説明

DNAポリメラーゼに対する核酸リガンド阻害剤

【課題】熱安定性Taqポリメラーゼ、TthポリメラーゼおよびTZ05ポリメラーゼに対する高親和性オリゴヌクレオチドリガンドを提供する。
【解決手段】Taq、TthおよびTZ05ポリメラーゼに結合する能力を有するDNAリガンド、並びにこうしたリガンドを得る方法。リガンドは、あらかじめ決定されたいかなる温度でも、ポリメラーゼを阻害することが可能である。DNAポリメラーゼに対する核酸リガンドの温度依存性結合は、その望ましい特性が、いかなる数でもよい反応条件、例えばpHおよび塩濃度に基づき、スイッチオンまたはオフすることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本明細書に記載されるのは、DNAポリメラーゼ、特に熱安定性DNAポリメラーゼに対する高親和性核酸リガンドを同定し、そして調製する方法である。好ましい態様において、DNAポリメラーゼは、サーマス・アクアティカスから単離された熱安定性ポリメラーゼであるTaqポリメラーゼ;サーマス・サーモフィラスから単離された熱安定性DNAポリメラーゼであるTthポリメラーゼ;または別のサーマス種から単離されたTZ05ポリメラーゼである。しかし、本発明の方法は、いかなる熱安定性DNAポリメラーゼの同定および調製に拡張してもよい。これらの熱安定性DNAポリメラーゼのいくつかはまた、RNAをコピーDNAに逆転写する能力も有する。逆転写能を持つDNAポリメラーゼの例には、TthおよびTZ05ポリメラーゼが含まれる。こうした核酸リガンドを同定するのに、本明細書において利用される方法はSELEXと称され、これは、指数的濃縮によるリガンドの計画的進化(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)の頭字語である。本明細書にやはり記載されるのは、本発明の核酸リガンドを用い、ポリメラーゼ連鎖反応を行う改善法である。本明細書に特に開示されるのは、Taqポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、およびTZ05ポリメラーゼに対する高親和性核酸リガンドである。本発明は、Taqポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、およびTZ05ポリメラーゼに結合し、それによりあらかじめ決定された温度範囲でポリメラーゼ活性を阻害する、高親和性DNAリガンドを含む。本発明にさらに含まれるのは、核酸スイッチである。本発明のDNAポリメラーゼに対する核酸リガンドの温度依存性結合は、その望ましい特性が、いかなる数でもよい反応条件、例えばpHおよび塩濃度に基づき、スイッチオンまたはオフすることが可能であるリガンドの例である。
【0002】
発明の背景
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、近年開発された技術であり、科学の多くの領域に重大な影響を有してきた。PCRは、指数的方式で標的DNA配列を特異的に増幅する、迅速でそして単純な方法である(Saikiら(1985)Science 230:1350; MullisおよびFaloona(1987)Methods Enzymol. 155:335)。簡潔には、該方法は、標的配列に隣接するDNAに相補的なヌクレオチド配列を有するプライマーセットを合成することからなる。その後、プライマーを、標的DNA、熱安定性DNAポリメラーゼおよびすべての4つのデオキシヌクレオチド三リン酸(dATP、dTTP、dCTPおよびdGTP)の溶液と混合する。その後、DNAの相補鎖を分離するのに十分な温度(およそ95℃)に溶液を加熱し、そしてその後、プライマーが隣接配列に結合するのを可能にするのに十分な温度に冷却する。その後、反応混合物を再び(およそ72℃に)加熱し、DNA合成が進行するのを可能にする。短期間の後、反応混合物の温度を再び、新規に形成された二本鎖DNAを分離するのに十分な温度に上昇させ、こうしてPCRの第一の周期を完了する。その後、反応混合物を冷却し、そして周期を反復する。このように、PCRはDNA融解、アニーリングおよび合成の反復周期からなる。20の複製周期により、標的DNA配列の百万倍までの増幅を達成することが可能である。単一のDNA分子をPCRにより増幅する能力は、環境および食物微生物学(Wernarsら(1991)Appl. Env. Microbiol. 57:1914−1919; HillおよびKeasler(1991)Int. J. Food Microbiol. 12:67−75)、臨床微生物学(Wagesら(1991)J. Med. Virol. 33:58−63; Sacramentoら(1991)Mol. Cell Probes :229−240; Laureら(1988)Lancet :538)、腫瘍学(KumarおよびBarbacid(1988)Oncogene :647−651; McCormick(1989)Cancer Cells :56−61; Crescenziら(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:4869)、遺伝的疾患予後(Handysideら(1990)Nature 344:768−770)、血液バンキング(Jackson(1990)Transfusion 30:51−57)および法医学(forensics)(Higuchiら(1988)Nature(London) 332:543)に適用を有する。
【0003】
Taq DNAポリメラーゼなどの熱安定性DNAポリメラーゼの入手可能性は、PCRを単純化しそしてまた改善してきている。元来、PCRで使用するのに、大腸菌(E. coli)DNAポリメラーゼなどの熱感受性ポリメラーゼのみが利用可能であった。しかし、熱感受性ポリメラーゼは二本鎖DNAを融解するのに必要な温度で破壊され、そして各PCR周期後に、さらなるポリメラーゼを添加しなければならない。好熱性細菌、サーマス・アクアティカスから単離されたTaq DNAポリメラーゼは、95℃まで安定であり、そしてPCRで使用すると、各熱周期後、温度感受性ポリメラーゼを繰り返し添加する必要性が除かれた。さらに、Taqポリメラーゼはより高い温度で用いることが可能であるため、PCRの特異性および感受性が改善された。特異性が改善された理由は、より高い温度で、望ましいもの以外の部位に対するプライマーの結合(ミスプライミングと称される)が有意に減少するためである。
【0004】
その発見以来、ポリメラーゼ連鎖反応は、多様な適用のため修飾されてきており、例えば、伝統的なin situハイブリダイゼーションの検出限界を単一コピーレベルにまで押し上げたin situ PCR(Haaseら(1990)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:4971−4975)、およびPCRにより増幅される前に、逆転写酵素(RT)によりRNA配列をコピーDNA(cDNA)に変換し、RNAをPCRの基質とする、逆転写酵素PCR(RT−PCR)(Kawasaki(1991)Amplification of RNA, PCR Protocols. A Guide to Methods and Applications, Innisら監修,中, Academic Press Inc.,カリフォルニア州サンディエゴ, 21−27)がある。しかし、中温性ウイルス逆転写酵素は、RNA分子の安定な二次構造を「読みぬく(read through)」ことが不可能であるため、全長cDNA分子を合成することがしばしば不可能である。この限界は、最近、サーマス・サーモフィラスから単離されたポリメラーゼ(Tthポリメラーゼ)の使用により克服された。Tthポリメラーゼは、逆転写酵素およびDNAポリメラーゼの両方として機能することが可能な熱安定性ポリメラーゼである(MyersおよびGelfand(1991)Biochemistry 30:7661−7666)。Tthポリメラーゼを用い、上昇した温度で逆転写を行うと、テンプレートRNAの二次構造が除かれ、全長cDNA合成が可能になる。
【0005】
PCR技術にはかなりの進歩があったが、副反応、例えばバックグラウンドDNAのミスプライミングによる、非標的オリゴヌクレオチド増幅および/またはプライマーオリゴマー化は、やはり重大な問題を呈する。これは、バックグラウンドDNAを含むが、標的DNAが単一コピーで存在する可能性がある環境で、PCRを行う、診断適用に特に当てはまる(Chouら(1992)Nucleic Acid Res. 20:1717−1723)。非特異的増幅産物の生成は、非特異的にアニーリングしたプライマーを伸長する、周囲温度でのポリメラーゼ活性に起因すると考えられてきている(Chouら(1992)Nucleic Acid Res. 20:1717−1723; Liら(1990)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:4580)。したがって、周囲温度でのポリメラーゼ活性の阻害は、非特異的産物の生成を調節するのに重要である。
【0006】
これらの副反応を最小限にする、2つの方法が報告されてきている。「手動ホットスタート(manual hot start)」PCRと称される、第一の方法では、混合物温度が、非特異的プライマーアニーリングを防ぐのに十分に高くなるまで、反応混合物にポリメラーゼ活性に必須の構成要素(例えば二価イオンおよび/またはポリメラーゼ自体)を添加しない(Chouら(1992)Nucleic Acid Res. 20:1717−1723; D’Aquilaら(1991)Nucleic Acid Res. 19:3749)。したがって、最後の試薬、通常はポリメラーゼを添加する前に、試薬すべてを72℃に加熱する。ワックス仲介「ホットスタート」PCRでは、ポリメラーゼ活性に必須の構成要素を、第一の周期での加熱に際し融解するワックス層により、低温では残りの反応混合物から物理的に分離する(Chouら(1992)Nucleic Acids Res. 20:1717; Hortonら(1994)BioTechniques 16:42)。「ホットスタート」PCRは特定の欠点を有する;熱反復を開始する前に、試験管を再度開く必要があり、これは交差混入を増加させ、そしてピペッティングの反復は、多くの試料を扱うのを冗長にする。すべての他の反応構成要素と共に直接反応混合物中に入れることが可能であり、そして周囲温度でポリメラーゼを阻害する試薬は、「ホットスタート」PCRに関連する限界を克服するのに有用であろう。本方法は特異性を増加させ、それにより副産物を減少させるが、該方法は、多くの試料を扱うのに不便であり、反応混合物はより容易に汚染され、そして該方法を誤りがちにする。
【0007】
「in situホットスタート」と称される、第二の方法では、低温でポリメラーゼに結合しそして阻害するが高温ではしない試薬(例えば、Taqポリメラーゼの中和抗体(TaqStart)またはオリゴヌクレオチドアプタマー)を完全反応混合物に添加する(Birchら(1996)Nature 381:445; DangおよびJayasena(1996)J. Mol. Biol. 264:268; Kelloggら(1994)BioTechniques 16:1134−1137)。本抗体は、周囲温度でポリメラーゼ活性を阻害するが、反応が熱反復されると熱変性により不活性化され、ポリメラーゼを活性にする。副産物を減少させる本アプローチの欠点は、抗Taq抗体を使用まで−20℃で保管しなければならないことである。これは検出キットを調節された環境下でパッケージングし、そして輸送しなければならず、費用が加算されることを意味する。さらに、1回のPCRに、売主が特定する緩衝液で希釈された、かなりの量の抗体(〜1μgの抗体/5 UのTaqポリメラーゼ)を必要とする。
【0008】
熱安定性TaqおよびTthポリメラーゼを阻害することが可能な高親和性核酸リガンドの開発は、「ホットスタート」法の必要性を除き、そして第二の方法に関連する限界を克服するであろう。非常に特異的で、そして高親和性を有する核酸阻害剤を開発することが可能である。核酸は周囲温度でタンパク質より安定であるため、抗体を用いることに関連する輸送およびパッケージングの問題を克服することが可能である。さらに、核酸は、抗体同様、より高い温度でポリメラーゼに対する親和性を失い、望ましいときにポリメラーゼが活性化されることを可能にすると確認することが可能である。PCRにおいて、核酸に基づく阻害剤が、それ自体、(反応に用いられる特異的プライマーに加え)プライマーとして機能することにより仲介されるミスプライミングの可能性は、その3’末端をキャップ化することにより、除去することが可能である。
【0009】
いくつかのDNAポリメラーゼのX線結晶構造により、これらが類似の三次元構造にフォールディングしていることが示されてきている(概説には、JoyceおよびSteiz(1994)Annu. Rev. Biochem. 63:777を参照されたい)。重合に責任があるC末端ドメインは、解剖学的に右手と類似の「手のひら(palm)」、「手指(finger)」および「親指(thumb)」の3つのサブドメインに組織される。TthポリメラーゼおよびTaqポリメラーゼは、アミノ酸配列レベルで93%類似であり、そして88%同一である(Abramson(1995)PCR Strategies(Academic Press, ニューヨーク)中)。どちらも3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を持たないが、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を含む(Abramson(1995)PCR Strategies(Academic Press, ニューヨーク)中; TindallおよびKunkel(1988)Biochemistry 27:6008)。したがって、核酸リガンド阻害剤は、これらの酵素両方と共に、他の熱安定性ポリメラーゼに類似の振る舞いをすると期待される。これにより、いくつかの熱安定性酵素に単一の阻害剤を用いることが可能になるであろう。
【0010】
RNA配列は、PCRにより増幅される前に、逆転写によりcDNAに変換される。最初は、これは、2つの異なる酵素:逆転写酵素および熱安定性DNAポリメラーゼを用いた2つの工程で達成された。最近の研究により、特定の熱安定性DNAポリメラーゼは、RNAを逆転写する能力を有し、RNA単位複製物を増幅するのに単一の酵素の使用が可能になることが示されてきている(MyersおよびGelfand(1991)Biochemistry 30:7661−7666)。RNAは二価イオンの存在下で、高温で不安定であるため、逆転写はDNA合成より低い温度(50−60℃)で行う。したがって、ポリメラーゼの周囲活性を阻害するのに用いられる試薬が、より低い温度でポリメラーゼを再活性化するような試薬を有することが望ましいであろう。この必要性は、RNAに基づく増幅において、in situホットスタート条件を生成する、不活性化のために高温(70−90℃)を要求する、抗体の使用を排除する。
【0011】
SELEXTM
標的分子に対し非常に特異的な結合を持つ、核酸分子のin vitro進化のための方法が開発されてきている。本方法は、指数的濃縮によるリガンドの計画的進化、SELEXTMと称され、現在放棄されている、“Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichment”と題される米国特許出願第07/536,428号、1991年6月10日に提出された“Nucleic Acid Ligands”と題される米国特許出願第07/714,131号、現米国特許第5,475,096号、および1992年8月17日に提出された“Methods for Identifying Nucleic Acid Ligands”と題される米国特許出願第07/931,473号、現米国特許第5,270,163号(1991年12月26日に刊行されたWO 91/19813も参照されたい)に記載され、これらの各々は、特に本明細書に援用される。これらの出願の各々は、本明細書において、集合的にSELEX特許出願と称され、いかなる望ましい標的分子に対しても核酸リガンドを作成するための根本的に新規な方法を記載する。
【0012】
SELEX法は、候補オリゴヌクレオチド混合物からの選択、並びに同じ一般的選択計画を用いた、結合、分配および増幅の段階的反復を伴い、実質的にいかなる望ましい規準の結合親和性および選択性も達成する。SELEX法は、好ましくはランダム配列セグメントを含む核酸混合物から出発し、結合に好ましい条件下で標的と混合物を接触させ、標的分子に特異的に結合している核酸から非結合核酸を分配し、核酸−標的複合体を解離させ、核酸−標的複合体から解離した核酸を増幅し、核酸のリガンド濃縮混合物を生じ、その後、結合、分配、解離および増幅を、望ましいだけ再反復し、標的分子に対する非常に特異的な高親和性核酸リガンドを生じる工程を含む。
【0013】
いくつかの特定の目的を達成するように、基本的なSELEX法が修飾されてきている。例えば、1992年10月14日に提出され、現在放棄されている、“Method for Selecting Nucleic Acdis on the Basis of Structure”と題される米国特許出願第07/960,093号(1994年2月22日に提出された“Method for Selecting Nucleic Acdis on the Basis of Structure”と題される米国特許出願第08/198,670号、現米国特許第5,707,796号を参照されたい)は、特定の構造特性を持つ核酸分子、例えば折れ曲がりDNAを選択するための、ゲル電気泳動と組み合わせたSELEX法の使用を記載する。1993年9月17日に提出され、現在放棄されている、“Photoselection of Nucleic Acid Ligands”と題される米国特許出願第08/123,935号(1996年3月8日に提出された“Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment: Photoselection of Nucleic Acid Ligands and Solution SELEX”と題される米国特許出願第08/612,895号、現米国特許第5,736,177号)は、標的分子に結合しおよび/または光架橋しおよび/または該分子を光不活性化することが可能な光反応性基を含む核酸リガンドを選択するためのSELEXに基づく方法を記載する。1995年5月18日に提出された“High−Affinity Nucleic Acid Ligands That Discriminate Between Theophylline and Caffeine”と題される、米国特許出願第08/443,957号、現米国特許第5,580,737号を支持し、放棄された、1993年10月7日に提出された“High−Affinity Nucleic Acid Ligands That Discriminate Between Theophylline and Caffeine”と題される、米国特許出願第08/134,028号は、非常に近縁の分子の間を区別することが可能な非常に特異的な核酸リガンドを同定するための、対抗SELEX(Counter−SELEX)と称される方法を記載する。1995年6月5日に提出された“Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichment: Solution SELEX”と題される、米国特許出願第08/461,069号、現米国特許第5,567,588号を支持し、放棄された、1993年10月25日に提出された“Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichment: Solution SELEX”と題される、米国特許出願第08/143,564号は、標的分子に高い親和性を有するオリゴヌクレオチドおよび低い親和性を有するものの間の非常に効率的な分配を達成する、SELEXに基づく方法を記載する。1992年10月21日に提出された、“Nucleic Acid Ligands to HIV−RT and HIV−1 Rev”と題される、米国特許出願第07/964,624号、現米国特許第5,496,938号は、SELEXが行われた後に、改善された核酸リガンドを得るための方法を記載する。1995年3月8日に提出された、“Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichment: Chemi−SELEX”と題される、米国特許出願第08/400,440号、現米国特許第5,705,337号は、標的にリガンドを共有結合する方法を記載する。
