説明

DC/DCコンバータ

【目的】乾電池1本程度の電圧レベルで動作可能で、かつ、通常のプロセスで製造されたCMOS回路を使用して消費電力を低減することができる、IC化に適したDC/DCコンバータを提供することを目的とする。
【構成】負荷に供給する電源電圧がMOSトランジスタをON/OFFさせることができる電圧値以下のとき、バイポーラトランジスタをスイッチングさせて負荷に供給する昇圧電圧を発生させ、昇圧電圧が本来のMOSトランジスタのDC/DCコンバータのスイッチング制御回路を動作させる電圧になると、バイポーラトランジスタ側のスイッチング動作を停止させてMOSトランジスタのDC/DCコンバータを動作させるものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、DC/DCコンバータに関し、詳しくは、乾電池1本で駆動する音響機器、例えば、ポータブルラジオ受信機やCDプレーヤ、ポータブル磁気テーププレーヤなど、乾電池1本で所定の動作電源電圧を生成する電源回路において、製造が容易で、その消費電力を低減することができるようなDC/DCコンバーに関する。
【0002】
【従来の技術】ポータブルCDプレーヤあるいはポータブル磁気テーププレーヤは、通常、乾電池で駆動され、その本数は、1本から2本程度である。したがって、その電源電圧は、1.2Vあるいは2.4V程度でしかない。しかも、この種のポータブル音響装置には、モータが内蔵され、さらに、各種の操作信号を受けて各種回路を動作させるためにマイクロコントローラ(MPU)あるいはマイクロコンピュータ(MCU)とROM等からなる制御回路を有している。
【0003】通常、マイクロコントローラとROM等の制御回路の動作電圧は、3V〜5V程度になる。また、オーディオ回路は、通常、2.4V〜3.5V程度の電源電圧で駆動されるが、モータ駆動回路は、それ以上の電圧が必要になる。DCモータ自体の駆動電圧は、低いものでは、1.2Vから2.4V程度、すなわち、電池1本から2本程度のものであるが、消費電力を低減するために、それを駆動するモータ駆動回路にMOSFET回路を用いた場合には高い電圧が必要になる。このようなことから、この種の装置にあっては、1.5V程度の電圧から所定の電源電圧を生成するDC/DCコンバータが電源回路に設けられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ポータブルCDプレーヤあるいはポータブル磁気テーププレーヤ等のオーディオ装置は、長時間駆動が要求され、しかも、乾電池1本で駆動することが望まれている。長時間駆動を実現するためには内部回路の消費電力の低減を図ることが重要であり、それぞれ低電圧で低電力駆動の回路が開発され、使用されている。また、消費電力の低減の1つとして、この種の装置の電源回路では、無負荷時の消費電力の低減が重要視される。無負荷時の消費電力を抑えるに、通常、電源回路のDC/DCコンバータ等の主要な回路をCMOS回路で構成する。これにより、バイポーラトランジスタで構成した回路よりも無負荷時の消費電力を低減することができる。
【0005】しかし、CMOS回路のDC/DCコンバータは、特別な製造プロセスで製造される場合を除いて、通常の回路では、バイポーラトランジスタよりも動作スレッショルド電圧が高いので、1本程度の乾電池の電圧で動作させることが難しい。この発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決するものであって、乾電池1本程度の電圧レベルで動作可能で、かつ、通常のプロセスで製造されたCMOS回路を使用して消費電力を低減することができる、IC化に適したDC/DCコンバータを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成するこの発明のDC/DCコンバータの構成は、負荷に対して直列あるいは並列に挿入され電池の電源供給ラインに対してスイッチングを行うMOSトランジスタと、負荷側に出力する電力の一部を受けてこのMOSトランジスタのスイッチングの期間を負荷側の電圧に応じてこの電圧が所定の一定値になるように制御する制御回路と、MOSトランジスタに並列に挿入され電源供給ラインに対してスイッチングを行うバイポーラトランジスタと、電池からの電力を受け、負荷の電圧が、制御回路がMOSトランジスタをON/OFFさせることができる所定電圧値以下のときに、バイポーラトランジスタをスイッチングさせて負荷側に昇圧電圧を発生させる起動回路とを備えるものである。
【0007】
【作用】このように、負荷に供給する電源電圧がMOSトランジスタをON/OFFさせることができる電圧値以下のとき、バイポーラトランジスタをスイッチングさせて負荷に供給する昇圧電圧を発生させ、昇圧電圧が本来のMOSトランジスタのDC/DCコンバータのスイッチング制御回路を動作させる電圧になると、バイポーラトランジスタ側のスイッチング動作を停止させてMOSトランジスタのDC/DCコンバータを動作させるので、定常動作状態においては、無負荷時の電力を従来と同様に抑えることができる。しかも、起動時の動作は、電圧が低く、短時間の動作であるので、消費電力の増加はほんのわずかである。この場合のMOSトランジスタのDC/DCコンバータは、昇圧電圧を受けて動作するので、従来の高いスレッショルドのものであってもよく、特別の製造プロセスで製造するCMOS回路を使用しないでも回路を構成することができる。
