説明

DC−DCコンバータ

【課題】部品点数が少ない簡単な回路構成を可能にするDC−DCコンバータを提供すること。
【解決手段】負荷RLの他端を前記直流電源の一端V1へ接続し、第1のトランジスタQ1の制御端子に第2端子を、直流電源の一端V1に第1端子を接続した第2のトランジスタQ2を具備し、第1のトランジスタQ1の第2端子と第2のトランジスタQ2の制御端子の間に第1のコンデンサC1を具備し、第2のトランジスタQ2の制御端子と直流電源の他端GNDの間に第1の抵抗R1を具備し、負荷RLと直列に検出抵抗RSを具備し、検出抵抗RSの一端に第1端子、検出抵抗RSの他端に制御端子を接続した第3のトランジスタQ3を具備し、第3のトランジスタQ3の第2端子を第2のトランジスタQ2の制御端子に接続し、第1のトランジスタQ1のスイッチング電流を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC−DCコンバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
DC−DCコンバータは、携帯用電子装置などにおいて広い電圧範囲で安定して駆動させたい、電池の消耗等に伴う電圧変動の影響を受けずに駆動させたい、電池を最後まで使いきりエネルギー効率を高めたい、電源回路において入出力電力差を小さくしてエネルギー効率を高めたい、等という要求に応じて需要が高まっているが、回路が複雑で多くの部品を必要とするため、比較的高価で大型な部品とならざるを得ないのが現状である。軽薄短小や低価格が求められる電子装置においては、常に更なる小型化、低価格化が求められている。
【0003】
これまでは、面実装部品で構成する、IC化するなどの方法で、低価格化・小型化を図ってきた。それに加えて、おおもとの回路が更に簡単で少ない部品で構成されるようになれば、更なる低価格化・小型化が可能である。
【0004】
また、従来のDC−DCコンバータを用いたくても、装置全体の価格を高くできないため、別の方法で対処せざるをえなかった場合があった。
【0005】
たとえば、白色LED1個を、小型化のため、少ない本数の1.5Vの電池で駆動したい場合を想定してみたい。白色LEDは3.5V程度の印加電圧で十分な光量が得られるようになるため、3本以上の電池か、1本または2本の電池とDC−DCコンバータが必要となる。しかし、ただ1個の白色LEDに対して、従来のDC−DCコンバータは、高価で大きすぎる装置であるため、用いられるようなことは希で、電池を3本にすることが、ほとんどの場合の現実的な選択肢であった。
【0006】
図12に、従来のDC−DCコンバータの基本的な回路図を示す。
【0007】
同図は、直流電源の一端(V1)の+極にインダクタ(L1)と整流素子(D1)が、インダクタ(L1)に整流素子(D1)のアノード側が接続されるように直列接続し、負荷(RL)を整流素子(D1)のカソードと直流電源の他端(GND)の間に置き、整流素子(D1)のアノードと直流電源の他端(GND)間にスイッチング素子(Q1)を接続し、このスイッチング素子(Q1)をパルス発生回路(P1)からのパルス信号で繰り返しスイッチングさせることにより、スイッチング素子(Q1)がONのときにインダクタ(L1)にエネルギーを蓄え、OFFのときにこのエネルギーを負荷(RL)に給電するDC−DCコンバータである。
【0008】
この回路に類似した回路としては、特開昭61−263175の図1がある。
【0009】
上記の駆動パルス発生回路(P1)の構成は、いくつかの種類がある。トランス(T1)を主な構成要素としたもの、三角波発生回路、PWM比較器、ドライブ回路などを主な構成要素としたもの、無安定マルチバイブレータ(U4)を主な構成要素としたものなどがある。
【0010】
上記駆動パルス発生回路(P1)としてトランス(T1)を主な構成要素としたDC−DCコンバータを図13に示す。同図は、ブロッキング発振回路とも呼ばれるもので、トランス(T1)はインダクタ(L1)と駆動パルス発生回路(P1)を兼ねる。ここで、トランス(T1)の1次側の巻線を通過してスイッチング素子(Q1)のベースに流れ込んだ電流が、スイッチング素子(Q1)のコレクタ電流を生じさせるが、この電流はトランス(T1)の2次側の巻線を通過して流れるため、誘導電流が発生し、トランス(T1)1次側の巻線の電流がスイッチング素子(Q1)のベースに流れ込むのを妨げてしまい、トランス(T1)の2次側の巻線の電流も減少するが、そのときには再びトランス(T1)の1次側に電流が流れる。こうして一連の動作を繰り返すことが、この回路がパルスを発生する仕組みとなっており、駆動パルス発生回路(P1)として動作する。回路図上では、部品点数が少なくシンプルな構成になるが、実際のトランスは比較的大きい部品であり、また受注生産されることが多い高価な部品でもある。
【0011】
この回路に類似した回路としては、特開2002−109901の図1と特開平1−149093の図3がある。
【0012】
上記駆動パルス発生回路(P1)として三角波発生回路、PWM比較器、ドライブ回路などを主な構成要素としたDC−DCコンバータとしては、特許第3480441号の図10などがある。これは、三角波発生回路、PWM比較器、ドライブ回路などにより構成され、さらに電圧安定化機能や電流安定化機能がついたものであり、その複雑さゆえに高価になりIC化されることも多い回路である。
【0013】
上記駆動パルス発生回路(P1)として無安定マルチバイブレータ(U4)を用いたDC−DCコンバータを図14に示す。同図は、4個の抵抗、2個のコンデンサ、2個のトランジスタからなる回路である。この回路がパルスを発生する仕組みは、1個の抵抗と1個のコンデンサからなる時定数回路を2つ備え、片方の時定数回路が充電され時定数に達したときに、もう片方の時定数回路を放電させリセットするという動作を繰り返すことから成り立っている。このDC−DCコンバータは、上記のトランス(T1)を用いたものや、三角波発生回路、PWM比較器、ドライブ回路などにより構成したものと比較して低価格化・小型化ができるが、入力電圧が変動すると出力電圧や出力電流が変動する欠点がある。
【0014】
上記無安定マルチバイブレータ回路(U4)に、出力電圧制御機能を加え、上記のDC−DCコンバータ専用ICと比較して小型化と低価格化が実現することを提案した特許として、特許第3480441号がある。
【0015】
