G−CSF部分および重合体の複合体
G−CSF部分および一つ以上の非ペプチド性の水溶性重合体の複合体が提供される。一般的に、前記非ペプチド性の水溶性重合体は、ポリ(エチレングリコール)またはその誘導体である。また、特に、共役を含む組成物、複合体を生成する方法および複合体を含む組成物を患者へ投与する方法が提供される。例えば、分解可能な連結を介し、直接または一つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して、水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSF部分の残基を含む、複合体が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
特に、本発明の一つ以上の実施態様は、概してG−CSF部分(つまり、少なくともいくつかの顆粒球コロニー刺激因子活性を有する部分)および重合体を含む複合体に関する。また、本発明は複合体を含む組成物、複合体を合成する方法および組成物を投与する方法に(特に)関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒト造血系の一つの重要な機能は、様々な白血球(マクロファージ、好中球および好塩基球/マスト細胞を含む)および、赤血球および凝血塊形成細胞(巨核球/血小板)の置換である。これらの特殊細胞のそれぞれは、骨髄中の造血前駆細胞から形成される。「コロニー刺激因子」といわれる特異的なホルモン様糖タンパク質は、造血前駆細胞の特殊な血球への分化および成熟を制御する。
【0003】
そのようなコロニー刺激因子の一つは、顆粒球コロニー刺激因子または「G−CSF」である。その名称からうかがえるように、G−CSFは他の細胞型の形成も促進できるが、このコロニー刺激因子は顆粒球の増殖および分化を促進する。G−CSFは、サイトカイン、免疫および/または炎症性刺激を受けて、多くの異なる細胞型(活性化T細胞、B細胞、マクロファージ、マスト細胞、内皮細胞および線維芽細胞を含む)によって生成される。天然ヒトG−CSFは、174アミノ酸の糖タンパク質であり、グリコシル化の程度に依存する様々な分子量を有することができる。ヒトG−CSFの分子量は約19,000である。
【0004】
薬理学的に、化学療法による治療中に死んだ白血球がより早急に置換されるように、これらの治療を受けている癌患者にG−CSFが投与されている。白血球置換を加速させる同様の目的のために、G−CSFの投与は骨髄置換療法を受けている白血病患者の治療に使用されている。加速された創傷治癒など、G−CSFのさらなる使用が提案されている。例えば、特許文献1を参照。
【0005】
G−CSF療法に付随する欠点の一つは頻繁な投薬である。G−CSF療法は一般的に連日注射を必要とするため、患者はこの投与計画に付随する不都合および不快感を嫌う。血球数を決定するために頻繁な血液検査が患者に必要とされる事実と相まって(これは医療関係者への訪問を必要とする)、多くの患者はあまり面倒でないおよび/または注射数の減少を伴う代替の方法を好むだろう。
【0006】
これらの課題に対して提案された一つの解決策では、G−CSFの持続放出製剤を提供している。例えば、特許文献2は、ポリ(乳酸共グリコール酸)の微粒子またはその他の生分解性重合体について記載する。しかしながら、微粒子の形成は複数の合成ステップを必要とする複雑な工程となり得る。従って、この持続放出手法は理想的には回避される合成の複雑さに苦しむ。
【0007】
タンパク質から派生するポリ(エチレングリコール)のペグ化または結合は、タンパク質の生体内半減期を持続させるための手段として説明され、それにより持続的な薬理学的活性をもたらしている。例えば、特許文献3は、5,000ダルトンの分子量を有する2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸誘導体化線状モノメトキシポリ(エチレングリコール)との反応から形成されるG−CSFおよびポリ(エチレングリコール)の複合体について記載する。
【0008】
特許文献4は特定の複合体について記載し、G−CSFタンパク質は、非ポリペプチド部分を含み、タンパク質の結合基に結合される少なくとも一つの非ポリペプチドを有する、1から15のアミノ酸により変換される。
【0009】
特許文献5は、G−CSFおよび特定の高分子剤(例えば、mPEG−スクシンイミジルプロピオン酸塩および特定のmPEGトリアジン誘導体)の反応から形成される複合体について記載する。また、特許文献6は、G−CSFおよび特定のmPEGトリアジン誘導体の反応から形成される複合体について記載する。
【0010】
二つの出版物は、G−CSFの内部システイン残基への特定の高分子剤の結合を考察する。これらの方法において説明される共役方法は異なるが、各方法は少なくとも一つの顕著な欠点に苦しむ。特許文献7は、凝集物の沈殿をもたらすことができる比較的厳しい条件を要求する。特許文献8は、G−CSFの可逆的変性の誘導が必要な工程について記載する。
【0011】
ペグ化G−CSFの市販用製品は、NEULASTA(登録商標)という名称でAmgen Inc.(Thousand Oaks CA)から入手可能であり、組換えヒトメチオニルG−CSF(フィルグラスチム)およびモノメトキシポリエチレングリコールの共有複合体である。
【特許文献1】米国特許第6,689,351号明細書
【特許文献2】米国特許第5,942,253号明細書
【特許文献3】米国特許第5,880,255号明細書
【特許文献4】米国特許第6,646,110号明細書
【特許文献5】米国特許第6,166,183号明細書
【特許文献6】米国特許第6,027,720号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0143563号明細書
【特許文献8】国際公開第05/099769号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、これらの複合体にもかかわらず、その他の異なる構造を有するG−CSFの複合体が依然として必要である。
【0013】
従って、特に、本発明の一つ以上の実施態様は、そのような複合体に加えて、複合体を含む組成物に関し、ならびに本明細書に記載する関連方法に関し、当技術分野において新しく全く未提案であるものと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要約
従って、直接またはスペーサー部分を介して、非ペプチド性水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSF部分を含む複合体が提供される。前記複合体は、一般的に組成物の一部として提供される。
【0015】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体が提供され、前記複合体は、直接または一つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSF前駆部分の残基を含む。前記重合体の結合部位は、前記G−CSF前駆部分の任意の地点に位置することができ、また前駆体型の生体内開裂に続く活性に必要な部分上であり得る。さらに、前記重合体の結合部位は、前記前駆体型の開裂に続くG−CSF活性を有さない部分上に位置することができる。
【0016】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体が提供され、前記複合体は、G−CSF部分のシステイン残基を介して前記G−CSF部分に共有結合的に結合される水溶性重合体を含む。
【0017】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体が提供され、前記複合体はシステイン残基側鎖を有するG−CSF部分の残基を含み、前記システイン残基側鎖は、直接または一つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して水溶性重合体に結合される。
【0018】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体が提供され、前記複合体は、非複合型においてジスルフィド結合を伴わないシステイン残基側鎖を有するG−CSF部分の残基を含み、前記システイン残基側鎖は、直接または一つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して水溶性重合体に結合される。
【0019】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体が提供され、前記複合体は、hG−CSFのアミノ酸位置17に対応するシステイン残基側鎖を有するG−CSF部分の残基を含み、前記システイン残基側鎖は、直接または一つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して水溶性重合体に結合される。
【0020】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体が提供され、前記複合体は、アミドまたは二次アミン連結を介して分岐水溶性重合体へ結合されるG−CSF部分の残基を含み、(i)一つ以上の原子を含む任意のスペーサー部分は前記アミドまたは二次アミン結合と前記分岐水溶性重合体の間に位置し、(ii)前記分岐水溶性重合体はリジン残基を含有しない。
【0021】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体が提供され、前記複合体は、分解可能な連結を介し、直接または一つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSF部分の残基を含む。好ましくは、前記分解可能な連結は、開裂可能な連結であり、また「タグなし」であり、「タグなし」とは、前記G−CSF部分からの前記重合体の分解および開裂の際に、前記高分子剤の任意のさらなる原子または残基(つまり「タグ」)が前記G−CSF部分に結合することなしに、本来のまたは天然G−CSF部分が生成されることを意味する。
【0022】
本発明の一つ以上の実施態様において、組成物が提供され、前記組成物は複数の複合体を含み、各複合体は直接または一つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して水溶性重合体に結合されるG−CSF部分の残基を含み、前記組成物中のすべての複合体の50%未満がN−末端モノペグ化される。
【0023】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体が提供され、前記複合体は以下の構造を含み、
ポリ”−(X2)b−ポリ’−(X1)a−(G−CSF)
ここで、
ポリ”は第二の水溶性重合体(好ましくは分岐または線状)であり、
ポリ1は第一の水溶性重合体であり(好ましくは線状)、
X1は、存在する場合、一つ以上の原子を含む第一のスペーサー部分であり、
X2は、存在する場合、一つ以上の原子を含む第二のスペーサー部分であり、
(b)は0または1のどちらかであり、
(a)は0または1のどちらかであり;
G−CSFはG−CSF部分の残基である。
【0024】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体を調製するための方法が提供され、前記方法は直接または一つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSF部分の残基を含む複合体組成物をもたらすのに十分な条件下で、高分子剤をG−CSF部分組成物に追加するステップを含む。
【0025】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体を調製するための方法が提供され、前記方法は、直接または一つ以上の原子を含む第一のスペーサー部分を介して、第一の水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSF部分の残基を含む第一の複合体を含む第一の複合体組成物をもたらすために十分な条件下で、第一の高分子剤組成物をG−CSF部分組成物に加えるステップと、直接または一つ以上の原子を含む第二のスペーサー部分を介して、前記複合体の前記第一の水溶性重合体に結合される第二の水溶性重合体を含む第二の複合体組成物をもたらすために、第二の高分子剤組成物を前記第一の複合体組成物に加えるステップと、を含む。
【0026】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体を調製するための方法が提供され、前記方法は、直接または一つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して、水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSF部分の残基を含む複合体の形成をもたらすために十分な条件下で、高分子剤およびG−CSF部分を組み合せるステップを含み、前記G−CSF部分はシステイン残基の側鎖で共有結合的に結合され、さらに前記方法は(a)変性状態を導入するステップを欠き、(b)8.5未満のpHで実行されるか、または洗浄剤を加えるステップを欠く。
【0027】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体を患者へ供給するための方法が提供され、前記方法は、本明細書に記載するように複合体を含む組成物を患者へ投与するステップを含み、前記組成物は一つ以上の前記複合体の治療的に効果的な量を含有する。前記複合体を投与するステップは注射(例えば、筋肉注射、静脈注射、皮下注射など)によって達成されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
発明の詳細な説明
本発明の一つ以上の実施態様を詳述する前に、本発明は特定の重合体、合成的技法、G−CSF部分などに限定されるものではないことを理解されたい。それは、それらが異なる可能性があるからである。
【0029】
本明細書および特許請求の範囲で用いられるように、単数形は、文脈により明確に指示されない限りは複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。故に、例えば、「重合体」への言及は単一の重合体だけでなく、二つ以上の同じまたは異なる重合体が含まれ、「任意の賦形剤」への言及は単一の任意の賦形剤だけでなく、二つ以上の同じまたは異なる任意の賦形剤などを意味する。
【0030】
本発明の一つ以上の実施態様を説明および主張する上で、後述する定義に従って以下の専門用語が使用される。
【0031】
本明細書で使用される「PEG」、「ポリエチレングリコール」および「ポリ(エチレングリコール)」は互いに交換して使用でき、あらゆる非ペプチド性、水溶性ポリ(エチレンオキシド)を包含する意味を持つ。一般的には、本発明に従って使用されるPEGは、(n)が2から4000の「−(OCH2CH2)n−」構造を含む。本明細書において、またPEGは、末端酸素が置換されているかどうかによって「−CH2CH2−O(CH2CH2O)n−CH2CH2−」および「−(OCH2CH2)nO−」を含む。明細書および特許請求の範囲にわたって、用語「PEG」は様々な末端基または「エンドキャッピング」基などを有する構造を含むことを忘れてはならない。用語「PEG」は、大部分、すなわち50%を超える繰り返しサブユニットの−OCH2CH2−を含有する重合体を意味する。特定の形態に関して、下記でされに詳述するように、PEGは様々な分子量のみならず、「分岐」、「線状」、「フォーク型」、「多官能性」などの構造または配置を多数とることができる。
【0032】
本明細書において、用語「エンドキャップされた」および「末端がキャップされた」は、エンドキャップしている部分を有する重合体の末端または終点を指すために互いに交換して本明細書で使用できる。必ずしもではないが、一般的にエンドキャッピング部分は、ヒドロオキシ基またはC1−20アルコキシ基を含み、より好ましくはC1−10アルコキシ基、さらにより好ましくはC1−5アルコキシ基を含む。故に、エンドキャッピングの例には、アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシおよびベンジルオキシ)のみならず、アリール、ヘテロアリール、シクロ、ヘテロシクロなどが含まれる。エンドキャッピング部分は、重合体中の末端モノマーの一つ以上の原子[例えば、CH3O(CH2CH2O)n−およびCH3(OCH2CH2)n−中のエンドキャッピング部分「メトキシ」]を含むことを忘れてはならない。加えて、前述のそれぞれの飽和型、不飽和型、置換型および非置換型が想定される。さらに、エンドキャッピング基はまたシランであり得る。エンドキャッピング基はまた、検出可能な標識を有利に含むことができる。重合体が検出可能な標識を含むエンドキャッピング基を有する場合、重合体が結合される重合体および/または部分(例えば、活性薬剤)の量または位置は、適切な検出器を用いて決定することができる。そのような標識は、蛍光物質、化学発光物質、酵素標識に使用される部分、比色部分(例えば、染料)、金属イオン、放射線部分などを無制限に含む。適切な検出器は、光度計、フィルム、分光計などを含む。エンドキャッピング基はまた、リン脂質を有利に含むことができる。重合体がリン脂質を含むエンドキャッピング基を有する場合、独自の特性が重合体およびその結果として得られる複合体に与えられる。典型的なリン脂質は、ホスファジルコリンと呼ばれるリン脂質の分類から選択されるものを無制限に含む。特定のリン脂質は、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、ベヘノイルホスファチジルコリン、アラキドイルホスファチジルコリン、およびレシチンからなるグループから選択されるものと無制限に含む。
【0033】
重合体に関して本明細書で説明される「非自然発生の」は、全体として天然に認められない重合体を意味する。しかし、本発明の非自然発生の重合体は、全体的な重合体の構造が天然に認められない限り、自然発生する一つ以上のモノマーまたはモノマーセグメントを含有してよい。
【0034】
「水溶性重合体」の場合の用語「水溶性」は、室温で水に溶ける任意の重合体である。一般的に、水溶性重合体は、ろ過後の同じ溶液によって伝えられた光の少なくとも約75%、より好ましくは95%を伝える。重量ベースでは、水溶性重合体は、好ましくは少なくとも約35(重量)%水に溶け、より好ましくは少なくとも約50(重量)%水に溶け、さらにより好ましくは約70(重量)%水に溶け、さらにより好ましくは約85(重量)%水に溶ける。しかし、水溶性重合体は約95(重量)%水に溶ける、または完全に水に溶けることが最も好ましい。
【0035】
PEGなどの本発明の水溶性重合体に関連する分子量は、数平均分子量または重量平均分子量のいずれかとして表すことができる。特に明記されない限り、本明細書の分子量へのすべての言及は重量平均分子量をいう。数平均と重量平均の両方の分子量決定は、ゲル浸透クロマトグラフィーまたはその他の液体クロマトグラフィー技術を用いて測定することができる。分子量の値を測定するためのその他の方法、例えば数平均分子量を決定するために末端基分析または束一的性質(例えば凝固点降下、沸点上昇、または浸透圧)の測定の使用、または重量平均分子量を決定するために光散乱法、超遠心分離法、または粘度測定法の使用などもまた使用できる。本発明の重合体は、一般的に多分散性(すなわち、重合体の数平均分子量と重量平均分子量は等しくない)であり、好ましくは約1.2より小さく、より好ましくは約1.15より小さく、さらにより好ましくは約1.10より小さく、その上さらにより好ましくは約1.05より小さく、最も好ましくは約1.03より小さい低い多分散性の値を持つ。
【0036】
特定の官能基とともに使用される場合の用語「活性の」または「活性化された」は、別の分子上の求電子試剤または求核試剤と容易に反応する反応性官能基をいう。これは、反応させるように強い触媒または非常に実用的でない反応条件を必要とする基とは対照的である(すなわち、「反応しない」または「不活性の」基)。
【0037】
本明細書において、用語「官能基」またはその同義語は、その保護された形態のみならず保護されていない形態を包含することを意味する。
【0038】
用語「スペーサー部分」、「連結」、または「リンカー」は、重合体セグメントおよびG−CSF部分の重合体の末端など相互連結部分とG−CSF部分の求電子試薬または求核試薬をつなぐように任意で使用される原子または原子の一群をいうように本明細書で使用される。スペーサー部分は加水分解に安定であってよいか、または生理学的に加水分解可能な連結または、酵素的に分解可能な連結を含んでよい。
【0039】
「アルキル」は、一般的に長さが約1から15の範囲にある炭化水素鎖をいう。そのような炭化水素鎖は、必ずしもではないが好ましくは飽和しており、一般的には直鎖が好ましいが分岐鎖または直鎖であってよい。典型的なアルキル基は、メチル、エチル、ブチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、3−メチルペンチルなどを含む。本明細書において、「アルキル」は、シクロアルキルのみならずシクロアルキレン含有のアルキルを含む。
【0040】
「低級アルキル」は1から6個の炭素原子を含有するアルキル基をいい、メチル、エチル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチルなどの直鎖または分岐鎖であってよい。
【0041】
「シクロアルキル」は飽和または不飽和の環状炭素水素鎖をいい、好ましくは3から約12個の炭素原子、より好ましくは3〜約8個の炭素原子で構成される架橋した、融合した、またはスピロ環の化合物を含む。「シクロアルキレン」は、環系中の任意の二つの炭素で鎖が結合することによって、アルキル鎖に挿入されるシクロアルキル基をいう。
【0042】
「アルコキシ」は、−O−R基をいい、Rはアルキルまたは置換アルキル、好ましくはC1−6アルキル(例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシなど)である。
【0043】
例えば、「置換アルキル」に使われる用語「置換」は、アルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチルなどのC3−8シクロアルキル、例えばフルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードなどのハロ、シアノ、アルコキシ、低級フェニル、置換フェニルなどの一つ以上の非干渉の置換基と置換される部分(例えばアルキル基)をいうがこれに限定されない。「置換アリール」は、一つ以上の非干渉の基を置換基として有するアリールである。フェニル環上での置換に関しては、置換基はどの位置(すなわち、オルト、メタまたはパラ)にあってもよい。
【0044】
「非干渉の置換基」は、分子中に存在する場合、一般的にはその分子内に含まれる他の官能基と反応しない基である。
【0045】
「アリール」は、一つ以上の芳香環を意味し、それぞれ5または6個の中心炭素原子である。アリールは、ナフチル中に見られるように融合されてよい、またはビフェニル中に見られるように融合されなくてよい、複数のアリール環を含む。アリール環はまた、一つ以上の環状炭素水素、ヘテロアリールまたは複素環と融合されてもされなくてもよい。本明細書において、「アリール」はヘテロアリールを含む。
【0046】
「ヘテロアリール」は、1から4個のヘテロ原子、好ましくは硫黄、酸素または窒素、あるいはそれらの組み合わせを含有するアリール基である。ヘテロアリール環はまた、一つ以上の環状炭素水素、複素環、アリールまたはヘテロアリール環と融合されてよい。
【0047】
「複素環」または「複素環の」は、不飽和または芳香族性のあるまたはない、炭素でない少なくとも一つの環の原子を有する、5から12個の原子、好ましくは5から7個の原子の一つ以上の環を意味する。好ましいヘテロ原子は、硫黄、酸素および窒素を含む。
【0048】
「置換ヘテロアリール」は、一つ以上の非干渉の基を置換基として有するヘテロアリールである。
【0049】
「置換複素環」は、非干渉置換基から形成される一つ以上の側鎖を有する複素環である。
【0050】
「求電子試薬」および「求電子基」は、求電子中心、すなわち求核試薬と反応可能な、電子を求める中心を有するイオンであってよい、イオンもしくは原子、または原子の一群をいう。
【0051】
「求核試薬」および「求核基」は、求核中心、すなわち求電子中心を求めるか、あるいは求電子試薬を伴う中心を有するイオンであってよい、イオンもしくは原子、または原子の一群をいう。
【0052】
「生理学的に開裂可能な」または「加水分解できる」あるいは「分解可能な」結合は、生理学的条件下で水と反応する(すなわち、加水分解される)結合である。水中で加水分解する結合の傾向は、2個の中心原子を結び付ける連結の一般型だけでなく、これらの2個の中心原子に結合された置換基に依存する。加水分解に不安定または弱い適切な連結は、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチドおよびオリゴヌクレオチドを含むがこれらに限定されない。
【0053】
「酵素的に分解可能な連結」は、一つ以上の酵素によって分解されやすい連結を意味する。
【0054】
「加水分解に安定な」連結または結合は、化学結合、典型的には共有結合をいい、つまり水中で実質的に安定であり、すなわち、生理学的条件下で長期間にわたって、感知されうる程度まで加水分解を起こさない。加水分解に安定な連結の例は、炭素−炭素結合(例えば、脂肪族鎖中)、エーテル、アミド、ウレタンなどを含むがそれらに限定されない。一般的には、加水分解に安定な連結は、生理学的条件下で一日につき約1から2%未満の加水分解率を呈するものである。代表的な化学結合の加水分解率は、大抵の標準的化学テキストで見られる。
【0055】
「薬学的に許容可能な賦形剤または担体」は、本発明の組成物中に任意に含まれてよく、患者に重大な毒物学的副作用を引き起こさない賦形剤をいう。「薬理学的に有効な量」、「生理学的に有効な量」および「治療上有効な量」は、所望のレベルの複合体(または対応する複合していないG−CSF部分)を、血流中または標的組織中に提供するのに必要な、重合体−(G−CSF)部分の複合体の量を意味するように本明細書で互いに交換して使用できる。正確な量は、多くの因子、例えば、特定のG−CSF部分、治療上の組成物の成分と生理学的特性、対象とする患者集団、個々の患者の検討材料などに依存し、本明細書に提供される情報に基づいて、当業者によって容易に決定できる。
【0056】
「多官能」は、それに含有される三つ以上の官能基を有する重合体を意味し、官能基は同じであっても異なってもよい。多官能性高分子剤は、一般的に、約3から100の官能基、3から50の官能基、3から25の官能基、3から15の官能基、3から10の官能基の一つ以上の範囲を満たす数の官能基を含有し、典型的な官能基の数は、高分子剤内に3、4、5、6、7、8、9および10を含む。
【0057】
用語「G−CSF部分」はここで使用されるように、G−CSF活性を有する部分を意味し、文脈が別に明示しない限り、G−CSF前駆部分も意味する(その典型的な配列は、配列番号3で提供される)。G−CSF部分はまた、高分子剤との反応に適切な少なくとも一つの求電子基または求核基を有する。加えて、用語「G−CSF部分」は、共役前のG−CSF部分のみならず、共役後のG−CSF残部分の両方を包含する。下記でさらに詳述するように、当業者はあらゆる所定の部分がG−CSF活性を有しているかどうかを決定できる。配列番号1から2のいずれか一つに対応するアミノ酸配列を含むタンパク質は、G−CSF部分および実質的にそれと相同となる任意のタンパク質またはポリペプチドであり、その生物学的特性は、G−CSFと同様の成長刺激および/または好中球数および/または活性をもたらす。本明細書において、用語「G−CSF部分」は、例えば変異原性に向けられた部位によってまたは誤って変異を介して意図的に修飾されたタンパク質を含む。これらの用語はまた、1から6のさらなるグリコシル化部位を有する類似体、タンパク質のカルボキシ末端側の少なくとも一つのさらなるアミノ酸を有し、前記さらなるアミノ酸は少なくとも一つの糖鎖付加部位を含む類似体、ならびに少なくとも一つのグリコシル化部位を含むアミノ酸配列を有する類似体を含む。これらの用語は、自然におよび組み換え技術によって生成されたG−CSFの両方を含む。
【0058】
用語「実質的に相同」は、特定の対象配列、例えば変異配列は一つ以上の置換基、欠失または追加による参照配列と異なり、その正味の影響は、参照および対象配列間の不利な機能的相違をもたらさないことを意味する。本発明の目的上、95%より大きい相同性、等価な生物学的特性および等価な表現特性を有する配列は実質的に相同であるとみなされる。相同性を決定する目的上、変異配列の切断は無視されるべきである。低い度合いの相同性、同等の生物活性および等価な表現特性を有する配列は、実質的に等価であるとみなされる。本明細書で使用される典型的なG−CSF部分は、実質的に相同な配列番号1であるそれらの配列を含む。
【0059】
用語G−CSFタンパク質の「断片」は、G−CSFタンパク質の一部または断片のアミノ酸配列を有し、G−CSFの生物活性を有するいかなるポリペプチドあるいはタンパク質をも意味する。断片は、G−CSFタンパク質のタンパク分解によって生成されたまたは当技術分野の通常の方法による化学合成によって生成されたタンパク質あるいはポリペプチドを含む。G−CSFタンパク質またはその断片は、ヒトへの前記タンパク質または断片の投与がある程度のG−CSF活性をもたらす場合に生物学的に有効であるとされる。G−CSFタンパク質のそのような生物学的な活性の決定は、一種以上の哺乳類種に対してそのような目的のために活用される従来の既知の試験によって実行可能である。そのような生物学的な活性を示すために活用され得る適切な試験は本明細書で説明される。
【0060】
用語「患者」は、活性薬剤(例えば、複合体)の投与によって予防または治療され得る状態を患うまたは状態になりやすい生体をいい、ヒトおよび動物を含む。
【0061】
「任意の」または「任意に」は、記述の中に、状況が発生する場合の例および発生しない場合の例を含むように、その後説明される状況が発生し得るまたは発生し得ないことをいう。
【0062】
「実質的に」は、殆ど完全にまたは完全に、を意味し、例えば、50%より大きい、51%以上、75%以上、80%以上、90%以上および95%以上の状況の一つ以上を満たす。
【0063】
文脈により明確に指示されない限り、用語「約」が数値の前に置かれる場合、その数値は述べられる数値の±10%を意味するものと理解される。
【0064】
ペプチド内のアミノ残基は、以下のとおりに省略される。フェニルアラニンはPheまたはF、ロイシンはLeuまたはL、イソロイシンはIleまたはI、メチオニンはMetまたはM、バリンはValまたはV、セリンはSerまたはS、プロリンはProまたはP、トレオニンはThrまたはT、アラニンはAlaまたはA、チロシンはTyrまたはY、ヒスチジンはHisまたはH、グルタミンはGlnまたはQ、アスパラギンはAsnまたはN、リジンはLysまたはK、アスパラギン酸はAspまたはD、グルタミン酸はGluまたはE、システインはCysまたはC、トリプトファンはTrpまたはW、アルギニンはArgまたはR、およびグリシンはGlyまたはGである。
【0065】
本発明の一つ以上の実施態様を参照すると、複合体が提供され、前記複合体は、直接またはスペーサー部分を介して、非ペプチド性水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSF部分を含む。本発明複合体は、一つ以上の以下の特徴を有する。
【0066】
G−CSF部分
前述したように、複合体は、総称的に、直接またはスペーサー部分を介して、非ペプチド性水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSF部分を含む。本明細書において、用語「G−CSF部分」は、複合前のG−CSF部分のみならず、非ペプチド性水溶性重合体へ結合後のG−CSF部分を指すものとする。しかし、G−CSF部分が非ペプチド性水溶性重合体に結合される場合、G−CSF部分は、重合体への連結と関連する一つ以上の供給結合の存在によってわずかに変化する。大抵、別の分子に結合したG−CSF部分のこのわずかに変化した形態は、G−CSF部分の「残基」と称される。複合体内のG−CSF部分は、顆粒球コロニー刺激因子活性を提供する任意の部分であり得る。
【0067】
G−CSF部分は、非組み換え方法または組換え方法のどちらかに由来することができ、本発明はこの点において制限されない。加えて、G−CSF部分はヒト源または動物源に由来することができる。
【0068】
G−CSF部分は非組み換え技術に由来することができる。例えば、米国特許第4,810,643号に記載されるように、5637で命名され、A.T.C.C.寄託番号 HTB−9としてAmerican Type Culture Collection、Rockville MDの制限条件下で寄託されたヒト癌細胞株の培養基からG−CSFを収集することが可能である。
【0069】
G−CSF部分は組換え方法に由来することができ、細菌(例えば、大腸菌)、哺乳類(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞)および酵母(例えば、サッカロマイセス・セレヴィシエ)発現系内に発現することができる。発現は、外因性発現を介してまたは内因性発現を介して発生することができる。例えば、Nagataら(1986)Nature 319:415は、ヒト扁平上皮細胞癌細胞株から分離したヒトG−CSF(“hG−CSF”)のためのcDNAを提供し、またCOS細胞(アフリカミドリザル細胞)内でタンパク質を発現させる工程について記載する。Souzaらは、大腸菌細胞内でG−CSFを発現させるための工程について説明する。米国特許第4,810,643号は、メチオニルG−CSF(すなわち、N−末端がアミノ酸メチオニンを有して、それが結合するG−CSF)を調製するための組換えベースの方法について記載する。加えて、米国特許第5,633,352号は、G−CSFを調製するための組換え方法について記載する。
【0070】
ヒトG−CSFのアミノ酸配列は、配列番号1で提供される。本明細書で提供されるように、(n’’’=1である)メチオニン残基含有の形態は、本明細書に記載されるこの旨およびすべての他の配列を考慮する。配列番号2は、配列番号1と異なる配列を有するG−CSF部分に対応する。
【0071】
タンパク質を調製するための組換えベースの方法は様々であり得るが、一般的に、組換え方法は、所望のポリペプチドまたは断片をコードする核酸を構成するステップと、核酸を発現ベクターにクローン化するステップと、宿主細胞(例えば、植物,細菌、酵母、遺伝子組み換え動物細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞や新生ハムスター腎細胞などの哺乳類細胞)を変換するステップと、所望のポリペプチドまたは断片を生成するために核酸を発現させるステップと、を含む。体外および原核生物もしくは真核宿主細胞内の組換えポリペプチドを生成および発現させるための方法は、当業者には既知である。
【0072】
組換えポリペプチドの同定および精製を容易にするために、エピトープタグをコードする核酸配列またはその他の親和性結合配列は、コード配列でフレーム内に挿入または追加することができ、それによって所望のポリペプチドおよび結合に適切なポリペプチドを含む融合タンパク質を生成する。融合タンパク質は、エピトープタグまたは融合タンパク質内のその他の結合配列に向けられた親和性カラム支持結合部分(例えば、抗体)を介する融合タンパク質を含有する混合物をまず流すことによって同定および精製することができ、それによってカラム内の融合タンパク質を結合する。その後、融合タンパク質は、結合融合タンパク質を放出するように適切な溶液(例えば、酸)でカラムを洗浄することによって回復することができる。組換えポリペプチドはまた、宿主細胞を融解すること、サイズ排除クロマトグラフィーなどによりポリペプチドを分離させること、およびポリペプチドを収集することによって同定および精製することができる。組換えポリペプチドを同定および精製するためのこれらおよびその他の方法は当業者には既知である。しかし、本発明の一つ以上の実施態様において、G−CSF部分は融合タンパク質の形態ではないことが好ましい。
【0073】
G−CSF活性を有するタンパク質を発現させるために使用される系によって、G−CSF部分は非グリコシル化またはグリコシル化であり得、どちらが使用されてよい。つまり、G−CSF部分は非グリコシル化であり得る、あるいはG−CSF部分はグリコシル化であり得る。本発明の一つ以上の実施例において、G−CSF部分はグリコシル化されないことが好ましい。
【0074】
G−CSF部分は、アミノ酸の側鎖内の原子に対する重合体の容易な結合を提供するために、例えば、リジン、システインおよび/またはアルギニンなどの一つ以上のアミノ酸残基を含むように有利に修飾され得る。加えて、G−CSF部分は非自然発生のアミノ酸残基を含むように修飾され得る。アミノ酸残基および非自然発生のアミノ酸残基を加えるための技術は、当業者には既知である。J. March、Advanced Organic Chemistry:Reactions Mechanisms and Structure、4th Ed.(New York:Wiley−Interscience、1992)への参照がなされる。本発明の一つ以上の実施例において、G−CSF部分は一つ以上のアミノ酸残基を含むように修飾されないことが好ましい。hG−CSFに対して少なくとも一つの置換を有する典型的なG−CSF部分は米国特許第6,646,110号で提供されており、本明細書におけるG−CSF部分の使用に適している。さらに、hG−CSFに対して少なくとも一つの置換を有する典型的なG−CSF部分は、米国特許第6,004,548号および第5,580,755号で提供されており、本明細書におけるG−CSF部分の使用に適している。
【0075】
加えて、G−CSF部分は、(官能基含有のアミノ酸残基の追加を介する場合以外で)官能基の結合を含むように有利に修飾され得る。例えば、G−CSF部分は、チオール基を含むように修飾され得る。加えて、G−CSF部分は、N−末端アルファ炭素を含むように修飾され得る。加えて、G−CSF部分は、一つ以上の炭水化物成分を含むように修飾され得る。本発明のいくつかの実施例において、G−CSF部分はチオール基および/またはN−末端アルファ炭素を含むように修飾されないことが好ましい。アミノオキシ、アルデヒドまたはその他のいくつかの官能基を含有するG−CSF部分を使用することができる。
【0076】
好適なG−CSF部分は、配列番号1および配列番号2からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。特に明記されない限り、本明細書で提供されるアミノ酸残基の数値位置の割り当てのすべては、配列番号1(いかなる先のメチオニル残基も無視)に基づく。G−CSF部分として機能するのに有用な配列は、NEUPOGEN(登録商標) G−CSF(Amgen、Thousand Oaks、CA)およびGRASTIM(登録商標) G−CSF(Dr.Reddy’s、Hyderabad、India)などの、市販版G−CSF含有の製剤にみられるタンパク質のそれらの配列を含む。
【0077】
(配列番号1で提供されるような)hG−CSF部分および、切断版、雑種変異および配列のペプチド模倣薬も使用できる。少なくともある程度のG−CSF活性を維持する生物活性のある断片、欠損変異体、置換変異体または前述のいずれかのさらなる変異体は、G−CSF部分として機能できる。
【0078】
あらゆる所定のペプチドまたはタンパク質部分に関しては、G−CSF活性を有する部分かを決定することが可能である。例えば、米国特許第5,580,755号に記載されるように、緩衝液を用いてハムスターの血流内に関心G−CSF部分を投与し、顆粒球を数えることが可能である。関心G−CSF部分は、提案されたG−CSF部分(例えば、緩衝液のみ)を用いて注射されなかった対照ハムスターと比べて、提案されたG−CSF部分で注射したハムスターが顆粒球の統計的に有意な増加を示せば、本発明に従ってG−CSF部分として使用することができる。
【0079】
水溶性重合体(例えば、ポリ”、ポリ’、ポリ1、ポリ2など)
前述したように、それぞれの複合体は、水溶性重合体に結合されるG−CSF部分を含む。水溶性重合体に関して、水溶性重合体は非ペプチド性、非毒性、非自然発生および生体適合性である。生体適合性については、生体組織に関連して(例えば、患者への投与)単独または別の物質(例えば、G−CSF部分などの活性薬剤)と併用での物質の使用と関連する有益な効果が、臨床医学者、例えば医師によって評価されるいかなる有害な影響にも勝る場合、物質は生体適合性であるとみなされる。非免疫原性に関しては、生体内物質の対象とする使用が、望ましくない免疫反応(例えば、抗体の形成)を生成しない場合、または免疫反応が生成された場合に、そのような反応が臨床医学者によって評価されたときに臨床的に有意義または重要であるとみなされない場合に、物質は非免疫原性であると考えられる。非ペプチド性水溶性複合体は、生体適合性および非免疫原性であることが特に好ましい。
【0080】
