説明

HCVレプリコンシャトルベクター

【課題】本発明は、HCVレプリコンシャトルベクターを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、HCV感染患者のサンプルからHCVポリヌクレオチド配列中にクローニングし、かつ得られたレプリコンを薬物感受性について試験するのに有益な新規のHCVレプリコンシャトルベクターを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HCVポリメラーゼインヒビターのスクリーニング、試験、および評価にとって有用である、新規なHCVレプリコンシャトルベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルスは、世界中の主要な健康問題であり、また慢性肝疾患の主な原因でもある(非特許文献1)。HCV感染患者は、肝硬変および続く肝細胞癌を発症するリスクにさらされており、従ってHCVが肝臓移植の主要な指標になっている。
【0003】
世界保健機構によれば、全世界には2億人を超える感染患者がおり、毎年、少なくとも3〜4百万人の人々が感染している。一度感染すると、約20%の人はウイルスを排除するが、しかし残りの人は生涯にわたってHCVを抱え込む。慢性感染患者の10〜20%が、最終的に肝障害性の硬変または癌を発症する。このウイルス疾患は、汚染した血液および血液製剤、汚染した針によって非経口的に、または感染した母親もしくは保菌者の母親からその子供へと性的および垂直的に伝染する。現在のHCV感染処置は、組換え体インターフェロン-α単独でまたはヌクレオチド類似体のリバビリンとの併用での免疫治療に限られており、その臨床的利益は特に遺伝子型1に限定されている。慢性HCV感染を効果的に根絶する、改良された治療薬が緊急に求められている。
【0004】
HCVは、属であるフラビウイルス属(flavivirus)、ペスチウイルス属(pestivirus)、およびC型肝炎ウイルスを含むヘパシウイルス属(hepacivirus)を含む、フラビウイルス科のウイルスの一員に分類されている(非特許文献2、3)。HCVはエンベロープ型ウイルスで、約9.4kbの、正の、センス型、単鎖RNAゲノムを含む。ウイルスゲノムは、5'非翻訳領域(UTR)、約3011アミノ酸のポリタンパク質前駆体をコードしている長いオープンリーディングフレーム、および短い3'-UTRからなる。5'-UTRは、HCVゲノムの中で最も保存の高い部分であり、ポリタンパク質の翻訳の開始および制御にとって重要である。
【0005】
HCVの遺伝子分析は、DNA配列における>30%の多様性を示す、6つの主要な遺伝子型を同定した。各遺伝子型は、20〜25%のヌクレオチド配列の多様性を示す、より密接に関係する一連のサブタイプを含んでいる(非特許文献4)。30を超えるサブタイプが識別されている。米国では、感染患者の約70%がタイプ1aおよび1bに感染している。タイプ1bは、アジアで最も流行しているサブタイプである(非特許文献5、6)。残念なことにタイプ1感染は、タイプ2または3遺伝子型にのいずれよりも、現在の治療法に対し反応性に劣っている(非特許文献7)。
【0006】
ペスチウイルスおよびヘパシウイルスのORFの非構造タンパク質部分の遺伝的構成およびポリタンパク質のプロセシングは非常によく似ている。これら正鎖のRNAウイルスは、ウイルスの複製に必要な全てのウイルスタンパク質をコードしている、単一の大きなオープンリーディングフレーム(ORF)を有する。これらのタンパク質は、細胞およびウイルスの両方がコードするプロテイナーゼによって翻訳と同時かまたは翻訳後にプロセシングされ、成熟ウイルスタンパク質を生成するポリタンパク質として発現する。ウイルスのゲノムRNAの複製を担当するウイルスタンパク質は、カルボキシル末端側に位置している。ORFの3分の2は、非構造(NS)タンパク質と呼ばれている。ペスチウイルスおよびヘパシウイルスの両方では、成熟した非構造(NS)タンパク質は、非構造タンパク質コード領域のアミノ末端側からORFのカルボキシル末端に向かって順番にp7、NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5AおよびNS5Bからなる。
【0007】
ペスチウイルスおよびヘパシウイルスのNSタンパク質は、特定のタンパク質機能を特徴とする配列ドメインを共有している。例えば、両群のウイルスのNS3タンパク質は、セリンプロテイナーゼおよびヘリカーゼに特徴的なアミノ酸配列モチーフを有している(非特許文献8〜10)。同様に、ペスチウイルスとヘパシウイルのNS5Bタンパク質は、RNA指向性RNAポリメラーゼに特徴的なモチーフを有する(非特許文献11)。
【0008】
ペスチウイルスおよびヘパシウイルスのNSタンパク質がウイルスのライフサイクルにおいて果たす実際の役割および機能は、全く類似している。両方の場合において、NS3のセリンプロテイナーゼはORF内のその位置から下流にあるポリタンパク質前駆体の、全タンパク質分解プロセシングを担っている(非特許文献12〜18)。NS4Aタンパク質は、両方の場合において、NS3セリンプロテアーゼと共に補助因子として作用する(非特許文献19〜21)。両方のウイルスのNS3タンパク質もまたヘリカーゼとして機能する(非特許文献22〜24)。最後に、ペスチウイルスおよびヘパシウイルスのNS5Bは、予測されるRNA依存RNAポリメラーゼ活性を有している(非特許文献25〜28、特許文献1)。
【0009】
現在、HCV感染の処置に利用できる承認された療法の数は限られている。HCVを処置し、かつHCV NS5Bポリメラーゼを阻害するための新規および既存の治療的アプローチが検討されている:非特許文献29〜38。
【0010】
ウイルスのゲノム構成およびウイルスタンパク質の機能の理解は進んだものの、HCV複製および病理の基本的局面は未だ不明のままである。HCV複製を実験的に取り扱う上での大きな問題は、感染ウイルス粒子の生成を可能にする、有効な細胞培養系が無いことである。一次細胞培養およびある種のヒト細胞株の感染が報告されているが、これらの系で生成されるウイルスの量およびHCV複製のレベルは低すぎて、詳細な分析は不可能である。
【0011】
ヒト肝細胞株Huh-7において最小限の効率で複製する、選択可能なサブゲノムHCV RNAの構築体が報告されている。Lohmanらは、タンパク質コード領域のC-p7またはC-NS2領域を欠失させて得た、クローン化され、全長を有するHCVコンセンサスゲノム(遺伝子型1b)由来のレプリコン(I377/NS3-3')の構築体を報告した(非特許文献39)。レプリコンは以下のエレメントを含んでいた;(i)カプシドコード領域の12アミノ酸に融合したHCV 5'-UTR;(ii)ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(NPTII);(iii)NPTII遺伝子の下流に挿入され、HCVタンパク質NS2またはNS3の翻訳をNS5Bに向ける、脳心筋炎ウイルス(EMCV)由来のIRES;および(iv)3'-UTR。Huh-7細胞のトランスフェクション後、HCV RNAの複製を支持する細胞だけがNPTIIタンパク質を発現し、薬剤G418に対する耐性を発生した。このようなG418耐性コロニーに由来する細胞株は、実質的なレベルのレプリコンRNAおよびウイルスタンパク質を含むが、トランスフェクションした106個のHuh-7細胞のうちHCVの複製を支持する細胞は僅か1個である。
【0012】
類似の選択可能なHCVレプリコンが、HCV-H遺伝子型1a感染性クローンに基づいて構築されている(非特許文献40)。HCV-H由来のレプリコンは有効なHCV複製を確立することができず、このことは、これまでに構築された上記Lohmannのレプリコン(1999)がこれらの実験に使用した特定の遺伝子型1bのコンセンサスcDNAクローンに依存していたことを示唆している。上記Blightら(2000)は、PCRに基づく遺伝子のアッセンブリー手法を行い、上記Lohmannら(1999)が行ったレプリコンの構築を再現して、G418耐性Huh-7細胞コロニーを得た。独立性G418耐性細胞クローンの配列を決定し、高レベルのHCV複製に宿主細胞に対するレプリコンの適合が必要であるか判定した。HCV非構造タンパク質NS5A中にクラスター形成する、複数の独立性適応変異が同定された。突然変異には高いインビトロ複製能力が付与されており、これまで当技術分野で構築されたレプリコン、例えばI377/NS3-3'レプリコンの形質導入効率が0.0001%であるのに比べ、トランスフェクトされた細胞の形質導入効率は0.2〜10%を示した。
【0013】
【特許文献1】Hagedorn, PCT WO 97/12033
【非特許文献1】Boyer, N. et al. J. Hepatol. 2000 32:98-112
【非特許文献2】Rice, C. M., Flaviviridae:The viruses and their replication, in:Fields Virology, 編集者:Fields
