説明

GIP上昇抑制剤

【課題】食経験が豊富で安全性に優れ、医薬または食品等として有用なGIP上昇抑制剤を提供すること。
【解決手段】カテキン類を有効成分とするGIP上昇抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬または食品として有用なGIP上昇抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
Gastric inhibitory polypeptide/Glucose-dependent insulinotropic peptide(GIP)は、1973年に発見された42アミノ酸から成る消化管ホルモンであり、炭水化物や脂質などの栄養素の摂取に伴い、胃、小腸、十二指腸上部に分布するK細胞から分泌され、胃酸分泌抑制作用や胃運動抑制作用を有することが知られている(非特許文献1〜3)。
【0003】
さらに、GIPの受容体は小腸や心臓、血管内皮細胞、骨、脾臓、肺、腎臓、甲状腺、中枢神経系などに発現していることから、GIP量を制御することにより、消化管機能、心臓機能、血管機能、骨機能、肺機能、腎臓機能、甲状腺機能、中枢神経機能等の全身各組織におけるGIPを介した諸機能を調節することが可能となると考えられ、GIP分泌やその機能制御に関する研究と素材探索が盛んに行われている。
【0004】
これまでの研究により、GIPの機能を阻害する物質として3−ブロモ−5−メチル−2−フェニルピラゾロ[1, 5−a]ピリミジン−7−オール(BMPP)が見出され、GIPの分泌を抑制する物質としてグアガム等が報告されている(特許文献1、非特許文献4〜9)。さらに近年、GIP低下作用を有する食品成分として、ジアシルグリセロール(特許文献2)、アルギン酸若しくはその塩又はヒドロキシプロピル化澱粉(特許文献3)、モノアシルグリセロール (特許文献4)などが報告されている。
【0005】
一方、カテキン類は茶やココアなどに含まれ、古来、世界中で広く摂取されてきた安全性に優れた食品成分である。カテキン類の機能性に関しては、これまでに、抗酸化作用(非特許文献10)や抗癌作用(非特許文献11)、アミラーゼ阻害作用(特許文献5)、血中脂質上昇抑制作用(特許文献6、非特許文献12)、血圧調整作用(特許文献7)、持久力向上作用(特許文献8、非特許文献13)、抗過労作用(特許文献9)、抗老化作用(特許文献10)、筋機能低下抑制作用(特許文献11)、アレルギー症状の改善作用(特許文献12、13)、胃粘膜保護作用(非特許文献14)、消化酵素活性化作用(非特許文献15)などが報告されている。しかしながら、カテキン類とGIP分泌との関係については、これまで全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−37744号公報
【特許文献2】特開2006−342084号公報
【特許文献3】特開2006−342085号公報
【特許文献4】特開2007−290989号公報
【特許文献5】特開2008−138129号公報
【特許文献6】特開2006−1909号公報
【特許文献7】特開2007−70338号公報
【特許文献8】特開2005−89384号公報
【特許文献9】特開2007−191426号公報
【特許文献10】特開2008−63318号公報
【特許文献11】特開2008−13473号公報
【特許文献12】特開2007−31314号公報
【特許文献13】特開2007−186462号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Can J Physiol Pharmacol., (1969), 47 p.113-114
【非特許文献2】J Clin Endocrinol Metab., (1973), 37, p.826-828
【非特許文献3】中外医学社 消化管 機能と病態, (1981), p.205-216
【非特許文献4】Diabet. Med., (1996), 13,p.358-364
【非特許文献5】Br. J. Nutr., (1995), 74, p.539-556
【非特許文献6】Reprod. Nutr. dev., (1992), 32, p.11-20
【非特許文献7】Br. J. Nutr., (1990), 64, p.103-110
【非特許文献8】Diabet. Med., (1990), 7, p.515-520
【非特許文献9】Br. J. Nutr., (1985), 53, p.467-475
【非特許文献10】J. Agric Food Chem. (1996), 44, p.3426-3431