さらに、重合体は、一般的に2から約300の末端を有することが特徴付けられる。そのような重合体の例は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(エチレングリコール)(”PPG”),エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体などのポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチレンポリオール),ポリ(オレフィンアルコール),ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカリド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)および前述のいずれかの組み合わせを含むがそれらに限定されない
重合体は特定の構造に限定されるものではなく、線状(例えば、アルコキシPEGまたは二官能性PEG)、分岐、マルチアーム(例えば、フォーク型PEGまたはポリオール中心に結合されるPEG)および/または樹枝状であり得、前述のそれぞれは、分解不可能なまたは分解可能な連結を含むことができる。さらに、重合体の内部構造は、任意の数の異なる形態で組織化されることができ、またホモポリマー、交互トリポリマー、ランダムトリポリマーおよびブロックトリポリマーからなる群から選択されることができる。
【0081】
一般的に、活性PEGおよびその他の活性水溶性重合体(すなわち、高分子剤)は、G−CSF部分上の所望の部位と共役させるのに適している適切な活性化基で活性される。故に、高分子剤は、G−CSF部分と反応するための反応基を持つ。これらの重合体を活性部分と共役させるための代表的な高分子剤および方法は、当技術分野において既知であり、またさらに、Polyethylene Glycol Chemistry:Biotechnical and Biomedical Applications, J. M. Harris, Plenus Press, New York (1992)およびZalipsky(1995)Advanced Drug Reviews 16:157−182で、Zalipsky, Sら「Use of Functionalized Poly(Ethylene Glycols)for Modification of polypeptides」に記載されている。
【0082】
一般的に、複合体内の水溶性重合体の重量平均分子量は、約100ダルトンから約150,000である。しかしながら、典型的な範囲は、5,000ダルトンを超える値から約100,000ダルトンの範囲、約6,000ダルトンから約90,000ダルトンの範囲、約10,000ダルトンから約85,000ダルトンの範囲、10,000ダルトンを超える値から約85,000ダルトンの範囲、約20,000ダルトンから約85,000ダルトンの範囲、約53,000ダルトンから約85,000ダルトンの範囲、約25,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲、約29,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲、約35,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲、および約40,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲における重量平均分子量を含む。任意の所定の水溶性重合体にとって、一つ以上のこれらの範囲の分子量を有するPEGが好ましい。
【0083】
水溶性重合体の典型的な重量平均分子量は、約100ダルトン、約200ダルトン、約300ダルトン、約400ダルトン、約500ダルトン、約600ダルトン、約700ダルトン、約750ダルトン、約800ダルトン、約900ダルトン、約1,000ダルトン、約1,500ダルトン、約2,000ダルトン、約2,200ダルトン、約2,500ダルトン、約3,000ダルトン、約4,000ダルトン、約4,400ダルトン、約4,500ダルトン、約5,000ダルトン、約5,500ダルトン、約6,000ダルトン、約7,000ダルトン、約7,500ダルトン、約8,000ダルトン、約9,000ダルトン、約10,000ダルトン、約11,000ダルトン、約12,000ダルトン、約13,000ダルトン、約14,000ダルトン、約15,000ダルトン、約20,000ダルトン約22,500ダルトン、約25,000ダルトン、約30,000ダルトン、約35,000ダルトン、約40,000ダルトン、約45,000ダルトン、約50,000ダルトン、約55,000ダルトン、約60,000ダルトン、約65,000ダルトン、約70,000ダルトンおよび約75,000ダルトンを含む。前述のいずれかの分子量合計を有する水溶性重合体の分岐版(例えば、二つの20,000ダルトン重合体を含む分岐40,000ダルトン水溶性重合体)もまた使用できる。一つ以上の実施態様において、複合体は、直接または間接的に、約6,000ダルトン未満の重量平均分子量を有するPEGで結合された任意のPEG部分を有さない。
【0084】
重合体として使用される場合、PEGは、一般的に多くの(OCH2CH2)モノマー[または、PEGがどのように定義されるかによって、(CH2CH2O)モノマー]を含む。本明細書本文を通して使用されるように、繰り返し単位の数は「(OCH2CH2)n」の下付き文字「n」によって特定される。故に、(n)の値は、一般的に、2から約3400、約100から約2300、約100から約2270、約136から約2050、約225から約1930、約450から約1930、約1200から約1930、約568から約2727、約660から約2730、約795から約2730、約795から約2730、約909から約2730および約1,200から約1,900の一つ以上の範囲に入る。分子量が既知である任意の所定の重合体に関しては、繰り返しモノマーの分子量により重合体の重量平均分子量合計を除算することによって、繰り返し単位(すなわち、「n」)の数を決定することが可能である。
【0085】
エンドキャップされた重合体が必要な場合、低C1−6アルコキシ基(ヒドロキシル基でも)などの比較的不活性の基でキャップされた少なくとも一つの末端を有する重合体が使用できる。重合体がPEGである場合、例えば、メトキシ−PEG(通例、mPEGと称される)を使用することが好ましく、これはPEGの線状形であって、重合体の一方の末端はメトキシ(−OCH3)基を有し、他方の末端は任意に化学的に修飾され得るヒドロキシルまたはその他の官能基である。
【0086】
本発明の一つ以上の実施態様で有益な一つの様式において、遊離または非結合のPEGは、ヒドロキシル基
HO−CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−OH
を持つ各端で終端した線状重合体であり、一般的に(n)は0から約4,000の範囲である。
【0087】
上記の重合体、アルファ−、オメガ−ジヒドロキシポリ(エチレングリコール)は、ごく簡潔にHO−PEG−OHとして表すことができ−PEG−記号は以下の構造単位を表すことができることを理解されたい。
−CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−,
ここで、(n)は上記のように定義される。
【0088】
本発明の一つ以上の実施態様において有益な別のタイプのPEGは、メトキシPEG−OH、または簡潔にmPEGであり、その一方の末端は比較的不活性のメトキシであり、他方の末端はヒドロキシル基である。mPEGの構造は以下に示される。
CH3O−CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−OH
ここで、(n)は上記のとおりである。
【0089】
米国特許第5,932,462号に記載されるものなどのマルチアームまたは分岐PEGはまた、PEG重合体として使用できる。例えば、PEGは以下の構造を有することができ、
【0090】
【化7】
ここで、
ポリaおよびポリbは例えばメトキシポリ(エチレングリコール)などのPEG骨格(同じまたは異なる)であり、
R”は非反応性部分、例えばH、メチル、またはPEG骨格であり、
PおよびQは非反応性連結である。いくつかの状況において、分岐PEG重合体はメトキシポリ(エチレングリコール)二置換リジン(例えば、以下の構造を
【0091】
【化8】
備える重合体であって、nはそれぞれ3から4,000の整数である)。例えば、米国特許第5,932,462号を参照。使用する特異的G−CSFによって、二置換リジンの反応エステル官能基は、G−CSF部分内の標的基との反応に適している官能基を形成するようにさらに修飾されてよい。
【0092】
加えて、PEGはフォーク型PEGを含むことができる。フォーク型PEGの例は、以下の構造によって表すことができ、
【0093】
【化9】
ここで、Xは一つ以上の原子のスペーサー部分であり、各Zは、定められた長さの原子の鎖によってCHに結合された活性化末端基である。米国特許第6,362,254号は、本発明の一つ以上の実施態様において使用できる様々なフォーク型PEG構造を開示する。Z官能基を分岐炭素原子に結合させる原子鎖は、連結基として機能し、また例えば、アルキル鎖、エーテル鎖、エステル鎖、アミド鎖およびそれらの組み合わせを含んでよい。
【0094】
PEG重合体は、PEG鎖の終端でよりむしろ、PEGの長さに沿って共有結合的に結合されるカルボキシルなどの反応基を有するペンダントPEG分子を含んでよい。ペンダント反応基は、直接またはアルキレン基などのスペーサー部分を介してPEGに結合することができる。
【0095】
上述のPEGの形態に加えて、上述の重合体のいずれかを含む重合体中の一つ以上の弱いまたは分解可能な連結を用いて、また重合体を調製することができる。例えば、PEGは、加水分解しやすい重合体内のエーテル連結を用いて調製することができる。下記に示すように、この加水分解は、より小さい分子量の断片となる重合体の切断をもたらす。
【0096】
【化10】
重合体骨格内の分解可能な連結として有用なその他の加水分解に分解可能な結合は、カーボネート連結と、例えば、アミンとアルデヒドの反応によってもたらされるイミン連結(例えば、Ouchiら、(1997)Polymer Preprints 38(1):582−3を参照)と、例えば、アルコールをリン酸エステル基と反応させることによって形成されるリン酸エステル連結と、アルデヒドとアルコール間の反応によって一般的に形成されるアセタール連結と、例えば、ギ酸とアルコールの間の反応によって形成されるオルトフェライト連結と、例えば、PEGなどの重合体の終端にあるアミン基および別のPEG鎖のカルボキシル基によって形成されるアミド連結と、例えば、末端イソシアネート基を有すPEGとPEGアルコールとの反応によって形成されるウレタン連結と、例えば、PEGなどの重合体の終端にあるアミン基およびペプチドのカルボキシル基によって形成されるペプチド連結と、例えば、重合体の終端にあるホスホロアミダイト基およびオリゴヌクレオチドの5’ヒドロキシル基によって形成されるオリゴヌクレオチド連結と、を含む。
【0097】
複合体のそのような任意の特徴、すなわち一つ以上の分解可能な連結の重合体鎖への導入は、投与の際に複合体の最終的な所望の薬理学的特性のさらなる制御を提供する可能性がある。例えば、大きく比較的不活性の複合体(すなわち、そこに結合された一つ以上の高分子量PEG鎖を有する、例えば、約10,000を超える分子量を有する一つ以上のPEG鎖であって、複合体は基本的に生物活性を持たない)が投与されてよく、これは本来のPEG鎖の一部を持つ生物活性の複合体を生成するように加水分解される。この方法において、複合体の性質は、長期にわたり複合体の生物活性を均一化できるようにより効果的に調製され得る。
【0098】
複合体と関連する水溶性重合体は、「開裂可能な」効果を提供できるように分解可能な連結を有することができる。つまり、水溶性重合体は(加水分解、酵素工程または別の方法を介して)開裂し、それによって複合していないG−CSF部分をもたらす。いくつかの例において、開裂可能な重合体は、水溶性重合体のいずれの断片も残すことなく、生体内のG−CSF部分から切り離される。その他の例において、開裂可能な重合体は生体内のG−CSF部分から切り離され、水溶性重合体から比較的小さな断片(例えば、コハク酸タグ)を残す。両方の場合において、結果は患者への投与の際に長期間にわたりな持続性放出特性を提供することができる複合体となる。そのような持続性放出を提供する典型的な複合体は、カーボネート連結またはウレタン連結を介してG−CSF部分に結合される重合体を用いて調整されるものである。
【0099】
分解可能な連結が分解可能な連結の開裂可能なタイプであるそれらの例において、本発明の複合体は、(複合体は複合体形態内でさえも活性を保持してよいが)プロドラッグとみなすことができる。典型的な分解可能および開裂可能な連結は、カルボン酸エステル、リン酸エステル、チオールエステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチドおよびオリゴヌクレオチドを含む。そのような連結は、本明細書において通例用いられる結合方法を使用して、G−CSF部分(例えば、タンパク質のカルボキシル基C末端またはタンパク質内に含有するセリンもしくはトレオニンなどのアミノ酸の側鎖ヒドロキシル基)および/または高分子剤の適切な修飾によって容易に調製することができる。しかしながら、最も好ましいものは、G−CSF活性を有する部分内に含有する非修飾官能基を用いて適切に活性化された重合体の反応によって容易に形成される加水分解可能な連結である。
【0100】
あるいは、アミド、ウレタン(カルバメートとしても知られる)、アミン、チオエーテル(スルフィドとしても知られる)または尿素(カルバミドとしても知られる)連結などの加水分解に安定な連結は、G−CSF部分を結合するための連結として用いることもできる。さらに、好ましい加水分解に安定な連結はアミドである。一手法において、活性エステルを有する水溶性重合体は、G−CSF部分のアミン基と反応することができ、それによってアミド連結をもたらす。いくつかの実施態様において、連結(従って、対応複合体)は
【0101】
【化11】
部分を欠くことが好ましい。いくつかの実施態様において、連結(従って、対応複合体)はフェニルグリオキサル末端された高分子剤とG−CSF部分によって生成された連結を欠くことが好ましい。いくつかの実施態様において、連結はハロアセトアミド末端された高分子剤とG−CSF部分によって生成された連結を欠くことが好ましい。
【0102】
複合体(複合されていないG−CSF部分とは対照的に)は、測定可能な程度のG−CSF活性を持っても持たなくてもよい。つまり、本発明に従った重合体−G−CSF部分の複合体は、で修飾されていない親G−CSF部分が持つ生物活性の約0.1%から約100%間の任意の生物活性を持つ。いくつかの例において、重合体−G−CSF部分の複合体は、修飾されていない親G−CSF部分が持つ生物活性の100%を超える生物活性を持ってよい。好ましくは、G−CSF活性を殆ど持たないまたは全く持たない複合体は、複合体内の活性の欠如(または相対的欠如)にかかわらず、加水分解可能な連結の水誘発分解の際に、活性親分子(またはその誘導体)が放出されるように、重合体を部分に結び付ける加水分解可能な連結を含有する。そのような活性は、用いられるG−CSF活性を有する特定の分子の既知の活性次第で、適切な生体内または体外型を使用して決定されてよい。
【0103】
G−CSF活性を有する部分を重合体と結び付ける加水分解に安定な連結を持つ複合体では、複合体は測定可能な程度の生物活性を持つ。例えば、一般的にそのような複合体は、複合されていないG−CSF部分の複合体と比較して、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約100%、よび105%を超える(当技術分において既知のものなどの適切な型で測定された場合)割合の一つ以上を満たす生物活性を有すると特徴付けられる。好ましくは、加水分解に安定な連結(例えば、アミド連結)を有する複合体は、G−CSF活性を有する非修飾の親部分が有する少なくともある程度の生物活性を持つ。
【0104】
非ペプチド性に関する前述の考察および水溶性重合体は決して包括的でなく具体例にすぎないこと、また上述した資質を有するすべての重合体材料が検討されることを当業者は認識する。本明細書において、用語「高分子剤」は概して分子全体をいい、水溶性重合体セグメントおよび官能基を含むことができる。
【0105】
前述したように、本発明の複合体は、G−CSF部分に共有結合的に結合される水溶性重合体を含む。一般的に、あらゆる所定の複合体には、G−CSF活性を有する一つ以上の部分に共有結合的に結合される一つから三つの水溶性重合体がある。しかし、いくつかの例において、複合体はG−CSF部分に独立に結合された1、2、3、4、5、6、7、8以上の水溶性重合体を有してよい。
【0106】
本発明に従った典型的な複合体がここで説明される。複合体に関する説明において、特定アミノ酸への参照がなされる。そのような参照は、利便性のためのみに、配列番号1で提供されるヒトG−CSFのアミノ酸配列を参照する。当業者は、G−CSF活性を有する他の部分内の対応場所または原子を容易に決定することができる。特に、天然ヒトG−CSFのために本明細書で提供される説明は、断片、欠損変異体、置換変異体または前述のいずれかのさらなる変異体に大抵適用できる。
【0107】
上記のように、G−CSF活性を有する部分内の特定の連結および重合体は多くの因子に依存する。そのような因子は、例えば、用いられる特定の連結の化学的特性、特定のG−CSF部分、G−CSF部分内の利用可能な官能基(重合体に結合するため、または適切な結合部位への変換のため)、G−CSF部分内のさらなる反応官能基の存在などを含む。
【0108】
G−CSF部分上のアミノ基は、G−CSF部分と水溶性重合体との間の結合点を提供する。一実施態様において、複合体はG−CSF部分のN−末端で結合する一つの水溶性複合体を有するが、しかし、いくつかの例において、組成物は50%より少ないN−末端モノペグ化された複合体を含有する。典型的な複合体では、N−末端が複合されたG−CSF部分は、末端アミノ酸としてメチオニン残基を含有しない。ヒトG−CSFは、四つのアミン含有のリジン残基および一つのアミノ末端を含む(配列番号1を参照)。故に、このG−CSFの典型的な結合点は、16、23、34および40のいずれか一つの位置のリジンと関連する、アミン側鎖での結合を含む。
【0109】
G−CSF部分の利用可能なアミンとの共有連結を形成するのに有用な、適切な高分子剤例が多数ある。 特定の例は、 対応する複合体とともに以下表1に提供される。表において、変数(n)は繰り返しのモノマー単位数を表し、「−NH−(G−CSF)」は高分子剤への共役後のG−CSF部分の残基を表す。表1に提示した各重合体の一部[例えば、(OCH2CH2)nまたは(CH2CH2O)n]が「CH3」基で終端するが、その他の基も(Hおよびベンジルなど)はそれらと置換することができる。
【0110】
【表1−1】
【0111】
【表1−2】
【0112】
【表1−3】
【0113】
【表1−4】
【0114】
【表1−5】
【0115】
【表1−6】
【0116】
【表1−7】
G−CSF部分のアミノ基への高分子剤の共役は、様々な技術によって達成することができる。一手法において、G−CSF部分は、スクシンイミジル誘導体(または他の活性エステル基)で官能基化された高分子剤に共役されることができる。この手法において、異なる反応条件(例:6から7などのより低いpH、または異なる温度、および/または15℃未満)の使用は、G−CSF部分の異なる位置への重合体の結合をもたらすが、スクシンイミジル基(または他の活性エステル基)を有する重合体は、7から9.0のpHで水媒体におけるG−CSF部分に結合されることができる。さらに、アミド連結は、活性カルボン酸基を有するG−CSF部分と、アミン末端非ペプチド性の水溶性重合体を反応させることによって、形成されることができる。
【0117】
本発明の典型的な複合体は、分岐水溶性重合体へのアミドまたは二次アミン連結を介して結合されるG−CSF部分の残基を含み、ここで、(i)一つ以上の原子から成る任意のスペーサー部分は、アミドまたは二次アミン連結、および分岐水溶性重合体の間に位置し、(ii)分岐水溶性重合体はリジン残基を含有しない。
【0118】
さらに、N末端修飾複合体に関して、典型的な組成物は複数の複合体を含み、各複合体は、直接または1つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して、水溶性重合体に結合されるG−CSF部分の残基を含み、ここで記組成物中の全ての複合体の50%未満が、非N末端モノペグ化である。
【0119】
本発明による典型的な複合体は、以下の構造を有し、
【0120】
【化12】
式中、
(n)は、3から4,000の値を有する整数であり、
Xは1つ以上の原子から成るスペーサー部分であり、
R1は、メチル、エチル、プロピル、およびイソプロピルから成る群から選択された1つから3つの炭素原子を含む有機基であり、
G−CSFはG−CSF部分の残基である。
【0121】
本発明の典型的な複合体は、以下の構造を有し、
【0122】
【化13】
式中、(n)は3から4,000の値を有する整数であり、G−CSFはG−CSF部分の残基である。
【0123】
G−CSF部分の高分子剤への共役に役立つ別の手法の典型は、G−CSF部分の一次アミンを、ケトン、アルデヒド、またはその水和形態(例:ケトン水和物、またはアルデヒド水和物)で官能基化された高分子剤に、共役するための還元アミノ化の使用である。この手法において、G−CSF部分からの一次アミンは、アルデヒドまたはケトンのカルボニル基(または、水和アルデヒドまたはケトンの、対応するヒドロキシル基含有基)と反応し、それによってシッフ塩基を形成する。シッフ塩基は次に、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤の使用によって、安定した複合体へと還元的に転化されることができる。選択反応(例:N末端における)が、特にケトン、またはアルファメチル分岐アルデヒドで官能基化された重合体で、および/または特定の反応条件下(例:pHの減少)で、可能である。
【0124】
水溶性重合体が分岐形態である本発明の典型的な複合体は、以下の構造を有する分岐形態の水溶性重合体を有し、
【0125】
【化14】
式中、(n)はそれぞれ独立して、3から4,000の値を有する整数である。
【0126】
本発明の典型的な複合体は、以下の構造を有し、
【0127】
【化15】
式中、
(n)はそれぞれ独立して、3から4,000の値を有する整数であり、
Xは1つ以上の原子から成るスペーサー部分であり、
(b)は2から6であり、
(c)は2から6であり、
R2は各発生において、独立してH、または低アルキルであり、
G−CSFはG−CSF部分の残基である。
【0128】
本発明の典型的な複合体は、以下の構造を有し、
【0129】
【化16】
式中、
(n)はそれぞれ独立して、3から4,000の値を有する整数であり、
G−CSFはG−CSF部分の残基である。
【0130】
本発明の典型的な複合体は、以下の構造を有し、
【0131】
【化17】
式中、
(n)はそれぞれ独立して、3から4,000の値を有する整数であり、
(a)は0または1であり、
Xは、存在する場合、1つ以上の原子から成るスペーサー部分であり、
(b’)は、0あるいは、1から10の値を有する整数であり、
(c)は、1から10の値を有する整数であり、
R2は各発生において、独立してH、または有機基であり、
R3は各発生において、独立してH、または有機基であり、
G−CSFはG−CSF部分の残基である。
【0132】
本発明の典型的な複合体は、以下の構造を有し、
【0133】
【化18】
式中、
(n)はそれぞれ独立して、3から4,000の値を有する整数であり、
G−CSFはG−CSF部分の残基である。
【0134】
本発明の典型的な複合体は、以下の構造を有し、
【0135】
【化19】
式中、
ポリ1は第一の水溶性重合体であり、
ポリ2は第二の水溶性重合体であり、
X1は第一のスペーサー部分であり、
X2は第二のスペーサー部分であり、
Hαはイオン化できる水素原子であり、
R1は、Hまたは有機基であり、
R2は、Hまたは有機基であり、
(a)は0または1であり、
(b)は0または1であり、
Re1は、存在する場合、第一の電子変換基であり、
Re2は、存在する場合、第二の電子変換基であり、
Y1はOまたはSであり、
Y2はOまたはSであり、
G−CSFはG−CSF部分の残基である。
【0136】
これらの複合体(「フルベン系」である)は、G−CSF部分が以下の投与によって生体内に放出される、開裂結合を含む。有利なことに、かかる「フルベン系」複合体は、ただ1つの水溶性重合体が存在する場合(例:ポリ2およびX2が存在しない)を含み、対応する高分子剤(真下の段落に記載される)がポリ2およびX2を欠いている場合にも形成される。
【0137】
かかるフルベン系複合体は、複合体条件下で、G−CSF部分を以下の構造のフルベン系高分子剤と組み合せることによって、調製されることができ、
【0138】
【化20】
式中、
ポリ1は第一の水溶性重合体であり、
ポリ2は第二の水溶性重合体であり、
X1は第一のスペーサー部分であり、
X2は第二のスペーサー部分であり、
Hαはイオン化できる水素原子であり、
R1は、Hまたは有機基であり
R2は、Hまたは有機基であり、
(a)は0または1であり、
(b)は0または1であり、
Re1は、存在する場合、第一の電子変換基であり、
Re2は、存在する場合、第二の電子変換基である。
【0139】
かかるフルベン系高分子剤の合成は、共同所有および同時係属の米国特許出願番号第11/454,971号に記載されている。その中で記載されているとおり、フルベン系高分子剤はあらゆる方法で調製されることができる。例えば、フルベン系試薬を調製する1つの方法は、以下を含む。(a)第一の結合部位、第二の結合部位、および任意の第三の結合部位を有する、芳香族化合物含有部分を提供するステップ、(b)活性薬剤のアミノ基と反応可能な官能基を有する第一の結合部位をもたらし、カルバメートなどの分解可能な連結をもたらすために、官能基試薬を第一の結合部位と反応させるステップと、(c)(i)スペーサー部分を介した水溶性重合体を有する第二の結合部位、および(ii)存在する場合、スペーサー部分を介した第二の水溶性重合体を有する任意の第三の結合部位をもたらすために、反応基を有する水溶性重合体を、第二の結合部位、および存在する場合、任意の第三の結合部位と反応させるステップ。場合によっては、(b)はステップ(c)の前に行われるが、他の場合では、(c)がステップ(b)の前に行われる。
【0140】
したがって、フルベン系高分子剤を調製するこの方法において、必須ステップは、(a)第一の結合部位、第二の結合部位、および任意の第三の結合部位を有する、芳香族化合物含有部分を提供するステップである。合成調製との関連で、物質を「提供するステップ」が、物質を得ること(例えば、物質を合成する、または物質を商業的に入手することによって)を意味することは理解される。説明目的のための典型的な芳香族化合物含有部分は、以下に示されるように、9−ヒドロキシメチル−2,7−ジアミノフルオレンである。
【0141】
【化21】
この芳香族化合物含有部分、9−ヒドロキシメチル−2,7−ジアミノフルオレンは、3つの結合部位を有する芳香族化合物含有部分の例である:位置9のヒドロキシル基、および位置2および7のそれぞれのアミノ基。芳香族化合物含有部分は、塩基または塩形態で提供されることができる。9−ヒドロキシメチル−2,7−ジアミノフルオレンに関して、二塩酸塩の形態を使用することが可能である。
【0142】
芳香族化合物含有部分が提供された後、フルベン系高分子剤を提供する方法におけるもう1つのステップは、 広範には、反応基を有する水溶性重合体を、芳香族化合物含有部分上の結合部位と反応させるステップを含む。ここで、芳香族化合物含有部分上の1つ以上の結合部位に水溶性重合体を結合させる、当技術分野で既知の手法が使用されることができ、その手法は特定の方法に制限されない。例えば、アミン反応性PEG(例えば、縮合剤としての、および任意で塩基の存在下での、N−ヒドロキシスクシンイミド、およびCH3O−CH2CH2−(OCH2CH2)−OCH2CH2−OCH2COOHの、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、またはジイソプロピルカルボジイミド(DIC)との反応から形成される、N−スクシンイミジルエステル−末端mPEGなど)は、9−ヒドロキシメチル−2,7−ジアミノフルオレンなどの芳香族化合物含有部分を有するアミンと反応することができる。
【0143】
場合によっては、反応基を有する水溶性重合体の、芳香族化合物含有部分との反応は、すべての可能な結合部位がそこへ結合される水溶性重合体を有する結果となる。かかる状況において、結合部位が官能基試薬との反応に利用されるように、少なくとも1つの水溶性重合体を除去することが必要である。したがって、例えば、前段落に記載されたN−スクシンイミジルエステル−末端mPEGの、9−ヒドロキシメチル−2,7−ジアミノフルオレンとの反応は、(a)2つの水溶性重合体(2つのアミン部位のそれぞれに1つ)を有する種、および(b)3つの水溶性重合体(2つのアミン部位のそれぞれに1つ、およびヒドロキシル部位に1つ)を有する種を含む混合物をもたらす。ここで、サイズ排除クロマトグラフィーを使用することによって、高分子量の種を除去および採取することが可能である。さらに、混合物を高pHに処理し[例えば、混合物を水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)に処理]、続いてイオン交換クロマトグラフィーを行うことが可能である。いずれの場合においても、結果は、2つの水溶性重合体(2つのアミン部位のそれぞれに1つ)を有する9−ヒドロキシメチル−2,7−ジアミノフルオレンを主に含む組成物である。それによって、第三のヒドロキシル部位は、官能基試薬との反応に使用可能である。
【0144】
最終ステップは、芳香族化合物含有部分の反応部位を、官能基試薬と反応させるステップである。好ましい手法は、2つの水溶性重合体(2つのアミン部位のそれぞれに1つ)を有する、ヒドロキシル含有9−ヒドロキシメチル−2,7−ジアミノフルオレンを、トリホスゲンと反応させ、続いてN−ヒドロキシスクシンイミドで処理する手法である。この方法において、カルバメート連結(この場合、「活性カルボネート」)などの分解可能な連結を形成するために、活性薬剤のアミノ基と反応可能な官能基は、ヒドロキシル含有反応部位上で形成される。
【0145】
フルベン系高分子剤を提供する方法のステップは、適切な溶媒で行われる。当技術分野における通常の技量を有する者は、いかなる特定の溶媒も、所定の反応に適切であるかどうか決定することができる。しかしながら、溶媒は、通常好ましくは無極性溶媒、または極性非プロトン性溶媒である。無極性溶媒の限定されない例は、ベンゼン、キシレン、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、t−ブチルアルコール、およびトルエンを含む。特に好ましい無極性溶媒は、トルエン、キシレン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、およびt−ブチルアルコールを含む。典型的な極性非プロトン性溶媒は、DMSO(ジメチルスルホキシド)、HMPA(ヘキサメチルホスホラミド)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMA(ジメチルアセトアミド)、NMP(N−メチルピロリジノン)を含むが、それらに限定されない。
【0146】
重合体を結合させる部位として機能できる、G−CSFにおける好ましいアミン基は、Lys16、Lys34、およびLys40などのリジン残基内で見られるアミン基を含む。さらに、タンパク質であるいかなるG−CSF部分のN末端も、重合体結合部位として機能できる。
【0147】
カルボキシル基は、G−CSF部分上の結合点として機能できる、別の官能基を表す。構造的に、複合体は以下を含み、
【0148】
【化22】
式中、(G−CSF)および隣接カルボニル基は、カルボキシル含有G−CSF部分に対応し、Xはスペーサー部分であり、この場合好ましくは、O、N(H)、およびSから選択されたヘテロ原子であり、ポリは、任意にエンドキャッピング部分において終端となる、PEGなどの水溶性重合体である。
【0149】
C(O)−X連結は、末端官能基を有する高分子誘導体、およびカルボキシル含有G−CSF部分との反応に起因する。上記に記載のとおり、特定の連結は、利用される官能基の種類による。重合体がヒドロキシル基で末端官能基化、または「活性化」される場合、得られる連結はカルボン酸エステルであり、XはOである。高分子骨格が、チオール基で官能基化される場合、得られる連結はチオエステルであり、XはSである。特定の、マルチアーム、分岐、またはフォーク重合体が用いられる場合、C(O)X部分、および特にX部分は、比較的より複雑で、より長い連結構造を含んでもよい。
【0150】
ヒドラジド部分を含む水溶性誘導体もまた、カルボニルにおける共役に有用である。G−CSF部分がカルボニル部分を含まない限りにおいて、カルボニル部分は、いかなるカルボン酸(例:C末端カルボン酸)を還元させることによって、および/またはグリコシル化もしくは糖化(ここで添加された糖はカルボニル部分を有する)型G−CSF部分を提供することによって、導入されることができる。ヒドラジド部分を含む水溶性誘導体の特定の実施例は、対応する複合体と共に、以下の表2に示される。さらに、活性エステル(例:スクシンイミジル基)を含むいかなる水溶性誘導体も、活性エステルを含む水溶性高分子誘導体を、ヒドラジン(NH2−NH2)、またはカルバジン酸tert−ブチル[NH2NHCO2C(CH3)3]と反応させることによって、ヒドラジド部分を含むように転化されることができる。表では、変数(n)は、モノマー単位を繰り返す数を表し、「=C−(G−CSF)」は、高分子剤への共役後のG−CSF部分の残基を表す。任意に、ヒドラゾン連結は、適切な還元剤を使用して還元されることができる。表1に提示した各重合体部分[例:(OCH2CH2)n、または(CH2CH2O)n]が「CH3」基で終端する場合は、他の基(Hおよびベンジルなど)は、それらと置換されることができる。
【0151】
【表2−1】
【0152】
【表2−2】
G−CSF部分内に含有されるチオール基は、水溶性重合体の結合のために有効な部位として機能することができる。特に、G−CSF部分がタンパク質の場合は、G−CSF部分でのシステイン残基はチオール基をもたらす。そのようなシステイン残基でのチオール基は次いで、チオール基との反応に対して特異的な活性化PEG 、例えば、米国特許第5,739,208号および国際特許公開第WO 01/62827号に記載のN−マレイミジル重合体または他の誘導体と反応することができる。
【0153】
配列番号1から3に関して、5つのチオール含有システイン残基が存在する。従って、好ましいチオール結合部位は、これら5つのシステインのうちの一つと関連する。いかなるジスルフィド結合も分裂させないことは好ましいが、1つ以上のこれらのシステイン残基の側鎖内で重合体を結合させ、ある程度の活性を保つ可能性がある。いかなる特定のG−CSF部分もチオール基を欠き、ジスルフィド結合の分裂を回避する限り、従来の合成手法を使用して、システイン残基をG−CSF部分に加えることは可能である。例えば、システイン残基を加えるためのWO90/12874に記載の手順を参照すると、この手順はG−CSF部分に適合できることが考えられる。さらに、従来の遺伝子工学法はまた、システイン残基をG−CSF部分に導入するのに使用することができる。しかしながら、いくつかの実施態様において、システイン残基および/またはチオール基を導入し、追加することは好ましくはない。
【0154】
特定の例を対応する複合体とともに以下表3に示す。表では、変数(n)はモノマー単位を繰り返す数を表し、「−S−(G−CSF)」は水溶性重合体への共役後のG−CSF部分残基を表す。表3に提示した重合体部分[例えば、(OCH2CH2)nまたは(CH2CH2O)n]が「CH3」基で終端するが、他の基(Hおよびベンジルなど)もそれらと置換することができる。
【0155】
【表3−1】
【0156】
【表3−2】
【0157】
【表3−3】
1つ以上のマレイミド官能基を有する(マレイミドがG−CSF部分でのアミンまたはチオール基と反応してもしなくても)水溶性重合体から形成される複合体に関しては、水溶性重合体の対応マレアミド酸型もまたG−CSF部分と反応することができる。特定の条件下では(例えば、pH約7〜9および水の存在下)、マレイミド環は「開」き、対応マレアミド酸を形成する。同様に、マレアミド酸はアミンまたはG−CSF部分のチオ1基と反応することができる。典型的なマレアミド酸ベースの反応は、図式的に以下に示す。ポリは水溶性重合体を表し、(G−CSF)はG−CSF部分を表す。
【0158】
【化23】
本発明のG−CSFの形成に使用するのに適している重合体試薬は、
ポリ−[Y−S−W]x
式中、
ポリは水溶性重合体セグメント;
xは1から25;
Yは、少なくとも4つの炭素原子を含み、また長さ3つから8つの炭素原子であり、水素、低アルキル、低アルケニル、および本明細書で定義する非妨害置換基から独立して選択される置換基を有し、バックボーンの異なる炭素原子でのそのような2つのアルキルおよび/またはアルケニル置換基が、シクロアルキル、シクロアルケニル、またはアリール基を形成するために結合してもよい、飽和または不飽和炭化水素バックボーンから成る二価連結基;
Sは、Yのsp3ハイブリッド炭素に結合した硫黄原子;
S−Wは、オルトピリジルジスルフィド(OPSS)などの、チオール(すわち、WはH)、保護チオール、またはチオール−反応誘導体である、構造を備える。保護チオールは、例えば、S−ベンジルまたはS−トリチルエーテルなどのチオエーテル、およびチオエステルを含む。米国特許出願公開第2006/0135586号は、そのような重合体試薬を開示している。
【0159】
本発明による典型的な複合体は、以下の構造を備えることができる。
ポリ−L0,1−C(O)Z−Y−S−S−(G−CSF)
式中、ポリは水溶性重合体、Lは任意のリンカー、ZはO、NH、およびSより成る群から選択されるヘテロ原子、YはC2−10アルキル、C2−10置換アルキル、アリール、および置換アリールよりなる群から選択され、(G−CSF)はG−CSF部分の残基である。米国特許出願公開第2005/0014903号は、G−CSF部分と反応することができ、この型の複合体をもたらす重合体試薬を記載している。
【0160】
複合体は多くの方法でチオール特異的重合体試薬を使用して形成することができ、本発明はこの点において限定されない。例えば、G−CSF部分―任意に適切な緩衝液中の(必要に応じて、アミン含有の緩衝液を含む)―は、pH約7〜8の水媒体中に入れ、チオール特異的重合体試薬をモル過剰で加える。ペグ化収率が比較的低いと判断された場合に、2時間より長い(例えば、5時間、10時間、12時間、および24時間)反応時間は有効となり得るが、反応は約0.5から2時間続行してもよい。この手法において使用することができる典型的な重合体試薬は、マレイミド、スルホン(例えば、ビニルスルホン)、およびチオール(例えば、オルトピリジニルまたは「OPSS」などの保護チオール)より成る群から選択される反応基を有する重合体試薬である。
【0161】
重合体試薬を結合する部位として機能することができるG−CSF部分における好ましいチオール基は、システイン残基内で見られるそれらチオール基を含む。特に好ましいチオール基は、位置17に配置されるアミノ酸残基システインの側鎖と関連するチオール基である。
【0162】
従って、本発明の典型的な複合体は、hG−CSFのアミノ酸位置17に対応するシステイン残基側鎖を有するG−CSF部分の残基を有し、ここでシステイン残基側鎖は、直接または一つ以上の原子を有するスペーサー部分を通して、水溶性重合体に結合する。
【0163】
すでに記載したように、いくつかのG−CSF部分のチオールベース複合体のためのペグ化収率は比較的低い可能性がある。反応時間の延長を許容しても、そのようなペグ化収率はそれでもやはり十分でない可能性がある。これらの場合では、複合体を調製するための方法を用いることによって、比較的大きな収率において、チオールベースの修飾をもたらすことはさらに可能であり、前記方法は、(a)直接または一つ以上の原子より構成される第一のスペーサー部分を通して、第一の水溶性重合体に共有結合するG−CSF部分より構成される第一の複合体を含む、第一の複合組成物(すなわち、第一の複合体を有する組成物)をもたらすのに十分な条件下で、第一の重合体試薬組成物(すなわち、第一の重合体試薬を有する組成物)をG−CSF部分組成物に加える手順と、(b)直接または一つ以上の原子より構成される第二のスペーサー部分を通して、複合体の第一の水溶性重合体に結合する第二の水溶性重合体を有する、第二の複合組成物(すなわち、第二の複合体を有する組成物)をもたらすために、第二の重合体試薬組成物(すなわち、第二の重合体試薬を有する組成物)を第一の複合組成物に加える手順とを含む。
【0164】
前記方法によると、比較的小さな重量平均分子量を有する重合体試薬は、G−CSF部分への最初の結合のために使用することができる。その後、比較的大きな重量平均分子量を有する重合体試薬を使用することができる。理論に束縛されないことを願う一方で、そのような手法を使用することによって、比較的小さな重量平均分子量を有する重合体試薬は、比較的高い重量平均分子量を有する重合体試薬よりも、G−CSF部分内の立体障害箇所とより完全に反応することができると考えられている。このようにして、所望の複合体をより効率的に調製することが可能である。
