説明

DNA分析のための生物学的サンプルの保管及び加工処理のための試薬並びに方法

本発明は、PCR及び他のDNA用途における直接的な使用のための生物学的サンプルの保管や加工処理のための試薬並びに方法について記載する。保管後、上記サンプル中の保存されたDNAは次に加工処理されることができ、既知の方法(例えば、PCR)により分析され得る。本発明は、一態様では、体液、各種溶液、細胞、植物、組織、プラスミドを含有する細菌細胞溶解産物等を包含するがこれらに限定されない各種供給源由来の核酸(例えば、DNA)の簡素且つ迅速な保管や加工処理に関する方法を提供する。本発明は、生物学的サンプルを加工処理し、且つさらなるサンプル精製を伴わずに、DNAをPCRで使用可能とするようにアルカリ性pHでグリコールを用いる試薬及び方法をさらに含む。したがって、本発明は、一態様では、体液、各種溶液、細胞、植物、組織、プラスミドを含有する細菌細胞溶解産物等を包含するがこれらに限定されない各種供給源由来の核酸(例えば、DNA)の簡素且つ迅速な加工処理に関する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は概して、多数の生物学的サンプルの簡素且つ有効な保存及び加工処理を可能にする試薬並びに方法に関する。より具体的には、本発明は、PCR及び他のDNA用途における直接的な使用のための生物学的サンプルの保管や加工処理のための試薬並びに方法に関する。本発明はさらに、生物学的サンプルを加工処理して、且つサンプル精製を伴わずにDNAをPCRで使用可能とするための試薬並びに方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
分子診断学におけるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の高まる使用は、多数の生物学的サンプルの簡潔且つ有効な保存及び加工処理が可能な試薬並びに方法を開発することを望ましいものとしている。
【0003】
伝統的なアルカリ溶解は、以下の工程、すなわち成長培地で希釈した細胞を濃縮又はペレット化する工程、遠心分離又はボルテックスする工程、細胞をアルカリ洗浄剤で溶解させる工程、溶解産物を振とうすることや攪拌する工程、中和緩衝液を添加する工程、凝集塊を除去するためにサンプルを濾過や操作する工程、固相キャリアを添加する工程、並びに結合緩衝液を添加する工程を必要とする。一般的に、次のようなさらなる精製工程が、洗浄剤及び塩を除去するのに必要とされる。すなわち、固相キャリアの添加及び結合緩衝液の添加がある。
【0004】
DNA診断において頻繁に使用される供給源は血液であるが、特に癌検査に関して、口腔ぬぐい液及び組織生検材料もまた使用される場合が多い。現在、組織サンプルは、凍結されて、ホルマリン固定されて又はパラフィン包埋されて保管及び保存される。ホルマリン固定されたサンプル又はパラフィン包埋されたサンプルの使用は、これらのサンプル由来のDNAを、PCRに使用可能にさせるための多段階プロセスを要する。DNA診断目的での血液保管は、冷蔵、凍結乾燥又は凍結を要する。或いは、血液サンプルは、FTA CARD(Invitrogen)のようなカードに塗布されて、室温で乾燥保管する。
【0005】
Leal-Klevez他は、20%エチレングリコール−プロピレングリコール水溶液中で−20℃で血液及び組織サンプルを保管する方法を開発した。このプロトコルでは、DNAは、プロテイナーゼK−フェノール抽出手順により保管サンプルから抽出され得る。
【0006】
米国特許第6,602,718号は、約2〜約12のpH範囲で、カオトロピック塩を含む添加剤を補充した陽イオン性洗浄剤の水溶液又は分散液を使用して生物学的サンプル中のRNA及びDNAを安定化するための方法並びに試薬について記載している。
【0007】
サンプル加工処理の各種方法が、PCR分析のためにDNAを調製するのに使用されている。DNAは通常、フェノールベースの方法、塩−アルコール沈殿法又はカラム上での吸着方法を使用して抽出される。これらの方法の概説は、Current Protocols. pp.2.0.1-2.4.5に提供されている。また、米国特許第5,346,994号及び同第5,945,515号は、DNA単離に関する試薬及び方法について記載している。これらの試薬及び方法は、実質的に純粋なDNAを提供する。しかしながら、これらは時間がかかり、自動化に容易に適合可能ではない。サンプルを94℃で加熱すること(Mercier他)、マイクロ波照射(Ohhara他)及び好熱性プロテアーゼによる処理(Bellly他)等のDNAの先立つ単離なしでサンプルに関してPCRを実施する方法が開発されている。これらの方法の多くは、40サイクルのPCR増幅につながる。40サイクルのPCR増幅は、人為的結果をうけやすく、診断目的で確実に使用することはできない。
【0008】
これまでに、アルカリ溶解を使用して、DNAの精製を伴わずにPCR用に直接的に血液及び他のサンプルを調製した。Rudbeck他は、0.2M NaOHを使用して、室温で全血、精液及び上皮細胞を溶解させた。溶解産物を中和して、PCR用に直接使用した。20mM NaOHは、PCRで使用可能なDNAを放出するのに有効ではなかった。Ashen他は、遠心分離及び溶解によりまず血液白血球を単離することにより、このプロトコルを修飾した。単離された白血球は、室温で0.2M NaOH中で溶解された。溶解産物を中和して、PCRに使用した。
【0009】
Truett他は、25mM NaOH−0.2mM EDTA二ナトリウム緩衝液(pH12)を使用して、95℃で加熱することによりマウス組織サンプルを溶解させた。加熱後、サンプル溶解産物を中和して、PCRに使用した。この方法は、DNAフラグメントを増幅するための40サイクルのPCRを包含したため、あまり有効ではなかった。また、アルカリ性溶解産物の中和は、プロトコルに1工程を加えて、溶解産物中のpHの正確な確定に関する厳しい要件を課した。
【0010】
Lin他は、最低2時間血液を凝結させることによりまず全血からヘモグロビンを除去し、続いて一晩の保管及び遠心分離による血液からのDNAの調製について記載している。生じた血清は、37℃で18mM KOH中で溶解させ、中和して、PCRに使用した。
【0011】
また、PCRによるDNA分析に関する迅速なプロトコルは、細菌に関して詳述された。Sandhu他は、水中の細菌コロニーを煮沸した。Joshi他は、煮沸することなくPCRに直接細菌を使用した。細菌細胞の保管及び加工処理に関するFTA CARD法もまた報告されている(Rogers他)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここで、直接的なPCRのための生物学的サンプルを加工処理するための試薬及び方法に適合可能な外気温保管のための信頼性が高く且つ貯蔵性のよい試薬並びに方法が必要とされる。予想外に、グリコールで構成される試薬は、生物学的サンプルのDNAを保存し、且つその長期の外気温保管を保証することが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[発明の概要]
本発明は、PCR及び他のDNA用途における直接的な使用のための生物学的サンプルの保管や加工処理に関する試薬並びに方法について記載する。保管後、サンプル中の保存されたDNAは次に加工処理されることができ、既知の方法(例えば、PCR)により分析され得る。
【0014】
以下の方法では、核酸は、或る特定の濃度のポリアルキレングリコールの存在下で保存及び加工処理される。したがって、本発明は、一態様では、体液、各種溶液、細胞、植物、組織、プラスミドを含有する細菌細胞溶解産物等を包含するがこれらに限定されない各種供給源由来の核酸(例えば、DNA)の簡素且つ迅速な保管や加工処理に関する方法を提供する。下記事項は、DNAにより例示されるような核酸に関する本発明の説明である。
【0015】
本発明は、生物学的サンプルを加工処理し、且つさらなるサンプル精製を伴わずに、DNAをPCRで使用可能とするようにアルカリ性pHでグリコールを用いる試薬及び方法をさらに含む。したがって、本発明は、一態様では、体液、各種溶液、細胞、植物、組織、プラスミドを含有する細菌細胞溶解産物等を包含するがこれらに限定されない各種供給源由来の核酸(例えば、DNA)の簡素且つ迅速な加工処理に関する方法を提供する。
【0016】
概して、例えばポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールを含む様々なポリアルキレングリコールが本発明で有用である。一実施形態では、ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコールである。概して、ポリアルキレン濃度は、使用するポリアルキレンに依存する。使用するポリエチレングリコールの重量範囲に応じて、濃度が調節され得る。概して、ポリエチレングリコールが使用される方法に関して、保管試薬の濃度は、最終容積の約25%〜約100%に調節される。別の実施形態では、ポリエチレングリコールの濃度は、最終容積の約30%である。
