説明

HDAC調節アッセイ、調合物および治療学的組成物

本発明は、PTB含有タンパク質、すなわちAPPL(PHドメイン、PTBドメインおよびロイシンジッパー・モチーフを含有するアダプタータンパク質)とヒストン・デアセチラーゼ、特にHDAC1との結合と相互作用する化合物のためのアッセイ分野に関する。該アッセイを使用して同定された化合物は、HDAC活性の阻害において、そして医薬として、特に、がんおよび乾癬のような増殖性症状を抑制する薬物の製造において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTB含有タンパク質、すなわちAPPL(PHドメイン、PTBドメインおよびロイシンジッパー(zipper)モチーフを含有するアダプタータンパク質)とヒストン・デアセチラーゼ、特にHDAC1との結合と相互作用する化合物のためのアッセイ分野に関する。該アッセイを使用して同定された化合物は、HDAC活性の阻害において、そして医薬として、特に、がんおよび乾癬のような増殖性症状を抑制する薬物の製造において有用である。
【背景技術】
【0002】
核ヒストンは、遺伝子転写および他のDNAを鋳型とするプロセス、例えば複製、修復、組み換えおよび染色体分離の調節に関与する機構の全体的かつ動的な構成成分として知られる。それらは、アセチル化、リン酸化、メチル化、ユビキチン化およびADP−リボシル化を含む翻訳後修飾の主体である。
【0003】
本明細書では「HDAC」と呼ばれる、ヒストン・デアセチラーゼは、コアヌクレオソーム・ヒストンH2A、H2B、H3およびH4を含む、タンパク質のリジン残基におけるアセチル修飾の除去を触媒する酵素である。本明細書では「HAT」と呼ばれる、ヒストン・アセチルトランスフェラーゼとともに、HDACはヒストンのアセチル化のレベルを調節する。ヌクレオソーム・ヒストンのアセチル化の平衡は、多くの遺伝子の転写において重要な役割を演じる。ヒストンの低アセチル化(hypoacetylation)は、遺伝子転写の抑制をもたらす凝縮されたクロマチン構造に関係していて、これに対してアセチル化ヒストンは、より開かれたクロマチン構造および転写の活性化に関係している。
【0004】
11種の構造的に関連するHDACが記述されていて、そして2クラスに分類される。クラスIHDACは、HDAC1、2、3、8および11からなり、これに対してクラスIIHDACは、HDAC4、5、6、7、9および10からなる。HDACの第3のクラスのメンバーはクラスIおよびクラスIIHDACに対して構造的に関連していない。クラスI/IIHDACは亜鉛依存性メカニズムによって作動し、これに対してクラスIIIHDACはNAD依存性である。
【0005】
ヒストンに加えて、他のタンパク質もまたアセチル化の基質であった、特に、転写因子、例えばp53、GATA−1およびE2F;核受容体、例えばグルココルチコイド受容体、甲状腺受容体、エストロゲン受容体;およびpRbのような細胞周期調節タンパク質。タンパク質のアセチル化は、タンパク質の安定化、例えばp53安定化、コ・ファクターの補充およびDNA結合の増加と結び付けられた。p53は、種々のストレスシグナル、例えばDNA損傷への応答に際して細胞周期の停止またはアポトーシスを誘導できる腫瘍サプレッサーである。p53誘導細胞周期停止の主標的は、p21遺伝子であると思われる。p53によるその活性化に次いで、p21は、両G1およびG2期における細胞周期停止、老化におけるその上方調節および増殖中の細胞の核抗原とのその相互作用をもたらすサイクリン/サイクリン依存性キナーゼ複合体とそれとの会合によって同定された。
【0006】
既に前述されたように、ヒストンのアセチル化および脱アセチル化は、遺伝子転写の調節において鍵となる役割を演じる。N末端のヒストンテールにおけるリジン残基のアセチル化状態は、ヒストン・アセチルトランスフェラーゼ(HAT)およびデアセチラーゼ(HDAC)の競合する活性の間の動的平衡によって厳格に制御される、HDAC媒介で減少されたヒストン・アセチル状態は、転写抑制に関連される。HATまたはHDAC活性の崩壊はがんの発生に関連づけることができる。HAT酵素をコードしている遺伝子は、血液学的および上皮性起源からの腫瘍、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、結腸直腸がん、胃がんおよび乳がんにおいて、突然変異、増幅、転位または過発現される。クロマチンに対する発がん性転写因子とともに、脱調節され、一定のHDACの補充が、白血病およびリンパ腫の特定の形態物、例えば急性前骨髄性白血病(APL)、非Hodgkin’sリンパ腫およびAML M2サブタイプにおいて観察される。
【0007】
HDACのインヒビターの研究は、それらが、細胞周期停止、細胞分化、アポトーシスおよび形質転換された表現型の逆転において重要な役割を演じることを示している。数種のHDACインヒビターが、現在、臨床開発の第II相にある[Artsらにおける総説])HDAC阻害が細胞周期の停止、細胞分化およびアポトーシスを誘導する。
【0008】
インヒビター、トリコスタチンA(trichostatinA)(TSA)は、例えば、両G1およびG2期における細胞周期停止を惹起し、種々の細胞系の形質転換表現型を逆転し、そしてFriend白血病細胞およびその他の分化を誘導する。TSA(およびスベロイルアニリドヒドロキサム酸SAHA)は、細胞増殖を抑制し、最終(terminal)分化を誘導し。そしてマウスにおける腫瘍の形成を阻止することが報告された(非特許文献1)。
【0009】
またトリコスタチンAは、線維症、例えば肝線維症および肝硬変(chirrhosis)の処置において有用であることが報告された(特許文献1)。
【0010】
HDACインヒビターは、宿主免役応答の増大および腫瘍血管形成の抑制のような間接的な活性をもつことができ、その結果、一次腫瘍の増殖を抑制し、そして転移を阻止することができる(非特許文献2)。
【0011】
さらに、HDACのインヒビターはまた、p21遺伝子の発現を誘導することが報告された。これらのインヒビターによるp21遺伝子の転写活性化は、クロマチンの再形成(remodelling)と、それに続くp21プロモーター領域におけるヒストンH3およびH4のアセチル化によって促進される。p21のこの活性化はp53に依存しない方式で起り、その結果、HDACインヒビターは、変異したp53遺伝子、種々の腫瘍の純正証明を有する細胞において作動する。
【0012】
そこで、マウス胚幹細胞におけるHDAC1の破壊が、重度に損傷された細胞増殖とインビボにおける胚の致死をもたらすことが例証された(Laggerら)。これは、H3およびH4アセチル化ならびにサイクリン依存性キナーゼインヒビターp21waf1,cip1およびp27の発現増大と相関した。さらにまた、HDAC1のノックダウンは、細胞増殖の抑制および細胞分化の指標である形態学的変化を惹起する。
【0013】
HDAC1は、少なくとも3種の異なる多タンパク質複合体:Sin3複合体、NuRD/Mi2複合体およびCoREST複合体の成分としてその機能を発揮する[Sengupta and Setoにおける総説]。これらの複合体における存在は、HDAC1の酵素活性のためには決定的である。複合体形成の他に、HDAC活性は翻訳後の修飾を通じて調節される。CK2によるセリン421およびセリン423におけるHDAC1のリン酸化は、RbAp48、MTA−2、Sin3およびCoRESTとの複合体形成を安定化し、それによってHDAC1酵素活性を増進する。またHDAC1は、ユビキチン化され、そしていくつかのC末端リジン残基においてスモイル化(sumoylate)されている5,6。SUMO1修飾は、複合体形成を実施することなくHDAC1による転写抑制を増進する。
【0014】
上記を考慮すれば、HDACインヒビターは、変異されたp53遺伝子を有する腫瘍を含む、細胞増殖性疾患または症状の処置において大きな潜在能力をもつことができる。現HDACインヒビターの薬物作用団(pharmacophore)は、HDACの亜鉛含有の活性部位の周囲に焦点を定める。HDAC抑制のための化学的空間を拡大するために、HDACタンパク質の機能および調節、特にHDAC酵素活性の調節に影響を与える他の結合性パートナーを同定することは興味あることであろう。
【0015】
本発明の目的は、結合においてHDAC活性を増進する新規のHDACコ・ファクター、すなわち、APPL(PHドメイン、PTBドメインおよびロイシンジッパー・モチーフを含有するアダプタータンパク質)の同定、ならびにHDACインヒビター、すなわち、HDACおよびAPPL間の相互作用に影響を与える化合物の同定における結果として起きるその使用を提供することである。
【特許文献1】Greetsら、1998年3月11日公開、欧州特許出願第0 827 742号
【非特許文献1】Finnin et al.,Nature,401:188−193、1999
【非特許文献2】Mai etal.,Medicinal Research Reviews,25:261−309
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、APPLまたは該APPLフラグメントと相互作用することが可能な、HDAC酵素、特にHDAC1またはそのフラグメントと、APPLまたはそのフラグメントの相互作用の使用をなすアッセイを提供する。APPLは、またDIP13αとしても知られ、「PHドメイン、PTBドメインおよびロイシンジッパー・モチーフを含有するアダプタータンパク質」7−10を表し、そして真核細胞におけるHDACの新規な直接結合パートナーおよびその酵素活性の調節における鍵因子として同定された。アッセイは、試験化合物がAPPLとHDACとの相互作用を変えることができるか否かを同定するために有用である。またアッセイは、試験化合物がHDACのアゴニストまたはアンタゴニストであるか否かを決定するために有用である。上記アッセイは、APPL(配列番号:2)または関連ペプチドとHDACとの相互作用が、ポジティブまたはネガティブ対照として調査されるか、または試験化合物により得られる結果に比較される、競合、非競合および比較アッセイを含む種々の形式において実施することができる。
