説明

GaAsウェハの加工方法

【課題】 各ウェハの厚みのばらつきを低減し、かつ平坦度の優れたGaAsウェハの加工方法を提供する。
【解決手段】 GaAsウェハのラッピング加工(16)の前に平面研削機による研削加工(14)を行うことにより、各ウェハの厚みが揃うので、ウェハ番号を管理したり、エッチング加工に1枚ずつウェハの厚みを測定したりする必要がない。このため、各ウェハの厚みのばらつきが低減し、かつ平坦度が大幅に向上する。平面研削加工機の砥石に1000番〜1500番の砥石を用いる場合には、ラッピング加工(16)時にウェハの表面に傷の発生が少ない。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、GaAsウェハの加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】図2は従来のGaAsウェハの加工方法を示す工程図である。
【0003】GaAs単結晶インゴットは、内周刃スライサー又はマルチワイヤソーにより、ウェハ状にスライスされる(ステップ1)。
【0004】スライスされたウェハは、外周部のベベリング加工を施されると同時に所定の外径寸法に加工される(ステップ2)。
【0005】その後エッチング加工(ステップ3)、両面ラッピング加工(ステップ4)、エッチング加工(ステップ5)及びポリッシング加工(ステップ6)が施されて鏡面ウェハが完成する。
【0006】エッチングは、主にアンモニアと過酸化水素水及び純水の混合液を用いて行われる。これはGaAsウェハ表面を化学的に除去するための処理である。
【0007】ラッピング加工は、アルミナ系の研磨剤を使用して行われる。これは機械的にGaAs表面を加工するためのものである。
【0008】ポリッシング加工は、次亜塩素酸ナトリウム系の研磨液と研磨布との作用により行われる。これは、化学的作用と機械的作用との両面でGaAsウェハの表面を除去し、鏡面に仕上げるためのものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従来技術では、スライス加工において、各ウェハの厚みやウェハ面内の平滑性がばらつくという欠点があった。
【0010】このようなウェハを図2に示すようにベベリング加工からポリッシング加工まで行った場合、各ウェハの厚みばらつきが大きく、しかも、平坦度の悪いウェハが製造される。
【0011】このような従来技術の欠点を解消し、各ウェハの厚みのばらつきが小さく、しかも、平坦度が優れたウェハを製造するためには、図2に示す両面ラッピング前に各ウェハの厚みを揃える必要がある。
【0012】この方法としては、下記の2種類がある。
【0013】(a)両面ラッピング前に全てのウェハの厚みを測定した後、厚み分級を行い、厚みの揃ったウェハだけで両面ラッピング加工を行う。
【0014】(b)両面ラッピング前のエッチング加工でウェハの厚みを揃える。すなわち、厚いウェハはエッチング量を多くし、薄いウェハはエッチング量を少なくして各ウェハの厚みを揃える。
【0015】しかしながら、前述した(a)の方法は、GaAsウェハの場合、1インゴット当りのスライス枚数が少ないこと、ウェハ番号を管理しなければならないという制約があり、(a)の方法は、非常に能率が悪く、ウェハの管理が非常に難しくなることから実用化されていない。
【0016】また、(b)の方法はエッチング時に1枚ずつウェハの厚みを測定し、その厚みに応じてエッチング量を調整するため、非常に能率が悪く、大幅なコストアップとなるため、実用化されていない。
【0017】さらに現状のスライス技術では各ウェハの厚みのばらつきやウェハ面内の厚みのばらつきを低減させることは困難である。
【0018】このため、現状では各ウェハの厚みのばらつきやウェハ面の厚みのばらつきがあるまま図2に示す加工を行わなければならず、完成後の各ウェハのばらつきがあったり、ウェハ面の平坦度が悪いという欠点があった。
【0019】そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、各ウェハの厚みのばらつきを低減し、かつ平坦度の優れたGaAsウェハの加工方法を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、GaAs単結晶インゴットからウェハを切り出し、ベベリング加工、ラッピング加工、エッチング加工及びポリッシング加工を経て鏡面ウェハを得るGaAsウェハの加工方法において、ラッピング加工の前に平面研削機による研削加工を行うものである。
【0021】上記構成に加え本発明は、平面研削加工機に用いられる砥石の番数は、1000番から1500番の範囲であるのが好ましい。