【非特許文献11】J. Nutr., (2003), 133, p.3268-3274
【非特許文献12】Biosci. Biotechnol. Iochem., (2007), 71, p.971-976
【非特許文献13】Am. J. Physiol. Regul. Integr. Comp. Physiol., (2005), 288, p.R708-715
【非特許文献14】J. Agric Food Chem. (2008), 56, p.12122-12126
【非特許文献15】J. Agric Food Chem. (2005), 53, p.8706-7813
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、食経験が豊富で安全性に優れ、医薬または食品等の有効成分として有用なGIP上昇抑制剤を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、血中のGIPを低下させる物質について種々検討を行なった結果、カテキン類が優れたGIP上昇抑制作用を有し、当該作用を有する医薬品、飲食品等の有効成分として配合して使用できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(3)に係わるものである。
(1)カテキン類を有効成分とするGIP上昇抑制剤。
(2)カテキン類が、カテキン、カテキンガレート、ガロカテキン、ガロカテキンガレート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートのうち、一種以上の成分を含有するものである、上記(1)記載のGIP上昇抑制剤。
(3)カテキン類が、茶カテキンである、上記(1)記載のGIP上昇抑制剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明のGIP上昇抑制剤等は、優れた食後のGIP上昇抑制作用、食後の胃酸分泌能や胃もたれの改善作用等を有する。従って、本発明によれば、GIP上昇抑制;GIP上昇により症状の悪化する疾患の発症リスクの低下、予防、改善;胃酸分泌能や胃もたれの改善等を図るための医薬品、飲食品やペットフード等の有効成分として有用である。また、GIP量を制御することにより、消化管機能、心臓機能、血管機能、骨機能、肺機能、腎臓機能、甲状腺機能、中枢神経機能等の全身各組織におけるGIPを介した諸機能を調節することが可能となると考えられ、そのための素材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、茶カテキンA群(茶カテキンA投与)、対照群(カテキン投与なし)の、投与後の時間経過における血中GIP値(pg/mL)を示す。
【図2】図2は、茶カテキンB群(茶カテキンB投与)、茶カテキンC群(茶カテキンC投与)、対照群(カテキン投与なし)の、投与10分後の血中GIP変化値(pg/mL)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明におけるカテキン類とは、カテキン、カテキンガレート、ガロカテキン及びガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類、ならびにエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、及びエピガロカテキンガレートなどのエピ体カテキンのうち、一種以上を含有するものである。
カテキン類におけるガレート体カテキンの含有率は、GIP上昇抑制効果向上のため、カテキン類中10〜100質量%が好ましく、20〜100質量%がより好ましく、25〜100質量%が更に好ましい。
【0014】
本発明に使用するカテキン類は、茶葉およびカカオ豆などの植物から直接抽出すること、又はその抽出物を濃縮もしくは精製することにより得ることができるが、他の原料由来のもの、市販品、カラム精製品および化学合成品であってもよい。
【0015】
茶葉からのカテキン類の抽出は、Camellia属、たとえばC. sinensis、C. assamica、またはそれらの雑種から得られる茶葉より製茶された茶葉に、水〜熱水(0〜100℃)、場合によってはこれらに抽出助剤を添加して抽出することにより行うことができる。また、煮沸脱気や窒素ガスなどの不活性ガスを通気して、溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸素化的雰囲気下で抽出する方法を併用してもよい。
