説明

FGF−R4受容体特異的拮抗薬

本発明は、FGF−R4受容体の活性の阻害を可能にするFGF−R4受容体特異的拮抗薬分子に関する。前記拮抗薬は、特に、前記受容体の活性の阻害を可能にするFGF−R4特異的抗体である。また、本発明は、特に血管形成の分野における、及び特定の種類の癌の治療における前記抗体の治療的使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、FGF受容体4(FGF−R4)に特異的な拮抗薬であって、この受容体の活性を阻害することを可能にする拮抗薬である。これらの拮抗薬は、特に、FGF受容体4(FGF−R4)に対して特異的な抗体である。
【0002】
また、本発明の対象は、特に血管形成分野における、及び特定の種類の癌の治療におけるこれらの拮抗薬の治療的使用でもある。
【背景技術】
【0003】
FGF(線維芽細胞成長因子)は、インビトロ及びインビボで血管細胞増殖、移動及び分化を刺激することできると報告された最初の分子の1つである。FGFによるインビトロ及びインビボでの血管形成の誘導及び毛細血管の形成については多くの文献で報告されている。また、FGFは、腫瘍によって動員される血管の形成を促進することによる腫瘍血管形成にも関与する。
【0004】
ヒトFGFファミリーは、少なくとも23のメンバーから構成され、これらは全て、120のアミノ酸からなる保存された中央ドメインを有する。ヒトFGFファミリーは、三重複合体を形成するように、そのチロシンキナーゼ型の高親和性受容体(FGF−R)と、ほとんどの細胞表面及び細胞外マトリックス(低親和性結合部位)上に存在する成分であるヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用することによってそれらの生物学的活性を発揮する。FGFは、幾つかのFGF−Rに対して高親和性を有するものもあるが、ある受容体又は受容体のあるアイソフォームを特異的に活性化するものもある。
【0005】
FGF−R4特異的リガンドは、Xieら(Cytokine、1999年、11:729−35頁)によって同定された。FGF19と呼ばれるこのリガンドは、FGF−R4だけに対して高親和性を有するリガンドであり、この受容体に対するリガンドの結合は、ヘパリン依存性又はヘパラン硫酸依存性である。FGF19は、成体動物では肝細胞及び小腸のみにおいて同定され、そこではFGF19は肝臓による胆汁酸の合成を調節している。FGF19は、胚発育の間に関与する成長因子であると思われ、ゼブラフィッシュ及びヒトにおける胎児の脳発育に関与すると思われる。
【0006】
FGF1又はFGF2等の他のFGF−R4リガンドも報告されている。これらのリガンドは、FGF−R4を強力に活性化するが、FGF−R4に特異的ではなく、即ち、これらのリガンドは他のFGF−Rにも結合する(Ornitzら、J.Biol.Chem.、1996年、271:15292−7頁)。
【0007】
FGF−R4受容体の活性化は、数種類の細胞シグナル伝達を生じさせる。これらの中で、最も通常の型は、FGFによるFGF−R4の刺激の後のリン酸化カスケードを介したシグナル伝達経路の状況に対応する。この誘導は、FGF−R4のチロシンキナーゼドメインの自己リン酸化をもたらし、他のシグナル伝達タンパク質、例えばAKT、p44/42、JNK等のリン酸化に依存する細胞内シグナル伝達経路を開始する働きがある。このリン酸化を介したシグナル伝達は、細胞の種類や、これらの細胞の表面に存在する補助受容体又は接着分子によって様々である(Cavallaroら、Nat.Cell Biol.3/7、650−657頁(2001)、Stadlerら、Cell.Signal.18/6、783−794頁(2006)、Linら、J Biol Chem.、2007年、14:27277−84頁(2007))。FGF−R4を含むFGF−Rにとって重要なシグナル伝達の別の方法は、そのリガンドと組み合わせた活性化の後の受容体の内部移行である。この機構は、受容体のチロシンキナーゼ活性に依存しないが、FGF−R4の短いC末端配列に依存する(Klingenbergら、J.Cell Sci.、113/Pt10:1827−1838頁(2000))。
【0008】
FGF−R4の4つの互いに異なる型は、文献で報告されている。受容体の標準型である388位で2つの多型変異体を有する完全長型、即ちFGF−R4 Gly388、及び幾つかの腫瘍の関連において報告されているArg388型(Bangeら、Cancer Res.62/3、840−847頁(2002)、Spinolaら、J Clin Oncol23、7307−7311頁(2005)、Stadlerら、Cell.Signal.18/6、783−794頁(2006))。乳腫瘍細胞において発現する可溶型も発見された(Takaishiら、Biochem Biophys Res Commun.、2000年、267:658−62頁)。細胞外部分において切断される第4の型は、特定の下垂体腺腫において報告された(Ezzatら、J Clin Invest.、2002年、109:69−78頁)。FGF−R4は、胃腸管、膵臓、肝臓、筋肉、副腎等、内胚葉から誘導される組織において主に発現する。
【0009】
FGF−R4は、幾つかの細胞の役割を有することが文献において知られており、それらの主な3つを以下に記載する。
【0010】
第1に、この受容体は、骨格筋分化及び再生、間葉組織分化又は骨形成等、インビトロ及びインビボでの各種の細胞分化プロセスの制御に、又は出生後の肝臓発育の間の腺胞の形成に関与する。
【0011】
第2に、FGF−R4は、胆汁酸及びコレステロールホメオスタシスの制御において報告され、肥満の制御に関与すると考えられる。更に、胆汁酸産生及びコレステロール産生の間のバランスは、インビトロ及びインビボでFGF−R4によって制御される。
【0012】
第3に、FGF−R4は、特定の腫瘍現象、例えば肝細胞癌若しくは大腸癌の発現、又は乳房線維腺腫細胞若しくは乳癌上皮細胞の増殖、例えば乳房若しくは直腸結腸癌細胞運動に関与する。FGF−R4の腫瘍への関与は、乳房及び結腸直腸腫瘍(Bangeら、Cancer Res.62/3、840−847頁、2002年)、前立腺腫瘍(Wangら、Clin.Cancer Res.10/18、6169−6178頁、2004年)又は肝臓腫瘍(Nicholesら、Am.J.Pathol.160/6、2295−307頁、2002年)の腫瘍進行の促進に相関する多型(Gly388Arg)の出現を主に伴う。また、この多型は、肉腫の場合(Morimotoら、Cancer98/10、2245−2250頁、2003年)、肺腺癌の場合(Spinolaら、J Clin Oncol23、7307−7311頁、2005年)又は扁平上皮肉腫の場合(da Costa Andradeら、Exp Mol Pathol82、53−7頁、2007年)、予後不良をも伴う。また、FGF−R4の過剰発現は、特定の膵臓癌株においても報告され(Shahら、Oncogene21/54、8251−61頁、2002年)、星状細胞腫悪性腫瘍に相関する(Yamadaら、Neurol.Res.24/3、244−8頁、2002年)。更に、移植大腸腫瘍のインビボモデル又は肝細胞癌モデルにおける抗FGF19モノクローナル抗体の使用は、FGF19の不活性化、したがってFGF−R4活性化の抑止が大腸癌又は肝臓癌の治療に有益であり得ることを示す。
【0013】
IIは、FGF/FGF−R1及びFGF/FGF−R2の対が正常又は病的な状況における新しい血管の形成に関与することが文献において受け入れられる。しかし、この細胞現象の制御におけるFGF―R4の可能な関与は、これまで研究されてこなかった。それは、実際、現在まで、血管形成の活性化はFGF−R1及び/又はFGF−R2によって媒介されると考えられてきた(Prestaら、Cytokine Growth Factor Rev.、2005年、16:159−78頁)。
【0014】
FGF−R4拮抗薬の例は、文献に記載されており、特に小分子であるが、それらは、FGF−R4を特異的に標的とせず、したがって悪影響につながる。したがって、幾つかのFGF−Rを阻害するチロシン−キナーゼドメイン阻害化学的小分子及び更には他の受容体型チロシンキナーゼは、Thompsonらによって報告されている(Thompsonら、J Med Chem.、2000年、43:4200−11頁)。また、それらの細胞外部分との会合によってFGF−Rを阻害する化学的小分子は、出願WO2007/080325にも記載されている。
【0015】
また、国際出願WO2005/066211及びWO2008052796において、又はChenら(Hybridoma24/3、152−159頁、2005年)に記載されている抗FGFR1抗体及び/又は抗FGFR4抗体等の抗体も研究されている。出願WO2005/037235は、肥満及び糖尿病の治療のためのFGF−R拮抗薬である抗体について記載している。更に、作動薬である抗FGF−R4抗体は、出願WO03/063893に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2007/080325号
【特許文献2】国際公開第2005/066211号
【特許文献3】国際公開第2008/052796号
【特許文献4】国際公開第2005/037235号
【特許文献5】国際公開第03/063893号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Xieら(Cytokine、1999年、11:729−35頁)
【非特許文献2】Ornitzら、J.Biol.Chem.、1996年、271:15292−7頁
【非特許文献3】Cavallaroら、Nat.Cell Biol.3/7、650−657頁(2001)
【非特許文献4】Stadlerら、Cell.Signal.18/6、783−794頁(2006)
【非特許文献5】Linら、J Biol Chem.、2007年、14:27277−84頁(2007)
【非特許文献6】Klingenbergら、J.Cell Sci.、113/Pt10:1827−1838頁(2000)
【非特許文献7】Bangeら、Cancer Res.62/3、840−847頁(2002)
【非特許文献8】Spinolaら、J Clin Oncol23、7307−7311頁(2005)
【非特許文献9】Takaishiら、Biochem Biophys Res Commun.、2000年、267:658−62頁
【非特許文献10】Ezzatら、J Clin Invest.、2002年、109:69−78頁
【非特許文献11】Wangら、Clin.Cancer Res.10/18、6169−6178頁、2004年
【非特許文献12】Nicholesら、Am.J.Pathol.160/6、2295−307頁、2002年
【非特許文献13】Morimotoら、Cancer98/10、2245−2250頁、2003年
【非特許文献14】da Costa Andradeら、Exp Mol Pathol82、53−7頁、2007年
【非特許文献15】Shahら、Oncogene21/54、8251−61頁、2002年
【非特許文献16】Yamadaら、Neurol.Res.24/3、244−8頁、2002年
【非特許文献17】Prestaら、Cytokine Growth Factor Rev.、2005年、16:159−78頁
【非特許文献18】Thompsonら、J Med Chem.、2000年、43:4200−11頁
【非特許文献19】Chenら(Hybridoma24/3、152−159頁、2005年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の対象は、FGF−R4受容体に特異的に結合することを特徴とするFGF−R4受容体拮抗薬である。
【0019】
有利には、前記拮抗薬は、FGF−R4受容体に特異的な抗体である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
一実施形態において、本発明の対象である前記拮抗薬は、FGF−R4受容体のD2−D3ドメインに結合する。有利な一実施形態において、本発明の対象である前記拮抗薬は、FGF−R4受容体のD2ドメインに結合する。更により有利な一実施形態において、前記拮抗薬は、配列番号70の配列に結合する。
【0021】
有利には、FGF−R4受容体特異的拮抗薬は、FGF−R4受容体に対して、Biacore法によって決定される10−8M未満、5×10−9M未満、2×10−9M未満又は1×10−9M未満のKを有する。
【0022】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬は、ヒトFGF−R4及びマウスFGF−R4の両方に対して活性である。
【0023】
別の有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬は、ヒトFGF−R4、マウスFGF−R4及びラットFGF−R4に対して同時に活性である。
【0024】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、配列番号9、10、11、12、13、14、73、74、75、78、79、80、83、84、85、88、89、90、93、94、95、98、99、100、103、104、105、108、109若しくは110と同一の配列を有する少なくとも1つのCDR、又は配列番号9、10、11、12、13、14、73、74、75、78、79、80、83、84、85、88、89、90、93、94、95、98、99、100、103、104、105、108、109若しくは110の配列と比較して1若しくは2つのアミノ酸だけ配列が異なる少なくとも1つのCDRを含むが、前記抗体は、その結合特異性を保持する。
【0025】
特に有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、配列番号9、10、11、12、13、14、73、74、75、78、79、80、83、84、85、88、89、90、93、94、95、98、99、100、103、104、105、108、109若しくは110の配列のCDR、又は上述した配列とそれぞれ比較して1若しくは2つのアミノ酸だけ配列が異なるCDRを含むが、これは、前記抗体のFGF−R4受容体結合特異性を改変しない。
【0026】
有利な一実施形態において、本発明の抗体は、少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、前記重鎖は、配列番号9、10及び11、又は73、74及び75、83、84及び85、又は93、94及び95、又は103、104及び105から構成される群から選択されるアミノ酸配列を有する3つのCDR配列を含み、前記軽鎖は、配列番号12、13及び14、又は78、79及び80、又は88、89及び90、又は98、99及び100、又は108、109及び110から構成される群から選択されるアミノ酸配列を有する3つのCDR配列を含む。
【0027】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体の重鎖可変領域は、配列番号6、77、87、97又は107の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有する配列を含む。
【0028】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体の軽鎖可変領域は、配列番号8、72、82、92又は102の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有する配列を含む。
【0029】
また、本発明の対象は、配列番号5、76、86、96又は106の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる可変領域を含む重鎖を含むFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体でもある。
【0030】
また、本発明の対象は、配列番号7、71、81、91又は101の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる可変領域を含む軽鎖を含むFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体でもある。
【0031】
また、本発明の対象は、配列番号6、77、87、97又は107のポリペプチド配列の可変領域を含む重鎖を含むFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体でもある。
【0032】
また、本発明の対象は、配列番号8、72、82、92又は102のポリペプチド配列の可変領域を含む軽鎖を含むFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体でもある。
【0033】
また、本発明の対象は、配列番号5及び7、又は71及び76、又は81及び86、又は91及び96、又は101及び106のヌクレオチド配列によってコードされる配列を含むFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体でもある。
【0034】
