説明

GPS受信装置およびGPS測位システム

【課題】保管中に無駄な電力の使用を抑えることができ、且つ、保管時や再使用時に煩わしい操作を要することなく、起動時に速やかな測位が可能となるGPS受信装置およびGPS測位システムを提供する。
【解決手段】GPS受信装置の運動状態を検出して装置本体が移動状態にあるか静止状態にあるかを判別する判別手段(20,21)と、装置本体が静止状態に移行した場合にGPS電源をオンするとともに、装置本体が移動状態に移行したと場合にGPS電源をオフする電源制御手段(16)と、通信ネットワークを介して航法メッセージを取得可能な航法メッセージ取得手段(10〜12)と、装置本体が移動状態に移行した場合に、前記航法データ取得手段を介して航法メッセージを取得し、この取得した航法メッセージで記憶手段(19)に記憶された航法メッセージを更新する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、GPS衛星からの信号を受信して測位を行うGPS受信装置およびこのGPS受信装置とサーバ装置とからなるGPS測位システムに関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信して現在位置を測定するGPS受信装置が知られている。
【0003】
GPS受信装置を応用した装置としては、車に搭載されて現在位置を測定しながら目的地までの案内情報を出力するカーナビゲーション装置や、近年では、持ち運び可能に小型化されて簡易的なナビゲーションを行うPND(Personal Navigation Device)などが開発されている。PNDは、歩行中に使用することもできるし、車に取り付けて運転中に使用されたりする。
【0004】
GPSを利用した正確な測位には、GPS衛星から送信されるC/A(Coarse and Acquisitions)コードやP(Precise)コードなどの測位符号(測位用信号)と、GPS衛星から送信される航法メッセージ(エフェメリス、アルマナック、時刻補正データ、電離層補正データなど)が必要となる。このうち、航法メッセージは、全てを受信するのに比較的長い時間(例えば10分以上)を要するが、測位のたびに受信する必要はなく、一度、受信したら所定の使用期限を過ぎるまでは、前回受信した航法メッセージを用いて正確な測位を行うことが可能となる。
【0005】
PNDなどでは、保管中などに前回受信した航法メッセージの使用期限が超過してしまうことが多々生じるため、通常では、使用開始時に航法メッセージの受信から開始しなければならず、測位が可能となるまでに比較的長い時間を要することがある。
【0006】
そこで、従来、GPS受信装置において以前に受信して記憶されている航法メッセージが、使用期限を超過している場合でも、速やかな測位を可能とする幾つかの提案がなされている。例えば、特許文献1には、定期的に航法メッセージを収集しているGPSアシストサーバから電子メール等で必要な航法メッセージを受信し、この航法メッセージを用いて測位を行うGPS受信機が開示されている。また、特許文献2には、GPS受信装置に通信機能を備え、無線基地局から送信される測位アシスト情報を定期的に受信して、内部記憶している測位アシスト情報を定期的に更新する構成が開示されている。また、特許文献3には、GPS衛星から送信される航法メッセージをGPS監視サーバで受信し、GPS監視サーバが航法メッセージ中のGPS補助情報をFM多重放送局から送信する構成が開示されている。
【特許文献1】特開2000−275319号公報
【特許文献2】特開2002−221565号公報
【特許文献3】特開2002−228739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1のGPS受信機では、保管状態から使用を開始する際に、受信機が記憶している航法メッセージが使用期限を超過しているか否かを確認したり、使用期限を過ぎている場合にユーザが航法メッセージを取得要求するメール送信の操作を行う必要があるなど、ユーザにとって煩雑な操作を要するという課題があった。そもそも、日常的に、PNDを車に取り付けて使用したり、使用後に取り外して部屋で保管したりするといった動作を繰り返すユーザにとっては、保管時にPNDの電源をオフ操作し、使用開始時にPNDの電源をオン操作すること自体煩わしいと感じるものであるため、使用開始時に航法メッセージの使用期限を確認したりメール送信を行ったりすることは、ユーザにとって大変煩雑なものになると考えられる。
【0008】
