説明

FcRn抗体およびその使用

特定の実施形態において、本発明は、FcRn活性を調節するための、ポリペプチド組成物(例えば、FcRnに結合する抗体およびその抗原結合部分)ならびに方法を提供する。他の実施形態において、本発明は、自己免疫疾患を処置するための方法および組成物を提供する。本発明は特に、ヒトFcRnのエピトープに結合する単離された抗体またはその抗原結合部分に関する。ここで、この抗体またはその抗原結合部分は、IgG抗体のFc部分のヒトFcRnへの結合を選択的に阻害するが、ヒトアルブミンのヒトFcRnへの結合を阻害しない。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願)
本願は、2005年4月29日に出願された、米国仮特許出願第60/676,412号に対する優先権を主張する。米国仮特許出願第60/676,412号の明細書は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(基金)
本明細書中に記載される研究は、その全体または一部が、National Institute of HealthのGrant番号NIH DK 57597によって資金援助されている。米国合衆国政府は、本発明における特定の権利を有する。
【0003】
(発明の背景)
抗体は、20世紀以前から、感染性生物に対する免疫防御において重要な役割を果たすことが知られている。抗体を産生する免疫系細胞は、Bリンパ球である。4つの主要なクラス:免疫グロブリンM(IgM)、IgG、IgA、およびIgE、が存在するが、IgGが最も多い抗体であり、成人における全ての抗体の約90%を構成する。抗体の各クラスは、免疫において特異的な役割を有し、この役割としては、一次免疫応答および二次免疫応答、抗原不活性化、ならびにアレルギー反応が挙げられる。IgGは、胎盤関門を通過し得る唯一のクラスであり、それゆえ新生児の免疫系が発達する前の病原体からの防御を提供する。抗体分子は、2つの末端を有する。一方の末端が、抗原特異的レセプターであり、これは、高度に可変であり、特異的な分子の形状に結合する能力を各抗体に生じさせる。他方の末端は、Fcと呼ばれ、クラス内で配列および構造の類似性を有し、免疫細胞上のレセプターに結合する能力を与える。完全に作用している免疫系においては、多様な特異性の抗原特異的レセプターが、宿主に、広範に種々の外来の感染性微生物に結合する能力を有する(その結果、その微生物および免疫性が破壊される)、多様なレパートリーの抗体を生じさせる。
【0004】
自己免疫疾患は、正常組織を外来のものであると誤って感知し、そしてその正常組織を攻撃する場合に生じる。自己免疫性の破壊における最も一般的な免疫学的に関与する因子は、本来の目的から逸し、そして正常な正常組織を破壊するようになった自己抗体である。これは、全身性エリテマトーデス(SLE)を含む多くの型の免疫疾患をもたらす。SLEは、高γグロブリン血症、抗DNA機能、および抗核タンパク質抗体の一般的特徴、ならびに腎糸球体、脈管系、関節および皮膚を含む多くの部位に蓄積する免疫複合体を伴う全身的な抗体の調節不全の、基本型の疾患である(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。その重篤度は、軽度から非常に重篤(最小限の消耗性から致死的)の範囲であり得る。現在、自己免疫疾患に対する有効な処置は、ほとんど存在しない。
【0005】
したがって、より有効な組成物および自己免疫疾患を処置する方法として抗体濃度を操作するための方法を開発することが、目的である。
【非特許文献1】TheofilopolosおよびDixon、Adv.Immunol.、1985年、第37巻、p.296−390
【非特許文献2】TheofilopolosおよびDixon、Immunol.Rev.、1981年、第55巻、p.179−215
【非特許文献3】Boumpasら、Ann Int.Med.、1995年、第122巻、p.940
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
特定の実施形態において、本発明は、ヒトFcRn上のエピトープに結合する単離された抗体またはその抗原結合部分を提供する。FcRn抗体またはその抗原結合部分は、ヒトFcRnのエピトープを結合し、そして上記FcRn抗体またはその抗原結合部分は、IgG抗体のFc部分のヒトFcRnへの結合を選択的に阻害するが、ヒトアルブミンのヒトFcRnへの結合を阻害しない。特定の具体的な実施形態において、上記FcRn抗体は、モノクローナル抗体である。特定の実施形態において、上記FcRn抗体またはその抗原結合部分は、ヒトに投与され得る。特定の場合において、上記FcRn抗体またはその抗原結合部分は、インビボで、ヒトIgGの血清半減期を選択的に減少させるが、ヒトアルブミンの血清半減期を減少させない。他の場合において、上記FcRn抗体またはその抗原結合部分は、人間におけるヒト自己抗体によって誘導される炎症性病変を軽減または阻害する。上記抗体の例としては、本明細書中でDVN21およびDVN24として示されるFcRn抗体が挙げられるが、これらに限定されない。対象のFcRn抗体としては、組換え抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、二重特異的(bispecific)抗体または多重特異的(multispecific)抗体、および単離された抗原結合部分(例えば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメントおよびFvフラグメントCDR3)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0007】
特定の実施形態において、上記FcRn抗体またはその抗原結合部分は、FcRn(例えば、標識されたFcRnタンパク質)を発現している生細胞に結合するその能力について、選択される。特定の場合において、上記抗体またはその抗原結合部分は、ヒトIgGの血清半減期を減少させ、かつヒトアルブミンの血清半減期を実質的には減少させないその能力について、インビボで選択される。他の場合において、上記抗体またはその抗原結合部分は、内在性FcRnを欠損しているが、ヒトFcRnをコードするトランスジーンを有するトランスジェニックマウスにおいて選択される。
【0008】
さらなる実施形態において、上記単離された抗体またはその抗原結合部分は、さらなる機能的部分(例えば、標識)に共有結合される。具体的な実施形態において、この標識は、蛍光検出法、陽電子断層撮影検出法、および核磁気共鳴検出法からなる群より選択される方法による検出に適している。例えば、上記標識は、蛍光標識、放射能標識、および特有の核磁気共鳴シグネチャーを有する標識から選択される。特定の場合において、上記さらなる機能的部分は、上記抗体またはその抗原結合部分において、血清半減期の増加を与える。例としては、このさらなる機能的部分は、ポリエチレングリコール(PEG)またはビオチン部分を含む。
【0009】
特定の実施形態において、本発明は、上述のFcRn抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を提供する。特定の実施形態において、このハイブリドーマ細胞株は、IgG抗体のFc部分の、ヒトFcRnへの結合を選択的に阻害するが、ヒトアルブミンのヒトFcRnへの結合を阻害しない、モノクローナルFcRn抗体を産生する。例えば、このハイブリドーマ細胞株は、DVN21およびDVN24のようなFcRn抗体を産生する。
【0010】
特定の実施形態において、本発明は、上述の少なくとも1つのFcRn抗体またはその抗原結合部分と、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤とを含む組成物を提供する。この組成物はさらに、免疫刺激物質、免疫調節物質、またはそれらの組み合わせを含む。例えば、この組成物は、免疫調節物質(例えば、α−インターフェロン、γ−インターフェロン、腫瘍壊死因子α、またはそれらの組み合わせであるが、これらに限定されない)を含む。別の例としては、この組成物は、免疫刺激物質(インターロイキン−2、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない)を含む。
【0011】
特定の実施形態において、本発明は、上述のFcRn抗体またはその抗原結合部分をコードする単離された核酸分子を提供する。
【0012】
特定の実施形態において、本発明は、個体におけるFcRn媒介性IgG防御を阻害するための方法を提供する。そのような方法は、FcRn媒介性IgG防御の阻害の必要のある個体に、ヒトFcRnのヒトIgGへの結合を選択的に阻害するが、ヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合を阻害しないのに十分な量で、FcRn抗体を投与する工程を包含する。例えば、そのようなFcRn抗体は、自己免疫疾患の個体に投与され得る。自己免疫疾患の例としては、SLE、インスリン抵抗性糖尿病、重症筋無力症、多発性動脈炎、自己免疫血小板減少性紫斑病、皮膚血管炎、水疱性類天疱瘡、尋常天疱瘡、落葉状天疱瘡、グッドパスチャー症候群、慢性関節リウマチ、川崎病、およびシェーグレン症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
特定の実施形態において、本発明は、患者における自己免疫疾患を予防または処置する方法を提供する。そのような方法は、FcRn抗体を、患者に、その自己免疫疾患を予防または処置するのに十分な量で投与する工程を包含する。具体的な実施形態において、投与されるFcRn抗体は、IgG抗体のFc部分のヒトFcRnへの結合を選択的に阻害するが、ヒトアルブミンのヒトFcRnへの結合を阻害しない。自己免疫疾患の例としては、SLE、インスリン抵抗性糖尿病、重症筋無力症、多発性動脈炎、自己免疫血小板減少性紫斑病、皮膚血管炎、水疱性類天疱瘡、尋常天疱瘡、落葉状天疱瘡、グッドパスチャー症候群、慢性関節リウマチ、川崎病、およびシェーグレン症候群が挙げられるが、これらに限定されない。この単離された抗体またはその抗原結合部分は、個体に、全身的または局所的に投与され得る。特定の場合において、上記方法は、患者に、免疫調節物質(例えば、α−インターフェロン、γ−インターフェロン、腫瘍壊死因子α、またはそれらの組み合わせ)を投与する工程を包含する。
【0014】
特定の実施形態において、本発明は、ヒトFcRnのヒトIgGへの結合を選択的に阻害するが、ヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合を阻害しないインヒビター(選択的FcRnインヒビター)を同定するインビトロ法を提供する。そのような方法は、以下:(a)候補インヒビターを、ヒトFcRn、ヒトIgGおよびヒトアルブミンに接触させる工程;(b)候補インヒビターの非存在下でのヒトFcRnのヒトIgGへの結合と比較して、候補インヒビターの存在下でのヒトFcRnのヒトIgGへの結合についてアッセイする工程;ならびに(c)候補インヒビターの非存在下でのヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合と比較して、候補インヒビターの存在下でのヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合についてアッセイする工程、を包含する。所望の選択的FcRnインヒビターは、ヒトFcRnのヒトIgGへの結合を阻害するが、ヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合を阻害しない。特定の実施形態において、この選択的FcRnインヒビターは、抗体、ポリペプチド、合成ペプチド、ペプチド模倣物(peptidomimetic)、または低分子から選択される。特定の場合において、この選択的FcRnインヒビターは、IgGポリペプチドのFc部分を含む融合タンパク質である。あるいは、この選択的FcRnインヒビターは、IgGポリペプチドのFc部分である。
【0015】
さらなる実施形態において、本発明は、ヒトFcRnのヒトIgGへの結合を選択的に阻害するが、ヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合を阻害しないインヒビターを同定する、代替的なインビトロ法を提供する。そのような方法は、以下:(a)ヒトFcRnのヒトIgGへの結合に適した条件下で、候補インヒビターを、ヒトFcRnおよびヒトIgGに接触させる工程;(b)候補インヒビターの非存在下でのヒトFcRnのヒトIgGへの結合と比較して、候補インヒビターの存在下でのヒトFcRnのヒトIgGへの結合についてアッセイする工程;(c)ヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合に適した条件下で、候補インヒビターを、ヒトFcRnおよびヒトアルブミンに接触させる工程;ならびに(d)候補インヒビターの非存在下でのFcRnのヒトアルブミンへの結合と比較して、候補インヒビターの存在下でのヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合についてアッセイする工程、を包含する。所望の選択的FcRnインヒビターは、ヒトFcRnのヒトIgGへの結合を阻害するが、ヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合を阻害しない。特定の実施形態において、この選択的FcRnインヒビターは、抗体、ポリペプチド、合成ペプチド、ペプチド模倣物、または低分子から選択される。特定の場合において、この選択的FcRnインヒビターは、IgGポリペプチドのFc部分を含む融合タンパク質である。あるいは、この選択的FcRnインヒビターは、IgGポリペプチドのFc部分である。
【0016】
特定の実施形態において、本発明は、ヒトIgGの半減期を選択的に減少させるが、ヒトアルブミンの半減期を減少させない因子を同定するインビボ法を提供する。そのような方法は、以下:(a)候補因子およびトレーサーヒトIgGを、FcRn−/−/huFcRnトランスジェニックマウスに投与する工程;(b)候補因子の非存在下でのトレーサーヒトIgGの半減期と比較して、候補因子の存在下でのそのマウスにおけるトレーサーヒトIgGの半減期を決定する工程;(c)その候補因子およびトレーサーヒトアルブミンを、そのFcRn−/−/huFcRnトランスジェニックマウスに投与する工程;ならびに(d)候補因子の非存在下でのトレーサーヒトアルブミンの半減期と比較して、候補因子の存在下でのそのマウスにおけるトレーサーヒトアルブミンの半減期を決定する工程、を包含する。その候補因子が、トレーサーヒトIgGの半減期を減少させるが、トレーサーヒトアルブミンの半減期を減少させない場合、その候補因子は、ヒトIgGの半減期を選択的に減少させるが、ヒトアルブミンの半減期を減少させない因子である。この因子は、例えば、抗体、ポリペプチド、合成ペプチド、ペプチド模倣物、または低分子から選択される。特定の場合において、この因子は、IgGポリペプチドのFc部分を含む融合タンパク質である。あるいは、この因子は、IgGポリペプチドのFc部分である。
【0017】
特定の実施形態において、本発明は、ヒトIgGの半減期を選択的に減少させるが、ヒトアルブミンの半減期を減少させない因子を同定するインビボ法を提供する。そのような方法は、以下:(a)候補因子、トレーサーヒトIgG、およびトレーサーヒトアルブミンを、FcRn−/−/huFcRnトランスジェニックマウスに投与する工程;(b)候補因子の非存在下でのトレーサーヒトIgGの半減期と比較して、候補因子の存在下でのそのマウスにおけるトレーサーヒトIgGの半減期を決定する工程;ならびに(c)候補因子の非存在下でのトレーサーヒトアルブミンの半減期と比較して、候補因子の存在下でのそのマウスにおけるトレーサーヒトアルブミンの半減期を決定する工程、を包含する。所望の因子は、トレーサーヒトIgGの半減期を選択的に減少させるが、トレーサーヒトアルブミンの半減期を減少させない。この因子は、例えば、抗体、ポリペプチド、合成ペプチド、ペプチド模倣物、または低分子から選択される。特定の場合において、この因子は、IgGポリペプチドのFc部分を含む融合タンパク質である。あるいは、この因子は、IgGポリペプチドのFc部分である。
【0018】