【0017】
一実施形態では、DNAは、保管又は加工処理試薬を含有する溶液中に可溶性形態で留まる。
【0018】
一実施形態では、PEG及びPEG誘導体がPCRミックスへ添加されて、PCRに対する不純物の影響を阻害する。一実施形態では、PEGの濃度は、約15%未満である。別の実施形態では、PEGの量は、約0.1%〜約10%である。
【0019】
本発明で有用なグリコール化合物としては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール及びグリコール誘導体(ポリオキシエチレンラウリルエーテル(BRIJ(登録商標)35)、オクチルフェノールポリエチレングリコールエーテル(Triton(登録商標)X−100)及びポリオキシエチレンセチルエーテル(BRIJ(登録商標)52)を含む)が挙げられる。
【0020】
一実施形態では、本発明は、生物学的サンプルを有効に溶解させて、且つPCR阻害剤を不活性にするように、グリコール化合物及びアルカリ性pH(アルカリ)の組合せを提供する。これにより、精製を伴わずにPCRのために直接的に、生じる溶解産物を使用することが可能となる。生物学的サンプルは、約0℃〜約100℃の範囲の温度で、本発明の試薬及び方法により加工処理され得る。
【0021】
一実施形態では、温度は、約10℃〜45℃の範囲の外気温である。別の実施形態では、温度は、約15℃〜35℃の範囲の外気温である。別の実施形態では、温度は、約18℃〜30℃の範囲の外気温である。本発明の試薬及び方法によりサンプルを加工処理するのに使用されるアルカリ性pHは概して、約9〜約14のpHである。一実施形態では、外気温でのサンプル加工処理のためのpH範囲は、約10〜約13のpHである。別の実施形態では、外気温でのサンプル加工処理のためのpHは、約11〜約12.5のpHである。
【0022】
生物学的サンプルは、生物学的起源の任意の材料から構成されるか、又は生物学的起源の任意の材料を含有する任意の材料であり得る。サンプルとしては、ヒト及び動物の組織、血液、骨、皮膚、毛、植物の葉、種子、芽及び茎、細菌及び細胞培養物、ホルマリン固定した組織、保存用紙又は固体マトリックス(例えば、Whatman製のFTA紙)上にスポッティングした血液等が挙げられ得るが、これらに限定されない。サンプルは、生物学的材料のみを含有する必要はない。サンプルはまた、一片の布地上の体液のしみ、一片の木材に包埋された一片の組織又は毛の断片を含有するわずかなほこりのような物理学的マトリックス上又は物理学的マトリックス中の生物学的材料から構成されてもよい。
【0023】
本発明は、好適には自動化になじみやすい。本発明の方法を実施するのに要される様々な反応物及び構成成分は、キット形態で利便性よく供給され得る。かかるキットは、本発明のさらなる態様を表す。最も単純には、本発明のこの態様は、1つ又は複数のグリコールを含むサンプル由来の核酸の核酸の保管用のキットを提供する。本発明はまた、アルカリ及び1つ又は複数のグリコールを含むサンプル由来の核酸の加工処理用のキットを提供する。任意に、かかるキットには、緩衝液、塩、溶解剤(例えば、プロテイナーゼ)、キレート剤及び還元剤が含まれてもよい。
【0024】
本発明はまた、上述の方法を実施する際に利用することができる、通常はキット形態での試薬系も意図する。上記系は、少なくとも1つの保管や加工処理に十分な量で、生物学的サンプル中の核酸の保管や加工処理用に個々にパッケージングされる試薬を包含する。パッケージングされる試薬の使用説明書もまた通常含まれる。
【0025】
本発明の組成物は、長期安定性を有するという点で、保管や加工処理手順の自動化に使用することができ、したがって自動化機器において使用されてもよく、そこでは試薬が、保管や加工処理工程を実施するのに必要に応じて保管及び分配される。その場合、開示する安定な組成物を含有する生物学的サンプル由来のDNAを保管や加工処理するための自動手順で有用な密封パッケージが提供され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
[発明の詳細な説明]
本発明は、サンプルの保管、及び生物学的サンプル由来のDNAの保存のための組成物、方法及びキットを提供する。概して、試薬は、グリコール及び水溶性有機溶媒又は溶媒のミックスを含む。予期せぬことに、グリコール化合物単独は、外気温で数ヶ月間保管される生物学的サンプル中のDNAを保存するのに十分である。本発明は、有毒な有機化学物質を必要とせずに、高い効率で生物学的サンプルからDNAを抽出する新規の試薬を提供する。本発明はまた、新規の試薬を含むDNAを精製するための方法及びキットも提供する。
【0027】
水溶性有機溶媒は、低級アルコールを含む。アルコールは、アルコール、好ましくは炭素数1〜10を有する低級アルコールに関して一般的に使用される専門用語の意味で意図される。一実施形態では、低級アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール又はt−ブタノール、並びにグリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリエチレングリコール、並びにそれらの混合物から選択される。別の実施形態では、アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール及び2−プロパノールから成る群から選択される。別の実施形態では、アルコールは、エタノール、イソプロパノール或いはそれらの誘導体又は混合物から成る群から選択される。
【0028】
本発明の方法における使用に適したアルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール)濃度(最終濃度)は、約25%〜約75%、約40%〜約60%、約45%〜約55%、及び約50%〜約54%である。
【0029】
適切なポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリプロピレングリコールが挙げられる。適切なPEGは、Spectrum Laboratory Products, Inc,(Gardena, CA)、分子量200、カタログ番号PO107)から得ることができる。ポリエチレングリコール(PEG)の分子量は、約200〜約10000の範囲であり得る。特定の実施形態では、約200の分子量を有するPEGが使用される。一実施形態では、PEG濃度は、約0.5%〜約20%である。他の実施形態では、PEG濃度は、約0.1%〜約10%、約25%〜約100%の範囲である。
【0030】
本発明で有用な「ポリエチレングリコール」又は「PEG」は、200〜10000ダルトン、より好ましくは約200〜300ダルトンの分子量を有する市販のジオールである。他の分子量制約を有する(例えば、10000ダルトンを超える)PEGの使用もまた、本発明の組成物及び方法における使用に関して意図されるが、おそらく高収率/品質の生成物を提供するのに有効ではない。
【0031】
一実施形態では、本発明のグリコール化合物は、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレン及びプロピレングリコール(エチレン及びプロピレングリコールモノマー並びにポリマー、例えば低分子量(600未満)のポリエチレングリコール及び低分子量(600未満)のプロピレングリコールを含む)、グリセロール、長鎖PEG 8000(約180個のエチレンモノマー)、メチルプロパンジオール、メチルプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、オクチルフェノール−ポリエチレングリコールエーテル(Triton(登録商標)X−100)、PEG−4〜PEG−100及びPPG−9〜PPG−34、ペンチレングリコール、ポリエチレングリコール200(PEG 200、約4個のエチレンモノマー)、ポリエチレングリコール、ポリグリコール、ポリオキシエチレンセチルエーテル及びオクチル−ポリエチレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル(BRIJ(登録商標)52)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(BRIJ(登録商標)35)、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチルプロパンジオール、トリプロピレングリコールを含む。