【0022】本発明によれば、ラッピング加工の前に平面研削機による研削加工を行うことにより、各ウェハの厚みが揃うので、ウェハ番号を管理したり、エッチング加工に1枚ずつウェハの厚みを測定したりする必要がない。このため、各ウェハの厚みのばらつきが低減し、かつ平坦度が大幅に向上する。平面研削加工機の砥石に1000番〜1500番の砥石を用いる場合には、ラッピング加工時にウェハの表面に傷の発生が少ない。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0024】図1は本発明のGaAsウェハの加工方法の一実施の形態を示す工程図である。 図1に示した工程のうち、スライス(ステップ11)からエッチング(ステップ13)までの工程は、図2に示した工程のスライス(ステップ1)からエッチング(ステップ3)までの工程と等しく、両面ラッピング(ステップ16)からポリッシング(ステップ18)までの工程は、図2に示した両面ラッピング(ステップ4)からポリッシング(ステップ6)までの工程に等しい。
【0025】しかし、図1に示した工程のうち、両面ラッピング加工(ステップ16)の前に、各ウェハの厚みのばらつきやウェハ面内の厚みのばらつきを低減させるために、平面研削機(図示せず)による平面研削加工(ステップ14)を施した後、エッチング(ステップ15)を行う点で図2に示した工程と異なる。
【0026】平面研削加工により各ウェハの厚みばらつきが3μm以下、ウェハ面の厚みのばらつきが2μm以下となった。
【0027】平面研削加工後に、エッチング加工、両面ラッピング加工、エッチング加工、ポリッシング加工を施した。その結果、各ウェハの厚みのばらつきは5μm以下であり、ウェハの平坦度は、例えばTTV(Total Thickness Variation) で2μm以下であった。
【0028】平面研削加工においては、平面研削加工機に用いる砥石の番数が1000番〜1500番が最適である。
【0029】1500番より粒径の細かい、例えば2000番や3000番の砥石を使用した場合、GaAsのウェハ表面はハーフミラーの表面状態になる。このハーフミラー状の表面に両面ラッピング加工を施すと、傷が発生しやすくなる。また1000番より粒径の粗い砥石の場合は、GaAsウェハ表面にダメージを与える。このため1000番〜1500番の砥石が最適である。
【0030】
【実施例】次に具体的な数値を挙げて説明するが、限定されるものではない。
【0031】引上げ法によって得られた3インチ径のGaAsウェハの場合で説明する。
【0032】内周刃スライスで厚み800μmを目標にしてスライス(ステップ11)した後、外周部のベベリング加工(ステップ12)を行った。
【0033】アンモニアと過酸化水素水と純水の混合液とでエッチングし、厚みを約790μmにした(ステップ13)。
【0034】平面研削機で片面ずつ両面を研削加工し、厚み700μmを目標にして加工した。研削に使用した砥石は1000番である。平面研削加工後のウェハの厚みは、700±1μmであった。さらに平坦度(TTU)は2μm以下であった(ステップ14)。
【0035】再度エッチングを行い690μmとした(ステップ15)。
【0036】フジミコーポレーション社製の研磨剤FO1500を用い、両面ラッピングを行って厚みを約640μmとした(ステップ16)。
【0037】再々度エッチングを行い厚みを約630μmとした(ステップ17)。
【0038】最後にフジミコーポレーション社製のポリッシュ剤、インセックFPとインセックNIBでポリッシングを行い600μmとし鏡面ウェハを完成させた(ステップ18)。
【0039】本鏡面ウェハは、各ウェハの厚みのばらつきが5μm以下、ウェハの平坦度(TTV)が2μm以下であった。
【0040】さらに、キズ等の発生もなく良好な鏡面状態であった。
【0041】
【発明の効果】以上要するに本発明によれば、次のような優れた効果を発揮する。
【0042】ラッピング加工の前に平面研削機による研削加工を行うことにより、各ウェハの厚みのばらつきを低減し、かつ平坦度の優れたGaAsウェハの加工方法の提供を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のGaAsウェハの加工方法の一実施の形態を示す工程図である。
【図2】従来のGaAsウェハの加工方法を示す工程図である。
【符号の説明】
11 スライス
12 ベベリング
13,15,17 エッチング
14 平面研削加工(研削加工)
16 両面ラッピング(ラッピング)
18 ポリッシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】 GaAs単結晶インゴットからウェハを切り出し、ベベリング加工、ラッピング加工、エッチング加工及びポリッシング加工を経て鏡面ウェハを得るGaAsウェハの加工方法において、上記ラッピング加工の前に平面研削機による研削加工を行うことを特徴とするGaAsウェハの加工方法。
【請求項2】 上記平面研削加工機に用いられる砥石の番数は、1000番から1500番の範囲である請求項1に記載のGaAsウェハの加工方法。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate