説明

DC/DCコンバータ

【課題】入力DC電圧より高い、もしくは低いもしくは等しい出力電圧を発生するDC/DCコンバータにおいて、電圧変換に際する消費電力を低減すること。
【解決手段】入力DC電圧供給端子TINにコイルLの一端が接続され、コイルLの他端には平滑コンデンサCと負荷Zとが接続される。スイッチングドライバDRVは第2スイッチS2をオフ状態に維持する一方、第1スイッチS1と第3スイッチS3とを交互にオン・オフ制御することにより、DC/DCコンバータは降圧動作を行う。スイッチングドライバDRVによる三つのスイッチS1〜S3のスイッチング制御を変更すると、DC/DCコンバータは昇圧動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧のレベルを変換するDC/DCコンバータに関し、降圧も昇圧も可能で、特に高効率動作を可能とするのに有益な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリー電圧より高い、もしくは低いもしくは等しい出力電圧を発生するDC/DCコンバータとして、米国カリフォルニア州Linear Technology Corporationから発売されている製品名LTC3440(Micropower Synchronous Buck−Boost DC/DC Converter)が知られている。
【0003】
この製品の概要は、下記の非特許文献1に記載されている。この製品では、入力DC電圧供給側のコイルの一端には入力DC電圧に接続される第1スイッチSWAと接地に接続される第2スイッチSWBとを含む。このコイルの他端のDC出力電圧側には接地に接続される第3スイッチSWCとコイルの他端とDC電圧出力端子との間に接続された第4スイッチSWDとを含む。第1期間に、第1スイッチSWAと第3スイッチSWCとをオンとし、第2スイッチSWBと4スイッチSWDとをオフとして、コイルを介して入力DC電圧から接地に電流が流れる。第2期間に、第1スイッチSWAと第3スイッチSWCとをオフとし、第2スイッチSWBと4スイッチSWDとをオンとして、コイルを介して接地からDC出力電圧端子へコイルの回生電流が流れる。入力DC電圧とDC出力電圧との比は、第1期間と第2期間との比となる。このようにして、バッテリー電圧より高い、もしくは低いもしくは等しい出力電圧を発生することが可能となる。
【0004】
【非特許文献1】製品名LTC3440 データ・シート “LTC3440 Micropower Synchronous Buck−Boost DC/DC Converter”pp.1〜20,米国カリフォルニア州Linear Technology Corporationhttp://www.linear.com−LTC3440−Micropower Synchronous Buck−Boost DC/DC Converter DC425A LTC3[平成17年11月23日検索]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記非特許文献1に記載された技術を、本発明者らが、更に検討を行ったところ、下記のような結論に到達した。
【0006】
第1期間と第2期間のいずれにおいても、コイルの両端には二つのスイッチが存在している。半導体集積回路ではスイッチは低オン抵抗のパワーMOSトランジスタで構成されることが多いが、パワーMOSトランジスタのオン抵抗RONは数100mΩとなることが多い。DC/DCコンバータのコイルにはアンペアオーダーの大電流が流れるので、コイルの両端での二つのスイッチの消費電力は数100mWとなる。従って、バッテリーで動作するモバイル電子機器では、バッテリー電圧1.5〜4.2ボルトを昇圧するDC/DCコンバータが良く使用される。このようなバッテリー電圧昇圧動作モードでの大きな消費電力は、バッテリー寿命を短くしてしまう。モバイル電子機器としては、携帯電話、PDA(Personal Digital Assist)機器、HDD使用の携帯型ミュージックプレイヤー等色々の機器がある。しかし、殆ど全ての場合に、搭載バッテリーの使用可能時間をできるだけ長くすることが要求される。
【0007】
本発明は上記のような本発明者による検討を基にしてなされたものであり、本発明の目的は、バッテリー電圧のような入力DC電圧より高い、もしくは低いもしくは等しい出力電圧を発生するDC/DCコンバータにおいて、電圧変換に際する電力損失を低減することにある。
