説明

EMM−3:新規結晶質微細孔物質

EMM−3(エクソンモービル物質第3号)は、四面体原子を橋かけすることが可能な原子によって結合された四面体原子の骨格を有する新規結晶質微細孔物質である。前記四面体原子の骨格は、その骨格内に四面体配位された原子間の相互結合によって定義される。EMM−3は、ヘキサメトニウムテンプレートによるアルミノホスフェート(AlPO)およびメタロアルミノホスフェート(MeAPO)組成物として調製できる。それは、特有のX線回折パターンを有し、それにより新規物質として同定される。EMM−3は、空気中焼成に対して安定であり、炭化水素を吸収し、炭化水素の転化に対する触媒活性がある。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
微細孔物質は、ゼオライトおよびシリコアルミノホスフェートを含めて、吸着剤、触媒および触媒担体として、石油産業で広く用いられる。それらの結晶構造は、均一な細孔開口、通路、および殆どの炭化水素に類似する寸法(<20Å)を有する内部籠を含む3次元骨格からなる。骨格の組成は、アニオン性のものでありうる。これは、負の荷電を均衡するために、非骨格カチオンが存在することを必要とする。これらの非骨格カチオンは、交換性であり、プロトン型に変換されると、前記物質に、触媒活性を有するブレンステッド酸点を付与する。酸性度、および限定された細孔開口の組み合わせにより、これらの物質は、多くの反応において、生成物、反応体および/または遷移状態のいくつかを排除または限定するその能力から、他の物質にはない触媒特性を与えられる。純粋のシリカおよびアルミノシリケート骨格などの非反応性物質もまた有用であり、液体、ガス、アルケンなどの反応性分子の吸着および分離プロセスで用いうる。
【0002】
モレキュラーシーブとして知られる結晶質微細孔組成物の群は、ゼオライトのイオン交換および/または吸着特性を示すが、これは、頭字語AlPOで識別されるアルミノホスフェート、並びに特許文献1および特許文献2に記載される置換アルミノホスフェートである。特許文献2は、頭字語SAPOで識別されるシリカアルミノホスフェートの種類を記載する。これは、そのX線回折パターンによって同定されるように、異なる構造を有する。構造は、AlPO、SAPO、MeAPO(Me=金属)等の後の数値によって同定される(非特許文献1)。これは、B、Si、Be、Mg、Ge、Zn、Fe、Co、Ni等によるAlおよびPの置換を含んでいてよい。本発明は、独特の骨格構造を有する新規モレキュラーシーブである。
【0003】
エクソンモービル他は、広く、フォージャサイト、モルデナイト、ZSM−5などの種々の微細孔物質を多くの商業用途で用いる。これらの用途には、改質、分解、水素化分解、アルキル化、オリゴマー化、脱ロウおよび異性化が含まれる。いずれの新規物質も、触媒性能を、現在用いられるそれらの触媒を超えて向上する潜在能力を有する。
【0004】
現在、国際ゼオライト協会(International Zeolite Association)が一覧表にした微細孔骨格構造が、135個を超えて知られる。多くの炭化水素プロセスの性能を向上するためには、これらの知られた物質のものとは異なる特性を有する新規構造に対する必要性が存在する。各構造は、独特の細孔、通路および籠寸法を有する。これは、上記されるように、特殊な特性を与える。EMM−3は、新規骨格物質である。
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,310,440号明細書
【特許文献2】米国特許第4,440,871号明細書
【特許文献3】米国特許第3,354,078号明細書
【非特許文献1】Proc.,7th Int.Zeolite Conf.(Flanigenら著、第103頁、1986年)
【非特許文献2】J.Mater.Chem.(C.Serre、G.Ferey著、第12巻、第2367頁、2002年)
【非特許文献3】Science(N.Zheng、X.Bu、B.Wang、P.Feng著、第298巻、第2366頁、2002年)
【非特許文献4】Acta Cryst.(M.R.Anderson、I.D.Brown、S.Vilminot著、第B29巻、第2626頁、1973年)
【非特許文献5】Journal of Solid State Chemistry(W.M.MeierおよびH.J.Moeck著、第27巻、第349頁、1979年)
【非特許文献6】Zeolites(M.O’KeeffeおよびS.T.Hyde著、第19巻、第370頁、1979年)
【非特許文献7】Atlas of Zeolite Framework Types(Ch.Baerlocher、W.M.Meier、およびD.H.Olson著、Elsevier、Amsterdom、2001年)
【非特許文献8】Microporous and mesoporous Materials(G.Sastre、J.D.Gale著、第43巻、第27頁、2001年)
【非特許文献9】J.Phys.Chem.(A.Tuelら著、第B104巻、第5697頁、2000年)
【非特許文献10】J.Am.Chem Soc.(H.Koller著、第121巻、第3368頁、1999年)
【非特許文献11】Acta Cryst.(S.HanおよびJ.V.Smith著、第A55巻、第332〜382頁、1999年)
【非特許文献12】Journal of Catalysis(第4巻、第527頁、1965年)
【非特許文献13】Journal of Catalysis(第6巻、第278頁、1966年)
【非特許文献14】Journal of Catalysis(第61巻、第395頁、1980年)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
EMM−3(エクソンモービル物質第3号)は、新規結晶質多孔性物質である。これは、橋かけ原子によって結合された四面体原子からなる骨格を有し、前記四面体原子からなる骨格は、その骨格内に四面体配位された原子間の相互結合によって定義される。EMM−3は、空気中焼成に対して安定であり、炭化水素を吸収し、炭化水素の転化に対する触媒活性がある。
【0007】
好ましい実施形態においては、新規結晶質物質は、メタロアルミノホスフェート化合物である。これは、組成RMeAl・nHO(式中、Rは有機化合物であり、MeはB、Ga、Si、Ge、Zn、Mg、Fe、Co、Ni、Be、Mn、TiおよびZrからなる群から選択される一種以上であり、しかもm=0.01〜1であり、x=0.00〜0.2であり、y=0.6〜1.2であり、z=0.6〜1.2であり、n=0.5〜10である)を有し、x=0の場合には表2、x>0の場合には表3に示す独特の回折パターンを有する。
【0008】
より好ましい実施形態においては、焼成結晶質メタロアルミノホスフェート化合物は、組成MeAl・nHO(式中、MeはB、Ga、Si、Ge、Zn、Mg、Fe、Co、Ni、Be、Mn、TiおよびZrからなる群から選択される一種以上であり、x=0.00〜0.2であり、y=0.6〜1.2であり、z=0.6〜1.2であり、n=0〜10である)を有し、n>0.2の場合には表4、n<0.2の場合には表5に示す独特の回折パターンを有する。
【0009】
本発明は、四面体および橋かけ原子の新規構造のサブユニットまたはカラムを含む。
【0010】
本発明は、表2または表3に類似の回折パターンを有する結晶質アルミノホスフェートまたはメタロアルミノホスフェート化合物を、アルミナ源、リン源、有機指向剤(organic directing agent)、水および任意の金属源を混合し、アルミノホスフェート、またはメタロアルミノホスフェートを結晶化するのに十分な温度および時間をかけて加熱することによって合成する方法である。
【0011】
本発明は、炭化水素を、炭化水素含有ストリームから分離するのにEMM−3を用いることを含む。
【0012】
本発明はまた、EMM−3を炭化水素転化触媒として用いて、有機原料材を転化生成物に転化することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、新規構造である。多孔性結晶質物質であればそうであるが、EMM−3の構造は、その骨格内に四面体配位された原子間の相互結合によって定義できる。特に、EMM−3は、橋かけ原子によって結合された四面体(T)原子からなる骨格を有し、四面体原子からなる骨格は、次の表1に示される方式で、直近の四面体(T)原子を結合することによって定義される。
【0014】
【表1】