また、本発明の対象は、配列番号6及び8、又は72及び77、又は82及び87、又は92及び97、又は102及び107のポリペプチド配列を含むFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体でもある。
【0035】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、配列番号2及び/又は配列番号4、又は配列番号72及び/又は配列番号77、又は配列番号82及び/又は配列番号87、又は配列番号92及び/又は配列番号97、又は配列番号102及び/又は配列番号107と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一である配列を含む。
【0036】
特に有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、配列番号1の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖を含む。
【0037】
また、本発明の対象は、配列番号2の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一のポリペプチド配列の重鎖を含むFGF−R4受容体拮抗薬抗体でもある。
【0038】
また、本発明の対象は、配列番号3の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖を含むFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体でもある。
【0039】
また、本発明の対象は、配列番号4の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一のポリペプチド配列の軽鎖を含むFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体でもある。
【0040】
また、本発明の対象は、配列番号1及び3のヌクレオチド配列によってコードされる配列を含むFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体でもある。
【0041】
更により有利な一実施形態において、FGF−R4特異的拮抗薬抗体は、配列番号2の配列を含む重鎖、及び配列番号4の配列を含む軽鎖を含む。
【0042】
配列番号2の配列の重鎖及び配列番号4の軽配列から構成される抗体は、残りの本出願において40−12と呼ばれる。
【0043】
本発明の一実施形態において、FGF−R4特異的抗体は、ヒトFGF−R4、マウスFGF−R4及びラットFGF−R4に対して同時に活性である。
【0044】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬は、AKT/p38細胞経路の阻害を誘導する。
【0045】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬は、Erk1/2細胞経路の阻害を誘導する。
【0046】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬は、FGF−R4制御細胞シグナル伝達経路の阻害を誘導する。
【0047】
別の有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬は、腫瘍細胞の増殖の阻害を誘導する。
【0048】
更に別の有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬は、血管形成の阻害を誘導する。
【0049】
別の特に有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬は、他のFGF受容体に対するその親和性よりも10倍大きなFGF−R4に対する親和性を有する。
【0050】
特に有利な一実施形態において、本発明による抗体は、FGF−R4受容体特異的ヒト化拮抗薬抗体である。
【0051】
一実施形態において、FGF−R4受容体特異的ヒト化拮抗薬抗体は、可変領域が配列番号29の配列又は配列番号31の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖を含む。
【0052】
別の一実施形態において、FGF−R4受容体特異的ヒト化拮抗薬抗体は、可変領域が配列番号30の配列又は配列番号32の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一である軽鎖を含む。
【0053】
別の一実施形態において、FGF−R4受容体特異的ヒト化拮抗薬抗体は、可変領域が配列番号29のヌクレオチド配列又は配列番号31の配列と同一の配列によってコードされる軽鎖を含む。
【0054】
また、本発明の対象は、可変領域が配列番号33の配列、配列番号35の配列、又は配列番号37の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一の配列によってコードされる重鎖を含むFGF−R4受容体特異的ヒト化拮抗薬抗体でもある。
【0055】
また、本発明の対象は、可変領域が配列番号34の配列、配列番号36の配列、又は配列番号38の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一である重鎖を含むFGF−R4受容体特異的ヒト化拮抗薬抗体でもある。
【0056】
また、本発明の対象は、配列番号33及び/又は配列番号35及び/又は配列番号37のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖を含むFGF−R4受容体特異的ヒト化拮抗薬抗体でもある。
【0057】
また、本発明の対象は、配列番号30又は32の配列のヒト化配列が配列番号34、36又は38の配列のヒト化配列と組み合わせて使用されるFGF−R4受容体特異的ヒト化拮抗薬抗体でもある。
【0058】
別の一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、配列番号73、74、75、78、79及び80の配列のCDR、又は上述した配列とそれぞれ比較して1又は2つのアミノ酸だけ配列が異なるCDRを含むが、これは、前記抗体のFGF−R4受容体結合特異性を改変しない。
【0059】
別の一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、配列番号83、84、85、88、89及び90の配列のCDR、又は上述した配列とそれぞれ比較して1又は2つのアミノ酸だけ配列が異なるCDRを含むが、これは、前記抗体のFGF−R4受容体結合特異性を改変しない。
【0060】
別の一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、配列番号93、94、95、98、99及び100の配列のCDR、又は上述した配列とそれぞれ比較して1又は2つのアミノ酸だけ配列が異なるCDRを含むが、これは、前記抗体のFGF−R4受容体結合特異性を改変しない。
【0061】
別の一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、配列番号103、104、105、108、109及び110の配列のCDR、又は上述した配列とそれぞれ比較して1又は2つのアミノ酸だけ配列が異なるCDRを含むが、これは、前記抗体のFGF−R4受容体結合特異性を改変しない。
【0062】
本発明の好ましい一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、配列番号83、84、85、88、89及び90の配列のCDRを含む。
【0063】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、重鎖可変領域が配列番号76、86、96又は106の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むヒト抗体である。
【0064】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、軽鎖可変領域が配列番号71,81,91又は101の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むヒト抗体である。
【0065】
また、本発明の対象は、配列番号77、87、97又は107の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有するタンパク質配列によってコードされる可変領域を含む重鎖を含むFGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体でもある。
【0066】
また、本発明の対象は、配列番号72、82、92又は102の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有するタンパク質配列によってコードされる可変領域を含む軽鎖を含むFGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体でもある。
【0067】
また、本発明の対象は、配列番号71及び76のヌクレオチド配列、又は配列番号81及び86のヌクレオチド配列、又は配列番号91及び96のヌクレオチド配列、又は配列番号101及び106のヌクレオチド配列によってコードされる配列を含むFGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体でもある。
【0068】
また、本発明の対象は、配列番号72及び77のポリペプチド配列、又は配列番号82及び87のポリペプチド配列、又は配列番号92及び97のポリペプチド配列、又は配列番号102及び107のポリペプチド配列を含むFGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体でもある。
【0069】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、配列番号72及び/又は配列番号77と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一の配列を含む。
【0070】
別の有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体は、配列番号82及び/又は配列番号87と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一の配列を含む。
【0071】
別の有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体は、配列番号92及び/又は配列番号97と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一の配列を含む。
【0072】
別の有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体は、配列番号102及び/又は配列番号107と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一の配列を含む。
【0073】
好ましい一実施形態において、本発明の対象は、配列番号82の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖を含み、配列番号87の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一のポリペプチド配列の軽鎖を含むFGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体である。
【0074】
更により好ましくは、本発明の対象は、配列番号82及び87のヌクレオチド配列によってコードされる配列を含むFGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体である。
【0075】
配列番号77の配列の重鎖及び配列番号72の軽配列から構成される抗体は、残りの本出願においてクローン8と呼ばれる。
【0076】
配列番号87の配列の重鎖及び配列番号82の軽配列から構成される抗体は、残りの本出願においてクローン31と呼ばれる。
【0077】
配列番号97の配列の重鎖及び配列番号92の軽配列から構成される抗体は、残りの本出願においてクローン33と呼ばれる。
【0078】
配列番号107の配列の重鎖及び配列番号102の軽配列から構成される抗体は、残りの本出願においてクローン36と呼ばれる。
【0079】
本発明の技術分野は、これらの配列を含む抗体に限定されない。実際、この受容体に対する拮抗的作用を有する、FGF−R4に特異的に結合する全ての抗体は、本発明の技術分野の一部である。
【0080】
本発明の対象は、細胞毒性薬とコンジュゲートするFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体でもある。
【0081】
本発明の対象は、血管形成を伴う疾患の治療におけるFGF−R4受容体特異的拮抗薬の使用である。
【0082】
本発明の対象は、癌の治療におけるFGF−R4受容体特異的拮抗薬の使用である。
【0083】
本発明の対象は、肝臓癌又は他の任意の種類の肝癌の治療におけるFGF−R4受容体特異的拮抗薬の使用である。
【0084】
本発明の対象は、膵臓癌の治療におけるFGF−R4受容体特異的拮抗薬の使用である。
【0085】
本発明の対象は、血管形成を伴う疾患の治療、及び肝臓癌又は他の任意の種類の肝癌の治療の両方において有用なFGF−R4受容体特異的抗体である。
【0086】
本発明の対象は、血管形成を伴う疾患の治療において、肝臓癌又は他の任意の種類の肝癌の治療において、及び膵臓癌又は胃腸管の器官若しくはFGF−R4を発現する他の任意の器官の癌の治療において同時に有用なFGF−R4受容体特異的抗体である。
【0087】
本発明の対象は、FGF−R4受容体特異的拮抗薬及び賦形剤を含む医薬組成物である。
【0088】
本発明の対象は、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体を患者に投与することを含む癌の治療方法である。
【0089】
本発明の対象は、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体を患者に投与することを含む血管形成の病理学的増大を伴う疾患の治療方法である。
【0090】
本発明の対象は、
a.マウスを免疫化するステップ、
b.マウスからリンパ節を採取するステップ、及び
c.ハイブリドーマ上清をスクリーニングするステップ
を含む、FGF−R4受容体特異的拮抗薬モノクローナル抗体の選択方法である。
【0091】
本発明の対象は、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体を産生する細胞系である。
【0092】
本発明の対象は、FGF−R4受容体拮抗薬抗体を産生する細胞系を培養することを含むFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体の作製方法である。
【0093】
本発明の対象は、FGF−R4受容体特異的拮抗薬を含む薬物である。
【0094】
また、本発明の対象は、配列番号2、4、6、8、9、10、11、12、13、14、30、32、34、36、38、72、73、74、75、77、78、79、80、82、83、84、85、87、88、89、90、92、93、94、95、97、98、99、100、102、103、104、105、107、108、109及び110、並びにこれらの配列の1つと少なくとも80%、90%、95%又は99%同一の配列から構成される群から選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドでもある。
【0095】
本発明の対象は、上記の通りのポリヌクレオチドを含む組換えベクター、又は上記の通りのポリペプチドをコードする組換えベクターである。
【0096】
本発明の対象であるFGF−R4受容体拮抗薬抗体の重鎖及び/又は軽鎖の発現を可能にするため、前記鎖をコードするポリヌクレオチドが発現ベクターに挿入される。これらの発現ベクターは、プラスミド、YAC、コスミド、レトロウイルス、EBV由来エピソーム、及び当業者が前記鎖の発現のために適切であると考え得るベクターのいずれかであってよい。
【0097】
本発明の対象は、上記の通りの組換えベクターを含む宿主細胞である。
本発明の詳細な説明
本発明の対象は、血管形成及び腫瘍成長を阻害するための(FGF−R1、R2又はR3との交差反応なしで)FGF−R4に対して特異的な抗体の使用である。
【0098】
予想外に、本発明者らは、FGF−R4が血管形成の制御に活性的及び特異的役割を果たすことを示した。
【0099】
FGF−R4のこの機能は、以前に示されず、提案もされなかった。したがって、この受容体は、血管形成機能不全を示す病状を治療するための標的として使用され得る。したがって、前記受容体の活性を調節し得るFGF−R4リガンドは、多くの血管形成関連病状のための可能な治療剤である。
【0100】