【0008】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴とは、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。
【0010】
すなわち、本発明のひとつの形態によるDC/DCコンバータは、スイッチングドライバ(DRV)と、入力DC電圧供給端子(TIN)に一端が接続されるコイル(L)の他端に一端が接続される第1スイッチ(S1)と、前記コイル(L)の前記他端と基底電位点との間に接続される第2スイッチ(S2)と、前記コイル(L)の前記一端と前記他端との間に接続される第3スイッチ(S3)とを含む。
【0011】
前記第1スイッチ(S1)の他端であるDC出力端子(TOUT)には、平滑コンデンサ(C)と負荷(Z)とが並列に接続可能とされる。
【0012】
前記DC/DCコンバータは、第1と第2の動作モードとを有する。
【0013】
前記第1の動作モードでは、前記スイッチングドライバ(DRV)は前記第2スイッチ(S2)をオフ状態に維持する一方、前記第1スイッチ(S1)と前記第3スイッチ(S3)とを交互にオン・オフ制御することにより、前記入力DC電圧供給端子(TIN)から供給された入力DC電圧(VIN)よりも低い出力DC電圧(VOUT)を前記DC出力端子(TOUT)より出力可能とされる。
【0014】
前記第2の動作モードでは、前記スイッチングドライバ(DRV)は前記第3スイッチ(S3)をオフ状態に維持する一方、前記第1スイッチ(S1)と前記第2スイッチ(S2)とを交互にオン・オフ制御することにより、前記入力DC電圧供給端子(TIN)から供給された入力DC電圧(VIN)よりも高い出力DC電圧(VOUT)を前記DC出力端子(TOUT)より出力可能とされる。
【0015】
上記した手段によれば、前記入力DC電圧供給端子(TIN)から前記DC出力端子(TOUT)への電流経路には前記コイル(L)と直列なスイッチは前記第1スイッチ(S1)のみの1個となるので、前記DC/DCコンバータを構成するスイッチでの消費電力を削減することが可能となる。
【0016】
本発明の具体的な形態では、前記第1スイッチ(S1)はPチャンネルMOSトランジスタであり、前記PチャンネルMOSトランジスタのNウェルとP型ソースとの間に第1制御スイッチ(SP1)が接続され、前記PチャンネルMOSトランジスタのNウェルとP型ドレインとの間に第2制御スイッチ(SP2)が接続される。前記第1の動作モードと前記第2の動作モードとのいずれも任意に指定する指示信号(PWRON_Reset)のレベルに応答して、前記第1制御スイッチ(SP1)と前記第2制御スイッチ(SP2)の一方がオン状態に制御され、他方がオフ状態に制御される。
【0017】
本発明の他の具体的な形態では、前記DC/DCコンバータはシステム起動時には前記第1の動作モードによる降圧動作で動作を開始して、その後に前記第2の動作モードによる昇圧動作での動作に移行するものである。より具体的には、前記システム起動時の所定時間までのパワーオンリセット信号のひとつのレベルに応答して前記第1の動作モードによる前記降圧動作での動作が開始され、前記システム起動時の所定時間後の前記パワーオンリセット信号の他のレベルに応答して前記第2の動作モードによる前記昇圧動作での動作に移行するものである。
【0018】
本発明の他の具体的な形態では、前記DC/DCコンバータは前記負荷(Z)の電流の変動を検出する負荷変動検出回路を更に含み、前記第2の動作モードにおいて前記負荷変動検出回路からの帰還信号(Vfb)により前記スイッチングドライバ(DRV)を制御する。その結果、負荷(Z)の電流の変動があっても、前記第2の動作モードでの前記出力DC電圧(VOUT)は略安定化される。
【発明の効果】
【0019】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0020】
すなわち、入力DC電圧より高い、もしくは低い出力電圧を発生するDC/DCコンバータにおいて、電圧変換に際する電力損失を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
≪DC/DCコンバータの回路構成≫
