説明

Fcγ受容体1(CD64)に対するヒトモノクローナル抗体

本発明は、高親和性でCD64に結合する単離されたモノクローナル抗体、とりわけヒト抗体を提供する。本発明の抗体をコードする核酸分子、本発明の抗体を発現するための発現ベクター、宿主細胞および方法もまた提供される。本発明の抗体を含んでなる免疫複合体、二重特異性分子および製薬学的組成物もまた提供される。本発明は、抗原および抗CD64抗体の複合物を使用する、自己免疫障害、移植片拒絶反応、移植片対宿主病若しくは癌の処置方法および抗原の高められた提示方法もまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2004年6月3日出願の米国仮出願第60/576,976号(この引用することによりそっくりそのまま本明細書に組み込まれる)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
抗体のFc領域の受容体(FcR)は免疫において調整する役割を演じている。それらは多様な型の細胞上で発現され、そしてエンドサイトーシス、食作用、抗体依存性の細胞媒介性の細胞傷害性(ADCC)およびサイトカイン産生から抗原提示の促進までの範囲にわたる機能を媒介する。抗原提示は、抗原が主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合する前に捕捉され、適切な区画にターゲッティングされかつプロセシングされる過程を表す。
【0003】
IgGに対する白血球のFcR(FcγR)は、受容体構造、細胞分布およびIgGに対する親和性に基づき3クラス(FcγRI、IIおよびIII)に分割される、多遺伝子ファミリーを含んでなる(非特許文献1)。FcγR分子は抗原提示を強力に高め得る。関与するFcγRのタイプは、抗原提示細胞により提示されるエピトープの型の決定的に重要な決定子であることが示されている(非特許文献2)。
【0004】
IgGのヒトの高親和性受容体hFcγRI(CD64)は、単球、マクロファージおよび樹状細胞のような抗原提示細胞上で一貫して発現されている。CD64は、それが(1)主として免疫エフェクター細胞上で発現され;(2)細胞傷害活性(例えばADCC、食作用)を媒介し;かつ(3)それらを標的とする抗原の高められた抗原提示を媒介するため、治療における使用に好ましいトリガー受容体である。事実、ヒトCD64を標的とする抗原はin vitroおよびin vivo双方で効率的に提示される(非特許文献3;非特許文献4)。従って、CD64は免疫機能を媒介するための治療上重要な受容体である。
【非特許文献1】Van de Winkelら(1993)Immunol.Today 14:215
【非特許文献2】Amigorenaら(1998)J.Exp.Med.187:505
【非特許文献3】Liuら(1996)J.Clin.Invest.98:2001
【非特許文献4】Heijnenら(1996)J.Clin.Invest.97:331
【発明の開示】
【0005】
[発明の要約]
本発明は、細胞傷害性トリガー分子、ヒトCD64の治療能力を活用する改良された免疫治療薬を提供する。とりわけ、本発明は、ヒトCD64に結合する単離されたヒトモノクローナル抗体、ならびにこうした抗体を含有する治療的組成物、二重特異性抗体および免疫複合体を提供する。
【0006】
好ましい一態様において、本発明のヒト抗体は、例えばCD64表面発現およびCD64媒介性の食作用を包含するCD64活性を調節することが可能である。特定の一態様において、該抗体は、CD32(FcγRII)およびCD16(FcγRIII)のような他のヒトFc受容体を同様に調節することなく、ヒトCD64に選択的に結合しかつそれを調節する。
【0007】
本発明の別の特定の態様において、該抗体はヒトIgG(ヒトCD64の天然のリガンド)により阻害されず、例えば、それはIgG結合部位と異なる部位でCD64に結合する。あるいは、該抗体は、例えばIgG結合部位内若しくはその近くにある部位でCD64を結合することにより、CD64へのIgG結合を阻害し得る。
【0008】
一態様において、本発明は、ヒトV 3−33遺伝子の産物若しくはそれ由来であるH鎖可変領域を含んでなる、単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分を提供し、該抗体はヒトCD64に特異的に結合する。別の態様において、本発明は、ヒトV L6遺伝子の産物若しくはそれ由来であるL鎖可変領域を含んでなる、単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分を提供し、該抗体はヒトCD64に特異的に結合する。好ましい一態様において、本発明は、単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分を提供し、該抗体は:
(a)ヒトV 3−33遺伝子の産物もしくはそれ由来であるH鎖可変領域(その遺伝子は配列番号11に示されるところのアミノ酸配列をコードする);および
(b)ヒトV L6遺伝子の産物もしくはそれ由来であるL鎖可変領域(その遺伝子は配列番号12に示されるところのアミノ酸配列をコードする)
を含んでなり;
該抗体はヒトCD64に特異的に結合する。
【0009】
別の局面において、本発明は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるH鎖可変領域、ならびにCDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるL鎖可変領域を含んでなる、単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分を提供し、
(a)該H鎖可変領域のCDR3配列は、配列番号3のアミノ酸配列若しくはその保存的改変を含んでなり;
(b)該L鎖可変領域のCDR3配列は、配列番号6のアミノ酸配列若しくはその保存的改変を含んでなり;および
(c)該抗体はヒトCD64に特異的に結合する。
【0010】
一態様において、こうした抗体は、以下の特性:
(i)該ヒト抗体がCD64の表面発現を抑制的調節するか;
(ii)該ヒト抗体がCD64のその天然のリガンド(IgG)への結合をブロックしないか;
(iii)該ヒト抗体がCD64媒介性の食作用を阻害するか;若しくは
(iv)該ヒト抗体がヒトエフェクター細胞の存在下での標的細胞の食作用を媒介する、の1種若しくはそれ以上を表し得る。
【0011】
好ましい一態様において、H鎖可変領域のCDR2配列は、配列番号2のアミノ酸配列若しくはその保存的改変を含んでなり;また、L鎖可変領域のCDR2配列は、配列番号5のアミノ酸配列若しくはその保存的改変を含んでなる。別の好ましい態様において、H鎖可変領域のCDR1配列は、配列番号1のアミノ酸配列若しくはその保存的改変を含んでなり;かつ、L鎖可変領域のCDR1配列は、配列番号4のアミノ酸配列若しくはその保存的改変を含んでなる。該抗体は、例えばヒト抗体、ヒト化抗体若しくはキメラ抗体であり得る。
【0012】
別の局面において、本発明は、H鎖可変領域およびL鎖可変領域を含んでなる、単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分を提供し、
(a)該H鎖可変領域は、配列番号7のアミノ酸配列に最低80%相同であるアミノ酸配列を含んでなり;
(b)該L鎖可変領域は、配列番号8のアミノ酸配列に最低80%相同であるアミノ酸配列を含んでなり;および
(c)該抗体はヒトCD64に特異的に結合する。
【0013】
一態様において、こうした抗体は、以下の特性:
(i)該ヒト抗体がCD64の表面発現を抑制的調節するか;
(ii)該ヒト抗体がCD64のその天然のリガンド(IgG)への結合をブロックしないか;
(iii)該ヒト抗体がCD64媒介性の食作用を阻害するか;若しくは
(iv)該ヒト抗体が、ヒトエフェクター細胞の存在下での標的細胞の食作用を媒介する、
の1種若しくはそれ以上を表し得る。
【0014】
該抗体は、例えばヒト抗体、ヒト化抗体若しくはキメラ抗体であり得る。
【0015】
別の局面において、本発明は、配列番号1、配列番号2および配列番号3のアミノ酸配列をそれぞれ含んでなるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるH鎖可変領域、ならびに配列番号4、配列番号5および配列番号6のアミノ酸配列をそれぞれ含んでなるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるL鎖可変領域を含んでなる、単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分に関し、該抗体はヒトCD64に特異的に結合する。
【0016】
一態様において、こうした抗体は、以下の特性:
(i)該ヒト抗体がCD64の表面発現を抑制的調節するか;
(ii)該ヒト抗体がCD64のその天然のリガンド(IgG)への結合をブロックしないか;
(iii)該ヒト抗体がCD64媒介性の食作用を阻害するか;若しくは
(iv)該ヒト抗体がヒトエフェクター細胞の存在下での標的細胞の食作用を媒介する、の1種若しくはそれ以上を表し得る。
【0017】
他の好ましい態様において、本発明は、
(a)配列番号7のアミノ酸配列を含んでなるH鎖可変領域;および
(b)配列番号8のアミノ酸配列を含んでなるL鎖可変領域
を含んでなる、単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分を提供し、
該抗体はヒトCD64に特異的に結合する、
本発明の別の局面において、CD64への結合について、前述の抗体のいずれかと競合する抗体若しくはその抗原結合部分が提供される。
【0018】
本発明の抗体は、例えば、例えばIgG1アイソタイプの完全長抗体であり得る。あるいは、該抗体はFab若しくはFab’2フラグメントのような抗体フラグメントまたは一本鎖抗体であり得る。
【0019】
本発明はまた、細胞毒若しくは放射活性同位体のような治療薬に連結された本発明の抗体若しくはその抗原結合部分を含んでなる免疫複合体も提供する。本発明はまた、抗体と異なる結合特異性を有する第二の機能部分若しくはその抗原結合部分に連結された本発明の抗体若しくはその抗原結合部分を含んでなる二重特異性分子も提供する。
【0020】
別の局面において、本発明は、抗体若しくはその抗原結合部分、および、別の抗体若しくは細胞受容体リガンドのような前記抗体若しくはその抗原結合部分と異なる結合特異性を有する第二の機能部分を含んでなる二重特異性若しくは多重特異性分子に関し、該第二
の機能部分は腫瘍細胞若しくは病原体上の標的分子に対する結合特異性を有する。一態様において、該二重特異性若しくは多重特異性分子は、エフェクター細胞の存在下での標的分子を発現する細胞若しくは病原体の抗体依存性の細胞媒介性の細胞傷害性(ADCC)を誘導する。別の態様において、該二重特異性若しくは多重特異性分子は、補体の存在下での標的分子を発現する細胞若しくは病原体の補体媒介性の死滅を誘導する。好ましい一態様において、標的分子は、炭疽菌抗原、ボツリヌス毒素、マラリア抗原、ウマ脳炎ウイルス抗原、ペスト菌(Y.pestis)抗原、ガストリン放出ペプチド受容体抗原(GRP)、ムチン抗原、上皮成長因子受容体(EGF−R)、HER2/neu、HER3、HER4、CD20、CD30、PSMA、癌胎児性抗原(CEA)、Pmel17、β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン(βHCG)、α−フェトプロテイン(AFP)、gp100、MART1、TRP−2、melan−A、NY−ESO−1、MN(gp250)イディオタイプ、MAGE抗原、SART抗原、チロシナーゼ、テロメラーゼ、TAG−72抗原、MUC−1抗原、血液型抗原Lea、Leb、LeX、LeY、H−2、B−1およびB−2、HIV−1 gag、HIV−1 env、HIV−1 nef、HBVコア、FAS、HSV−1、HSV−2、p17、HTLV、FELV、ORF2およびORF3抗原、原生動物特異的抗原、カンジダ アルビカンス(Candida albicans)抗原、細菌抗原、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)抗原、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)抗原、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)抗原、溶血性連鎖球菌(Streptococcus hemolyticus)抗原、ならびにヒト結核菌(Mycobacterium tuberculsis)抗原よりなる群から選択される。
【0021】
本発明の別の局面は、疾患生物体、感染した細胞、疾患生物体の遺伝子産物若しくは癌細胞からの抗原を包含することによる、癌を包含する疾患に対するワクチン接種に有用である分子を提供する。これらの目的上、本発明は、抗原を免疫系に向ける結合決定子としてはたらく本発明の抗CD64抗体に有用な効果的な抗原を連結する結合剤である組成物を提供する。好ましい一態様において、抗原は、ウイルス、細菌、寄生虫、アレルゲン、蛇毒、自己抗原、移植された抗原、ならびに、ガストリン放出ペプチド受容体抗原(GRP)、ムチン抗原、上皮成長因子受容体(EGF−R)、HER2/neu、HER3、HER4、CD20、CD30、PSMA、癌胎児性抗原(CEA)、Pmel17、β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン(βHCG)、α−フェトプロテイン(AFP)、gp100、MART1、TRP−2、melan−A、NY−ESO−1、MN(gp250)イディオタイプ、MAGE抗原、SART抗原、チロシナーゼ、テロメラーゼ、TAG−72抗原、MUC−1抗原、血液型抗原Le、Le、Le、Le、H−2、B−1およびB−2よりなる群から選択される腫瘍関連抗原のような腫瘍関連抗原よりなる群から選択される。別の局面において、本発明は、抗原に連結された本発明の抗体を含んでなるワクチン複合体を被験体に投与することを含んでなる、被験体における免疫細胞への抗原の提示の誘導若しくは高める方法を提供する。
【0022】
本発明の抗体、若しくはその抗原結合部分、または免疫複合体若しくは二重特異性分子、および製薬学的に許容できる担体を含んでなる組成物もまた提供される。
【0023】
本発明の抗体若しくはその抗原結合部分をコードする核酸分子、ならびにこうした核酸を含んでなる発現ベクター、およびこうした発現ベクターを含んでなる宿主細胞もまた本発明により包含される。さらに、本発明はヒト免疫グロブリンHおよびL鎖導入遺伝子を含んでなるトランスジェニックマウス(該マウスは本発明の抗体を発現する)、ならびにこうしたマウスから調製されるハイブリドーマ(該ハイブリドーマは本発明の抗体を産生する)を提供する。
【0024】
別の局面において、本発明は、自己免疫疾患、移植片拒絶反応若しくは移植片対宿主病
(GVHD)のような、CD64を発現する細胞を伴う障害の処置若しくは予防方法を提供する。該方法は、本発明の抗体若しくはその抗原結合部分を被験体に投与して、その結果、障害、例えば自己免疫疾患、移植片拒絶反応若しくは移植片対宿主病(GVHD)が処置若しくは予防されることを含んでなる。疾患は、例えば、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性硬化症、アトピー性皮膚炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、ヴェゲナー肉芽腫、オーメン症候群、慢性腎不全、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、炎症性腸疾患(IBD;クローン病、潰瘍性大腸炎およびスプルー、シェリアキー、セリアック病を包含する)、インスリン依存型糖尿病(IDDM)、急性感染性単核症、HIV、ヘルペスウイルス関連疾患、多発性硬化症(MS)、溶血性貧血、甲状腺炎、スティッフマン症候群、尋常性天疱瘡ならびに重症筋無力症(MG)であり得る。
【0025】
別の局面において、本発明は、CD64を発現する細胞を本発明の抗体若しくは抗体フラグメントと接触させ、その結果標的細胞の食作用が阻害されることを含んでなる、CD64を発現する細胞による標的細胞のCD64媒介性の食作用の阻害方法を提供する。
【0026】
別の局面において、本発明は、本発明の抗体を含んでなる二重特異性若しくは多重特異性分子または免疫複合体の有効量と標的細胞を接触させ、その結果細胞の増殖が阻害されることを含んでなる、標的細胞の増殖の阻害方法を提供し、該二重特異性若しくは多重特異性分子または免疫複合体は標的細胞上の一成分に結合する。一局面において、増殖はADCCにより阻害される。別の局面において、増殖は補体媒介性の細胞の細胞傷害性により阻害される。好ましい一態様において、標的細胞は、卵巣癌、乳癌、精巣癌、前立腺癌、白血病およびリンパ腫の群から選択される癌細胞である。他の態様において、標的細胞は免疫細胞若しくは病原体である。こうした病原体の例は、細菌、ウイルスに感染した細胞および寄生虫を包含する。
【0027】
別の局面において、本発明は、
(a)本発明の抗体とCD64の間の複合体の形成を見込む条件下で、該抗体とサンプルを接触させること;および
(b)複合体の形成を検出すること
を含んでなる、サンプル中のCD64若しくはCD64を発現する細胞の存在の検出方法を提供する。
【0028】
本発明はまた、本明細書で提供される抗CD64抗体の配列に基づく「第二世代」の抗CD64抗体の作成方法も提供する。例えば、本発明は、
(a)(i)配列番号1、配列番号2および配列番号3それぞれのアミノ酸配列を含んでなるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるH鎖可変領域抗体配列;ならびに/若しくは(ii)配列番号4、配列番号5および配列番号6それぞれのアミノ酸配列を含んでなるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるL鎖可変領域抗体配列を提供すること;
(b)H鎖可変領域抗体配列および/若しくはL鎖可変領域抗体配列内の最低1アミノ酸残基を変えて最低1種の変えられた抗体配列を創製すること;ならびに
(c)変えられた抗体配列をタンパク質として発現させること
を含んでなる、抗CD64抗体の製造方法を提供する。
【0029】
本発明の他の特徴および利点は、制限するとして解釈されるべきでない以下の詳細な記述および実施例から明らかであろう。
【0030】
[発明の詳細な記述]
本発明は、IgGのヒト高親和性受容体CD64の治療能力を活用するための改良され
た抗体に基づく治療および組成物を提供する。本発明の治療は、単離されたヒトモノクローナル抗体および/若しくはCD64上に存在するエピトープに結合する抗体を含有する関連組成物を使用する。特定の一態様において、本発明の抗体は、CD32(FcγRII)およびCD16(FcγRIII)のような他のヒトFc受容体を同様に調節することなくCD64に選択的に結合しかつそれを調節する。例えば、本発明のヒト抗体は、CD32若しくはCD16に関しての同一の効果に本質的に関わることなく、(1)CD64架橋、(2)CD64発現の抑制的調節、(3)CD64媒介性の食作用の阻害、および(4)CD64媒介性のスーパーオキシド誘導の誘発に選択的に関わり得る。
【0031】
本発明の抗体および抗体誘導体(例えば複合物および二重特異性物)の治療的(例えば多様な疾患を処置かつ/若しくは予防するため)ならびに標的細胞若しくは病原体の食作用および/若しくは溶解を媒介するための使用方法もまた本発明により包含される。例えば、CD64をもつ免疫細胞および特異的標的細胞(すなわちその排除が宿主にとって有益であるとみられる細胞)双方に結合するそれらの能力に基づき、本の二重特異性および多重特異性分子を、自己免疫疾患および癌のようないくつかの疾患を処置するために使用し得る。
【0032】
本明細書に例示される別の態様において、ヒト抗体を、V−D−J組換えおよびアイソタイプスイッチを受けることによりCD64に対するヒトモノクローナル抗体の複数のアイソタイプを産生することが可能なヒト以外のトランスジェニック動物、例えばトランスジェニックマウス中で産生させる。従って、本発明の局面は、抗体、抗体フラグメント、二重特異性/多重特異性抗体およびそれらの製薬学的組成物のみならず、しかしまたモノクローナル抗体を産生するヒト以外のトランスジェニック動物、B細胞、トランスフェクトーマ(transfectoma)およびハイブリドーマも包含する。
【0033】
本発明がより容易に理解されうるために、ある種の用語を後に続くとおり定義することができる。付加的な定義は詳細な記述全体に示される。
【0034】
本明細書で使用されるところの「ヒトCD64」、「ヒト高親和性IgG受容体」および「ヒトFcγ受容体I」(FcγRI)という用語は互換性に使用され、そしてヒト染色体1q21.1に位置するFcγRIa遺伝子産物を包含することを意図している。FcγRI(CD64)は、単球、マクロファージおよび樹状細胞のような抗原提示細胞上で構成的に発現される。CD64は、それが(1)主に免疫エフェクター細胞上で発現され;(2)細胞傷害活性(例えばADCC、食作用)を媒介し;かつ(3)それらを標的とする抗原の高められた抗原提示を媒介するために、好ましいトリガー受容体である。にもかかわらず、ヒトCD64に結合する本発明のヒト抗体は、他のヒト以外の種(例えば他の哺乳動物および脊椎動物)からのCD64ならびに/若しくは関連する受容体にもまた結合しうる。
【0035】
本明細書で使用されるところの「エフェクター細胞」という用語は免疫応答の認識および活性化期と対照的に免疫応答のエフェクター期に関与する免疫細胞を指す。例示的免疫細胞は、骨髄若しくはリンパ球起源の細胞、例えばリンパ球(例えばB細胞および細胞傷害性T細胞(CTL)を包含するT細胞)、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、好酸球、好中球、多形核細胞、顆粒球、肥満細胞ならびに好塩基球を包含する。数種のエフェクター細胞は特殊なFc受容体を発現し、そして特殊な免疫機能を実行する。好ましい態様において、エフェクター細胞は抗体依存性の細胞媒介性の細胞傷害性(ADCC)を誘導することが可能である(例えばADCCを誘導することが可能な好中球)。例えば、FcRを発現する単球、マクロファージは、標的細胞の特異的死滅および免疫系の他の構成要素への抗原の提示、若しくは抗原を提示する細胞への結合に関与する。他の態様において、エフェクター細胞は標的抗原、標的細胞若しくは微生物を食作
用し得る。エフェクター細胞上での特定の1FcRの発現はサイトカインのような体液性因子により調節され得る。例えば、FcαRIの発現はG−CSF若しくはGM−CSFによりアップレギュレートされることが見出されている。この高められた発現は、標的に対するFcαRIをもつ細胞のエフェクター機能を増大させる。エフェクター細胞は標的抗原若しくは標的細胞を食作用若しくは溶解し得る。本発明の好ましいエフェクター細胞はCD64を発現するエフェクター細胞であり、単球、マクロファージおよび樹状細胞を包含する。
【0036】
「標的細胞」は、その排除が被験体(例えばヒト若しくは動物)において有益であるとみられ、また本発明の組成物(例えばヒトモノクローナル抗体、二重特異性若しくは多重特異性分子)により標的とされ得る、いかなる細胞若しくは病原体も指す。例えば、標的細胞はCD64を発現若しくは過剰発現する細胞であり得る。あるいは、標的細胞は、乳房、卵巣、前立腺、精巣、肺、結腸、直腸、膵、肝、中枢神経系、腎、頭部、頚部、骨、血液若しくはリンパ系の癌から選択される細胞のような腫瘍細胞であり得る。加えて、標的細胞は自己抗体を産生するリンパ球(自己免疫疾患の処置のため)およびIgEを産生するリンパ球(アレルギーの処置のため)を包含する。標的細胞は微生物(例えば細菌、若しくはウイルスに感染した細胞)を包含する。微生物は、病原体、ウイルス、細菌、真菌および原生動物を包含する。なお他の適する標的は、リウマチ因子ならびに他の自己抗体および毒素のような可溶性抗原を包含する。
【0037】
「抗原」という用語は、タンパク質、ペプチド若しくはハプテンのようないかなる天然若しくは合成の免疫原性物質も指す。「抗原」という用語は、複合体形成されない形態で非免疫原性であるがしかし複合体形成される場合に免疫原性となる物質もまた包含する。「複合体形成されない」という用語は、本発明の分子複合体を形成するように別の分子に連結されない物質を包含する。「複合体形成される」という用語は、別の分子(例えば本発明の抗CD64抗体)に連結されて本発明の分子複合体を形成する物質を包含する。
【0038】
本明細書で使用されるところの「増殖を阻害する」(例えば細胞を指して)という用語は、細胞の増殖のいかなる測定可能な減少、例えば最低約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%若しくは100%の細胞の増殖の阻害も包含することを意図している。
【0039】
本明細書で使用されるところの「結合を阻害する」および「結合をブロックする」(例えばCD64へのCD64リガンド、例えばIgGの結合の阻害/ブロックを指す)という用語は互換性に使用され、そして部分的および完全双方の阻害/ブロックを包含する。CD64に対するIgGの阻害/ブロックは、好ましくは、IgGが阻害若しくはブロックを伴わずにCD64に結合する場合に存在するエフェクター細胞の機能の正常のレベル若しくは型を低下させるか若しくは変える。阻害およびブロックは、抗CD64抗体と接触していないリガンドと比較して抗CD64抗体と接触させた場合のCD64へのIgGの結合親和性のいかなる測定可能な低下、例えば最低約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%若しくは100%のCD64に対するCD64リガンドのブロックも包含することもまた意図している。
【0040】
本明細書で称されるところの「抗体」という用語は、抗体全体およびそれらのいずれかの抗原結合フラグメント(すなわち「抗原結合部分」)若しくは一本鎖を包含する。「抗体」は、ジスルフィド結合により相互結合された最低2本のH鎖および2本のL鎖、若しくはその抗原結合部分を含んでなる糖タンパク質を指す。各H鎖はH鎖可変領域(本明細書でVHと略称される)およびH鎖定常領域から構成される。H鎖定常領域は3ドメイン、CH1、CH2およびCH3から構成される。各L鎖はL鎖可変領域(本明細書でVLと略称される)およびL鎖定常領域から構成される。L鎖定常領域は1ドメインCLから構成される。VHおよびVL領域は、枠組み領域(FR)と命名される、より保存されている領域が組み入れられた、相補性決定領域(CDR)と命名される超可変領域にさらに細分し得る。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端まで、以下の順序すなわちFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される3個のCD3および4個のFRから構成される。HおよびL鎖の可変領域は抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の多様な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第一の成分(C1q)を包含する、宿主組織若しくは因子への免疫グロブリンの結合を媒介しうる。
【0041】