【0032】
別の実施形態では、本発明のグリコール化合物は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリコール及びグリコール誘導体(ポリオキシエチレンラウリルエーテル(BRIJ(登録商標)35)、オクチルフェノール−ポリエチレングリコールエーテル(Triton(登録商標)X−100)及びポリオキシエチレンセチルエーテル(BRIJ(登録商標)52)を含む)を含む。本発明の好ましい有機溶媒は、ポリエチレングリコール及びグリコール誘導体である。最も好ましい溶媒は、ポリエチレングリコールである。
【0033】
保管試薬
本発明の保管試薬は、約−80℃〜約50℃の範囲の温度で保管される生物学的サンプル中のDNAを保存する。本発明における生物学的サンプルの優先的な保管は、外気温(18〜25℃)である。本発明の保管試薬は、生物学的サンプルを外気温で数ヶ月間保管することを可能にする。これらの試薬とともに使用される生物学的サンプルは、生物学的材料に由来するか、又は生物学的材料を含有する任意の固形物或いは流体であり得る。全血、生体液又は組織フラグメントは全て、本発明の保管試薬中で保管することができる。
【0034】
本発明の保管条件下では、DNAは、数日以上〜数ヶ月以上の間、二本鎖又は一本鎖形態のいずれかで保存され得る。一実施形態では、組成物は、約25℃で少なくとも30日間安定である。一実施形態では、組成物は、約25℃で少なくとも60日間安定である。一実施形態では、組成物は、約25℃で少なくとも90日間安定である。
【0035】
サンプル保管及びDNA保存に関して、保管試薬は、約25%〜最大約100%の範囲の試薬の最終濃度に匹敵するように固体又は流体生物学的サンプルへ添加され得る。保管試薬は、非水性試薬として、或いは水含有溶液又は分散液として使用することができる。
【0036】
本発明の試薬単独では、室温で数ヶ月間、DNAを保存するのに十分である。さらに、本発明の試薬はまた、塩、キレート剤及び洗浄剤のような添加剤も含むことができ、それらは、DNAの可溶化及びPCR阻害剤の不活性化を促進する。これらの添加剤は、分散液或いは水溶液又は非水溶液のいずれかとして保管試薬に添加され得る。
【0037】
保管試薬はまた、アルカリ性添加剤も含むことができる。アルカリ性添加剤は、約pH8、9、10、11、12又は13より高い(最高約pH13.8で)保管サンプルのpHを保証するのに十分な量で存在し得る。アルカリ性添加剤は、保管試薬中でのDNAの溶解度を促進する。
【0038】
本発明の予期せぬ特徴は、DNAが、最大約75%の有機溶媒の濃度を有するアルカリ性保管試薬中で実質的に可溶性であることである。低級アルコール及びポリエチレングリコールは、DNA及びRNAを沈殿させるのに使用されている。本発明の試薬中でのDNAの溶解度は、必要であれば、サンプルの分取量を採取して、続く分析用に残りを保管することを可能にする。従来特許'718号の試薬及び方法は、保管サンプル中のDNAの沈殿につながる。これは、分取量を採取することを困難とさせ、DNA分析のためのサンプル全体の加工処理を要する。
【0039】
一実施形態では、DNAは、保管溶液中で実質的に可溶性形態で留まる。一実施形態では、DNAは、保管溶液中で安定な実質的に可溶性形態で留まり、ここで保管溶液は、高PEG濃度を含有する。
【0040】
本明細書中で使用する場合、「実質的に可溶性形態」は、核酸が安定な形態で存続することを意味し、ここで少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%又はそれ以上が沈殿することなく溶液中に存続する。
【0041】
pH10又はそれ以上で、アルカリ性添加剤は、タンパク質を変性及び不活性化させて、タンパク質−DNA複合体を解離させて、RNAを加水分解して、したがってDNAの分析に使用される生体液の感染性を減少又は根絶させる。有機塩基又は無機塩基或いは塩基のミックスが、本発明においてアルカリ性添加剤として使用され得る。例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、テトラメチルグアニジン及びトリオクチルアミンが挙げられる。これらの塩基に代わって、他の強力な塩基を使用してもよいことは、当業者に理解されよう。サンプルが10以下のpHで保管試薬を用いて保管される場合、DNAは、二本鎖形態で保存される。約10より高いpHでは、DNAは、一本鎖形態へ解離される。
【0042】
一実施形態では、本明細書で調製される混合物中のアルカリの最終濃度は、約10〜約90mMの範囲である。一実施形態では、上記方法は、1容量部の血清又は血漿と、約4容量部の約20mMアルカリの保管溶液との混合物を形成することを包含する。
【0043】
保管試薬は、塩又は塩のミックスをさらに含むことができる。請求項1の保管試薬は、約1mM〜約0.8Mの範囲の濃度で塩又は塩のミックスをさらに含む。
【0044】
概して、塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム及びアンモニウムの酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、エチレンジアミン、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩並びに塩化物塩を含有する群から選択される。一実施形態では、適切な塩としては、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化リチウム(LiCl)、塩化バリウム(BaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化カルシウム(CaCl)、塩化マグネシウム(MgCl)、塩化アンモニウム(NHCl、NHSO)及び塩化セシウム(CsCl)の1つ又は複数が挙げられる。一実施形態では、塩化ナトリウムが使用される。一般的に、塩の存在は、核酸分子の負の電荷の反発を最低限に抑えるように機能する。上記方法における使用に適した広範囲の塩により、多くの他の塩もまた使用することができることが示され、適切なレベルは、当業者により実験的に確定することができる。塩濃度は、約0.1M〜約5M、約0.15M〜約4M、及び約0.2M〜約1Mであり得る。
【0045】
保管試薬は、非イオン性作用物質をさらに含むことができる。一実施形態では、非イオン性作用物質は、Brij界面活性剤、オレイル界面活性剤、Igepal CO−990、Tween20、Tween 40、Tween 60、Tween 80、Triton X−405、Triton X−100、Tetronic 908、コレステロールPEG 900、ポリオキシエチレンエーテル W−1、Span 20、Span 40、Span 85、アゾン及びそれらの混合物から成る群から選択される。別の実施形態では、非イオン性作用物質は、Brij 30、Brij 35、Brij 36、Brij 52、Brij 56、Brij 58、Brij 72、Brij 76、Brij 78、Brij 92、Brij 96、Brij 97、Brij 98、Brij 98/99、及びそれらの組合せから成る群から選択されるBrij界面活性剤である。別の実施形態では、非イオン性作用物質は、Brij 35又はBrij 52のBrij界面活性剤である。
【0046】
さらに、保管溶液の実施形態で、他の成分が包含され得ること、例えば50mM〜6M、好ましくは200mM〜400mMの濃度でのカオトロピック塩が溶液中に包含され得ることが想定される。
【0047】
保管試薬中の塩又は塩のミックスは、pH約2〜pH約13.8の範囲で試薬のpHを維持する緩衝液を構成し得る。概して、塩の添加は、DNAを安定化して、DNAの二本鎖構造を維持するのを助長する。
【0048】
本発明の試薬及び方法は、ヒト、動物、植物、真菌、酵母及び細菌起源のサンプルを含む固体並びに流体生物学的サンプル中のDNAを保管及び保存するのに使用することができる。保存されるDNAは、医学的目的、薬学的目的、法医学的目的、診断目的又は科学的目的を含む様々なDNA分析で使用され得る。保管後の分析としては、PCR、ハイブリダイゼーション、一本鎖コンホメーション多型、制限フラグメント長多型及びDNAシーケンシングが挙げられる。
【0049】
これらの方法の際の条件は、重要ではない。混合は、例えばかき混ぜること又はボルテックスすることによる単純な攪拌を含む任意の利便性のよい手段により実施することができる。また、望ましい場合、より高温又はより低温を使用してもよいが、必須ではない。
【0050】
加工処理試薬