【0015】
この新規結晶質メタロアルミノホスフェート化合物は、組成RMeAl・nHO(式中、Rは有機化合物であり、MeはB、Ga、Si、Ge、Zn、Mg、Fe、Co、Ni、Be、Mn、TiおよびZrからなる群から選択される一種以上であり、m=0.01〜1、x=0.00〜0.2、y=0.6〜1.2、z=0.6〜1.2、n=0.5〜10である)を有する。独特の回折パターンは、x=0(AlPO EMM−3)の場合には表2に、x>0(SAPO、MeAPO EMM−3)の場合には表3に示される。
【0016】
新規構造の他の実施形態には、組成MeAl・nHO(式中、Meは、B、Ga、Si、Ge、Zn、Mg、Fe、Co、Ni、Be、Mn、TiおよびZrからなる群から選択される一種以上であり、m=0.00〜0.1、x=0.00〜0.2、y=0.6〜1.2、z=0.6〜1.2、n=0〜10である)の焼成化合物が含まれる。この化合物は、n>0.2のときは表4、n<0.2のときは表5に示される独特の回折パターンを有する。
【0017】
これらの新規化合物は、アルミナ源、リン源、有機指向剤、水および任意の金属源を混合し、メタロアルミノホスフェートを結晶化するのに十分な温度および時間をかけて加熱するという方法によって作製される。本方法は以下に記載される。
【0018】
本発明の合成多孔性結晶質物質EMM−3は、独特の2次元通路系を有する結晶質相である。これは、直線状の、高度に楕円形の通路(そのいずれも、四面体配位原子の8員環によって定義される)と交差する、シヌソイド状の(sinusoidal)楕円通路(そのいずれも、四面体配位原子の12員環によって定義される)を含む。12員環通路は、橋かけ酸素原子間に約6.5オングストローム×約6.1オングストロームの断面寸法を有し、8員環通路は、約1.2オングストローム×約5.0オングストロームの断面寸法を有する。
【0019】
EMM−3の異なる化学組成形態間で、X線回折パターンの変化が生じうる。例えば、EMM−3の合成されたままのAlPO形態のX線回折パターンは、合成されたままのSAPO形態のそれとはかなり異なる。正確なEMM−3の構造は、その特定の組成により、また焼成および再水和されているか否かにより異なりうると考えられる。合成されたままのものと、焼成/水和されたものでは、試料は異なるX線回折パターンを有しうるが、焼成/脱水された形態は、非常に類似した回折パターンを有する。
【0020】
合成されたままの形態において、AlPO−EMM−3は特徴的なX線回折パターンを有し、その主要な線は表2に示される(反射配置および1°の発散スリットを用いて、CuKα放射により測定)。線強度は、最も強い線(I)(この場合は、約11.2Åにある第1の線)を参照している。特定の組成および構造内のその充填量の関数として変化が生じる。この理由から、強度およびd−間隔は範囲として示される。
【0021】
【表2】

【0022】
合成されたままの形態において、SAPO−EMM−3は特徴的なX線回折パターンを有し、その主要な線は表3に示される(反射配置および1°の発散スリットを用いて、CuKα放射により測定)。前と同様、線強度は、最も強い線(I)(この場合は、約4.0Åにある線)を参照している。特定の組成および構造内のその充填量の関数として変化が生じる。この理由から、強度およびd−間隔は範囲として示される。
【0023】
【表3】

【0024】
本発明のEMM−3物質を焼成して、結晶性を失うことなく有機テンプレート剤を除去してもよい。これは、次に他のゲスト分子(炭化水素など)を吸着するように、物質を活性化するのに有用である。焼成により、EMM−3の構造はX線回折パターンに示されるように変化する。上記のように、焼成したEMM−3物質を周囲条件下で水和させると、回折パターンは、焼成したEMM−3物質を脱水した場合に測定されるものとは異なる。焼成/水和したEMM−3を独特に定義する主要な線は表4に、焼成/脱水したEMM−3を独特に定義するこれらの主要な線は、表5に表記される(反射配置および1°の発散スリットを用いて、CuKα放射により測定)。前と同様、線強度は、最も強い線(I)(焼成/水和した場合には、約10.7Åにある線であり、焼成/脱水した場合には、約10.9Åにある第一の線)を参照している。特定の組成、温度および構造内の水和レベルの関数として変化が生じる。この理由から、強度およびd−間隔は範囲として示される。
【0025】
【表4】