【0165】
本方法によるチオールベースの修飾は、システイン残基のチオール基含有の側鎖と反応することができる一つ以上の官能基を有する重合体試薬を利用する。そのようなPEG試薬は、PEGオルトピリジルジスルフィド試薬、PEGビニルスルホン試薬、PEGマレイミド試薬、およびPEGヨードアセトアミド試薬を含むが、それらに限定されない。これらおよび他の重合体試薬を表3に示す。
【0166】
この方法により使用される重合体試薬は、性質がヘテロ二官能性またはホモ二官能性であってもよい。
【0167】
比較的低い重量平均分子量を有する重合体試薬は、約100ダルトンから約5,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有することになる。典型的に、この範囲の重量平均分子量は、約100ダルトン、約150ダルトン、約200ダルトン、約250ダルトン、約300ダルトン、約300ダルトン、約350ダルトン、約400ダルトン、約450ダルトン、約500ダルトン、約600ダルトン、約700ダルトン、約800ダルトン、約900ダルトン、約1000ダルトン、約1,500ダルトン、約2,000ダルトン、約2,500ダルトン、約3,000ダルトン、約3,500ダルトン、約4,000ダルトン、約4,500ダルトン、および約5,000ダルトンを含む。比較的低い重量平均分子量を有する典型的な重合体試薬は以下の構造を有する。
Y’−CH2CH2O(CH2CH2O)nCH2CH2−Y” 式I
式中、Y’は求電子基または求核基、Y’’はG−CSF部分と関連する官能基と反応するのに適した反応基(例えば、Y’’はG−CSFと関連するチオール基と反応するためのマレイミド、スルホンまたはチオール、G−CSF部分と関連するアミン基と反応するためのアルデヒド、ケトンまたはサクシンイミジルなどであってもよい)、(n)は2から約114までの値、好ましくは約3から約6(例えば、3、4、5、6のうちのいずれか一つ)の値を有する整数である。
【0168】
比較的低い重量平均分子量を有する重合体試薬は任意に単分散であってもよい(単分散は必要条件ではないが)。単分散である重合体試薬を使用することによって、G−CSF部分に共有結合する一つ以上の水溶性重合体より構成される複合体を有する組成物を調製することが可能となり、ここではそれぞれの水溶性重合体は(n)反復型モノマーを有し、(ii)組成物におけるあらゆる複合体でのG−CSF部分に共有結合する一つ以上の水溶性重合体のそれぞれの(n)は同じである。
【0169】
比較的高い重量平均分子量を有する重合体試薬は、約100ダルトンから約150,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する。しかしながら、典型的な範囲は、5,000ダルトンより大きいものからから約100,000ダルトンの範囲、約6,000ダルトンから約90,000ダルトンの範囲、約10,000ダルトンから約85,000ダルトンの範囲、10,000ダルトンより大きいものからから約85,000ダルトンの範囲、約20,000ダルトンから約85,000ダルトンの範囲、約53,000ダルトンから約85,000ダルトンの範囲、約25,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲、約29,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲、約35,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲、および約40,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を含む。比較的高い重量平均分子量を有する典型的な重合体試薬は以下の構造を有する。
Z’−CH2CH2O(CH2CH2O)n’CH2CH2−Z” (式II)
式中、Z’’は比較的低い重量平均分子量を有する典型的な重合体試薬(式I)のY’と反応し、Z’は官能基の端キャップ基、(n’)は2から約3,400の値を有する整数である。比較的高い重量平均分子量重合体試薬に関しては、典型的な型は、直鎖および分岐重合体試薬を含む。
【0170】
そのような手法のための図式を以下に示す(ここではG−CSFはG−CSF部分の残基を表す)。
【0171】
【化24】
上記の図式は説明目的のみであること、および(例えば)他の重合体試薬が前記方法により使用することができることが認識されるであろう。従って、例えば、重合体試薬は、以下の構造をもたらす上記の図式にしたがって使用することができる。
【0172】
【化25】
式中、(n)は2から約114までの整数であり、n’は2から約3,400の整数であり、G−CSFはG−CSF部分の残基である。
【0173】
システイン残基(例えば、システイン17)などの内部アミノ酸残基に結合する代替の方法において、反応基(例えば、マレイミドなどのチオール反応基)が比較的長い連結基[例えば、エチレンオキシド重合体、例えば、ポリマーアミノ酸(すなわち、同じまたは異なるアミノ酸の重合体)を含有する生体適合性重合体、ポリモノサッカリド、ポリ乳酸のような、ポリ炭水化物(すなわち、同じまたは異なる炭水化物の重合体)その他、および前述のうちいかなるものの組み合わせ]に任意に与えられる単一手順によりペグ化を実行することが可能となる。任意に、G−CSF部分に結合する重合体は、次に第二の重合体(例えば、分岐重合体)に結合することができる。米国特許第6,774,180号および米国特許出願番号第10/734,858と同様に文献にもそのような試薬が記載されている。
【0174】
どの方法を使用するかを問わず、pH10を下回る、より好ましくはpH8.5を下回る、さらにより好ましくは8.25を下回る、その上さらに好ましくは8.0を下回る、最も好ましくは7,5を下回るG−CSF部分に水溶性重合体を結合するための方法を行うことが好ましい。
【0175】
二つの重合体試薬を使用する方法となる実施例では、以下の構造を有する複合体が形成される。
ポリ’’−(X2)b−ポリ’−(X1)a−(G−CSF)
式中、
ポリ’’は第二の水溶性重合体(好ましくは分岐または直線)であり;
ポリ’は第一の水溶性重合体または生体適合性重合体であり;
存在する場合、X1は一つ以上の原子より構成される第一のスペーサー部分であり;
存在する場合、X2は一つ以上の原子より構成される第二のスペーサー部分であり;
(b)は0または1のどちらかであり;
(a)は0または1のどちらかであり;
G−CSFはG−CSF部分の残基である。
【0176】
重合体試薬に関しては、本明細書および他の場所に記載のそれらは、販売元(例えば、Nektar Therapeutics、アラバマ州、ハンツビル)から購入することができる。さらに、重合体試薬を調製するための方法は文献に説明されている。
【0177】
G−CSF部分および非ペプチド性、水溶性重合体間の結合(二つの水溶性重合体間の結合などの、本明細書に記載の複合体の異なる部分間での他の結合と同様に)は、直接的(例えば、G−CSF部分と重合体との間に位置する介在原子がない)、または間接的(例えば、G−CSF部分と重合体との間に一つ以上の原子が位置する)であってもよい。間接的結合に関しては、一つ以上の炭素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子およびその組み合わせを含むことができる、[従来「スペーサー部分」と称される(および本明細書でX1、X2などと定義される)一つ以上の原子は、隣接原子を結合するために使用することによって、間接的結合をもたらす。スペーサー部分は、アミド、第2級アミン、カルバメート、チオエーテル、またはジスルフィド基を有することができる。特異的スペーサー部分の限定されない例は、−O−、−S−、−S−S−、−CH2−S−S−CH2−、−CH2−CH2−S−S−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−S−S−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−S−S−CH2−CH2−CH2−CH2−、−C(O)−NH−CH2−CH2−S−S−CH2−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−S−S−CH2−CH2−NH−C(O)−、−C(O)−、−C(O)−NH−、−NH−C(O)−NH−、−O−C(O)−NH−、−C(S)−、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−、−O−CH2−、−CH2−O−、−O−CH2−CH2−、−CH2−O−CH2−、−CH2−CH2−O−、−O−CH2−CH2−CH2−、−CH2−O−CH2−CH2−、−CH2−CH2−O−CH2−、−CH2−CH2−CH2−O−、−O−CH2−CH2−CH2−CH2−、−CH2−O−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−O−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−O−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−O−、−C(O)−NH−CH2−、−C(O)−NH−CH2−CH2−、−CH2−C(O)−NH−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH2−CH2−CH2−、−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH2−CH2−CH2−CH2−、−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−、−C(O)−O−CH2−、−CH2−C(O)−O−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−O−CH2−、−C(O)−O−CH2−CH2−、−NH−C(O)−CH2−、−CH2−NH−C(O)−CH2−、−CH2−CH2−NH−C(O)−CH2−、−NH−C(O)−CH2−CH2−、−CH2−NH−C(O)−CH2−CH2−、−CH2−CH2−NH−C(O)−CH2−CH2−、−C(O)−NH−CH2−、−C(O)−NH−CH2−CH2−、−O−C(O)−NH−CH2−、−O−C(O)−NH−CH2−CH2−、−NH−CH2−、−NH−CH2−CH2−、−CH2−NH−CH2−、−CH2−CH2−NH−CH2−、−C(O)−CH2−、−C(O)−CH2−CH2−、−CH2−C(O)−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−CH2−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−NH−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−NH−C(O)−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−NH−C(O)−CH2−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−NH−C(O)−CH2−CH2−、−O−C(O)−NH−[CH2]h−(OCH2CH2)j−、二価シクロアルキル基、−O−、−S−、アミノ酸、−N(R6)−、および前述の二つ以上のいかなる組み合わせより成る群から選択されるものを含み、ここではR6はHまたはアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリールおよび置換 アリールより成る群から選択される有機基であり、(h)は0から6であり、また(j)は0から20である。他の特異的スペーサー部分は以下の構造を有する。−C(O)−NH−(CH2)1−6−NH−C(O)−、−NH−C(O)−NH−(CH2)1−6−NH−C(O)−、および−O−C(O)−NH−(CH2)1−6−NH−C(O)−、それぞれのメチレンの次の下付き文字の値は、構造内に含有されるメチレンの数を表示し、例えば、(CH2)1−6とは、構造が1、2、3、4、5または6メチレンを含有することができることを指す。さらに、上記のスペーサー部分のいずれも、1から20のエチレン酸化物モノマー単位を有するエチレンオキシドオリゴマー[例えば、−(CH2CH2O)1−20]をさらに含んでよい。すなわち、エチレンオキシドオリゴマー鎖は、スペーサー部分の前後、および任意に二つ以上の原子より構成されるスペーサー部分の二つの任意の原子間で存在することができる。また、オリゴマーが重合体セグメントに隣接し、重合体セグメントの伸長を単に表す場合は、オリゴマー鎖はスペーサー部分の一部と見なされない。いくつかの実施例では、スペーサー部分は二つ以上のアミノ酸残基と含まない(例えば、スペーサー部分は−Gly−Gly−を含まない)ことが好ましい。
【0178】
組成物
複合体は通常組成物の一部である。一般に、組成物は複数の複合体を含み、必ずではないが、好ましくはそれぞれの複合体は同じG−CSF部分より構成される(すなわち、全組成物内で、ただ一つの型のG−CSF部分が検出される)。さらに、組成物は複数の複合体を含むことができ、ここでは任意の所与の複合体は、二つ以上の異なるG−CSF部分より成る群から選択される部分より構成される(すなわち、全組成物内で、二つ以上の異なるG−CSF部分が検出される)。しかしながら、最適には、組成物でのすべての複合体(例えば、組成物での85%以上の複数の複合体)はそれぞれ同じG−CSF部分より構成される。
【0179】
組成物は、単一の複合体種(例えば、単一重合体が組成物での実質上すべての複合体のために同じ箇所で結合されるモノペグ化複合体)、または複合体種の混合物(例えば、重合体の結合が異なる部位で発生するモノペグ化複合体の混合物および/またはモノペグ化、ジペグ化およびトリペグ化複合体の混合物)を含むことができる。組成物はまた、G−CSF活性を有する任意の所与の部分に結合する4、5、6、7、8あるいはそれ以上の重合体を有する他の複合体を含むことができる。さらに、本発明は、組成物が複数の複合体を含み、それぞれの複合体は、一つのG−CSF部分に共有結合される2、3、4、5、6、7、8、あるいはそれ以上の水溶性重合体を含む組成物と同様に、一つのG−CSF部分に共有結合される一つの水溶性重合体を含む実施例を含む。
【0180】
組成物での複合体に関しては、組成物は、一つ以上の以下の特徴を充足させる。組成物での少なくとも約85%の複合体はG−CSF部分に結合する1つから4つの重合体を有する、組成物での少なくとも約85%の複合体はG−CSF部分に結合する1つから3つの重合体を有する、組成物での少なくとも約85%の複合体はG−CSF部分に結合する1つから2つの重合体を有する、組成物での少なくとも約85%の複合体はG−CSF部分に結合する1つの重合体を有する、組成物での少なくとも約95%の複合体はG−CSF部分に結合する1つから4つの重合体を有する、組成物での少なくとも約95%の複合体はG−CSF部分に結合する1つから3つの重合体を有する、組成物での少なくとも約95%の複合体はG−CSF部分に結合する1つから2つの重合体を有する、組成物での少なくとも約95%の複合体はG−CSF部分に結合する1つの重合体を有する、組成物での少なくとも約99%の複合体はG−CSF部分に結合する1つから4つの重合体を有する、組成物での少なくとも約99%の複合体はG−CSF部分に結合する1つから3つの重合体を有する、組成物での少なくとも約99%の複合体はG−CSF部分に結合する1つから2つの重合体を有する、組成物での少なくとも約99%の複合体はG−CSF部分に結合する1つの重合体を有する。
【0181】
一つ以上の実施態様において、複合体含有組成物はアルブミンがない、または実質上ないことが好ましい。組成物は、G−CSF活性のないタンパク質がない、または実質上ないこともまた好ましい。従って、組成物は、85%、より好ましくは95%、最もこの好ましくは99%アルブミンがないことが好ましい。さらに、組成物は、85%、より好ましくは95%、最もこの好ましくは99%、G−CSF活性のないタンパク質がないことが好ましい。アルブミンが組成物に存在する限り、本発明の典型的な組成物は、G−CSF部分の残基をアルブミンに結合させるポリ(エチレングリコール)重合体を有する複合体が実質上ない。
【0182】
任意の所与の部分のための重合体の所望の数の調整は、適切な重合体試薬、G−CSF部分への重合体試薬の割合、温度、pH条件、および共役反応の他の側面を選択することによって達成することができる。さらに、所望でない複合体(例えば、4つ以上の結合重合体を有するそれらの複合体)の減少または除去は、精製手段により達成することができる。
【0183】
例えば、重合体G−CSF部分複合体を精製して、異なる複合体種を獲得/単離することができる。特に、生成混合物を精製して、G−CSF部分につき平均1、2、3、4、5、あるいはそれ以上のいずれかのPEG、通常G−CSF部分につき1、2、または3のPEGを得ることができる。最終共役反応混合物の精製の方策は、例えば、用いる重合体試薬の分子量、特定のG−CSF部分、所望の投与計画、ならびに個別の複合体の残留活性および体内特性を含む、多くの要因によって決まることになる。
【0184】
必要に応じて、異なる分子量を有する複合体は、ゲルろ過クロマトグラフィーおよび/またはイオン交換クロマトグラフィーを使用して単離することができる。すなわち、ゲルろ過クロマトグラフィーは、異なる分子量(差異は水溶性重合体部分の平均分子量に基本的に一致する)に基づいて、数の異なる重合体とG−CSF部分の割合(例えば、「1−mer」はG−CSF部分に結合される1つの重合体を示す、「2−mer」はG−CSF部分に結合される2つの重合体を示す場合などの1−mer、2−mer、3−merなど)を分割するのに使用する。例えば、35,000ダルトンのタンパク質が、約20,000ダルトンの分子量を有する重合体試薬に無作為に共役する典型的な反応では、得られた反応混合物は、未修飾タンパク質(約35,000ダルトンの分子量を有する)、モノペグ化タンパク質(約55,000ダルトンの分子量を有する)、ジペグ化タンパク質(約75,000ダルトンの分子量を有する)などを含有する可能性がある。
【0185】
この手法は、PEGおよび異なる分子量を有する他の重合体−G−CSF部分複合体を分離するのに使用することができるが、この手法は一般に、G−CSF部分内の異なる重合体結合部位を有する位置アイソフォームを分離するには効果がない。例えば、ゲルろ過クロマトグラフィーは、1−mers、2−mers、3−mersの混合物をお互いから分離するのに使用することができるが、回収複合組成物のそれぞれは、G−CSF部分内の異なる反応基(例えば、リジン残基)に結合されるPEGを含有する可能性がある。
【0186】
この種類の分離を行うのに適切なゲルろ過カラムは、Amersham Biosciences(ニュージャージー州、ピスカタウェイ)から入手可能なSuperdexTMおよびSephadexTMカラムを含む。特定のカラムの選択は、所望の分割範囲によって決まる。溶出は一般に、リン酸塩、酢酸塩などの適切な緩衝液を使用して行うことができる。収集された部分は、多くの異なる方法、例えば、(i)タンパク質含有量の280nmでの吸収度(ii)標準のウシ血清アルブミン(BSA)を使用した染料ベースのタンパク質分析(iii)ペグ含有量のヨード検査(Simsら、(1980)Anal.Biochem、107:60−63)、(iv)ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS PAGE)、続いてヨウ化バリウムによる染色、および(v)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析してもよい。
【0187】
位置アイソフォームの分離は、適切なカラム(例えば、Amersham BiosciencesまたはVydacなどの企業から市販されている、C18カラムまたはC3カラム)を使用した逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)を使用した逆相クロマトグラフィー、またはイオン交換カラム、例えば、Amersham Biosciencesから入手可能なSepharoseTMイオン交換カラムを使用したイオン交換クロマトグラフィーによって行う。どちらの手法も、分子量を有する重合体活性剤異性体(すなわち、位置アイソフォーム)を分離するのに使用することができる。
【0188】
組成物は、G−CSF活性のないタンパク質が実質上ないことが好ましい。さらに組成物は、他のすべての非共有結合水溶性重合体が実質上ないことが好ましい。しかしながら、いくつかの状況において、組成物は重合体G−CSF部分複合体および非複合G−CSF部分の混合物を含有し得る。
【0189】
米国特許出願公開第2005/0143563号に記載の方法によって形成された組成物と対照的に、現在記載の複合組成物は会合体がない、または実質上ない。従って、本発明の組成物は会合体がない、または実質上ない(例えば、約20%未満、より好ましくは約15%未満、さらにより好ましくは約10%未満、その上さらにより好ましくは約9%未満、その上さらにより好ましくは約8%未満、その上さらにより好ましくは約7%未満、その上さらにより好ましくは約6%未満、その上さらにより好ましくは約5%未満、その上さらにより好ましくは約4%未満、その上さらにより好ましくは約3%未満、その上さらにより好ましくは約2%未満、その上さらにより好ましくは約1%未満で、約0.5%未満が最も好ましい)。
【0190】
米国特許出願公開2005/0143563号は、不活性会合体形成の形成に取り組む手法を開示している。この参考資料は、少量のSDS、ツイーン20、ツイーン80洗浄剤による処理は、会合体が形成されるのを防ぐのに必要であると記載している。有利に、本発明の組成物および複合体は、SDS、ツイーン20、およびツイーン80を加える手順を実行することなく調製することができる。さらに、本発明の組成物および複合体は、洗浄剤を加える手順を実行することなく調製することができる。さらに、本発明の組成物は、SDS、ツイーン20、およびTween80などの洗浄剤がない、または実質上ない(例えば、約20%未満、より好ましくは約15%未満、さらにより好ましくは約10%未満、その上さらにより好ましくは約9%未満、その上さらにより好ましくは約8%未満、その上さらにより好ましくは約7%未満、その上さらにより好ましくは約6%未満、その上さらにより好ましくは約5%未満、その上さらにより好ましくは約4%未満、その上さらにより好ましくは約3%未満、その上さらにより好ましくは約2%未満、その上さらにより好ましくは約1%未満、その上さらにより好ましくは約0.5%未満で、0.001%未満が最も好ましい)。さらに、本発明の組成物および複合体は、SDS、ツイーン20、およびツイーン80などの洗浄剤を除去(例えば、限外ろ過によって)する手順を実行することなく調製することができる。さらに、本発明の組成物および複合体は、洗浄剤を除去(例えば、限外ろ過によって)する手順を実行することなく調製することができる。
【0191】
国際特許出願公開第05/099769号での複合体を形成する手法と対照的に、本発明の複合体および組成物を調製するための手法は、Cys−17のチオール基を暴露するためのG−CSFを変性させる手順を含まない。好ましくは、複合体および組成物を形成するための本方法は、例えば、尿素、塩酸グアニジンまたはイソチオシアネート、ジメチル尿素、高中性塩濃度および溶媒(例えば、アセトニトリル、アルコール、有機エステル、ジメチルスルホキシドなど)より成る群から選択される変性剤などの変性剤を加える手順を含まない(前記変性剤の存在下で実行されない)。実験に示すように、そのような変性をさせる手順は、Cys−17残基でのG−CSFの複合体を獲得するのに必要ない。
【0192】
さらに、本発明の組成物は変性剤がない、または実質上ない(例えば、約20%未満、より好ましくは約15%未満、さらにより好ましくは約10%未満、その上さらにより好ましくは約9%未満、その上さらにより好ましくは約8%未満、その上さらにより好ましくは約7%未満、その上さらにより好ましくは約6%未満、その上さらにより好ましくは約5%未満、その上さらにより好ましくは約4%未満、その上さらにより好ましくは約3%未満、その上さらにより好ましくは約2%未満、その上さらにより好ましくは約1%未満で、約0.5%未満が最も好ましい)。さらに、本発明の組成物および複合体は、複合体を再生条件(例えば、限外ろ過またはクロマトグラフィー法など)に暴露する手順を実行することなく調製することができる。
【0193】
任意に、本発明の組成物は薬学的に許容できる賦形剤をさらに含む。必要に応じて、薬学的に許容できる賦形剤は、組成物を形成するために複合体に加えることができる。
【0194】
典型的な賦形剤は、炭水化物、無機塩類、抗菌剤、抗酸化物質、界面活性剤、緩衝液、酸、塩基およびそれらの組み合わせより成る群から選択されるものを含むが、それらに限定されない。
【0195】
糖などの炭水化物、アルジトール、アルドン酸、エステル化糖などの誘導体化糖、および/または糖重合体は賦形剤として存在してもよい。特異的炭水化物賦形剤は、例えば、フルクトース、麦芽糖、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボースなどの単糖類;乳糖、ショ糖、トレハロース、セロビオースなどの二糖類;ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなどの多糖類;マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシル、ソルビトール、ミオイノシトールなどのアルジトールを含む。
【0196】
賦形剤はまた、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせなどの無機塩類または緩衝液を含むことができる。
【0197】
組成物はまた、微生物増殖を防ぐ、または阻止するための抗菌剤を含むことができる。本発明の一つ以上の実施態様に適切な抗菌剤の限定されない例は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム,ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール,フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメルゾル、およびそれらの組み合わせを含む。
【0198】
抗酸化物質は、組成物にも同様に存在することができる。抗酸化物質を酸化防止のために使用することによって、複合体または調製の他の成分の劣化を防ぐ。本発明の一つ以上の実施態様で使用するために適切な抗酸化物質は、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせを含む。
【0199】
いくつかの状況において、界面活性剤は賦形剤として存在することができる。典型的な界面活性剤は、「ツイーン20」および「ツイーン80」などのポリソルベートならびにF68およびF88(両方ともBASF、Mount Olive、ニュージャージーから入手可能)などのプルロニック;ソルビタンエステル;レシチンおよび他のホスファチジルコリンなどのリン脂質、ホスファチジルエタノールアミン(リポソーム型でないものが好ましいが)、脂肪酸ならびに脂肪酸エステルなどの脂質;コレステロールなどのステロイド;ならびにEDTA、亜鉛および他のそのような適切な陽正イオンなどのキレート剤を含む。
【0200】
酸または塩基は、組成物に賦形剤として存在することができる。使用することができる酸の限定されない例は、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびそれらの組み合わせより成る群から選択されるそれらの酸を含む。適切な塩基の例は、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、苛性カリ、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、カリウムフマル酸カリウム、およびそれらの組み合わせより成る群から選択される塩基を含むが、それらに限定されない。
【0201】
組成物での複合体(すなわち、活性剤と重合体試薬との間に形成される複合体)の量は、多くの要因に応じて異なるが、組成物が単位用量容器(例えば、水薬瓶)に保存されている場合が、最も有利に治療効果のある用量となる。さらに、調合薬はシリンジに保管することができる。治療効果のある用量は、どの量が臨床的に所望の評価項目を実現するかを決定するために、複合体の投与量増加を繰り返すことによって実験的に決定することができる。
【0202】
組成物での任意の個別の賦形剤の量は、賦形剤の活性および組成物の特殊な必要性に応じて異なる。通常、任意の個別の賦形剤の最適量は、定期実験を通して、すなわち、様々な量の賦形剤(低から高に及ぶ)を含有する組成物を調製する、安定性および他のパラメーターを調べる、次いで深刻な副作用がなく最適の性能が得られる範囲を決定することによって決定する。
【0203】
しかしながら一般に、賦形剤は約1重量%から約99重量%、好ましくは約5重量%から約98重量%、より好ましくは約15から約95重量%の賦形剤の量で、濃度30重量%未満が最も好ましい組成物に存在することになる。
【0204】
他の賦形剤とともにこれらの前述の医薬品賦形剤は、「Remington:The Science&Practice of Pharmacy」、第19版、Williams&Williams、(1995)、「Physician’s Desk Reference」、第52版、Medical Economics、ニュージャージー州、モントベール(1998)、およびKibbe、A.H.、Handbook of Pharmaceutical Excipients、第3rd版、American Pharmaceutical Association、ワシントンD.C.、2000に開示されている。
【0205】
組成物はすべての種類の製剤、および特に注射のために適したもの、例えば、液体と同様にもどすことができる粉剤または凍結乾燥物を包含する。注射の前に固体組成物を再構成するために適切な希釈剤の例は、注射のための静菌性水、水中5%のD形グルコース、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水およびそれらの組み合わせを含む。液剤組成物に関しては、溶液および懸濁液が想定される。
【0206】
本発明の一つ以上の実施態様の組成物は通常、必ずではないが、注射により投与され、従って一般に、投与の直前に溶液または懸濁液となる。調合薬はまた、シロップ剤、クリーム、軟膏、錠剤、粉剤などの他の形態を取ることができる。投与の他の形態はまた、肺、直腸、経皮、経粘膜、口、くも膜下腔、皮下、動脈、その他などが含まれる。
【0207】
本発明はまた、本明細書に記載の複合体による治療に応答する病気に苦しむ患者に、本明細書に記載の複合体を投与するための方法を提供する。前記方法は、一般には注射により、治療効果量(好ましくは薬剤組成物の一部として投与)の複合体を患者に投与する手順を含む。先述のように、複合体は静脈注射によって、またはそれほど好ましくはないが筋内注射もしくは皮下注射によって非経口的に投与することができる。非経口投与の適切な処方タイプは、とりわけ注射準備のできている溶液、使用前の溶媒と組み合せた乾燥粉剤、注射準備のできている懸濁液、使用前の賦形剤と組み合わせ乾燥不溶性組成物および投与前の希釈用原液を含む。
【0208】
投与の方法は、複合体の投与によって治療または防ぐことができるいかなる病気も治療するのに使用してもよい。当業者は、本発明の複合体がどの病気を効果的に治療できるかを理解する。例えば、複合体は、骨髄抑制化学療法、骨髄移植、重度の慢性好中球減少症、後天性免疫不全症候群(AIDS)、再生不良性貧血、ヘアリー細胞白血病、骨髄異形成、顆粒球減少症(例えば、薬剤誘発顆粒球減少症、先天性顆粒球減少症、同種免疫性新生児好中球減少)に苦しむ患者を治療するのに使用することができる。さらに、複合体は、末梢血前駆細胞収集を必要としている患者に使用することができる。有利に、複合体は、その他の活性剤の投与の前、同時、または後に患者に投与することができる。
【0209】
投与する実際の用量は、治療する病気の重度と同様に被験者の年齢、体重、全身状態、ヘルスケアの専門家の判断、および投与される複合体に応じて異なる。治療効果量は当業者には周知であり、および/または関連参考テキストおよび文献に記載されている。一般に、治療効果量は、約0.001mgから100mg、好ましくは0.01mg/日から75mg/日の用量、より好ましくは0.10mg/日から50 mg/日の用量に及ぶ。所与の用量は、例えば、所望の(例えば、健康的)白血球を達成するまで、定期的に投与することができる。
【0210】
任意の所与の複合体の単位用量(ここでも、好ましくは調合薬の一部として提供される)は、臨床従事者の判断、患者の必要性その他に応じて様々な服薬スケジュールで投与することができる。特定の服薬スケジュールは当業者には周知であるか、または日常的方法を使用して実験的に決定することができる。典型的な服薬スケジュールは、1日1回、週3回、週2回、週1回、月2回、月1回、およびそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない。臨床的評価項目が達成されると、組成物の服薬は中断する。
【0211】
本明細書に記載の特定の複合体を投与する1つの利点は、個別の水溶性重合体部分を開裂できることである。そのような効果は、身体からのクリアランスが重合体の大きさのために潜在的に問題である場合に有利である。最適には、それぞれの水溶性重合体部分の開裂は、アミド、炭酸塩またはエステル含有の連結などの、生理学的に開裂可能および/または酵素的に分解可能な連結の使用により促進される。このようにして、複合体のクリアランス(個別の水溶性重合体部分の開裂による)は、所望のクリアランス性を与える官能基の重合体分子の大きさおよび型を選択することによって調節することができる。当業者は、回裂可能な官能基と同様に重合体の適切な分子の大きさを決定することができる。例えば、日常的実験を利用して、当業者は、まず異なる重合体重量および開裂可能な官能基により様々な重合体誘導体を調製し、次いで重合体誘導体を患者に投与し、定期的な採血および/または採尿によってクリアランスの分析結果(例えば、定期的な採血または採尿によって)を得ることによって、適切な分子の大きさおよび開裂可能な官能基を決定することができる。一連のクリアランス分析結果がそれぞれの試験済み複合体のために得られると、適切な複合体を同定することができる。
【0212】
本発明はその好ましい特定の実施態様とともに記載してきたが、以下の実施例と同様に前述の記載は、例示することを目的とし、本発明の範囲を限定しないことが理解されるべきである。本発明の範囲内の他の側面、利点および修正は、本発明に関係する当業者には明白となるであろう。
【0213】
実験
本発明の実施は、他に指示がない限り、当技術の範囲内である、有機合成、生化学、タンパク質精製などの従来の手法を用いる。例えば、J.March、Advanced Organic Chemistry:Reactions Mechanisms and Structure、第4版(ニューヨーク:Wiley−Interscience、1992)、上記を参照されたい。
【0214】
以下の実施例において、使用した数字(例えば、量、温度など)に関して正確さを確保する努力をしてきたが、いくつかの実験誤差および偏差を考慮に入れるべきである。他に指示がない限り、温度は摂氏温度、また圧力は海抜ゼロの大気圧またはそれに近い地点である。以下の実施例のそれぞれは、本明細書に記載の実施態様の一つ以上を実行するために当業者に有益であると見なされる。
【0215】
組換えメチオニルヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)は、大腸菌によって生成される非グリコシル化タンパク質であり、実施例1〜5で使用した。組換えタンパク質は、位置17で一つの遊離システインを有する175のアミノ酸から構成される(リーディングメチオニン残基を無視する)。完全なアミノ酸配列は以下の通りであり、
【0216】
【化26】
また配列番号1に相当し、ここではn’’’は1である。
【0217】
SDS−PAGE分析
SDS−PAGE分析を実行したときは、試料はBio−Radシステム(Mini−PROTEAN III Precast Gel Electrophoresis System)、およびInvitrogenシステム(XCell SureLock Mini−Cell)を使用して、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析した。試料は試料緩衝液と混ぜ合わせた。次いで、調製済み試料をゲルに取り込み、約30分間泳動させた。
【0218】
RP−HPLC分析
RP−HPLC 分析を実施例1A、2B、3Aおよび6で実行したときは、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)はAgilent 1100 HPLCシステム(Agilent)で実行した。試料はPRP−3カラム(粒径3μm、75×4.6mm、Hamilton)、ならびに水中0.1%のトリフルオロ酢酸およびアセトニトリル(緩衝液B)中0.1%のトリフルオロ酢酸から成る移動相を使用して分析した。カラムの流速は0.5ml/分であった。タンパク質およびPEGタンパク質複合体は40分にわたり線形勾配により溶出し、280nmの紫外検出を使用して可視化した。
【0219】
RP−HPLC 分析を実施例1B、1Cおよび1Dで実行したときは、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)はAgilent 1100 HPLCシステム(Agilent)で実行した。試料はZorbax300SB−C3カラム(粒径3.5μm、150mm×3.0mm、Agilent)、ならびに水(緩衝液A)中0.1%のトリフルオロ酢酸およびアセトニトリル(緩衝液B)中0.1%のトリフルオロ酢酸から成る移動相を使用して分析した。カラムの流速は0.3ml/分であった。タンパク質およびPEGタンパク質複合体は35分にわたり線形勾配により溶出し、280nmの紫外を使用して検出した。
【0220】
存在する場合、RP−HPLCにより同定される二量体は、タンパク質二量体会合体を示す(また任意の重合体成分を欠く)。
【0221】
陽イオン交換クロマトグラフィー
陽イオン交換クロマトグラフィーを実行する際は、HiTrap SP Sepharose HP陽イオン交換クロマトグラフィー(Amersham Biosciences)をAKTAprimeシステム(Amersham Biosciences)とともに使用し、PEG−G−CSF複合体を精製した。調製済み共役溶液のそれぞれに関しては、20mMのNaOAc緩衝液、pH4.0(緩衝液A)で予め平衡化したカラムに共役溶液を取り込み、次いで10カラム体積の緩衝液Aで洗浄し、いかなる未反応PEG試薬も除去した。その後、0〜100%緩衝液B(1.0M NaCl緩衝液、pH4.0による20mMのNaOAc)による緩衝液Aの勾配を増した。溶離剤は280nmの紫外検知器によって監視した。留分をため、個別の複合体の純度はRP−HPLCまたはSDS−PAGEによって決定した。
【0222】
収率パーセントおよび共役溶液
ペグ化の収率パーセントとは、モノペグ化種の収率を指す。用語「共役溶液」および「反応混合物」は同義であり、両方とも記載の反応または処理から生じる組成物を表す。
【実施例】
【0223】
実施例1A
以下によるG−CSFのペグ化
直鎖mPEG−オルトピリジルジスルフィド試薬(mPEG−OPSS)、10kDa
【0224】
【化27】
アルゴン下において−20℃で保存したmPEG−OPSS、10kDaは周囲温度まで温めた。50倍過剰(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)の温めたmPEG−OPSSをジメチルスルホキシド(「DMSO」)中に溶解させ、10%の試薬液を形成した。前記10%の試薬液をG−CSF原液(リン酸ナトリウム緩衝液0.4mg/ml、pH7.0)のアリコートに素早く加え、よく混ぜ合わせた。ジスルフィド連結によるG−CSFの位置17でのmPEG−OPSSの遊離(すなわち、非イントラタンパク質ジスルフィド結合関与)システイン残基への結合が可能となるように、反応液をRotoMix(48200型、Thermolyne、アイオワ州デビューク)に載せ、37℃で共役を促進させた。30分後、別の50倍過剰のmPEG−OPSS、10kDaを反応液に加え、続いてまず37℃で30分間、次いで室温で2時間混ぜ合わせて、mPEG10kDa−G−CSF共役溶液を形成した。mPEG10kDa−G−CSF共役溶液はSDS−PAGEおよびRP−HPLCで特性化した。
【0225】
図1は、mPEG10kDa−G−CSF共役溶液のRP−HPLC分析後のクロマトグラムを示す。ペグ化反応はmPEG10kDa−G−CSF複合体の36%を生成した(G−CSFのシステイン残基でのモノペグ化複合体)。図2は、mPEG10kDa−G−CSF共役溶液のSDS−PAGE分析を示す。陽イオン交換クロマトグラフィーを複合体を精製するのに使用した。図3は、陽イオン交換精製後のクロマトグラムを示す。