図1は、本発明の一つの実施形態によるDC/DCコンバータの第1の動作モード(降圧出力モード)における回路構成と回路動作を示す波形図とである。
【0022】
同図に示すように、DC/DCコンバータは、スイッチングドライバDRVと、入力DC電圧供給端子TINに一端が接続されるコイルLの他端に一端が接続される第1スイッチS1と、前記コイルLの前記他端と接地電位のような基底電位点との間に接続される第2スイッチS2と、前記コイルLの前記一端と前記他端との間に接続される第3スイッチS3とを含む。前記第1スイッチS1の他端であるDC出力端子TOUTには、平滑コンデンサCと負荷Zとが並列に接続可能とされる。
【0023】
前記第1の動作モード(降圧出力モード)では、例えばハイレベルのモード指示信号MDに応答して前記スイッチングドライバDRVは前記第2スイッチS2をオフ状態に維持する一方、前記第1スイッチS1と前記第3スイッチS3とを交互にオン・オフ制御する。
【0024】
より厳密に説明すると、この第1の動作モード(降圧出力モード)では、第1期間にはスイッチングドライバDRVは前記第1スイッチS1をオン状態に、第3スイッチS3をオフ状態にそれぞれ制御する。従って、下記で与えられるコイル電流が流れ、前記第1期間にコイルLにエネルギーが蓄積される。
【0025】
ON=(VIN−VOUT)・t/L …(1)式
尚、VINは入力DC電圧供給端子TINから供給された入力DC電圧、VOUTはDC出力端子TOUTよりの出力DC電圧、tは時間、Lはコイルのインダクタンスである。
【0026】
この第1期間の後の第2期間では、スイッチングドライバDRVは前記第1スイッチS1をオフ状態に、第3スイッチS3をオン状態にそれぞれ制御する。従って、下記で与えられるエネルギー放出電流としてのコイル電流(回生電流)がコイルから第3スイッチS3に流れる。
【0027】
OFF=VON・t/L …(2)式
尚、VONはオン状態の第3スイッチS3の端子間オン電圧、tは時間である。
【0028】
第1期間の時間tの長さをTON、第2期間の時間tの長さをTOFFとする。すると、第1期間と第2期間との境界で(1)式で与えられる電流と(2)式で与えられる電流とは、等しくならなければならない。従って、次式が得られる。
【0029】
(VIN−VOUT)・TON/L=VON・TOFF/L …(3)式
(3)式を展開すると、次式の関係が得られる。
【0030】
OUT=VIN−(TOFF/TON)・ VON …(4)式
従って、この第1の動作モード(降圧出力モード)では、(4)式に従って、前記入力DC電圧供給端子TINから供給された入力DC電圧VINよりも低い出力DC電圧VOUTをDC出力端子TOUTより出力可能となることが理解できる。このように、前記第2期間TOFFと前記第1期間TONとの比に依存する電圧降下が発生して、図1に示したDC/DCコンバータは降圧動作を行う。尚、入力DC電圧供給端子TINからDC出力端子TOUTへの電流経路にはコイルLと直列なスイッチは第1スイッチS1のみの1個となるので、DC/DCコンバータを構成するスイッチでの消費電力を削減することが可能となる。
【0031】
図2は、本発明の一つの実施形態によるDC/DCコンバータの第2の動作モード(昇圧出力モード)における回路構成と回路動作を示す波形図とである。
【0032】
前記第2の動作モード(昇圧出力モード)では、例えばローレベルのモード指示信号MDに応答して前記スイッチングドライバDRVは前記第3スイッチS3をオフ状態に維持する一方、前記第1スイッチS1と前記第2スイッチS2とを交互にオン・オフ制御する。
【0033】
より厳密に説明すると、この第2の動作モード(昇圧出力モード)では、第1期間にはスイッチングドライバDRVは前記第1スイッチS1をオフ状態に、第2スイッチS2をオン状態にそれぞれ制御する。従って、下記で与えられるコイル電流がコイルを介して接地電位へ流れ、前記第1期間にコイルLにエネルギーが蓄積される。
【0034】
ON=VIN・t/L …(5)式
この第1期間の後の第2期間では、スイッチングドライバDRVは前記第1スイッチS1をオン状態に、第2スイッチS2をオフ状態にそれぞれ制御する。従って、下記で与えられるコイル電流がコイルと第2スイッチS2とを介してDC出力端子TOUTに流れ、エネルギー放出電流としての回生電流が流れる。
【0035】
OFF=(VIN−VOUT)・t/L …(6)式