【0026】
【表5】

【0027】
加えて、EMM−3の構造を、四面体原子の相互結合で記載する(上記表1でそうしているように)ため、その単位格子(物質の全ての構造元素を含む最小の繰返し格子)によって定義してもよい。EMM−3の細孔構造を、シヌソイド状12員環通路の方向に沿って、図1(四面体原子のみ示す)に示す。図1には四種の単位格子があり、その境界は、四種のボックスによって定義される。表6は、単位格子中の各四面体原子の典型的な配置を、オングストローム単位で記載する。各四面体原子は、橋かけ原子に結合される。これはまた、隣接する四面体原子に結合される。四面体原子は、四面体配位を有することが可能な原子である。これには、限定することなく、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、砒素、インジウム、スズおよびアンチモンからなる群から選択される一種以上が含まれる。橋かけ原子は、二つの四面体原子を結合可能なものである。その例には、限定することなく、酸素、窒素、フッ素、硫黄、セレンおよび炭素原子が含まれる。
【0028】
酸素の場合には、橋かけ酸素が水素原子とも結合して、ヒドロキシル基(−OH−)を形成することも可能である。炭素の場合には、炭素が二つの水素原子とも結合して、メチレン基(−CH―)を形成することも可能である。例えば、橋かけメチレン基は、ジルコニウムジホスホネート(MIL−57)中に見られた。非特許文献2を参照されたい。橋かけ硫黄およびセレン原子は、微細孔物質UCR−20−23群に見られた。非特許文献3を参照されたい。橋かけフッ素原子は、リチウムヒドラジニウムフルオロベリレートに見られた。これは、ABW構造タイプを有する。非特許文献4を参照されたい。四面体原子は、他の結晶力(例えば、無機または有機種の存在)によって、または四面体および橋かけ原子の選択によって動き回れるので、xおよびy座標位置には±0.5オングストロームの範囲、z座標位置には±1オングストロームの範囲が含まれる。
【0029】
【表6】

【0030】
EMM−3の完全な構造は、完全結合された三次元骨格内の複数の単位格子(上記に定義される)を結合することによって造られる。一単位格子中の四面体原子は、その隣接する全ての単位格子のうちの、ある四面体原子に結合される。表1は、EMM−3の所定の単位格子について、全ての四面体原子の結合を表で示しているが、前記結合は、同じ単位格子中の特定の原子ではなく、隣接する単位格子に対するものであってもよい。例えば、表1に記載される原子が、表6に記載される特定の座標を有する場合、原子T4は、同一の単位格子中の原子T2およびT35に結合される。しかし、T17およびT45とのT4の結合は、二つの隣接する単位格子に対するものである。表1に記載される結合の全ては、最も近い四面体(T)原子(同一単位格子中にあるか、隣接する単位格子中にあるかを問わない)に対するものである。
【0031】
表6に示されるデカルト座標は、理想化された構造中の四面体原子の配置を、正確に反映しうるが、真の構造は、上記表1に示されるように、骨格原子間の結合性によって、より正確に記述できる。この結合性を記述する他の方法は、非特許文献5による微細孔骨格に適用される配位順序を用いることによる。微細孔骨格において、各四面体原子N(T−原子)は、橋かけ原子(典型的には酸素)によってN(=隣接する4個のT−原子)に結合される。次いで、これらの隣接するT−原子は、次のシェル内のT−原子、Nに結合される。第二のシェル中のN原子は、第三のシェル中のT−原子、Nに結合される、などである。各T−原子は、一度だけ数えられる。よって、例えばT−原子が4員環中にある場合、N原子が第四のシェルとなって二回数えられることはない、などのようになる。この方法論を用いると、4結合T−原子網(4−connected net of T−atoms)の各T−原子について、配位順序を決定できる。次の行は、各シェルについて、T−原子の最大数を記載する。
=1 N≦4 N≦12 N≦36 N≦4・3k−1
【0032】
3次元骨格内の所定のT−原子については、その4個の隣接するT−原子との結合に付随する6個の角度がある。これら6個の角度それぞれに付随する環の最小サイズ(頂点記号と呼ばれる)を示す方法が、M.O’KeeffeおよびS.T.Hyde(非特許文献6)によって開発された。順序は、対向する対の角度がひとまとめにされている。例えば、頂点記号4.4.6.6.6.8は、第一組の対向する角度が4環を含み、第二組が6環を含み、第三組が二つの6環および8環を含むことを示す。国際ゼオライト協会の構造委員会によって、配位順序および頂点記号の組み合わせが、特定の骨格形態について固有のものであることが認められている。よって、異なるタイプの微細孔骨格を明白に区別するのに、それらを用いることができる(非特許文献7を参照されたい)。所定の構造について、配位順序および頂点記号を決定する一方法は、コンピュータープログラムzeoTsite(非特許文献8を参照)を用いる骨格原子の原子配位によるものである。
【0033】
EMM−3構造に対する配位順序は、表7に示される。表7に示されるT−原子との結合性は、T−原子のみに関する。酸素などの橋かけ原子は、通常、T−原子と結合する。大半のT−原子は、橋かけ原子によって他のT−原子に結合されるが、骨格構造を有する物質の特定の結晶において、いくつかのT−原子が互いに結合されなくてもよいことが起こりうると解される。非結合性の理由には、限定されることなく、結晶の端部に配置されたT−原子および欠陥(例えば、結晶中の空格子点によって生じるもの)によるものが含まれる。表7に記載される骨格は、いかなる意味においても、その組成、単位格子の寸法、または空間群の対称性に限定されない。
【0034】
【表7】

【0035】
理想化された構造は、4配位T−原子のみを含むが、ある条件下では、ある種の骨格原子が5−または6−配位であってもよいことが起こりうる。これは、例えば、物質の組成が主としてリンおよびアルミニウムT−原子を含む場合、水和条件下で生じうる。これが生じる際、T−原子は、水分子(−OH)またはヒドロキシル基(−OH)の一つまたは二つの酸素原子にも配位されうることが認められる。例えば、モレキュラーシーブAlPO−34は、非特許文献9に記載されるように、水和すると、ある種のアルミニウムT−原子の配位を4−配位から5−および6−配位に可逆的に変化させると知られる。また、フッ素の存在下に物質を調製して、5−配位のT−原子を有する物質を作製すると、ある種の骨格T−原子がフッ化物原子(−F)に配位されることがある(非特許文献10に記載される)。
【0036】
EMM−3の完全な構造は、図1に示されるが、その構造に独特のある種のサブユニットが存在する。サブユニットとは、特定の構造の単位格子中に配置される、四面体原子からなるある種のより小さな単位である。所定の物質の完全な構造は、これらのサブユニットの、特定の組み合わせおよび結合により造られると見ることができる。その例は、二重の4環、六角柱および多面体籠(ソーダライト、グメリナイト、チャバザイト籠など)である。他の例には、一次元サブユニット(鎖、カラム、管など)が含まれる。典型的な微細孔物質のサブユニットは、非特許文献11に記載される。EMM−3の構造は、他の骨格物質に見られる二つのサブユニットからなる(図2を参照されたい)。図2のaに示されるサブユニットはまた、MEIおよびBPH骨格の一部でもあり、面記号6を有する。これらの三つの文字コードは、非特許文献7により記載される骨格タイプのコードである。図2のbに示されるサブユニット(面記号6を有する)はまた、ATO、DFO、IFR、OSI、SAO骨格の一部でもある。
【0037】
EMM−3においては、二つのサブユニット(2aおよび2b)がこれらの他の骨格とは異なる方法で結合されて、独特の一次元サブユニットのカラムが形成される。サブユニットのこれらの新規カラムは、図3に示される。
【0038】
表8および表9は、オングストローム単位で表したサブユニット3aおよび3bにおける、各四面体原子の配置を記載する。各四面体原子は、橋かけ原子に結合される。これはまた、隣接する四面体原子にも結合される。
【0039】
【表8】