【0017】
その他の態様では、本発明は、APPLのアミノ酸500−635(配列番号:3)からなるAPPLのHDAC結合性フラグメントならびにその同族体をコードしている、単離および精製されたポリペプチドおよびポリヌクレオチド分子およびその診断的および治療的使用に関する。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、HDACドメインにおける、これ以降ではAPPL結合部位とも呼ばれるAPPL結合性領域またはAPPL結合部位の同定、およびHDAC1のアミノ酸51−84(配列番号:7)からなる該APPL結合性領域ならびにその同族体をコードしている、単離および精製されたポリペプチドおよびポリヌクレオチド分子、および本発明によるアッセイにおける該APPL結合性領域の使用に関する。
【0019】
さらなる実施態様では、本発明は、本発明によって提供されるアッセイにおいて同定された化合物を含んでなる製薬学的組成物、および増殖性症状、例えばがんおよび乾癬を抑制するためのその治療的使用に関する。本発明は、本発明の化合物の有効量を投与することによって、形質転換された細胞を含む細胞の異常増殖を抑制する方法を提供する。細胞の異常増殖は、正常な調節機構に依存しない細胞増殖(例えば、接触抑制の喪失)を指す
。これは、増殖停止、最終分化および/またはがん細胞のアポトーシスを惹起することによって直接的に、および腫瘍の新生血管形成を抑制することによって間接的に、両腫瘍増殖の抑制を含む。
【0020】
さらなる態様では、本発明は、細胞フラクションを、溶質基質に固定化されたAPPLまたはそのHDAC結合性フラグメントと接触させ、そしてそこからHDACを溶出することを含んでなる、HDACを含有する細胞フラクションからHDACを単離する方法を提供する。
【0021】
本明細書で使用されるように、「APPL」は、アミノ酸配列、配列番号:2を有するDIP13αとしてもまた知られる、PHドメイン、PTBドメインおよびロイシンジッパー・モチーフを含有するアダプタータンパク質またはAPPL関連タンパク質を指し、ここで、該関連タンパク質は、APPLをコードしているアミノ酸配列の1個または数個のアミノ酸の置換、欠失および/または付加の方法によって前記配列から誘導され、そして該APPL関連タンパク質は、配列番号:2に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有し、そして本発明によるHDACタンパク質に結合することが可能である。その他の実施態様では、本発明は、APPLタンパク質のフラグメントを提供し、ここで、該フラグメントは、親タンパク質において隣接している少なくとも100、150、200、250または300個のアミノ酸を含み、そして該フラグメントは、HDACまたはそのAPPL結合性フラグメントを結合することが可能である。特定の実施態様では、該フラグメントは、APPLのHDAC結合性フラグメント(配列番号:3)ならびにその同族体からなり、ここで、該同族体は、配列番号:3に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有し、そしてHDACタンパク質、特にHDAC1に結合することが可能である。先に定義されたAPPLフラグメントは、本文をとおして使用されるように、APPL関連タンパク質の定義内にあることを意味する。
【0022】
先に使用されるように、「HDAC」は、コアヌクレオソームのヒストンH2A、H2B、H3およびH4を含む、タンパク質のリジン残基におけるアセチル修飾の除去を触媒する酵素である。本発明において使用されるように、これらの酵素は、HDACタンパク質1〜11、特にアミノ酸配列、配列番号:5を有するHDAC1またはその同族体からなり、ここで、該同族体は、配列番号:5に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有し、そしてAPPLまたはAPPLのHDAC結合性フラグメントに結合することが可能である。また本発明の目的は該HDACタンパク質のフラグメントを提供し、ここで、該フラグメントは、親タンパク質において隣接している少なくとも20個のアミノ酸を含むが、望ましくは、親タンパク質において隣接している少なくとも40、60、80、100、150、200、250、300または350個のアミノ酸を含有してもよく、そして該フラグメントは、APPLまたはAPPLのHDAC結合性フラグメントを結合することが可能である。特定の実施態様では、該フラグメントは、ヒストンデアセチラーゼ・ドメイン(配列番号:6)またはその同族体を含み、ここで、該同族体は、配列番号:6に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する。より特定の実施態様では、該フラグメントは、HDAC1のアミノ酸51−84(配列番号:7)からなるAPPL結合性領域またはその同族体を含み、ここで、該同族体は、配列番号:7に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の配列同一性を有する。さらなる実施態様では、APPL結合性領域の同族体は、配列番号:7に較べられた場合、位置1および14におけるメチオニン(M)、位置3おける疎水性アミノ酸;位置6および31におけるプロリン(P);位置9におけるアラニン(A);位置12および13におけるグルタメート(E)、位置19における芳香族アミノ酸および位置18におけるヒスチジン(H)を有することを特徴とする。本明細書で使用されるように、芳香族アミノ酸は、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)またはヒスチジン(H)からなる群から選ばれ、そして疎水性アミノ酸は、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、バリン(V)、システイン(C)、アラニン(A)、グリシン(G)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、ヒスチジン(H)、トレオニン(T)またはプロリン(P)からなる群から選ばれる。なおさらなる実施態様では、APPLのHDAC結合性フラグメントは、配列番号:6または配列番号:7からなる。
【0023】
2種以上の配列の同一性および類似性を比較する方法は当該技術分野において周知である。したがって、例えば、Winsconsin Sequence Analysis
Package,version 9.1(Devreux J.et al.,Nucleic Acid Res.,12,387−395,1984)において利用できるプログラム、例えばプログラムBESTFITおよびGAPが、2種のポリヌクレオチド間の%同一性および2種のペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の%同一性および%類似性を決定するために使用されてもよい。BESTFITは、SmithおよびWaterman(J.Mol.Biol.,147,195−197,1981)の「局部的相同性」アルゴリズムを使用し、そして2種配列間の類似性の最良な単一領域を見出す。BESTFITは、長さの違う2種のポリヌクレオチドまたは2種のペプチドまたはポリペプチド配列を比較するのにより適しており、このプログラムは、より短い配列がより長い配列の一部を表すことを想定する。これに対して、GAPは2種の配列を整列して、NeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.,48,443−453,1970)のアルゴリズムにしたがって「最大類似性」を見出す。GAPは、ほぼ同じ長さである配列を比較するのにより適していて、そして整列は全長にわたって期待される。好ましくは、各プログラムで使用されるパラメーター「GAP Weight」および「Length Weight」は、それぞれ、ポリヌクレオチド配列については50および3であり、ポリペプチド配列については12および4である。好ましくは、%同一性および類似性は、比較される2種の配列が任意に整列される場合に決定される。配列間の同一性および/または類似性を決定するための他のプログラムもまた当該技術分野匂い手は既知である、例えばプログラムのBLASTファミリー(Alschul S F et al.,Nucleic Acids Res.,25:3389−3402、1997)。
【0024】
本明細書で使用されるように、「化合物」は、すべてのサイズの原子の有機または無機集合であり、そして低分子(約2500ダルトン未満)または高分子、例えばペプチド、ポリペプチド、タンパク質全体およびポリヌクレオチドを含む。
【0025】
本明細書で使用されるように、「試験」化合物は、該試験化合物がHDAC酵素のアゴニストまたはアンタゴニストであるか否か調査する試験において使用される化合物である。試験化合物がHDAC酵素の実際のアゴニストまたはアンタゴニストであるか否かは、本発明によるアッセイにおいて決定される。
【0026】
本明細書で使用されるように、「アゴニスト」はHDAC酵素と相互作用し、そして活性化する化合物である。活性化されたHDAC酵素は、タンパク質のアセチル化されたリジン残基からアセチルの除去を触媒でき、そして例えば、検出可能に標識されたアセチル−ヒストンペプチド基質からの酢酸の遊離を測定することによって調査することができる。
【0027】
本明細書で使用されるように、「アンタゴニスト」は、HDAC酵素と相互作用し、そしてその活性化を抑制または妨害する化合物である。
【0028】
ポリヌクレオチド
したがって、第1の実施態様では、本発明は、APPLまたはそのフラグメントをコードしている単離され、精製された核酸分子の使用に関していて、ここで、該核酸分子は、APPLおよび関連ペプチドとHDACまたはそのフラグメントとの相互作用の使用をなすアッセイにおける、RNA、DNA、cDNAまたはゲノムDNAのいずれかである。
