説明

EUOゼオライトと、10MRゼオライトと、12MRゼオライトとを含む触媒および芳香族C8化合物の異性化におけるその使用

EUO構造型の少なくとも1種のゼオライトと、開口部が10個の酸素原子を有する環(10MR)によって規定されるチャネルを呈する少なくとも1種のゼオライトと、開口部が12個の酸素原子を有する環(12MR)によって規定されるチャネルを呈する少なくとも1種のゼオライトと、少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクスとを含む触媒が記載される。前記触媒は、場合によっては、第VIII族からの少なくとも1種の金属をさらに含有する。本発明による触媒は、1分子当たり8個の炭素原子を有する芳香族化合物を含む供給材料の異性化方法に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも3種の相異なるゼオライトから形成される触媒であって、例えば、芳香族炭化水素の転換反応における使用のためのものに関する。より正確には、本発明は、C8芳香族化合物の異性化のための触媒に関する。本発明はまた、1分子当たり8個の炭素原子を含む芳香族化合物を含む供給材料の異性化方法における前記触媒の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
8個の炭素原子を含む芳香族化合物(AC8)を異性化するための既知の方法において、供給材料であって、混合物の熱力学的平衡に対してパラキシレンが一般的に少なく(すなわち、考慮中である温度での熱力学的平衡にあり、メタキシレン、オルトキシレン、パラキシレンおよびエチルベンゼンによって形成される群から選択される少なくとも1種の化合物を含む混合物の含有量よりはるかに低いパラキシレン含有量を有し、かつ、一般的に、熱力学的平衡にある同混合物と比較してエチルベンゼンを豊富に含むものは、少なくとも1種の触媒を含む反応器に適切な温度および圧力条件下に導入されて、反応器の出口において、反応器の温度における熱力学的平衡にある前記混合物の組成物に可及的に近い8個の炭素原子を含む芳香族化合物の組成物が得られる。このような組成物を得るために、当業者は、一般的に、供給材料中に存在するエチルベンゼンの転化を最大にするように強いられる。異性化反応器からの出口において得られた混合物からキシレンが分離されるが、場合によっては、特に合成繊維産業のために非常に重要なものであるため所望の異性体であるメタキシレンまたはオルトキシレンを伴う。
【0003】
8個の炭素原子を含む芳香族化合物の異性化方法を行うために用いられる触媒は、一般的にはゼオライト触媒である。従来技術の触媒、特に、モルデナイトゼオライトをベースとする触媒は、それらの存在下に起こる無視することのできない副反応が損失を生じさせるので、可もなく不可もない触媒性能を引き出すだけである。このような二次反応の挙げられ得る例は、ナフテン環の開環(この開環の後に、分解が生じることも生じないこともある)(パラフィンへの損失)、8個の炭素原子を含む芳香族化合物の不均化およびトランスアルキル化反応(不要な芳香族化合物への損失)、または、芳香族化合物の水素化(ナフテンへの損失)である。ZSM−5ゼオライトをベースとする触媒は、単独でまたは例えばモルデナイト等の他のゼオライトと混合されて、既に用いられているが、これも、最適の触媒性能を引き出すわけではない。より最近では、構造型EUOを有するゼオライトをベースとする触媒が提案された(特許文献1)。それ故に、本発明は、1分子当たり8個の炭素原子を含む芳香族化合物を異性化するために用いられた場合に、エチルベンゼンの転化率が向上させられ、二次反応が制限され、これにより、損失が低減するような組成を有する新規な触媒を提供することを提案する。
【特許文献1】欧州特許出願公開0923987号明細書(特開平11−244704号公報)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要約)
本発明は、構造型EUOを有する少なくとも1種のゼオライトと、開口部が10個の酸素原子の環(10MR)によって規定されるチャネルを有する少なくとも1種のゼオライトと、開口部が12個の酸素原子の環(12MR)によって規定されるチャネルを有する少なくとも1種のゼオライトと、少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクスとを含む触媒を提供する。有利には、本発明の触媒は、元素周期律表の第VIB、VIIBおよびVIII族からの金属から選択される少なくとも1種の金属を含み、場合によっては、元素周期律表の第IIIAおよびIVA族から選択される少なくとも1種の金属も含む。本発明の触媒に含まれるゼオライトのそれぞれは、ケイ素と、アルミニウム、鉄、ガリウムおよびホウ素によって形成される群から選択される少なくとも1種の元素T、好ましくはアルミニウムとを含有する。
【0005】
本発明はまた、1分子当たり8個の炭素原子を含む芳香族化合物を含む供給材料を異性化する方法における前記触媒の使用に関する。
【発明の効果】
【0006】
(発明の利点)
驚くべきことに、構造型EUOを有する少なくとも1種のゼオライトと、開口部が10個の酸素原子の環(10MR)によって規定されるチャネルを有する少なくとも1種のゼオライトと、開口部が12個の酸素原子の環(12MR)によって規定されるチャネルを有する少なくとも1種のゼオライトとの組合せを含む複合触媒によって、1分子当たり8個の炭素原子を含む芳香族化合物を異性化する反応において改善された触媒性能が得られることが発見された。特に、本発明の触媒により、従来技術の触媒、特に、構造型EUOまたは構造型MORを有するゼオライトをベースとする触媒によって達成された転化率より高いエチルベンゼンの転化率が得られた。さらに、本発明の触媒は、二次反応を実質的に制限し、これにより、従来技術の触媒と比較してより少ない損失を生じさせる。
