説明

GNSS受信装置

【課題】CBOC信号であっても確実にコード追尾を行うことができるGNSS受信装置を実現する。
【解決手段】復調部13は、概略コードのサーチ処理を終了すると、BOC(1,1)レプリカコードとベースバンド信号とを相関処理し、ドットプロダクト演算によりコード誤差を検出することで、コード捕捉処理を行う(S102)。復調部13は、C/No等によるステータス情報を取得し(S103)、ステータス情報がコード捕捉完了条件を満たしたことを検出すると(S104:Yes)、BOC(1,1)サブキャリアとBOC(6,1)サブキャリアとを合成した合成レプリカコードとベースバンド信号とを相関処理するように切り替え、この合成レプリカコードを利用したドットプロダクト演算によりコード誤差を検出することで、コード追尾を行う(S105)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定の擬似雑音コードによって位相変調された測位信号を復調して測位に利用するGNSS受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
GNSS(Global Navigation Satellite System;全世界的航法衛星システム)の一つとして、欧州が運用開始する予定のGalileoがある。Galileoでは、擬似雑音コード(PNコード)とサブキャリアとを用いて、航法メッセージが重畳された搬送波を位相変調することで、測位信号が形成される。このような測位信号の一つとして、BOC(1,1)サブキャリアでPNコードを位相変調してなるBOC(1,1)信号が挙げられ、当該BOC(1,1)信号を受信して復調する装置が、特許文献1に開示されている。
【0003】
ところで、Galileoでは、非特許文献1に示すように、BOC(1,1)信号とは異なるCBOC信号を用いることも示されている。CBOC信号とは、BOC(1,1)サブキャリアとBOC(6,1)サブキャリアとを特定の合成比率で合成してなる合成サブキャリアで、PNコードを位相変調している。具体的には、BOC(1,1):BOC(6,1)=10(1/2):1の合成比からなり、BOC(6,1)の符号により、CBOC.in−phase信号(E1B信号)とCBOC.anti−phase信号(E1C信号)とが存在する。なお、以下の説明では、CBOC.in−phase信号を簡略して「CBOC+信号」と称し、CBOC.anti−phase信号を簡略して「CBOC−信号」と称する。そして、CBOC+信号とCBOC−信号の双方に同じことに関して述べる場合には、単に「CBOC信号」と称する。
【0004】
このため、CBOC信号を利用するGalileoの受信装置は、BOC(1,1)サブキャリアとBOC(6,1)サブキャリアとを仕様に応じた特定の合成比率で合成してなるCBOCレプリカコードを形成し、受信信号と当該CBOCレプリカコードとを相関処理することでコード捕捉およびコード追尾を行う。そして、このようなコード捕捉およびコード追尾には、ドットプロダクト演算が用いられることがある。
【0005】
ドットプロダクト演算では、レプリカコードとして、位相の異なるEarlyレプリカコード、Promptレプリカコード、Lateレプリカコードを用い、これら三つのレプリカコードと受信信号との相関処理を行う。そして、ドットプロダクト演算では、Earlyレプリカコードと受信信号との相関処理結果であるE相関値、Promptレプリカコードと受信信号との相関処理結果であるP相関値、Lateレプリカコードと受信信号との相関処理結果であるL相関値とを取得して、例えばE相関値とL相関値との差分値であるE−L相関値とP相関値と乗算値からコード誤差を算出する。そして、コードをロックさせる場合、ドットプロダクト演算値が「0」になるように、レプリカコードの位相や周波数を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−208904号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「Inside GNSS」, Gibbons Media andResearch, LLC, Spring 2007, p.50-57
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、CBOC信号は、サブキャリアでPNコードを位相変調したものであり、図1に示すように自己相関カーブが複雑に変化し、図2に示すようにドットプロダクト特性も複雑な形状となる。図1はCBOC+信号およびCBOC−信号の自己相関カーブを示す図である。図2(A)はCBOC+信号のドットプロダクト特性を示す図であり、図2(B)はCBOC−信号のドットプロダクト特性を示す図である。なお、図2では、CBOC信号を自己相関した場合のドットプロダクト特性と、CBOC信号をBOC(1,1)レプリカコード(BOC(1,1)サブキャリアとPNコードのみを用いたレプリカコード)で相互相関した場合のドットプロダクト特性とを示している。
【0009】
図2に示すように、CBOC信号(CBOC+信号およびCBOC−信号)を自己相関した場合のドットプロダクト特性は、ドットプロダクト演算値が「0」となるコード誤差(位相差)、言い換えればドットプロダクト特性がゼロクロスする点が、真のコードロックポイントであるコード誤差=「0」を中心とする±0.5chipのコード誤差範囲内に複数存在してしまう。このため、従来のGPSのような比較的大きなコード誤差の範囲でコード追尾を開始すると、真のコードロックポイントとは異なるコード誤差へ位相がロックしてしまう、所謂「False Lock」が生じる可能性が高くなる。
【0010】