本明細書で使用されるところの抗体の「抗原結合部分」(若しくは単に「抗体部分」)という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1個若しくはそれ以上のフラグメント(例えばCD64)を指す。抗体の抗原結合機能は完全長抗体のフラグメントにより実施され得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語内に包含される結合フラグメントの例は、(i)Fabフラグメント、すなわちVL、VH、CLおよびCH1ドメインよりなる一価フラグメント;(ii)F(ab’)フラグメント、すなわちヒンジ領域のジスルフィド架橋により連結された2個のFabフラグメントを含んでなる二価のフラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインよりなるFdフラグメント;(iv)抗体の一本鎖アームのVLおよびVHドメインよりなるFvフラグメント、(v)VHドメインよりなるdAbフラグメント(Wardら、(1989)Nature 341:544−546);ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)を包含する。さらに、Fvフラグメントの2ドメインVLおよびVHは別個の遺伝子によりコードされるとは言え、それらは、組換え法を使用して、VLおよびVH領域が対を形成して一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えばBirdら(1988)Science 242:423−426;およびHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883を参照されたい)としてそれらが作成されることを可能にする合成リンカーにより結合され得る。こうした一本鎖抗体は、抗体の「抗原結合部分」という用語内に包含されることもまた意図している。これらの抗体フラグメントは当業者に既知の慣習的技術を使用して得られ、そして該フラグメントは無傷の抗体がそうであると同じ様式で利用性についてスクリーニングされる。
【0042】
「エピトープ」という用語は、抗体への特異的結合若しくは抗体による特異的結合が可能な、タンパク質決定子のような分子決定子を意味している。エピトープは通常、アミノ酸若しくは糖側鎖のような分子の化学的に活性の表面基よりなり、そして、通常は特殊な三次元構造の特徴ならびに特定の電荷の特徴を有する。コンホメーションおよび非コンホメーションエピトープは、前者への結合が変性溶媒の存在下で喪失されるがしかし後者への結合はされないために区別される。
【0043】
「二重特異性分子」という用語は、2種の異なる結合特異性を有するいかなる剤、例えばタンパク質、ペプチド、またはタンパク質若しくはペプチド複合体も包含することを意図している。例えば、該分子は(a)細胞表面抗原および(b)エフェクター細胞の表面上のFc受容体、例えばCD64に結合若しくはそれらと相互作用しうる。「多重特異性分子」若しくは「異種特異性分子」という用語は、2種以上の異なる結合特異性を有するいかなる剤、例えばタンパク質、ペプチド、またはタンパク質若しくはペプチド複合体も包含することを意図している。例えば、該分子は(a)細胞表面抗原、(b)エフェクター細胞の表面上のFc受容体、および(c)最低1種の他の成分に結合若しくはそれらと相互作用しうる。従って、本発明は、限定されるものでないが、CD64のような細胞表面抗原およびエフェクター細胞上のFc受容体のような他の標的に向けられる、二重特異性、三特異性、四特異性および他の多重特異性分子を挙げることができる。
【0044】
「二重特異性抗体」という用語はまた二重特異性抗体(diabody)も包含する。二重特異性抗体は、VHおよびVLドメインが、しかし同一鎖上の2ドメイン間で対形成することを見込むのには短すぎるリンカーを使用して、単一のポリペプチド鎖上で発現されて、それにより該ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対形成させそして2個の抗原結合部位を創製させる、二価の二重特異性抗体である(例えば、Holliger,P.ら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6468;Poljak,R.J.ら(1994)Structure :1121−1123を参照されたい)。
【0045】
「ヒト抗体誘導体」という用語は、いずれかの改変された形態のヒト抗体、例えば抗体および別の剤若しくは抗体の複合物を指す。
【0046】
本明細書で使用されるところの「異種抗体」という用語は、それらの最低2種が異なる特異性を有する、一緒に連結された2種若しくはそれ以上の抗体、抗体結合フラグメント(例えばFab)、それらからの誘導体、若しくは抗原結合領域を指す。これらの異なる特異性は、エフェクター細胞上のFc受容体例えばCD64に対する結合特異性、および標的細胞例えば腫瘍細胞上の抗原若しくはエピトープに対する結合特異性を包含する。
【0047】
本明細書で使用されるところの「モノクローナル抗体」若しくは「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一分子組成物の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定の1エピトープに対する単一の結合特異性および親和性を表す。
【0048】
本明細書で使用されるところの「ヒト抗体」という用語は、枠組みおよびCDR双方の領域がヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来である可変領域を有する抗体を指すことを意図している。さらに、抗体が定常領域を含有する場合、該定常領域もまたヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来である。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えばin vitroでの無作為若しくは部位特異的突然変異誘発またはin vivoでの体細胞突然変異により導入される突然変異)を包含しうる。しかしながら、本明細書で使用されるところの「ヒト抗体」という用語は、マウスのような別の哺乳動物種の生殖系列由来のCDR配列がヒト枠組み配列に移植された抗体を包含することを意図していない。
【0049】
「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、枠組みおよびCDR双方の領域がヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来である可変領域を有する、単一結合特異性を表す抗体を指す。一態様において、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合されたヒトH鎖導入遺伝子およびL鎖導入遺伝子を含んでなるゲノムを有するトランスジェニックのヒト以外の動物、例えばトランスジェニックマウスから得られるB細胞を包含するハイブリドーマにより産生される。
【0050】
本明細書で使用されるところの「組換えヒト抗体」という用語は、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子に対しトランスジェニック若しくは導入染色体(transchromosomal)である動物(例えばマウス)またはそれから調製したハイブリドーマ(さらに下述する)から単離された抗体、(b)ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えばトランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換えのコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子の他のDNA配列へのスプライシングを必要とするいずれかの他の手段により製造、発現、創製若しくは単離された抗体、のような、組換え手段により製造、発現、創製若しくは単離される全部のヒト抗体を包含する。こうした組換えヒト抗体は、枠組みおよびCDR領域がヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来である可変領域を有する。ある態様においては、しかしながら、こうした組換えヒト抗体は、in vitro突然変異誘発(若しくは、
ヒトIg配列についてトランスジェニックの動物を使用する場合にはin vivo体細胞突然変異)にかけることができ、そして、従って、組換え抗体のVおよびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列のVおよびV配列由来かつそれらに関係しつつ、in
vivoでのヒト抗体生殖系列のレパートリー内に天然に存在しないことがある配列である。
【0051】
本明細書で使用されるところの「異種抗体」は、こうした抗体を産生するトランスジェニックのヒト以外の生物体に関して定義される。この用語は、トランスジェニックのヒト以外の動物よりならず、そして一般にはトランスジェニックのヒト以外の動物のもの以外の種からの生物体で見出されるものに対応するアミノ酸配列若しくはコードする核酸配列を有する抗体を指す。
【0052】
本明細書で使用されるところの「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことを意図している(例えば、CD64に特異的に結合する単離された抗体は、CD64以外の抗原を特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。ヒトCD64のエピトープ、アイソフォーム若しくはバリアントに特異的に結合する単離された抗体は、しかしながら、例えば他の種からの他の関連した抗原(例えばCD64種ホモログ)に対する交差反応性を有しうる。さらに、単離された抗体は他の細胞物質および/若しくは化学物質を実質的に含まないことができる。本発明の一態様において、異なる特異性を有する「単離された」モノクローナル抗体の組合せは、十分に定義された組成物中で組み合わせられる。
【0053】
本明細書で使用されるところの「特異的結合」は、予め決められた抗原に結合する抗体を指す。典型的には、抗体は10−7M若しくは未満の解離定数(K)で結合し、また、予め決められた抗原若しくは緊密に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えばBSA、カゼイン)への結合についてそのKより最低2倍より小さいKで、予め決められた抗原に結合する。「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」という句は、本明細書で「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と互換性に使用される。
【0054】
本明細書で使用されるところのIgG抗体に対する「高親和性」という用語は、10−8M若しくは未満、より好ましくは10−9M若しくは未満、およびなおより好ましくは10−10M若しくは未満のKを有する抗体を指す。しかしながら、「高親和性」結合は他の抗体アイソタイプに関して変動し得る。例えば、IgMアイソタイプに対する「高親和性」結合は、10−7M若しくは未満、より好ましくは10−8M若しくは未満のKDを有する抗体を指す。
【0055】
本明細書で使用されるところの「Kassoc」若しくは「K」という用語は、特定の1抗体−抗原相互作用の会合速度を指すことを意図している一方、本明細書で使用されるところの「Kdis」若しくは「K」という用語は、特定の1抗体−抗原相互作用の解離速度を指すことを意図している。本明細書で使用されるところの「K」という用語は、Kに対するKの比(すなわちK/K)から得られかつモル濃度(M)として表される解離定数を指すことを意図している。
【0056】
本明細書で使用されるところの「アイソタイプ」は、H鎖定常領域遺伝子によりコードされる抗体クラス(例えばIgM若しくはIgG1)を指す。
【0057】
本明細書で使用されるところの「アイソタイプスイッチ」は、抗体のクラス若しくはアイソタイプが1種のIgクラスから他のIgクラスの1種に変化する現象を指す。
【0058】
本明細書で使用されるところの「スイッチされない(nonswitched)アイソ
タイプ」は、アイソタイプスイッチが起こらない場合に産生されるH鎖のアイソタイプクラスを指し;スイッチされないアイソタイプをコードするCH遺伝子は、典型的には、機能的に再配列されたVDJ遺伝子からすぐ下流の最初のCH遺伝子である。アイソタイプスイッチは古典的若しくは非古典的アイソタイプスイッチとして分類されている。古典的アイソタイプスイッチは、導入遺伝子中の最低1個のスイッチ配列領域を伴う組換え事象により起こる。非古典的アイソタイプスイッチは、例えばヒトσμとヒトΣμの間の相同的組換え(δ関連の欠失)により起こりうる。とりわけ導入遺伝子間および/若しくは染色体間の組換えのような代替の非古典的スイッチ機構が存在することができかつアイソタイプスイッチを達成しうる。
【0059】
本明細書で使用されるところの「スイッチ配列」という用語は、スイッチ組換えを司るDNA配列を指す。「スイッチドナー」配列、典型的にはμスイッチ領域は、スイッチ組換えの間に欠失されるべき構築物領域の5’(すなわち上流)であることができる。「スイッチアクセプター」領域は、欠失されるべき構築物領域と置換定常領域(例えばγ、εなど)の間であることができる。組換えが常に起こる特異的部位が存在しないため、最終的な遺伝子配列は、典型的には、構築物から予測可能でないことができる。
【0060】
本明細書で使用されるところの「グリコシル化パターン」は、タンパク質、より具体的には免疫グロブリンタンパク質に共有結合される炭水化物単位のパターンと定義される。異種抗体のグリコシル化パターンは、異種抗体のグリコシル化パターンを、導入遺伝子のCH遺伝子が由来した種よりもヒト以外のトランスジェニック動物の種でのグリコシル化の前記パターンにより類似であるとして当業者が認識するとみられる場合に、ヒト以外のトランスジェニック動物の種により産生される抗体で天然に存在するグリコシル化パターンに実質的に類似であると特徴付け得る。
【0061】
対象に適用されるように本明細書で使用されるところの「天然に存在する」という用語は、対象が天然で見出され得るという事実を指す。例えば、天然に供給源から単離され得かつ実験室で人により意図的に改変されていない、生物体(ウイルスを包含する)中に存在するポリペプチド若しくはポリヌクレオチド配列は、天然に存在する。
【0062】
本明細書で使用されるところの「再配列された」という用語は、本質的に完全なVH若しくはVLドメインをコードする形態でそれぞれD−J若しくはJセグメントに直に隣接してVセグメントが配置されている、H鎖若しくはL鎖免疫グロブリン遺伝子座の配置を指す。再配列された免疫グロブリン遺伝子の遺伝子座は生殖系列DNAとの比較により同定し得;再配列された遺伝子座は最低1種の組換えられたヘプタマー/ノナマー相同エレメントを有することができる。
【0063】
Vセグメントに関して本明細書で使用されるところの「再配列されない」若しくは「生殖系列配置」という用語は、VセグメントがD若しくはJセグメントに直に隣接するように組換えられていない配置を指す。
【0064】
本明細書で使用されるところの「核酸分子」という用語は、DNA分子およびRNA分子を包含することを意図している。核酸分子は一本鎖でも若しくは二本鎖でありうるが、しかし好ましくは二本鎖DNAである。
【0065】
CD64に結合する抗体若しくは抗体部分(例えばVH、VL、CDR3)をコードする核酸に関して本明細書で使用されるところの「単離された核酸分子」という用語は、抗体若しくは抗体部分をコードするヌクレオチド配列がCD64以外の抗原を結合する抗体若しくは抗体部分をコードする他のヌクレオチド配列を含まない(この他の配列はヒトゲノムDNA中で該核酸に天然に隣接しうる)核酸分子を指すことを意図している。
【0066】
本明細書に開示かつ特許請求されるところの、配列番号1〜10に示される配列は、「保存的配列改変」、すなわちヌクレオチド配列によりコードされるか若しくはアミノ酸配列を含有する抗体の結合の特徴に有意に影響を及ぼさないか若しくはそれらを変えない、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列の改変を包含する。こうした保存的配列改変はヌクレオチドおよびアミノ酸の置換、付加および欠失を包含する。改変は、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介性突然変異誘発のような当該技術分野で既知の標準的技術により、配列番号1〜10に導入し得る。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられているものを包含する。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当該技術分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、電荷をもたない極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分枝状側鎖(例えばトレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)をもつアミノ酸を包含する。従って、ヒト抗CD64抗体中の予測される不可欠でないアミノ酸残基は、好ましくは同一の側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置換する。
【0067】
あるいは、別の態様において、突然変異は飽和突然変異誘発によるような、抗CD64抗体のコーディング配列の全部若しくは一部に沿って無作為に導入し得、そして、生じる改変された抗CD64抗体を結合活性についてスクリーニングし得る。
【0068】
従って、本明細書に開示される(HおよびL鎖可変領域)ヌクレオチド配列(すなわち配列番号9および10)によりコードされかつ/若しくは本明細書に開示される(HおよびL鎖可変領域)アミノ酸配列(すなわち配列番号7および8)を含有する抗体は、保存的に改変された類似の配列によりコードされるか若しくはそれらを含有する実質的に類似の抗体を包含する。配列番号1〜10として本明細書に開示される配列(すなわちHおよびL鎖可変領域若しくはそれらのCDR)に基づきこうした実質的に類似の抗体をどのように生成し得るかに関するさらなる論考が下に提供される。
【0069】
核酸について、「実質的相同性」という用語は、2種の核酸若しくはそれらの指定された部分が最適に整列かつ比較される場合に、ヌクレオチドの最低約80%、通常最低約90%ないし95%、およびより好ましくはヌクレオチドの最低約98%ないし99.5%で、適切なヌクレオチドの挿入若しくは欠失を伴い同一であることを示す。あるいは、実質的相同性は、セグメントが選択的ハイブリダイゼーション条件下で該鎖の相補物にハイブリダイズすることができる場合に存在する。
【0070】
2配列間の同一性パーセントは、該2配列の最適なアライメントのための導入されることが必要であるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れた、該配列により共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、相同性%=同一の位置の数/位置の総数×100)。配列の比較、および2配列間の同一性パーセントの決定は、下の制限しない例に記述されるところの数学的アルゴリズムを使用して達成し得る。
【0071】
2種のヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、NWSgapdna.CMPマトリックスならびに40、50、60、70若しくは80のギャップ重み(gap weight)および1、2、3、4、5若しくは6の長さ重み(length weight)を使用して、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラム(www.gcg.comで入手可能)を使用して決定し得る。2種のヌクレオチド若しくはアミノ酸配列間の同一性パーセントは、PAM120重み残基テーブル(weight residue table)、12のギャップ長ペナルティ(gap lenght penalty)および4のギャップペナルティ(gap penalty)を使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれたE.MeyersとW.Millerのアルゴリズム(Comput.Appl.Biosci.:11−17(1988))を使用してもまた決定し得る。加えて、2種のアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Blossum 62マトリックス若しくはPAM250マトリックスのいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6若しくは4のギャップ重みおよび1、2、3、4、5若しくは6の長さ重みを使用して、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれたNeedlemanとWunsch(J.Mol.Biol.48:444−453(1970))のアルゴリズム(www.gcg.comで入手可能)を使用して決定し得る。
【0072】
本発明の核酸およびタンパク質配列は、例えば関係する配列を同定するための公的データベースに対する検索を実施するための「クエリ配列」としてさらに使用し得る。こうした検索は、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403−10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施し得る。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、スコア=100、語長(wordlength)=12で実施して、本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム、スコア=50、語長=3で実施して、本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較の目的上ギャップをつけたアライメントを得るために、Gapped BLASTをAltschulら、(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389−3402に記述されるとおり利用し得る。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトのパラメータを使用し得る。www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0073】
核酸は、全細胞中、細胞ライセート中に、または部分的に精製された若しくは実質的に純粋な形態で存在しうる。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動、および当該技術分野で公知の他者を包含する標準的技術により、他の細胞成分若しくは他の汚染物質、例えば他の細胞性核酸若しくはタンパク質から精製された場合に「単離されて」若しくは「実質的に純粋にされて」いる。F.Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing and Wiley Interscience、ニューヨーク(1987)を参照されたい。
【0074】
cDNA、ゲノム若しくは混合物のいずれかからの本発明の核酸組成物は、しばしば天然の配列(改変された制限部位などを除く)にある一方で、遺伝子配列を提供するための標準的技術によりその変異されうる。コーディング配列については、これらの突然変異は所望のとおりアミノ酸配列に影響を及ぼしうる。とりわけ、天然のV、D、J、定常、スイッチ、および本明細書に記述される他のこうした配列に実質的に相同な若しくはそれら由来のDNA配列を企図している(「由来の」は、ある配列が別の配列に同一若しくはそれから改変されていることを示す)。
【0075】
核酸は、それが別の核酸配列と機能的関係におかれる場合に「作動可能に連結」される。例えば、プロモーター若しくはエンハンサーは、コーディング配列の転写にそれが影響を及ぼす場合に、該配列に作動可能に連結されている。転写制御配列に関して、作動可能に連結されるは、連結されているDNA配列が連続的であり、かつ、2種のタンパク質コーディング領域を結合することが必要な場合は連続的かつ同じ読み枠であることを意味している。スイッチ配列については、作動可能に連結されるは、該配列がスイッチ組換えを遂げることが可能であることを示す。
【0076】
本明細書で使用されるところの「ベクター」という用語は、それが連結された別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指すことを意図している。1つの型のベクターは「プラスミド」であり、付加的DNAセグメントを連結しうる環状二本鎖DNAループを指す。別の型のベクターはウイルスベクターであり、付加的DNAセグメントをウイルスゲノムに連結しうる。あるベクターはそれらが導入される宿主細胞中での自律複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入に際して宿主細胞のゲノム中に組込み得、そしてそれにより宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、あるベクターは、それらが効果的に連結されている遺伝子の発現を指図することが可能である。こうしたベクターは本明細書で「組換え発現ベクター」(若しくは単に「発現ベクター」)と称される。一般に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターはしばしばプラスミドの形態である。プラスミドが最も一般的に使用される形態のベクターであるため、本明細で「プラスミド」および「ベクター」は互換性に使用しうる。しかしながら、本発明は、同等な機能を供するウイルスベクター(例えば複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)のようなこうした他の形態の発現ベクターを包含することを意図している。
【0077】
本明細書で使用されるところの「組換え宿主細胞」(若しくは単に「宿主細胞」)という用語は、組換え発現ベクターが導入された細胞を指すことを意図している。こうした用語は特定の被験体細胞のみならずしかしこうした細胞の子孫を指すことを意図していることが理解されるべきである。突然変異若しくは環境の影響のいずれにもより後に続く世代である種の改変が起こりうるため、こうした子孫は実際には親細胞に同一でないことがあるが、しかしなお、本明細書で使用されるところの「宿主細胞」という用語の範囲内に包含される。組換え宿主細胞は、例えば、CHO細胞、トランスフェクトーマおよびリンパ球細胞を包含する。
【0078】
本明細書で使用されるところの「被験体」という用語はいかなるヒト若しくはヒト以外の動物も包含する。「ヒト以外の動物」という用語は、全部の脊椎動物、例えば、ヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などのような哺乳動物および哺乳動物以外を包含する。
【0079】