【非特許文献3】B. N., Knipe, D. M., and Howley, P. M., Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, Pa., Chapter 30, 931-959, 1996
【非特許文献4】Simmonds, P. 2004 J. Gen. Virol. 85:3173-88
【非特許文献5】X. Forns and J. Bukh, Clinics in Liver Disease 1999 3:693-716
【非特許文献6】J. Bukh et al., Semin. Liv. Dis. 1995 15:41-63
【非特許文献7】N. N. Zein, Clin. Microbiol. Rev., 2000 13:223-235
【非特許文献8】Gorbalenya et al. Nature 1988 333:22
【非特許文献9】Bazan and Fletterick Virology 1989 171:637-639
【非特許文献10】Gorbalenya et al. Nucleic Acid Res. 1989 17.3889-3897
【非特許文献11】Koonin, E.V. and Dolja, V.V. Crit.Rev.Biochem.Molec.Biol. 1993 28:375-430
【非特許文献12】Wiskerchen and Collett Virology 1991 184:341-350
【非特許文献13】Bartenschlager et al. J. Virol. 1993 67:3835-3844
【非特許文献14】Eckart et al. Biochem. Biophys. Res. Comm. 1993 192:399-406
【非特許文献15】Grakoui et al. J. Virol. 1993 67;2832-2843
【非特許文献16】Grakoui et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1993 90:10583-10587
【非特許文献17】Ilijikata et al. Virol. 1993 67:4665-4675
【非特許文献18】Tome et al. J. Virol. 1993 67:4017-4026
【非特許文献19】Bartenschlager et al. J. Virol. 1994 68:5045-5055
【非特許文献20】Failla et al. J. Virol. 1994 68:3753-3760
【非特許文献21】Xu et al. J Virol. 1997 71:53 12-5322
【非特許文献22】Kim et al. Biochem. Biophys. Res. Comm. 1995 215:160-166
【非特許文献23】Jin and Peterson Arch. Biochem. Biophys. 1995, 323:47-53
【非特許文献24】Warrener and Collett J. Virol. 1995 69:1720-1726
【非特許文献25】Behrens et al. EMBO 1996 15:12-22
【非特許文献26】Lechmann et al. J. Virol. 1997 71:8416-8428
【非特許文献27】Yuan et al. Biochem. Biophys. Res. Comm. 1997 232:231-235
【非特許文献28】Zhong et al. J. Virol. 1998 72:9365-9369
【非特許文献29】R. G. Gish, Sem. Liver. Dis., 1999 19:5
【非特許文献30】Di Besceglie, A. M. and Bacon, B. R., Scientific American, October;1999 80-85
【非特許文献31】G. Lake-Bakaar, Current and Future Therapy for Chronic Hepatitis C Virus Liver Disease, Curr. Drug Targ. Infect Dis. 2003 3(3):247-253
【非特許文献32】P. Hoffmann et al., Recent patents on experimental therapy for hepatitis C virus infection (1999-2002), Exp. Opin. Ther. Patents 2003 13(11):1707-1723
【非特許文献33】F. F. Poordad et al. Developments in Hepatitis C therapy during 2000-2002, Exp. Opin. Emerging Drugs 2003 8(1):9-25
【非特許文献34】M. P. Walker et al., Promising Candidates for the treatment of chronic hepatitis C, Exp. Opin. Investig. Drugs 2003 12(8):1269-1280
【非特許文献35】S.-L. Tan et al., Hepatitis C Therapeutics:Current Status and Emerging Strategies, Nature Rev. Drug Discov. 2002 1:867-881
【非特許文献36】R. De Francesco et al. Approaching a new era for hepatitis C virus therapy:inhibitors of the NS3-4A serine protease and the NS5B RNA-dependent RNA polymerase, Antiviral Res. 2003 58:1-16
【非特許文献37】Q. M. Wang et al. Hepatitis C virus encoded proteins:targets for antiviral therapy, Drugs of the Future 2000 25(9):933-8-944
【非特許文献38】J. A. Wu and Z. Hong, Targeting NS5B-Dependent RNA Polymerase for Anti-HCV Chemotherapy Cur. Drug Targ.-Inf. Dis. 2003 3:207-219
【非特許文献39】Lohman et al., Science 1999 285:110-113
【非特許文献40】Blight et al., Science 2000 290:1972-74
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、HCVレプリコンシャトルベクターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、HCV感染患者のサンプル由来のNS5B配列をシャトルベクター内にクローニングできるようNS5B遺伝子の5'および3'末端に固有の制限酵素部位が導入された、新規HCVレプリコンシャトルベクターの開発を特徴とし、そうして得たレプリコンは複製適合性およびHCVポリメラーゼインヒビターに対する感受性について評価される。個々のHCV感染患者は、典型的にNS5B RNAポリメラーゼの高いエラー率によって遺伝的に多様化したウイルス集団を含んでいるため、本発明のシャトルベクターを用いることによって、特定の患者由来のNS5B変異体の特徴および薬物処理に対するこれら変異体の感受性または耐性を明らかにできるだろう。
【0016】
従って本発明は、順番に、NS3タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列、NS4Aタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列、NS4Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列、NS5Aタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列、NS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列から5'側の1ヌクレオチドから20ヌクレオチドの間に配置されたAsiSIまたはSnaBIを認識する制限酵素配列、NS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列、およびNS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列から3'側の1ヌクレオチドから20ヌクレオチドの間に配置されたSacIIまたはRsrIIを認識する制限酵素配列を含む、HCVポリヌクレオチド配列を含むHCVレプリコンシャトルベクターを提供する。本発明の一つの態様において、HCVポリヌクレオチド配列は、HCVの遺伝子型1aまたは遺伝子型1bに由来する。本発明の別の態様において、NS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、NS5Bタンパク質が非機能的であるように変更されている。本発明のさらに別の態様において、HCVレプリコンシャトルベクターは、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、またはSEQ ID NO:8より選択される、HCVポリヌクレオチド配列を含む。