また、特許文献2と3の構成では、保管時であっても常時或いは定期的に受信部に電源を供給してデータ受信動作を行わせる必要があり、バッテリで駆動するタイプのGPS受信装置では保管中でもバッテリが消耗していくという欠点がある。また、保管場所が無線電波の届かないところであれば、測位に必要なデータも受信できないという欠点もある。
【0009】
この発明の目的は、保管中に無駄な電力の使用を抑えることができ、且つ、保管時や再使用時に煩わしい操作を要することなく、起動時に速やかな測位が可能となるGPS受信装置およびGPS測位システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
GPS衛星から送信される測位用信号と航法メッセージとを受信する受信手段と、
この受信手段により受信された航法メッセージを記憶する記憶手段と、
前記受信手段により受信された測位用信号と前記記憶手段に記憶された航法メッセージとから現在位置を算出する測位手段と、
を有するGPS受信装置において、
当該GPS受信装置の装置本体の運動状態を検出して当該装置本体が移動状態にあるか静止状態にあるかを判別する判別手段と、
前記判別手段により前記装置本体が移動状態から静止状態に移行したと判別された場合に前記受信手段および前記測位手段の電源をオンするとともに、前記装置本体が静止状態から移動状態に移行したと判別された場合に前記受信手段および前記測位手段の電源の全て或いは一部をオフする電源制御手段と、
前記受信手段を介さずに外部から航法メッセージを取得可能な航法メッセージ取得手段と、
前記判別手段により前記装置本体が静止状態から移動状態に移行したと判別された場合に、前記航法メッセージ取得手段を介して航法メッセージを取得し、この取得した航法メッセージで前記記憶手段に記憶された航法メッセージを更新する航法メッセージ更新手段と、
を有することを特徴としている。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のGPS受信装置において、
前記判別手段は、
前記装置本体に加わる加速度を検出する加速度センサと、
当該加速度センサの検出値に基づいて前記装置本体の速度を演算する演算手段と、
前記加速度センサの検出値と前記演算手段により演算された速度値とに基づいて前記装置本体が移動状態にあるか静止状態にあるかを判別する状態判別手段と、
を有することを特徴としている。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のGPS受信装置において、
前記航法メッセージ取得手段は、
新しい航法メッセージが順次記憶されていく外部装置と通信を行う通信手段と、
前記通信手段を介して前記外部装置に対して新しい航法メッセージの転送要求を送信し、この転送要求に基づき前記外部装置から送信されてくる航法メッセージを受信する通信制御手段と、
を備えたことを特徴としている。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のGPS受信装置において、
前記通信手段は、
無線LANを介してインターネットに接続する構成であり、
前記通信制御手段は、
前記通信手段によりインターネットを介して外部から航法メッセージを取得する構成であることを特徴としている。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項3記載のGPS受信装置において、
前記通信制御手段は、
前記航法メッセージの転送要求の際に、前記測位手段により以前に測位された現在位置の情報を送信し、この現在位置の情報に対応した航法メッセージを受信する構成であることを特徴としている。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1記載のGPS受信装置において、
前記航法メッセージ更新手段は、
前記判別手段により前記装置本体が静止状態から移動状態に移行したと判別された場合に、前記記憶手段に格納された航法メッセージの使用期限が過ぎているか否かを判別する期限判別手段を有し、
前記期限判別手段により使用期限が過ぎていると判別された場合に、前記航法メッセージ取得手段により航法メッセージを取得して前記記憶手段に記憶された航法メッセージを更新する構成であることを特徴としている。
【0016】
請求項7記載の発明は、請求項1記載のGPS受信装置において、
バッテリ搭載部を有し、
前記受信手段および前記測位手段は、前記バッテリ搭載部に搭載されたバッテリの電源によって駆動する構成であることを特徴としている。
【0017】
請求項8記載の発明は、
請求項1記載のGPS受信装置と、ネットワークに接続されたサーバ装置と、を備えたGPS受信システムにおいて、
前記サーバ装置は、