したがって、本発明の目的は、CBOC信号であっても確実にコード追尾を行うことができるGNSS受信装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、拡散コードにより位相変調された測位信号を受信してコード捕捉・追尾するGNSS受信装置に関するものである。このGNSS受信装置は、レプリカコード生成部、相関処理部、相関結果を合成する合成部、およびコード誤差検出部を備える。レプリカコード生成部は、サブキャリアが異なる第1のレプリカコードおよび第2のレプリカコードを生成する。相関処理部は第1の相関器および第2の相関器を有し、第1の相関器は、受信した測位信号と第1のレプリカコードとの相関処理を行う。第2の相関器は、受信した測位信号と第2のレプリカコードとの相関処理を行う。合成部は、第1の相関処理結果と第2の相関処理結果を相関処理条件に基づいて合成する。コード誤差検出部は、合成部から出力される相関処理結果に基づいてコード誤差を検出する。
【0012】
また、この発明のGNSS受信装置は、レプリカコード生成部、レプリカコードを合成する合成部、相関処理部、およびコード誤差検出部を備える。レプリカコード生成部は、演算部からのコード制御情報に基づいてサブキャリアが異なる第1のレプリカコードおよび第2のレプリカコードを生成する。合成部は、第1のレプリカコードと第2のレプリカコードを相関処理条件に基づいて合成する。相関処理部は、受信した測位信号と合成部から出力されるレプリカコードとの相関処理を行う。コード誤差検出部は、相関処理結果に基づいてコード誤差を検出する。
【0013】
これらの構成では、複数のレプリカコードと1つの測位信号との相関結果を得て合成するか、複数のレプリカコードを合成したレプリカコードと1つの測位信号との相関結果を得る。この際、相関処理条件を変更することで、異なる組み合わせからなる各レプリカコードと測位信号との相関結果が相関処理条件毎に得られる。このように1つの測位信号に対してレプリカコード毎に相関結果が異なることを利用すれば、捕捉、追尾等の状況に応じて、適正なレプリカコードを選択することが可能になる。
【0014】
また、この発明のGNSS受信装置は、コード誤差が予め設定した切替閾値以上か未満かにおいて相関処理条件を異ならせる。
【0015】
この構成では、相関処理条件の決定方法として、コード誤差を用いる。これにより、コード誤差が大きいコード捕捉時とコード誤差が小さい追尾時とで相関処理条件を異ならせることが可能になる。すなわち、コード捕捉時とコード追尾時のそれぞれに適したレプリカコードを利用することができる。
【0016】
また、この発明のGNSS受信装置は、シフトレジスタを備える。シフトレジスタは、第1のレプリカコードに基づいて、それぞれに所定のコード位相差からなる第1のEarlyレプリカコード、第1のPromptレプリカコード、第1のLateレプリカコードを生成する。また、シフトレジスタは、第2のレプリカコードに基づいて、それぞれに所定のコード位相差からなる第2のEarlyレプリカコード、第2のPromptレプリカコード、第2のLateレプリカコードを生成する。コード誤差検出部は、ドットプロダクト演算によりコード誤差を検出する。
【0017】
この構成では、具体的な実現方法として、ドットプロダクト演算の場合を示している。ドットプロダクト演算の場合、上述のように、ドットプロダクト特性が「0」の点に合わせ込むことで、コード誤差「0」の点にコードロックするのであるが、図1、図2に示すように、相関処理条件すなわちレプリカコードによって、ドットプロダクト特性が異なる。したがって、状況に応じた相関処理条件を選択することで、その状況(コード捕捉時やコード追尾時)毎に適するコードの追い込み処理を行うことができる。
【0018】
また、この発明のGNSS受信装置のレプリカコード生成部は、サブキャリアとして、BOC(1,1)サブキャリアおよびBOC(6,1)サブキャリアを用いる。相関処理部は、測位信号としてCBOC信号を用いる。
【0019】
この構成では、より具体的に、測位信号がGalileoのCBOC信号であり、サブキャリアが当該CBOC信号に用いられているBOC(1,1)サブキャリアおよびBOC(6,1)サブキャリアの場合を示している。
【0020】
また、この発明のGNSS受信装置のレプリカコード生成部は、サブキャリアとして、BOC(1,1)サブキャリアおよびBOC(6,1)サブキャリアを用いる。相関処理部は、測位信号としてCBOC信号を用いる。そして、制御部は、コード誤差が切替閾値以上であることを検出すると捕捉ステースと判断してBOC(1,1)サブキャリアのみを用いたBOC(1,1)レプリカコードを用いるように前記相関処理条件を設定し、コード誤差が切替閾値未満であることを検出すると追尾ステースと判断してBOC(1,1)サブキャリアを用いたBOC(1,1)レプリカコードとBOC(6,1)サブキャリアを用いたBOC(6,1)レプリカコードとを所定の合成比で合成して用いるように相関処理条件を設定する。さらに加えて、この発明のGNSS受信装置は、BOC(1,1)レプリカコードに基づいて、それぞれに所定のコード位相差からなるEarlyBOC(1,1)レプリカコード、PromptBOC(1,1)レプリカコード、LateBOC(1,1)レプリカコードを生成するとともに、BOC(6,1)レプリカコードに基づいて、それぞれに所定のコード位相差からなるEarlyBOC(6,1)レプリカコード、PromptBOC(6,1)レプリカコード、LateBOC(6,1)レプリカコードを生成するシフトレジスタを備える。そして、コード誤差検出部は、ドットプロダクト演算によりコード誤差を検出する。
【0021】
