説明

FMトランスミッタ装置

【課題】小型化且つ低消費電力化であって高S/N比が得られるFMトランスミッタ装置の提供。
【解決手段】FMトランスミッタ装置は、音声信号を対数圧縮する音声信号処理コンプレッション1と、音声信号処理コンプレッション1からの変調信号とチャンネル周波数設定信号Cとをそれぞれ入力として基準クロックを受けて作動しFM高周波を送出するFM放送帯送信用ワンチップIC4と、局部発振器を構成するSAWレゾネータ5及び700MHz帯SAW発振回路6と、この発振回路6からの無変調高周波とFM放送帯送信用ワンチップIC4からのFM高周波を混合して周波数変換する混合回路7と、混合回路7からの混合波のうち不要周波数を除去して800MHz帯の高周成分を取り出すSAWフィルタ8とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレスマイクロフォン(ラジオマイク)装置やワイヤレス用トランスミッタ装置などに用いるに好適なFMトランスミッタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電波法の関係から一般的に国内及び海外のワイヤレスマイクロフォン装置は800MHz帯付近で運用されるものが多く、許可帯域内でチャンネル周波数を任意に設定できるPLL周波数シンセサイザー方式が広く用いられている。この方式のうち800MHz帯で作動するVCO(電圧制御発振器)を使用するストレート方式では、VCOからのFM高周波の周波数とアンテナからの送信周波数とが同一の800MHz帯であることから、アンテナからVCOに電子回路上のフィードバックが生じてカップリングし、アンテナに手を触れた際などに周波数にふらつきが生じる。このため、送信出力段とアンテナとの間にアイソレータを挿入してSパラメータ反射係数(S11)を軽減すると共に、送信増幅回路の各段に減衰器を挿入して順方向増幅度を増加させて反射特性を改善する措置が講じられている。ところが、アンテナからの輻射電力が空間を介してVCOにカップリングし、なおも周波数のふらつきが生じるので、VCOにシールドを施した上、送信回路全体にシールドを施す必要があり、2重シールの手間と大型化を招いていた。また、VCOの後段では減衰と増幅を交互に行うため、消費電力が大きい。
【0003】
一方、400MHz帯で作動するVCOと2逓倍回路などを用いる逓倍方式では、アンテナとVCOとのカップリングが低減して周波数のふらつきを抑制でき、シールド処理の負担が軽減する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
逓倍方式では、VCOで発生する位相雑音も逓倍回路で乗算されてしまうため、S/N比の劣化を招く。
【0005】
そこで上記各問題点に鑑み、本発明の課題は、小型化且つ低消費電力化であって高S/N比が得られるFMトランスミッタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るFMトランスミッタ装置は、音声信号に基づく変調波と搬送波設定信号とをそれぞれ入力として作動するFM放送帯送信用ワンチップIC及び発振器を用い、前記FM放送帯送信用ワンチップIC及び前記発振器のいずれか一方から得られる無変調高周波とその他方から得られるFM高周波とを混合回路で混合して混合波を生成し、この混合波から不要周波数をフィルタ手段で除去して800MHz帯の送信FM波を生成する。
【0007】
なお、「800MHz帯」とは800MHzの近傍周波数も含み、ワイヤレスマイクロフォン装置などに許可される帯域を意味する。
【0008】
FM放送帯送信用ワンチップICとしては市販品(例えばローム株式会社製の型番BH1425など)を用いることができるため小型化及び低消費電力化を図ることができることは勿論、ストレート方式や逓倍方式とは全く異なり、混合回路で無変調高周波とFM高周波とを混合して混合波を生成し、この混合回路での周波数変換後に、不要周波数をフィルタ手段で除去して800MHz帯の送信FM波を生成しているので、小型化且つ低消費電力化であって高S/N比が得られる。
【0009】
混合回路での周波数変換においては、発振器を無変調高周波出力する局部発振器として利用する場合と、FM放送帯送信用ワンチップICを無変調高周波出力する局部発振器として利用する場合とがある。前者の場合、無変調高周波は発振器から得られる発振波であり、FM高周波はFM放送帯送信用ワンチップICから得られる被変調波となるが、後者の場合、無変調高周波は変調波を非入力とすると共に搬送波設定信号を入力とするFM放送帯送信用ワンチップICから得られる搬送波であり、FM高周波は音声波に基づく変調波で発振器の付加容量をアナログ変化させて得られる被変調波となる。
【0010】
ここで、発振器としてはSAWレゾネータ発振器であることが望ましい。また、バンドパスフィルタとしてのフィルタ手段はSAWフィルタであることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型化且つ低消費電力化であって高S/N比が得られるFMトランスミッタ装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施例1に係るFMトランスミッタ装置を示すブロック図である。
【0013】