したがって、本発明は、血管形成の調節不全を含み、その阻害を必要とする全ての病状の治療に使用され得る。腫瘍血管形成阻害剤として本発明による拮抗薬を用いる、包含される病状は、癌、又は血管形成の調節不全が報告されている病状、例えば、加齢性黄斑変性若しくはARMD、炎症性疾患、例えば、関節リウマチ、骨関節炎、大腸炎、潰瘍、若しくは腸管の任意の炎症性疾患、アテローム性動脈硬化症、又は肥満の治療におけるものであってもよい。
【0101】
また、これらの抗体の使用は、腫瘍の成長の阻害においても示される。したがって、本発明による拮抗薬は、FGF−R4の調節不全を伴う特定の癌、より詳しくは、肝臓癌、大腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、膵臓癌、皮膚癌又は食道癌の治療のために使用され得る。
【0102】
本発明による拮抗薬の主要な利点の内の1つは、FGF受容体、適例としてFGF−R4を特異的に標的とすることである。この特異性は、チロシンキナーゼドメインを阻害する化学的小分子が有し得る悪影響を限定することを可能にする。更に、FGF−R4は、偏在して発現しないが、内皮細胞上で、例えば、肝細胞、胆管細胞、乳腺細胞、前立腺細胞、卵巣細胞、膵臓細胞又は腎臓細胞上で特に発現することから、これは、副作用を限定するFGF−R4活性の調節不全に関連する疾患の治療方法を提供する。
【0103】
「拮抗薬」という用語は、FGF−R4の活性を低下させる又は完全に阻害する任意のリガンドを指す。したがって、この拮抗剤化合物は、FGF−R4阻害剤とも呼ばれる。
【0104】
この拮抗薬は、他のFGFR以外のFGF−R4受容体に特異的に結合し得る化学的分子、組換えタンパク質、オリゴ糖、多糖、オリゴヌクレオチド、抗体等の任意のFGF−R4リガンドであってよい。
【0105】
したがって、本発明の対象は、FGF−R4特異的拮抗薬である。本発明によれば、FGF−R4に特異的に結合する拮抗薬は、他のFGF受容体、即ち、FGF−R1、FGF−R2又はFGF−R3に結合しないリガンドを指す。特に、FGF−R4特異的抗体は、FGF−R1、FGF−R2又はFGF−R3とのいかなる交差反応も示さない抗体である。
【0106】
「特異的結合」は、ある受容体に対する結合の強度を別の受容体と比較した差、この場合は、FGF−R4に対する結合と、FGF−R1、FGF−R2又はFGF−R3に対する可能な結合との間の差が少なくとも10倍であることを指す。
【0107】
本発明の一実施形態において、FGF−R4リガンドは、オリゴ糖又は多糖である。
【0108】
「オリゴ糖」は、3から10単位の単糖を含有する任意の糖ポリマーを指す。例えばフルクトオリゴ糖(FOS)等の天然オリゴ糖、及び例えばヘパリン模倣抗血栓剤等の合成オリゴ糖が存在する。
【0109】
「多糖」という用語は、グリコシド結合によって相互に結合する10超の単糖から構成される任意のポリマーを指す。合成多糖と同様に、例えばムコ多糖、フコイド、カラゲナン、細菌性エキソポリサッカライド等の天然多糖が存在する。したがって、低分子量フコイダン又は高硫酸化エキソポリサッカライドは、血管新生促進活性を示した(Chabutら、Mol Pharmacol.、2003年、64:696−702頁、Matouら、Biochem Pharmacol.、2005年、69:751−9頁)。逆に、ヘパリン由来弱硫酸化オリゴ糖又はホスホマンノペントーススルフェートは、血管新生阻害特性を有することができる(Parishら、1999年、15:3433−41頁、Casuら、J Med Chem.、2004年、12:838−48頁)。
【0110】
本発明の一実施形態において、FGF−R4リガンドは抗体である。
【0111】
「抗体」という用語は、任意の種類の抗体又は誘導分子、例えばポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を指す。ヒト化抗体、ヒト抗体、多特異的抗体、キメラ抗体、抗体フラグメント、ナノ体等は、モノクローナル抗体から誘導される分子の中に含まれる。
【0112】
本発明の一実施形態において、FGF−R4特異的拮抗薬は、ポリクローナル抗体である。
【0113】
「ポリクローナル抗体」は、幾つかのBリンパ球クローンに由来する抗体の混合物から産生された、一連の異なるエピトープを認識する抗体である。
【0114】
有利な一実施形態において、FGF−R4特異的拮抗薬は、モノクローナル抗体である。
【0115】
「モノクローナル抗体」は、単一の種類のBリンパ球から誘導される(クローン的に増幅される)抗体の実質的に均質な集団から得られる抗体である。この集団を占める抗体は、小量で存在し得る可能な天然の突然変異を除いて同一である。これらの抗体は、単一のエピトープに対するものであり、したがって高度に特異的である。
【0116】
「エピトープ」という用語は、抗体が結合する抗原の部位を指す。抗原がポリマー、例えばタンパク質又は多糖である場合、エピトープは、隣接残基又は非隣接残基から構成され得る。
【0117】
本発明の有利な一実施形態において、抗FGF−R4拮抗薬抗体は、FGF−R4受容体のD2−D3ドメインに属するエピトープに結合する。
【0118】
更により有利な一実施形態において、前記抗体は、FGF−R4受容体のアミノ酸144から365を含むドメインに含まれるエピトープに結合する。
【0119】
更により有利な一実施形態において、前記抗体は、FGF−R4受容体のD2ドメインに含まれるエピトープに結合し、このエピトープは、配列番号70の配列に記載されるアミノ酸145から242に対応する。
【0120】
免疫グロブリンとしても公知である抗体は、ジスルフィド架橋によって結合する2つの同一の重鎖(「VH」)及び2つの同一の軽鎖(「VL」)から構成される。各鎖は、定常領域及び可変領域を含む。各可変領域は、抗原のエピトープへの結合を主に担う「相補性決定領域」(「CDR」)又は「超可変領域」と呼ばれる3つのセグメントを含む。
【0121】
「VH」という用語は、Fv、scFv、dsFv、Fab、Fab’又はF(ab)’フラグメントの重鎖を含む抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。
【0122】
「VL」という用語は、Fv、scFv、dsFv、Fab、Fab’又はF(ab)’フラグメントの軽鎖を含む抗体の免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
【0123】
「抗体フラグメント」という用語は、前記抗体の任意の部分:Fab(抗原結合フラグメント)Fv、scFv(一本鎖Fv)、Fc(結晶化可能フラグメント)を指す。好ましくは、これらの機能性フラグメントは、Fv、scFv、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFv−Fcの種類のフラグメント又は二重抗体であり、前記二重抗体は、一般にそれらが誘導されるキメラ又はヒト化モノクローナル抗体と同じ結合特異性を有する。本発明によれば、本発明の抗体フラグメントは、酵素、例えばペプシン又はパパインによる消化等の方法によって及び/又は化学還元によるジスルフィド架橋の開裂によってキメラ又はヒト化モノクローナル抗体から得られ得る。
【0124】
「CDR領域又はCDR」という用語は、Kabatら(Kabatら、Sequences of proteins of immunological interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH、1991年、及び以降の版)によって定義される通りの免疫グロブリン重鎖及び軽鎖超可変領域を示すことが意図される。3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDRがある。1つのCDR又は複数のCDRという用語は、抗体の、抗原又はそれが認識するエピトープに対する親和性結合を担う大部分のアミノ酸残基を含有するこれらの領域の内の1つ若しくは複数又はこれらの領域の内の全てさえも必要に応じて示すために本明細書において使用される。可変ドメインの最も保存された領域は、FR(「フレームワーク」)領域又は配列と呼ばれる。
【0125】
本発明の他の一実施形態において、FGF−R4特異的拮抗薬は、キメラ抗体である。
【0126】
「キメラ抗体」という用語は、定常領域又はその部分が、可変領域が異なる種の定常領域に結合するように改変、置換又は交換される、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体を指す。
【0127】
また、「キメラ抗体」という用語は、可変領域又はその部分が、定常領域が異なる種の可変領域に結合するように改変、置換又は交換される、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体をも指す。
【0128】
キメラ抗体の作製方法は、当業者に公知である。例えば、Morrison、1985年、Science、229:1202頁、Oiら、1986年、Bio Techniques、4:214頁、Gilliesら、1989年、J.Immunol.Methods、125:191−202頁、米国特許第5,807,715号、第4,816,567号及び第4,816,397号を参照すること。
【0129】
前記抗体のこれらのキメラバージョンは、キメラモノクローナル抗体を生成するためにヒト由来のCkappa及びCH(IgG1)定常ドメインへのVL及びVH可変領域の融合を含むことができる。
【0130】
また、CH(IgG1)ドメインは、FcγRIIIa受容体に対するFcフラグメントの親和性を増大させ、それにより前記抗体のエフェクター機能を増大させるために点突然変異によって改変することも可能である(Lazarら、2006年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA103:4005−4010頁、Stavenhagenら、2007年、Cancer Res.67:8882−8890頁)。
【0131】
本発明は、抗体のヒト化バージョンを含む。
【0132】
「ヒト化抗体」という用語は、主にヒト免疫グロブリン配列を含む抗体を指す。この用語は、ヒト配列の又はヒト配列中に見出される残基の組み込みによって改変された非ヒト免疫グロブリンを一般に指す。
【0133】
一般に、ヒト化抗体は、CDR領域の全て又は一部が非ヒト親配列から誘導される部分に対応し、FR領域の全て又は一部がヒト免疫グロブリン配列から誘導されるものである1つ又は典型的には2つの可変ドメインを含む。したがって、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常部領域(Fc)の少なくとも一部、特に選択されるヒト免疫グロブリン鋳型の一部を含むことができる。
【0134】
したがって、目的は、ヒトにおいて免疫原性が最小限である抗体を有することである。したがって、1つ又は複数のCDRにおける1又は2つアミノ酸は、FGF−R4への抗体の特異的結合機能を実質的に低下させることなく、ヒト宿主に対してより免疫原性でないものによって改変され得ることが可能である。同様に、フレームワーク領域の残基はヒトでなくてよく、それらが抗体の免疫原性に寄与しないことから、それらが改変されないことが可能である。
【0135】
ヒトに対してより免疫原性でない抗体を得るように非ヒト親抗体を改変するための当業者に公知の幾つかのヒト化方法が存在する。ヒト抗体との全体的配列同一性は、必ずしも必要とされない。これは、全体的配列同一性が必ずしも低下した免疫原性の予測的指標でないからであり、限定された数の残基の改質は、ヒトにおける大きく低下した免疫原性を有するヒト化抗体をもたらす可能性がある(Molecular Immunology(2007)44、1986−1998頁)。
【0136】
各種方法は、例えば、CDRグラフティング(EPO0239400、WO91/09967、並びに米国特許第5,530,101号及び第5,585,089号)、表面再構成(resurfacing)(EPO0592106、EPO0519596、Padlan、1991年、Molec Imm28(4/5):489−498頁、Studnickaら、1994年、Prot Eng7(6):805−814頁、及びRoguskaら、1994年、PNAS91:969−973頁)、又は鎖シャフリング(米国特許第5,565,332号)である。
【0137】
本発明は、特に、可変部分が以下の技術に従って改変されるヒト化抗体に関する。
【0138】
抗FGF−R4マウス抗体40−12の対応する鎖に最も類似の軽鎖及び重鎖は、Protein Data Bankとの比較により同定される(H.M.Berman、J.Westbrook、Z.Feng、G.Gilliland、T.N.Bhat、H.Weissig、I.N.Shindyalov、P.E.Bourne.Nucleic Acids Research、2000年、28:235−242頁)。配列アラインメントは、BLASTアルゴリズムを使用する(J Mol Biol.1990年10月215:403−410頁)。これらは、可変ドメインの軽鎖及び重鎖の相同性モデルを構築するために使用されたそれぞれPDBコード1NDM及び1ETZに対応する三次元構造である。続いて、これらの三次元モデルは、MOEソフトウェア(Molecular Operating Environment、Chemical Computing Group、Quebec、Canada)において実施される標準手順を使用して最小化されるエネルギーである。続いて、抗体のこれらの最小化された三次元のモデルの分子力学(MD)シミュレーションは、Amberソフトウェアによって実施される(D.A.Case、T.E.Cheatham、III、T.Darden、H.Gohlke、R.Luo、K.M.Merz,Jr.、A.Onufriev、C.Simmerling、B.Wang及びR.Woods.J.Computat.Chem.2005年、26:1668−1688頁)。このシミュレーションは、一般化ボルン暗溶媒において1.1ナノ秒の期間の間500Kの温度でタンパク質骨格原子に適用される調和的制約条件で行われる(Gallicchio及びLevy、J Comput Chem2004年、25:479−499頁)。したがって、10の多様な立体配座は、シミュレーションの最後のナノ秒の間、100ピコ秒毎に1つの三次元立体配座でこの第1のシミュレーションから抽出される。次いで、これらの10の多様な立体配座は、一般化ボルン暗溶媒において2.3ナノ秒間、27℃の温度で、タンパク質骨格に対する制約なしで、それぞれ分子力学シミュレーションに供される。水素原子を含む結合は、SHAKEアルゴリズムを使用して限定され(Barthら、J Comp Chem、1995年、16:1192−1209頁)、時間ステップは1フェムト秒であり、シミュレーションは、一定体積及び27℃の一定温度でランジュバン方程式に基づいて実行された。次いで、10の分子力学シミュレーションの各々について、1ピコ秒毎に1回の頻度で抽出される最後の2,000の立体配座は、ヒト化すべき抗体の各アミノ酸について、アミノ酸の平均又はメドイド立体配座に対する原子配置の偏差を定量するために使用される。MOEソフトウェアのScientific Vector Language(SVL)は、以下に記載される解析の全てをコード化するために使用される。アミノ酸のメドイド立体配座は、アミノ酸の全ての立体配座の原子の位置から算出される平均立体配座に最も近い分子力学から誘導される立体配座である。メドイド立体配座を検出するために使用される距離は、アミノ酸の2つの立体配座の原子の間のスカラー距離の二乗平均平方根(RMSD)である。同様に、メドイド立体配座と比較したアミノ酸の1つの立体配座の原子の位置の偏差は、シミュレーションの1つの立体配座のアミノ酸の原子とメドイド立体配座の同じ原子との間のスカラー距離のRMSDを算出することによって定量される。続いて、10の分子力学シミュレーション全てに亘って平均された所定のアミノ酸(i)の原子の位置のRMSD(Fi)と10の分子力学シミュレーション全てに亘って平均された抗体の全てのアミノ酸の位置のRMSD(Fm)とを比較することによって、アミノ酸が、潜在的にT細胞受容体と相互作用し、免疫系の活性化を誘発し得ると考えられるのに十分柔軟であるのかが決定される。アミノ酸iは、Zi=(Fi−Fm)/Fmと定義されるその柔軟性スコアZiが0.15を越える場合、柔軟であると考えられる。したがって、45のアミノ酸が、抗原相補性決定領域(CDR)及びそのごく近傍を除いて抗体の可変ドメインにおいて柔軟であると同定される。CDRのごく近傍は、CDRのα炭素と5オングストローム(Å)以下の距離のα炭素を有する任意のアミノ酸と定義される。
【0139】
次いで、10の分子力学シミュレーション(10×2ns)が同じプロトコルを使用して実行された各々について、シミュレーションの20ナノ秒(10×2ns)の間の抗体の60の最も柔軟なアミノ酸の運動が、ヒト抗体生殖細胞系の49の相同性モデルの対応するアミノ酸の運動と比較される。60の最も柔軟なアミノ酸は、抗原相補性決定領域(CDR)及びそのごく近傍を含まない。7つの最もよく認められるヒト軽鎖(vk1、vk2、vk3、vk4、vlambda1、vlambda2、vlambda3)と7つの最もよく認められるヒト重鎖(vh1a、vh1b、vh2、vh3、vh4、vh5、vh6)とを系統的に組み合わせることによって、49のヒト抗体生殖細胞系モデルが構築された(Nucleic Acids Research、2005年、Vol.33、Database issue D593−D597)。
