説明

H1N1感染を予防するための免疫戦略の方法

本発明は、H1N1インフルエンザに対する免疫応答を提供するためのキメラウイルス発現ベクターおよびこれを用いる方法を提供する。本発明の組成物は、H1N1株のワクチンとして用いることができる。利点には、株が単離された後の迅速な開発および利用可能性、ならびに有効な経口または粘膜投与が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本文書は、その開示の全内容が参照により本明細書に組み入れられる、2009年9月16日に提出された米国特許仮出願第61/243,070号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
インフルエンザ感染症を予防するためにいくつかの異なる方法が提唱されているが、これらの方法のほとんどは、注射によって投与される古い技術を用いている。これは、通常の医療が混乱する汎発流行の際には、達成することが困難である場合がある。資格のある医療従事者がいなくても分配することができる経口送達ワクチンは、大きな利益を有すると考えられる。
【0003】
2009年のH1N1汎発流行ウイルスは、通常のインフルエンザとは異なる細胞集団を標的とする。これらのウイルスは、腸管上皮細胞および肺上皮細胞に感染する。H1N1に感染した患者は、通常のインフルエンザ症状に加えて下痢および胃痛を報告した。
【0004】
本発明は、H1N1感染に対する防御において実質的な利益を有する経口免疫化を提供する。便固形物中のHAに対する強力なIgA抗体応答によって証明されるように、腸管での免疫応答を含む強力な粘膜免疫応答が生成される。経口H1N1ワクチンはまた、インビボで直接チャレンジした場合にH1N1に対して防御的であることが示されている。
【発明の概要】
【0005】
発明の簡単な概要
本発明は、H1N1インフルエンザの汎発流行株に対するワクチン接種のための、迅速に対応でき容易に拡張可能な組成物を提供する。株の単離後、本発明による遺伝子に基づくウイルスワクチンを、数週間以内に調製して安全性および効能に関して試験することができる。
【0006】
したがって、いくつかの態様において、本発明は、(a)toll様受容体-3(TLR-3)アゴニストをコードする核酸に機能的に連結した第一のプロモーターと;(b)H1N1インフルエンザ由来のポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結した第二のプロモーターとを含む発現カセットを含む、H1N1インフルエンザに対する防御のためのキメラウイルス発現ベクターを提供する。いくつかの態様において、ウイルスベクターはアデノウイルスベクターであるか、またはアデノウイルスベクターに由来するが弱毒化されるように改変されているベクターである。いくつかの態様において、TLR-3アゴニストは、dsRNAである。いくつかの態様において、dsDNAは、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、ウイルスdsRNA、およびsiRNAから選択される。いくつかの態様において、dsRNAをコードする配列は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、およびSEQ ID NO:6(SEQ ID NO:1〜6)からなる群より選択される配列に対して実質的な同一性を有する配列を含む。いくつかの態様において、dsRNAをコードする配列は、SEQ ID NO:1〜6からなる群より選択される配列を含む。
【0007】
いくつかの態様において、H1N1由来のポリペプチドは、H1N1の表面抗原またはその抗原性断片である。いくつかの態様において、H1N1ポリペプチドは、HA、NA、MP、およびNP、ならびにその抗原性断片からなる群より選択される。いくつかの態様において、H1N1インフルエンザは、株A/CA/04/2009に由来する。
【0008】
いくつかの態様において、第一のプロモーターと第二のプロモーターは同じである。いくつかの態様において、第一のプロモーターと第二のプロモーターは異なる。プロモーターは、構成的または誘導型であってよく、ウイルスまたは哺乳動物遺伝子プロモーター、たとえばCMVまたはSV40であってよい。
【0009】
いくつかの態様において、ウイルス発現ベクターは、SEQ ID NO:7と実質的に同一であり、たとえばSEQ ID NO:7またはSEQ ID NO:7の発現カセット(ヌクレオチド603位から4194位)に対して少なくとも90、92、95、96、98、または99%同一である。いくつかの態様において、ウイルス発現ベクターは、SEQ ID NO:7またはSEQ ID NO:7の発現カセットを含む。いくつかの態様において、ウイルス発現ベクターは、SEQ ID NO:7と実質的に同一であるが、異なるH1N1抗原性ポリペプチドをコードする。
【0010】
いくつかの態様において、本発明は、本明細書において記載されるキメラウイルスベクターと薬学的に許容される担体とを含む、H1N1インフルエンザに対する防御のための薬学的組成物を提供する。いくつかの態様において、薬学的組成物は、非-腸管外送達(投与)用に、たとえば経口、粘膜、または鼻腔内送達用に調製される。いくつかの態様において、薬学的組成物は、経口送達用に調製される。
【0011】
いくつかの態様において、本発明は、本明細書において記載されるキメラウイルスベクターと薬学的に許容される担体とを含む、経口送達用薬学的組成物を提供する。このように、いくつかの態様において、ベクターは、(a)toll様受容体-3(TLR-3)アゴニストをコードする核酸に機能的に連結した第一のプロモーターと;(b)H1N1インフルエンザ由来のポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結した第二のプロモーターとを含む発現カセットを含む。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターであるか、またはアデノウイルスベクターに由来するが弱毒化されるように改変されているベクターである。いくつかの態様において、TLR-3アゴニストはdsRNAである。いくつかの態様において、dsRNAは、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、ウイルスdsRNA、およびsiRNAから選択される。いくつかの態様において、H1N1ポリペプチドは、H1N1表面抗原である。いくつかの態様において、H1N1ポリペプチドは、HA、NA、NP、およびMPからなる群より選択される。
【0012】
本発明はまた、本明細書において記載されるキメラウイルス発現ベクターの免疫原性有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、H1N1インフルエンザに対する免疫応答を誘発する方法であって、免疫応答がH1N1インフルエンザポリペプチドに対して向けられ、かつ投与経路が経口、鼻腔内、および粘膜からなる群より選択される方法を提供する。いくつかの態様において、投与は経口である。いくつかの態様において、哺乳動物はヒトである。いくつかの態様において、免疫応答は、粘膜免疫応答、全身性免疫応答、液性免疫応答、および細胞性免疫応答からなる群より選択される。いくつかの態様において、免疫応答は粘膜免疫応答である。いくつかの態様において、免疫応答は腸管粘膜において検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】抗インフルエンザHA抗体の全身抗体力価は、8週目でDX1の経口(p.o.)および筋肉内(i.m.)ワクチン接種に関して同等である。Ad-CA/04/09-Adjを異なる2つの用量(107 IUまたは108 IU)で経口投与または108 IUで筋肉内投与した。非類似のH1N1由来のHAをコードする類似のキメラアデノウイルス発現ベクターの結果も同様に示す(Ad-PR8-Adj)。
【図1B】ワクチン接種後3、5および8週目で赤血球凝集阻害(HAI)の結果により、経口および筋肉内投与のA/CA/04/2009に対する全身抗体応答が類似であることが確認される。
【図1C】DX1ベクターワクチンの経口投与は、筋肉内注射と比較して優れた粘膜抗体応答を提供する。HAに対して特異的な抗体の力価を、投与後8、10、および12週目にそれぞれ、腸管(便中)、膣、および肺粘膜組織において測定した。図1のパネルC、D、およびEに結果を示す。DX1ベクターの経口投与は、高用量の筋肉内注射より有意に高い特異的IgA力価を提供することに注意されたい。10倍低い経口用量は同様に、等しいかまたはより大きいIgA応答を誘導する。*は、OD450の読み取り値に基づいてスチューデントT-検定を用いて計算したP<0.05を示す。
【図1D】DX1ベクターワクチンの経口投与は、筋肉内注射と比較して優れた粘膜抗体応答を提供する。HAに対して特異的な抗体の力価を、投与後8、10、および12週目にそれぞれ、腸管(便中)、膣、および肺粘膜組織において測定した。図1のパネルC、D、およびEに結果を示す。DX1ベクターの経口投与は、高用量の筋肉内注射より有意に高い特異的IgA力価を提供することに注意されたい。10倍低い経口用量は同様に、等しいかまたはより大きいIgA応答を誘導する。*は、OD450の読み取り値に基づいてスチューデントT-検定を用いて計算したP<0.05を示す。
【図1E】DX1ベクターワクチンの経口投与は、筋肉内注射と比較して優れた粘膜抗体応答を提供する。HAに対して特異的な抗体の力価を、投与後8、10、および12週目にそれぞれ、腸管(便中)、膣、および肺粘膜組織において測定した。図1のパネルC、D、およびEに結果を示す。DX1ベクターの経口投与は、高用量の筋肉内注射より有意に高い特異的IgA力価を提供することに注意されたい。10倍低い経口用量は同様に、等しいかまたはより大きいIgA応答を誘導する。*は、OD450の読み取り値に基づいてスチューデントT-検定を用いて計算したP<0.05を示す。
【図2】DX1ベクターの低用量経口投与は、高用量の経口および筋肉内投与と同等の生存および体重維持データを提供する。図2Aは、致死H1N1チャレンジを受けたDX1ワクチン接種マウスの100%が生存したことを示す。同様に、図2Bは、3つ全ての群において体重減少が最小であることを示す。無処置マウスまたはアジュバントのみをワクチン接種したマウスは、チャレンジ後まもなくウイルスにより死亡した。経口投与は、108 IU DX1を示し、筋肉内投与は108 IU DX1を示し、低用量経口は、107 IU DX1を示し、アジュバント対照はdsRNAのみを発現するベクターを示す。
【図3】dsRNAアジュバントの発現は、H1N1 HA抗原に対する抗体応答を改善する。HAに対して特異的な抗体の血漿中力価を、DX1およびDX2(dsRNAコート配列を欠損しているベクター)の経口投与後に測定した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