本発明はまた、精製することなく直接的にPCRで使用するための生物学的サンプルを加工処理するための試薬及び方法を提供する。これらの加工処理試薬及び方法は、本発明の保管試薬及び方法に適合可能である。予期せぬことに、生物学的サンプルと加工処理試薬との短い3〜5分の外気温インキュベーションは、精製することなくPCRのために直接的にサンプルの分取量を使用するのに十分なサンプルの溶解、DNAの放出及びPCR阻害剤の不活性化をもたらす。サンプルによっては、約80℃〜約100℃の範囲の温度で3〜10分の加熱を要するものもある。
【0051】
本発明のサンプル加工処理試薬及び方法は、グリコール又はグリコール誘導体の存在下で実施されるサンプルのアルカリ性溶解を用いる。本発明で使用されるグリコール及びグリコール誘導体は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリコール及びグリコール誘導体(ポリオキシエチレンラウリルエーテル(BRIJ(登録商標)35)、オクチルフェノール−ポリエチレングリコールエーテル(Triton(登録商標)X−100)及びポリオキシエチレンセチルエーテル(BRIJ(登録商標)52)を含む)を含む。本発明の好ましい加工処理試薬は、ポリエチレングリコール及びポリエチレングリコール誘導体である。最も好ましい加工処理試薬は、ポリエチレングリコールである。
【0052】
加工処理試薬中のグリコールの濃度は、約25%〜約100%の範囲である。一実施形態では、加工処理試薬中のグリコールの濃度は、約50%〜約70%である。
【0053】
生物学的サンプルは、約0℃〜約100℃の範囲の温度で、本発明の試薬及び方法によりPCRにおける使用のために加工処理され得る。一実施形態では、温度は、約10℃〜45℃の範囲の外気温である。別の実施形態では、温度は、約15℃〜35℃の範囲の外気温である。別の実施形態では、温度は、約18℃〜30℃の範囲の外気温である。別の実施形態では、温度は、約18℃〜25℃の範囲の外気温である。
【0054】
本発明の試薬及び方法によりサンプルを加工処理するのに使用されるアルカリ性pHは概して、約9〜約13.8のpHである。一実施形態では、外気温でのサンプル加工処理のためのpH範囲は、約10〜約13.5のpHである。別の実施形態では、外気温でのサンプル加工処理のためのpH範囲は、約11〜約13のpHである。
【0055】
加工処理試薬は、比較的低濃度の塩基(例えば、水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属又は水酸化アンモニウム)の存在により強力に塩基性である。これらの塩基に代わって、他の強塩基が使用され得ることは、当業者に理解されよう。塩基は通常、約10mM/L〜約0.5M/Lの最終濃度で存在する。一実施形態では、塩基は、約10mM/L〜約0.3M/Lの最終濃度で存在する。別の実施形態では、塩基は、約10mM/L〜約35mM/Lの最終濃度で存在する。一実施形態では、アルカリの量は、約pH9を超えるサンプル加工処理試薬混合物のアルカリ度を維持するのに十分である。別の実施形態では、アルカリの量は、約pH10を超えるサンプル加工処理試薬混合物のアルカリ度を維持するのに十分である。別の実施形態では、アルカリの量は、約pH11を超えるサンプル加工処理試薬混合物のアルカリ度を維持するのに十分である。別の実施形態では、アルカリの量は、約pH11.5を超えるサンプル加工処理試薬混合物のアルカリ度を維持するのに十分である。別の実施形態では、アルカリの量は、約pH12を超えるサンプル加工処理試薬混合物のアルカリ度を維持するのに十分である。
【0056】
本発明による典型的な溶液では、塩基は、約15mM〜約25mMの水酸化ナトリウムである。本発明の状況では、高度に塩基性の溶液は、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12又は少なくとも約13のpHを有する溶液である。
【0057】
このpH範囲では、ほとんどのサンプルが、室温で最低約1〜3分間のグリコール試薬とのインキュベーションにより有効に加工処理される。幾つかのサンプルを用いる場合、例えば乾燥血液又はグラム陰性菌を伴うカードを用いる場合、約25℃〜最大約100℃の範囲の高温でのインキュベーションを要する。別の実施形態では、インキュベーション温度は、約50℃〜約90℃である。別の実施形態では、インキュベーション温度は、約70℃〜約90℃である。本発明の試薬を用いて加工処理した後、サンプル溶解産物は、任意のさらなる工程を伴わずにPCRにおいて使用する準備が整っている。サンプル溶解産物の分取量は、PCRミックスへ添加されて、所望のDNAフラグメント(複数可)を増幅させる。ほとんどのサンプルにおいて、アルカリ性サンプル溶解産物のpH調節は、本発明の方法では必要でない。これは、PCR及び他のDNA用途における使用のためのサンプルの加工処理を簡素化する。
【0058】
いかなる場合でも理論により拘束されることを望まないが、本発明のサンプル加工処理方法におけるpH調節の必要性がないことは、グリコールの予期せぬ特性の結果であると考えられる。ここでは、アルカリ性水溶液中で、グリコールは塩基のように作用し、溶液のアルカリ度に有意に寄与することが開示される。グリコールのアルカリ性効果は、プロピレングリコール及びグリコールポリマーで観察され、エチレングリコールモノマーでは観察されない。トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール200(PEG 200、約4個のエチレンオキシドモノマー)、長鎖ポリエチレングリコール8000(PEG 8000、約180個のエチレンオキシドモノマー)、ポリオキシエチレンセチルエーテル、セチルフェノール−ポリエチレングリコールエーテル及びポリオキシエチレンセチルエーテルは全て、アルカリ性効果を示す。
【0059】
20mM KOHのみを含有する水溶液は、pH12.3を有するのに対して、20mM KOH及び60%PEG 200を含有する溶液は、pH13.3を有する。同様に、30mM KOHは、pH12.4を有し、30mM KOH及び60% PEG 200を含有する溶液は、pH13.5を有する。したがって、60%PEG 200は、OHイオンの濃度の約10倍の増加を引き起こす。このアルカリ性効果は、様々な程度で、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリコール、Brij 35、BRIJ 58及びTritonX−100を含むグリコールで観察される。OH濃度の最も顕著な増加は、ポリエチレングリコールで観察される。
【0060】
ポリエチレングリコールのアルカリ性効果は、水溶液のpHが約9を超える場合に有意となり、一般的に約11を超えるpHで増加する。ポリエチレングリコールのアルカリ性効果はまた、濃度依存的である。有意なpH増加に関して、ポリエチレングリコール濃度は、約10%を超えるべきである。これらの特性が、ポリエチレングリコールを、本発明のサンプル保管及び加工処理のための好ましい試薬とする。
【0061】
ポリエチレングリコール−サンプル溶解産物の分取量は、例えばPCRミックスの最終容量の0.1容量又はそれ未満を構成する。10倍希釈により、ポリエチレングリコール濃度が10%以下へ減少され、そのアルカリ性効果は、非常に減少する。したがって、生じるPCR反応混合物は、PCR緩衝液の緩衝範囲内であり、pH調節は必要でない。
【0062】
PCRミックス中のサンプル溶解産物の量は、サンプル中のDNAの量に応じて様々であり得る。通常、PCRに使用されるサンプル溶解産物は、約0.01ng〜200ngを含む。DNAの好ましい量は、約1ng〜約20ngの範囲である。
【0063】
アルカリ性効果は、グリコールモノマーであるエチレングリコールでは観察されない。アルカリ性pHでは、エチレングリコールは、酸として作用し、本発明のサンプル加工処理方法において有益ではない。ペンタンジオール及びポリアルコール(例えば、グリセリン)は、アルカリ性効果を示さない。
【0064】
PCR中のポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル及びポリオキシエチレンセチルエーテルの存在は、DNA増幅をPCR阻害剤に対して感受性を低くさせ、所望のDNAフラグメントの増幅の有意な増加をもたらすことが、本発明でさらに開示される。PCRミックス中のポリエチレングリコールの好ましい濃度は、約2%〜約10%であり、ポリオキシエチレンラウリルエーテル及びポリオキシエチレンセチルエーテルの好ましい濃度は、約0.5%〜約2%である。
【0065】
一般的な手順
サンプルに一定容量の保管試薬を添加する。サンプルを攪拌して、その結果、実質的に全てのサンプルが、保管試薬と接触する。保管試薬中のサンプルは、即座にDNA加工処理に使用され得るか、或いは少なくとも10日、20日、30日、40日、50日、60日又はそれ以上の日数の間、外気温で保管され得る。