この構成でも、具体的な構成を示すものであり、相関処理条件が捕捉・追尾にステータスによって切り替えられ、捕捉ステースではCBOC信号に対してBOC(1,1)レプリカコードとが相関処理され、追尾ステータスではCBOC信号に対してBOC(1,1)レプリカコードとBOC(6,1)レプリカコードとの合成レプリカコードにより相関処理される。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、自己相関特性が複雑なCBOC信号等の測位信号をコード追尾する際にも、FalseLockさせることなく、確実且つ高精度にコード追尾を行うことができる。これにより、確実且つ高精度な測位も実現可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】CBOC+信号およびCBOC−信号の自己相関カーブを示す図である。
【図2】CBOC+信号の自己相関およびBOC(1,1)レプリカコードによる相互相関におけるドットプロダクト特性、および、CBOC−信号の自己相関およびBOC(1,1)レプリカコードによる相互相関におけるドットプロダクト特性を示す図である。
【図3】第1の実施形態のGNSS受信装置の主要構成を示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態の復調部13が行うコード捕捉およびコード追尾の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】図3に示した復調部13のキャリア相関器を除いた主要構成を示したブロック図である。
【図6】第2の実施形態の復調部13’の主要構成を示したブロック図である。
【図7】第3の実施形態の復調部130の合成部34’、誤差検出部35’、スイッチ37を詳細に示した図である。
【図8】第4の実施形態の復調部130’の誤差検出部350、誤差合成部38と、これらに直接関連する機能部のみを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1の実施形態に係るGNSS受信装置について、図を参照して説明する。
【0025】
図3は本実施形態のGNSS受信装置の主要構成を示すブロック図である。
【0026】
GNSS受信装置は、受信アンテナ11、ダウンコンバータ12、復調部13、航法メッセージ取得部14、および測位部15を備える。
【0027】
受信アンテナ11は、Galileo衛星から送信されるCBOC信号を受信して電気信号変換し、ダウンコンバータ12へ出力する。
【0028】
ダウンコンバータ12は、CBOC信号の周波数をダウンコンバートして、ベースバンド信号を生成し、復調部13へ与える。
【0029】
復調部13は、受信信号に基づくベースバンド信号に対してキャリア相関およびコード相関を行うことでCBOC信号の捕捉・追尾処理を行う。
【0030】
復調部13は、まず概略サーチを行うことで、コード位相とキャリア周波数の粗調整を行った後、ドットプロダクト演算を用いた詳細なコード捕捉とコード追尾とを実行する。この際、復調部13は、図4のフローに示すように、コード捕捉およびコード追尾を実行する。図4は本実施形態の復調部13が行うコード捕捉およびコード追尾の処理の流れを示すフローチャートである。
【0031】
図4に示すように、復調部13は、まず、コード位相差が大きい複数のレプリカコードを生成し、各レプリカコードとベースバンド信号とを相関処理して、それぞれの相関レベルを取得する。復調部13は、最も相関レベルが高いレプリカコードの位相を取得し、次のより詳細なコード捕捉へ移行する(S101)。
【0032】
復調部13は、概略コード位相を取得すると、よりコード位相差が小さいEarlyレプリカコード、Promptレプリカコード、Lateレプリカコードを生成し、ドットプロダクト演算を用いて相関処理を実行する(S102)。この際、復調部13は、BOC(1,1)サブキャリアおよびPNコードのみを利用したBOC(1,1)レプリカコードを用いて相関処理を実行する。これは、BOC(1,1)レプリカコードによりCBOC信号を相互相関すると、上述の図2に示すように、CBOC信号の自己相関やBOC(6,1)レプリカコードの相互相関よりも、ドットプロダクト特性がゼロクロスするコード誤差の間隔が広いことを利用している。
【0033】
この際、復調部13は、コード誤差の大きさやC/No等からなるステータス情報を取得する(S103)。復調部13は、このようなステータス情報を取得しながらのBOC(1,1)レプリカコードを用いたドットプロダクト相関処理を、ステータスがコード捕捉完了条件をクリアするまで継続的に実行し(S104:No)、ステータスがコード捕捉完了条件をクリアした時点で、コード追尾処理へ移行する(S104:Yes)。ここで、コード捕捉完了条件は、以下のコード追尾を行う際に合成レプリカコードを用いてもFalseLockしないコード誤差範囲内にコード位相が追い込めていることを検出できるステータスとなる条件で与えられている。
【0034】
復調部13は、コード追尾処理に移行すると、上記コード捕捉よりもさらにコード位相差が小さいEarlyレプリカコード、Promptレプリカコード、Lateレプリカコードを生成し、ドットプロダクト演算を用いて相関処理を実行する(S105)。この際、復調部13は、BOC(1,1)サブキャリアとBOC(6,1)サブキャリアとを合成してなる合成レプリカコードを用いて相関処理を実行する。これは、CBOC信号の自己相関やCBOC信号に近い合成レプリカコードによる相互相関をすると、上述の図2に示すように、真のゼロクロス点(コードロックポイント)であるコード誤差「0」近傍のドットプロダクト特性が急峻になることを利用している。
【0035】
以上のように、コード捕捉においては、BOC(1,1)レプリカコードを用いることで、コード誤差が多少大きくてもFalseLockが生じないようにコード位相を、コード誤差=「0」に向かうように、確実に追い込むことができる。そして、コード誤差が小さくなった時点で、ベースバンド信号に用いられているCBOCコードに近いもしくは同じ、BOC(1,1)サブキャリアとBOC(6,1)サブキャリアとPNコードとによる合成レプリカコードを用いることで、コード誤差=「0」へ高精度にコードをロックすることができる。すなわち、コードが複雑なCBOC信号であっても、FalseLockすることなく、高精度にコード追尾を行うことができる。