【0029】
第2の実施態様では、本発明は、HDACまたはそのフラグメントをコードしている単離され、精製された核酸分子の使用に関していて、ここで、該核酸分子は、APPLおよびAPPL関連タンパク質とHDACまたはHDACフラグメントとの相互作用の使用をなすアッセイにおける、RNA、DNA、cDNAまたはゲノムDNAのいずれかである。
【0030】
本明細書で使用されるように、「単離された」は、問題のポリヌクレオチド、タンパク質およびポリペプチド、またはそれぞれそのフラグメントが、それらのインビボ環境から持ち去られる事実を指し、その単離によって、例えば限定されるものではないが、核酸フラグメントについての、配列決定、制限消化、部位特異的変異誘発および発現ベクター中へのサブクローニング、ならびに場合によっては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体を生成できる量におけるタンパク質またはタンパク質フラグメントの獲得、アミノ酸配列決定およびペプチド消化のように、それらが、熟達者によって操作できるようになる。言い換えれば、「単離された」は、天然に存在する配列がその正常な細胞内容物から持ち去られたことを示す。かくして、配列は細胞を含有しない溶液において存在するか、または異なる細胞環境または核酸内容物中に置くことができる。したがって、本明細書で請求される核酸は、細胞全体においてまたは細胞溶解物において、あるいは部分的、実質的または全体的に精製された形態物において存在することができる。
【0031】
ポリヌクレオチドは、それが環境の混入物から除かれて精製される場合に「精製された」と考えられる。かくして、細胞から単離されたポリヌクレオチドは、標準的方法によって細胞成分から精製された場合に実質的に精製されたと考えられ、一方、化学的に合成された核酸配列は、その化学的前駆物質から精製された場合に実質的に精製されたと考えられる。「実質的に純粋な」タンパク質または核酸は、より大きいパーセンテージが好適であるが、典型的にはサンプルの少なくとも85%を含むであろう。タンパク質または核酸分子の純度を決定する1つの方法は、ポリアクリルアミドまたはアガロースのようなマトリックスにおいて調製物を電気泳動することによる。純度は、染色後の単一バンドの出現によって証明される。純度を調べる他の方法は、クロマトグラフィー、質量分光測定法および分析用遠心分離を含む。
【0032】
用語「そのフラグメント」は、該フラグメントが、親核酸分子において隣接している15個以上のヌクレオチドを含むが、望ましくは親核酸分子の少なくとも40、50または100個のヌクレオチドを含有してもよいような、その配列が本明細書で開示される核酸分子の断片またはサブ領域を述べる。用語「そのフラグメント」は、単離されたフラグメント、断片またはサブ領域が受容体の活性部位、結合部位またはリン酸化部位のような機能的に明確な領域を含む「機能性フラグメント」を含むことを意図している。機能性フラグメントは、クローニング技術によるか、または交互スプライシング技術の自然産物として生産されてもよい。HDACタンパク質に関連して使用されるように、機能性フラグメントは該タンパク質の酵素活性、すなわち、コアヌクレオソームヒストンH2A、H2B、H3およびH4を含む、タンパク質におけるリジン残基のアセチル修飾の除去を保持している。それらの活性は、典型的には、例えば、以下の実施例4に与えられる例のように、基質として検出可能に標識されたアセチル化ヒストンを用い、そして標識されたアセチル基の遊離を測定して調査される。HDACタンパク質の機能性フラグメントは、最小でも、該タンパク質のヒストンデアセチラーゼ・ドメイン、特に、アミノ酸配列、配列番号:6を有し、かつ核酸、配列番号:4の109〜1047によってコードされたHDAC1のヒストンデアセチラーゼ・ドメイン、またはその同族体を含み、ここで、該同族体は核酸、配列番号:109の〜1047に対して少なくとも70、80、85、90、95、96、97、98または99%の配列同一性を有する。
【0033】
特に、本発明は、
(a)配列番号:2のアミノ酸配列を含んでなるAPPLをコードしている核酸分子;
(b)APPLをコードしている核酸配列(配列番号:1)を含んでなる核酸分子;
(c)核酸、配列番号:1の1554〜1958を含んでなる、APPLのHDAC結合性フラグメントならびにその同族体をコードしている核酸分子であって、該同族体は配列番号:3の該フラグメントに対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
(d)アミノ酸配列、配列番号:3を含んでなる、APPLのHDAC結合性フラグメントをコードしている核酸分子;
(e)(a)〜(d)のポリヌクレオチドに対して相補的である核酸分子;
(f)(a)〜(d)のポリヌクレオチドの少なくとも15個の連続する塩基を含んでなる核酸分子;
(g)(a)〜(d)のポリヌクレオチド分子に対して緊縮条件下でハイブリダイズする核酸分子;または
(h)(a)〜(g)のいずれかのポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に対する遺伝コードの結果として退化されるヌクレオチド配列を含んでなる、APPLをコードしている核酸分子:
からなる群から選ばれるメンバーを含んでなる、APPLまたはそのフラグメントをコードしている単離され、精製された核酸分子の、本発明によるアッセイにおける使用を包含する。
【0034】
また、本発明の1つの実施態様は、
(a)配列番号:2のアミノ酸配列を有するAPPLをコードしている核酸分子;
(b)APPLをコードしている単離された核酸配列(配列番号:1)を含んでなる核酸分子;
(c)核酸、配列番号:1の1554〜1958ならびにその同族体からなる、APPLのHDAC結合性フラグメントをコードしている核酸分子であって、該同族体は核酸、配列番号:1の1554〜1958に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
(d)APPLのHDAC結合性フラグメントをコードしている核酸分子であって、該HDAC結合性フラグメントはアミノ酸配列、配列番号:3を有する;
(e)(a)〜(d)のポリヌクレオチドに対して相補的である核酸分子;
(f)(a)〜(d)のポリヌクレオチドの少なくとも15個の連続する塩基を含んでなる核酸分子;
(g)(a)〜(d)のポリヌクレオチド分子に対して緊縮条件下でハイブリダイズする核酸分子;または
(h)(a)〜(g)のいずれかのポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に対する遺伝コードの結果として退化されるヌクレオチド配列を含んでなる、APPLをコードしている核酸分子:
からなる群から選ばれるメンバーを含んでなる、APPLまたはそのフラグメントをコードしている単離され、精製された核酸分子の、本発明によるアッセイにおける使用を提供することである。
【0035】
本発明のさらなる実施態様では、APPLをコードしている核酸分子は配列番号:1からなり、そしてAPPLのHDAC結合性フラグメントをコードしている核酸分子は核酸
、配列番号:1の1554〜1958からなる。
【0036】
したがって、本発明は、
(a)配列番号:5のアミノ酸配列を含んでなる、HDAC1をコードしている核酸分子;
(b)HDAC1をコードしている、配列番号:4のヌクレオチド配列を含んでなる核酸分子;
(c)核酸、配列番号:4の109〜1047ならびにその同族体を含んでなる、HDAC1のヒストンデアセチラーゼ・ドメインをコードしている核酸分子であって、該同族体は配列番号:4の該フラグメントに対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
(d)アミノ酸配列、配列番号:6を含んでなる、HDACのヒストンデアセチラーゼ・ドメインをコードしている核酸分子;
(e)核酸、配列番号:4の235〜336ならびにその同族体を含んでなる、HDAC1のAPPL結合性領域をコードしている核酸分子であって、該同族体は配列番号:4の該フラグメントに対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
(f)アミノ酸配列、配列番号:7を含んでなる、HDACのAPPL結合性領域をコードしている核酸分子;
(g)(a)〜(f)のポリヌクレオチドに対して相補的である核酸分子;
(h)(a)〜(g)のポリヌクレオチドの少なくとも15個の連続する塩基を含んでなる核酸分子;
(i)(a)〜(f)のポリヌクレオチド分子に対して緊縮条件下でハイブリダイズする核酸分子;または
(j)(a)〜(i)のいずれかのポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に対する遺伝コードの結果として退化されるヌクレオチド配列を含んでなる、HDACをコードしている核酸分子:
からなる群から選ばれるメンバーを含んでなる、HDACまたはそのフラグメントをコードしている単離され、精製された核酸分子の、本発明によるアッセイにおける使用を包含する。
【0037】
また本発明の目的は、
(a)配列番号:5のアミノ酸配列を有するHDAC1をコードしている核酸分子;
(b)HDAC1をコードしている配列番号:4のヌクレオチド配列からなる核酸分子;(c)核酸、配列番号:4の109〜1047ならびにその同族体からなる、HDAC1のヒストンデアセチラーゼ・ドメインをコードしている核酸分子であって、該同族体は配列番号:4の該フラグメントに対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
(d)アミノ酸配列、配列番号:6を有する、HDACのヒストンデアセチラーゼ・ドメインをコードしている核酸分子;
(e)核酸、配列番号:4の235〜336ならびにその同族体からなる、HDAC1のAPPL結合性領域をコードしている核酸分子であって、該同族体は配列番号:4の該フラグメントに対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