【0008】
【実施例】図1は、この発明のDC/DCコンバータを適用した一実施例の携帯用音響機器の電源回路を中心とするブロック図である。図において、1は、携帯用の音響機器であり、2は、そのDC/DCコンバータ回路、3は、その入力端子であってスイッチ15を介して電池16の正側端子に接続されている。4はその出力端子であって、3.5Vの電源供給ライン18(VCC1 )に接続されている。入力端子3と出力端子4との間には、電池16からの電源供給ライン(VCC)17を経てコイルLとダイオードDとが直列に順次接続されている。コイルLとダイオードDの接続点と接地間には、ドレイン−ソースの順でN型FETのスイッチングトランジスタ5aが設けられ、さらにこれに並列にコレクタ−エミッタの順で接続されたN型バイポーラのスイッチングトランジスタ5bとが設けられていて、出力端子4側には、コンデンサCが出力端子と接地間に設けられている。
【0009】また、出力端子4と接地間には、抵抗R1 、R2 からなる抵抗分圧回路6が設けられていて、その分圧点Nの電圧が誤差増幅器7に入力され、基準電圧VREFと比較されて、その誤差分が発振/駆動回路8に入力される。発振/駆動回路8は、例えば、電圧制御可変周波数発振器(VCO)を主体として構成され、誤差分に対応する電圧信号に応じて発振周波数が変化する所定のパルス幅のON/OFF駆動パルス(HIGHレベルとLOWレベルに変化するパルス)をスイッチングトランジスタ5aのゲート電極に送出する。そこで、発振/駆動回路8の出力信号に応じてトランジスタ5aがON/OFFしてこのスイッチングによりコイルLに発生するフライバック電圧がダイオードDを介してコンデンサCに充電されて昇圧電圧が出力端子4に発生する。
【0010】ここで、誤差信号による発振/駆動回路8の周波数は、出力端子4の電圧が誤差を発生しないような方向の電圧になるように変化する。すなわち、出力端子4の電圧が所定の一定値VCON より低いときには、その周波数は基準発振周波数より高くなり、高いときにはその周波数は基準発振周波数より低くなる。その結果として、出力端子4の電圧は、分圧点Nの電圧が基準電圧VREF に一致するような所定の一定電圧VCON に制御される。ここで、誤差増幅器7と発振/駆動回路8とは、出力端子4から電力を受けて出力端子4の電圧を電源電圧として動作する。したがって、出力端子4の電圧がこれらが動作できる電圧VS になるまでは前記のようなスイッチング制御動作はなされない。
【0011】9は、発振/起動回路であって、スイッチ回路9aを介して乾電池16から電力の供給を受けてバイポーラトランジスタ5bをON/OFFする。バイポーラトランジスタ5bがON/OFFするためのスレッショルド電圧は、0.5〜0.8程度であり、1.5Vの電源電圧で動作する発振/起動回路9の出力でこれをON/OFF制御することができる。その結果、出力端子4には、前記と同様に昇圧された電圧が発生する。なお、乾電池16の+側に直列に挿入された電源スイッチ15は、電源が投入されたときにはONになるマニュアルスイッチである。
【0012】スイッチ回路9aは、通常、ONであって、コンパレータ(COM)10の電圧検出出力によりOFFにされる。そこで、発振/起動回路9は、電源スイッチ15がONする電源投入時から乾電池16の電力により動作する。コンパレータ10は、出力端子4の電圧と比較電圧VSRとを比較して比較電圧VSR以上になったときにスイッチ回路9aをOFFさせ、発振/起動回路9の動作を停止させる。ただし、この比較電圧VSRは、電圧VSRは前記の誤差増幅器7と発振/駆動回路8が動作する電圧VS 以上であって前記一定電圧VCON より低い値である(VS <=VSR<VCON )。なお、発振/起動回路9が動作を停止したときには、その出力がLOWレベルになりバイポーラトランジスタ5bは、OFFする。
【0013】これとは別に、携帯用音響機器では、このDC/DCコンバータ2から電力供給を受けるオーディオ信号処理回路11とDCモータ駆動回路(出力回路)12、そして、マイクロコントローラとROM等からなる制御回路13等が設けられている。なお、ここでのDC/DCコンバータ2は、単独でワンチップ化されるが、前記のオーディオ信号処理回路11とDCモータ駆動回路(出力回路)12、そして、マイクロコントローラとROM等からなる制御回路13等の一部の回路とともにワンチップ化されてもよい。