【0036】
そして、復調部13は、このようにして得られたコード位相や、キャリア追尾処理で得られたキャリア周波数を用い、ベースバンド信号を復調処理して航法メッセージ取得部14へ与えるとともに、得られた位相差情報から擬似距離等を算出して測位部15へ与える。
【0037】
航法メッセージ取得部14は、復調部13からの航法メッセージを取得して、その内容を測位部15に与える。測位部15は、航法メッセージ取得部14からの航法メッセージの内容と、復調部13からの擬似距離やキャリア周波数情報等に基づいて測位演算を行い、測位装置の位置を算出する。
【0038】
次に、このようなコード捕捉・追尾処理を実現する復調部13の構成について、図5を参照して、より詳細に説明する。
【0039】
図5は、図3に示した復調部13のキャリア相関器を除いた主要構成を示したブロック図である。なお、復調部13の図示しないキャリア相関器は、既知の構成によるものであってよく、説明は省略する。また、図5では、上述の概略コードのサーチを完了した後の、コード捕捉状態およびコード追尾状態を実行する場合の構成を示す図であり、概略コードサーチは、従来からの既知の方法であるので説明は省略する。
【0040】
復調部13は、制御部30、レプリカコード生成部31、シフトレジスタ32、相関処理部33、合成部34、および誤差検出部35を備える。
【0041】
制御部30は、誤差検出部35からのコード誤差に基づいてコード位相を算出し、当該コード位相から擬似距離を算出して測位部15へ与えるとともに、航法メッセージを復調して航法メッセージ取得部14へ与える。さらに、制御部30は、コード制御情報としてコード位相をレプリカコード生成部31へ与える。なお、コード制御情報は、コード位相に限るものではなく、周波数情報等であってもよく、レプリカコードを受信信号のコードに同期させるために用いる情報であればよい。また、制御部30は、コード誤差に基づいて、復調部13が上述のコード捕捉ステータスであるかコード追尾ステータスであるかを示すステータス情報を取得する。
【0042】
制御部30は、ステータスの段階毎に、Earlyレプリカコード、Promptレプリカコード、およびLateレプリカコードの位相差を設定するスペーシング情報を記憶している。制御部30は、取得したステータス情報に基づいて、スペーシング情報を読み出し、シフトレジスタ32へ出力する。
【0043】
制御部30は、BOC(1,1)サブキャリアとBOC(6,1)サブキャリアとの合成比を与えるBOC(1,1)用合成比率係数G11およびBOC(6,1)用合成比率係数G61の組を、ステータスの段階毎に記憶している。制御部30は、取得したステータス情報に基づいて、BOC(1,1)用合成比率係数G11およびBOC(6,1)用合成比率係数G61を読み出し、BOC(1,1)用合成比率係数G11を合成部34の可変増幅器341,342,343へ与え、BOC(6,1)用合成比率係数G61を合成部34の可変増幅器344,345,346へ与える。このようにステータスに応じて与えられる合成比が本発明の「相関処理条件」に相当する。
【0044】
この際、より具体的には、制御部30は、ステータスがコード捕捉状態であれば、BOC(1,1)レプリカコードのみで相関処理が行われているように、BOC(1,1)用合成比率係数G11を「1」とし、BOC(6,1)用合成比率係数G61を「0」とする。また、制御部30は、ステータスがコード追尾状態であれば、BOC(1,1)レプリカコードとBOC(6,1)レプリカコードとを所定の比率で合成した合成レプリカコードで相関処理が行われているように、BOC(1,1)用合成比率係数G11とBOC(6,1)用合成比率係数G61を設定する。なお、コード追尾時の合成比は、例えば、CBOC信号の仕様に準じた、電力比において「BOC(1,1):BOC(6,1)=10(1/2):1」や「BOC(1,1):BOC(6,1)=5:1」等、状況に応じて適宜設定すればよい。これにより、ベースバンド信号に含まれるコードに近い合成レプリカコードが設定される。
【0045】
レプリカコード生成部31は、コードNCO310、BOC(1,1)レプリカコード生成部311、およびBOC(6,1)レプリカコード生成部312を備える。
【0046】
コードNCO310は、制御部30からのコード制御情報に基づいて、BOC(1,1)レプリカコード生成部311からのBOC(1,1)レプリカコードおよびBOC(6,1)レプリカコード生成部312からのBOC(6,1)をベースバンド信号に同期させるようにするコード位相調整データを生成する。
【0047】
BOC(1,1)レプリカコード生成部311は、コード位相調整データに基づいて、PNコードとBOC(1,1)サブキャリアからなるBOC(1,1)レプリカコードを生成する。BOC(1,1)レプリカコード生成部311は、BOC(1,1)レプリカコードを、シフトレジスタ32のBOC(1,1)用シフトレジスタ321へ出力する。
【0048】
BOC(6,1)レプリカコード生成部312は、コード位相調整データに基づいて、PNコードとBOC(6,1)サブキャリアからなるBOC(6,1)レプリカコードを生成する。BOC(6,1)レプリカコード生成部312は、BOC(6,1)レプリカコードを、シフトレジスタ32のBOC(6,1)用シフトレジスタ322へ出力する。
【0049】
シフトレジスタ32は、BOC(1,1)用シフトレジスタ321とBOC(6,1)用シフトレジスタ322とからなる。
【0050】