(f)アミノ酸配列、配列番号:7またはその同族体を有する、HDACのAPPL結合性領域をコードしている核酸分子であって、該同族体は配列番号:7に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
(g)(a)〜(f)のポリヌクレオチドに対して相補的である核酸分子;
(h)(a)〜(f)のポリヌクレオチドの少なくとも15個の連続する塩基を含んでなる核酸分子;
(i)(a)〜(f)のポリヌクレオチド分子に対して緊縮条件下でハイブリダイズする核酸分子;または
(j)(a)〜(i)のいずれかのポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に対する遺伝コードの結果として退化されるヌクレオチド配列を含んでなるHDACをコードしている核酸分子:
からなる群から選ばれるメンバーを含んでなる、HDACまたはそのフラグメントをコードしている単離され、精製された核酸分子の、本発明によるアッセイにおける使用を提供することである。
【0038】
本発明の特定の実施態様では、HDACをコードしている核酸分子は配列番号:4からなり、そしてAPPL結合性領域をコードしている核酸分子は、核酸、配列番号:4の〜1047、より特には核酸、配列番号:4の235〜336からなるそのフラグメントからなる。
【0039】
当業者は、遺伝コードの退化により、ヌクレオチド塩基対の種々の「サイレント」置換が、コードされたアミノ酸またはタンパク質生産物の同一性を変えることなく、配列番号:1、配列番号:4として同定された配列、または該配列の先に同定されたフラグメント中に導入できることを認識できる。すべてのそのような置換は、本発明の範囲内にあることが意図される。
【0040】
本明細書で使用されるように、用語「相補的」または「相補性」は、二本鎖核酸分子を形成するためにプリンおよびピリミジンヌクレオチドが水素結合をとおして会合する能力を指す。次の塩基対が相補性に関係している:グアニンとシトシン;アデニンとチミン;およびアデニンとウラシル。本明細書で使用されるように、「相補的」は、前記関係が、該分子の全長にわたって2本の一本鎖核酸分子を含んでなる実質的に全塩基対に適用されることを意味する。「部分的に相補的」は、2本の一本鎖核酸分子の1本が、1本の分子の一部が一本鎖のまま残るように、他方よりも短い長さである前記関係を言う。
【0041】
用語「ハイブリダイゼーション」は、一本鎖の核酸分子がヌクレオチド塩基対合を介して相補的な鎖と結合するプロセスを指す。
【0042】
用語「緊縮(ストリンジェンシー)」はハイブリダイゼーション条件を指す。高い緊縮条件は非相同的塩基対合を嫌う。低緊縮条件は反対の効果を有する。ストリンジェンシーは、例えば、温度および塩濃度によって変えることができる。「緊縮条件」は、50%ホルムアミド、5xSSC(750mMNaCl、75mMクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xDenhardt溶液、10%硫酸デキストランおよび20μg/ml変性、せん断されたサケ精子DNAを含んでなる溶液中42℃で一夜のインキュベーション、それに続く約65℃における0.1xSSC中でのフィルターの洗浄を言う。さらに適当なハイブリダイゼーション条件は実施例において記述される。
【0043】
APPL内のHDAC結合性フラグメントおよびHDAC内のAPPL結合性フラグメントの同定および特性決定が与えられれば、また、本発明の目的は、
(a)核酸、配列番号:1の1554〜1958ならびにその同族体からなる、APPLのHDAC結合性フラグメントをコードしている核酸分子であって、該同族体は核酸、配列番号:1の1554〜1958に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
(b)APPLのHDAC結合性フラグメントをコードしている核酸分子であって、該HDAC結合性フラグメントはアミノ酸配列、配列番号:3を有する;
(c)核酸、配列番号:4の235〜336ならびにその同族体からなる、HDAC1の
APPL結合性領域をコードしている核酸分子であって、該同族体は配列番号:4の該フラグメントに対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
(d)アミノ酸配列、配列番号:7またはその同族体を有する、HDACのAPPL結合性領域をコードしている核酸分子であって、該同族体は配列番号:7に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
(e)(a)〜(d)のポリヌクレオチドに対して相補的である核酸分子;
(f)(a)〜(e)のポリヌクレオチドの少なくとも15個の連続する塩基を含んでなる核酸分子;または
(g)(a)〜(f)のポリヌクレオチド分子に対して緊縮条件下でハイブリダイズする核酸分子:
からなる群から選ばれる単離され、精製された核酸分子を提供することである。
【0044】
また本発明は、先に定義された単離された核酸分子を含んでなるベクター、ならびにそのようなベクターにより安定に形質転換された宿主細胞を提供する。用語「ベクター」は、宿主細胞による外因性DNAの複製および/または適当な発現のために宿主細胞中にDNAを移送するために有用である外因性DNAのすべての担体を指す。したがって、特定の実施態様では、該ベクターは、pGL3luc、pBLCAT5(LMBP2451)、pGMCSFlacZ(LMBP2979)、pEGFPまたはpSEAPbasic(DMB3115)のような発現ベクターであり、ここで、LMBPおよびDMBナンバーは、Belgian Co−ordinated Collections of Microorganismsにおけるこれらの発現ベクターの受入ナンバーを指す。そのような宿主細胞は、原核細胞、単細胞の真核細胞または多細胞生物由来の細胞であってもよい。かくして、宿主細胞は、例えば、E,コリ(E.coli)のような細菌細胞;サッカロミセス・セレビシエ(Scharomyces cerevisiae)またはピヒア・パストリス(Pichia pastoris)のような酵母細胞、またはHEK239細胞のような哺乳動物細胞であってもよい。宿主細胞中へのベクターの導入を実施するために使用される方法は、組み換えDNA法に習熟した者には周知の標準的な方法である。
【0045】
したがって、本発明の目的は、
(a)核酸、配列番号:1の1554〜1958ならびにその同族体からなる、APPLのHDAC結合性フラグメントをコードしている核酸分子であって、該同族体は核酸、配列番号:1の1554〜1958に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
(b)APPLのHDAC結合性フラグメントをコードしている核酸分子であって、該HDAC結合性フラグメントはアミノ酸配列、配列番号:3またはその同族体を有し、該同族体は配列番号:3に対して少なくとも70、80、85、90、95、96、97、98または99%の配列同一性を有する;
(c)核酸、配列番号:4の109〜1047ならびにその同族体からなる、HDAC1のヒストンデアセチラーゼ・ドメインをコードしている核酸分子であって、該同族体は配列番号:4に対して少なくとも70、80、85、90、95、96、97、98または99%の同一性を有する;
(d)アミノ酸配列、配列番号:6またはその同族体を有する、HDAC1のヒストンデアセチラーゼ・ドメインをコードしている核酸分子であって、該同族体は配列番号:6に対して少なくとも70、80、85、90、95、96、97、98または99%の配列同一性を有する;
(e)核酸、配列番号:4の235〜336ならびにその同族体からなる、HDAC1のAPPL結合性領域をコードしている核酸分子であって、該同族体は配列番号:4の該フラグメントに対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%
の同一性を有する;
(f)アミノ酸配列、配列番号:7またはその同族体を有する、HDACのAPPL結合性領域をコードしている核酸分子であって、該同族体は配列番号:7に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
(g)(a)〜(f)のポリヌクレオチドの少なくとも15個の連続する塩基を含んでなる核酸分子;または
(h)(a)〜(f)のポリヌクレオチド分子に対して緊縮条件下でハイブリダイズする核酸分子:
からなる群から選ばれる単離され、精製された核酸分子を含んでなるベクターを提供することである。
【0046】
本発明によるベクターは、APPLとHDACタンパク質の相互作用を調節する化合物を同定する方法において特に有用であり;そのような方法は、例えば、分子生物学者には周知であるツー・ハイブリッドベクター系を含む(Fields & Song,Nature 340:245 1989)。この技術は、レポーター遺伝子を活性化する転写因子のインビボでの機能的再構成に基づく。より具体的には、本技術は、DNA結合性ドメインと活性化ドメインを有する転写因子によって調節されるプロモーターの制御下のレポーター遺伝子を含んでなるDNA構築物をもつ適当な宿主細胞を提供し、APPLまたはそのHDAC結合性フラグメントをコードしている核酸配列のフラグメントまたは全部および転写因子の該DNA結合性ドメインまたは該活性化ドメインのいずれかの第1の融合物をコードしている第1のハイブリッドDNA配列を宿主細胞において発現し、第1の融合物において組み込まれていない転写因子のDNA結合性または活性化ドメインとともにHDACまたはAPPLフラグメントをコードしている、少なくとも1種の第2のハイブリッドDNA配列を宿主において発現し;宿主細胞におけるいずれかのレポーター遺伝子産物の存在について検出することによって本発明によるタンパク質と探索されているタンパク質のいずれかの結合を検出することを含む。
【0047】