I.緒言
本発明は、H1N1ウイルスの汎発流行に対応して迅速に開発することができる新規かつ有効なキメラウイルスベクターワクチンを提供する。汎発流行株を単離した後、抗原を単離して、これを用いて本発明によるワクチンを設計することができる。特定の汎発流行株に対するワクチンの安全性および認容可能な用量範囲ならびに効能を決定するために、動物試験を数週間の単位で行うことができる。キメラウイルスベクターワクチンは、抗原をコードする配列と、dsRNAアジュバントをコードする配列とを含む。ワクチンは、非-腸管外に低用量で投与して、H1N1抗原に対する免疫応答を誘発することができる。キメラウイルスベクターは、特に非-腸管外経路(たとえば、経口、鼻腔内、または粘膜)によって投与した場合にH1N1ポリペプチド抗原に対して特異的で強力かつ有効な免疫応答を誘発する。
【0015】
ベクターをコードするdsRNA TLR-3アゴニストの、アジュバントとしての効能もまた驚くべきものである。dsRNAをウイルスベクターのアジュバントとして用いることは、dsRNA模倣体ポリI:Cの主に提唱される有用性が抗ウイルス剤としての有用性であることを考慮すると、直感に反している[Nemes, et al, Proc Soc Exp Biol Med. (1969) 132:776; Schafer, et al, Nature. (1970) 226:449; Fenje, et al, Nature (1970) 226:171]。
【0016】
II.定義
たとえば核酸、タンパク質、またはベクターに関して本明細書において用いられる「キメラ」または「組み換え型」という用語は、核酸、タンパク質、またはベクターが、異種核酸もしくは異種タンパク質の導入によって、または本来の核酸もしくはタンパク質の変更によって改変されていることを示す。このように、たとえば、キメラおよび組み換え型ベクターは、本来の型(非キメラまたは非組み換え型)のベクターにおいて見いだされない核酸配列を含む。キメラウイルスベクター(またはキメラウイルス発現ベクター)は、異種ポリペプチドをコードする核酸配列を含むウイルスベクターを指す。
【0017】
「発現ベクター」または「発現カセット」は、宿主細胞における特定の核酸の転写を許容する一連の特定の核酸エレメントを有する、組み換えまたは合成によって生成された核酸構築物である。発現ベクターは、プラスミド、ウイルス、または核酸断片の一部でありうる。典型的には、発現ベクターは、プロモーターに機能的に連結された転写される核酸を含む。発現ベクターは、隣接でありうる(たとえば同じプロモーターの制御下)または非隣接でありうる(たとえば、異なるプロモーターの制御下)複数の発現単位またはコード配列を含むことができる。
【0018】
「プロモーター」および「発現制御配列」という用語は、核酸の転写を導く核酸制御配列を指す。本明細書において用いられるように、プロモーターは、ポリメラーゼII型プロモーターの場合のTATAエレメントなどの、転写の開始部位付近で必要な核酸配列を含む。プロモーターはまた、任意で、転写開始部位から数千塩基対も離れた位置に存在しうる遠位エンハンサーまたはリプレッサーエレメントを含む。プロモーターの例には、構成的および誘導型プロモーターが挙げられる。「構成的」プロモーターは、ほとんどの環境条件および発達条件下で活性であるプロモーターである。「誘導型」プロモーターは、環境による調節または発達による調節下で活性であるプロモーターである。「機能的に連結した」という用語は、核酸発現制御配列(プロモーター、または転写因子結合部位のアレイなどの)と第二の核酸配列とのあいだの機能的連結を指し、発現制御配列は、第二の配列に対応する核酸の転写を導く。
【0019】
本明細書において用いられる「TLR-3アゴニスト」または「Toll様受容体3アゴニスト」という用語は、TLR-3に結合してこれを刺激する化合物を指す。二本鎖RNA、ウイルス由来dsRNA、ポリイノシン-ポリシチジル酸(ポリI:C)、ポリアデニル酸-ポリウリジル酸(ポリA:U)、およびポリI:ポリC、ならびにそれによってIFNβ産生が起こるTLR-3に対する抗体(または抗体の架橋)を含む二本鎖RNAに対するいくつかの化学合成アナログを含むTLR-3アゴニストが同定されている[Matsumoto, M, et al, Biochem Biophys Res Commun 24:1364 (2002), de Bouteiller, et al, J Biol Chem 18:38133-45 (2005)]。TLR-3アゴニストはまた、たとえば本明細書において記載されるようにベクターによってコードされかつベクターによって発現されるdsRNAも含む。
【0020】
二本鎖RNA(dsRNA)は、典型的には少なくとも4、5、10、12、15、20個またはそれより多くのリボヌクレオチドの一連の相補的部分を有する2つの相補鎖を含むRNAである。dsRNAの一連の相補的部分は、5〜10、5〜20、5〜30、10〜20、10〜100、20〜100、およびそれより多くでありうる。当業者は、一連の相補的部分が、有効なTLR-3アゴニストまたはアジュバントとして作用するためにdsRNAに対して100%相補的である必要はないことを認識する。dsRNA分子は、分子内二本鎖RNA種(たとえば、低分子ヘアピンRNAまたはsiRNA)、および少なくとも2つの異なる一本鎖RNA分子を含むdsRNA種を含むことができる。
【0021】
ポリヌクレオチドは、指定された配列(すなわち、特定のポリペプチドまたはdsRNAまたはその一部をコードするH1N1ウイルス配列)またはそれによって所望のH1N1ウイルスに対する免疫応答またはTLR-3アゴニズムがそれぞれ起こるそのような配列の変種を含むことができる。ポリヌクレオチド変種は、コードされるポリペプチドの生物活性が、当初の配列を含むポリペプチドと比較して減損しないような、1つまたは複数の置換、付加、欠失、および/または挿入を含有しうる。所定のdsRNAのポリヌクレオチド変種は、コードされるdsRNAのTLR-3アゴニスト活性が、置換、付加、欠失、および/または挿入を含有しないdsRNAと比較して減損しないような、1つまたは複数の置換、付加、欠失、および/または挿入を含有することができる。変種は好ましくは、本来のポリペプチドもしくはその一部をコードするポリヌクレオチド配列に対して、またはTLR-3アゴニスト活性を有するdsRNAをコードするポリヌクレオチド配列に対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%を示す。
【0022】
本発明の目的に関する「被験体」または「患者」という用語は、H1N1ウイルスが感染することができる哺乳動物を指す。哺乳動物の例には、ヒトならびに齧歯類(たとえば、マウスおよびラット)、ウサギ、家畜動物(たとえば、ウシ、ブタ、およびヒツジ動物)、およびペット(たとえば、イヌおよびネコ)、ならびに非ヒト霊長類などの非ヒト哺乳動物が挙げられる。
【0023】
核酸の一部に関して用いられる場合の「異種」という用語は、その核酸が、天然において互いに同じ関係で見いだされない2つまたはそれより多くの部分配列を含むことを示している。例として、核酸は、典型的には組み換えによって産生され、新しい機能的核酸を作製するように整列させた無関係な遺伝子からの2つまたはそれより多くの配列、たとえば1つの起源からのプロモーターと他の起源からのコード領域を有する。同様に、異種タンパク質は、タンパク質が、天然において互いに同じ関係で見いだされない(たとえば、融合タンパク質)2つまたはそれより多くの部分配列を含むことを示している。
【0024】
「核酸」、「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」等の用語は、一本鎖型または二本鎖型のいずれかのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのポリマーを指すために本明細書において互換的に用いられる。この用語は、参照核酸と類似の結合特性を有する、および参照ヌクレオチドと類似の様式で代謝される、合成、天然に存在する、および天然に存在しない、公知のヌクレオチドアナログまたは改変骨格残基または連結を含有する核酸を包含する。そのようなアナログの例には、ホスホロチオエート、ホスホラミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。
【0025】
特に明記していなければ、特定の核酸配列はまた、保存的に改変されたその変種(たとえば、縮重コドン置換)および相補的配列ならびに明記された配列を包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(または全ての)コドンの第3位が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基に置換されている配列を生成することによって、達成されうる(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka et al, J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985); Rossolini et al , Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。
【0026】
抗原は、T細胞受容体および/または抗体が認識することができるタンパク質またはポリペプチド鎖の一部を指す。典型的には、抗原は、細菌、ウイルス、もしくは真菌タンパク質に由来するか、または癌細胞によって発現される異常なタンパク質に由来する。
【0027】
本発明の組成物の「免疫原性有効用量または量」は、所望の抗原性ポリペプチドに対して特異的な免疫応答を誘発または調整する量である。免疫応答には、液性免疫応答および細胞性免疫応答が挙げられる。免疫原性組成物は、H1N1感染症を処置または予防するために治療的または予防的に用いることができる。
【0028】
「用量」および「投与量」という用語は、本明細書において互換的に用いられる。用量は、各投与時に個体に与えられる活性成分の量を指す。本発明の目的に関する用量は、多くの様式で、たとえばウイルスベクターのmg/mlもしくはIUで、被験体のkgもしくはlb体重あたりのmgもしくはIUで、またはウイルスベクターによって産生される抗原性ポリペプチドの量に関して表記することができる。用量は、投与回数;個体の体格および認容性;H1N1流行の重症度;感染のリスク;および投与経路を含む多くの要因に応じて多様である。当業者は、上記の要因に応じて最低用量を変更する方法を決定することができる。初回用量をベースラインとして用いることができ、個体の反応に基づいて変更することができる。