【0007】
さらに、本発明の触媒において3種のゼオライト、すなわち、構造型EUOを有するもの、10MRを有するものおよび12MRを有するものの相対量を調節することによって、非常に広い範囲の炭化水素供給材料混合物を処理することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(説明)
本発明は、構造型EUOを有する少なくとも1種のゼオライトと、開口部が10個の酸素原子の環(10MR)によって規定されるチャネルを有する少なくとも1種のゼオライトと、開口部が12個の酸素原子の環(12MR)によって規定されるチャネルを有する少なくとも1種のゼオライトと、少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクスとを含む触媒を提供する。
【0009】
本発明によると、触媒は、異なる構造型を有する少なくとも3種のゼオライトを含む。
【0010】
本発明の触媒中に存在する構造型EUOを有するゼオライトは、従来技術において既に記載されている。それは、4.1×5.4Å(1Å=1オングストローム=10−10m)の細孔径を有する一次元ミクロ孔ネットワークを有している(「Atlas of Zeolite Structure Types」,W. M. Meier,D. H. Olson,and Ch. Baerlocher,第5版,2001)。さらに、N. A. Briscoeらは、総説「Zeolites」(1988,8,74)における論文において、これらの一次元チャネルは、8.1Åの深さおよび6.8×5.8Åの径を有するサイドポケットを有することを開示した。構造型EUOを有するゼオライトは、ゼオライトEU−1(EP-B1-0 042 226)、ZSM−50(US-A-4 640 829)およびTPZ−3(EP-A1-0 051 318)を含む。本発明の触媒中に存在する構造型EUOを有するゼオライトは、好ましくはEU−1ゼオライトである。
【0011】
開口部が10個の酸素原子の環によって規定されるチャネルを有するゼオライトおよび開口部が12個の酸素原子の環によって規定されるチャネルを有するゼオライトは、「Atlas of Zeolite Framework Types」,W. M. Meier,D. H. Olson,and Ch. Baerlocher,第5改訂版,2001,Elsevier(これも、本出願において参照される)において規定されている。その中のゼオライトは、それらの細孔の開口部またはチャネルのサイズに従って分類される。本発明によると、本発明の触媒に含まれる少なくとも1種のゼオライトは、開口部が10個の酸素原子の環(10MR開口部)によって規定される細孔またはチャネルを有し、本発明の触媒における少なくとも1種の他のゼオライトは、開口部が12個の酸素原子の環(12MR開口部)によって規定される細孔またはチャネルを有する。本発明によると、10MR開口部を有するゼオライト(以降10MRゼオライトと記す)のチャネルは、前記ゼオライトの外部に対して直接的に開口する主要チャネルである。10MRゼオライトはまた、主要10MRチャネルを介して一意的にアクセス可能な、内部の二次チャネル、例えば12MRチャネルを含み得る。12MR開口部を有するゼオライト(以降12MRゼオライトと記す)は、前記ゼオライトの外側に対して直接的に開口する主要12MRチャネルを少なくとも有する。
【0012】
本発明の触媒中に存在する構造型EUOを有するゼオライトと、10MRゼオライトと12MRゼオライトとは、ケイ素と、アルミニウム、鉄、ガリウムおよびホウ素によって形成される群から選択される少なくとも1種の元素T、好ましくはアルミニウムとを含む。それらは、好ましくは、実質的に完全に酸型である。
【0013】
本発明の触媒中に存在する構造型EUOを有するゼオライトは、好ましくはEU−1ゼオライトである。それは、少なくとも5、有利には5〜100のSi/T原子比、好ましくはSi/Al原子比によって特徴付けられる。前記構造型EUOを有するゼオライトは、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、酸型、すなわち、水素型Hであり、ナトリウム含有量は、好ましくは、原子比Na/Tが0.1未満、好ましくは0.05未満であるようにされる。EU−1ゼオライトを合成する方式は、EP-B1-0 042 226に記載されている。ZSM−50ゼオライトを合成する方式は、US-A-4 640 829に記載されている。TPZ−3ゼオライトを合成する方式は、EP-A1 0 051 318に記載されている。
【0014】
本発明の触媒中に存在する10MRゼオライトは、2〜250、好ましくは5〜150、より好ましくは10〜80のSi/T原子比、好ましくはSi/Al原子比によって特徴付けられる。ナトリウム含有量は、乾燥ゼオライトの総重量に対して0.2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0.05重量%未満である。開口部が10個の酸素原子を有する環(10MR)によって規定されるチャネルを有し、従来技術において知られるあらゆるゼオライトが、本発明の触媒の製造に適している。10MRゼオライトは、有利には、構造型MFI、TON、NESおよびFERを有するゼオライトから選択される。非常に好ましくは、10MRゼオライトは、ZSM−5、NU−87、IM−5、フェリエライト、NU−85およびZSM−22ゼオライトから選択される。非常に有利には、それはZSM−5ゼオライトである。これらのゼオライトおよびそれらの調製方式は、当業者に周知である:NU−85ゼオライトは、特に、US-A-5 446 234に記載されている;IM−5ゼオライトは、特に、EP-A-0 946 416およびUS-A-6 136 290に記載されている。