【0140】
49のヒト生殖細胞系モデルとのヒト化すべき抗体の類似性は、1Åの分解能を有する固有の三次元立方格子によって10の分子力学シミュレーションの経過を通じて抗体の60の柔軟なアミノ酸の特異的原子の位置をサンプリングすることにより定量される。これは四次元類似性と呼ばれる。使用される三次元格子は、445,740の点で構成され、PDBコード8FABに対応するヒト抗体の三次元構造を使用して初期化される。また、8FAB構造は、三次元格子においてサンプリングされる抗体の全ての立体配座を配置するためにも使用される。この目的のため、抗体の分子力学のメドイド立体配座は、8FAB構造上に重ね合わせられる。この重ね合わせは、2つの立体配座の慣性モーメントを整列配置した後、両方の立体配座のα炭素原子の間のスカラー距離の最適化を行うことから成る。抗体の分子力学の全ての残りの立体配座は、同じ方法を使用してメドイド立体配座上へ重ね合わせられる。
【0141】
比較される一対の抗体について2つの種類のサンプリングが実施され、2つの類似性(静電気の類似性及び親油性の類似性)が得られる。次いで、全体の類似性を得るためにこれらの2つの類似性が加えられる。第1のサンプリング(静電気のサンプリング)は、アミノ酸側鎖の全ての原子を考慮する。格子の1つの点の値xは、Amber99力場において記載される通りの原子部分電荷で重み付けされた三次元ガウス関数f(x)をアミノ酸側鎖の原子に適用することによって得られる(Cieplak,J.ら、J.Comp.Chem.2001年、22:1048−1057頁)。f(x)関数は、3本のデカルト座標軸上に適用され、以下の式:
【0142】
【数1】

[式中、x及びuは、それぞれ格子点x及びサンプリングされた原子のデカルト座標であり、s=r/1.6(r=原子の共有結合半径)である]に対応する。サンプリングは、アミノ酸の全ての立体配座について繰り返され、得られた結果は、三次元格子の全ての点xで平均される。第2のサンプリング(親油性サンプリング)は、アミノ酸側鎖の親油性原子のみを考慮する。格子の1点の値xは、重み付けなしで同じガウス関数f(x)によって算出される。その結果、比較される2つの抗体の分子力学シミュレーションからの立体配座の2つの集合は、同じ三次元格子によってサンプリングされる。抗体aと抗体bとの間の静電気類似性(sim−elec)は、以下の式:
【0143】
【数2】

によって測定される。親油性類似性は、既に記載された親油性サンプリングによって生成されるデータに適用される同じ式によって算出される。
【0144】
したがって、ヒト生殖細胞系モデルvlambda2−vh2は、マウス抗体40−12の柔軟なアミノ酸に対してこれらの60の柔軟なアミノ酸の最も高い四次元類似性(総類似性=58%)を示す。したがって、ヒト生殖細胞系モデルvlambda2−vh2は、45の柔軟なアミノ酸に焦点を合わせると共にヒト化すべき抗体をヒト化するために使用された。作製される突然変異を決定するため、マウス抗体40−12のモデルの三次元構造は、最適化されるアミノ酸のα炭素の位置で最も高い類似性を示す生殖細胞系から誘導されるモデルのものに重ね合わせられた。柔軟であると同定されたアミノ酸は、最も高い類似性を示すモデルの配列において対応するアミノ酸によって突然変異する。
【0145】
考えられる望ましくない配列モチーフは、以下のものである。アスパルテート−プロリン(酸性媒質における易動性のペプチド結合)、アスパラギン−X−セリン/スレオニン(グリコシル化部位、X=プロリン以外の任意のアミノ酸)、アスパルテート−グリシン/セリン/スレオニン(柔軟なゾーンにおけるスクシンイミド/イソアスパルテートの可能な形成)、アスパラギン−グリシン/ヒスチジン/セリン/アラニン/システイン(曝露されたアミド分解部位)、メチオニン(曝露されたゾーンにおける酸化)。したがって得られたヒト化配列は、配列がB及びTリンパ球によって認識されることが公知のいかなるエピトープも含まないことを確認するようにBLAST配列比較アルゴリズムによってIEDBデータベース(http://www.immuneepitope.org/ The immune epitope database and analysis resource:from vision to blueprint.PLoS Biol.2005年3月;3(3):e91)の配列と最後に比較される。配列が望ましくない配列を有する残基を含む場合、それらも次いで改変される。コンポジット配列がIEDBにおいて列挙される公知のエピトープを含む場合、次いで高い類似性を示す別の生殖細胞系構造鋳型がモデルとして使用される。
【0146】
より有利には、本発明による抗体は、配列番号34の配列、配列番号36の配列又は配列番号38の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有する配列と組み合わせて、使用される配列番号30の配列又は配列番号32の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有する配列を含む。
【0147】
一実施形態において、本発明による抗体は、配列番号30の配列の可変軽鎖及び配列番号34の配列の可変重鎖を含む。
【0148】
別の一実施形態において、抗体は、配列番号32の配列の可変軽鎖及び配列番号38の配列の可変重鎖を含む。
【0149】
別の一実施形態において、抗体は、配列番号30の配列の可変軽鎖及び配列番号36の配列の可変重鎖を含む。
【0150】
別の一実施形態において、抗体は、配列番号32の配列の可変軽鎖及び配列番号34の配列の可変重鎖を含む。
【0151】
別の一実施形態において、抗体は、配列番号32の配列の可変軽鎖及び配列番号36の配列の可変重鎖を含む。
【0152】
別の一実施形態において、抗体は、配列番号30の配列の可変軽鎖及び配列番号38の配列の可変重鎖を含む。
【0153】
また、本発明の対象は、FGF−R4特異的ヒト拮抗薬抗体でもある。かかる抗体は、当業者に公知の方法に従ってファージディスプレイによって得られ得る(McCafferty J.ら、1990年;Hoogenboom,HRら、2005年)。米国特許第5,939,598号に記載されるXenoMouse技術等の他の技術は、ヒト抗体の調製に利用可能である。
【0154】
特定の一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、重鎖可変領域が配列番号76、86、96又は106の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有する配列を含むヒト抗体である。
【0155】
別の一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、軽鎖可変領域が配列番号71、81、91又は101の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有する配列を含むヒト抗体である。
【0156】
また、本発明の対象は、配列番号77、87、97又は107の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる可変領域を含む重鎖を含むFGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体でもある。
【0157】
また、本発明の対象は、配列番号72、82、92又は102の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる可変領域を含む軽鎖を含むFGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体でもある。
【0158】
また、本発明の対象は、配列番号71及び76のヌクレオチド配列又は配列番号81及び86のヌクレオチド配列又は配列番号91及び96のヌクレオチド配列又は配列番号101及び106のヌクレオチド配列によってコードされる配列を含むFGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体でもある。
【0159】
また、本発明の対象は、配列番号72及び77のポリペプチド配列又は配列番号82及び87のポリペプチド配列又は配列番号92及び97のポリペプチド配列又は配列番号102及び107のポリペプチド配列を含むFGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体でもある。
【0160】
特に好ましくは、FGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体は、配列番号82及び87のポリペプチド配列を含む。
【0161】
したがって改変されるアミノ酸配列はまた、哺乳類の細胞における作製の間に翻訳後修飾によって改変することも可能である。特に、フコース生合成において不十分な安定ラインの使用は、Fc(N297位)のN−グリカンが部分的に又は完全にフコースを欠くモノクローナル抗体を作製することを可能にすることができ、ADCCエフェクター効果を増大させることを可能にする(Kandaら、2006年、Biotechnol.Bioeng.94:680−688頁、及びRipkaら、1986年Arch Biochem Bioph249:533−545頁)。
【0162】
本発明の別の一実施形態において、FGF−R4特異的拮抗薬は、コンジュゲート抗体である。
【0163】
前記抗体は、細胞毒性薬とコンジュゲートすることができる。本明細書において、「細胞毒性薬」という用語は、細胞の機能若しくは成長を低下若しくは抑止させる又は細胞の破壊を引き起こす物質を示す。
【0164】
一実施形態において、抗体又はその結合フラグメントは、抗原を発現する細胞に対して細胞毒性を有する「プロドラッグ」を形成するようにメイタンシノイド等の薬物とコンジュゲートすることができる。
【0165】
本発明の細胞毒性薬は、細胞死を生じさせる又は細胞死を誘導する又は各種の方法で細胞生存度を減少させる任意の化合物であってよい。好ましい細胞毒性薬としては、例えば、上記で定義されたメイタンシノイド及びメイタンシノイド類似体、タキソイドCC−1065及びCC−1065類似体、ドラスタチン及びドラスタチン類似体が挙げられる。これらの細胞毒性薬は、本出願において記載される通りの抗体、抗体フラグメント、機能的等価物、改善された抗体及びその類似体とコンジュゲートする。
【0166】
コンジュゲート抗体は、インビトロでの方法によって調製され得る。リンカー基は、薬物又はプロドラッグを抗体に結合させるために使用される。適切なリンカー基は、当業者に周知であり、特に、ジスルフィド基、チオエーテル基、不安定酸性基、感光性基、不安定ペプチダーゼ基及び不安定エステラーゼ基を含む。好ましいリンカー基は、ジスルフィド基及びチオエーテル基である。例えば、コンジュゲートは、ジスルフィド交換反応を用いることによって又は抗体と薬物若しくはプロドラッグとの間にチオエーテル架橋を形成することによって構築され得る。
【0167】
メトトレキサート、ダウノルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、カリケアマイシン、ツブリシン及びツブリシン類似体、デュオカルマイシン及びデュオカルマイシン類似体、ドラスタチン及びドラスタチン類似体等の化合物はまた、本発明のコンジュゲートの調製にも適切である。分子は、血清アルブミン等の中間体分子を介して抗体分子に結合することもできる。例えば特許出願US09/740991に記載される通りのドキソルビシン及びドキソルビシン化合物もまた、有用な細胞毒性薬であり得る。
【0168】
本発明の対象である抗体は、細胞障害性分子又は化合物と組み合わせられ得る。また、それらは、他の血管形成経路に作用する血管新生阻害化合物とも組み合わせられ得る。
【0169】
「FGF−R4を発現する細胞」という表現は、その天然型において又は突然変異型においてFGF−R4受容体を発現する任意の真核細胞、とりわけ哺乳類細胞、特にヒト細胞を指す。FGF−R4は、例えばFGR−R4の細胞外ドメイン、特にD2−D3ドメインを含むその全体の型又は切断型であってもよい。FGF−R4は、キメラ型においても組み換えられ得る。
【0170】
本発明の化合物は、局所、経口、非経口、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下、眼内等の投与の目的のために医薬組成物の形で製剤化され得る。好ましくは、医薬組成物は、注射可能製剤のために医薬的に許容し得る担体を含む。それらは、特に滅菌等張性食塩水(リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム若しくは塩化マグネシウム等、又はかかる塩の混合物)又は必要に応じて滅菌水若しくは生理的食塩水を添加することによって注射可能溶質を形成し得る乾燥、特に凍結乾燥組成物であってよい。
【0171】
血管形成が腫瘍性であっても非腫瘍性であっても、標的とされる病状は、血管形成に関連する全ての疾患であり得る。
【0172】
標的とされる病状は、癌(腫瘍血管形成の阻害剤として本発明を使用することによる)、特に肝臓癌、大腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、膵臓癌若しくは皮膚癌、又は血管形成の調節不全が報告されている病状、例えば、加齢性黄斑変性若しくはARMD、炎症性疾患、例えば、関節リウマチ、骨関節炎、大腸炎、潰瘍、若しくは腸管の任意の炎症性疾患、アテローム性動脈硬化症、又は肥満の治療におけるものであってもよい。
【0173】
腫瘍成長に直接及ぼす作用を有する阻害剤として、抗FGF−R4抗体を、癌、特に肝臓癌及び他の肝癌、並びに膵臓癌を治療するために使用することも可能である。
【0174】
本発明を以下の実施例によって示すが、限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1A】インビトロにおいて(図1A)、HUVEC型のヒト内皮細胞は、血管形成として公知の擬管のネットワークを形成することができる。このネットワークは、1ng/mlのFGF2の添加によって刺激される。この誘導は、FGF−R4に特異的なリガンドである10ng/mlのFGF19を添加することによっても得られ得るが、一方で10ng/mlのFGF4(FGF−R4を活性化しないリガンド)は、血管形成を刺激することができない。同様に、インビボにおける(図1B)、マウスの背部上のスポンジインプラントにおける血管形成の誘導のマウスモデルにおいて、FGF2は、対照と比較してこれらのスポンジのヘモグロビン含有率の増加を特徴とするスポンジへの機能性新血管の漸増を誘導することができる。FGF19もまた、スポンジにおけるこの血管形成を誘導することができる。
【図1B】インビトロにおいて(図1A)、HUVEC型のヒト内皮細胞は、血管形成として公知の擬管のネットワークを形成することができる。このネットワークは、1ng/mlのFGF2の添加によって刺激される。この誘導は、FGF−R4に特異的なリガンドである10ng/mlのFGF19を添加することによっても得られ得るが、一方で10ng/mlのFGF4(FGF−R4を活性化しないリガンド)は、血管形成を刺激することができない。同様に、インビボにおける(図1B)、マウスの背部上のスポンジインプラントにおける血管形成の誘導のマウスモデルにおいて、FGF2は、対照と比較してこれらのスポンジのヘモグロビン含有率の増加を特徴とするスポンジへの機能性新血管の漸増を誘導することができる。FGF19もまた、スポンジにおけるこの血管形成を誘導することができる。
【図2A】hFGFR4−Histag(配列番号40)の発現を可能にするプラスミドpXL4614の地図である。
【図2B】hFGFR4−Streptag(配列番号69)の発現を可能にするプラスミドpXL4613の地図である。
【図3】hFGFR4(D2、D3)−Histag(配列番号42)の発現を可能にするプラスミドpXL4615の地図である。
【図4】mFGFR4−Histag(配列番号44)の発現を可能にするプラスミドpXL4621の地図である。
【図5】(配列番号No.46の配列の)hFGFR1−Fcの発現を可能にするプラスミドpXL4328の地図である。
【図6】(配列番号48の配列の)hFGFR2−Fcの発現を可能にするプラスミドpXL4327の地図である。
【図7】ELISAプレートに、4種のヒトFGF受容体を被覆する。これらの各種FGF−Rを認識する抗FGFR4抗体40−12及び64−12の能力をELISAアッセイによって測定する。クローン40−12(黒色の棒グラフ)は、FGF−R4に特異的である。クローン64−12(灰色の棒グラフ)は、更に、FGF−R3を非常に弱く認識する。
【図8A】活性拮抗薬抗体40−12及びその不活性対照64−12は、基底血管形成にそれ自体無効である。一方で、30μg/ml(約200nM)の投与量で、抗FGFR4モノクローナル抗体40−12は、HUVEC細胞のFGF2誘導血管形成を阻害することができるが、一方で対照抗体64−12は、そうすることができない(図8A)。 AlexaFluor(登録商標)488nmにより標識されたFGF2は、300−19細胞によって発現したFGF−R4に結合することができる(白色の棒グラフ)。この相互作用は、標識されないFGF2(黒色の棒グラフ)又は抗FGFR4抗体40−12(暗灰色の棒グラフ)によって解離され得るが、一方で対照抗体64−12は、そうすることができない(淡灰色の棒グラフ)(図8B)。