特定の実施形態において、本発明は、自己免疫疾患を処置するための薬学的調製物を製造するための、単離されたFcRn抗体またはその抗原結合部分の使用を提供する。特定の場合において、このFcRn抗体は、ヒトFcRnの、IgG抗体のFc部分への結合を阻害するが、ヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合を阻害しない。具体的な実施形態において、このFcRn抗体は、モノクローナル抗体である。
【0019】
特定の実施形態において、本発明は、放射性抗体または抗体結合体化毒素のクリアランスを促進するための、単離されたFcRn抗体またはその抗原結合部分の使用を提供する。特定の実施形態において、これらの放射性抗体または抗体結合体化毒素は、癌の画像化および処置に使用される。具体的な実施形態において、このFcRn抗体は、モノクローナル抗体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
本発明の特定の局面は、少なくとも部分的に、レセプターFcRn(FcRp/Fcgrt1)が正常なタンパク質異化からIgGアイソタイプの抗体をFc依存的様式で選択的に防御するという知見に基づく。FcRnは、変化した免疫学的機能を行なうタンパク質のファミリーの新規メンバーである。上記FcRn分子は、マウスおよびヒトを含む成体動物の血管内皮と共に他の組織において発現される。FcRnは、抗体分子に結合するが、IgGクラス由来の抗体分子だけに結合する。FcRn/IgG複合体の結晶構造は、解明されており(BjorkmanおよびSimister、1992、PNAS 89:638−42;WestおよびBjorkman、2000、Biochemistry 39:9698−9708)、それは、レセプター/リガンドの関係がそれら2つの分子の間に存在することを示す。さらに、FcRnは、β2−ミクログロブリンとヘテロ二量体化し、そしてそのβ2−ミクログロブリン複合体は、FcRnがpH依存的様式でIgGに結合するのに重要である。
【0021】
ほとんどの血清タンパク質は、短い血清半減期(約1〜2日間)を有する。しかし、血清タンパク質の2つの型(アルブミンおよびIgGクラスの抗体)は、大きく延長された血清半減期を有する。それらの半減期は、それらが主要組織適合遺伝子複合体ファミリータンパク質(FcRn)によって正常な異化による分解から天然に救済されることに起因して延長される。数人の研究者らは、IgGのFc領域を異なるポリペプチドにカップリングしてそのポリペプチドの安定性を改善することによる防御効果を、間接的に示している(例えば、米国特許第6,096,871号および同第6,121,022号)。PCT出願WO 97/34631はまた、治療および診断を目的として薬学的組成物の安定性および寿命を増大させることにおける免疫グロブリン様ドメインの使用を記載する。さらに、出願人らは、遺伝子ターゲッティングによるFcRnの遺伝子の排除が自己免疫性関節炎からK/BxNマウスを防御することを示した(Akileshら、2004、J Clin Invest 113:1328−33)。出願人はまた、遺伝子ターゲッティングによるFcRnの遺伝子の排除が、全身性エリテマトーデス(SLE)の重篤度を、遺伝的にSLE様疾患を発症する素因を有するマウスにおいて低下させることを示した。出願人および他の者は、病原性血清移入モデルにおいて、FcRn防御経路の機能的飽和が関節炎の軽減および免疫性血小板減少性紫斑病マウスモデルをもたらすことを示唆した(Akileshら、2004、J Clin Invest 113:1328−33;HansonおよびBalthasar、2002、Thromb Haemo 88:898−899)。したがって、これらの実験は、FcRnが自己免疫疾患(例えば、自己抗体によって引き起こされるもの)を処置するための有望な治療標的であること示唆する。出願人およびその者らの共同実験者による最近の研究(例えば、Chaudhuryら、2003、J Exp Med 197:315−322)は、FcRnがまたアルブミンを正常な異化による排除から防御することを示した。これは、FcRnがアルブミンに結合し、そしてIgGについて見出されるものと同様の様式でアルブミンを正常な異化による排除から防御することに起因して起きる。IgGのFcRn防御の治療的ブロックのストラテジーに対する主要な懸案事項は、このような治療がまたアルブミンの血清半減期を減少させ得ることである。これは、有害な副作用をもたらし得る。なぜならば、アルブミンの正常な血清濃度の維持は、正常な重量オスモル濃度の維持およびアルブミンが必須の役割を果たす他の生物学的機能に重要であるからである。抗FcRn治療のこの潜在的に深刻な副作用を回避するために、本発明の特定の実施形態は、IgGの血清半減期を選択的に減少させるが、ヒトアルブミンの血清半減期を減少させないように設計される抗FcRn治療を提供する。
【0022】
(I.FcRn抗体および他のFcRn結合因子)
本発明は、部分的に、FcRn分子の部分を選択的にターゲッティングするFcRn結合因子(例えば、FcRn抗体、FcRn抗体の抗原結合部分、およびFcRnの非免疫グロブリン結合因子)を提供する。本明細書中に記載されるFcRn結合因子は、種々の障害(特に、FcRn関連性の自己免疫疾患)を処置するために使用され得る。本発明は、FcRn媒介性の機能(例えば、Fc結合活性またはIgG防御活性)をモジュレート(modulate)(阻害または増強)する抗体およびその抗原結合部分を提供する。このような結合因子は、インビトロおよびインビボでFcRn機能をモジュレートするため、そして特に、FcRn関連性の自己免疫疾患を処置するために使用され得る。特定の実施形態において、本発明は、FcRnに対するモノクローナル抗体に関する。
【0023】
1つの実施形態において、FcRn抗体(免疫グロブリン)は、単離されたヒトFcRnおよび/もしくは組換えヒトFcRnまたはそれらの部分(例えば、ペプチド)に対して惹起されるか、あるいは組換えヒトFcRnを発現する宿主細胞に対して惹起される。本明細書中で使用される場合、用語「FcRn」(文献においてFcRnα鎖とも称される)とは、哺乳動物(例えば、ヒトを含む)由来のFcRnポリペプチドをいう。特定の局面において、本発明の抗体は、Fc結合部位(例えば、WestおよびBjorkman、2000、Biochemistry 39:9698−9708を参照のこと)を構成するFcRnタンパク質(例えば、α2ドメインヘリックス)の領域に特異的に結合する。他の場合において、本発明の抗体は、β2−ミクログロブリン結合部位を構成するFcRnタンパク質の領域に特異的に結合する。本発明の抗体は、FcRnのIgGへの結合を阻害するが、FcRnのヒトアルブミンへの結合を阻害しない。
【0024】
「免疫グロブリン」は、四量体の分子である。天然に存在する免疫グロブリンにおいて、それぞれの四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対から構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識を担う約100〜110アミノ酸以上の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能を担う定常領域を規定する。ヒト軽鎖は、κ軽鎖およびλ軽鎖として分類される。重鎖は、μ、δ、γ、α、またはεとして分類され、そしてそれらは、それぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして抗体のアイソタイプを規定する。軽鎖および重鎖内で、上記可変領域および定常領域は、約12アミノ酸以上の「J」領域によって連結され、重鎖はまた、約10アミノ酸より多い「D」領域を含む。一般に、Fundamental Immunology、第7章(Paul,W.編、第2版、Raven Press、N.Y.(1989))(全ての目的のためにその全体が参考として援用される)。それぞれの軽/重鎖対の可変領域は、インタクトな免疫グロブリンが2つの結合部位を有するように抗体内の結合部位(antibody binding site)を形成する。
【0025】
免疫グロブリン鎖は、同じ一般構造を示す:それらは、相補性決定領域またはCDRともいわれる3つの超可変領域によって連結される比較的保存されたフレームワーク領域(FR)を含む。各対の2つの鎖由来のCDRは、フレームワーク領域によって整列され、特定のエピトープに対する結合を可能にする。N末端からC末端に向かって、軽鎖および重鎖の両方は、ドメインFRl、CDRl、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各ドメインに対するアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987および1991))、またはChothiaおよびLesk J.Mol.Biol.、1997、196:901−917;Chothiaら、Nature、1989、342:878−883(1989)の定義に従う。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」とは、インタクトな免疫グロブリン、または特異的結合に関してインタクトな抗体と競合するその抗原結合部分をいう。抗原結合部分は、組換えDNA技術またはインタクトな抗体の酵素的切断もしくは化学的切断によって産生され得る。抗原結合部分としては、とりわけ、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、dAbフラグメント、および相補性決定領域(CDR)フラグメント、単鎖抗体(scFv)、単一ドメイン抗体、キメラ抗体、ダイアボディ(diabody)および少なくとも免疫グロブリンの一部を含むポリペプチド(その免疫グロブリンの一部は、このポリペプチドに特異的抗原結合を与えるのに十分である)が挙げられる。用語「抗FcRn抗体」および「FcRn抗体」は、本明細書中で交換可能に使用される。
【0027】
Fabフラグメントは、VL、VH、CLおよびCH Iドメインからなる多価フラグメントである;F(ab’)フラグメントは、ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋によって連結される2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントである;Fdフラグメントは、VHドメインおよびCH1ドメインからなる;Fvフラグメントは、抗体の単腕(single arm)のVLドメインおよびVHドメインからなる;そしてdAbフラグメント(Wardら、Nature 341:544−546、1989)は、VHドメインからなる。
【0028】
単鎖抗体(scFv)は、多価分子を形成するためにVL領域およびVH領域が単一のタンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーを介して対形成される抗体である(Birdら、Science 242:423−426、1988およびHustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883、1988)。ダイアボディは、VHドメインおよびVLドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現される二価の二重特異的(bispecific)抗体であるが、ダイアボディは、、同じ鎖上のその2つのドメインの間で対形成を可能にするには短すぎリンカーを使用し、それによってそのドメインを別の鎖の相補性ドメインと対形成させ、そして2つの抗原結合部位を形成する(例えば、Holliger,P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448、1993、およびPoljak,R.J.ら、Structure 2:1121−1123、1994を参照のこと)。1つ以上のCDRは、共有結合または非共有結合のいずれかで分子に組み込まれ得る。
【0029】
抗体は、1つ以上の結合部位を有し得る。1つより多い結合部位が存在する場合、その結合部位は、互いに同一であっても異なっていてもよい。例えば、天然に存在する免疫グロブリンは、2つの同一の結合部位を有し、単鎖抗体またはFabフラグメントは、1つの結合部位を有するが、「二重特異的」または「二機能性」である抗体は、2つの結合部位を有する。
【0030】
用語「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1つ以上の可変領域および定常領域を有する全ての抗体を含む。1つの実施形態において、可変ドメインおよび定常ドメインの全ては、ヒト免疫グロブリン配列に由来する(完全ヒト抗体)。これらの抗体は、下に記載されるような種々の方法において調製され得る。
【0031】
用語「キメラ抗体」とは、1種の抗体由来の1つ以上の領域および1種以上の他の異なる抗体由来の1つ以上の領域を含む抗体をいう。1つの実施形態において、1つ以上のCDRは、ヒト抗FcRn抗体に由来する。より好ましい実施形態において、CDRの全ては、ヒト抗FcRn抗体に由来する。別の好ましい実施形態において、1種以上のヒト抗FcRn抗体に由来するCDRは、キメラ抗体において混成され、そして調和する。例えば、キメラ抗体は、第2のヒト抗FcRn抗体の軽鎖由来のCDR2およびCDR3と組み合わされた第1のヒト抗FcRn抗体の軽鎖由来のCDR1を含み得、そして重鎖由来のCDRは、第3の抗FcRn抗体に由来し得る。さらに、そのフレームワーク領域は、1種の同じ抗FcRn抗体、1種の異なる抗体(例えば、ヒト抗体)、またはヒト化抗体に由来し得る。
【0032】
特定の実施形態において、FcRn抗体またはその抗原結合部分は、さらなる機能的部分に連結される。このような連結は、共有結合であっても非共有結合であってもよい。1つの実施形態において、上記機能的部分は、治療的(例えば、薬物結合体または毒素)であり得る。
【0033】
特定のさらなる実施形態において、FcRn抗体またはその抗原結合部分は、検出を容易にするために標識される。本明細書中で使用される場合、用語「標識する」または「標識される」とは、抗体における別の分子の組み込みをいう。1つの実施形態において、上記標識は、検出可能なマーカーである(例えば、放射標識されたアミノ酸の組み込み、あるいはマーカー化(marked)アビジン(例えば、光学的方法または比色定量法によって検出され得る蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン)によって検出され得るビオチン化部分のポリペプチドに対する結合)。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する種々の方法は、当該分野において公知であり、そしてそれらの方法が、使用され得る。ポリペプチドに対する標識の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:放射性同位体または放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリフォスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、第2のレポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体に対する結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、磁性因子(例えば、ガドリニウム錯体)、毒素(例えば、百日咳毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトザントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、またはプロマイシン)およびそれらのアナログまたはホモログ。いくつかの実施形態において、標識は、潜在的な立体障害を減少させるために種々の長さのスペーサーアーム(spacer arm)によって結合される。
【0034】