【0014】
SELEX法は、リガンドに改善された特性、例えば改善されたin vivo安定性または改善された搬送特性を与える修飾ヌクレオチドを含む高親和性核酸リガンドの同定を含む。こうした修飾の例には、リボースおよび/またはリン酸および/または塩基位での化学的置換が含まれる。修飾ヌクレオチドを含む、SELEX法で同定された核酸リガンドは、1995年4月27日に提出された、“High Affinity Nucleic Acid Ligands Containing Modified Nucleotides”と題される、米国特許出願第08/430,709号、現米国特許第5,660,985号を支持し、放棄された、1993年9月8日に提出された“High Affinity Nucleic Acid Ligands Containing Modified Nucleotides”と題される、米国特許出願第08/117,991号に記載され、該出願は、ピリミジンの5−および2’−位で化学的に修飾されているヌクレオチド誘導体を含むオリゴヌクレオチドを記載する。上記の米国特許第5,580,737号は、2’−アミノ(2’−NH2)、2’−フルオロ(2’−F)、および/または2’−O−メチル(2’−OMe)で修飾されている1つまたはそれ以上のヌクレオチドを含む、非常に特異的な核酸リガンドを記載する。1994年6月22日に提出された、現在放棄されている、“Novel Method of Preparation of Known and Novel Nucleosides by Intramolecular Nucleophilic Displacement”と題される米国特許出願第08/264,029号は、多様な2’−修飾ピリミジンを含むオリゴヌクレオチドを記載する。
【0015】
1994年8月2日に提出された“Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment: Chimeric SELEX”と題される米国特許出願第08/284,063号、現米国特許第5,637,459号および1994年4月28日に提出された“Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment: Blended SELEX”と題される米国特許出願第08/234,997号、現米国特許第5,683,867号にそれぞれ記載されるように、SELEX法は、選択されたオリゴヌクレオチドを、他の選択されたオリゴヌクレオチドおよび非オリゴヌクレオチド官能単位と組み合わせることを含む。これらの出願により、オリゴヌクレオチドの広範囲の形状および他の特性のアレイ、並びに効率的な増幅および複製特性を、他の分子の望ましい特性と組み合わせることが可能になる。基本的SELEX法の修飾を記載する上述の特許出願の各々は、特に、完全に本明細書に援用される。
【0016】
発明の簡単な概要
本発明は、DNAポリメラーゼに対する核酸リガンドを同定しそして産生する方法を含む。特に含まれるのは、Taq、TthおよびTZ05ポリメラーゼを含む、ポリメラーゼ連鎖反応に有用な熱安定性DNAポリメラーゼに対する核酸リガンドを同定する方法、並びにこうして同定されそして産生された核酸リガンドである。より詳細には、それぞれ、Taq、TthおよびTZ05ポリメラーゼに特異的に結合することが可能であり、それにより、それらがDNA合成を触媒する能力を阻害するDNA配列が提供される。本発明の方法を用い、使用者により定義される条件下で、in vitroで核酸リガンドを選択し、そしてしたがって、あらかじめ選択された温度/またはそれに近い温度で、ポリメラーゼに結合し、そして該ポリメラーゼを阻害するリガンドを選択する機会が提供される。周囲温度で、TaqおよびTZ05ポリメラーゼに結合し、そして該ポリメラーゼを阻害するDNA配列、並びに55℃近傍で、TaqおよびTthポリメラーゼに結合し、そして該ポリメラーゼを阻害するDNA配列が提供される。本発明の方法は、あらかじめ決定されたいかなる温度までの、いかなる熱安定性DNAポリメラーゼに対する核酸リガンドを同定しそして産生すること、およびこうして同定されそして産生されたリガンドにも拡張することが可能である。
【0017】
本発明にさらに含まれるのは、Taq、TthおよびTZ05ポリメラーゼに対する核酸リガンドおよび核酸リガンド配列を同定する方法であって、(a)核酸候補混合物を調製し、(b)あらかじめ決定された温度で、Taq、TthおよびTZ05ポリメラーゼに対する親和性に基づき、前記候補混合物のメンバー間で分配し、そして(c)選択された分子を増幅し、それぞれ、Taq、TthおよびTZ05ポリメラーゼに対する結合に関し比較的高い親和性の核酸配列が濃縮された核酸混合物を得る、工程を含む、前記方法である。
【0018】
本発明にさらに含まれるのは、周囲温度で熱安定性ポリメラーゼを阻害するが、上昇した温度で該ポリメラーゼから解離する核酸リガンドを含む工程を含む、ポリメラーゼ連鎖反応を実行する改善法である。こうした核酸リガンドは、本発明の方法にしたがって同定される。
【0019】
より具体的には、本発明は、上述の方法にしたがって同定された、Taqポリメラーゼ、TthポリメラーゼおよびTZ05ポリメラーゼに対するssDNAリガンドを含み、表2−3、10および11(配列番号7−74および76−77)並びに表4−6および図33(配列番号78−115)を含む。やはり含まれるのは、いかなるものでもよい既定のリガンドに実質的に相同であり、Taqポリメラーゼ、TthポリメラーゼおよびTZ05ポリメラーゼに結合し、そして該ポリメラーゼの活性を阻害する、実質的に同一の能力を有する、Taqポリメラーゼ、TthポリメラーゼおよびTZ05ポリメラーゼに対するDNAリガンドである。本発明にさらに含まれるのは、本明細書に提示されるリガンドと実質的に同一の構造型を有し、そしてTaqポリメラーゼ、TthポリメラーゼおよびTZ05ポリメラーゼに結合し、そして該ポリメラーゼの活性を阻害する、実質的に同一の能力を有する、Taqポリメラーゼ、TthポリメラーゼおよびTZ05ポリメラーゼに対するDNAリガンドである。
【0020】
本発明はまた、本明細書に同定されるDNAリガンドに基づく修飾ヌクレオチド配列および該配列の混合物も含む。
本発明の核酸リガンドは、反応混合物の温度に応じ、ポリメラーゼ連鎖反応を「オン」または「オフ」にする「スイッチ」として機能することが可能である。したがって、本発明はまた、スイッチとして機能する核酸リガンド配列を同定しそして調製する方法であって、(a)核酸候補混合物を調製し、(b)Taq、TthまたはTZ05ポリメラーゼに対する親和性に基づき、前記候補混合物のメンバー間で分配し、そして(c)標的分子を用い、選択された分子を増幅し、増幅温度以下の温度でのみ、それぞれ、Taq、TthおよびTZ05ポリメラーゼに対する結合に関し比較的高い親和性の核酸配列が濃縮された核酸混合物を得る、工程を含む、前記方法も含む。
【0021】
本発明は、したがって、核酸スイッチを同定する方法を含む。核酸スイッチは、SELEX法により同定される核酸であり、ここで該核酸の望ましい特性は、いくつかの環境パラメーターの操作に応じ、「スイッチ」オンまたはオフすることが可能である。核酸スイッチは、SELEX分配工程を操作し、反応媒体パラメーター中の改変に基づき、反対の結果――しばしば標的に対する結合――を生じる核酸を選択することにより、同定することが可能である。この場合の例は、温度に基づき、オンおよびオフされる核酸スイッチを示すが、本発明の方法を拡張し、限定されるわけではないが、pH、特定のイオン、すなわちMg++の濃度を含む、温度以外の条件に基づくスイッチとして機能する核酸リガンドを同定しそして調製してもよい。
【0022】
発明の詳細な説明
本出願は、DNAポリメラーゼに対する核酸リガンドの単離を記載する。具体的には、本出願は、ポリメラーゼ連鎖反応に有用な熱安定性ポリメラーゼに対する核酸リガンドの単離を記載する。好ましい態様において、DNAポリメラーゼはTaq、TthまたはTZ05ポリメラーゼより選択されるが、本発明の方法は、いかなる熱安定性DNAポリメラーゼに対する高親和性核酸リガンドの同定および調製に拡張してもよい。核酸リガンドは、SELEXとして知られる方法を通じ、同定される。SELEXは、現在放棄されている、“Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichment”と題される米国特許出願第07/536,428号、1991年6月10日に提出された“Nucleic Acid Ligands”と題される米国特許出願第07/714,131号、現米国特許第5,475,096号、および1992年8月17日に提出された“Methods for Identifying Nucleic Acid Ligands”と題される米国特許出願第07/931,473号、現米国特許第5,270,163号(1991年12月26日に刊行されたWO 91/19813も参照されたい)に記載される。これらの出願は各々、特に本明細書に援用され、集合的にSELEX特許出願と称される。
【0023】
最も基本的な形で、SELEX法は、以下の一連の工程により定義することが可能である:
1)異なる配列の核酸候補混合物を調製する。候補混合物は、一般的に、固定配列の領域(すなわち、候補混合物の各メンバーは同一部位に同一配列を含む)およびランダム配列の領域を含む。固定配列領域は:a)以下に記載される増幅工程を補助するよう、b)標的に結合する既知の配列を模倣するよう、またはc)候補混合物中の既定の構造配置の核酸の濃度を亢進するよう、選択される。ランダム配列は、完全にランダム(すなわちいかなる位でも塩基が4つのうち1つであることを見出すことが可能)でも、または部分的にのみランダム(例えば、塩基を見出す可能性が、いかなる部位でも0および100パーセントの間のいずれでもよいレベルで選択することが可能)でもよい。
2)候補混合物を、標的および候補混合物のメンバーの間の結合に好ましい条件下で、選択された標的と接触させる。これらの状況下では、標的および候補混合物核酸の間の相互作用は、標的および標的に対し最も強い親和性を有する核酸の間の核酸−標的対を形成するとみなすことが可能である。
3)標的に対し最も高い親和性を持つ核酸を、標的に対しより少ない親和性の核酸から分配する。最も高い親和性の核酸に相当する配列は、候補混合物中に非常に少数のみ(そしておそらくわずか1つの核酸分子が)存在するため、一般的に、候補混合物中の核酸のかなりの量(およそ5−50%)が分配中に保持されるように、分配規準を設定することが望ましい。
4)その後、分配中、標的に対し相対的に高い親和性を有すると選択された核酸を増幅し、標的に対し相対的に高い親和性を有する核酸が濃縮された、新規候補混合物を生成する。
5)上記の分配および増幅工程を反復することにより、新たに形成される候補混合物は、より少ない特有配列を含み、そして標的に対する核酸親和性の平均的度合いは、一般的に増加するであろう。極端な場合、SELEX法は、標的分子に対し最も高い親和性を有する、元来の候補混合物由来の核酸に相当する、1つまたは少数のユニークな核酸を含む、候補混合物を生じるであろう。
【0024】
SELEX特許出願は、本方法を非常に詳細に記載し、そして詳述する。含まれるのは、本方法に用いることが可能な標的;候補混合物中の核酸を分配する方法;および分配された核酸を増幅し、濃縮候補混合物を生成する方法である。SELEX特許出願はまた、タンパク質が核酸結合タンパク質であるまたはない、タンパク質標的を含む、いくつかの標的種に対して得られるリガンドも記載する。
【0025】
SELEX法は、標的分子の高親和性リガンドを提供する。これは核酸研究の分野で前例のないまれにみる達成に相当する。本発明は、SELEX法をDNAポリメラーゼ、特にTaqポリメラーゼ、TthポリメラーゼおよびTZ05ポリメラーゼの核酸阻害剤という特定の標的に適用する。以下の実施例項では、Taq、TthおよびTZ05ポリメラーゼに対する核酸阻害剤を単離しそして同定するのに用いた実験パラメーターが記載される。
【0026】
1992年10月21日に提出された、同時係属であり、そして本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第07/964,624号、現米国特許第5,496,938号(’938特許)では、SELEXを行った後、改善された核酸リガンドを得る方法が記載される。“Nucleic Acid Ligands to HIV−RT and HIV−1 Rev”と題される’938特許は、特に本明細書に援用される。
【0027】
本明細書において、本発明を記載するのに用いられる特定の用語は、以下のように定義される:
本明細書において、「核酸リガンド」は、標的に対し望ましい作用を有する、非天然発生核酸である。望ましい作用には、限定されるわけではないが、標的の結合、標的の触媒的変化、標的または標的の機能的活性を修飾する/改変する方式での標的との反応、自殺阻害剤におけるような、標的への共有結合、標的および別の分子の間の反応の促進が含まれる。好ましい態様において、作用は、標的分子への特異的結合親和性を有し、こうした標的分子は、主にワトソン/クリック塩基対形成または三重らせん結合に依存する機構を通じ、核酸リガンドに結合するポリヌクレオチド以外の三次元化学構造であり、ここで核酸リガンドは、標的分子に結合される既知の生理学的機能を有する核酸ではない。既定の標的のリガンドである核酸リガンドには、核酸候補混合物より:a)候補混合物を標的と接触させ、ここで候補混合物に比較し、標的に増加した親和性を有する核酸を残りの候補混合物から分配することが可能である;b)増加した親和性の核酸を残りの候補混合物から分配し;そしてc)増加した親和性の核酸を増幅し、リガンド濃縮核酸混合物を生じる、ことを含む方法により、同定される核酸が含まれる。
【0028】
「候補混合物」は、そこから望ましいリガンドを選択しようとする、異なる配列の核酸の混合物である。候補混合物の供給源は、天然発生核酸またはその断片、化学的に合成された核酸、酵素的に合成された核酸または前述の技術の組み合わせにより作成された核酸由来であってもよい。好ましい態様において、各核酸は、増幅過程を促進する、ランダム領域を囲む固定配列を有する。
【0029】
「核酸」は、DNA、RNA、一本鎖または二本鎖、およびそのいかなる化学修飾物をも意味する。修飾には、限定されるわけではないが、核酸リガンド塩基または全体としての核酸リガンドに、さらなる電荷、極性、水素結合、静電相互作用、および流動性(fluxionality)を取り込む他の化学基を提供するものが含まれる。こうした修飾には、限定されるわけではないが、2’−位糖修飾、5−位ピリミジン修飾、8−位プリン修飾、環外アミンでの修飾、4−チオウリジンの置換、5−ブロモまたは5−ヨード−ウラシルの置換;骨格修飾、メチル化、異常塩基対の組み合わせ、例えばイソ塩基、イソシチジンおよびイソグアニジン、並びにそれらに匹敵するものが含まれる。修飾はまた、キャップ化などの3’および5’修飾も含んでもよい。
【0030】
「SELEX」方法論は、望ましい方式で標的と相互作用する、例えばタンパク質に結合する、核酸リガンドの選択と、選択された核酸の増幅との組み合わせを伴う。選択/増幅工程の反復周期により、非常に多数の核酸を含むプールから、標的と最も強く相互作用する1つまたは少数の核酸の選択が可能になる。選択/増幅法の周期は、選択された目的が達成されるまで続ける。本発明において、SELEX方法論を使用し、Taq、TthおよびTZ05ポリメラーゼに対する核酸リガンドを得る。
【0031】
SELEX方法論は、SELEX特許出願に記載される。
「標的」は、リガンドが望ましい、目的のいかなる化合物または分子も意味する。標的は、タンパク質、ペプチド、炭水化物、多糖、糖タンパク質、ホルモン、受容体、抗原、抗体、ウイルス、基質、代謝物、遷移状態類似体、補因子、阻害剤、薬剤、染色剤、栄養物、増殖因子などであってもよく、制限はない。本出願では、標的はDNAポリメラーゼである。好ましい態様において、DNAポリメラーゼは、Taqポリメラーゼ、TthポリメラーゼおよびTZ05ポリメラーゼである。
【0032】
本明細書において、「不安定リガンド」は、環境パラメーターの調整に基づき、標的に対する親和性が非常に減少する、SELEX法で同定された核酸リガンドである。好ましい態様において、環境パラメーターは温度であり、標的に対するリガンドの親和性は、上昇した温度で減少する。
【0033】
本明細書において、「DNAポリメラーゼ」は、DNAまたはRNA(逆転写酵素)をテンプレートして用い、DNA鎖に対するデオキシリボヌクレオチド単位の添加により、DNA合成を触媒するいかなる酵素も指す。熱安定性DNAポリメラーゼは、40℃以上の温度で成長する微生物から単離される。
【0034】
「スイッチ」は、いくつかの特定の反応条件に応じ、反応を「オン」または「オフ」にするよう機能する、いかなる化合物も指す。本発明において、核酸リガンドは、反応温度に応じ、PCRを「オン」または「オフ」にするよう機能する。スイッチは、pH、イオン強度、あるいは特定のイオンの存在または非存在を含む他の反応条件に基づき、作動してもよい。核酸スイッチは、分配技術の適切な選択により、SELEX法を介し、同定される。望ましいスイッチ特性を有する核酸を選択するため、分配パラメーターを決定する。
【0035】
本発明において、30ランダム位(30N)を含む縮重ライブラリーからTaqおよびTthポリメラーゼに特異的な高親和性を持つ核酸リガンドを同定するため、SELEX実験を行った(実施例1)。本目的のため、RNAまたはDNAリガンドを同定することが可能であるが、以下の実施例は、DNAリガンドの同定を記載する。本SELEX実験は、低温(室温)で、ポリメラーゼに結合し、そして該ポリメラーゼを阻害するが、高温(>40℃)でしないオリゴヌクレオチドを同定するよう設計した。これは、上昇した温度でPCRにおいて、親和性選択分子を増幅する標的ポリメラーゼを用いて達成した。こうした条件下では、高温でTaqおよびTthポリメラーゼを阻害するDNA配列は、選択中、増幅し、そして増加するとは期待されなかった。本発明は、実施例1に記載される方法により同定された、表2に示されるTthポリメラーゼに対する特異的ssDNAリガンド(配列番号7−35)および表3に示されるTaqポリメラーゼに対するリガンド(配列番号36−66、76、77)並びに、表10および11に示される核酸リガンド(配列番号67−74)を含む。本発明はさらに、TaqおよびTthポリメラーゼの機能を阻害するTaqおよびTthポリメラーゼに対するDNAリガンドを含む。
【0036】
本発明において、30ランダム位(30N)を含む縮重ライブラリーからTaqおよびTZ05ポリメラーゼに特異的な高親和性を持つ核酸リガンドを同定するため、高温SELEX実験もまた行った(実施例1)。本SELEX実験は、およそ55℃で、ポリメラーゼに結合し、そして該ポリメラーゼを阻害するオリゴヌクレオチドを同定するよう設計した。本発明は、実施例1に記載される方法により同定された、表4および5に示されるTaqポリメラーゼに対する特異的ssDNAリガンド(配列番号78−88)並びに表6(配列番号89−106)および図3(配列番号107−115)に示されるTZ05ポリメラーゼに対するリガンドを含む。本発明はさらに、TaqおよびTZ05ポリメラーゼの機能を阻害するTaqおよびTZ05ポリメラーゼに対するDNAリガンドを含む。