【図8B】活性拮抗薬抗体40−12及びその不活性対照64−12は、基底血管形成にそれ自体無効である。一方で、30μg/ml(約200nM)の投与量で、抗FGFR4モノクローナル抗体40−12は、HUVEC細胞のFGF2誘導血管形成を阻害することができるが、一方で対照抗体64−12は、そうすることができない(図8A)。 AlexaFluor(登録商標)488nmにより標識されたFGF2は、300−19細胞によって発現したFGF−R4に結合することができる(白色の棒グラフ)。この相互作用は、標識されないFGF2(黒色の棒グラフ)又は抗FGFR4抗体40−12(暗灰色の棒グラフ)によって解離され得るが、一方で対照抗体64−12は、そうすることができない(淡灰色の棒グラフ)(図8B)。
【図8C】3ng/mlのFGF−2によって誘導されるインビトロでの血管形成に対する10μg/mlのクローン8、31、33及び36から誘導される抗FGFR4抗体の効果を示す図である。クローン8(図8C)並びに31、33及び36(図8D)は、HUVEC細胞のFGF−2誘導血管形成を阻害する。
【図8D】3ng/mlのFGF−2によって誘導されるインビトロでの血管形成に対する10μg/mlのクローン8、31、33及び36から誘導される抗FGFR4抗体の効果を示す図である。クローン8(図8C)並びに31、33及び36(図8D)は、HUVEC細胞のFGF−2誘導血管形成を阻害する。
【図9A】Hep3bヒト肝臓癌細胞を、30ng/mlのFGF19によって刺激する。この刺激は、ウェスタンブロット法によって観察される、cFos及びJunBタンパク質の合成、並びにErk1/2のリン酸化を生じさせるFGF−R4特異的細胞シグナル伝達を誘導する(図9A)。次いで、各バンドを定量する。この定量化は、棒グラフの形で表される(図9B)。100μg/mlの抗体40−12は、FGF−R4特異的細胞シグナル伝達の誘導を完全に阻害するが、一方で対照抗体は、効果を有さない。具体的には、抗体40−12は、3時間の刺激の後でFGF19によって誘導されるJunB及びcFosの合成と更にErk1/2のリン酸化とを完全に抑止する。
【図9B】Hep3bヒト肝臓癌細胞を、30ng/mlのFGF19によって刺激する。この刺激は、ウェスタンブロット法によって観察される、cFos及びJunBタンパク質の合成、並びにErk1/2のリン酸化を生じさせるFGF−R4特異的細胞シグナル伝達を誘導する(図9A)。次いで、各バンドを定量する。この定量化は、棒グラフの形で表される(図9B)。100μg/mlの抗体40−12は、FGF−R4特異的細胞シグナル伝達の誘導を完全に阻害するが、一方で対照抗体は、効果を有さない。具体的には、抗体40−12は、3時間の刺激の後でFGF19によって誘導されるJunB及びcFosの合成と更にErk1/2のリン酸化とを完全に抑止する。
【図9C】FGF−19(30ng/ml)によってHep3b細胞において誘導されるErk1/2のリン酸化に対する抗FGFR4抗体40−12の阻害効果は、抗ホスホERk1/2 ELISAによって確認される。また、抗体40−12は、FGF−2(1ng/ml)又は10%の血清(FCS)によって刺激されるHep3b細胞におけるErk1/2のリン酸化を阻害することもできる。
【図9D】クローン8、31、33及び36から誘導される抗体を使用してHep3b細胞上のELISAによって得られたFGF−19(30ng/ml)によって誘導されるErk1/2リン酸化の阻害率を示す図である。
【図10A】Hep3b細胞の増殖は、血清(図10A)又はFGF19(図10B)を添加することによって刺激され得る。血清による誘導は、100μg/mlの抗体40−12によって部分的に阻害されるが、一方で対照抗体は効果を有さない(図10A)。FGF19によって誘導される増殖は、10μg/mlの抗FGFR4抗体40−12によって完全に抑止されるが、一方で同じ投与量の対照抗体は、そうすることができない(図10B)。
【図10B】Hep3b細胞の増殖は、血清(図10A)又はFGF19(図10B)を添加することによって刺激され得る。血清による誘導は、100μg/mlの抗体40−12によって部分的に阻害されるが、一方で対照抗体は効果を有さない(図10A)。FGF19によって誘導される増殖は、10μg/mlの抗FGFR4抗体40−12によって完全に抑止されるが、一方で同じ投与量の対照抗体は、そうすることができない(図10B)。
【図11A】抗FGFR4抗体40−12は、腫瘍血管形成を阻害することによってRipTagマウスモデルの膵腫瘍の発育を低下させるができる。Rip1−Tag2モデルは、トランスジェニックマウスが膵島のインスリン産生β細胞におけるSV40T抗原を発現するマウスモデルである(Hanahan D.Nature、1985年、9−15:115−22頁)。このT抗原は、見かけ上の効果なしで、生後4−5週間まで膵臓の胚発育の間発現する。次いで、T抗原を発現する膵島の一部が、次の5週間の間に、血管系の活性化を伴う血管形成膵島の形成の方に、次いで腺腫瘍型の小さな腫瘍の発育の方に進行する。数週間後、幾つかの腺腫瘍が発育し、侵食癌を形成する(図11A)。 これらのRip1−Tag2マウスを、25mg/kgの投与量で抗体40−12又は対照抗体によってWeek10から13の間に週に1回皮下で治療する。13週間後、マウスを屠殺する。腫瘍体積、更には膵臓1つ当たりの腫瘍の数、及び血管密度を決定する。抗FGFR4抗体40−12による治療は、腫瘍体積を有意に55%減少させることを可能にするが、一方で対照抗体は、効果を示さない(図11B)。抗体40−12はまた、対照と比較して膵臓1つ当たりの腫瘍の数を34%減少させることをも可能にする(図11C)。腫瘍体積のこの減少は、小血管、中血管又は大血管の数のいずれについても血管密度の減少を伴う(図11D)。
【図11B】抗FGFR4抗体40−12は、腫瘍血管形成を阻害することによってRipTagマウスモデルの膵腫瘍の発育を低下させるができる。Rip1−Tag2モデルは、トランスジェニックマウスが膵島のインスリン産生β細胞におけるSV40T抗原を発現するマウスモデルである(Hanahan D.Nature、1985年、9−15:115−22頁)。このT抗原は、見かけ上の効果なしで、生後4−5週間まで膵臓の胚発育の間発現する。次いで、T抗原を発現する膵島の一部が、次の5週間の間に、血管系の活性化を伴う血管形成膵島の形成の方に、次いで腺腫瘍型の小さな腫瘍の発育の方に進行する。数週間後、幾つかの腺腫瘍が発育し、侵食癌を形成する(図11A)。 これらのRip1−Tag2マウスを、25mg/kgの投与量で抗体40−12又は対照抗体によってWeek10から13の間に週に1回皮下で治療する。13週間後、マウスを屠殺する。腫瘍体積、更には膵臓1つ当たりの腫瘍の数、及び血管密度を決定する。抗FGFR4抗体40−12による治療は、腫瘍体積を有意に55%減少させることを可能にするが、一方で対照抗体は、効果を示さない(図11B)。抗体40−12はまた、対照と比較して膵臓1つ当たりの腫瘍の数を34%減少させることをも可能にする(図11C)。腫瘍体積のこの減少は、小血管、中血管又は大血管の数のいずれについても血管密度の減少を伴う(図11D)。
【図11C】抗FGFR4抗体40−12は、腫瘍血管形成を阻害することによってRipTagマウスモデルの膵腫瘍の発育を低下させるができる。Rip1−Tag2モデルは、トランスジェニックマウスが膵島のインスリン産生β細胞におけるSV40T抗原を発現するマウスモデルである(Hanahan D.Nature、1985年、9−15:115−22頁)。このT抗原は、見かけ上の効果なしで、生後4−5週間まで膵臓の胚発育の間発現する。次いで、T抗原を発現する膵島の一部が、次の5週間の間に、血管系の活性化を伴う血管形成膵島の形成の方に、次いで腺腫瘍型の小さな腫瘍の発育の方に進行する。数週間後、幾つかの腺腫瘍が発育し、侵食癌を形成する(図11A)。 これらのRip1−Tag2マウスを、25mg/kgの投与量で抗体40−12又は対照抗体によってWeek10から13の間に週に1回皮下で治療する。13週間後、マウスを屠殺する。腫瘍体積、更には膵臓1つ当たりの腫瘍の数、及び血管密度を決定する。抗FGFR4抗体40−12による治療は、腫瘍体積を有意に55%減少させることを可能にするが、一方で対照抗体は、効果を示さない(図11B)。抗体40−12はまた、対照と比較して膵臓1つ当たりの腫瘍の数を34%減少させることをも可能にする(図11C)。腫瘍体積のこの減少は、小血管、中血管又は大血管の数のいずれについても血管密度の減少を伴う(図11D)。
【図11D】抗FGFR4抗体40−12は、腫瘍血管形成を阻害することによってRipTagマウスモデルの膵腫瘍の発育を低下させるができる。Rip1−Tag2モデルは、トランスジェニックマウスが膵島のインスリン産生β細胞におけるSV40T抗原を発現するマウスモデルである(Hanahan D.Nature、1985年、9−15:115−22頁)。このT抗原は、見かけ上の効果なしで、生後4−5週間まで膵臓の胚発育の間発現する。次いで、T抗原を発現する膵島の一部が、次の5週間の間に、血管系の活性化を伴う血管形成膵島の形成の方に、次いで腺腫瘍型の小さな腫瘍の発育の方に進行する。数週間後、幾つかの腺腫瘍が発育し、侵食癌を形成する(図11A)。 これらのRip1−Tag2マウスを、25mg/kgの投与量で抗体40−12又は対照抗体によってWeek10から13の間に週に1回皮下で治療する。13週間後、マウスを屠殺する。腫瘍体積、更には膵臓1つ当たりの腫瘍の数、及び血管密度を決定する。抗FGFR4抗体40−12による治療は、腫瘍体積を有意に55%減少させることを可能にするが、一方で対照抗体は、効果を示さない(図11B)。抗体40−12はまた、対照と比較して膵臓1つ当たりの腫瘍の数を34%減少させることをも可能にする(図11C)。腫瘍体積のこの減少は、小血管、中血管又は大血管の数のいずれについても血管密度の減少を伴う(図11D)。
【図12】ヒト又はマウスのFGF−R4の完全細胞外ドメイン、更にそのD1ドメインから欠失したFGF−R4の細胞外ドメインを認識する抗体40−12及び64−12の能力がELISAによって測定される。クローン40−12は、等しく3つのFGF−R4構築物と結合することができるが、一方でクローン64−12は、FGF−R4のマウスの型をあまり認識しない。
【図13A】FGF2/FGF−R4結合に対する抗FGFR4抗体クローン40−12の拮抗的効果を、AlexaFluor(登録商標)488nmによって標識されるFGF2との競合結合実験によって測定する。クローン40−12は、同じ有効性(それぞれヒト、マウス又はラット複合体について3500、4110及び3940ng/ml、即ち23、27及び26nM)によってFGF−R4受容体のヒト、マウス又はラット型をコードするcDNAによってトランスフェクトされたマウス300−19細胞上のヒト(図13A)、マウス(図13B)及びラット(図13C)FGF2の結合を抑止することができる。
【図13B】FGF2/FGF−R4結合に対する抗FGFR4抗体クローン40−12の拮抗的効果を、AlexaFluor(登録商標)488nmによって標識されるFGF2との競合結合実験によって測定する。クローン40−12は、同じ有効性(それぞれヒト、マウス又はラット複合体について3500、4110及び3940ng/ml、即ち23、27及び26nM)によってFGF−R4受容体のヒト、マウス又はラット型をコードするcDNAによってトランスフェクトされたマウス300−19細胞上のヒト(図13A)、マウス(図13B)及びラット(図13C)FGF2の結合を抑止することができる。
【図13C】FGF2/FGF−R4結合に対する抗FGFR4抗体クローン40−12の拮抗的効果を、AlexaFluor(登録商標)488nmによって標識されるFGF2との競合結合実験によって測定する。クローン40−12は、同じ有効性(それぞれヒト、マウス又はラット複合体について3500、4110及び3940ng/ml、即ち23、27及び26nM)によってFGF−R4受容体のヒト、マウス又はラット型をコードするcDNAによってトランスフェクトされたマウス300−19細胞上のヒト(図13A)、マウス(図13B)及びラット(図13C)FGF2の結合を抑止することができる。
【図14A】hFGFR4_D1:Fcの発現を可能にするプラスミドpXL4794の地図である。
【図14B】プラスミドpXL4794によってトランスフェクトされたHEK293系において分泌されたhFGFR4_D1:Fcタンパク質のアミノ酸配列を示す図である。
【図15A】hFGFR4_D2:Fcの発現を可能にするプラスミドpXL4796の地図である。
【図15B】プラスミドpXL4796によってトランスフェクトされたHEK293系において分泌されたhFGFR4_D2:Fcタンパク質のアミノ酸配列を示す図である。
【図16A】hFGFR4_D3:Fcの発現を可能にするプラスミドpXL4799の地図である。
【図16B】プラスミドpXL4799によってトランスフェクトされたHEK293系において分泌されたhFGFR4_D3:Fcタンパク質のアミノ酸配列を示す図である。
【0176】
(実施例)
【実施例1】
【0177】
血管形成の制御の際のFGF−R4の役割の実証
血管形成の制御におけるFGF−R4の役割を実証するため、インビトロでの血管形成実験を、幾つかのFGF:FGF2(FGF受容体のほとんどを活性化するリガンド)、FGF19(FGF−R4を特異的に活性化するリガンド)及びFGF4(FGF−R4を活性化しないリガンド)によって刺激したHUVEC型のヒト内皮細胞によって実施した。
【0178】
これを行うため、コラーゲン(ラットTailコラーゲン、I型:Becton dickinson354236)中に6倍に希釈した160μlのマトリゲル(成長因子減少型Matrigel:Becton dickinson356230)をチャンバースライド(Biocoat Cellwareコラーゲン、I型、8ウェル培養スライド:Becton dickinson354630)の各ウェル内に分注することによってゲルを調製した。ゲルを、重合することができるように37℃で1時間維持する。次に、ヒト静脈内皮細胞(HUVEC ref:C−12200−Promocell)を、400μlのEBM培地(Clonetics C3121)+2%のFBS+10μg/mlのhEGF中において15×10個/ウェルで播種した。このプロトコルは、96−ウェルプレート:96ウェルプレート(BiocoatコラーゲンI cellware、Becton Dickinson354407)のウェル1つにつき60μlに応用され得る。マトリゲルの1/3と、1mg/mlの終濃度のコラーゲンと、NaOH(0.026×μlにおけるコラーゲンの体積)と、1×PBSとを混合することによってマトリックスを調製し、次いで水によって体積を調整する。5%のCOの存在下で37℃で24時間、1ng/mlのFGF2(R&D、133−FB−025)又は10ng/mlのFGF4(R&D、235−F4−025)若しくはFGF19(R&D、969−FG−025)によって内皮細胞を刺激する。24時間後、形成された微小管のネットワークの長さを、コンピュータを利用した画像解析システム(Imagenia Biocom、Courtaboeuf、France)を使用して測定し、各ウェルにおける擬管の全長を決定する。微小毛細血管ネットワークの全長の平均を、6つの複製の平均に対応する各条件についてμmにおいて算出する。
【0179】
FGF2又はFGF19による刺激は、新しい細管の形成の誘導を可能にするが、一方でFGF4は、効果を有さない(図1A)。これらの結果は、FGF−R4の特異的活性化が、新血管の形成を誘導することを可能にし、したがってFGF−R4がインビトロにおいて血管形成を制御すると結論することを可能にすることを示す。
【0180】
インビトロにおけるデータとのインビボにおける相関性を、マウスにおけるセルロースインプラントにおいてインビボにおける血管形成誘導のモデルを使用して得た。このモデルは、Andradeら(Microvascular Research、1997年、54、253−61頁)によって記載されるモデルの応用である。
【0181】
動物(先天的に白色のBALB/c Jマウス)を、腹腔内投与されるキシラジン(Rompun(登録商標)、10mg/kg)/ケタミン(Imalgene1000、100mg/kg)混合物によって麻酔する。動物の背部を剃り、Hexomedine(登録商標)によって消毒する。5mlの無菌空気の注射によってマウスの背部の皮下に空気のポケットを作製する。タンパク質又は試験すべき生成物を含有する50μlの滅菌溶液が含浸された滅菌セルロースインプラント(直径1cm、2mm厚のディスク、Cellspon(登録商標)ref0501)を導入するため、動物の上背部上に約2cmの切開を行う。次いで切開を縫合し、Hexomedine(登録商標)によって洗浄する。インプラントの注入後の日の間、マウスは、インプラントにおいて、ガス麻酔(5%のイソフルラン(Aerrane(登録商標)、Baxter))下で皮膚を介した注射(50μl/インプラント/日)によってタンパク質又は生成物の投与を受けた。