BOC(1,1)用シフトレジスタ321は、BOC(1,1)レプリカコードからEarlyBOC(1,1)レプリカコード、PromptBOC(1,1)レプリカコード、およびLateBOC(1,1)レプリカコードを出力する。この際、BOC(1,1)用シフトレジスタ321は、スペーシング情報に基づいて、EarlyBOC(1,1)レプリカコード、PromptBOC(1,1)レプリカコード、およびLateBOC(1,1)レプリカコードの位相差を設定する。BOC(1,1)用シフトレジスタ321は、EarlyBOC(1,1)レプリカコードを相関処理部33の相関器331へ出力し、PromptBOC(1,1)レプリカコードを相関器332へ出力し、LateBOC(1,1)レプリカコードをL相関器333へ出力する。
【0051】
BOC(6,1)用シフトレジスタ322は、BOC(6,1)レプリカコードからEarlyBOC(6,1)レプリカコード、PromptBOC(6,1)レプリカコード、およびLateBOC(6,1)レプリカコードを出力する。この際、BOC(6,1)用シフトレジスタ322は、スペーシング情報に基づいて、上述の各BOC(1,1)レプリカコードと同じ位相差となるように、EarlyBOC(6,1)レプリカコード、PromptBOC(6,1)レプリカコード、およびLateBOC(6,1)レプリカコードの位相差を設定する。
【0052】
BOC(6,1)用シフトレジスタ322は、EarlyBOC(6,1)レプリカコードを相関処理部33の相関器334へ出力し、PromptBOC(6,1)レプリカコードをB相関器335へ出力し、LateBOC(6,1)レプリカコードを相関器336へ出力する。
【0053】
相関処理部33は、複数の相関器331〜336を備える。なお、この説明では、相関器数は6個であるが、相関処理部33は、I,Q信号毎の相関処理やCBOC+信号、CBOC−信号毎の相関処理、さらには、概略コードサーチ時の相関処理のために、図示した数よりも多い数の相関器を備える。
【0054】
各相関器331〜336は、同じ構成からなり、入力されるベースバンド信号と各レプリカコードとを乗算して相関レベルを検出し、当該相関レベルを所定のサンプリング時間長に亘り積算することで、相関データを生成する。以下、この乗算して積算する処理を相関処理と称す。
【0055】
具体的には、相関器331は、ベースバンド信号とEarlyBOC(1,1)レプリカコードとを相関処理して、BOC(1,1)E相関データを生成し、合成部34の可変増幅器341へ出力する。相関器332は、ベースバンド信号とPromptBOC(1,1)レプリカコードとを相関処理して、BOC(1,1)P相関データを生成し、合成部34の可変増幅器342へ出力する。相関器333は、ベースバンド信号とLateBOC(1,1)レプリカコードとを相関処理して、BOC(1,1)L相関データを生成し、合成部34の可変増幅器343へ出力する。相関器334は、ベースバンド信号とEarlyBOC(6,1)レプリカコードとを相関処理して、BOC(6,1)E相関データを生成し、合成部34の可変増幅器344へ出力する。相関器335は、ベースバンド信号とPromptBOC(6,1)レプリカコードとを相関処理して、BOC(6,1)P相関データを生成し、合成部34の可変増幅器345へ出力する。相関器336は、ベースバンド信号とLateBOC(6,1)レプリカコードとを相関処理して、BOC(6,1)L相関データを生成し、合成部34の可変増幅器346へ出力する。
【0056】
合成部34は、可変増幅器341〜346と、加算器347,348,349を備える。なお、合成部34を構成する可変増幅器および加算器の個数も、図示した個数のみではなく、上述の相関器の個数に応じた個数を備える。
【0057】
可変増幅器341〜346は同じ構成からなり、入力された相関データに対して、制御部30から与えられる各合成比率係数を乗算する処理を行う。具体的には、可変増幅器341は、BOC(1,1)E相関データに対してBOC(1,1)用合成比率係数G11を乗算する。可変増幅器342は、BOC(1,1)P相関データに対してBOC(1,1)用合成比率係数G11を乗算する。可変増幅器343は、BOC(1,1)L相関データに対してBOC(1,1)用合成比率係数G11を乗算する。可変増幅器344は、BOC(6,1)E相関データに対してBOC(6,1)用合成比率係数G61を乗算する。可変増幅器345は、BOC(6,1)P相関データに対してBOC(6,1)用合成比率係数G61を乗算する。可変増幅器346は、BOC(6,1)L相関データに対してBOC(6,1)用合成比率係数G61を乗算する。
【0058】
加算器347,348,349も同じ構造からなり、CBOC+信号に対する相関処理であれば、合成比係数乗算後の相関データ同士を加算して出力し、CBOC−信号に対する相関処理であれば、合成比係数乗算後の相関データ同士を差分して出力する。具体的には、加算器347は、BOC(1,1)用合成比率係数G11乗算後のBOC(1,1)E相関データとBOC(6,1)用合成比率係数G61乗算後のBOC(6,1)E相関データとを加算もしくは差分して合成E相関データを出力する。加算器348は、BOC(1,1)用合成比率係数G11乗算後のBOC(1,1)P相関データとBOC(6,1)用合成比率係数G61乗算後のBOC(6,1)P相関データとを加算もしくは差分して合成P相関データを出力する。加算器349は、BOC(1,1)用合成比率係数G11乗算後のBOC(1,1)L相関データとBOC(6,1)用合成比率係数G61乗算後のBOC(6,1)L相関データとを加算もしくは差分して合成L相関データを出力する。
【0059】
誤差検出部35は、合成部34からの合成E相関データ、合成P相関データ、および合成L相関データを用いてドットプロダクト演算によるコード誤差検出を行い、制御部30へコード誤差を出力する。
【0060】