【0037】
本発明に含まれるリガンドの範囲は、低温および高温親和性選択両方を用いたSELEX法にしたがって同定される、Taq、TthおよびTZ05ポリメラーゼの修飾および非修飾核酸リガンドすべてに拡張される。より具体的には、本発明は、表2−6、10および11並びに図33に示されるリガンドに実質的に相同な核酸配列を含む。実質的に相同により、一次配列相同性の度合いが70%を上回る、最も好ましくは80%を上回ることを意味する。表2−6、10および11並びに図33に示されるTaq、TthおよびTZ05のリガンドの配列相同性の再吟味により、ほとんどまたはまったく一次相同性を持たない配列が、それぞれ、Taq、TthおよびTZ05ポリメラーゼに結合する、実質的に同じ能力を有する可能性があることが示される。Taq、TthおよびTZ05ポリメラーゼに結合する、実質的に同じ能力は、親和性が、本明細書に記載されるリガンドの親和性と、数桁の範囲にあることを意味する。既定の配列――本明細書に特に記載されるものと実質的に相同なもの――が、それぞれ、Taq、TthおよびTZ05ポリメラーゼに結合する、実質的に同じ能力を有するかどうか決定するのは、十分に、一般の当業者の技術の範囲内である。
【0038】
本発明はまた、上述のようなリガンドであって、前記リガンドが、限定されるわけではないが、ストッフェル(Stoffel)断片、Tbrポリメラーゼ(サーマス・ブロキアヌス(Thermus brockianus)より単離)、Tflポリメラーゼ(サーマス・フラバス(Thermus flavus)より単離)およびM−MLV逆転写酵素(モロニーネズミ白血病ウイルスより単離)を含む、他の熱安定性DNAポリメラーゼの機能を阻害するものも含む。
【0039】
本発明はまた、上述のようなリガンドであって、リガンドのin vivoまたはin vitro安定性を増加させ、あるいは、リガンドの結合もしくは他の望ましい特性またはリガンドの搬送を亢進しまたは仲介するために、特定の化学的修飾が行われるものも含む。こうした修飾の例には、既定の核酸配列の糖および/またはリン酸および/または塩基位での化学的置換が含まれる。例えば、本明細書に特に援用される、米国特許出願第08/430,709号、現米国特許第5,660,985号を支持し、放棄された、1993年9月8日に提出され、“High Affinity Nucleic Acid Ligand Containing Modified Nucleotides”と題される、米国特許出願第08/117,991号を参照されたい。他の修飾が一般の当業者に知られる。こうした修飾は、SELEX後に行ってもよい(先に同定された非修飾リガンドの修飾)し、またはSELEX法への取り込みにより、行ってもよい。
【0040】
本明細書に記載される、Taq、TthおよびTZ05ポリメラーゼに対する核酸リガンドは、ポリメラーゼ連鎖反応の試薬として有用である。
本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応を行う改善法を含み、ここで増幅しようとする核酸配列を含む試料を、1)増幅しようとする配列に隣接する配列と相補的なプライマー、2)熱安定性ポリメラーゼ、および3)周囲温度でポリメラーゼを阻害することが可能な核酸リガンドと混合する。核酸リガンド阻害剤は、固体支持体上に固定してもよい。その後、混合物の熱反復により、PCRの通常の工程――融解、アニーリングおよび合成――にしたがう。核酸リガンドの存在は、反復前または反復中のより低い温度でのいかなる合成も妨げることにより、混合物がバックグラウンドDNAを増幅することを妨げる。本発明はまた、熱安定性DNAポリメラーゼ、および周囲温度で前記ポリメラーゼを阻害するが、それにもかかわらずPCR法の上昇温度周期中の合成が起こることを可能にする核酸リガンドを含む、PCRキットも含む。本発明はまた、当業者に理解されるように、熱安定性ポリメラーゼに、周囲温度で前記ポリメラーゼを阻害するが、それにもかかわらずPCR法の上昇温度周期中の合成が起こることを可能にする核酸リガンドを添加する工程を含む、改善PCR法も含む。
【0041】
Taq、TthおよびTZ05ポリメラーゼに対する核酸リガンド
実施例1は、室温でのTaqおよびTthポリメラーゼ両方、並びに上昇温度でのTaqおよびTZ05ポリメラーゼに対する核酸リガンドの選択に用いる実験法を記載する。室温で、Tthポリメラーゼを用いて行った選択10周期から得たssDNA配列を表2に示す。Tthポリメラーゼ選択由来の29の個々のクローンを配列決定した(表2には、可変30ヌクレオチド領域のみを示す)。一次配列相同性に基づき、リガンドをファミリーに分類した。
【0042】
室温で、Taqポリメラーゼを用いて行った選択12周期から得たssDNA配列を表3に示す。Taqポリメラーゼ選択由来の解析した42の配列のうち、33がユニークであった。大文字は、30ヌクレオチドランダム領域を示し、これに5’−ttctcggttggtctctggcggagc−および−tcttgtgtatgattcgcttttccc−3’固定配列領域が隣接し、全長配列を形成する。いくつかの配列中の小文字は、5’固定配列を示す。同一配列を含むクローンの数は、括弧内に示した。配列類似性に基づき、配列を3つのファミリーに分類した。ファミリーIおよびIIの保存配列モチーフを囲む。両ファミリーは、異なるコンセンサス配列を含み:ファミリーIでは5’−A/G/GTGTG/ACAGTAT/GC−3’、ファミリーIIでは、5’−A/GCGTTTTG−3’であった。ファミリーIでは、コンセンサス配列の5’および3’領域は、互いに塩基対形成する能力を示した(表3下線)。さらに、これらの領域に観察される、共変動(covariation)は、ステムループ構造の存在の可能性を示唆する。リガンドの大部分で、潜在的な塩基対形成領域は、コンセンサス領域を越え伸長する。対照的に、ファミリーIIリガンドは、明らかな二次構造モチーフを持たない。
【0043】
ファミリーIのクローン30(TQ30(配列番号50))およびファミリーIIのクローン21(TQ21(配列番号59))に関する、室温でのニトロセルロースフィルター結合により得られた代表的結合曲線を、図3に示す。両方の場合で、リガンドは2つのポリメラーゼに緊密な結合を示し、Kd値は低いピコモル範囲である:TQ30のKd値は、それぞれ、Taqポリメラーゼに関し、40±1 pM、そしてTthポリメラーゼに関し、28±4 pMであり、一方、TQ21では、それぞれTaqポリメラーゼおよびTthポリメラーゼに関し、36±4 pMおよび10±2 pMである。2つのファミリーのさらにいくつかのリガンドをスクリーニングした。Kd値は、Taqポリメラーゼに関し、0.04ないし9 nM、そしてTthポリメラーゼに関し、0.01ないし0.3 nMの範囲であった。
【0044】
Taqポリメラーゼとの個々の配列の結合相互作用を、55℃で、ニトロセルロースフィルター結合により、測定した。いくつかの代表的な結合曲線を図4A−Eに示す。図4A−Dは、ファミリーIに属する4つの配列(表4および5を参照されたい)の結合曲線を示す。クローン6(配列番号78)、22(配列番号81)および28(配列番号87)は、すべて、そのKd値が低いピコモル範囲であったことにより特徴付けられるように、55℃で、Taqポリメラーゼに対する高親和性結合を示す。しかし、ファミリーの他のもののなかに同定されるコンセンサス配列を含む、クローン18(配列番号83)は、高親和性を示さない。クローン18は、ランダム領域が4ヌクレオチド短く、欠失ヌクレオチドが、ポリメラーゼとの相互作用に重要な役割を果たしているようであることが示唆される。クローン19(配列番号84)は、ファミリーIIに属し、そしてファミリーI配列に同定されたコンセンサス配列を持たない。にもかかわらず、該クローンは、大部分のファミリーI配列と類似の高親和性結合を示し(図4E)、ファミリーI配列に見出されたもの以外の、高親和性結合の別の配列の解決があることが示される。
【0045】
図4A−Eに示される結合解析を、55℃で、Tris緩衝液中で行った。40℃および55℃で、TrisおよびTricine緩衝液中で、クローン6、22および28の親和性を比較した(表7)。両緩衝液中で、すべての3つのクローンの結合親和性は、40℃で、55℃での場合より高かった。40℃で、両緩衝液中で、非常によく似たKd値が観察されたが、55℃で、Tricine緩衝液中では、いくぶん減少した親和性が見られた。
【0046】
実施例2に記載されるように、55℃で、ニトロセルロースフィルター結合により、TZ05ポリメラーゼを用いた個々の配列の結合相互作用を測定した。図5A−Dは、4つの異なる配列、クローン1(TZ1(配列番号94))、13(TZ13(配列番号89))、36(TZ36(配列番号99))および2(TZ2(配列番号96))(表6)の代表的な結合曲線を示す。個々のクローンのKd値およびIT50値を表8に要約する。IT50値は、実施例2に記載されるような、ヘアピン伸長アッセイを用いて得た。大部分のリガンドは、Kd値が低いピコモル範囲であることで特徴付けられるように、55℃でTZ05ポリメラーゼに対する高親和性結合を示す。ランダム領域に26ヌクレオチド(期待されるより4ヌクレオチド短い)を持つTZ2配列は、55℃で該ポリメラーゼと効率的に相互作用せず(図5Dおよび表8)、欠失ヌクレオチドが高親和性結合に必要であることが示唆された。
【0047】
ポリメラーゼ阻害アッセイ
実施例2(図7−10)は、低温親和性選択を用いて同定された、本発明のリガンドが、40℃未満の温度で、TaqおよびTthポリメラーゼ両方の相互作用を阻害することが可能であることを立証する、いくつかのポリメラーゼ阻害アッセイを記載する。実施例2(図11−15)はまた、高温親和性選択を用いて同定された、本発明のリガンドが、およそ55℃の温度で、TaqおよびTZ05ポリメラーゼ両方の相互作用を阻害することが可能であることを立証する、いくつかのポリメラーゼ阻害アッセイも記載する。実施例2では、設計ヘアピンDNA(DNA−HP; 5’−ATGCCTAAGTTTCGAACGCGGCTAGCCAGCTTTTGCTGGCTAGCCGCGT−3’(配列番号6;図6))をテンプレートとして用い、DNA濃縮プールと共に、本発明の方法にしたがって同定された特定のリガンドが、多様な条件下で、ポリメラーゼ活性を阻害する能力を測定した。本アッセイは、折り返しDNAヘアピン上の15ヌクレオチドのテンプレート指示埋め込み合成を検出する。
【0048】
低温でTaqおよびTthポリメラーゼを認識するよう選択されたリガンド
図7Aは、DNAリガンド濃縮プールを用い、異なるインキュベーション時間で、異なる温度で行った阻害アッセイの結果を示す。TaqおよびTthポリメラーゼ両方の活性は、レーン3(室温反応)をレーン6−9(それぞれ50、60および70℃での反応)と比較することにより、わかるように、一般的に、低温では低く、そして温度が増加するにつれ、増加する。濃縮プールは、室温で各ポリメラーゼの活性を阻害する(レーン4)が、50℃−70℃ではしない。レーン10は、参考として放射標識プールの移動度を示し、ポリメラーゼのテンプレートとして作用することが可能な、プール中のDNA分子のありうる伸長を検出する。レーン6−9に標識プールに近くまたはそれ以上に移動する放射標識バンドがないことにより、ssDNAプールの重合がないことが示される。
【0049】
熱安定性ポリメラーゼの活性は、周囲温度で低いため、アッセイ中のインキュベーション期間を16時間に増加させた。図7Bおよび7Cは、選択プールおよびランダムプールの存在下での2つのポリメラーゼとテンプレートの16時間インキュベーションの結果を示す。さらに、選択プールに仲介される阻害を、抗Taq抗体(Taqstart)のものと比較した。図7Bのデータは、Taqポリメラーゼを用いて得、そして図7Cのデータは、Tthポリメラーゼを用いて得た。研究した3つの温度、室温、30℃および37℃に渡り、ランダムプールは、2つのポリメラーゼの阻害を示さず(レーン1−3を4−6と比較されたい)、濃縮プールにより引き起こされる阻害は、配列特異的であることが示唆された。Taqポリメラーゼに関し選択されたプールは、室温(レーン7)でのみ、16時間インキュベーションに渡り、ポリメラーゼ活性を完全に阻害したが、30℃およびそれ以上(レーン8および9)では阻害しなかった。Tthポリメラーゼに関して選択されたプールは、Taqポリメラーゼに結合を示したが、Taqポリメラーゼを阻害することはできなかった(レーン10−12)。期待されるように、Taqstart抗体は、調べた3つの温度すべてでポリメラーゼ活性を阻害した(レーン12−15)。しかし、Tthポリメラーゼに関し選択されたssDNAプールは、16時間インキュベーションに渡り、酵素活性を阻害しなかった(レーン1−3を4−6と比較されたい)。対照的に、同一プールは、短期間のインキュベーションに渡り、酵素活性を阻害することが可能であった。Taqポリメラーゼに関し選択されたプールは、室温での16時間インキュベーションに渡り、Tth活性を部分的に(>50%)阻害することが可能であった(レーン10)。Taqstart抗体は、Tthの活性にはいかなる影響も持たなかった(レーン13−15)。
【0050】
Taqstart抗体の使用は、PCR反応中1回に限定される。高温で変性されると、天然型に再生することはできない。しかし、単純な二次構造を持つ核酸リガンドは、熱周期を経た後、天然型に再生する可能性を有する。Taqポリメラーゼに関し選択されたDNAプールの阻害能が、加熱後、回復するかどうか調べるため、実験を行った(図7Dおよび7E)。図7Dは、熱反復にさらされていない選択DNAプールによる、20℃−40℃のTaq活性の阻害を示す。45分間のインキュベーションに渡り、プールは、20℃および25℃で、Taq活性を完全に阻害する。この比較的短いインキュベーション期間内では、プールは、30℃で>70%の阻害を示した。テンプレートDNAの非存在下で、Taqポリメラーゼを用いた2つのPCR周期にさらされたDNAプールで、非常に類似の阻害プロフィールを見ることが可能である。この結果は、ssDNAに仲介される阻害は、可逆的に温度感受性であり、そしてPCRの後であっても回復することが可能であることを立証する。
【0051】
図8は、配列、TQ30(配列番号50)およびTQ21(配列番号59)(表3)が、TaqおよびTth DNAポリメラーゼに対し阻害性である温度範囲を示す。本図に示されるヘアピン伸長アッセイは、250 nMの各リガンドを用い、1時間、示される温度で行った(レーン1−10)。予期されるように、ssDNAリガンドは、>40℃の温度でどちらのDNAポリメラーゼも阻害しなかった(図8Aおよび8B)。リガンドTQ30に関し、1時間アッセイ中に産物の50%が生成される温度(IT50値)は、TaqポリメラーゼおよびTthポリメラーゼで、それぞれ41℃および29℃である。リガンドTQ21に関するそれぞれの値は37℃および29℃である(図8Cおよび8D)。これらのポリメラーゼに対する2つのリガンドの結合親和性は、これらが高温で減少した阻害活性を持つのと一致して、より高い温度で減少する(データ未提示)。ヘアピン伸長アッセイでは、投入ヘアピンテンプレートのおよそ2%は、おそらく正しくないフォールディングのため、DNAポリメラーゼにより伸長されなかった。
【0052】
図9は、リガンドTQ30(配列番号50)によるTaqポリメラーゼの阻害は熱的に可逆的であり、そしてPCR後でさえ回復することが可能であることを例示する。本図に示されるヘアピン伸長アッセイは、リガンドTQ30の非存在下(レーン1−5)および存在下(50 nM)(レーン6−10)で、5 UのTaqポリメラーゼを用い、100μl反応体積中で、10分間、示される温度で行った。図9Aでは、リガンドTQ30は、熱反復にさらされていない。図9Bでは、TQ30は、Taqポリメラーゼと共に、25周期の熱反復(90℃30秒;50℃1分;72℃30秒)にさらされ、そして放射標識ヘアピンテンプレート(250 nM)を添加する前に、室温に冷却した。図9でわかるように、どちらの場合でも、リガンドTQ30は40℃未満の温度でポリメラーゼを阻害した。さらに、熱反復を経た試料は、熱反復にさらされなかった試料と同一のまたはそれより有効な阻害を示した。
【0053】
図10は、TaqおよびTthポリメラーゼの阻害に対するリガンド濃度の影響を立証する。TQ30(配列番号50)およびTQ21(配列番号59)に関し、ヘアピンアッセイで産物の50%を産生するのに必要な阻害剤の濃度(IC50値)は、16時間インキュベーション期間に渡る室温(およそ22℃)でのTaqポリメラーゼの阻害に関し、それぞれ、6.5 nMおよび10 nMであった(図10A)。アッセイに用いたTaqポリメラーゼの濃度は、12.5 nMであるため、TQ30(配列番号50)による酵素阻害は、化学量論的結合の結果である可能性がある。1時間に渡り30℃でアッセイした場合、IC50値は、およそ3倍増加した(TQ30では22 nM、そしてTQ21では67 nM;データ未提示)。Tthポリメラーゼの阻害に関するTQ30およびTQ21のIC50値は、室温で、それぞれ、60および36 nMであった(図10B)。総合すると、これらのオリゴヌクレオチドは、Tthポリメラーゼに対するより、選択に用いた酵素、Taqポリメラーゼに対し、より有効な阻害剤である。
【0054】
テンプレート伸長の観察された阻害が、ポリメラーゼに対する選択リガンドの優先的な結合およびそれに続く基質としての利用のためであるという可能性を除外するため、5’末端放射標識TQ21およびTQ30リガンドを、2つのDNAポリメラーゼと16時間インキュベーションした(実施例2、データ未提示)。リガンドTQ30は、どちらの酵素とのインキュベーションに際しても、伸長産物を示さず、ポリメラーゼ活性の基質でないことが示された。しかし、TQ21は、より高い分子量のバンドを生じ、どちらのポリメラーゼとのインキュベーションに際しても、配列伸長が示された。TQ21の観察された部分的伸長は、標準的条件を用い、エチレングリコールリンカーで、3’末端をキャップ化することにより、3’OH基の利用可能性をブロッキングすることにより、有効に除去された。3’キャップ化オリゴヌクレオチド構築物は、未キャップ化分子と同等の有効な阻害剤である(データ未提示)。これらの結果は、ssDNAリガンドがポリメラーゼ活性の劣った基質であり、そして2種類のリガンドは、DNAポリメラーゼ上に異なって配置される可能性があることを示す:TQ21は、3’末端が伸長される(劣ってではあるが)ことが可能であるようにポリメラーゼに結合し、一方TQ30は、結合に際し、伸長不可能である。
【0055】
高温でTaqおよびTZ05ポリメラーゼを認識するよう選択されたリガンド
図11は、高温での親和性選択後に得られた4つのリガンド:クローン6(配列番号78)、15(配列番号86)、10(配列番号85)および18(配列番号83)の存在下で、温度範囲に渡り、Taqポリメラーゼに触媒される、末端標識ヘアピン基質の伸長を示す。4つのリガンドのすべてが、Taqポリメラーゼを同じ度合いで阻害するのではなかった。Taqポリメラーゼに高親和性結合を示さなかったクローン18は、40℃でさえも、有意な酵素阻害を示さなかった。これらのリガンドによるポリメラーゼ阻害の強度は、その親和性の順にしたがう;クローン6>15>10>>>>18。図12AおよびBは、温度の関数として、これらのリガンドの存在下で形成された産物のパーセントを示す。これらのリガンドのIT50値は、40℃−56℃の間であったが、リガンド18は<40℃の値を示した。この結果は、減少した親和性と一致する。高親和性結合にしたがい、ファミリーII配列、クローン19(配列番号84)もまた、高いIT50値を示した。表9は、クローン6(TQH6)および28(TQH28)のKd値を要約する。表9中のデータは、明らかに、高温での親和性選択後に得られたリガンドは、期待される特性、すなわち高温での結合および阻害を持つことを立証する。この結果は、望ましい特性を持つリガンドを得るのに、適切な選択条件を定義する重要性をさらに裏付ける。