第1期間の時間tの長さをTON、第2期間の時間tの長さをTOFFとする。すると、第1期間と第2期間との境界で(5)式で与えられる電流と(6)式で与えられる電流とは、等しくならなければならない。従って、次式が得られる。
【0036】
IN・TON/L=(VIN−VOUT)・TOFF/L …(7)式
(7)式を展開すると、次式の関係が得られる。
【0037】
OUT=(1+(TON/TOFF))・ VIN …(8)式
従って、この第2の動作モード(昇圧出力モード)では、(8)式に従って、前記入力DC電圧供給端子TINから供給された入力DC電圧VINよりも高い出力DC電圧VOUTをDC出力端子TOUTより出力可能となることが理解できる。このように、前記第2期間には、入力DC電圧VINに放出エネルギーを重畳した電圧が出力される。すなわち、前記第2期間TOFFと前記第1期間TONとの比に依存する電圧増加が発生して、図1に示したDC/DCコンバータは昇圧動作を行う。尚、入力DC電圧供給端子TINからDC出力端子TOUTへの電流経路にはコイルLと直列なスイッチは第1スイッチS1のみの1個となるので、DC/DCコンバータを構成するスイッチでの消費電力を削減することが可能となる。
【0038】
図3は、本発明のより具体的な実施形態によるDC/DCコンバータを示す回路図である。図3のDC/DCコンバータは大きな特徴は、システム起動時(電源電圧投入時)には、DC/DCコンバータは第1の動作モード(降圧出力モード)で動作を開始することである。これにより、システム起動時にラッシュ電流を低減する。その後、DC/DCコンバータは第2の動作モード(昇圧出力モード)の定常動作を開始して、バッテリーからの入力DC電圧VINよりも高い出力DC電圧VOUTを生成して、モバイル電子機器の内部装置に供給する。また、図3で、図1と図2の第1スイッチS1、第2スイッチS2、第3スイッチS3はそれぞれPチャンネルMOSトランジスタM1、NチャンネルMOSトランジスタM2、トランスミッションゲートTGで構成されている。尚、トランスミッションゲートTGは図3にも示してあるように、PチャンネルMOSトランジスタMP1とNチャンネルMOSトランジスタMN1との並列接続のCMOSアナログスイッチとすることで、そのオン抵抗RONを低減している。
【0039】
システム起動直後は、DC出力端子TOUTの出力DC電圧VOUTは略ゼロボルトのため入力DC電圧供給端子TINの入力DC電圧VINからコイルLを介して大きなラッシュ電流が流れる可能性がある。特に、システム起動直後にDC/DCコンバータが第2の動作モード(昇圧出力モード)で動作すると、第1期間にはスイッチングドライバDRVは第2スイッチS2をオン状態に制御するのでコイル電流がコイルから直接に接地電位へ流れる。一方、システム起動直後にDC/DCコンバータが第1の動作モード(降圧出力モード)で動作すると、第1期間にはスイッチングドライバDRVは第1スイッチS1をオン状態に制御するがコイル電流がコイルから平滑コンデンサCと負荷Zの並列接続を介して接地電位へ流れる。従って、システム起動直後にDC/DCコンバータを第1の動作モード(降圧出力モード)で動作させることによって、ラッシュ電流を低減することができる。このシステム起動時のラッシュ電流の低減は、バッテリーで動作するモバイル電子機器では重要である。
【0040】
このように、図3の実施形態によるDC/DCコンバータは、システム起動時には第1の動作モード(降圧出力モード)で動作を開始する。システム起動時には図示しないパワーオンリセット発生回路より、図4のPWRON_Resetに示すようなシステム起動から所定期間ハイレベルのパワーオンリセット信号が、このDC/DCコンバータ内部で発生する。この所定期間ハイレベルのパワーオンリセット信号PWRON_Resetによって、スイッチングドライバDRV、第1スイッチS1としてのPチャンネルMOSトランジスタM1のソース・Nウェル間に接続されたスイッチSWP1、Nウェル・ドレイン間に接続されたスイッチSWP2を制御する。この所定期間にオン状態のスイッチSWP1は第1スイッチS1としてのPチャンネルMOSトランジスタM1のソース寄生ダイオードDpsを短絡し、オフ状態のスイッチSWP2は第1スイッチS1としてのPチャンネルMOSトランジスタM1のドレイン寄生ダイオードDpdを整流素子として動作させる。