新しい航法メッセージが順次記憶されていく記憶手段と、
通信ネットワークを介して通信を行う通信手段と、
前記GPS受信装置からの転送要求に応じて前記記憶手段に記憶された航法メッセージを前記通信手段により前記通信ネットワークを介して送信する通信制御手段と、
を備え、
前記GPS受信装置における前記航法メッセージ取得手段は、
前記通信ネットワークを介して通信を行う通信手段と、
前記通信手段により前記通信ネットワークを介して前記サーバ装置に接続し、該サーバ装置に新しい航法メッセージの転送要求をして当該サーバ装置から航法メッセージを受信する通信制御手段と、
を有していることを特徴としている。
【0018】
請求項9記載の発明は、請求項8記載のGPS測位システムにおいて、
前記GPS受信装置における前記通信制御手段は、
前記新しい航法メッセージの転送要求の際に、前記測位手段により以前に測位された現在位置の情報を送信する構成であり、
前記サーバ装置の前記通信制御手段は、
前記GPS受信装置から現在位置の情報を受信した場合に、前記記憶手段から当該現在位置に対応した新しい航法メッセージを読み出して前記GPS受信装置へ送信する構成であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明に従うと、保管時や再使用時にユーザに煩わしい操作を行わせることなく、保管状態において不要な電力消費を削減したり、再使用時に必要な電力の供給を再開させて測位動作を行わせることができる。さらに、再使用時には、煩わしい操作を要することなく、GPS衛星以外から新しい航法メッセージを取得して、速やかな測位を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態のGPS受信装置の全体構成を示すブロック図である。
【0022】
この実施形態のGPS受信装置1は、例えば持ち運び可能に小型化されて現在位置の測定や簡易的なナビゲーション動作を行うPND(Personal Navigation Device)である。このGPS受信装置1は、図1に示すように、GPS衛星から測位用信号や航法メッセージの信号を受信するGPSアンテナ14と、測位用信号や航法メッセージから少なくとも4つのGPS衛星との擬似距離や衛星軌道を求めこれらから現在位置を算出するGPS測位演算装置15と、測位情報やナビゲーション情報などを出力する表示装置13と、装置の統括的な制御を行うCPU(中央演算処理装置)16と、算出された最新の位置情報が記憶される最終位置情報記憶メモリ17と、例えば不揮発性メモリに地図データが格納されてなる地図データベース18と、GPS衛星からの受信やインターネットを介したデータ通信により取得した航法メッセージ(例えばエフェメリスデータ)が記憶されるエフェメリス記憶メモリ19等を備えている。
【0023】
さらに、このGPS受信装置1には、他の無線LAN(Local Area Network)機器との間で無線信号の送受信を行う無線LANアンテナ10と、通信規約に従って送受信信号と通信データの相互変換を行うネットワーク制御装置11と、無線LANアンテナ10を介したデータ通信によりインターネット接続を行うための通信処理を行うインターネット接続装置12と、装置本体の運動状態を検出する加速度センサ20と、加速度センサ20の出力データを積分処理等して装置本体の移動状態の判定信号を生成する移動判定装置21と、例えば、二次電池などのバッテリが搭載されて各部に電源電圧を供給する電源22等を備えている。
【0024】
上記の無線LANアンテナ10は、例えばWiFi(ワイファイ:登録商標)規格の構成であり、予め接続設定がなされた家庭内の無線LANなどに低電力で無線接続可能なものである。ネットワーク制御装置11は、CPU16やインターネット接続装置12から送られてきた送信データを所定の通信方式の信号に変換して無線LANアンテナ10から送信したり、無線LANアンテナ10を介した受信信号から受信データを再生してCPU16やインターネット接続装置12に送ることで、他の無線LAN機器との間でデータ通信を行うものである。インターネット接続装置12は、CPU16とネットワーク制御装置11との間でインタネットプロトコルに則ったデータ変換を行うことで、インターネットを介したデータ通信を可能とするものである。
【0025】
CPU16は、図示略のRAM(Random Access Memory)を作業用のメモリ空間として使用しながら、図示略の不揮発性メモリに格納された制御プログラムを実行して、機器の全体的な制御処理を行うものである。CPU16は、ネットワーク制御装置11やインターネット接続装置12などの通信手段により通信を行わせる通信制御手段としても機能するものである。