【0040】
【表9】

【0041】
本発明にはまた、表2または3に類似の回折パターンを有するEMM−3の結晶質アルミノホスフェートまたはメタロアルミノホスフェート組成物の合成方法が含まれる。これは、モル比で表して下記範囲:
/Al 0.5〜2
R/Al 0.1〜4
O/Al 20〜1000
Me/Al 0〜2
好ましくは、
/Al 0.9〜1.1
R/Al 0.3〜1.0
O/Al 30〜80
Me/Al 0〜0.6
(Meは、B、Ga、Si、Ge、Zn、Mg、Fe、Co、Ni、Be、Mn、TiおよびZrからなる群から選択される一種以上である。)
の組成を有するアルミナ源、リン源、有機指向剤(R)、水および任意の金属(Me)源を混合することによる。
【0042】
前記有機指向剤は、好ましくはヘキサメトニウムジヒドロキシド(ヘキサメトニウムとは、N,N,N,N’,N’,N’−ヘキサメチル−1,6−ヘキサンジアンモニウムである)である。アルミニウム源は、アルミナ水和物、擬ベーマイト、コロイドアルミナおよび水酸化アルミニウムでありうる。リン源は、リン酸およびリン酸アンモニウムでありうる。金属源は、テトラエチルオルソシリケートなどの有機ケイ素、ゲルマニウム(IV)エトキシド、コロイダルシリカ、シリカゲル、ヒュームドシリカおよび種々の金属(Me)塩(硝酸亜鉛、酢酸コバルト、塩化鉄、硝酸マグネシウム等など)でありうる。次いで混合物を、アルミノホスフェートまたはメタロアルミノホスフェートを結晶化するのに十分な温度および時間をかけて加熱する。
【0043】
本発明の結晶質物質を用いて、幅広い種類の化学転化プロセス、特に有機化合物転化プロセス(現在の商業/工業的に重要な多くのものを含む)を触媒することができる。本発明の結晶質物質(それ自体、または一種以上の他の触媒活性基体(他の結晶質触媒を含む)との組み合わせ)によって、効果的に触媒される化学転化プロセスの例には、酸活性を有する触媒を必要とするものが含まれる。
【0044】
従ってEMM−3は、その活性型において高い酸活性を示し、1〜12のアルファ値を有する。アルファ値は、標準触媒と比較した触媒の接触分解活性の近似的な指標であり、相対的な反応速度定数(ノルマルヘキサン転化速度(触媒の容積/単位時間))を示す。これは、アルファ値1(反応速度定数=0.016秒−1)とされるシリカ−アルミナ分解触媒の活性を基準とする。アルファ値試験は、特許文献3、非特許文献12、非特許文献13および非特許文献14に記載される。それぞれは、その記載に関して本明細書に引用して含まれる。本明細書で用いられる試験の実験条件には、一定温度538℃および種々の流量が含まれる。これは、非特許文献14に詳しく記載される。
【0045】
触媒として用いる場合、本発明の結晶質物質を、何らかの有機成分の一部または全てを除去するための処理に付してもよい。これは、合成されたままの物質を、少なくとも約370℃の温度で少なくとも1分間、一般的には20時間以下加熱する熱処理によって、好都合に行われる。熱処理には大気圧より低い圧力を用いることもできるが、便宜上は大気圧が望ましい。熱処理は、約925℃までの温度で行うことができる。熱処理された生成物(特にその金属、水素およびアンモニウム型)は、特に、ある種の有機物(例えば炭化水素)転化反応の触媒に有用である。
【0046】
触媒として用いられる場合、結晶質物質を、タングステン、バナジウム、モリブデン、レ二ウム、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、貴金属(白金、パラジウムなど)などの、水素添加−脱水素機能が発揮される水素添加成分と緊密に組み合わせてもよい。そのような成分は、共結晶化によって組成物中に存在させてもよく、第IIIA族元素(例えばアルミニウム)が構造内に存在する程度に組成物中で交換させてもよく、その中に含浸させてもよく、それと物理的に緊密に混合してもよい。そのような成分を、その中またはその上に含浸させてもよい(例えば白金の場合、白金金属含有イオンを含む溶液を用いてEMM−3を処することによって)。従って、この目的に適切な白金化合物には、塩化白金酸、塩化白金および白金アミン錯体を含む種々の化合物が含まれる。
【0047】
有機化合物転化プロセスにおいて吸着剤または触媒のいずれかとして用いる場合、本発明の結晶質物質を、少なくとも部分的に脱水すべきである。これは、空気、窒素等などの雰囲気下、大気圧、大気圧未満または超大気圧で、100〜約370℃に、30分〜48時間加熱することによって行うことができる。脱水はまた、単にEMM−3を真空中に置くことによって、室温で行うこともできる。しかし、十分量の脱水を得るにはより長い時間が必要とされる。