「トランスジェニックのヒト以外の動物」という用語は、1種若しくはそれ以上のヒトHおよび/若しくはL鎖の導入遺伝子若しくは導入染色体(動物の天然のゲノムDNA中に組込まれるか若しくは組込まれないかのいずれも)を含んでなるゲノムを有しかつ完全なヒト抗体を発現することが可能であるヒト以外の動物を指す。例えば、トランスジェニックマウスは、ヒトL鎖導入遺伝子およびヒトH鎖導入遺伝子若しくはヒトH鎖導入染色体のいずれかを有し得、その結果、該マウスはCD64抗原および/若しくはCD64を発現する細胞で免疫した場合にヒト抗CD64抗体を産生する。ヒトH鎖導入遺伝子は、トランスジェニックの、例えばHuMAbマウスの場合のようにマウスの染色体DNAに組込まれ得るか、若しくは、ヒトH鎖導入遺伝子は、第WO 02/43478号明細書に記述されるところの導入染色体(例えばKM)マウスの場合のように染色体外で維持され得る。こうしたトランスジェニックおよび導入染色体マウスは、V−D−J組換えおよびアイソタイプスイッチを受けることにより、CD64に対するヒトモノクローナル抗体の複数のアイソタイプ(例えばIgG、IgAおよび/若しくはIgE)を産生することが可能である。
【0080】
本発明の多様な局面は以下の下位節にさらに詳細に記述する。
【0081】
抗CD64抗体
本発明の抗体は、抗体の特定の機能の特徴若しくは特性を特徴とする。例えば、該抗体はヒトCD64に特異的に結合する。好ましくは、本発明の抗体は、高親和性、例えば10−8M若しくは未満、または10−9M若しくは未満、またはなお10−10M若しくは未満のKでCD64に結合する。加えて、本発明の抗体は以下の特徴の1種若しくはそれ以上を特徴としうる。すなわち、該抗体はCD64の表面発現を抑制的調節するか、該抗体はCD64媒介性の食作用を阻害するか、または該抗体はCD64のその天然のリガンド(IgG)への結合を阻害しないか、若しくはIgGのCD64への結合を阻害しない。
【0082】
例えばELISA、ウエスタンブロットおよびRIAを包含するCD64への抗体の結合能力を評価するための標準的アッセイが当該技術分野で既知である。適するアッセイは実施例に詳細に記述する。抗体の結合キネティクス(例えば結合親和性)もまた、Biacore分析のような当該技術分野で既知の標準的アッセイにより評価し得る。
【0083】
モノクローナル抗体611
本発明の好ましい抗体は、実施例1および2に記述されるとおり単離かつ構造的に特徴付けられたヒトモノクローナル抗体611を包含する。611のVのアミノ酸配列を配列番号7に示す。611のVのアミノ酸配列を配列番号8に示す。
【0084】
従って、一局面において、本発明は:
(a)配列番号7のアミノ酸配列を含んでなるH鎖可変領域;および
(b)配列番号8のアミノ酸配列を含んでなるL鎖可変領域
を含んでなる、単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分を提供し;
該抗体はヒトCD64を特異的に結合する。
【0085】
別の局面において、本発明は、611のH鎖およびL鎖のCDR1、CDR2およびCDR3若しくはそれらの組合せを含んでなる抗体を提供する。VのCDR1、2および3領域のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号1、2および3に示す。VのCDR1、2および3領域のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号4、5および6に示す。CDR領域はKabatの系(Kabat,E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、米国保健・福祉省(U.S.Department of Health and Human Services)、NIH刊行物第91−3242号)を使用して描写する。
【0086】
従って、別の局面において、本発明は:
(a)配列番号1、2および3のアミノ酸配列をそれぞれ含んでなるCDR1、CDR2およびCDR3を含んでなるH鎖可変領域;
(b)配列番号4、5および6のアミノ酸配列をそれぞれ含んでなるCDR1、CDR2およびCDR3を含んでなるL鎖可変領域
を含んでなる、単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分を提供し;
該抗体はヒトCD64を特異的に結合する。
【0087】
611と同一のエピトープに結合する抗体
別の態様において、本発明は、ヒトCD64上のモノクローナル抗体611と同一のエピトープに結合する(配列番号7および8に示されるところのVおよびV配列を有する)抗体を提供する。こうした抗体は、標準的CD64結合アッセイにおいて611と交差競合するそれらの能力に基づき同定し得る。ヒトCD64への611の結合を阻害する試験抗体の能力は、該試験抗体がヒトCD64への結合について611と競合し得かつ従ってヒトCD64上の611と同一のエピトープに結合することを示す。好ましい一態様において、ヒトCD64上の611と同一のエピトープに結合する抗体はヒトモノクローナル抗体である。こうしたヒトモノクローナル抗体は実施例に記述されるとおり製造かつ単離し得る。
【0088】
特定の生殖系列配列を有する抗体
ある態様において、本発明の抗体は、特定の1生殖系列のH鎖免疫グロブリン遺伝子からのH鎖可変領域および/若しくは特定の1生殖系列のL鎖免疫グロブリン遺伝子からのL鎖可変領域を含んでなる。
【0089】
例えば、好ましい一態様において、本発明は、ヒトV 3−33遺伝子の産物若しくはそれ由来であるH鎖可変領域を含んでなる単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分を提供し、該抗体はヒトCD64に特異的に結合する。別の好ましい態様において、本発明は、ヒトV L6遺伝子の産物若しくはそれ由来であるL鎖可変領域を含んでなる単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分を提供し、該抗体はヒトCD64に特異的に結合する。
【0090】
なお別の好ましい態様において、本発明は、抗体が:
(a)ヒトV 3−33遺伝子(配列番号11に示されるアミノ酸配列をコードする)の産物若しくはそれ由来であるH鎖可変領域を含んでなり;
(b)ヒトV L6遺伝子(配列番号12に示されるアミノ酸配列をコードする)の産物若しくはそれ由来であるL鎖可変領域を含んでなり;かつ
(c)ヒトCD64に特異的に結合する、
単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分を提供する。
【0091】
VH 3−33およびVk L6のそれぞれVおよびVを有する抗体の一例は611抗体である。
【0092】
本明細書で使用されるところのヒト抗体は、該抗体の可変領域がヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られる場合に特定の1生殖系列配列「の産物」若しくは「由来」であるH若しくはL鎖可変領域を含んでなる。こうした系は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を運搬するトランスジェニックマウスを目的の抗原で免疫すること、若しくはファージ上に表示されるヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーを目的の抗原でスクリーニングすることを包含する。ヒト生殖系列免疫グロブリン配列「の産物」若しくは「由来」であるヒト抗体は、ヒト抗体のアミノ酸配列をヒト生殖系列免疫グロブリンのアミノ酸配列と(例えばVbaseデータベースを使用して)比較すること、およびヒト抗体の配列に配列が最も近い(すなわち最大の同一性%)ヒト生殖系列免疫グロブリン配列を選択することにより、そうしたものと同定し得る。特定の1ヒト生殖系列免疫グロブリン配列「の産物」若しくは「由来」であるヒト抗体は、例えば自然に起こる体細胞突然変異若しくは部位特異的突然変異の意図的な導入により、生殖系列配列に比較してアミノ酸の差違を含有しうる。しかしながら、選択されたヒト抗体は、典型的には、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列にアミノ酸配列が最低90%同一であり、そして他の種の生殖系列免疫グロブリンアミノ酸配列(例えばネズミの生殖系列配列)に比較した場合に該ヒト抗体をヒトであると同定するアミノ酸残基を含有する。ある場合には、ヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列にアミノ酸配列が最低95%、またはなお最低96%、97%、98%若しくは99%同一でありうる。典型的には、特定の1ヒト生殖系列配列由来のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列から10を超えないアミノ酸の差違を表すことができる。ある場合には、ヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列から5を超えない、またはなお4、3、2若しくは1を超えないアミノ酸の差違を表しうる。
【0093】
相同な抗体
なお別の態様において、本発明の抗体は、本明細書に記述される好ましい抗体のアミノ酸配列に相同であるアミノ酸配列を含んでなるHおよびL鎖可変領域を含んでなり、また、該抗体は本発明の抗CD64抗体の所望の機能特性を保持する。
【0094】
例えば、本発明は、H鎖可変領域およびL鎖可変領域を含んでなる、単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分を提供し:
(a)H鎖可変領域は配列番号7のアミノ酸配列に最低80%相同であるアミノ酸配列を含んでなり;
(b)L鎖可変領域は配列番号8のアミノ酸配列に最低80%相同であるアミノ酸配列を含んでなり;かつ
(c)該抗体はヒトCD64に特異的に結合する。
【0095】
一態様において、こうした抗体は、以下の特性:
(i)該ヒト抗体がCD64の表面発現を抑制的調節するか;
(ii)該ヒト抗体がCD64のその天然のリガンド(IgG)への結合を阻害しない(か、若しくは天然のリガンドIgGのCD64への結合を阻害しない)か;
(iii)該ヒト抗体がCD64媒介性の食作用を阻害するか;または
(iv)該ヒト抗体がヒトエフェクター細胞の存在下での標的細胞の食作用を媒介する
の1種若しくはそれ以上を表し得る。
【0096】
多様な態様において、該抗体は例えばヒト抗体、ヒト化抗体若しくはキメラ抗体であり得る。
【0097】
他の態様において、Vおよび/若しくはVアミノ酸配列は、上に示される配列に85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%相同でありうる。上に示される配列のVおよびV領域に対する高い(すなわち80%若しくはそれ以上)相同性を有するVおよびV領域を有する抗体は、配列番号7若しくは8をコードする核酸分子の突然変異誘発(例えば部位特異的若しくはPCR媒介性突然変異誘発)、次いで本明細書に記述される機能アッセイを使用して保持される機能(すなわち上の(c)および(d)に示される機能)についてのコードされる変えられた抗体の試験により、得ることができる。
【0098】
本明細書で使用されるところの2種のアミノ酸配列間の相同性パーセントは、該2配列間の同一性パーセントに同等である。2配列間の同一性パーセントは、該2配列の最適のアライメントのため導入されることが必要であるギャップの数およびギャップの長さを考慮に入れた、該配列により共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、相同性%=同一位置の数/位置の総数×100)。配列の比較および2配列間の同一性パーセントの決定は、下の制限しない例に記述されるところの数学的アルゴリズムを使用して達成し得る。
【0099】
2種のアミノ酸配列間の同一性パーセントは、PAM120重み残基テーブル、12のギャップ長ペナルティおよび4のギャップペナルティを使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれた、E.MeyersとW.Millerのアルゴリズム(Comput.Appl.Biosci.:11−17(1988))を使用して決定し得る。加えて、2種のアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Blossum
62マトリックス若しくはPAM250マトリックスのいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6若しくは4のギャップ重みおよび1、2、3、4、5若しくは6の長さ重みを使用して、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラム(www.gcg.comで入手可能)に組み込まれたNeedlemanとWunsch(J.Mol.Biol.48:444−453(1970))のアルゴリズムを使用して決定し得る。
【0100】
加えて、若しくは、あるいは、本発明のタンパク質配列は、例えば関係する配列を同定するために公的データベースに対する検索を実施するための「クエリ配列」としてさらに使用し得る。こうした検索は、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403−10のXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施し得る。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム、スコア=50、語長=3で実施して、本発明の抗体分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較の目的上ギャップをつけたアライメントを得るために、Gapped BLASTをAltschulら、(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389−3402に記述されるとおり利用し得る。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトのパラメータを使用し得る。www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0101】
保存的改変を伴う抗体
ある態様において、本発明の抗体は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるH鎖可変領域、ならびにCDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるL鎖可変領域を含んでなり、これらのCDR配列の1種若しくはそれ以上は、本明細書に記述される好ましい抗体(例えば611)若しくはそれらの保存的改変に基づく指定されたアミノ酸配列を含んでなり、また、該抗体は本発明の抗CD64抗体の所望の機能特性を保持している。従って、本発明は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるH鎖可変領域、ならびにCDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるL鎖可変領域を含んでなる、単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分を提供し、
(a)H鎖可変領域のCDR3配列は配列番号3のアミノ酸配列若しくはその保存的改変を含んでなり;
(b)L鎖可変領域のCDR3配列は配列番号6のアミノ酸配列若しくはその保存的改変を含んでなり;かつ
(c)該抗体はヒトCD64に特異的に結合する。
【0102】
一態様において、こうした抗体は、以下の特性:
(i)該ヒト抗体がCD64の表面発現を抑制的調節するか;
(ii)該ヒト抗体がCD64のその天然のリガンド(IgG)への結合を阻害しない(か、若しくは天然のリガンドIgGのCD64への結合を阻害しない)か;
(iii)該ヒト抗体がCD64媒介性の食作用を阻害するか;または
(iv)該ヒト抗体がヒトエフェクター細胞の存在下での標的細胞の食作用を媒介する
の1種若しくはそれ以上を表し得る。
【0103】
好ましい一態様において、H鎖可変領域のCDR2配列は配列番号2のアミノ酸配列若しくはその保存的改変を含んでなり;また、L鎖可変領域のCDR2配列は配列番号5のアミノ酸配列若しくはその保存的改変を含んでなる。別の好ましい態様において、H鎖可変領域のCDR1配列は配列番号1のアミノ酸配列若しくはその保存的改変を含んでなり;また、L鎖可変領域のCDR1配列は配列番号4のアミノ酸配列若しくはその保存的改変を含んでなる。
【0104】
多様な態様において、抗体は例えばヒト抗体、ヒト化抗体若しくはキメラ抗体であり得る。
【0105】
本明細書で使用されるところの「保存的配列改変」という用語は、該アミノ酸配列を含有する抗体の結合の特徴に有意に影響を及ぼさないか若しくはそれらを変えないアミノ酸改変を指すことを意図している。こうした保存的改変はアミノ酸の置換、付加および欠失を包含する。改変は、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介性の突然変異誘発のような当該技術分野で既知の標準的技術により本発明の抗体に導入し得る。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられているものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当該技術分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、荷電していない極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分枝状側鎖(例えばトレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)をもつアミノ酸を包含する。従って、本発明の抗体のCDR領域内の1個若しくはそれ以上のアミノ酸残基を同一の側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置換し得、そして、変えられた抗体は、本明細書に記述される機能アッセイを使用して、保持された機能(すなわち上の(c)から(j)に示される機能)について試験し得る。
【0106】
本発明の抗CD64抗体と同一のエピトープに結合する抗体
別の態様において、本発明は、本明細書に記述される611抗体と同一のエピトープに結合する他のヒト抗体のような、本明細書で提供される本発明の多様な抗CD64抗体が結合すると同一のエピトープに結合する抗体を提供する。こうした付加的な抗体は、標準的CD64結合アッセイにおいて、611のような本発明の他の抗体と交差競合する(例えば、統計学的に意義のある様式でその結合を競合的に阻害する)それらの能力に基づき同定し得る。例えば611のヒトCD64への結合を阻害する試験抗体の能力は、該試験抗体がヒトCD64への結合についてその抗体と競合し得ることを示し;こうした抗体は、制限しない論理に従えば、ヒトCD64上のそれが競合する抗体と同一の若しくは関係する(例えば構造的に類似若しくは空間的に近接の)エピトープに結合しうる。好ましい一態様において、ヒトCD64上の611と同一のエピトープに結合する抗体はヒトモノクローナル抗体である。こうしたヒトモノクローナル抗体は実施例に記述されるとおり製造かつ単離し得る。
【0107】
工作および改変された抗体
本発明の抗体は、改変された抗体を工作するための出発原料として、本明細書に開示されるVおよび/若しくはV配列の1種若しくはそれ以上を有する抗体を使用してさらに製造し得、この改変された抗体は出発抗体から変えられた特性を有しうる。抗体は、一方若しくは双方の可変領域(すなわちVおよび/若しくはV)内、例えば1個若しくはそれ以上のCDR領域内および/または1個若しくはそれ以上の枠組み領域内の1個若しくはそれ以上の残基を改変することにより工作し得る。付加的に、若しくは、あるいは、抗体は、例えば抗体のエフェクター機能(1種若しくは複数)を変えるために、定常領域(1個若しくは複数)内の残基を改変することにより工作し得る。
【0108】
実施し得る1つの型の可変領域の工作はCDRグラフトである。抗体は、主として、6個のHおよびL鎖の相補性決定領域(CDR)中に配置されているアミノ酸残基により、標的抗原と相互作用する。この理由から、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外側の配列よりも個々の抗体間でより多彩である。CDR配列は大部分の抗体−抗原相互作用の原因であるため、異なる特性をもつ異なる抗体からの枠組み配列にグラフトした特異的な天然に存在する抗体からのCDR配列を包含する発現ベクターを構築することにより、特異的な天然に存在する抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現することが可能である(例えば、Riechmann,L.ら(1998)Nature 332:323−327;
Jones,P.ら(1986)Nature 321:522−525;Queen,C.ら(1989)Proc.Natl.Acad.See.U.S.A.86:10029−10033;Winterへの米国特許第5,225,539号、ならびにQueenらへの米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号および同第6,180,370号明細書を参照されたい)。
【0109】
従って、本発明の別の態様は、それぞれ配列番号1、2および3のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるH鎖可変領域、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列を含んでなるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるL鎖可変領域を含んでなる、単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分に関する。従って、こうした抗体は、モノクローナル抗体611のVおよびVのCDR配列を含有するが、それでもなおこれらの抗体からの多様な枠組み配列を含有しうる。
【0110】
こうした枠組み配列は、生殖系列抗体遺伝子配列を包含する公的なDNAデータベース若しくは公表された参考文献から得ることができる。例えば、ヒトHおよびL鎖可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖系列配列データベース(www.mrc−cpe.cam.ac.uk/vbaseでインターネット上で入手可能)、ならびにKabat,E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、米国保健・福祉省(U.S.Department of Health and Human Services)、NIH刊行物第91−3242号;Tomlinson,I.M.ら(1992)“The Repartoire of Human Germline V Sequences Reveals about Fifty Groups of V Segments with Different Hypervariable Loops”J.Mol.Biol.227:776−798;およびCox,J.P.L.ら(1994)“A Directory of Human Germ−line V Segments Reveals a Strong Bias in their Usage”Eur.J.Immunol.24:827−836;それらのそれぞれの内容は引用することにより明らかに本明細書に組み込まれる)に見出し得る。
【0111】
本発明の抗体での使用に好ましい枠組み配列は、本発明の選択された抗体により使用される枠組み配列に構造的に類似、例えば、本発明の好ましいモノクローナル抗体により使用されるV 3−33配列(配列番号11のアミノ酸配列をコードする)および/若しくはV L6枠組み配列(配列番号12のアミノ酸配列をコードする)に類似であるものである。VのCDR1、2および3配列、ならびにV のCDR1、2および3配列は、枠組み配列が由来する生殖系列免疫グロブリン遺伝子中で見出されるものに同一の配列を有する枠組み領域にグラフトし得るか、または、CDR配列は、生殖系列配列に比較して1個若しくはそれ以上の突然変異を含有する枠組み領域にグラフトし得る。例えば、ある場合には、抗体の抗原結合能力を維持する若しくは高めるように枠組み領域内の残基を変異させることが有益であることが見出された(例えば、Queenらへの米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号および同第6,180,370号明細書を参照されたい)。
【0112】
別の型の可変領域改変は、Vおよび/若しくはVのCDR1、CDR2および/若しくはCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させてそれにより目的の抗体の1種若しくはそれ以上の結合特性(例えば親和性)を向上させることである。部位特異的突然変異誘発若しくはPCR媒介性の突然変異誘発を実施して、突然変異(1個若しくは複数)および抗体結合に対する影響を導入し得るか、または、目的の他の機能特性を、本明細書に記述されかつ実施例に提供されるところのin vitro若しくはin vivoアッセイ
で評価し得る。好ましくは(上で論考されたところの)保存的改変を導入する。突然変異はアミノ酸の置換、付加若しくは欠失でありうるが、しかし好ましくは置換である。さらに、典型的には、CDR領域内の1、2、3、4若しくは5を超えない残基が変えられる。
【0113】
従って、別の態様において、本発明は:(a)それぞれ配列番号1、2および3のアミノ酸配列、または配列番号1、2および3と比較して1、2、3、4若しくは5個のアミノ酸置換、欠失若しくは付加を有するアミノ酸配列を含んでなるVのCDR1、CDR2およびCDR3領域;(b)それぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列、または配列番号4、5および6と比較して1、2、3、4若しくは5個のアミノ酸置換、欠失若しくは付加を有するアミノ酸配列を含んでなるVのCDR1、CDR2およびCDR3領域を含んでなるH鎖可変領域を含んでなる、単離された抗CD64モノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分を提供する。
【0114】
本発明の工作された抗体は、例えば抗体の特性を改良するためにVおよび/若しくはV内の枠組み残基に対する改変がなされたものを包含する。典型的には、こうした枠組み改変は抗体の免疫原性を低下させるように行われる。例えば、1アプローチは、1個若しくはそれ以上の枠組み残基を対応する生殖系列配列に「戻し変異させる(backmutate)」ことである。より具体的には、体細胞突然変異を受けた抗体は、該抗体が由来する生殖系列配列と異なる枠組み残基を含有しうる。こうした残基は、抗体の枠組み配列を該抗体が由来する生殖系列配列と比較することにより同定し得る。例えば、611について、Vのアミノ酸残基#28(FR1内)はイソロイシンである一方、対応するV 3−33生殖系列配列中のこの残基はトレオニンである。別の例として、611について、Vのアミノ酸残基#49(FR2内)はトレオニンである一方、対応するV 3−33生殖系列配列中のこの残基はアラニンである。枠組み領域配列をそれらの生殖系列の配置に戻すために、体細胞突然変異を、例えば、部位特異的突然変異誘発若しくはPCR媒介性の突然変異誘発により、生殖系列配列に「戻し変異させ」得る(例えば、611のVのFR1内の残基28をイソロイシンからトレオニンに「戻し変異させ」得るか、若しくは、611のVのFR2内の残基49をトレオニンからアラニンに「戻し変異させ」得る)。こうした「戻し変異」抗体もまた、本発明により包含されることを意図している。