【0026】
最終位置情報記憶メモリ17やエフェメリス記憶メモリ19は、図示では別個の構成のように記しているが、例えば、1個のスタティックRAMや1個の不揮発性メモリなどの一部の記憶領域として形成されるものである。
【0027】
加速度センサ20は、例えば、3次元の加速度センサであり、重力加速度を基準の加速度としてこれとの差分をとることで、鉛直方向と水平方向とを識別してそれぞれの加速度の検出を行えるものである。なお、ジャイロスコープなどを搭載して、回転方向の検出も同時に行う構成としても良い。
【0028】
移動判定装置21は、加速度センサ20からの検出信号を取り込んで、装置本体の移動状態の判別を行う処理装置である。移動判定装置21は、CPU16がスリープ状態となった場合でも、装置本体の移動状態の判別を継続するとともに、装置本体が静止状態から移動状態に移行した場合に、CPU16にスリープ解除の信号を出力してCPU16のスリープ状態を解除できるように構成されている。
【0029】
電源22は、例えば、CPU16からの指令に基づいてGPS測位演算装置15やGPSアンテナ14に供給されるGPS電源をオン(供給状態)/オフ(停止状態)することが可能になっている。また、CPU16からの指令によって、加速度センサ20や移動判定装置21を除いた各部へ供給されている電源をオフしたり、スリープモード用の供給に切り換えたりすることも可能になっている。
【0030】
図2は、本発明の実施形態のGPS測位システムの構成を示すシステム構成図である。
【0031】
本実施形態のGPS測位システムは、図2に示すように、上述のGPS受信装置1、並びに、インターネット40に接続されているサーバ装置30から構成される。
【0032】
サーバ装置30は、例えば、通信制御を行うCPU31と、CPU31に作業用のメモリ空間を提供するRAM32と、制御プログラムや制御データが格納される記憶装置33と、インターネット40と接続してデータ通信の処理を行う通信処理部34等を備えている。
【0033】
このサーバ装置30は、GPS衛星から送信される航法メッセージを、例えば、通信ネットワーク接続された他の受信装置から送られるなどして記憶装置33に記憶するように動作する。航法メッセージは所定時間ごとに更新されるので、更新されるたびに新しい航法メッセージを受け取って、最新の航法メッセージが記憶されるように構成される。なお、サーバ装置30に、GPS衛星からの航法メッセージを直接的に受信する構成を設けて、この直接受信した航法メッセージを記憶するように構成しても良い。
【0034】
記憶装置33に記憶される航法メッセージは、例えば、エフェメリスデータであり、複数のGPS衛星から受信された複数の最新エフェメリスデータが記憶装置33に記憶されるようになっている。
【0035】
また、このサーバ装置30は、常時、後述のサイト処理(図4)を実行しており、予め登録されている機器からインターネット40を介してアクセス可能な状態にされるとともに、アクセスがあった場合に所定の処理を実行するようになっている。
【0036】
図3には、GPS受信装置1により実行される端末処理のフローチャートを示す。また、図4には、サーバ装置30により実行されるサイト処理のフローチャートを示す。
【0037】
GPS受信装置1は、常時、図3の端末処理を実行した状態にされる。この端末処理は、GPS受信装置1を通常使用しているときの処理、保管時など停止状態としたときの処理、使用再開した際の処理が含まれるものである。
【0038】
[通常使用状態の処理]
先ず、GPS受信装置1を通常の使用状態とした場合の処理を説明する。例えば、GPS受信装置1を持ち出して使用している際には、図3の端末処理において、ステップS1〜S9のループ処理が繰り返し実行されることとなる。
【0039】
先ず、ステップS1では、移動判定装置21が加速度センサ20から加速度データを取り込んで、ステップS2において加速度がゼロか否か判別する。そして、加速度がゼロでなければ、ステップS3において、加速度データから速度演算を行って内部記憶してある速度データを更新する。一方、加速度がゼロであると判別されたら、ステップS4で内部記憶されている速度データを取り出して、続くステップS5で速度がゼロか否か判別する。ステップS5の判別で速度がゼロでないと判別されたら、続くステップS6に移行する。
【0040】
つまり、上記のステップS1〜S5の処理によって、速度か加速度の何れかがゼロでないと判別されて、GPS受信装置1が移動状態にあることが判別される。
【0041】