当該製茶された茶葉には、(1)煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜煎り茶等の緑茶類、(2)総称して烏龍茶と呼ばれる鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等の半発酵茶、(3)紅茶と呼ばれるダージリン、ウバ、キーマン等の発酵茶が含まれる。
抽出助剤としては、アスコルビン酸ナトリウム等の有機酸又はこれら有機酸塩類が挙げられる。
【0016】
また、本発明のカテキン類は、上記のように茶葉などから抽出・精製したものの他、市販品を用いても良い。たとえば、ポリフェノン(三井農林)、テアフラン(伊藤園)、サンフェノン(太陽化学株式会社)、テアビゴ(DMS Nutritional Products)などのカテキン製剤を用いることが出来る。
当該茶抽出物の濃縮は、上記抽出物を濃縮することにより行うことができ、当該茶抽出物の精製は、溶剤やカラムを用いて精製することにより行うことができる。茶抽出物の濃縮物や精製物の形態としては、固体、水溶液、スラリー状等種々のものがあげられる。
例えば、当該茶抽出物は、特開昭59−219384号公報、特開平4−20589号公報、特開平5−260907号公報、特開平5−306279号公報等に詳細に例示されている方法で調製することができる。
【0017】
また、植物抽出物由来のカテキン類等には特有の苦みや渋みがあることから、本発明を食品等に利用する場合、呈味性を改善することが好ましい場合がある。特に茶抽出物は、カテキン類の他、有機酸や蛋白質、植物繊維等の成分を多く含み、それが茶特有の苦味やエグミになっていることから、カテキン類の純度を高めることにより改善することができる。通常、植物抽出物、特に緑茶抽出物を用いる場合、カテキン類の純度は、抽出物中20質量%以上であることが望ましいが、更には30質量%以上、特に30〜95質量%が好ましい。
また、呈味性を改善するため、ガレート体カテキンの含有率は、カテキン類中10〜100質量%が好ましく、より20〜90質量%、更に25〜80質量%が望ましい。なお、カテキン類中のガレート体カテキンの含有比率は、タンナーゼ処理などの方法により調整することができる(特開2007−61083号公報)。
【0018】
また、カテキン類として植物抽出物、特に茶抽出物を用いた場合には、当該抽出物中にカフェインが含まれる。カフェインは覚醒作用等を有するので、眠気、倦怠感、頭痛等の予防・改善に効果があるが、カフェインに対し、過敏症の者やカフェインを嫌う者もいるので、植物抽出物からカフェインを低減してもよい。
従って、本製剤の使用目的に応じて、カテキン類単体や植物抽出物等にカフェインを添加して、あるいは植物抽出物に脱カフェイン処理を施してカフェインを低減して用いることができる。カフェインは苦味を有するため、特に飲食品においては脱カフェイン処理したカテキン類を使用する場合には、カテキン類に対しカフェインが20質量%以下、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、特に1質量%以下にすることが望ましい。
カフェイン量を低減した茶カテキン組成物の製法としては、例えば特開2006−8580号公報、特開2006−160656号公報、特開2006−206483号公報、特開2008−79609号公報、特開2008−141987号公報などが挙げられる。
【0019】
本発明において「GIP上昇抑制」とは、脂質及び糖質を含む炭水化物(糖質)などの栄養素、特に脂質を多く含む食事(食餌)、そのなかでもトリアシルグリセロールを多く含む食事(食餌)を摂取することにより消化管から分泌されるGIPの血中濃度が上昇するのを抑制することをいう。すなわち「GIP上昇抑制」とは、主として食後に生じるGIP上昇を抑制することをいう。そして、本発明における「GIP上昇抑制作用」は、消化管からのGIP分泌を抑制することでGIP上昇を抑制するGIP分泌抑制作用、及び血中GIP濃度を低下させることによりGIP上昇を抑制するGIP低下作用のいずれをも含む概念である。
【0020】