【0017】
本発明のさらなる態様は、以下の段階を含む、対象のHCV感染を制御するHCVポリメラーゼインヒビターの有効性を評価するための方法を提供する:HCVに感染した対象由来のサンプルを提供する段階、AsiSIまたはSnaBIを認識する制限酵素配列を含むセンス鎖プライマー、およびSacIIまたはRsrIIを認識する制限酵素配列を含むアンチセンス鎖プライマーを用いて、サンプル中に存在する複数のHCV疑似種から、NS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をPCR増幅する段階、該PCR増幅ポリヌクレオチド配列をHCVレプリコンシャトルベクター内にクローニングしてキメラHCVレプリコンプラスミドを生成する段階、該キメラHCVレプリコンプラスミドを直線化し、かつ該直線化したプラスミドをインビトロ転写に供してキメラHCVレプリコンRNAを生成する段階、ならびにHuh7細胞株を該HCVレプリコンRNAでトランスフェクションし、かつHCVポリメラーゼインヒビターの存在下または非存在下で該HCVレプリコンRNAの複製レベルを測定する段階。
【0018】
本発明のなおさらなる態様は、以下の段階を含む、対象のHCV感染を制御するHCVポリメラーゼインヒビターの有効性を評価するための方法を提供する:HCVに感染した対象由来のサンプルを提供する段階、AsiSIまたはSnaBIを認識する制限酵素配列を含むセンス鎖プライマー、およびSacIIまたはRsrIIを認識する制限酵素配列を含むアンチセンス鎖プライマーを用いて、サンプル中に存在する複数のHCV疑似種から、NS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をPCR増幅する段階、該PCR増幅ポリヌクレオチド配列をHCVレプリコンシャトルベクター内にクローニングしてキメラHCVレプリコンプラスミドを生成する段階、該プラスミドを細胞内に形質転換して複数の形質転換細胞のコロニーを生成する段階、該コロニーをプールし、かつプールしたコロニーからキメラHCVレプリコンプラスミドを単離する段階、該キメラHCVレプリコンプラスミドを直線化し、かつ該直線化したプラスミドをインビトロ転写に供してキメラHCVレプリコンRNAを生成する段階、ならびにHuh7細胞株を該HCVレプリコンRNAでトランスフェクションし、かつHCVポリメラーゼインヒビターの存在下または非存在下で該HCVレプリコンRNAの複製レベルを測定する段階。
【0019】
本発明の前記およびその他の利点および特徴、ならびに同利点および特徴を達成する手段は、以下の発明の詳細な説明を、例示的態様を説明する添付の実施例と結びつけながら、検討することにより容易に明らかになるだろう。
【0020】
本発明(1)は、以下をこの順番で含む、HCVポリヌクレオチド配列を含むHCVレプリコンシャトルベクターである:
(a)NS3タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列;
(b)NS4Aタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列;
(c)NS4Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列;
(d)NS5Aタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列;
(e)NS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列から5'側の、1ヌクレオチドから20ヌクレオチドの間に配置されたAsiSIまたはSnaBIを認識する制限酵素配列;
(f)NS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列;および
(g)NS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列から3'側の、1ヌクレオチドから20ヌクレオチドの間に配置されたSacIIまたはRsrIIを認識する制限酵素配列。
本発明(2)は、HCVポリヌクレオチド配列がHCV遺伝子型1aまたは遺伝子型1bに由来する、本発明(1)のHCVレプリコンシャトルベクターである。
本発明(3)は、NS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列が、NS5Bタンパク質が非機能的であるように変更されている、本発明(1)のHCVレプリコンシャトルベクターである。
本発明(4)は、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7またはSEQ ID NO:8より選択される、HCVポリヌクレオチド配列を含むHCVレプリコンシャトルベクターである。
本発明(5)は、以下の段階を含む、対象のHCV感染を制御するHCVポリメラーゼインヒビターの有効性を評価するための方法である:
(a)HCVに感染した対象由来のサンプルを提供する段階;
(b)AsiSIまたはSnaBIを認識する制限酵素配列を含むセンス鎖プライマー、およびSacIIまたはRsrIIを認識する制限酵素配列を含むアンチセンス鎖プライマーを用いて、サンプル中に存在する複数のHCV疑似種から、NS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をPCR増幅する段階;
(c)該PCR増幅ポリヌクレオチド配列をHCVレプリコンシャトルベクター内にクローニングしてキメラHCVレプリコンプラスミドを生成する段階;
(d)該キメラHCVレプリコンプラスミドを直線化し、かつ該直線化したプラスミドをインビトロ転写に供してキメラHCVレプリコンRNAを生成する段階;ならびに
(e)Huh7細胞株を該HCVレプリコンRNAでトランスフェクションし、かつHCVポリメラーゼインヒビターの存在下または非存在下で該HCVレプリコンRNAの複製レベルを測定する段階。
本発明(6)は、段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが本発明(1)のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、本発明(5)の方法である。
本発明(7)は、段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが本発明(2)のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、本発明(5)の方法である。
本発明(8)は、段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが本発明(3)のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、本発明(5)の方法である。
本発明(9)は、段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが本発明(4)のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、本発明(5)の方法である。
本発明(10)は、以下の段階を含む、対象のHCV感染を制御するHCVポリメラーゼインヒビターの有効性を評価するための方法である:
(a)HCVに感染した対象由来のサンプルを提供する段階;
(b)SEQ ID NO:9からSEQ ID NO:19より選択されるヌクレオチド配列を含むセンス鎖プライマー、およびSEQ ID NO:20からSEQ ID NO:33より選択されるヌクレオチドを含むアンチセンス鎖プライマーを用いて、サンプル中に存在する複数のHCV疑似種から、NS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をPCR増幅する段階;
(c)該PCR増幅ポリヌクレオチド配列をHCVレプリコンシャトルベクター内にクローニングしてキメラHCVレプリコンプラスミドを生成する段階;
(d)該キメラHCVレプリコンプラスミドを直線化し、かつ該直線化したプラスミドをインビトロ転写に供してキメラHCVレプリコンRNAを生成する段階;ならびに
(e)Huh7細胞株を該HCVレプリコンRNAでトランスフェクションし、かつHCVポリメラーゼインヒビターの存在下または非存在下で該HCVレプリコンRNAの複製レベルを測定する段階。
本発明(11)は、段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが本発明(1)のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、本発明(10)の方法である。