図3の実施形態によるDC/DCコンバータが第1の動作モード(降圧出力モード)のみで動作するならば、PチャンネルMOSトランジスタM1のNウェルは、当業者の通常の知識によればスイッチSWP1を介することなく、直接に高電位側のPチャンネルMOSトランジスタM1のソース(NチャンネルMOSトランジスタM2のドレイン)に接続される。しかし、この直接接続の場合に、図3の実施形態によるDC/DCコンバータが第2の動作モード(昇圧出力モード)でも動作するならば、高電位側の負荷ZよりPチャンネルMOSトランジスタM1のドレイン寄生ダイオードDpdとPチャンネルMOSトランジスタM1のNウェルとPチャンネルMOSトランジスタM1のソースとを介して逆流電流が流れてしまう。この逆流電流は、昇圧出力の動作に妨害となる。従って、図3の実施形態によるDC/DCコンバータではこの逆流電流を防止するため、第1の動作モード(降圧出力モード)では上述のようにオン状態のスイッチSWP1は第1スイッチS1としてのPチャンネルMOSトランジスタM1のソース寄生ダイオードDpsを短絡し、オフ状態のスイッチSWP2は第1スイッチS1としてのPチャンネルMOSトランジスタM1のドレイン寄生ダイオードDpdを整流素子として動作させている。従って、入力DC電圧供給端子TINとDC出力端子TOUTとの間の電気的導通は、第1スイッチS1としてのPチャンネルMOSトランジスタM1のゲート電圧に応答するソース・ドレイン間のオン・オフ動作にのみ依存する。DC出力端子TOUTには平滑コンデンサC1と負荷Zとが並列に接続されるともに、抵抗R1、R2による分圧回路が接続されている。従って、抵抗R1、R2による分圧電圧がエラーアンプEAの反転入力端子に供給され、エラーアンプEAの非反転入力端子には基準電圧Vrefが供給されている。尚、分圧抵抗R1と並列に負荷ZのAC変動を検出するための容量C2が接続されている。また、エラーアンプEAの出力端子と反転入力端子との間には発振防止容量C3が接続されている。エラーアンプEAの出力は第1比較器CMP1の非反転入力端子に供給されて、第1比較器CMP1の反転入力端子には三角波発生器Tri_Genから生成された三角波が供給されている。第1比較器CMP1の出力とインバータINVの出力はモードスイッチMSWにより一方が選択されて、選択された出力がスイッチングドライバDRVの入力端子INに供給される。入力DC電圧供給端子TINからの入力DC電圧VINが反転入力端子に印加され、DC出力端子TOUTの出力DC電圧VOUTが非反転入力端子に印加された第2比較器CMP2は二つの電圧を比較する。この第2比較器CMP2にも所定期間ハイレベルのパワーオンリセット信号PWRON_Resetが供給される。従って、この所定期間に第2比較器CMP2が動作して、第2比較器CMP2のローレベル出力により、モードスイッチMSWが制御される。モードスイッチMSWはインバータINVの出力を選択して、スイッチングドライバDRVに供給する。
【0041】
図5は、パワーオンリセット信号PWRON_Resetがハイレベルの所定期間での図3のDC/DCコンバータがシステム起動時で第1の動作モード(降圧出力モード)で動作を行っている際の回路各部の波形を示す図である。同図で上部の三角波は、三角波発生器Tri_Genからの三角波の波形である。DC出力端子TOUTの出力DC電圧VOUTが上昇すると、エラーアンプEAの出力電圧EAは破線から実線のように低下する。三角波発生器Tri_Genからの三角波の信号レベルがエラーアンプEAの出力電圧EAよりも低くなると第1比較器CMP1の出力はハイレベルとなり、その逆になると、第1比較器CMP1の出力はローレベルとなる。インバータINVの出力は、第1比較器CMP1の出力と逆位相となる。図1の降圧出力モードでも既に説明したように、図3のDC/DCコンバータが第1の動作モード(降圧出力モード)を行うには第1期間TONに第1スイッチS1をオン状態に制御する一方、第2期間TOFFに第3スイッチS3をオン状態に制御する必要がある。第1スイッチS1をPチャンネルMOSトランジスタM1で構成して、第3スイッチS3をCMOSのトランスミッションゲートで構成しているので、第1スイッチS1と第3スイッチS3のゲートの駆動波形は図5の下部に示すようにする必要がある。まず、第1スイッチS1と第3スイッチS3のゲートの駆動波形と同位相であるインバータINVの出力が、モードスイッチMSWにより選択され、スイッチングドライバDRVの入力端子INに供給される。