下の実施例に示される通り、出願人は、ヒトFcRnに対するモノクローナル抗体、およびFcRnモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を産出した。これらの抗体は、多くの事項(例えば、ヒトFcRnとそのリガンド(例えば、ヒトIgGまたはヒト血清アルブミン)との間の相互作用を阻害するそれらの能力、インビボでのIgGの血清半減期を減少させるそれらの能力、インビボでのIgGのクリアランスを促進するそれらの能力、および病原性のヒト抗体によって誘導される炎症性の病変を軽減するそれらの能力)においてさらに特徴付けられた。ヒトIgGに特異的に結合するが、ヒト血清アルブミン(HSA)に結合しないFcRn抗体は、治療目的のために特に有用である。
【0035】
特定の実施形態において、本発明の抗体は、FcRnタンパク質(本明細書中で可溶性FcRnポリペプチドとも称される)の細胞外ドメイン(ECD)に特異的に結合する。代表的な可溶性FcRnポリペプチドは、以下の配列番号1のアミノ酸残基24〜297を含み得る。本明細書中で使用される場合、FcRn可溶性ポリペプチドは、フラグメント、機能的改変体、おおよびFcRn可溶性ポリペプチドの改変形態を含む。
【0036】
【化1】

特定の実施形態において、本発明は、FcRnまたはFcRnの一部を特異的に結合するモノクローナルFcRn抗体を提供する。モノクローナルFcRn抗体の例としては、実施例において以下に記載されるようなDVN21およびDVN24が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、免疫グロブリンは、FcRnに少なくとも約1×10−6M、1×10−7M、1×10−8M、1×10−9Mまたはそれ未満の親和性で結合する。
【0037】
本発明の特定の局面において、本発明の抗FcRn抗体は、分子選択性および種選択性の両方を示す。例えば、本明細書中に開示される抗体は、好ましくは、FcRnに対して特異的であり、その抗体は、例えば、HASなどの他のFcRnリガンド分子に対する最小限の結合を有する。1つの実施形態において、上記抗FcRn抗体としては、ヒトFcRn、カニクイザルFcRnまたはアカゲザルFcRnに結合する。1つの実施形態において、上記抗FcRn抗体は、マウスFcRn、ラットFcRn、モルモットFcRn、イヌFcRn、ヤギFcRnまたはウサギFcRnに結合しない。あるいは、上記抗体は、異なる種(例えば、ヒトおよびマウス)由来の1種より多い異なるFcRn分子に結合する。明細書の教示に従って、当該分野において周知である方法(例えば、免疫蛍光顕微鏡検査法、ウェスタンブロット、FACS、ELISAまたはRIA)を使用して、上記抗FcRn抗体に関する分子選択性および種選択性を決定し得る。1つの実施形態において、上記抗FcRn抗体は、FcRnに結合する傾向を有し、その傾向は、他のFcRnリガンド分子に結合する傾向よりも少なくとも50倍大きく、そして好ましくは、100倍または200倍大きい。
【0038】
特定の実施形態において、本発明の抗体は、FcRnの1つ以上の特定のドメインに結合する。例えば、対象の抗体は、FcRn重鎖のFc結合部位中の領域に結合する。
【0039】
上記抗FcRn抗体は、IgG分子、IgM分子、IgE分子、IgA分子またはIgD分子であり得る。好ましい実施形態において、上記抗体は、IgGであり、そしてそれは、IgG1サブタイプ、IgG2サブタイプ、IgG3サブタイプまたはIgG4サブタイプである。特定の実施形態において、上記抗FcRn抗体は、サブクラスIgG2である。FcRn抗体のクラスおよびサブクラスは、当該分野において公知である任意の方法によって決定され得る。一般に、抗体のクラスおよびサブクラスは、抗体の特定のクラスおよびサブクラスに対して特異的である抗体を使用して決定され得る。このような抗体は、市販されている。上記クラスおよびサブクラスは、ELISA、ウェスタンブロットおよび他の技術によって決定され得る。あるいは、上記クラスおよびサブクラスは、その抗体の重鎖および/または軽鎖の定常ドメインの全部または一部を配列決定し、それらのアミノ酸配列を免疫グロブリンの種々のクラスおよびサブクラスの公知のアミノ酸と比較し、そしてその抗体のクラスおよびサブクラスを決定することによって決定され得る。
【0040】
特定の実施形態において、異なる種に由来する部分を含む単鎖抗体、およびキメラ抗体、ヒト化抗体または霊長類化(primatized)抗体(CDR移植)、ならびにキメラ単鎖抗体またはCDR移植単鎖抗体もまた、FcRn抗体の抗原結合部分として本発明によって包含される。これらの抗体の種々の部分は、従来の技術によって化学的に1つに連結され得るか、または遺伝子工学技術を使用して隣接したタンパク質として調製され得る。例えば、キメラの鎖またはヒト化された鎖をコードする核酸は、隣接したタンパク質を産生するために発現され得る。例えば、Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Cabillyら、欧州特許第0,125,023号;Bossら、米国特許第4,816,397号;Bossら、欧州特許第0,120,694号;Neuberger,M.S.ら、WO 86/01533;Neuberger,M.S.ら、欧州特許第0,194,276 B1号;Winter、米国特許第5,225,539号;およびWinter、欧州特許第0,239,400 B1号を参照のこと。霊長類化抗体に関しては、Newman,R.ら、BioTechnology、10:1455−1460(1992)もまた参照のこと。単鎖抗体に関しては、例えば、Ladnerら、米国特許第4,946,778号;およびBird,R.E.ら、Science、242:423−426(1988)を参照のこと。
【0041】
さらに、キメラ抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体または単鎖抗体のフラグメントを含む抗体の機能的フラグメントが、産生され得る。対象の抗体の機能的フラグメントは、それらが由来する完全長抗体の少なくとも1つの結合機能および/またはモジュレーション機能を保持する。好ましい機能的フラグメントは、対応する完全長抗体の抗原結合機能(例えば、FcRnに対する特異性)を保持する。特定の好ましい機能的フラグメントは、FcRnの1つ以上の機能の特性(例えば、結合能力または輸送能力)を阻害する能力を保持する。例えば、1つの実施形態において、FcRn抗体の機能的フラグメントは、FcRnとそのリガンドの1つ(例えば、IgG)との相互作用を特異的に阻害し得るか、そして/またはインビボで1つ以上のFcRn媒介性の機能(例えば、IgG輸送および自己免疫応答)を阻害し得る。
【0042】
特定の実施形態において、FcRnレセプターまたはその部分に結合する抗体フラグメント(Fvフラグメント、Fabフラグメント、Fab’フラグメントおよびF(ab’)フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない)が、本発明によって包含される。このようなフラグメントは、酵素的切断または組換え技術によって産生され得る。例えば、パパインまたはペプシンによる切断は、それぞれ、FabフラグメントまたはF(ab’)フラグメントをもたらし得る。抗体はまた、1つ以上の終止コドンが天然の終止部位の上流に導入されている抗体コード遺伝子を使用して、種々の短縮形態で産生され得る。例えば、F(ab’)重鎖部分をコードするキメラ遺伝子は、その重鎖のCHドメインおよびヒンジ領域をコードするDNA配列を含むように設計され得る。
【0043】
ヒト化抗体は、例えば、非ヒト種に由来する抗体であり得、この抗体において、その重鎖および軽鎖のフレームワークドメインおよび定常ドメインにおける特定のアミノ酸は、ヒトにおいて免疫応答を減少または廃絶するように変異されている。あるいは、ヒト化抗体は、ヒト抗体由来の定常ドメインを非ヒト種の可変ドメインに融合することによって産生され得る。ヒト化抗体を作製する方法の例は、米国特許第6,054,297号、同第5,886,152号および同第5,877,293号において見出され得る。ヒト化抗体は、異なる起源の免疫グロブリンの部分を含み得る。例えば、少なくとも1つの部分は、ヒト起源のものであり得る。したがって、本発明は、FcRn(例えば、ヒトFcRn)に対する結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンに関連し、この免疫グロブリンは、非ヒト起源(例えば、げっ歯類)の抗原結合領域およびヒト起源の免疫グロブリンの少なくとも一部(例えば、ヒトフレームワーク領域、ヒト定常領域またはそれらの部分)を含む。例えば、上記ヒト化抗体は、必要な特異性を有する非ヒト起源(例えば、マウス)の免疫グロブリンに由来する部分、およびヒト起源の免疫グロブリン配列に由来する部分を有し(例えば、キメラ免疫グロブリン)、それらの部分は、従来の技術によって化学的(例えば、合成的)に1つに連結されるか、または遺伝子工学技術を使用して隣接したポリペプチドとして調製される(例えば、キメラ抗体のタンパク質部分をコードするDNAは、隣接したポリペプチド鎖を産生するように発現され得る)。
【0044】
本発明のヒト化免疫グロブリンの別の例は、1種以上の免疫グロブリン鎖を含む免疫グロブリンであり、その免疫グロブリン鎖は、非ヒト起源のCDR(例えば、非ヒト起源の抗体に由来する1つ以上のCDR)、およびヒト起源の軽鎖および/または重鎖に由来するフレームワーク領域を含む(例えば、フレームワークの変化を伴うかまたはそれを伴わないCDR移植抗体)。1つの実施形態において、上記ヒト化免疫グロブリンは、FcRnポリペプチドに対する結合に関してマウスモノクローナル抗体と競合し得る。キメラ単鎖抗体またはCDR移植単鎖抗体はまた、用語「ヒト化免疫グロブリン」によって包含される。
【0045】
特定の実施形態において、本発明は、FcRnアンタゴニスト抗体を提供する。本明細書中に記載されるように、用語「アンタゴニスト抗体」は、結合活性(例えば、リガンド結合およびβ2−ミクログロブリン結合)または輸送活性(例えば、IgGを輸送し、そしてリソソームによる異化からIgGを防御すること)などのFcRnの1つ以上の機能を阻害し得る抗体をいう。
【0046】
特定の実施形態において、抗イディオタイプ抗体もまた、提供される。抗イディオタイプ抗体は、別の抗体の抗原結合部位に関連する抗原性決定因子を認識する。抗イディオタイプ抗体は、第2の抗体を産生するために使用される動物と同じ種の動物、そして好ましくは同じ系統の動物を免疫化することによって第2の抗体に対して調製され得る。例えば、米国特許第4,699,880号を参照のこと。1つの実施形態において、抗体は、FcRnまたはその部分に対して惹起され、そしてこれらの抗体は、次に、抗イディオタイプ抗体を産生するために使用される。それによって産生された抗イディオタイプ抗体は、レセプターに結合する化合物(例えば、レセプター分画のリガンド)を結合し得、そしてこのような化合物を検出もしくは同定または定量するためにイムノアッセイにおいて使用され得る。このような抗イディオタイプ抗体はまた、FcRnレセプター機能のインヒビターであり得るが、その抗イディオタイプ抗体は、レセプター自体を結合しない。このような抗イディオタイプ抗体はまた、アンタゴニスト抗体と称され得る。
【0047】
特定の局面において、本発明は、ハイブリドーマ細胞株、およびこれらのハイブリドーマ細胞株によって産生されるモノクローナル抗体に関する。本発明の細胞株は、上記モノクローナル抗体の産生以外の用途を有する。例えば、本発明の細胞株は、さらなるハイブリドーマを産生するために他の細胞(例えば、適切に薬物でマーカー化した、ヒト骨髄腫細胞、マウス骨髄腫細胞、ヒト−マウス異種移植骨髄腫(heteromyeloma)細胞またはヒトリンパ芽球様(lymphoblastoid)細胞)と融合され、したがってモノクローナル抗体をコードする遺伝子の移入を提供し得る。さらに、上記細胞株は、抗FcRn免疫グロブリン鎖をコードする核酸の供給源として使用され得、その核酸は、(例えば、任意の適切な技術(例えば、Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Winter、米国特許第5,225,539号を参照のこと)を使用して他の細胞に移入する際に)単離および発現され得る。例えば、再配列された抗FcRn軽鎖または抗FcRn重鎖を含むクローンが、単離(例えば、PCRによって)され得るか、またはcDNAライブラリーが、細胞株から単離されたmRNAから調製され得、そして抗FcRn免疫グロブリン鎖をコードするcDNAクローンが、単離され得る。したがって、上記抗体またはその部分の重鎖および/または軽鎖をコードする核酸は、特定の免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはそれらの改変体(例えば、ヒト化免疫グロブリン)の産生のために、種々の宿主細胞またはインビトロ翻訳系において組換えDNA技術に従って、入手および使用され得る。例えば、cDNAを含む核酸、または改変体(例えば、ヒト化免疫グロブリンまたはヒト化免疫グロブリン鎖)をコードするその誘導体は、適切な原核生物ベクターまたは真核生物ベクター(例えば、発現ベクター)中に配置され得、そして適切な方法(例えば、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、感染)によって適切な宿主細胞に導入され得、その結果、その核酸は、1つ以上の発現制御エレメント(例えば、ベクター中のもの、または宿主細胞ゲノムに組み込まれたもの)に作動可能に連結される。産生のために、宿主細胞は、発現に適した条件(例えば、誘導物質、適当な塩を補充した適切な培地、増殖因子、抗生物質、栄養補助物質(nutritional supplement)などの存在)において維持され得、それによって、そのコードされたポリペプチドが、産生される。所望の場合、そのコードされたタンパク質は、(例えば、その宿主細胞または培地から)回収および/または単離され得る。産生の方法はトランスジェニック動物の宿主細胞における発現を包含することが、認識される(例えば、WO 92/03918、GenPharm International(1992年3月19日公開)を参照のこと)。
【0048】
(II.抗体産生の方法)
免疫化する抗原の調製、ならびにポリクローナル抗体産生およびモノクローナル抗体産生は、本明細書中に記載される通りに行われても、他の適切な技術を使用して行なわれてもよい。種々の方法が、記載されている。例えば、Kohlerら、Nature、256:495−497(1975)およびEur.J.Immunol.6:511−519(1976);Milsteinら、Nature 266:550−552(1977);Koprowskiら、米国特許第4,172,124号;Harlow,E.およびD.Lane、1988、Antibodies:A Laboratory Manual、(Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor、N.Y.);Current Protocols In Molecular Biology、第2巻(第27補遺、1994年夏)、Ausubel,F.M.ら編、(John Wiley & Sons:New York、N.Y.)、第11章、(1991)を参照のこと。一般に、ハイブリドーマは、適切な不死の細胞株(例えば、SP2/0のような骨髄腫細胞株)を抗体産生細胞と融合することによって産生され得る。上記抗体産生細胞(好ましくは、脾臓またはリンパ節の抗体産生細胞)は、目的の抗原によって免疫化された動物から得られる。融合細胞(ハイブリドーマ)は、選択的培養条件を使用して単離され得、そして限界希釈法によってクローニングされ得る。所望の特異性を有する抗体を産生する細胞は、適切なアッセイ(例えば、ELISA)によって選択され得る。
【0049】
必要な特異性の抗体を産生または単離する他の適切な方法が、使用され得、その方法は、例えば、ライブラリーから組換え抗体を選択する方法、またはヒト抗体の全てのレパートリーを産生し得るトランスジェニック動物(例えば、マウス)の免疫化による方法を含む。例えば、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:2551−2555(1993);Jakobovitsら、Nature、362:255−258(1993);Lonbergら、米国特許第5,545,806号;Suraniら、米国特許第5,545,807号を参照のこと。例えば、FcRn抗体は、合成ヒトコンビナトリアル抗体ライブラリー(HuCAL)から単離され得る。例えば、Knappikら、2000、J Mol boil 296:57−86を参照のこと。