【0226】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するmPEG−OPSSを使用して調製することができる。
【0227】
実施例1B
以下によるG−CSFのPEG化
直鎖mPEG−オルトピリジルジスルフィド試薬(mPEG−OPSS)、10kDa
【0228】
【化28】
アルゴン下において−20℃で保存したmPEG−OPSS、10kDaは周囲温度まで温めた。50倍過剰(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)の温めたmPEG−OPSSを50%のDMSO中に溶解させ、10%の試薬液を形成した。10%の試薬液をG−CSF原液(10mMのリン酸ナトリウム緩衝液3.0mg/ml、1%(w/v)ショ糖、pH6.7)のアリコートに素早く加え、よく混ぜ合わせた。ジスルフィド連結によるG−CSFの位置17でのmPEG−OPSSの遊離(すなわち、非イントラタンパク質ジスルフィド結合関与)システイン残基への結合が可能となるように、反応液をRotoMix(48200型、Thermolyne、アイオワ州デビューク)に載せ、37℃で1時間、次いで室温で一晩共役を促進させることによってmPEG10kDa−G−CSF共役溶液を形成した。mPEG10kDa−G−CSF共役溶液はSDS−PAGEおよびRP−HPLCで特性化した。
【0229】
図4は、共役溶液のRP−HPLC分析後のクロマトグラムを示す。ペグ化反応は34%のmPEG10K−G−CSF複合体を生成した。
【0230】
図5は、共役溶液のSDS−PAGE分析を示す。
【0231】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するmPEG−OPSSを使用して調製することができる。
【0232】
実施例1C
以下によるG−CSFのPEG化
直鎖mPEG−オルトピリジルジスルフィド試薬(mPEG−OPSS)、10kDa
【0233】
【化29】
アルゴン下において−20℃で保存したmPEG−OPSS、10kDaは周囲温度まで温めた。温めたmPEG−OPSS(37mg)をアセトニトリル中に溶解させ、試薬液を形成した。試薬液を1mlのG−CSF溶液(リン酸ナトリウム緩衝液0.5mg/ml、pH6.9)に素早く加え、よく混ぜ合わせた。ジスルフィド連結によるG−CSFの位置17でのmPEG−OPSSの遊離(すなわち、非イントラタンパク質ジスルフィド結合関与)システイン残基への結合が可能となるように、反応液をRotoMix(48200型、Thermolyne、アイオワ州デビューク)に載せ、37℃で30分、次いで室温で2時間共役を促進させることによってmPEG10kDa−G−CSF共役溶液を形成した。mPEG10kDa−G−CSF共役溶液はRP−HPLCで特性化した。
【0234】
図6は、mPEG10kDa−G−CSF共役溶液のRP−HPLC分析後のクロマトグラムを示す。ペグ化反応は56%のmPEG10K−G−CSF複合体を生成した。
【0235】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するmPEG−OPSSを使用して調製することができる。
【0236】
実施例1D
以下によるG−CSFのPEG化
直鎖mPEG−オルトピリジルジスルフィド試薬(mPEG−OPSS)、10kDa
【0237】
【化30】
アルゴン下において−20℃で保存したmPEG−OPSS、10kDaは周囲温度まで温めた。温めたmPEG−OPSS(17mg)をアセトニトリル中に溶解させ、試薬液を形成した。試薬液を0.2mlのG−CSF溶液(10mMのリン酸ナトリウム緩衝液0.3mg/ml、1% (w/v)ショ糖、pH7.0)素早く加え、よく混ぜ合わせた。ジスルフィド連結によるG−CSFの位置17でのmPEG−OPSSの遊離(すなわち、非イントラタンパク質ジスルフィド結合関与)システイン残基への結合が可能となるように、反応液をRotoMix(48200型、Thermolyne、アイオワ州デビューク)に載せ、37℃で1時間、次いで室温で2時間共役を促進させることによってmPEG10kDa−G−CSF共役溶液を形成した。mPEG10kDa−G−CSF共役溶液はRP−HPLCで特性化した。
【0238】
図7は、mPEG10kDa−G−CSF共役溶液のRP−HPLC分析後のクロマトグラムを示す。ペグ化反応は73%のmPEG10K−G−CSF複合体を生成した。
【0239】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するmPEG−OPSSを使用して調製することができる。
【0240】
実施例2A
直鎖PEG−ジオルトピリジルジスルフィド試薬、2kDa、および直鎖mPEG−チオール試薬、20kDaによるG−CSFのペグ化
【0241】
【化31】
【0242】
【化32】
この実施例(実施例2Bと同様に)は、比較的小さな重量平均分子量を有する重合体試薬のG−CSF部分への最初の結合、続いて比較的大きな重量平均分子量重合体試薬の、比較的小さな重量平均分子量重合体試薬のG−CSF部分への結合から形成された複合体の重合体への結合を伴う手法に依存した。この手法を用いることによって、G−CSFの部分的に埋もれた遊離チオール含有システイン残基を修飾することが可能であった。二官能性PEG−DiOPSS、2kDaは基本的にジスルフィド連結、続いて別のジスルフィド連結により、チオール終端ペグの、PEG−OPSS、2kDaの暴露残基への結合により立体障害遊離チオールに挿入した。
【0243】
図式的に、前記手法を以下に示す[比較的低い重量平均分子量「PEGB」を有する重合体試薬が最初に共役される部分(A)に結合し、続いて比較的高い重量平均分子量重合体試薬(図式中PEGA)の、低い重量平均分子量試薬の共役部分への結合から形成される複合体の重合体部分へ結合する]。以下に示した構造は単なる実例であり、様々な構造の重合体試薬を使用することができる。
【0244】
【化33】
アルゴン下において−20℃で保存したPEG−DiOPSS、2kDは周囲温度まで温めた。50倍過剰(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)の温めたPEG−DiOPSSをDMSO中に溶解させ、10%の試薬液を形成した。前記10%の試薬液をG−CSF原液(リン酸ナトリウム緩衝液0.4mg/ml、pH7.0)のアリコートに素早く加え、よく混ぜ合わせた。ジスルフィド連結によるG−CSFの位置17でのPEG−DiOPSSの遊離(すなわち、非イントラタンパク質ジスルフィド結合関与)システイン残基への共役を促進するために、反応液をRotoMix(48200型、Thermolyne、アイオワ州デビューク)に載せ、37℃で1時間、次いで室温で2時間混ぜ合わせることによってPEG2kDa−G−CSF反応混合物を得た。反応を完了した後、反応液はリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0で透析し、過剰遊離PEG−DiOPSSを除去した。次いで50倍過剰のmPEG−SH、20kDa(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)を透析済み共役溶液に加え、続いて室温で1時間、次いで4℃で一晩混ぜ合わせて、mPEG20kDa−PEG2kDa−G−CSF共役溶液を形成した。mPEG20kDa−PEG2kDa−G−CSF共役溶液はSDS−PAGEおよびRP−HPLCで特性化した。
【0245】
図8は、mPEG20kDa−PEG2kDa−G−CSF共役溶液のSDS−PAGE分析を示す。PEG−diOPSSによるペグ化の第一の手順は、58%のPEG2kDa−G−CSF複合体を生成したが、mPEG−SHによる反応の第二の手順は、42%のmPEG20kDa−PEG2kDa−G−CSF複合体を生成した。
【0246】
陽イオン交換クロマトグラフィーは最終複合体を精製するのに使用した。図9は、陽イオン交換精製後のクロマトグラムを示す。
【0247】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するPEG−OPSSおよびmPEG−SHを使用して調製することができる。
【0248】
実施例2B
直鎖PEG−ジオルトピリジルジスルフィド試薬、2kDa、および直鎖mPEG−チオール試薬、20kDaによるG−CSFのペグ化
【0249】
【化34】
【0250】
【化35】
アルゴン下において−20℃で保存したPEG−DiOPSS、2kDは周囲温度まで温めた。100倍過剰(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)の温めたPEG−DiOPSSをDMSO中に溶解させ、10%の試薬液を形成した。10%の試薬液をG−CSF原液(リン酸ナトリウム緩衝液0.5mg/ml、pH7.0)のアリコートに素早く加え、よく混ぜ合わせた。ジスルフィド連結によるG−CSFの位置17でのPEG−DiOPSSの遊離(すなわち、非イントラタンパク質ジスルフィド結合関与)システイン残基への共役を促進するために、反応液をRotoMix(48200型、Thermolyne、アイオワ州デビューク)に載せ、37℃で1時間、次いで室温で3時間半混ぜ合わせた。反応を完了した後、反応液はリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0で透析し、過剰遊離PEG−DiOPSSを除去した。その後、次いで100倍過剰のmPEG−SH、20kDa(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)を透析済み共役溶液に加え、続いて室温で一晩混ぜ合わせて、mPEG20kDa−PEG2kDa−G−CSF共役溶液を形成した。mPEG20kDa−PEG2kDa−G−CSF共役溶液はSDS−PAGEおよびRP−HPLCで特性化した。
【0251】
図10は、共役溶液のRP−HPLC分析後のクロマトグラムを示す。ペグ化反応は25%のmPEG20kDa−PEG2kDa−G−CSF複合体を生成した。
【0252】
SP Sepharose High Performance交換媒体(Amersham Biosciences、スウェーデン、ウプサラ)およびNaOAc緩衝液を使用した陽イオン交換クロマトグラフィー法を用い、mPEG20kDa−PEG2kDa−G−CSF複合体を精製した。
【0253】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するPEG−DiOPSSおよびmPEG−SHを使用して調製することができる。
【0254】
実施例3A
直鎖PEG−ジオルトピリジルジスルフィド試薬、2kDa、および直鎖mPEG−チオール試薬、30kDaによるG−CSFのペグ化
【0255】
【化36】
【0256】
【化37】
この実施例(実施例3Bと同様に)は、比較的小さな重量平均分子量を有する重合体試薬のG−CSF部分への最初の結合、続いて比較的大きな重量平均分子量重合体試薬の、比較的小さな重量平均分子量重合体試薬のG−CSF部分への結合から形成された複合体の重合体への結合を伴う手法に依存した。この手法を用いることによって、G−CSFの部分的に埋もれた遊離チオール含有システイン残基を修飾することが可能であった。二官能性PEG−DiOPSS、2kDaは基本的にジスルフィド連結、続いて別のジスルフィド連結により、チオール終端ペグの、PEG−OPSS、2kDaの残基への結合により立体障害遊離チオールに挿入した。
【0257】
アルゴン下において−20℃で保存したPEG−DiOPSS、2kDは周囲温度まで温めた。50倍過剰(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)の温めたPEG−DiOPSSをDMSO中に溶解させ、10%の試薬液を形成した。前記10%の試薬液をG−CSF原液(リン酸ナトリウム緩衝液0.4mg/ml、pH7.0)のアリコートに素早く加え、よく混ぜ合わせた。ジスルフィド連結によるG−CSFの位置17でのPEG−DiOPSSの遊離(すなわち、非イントラタンパク質ジスルフィド結合関与)システイン残基への共役を促進するために、反応液をRotoMix(48200型、Thermolyne、アイオワ州デビューク)に載せ、37℃で1時間、次いで室温で2時間混ぜ合わせることによってPEG2kDa−G−CSF反応混合物を得た。反応を完了した後、反応液はリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0で透析し、過剰遊離PEG−DiOPSSを除去した。次いで50倍過剰のmPEG−SH、30kDa(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)を透析済み共役溶液に加え、続いて室温で1時間、次いで4℃で一晩混ぜ合わせて、mPEG30kDa−PEG2kDa−G−CSF共役溶液を形成した。mPEG30kDa−PEG2kDa−G−CSF共役溶液はSDS−PAGEおよびRP−HPLCで特性化した。
【0258】
図11は、mPEG30kDa−PEG2kDa−G−CSF共役溶液のRP−HPLC分析後のクロマトグラムを示す。ペグ化反応は20%のmPEG30kDa−PEG2kDa−G−CSF複合体を生成した。
【0259】
陽イオン交換クロマトグラフィーはmPEG30kDa−PEG2kDa−G−CSF複合体を精製するのに使用した。図12は、陽イオン交換精製後のクロマトグラムを示す。
【0260】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するPEG−OPSSおよびmPEG−SHを使用して調製することができる。
【0261】
実施例3B
直鎖PEG−ジオルトピリジルジスルフィド試薬、2kDa、および直鎖mPEG−チオール試薬、30kDaによるG−CSFのペグ化
【0262】
【化38】
【0263】
【化39】
アルゴン下において−20℃で保存したPEG−DiOPSS、2kDは周囲温度まで温めた。100倍過剰(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)の温めたPEG−DiOPSS、2kDaをDMSO中に溶解させ、10%の試薬液を形成した。10%の試薬液をG−CSF原液(リン酸ナトリウム緩衝液0.5mg/ml、pH7.0)のアリコートに素早く加え、よく混ぜ合わせた。ジスルフィド連結によるG−CSFの位置17でのPEG−DiOPSSの遊離(すなわち、非イントラタンパク質ジスルフィド結合関与)システイン残基への共役を促進するために、反応液をRotoMix(48200型、Thermolyne、アイオワ州デビューク)に載せ、37℃で1時間、次いで室温で3時間半混ぜ合わせた。反応を完了した後、反応液はリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0で透析し、過剰遊離PEG−DiOPSSを除去した。次いで100倍および50倍過剰のmPEG−SH、30kDa(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)を透析済み共役溶液に加え、続いて室温で一晩混ぜ合わせて、mPEG30kDa−PEG−2kDa−G−CSF共役溶液を形成した。共役溶液はSDS−PAGEおよびRP−HPLCで特性化した。
【0264】
ペグ化反応は21%のmPEG30kDa−PEG2kDa−G−CSF複合体を生成した。
【0265】
SP Sepharose High Performance 交換媒体(Amersham Biosciences、スウェーデン、ウプサラ)およびNaOAc緩衝液を使用した陽イオン交換クロマトグラフィー法を用い、mPEG30K−PEG2K−G−CSF複合体を精製した(図13参照)。
【0266】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するPEG−DiOPSSおよびmPEG−SHを使用して調製することができる。
【0267】
実施例4
9−ヒドロキシメチル−2,7−ジ[mPEG(20,000)−アミドグルタルアミド]フルオレン−N−ヒドロキシこはく酸イミド試薬(「分岐」試薬)、40kDaによるG−CSFの分解可能なペグ化
【0268】
【化40】
アルゴン下において−20℃で保存したG2−PEG2−FMOC−NHS、40kDaは周囲温度まで温めた。5倍過剰(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)の温めたG2−PEG2−FMOC−NHSを2mMのHCl中に溶解させ、10%の試薬液を形成した。前記10%の試薬液をG−CSF原液(リン酸ナトリウム緩衝液0.4mg/ml、pH7.0)のアリコートに素早く加え、よく混ぜ合わせた。ペグ試薬を加えた後、従来の手法を使用して、反応混合物のpHを7.0に決定し調節した。アミド連結によるG2−PEG2−FMOC−NHSのG−CSFへの結合が可能となるように、反応液を3時間Slow Speed Lab Rotatorに載せ、室温での共役を促進することによってG2−PEG2−FMOC−G−CSF共役溶液を形成した。1Mの酢酸を加えてpHを4.0に下げ、反応を停止させた。G2−PEG2−FMOC−G−CSF共役溶液はSDS−PAGEで特性化した。図14に示すSDS−PAGE結果のレーン4を参照されたい。
【0269】
ペグ化反応は、52%の1−mer(単一共役またはG−CSFに結合される一つのPEG)および15%の2−mer(二重共役またはG−CSFに結合される二つのPEG)種を生成した。SP Sepharose High Performance交換媒体およびNaOAc(酢酸ナトリウム)緩衝液を使用した陽イオン交換クロマトグラフィー法を用い、複合体を精製した。
【0270】
PEG構造での分解可能な連結のために、G−CSFは生理学的条件下で、遅速で複合体から遊離すると予測される。このための証拠は、pH7.4、37℃でインキュベートした時点での時間の関数としての残る複合体のHPLCピーク面積として表される、G2−PEG2−FMOC−40K−G−CSF単一共役の放出特性(図15参照)において示される。G2−PEG2−FMOC−40K−G−CSF単一共役の半減期を、加水分解速度の線形プロットから98時間と計算された(図16参照)。
【0271】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するG2−PEG2−FMOC−NHS試薬を使用して調製することができる。
【0272】
実施例5
9−ヒドロキシメチル−[4−カルボキシアミド mPEG(10,000)−7−アミドグルタルアミmPEG(10,000)]フルオレン−N−ヒドロキシこはく酸イミド試薬、20kDaによるG−CSFの分解可能なペグ化
【0273】
【化41】
アルゴン下において−20℃で保存したCG−PEG2−FMOC−NHS、20kDaは周囲温度まで温めた。7倍過剰(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)の温めたCG−PEG2−FMOC−NHSを2mMのHCl中に溶解させ、10%の試薬液を形成した。前記10%の試薬液をG−CSF原液(リン酸ナトリウム緩衝液0.4mg/ml、pH7.0)のアリコートに素早く加え、よく混ぜ合わせた。ペグ試薬を加えた後、従来の手法を使用して、反応混合物のpHを7.0に決定し調節した。アミド連結によるCG−PEG2−FMOC−NHSのG−CSFへの結合が可能となるように、反応液を3時間Slow Speed Lab Rotatorに載せ、室温での共役を促進することによってCG−PEG2−FMOC−G−CSF共役溶液を形成した。1Mの酢酸を加えてpHを4.0に下げ、反応を停止させた。CG−PEG2−FMOC−G−CSF共役溶液はSDS−PAGEで特性化した。図14に示すSDS−PAGE結果のレーン2を参照されたい。
【0274】
ペグ化反応は、45%の1−mer(単一共役またはG−CSFに結合される一つのPEG)および26%の2−mer(二重共役またはG−CSFに結合される二つのPEG)種を生成した。SP Sepharose High Performance交換媒体およびNaOAc緩衝液を使用した陽イオン交換クロマトグラフィー法を用い、複合体を精製した。
【0275】
PEG構造での分解可能な連結のために、G−CSFは生理学的条件下で、PEG−G−CSF 複合体からゆっくり遊離すると予測される。このための証拠は、pH7.4、37℃でインキュベートした時点での時間の関数としての残る複合体のHPLCピーク面積として表されるCG−PEG2−FMOC−20K−G−CSF単一共役の放出特性(図17参照)において示される。CG−PEG2−FMOC−20K−G−CSF単一共役の半減期は、加水分解速度の線形プロットから60時間として計算した(図18参照)。
【0276】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するCG−PEG2−FMOC−NHS試薬を使用して調製することができる。
【0277】
実施例6
PEG2000−ジ−((CH2)4−オルトピリジルジスルフィド試薬)および分岐PEG240,000−チオールによるG−CSFのペグ化
【0278】
【化42】
【0279】
【化43】
アルゴン下において−20℃で保存したPEG2,000−ジ−(4C−OPSS)(米国特許出願公開第2006/0135586の実施例2で調製されている)を周囲温度まで温めた。50倍過剰(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)の温めたPEG2,000−ジ−(4C−OPSS)をDMSO中に溶解させ、10%の試薬液を形成した。前記10%の試薬液をG−CSF原液(リン酸ナトリウム緩衝液0.4mg/ml、pH7.0)のアリコートに素早く加え、よく混ぜ合わせた。溶液をRotoMix(48200型、Thermolyne、アイオワ州デビューク)に載せ、37℃で2時間、次いで室温で2時間混ぜ合わせた。反応を完了した後、反応液はリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0で透析し、過剰PEG2,000−ジ−(4C−OPSS)を除去した。
【0280】
次いで75倍過剰(G−CSFに対して)のPEG240,000−チオール(Nektar Therapeutics、アラバマ州ハンツビル)を透析済み共役溶液に加え、続いて室温で3時間、次いで4℃で一晩混ぜ合わせて、PEG240,000−PEG2,000−G−CSF複合体を形成した。複合体はSDS−PAGEおよびRP−HPLCで特性化した。図19に示すように、獲得した複合体の最終収率は35%であった。
【0281】
実施例7(比較)
PEG2000−ジ−((CH2)_オルトピリジルジスルフィド試薬)およびPEG240,000−チオールによるG−CSFのペグ化反応
【0282】
【化44】
【0283】
【化45】
4つの炭素リンカーではなく2つの炭素リンカーを有する低分子量PEGチオール試薬を使用して、実質的に、実施例6の反応手順を繰り返した。
【0284】
したがって、アルゴン下において−20℃で保存した、Nektar Therapeutics、アラバマ州ハンツビルから入手したPEG2,000−ジ−(2C−OPSS)を周囲温度まで温めた。50倍過剰(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)の試薬をDMSO中に溶解させ、10%の溶液を形成した。この溶液をG−CSF原液(リン酸ナトリウム緩衝液0.4mg/ml、pH7.0)のアリコートに素早く加え、よく混ぜ合わせた。反応溶液をRotoMix(48200型、Thermolyne、アイオワ州デビューク)に載せ、37℃で2時間、次いで室温で2時間混ぜ合わせた。反応を完了した後、反応液はリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0で透析し、過剰PEG2,000−ジ−(2C−OPSS)を除去した。
【0285】
75倍過剰(G−CSFに対して)の分岐PEG240,000−チオール(Nektar Therapeutics、アラバマ州ハンツビル)を透析済み共役溶液に加え、続いて室温で3時間、4℃で一晩混ぜ合わせた。しかしながら、SDS−PAGEおよびRP−HPLC分析は、検出可能量のPEG240,000−PEG2,000−G−CSF複合体を示さなかった。
【0286】
この事実は、エチレン(C2)−連結PEG−OPSS試薬が還元開裂を受け、それが標的タンパク質と反応する前後に試薬を効果的に破壊することを示唆している。ブチレン(C4)−連結試薬は、そのような開裂にに対してより安定性があり、その結果、より高い収率の複合体が得られるよう存続する。
【0287】
実施例8
一連のrhG−CSFにおけるペグ化
G−CSFは酢酸ナトリウム緩衝液、pH6.8中に溶解させ、原液を形成した。約40モル過剰(G−CSFに対して)の水中OPSS−PEG2,000 ダルトン−ヒドラジドを原液に加えて、反応液を形成した。
【0288】
【化46】
システインとスルフヒドリル反応性オルトピリジルジスルフィド基(「OPSS」)との反応が可能となるように、反応液を室温で3時間混ぜ合わせる。反応液は次いでサイズ排除クロマトグラフィーカラムを通過し、モノペグ化(「1−mer」)複合体[(G−CSF)−S−S−PEG2,000ダルトンC(O)−NH−NH2の構造を有する]に関連するピーク収集して、モノペグ化組成物を形成する。
【0289】
前記モノペグ化組成物は次いで20モル過剰のmPEG30,000 ダルトンプロピオンアルデヒド誘導体で処理し、第二の反応液を形成する。
【0290】
【化47】
前記ヒドラジドとアルデヒドの官能基との反応が可能となるように、第二の反応液を3.8に調節したpHで室温で3時間混ぜ合わせる。反応混合物の分析は、以下の構造を有するG−CSFの共役の成功を明らかにする。
(rG−CSF)−S−S−PEG2,000 ダルトンC(O)−NH−N=CHCH2CH2O(CH2CH2O)CH3。
【0291】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するPEG−OPSSおよびmPEG−プロピオンアルデヒド試薬を使用して調製することができる。
【0292】
実施例9
複合体の活性
実施例9の目的は、表4に示されているヒト組み換え顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)の複合体の有効性を評価することであった。
【0293】
【表4】
M−NFS−60マウス骨髄腫細胞(ATCC#CRL−1838)を入手し、10%FBS(HyClone)、50μMの2−メルカプトエタノール(Gibco)、および62ng/mlのヒト組換え型マクロファージコロニー刺激因子(rhM−CSF、Sigma#M6518)が添加されたRPMI−1640(ATCC#30−2001)で維持された。細胞は、2−3日ごとに、または1週間に3回、二次培養された。種子密度は、25000細胞/mLであった。細胞は、足場依存性ではない。PEG−G−CSF化合物を検査する直前に、細胞は、rhM−CSFを除去するために、PBS緩衝液で3回洗浄された。表5の手順は、以下のとおりである。
【0294】
【表5】
各共役の活性は、正常な雄Sprague−Dawleyラット(Harlan、インディアナ州インディアナポリス)において、薬力学的に決定された。動物は150−200gの体重範囲内で順序付けられ、それらのおおよその年齢は、6週間であった。それらは、配達後、研究調査の開始前に、少なくとも3日間、動物収容設備で順応された。
【0295】
1群につき4匹のラットで、10の処理群があった。各処理群は文字(AからJ)が与えられ、ラットは、表6で示されるように、各処理群に任意に割り当てられた。
【0296】
【表6】
賦形剤および試験物質の投与量(体積)は、各投薬溶液の濃度によって決定された。各ラットは、皮下注射によって、試験物質、陽性対照、または担体の単回投与を受けた。
【0297】
動物の10の群(1群につきn=8(5回の処理採取時間に対して、n=4)は、注射によって、試験物質、担体、または陽性対照の皮下投与を受け、分析のために血液試料が採取された。割り当ては、表7に示される。
【0298】
【表7】
初期試料に関しては、およそ0.5mLの全血が、尾静脈から採取された。5回目すなわち最終試料に関しては、動物は炭酸ガスで麻酔され、最大量の血液試料が心穿刺で採取された。心臓からの採取の時点は、投与後144、および168時間であった。試料は、EDTAでコーティングされた採取バイアルに置かれ、直ちに混合され、次に氷上に保管された。動物は、最終血液採取時点の後、頚部脱臼により屠殺された。血液採取の実時間は、文書で記録された。血液試料は、直ちに氷上に置かれ、分析に先立っておよそ4℃で冷蔵され保管された。血液試料は、採取の48時間以内に分析された。EDTAは、血液試料の抗凝血剤として使用された。
【0299】
測定されたパラメーター、および血液検査の方法を表8に示す。
【0300】
【表8】
各試験済み化合物の活性は、以下の図20および図21で説明される。各グラフは、濃度の関数としてのNFS細胞における増殖率を表す。2つの図の差異は、培養の長さ、すなわち、図20の48時間に対して、図21の72時間である。
【0301】
結果は、G−CSFが、各試験済みPEG−G−CSF複合体と比較した時、より低濃度で活性を有することを示唆する。グラフの結果をよりよく比較するために、データは正規化され、天然G−CSFと直接比較された。EC50(ng/mL)における活性が計算された。以下の表で比較がなされる。
【0302】
【表9】
結果は、ペグフィルグラスチム(ID#2)が、天然G−CSF(ID#1)の8分の1の効力があり、実施例1A(ID#7)で調製された共役が、16分の1の効力があり、実施例2A、2B、3A、および3Bで調製された各共役が、32分の1の効力があり、言い換えれば、1.5の対数減少を示唆する。放出可能複合体は、PEG化が非選択的であると考えられたため、あまり効力がなかった。しかしながら、放出可能複合体は、活性G−CSF分子を放出すると予測され、それによって、天然化合物と同様の十分な活性を有するであろう。予測されたとおり、高分子剤対照(ID#8)はいかなる活性も有さなかった。
【0303】
天然G−CSF(ID#1)、およびペグフィルグラスチムが、0.097ng/mLを下回る濃度で、システイン共役化合物より、よい活性を有することも認められた。しかしながら、0.097ng/mLを上回る濃度では、逆のことが認められた(すなわち、天然G−CSF(ID#1)、およびペグフィルグラスチムの細胞増殖活性は、PEG−G−CSF試料が継続的成長を示す一方で、横ばいであった)。
【0304】
体内活性に関して、好中球および白血球数が測定および比較された。下記の各グラフにおいて、総数が(両方の投与量に対して)示され、ペグフィルグラスチム(N−末端PEG化G−CSF)と比較された。すべてのグラフにおいて、小さいが明らかな用量反応が、40μg/kgおよび100μg/kgの投与量間で認められた。
【0305】
最後に、G−CSFのシステイン共役は、体外および体内の両方において陽性活性を示した。実施例1Aの複合体は、ペグフィルグラスチムに最も近い活性を有するように思われた。実施例2A、2B、3A、および3Bの複合体に対して測定された活性間に、有差異はなかった。放出可能複合体もまた、陽性活性を示した。
【0306】
【化48】
【0307】
【化49】
【0308】
【化50】
【図面の簡単な説明】
【0309】
【図1】図面1は、実施例1Aで調製した組成物に対応する図である。
【図2】図面2は、実施例1Aで調製した組成物のSDS−PAGE分析によりもたらされるゲルの複製物である。
【図3】図面3は、実施例1Aで調製した組成物に対応する図である。
【図4】図面4は、実施例1Bで調製した組成物に対応する図である。
【図5】図面5は、実施例1Bで調製した組成物のSDS−PAGE分析によりもたらされるゲルの複製物である。
【図6】図面6は、実施例1Cで調製した組成物に対応する図である。
【図7】図面7は、実施例1Dで調製した組成物に対応する図である。
【図8】図面8は、実施例2Aで調製した組成物のSDS−PAGE分析によりもたらされるゲルの複製物である。
【図9】図面9は、実施例2Aで調製した組成物に対応する図である。
【図10】図面10は、実施例2Bで調製した組成物に対応する図である。
【図11】図面11は、実施例3Aで調製した試料に対応する図である。
【図12】図面12は、実施例3Aで調製した試料に対応する図である。
【図13】図面13は、実施例3Bで調製した試料に対応する図である。
【図14】図面14は、実施例4および5で調製した組成物のSDS−PAGE分析によりもたらされるゲルの複製物である。
【図15】図面15は、実施例4に記載されるように複合体の放出特性を示す図である。
【図16】図面16は、実施例4に記載されるように複合体の加水分解速度を示す図である。
【図17】図面17は、実施例5に記載されるように複合体の放出を示す図である。
【図18】図面18は、実施例5に記載されるように複合体の加水分解速度を示す図である。
【図19】図面19は、実施例6で調製した組成物に対応する図である。
【図20】図面20および図面21は、実施例9に記載するように、48時間および72時間それぞれにおける、様々なPEG−G−CSF複合体の活性を示す図である。
【図21】図面20および図面21は、実施例9に記載するように、48時間および72時間それぞれにおける、様々なPEG−G−CSF複合体の活性を示す図である。
【図22】図面22、図面23、図面24、図面25、図面26、図面27、図面28および図面29は、実施例9に記載するように、様々なPEG−G−CSF複合体の好中球反応または白血球数のどちらかをそれぞれ示す図である。
【図23】図面22、図面23、図面24、図面25、図面26、図面27、図面28および図面29は、実施例9に記載するように、様々なPEG−G−CSF複合体の好中球反応または白血球数のどちらかをそれぞれ示す図である。
【図24】図面22、図面23、図面24、図面25、図面26、図面27、図面28および図面29は、実施例9に記載するように、様々なPEG−G−CSF複合体の好中球反応または白血球数のどちらかをそれぞれ示す図である。
【図25】図面22、図面23、図面24、図面25、図面26、図面27、図面28および図面29は、実施例9に記載するように、様々なPEG−G−CSF複合体の好中球反応または白血球数のどちらかをそれぞれ示す図である。
【図26】図面22、図面23、図面24、図面25、図面26、図面27、図面28および図面29は、実施例9に記載するように、様々なPEG−G−CSF複合体の好中球反応または白血球数のどちらかをそれぞれ示す図である。
【図27】図面22、図面23、図面24、図面25、図面26、図面27、図面28および図面29は、実施例9に記載するように、様々なPEG−G−CSF複合体の好中球反応または白血球数のどちらかをそれぞれ示す図である。
【図28】図面22、図面23、図面24、図面25、図面26、図面27、図面28および図面29は、実施例9に記載するように、様々なPEG−G−CSF複合体の好中球反応または白血球数のどちらかをそれぞれ示す図である。
【図29】図面22、図面23、図面24、図面25、図面26、図面27、図面28および図面29は、実施例9に記載するように、様々なPEG−G−CSF複合体の好中球反応または白血球数のどちらかをそれぞれ示す図である。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
特に、本発明の一つ以上の実施態様は、概してG−CSF部分(つまり、少なくともいくつかの顆粒球コロニー刺激因子活性を有する部分)および重合体を含む複合体に関する。また、本発明は複合体を含む組成物、複合体を合成する方法および組成物を投与する方法に(特に)関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒト造血系の一つの重要な機能は、様々な白血球(マクロファージ、好中球および好塩基球/マスト細胞を含む)および、赤血球および凝血塊形成細胞(巨核球/血小板)の置換である。これらの特殊細胞のそれぞれは、骨髄中の造血前駆細胞から形成される。「コロニー刺激因子」といわれる特異的なホルモン様糖タンパク質は、造血前駆細胞の特殊な血球への分化および成熟を制御する。
【0003】
そのようなコロニー刺激因子の一つは、顆粒球コロニー刺激因子または「G−CSF」である。その名称からうかがえるように、G−CSFは他の細胞型の形成も促進できるが、このコロニー刺激因子は顆粒球の増殖および分化を促進する。G−CSFは、サイトカイン、免疫および/または炎症性刺激を受けて、多くの異なる細胞型(活性化T細胞、B細胞、マクロファージ、マスト細胞、内皮細胞および線維芽細胞を含む)によって生成される。天然ヒトG−CSFは、174アミノ酸の糖タンパク質であり、グリコシル化の程度に依存する様々な分子量を有することができる。ヒトG−CSFの分子量は約19,000である。
【0004】
薬理学的に、化学療法による治療中に死んだ白血球がより早急に置換されるように、これらの治療を受けている癌患者にG−CSFが投与されている。白血球置換を加速させる同様の目的のために、G−CSFの投与は骨髄置換療法を受けている白血病患者の治療に使用されている。加速された創傷治癒など、G−CSFのさらなる使用が提案されている。例えば、特許文献1を参照。
【0005】
G−CSF療法に付随する欠点の一つは頻繁な投薬である。G−CSF療法は一般的に連日注射を必要とするため、患者はこの投与計画に付随する不都合および不快感を嫌う。血球数を決定するために頻繁な血液検査が患者に必要とされる事実と相まって(これは医療関係者への訪問を必要とする)、多くの患者はあまり面倒でないおよび/または注射数の減少を伴う代替の方法を好むだろう。
【0006】
これらの課題に対して提案された一つの解決策では、G−CSFの持続放出製剤を提供している。例えば、特許文献2は、ポリ(乳酸共グリコール酸)の微粒子またはその他の生分解性重合体について記載する。しかしながら、微粒子の形成は複数の合成ステップを必要とする複雑な工程となり得る。従って、この持続放出手法は理想的には回避される合成の複雑さに苦しむ。
【0007】
タンパク質から派生するポリ(エチレングリコール)のペグ化または結合は、タンパク質の生体内半減期を持続させるための手段として説明され、それにより持続的な薬理学的活性をもたらしている。例えば、特許文献3は、5,000ダルトンの分子量を有する2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸誘導体化線状モノメトキシポリ(エチレングリコール)との反応から形成されるG−CSFおよびポリ(エチレングリコール)の複合体について記載する。
【0008】
特許文献4は特定の複合体について記載し、G−CSFタンパク質は、非ポリペプチド部分を含み、タンパク質の結合基に結合される少なくとも一つの非ポリペプチドを有する、1から15のアミノ酸により変換される。
【0009】
特許文献5は、G−CSFおよび特定の高分子剤(例えば、mPEG−スクシンイミジルプロピオン酸塩および特定のmPEGトリアジン誘導体)の反応から形成される複合体について記載する。また、特許文献6は、G−CSFおよび特定のmPEGトリアジン誘導体の反応から形成される複合体について記載する。
【0010】
二つの出版物は、G−CSFの内部システイン残基への特定の高分子剤の結合を考察する。これらの方法において説明される共役方法は異なるが、各方法は少なくとも一つの顕著な欠点に苦しむ。特許文献7は、凝集物の沈殿をもたらすことができる比較的厳しい条件を要求する。特許文献8は、G−CSFの可逆的変性の誘導が必要な工程について記載する。
【0011】
ペグ化G−CSFの市販用製品は、NEULASTA(登録商標)という名称でAmgen Inc.(Thousand Oaks CA)から入手可能であり、組換えヒトメチオニルG−CSF(フィルグラスチム)およびモノメトキシポリエチレングリコールの共有複合体である。
【特許文献1】米国特許第6,689,351号明細書
【特許文献2】米国特許第5,942,253号明細書
【特許文献3】米国特許第5,880,255号明細書
【特許文献4】米国特許第6,646,110号明細書
【特許文献5】米国特許第6,166,183号明細書
【特許文献6】米国特許第6,027,720号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0143563号明細書
【特許文献8】国際公開第05/099769号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、これらの複合体にもかかわらず、その他の異なる構造を有するG−CSFの複合体が依然として必要である。
【0013】
従って、特に、本発明の一つ以上の実施態様は、そのような複合体に加えて、複合体を含む組成物に関し、ならびに本明細書に記載する関連方法に関し、当技術分野において新しく全く未提案であるものと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要約
従って、直接またはスペーサー部分を介して、非ペプチド性水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSF部分を含む複合体が提供される。前記複合体は、一般的に組成物の一部として提供される。