本発明(12)は、段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが本発明(2)のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、本発明(10)の方法である。
本発明(13)は、段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが本発明(3)のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、本発明(10)の方法である。
本発明(14)は、段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが本発明(4)のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、本発明(10)の方法である。
本発明(15)は、以下の段階を含む、対象のHCV感染を制御するHCVポリメラーゼインヒビターの有効性を評価するための方法である:
(a)HCVに感染した対象由来のサンプルを提供する段階;
(b)AsiSIまたはSnaBIを認識する制限酵素配列を含むセンス鎖プライマー、およびSacIIまたはRsrIIを認識する制限酵素配列を含むアンチセンス鎖プライマーを用いて、サンプル中に存在する複数のHCV疑似種から、NS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をPCR増幅する段階;
(c)該PCR増幅ポリヌクレオチド配列をHCVレプリコンシャトルベクター内にクローニングしてキメラHCVレプリコンプラスミドを生成する段階;
(d)該プラスミドを細胞内に形質転換して複数の形質転換細胞のコロニーを生成する段階;
(e)該コロニーをプールし、かつプールしたコロニーからキメラHCVレプリコンプラスミドを単離する段階;
(f)段階(e)の該キメラHCVレプリコンプラスミドを直線化し、かつ直線化したプラスミドをインビトロ転写に供してキメラHCVレプリコンRNAを生成する段階;ならびに
(g)Huh7細胞株を該HCVレプリコンRNAでトランスフェクションし、かつHCVポリメラーゼインヒビターの存在下または非存在下で該HCVレプリコンRNAの複製レベルを測定する段階。
本発明(16)は、段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが本発明(1)のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、本発明(15)の方法である。
本発明(17)は、段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが本発明(2)のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、本発明(15)の方法である。
本発明(18)は、段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが本発明(3)のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、本発明(15)の方法である。
本発明(19)は、段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが本発明(4)のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、本発明(15)の方法である。
本発明(20)は、以下の段階を含む、対象のHCV感染を制御するHCVポリメラーゼインヒビターの有効性を評価する方法である:
(a)HCVに感染した対象由来のサンプルを提供する段階;
(b)SEQ ID NO:9からSEQ ID NO:19より選択されるヌクレオチド配列を含むセンス鎖プライマー、およびSEQ ID NO:20からSEQ ID NO:33より選択されるヌクレオチドを含むアンチセンス鎖プライマーを用いて、サンプル中に存在する複数のHCV疑似種から、NS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をPCR増幅する段階;
(c)該PCR増幅ポリヌクレオチド配列をHCVレプリコンシャトルベクター内にクローニングしてキメラHCVレプリコンプラスミドを生成する段階;
(d)該プラスミドを細胞に形質変換して複数の形質変換細胞のコロニーを生成する段階;
(e)該コロニーをプールし、かつプールしたコロニーからキメラHCVレプリコンプラスミドを単離する段階;
(f)段階(e)の該キメラHCVレプリコンプラスミドを直線化し、かつ直線化したプラスミドをインビトロ転写に供してキメラHCVレプリコンRNAを生成する段階;ならびに
(g)Huh7細胞株を該HCVレプリコンRNAでトランスフェクションし、かつHCVポリメラーゼインヒビターの存在下または非存在下で該HCVレプリコンRNAの複製レベルを測定する段階。
本発明(21)は、段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが本発明(1)のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、本発明(20)の方法である。
本発明(22)は、段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが本発明(2)のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、本発明(20)の方法である。
本発明(23)は、段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが本発明(3)のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、本発明(20)の方法である。
本発明(24)は、段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが本発明(4)のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、本発明(20)の方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、HCVレプリコンシャトルベクターが提供された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
定義
用語「HCVレプリコン」は、それ自体のコピーの生成を管理できるC型肝炎ウイルス由来の核酸を指す。本明細書で使用する場合、用語「レプリコン」は、RNAに加えてDNAも、さらにそのハイブリッドも含む。例えばHCVゲノムの二重鎖DNA型を用いて、HCVレプリコンを構成する単鎖RNA転写物を生成できる。HCVレプリコンは、完全長HCVゲノムまたは「サブゲノムレプリコン」とも呼ばれるHCVのサブゲノムコンストラクトを含み得る。例えば、本明細書に記載のHCVのサブゲノムレプリコンは、ウイルスの非構造タンパク質遺伝子の大部分を含むが、しかし構造タンパク質をコードする遺伝子の大部分を欠いている。サブゲノムレプリコンは、ウイルスサブゲノムの複製、サブゲノムレプリコンの複製のために必要なウイルス遺伝子の全てを、ウイルス粒子の生成なしに発現を管理することができる。
【0023】
基本のHCVレプリコンは、HCV5'非翻訳(UTR)領域、HCV NS3-NS5Bポリタンパク質コード領域およびHCV3'-UTRを含む、サブゲノム構築体である。HCV NS2、構造的HCVタンパク質および非HCV配列を提供するような、その他の核酸領域が存在してもよい。
【0024】
HCV5'-UTR領域は、タンパク質翻訳のための内部リボソーム進入部位(IRES)および複製に必要なエレメントを提供する。HCV5'-UTR領域は、HCVコアコード領域内に約36ヌクレオチド伸長している天然のHCV5'-UTR、およびその機能的誘導体を含む。5'-UTR領域は、選択したタンパク質、レポーター、タンパク質、またはHCVポリタンパク質をコードする配列より下流の部位といった様々な位置に存在し得る。
【0025】
HCV5'-UTR-PC領域に加えて、レプリコン内には非HCV IRESエレメントも存在し得る。非HCV IRESエレメントは、HCVポリタンパク質をコードする領域のすぐ上流を含め、様々な位置に存在し得る。用いることができる非HCV IRESエレメントの例は、EMCV IRES、ポリオウイルスIRES、およびウシウイルス性下痢ウイルスIRESである。
【0026】
HCV3'-UTRは、HCVの複製を補助する。HCV3'-UTRは、天然のHCV3'-UTRおよびその機能的誘導体を含む。天然の3'-UTRは、ポリU区画および約100ヌクレオチドの追加領域を含む。
【0027】
NS3-NS5Bポリタンパク質をコードする領域は、細胞内において様々なタンパク質にプロセシングされ得るポリタンパク質を提供する。レプリコンの一部となり得る適したNS3-NS5Bポリタンパク質配列には、NS3-NS5Bをプロセシングして機能的複製機構を生成する、様々なHCV株に存在する配列およびその機能的等価物が含まれる。適切なプロセシングは、例えば、NS5B RNA依存性RNAポリメラーゼをアッセイすることによって測定できる。