【0056】
図13A−Fは、温度範囲にわたる高温での親和性選択後に得られた多様なリガンドの存在下で、TZ05ポリメラーゼに触媒される末端標識基質の伸長を示す。TZ05ポリメラーゼとリガンドの観察された高親和性相互作用は、これらが酵素のポリメラーゼ活性を阻害する能力を反映する。高親和性でポリメラーゼに結合しなかったクローン2(TZ2(配列番号96))を除き、他のリガンドは、40−59℃の間のIT50値を示した(表8を参照されたい)。より短いランダム領域を持つTZ2(期待されるより4ヌクレオチド短い)は、35℃でさえ、ポリメラーゼを有効に阻害しなかった。ファミリーIに属するリガンドTZ13(配列番号89)およびTZ26(配列番号93)は、2つの極端なIT50値(58.5℃対41℃)を示した。配列レベルでは、これらの2つの配列は非常に類似であるが、特により高い温度では、その阻害強度はかなり異なる。TZ13およびTZ26の間には、高い度合いの配列類似性があるが、2つの配列の重大でない相違が、ポリメラーゼ阻害能の相違の原因となっている可能性がある。
【0057】
図14は、Taqポリメラーゼの阻害に関し、高温親和性選択を用いて得られた3つのリガンドの濃度の影響を示す。3つのリガンドのIC50値は、およそ20 nMである。
【0058】
図15は、Tris緩衝液(図15A)およびTricine緩衝液(図15B)中のリガンド6(配列番号78)、22(配列番号81)および28(配列番号87)に関し、温度の関数としてのIC50値の変化を例示する。Tris緩衝液中では、3つのリガンドすべてのIC50値は、40℃ないし50℃の温度範囲内では、非常に弾力的である(図15A)。しかし、Tricine緩衝液中では、IC50値は、45°を超える温度で感受性である(図15B)。これらのアッセイでは、Taqポリメラーゼの濃度は2.5 nMであり、そしてIC50値は、30℃ないし45°で20−40 nMのままである。したがって、この温度範囲内では、完全に酵素を阻害するのに、酵素濃度に対し、およそ20倍過剰のリガンド濃度で十分である。
【0059】
親和性捕捉実験
TaqおよびTthポリメラーゼと核酸リガンドの相互作用の熱可逆性により、1つの増幅後、続く増幅に再使用するためにポリメラーゼを捕捉する、こうしたリガンドで生成された親和性マトリックスの使用の可能性が生じる。親和性捕捉の可能性を調べるため、実施例1に記載されるように、リガンドTQ30(配列番号50)およびTQ21(配列番号59)を含むアフィニティービーズを調製した。ヘパリンを含むPCR緩衝液中で、TaqおよびTthポリメラーゼを用い、ヘアピンテンプレートを伸長した後、実施例2に記載されるように、反応物を、アフィニティービーズまたはコントロールビーズと混合し、ビーズを完全に洗浄し、そしてポリメラーゼ以外、すべての試薬を含む反応混合物の新鮮なアリコットに曝露した。70℃でさらに5分間インキュベーションし、新たに添加されたテンプレート上の伸長を可能にした後、変性条件下で、8%ポリアクリルアミドゲル上で、反応混合物を解析した。コントロールビーズを含んだ反応混合物では、増幅の第二の周期中、テンプレートの伸長はない。対照的に、アフィニティービーズを含んだ反応混合物では、増幅の第一および第二の周期両方で、伸長産物に相違はなく、両リガンド、TQ30およびTQ21を含むアフィニティービーズがPCRの最初の周期後、2つのポリメラーゼの捕捉に成功したことが示された。
【0060】
ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性に対する核酸リガンドの影響
ポリヌクレオチド合成を触媒する能力に加え、Taq、TthおよびTZ05ポリメラーゼは、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性も持つ(JoyceおよびSteitz(1987)Trends Biochem. Sci. 12:288; Longleyら(1990)Nucleic Acids Res. 18:7317)。5’→3’エキソヌクレアーゼ活性の好ましい基質は、置換ssDNA(またはフォーク様構造)であり、切断は二重鎖/ssDNA結合部の近傍で起こる。ポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性に対するオリゴヌクレオチド阻害剤の影響を研究するため、ヘアピン中に置換ssDNAを含むDNA基質(Exo−Sub)を設計した(実施例3、図16)。5’および3’末端両方でExo−Sub基質を放射標識し、エキソヌクレアーゼ活性により生じる2つのDNA断片の検出を可能にする。
【0061】
TaqおよびTthポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性に対するリガンドTQ30(配列番号50)およびTQ21(配列番号59)の影響
エキソヌクレアーゼ活性から生じる2つの標識DNA断片は、オリゴヌクレオチド阻害剤の存在下および非存在下両方で見られた(データ未提示)が、オリゴヌクレオチド阻害剤の存在下で生成される切断産物の量は、阻害剤の非存在下で生じるものより、いくぶん少なく、オリゴヌクレオチド阻害剤が、酵素のエキソヌクレアーゼ活性に対し、いくらか阻害効果を発揮することが示された。これらのオリゴヌクレオチドは、250 nMで、2つの酵素のポリメラーゼ活性を完全に阻害したため、エキソヌクレアーゼ活性に対する影響は、不十分であるとみなされる。
【0062】
TZ05ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性に対するリガンドTZ13(配列番号89)、一部切除(truncated)TZ13(51ヌクレオチド)およびTZ36(配列番号99)の影響
図17は、TZ05ポリメラーゼに対する3つのリガンド:全長TZ13、一部切除TZ13(51ヌクレオチド)(以下を参照されたい)および全長TZ36を用いて行ったアッセイの結果を示す。レーンCは、リガンドの非存在下でTZ05ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ切断により生じる切断産物(78ヌクレオチドおよび24ヌクレオチド)を示す。レーン1−4、5−8および9−12は、それぞれ、増加する濃度のTZ13、TZ13−TrncおよびTZ36リガンドの存在下でのExo−Sub切断を示す。酵素のエキソヌクレアーゼ活性による基質の切断は、3つのリガンドすべてで阻害された。エキソヌクレアーゼ活性の阻害は、2μMのリガンド濃度でさえ、100%ではなかった。250 nMのリガンド濃度で、ポリメラーゼ活性が完全に阻害されたことは注目に値する。したがって、ポリメラーゼ活性およびエキソヌクレアーゼ活性の完全な阻害に必要なリガンド濃度に基づき、これらのリガンドは、ポリメラーゼ活性に関してそうであるようには、エキソヌクレアーゼ活性の阻害剤として有効でない。
【0063】
リガンドに対するTaqポリメラーゼおよびTZ05ポリメラーゼの影響
理想的には、核酸リガンドは、酵素のポリメラーゼ活性の阻害剤としてのみ機能し、それによりPCRにおける、望ましくない非特異的増幅を調節するのに適した試薬となるであろう。しかし、そのフォールディングした構造の性質に応じ、リガンドはそれ自体、ポリメラーゼ活性または5’→3’エキソヌクレアーゼ活性どちらか、あるいは両方の基質となる可能性がある。リガンドに対するTaqポリメラーゼの影響を研究するため、5’末端標識リガンド6(TQH6(配列番号78))、22(TQH22(配列番号81))および28(TQH28(配列番号87))を、dNTPの存在下および非存在下でTaqポリメラーゼとインキュベーションし、そして変性条件下でポリアクリルアミドゲル電気泳動により、反応産物を解析した。図18は、これらのリガンドの各々に対するTaqポリメラーゼの影響を例示する。各リガンドに関し、レーン1および4は、インキュベーションが緩衝液中でのみ行われたコントロールである。レーン2および5は、Taqポリメラーゼとのインキュベーション後の結果を示し、そしてレーン3および6は、Taqポリメラーゼおよび4つのdNTPすべてとのインキュベーション後の結果を示す。図18に見られるように、Taqポリメラーゼとインキュベーションした際、レーン2、3、5および6では、3つのリガンドすべてが、速く動く小さいDNA断片の出現により示されるように、エキソヌクレアーゼ活性の基質として作用した。実際観察されるのは、Hollandら(1991)Proc. Natl. Aca. Sci, USA 88:7276−7280に記載されている、Taqポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性の構造特異的エンドヌクレアーゼ活性である。エキソヌクレアーゼ活性の基質であるのに加え、各リガンドはまた、dNTPの存在下でインキュベーションした際、ポリメラーゼにより伸長された(レーン3)。これは、リガンド6で明らかに顕著であり、ポリメラーゼおよびdNTPとのインキュベーションに際し、遅く動くバンドが生成された。レーン4−6で見られるように、ポリメラーゼ伸長は、各リガンドの3’OH基の利用可能性をブロッキングすることにより、完全に停止した。本研究では、リガンドの化学合成中、3’末端をリン酸基でキャップ化した。リン酸基に加え、他の分子実体、例えば、エチレングリコールリンカーおよび3’−3’dT結合もまた、リガンドの3’末端を有効にキャップ化するのに用いることが可能である。リガンドの3’末端のキャップ化は、リガンドがPCRにおいて非特異的プライマーとして作用する、潜在的な問題を除去する。リガンドの3’末端のキャップ化は、リガンドの機能に影響を与えなかった(DangおよびJayasena(1996)J. Mol. Biol. 264:268)。
【0064】
リガンドに対するTZ05ポリメラーゼの影響を研究するため、TZ05に対する5’末端標識リガンドを、dNTPの存在下でTZ05ポリメラーゼとインキュベーションした。大部分のリガンドは、dNTPおよびTZ05ポリメラーゼとインキュベーションした際、伸長産物を示し、リガンドがポリメラーゼ活性の基質として利用されることが示された。さらに、試験したすべてのリガンド配列は、TZ05ポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性により、2つの断片に切断された(データ未提示)。切断の正確な部位はマッピングされなかったが、5’固定領域のどこかであるようであった。上に論じられるように、リガンドに対するポリメラーゼ伸長は、リガンドの3’ヒドロキシル基をブロッキングすることにより、有効に調節することが可能である。しかし、ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性によるリガンドの切断は、in situで、新規3’末端を生成し、2つの結果を導く可能性があるであろう。第一に、切断は、リガンドの機能を潜在的に不活性化する可能性があり、そして第二に、新規未キャップ化3’末端がPCRにおいて非特異的プライマーとして作用する可能性がある。これらの観察は、以下に記載される一部切除リガンドの同定を導いた。
【0065】
TQ21(配列番号59)およびTQ30(配列番号50)による多様なDNAポリメラーゼの阻害
いくつかの他の商業的に入手可能なDNAポリメラーゼ並びに阻害剤としてリガンドTQ21(配列番号59)およびTQ30(配列番号50)を用いた阻害アッセイが、実施例4に記載される。4つの熱安定性酵素(サーマス・ブロキアヌス由来のTbrポリメラーゼ、サーマス・フラバス由来のTflポリメラーゼ、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)由来のTmaポリメラーゼ、およびサーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来のTliポリメラーゼ);3つの中温性酵素(大腸菌DNAP1のクレノウ断片(KF)、T4 DNAポリメラーゼおよびT7 DNAポリメラーゼ);並びに4つの逆転写酵素(RT)(HIV−I RT、AMV(鳥類骨髄芽球症ウイルス)RTおよびM−MLV(モロニーネズミ白血病ウイルス)RTおよびRNアーゼH活性を欠くその突然変異体(SuperScriptII))を調べた。
【0066】
調べた6つの熱安定性ポリメラーゼ(TaqおよびTthポリメラーゼを含む)のうち、サーマス種由来の4つのポリメラーゼ(Taq、Tth、TbrおよびTlf)は、選択されたオリゴヌクレオチドの両方で阻害され、これらの酵素が高い度合いの類似性を共有することが示唆された。上述のように、TthポリメラーゼおよびTaqポリメラーゼは、アミノ酸配列レベルで、93%類似であり、そして88%同一であると報告されている(Abramson(1995)PCR Strategies(Academic Press, ニューヨーク)中)。Tflポリメラーゼは、アミノ酸レベルで、93%類似であり、そして86%同一であると報告されている(D. Gelfand、個人的通信)。一方、サーモトガ・マリティマ由来のTmaポリメラーゼおよびサーモコッカス・リトラリス由来のTliポリメラーゼは、どちらのリガンドによっても阻害されなかった。Tliポリメラーゼは、真正細菌酵素と、ほとんど配列相同性を共有しない(ItoおよびBraithwaite(1991)Nucleic Acids Res. 19:4045)。Tmaポリメラーゼは、アミノ酸レベルで、Taqポリメラーゼに、61%類似であり、そして44%同一であると報告されている(Abramson(1995)PCR Strategies(Academic Press, ニューヨーク)中)が、オリゴヌクレオチドリガンドは、Tmaポリメラーゼを阻害しない。
【0067】
試験した4つの逆転写酵素のうち、HIV−IおよびAMV(鳥類骨髄芽球症ウイルス)由来のRTは阻害されなかった。一方、M−MLV(モロニーネズミ白血病ウイルス)およびRNアーゼH活性を欠くその突然変異体(SuperScriptII)は、2つのオリゴヌクレオチドリガンドにより、阻害された。
【0068】
中温性DNAポリメラーゼ、例えば大腸菌DNAP1のクレノウ断片(KF)、T4 DNAPおよびT7 DNAPは、TaqポリメラーゼのポリメラーゼドメインおよびKFの類似性にもかかわらず、0.5μM濃度で、どちらのリガンドにも阻害されなかった(Kimら(1995)Nature(London)376:612; Lawyerら(1989)J. Biol. Chem. 264:6427)。したがって、オリゴヌクレオチド阻害剤は、一般的にかなり特異的であるようである。これらの結果は、他の逆転写酵素に関するin vitro選択により同定される核酸リガンドの振る舞いに似ている(TuerkおよびMacDougal(1994)Proc. Natl. Acad. Sci, U.S.A. 89:6988; ChenおよびGold(1994)Biochemistry 33:8746; Schneiderら(1995)Biochemistry 34:9599)。
【0069】
TQH6(配列番号78)およびTQH22(配列番号81)による多様なDNAポリメラーゼの阻害
TQH6およびTQH22の全長および一部切除型両方を研究し、Taqポリメラーゼのストッフェル断片、Tthポリメラーゼ、TZ05ポリメラーゼを阻害する能力を測定した。両リガンドは、48℃のIT50値で、ストッフェル断片を阻害した(図19AおよびB)。どちらの場合でも、全長および一部切除リガンドは、同一のIT50値を示した。この結果は、一部切除リガンドが、全長分子より低いIT50値を示した、これらの2つのリガンドによるTaqポリメラーゼの阻害とはまったく異なる。
【0070】
Tthポリメラーゼに対する2つのリガンドの全長および一部切除型の阻害特性は、Taqポリメラーゼに対するものと非常に類似である。どちらの場合でも、一部切除リガンドは、より低いIT50値(6℃または10℃)を示した(図20AおよびB)。
【0071】
Mg2+またはMn2+イオンどちらかの存在下で、2つのリガンドによるTZ05ポリメラーゼの阻害を調べた。どちらかの金属イオンの存在下で、非常に類似の結果が観察された。図21AおよびBは、Mg2+イオンの存在下でのTZ05ポリメラーゼの阻害を示す。
【0072】
TZ1(配列番号94)、TZ8(配列番号100)、TZ13(配列番号89)およびTZ54(配列番号103)による、多様なDNAポリメラーゼの阻害
TZ05ポリメラーゼの親和性選択から得たいくつかのリガンドを用い、これらのリガンドによる、Taqポリメラーゼ、Tthポリメラーゼおよびストッフェル断片の阻害を調べた。異なるファミリー由来の試験したいくつかの全長リガンドのうち、4つの連続するチミンを含むコンセンサスを持つリガンド、すなわちファミリーIIIに分類される配列(TZ8(配列番号100)およびTZ54(配列番号103))は、TaqおよびTthポリメラーゼを両方、有効に阻害した(データ未提示)。この結果は、Taqポリメラーゼに対する親和性選択により同定されたファミリーIIリガンド(表4)もまた、Tthポリメラーゼと共にサーマス・ブロキアヌスおよびサーマス・フラバス由来のポリメラーゼを阻害したという事実に基づくと、それほど驚くべきことではない。4つのチミンを含むコンセンサスモチーフを含むリガンド、TZ54により観察されるが、7つの隣接するグアニンを含むリガンド、TZ13(配列番号89)により観察されない阻害は、TaqおよびTthポリメラーゼに対する結合親和性を反映する(図22AおよびB)。図22に示されるように、TZ13は、どちらのポリメラーゼにも高い親和性では結合しないが、TZ54は結合する。一方、7つの隣接するグアニンを含む、TZ1およびTZ13は、30℃以上で、これらの2つのポリメラーゼの有効な阻害を示さない(図23AおよびB)。リガンドTZ36(配列番号99)は、7つの隣接するグアノシンまたは隣接する4つのチミンのいずれも持たず、そしてTaqおよびTthポリメラーゼ両方を阻害する点でユニークである。したがって、7つの隣接するグアノシンを含むリガンドは、親和性選択に用いられたポリメラーゼである、TZ05ポリメラーゼに特異的である可能性がある。
【0073】
試験した3つのリガンド(TZ1、TZ13およびTZ36)のいずれも、ストッフェル断片を阻害しなかった(図23C)。この結果は、Taqポリメラーゼを有効に阻害するTZ36に関しては、驚くべきことである。これは、Taqポリメラーゼ上のTZ36の結合部位が、ストッフェル断片では欠失しているかまたは再構成されていることを示唆する。
【0074】
低コピー数標的の増幅
実施例5は、標準的PCR技術、「ホットスタート」PCR、および「ホットスタート」条件の非存在下で、PCRにより低コピー数標的の検出を促進する、本発明の方法により同定されるリガンドを用いたPCRを比較する、いくつかのPCR増幅を記載する。Respessら(1994)により、Interscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 94:110に記載されるように、HIV−2 LTR(末端反復配列)由来の203塩基対(bp)DNA断片を検出するよう設計されたプライマー−テンプレート系を利用した。
【0075】