【0015】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体が提供され、前記複合体は、直接または一つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSF前駆部分の残基を含む。前記重合体の結合部位は、前記G−CSF前駆部分の任意の地点に位置することができ、また前駆体型の生体内開裂に続く活性に必要な部分上であり得る。さらに、前記重合体の結合部位は、前記前駆体型の開裂に続くG−CSF活性を有さない部分上に位置することができる。
【0016】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体が提供され、前記複合体は、G−CSF部分のシステイン残基を介して前記G−CSF部分に共有結合的に結合される水溶性重合体を含む。
【0017】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体が提供され、前記複合体はシステイン残基側鎖を有するG−CSF部分の残基を含み、前記システイン残基側鎖は、直接または一つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して水溶性重合体に結合される。
【0018】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体が提供され、前記複合体は、非複合型においてジスルフィド結合を伴わないシステイン残基側鎖を有するG−CSF部分の残基を含み、前記システイン残基側鎖は、直接または一つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して水溶性重合体に結合される。
【0019】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体が提供され、前記複合体は、hG−CSFのアミノ酸位置17に対応するシステイン残基側鎖を有するG−CSF部分の残基を含み、前記システイン残基側鎖は、直接または一つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して水溶性重合体に結合される。
【0020】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体が提供され、前記複合体は、アミドまたは二次アミン連結を介して分岐水溶性重合体へ結合されるG−CSF部分の残基を含み、(i)一つ以上の原子を含む任意のスペーサー部分は前記アミドまたは二次アミン結合と前記分岐水溶性重合体の間に位置し、(ii)前記分岐水溶性重合体はリジン残基を含有しない。
【0021】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体が提供され、前記複合体は、分解可能な連結を介し、直接または一つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSF部分の残基を含む。好ましくは、前記分解可能な連結は、開裂可能な連結であり、また「タグなし」であり、「タグなし」とは、前記G−CSF部分からの前記重合体の分解および開裂の際に、前記高分子剤の任意のさらなる原子または残基(つまり「タグ」)が前記G−CSF部分に結合することなしに、本来のまたは天然G−CSF部分が生成されることを意味する。
【0022】
本発明の一つ以上の実施態様において、組成物が提供され、前記組成物は複数の複合体を含み、各複合体は直接または一つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して水溶性重合体に結合されるG−CSF部分の残基を含み、前記組成物中のすべての複合体の50%未満がN−末端モノペグ化される。
【0023】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体が提供され、前記複合体は以下の構造を含み、
ポリ”−(X2)b−ポリ’−(X1)a−(G−CSF)
ここで、
ポリ”は第二の水溶性重合体(好ましくは分岐または線状)であり、
ポリ1は第一の水溶性重合体であり(好ましくは線状)、
X1は、存在する場合、一つ以上の原子を含む第一のスペーサー部分であり、
X2は、存在する場合、一つ以上の原子を含む第二のスペーサー部分であり、
(b)は0または1のどちらかであり、
(a)は0または1のどちらかであり;
G−CSFはG−CSF部分の残基である。
【0024】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体を調製するための方法が提供され、前記方法は直接または一つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSF部分の残基を含む複合体組成物をもたらすのに十分な条件下で、高分子剤をG−CSF部分組成物に追加するステップを含む。
【0025】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体を調製するための方法が提供され、前記方法は、直接または一つ以上の原子を含む第一のスペーサー部分を介して、第一の水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSF部分の残基を含む第一の複合体を含む第一の複合体組成物をもたらすために十分な条件下で、第一の高分子剤組成物をG−CSF部分組成物に加えるステップと、直接または一つ以上の原子を含む第二のスペーサー部分を介して、前記複合体の前記第一の水溶性重合体に結合される第二の水溶性重合体を含む第二の複合体組成物をもたらすために、第二の高分子剤組成物を前記第一の複合体組成物に加えるステップと、を含む。
【0026】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体を調製するための方法が提供され、前記方法は、直接または一つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して、水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSF部分の残基を含む複合体の形成をもたらすために十分な条件下で、高分子剤およびG−CSF部分を組み合せるステップを含み、前記G−CSF部分はシステイン残基の側鎖で共有結合的に結合され、さらに前記方法は(a)変性状態を導入するステップを欠き、(b)8.5未満のpHで実行されるか、または洗浄剤を加えるステップを欠く。
【0027】
本発明の一つ以上の実施態様において、複合体を患者へ供給するための方法が提供され、前記方法は、本明細書に記載するように複合体を含む組成物を患者へ投与するステップを含み、前記組成物は一つ以上の前記複合体の治療的に効果的な量を含有する。前記複合体を投与するステップは注射(例えば、筋肉注射、静脈注射、皮下注射など)によって達成されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
発明の詳細な説明
本発明の一つ以上の実施態様を詳述する前に、本発明は特定の重合体、合成的技法、G−CSF部分などに限定されるものではないことを理解されたい。それは、それらが異なる可能性があるからである。
【0029】
本明細書および特許請求の範囲で用いられるように、単数形は、文脈により明確に指示されない限りは複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。故に、例えば、「重合体」への言及は単一の重合体だけでなく、二つ以上の同じまたは異なる重合体が含まれ、「任意の賦形剤」への言及は単一の任意の賦形剤だけでなく、二つ以上の同じまたは異なる任意の賦形剤などを意味する。
【0030】
本発明の一つ以上の実施態様を説明および主張する上で、後述する定義に従って以下の専門用語が使用される。
【0031】
本明細書で使用される「PEG」、「ポリエチレングリコール」および「ポリ(エチレングリコール)」は互いに交換して使用でき、あらゆる非ペプチド性、水溶性ポリ(エチレンオキシド)を包含する意味を持つ。一般的には、本発明に従って使用されるPEGは、(n)が2から4000の「−(OCH2CH2)n−」構造を含む。本明細書において、またPEGは、末端酸素が置換されているかどうかによって「−CH2CH2−O(CH2CH2O)n−CH2CH2−」および「−(OCH2CH2)nO−」を含む。明細書および特許請求の範囲にわたって、用語「PEG」は様々な末端基または「エンドキャッピング」基などを有する構造を含むことを忘れてはならない。用語「PEG」は、大部分、すなわち50%を超える繰り返しサブユニットの−OCH2CH2−を含有する重合体を意味する。特定の形態に関して、下記でされに詳述するように、PEGは様々な分子量のみならず、「分岐」、「線状」、「フォーク型」、「多官能性」などの構造または配置を多数とることができる。
【0032】
本明細書において、用語「エンドキャップされた」および「末端がキャップされた」は、エンドキャップしている部分を有する重合体の末端または終点を指すために互いに交換して本明細書で使用できる。必ずしもではないが、一般的にエンドキャッピング部分は、ヒドロオキシ基またはC1−20アルコキシ基を含み、より好ましくはC1−10アルコキシ基、さらにより好ましくはC1−5アルコキシ基を含む。故に、エンドキャッピングの例には、アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシおよびベンジルオキシ)のみならず、アリール、ヘテロアリール、シクロ、ヘテロシクロなどが含まれる。エンドキャッピング部分は、重合体中の末端モノマーの一つ以上の原子[例えば、CH3O(CH2CH2O)n−およびCH3(OCH2CH2)n−中のエンドキャッピング部分「メトキシ」]を含むことを忘れてはならない。加えて、前述のそれぞれの飽和型、不飽和型、置換型および非置換型が想定される。さらに、エンドキャッピング基はまたシランであり得る。エンドキャッピング基はまた、検出可能な標識を有利に含むことができる。重合体が検出可能な標識を含むエンドキャッピング基を有する場合、重合体が結合される重合体および/または部分(例えば、活性薬剤)の量または位置は、適切な検出器を用いて決定することができる。そのような標識は、蛍光物質、化学発光物質、酵素標識に使用される部分、比色部分(例えば、染料)、金属イオン、放射線部分などを無制限に含む。適切な検出器は、光度計、フィルム、分光計などを含む。エンドキャッピング基はまた、リン脂質を有利に含むことができる。重合体がリン脂質を含むエンドキャッピング基を有する場合、独自の特性が重合体およびその結果として得られる複合体に与えられる。典型的なリン脂質は、ホスファジルコリンと呼ばれるリン脂質の分類から選択されるものを無制限に含む。特定のリン脂質は、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、ベヘノイルホスファチジルコリン、アラキドイルホスファチジルコリン、およびレシチンからなるグループから選択されるものと無制限に含む。
【0033】
重合体に関して本明細書で説明される「非自然発生の」は、全体として天然に認められない重合体を意味する。しかし、本発明の非自然発生の重合体は、全体的な重合体の構造が天然に認められない限り、自然発生する一つ以上のモノマーまたはモノマーセグメントを含有してよい。
【0034】
「水溶性重合体」の場合の用語「水溶性」は、室温で水に溶ける任意の重合体である。一般的に、水溶性重合体は、ろ過後の同じ溶液によって伝えられた光の少なくとも約75%、より好ましくは95%を伝える。重量ベースでは、水溶性重合体は、好ましくは少なくとも約35(重量)%水に溶け、より好ましくは少なくとも約50(重量)%水に溶け、さらにより好ましくは約70(重量)%水に溶け、さらにより好ましくは約85(重量)%水に溶ける。しかし、水溶性重合体は約95(重量)%水に溶ける、または完全に水に溶けることが最も好ましい。
【0035】
PEGなどの本発明の水溶性重合体に関連する分子量は、数平均分子量または重量平均分子量のいずれかとして表すことができる。特に明記されない限り、本明細書の分子量へのすべての言及は重量平均分子量をいう。数平均と重量平均の両方の分子量決定は、ゲル浸透クロマトグラフィーまたはその他の液体クロマトグラフィー技術を用いて測定することができる。分子量の値を測定するためのその他の方法、例えば数平均分子量を決定するために末端基分析または束一的性質(例えば凝固点降下、沸点上昇、または浸透圧)の測定の使用、または重量平均分子量を決定するために光散乱法、超遠心分離法、または粘度測定法の使用などもまた使用できる。本発明の重合体は、一般的に多分散性(すなわち、重合体の数平均分子量と重量平均分子量は等しくない)であり、好ましくは約1.2より小さく、より好ましくは約1.15より小さく、さらにより好ましくは約1.10より小さく、その上さらにより好ましくは約1.05より小さく、最も好ましくは約1.03より小さい低い多分散性の値を持つ。
【0036】
特定の官能基とともに使用される場合の用語「活性の」または「活性化された」は、別の分子上の求電子試剤または求核試剤と容易に反応する反応性官能基をいう。これは、反応させるように強い触媒または非常に実用的でない反応条件を必要とする基とは対照的である(すなわち、「反応しない」または「不活性の」基)。
【0037】
本明細書において、用語「官能基」またはその同義語は、その保護された形態のみならず保護されていない形態を包含することを意味する。
【0038】
用語「スペーサー部分」、「連結」、または「リンカー」は、重合体セグメントおよびG−CSF部分の重合体の末端など相互連結部分とG−CSF部分の求電子試薬または求核試薬をつなぐように任意で使用される原子または原子の一群をいうように本明細書で使用される。スペーサー部分は加水分解に安定であってよいか、または生理学的に加水分解可能な連結または、酵素的に分解可能な連結を含んでよい。
【0039】
「アルキル」は、一般的に長さが約1から15の範囲にある炭化水素鎖をいう。そのような炭化水素鎖は、必ずしもではないが好ましくは飽和しており、一般的には直鎖が好ましいが分岐鎖または直鎖であってよい。典型的なアルキル基は、メチル、エチル、ブチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、3−メチルペンチルなどを含む。本明細書において、「アルキル」は、シクロアルキルのみならずシクロアルキレン含有のアルキルを含む。
【0040】
「低級アルキル」は1から6個の炭素原子を含有するアルキル基をいい、メチル、エチル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチルなどの直鎖または分岐鎖であってよい。
【0041】
「シクロアルキル」は飽和または不飽和の環状炭素水素鎖をいい、好ましくは3から約12個の炭素原子、より好ましくは3〜約8個の炭素原子で構成される架橋した、融合した、またはスピロ環の化合物を含む。「シクロアルキレン」は、環系中の任意の二つの炭素で鎖が結合することによって、アルキル鎖に挿入されるシクロアルキル基をいう。
【0042】
「アルコキシ」は、−O−R基をいい、Rはアルキルまたは置換アルキル、好ましくはC1−6アルキル(例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシなど)である。
【0043】
例えば、「置換アルキル」に使われる用語「置換」は、アルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチルなどのC3−8シクロアルキル、例えばフルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードなどのハロ、シアノ、アルコキシ、低級フェニル、置換フェニルなどの一つ以上の非干渉の置換基と置換される部分(例えばアルキル基)をいうがこれに限定されない。「置換アリール」は、一つ以上の非干渉の基を置換基として有するアリールである。フェニル環上での置換に関しては、置換基はどの位置(すなわち、オルト、メタまたはパラ)にあってもよい。
【0044】
「非干渉の置換基」は、分子中に存在する場合、一般的にはその分子内に含まれる他の官能基と反応しない基である。
【0045】
「アリール」は、一つ以上の芳香環を意味し、それぞれ5または6個の中心炭素原子である。アリールは、ナフチル中に見られるように融合されてよい、またはビフェニル中に見られるように融合されなくてよい、複数のアリール環を含む。アリール環はまた、一つ以上の環状炭素水素、ヘテロアリールまたは複素環と融合されてもされなくてもよい。本明細書において、「アリール」はヘテロアリールを含む。
【0046】
「ヘテロアリール」は、1から4個のヘテロ原子、好ましくは硫黄、酸素または窒素、あるいはそれらの組み合わせを含有するアリール基である。ヘテロアリール環はまた、一つ以上の環状炭素水素、複素環、アリールまたはヘテロアリール環と融合されてよい。
【0047】
「複素環」または「複素環の」は、不飽和または芳香族性のあるまたはない、炭素でない少なくとも一つの環の原子を有する、5から12個の原子、好ましくは5から7個の原子の一つ以上の環を意味する。好ましいヘテロ原子は、硫黄、酸素および窒素を含む。
【0048】
「置換ヘテロアリール」は、一つ以上の非干渉の基を置換基として有するヘテロアリールである。
【0049】
「置換複素環」は、非干渉置換基から形成される一つ以上の側鎖を有する複素環である。
【0050】
「求電子試薬」および「求電子基」は、求電子中心、すなわち求核試薬と反応可能な、電子を求める中心を有するイオンであってよい、イオンもしくは原子、または原子の一群をいう。
【0051】
「求核試薬」および「求核基」は、求核中心、すなわち求電子中心を求めるか、あるいは求電子試薬を伴う中心を有するイオンであってよい、イオンもしくは原子、または原子の一群をいう。
【0052】
「生理学的に開裂可能な」または「加水分解できる」あるいは「分解可能な」結合は、生理学的条件下で水と反応する(すなわち、加水分解される)結合である。水中で加水分解する結合の傾向は、2個の中心原子を結び付ける連結の一般型だけでなく、これらの2個の中心原子に結合された置換基に依存する。加水分解に不安定または弱い適切な連結は、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチドおよびオリゴヌクレオチドを含むがこれらに限定されない。
【0053】
「酵素的に分解可能な連結」は、一つ以上の酵素によって分解されやすい連結を意味する。
【0054】
「加水分解に安定な」連結または結合は、化学結合、典型的には共有結合をいい、つまり水中で実質的に安定であり、すなわち、生理学的条件下で長期間にわたって、感知されうる程度まで加水分解を起こさない。加水分解に安定な連結の例は、炭素−炭素結合(例えば、脂肪族鎖中)、エーテル、アミド、ウレタンなどを含むがそれらに限定されない。一般的には、加水分解に安定な連結は、生理学的条件下で一日につき約1から2%未満の加水分解率を呈するものである。代表的な化学結合の加水分解率は、大抵の標準的化学テキストで見られる。
【0055】
「薬学的に許容可能な賦形剤または担体」は、本発明の組成物中に任意に含まれてよく、患者に重大な毒物学的副作用を引き起こさない賦形剤をいう。「薬理学的に有効な量」、「生理学的に有効な量」および「治療上有効な量」は、所望のレベルの複合体(または対応する複合していないG−CSF部分)を、血流中または標的組織中に提供するのに必要な、重合体−(G−CSF)部分の複合体の量を意味するように本明細書で互いに交換して使用できる。正確な量は、多くの因子、例えば、特定のG−CSF部分、治療上の組成物の成分と生理学的特性、対象とする患者集団、個々の患者の検討材料などに依存し、本明細書に提供される情報に基づいて、当業者によって容易に決定できる。
【0056】
「多官能」は、それに含有される三つ以上の官能基を有する重合体を意味し、官能基は同じであっても異なってもよい。多官能性高分子剤は、一般的に、約3から100の官能基、3から50の官能基、3から25の官能基、3から15の官能基、3から10の官能基の一つ以上の範囲を満たす数の官能基を含有し、典型的な官能基の数は、高分子剤内に3、4、5、6、7、8、9および10を含む。
【0057】
用語「G−CSF部分」はここで使用されるように、G−CSF活性を有する部分を意味し、文脈が別に明示しない限り、G−CSF前駆部分も意味する(その典型的な配列は、配列番号3で提供される)。G−CSF部分はまた、高分子剤との反応に適切な少なくとも一つの求電子基または求核基を有する。加えて、用語「G−CSF部分」は、共役前のG−CSF部分のみならず、共役後のG−CSF残部分の両方を包含する。下記でさらに詳述するように、当業者はあらゆる所定の部分がG−CSF活性を有しているかどうかを決定できる。配列番号1から2のいずれか一つに対応するアミノ酸配列を含むタンパク質は、G−CSF部分および実質的にそれと相同となる任意のタンパク質またはポリペプチドであり、その生物学的特性は、G−CSFと同様の成長刺激および/または好中球数および/または活性をもたらす。本明細書において、用語「G−CSF部分」は、例えば変異原性に向けられた部位によってまたは誤って変異を介して意図的に修飾されたタンパク質を含む。これらの用語はまた、1から6のさらなるグリコシル化部位を有する類似体、タンパク質のカルボキシ末端側の少なくとも一つのさらなるアミノ酸を有し、前記さらなるアミノ酸は少なくとも一つの糖鎖付加部位を含む類似体、ならびに少なくとも一つのグリコシル化部位を含むアミノ酸配列を有する類似体を含む。これらの用語は、自然におよび組み換え技術によって生成されたG−CSFの両方を含む。
【0058】
用語「実質的に相同」は、特定の対象配列、例えば変異配列は一つ以上の置換基、欠失または追加による参照配列と異なり、その正味の影響は、参照および対象配列間の不利な機能的相違をもたらさないことを意味する。本発明の目的上、95%より大きい相同性、等価な生物学的特性および等価な表現特性を有する配列は実質的に相同であるとみなされる。相同性を決定する目的上、変異配列の切断は無視されるべきである。低い度合いの相同性、同等の生物活性および等価な表現特性を有する配列は、実質的に等価であるとみなされる。本明細書で使用される典型的なG−CSF部分は、実質的に相同な配列番号1であるそれらの配列を含む。
【0059】
用語G−CSFタンパク質の「断片」は、G−CSFタンパク質の一部または断片のアミノ酸配列を有し、G−CSFの生物活性を有するいかなるポリペプチドあるいはタンパク質をも意味する。断片は、G−CSFタンパク質のタンパク分解によって生成されたまたは当技術分野の通常の方法による化学合成によって生成されたタンパク質あるいはポリペプチドを含む。G−CSFタンパク質またはその断片は、ヒトへの前記タンパク質または断片の投与がある程度のG−CSF活性をもたらす場合に生物学的に有効であるとされる。G−CSFタンパク質のそのような生物学的な活性の決定は、一種以上の哺乳類種に対してそのような目的のために活用される従来の既知の試験によって実行可能である。そのような生物学的な活性を示すために活用され得る適切な試験は本明細書で説明される。
【0060】
用語「患者」は、活性薬剤(例えば、複合体)の投与によって予防または治療され得る状態を患うまたは状態になりやすい生体をいい、ヒトおよび動物を含む。
【0061】
「任意の」または「任意に」は、記述の中に、状況が発生する場合の例および発生しない場合の例を含むように、その後説明される状況が発生し得るまたは発生し得ないことをいう。
【0062】
「実質的に」は、殆ど完全にまたは完全に、を意味し、例えば、50%より大きい、51%以上、75%以上、80%以上、90%以上および95%以上の状況の一つ以上を満たす。
【0063】
文脈により明確に指示されない限り、用語「約」が数値の前に置かれる場合、その数値は述べられる数値の±10%を意味するものと理解される。
【0064】
ペプチド内のアミノ残基は、以下のとおりに省略される。フェニルアラニンはPheまたはF、ロイシンはLeuまたはL、イソロイシンはIleまたはI、メチオニンはMetまたはM、バリンはValまたはV、セリンはSerまたはS、プロリンはProまたはP、トレオニンはThrまたはT、アラニンはAlaまたはA、チロシンはTyrまたはY、ヒスチジンはHisまたはH、グルタミンはGlnまたはQ、アスパラギンはAsnまたはN、リジンはLysまたはK、アスパラギン酸はAspまたはD、グルタミン酸はGluまたはE、システインはCysまたはC、トリプトファンはTrpまたはW、アルギニンはArgまたはR、およびグリシンはGlyまたはGである。
【0065】
本発明の一つ以上の実施態様を参照すると、複合体が提供され、前記複合体は、直接またはスペーサー部分を介して、非ペプチド性水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSF部分を含む。本発明複合体は、一つ以上の以下の特徴を有する。
【0066】
G−CSF部分
前述したように、複合体は、総称的に、直接またはスペーサー部分を介して、非ペプチド性水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSF部分を含む。本明細書において、用語「G−CSF部分」は、複合前のG−CSF部分のみならず、非ペプチド性水溶性重合体へ結合後のG−CSF部分を指すものとする。しかし、G−CSF部分が非ペプチド性水溶性重合体に結合される場合、G−CSF部分は、重合体への連結と関連する一つ以上の供給結合の存在によってわずかに変化する。大抵、別の分子に結合したG−CSF部分のこのわずかに変化した形態は、G−CSF部分の「残基」と称される。複合体内のG−CSF部分は、顆粒球コロニー刺激因子活性を提供する任意の部分であり得る。
【0067】
G−CSF部分は、非組み換え方法または組換え方法のどちらかに由来することができ、本発明はこの点において制限されない。加えて、G−CSF部分はヒト源または動物源に由来することができる。
【0068】
G−CSF部分は非組み換え技術に由来することができる。例えば、米国特許第4,810,643号に記載されるように、5637で命名され、A.T.C.C.寄託番号 HTB−9としてAmerican Type Culture Collection、Rockville MDの制限条件下で寄託されたヒト癌細胞株の培養基からG−CSFを収集することが可能である。
【0069】
G−CSF部分は組換え方法に由来することができ、細菌(例えば、大腸菌)、哺乳類(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞)および酵母(例えば、サッカロマイセス・セレヴィシエ)発現系内に発現することができる。発現は、外因性発現を介してまたは内因性発現を介して発生することができる。例えば、Nagataら(1986)Nature 319:415は、ヒト扁平上皮細胞癌細胞株から分離したヒトG−CSF(“hG−CSF”)のためのcDNAを提供し、またCOS細胞(アフリカミドリザル細胞)内でタンパク質を発現させる工程について記載する。Souzaらは、大腸菌細胞内でG−CSFを発現させるための工程について説明する。米国特許第4,810,643号は、メチオニルG−CSF(すなわち、N−末端がアミノ酸メチオニンを有して、それが結合するG−CSF)を調製するための組換えベースの方法について記載する。加えて、米国特許第5,633,352号は、G−CSFを調製するための組換え方法について記載する。
【0070】
ヒトG−CSFのアミノ酸配列は、配列番号1で提供される。本明細書で提供されるように、(n’’’=1である)メチオニン残基含有の形態は、本明細書に記載されるこの旨およびすべての他の配列を考慮する。配列番号2は、配列番号1と異なる配列を有するG−CSF部分に対応する。
【0071】
タンパク質を調製するための組換えベースの方法は様々であり得るが、一般的に、組換え方法は、所望のポリペプチドまたは断片をコードする核酸を構成するステップと、核酸を発現ベクターにクローン化するステップと、宿主細胞(例えば、植物,細菌、酵母、遺伝子組み換え動物細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞や新生ハムスター腎細胞などの哺乳類細胞)を変換するステップと、所望のポリペプチドまたは断片を生成するために核酸を発現させるステップと、を含む。体外および原核生物もしくは真核宿主細胞内の組換えポリペプチドを生成および発現させるための方法は、当業者には既知である。
【0072】
組換えポリペプチドの同定および精製を容易にするために、エピトープタグをコードする核酸配列またはその他の親和性結合配列は、コード配列でフレーム内に挿入または追加することができ、それによって所望のポリペプチドおよび結合に適切なポリペプチドを含む融合タンパク質を生成する。融合タンパク質は、エピトープタグまたは融合タンパク質内のその他の結合配列に向けられた親和性カラム支持結合部分(例えば、抗体)を介する融合タンパク質を含有する混合物をまず流すことによって同定および精製することができ、それによってカラム内の融合タンパク質を結合する。その後、融合タンパク質は、結合融合タンパク質を放出するように適切な溶液(例えば、酸)でカラムを洗浄することによって回復することができる。組換えポリペプチドはまた、宿主細胞を融解すること、サイズ排除クロマトグラフィーなどによりポリペプチドを分離させること、およびポリペプチドを収集することによって同定および精製することができる。組換えポリペプチドを同定および精製するためのこれらおよびその他の方法は当業者には既知である。しかし、本発明の一つ以上の実施態様において、G−CSF部分は融合タンパク質の形態ではないことが好ましい。
【0073】
G−CSF活性を有するタンパク質を発現させるために使用される系によって、G−CSF部分は非グリコシル化またはグリコシル化であり得、どちらが使用されてよい。つまり、G−CSF部分は非グリコシル化であり得る、あるいはG−CSF部分はグリコシル化であり得る。本発明の一つ以上の実施例において、G−CSF部分はグリコシル化されないことが好ましい。
【0074】
G−CSF部分は、アミノ酸の側鎖内の原子に対する重合体の容易な結合を提供するために、例えば、リジン、システインおよび/またはアルギニンなどの一つ以上のアミノ酸残基を含むように有利に修飾され得る。加えて、G−CSF部分は非自然発生のアミノ酸残基を含むように修飾され得る。アミノ酸残基および非自然発生のアミノ酸残基を加えるための技術は、当業者には既知である。J. March、Advanced Organic Chemistry:Reactions Mechanisms and Structure、4th Ed.(New York:Wiley−Interscience、1992)への参照がなされる。本発明の一つ以上の実施例において、G−CSF部分は一つ以上のアミノ酸残基を含むように修飾されないことが好ましい。hG−CSFに対して少なくとも一つの置換を有する典型的なG−CSF部分は米国特許第6,646,110号で提供されており、本明細書におけるG−CSF部分の使用に適している。さらに、hG−CSFに対して少なくとも一つの置換を有する典型的なG−CSF部分は、米国特許第6,004,548号および第5,580,755号で提供されており、本明細書におけるG−CSF部分の使用に適している。
【0075】
加えて、G−CSF部分は、(官能基含有のアミノ酸残基の追加を介する場合以外で)官能基の結合を含むように有利に修飾され得る。例えば、G−CSF部分は、チオール基を含むように修飾され得る。加えて、G−CSF部分は、N−末端アルファ炭素を含むように修飾され得る。加えて、G−CSF部分は、一つ以上の炭水化物成分を含むように修飾され得る。本発明のいくつかの実施例において、G−CSF部分はチオール基および/またはN−末端アルファ炭素を含むように修飾されないことが好ましい。アミノオキシ、アルデヒドまたはその他のいくつかの官能基を含有するG−CSF部分を使用することができる。
【0076】
好適なG−CSF部分は、配列番号1および配列番号2からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。特に明記されない限り、本明細書で提供されるアミノ酸残基の数値位置の割り当てのすべては、配列番号1(いかなる先のメチオニル残基も無視)に基づく。G−CSF部分として機能するのに有用な配列は、NEUPOGEN(登録商標) G−CSF(Amgen、Thousand Oaks、CA)およびGRASTIM(登録商標) G−CSF(Dr.Reddy’s、Hyderabad、India)などの、市販版G−CSF含有の製剤にみられるタンパク質のそれらの配列を含む。
【0077】
(配列番号1で提供されるような)hG−CSF部分および、切断版、雑種変異および配列のペプチド模倣薬も使用できる。少なくともある程度のG−CSF活性を維持する生物活性のある断片、欠損変異体、置換変異体または前述のいずれかのさらなる変異体は、G−CSF部分として機能できる。
【0078】
あらゆる所定のペプチドまたはタンパク質部分に関しては、G−CSF活性を有する部分かを決定することが可能である。例えば、米国特許第5,580,755号に記載されるように、緩衝液を用いてハムスターの血流内に関心G−CSF部分を投与し、顆粒球を数えることが可能である。関心G−CSF部分は、提案されたG−CSF部分(例えば、緩衝液のみ)を用いて注射されなかった対照ハムスターと比べて、提案されたG−CSF部分で注射したハムスターが顆粒球の統計的に有意な増加を示せば、本発明に従ってG−CSF部分として使用することができる。
【0079】
水溶性重合体(例えば、ポリ”、ポリ’、ポリ1、ポリ2など)
前述したように、それぞれの複合体は、水溶性重合体に結合されるG−CSF部分を含む。水溶性重合体に関して、水溶性重合体は非ペプチド性、非毒性、非自然発生および生体適合性である。生体適合性については、生体組織に関連して(例えば、患者への投与)単独または別の物質(例えば、G−CSF部分などの活性薬剤)と併用での物質の使用と関連する有益な効果が、臨床医学者、例えば医師によって評価されるいかなる有害な影響にも勝る場合、物質は生体適合性であるとみなされる。非免疫原性に関しては、生体内物質の対象とする使用が、望ましくない免疫反応(例えば、抗体の形成)を生成しない場合、または免疫反応が生成された場合に、そのような反応が臨床医学者によって評価されたときに臨床的に有意義または重要であるとみなされない場合に、物質は非免疫原性であると考えられる。非ペプチド性水溶性複合体は、生体適合性および非免疫原性であることが特に好ましい。
【0080】
さらに、重合体は、一般的に2から約300の末端を有することが特徴付けられる。そのような重合体の例は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(エチレングリコール)(”PPG”),エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体などのポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチレンポリオール),ポリ(オレフィンアルコール),ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカリド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)および前述のいずれかの組み合わせを含むがそれらに限定されない
重合体は特定の構造に限定されるものではなく、線状(例えば、アルコキシPEGまたは二官能性PEG)、分岐、マルチアーム(例えば、フォーク型PEGまたはポリオール中心に結合されるPEG)および/または樹枝状であり得、前述のそれぞれは、分解不可能なまたは分解可能な連結を含むことができる。さらに、重合体の内部構造は、任意の数の異なる形態で組織化されることができ、またホモポリマー、交互トリポリマー、ランダムトリポリマーおよびブロックトリポリマーからなる群から選択されることができる。
【0081】
一般的に、活性PEGおよびその他の活性水溶性重合体(すなわち、高分子剤)は、G−CSF部分上の所望の部位と共役させるのに適している適切な活性化基で活性される。故に、高分子剤は、G−CSF部分と反応するための反応基を持つ。これらの重合体を活性部分と共役させるための代表的な高分子剤および方法は、当技術分野において既知であり、またさらに、Polyethylene Glycol Chemistry:Biotechnical and Biomedical Applications, J. M. Harris, Plenus Press, New York (1992)およびZalipsky(1995)Advanced Drug Reviews 16:157−182で、Zalipsky, Sら「Use of Functionalized Poly(Ethylene Glycols)for Modification of polypeptides」に記載されている。
【0082】
一般的に、複合体内の水溶性重合体の重量平均分子量は、約100ダルトンから約150,000である。しかしながら、典型的な範囲は、5,000ダルトンを超える値から約100,000ダルトンの範囲、約6,000ダルトンから約90,000ダルトンの範囲、約10,000ダルトンから約85,000ダルトンの範囲、10,000ダルトンを超える値から約85,000ダルトンの範囲、約20,000ダルトンから約85,000ダルトンの範囲、約53,000ダルトンから約85,000ダルトンの範囲、約25,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲、約29,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲、約35,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲、および約40,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲における重量平均分子量を含む。任意の所定の水溶性重合体にとって、一つ以上のこれらの範囲の分子量を有するPEGが好ましい。
【0083】
水溶性重合体の典型的な重量平均分子量は、約100ダルトン、約200ダルトン、約300ダルトン、約400ダルトン、約500ダルトン、約600ダルトン、約700ダルトン、約750ダルトン、約800ダルトン、約900ダルトン、約1,000ダルトン、約1,500ダルトン、約2,000ダルトン、約2,200ダルトン、約2,500ダルトン、約3,000ダルトン、約4,000ダルトン、約4,400ダルトン、約4,500ダルトン、約5,000ダルトン、約5,500ダルトン、約6,000ダルトン、約7,000ダルトン、約7,500ダルトン、約8,000ダルトン、約9,000ダルトン、約10,000ダルトン、約11,000ダルトン、約12,000ダルトン、約13,000ダルトン、約14,000ダルトン、約15,000ダルトン、約20,000ダルトン約22,500ダルトン、約25,000ダルトン、約30,000ダルトン、約35,000ダルトン、約40,000ダルトン、約45,000ダルトン、約50,000ダルトン、約55,000ダルトン、約60,000ダルトン、約65,000ダルトン、約70,000ダルトンおよび約75,000ダルトンを含む。前述のいずれかの分子量合計を有する水溶性重合体の分岐版(例えば、二つの20,000ダルトン重合体を含む分岐40,000ダルトン水溶性重合体)もまた使用できる。一つ以上の実施態様において、複合体は、直接または間接的に、約6,000ダルトン未満の重量平均分子量を有するPEGで結合された任意のPEG部分を有さない。
【0084】
重合体として使用される場合、PEGは、一般的に多くの(OCH2CH2)モノマー[または、PEGがどのように定義されるかによって、(CH2CH2O)モノマー]を含む。本明細書本文を通して使用されるように、繰り返し単位の数は「(OCH2CH2)n」の下付き文字「n」によって特定される。故に、(n)の値は、一般的に、2から約3400、約100から約2300、約100から約2270、約136から約2050、約225から約1930、約450から約1930、約1200から約1930、約568から約2727、約660から約2730、約795から約2730、約795から約2730、約909から約2730および約1,200から約1,900の一つ以上の範囲に入る。分子量が既知である任意の所定の重合体に関しては、繰り返しモノマーの分子量により重合体の重量平均分子量合計を除算することによって、繰り返し単位(すなわち、「n」)の数を決定することが可能である。
【0085】
エンドキャップされた重合体が必要な場合、低C1−6アルコキシ基(ヒドロキシル基でも)などの比較的不活性の基でキャップされた少なくとも一つの末端を有する重合体が使用できる。重合体がPEGである場合、例えば、メトキシ−PEG(通例、mPEGと称される)を使用することが好ましく、これはPEGの線状形であって、重合体の一方の末端はメトキシ(−OCH3)基を有し、他方の末端は任意に化学的に修飾され得るヒドロキシルまたはその他の官能基である。
【0086】
本発明の一つ以上の実施態様で有益な一つの様式において、遊離または非結合のPEGは、ヒドロキシル基
HO−CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−OH
を持つ各端で終端した線状重合体であり、一般的に(n)は0から約4,000の範囲である。