【0115】
別の型の枠組み改変は、枠組み領域、またはなお1個若しくはそれ以上のCDR領域内の1個若しくはそれ以上の残基を変異させてT細胞エピトープを除去してそれにより抗体の潜在的免疫原性を低下させることを必要とする。このアプローチは「脱免疫化(deimmunization)」ともまた称され、そしてCarrらによる米国特許公開第20030153043号明細書にさらに詳細に記述されている。
【0116】
枠組み若しくはCDR領域内でなされる改変に加え、若しくはそれに代わり、本発明の抗体は、典型的には、血清半減期、補体固定、Fc受容体結合および/若しくは抗原依存性の細胞の細胞傷害性のような抗体の1種若しくはそれ以上の機能特性を変えるために、Fc領域内の改変を包含するように工作しうる。さらに、本発明の抗体は、再度、該抗体の1種若しくはそれ以上の機能特性を変えるために、化学的に改変しうる(例えば1個若しくはそれ以上の化学的部分を該抗体に結合し得る)か、またはそのグリコシル化を変えるように改変しうる。これらの態様のそれぞれは下にさらに詳細に記述されている。Fc領域中の残基の番号付けはKabatのEUインデックスのものである。
【0117】
一態様において、CH1のヒンジ領域中のシステイン残基の数を変える、例えば増大若しくは減少させるようなCH1のヒンジ領域が改変される。このアプローチはBodmerらによる米国特許第5,677,425号明細書にさらに記述されている。CH1のヒ
ンジ領域中のシステイン残基の数は、例えばLおよびH鎖の集成を容易にするように、または抗体の安定性を増大若しくは低下させるように変えられる。
【0118】
別の態様において、抗体のFcヒンジ領域は抗体の生物学的半減期を低下させるように変異させる。より具体的には、抗体が天然のFc−ヒンジドメインのブドウ球菌プロテインA(SpA)結合に関して損なわれたSpA結合を有するような、1個若しくはそれ以上のアミノ酸突然変異をFc−ヒンジフラグメントのCH2−CH3ドメインの界面領域に導入する。このアプローチはWardらによる米国特許第6,165,745号明細書にさらに詳細に記述されている。
【0119】
別の態様において、抗体はその生物学的半減期を増大させるように改変される。多様なアプローチが可能である。例えば、以下の突然変異、すなわち、Wardへの米国特許第6,277,375号明細書に記述されるところのT252L、T254S、T256Fの1個若しくはそれ以上を導入し得る。あるいは、生物学的半減期を増大させるため、Prestaらによる米国特許第5,869,046号および同第6,121,022号明細書に記述されるとおり、IgGのFc領域のCH2ドメインの2個のループから採用されたサルベージ受容体(salvage receptor)結合エピトープを含有するように、CH1若しくはCL領域内で抗体を変えることができる。
【0120】
なお他の態様において、Fc領域は、最低1個のアミノ酸残基を、該抗体のエフェクター機能(1種若しくは複数)を変えるように異なるアミノ酸残基で置換することにより変えられる。例えば、アミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320および322から選択される1個若しくはそれ以上のアミノ酸を、該抗体がエフェクターリガンドに対する変えられた親和性を有するがしかし親抗体の抗原結合能力を保持するような異なるアミノ酸残基で置換し得る。それに対する親和性が変えられるエフェクターリガンドは、例えばFc受容体若しくは補体のC1成分であり得る。このアプローチは、双方ともWinterらによる米国特許第5,624,821号および同第5,648,260号明細書にさらに詳細に記述されている。
【0121】
別の例において、アミノ酸残基329、331および322から選択される1個若しくはそれ以上のアミノ酸を、該抗体が変えられたC1q結合および/または低下若しくは廃止された補体依存性の細胞傷害性(CDC)を有するような異なるアミノ酸残基で置換し得る。このアプローチは、Idusogieらによる米国特許第6,194,551号明細書にさらに詳細に記述されている。
【0122】
別の例において、アミノ酸位置231および239内の1個若しくはそれ以上のアミノ酸残基を変えて、それにより補体を固定する抗体の能力を変える。このアプローチは、BodmerらによるPCT公開第WO 94/29351号明細書にさらに詳細に記述されている。
【0123】
なお別の例において、Fc領域が、抗体依存性の細胞の細胞傷害性(ADCC)を媒介する該抗体の能力を増大させかつ/若しくはFcγ受容体に対する該抗体の親和性を増大させるように、以下の位置すなわち238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438若しくは439の1個若しくはそれ以上のアミノ酸を改変することにより、改変される。こ
のアプローチはPrestaによるPCT公開第WO 00/42072号明細書にさらに記述されている。さらに、FcγR1、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnに対するヒトIgG上の結合部位がマッピングされており、また、改良された結合を伴うバリアントが記述されている(Shields,R.L.ら(2001)J.Biol.Chem.276:6591−6604を参照されたい)。位置256、290、298、333、334および339の特定の突然変異がFcγRIIIへの結合を改善することが示された。加えて、以下の組合せ突然変異すなわちT256A/S298A、S298A/E333A、S298A/K224AおよびS298A/E333A/K334Aが、FcγRIII結合を向上させることが示された。
【0124】
なお別の態様においては、抗体のグリコシル化が改変される。例えば、アグリコシル化(aglycoslated)抗体を作成し得る(すなわち抗体はグリコシル化を欠く)。グリコシル化は、例えば抗原に対する抗体の親和性を増大させるように変えることができる。こうした炭水化物の改変は、例えば抗体配列内のグリコシル化部位の1個若しくはそれ以上を変えることにより達成し得る。例えば、1個若しくはそれ以上の可変領域枠組みのグリコシル化部位の排除をもたらしてそれによりその部位でのグリコシル化を排除する、1個若しくはそれ以上のアミノ酸置換を行い得る。こうしたアグリコシル化は抗原に対する抗体の親和性を増大させうる。こうしたアプローチは、Coらによる米国特許第5,714,350号および同第6,350,861号明細書にさらに詳細に記述されている。
【0125】
加えて、若しくは、あるいは、低下された量のフコシル残基を有する低フコシル化(hypofucosylated)抗体、若しくは増大された分岐GluNac構造を有する抗体のような、変えられたグリコシル化の型を有する抗体を作成し得る。こうした変えられたグリコシル化パターンは抗体のADCC能力を増大させることが示されている。こうした炭水化物の改変は、例えば変えられたグリコシル化機構をもつ宿主細胞中で抗体を発現させることにより達成し得る。変えられたグリコシル化機構をもつ細胞は当該技術分野で記述されており、そして本発明の組換え抗体を発現させてそれにより変えられたグリコシル化を伴う抗体を産生させる宿主細胞として使用し得る。例えば、Hanaiらによる欧州特許第EP 1,176,195号明細書は、機能的に破壊されたFUT8遺伝子(フコシルトランスフェラーゼをコードする)をもつ細胞株を記述しており、その結果、こうした細胞株中で発現される抗体は低フコシル化を表す。PrestaによるPCT公開第WO 03/035835号明細書は、またその宿主細胞中で発現される抗体の低フコシル化をもたらす、Asn(297)に連結した炭水化物にフコースを結合させる低下された能力を伴うバリアントCHO細胞株Lec13を記述している(Shields,R.L.ら(2002)J.Biol.Chem.277:26733−26740もまた参照されたい)。UmanaらによるPCT公開第WO 99/54342号明細書は、工作された細胞株中で発現される抗体が、抗体の増大されたADCC活性をもたらす増大された分岐GluNac構造を表すような、糖タンパク質を改変するグリコシルトランスフェラーゼ(例えばβ(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するよう工作された細胞株を記述している(Umanaら(1999)Nat.Biotech.17:176−180もまた参照されたい)。
【0126】
本発明により企図される本明細書の抗体の別の改変はペグ化である。抗体は、例えば抗体の生物学的(例えば血清)半減期を増大させるためにペグ化し得る。抗体をペグ化するためには、抗体若しくはそのフラグメントを、典型的には、1個若しくはそれ以上のポリエチレングリコール(PEG)基が抗体若しくは抗体フラグメントに結合される条件下で、PEGの反応性エステル若しくはアルデヒド誘導体のようなPEGと反応させる。好ましくは、ペグ化は、反応性のPEG分子(若しくは類似の反応性の水溶性ポリマー)とのアシル化反応若しくはアルキル化反応を介して実施する。本明細書で使用されるところの「ポリエチレングリコール」という用語は、モノ(C1−C10)アルコキシ若しくはアリールオキシポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール−マレイミドのような、他のタンパク質を誘導体化するのに使用されているPEGの形態のいずれも包含することを意図している。ある態様において、ペグ化されるべき抗体はアグリコシル化抗体である。タンパク質のペグ化方法は当該技術分野で既知であり、そして本発明の抗体に適用し得る。例えばNishimuraらによる欧州特許第EP 0 154 316号およびIshikawaらによる欧州特許第EP 0 401 384号明細書を参照されたい。
【0127】
抗体の工作方法
上で論考されたとおり、本明細書に開示されるVおよびV配列を有する抗CD64抗体は、VHおよび/若しくはV配列、またはそれに結合された定常領域(1個若しくは複数)を改変することにより、新たな抗CD64抗体を創製するのに使用し得る。従って、本発明の別の局面において、ヒトCD64への結合のような本発明の抗体の最低1種の機能特性を保持している構造上関係した抗CD64抗体を創製するために、本発明の抗CD64抗体、例えば611の構造の特徴を使用する。例えば、611の1個若しくはそれ以上のCDR領域またはそれらの変異体を、既知の枠組み領域および/若しくは他のCDRと組換え的に組合せて、上で論考されたところの本発明の付加的な組換え的に工作された抗CD64抗体を創製し得る。他の型の改変は前の節に記述されたものを包含する。該工作方法の出発原料は、本明細書で提供されるVおよび/若しくはV配列の1種若しくはそれ以上、またはそれらの1個若しくはそれ以上のCDR領域である。工作された抗体を創製するためには、本明細書に提供されるVおよび/若しくはV配列の1種若しくはそれ以上、またはそれらの1個若しくはそれ以上のCDR領域を有する抗体を実際に製造する(すなわちタンパク質として発現させる)ことは必要でない。むしろ、該配列(1種若しくは複数)中に含有される情報を、元の配列(1種若しくはそれ以上)由来の「第二世代」の配列(1種若しくは複数)を創製するための出発原料として使用し、そしてその後、該「第二世代」の配列(1種若しくは複数)を調製しかつタンパク質として発現させる。
【0128】
従って、別の態様において、本発明は:
(a)(i)配列番号1、2および3のそれぞれCDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるH鎖可変領域抗体配列;ならびに/若しくは(ii)配列番号4、5および6のそれぞれCDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるL鎖可変領域抗体配列を提供すること;
(b)H鎖可変領域抗体配列および/若しくはL鎖可変領域抗体配列内の1個若しくはそれ以上のアミノ酸残基を変えて、最低1種の変えられた抗体配列を創製すること;ならびに
(c)変えられた抗体配列をタンパク質として発現させること
を含んでなる、抗CD64抗体の製造方法を提供する。
【0129】
標準的な分子生物学技術を、変えられた抗体配列を製造しかつ発現させるのに使用し得る。
【0130】
好ましくは、変えられた抗体配列(1種若しくは複数)によりコードされる抗体は、本明細書に記述される抗CD64抗体の機能特性の1種、数種若しくは全部を保持するものであり、その機能特性は、限定されるものでないが:
(i)ヒトCD64に特異的に結合する;
(ii)CD64の表面発現を抑制的調節する;
(iii)CD64のその天然のリガンド(IgG)への結合を阻害しない;
(iv)CD64媒介性の食作用を阻害する;
(iv)ヒトエフェクター細胞の存在下での標的細胞の食作用を媒介する、
を挙げることができる。
【0131】
変えられた抗体の機能特性は、実施例に示されるもの(例えばフローサイトメトリー、結合アッセイ)のような、当該技術分野で利用可能かつ/若しくは本明細書に記述される標準的アッセイを使用して評価し得る。
【0132】
本発明の抗体の工作方法のある態様において、抗CD64抗体のコーディング配列の全部若しくは一部に沿って突然変異を無作為に若しくは選択的に導入し得、そして、生じる改変された抗CD64抗体を、結合活性および/若しくは本明細書に記述されるところの他の機能特性についてスクリーニングし得る。突然変異方法は当該技術分野で記述されている。例えば、ShortによるPCT公開第WO 02/092780号明細書は、飽和突然変異誘発、合成ライゲーション集成若しくはそれらの組合せを使用する抗体の突然変異の創製およびスクリーニング方法を記述している。あるいは、LazarらによるPCT公開第WO 03/074679号明細書は、抗体の物理化学特性を最適化するためのコンピュータによるスクリーニング方法の使用方法を記述している。
【0133】
本発明の抗体をコードする核酸分子
本発明の別の局面は、本発明の抗体をコードする核酸分子に関する。該核酸は、全細胞中、細胞ライセート中に、または部分的に精製された若しくは実質的に純粋な形態で存在しうる。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動、および当該技術分野で公知の他者を包含する標準的技術により、他の細胞成分若しくは他の汚染物質、例えば他の細胞性核酸若しくはタンパク質から精製されている場合に「単離されて」若しくは「実質的に純粋にされて」いる。F.Ausubelら編(1987)Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing and Wiley Interscience、ニューヨークを参照されたい。本発明の核酸は例えばDNA若しくはRNAであり得、そしてイントロン配列を含有しても若しくはしなくてもよい。好ましい一態様において、核酸はcDNA分子である。
【0134】
本発明の核酸は標準的な分子生物学技術を使用して得ることができる。ハイブリドーマ(例えば、さらに下述されるところのヒト免疫グロブリン遺伝子を運搬するトランスジェニックマウスから調製したハイブリドーマ)により発現される抗体について、該ハイブリドーマにより作成される抗体のLおよびH鎖をコードするcDNAは、標準的なPCR増幅若しくはcDNAクローニング技術により得ることができる。(例えばファージディスプレイ技術を使用して)免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから得られる抗体については、該抗体をコードする核酸を該ライブラリーから回収し得る。
【0135】
本発明の好ましい核酸分子は、611モノクローナル抗体のVHおよびVL配列をコードするものである。611のVH配列をコードするDNA配列を配列番号9に示す。611のVL配列をコードするDNA配列を配列番号10に示す。
【0136】
VHおよびVLセグメントをコードするDNAフラグメントが一旦得られれば、これらのDNAフラグメントは、例えば可変領域遺伝子を完全長の抗体鎖遺伝子、Fabフラグメント遺伝子若しくはscFv遺伝子に転化するための標準的組換えDNA技術によりさらに操作し得る。これらの操作において、VL若しくはVHをコードするDNAフラグメントは、抗体の定常領域若しくはフレキシブルリンカーのような別のタンパク質をコードする別のDNAフラグメントに効果的に連結する。この文脈で使用されるところの「効果的に連結される」という用語は、2種のDNAフラグメントによりコードされるアミノ酸配列がインフレームのまま留まるような2種のDNAフラグメントを結合することを意味
することを意図している。
【0137】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするDNAを、H鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする別のDNA分子に効果的に連結することにより、完全長のH鎖遺伝子に転化し得る。ヒトH鎖定常領域遺伝子の配列は当該技術分野で既知であり(例えば、Kabat,E.A.ら(1991)Sequences of
Proteins of Immunological Interest、第5版、米国保健・福祉省(U.S.Department of Health and Human Services)、NIH刊行物第91−3242号を参照されたい)、そして、これらの領域を包含するDNAフラグメントは標準的なPCR増幅により得ることができる。H鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM若しくはIgD定常領域であり得るが、しかし、最も好ましくは、IgG1若しくはIgG4定常領域である。FabフラグメントのH鎖遺伝子について、VHをコードするDNAを、H鎖のCH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に効果的に連結し得る。
【0138】
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLをコードするDNAを、L鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に効果的に連結することにより、完全長のL鎖遺伝子(ならびにFabのL鎖遺伝子)に転化し得る。ヒトL鎖定常領域遺伝子の配列は当該技術分野で既知であり(例えば、Kabat,E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、米国保健・福祉省(U.S.Department of Health and Human Services)、NIH刊行物第91−3242号を参照されたい)、そしてこれらの領域を包含するDNAフラグメントは標準的なPCR増幅により得ることができる。L鎖定常領域はκ若しくはλ定常領域であり得るが、しかし、最も好ましくはκ定常領域である。
【0139】
scFv遺伝子を創製するためには、VHおよびVLをコードするDNAフラグメントを、フレキシブルリンカーをコードする、例えばアミノ酸配列(Gly−Ser)をコードする別のフラグメントに効果的に連結し、その結果、該VHおよびVL配列は、VLおよびVH領域がフレキシブルリンカーにより結合された連続した一本鎖タンパク質として発現され得る(例えば、Birdら(1988)Science 242:423−426;Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;McCaffertyら、(1990)Nature 348:552−554を参照されたい)。
【0140】
本発明のモノクローナル抗体の製造
本発明のモノクローナル抗体(mAb)は、慣習的なモノクローナル抗体の方法論、例えばKohlerとMilstein(1975)Nature 256:495の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を包含する多様な技術により製造し得る。体細胞ハイブリダイゼーション手順が好ましいとは言え、原則的に、モノクローナル抗体を産生する他の技術、例えばBリンパ球のウイルス若しくは癌性形質転換を使用し得る。
【0141】
ハイブリドーマを製造するのに好ましい動物系はネズミの系である。マウスでのハイブリドーマ産生は非常に十分に確立された手順である。免疫化プロトコルおよび融合のための免疫化した脾細胞の単離のための技術は当該技術分野で既知である。融合パートナー(例えばネズミ骨髄腫細胞)および融合手順もまた既知である。
【0142】
本発明のキメラ若しくはヒト化抗体は、上述されたとおり製造したネズミモノクローナル抗体の配列に基づいて製造し得る。HおよびL鎖免疫グロブリンをコードするDNAを
目的のネズミのハイブリドーマから得ることができ、そして、標準的な分子生物学技術を使用して、ネズミ以外(例えばヒト)の免疫グロブリン配列を含有するように工作し得る。例えば、キメラ抗体を創製するために、当該技術分野で既知の方法を使用してネズミの可変領域をヒト定常領域に連結し得る(例えば、Cabillyらへの米国特許第4,816,567号明細書を参照されたい)。ヒト化抗体を創製するためには、当該技術分野で既知の方法を使用して、ネズミのCDR領域をヒト枠組みに挿入し得る(例えば、Winterへの米国特許第5,225,539号、ならびにQueenらへの米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号および同第6,180,370号明細書を参照されたい)。
【0143】
好ましい一態様において、本発明の抗体はヒトモノクローナル抗体である。CD64に対し向けられたこうしたヒトモノクローナル抗体は、マウスの免疫系よりむしろヒトの免疫系の一部を運搬するトランスジェニック若しくは導入染色体マウスを使用して生成し得る。これらのトランスジェニックおよび導入染色体マウスは、それぞれHuMAbマウスおよびKMマウスと本明細書で称されるマウスを包含し、そして集合的に本明細書で「ヒトIgマウス」と称される。
【0144】
HuMAb Mouse(R)(Medarex,Inc.)は、内因性のμおよびκ鎖遺伝子座を不活性化する標的突然変異と一緒に、再配列されないヒトH(μおよびγ)ならびにκ L鎖免疫グロブリン配列をコードする、ヒト免疫グロブリン遺伝子のミニ遺伝子座(minilocus)を含有する(例えばLonbergら(1994)Nature 368(6474):856−859を参照されたい)。従って、該マウスはマウスIgM若しくはκの低下された発現を表し、そして免疫化に応答して、導入されたヒトHおよびL鎖導入遺伝子が、クラススイッチおよび体細胞突然変異を受けて、高親和性のヒトIgGκモノクローナルを生成する(Lonberg,N.ら(1994)、上記;Lonberg,N.(1994)Handbook of Experimental Pharmacology 113:49−101;Lonberg,N.とHuszar,D.(1995)Intern.Rev.Immunol.13:65−93、およびHarding,F.とLonberg,N.(1995)Ann.N.Y.Acad.Sci.764:536−546に総説されている)。HuMabマウスの製造および使用、ならびにこうしたマウスによる運搬されるゲノム改変は、Taylor,L.ら(1992)Nucleic Acids Research 20:6287−6295;Chen,J.ら(1993)International Immunology :647−656;Tuaillonら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:3720−3724;Choiら(1993)Nature Genetics :117−123;Chen,J.ら(1993)EMBO J.12:821−830;Tuaillonら(1994)J.Immunol.152:2912−2920;Taylor,L.ら(1994)International Immunology :579−591;およびFishwild,D.ら(1996)Nature Biotechnology 14:845−851(それらの全部の内容はそっくりそのまま引用することによりここにとりわけ組み込まれる)にさらに記述されている。さらに、米国特許第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,789,650号;同第5,877,397号;同第5,661,016号;同第5,814,318号;同第5,874,299号;および5,770,429号明細書;全部LonbergとKayへ;Suraniらへの米国特許第5,545,807号;PCT公開第WO 92/03918号、同第WO 93/12227号、同第WO 94/25585号、同第WO 97/13852号、同第WO 98/24884号および同第WO 99/45962号明細書(全部LonbergとKayへ);ならびにKormanらへのPCT公開第WO 01/14424号明細書を参照されたい。
【0145】
別の態様において、本発明のヒト抗体は、ヒトH鎖導入遺伝子およびヒトL鎖導入染色体を運搬するマウスのような、ヒト免疫グロブリン配列を導入遺伝子および導入染色体上に運搬するマウスを使用して生じさせ得る。「KMマウス」と本明細書で称されるこうしたマウスは、IshidaらへのPCT公開第WO 02/43478号明細書に詳細に記述されている。
【0146】
なおさらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替のトランスジェニック動物系が当該技術分野で利用可能であり、そして本発明の抗CD64抗体を生じさせるのに使用し得る。例えば、Xenomouse(Abgenix,Inc.)と称される代替のトランスジェニック系を使用し得;こうしたマウスは、例えば、Kucherlapatiらへの米国特許第5,939,598号;同第6,075,181号;同第6,114,598号;同第6,150,584号および同第6,162,963号明細書に記述されている。
【0147】
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替の導入染色体動物系が当該技術分野で利用可能であり、そして本発明の抗CD64抗体を生じさせるのに使用し得る。例えば、「TCマウス」と称される、ヒトH鎖導入染色体およびヒトL鎖導入染色体双方を運搬するマウスを使用し得;こうしたマウスはTomizukaら(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:722−727に記述されている。さらに、ヒトHおよびL鎖導入染色体を運搬する乳牛が当該技術分野で記述されており(Kuroiwaら(2002)Nature Biotechnology 20:889−894)、そして本発明の抗CD64抗体を生じさせるのに使用し得る。
【0148】
本発明のヒトモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレイ法を使用してもまた製造し得る。ヒト抗体を単離するためのこうしたファージディスプレイ法は当該技術分野で確立されている。例えば:Ladnerらへの米国特許第5,223,409号;同第5,403,484号;および同第5,571,698号明細書;Dowerらへの米国特許第5,427,908号および同第5,580,717号明細書;McCaffertyらへの米国特許第5,969,108号および同第6,172,197号明細書;ならびにGriffithsらへの米国特許第5,885,793号;同第6,521,404号;同第6,544,731号;同第6,555,313号;同第6,582,915号および同第6,593,081号明細書を参照されたい。
【0149】