そのような技術の1例は酵母におけるGAL4タンパク質を利用する。GAL4は酵母におけるガラクトース代謝の転写アクチベーターであり、そしてガラクトース代謝遺伝子ならびにタンパク質結合性ドメインの上流のアクチベーターに結合するための別のドメインを有する。ヌクレオチドベクターが構築されてもよく、これの1つは、GAL4のDNA結合性ドメインをコードしているヌクレオチド残基を含む。これらの結合性ドメイン残基は、前記のAPPLまたはそのHDAC結合性フラグメントをコードしている核酸配列に融合されてもよい。その他のベクターは、前記のHDACまたはそのAPPL結合性フラグメントをコードしている残基に融合された、GAL4のタンパク質結合性ドメインをコードしている残基を含む。本発明による核酸によってコードされた神経栄養因子と試験されるタンパク質との間のいずれかの相互作用は、ベクターが導入されたGAL−4転写欠陥酵母細胞においてレポーター分子の転写活性化をもたらす。好ましくは、β−ガラクトシダーゼのようなレポーター分子は、酵母のガラクトース代謝遺伝子の転写の回復により活性化される。
【0048】
ポリペプチド
本発明はまた、APPLおよび関連ペプチドとHDAC酵素との相互作用の使用をなすアッセイにおけるHDAC酵素またはそのフラグメントの使用に関していて、該ポリペプチドは、本発明による単離され、精製された核酸分子によってコードされている。
【0049】
本明細書で使用されるHDAC酵素は、
(a)アミノ酸配列、配列番号:5またはその同族体を有する、単離され、精製されたHDAC1タンパク質であって、該同族体は配列番号:5に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
(b)アミノ酸配列、配列番号:6またはその同族体を有する、単離され、精製されたAPPL結合性フラグメントであって、該同族体は配列番号:6に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
(c)アミノ酸配列、配列番号:7またはその同族体を有する、単離され、精製されたAPPL結合性フラグメントであって、該同族体は配列番号:7に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
からなる群から選ばれるHDAC1酵素またはそのAPPL結合性フラグメントの1つの実施態様にある。
【0050】
1つの実施態様では、HDAC1タンパク質は、配列番号:5のアミノ酸配列またはその同族体を含む。特に、HDAC1の機能性フラグメントが該タンパク質の酵素活性を保持するその機能性フラグメントは、すなわち、コアヌクレオソームヒストンH2A、H2B、H3およびH4を含む、タンパク質におけるリジン残基のアセチル修飾を除去する。HDACタンパク質の機能性フラグメントは、最小には、該タンパク質のヒストンデアセチラーゼドメイン、特にアミノ酸配列、配列番号:6またはその同族体を有するHDAC1のヒストンデアセチラーゼドメインを含み、該同族体は配列番号:6に対して少なくとも70、80、85、90、95、96、97、98または99%の配列同一性を有する。より特定の実施態様では、HDACタンパク質の機能性フラグメントは、アミノ酸配列、配列番号:6またはその同族体を有する、単離され、精製されたポリペプチドからなり、該同族体は配列番号:6に対して少なくとも70、80、85、90、95、96、97、98または99%の配列同一性を有する。その他の実施態様では、HDAC1タンパク質は、アミノ酸配列、配列番号:5またはそのAPPL結合性フラグメントからなる。APPL結合性フラグメントは、配列番号:7からなるか、または前記の共通配列を含むかいずれかである。特にAPPL結合性フラグメントは、配列番号:7または前記のその同族体かいずれかからなる。
【0051】
さらなる態様では、本発明は、本発明によるアッセイにおけるAPPLおよび関連ペプチドの使用に関する。好適な実施態様では、APPLまたはAPPL関連タンパク質は、i)アミノ酸配列、配列番号:2を含んでなる、APPLをコードしている単離されたポリペプチド;
ii)APPLから誘導され、そしてHDACへの結合の可能な単離されたポリペプチド;
iii)アミノ酸配列、配列番号:3またはその同族体を含んでなる、APPLのHDAC結合性フラグメントをコードしている単離されたポリペプチドであって、該同族体は配列番号:3に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
からなる群から選ばれる。
【0052】
本発明の1つの実施態様では、APPLは、配列番号:2によってコードされたアミノ酸配列、前記のAPPL関連タンパク質、または配列番号:3によってコードされたHDAC結合性フラグメントからなる。
【0053】
APPL内のHDAC結合性フラグメントおよびHDAC内のAPPL結合性フラグメントの同定および特性決定が与えられれば、また、本発明の目的は、
(a)アミノ酸配列、配列番号:6またはその同族体を有する、単離され、精製されたAPPL結合性フラグメントであって、該同族体は配列番号:6に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
(b)アミノ酸配列、配列番号:7またはその同族体を有する、単離され、精製されたAPPL結合性フラグメントであって、該同族体は配列番号:7に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
(c)アミノ酸配列、配列番号:3またはその同族体を有する、APPLのHDAC結合性フラグメントをコードしている単離され、精製されたポリペプチドであって、該同族体は配列番号:3に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
からなる群から選ばれる、単離され、精製されたポリペプチドを提供することである。
【0054】
本発明による受容体タンパク質およびペプチドは、すべての可能な保存アミノ酸変更物(changes)を含み、ここで、「保存アミノ酸変更物」は、技術的に認識されたある種のアミノ酸の置換可能性に基づいて、親分子の生物活性に影響することなく親の受容体タンパク質またはペプチドにおける1種以上のアミノ酸残基の置換物を指す(参照、例えば、M.Dayhoff,In Atlas of Protein Sequence and Structure,Vol.5,Supp.3,pgs 345−352,1978)。
【0055】
当業者は、本発明によるポリペプチド、すなわち、HDAC酵素、APPL結合性フラグメントおよびAPPLまたはAPPL関連タンパク質が、例えば、ハイブリダイゼーション、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、またはde novoのDNA合成を含む、多数の組み換えDNA技術によって得られることを認識できる(参照、例えば、T.Maniatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d.Chap.14(1989))。
【0056】
本発明のペプチドおよび誘導体は、十分に確立された、標準的液体または好ましくは固相ペプチド合成法にしたがって容易に製造することができ、この方法の一般的記述は広く利用できる、あるいはそれらは、液相法によるか、または固相、液相および溶液化学のいかなる組み合わせによっても、溶液において製造されてもよい。
【0057】
本発明によるポリペプチドは、例えば、コードしている核酸からの発現によって生産された後、単離および/または精製(例えば、抗体を用いて)されてもよい。単離および/または精製されたポリペプチドは、少なくとも1種のさらなる成分を含んでもよい組成物、例えば、製薬学的に許容できる添加物、媒質または担体を含む製薬学的組成物の調合において使用されてもよい。
【0058】
本発明によるポリペプチドは、特定の抗体を得る際に免疫原またはその他として使用されてもよい。抗体は、ポリペプチドの精製および他の操作、診断学的スクリーニングおよび治療学的環境において有用である。本発明のポリペプチドに対する抗体は、当該技術分野において既知である技術によって有利に製造することができる。例えば、ポリクローナル抗体は、マウスのような宿主動物に成長因子またはそのエピトープを接種し、そして免役血清を回収することによって製造されてもよい。モノクローナル抗体は、Kohler
R.and Milstein C.,Nature(1975)256,495−497によって記述されているような既知の技術にしたがって製造されてもよい。
【0059】
本発明によるポリペプチドは、それに結合するか、またはその活性もしくは機能を調節する分子のスクリーニングにおいて使用されてもよい。そのような分子は治療学的(予防的を含むことも可能)環境において有用であろう。
【0060】
本発明のポリペプチドまたは標識されたポリペプチドまたはそのフラグメントもまた、固相、例えばイムノアッセイウェルまたはディスクの表面に固定することができる。
【0061】
そのような標識された、そして/または固定化されたポリペプチドは、適当な試薬、対照物質、指示書などとともに適当な容器におけるキット中に包装されてもよい。
【0062】
そのようなポリペプチドおよびキットは、イムノアッセイによってサンプル中に存在するそのようなポリペプチドまたはその活性部分もしくはフラグメントに対する抗体の検出方法において使用することができる。
【0063】
イムノアッセイ法は、当該技術分野において周知であり、そして一般に、
(a)該タンパク質に対する抗体によって結合可能なエピトープを含んでなるポリペプチドを提供し;
(b)抗体−抗原複合体の形成を可能にする条件下で該ポリペプチドと生物サンプルをインキュベートし;そして
(c)該ポリペプチドを含んでなる抗体−抗原複合体が形成されたか否かを決定すること;を含むことができる。
【0064】
アッセイ
本発明のアッセイは、生物学的活性または結合性タンパク質について化合物をスクリーニングする当該技術分野において一般に既知の多くの形式において計画することができる。