図24は、リガンドTQ30(配列番号50)およびTQ21(配列番号59)を用いた結果を例示する。PCR増幅は、0、10および50コピーのHIV−2 LTR標的を用いて行った。通常PCR条件下で、正しい標的バンドの同定は、いくつかの非特異的バンドの存在により、危うくされた(図24A、レーン1−3)。「ホットスタート」条件下で行った増幅は、非特異的バンドを除去した(図24A、レーン4−6)。TQ21およびTQ30と同一の5’および3’固定配列を含む、非特異的78ヌクレオチドssDNA配列の存在下で行った増幅の結果は、「ホットスタート」条件を用いないPCRにより得られたものと同様であった。しかし、標準的条件下(「ホットスタート」なし)で行い、TQ21(図24B、レーン4−6)またはTQ30(図24B、レーン7−9)いずれかを添加したものは、標的特異的バンドの収率に影響を与えず、非特異的バンドを除去した。特に重要なのは、標的コピー数が低い場合、シグナル検出が非常に効果的であったという観察であった(図24B、レーン2をレーン5および8と比較されたい)。オリゴヌクレオチド阻害剤の効果は、低コピー数のHIV−2 LTRを検出する際、Taqポリメラーゼの代わりにTthポリメラーゼを用いた場合、同様であった(データ未提示)。PCRにおいてオリゴヌクレオチド阻害剤を用いて得られた標的特異的バンドの収率の亢進は、反応の感受性を増加させ、およそ3コピーしか存在しない標的の検出を促進した(図24C)。
【0076】
図24に記載される実験に用いたオリゴヌクレオチド阻害剤は、3’末端がキャップ化されておらず、非特異的に増幅を開始することを可能にし、そしてさらにPCRの結果を複雑にする可能性がある。しかし、偶発性の(adventitious)バンドは検出されず、本系では、オリゴヌクレオチド阻害剤の3’キャップ化は、非特異的バンドの生成を除去するのに必要でないことが示唆された。
【0077】
図25は、3’キャップ化一部切除リガンド:TQH6、TQH22およびTQH28を用いた結果を例示する。増幅は、1μgのヒト胎盤DNAと混合した10コピーのHIV−2 LTR標的を含みまたは含まず行った。図25に示されるすべての増幅は、ホットスタート条件の非存在下で行った。レーン1−4は、リガンドを含まないコントロール条件の結果を示す。これらの反応において、非特異的増幅のため、多数のDNAバンドが生成された。これらの非特異的増幅産物は、テンプレートDNAを含む反応および含まない反応に存在する。リガンドを反応混合物に添加した場合、結果は明らかに異なる(レーン5−10)。すべての3つのリガンドの場合で、標的を含まない反応では、増幅産物は1つも存在しなかった(レーン5、7および9)。標的を含むPCR反応では、反応混合物にリガンドTQH6を添加した場合(レーン6)、特異的単位増幅物(amplicon)のみが増幅され、そしてリガンドTQH22およびTQH28を添加した場合、おそらく標的へのプライマーの非特異的アニーリングのため、さらなる低分子量バンドが存在した(レーン8および10)。これらの結果は、これらの一部切除リガンドが、in situホットスタート条件を生成することにより、非特異的増幅を調節するのに有効であることを示す。
【0078】
TZ05ポリメラーゼに対するリガンドが、低コピー数標的配列を増幅するPCRの結果を改善する能力を試験するため、ヒトゲノムDNAからK−ras遺伝子を増幅するよう設計されたPCR系を用いた(Nilssonら(1997)BioTechniques 22:744−751)。TZ1(TZ1−Tr(配列番号107))、TZ13(TZ13−Tr(配列番号108))およびTZ36(配列番号109)の51ヌクレオチド一部切除リガンド(図33)を試験した。これらのリガンドの3’OH基を3’−3’dT残基でキャップ化し、リガンドのポリメラーゼ伸長を妨げた。さらに、これらのリガンドは、TZ05ポリメラーゼによるエキソヌクレアーゼ切断を遮断するため、5’末端に8つのホスホロチオエート結合を含んだ。増幅反応において、テンプレートヒトゲノムDNAの添加前に、ポリメラーゼおよびプライマーを含む、完全反応緩衝液中にリガンドが存在した。PCR後、3%アガロースゲル上で、増幅産物を解析した。濃度範囲にわたる、一部切除TZ1リガンドの存在下で行ったPCRの結果を図26に示す。リガンドの非存在下または低濃度のリガンドの存在下では、K−ras遺伝子は増幅されなかった(レーン2−6)。リガンド濃度が増加するにつれ、バックグラウンドの減少を伴い、特異的単位増幅物の生成が見られる(レーン7−8)。リガンド濃度のさらなる増加に際し、PCRは完全に阻害された(レーン9)。結果は、20−40 nMの間である、リガンドの最適濃度が、望ましい増幅に必要であることを示す。他の2つのリガンドを用いた結果は、図26に示される結果に非常に似ていた。
【0079】
TZ1およびTZ13の30ヌクレオチド一部切除体を用い、同様の結果が得られた(図27AおよびB)。これらの一部切除体は、5’末端にホスホロチオエート結合を持たないが、3’末端でキャップ化された。30ヌクレオチド一部切除体では、望ましい結果を達成するために必要な濃度は、51ヌクレオチド一部切除体で必要とされたもののおよそ2倍であった。30ヌクレオチド一部切除体よりさらに高い濃度(660 nM)のTZ13の26ヌクレオチド一部切除体で同様の結果が観察された。標的特異的単位複製物を産生するのに必要とされる一部切除リガンドの有効濃度は、リガンドの長さが減少するにつれ、減少する。この結果は、そのIT50値と相関し、IT50値もまた、リガンドの長さの減少と共に減少する。
【0080】
図26および27に見られる増幅は、TZ05ポリメラーゼを用いて行った。TZ05ポリメラーゼを認識するよう選択されたいくつかのリガンドはまた、Tthポリメラーゼも阻害した。Tthポリメラーゼを用いて行う、同一のPCR系で、リガンドTZ36(51ヌクレオチド一部切除体)を試験した。図28に示されるように、該リガンドはまた、Tthポリメラーゼを用いて特異的単位増幅物を生成するのにも、非常に有効である。
【0081】
阻害活性を持つ一部切除リガンドの同定
典型的には、全長配列中のすべてのヌクレオチドが、その機能に必要であるのではない。したがって、全配列の機能を保持する一部切除DNA配列の同定が望ましい。さらに、上に論じられるように、全長配列は、ポリメラーゼに関連する構造特異的エンドヌクレアーゼ活性による、部位特異的切断を経る。これは、伸長可能3’末端の生成または切断の際のリガンド機能のありうる不活性化のどちらか、あるいは両方による、PCR適用における潜在的な問題を引き起こす。結果として、エキソヌクレアーゼ活性の基質でないリガンドが望ましい。切断部位は、配列の5’末端近傍であるため、一部切除はこの部位を除去することが可能である。一部切除はまた、リガンドを製造するのに経済的であるため、望ましい。
【0082】
TQ30およびTQ21の一部切除リガンドの同定
一部切除実験のため、ファミリーI由来のリガンドTQ30(配列番号50)およびファミリーII由来のTQ21(配列番号59)(表10を参照されたい)を選択した。実施例2に記載されるように、両リガンドの全長配列から生成した末端標識入れ子(nested)断片に対する親和性選択後、配列決定ゲル解析を行ったが、同定可能な境界は得られなかった。しがたって、2つのリガンドを欠失解析に供した。ヘアピン伸長アッセイにおいて、ポリメラーゼを阻害する能力に関し、連続欠失型を試験し、機能する一部切除体を同定した。
【0083】
リガンドTQ30(配列番号50)の一部切除体
予測されるステム−ループ構造を持つ保存配列モチーフを含むTQ30の可変30ヌクレオチド領域(Trnc.A−30(配列番号74);表11)は、全長配列と同じ度合いで、25℃でTaqポリメラーゼを阻害する(データ未提示)。しかし、より高い温度では、阻害効率は、全長配列より低い。例えば30℃では、Trnc.A−30(250 nM)によるTaqポリメラーゼの阻害はおよそ82%であり、一方、全長配列は、この温度および濃度で、酵素を完全に阻害した。Trnc.A−30の熱感受性の増加は、A−T塩基対で中断されたらせん、低温で融解する傾向があるらせんの存在による可能性がある。
【0084】
したがって、高G−C塩基対を持つ非中断ステムを含む、Trnc.A−30の3つのステム−ループ変異体を設計した。これらの変異体では、ファミリーIに同定される保存配列モチーフは改変されなかった(表11)が、ステムは多様な長さを有した。250 nM阻害剤濃度で、Trnc.1−30(配列番号67)およびTrnc.2−30(配列番号68)は、Taqポリメラーゼ活性をおよそ95%阻害し、一方、Trnc.3−30(配列番号69)は、ポリメラーゼ活性の約60%しか阻害しなかった(以下を参照されたい)。これらの変異体のうち最短ステム(7塩基対)を含むTrnc.3−30は、Taqポリメラーゼの劣った阻害剤であり、生産的な相互作用には、ステム内でさらに接触することが必要であることが示された。Trnc.3−30で観察された阻害の減少が、ポリメラーゼに対する結合親和性の減少のためであるか決定するため、Taqポリメラーゼに対する結合に関し、3つの変異体すべての親和性を計算した。Kd値は、2−3 nMの間であり、3つの変異体はすべて、同様の結合親和性を有することが示された。したがって、Trnc.3−30により引き起こされた阻害の欠失は、結合の欠失のためではなく、おそらく、活性部位をブロッキングすることができないためであった。Taqポリメラーゼに対する結合に関する3つの変異体の親和性は、全長分子より約75倍低く(全長配列のKdは、40 pMである)、そしてTrnc.A−30より約3−5倍低い。3つの構築物のIC50値は、ステムの長さの減少と共に減少した:Trnc.1−30、Trnc.2−30およびTrnc.3−30で、それぞれ25、50および186 nMであった(図29)。この結果は、より長いステムを持つリガンドがより有効な阻害剤であるという見解と一致する。全長配列のIC50値は22 nMである。30℃で1時間、ヘアピン伸長アッセイを行った。Tthポリメラーゼが全長リガンドに完全に阻害されるという事実にもかかわらず、Trnc.1−30もTrnc.2−30もどちらもTthポリメラーゼを阻害しなかった。
【0085】
ストッフェル断片(61 kD)は、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を欠くTaqポリメラーゼの一部切除型であり、そしてKlen Taq DNAポリメラーゼ(67 kD)と類似である。ストッフェル断片のポリメラーゼ活性は、全長と共にTQ30の3つの一部切除型で完全に阻害された。3つの一部切除体のIC50値は、Trnc.1−30=2.7 nM、Trnc.2−30=5.9 nMおよびTrnc.3−30=10.3 nMである(図30)。総合すると、TQ30の3つの一部切除型は、Taqポリメラーゼよりストッフェル断片を阻害するのにより有効である(図29を図30と比較されたい)。ストッフェル断片の阻害に関するこれらの一部切除体のIC50値は、Taqポリメラーゼに関するものより一桁優れていた。Trnc.2−30によるストッフェル断片の阻害に関するIT50値は、38℃であった(データ未提示)。驚くべきことに、TaqおよびTthポリメラーゼを両方阻害するTQ21配列は、ストッフェル断片を阻害しない。これは、ストッフェル断片上のTQ21結合部位が、部分的にまたは完全に欠失しているか、あるいはタンパク質の一部切除に際し、再構成されているかを示唆する。
【0086】
リガンドTQ21(配列番号59)の一部切除体
TQ30のようなファミリーIリガンドと異なり、ファミリーIIリガンド、TQ21の30ヌクレオチド可変領域は、TaqまたはTthポリメラーゼをどちらも阻害せず(データ未提示)、固定領域由来のさらなるヌクレオチドが阻害に必要であることが示される。全長TQ21配列の欠失解析により、TaqおよびTthポリメラーゼを両方阻害する能力を保持する、51量体配列(Trnc.21(配列番号70)(表10))が同定された。30ヌクレオチドランダム領域の全てに加え、Trnc.21配列は、5’および3’固定領域由来の、それぞれ、9および12ヌクレオチドを含んだ(表10)。Taqポリメラーゼに減少した親和性を示した、TQ30一部切除体と対照的に、Trnc.21は、増加した親和性を示し;Taqポリメラーゼへの結合に関するTrnc.21のKdは、9 pMであり(図31A)、全長配列より約4倍高い親和性である。Taqポリメラーゼの阻害に関するTrnc.21のIC50値は、21 nMであり(図31B)、全長配列の値より、約3倍低い。TaqポリメラーゼおよびTthポリメラーゼに関する計算IT50値は、それぞれ、34℃および35.6℃である(図31C)。250 mM Trnc.21を用い、35および50℃の温度の間で、1時間、ヘアピン伸長アッセイを行った。このように、親和性およびIC50およびIT50の値に基づくと、TQ21の一部切除型は、全長配列より優れた阻害剤である。全長配列同様、Trnc.21は、ストッフェル断片の活性を阻害しなかった。
【0087】
リガンド6(TQH6(配列番号78))、22(TQH22(配列番号81))および28(TQH28(配列番号87))の一部切除体
全長配列の体系的欠失解析により、機能する一部切除体を同定した。一部切除体は、可変領域に結合する、それぞれ5’および3’固定領域由来の9および12ヌクレオチドを含み、結果として50または51ヌクレオチド配列であった。したがって、各一部切除体では、可変領域に、5’−TGGCGGAGC−および−TCTTGTGTATGA−3’が隣接する。一部切除リガンドは、Taqポリメラーゼとインキュベーションした際、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性により切断されず(図32)、一部切除に際し、切断部位が除去されたか、またはリガンドがエキソヌクレアーゼ活性に認識されない構造に作りかえられたかいずれかが示唆される。
【0088】
一部切除リガンド、TQH6−TrおよびTQH28−TrのTaqポリメラーゼに対する親和性を、TrisおよびTricine緩衝液中で測定した。55℃で、2つの緩衝液における全長および一部切除リガンドのKd値は、表9に示される。リガンド6(TQH6)の親和性は、一部切除に際し、どちらの緩衝液でも3−4倍減少し、そしてリガンド28(TQH28)の親和性は、Tris緩衝液中で3−4倍減少した。総合すると、一部切除に際し、親和性は中程度に減少し、これは欠失ヌクレオチドが、おそらく、非特異的相互作用を通じ、全長配列における結合エネルギーのある程度のレベルに寄与することを示す。
【0089】
表12に示されるように、一部切除リガンドTQH6−Tr、TQH22−TrおよびTQH28−TrのIT50値は、一部切除に際し、5−9℃減少した。一部切除および全長リガンドに関し、45℃で、Tricine緩衝液中で測定したTC50値を比較すると、一部切除に際し、TC50値(投入ヘアピン基質の50%が、既定の温度で完全伸長産物に変換される濃度)が2−3倍増加したことが明らかになる(表12)。
【0090】
総合すると、本解析の結果は、一部切除リガンドが、Taqポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性により切断されないことを示す。さらに、これらはTaqポリメラーゼに高親和性結合を示し、そしてより高い温度でポリメラーゼ活性を阻害する。一部切除リガンドのこれらの特性は、非特異的増幅を調節するため、PCR適用に望ましい。
【0091】
TZ05ポリメラーゼに対する核酸リガンドの一部切除体
全長配列の体系的欠失解析により、TZ05ポリメラーゼのポリメラーゼ活性を阻害する一部切除リガンドを同定した。これらのリガンドは、2つの固定領域の大部分を欠き、そして51ヌクレオチド長である(図33)。一部切除体は、ポリメラーゼ活性の有効な阻害のため、5’および3’固定領域由来の、それぞれ、9および12ヌクレオチドを必要とする。
【0092】
表13は、TZ1、TZ13およびTZ36に対する一部切除リガンドのKd値を、各全長リガンドのものに比較する。これらのリガンドの親和性が、51ヌクレオチドまでの一部切除に際し、劇的に変化しなかったことがわかる。55℃で、TZ05緩衝液中で、表13に示される結合反応を行った。この結果は、2つの固定領域中の欠失ヌクレオチドがポリメラーゼに対するリガンド結合に必須でないことを示す。51ヌクレオチド一部切除体に加え、全長リガンドの可変領域のみを含む30ヌクレオチド一部切除体もまた、ポリメラーゼを阻害する能力に関し、試験した(図33)。
【0093】
リガンドTZ1、TZ13およびTZ36の51および30ヌクレオチド一部切除体のIT50値を表14に示す。IT50値を計算するため、実施例2に記載されるように、ヘアピン伸長アッセイを行った。表14でわかるように、3つの51ヌクレオチド一部切除体はすべて、40℃以上でポリメラーゼ活性を阻害した。TZ13およびTZ36のIT50値は、一部切除に際し、7.5℃および4℃減少し、一方、TZ1のIT50値は、一部切除に際し、変化しなかった。総合すると、51ヌクレオチドのIT50値および親和性は、これらをPCR適用に関する魅力的な候補とする。
【0094】
リガンドTZ13の場合、30ヌクレオチドまでのさらなる一部切除は、親和性をおよそ5倍減少させた(Kd=145 pM)。本一部切除体の親和性は、低いIT50値(42℃)と一致する。TZ13の30ヌクレオチド一部切除体の3’末端からさらに4ヌクレオチド欠失させると、IT50値は17℃減少した(図34AおよびB)。興味深いことに、TZ1およびTZ13の30ヌクレオチド一部切除体は、40℃以上のIT50値を示し、一方、TZ36の30ヌクレオチド一部切除体は示さなかった。したがって、IT50値が>40℃であるTZ1およびTZ13の30ヌクレオチド一部切除体もまた、PCR適用に有用である可能性がある。
【0095】
これらのリガンドの51ヌクレオチド一部切除体は、親和性(Kd)およびポリメラーゼ阻害(IT50)に関し、望ましい値を保持する。図35に示されるように、51ヌクレオチド一部切除体は、ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性により切断された。しかし、30ヌクレオチド一部切除体とTZ05ポリメラーゼのインキュベーションの結果、切断は起こらず、51ヌクレオチド一部切除体上の切断部位は、5’固定領域の9ヌクレオチドの範囲にある可能性があることが示唆された。30ヌクレオチド一部切除体は、酵素により切断されなかったが、そのKd値(145 pM)およびIT50値(42℃)は、50℃に近い温度でのポリメラーゼ活性化が望ましい、特定のPCR適用には魅力的でない可能性がある。51ヌクレオチド一部切除体の切断を遮断する試みの中で、ホスホロチオエート結合が導入された。5’末端の最初の8ヌクレオチドにホスホロチオエート結合を含む一部切除体(図33)は、エキソヌクレアーゼ切断に耐性であることが見出された。ホスホロチオエート結合を持つ一部切除体のIT50値は、ホスホロチオエートを欠くものに匹敵し、これらの一部切除体への8つのホスホロチオエート結合の導入は、TZ05ポリメラーゼを阻害する能力に影響を与えないことが示唆された。
【0096】
一部切除体の二量体型
リガンドの多量体化は、有効な局所濃度を増加させ、標的とのより長い在留時間(アビディティー)を生じる。Taqポリメラーゼに関する中程度の親和性に基づき、ホモ二量体の合成のため、Trnc.2−30を選択した(表10)。Trnc.2−30(配列番号68)のホモ二量体(D.30−D.30)(配列番号71)は、標準法を用い、固相化学合成において、支持体として対称的二量体CPGを用い、テールからテールへの方向(3’末端で結合)に合成した。
【0097】
Tapポリメラーゼに対する結合に関するD.30−D.30二量体の親和性は40 pM(図36A)であり、単量体型より約75倍高かった。ホモ二量体のIC50値は14 nMであり、単量体型より約3.5倍低かった(図36B)。したがって、一部切除TQ30の二量体化は、Taqポリメラーゼのより有効な阻害剤を産生した。
【0098】