本発明のヒトモノクローナル抗体は、ヒト抗体応答が免疫化に際して生成され得るような、ヒト免疫細胞がその中で再構成されているSCIDマウスを使用してもまた製造し得る。こうしたマウスは、例えばWilsonらへの米国特許第5,476,996号および同第5,698,767号明細書に記述されている。
【0150】
ヒトIgマウスの免疫化
ヒトIgマウスを本発明のヒト抗体を生じさせるのに使用する場合、こうしたマウスを、Lonberg,N.ら(1994)Nature 368(6474):856−859;Fishwild,D.ら(1996)Nature Biotechnology 14:845−851;ならびにPCT公開第WO 98/24884号および同第WO 01/14424号明細書により記述されるとおり、CD64抗原および/若しくは組換えCD64またはCD64融合タンパク質の精製若しくは濃縮された調製物で免疫し得る。好ましくは、マウスは第一の注入に際して6〜16週齢であることができる。例えば、CD64抗原の精製した若しくは組換えの調製物(5〜50μg)を使用して、ヒトIgマウスを腹腔内で免疫し得る。
【0151】
CD64に対する完全にヒトのモノクローナル抗体を生成させるための詳細な手順を下の実施例1に記述する。多様な抗原での累積的実験は、最初にフロイントの完全アジュバント中の抗原で腹腔内で(IP)免疫し、次いでフロイントの不完全アジュバント中の抗原で1週おきにIP免疫化した(合計6回まで)場合にトランスジェニックマウスが応答することを示した。しかしながら、フロイントのアジュバント以外のアジュバントもまた有効であることが見出されている。加えて、アジュバントの非存在下での全細胞が高度に免疫原性であることが見出されている。免疫応答は、後眼窩出血により得られている血漿サンプルでの免疫化プロトコルの経過にわたりモニターし得る。血漿を(下述されるところの)ELISAによりスクリーニングし得、そして、抗CD64ヒト免疫グロブリンの十分な力価をもつマウスを融合に使用し得る。マウスは屠殺および脾の取り出しの3日前に抗原で静脈内で追加刺激し得る。各免疫化に2〜3回の融合が実施されることが必要でありうることが期待される。6と24匹との間のマウスを典型的に各抗原について免疫する。単一系統のトランスジェニックマウス、若しくは1系統以上のトランスジェニックマウスを使用し得る。例えば、HCo7およびHCo12双方の系統を使用し得る。加えて、HCo7およびHCo12双方の導入遺伝子を、2種の異なるヒトH鎖導入遺伝子を有する単一のマウス中に一緒に繁殖させ(bred)得る(HCo7/HCo12)。
【0152】
本発明のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの生成
本発明のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを生成させるため、免疫したマウスからの脾細胞および/若しくはリンパ節細胞を単離し得、そしてマウス骨髄腫細胞株のような適切な不死化細胞株に融合し得る。生じるハイブリドーマを抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングし得る。例えば、免疫したマウスからの脾リンパ球の単細胞懸濁液を、50%PEGを用い、1/6の数のP3X63−Ag8.653非分泌性(nonsecreting)マウス骨髄腫細胞(ATCC、CRL 1580)に融合し得る。細胞を平底マイクロタイタープレートにおよそ2×10でプレーティングし、次いで、20%胎児クローン血清、18%「653」馴化培地、5%origen(IGEN)、4mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、5mM HEPES、0.055mM 2−メルカプトエタノール、50単位/mlペニシリン、50mg/mlストレプトマイシン、50mg/mlゲンタマイシンおよび1×HAT(Sigma;HATは融合24時間後に添加する)を含有する選択培地中で2週間インキュベートする。およそ2週間後に、細胞をHATがHTで置換されている培地中で培養し得る。個々のウェルをその後、ELISAによりヒトモノクローナルIgMおよびIgG抗体についてスクリーニングし得る。広範囲のハイブリドーマ増殖が一旦発生すれば、培地を通常10〜14日後に観察し得る。抗体を分泌するハイブリドーマを再プレーティングし得、再度スクリーニングし得、そして、ヒトIgGについてなお陽性の場合は、モノクローナル抗体を限界希釈により最低2回サブクローニングし得る。安定なサブクローンをその後in vitroで培養して、特徴付けのために組織培養培地中で少量の抗体を生成させ得る。
【0153】
ヒトモノクローナル抗体を精製するために、選択したハイブリドーマを、モノクローナル抗体精製のため2リットルスピナーフラスコ中で増殖させ得る。プロテインA−セファロース(Pharmacia、ニュージャージー州ピスカタウェイ)でのアフィニティークロマトグラフィーの前に上清を濾過かつ濃縮し得る。溶出されたIgGを、純度を確保するために、ゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィーにより確認し得る。緩衝溶液をPBSに変更し得、そして1.43の消光係数を使用してOD280により濃度を測定し得る。モノクローナル抗体を分注しかつ−80℃で保存し得る。
【0154】
本発明のモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの生成
本発明の抗体は、例えば公知の組換えDNA技術および遺伝子トランスフェクション法(例えばMorrison,S.(1985)Science 229:1202)の組
合せを使用して、宿主細胞のトランスフェクトーマ中でもまた産生させ得る。
【0155】
例えば、抗体若しくはその抗体フラグメントを発現させるため、部分的若しくは完全長のLおよびH鎖をコードするDNAを、標準的分子生物学技術(例えば、目的の抗体を発現するハイブリドーマを使用するPCR増幅若しくはcDNAクローニング)により得ることができ、そして、該DNAを、該遺伝子が転写および翻訳制御配列に効果的に連結されているような発現ベクターに挿入し得る。この文脈で、「効果的に連結される」という用語は、抗体遺伝子が、ベクター内の転写および翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写および翻訳を調節するというそれらの意図された機能を供するようなベクターに連結されていることを意味することを意図している。発現ベクターおよび発現制御配列は使用する発現宿主細胞と適合性であるように選ぶ。抗体L鎖遺伝子および抗体H鎖遺伝子は別個のベクターに挿入し得るか、若しくは、より典型的には、双方の遺伝子を同一の発現ベクターに挿入する。抗体遺伝子は標準的方法(例えば、抗体遺伝子フラグメントおよびベクターへの相補的制限部位の連結、若しくは、制限部位が存在しない場合は平滑末端連結)により発現ベクターに挿入する。本明細書に記述される抗体のLおよびH鎖可変領域を使用して、Vセグメントが該ベクター内のCセグメント(1個若しくは複数)に効果的に連結されかつVセグメントが該ベクター内のCセグメントに効果的に連結されているような、所望のアイソタイプのH鎖定常およびL鎖定常領域を既にコードする発現ベクターにそれらを挿入することにより、いかなる抗体アイソタイプの完全長抗体遺伝子も創製し得る。加えて、若しくは、あるいは、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を助長するシグナルペプチドをコードし得る。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが該抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されているようなベクターにクローン化し得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンのシグナルペプチド若しくは異種シグナルペプチド(すなわち免疫グロブリン以外のタンパク質からのシグナルペプチド)であり得る。
【0156】
抗体鎖遺伝子に加え、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中での抗体鎖遺伝子の発現を制御する制御配列を運搬する。「制御配列」という用語は、プロモーター、エンハンサー、および抗体鎖遺伝子の転写若しくは翻訳を制御する他の発現調節領域(例えばポリアデニル化シグナル)を包含することを意図している。こうした制御配列は、例えばGoeddel(Gene Expression Technology.Methods in Enzymology 185、Academic Press、カリフォルニア州サンディエゴ(1990))に記述されている。制御配列の選択を包含する発現ベクターの設計は、形質転換されるべき宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現のレベルなどのような因子に依存しうることが、当業者により認識されるであろう。哺乳動物宿主細胞発現に好ましい制御配列は、サイトメガロウイルス(CMV)、SV40、アデノウイルス(例えばアデノウイルス主後期(major late)プロモーター(AdMLP)およびポリオーマ由来のプロモーターおよび/若しくはエンハンサーのような、哺乳動物細胞中での高レベルのタンパク質発現を指図するウイルス要素を包含する。あるいは、ユビキチンプロモーター若しくはβ−グロビンプロモーターのような非ウイルス性制御配列を使用しうる。なおさらに、制御配列は、SV40初期プロモーター、およびヒトT細胞白血病ウイルス1型の末端反復配列(Takebe,Y.ら(1988)Mol.Cell.Biol.8:466−472)からの配列を含有するSRαプロモーター系のような多様な供給源からの配列から構成した。
【0157】
抗体鎖遺伝子および制御配列に加え、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中でのベクターの複製を調節する配列(例えば複製起点)および選択可能なマーカー遺伝子のような付加的な配列を運搬しうる。選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号および同第5,179,017号明細書(全部Axelらによる)を参照されたい)。例えば、典型的には、選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、G418、ハイグロマイシン若しくはメトトレキセートのような薬物に対する抵抗性を与える。好ましい選択可能なマーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキセート選択/増幅とともにdhfr−宿主細胞での使用のため)およびneo遺伝子(G418選択のため)を包含する。
【0158】
LおよびH鎖の発現のため、HおよびL鎖をコードする発現ベクター(1種若しくは複数)を標準技術により宿主細胞にトランスフェクトする。多様な形態の「トランスフェクション」という用語は、外因性DNAの原核生物若しくは真核生物宿主細胞中への導入に一般に使用される多様な技術、例えば電気穿孔法、カルシウム−リン酸沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクションなどを包含することを意図している。本発明の抗体を原核生物若しくは真核生物いずれの宿主細胞中でも発現させることが理論上可能であるとは言え、真核生物細胞、および最も好ましくは哺乳動物宿主細胞中での抗体の発現が最も好ましい。こうした真核生物細胞、およびとりわけ哺乳動物細胞は、適正にフォールディングされかつ免疫学的に活性の抗体を集成かつ分泌することが原核生物細胞よりもよりありそうであるためである。抗体遺伝子の原核生物発現は、活性の抗体の高収量の産生に無効であることが報告された(Boss,M.A.とWood,C.R.(1985)Immunology Today :12−13)。
【0159】
本発明の組換え抗体を発現するのに好ましい哺乳動物宿主は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えばR.J.KaufmanとP.A.Sharp(1982)Mol.Biol.159:601−621に記述されるようにDHFRで選択可能なマーカーとともに使用される、UrlaubとChasin、(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220に記述されるdhfr− CHO細胞を包含する)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞を包含する。とりわけ、NS0骨髄腫細胞との使用のための、別の好ましい発現系は、第WO 87/04462号、同第WO 89/01036号および欧州特許第EP 338,841号明細書に開示されるGS遺伝子発現系である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入する場合、抗体は、宿主細胞中での該抗体の発現、若しくはより好ましくは、該宿主細胞が増殖されている培地中への抗体の分泌を見込むのに十分な時間、宿主細胞を培養することにより産生される。抗体は標準的なタンパク質精製法を使用して培地から回収し得る。
【0160】
加えて、若しくは、あるいは、CD64を単純に結合するため、上述されたもののような工作された抗体は:
(a)ヒトCD64に対する特異性;
(b)10−8M若しくは未満のKでヒトCD64に結合する能力;
(c)CD64の表面発現を抑制的調節する能力;
(d)その天然のリガンド(IgG)と異なる部位でヒトCD64を結合する能力;
(e)CD64媒介性の食作用を阻害する能力;および
(f)ヒトエフェクター細胞の存在下で標的細胞の食作用を媒介する能力
のような、本発明の抗体の他の機能特性のそれらの保持について選択しうる。
【0161】
抗原への抗体結合の特徴付け
本発明の抗体は、例えば標準的なELISAによりCD64への結合について試験し得る。簡潔には、マイクロタイタープレートをPBS中0.25μg/mlの精製したCD64で被覆し、そしてその後PBS中5%ウシ血清アルブミンでブロッキングする。抗体の希釈(例えばCD64で免疫したマウスからの血漿の希釈)を各ウェルに添加し、そして37℃で1〜2時間インキュベートする。プレートをPBS/Tweenで洗浄し、そしてその後、アルカリホスファターゼに結合した二次試薬(例えば、ヒト抗体について、ヤギ抗ヒトIgG Fc特異的ポリクローナル試薬)とともに37℃で1時間インキュベ
ートする。洗浄した後にプレートをpNPP基質(1mg/ml)で発色させ、そして405〜650のODで分析する。好ましくは、最高の力価を発生させるマウスを融合に使用することができる。
【0162】
上述されたところのELISAアッセイは、CD64免疫原との正の反応性を示すハイブリドーマについてスクリーニングするのにもまた使用し得る。CD64に高親和性で結合するハイブリドーマをサブクローニングしかつさらに特徴付けする。(ELISAにより)親細胞の反応性を保持する各ハイブリドーマからの1クローンを、−140℃で保存する5〜10バイアルの細胞バンクを作成するため、および抗体精製のために選ぶことができる。
【0163】
抗CD64抗体を精製するため、選択したハイブリドーマを、モノクローナル抗体精製のため2リットルスピナーフラスコ中で増殖させ得る。プロテインA−セファロース(Pharmacia、ニュージャージー州ピスカタウェイ)でのアフィニティークロマトグラフィーの前に上清を濾過しかつ濃縮し得る。溶出されたIgGを、純度を確保するために、ゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィーにより確認し得る。緩衝溶液をPBSに変更し得、そして、1.43の消光係数を使用してOD280により濃度を測定し得る。モノクローナル抗体を分注しかつ−80℃で保存し得る。
【0164】
選択された抗CD64モノクローナル抗体が独特なエピトープに結合するかどうかを決定するため、商業的に入手可能な試薬(Pierce、イリノイ州ロックフォード)を使用して各抗体をビオチニル化し得る。未標識のモノクローナル抗体およびビオチニル化モノクローナル抗体を使用する競合試験を、上述されたところのCD64被覆したELISAプレートを使用して実施し得る。ビオチニル化mAb結合は、strep−avidin−アルカリホスファターゼプローブを用いて検出し得る。
【0165】
精製された抗体のアイソタイプを決定するため、特定の1アイソタイプの抗体に特異的な試薬を使用してアイソタイプELISAを実施し得る。例えば、ヒトモノクローナル抗体のアイソタイプを決定するために、マイクロタイタープレートのウェルを、1μg/mlの抗ヒト免疫グロブリンで4℃で一夜被覆し得る。1%BSAでブロッキングした後に、プレートを、1μg/ml若しくは未満の試験モノクローナル抗体若しくは精製したアイソタイプ対照と周囲温度で1ないし2時間反応させる。ウェルをその後、ヒトIgG1若しくはヒトIgM特異的アルカリホスファターゼ結合プローブのいずれかと反応させ得る。プレートを上述されたとおり発色させかつ分析する。
【0166】
抗CD64ヒトIgGは、ウェスタンブロッティングにより、CD64抗原との反応性についてさらに試験し得る。簡潔には、CD64を調製しかつドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけることができる。電気泳動後、分離された抗原をニトロセルロースメンブレンに転写し、10%ウシ胎児血清でブロッキングし、そして試験されるべきモノクローナル抗体でプロービングする。ヒトIgG結合を、抗ヒトIgGアルカリホスファターゼを使用して検出し得、そしてBCIP/NBT基質錠剤(Sigma Chem.Co.、ミズーリ州セントルイス)で発色させ得る。
【0167】
免疫複合体
別の局面において、本発明は、細胞毒、薬物(例えば免疫抑制薬)若しくは放射性毒のような治療的部分に複合させた抗CD64抗体若しくはそのフラグメントを特徴とする。こうした複合物は本明細書で「免疫複合体」と称される。1種若しくはそれ以上の細胞毒を包含する免疫複合体は「免疫毒素」と称される。細胞毒若しくは細胞傷害剤は細胞に有害である(すなわち死滅させる)いかなる剤も包含する。例は、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テ
ノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、マイトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびピューロマイシン、ならびにそれらのアナログ若しくはホモログを包含する。治療薬はまた、例えば、代謝拮抗薬(例えばメトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCならびにcis−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびアントラマイシン(AMC))、ならびに有糸分裂阻害剤(例えばビンクリスチンおよびビンブラスチン)も包含する。
【0168】
本発明の抗体に複合させ得る治療的細胞毒の他の好ましい例は、デュオカルマイシン(duocarmycin)、カリチュアミシン、マイタンシンおよびオーリスタチン(auristatin)ならびにそれらの誘導体を包含する。カリチュアミシン抗体複合体の一例は商業的に入手可能である(MylotargTM;Wyeth−Ayerst)。
【0169】
細胞毒は、当該技術分野で利用可能なリンカー技術を使用して本発明の抗体に複合させ得る。細胞毒を抗体に複合させるのに使用されているリンカー型の例は、限定されるものでないがヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィドおよびペプチド含有リンカーを挙げることができる。例えばリソソーム区画内の低pHによる切断に感受性、若しくはカテプシン(例えばカテプシンB、C、D)のような腫瘍組織中で優先的に発現されるプロテアーゼのようなプロテアーゼによる切断に感受性であるリンカーを選ぶことができる。
【0170】
サイトカインの型、リンカー、および抗体への治療薬の複合方法のさらなる論考については、Saito,G.ら(2003)Adv.Drug Deliv.Rev.55:199−215;Trail,P.A.ら(2003)Cancer Immunol.Immunother.52:328−337;Payne,G.(2003)Cancer Cell :207−212;Allen,T.M.(2002)Nat.Rev.Cancer :750−763;Pastan,I.とKreitman,R.J.(2002)Curr.Opin.Investig.Drugs :1089−1091;Senter,P.D.とSpringer,C.J.(2001)Adv.Drug Deliv.Rev.53:247−264もまた参照されたい。
【0171】
本発明の抗体はまた、放射活性同位体に複合して、放射免疫複合体ともまた称される細胞傷害性の放射性医薬品も生成させ得る。診断的若しくは治療的使用のため抗体に複合し得る放射活性同位体の例は、限定されるものでないがヨウ素131、インジウム111、イットリウム90およびルテチウム177を挙げることができる。放射免疫複合体の製造方法は当該技術分野で確立されている。ZevalinTM(IDEC Pharmaceuticals)およびBexxarTM(Corixa Pharmaceuticals)を包含する放射免疫複合体の例は商業的に入手可能であり、そして、類似の方法を使用して、本発明の抗体を使用する放射免疫複合体を製造し得る。
【0172】
本発明の抗体複合体は所定の生物学的応答を改変するのに使用し得、そして、薬物部分は古典的な化学的治療薬に制限されると解釈されるべきでない。例えば、薬物部分は所望
の生物学的活性を有するタンパク質若しくはポリペプチドでありうる。こうしたタンパク質は、例えば、アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素若しくはジフテリア毒素のような酵素活性トキシン若しくはその活性フラグメント;腫瘍壊死因子若しくはインターフェロン−γのようなタンパク質;または、例えばリンホカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)若しくは他の増殖因子のような生物学的反応修飾物質を包含しうる。
【0173】
こうした治療的部分を抗体に複合させるための技術は公知であり、例えば、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeldら(編)中、Arnonら、“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”、pp.243−56(Alan R.Liss,Inc.1985);Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinsonら(編)中、Hellstromら、“Antibodies For Drug Delivery”、pp.623−53(Marcel Dekker,Inc.1987);Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications、Pincheraら(編)中、Thorpe、“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review”、pp.475−506(1985);Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy、Boldwinら(編)中、“Analysis,Results And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”、pp.303−16(Academic Press 1985)、およびThorpeら、“The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates”、Immunol.Rev.62:119−58(1982)を参照されたい。
【0174】
二重特異性分子
別の局面において、本発明は、本発明の抗CD64抗体若しくはそのフラグメントを含んでなる二重特異性分子を特徴とする。本発明の抗体、若しくはその抗原結合部分は、誘導体化、または別の機能性分子、例えば別のペプチド若しくはタンパク質(例えば別の抗体若しくは受容体のリガンド)に連結して、最低2種の異なる結合部位若しくは標的分子に結合する二重特異性分子を生成させ得る。本発明の抗体は、事実、誘導体化、若しくは1種以上の他の機能的分子に連結して、2種以上の異なる結合部位および/若しくは標的分子に結合する多重特異性分子を生成することができ;こうした多重特異性分子もまた、本明細書で使用されるところの「二重特異性分子」という用語により包含されることを意図している。本発明の二重特異性分子を創製するために、本発明の抗体を、別の抗体、抗体フラグメント、腫瘍特異的若しくは病原体特異的抗原、ペプチド若しくは結合模倣物のような1種若しくはそれ以上の他の結合分子に(例えば化学結合、遺伝子融合、非共有会合若しくは別の方法により)機能的に連結し得、その結果二重特異性分子が生じる。
【0175】
従って、本発明は、CD64に対する特異性を有する最低1種の第一の結合分子、および第二の標的エピトープに対する特異性を有する第二の結合分子を含んでなる二重特異性分子を包含する。本発明の特定の一態様において、第二の結合分子は、標的細胞、例えば腫瘍細胞若しくは病原体上の標的抗原に特異的な別の抗体若しくは抗体部分でありうる。一例として、第二の結合分子は乳癌細胞を結合する抗Her2/Neu抗体でありうる。
本発明の別の特定の態様において、第二の結合分子は標的受容体に特異的なリガンドでありうる。一例として、第二の結合分子は、腫瘍細胞上の上皮成長因子(EGF)受容体を結合するEGF若しくはEGFの受容体結合部分でありうる。従って、本発明は、FcγRIを発現するエフェクター細胞(例えば単球、マクロファージ若しくは樹状細胞、および標的細胞の双方に結合することが可能な二重特異性分子を包含する。これらの二重特異性分子はCD64を発現するエフェクター細胞の標的を、それに二重特異性分子が結合しかつ標的を発現する細胞の食作用、抗体依存性の細胞媒介性の細胞傷害性(ADCC)、サイトカイン放出若しくはスーパーオキシドアニオンの生成のようなFc受容体媒介性のエフェクター細胞活性を誘発する標的分子を発現する標的細胞に向ける。
【0176】
二重特異性分子が多重特異性である本発明の一態様において、該分子は、抗Fc結合特異性および抗CD64結合特異性に加え、第三の結合特異性をさらに包含し得る。一態様において、第三の結合特異性は、抗増強因子(anti−enhancement factor)(EF)部分、例えば細胞傷害活性に関与する表面タンパク質に結合しかつそれにより標的細胞に対する免疫応答を増大させる分子である。「抗増強因子部分」は、抗体、機能的抗体フラグメント、または所定の分子、例えば抗原若しくは受容体に結合しそしてそれによりFc受容体若しくは標的細胞抗原の結合決定子の効果の増強をもたらすリガンドであり得る。「抗増強因子部分」はFc受容体若しくは標的細胞抗原を結合しうる。あるいは、抗増強因子部分は、第一および第二の結合特異性が結合する実体と異なる実体に結合し得る。例えば、抗増強因子部分は、細胞傷害性T細胞を(例えば、CD2、CD3、CD8、CD28、CD4、CD40、ICAM−1、若しくは標的細胞に対する増大された免疫応答をもたらす他の免疫細胞を介して)結合し得る。
【0177】