本発明のカテキン類は、後記実施例に示すように、優れた血中GIP上昇抑制作用を有する。そして、前述(非特許文献1〜3参照)のとおり、GIPの上昇を抑制することは、胃酸分泌の抑制及び胃運動の抑制を軽減させることから、ヒトを含む動物に摂取又は投与して、血中GIP上昇抑制;GIP上昇により症状の悪化する疾患の発症リスクの低下、予防、改善;胃酸分泌能や胃もたれの改善を図るための方法に使用することができる。また、当該カテキン類はGIP上昇抑制剤;GIP上昇により症状の悪化する疾患の発症リスクの低下、予防、改善剤;胃酸分泌能や胃もたれの改善剤(以下、「GIP上昇抑制剤等」とする)ともなり得、当該製剤の有効成分として使用することができる。また、当該カテキン類を、GIP上昇抑制剤;GIP上昇により症状の悪化する疾患の発症リスクの低下、予防、改善剤;胃酸分泌能や胃もたれの改善剤を製造するために使用することができる。 このとき、当該GIP上昇抑制剤等には、当該カテキン類を単独で、又はこれ以外に、必要に応じて適宜選択した担体等の、配合すべき後述の対象物において許容されるものを使用してもよい。なお、当該製剤は配合すべき対象物に応じて常法により製造することができる。
【0021】
また、斯かるGIP上昇抑制剤等は、GIP上昇抑制、胃もたれ改善等の効果を発揮し得る、ヒト又は非ヒト動物用の各種飲食品、医薬品、医薬部外品、ペットフード等の有効成分として使用可能である。
また、当該GIP上昇抑制剤等は、カテキン類を含有し、GIP分泌抑制作用等を有することをコンセプトとし、必要に応じてGIP上昇抑制;GIP上昇により症状の悪化する疾患の発症リスクの低下、予防、改善;胃酸分泌能改善、胃もたれ改善等に用いられるものである旨の表示を付した健康食品、美容食品、病者用食品、特定保健用食品、栄養機能性食品等の機能性食品の有効成分として使用できる。
【0022】
本発明のGIP上昇抑制剤等を医薬品や医薬部外品の有効成分として使用する場合は、任意の投与形態で投与され得る。
投与形態としては、経口、経腸、経粘膜、注射等が挙げられる。経口投与のための剤型としては、たとえば、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、徐放性製剤、糖衣錠、丸剤、際粒剤等の経口用固形製剤;懸濁液、エマルジョン剤、内服液、内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等の経口用液体製剤等が挙げられる。
非経口投与のための剤型としては、静脈内注射剤、筋肉注射剤、吸入剤、輸液、坐剤、吸入剤、経皮吸入剤、点眼剤、点鼻剤等が挙げられる。
【0023】
斯かる製剤では、カテキン類を単独で、又はカテキン類と薬学的に許容される担体とを組み合わせて使用してもよい。斯かる担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、流動性促進剤、吸収補助剤、pH調整剤、乳化剤、防腐剤、安定化剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、光沢剤、活性増強剤、抗炎症剤、殺菌剤、矯味剤、矯臭剤、増量剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、香料、被膜剤等が挙げられる。
【0024】
なお、経口用固形製剤を調製する場合には、本発明の製剤に賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤などを加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。また、経口用液体製剤を調製する場合は、矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤などを加えて常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤などを製造することができる。
【0025】
本発明のGIP上昇抑制剤等を飲食品の有効成分として使用する場合、その形態は、固形、半固形又は液状とすることができる。飲食品の例としては、パン類、麺類、クッキー等の菓子類、ゼリー類、乳製品、冷凍食品、インスタント食品、デンプン加工製品、加工肉製品、その他加工食品、烏龍茶、緑茶、紅茶やコーヒー飲料等の飲料、スープ類、調味料、栄養補助食品等及びそれらの原料が挙げられる。また、当該形態は、上記経口投与製剤の形態と同様、錠剤、丸剤、カプセル、液剤、シロップ、粉末、顆粒等の形態であってもよい。
【0026】
種々の形態の飲食品を調製するには、カテキン類を単独で、又は他の食品原材料や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香料、安定化剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤等を適宜組み合わせて用いることができる。
【0027】
また、本発明のGIP上昇抑制剤等をペットフードの有効成分として使用する場合、上記飲食品と同様の原材料等を用いて種々の形態のペットフードに調製してもよい。
【0028】