【0028】
RNAポリメラーゼ活性を提供するNS5Bタンパク質の能力は、当技術分野周知の技術を用いて測定できる。NS5Bタンパク質は、そのRNAポリメラーゼ活性が実質的に測定不可能である場合には「非機能的」とされ、これは、例えばヌクレオチド置換、挿入、または欠失の導入によりNS5Bタンパク質のポリヌクレオチド配列を「変更すること」によって達成できる。
【0029】
「ベクター」は、別のDNAセグメントの一部を結合してもよく、それによって結合したDNAセグメントの複製、発現、または組込みが可能となる、プラスミド、ファージ、またはコスミドのようなDNAの一部である。「シャトルベクター」は、DNAセグメントを、ベクター内の特定の制限酵素部位に挿入、または同部位から切り出すことができるベクターを指す。シャトルベクター内に挿入されたDNAセグメントは、一般的に、関心対象のポリペプチドまたはRNAをコードしており、かつ制限酵素部位は、転写および翻訳のためにDNAセグメントが適切なリーディングフレーム内に確実に挿入されるように設計される。
【0030】
様々なベクターを用いて、核酸分子を発現させることができる。このようなベクターには、染色体、エピソーム、ならびに例えば細菌性プラスミド由来、バクテリオファージ由来、酵母エピソーム由来、酵母人工染色体を含む酵母染色体エレメント由来、バキュロウイルス、SV40のようなパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、ヘルペスウイルスおよびレトロウイルスのようなウイルス由来のベクターのようなウイルス由来ベクターが含まれる。ベクターはまた、プラスミドとバクテリオファージの遺伝的エレメント由来のようなこれら供給源の組み合わせ、例えばコスミッドおよびファージミドに由来し得る。原核生物宿主および真核生物宿主の適切なクローニングおよび発現ベクターは、Sambrookら(1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual. 2nd edn. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, USAに記載されている。
【0031】
適切な核酸分子を含むベクターは、公知の技術を用いて継代または発現のために適切な宿主細胞内に導入され得る。宿主細胞には、大腸菌(E. coli)、放線菌類(Streptomyces)およびネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)を含むがこれらに限定されない細菌細胞、酵母、ショウジョウバエ(Drosophila)のような昆虫細胞、Huh-7、HeLa、COS、HEK 293、MT-2T、CEM-SSおよびCHO細胞のような動物細胞、ならびに植物細胞を含むがこれらに限定されない真核生物細胞が含まれる。
【0032】
ベクターは、一般的に、組換えベクター構築体を含む細胞の部分集団を選択可能にする、選択可能マーカーを含む。マーカーは、本明細書に記載の核酸分子を含む同一ベクター内に含まれ得るか、または別のベクター上であってもよい。マーカーには、原核生物宿主細胞についてはテトラサイクリン-もしくはアンピシリン-耐性遺伝子、および真核生物宿主細胞についてはジヒドロ葉酸還元酵素もしくはネオマイシン耐性が含まれる。しかしながら、表現形質について選択性を与えるマーカーはいずれも有効であろう。
【0033】
「ポリヌクレオチド」または「核酸分子」は、一般的に任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを指し、それらは未修飾のRNAもしくはDNA、または修飾されたRNAもしくはDNAでよい。「ポリヌクレオチド」には、単鎖および二重鎖DNA、単鎖と二重鎖領域の混合物であるDNA、単鎖および二重鎖のRNA、ならびに単鎖と二重鎖領域の混合物であるRNA、単鎖もしくは、より典型的には二重鎖、または単鎖と二重鎖領域の混合物であり得るDNAとRNAを含むハイブリッド分子が含まれるが、これらに限定されない。さらに「ポリヌクレオチド」は、RNAもしくはDNA、またはRNAとDNAの両方を含む三重鎖領域も指す。「ポリヌクレオチド」はまた、オリゴヌクレオチドと呼ばれることが多い比較的短いポリヌクレオチドも含む。
【0034】
さらに用語「DNA分子」は、分子の一次および二次構造だけを指し、特定の三次構造に限定されない。従って、本用語は、とりわけ直線状のDNA分子(例えば制限断片)、ウイルス、プラスミドおよび染色体における二重鎖DNAを含む。特定の二重鎖DNA分子の構造を論じる場合、本明細書において配列は、DNAの非転写鎖に沿って、5'から3'の方向の配列だけ(即ちmRNAと相同的な配列を有する鎖)を示すような慣例に従って記載してもよい。
【0035】
「RNA分子」は、単鎖形または二重鎖螺旋形のいずれかのリボヌクレオチドの高分子形態を指す。特定のRNA分子の構造を論じる場合、配列は、5'から3'方向に配列を示すような慣例に従って、記載してもよい。
【0036】
用語「制限酵素配列」は、それぞれが特定のヌクレオチド配列で、またはその近傍で二重鎖DNAを切断する細菌性酵素によって認識されかつ切断される、特異的な二重鎖DNA配列を指す。制限酵素「AsiSI」は、配列

を認識し、認識配列内の残基T(▼▲で示している)の後ろで二重鎖DNAを切断する。制限酵素「SnaBI」は、配列

を認識し、印を付けたヌクレオチド位置で切断する。
【0037】
同様に「SacII」は、

を認識して切断し、かつ「RsrII」は、

または

のいずれかを認識して切断する。
【0038】
用語「プライマー」は、本明細書で用いる場合、RNAまたはDNAのいずれか、単鎖-単鎖-鎖または二重鎖のいずれか、生物系に由来するか、制限酵素消化によって生成されたか、または合成的に生成されたかのいずれかであり、適切な環境に置かれた場合、鋳型依存的な核酸合成系の開始因子として機能的に作用することができるオリゴヌクレオチドを指す。適切な鋳型核酸、核酸の適したヌクレオチド三リン酸前駆体、ポリメラーゼ酵素、適した補助因子、および適した温度やpHといった条件が揃えば、プライマーは、ポリメラーゼの働きまたは類似の活性によって、ヌクレオチドを付加することによりその3'末端で伸長し、プライマー伸長産物を生じ得る。プライマーは、適用の特定の条件および必要に応じて様々な長さをとることができる。例えば、PCR反応では、プライマーは典型的に15〜25ヌクレオチドまたはそれ以上の長さである。プライマーは、所望の伸長産物の合成を刺激するのに十分な程、即ちプライマーの3'ヒドロキシル部分を、ポリメラーゼまたは類似の酵素による合成の開始に用いるのに適切な近さに提供するのに十分な様式で所望の鋳型鎖とアニーリングするのに十分な程、所望の鋳型に対し相補的でなければならない。プライマー配列は、所望の鋳型と正確に相補的である必要はない。例えば、非相補的ヌクレオチド配列(例えば制限酵素認識配列)を、それ以外は相補的であるプライマーの5'末端に結合してもよい。または、プライマー配列が所望の鋳型鎖の配列に対し十分な相補性を有し、伸長産物の合成のための鋳型-プライマー複合体を機能的に提供する条件で、非相補的塩基をオリゴヌクレオチドプライマー配列内に散在させてもよい。
【0039】
用語「キメラ」は、本明細書で用いる場合、共に融合またはスプライシングしている2つまたはそれ以上の異なる供給源由来のDNAより得られたDNA分子を意味する。
【0040】
本明細書で用いる場合、用語「疑似種」は、優勢HCVゲノム配列(即ち遺伝子型)の微小変異体の集合体を意味し、該微小変異体は、HCV複製中の高い突然変異率の結果、単一感染対象中において、または単一細胞クローンにおいてさえ形成される。
【0041】
本明細書で使用する場合、用語「対象」は、脊椎動物、特に哺乳動物種のメンバーを指し、齧歯類、ウサギ、トガリネズミ、および霊長類が含まれ、また後者はヒトを含むが、これらに限定されない。
【0042】
用語「サンプル」は、対象から単離した組織または液体のサンプルを指し、例えば血漿、血清、髄液、リンパ液、皮膚、呼吸器、小腸および尿生殖器管の外切片、涙、唾液、乳汁、血液細胞、腫瘍、臓器、およびインビトロ細胞培養成分(培養細胞を増殖させて生じた馴化培地、推定ウイルス感染細胞、組換え細胞および細胞成分を含むが、これに限定されない)のサンプルも含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
細胞は、外因性もしくは異種DNAまたはRNAが細胞の内側に導入された時、そのようなDNAまたはRNAによって「形質転換」または「トランスフェクション」される。形質転換もしくはトランスフェクションするDNAまたはRNAは、細胞のゲノムを作る染色体DNAに組み込まれても(共有結合しても)、組み込まれなくてもよい。例えば、原核生物、酵母お、よび哺乳動物において、形質転換DNAはプラスミドのようなエピソームエレメント上に維持され得る。真核生物細胞に関しては、安定に形質転換した細胞とは、染色体複製を通してそれが嬢細胞に遺伝するよう形質転換DNAが染色体に組み込まれた細胞である。この安定性は、形質導入DNAを含む嬢細胞集団を含む細胞株またはクローンを樹立する真核生物細胞の能力によって実証される。本発明に記載するような、哺乳動物細胞を形質転換するHCVレプリコンの場合、RNA分子、例えばHCV RNA分子は、半自律的に複製する能力を有する。HCVレプリコンを有するHuh-7細胞は、レプリコン上に存在する選択マーカーまたはレポーター遺伝子のいずれかの存在によって検出される。