【0048】
多くの触媒でそうであるが、新規結晶を、有機転化プロセスで用いられる温度および他の条件に耐性がある別の物質と組み合わせることが望ましい場合がある。そのような物質には、活性および不活性物質、並びに合成または天然ゼオライト、更には無機物質(粘土、シリカおよび/または金属酸化物(アルミナなど))が含まれる。後者は、天然に産するものでもよく、ゼラチン状沈殿物またはゲルの形態(シリカと金属酸化物の混合物を含む)であってもよい。ある物質を、活性がある新規結晶と共に用いる(即ち、それと組み合わせる)か、新規結晶の合成中に存在させることにより、ある種の有機転化プロセスにおける、触媒の転化率および/または選択性が変化する傾向がある。不活性物質は、適切に希釈剤として資して、所定のプロセスの転化量を制御し、それにより生成物を、反応速度を制御する他の手段を用いることなく、経済的かつ整然と得ることができる。これらの物質を、天然の粘土(例えばベントナイトおよびカオリン)に組み込み、商業運転条件下での触媒の粉砕強度を向上してもよい。前記物質(即ち粘土、酸化物等)は、触媒に対する結合剤として機能する。良好な粉砕強度を有する触媒を供給することが望ましい。何故なら、商業的用途においては、触媒が粉末状物質に破壊するのを防ぐことが望ましいからである。これらの粘土および/または酸化物結合剤は、通常、触媒の粉砕強度を向上する目的のためのみに用いられている。
【0049】
新規結晶と複合化されうる天然粘土には、モンモリロナイト系およびカオリン系が含まれる。これらには、サブベントナイトおよびカオリン(一般にはディキシー、マクナミー、ジョージアおよびフロリダ粘土その他として知られ、主要鉱物成分はハロイサイト、カオリナイト、ジッカイト、ナクライトまたはアナウキサイトである)が含まれる。そのような粘土は、採掘されたままの元の未加工状態で用いてもよく、初めに焼成、酸処理または化学修飾に付してもよい。本結晶と複合化するのに有用な結合剤には、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ベリリア、アルミナおよびそれらの混合物などの無機酸化物も含まれる。
【0050】
新規結晶を、前記物質に加えて、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニア等、またシリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−マグネシア、シリカ−マグネシア−ジルコニア等の三元組成物等の多孔性母材物質と複合化してもよい。
【0051】
微細に粉砕した結晶質物質および無機酸化物母材の相対的な割合は、幅広く異なり、結晶含有量は約1〜約90wt%、より通常には、特に複合物がビーズ形態で調製される場合には、複合物の約2〜約80wt%の範囲である。
【0052】
本発明の性質およびその実施方法をより完全に示すために、次の実施例が示される。
【実施例】
【0053】
実施例1:AlPO EMM−3の合成
下記組成:
0.5R(OH):Al:P:45H
(式中、RはN,N,N,N’,N’,N’−ヘキサメチル−1,6−へキサンジアンモニウム(ヘキサメトニウム)である)
の合成ゲルを、85%HPO 49.2g、HO 50gおよびアルミナ水和物(Condea/Vista Catapal A、26%HO)29.4gを、風袋を計ったプラスチック製ビーカーに加えることによって調製した。混合物を、スパチュラを用いて1分間混合し、得られた粘稠ペーストを5分間エージングした。混合物を、再度スパチュラを用いて1分間混合した。この混合物に、22%ヘキサメトニウムジヒドロキシド114.5gおよびHO 6.9gを加え、混合物を、スパチュラを用いて1分間混合し、混合機に移し、次いで5分間完全にホモジナイズした。次いで白色ゲルを、テフロン(登録商標)加工したオートクレーブおよび300mlの撹拌装置付きステンレススチール製オートクレーブに分配した。テフロン(登録商標)加工したオートクレーブを、空気オーブン中、静的条件下に160℃で20時間反応させ、ステンレススチール製オートクレーブを、撹拌速度250rpmで、160℃20時間反応させた。オートクレーブを室温に冷却した後、生成物を、遠心分離によって回収し、次いで脱イオンHOを用いて再度スラリー化し、更に4回遠心分離して生成物を洗浄した。生成物を、空気オーブン中115℃で乾燥し、次いで粉末X線回折によって分析した。これは、表10および図4に示されるように、純粋のEMM−3であることが認められた。
【0054】
【表10】