【0015】
本発明の触媒中に存在する12MRゼオライトは、2〜250、好ましくは5〜150、非常に好ましくは10〜80のSi/T原子比、好ましくはSi/Al原子比によって特徴付けられる。ナトリウム含有量は、乾燥ゼオライトの総重量に対して0.2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、非常に好ましくは0.05重量%未満である。開口部が12個の酸素原子を有する環(12MR)によって規定される(主要または二次)チャネルを有し、従来技術において知られるあらゆるゼオライトが、本発明の触媒の製造に適している。12MRゼオライトは、有利には、構造型BEA、MOR、MAZ、FAU、MTWおよびBOGを有するゼオライトから選択される。非常に好ましくは、12MRゼオライトは、ベータ、Y、モルデナイト、ZSM−12、マッチアイト(mazzite)およびボグサイトゼオライトから選択される。ボグサイトは、10MRおよび12MRを有する主要チャネルを有している。より好ましくは、本発明の触媒中に存在する12MRは、モルデナイトまたはベータゼオライトである。
【0016】
本発明の触媒は、場合によっては、開口部が8個の酸素原子の環によって規定されるチャネルを有する少なくとも1種のゼオライトを含む。本発明によると、8MR開口部を有するゼオライト(以降8MRゼオライトと称する)のチャネルは、前記ゼオライトの外部に対して直接的に開口し、かつ、より大きな細孔開口部を有するチャネルを有しない主要チャネルである。有利には本発明の触媒中に存在する前記8MRゼオライトは、ケイ素と、アルミニウム、鉄、ガリウムおよびホウ素によって形成される群から選択される少なくとも1種の元素T、好ましくはアルミニウムとを含む。それは、好ましくは、実質的に完全に酸型である。前記8MRゼオライトは、2〜250、好ましくは5〜150、より好ましくは10〜80のSi/T原子比、好ましくはSi/Al原子比によって特徴付けられる。ナトリウム含有量は、乾燥ゼオライトの総重量に対して0.2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0.05重量%未満である。開口部が8個の酸素原子を有する環(8MR)によって規定されるチャネルを有し、かつ、従来技術において知られているあらゆるゼオライトが本発明の触媒の製造に適している。8MRゼオライトは、有利には、構造型ERI、ESVおよびLTAを有するゼオライトから選択される。好ましくは、好適な8MRゼオライトは、エリオナイト、ERS−7およびリンデタイプAのゼオライトから選択される。これらのゼオライトおよびそれらの調製方式は、当業者に周知である。
【0017】
構造型EUOを有するゼオライトの結晶、10MRゼオライトの結晶、12MRゼオライトの結晶および場合による8MRゼオライトの結晶は、それぞれ明確に区別される:混同はない。
【0018】
上記のゼオライトの原子比Si/T、好ましくは原子比Si/Alは、前記ゼオライトの合成の後に得られたもの、または、T原子の一部の合成後抽出(元素Tがアルミニウムである場合には脱アルミニウム処理と称される)の後に得られるものである。この処理は、当業者に周知である:限定的な例は、水熱処理であり、これに続いて、ゼオライト骨格からT原子の一部、好ましくは、アルミニウム原子の一部を抽出するための鉱酸または有機酸の溶液を用いる酸攻撃(acid attack)または直接的酸攻撃が行われる場合と行われない場合がある。
【0019】
本発明の触媒の組成物の一部を形成する、構造型EUOを有するゼオライト、10MRおよび12MRゼオライトおよび場合による8MRゼオライトの原子比Si/T、好ましくは原子比Si/Al、および前記触媒の化学組成は、X線蛍光および原子吸光によって測定される。
【0020】
本発明の触媒の組成物の一部を形成する、構造型EUOを有するゼオライト、10MRおよび12MRゼオライトおよび場合による8MRゼオライトは、焼成され、かつ、一旦焼成されてから前記ゼオライトの水素型を生じたゼオライトのアンモニウム型を得るために少なくとも1種のアンモニウム塩の溶液を用いる少なくとも1回の処理によって交換され得る。
【0021】
本発明の触媒の組成物の一部を形成する、構造型EUOを有するゼオライト、10MRおよび12MRゼオライトおよび場合による8MRゼオライトは、少なくとも部分的に、好ましくは、事実上完全に、酸型、すなわち、水素型(H)である。原子比Na/Tは、一般的には10%未満、好ましくは5%未満、一層より好ましくは1%未満である。
【0022】
10MRおよび12MRゼオライトおよび場合による8MRゼオライトは、Atlas of zeolitesにカタログに入れられており、著作物(「Atlas of Zeolite Framework Types」,W. M. Meier,D. H. Olson and Ch. Baerlocher,第5改訂版,2001)において記載された方法または当業者にアクセス可能な文献に記載された任意の他の方法を用いて合成される。本発明の触媒を得るために任意の市販のゼオライトが用いられ得る。
【0023】
本発明の触媒中に存在する多孔質鉱物マトリクスは、一般的には、粘土(例えば、カオリン、セピオライト、アタパルジャイト、ベントナイト等の天然の粘土)、マグネシア、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化ホウ素、ジルコニア、リン酸アルミニウム、リン酸チタン、リン酸ジルコニウム、無定形シリカ−アルミナおよび石炭によって形成される群からの構成要素から、好ましくは、アルミナ、粘土、アルミナとシリカの混合物およびアルミナとシリカ−アルミナの混合物によって形成される群の構成要素から、より好ましくはアルミナ、特にガンマアルミナから選択される。