【0029】
「投与剤形」は、薬剤の特定の形式を指し、投与経路に依存する。たとえば、投与剤形は、たとえば経口送達のための錠剤もしくは液剤、たとえば直腸内もしくは膣内投与のための坐剤、または注射のための液剤でありうる。「1回投与剤形」は、薬学的組成物の形式および上記で考察した活性成分の量の双方を指す。
【0030】
感染症の「防御」または「予防」は、たとえば症状を観察することによって見出されるまたはウイルスもしくは抗体力価の検出によるH1N1感染症を、個体が発症する可能性を低減させることを指す。この用語は、たとえば感染症を既に有する個体の場合では、たとえばH1N1の異なる株または異なるウイルスによるさらなる感染症または感染症の悪化に対する防御を含む。感染の可能性は、感染物質に曝露されても個体が症状を示さない程度に低減させることができる。たとえば、個体の感染症を防ぐことは、本発明のキメラウイルスベクターの、感染の発生または再発を予防または低減する能力を指すことができる。
【0031】
H1N1感染症を「処置する」または「低減させる」ことは、個体における感染物質の量(たとえば、細胞またはウイルス粒子の数)を低減させること、症状の重症度を低減させる、および/または症状の頻度を低減させることを指す。いくつかの態様において、感染物質の数は、たとえば投与前の個体または処置を受けていない対照個体と比較して少なくとも10%低減される。いくつかの態様において、感染物質の数は、少なくとも25%、50%、75%、80%、または90%低減される。いくつかの態様において、感染症は、たとえば症状または一般的な診断技術によってもはや検出されない。
【0032】
当業者は、防御する、予防する、および処置という用語が絶対的な用語ではなく、無処置または異なる形で処置された対照と比較した転帰の全般的改善であることを認識する。たとえば、本発明の組成物は、処置された個体または集団が、本発明に従って処置されていないが類似の条件に曝露された個体または集団より、H1N1感染症を発症する可能性が低い場合に防御的であると見なされる。
【0033】
本発明の目的に関して「感染症」という用語は、個体中に潜在的に病原性のH1N1インフルエンザ株が存在することを指す。感染症は必ずしも、感染した個体が感染物質による症状を経験することを意味するのではない。H1N1感染症は典型的には粘膜組織を介して、たとえば生殖器官、消化管、口腔および食道表面、鼻腔、ならびに気管支内層の上皮内層を介して起こる。
【0034】
ある物質が、たとえば個体の細胞に感染するための標的H1N1株の粘膜表面定着能または粘膜障壁通過能を低減させる場合、その物質は、感染を「妨害する」または感染「から防御する」。たとえば、物質は、より少ない細胞がウイルスに曝露されるまたは感染する場合に、感染を妨害する。低減は、たとえば処置前の個体、または類似の状態に曝露されるが処置を受けていない対照個体と比較することによって決定することができる。
【0035】
「単離された」という用語は、絶対的な用語ではないが、その本来の状態で材料に付随する混入物または成分を実質的に含まない材料を指す。
【0036】
「液性免疫応答」は、血液、すなわち血漿または血清の無細胞成分、たとえば抗体によって媒介される。1つの個体からもう1つの個体への血清または血漿の移入は、液性免疫を移入する。
【0037】
「細胞性免疫応答」は、抗原特異的リンパ球、たとえば細胞障害性T細胞(CTL)によって媒介される。1つの個体からもう1つの個体への抗原特異的リンパ球の移入は、免疫を移入する。
【0038】
キメラウイルスベクターまたはキメラウイルスベクターを含む組成物の「治療用量」または「治療的有効量」または「有効量」は、標的H1N1ウイルスの症状を予防する、軽減する、減らす、または重症度を低減させるベクターまたはベクターを含む組成物の量である。
【0039】
抗体は、抗原に特異的に結合してこれを認識する免疫グロブリン遺伝子またはその断片によってコードされるポリペプチドを指す。認識されている免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン、およびミュー定常領域遺伝子ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンに分類されて、これらは免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEをそれぞれ定義する。
【0040】
T細胞は、遺伝子ファミリーによってコードされる特異的受容体(T細胞受容体)を発現する特定のクラスのリンパ球を指す。認識されているT細胞受容体遺伝子には、アルファ、ベータ、デルタ、およびガンマ座が挙げられ、T細胞受容体は典型的には(しかし、普遍的ではない)、MHCプラス短いペプチドの組み合わせを認識する。
【0041】
適応免疫応答は、T細胞(T細胞受容体(TCR)を通して)、またはB細胞(BCRまたは抗体/免疫グロブリンを通して)による抗原の特異的認識を指す。
【0042】
抗原提示細胞(APC)は、T細胞に免疫原性ペプチドまたはその断片を提示して、免疫応答を活性化または増強する。APCには、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、単球、および効率的なAPCとなるように操作されうる他の細胞が挙げられる。そのような細胞は、抗原提示能を増加させるように、T細胞応答の活性化および/または維持を改善するように、それ自身が抗腫瘍効果を有するように、および/または受け手側と免疫学的に適合性(すなわち、マッチしたHLAハプロタイプ)であるように遺伝子改変されうるが、必ずしもその必要はない。APCは、骨髄、末梢血、腫瘍、および腫瘍周囲組織を含む任意の多様な生物学的液体および臓器から単離されてもよく、自己、同種異系、同系、または異種細胞でありうる。APCは、典型的には、短いポリペプチドをT細胞に提示するために、組織適合抗原複合体(MHC)座からの受容体を利用する。
【0043】
アジュバントは、当技術分野において公知であり、非特異的免疫応答増強剤を指す。適したアジュバントには、たとえばdsRNAおよびdsRNA模倣体、コレラ毒素、モノホスホリルリピッドA(MPL)、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、Quil A、およびAl(OH)が挙げられる。アジュバントはまた、APCの活性化を引き起こしてToll様受容体などの二次シグナル伝達分子を通してのT細胞の提示を増強する物質でもありうる。Toll様受容体の例には、二本鎖RNA、細菌の鞭毛、LPS、CpG DNAおよび細菌リポペプチドを認識する受容体が挙げられる(Abreu et al , J Immunol, 174(8), 4453-4460 (2005)を参照されたい)。
【0044】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学模倣体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに当てはまる。
【0045】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸、ならびにアミノ酸アナログおよび天然に存在するアミノ酸と類似の様式で機能するアミノ酸模倣体を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コードによってコードされるアミノ酸、ならびに後に改変されるアミノ酸、たとえば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、およびO-ホスホセリンである。アミノ酸アナログは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち水素に結合した炭素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基を有する化合物、たとえばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。そのようなアナログは、改変R基(たとえば、ノルロイシン)または改変ペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣体は、アミノ酸の全般的化学構造とは異なるが、天然に存在するアミノ酸と類似の様式で機能する構造を有する化学化合物を指す。
【0046】
アミノ酸は、本明細書において、その一般的に公知の三文字記号またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commission(生化学命名法委員会)によって推奨される一文字記号のいずれかによって参照されうる。同様に、ヌクレオチドも、その一般的に容認される一文字記号によって参照されうる。
【0047】
「保存的改変変種」は、アミノ酸および核酸配列の双方に当てはまる。特定の核酸配列に関して、保存的改変変種は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指すか、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一の配列を指す。遺伝子コードの縮重のために、多数の機能的に同一の核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例として、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUは全て、アミノ酸アラニンをコードする。このように、アラニンがコドンによって明記されるあらゆる位置で、コードされるポリペプチドを変化させることなく、コドンを記載の対応するコドンのいずれかに変化させることができる。そのような核酸変種は「サイレント変種」であり、これは保存的改変変種の1つの種である。ポリペプチドをコードする本明細書におけるあらゆる核酸配列はまた、核酸の起こりうるあらゆるサイレント変種を表す。当業者は、核酸における各々のコドン(メチオニンに関する通常唯一のコドンであるAUG、およびトリプトファンに関する通常唯一のコドンであるTGGを除く)を改変して機能的に同一の分子を生じることができることを認識する。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変種が、各記載の配列において暗に意味される。
【0048】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされる配列における1つのアミノ酸またはアミノ酸の小さい割合を変化させる、付加する、または欠失させる、核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失、または付加が、改変によってアミノ酸と化学的に類似のアミノ酸との置換が起こる「保存的改変変種」であることを認識する。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野において周知である。そのような保存的改変変種は、本発明の多形変種、種間相同体、および対立遺伝子に加えて存在し、本発明の多形変種、種間相同体、および対立遺伝子を除外しない。