【0044】
「クローン」は、一般的に有糸分裂のプロセスによって、単一細胞または共通の祖先から派生した細胞の集団を指す。
【実施例】
【0045】
以下の調製物および実施例は、当業者が本発明をより明確に理解でき、また実施できるようにするために記載される。それらは、本発明の範囲を制限するものと考えてはならず、その例示および代表例に過ぎない。
【0046】
実施例1
プラスミドの構築
図1に示す、一過性のHCV遺伝子型1b Con1レプリコンベクターrep PI-luc/ETは、R. Bartenschlagerより得たものであり、5'-UTRから、NS3〜NS5Bタンパク質、および3'-UTRの、GenBankアクセッション番号AJ238799に開示されているHCVポリヌクレオチド配列を含んでいる。それはまたポリオウイルス内部リボソーム進入部位(IRES)も含み、これはホタルルシフェラーゼ遺伝子の翻訳を制御する。ホタルルシフェラーゼ遺伝子の下流で、脳心筋炎ウイルス(EMCV)のIRESは、HCV非構造遺伝子(NS3、NS4A、NS4B、NS5A、およびNS5B)の翻訳を制御する。
【0047】
一過性レプリコンrepPI-luc/ETベクターに変更を加え、pBR322骨格をpUC18骨格と交換して、レプリコンpPI-luc/ET/SC(SEQ ID NO:1)を生成した。試験アッセイでは、pPI-luc/ET/SCは、rep PI-luc/ETと同様のレベルで複製した(表1を参照されたい)。
【0048】
一過性のHCV遺伝子型1a H77レプリコンベクターpSS-1は、pUC18骨格、5'-UTR、ポリオウイルスIRES、ホタルルシフェラーゼ、EMCV IRES、およびNS3遺伝子(遺伝子型1b-Con1)の5'末端から75アミノ酸由来のヌクレオチド配列を含むpPI-luc/ET/SC由来のSpe1-BsrGI断片に、NS3遺伝子から3'-UTRまでの残りに部分、およびNS5A遺伝子のS2204I適応変異(Blight et al., 2000)も含むHCV遺伝子型1a H77(Yanagi et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 1997 94:8738-8743;GenBankアクセッション番号AF011751)由来のBsrGI-SpeI断片をライゲーションすることによって生成した。pSS-1の全ヌクレオチド配列をSEQ ID NO:2に示す。
【0049】
部位特異的突然変異の目的のために、中間ベクター(pSLP)を作製し、これはpBSKII+ベクターにサブクローニングされたNS5Aの3'末端領域、NS5Bコード領域、および3'-UTR(XhoI-SpeI断片)を含む、pPI-luc/ET/SCまたはpSS-1のいずれかの断片を含む。Quick Change部位特異的突然変異キットを、製造元の指示書(Stratagene, La Jolla, CA, USA)に従って使用し、突然変異を中間ベクターpSLPの中に導入し、二重鎖DNA配列決定により確認した。本明細書に記載する部位特異的突然変異体を中間ベクターpSLP内に作製し、次に突然変異断片XhoI-SpeIをレプリコンベクター(pPI-luc/ET/SCまたはpSS-1)にサブクローニングした。
【0050】
表現型アッセイに用いるHCVレプリコンシャトルベクターを作製するために、中間ベクターpSLPを用いて、NS5B遺伝子の開始の5'側1〜20ヌクレオチドの間のNS5A遺伝子の3'末端、およびNS5B遺伝子の末端3'側1〜20ヌクレオチドの間の3'-UTRに、酵素制限部位を導入した。両位置の制限部位の複数の組み合わせをpSLPベクター内に作製し、次にレプリコンシャトルベクターにサブクローニングした。pPI-luc/ET/SCベクターを鋳型として利用し、遺伝子型1bシャトルベクター、pSC_1b_NS5B_5'AsiSI_3'RsrII(SEQ ID NO:3)、およびpSC_1b_NS5B_5'AsiSI_3'SacII(SEQ ID NO:4)を合成した。pSS-1を、鋳型ベクターとして使用して、遺伝子型1aシャトルベクター pSS-1_1a_NS5B_5'AsiSI_3'RsrII(SEQ ID NO:7)を合成した。
【0051】
pSC_1b_NS5B_5'AsiSI_3'SacIIを用いて、NS5B遺伝子の、2カ所あるBglII部位の間に欠失を作製し、1.044kbの断片を除いて、レプリコンシャトルベクターpSC_1b_delNS5B_5'AsiSI_3'SacII(SEQ ID NO:5)を生成した。機能的NS5Bタンパク質を欠くため、欠失レプリコンの複製能力は無効になった(表1を参照されたい)。
【0052】
pSC_1b_NS5B_5'AsiSI_3'RsrIIおよびpSS-1_1a_NS5B_5'AsiSI_3'RsrII内のNS5Bヌクレオチド配列が、lacZプロモータおよびプラスミドpAmCyan(Clontech Laboratories Inc.)由来のアネモニア・マジャノ(Anemonia majano)シアン蛍光タンパク質(AmCyan)遺伝子を含む約1.0kbのヌクレオチド配列断片と交換され、シャトルベクターpSC_1b_5'AsiSI_lacZAmC_3'RsrII(SEQ ID NO:6)およびpSS-1_1a_5'AsiSI_lacZAmC_3'RsrII(SEQ ID NO:8)をそれぞれ生成する、非自己複製HCVレプリコンシャトルベクターもまた構築された。
【0053】
これらシャトルベクターのいくつかの複製能力を、実施例3に記載の表現型アッセイを用いて評価し、その結果を表1に示す。
【0054】
実施例2
感染患者から増幅したNS5B PCRサンプルのpSC_1b_NS5B_5'AsiSI_3'SacIIおよびpSC_1b_delNS5B_5'AsiSI_3'SacIIへのクローニング
図2に患者由来のNS5B PCRサンプルをレプリコンシャトルベクターにクローニングし、得られたレプリコンを試験する実験計画の代表例を図示す。簡単に説明すると、NS5Bタンパク質をコードするDNA配列を、縮重プライマーまたは患者特異的プライマーのいずれかを用いて、HCV感染患者から得た血漿より直接、または血漿から増幅したDNAよりPCR生成した。ここで、センス鎖プライマーはAsiSI制限部位配列を含み、かつアンチセンス鎖プライマーはSacII制限部位配列を含む。用いたセンス鎖AsiSIプライマーは、以下の配列を含む。

【0055】
用いたアンチセンス鎖SacIIプライマーは、以下の配列を含む。

【0056】
Accuprime Pfx(KODポリメラーゼ、Invitrogen)を用いて、高い忠実度および高い収率を確保した。患者サンプルおよびプライマーの組み合わせに応じて、60〜68℃の範囲のアニーリング温度を用いた。次にPCR増幅した患者のNS5B DNAをQiagen PCR精製カラムを用いて精製し、制限エンドヌクレアーゼSgfI(AsiSIのアイソシゾマー)およびSacII(Promega)で二重消化し、QiagenのGel Extractionキットを用いてゲル精製した。
【0057】
シャトルレプリコンベクターpSC_1b_NS5B_5'AsiSI_3'SacIIまたは欠失シャトルレプリコンベクターpSC_1b_delNS5B_5'AsiSI_3'SacIIは、制限エンドヌクレアーゼSgfIおよびSacII(Promega)を用いた二重消化によって調製した。ベクターは、1%アガロース電気泳動によって消化されたインサートから分離され、QiagenのGel Extractionキットを用いてゲル精製された。精製したベクターは、次にShrimp Alkaline Phosphatase(Roche Applied Science)で処理された。
【0058】
シャトルベクター25ngを、消化した患者アンプリコンと、T4DNAリガーゼ(Roche Applied Science)を用いて、一晩、14〜16℃でライゲーションした。1:2〜1:4のベクターとインサートの比率をルーチンに使用した。一晩ライゲーションさせた後、反応物5μlを100μlのDH5αMaximum Efficiency Cell(Invitrogen)に形質転換し、37℃で1時間の表現型発現の後に平板培養した。20%を超える形質転換混合物を平板培養したところ、翌日には十分な数のコロニーが得られた。
【0059】