【0024】
有利には、本発明の触媒は、元素周期律表の第VIB、VIIBおよびVIII族からの金属から選択される少なくとも1種の金属、非常に有利には、第VIIBおよびVIII族からの金属、より有利には、元素周期律表の第VIII族からの金属を含む。好ましくは、第VIB族金属はモリブデンである。好ましくは、第VIIB族金属はレニウムである。好ましくは、第VIII族金属は、白金およびパラジウムから選択され、より好ましくは白金である。前記元素の重量含有量は、前記触媒の総重量に対して好ましくは0.01〜5重量%、好ましくは0.01〜2重量%、より好ましくは0.05〜1重量%である。
【0025】
本発明によると、触媒の触媒組成物は、有利には、元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属、好ましくは、白金およびパラジウムによって形成される群から選択される金属を含有し;より好ましくは、前記第VIII族金属は白金である。前記第VIII族金属の重量含有量は、総触媒重量に対して一般的には0.01〜2.0重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%である。好ましくは、化学吸着、例えば、H−O滴定(titration)、または、一酸化炭素の化学吸着等)によって測定される第VIII族金属、好ましくは白金の触媒中の分布は、50%超、非常に好ましくは70%超である。
【0026】
非常に有利には、本発明の触媒の前記触媒組成物は、第VIB、VIIBおよびVIII族からの金属から選択される少なくとも1種の金属に加えて、第IIIAおよびIVA族からの金属から選択される少なくとも1種の金属を含有する。前記第IIIAおよびIVA族からの金属から選択される金属は、総触媒重量に対して0.01〜5.0重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%の量で存在する。好ましくは、第IIIA族金属は、インジウムである。好ましくは、第IVA族金属はスズである。
【0027】
本発明の触媒は、好ましくは、ビーズ状または押出物状、より好ましくは押出物の形態に成形されるものであり、触媒の重量に対して、以下のものを含有する:
・構造型EUOを有する少なくとも1種のゼオライト、開口部が10個の酸素原子の環(10MR)によって規定されるチャネルを有する少なくとも1種のゼオライトおよび開口部が12個の酸素原子の環(12MR)によって規定されるチャネルを有する少なくとも1種のゼオライト、および場合による開口部が8個の酸素原子の環(8MR)によって規定されるチャネルを有する少なくとも1種のゼオライト:1〜90%、好ましくは3〜60%、より好ましくは3〜40%;
・第VIB、VIIBおよびVIII族からの金属から選択される少なくとも1種の水添脱水素化金属:0〜5.0%、好ましくは0.01〜5.0%、より好ましくは0.01〜2.0%、一層より好ましくは0.05〜1.0%;
・場合による、第IIIAおよびIVA族からの金属から選択される少なくとも1種の追加金属;0.01〜5.0%、好ましくは0.05〜1.0%;
・場合による、硫黄;
・バインダと称される少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクス;触媒において100%までの残部を提供する;多孔質鉱物マトリクスは、一般的に、粘土(例えば、カオリン、セピオライト、アタパルジャイト、ベントナイト等の天然粘土)、マグネシア、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化ホウ素、ジルコニア、リン酸アルミニウム、リン酸チタン、リン酸ジルコニウム、無定形シリカ・アルミナおよび石炭によって形成される群からの構成要素、好ましくは、アルミナ、粘土、アルミナとシリカの混合物およびアルミナとシリカ・アルミナの混合物によって形成される群からの構成要素、より好ましくは、アルミナ、特にガンマアルミナから選択される。
【0028】
一般的におよび本発明の触媒の調製方法の第一の実施形態では、触媒は、構造型EUOを有する少なくとも1種のゼオライトと、少なくとも1種の10MRゼオライトと、少なくとも1種の12MRゼオライトと、場合による少なくとも1種の8MRゼオライトとを混合することによって調製される(前記ゼオライトは粉体の状態である)。前記ゼオライトの混合物は、当業者に知られるあらゆる粉体混合技術を用いて生じさせられる。一旦ゼオライト粉体の混合物が生じさせられてから、混合物は、当業者に知られるあらゆる技術を用いて成形される。特に、それは、多孔質鉱物マトリクス(一般的には無定形)、例えば、湿気のあるアルミナゲル粉体と混合され得る。次いで、混合物は、例えば、ダイを通した押出によって成形される。成形は、アルミナ以外のマトリクス、例えば、マグネシア、無定形シリカ・アルミナ、天然粘土(カオリン、ベントナイト、セピオライト、アタパルジャイト)、シリカ、酸化チタン、酸化ホウ素、ジルコニア、リン酸アルミニウム、リン酸チタン、リン酸ジルコニウム、石炭およびそれらの混合物により行われ得る。好ましくは、当業者に知られる形態のいずれかのアルミナ、より好ましくはガンマアルミナを有するマトリクスが用いられる。アルミナとシリカの混合物、またはアルミナとシリカ・アルミナの混合物を用いることも有利であり得る。押出以外の技術、例えば、ペレット化またはボウル造粒(bowl granulation)が用いられてもよい。成形工程の後、得られた触媒は、乾燥工程、次いで、焼成工程を経る。乾燥工程は80〜150℃の温度で行われ、焼成工程は300〜600℃、好ましくは400〜550℃の温度で行われる。