【0049】
以下の8つの群は、各々が互いの保存的置換であるアミノ酸を含有する:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(I)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W):
7)セリン(S)、トレオニン(T);および
8)システイン(C)、メチオニン(M)
(たとえば、Creighton, Proteins (1984)を参照されたい)。
【0050】
「選択的に(または特異的に)ハイブリダイズする」という句は、すなわち、ワトソン-クリックの相補性に従って特定のヌクレオチド配列のみに結合する、二本鎖を形成する、またはハイブリダイズすることを指す。
【0051】
所定の条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一であれば、なお実質的に同一であると見なされる。たとえば、このことは、核酸のコピーが遺伝子コードによって許容される最大のコドン縮重性を用いて作製される場合に起こる。そのような場合において、核酸は典型的には、中等度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。例としての「中等度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、40%ホルムアミド、1 M NaCl、1%SDSの緩衝液中で37℃でのハイブリダイゼーション、および45℃で1×SSC中での洗浄を含む。陽性ハイブリダイゼーションは、バックグラウンドの少なくとも2倍である。当業者は、類似のストリンジェンシー条件を提供するために代替的なハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を利用できることを容易に認識する。
【0052】
タンパク質またはペプチドについて言及する場合に、抗体に「特異的(または選択的に)結合する」、または「特異的(または選択的)に免疫反応する」という句は、そのタンパク質と他の生物学的物質との不均一な集団におけるタンパク質の存在を決定する結合反応を指す。このように、指定されたイムノアッセイ条件において、明記される抗体は、バックグラウンドの少なくとも2倍で特定のタンパク質に結合するが、試料中に存在する他のタンパク質には有意な量で実質的に結合しない。そのような条件下での抗体に対する特異的結合は、特定のタンパク質に対するその特異性のために選択される抗体を必要としうる。たとえば、融合タンパク質に対するポリクローナル抗体は、融合タンパク質と特異的に免疫反応するが融合タンパク質の個々の成分とは免疫反応しないポリクローナル抗体のみを得るために選択することができる。この選択は、個々の抗原と交叉反応する抗体を差し引くことによって達成されうる。
【0053】
多様なイムノアッセイフォーマットを用いて特定のタンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択してもよい。たとえば、固相ELISAイムノアッセイは、タンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択するために慣例的に用いられる(たとえば、特異的免疫反応性を決定するために用いることができるイムノアッセイのフォーマットおよび条件の記載に関して、Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (1988)を参照されたい)。典型的には、特異的または選択的反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、より典型的には、バックグラウンドの10から100倍上である。
【0054】
2つまたはそれより多くの核酸(たとえば、dsRNAまたは抗原コード配列)またはポリペプチド配列の文脈における「同一」またはパーセント「同一性」という用語は、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いて測定した場合に、または手動での整列および目視での検分によって、比較ウィンドウまたは指定された領域に対して最大に一致するように比較および整列させた場合に、同じである、または同じである(すなわち、明記された領域に対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより多くの同一性)アミノ酸残基もしくはヌクレオチドの特定の百分率を有する、2つまたはそれより多くの配列または部分配列を指す。そのような配列は、「実質的に同一」であると言われる。この定義はまた、試験配列の相補体にも当てはまる。任意で、同一性は、長さがアミノ酸またはヌクレオチド少なくとも約10個から約100個、約20個から約75個、約30個から約50個である領域に対して存在する。
【0055】
配列比較の場合、典型的には、1つの配列は、それに対して試験配列を比較する参照配列として作用する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列および参照配列をコンピューターに入力して、必要であれば部分配列座標を指定して、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトプログラムパラメータを用いることができ、または代わりのパラメータを指定することができる。次に、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列と比較して試験配列に関する%配列同一性を計算する。
【0056】
本明細書において用いられる「比較ウィンドウ」は、約10から約500、約25から約200、50から約150個の数の連続位置のいずれか1つのセグメントに対する言及を含み、1つの配列と参照配列とを最適に整列させた後に該配列が同数の連続位置の参照配列と比較されうる。比較のために配列を整列させる方法は当技術分野において周知である。比較のための配列の最適な整列は、たとえばSmith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)のローカルホモロジーアルゴリズム、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)のホモロジーアラインメントアルゴリズム、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実行(the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または手動での整列および目視での検分(たとえば、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al, eds. 1995 supplement)を参照されたい)によって実行することができる。
【0057】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するために適したアルゴリズムの例は、Altschul et al, Nuc. Acids Res. 25:3389-3402 (1977)およびAltschul et al, J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)においてそれぞれ記載されるBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムである。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(NCBIのウェブサイト、ncbi.nlm.nih.gov)を通して一般に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列における同じ長さのワードと共に整列させた場合に、いくつかの陽性値の閾値スコアにマッチするまたは閾値スコアを満たす、問い合わせ配列における長さWの短いワードを同定することによって、高いスコアリング配列対(HSP)を最初に同定する段階を伴う。Tは、近傍ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al.、前記)。これらの最初の近傍ワードヒットは、それらを含有するより長いHSPを探す検索を開始するためのシードとして作用する。累積アラインメントスコアを増加させることができる限り、各配列に沿ってワードヒットを双方向に拡張する。ヌクレオチド配列に関してパラメータM(マッチする残基対の報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基に関するペナルティスコア;常に<0)を用いて累積スコアを計算する。アミノ酸配列の場合、スコア行列を用いて累積スコアを計算する。各方向でのワードヒットの拡張は、以下の場合に停止する:累積アラインメントスコアがその最大到達値から量X低下した場合;1つまたは複数の負のスコアリング残基アラインメントの蓄積により、累積スコアがゼロまたはそれ未満になった場合;またはいずれかの配列の末端に達した場合。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に関して)は、デフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4、および双方の鎖の比較を用いる。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムは、デフォルトとしてワード長3、および期待値(E)10、およびBLOSUM62スコア行列(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915 (1989)を参照されたい)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4、および双方の鎖の比較を用いる。
【0058】
III.本発明の組成物
本発明は、キメラウイルスベクターを含む組成物を提供する。いくつかの態様において、本発明のキメラウイルスベクターは、抗原性H1N1ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結した第一のプロモーターと、TLR3アゴニストをコードする核酸に機能的に連結した第二のプロモーターとを含む。第一および第二のプロモーターは同じであっても異なっていてもよく、誘導型、構成的、または組織特異的でありうる。いくつかの態様において、第一および第二のプロモーターは、ベータアクチンプロモーターおよびCMVプロモーターから独立して選択される。