特許第3480441号は、パルス発生の時定数を変化させることによって、スイッチング素子(Q1)のON・OFFのタイミングを変化させて出力電圧を制御する出力電圧制御回路を備えたことを特徴としている無安定マルチバイブレータを用いたDC−DCコンバータである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開昭61−263175
【特許文献2】特開2002−109901
【特許文献3】特開平1−149093
【特許文献4】特許第3480441号(特開2000−78325)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
これらの従来の、DC−DCコンバータにおいては、次に示すような欠点があった。
【0018】
回路にトランスを含むDC−DCコンバータにおいては部品が大きく高価になること、回路にICを用いたものにおいては高価になること、回路を個別部品で構成したものにおいては回路規模が大きくなることなどの欠点があった。
【0019】
本発明は、これら従来技術の問題点を解決するためになされたもので、部品点数が少ない簡単な回路構成、さらに、小型化と低価格化を可能にするDC−DCコンバータを提供することを目的とする。
【0020】
本発明の別の目的は、特許第3480441号に開示されたDC−DCコンバータよりも、更なる小型化、低価格化、電圧範囲の拡大、応用範囲の拡大、カスタマイズの容易さが求められる場合に対応することの可能なDC−DCコンバータを提供することである。
【0021】
本発明の更に別の目的は、IC化された場合でも、更なる小型化、低価格化、電圧範囲の拡大、応用範囲の拡大、カスタマイズの容易さを実現した製造しやすい簡単な回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
かかる目的を達成するために、本発明に係るDC−DCコンバータは、直流電源の一端(V1)と直流電源の他端(GND)との間に該直流電源の一端(V1)側から第1のコイル(L1)と、第1端子及び第2端子間に電流経路が形成され制御端子に該第1端子の電圧に対応した所定電圧が印加されたときに該第1端子及び該第2端子間が導通状態となるトランジスタである第1のトランジスタ(Q1)の第2端子が第1のコイル(L1)側に、その第1端子を直流電源の他端(GND)側にして直列接続され、前記第1のコイル(L1)と前記第1のトランジスタ(Q1)の接続点と第1の整流素子(D1)の一端が接続され、負荷(RL)が前記第1の整流素子(D1)の他端に接続され、前記第1のトランジスタ(Q1)が繰り返しスイッチングされることにより、該第1のトランジスタ(Q1)がONのときに前記第1のコイル(L1)にエネルギーが蓄えられ、OFFのときにこのエネルギーが前記負荷部(RL)へ給電される、DC‐DCコンバータにおいて、前記負荷(RL)の他端が前記直流電源の一端(V1)へ接続され、前記第1のトランジスタ(Q1)の制御端子に第2端子が、前記直流電源の一端(V1)に第1端子が接続された前記第2のトランジスタ(Q2)を具備し、前記第1のトランジスタ(Q1)の第2端子と前記第2のトランジスタ(Q2)の制御端子との間に第1のコンデンサ(C1)を具備し、前記第2のトランジスタ(Q2)の制御端子と直流電源の他端(GND)との間に第1の抵抗(R1)を具備し、前記負荷(RL)と直列に接続される検出抵抗(RS)を具備し、前記検出抵抗(RS)の一端に第1端子が、該検出抵抗(RS)の他端に制御端子が接続された第3のトランジスタ(Q3)を具備し、前記第3のトランジスタ(Q3)の第2端子が前記第2のトランジスタ(Q2)の制御端子に接続され、前記第1のトランジスタ(Q1)のスイッチング電流を制御することを特徴として構成される。
【0023】
上記負荷(RL)と検出抵抗(RS)の位置関係は、第1の整流素子(D1)側に検出抵抗(RS)が付く場合と、第1の整流素子(D1)側に負荷(RL)が付く場合の両方が含まれる。
【0024】
このように構成されることで、各部品(R1、R2、RS、C1、L1、D1、Q1、Q2、Q3)の相互作用により、この第1のトランジスタ(Q1)を繰り返しスイッチングされることで、該第1のトランジスタ(Q1)がONのときに当該第1のインダクタ(L1)にエネルギーを蓄え、OFFのときにこのエネルギーを整流素子(D1)を通して前記負荷部(RL)へ給電する。また、このとき、該負荷(RL)と直列接続された検出抵抗(RS)に一定以上の電流が流れている間は、第1のトランジスタ(Q1)のスイッチング動作は一時停止するため、出力電流制御機能を付加した昇降圧型DC−DCコンバータを実現できる。さらに、該負荷(RL)の他端を直流電源の一端(V1)の側に接続するので該負荷(RL)の一端にかかる電圧は、常に電源電圧よりも高くなるため、電源電圧が該負荷(RL)の両端にかかる電圧より大きくなる場合でも、トランジスタ(Q1)のスイッチング動作により該負荷(RL)にかかる電流を制御でき、電源電圧範囲が、負荷(RL)の電圧をまたぐことができる昇降圧型DC−DCコンバータを実現できる。
【0025】
またさらに、部品点数が少ない簡単な回路構成と小型化と低価格化を提供することが可能となる。
【0026】
また、上記DC−DCコンバータは、前記負荷(RL)の他端を直流電源の他端(GND)に接続されることを特徴とするように構成しても良い。
【0027】
このように構成することで、上記負荷(RL)の他端を直流電源の他端(GND)側に接続するので出力電流制御機能を付加した昇圧型DC−DCコンバータを実現できる。また、上記負荷(RL)の他端を直流電源の一端(V1)側に接続した場合よりも、電力効率の向上を実現できる。さらに、部品点数が少ない簡単な回路構成と小型化と低価格化を実現することが可能となる。
【0028】
さらに、上記DC−DCコンバータは、上記負荷(RL)があった位置に第2の抵抗(R2)を具備し、前記検出抵抗(RS)と前記第2の抵抗(R2)とが直列に接続された部分に並列に前記負荷(RL)が接続されたことを特徴とするように構成しても良い。
【0029】
このように構成することで、出力電圧制御機能を付加した昇圧型DC−DCコンバータを実現できる。上記負荷(RL)の他端を直流電源の一端(V1)の側に接続した昇降圧DC−DCコンバータにも、上記負荷(RL)の他端を直流電源の他端(GND)の側に接続した昇圧DC−DCコンバータにも応用ができるので、バリエーションをさらに2つ増やすことができる、また、部品点数が少ない簡単な回路構成と小型化と低価格化を実現することが可能となる。
【0030】