【0065】
本発明のポリペプチドは、1つ以上の疾病状態、特に前述の疾病を含む、1つ以上の生物学的機能のために応答することができる。したがって、HDACの機能を促進するか、または抑制する化合物を同定するスクリーニング法を案出することが望まれる。
【0066】
本発明のアッセイは、有利には、APPLまたはAPPL関連タンパク質がHDAC酵素のためのコ・ファクターであり、そしてそれへの結合によりHDAC酵素を活性化するという事実を利用する。
【0067】
したがって、本発明は、HDAC酵素に特異的に結合する化合物を同定する方法を含み、ここで、該化合物はHDAC酵素のアゴニストまたはアンタゴニストであってもよい。本発明のアッセイ法は、本アッセイが、APPLまたはAPPL関連タンパク質とHDACとの相互作用がアッセイに組み入れられるか、またはそれらがHDACのAPPL結合性フラグメントを応用するか、少なくとも1つの段階を組み入れているので、当該技術分野において既に記述されたアッセイ法とは異なる。
【0068】
かくして、本発明は、
a)HDAC酵素またはそのフラグメントを含有する給源を、
i)APPLまたはAPPL関連タンパク質、
ii)該試験化合物
とともにインキュベートし;そして
b)酵素に結合されたAPPLまたはAPPL関連タンパク質の量に及ぼす試験化合物の影響を測定すること:
を含んでなる、HDAC酵素を結合することが可能な試験化合物を同定し、かつ得る方法を提供する。
【0069】
好適な実施態様では、本発明は、
a)HDAC1またはそのフラグメントを含有する給源を、
i)APPLまたはAPPL関連タンパク質、
ii)該試験化合物
とともにインキュベートし;そして
b)酵素に結合されたAPPLまたはAPPL関連タンパク質の量に及ぼす試験化合物の影響を測定すること:
を含んでなる、HDAC1酵素を結合することが可能な試験化合物を同定し、かつ得る方法を提供する。
【0070】
本発明のさらなる実施態様では、HDAC1を含有する給源は、
(a)アミノ酸配列、配列番号:5またはその同族体を有する、単離され、精製されたHDAC1タンパク質であって、該同族体は配列番号:5に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
(b)アミノ酸配列、配列番号:6またはその同族体を有する、単離され、精製されたAPPL結合性フラグメントであって、該同族体は配列番号:6に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
(c)アミノ酸配列、配列番号:7またはその同族体を有する、単離され、精製されたAPPL結合性フラグメントであって、該同族体は配列番号:7に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
からなる群から選ばれる。
【0071】
APPL結合性領域の同定に基づいて、さらに本発明は、APPLまたはAPPL関連タンパク質と該APPL結合性領域との相互作用を調節する化合物を同定するためのアッセイを提供する。そのような化合物は、APPLと、該APPL結合性領域を含んでなる他の酵素、例えばAKT2、DCC、FSHRおよびRab5との相互作用を調節するアゴニストまたはアンタゴニストとして有用であろう。
【0072】
かくして、本発明は、
a)APPL結合性領域を含有する給源を、
i)APPLまたはAPPL関連タンパク質、
ii)該試験化合物
とともにインキュベートし;そして
b)結合性領域に結合されたAPPLまたはAPPL関連タンパク質の量に及ぼす試験化合物の影響を測定すること:
を含んでなる、APPLまたはAPPL関連タンパク質と、APPL結合性領域との相互作用を調節することが可能な試験化合物を同定し、かつ得る方法を提供する。
【0073】
本発明のさらなる実施態様では、APPL結合性領域を含有する給源は、
(a)アミノ酸配列、配列番号:6またはその同族体を有する、単離され、精製されたAPPL結合性フラグメントであって、該同族体は配列番号:6に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
(b)アミノ酸配列、配列番号:7またはその同族体を有する、単離され、精製されたAPPL結合性フラグメントであって、該同族体は配列番号:7に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
からなる群から選ばれる。
【0074】
スクリーニング方法は、簡単には、ポリペプチド、またはポリペプチドを担持する細胞または膜への候補化合物の結合、あるいは候補化合物と直接または間接的に会合される標識の手段によるその融合タンパク質を測定してもよい。あるいはまた、スクリーニング方法は標識されたコンペティターとの競合を伴ってもよい。好適な実施態様では、この標識されたコンペティターは、APPLまたはAPPL関連タンパク質のようなHDACに結合することが知られたリガンドである。さらなる実施態様では、該APPL関連タンパク質は、配列番号:3によってコードされたHDAC結合性フラグメントまたはその同族体からなり、ここで、該同族体は、配列番号:3に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する。
【0075】
それ故、より好適な実施態様では、スクリーニング方法は、標識されたAPPLまたは標識されたAPPL関連タンパク質を含み、ここで、該標識は、HDAC酵素またはそのAPPL結合性フラグメントに結合されたAPPLまたはAPPL関連タンパク質の量に及ぼす試験化合物の影響を測定するために使用される。
【0076】
したがって、本発明は、
i)HDAC1酵素またはそのAPPL結合性フラグメントを、配列番号:2によってコードされたアミノ酸配列を含んでなる標識されたAPPL関連タンパク質、好ましくは配列番号:3からなるヨウ素化APPL関連タンパク質とともにインキュベートし;
ii)インキュベーション混合液に試験化合物を添加し;そして
iii)HDAC1酵素またはそのAPPL結合性フラグメントに結合される標識されたAPPL関連ペプチドの量に及ぼす試験化合物の影響を測定すること:
を含んでなる、HDAC1酵素を結合することが可能な試験化合物を同定し、かつ得る方法を提供する。
【0077】
1つの実施態様では、HDAC1酵素はアミノ酸配列、配列番号:5を有し、あるいはまた、APPL結合性フラグメントは配列番号:7を含む。その他の実施態様では、APPL結合性フラグメントは、配列番号:7からなるか、または先に定義された共通配列を含む。
【0078】
可能な結合アッセイの例は、以下に示す実施例において与えられる免役沈降アッセイまたはBiacore instrument(Malmqvist M.,Biochem Soc Trans.1999 Feb;27(2):335−40)によって開発された表面プラズモン共鳴効果の使用である。後者では、本発明のポリペプチドのFLAG−タグまたはHis−タグを付された改変物がBiacoreのバイオセンサーチップに付着され、そして結合性パートナーの結合が化合物の存在および不在下で試験されて、結合部位のコンペティターを同定できる。例えば、1つの実施態様では、先に定義されたAPPLのHDAC結合性フラグメントまたはその同族体が、Flagタグを用いてBiacoreチップ上に固定化され、そしてHDACまたはそのAPPL結合性フラグメントの結合が化合物の存在および不在下で試験されて、結合部位のコンペティターが同定される。あるいはまた、先に定義されたHDACのAPPL結合性フラグメントまたはその同族体が、Flagタグを用いてBiacoreチップ上に固定化され、そしてAPPLまたはそのHDAC結合性フラグメントの結合が化合物の存在および不在下で試験されて、結合部位のコンペティターが同定される。
【0079】
本発明によるポリペプチドのタグ付着もまた、慣用のフィルター結合アッセイ(例えば、Brandelフィルターアッセイ装置を用いる)または高処理Scintilation Proximity型結合アッセイ(SPA and Cytostar−T flashplate technology;Amersham Pharmacia Biotech)において該分子を固定化して、放射能標識リガンドの結合および結合部位に対するコンペティターによるそのような放射性リガンドの置換を検出するために有用である。放射能は、96−、384−、1536穴ミクロタイターウェル形式からの迅速測定を可能にするPackard Topcountまたは類似の装置を用いて測定することができる。SPA/Cytostar−T技術は、高処理スクリーニングを特に受け入れることができ、したがって、この技術は、標準的リガンドを置換できる化合物のスクリーニングとして使用するために適当である。
【0080】
さらに、これらのスクリーニング方法は、酵素の酵素活性に適当な検出系を用いて、候補化合物が、該酵素の活性化または阻害によって生成されるシグナルをもたらすか否かを試験してもよい。酵素活性は、一般に、処理によって測定可能なシグナルを与える適当な
基質を用いて調査される。HDACの活性/活性化を測定するアッセイは、一般に、当該技術分野においては既知であり、なかんずく、基質としての放射能標識または蛍光標識されたアセチル化ヒストンおよび以下の実施例4において与えられるような標識されたアセチル基の遊離の測定を含む。
【0081】
したがって、本発明は、
a)HDACまたはその機能性フラグメントを、該試験化合物とともにインキュベートし;
b)HDAC酵素の活性に及ぼす試験化合物の影響を測定し:そして
c)この影響を、APPLまたはAPPL関連タンパク質の結合におけるHDAC酵素の活性と比較すること;
を含んでなる、HDACの活性を調節することが可能な試験化合物を同定し、かつ得る方法を提供する。
【0082】
本発明のさらなる実施態様では、HDAC酵素は、
a)アミノ酸配列、配列番号:5またはその同族体を有するHDAC1であって、該同族体は配列番号:5に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