【0087】
上記の重合体、アルファ−、オメガ−ジヒドロキシポリ(エチレングリコール)は、ごく簡潔にHO−PEG−OHとして表すことができ−PEG−記号は以下の構造単位を表すことができることを理解されたい。
−CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−,
ここで、(n)は上記のように定義される。
【0088】
本発明の一つ以上の実施態様において有益な別のタイプのPEGは、メトキシPEG−OH、または簡潔にmPEGであり、その一方の末端は比較的不活性のメトキシであり、他方の末端はヒドロキシル基である。mPEGの構造は以下に示される。
CH3O−CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−OH
ここで、(n)は上記のとおりである。
【0089】
米国特許第5,932,462号に記載されるものなどのマルチアームまたは分岐PEGはまた、PEG重合体として使用できる。例えば、PEGは以下の構造を有することができ、
【0090】
【化7】
ここで、
ポリaおよびポリbは例えばメトキシポリ(エチレングリコール)などのPEG骨格(同じまたは異なる)であり、
R”は非反応性部分、例えばH、メチル、またはPEG骨格であり、
PおよびQは非反応性連結である。いくつかの状況において、分岐PEG重合体はメトキシポリ(エチレングリコール)二置換リジン(例えば、以下の構造を
【0091】
【化8】
備える重合体であって、nはそれぞれ3から4,000の整数である)。例えば、米国特許第5,932,462号を参照。使用する特異的G−CSFによって、二置換リジンの反応エステル官能基は、G−CSF部分内の標的基との反応に適している官能基を形成するようにさらに修飾されてよい。
【0092】
加えて、PEGはフォーク型PEGを含むことができる。フォーク型PEGの例は、以下の構造によって表すことができ、
【0093】
【化9】
ここで、Xは一つ以上の原子のスペーサー部分であり、各Zは、定められた長さの原子の鎖によってCHに結合された活性化末端基である。米国特許第6,362,254号は、本発明の一つ以上の実施態様において使用できる様々なフォーク型PEG構造を開示する。Z官能基を分岐炭素原子に結合させる原子鎖は、連結基として機能し、また例えば、アルキル鎖、エーテル鎖、エステル鎖、アミド鎖およびそれらの組み合わせを含んでよい。
【0094】
PEG重合体は、PEG鎖の終端でよりむしろ、PEGの長さに沿って共有結合的に結合されるカルボキシルなどの反応基を有するペンダントPEG分子を含んでよい。ペンダント反応基は、直接またはアルキレン基などのスペーサー部分を介してPEGに結合することができる。
【0095】
上述のPEGの形態に加えて、上述の重合体のいずれかを含む重合体中の一つ以上の弱いまたは分解可能な連結を用いて、また重合体を調製することができる。例えば、PEGは、加水分解しやすい重合体内のエーテル連結を用いて調製することができる。下記に示すように、この加水分解は、より小さい分子量の断片となる重合体の切断をもたらす。
【0096】
【化10】
重合体骨格内の分解可能な連結として有用なその他の加水分解に分解可能な結合は、カーボネート連結と、例えば、アミンとアルデヒドの反応によってもたらされるイミン連結(例えば、Ouchiら、(1997)Polymer Preprints 38(1):582−3を参照)と、例えば、アルコールをリン酸エステル基と反応させることによって形成されるリン酸エステル連結と、アルデヒドとアルコール間の反応によって一般的に形成されるアセタール連結と、例えば、ギ酸とアルコールの間の反応によって形成されるオルトフェライト連結と、例えば、PEGなどの重合体の終端にあるアミン基および別のPEG鎖のカルボキシル基によって形成されるアミド連結と、例えば、末端イソシアネート基を有すPEGとPEGアルコールとの反応によって形成されるウレタン連結と、例えば、PEGなどの重合体の終端にあるアミン基およびペプチドのカルボキシル基によって形成されるペプチド連結と、例えば、重合体の終端にあるホスホロアミダイト基およびオリゴヌクレオチドの5’ヒドロキシル基によって形成されるオリゴヌクレオチド連結と、を含む。
【0097】
複合体のそのような任意の特徴、すなわち一つ以上の分解可能な連結の重合体鎖への導入は、投与の際に複合体の最終的な所望の薬理学的特性のさらなる制御を提供する可能性がある。例えば、大きく比較的不活性の複合体(すなわち、そこに結合された一つ以上の高分子量PEG鎖を有する、例えば、約10,000を超える分子量を有する一つ以上のPEG鎖であって、複合体は基本的に生物活性を持たない)が投与されてよく、これは本来のPEG鎖の一部を持つ生物活性の複合体を生成するように加水分解される。この方法において、複合体の性質は、長期にわたり複合体の生物活性を均一化できるようにより効果的に調製され得る。
【0098】
複合体と関連する水溶性重合体は、「開裂可能な」効果を提供できるように分解可能な連結を有することができる。つまり、水溶性重合体は(加水分解、酵素工程または別の方法を介して)開裂し、それによって複合していないG−CSF部分をもたらす。いくつかの例において、開裂可能な重合体は、水溶性重合体のいずれの断片も残すことなく、生体内のG−CSF部分から切り離される。その他の例において、開裂可能な重合体は生体内のG−CSF部分から切り離され、水溶性重合体から比較的小さな断片(例えば、コハク酸タグ)を残す。両方の場合において、結果は患者への投与の際に長期間にわたりな持続性放出特性を提供することができる複合体となる。そのような持続性放出を提供する典型的な複合体は、カーボネート連結またはウレタン連結を介してG−CSF部分に結合される重合体を用いて調整されるものである。
【0099】
分解可能な連結が分解可能な連結の開裂可能なタイプであるそれらの例において、本発明の複合体は、(複合体は複合体形態内でさえも活性を保持してよいが)プロドラッグとみなすことができる。典型的な分解可能および開裂可能な連結は、カルボン酸エステル、リン酸エステル、チオールエステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチドおよびオリゴヌクレオチドを含む。そのような連結は、本明細書において通例用いられる結合方法を使用して、G−CSF部分(例えば、タンパク質のカルボキシル基C末端またはタンパク質内に含有するセリンもしくはトレオニンなどのアミノ酸の側鎖ヒドロキシル基)および/または高分子剤の適切な修飾によって容易に調製することができる。しかしながら、最も好ましいものは、G−CSF活性を有する部分内に含有する非修飾官能基を用いて適切に活性化された重合体の反応によって容易に形成される加水分解可能な連結である。
【0100】
あるいは、アミド、ウレタン(カルバメートとしても知られる)、アミン、チオエーテル(スルフィドとしても知られる)または尿素(カルバミドとしても知られる)連結などの加水分解に安定な連結は、G−CSF部分を結合するための連結として用いることもできる。さらに、好ましい加水分解に安定な連結はアミドである。一手法において、活性エステルを有する水溶性重合体は、G−CSF部分のアミン基と反応することができ、それによってアミド連結をもたらす。いくつかの実施態様において、連結(従って、対応複合体)は
【0101】
【化11】
部分を欠くことが好ましい。いくつかの実施態様において、連結(従って、対応複合体)はフェニルグリオキサル末端された高分子剤とG−CSF部分によって生成された連結を欠くことが好ましい。いくつかの実施態様において、連結はハロアセトアミド末端された高分子剤とG−CSF部分によって生成された連結を欠くことが好ましい。
【0102】
複合体(複合されていないG−CSF部分とは対照的に)は、測定可能な程度のG−CSF活性を持っても持たなくてもよい。つまり、本発明に従った重合体−G−CSF部分の複合体は、で修飾されていない親G−CSF部分が持つ生物活性の約0.1%から約100%間の任意の生物活性を持つ。いくつかの例において、重合体−G−CSF部分の複合体は、修飾されていない親G−CSF部分が持つ生物活性の100%を超える生物活性を持ってよい。好ましくは、G−CSF活性を殆ど持たないまたは全く持たない複合体は、複合体内の活性の欠如(または相対的欠如)にかかわらず、加水分解可能な連結の水誘発分解の際に、活性親分子(またはその誘導体)が放出されるように、重合体を部分に結び付ける加水分解可能な連結を含有する。そのような活性は、用いられるG−CSF活性を有する特定の分子の既知の活性次第で、適切な生体内または体外型を使用して決定されてよい。
【0103】
G−CSF活性を有する部分を重合体と結び付ける加水分解に安定な連結を持つ複合体では、複合体は測定可能な程度の生物活性を持つ。例えば、一般的にそのような複合体は、複合されていないG−CSF部分の複合体と比較して、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約100%、よび105%を超える(当技術分において既知のものなどの適切な型で測定された場合)割合の一つ以上を満たす生物活性を有すると特徴付けられる。好ましくは、加水分解に安定な連結(例えば、アミド連結)を有する複合体は、G−CSF活性を有する非修飾の親部分が有する少なくともある程度の生物活性を持つ。
【0104】
非ペプチド性に関する前述の考察および水溶性重合体は決して包括的でなく具体例にすぎないこと、また上述した資質を有するすべての重合体材料が検討されることを当業者は認識する。本明細書において、用語「高分子剤」は概して分子全体をいい、水溶性重合体セグメントおよび官能基を含むことができる。
【0105】
前述したように、本発明の複合体は、G−CSF部分に共有結合的に結合される水溶性重合体を含む。一般的に、あらゆる所定の複合体には、G−CSF活性を有する一つ以上の部分に共有結合的に結合される一つから三つの水溶性重合体がある。しかし、いくつかの例において、複合体はG−CSF部分に独立に結合された1、2、3、4、5、6、7、8以上の水溶性重合体を有してよい。
【0106】
本発明に従った典型的な複合体がここで説明される。複合体に関する説明において、特定アミノ酸への参照がなされる。そのような参照は、利便性のためのみに、配列番号1で提供されるヒトG−CSFのアミノ酸配列を参照する。当業者は、G−CSF活性を有する他の部分内の対応場所または原子を容易に決定することができる。特に、天然ヒトG−CSFのために本明細書で提供される説明は、断片、欠損変異体、置換変異体または前述のいずれかのさらなる変異体に大抵適用できる。
【0107】
上記のように、G−CSF活性を有する部分内の特定の連結および重合体は多くの因子に依存する。そのような因子は、例えば、用いられる特定の連結の化学的特性、特定のG−CSF部分、G−CSF部分内の利用可能な官能基(重合体に結合するため、または適切な結合部位への変換のため)、G−CSF部分内のさらなる反応官能基の存在などを含む。
【0108】
G−CSF部分上のアミノ基は、G−CSF部分と水溶性重合体との間の結合点を提供する。一実施態様において、複合体はG−CSF部分のN−末端で結合する一つの水溶性複合体を有するが、しかし、いくつかの例において、組成物は50%より少ないN−末端モノペグ化された複合体を含有する。典型的な複合体では、N−末端が複合されたG−CSF部分は、末端アミノ酸としてメチオニン残基を含有しない。ヒトG−CSFは、四つのアミン含有のリジン残基および一つのアミノ末端を含む(配列番号1を参照)。故に、このG−CSFの典型的な結合点は、16、23、34および40のいずれか一つの位置のリジンと関連する、アミン側鎖での結合を含む。
【0109】
G−CSF部分の利用可能なアミンとの共有連結を形成するのに有用な、適切な高分子剤例が多数ある。 特定の例は、 対応する複合体とともに以下表1に提供される。表において、変数(n)は繰り返しのモノマー単位数を表し、「−NH−(G−CSF)」は高分子剤への共役後のG−CSF部分の残基を表す。表1に提示した各重合体の一部[例えば、(OCH2CH2)nまたは(CH2CH2O)n]が「CH3」基で終端するが、その他の基も(Hおよびベンジルなど)はそれらと置換することができる。
【0110】
【表1−1】
【0111】
【表1−2】
【0112】
【表1−3】
【0113】
【表1−4】
【0114】
【表1−5】
【0115】
【表1−6】
【0116】
【表1−7】
G−CSF部分のアミノ基への高分子剤の共役は、様々な技術によって達成することができる。一手法において、G−CSF部分は、スクシンイミジル誘導体(または他の活性エステル基)で官能基化された高分子剤に共役されることができる。この手法において、異なる反応条件(例:6から7などのより低いpH、または異なる温度、および/または15℃未満)の使用は、G−CSF部分の異なる位置への重合体の結合をもたらすが、スクシンイミジル基(または他の活性エステル基)を有する重合体は、7から9.0のpHで水媒体におけるG−CSF部分に結合されることができる。さらに、アミド連結は、活性カルボン酸基を有するG−CSF部分と、アミン末端非ペプチド性の水溶性重合体を反応させることによって、形成されることができる。
【0117】
本発明の典型的な複合体は、分岐水溶性重合体へのアミドまたは二次アミン連結を介して結合されるG−CSF部分の残基を含み、ここで、(i)一つ以上の原子から成る任意のスペーサー部分は、アミドまたは二次アミン連結、および分岐水溶性重合体の間に位置し、(ii)分岐水溶性重合体はリジン残基を含有しない。
【0118】
さらに、N末端修飾複合体に関して、典型的な組成物は複数の複合体を含み、各複合体は、直接または1つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して、水溶性重合体に結合されるG−CSF部分の残基を含み、ここで記組成物中の全ての複合体の50%未満が、非N末端モノペグ化である。
【0119】
本発明による典型的な複合体は、以下の構造を有し、
【0120】
【化12】
式中、
(n)は、3から4,000の値を有する整数であり、
Xは1つ以上の原子から成るスペーサー部分であり、
R1は、メチル、エチル、プロピル、およびイソプロピルから成る群から選択された1つから3つの炭素原子を含む有機基であり、
G−CSFはG−CSF部分の残基である。
【0121】
本発明の典型的な複合体は、以下の構造を有し、
【0122】
【化13】
式中、(n)は3から4,000の値を有する整数であり、G−CSFはG−CSF部分の残基である。
【0123】
G−CSF部分の高分子剤への共役に役立つ別の手法の典型は、G−CSF部分の一次アミンを、ケトン、アルデヒド、またはその水和形態(例:ケトン水和物、またはアルデヒド水和物)で官能基化された高分子剤に、共役するための還元アミノ化の使用である。この手法において、G−CSF部分からの一次アミンは、アルデヒドまたはケトンのカルボニル基(または、水和アルデヒドまたはケトンの、対応するヒドロキシル基含有基)と反応し、それによってシッフ塩基を形成する。シッフ塩基は次に、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤の使用によって、安定した複合体へと還元的に転化されることができる。選択反応(例:N末端における)が、特にケトン、またはアルファメチル分岐アルデヒドで官能基化された重合体で、および/または特定の反応条件下(例:pHの減少)で、可能である。
【0124】
水溶性重合体が分岐形態である本発明の典型的な複合体は、以下の構造を有する分岐形態の水溶性重合体を有し、
【0125】
【化14】
式中、(n)はそれぞれ独立して、3から4,000の値を有する整数である。
【0126】
本発明の典型的な複合体は、以下の構造を有し、
【0127】
【化15】
式中、
(n)はそれぞれ独立して、3から4,000の値を有する整数であり、
Xは1つ以上の原子から成るスペーサー部分であり、
(b)は2から6であり、
(c)は2から6であり、
R2は各発生において、独立してH、または低アルキルであり、
G−CSFはG−CSF部分の残基である。
【0128】
本発明の典型的な複合体は、以下の構造を有し、
【0129】
【化16】
式中、
(n)はそれぞれ独立して、3から4,000の値を有する整数であり、
G−CSFはG−CSF部分の残基である。
【0130】
本発明の典型的な複合体は、以下の構造を有し、
【0131】
【化17】
式中、
(n)はそれぞれ独立して、3から4,000の値を有する整数であり、
(a)は0または1であり、
Xは、存在する場合、1つ以上の原子から成るスペーサー部分であり、
(b’)は、0あるいは、1から10の値を有する整数であり、
(c)は、1から10の値を有する整数であり、
R2は各発生において、独立してH、または有機基であり、
R3は各発生において、独立してH、または有機基であり、
G−CSFはG−CSF部分の残基である。
【0132】
本発明の典型的な複合体は、以下の構造を有し、
【0133】
【化18】
式中、
(n)はそれぞれ独立して、3から4,000の値を有する整数であり、
G−CSFはG−CSF部分の残基である。
【0134】
本発明の典型的な複合体は、以下の構造を有し、
【0135】
【化19】
式中、
ポリ1は第一の水溶性重合体であり、
ポリ2は第二の水溶性重合体であり、
X1は第一のスペーサー部分であり、
X2は第二のスペーサー部分であり、
Hαはイオン化できる水素原子であり、
R1は、Hまたは有機基であり、
R2は、Hまたは有機基であり、
(a)は0または1であり、
(b)は0または1であり、
Re1は、存在する場合、第一の電子変換基であり、
Re2は、存在する場合、第二の電子変換基であり、
Y1はOまたはSであり、
Y2はOまたはSであり、
G−CSFはG−CSF部分の残基である。
【0136】
これらの複合体(「フルベン系」である)は、G−CSF部分が以下の投与によって生体内に放出される、開裂結合を含む。有利なことに、かかる「フルベン系」複合体は、ただ1つの水溶性重合体が存在する場合(例:ポリ2およびX2が存在しない)を含み、対応する高分子剤(真下の段落に記載される)がポリ2およびX2を欠いている場合にも形成される。
【0137】
かかるフルベン系複合体は、複合体条件下で、G−CSF部分を以下の構造のフルベン系高分子剤と組み合せることによって、調製されることができ、
【0138】
【化20】
式中、
ポリ1は第一の水溶性重合体であり、
ポリ2は第二の水溶性重合体であり、
X1は第一のスペーサー部分であり、
X2は第二のスペーサー部分であり、
Hαはイオン化できる水素原子であり、
R1は、Hまたは有機基であり
R2は、Hまたは有機基であり、
(a)は0または1であり、
(b)は0または1であり、
Re1は、存在する場合、第一の電子変換基であり、
Re2は、存在する場合、第二の電子変換基である。
【0139】
かかるフルベン系高分子剤の合成は、共同所有および同時係属の米国特許出願番号第11/454,971号に記載されている。その中で記載されているとおり、フルベン系高分子剤はあらゆる方法で調製されることができる。例えば、フルベン系試薬を調製する1つの方法は、以下を含む。(a)第一の結合部位、第二の結合部位、および任意の第三の結合部位を有する、芳香族化合物含有部分を提供するステップ、(b)活性薬剤のアミノ基と反応可能な官能基を有する第一の結合部位をもたらし、カルバメートなどの分解可能な連結をもたらすために、官能基試薬を第一の結合部位と反応させるステップと、(c)(i)スペーサー部分を介した水溶性重合体を有する第二の結合部位、および(ii)存在する場合、スペーサー部分を介した第二の水溶性重合体を有する任意の第三の結合部位をもたらすために、反応基を有する水溶性重合体を、第二の結合部位、および存在する場合、任意の第三の結合部位と反応させるステップ。場合によっては、(b)はステップ(c)の前に行われるが、他の場合では、(c)がステップ(b)の前に行われる。
【0140】
したがって、フルベン系高分子剤を調製するこの方法において、必須ステップは、(a)第一の結合部位、第二の結合部位、および任意の第三の結合部位を有する、芳香族化合物含有部分を提供するステップである。合成調製との関連で、物質を「提供するステップ」が、物質を得ること(例えば、物質を合成する、または物質を商業的に入手することによって)を意味することは理解される。説明目的のための典型的な芳香族化合物含有部分は、以下に示されるように、9−ヒドロキシメチル−2,7−ジアミノフルオレンである。
【0141】
【化21】
この芳香族化合物含有部分、9−ヒドロキシメチル−2,7−ジアミノフルオレンは、3つの結合部位を有する芳香族化合物含有部分の例である:位置9のヒドロキシル基、および位置2および7のそれぞれのアミノ基。芳香族化合物含有部分は、塩基または塩形態で提供されることができる。9−ヒドロキシメチル−2,7−ジアミノフルオレンに関して、二塩酸塩の形態を使用することが可能である。
【0142】
芳香族化合物含有部分が提供された後、フルベン系高分子剤を提供する方法におけるもう1つのステップは、 広範には、反応基を有する水溶性重合体を、芳香族化合物含有部分上の結合部位と反応させるステップを含む。ここで、芳香族化合物含有部分上の1つ以上の結合部位に水溶性重合体を結合させる、当技術分野で既知の手法が使用されることができ、その手法は特定の方法に制限されない。例えば、アミン反応性PEG(例えば、縮合剤としての、および任意で塩基の存在下での、N−ヒドロキシスクシンイミド、およびCH3O−CH2CH2−(OCH2CH2)−OCH2CH2−OCH2COOHの、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、またはジイソプロピルカルボジイミド(DIC)との反応から形成される、N−スクシンイミジルエステル−末端mPEGなど)は、9−ヒドロキシメチル−2,7−ジアミノフルオレンなどの芳香族化合物含有部分を有するアミンと反応することができる。
【0143】
場合によっては、反応基を有する水溶性重合体の、芳香族化合物含有部分との反応は、すべての可能な結合部位がそこへ結合される水溶性重合体を有する結果となる。かかる状況において、結合部位が官能基試薬との反応に利用されるように、少なくとも1つの水溶性重合体を除去することが必要である。したがって、例えば、前段落に記載されたN−スクシンイミジルエステル−末端mPEGの、9−ヒドロキシメチル−2,7−ジアミノフルオレンとの反応は、(a)2つの水溶性重合体(2つのアミン部位のそれぞれに1つ)を有する種、および(b)3つの水溶性重合体(2つのアミン部位のそれぞれに1つ、およびヒドロキシル部位に1つ)を有する種を含む混合物をもたらす。ここで、サイズ排除クロマトグラフィーを使用することによって、高分子量の種を除去および採取することが可能である。さらに、混合物を高pHに処理し[例えば、混合物を水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)に処理]、続いてイオン交換クロマトグラフィーを行うことが可能である。いずれの場合においても、結果は、2つの水溶性重合体(2つのアミン部位のそれぞれに1つ)を有する9−ヒドロキシメチル−2,7−ジアミノフルオレンを主に含む組成物である。それによって、第三のヒドロキシル部位は、官能基試薬との反応に使用可能である。
【0144】
最終ステップは、芳香族化合物含有部分の反応部位を、官能基試薬と反応させるステップである。好ましい手法は、2つの水溶性重合体(2つのアミン部位のそれぞれに1つ)を有する、ヒドロキシル含有9−ヒドロキシメチル−2,7−ジアミノフルオレンを、トリホスゲンと反応させ、続いてN−ヒドロキシスクシンイミドで処理する手法である。この方法において、カルバメート連結(この場合、「活性カルボネート」)などの分解可能な連結を形成するために、活性薬剤のアミノ基と反応可能な官能基は、ヒドロキシル含有反応部位上で形成される。
【0145】
フルベン系高分子剤を提供する方法のステップは、適切な溶媒で行われる。当技術分野における通常の技量を有する者は、いかなる特定の溶媒も、所定の反応に適切であるかどうか決定することができる。しかしながら、溶媒は、通常好ましくは無極性溶媒、または極性非プロトン性溶媒である。無極性溶媒の限定されない例は、ベンゼン、キシレン、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、t−ブチルアルコール、およびトルエンを含む。特に好ましい無極性溶媒は、トルエン、キシレン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、およびt−ブチルアルコールを含む。典型的な極性非プロトン性溶媒は、DMSO(ジメチルスルホキシド)、HMPA(ヘキサメチルホスホラミド)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMA(ジメチルアセトアミド)、NMP(N−メチルピロリジノン)を含むが、それらに限定されない。
【0146】
重合体を結合させる部位として機能できる、G−CSFにおける好ましいアミン基は、Lys16、Lys34、およびLys40などのリジン残基内で見られるアミン基を含む。さらに、タンパク質であるいかなるG−CSF部分のN末端も、重合体結合部位として機能できる。
【0147】
カルボキシル基は、G−CSF部分上の結合点として機能できる、別の官能基を表す。構造的に、複合体は以下を含み、
【0148】
【化22】
式中、(G−CSF)および隣接カルボニル基は、カルボキシル含有G−CSF部分に対応し、Xはスペーサー部分であり、この場合好ましくは、O、N(H)、およびSから選択されたヘテロ原子であり、ポリは、任意にエンドキャッピング部分において終端となる、PEGなどの水溶性重合体である。
【0149】
C(O)−X連結は、末端官能基を有する高分子誘導体、およびカルボキシル含有G−CSF部分との反応に起因する。上記に記載のとおり、特定の連結は、利用される官能基の種類による。重合体がヒドロキシル基で末端官能基化、または「活性化」される場合、得られる連結はカルボン酸エステルであり、XはOである。高分子骨格が、チオール基で官能基化される場合、得られる連結はチオエステルであり、XはSである。特定の、マルチアーム、分岐、またはフォーク重合体が用いられる場合、C(O)X部分、および特にX部分は、比較的より複雑で、より長い連結構造を含んでもよい。
【0150】
ヒドラジド部分を含む水溶性誘導体もまた、カルボニルにおける共役に有用である。G−CSF部分がカルボニル部分を含まない限りにおいて、カルボニル部分は、いかなるカルボン酸(例:C末端カルボン酸)を還元させることによって、および/またはグリコシル化もしくは糖化(ここで添加された糖はカルボニル部分を有する)型G−CSF部分を提供することによって、導入されることができる。ヒドラジド部分を含む水溶性誘導体の特定の実施例は、対応する複合体と共に、以下の表2に示される。さらに、活性エステル(例:スクシンイミジル基)を含むいかなる水溶性誘導体も、活性エステルを含む水溶性高分子誘導体を、ヒドラジン(NH2−NH2)、またはカルバジン酸tert−ブチル[NH2NHCO2C(CH3)3]と反応させることによって、ヒドラジド部分を含むように転化されることができる。表では、変数(n)は、モノマー単位を繰り返す数を表し、「=C−(G−CSF)」は、高分子剤への共役後のG−CSF部分の残基を表す。任意に、ヒドラゾン連結は、適切な還元剤を使用して還元されることができる。表1に提示した各重合体部分[例:(OCH2CH2)n、または(CH2CH2O)n]が「CH3」基で終端する場合は、他の基(Hおよびベンジルなど)は、それらと置換されることができる。
【0151】
【表2−1】
【0152】
【表2−2】
G−CSF部分内に含有されるチオール基は、水溶性重合体の結合のために有効な部位として機能することができる。特に、G−CSF部分がタンパク質の場合は、G−CSF部分でのシステイン残基はチオール基をもたらす。そのようなシステイン残基でのチオール基は次いで、チオール基との反応に対して特異的な活性化PEG 、例えば、米国特許第5,739,208号および国際特許公開第WO 01/62827号に記載のN−マレイミジル重合体または他の誘導体と反応することができる。
【0153】
配列番号1から3に関して、5つのチオール含有システイン残基が存在する。従って、好ましいチオール結合部位は、これら5つのシステインのうちの一つと関連する。いかなるジスルフィド結合も分裂させないことは好ましいが、1つ以上のこれらのシステイン残基の側鎖内で重合体を結合させ、ある程度の活性を保つ可能性がある。いかなる特定のG−CSF部分もチオール基を欠き、ジスルフィド結合の分裂を回避する限り、従来の合成手法を使用して、システイン残基をG−CSF部分に加えることは可能である。例えば、システイン残基を加えるためのWO90/12874に記載の手順を参照すると、この手順はG−CSF部分に適合できることが考えられる。さらに、従来の遺伝子工学法はまた、システイン残基をG−CSF部分に導入するのに使用することができる。しかしながら、いくつかの実施態様において、システイン残基および/またはチオール基を導入し、追加することは好ましくはない。
【0154】
特定の例を対応する複合体とともに以下表3に示す。表では、変数(n)はモノマー単位を繰り返す数を表し、「−S−(G−CSF)」は水溶性重合体への共役後のG−CSF部分残基を表す。表3に提示した重合体部分[例えば、(OCH2CH2)nまたは(CH2CH2O)n]が「CH3」基で終端するが、他の基(Hおよびベンジルなど)もそれらと置換することができる。
【0155】
【表3−1】
【0156】
【表3−2】
【0157】
【表3−3】
1つ以上のマレイミド官能基を有する(マレイミドがG−CSF部分でのアミンまたはチオール基と反応してもしなくても)水溶性重合体から形成される複合体に関しては、水溶性重合体の対応マレアミド酸型もまたG−CSF部分と反応することができる。特定の条件下では(例えば、pH約7〜9および水の存在下)、マレイミド環は「開」き、対応マレアミド酸を形成する。同様に、マレアミド酸はアミンまたはG−CSF部分のチオ1基と反応することができる。典型的なマレアミド酸ベースの反応は、図式的に以下に示す。ポリは水溶性重合体を表し、(G−CSF)はG−CSF部分を表す。
【0158】
【化23】
本発明のG−CSFの形成に使用するのに適している重合体試薬は、
ポリ−[Y−S−W]x
式中、
ポリは水溶性重合体セグメント;
xは1から25;
Yは、少なくとも4つの炭素原子を含み、また長さ3つから8つの炭素原子であり、水素、低アルキル、低アルケニル、および本明細書で定義する非妨害置換基から独立して選択される置換基を有し、バックボーンの異なる炭素原子でのそのような2つのアルキルおよび/またはアルケニル置換基が、シクロアルキル、シクロアルケニル、またはアリール基を形成するために結合してもよい、飽和または不飽和炭化水素バックボーンから成る二価連結基;
Sは、Yのsp3ハイブリッド炭素に結合した硫黄原子;
S−Wは、オルトピリジルジスルフィド(OPSS)などの、チオール(すわち、WはH)、保護チオール、またはチオール−反応誘導体である、構造を備える。保護チオールは、例えば、S−ベンジルまたはS−トリチルエーテルなどのチオエーテル、およびチオエステルを含む。米国特許出願公開第2006/0135586号は、そのような重合体試薬を開示している。
【0159】
本発明による典型的な複合体は、以下の構造を備えることができる。
ポリ−L0,1−C(O)Z−Y−S−S−(G−CSF)
式中、ポリは水溶性重合体、Lは任意のリンカー、ZはO、NH、およびSより成る群から選択されるヘテロ原子、YはC2−10アルキル、C2−10置換アルキル、アリール、および置換アリールよりなる群から選択され、(G−CSF)はG−CSF部分の残基である。米国特許出願公開第2005/0014903号は、G−CSF部分と反応することができ、この型の複合体をもたらす重合体試薬を記載している。
【0160】
複合体は多くの方法でチオール特異的重合体試薬を使用して形成することができ、本発明はこの点において限定されない。例えば、G−CSF部分―任意に適切な緩衝液中の(必要に応じて、アミン含有の緩衝液を含む)―は、pH約7〜8の水媒体中に入れ、チオール特異的重合体試薬をモル過剰で加える。ペグ化収率が比較的低いと判断された場合に、2時間より長い(例えば、5時間、10時間、12時間、および24時間)反応時間は有効となり得るが、反応は約0.5から2時間続行してもよい。この手法において使用することができる典型的な重合体試薬は、マレイミド、スルホン(例えば、ビニルスルホン)、およびチオール(例えば、オルトピリジニルまたは「OPSS」などの保護チオール)より成る群から選択される反応基を有する重合体試薬である。
【0161】
重合体試薬を結合する部位として機能することができるG−CSF部分における好ましいチオール基は、システイン残基内で見られるそれらチオール基を含む。特に好ましいチオール基は、位置17に配置されるアミノ酸残基システインの側鎖と関連するチオール基である。
【0162】
従って、本発明の典型的な複合体は、hG−CSFのアミノ酸位置17に対応するシステイン残基側鎖を有するG−CSF部分の残基を有し、ここでシステイン残基側鎖は、直接または一つ以上の原子を有するスペーサー部分を通して、水溶性重合体に結合する。
【0163】
すでに記載したように、いくつかのG−CSF部分のチオールベース複合体のためのペグ化収率は比較的低い可能性がある。反応時間の延長を許容しても、そのようなペグ化収率はそれでもやはり十分でない可能性がある。これらの場合では、複合体を調製するための方法を用いることによって、比較的大きな収率において、チオールベースの修飾をもたらすことはさらに可能であり、前記方法は、(a)直接または一つ以上の原子より構成される第一のスペーサー部分を通して、第一の水溶性重合体に共有結合するG−CSF部分より構成される第一の複合体を含む、第一の複合組成物(すなわち、第一の複合体を有する組成物)をもたらすのに十分な条件下で、第一の重合体試薬組成物(すなわち、第一の重合体試薬を有する組成物)をG−CSF部分組成物に加える手順と、(b)直接または一つ以上の原子より構成される第二のスペーサー部分を通して、複合体の第一の水溶性重合体に結合する第二の水溶性重合体を有する、第二の複合組成物(すなわち、第二の複合体を有する組成物)をもたらすために、第二の重合体試薬組成物(すなわち、第二の重合体試薬を有する組成物)を第一の複合組成物に加える手順とを含む。
【0164】
前記方法によると、比較的小さな重量平均分子量を有する重合体試薬は、G−CSF部分への最初の結合のために使用することができる。その後、比較的大きな重量平均分子量を有する重合体試薬を使用することができる。理論に束縛されないことを願う一方で、そのような手法を使用することによって、比較的小さな重量平均分子量を有する重合体試薬は、比較的高い重量平均分子量を有する重合体試薬よりも、G−CSF部分内の立体障害箇所とより完全に反応することができると考えられている。このようにして、所望の複合体をより効率的に調製することが可能である。
【0165】
本方法によるチオールベースの修飾は、システイン残基のチオール基含有の側鎖と反応することができる一つ以上の官能基を有する重合体試薬を利用する。そのようなPEG試薬は、PEGオルトピリジルジスルフィド試薬、PEGビニルスルホン試薬、PEGマレイミド試薬、およびPEGヨードアセトアミド試薬を含むが、それらに限定されない。これらおよび他の重合体試薬を表3に示す。
【0166】
この方法により使用される重合体試薬は、性質がヘテロ二官能性またはホモ二官能性であってもよい。
【0167】
比較的低い重量平均分子量を有する重合体試薬は、約100ダルトンから約5,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有することになる。典型的に、この範囲の重量平均分子量は、約100ダルトン、約150ダルトン、約200ダルトン、約250ダルトン、約300ダルトン、約300ダルトン、約350ダルトン、約400ダルトン、約450ダルトン、約500ダルトン、約600ダルトン、約700ダルトン、約800ダルトン、約900ダルトン、約1000ダルトン、約1,500ダルトン、約2,000ダルトン、約2,500ダルトン、約3,000ダルトン、約3,500ダルトン、約4,000ダルトン、約4,500ダルトン、および約5,000ダルトンを含む。比較的低い重量平均分子量を有する典型的な重合体試薬は以下の構造を有する。
Y’−CH2CH2O(CH2CH2O)nCH2CH2−Y” 式I
式中、Y’は求電子基または求核基、Y’’はG−CSF部分と関連する官能基と反応するのに適した反応基(例えば、Y’’はG−CSFと関連するチオール基と反応するためのマレイミド、スルホンまたはチオール、G−CSF部分と関連するアミン基と反応するためのアルデヒド、ケトンまたはサクシンイミジルなどであってもよい)、(n)は2から約114までの値、好ましくは約3から約6(例えば、3、4、5、6のうちのいずれか一つ)の値を有する整数である。
【0168】
比較的低い重量平均分子量を有する重合体試薬は任意に単分散であってもよい(単分散は必要条件ではないが)。単分散である重合体試薬を使用することによって、G−CSF部分に共有結合する一つ以上の水溶性重合体より構成される複合体を有する組成物を調製することが可能となり、ここではそれぞれの水溶性重合体は(n)反復型モノマーを有し、(ii)組成物におけるあらゆる複合体でのG−CSF部分に共有結合する一つ以上の水溶性重合体のそれぞれの(n)は同じである。
【0169】
比較的高い重量平均分子量を有する重合体試薬は、約100ダルトンから約150,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する。しかしながら、典型的な範囲は、5,000ダルトンより大きいものからから約100,000ダルトンの範囲、約6,000ダルトンから約90,000ダルトンの範囲、約10,000ダルトンから約85,000ダルトンの範囲、10,000ダルトンより大きいものからから約85,000ダルトンの範囲、約20,000ダルトンから約85,000ダルトンの範囲、約53,000ダルトンから約85,000ダルトンの範囲、約25,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲、約29,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲、約35,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲、および約40,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を含む。比較的高い重量平均分子量を有する典型的な重合体試薬は以下の構造を有する。
Z’−CH2CH2O(CH2CH2O)n’CH2CH2−Z” (式II)
式中、Z’’は比較的低い重量平均分子量を有する典型的な重合体試薬(式I)のY’と反応し、Z’は官能基の端キャップ基、(n’)は2から約3,400の値を有する整数である。比較的高い重量平均分子量重合体試薬に関しては、典型的な型は、直鎖および分岐重合体試薬を含む。
【0170】
そのような手法のための図式を以下に示す(ここではG−CSFはG−CSF部分の残基を表す)。
【0171】
【化24】
上記の図式は説明目的のみであること、および(例えば)他の重合体試薬が前記方法により使用することができることが認識されるであろう。従って、例えば、重合体試薬は、以下の構造をもたらす上記の図式にしたがって使用することができる。
【0172】
【化25】
式中、(n)は2から約114までの整数であり、n’は2から約3,400の整数であり、G−CSFはG−CSF部分の残基である。
【0173】
システイン残基(例えば、システイン17)などの内部アミノ酸残基に結合する代替の方法において、反応基(例えば、マレイミドなどのチオール反応基)が比較的長い連結基[例えば、エチレンオキシド重合体、例えば、ポリマーアミノ酸(すなわち、同じまたは異なるアミノ酸の重合体)を含有する生体適合性重合体、ポリモノサッカリド、ポリ乳酸のような、ポリ炭水化物(すなわち、同じまたは異なる炭水化物の重合体)その他、および前述のうちいかなるものの組み合わせ]に任意に与えられる単一手順によりペグ化を実行することが可能となる。任意に、G−CSF部分に結合する重合体は、次に第二の重合体(例えば、分岐重合体)に結合することができる。米国特許第6,774,180号および米国特許出願番号第10/734,858と同様に文献にもそのような試薬が記載されている。
【0174】
どの方法を使用するかを問わず、pH10を下回る、より好ましくはpH8.5を下回る、さらにより好ましくは8.25を下回る、その上さらに好ましくは8.0を下回る、最も好ましくは7,5を下回るG−CSF部分に水溶性重合体を結合するための方法を行うことが好ましい。
【0175】
二つの重合体試薬を使用する方法となる実施例では、以下の構造を有する複合体が形成される。
ポリ’’−(X2)b−ポリ’−(X1)a−(G−CSF)
式中、
ポリ’’は第二の水溶性重合体(好ましくは分岐または直線)であり;
ポリ’は第一の水溶性重合体または生体適合性重合体であり;
存在する場合、X1は一つ以上の原子より構成される第一のスペーサー部分であり;
存在する場合、X2は一つ以上の原子より構成される第二のスペーサー部分であり;
(b)は0または1のどちらかであり;
(a)は0または1のどちらかであり;
G−CSFはG−CSF部分の残基である。
【0176】