GPS受信装置1が移動状態にあると判別されてステップS6に移行すると、該ステップS6で、電源22からのGPS電源がオンされているかオフされているかを判別する。GPS電源は、装置本体が停止状態にあると判断された場合に後述のようにオフされるようになっているので、オンされていれば前回のループ処理でも移動状態にあったと判別できる。
【0042】
通常の使用状態においては、装置本体は移動状態が続いてGPS電源がオンのままとされるので、ステップS6の判別処理の結果、ステップS7に移行する。
【0043】
ステップS7に移行すると、GPS測位演算装置15とGPSアンテナ14を動作させてGPS衛星の信号受信処理を行わせ、GPS衛星が補足されたか否かを判別する。そして、補足されていれば、ステップS8に移行して、GPS測位演算装置15が受信した測位用信号と記憶メモリ19に記憶されているエフェメリスデータとを用いて現在位置の計算処理を行う。現在位置が算出されたら、この現在位置の情報を最終位置情報記憶メモリ17に記憶させる。
【0044】
なお、このGPS衛星の信号受信処理の際、更新された航法メッセージ(例えばエフェメリスデータ)の送信が行われている場合には、これを全て受信して、この最新のエフェメリスデータで記憶メモリ19のエフェメリスデータを更新する。
【0045】
ステップS8で現在位置の算出がなされたら、続くステップS9において、現在位置を地図上に表わした表示データを表示装置13に出力する等の表示処理を行う。この表示データは、例えば、地図データベース18から現在位置の周辺の地図データを読み出し、現在位置を表わす表示データを地図データの現在位置に対応する部位に付加するなどして生成される。
【0046】
そして、ステップS9の表示処理が済んだら、再び、ステップS1に戻って、ステップS1からのループ処理を繰り返す。
【0047】
このようなステップS1〜S9のループ処理が繰り返されることで、GPS受信装置1が移動状態にある場合にGPS受信を行って現在位置の測定とその表示処理とが繰り返し行われていくようになっている。
【0048】
[停止状態の処理]
次に、GPS受信装置1の使用後など装置本体が停止状態となったときの処理を説明する。例えば、GPS受信装置1が保管場所などに置かれるなどして停止状態となった場合、この停止状態は、上述した加速度の判別処理(ステップS2)と速度の判別処理(ステップS5)により両方がゼロとなることで判別される。
【0049】
そして、このようにGPS受信装置1が停止状態と判別されたら、ステップS10に移行してCPU16が電源22に指令コードを出力してGPS電源の供給を停止させる。そして、再びステップS1に戻る。
【0050】
GPS受信装置1が停止状態のまま続いた場合には、ステップS1,S2,S4,S5,S10のループ処理が繰り返されることで、GPS電源はオフ状態のまま、GPS受信装置1が動作状態に移行しないか監視が続けられることとなる。
【0051】
なお、この停止状態の処理は、GPS受信装置1が使用後に保管状態にされたときだけでなく、例えば、GPS受信装置1の使用中に一時停止した場合などにも移行されるものである。しかしながら、一時停止中には現在位置は変化しないので、表示装置13の表示の更新やGPS受信の処理を行う必要はないため、上記ステップS1,S2,S4,S5,S10のループ処理に移行することで、無駄な消費電力の削減を図ることができる。
【0052】
なお、使用中の一時停止の場合と保管状態にある停止状態とを区別するために、加速度と速度の両方がゼロとなる状態が所定期間や所定回数続いたか判別し、所定期間や所定回数続いた場合には使用後の保管状態にあると判別して、表示装置13の電源をオフしたり、再起動に必要な加速度センサ20や移動判定装置21を除いてその他の構成をスリープモードの状態に移行させるように構成しても良い。
【0053】
[静止状態から移動状態への移行処理]
次に、GPS受信装置1の装置本体が停止状態から再び移動状態に変化した場合の処理について説明する。停止状態から移動状態へ移行したことの判別は、ステップS2又はステップS5の加速度や速度の判別処理と、ステップS6のGPS電源のオン・オフの判別処理によって行われる。すなわち、GPS受信装置1の装置本体が移動状態に変化すると、加速度か速度がゼロでなくなるので、ステップS2,S5の判別処理によってステップS6に移行する。さらに、直前の状態が停止状態であれば、ステップS10の処理によりGPS電源はオフにされているので、ステップS6においてGPS電源がオフであると判別した場合に、停止状態から移動状態へ移行したことが判別される。
【0054】