【0050】
例示として、FcRnポリペプチド(例えば、抗体応答を誘発し得るFcRnポリペプチドまたはその抗原性フラグメント、あるいはFcRn融合タンパク質)に由来する免疫原が、動物(例えば、マウス、ハムスターまたはウサギ)を免疫化するために使用され得る。例えば、Antibodies:A Laboratory Manual編、HarlowおよびLane(Cold Spring Harbor Press:1988)を参照のこと。タンパク質またはペプチドに対して免疫原性を付与するための技術は、キャリアへの結合体化または当該分野において周知である他の技術を含む。FcRnポリペプチドの免疫原部分は、アジュバントの存在下において投与され得る。免疫化の進行は、血漿または血清中の抗体力価の検出によってモニタリングされ得る。標準的なELISAまたは他のイムノアッセイは、抗体のレベルを評価するために、抗原のような免疫原と一緒に使用され得る。1つの実施形態において、本発明の抗体は、FcRnタンパク質の細胞外部分またはそのフラグメントに対して特異的である。別の実施形態において、本発明の抗体は、上記FcRnタンパク質の細胞内部分または膜貫通部分に対して特異的である。
【0051】
FcRnポリペプチドの抗原調製物を用いた動物の免疫化の後に、抗血清が、得られ得、そして所望の場合、ポリクローナル抗体が、その血清から単離され得る。モノクローナル抗体を産生するために、抗体産生細胞(リンパ球)は、免疫化した動物から回収され得、そしてその抗体産生細胞は、ハイブリドーマ細胞を産生するために、不死化細胞(例えば、骨髄腫)との標準的な体細胞融合手順によって融合され得る。このような技術は、当該分野において周知であり、そしてその技術としては、例えば、ハイブリドーマ技術(KohlerおよびMilstein、(1975)Nature、256:495−497によって最初に開発された)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbarら、(1983)Immunology Today、4:72)、およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBV−ハイブリドーマ技術(Coleら、(1985)Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss,Inc.pp.77−96)が挙げられる。ハイブリドーマ細胞は、FcRnポリペプチドと特異的に反応する抗体およびこのようなハイブリドーマ細胞を含む培養物から単離されたモノクローナル抗体の産生について、免疫化学的にスクリーニングされ得る。
【0052】
特定の実施形態において、本発明の抗体は、従来の技術を使用してフラグメント化され得、そのフラグメントは、完全な抗体の代わりに上記と同じ様式において有用性についてスクリーニングされ得る。例えば、F(ab)2フラグメントは、ペプシンで抗体を処理することによって生成され得る。得られたF(ab)2フラグメントは、ジスルフィド架橋を還元して、Fabフラグメントを生成するために処理され得る。
【0053】
特定の実施形態において、本発明の抗体は、抗体の少なくとも1つのCDR領域によって付与されるFcRnポリペプチドに対する親和性を有する、二重特異的分子、一本鎖分子およびキメラ分子およびヒト化分子を含むことがさらに意図される。一本鎖抗体を生成するための技術(米国特許第4,946,778号)はまた、一本鎖抗体を生成するために適合され得る。また、トランスジェニックマウスまたは他の生物(他の哺乳動物を含む)は、ヒト化抗体を発現するために使用され得る。これら抗体を生成するための方法は、当該分野で公知である。例えば、Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Cabillyら、欧州特許第0,125,023号;Queenら、欧州特許第0,451,216号;Bossら、米国特許第4,816,397号;Bossら、欧州特許第0,120,694号;Neuberger,M.S.ら、WO86/01533;Neuberger,M.S.ら、欧州特許第0,194,276号;Winter、米国特許第5,225,539号;Winter、欧州特許第0,239,400号;Padlan,E.A.ら、欧州特許出願第0,519,596A1を参照のこと。Ladnerら、米国特許第4,946,778号;Huston、米国特許第5,476,786号;およびBird,R.E.ら、Science,242:423−426(1988)もまた参照のこと。
【0054】
このようなヒト化免疫グロブリンは、所望のヒト化鎖をコードする遺伝子(例えば、cDNA)を調製するために、合成核酸および/または組換え核酸を使用して生成され得る。例えば、ヒト化可変領域をコードする核酸(例えば、DNA)配列は、ヒトの鎖またはヒト化した鎖をコードするDNA配列(例えば、予めヒト化した可変領域)の由来するDNAテンプレートを変化させるために、PCR変異誘発法を使用して構築され得る(例えば、Kamman,M.ら、Nucl.Acids Res.,17:5404(1989);Sato,K.ら、Cancer Research,53:851−856(1993);Daugherty,B.ら、Nucleic Acids Res.,19(9):2471−2476(1991);ならびにLewis,A.P.およびJ.S.Crowe,Gene,101:297−302(1991)を参照のこと)。これらまたは他の適切な方法を使用して、改変体も油容易に生成され得る。一実施形態において、クローニングされた可変領域は変異誘発され得、そして所望の特異性を有する改変体をコードする配列が選択され得る(例えば、ファージライブラリーから;例えば、Krebberら、米国特許第5,514,548号;Hoogenboomら、WO93/06213(1993年4月1日公開))。
【0055】
特定の実施形態において、その抗体は、検出され得る標識にさらに結合される(例えば、標識は、放射性同位体、蛍光化合物、酵素または酵素補因子であり得る)。その活性部分は、放射性因子(例えば、放射性重金属(例えば、鉄キレート化剤)、ガドリニウムもしくはマンガンの放射活性キレート、酸素、窒素、鉄、炭素もしくはガリウムの陽電子放射体、43K、52Fe、57Co、67Cu、67Ga、68Ga、123I、125I、131I、132I、または99Tc)であり得る。このような部分に付加される結合剤は、画像化剤として使用され得、そしてヒトのような哺乳動物における診断用途に有用な量において投与され得る。次いで、この画像化剤の位置および蓄積が検出される。その画像化剤の位置および蓄積は、ラジオシンチグラフィー、核磁気共鳴画像化法、コンピューター断層撮影法、または陽電子射出断層撮影法によって検出され得る。FcRnに対する抗体または他の結合ポリペプチドを使用するイムノシンチグラフィーは、癌および脈管構造を検出および/または診断するために使用され得る。例えば、99テクネチウム、111インジウム、125ヨウ素で標識したFcRnマーカーに対するモノクローナル抗体は、このような画像化法において有効に使用され得る。当業者に明らかであるように、投与されるべき放射性同位体の量は、その放射性同位体に依存する。当業者は、活性部分として使用される所定の放射性核種の比活性およびエネルギーに基づいて、投与されるべきその画像化剤の量を容易に処方し得る。代表的には、画像化剤1用量あたり0.1〜100ミリキュリー、好ましくは、1〜10ミリキュリー、最も頻繁には、2〜5ミリキュリーが投与される。従って、放射活性部分に結合体化した標的化部分を含む画像化剤として有用な本発明に従う組成物は、0.1〜100ミリキュリー、いくらかの実施形態においては好ましくは1〜10ミリキュリー、いくらかの実施形態においては好ましくは2〜5ミリキュリー、いくらかの実施形態においてはより好ましくは1〜5ミリキュリーを含む。
【0056】
特定の好ましい実施形態において、本発明の抗体は、モノクローナル抗体であり、特定の実施形態において、本発明は、新規な抗体を生成するための方法を利用する。例えば、FcRnポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を生成するための方法は、検出可能な免疫応答を刺激するに有効な量のFcRnポリペプチドを含む免疫原性組成物をマウスに投与する工程、そのマウスから抗体生成細胞(例えば、脾臓由来細胞)を得る工程、およびその抗体生成細胞と骨髄腫細胞とを融合して、抗体生成ハイブリドーマを得る工程、ならびにその抗体生成ハイブリドーマを試験して、FcRnポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマを同定する工程、を包含し得る。一旦得られたら、ハイブリドーマを細胞培養において、必要に応じて、そのハイブリドーマ由来細胞がFcRnポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を生成する培養条件で、増殖させ得る。そのモノクローナル抗体は、細胞培養物から精製され得る。
【0057】
さらに、所望の抗体を同定するために抗体をスクリーニングするために使用される技術は、得られる抗体の特性に影響を及ぼし得る。例えば、特定の治療目的に使用される抗体は、好ましくは、特定の細胞型を標的にすることが可能である。従って、この型の抗体を得るために、目的の抗原を発現する細胞に結合する抗体について(例えば、蛍光活性化セルソーティングによって)スクリーニングすることが望ましい。同様に、抗体が溶液中で抗原と結合させるために使用される場合、液相での結合(solution binding)を試験することが望ましい。種々の異なる技術が、抗体:抗原相互作用を試験して、特に望ましい抗体を同定するために利用可能である。このような技術としては、ELISA、表面プラズモン共鳴結合アッセイ(例えば、Biacore結合アッセイ、Bia−core AB、Uppsala、Sweden)、サンドイッチアッセイ(例えば、IGEN International,Inc.(Gaithersburg,Maryland)の常磁性ビーズシステム)、ウェスタンブロット、免疫沈降アッセイおよび免疫組織化学が挙げられる。
【0058】
本発明の抗体は、種々の適用(例えば、研究適用、診断適用および治療適用が挙げられる)において有用である。例えば、これら抗体は、レセプターもしくはその一部を単離および/または精製するために、ならびにレセプター構造(例えば、コンホメーション)および機能を研究するために使用され得る。
【0059】
(III.診断適用)
特定の局面において、本発明のFcRn抗体は、例えば、FcRnを発現する内因性細胞(例えば、腸上皮細胞および血管内皮細胞)において、またはFcRnレセプター遺伝子でトランスフェクトされた細胞において、FcRnレセプターの発現を検出もしくは測定するために使用され得る。患者または個体におけるFcRnの検出は、FcRnの関与が何らかの自己免疫疾患プロセスにおいて果たしている程度を決定することにおいて重要であり得る。特定の実施形態において、FcRn抗体は、診断目的もしくは研究目的で、細胞画像化(例えば、フローサイトメトリー、および蛍光活性化セルソーティング)において有用性を有し得る。
【0060】
特定の実施形態において、上記抗体またはその抗体の抗原結合フラグメントは、診断目的で標識されてもよいし、標識されなくてもよい。代表的には、診断アッセイは、FcRnへの抗体の結合から生じる複合体の形成を検出する工程を包含する。抗体は、直接標識され得る。種々の標識が使用され得る。これら標識としては、放射性核種、蛍光剤、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素インヒビターおよびリガンド(例えば、ビオチン、ハプテン)が挙げられるが、これらに限定されない。種々の適切なイムノアッセイが当業者に公知である(例えば、米国特許第3,817,827号;同第3,850,752号;同第3,901,654号;および同第4,098,876号を参照のこと)。標識されない場合、上記抗体は、凝集アッセイのようなアッセイにおいて使用され得る。標識されていない抗体はまた、抗体を検出するために使用され得る別の(1種以上の)適切な試薬(例えば、第1の抗体(例えば、抗イディオタイプ抗体または標識されていない免疫グロブリンに対して特異的な他の抗体)と反応する標識抗体(例えば、第2の抗体))または他の試薬(例えば、標識プロテインA)と組み合わせて使用され得る。FcRn抗体はまた、化学基(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、メチル基もしくはエチル基、または炭水化物基)で誘導体化され得る。これら基は、上記抗体の生物学的特性を改善するために(例えば、血清半減期を増すためまたは組織結合を増すために)有用であり得る。
【0061】
一実施形態において、本発明の抗体は、酵素イムノアッセイにおいて利用され得る。ここで本発明の抗体、または第2の抗体は、酵素に結合され得る。FcRnタンパク質を含む生物学的サンプルが本発明の抗体と合わされる場合、この抗体とFcRnタンパク質との間で結合が生じる。一実施形態において、FcRnタンパク質を発現する細胞(例えば、内皮細胞)を含むサンプルが本発明の抗体と合わされると、この抗体と、この抗体によって認識されるエピトープを含むFcRnタンパク質を有する細胞との間で結合が生じる。これら結合した細胞は、結合していない試薬から分離され得、その細胞に特異的に結合した抗体−酵素結合体の存在が、例えば、そのサンプルと上記酵素の基質(この酵素の基質は、その酵素が作用したときに呈色または他の検出可能な変化を生じる)とを接触させることによって、決定され得る。別の実施形態において、本発明の抗体は、標識されていなくてもよく、本発明の抗体を認識する第2の標識された抗体が添加され得る。
【0062】
特定の局面において、生物学的サンプル中でFcRnタンパク質の存在を検出することにおいて使用するためのキットもまた、調製され得る。このようなキットは、FcRnタンパク質またはそのレセプターの一部に結合する抗体、ならびにその抗体とFcRnもしくはその一部との間の複合体の存在を検出するに適切な1種以上の補助的な試薬を含む。本発明の抗体組成物は、凍結乾燥形態において、単独でまたは他のエピトープに対して特異的なさらなる抗体と組み合わせて提供され得る。この抗体は標識されていてもされていなくてもよく、付属成分(例えば、緩衝化剤(例えば、Tris、リン酸塩および炭酸塩)、安定化剤、賦形剤、殺虫剤および/または不活性タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン))とともにキット中に含まれ得る。例えば、上記抗体は、付属成分との凍結乾燥混合物として提供されてもよいし、その付属成分は、ユーザーが組み合わせるために別個に提供されてもよい。一般に、これら付属物質は、活性抗体の量に基づいて約5重量%未満で存在し、通常、抗体濃度に基づいて少なくとも約0.001重量%の総量で存在する。上記モノクローナル抗体に結合し得る第2の抗体が使用される場合、このような抗体は、例えば、別個のバイアルもしくは容器において、キット中に提供され得る。存在する場合、この第2の抗体は、代表的には標識され、そして上記の抗体処方物と類似の様式で処方され得る。
【0063】
同様に、本発明はまた、FcRnもしくは細胞によるそのレセプターの一部の発現を検出および/または定量する方法に関する。ここで細胞またはその画分(例えば、膜画分)を含む組成物は、FcRnもしくはそのレセプターの一部に結合する抗体と、これらFcRnもしくはそのレセプターの一部への上記抗体の結合に適した条件下で接触させられ、抗体結合がモニターされる。抗体とFcRNもしくはその一部との間の複合体の形成の指標である、その抗体の検出は、上記レセプターの存在を示す。上記細胞に対する抗体の結合は、標準的な方法(例えば、作業実施例において記載される方法)によって決定され得る。その方法は、個体に由来する細胞におけるFcRnの発現を検出するために使用され得る。特定の実施形態において、内皮細胞におけるFcRnの定量的発現は、例えば、免疫蛍光顕微鏡によって評価され得る。代替の実施形態において、定量的評価は、血中白血球のフローサイトメトリーおよびフローサイトメトリーによって評価され得、そしてその染色強度が、疾患の素因、進行もしくは危険性と相関され得る。
【0064】
本発明はまた、特定の疾患に対する哺乳動物の素因を検出する方法に関する。例示すると、この方法は、細胞上に存在するFcRnの量および/または哺乳動物におけるFcRn陽性細胞の数に基づいて、進行する疾患に対する哺乳動物の素因を検出するために使用され得る。一実施形態において、本発明は、自己免疫疾患に対する哺乳動物の素因を検出する方法に関する。この実施形態において、試験されるべきサンプルは、FcRnもしくはその一部に結合する抗体と、これらFcRnもしくはそのレセプターの一部への上記抗体の結合に適した条件下で接触させられる。ここでそのサンプルは、通常の個体においてFcRnを発現する細胞を含む。抗体の結合および/または結合量が検出され、このことは、自己免疫疾患に対する上記個体の素因を示し、ここでレセプターのより高いレベルは、自己免疫疾患に対する上記個体の増大した素因と相関する。
【0065】
(IV.治療適用)
特定の実施形態において、本発明は、自己免疫疾患(または自己免疫障害)を処置するための組成物および方法を提供する。他の実施形態において、本発明は、個体におけるFcRn媒介性IgG保護を阻害するための方法を提供する。これら方法は、上記の1種以上のFcRn抗体の治療上有効な量をその個体に投与する工程を包含する。これら方法は、動物、より具体的にはヒトの治療的処置および予防的処置を特に目的とする。
【0066】
本明細書中で記載されるように、FcRn抗体による処置に適した自己免疫疾患としては、全身性エリテマトーデス、インスリン耐性糖尿病、重症筋無力症、多発性動脈炎、自己免疫性特発性血小板減少性紫斑病、皮膚血管炎、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、グッドパスチャー症候群、慢性関節リウマチ、川崎病、およびシェーグレン症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
このような方法の特定の実施形態において、1種以上のFcRn抗体が一緒に(同時に)または異なる時間に(連続して)投与され得る。特定の実施形態において、本発明の抗体はまた、他の抗体治療剤(モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体)とともに使用され得る。
【0068】
特定の実施形態において、本発明のFcRn抗体は、単独で使用され得る。あるいは、FcRn抗体は、免疫刺激剤、免疫調節剤、またはこれらの組み合わせと組み合わせて使用され得る。幅広い範囲の従来の化合物が、免疫調節活性を有することが示されている。これらの化合物としては、α−インターフェロン、γ−インターフェロン、腫瘍壊死因子α、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明によって、自己免疫疾患についての従来の治療の有効性が本発明の1種以上のFcRn抗体の使用を通じて増強され得ることが認識される。
【0069】
特定の実施形態において、本発明のFcRn抗体は、自己免疫疾患についての公知の治療と併用され得る。このような自己免疫疾患の公知の治療の例としては、非ステロイド系抗炎症薬物(NSAID)またはコルチコステロイドでの治療が挙げられるが、これらに限定されない。自己免疫疾患についての治療の他の例としては、高用量の抗体を患者に周期的に投与することが挙げられる。
【0070】
特定の具体的実施形態において、本発明のFcRN抗体は、癌を画像化または処置するために使用される放射活性抗体または毒素に結合した抗体のクリアランスを促進するために使用され得る。
【0071】
併用療法の性質に依存して、他の治療が施されると同時に本発明の抗体の投与が継続され得るか、または他の治療の後に本発明の抗体の投与が行われる。抗体の投与は、単一用量においてかまたは複数用量において行われ得る。いくらかの場合において、抗体の投与は、従来の治療の数日前に開始される一方で、他の場合には、投与は、従来の治療が施される直前またはそのときに開始される。
【0072】
(V.薬学的組成物および投与様式)
特定の実施形態において、本発明の抗体は、薬学的に受容可能なキャリアとともに処方される。このような抗体は、単独で、または薬学的処方物(薬学的組成物)の成分として投与され得る。この化合物は、ヒトまたは獣医学における使用のための任意の好都合な様式において投与するために処方され得る。湿潤剤、乳化剤および滑沢剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、矯味矯臭剤、保存剤および抗酸化剤もまた、この組成物中に存在し得る。
【0073】
本発明の抗体の処方物は、経口投与、食事による投与、局所投与、非経口投与(例えば、静脈内注射、動脈内注射、筋肉内注射、皮下注射)、吸入(例えば、気管支内吸入、鼻腔内吸入、または経口吸入、点鼻)、直腸投与、および/または膣内投与に適したものが挙げられる。他の適切な投与方法はまた、再充填可能なデバイスまたは生分解性デバイス、および徐放性ポリマーデバイス(slow release polymeric device)が挙げられ得る。本発明の薬学的組成物は、他の薬剤とともに併用療法の一部として(同じ処方物または別個の処方物のいずれかで)投与され得る。
【0074】
上記処方物は、好都合には、単一投薬形態において提示され得、薬学分野で周知の任意の方法によって調製され得る。単位投薬形態を生じるためにキャリア物質と合わせられ得る活性成分の量は、処置される宿主、特定の投与様式に依存して変動する。単一投薬形態を生じるためにキャリア物質と合わせられ得る活性成分の量は、治療効果を生じるその化合物の量である。
【0075】
特定の実施形態において、これら処方物または組成物を調製する方法は、別の型の免疫調節剤およびキャリア、および必要に応じて1種以上の補助成分をあわせる工程を包含する。一般に、上記処方物は、液体キャリア、もしくは微細に分離した固体キャリア、またはその両方とともに調製され得、次いで、必要であれば、製品に成形される。
【0076】
経口投与のための処方物は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(香味をつけた基剤、通常は、スクロースおよびアカシアゴムまたはトラガカントゴムを使用する)、散剤、顆粒剤の形態で、または水溶液もしくは非水溶液での液剤もしくは懸濁剤として、または水中油滴エマルジョンもしくは油中水滴エマルジョンとして、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、または錠剤(pastille)(不活性基剤(例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアゴム)を使用する)ならびに/あるいはマウスウォッシュなどとして存在し得る。各々は、活性成分として所定の量の1種以上の本発明の抗体を含む。
【0077】
経口投与のための液体投薬形態としては、薬学的に受容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップおよびエリキシル剤が挙げられる。その活性成分に加えて、その液体投薬形態は、当該分野で一般に使用される不活性希釈剤(例えば、水または他の溶媒)、可溶化剤および乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、カルボン酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、およびこれらの混合物)を含み得る。不活性希釈剤の他に、上記経口用組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤、香料、および保存剤のような補助剤を含み得る。
【0078】
活性化合物に加えて、懸濁剤は、懸濁化剤(例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、およびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天(agar−agar)、およびトランガカントゴム、ならびにこれらの混合物)を包含し得る。
【0079】
本発明の処方物(method)は、局所的に、例えば、皮膚に投与され得る。この局所用処方物は、皮膚透過増強剤または角質透過増強剤として有効であることが公知の、幅広い種々の1種以上の薬剤をさらに含み得る。これらの例は、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコール、メチルアルコールもしくはイソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、およびアゾン(azone)である。さらなる薬剤が、上記処方物を審美的に許容可能にするためにさらに含まれ得る。これらの例は、脂肪、ワックス、油、色素、香料、保存剤、安定化剤、および界面活性剤である。表皮剥離剤(例えば、当該分野で公知のもの)がまた、含まれ得る。例は、サリチル酸および硫黄である。
【0080】
局所投与および経皮投与のための投薬形態としては、散剤、スプレー剤、軟膏、パスタ剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル、液剤、パッチ、および吸入剤が挙げられる。本発明の抗体は、薬学的に受容可能なキャリア、および保存剤、緩衝化剤、または必要とされ得るプロペラントと、無菌条件下で混合され得る。軟膏、パスタ剤、クリーム剤およびゲルは、抗体に加えて、賦形剤(例えば、動物性脂肪および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トランガカントゴム、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはこれらの混合物)を含み得る。
【0081】
非経口投与に適した薬学的組成物は、1種以上の薬学的に受容可能な滅菌等張性水溶液もしくは滅菌等張性非水溶液、分散剤、懸濁剤、エマルジョン、または使用直前に滅菌注射用液もしくは分散剤に再構成され得る滅菌散剤(抗酸化剤、緩衝化剤、静菌薬、処方物を意図されたレシピエントの血液と等張性にする溶質、または懸濁化剤もしくは濃化剤を含み得る)と組み合わせて、1種以上の抗体を含み得る。本発明の薬学的組成物において使用され得る適切な水性キャリアおよび非水性キャリアの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物、植物性油(例えば、オリーブ油)、ならびに注射用有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。例えば、コーティング用物質(例えば、レシチン)の使用によって、懸濁剤の場合に必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、適切な流動性が維持され得る。
【0082】
これら組成物はまた、補助剤(例えば、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤)を含み得る。微生物活動の予防は、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など)を含めることによって確実にされ得る。等張剤(例えば、糖、塩化ナトリウムなど)を組成物に含めることも望ましい。さらに、注射用医薬形態の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を含めることによってもたらされ得る。
【0083】
注射用デポー形態は、生分解性ポリマー(例えば、ポリラクチド−ポリグリコリド)中に1種以上の抗体のマイクロカプセルマトリクスを形成することによって作製される。薬物対ポリマーの比、および使用される特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出の速度は制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用処方物はまた、身体組織と適合するリポソームもしくはマイクロエマルジョンの中に薬物を捕捉することによって調製される。
【実施例】
【0084】
(例示)
本発明はこれまでのところ一般的に記載されているが、本発明は、以下の実施例を参照することによって、より容易に理解される。以下の実施例は、本発明の特定の局面および実施形態を例示するために含まれているに過ぎず、以下の実施例は、本発明を限定することは意図されるものではない。
【0085】
本出願人の最初の目的は、hFcRnへのhIgGおよびアルブミンの結合が細胞表面モニタリング法(例えば、フローサイトメトリー)を使用して簡便に測定され得る細胞株を作製することであった。FcRnの定常状態での局在化は、通常ではエンドソーム局在化である(Claypoolら,2002,J Biol Chem 277:28038〜50;Oberら,2004,J Immunol 172:2021〜9)。hFcRnの可視化を容易にするために、本出願人は、末端シグナル配列コドンと成熟hFcRnタンパク質の最初のコドンとの間にインフレームでクローン化された緑色蛍光タンパク質(GFP)コードcDNAフラグメントを含む、構築物を作製した。エンドソームから形質膜へとhFcRnを向けるために、本出願人はその後、正常な細胞質エンドソーム標的化ドメインが欠失されるように、上記構築物を操作した(図1A)。ヒトHEK293細胞中にトランスフェクトした場合、上記GFP改変型構築物(ssECTM)と、GFPを欠く同様の構築物(ECTM)とは、hFcRnを通常のエンドソームパターンから形質膜へと向けた。
【0086】
HEK293細胞中に安定にトランスフェクトされたssECTM構築物およびHEK293細胞中に安定にトランスフェクトされたECTM構築物を、その後、それらがpH依存性様式でhIgGに結合する能力を分析するために、フローサイトメトリー分析のために使用した(図1B)。上記ssECTMトランスフェクト体およびECTMトランスフェクト体は、pH6では同等のhIgG結合を示したが、pH7.4ではそうではなかった。このことは、上記GFPタグがhIgG−hFcRnのpH依存性結合に影響を与えなかったことを示す。これらの結果は、hIgGおよびHSAの結合についてモニターするためにssECTMトランスフェクトHEK293細胞株を使用することを確認した。
【0087】
その後、フローサイトメトリーを使用して、HSAがhIgGとともにhFcRnと相互作用する可能性を評価した(図2)。pH6にてssECTM細胞を精製HSAとともにインキュベート(図2A3;p≦0.002)およびpH6にてssECTM細胞をヒト血清とともにインキュベート(図2A4;p≦0.002)すると、SA−APCと組み合わせたGAHbioによって検出されるSA結合を生じたが、ssECTM細胞をGAHSA−ビオチン+SA−APCのみとともにインキュベートした場合には、結合は観察されなかった(図2A1)。pH6.0では、ssECTM細胞をヒト血清およびGAH IgG−PEとともにプレインキュベートした場合に、hFcRN−GFPに対するhIgGの結合を検出することが同様に可能であった(図2A5;p≦0.003)が、細胞をGAH IgG−PEのみとインキュベートした場合には、結合は検出されなかった(図2A2)。中性pH(pH7.4)では、hFcRn−GFPを発現するssECTM細胞に対するIgGの結合もHSAの結合も、観察されなかった(図2A6〜図2A10)。
【0088】
HSA結合の特異性を確認するために、本出願人は、ビオチン化HSAを使用することによって、同様の実験を実施した(HSA−bio;図2B)。酸性pHにおいて、ssECTM細胞に対するHSA−bioの結合が、SA−APCのみを用いた場合(図2B1)と比較して、SA−APCを用いて検出した場合に観察された(図2B2;p≦0.001)。中性pHにおいては、結合は観察されなかった(図2B3および図2B4)。同様の結果が、ECTM細胞(GFPタグを欠く)を使用することによって得られた。このことは、HSA−bio(p≦0.006)およびhIgG−AF647(p≦0.001)の両方が、上記GFPタグとは無関係にhFcRnに特異的に結合可能であったことを確認した(図2C)。従って、上記の酸性pH依存性結合は、hFcRnとGFPとの融合によって生じたアーティファクトではなかった。さらに、非トランスフェクトHEK293細胞は、酸性pHにおいて、認識可能なHSAbio結合もhIgG−AF結合も示さなかった(図2D)。これらの結果は、hIgGおよびHSAの結合を評価するためのssECTMトランスフェクト細胞の使用を確認し、hIgGおよびHSAが酸性pH(pH6.0)ではhFcRNに結合するが、中性pH(pH7.4)では結合しないことを示唆した。
【0089】
huIgGおよびHSAの両方がpH依存性様式でhFcRnに特異的に結合することが示されたので、本出願人はその後、hFcRnのアルブミン結合部位とhFcRnのIgG結合部位との間に重複が存在するか否かについて取り組んだ。本出願人はまず、HSAおよびhIgGが、ヒトトランスフェリン(hTF)とともに、pH6においてssECTM細胞に対するhIgG−AFおよびHSA−bioの結合を阻害する能力を評価した。HSAおよびhTFは、hFcRnに対するhIgGの結合を認識可能には阻害しなかった(図3A)。反対に、HSAは、高濃度(>16mg/ml)においてのみ、hIgG−AF647結合を最小限度阻害し、hTFはそれ以下であった(図3B)。これらの結果は、HSAおよびhuIgGがhFcRn上にある非競合的酸性pH依存性部位に結合することを示唆する。
【0090】
FcRnの治療的ブロックは、IgG自己抗体により引き起こされる自己免疫疾患を処置するための有望なアプローチとして想定される(Christiansonら、1996、J.Immuno.176,4933〜39;Christiansonら、1997、J Immunol 159:4781〜92;Liuら、1997、J Exp Med 186:777〜83;Akileshら、2004、J Clin Invest 113:1328〜33)。実際、FcRnが欠損したマウスは、病原性IgG抗体により引き起こされる関節炎に対して抵抗性である(Akileshら、2004、J Clin Invest 113:1328〜33)。しかし、酸性pH6においてhIgGおよびHSAがhFcRnに結合するという事実が原因で、主要な懸念事項は、FcRnのブロックが、アルブミンのT1/2および血清濃度の減少を生じ得ることである。アルブミンは、正常なコロイド浸透圧の維持のため、pH緩衝化、および多数の分子(胆汁酸、脂肪酸、ビタミン、および薬物が挙げられる)の輸送のために重要であると考えられている(Peters,1996,All About Albumin.New York,Academic Pressにおいて概説される)ので、FcRnブロックは、深刻な副作用をもたらし得る。生じ得るそのような深刻な副作用を回避するために、抗FcRn治療剤は、IgG結合を選択的に阻害するがアルブミンは阻害しない必要がある。
【0091】
FcRnの結合およびアルブミンの保護を損なうことなくhFcRnに対するhIgG結合を選択的にブロックすることが可能であるか否かを決定するために、本出願人は、抗原結合部位がhFcRnに特異的である一群のモノクローナル抗体(mAb)を作製した。これを行うために、本出願人はまず、マウスFcRnを欠損したマウスを、hFcRnトランスジーンを発現するマウス由来の細胞で免疫した。主要な目的は、hIgG/hFcRn相互作用をブロック可能な抗体を産生するマウスを同定することであったので、その後、それらの血清を、フローサイトメトリーアッセイにおいてssECTM細胞株を使用してスクリーニングして、pH6においてhIgGがhFcRNに結合するのをブロックする上記血清の能力を測定した。ブロック活性は、免疫したマウスのうちの14%の血清において検出された。その後、その血清がブロック活性を示したマウスの脾臓細胞を、従来のハイブリドーマ技術(CooperおよびPaterson,2004,Production of antibodies,Current Protocols in Immunology,New York,Wiley.1:2.4.1〜2.5.14)を使用して不死化した。その後、増殖中のハイブリドーマに由来する培養上清を、(材料および方法)において記載される細胞ELISAを使用して、pH7.5でのhFcRnへの結合についてスクリーニングした。再クローン化されたハイブリドーマに由来する上清を、同様にスクリーニングした。本発明にとって重要であったのは、分泌されたmAbが中性条件下でhFcRnに結合可能であるだけでなく酸性条件下でもhFcRnに結合可能であることであったので、その後、安定なハイブリドーマクローンに由来する上清を、pH6においてhFcRnに結合する能力についてssECTM細胞を使用して試験した。精製mAbであるADM11、ADM12、DVN21、DVN23、DVN24、ADM31、およびADM32は、両方のpHにおいてインビトロでhFcRnに結合した。一方、mAbであるDVN1およびDVN22は、pH7.5ではhFcRnに結合したが、pH6.0では結合しなかった。DVN24、ADM31、ADM32および非hFcRn特異的コントロールmAbであるADM33についての例示データが、図4の左および中央の分散図において示される。
【0092】
目的は、hFcRnの治療的ブロックのための抗FcRn mAbの使用であるので、その後、上記の抗hFcRn mAbを、それらがpH6においてインビトロでhFcRnの結合をブロックする能力について分析した。図3Aにおいて使用したブロックアッセイの改変形を、このために使用した。図4の最も右の分散図は、DVN24がhFcRnに対するhIgG3の結合を有効にブロックしたが、同じ実験において分析した他の抗FcRn mAbはどれもhFcRnに対するhIgG3の結合をブロックしなかったことを示すデータを示す。図5Aは、種々の濃度の上記抗hFcRn mAbのうちのいくつかを使用して、pH6においてhIgGがhFcRnに結合するのをそれらのmAbがブロックする能力を決定した、一連のフローサイトメトリーデータを示す。2つだけのmAb(DVN21およびDVN24)が、一定濃度範囲にわたって有効なブロックを示した。従って、これらの2つのmAbは、hFcRnの治療的ブロックのための候補であり、DVN24が、濃度に基づいて最も有効である。
【0093】
しかし、治療適用のためには、hIgGの結合をブロック可能なmAbが、アルブミン結合はブロックしないことが、重要であった。従って、本出願人は、図3Bにおいて記載されるブロックアッセイの改変形を使用して、上記の抗hFcRn mAb群がHSAのpH6.0依存性結合をブロック可能であるか否かを決定した。図5Bにおいて示されるように、漸増濃度のDVN21およびDVN24は、アルブミンの結合を認識可能には阻害しなかった。対照的に、2つの抗hFcRn mAb(ADM31およびADM32)は、hFcRnに対するHSAの結合を有効にブロックした。
【0094】
いくつかの抗FcRn mAbが上記のhIgGのpH6依存性結合を有効にブロックしたが、他の抗FcRn mAbはHSA結合を有効にブロックしたという事実は、IgG防御経路を選択的に標的とする一方でアルブミン防御経路を無傷のまま残す抗hFcRn治療剤を開発し得ることを、強く示唆する。従って、DVN21およびDVN24により例示される抗hFcRn mAbは、HSAをインビボで安定化するhFcRnの選択的な治療的ブロックのための優れた候補であると、想定される。
【0095】
本発明の主要な目的は、インビボにおいてhIgGの血清T1/2を減少させる抗FcRn mAbを同定することである。これを行うために、本出願人は、マウスFcRnを欠くがhFcRnについてトランスジェニックであるマウスを作製した(Chaudhuryら、2003、J Exp Med 197:315〜22;Roopenianら、2003、J Immunol 170:3528〜33)。マウスFcRnを欠くがhFcRnトランスジーンは保有しないマウスと比較して長いhIgGのT1/2は、上記hFcRnトランスジーンの直接的結果である(Roopenianら、2003、J Immunol 170:3528〜33)。その後、本出願人は、DVN24の注入によって、hFcRnがhIgGを安定化するのを治療的にブロックし、以前に投与されたhIgGトレーサー抗体の血清T1/2を短縮させ得るか否かを試験した。図6は、漸増濃度の注入DVN24は、実際には、用量依存性様式でhIgGトレーサーのクリアランスを促進し、従ってそのT1/2を減少させたことを、示す。hIgGの濃度は、ネガティブコントロールであるアイソタイプが一致したmAbの同様の用量と比較して、9日目までに3分の1に減少した。
【0096】
その後、本出願人は、DVN24がhIgGのクリアランスを促進する能力とADM32がhIgGのクリアランスを促進する能力とを比較した。DVN24はまた、6日目にhIgGトレーサーの血清濃度の約3分の1への減少を促進した(図7A)。しかし、ADM32の注入は、上記のネガティブコントロールmAbによって達成されたhIgGトレーサーの血清濃度を超えて、hIgGトレーサーの血清濃度に顕著には影響を与えなかった(図7A)。さらに、DVN24は、HSAトレーサーの濃度に顕著には影響を与えなかった(図8B)。上記のインビトロでのブロック結果(図6)は、ADM31がHSA結合をブロックしたがhIgG結合はブロックしなかったことを示した。DVN24は、hIgG結合をブロックしたがHSA結合はブロックしなかったので、これらの結果は、hIgGのインビボクリアランスを選択的に増加させる一方でHSAのクリアランスは促進しない、mAbブロック因子(DVN24によって例証される)を生成することが可能であることを、示す。従って、そのようなブロック因子は、血清アルブミン濃度に影響を与えることなく病原性自己抗体を除去するための主要候補であると考えられる。
【0097】
抗hFcRn治療剤の開発に向けての重要な考慮事項は、そのような治療剤が自己免疫病変から患者を防御するか否かである。実際、本出願人は、マウスFcRnの欠損が、関節炎原性(arthritogenic)マウスIgGの転移によって通常は引き起こされる関節炎性関節病変をマウスが発症することを防御することを以前に示した(Akileshら、2004、J Clin Invest 113:1328〜33)。しかし、抗hFcRn mAb治療剤がヒト病原性自己抗体をブロックするために使用され得るか否かが、決定されなければならない状態のままであった。従って、本出願人は、関節リウマチを有する患者に由来するIgGが、体液性免疫疾患を発症するように遺伝的に過剰感作されたマウス中に移入された場合に関節炎症を引き起こすモデル(このマウスは、阻害性FcレセプターであるFcgr2bを欠損しているからである)を開発した(BollandおよびRavetch,2000,Immunity 13:277〜85;Akileshら、2004,J Clin Invest 113:1328〜33)。本出願人は、関節リウマチを有すると診断された患者に由来する血清または血漿が、Fcgr2bマウス中に移入された場合に一過性の足首の腫脹および炎症を引き起こすが、非疾患コントロールに由来の血清も血漿もそうではないことを見出した。上記の炎症活性は、IgG画分中に存在した。このことは、この炎症活性が、IgG抗体によって引き起こされたことを示す。DVN24によるhFcRnのブロックが上記の関節病変の軽減をもたらし得るか否かを研究するために、本出願人は、mFcRn−/−Fcgr2b−/−hFcRnトランスジェニックマウスを作製した。これらのマウスが発現する唯一のFcRn形態がヒト形態であるので、そのようなマウスにおけるhIgG安定化は、hFcRnの結果としてのみ生じるはずである。従って、抗hFcRnが上記炎症病変を軽減する能力は、抗hFcRnブロックが病原性ヒト抗体誘導性病変の処置において、正の治療的利益を提供するという、証拠である。図8において示されるデータは、DVN24の投与が、上記のネガティブコントロールmAbの投与と比較して、上記の関節炎性病変をかなり減少したことを示す。この例示的データは、hFcRnの決定基に対するmAb(上記の研究は、アルブミン安定化を妨害しないことを示す)が、病原性ヒト抗体により引き起こされる病変に対する防御を提供し得ることを示す。従って、hFcRnによるhIgGの正常な防御についてのこの選択的治療的ブロックを提供する因子が、ヒト自己免疫疾患を処置するために使用され得ることが、想定される。
【0098】
(材料および方法)
(マウス)
FcRntm1Derについてヌル対立遺伝子を保有するマウス(Roopenianら、2003、J Immunol 170:3528〜33)を、C57BL/6J(B6)マウスに対して最低10回戻し交配した。ヒト(h)FcRnトランスジェニック(Tg)株hFcRn276について同系であるマウスであって、異種プロモーター/エンハンサーにより駆動されるヒトFcRn cDNAを保有するマウスを、記載されるように(Chaudhuryら、2003,J Exp Med 197:315〜22;Roopenianら、2003,J Immunol 170:3528〜33)、独立したB6初代始原(founder)動物から確立した。Fcgr2b−/−について欠損性のマウスを、Taconic Farms(Germantown,NY)から取得した。FcRn−/−Fcgr2b−/−hFcRnトランスジェニック株276マウスを、FcRn−/−hFcRnトランスジェニック株276マウスとFcgr2b−/−マウスとの異種交配によって産生した。
【0099】
(トレーサーヒト血清アルブミン(HSA)およびhIgGのインビボでのモニタリング)
100μgのHSA(10:1の重量比にてN−ヒドロキシスクシンイミドビオチンでビオチン化されている;Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)トレーサーおよびヒト化IgG1(抗Her−2 IgG1;G.Meng,Genentech,Inc.から好意により提供された)トレーサーを、記載されるように(Roopenianら、2003、J Immunol 170:3528〜33)、腹腔内注射した。血液を、上記のトレーサー注射の直前、および7日間にわたって24時間ごとに、後眼窩静脈叢(retroorbital plexus)から連続収集した。マウス血清中にある抗Her−2 hIgG抗体トレーサーを、標準的サンドイッチELISAによって検出した。このELISAにおいて、捕捉抗原はHer−2リガンドであり、検出抗体はヤギ抗hIgGアルカリホスファターゼ(Southern Biotechnology,Birminghan,AL)であった。改変型サンドイッチELISAプロトコルを使用して、マウス血清中のHSA−ビオチンを検出した。この改変型サンドイッチELISAプロトコルでは、希釈緩衝液を、アルブミンを含まないELISA洗浄緩衝液で置換した。ウサギ抗HSA抗体(US Biological,5μg/ml)を使用して、HSA−ビオチンを捕捉した。ストレプトアビジンアルカリホスファターゼ(Southern Biotechnology,1μg/ml)を検出のために使用した。クリアランスは、注射の24時間後に存在するトレーサーの量に対する、保持されたトレーサーの量に基づいた。
【0100】
(hFcRn構築物の作製および確認)
hFcRn構築物(CDS、ECTM、およびssECTM)を、pEGFP−C1ベクター骨格(BD Biosciences,Franklin Lakes,NJ)中にクローン化した。118bpの5’非コード配列と、ヒトFcRNシグナル配列をコードする最初の23アミノ酸とを、ヒトFcRN cDNA(Ohio State UniversityのClark Andersonから好意的に提供された)からPCR増幅した。このPCR増幅は、プライマーFcRN.SigSeq−F:CCCCCCCCGCTAGCGAAGCCCCTCCTCG GCGTCCTGGT(配列番号2)(NheI部位に下線を付している)およびプライマーFcRN.SigSeq−R:CCCCCCCCACCGGTCCGCCCAGGCTCCCAGGAAGGAGAAA(配列番号3)(AgeI部位に下線を付している)を使用した。余分な塩基をすべてのPCRプライマーの5’末端に含めて、制限エンドヌクレアーゼ活性の効率を増加させた。このPCR産物を、CMV IEプロモーターの下流のNheI制限部位とAgeI制限部位との間において、GFPコード配列の上流でありかつGFPコード配列とインフレームの状態であるように挿入した。この中間体構築物を使用して、下記のN末端GFPタグ化テールレス(tail−less)hFcRn(ssECTM)を作製した。テールレス(tail−less)FcRn(ssECTM)を作製するために、PCRプライマーのCDS−FおよびECTM−R:CCCCCCCCGAATTCttaCCTCATCCTTCTCCACAACAGAGCT(配列番号4)(EcoRI部位に下線を付している;推定停止コドンは小文字である)を使用して、コドン24〜325および推定停止コドンを増幅した。このPCR産物をまた、上記のFcRnシグナル配列とGFPとを含むベクター骨格中に挿入した。最後に、非GFPタグ化テールレス(tail−less)FcRn構築物であるECTMを作製するために、PCRプライマーのFcRn.SigSeq−FとECTM−Rとの産物を、pEGFP−C1ベクターのNheI部位とEcoRI部位との間に挿入して、上記GFPコードフラグメントを排除した。すべてのPCR増幅挿入物は、そのクローニング部位全体にわたって二方向の配列を確認した。