重合体試薬に関しては、本明細書および他の場所に記載のそれらは、販売元(例えば、Nektar Therapeutics、アラバマ州、ハンツビル)から購入することができる。さらに、重合体試薬を調製するための方法は文献に説明されている。
【0177】
G−CSF部分および非ペプチド性、水溶性重合体間の結合(二つの水溶性重合体間の結合などの、本明細書に記載の複合体の異なる部分間での他の結合と同様に)は、直接的(例えば、G−CSF部分と重合体との間に位置する介在原子がない)、または間接的(例えば、G−CSF部分と重合体との間に一つ以上の原子が位置する)であってもよい。間接的結合に関しては、一つ以上の炭素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子およびその組み合わせを含むことができる、[従来「スペーサー部分」と称される(および本明細書でX1、X2などと定義される)一つ以上の原子は、隣接原子を結合するために使用することによって、間接的結合をもたらす。スペーサー部分は、アミド、第2級アミン、カルバメート、チオエーテル、またはジスルフィド基を有することができる。特異的スペーサー部分の限定されない例は、−O−、−S−、−S−S−、−CH2−S−S−CH2−、−CH2−CH2−S−S−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−S−S−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−S−S−CH2−CH2−CH2−CH2−、−C(O)−NH−CH2−CH2−S−S−CH2−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−S−S−CH2−CH2−NH−C(O)−、−C(O)−、−C(O)−NH−、−NH−C(O)−NH−、−O−C(O)−NH−、−C(S)−、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−、−O−CH2−、−CH2−O−、−O−CH2−CH2−、−CH2−O−CH2−、−CH2−CH2−O−、−O−CH2−CH2−CH2−、−CH2−O−CH2−CH2−、−CH2−CH2−O−CH2−、−CH2−CH2−CH2−O−、−O−CH2−CH2−CH2−CH2−、−CH2−O−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−O−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−O−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−O−、−C(O)−NH−CH2−、−C(O)−NH−CH2−CH2−、−CH2−C(O)−NH−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH2−CH2−CH2−、−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH2−CH2−CH2−CH2−、−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−、−C(O)−O−CH2−、−CH2−C(O)−O−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−O−CH2−、−C(O)−O−CH2−CH2−、−NH−C(O)−CH2−、−CH2−NH−C(O)−CH2−、−CH2−CH2−NH−C(O)−CH2−、−NH−C(O)−CH2−CH2−、−CH2−NH−C(O)−CH2−CH2−、−CH2−CH2−NH−C(O)−CH2−CH2−、−C(O)−NH−CH2−、−C(O)−NH−CH2−CH2−、−O−C(O)−NH−CH2−、−O−C(O)−NH−CH2−CH2−、−NH−CH2−、−NH−CH2−CH2−、−CH2−NH−CH2−、−CH2−CH2−NH−CH2−、−C(O)−CH2−、−C(O)−CH2−CH2−、−CH2−C(O)−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−CH2−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−NH−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−NH−C(O)−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−NH−C(O)−CH2−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−NH−C(O)−CH2−CH2−、−O−C(O)−NH−[CH2]h−(OCH2CH2)j−、二価シクロアルキル基、−O−、−S−、アミノ酸、−N(R6)−、および前述の二つ以上のいかなる組み合わせより成る群から選択されるものを含み、ここではR6はHまたはアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリールおよび置換 アリールより成る群から選択される有機基であり、(h)は0から6であり、また(j)は0から20である。他の特異的スペーサー部分は以下の構造を有する。−C(O)−NH−(CH2)1−6−NH−C(O)−、−NH−C(O)−NH−(CH2)1−6−NH−C(O)−、および−O−C(O)−NH−(CH2)1−6−NH−C(O)−、それぞれのメチレンの次の下付き文字の値は、構造内に含有されるメチレンの数を表示し、例えば、(CH2)1−6とは、構造が1、2、3、4、5または6メチレンを含有することができることを指す。さらに、上記のスペーサー部分のいずれも、1から20のエチレン酸化物モノマー単位を有するエチレンオキシドオリゴマー[例えば、−(CH2CH2O)1−20]をさらに含んでよい。すなわち、エチレンオキシドオリゴマー鎖は、スペーサー部分の前後、および任意に二つ以上の原子より構成されるスペーサー部分の二つの任意の原子間で存在することができる。また、オリゴマーが重合体セグメントに隣接し、重合体セグメントの伸長を単に表す場合は、オリゴマー鎖はスペーサー部分の一部と見なされない。いくつかの実施例では、スペーサー部分は二つ以上のアミノ酸残基と含まない(例えば、スペーサー部分は−Gly−Gly−を含まない)ことが好ましい。
【0178】
組成物
複合体は通常組成物の一部である。一般に、組成物は複数の複合体を含み、必ずではないが、好ましくはそれぞれの複合体は同じG−CSF部分より構成される(すなわち、全組成物内で、ただ一つの型のG−CSF部分が検出される)。さらに、組成物は複数の複合体を含むことができ、ここでは任意の所与の複合体は、二つ以上の異なるG−CSF部分より成る群から選択される部分より構成される(すなわち、全組成物内で、二つ以上の異なるG−CSF部分が検出される)。しかしながら、最適には、組成物でのすべての複合体(例えば、組成物での85%以上の複数の複合体)はそれぞれ同じG−CSF部分より構成される。
【0179】
組成物は、単一の複合体種(例えば、単一重合体が組成物での実質上すべての複合体のために同じ箇所で結合されるモノペグ化複合体)、または複合体種の混合物(例えば、重合体の結合が異なる部位で発生するモノペグ化複合体の混合物および/またはモノペグ化、ジペグ化およびトリペグ化複合体の混合物)を含むことができる。組成物はまた、G−CSF活性を有する任意の所与の部分に結合する4、5、6、7、8あるいはそれ以上の重合体を有する他の複合体を含むことができる。さらに、本発明は、組成物が複数の複合体を含み、それぞれの複合体は、一つのG−CSF部分に共有結合される2、3、4、5、6、7、8、あるいはそれ以上の水溶性重合体を含む組成物と同様に、一つのG−CSF部分に共有結合される一つの水溶性重合体を含む実施例を含む。
【0180】
組成物での複合体に関しては、組成物は、一つ以上の以下の特徴を充足させる。組成物での少なくとも約85%の複合体はG−CSF部分に結合する1つから4つの重合体を有する、組成物での少なくとも約85%の複合体はG−CSF部分に結合する1つから3つの重合体を有する、組成物での少なくとも約85%の複合体はG−CSF部分に結合する1つから2つの重合体を有する、組成物での少なくとも約85%の複合体はG−CSF部分に結合する1つの重合体を有する、組成物での少なくとも約95%の複合体はG−CSF部分に結合する1つから4つの重合体を有する、組成物での少なくとも約95%の複合体はG−CSF部分に結合する1つから3つの重合体を有する、組成物での少なくとも約95%の複合体はG−CSF部分に結合する1つから2つの重合体を有する、組成物での少なくとも約95%の複合体はG−CSF部分に結合する1つの重合体を有する、組成物での少なくとも約99%の複合体はG−CSF部分に結合する1つから4つの重合体を有する、組成物での少なくとも約99%の複合体はG−CSF部分に結合する1つから3つの重合体を有する、組成物での少なくとも約99%の複合体はG−CSF部分に結合する1つから2つの重合体を有する、組成物での少なくとも約99%の複合体はG−CSF部分に結合する1つの重合体を有する。
【0181】
一つ以上の実施態様において、複合体含有組成物はアルブミンがない、または実質上ないことが好ましい。組成物は、G−CSF活性のないタンパク質がない、または実質上ないこともまた好ましい。従って、組成物は、85%、より好ましくは95%、最もこの好ましくは99%アルブミンがないことが好ましい。さらに、組成物は、85%、より好ましくは95%、最もこの好ましくは99%、G−CSF活性のないタンパク質がないことが好ましい。アルブミンが組成物に存在する限り、本発明の典型的な組成物は、G−CSF部分の残基をアルブミンに結合させるポリ(エチレングリコール)重合体を有する複合体が実質上ない。
【0182】
任意の所与の部分のための重合体の所望の数の調整は、適切な重合体試薬、G−CSF部分への重合体試薬の割合、温度、pH条件、および共役反応の他の側面を選択することによって達成することができる。さらに、所望でない複合体(例えば、4つ以上の結合重合体を有するそれらの複合体)の減少または除去は、精製手段により達成することができる。
【0183】
例えば、重合体G−CSF部分複合体を精製して、異なる複合体種を獲得/単離することができる。特に、生成混合物を精製して、G−CSF部分につき平均1、2、3、4、5、あるいはそれ以上のいずれかのPEG、通常G−CSF部分につき1、2、または3のPEGを得ることができる。最終共役反応混合物の精製の方策は、例えば、用いる重合体試薬の分子量、特定のG−CSF部分、所望の投与計画、ならびに個別の複合体の残留活性および体内特性を含む、多くの要因によって決まることになる。
【0184】
必要に応じて、異なる分子量を有する複合体は、ゲルろ過クロマトグラフィーおよび/またはイオン交換クロマトグラフィーを使用して単離することができる。すなわち、ゲルろ過クロマトグラフィーは、異なる分子量(差異は水溶性重合体部分の平均分子量に基本的に一致する)に基づいて、数の異なる重合体とG−CSF部分の割合(例えば、「1−mer」はG−CSF部分に結合される1つの重合体を示す、「2−mer」はG−CSF部分に結合される2つの重合体を示す場合などの1−mer、2−mer、3−merなど)を分割するのに使用する。例えば、35,000ダルトンのタンパク質が、約20,000ダルトンの分子量を有する重合体試薬に無作為に共役する典型的な反応では、得られた反応混合物は、未修飾タンパク質(約35,000ダルトンの分子量を有する)、モノペグ化タンパク質(約55,000ダルトンの分子量を有する)、ジペグ化タンパク質(約75,000ダルトンの分子量を有する)などを含有する可能性がある。
【0185】
この手法は、PEGおよび異なる分子量を有する他の重合体−G−CSF部分複合体を分離するのに使用することができるが、この手法は一般に、G−CSF部分内の異なる重合体結合部位を有する位置アイソフォームを分離するには効果がない。例えば、ゲルろ過クロマトグラフィーは、1−mers、2−mers、3−mersの混合物をお互いから分離するのに使用することができるが、回収複合組成物のそれぞれは、G−CSF部分内の異なる反応基(例えば、リジン残基)に結合されるPEGを含有する可能性がある。
【0186】
この種類の分離を行うのに適切なゲルろ過カラムは、Amersham Biosciences(ニュージャージー州、ピスカタウェイ)から入手可能なSuperdexTMおよびSephadexTMカラムを含む。特定のカラムの選択は、所望の分割範囲によって決まる。溶出は一般に、リン酸塩、酢酸塩などの適切な緩衝液を使用して行うことができる。収集された部分は、多くの異なる方法、例えば、(i)タンパク質含有量の280nmでの吸収度(ii)標準のウシ血清アルブミン(BSA)を使用した染料ベースのタンパク質分析(iii)ペグ含有量のヨード検査(Simsら、(1980)Anal.Biochem、107:60−63)、(iv)ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS PAGE)、続いてヨウ化バリウムによる染色、および(v)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析してもよい。
【0187】
位置アイソフォームの分離は、適切なカラム(例えば、Amersham BiosciencesまたはVydacなどの企業から市販されている、C18カラムまたはC3カラム)を使用した逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)を使用した逆相クロマトグラフィー、またはイオン交換カラム、例えば、Amersham Biosciencesから入手可能なSepharoseTMイオン交換カラムを使用したイオン交換クロマトグラフィーによって行う。どちらの手法も、分子量を有する重合体活性剤異性体(すなわち、位置アイソフォーム)を分離するのに使用することができる。
【0188】
組成物は、G−CSF活性のないタンパク質が実質上ないことが好ましい。さらに組成物は、他のすべての非共有結合水溶性重合体が実質上ないことが好ましい。しかしながら、いくつかの状況において、組成物は重合体G−CSF部分複合体および非複合G−CSF部分の混合物を含有し得る。
【0189】
米国特許出願公開第2005/0143563号に記載の方法によって形成された組成物と対照的に、現在記載の複合組成物は会合体がない、または実質上ない。従って、本発明の組成物は会合体がない、または実質上ない(例えば、約20%未満、より好ましくは約15%未満、さらにより好ましくは約10%未満、その上さらにより好ましくは約9%未満、その上さらにより好ましくは約8%未満、その上さらにより好ましくは約7%未満、その上さらにより好ましくは約6%未満、その上さらにより好ましくは約5%未満、その上さらにより好ましくは約4%未満、その上さらにより好ましくは約3%未満、その上さらにより好ましくは約2%未満、その上さらにより好ましくは約1%未満で、約0.5%未満が最も好ましい)。
【0190】
米国特許出願公開2005/0143563号は、不活性会合体形成の形成に取り組む手法を開示している。この参考資料は、少量のSDS、ツイーン20、ツイーン80洗浄剤による処理は、会合体が形成されるのを防ぐのに必要であると記載している。有利に、本発明の組成物および複合体は、SDS、ツイーン20、およびツイーン80を加える手順を実行することなく調製することができる。さらに、本発明の組成物および複合体は、洗浄剤を加える手順を実行することなく調製することができる。さらに、本発明の組成物は、SDS、ツイーン20、およびTween80などの洗浄剤がない、または実質上ない(例えば、約20%未満、より好ましくは約15%未満、さらにより好ましくは約10%未満、その上さらにより好ましくは約9%未満、その上さらにより好ましくは約8%未満、その上さらにより好ましくは約7%未満、その上さらにより好ましくは約6%未満、その上さらにより好ましくは約5%未満、その上さらにより好ましくは約4%未満、その上さらにより好ましくは約3%未満、その上さらにより好ましくは約2%未満、その上さらにより好ましくは約1%未満、その上さらにより好ましくは約0.5%未満で、0.001%未満が最も好ましい)。さらに、本発明の組成物および複合体は、SDS、ツイーン20、およびツイーン80などの洗浄剤を除去(例えば、限外ろ過によって)する手順を実行することなく調製することができる。さらに、本発明の組成物および複合体は、洗浄剤を除去(例えば、限外ろ過によって)する手順を実行することなく調製することができる。
【0191】
国際特許出願公開第05/099769号での複合体を形成する手法と対照的に、本発明の複合体および組成物を調製するための手法は、Cys−17のチオール基を暴露するためのG−CSFを変性させる手順を含まない。好ましくは、複合体および組成物を形成するための本方法は、例えば、尿素、塩酸グアニジンまたはイソチオシアネート、ジメチル尿素、高中性塩濃度および溶媒(例えば、アセトニトリル、アルコール、有機エステル、ジメチルスルホキシドなど)より成る群から選択される変性剤などの変性剤を加える手順を含まない(前記変性剤の存在下で実行されない)。実験に示すように、そのような変性をさせる手順は、Cys−17残基でのG−CSFの複合体を獲得するのに必要ない。
【0192】
さらに、本発明の組成物は変性剤がない、または実質上ない(例えば、約20%未満、より好ましくは約15%未満、さらにより好ましくは約10%未満、その上さらにより好ましくは約9%未満、その上さらにより好ましくは約8%未満、その上さらにより好ましくは約7%未満、その上さらにより好ましくは約6%未満、その上さらにより好ましくは約5%未満、その上さらにより好ましくは約4%未満、その上さらにより好ましくは約3%未満、その上さらにより好ましくは約2%未満、その上さらにより好ましくは約1%未満で、約0.5%未満が最も好ましい)。さらに、本発明の組成物および複合体は、複合体を再生条件(例えば、限外ろ過またはクロマトグラフィー法など)に暴露する手順を実行することなく調製することができる。
【0193】
任意に、本発明の組成物は薬学的に許容できる賦形剤をさらに含む。必要に応じて、薬学的に許容できる賦形剤は、組成物を形成するために複合体に加えることができる。
【0194】
典型的な賦形剤は、炭水化物、無機塩類、抗菌剤、抗酸化物質、界面活性剤、緩衝液、酸、塩基およびそれらの組み合わせより成る群から選択されるものを含むが、それらに限定されない。
【0195】
糖などの炭水化物、アルジトール、アルドン酸、エステル化糖などの誘導体化糖、および/または糖重合体は賦形剤として存在してもよい。特異的炭水化物賦形剤は、例えば、フルクトース、麦芽糖、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボースなどの単糖類;乳糖、ショ糖、トレハロース、セロビオースなどの二糖類;ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなどの多糖類;マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシル、ソルビトール、ミオイノシトールなどのアルジトールを含む。
【0196】
賦形剤はまた、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせなどの無機塩類または緩衝液を含むことができる。
【0197】
組成物はまた、微生物増殖を防ぐ、または阻止するための抗菌剤を含むことができる。本発明の一つ以上の実施態様に適切な抗菌剤の限定されない例は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム,ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール,フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメルゾル、およびそれらの組み合わせを含む。
【0198】
抗酸化物質は、組成物にも同様に存在することができる。抗酸化物質を酸化防止のために使用することによって、複合体または調製の他の成分の劣化を防ぐ。本発明の一つ以上の実施態様で使用するために適切な抗酸化物質は、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせを含む。
【0199】
いくつかの状況において、界面活性剤は賦形剤として存在することができる。典型的な界面活性剤は、「ツイーン20」および「ツイーン80」などのポリソルベートならびにF68およびF88(両方ともBASF、Mount Olive、ニュージャージーから入手可能)などのプルロニック;ソルビタンエステル;レシチンおよび他のホスファチジルコリンなどのリン脂質、ホスファチジルエタノールアミン(リポソーム型でないものが好ましいが)、脂肪酸ならびに脂肪酸エステルなどの脂質;コレステロールなどのステロイド;ならびにEDTA、亜鉛および他のそのような適切な陽正イオンなどのキレート剤を含む。
【0200】
酸または塩基は、組成物に賦形剤として存在することができる。使用することができる酸の限定されない例は、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびそれらの組み合わせより成る群から選択されるそれらの酸を含む。適切な塩基の例は、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、苛性カリ、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、カリウムフマル酸カリウム、およびそれらの組み合わせより成る群から選択される塩基を含むが、それらに限定されない。
【0201】
組成物での複合体(すなわち、活性剤と重合体試薬との間に形成される複合体)の量は、多くの要因に応じて異なるが、組成物が単位用量容器(例えば、水薬瓶)に保存されている場合が、最も有利に治療効果のある用量となる。さらに、調合薬はシリンジに保管することができる。治療効果のある用量は、どの量が臨床的に所望の評価項目を実現するかを決定するために、複合体の投与量増加を繰り返すことによって実験的に決定することができる。
【0202】
組成物での任意の個別の賦形剤の量は、賦形剤の活性および組成物の特殊な必要性に応じて異なる。通常、任意の個別の賦形剤の最適量は、定期実験を通して、すなわち、様々な量の賦形剤(低から高に及ぶ)を含有する組成物を調製する、安定性および他のパラメーターを調べる、次いで深刻な副作用がなく最適の性能が得られる範囲を決定することによって決定する。
【0203】
しかしながら一般に、賦形剤は約1重量%から約99重量%、好ましくは約5重量%から約98重量%、より好ましくは約15から約95重量%の賦形剤の量で、濃度30重量%未満が最も好ましい組成物に存在することになる。
【0204】
他の賦形剤とともにこれらの前述の医薬品賦形剤は、「Remington:The Science&Practice of Pharmacy」、第19版、Williams&Williams、(1995)、「Physician’s Desk Reference」、第52版、Medical Economics、ニュージャージー州、モントベール(1998)、およびKibbe、A.H.、Handbook of Pharmaceutical Excipients、第3rd版、American Pharmaceutical Association、ワシントンD.C.、2000に開示されている。
【0205】
組成物はすべての種類の製剤、および特に注射のために適したもの、例えば、液体と同様にもどすことができる粉剤または凍結乾燥物を包含する。注射の前に固体組成物を再構成するために適切な希釈剤の例は、注射のための静菌性水、水中5%のD形グルコース、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水およびそれらの組み合わせを含む。液剤組成物に関しては、溶液および懸濁液が想定される。
【0206】
本発明の一つ以上の実施態様の組成物は通常、必ずではないが、注射により投与され、従って一般に、投与の直前に溶液または懸濁液となる。調合薬はまた、シロップ剤、クリーム、軟膏、錠剤、粉剤などの他の形態を取ることができる。投与の他の形態はまた、肺、直腸、経皮、経粘膜、口、くも膜下腔、皮下、動脈、その他などが含まれる。
【0207】
本発明はまた、本明細書に記載の複合体による治療に応答する病気に苦しむ患者に、本明細書に記載の複合体を投与するための方法を提供する。前記方法は、一般には注射により、治療効果量(好ましくは薬剤組成物の一部として投与)の複合体を患者に投与する手順を含む。先述のように、複合体は静脈注射によって、またはそれほど好ましくはないが筋内注射もしくは皮下注射によって非経口的に投与することができる。非経口投与の適切な処方タイプは、とりわけ注射準備のできている溶液、使用前の溶媒と組み合せた乾燥粉剤、注射準備のできている懸濁液、使用前の賦形剤と組み合わせ乾燥不溶性組成物および投与前の希釈用原液を含む。
【0208】
投与の方法は、複合体の投与によって治療または防ぐことができるいかなる病気も治療するのに使用してもよい。当業者は、本発明の複合体がどの病気を効果的に治療できるかを理解する。例えば、複合体は、骨髄抑制化学療法、骨髄移植、重度の慢性好中球減少症、後天性免疫不全症候群(AIDS)、再生不良性貧血、ヘアリー細胞白血病、骨髄異形成、顆粒球減少症(例えば、薬剤誘発顆粒球減少症、先天性顆粒球減少症、同種免疫性新生児好中球減少)に苦しむ患者を治療するのに使用することができる。さらに、複合体は、末梢血前駆細胞収集を必要としている患者に使用することができる。有利に、複合体は、その他の活性剤の投与の前、同時、または後に患者に投与することができる。
【0209】
投与する実際の用量は、治療する病気の重度と同様に被験者の年齢、体重、全身状態、ヘルスケアの専門家の判断、および投与される複合体に応じて異なる。治療効果量は当業者には周知であり、および/または関連参考テキストおよび文献に記載されている。一般に、治療効果量は、約0.001mgから100mg、好ましくは0.01mg/日から75mg/日の用量、より好ましくは0.10mg/日から50 mg/日の用量に及ぶ。所与の用量は、例えば、所望の(例えば、健康的)白血球を達成するまで、定期的に投与することができる。
【0210】
任意の所与の複合体の単位用量(ここでも、好ましくは調合薬の一部として提供される)は、臨床従事者の判断、患者の必要性その他に応じて様々な服薬スケジュールで投与することができる。特定の服薬スケジュールは当業者には周知であるか、または日常的方法を使用して実験的に決定することができる。典型的な服薬スケジュールは、1日1回、週3回、週2回、週1回、月2回、月1回、およびそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない。臨床的評価項目が達成されると、組成物の服薬は中断する。
【0211】
本明細書に記載の特定の複合体を投与する1つの利点は、個別の水溶性重合体部分を開裂できることである。そのような効果は、身体からのクリアランスが重合体の大きさのために潜在的に問題である場合に有利である。最適には、それぞれの水溶性重合体部分の開裂は、アミド、炭酸塩またはエステル含有の連結などの、生理学的に開裂可能および/または酵素的に分解可能な連結の使用により促進される。このようにして、複合体のクリアランス(個別の水溶性重合体部分の開裂による)は、所望のクリアランス性を与える官能基の重合体分子の大きさおよび型を選択することによって調節することができる。当業者は、回裂可能な官能基と同様に重合体の適切な分子の大きさを決定することができる。例えば、日常的実験を利用して、当業者は、まず異なる重合体重量および開裂可能な官能基により様々な重合体誘導体を調製し、次いで重合体誘導体を患者に投与し、定期的な採血および/または採尿によってクリアランスの分析結果(例えば、定期的な採血または採尿によって)を得ることによって、適切な分子の大きさおよび開裂可能な官能基を決定することができる。一連のクリアランス分析結果がそれぞれの試験済み複合体のために得られると、適切な複合体を同定することができる。
【0212】
本発明はその好ましい特定の実施態様とともに記載してきたが、以下の実施例と同様に前述の記載は、例示することを目的とし、本発明の範囲を限定しないことが理解されるべきである。本発明の範囲内の他の側面、利点および修正は、本発明に関係する当業者には明白となるであろう。
【0213】
実験
本発明の実施は、他に指示がない限り、当技術の範囲内である、有機合成、生化学、タンパク質精製などの従来の手法を用いる。例えば、J.March、Advanced Organic Chemistry:Reactions Mechanisms and Structure、第4版(ニューヨーク:Wiley−Interscience、1992)、上記を参照されたい。
【0214】
以下の実施例において、使用した数字(例えば、量、温度など)に関して正確さを確保する努力をしてきたが、いくつかの実験誤差および偏差を考慮に入れるべきである。他に指示がない限り、温度は摂氏温度、また圧力は海抜ゼロの大気圧またはそれに近い地点である。以下の実施例のそれぞれは、本明細書に記載の実施態様の一つ以上を実行するために当業者に有益であると見なされる。
【0215】
組換えメチオニルヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)は、大腸菌によって生成される非グリコシル化タンパク質であり、実施例1〜5で使用した。組換えタンパク質は、位置17で一つの遊離システインを有する175のアミノ酸から構成される(リーディングメチオニン残基を無視する)。完全なアミノ酸配列は以下の通りであり、
【0216】
【化26】
また配列番号1に相当し、ここではn’’’は1である。
【0217】
SDS−PAGE分析
SDS−PAGE分析を実行したときは、試料はBio−Radシステム(Mini−PROTEAN III Precast Gel Electrophoresis System)、およびInvitrogenシステム(XCell SureLock Mini−Cell)を使用して、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析した。試料は試料緩衝液と混ぜ合わせた。次いで、調製済み試料をゲルに取り込み、約30分間泳動させた。
【0218】
RP−HPLC分析
RP−HPLC 分析を実施例1A、2B、3Aおよび6で実行したときは、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)はAgilent 1100 HPLCシステム(Agilent)で実行した。試料はPRP−3カラム(粒径3μm、75×4.6mm、Hamilton)、ならびに水中0.1%のトリフルオロ酢酸およびアセトニトリル(緩衝液B)中0.1%のトリフルオロ酢酸から成る移動相を使用して分析した。カラムの流速は0.5ml/分であった。タンパク質およびPEGタンパク質複合体は40分にわたり線形勾配により溶出し、280nmの紫外検出を使用して可視化した。
【0219】
RP−HPLC 分析を実施例1B、1Cおよび1Dで実行したときは、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)はAgilent 1100 HPLCシステム(Agilent)で実行した。試料はZorbax300SB−C3カラム(粒径3.5μm、150mm×3.0mm、Agilent)、ならびに水(緩衝液A)中0.1%のトリフルオロ酢酸およびアセトニトリル(緩衝液B)中0.1%のトリフルオロ酢酸から成る移動相を使用して分析した。カラムの流速は0.3ml/分であった。タンパク質およびPEGタンパク質複合体は35分にわたり線形勾配により溶出し、280nmの紫外を使用して検出した。
【0220】
存在する場合、RP−HPLCにより同定される二量体は、タンパク質二量体会合体を示す(また任意の重合体成分を欠く)。
【0221】
陽イオン交換クロマトグラフィー
陽イオン交換クロマトグラフィーを実行する際は、HiTrap SP Sepharose HP陽イオン交換クロマトグラフィー(Amersham Biosciences)をAKTAprimeシステム(Amersham Biosciences)とともに使用し、PEG−G−CSF複合体を精製した。調製済み共役溶液のそれぞれに関しては、20mMのNaOAc緩衝液、pH4.0(緩衝液A)で予め平衡化したカラムに共役溶液を取り込み、次いで10カラム体積の緩衝液Aで洗浄し、いかなる未反応PEG試薬も除去した。その後、0〜100%緩衝液B(1.0M NaCl緩衝液、pH4.0による20mMのNaOAc)による緩衝液Aの勾配を増した。溶離剤は280nmの紫外検知器によって監視した。留分をため、個別の複合体の純度はRP−HPLCまたはSDS−PAGEによって決定した。
【0222】
収率パーセントおよび共役溶液
ペグ化の収率パーセントとは、モノペグ化種の収率を指す。用語「共役溶液」および「反応混合物」は同義であり、両方とも記載の反応または処理から生じる組成物を表す。
【実施例】
【0223】
実施例1A
以下によるG−CSFのペグ化
直鎖mPEG−オルトピリジルジスルフィド試薬(mPEG−OPSS)、10kDa
【0224】
【化27】
アルゴン下において−20℃で保存したmPEG−OPSS、10kDaは周囲温度まで温めた。50倍過剰(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)の温めたmPEG−OPSSをジメチルスルホキシド(「DMSO」)中に溶解させ、10%の試薬液を形成した。前記10%の試薬液をG−CSF原液(リン酸ナトリウム緩衝液0.4mg/ml、pH7.0)のアリコートに素早く加え、よく混ぜ合わせた。ジスルフィド連結によるG−CSFの位置17でのmPEG−OPSSの遊離(すなわち、非イントラタンパク質ジスルフィド結合関与)システイン残基への結合が可能となるように、反応液をRotoMix(48200型、Thermolyne、アイオワ州デビューク)に載せ、37℃で共役を促進させた。30分後、別の50倍過剰のmPEG−OPSS、10kDaを反応液に加え、続いてまず37℃で30分間、次いで室温で2時間混ぜ合わせて、mPEG10kDa−G−CSF共役溶液を形成した。mPEG10kDa−G−CSF共役溶液はSDS−PAGEおよびRP−HPLCで特性化した。
【0225】
図1は、mPEG10kDa−G−CSF共役溶液のRP−HPLC分析後のクロマトグラムを示す。ペグ化反応はmPEG10kDa−G−CSF複合体の36%を生成した(G−CSFのシステイン残基でのモノペグ化複合体)。図2は、mPEG10kDa−G−CSF共役溶液のSDS−PAGE分析を示す。陽イオン交換クロマトグラフィーを複合体を精製するのに使用した。図3は、陽イオン交換精製後のクロマトグラムを示す。
【0226】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するmPEG−OPSSを使用して調製することができる。
【0227】
実施例1B
以下によるG−CSFのPEG化
直鎖mPEG−オルトピリジルジスルフィド試薬(mPEG−OPSS)、10kDa
【0228】
【化28】
アルゴン下において−20℃で保存したmPEG−OPSS、10kDaは周囲温度まで温めた。50倍過剰(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)の温めたmPEG−OPSSを50%のDMSO中に溶解させ、10%の試薬液を形成した。10%の試薬液をG−CSF原液(10mMのリン酸ナトリウム緩衝液3.0mg/ml、1%(w/v)ショ糖、pH6.7)のアリコートに素早く加え、よく混ぜ合わせた。ジスルフィド連結によるG−CSFの位置17でのmPEG−OPSSの遊離(すなわち、非イントラタンパク質ジスルフィド結合関与)システイン残基への結合が可能となるように、反応液をRotoMix(48200型、Thermolyne、アイオワ州デビューク)に載せ、37℃で1時間、次いで室温で一晩共役を促進させることによってmPEG10kDa−G−CSF共役溶液を形成した。mPEG10kDa−G−CSF共役溶液はSDS−PAGEおよびRP−HPLCで特性化した。
【0229】
図4は、共役溶液のRP−HPLC分析後のクロマトグラムを示す。ペグ化反応は34%のmPEG10K−G−CSF複合体を生成した。
【0230】
図5は、共役溶液のSDS−PAGE分析を示す。
【0231】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するmPEG−OPSSを使用して調製することができる。
【0232】
実施例1C
以下によるG−CSFのPEG化
直鎖mPEG−オルトピリジルジスルフィド試薬(mPEG−OPSS)、10kDa
【0233】
【化29】
アルゴン下において−20℃で保存したmPEG−OPSS、10kDaは周囲温度まで温めた。温めたmPEG−OPSS(37mg)をアセトニトリル中に溶解させ、試薬液を形成した。試薬液を1mlのG−CSF溶液(リン酸ナトリウム緩衝液0.5mg/ml、pH6.9)に素早く加え、よく混ぜ合わせた。ジスルフィド連結によるG−CSFの位置17でのmPEG−OPSSの遊離(すなわち、非イントラタンパク質ジスルフィド結合関与)システイン残基への結合が可能となるように、反応液をRotoMix(48200型、Thermolyne、アイオワ州デビューク)に載せ、37℃で30分、次いで室温で2時間共役を促進させることによってmPEG10kDa−G−CSF共役溶液を形成した。mPEG10kDa−G−CSF共役溶液はRP−HPLCで特性化した。
【0234】
図6は、mPEG10kDa−G−CSF共役溶液のRP−HPLC分析後のクロマトグラムを示す。ペグ化反応は56%のmPEG10K−G−CSF複合体を生成した。
【0235】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するmPEG−OPSSを使用して調製することができる。
【0236】
実施例1D
以下によるG−CSFのPEG化
直鎖mPEG−オルトピリジルジスルフィド試薬(mPEG−OPSS)、10kDa
【0237】
【化30】
アルゴン下において−20℃で保存したmPEG−OPSS、10kDaは周囲温度まで温めた。温めたmPEG−OPSS(17mg)をアセトニトリル中に溶解させ、試薬液を形成した。試薬液を0.2mlのG−CSF溶液(10mMのリン酸ナトリウム緩衝液0.3mg/ml、1% (w/v)ショ糖、pH7.0)素早く加え、よく混ぜ合わせた。ジスルフィド連結によるG−CSFの位置17でのmPEG−OPSSの遊離(すなわち、非イントラタンパク質ジスルフィド結合関与)システイン残基への結合が可能となるように、反応液をRotoMix(48200型、Thermolyne、アイオワ州デビューク)に載せ、37℃で1時間、次いで室温で2時間共役を促進させることによってmPEG10kDa−G−CSF共役溶液を形成した。mPEG10kDa−G−CSF共役溶液はRP−HPLCで特性化した。
【0238】
図7は、mPEG10kDa−G−CSF共役溶液のRP−HPLC分析後のクロマトグラムを示す。ペグ化反応は73%のmPEG10K−G−CSF複合体を生成した。
【0239】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するmPEG−OPSSを使用して調製することができる。
【0240】
実施例2A
直鎖PEG−ジオルトピリジルジスルフィド試薬、2kDa、および直鎖mPEG−チオール試薬、20kDaによるG−CSFのペグ化
【0241】
【化31】
【0242】
【化32】
この実施例(実施例2Bと同様に)は、比較的小さな重量平均分子量を有する重合体試薬のG−CSF部分への最初の結合、続いて比較的大きな重量平均分子量重合体試薬の、比較的小さな重量平均分子量重合体試薬のG−CSF部分への結合から形成された複合体の重合体への結合を伴う手法に依存した。この手法を用いることによって、G−CSFの部分的に埋もれた遊離チオール含有システイン残基を修飾することが可能であった。二官能性PEG−DiOPSS、2kDaは基本的にジスルフィド連結、続いて別のジスルフィド連結により、チオール終端ペグの、PEG−OPSS、2kDaの暴露残基への結合により立体障害遊離チオールに挿入した。
【0243】
図式的に、前記手法を以下に示す[比較的低い重量平均分子量「PEGB」を有する重合体試薬が最初に共役される部分(A)に結合し、続いて比較的高い重量平均分子量重合体試薬(図式中PEGA)の、低い重量平均分子量試薬の共役部分への結合から形成される複合体の重合体部分へ結合する]。以下に示した構造は単なる実例であり、様々な構造の重合体試薬を使用することができる。
【0244】
【化33】