【0066】
保管後に、1〜50容量の加工処理試薬を、サンプルを含有する保管試薬に添加して、溶液を完全に混合する。DNA抽出に関して、加工処理溶液は、DNAの加工処理のための最適pH及び塩条件を提供する。
【0067】
或いは、生物学的サンプルは、加工処理試薬中に直接浸浸させることでき、PCR又は他のDNA分析に使用することができる。
【0068】
本明細書中に記載する試薬及び方法の結果として、細胞由来のゲノム核酸を保管及び加工処理する迅速且つ容易に自動化可能な方法が現在利用可能である。開示される方法により加工処理された核酸は、核酸を要する分子生物学用途、例えばDNAシーケンシング鋳型の調製、マイクロインジェクション、哺乳類細胞のトランスフェクション又は形質転換、RNAiヘアピンのin vitroでの合成、逆転写クローニング、cDNAライブラリー構築、PCR増幅及び遺伝子療法研究に、並びに形質転換、制限エンドヌクレアーゼ又はマイクロアレイ分析、選択的RNA沈殿、in vitro転位、マルチプレックスPCR増幅産物の分離、DNAプローブ及びプライマーの調製、及び脱鋳型(detemplating)プロトコルを含むがこれらに限定されない他の用途に使用することができる。
【0069】
本明細書中に記載する試薬及び方法は、米国特許第5,705,628号及び同第5,898,071号、並びにPCT国際公開WO99/58664号(これらの内容は、参照により本明細書に援用される)に記載されるものを含む様々な核酸精製技法とともに使用することができる。
【0070】
ヒト、動物、植物、酵母、真菌、細菌及びウイルス起源のサンプルを包含する生物学的サンプル(固体又は流体)は、保管や加工処理のために本発明の試薬と混合され得る。血液を含む生物学的流体は、真空下で、保管や加工処理用の本発明の試薬を含有するチューブへ収集され得る。
【0071】
本発明の試薬及び方法は、Invitrogen(Carlsbad. CA)製のPlatinium(登録商標)及びAccuPrime(商標)ポリメラーゼ、Sigma(St Louis, MO)製のSigma Taq、並びにタカラバイオ株式会社(日本国瀬田)製のTakara Ex Taq(商標)を含む様々なDNAポリメラーゼを用いてDNAフラグメントを増幅するために直接的なPCRに使用することができる。
【0072】
一実施形態では、1つ又は複数のさらなる構成成分が試薬へ添加されてもよい。一実施形態では、1つ又は複数のさらなる構成成分が保管試薬へ添加されてもよい。一実施形態では、1つ又は複数の緩衝液、塩、安定剤、溶解剤、キレート剤や還元剤が、試薬ミックスへ添加される。湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム)並びに着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤及び芳香剤、防腐剤及び酸化防止剤もまた組成物中に存在し得る。
【0073】
許容可能な酸化防止剤の例としては、水溶性酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等)、油溶性酸化防止剤(例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロール等)、及び金属キレート剤(例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等)が挙げられる。
【0074】
キレート剤は、金属イオンをキレートするのに有効な任意の組成物であり得る。キレート剤はまた、DNAアーゼ阻害剤として機能を果たすという利点を提供する。本発明における使用に適したキレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、クエン酸、サリチル酸塩(例えば、サリチル酸ナトリウム、5−メトキシサリチル酸塩(5-methoxysalicytate)及びホモバニリン酸塩)、コラーゲンのN−アシル誘導体、ラウレス−9及びβ−ジケトンのN−アミノアシル誘導体(エナミン)が挙げられる。他のキレート剤が、単独で或いは組み合わせて使用され得ることが当業者に理解されよう。キレート剤は、1〜500mM、通常1〜100mM、好適には約25mMの濃度で存在し得る。
【0075】
安定剤は、例えば、メタケイ酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、セスキケイ酸ナトリウム、アルミノケイ酸ナトリウム、フルオロケイ酸ナトリウムであってもよく、約1mM〜約500mM、通常1〜100mM、好適には約25mMの濃度で存在し得る。
【0076】
任意に存在する緩衝液は、pH緩衝液として作用し得る任意の作用物質であり得る。かかる作用物質は、当該技術分野で既知であり、ピロリン酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム、カルボン酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸三ナトリウム、フルオロホウ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム及び三リン酸ナトリウムが挙げられる。緩衝液は、0〜500mM、通常1〜200mM、好適には約25〜150mMの濃度で存在し得る。
【0077】
任意に、別の実施形態では、少なくとも1つの酸化防止剤が、本発明の溶液へ添加され得る。一実施形態では、酸化防止剤は、BHA、BHT、没食子酸オクチル又は没食子酸ドデシル、SO(例えば、亜硫酸ナトリウム又はチオ亜硫酸ナトリウムの形態で)、乳酸、クエン酸、酒石酸やその塩、ビタミンC、ビタミンE並びに尿酸及びその塩から成る群から選択される。尿酸及びその塩は、約0.01〜約1重量%の濃度で添加されることが好ましく、ビタミンCは、約0.01〜2重量%の濃度で添加されることが好ましく、ビタミンEは、約0.01〜約0.1重量%の濃度で添加されることが好ましい。
【0078】
使用される防腐剤は、サリチル酸塩(好ましくは約0.01〜約0.5重量%)、PBHエステル(好ましくは約0.05〜約0.6重量%)、イミダゾリジニル尿素誘導体(好ましくは約0.01〜約0.6重量%)、クロロヘキシジン、NIPA−ESTER(登録商標)又は抗生物質であり得る。
【0079】
上記方法では、DNAは、アルコール沈殿され得るか、或いは酸沈殿されてもよく、当該技術分野で既知の溶液で洗浄して、他の状況ではDNAとともに同時精製される特異的な混入物を除去し得る。かかる混入物の例は、RNA、エンドトキシン、植物樹脂及びポリフェノール系化合物である。洗浄溶液は通常、低濃度のカオトロピック剤及びアルコール(例えば、エタノール又はイソプロパノール)を含む。例えば、洗浄溶液は、1Mの塩酸グアニジン及び60%エタノールを含んでもよい(pH7.0)。このインキュベーション後、DNAは、遠心分離、真空、ポンピング又は当該技術分野で既知の他の方法により回収される。
【0080】
上記で付与される手順は、多くの変形がDNAの精製の当業者により成され得るように可能であるため、限定的であると意図されない。このようにして包括的に記載される本発明は、以下の実施例を参照することにより、より容易に理解され、以下の実施例は、説明の目的で提供されるものであり、本発明を限定するものであると意図されない。
【0081】
試薬キット
本発明はまた、上述の方法を実施する際に利用することができる、通常はキット形態での試薬系を意図する。上記系は、少なくとも1つの保管や加工処理に十分な量で、生物学的サンプル中の核酸の保管や加工処理用の個々にパッケージングされる試薬を包含する。パッケージングされる試薬の使用説明書もまた通常含まれる。
【0082】
本明細書中で使用する場合、「パッケージ」という用語は、定められた限度で、本発明の試薬を保持することが可能な固体マトリックス又は材料(例えば、ガラス、プラスチック、紙、箔等を指す。「使用説明書」は通常、試薬濃度、或いは少なくとも1つのアッセイ法パラメータ(例えば、混合されるべき試薬及びサンプルの相対量、試薬/サンプル混合物に関する維持期間、温度、緩衝液条件等)について記載する明白な表現を包含する。診断系に関して本明細書中で論述されるパッケージング材料は、診断系で通例利用されるものである。かかる材料としては、ガラス及びプラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリカーボネート)瓶、バイアル、プラスチック及びプラスチック箔積層エンベロープ等が挙げられる。
【0083】