GPS受信装置1が停止状態から移動状態へ移行したと判別されてステップS11に移行すると、先ず、該ステップS11で電源22に指令コードを出力してGPS電源をオン(供給状態)させる。スリープモードに移行していた場合には、移動判定装置21がスリープ解除信号をCPU16に出力することで、CPU16のスリープモードが解除されるとともに、CPU16からの指令コードにより電源22が通常モードにされて各部のスリープモードも解除される。
【0055】
GPS電源をオンしたら、続くステップS12で、エフェメリス記憶メモリ19に記憶されているエフェメリスデータが取得時期が新しいものか古いものかを判別する。取得時期の情報は、エフェメリスデータとともに記憶された航法メッセージの時刻情報から判別しても良いし、エフェメリスデータを記憶メモリ19に記憶する際に、時刻データも付加して記憶させておくことで、この時刻データから判別するようにしても良い。その結果、取得時期が古くてエフェメリスデータの使用期限が過ぎているものと判別されればステップS13に移行するし、取得時期が新しくてエフェメリスデータの使用期限を過ぎていないと判別されればステップS7に移行する。
【0056】
つまり、一時的な停止からGPS受信装置1が動作状態に移行した場合などは、記憶メモリ19に記憶されたエフェメリスデータが新しくそのまま使用できるので、ステップS7に戻って、再び、通常使用状態のステップS1〜S9のループ処理に戻ることとなる。
【0057】
一方、例えば、GPS受信装置1を一定時間保管した後に使用を開始する際など、記憶メモリ19に記憶されたエフェメリスデータが古くて使用できない場合には、先ず、ステップS13において、ネットワーク制御装置11により無線LANアンテナ10を介して無線接続処理を行い、近くに接続可能な無線LAN機器が有るか無いかを判別する。そして、接続可能な無線LAN機器があれば、続くステップS14でこの無線LAN機器と無線接続処理を行う。この無線接続により、GPS受信装置1はインターネット40を介してサーバ装置30にアクセス可能な状態となる。
【0058】
サーバ装置30にアクセス可能になったら、次に、ステップS15において、CPU16は最終位置情報記憶メモリ17に記憶されている前回算出された位置情報(前回位置情報)を読み出して、これをサーバ装置30に送信する。前回位置情報は、前回算出時からGPS受信装置1は停止状態のままであったはずなので、現在の位置情報を表わすものと同等の情報となる。
【0059】
ところで、サーバ装置30においては、図4に示すサイト処理が、並列処理等により常に実行された状態にある。そして、そのステップS21のループ処理によって、常時、GPS受信装置1からのアクセスがないか監視を行っている。なので、GPS受信装置1から前回位置情報がサーバ装置30に送られたら、サーバ装置30によりこれが検出されてステップS22に移行するとともに、該ステップS22においてこの前回位置情報を受信処理する。なお、GPS受信装置1からサーバ装置30へのアクセスが行われる際には、予め設定された認証処理を経るようにしても良い。
【0060】
前回位置情報を受信したら、サーバ装置30は、次のステップS23において、記憶装置33に記憶されている複数のGPS衛星のエフェメリスデータのうち、受信した前回位置情報と同一エリアにおいて、受信しやすい位置に存在する所定個のGPS衛星のエフェメリスデータ(位置情報に対応した最新のエフェメリスデータ)を検索する。
【0061】
そして、続くステップS24で、この検索されたエフェメリスデータをGPS受信装置1に送信して、再びステップS21に戻る。
【0062】
GPS受信装置1では、図3のステップS15で前回位置情報をサーバ装置30に送信した後、ステップS16において、サーバ装置30から応答受信処理を繰り返す。そして、サーバ装置30から最新エフェメリスデータを受信したら、ステップS17に移行して、記憶メモリ19に記憶されているエフェメリスデータをこの最新のものに更新する。
【0063】
エフェメリスデータを更新したら、ステップS7に移行して、再び、通常使用状態のステップS1〜S9のループ処理に戻ることとなる。そして、このループ処理において、最新のエフェメリスデータを用いて、速やかな現在位置の算出や現在位置の表示処理が可能となる。
【0064】
一方、上述したステップS13の無線LAN機器の有無の判別処理において、外部に無線接続できる無線LAN機器が無いと判別されたら、記憶メモリ19のエフェメリスデータが古いまま、やむを得ずステップS7に移行して、再び、通常使用状態のステップS1〜S9のループ処理に戻る。この場合、比較的長い時間を要するが、GPS衛星から新たなエフェメリスデータの受信を行って現在位置の算出を行うこととなる。
【0065】