また、上記DC−DCコンバータは、前記検出抵抗(RS)と前記第3のトランジスタ(Q3)の制御端子との間に挿入された定電圧素子(D2)を具備し、前記第3のトランジスタ(Q3)の制御端子と前記負荷(RL)の他端との間に第3の抵抗(R3)の一端が接続されたことを特徴とするように構成しても良い。
【0031】
第3の抵抗(R3)の他端は、第3の抵抗(R3)の一端よりも常に電位の低い箇所であれば、どこに接続しても良い。しかし、最適な場所としては、負荷(RL)の電位の低い側がある。
【0032】
このように構成することで、負荷に流れている電流または電圧検出のときのロスを少なくしたので、定電圧素子を挿入し検出電圧を下げたDC−DCコンバータを実現できる。上記DC−DCコンバータの組み合わせで、さらに4種類のバリエーションのDC−DCコンバータを増やすことができる。また、電圧範囲の拡大と電力効率の向上を実現できる。
【0033】
さらに、上記DC−DCコンバータは、前記第1の抵抗(R1)と置換した電流制限回路(CR)とを具備したことを特徴とするように構成しても良い。
【0034】
このように構成することで、上記第1の抵抗(R1)を電流制限回路にすることで、バイアス抵抗を電流制限回路に交換し、入力電源電圧が高くなったときにコイル(L1)に流れる電流の飽和を防ぐDC−DCコンバータを実現できる。また、電圧範囲の拡大と電力効率の向上も実現できる。
【0035】
また、上記DC−DCコンバータは、前記電流制限回路(CR)として、前記第2のトランジスタ(Q2)の制御端子に第2端子が接続された第4のトランジスタ(Q4)を具備し、前記直流電源の一端(V1)と前記第4のトランジスタ(Q4)の制御端子との間に挿入された第4の抵抗(R4)を具備し、前記第4のトランジスタ(Q4)の制御端子に第2端子が、該第4のトランジスタ(Q4)の第1端子に制御端子が、直流電源の他端(GND)に第1端子が、それぞれ接続された第5のトランジスタ(Q5)を具備し、前記第5のトランジスタ(Q5)の制御端子と該第5のトランジスタ(Q5)の第1端子との間に挿入された第5の抵抗(R5)を具備したことを特徴とするように構成しても良い。
【0036】
このように構成することで、上記DC−DCコンバータの電流制限回路の具体的構成を実現できる。
【0037】
さらに、上記DC−DCコンバータは、前記直流電源の一端(V1)と前記第5のトランジスタ(Q5)との制御端子の間に挿入された第6の抵抗(R6)を具備したことを特徴とするように構成しても良い。
【0038】
このように構成することで、上記DC−DCコンバータの電流制限回路(CR)の制限する電流量を入力電圧に反比例させることができ、規定以上の電圧が入力された場合、回路の主要部の電流を止め、回路の動作を停止するシャットダウン機能を備えた回路を実現できる。
【0039】
また、上記DC−DCコンバータは、前記第1のトランジスタ(Q1)の第1端子を含み、前記第5のトランジスタ(Q5)の第1端子と前記第5の抵抗(R5)の一部または全部とが接続されるノードから、前記直流電源の他端(GND)が切り離され、該ノードに第1端子、前記直流電源の他端(GND)に第2端子が接続された第6のトランジスタを具備し、前記第1の整流素子(Q1)の他端と前記第6のトランジスタ(Q6)との制御端子の間に挿入された第7の抵抗(R7)を具備したことを特徴とするように構成しても良い。
【0040】
このように構成することで、第6のトランジスタ(Q6)としてFETを挿入した場合には、付加機能である逆電圧からの保護回路を有するDC−DCコンバータを実現できる。また、ダイオードなどで整流回路を構成した場合に比べ、回路の効率を向上させ、回路の動作開始電圧にほとんど影響を与えず、保護回路を構成することも実現できる。
【0041】
この構成によって、部品点数が少ない簡単な回路構成、さらに、小型化と低価格化を可能にするDC−DCコンバータを提供することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、部品点数が少ない簡単な回路構成、さらに、小型化と低価格化を可能にするDC−DCコンバータを提供することができる。
【0043】
本発明は、軽薄短小や低価格が求められる電子装置においては、特許3480441号に開示されたDC−DCコンバータよりも、更なる小型化、低価格化、電圧範囲の拡大、応用範囲の拡大、カスタマイズの容易さを実現できる。
【0044】
本発明は、リード線付きの素子で構成した場合、面実装用の素子で構成した場合、いずれの場合においても、従来のDC−DCコンバータより少ない部品数で構成できるので、低価格化と小型化を実現可能である。
【0045】
また、IC化した場合も、回路が単純なため、従来のものより小型化が可能であるし、電圧範囲の拡大、応用範囲の拡大、カスタマイズの容易さを実現し、製造しやすく歩留まりも向上するため、低価格化が可能である。
【0046】
これらの点を生かして、需要があったにもかかわらず、コストと折り合いが付かず使用されてこなかった用途に販路を拡大すれば、相乗効果によりさらなる低価格化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る出力電流制御機能を付加した昇降圧型DC−DCコンバータの一実施形態を示す回路図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る出力電流制御機能を付加した昇圧型DC−DCコンバータの一実施形態を示す回路図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る出力電圧制御機能を付加した昇降圧型DC−DCコンバータの一実施形態を示す回路図である。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る出力電圧制御機能を付加した昇圧型DC−DCコンバータの一実施形態を示す回路図である。
【図5】本発明の第5の実施形態に係る出力電流制御機能を付加したDC−DCコンバータの負荷部の一実施形態を示す回路図である。
【図6】本発明の第6の実施形態に係るスイッチング電流制御機能を付加した昇降圧型DC−DCコンバータの一実施形態を示す回路図である。
【図7】本発明の第7の実施形態に係るスイッチング電流制御機能を付加する電流制限回路の具体例を含む昇降圧型DC−DCコンバータの一実施形態を示す回路図である。
【図8】本発明の第8の実施形態に係るシャットダウン機能を付加したDC−DCコンバータの一実施形態を示す回路図である。
【図9】本発明の第9の実施形態に係る逆電圧保護機能を付加したDC−DCコンバータの一実施形態を示す回路図である。
【図10】本発明の第10の実施形態に係る主トランジスタのベース−エミッタ間抵抗と入力コンデンサを付加したDC−DCコンバータの一実施形態を示す回路図である。
【図11】本発明のDC−DCコンバータの機能の切り替え方法を具体的に示した回路図である。
【図12】従来のDC−DCコンバータの基本回路図である。
【図13】従来のトランスを用いたDC−DCコンバータの1例を示す回路図である。
【図14】従来の無安定マルチバイブレータを用いたDC−DCコンバータの1例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0049】
なお、以下各図において、同一または相当部分には、同一符号を付す。
【0050】
図1は、本発明に係るDC−DCコンバータの一実施形態を示す基本回路図である。なお、以下各図において、同一または相当部分には、同一符号を付す。
【0051】
同図に示すように、本実施形態に係るDC−DCコンバータは、直流電源V1と接地GNDの間に直流電源V1側から第1のコイルL1と第1端子と第2端子間に電流経路が形成され、制御端子に該第1端子の電圧に対応した所定電圧が印加されたときに該第1端子及び該第2端子間が導通状態となるトランジスタである第1のトランジスタ(Q1)の第2端子が第1のコイル(L1)側に、その第1端子を直流電源の他端(GND)側にして直列接続されて構成される。第1のコイルL1と第1のトランジスタQ1の接続点と第1の整流素子D1の一端を接続し、負荷RLを第1の整流素子D1の他端に接続する。
【0052】
これは、第1のトランジスタ(Q1)が繰り返しスイッチングされることにより、該第1のトランジスタ(Q1)がONのときに第1のコイル(L1)にエネルギーが蓄えられ、OFFのときにこのエネルギーが負荷部(RL)へ給電される、DC‐DCコンバータである。このとき、負荷RLの他端を直流電源V1へ接続し、第2のトランジスタ(Q2)の第2端子を第1のトランジスタQ1の制御端子に、第2のトランジスタQ2の第1端子を直流電源V1に接続する。第1のトランジスタQ1の第2端子と第2のトランジスタQ2の制御端子の間に第1のコンデンサC1を、第2のトランジスタQ2の制御端子と接地GNDの間に第1の抵抗R1を接続する。負荷RLと電流検出抵抗RSを直列に、第3のトランジスタQ3の第1端子を電流検出抵抗RSの一端に、第3のトランジスタQ3の制御端子を電流検出抵抗RSの他端に、第3のトランジスタQ3の第2端子を第2のトランジスタの制御端子に接続して構成される。
【0053】
次に、このように構成される本発明に係るDC−DCコンバータの機能を説明する。
【0054】
まず、第1の抵抗(R1)を介して第2のトランジスタ(Q2)のベースに所定の電圧が印加され電流が流れ始めると第2のトランジスタ(Q2)がONし、その第2のトランジスタ(Q2)のコレクタから出た電流が、第1のトランジスタ(Q1)のベースに所定の電圧を印加し電流が流れ始めると、第1のトランジスタ(Q1)をONさせる。
【0055】
それにより、コイル(L1)に電流が流れ始め、第1のトランジスタ(Q1)のベース電流とhFE(直流電流増幅率)により決まる飽和電流値に達するまで増加する。このコイルに流れる電流が第1のトランジスタ(Q1)の飽和電流値まで達すると、電流を流し続けようとするコイルの性質により、コイル(L1)とトランジスタ(Q1)のコレクタとの接続点の電圧が、コイル(L1)と直流電源の+極の接続点の電圧を基準として反転し、整流素子(D1)を介して負荷部(UL)へ電流が流れるまで上昇する。
【0056】
コイル(L1)とトランジスタ(Q1)のコレクタとの接続点の電圧の反転・上昇が、第1のコンデンサ(C1)を介して第2のトランジスタ(Q2)のベース電圧を上昇させるため、第2のトランジスタ(Q2)はOFFとなり、つづいて第1のトランジスタ(Q1)もOFFとなる。
【0057】
コイル(L1)の電流が、負荷部(UL)に入ると、まず第2のコンデンサ(C2)に蓄えられ、同時に負荷(RL)と検出抵抗(RS)にも電流を流し始める。
【0058】
検出抵抗(RS)にあらかじめ設定した電流以上の電流が流れると、検出抵抗(RS)の両端の電圧が第3のトランジスタ(Q3)のベース電圧を超えるため、第3のトランジスタ(Q3)がONになり、第3のトランジスタのコレクタから電流が流れ始め、第2のトランジスタのベース電位が上昇し、第2のトランジスタ(Q2)がOFFとなる条件を加える。
【0059】
コイル(L1)から負荷部(UL)に流れる電流は、時間と共に減衰し、しまいにゼロになり、コイル(L1)とトランジスタ(Q1)のコレクタとの接続点の電圧は直流電源の+極の電圧と同じまでになる。
【0060】
第2のコンデンサ(C2)に蓄えられていた電荷が、負荷(RL)に電流として流れるので、コイル(L1)に流れる電流がゼロになってから第3のトランジスタ(Q3)がOFFになるまで、時間差を生じることがあるが、この時間差により負荷(RL)に流れる電流が一定以下に保たれることになる。
【0061】
検出抵抗(RS)に流れる電流が、あらかじめ設定した電流以下になると、検出抵抗(RS)の両端の電圧が第3のトランジスタ(Q3)のベース電圧を下回り、第3のトランジスタ(Q3)がOFFになり、第3のトランジスタ(Q3)のコレクタ電流が止まり、第1の抵抗(R1)の電流により第2のトランジスタのベース電位が下降し、再び第2のトランジスタ(Q2)がONとなり、次のサイクルが始まる。
【0062】
さらに、該負荷(RL)の他端を直流電源の一端(V1)の側に接続するので該負荷(RL)の一端にかかる電圧は、常に電源電圧よりも高くなるため、電源電圧が該負荷(RL)の両端にかかる電圧より大きくなる場合でも、トランジスタ(Q1)のスイッチング動作により該負荷(RL)にかかる電流を制御でき、電源電圧範囲が、負荷(RL)の電圧をまたぐことができる昇降圧型DC−DCコンバータを実現できる。
【0063】
図2は、本発明に係る出力電流制御機能を付加し図1よりも電力効率を改善したDC−DCコンバータの一実施形態を示す基本回路図である。
【0064】
同図に示すように、このDC−DCコンバータは、図1の負荷部(UL)の直流電源の+極(V1)と接続されていたノードを直流電源の−極(GND)に接続しなおしたものである。
【0065】
次に、このように構成される本発明に係るDC−DCコンバータの機能を説明する。