2つの単量体一部切除体、Trnc.2−30およびTrnc−21(表10)が、3つのチミンを含むリンカーにより連結された、2つのヘテロ二量体配列もまた、調製した。D.21−D.30(配列番号72)において、Trnc−21配列を分子の5’末端に置く。全長TQ30と異なり、一部切除型は、Tthポリメラーゼを阻害しなかった。一方、Trnc−2は、TaqおよびTthポリメラーゼ両方を阻害したが、ストッフェル断片を阻害しなかった。単量体単位が独立に機能することが可能であると仮定すると、単一の配列につなぎとめられた後、2つの一部切除リガンドの組合せは、3つのポリメラーゼすべてを阻害することが可能な単一の配列を提供するであろう。最低の阻害剤濃度(62.5 nM)で、Taqポリメラーゼに対する2つのヘテロ二量体の阻害効果は、2つの単量体より高い。Tthポリメラーゼに対するヘテロ二量体の効果は、Trnc−21単量体のものと同等である。ストッフェル断片は、2つのヘテロ二量体の存在下で、ヘアピンテンプレートを完全に伸長することは不可能であった。対照的に、単量体Trnc.2−30配列の存在下で、部分的伸長産物は、より少なかった。ヘアピンテンプレートが完全には伸長しないことにより、ヘテロ二量体が、ストッフェル断片の活性を抑制することが示唆される。
【0099】
ヘテロ二量体D.21−D.30は、TaqおよびTthポリメラーゼの阻害に関し、およそ30 nMのIC50値を有する(図37A)。TaqおよびTthポリメラーゼの阻害に関するIC50値は、それぞれ、41および34.5℃である(図37B)。D.21−D.30は、15.5 nMのIC50値および38℃のIT50値で、ストッフェル断片を阻害する(データ未提示)。Taqポリメラーゼに対する結合に関する、リガンドD.21−D.30ヘテロ二量体のKdは、Trnc−21のもの(10 pM)と同様であり、該タンパク質が、高親和性結合で配列モチーフに優先的に結合することを示唆する。
【0100】
二量体中の2つの単量体単位の配置は、3つのポリメラーゼのいずれに対する阻害にも、全体的な影響を持たないようである。2つの異なる単量体単位は、二量体に組み合わされた際、不都合な影響を示さなかった。期待されるように、ヘテロ二量体は、かなり有効に3つのポリメラーゼすべてを阻害する能力を示し、概して、ヘテロ二量体における単量体単位の機能は、互いに排他的であることを示す。
【0101】
核酸リガンドTZ13(配列番号89)の30ヌクレオチド一部切除体は、3つの異なる型の二量体として合成した(図38)。TZ13−タンデム(配列番号116)は、30ヌクレオチド一部切除体の2つの単位を、3つのチミン単位により結合した、タンデム様式に置くことにより、得た。TZ13−対称的二量体−1(配列番号117)は、グリセロール部分により、2つのリガンドの3’末端を結合することにより、合成した。第三の二量体、TZ13−対称的二量体−2(配列番号118)では、3’末端で、グリセロール部分を通じて2つの単量体単位を結合したが、3’末端およびグリセロール部分の間に、6つのエチレングリコール単位からなるリンカーを置いた。図39Aおよび表15に示されるように、3つの二量体はすべて、TZ05ポリメラーゼに対する結合に関し、Kd値が145 pMであった単量体リガンドより、高い親和性を示す(Kd値は18−80 pMの間)。ポリメラーゼと二量体の相互作用には、アビディティーが役割を果たし、そしてそれにより親和性を増加させると期待される。同一単量体の3つの二量体構築物は、異なる親和性を示す。リンカーを含まない対称的二量体−1は、3つの二量体で最高の親和性を示し、一方、エチレングリコールリンカーを含む対称的二量体−2は、最低の親和性を有する。3つの二量体の観察される親和性は、IT50値により測定されるような、その阻害強度とよく相関する(図39Bおよび表15)。
【0102】
以下の実施例は、本発明を説明し、そして例示するため提供され、そして本発明を限定することを意図しない。
【実施例】
【0103】
実施例1.実験法
A.材料および方法
100 mM KCl、20 mM Tris−HCl(pH 8.0)、0.1 mM EDTA、50%グリセロール(v/v)および0.2% Tween 20からなる緩衝液中に懸濁された組換えTaqポリメラーゼ(rTaq;Mr 94 kDa);50 mM Bicine−KOH(pH 8.3)、90 mM KClおよび50%グリセロール(v/v)からなる緩衝液に懸濁された組換えTthポリメラーゼ(rTth;Mr 94 kDa);およびサーマス種Z05(TZ05 pol)はRoche Molecular Systems, Inc.(カリフォルニア州アラメダ)より購入した。Taq、TthおよびUlTma DNAポリメラーゼは、Perkin Elmerから得た。Ultmaポリメラーゼは、Tmaポリメラーゼの欠失型であり、野生型5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を欠く。TliおよびTfl DNAポリメラーゼは、Promegaより購入した。Tbrポリメラーゼ(サーマラーゼ(Thermalase)Tbr)は、Amresco Inc.より得た。対称的分岐3’−3’結合CPGおよびC−6チオール修飾剤ホスホロアミダイトは、Clontech(カリフォルニア州パロアルト)より得た。ULTRALINKTMヨードアセチルビーズは、Pierce Chemicals(イリノイ州ロックフォード)より購入した。DNAの放射標識に用いた酵素は、Boehringer Mannheim(インディアナ州インディアナポリス)より得た。すべての他の試薬および化学薬品は、解析等級であり、そして標準的な商業的供給源より購入した。
【0104】
オリゴヌクレオチドの調製 オリゴヌクレオチドは、標準的固相シアノエチルホスホロアミダイト化学反応により合成し、そして均一な大きさにする、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動または逆相高圧液体クロマトグラフィーにより、精製した。対称的ホモ二量体は、対称的分岐3’−3’結合CPGを用いて合成した。DNA濃度は、33μg/ml=1 A260単位に基づいた。
【0105】
アフィニティービーズの調製 5’末端にチオール基を含む、リガンドTQ21(配列番号59)またはTQ30(配列番号50)(表3)いずれか25ナノモルを、製造者の指示にしたがい、AgNO3およびジチオスレイトール(DTT)で脱保護した。過剰なDTTは、等体積の酢酸エチルを用いた、4回の連続抽出により、除去した。その後、50 mM Tris−HCl(pH 8.3)および5 mM EDTAからなる緩衝液で2回洗浄しておいた500μlのULTRALINKTMヨードアセチルビーズと、脱保護リガンドを混合した。反応混合物を、回転プラットホーム上で、室温で2時間、インキュベーションした。ヨードアセチルビーズの未反応部位は、同緩衝液中の0.5 M システイン溶液50μlと混合物を15分間反応させることにより、キャップ化した。コントロールビーズは、0.5 M システイン500μlとヨードアセチルビーズ500μlを反応させることにより、調製した。反応後、75μM ヘパリン、12.5 mM MgCl2、50 mM KClおよび10 mM Tris−HCl(pH 8.3)からなるPCR緩衝液500μlで、ビーズを5回洗浄した。
【0106】
B.SELEX
SELEX法は、本明細書に完全に援用される、米国特許第5,270,163号に、詳細に記載されている。表1に示されるテンプレートおよびプライマーを用い、室温および上昇した温度で、SELEX実験を行った。
【0107】
室温 Taqポリメラーゼに対する選択は、10 mM Tris−HCl(pH 8.3:22℃)、50 mM KClおよび2.5 mM MgCl2からなる緩衝液(Taq結合緩衝液)中で、室温で行った。Tthポリメラーゼに対する選択は、50 mM Bicine−KOH(pH 8.3:25℃)、90 mM KClおよび3.5 mM Mn(OAc)2からなる緩衝液(Tth結合緩衝液)中で行った。
【0108】
各SELEX実験は、固定構造の5’および3’領域が隣接する、30ヌクレオチドランダム領域からなる、合成のゲル精製ランダム配列プール一本鎖DNA(ssDNA)(表1)5 nmolで開始した。典型的な選択周期では、適切な結合緩衝液に懸濁したssDNAを90℃で3分間加熱し、氷上で冷却し、そしてその後、室温にした。室温に平衡化すると、競合剤としての2 nmolのtRNAおよび0.01%ヒト血清アルブミン(hSA)の存在下で、適切な標的ポリメラーゼとDNAを、15分間インキュベーションした。あらかじめ湿らせたニトロセルロースフィルター(0.45μM、Millipore)を通じ、吸引下で、ニトロセルロースろ過することにより、未結合DNAからポリメラーゼ−DNA複合体を分離した。フィルターを直ちに、結合緩衝液20 ml、結合緩衝液中の0.5 M 尿素、および水中の0.5 M 尿素で洗浄した。フィルターに保持されたDNAを溶出し、そしてキャリアーtRNA(5μg)の存在下で、エタノール沈殿により、単離した。
【0109】
単離DNAを、プライマーセットI(表1)を用いたPCRにより、増幅した。プライマー鎖の1つは、5’末端に3つの連続するビオチンを含んだ。生じた二重鎖DNAの非ビオチン化鎖を、変性条件下でゲル電気泳動により単離し(Pagratis(1996)Nucleic Acid Res. 24:3645−3646)、そして次の選択周期に用いた。続く周期で、標的ポリメラーゼとのインキュベーション前に、DNAプールをニトロセルロースフィルターに通過させ(逆選択)、ニトロセルロースフィルターに結合するDNA配列を除去した。標的ポリメラーゼのピコモル数は、SELEXの経過中、次第に減少させ、高親和性結合の配列に関する選択圧を増加させた。各選択中のDNA量は、タンパク質量の少なくとも5倍に維持され、高親和性結合DNA配列に関する競合を確実にした。
【0110】
SELEXの進行は、濃縮プールのニトロセルロースフィルター結合解析によりモニターした。最高の親和性の結合を示した濃縮プールは、プライマーセットIIを用いてPCR増幅し、生じた二重鎖DNAの末端にBamHIおよびEcoRI制限部位を取り込んだ。このDNAをゲル精製し、そしてBamHIおよびEcoRIで消化し、そして標準的技術を用い、同一酵素であらかじめ消化されたプラスミドpUC18ベクターにクローニングした(Sambrookら(1989)Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版,中, 第3部, pC.1. Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)。クローンを単離し、そして標準的ジデオキシ配列決定技術により、配列決定した(U.S. Biochemical、オハイオ州クリーブランドのSequenaseキット)。
【0111】
高温SELEX 50 mM Tricine−KOH(pH 8.0)、50 mM KOAc(pH 7.5)、2.5 mM Mg(OAc)2および10%グリセロールからなる結合緩衝液(Tricine緩衝液)中で、55℃で、Taqポリメラーゼに対する高温での親和性選択を行った。本選択の出発ライブラリーは、10 mM Tris−HCl(pH 8.3)、50 mM KClおよび2.5 mM MgCl2からなる結合緩衝液中で、室温で行った親和性選択由来の12回目の周期のssDNAであった(表3(DangおよびJayasena(1996)J. Mol. Biol. 264:268))。大文字は、5’−TTCTCGGTTGGTTCTCTGGCGGAGC−および−TCTTGTGTATGATTCGCTTTTCCC−3’固定配列が隣接する、30ヌクレオチド(nt)ランダム領域を示す。ファミリーI配列の下線領域は、塩基対形成に関し相補的である。後者のライブラリーは、配列5’−TTCTCGGTTGGTCTCTGGCGGAGC−[N]30−TCTTGTGTATGATTCGCTTTTCCC−3’(配列番号1;表1)を用い、合成ランダム配列ssDNAライブラリーから濃縮した。
【0112】
Tricine結合緩衝液に懸濁した12回目の周期のssDNAライブラリー5 nmolを用い、高温親和性選択を開始した。本懸濁物を95℃で3分間加熱し、氷上で5分間冷却し、そして55℃にした。2 nmolのtRNA(競合剤として使用)、0.01%(w/v;最終濃度)のhSA(ヒト血清アルブミン)およびTaqポリメラーゼ(125 nM)をDNA懸濁物に添加し、そして55℃で15分間インキュベーションした。あらかじめ湿らせたニトロセルロースフィルター(0.45μM;Millipore)を通じ、吸引下で、迅速にろ過することにより、ポリメラーゼ結合DNAを回収した。フィルターを直ちに、20 ml体積の結合緩衝液、続いて同体積の結合緩衝液中の0.5 M 尿素で洗浄した。どちらの洗浄緩衝液も、使用前に、あらかじめ60℃に温めた。フィルターに保持されたDNAを溶出し、そしてキャリアーとして用いる5μgのtRNAの存在下で、エタノール沈殿により、単離した。単離DNAは、上述のようにプライマーセットI(表1)を用いたPCRにより増幅した。
【0113】
Taq polに対する高親和性結合DNA配列の濃縮を確実にするため、選択経過中、選択圧を次第に増加させた。これは、Taqポリメラーゼおよび各周期で用いられるDNA両方の量を次第に減少させると共に、フィルター保持DNAのストリンジェントな洗浄により、達成した。濃縮ライブラリーの親和性は、ニトロセルロースフィルター結合によりモニターした(以下に記載される)。8周期の選択後、有意な親和性の改善は見られなかった。8回目の周期のライブラリーを、上述のようにプライマーセットII(表1)を用いてPCR増幅した。ジデオキシ配列決定技術(USBのSequenaseキット)により、形質転換体のDNA挿入物を配列決定することにより、濃縮ライブラリーの複雑さを解析した。
【0114】
50 mM Tricine−KOH、125 mM KOAc、2.5 mM Mn(OAc)2および8%グリセロールからなる結合緩衝液(TZ05 pol緩衝液)中で、55℃で、TZ05ポリメラーゼに対する親和性選択を行った。結合緩衝液は、1 M Tricine−KOH(pH 8.0)、3 M KOAc(pH 7.5)、25 mM Mn(OAc)2および80%グリセロールのストック溶液を混合することにより、調製した。同一条件下で、異なるssDNAライブラリーから出発し、2つの親和性選択を行った。1つの選択は、5 nmolの合成ランダム配列ssDNAライブラリー;5’−TTCTCGGTTGGTCTCTGGCGGAGC−[N]30−TCTTGTGTATGATTCGCTTTTCCC−3’(配列番号1;表1)で開始した。他の選択の出発ライブラリーは、室温で、Taqポリメラーゼに対して行った親和性選択由来の12回目の周期のssDNAライブラリーであった(表3)。
【0115】
結合緩衝液に懸濁したssDNAライブラリーを95℃で3分間加熱し、氷上で5分間冷却し、そしてその後、55℃にした。2 nmolのtRNA(競合剤として使用)、0.01%(w/v;最終濃度)のhSA(ヒト血清アルブミン)およびTZ05ポリメラーゼ(125 nM)をDNA懸濁物に添加し、そして55℃で15分間インキュベーションした。あらかじめ湿らせたニトロセルロースフィルター(0.45μM;Millipore)を通じ、吸引下で、迅速にろ過することにより、ポリメラーゼ結合DNAを回収した。フィルターを直ちに、20 mlの結合緩衝液、および結合緩衝液中の0.5 M 尿素で洗浄した。どちらの洗浄緩衝液も、使用前に、あらかじめ60℃に温めた。フィルターに保持されたDNAを溶出し、そしてキャリアーとして用いた5μgのtRNAの存在下で、エタノール沈殿により、単離した。
【0116】
単離DNAは、上述のようにプライマーセットI(表1)を用いたPCRにより増幅した。完全ランダムライブラリーで開始した選択には、標準的PCR増幅を用い、一方、Taq polに対するあらかじめ選択されたライブラリーで開始した選択には、突然変異性PCR条件を用いた。突然変異性PCRは、生じたPCR産物のヌクレオチド多様性を増加させるよう意図され、以下のように行った。回収DNAは、まず、50 mM KCl、10 mM Tris−HCl(pH 8.3)、1.1 mM MnCl2、7 mM MgCl2、1 mM dCTP、1 mM dTTP、0.2 mM dGTP、0.2 mM ATPおよび1 UのTaqポリメラーゼを含む100μl体積中で、94℃50秒、45℃45秒および72℃45秒を5周期の反復パラメーターで、PCRにより増幅した。上述のPCRから13μlを、上述のものと同じ条件下で、5周期行う、新規の100μl PCRのテンプレートとして用いた。後者の工程をさらに3回繰り返した。4回目の突然変異性PCR由来の13μlを、500μl PCRのテンプレートとして用い、次の選択に用いるssDNAプールを生成した。変性ポリアクリルアミドゲル上で分離された、生じた二重鎖PCR産物の非ビオチン化鎖を単離し、そして次の周期の選択に用いた。
【0117】
TZ05 polに対する高親和性結合DNA配列の濃縮を確実にするため、選択経過中、選択圧を次第に増加させた。これは、TZ05ポリメラーゼおよび各周期で用いられるDNA両方の量を次第に減少させると共に、フィルターのストリンジェントな洗浄により、達成した。親和性濃縮は、濃縮ライブラリーの平衡解離定数を測定することにより、モニターした。
【0118】
その後、濃縮ライブラリーを、上述のようにプライマーセットII(表1)を用いてPCR増幅した。ジデオキシ配列決定技術(USBのSequenaseキット)により、形質転換体のDNA挿入物を配列決定することにより、濃縮ライブラリーの複雑さを解析した。
【0119】
C.ニトロセルロースフィルター結合アッセイ
室温 オリゴヌクレオチドライブラリーおよび個々のリガンドの親和性を評価するため、ニトロセルロースフィルター結合技術を用いた。簡潔には、5’末端で標識したゲル精製32P ssDNAプールを結合緩衝液に懸濁し、80℃に加熱し、氷上で冷却し、そしてその後、室温にした。その後、DNA(5−10 pM)を、0.1μgのtRNAおよび0.01% hSAを含む、適切な結合緩衝液50μl中で、多様な量の標的ポリメラーゼと、室温で15分間インキュベーションした。DNA濃度は100 pMより低く維持し、過剰なタンパク質濃度の存在下で平衡を確実にした。15分後、結合反応混合物を、あらかじめ湿らせたニトロセルロース/セルロースアセテート混合マトリックスフィルター(0.45μm孔サイズ、Millopore Corporation、マサチューセッツ州ベッドフォード)に通過させ、そしてフィルターを直ちに5 mlの結合緩衝液で洗浄した。フィルターに結合したDNAの量は、液体シンチレーション計測により、フィルターの放射能を測定することにより、定量化した。タンパク質の非存在下でフィルターに結合したDNAの量を、バックグラウンド訂正に用いた。各フィルターに保持された投入DNAのパーセントを、対応するポリメラーゼ濃度の対数に対しプロットした(図1および2)。非線形最小二乗法を用い、それぞれ、TaqおよびTthポリメラーゼに対するDNAリガンドの解離定数(Kd)を得た(Schneiderら(1995)Biochemistry 34:9599; Jellinekら(1993)Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A. 90:11227−11231)。
【0120】
非選択ランダム配列プールは、およそ70 nMの概算Kdで、Tthポリメラーゼに結合し(図1B(黒丸))、一方、Taqポリメラーゼに対する本プールの結合のKdはおよそ50−100 nMである(図1A(白丸))。12周期の選択後、Taqポリメラーゼに対する結合のKdは、3.5 nMであった(図1A(白丸))。選択周期をさらに多くしても、親和性のさらなる改善は生じなかった。このように、Taqポリメラーゼに対する濃縮プールの結果的な親和性は、非選択ランダムプールに比較し、有意に改善された。Tthポリメラーゼで、同様の結果が得られ、10回目の周期からのプールは、5 nMのKdを示した(図1B(白丸))。
【0121】