【0182】
スポンジのインプラントの7日後、マウスを、腹腔内投与される致死量のペントバルビタールナトリウム(CEVA sante animale)によって屠殺する。次いで、皮膚及びスポンジを除去するため、スポンジの周囲約1cmの皮膚を、瘢痕を回避して切除する。次いで、スポンジを幾つかの部分に切り、1mlの溶解緩衝液(Cell Death Detection ELISA、Roche)を含有するRibolyser(登録商標)チューブ内に配置する。細胞破砕機(FastPrep(登録商標)FP120)において、チューブを、20秒間、force4で4回連続的に振盪する。次いで、チューブを、20℃で2000gで10分間遠心分離し、上清を、ヘモグロビンアッセイを待つ間、−20℃で凍結する。
【0183】
アッセイの日に、チューブを、融解後に再度遠心分離し、ヘモグロビン濃度を、標準範囲のウシヘモグロビン(Sigma)に対する405nmの分光光度計における読み取りによってDrabkin試薬(Sigma、体積/体積)によって測定する。各試料におけるヘモグロビン濃度を、標準範囲に基づいて実施される多項回帰に従ってmg/mlで表す。結果を、各群について平均値(±sem)で表す。群間差をANOVAによって試験した後、値の平方根におけるダネット検定を行う。
【0184】
このモデルにおいて、1部位につき50ngの、5回の再注射のFGF19は、1部位につき5ngのFGF2と同じ有効性によって、新しく形成された成熟血管によって有意にスポンジのコロニー形成を誘導することができる。スポンジにおける機能的血管の存在は、ヘモグロビンの存在によって実証される(図1B)。これらの結果は、FGF−R4の特異的活性化が機能的血管の漸増を可能にすることを示しており、このことは、FGF−R4もインビボにおける血管形成を制御することを示す。
【実施例2】
【0185】
イムノゲン及び抗原として使用されるFGFRタンパク質の記載
FGFR成長因子受容体、及び特にFGF−R1、FGF−R2、FGF−R3、FGF−R4の細胞外ドメインを、標識(Histag)又は、免疫グロブリンFcドメインに融合する。
【0186】
ヒトFGF−R4の細胞外ドメインをコードするcDNAは、L136P突然変異を有するSwissProt FGF−R4_HUMAN1−365位に記載されるタンパク質に対応する。細胞外ドメインにおけるC末端の位置においてHistagを含むタンパク質を発現するため、図2において表される真核生物発現ベクターpXL4614にそれをクローン化した。
【0187】
配列番号40の配列のhFGFR4−Histagと呼ばれるタンパク質を、出願WO2008/065543に記載されるように2種のN−グリカングリコシル化酵素、即ち、α−2,3−シアリルトランスフェラーゼ及びβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼの発現を可能にするプラスミドpXL4614、並びにヘルパープラスミドpXL4544及びpXL4551を使用してHEK293 EBNA系(Invitrogen)における一過性トランスフェクションによって作製した。
【0188】
HEK293 EBNA細胞培養液上清において発現するhFGFR4−Histagタンパク質を、Ni−キレート化セファロースカラム(Amersham Biosciences、ref.17−0575−01)上のクロマトグラフィーによって精製し、イミダゾール緩衝液において溶出を行い、次いでPBS緩衝液において配合した(Invitrogen、ref.14190−094)。Saddicら、2002年(Methods Mol.Biol.194:23−36及びAnumulaら、1998年、Glycobiology8:685−694頁)によって記載される通りの単糖組成物の分析及びN−グリカンのシアル酸の定量化は、タンパク質が非常に高度にシアル酸付加された(91%)ことを実証することを可能にした。したがって、タンパク質は、十分な薬物動態学的性質を有するための全ての特性を有した。
【0189】
同様の方法において、hFGFR4−Streptagタンパク質(配列番号69)を、Strep−Tactin Superflowカラム(IBA、ref.2−1206)上のクロマトグラフィーによって精製し、デスチオビオチン緩衝液において溶出を行い、次いでPBS緩衝液において配合する。
【0190】
hFGFR4(D2、D3)−Histagタンパク質は、配列番号42の配列に対応する。cDNAを、図3において表される真核生物発現プラスミドpXL4615にクローン化し、hFGFR4−Histagタンパク質と同様の条件下でタンパク質を作製し、精製した。
【0191】
mFGFR4−Histagタンパク質(配列番号43)をコードするcDNAを、図4において表される真核生物発現プラスミドpXL4621にクローン化し、hFGFR4−Histagタンパク質と同様の条件下でタンパク質を作製し、精製した。
【0192】
hFGFR1−Fcタンパク質(配列番号46)は、C末端の位置においてヒトIgG1のFcドメインに融合するヒトFGF−R1 IIIcの細胞外ドメインを含む。cDNAを、図5において表される真核生物発現プラスミドpXL4728にクローン化し、タンパク質を、hFGFR4−Histagタンパク質と同様の条件下で作製し、次いで、タンパク質Gセファロースアフィニティーカラム(Amersham Biosciences)上のクロマトグラフィーによって精製し、100mMのグリシン/HCl緩衝液(pH2.7)において溶出を行い、次いでPBS緩衝液において配合した。
【0193】
hFGFR2−Fcタンパク質(配列番号48の配列)は、C末端の位置においてヒトIgG1のFcドメインに融合するヒトFGF−R2 IIIcの細胞外ドメインを含む。cDNAを、図6において表される真核生物発現プラスミドpXL4327にクローン化し、タンパク質を、hFGFR1−Fcタンパク質と同様の条件下で作製し、次いで精製した。
【0194】
hFGFR3−Fcタンパク質は、ヒトIgG1のFcドメインにヒトFGF−R3 IIIcの細胞外ドメインを融合するタンパク質であり、R&D Systemsから入手した(ref:760−FR)。
【0195】
hFGFR4−Fcタンパク質は、ヒトIgG1のFcドメインにヒトFGF−R4の細胞外ドメインを融合するタンパク質であり、R&D Systemsから入手した(ref:685−FR)。
【0196】
hFGFR4タンパク質の細胞外部分の各種サブドメインを、ヒトIgG1のFcドメインに融合した。D1サブドメインは、構築物SABVA4794(配列番号112、並びに図14A及び14B)に含まれる。D2サブドメインは、構築物SABVA4796(配列番号114、並びに図15A及び15B)に含まれる。D3サブドメインは、構築物SABVA4799(配列番号116、並びに図16A及び16B)に含まれる。これらの3つのサブドメインは、それぞれ、SABVA4794については1位から179位、SABVA4796については1位から32位、更に145位から242位、SABVA4799については1位から32位、更に228位から360位(SwissProt FGF−R4_HUMANにおいて記載される位置)で延長する。これらを、FGFR1−Fcタンパク質と同様の条件下でプラスミドpXL4794(配列番号111のコード配列)、pXL4796(配列番号113のコード配列)及びpXL4799(配列番号115のコード配列)を使用して作製した。
【実施例3】
【0197】
抗FGF−R4モノクローナル抗体の生成及びスクリーニング
A−免疫化によって得られる抗体
6から8週齢の5匹のBALB/cJマウス(Charles River)(各々は、Kilpatrickら(1997年、Hybridoma16:381389)によって記載されるRIMMS法及びClonaCell(商標)−HY Hybridoma Cloning Kit(StemCell Technologies、ref03800)に記載される融合プロトコルによって合計24μgのhFGFR4−Histagによって免疫化される)におけるhFGFR4−Histagイムノゲンによる免疫化によってモノクローナル抗体を得た。
【0198】
最後の注射の2日後、マウスを屠殺し、リンパ節を、ポリエチレングリコール(ClonaCell(商標)−HY、ref.03806)の存在下で5:1の比率でP3X63−AG8.653骨髄腫細胞(ATCC、CRL−1580)と融合した。細胞懸濁液を、5%のCOの存在下、37℃でインキュベートされるペトリ皿に無菌的に分注した。インキュベーションの12日後に出現したコロニーを単離し、96ウェルプレートにおいて培地E(ClonaCell(商標)−HY、ref.03805)において培養した。
【0199】
hFGFR4−Histagによる免疫化によって得られたモノクローナル抗体の一次スクリーニングを、捕獲抗原としてhFGFR4−Streptagを使用してELISAアッセイによって実施した。捕獲抗原は、Immulon−4酵素結合プレート(VWR Scientific Inc.Swedesboro、NJ)に結合した。続いて、ハイブリドーマ培養液上清を添加し、次いでペルオキシダーゼコンジュゲート抗マウスIgGウサギ抗体(Sigma、ref.A9044−1:50000に希釈)を使用して検出を行った。明示化をTMB−H2O2基質(Interchim、ref UP664780)によって実施し、測定を450nmでプレートリーダによって実施した。試験した444のハイブリドーマの中で、129が、hFGFR4−Streptag抗原とELISAアッセイによって陽性であり、これらのハイブリドーマの内の120もまた、hFGFR4−Fcダイマータンパク質と陽性であった。
【0200】
FGF−R4特異的抗体だけを選択するために、hFGFR4−Streptagタンパク質を捕獲抗原として使用してELISAアッセイによって二次スクリーニングを行い、次いで実施例2に記載されるhFGFR1−Fc、hFGFR2−Fc及びhFGFR3−Fcタンパク質によって行った。捕獲抗原は、Immulon−4酵素結合プレート(VWR Scientific Inc.Swedesboro、NJ)に結合した。続いて、ハイブリドーマ培養液上清を添加し、次いで、ペルオキシダーゼコンジュゲート抗マウスIgGウサギ抗体(Sigma、ref.A9044−1:50000に希釈)を使用して検出を行った。明示化をTMB−H2O2基質(Interchim、ref UP664780)によって実施し、測定を450nmでプレートリーダによって実施した。抗原とELISAアッセイによって陽性反応を示した129のハイブリドーマの中で、84のハイブリドーマがhFGFR4−Streptagと陽性であり、hFGFR1−Fc、hFGFR2−Fc、hFGFR3−Fcのいずれとも親和性を有さなかった。それらの成長及びそれらの形態の機能として、39のハイブリドーマを保存した。それらのアイソタイプを、SEROTECキット(ref.MMT1)を使用して決定し、95%がIgG1であった。
【0201】
抗FGFR4抗体による阻害を特徴付けるため、Baf/3改変細胞のFGF2誘導増殖についての試験において三次スクリーニングを行った。
【0202】
抗FGFR4拮抗薬抗体を発現するマウスハイブリドーマを、限界希釈法によってクローン化した。指数増殖期において培養したハイブリドーマ細胞を使用して、コード配列(cDNA)を、Oligotexキット(Qiagen、ref72022)を使用してmRNAの抽出の後決定し、Gene Racerキット、SuperScript III逆転写酵素(Invitrogen、ref L1500)及び下記の表2に記載されるプライマーによるRACE−RT法によるcDNAの作製及び増幅、Phusionポリメラーゼ(Finnzymes、ref.F−530S)、表2に記載されるプライマー及び温度条件を使用するcDNAフラグメントの増幅を行った。VH(重鎖HCの可変領域)又はVL(軽鎖LCの可変領域)に対するコード領域を含む増幅フラグメントを、Promega、ref A137AからのpGEM−T Easyベクターにクローン化し、得られたプラスミドの挿入物を配列決定し、それにより各可変ドメインのコード配列を、抗FGFR4抗体40−12及び抗FGFR4抗体64−12に対応する少なくとも6つのプラスミドにおいて5’−3’及び3’−5’方向において解析した。配列、コンティグ及びアラインメントの解析を、Vector NTI(Invitrogen)において利用可能なソフトウェアを使用して行った。
【0203】
抗FGFR4抗体の可変領域をコードするコンセンサス配列を含むプラスミドを保存した。下記の表2に示すように、プラスミドpXL4691は、抗FGFR4抗体40−12の配列番号5の配列のVHをコードする配列を含み、プラスミドpXL4693は、抗FGFR4抗体64−12の配列番号19の配列のVHをコードする配列を含む。
【0204】
下記の表2に示すように、プラスミドpXL4690は、抗FGFR4抗体40−12の配列番号8の配列のVLをコードする配列番号7のヌクレオチド配列を含み、プラスミドpXL4692は、抗FGFR4抗体64−12の配列番号22の配列のVLをコードする配列番号21のヌクレオチド配列を含む。
【0205】
表2−逆転写酵素及びPCR反応の操作条件及び解析−プラスミドpXL4690からpXL4693の同定。
【0206】
【表1】

【0207】
それぞれ抗FGFR4抗体64−12及び抗FGFR4抗体40−12の軽可変領域及び重可変領域のアミノ酸配列は異なる。使用され、得られ、推測される配列の数を表7に示す。
【0208】
抗体40−12及び64−12を、T500フラスコにおいて作製した。培養液上清を、7日後に採取した。抗FGFR4抗体を、タンパク質Gにおいて親和性精製し、次いでPBSに対して透析し、滅菌濾過し、4℃で保存した。
【0209】
精製された拮抗薬抗体は、6.5×10−9M(抗FGFR4 40−12)及び5.75×10−8M(抗FGFR4 64−12)のKを有する。
【0210】
B−ファージディスプレイ法を使用して選択される抗体
hFGFR4−Histagによるファージディスプレイによって得られたモノクローナル抗体の一次スクリーニングを、捕獲抗原としてhFGFR4−Histagを使用してELISAアッセイによって行った。捕獲抗原は、Immulon−2酵素結合プレート(VWR Scientific Inc.Swedesboro、NJ)に結合した。続いて、ファージを感染させた大腸菌からの培養液上清を添加し、次いでペルオキシダーゼコンジュゲート抗M13マウス抗体(GE Healthcare、ref.27−9421−01、1:5000に希釈)を使用して検出を行った。明示化をTMB−H2O2基質(Interchim、ref UP664780)によって実施し、光学密度(O.D.)測定を450nmで行った。
【0211】
FGF−R4特異的抗体だけを選択するために、hFGFR4−Histagタンパク質を捕獲抗原として使用してELISAアッセイによって二次スクリーニングを行い、次いで実施例2に記載されるhFGFR1−Fc、hFGFR2−Fc及びhFGFR3−Fcタンパク質によって行った。捕獲抗原は、Immulon−2酵素結合プレート(VWR Scientific Inc.Swedesboro、NJ)に結合した。続いて、ファージを感染させた大腸菌からの培養液上清を添加し、次いでペルオキシダーゼコンジュゲート抗M13マウス抗体(GE Healthcare、ref.27−9421−01、1:5000に希釈)を使用して検出を行った。明示化をTMB−H2O2基質(Interchim、ref UP664780)によって実施し、光学密度(O.D.)測定を450nmで行った。
【0212】
選択されたFGF−R4特異的クローンを配列決定し、HEK293細胞の一過性のトランスフェクションのための発現ベクターに再クローン化した。
【0213】
このために、第一ステップにおいて、Fabをコードする領域、即ち、抗体の軽鎖、細菌リボソーム結合部位、及び抗体の重鎖可変領域を、リストリクションによってファージミドから抽出し、哺乳類細胞のためのIgG発現プラスミド、真核生物抗体シグナル配列の下流側、及びヒトIgG1重鎖の定常領域の上流側に挿入する。第二ステップにおいて、細菌リボソーム結合部位と重鎖のための細菌シグナルペプチドとを含む領域をIRES配列及び真核生物シグナル配列に対して交換する。IgGは、HEK293細胞への一過性トランスフェクションによって発現する。この方法は、T.Jostockら、Journal of Immunological Methods289(2004)65−80頁において詳細に記載されている。
【0214】
本発明において使用され得るヒトIgG1定常領域配列の例は、配列番号117の配列である。
【0215】
抗体発現ベクターを一過性にトランスフェクトしたHEK293細胞からの培養液上清を使用して、抗FGFR4抗体による阻害を特徴付けるため、実施例4に記載される改変Baf/3細胞のFGF2誘導増殖についての試験において三次スクリーニングを行った。このスクリーニングは、クローン8、31、33及び36の抗体を同定することを可能にした。対応配列を表7に記載する。
【実施例4】
【0216】
BaF/3 FGF−R4−hMplマウスクローン系及び細胞増殖プロトコルの確立