【0066】
電源電圧が該負荷(RL)の両端にかかる電圧より大きくなると、負荷(RL)に過電流が流れるため、電源電圧を負荷(RL)の電圧より大きくすることができない。そのかわり、入出力電圧差を小さくすることができるため、図1のものよりも高効率な昇圧型DC−DCコンバータを実現できる。
【0067】
図3は、本発明に係る出力電圧制御機能を付加したDC−DCコンバータの一実施形態を示す基本回路図である。
【0068】
同図に示すように、このDC−DCコンバータは、図1の負荷(RL)があった位置に第2の抵抗(R2)を置き換え、さきの検出抵抗(RS)とこの第2の抵抗(R2)が直列に接続された部分に並列に負荷(RL)を接続したものである。
【0069】
次に、このように構成される本発明に係るDC−DCコンバータの機能を説明する。
【0070】
第1の実施形態で説明したように、検出用抵抗(RS)の両端電圧は第3のトランジスタ(Q3)のベース−エミッタ接合の順方向電圧VFにほぼ等しい。第3のトランジスタ(Q3)のベース電流は小さいので無視して説明する。検出用抵抗(RS)を流れた電流は、そのまま第2の抵抗(R2)を流れる。従って、負荷RLの両端の出力電圧VLは次のようになる。
VL=VF・(RS+R2)/RS
即ち、出力電圧VLは一定となり、負荷RLは定電圧で駆動される。当然ながら、負荷はLEDに限定されるものではない。
【0071】
この出力電圧制御機能を付加したDC−DCコンバータも僅かな個数の部品で回路を構成できる点に大きな特徴がある。部品点数が少ないため安価に製作できる利点がある。
【0072】
図4は、本発明に係る出力電圧制御機能を付加したDC−DCコンバータの一実施形態を示す基本回路図である。
【0073】
同図に示すように、このDC−DCコンバータは、図3の負荷部(UL)の直流電源の+極(V1)と接続されていたノードを直流電源の−極(GND)に接続しなおしたものである。
【0074】
次に、このように構成される本発明に係るDC−DCコンバータの機能を説明する。
【0075】
図3と図4の関係は、図1と図2の関係と同一である。
【0076】
電源電圧が該負荷(RL)の両端にかかる電圧より大きくなると、負荷(RL)に過電流が流れるため、電源電圧を負荷(RL)の電圧より大きくすることができない。そのかわり、入出力電圧差を小さくすることができるため、図3のものよりも高効率な昇圧型DC−DCコンバータを実現できる。
【0077】
図5は、本発明に係る出力電流制御機能を付加したDC−DCコンバータの負荷部の電流検出の際のロスを少なくする回路の一実施形態を示す回路図である。
【0078】
同図に示すように、このDC−DCコンバータの負荷部は、図1および図2の負荷部の当該検出抵抗(RS)と当該第3のトランジスタ(Q3)の制御端子との間に挿入した定電圧素子(D2)を具備し、この第3のトランジスタ(Q3)の制御端子と当該負荷(RL)の他端との間に第3の抵抗(R3)を接続して構成されるものである。
【0079】
次に、このように構成される本発明に係るDC−DCコンバータの機能を説明する。
【0080】
第1の実施形態で説明したように、図1や図2の場合、検出用抵抗(RS)の両端電圧は第3のトランジスタ(Q3)のベース−エミッタ接合の順方向電圧VFにほぼ等しい。同図は、電流制御機能を付加しながらも検出用抵抗(RS)の両端電圧を低くし、検出用抵抗(RS)による電力ロスを抑えるための回路である。
【0081】
第3のトランジスタ(Q3)のベース−エミッタ接合の順方向電圧VFは、ほぼ一定なので、定電圧回路(D2)の両端電圧分だけ、検出用抵抗(RS)の両端電圧が低くなる。第3のトランジスタ(Q3)のベース電流は、第3の抵抗(R3)を通って流れる。
【0082】
検出用抵抗(RS)の両端電圧は次のようになる。
RS=VF−D2
負荷電流をILとした場合、検出用抵抗(RS)にかかる電力は、
RS・IL=VF・IL−D2・IL
となり、図1や図2に回路に比べ、D2・IL分だけ節約できる。
【0083】
この出力電圧制御機能を付加したDC−DCコンバータも僅かな個数の部品で回路を構成できる点に大きな特徴がある。部品点数が少ないため安価に製作できる利点がある。
【0084】
図6は、本発明に係るDC−DCコンバータの一実施形態を示す応用回路図である。これは、負荷部の電流検出の際のロスを少なくする回路の一実施形態を示す回路図である。
【0085】
同図に示すように、このDC−DCコンバータは、図1の第1の抵抗(R1)を電流制限回路(CR)に変更したものである。
【0086】
次に、このように構成される本発明に係るDC−DCコンバータの機能を説明する。
【0087】
第1の実施形態で説明したように、第1の抵抗(R1)を流れる電流が、第2のトランジスタのベース電流となり、第2のトランジスタ(Q2)のコレクタ電流が第1のトランジスタ(Q1)のベース電流となり、第1のトランジスタのコレクタ電流がコイル(L1)を流れる電流となる。即ち、第1の抵抗(R1)を流れる電流の大きさとコイル(L1)を流れる電流の大きさは比例関係にある。
IL1=IR1・Q2のhFE・Q1のhFE
DC−DCコンバータの効率を維持するためには、コイルが飽和するほど過大な電流を流さないことが求められる。しかし、第1の抵抗(R1)を流れる電流は、電源電圧に比例する。(このままでは、電源電圧の変動により、DC−DCコンバータの効率が大きく変動してしまう。)
IR1=(V1−VF)/R1
そこで、第1の抵抗(R1)を定電流回路(CR)に変更することにより、コイル(L1)に流れる電流を制御した回路としたものである。
【0088】
この出力電圧制御機能を付加したDC−DCコンバータも僅かな個数の部品で回路を構成できる点に大きな特徴がある。部品点数が少ないため安価に製作できる利点がある。
【0089】
図7は、本発明に係るDC−DCコンバータの電流制限回路の一実施形態を示す回路図である。
【0090】
同図に示すように、このDC−DCコンバータは、図6の電流制限回路(CR)を第2のトランジスタ(Q2)の制御端子に第2端子を接続した第4のトランジスタ(Q4)と、直流電源の一端(V1)と当該第4のトランジスタ(Q4)の制御端子の間に挿入した第4の抵抗(R4)と、第4のトランジスタ(Q4)の制御端子に第2端子を、第4のトランジスタ(Q4)の第1端子に制御端子を、直流電源の他端(GND)に第1端子を接続した第5のトランジスタ(Q5)と、第5のトランジスタ(Q5)の制御端子と該第5のトランジスタ(Q5)の第1端子の間に挿入した第5の抵抗(R5)により構成したものである。