b)HDAC1の機能性フラグメント;または
c)アミノ酸配列、配列番号:6またはその同族体を有するHDAC1のヒストンデアセチラーゼ・ドメインであって、該同族体は配列番号:6に対して少なくとも70、80、85、90、95、96、97、98または99%の配列同一性を有する;
からなる群から選ばれる。
【0083】
HDAC酵素に及ぼす試験化合物の影響は、典型的には、基質として放射能標識または蛍光標識されたアセチル化ヒストンを用い、そして標識されたアセチル基の遊離を測定して調査される。特に以下の実施例4において与えられるような放射能標識されたアセチル化ヒストンH4を用いて。
【0084】
APPLまたはAPPL関連タンパク質とHDACとの相互作用の発見が、また、
a)APPLまたはAPPL誘導体によるHDAC上の結合部位の構造を探査し;
b)結合においてAPPLリガンドと相互作用するHDACタンパク質の結合部位において接触する原子を同定し;
c)HDAC酵素の活性を調節するように、(b)において同定された原子と相互作用する試験化合物を設計し;そして
d)該設計された試験化合物をHDACまたはその機能性フラグメントと接触させて、HDAC活性を調節する該化合物の能力を測定すること;
によって、HDACのアゴニストまたはアンタゴニストの構造に基づくまたは合理的な設計のための方法において使用されてもよいことは、当業者によって容易に評価できる。
【0085】
これが普通に繰り返される方法であることはさらに評価できる。
【0086】
さらに、本発明は、APPL結合部位と相互作用する試験化合物の潜在性を評価するための方法を提供し、該方法は、
(a)APPL結合部位の三次元構造を系統的に表す分子造形技術を用い;
(b)試験化合物とAPPL結合部位の三次元構造との間の適合化操作を実施するコンピューター手段を使用し;そして
(c)該適合化操作の結果を分析して試験化合物とAPPL結合部位の三次元構造との会合を定量化すること;
を含む。
【0087】
分子造形技術は当該技術分野においては既知であり、レセプターおよび酵素コンフォメーションの模型の創出と利用のために適当な両ハードウェアおよびソフトウェアを含む。
【0088】
多様なコンピュータープログラムが利用でき、そして本明細書で記述される方法における潜在的なatpE相互作用化合物のコンピューター造形、模型製作、およびコンピューターによる同定、選択および評価の処理のために適する。これらは、例えば、GRID(Oxford University,UKから得られる)、MCSS(Accelry,Inc.,SanDiego,CAから得られる)、AUTODOCK(Oxford Molecular Groupから得られる)、FLEXX(Tripos,St.Louis,MOから得られる)、DOCK(University of California,San Francisco,CAから得られる)、CAVEAT)(University of California,Berkeleyから得られる)、HOOK(Accelry,Inc.,San Diego,CAから得られる)および3Dデータベース・システム、例えばMACCS−3D(MDL Information Systems,San Leandro,CAから得られる)、UNITY(Tripos,St,Louis,MOから得られる)およびCATALYST(Accelry,Inc.,San Diego,CAから得られる)を含む。潜在的な候補物質はまた、LUDI(Biosym Technologies,San Diego,CAから得られる)、LEGEND(Accelry,Inc.,San Diego,CAから得られる)およびLEAPFROG(Tripos,St,Louis,MOから得られる)のようなソフトウェア・パッケージを用いて、「初めから」コンピューターにより設計されてもよい。化合物ひずみエネルギーおよび静電反発は、GAUSSIAN 92,AMBER、QUANTA/CHARMMおよびINSIGHT II/DISCOVERのようなプログラムを用いて解析されてもよい。これらのコンピューター評価および造形技術は、例えば、Silicon Graphics,Sun Microsystemsおよびその他から得られるワークステーションを含むいかなる適当なハードウェアにおいて実行されてもよい。これらの造形技術、方法、ハードウェアおよびソフトウェアパッケージは代表的なものであり、そして包括的なリストであることを意図していない。当該技術分野において既知の他の造形技術もまた本発明にしたがって用いられてもよい。例えば、N.C.Cohen,Molecular Modeling in Drug Design,Academic Press(1996)参照。
【0089】
本発明の1つの実施態様では、APPL結合性部位の三次元構造は、HDAC8タンパク質の原子座標(Protein Database 1W22)+/−10Å以下、好ましくは5Å以下の該アミノ酸の骨格原子の根平均平方偏差を用いて生成される。
【0090】
治療的使用
一般に、アゴニストまたはアンタゴニストは、前述されたような疾病に対する治療的および予防的目的のために使用されてもよい。化合物は、種々の起源、例えば細胞、無細胞調製物、化学ライブラリーおよび自然生産物混合物から同定されてもよい。そのように同定されたアゴニストまたはアンタゴニストは、場合によっては受容体ポリペプチドの、天然または改変ペプチド、リガンド、酵素などであってもよく;または、それらの構造的または機能的模倣物であってもよい(参照、Coligan et al.,Current Protocols in Immunology 1(2):Chapter 5(1991))。
【0091】
したがって,本発明は、腫瘍の増殖を抑制する処置において、医薬としての、そして使用のためのAPPL結合性フラグメントまたはその同族体の使用に関する。抑制されてもよい腫瘍の例は、限定されるものではないが、肺がん(例えば、非小細胞肺がんを含む腺
がん)、膵臓がん(例えば、外分泌膵臓がん腫のような膵臓がん腫)、結腸がん(例えば、結腸腺がんおよび結腸腺腫のような結腸直腸がん腫)、後生的疾病を含む前立腺がん、リンパ様系統の造血性腫瘍(例えば、急性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫)、骨髄性白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML))、甲状腺胞状がん、脊髄異形成症候群(MDS)、間葉原発の腫瘍(例えば、線維肉腫および横紋筋肉腫)、黒色腫、奇形がん、神経芽細胞腫、膠腫、皮膚の良性腫瘍(例えば、角化棘細胞腫)、乳がん(例えば、後生的乳がん)、腎臓がん、卵巣がん、膀胱がんおよび表皮がんである。
【0092】
好適な実施態様では、該APPL結合性フラグメントは配列番号:7からなるか、または先に定義された共通配列を含む。より好適な実施態様では、該APPL結合性フラグメントは、配列番号:7またはその同族体からなり、該同族体は配列番号:7に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の配列同一性を有する。
【0093】
したがって、本発明は、さらに、本発明によるアッセイにおいて同定された化合物に関し、ここで、該化合物はHDAC酵素に結合可能であり、そして/またはその活性を調節することが可能であり、そして該化合物は、前記アッセイのいずれかにおいて決定されるような酵素のアゴニストまたはアンタゴニストのいずれかである。さらにそれは、腫瘍の増殖を抑制する処置において、医薬として、そして使用のための該化合物の使用に関する。抑制されてもよい腫瘍の例は、限定されるものではないが、肺がん(例えば、非小細胞肺がんを含む腺がん)、膵臓がん(例えば、外分泌膵臓がん腫のような膵臓がん腫)、結腸がん(例えば、結腸腺がんおよび結腸腺腫のような結腸直腸がん腫)、後生的疾病を含む前立腺がん、リンパ様系統の造血性腫瘍(例えば、急性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫)、骨髄性白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML))、甲状腺胞状がん、脊髄異形成症候群(MDS)、間葉原発の腫瘍(例えば、線維肉腫および横紋筋肉腫)、黒色腫、奇形がん、神経芽細胞腫、膠腫、皮膚の良性腫瘍(例えば、角化棘細胞腫)、乳がん(例えば、後生的乳がん)、腎臓がん、卵巣がん、膀胱がんおよび表皮がんである。
【0094】
かくして、さらなる態様では、本発明は、HDAC酵素活性を調節するのに有効な量において、場合によっては製薬学的に許容できる担体と組み合わせて、APPL関連タンパク質およびAPPL結合性フラグメントを含む前記HDAC調節化合物の治療学的に有効な量を哺乳動物被験者に投与することを含む、HDAC活性の障害に関係する医学的症状を予防、処置または軽減する方法を提供する。そのような担体は、限定されるものではないが、食塩水、緩衝化食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノールおよびそれらの組み合わせ物を含む。さらに本発明は、本発明の前述の組成物の1種以上の成分を充填された1種以上の容器を含んでなる製薬学的包装物およびキットに関する。本発明のポリペプチドおよび他の化合物は、単独でも、また他の化合物、例えば治療化合物と一緒に使用されてもよい。
【0095】
本組成物は、全身的または経口経路のような投与経路に適応されてもよい。全身的投与の好適な形態物は典型的には静脈内注射による注射を含む。他の注射経路、例えば皮下、筋肉内または腹腔内経路が使用されてもよい。全身的投与の代替手段は、浸透剤、例えば胆汁塩またはフシジン酸または他の界面活性剤を用いる経粘膜および経皮投与を含む。さらに、本発明のポリペプチドまたは他の化合物は腸溶性またはカプセル化調合物において調合できる場合には、また経口投与も可能である。これらの化合物の投与は、パッチ剤、軟膏剤、パスタ剤、ゲル剤などの形態における局所的および/または局部的に実施される。