以上のような構成とすることで、上述のコード捕捉状態とコード追尾状態とでレプリカコードを切り替える処理を実行することができる。すなわち、ステータスに応じてFalseLockさせることなく、コード追尾を行うことができる。なお、上述の説明では、コード追尾状態には、常時所定の合成比でBOC(1,1)レプリカコードとBOC(6,1)レプリカコードを合成して使用することを示したが、この合成比をステータス情報に含まれるC/No等により可変にしても良い。これにより、より詳細な状況に応じたレプリカコードを設定でき、確実にコード追尾を行うことができる。
【0061】
なお、上述の合成部33、誤差検出部35および制御部30は、CPU(演算処理装置)と当該CPUにより実行される処理プログラムとにより実現することができる。特に、合成部34をCPUによるソフトウェア処理によって実現することで、上述のCBOC信号の仕様のように、10(1/2):1のような整数のみを用いない合成比であっても容易に実現することができる。これにより、コード追尾状態で設定可能な合成比の種類が増加し、より最適な合成比で相関処理を行うことができる。
【0062】
次に、第2の実施形態に係るGNSS受信装置について、図6を参照して説明する。なお、本実施形態のGNSS受信装置は、復調部13’の内部構成が第1の実施形態の復調部13と異なるのみで他の構成は同じであるので、復調部13’のみを説明する。
図6は本実施形態の復調部13’の主要構成を示したブロック図である。
図6に示すように、本実施形態の復調部は、第1の実施形態のように、ベースバンド信号に対してBOC(1,1)レプリカコードおよびBOC(6,1)レプリカコードのそれぞれを相関処理した結果を合成するのではなく、相関処理部33に与えるレプリカコードを、BOC(1,1)レプリカコードとBOC(6,1)レプリカコードとの合成レプリカコードにするものである。したがって、本実施形態の復調部13’は、制御部30、レプリカコード生成部31、シフトレジスタ32、誤差検出部35の構成および基本的な処理は同じであるので、新たに説明が必要な部分を除き説明を省略する。
【0063】
本実施形態の復調部13’のレプリカ合成部36は、可変増幅器361〜366、加算器367〜369を備える。ここで、第1の実施形態の合成部34における可変増幅器341〜346と同様に、レプリカ合成部36の可変増幅器361〜366は同じ構造からなる。また、上述の第1の実施形態の合成部34における加算器347〜349と同様に、レプリカ合成部36の加算器367〜369は同じ構造からなる。
【0064】
可変増幅器361は、制御部30からのBOC(1,1)用合成比率係数G11をEarlyBOC(1,1)レプリカコードに乗算して、加算器367へ出力する。可変増幅器362は、制御部30からのBOC(1,1)用合成比率係数G11をPromptBOC(1,1)レプリカコードに乗算して、加算器368へ出力する。可変増幅器363は、制御部30からのBOC(1,1)用合成比率係数G11をLateBOC(1,1)レプリカコードに乗算して、加算器369へ出力する。
【0065】
可変増幅器364は、制御部30からのBOC(6,1)用合成比率係数G61をEarlyBOC(6,1)レプリカコードに乗算して、加算器367へ出力する。可変増幅器365は、制御部30からのBOC(6,1)用合成比率係数G61をPromptBOC(6,1)レプリカコードに乗算して、加算器368へ出力する。可変増幅器366は、制御部30からのBOC(6,1)用合成比率係数G61をLateBOC(6,1)レプリカコードに乗算して、加算器369へ出力する。
【0066】
CBOC+信号に対する相関処理であれば、加算器367は、EarlyBOC(1,1)レプリカコードにEarlyBOC(6,1)レプリカコードを加算して、合成Earlyレプリカコードを生成して、相関処理部33の相関器331へ出力する。加算器368は、PromptBOC(1,1)レプリカコードにPromptBOC(6,1)レプリカコードを加算して、合成Promptレプリカコードを生成して、相関処理部33の相関器332へ出力する。加算器369は、LateBOC(1,1)レプリカコードにLateBOC(6,1)レプリカコードを加算して、合成Lateレプリカコードを生成して、相関処理部33の相関器333へ出力する。
【0067】
一方、CBOC−信号に対する相関処理であれば、加算器367は、EarlyBOC(1,1)レプリカコードにEarlyBOC(6,1)レプリカコードを差分して、合成Earlyレプリカコードを生成して、相関処理部33の相関器331へ出力する。加算器368は、PromptBOC(1,1)レプリカコードにPromptBOC(6,1)レプリカコードを差分して、合成Promptレプリカコードを生成して、相関処理部33の相関器332へ出力する。加算器369は、LateBOC(1,1)レプリカコードにLateBOC(6,1)レプリカコードを差分して、合成Lateレプリカコードを生成して、相関処理部33の相関器333へ出力する。
【0068】
相関処理部33は、相関器331,332,333を備える。なお、上述の第1の実施形態にも示したように、I,Q信号毎の相関処理やCBOC+,CBOC−信号毎の相関処理、さらには、概略サーチ時の相関処理のために、図示した数よりも多い数の相関器を備える。
【0069】
相関器331は、ベースバンド信号と合成Earlyレプリカコードとを相関処理して合成E相関データを算出し、誤差検出部35へ出力する。相関器332は、ベースバンド信号と合成Promptレプリカコードとを相関処理して合成P相関データを算出し、誤差検出部35へ出力する。相関器333は、ベースバンド信号と合成Lateレプリカコードとを相関処理して合成L相関データを算出し、誤差検出部35へ出力する。
【0070】
このような構成であっても、上述の第1の実施形態と同様に、ステータスに応じてFalseLockさせることなく、コード追尾を行うことができる。