【0029】
本発明の触媒が元素周期律表の第VIB、VIIBおよびVIII族からの金属から選択される少なくとも1種の金属を含む場合、前記金属(単数種または複数種)は、金属を含まないゼオライトを成形した後に、当業者に知られ、金属が触媒担体上に担持させられることを可能にし得るあらゆる方法を用いて触媒担体上に担持させられる。用語「触媒担体」は、上記の成形、乾燥および焼成後の、ゼオライト(金属を含まない)の少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクスとの混合物を意味する。本発明の触媒の前記触媒担体は、一般的に、以下の量のマトリクスおよびゼオライトを有する:
・少なくとも1種のゼオライトが構造型EUOを有するゼオライトであり、少なくとも1種のゼオライトが10MRゼオライトから選択されるゼオライトであり、少なくとも1種のゼオライトが12MRゼオライトから選択されるゼオライトであり、場合による少なくとも1種のゼオライトが8MRゼオライトから選択されるゼオライトであるようなゼオライト:1〜90重量%、好ましくは3〜60重量%、より好ましくは3〜40重量%;
・少なくとも1種の無定形または低結晶酸化物タイプの多孔質鉱物マトリクス:10〜99重量%、好ましくは40〜97重量%、より好ましくは60〜97重量%。
【0030】
前記触媒が元素周期律表の第VIB、VIIBおよびVIII族からの金属から選択される少なくとも1種の金属を含む好適な場合における本発明の触媒の調製方法の第二の実施形態は、ゼオライト集合体の成形の前に、上記の前記触媒に含まれるゼオライトの少なくとも1種を、第VIB、VIIBおよびVIII族からの金属から選択される少なくとも1種の金属の担持に付すことからなる。
【0031】
好ましくは、少なくとも1種のEU−1ゼオライトが、第VIB、VIIBおよびVIII族からの金属から選択される少なくとも1種の金属の担持に付される。10MRゼオライト上に第VIB、VIIBおよびVIII族からの金属から選択される少なくとも1種の金属を担持させることおよび12MRゼオライト上に第VIB、VIIBおよびVIII族からの金属から選択される少なくとも1種の他の金属を担持させることも有利である。本発明の触媒の調製方法の第二の実施形態において、本発明の触媒中に存在するゼオライトのそれぞれ上に、第VIB、VIIBおよびVIII族からの金属から選択される同一金属を担持させること、好ましくは、第VIII族からの少なくとも1種の金属を担持させること、より好ましくは、白金を担持させることも有利である。これらのゼオライト(これらは、この時、粉体状態にあり、ゼオライトの少なくとも1種には、金属(単数種または複数種)が装填される)の混合物は、当業者に知られるあらゆる粉体混合技術を用いて生じさせられる。一旦ゼオライト粉体の混合物(ここで、粉体の少なくとも1種には金属(単数種または複数種が装填されている)が形成されてから、混合物は、当業者に周知である任意の技術を用いて成形される。特に、それは、多孔質鉱物マトリクス(一般的には無定形)、例えば、湿気のあるアルミナゲル粉体と混合され得る。次いで、混合物は、例えば、ダイを通した押出によって成形される。成形は、アルミナ以外のマトリクス、例えば、マグネシア、無定形シリカ・アルミナ、天然粘土(カオリン、ベントナイト、セピオライト、アタパルジャウト)、シリカ、酸化チタン、酸化ホウ素、ジルコニア、リン酸アルミニウム、リン酸チタン、リン酸ジルコニウム、石炭およびそれらの混合物により行われ得る。好ましくは、当業者に知られる形態のいずれかのアルミナ、より好ましくはガンマアルミナを含有するマトリクスが用いられる。アルミナとシリカの混合物またはアルミナとシリカ・アルミナの混合物を用いることも有利であり得る。押出以外の技術、例えば、ペレット化またはボウル造粒が用いられてもよい。成形工程の後、得られた産物は、乾燥工程、次いで、焼成工程を経る。乾燥工程は、80〜150℃の温度で行われ、焼成工程は、300〜600℃、好ましくは400〜550℃の温度で行われる。
【0032】
上記の少なくとも1種のゼオライトおよび/または本発明の触媒の調製方法の第一または第二の実施形態による触媒担体上に金属を担持させるために、競争剤との陽イオン交換技術を用いることが可能である(競争剤は、好ましくは、硝酸アンモニウムであり、競争剤と金属前駆体との間の競争剤比は、少なくとも約5、有利には5〜200である)。乾式含浸または共沈技術が用いられてもよい。
【0033】
用いられ得る第VIII族金属の源は、当業者に周知である。用いられ得る例は、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物またはフッ化物)、カルボン酸塩(例えば、酢酸塩)および炭酸塩である。白金の場合、ヘキサクロロ白金酸または白金テトラミン塩化物が好ましく用いられる。用いられ得る第VIIB族金属の源も当業者に周知である。レニウムの場合、過レニウム酸アンモニウム錯体(NH)ReOまたは過レニウム酸が通常用いられる。用いられ得る第VIB族からの金属の源も当業者に周知である。モリブデンの場合、モリブデン酸およびその塩、特に、そのアンモニウム塩、例えば、モリブデン酸アンモニウム、七モリブデン酸六アンモニウムおよびリンモリブデン酸を用いることが可能である。好ましくは、七モリブデン酸六アンモニウム(NHMo24が用いられる。金属(単数種または複数種)の担持に次いで、一般的に、空気または酸素中で、通常300〜600℃で0.5〜10時間にわたって、好ましくは350〜550℃で1〜4時間にわたって焼成が行われる。次に、水素中の還元が行われてもよく、これは、一般的に300〜600℃の温度で1〜10時間にわたって、好ましくは350〜550℃で2〜5時間にわたって行われる。