アルゴン下において−20℃で保存したPEG−DiOPSS、2kDは周囲温度まで温めた。50倍過剰(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)の温めたPEG−DiOPSSをDMSO中に溶解させ、10%の試薬液を形成した。前記10%の試薬液をG−CSF原液(リン酸ナトリウム緩衝液0.4mg/ml、pH7.0)のアリコートに素早く加え、よく混ぜ合わせた。ジスルフィド連結によるG−CSFの位置17でのPEG−DiOPSSの遊離(すなわち、非イントラタンパク質ジスルフィド結合関与)システイン残基への共役を促進するために、反応液をRotoMix(48200型、Thermolyne、アイオワ州デビューク)に載せ、37℃で1時間、次いで室温で2時間混ぜ合わせることによってPEG2kDa−G−CSF反応混合物を得た。反応を完了した後、反応液はリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0で透析し、過剰遊離PEG−DiOPSSを除去した。次いで50倍過剰のmPEG−SH、20kDa(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)を透析済み共役溶液に加え、続いて室温で1時間、次いで4℃で一晩混ぜ合わせて、mPEG20kDa−PEG2kDa−G−CSF共役溶液を形成した。mPEG20kDa−PEG2kDa−G−CSF共役溶液はSDS−PAGEおよびRP−HPLCで特性化した。
【0245】
図8は、mPEG20kDa−PEG2kDa−G−CSF共役溶液のSDS−PAGE分析を示す。PEG−diOPSSによるペグ化の第一の手順は、58%のPEG2kDa−G−CSF複合体を生成したが、mPEG−SHによる反応の第二の手順は、42%のmPEG20kDa−PEG2kDa−G−CSF複合体を生成した。
【0246】
陽イオン交換クロマトグラフィーは最終複合体を精製するのに使用した。図9は、陽イオン交換精製後のクロマトグラムを示す。
【0247】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するPEG−OPSSおよびmPEG−SHを使用して調製することができる。
【0248】
実施例2B
直鎖PEG−ジオルトピリジルジスルフィド試薬、2kDa、および直鎖mPEG−チオール試薬、20kDaによるG−CSFのペグ化
【0249】
【化34】
【0250】
【化35】
アルゴン下において−20℃で保存したPEG−DiOPSS、2kDは周囲温度まで温めた。100倍過剰(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)の温めたPEG−DiOPSSをDMSO中に溶解させ、10%の試薬液を形成した。10%の試薬液をG−CSF原液(リン酸ナトリウム緩衝液0.5mg/ml、pH7.0)のアリコートに素早く加え、よく混ぜ合わせた。ジスルフィド連結によるG−CSFの位置17でのPEG−DiOPSSの遊離(すなわち、非イントラタンパク質ジスルフィド結合関与)システイン残基への共役を促進するために、反応液をRotoMix(48200型、Thermolyne、アイオワ州デビューク)に載せ、37℃で1時間、次いで室温で3時間半混ぜ合わせた。反応を完了した後、反応液はリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0で透析し、過剰遊離PEG−DiOPSSを除去した。その後、次いで100倍過剰のmPEG−SH、20kDa(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)を透析済み共役溶液に加え、続いて室温で一晩混ぜ合わせて、mPEG20kDa−PEG2kDa−G−CSF共役溶液を形成した。mPEG20kDa−PEG2kDa−G−CSF共役溶液はSDS−PAGEおよびRP−HPLCで特性化した。
【0251】
図10は、共役溶液のRP−HPLC分析後のクロマトグラムを示す。ペグ化反応は25%のmPEG20kDa−PEG2kDa−G−CSF複合体を生成した。
【0252】
SP Sepharose High Performance交換媒体(Amersham Biosciences、スウェーデン、ウプサラ)およびNaOAc緩衝液を使用した陽イオン交換クロマトグラフィー法を用い、mPEG20kDa−PEG2kDa−G−CSF複合体を精製した。
【0253】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するPEG−DiOPSSおよびmPEG−SHを使用して調製することができる。
【0254】
実施例3A
直鎖PEG−ジオルトピリジルジスルフィド試薬、2kDa、および直鎖mPEG−チオール試薬、30kDaによるG−CSFのペグ化
【0255】
【化36】
【0256】
【化37】
この実施例(実施例3Bと同様に)は、比較的小さな重量平均分子量を有する重合体試薬のG−CSF部分への最初の結合、続いて比較的大きな重量平均分子量重合体試薬の、比較的小さな重量平均分子量重合体試薬のG−CSF部分への結合から形成された複合体の重合体への結合を伴う手法に依存した。この手法を用いることによって、G−CSFの部分的に埋もれた遊離チオール含有システイン残基を修飾することが可能であった。二官能性PEG−DiOPSS、2kDaは基本的にジスルフィド連結、続いて別のジスルフィド連結により、チオール終端ペグの、PEG−OPSS、2kDaの残基への結合により立体障害遊離チオールに挿入した。
【0257】
アルゴン下において−20℃で保存したPEG−DiOPSS、2kDは周囲温度まで温めた。50倍過剰(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)の温めたPEG−DiOPSSをDMSO中に溶解させ、10%の試薬液を形成した。前記10%の試薬液をG−CSF原液(リン酸ナトリウム緩衝液0.4mg/ml、pH7.0)のアリコートに素早く加え、よく混ぜ合わせた。ジスルフィド連結によるG−CSFの位置17でのPEG−DiOPSSの遊離(すなわち、非イントラタンパク質ジスルフィド結合関与)システイン残基への共役を促進するために、反応液をRotoMix(48200型、Thermolyne、アイオワ州デビューク)に載せ、37℃で1時間、次いで室温で2時間混ぜ合わせることによってPEG2kDa−G−CSF反応混合物を得た。反応を完了した後、反応液はリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0で透析し、過剰遊離PEG−DiOPSSを除去した。次いで50倍過剰のmPEG−SH、30kDa(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)を透析済み共役溶液に加え、続いて室温で1時間、次いで4℃で一晩混ぜ合わせて、mPEG30kDa−PEG2kDa−G−CSF共役溶液を形成した。mPEG30kDa−PEG2kDa−G−CSF共役溶液はSDS−PAGEおよびRP−HPLCで特性化した。
【0258】
図11は、mPEG30kDa−PEG2kDa−G−CSF共役溶液のRP−HPLC分析後のクロマトグラムを示す。ペグ化反応は20%のmPEG30kDa−PEG2kDa−G−CSF複合体を生成した。
【0259】
陽イオン交換クロマトグラフィーはmPEG30kDa−PEG2kDa−G−CSF複合体を精製するのに使用した。図12は、陽イオン交換精製後のクロマトグラムを示す。
【0260】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するPEG−OPSSおよびmPEG−SHを使用して調製することができる。
【0261】
実施例3B
直鎖PEG−ジオルトピリジルジスルフィド試薬、2kDa、および直鎖mPEG−チオール試薬、30kDaによるG−CSFのペグ化
【0262】
【化38】
【0263】
【化39】
アルゴン下において−20℃で保存したPEG−DiOPSS、2kDは周囲温度まで温めた。100倍過剰(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)の温めたPEG−DiOPSS、2kDaをDMSO中に溶解させ、10%の試薬液を形成した。10%の試薬液をG−CSF原液(リン酸ナトリウム緩衝液0.5mg/ml、pH7.0)のアリコートに素早く加え、よく混ぜ合わせた。ジスルフィド連結によるG−CSFの位置17でのPEG−DiOPSSの遊離(すなわち、非イントラタンパク質ジスルフィド結合関与)システイン残基への共役を促進するために、反応液をRotoMix(48200型、Thermolyne、アイオワ州デビューク)に載せ、37℃で1時間、次いで室温で3時間半混ぜ合わせた。反応を完了した後、反応液はリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0で透析し、過剰遊離PEG−DiOPSSを除去した。次いで100倍および50倍過剰のmPEG−SH、30kDa(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)を透析済み共役溶液に加え、続いて室温で一晩混ぜ合わせて、mPEG30kDa−PEG−2kDa−G−CSF共役溶液を形成した。共役溶液はSDS−PAGEおよびRP−HPLCで特性化した。
【0264】
ペグ化反応は21%のmPEG30kDa−PEG2kDa−G−CSF複合体を生成した。
【0265】
SP Sepharose High Performance 交換媒体(Amersham Biosciences、スウェーデン、ウプサラ)およびNaOAc緩衝液を使用した陽イオン交換クロマトグラフィー法を用い、mPEG30K−PEG2K−G−CSF複合体を精製した(図13参照)。
【0266】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するPEG−DiOPSSおよびmPEG−SHを使用して調製することができる。
【0267】
実施例4
9−ヒドロキシメチル−2,7−ジ[mPEG(20,000)−アミドグルタルアミド]フルオレン−N−ヒドロキシこはく酸イミド試薬(「分岐」試薬)、40kDaによるG−CSFの分解可能なペグ化
【0268】
【化40】
アルゴン下において−20℃で保存したG2−PEG2−FMOC−NHS、40kDaは周囲温度まで温めた。5倍過剰(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)の温めたG2−PEG2−FMOC−NHSを2mMのHCl中に溶解させ、10%の試薬液を形成した。前記10%の試薬液をG−CSF原液(リン酸ナトリウム緩衝液0.4mg/ml、pH7.0)のアリコートに素早く加え、よく混ぜ合わせた。ペグ試薬を加えた後、従来の手法を使用して、反応混合物のpHを7.0に決定し調節した。アミド連結によるG2−PEG2−FMOC−NHSのG−CSFへの結合が可能となるように、反応液を3時間Slow Speed Lab Rotatorに載せ、室温での共役を促進することによってG2−PEG2−FMOC−G−CSF共役溶液を形成した。1Mの酢酸を加えてpHを4.0に下げ、反応を停止させた。G2−PEG2−FMOC−G−CSF共役溶液はSDS−PAGEで特性化した。図14に示すSDS−PAGE結果のレーン4を参照されたい。
【0269】
ペグ化反応は、52%の1−mer(単一共役またはG−CSFに結合される一つのPEG)および15%の2−mer(二重共役またはG−CSFに結合される二つのPEG)種を生成した。SP Sepharose High Performance交換媒体およびNaOAc(酢酸ナトリウム)緩衝液を使用した陽イオン交換クロマトグラフィー法を用い、複合体を精製した。
【0270】
PEG構造での分解可能な連結のために、G−CSFは生理学的条件下で、遅速で複合体から遊離すると予測される。このための証拠は、pH7.4、37℃でインキュベートした時点での時間の関数としての残る複合体のHPLCピーク面積として表される、G2−PEG2−FMOC−40K−G−CSF単一共役の放出特性(図15参照)において示される。G2−PEG2−FMOC−40K−G−CSF単一共役の半減期を、加水分解速度の線形プロットから98時間と計算された(図16参照)。
【0271】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するG2−PEG2−FMOC−NHS試薬を使用して調製することができる。
【0272】
実施例5
9−ヒドロキシメチル−[4−カルボキシアミド mPEG(10,000)−7−アミドグルタルアミmPEG(10,000)]フルオレン−N−ヒドロキシこはく酸イミド試薬、20kDaによるG−CSFの分解可能なペグ化
【0273】
【化41】
アルゴン下において−20℃で保存したCG−PEG2−FMOC−NHS、20kDaは周囲温度まで温めた。7倍過剰(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)の温めたCG−PEG2−FMOC−NHSを2mMのHCl中に溶解させ、10%の試薬液を形成した。前記10%の試薬液をG−CSF原液(リン酸ナトリウム緩衝液0.4mg/ml、pH7.0)のアリコートに素早く加え、よく混ぜ合わせた。ペグ試薬を加えた後、従来の手法を使用して、反応混合物のpHを7.0に決定し調節した。アミド連結によるCG−PEG2−FMOC−NHSのG−CSFへの結合が可能となるように、反応液を3時間Slow Speed Lab Rotatorに載せ、室温での共役を促進することによってCG−PEG2−FMOC−G−CSF共役溶液を形成した。1Mの酢酸を加えてpHを4.0に下げ、反応を停止させた。CG−PEG2−FMOC−G−CSF共役溶液はSDS−PAGEで特性化した。図14に示すSDS−PAGE結果のレーン2を参照されたい。
【0274】
ペグ化反応は、45%の1−mer(単一共役またはG−CSFに結合される一つのPEG)および26%の2−mer(二重共役またはG−CSFに結合される二つのPEG)種を生成した。SP Sepharose High Performance交換媒体およびNaOAc緩衝液を使用した陽イオン交換クロマトグラフィー法を用い、複合体を精製した。
【0275】
PEG構造での分解可能な連結のために、G−CSFは生理学的条件下で、PEG−G−CSF 複合体からゆっくり遊離すると予測される。このための証拠は、pH7.4、37℃でインキュベートした時点での時間の関数としての残る複合体のHPLCピーク面積として表されるCG−PEG2−FMOC−20K−G−CSF単一共役の放出特性(図17参照)において示される。CG−PEG2−FMOC−20K−G−CSF単一共役の半減期は、加水分解速度の線形プロットから60時間として計算した(図18参照)。
【0276】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するCG−PEG2−FMOC−NHS試薬を使用して調製することができる。
【0277】
実施例6
PEG2000−ジ−((CH2)4−オルトピリジルジスルフィド試薬)および分岐PEG240,000−チオールによるG−CSFのペグ化
【0278】
【化42】
【0279】
【化43】
アルゴン下において−20℃で保存したPEG2,000−ジ−(4C−OPSS)(米国特許出願公開第2006/0135586の実施例2で調製されている)を周囲温度まで温めた。50倍過剰(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)の温めたPEG2,000−ジ−(4C−OPSS)をDMSO中に溶解させ、10%の試薬液を形成した。前記10%の試薬液をG−CSF原液(リン酸ナトリウム緩衝液0.4mg/ml、pH7.0)のアリコートに素早く加え、よく混ぜ合わせた。溶液をRotoMix(48200型、Thermolyne、アイオワ州デビューク)に載せ、37℃で2時間、次いで室温で2時間混ぜ合わせた。反応を完了した後、反応液はリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0で透析し、過剰PEG2,000−ジ−(4C−OPSS)を除去した。
【0280】
次いで75倍過剰(G−CSFに対して)のPEG240,000−チオール(Nektar Therapeutics、アラバマ州ハンツビル)を透析済み共役溶液に加え、続いて室温で3時間、次いで4℃で一晩混ぜ合わせて、PEG240,000−PEG2,000−G−CSF複合体を形成した。複合体はSDS−PAGEおよびRP−HPLCで特性化した。図19に示すように、獲得した複合体の最終収率は35%であった。
【0281】
実施例7(比較)
PEG2000−ジ−((CH2)_オルトピリジルジスルフィド試薬)およびPEG240,000−チオールによるG−CSFのペグ化反応
【0282】
【化44】
【0283】
【化45】
4つの炭素リンカーではなく2つの炭素リンカーを有する低分子量PEGチオール試薬を使用して、実質的に、実施例6の反応手順を繰り返した。
【0284】
したがって、アルゴン下において−20℃で保存した、Nektar Therapeutics、アラバマ州ハンツビルから入手したPEG2,000−ジ−(2C−OPSS)を周囲温度まで温めた。50倍過剰(G−CSF原液の測定アリコートでのG−CSFの量に対して)の試薬をDMSO中に溶解させ、10%の溶液を形成した。この溶液をG−CSF原液(リン酸ナトリウム緩衝液0.4mg/ml、pH7.0)のアリコートに素早く加え、よく混ぜ合わせた。反応溶液をRotoMix(48200型、Thermolyne、アイオワ州デビューク)に載せ、37℃で2時間、次いで室温で2時間混ぜ合わせた。反応を完了した後、反応液はリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0で透析し、過剰PEG2,000−ジ−(2C−OPSS)を除去した。
【0285】
75倍過剰(G−CSFに対して)の分岐PEG240,000−チオール(Nektar Therapeutics、アラバマ州ハンツビル)を透析済み共役溶液に加え、続いて室温で3時間、4℃で一晩混ぜ合わせた。しかしながら、SDS−PAGEおよびRP−HPLC分析は、検出可能量のPEG240,000−PEG2,000−G−CSF複合体を示さなかった。
【0286】
この事実は、エチレン(C2)−連結PEG−OPSS試薬が還元開裂を受け、それが標的タンパク質と反応する前後に試薬を効果的に破壊することを示唆している。ブチレン(C4)−連結試薬は、そのような開裂にに対してより安定性があり、その結果、より高い収率の複合体が得られるよう存続する。
【0287】
実施例8
一連のrhG−CSFにおけるペグ化
G−CSFは酢酸ナトリウム緩衝液、pH6.8中に溶解させ、原液を形成した。約40モル過剰(G−CSFに対して)の水中OPSS−PEG2,000 ダルトン−ヒドラジドを原液に加えて、反応液を形成した。
【0288】
【化46】
システインとスルフヒドリル反応性オルトピリジルジスルフィド基(「OPSS」)との反応が可能となるように、反応液を室温で3時間混ぜ合わせる。反応液は次いでサイズ排除クロマトグラフィーカラムを通過し、モノペグ化(「1−mer」)複合体[(G−CSF)−S−S−PEG2,000ダルトンC(O)−NH−NH2の構造を有する]に関連するピーク収集して、モノペグ化組成物を形成する。
【0289】
前記モノペグ化組成物は次いで20モル過剰のmPEG30,000 ダルトンプロピオンアルデヒド誘導体で処理し、第二の反応液を形成する。
【0290】
【化47】
前記ヒドラジドとアルデヒドの官能基との反応が可能となるように、第二の反応液を3.8に調節したpHで室温で3時間混ぜ合わせる。反応混合物の分析は、以下の構造を有するG−CSFの共役の成功を明らかにする。
(rG−CSF)−S−S−PEG2,000 ダルトンC(O)−NH−N=CHCH2CH2O(CH2CH2O)CH3。
【0291】
この同じ手法を用いて、別の複合体は別の重量平均分子量を有するPEG−OPSSおよびmPEG−プロピオンアルデヒド試薬を使用して調製することができる。
【0292】
実施例9
複合体の活性
実施例9の目的は、表4に示されているヒト組み換え顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)の複合体の有効性を評価することであった。
【0293】
【表4】
M−NFS−60マウス骨髄腫細胞(ATCC#CRL−1838)を入手し、10%FBS(HyClone)、50μMの2−メルカプトエタノール(Gibco)、および62ng/mlのヒト組換え型マクロファージコロニー刺激因子(rhM−CSF、Sigma#M6518)が添加されたRPMI−1640(ATCC#30−2001)で維持された。細胞は、2−3日ごとに、または1週間に3回、二次培養された。種子密度は、25000細胞/mLであった。細胞は、足場依存性ではない。PEG−G−CSF化合物を検査する直前に、細胞は、rhM−CSFを除去するために、PBS緩衝液で3回洗浄された。表5の手順は、以下のとおりである。
【0294】
【表5】
各共役の活性は、正常な雄Sprague−Dawleyラット(Harlan、インディアナ州インディアナポリス)において、薬力学的に決定された。動物は150−200gの体重範囲内で順序付けられ、それらのおおよその年齢は、6週間であった。それらは、配達後、研究調査の開始前に、少なくとも3日間、動物収容設備で順応された。
【0295】
1群につき4匹のラットで、10の処理群があった。各処理群は文字(AからJ)が与えられ、ラットは、表6で示されるように、各処理群に任意に割り当てられた。
【0296】
【表6】
賦形剤および試験物質の投与量(体積)は、各投薬溶液の濃度によって決定された。各ラットは、皮下注射によって、試験物質、陽性対照、または担体の単回投与を受けた。
【0297】
動物の10の群(1群につきn=8(5回の処理採取時間に対して、n=4)は、注射によって、試験物質、担体、または陽性対照の皮下投与を受け、分析のために血液試料が採取された。割り当ては、表7に示される。
【0298】
【表7】
初期試料に関しては、およそ0.5mLの全血が、尾静脈から採取された。5回目すなわち最終試料に関しては、動物は炭酸ガスで麻酔され、最大量の血液試料が心穿刺で採取された。心臓からの採取の時点は、投与後144、および168時間であった。試料は、EDTAでコーティングされた採取バイアルに置かれ、直ちに混合され、次に氷上に保管された。動物は、最終血液採取時点の後、頚部脱臼により屠殺された。血液採取の実時間は、文書で記録された。血液試料は、直ちに氷上に置かれ、分析に先立っておよそ4℃で冷蔵され保管された。血液試料は、採取の48時間以内に分析された。EDTAは、血液試料の抗凝血剤として使用された。
【0299】
測定されたパラメーター、および血液検査の方法を表8に示す。
【0300】
【表8】
各試験済み化合物の活性は、以下の図20および図21で説明される。各グラフは、濃度の関数としてのNFS細胞における増殖率を表す。2つの図の差異は、培養の長さ、すなわち、図20の48時間に対して、図21の72時間である。
【0301】
結果は、G−CSFが、各試験済みPEG−G−CSF複合体と比較した時、より低濃度で活性を有することを示唆する。グラフの結果をよりよく比較するために、データは正規化され、天然G−CSFと直接比較された。EC50(ng/mL)における活性が計算された。以下の表で比較がなされる。
【0302】
【表9】
結果は、ペグフィルグラスチム(ID#2)が、天然G−CSF(ID#1)の8分の1の効力があり、実施例1A(ID#7)で調製された共役が、16分の1の効力があり、実施例2A、2B、3A、および3Bで調製された各共役が、32分の1の効力があり、言い換えれば、1.5の対数減少を示唆する。放出可能複合体は、PEG化が非選択的であると考えられたため、あまり効力がなかった。しかしながら、放出可能複合体は、活性G−CSF分子を放出すると予測され、それによって、天然化合物と同様の十分な活性を有するであろう。予測されたとおり、高分子剤対照(ID#8)はいかなる活性も有さなかった。
【0303】
天然G−CSF(ID#1)、およびペグフィルグラスチムが、0.097ng/mLを下回る濃度で、システイン共役化合物より、よい活性を有することも認められた。しかしながら、0.097ng/mLを上回る濃度では、逆のことが認められた(すなわち、天然G−CSF(ID#1)、およびペグフィルグラスチムの細胞増殖活性は、PEG−G−CSF試料が継続的成長を示す一方で、横ばいであった)。
【0304】
体内活性に関して、好中球および白血球数が測定および比較された。下記の各グラフにおいて、総数が(両方の投与量に対して)示され、ペグフィルグラスチム(N−末端PEG化G−CSF)と比較された。すべてのグラフにおいて、小さいが明らかな用量反応が、40μg/kgおよび100μg/kgの投与量間で認められた。
【0305】
最後に、G−CSFのシステイン共役は、体外および体内の両方において陽性活性を示した。実施例1Aの複合体は、ペグフィルグラスチムに最も近い活性を有するように思われた。実施例2A、2B、3A、および3Bの複合体に対して測定された活性間に、有差異はなかった。放出可能複合体もまた、陽性活性を示した。
【0306】
【化48】
【0307】
【化49】
【0308】
【化50】
【図面の簡単な説明】
【0309】
【図1】図面1は、実施例1Aで調製した組成物に対応する図である。
【図2】図面2は、実施例1Aで調製した組成物のSDS−PAGE分析によりもたらされるゲルの複製物である。
【図3】図面3は、実施例1Aで調製した組成物に対応する図である。
【図4】図面4は、実施例1Bで調製した組成物に対応する図である。
【図5】図面5は、実施例1Bで調製した組成物のSDS−PAGE分析によりもたらされるゲルの複製物である。
【図6】図面6は、実施例1Cで調製した組成物に対応する図である。
【図7】図面7は、実施例1Dで調製した組成物に対応する図である。
【図8】図面8は、実施例2Aで調製した組成物のSDS−PAGE分析によりもたらされるゲルの複製物である。
【図9】図面9は、実施例2Aで調製した組成物に対応する図である。
【図10】図面10は、実施例2Bで調製した組成物に対応する図である。
【図11】図面11は、実施例3Aで調製した試料に対応する図である。
【図12】図面12は、実施例3Aで調製した試料に対応する図である。
【図13】図面13は、実施例3Bで調製した試料に対応する図である。
【図14】図面14は、実施例4および5で調製した組成物のSDS−PAGE分析によりもたらされるゲルの複製物である。
【図15】図面15は、実施例4に記載されるように複合体の放出特性を示す図である。
【図16】図面16は、実施例4に記載されるように複合体の加水分解速度を示す図である。
【図17】図面17は、実施例5に記載されるように複合体の放出を示す図である。
【図18】図面18は、実施例5に記載されるように複合体の加水分解速度を示す図である。
【図19】図面19は、実施例6で調製した組成物に対応する図である。
【図20】図面20および図面21は、実施例9に記載するように、48時間および72時間それぞれにおける、様々なPEG−G−CSF複合体の活性を示す図である。
【図21】図面20および図面21は、実施例9に記載するように、48時間および72時間それぞれにおける、様々なPEG−G−CSF複合体の活性を示す図である。
【図22】図面22、図面23、図面24、図面25、図面26、図面27、図面28および図面29は、実施例9に記載するように、様々なPEG−G−CSF複合体の好中球反応または白血球数のどちらかをそれぞれ示す図である。
【図23】図面22、図面23、図面24、図面25、図面26、図面27、図面28および図面29は、実施例9に記載するように、様々なPEG−G−CSF複合体の好中球反応または白血球数のどちらかをそれぞれ示す図である。
【図24】図面22、図面23、図面24、図面25、図面26、図面27、図面28および図面29は、実施例9に記載するように、様々なPEG−G−CSF複合体の好中球反応または白血球数のどちらかをそれぞれ示す図である。
【図25】図面22、図面23、図面24、図面25、図面26、図面27、図面28および図面29は、実施例9に記載するように、様々なPEG−G−CSF複合体の好中球反応または白血球数のどちらかをそれぞれ示す図である。
【図26】図面22、図面23、図面24、図面25、図面26、図面27、図面28および図面29は、実施例9に記載するように、様々なPEG−G−CSF複合体の好中球反応または白血球数のどちらかをそれぞれ示す図である。
【図27】図面22、図面23、図面24、図面25、図面26、図面27、図面28および図面29は、実施例9に記載するように、様々なPEG−G−CSF複合体の好中球反応または白血球数のどちらかをそれぞれ示す図である。
【図28】図面22、図面23、図面24、図面25、図面26、図面27、図面28および図面29は、実施例9に記載するように、様々なPEG−G−CSF複合体の好中球反応または白血球数のどちらかをそれぞれ示す図である。
【図29】図面22、図面23、図面24、図面25、図面26、図面27、図面28および図面29は、実施例9に記載するように、様々なPEG−G−CSF複合体の好中球反応または白血球数のどちらかをそれぞれ示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分解可能な連結を介し、直接または一つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して、水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSF部分の残基を含む、複合体。
【請求項2】
前記分解可能な連結は開裂可能な連結である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記G−CSF部分のアミノ基は共有結合のための部位として機能する、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
以下の構造を有する請求項1に記載の複合体であって、
【化1】
ポリ1は第一の水溶性重合体であり、
ポリ2は第二の水溶性重合体であり、
X1は第一のスペーサー部分であり、
X2は第二のスペーサー部分であり、
Hαはイオン化できる水素原子であり、
R1はHまたは有機基であり、
R2はHまたは有機基であり
(a)は0または1であり、
(b)は0または1であり、
Re1は、存在する場合、第一の電子変換基であり、
Re2は、存在する場合、第二の電子変換基であり
Y1はOまたはSであり、
Y2はOまたはSであり、
G−CSFはG−CSF部分の残基である、
請求項1に記載の共役。
【請求項5】
【化2】
からなる群から選択される請求項4に記載の複合体であって、
(n)は3から4,000であり、G−CSFはG−CSF部分の残基である、
請求項4に記載の複合体。
【請求項6】
前記G−CSF部分は組換えヒトG−CSFである、またはN末端メチオニル残基を有する組替えヒトG−CSFである、請求項1、2,3,4および5のいずれか一つに記載の複合体。
【請求項7】
以下の構造を有する共役であって、
ポリ”−(X2)b−ポリ’−(X1)a−(G−CSF)
ポリ”は第二の水溶性重合体であり、
ポリ1は第一の水溶性重合体であり、
X1は、存在する場合、一つ以上の原子を含む任意のスペーサー部分であり、
X2は一つ以上の原子を含むスペーサー部分であり、
(b)は1であり、
(a)は0または1であり、
G−CSFはG−CSF部分の残基である、
複合体。
【請求項8】
ポリ”は分岐重合体である、請求項7に記載の複合体。
【請求項9】
前記分岐重合体が以下からなる群から選択される構造を含む、請求項8に記載の複合体であって、
【化3】
(n)はそれぞれ独立に、3から4,000の値を有する整数であり、
【化4】
(n)はそれぞれ独立に、3から4,000の値を有する整数である、
請求項8に記載の複合体。
【請求項10】
ポリ”は線状重合体である、請求項7に記載の複合体。
【請求項11】
前記G−CSF部分のチオール基は、前記第一の水溶性重合体、または存在する場合、前記任意のスペーサー部分の共有結合のための部位として機能する、請求項7に記載の複合体。
【請求項12】
以下の構造を有する請求項11に記載の複合体であって、
【化5】
(n)は2から約114の整数であり、n’は2から約3,400の整数であり、G−CSFはG−CSF部分の残基である、
請求項11に記載の複合体。
【請求項13】
以下の構造を有する請求項11に記載の複合体であって、
【化6】
(n)は2から約114の整数であり、n’は2から約3,400の整数であり、G−CSFはG−CSF部分の残基である、
請求項11に記載の複合体。
【請求項14】
前記G−CSF部分は組換えヒトG−CSFである、またはN末端メチオニル残基を有する組替えヒトG−CSFである、請求項7、8、9、10、11、12および13のいずれか一つに記載の複合体。
【請求項15】
複合体を調製するための方法であって、直接または一つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して、水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSFの残基を含む共役の形成をもたらすために十分な条件下で、高分子剤およびG−CSF部分を組み合せるステップを含み、前記G−CSF部分はシステイン残基の側鎖で共有結合的に結合され、さらに前記方法は(a)変性状態を導入するステップを欠き、(b)8.5未満のpHで実行されるか、または洗浄剤を加えるステップを欠く、
方法。
【請求項16】
前記システイン残基はhG−CSFのシステイン17に対応する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記G−CSF部分は組換えヒトG−CSFである、またはN末端メチオニル残基を有する組替えヒトG−CSFである、請求項15および16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
複合体を調製するために提供される方法であって、直接または一つ以上の原子を含む第一のスペーサー部分を介して、第一の水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSF部分の残基を含む第一の複合体を含む第一の複合体組成物をもたらすために十分な条件下で、第一の高分子剤組成物をG−CSF部分組成物に加えるステップと、直接または一つ以上の原子を含む第二のスペーサー部分を介して、前記複合体の前記第一の水溶性重合体に結合される第二の水溶性重合体を含む第二の複合体組成物をもたらすために、第二の高分子剤組成物を前記第一の複合体組成物に加えるステップと、
を含む方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法により調製される、組成物。
【請求項20】
請求項18に記載の方法により調製される、組成物。
【請求項1】
分解可能な連結を介し、直接または一つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して、水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSF部分の残基を含む、複合体。
【請求項2】
前記分解可能な連結は開裂可能な連結である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記G−CSF部分のアミノ基は共有結合のための部位として機能する、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
以下の構造を有する請求項1に記載の複合体であって、
【化1】
ポリ1は第一の水溶性重合体であり、
ポリ2は第二の水溶性重合体であり、
X1は第一のスペーサー部分であり、
X2は第二のスペーサー部分であり、
Hαはイオン化できる水素原子であり、
R1はHまたは有機基であり、
R2はHまたは有機基であり
(a)は0または1であり、
(b)は0または1であり、
Re1は、存在する場合、第一の電子変換基であり、
Re2は、存在する場合、第二の電子変換基であり
Y1はOまたはSであり、
Y2はOまたはSであり、
G−CSFはG−CSF部分の残基である、
請求項1に記載の共役。
【請求項5】
【化2】
からなる群から選択される請求項4に記載の複合体であって、
(n)は3から4,000であり、G−CSFはG−CSF部分の残基である、
請求項4に記載の複合体。
【請求項6】
前記G−CSF部分は組換えヒトG−CSFである、またはN末端メチオニル残基を有する組替えヒトG−CSFである、請求項1、2,3,4および5のいずれか一つに記載の複合体。
【請求項7】
以下の構造を有する共役であって、
ポリ”−(X2)b−ポリ’−(X1)a−(G−CSF)
ポリ”は第二の水溶性重合体であり、
ポリ1は第一の水溶性重合体であり、
X1は、存在する場合、一つ以上の原子を含む任意のスペーサー部分であり、
X2は一つ以上の原子を含むスペーサー部分であり、
(b)は1であり、
(a)は0または1であり、
G−CSFはG−CSF部分の残基である、
複合体。
【請求項8】
ポリ”は分岐重合体である、請求項7に記載の複合体。
【請求項9】
前記分岐重合体が以下からなる群から選択される構造を含む、請求項8に記載の複合体であって、
【化3】
(n)はそれぞれ独立に、3から4,000の値を有する整数であり、
【化4】
(n)はそれぞれ独立に、3から4,000の値を有する整数である、
請求項8に記載の複合体。
【請求項10】
ポリ”は線状重合体である、請求項7に記載の複合体。
【請求項11】
前記G−CSF部分のチオール基は、前記第一の水溶性重合体、または存在する場合、前記任意のスペーサー部分の共有結合のための部位として機能する、請求項7に記載の複合体。
【請求項12】
以下の構造を有する請求項11に記載の複合体であって、
【化5】
(n)は2から約114の整数であり、n’は2から約3,400の整数であり、G−CSFはG−CSF部分の残基である、
請求項11に記載の複合体。
【請求項13】
以下の構造を有する請求項11に記載の複合体であって、
【化6】
(n)は2から約114の整数であり、n’は2から約3,400の整数であり、G−CSFはG−CSF部分の残基である、
請求項11に記載の複合体。
【請求項14】
前記G−CSF部分は組換えヒトG−CSFである、またはN末端メチオニル残基を有する組替えヒトG−CSFである、請求項7、8、9、10、11、12および13のいずれか一つに記載の複合体。
【請求項15】
複合体を調製するための方法であって、直接または一つ以上の原子を含むスペーサー部分を介して、水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSFの残基を含む共役の形成をもたらすために十分な条件下で、高分子剤およびG−CSF部分を組み合せるステップを含み、前記G−CSF部分はシステイン残基の側鎖で共有結合的に結合され、さらに前記方法は(a)変性状態を導入するステップを欠き、(b)8.5未満のpHで実行されるか、または洗浄剤を加えるステップを欠く、
方法。
【請求項16】
前記システイン残基はhG−CSFのシステイン17に対応する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記G−CSF部分は組換えヒトG−CSFである、またはN末端メチオニル残基を有する組替えヒトG−CSFである、請求項15および16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
複合体を調製するために提供される方法であって、直接または一つ以上の原子を含む第一のスペーサー部分を介して、第一の水溶性重合体に共有結合的に結合されるG−CSF部分の残基を含む第一の複合体を含む第一の複合体組成物をもたらすために十分な条件下で、第一の高分子剤組成物をG−CSF部分組成物に加えるステップと、直接または一つ以上の原子を含む第二のスペーサー部分を介して、前記複合体の前記第一の水溶性重合体に結合される第二の水溶性重合体を含む第二の複合体組成物をもたらすために、第二の高分子剤組成物を前記第一の複合体組成物に加えるステップと、
を含む方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法により調製される、組成物。
【請求項20】
請求項18に記載の方法により調製される、組成物。
【図1】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図5】
【図8】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図5】
【図8】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2009−503111(P2009−503111A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525234(P2008−525234)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/030481
【国際公開番号】WO2007/019331
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(500321438)ネクター セラピューティックス エイエル,コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/030481
【国際公開番号】WO2007/019331
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(500321438)ネクター セラピューティックス エイエル,コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】
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