【0059】
いくつかの態様において、キメラウイルスベクターは、アデノウイルスゲノム(E1およびE3遺伝子欠失)およびdsRNAをコードする核酸を含む。組み換え型アデノウイルス(rAd)が細胞によって産生されるように、Ad E1遺伝子を発現する細胞にキメラベクターを投与することができる。このrAdは回収することができ、これは、抗原性ポリペプチドに対する免疫応答を誘発するために、哺乳動物におけるもう1つの細胞にトランスジェニック組成物を送達する1回の感染ラウンドを行うことができる。
【0060】
A.適したウイルスベクター
任意のウイルス発現ベクターを本発明のために用いることができる。ウイルスワクチンは典型的には弱毒化される(たとえば、複製インコンピテント)。適したウイルス発現ベクターは、アデノウイルス、改変ワクシニア・アンカラ(vaccinia ankara)(MVA;たとえばKumar and Seth (2004) Gene Ther. Mol. Biol. 8: 193-200を参照されたい)、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、バキュロウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、および風疹ウイルス(たとえば、Pugachev et al. (2000) J. Virology 74: 10811-15において記載されるように)に由来することができる。いくつかの態様において、ベクターは、たとえばアデノウイルス5、たとえばE1/E3領域を欠失したAd5、およびE4領域を欠失したAd5に由来するアデノウイルスベクターである。他の適したアデノウイルスベクターには、株2、経口試験株4および7、腸管アデノウイルス40および41、ならびに抗原を送達するためにおよびトランスジーン抗原に対する適応免疫応答を誘発するために十分である他の株(たとえば、Ad34)[Lubeck et al , Proc Natl Acad Sci USA, 86(17), 6763-6767 (1989); Shen et al, J Virol, 75(9), 4297-4307 (2001); Bailey et al, Virology, 202(2), 695-706 (1994)]が挙げられる。いくつかの態様において、アデノウイルスベクターは、生きている複製インコンピテントアデノウイルスベクター(E1およびE3欠失rAd5などの)、生きている弱毒化アデノウイルスベクター(E1B55K欠失ウイルスなどの)、または野生型複製を有する生きたアデノウイルスベクターである。
【0061】
インビトロで脊椎動物細胞を形質転換するために用いられる発現ベクターにおける転写および翻訳制御配列は、ウイルス起源によって提供されうる。たとえば、一般的に用いられるプロモーターおよびエンハンサーは、たとえば、ベータアクチン、アデノウイルス、シミアンウイルス(SV40)、およびヒトサイトメガロウイルス(CMV)に由来する。たとえば、CMVプロモーター、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネオインプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、トランスデューサープロモーター、または哺乳動物細胞における発現にとって有効であることが示されている他のプロモーターの誘導下でタンパク質を発現させるベクターが適している。そのような制御配列が、選択される宿主細胞と適合性である限り、さらなるウイルスゲノムプロモーター、制御および/またはシグナル配列を用いることができる。
【0062】
B.H1N1ポリペプチド
適した異種ポリペプチドをコードする核酸は、H1N1インフルエンザ抗原に由来しうる。H1N1は、小腸などの粘膜組織に感染し、このように強力な粘膜応答を生じる抗原は特に重要である。抗原性ポリペプチドには、H1N1ウイルス表面抗原およびその断片が挙げられる。抗原性ポリペプチドには、たとえばH1N1インフルエンザのHA、NA、MP、およびNPが挙げられる。
【0063】
当業者は、たとえば公知のインフルエンザ配列との比較を用いて、新しく単離されたまたは特に毒性のあるH1N1株から抗原性ポリペプチドを同定および単離する方法を理解する。
【0064】
組み換え型発現ベクターは、哺乳動物遺伝子またはウイルス遺伝子由来の適した転写または翻訳調節エレメントに機能的に連結した免疫原性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むことができる。そのような調節エレメントには、プロモーター、適したmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、ならびに転写および翻訳の終止を制御する配列が挙げられる。複製開始点、形質転換体の認識を容易にするための選択可能なマーカー、および/または転写を制御するためのオペレーター配列をさらに組み入れてもよい。いくつかの態様において、組み換え型発現ベクターの成分を、遺伝子産物が異なる2つのベクター上に存在するように、複数のウイルスに分割することができ、ベクターは、全ての遺伝子産物をトランスで提供するための同時形質導入のために用いられる。遺伝子産物を分割する理由には、挿入のためのサイズの制限、またはウイルス産生細胞株に対する複合遺伝子産物の毒性などがある。
【0065】
C.TLR-3アゴニスト
TLR-3アゴニストは、H1N1ポリペプチドに対する免疫応答を増強するために用いられる。TLR-3アゴニストは、関心対象抗原をコードする同じ発現ベクター上で同時に送達することができる。いくつかの態様において、関心対象抗原をコードする発現ベクターから、TLR-3アゴニストを個別に(すなわち、時間的または空間的に)送達することができる。たとえば、発現ベクターは非-腸管外経路(たとえば、経口、鼻腔内、または粘膜内)により投与されうるが、TLR-アゴニストは、腸管外経路(たとえば、筋肉内、腹腔内、または皮下)により送達される。
【0066】
TLR-3アゴニストには、たとえば低分子RNA、ウイルス送達RNA、二本鎖を形成することができるRNAの低分子セグメント、および低分子干渉RNA(siRNA)が挙げられる。本発明のいくつかの態様において、TLR-3アゴニストは、たとえばシンドビスウイルスに由来するdsRNA、dsRNAウイルス中間体などのウイルス由来dsRNAである[Alexopoulou et al, Nature 413 :732-8 (2001)]。
【0067】
いくつかの態様において、TLR-3アゴニストは、低分子ヘアピンRNAである。低分子ヘアピンRNA配列は典型的には、リンカー配列によって連結された2つの相補的配列を含む。特定のリンカー配列は、本発明の肝要な局面ではない。いかなる適切なリンカー配列も、それがdsRNAを形成するための2つの相補的配列のハイブリダイゼーションを妨害しない限り、用いることができる。同様に、一連の相補的配列は、鎖が二本鎖を形成する限り、必ずしも肝要ではない。鎖は、二本鎖構造が維持される限り、100%相補的である必要はない。一連の相補鎖は、典型的には10〜30ヌクレオチドの範囲、たとえば4〜10、5〜15、5〜20、10〜25、20〜30、または10〜30ヌクレオチドであるが、より長いもの、たとえば長さが20〜100でありうる。
【0068】
いくつかの態様において、低分子ヘアピンRNAをコードする配列は、SEQ ID NO:1〜6のいずれか1つに記載される配列、SEQ ID NO:1〜6に記載される配列と実質的な同一性を有する配列、またはSEQ ID NO:1〜6に記載される配列の変種を含む。TLR-3アゴニストであるdsRNAは、特定のポリペプチドをコードしないが、インビトロまたはインビボで応答細胞(たとえば、樹状細胞、末梢血単核球、またはマクロファージ)に接触すると炎症誘発性サイトカイン(たとえば、IL-6、IL-8、TNF-α、IFN-α、IFN-β)の産生が起こる。
【0069】
いくつかの態様において、TLR-3アゴニストをコードする核酸(たとえば、発現されたdsRNA)とH1N1抗原をコードする核酸を含むキメラウイルスベクターは、同じ製剤で投与される。他の場合において、TLR-3アゴニストをコードする核酸とH1N1抗原をコードする核酸を含むキメラウイルスベクターは、異なる製剤において、同時または連続的に投与される。
【0070】
いくつかの態様において、TLR-3アゴニストをコードする核酸と、H1N1抗原をコードする核酸は、同じプロモーターの制御下に存在する。他の態様において、TLR-3アゴニストをコードする核酸と、H1N1抗原をコードする核酸は、異なるプロモーターの制御下に存在する。
【0071】
二本鎖RNAに対するいくつかの化学合成されたアナログが市販されている。これらには、ポリイノシン:ポリシチジル酸(ポリI:C)、ポリアデニル酸:ポリウリジル酸(ポリA:U)、およびポリI:ポリCが挙げられる。TLR-3に対する抗体(または抗体の架橋)もまた、IFN-βまたは炎症誘発性サイトカイン産生が起こりうる[Matsumoto et al, Biochem. Biophys. Res. Commun. 24: 1364 (2002), de Bouteiller et al, J Biol. Chem. 18:38133-45(2005)]。任意の配列の市販のsiRNAセグメントも同様に、Invitrogenなどの供給源を通して得ることができる。
【0072】
IV.薬学的組成物
本明細書において記載されるベクターを含む薬学的組成物は、生物活性または不活性でありうる薬学的に許容される担体を含むことができる。薬学的組成物は全般的に、予防目的および治療目的のために用いることができる。いくつかの態様において、薬学的組成物は、胃での分解から保護されるように設計することができる。経口での環境に関して、EudragitおよびTimeClock放出系ならびにアデノウイルスのために特異的に設計される他の方法[Lubeck et al, Proc Natl Acad Sci U SA, 86(17), 6763-6767 (1989); Chourasia and Jain, J P harm Pharm Sci, 6(1), 33-66 (2003)]を含む、そのようないくつかの組成物が入手可能である。同様に経口送達のためのDNAおよび薬物のマイクロカプセル化に関して既に記載されたいくつかの方法が存在する(たとえば、米国特許出願第2004043952号を参照されたい)。いくつかの態様において、Eudragit系を用いて、キメラウイルスベクターを下部小腸に送達することができる。しかし、小腸の他の位置への送達も同様に、H1N1に対する防御にとって有利である。
【0073】