【0055】
実施例2:EMM−3の焼成
実施例1からの試料の一部を、空気中2時間で650℃に昇温し、次いで2時間保持することによって焼成した。この焼成試料の一部を、ScintagXDS2000回折計に装備された高温X線回折チャンバー内の白金加熱片上に載せた。試料の温度を150℃に設定し、チャンバーを乾燥窒素流で掃気した。次いで、X線回折パターンを測定した。これを、表11および図5に示す。
【0056】
【表11】

【0057】
この焼成試料の他の一部を、周囲条件下、室温で数時間水和した。次いで、X線回折パターンを、CuKα放射を用いて測定した。これを、表12および図6に示す。
【0058】
【表12】

【0059】
実施例3:SAPO EMM−3の合成
下記組成:
0.5R(OH):Al:P:0.2SiO:45HO:8CHCHOH
(式中、RはN,N,N,N’,N’,N’−ヘキサメチル−1,6−へキサンジアンモニウム(ヘキサメトニウム)である)
の合成ゲルを、85%HPO 10.92g、HO 12.0gおよびアルミナ水和物(Condea/Vista Catapal A、26%HO)6.54gを、風袋を計ったプラスチック製ビーカーに加えることによって調製した。混合物を、スパチュラを用いて1分間混合し、得られた粘稠ペーストを5分間エージングした。混合物を、再度スパチュラを用いて1分間混合した。この混合物に、98%テトラエチルオルソシリケート(Aldrich)1.97g、22%ヘキサメトニウムジヒドロキシド(SACHEM,Inc.)25.45および200プルーフエタノール17.46gを加え、混合物を、スパチュラを用いて1分間混合し、次いでAlPO EMM−3種晶1.00gおよびHO 0.65gを加え、混合物を、スパチュラを用いて1分間混合し、次いで混合機に移し、5分間完全にホモジナイズした。次いで、白色ゲルをテフロン(登録商標)加工したオートクレーブに入れ、空気オーブン中、160℃で48時間反応させた。オートクレーブを室温に冷却した後、生成物を、遠心分離によって回収し、次いで脱イオンHOを用いて再度スラリー化し、更に4回遠心分離して生成物を洗浄した。生成物を、空気オーブン中115℃で乾燥し、次いで粉末X線回折によって分析し、純粋のEMM−3であることを認めた。元素分析では、1.40%Si、17.0%Alおよび17.8%Pが示された。これは、下記の生成物化学量論を表す。
Si0.04Al0.500.46
【0060】
この試料の一部を、空気中で、650℃3時間焼成した。すると、50torrの圧力(24℃)で、これがn−ヘキサン11.1%を吸収することが認められた。
【0061】
実施例4:SAPO EMM−3の合成
下記組成:
0.5R(OH):Al:P:0.4SiO:45H
(式中、RはN,N,N,N’,N’,N’−ヘキサメチル−1,6−へキサンジアンモニウム(ヘキサメトニウム)である)
の合成ゲルを、85%HPO 13.77g、HO 15.0gおよびアルミナ水和物(Condea/Vista Catapal A、26%HO)8.24gを、風袋を計ったプラスチック製ビーカーに加えることによって調製した。混合物を、スパチュラを用いて1分間混合し、得られた粘稠ペーストを5分間エージングした。混合物を、再度スパチュラを用いて1分間混合した。この混合物に、98%テトラエチルオルソシリケート(Aldrich)4.98g、22%ヘキサメトニウムジヒドロキシド(SACHEM,Inc.)32.08gを加え、混合物を、スパチュラを用いて1分間混合し、次いでAlPO EMM−3種晶1.00gおよびHO 0.94gを加え、混合物を、スパチュラを用いて1分間混合し、次いで混合機に移し、5分間完全に均質化した。次いで、白色ゲルを、テフロン(登録商標)加工したオートクレーブに入れ、空気オーブン中、160℃で48時間反応させた。オートクレーブを室温に冷却した後、生成物を、遠心分離によって回収し、次いで脱イオンHOを用いて再度スラリー化し、更に4回遠心分離して生成物を洗浄した。生成物を、空気オーブン中115℃で乾燥し、次いで粉末X線回折によって分析し、純粋のEMM−3であることを認めた。元素分析では、2.5%Si、17.1%Alおよび18.0%Pが示された。これは、下記の生成物化学量論を表す。
Si0.068Al0.4860.446
【0062】
この試料の一部を、空気中で、650℃3時間焼成した。すると、50torrの圧力(23℃)で、これがn−ヘキサン12.3%を吸収することが認められた。
【0063】
実施例5:SAPO EMM−3の合成
下記組成:
0.5R(OH):Al:P:0.2SiO:45H
(式中、RはN,N,N,N’,N’,N’−ヘキサメチル−1,6−へキサンジアンモニウム(ヘキサメトニウム)である)
の合成ゲルを、85%HPO 14.24g、HO 15.0gおよびアルミナ水和物(Condea/Vista Catapal A、26%HO)8.52gを、風袋を計ったプラスチック製ビーカーに加えることによって調製した。混合物を、スパチュラを用いて1分間混合し、得られた粘稠ペーストを5分間エージングした。混合物を、再度スパチュラを用いて1分間混合した。この混合物に、98%テトラエチルオルソシリケート(Aldrich)2.57g、22%ヘキサメトニウムジヒドロキシド(SACHEM,Inc.)33.18gを加え、混合物を、スパチュラを用いて1分間混合し、次いでAlPO EMM−3種晶1.00gおよびHO 1.49gを加え、混合物を、スパチュラを用いて1分間混合し、次いで混合機に移し、5分間完全にホモジナイズした。次いで、白色ゲルを、テフロン(登録商標)加工したオートクレーブに入れ、空気オーブン中、160℃で48時間反応させた。オートクレーブを室温に冷却した後、生成物を、遠心分離によって回収し、次いで脱イオンHOを用いて再度スラリー化し、更に4回遠心分離して生成物を洗浄した。生成物を、空気オーブン中115℃で乾燥し、次いで粉末X線回折によって分析し、純粋のEMM−3であることを認めた。元素分析では、1.2%Si、17.5%Alおよび19.4%Pが示された。これは、下記の生成物化学量論を表す。
Si0.032Al0.4920.475
【0064】
この試料の一部を、空気中で、650℃3時間焼成した。すると、50torrの圧力(24℃)で、これがn−ヘキサン11.7%を吸収することが認められた。
【0065】
実施例6:SAPO EMM−3の合成
下記組成:
0.5R(OH):Al:P:0.4SiO:45H
(式中、RはN,N,N,N’,N’,N’−ヘキサメチル−1,6−へキサンジアンモニウム(ヘキサメトニウム)である)
の合成ゲルを、22%ヘキサメトニウムジヒドロキシド(SACHEM)33.67gおよびヒュームドシリカ1.67gを、125mlのテフロン(登録商標)ボトル中に加え、振とうし、次いで100℃のオーブン中に3時間入れることによって調製した。85%HPO 14.45g、HO 12.44gおよびアルミナ水和物(Condea/Vista Catapal A、26%HO)8.65gを、風袋を計ったプラスチック製ビーカーに加えた。この混合物を、スパチュラを用いて1分間混合し、得られた粘稠ペーストを、5分間エージングした。混合物を、再度スパチュラを用いて1分間混合した。この混合物に、AlPO EMM−3種晶1.00gおよびHO 4.12gと共に、テンプレート溶液を加え、混合物を、スパチュラを用いて1分間混合し、次いで混合機に移し、5分間完全にホモジナイズした。次いで、白色ゲルを、テフロン(登録商標)加工したオートクレーブに入れ、空気オーブン中、160℃で48時間反応させた。オートクレーブを室温に冷却した後、生成物を、遠心分離によって回収し、次いで脱イオンHOを用いて再度スラリー化し、更に4回遠心分離して生成物を洗浄した。生成物を、空気オーブン中115℃で乾燥し、次いで粉末X線回折によって分析し、表13および図7に示されるように、純粋のEMM−3であることを認めた。元素分析では、2.6%Si、17.2%Alおよび17.0%Pが示された。これは、下記の生成物化学量論を表す。
Si0.072Al0.4980.429
【0066】
この試料の一部を、空気中で、650℃3時間焼成した。すると、59torrの圧力(23℃)で、これがn−ヘキサン12.5%を吸収することが認められた。
【0067】
【表13】