【0014】次にこのDC/DCコンバータの動作を説明する。電源スイッチ15が投入されると、スイッチ9aを介して発振/起動回路9に電力が供給されて、この回路の発振出力によりバイポーラトランジスタ5bがON/OFFされて、出力端子4に昇圧電圧が発生してこの電圧がやがてVS になる。そこで、誤差増幅器7と発振/駆動回路8とが動作してMOSトランジスタ5aがON/OFFされて、出力端子4の電圧がさらに上昇して電圧がVSRになると、スイッチ9aがOFFして発振/起動回路9の動作が停止してバイポーラトランジスタ5bがOFFして、その動作が停止する。一方、MOSトランジスタ5aのON/OFFが出力端子4の電圧に応じて誤差増幅器7からの誤差信号が発生し、これによりON/OFF駆動パルスの周波数が制御されて、出力電圧が一定電圧VCON になるように制御される。
【0015】以上説明してきたが、発振/起動回路9は、発振回路としてリング発振回路をであってもよく、また、発振/駆動回路8はPWM制御回路であってもよい。リング発振回路(半導体の発振回路)は、いわゆるシフトレジスタで構成されるリングカウンタにより1ビットをシフトさせて所定の周期でパルスを発生する。また、PWM制御回路を使用することきに、誤差信号に応じたパルス幅のパルスが発生してトランジスタ5aのON/OFFが制御される。これにより出力電圧が基準電出力電圧になるようにPWMスイッチングレギュレーション制御を行う。このようなPWM制御回路は、通常、三角波発生回路とコンパレータで構成することができる。
【0016】実施例では、MOSトランジスタ5aとバイポーラトランジスタ5bとが負荷に対して並列に挿入されているが、これらトランジスタの並列回路を負荷に対して直列に設けてもよいことはもちろんである。
【0017】
【発明の効果】以上説明してきたように、この発明にあっては、負荷に供給する電源電圧がMOSトランジスタをON/OFFさせることができる電圧値以下のとき、バイポーラトランジスタをスイッチングさせて負荷に供給する昇圧電圧を発生させ、昇圧電圧が本来のMOSトランジスタのDC/DCコンバータのスイッチング制御回路を動作させる電圧になると、バイポーラトランジスタ側のスイッチング動作を停止させてMOSトランジスタのDC/DCコンバータを動作させるので、定常動作状態においては、無負荷時の電力を従来と同様に抑えることができる。この場合のMOSトランジスタのDC/DCコンバータは、昇圧電圧を受けて動作させることができるので、従来の高いスレッショルドのものであってもよく、特別の製造プロセスで製造するCMOS回路を使用しないでも回路を構成することができ、電池駆動の装置などにあっては、電池1本当たりの動作時間が伸長される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明のDC/DCコンバータを適用した一実施例の携帯用音響機器の電源回路を中心とするブロック図である。
【符号の説明】
1…携帯用の音響機器、2…DC/DCコンバータ回路、3…入力端子、4…出力端子、5…スイッチングトランジスタ、6…抵抗分圧回路、7…誤差増幅器、8…発振/駆動回路、9…発振/起動回路、10…コンパレータ、11…オーディオ信号処理回路、12…DCモータ駆動回路、13…制御回路、15…電源スイッチ、16…電池、5a…N形バイポーラトランジスタ、5b…N形MOSFETトランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】電池からの電力を受けて所定の電圧まで昇圧した電圧の電力を発生して負荷に供給するDC/DCコンバータにおいて、前記負荷に対して直列あるいは並列に挿入され前記電池の電源供給ラインに対してスイッチングを行うMOSトランジスタと、前記負荷側に出力する電力の一部を受けてこのMOSトランジスタのスイッチングの期間を前記負荷側の電圧に応じてこの電圧が所定の一定値になるように制御する制御回路と、前記MOSトランジスタに並列に挿入され前記電源供給ラインに対してスイッチングを行うバイポーラトランジスタと、前記電池からの電力を受け、前記負荷の電圧が、前記制御回路が前記MOSトランジスタをON/OFFさせることができる所定電圧値以下のときに、前記バイポーラトランジスタをスイッチングさせて前記負荷側に昇圧電圧を発生させる起動回路とを備えるDC/DCコンバータ。
【請求項2】前記起動回路は、所定の周波数で発振する発振回路と前記負荷側の電圧が前記所定電圧値以下か否かを検出する検出回路と、この検出回路の検出信号に応じて、前記負荷側の電圧が前記所定電圧値以上になったときに前記発振回路の動作を停止させる停止回路とを有する請求項1記載のDC/DCコンバータ。

【図1】
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【公開番号】特開平8−186980
【公開日】平成8年(1996)7月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−338518
【出願日】平成6年(1994)12月28日
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)