本発明のキメラウイルスベクターは、当技術分野において公知の任意の公知の送達系を用いて送達することができる。Rolland (1998) Crit. Rev. Therap. Drug Carrier Systems 15: 143-198およびその中で引用される参考文献によって記載される技術などの多数の遺伝子送達技術が周知である。
【0074】
免疫原性組成物は、H1N1免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの薬学的に許容される塩を含有することができることは明らかである。そのような塩は、有機塩基(たとえば、一級、二級、および三級アミンならびに塩基性アミノ酸の塩)および無機塩基(たとえば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、およびマグネシウム塩)を含む薬学的に許容される非毒性の塩基から調製されうる。塩のいくつかの特定の例には、リン酸緩衝生理食塩液および注射用食塩水が挙げられる。
【0075】
当業者に公知の任意の適した担体を本発明の薬学的組成物において使用してもよい。適した担体には、たとえば水、食塩水、アルコール、脂肪、ロウ、緩衝液、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、および炭酸マグネシウム、または生物学的分解性のミクロスフェア(たとえば、ポリ乳酸ポリグリコール酸)などの固体担体が挙げられる。適した生物分解性のミクロスフェアは、たとえば米国特許第4,897,268号;第5,075,109号;第5,928,647号;第5,811,128号;第5,820,883号に開示される。キメラウイルスベクターは、生物学的分解性のミクロスフェアの中に封入することができ、またはミクロスフェアの表面に会合することができる。
【0076】
そのような組成物は、緩衝剤(たとえば、中性緩衝食塩水またはリン酸緩衝生理食塩液)、炭水化物(たとえば、グルコース、マンノース、スクロース、またはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチド、またはグリシンなどのアミノ酸、抗酸化剤、静菌剤、EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤、アジュバント(たとえば、水酸化アルミニウム)、製剤をレシピエントの血液と等張、低張、または弱高張にする溶質、懸濁剤、濃化剤、および/または保存剤を含むことができる。または、本発明の組成物は、凍結乾燥剤として調製することができる。化合物はまた、周知の技術を用いてリポソーム内に封入することができる。
【0077】
いくつかの態様において、組成物は、追加のアジュバントを含むことができる。適したアジュバントには、たとえば脂質および非脂質化合物、コレラ毒素(CT)、CTサブユニットB、CT誘導体CTK63、大腸菌(E. coli)熱不安定性腸毒素(LT)、LT誘導体LTK63、Al(OH)3、およびたとえばWO 04/020592、Anderson and Crowle, Infect. Immun. 31(1):413-418 (1981), Roterman et al, J. Physiol. Pharmacol., 44(3):213-32(1993), Arora and Crowle, J. Reticuloendothel. 24(3):271-86 (1978)、およびCrowle and May, Infect. Immun. 38(3):932-7 (1982)において記載されるポリイオン性有機酸が挙げられる。適したポリイオン性有機酸には、たとえば6,6'-[3,3'-デミチル[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジイル]ビス(アゾ)ビス[4-アミノ-5-ヒドロキシ-1,3-ナフタレン-ジスルホン酸](エバンスブルー)および3,3'-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジイルビス(アゾ)ビス[4-アミノ-1-ナフタレンスルホン酸](コンゴーレッド)が挙げられる。ポリイオン性有機酸を、任意の投与経路と共に、遺伝子に基づくワクチン接種法のために用いることができることは、当業者によって認識される。
【0078】
他の適したアジュバントには、イミダゾキノリンファミリーメンバー、たとえばイミキモドおよびレシキモド(たとえば、Hengge et al, Lancet Infect. Dis. 1(3): 189-98 (2001)を参照されたい)などの局所免疫調整剤が挙げられる。
【0079】
さらなる適したアジュバントが、たとえばさらなるミョウバンに基づくアジュバント(たとえば、Alhydrogel、Rehydragel、リン酸アルミニウム、Algammulin);油脂基剤のアジュバント(フロイント不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Difco Laboratories, Detroit, Mich.)、Specol、RIBI、TiterMax、Montanide ISA50、またはSeppic MONTANIDE ISA 720);非イオン性ブロックコポリマーに基づくアジュバント、サイトカイン(たとえば、GM-CSFまたはFlat3-リガンド);Merck Adjuvant 65(Merck and Company, Inc., Rahway, N.J.);AS-2(SmithKline Beecham, Philadelphia, Pa.);カルシウム、鉄、または亜鉛の塩;アクリル化チロシンの不溶性懸濁剤;アクリル化糖;陽イオンまたは陰イオン誘導体化多糖類;ポリホスファゼン;生物学的分解性のミクロスフェア;モノホスホリルリピッドAおよびQuil Aとして市販されている。GM-CSFまたはインターロイキン-2、-7、もしくは-12などのサイトカインも同様に、適したアジュバントである。ホモシアニン(たとえば、キーホールリンペットヘモシアニン)およびヘモエリスリンも同様に用いることができる。たとえばキチン、キトサン、および脱アセチル化キチンなどの多糖類アジュバントも同様にアジュバントとして適している。他の適したアジュバントには、ムラミルジペプチド(MDP、NアセチルムラミルLアラニルDイソグルタミン)細菌ペプチドグリカンおよびその誘導体(たとえば、トレオニル-MDP、およびMTPPE)が挙げられる。BCGおよびBCG細胞壁骨格(CWS)も同様に、ジミコール酸トレハロースの存在下または非存在下でアジュバントとして用いることができる。ジミコール酸トレハロースも同様に用いることができる(たとえば、米国特許第4,579,945号を参照されたい)。解毒化エンドトキシンも同様に、単独でまたは他のアジュバントと併用して有用である(たとえば、米国特許第4,866,034号;第4,435,386号;第4,505,899号;第4,436,727号;第4,436,728号;第4,505,900号;および第4,520,019号を参照されたい)。サポニンQS21、QS17、QS7も同様にアジュバントとして有用である(たとえば、米国特許第5,057,540号;EP 0362 279;WO 96/33739;およびWO 96/11711を参照されたい)。他の適したアジュバントには、Montanide ISA 720(Seppic, France)、SAF(Chiron, Calif., United States)、ISCOMS(CSL)、MF-59(Chiron)、SBASシリーズアジュバント(たとえば、SBAS-2、SBAS-4、またはSBAS-6、またはその変種、SmithKline Beecham, Rixensart, Belgiumから入手可能)、Detox(Corixa, Hamilton, Mont.)、およびRC-529(Corixa, Hamilton, Mont.)がある。
【0080】
スーパー抗原もまた、アジュバントとして用いるために企図される。スーパー抗原には、黄色ブドウ球菌(S. aureus)および表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)のα、β、γ、およびδ腸毒素などのブドウ球菌エキソタンパク質、ならびにα、β、γ、およびδ大腸菌外毒素が挙げられる。一般的なブドウ球菌腸毒素は、ブドウ球菌腸毒素A(SEA)およびブドウ球菌腸毒素B(SEB)として知られ、Eまでの腸毒素(SEE)が記載されている(Rott et al., 1992)。化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)B(SEB)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)腸毒素(Bowness et al, 1992)、化膿性連鎖球菌の細胞膜会合タンパク質(CAP)(Sato et al, 1994)、および黄色ブドウ球菌の毒素ショック症候群毒素1(TSST1)(Schwab et al , 1993)は、さらに有用なスーパー抗原である。
【0081】
本明細書において提供される薬学的組成物において、アジュバント組成物は、たとえば、主にTh1またはTh2型の免疫応答を誘導するように設計することができる。高レベルのTh1型サイトカイン(たとえば、IFN-γ、TNF-α、IL-2およびIL-12)は、投与された抗原に対する細胞性免疫応答の誘導にとって有利である傾向がある。対照的に、高レベルのTh2-型サイトカイン(たとえば、IL-4、IL-5、IL-6、およびIL-10)は、液性免疫応答の誘導にとって有利である傾向がある。免疫原性H1N1ポリペプチドを含む組成物の経口送達は、Th1およびTh2型応答を含む免疫応答を誘導することができる。
【0082】
本明細書において記載される組成物は、徐放性製剤(すなわち、投与後の化合物の遅延放出を行うカプセルまたはスポンジなどの製剤)の一部として投与されうる。そのような製剤は、周知の技術を用いて一般に調製されうる(たとえば、Coombes et al. (1996) Vaccine 14: 1429-1438を参照されたい)。徐放性製剤は、担体マトリクス内に分散されたポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体を含有してもよく、および/または速度制御膜によって取り囲まれたリザーバー内に含有されうる。
【0083】
そのような製剤において用いるための担体は、生物学的適合性であり、同様に生物学的分解性でありうる;好ましくは、製剤は、比較的一定レベルの活性成分の放出を提供する。そのような担体には、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)の微粒子ならびにポリアクリレート、ラテックス、デンプン、セルロース、およびデキストランが挙げられる。他の遅延放出担体には、非液体親水性コア(たとえば、架橋した多糖類またはオリゴ糖)および任意で両親媒性化合物を含む外層を含む超分子バイオベクターが挙げられる(たとえば、WO 94/20078;WO 94/23701;およびWO 96/06638を参照されたい)。徐放性製剤内に含有される活性化合物の量は、埋め込み部位、放出速度および予想放出期間、ならびに処置または予防される状態の性質に依存する。