96個のクローンを拾い上げ、50μg/mlのアンピシリンを追加したTerrific Broth(TB)200μlに接種した。この「ストック」96ウェルプレートを37℃で一晩インキュベーションした。翌日、このプレートを用いてレプリカプレートを調製した。48ピンスタンプを用いて、100μg/mlのカルベニシリンを追加した2枚のLBプレートにレプリカ平板培養した。96個の培養物200μlをまた、50μg/mlのアンピシリンを追加した1.5mlのTB培地に移し、DNAの調製に用いた。37℃で一晩インキュベーションした後、レプリカプレートを6mlのLBに広げ、96クローンの異種プールを得、次いでこれを用いてDNAのミニプレップを行った。次にこの患者のDNAプールを、次のレプリコン表現型アッセイに用いた。37℃で一晩振盪したのち、96個のTB培養物1.5mlを遠心沈殿させ、デカンテーションして、Qiagen's Qiaprep 96 Turbo Mini-DNAキットを用いてプラスミドDNAを抽出した。レプリコン表現型アッセイに用いた複合性96プールに相当する、これら個々の分子クローンを配列決定反応に用いた。
【0060】
異種クローンプールプラスミドDNAを配列分析にかけ、インビトロ転写反応前に、患者サンプルの同一性を確認し、かつ潜在的汚染DNAについてスクリーニングした。その後の分析のために個々の分子クローンを配列分析にかけ、表現型レプリコンアッセイの結果と患者NS5B配列の間の関係について洞察しようとした。プラスミドDNA 1.5μgと配列決定用プライマー8pmoleをルーチンに用いた。
【0061】
実施例3
感染患者から増幅したNS5B PCRサンプルのpSC_1b_NS5B_5'AsiSI_3'RsrII、pSC_1b_5'AsiSI_lacZAmC_3'RsrII、pSS_1_1a_NS5B_5'AsiSI_3'RsrII、およびpSS-1_1a_5'AsiSI_lacZAmC_3'RsrIIへのクローニング
患者NS5BのPCR増幅に、RsrII制限部位を含む以下のアンチセンス鎖プライマーを用いたことを除き、実施例2に記載の手順を用いて、NS5B遺伝子の3'末端にRsrIIを含むベクターにNS5B PCRサンプルをクローニングした。

【0062】
実施例4
レプリコン表現型アッセイ
A.インビトロ転写RNAの調製
DNAプラスミド5μgを、ScaI制限酵素(Roche)により直線化した。37℃で一晩消化した後、DNAをQiagen PCR精製キットを用いて精製した。直線化したDNA 1μgを、製造元(Ambion)のプロトコール通りにT7Megaスクリプトキットを用いたインビトロ転写に使用した。37℃で2時間インキュベーションした後、DNase処理を37℃で30分間実施し、DNA鋳型を除去した。次にインビトロ転写されたRNAを、NucAway Spinカラムを、製造元(Ambion)のプロトコール通りに用いて精製した。
【0063】
B.肝細胞株
治癒した肝細胞株Huh7を、5%のCO2を含む湿潤雰囲気中37℃において、Glutamax(商標)および100mg/mlのピルビン酸ナトリウム(カタログ番号10569-010)を追加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で培養した。培地にさらに10%(v/v)のFBS(カタログ番号16000-036)および1%(v/v)のペニシリン/ストレプトマイシン(カタログ番号15140-122)を追加した。全ての試薬はInvitrogen/Gibcoより得た。
【0064】
C.一過性レプリコンの複製レベルの決定
4百万個の治癒したHuh7細胞を、エレクトロポレーションを用いて、インビトロ転写したRNA 5μgでトランスフェクションした。次に細胞を5%のFBSを含むDMEM 7.2mlに再懸濁させ、96ウェルプレートに50000細胞/ウェルで平板培養した(90μl最終容積)。トランスフェクションから24時間後に3倍希釈して最終DMSO濃度が1%になるようにインヒビターを加え、インヒビター追加後72時間目に、Luciferase Assayシステム(Promega、カタログ番号E1501)を用いてホタルルシフェラーゼレポーターシグナルを読みとった。IC50値は、ホタルルシフェラーゼレポーターのレベルが、化合物を添加しない場合のホタルルシフェラーゼシグナルのレベルに比べて50%減少する時のインヒビター濃度として評価した。化合物、2'-C-メチル-シチジンが、pSS-1_1a_NS5B_5'AsiSI_3'RsrIIのレプリコンおよび患者由来のNS5B配列を有するレプリコンに及ぼす阻害作用を試験した研究の結果を表2に示す。
【0065】
遺伝的に多様化した、治療を受けていない臨床分離株に対するHCVポリメラーゼインヒビターの感受性を試験するために、分離株由来のNS5Bコード領域を増幅し、レプリコンシャトルベクターにクローニングした(遺伝子型1a由来の臨床分離株をpSS-1_1a_5'AsiSI_lacZAmC_3'RsrIIへクローニングし、かつ遺伝子型1b由来の臨床分離株をpSC_1b_5'AsiSI_lacZAmC_3'RsrIIへクローニングした)。各臨床分離株について、96個の分子クローンをプールした。プールしたDNAのインビトロ転写を実施した。次に、インビトロ転写されたRNAを、ポリメラーゼインヒビターの非存在下および存在下で、上記のようにHuh-7細胞にエレクトロポレーションしてIC50を決定した。図3は、NS5B臨床分離株についてHCVポリメラーゼインヒビター、チオフェン-2-カルボン酸、およびベンゾチアジアジンが示した様々な効力を、参照レプリコン、Con1(遺伝子型1b)、およびH77(遺伝子型1a)と比較して示している。
【0066】
D.NS5B配列決定
患者由来のNS5Bの配列が一過性アッセイ中に複製できるかを明らかにするため、一過性トランスフェクション後3日目にRNeasy Qiagenキットを用いて全細胞RNAを単離した。NS5B領域においてRT-PCRおよび直接配列決定を実施した。次にトランスフェクションしたHuh7細胞由来のNS5Bヌクレオチド配列を、96クローンのプールから得たNS5Bヌクレオチド配列、および患者サンプル中のHCVヌクレオチドを直接配列決定して得た配列と比較した。
【0067】
【表1】

a RLUは複製の72時間後に観察されたホタルルシフェラーゼシグナルのレベルを表す。各列の数値は、独立した実験の異なるデータを表している。
b 複製レベルは、野生形ベクター(制限部位が導入されていない)と比較している。
【0068】
【表2】

a シャトルベクターpSS-1_1a_NS5B_5'AsiSI_3'RsrIIに挿入された遺伝子型1a臨床分離株由来のNS5Bを含む一過性HCVレプリコンのRNA複製の2'-C-メチル-シチジンによる阻害;少なくともn=3の実験から決定した、平均のIC50値および平均値の標準誤差。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】HCVレプリコンシャトルベクター、および患者由来のNS5B配列をベクターにクローニングできるようにするために導入された制限酵素部位(AsiSIおよびRsrII制限部位として示されている)の位置を示す概略図である。
【図2】患者由来のNS5B PCRサンプルをレプリコンシャトルベクター内にクローニングし、得られたレプリコンを試験する実験計画を表す図である。
【図3】遺伝的に多様化し、かつ未治療の臨床分離株に見られる、HCVポリメラーゼインヒビター、チオフェン-2-カルボン酸、およびベンゾチジアジンに対する参照レプリコンの感受性と比較した場合の、感受性の違いを示す図である(遺伝子型1bに対するCon 1および遺伝子型1aに対するH77)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下をこの順番で含む、HCVポリヌクレオチド配列を含むHCVレプリコンシャトルベクター:
(a)NS3タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列;
(b)NS4Aタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列;
(c)NS4Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列;
(d)NS5Aタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列;
(e)NS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列から5'側の、1ヌクレオチドから20ヌクレオチドの間に配置されたAsiSIまたはSnaBIを認識する制限酵素配列;
(f)NS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列;および
(g)NS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列から3'側の、1ヌクレオチドから20ヌクレオチドの間に配置されたSacIIまたはRsrIIを認識する制限酵素配列。
【請求項2】
HCVポリヌクレオチド配列がHCV遺伝子型1aまたは遺伝子型1bに由来する、請求項1記載のHCVレプリコンシャトルベクター。
【請求項3】
NS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列が、NS5Bタンパク質が非機能的であるように変更されている、請求項1記載のHCVレプリコンシャトルベクター。
【請求項4】
SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7またはSEQ ID NO:8より選択される、HCVポリヌクレオチド配列を含むHCVレプリコンシャトルベクター。
【請求項5】
以下の段階を含む、対象のHCV感染を制御するHCVポリメラーゼインヒビターの有効性を評価するための方法:
(a)HCVに感染した対象由来のサンプルを提供する段階;
(b)AsiSIまたはSnaBIを認識する制限酵素配列を含むセンス鎖プライマー、およびSacIIまたはRsrIIを認識する制限酵素配列を含むアンチセンス鎖プライマーを用いて、サンプル中に存在する複数のHCV疑似種から、NS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をPCR増幅する段階;
(c)該PCR増幅ポリヌクレオチド配列をHCVレプリコンシャトルベクター内にクローニングしてキメラHCVレプリコンプラスミドを生成する段階;
(d)該キメラHCVレプリコンプラスミドを直線化し、かつ該直線化したプラスミドをインビトロ転写に供してキメラHCVレプリコンRNAを生成する段階;ならびに
(e)Huh7細胞株を該HCVレプリコンRNAでトランスフェクションし、かつHCVポリメラーゼインヒビターの存在下または非存在下で該HCVレプリコンRNAの複製レベルを測定する段階。
【請求項6】
段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが請求項1記載のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが請求項2記載のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが請求項3記載のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、請求項5記載の方法。
【請求項9】
段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが請求項4記載のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、請求項5記載の方法。
【請求項10】
以下の段階を含む、対象のHCV感染を制御するHCVポリメラーゼインヒビターの有効性を評価するための方法:
(a)HCVに感染した対象由来のサンプルを提供する段階;
(b)SEQ ID NO:9からSEQ ID NO:19より選択されるヌクレオチド配列を含むセンス鎖プライマー、およびSEQ ID NO:20からSEQ ID NO:33より選択されるヌクレオチドを含むアンチセンス鎖プライマーを用いて、サンプル中に存在する複数のHCV疑似種から、NS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をPCR増幅する段階;
(c)該PCR増幅ポリヌクレオチド配列をHCVレプリコンシャトルベクター内にクローニングしてキメラHCVレプリコンプラスミドを生成する段階;
(d)該キメラHCVレプリコンプラスミドを直線化し、かつ該直線化したプラスミドをインビトロ転写に供してキメラHCVレプリコンRNAを生成する段階;ならびに
(e)Huh7細胞株を該HCVレプリコンRNAでトランスフェクションし、かつHCVポリメラーゼインヒビターの存在下または非存在下で該HCVレプリコンRNAの複製レベルを測定する段階。
【請求項11】
段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが請求項1記載のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが請求項2記載のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが請求項3記載のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが請求項4記載のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、請求項10記載の方法。
【請求項15】
以下の段階を含む、対象のHCV感染を制御するHCVポリメラーゼインヒビターの有効性を評価するための方法:
(a)HCVに感染した対象由来のサンプルを提供する段階;
(b)AsiSIまたはSnaBIを認識する制限酵素配列を含むセンス鎖プライマー、およびSacIIまたはRsrIIを認識する制限酵素配列を含むアンチセンス鎖プライマーを用いて、サンプル中に存在する複数のHCV疑似種から、NS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をPCR増幅する段階;
(c)該PCR増幅ポリヌクレオチド配列をHCVレプリコンシャトルベクター内にクローニングしてキメラHCVレプリコンプラスミドを生成する段階;
(d)該プラスミドを細胞内に形質転換して複数の形質転換細胞のコロニーを生成する段階;
(e)該コロニーをプールし、かつプールしたコロニーからキメラHCVレプリコンプラスミドを単離する段階;
(f)段階(e)の該キメラHCVレプリコンプラスミドを直線化し、かつ直線化したプラスミドをインビトロ転写に供してキメラHCVレプリコンRNAを生成する段階;ならびに
(g)Huh7細胞株を該HCVレプリコンRNAでトランスフェクションし、かつHCVポリメラーゼインヒビターの存在下または非存在下で該HCVレプリコンRNAの複製レベルを測定する段階。
【請求項16】
段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが請求項1記載のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが請求項2記載のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが請求項3記載のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、請求項15記載の方法。
【請求項19】
段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが請求項4記載のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、請求項15記載の方法。
【請求項20】
以下の段階を含む、対象のHCV感染を制御するHCVポリメラーゼインヒビターの有効性を評価する方法:
(a)HCVに感染した対象由来のサンプルを提供する段階;
(b)SEQ ID NO:9からSEQ ID NO:19より選択されるヌクレオチド配列を含むセンス鎖プライマー、およびSEQ ID NO:20からSEQ ID NO:33より選択されるヌクレオチドを含むアンチセンス鎖プライマーを用いて、サンプル中に存在する複数のHCV疑似種から、NS5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をPCR増幅する段階;
(c)該PCR増幅ポリヌクレオチド配列をHCVレプリコンシャトルベクター内にクローニングしてキメラHCVレプリコンプラスミドを生成する段階;
(d)該プラスミドを細胞に形質変換して複数の形質変換細胞のコロニーを生成する段階;
(e)該コロニーをプールし、かつプールしたコロニーからキメラHCVレプリコンプラスミドを単離する段階;
(f)段階(e)の該キメラHCVレプリコンプラスミドを直線化し、かつ直線化したプラスミドをインビトロ転写に供してキメラHCVレプリコンRNAを生成する段階;ならびに
(g)Huh7細胞株を該HCVレプリコンRNAでトランスフェクションし、かつHCVポリメラーゼインヒビターの存在下または非存在下で該HCVレプリコンRNAの複製レベルを測定する段階。
【請求項21】
段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが請求項1記載のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが請求項2記載のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、請求項20記載の方法。
【請求項23】
段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが請求項3記載のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、請求項20記載の方法。
【請求項24】
段階(c)のHCVレプリコンシャトルベクターが請求項4記載のHCVレプリコンシャトルベクターを含む、請求項20記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−167067(P2007−167067A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341968(P2006−341968)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】