具体的には、本発明は、1つ又は複数の容器を、緊密に閉じ込めた中に収容するための区分されたキットを提供する。この容器には、(a)本発明の保管試薬又は本発明の加工処理試薬を含む第1の容器、及び(b)以下の:緩衝液試薬、塩、アルカリ、防腐剤、中和緩衝液、アルコール、サンプル収集チューブ及び説明書、の1つ又は複数を含む1つ又は複数の他の容器を含む。
【0084】
一実施形態では、本発明は、1つ又は複数の容器を、緊密に閉じ込めた中に収容するための区分されたキットを提供する。この容器には、(a)本発明の保管試薬を含む第1の容器、(b)本発明の加工処理試薬を含む第2の容器、(c)緩衝液試薬、塩、アルカリ、防腐剤、中和緩衝液、アルコール、サンプル収集チューブ及び説明書、の中から1つ又は複数を含む1つ又は複数の他の容器を含む。
【0085】
幾つかのキットでは、細胞の培養で使用される複数のチューブ、例えばLid−Bacチューブ(米国特許第5,958,778号及び同第6,503,455号(参照により本明細書に援用される)もまた包含され得ることが規定される。これらのチューブにより、標的細胞の培養、並びにこれら同じ細胞の保管、加工処理及び可溶化は、本発明の試薬及び方法を使用して、全てを単一のチューブで達成することが可能となる。
【0086】
溶液構成成分は、ほぼ任意の生物学的サンプル由来のDNAの最適な保管及び抽出を達成するように、種々の組合せで、また種々の濃度で組み合わせてもよいことは当業者に理解されよう。また、これらの添加剤に関して上述した塩(例えばナトリウム)は、他の適切な対イオンを含有する塩(例えばカリウム又はリチウム)で置き換えることができることも当業者に理解されよう。
【0087】
上記説明は、排他的ではなく説明的であることが当業者に理解されよう。実際に、様々な処理レジメンにおける本明細書中に記載される特定の組成物を使用するのに適した投薬及び処理レジメンの発展であるように、多くのさらなる配合物技法並びに薬学的に許容可能な賦形剤及びキャリア溶液が当業者に既知である。
【0088】
別記しない限り、本明細書中で使用する技術用語及び科学用語は全て、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるのと同義を有する。本明細書中に記載するものに類似又は等価な任意の方法及び材料は、本発明の実施又は試験で使用することができ、好ましい方法及び材料がここで記載されている。言及した刊行物は全て、参照により本明細書に援用される。別記しない限り、本明細書中で使用又は意図される技法は、当業者に既知の標準的な方法論である。材料、方法及び実施例は、単なる説明であり、限定的ではない。
【実施例1】
【0089】
ヒト全血を、K2EDTA 10.8mgを含有する5mlのBD Vacutainer(登録商標)へ収集する。全血分取量0.4mlを、PEG200を含有する保管試薬0.8mlと混合して、混合物は室温(18℃〜23℃)で保管する。
【0090】
保管の177日後に、血液−PEG混合物の5μl分取量を収集して、60%PEG200及び20mM KOHを含有する加工処理試薬50μlへ添加する。得られた血液溶解産物を、室温(24℃)で3分間インキュベートして、2μl分取量を、PCRミックス20μlへ添加する。PCRは、626bp(GAPDH遺伝子)及び434bp(GAPDH偽遺伝子)DNAフラグメントを包含するhGAPDHプライマーを使用して、Platinum(登録商標)Taqポリメラーゼキット(Invitrogen, Carsbad CA)を用いて実施する。増幅は、60℃で30サイクル行われる。増幅したDNAは、1%アガロースゲル中で電気泳動して、臭化エチジウム染色により、626及び434bp hGAPDH DNAフラグメントの存在が明らかとなる。
【実施例2】
【0091】
ヒト全血を、5mlの血液Vacutainerへ収集する。血液5μlを、実施例1と同様に保管試薬と混合する。得られた溶解産物を、室温で5分間インキュベートする。インキュベートした溶解産物2μlを、PCRミックス20μlへ添加して、PCRは、ヒトベータ−グロビン遺伝子の5kbフラグメントを包含するプライマーを使用して、Takaraポリメラーゼを用いて実施する。増幅は、65℃で35サイクル行われる。増幅したDNAは、1%アガロースゲル中で電気泳動して、臭化エチジウム染色により、5kb hGAPDH DNAフラグメントの存在が明らかとなる。
【実施例3】
【0092】
ヒト唾液の0.1mlサンプルを、60%PEG 200及び20mM KOHを含有する加工処理試薬2mlと混合して、室温で保管する。保管の70日後に、2μl分取量を、PCRミックス20μlへ添加する。PCRは、221bpフラグメントを包含するhGAPDHプライマーを使用して、Sigma(登録商標)Taqポリメラーゼキット(Sigma St.Louis, MO)を用いて実施する。増幅は、60℃で35サイクル行われる。増幅したDNAは、1%アガロースゲル中で電気泳動して、臭化エチジウム染色により、221bp hGAPDHフラグメントの存在が明らかとなる。
【実施例4】
【0093】
さらに、ラットの肝臓フラグメント56mgを、PEG200を含有する保管試薬0.5ml中に浸浸させる。室温での保管の5週後、フラグメントを、60%PEG200及び16mM KOHを含有する加工処理試薬0.56ml中にピペットチップを用いて分散させて、80℃で5分間インキュベートする。得られた溶解産物の2μl分取量を、PCRミックス20μlへ添加する。PCRは、221bpフラグメントを包含するラットGAPDHプライマーを使用して、Sigma(登録商標)Taqポリメラーゼキット(Sigma St. Loius, MO)を用いて実施する。増幅は、60℃で35サイクル行われる。増幅したDNAは、1%アガロースゲル中で電気泳動して、臭化エチジウム染色により、221bp hGAPDHフラグメントの存在が明らかとなる。
【実施例5】
【0094】
ルテウス菌(Micrococcus luteus)の培養物を、50%PEG200及び16mM NaOHを含有する加工処理試薬中に懸濁させる。細菌DNA0.4ngを含有する懸濁液の5μl分取量をPCRミックスへ添加する。PCRは、16S rRNA遺伝子の700〜800DNAフラグメントを包含するプライマーを使用して、60℃での35回増幅サイクルで、Sigma Taqポリメラーゼを用いて実施する。増幅したDNAは、1%アガロースゲル中で電気泳動して、臭化エチジウム染色により、700〜800bp DNAフラグメントの存在が明らかとなる。
【実施例6】
【0095】
ヒトの指の爪の0.1mgサンプルを、50%PEG200、16mM KOH及び0.1%Triton X−100を含有する加工処理試薬とともに、88℃で15分間インキュベートする。インキュベーション混合物2.5μlをPCRミックスへ添加する。PCRは、626及び434bpフラグメントを包含するhGAPDHプライマーを使用して、Platinum Taqポリメラーゼを用いて実施する。増幅は、60℃で35サイクル行われる。増幅したDNAは、1%アガロースゲル中で電気泳動して、臭化エチジウム染色により、626及び434bp hGAPDHフラグメントの存在が明らかとなる。
【実施例7】
【0096】
ニワトリ肝臓(11mg)及びニワトリ羽先を、50%PEG200及び16mM KOHを含有する加工処理試薬0.1ml中で86℃で15分間、個々にインキュベートする。肝臓溶解産物0.05μlに相当する希釈分取量及び羽溶解産物の5μl分取量を、別個のPCRミックスへ添加する。PCRは、202bpフラグメントを包含するニワトリベータ−アクチンプライマーを使用して、Sigma Taqポリメラーゼを用いて実施する。35回の増幅サイクルは、60℃で行われる。増幅したDNAは、1%アガロースゲル中で電気泳動して、臭化エチジウム染色により、加工処理したサンプルの両方において、202bpベータ−アクチンフラグメントの存在が明らかとなる。
【0097】
参照文献
1)Annuziata O., Asherie N., Lomakin A., Pande J., Ogun O.及びBenedek GB. 「水性タンパク質溶液における液液相転移に対するポリエチレングルコールの影響(Effect of polyethylene glucol on the liquid-liquid phase transition in aqueous protein solutions)」 2002, Proc. Natl., Acad. Sci. 10, 14165-14170