【0091】
次に、このように構成される本発明に係るDC−DCコンバータの機能を説明する。
【0092】
回路に電源が入ると、第4の抵抗(R4)と第4のトランジスタ(Q4)のベース−エミッタ間と第5の抵抗(R5)を通って電流が流れ始める。第4のトランジスタにベース電流が流れるため、第4のトランジスタ(Q4)のコレクタ電流が流れ始め、これが第2のトランジスタ(Q2)のベース電流となる。第2のトランジスタ(Q2)のベース電流と第5の抵抗(R5)に流れる電流は、ほぼ同じである。このとき、第4のトランジスタ(Q4)のベース電流は小さいので無視する。第5の抵抗(R5)に流れる電流が一定値を超えると、第5の抵抗(R5)の両端の電圧が、第5のトランジスタ(Q5)の閾値電圧をこえ、第5のトランジスタ(Q5)がコレクタ電流を流し始める。第5のトランジスタ(Q5)のコレクタ電流が、第4のトランジスタ(Q4)のベース電流を減少させるので、これがネガティブフィードバックとなり、これが第4のトランジスタ(Q4)のコレクタ電流と第2のトランジスタ(Q2)のベース電流と第5の抵抗(R5)に流れる電流も減少させ、一定の量に保たせようとする。
【0093】
すなわち、第4のトランジスタ(Q4)と第4の抵抗(R4)と第5のトランジスタ(Q5)と第5の抵抗(R5)により構成された電流制限回路(CR)は、第二のトランジスタ(Q2)のベース電流を一定に保とうとし、この結果としてコイル(L1)の電流を異なる電源電圧のもとで一定以下に保つことができる。
【0094】
このコイル電流制御機能を付加したDC−DCコンバータも僅かな個数の部品で回路を構成できる点に大きな特徴がある。部品点数が少ないため安価に製作できる利点がある。
【0095】
図8は、本発明に係るDC−DCコンバータのシャットダウン機能を付加した一実施形態を示す回路図である。
【0096】
同図に示すように、このDC−DCコンバータは、図7の直流電源の+極(V1)と第5のトランジスタ(Q5)の制御端子の間に第6の抵抗(R6)を挿入したものである。
【0097】
次に、このように構成される本発明に係るDC−DCコンバータの機能を説明する。
【0098】
図7で説明したように、第5の抵抗(R5)の電流は一定に保たれる。図8において、第6の抵抗(R6)の電流は第4のトランジスタ(Q4)のコレクタ電流と第6の抵抗(R6)の電流の和にほぼ等しい。このとき、第4のトランジスタ(Q4)のベース電流は小さいので無視する。
【0099】
第6の抵抗(R6)に流れる電流は、電源電圧の大きさに比例する。
IR6=(V1−VF)/R6
第5の抵抗(R5)の電流は一定であるので、第4のトランジスタ(Q4)のコレクタ電流は、電源電圧の上昇と共に小さくなり、ついにはゼロになり、回路の発振動作が停止する。この状態になることをシャットダウンという。
ICQ4≒(R5/VF)−(V1−VF)/R6
第6の抵抗(R6)の値を調整することで、シャットダウン電圧を任意の値に設定することができる。
【0100】
このシャットダウン機能を付加したDC−DCコンバータも僅かな個数の部品で回路を構成できる点に大きな特徴がある。部品点数が少ないため安価に製作できる利点がある。
【0101】
図9は、本発明に係るDC−DCコンバータの逆電圧保護機能を付加した一実施形態を示す回路図である。
【0102】
同図に示すように、このDC−DCコンバータは、図1ないし図8において、第1のトランジスタ(Q1)のエミッタが接続されているノードから直流電源の−極(GND)を切り離し、該ノードにソース、直流電源の他端(GND)にドレインを接続したN型MOSFET(Q6)と、第1の整流素子(D1)のカソードとN型MOSFET(Q6)のゲートの間に第7の抵抗(R7)を挿入したものである。なお、下記の説明に使用しない構成要素は、抽象化するために省略してある。
【0103】
次に、このように構成される本発明に係るDC−DCコンバータの機能を説明する。
【0104】
直流電源の+極(V1)に正電圧、直流電源の−極(GND)に負電圧が印加されたときに、N型MOSFET(Q6)のソース−ドレイン間の寄生ダイオードを電流が流れ、DC−DCコンバータの発振動作が開始される。いったん発振動作が開始されると、整流素子(D1)のカソードの電圧が上昇し、第7の抵抗(R7)を通じてN型MOSFET(Q6)のゲートにバイアス電圧が印加される。このバイアス電圧がN型MOSFET(Q6)の動作電圧を超えると、N型MOSFET(Q6)のソース−ドレイン間電圧がほぼゼロになり、N型MOSFET(Q6)を付加しない図1ないし図4、図6ないし図8の回路とほぼ同様の効率のDC−DCコンバータとして動作する。
【0105】
N型MOSFET(Q6)の動作電圧は、少なくても2V程度は必要であるが、直流電源の電圧が0.8V程度からN型MOSFET(Q6)のソース−ドレイン間の寄生ダイオードに電流が流れはじめ、昇圧された電圧が第7の抵抗(R7)を通じてN型MOSFET(Q6)のゲートに印加されるので、電源電圧が0.8V程度から動作するDC−DCコンバータを構成することができる。
【0106】
直流電源の+極(V1)に負電圧、直流電源の−極(GND)に正電圧が印加されたときには、N型MOSFET(Q6)のドレイン−ソース間には電流が流れない。第7の抵抗(R7)を通じてN型MOSFET(Q6)のゲートにかかるバイアス電圧も、逆バイアスとなり、逆電圧がN型MOSFET(Q6)の逆耐圧電圧を超えて回路が破壊されるまで、DC−DCコンバータはN型MOSFET(Q6)によって逆電圧から保護される。
【0107】
N型MOSFET(Q6)は、逆耐圧電圧が少なくても−10Vから−20V程度あるものを選択可能なため、乾電池や自動車用バッテリーなどを用途としたDC−DCコンバータであれば、十分な保護回路として動作する。さらに逆耐圧電圧を高くしたい場合は、相応のN型MOSFET(Q6)を選択することにより対応可能である。
【0108】
逆耐圧保護回路は、ダイオードをDC−DCコンバータと直列に接続することでも構成可能であるが、この場合は、電源電圧を0.8Vまで下げることはできず、また、ダイオードが順方向電圧と電流の積の分だけ電力を消費するため、DC−DCコンバータの効率を低下させる。ダイオードの順方向電圧は、シリコンダイオードで0.6〜0.8V程度、ショットキーバリアダイオードで0.3〜0.6V程度であり、無視できる大きさではない。効率の低下は、電源電圧が低いときほど顕著である。
【0109】