【0101】
(細胞培養およびトランスフェクション)
安定なHEK293トランスフェクト体を、選択のためにFCS補充DMEM(800μg/ml G418(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)を含み、次いで400μg/ml G418を含む)を使用して、同様に作製した。その後、それらの細胞株を、分析用のhFcRn陽性細胞およびhFcRn陰性細胞の集団とともに、慎重に維持した。
【0102】
(フローサイトメトリー)
トランスフェクトしていないコンフルエントな接着HEK293細胞、GFP−hFcRnを安定に発現するコンフルエントな接着HEK293細胞(ssECTM)、またはhFcRnを安定に発現するコンフルエントな接着HEK293細胞(ECTM)を、PBSで一回穏やかに洗浄し、PBS中に含まれる0.5%トリプシン/5.3mM EDTAとともに37℃にて5分間インキュベートした。その後、トリプシンの活性を、5% FCSを含むDMEMを添加することによってブロックした。その後、細胞をPBS(pH7.4)中で2回洗浄して血清(およびアルブミン)を除去し、その後、PBS(pH7.4またはpH6)でさらに2回洗浄した。ヒト血清アルブミン(HSA;Sigma−Aldrich,6μg/ml)、ヒトIgG3(Calbiochem)−Alexafluor647(Molecular Probes,Eurogene OR)結合体(hIgG3−AF647)(100μg/ml)、または2%ヒト血清をpH6.0のPBSもしくはpH7.4のPBSの中で使用して、HSA結合またはhIgG結合を決定した。これらの試薬を、50μl体積中の10個の細胞に添加した。HSA結合を、ビオチン化ヤギ抗HSA抗体(GAHSA−ビオチン;Antibodies Incorporated,Davis,CA)(40μg/ml)またはHSA−ビオチンを用いて、検出した。ビオチン化試薬を、2μg/mlのストレプトアビジンアロフィコシアニンまたはストレプトアビジンフィコエリトリン(SA−APCまたはSA−PE;Molecular Probes)を用いて検出した。hIgGを、ヤギ抗ヒトIgGフィコエリトリン(GAH IgG−PE;Southern Biotech)(2μg/ml)を用いて検出した。各試薬を、細胞とともに氷上にて1時間インキュベートし、それらの細胞を、各工程の間で洗浄して、非結合型試薬を除去した。各インキュベーション工程および洗浄は、示したpHのPBSを用いて実施した。ヨウ化プロピジウムを排除した後に、FACSCaliburおよびCellQuestソフトウェア(Becton−Dickinson,Frankin Lakes,NJ)を使用して細胞を得た。
【0103】
競合実験のために、ssECTM細胞を、pH7.5にて2回洗浄し、連続用量の非標識HSA、非標識hIgG(GammaGuard hIgGから精製した)、または非標識ヒトトランスフェリン(fTfn;Sigma−Aldrich)を、50μl体積中にある10個のssECTM細胞に1時間プレローディング(preload)した。その後、hIgG−AF647(最終濃度50μg/ml)またはHSA−ビオチン(最終濃度250μg/ml)を添加し、ssECTM細胞とともに60分間インキュベートした。その後、HSA競合のために、上記細胞を2回洗浄し、5μg/mlのSA−PEを用いて染色した。30分間後、それらの細胞を洗浄し、GEP陽性細胞のフローデータを、ヨウ化プロピジウム排除後に得た。すべての実験は、氷上にて実施した。
【0104】
(抗hFcRn mAbの作製およびスクリーニング)
抗hFcRn mAbを作製するために、B6−FcRn−/−マウスを、hFcRnについてトランスジェニックであるB6マウス由来の2×10個の脾臓細胞で免疫した。その後、そのマウスに由来する血清を、その血清がssECTM細胞に特異的に結合する能力についてスクリーニングした。認識可能な抗hFcRn活性を血清が示したマウスを、B6−hFcRnトランスジェニック脾臓細胞で再度チャレンジし、3日間後に、これらのマウスに由来する脾臓細胞を、ハイブリドーマ作製のためにSP2と融合した(CooperおよびPaterson,2004(前出))。融合した細胞を、フラスコ中にある300U/ml IL6を含む20% FBS補充DMEM(DMEM20)中にて1日間培養して、接着性線維芽細胞を除去し、その後、2×ヒポキサンチン/アミノプテリン/チミジン(HAT)と300U/ml IL6とを含有する100μl/ウェルのDMEM20を含む平底96ウェルプレート中に約2×10/100μl/ウェルにてプレートした。個々のウェルからの上清を、細胞ELISAにおいてssECTM細胞に対する特異的結合についてスクリーニングした。ssECTM細胞を、3×10/ウェルにて96ウェル平底プレート中にプレートした。この96ウェルハイブリドーマ培養物からの上清を、培養8日目〜10日目に収集し、上記プレートを遠心分離してデカントした後に上記ssECTM細胞に添加した。30分間の氷上でのインキュベーションの後、遠心分離およびデカントによって、細胞ELISA緩衝液(5% FBSおよび0.05% NaNを含む、PBS)を用いて、300μl/ウェルで2回洗浄した。ヤギ抗マウスIgG−アルカリホスファターゼ(Southern Biotech,Birmingham,AL)を、細胞ELISA緩衝液中で1:1000希釈し、100μl/ウェルにて添加し、氷上にて30分間インキュベートした。細胞を、細胞ELISA緩衝液を用いて300μl/ウェルで2回洗浄し、抗hFcRn活性を、基質p−ニトロフェニルホスフェート(1mg/mlにて100μl/ウェル;Sigma,St.Louis,MO)を使用して検出した。プレートを、EL212e Microplate Bio−Kinetics Reader(Bio−Tek Instruments,Winooski,VT)において吸光度405nmにて読取った。光学密度(O.D.)0.03よりも高い吸光度を上清が示したハイブリドーマ細胞を、クローン化および再クローン化し、安定に増殖するクローンを、上記細胞ELISAにおいて再試験した。その後、選択した抗hFcRnハイブリドーマクローンからの腹水を、CB−17−scidマウスにおいて生成し、HiTrap Protein Gカラム(Amersham Bisciences,Uppsala,Sweden)にて精製し、その特異性を、ssECTM細胞およびECTM細胞を使用して確認した。各抗体のアリコートをまた、キット(Molecular Probes,Eugene,OR)を使用してAlexafluor647で標識した。
【0105】
(hFcRnに対するhIgGおよびHSAの結合の抗hFcRN mAbによるブロック)
抗hFcRn mAbがどのようにhFcRn結合についてhIgGおよびHSAと競合するかを決定するために、連続用量の非標識抗hFcRn mAbをssECTM細胞に添加した。30分間後、hIgG−Alexafluor647(50μg/ml)またはHSA−ビオチン(250μg/ml)のうちのいずれかを、添加した。60分間後、hIgG−Alexafluor647染色細胞を、洗浄して得た。HSA−ビオチン染色細胞を、2回洗浄し、5μg/mlのSA−PEを用いて染色した。30分間後、HSA−ビオチン染色細胞を洗浄し、フローサイトメトリーデータを得た。すべてのインキュベーションは氷上にて行い、細胞洗浄は、4ml PBS(pH6)を使用して。
【0106】
(統計分析)
統計分析は、非パラメトリック順位和検定または両側スチューデントt検定を使用することによって実施した。差は、p≦0.05である場合に有意であると見なした。すべての値は、平均±平均標準誤差(s.e.m.)として表わした。
【0107】
(参考としての援用)
本明細書において言及されるすべての刊行物および特許は、各々の刊行物または特許が具体的かつ個別に参考として援用されると示されたかの如く、本明細書によりその全体が参考として援用される。
【0108】
本発明の特定の実施形態が考察されているが、上記明細書は、例示に過ぎず、限定するものではない。本発明の多くの変化形が、本明細書および特許請求の範囲を検討することによって当業者にとって明らかになる。本発明の完全な範囲は、特許請求の範囲をその等価物の完全な範囲とともに参照し、本明細書をその変化形とともに参照することによって、決定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1A〜1Bは、hFcRn構築物の構築および検証を示す。図1A:hFcRn cDNA構築物の概略図。ssECTM(シグナル配列−GFP−外側ドメイン−膜貫通ドメイン)およびECTM(シグナル配列−外側ドメイン−膜貫通ドメイン)。クローニングサイトおよびFcRnコドン位置が、示される。終止コドンが、*によって示される。図1B:ECTMトランスフェクトHEK 293細胞およびssECTMトランスフェクトHEK 293細胞に対するhIgGのpH依存的結合のフローサイトメトリー分析。
【図2】図2A〜2Dは、hFcRnに対するアルブミンの結合およびhIgGの結合のフローサイトメトリーを示す。図2A:ssECTM細胞に対するHASまたはIgGの結合。(1および6);Ctrl HSA、ビオチン化ヤギ抗HSA+SA−APC。(2および7);Ctrl hIgG、ヤギ抗hIgG−PE。(3および8);HAS結合、HSA+ビオチン化ヤギ抗HSA+SA−APC。(4および10);HAS結合、ヒト血清+ビオチン化ヤギ抗HSA+SA−APC。(5および9);hIgG結合、ヒト血清+ヤギ抗hIgG−PE。図2B:ssECTM細胞に対するHSA−ビオチンの結合。(1および3);Ctrl HSA、SA−APC。(2および4);HAS結合、ビオチン化HSA+SA−APC。図2Cおよび2D:HSA−ビオチンおよびhIgG3−AF647のECTM細胞への結合(C)およびHEK293細胞への結合(D)。Ctrl hIgG、処理なし;hIgG結合、hIgG−AF647;Ctrl HSAbio、SA−APC;HSAbio結合、HSA−ビオチン+SA−APC。内部ネガティブコントロールに関して、GFP−hFcRnネガティブ細胞の集団は、GFP−hFcRnポジティブssECTM細胞およびGFP−hFcRnポジティブECTM細胞と一緒に慎重に維持された。相対的な平均蛍光強度(MFI)は、hFcRn−GFPポジティブ集団のMFIとhFcRn−GFPネガティブ集団のMFIとの間の比である。棒グラフは、少なくとも4つの独立した実験の平均+s.e.m.である(M&Mを参照のこと)。
【図3】図3A〜3Bは、hFcRnを結合することに関するHASとhIgGとの間の競合の結果を示すグラフである。ssECTM細胞は、標識されていないhIgG(三角)、HSA(四角)、またはhTF(円)の表示の用量と一緒にインキュベートされ、ついでhIgG−AF647またはHSA−ビオチンのいずれかが、添加された。アッセイは、pH6にて行なわれた。図3A:対50μg/mlのhIgG−AF647の競合。図3B:対250μg/mlのHSA−ビオチンの競合。データは、GFP−ポジティブなゲートされた(gated)細胞のMFIとして表される。同様の結果を有する2つの実験のうちの1つからの代表的なデータが、示される。競合因子を伴わないpH7.5におけるssECTM細胞に対するHIgG−AF647結合は、6のMFIを生じた。競合因子を伴わないpH7.5におけるssECTM細胞に対するHSA−ビオチン/SA−PE結合は、4のMFIを生じた。
【図4】図4は、pH7.5およびpH6.0における抗hFcRn mAbの結合能力、およびpH6.0におけるhIgGのhFcRnへの結合をブロックするDVN24の能力におけるデータを示す。直接的な結合データ(左側および中央の散布図)に関して、1μgの表示のmAbは、10個のssECTM細胞と一緒に、表示のpH緩衝液中で4℃にて30分間インキュベートされた。そのssECTM細胞は、次いで、2回洗浄され、そしてフィコエリスリン結合体化ヤギ抗マウスIgG(Southern Biotech、Birmingham、AL)と一緒にインキュベートされ、次いでフローサイトメトリーによって分析された。hIgGの阻害(右側の散布図)に関して、上記mAbは、10μgの濃度で10個のssECTM細胞に対して、pH6.0の緩衝液中で4℃にて30分間にわたって添加され、2回洗浄され、1μgのAlexiFluor647結合体化hIgG3と一緒にインキュベートされ、2回洗浄され、そしてフローサイトメトリーによって分析された。
【図5】図5A〜5Bは、特定の抗hFcRn mAbがhIgGまたはHASのhFcRnへの結合をpH6.0において選択的にブロックすることを示すデータのグラフである。図5A:hIgGのブロック。10個のssETCM細胞は、漸増濃度の精製した抗hFcRn mAbと一緒に4℃にてインキュベートされ、2回洗浄され、次いで1μgのAlexaFluor647結合体化hIgGと一緒に4℃にて1時間インキュベートされた。そのssECTM細胞は、次いで、2回洗浄され、そしてフローサイトメトリーによって分析された。図5B:HASのブロック。10個のssETCM細胞は、漸増濃度の精製した抗hFcRn mAbと一緒に4℃にてインキュベートされ、2回洗浄され、次いで1μgのビオチン結合体化HASと一緒にインキュベートされた。そのssECTM細胞は、次いで、2回洗浄され、ストレプトアビジン−フィコエリスリンと一緒にインキュベートされ、2回洗浄され、そしてフローサイトメトリーによって分析された。全てのインキュベーションは、pH6.0緩衝液中で行われた。データは、GFPポジティブなゲートされた細胞の平均蛍光強度(MFI)として与えられる。
【図6】図6は、DVN24 mAbの投与がhIgGの血清濃度を減少させることを示すデータのグラフである。100μgのトレーサーhIgGは、5匹のマウスFcRn−/−hFcRn系統276トランスジェニックマウスの群に対して、0日目において腹腔内に注射された。変化する濃度のDVN24または1000μgのアイソタイプが一致したネガティブコントロールmAbは、2日目、3日目、および4日目において腹腔内に注射された。連続的な眼の採血由来の血清は、次いで、注射されたhIgGトレーサーの濃度に対してELISAによって分析された。データは、トレーサーの注射の24時間後の血清トレーサーhIgG濃度の%に基づいて与えられる。
【図7】図7Aおよび7Bは、DVN24 mAbの投与が、hIgGの血清濃度を減少させるが、HASの血清濃度を減少させない一方で、ADM32 mAbの投与が、そうではないことを示すデータのグラフである。図7A:hIgGのクリアランス。図7B:HASのクリアランス。100μgのトレーサーhIgGおよびトレーサーHASは、3匹のマウスFcRn−/−hFcRn(系統276トランスジェニック)マウスの群に対して、0日目において腹腔内に注射された。1000μgのDVN24、ADM31、またはネガティブコントロールmAbは、2日目、3日目、および4日目において腹腔内に注射された。連続的な眼の採血由来の血清は、次いで、注射されたhIgGトレーサーの濃度についてELISAによって分析された。平均±標準誤差値は、トレーサーの注射の24時間後の濃度に対する残りの血清トレーサーhIgG濃度の%に基づく。p<0.05の比較が、示される(*)。