一態様において、本発明の二重特異性分子は、結合特異性として最低1種の抗体、または例えばFab、Fab’、F(ab’)、Fv若しくは一本鎖Fvを包含するその抗体フラグメントを含んでなる。抗体はまた、L鎖若しくはH鎖二量体、またはFv、若しくはLadnerら 米国特許第4,946,778号明細書(その内容は引用することにより明らかに組み込まれる)に記述されるところの一本鎖構築物のようなそれらのいずれかの最小フラグメントでもありうる。
【0178】
一態様において、Fcγ受容体(例えば本発明の抗CD64抗体)の結合特異性は、その結合がヒト免疫グロブリンG(IgG)により阻害されないモノクローナル抗体により提供される。
【0179】
ヒトモノクローナル抗体が好ましい一方、本発明の二重特異性分子で使用し得る他の抗体は、ネズミ、キメラおよびヒト化モノクローナル抗体である。
【0180】
本発明の二重特異性分子は、構成的結合特異性、例えば抗CD64結合特異性、および抗標的細胞結合特異性を、当該技術分野で既知の方法を使用して複合させることにより製造し得る。例えば、二重特異性分子の各結合特異性を別個に生成させ得、そしてその後相互に複合させ得る。結合特異性がタンパク質若しくはペプチドである場合、多様なカップリング若しくは架橋剤を共有複合に使用し得る。架橋剤の例は、プロテインA、カルボジイミド、N−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテート(SATA)、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、o−フェニレンジマレイミド(oPDM)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)および4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸スルホスクシンイミジル(sulfo−SMCC)を包含する(例えば、Karpovskyら(1984)J.Exp.Med.160:1686;Liu,MAら(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:8648を参照されたい)。他の方法は、Paulus(1985)Behring Ins.Mitt.No.78、118−132;Brennanら(1985)Science 229:81−83)、およびGlennieら(1987)J.Immunol.139:2367−2375)に記述されるものを包含する。好ましい複合剤は、双方ともPierce Chemical Co.(イリノイ州ロックフォード)から入手可能なSATAおよびsulfo−SMCCである。
【0181】
結合特異性が抗体である場合、それらは2本のH鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合を介して複合し得る。とりわけ好ましい一態様において、ヒンジ領域は複合前に奇数のスルフヒドリル残基(好ましくは1個)を含有するように改変する。
【0182】
あるいは、双方の結合特異性を同一ベクターにコードさせ得、そして同一宿主中で発現かつ集成し得る。この方法は、二重特異性分子がmAb×mAb、mAb×Fab、Fab×F(ab’)若しくはリガンド×Fab融合タンパク質である場合にとりわけ有用である。本発明の二重特異性分子は、1種の一本鎖抗体および1個の結合決定子を含んでなる一本鎖分子、若しくは2個の結合決定子を含んでなる一本鎖二重特異性分子であり得る。二重特異性分子は最低2種の一本鎖分子を含みうる。二重特異性分子の製造方法は、例えば、米国特許第5,260,203号;米国特許第5,455,030号;米国特許第4,881,175号;米国特許第5,132,405号;米国特許第5,091,513号;米国特許第5,476,786号;米国特許第5,013,653号;米国特許第5,258,498号;および米国特許第5,482,858号明細書に記述されている。
【0183】
それらの特異的標的への二重特異性分子の結合は、例えば、酵素結合免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば増殖阻害)若しくはウエスタンブロットアッセイにより確認し得る。これらのアッセイのそれぞれは、一般に、目的の複合体に特異的な標識試薬(例えば抗体)を使用することにより特定の目的のタンパク質−抗体複合体の存在を検出する。例えば、FcR−抗体複合体は、例えば、抗体−FcR複合体を認識しかつそれらに特異的に結合する酵素が結合された抗体若しくは抗体フラグメントを使用して検出し得る。あるいは、複合体は多様な他のイムノアッセイのいずれかを使用して検出し得る。例えば、抗体を放射活性標識しかつラジオイムノアッセイ(RIA)で使用し得る(例えば、Weintraub,B.、Principles of Radioimmunoassays、Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques、The Endocrine Society、March 1986(引用することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。放射活性同位体は、ガンマカウンター若しくはシンチレーションカウンターの使用のような手段またはオートラジオグラフィーにより検出し得る。
【0184】
抗体ワクチン複合体
本発明は、さらに、腫瘍若しくはウイルス抗原のような1種若しくはそれ以上の抗原に連結されてワクチン複合体を形成する、1種若しくはそれ以上のヒト抗CD64抗体(若しくはそれらのフラグメント)を包含する多様な治療的複合物を提供する。これは、プロセシング、提示、および究極的には抗原(1種若しくは複数)に対する免疫応答を高めるための、CD64を発現する免疫細胞、とりわけ抗原提示細胞(APC)への多様な抗原のターゲッティングを見込む。
【0185】
本発明の抗体−抗原ワクチン複合体は、遺伝子的若しくは化学的を包含するいずれの実務的方法論を使用しても作成し得る。いずれの場合も、複合体の抗体部分は、抗体全体、またはFabフラグメント若しくは一本鎖Fvのような抗体の一部分よりなりうる。加えて、1種以上の抗原を単一の抗体構築物に付加し得る。
【0186】
遺伝子的に構築した抗CD64抗体−抗原複合物(例えば単一の組換え融合タンパク質として発現されるもの)は、最適な抗原を多様な位置で抗体に連結することにより作成し得る。例えば、抗原はヒト抗体H鎖のCHドメインの端に融合し得る。抗原はまた、Fab融合構築物中で抗体H鎖のヒンジ領域で、若しくは、一本鎖の融合構築物(ScFv構築物)中に可変LおよびH鎖(VおよびV)をもつ配列にも融合し得る。あるいは、抗原は抗体H鎖の代わりに抗体L鎖に融合し得る。
【0187】
化学的に構築される抗体−抗原複合物は、多様な公知のかつ容易に入手可能な架橋試薬を使用して作成し得る。これらの架橋試薬は、抗CD64抗体および選択された抗原上の多様な反応性アミノ酸若しくは炭水化物側鎖と共有結合を形成する、SPDP、SATA、SMCC、DTNBのようなホモ官能性若しくはヘテロ官能性化合物であり得る。
【0188】
クローン化かつ発現若しくは精製され得るいかなる抗原も、本発明の抗体−抗原ワクチン複合体での使用に選択し得る。こうした抗原を得るための技術は当該技術分野で公知である。例えば、腫瘍関連抗原は癌細胞から直接精製し得、そしてタンデム質量分析のような物理化学的技術により同定し得る。あるいは、腫瘍特異的T細胞クローンを、抗原を発現するクローンを単離するためにプラスミドDNAクローンでトランスフェクトされることにより抗原を獲得した抗原陰性細胞に対し試験し得る。合成ペプチドをその後構築して、抗原部位すなわちエピトープを正確に同定し得る。
【0189】
本発明の抗体−抗原複合物の大きな一利点は、強い免疫応答をワクチンから迅速に導き出してそれによりワクチン接種の有効性を向上させるそれらの能力である。従って、それに対し免疫応答が保護的若しくは治療的である感染性疾患抗原および腫瘍抗原を、抗体611のような本発明のヒト抗CD64抗体に複合させて、高度に有効なワクチンを形成させ得る。感染性疾患抗原の例は、限定されるものでないが、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質および炭水化物、真菌タンパク質および炭水化物を挙げることができる。
【0190】
本発明の抗体−抗原複合物はまた、旅行の間に若しくは細菌戦により遭遇されうる感染性生物体およびそれらの毒素に対するワクチン接種の有効性を向上させるのにも使用し得る。こうした抗原の例は、例えば炭疽菌抗原、ボツリヌス毒素、マラリア抗原、ウマ脳炎およびペスト菌(Y.pestis)抗原を包含する。
【0191】
本発明の抗体−抗原複合物での使用のための他の適する抗原は、癌の予防若しくは処置のための腫瘍関連抗原を包含する。腫瘍関連抗原の例は、限定されるものでないが、ガストリン放出ペプチド受容体抗原(GRP)、ムチン抗原、上皮成長因子受容体(EGF−R)、HER2/neu、HER3、HER4、CD20、CD30、PSMA、癌胎児性抗原(CEA)、Pmel17、β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン(βHCG)、α−フェトプロテイン(AFP)、gp100、MART1、TRP−2、melan−A、NY−ESO−1、MN(gp250)イディオタイプ、MAGE抗原、例えばMAGE−1およびMAGE−3、SART抗原、チロシナーゼ、テロメラーゼ、TAG−72抗原ならびにMUC−1抗原を挙げることができる。腫瘍関連抗原は、血液型抗原、例えばLe、Le、LeX、LeY、H−2、B−1、B−2抗原もまた包含する。別の好ましい態様において、1種以上の抗原が単一の抗CD64抗体構築物に融合される。例えば、MAGE抗原は、GM−CSF若しくはIL−12のようなアジュバントと一緒に、メラニンA、チロシナーゼおよびgp100のような他の抗原と組合せ得、そして抗CD64抗体構築物、例えば611に融合し得る。
【0192】
他の適する抗原は、ウイルス性疾患の予防若しくは処置のためのウイルス抗原を包含する。ウイルス抗原の例は、限定されるものでないが、HIV−1 gag、HIV−1
env、HIV−1 nef、HBVコア、FAS、HSV−1、HSV−2、p17、HTLV、FELV、ORF2およびORF3抗原を挙げることができる。別の好ましい態様において、選択される抗原は、限定されるものでないがgp100若しくはPmel17を挙げることができる黒色腫特異的抗原である。別の好ましい態様において、選択される抗原は、原生動物特異的抗原、例えば真菌抗原(例えばカンジダ アルビカンス(Candida albicans))である。なお別の態様において、選択される抗原は、限定されるものでないが、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)若しくは梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)を挙げることができる細菌抗原である。本発明の抗体−細菌抗原複合物は、炭疽菌、ボツリヌス、破傷風、クラミジア、コレラ、ジフテリア、ライム病、梅毒および結核のような多様な細菌性疾患の処置若しくは予防においてであり得る(例えば、黄色ブドウ球菌(Staphyloloccus aureus)、溶血性連鎖球菌(Streotococcus hemolyticus)およびヒト結核菌(Mycobacterium tuberculsis))。
【0193】
製薬学的組成物
別の局面において、本発明は、製薬学的に許容できる担体と一緒に処方された本発明のモノクローナル抗体若しくはそれらの抗原結合部分(1個若しくは複数)の1種若しくは組合せを含有する組成物、例えば製薬学的組成物を提供する。こうした組成物は、本発明の(例えば2種若しくはそれ以上の異なる)抗体若しくは免疫複合体若しくは二重特異性分子の1種若しくは組合せを包含しうる。例えば、本発明の製薬学的組成物は、標的抗原上の多様なエピトープに結合する、若しくは相補的活性を有する抗体(または免疫複合体若しくは二重特異性物(bispecifics))の組合せを含み得る。
【0194】
本発明の製薬学的組成物はまた、併用療法で、すなわち他剤と組合せても投与し得る。例えば、併用療法は、最低1種の他の抗炎症若しくは免疫抑制剤と組合せた本発明の抗CD64抗体を包含し得る。併用療法で使用し得る治療薬の例は、下の本発明の抗体の用途に関する節により詳細に記述されている。
【0195】
本明細書で使用されるところの「製薬学的に許容できる担体」は、生理学的に適合性であるいずれかおよび全部の溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌薬、等張および吸収遅延剤などを包含する。好ましくは、担体は、(例えば注入(injection)若しくは注入(infusion)による)静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄若しくは表皮投与に適する。投与経路に依存して、有効成分、すなわち抗体、免疫複合体若しくは二重特異性分子は、化合物を不活性化しうる酸および他の天然の条件の作用から化合物を保護するため物質中に被覆されうる。
【0196】
本発明の製薬学的化合物は1種若しくはそれ以上の製薬学的に許容できる塩を包含しうる。「製薬学的に許容できる塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保持しかついかなる望ましくない毒物学的影響も与えない塩を指す(例えばBerge,S.M.ら(1977)J.Pharm.Sci.66:1−19を参照されたい)。こうした塩の例は酸付加塩および塩基付加塩を包含する。酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などのような非毒性の無機酸、ならびに脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などのような非毒性の有機酸由来のものを包含する。塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのようなアルカリ土類金属、ならびにN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどのような非毒性の有機アミン由来のものを包含する。
【0197】
本発明の製薬学的組成物は、製薬学的に許容できる抗酸化剤もまた包含しうる。製薬学的に許容できる抗酸化剤の例は:(1)アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどのような水溶性抗酸化剤;(2)アスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなどのような油溶性抗酸化剤、および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤を包含する。
【0198】
本発明の製薬学的組成物で使用しうる適する水性および非水性担体の例は、水、エタノール、多価アルコール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのような)、およびそれらの適する混合物、オリーブ油のような植物油、ならびにエチルオレエートのような注入可能な有機エステルを包含する。適正な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング物質の使用、分散剤の場合は必要とされる粒子径の維持、および界面活性剤の使用により維持し得る。
【0199】
これらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散助剤のような補助物質もまた含有しうる。微生物の存在の予防は、滅菌処置、上記、ならびに多様な抗菌および抗真菌薬、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの包含の双方により確実にしうる。糖、塩化ナトリウムなどのような等張剤を組成物に包含することもまた望ましいことができる。加えて、注入可能な製薬学的形態の持続吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅延させる剤の包含によりもたらされうる。
【0200】
製薬学的に許容できる担体は、滅菌の水性溶液若しくは懸濁剤、および滅菌の注入可能な溶液若しくは分散剤の即座の調製のための滅菌粉末を包含する。製薬学的有効成分のためのこうした媒体および剤の使用は当該技術分野で既知である。いずれかの慣習的媒体若しくは剤が有効成分と不適合性である場合を除き、本発明の製薬学的組成物中でのそれらの使用を企図している。補助的有効成分もまた組成物中に組み込み得る。
【0201】
治療的組成物は、典型的には無菌でありかつ製造および貯蔵の条件下で安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、若しくは高薬物濃度に適する他の規則的構造として処方し得る。担体は、例えば水、エタノール、多価アルコール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)ならびにそれらの適する混合物を含有する溶媒若しくは分散媒であり得る。適正な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用、分散剤の場合は必要とされる粒子径の維持、および界面活性剤の使用により維持し得る。多くの場合、等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールのような多価アルコール、若しくは塩化ナトリウムを組成物中に包含することが好ましいことができる。注入可能な組成物の持続吸収は、吸収を遅延させる剤、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に包含することによりもたらされ得る。
【0202】
滅菌の注入可能な溶液は、必要な量の有効成分を、必要とされるところの上で挙げられた成分の1種若しくは組合せと適切な溶媒中に組み込むこと、次いで滅菌精密濾過により製造し得る。一般に、分散剤は、基本的分散媒および上で挙げられた成分からの必要とされる他の成分を含有する滅菌ベヒクル中に、有効成分を組み込むことにより製造する。滅菌の注入可能な溶液の製造のための滅菌粉末の場合、好ましい製造方法は、その以前に滅菌濾過した溶液から有効成分およびいかなる付加的な所望の成分の粉末も生じる真空乾燥および凍結乾燥(freeze−drying)(凍結乾燥(lyophilization))である。
【0203】
単一の投薬形態物を製造するため担体物質と組合せ得る有効成分の量は、処置されてい
る被験体および特定の投与様式に依存して変動することができる。単一の投薬形態物を製造するため担体物質と組合せ得る有効成分の量は、一般に、治療効果を生じさせる組成物の量であることができる。一般に、100パーセントのうち、この量は、約0.01パーセントから約99パーセントまでの有効成分、好ましくは約0.1パーセントから約70パーセントまで、最も好ましくは約1パーセントから約30パーセントまでの、製薬学的に許容できる担体と組合せの有効成分の範囲にわたることができる。
【0204】
投薬レジメンは最適の所望の応答(例えば治療応答)を提供するように調節される。例えば、単回ボーラスを投与しても、数回の分割された用量を長時間にわたり投与しても、または、用量を治療状況の緊急の要件により示されるとおり比例して減少若しくは増大してもよい。非経口組成物を、投与の容易さおよび投薬量の均一性のため、投薬単位形態物に処方することがとりわけ有利である。本明細書で使用されるところの投薬単位形態物は、処置されるべき被験体の単位投薬量として適する物理的に別個の単位を指し;各単位は、必要とされる製薬学的担体とともに所望の治療効果を生じるよう計算された、予め決められた量の有効成分を含有する。本発明の投薬単位形態物の仕様は、(a)有効成分の独特の特徴および達成されるべき特定の治療効果、ならびに(b)個体の感受性の処置のための有効成分のような調合の技術分野に固有の制限により支配され、かつ、それらに直接依存する。
【0205】
抗体の投与のため、投薬量は、約0.0001から100mg/kgまで、およびより通常は0.01ないし5mg/kg宿主体重の範囲にわたる。例えば、投薬量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重若しくは10mg/kg体重、または1〜10mg/kgの範囲内であり得る。例示的処置レジメンは、週あたり1回、2週ごとに1回、3週ごとに1回、4週ごとに1回、月1回、3か月ごとに1回若しくは3ないし6か月ごとに1回の投与を必要とする。本発明の抗CD64抗体に好ましい投薬レジメンは、静脈内投与を介しての1mg/kg体重若しくは3mg/kg体重を包含し、抗体は以下の投与スケジュール、すなわち(i)6投薬量について4週ごと、その後3か月ごと;(ii)3週ごと;(iii)3mg/kg体重を1回、次いで3週ごとに1mg/kg体重の1つを使用して与える。
【0206】
いくつかの方法において、異なる結合特異性をもつ2種若しくはそれ以上のモノクローナル抗体を同時に投与し、この場合は投与される各抗体の投薬量は示される範囲内にある。抗体は通常複数の機会に投与される。単一投薬量の間の間隔は、例えば、週、月、3か月若しくは年であり得る。間隔はまた、患者における標的抗原に対する抗体の血中濃度を測定することにより示されるように不定期でもあり得る。いくつかの方法において、投薬量は約1〜1000μg/ml、およびいくつかの方法においては約25〜300μg/mlの血漿抗体濃度を達成するよう調節される。
【0207】
あるいは、抗体は除放性製剤として投与し得、その場合にはより少なく頻繁な投与が必要とされる。投薬量および頻度は患者における抗体の半減期に依存して変動する。一般に、ヒト抗体は最長の半減期を示し、次いでヒト化抗体、キメラ抗体およびヒト以外の抗体である。投薬量および投与の頻度は、処置が予防的であるか若しくは治療的であるかどうかに依存して変動し得る。予防的用途においては、相対的に低投薬量を長期間にわたり比較的頻繁でない間隔で投与する。若干の患者は彼らの生涯の残りの間、処置を受領し続ける。治療的用途においては、比較的短い間隔での比較的高投薬量が、疾患の進行が低下若しくは終了されるまで、および好ましくは患者が疾患の症状の部分的若しくは完全な改善を示すまで、ときに必要とされる。その後は患者に予防的レジメンを投与し得る。
【0208】
本発明の製薬学的組成物中の有効成分の実際の投薬量レベルは、患者に対し毒性であることなく、特定の患者、組成物および投与様式について所望の治療応答を達成するのに有
効である有効成分の量を得るように変動させうる。選択される投薬量レベルは、医学の技術分野で公知の、使用される本発明の特定の組成物、またはそれらのエステル、塩若しくはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用されている特定の化合物の排泄速度、処置の持続期間、使用される特定の組成物とともに使用される他の薬物、化合物および/若しくは物質、処置されている患者の齢、性別、重量、状態、全身の健康状態および以前の病歴ならびに類似の因子を包含する多様な薬物動態因子に依存することができる。
【0209】
本発明の抗CD64抗体の「治療上有効な投薬量」は、好ましくは、疾患の症状の重症度の低下、疾患の症状のない期間の頻度および持続期間の増大、若しくは疾患の苦痛による機能的障害若しくは身体障害の予防をもたらす。例えば、癌性腫瘍の処置のため、「治療上有効な投薬量」は、好ましくは、細胞増殖若しくは腫瘍の増殖を未処置の被験体に関して最低約20%、より好ましくは最低約40%、なおより好ましくは最低約60%、およびなおより好ましくは最低約80%阻害する。腫瘍の増殖を阻害する化合物の能力は、ヒト腫瘍における有効性を予測する動物モデル系で評価し得る。あるいは、組成物のこの特性は、化合物の阻害する能力を検査することにより評価し得、こうしたin vitroの阻害を当業者に既知のアッセイにより。治療上有効な量の治療的化合物は、腫瘍の大きさを減少させ得るか、若しくは被験体における症状を別の方法で改善し得る。当業者は、被験体の大きさ、被験体の症状の重症度、および特定の組成物若しくは選択された投与経路のような因子に基づき、こうした量を決定することが可能であろう。
【0210】
本発明の組成物は、当該技術分野で既知の多様な方法の1種若しくはそれ以上を使用して、1種若しくはそれ以上の投与経路を介して投与し得る。当業者により認識されるであろうとおり、投与の経路および/若しくは様式は所望の結果に依存して変動することができる。本発明の抗体に好ましい投与経路は、例えば注入(injection)若しくは注入(infusion)による静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄若しくは他の非経口投与経路を包含する。本明細書で使用されるところの「非経口投与」という句は、通常は注入による腸および局所投与以外の投与様式を意味しており、そして、制限なしに、静脈内、筋肉内、動脈内、硬膜下腔内、嚢内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、気管内、皮下、表皮下、関節内、皮膜下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注入(injection)および注入(infusion)を包含する。
【0211】
あるいは、本発明の抗体は、局所、表皮若しくは粘膜投与経路のような非腸管外経路を介して、例えば鼻内で、経口で、膣で、直腸で、舌下で若しくは局所で投与し得る。
【0212】
有効成分は、植込物、経皮貼付剤および微小被包化送達系を包含する制御放出製剤のような、迅速な放出に対して化合物を保護することができる担体とともに調製し得る。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸のような生物分解可能な生物適合性ポリマーを使用し得る。こうした製剤の多くの製造方法は特許を受けているか若しくは当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R.Robinson編、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、1978を参照されたい。
【0213】
治療的組成物は、当該技術分野で既知の医療用具を用いて投与し得る。例えば、好ましい一態様において、本発明の治療的組成物は、米国特許第5,399,163号;同第5,383,851号;同第5,312,335号;同第5,064,413号;同第4,941,880号;同第4,790,824号;若しくは同第4,596,556号に開示される装置のような無針注入装置で投与し得る。本発明で有用な公知の植込物およびモジュールの例は:制御された速度で医薬品を分注するための植込可能な微量注入ポンプを開示する米国特許第4,487,603号明細書;皮膚を通して医薬品を投与するための治療装置を開示する米国特許第4,486,194号明細書;正確な注入速度で医薬品を送達するための医薬品注入ポンプを開示する米国特許第4,447,233号明細書;連続的薬物送達のための可変流量の植込可能な注入装置を開示する米国特許第4,447,224号明細書;多室区画を有する浸透圧薬物送達系を開示する米国特許第4,439,196号明細書;および浸透圧薬物送達系を開示する米国特許第4,475,196号明細書を包含する。多くの他のこうした植込物、送達系およびモジュールが当業者に既知である。
【0214】