上記飲食品、医薬品、医薬部外品等に対するカテキン類の配合量は、その使用形態により異なるが、飲料中のカテキン類の含有量は、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.05〜1質量%、さらに好ましくは0.1〜0.5質量%である。また、食品中のカテキン類の含有量は、好ましくは通常0.01〜20質量%、より好ましくは0.01〜5質量%、さらに好ましくは0.1〜2質量%である。また、サプリメント中のカテキン類の含有量は、好ましくは通常0.01〜90質量%、より好ましくは0.1〜70質量%、さらに好ましくは1〜50質量%である。
医薬品、たとえば錠剤、顆粒剤、カプセル剤などの経口用固形製剤中のカテキン類の含有量は、好ましくは通常0.01〜95質量%、より好ましくは5〜90質量%、さらに好ましくは20〜50質量%であり、内服液剤、シロップ剤などの経口用液体製剤中のカテキン類の含有量は、好ましくは通常0.01〜50質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%である。
【0029】
上記製剤の有効投与(摂取)量は、効果が得られる量であれば、特に限定されない。またその投与量・摂取量は、対象者の状態、体重、性別又はその他の要因に従って変動し得るが、好ましくはカテキン類として1日当たり100〜5000mg/60kg体重、より好ましくは300〜2500mg/60kg体重、さらに好ましくは400〜1000mg/60kg体重である。カテキン類の組成は、特に限定されないが、効果の面ではガレート体が多いほうが好ましい。また、上記製剤は、任意の投与計画に従って投与され得るが、1日1〜数回に分けて投与することが好ましい。また、食前・食中・食後のいずれで投与してもよく、好ましくは食前・食中である。
本発明のGIP上昇抑制剤等の投与又は摂取の対象者としては、それを必要としているものであれば特に限定されないが、空腹時血中GIP値が30pg/mL以上、または胃液分泌機能検査において、基礎分泌量が30mL/時間以下のヒトは好ましい。
【0030】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例及び配合例等を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
実施例1<茶カテキンのGIP抑制作用 1>
マウス(C57BL/6J雄、9週令)を、各群の体重の平均値が等しくなるように、対照群、茶カテキンA群の2群に分けた(各群10匹)。茶カテキンAは、緑茶(Camellia sinensis)葉熱水抽出物の乾燥粉末を熱水に溶解した後、等量のクロロホルム、3倍量のエタノールを加えて混合し水相を回収、再乾燥して調製した。絶食16時間後に、対照溶液(20質量%エタノール)を対照群に、または茶カテキンA溶液(濃度1質量%/20質量%エタノール溶液)を茶カテキンA群に、それぞれゾンデにて経口投与(カテキン類総量にして100mg/kg体重)し、連続して各群に卵製レシチン(和光純薬)(0.02g/kg体重)を用いて乳化したデンプン・コーン油混合溶液(各成分2g/kg体重)を投与した。
なお、本試験で用いた茶カテキンAの組成は、全カテキン類中、カテキン3.2%、エピカテキン9.7%、ガロカテキン6.9%、エピガロカテキン51.1%、エピカテキンガレート3.3%、ガロカテキンガレート1.2%、エピガロカテキンガレート24.4%(ガレート体組成 29.0%)だった。
投与前および、投与後経時的に眼底より採血し、血中GIP値をELISA法(Gastric Inhibitory Peptide EIA Kit,Phenix Pharmaceutical Inc.)により測定した。測定結果を図1に示す。
【0032】
実施例2<茶カテキンのGIP抑制作用 2>
茶カテキンBとして、ポリフェノンHG(三井農林)水溶液を121℃、20分間加熱処理し、重曹でpH6.5に調整した後、凍結乾燥した粉末を、茶カテキンCとしてテアフラン90S(伊藤園)を用いた。
マウス(C57BL/6J雄、9週令)を、各群の体重の平均値が等しくなるように対照群、茶カテキンB群及び茶カテキンC群の3群に分けた(各群10匹)。絶食16時間後に、対照溶液(20質量%エタノール)を対照群に、茶カテキンB溶液(濃度2質量%/20質量%エタノール溶液)を茶カテキンB群に、茶カテキンC溶液(濃度2質量%/20質量%エタノール溶液)を茶カテキンC群に、それぞれゾンデにて経口投与(カテキン類総量にして200mg/kg体重)し、連続して各群に卵製レシチン(和光純薬)(0.02g/kg体重)を用いて乳化したデンプン・コーン油混合溶液(各成分4g/kg体重)を投与した。