2)Ashen, N., Oellerich M.及びSchutz E, 「単一チューブの迅速サイクルPCRにおける干渉を伴わない2つのレポーター色素の使用:ライトサイクラーを用いたマルチプレックス実時間蛍光PCRによるα1−アンチトリプシン遺伝子型同定(Use of two reporter dyes without interference in a single-tube rapid-cycle PCR: α1-antitrypsin genotyping by multiplex real time fluorescence PCR with the LightCycler)」 2000, Clin. Chem. 46, 156-161
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14)Sandhu G.S., Precup J.W.及びKline B.C. 「形質転換された大腸菌コロニーの直接的な分析による組換えベクターの迅速な1段階特性化(Rapid One-step characterization of recombinant vectors by direct analysis of transformed Escherichia Coli colonies)」 1989, Biotechniques 7, 689-690
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
約−80℃〜約50℃の範囲の温度でDNAを有効に保存することが可能な量のグリコール、アルコール及びそれらの混合物を含む群から選択される有機溶媒を含むDNAを含有する、一生物学的サンプルを保管するための試薬。
【請求項2】
前記有機溶媒は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリコール及びグリコール誘導体並びにそれらの混合物から成る群から選択されるグリコールである、請求項1に記載の保管試薬。
【請求項3】
前記グリコールは、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(BRIJ35)、オクチルフェノール−ポリエチレングリコールエーテル(TritonX−100)及びポリオキシエチレンセチルエーテル(BRIJ52)並びにそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の保管試薬。
【請求項4】
前記グリコールは、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、約2個〜約4個のエチレンモノマーを有するポリエチレングリコール200、約180個のエチレンモノマーを有する長鎖PEG8000、ポリオキシエチレンセチルエーテル、オクチル−ポリエチレングリコールエーテル及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の保管試薬。
【請求項5】
前記有機溶媒は低級アルコールである、請求項1に記載の保管試薬。
【請求項6】
前記有機溶媒は、エタノール、イソプロパノール、2−プロパノール及びそれらの混合物から成る群から選択される低級アルコールである、請求項1に記載の保管試薬。
【請求項7】
前記有機溶媒は、グリコール及びアルコールの混合物である、請求項1に記載の保管試薬。
【請求項8】
前記有機溶媒の濃度は、非水性組成物又は水性組成物中で約25%〜約100%である、請求項1に記載の保管試薬。
【請求項9】
前記有機溶媒の濃度は、非水性組成物又は水性組成物中で約25%〜約75%である、請求項1に記載の保管試薬。
【請求項10】
前記有機溶媒の濃度は、非水性組成物又は水性組成物中で、低級アルコール約1%〜約15%、グリコール約15%〜約85%である、請求項1に記載の保管試薬。
【請求項11】
非イオン性作用物質、緩衝液、塩、安定剤、溶解剤、キレート剤、還元剤、湿潤剤、乳化剤、防腐剤及び酸化防止剤から成る群から選択される1つ又は複数の有機添加剤或いは無機添加剤をさらに含む、請求項1に記載の保管試薬。
【請求項12】
前記有機溶媒の濃度は、非水性組成物又は水性組成物中で、低級アルコール約1%〜約15%、グリコール約15%〜約85%、及び非イオン性作用物質約0.05%〜約10%である、請求項1に記載の保管試薬。
【請求項13】
前記非イオン性作用物質は、Brij界面活性剤、オレイル界面活性剤、Igepal CO−990、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、Triton X−405、Triton X−100、Tetronic 908、コレステロールPEG 900、ポリオキシエチレンエーテル W−1、Span 20、Span 40、Span 85、アゾン及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項12に記載の保管試薬。
【請求項14】
約1mM〜約0.8Mの最終濃度で塩をさらに含む、請求項1に記載の保管試薬。
【請求項15】
前記塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム及びアンモニウムの酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、エチレンジアミン、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩並びに塩化物塩、並びにそれらの混合物から成る群から選択される、請求項14に記載の保管試薬。
【請求項16】
前記塩又は塩のミックスは、pH約2〜pH約13.8の範囲で前記試薬のpHを維持する緩衝液を構成する、請求項14に記載の保管試薬。
【請求項17】
前記塩又は塩のミックスは、pH約10〜pH約13.8の範囲で前記試薬のpHを維持する緩衝液を構成する、請求項14に記載の保管試薬。
【請求項18】
水をさらに含む、請求項1に記載の保管試薬。
【請求項19】
アルカリをさらに含む、請求項1に記載の保管試薬。
【請求項20】
前記アルカリは、約pH10〜約pH13.8の前記試薬のpHを維持することが可能な有機アルカリ及び無機アルカリの群から選択される、請求項19に記載の保管試薬。
【請求項21】
前記アルカリ又はアルカリのミックスは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、トリオクチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化トリエチルフェニルアンモニウムを含有する群から選択される、請求項20に記載の保管試薬。
【請求項22】
請求項1に記載の保管試薬を含有する生物学的サンプル由来の核酸の保管のための自動手順で有用な密封パッケージ。
【請求項23】
各種供給源由来の核酸を保管するのに適した濃度で請求項1に記載の保管試薬を含む、核酸の保管用のキット。
【請求項24】
前記保管試薬は、約25%〜約75%の最終濃度でグリコールを含む、請求項23に記載の核酸の保管用のキット。
【請求項25】
約25%〜約75%の最終濃度で低級アルコールをさらに含む、請求項23に記載の核酸の保管用のキット。
【請求項26】
塩をさらに含む、請求項23に記載の保管用のキット。
【請求項27】
アルカリをさらに含む、請求項23に記載の保管用のキット。
【請求項28】
生物学的サンプルを保管して、DNAを保存する方法であって、以下の:
a)DNAを含む生物学的サンプルを得る工程と、
b)前記生物学的サンプルを、該サンプルの前記DNAを保存するのに有効な量の請求項1に記載の保管試薬と混合する工程と、
c)約−80℃〜約50℃の範囲の温度で、生じる混合物を保管する工程と
を含む、生物学的サンプルを保管して、DNAを保存する方法。
【請求項29】
前記保管試薬の最終濃度は、約25%〜約100%の範囲である、請求項28に記載の生物学的サンプルを保管して、DNAを保存する方法。
【請求項30】
前記保存されるDNAは、医学的目的、薬学的目的、法医学的目的、診断目的又は科学的目的を含むDNA分析で使用され得る、請求項28に記載の生物学的サンプルを保管して、DNAを保存する方法。
【請求項31】
PCR、ハイブリダイゼーション、一本鎖コンホメーション多型、制限フラグメント長多型及びDNAシーケンシングから成る群から選択される分析方法により、前記保管されるDNAを分析するさらなる工程を含む、請求項28に記載の生物学的サンプルを保管して、DNAを保存する方法。
【請求項32】
前記保存されるDNAは、約25℃での少なくとも30日間の保管に対して実質的に安定である、請求項28に記載の生物学的サンプルを保管して、DNAを保存する方法。
【請求項33】
前記保存されるDNAは、約25℃での少なくとも30日間の保管に関して二重鎖形態で維持される、請求項28に記載の生物学的サンプルを保管して、DNAを保存する方法。
【請求項34】