【0084】
薬学的組成物は、密封アンプルまたはバイアルなどの単位用量または多用量容器において示すことができる。そのような容器は好ましくは、使用するまで製剤の無菌性を保持するように気密性に密封される。全般的に、製剤は、油性または水性ビヒクル中で懸濁剤、液剤、または乳剤として保存することができる。または、薬学的組成物は、使用直前に無菌性の液体担体を添加するのみでよい凍結乾燥状態で保存されうる。
【0085】
V.本発明の治療的使用
本発明は、H1N1感染の可能性または重症度を低減させるためのワクチンを提供する。本明細書において用いられる「被験体」または「患者」は、たとえば齧歯類、ネコ、イヌ、または霊長類、たとえばヒトなどの任意の温血動物を指す。
【0086】
免疫原性組成物は、たとえばH1N1株による感染症を既に経験した個体におけるH1N1の異なる株による感染症を予防するために、任意の段階で処置するために用いられうる。そのような方法において、薬学的組成物は典型的には患者に投与される。患者は感染または曝露されうるまたはされなくてもよい。したがって、上記の薬学的組成物は、感染症または症状の発症を予防するために用いられうる。感染または曝露は、たとえば患者の試料中のウイルス力価またはウイルス特異的抗体を測定することによって、当技術分野において公知の方法に従って診断することができる。
【0087】
免疫療法は典型的には能動的免疫療法であり、処置が、ウイルスに対してまたはウイルス感染細胞に対する応答のために内因性の宿主免疫系のインビボ刺激に依存する。
【0088】
本明細書において記載される予防または治療組成物の投与回数ならびに投与量は、個体によって異なり、標準的な技術を用いて容易に確立されうる。たとえば、1から10用量を規定の期間(たとえば、1もしくは2週間、または1、2、もしくは3ヶ月)または汎発流行のあいだ投与することができる。いくつかの態様において、3用量を1ヶ月の間隔で投与する。いくつかの態様において、2〜3用量を2〜3ヶ月毎に投与する。ブースターワクチン接種を、その後定期的に、たとえば汎発流行の期間、または標的株もしくは類似の株が再出現するリスクが存在する場合に行うことができる。
【0089】
医学の当業者は、投与の用量および回数が、個々の患者に応じて変化することを認識する。適した用量は、上記のように投与した場合に、基礎(すなわち無処置)レベルより少なくとも10〜50%上である抗ウイルス免疫応答を促進することができる組成物の量である。そのような応答は、患者における特異的抗体を測定することによって、またはインビトロでウイルス感染細胞を殺すことができる細胞障害性T細胞のワクチン依存的生成によってモニターすることができる。そのようなワクチンはまた、非ワクチン接種患者と比較してワクチン接種患者において改善された臨床転帰に至る免疫応答を引き起こすことができなければならない。
【0090】
一般的に、適切な用量および処置プログラムは、治療および/または予防上の利益を提供するために十分量の活性化合物を提供する。そのような応答は、無処置患者と比較して処置患者において改善された臨床転帰(たとえば、体重減少などの症状の重症度の低減、検出可能なウイルス力価がないかまたは低い、生存の見込みの増加)を確立することによってモニターすることができる。そのような免疫応答は一般的に、先に記載した標準的な増殖アッセイ、細胞障害性アッセイ、またはサイトカインアッセイを用いて評価することができる。免疫応答は、処置の前後で患者から得られた試料を用いて、またはたとえば類似の個体の集団の平均的な応答と比較して、決定することができる。
【0091】
免疫原性ポリペプチドと体液中の抗体とのあいだで形成された免疫複合体の検出を用いて、治療の有効性をモニターすることができる。ワクチン接種の前後に個体から採取された体液試料を、上記の方法論によって免疫複合体に関して分析することができる。第一の試料(ワクチン接種前)と比較して第二の試料(ワクチン接種後)における免疫複合体の数の実質的な変化は、ワクチン接種の成功を反映しうる。
【0092】
A.本発明の組成物の投与
キメラウイルスベクターを含む組成物は、任意の非-腸管外経路(たとえば、経口、鼻腔内、たとえば膣、肺、唾液腺、鼻腔、小腸、結腸、直腸、扁桃、またはパイエル板を介して粘膜内)によって投与することができる。組成物は単独でまたは先に記載した追加のアジュバントと共に投与することができる。
【0093】
B.関心対象抗原に対する免疫応答の検出
H1N1抗原性ポリペプチドに対する免疫応答は、たとえば、CD4+もしくはCD8+ T細胞の特異的活性化を検出する段階、または当該ポリペプチドに特異的に結合する抗体の存在を検出する段階を含む、当技術分野において公知の任意の手段を用いて検出することができる。
【0094】
粘膜、液性、または細胞性免疫応答に関連するCD4+またはCD8+ T細胞の特異的活性化は、多様な様式で検出されうる。特異的T細胞活性化を検出する方法には、T細胞の増殖、サイトカインの産生(たとえば、リンフォカイン)、細胞溶解性の生成(すなわち、免疫原性ポリペプチドに対して特異的な細胞障害性T細胞の生成)が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。CD4+ T細胞に関して、増殖を検出することによって活性化を決定することができる。CD8+ T細胞に関して、51Cr放出アッセイを用いる細胞溶解活性の生成によって活性化を検出することができる(たとえば、Brossart and Bevan, Blood 90(4): 1594-1599 (1997)およびLenz et al., J. Exp. Med. 192(8): 1135-1142 (2000)を参照されたい)。
【0095】
T細胞の増殖の検出は、多様な公知の技術を用いて達成されうる。たとえば、T細胞増殖は、DNA合成速度を測定することによって検出することができる。増殖するように刺激されているT細胞は、DNA合成速度の増加を示す。DNA合成速度を測定するための典型的な様式は、たとえば新たに合成されたDNAに取り込まれるヌクレオシド前駆体であるトリチウム化チミジンによってT細胞培養物をパルス標識することによることである。取り込まれたトリチウム化チミジンの量は、液体シンチレーション分光光度計を用いて決定することができる。T細胞増殖を検出する他の方法には、インターロイキン-2(IL-2)産生、Ca2+流入、または3-(4,5-ジメチルチアゾル-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムなどの色素の取り込みの増加を測定する段階が挙げられる。または、リンフォカイン(たとえば、インターフェロン-γ)の合成を測定することができ、または免疫原性ポリペプチドに応答することができるT細胞の相対数を定量してもよい。
【0096】
粘膜抗体応答を含む抗体免疫応答(液性免疫応答またはB細胞応答)は、当技術分野において公知のイムノアッセイを用いて検出することができる[Tucker et al, Mol Therapy, 8, 392-399 (2003); Tucker et al, Vaccine, 22, 2500-2504 (2004)]。適したイムノアッセイには、David et al(米国特許第4,376,110号)の二重モノクローナル抗体サンドイッチイムノアッセイ技術;モノクローナル-ポリクローナル抗体サンドイッチアッセイ(Wide et al, in Kirkham and Hunter, eds., Radioimmunoassay Methods, E. and S. Livingstone, Edinburgh (1970));Gordon et al.の「ウェスタンブロット」法(米国特許第4,452,901号);標識リガンドの免疫沈降(Brown et al. (1980) J. Biol. Chem. 255:4980-4983);たとえばRaines et al. (1982) J Biol. Chem. 257:5154-5160によって記載される酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA);蛍光色素を用いることを含む免疫細胞化学技術(Brooks et al. (1980) Clin. Exp. Immunol. 39:477);および活性の中和(Bowen-Pope et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:2396-2400)が挙げられる。上記のイムノアッセイに加えて、米国特許第3,817,827号;第3,850,752号;第3,901,654号;第3,935,074号;第3,984,533号;第3,996,345号;第4,034,074号;および第4,098,876号に記載のアッセイを含む多数の他のイムノアッセイが利用可能である。
【0097】
実施例を提供するが、それらは本発明を説明するためであってその範囲を制限するためではない。本発明の他の変形は、当業者に容易に明らかであり、添付の特許請求の範囲に包含される。本明細書において引用される刊行物、データベース、特許、特許出願、およびアクセッション番号は全て、全ての目的に関してその全内容が参照により本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0098】
IV.実施例
実施例1:dsRNAアジュバントおよびH1N1 HAポリペプチドをコードするキメラアデノウイルスベクター(DX1)の構築
インフルエンザ株A/CA/04/09(Blue Heronによって合成)由来のHAのコード配列をシャトルベクター(pShuttleCMV, Qbiogene)のKpnI制限部位にクローニングした。HA配列の開始コドンは、小さいイントロンと共にCMVプロモーターのすぐ下流に存在する。bGHポリA配列は、HA遺伝子のすぐ後に続く。pShutleベクターはまた、抗原とアジュバントの双方がいずれも同じベクター上でコードされるが、異なるCMVプロモーターを有するように、dsRNAヘアピンアジュバントをコードする配列(luc1、SEQ ID NO:1)を含む。このシャトルベクターは、pCMV-HA-CMV-luc1と呼ばれる。
【0099】