DC出力端子TOUTの出力DC電圧VOUTが上昇した場合、DC/DCコンバータの負帰還によって出力DC電圧VOUTを低下させるには、前記(4)式に従って第2期間の時間tの長さTOFFを第1期間の時間tの長さTONよりも大とする必要がある。この意味からも、インバータINVの出力がモードスイッチMSWにより選択されて、スイッチングドライバDRVに供給される。するとスイッチングドライバDRVは、第1スイッチS1、第2スイッチS2、第3スイッチS3を図5の下部の波形図のように制御してシステム起動時での第1の動作モード(降圧出力モード)が実行される。
【0042】
図6は、パワーオンリセット信号PWRON_Resetがハイレベルの所定期間が経過した後、図3のDC/DCコンバータが定常動作時の第2の動作モード(昇圧出力モード)で動作を行っている際の回路各部の波形を示す図である。定常動作時の第2の動作モード(昇圧出力モード)になると、図3ではPチャンネルMOSトランジスタM1のソース・Nウェル間に接続されたスイッチSWP1はオフ状態に、Nウェル・ドレイン間に接続されたスイッチSWP2はオン状態に制御される。図3の実施形態によるDC/DCコンバータが第2の動作モード(昇圧出力モード)のみで動作するならば、PチャンネルMOSトランジスタM1のNウェルは、当業者の通常の知識によればスイッチSWP2を介することなく、負荷Zの側の高電位側のPチャンネルMOSトランジスタM1のドレイン(機能的にはソースとして動作する電極)に直接に接続される。しかし、この直接接続の場合に、図3の実施形態によるDC/DCコンバータが第1の動作モード(降圧出力モード)でも動作するならば、高電位側の負荷ZよりPチャンネルMOSトランジスタM1のソース寄生ダイオードDpsとPチャンネルMOSトランジスタM1のNウェルとPチャンネルMOSトランジスタM1のドレインとを介して定常電流が流れてしまう。図3のDC/DCコンバータによる第1の動作モード(降圧出力モード)では負荷Zの側への電流供給は第1スイッチとしてのPチャンネルMOSトランジスタM1のスイッチング動作によるオン動作にのみ支配されるべきである。従って、ソース寄生ダイオードDpsによる定常電流は電圧変換の効率低下を引き起こす。従って、図3の実施形態によるDC/DCコンバータではこの逆流電流を防止するため、第2の動作モード(昇圧出力モード)では上述のようにオン状態のスイッチSWP2は第1スイッチS1としてのPチャンネルMOSトランジスタM1のドレイン寄生ダイオードDpdを短絡し、オフ状態のスイッチSWP1は第1スイッチS1としてのPチャンネルMOSトランジスタM1のソース寄生ダイオードDpsを整流素子として動作させている。
【0043】
図6で上部の三角波は、三角波発生器Tri_Genからの三角波の波形である。DC出力端子TOUTの出力DC電圧VOUTが上昇すると、エラーアンプEAの出力電圧EAは破線から実線のように低下する。三角波発生器Tri_Genからの三角波の信号レベルがエラーアンプEAの出力電圧EAよりも低くなると第1比較器CMP1の出力はハイレベルとなり、その逆になると。第1比較器CMP1の出力はローレベルとなる。インバータINVの出力は、第1比較器CMP1の出力と逆位相となる。図2の昇圧出力モードでも既に説明したように、図3のDC/DCコンバータが第2の動作モード(昇圧出力モード)を行うには第1期間TONに第2スイッチS2をオン状態に制御する一方、第2期間TOFFに第1スイッチS1をオン状態に制御する必要がある。第1スイッチS1をPチャンネルMOSトランジスタM1で構成して、第2スイッチS2をNチャンネルMOSトランジスタM2で構成しているので、第1スイッチS1と第2スイッチS2のゲートの駆動波形は図6の下部に示すようにする必要がある。まず、第1スイッチS1と第2スイッチS2のゲートの駆動波形と同位相である第1比較器CMP1の出力が、モードスイッチMSWにより選択され、スイッチングドライバDRVの入力INに供給される。
【0044】