逆耐圧保護回路は、バイポーラトランジスタを図9のN型MOSFETと同様に接続しても構成可能であるが、バイポーラトランジスタの逆耐圧電圧は5Vから7Vの範囲にとどまるため、逆耐圧保護回路としては十分でない場合があり、実用性が低い。
【0110】
この逆耐圧保護回路を付加したDC−DCコンバータも僅かな個数の部品で回路を構成できる点に大きな特徴がある。部品点数が少ないため安価に製作できる利点がある。
【0111】
図10は、本発明に係るDC−DCコンバータの一実施形態を示す回路図である。
【0112】
同図に示すように、このDC−DCコンバータは、図8の回路図に図9の逆耐圧保護回路を付加し、さらに第1のトランジスタのベースとエミッタの間に挿入された第8の抵抗(R8)と、直流電源の+極(V1)とN型MOSFETのソースの間に挿入された第3のコンデンサ(C3)を追加したものである。
【0113】
次に、このように構成される本発明に係るDC−DCコンバータの機能を説明する。
【0114】
第8の抵抗(R8)は、主トランジスタである第1のトランジスタ(Q1)のベース−エミッタ間抵抗として機能し、第1のトランジスタ(Q1)のベース電流が遮断されたとき、速やかに寄生コンデンサの電荷を放電しベース電圧を下げる働きがある。この働きにより、主トランジスタのスイッチング効果を高め、DC−DCコンバータの効率を上げることができる。
【0115】
第3のコンデンサ(C3)は、DC−DCコンバータの入力コンデンサとして機能する。DC−DCコンバータの消費電流は、のこぎり波状に1〜3A以上にもなるピークを繰り返す。直流電源の内部抵抗や電線の抵抗が大きい場合は、このような電流消費のピークがあると1〜3V以上もの電圧降下を生じ、DC−DCコンバータの効率を低下させる。入力コンデンサは、十分な容量を持ったものを用意すれば、ピーク時に大きな電流を消費しても入力電圧の低下を防ぐ効果があり、DC−DCコンバータの効率低下を防ぐことができる。
【0116】
この主トランジスタのベース抵抗と入力コンデンサを付加したDC−DCコンバータも僅かな個数の部品で回路を構成できる点に大きな特徴がある。部品点数が少ないため安価に製作できる利点がある。
【0117】
以上、詳細に説明したように、本発明に係るDC−DCコンバータによれば、部品点数が少ない簡単な回路構成、さらに、小型化と低価格化を可能にするDC−DCコンバータを可能にすることができる。
【0118】
なお、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、その技術思想の同一及び等価に及ぶ範囲において上述した実施形態への様々な変形、追加、置換、拡大、縮小等を許容するものである。
【0119】
たとえば、本発明を実施した基板製造後でも昇降圧型と昇圧型を1本の配線の半田付け位置で容易に切り替えることや、本発明を実施した基板製造後でも電流制御型と電圧制御型を負荷の半田付け位置と検出抵抗の変更と第2の抵抗(R2)の追加により容易に切り替えることができる。
【0120】
これらの切り替え方法を具体的に示した回路図を図11に示す。回路構成を切り替える為の端子を第1ないし第9の端子(P1ないしP9)として示してある。
【0121】
第1の端子(P1)を第2の端子(P2)に接続すると、昇降圧型DC−DCコンバータになる。第1の端子(P1)を第3の端子(P2)に接続すると、昇圧型DC−DCコンバータになる。
【0122】
第4の端子(P4)と第5の端子(P5)との間に負荷(RL)を接続すると、電流制御型DC−DCコンバータになる。第6の端子(P6)と第7の端子(P7)との間に負荷(RL)を接続し、第4の端子(P4)と第5の端子(P5)との間に第2の抵抗(P2)を接続し、第8の端子(P8)と第9の端子(P9)との間の検出抵抗(RS)を必要に応じて変更すると電圧制御型DC−DCコンバータになる。
【0123】
さらに、上述したものは本願に係る技術思想を具現化するための実施形態の一例を示したにすぎないものであり、他の実施形態でも本願に係る技術思想を適用することが可能である。
【実施例1】
【0124】
LED駆動用のDC−DCコンバータとして用いると、電圧1V程度からLEDの順方向電圧よりも高い電圧までの範囲の電源でLEDを駆動させる回路ができる。
【0125】
これまでは、LEDに対してDC−DCコンバータが高価であったので、LEDを低電圧で駆動させる用途や電圧に関わらず駆動させる用途には、あまり用いられてこなかった。まして、小型LED1個を駆動させるためにDC−DCコンバータを使用する例は皆無に等しかったが、本発明を利用すれば、現実的な選択肢となる。
【実施例2】
【0126】
LEDの樹脂パッケージ内にDC−DCコンバータを内蔵させることができるので、従来のLEDと同様の外観を持った、入力電圧範囲が広いLEDを作ることができる。
【0127】
また、電流制御機能を備えた本発明を用いたLEDの場合、入力電圧範囲が広い上に電池が新しい状態から消耗した状態まで、安定した光量の得られるLEDを製造可能である。
【実施例3】
【0128】
本発明とLEDを組み合わせ、入力電圧範囲が広いLED発光装置を作り、これを電球に内蔵させると、LEDの特徴である高い発光効率・長寿命・演色性をもちながら、幅広い入力電圧範囲に対応した理想的な電球を安価につくることができる。
【実施例4】
【0129】
本発明とLEDを組み合わせ、電池1本で駆動するLED発光装置を作り、これをワイヤレスリモコンに内蔵させると、電池1本で駆動しつつ、電池を最後まで使い切ることで電池寿命を延ばした、理想的なワイヤレスリモコンを安価につくることができる。
【実施例5】
【0130】
3端子レギュレータなどの既存の電圧制御素子と形状的な互換性を持ったDC−CDコンバータを提供すれば、既成の電子回路や基板を変更することなく、あるいは僅かな変更で、入力電圧範囲が広く安定した動作をする電子装置を制作可能になる。
【実施例6】
【0131】
テレビチューナー、不揮発性半導体メモリ書き換え装置など、高い電圧を必要とするが、電流はそれほど必要としない装置がある。現状ではそういった装置のために、従来の高電圧発生回路や従来のDC−DCコンバータ組み込んでいる。そういった装置に本発明を組み込むと、コスト面で有利になる。
【0132】