このFMトランスミッタ装置は、PLL周波数シンセサイザー方式のワイヤレスマイクロフォン(ラジオマイク)装置やワイヤレス用FMトランスミッタ装置などに適用でき、マイクロフォン等からの音声信号を対数圧縮する音声信号処理コンプレッション1と、基準クロックを発振するクロック生成発振器2と、基準クロックを受けて周波数制御信号によりチャンネル周波数設定信号Cを出力する制御CPU3と、音声信号処理コンプレッション1からの変調信号とチャンネル周波数設定信号Cとをそれぞれ入力として基準クロックを受けて作動し78MHz〜108MHz帯域のFM高周波(被変調波)を送出するFM放送帯送信用ワンチップIC4と、局部発振器を構成するSAWレゾネータ(表面弾性波発振素子)5及び700MHz帯SAW発振回路6と、この発振回路6からの無変調高周波とFM放送帯送信用ワンチップIC4からのFM高周波を混合して周波数変換する混合回路7と、混合回路7からの混合波のうち不要周波数(直流成分、うなり周波成分、第2高調成分など)を除去して800MHz帯(778MHz〜808MHz)の高周成分(送信FM波)の方を取り出すバンドパスフィルタとしてのSAWフィルタ8と、この高周成分を電力増幅する送信電力増幅器9と、電波輻射するアンテナ10とを有している。FM高周波を出力するFM放送帯送信用ワンチップIC4としては、プリエンファシス回路,リミッタ回路,LPF,PLL周波数シンセサイザなどを内蔵した市販品(例えばローム株式会社製の型番BH1425など)が用いられる。
【0014】
FM放送帯送信用ワンチップIC4を用いているため、小型化及び低消費電力化を図ることができる。しかも、混合回路7で無変調高周波とFM高周波とを混合して混合波を生成し、この混合回路7での周波数変換後に、不要周波数をSAWフィルタ8で除去して800MHz帯の送信FM波を生成しているので、小型化且つ低消費電力化であって高S/N比が得られる。
【0015】
図2は本発明の実施例2に係るFMトランスミッタ装置を示すブロック図である。この図2において図1に示す部分と同一部分には同一参照符号を付し、その説明は省略する。
【0016】
本例の実施例1と異なる点は、FM放送帯送信用ワンチップIC4を無変調高周波を発振する発振器として使用するため、音声信号処理コンプレッション1からの変調信号は非入力として無変調高周波を混合回路7に出力すると共に、SAWレゾネータ5に可変容量ダイオード11を接続し、その付加容量を音声信号処理コンプレッション1からの変調信号でアナログ変化させて700MHz帯SAW発振回路6から被変調波のFM高周波を混合回路7に出力するようになっている。
【0017】
本例においても、FM放送帯送信用ワンチップIC4を用いているため、小型化及び低消費電力化を図ることができる。また、混合回路7で無変調高周波とFM高周波とを混合して混合波を生成し、この混合回路7での周波数変換後に、不要周波数をSAWフィルタ8で除去して800MHz帯の送信FM波を生成しているので、小型化且つ低消費電力化であって高S/N比が得られる。
【0018】
図3は本発明の実施例3に係るFMトランスミッタ装置を示すブロック図である。この図3において図1に示す部分と同一部分には同一参照符号を付し、その説明は省略する。
【0019】
本例は実施例1の拡張したもので、FM放送帯送信用ワンチップIC4′はステレオエンコーダ(図示せず)を内蔵しており、右音声信号Rと左音声信号Lとを音声信号処理コンプレッション1′で対数圧縮した後、FM放送帯送信用ワンチップIC4′が両信号をそれぞれ変調入力としてそれぞれのFM高周波を出力するようになっている。このため、ステレオワイヤレス,イヤーモニター送信装置などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1に係るFMトランスミッタ装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例2に係るFMトランスミッタ装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例3に係るFMトランスミッタ装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0021】
1,1′…音声信号処理コンプレッション
2…クロック生成発振器
3…制御CPU
4,4′…FM放送帯送信用ワンチップIC
5…SAWレゾネータ
6…700MHz帯SAW発振回路
7…混合回路
8…SAWフィルタ
9…送信電力増幅器
10…アンテナ
11…可変容量ダイオード
C…チャンネル周波数設定信号
L…左音声信号
R…右音声信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声信号に基づく変調波と搬送波設定信号とをそれぞれ入力として作動するFM放送帯送信用ワンチップIC及び発振器を用い、前記FM放送帯送信用ワンチップIC及び前記発振器のいずれか一方から得られる無変調高周波とその他方から得られるFM高周波とを混合回路で混合して混合波を生成し、この混合波から不要周波数をフィルタ手段で除去して800MHz帯の送信FM波を生成して成ることを特徴とするFMトランスミッタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のFMトランスミッタ装置において、前記無変調高周波は前記発振器から得られる発振波であり、前記FM高周波はFM放送帯送信用ワンチップICから得られる被変調波であることを特徴とするFMトランスミッタ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のFMトランスミッタ装置において、前記無変調高周波は変調波を非入力とすると共に搬送波設定信号を入力とする前記FM放送帯送信用ワンチップICから得られる搬送波であり、前記FM高周波は音声波に基づく変調波で前記発振器の付加容量をアナログ変化させて得られる被変調波であることを特徴とするFMトランスミッタ装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のFMトランスミッタ装置において、前記発振器はSAWレゾネータ発振器であることを特徴とするFMトランスミッタ装置。
【請求項5】
請求項項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のFMトランスミッタ装置において、前記フィルタ手段はSAWフィルタであることを特徴とするFMトランスミッタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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