【0034】
本発明の触媒の調製の第一または第二の実施形態において、および、前記触媒が元素周期律表の第VIB、VIIBおよびVIII族からの金属から選択される少なくとも1種の金属、および場合による第IIIAおよびIVA族からの金属から選択される少なくとも1種の追加金属を含む好ましい場合において、金属はまた、直接的にゼオライト上ではなく、3種のゼオライト(場合によっては4種のゼオライト)および少なくとも1種のマトリクスによって形成される触媒担体の多孔質鉱物マトリクス(例えば、アルミナバインダ)上に、成形工程の前または後に、陰イオン交換を用いて担持され得る。挙げられ得る例は、白金の担持の場合においてヘキサクロロ白金酸錯体HPtClの使用、レニウムの担持の場合において過レニウム酸HReOの使用である。一般に、金属(単数種または複数種)を担持させた後に、従来通り、触媒は、上記のように焼成、次いで、水素中の還元を経る。
【0035】
本発明の触媒が複数種の金属を含有する場合、それらは、同じ方法または異なる技術を用いるかのいずれかで、用いられる触媒調製方式に応じて成形の前または後に、任意の順序で導入され得る。用いられる技術がイオン交換である場合には、要求される量の金属を導入するために連続する複数回の交換が必要であり得る。
【0036】
本発明の触媒の調製方式に拘わらず、前記触媒を焼成した後に、水素中で還元が行われ得る。この還元は、一般的には300〜600℃、好ましくは350〜550℃の温度で、1〜10時間、好ましくは2〜5時間の期間にわたって行われる。このような還元は、所与の反応における前記触媒の使用の場所に対して現場外(ex situ)または現場(in situ)で行われ得る。
【0037】
上記に規定される群のそれぞれの3種のゼオライト(場合によっては4種のゼオライト)の間の分布は、本発明の触媒中に存在するゼオライトのそれぞれの量が、触媒に導入されたゼオライトの集合物に対するゼオライトの重量百分率として、1〜98重量%、好ましくは2〜60重量%、より好ましくは4〜50重量%であり得るようにされる。
【0038】
本発明の触媒は、種々の形状および寸法を有する粒状に成形される。それは、一般的には、円筒状押出物または多葉状押出物(真っ直ぐまたは捻れ形状を有する、二葉、三葉または多葉等)の形態で用いられるが、場合によっては、粉体、ペレット、錠剤、リング、ビーズ、または車輪状の形態で製造され、用いられてもよい。
【0039】
本発明の触媒は、場合によっては、硫黄を含有し得る。この場合、硫黄は、上記の構成要素(単数種または複数種)を含有する成形および焼成された触媒に、触媒反応の前に現場で、または現場外のいずれかで導入される。硫化は、当業者に知られるあらゆる硫化剤、例えば、ジメチルジスルフィド、硫化水素を用いて行われる。還元の後にあらゆる硫化が行われる。現場硫化の場合、触媒が未だに還元されていないのであれば、還元は硫化の前に行われる。現場外硫化の場合、還元が行われた後に、硫化が行われる。
【0040】
本発明はまた、炭化水素を転化する方法における本発明の触媒の使用に関する。より正確には、本発明は、1分子当たり8個の炭素原子を含む芳香族化合物を含む供給材料を異性化する方法であって、本発明による触媒の存在下に行われるものに関する。前記供給材料は、キシレン類およびエチルベンゼンの混合物を含む。前記方法は、気相中、好ましくはあらゆる液相の不存在下に行われる。前記方法は、一般的には、以下の操作条件下に行われる:
・温度:300〜500℃、好ましくは320〜450℃、より好ましくは340〜430℃;
・水素分圧:0.3〜1.5MPa、好ましくは0.4〜1.2MPa、より好ましくは0.7〜1.2MPa;
・全圧:0.45〜1.9MPa、好ましくは0.6〜1.5MPa;
・触媒の重量(kg)当たり、かつ、1時間当たりの導入される供給材料の重量(kg)で表される毎時空間速度:0.25〜30h−1、好ましくは1〜10h−1、より好ましくは2〜6h−1
【0041】
以下の実施例は、決して本発明の範囲を制限することなく本発明を例示する。
【0042】
(実施例1:構造型EUOを有するゼオライトをベースとする触媒の調製(比較例))
用いられた出発材料は、合成された際のEU−1ゼオライトであって、有機テンプレート、ケイ素およびアルミニウムを含み、全体Si/Al原子比が13.6であり、乾燥EU−1ゼオライトの重量に対するナトリウム重量含有量が約1.5%である(0.6のNa/Al原子比に対応する)ものであった。このEU−1ゼオライトは、最初に、550℃で空気の流れ中6時間にわたる乾式焼成を経た。次に、得られた固体は、3回のイオン交換を経た。このイオン交換は、各交換について、10NのNHNO溶液中、約100℃で4時間にわたるものであった。これらの処理の終了時に、NH型のEU−1ゼオライトの全体Si/Al原子比は18.3であり、乾燥EU−1ゼオライトの重量に対するナトリウム重量含有量は50ppmであり、これは、0.003のNa/Al原子比に対応していた。次いで、EU−1ゼオライトは、アルミナゲルを用いて押出によって成形され、乾燥および乾燥空気中の焼成後に、1.4mmの径の押出物によって構成される担体が得られた。この担体は、15重量%のH型EU−1ゼオライトおよび85重量%のアルミナを含んでいた。
【0043】
得られた担体は、競争剤(塩酸)の存在下にヘキサクロロ白金酸との陽イオン交換を経て、触媒の重量に対して0.3重量%の白金が導入された。湿気を有する固体は、次いで、120℃で12時間にわたって乾燥させられ、乾燥空気の流れの中500℃の温度で1時間にわたって焼成された。こうして得られた触媒C0は、15.0重量%のH型EU−1ゼオライト、84.7重量%のアルミナおよび0.3重量%の白金を含有していた。