以上のように、この実施形態のGPS受信装置1によれば、加速度センサ20や移動判定装置21を用いてGPS受信装置1が移動状態にあるか停止状態にあるかを検出し、停止状態であればGPS電源がオフされ、停止状態から動作状態に移行したらGPS電源がオンされるので、無駄な電力消費を削減できる。また、停止状態がある程度つづいたら再起動に必要な構成を除いてスリープ状態にされ、また、停止状態から動作状態に移行したら、GPS電源がオンされて他の構成もスリーブ状態から復帰されるので、使用後に保管するときや、保管状態から使用を開始する際などに、ユーザは煩雑な操作を行うことなく、GPS受信装置1を保管に適した状態から通常使用状態に切り換えることができる。保管状態においては電力消費も非常に小さくされるので、バッテリ電源を早く消耗させてしまうこともない。
【0066】
また、この実施形態のGPS受信装置1およびサーバ装置30を含めたGPS測位システムによれば、GPS受信装置1を保管状態から使用再開する場合に、GPS受信装置1が停止状態から移動状態へ移行したことを自動的に検出し、さらに、これに基づき自動的に無線LAN接続を行って、ネットワーク経由でサーバ装置30からその地点に対応したエフェメリスデータが取得される。したがって、ユーザはなんら煩雑な操作を行うことなく、このエフェメリスデータを使用して、速やかな現在位置の測定を開始することができる。また、長い期間保管する場合でも、保管中にはエフェメリスデータの更新処理等が行われないので、バッテリ電源を早く消耗させてしまうこともない。
【0067】
また、GPS受信装置1の動作状態を検出するのに加速度センサ20と移動判定装置21とを用いているので、低コストに且つ低い消費電力で動作状態の検出が可能である。
【0068】
また、サーバ装置30から最新のエフェメリスデータを受信する構成として、無線LANとインターネットを介したデータ通信を採用しているので、低コストに且つ低い消費電力で確実なデータ取得を可能としている。
【0069】
また、サーバ装置30にエフェメリスデータの転送要求をする際には、前回位置情報を送信することで転送要求としているので、GPS受信装置1の現在位置に適したエフェメリスデータが得られて、最小限のデータ通信で速やかな測位がを開始できるという効果が得られる。
【0070】
また、GPS受信装置1が静止状態から動作状態に移行した場合でも、一旦、記憶メモリ19のエフェメリスデータが使用期限を過ぎたものか否か確認し、使用期限を過ぎている場合のみサーバ装置30からエフェメリスデータを取得するようにしているので、一時的な停止から動作状態に移行した場合などに、不要なデータ通信を省くことができる。
【0071】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記実施形態では、GPS受信装置1として持ち運び可能なPNDを適用した例を示したが、車に設置されるタイプのカーナビケーションに本発明を適用することも可能である。また、測位情報を緯度経度で表示するタイプのGPS受信装置に適用したり、表示装置を持たずに測位情報を履歴として記憶して後でコンピュータに取り込み可能としたGPS受信装置に適用することも可能である。
【0072】
その他、装置本体の移動状態を検出する方式や、GPS受信装置1とサーバ装置30との間の通信形態など、実施形態で示した細部は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態のGPS受信装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態のGPS測位システムの構成を示すシステム構成図である。
【図3】GPS受信装置のCPUにより実行される制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】サーバ装置により実行される制御処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0074】
1 GPS受信装置
10 無線LANアンテナ
11 ネットワーク制御装置
12 インターネット接続装置
13 表示装置
14 GPSアンテナ
15 GPS測位演算装置
16 CPU
17 最終位置情報記憶メモリ
18 地図データベース
19 エフェメリス記憶メモリ
20 加速度センサ
21 移動判定装置
22 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS衛星から送信される測位用信号と航法メッセージとを受信する受信手段と、
この受信手段により受信された航法メッセージを記憶する記憶手段と、
前記受信手段により受信された測位用信号と前記記憶手段に記憶された航法メッセージとから現在位置を算出する測位手段と、