Taqポリメラーゼに関して選択されたssDNAプールは、0.2 nMのKdで、Tthポリメラーゼに非常に緊密な結合を示した(図2A(白丸))。2つのポリメラーゼの間のアミノ酸配列同一性はおよそ87%である(Asakuraら(1993)J. Ferment. Bioeng. 76:265−269)ため、この結果は驚くべきことではない。Tthポリメラーゼに関し選択されたプールは異なる方式でTaqポリメラーゼに結合し、結合は50%レベル付近で飽和し(図2B(白丸))、プール中の約半分の配列は、Taqポリメラーゼと相互作用しないことが示唆された。50%飽和に基づき、概算Kdは0.3 nMである。
【0122】
Tthポリメラーゼを用いて行った10周期の選択から得たssDNA配列を、表2に示す。Tthポリメラーゼ選択由来の29の個々のクローンを配列決定した(可変30nt領域のみを表2に示す)。配列類似性に基づき、配列を2つのファミリーに分類した。Taqポリメラーゼを用いて行った12周期の選択から得たssDNA配列を、表3に示す。33のユニーク配列を単離した。いくつかの配列中の小文字は、5’固定配列を示し、そして大文字は、30ヌクレオチドランダム領域を示す。配列類似性に基づき、配列を3つのファミリーに分類した。
【0123】
高温 TaqおよびTZ05ポリメラーゼに対するアプタマーの結合親和性を、ニトロセルロースフィルター結合技術により、55℃で測定した。簡潔には、末端標識アプタマーを、それぞれ、多様な濃度のTaqまたはTZ05ポリメラーゼと、50μlの結合緩衝液中で、55℃で15分間、インキュベーションした。アプタマー−ポリメラーゼ混合物を、あらかじめ55℃に温めた結合緩衝液を用い、あらかじめ湿らせたニトロセルロースフィルター(0.45μm)に通過させた。55℃に加熱した同緩衝液5 mlを用い、フィルターを直ちに洗浄した。各ポリメラーゼには2つの緩衝液を用いた:50 mM KCl、2.5 mM MgCl2、10 mM Tris−HCl(22℃でpH 8.3)、2 ng/μlのtRNAおよび0.01% hSAからなるTris緩衝液;並びに、50 mM Tricine−KOH(pH 8.3)、50 mM KOAc(pH 7.5)、2.5 mM Mg(OAc)2、10%グリセロール、2 ng/μlのtRNAおよび0.01% hSAからなるTaq緩衝液または50 mM Tricine−KOH、125 mM KOAc、2.5 mM Mg(OAc)2、8%グリセロール、2 ng/μlのtRNAおよび0.01% hSAからなるTZ05緩衝液。平衡解離定数(Kd値)は、非線形最小二乗法を用いることにより、計算した。
【0124】
55℃で、Taqポリメラーゼを用いて行った選択8周期後のssDNA配列およびその発生頻度を表4に示す。個々の配列は表5に示す。各配列に関し、30ntランダム領域のみを示す。全長アプタマー中、ランダム領域は、表1に示される固定配列(配列番号1)に隣接する。表4でわかるように、出発ライブラリーの複雑さは有意に減少し;そして驚くべきことに、わずか6配列しか見られなかった。表4のデータは、63の読み取り可能な個々の配列の解析から得た。配列類似性に基づき、アプタマーを2つのファミリーに分類した。ファミリーIアプタマーは、出発ライブラリーのファミリーII配列に緊密に関連し(表3および4を比較されたい);これらの2つのファミリーは、各表の囲み内に示される類似のコンセンサス配列モチーフを持つ。出発ライブラリーに存在するファミリーI配列のすべて(表3)は、高温での選択後、完全に消失し、これらのTaqポリメラーゼとの相互作用は、非常に温度感受性であったことを示した。最終ライブラリーでファミリーIIと分類された単一配列は、解析した配列のおよそ10%に相当する。本配列は、ファミリーI配列とまったく異なり、そしてコンセンサスモチーフを欠く。出発および最終ライブラリーの配列複雑性の比較により、出発ライブラリー中の特定の配列は、新規選択条件に耐えず、そして順応してヌクレオチドが変化した他の配列が新規条件に耐えたことが示される。
【0125】
TZ05ポリメラーゼを用いて行った2つの選択の経過中、TZ05ポリメラーゼに結合し、そしてまた該ポリメラーゼを阻害する能力に関し、濃縮ライブラリーを試験した。ランダム配列ライブラリーで開始した選択は、選択14周期後、親和性およびTZ05ポリメラーゼ阻害能の有意な改善を示した。本選択に比較し、突然変異性PCRを通じて得た選択の濃縮ライブラリーは、わずか4周期の選択後、TZ05ポリメラーゼ阻害能において、さらにより大きい改善を示した。4周期の選択後、55℃で、突然変異性条件下でのPCRを行って得たssDNA配列を表5に示す。表に示される30ntランダム領域は、表1に示される固定配列(配列番号1)に隣接する。括弧内の数字は、その配列が同定された回数を示す。配列類似性に基づき、配列を3つのファミリーに分類した。精査すると、これらの配列が2つの広いカテゴリーに分類されることが明らかになる;グアニンがリッチな配列(ファミリーI−II)およびグアニンが少ない配列(ファミリーIII)である。グアニンリッチ配列中のグアニンの分布は、分子内G−四分子構造にフォールディングすることが可能であるようなものである。興味深いことに、これらのグアニンリッチ配列は、表3に複雑性を示す出発ライブラリーには存在しない(存在量が少ないため、クローニングにより検出されなかった可能性が最も高い)。ファミリーIII中の配列は、グアニンリッチではないが、ランダム配列の3’末端付近にCGTTTTGコンセンサスモチーフを持つ。出発ライブラリー中、ファミリーII配列に同様のコンセンサスモチーフが同定され(表3)、これらの2つのファミリーが関連しており、そして他方から一方が派生したことが示唆される。出発ライブラリーに存在するファミリーI配列は、TZ05ポリメラーゼに対する高温選択に際し、消失した。同一ライブラリーを、Taqポリメラーゼに対する高温親和性選択に供すると、同様の結果が観察され、出発ライブラリーに見られるファミリーIアプタマーと2つのポリメラーゼの相互作用が温度感受性であり、そして高温での選択に耐えなかったことを示唆する。それらの間でまたは表5に示されるものに配列相同性を持たない13の他の配列もまた同定され、そしてオーファン配列と分類された(データ未提示)。
【0126】
実施例2.ポリメラーゼ阻害活性
ポリメラーゼ阻害アッセイは、T4ポリヌクレオチドキナーゼおよび32P−γ−ATPを用い、5’末端で末端標識し、そして変性条件下でゲル電気泳動により精製したテンプレートDNA(DNA−HP; 5’−ATGCCTAAGTTTCGAACGCGGCTAGCCAGCTTTTGCTGGCTAGCCGCGT−3’(配列番号6;図6))を用いて行った(図6)。それぞれの実験法において、0.25 pmolのTaqポリメラーゼ(5 U)または0.125 pmolのTthポリメラーゼ(2.5 U)いずれかを、標準的PCR緩衝液(20μl)中の5 pmol(250μM)の濃縮プール、ランダムプールまたは特異的DNAリガンドと混合した。5 pmol(250 nM)の標識テンプレートDNA−HPを添加し、そして異なる温度で既定の時間、混合物をインキュベーションした。最終濃度125 mMにEDTAを添加する(5μlの0.5 M EDTA)ことにより、反応を停止した。変性条件下でポリアクリルアミドゲル上でDNAを分離した。オートラジオグラフィーによりゲルを視覚化し、そしてホスホイメージャーにより結合DNAパーセントを定量化した。特定の反応に関する一般的な方法の変動は、明細に示される。
【0127】
オリゴヌクレオチド阻害剤が反応混合物に添加される順序は、テンプレートが最後に添加される限り、問題でない。オリゴヌクレオチドは、機能するのに、PCRの必須の構成要素であるMg++イオンを必要とし、そして多くの緩衝液系に耐えるようである。
【0128】
図7は、DNA濃縮プールを用いたポリメラーゼ活性アッセイの結果を例示する。図8−10は、リガンドTQ30(配列番号50)およびTQ21(配列番号59)を用いたポリメラーゼ活性アッセイの結果を例示する。
【0129】
IC50値の測定
IC50値(アッセイにおいて、産物の50%を生じるのに必要な阻害剤濃度)は、ヘアピン伸長アッセイを用いて得た。典型的な阻害アッセイにおいて、20μl反応は、TrisまたはTricine緩衝液(TaqおよびTth pol)あるいはTZ05緩衝液(TZ05 pol)中に、0.25(0.04)pmolのTaqポリメラーゼ(5 U)(1 U)、0.125 pmolのTthポリメラーゼ(2.5 U)、または0.05 pmolのTZ05ポリメラーゼ(1 U)いずれか、オリゴヌクレオチド阻害剤(多様な濃度)、0.2 M dNTPを含んだ。その後、ゲル精製5’末端標識ヘアピンDNA基質(DNA−HP; 5’−ATGCCTAAGTTTCGAACGCGGCTAGCCAGCTTTTGCTGGCTAGCCGCGT−3’(配列番号6;図6))を、最終濃度250 nMまで添加し、そして図レジェンドに示されるように、既定の時間、望ましい温度で、反応をインキュベーションした(TZ05 polでは30分間)。反応は、5μlの0.5 M EDTA(pH 8.0)の後、ホルムアミドゲル装填緩衝液を添加することにより、停止した。変性条件下で、10%ポリアクリルアミドゲル上で、伸長産物を分離し、そしてホスホイメージャーにより定量化した。阻害剤の存在下で形成された産物の量を、阻害剤の非存在下で形成された産物に対し規準化し、産物パーセントを得た。
【0130】
IT50値の測定
ヘアピン伸長反応は、阻害剤濃度が250 nMであり、そしてTZ05ポリメラーゼ反応が37℃で行われたことを除き、上述のものと同じであった。各温度でのインキュベーション時間は、TaqおよびTth polで1時間、そしてTZ05 polで30分間であった。産物量はホスホイメージャーにより定量化し、そして同一温度で、阻害剤の非存在下で形成された産物に対し規準化し、産物パーセントを得た。
【0131】
リガンドTQ30およびリガンドTQ21基質活性の測定
各実験法において、5’末端標識リガンドTQ30(配列番号50)、TQ21(配列番号59)またはTQ21(エチレングリコールリンカーを用い3’キャップ化されたもの)(およそ3 pmol)を、5 UのTaqポリメラーゼまたは2.5 UのTthポリメラーゼいずれかの存在下または非存在下で、20μlの結合緩衝液中、1 mMの各dNTPと、室温で16時間、インキュベーションした。TQ21の3’末端のキャップ化は、当業に知られる標準的条件を用い、エチレングリコールリンカー(Glen Researchの3’−スペーサーC3支持体)を用いて達成した。
【0132】
親和性捕捉アッセイ
親和性捕捉反応は:75μM ヘパリン、12.5 mM MgCl2、1 mM 各dNTP、50 mM KCl、10 mM Tris−HCl(pH 8.3)、5 UのTaqポリメラーゼまたは2.5 UのTthポリメラーゼおよび250 nM 5’末端標識ヘアピンアッセイテンプレート(DNA−HP)を含む、100μl反応体積中で、70℃で5分間行った。5分後、反応混合物を3倍希釈し、そして4℃に冷却した。第1周期合成後、15μlのビーズ(上述のように調製された、アフィニティービーズまたはコントロールビーズいずれか)を4℃で反応混合物に添加し、そして10分間、穏やかに混合した。標識テンプレートを含む上清を遠心分離後回収し、そしてゲル解析のため取り置いた。その後、75μM ヘパリン、12.5 mM MgCl2、50 mM KClおよび10 mM Tris−HCl(pH 8.3)からなる緩衝液100μlでビーズを5回洗浄した。第2周期合成後、洗浄ビーズを、ポリメラーゼ以外全ての試薬を含む反応混合物の新鮮なアリコットと混合した。70℃で5分間インキュベーションした後、反応混合物を回収し、そしてゲル電気泳動により解析した。
【0133】
実施例3.エキソヌクレアーゼ阻害アッセイ
エキソヌクレアーゼ阻害アッセイは、([γ32P]−ATPおよびT4ポリヌクレオチドキナーゼを用い)5’末端で、そして([α32P]−ddATPおよびデオキシターミナルトランスフェラーゼを用い)3’末端で、放射標識された、設計テンプレート、5’−TTCGAGCGTGAATCTGAATTCGCGGCTAGCCAGCTTTTGCTGGCTAGCCGCGGTGGGAAACTGAGGTAGGTGTTTTCACCTACCTCAGTTTCCCACC−3’ (Exo−sub)(配列番号75)を用いて行った。TaqおよびTth polのための代表的な実験法において、それぞれ、5 UのTaqポリメラーゼまたは2.5 UのTthポリメラーゼを、標準的PCR緩衝液(20μl)中で、250 nMのリガンドTQ30またはリガンドTQ21と混合し、その後、二重標識Exo−Sub(250 nM、最後に添加)を添加した。室温で16時間インキュベーションした後、最終濃度0.1 mMまでEDTAを添加することにより、反応を停止した。変性条件下で、8%ポリアクリルアミドゲル上で、切断産物を分離した。
【0134】
TZ05のための代表的な実験法において、1 UのTZ05ポリメラーゼを、TZ05緩衝液(50 mM Tricine−KOH、50 mM KOAc、2.5 mM Mn(OAc)2、8%グリセロール;20μl)中で、リガンドと混合し、その後、二重標識Exo−Sub(250 nM、最後に添加)を添加した。45℃で20分間インキュベーションした後、最終濃度0.1 mMまでEDTAを添加することにより、反応を停止した。変性条件下で8%ポリアクリルアミドゲル上で、切断産物を分離した。
【0135】
実施例4.ポリメラーゼ阻害アッセイ
TQ21(配列番号59)およびTQ30(配列番号50)による阻害を、(A)好熱性DNAポリメラーゼ、(B)中温性DNAP(コントロールとしてTaqポリメラーゼ)、および(C)逆転写酵素(RT)に対し、試験した。すべての反応は、250または500 nMのリガンドTQ21またはTQ30いずれかを用い、1 mM 各dNTPの存在下で、HPヘアピンテンプレート(実施例2)を含む20μl体積中で行った。各ポリメラーゼに関する特定の反応条件は、以下の通りであった:
【0136】
熱安定性ポリメラーゼ: Tmaポリメラーゼ:UlTmaポリメラーゼ(6 U)、10 mM Tris−HCl、pH 8.8、10 mM KCl、2.5 mM MgCl2および0,002% Tween 20(v/v); Tbrポリメラーゼ(2 U)、10 mM Tris−HCl、pH 8.8、50 mM KCl、1.5 mM MgCl2および0.01% Triton X−100; Tliポリメラーゼ(3 U)およびTflポリメラーゼ(5 U)、10 mM Tris−HCl、pH 9.0、50 mM KClおよび0.1% Triton X−100。
【0137】
中温性ポリメラーゼ: Taqポリメラーゼ(5 U)(緩衝液の内部コントロール)を含むすべてのインキュベーションは、10 mM Tris−HCl、pH 7.5、40 mM KCl、5 mM MgCl2および7.5 mM DTTからなる緩衝液中で行った(クレノウ断片(5 U); T4 DNAポリメラーゼ(4 U); T7 DNAポリメラーゼ(7 U))。
【0138】
逆転写酵素: すべてのインキュベーションは、50 mM Tris−HCl、pH 8.3、60 mM NaCl、6 mM Mg(OAc)2および10 mM DTTからなる緩衝液中で行った(HIV−1 RT(0.56 pmol); AMV RT(1 U); M−MLV RT(10 U); Superscript II(Ssript II)(10 U))。
【0139】
実施例5.低コピー数標的の検出
「ホットスタート」条件なしで、Respessら(1994)Interscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy 94:110に記載されるように、HIV−2 LTRから203 bpの標的特異的産物を増幅する系を用い、PCR増幅を行った。すべてのPCR増幅は、100μl反応体積中で、1.3μgのヒト胎盤DNA、0.4 mM 各dNTP、25 pmolの各プライマー、10 mM Tris−HCl(pH 8.3)、2.5 mM MgCl2、10%グリセロール、0.2 pmol(5 U)のTaqポリメラーゼおよびテンプレート(図10A−10Cに示されるような、およそのコピー数)の存在下で行った。熱反復は、50℃2分の後、94℃30秒;60℃30秒;72℃30秒およびその後、1℃増加の自己伸長(autoextended)60℃アニーリングを5周期、TC9600熱反復装置(PE Applied Biosystems)で行った。これに、90℃30秒;65℃30秒;72℃30秒での35周期増幅が続いた。
【0140】
あるいは、HIV−2の末端反復配列(LTR)を検出するよう設計したPCR増幅を、「ホットスタート」条件なしで、1μgのヒト胎盤DNAの存在下で行った(Respessら(1994)Interscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy 94:110)。PCRは、100μl体積中に、15 mM Tricine−KOH(pH 8.0)、48 mM KOAc(pH 7.5)、3.5 mM Mg(OAc)2、10%グリセロール、0.4 mM dNTPおよび0.2 pmol(5 U)のTaqポリメラーゼを含んだ。リガンドは50 nM濃度で用い、そしてテンプレートを添加する前に反応混合物中に存在した。テンプレートは、50μl体積中に1μgのヒト胎盤DNAと混合したゼロまたはおよそ10コピーのHIV−2テンプレートDNAを含んだ。熱反復は、50℃2分、94℃30秒、60℃30秒(1℃/周期の自己伸長で)、72℃30秒の後、90℃30秒、65℃30秒および72℃30秒での35周期をTC9600熱反復装置(PE Applied Biosystems)で行った。最後に、反応を72℃で10分間インキュベーションした。PCR由来の20μlを、非変性条件下で、8%ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動し、解析した。ゲルは、エチジウムブロミド染色により視覚化した。
【0141】
TZ05 polに対し選択されたアプタマーの成果は、「ホットスタート」条件なしに、ヒトゲノムDNAからヒトK−ras遺伝子を増幅するよう設計されたPCR系で評価した(Nilssonら、1997)。PCR増幅は、プライマー、5’−TGAAAATGACTGAATATAAACTT−3’および5’−GATCATATTCGTCCACAAAATGA−3’を用いて行った。すべてのPCRは、GeneAmp PCR系9600(Perkin−Elmer)上で、30μl反応体積で行った。PCRは、10 mM Tris−HCl(pH 8.3)、50 mM KCl、2.5 mM MgCl2、1μM各プライマー、200μM 各dNTP、または50 mM Tricine−KOH、125 mM KOAc、2.5 mM Mn(OAc)2、8%グリセロール、1μM 各プライマーおよび200μM 各dNTPいずれかを含んだ。アプタマーは、ヒト胎盤DNA25 ngをテンプレートとして添加する前に、緩衝液および2.5 UのTZ05ポリメラーゼを含む反応に存在した。94℃2分間の変性後、94℃30秒、55℃30秒、75℃45秒で、34周期の増幅を行った。これに、72℃5分間の単回インキュベーションが続いた。TBE緩衝液中の3%アガロース(NuSieve GTG; FMC BioProducts)上で、PCRの5μlを泳動することにより、増幅産物を解析した。ゲルは、エチジウムブロミドで染色した後、UV光下で視覚化した。
【0142】
「ホットスタート」PCRは、製造者の指示にしたがい、「AmpliWax」ビーズ(Perkin Elmer)を用いることにより、行った。全ての他のPCR増幅は、「ホットスタート」条件なしで行った。
【0143】
「NeXstart」PCRは、阻害剤として(50 nM最終濃度の)リガンドTQ30およびTQ21を用いて行った。1つの増幅は、比較目的のため、非特異的オリゴヌクレオチド(50 nM 最終濃度)の存在下で行った。
【0144】
【表1】