【0068】
実施例7:GeAPO EMM−3の合成
下記組成:
0.5R(OH):Al:P:0.2GeO:45H
(式中、RはN,N,N,N’,N’,N’−ヘキサメチル−1,6−へキサンジアンモニウム(ヘキサメトニウム)である)
の合成ゲルを、85%HPO 14.1g、HO 16.4gおよびアルミナ水和物(Condea/Vista Catapal A、26%HO)8.46gを、風袋を計ったプラスチック製ビーカーに加えることによって調製した。混合物を、スパチュラを用いて1分間混合し、得られた粘稠ペーストを5分間エージングした。混合物を、再度スパチュラを用いて1分間混合した。この混合物に、ゲルマニウム(IV)エトキシド3.1gおよび22%ヘキサメトニウムジヒドロキシド(SACHEM,Inc.)32.9gを加え、混合物を、スパチュラを用いて1分間混合し、混合機に移し、次いで5分間完全にホモジナイズした。次いで、白色ゲルを、テフロン(登録商標)加工したオートクレーブに入れ、160℃で26時間反応させた。オートクレーブを室温に冷却した後、生成物を、遠心分離によって回収し、次いで脱イオンHOを用いて再度スラリー化し、更に4回遠心分離して生成物を洗浄した。生成物を、空気オーブン中115℃で乾燥し、次いで粉末X線回折によって分析し、純粋のGeAPO EMM−3であることを認めた。
【0069】
実施例8:ZnAPO EMM−3の合成
下記組成:
0.7R(OH):0.9Al:P:0.2ZnO:55H
(式中、RはN,N,N,N’,N’,N’−ヘキサメチル−1,6−へキサンジアンモニウム(ヘキサメトニウム)である)
の合成ゲルを、85%HPO 24.2g、HO 25gおよびZn(NO・6HO 6.3gを、風袋を計ったプラスチック製ビーカーに添加し、硝酸亜鉛が溶解するまで撹拌することによって調製した。次いで、アルミナ水和物(Condea/Vista Catapal A、26%HO)13.0gを加え、混合物を、スパチュラを用いて1分間混合し、得られた粘稠ペーストを5分間エージングした。混合物を、再度スパチュラを用いて1分間混合した。この混合物に、22%ヘキサメトニウムジヒドロキシド(SACHEM,Inc.)79.0gを加え、混合物を、スパチュラを用いて1分間混合し、混合機に移し、次いで5分間完全にホモジナイズした。次いで、白色ゲルを、テフロン(登録商標)加工したオートクレーブに入れ、空気オーブン中、130℃で1日間反応させた。オートクレーブを室温に冷却した後、生成物を、遠心分離によって回収し、次いで脱イオンHOを用いて再度スラリー化し、更に4回遠心分離して生成物を洗浄した。生成物を、空気オーブン中115℃で乾燥し、次いで粉末X線回折によって分析し、純粋でないEMM−3であることを認めた。
【0070】
実施例9:MgAPO EMM−3の合成
下記組成:
0.7R(OH):0.9Al:P:0.2MgO:55H
(式中、RはN,N,N,N’,N’,N’−ヘキサメチル−1,6−へキサンジアンモニウム(ヘキサメトニウム)である)
の合成ゲルを、85%HPO 24.4g、HO 25gおよびMg(NO・6HO 5.4gを、風袋を計ったプラスチック製ビーカーに加え、硝酸マグネシウムが溶解するまで撹拌することによって調製した。次いでアルミナ水和物(Condea/Vista Catapal A、26%HO)13.1gを加え、混合物を、スパチュラを用いて1分間混合し、得られた粘稠ペーストを5分間エージングした。混合物を、再度スパチュラを用いて1分間混合した。この混合物に、22%ヘキサメトニウムジヒドロキシド(SACHEM,Inc.)79.5gを加え、混合物を、スパチュラを用いて1分間混合し、混合機に移し、次いで5分間完全にホモジナイズした。次いで、白色ゲルを、テフロン(登録商標)加工したオートクレーブに入れ、空気オーブン中、130℃で1日間反応させた。オートクレーブを室温に冷却した後、生成物を、遠心分離によって回収し、次いで脱イオンHOを用いて再度スラリー化し、更に4回遠心分離して生成物を洗浄した。生成物を、空気オーブン中115℃で乾燥し、次いで粉末X線回折によって分析し、純粋でないが、主要相であるEMM−3であることを認めた。
【0071】
実施例10:EMM−3の触媒活性
実施例3、4、5および6からのSAPO−EMM−3生成物を、空気中、650℃で3時間焼成して、有機テンプレートを除去した。次いで、焼成試料をぺレットにプレスし、粉砕し、次いで14〜24メッシュサイズに篩い分けした。次いで、これらの篩い分けされた試料を、上記されたアルファ値試験に付した。結果を次に示す。これは、炭化水素を転化するEMM−3の能力を示す。
【0072】
【表14】