DC出力端子TOUTの出力DC電圧VOUTが上昇した場合、DC/DCコンバータの負帰還によって出力DC電圧VOUTを低下させるには、前記(7)式に従って第1期間の時間tの長さTONよりも第2期間の時間tの長さTOFFを大とする必要がある。この意味からも、インバータINVの出力ではなく、第1比較器CMP1の出力がモードスイッチMSWにより選択されて、スイッチングドライバDRVに供給される。するとスイッチングドライバDRVは、第1スイッチS1、第2スイッチS2、第3スイッチS3を図6の下部の波形図のように制御して定常動作時の第2の動作モード(昇圧出力モード)が実行される。尚、定常動作時にはパワーオンリセット信号PWRON_Resetがローレベルなので、第2比較器CMP2は非動作状態となっている。この非動作状態の第2比較器CMP2の出力で、モードスイッチMSWは、インバータINVの出力ではなく、第1比較器CMP1の出力を選択するように構成されている。例えば、第2比較器CMP2の出力を高抵抗によって適切な高電位点にプルアップすることにより、モードスイッチMSWは第1比較器CMP1の出力を選択することが可能となる。
【0045】
以上説明したように、図4に示すようにパワーオンリセット信号PWRON_Resetがハイレベルの間に図3のDC/DCコンバータは降圧動作を行うことにより、システム起動時のラッシュ電流を低減する。所定期間経過後にはパワーオンリセット信号PWRON_Resetはローレベルとなり、図3のDC/DCコンバータは定常動作としての昇圧動作を開始する。その結果、図4に示すようにDC出力電圧VOUTが本格的に上昇する。このようなDC/DCコンバータによる定常動作としての昇圧動作は、バッテリーで動作するモバイル電子機器では有益である。
【0046】
図7は本発明の他の実施形態によるDC/DCコンバータを示す回路図である。図7では、図3の三角波発生器Tri_Genが削除されている。その代わり、第1比較器CMP1の反転入力にはエラーアンプEAの出力Veが印加され、第1比較器CMP1の非反転入力には帰還容量Cfと第1帰還抵抗Rf1、第2帰還抵抗Rf2で構成された負荷変動検出回路からの帰還信号Vfbが印加されている。図7のDC/DCコンバータが定常動作としての昇圧動作を行っている間に、負荷変動によって負荷Zに流れる電流が急増したとする。すると、エラーアンプEAの出力Veよりも負荷変動検出回路からの帰還信号Vfbのレベルが低下して、第1比較器CMP1の出力はローレベルとなる。従って、スイッチングドライバDRVは第1スイッチS1をオン状態に、第2スイッチS2をオフ状態にそれぞれ制御するので、DC出力電圧VOUTを上昇しようとする。このようにして負荷電流が急増しても、DC出力電圧VOUTが略安定に維持されることができる。
【0047】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0048】
例えば、図3の実施形態でパワーオンリセット信号PWRON_Resetをモード切替信号MDに置換して、このモード切替信号MDをハイレベルとローレベルで切り換えても良い。モード切替信号MDをハイレベルとするとDC/DCコンバータは降圧動作を行い、モード切替信号MDをローレベルとするとDC/DCコンバータは昇圧動作を行う。
【0049】
また、図3の実施形態で、PチャンネルMOSトランジスタM1は、PNP型バイポーラトランジスタに置換されることができる。またNチャンネルMOSトランジスタM2は、NPN型バイポーラトランジスタに置換されることができる。同様にトランスミッションゲートTGのPチャンネルMOSトランジスタMP1とNチャンネルMOSトランジスタMN1は、それぞれPNP型バイポーラトランジスタとNPN型バイポーラトランジスタに置換されることができる。
【0050】
DC/DCコンバータの平滑コイルLはチップ外部のインダクタ素子以外に半導体チップ上に半導体プロセスで形成されるスパイラルコイルでも良く、半導体チップを封止するパッケージ内部のリードフレームの一部を利用するパッケージ内部のコイルでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、本発明の一つの実施形態によるDC/DCコンバータの第1の動作モード(降圧出力モード)における回路構成と回路動作を示す波形図とである
【図2】図2は、本発明の一つの実施形態によるDC/DCコンバータの第2の動作モード(昇圧出力モード)における回路構成と回路動作を示す波形図とである。
【図3】図3は、本発明のより具体的な実施形態によるDC/DCコンバータを示す回路図である。
【図4】図4は図3の本発明のより具体的な実施形態で使用されるパワーオンリセット信号PWRON_Resetを説明する波形図である。