DNA分析における使用のためにDNAを含有する生物学的サンプルを加工処理するための試薬であって、有効に該サンプルを溶解させて、前記DNAを放出させて、且つ外気温でPCR阻害剤を不活性化させることが可能な量のアルカリ及びグリコールを含む、DNAを含有する生物学的サンプルを加工処理するための試薬。
【請求項35】
前記グリコール又はグリコールのミックスは、約25%〜約100%の範囲の濃度であり、前記グリコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリコール及びグリコール誘導体並びにそれらの混合物から成る群から選択される、請求項34に記載のDNAを含有する生物学的サンプルを加工処理するための試薬。
【請求項36】
前記アルカリ又はアルカリのミックスは、約11.5を上回るpHで溶解産物を維持するのに十分な濃度であり、前記アルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、トリオクチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化トリエチルフェニルアンモニウムを含有する群から選択される、請求項34に記載のDNAを含有する生物学的サンプルを加工処理するための試薬。
【請求項37】
洗浄剤又は洗浄剤のミックスをさらに含む、請求項34に記載のDNAを含有する生物学的サンプルを加工処理するための試薬。
【請求項38】
前記洗浄剤は、Brij界面活性剤、オレイル界面活性剤、Igepal CO−990、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、Triton X−405、Triton X−100、Tetronic 908、コレステロールPEG 900、ポリオキシエチレンエーテル W−1、Span 20、Span 40、Span 85、アゾン及びそれらの混合物から成る群から選択される非イオン性作用物質である、請求項37に記載のDNAを含有する生物学的サンプルを加工処理するための試薬。
【請求項39】
約1mM〜約0.8Mの最終濃度で塩をさらに含む、請求項34に記載のDNAを含有する生物学的サンプルを加工処理するための試薬。
【請求項40】
前記塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム及びアンモニウムの酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、エチレンジアミン、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩並びに塩化物塩、並びにそれらの混合物から成る群から選択される、請求項39に記載のDNAを含有する生物学的サンプルを加工処理するための試薬。
【請求項41】
前記塩は、約10のpHよりも大きいpHで前記試薬のpHを維持する緩衝液を構成する、請求項39に記載のDNAを含有する生物学的サンプルを加工処理するための試薬。
【請求項42】
前記塩は、約11.5のpHよりも大きいpHで前記試薬のpHを維持する緩衝液を構成する、請求項39に記載のDNAを含有する生物学的サンプルを加工処理するための試薬。
【請求項43】
水をさらに含む、請求項34に記載のDNAを含有する生物学的サンプルを加工処理するための試薬。
【請求項44】
有機溶媒又は溶媒のミックスをさらに含む、請求項34に記載のDNAを含有する生物学的サンプルを加工処理するための試薬。
【請求項45】
前記グリコールの濃度は、非水性組成物又は水性組成物中で、低級アルコール約10%〜約80%、及びグリコール約10%〜約75%である、請求項44に記載のDNAを含有する生物学的サンプルを加工処理するための試薬。
【請求項46】
前記有機溶媒の濃度は、非水性組成物又は水性組成物中で、低級アルコール約10%〜約80%、グリコール約20%〜約75%、及び非イオン性作用物質約0.05%〜約10%である、請求項44に記載のDNAを含有する生物学的サンプルを加工処理するための試薬。
【請求項47】
DNA分析のための生物学的サンプルを加工処理する方法であって、以下の:
a)DNAを含む生物学的サンプルを得る工程と、
b)前記生物学的サンプルを、該生物学的サンプルを溶解させて、該サンプルのDNAを放出させるのに有効な量の請求項34に記載の試薬と接触させる工程と、
c)PCR、ハイブリダイゼーション、一本鎖コンホメーション多型、制限フラグメント長多型及びDNAシーケンシングから成る群から選択される分析方法により、前記DNAを分析する工程と
を含み、前記分析はさらなる精製を伴わずに実施される、DNA分析のための生物学的サンプルを加工処理する方法。
【請求項48】
工程(c)に先立って、アルカリ化した生物学的サンプルを、外気温で約1分を上回る時間インキュベートするというさらなる工程を含む、請求項47に記載のDNA分析のための生物学的サンプルを加工処理する方法。
【請求項49】
工程(c)に先立って、アルカリ化した生物学的サンプルを、約25〜約110℃の温度で約5分を上回る時間インキュベートするというさらなる工程を含む、請求項47に記載のDNA分析のための生物学的サンプルを加工処理する方法。
【請求項50】
工程(c)に先立って、アルカリ化した生物学的サンプルを、約70〜約110℃の温度まで約5分を上回る時間加熱するというさらなる工程を含む、請求項47に記載のDNA分析のための生物学的サンプルを加工処理する方法。
【請求項51】
前記有効な量の試薬は、サンプル1容量当たり約100容量〜約0.1容量の前記試薬の範囲であり、インキュベーション時間は、最小限で1〜3分である、請求項47に記載のDNA分析のための生物学的サンプルを加工処理する方法。
【請求項52】
前記生物学的サンプルは、請求項1に記載の保管試薬中に予め保管されている、請求項47に記載のDNA分析のための生物学的サンプルを加工処理する方法。
【請求項53】
前記生物学的サンプルは、請求項28に記載の方法により予め保管されている、請求項47に記載のDNA分析のための生物学的サンプルを加工処理する方法。
【請求項54】
前記生物学的サンプルは、ヒト、動物、植物、真菌、細菌及びウイルスの流体或いは固体サンプルを含む、請求項47に記載のDNA分析のための生物学的サンプルを加工処理する方法。
【請求項55】
前記DNA分析は、ポリメラーゼ連鎖反応、DNAシーケンシング及びDNAハイブリダイゼーションを含む、請求項47に記載のDNA分析のための生物学的サンプルを加工処理する方法。
【請求項56】
前記試薬混合物又は前記混合物の分取量は、希釈または中和されて、該希釈または中和された混合物又は前記混合物の分取量が、DNA分析又は他のDNA用途に使用される、請求項47に記載のDNA分析のための生物学的サンプルを加工処理する方法。
【請求項57】
前記試薬混合物は、中和されて、沈降又は濾過されて、生じる上清又は濾液が、DNA分析に使用される、請求項47に記載のDNA分析のための生物学的サンプルを加工処理する方法。
【請求項58】
前記生物学的サンプルは、ヒト又は動物の血液であり、前記サンプルは、約12.5を上回るpHを有する混合物を得るのに有効な量の試薬と混合され、生じる混合物は、外気温で少なくとも1分間インキュベートされる、請求項47に記載のDNA分析のための生物学的サンプルを加工処理する方法。
【請求項59】
前記反応ミックスは、Brij 35、Brij 52又はそれらの混合物をさらに含む、請求項47に記載のDNA分析のための生物学的サンプルを加工処理のための方法。
【請求項60】
請求項34に記載の試薬を含有する生物学的サンプル由来の核酸の加工処理のための自動手順で有用な密封パッケージ。
【請求項61】
分析用の各種供給源由来の核酸を加工処理するのに適した濃度で請求項34に記載の試薬を含む、核酸の保管用のキット。
【請求項62】
前記試薬は、約20%〜約75%の最終濃度でグリコールを含む、請求項61に記載の核酸の保管用のキット。
【請求項63】
約1%〜約25%の最終濃度で低級アルコールをさらに含む、請求項61に記載の核酸の保管用のキット。
【請求項64】
塩をさらに含む、請求項61に記載の核酸の保管用のキット。

【公表番号】特表2008−526226(P2008−526226A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550352(P2007−550352)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/027127
【国際公開番号】WO2006/073497
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(507059613)モレキュラー リサーチ センター インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】