ある態様において、本発明のヒトモノクローナル抗体は、in vivoでの適正な分布を確実にするように処方し得る。例えば、血液脳関門(BBB)は多くの高度に親水性の化合物を排除する。本発明の治療的化合物がBBBを横断することを確実にするために(所望の場合)、それらは例えばリポソーム中に処方し得る。リポソームの製造方法については、例えば米国特許第4,522,811号;同第5,374,548号;および同第5,399,331号明細書を参照されたい。リポソームは、特定の細胞若しくは器官中に選択的に輸送されて従って標的薬物送達を高める1個若しくはそれ以上の部分を含みうる(例えばV.V.Ranade(1989)J.Clin.Pharmacol.29:685を参照されたい)。例示的ターゲッティング部分は、葉酸若しくはビオチン(例えばLowらへの米国特許第5,416,016号明細書を参照されたい);マンノシド(Umezawaら、(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1038);抗体(P.G.Bloemanら(1995)FEBS Lett.357:140;M.Owaisら(1995)Antimicrob.Agents Chemother.39:180);界面活性剤プロテインA受容体(Briscoeら(1995)Am.J.Physiol.1233:134);p120(Schreierら(1994)J.Biol.Chem.269:9090を参照されたい)を包含し;K.Keinanen;M.L.Laukkanen(1994)FEBS Lett.346:123;J.J.Killion;I.J.Fidler(1994)Immunomethods :273もまた参照されたい。
【0215】
本発明の用途および方法
本発明のヒト抗体、抗体組成物および方法は、CD64に媒介される障害の診断および処置を伴う無数のin vitroおよびin vivoの診断的および治療的利用性を有する。例えば、これらの分子は、多様な障害を処置、予防および診断するために、例えばin vitro若しくはex vivoの培養物中の細胞、または例えばin vivoでヒト被験体に投与し得る。本明細書で使用されるところの「被験体」という用語はヒトおよびヒト以外の動物を包含することを意図している。ヒト以外の動物は全部の脊椎動物、例えば、ヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類および爬虫類のような哺乳動物および哺乳動物以外を包含する。CD64に対する抗体を別の剤と一緒に投与する場合、該二者は順番に若しくは同時にのいずれでも投与し得る。
【0216】
in vivoおよびin vitroの本発明の抗体組成物(例えばヒトモノクローナル抗体、多重特異性および二重特異性分子、免疫複合体若しくはワクチン)の適する投与経路は当該技術分野で公知であり、そして当業者により選択され得る。例えば、抗体組成物は注入(例えば静脈内若しくは皮下)により投与し得る。使用される分子の適する投薬量は、被験体の齢および重量、ならびに抗体組成物の濃度および/若しくは製剤に依存することができる。
【0217】
検出方法
一態様において、本発明の抗体(例えばヒトモノクローナル抗体、多重特異性および二重特異性分子ならびに組成物)を使用して、CD64のレベル、若しくはCD64をそれらの膜表面に含有する細胞のレベルを検出し得、それらのレベルをその後、ある疾患の診
断に結びつけ得る。これは、例えば、抗体とCD64の間の複合体の形成を見込む条件下で、サンプル(in vitroサンプルのような)および対照サンプルを抗CD64抗体と接触させることにより達成し得る。抗体とCD64の間で形成されるいかなる複合体も、サンプルおよび対照中で検出かつ比較する。例えば、ELISAおよびフローサイトメトリーアッセイのような当該技術分野で公知の標準的検出方法を、本発明の組成物を使用して実施し得る。
【0218】
従って、一局面において、本発明はさらに、本発明の抗体若しくはその部分とCD64の間での複合体の形成を見込む条件下で、サンプルおよび対照サンプルを抗体若しくはCD64に特異的に結合するその抗原結合部分と接触させることを含んでなる、サンプル中のCD64(例えばヒトCD64抗原)の存在の検出若しくはCD64の量の測定方法を提供する。複合体の形成をその後検出し、対照サンプルと比較したサンプル間の複合体形成の差違は、サンプル中のCD64の存在を暗示する。
【0219】
なお別の態様において、本発明は、in vivo若しくはin vitroでのFc発現細胞の存在の検出若しくはその量の定量方法を提供する。該方法は、(i)検出可能なマーカーに複合させた本発明の組成物(例えばモノクローナル抗体または多若しくは二重特異性分子)あるいはそのフラグメントを被験体に投与すること;(ii)前記検出可能なマーカーを検出してFc発現細胞を含有する領域を同定するための手段に被験体を曝露することを含んでなる。
【0220】
本発明の組成物(例えばヒト抗体、多重特異性および二重特異性分子)はまた、例えばこうした細胞を標識するためにFcγR若しくはCD64を発現する細胞を標的とするのにも使用し得る。こうした使用のため、検出され得る分子に結合剤を連結し得る。従って、本発明はFcγRのようなRc受容体すなわちCD64を発現する細胞のex vivo若しくはin vitroでの位置推定方法を提供する。検出可能な標識は、例えば放射性同位体、蛍光化合物、酵素若しくは酵素補助因子であり得る。
【0221】
抗CD64抗体の用途
該抗体は、CD64の機能を阻害若しくはブロックするのに使用し得、それは順にある疾患の症状の予防若しくは改善に結びつけられてそれによりCD64を該疾患の媒介物質として関係しているとみなし得る。非疾患状態に比較しての疾患状態の間のCD64発現の差違は、該疾患に罹っている被験体からの試験サンプルおよび対照サンプルを、抗体とCD64の間での複合体の形成を見込む条件下で抗CD64抗体と接触させることにより測定し得る。抗体とCD64の間で形成されるいかなる複合体も、サンプルおよび対照中で検出かつ比較する。
【0222】
一態様において、本発明のヒト抗体若しくはその結合部分を、細胞表面上の受容体をキャッピングかつ排除することによるような、エフェクター細胞上のCD64のレベルを調節するのに使用し得る。抗Fc受容体抗体の混合物もまたこの目的上使用し得る。
【0223】
好ましい一態様において、抗CD64抗体は免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)を処置するのに使用し得る。ITPはIgGと会合した血小板の自己抗体媒介性の破壊を特徴とする自己免疫疾患である(Crow ARとLazarus AH(2003)J periatr Hematol Oncol 25 Suppl 1:S14−18)。抗CD64抗体はFcγ受容体を結合し、そしてFcγ受容体媒介性の食作用を阻害して、単球への血小板の結合を阻害することにより血小板の寿命を延長させる(Wallace PKら(1997)Cancer Immunol Immunother 45:137−41;Wiener Eら(2000)Eur J Haematol 65:399−406)。
【0224】
二重特異性および多重特異性試薬の用途
上述された二重特異性および多重特異性ヒト抗体を用いる自己免疫障害、癌若しくは病原性感染症のような障害の処置方法がさらに本発明の範囲内にある。こうした二重特異性および多重特異性分子は、CD64に対する最低1種の結合特異性(例えば本発明のヒト抗CD64抗体)および標的抗原に対する最低1種の結合特異性を包含する。別の態様において、該抗体は同一の標的抗原および/若しくは受容体の異なるエピトープへの抗原結合領域に対する第三の結合特異性を包含する。被験体中の不必要な細胞、すなわち標的細胞若しくは抗原の排除方法は、該被験体を本発明の二重特異性若しくは多重特異性分子で処置することを包含する。一態様において、こうした方法は、本発明の二重特異性若しくは多重特異性分子を、標的細胞の除去が望ましい被験体(例えば腫瘍をもつ被験体)に投与することを包含する。別の態様において、こうした方法は、被験体から血液若しくは血液細胞のサンプルのアリコートを得ること、製薬学的に許容できる担体中の治療上有効な用量の本発明の二重特異性若しくは多重特異性抗体で該血液若しくは血液細胞をex vivoで処理すること、および該処理した血液若しくは血液細胞を被験体に戻すことを包含する。好ましくは、血液のサンプルの細胞を単離しかつ培養物中で増殖させ、また、より好ましくは、血液のサンプルの細胞をCD64の数若しくは活性を高める剤で処理する。こうした剤は、サイトカイン、リンホカイン若しくは成長因子、例えばG−CSF、GM−CSF、IFN−γ、TNF、ならびにIL−2、IL−10およびIL−12のようなインターロイキンを包含する。
【0225】
標的特異的エフェクター細胞、例えば本発明の組成物(例えばヒト抗体、多重特異性および二重特異性分子)に連結したエフェクター細胞もまた治療薬として使用し得る。ターゲッティングのためのエフェクター細胞は、マクロファージ、好中球若しくは単球のようなヒト白血球であり得る。他の細胞は好酸球、ナチュラルキラー細胞および他のIgG若しくはIgA受容体をもつ細胞を包含する。所望の場合は、エフェクター細胞は処置されるべき被験体から得ることができる。標的特異的エフェクター細胞は、生理学的に許容できる溶液中の細胞の懸濁液として投与し得る。投与される細胞の数は10〜10の桁であり得るが、しかし治療目的に依存して変動することができる。一般に、該量は、標的細胞、例えば目的の標的を発現する腫瘍細胞での位置推定を得るため、および例えば食作用による細胞の死滅を遂げるために十分であることができる。投与経路もまた変動し得る。
【0226】
標的特異的エフェクター細胞での治療は、標的とされる細胞の除去のための他の技術とともに実施し得る。例えば、本発明の組成物(例えばヒト抗体、多重特異性および二重特異性分子)ならびに/若しくはこれらの組成物を備えたエフェクター細胞を使用する抗腫瘍療法を、化学療法とともに使用し得る。加えて、2種の異なる細胞傷害性エフェクター集団を腫瘍細胞拒絶に向けるために組合せ免疫療法を使用しうる。例えば、抗FcγRI若しくは抗CD3に連結した抗CD64抗体をIgG若しくはIgA受容体特異的結合剤とともに使用しうる。
【0227】
本発明の二重特異性および多重特異性分子は、細胞表面上の受容体のキャッピングおよび排除によるような、エフェクター細胞上のFcγR若しくはFcγRレベルを調節するのにもまた使用し得る。抗Fc受容体の混合物もまたこの目的上使用し得る。
【0228】
補体を結合するIgG1、2若しくは3またはIgMからの部分のような補体結合部位を有する本発明の組成物(例えばヒト抗体、多重特異性および二重特異性分子ならびに免疫複合体)は、補体の存在下でもまた使用し得る。一態様において、本発明の結合剤および適切なエフェクター細胞での標的細胞を含んでなる細胞の一集団のex vivo処理は、補体若しくは補体を含有する血清の添加により補われ得る。本発明の結合剤で被覆し
た標的細胞の食作用は補体タンパク質の結合により改善され得る。別の態様において、本発明の組成物(例えばヒト抗体、多重特異性および二重特異性分子)で被覆した標的細胞もまた補体により溶解されうる。なお別の態様において、本発明の組成物は補体を活性化しない。
【0229】
本発明の組成物(例えばヒト抗体、多重特異性および二重特異性分子ならびに免疫複合体)はまた補体と一緒にも投与し得る。従って、ヒト抗体、多重特異性若しくは二重特異性分子および血清若しくは補体を含んでなる組成物が本発明の範囲内にある。これらの組成物は、補体がヒト抗体、多重特異性若しくは二重特異性分子に対し密接な近接に配置されるために有利である。あるいは、本発明のヒト抗体、多重特異性若しくは二重特異性分子、および補体若しくは血清を別個に投与し得る。
【0230】
免疫複合体の使用および併用療法
前述されたとおり、本発明のヒト抗CD64抗体は一方若しくは他方のそれ以上の治療薬、例えば細胞傷害剤、放射性毒剤若しくは免疫抑制剤と共投与し得る。該抗体は該剤に(免疫複合体として)連結し得るか、若しくは該剤と別個に投与し得る。後者の場合(別個の投与)、抗体は該剤の前、後若しくはそれと同時に投与し得るか、または他の既知の治療、例えば抗癌治療、例えば放射線療法と共投与し得る。こうした治療薬は、とりわけ、単独では患者に対し毒性若しくは準毒性であるレベルでのみ有効である、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラチン硫酸ブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシル、およびシクロホスファミドヒドロキシ尿素を包含する。シスプラチンは4週ごとに1回100mg/ml用量として静脈内投与し、また、アドリアマイシンは21日ごとに1回60〜75mg/ml用量として静脈内投与する。
【0231】
一態様において、本発明の免疫複合体は、化合物(例えば治療薬、標識、細胞毒、放射性毒、免疫抑制薬など)を抗体に連結することにより、CD64細胞表面受容体を有する細胞にこうした化合物の標的を向けるのに使用し得る。従って、本発明はまた、(例えば放射性同位体、蛍光化合物、酵素若しくは酵素補助因子のような検出可能な標識を用いる)CD64およびCD64リガンドを発現する細胞のex vivo若しくはin vitro位置推定方法も提供する。あるいは、免疫複合体は、(例えば自己免疫障害における)免疫応答を阻害する手段として、細胞毒若しくは放射性毒の標的を、CD64を発現する腫瘍細胞に向けてそれにより腫瘍細胞を排除するか、またはCD64を発現する抗原提示細胞に向けてそれによりAPCを排除するようなCD64に向けることにより、CD64細胞表面受容体を有する細胞を死滅させるのに使用し得る。他の態様において、例えばサイトカインで被験体を処置することにより、Fcγ若しくはFcγ受容体の発現若しくは活性を調節する、例えば高める若しくは阻害する剤で被験体を付加的に処置し得る。多重特異性分子での処置の間の投与に好ましいサイトカインは、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロン−γ(IFN−γ)および腫瘍壊死因子(TNF)のを包含する。
【0232】
別の態様において、被験体はリンホカイン製剤で付加的に処置し得る。CD64を高度に発現しない癌細胞は、リンホカイン製剤を使用してそうするよう誘導し得る。リンホカイン製剤は、より有効な治療に至り得る、腫瘍の細胞のなかでのCD64のより均一な発現を引き起こし得る。投与に適するリンホカイン製剤は、インターフェロン−γ、腫瘍壊死因子およびそれらの組合せを包含する。これらは静脈内で投与し得る。リンホカインの適する投薬量は10,000ないし1,000,000単位/患者である。
【0233】
ワクチンの使用
特定の一態様において、本発明は、本発明のワクチン組成物を使用して、癌抗原、病原体若しくは病原体により感染された細胞上で見出される抗原のような抗原に対し被験体を
免疫することによる、目的の抗原に対する免疫応答の刺激方法を提供する。こうした方法は、ワクチン複合体を含んでなる組成物を製薬学的に許容できる担体中で被験体に投与することを包含し、この複合体は、病原性の感染性生物体の抗原若しくは感染した細胞の抗原または癌細胞の抗原のような目的の1種若しくはそれ以上の抗原に連結した本発明の抗CD64抗体を含んでなる。本発明のワクチン組成物は、抗原提示細胞上のCD64への抗CD64抗体の結合を介して抗原の標的を抗原提示細胞に向け、従って該抗原に対する免疫応答を促進するために抗原提示を増大させる。
【0234】
自己免疫疾患の処置
該組成物は、CD64により媒介されるかもしくはそれが関係する疾患、例えば、体液性および細胞性双方の自己免疫の組合せを伴うものを包含する自己免疫疾患、移植片拒絶反応若しくは移植片対宿主病(GVHD)のようなCD64の発現、典型的には過剰発現を特徴とする疾患を処置するのにin vitro若しくはin vivoで使用し得る。一態様において、本発明の抗体はCD64に対する天然のリガンドIgGの結合部位をブロックすることができ、その結果結合が低下若しくは自己抗原に対する自己抗体の結合を予防して、それにより標的細胞、例えば特発性血小板減少性紫斑病において血小板若しくは貧血において赤血球の食作用を予防するとみられる。該組成物は、CD64を発現する悪性病変、例えば急性白血病を包含するCD64発現細胞により媒介されるいずれかの疾患、またはマクロファージ、活性化された好中球、樹状細胞若しくはNK細胞により媒介されるいずれかの自己免疫疾患を処置するのにもまた使用し得る。こうした疾患の例は、限定されるものでないが、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性硬化症、アトピー性皮膚炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、ヴェゲナー肉芽腫、オーメン症候群、慢性腎不全、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、炎症性腸疾患(IBD;クローン病、潰瘍性大腸炎およびスプルー、シェリアキー、セリアック病を包含する)、インスリン依存型糖尿病(IDDM)、急性感染性単核症、HIV、ヘルペスウイルス関連疾患、多発性硬化症(MS)、溶血性貧血、甲状腺炎、スティッフマン症候群、尋常性天疱瘡ならびに重症筋無力症(MG)を挙げることができる。
【0235】
癌の処置
別の態様において、本発明は、CD64発現を伴う腫瘍原性障害、例えばホジキン病、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、未分化大細胞性リンパ腫(ALCL)、皮膚T細胞リンパ腫、結節性核切れ込み小細胞型リンパ腫、リンパ球性リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、レナートリンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、成人T細胞白血病(T−ALL)、胚中心細胞/中心細胞(cb/cc)濾胞性リンパ腫癌、B系統のびまん性大細胞型リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ節症(AILD)様T細胞リンパ腫、HIV関連の体腔に基づく(body cavity based)リンパ腫、胚性癌腫、鼻咽喉の未分化癌(例えばシュミンケ(Schmincke)腫瘍)、キャッスルマン病、カポシ肉腫および他のB細胞リンパ腫の処置若しくは予防方法を提供する。該方法は、該障害を処置若しくは予防するのに有効な量の本発明の抗体組成物を被験体に投与することを伴う。該抗体組成物は、単独で、または、CD64媒介性の疾患を処置若しくは予防するように抗体組成物とともに若しくは相乗的に作用する細胞傷害性若しくは放射性毒の剤のような別の治療薬と一緒に、投与し得る。
【0236】
キット
本発明の組成物(例えば抗体、ヒト抗体、免疫複合体、二重特異性分子およびワクチン複合体)ならびに使用説明書を含んでなるキットもまた本発明の範囲内にある。該キットはさらに、免疫抑制試薬、細胞傷害剤若しくは放射性毒剤、または本発明の1種若しくはそれ以上の付加的なヒト抗体(例えば、第一のヒト抗体と別個の、CD64抗原中の1エピトープに結合する補足活性を有するヒト抗体)のような1種若しくはそれ以上の付加的な試薬を含有し得る。キットは、典型的には、該キットの内容の意図される使用を示すラ
ベルを包含する。ラベルという用語は、キット上に若しくはそれとともに供給されるかまたは該キットに別の方法で付随するいかなる文書若しくは記録媒体も包含する。
【0237】
本発明は、さらに制限すると解釈されるべきでない、以下の実施例によりさらに具体的に説明される。本明細書を通じて引用される全部の参考文献、Genbankエントリ、特許および公開特許出願、ならびに図および配列表の内容は、引用することにより本明細書に明らかに組み込まれる。
実施例
【実施例1】
【0238】
CD64に対するヒトモノクローナル抗体の生成
トランスジェニックHuMabマウス
CD64に対する完全にヒトのモノクローナル抗体は、ヒト抗体遺伝子を発現するHCo7系統のHuMabトランスジェニックマウスを使用して製造した。このマウス系では、内因性のマウスκ L鎖遺伝子は、Chenら(1993)EMBO J.12:811−820に記述されるとおりホモ接合性に破壊されており、また、内因性のマウスH鎖遺伝子は、PCT公開第WO 01/09187号明細書の実施例1に記述されるとおりホモ接合性に破壊されている。さらに、このマウス系統は、Fishwildら(1996)Nature Biotechnology 14:845−851に記述されるところのヒトκ L鎖導入遺伝子KCo5、ならびに米国特許第5,545,806号;同第5,625,825号;および同第5,545,807号明細書に記述されるところのヒトH鎖導入遺伝子HCo7を運搬する。
【0239】
HuMab免疫化:
CD64に対する完全にヒトのモノクローナル抗体を生成させるため、ヒトCD64の細胞外ドメインをHuMabマウスで抗体を生じさせることにおける初回免疫原として使用し、次いで、天然の完全長CD64を発現するU937細胞で腹腔内で追加免疫した。HuMabマウスの一般的な免疫化スキームは、Lonberg,N.ら(1994)Nature 368(6476):856−859;Fishwild,D.ら(1996)Nature Biotechnology 14:845−851およびPCT公開第WO 98/24884号明細書に記述されている。マウスは抗原の最初の注入に際して6〜16週齢であった。
【0240】
免疫応答を後眼窩出血によりモニターした。血漿をELISAにより(下述されるとおり)スクリーニングし、そして十分な力価の抗CD64ヒト免疫グロブリンを伴うマウスを融合に使用した。マウスを、屠殺および脾の取り出しの3および2日前に抗原で静脈内に追加免疫した。典型的には、のための10〜15回の融合を実施し、そして数ダースのマウスを免疫した。
【0241】
抗IRTA5抗体を産生するHuMabマウスの選択:
CD64を結合した抗体を産生するHuMabマウスを選択するために、免疫したマウスからの血清を、元はFishwild,D.ら(1996)に記述されたところの改変ELISAにより検査した。簡潔には、マイクロタイタープレートをPBS中1〜2μg/mlの精製した組換えCD64、50μl/ウェルで被覆し、4℃で一夜インキュベートし、その後PBS中5%BSAの200μl/ウェルでブロッキングした。CD64で免疫したマウスからの血漿の希釈を各ウェルに添加し、そして周囲温度で1〜2時間インキュベートした。プレートをPBS/Tweenで洗浄し、そしてその後、アルカリホスファターゼと結合したヤギ抗ヒトκ L鎖ポリクローナル抗体とともに室温で1時間インキュベートした。洗浄した後にプレートをpNPP基質で発色させ、そして分光光度計によりOD 415〜650で分析した。抗CD64抗体の最高力価を発生したマウスを融
合に使用した。融合は下述されるとおり実施し、そしてハイブリドーマ上清をELISAにより抗CD64活性について試験した。
【0242】
CD64に対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの生成:
マウス脾細胞をHuMabマウスから単離し、標準的プロトコルに基づきマウス骨髄腫細胞株にPEGを用いて融合した。生じるハイブリドーマをその後、CD64特異的抗体の産生についてスクリーニングした。免疫したマウスからの脾リンパ球の単細胞懸濁液を、1/4の数のP3X64−Ag8.653非分泌性マウス骨髄腫細胞(ATCC、CRL 1580)若しくはSP2/0非分泌性マウス骨髄腫細胞(ATCC、CRL 1581)に50%PEG(Sigma)を用いて融合した。細胞を平底マイクロタイタープレート中におよそ1×10/ウェルでプレーティングし、次いで、DMEM(Mediatech、CRL 10013、高グルコース、L−グルタミンおよびピルビン酸ナトリウムを含む)中に10%ウシ胎児血清、10%P388D1(ATCC、CRL TIB−63)馴化培地、3〜5%origen(IGEN)、ならびに5mM HEPES、0.055mM 2−メルカプトエタノール、50mg/mlゲンタマイシンおよび1×HAT(Sigma、CRL P−7185)を含有する選択培地中で約2週間インキュベートした。1〜2週後に、HATをHTで置換した培地中で細胞を培養した。個々のウェルをその後、ヒト抗CD64モノクローナルIgG抗体についてELISA(下述する)によりスクリーニングした。広範囲のハイブリドーマ増殖が一旦発生すれば、培地を通常10〜14日後にモニターした。抗体を分泌するハイブリドーマを再プレーティングし、再度スクリーニングし、そして、ヒトIgGについてなお陽性の場合は、抗CD64モノクローナル抗体を限界希釈により最低2回サブクローニングした。安定なサブクローンをその後in vitroで培養して、特徴付けのため組織培養培地中で少量の抗体を生成させた。
【0243】
ハイブリドーマクローン611をさらなる分析に選択した。
【実施例2】
【0244】
ヒトモノクローナル抗体611の構造の特徴付け
611モノクローナル抗体のHおよびL鎖可変領域をコードするcDNA配列を、標準的PCR技術を使用して611ハイブリドーマから得、そして標準的DNA配列決定技術を使用して配列決定した。
【0245】
611のH鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図1Aならびにそれぞれ配列番号9および7に示す。
【0246】
611のL鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図1Bならびにそれぞれ配列番号10および8に示す。
【0247】
611のH鎖免疫グロブリン配列の既知のヒト生殖系列免疫グロブリンH鎖配列との比較は、611のH鎖がヒト生殖系列VH 3−33からのVHセグメント、未決定のDセグメント、およびヒト生殖系列JH4からのJHセグメントを利用していることを示した。611のVH配列の生殖系列VH 3−33配列へのアライメントを図2に示す。CDR領域決定のKabatの系を使用する611のVH配列のさらなる分析は、図1Aおよび2、ならびにそれぞれ配列番号1、2および3に示されるところのH鎖CDR1、CDR2およびCD3領域の描写に至った。
【0248】
611のL鎖免疫グロブリン配列の既知のヒト生殖系列免疫グロブリンL鎖配列との比較は、611のL鎖が、ヒト生殖系列VK L6からのVLセグメントおよびヒト生殖系列JK2からのJKセグメントを利用していることを示した。611のVL配列の生殖系
列VK L6配列へのアライメントを図3に示す。CDR領域決定のKabatの系を使用する611のVL配列のさらなる分析は、図1Bおよび3、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に示されるところのL鎖CDR1、CDR2およびCD3領域の描写に至った。
【0249】
どのHおよびL鎖アイソタイプが抗体611により利用されているかを決定するため、抗体をELISAにより試験した。ELISAプレートを、10μg/ml PBS中のヤギ抗ヒトκ鎖、50μl/ウェルで被覆し、そして4℃で一夜インキュベートした。プレートを洗浄しかつ5%PBA(5%ウシ血清アルブミンおよび0.05%アジ化ナトリウムを含有するPBS)、150μl/ウェルでブロッキングし、そして37℃で最低1時間インキュベートした。プレートをその後洗浄し、そして融合からの上清を50〜75μl/ウェルで添加した。プレートを、10、1 0.1および0.01μg/mlの陰性対照としてのPBAならびに陽性対照としてのH22(ヒト化抗CD64 mAb)を使用して37℃で1〜2時間インキュベートした。プレートをその後洗浄し、そしてアルカリホスファターゼ標識抗ヒトγ鎖特異的抗体若しくはアルカリホスファターゼ標識抗ヒトIgG1を50μl/ウェルで添加した。プレートを37℃で1〜2時間インキュベートしかつ洗浄した。1mg/mlのPNPP基質をアッセイ混合物に添加した。ODを発色後に読み取った。モノクローナル抗体611はヒトκ L鎖およびヒトγ H鎖双方を発現することが示され、またヒトIgG1抗体であることが示された。