【図5】図5は、パワーオンリセット信号PWRON_Resetがハイレベルの所定期間での図3のDC/DCコンバータがシステム起動時で第1の動作モード(降圧出力モード)で動作を行っている際の回路各部の波形を示す図である。
【図6】図6は、パワーオンリセット信号PWRON_Resetがハイレベルの所定期間が経過した後、図3のDC/DCコンバータが定常動作時の第2の動作モード(昇圧出力モード)で動作を行っている際の回路各部の波形を示す図である。
【図7】図7は本発明の他の実施形態によるDC/DCコンバータを示す回路図である。
【符号の説明】
【0052】
DRV スイッチングドライバ
TIN 入力DC電圧供給端子
L コイル
S1 第1スイッチ
S2 第2スイッチ
S3 第1スイッチ
TOUT DC出力端子
C 平滑コンデンサ
ZL 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチングドライバと、
入力DC電圧供給端子に一端が接続されるコイルの他端に一端が接続される第1スイッチと、
前記コイルの前記他端と基底電位点との間に接続される第2スイッチと、
前記コイルの前記一端と前記他端との間に接続される第3スイッチとを含み、
前記第1スイッチの他端であるDC出力端子には、平滑コンデンサと負荷とが並列に接続可能とされ、
DC/DCコンバータの動作として、第1と第2の動作モードとを有し、
前記第1の動作モードでは、前記スイッチングドライバは前記第2スイッチをオフ状態に維持する一方、前記第1スイッチと前記第3スイッチとを交互にオン・オフ制御することにより、前記入力DC電圧供給端子から供給された入力DC電圧よりも低い出力DC電圧を前記DC出力端子より出力可能とされ、
前記第2の動作モードでは、前記スイッチングドライバは前記第3スイッチをオフ状態に維持する一方、前記第1スイッチと前記第2スイッチとを交互にオン・オフ制御することにより、前記入力DC電圧供給端子から供給された入力DC電圧よりも高い出力DC電圧を前記DC出力端子より出力可能とされるDC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記第1スイッチはPチャンネルMOSトランジスタであり、前記PチャンネルMOSトランジスタのNウェルとP型ソースとの間に第1制御スイッチが接続され、前記PチャンネルMOSトランジスタのNウェルとP型ドレインとの間に第2制御スイッチが接続され、前記第1の動作モードと前記第2の動作モードとのいずれも任意に指定する指示信号のレベルに応答して前記第1制御スイッチと前記第2制御スイッチの一方がオン状態に制御され、他方がオフ状態に制御される請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項3】
システム起動時には前記第1の動作モードによる降圧動作で動作を開始して、その後に前記第2の動作モードによる昇圧動作での動作に移行する請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記システム起動時の所定時間までのパワーオンリセット信号のひとつのレベルに応答して前記第1の動作モードによる前記降圧動作での動作が開始され、前記システム起動時の所定時間後の前記パワーオンリセット信号の他のレベルに応答して前記第2の動作モードによる前記昇圧動作での動作に移行する請求項3に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記負荷の電流の変動を検出する負荷変動検出回路を更に含み、前記第2の動作モードにおいて前記負荷変動検出回路からの帰還信号により前記スイッチングドライバを制御することにより、前記負荷の電流の変動があっても、前記第2の動作モードでの前記出力DC電圧は略安定化されるものである請求項1から4のいずれかに記載のDC/DCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−151245(P2007−151245A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339568(P2005−339568)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】