【0071】
次に、第3の実施形態に係るGNSS受信装置について図を参照して説明する。
なお、本実施形態のGNSS受信装置は、第1の実施形態の復調部13の構成に対して、合成部、誤差検出部、およびその後段が異なる復調部130を有するものであるので、当該箇所のみを説明する。
【0072】
図7は、本実施形態の復調部130の合成部34’、誤差検出部35’、スイッチ37を詳細に示した図であり、他の構成は、第1の実施形態の復調部13と同じである。
【0073】
合成部34’の可変増幅器341は、BOC(1,1)E相関データに対してBOC(1,1)用合成比率係数G11を乗算し、加算器347へ出力とともに誤差検出部35’のBOC(1,1)用誤差検出器351へ出力する。可変増幅器342は、BOC(1,1)P相関データに対してBOC(1,1)用合成比率係数G11を乗算し、加算器348へ出力とともに誤差検出部35’のBOC(1,1)用誤差検出器351へ出力する。可変増幅器343は、BOC(1,1)L相関データに対してBOC(1,1)用合成比率係数G11を乗算し、加算器349へ出力とともに誤差検出部35’のBOC(1,1)用誤差検出器351へ出力する。
【0074】
加算器347,348,349から出力された、合成Early相関データ、合成Prompt相関データ、および合成Late相関データは、誤差検出部35’のCBOC用誤差検出器352へ出力される。
【0075】
誤差検出部35’は、BOC(1,1)用誤差検出器351とCBOC用誤差検出器352とからなる。BOC(1,1)用誤差検出器351は、BOC(1,1)E相関データ、BOC(1,1)P相関データ、およびBOC(1,1)L相関データに基づいてドットプロダクト演算を実行することで、BOC(1,1)レプリカコードによるコード誤差を検出する。CBOC用誤差検出器352は、合成E相関データ、合成P相関データ、および合成L相関データに基づいてドットプロダクト演算を実行することで、合成レプリカコードによるコード誤差を検出する。
【0076】
スイッチ37は、制御部30からのSW制御信号に基づいて、BOC(1,1)レプリカコードによるコード誤差、または合成レプリカコードによるコード誤差のいずれか一方を選択して出力する。ここで、SW制御信号は、本発明の「相関処理条件」に含まれる情報に相当し、上述のコード捕捉のステータス時にはBOC(1,1)レプリカコードによるコード誤差を選択し、コード追尾のステータス時には合成レプリカコードによるコード誤差を選択する旨を示す信号である。これにより、スイッチ37は、コード捕捉のステータス時にはBOC(1,1)レプリカコードによるコード誤差を制御部30へ出力し、コード追尾のステータス時には合成レプリカコードによるコード誤差を制御部30へ出力する。
【0077】
このような構成および処理を用いても、上述の各実施形態と同様に、ステータスに応じてFalseLockさせることなく、コード追尾を行うことができる。
【0078】
なお、このようなBOC(1,1)用誤差検出器351およびCBOC用誤差検出器352から構成された誤差検出部35’とスイッチ37とを備えた構成を、上述の第2の実施形態に示したような相関処理前にレプリカコードを合成する構成に適用しても良い。
【0079】
次に、第4の実施形態に係るGNSS受信装置について図を参照して説明する。
【0080】
なお、本実施形態のGNSS受信装置は、第3の実施形態の復調部130の合成部34’、誤差検出部35’に置き換えて、誤差検出部350および誤差合成部38を有する復調部130’を備えたものであるので、当該箇所のみを説明する。
【0081】
図8(A)は、本実施形態の復調部130’の誤差合成部38と、これらに直接関連する機能部のみを示す図であり、他の構成は、第3の実施形態の復調部130と同じである。また、図8(B)は本実施形態の復調部130’の誤差検出部38の派生パターンである誤差検出部38’の構成を示す図ある。
【0082】
誤差検出部350は、BOC(1,1)用誤差検出器351とBOC(6,1)用誤差検出器353とを備える。
【0083】
BOC(1,1)用誤差検出器351は、BOC(1,1)E相関データ、BOC(1,1)P相関データ、およびBOC(1,1)L相関データに基づいてドットプロダクト演算を用いることで、BOC(1,1)レプリカコードによるコード誤差を検出する。
【0084】
BOC(6,1)用誤差検出器353は、BOC(6,1)E相関データ、BOC(6,1)P相関データ、およびBOC(6,1)L相関データに基づいてドットプロダクト演算を用いることで、BOC(6,1)レプリカコードによるコード誤差を検出する。
【0085】
誤差合成部38は、可変増幅器381,382および加算器383からなる。可変増幅器381は、BOC(1,1)レプリカコードによるコード誤差にBOC(1,1)用合成比率係数G11を乗算し、加算器383へ出力とともにスイッチ回路37へ出力する。可変増幅器382は、BOC(6,1)レプリカコードによるコード誤差にBOC(6,1)用合成比率係数G61を乗算し、加算器383へ出力する。加算器383は、BOC(1,1)用合成比率係数G11が乗算されたBOC(1,1)レプリカコードによるコード誤差と、BOC(6,1)用合成比率係数G61が乗算されたBOC(6,1)レプリカコードによるコード誤差とを加算もしくは差分して、合成コード誤差データを算出し、スイッチ37へ与える。
【0086】
このような構造及び処理を用いても、上述の各実施形態と同様に、ステータスに応じてFalseLockさせることなく、コード追尾を行うことができる。
【0087】
なお、上述の本実施形態の誤差合成部38では、可変増幅器381が、図8(A)に示すように、誤差検出部350のBOC(1,1)用誤差検出器351とスイッチ37との接続経路上に直接挿入される例を示したが、BOC(1,1)用誤差検出器351とスイッチ37との接続経路上ではなく、図8(B)に示す誤差合成部38’のように、当該接続経路と加算器383との間に配置しても良い。このような可変増幅器の接続構成は、本実施形態に限らず、上述の第1、第3の実施形態に適用しても良い。