【0145】
【表2】

【0146】
【表3】

【0147】
【表4】

【0148】
【表5】

【0149】
【表6】

【0150】
【表7】

【0151】
【表8】

【0152】
【表9】

【0153】
【表10】

【0154】
【表11】

【0155】

【0156】
【表12】

【0157】
【表13】

【0158】
【表14】

【0159】
【表15】

【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】図1Aは、12周期のSELEX後のDNA濃縮プール(白丸)およびDNA非選択ランダムプール(黒丸)の、Taqポリメラーゼに対する結合親和性を示す。図1Bは、10周期のSELEX後のDNA濃縮プール(白丸)およびDNA非選択ランダムプール(黒丸)の、Tthポリメラーゼに対する結合親和性を示す。
【図2】図2Aは、Taqポリメラーゼに関する濃縮DNAプール(白丸)およびTthポリメラーゼに関する濃縮DNAプール(黒丸)の、Tthポリメラーゼに対する交差結合解析を示す。図2Bは、Taqポリメラーゼに関する濃縮DNAプール(白丸)およびTthポリメラーゼに関する濃縮DNAプール(黒丸)の、Taqポリメラーゼに対する交差結合解析を示す。
【図3】図3Aは、リガンド30(TQ30(配列番号50))(黒丸)およびリガンド21(TQ21(配列番号59))(白丸)の、Taqポリメラーゼに対する結合曲線を示す。図3Bは、リガンド30(黒丸)およびリガンド21(白丸)の、Tthポリメラーゼに対する結合曲線を示す。
【図4】図4A−Eは、55℃で測定したTaqポリメラーゼに対するいくつかの全長リガンドの結合曲線を示す。図4A−Dは、ファミリーIに属するリガンドの相互作用を示し、一方図4Eは、ファミリーIIの代表的なリガンドの結合を示す。
【図5】図5A−Dは、TZ05ポリメラーゼに対するいくつかの全長リガンドの結合相互作用を示す。
【図6】図6は、ポリメラーゼ活性をアッセイするのに用いた、ヘアピンDNA基質およびその産物を例示する。
【図7A】図7Aは、異なる温度で、異なるインキュベーション時間を用いて行った、TaqおよびTthポリメラーゼに関するポリメラーゼ活性アッセイを例示する。図6に示される末端標識DNA基質を、変性条件下で、15%ポリアクリルアミドゲル上で分離する。パネル1のデータは、TaqポリメラーゼおよびTaqポリメラーゼに関し選択された濃縮プールを用いて得、一方、パネル2に示されるデータは、TthポリメラーゼおよびTthポリメラーゼに関し選択された濃縮プールを用いて得た。未処理の5’末端標識DNAヘアピンテンプレート(レーン1);ポリメラーゼを欠く反応混合物中の標識テンプレート(レーン2);濃縮プールの非存在下(レーン3)および存在下(レーン4)での、室温で25分間の、完全反応混合物のインキュベーション。レーン5、6、および7は、それぞれ、37℃、50℃および60℃で5分間の、濃縮プールの存在下での完全反応混合物のインキュベーションを示す。レーン8および9は、濃縮プールの存在下(レーン8)および非存在下(レーン9)での、70℃で5分間の、完全反応混合物のインキュベーションを示す。レーン10は、末端標識プールDNAのゲル移動度を示す。ゲルの右側の図式は、出発時の末端標識された短いDNAおよびポリメラーゼ伸長産物の位置を示す。
【図7BC】図7Bおよび7Cは、異なる温度で行った、TaqおよびTthポリメラーゼに関する第二のアッセイを例示する。DNAは、変性条件下で、15%ポリアクリルアミドゲル上で分離する。図7Bのデータは、Taqポリメラーゼを用いて得、そして図7Cのデータは、Tthポリメラーゼを用いて得た。レーン1−3は、それぞれ、室温、30℃および37℃で5分間のインキュベーションに際し、いかなる阻害剤も非存在下で得た産物を示す。レーン4−6は、非選択ランダム配列プールを用いて得たデータを示し;レーン7−9は、Taqポリメラーゼに関する濃縮プールを用いて得たデータを示し;レーン10−12は、Tthポリメラーゼに関する濃縮プールを用いて得たデータを示し;レーン13−15は、示される3つの温度での5分間のインキュベーションでの、Taqstart抗体で得たデータを示す。右側の図式は、出発時の末端標識された短いDNAおよびポリメラーゼ伸長産物を示す。
【図7DE】図7Dおよび7Eは、濃縮プールによるTaqおよびTthポリメラーゼの可逆的阻害を例示する。図7Dは、熱周期にさらされていない、濃縮プールの存在下でのTaqポリメラーゼの活性を示し、一方、図7Eは、反応に添加される前に熱周期にさらされた、濃縮プールの存在下でのTaqポリメラーゼの活性を示す。レーン1−5は、それぞれ、20℃、25℃、30℃、35℃および40℃での5分間のインキュベーションに渡り、形成された産物の量を示す。レーン6−10は、それぞれ、20℃、25℃、30℃、35℃および40℃での5分間のインキュベーションに渡る、濃縮プールの存在下での、Taqポリメラーゼ活性を示す。右側の図式は、出発時の末端標識された短いDNAおよびポリメラーゼ伸長産物を示す。
【図8】図8は、リガンドTQ30(配列番号50)およびTQ21(配列番号59)による、Taqポリメラーゼ(図8A)およびTthポリメラーゼ(図8B)の阻害に対する温度の影響を示す(レーン1−10)。DNAは、変性条件下で、10%ポリアクリルアミドゲル上で分離した。レーン11−15は、阻害剤の非存在下での産物の形成を示す。オートラジオグラムの右側は、ポリメラーゼ伸長前および後の5’標識テンプレートを図式的に示す。図8Cおよび8Dは、それぞれ、Taqポリメラーゼ(図8C)およびTthポリメラーゼ(図8D)を用い、リガンドTQ21(白丸)およびリガンドTQ30(黒丸)の存在下で形成された産物のパーセントを示す。産物量は、ホスホイメージャーにより定量化し、そして同一の温度で、阻害剤の非存在下で形成された産物に対し規準化し、産物のパーセントを得た(図8CおよびD(横座標))。
【図9】図9AおよびBは、リガンドTQ30(配列番号50)によるTaqポリメラーゼの可逆的阻害を例示する。DNAは、変性条件下で、10%ポリアクリルアミド上で分離する。レーン1−5は、20℃−40℃の間でのインキュベーションに際し、いかなる阻害剤も非存在下で得た産物を示す。レーン6−10は、熱反復されていないリガンドTQ30(図9A)および25周期の熱反復にさらされたリガンドTQ30(図9B)の存在下で、20℃−40℃の間でのインキュベーションに際し、形成された産物を示す。
【図10】図10AおよびBは、リガンドTQ30(配列番号50)(黒丸)およびTQ21(配列番号59)(白丸)による、Taqポリメラーゼ(図10A)およびTthポリメラーゼ(図10B)の阻害に対するリガンド濃度の影響を示す。テンプレート伸長アッセイにおける、多様な濃度の阻害剤の存在下で形成された産物の量は、ホスホイメージャーにより定量化し、そして阻害剤の非存在下で形成された産物に対し規準化し、産物のパーセントを得た(横座標)。
【図11】図11は、リガンド6(配列番号78)、15(配列番号86)、10(配列番号85)および18(配列番号83)によるTaqポリメラーゼの阻害に対する温度の影響を示す。伸長産物は、変性条件下で、10%ポリアクリルアミドゲル上で泳動した後、オートラジオグラフィーにより、解析した。
【図12】図12AおよびBは、Taqポリメラーゼを用い、リガンド6(黒丸)、リガンド10(黒三角)、およびリガンド15(黒四角)(図12A)並びにリガンド18(黒丸)、リガンド19(黒三角)、およびリガンド20(黒四角)(図12B)の存在下で形成された産物のパーセントを示す。産物量は、ホスホイメージャーにより定量化し、そして同一の温度で、阻害剤の非存在下で形成された産物に対し規準化し、産物のパーセントを得た。
【図13】図13A−Fは、リガンドTZ1(配列番号94)、TZ2(配列番号96)、TZ3(配列番号106)、TZ8(配列番号100)、TZ9(配列番号101)およびTZ13(配列番号89)によるTZ05ポリメラーゼの阻害に対する温度の影響を示す。伸長産物は、変性条件下でのゲル電気泳動後、オートラジオグラフィーにより、解析した。
【図14】図14は、高温での親和性選択後に得られた多様なリガンドを用い、Taqポリメラーゼの阻害に対するリガンド濃度の影響を示す(リガンド6(配列番号78)(黒丸)、リガンド22(配列番号81)(黒三角)およびリガンド28(配列番号87)(黒四角))。ヘアピン伸長アッセイは、実施例2に記載されるように行った。ヘアピン基質の伸長産物は、ホスホイメージャーにより定量化し、そして阻害剤の非存在下で形成された産物に対し規準化し、産物のパーセントを得た。
【図15】図15AおよびBは、Tris緩衝液(図15A)およびTricine緩衝液(図15B)中のリガンド6(配列番号78)(黒丸)、リガンド22(配列番号81)(黒三角)およびリガンド28(配列番号87)(黒四角)のIC50値に対する温度の影響を示す。
【図16】図16は、TaqおよびTthポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性により触媒される、置換鎖と予測される2つのステム−ループを持つ、97ヌクレオチドDNA配列(Exo−Sub)(5’−TTCGAGCGTGAATCTGAATTCGCGGCTAGCCAGCTTTTGCTGGCTAGCCGCGGTGGGAAACTGAGGTAGGTGTTTTCACCTACCTCAGTTTCCCACC−3’(配列番号75))の切断を図式的に例示する。フォールディングした配列の極性は、小さい矢印により示される。DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性により仲介される切断は、置換鎖およびらせんの結合部近傍で起こり、20ヌクレオチドおよび77ヌクレオチドの2つのDNA断片を生じると期待される。分子の両端の黒丸は、放射標識を示す。
【図17】図17は、TZ05ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性に対する、リガンドTZ13(配列番号89)、TZ13一部切除体(51ヌクレオチド)およびTZ36(配列番号99)の影響の解析を示す。レーンUは、両端での未処理Exo−Sub標識の移動度を示す。レーンCは、リガンドの非存在下でのTZ05ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ切断から生じる切断産物(78ヌクレオチドおよび24ヌクレオチド)を示す。レーン1−4、5−8、および9−12は、それぞれ、増加する濃度のTZ13、TZ13−TrncおよびTZ36リガンドの存在下でのExo−Sub切断を示す。アプタマー濃度は、250 nMから2000 nMの範囲であった。レーンCから12までのすべての反応は、同一条件下で行った。
【図18】図18は、5’標識リガンド6(配列番号78)、22(配列番号81)および28(配列番号87)に対するTaqポリメラーゼの影響を例示する。各リガンドに関し、レーン1および4は、インキュベーションが緩衝液のみで行われたコントロールである。レーン2および5は、Taqポリメラーゼとのインキュベーション後の結果を示し、そしてレーン3および6は、Taqポリメラーゼおよび4つのdNTPすべてとのインキュベーション後の結果を示す。下部の矢印は、エキソヌクレアーゼ切断から生じる切断産物を示し、一方、上部の矢印は、リガンドの伸長産物を示す。
【図19】図19AおよびBは、TQH6(配列番号78)(図19A)およびTQH22(配列番号81)(図19B)の全長(黒丸)および一部切除(黒四角)リガンドによるストッフェル断片の阻害を示す。ヘアピン基質の伸長産物は、ホスホイメージャーにより定量化し、そして同一の温度で、阻害剤の非存在下で形成された産物に対し規準化し、産物のパーセントを得た。産物の50%が形成された温度は、リガンドのIT50値である。
【図20】図20AおよびBは、TQH6(図20A)およびTQH22(図20B)の全長(黒丸)および一部切除(黒四角)リガンドによるTthポリメラーゼの阻害を示す。ヘアピン基質の伸長産物は、ホスホイメージャーにより定量化し、そして同一の温度で、阻害剤の非存在下で形成された産物に対し規準化し、産物のパーセントを得た。産物の50%が形成された温度は、リガンドのIT50値である。
【図21】図21AおよびBは、TQH6(図21A)およびTQH22(図21B)の全長(黒丸)および一部切除(黒四角)リガンドによるTZ05ポリメラーゼの阻害を示す。ヘアピン基質の伸長産物は、ホスホイメージャーにより定量化し、そして同一の温度で、阻害剤の非存在下で形成された産物に対し規準化し、産物のパーセントを得た。産物の50%が形成された温度は、リガンドのIT50値である。
【図22】図22AおよびBは、Taqポリメラーゼ(図22A)およびTthポリメラーゼ(図22B)に対する、TZ13(配列番号89)(黒四角)およびTZ54一部切除体(51ヌクレオチド)(黒丸)の結合解析を示す。
【図23】図23A−Cは、TZ05ポリメラーゼに高温で結合するよう選択された、リガンドTZ1(配列番号94)(黒丸)、TZ13(配列番号89)(黒四角)およびTZ36(配列番号99)(黒三角)による、多様な熱安定性DNAポリメラーゼの阻害の解析を示す。図23Aは、Tthポリメラーゼの活性に対するリガンドの影響を示し;図23Bは、Taqポリメラーゼの活性に対するリガンドの影響を示し;図23Cは、ストッフェル断片の活性に対するリガンドの影響を示す。
【図24】図24A−Cは、標準的PCR増幅、「ホットスタート」PCR、並びにオリゴヌクレオチド阻害剤TQ30(配列番号50)およびTQ21(配列番号59)の存在下でのPCR増幅(「NeXスタートPCR」)を用いた、低コピー数標的の検出を例示する。図24Aは、〜10および50コピーで標的を検出する際の、標準的条件(レーン1−3)下で行った増幅と、「ホットスタート」PCR(レーン4−6)の比較を例示する。図24Bは、〜10および50コピーで標的を検出する際の、非特異的(NS)オリゴヌクレオチド(レーン1−3)の存在下で行ったPCR増幅と、TQ21(レーン4−6)およびTQ30(レーン7−9)のものの比較を例示する。図24Cは、オリゴヌクレオチド阻害剤TQ21およびTQ30の存在下での、(示されるような)非常に低い数の標的コピーの検出を例示する。(B)および(C)とも、オリゴヌクレオチド阻害剤は、50 nMの濃度で用いた。Mは分子量標準を示す。各パネルの矢印は、ゲルにおける標的特異的203 bp DNAの位置を示す。
【図25】図25は、リガンドの一部切除オリゴヌクレオチド阻害剤、TQH6(配列番号78)、TQH22(配列番号81)およびTQH28(配列番号87)の存在下でのPCR増幅(「NeXスタートPCR」)を用いた、低コピー数標的の検出を例示する。すべてのPCR増幅は、非手動「ホットスタート」を用い、1μgのヒト胎盤DNAの存在下で行った。レーン1−4は、リガンドの非存在下で行ったPCR増幅の結果を示す。奇数のレーンに示される反応は、HIV−2テンプレートDNAを含まず、一方、偶数で示されるものは、10コピーのHIV−2ゲノムDNAを含んだ。矢印は特異的単位複製物を示す。
【図26】図26は、ヒトK−ras遺伝子から104 bpの単位増幅物を増幅するPCR系を用いた、低コピー数標的の検出を例示する。TZ05 DNAポリメラーゼを含むすべての増幅反応は、手動ホットスタート条件なしで行った。レーン1では、テンプレートDNAを添加せず;レーン2では、アプタマーを添加せず;レーン3−9では、増加する濃度の51ヌクレオチド一部切除TZ1リガンドを用い、完全なPCRを行った。リガンド濃度は、1.3 nMの濃度から開始し、1つの反応から次には二倍とした。レーンMはDNAサイズ標準を示す。
【図27】図27AおよびBは、TZ1(図27A)およびTZ13(図27B)の30ヌクレオチド一部切除体の存在下で、TZ05ポリメラーゼによるヒトK−ras遺伝子の増幅を示す。TZ05 DNAポリメラーゼを含むすべての増幅反応は、手動ホットスタート条件なしで行った。レーン1では、テンプレートDNAを添加しなかった。レーン2では、リガンドを添加しなかった。レーン3−9では、増加する濃度の各リガンドを用い、完全なPCRを行った。リガンド濃度は、1.3 nMの濃度から開始し、各連続反応で二倍とした。
【図28】図28は、TZ36の51ヌクレオチド一部切除体の存在下で、TthポリメラーゼによるヒトK−ras遺伝子の増幅を示す。すべての増幅反応は、Tth DNAポリメラーゼを含み、そして手動ホットスタート条件なしで行った。レーン1では、テンプレートDNAを添加しなかった。レーン2では、リガンドを添加しなかった。レーン3−9では、増加する濃度のリガンドを用い、完全なPCRを行った。リガンド濃度は、1.3 nMの濃度から開始し、各連続反応で二倍とした。
【図29】図29は、Taqポリメラーゼの活性に対する、Trunc.1−30(配列番号75)(黒丸)、Trnc.2−30(配列番号76)(黒四角)およびTrnc.3−30(配列番号77)(黒三角)の濃度の影響を示す。多様な濃度の阻害剤の存在下で形成された産物の量は、ホスホイメージャーにより定量化し、そして阻害剤の非存在下で形成された産物に対し規準化し、産物のパーセントを得た(横座標)。
【図30】図30は、ストッフェル断片の活性に対する、一部切除リガンドTrunc.1−30(黒丸)、Trnc.2−30(黒四角)およびTrnc.3−30(黒三角)の阻害剤濃度の影響を示す。多様な濃度の阻害剤の存在下で形成された産物の量は、ホスホイメージャーにより定量化し、そして阻害剤の非存在下で形成された産物に対し規準化し、産物のパーセントを得た(横座標)。
【図31】図31A−Cは、一部切除リガンドTrnc.21(配列番号70)の親和性および阻害特性を例示する。図31Aは、Taqポリメラーゼに対するリガンドTrnc.21の結合曲線を示す。図31Bは、Taqポリメラーゼ(黒丸)およびTthポリメラーゼ(白丸)の活性に対するTrnc.21濃度の影響を例示する。TaqポリメラーゼおよびTthポリメラーゼのIC50値は、それぞれ、21および36.5 nMである。図31Cは、Trnc.21によるTaqポリメラーゼ(黒丸)およびTthポリメラーゼ(白丸)の阻害に対する温度の影響を示す。既定の温度で、阻害剤の存在下で形成された産物の量を、同一温度で、阻害剤の非存在下で形成された産物に対し規準化し、産物のパーセントを得た。TaqポリメラーゼおよびTthポリメラーゼの計算IT50値は、それぞれ、34℃および35.6℃である。
【図32】図32は、リガンド6(配列番号78)、22(配列番号81)および28(配列番号87)の一部切除型に対するTaqポリメラーゼの影響を例示する。本実験では5’末端標識リガンドを用いた。各リガンドに関し、レーン1および4は、インキュベーションが緩衝液のみで行われたコントロールである。レーン2および5は、Taqポリメラーゼとのインキュベーション後の結果を示し、そしてレーン3および6は、Taqポリメラーゼおよび4つのdNTPすべてとのインキュベーション後の結果を示す。矢印は、リガンドの伸長産物を示す。
【図33】図33は、TZ05ポリメラーゼに対するリガンドの一部切除体の配列を示す。下線のヌクレオチド塩基は、5’および3’固定領域由来である。アステリスクは、ホスホロチオエート結合を示す。
【図34】図34AおよびBは、リガンドTZ13(配列番号89)の異なる一部切除体によるTZ05ポリメラーゼの阻害に対する温度の影響を例示する。ヘアピン基質の伸長産物は、ホスホイメージャーにより定量化し、そして同一の温度で、阻害剤の非存在下で形成された産物に対し規準化し、産物のパーセントを得た。産物の50%が形成された温度は、アプタマーのIT50値である。
【図35】図35は、TZ1およびTZ13の5’末端標識一部切除リガンドに対するTZ05ポリメラーゼの影響を例示する。レーン1−3およびレーン4−6は、各リガンドの51ヌクレオチドおよび30ヌクレオチド一部切除体で得た結果を示す。レーン1および4の反応は、dNTPを含まず、一方、レーン2、3、5および6ではdNTPを含んだ。矢印は、エキソヌクレアーゼ切断から生じる切断産物を示す。
【図36】図36は、ホモ二量体(D.30−D.30)(配列番号71)の親和性および阻害特性を示す。図36Aは、Taqポリメラーゼに対するホモ二量体(D.30−D.30)の結合曲線を示す(Kd=47.5±5 pM)。図36Bは、Taqポリメラーゼ活性に対する二量体(黒丸)および単量体(白丸)リガンド濃度の影響を例示する。Trnc.2−30(単量体)のIC50値は48 nMであり、一方、D.30−D.30(二量体)は14 nMである。
【図37】図37AおよびBは、ヘテロ二量体D.21−D.30(配列番号72)の阻害特性を示す。図37Aは、Taqポリメラーゼ(黒丸)およびTthポリメラーゼ(白丸)活性に対するD21−D30濃度の影響を例示する。これら2つのポリメラーゼの阻害に関するIC50値はおよそ30 nMである。図37Bは、ヘテロ二量体D.21−D.30によるTaqポリメラーゼ(黒丸)およびTthポリメラーゼ(白丸)の阻害に対する温度の影響を例示する。Taqポリメラーゼに対するIT50値は、41℃であり、一方、Tthポリメラーゼに対する値は、34.5℃である。
【図38】図38は、TZ13(配列番号89)核酸リガンドの3つの二量体の配列およびリンカー構造を示す。
【図39】図39AおよびBは、TZ13(配列番号89)単量体および図38に示される3つの二量体の結合および阻害解析を示す。図39Aは、TZ05ポリメラーゼに対する3つの二量体および単量体のニトロセルロースフィルター結合解析を示し、そして図39Bは、反応温度の関数としての3つの二量体および単量体によるTZ05ポリメラーゼ活性の阻害解析を示す。
【図40】図40AおよびBは、Taqポリメラーゼに対するTrnc.21の結合親和性に対する、dNTPおよびヘアピンテンプレートDNAの影響を例示する。図40Aは、1 mM dNTPの存在下でのTrnc.21のニトロセルロースフィルター結合解析を示す。黒丸は、ヘアピンDNAテンプレートの非存在下での結合を示し、一方、白丸は、250 nMのヘアピンDNAテンプレートの存在下での結合を示す。これらの条件下での計算Kd値は、およそ2.5 nMである。図40Bは、Taqポリメラーゼに対するTrnc.21の結合に対するdNTP濃度の影響を例示する。本実験では、1 nM Taqポリメラーゼに対する放射標識Trnc.21の結合を、多様な濃度のdNTPの存在下でモニターした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱安定性DNAポリメラーゼに対する核酸リガンドを同定する方法であって:
a)核酸候補混合物を調製し;
b)あらかじめ決定された温度で、前記ポリメラーゼと核酸候補混合物を接触させ、ここで、その温度で、候補混合物に比較し、前記ポリメラーゼに増加した親和性を有する核酸を残りの候補混合物から分配することが可能である;
c)増加した親和性を有する核酸を残りの候補混合物から分配し;そして
d)増加した親和性を有する核酸を増幅し、前記ポリメラーゼに対する結合に関し、相対的により高い親和性および特異性を持つ核酸配列が濃縮された核酸混合物を生じ、ここで前記にて同定された前記ポリメラーゼの核酸リガンドの塩基配列が以下からなる群から選択されるものである:
(i)配列番号89−95、113−114、および116−118の内の一つ;および
(ii)前記(i)の配列番号の一つと80%を超える一次配列相同性を有する配列
ことを含む、前記方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、さらに:
e)工程b)、c)、およびd)を反復する
ことを含む、前記方法。
【請求項3】
請求項1の方法であって、前記DNAポリメラーゼが、TZ05ポリメラーゼである、前記方法。
【請求項4】
請求項1の方法であって、前記核酸候補混合物が一本鎖核酸で構成される、前記方法。
【請求項5】
熱安定性DNAポリメラーゼの活性を阻害する方法であって、請求項1の方法にしたがって同定された高親和性熱安定性DNAポリメラーゼ核酸リガンドの有効量を、DNA重合反応に添加することを含む、前記方法。
【請求項6】
請求項5の方法であって、前記DNAポリメラーゼがTZ05ポリメラーゼである、前記方法。
【請求項7】
以下からなる群から選択される精製されそして単離された、非天然発生核酸:
(i)配列番号89−95、113−114、および116−118の内の一つ;および
(ii)前記(i)の配列番号の一つと80%を超える一次配列相同性を有する配列の核酸であって、熱安定性DNAポリメラーゼの活性を阻害する核酸;および
(iii)前記(i)または(ii)の配列に相補的な核酸配列を有する配列。
【請求項8】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う方法であって:
a)増幅しようとする核酸配列を含む試料を、増幅しようとする配列に隣接する配列と相補的なプライマー、熱安定性DNAポリメラーゼ、および該ポリメラーゼを55℃で阻害することが可能であり、それにもかかわらず55℃より高い温度でポリメラーゼが活性化されることを可能にする核酸リガンドと混合し;そして
b)標的核酸を融解し、標的核酸にプライマーをアニーリングさせ、そして標的核酸を合成する標準的PCR工程を、混合物の熱反復により行う、
ここで、前記核酸リガンドの塩基配列は以下からなる群から選択されるものである:
(i)配列番号89−95、113−114、および116−118の内の一つ;および
(ii)前記(i)の配列番号の一つと80%を超える一次配列相同性を有する配列
ことを含む、前記方法。
【請求項9】
請求項8の方法であって、前記熱安定性DNAポリメラーゼがTZ05ポリメラーゼである、前記方法。
【請求項10】
熱安定性DNAポリメラーゼの活性を阻害する方法であって、請求項1の方法にしたがって同定された、前記DNAポリメラーゼを阻害する核酸リガンドを、前記リガンドが重合を阻害する温度またはそれ以下の温度で維持されている、DNA重合反応に添加することを含む、前記方法。
【請求項11】
請求項10の方法であって、前記DNAポリメラーゼがTZ05ポリメラーゼである、前記方法。
【請求項12】
核酸スイッチを同定する方法であって:
a)核酸候補混合物を調製し;
b)熱安定性DNAポリメラーゼと核酸候補混合物を接触させ、ここで、候補混合物に比較し、前記ポリメラーゼに増加した親和性を有する核酸を残りの候補混合物から分配することが可能である;
c)増加した親和性を有する核酸を残りの候補混合物状態から分配し、それにより増加した親和性を有する核酸を、環境パラメーターの変動に際し、前記ポリメラーゼへの親和性を欠くことに基づき、さらに分配し;そして
d)増加した親和性を有する核酸を増幅し、ポリメラーゼに対する結合に関し、相対的により高い親和性および特異性を持つ核酸配列が濃縮された核酸混合物を生じ、ここで前記にて同定された核酸の塩基配列が以下からなる群から選択されるものである:
(i)配列番号89−95、113−114、および116−118の内の一つ;および
(ii)前記(i)の配列番号の一つと80%を超える一次配列相同性を有する配列
ことを含む、前記方法。
【請求項13】
請求項12の方法であって、前記DNAポリメラーゼがTZ05ポリメラーゼである、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7BC】
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【図7DE】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2011−103890(P2011−103890A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4936(P2011−4936)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【分割の表示】特願2000−602817(P2000−602817)の分割
【原出願日】平成12年2月24日(2000.2.24)
【出願人】(501345390)ギリード・サイエンシズ・インコーポレーテッド (17)
【Fターム(参考)】