5’位におけるキメラFGF−R4−hMpl受容体の前のHA標識の存在を得るため、突然変異pEF6/V5−His Aベクターに、hMplの細胞内ドメインを有する翻訳融合としてFGF−R4の細胞外及び膜貫通ドメインをクローン化した。
【0217】
突然変異pEF6Aの構築
pDisplay(Invitrogen、reference V660−20)のIgGkのシグナルペプチドの下に配置されるHA標識と会合するMCS(マルチクローニング部位)を一体化するため、pEF6/V5−His Aベクター(Invitrogen、reference V961−20)を改善させた。これを行うため、HA標識及びそのシグナルペプチドと会合するMCSを、配列番号51の配列のセンスプライマーと配列番号52の配列の後方プライマーとの間でPCRによって増幅し、それによって、5’位においてKpnl制限部位を、3’位においてXbal制限部位を挿入することが可能になった。PCRフラグメントを、Kpnl及びXbal酵素によって消化させ、次いで同じ酵素によって切開されるpEF6/V5−His Aベクターにクローン化した。最後に、MCSの第1のBamHI部位を、新しく形成されたベクターをKpnl及びSpel酵素によって消化し、これらの部位の間に、相互にハイブリダイズされ、BsrGI酵素部位を含む配列番号53及び配列番号54の配列のプライマーを挿入することによってBsrGI部位と置換した。得られたベクターを、pEF6mut−HAと呼んだ。
【0218】
pEF6mut−HA−FGF−R4−hMplベクターの構築
Mplの細胞内ドメインを、Sacl消化部位の挿入を可能にする配列番号55の配列のセンスプライマーと一般にrevBGHと呼ばれる配列番号56の配列の後方プライマーとの間のベクターpEF6/V5−His TOPO(Invitrogen、reference K9610−20)において増幅した。次いで、生成したPCRフラグメントを、Sacl及びNotl酵素によって消化させた。
【0219】
FGF−R4の細胞外及び膜貫通ドメインを、一対のプライマーを使用して増幅した(センス:配列番号57の配列、後方:配列番号58の配列)。これらのプライマーは、5’位においてBamHI酵素部位を、3’位においてSacl酵素部位を挿入することを可能にする。次いで、得られたPCRフラグメントを、BamHI及びSacl酵素によって消化させた。
【0220】
次いで、hMplをコードするDNAの増幅物と、FGF−R4をコードするDNAの増幅物とを、BamHI−Notlによって切開したpEF6mut−HAベクターに同時にクローン化した。得られた構築物を、「pEF6mut−HA FGF−R4αIIIc−hMpl2」と呼んだ。次いで、配列番号60の配列をFGF−R4の膜貫通ドメイン(配列番号59のタンパク質配列)と取り替えるため、この構築物を部位特異的変異誘発によって改善した。これを行うため、「QuickChange(登録商標)部位特異的変異誘発キット」(Clontech、reference 200518)を、配列番号61の配列のセンスプライマーと配列番号62の配列の後方プライマーと共に使用した。得られた新しいキメラ構築物を、pEF6mut−HA FGF−R4αIIIcmut−hMpl2と呼んだ。
【0221】
FGF−R4αIIIcmut−hMpl2構築物によるBaF/3マウス系のトランスフェクションによる安定系の作製
「pEF6mut−HA FGF−R4αIIIcmut−hMpl2」構築物を、BaF/3マウス細胞のゲノムにエレクトロポレーションによって安定して導入した。得られた系を、20ng/mlのFGF2(R&D、reference 234−FSE−025)及び100ng/mlのヘパリン(Sigma、reference H3149)の存在下で選択した。次いで、トランスフェクトされ、選択された系は、クローン型である。
【0222】
BaF/3 FGFR4−hMpl細胞系による細胞増殖プロトコル
BaF/3 FGFR4―hMpl細胞を、20ng/mlのFGF2(R&D Systems、ref234−FSE)及び3ng/mlのヘパリン(Sigma、ref H3149)を補充した完全RPMI1640培地(Invitrogen、ref.32404−014)(10%FCS(Hyclone、ref.SH30070.03)、2mMグルタミン、1×MEM非必須アミノ酸(Gibco、ref11140−035)、1×MEMピルビン酸ナトリウム(Gibco、ref11360−039))において培養し、維持した。Day1に、20ng/mlのFGF2と3ng/mlのヘパリンとを補充した完全RPMI1640培地において細胞を0.4×10個/mlで播種する。翌日、20ng/mlのFGF2と3ng/mlのヘパリンとを補充した完全RPMI1640培地における0.2×10個/mlの50μlのBaF/3 FGFR4−hMpl細胞懸濁液を96ウェルプレート(Porvair、ref214006)に分注した後、試験される抗体を含む50μlのハイブリドーマ上清を分注した。次いで、プレートを37℃で24から30時間、5%COで配置した。細胞増殖を読み取るため、ATPの量を、100μlのCell Titer Glo Luminesent Cell Viability Assay(Promega、ref G7571)を添加することによって定量し、ルミノメータを使用してルミネセンスを読み取った。
【0223】
この試験において20ng/mlの添加剤FGF2と3ng/mlのヘパリンとを含む完全RPMI1640培地よりも50%弱いシグナルを示すクローンを選択した。
【0224】
FGF−R4に特異的な抗FGFR4抗体を、Baf/3−FGFR4−hMpl細胞と以下の20ng/mlの添加剤FGF2及び3ng/mlのヘパリンとによってインキュベートした際、細胞増殖に対する拮抗薬効果を認めた。試験した39のハイブリドーマの中で、14が、FGF2の存在下でBaf/3−FGFR4−hMpl細胞のFGF誘導細胞増殖を阻害することができる。
【0225】
抗FGFR4拮抗薬抗体40−12及び64−12がマウスタンパク質mFGFR4及びヒトタンパク質hFGFR4(D2、D3)に対する親和性を有したことがELISA(図12)によって示された。
【0226】
最後に、抗FGFR4抗体の親和定数を決定するため、Surface Plasmon Resonance(BlAcore 2000)によって最後のスクリーニングを行った。ハイブリドーマ培養液上清中に存在するFGF−R4タンパク質と抗FGFR4抗体との間の相互作用を、抗Fc抗体に抗FGFR4抗体が結合し、それ自体がCMチップに結合した後で解析した。Canzianiら、2004年、Anal.Biochem.325:301−307頁のプロトコルに従って動態を測定する。
【0227】
10−8から10−9Mの親和定数及び10−3から10−5−1の解離速度を有するものの中の2つの抗体を選択した。これらの抗体の特性は、下記の表1に記載される。
【0228】
を決定するために使用される参照方法は、Surface Plasmon Resonance(BIAcore)である。
【0229】
【表2】

【0230】
【表3】

【実施例5】
【0231】
抗FGFR4抗体の特異性
A−FGF−R4に対する抗FGFR4抗体40−12の特異性
各抗体の特異性を、実施例4に記載されるプロトコルに従ってELISAによって確立する。このようにして、各FGF−Rに結合する各抗体の能力を観察する。この実験は、抗体40−12がFGF−R4だけを認識し、したがってFGF−R4に対して特異的であることを明らかに示す。抗体64−12は、主にFGF−R4に結合し得るが、FGF−R3にも弱く結合する(図7)。
【0232】
B−FGF−R4に対する抗FGFR4抗体8、31、33及び36の特異性
各抗体の特異性を、以下のプロトコルに従ってELISAによって確立する。Fab形態の抗体を示すその表面におけるファージの懸濁液を、大腸菌細菌の感染によって生成する。捕獲抗原は、Immulon−2酵素結合皿(VWR Scientific Inc.Swedesboro、NJ)に結合した。続いて、ファージ懸濁液を添加し、次いでペルオキシダーゼコンジュゲート抗M13ファージマウス抗体(GE Healthcare、ref.27−9421−01、1:5000に希釈)を使用して検出を行った。明示化をTMB−H2O2基質(Interchim、ref UP664780)によって実施し、光学密度(OD)測定を450nmで行った。得られた結果を表2にまとめる。
【0233】
このようにして、各FGF−Rに結合する各抗体の能力を観察する。この実験は、抗体8、31、33、36がFGF−R4だけを認識し、したがってFGF−R4に対して特異的であることを明らかに示す。
【0234】
【表4】

【実施例6】
【0235】
血管形成に対する、抗体40−12の、及びクローン8、31、33、36に由来する抗体の拮抗的効果(インビトロ)
ヒト内皮細胞血管形成の経過に亘る抗FGFR4モノクローナル抗体40−12の生物学的活性を決定するため、1から30μg/mlの漸増投与量で抗体40−12又は対照抗体の存在下でFGF2によって刺激されるHUVEC細胞を使用してインビトロにおける血管形成実験を行った(図8A及び8B)。
【0236】
この関連において、活性抗FGFR4拮抗薬モノクローナル抗体40−12は、30μg/ml又は200nMの投与量でHUVEC細胞のFGF2誘導血管形成を阻害することができるが、対照抗体64−12は効果を有さない。更に、抗体40−12は、それ自体基底血管形成に対して影響を及ぼさない。
【0237】
これらの結果は、FGF−R4特異的拮抗薬抗体が血管形成を阻害することができることを示す。
【0238】
抗体40−12について、ファージディスプレイから誘導されるクローン8、31、33及び36の抗FGFR4抗体を、HUVEC型のヒト内皮細胞のFGF−2誘導血管形成を阻害するそれらの能力に関して評価した。これらの4つの抗体は、FGF−2によって得られた血管形成のインビトロにおける刺激を抑止し、前記抗体は、10μg/mlの投与量である(図8C及び8D)。
【実施例7】
【0239】
ヒト肝臓癌細胞に対する、抗体40−12の、及びクローン8、31、33及び36に由来する抗体の拮抗的効果(インビトロ)
抗FGFR4拮抗薬モノクローナル抗体40−12の抗腫瘍効果を決定するため、増殖及びそれをもたらすシグナル伝達経路がリガンド−受容体対:FGF19/FGF−R4に依存するHep3bヒト肝臓癌細胞において実験を行った。
【0240】
最初に、Hep3b細胞の増殖をもたらすFGF−R4依存性シグナル伝達経路の研究をウェスタンブロット法によって行った。この細胞シグナル伝達は、cFos及びJunBタンパク質の新合成と、更にErk1/2のリン酸化とを含む(Linら、J Biol Chem.、2007年、14:27277−84頁)。これを行うため、5×10の細胞を、2mlの完全培地(DMEM、10%FCS、2mMグルタミン)において直径35mmの皿に播種する。24時間後、細胞を、1.8mlの無血清培地中において、24時間、欠失の条件に供する。次いで、対照抗FGFR4抗体又は抗FGFR4抗体40−12の非存在下又は存在下で、10倍に濃縮した200μlのFGF19によって細胞を3時間刺激する。次いで培地を除去し、細胞を、冷たいPBSによって1回洗浄し、プロテアーゼ阻害剤を補充した75μlのRIPA緩衝液によって、4℃で30分間、皿上で溶解する。次いで、総タンパク質抽出物を、13000rpmで4℃で10分間遠心分離し、上清をウェスタンブロット法によって解析する。次いで、膜を、TBS、0.05%tween、5%乳汁において周囲温度で2時間インキュベートし、次いで、抗cFos(Cell Signaling Technology、ref2250)、抗JunB(Cell Signaling Technology、ref3746)及び抗ホスホErk1/2(Cell Signaling Technology、ref4377)一次抗体を1/1000thで添加し、ゆっくりと振盪しながら4℃で終夜インキュベートする。膜を、TBS、0.05%tweenによって3回すすぎ、HRPに結合させた二次抗体を4℃で4時間インキュベートし、TBS、0.05%tween、5%乳汁において1/2000thに希釈する。次いで、Chemigenius装置(Syngene)を使用してウェスタンブロット法の結果を定量する。各種抗体によって得られたバンドの強度を、HRPに直接結合し、1/3000thで使用する抗アクチン抗体によって得られたバンドの強度によって重み付ける(Santa Cruz Biotechnology、ref Sc−8432−HRP)。
【0241】
30ng/mlのFGF19は、JunB及びcFosタンパク質の合成、更にHep3b細胞におけるErk1/2のリン酸化を誘導する。タンパク質のこの新合成及びErkのリン酸化は、100μg/mlの抗FGFR4抗体40−12によって完全に阻害されるが、一方で対照抗体は阻害効果を有さない。ウェスタンブロット法の膜(図9A)において観察されるこれらの効果を定量し、各膜のバンドの強度をグラフの形で表す(図9B)。
【0242】
第2に、細胞増殖実験自体を実施した。5000の細胞を、10%FCSと2mMグルタミンとを含む100μlのDMEM培地において96ウェルプレートに播種する。24時間後、細胞を、24時間無血清培地において血清除去する。次いで、対照抗体又は抗FGFR4拮抗薬モノクローナル抗体40−12の非存在下又は存在下で、Hep3b細胞を、10ng/mlのFGF19(Sanofi−Aventis R&Dにおける内部製造)又は10%の血清が補充される100μlの無血清培地によって72時間刺激する。3日後、細胞増殖を、CellTiter Gloキット(Promega、France)を使用して定量する。
【0243】
血清及びFGF19がHep3b増殖を刺激し得ることは、これらの実験から明らかになる。抗FGFR4拮抗薬抗体40−12は、100μg/mlでこの血清誘導増殖を部分的に阻害するが、一方で対照抗体は、いかなる阻害活性も示さない(図10A)。更に、10μg/mlの抗体40−12は、FGF19によって誘導される増殖を完全に抑止する(図10B)。対照抗体は、効果を有さない。
【0244】
このことは、本発明の対象である抗FGFR4拮抗薬抗体がFGF19依存性又はFGF−R4依存性腫瘍の関連において抗腫瘍治療剤として使用され得、この抗体が肝臓癌の治療において特に効果的であることを実証する。
【0245】
Hep3b細胞に対する抗FGFR4抗体の効果の研究を単純化するため、ELISAアッセイは、Erk1/2のリン酸化を検出し、その後FGF−19(実施例8に記載される実験に相関する)、FGF−2又はウシ胎仔血清によるこれらの細胞を刺激するために開発された。
【0246】
これを行うため、50000個のHep3b細胞を、10%FCSと2mMグルタミンとを含有する100μlのDMEM培地において96ウェルの黒色の明確なボトムプレート(COSTAR、ref3603)に播種する。24時間後、細胞を、2mMグルタミンを含む無FCS DMEM培地において24時間欠失の条件に供する。次いで、培地を抜き取り、FGF又はFCSと、更に各種の投与量の評価される抗体とを含む37℃の前平衡した100μlの欠乏培地と置換する。細胞を、37℃、5%COで3時間インキュベートする。次いで、刺激培地を抜き取り、ウェルを4℃のPBSですすぎ、細胞を、PBSにおける200μlの4%PFA(パラホルムアルデヒド)を添加することによって周囲温度15分間固定する。PFAを抜き取り、細胞を、200μlのPBSによって3回洗浄する。直接Hep3b細胞上のホスホ−Erk1/2を検出するための抗体標識化を、非特異的部位を100μlの飽和緩衝液(21.25mlのPBS、1.25mLの10%非免疫性ヤギ血清(Zymed、ref50−062Z)、75μlのトリトンX100)によって2時間飽和させることによって開始する。飽和緩衝液を、1%BSAと0.3%トリトンX100を含むPBS緩衝液において1/100thに希釈した50μlの抗ホスホErk1/2一次抗体(Cell Signaling Technology、ref4377)によって置換する。一次抗体を4℃で細胞と共に終夜インキュベートする。次いで、それを200μlのPBSの3回の洗浄によってすすぎ、4時間、1%BSAと0.3%トリトンX100とを含むPBS緩衝液において1/5000thに希釈したAlexaFluor488(Molecular Probes、ref A11008)に結合した抗ウサギ二次抗体を使用して明示化する。次いで、二次抗体を200μlのPBSの3回の洗浄によってすすぎ、次いで100μlのPBSを各ウェルに添加する。蛍光を、FITCフィルタを用いてEnVision2103Multilabel Reader(Perkin Elmer)によって読み取る。
【0247】
この手法は、30ng/mlのFGF−19がHep3b細胞におけるErk1/2のリン酸化を誘導し、40−12が3μg/mlの投与量からこの刺激を抑止することができることを確認することを可能にする(図9C)。また、FGF−2及び血清は、系を誘導することもできる。後の2つの場合、抗体40−12は、より高投与量(30−100μg/ml、図9C)でFGF−2及び血清の効果を阻害する。
【0248】
また、ELISAによるホスホ−Erk1/2の検出は、インビトロにおける血管形成モデルにおいて活性である抗FGFR4抗体が、3μg/mlの投与量でFGF−19によって誘導されるErk1/2のリン酸化の70%から95%を抑止することもできることを示すことをも可能にした(図9D)。