【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】EMM−3の骨格構造を示す(四面体原子のみ示す)。四個の単位格子が存在し、その端部はグレーボックスで定義される。
【図2】EMM−3構造内に認められる多面体サブユニットを示す。四面体原子のみを示す。
【図3】EMM−3構造内に認められる管状サブユニットを示す(a:サブユニット3a、b:サブユニット3b)。四面体原子のみを示す。
【図4】実施例1からのAlPO−EMM−3のX線回折パターンを示す。
【図5】実施例2からの焼成/脱水されたAlPO−EMM−3のX線回折パターンを示す。
【図6】実施例2からの焼成/脱水されたAlPO−EMM−3のX線回折パターンを示す。
【図7】実施例6で調製されたSAPO EMM−3のX線回折パターンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋かけ原子によって結合された四面体原子(T)からなる骨格を有し、前記四面体原子からなる骨格は、明細書の表1に示す方式で、直近の四面体原子(T)を結合することによって定義されることを特徴とする合成多孔性結晶質物質。
【請求項2】
合成された際に、実質的に明細書の表2に示す通りの、最も重要な線を含むX線回折パターンによって特性付けられることを特徴とする合成多孔性結晶質物質。
【請求項3】
合成された際に、実質的に明細書の表3に示す通りの、最も重要な線を含むX線回折パターンによって特性付けられることを特徴とする合成多孔性結晶質物質。
【請求項4】
請求項2または3に記載の合成多孔性結晶質物質を焼成および水和して得られる生成物であって、実質的に明細書の表4に示す通りの、最も重要な線を含むX線回折パターンによって特性付けられることを特徴とする生成物。
【請求項5】
請求項2または3に記載の合成多孔性結晶質物質を焼成および水和して得られる生成物であって、実質的に明細書の表5に示す通りの、最も重要な線を含むX線回折パターンによって特性付けられることを特徴とする生成物。
【請求項6】
前記四面体原子は、Li、Be、Li、Al、P、Si、Ga、Ge、Zn、Cr、Mg、Fe、Co、Ni、Be、Mn、As、In、Sn、Sb、TiおよびZrからなる群から選択される一種以上の原子を含むことを特徴とする請求項1に記載の合成多孔性結晶質物質。
【請求項7】
前記橋かけ原子は、O、N、F、S、SeおよびCからなる群から選択される一種以上の元素を含むことを特徴とする請求項1に記載の合成多孔性結晶質物質。
【請求項8】
組成RAl・nHO(式中、Rは有機化合物であり、m=0.01〜1であり、y=0.6〜1.2であり、z=0.6〜1.2であり、n=0.1〜10である)を有し、表2に示す回折パターンを有することを特徴とする結晶質アルミノホスフェート化合物。
【請求項9】
組成RMeAl・nHO(式中、Rは有機化合物であり、MeはB、Ga、Si、Ge、Zn、Mg、Fe、Co、Ni、Be、Mn、TiおよびZrからなる群から選択される一種以上であり、m=0.01〜1であり、x=0.01〜0.2であり、y=0.6〜1.2であり、z=0.6〜1.2であり、n>0.2である)を有し、表3に示す回折パターンを有することを特徴とする結晶質メタロアルミノホスフェート化合物。
【請求項10】
組成MeAl・nHO(式中、MeはB、Ga、Si、Ge、Zn、Mg、Fe、Co、Ni、Be、Mn、TiおよびZrからなる群から選択される一種以上であり、x=0.00〜0.2であり、y=0.6〜1.2であり、z=0.6〜1.2であり、n>0.2である)を有し、表4に示す回折パターンを有することを特徴とする焼成結晶質メタロアルミノホスフェート化合物。
【請求項11】
組成MeAl・nHO(式中、MeはB、Ga、Si、Ge、Zn、Mg、Fe、Co、Ni、Be、Mn、TiおよびZrからなる群から選択される一種以上であり、x=0.00〜0.2であり、y=0.6〜1.2であり、z=0.6〜1.2であり、n<0.2である)を有し、表5に示す回折パターンを有することを特徴とする焼成結晶質メタロアルミノホスフェート化合物。
【請求項12】
Rは、ヘキサメトニウムから誘導されるカチオンを含むことを特徴とする請求項8に記載の結晶質物質。
【請求項13】
Rは、ヘキサメトニウムから誘導されるカチオンを含むことを特徴とする請求項9に記載の結晶質物質。
【請求項14】
アルミナ源、リン源、水および有機指向剤を混合し、アルミノホスフェートを結晶化するのに十分な温度および時間をかけて加熱することによる、表2に類似の回折パターンを有する結晶質アルミノホスフェート化合物の合成方法。
【請求項15】
金属源、アルミナ源、リン源、水および有機指向剤を混合し、メタロアルミノホスフェートを結晶化するのに十分な温度および時間をかけて加熱することによる、表3に類似の回折パターンを有する結晶質メタロアルミノホスフェート化合物の合成方法。
【請求項16】
その構造が、表8に示すサブユニットを有することを特徴とする結晶質物質。
【請求項17】
その構造が、表9に示すサブユニットを有することを特徴とする結晶質物質。
【請求項18】
表2に示すd−間隔値を含む特性X線回折パターンを示す結晶質物質の合成方法であって、
(i)アルミナ源、リン源、有機指向剤(R)および水を、モル比で表して下記範囲内の組成に混合することによって、前記物質を形成可能な混合物を調製する工程;
/Al 0.5〜2
R/Al 0.1〜4
O/Al 20〜1000
(ii)前記混合物を、100〜220℃の温度を含む十分な条件下で、前記物質の結晶が形成されるまで保持する工程;および
(iii)前記工程(ii)からの前記結晶質物質を回収する工程
を含むことを特徴とする結晶質物質の合成方法。
【請求項19】
前記混合物は、モル比で表して下記範囲内の組成を有することを特徴とする請求項18に記載の結晶質物質の合成方法。
/Al 0.9〜1.1
R/Al 0.3〜1.0
O/Al 30〜80
【請求項20】
前記有機指向剤(R)は、ヘキサメトニウムであることを特徴とする請求項18に記載の結晶質物質の合成方法。
【請求項21】
前記有機指向剤(R)は、ヘキサメトニウムであることを特徴とする請求項19に記載の結晶質物質の合成方法。
【請求項22】
表3に示すd−間隔値を含む特性X線回折パターンを示す結晶質物質の合成方法であって、
(i)金属(Me)源、アルミナ源、リン源、有機指向剤(R)および水を、モル比で表して下記範囲内の組成で混合することによって、前記物質を形成可能な混合物を調製する工程;
/Al 0.5〜2
R/Al 0.1〜4
O/Al 20〜1000
Me/Al 0.01〜2.0
(ii)前記混合物を、100〜220℃の温度を含む十分な条件下で、前記物質の結晶が形成されるまで保持する工程;および
(iii)工程(ii)からの前記結晶質物質を回収する工程
を含むことを特徴とする結晶質物質の合成方法。
【請求項23】
前記混合物は、モル比で表して下記範囲内の組成を有することを特徴とする請求項22に記載の結晶質物質の合成方法。
/Al 0.9〜1.1
R/Al 0.3〜1.0
O/Al 30〜80
Me/Al 0.01〜0.6
【請求項24】
前記有機指向剤(R)は、ヘキサメトニウムであることを特徴とする請求項22に記載の結晶質物質の合成方法。
【請求項25】
前記有機指向剤(R)は、ヘキサメトニウムであることを特徴とする請求項23に記載の結晶質物質の合成方法。
【請求項26】
前記金属(Me)は、B、Ga、Si、Ge、Zn、Mg、Fe、Co、Ni、Be、Mn、TiおよびZrからなる群から選択される一種以上であることを特徴とする請求項22に記載の結晶質物質の合成方法。
【請求項27】
前記金属(Me)は、B、Ga、Si、Ge、Zn、Mg、Fe、Co、Ni、Be、Mn、TiおよびZrからなる群から選択される一種以上であることを特徴とする請求項23に記載の結晶質物質の合成方法。
【請求項28】
請求項1に記載の合成多孔性結晶質物質を用いて、炭化水素を、炭化水素含有ストリームから分離する方法。
【請求項29】
有機化合物を含む原料材を生成物に転化する方法であって、前記原料材を、有機化合物転化条件で、請求項1に記載の合成多孔性結晶質物質の活性形態を含む触媒と接触させる工程を含むことを特徴とする原料材の転化方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2007−524561(P2007−524561A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517568(P2006−517568)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/020090
【国際公開番号】WO2005/003031
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】