【実施例3】
【0250】
モノクローナル抗体611はCD64上のIgGリガンド結合部位の外側を結合する
モノクローナル抗体611を、CD64を発現するU937細胞を使用する結合競合アッセイおよびフローサイトメトリー(FACS分析)により、IgGに対する結合について試験した。CD64を発現するU937細胞を、過剰の(3mg/ml)未標識ヒトIgGの存在下で、多様な濃度のFITC標識611(1μg/ml)、FITC標識H22(ヒト化抗CD64、0.2μg/ml)若しくはFITC標識非特異的ヒトIgG(0.1μg/ml)とともに氷上で1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、そして標準的手順を使用するフローサイトメトリーにより細胞関連の蛍光について評価した。HuMAb 611はヒトIgGの存在下でCD64に結合し、それがリガンド結合部位の外側を結合することを示す。ネズミ抗体H22もまたリガンド結合部位の外側を結合するが、しかし非特異的IgGはしない。該結果を図4に示す。加えて、該アッセイをIgGの非存在下で実施し、そして、HuMAb 611は、CD64を発現するU937細胞に結合することがなお可能であった。
【実施例4】
【0251】
ネズミおよびヒト化抗CD64モノクローナル抗体を用いる交差競合試験。
【0252】
611と他のモノクローナル抗体の間で結合を比較するため、U937細胞を使用する交差競合試験およびFACS分析を上のとおり実施した。CD64を発現するU937細胞を、多様な濃度の未標識のH22、611若しくはM32と一緒に、固定した濃度のM32−FITC(FITCで標識したネズミのモノクローナル抗CD64、2μg/ml)、197−FITC(FITCで標識したネズミのモノクローナル抗CD64、1μg/ml)若しくは611−FITC(1μg/ml)とともにインキュベートした。細胞を洗浄し、そして細胞に関連する蛍光についてフローサイトメトリーによりアッセイした。未標識のHuMAb 611は、FITCで標識した抗体H22、M32およびM197のCD64への結合を阻害した。加えて、FITC標識した611のCD64への結合に対する未標識抗体H22、M32およびM197の影響を試験するためのアッセイを実施した。各未標識抗体は、CD64を発現するU937細胞へのFITC標識611の結合を阻害することが可能であった。
【実施例5】
【0253】
CD64に対するヒトモノクローナル抗体の機能活性
HuMAb 611を下述されるとおり試験し、そして、ヒト化抗CD64抗体H22(Graziano,R.F.ら(1995)J.Immunol 155(10):4996−5002およびPCT公開第WO 94/10332号明細書)に類似の様式でCD64の表面発現を抑制的調節することおよびCD64媒介性の食作用を阻害することが示された。
【0254】
表面調節試験のため、CD64を発現するU937細胞を、多様な濃度のmAb H22若しくは611とともに4℃若しくは37℃のいずれかで2時間インキュベートした。細胞を洗浄し、そしてFITC標識した抗ヒト抗体とともにインキュベートした。細胞を洗浄し、そしてフローサイトメトリーにより細胞関連の蛍光について評価した。結果を図5に示す。CD64の抑制的調節パーセント(%)は、細胞を4℃に対し37℃でインキュベートした場合に見られる蛍光量の比である。
【0255】
食作用アッセイは、Wallace,P.K.ら(1997)J.Leukocyte
Biology 62:469−479に記述されるとおり実施した。簡潔には、改変二色フローサイトメトリーアッセイを使用して、赤血球(RBC)のmono−D媒介性の食作用に対する611の効果を評価した。Rh+の志願者から静脈穿刺によりヘパリン中に収集した標的RBCを、細胞膜中に安定に挿入する赤色蛍光親油性色素PKH−24(Sigma)で標識した。精製した単球エフェクター細胞を、10%ウシ胎児血清を含有する完全培地(CM)に再懸濁し、そして200μlの容量中ウェルあたり5×10エフェクター細胞の密度で96ウェル滅菌ポリプロピレンプレートに移した。単球を、対照としてCM単独中、若しくは160UのヒトrIFN−γとともにのいずれかでインキュベートした。一夜インキュベーション後に、単球エフェクターを2回洗浄してサイトカインを除去し、そして新鮮CMに再懸濁した。抗CD64モノクローナル抗体611を単球に添加した。Mono−D(0.1μg/ml)およびPKH−26で標識したRBC(5:1のエフェクター対標的比)を添加して200μlの最終容量をなし、そしてアッセイを37℃で90分間インキュベートした。食作用は、FITC結合した抗CD14 Abで単球を標識した後にフローサイトメトリーによりアッセイした。CD14陽性単球をFUチャンネルで検出し、また、PDH−26陽性RBCをFL2チャンネルで検出した。食作用は、FITC標識したエフェクターによるPKH−26標識した標的細胞の摂取により示された。Mono−D媒介性の食作用を、Mono−Dの存在下で発生する食作用の総量から抗体の非存在下で発生する非特異的食作用の割合を減算することにより計算した。結果を図6に示す。HuMAb 611はH22に類似の様式でCD64媒介性の食作用を阻害することが示された。
【実施例6】
【0256】
抗CD64二重特異性抗体の特徴付け
二重特異性抗体の生成
抗CD64抗体結合部分および細菌タンパク質に結合する第二の抗体を含んでなる二特異的抗体を使用して、ヒトCD64を発現するよう工作されたトランスジェニックマウスモデルにおける該二重特異性抗体の抗CD64抗体部分のCD64への特異的結合を示した。
【0257】
2種のHuMAbモノクローナル抗体、具体的には抗CD64抗体611および抗細菌抗体9A7を使用して二重特異性抗体を生成させた。HuMAbのそれぞれのF(ab’)フラグメントをペプシン消化により生成させ、そしてSuperdex 200ゲル濾過クロマトグラフィーにより均質まで精製した。サイズ排除HPLCを実施し、そして双方のF(ab’)フラグメントは95%超純粋であることが見出された。個別の611および9A7 Fab’フラグメントをその後、メルカプトエタノールアミン(MEA)でのF(ab’)フラグメントのH鎖間ジスルフィド結合の穏やかな還元により生成させた。サイズ排除HPLCを実施し、そして611および9A7 Fab’フラグメントが90%超純粋であることが見出された。611および9A7 Fab’フラグメントを、G−25カラムクロマトグラフィーにより遊離MEAから分離した。611 Fab’フラグメントをジニトロチオベンゾエート(DTNB)とともにインキュベートして611 Fab’−TNB複合物を生成させた。9A7 Fab’フラグメントおよび611 Fab’−TNB複合物を1:1のモル比で室温で一夜混合した。生じる二重特異性抗体をSuperdex 200サイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。
【0258】
二重特異性抗体の結合特異性の特徴付け
611×9A7二重特異性抗体を使用して、ヒトCD64トランスジェニックマウスからの血液サンプルをCD64発現細胞型への結合について試験した。ヒトCD64導入遺伝子を発現するトランスジェニックマウス若しくは非トランスジェニックの同腹子から血液を採取した。血液を30μg/mlの濃度の二重特異性抗体と室温で30分間インキュベートした。血液をその後洗浄し、そしてFITC標識した抗ヒトIgG抗体とともに室温で30分間インキュベートした。赤血球を溶解し、そして残存する白血球をフローサイトメトリーにより染色について分析した。リンパ球、単球および好中球集団に対応する領域をゲートし、そして個別に分析した。抗ヒトCD64を含んでなる二特異的抗体はヒトCD64を発現する細胞に特異的に結合した。ヒトCD64は、ヒトCD64トランスジェニックマウスの単球、およびより少ない程度まで好中球上で発現されることが示された。ヒトCD64はトランスジェニックマウスのリンパ球により発現されなかった。結果を図7に示す。
【0259】
本実施例は、ヒトCD64に対する完全にヒトの抗体が、ヒトCD64を発現するよう工作された動物の血液から単離した免疫細胞上のCD64に結合することを示す。該結果は、ヒトCD64に対する該HuMAbの特異性を確認し、そしてまた、ヒトCD64に向けられた治療薬の有効性を評価するためのこのトランスジェニックモデルも検証する。
【0260】
同等物
当業者は、わずかに慣例の実験を使用して、本明細書に記述される本発明の特定の態様の多くの同等物を認識するであろうか、若しくは確かめることが可能であろう。こうした同等物は、以下の請求の範囲により包含されることを意図している。
【0261】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0262】
【図1A】611ヒトモノクローナル抗体のH鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号9)およびアミノ酸配列(配列番号7)を示す。CDR1(配列番号1)、CDR2(配列番号2)およびCDR3(配列番号3)領域の輪郭を描き、また、V、DおよびJ生殖系列の派生を示す。
【図1B】611ヒトモノクローナル抗体のL鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号10)およびアミノ酸配列(配列番号8)を示す。CDR1(配列番号4)、CDR2(配列番号5)およびCDR3(配列番号6)領域の輪郭を描き、また、VおよびJ生殖系列の派生を示す。
【図2】611のH鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号7)のヒト生殖系列V 3−33アミノ酸配列(配列番号11)とのアライメントを示す。
【図3】611のL鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号8)のヒト生殖系列V L6アミノ酸配列(配列番号12)とのアライメントを示す。
【図4】FITC標識ヒトモノクローナル抗体(HuMab)611がヒトIgGの存在下でCD64に結合することを示し、それがリガンド結合部位の外側を結合することを示すグラフである。ヒト化抗CD64抗体H22を陽性対照として使用し、また、非特異的IgG1を陰性対照として使用した。
【図5】HuMAb 611がU937細胞上のCD64の表面発現を抑制的調節することを示すグラフである。
【図6】HuMAb 611がCD64媒介性の食作用を阻害することを示すグラフである。
【図7A−7C】CD64を発現するヒトCD64トランスジェニックマウスからの単球(図7B)および好中球(図7C)への抗CD64二重特異性抗体の特異的結合を示すグラフである。リンパ球(図7A)は陰性対照として示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたヒトモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分であって、該抗体が:
(a)ヒトCD64に特異的に結合し
(b)CD64の表面発現を抑制的調節し;
(c)ヒトCD64のその天然のリガンド(ヒトIgG)への結合を阻害せず;
(d)ヒトIgGのヒトCD64への結合をブロックせず;かつ
(e)CD64媒介性の食作用を阻害する、
上記抗体。
【請求項2】
IgG1アイソタイプの完全長抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
抗体フラグメント若しくは一本鎖抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
ヒトV 3−33遺伝子の産物若しくはそれ由来であるH鎖可変領域を含んでなる、単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分であって、該抗体がヒトCD64に特異的に結合する、上記抗体。
【請求項5】
ヒトV L6遺伝子の産物若しくはそれ由来であるL鎖可変領域を含んでなる、単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分であって、該抗体がヒトCD64に特異的に結合する、上記抗体。
【請求項6】
(a)ヒトV 3−33遺伝子の産物もしくはそれ由来であるH鎖可変領域;および(b)ヒトVk L6遺伝子の産物もしくはそれ由来であるL鎖可変領域
を含んでなる、単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分であって;
該抗体がヒトCD64に特異的に結合する、上記抗体。
【請求項7】
CDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるH鎖可変領域;ならびに
CDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるL鎖可変領域
を含んでなる、単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分であって、
(a)該H鎖可変領域のCDR3配列が、配列番号3のアミノ酸配列若しくはその保存的改変を含んでなり;
(b)該L鎖可変領域のCDR3配列が、配列番号6のアミノ酸配列若しくはその保存的改変を含んでなり;および
(c)該抗体がヒトCD64に特異的に結合する、
上記抗体。
【請求項8】
前記抗体が、機能特性:
(a)該抗体がCD64の表面発現を抑制的調節するか;
(b)該抗体がCD64のその天然のリガンド(IgG)への結合をブロックしないか;(c)該抗体がCD64媒介性の食作用を阻害するか;若しくは
(d)該抗体がヒトエフェクター細胞の存在下での標的細胞の食作用を媒介する、
の最低1種を表す、請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
H鎖可変領域のCDR2配列が、配列番号2のアミノ酸配列若しくはその保存的改変を含んでなり;かつ、L鎖可変領域のCDR2配列が、配列番号5のアミノ酸配列若しくはその保存的改変を含んでなる、請求項7に記載の抗体。
【請求項10】
H鎖可変領域のCDR1配列が、配列番号1のアミノ酸配列若しくはその保存的改変を含んでなり;かつ、L鎖可変領域のCDR1配列が、配列番号4のアミノ酸配列若しくは
その保存的改変を含んでなる、請求項7に記載の抗体。
【請求項11】
ヒト抗体である、請求項7に記載の抗体。
【請求項12】
ヒト化若しくはキメラ抗体である、請求項7に記載の抗体。
【請求項13】
H鎖可変領域およびL鎖可変領域を含んでなる、単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分であって、
(a)該H鎖可変領域が、配列番号7のアミノ酸配列に最低80%相同であるアミノ酸配列を含んでなり;
(b)該L鎖可変領域が、配列番号8のアミノ酸配列に最低80%相同であるアミノ酸配列を含んでなり;および
(c)該抗体がヒトCD64に特異的に結合する、
上記抗体。
【請求項14】
前記抗体が、機能特性:
(a)該抗体がCD64の表面発現を抑制的調節するか;
(b)該抗体がCD64のその天然のリガンド(IgG)への結合をブロックしないか;(c)該抗体がCD64媒介性の食作用を阻害するか;若しくは
(d)該抗体が、ヒトエフェクター細胞の存在下での標的細胞の食作用を媒介する、
の最低1種を表す、請求項13に記載の抗体。
【請求項15】
ヒト抗体である、請求項13に記載の抗体。
【請求項16】
ヒト化若しくはキメラ抗体である、請求項13に記載の抗体。
【請求項17】
(a)配列番号1、2および3のアミノ酸配列をそれぞれ含んでなるH鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3;ならびに
(b)配列番号4、5および6のアミノ酸配列をそれぞれ含んでなるL鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3
を含んでなる、単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分であって;
該抗体がヒトCD64に特異的に結合する、
上記抗体。
【請求項18】
該抗体が、機能特性:
(a)該抗体がCD64の表面発現を抑制的調節するか;
(b)該抗体がCD64のその天然のリガンド(IgG)への結合をブロックしないか;(c)該抗体がCD64媒介性の食作用を阻害するか;若しくは
(d)該抗体がヒトエフェクター細胞の存在下での標的細胞の食作用を媒介する、
の最低1種を表す、請求項17に記載の抗体。
【請求項19】
(a)配列番号7のアミノ酸配列を含んでなるH鎖可変領域;および
(b)配列番号8のアミノ酸配列を含んでなるL鎖可変領域
を含んでなる、単離されたモノクローナル抗体若しくはその抗原結合部分であって;
該抗体がヒトCD64に特異的に結合する、
上記抗体。
【請求項20】
CD64への結合について、請求項19に記載の抗体と競合する、単離されたヒト抗体若しくはその抗原結合部分。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1つに記載の抗体若しくはその抗原結合部分、および製薬学的に許容できる担体を含んでなる組成物。
【請求項22】
治療薬に連結された、請求項1〜20のいずれか1つに記載の抗体若しくはその抗原結合部分を含んでなる免疫複合体。
【請求項23】
請求項22に記載の免疫複合体および製薬学的に許容できる担体を含んでなる組成物。
【請求項24】
治療薬が細胞毒である、請求項22に記載の免疫複合体。
【請求項25】
請求項24に記載の免疫複合体および製薬学的に許容できる担体を含んでなる組成物。
【請求項26】
治療薬が放射活性同位体である、請求項22に記載の免疫複合体。
【請求項27】
請求項26に記載の免疫複合体および製薬学的に許容できる担体を含んでなる組成物。
【請求項28】
抗体若しくはその抗原結合部分と異なる結合特異性を有する第二の機能部分に連結された、請求項1〜20のいずれか1つに記載の抗体若しくはその抗原結合部分を含んでなる二重特異性若しくは多重特異性分子。
【請求項29】
第二の機能部分が抗体若しくは細胞受容体リガンドを含んでなる、請求項28に記載の二重特異性若しくは多重特異性分子。
【請求項30】
第二の機能部分が、腫瘍細胞若しくは病原体上の標的抗原に対する結合特異性を有する、請求項28に記載の二重特異性若しくは多重特異性分子。
【請求項31】
エフェクター細胞の存在下で、標的抗原を発現する細胞若しくは病原体の抗体依存性の細胞媒介性の細胞傷害性(ADCC)を誘導する、請求項30に記載の二重特異性若しくは多重特異性分子。
【請求項32】
補体の存在下で標的抗原を発現する細胞若しくは病原体の補体媒介性の死滅を誘導する、請求項30に記載の二重特異性若しくは多重特異性分子。
【請求項33】
標的抗原が、炭疽菌抗原、ボツリヌス毒素、マラリア抗原、ウマ脳炎ウイルス抗原、ペスト菌(Y.pestis)抗原、ガストリン放出ペプチド受容体抗原(GRP)、ムチン抗原、上皮成長因子受容体(EGF−R)、HER2/neu、HER3、HER4、CD20、CD30、PSMA、癌胎児性抗原(CEA)、Pmel17、β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン(βHCG)、α−フェトプロテイン(AFP)、gp100、MART1、TRP−2、melan−A、NY−ESO−1、MN(gp250)イディオタイプ、MAGE抗原、SART抗原、チロシナーゼ、テロメラーゼ、TAG−72抗原、MUC−1抗原、血液型抗原Lea、Leb、LeX、LeY、H−2、B−1およびB−2、HIV−1 gag、HIV−1 env、HIV−1 nef、HBVコア、FAS、HSV−1、HSV−2、p17、HTLV、FELV、ORF2およびORF3抗原、原生動物特異的抗原、カンジダ アルビカンス(Candida albicans)抗原、細菌抗原、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)抗原、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)抗原、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)抗原、溶血性連鎖球菌(Streptococcus hemolyticus)抗原、ならびにヒト結核菌(Mycobacterium tuberculsis)抗原よりなる群から選択される、請求項30に記載の二重特異性若しくは多重特異性分子。
【請求項34】
請求項28に記載の二重特異性若しくは多重特異性分子、および製薬学的に許容できる担体を含んでなる組成物。
【請求項35】
抗原に連結された、請求項1〜20のいずれか1つに記載の抗体を含んでなるワクチン複合体。
【請求項36】
抗原が、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、アレルゲン、蛇毒、自己抗原、移植された抗原および腫瘍関連抗原よりなる群から選択される、請求項35に記載のワクチン複合体。
【請求項37】
抗原が、ガストリン放出ペプチド受容体抗原(GRP)、ムチン抗原、上皮成長因子受容体(EGF−R)、HER2/neu、HER3、HER4、CD20、CD30、PSMA、癌胎児性抗原(CEA)、Pmel17、β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン(βHCG)、α−フェトプロテイン(AFP)、gp100、MART1、TRP−2、melan−A、NY−ESO−1、MN(gp250)イディオタイプ、MAGE抗原、SART抗原、チロシナーゼ、テロメラーゼ、TAG−72抗原、MUC−1抗原、血液型抗原Lea、Leb、LeX、LeY、H−2、B−1およびB−2よりなる群から選択される腫瘍関連抗原である、請求項36に記載のワクチン複合体。
【請求項38】
請求項35に記載のワクチン複合体および製薬学的に許容できる担体を含んでなる組成物。
【請求項39】
請求項1〜20のいずれか1つに記載の抗体若しくはその抗原結合部分をコードする単離された核酸分子。
【請求項40】
請求項39に記載の核酸分子を含んでなる発現ベクター。
【請求項41】
請求項40に記載の発現ベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項42】
ヒト免疫グロブリンHおよびL鎖導入遺伝子を含んでなるトランスジェニックマウスであって、該マウスが請求項1〜20のいずれか1つに記載の抗体を発現する、上記マウス。
【請求項43】
請求項1〜20のいずれか1つに記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項44】
請求項1〜20のいずれか1つに記載の抗体を被験体に投与して、その結果被験体が自己免疫障害、移植片拒絶反応若しくは移植片対宿主病(GVHD)について処置されることを含んでなる、被験体におけるCD64を発現する細胞を伴う自己免疫疾患、移植片拒絶反応若しくはGVHDの処置若しくは予防方法。
【請求項45】
自己免疫障害、移植片拒絶反応若しくはGVHDが、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性硬化症、アトピー性皮膚炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、ヴェゲナー肉芽腫、オーメン症候群、慢性腎不全、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、炎症性腸疾患(IBD;クローン病、潰瘍性大腸炎およびスプルー、シェリアキー、セリアック病を包含する)、インスリン依存型糖尿病(IDDM)、急性感染性単核症、HIV、ヘルペスウイルス関連疾患、多発性硬化症(MS)、溶血性貧血、甲状腺炎、スティッフマン症候群、尋常性天疱瘡ならびに重症筋無力症(MG)よりなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
標的細胞の食作用が阻害されるように、CD64を発現する細胞を請求項1〜20のいずれか1つに記載の抗体と接触させることを含んでなる、CD64を発現する細胞による標的細胞のCD64媒介性の食作用の阻害方法。
【請求項47】
細胞の増殖が阻害されるように、細胞を請求項1〜20のいずれか1つに記載の抗体を含んでなる二重特異性若しくは多重特異性分子または免疫複合体の有効量と接触させることを含んでなり、該二重特異性若しくは多重特異性分子または免疫複合体が標的細胞上の一成分に結合する、標的細胞の増殖の阻害方法。
【請求項48】
増殖がADCCにより阻害される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
増殖が、補体媒介性の細胞の細胞傷害性により阻害される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
標的細胞が、卵巣癌細胞、乳癌細胞、精巣癌細胞、前立腺癌細胞、白血病細胞およびリンパ腫細胞よりなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
標的細胞が免疫細胞である、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
標的細胞が病原体である、請求項47に記載の方法。
【請求項53】
病原体が、細菌、ウイルスに感染した細胞および寄生虫よりなる群から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
抗原に連結された請求項1〜20のいずれか1つに記載の抗体を含んでなるワクチン複合体を被験体に投与することを含んでなる、被験体における免疫細胞への抗原の提示を誘導し若しくは高める方法。
【請求項55】
(a)抗体とCD64の間の複合体の形成を見込む条件下で、請求項1〜20のいずれか1つに記載の抗体とサンプルを接触させること;および
(b)複合体の形成を検出すること
を含んでなる、サンプル中のCD64若しくはCD64を発現する細胞の存在の検出方法。
【請求項56】
(a)(i)配列番号1、2および3のそれぞれCDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるH鎖可変領域抗体配列;若しくは(ii)配列番号4、5および6のそれぞれCDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるL鎖可変領域抗体配列を提供すること;
(b)最低1種のH鎖可変領域抗体配列およびL鎖可変領域抗体配列から選択される可変領域抗体配列内の最低1アミノ酸残基を変えて最低1種の変えられた抗体配列を創製すること;ならびに
(c)変えられた抗体配列をタンパク質として発現させること
を含んでなる、抗CD64抗体の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−508860(P2008−508860A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515706(P2007−515706)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/022991
【国際公開番号】WO2006/002438
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(500251630)メダレツクス・インコーポレーテツド (2)
【Fターム(参考)】