【0249】
有利には、本発明の抗体は、特に肝臓癌のモデルにおいて、腫瘍発育を伴う病理学的血管形成とそれ自体で肝臓の腫瘍成長との両方に対する拮抗的影響を有する。
【実施例8】
【0250】
膵臓癌のマウスモデルにおける抗体40−12の拮抗的効果
この薬理学的モデルのため、C57BI/6J遺伝的背景を有する雌性Rip1−Tag2マウス(Charles River Laboratory、France)を使用する。出生後Week9から開始して、動物は、5%のショ糖が補充された飲料水を飲む。マウスを、週に1回、25mg/kgの投与量で抗FGFR4抗体40−12又は対照抗体の皮下注射によって、介入治療プロトコルにおいてWeek10からWeek12.5まで治療する(図14A)。このプロトコルは、Sanofi−Aventis Rechercheの「Comite experimentation Animale(Animal Care and Use Committee)」によって承認される。我々の畜産施設、動物への注目、更に治療プロトコルは、治療期間後、又は腫瘍負荷及び/又は副作用によって義務的な研究から中止する際に屠殺される脊椎動物の保護におけるEuropean Conventionによって置かれる原理に従う。
【0251】
腫瘍負荷を測定するため、実験終了後に安楽死によって動物を屠殺し、新たに切除された膵臓から腫瘍を顕微解剖する。mmにおける腫瘍体積を、球状体の体積を求めるため式[体積=0.52×(幅)×(長さ)]を適用してキャリパを使用して測定する。マウス1匹当たりの腫瘍負荷を、各マウスの腫瘍の体積の累加によって算出する。
【0252】
血管密度の組織化学的解析のため、動物を麻酔し、膵臓を回収し、accustain(登録商標)(Sigma)において終夜固定し、次いでパラフィン中に埋め込む。5μm厚の切片を各試料について調製する。内皮細胞を、37℃で10分間、切片をトリプシン(Zymed、ref00−3003)と共に、次いでラットにおいて産生される1/50thに希釈される抗マウスCD31抗体(BD Pharmingen)と共にインキュベートすることによって検出する。抗体によって標識された領域を明示化するため、切片を、ビオチン結合抗ラット抗体によって30分間、次いでHRP結合ストレプトアビジン(Vectastain(登録商標)ABCキット、Vector)によって更に30分間、最後にDAB(Vector、ref SK4100)によって5分間インキュベートする。次いで、切片を、1/10thに希釈されるヘマトキシリン(Dako、S−3309)によって染色する。×200の総拡大倍率で、顕微鏡(Nikon、E−800)に載置されるカメラによって写真を撮影する。ソフトウェア(Visiolab、Biocom)を使用して画像を解析する。腫瘍中における血管を、それらの表面積(5から20μmの間の小血管、21から100μmの間の中血管、101μmから開始する大血管)に従って計数し、分類する。1つの場所につき標識される要素の総数に対応する血管密度を決定するため、膵臓1つにつき2つのスライドを解析する。
【0253】
このモデルにおいて、10から12週目の間の週に1回の25mg/kgの抗FGFR4抗体40−12を使用する皮下治療は、有意に55%腫瘍負荷を減少させることを可能にし(図11B)、膵臓1つ当たりの腫瘍の数を34%減少させる傾向を有するが(図11C)、対照治療は効果を有さない。抗FGFR4抗体40−12による腫瘍発育のこの阻害は、抗CD31抗体によって標識された全ての血管の大きさの群における血管の数の観察された減少(図11D)に対応する総血管密度の31%の有意な減少を伴う(図11D)。
【0254】
これらのインビボにおける結果は、抗FGFR4拮抗薬抗体が腫瘍における血管の漸増及び形成を阻害することができることを明らかに示す。腫瘍血管新生のこの阻害は、膵臓1つ当たりの腫瘍の数及び総腫瘍体積の減少を伴う。
【0255】
有利には、本発明の抗体は、病理学的血管形成と肝臓腫瘍成長(肝臓癌のモデル)及び膵臓腫瘍成長との両方に対する拮抗的影響を有する。
【実施例9】
【0256】
ヒト、マウス及びラットFGF−R4との抗体の交差反応性
第1に、競合結合実験を行った。これを行うため、FGF2に、供給業者の推奨に従ってAlexaFluor(登録商標)488nmC−5マレイミド(Molecular Probes、A10254)を2つの遊離システイン上で標識した。このFGF2−AF488は、10ng/mlで、トランスフェクトされた300−19細胞の表面において発現したヒトFGF−R4に結合することができる(図8)。過剰な非標識FGF2の添加がFGF2/FGF−R4相互作用を置き換えることを可能にすることから、この結合は特異的である(図8A)。同じ実験を、抗体40−12又は添加される対照抗体64−12の投与量の増加と共に行った。拮抗薬抗体40−12だけは、3500ng/mlのIC50、即ち23nMによってFGF2−AF488/FGF−R4結合を置き換えることができるが、このことは、この抗体の拮抗的効果がFGF/FGF−R4結合を置き換えるその能力に起因することを示す。
【0257】
第2に、ヒト以外の種におけるFGF/FGF−R4結合を抑止するクローン40−12の能力を決定する目的のため、解離実験を、上述のマウス、ラット及びヒトFGF2/FGF−R4の対を使用して行った。これを行うため、ヒトFGF2と同じ方法で、マウスFGF2(R&D、ref3139−FB−025)又はラットFGF2(R&D、ref3339−FB−025)にAlexaFluor488を標識した。マウス又はラットFGF−R4受容体によってトランスフェクトされた300−19系を使用して解離実験を行った。結果は、抗FGFR4拮抗薬抗体40−12が、ヒト系におけるものと同じ有効性によってマウス又はラット系においてFGF2/FGF−R4結合を解離することができることを示す。実際、IC50の値は、ヒト、マウス又はラットFGF2/FGF−R4複合体についてそれぞれ3500、4110及び3940ng/ml、即ち23、27及び26nMである(それぞれ図13A、13B及び13C)。齧歯類FGF−R4と結合するこの能力を、ELISAによって確認した。抗体40−12は、ヒトFGF−R4とマウスFGF−R4との両方に結合する(図12)。
【0258】
これらの結果は、抗FGFR4抗体40−12を齧歯類(少なくともマウス及びラット)における薬理学的モデルにおいて使用することが可能であり、得られた結果がヒトにおける有効性を予測することを示す。
【0259】
同様に、クローン8、31、33及び36に由来する抗体において実施された研究は、これらの抗体がヒトFGF−R4及びマウスFGF−R4の両方を認識することを示す(下記の表4)。
【0260】
【表5】

【実施例10】
【0261】
抗FGF−R4抗体によって認識されるエピトープの決定
A−抗FGFR4抗体40−12によって認識されるエピトープの決定
ELISAアッセイによって、抗体40−12によって認識されるFGFR4の特異的ドメインを決定するためにスクリーニングを行った。ELISAにおいて、FGF−R4のD1ドメインの欠失型を用いることにより、抗体40−12が、FGF−R4のD2−D3ドメインと相互作用したことが確立された(図12)。
【0262】
第2のスクリーニングを、実施例2において記載されるように捕獲抗原としてhFGFR4タンパク質のD1ドメイン(SABVA4794)又はD2ドメイン(SABVA4796)又はD3ドメイン(SABVA4799)を含む構築物を使用してELISAアッセイによって行った。捕獲抗原は、Immulon−4酵素結合プレート(VWR Scientific Inc.Swedesboro、NJ)に結合した。続いて、ハイブリドーマ40−12を添加し、次いでペルオキシダーゼコンジュゲート抗マウスIgGウサギ抗体(Sigma、ref.A9044−1:50000に希釈)を使用して検出を行った。明示化をTMB−H2O2基質(Interchim、ref UP664780)によって実施し、光学密度(OD)測定を450nm実施した。得られた結果を表5にまとめる。
【0263】
【表6】

【0264】
したがって、抗FGFR4抗体は、FGFR4タンパク質の細胞外部分のD2ドメインを認識する。
【0265】
更に、FCSによって変性されたFGFR4−Fcタンパク質は、ウェスタンブロット解析において抗体40−12によって認識されず、このことにより、FGFR4のD2ドメイン上の40−12によって標的とされるエピトープが立体構造型であることが示される。
【0266】
B−抗FGFR4抗体8、31、33、36によって認識されるエピトープの決定
抗体8、31、33及び36によって認識されるFGFR4の特異的ドメインを決定するため、D2及びD3ドメイン(配列番号42)又はhFGFR4−Histagタンパク質(SABVA4614、配列番号40)のいずれかを含む構築物を捕獲抗原として使用するELISAアッセイによってスクリーニングを行った。捕獲抗原は、Immulon−4酵素結合プレート(VWR Scientific Inc.Swedesboro、NJ)に結合した。続いて、抗体8、31、33及び36の分泌を可能にするプラスミドを一過性にトランスフェクトしたHEK293細胞からの培養液上清を添加し、次いでペルオキシダーゼコンジュゲート抗ヒトIgGウサギ抗体(DakoCytomation、ref.P0214、1:5000に希釈)を使用して検出を行った。明示化をTMB−H2O2基質(Interchim、ref UP664780)によって実施し、光学密度(OD)測定を450nmで行った。得られた結果を以下の表6にまとめる。
【0267】
【表7】

【0268】
したがって、抗体8、31、33及び36は、FGFR4タンパク質の細胞外部分のD2−D3ドメインを認識する。
【0269】
【表8】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
FGF−R4に特異的に結合する抗体であることを特徴とするFGF−R4受容体拮抗薬。
【請求項2】
FGF−R4受容体のD2−D3ドメインに結合することを特徴とする、請求項1に記載の拮抗薬。
【請求項3】
FGF−R4受容体のD2ドメインに結合することを特徴とする、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
FGF−R4受容体に対して、Surface Plasmon Resonance(Biacore)法によって決定される10−8M未満のKを有することを特徴とする、請求項1から3の一項に記載の拮抗薬。
【請求項5】
ヒトFGF−R4及びマウスFGF−R4の両方に対して活性であることを特徴とする、請求項1から4の一項に記載の拮抗薬。
【請求項6】
抗体であり、配列番号9、10、11、12、13、14、73、74、75、78、79、80、83、84、85、88、89、90、93、94、95、98、99、100、103、104、105、108、109若しくは110の配列の1つと同一の配列を有する少なくとも1つのCDRを含むことを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の拮抗薬。
【請求項7】
抗体であり、配列番号9、10、11、12、13及び14、又は73、74、75、78、79及び80、又は83、84、85、88、89及び90、又は93、94、95、98、99及び100、又は103、104、105、108、109及び110の配列のCDRを含み、CDRの1つが前記配列の少なくとも1つと比較して1又は2つのアミノ酸だけ異なっていてもよいが、前記抗体が、その結合特異性を保持することを特徴とする、請求項1から6の一項に記載の拮抗薬。
【請求項8】
その重鎖の可変領域が配列番号5、76、86、96又は106の配列と少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗体であることを特徴とする、請求項1から7の一項に記載の拮抗薬。
【請求項9】
その軽鎖の可変領域が配列番号7、71、81、91又は101の配列と少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗体であることを特徴とする、請求項1から8の一項に記載の拮抗薬。
【請求項10】
抗体であり、その配列が配列番号2及び4、又は6及び8、又は72及び77、又は82及び87、又は92及び97、又は102及び107のポリペプチド配列を含むことを特徴とする、請求項1から9の一項に記載の拮抗薬。
【請求項11】
FGF−R4によって制御される細胞シグナル伝達経路の阻害を誘導することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の拮抗薬。
【請求項12】
血管形成の阻害を誘導することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の拮抗薬。
【請求項13】
腫瘍細胞増殖の阻害を誘導することを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の拮抗薬。
【請求項14】
FGF−R4に対するその親和性が他のFGF受容体に対するその親和性よりも10倍大きいことを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の拮抗薬。
【請求項15】
ヒト化抗体であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の拮抗薬。
【請求項16】
ヒト抗体であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の拮抗薬。
【請求項17】
配列番号30又は32のポリペプチド配列の1つと少なくとも80%の同一性を有する可変軽鎖を含むことを特徴とする、請求項15に記載の拮抗薬。
【請求項18】
配列番号34、36又は38の配列と少なくとも80%の同一性を有する可変重鎖を含むことを特徴とする、請求項15に記載の拮抗薬。
【請求項19】
抗体であり、細胞毒性薬とコンジュゲートすることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の拮抗薬。
【請求項20】
病理学的血管形成を伴う疾患の治療における、請求項1から19のいずれか一項に記載の拮抗薬の使用。
【請求項21】
肝臓癌又は他の任意の種類の肝癌の治療における、請求項1から20のいずれか一項に記載の拮抗薬の使用。
【請求項22】
膵臓癌の治療における、請求項1から21のいずれか一項に記載の拮抗薬の使用。
【請求項23】
請求項1から19のいずれか一項に記載の拮抗薬及び賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項24】
請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体を患者に投与することを含むことを特徴とする、病理学的血管形成に関連する疾患の治療方法。
【請求項25】
請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体を患者に投与することを含むことを特徴とする、癌の治療方法。
【請求項26】
請求項1から19に記載の抗体を産生する細胞系。
【請求項27】
請求項26に記載の細胞系を培養することを含むことを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体の作製方法。
【請求項28】
請求項1から19のいずれか一項に記載の拮抗薬を含む薬物。
【請求項29】
配列番号2、4、6、8、9、10、11、12、13、14、30、32、34、36、38、72、73、74、75、77、78、79、80、82、83、84、85、87、88、89、90、92、93、94、95、97、98、99、100、103、104、105、107、108、109又は110の配列の1つと少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項30】
配列番号1、3、5、7、29、31、33、35又は37、71、76、81、86、91、96、101又は106の配列の1つと少なくとも80%の同一性を有する配列を有することを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項31】
請求項29又は30に記載の核酸を含む組換えベクター。
【請求項32】
請求項31に記載のベクターを含む宿主細胞。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【公表番号】特表2011−527322(P2011−527322A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517203(P2011−517203)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051343
【国際公開番号】WO2010/004204
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(504456798)サノフイ−アベンテイス (433)
【Fターム(参考)】