また、本願発明を用いて生産される装置、方法、ソフトウェア、システムが、その2次的生産品に登載されて商品化された場合であっても、本願発明の価値は何ら減ずるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明に係るDC−DCコンバータによれば、部品点数が少ない簡単な回路構成、さらに、小型化と低価格化を可能にするDC−DCコンバータを実現できるので、電子部品、各種装置、機械等に関わるあらゆる産業において利用することが可能である。
【符号の説明】
【0134】
C1 コンデンサ
C2 コンデンサ
C3 コンデンサ
D1 整流素子
D2 定電圧素子
GND 直流電源の他端
L1 コイル
Q1 トランジスタ
Q2 トランジスタ
Q3 トランジスタ
Q4 トランジスタ
Q5 トランジスタ
Q6 トランジスタ
R1 抵抗
R2 抵抗
R3 抵抗
R4 抵抗
R5 抵抗
R6 抵抗
R7 抵抗
R8 抵抗
RL 負荷
RS 検出用抵抗
UL 負荷部
V1 直流電源の一端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の一端(V1)と直流電源の他端(GND)との間に該直流電源の一端(V1)側から第1のコイル(L1)と、第1端子及び第2端子間に電流経路が形成され制御端子に該第1端子の電圧に対応した所定電圧が印加されたときに該第1端子及び該第2端子間が導通状態となるトランジスタである第1のトランジスタ(Q1)の第2端子が第1のコイル(L1)側に、その第1端子を直流電源の他端(GND)側にして直列接続され、
前記第1のコイル(L1)と前記第1のトランジスタ(Q1)の接続点と第1の整流素子(D1)の一端が接続され、
負荷(RL)が前記第1の整流素子(D1)の他端に接続され、
前記第1のトランジスタ(Q1)が繰り返しスイッチングされることにより、該第1のトランジスタ(Q1)がONのときに前記第1のコイル(L1)にエネルギーが蓄えられ、OFFのときにこのエネルギーが前記負荷部(RL)へ給電される、DC‐DCコンバータにおいて、
前記負荷(RL)の他端が前記直流電源の一端(V1)へ接続され、
前記第1のトランジスタ(Q1)の制御端子に第2端子が、前記直流電源の一端(V1)に第1端子が接続された前記第2のトランジスタ(Q2)を具備し、
前記第1のトランジスタ(Q1)の第2端子と前記第2のトランジスタ(Q2)の制御端子との間に第1のコンデンサ(C1)を具備し、
前記第2のトランジスタ(Q2)の制御端子と直流電源の他端(GND)との間に第1の抵抗(R1)を具備し、
前記負荷(RL)と直列に接続される検出抵抗(RS)を具備し、
前記検出抵抗(RS)の一端に第1端子が、該検出抵抗(RS)の他端に制御端子が接続された第3のトランジスタ(Q3)を具備し、
前記第3のトランジスタ(Q3)の第2端子が前記第2のトランジスタ(Q2)の制御端子に接続され、
前記第1のトランジスタ(Q1)のスイッチング電流を制御することを特徴とするDC‐DCコンバータ。
【請求項2】
前記負荷(RL)の他端を直流電源の他端(GND)に接続されることを特徴とする請求項1記載のDC‐DCコンバータ。
【請求項3】
前記負荷(RL)があった位置に第2の抵抗(R2)を具備し
前記検出抵抗(RS)と前記第2の抵抗(R2)とが直列に接続された部分に並列に前記負荷(RL)が接続されたことを特徴とする請求項1ないし2のうち1項記載のDC‐DCコンバータ。
【請求項4】
前記検出抵抗(RS)と前記第3のトランジスタ(Q3)の制御端子との間に挿入した定電圧素子(D2)を具備し、
前記第3のトランジスタ(Q3)の制御端子に第3の抵抗(R3)が接続されたことを特徴とする請求項1ないし3のうち1項記載のDC‐DCコンバータ。
【請求項5】
前記第1の抵抗(R1)と置換した電流制限回路(CR)とを具備したことを特徴とする請求項1ないし4のうち1項記載のDC‐DCコンバータ。
【請求項6】
前記電流制限回路(CR)として、
前記第2のトランジスタ(Q2)の制御端子に第2端子に接続された第4のトランジスタ(Q4)を具備し、
前記直流電源の一端(V1)と前記第4のトランジスタ(Q4)の制御端子との間に挿入された第4の抵抗(R4)を具備し、
前記第4のトランジスタ(Q4)の制御端子に第2端子が、該第4のトランジスタ(Q4)の第1端子に制御端子が、直流電源の他端(GND)に第1端子が、それぞれ接続された第5のトランジスタ(Q5)を具備し、
前記第5のトランジスタ(Q5)の制御端子と該第5のトランジスタ(Q5)の第1端子との間に挿入された第5の抵抗(R5)を具備したことを特徴とする請求項5記載のDC‐DCコンバータ。
【請求項7】
前記直流電源の一端(V1)と前記第5のトランジスタ(Q5)との制御端子の間に挿入された第6の抵抗(R6)を具備したことを特徴とする請求項6記載のDC‐DCコンバータ。
【請求項8】
直流電源の一端(V1)と直流電源の他端(GND)の間に該直流電源の一端(V1)側から第1のコイル(L1)と、第1端子と第2端子間に電流経路が形成され制御端子に該第1端子の電圧に対応した所定電圧が印加されたときに該第1端子と該第2端子間が導通状態となるトランジスタである第1のトランジスタ(Q1)の第2端子が第1のコイル(L1)側に、第1端子が直流電源の他端(GND)側にして直列接続され、
前記第1のコイル(L1)と前記第1のトランジスタ(Q1)の接続点と第1の整流素子(D1)の一端が接続され、
負荷(RL)が前記第1の整流素子(D1)の他端に接続され、
前記第1のトランジスタ(Q1)を繰り返しスイッチングさせることにより、該第1のトランジスタ(Q1)がONのときに前記第1のコイル(L1)にエネルギーを蓄え、OFFのときにこのエネルギーを前記負荷部(RL)へ給電する、DC‐DCコンバータにおいて、
第1のトランジスタ(Q1)の第1端子が接続されるノードから、前記直流電源の他端(GND)が切り離され、該ノードに第1端子が、前記直流電源の他端(GND)に第2端子がそれぞれ接続された第6のトランジスタを具備し、
前記第1の整流素子(Q1)の他端と前記第6のトランジスタ(Q6)の制御端子との間に挿入された第7の抵抗(R7)を具備したことを特徴とするDC‐DCコンバータ。

【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−199985(P2011−199985A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62510(P2010−62510)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(304026939)サイキット株式会社 (4)
【Fターム(参考)】