【0044】
(実施例2:構造型EUOを有するゼオライトと、10MRゼオライトと、12MRゼオライトとをベースとする触媒の調製(本発明に合致する))
本発明を例示する触媒を調製するために用いられたゼオライトは、それらの組成(Si/Al原子比)およびそれらの残留ナトリウム含有量と共に表1に示される。関係するゼオライトは酸型である。
【0045】
EU−1ゼオライトは、実施例1に記載された方法で合成された。空気中550℃で焼成し、次いで、10NのNHNO溶液中の4時間にわたる3回のイオン交換の後に、そのSi/Al原子比は18.3であり、Na/Al原子比は0.003であり、これは、50ppmのNa含有量に対応していた。
【0046】
ベータ、モルデナイト、YおよびZSM−5ゼオライトは、市販ゼオライト(Zeolyst)であった。
【0047】
NU−87ゼオライトは、欧州特許出願EP-A-0 377 291またはEP-B-0 378 916に従って合成された。その全体Si/Al原子比は17.2であり、ナトリウム含有量は1256重量ppmであった。このNU−87ゼオライトは、最初に、550℃で空気および窒素の流れの中、6時間にわたる乾式焼成を経た。次に、得られた固体は、10NのNHNO溶液中約100℃で4時間にわたるイオン交換を経た。NU−87ゼオライトは、次いで、約100℃で5時間にわたって7Nの硝酸溶液による処理を経た。用いられた硝酸の容積V(mL)は、乾燥NU−87ゼオライトの重量Wの10倍であった(V/W=10)。この7N硝酸溶液による処理は、同じ操作条件下に2回行われた。
【0048】
これらの処理の終了時に、得られたゼオライトは、H型であり、全体Si/Al原子比は33.3であり、Na含有量は10ppmであった。
【0049】
IM−5ゼオライトは、特許出願EP-A-0 946 416またはUS-A-6 136 290の実施例1に記載されたようにして合成された。当該文献のそれぞれの内容は、ここに、参考として援用される。
【0050】
【表1】

【0051】
ゼオライト(粉体状態にあった)は、機械的に混合され、次いで、アルミナゲルを用いて押出によって成形され、100℃での終夜乾燥および500℃での乾燥空気中の焼成の後に、重量で、15%のゼオライト(各担体は、EU−1ゼオライト、10MRゼオライトおよび12MRゼオライトを含有する)および85%のアルミナを含有する担体が得られた。担体のゼオライト部分は、成形前に生じさせられた3種の異なるゼオライトの機械的な混合物によって構成された。ゼオライト担体におけるゼオライトの重量分布および各担体中に存在するゼオライトの型は、表2に与えられる。
【0052】
触媒C2〜C8を調製するために、3種の異なるゼオライト(すなわち、構造型EUOを有する少なくとも1種のゼオライト、少なくとも1種の10MRゼオライトおよび少なくとも1種の12MRゼオライト)の混合物を含むゼオライト担体は、金属前駆体の溶液(金属が白金である場合(C2〜C5およびC8)にはヘキサクロロ白金酸HPtClの溶液または金属がレニウムである場合(C6およびC7)には過レニウム酸溶液)を用いる乾式含浸を経た。触媒C7について、レニウムの乾式含浸および120℃での終夜乾燥の後にインジウムが塩化インジウムによる乾式含浸によって担体上に担持させられた。触媒C8について、白金の乾式含浸および120℃での終夜乾燥の後に塩化スズの乾式含浸によって担体上にスズが担持させられた。
【0053】
全ての金属を種々の担体上に担持させた後、各湿った固体は、次いで、120℃で12時間にわたって乾燥させられ、乾燥空気の流れの中500℃の温度で1時間にわたって焼成された。得られた触媒の組成は表2に示される。
【0054】
【表2】

【0055】
(実施例3:芳香族C8留分の異性化による触媒C0〜C8の触媒特性の評価)
触媒C0〜C8の性能は、1分子当たり8個の炭素原子を含有する芳香族化合物(主として、メタキシレン、オルトキシレンおよびエチルベンゼン)を含む芳香族留分を異性化することによって評価された。用いられた操作条件は、以下の通りであった:
・温度=390℃;
・圧力=15バール;
・H分圧=12バール。
【0056】
触媒は、水素の存在下にジメチルジスルフィド(dimethyldisulphide:DMDS)を含有する供給材料により、金属に対する硫黄の原子比が1.5であるような濃度で前処理された。触媒は、次いで、水素の流れの中で3時間にわたって400℃に維持され、次いで、供給材料が注入された。
【0057】
触媒は、エチルベンゼンの転化による活性およびパラキシレンの擬似等平衡(quasi iso-equilibrium)における正味の損失によって選択性に関して比較された。
【0058】
異性化反応によって、3タイプの損失を生じさせる副反応が起こった:パラフィンへの損失(特に、ナフテン環の開環反応およびその後の分解に由来するもの)、8個の炭素原子を含む芳香族化合物(AC8)の不均化およびトランスアルキル化によって形成される芳香族化合物への損失、および、芳香族脱水素に起因する8個の炭素原子を含むナフテン(N8)を含むナフテン類への損失。N8は再循環させられ得るので、N8以外のナフテンを含むクラッキングおよび不均化/トランスアルキル化による損失(その合計は、正味の損失を構成する)が比較されることになる。
【0059】
クラッキングによる損失(P1)は、1〜8個の炭素原子を含有するパラフィン(PAR)の形態のAC8の損失である:
P1(重量%)=100×[(%PAR流出物×流出物重量)−(%PAR供給材料×供給材料の重量)]/(%AC8供給材料×供給材料の重量)。
【0060】