【0088】
また、本実施形態や第1、第3の実施形態で詳細を図示していないが、合成部34,34’の可変増幅器341〜346を相関処理部の相関器と積算器との間に配置するようにしても良い。
【符号の説明】
【0089】
11−受信アンテナ、12−ダウンコンバータ、13,13’,130,130’−復調部、14−航法メッセージ取得部、15−測位部、30−演算部、31−レプリカコード生成部、310−コードNCO、311−BOC(1,1)レプリカコード生成部、312−BOC(6,1)レプリカコード生成部、32−シフトレジスタ、321−BOC(1,1)用シフトレジスタ、322−BOC(6,1)用シフトレジスタ、33−相関処理部、331〜336−相関器、34,34’−合成部、341〜346,361〜366,381,382−可変増幅器、347〜349,367〜369,383−加算器、35,35’,350−誤差検出部、351−BOC(1,1)用誤差検出部、352−CBOC用誤差検出器、353−BOC(6,1)用誤差検出部、36−レプリカ合成部、37−スイッチ、38,38’−誤差合成部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡散コードにより位相変調された測位信号を受信してコード捕捉・追尾するGNSS受信装置であって、
サブキャリアが異なる第1のレプリカコードおよび第2のレプリカコードを生成するレプリカコード生成部と、
前記受信した測位信号と前記第1のレプリカコードとの相関処理を行う第1の相関器、および、前記受信した測位信号と前記第2のレプリカコードとの相関処理を行う第2の相関器を有する相関処理部と、
前記第1の相関処理結果と第2の相関処理結果を相関処理条件に基づいて合成する合成部と、
前記合成部から出力される相関処理結果に基づいてコード誤差を検出するコード誤差検出部と、
を備えたGNSS受信装置。
【請求項2】
拡散コードにより位相変調された測位信号を受信してコード追尾するGNSS受信装置であって、
演算部からのコード制御情報に基づいてサブキャリアが異なる第1のレプリカコードおよび第2のレプリカコードを生成するレプリカコード生成部と、
前記第1のレプリカコードと第2のレプリカコードを相関処理条件に基づいて合成する合成部と、
前記受信した測位信号と前記合成部から出力されるレプリカコードとの相関処理を行う相関処理部と、
前記相関処理結果に基づいてコード誤差を検出するコード誤差検出部と、
を備えたGNSS受信装置。
【請求項3】
前記コード誤差が予め設定した切替閾値以上か未満かにおいて前記相関処理条件を異ならせる制御部を備える請求項1または請求項2に記載のGNSS受信装置。
【請求項4】
前記第1のレプリカコードに基づいて、それぞれに所定のコード位相差からなる第1のEarlyレプリカコード、第1のPromptレプリカコード、第1のLateレプリカコードを生成するとともに、前記第2のレプリカコードに基づいて、それぞれに所定のコード位相差からなる第2のEarlyレプリカコード、第2のPromptレプリカコード、第2のLateレプリカコードを生成するシフトレジスタを備え、
前記コード誤差検出部は、ドットプロダクト演算により前記コード誤差を検出する、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のGNSS受信装置。
【請求項5】
前記レプリカコード生成部は、サブキャリアとして、BOC(1,1)サブキャリアおよびBOC(6,1)サブキャリアを用い、
前記相関処理部は、測位信号としてCBOC信号を用いる、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のGNSS受信装置。
【請求項6】
前記レプリカコード生成部は、サブキャリアとして、BOC(1,1)サブキャリアおよびBOC(6,1)サブキャリアを用い、
前記相関処理部は、測位信号としてCBOC信号を用い、
前記制御部は、
前記コード誤差が前記切替閾値以上であることを検出すると捕捉ステースと判断し、前記BOC(1,1)サブキャリアのみを用いたBOC(1,1)レプリカコードを用いるように前記相関処理条件を設定し、
前記コード誤差が前記切替閾値未満であることを検出すると追尾ステースと判断し、前記BOC(1,1)サブキャリアを用いたBOC(1,1)レプリカコードと前記BOC(6,1)サブキャリアを用いたBOC(6,1)レプリカコードとを所定の合成比で合成して用いるように前記相関処理条件を設定する、請求項3に記載のGNSS受信装置。
【請求項7】
前記BOC(1,1)レプリカコードに基づいて、それぞれに所定のコード位相差からなるEarlyBOC(1,1)レプリカコード、PromptBOC(1,1)レプリカコード、LateBOC(1,1)レプリカコードを生成するとともに、前記BOC(6,1)レプリカコードに基づいて、それぞれに所定のコード位相差からなるEarlyBOC(6,1)レプリカコード、PromptBOC(6,1)レプリカコード、LateBOC(6,1)レプリカコードを生成するシフトレジスタを備え、
前記コード誤差検出部は、ドットプロダクト演算により前記コード誤差を検出する、請求項6に記載のGNSS受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−206256(P2010−206256A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46446(P2009−46446)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】