【図8】図8Aおよび8Bは、DVN24がヒト慢性関節リウマチ血漿によって引き起こされた関節炎の病変を減少させることを示すデータのグラフである。3匹のmFcRn−/−Fcgr2b−/−hFcRnトランスジェニック(系統32)マウスの群は、腹腔内に0.5ml、1ml、および1mlのヒトRA血漿を、それぞれ、0日目、2日目および7日目に注射され、そしてまた、腹腔内に1mgの精製したDVN24 mAbまたはアイソタイプコントロールIgGa mAbを1日目、3日目および8日目に注射された。足根関節幅および総合的な関節炎スコアは、記載される(Akileshら、2004、J Clin Invest 113:1328−33)ように、2人の独立した観察者によって盲検様式で測定された。データは、平均±標準誤差である。足根関節幅のp<0.05の比較(*)および(p<0.005)の比較(**)が、示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトFcRnのエピトープに結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、ここで、該抗体またはその抗原結合部分は、IgG抗体のFc部分のヒトFcRnへの結合を選択的に阻害するが、ヒトアルブミンのヒトFcRnへの結合を阻害しない、抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
前記抗体はモノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項3】
前記抗体またはその抗原結合部分は、ヒトに投与され得る、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項4】
前記抗体またはその抗原結合部分は、インビボで、ヒトIgGの血清半減期を選択的に減少させるが、ヒトアルブミンの血清半減期を減少させない、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項5】
前記抗体またはその抗原結合部分は、被験体におけるヒト自己抗体によって誘導される炎症性病変を軽減または阻害する、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項6】
前記抗体は、本明細書中でDVN21およびDVN24として示される抗体からなる群より選択される、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項7】
前記抗体は組み換え抗体である、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項8】
前記抗体はヒト化抗体である、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項9】
前記抗体はキメラ抗体である、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項10】
前記抗体はヒト抗体である、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項11】
前記抗体は二重特異的抗体または多重特異的抗体である、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項12】
前記単離された抗原結合部分は、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、およびFvフラグメントCDR3からなる群より選択される、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項13】
前記抗体またはその抗原結合部分は、FcRnを発現する生細胞へ結合するその能力について選択される、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項14】
前記FcRnは標識されている、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項15】
前記抗体またはその抗原結合部分は、ヒトIgGの血清半減期を減少させるが、ヒトアルブミンの血清半減期を減少させないその能力について、インビボで選択される、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項16】
前記抗体またはその抗原結合部分は、内在性FcRn遺伝子を欠損しているが、ヒトFcRnをコードするトランスジーンを有するトランスジェニックマウスにおいて選択される、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項17】
前記抗体またはその抗原結合部分は、ヒトFcRnに、少なくとも約1×10−8Mまたはそれ未満の結合親和性で、特異的に結合する、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項18】
前記単離された抗体またはその抗原結合部分は、さらなる機能的部分に共有結合されている、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項19】
前記さらなる機能的部分が標識である、請求項18に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項20】
前記標識が検出可能な標識である、請求項19に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項21】
前記標識が、蛍光標識、放射能標識、および特有の核磁気共鳴シグネチャーからなる群より選択される、請求項20に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項22】
前記さらなる機能的部分が、前記抗体またはその抗原結合部分に増加した血清半減期を与える、請求項18に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項23】
前記さらなる機能的部分が、ポリエチレングリコール(PEG)部分である、請求項22に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項24】
前記さらなる機能的部分が、ビオチン部分を含む、請求項22に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項25】
請求項1に記載の抗体を産生する、ハイブリドーマ細胞株。
【請求項26】
前記ハイブリドーマ細胞株は、本明細書中でDVN21およびDVN24として示される抗体からなる群より選択される、請求項25に記載のハイブリドーマ細胞株。
【請求項27】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の少なくとも1つの抗体またはその抗原結合部分と、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤または安定剤とを含む、組成物。
【請求項28】
免疫刺激剤、免疫調節物質またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記免疫調節物質が、α−インターフェロン、γ−インターフェロン、腫瘍壊死因子α、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記免疫刺激剤が、インターロイキン−2、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分をコードする、単離された核酸分子。
【請求項32】
個体におけるFcRn媒介性IgG防御を阻害するための方法であって、該方法は、FcRn媒介性IgG防御を阻害する必要がある個体に、ヒトFcRnのヒトIgGへの結合を選択的に阻害するが、ヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合を阻害しないのに十分な量で、請求項1に記載の抗体を投与する工程を包含する、方法。
【請求項33】
前記個体は自己免疫疾患を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記個体は全身性エリテマトーデスを有する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
患者における自己免疫疾患を予防または処置する方法であって、患者に、該自己免疫疾患を予防または処置するのに十分な量で、請求項1に記載の抗体を投与する工程を包含する、方法。
【請求項36】
前記自己免疫疾患が、全身性エリテマトーデス、インスリン抵抗性糖尿病、重症筋無力症、多発性動脈炎、自己免疫血小板減少性紫斑病、皮膚血管炎、水疱性類天疱瘡、尋常天疱瘡、落葉状天疱瘡、グッドパスチャー症候群、慢性関節リウマチ、川崎病、およびシェーグレン症候群からなる群より選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記単離された抗体またはその抗原結合部分は、全身投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記単離された抗体は、局所投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
患者に免疫調節物質を投与する工程をさらに包含する、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
ヒトFcRnのヒトIgGへの結合を選択的に阻害するが、ヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合を阻害しないインヒビターを同定するインビトロ法であって、該方法は、以下:
a)候補インヒビターと、ヒトFcRnおよびヒトIgGとを、該ヒトFcRnの該ヒトIgGへの結合に適切な条件下で接触させる工程;
b)候補インヒビターの非存在下でのヒトFcRnの該ヒトIgGへの結合と比較して、該候補インヒビターの存在下でのヒトFcRnの該ヒトIgGへの結合についてアッセイする工程;
c)候補インヒビターと、ヒトFcRnおよびヒトアルブミンとを、該ヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合に適切な条件下で接触させる工程;ならびに
d)候補インヒビターの非存在下でのヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合と比較して、該候補インヒビターの存在下でのヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合についてアッセイする工程;
を包含し、
ここで、該候補インヒビターがFcRnの該ヒトIgGへの結合を阻害するが、ヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合を阻害しない場合、該候補インヒビターは、ヒトFcRnのヒトIgGへの結合を選択的に阻害するが、ヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合を阻害しないインヒビターである、方法。
【請求項41】
ヒトFcRnのヒトIgGへの結合を選択的に阻害するが、ヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合を阻害しないインヒビターを同定するインビトロ法であって、該方法は、以下:
a)候補インヒビターと、ヒトFcRn、ヒトIgGおよびヒトアルブミンとを接触させる工程;
b)該候補インヒビターの非存在下でのヒトFcRnの該ヒトIgGへの結合と比較して、該候補インヒビターの存在下でのヒトFcRnの該ヒトIgGへの結合についてアッセイする工程;ならびに
c)候補インヒビターの非存在下でのヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合と比較して、該候補インヒビターの存在下でのヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合についてアッセイする工程;
を包含し、
ここで、該候補インヒビターがヒトFcRnの該ヒトIgGへの結合を阻害するが、ヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合を阻害しない場合、該候補インヒビターは、ヒトFcRnのヒトIgGへの結合を選択的に阻害するが、ヒトFcRnのヒトアルブミンへの結合を阻害しないインヒビターである、方法。
【請求項42】
ヒトIgGの半減期を選択的に減少させるが、ヒトアルブミンの半減期を減少させない因子を同定するインビボ法であって、該方法は、以下:
a)候補因子およびトレーサーヒトIgGを、FcRn−/−/huFcRnトランスジェニックマウスに投与する工程;
b)候補因子の非存在下での該トレーサーヒトIgGの半減期と比較して、該候補因子の存在下での該マウスにおける該トレーサーヒトIgGの半減期を決定する工程;
c)該候補因子およびトレーサーヒトアルブミンを、該FcRn−/−/huFcRnトランスジェニックマウスに投与する工程;ならびに
d)候補因子の非存在下での該トレーサーヒトアルブミンの半減期と比較して、該候補因子の存在下での該マウスにおける該トレーサーヒトアルブミンの半減期を決定する工程;
を包含し、
ここで、該候補因子が該トレーサーヒトIgGの半減期を減少させるが、該トレーサーヒトアルブミンの半減期を減少させない場合、該候補因子は、ヒトIgGの半減期を選択的に減少させるが、ヒトアルブミンの半減期を減少させない因子である、方法。
【請求項43】
ヒトIgGの半減期を選択的に減少させるが、ヒトアルブミンの半減期を減少させない因子を同定するインビボ法であって、該方法は、以下:
a)候補因子、トレーサーヒトIgG、およびトレーサーヒトアルブミンを、FcRn−/−/huFcRnトランスジェニックマウスに投与する工程;
b)候補因子の非存在下での該トレーサーヒトIgGの半減期と比較して、該候補因子の存在下での該マウスにおける該トレーサーヒトIgGの半減期を決定する工程;ならびに
c)候補因子の非存在下での該トレーサーヒトアルブミンの半減期と比較して、該候補因子の存在下での該マウスにおけるトレーサーヒトアルブミンの半減期を決定する工程;
を包含し、
ここで、該候補因子が、該トレーサーヒトIgGの半減期を減少させるが、該トレーサーヒトアルブミンの半減期を減少させない場合、該候補因子は、ヒトIgGの半減期を選択的に減少させるが、ヒトアルブミンの半減期を減少させない因子である、方法。
【請求項44】
前記因子は、抗体、ポリペプチド、合成ペプチド、ペプチド模倣物、および低分子からなる群より選択される、請求項40〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記因子は、IgGポリペプチドのFc部分を含む融合タンパク質である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記因子は、IgGポリペプチドのFc部分である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
自己免疫疾患を処置するための薬学的調製物を製造するための、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分の、使用。
【請求項48】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項47に記載の使用。
【請求項49】
癌の画像化または処置のために使用された放射性抗体または抗体結合体化毒素のクリアランスを促進するための、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分の、使用。
【請求項50】
前記抗体はモノクローナル抗体である、請求項49に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−538919(P2008−538919A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508906(P2008−508906)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/014182
【国際公開番号】WO2006/118772
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(398066918)ザ ジャクソン ラボラトリー (5)
【Fターム(参考)】