不均化/トランスアルキル化による損失(P2)は、N8以外のナフテン、トルエン、ベンゼンおよびC9+芳香族化合物(OAN)の形態のAC8の損失である:
P2(重量%)=100×[(%OAN流出物×流出物重量)−(%OAN供給材料×供給材料の重量)]/(%AC8供給材料×供給材料の重量)。
【0061】
損失の合計(P1およびP2)は、正味の損失を示す。
【0062】
表3に示されるデータは、等実験(iso-experimental)条件および擬似等平衡(98%)において得られた。
【0063】
【表3】

【0064】
本発明の触媒C1〜C8(それぞれ、構造型EUOを有するゼオライト、10MRゼオライトおよび12MRゼオライトを含む)は、より良好なエチルベンゼンの転化率および正味の損失の低減を引き出し、これは、構造型EUOを有する1種のゼオライトのみをベースとする触媒C0を用いて得られた性能と比較して二次反応が制限されたことを意味する。金属(白金またはレニウム)の担体上への導入(C2〜C6)も、金属を含まない触媒C1と比較して正味の損失を低減させ、エチルベンゼンの転化率を向上させた。追加金属(スズまたはインジウム)の導入(それぞれC8、C7)は、単一種の金属のみを含有する触媒(それぞれC3、C6)により得られた性能と比較して、一層より大幅に正味の損失を低減させ、エチルベンゼンの転化率をさらに向上させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造型EUOを有する少なくとも1種のゼオライトと、開口部が10個の酸素原子の環(10MR)によって規定されるチャネルを有する少なくとも1種のゼオライトと、開口部が12個の酸素原子の環(12MR)によって規定されるチャネルを有する少なくとも1種のゼオライトと、少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクスとを含む触媒。
【請求項2】
元素周期律表の第VIB、VIIBおよびVIII族からの金属から選択される少なくとも1種の金属を含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記金属は、第VIII族からの金属から選択される、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
前記第VIII族からの金属から選択される金属は、白金である、請求項3に記載の触媒。
【請求項5】
開口部が10個の酸素原子の環によって規定されるチャネルを有するゼオライトは、ZSM−5、NU−87、IM−5、フェリエライト、NU−85およびZSM−22から選択される、請求項1〜4のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項6】
開口部が10個の酸素原子の環によって規定されるチャネルを有するゼオライトは、ZSM−5ゼオライトである、請求項5に記載の触媒。
【請求項7】
開口部が12個の酸素原子の環によって規定されるチャネルを有するゼオライトは、ベータ、Y、モルデナイト、ZSM−12、マッチアイトおよびボグサイトゼオライトから選択される、請求項1〜6のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項8】
開口部が12個の酸素原子の環によって規定されるチャネルを有するゼオライトは、モルデナイトである、請求項7に記載の触媒。
【請求項9】
開口部が12個の酸素原子の環によって規定されるチャネルを有するゼオライトは、ベータゼオライトである、請求項7に記載の触媒。
【請求項10】
前記構造型EUOを有するゼオライトは、EU−1ゼオライトである、請求項1〜9のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項11】
開口部が8個の酸素原子の環(8MR)によって規定されるチャネルを有する少なくとも1種のゼオライトを含む、請求項1〜10のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項12】
第IIIAおよびIVA族からの金属から選択される少なくとも1種の金属を含む、請求項2〜11のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項13】
硫黄を含む、請求項1〜12のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項14】
1分子当たり8個の炭素原子を含む芳香族化合物を含む供給材料の異性化方法であって、請求項1〜13のいずれか1つに記載の触媒の存在下に行われる、方法。
【請求項15】
前記供給材料は、キシレン類およびエチルベンゼンの混合物を含む、請求項14に記載の異性化方法。
【請求項16】
温度:300〜500℃;水素分圧:0.3〜1.5MPa;全圧:0.45〜1.9MPaおよび触媒の重量(kg)当たり、かつ、1時間当たりの導入される供給材料の重量(kg)で表される毎時空間速度:0.25〜30h−1で行われる、請求項14または15に記載の異性化方法。

【公表番号】特表2009−520592(P2009−520592A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546505(P2008−546505)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002647
【国際公開番号】WO2007/080246
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(500393413)アンスティテュ フランセ デュ ペトロール (32)
【Fターム(参考)】