なお、本試験で用いた茶カテキンB及びCの組成を表1に示す。
投与前および、投与10分後に眼底より採血し、血中GIP値をELISA法(Gastric Inhibitory Peptide EIA Kit,Phenix Pharmaceutical Inc.)により測定した。投与10分後の変化値(投与10分後の血中GIP値−投与前の血中GIP値)を図2に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
図1および図2に示すとおり、茶カテキンの投与(摂取)により、血中GIP値の上昇が統計学的有意に抑制された。よって、カテキン類はGIP上昇抑制に有効であるといえる。
【0035】
以下に、本発明のGIP上昇抑制剤等の配合例を示す。
【0036】
配合例1 GIP上昇抑制用チュアブル錠剤
茶カテキン(エピガロカテキンガレート98%、テアビゴ(DMS Nutritional Products))45質量%、乳糖20質量%、アスコルビン酸15質量%、結晶セルロース10質量%、クエン酸7質量%、ステアリン酸マグネシウム2質量%、アスパルテーム1質量%からなる処方で、日本薬局方(製剤総則「錠剤」)に準じて錠剤を製造し、茶カテキンを含有するチュアブル錠剤を得た。
【0037】
配合例2 GIP上昇抑制用錠剤
カカオ抽出物(カテキン類10%)40質量%、乳糖20質量%、アスコルビン酸15質量%、結晶セルロース10質量%、ココア粉末8質量%、果糖4質量%、ステアリン酸マグネシウム2質量%、アスパルテーム1質量からなる処方で、日本薬局方(製剤総則「錠剤」)に準じて錠剤を製造した。
【0038】
配合例3 GIP上昇抑制用カプセル剤
茶カテキン(カテキン2%、エピカテキン10%、ガロカテキン7%、エピガロカテキン24%、カテキンガレート1%、エピカテキンガレート11%、ガロカテキンガレート4%、エピガロカテキンガレート41%)50質量%、ビタミンC 15質量%、セルロース13質量%、乳糖13質量%、コーンスターチ7質量%、トコフェロール2質量%を混合し、カプセル剤を得た。
【0039】
配合例4 GIP上昇抑制用顆粒剤
サンフェノン(太陽化学株式会社)30質量%、果糖30質量%、ブドウ糖20質量%、脱脂粉乳10質量%、ミネラル類(Na,K,Ca,Mg,P,Cl,Fe等の有機又は無機塩混合物)8質量%、ビタミン類(ビタミンA,D,E,B1,B2,B6、B12,C,ナイアシン、パントテン酸などの混合物)2質量%を混合し、エタノールを適量加えて練和して造粒し、乾燥して顆粒剤とした。
【0040】
配合例5 GIP上昇抑制用錠剤
茶カテキン(カテキン6%、エピカテキン7%、ガロカテキン21%、エピガロカテキン16%、カテキンガレート5%、エピカテキンガレート8%、ガロカテキンガレート16%、エピガロカテキンガレート21%)30質量%、リンゴ酸ナトリウム20質量%、パラチノース15質量%、アスコルビン酸15質量%、ビタミンミックス(日本香料薬品社製)5質量%、結晶セルロース5質量%、卵殻カルシウム5質量%、ショ糖エステル4質量%、二酸化ケイ素1質量%を混合し、常法によりカテキン類を含有する錠剤を調製した。
【0041】
配合例6 GIP上昇抑制用錠剤
茶カテキン(カテキン3%、エピカテキン10%、ガロカテキン7%、エピガロカテキン51%、エピカテキンガレート3%、ガロカテキンガレート1%、エピガロカテキンガレート25%)25質量%、コーンスターチ 25質量%、セルロース 25質量%、乳糖 15質量%、ビタミンC 10質量%を混合し、常法により錠剤を作製した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテキン類を有効成分とするGIP上昇抑制剤。
【請求項2】
カテキン類が、カテキン、カテキンガレート、ガロカテキン、ガロカテキンガレート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートのうち、一種以上の成分を含有するものである請求項1記載のGIP上昇抑制剤。
【請求項3】
カテキン類が、茶カテキンである請求項1記載のGIP上昇抑制剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−260856(P2010−260856A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89206(P2010−89206)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】