HAトランスジーンとdsRNAヘアピンluc1をコードする配列とを発現する組み換え型アデノウイルスベクター(E1/E3欠失)を産生することができるプラスミド構築物を生成するために、pCMV-HA-CMV-luc1とアデノウイルス骨格pAd(Qbiogene)との相同組み換えを行った。このベクターは、pAd-DX1と呼ばれ、SEQ ID NO:7に示される。組み換え型Adは、直線状にしたpAd-DX1発現構築物をHEK293細胞にトランスフェクトすることによって生成された。このウイルスベクターは、DX1と呼ばれる。ウイルス力価(感染単位(IU/ml))を、Cell Biolabs Inc.(San Diego, CA)によって記載されるQuickTiter(商標)イムノアッセイと類似であるヘキソン免疫染色アッセイによって測定した。
【0100】
実施例2:粘膜組織における抗原特異的免疫応答の誘導に関して、経口DX1は注射rAd5より優れている
経口投与による遺伝子に基づく抗原の送達に対して高い抗体力価を生成することは、難題である。本発明者らは、DX1ベクターが実質的な全身および粘膜抗体力価を誘導できるか否かを決定しようとした。先に説明したように、DX1は、E1/E3欠失アデノウイルス5型ベクターにおいてCMVプロモーターの制御下でHAを発現する。Balb/c雌性マウスに0週目および5週目に、経口胃管栄養によってDX1ベクター1.0×107 IUもしくは1.0×108 IU DX1(図1においてAd-CA04/09-adjと表示)を投与したか、または1.0×108 IU DX1を筋肉内(i.m.)に免疫した(各群N=6)。対照群には、インフルエンザ研究室株A/PR/8/34からのH1N1 HA抗原を発現する類似のAdベクター(図1においてAd-PR8/34-Adjと表示)をワクチン接種した。A/PR/8/34は、A/CA/04/09 H1N1株と高度に類似であるとは見なされない。HAタンパク質の%アミノ酸同一性は75〜85%の次数である。対照Adベクターも同様に、経口(p.o.と表示)またはi.m.注射のいずれかによって投与した。無処置マウスは追加の対照を提供した。
【0101】
全身抗体応答を決定するために、本発明者らは、ワクチン接種後の血漿中の抗体力価を測定した。A/CA/04/09 HAに対する抗体力価を、抗HA IgG ELISAによって初回ウイルス投与後2、3、5および8週目の血漿中で測定した(図1A)。DX1による経口および筋肉内免疫は、ワクチン接種後8週目までに同等の全身抗HA IgG免疫を産生した。
【0102】
赤血球凝集阻害(HAI)抗体力価も同様にワクチン接種後3、5、および8週目の血漿中で測定した(図1B)。いずれの経口(p.o.)群においても有意なHAI力価が誘発された。8週目までに、高い経口用量は、筋肉内注射によって誘発された力価と本質的に同等のHAI力価を示した。ELISAはA/CA/4/09からのHA抗原に対する抗体結合に依存することから、PR/8/34 HAベクターは、アッセイのバックグラウンドを超えてHAI力価を誘導しなかった。
【0103】
HAに対する粘膜IgA抗体力価を、投与後8週目の便試料(図1C)、投与後10週目での膣洗浄液(図1D)、および投与後12週目での肺洗浄液(図1E)において測定した。これらの結果は、局所(小腸)および遠位(膣および肺)粘膜組織の双方におけるタンパク質HAに対する抗体応答の誘発において、DX1ベクターの経口送達は筋肉内送達より有意によい成績を収めたことを証明している。特に、HAに対する平均抗体力価は、筋肉内ワクチン接種後より経口免疫後(便中IgA)の小腸組織において17倍良好であった(図1C)。
【0104】
意外にも、DX1の10倍低い用量を経口投与すると、肺洗浄液、膣洗浄液、および便固形物においてDX1の筋肉内送達と同等またはそれより良好なIgA応答を誘導した(図1C、1D、1E)。加えて、交叉反応性の低いPR8/34ベクターの経口投与によって、DX1の筋肉内投与と類似の特異的IgA応答が起こった。特異的IgAの結果は、DX1の経口での使用が、粘膜から侵入する病原体であるH1N1インフルエンザに対して優れた防御を提供することを示している。このように、本発明のアデノウイルスワクチンアプローチを用いることにより、より低いワクチン有効量を可能にすることができる。加えて、ミスマッチ抗原によるワクチン接種もなおも、何らかの特異的免疫防御を付与することができる。これらは、ワクチン供給が危機的であり、完全にマッチしたワクチン株を利用することができない可能性がある汎発流行の際の重要な考察となる。
【0105】
実施例3:DX1の経口送達はインフルエンザチャレンジに対して動物を防御できることの証明
マウスを0および4週目に表1に記載の群によって免疫した。経口免疫を、1×108または1×107 IU DX1(A群およびC群)のいずれかによる経口胃管栄養によって行った。送達の対照とするために、DX1の筋肉内免疫も同様に行った(B群)。アジュバントの起こりうる下流の効果の対照とするために、本発明者らは、dsRNAアジュバントを発現するが抗原を発現しないアジュバント対照ベクターを用いた。無処置マウスを陰性対照として用いた。各チャレンジ群の動物数は6匹であった。
【0106】
動物に、9週目(64日目)に汎発流行H1N1ウイルス(A/CA/07/2009)を、8.6×105 TCID50の用量を用いてチャレンジした。A/CA/07/2009は、A/CA/04/09と非常に類似であると考えられ、HAタンパク質は、95%より高いアミノ酸同一性を共有する。体重減少は動物の健康の指標であることから、チャレンジ後14日間、動物を体重減少に関して測定した。
【0107】
結果は、DX1免疫動物が、死亡および実質的な体重減少から完全に防御されたことを示している(図2Aおよび2B)。DX1群を、無処置またはアジュバント対照群のいずれかと生存に関して比較すると、Fisherの正確確率検定によりP<0.03であった。アジュバント対照および無処置マウスは全て有意な量の体重を失い、大多数はチャレンジの結果として死亡した。低い経口用量のDX1がなおも動物の100%を防御することができ、筋肉内免疫動物と同等の体重保護を有することを示すデータは特に有意である。
【0108】
【表1】

【0109】
実施例4:H1N1インフルエンザに対する抗体応答の誘発に関して、DX1の経口送達がrAd5より優れていることの証明
A/CA/04/09由来のHAを発現するが、今回は発現されたdsRNAアジュバントは有しない第二のrAdベクターを構築した。このベクターをDX2と呼んだ。Balb/cマウスに、0および4週目に経口胃管栄養によって1.0×107 IUのDX1またはDX2を投与した(図3においてrAd5(アジュバントなし)と呼ぶ)。この実験ではN=6であった。A/CA/4/09 HAに対する抗体力価を、抗HA IgG ELISAによって投与後3および7週目の血漿中で測定した(図3)。結果は、DX1がDX2と比較して優れた抗体力価を誘導することを示し、アジュバントが経口送達後にHAに対する免疫応答を改善することを証明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む発現カセットを含む、H1N1インフルエンザに対して防御するためのキメラアデノウイルス発現ベクター:
(a)toll様受容体-3(TLR-3)アゴニストをコードする核酸に機能的に連結した第一のプロモーターであって、TLR-3アゴニストが二本鎖RNA(dsRNA)である、第一のプロモーター;および
(b)H1N1インフルエンザ由来のポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結した第二のプロモーター。
【請求項2】
TLR-3アゴニストをコードする核酸が低分子ヘアピンRNAを含む、請求項1記載のキメラアデノウイルス発現ベクター。
【請求項3】
TLR-3アゴニストをコードする核酸が、SEQ ID NO:1〜6からなる群より選択される配列を含む、請求項1記載のキメラアデノウイルス発現ベクター。
【請求項4】
H1N1インフルエンザポリペプチドがA/CA/4/2009 H1N1インフルエンザに由来する、先行請求項のいずれか1項に記載のキメラアデノウイルス発現ベクター。
【請求項5】
H1N1インフルエンザポリペプチドがHA、NA、MP、およびNPからなる群より選択される、先行請求項のいずれか1項記載のキメラアデノウイルス発現ベクター。
【請求項6】
H1N1インフルエンザポリペプチドがHAポリペプチドである、請求項5記載のキメラアデノウイルス発現ベクター。
【請求項7】
第一のプロモーターと第二のプロモーターが同じである、先行請求項のいずれか1項記載のキメラアデノウイルス発現ベクター。
【請求項8】
第一のプロモーターと第二のプロモーターが各々CMVプロモーターである、請求項7記載のキメラアデノウイルス発現ベクター。
【請求項9】
SEQ ID NO:7と95%の同一性を有する配列を含む、請求項1記載のキメラアデノウイルス発現ベクター。
【請求項10】
先行請求項のいずれか1項記載のキメラアデノウイルス発現ベクターと薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物であって、経口、粘膜、または鼻腔内投与用に調製される、薬学的組成物。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項記載のキメラアデノウイルス発現ベクターと薬学的に許容される担体とを含む、経口送達用薬学的組成物。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項記載のキメラアデノウイルス発現ベクターまたは請求項10〜11のいずれか1項記載の組成物の免疫原性有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、H1N1インフルエンザに対する免疫応答を誘発する方法であって、
免疫応答がH1N1インフルエンザポリペプチドに対するものであり、かつ投与経路が経口、鼻腔内、および粘膜からなる群より選択される、方法。
【請求項13】
投与経路が経口である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
免疫応答が粘膜免疫応答である、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
哺乳動物がヒトである、請求項12〜14のいずれか1項記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−505022(P2013−505022A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529880(P2012−529880)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/048967
【国際公開番号】WO2011/034950
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(508259353)バクサート インコーポレーティッド (2)
【Fターム(参考)】