を有するGPS受信装置において、
当該GPS受信装置の装置本体の運動状態を検出して当該装置本体が移動状態にあるか静止状態にあるかを判別する判別手段と、
前記判別手段により前記装置本体が移動状態から静止状態に移行したと判別された場合に前記受信手段および前記測位手段の電源をオンするとともに、前記装置本体が静止状態から移動状態に移行したと判別された場合に前記受信手段および前記測位手段の電源の全て或いは一部をオフする電源制御手段と、
前記受信手段を介さずに外部から航法メッセージを取得可能な航法メッセージ取得手段と、
前記判別手段により前記装置本体が静止状態から移動状態に移行したと判別された場合に、前記航法メッセージ取得手段を介して航法メッセージを取得し、この取得した航法メッセージで前記記憶手段に記憶された航法メッセージを更新する航法メッセージ更新手段と、
を有することを特徴とするGPS受信装置。
【請求項2】
前記判別手段は、
前記装置本体に加わる加速度を検出する加速度センサと、
当該加速度センサの検出値に基づいて前記装置本体の速度を演算する演算手段と、
前記加速度センサの検出値と前記演算手段により演算された速度値とに基づいて前記装置本体が移動状態にあるか静止状態にあるかを判別する状態判別手段と、
を有することを特徴とする請求項1記載のGPS受信装置。
【請求項3】
前記航法メッセージ取得手段は、
新しい航法メッセージが順次記憶されていく外部装置と通信を行う通信手段と、
前記通信手段を介して前記外部装置に対して新しい航法メッセージの転送要求を送信し、この転送要求に基づき前記外部装置から送信されてくる航法メッセージを受信する通信制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載のGPS受信装置。
【請求項4】
前記通信手段は、
無線LANを介してインターネットに接続する構成であり、
前記通信制御手段は、
前記通信手段によりインターネットを介して外部から航法メッセージを取得する構成であることを特徴とする請求項3記載のGPS受信装置。
【請求項5】
前記通信制御手段は、
前記航法メッセージの転送要求の際に、前記測位手段により以前に測位された現在位置の情報を送信し、この現在位置の情報に対応した航法メッセージを受信する構成であることを特徴とする請求項3記載のGPS受信装置。
【請求項6】
前記航法メッセージ更新手段は、
前記判別手段により前記装置本体が静止状態から移動状態に移行したと判別された場合に、前記記憶手段に格納された航法メッセージの使用期限が過ぎているか否かを判別する期限判別手段を有し、
前記期限判別手段により使用期限が過ぎていると判別された場合に、前記航法メッセージ取得手段により航法メッセージを取得して前記記憶手段に記憶された航法メッセージを更新する構成であることを特徴とする請求項1記載のGPS受信装置。
【請求項7】
バッテリ搭載部を有し、
前記受信手段および前記測位手段は、前記バッテリ搭載部に搭載されたバッテリの電源によって駆動する構成であることを特徴とする請求項1記載のGPS受信装置。
【請求項8】
請求項1記載のGPS受信装置と、ネットワークに接続されたサーバ装置と、を備えたGPS受信システムにおいて、
前記サーバ装置は、
新しい航法メッセージが順次記憶されていく記憶手段と、
通信ネットワークを介して通信を行う通信手段と、
前記GPS受信装置からの転送要求に応じて前記記憶手段に記憶された航法メッセージを前記通信手段により前記通信ネットワークを介して送信する通信制御手段と、
を備え、
前記GPS受信装置における前記航法メッセージ取得手段は、
前記通信ネットワークを介して通信を行う通信手段と、
前記通信手段により前記通信ネットワークを介して前記サーバ装置に接続し、該サーバ装置に新しい航法メッセージの転送要求をして当該サーバ装置から航法メッセージを受信する通信制御手段と、
を有していることを特徴とするGPS測位システム。
【請求項9】
前記GPS受信装置における前記通信制御手段は、
前記新しい航法メッセージの転送要求の際に、前記測位手段により以前に測位された現在位置の情報を送信する構成であり、
前記サーバ装置の前記通信制御手段は、
前記GPS受信装置から現在位置の情報を受信した場合に、前記記憶手段から当該現在位置に対応した新しい航法メッセージを読み出して前記GPS受信装置へ送信する構成であることを特徴とする請求項8記載のGPS測位システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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