【0096】
要求される用量範囲は、本発明のペプチドまたは化合物の選択、投与経路、調合物の性質、被験者の症状の性質、および担当医療実施者の判断により異なる。しかしながら、適
当な用量は、0.01mg/kg〜300mg/kg体重、特に5mg/kg〜150mg/kg体重、なおより特に2mg/kg〜100mg/kg体重の範囲である。しかしながら、利用される種々の化合物および種々の投与経路の異なる効力の観点から、必要な用量における幅広い変化が期待される。例えば、経口投与は、静脈内注射によるよりも高い用量を必要とすることが予期されるであろう。これらの用量レベルにおける変化は、当該技術分野では周知であるように、最適化のための標準の経験的慣例手段を用いて調節することができる。一般に、細胞増殖性障害、例えばアテローム性動脈硬化、再狭窄およびがんを処置するための治療作用物として投与されるHDACモジュレーターの量は、担当する医者によってケース・バイ・ケースで決定される。
【0097】
本発明は次に示す実験的詳細を引用してより良く理解できるが、これらが単に本発明の具体的な説明であって、以下に示す請求項においてより完全に記述されることを、当業者は容易に評価できる。さらに、本出願を通じて種々の公表物が引用される。これらの公表物の開示は、それによって、本発明が属する技術の状態をより完全に記述するために、本出願中に引用によって組み入れられている。
【実施例】
【0098】
例1:新規HDAC1結合性タンパク質としてのAPPLの同定
新規なHDAC1会合タンパク質を同定するために、酵母ツーハイブリッド・スクリーニング(two−hybrid screen)が、ヒト脳のcDNAライブラリーに対するバイト(bait)として全長HDAC1を用いて実施された。これにより、既にAPPLまたはDIP13α、細胞のシグナル伝達において重要な機能を発揮するであろうアダプタータンパク質、として記述されている、PTBドメインを含有するタンパク質のフラグメント(aa489−639)の同定がもたらされた。同定されたAPPLのフラグメント(aa489−639)は、APPLのPTBドメイン(aa500−634)と完全に重複し、そしてさらにAPPL−PTBと呼ばれる。
【0099】
例2:HDAC1およびAPPLの相互作用
HDAC1とAPPLのフラグメント(アミノ酸489−639)との間の相互作用が真核細胞においてもまた起きるか否かを決定するために、一連の同時免役沈降アッセイがHEK239細胞において実施された。図1Aに示されるように、APPL−PTBは、両タンパク質が過発現された場合(列4)、HDAC1と同時免役沈降された。複合体はHDAC1過発現の不在下では検出されなかったので、この相互作用は特異的である(図1A、列2−4)。逆免役沈降、すなわちAPPL−PTBの逆免役沈降もまた、HDAC1の同時免役沈降をもたらした(データ未掲載)。APPLのPTBドメイン単独がHDAC1と有効な同時免役沈降を既に示したという事実は、このドメインが相互作用のために十分であることを示す。PTBドメインは、リン酸化NPXpYモチーフ、HDAC1には存在しないモチーフと相互作用することが初めて見出された。しかしながら、近年の公表物は、PTB結合がNPXpYモチーフ12,13には厳密には依存しないことを示している。
【0100】
続いて、本発明者らは、HDAC1と全長APPLタンパク質間の相互作用を確認した。V5−APPLは、これらの両タンパク質が同時にトランスフェクトされた場合、HDAC1−flagとともに同時免役沈降された(列4、図1B)。結果的に、本発明者らは、過発現されたHDAC1が、単離されたAPPLのPTBドメインならびに全長タンパク質の両方と相互作用すると言うことができる。興味あることには、今日まで、APPLに結合すると記述された全てのタンパク質、すなわち、Akt2、DCC、FSHRおよびRab57−10が、APPL PTB(ホスホチロシン結合)ドメインを介して相互作用する。したがって、本発明者らは、全てのAPPL−PTB結合性パートナーを整列させ、そしてHDAC1のアミノ酸残基51および88間に置かれ(図5)、そして配列番号:7を含む、強い共通配列を同定した。興味あることには、同じ共通性は、HDAC2、HDAC3およびHDAC8を含む全クラスIのHDACにおいて同定されたが、クラスIIまたはクラスIIIファミリーメンバーのいずれにおいても同定されなかった。多数のシグナル伝達タンパク質がAPPLに結合するという事実は、スカフォードタンパク質としてのAPPLの可能性のある役割を教える。APPLのPTBドメインは各相互作用に必要であるので、このことは、種々の結合性パートナーが互いに競合するかもしれないことを示唆する。本発明者らは、Akt2の過発現がAPPLとHDACとの同時免役沈降を阻止する(データ未掲載)ことを見出したが、このことはHDAC1とAkt2がAPPLとの結合に対して競合することを示している。
【0101】
例3:内因性HDAC1およびAPPLは共に局在している
内因性APPLおよびHDAC1が相互作用するか否かを決定するために、本発明者らは、ヒトのMDA−MB−231乳がんおよびA2780卵巣がん細胞におけるAPPLおよびHDAC1の局在を免役細胞化学を用いて研究した。図2は、間期の細胞におけるHDAC1およびAPPLの共局在を示す。APPLの染色は、細胞質に顕著に存在する粒状構造を示し、このことは、またTesta et alによって既に記述されている。しかしながら、少部分のAPPL小胞は核に局在していて、それらはHDAC1と重複する。内因性APPLおよびHDAC1シグナルの共局在の共焦点3D解析は、核の内側でAPPLおよびHDAC1の明瞭な重複を示した(図2、ピクセル強度グラフ)。これは、タンパク質が、実際に静止状態の細胞において相互作用する可能性をもつことを示す。これらの2種のタンパク質が細胞周期の進行中に如何にして相互作用できるかを評価するために、本発明者らは、有糸分裂中の細胞におけるAPPLおよびHDAC1の局在を評価した(図6)。中期では、HDAC1は染色体の周囲に再組織しているが、一方APPLはより散漫に存在している。後期では、HDAC1は染色体の周囲になお存在している。興味あることには、この特殊な有糸分裂の段階中、APPLは、HDAC1と同じ場所:明確な黄色領域によって明らかなように、分裂しつつある姉妹染色分体の中間において、顕著に局在しているようである。より後期の段階では、両APPLおよびHDAC1はより散漫に発現される。後の終期および細胞質分裂では、APPLおよびHDAC1は再分布する。HDAC1は、この段階では核においてのみ存在しているが、一方APPLは細胞質において顕著に存在しているので、後の終期および細胞質分裂中には重複は検出できなかった。MDA−MB−231細胞における共局在実験は匹敵する結果を示した;APPLは、より粒状に形成され、そして間期におけるMDA−MB−231細胞の核においては、A2780細胞におけるよりも多いAPPLが存在するようである。A2780細胞においては、より多くのHDAC1が細胞質に存在するように見える。間期の細胞における無刺激条件下では、APPLの少部分のみがHDAC1と共に局在するという事実は、同時免役沈降およびHDAC1活性実験が、技術的に意欲をそそられ、そしてAPPLの過発現の拡大(extend)に依存した理由を説明できる。興味あることには、Miaczynska et al.(2004)は、APPLはHeLa細胞においてEGF刺激により核に移動することを示したが、このことは、EGFシグナル伝達経路の活性化後には、より大量のAPPLおよびHDAC1が相互作用することができることを示唆する。結論として、本発明者らは、内因性APPLおよびHDAC1は明らかに共局在していて、観察される相互作用に関して生理学的関係を強調していると言うことができる。
【0102】
例4:APPLはヒトHEK239細胞においてHDAC1活性を増強する
HDAC1およびAPPLはHEK239細胞において直接相互作用するので、本発明者らは、APPLがHDAC1活性に及ぼす効果をもつか否か疑問に思った。両タンパク質はHEK239細胞において等しく過発現された(図3B)。過発現の48時間後、細胞が溶解され、HDAC1が免役沈降され、そして活性が、[H]アセチル−標識されたヒストンH4ペプチドからの酢酸の遊離を定量することによって調べられた。注目すべ
きは、過発現されたAPPLの存在下では、等量のHDAC1が免役沈降された(図3B、上部パネル)にもかかわらず、HDAC1活性は約4倍増強された(図3A、条件2と4を比較)。これらの結果は、APPLがHDAC1酵素活性の新規なレギュレーターであることを示す。しかしながら、HDAC1活性がAPPLによって如何にして増強されるかは、今日まだ不明確である。HDAC活性の既知の調節メカニズムに基づけば、これは、コアHDAC−NuRD複合体の安定化および/またはHDAC1翻訳後修飾の強化のいずれかを必要とするであろう。
【0103】
例5:過発現されたAPPLはHEK293細胞においてヒストンH3のアセチル化レベルを減少させる
APPLがHDAC1活性を増強するという本発明者らの仮説をさらに確認するために、ヒストンH3のアセチル化状態が決定された。APPLがHDAC1活性に効果を有する場合は、ヒストンH3のアセチル化レベルがAPPL過発現後に減少すると仮定された。したがって、HEK293細胞がAPPLによりトランスフェクトされ、そして48時間後に細胞がpMACS選択システム(実験操作、参照)を用いてトランスフェクトされた集団について富有化された。総タンパク質抽出物が調製され、そしてウエスタンブロットにおいて分析された。APPL過発現の48時間後、ヒストンH3のアセチル化状態における明らかな減少が模倣対照に比較されて検出でき(図4、列2と4を比較)たが、一方、総H3タンパク質レベルは全列において等しいままであった。また、期待されたように、HDAC1の過発現はH3のアセチル化の減少をもたらし、これは、存在する内因性HDAC1活性の量が律速的であることを示している。両過発現タンパク質の存在は、H3のアセチル化レベルをさらには減少させなかった(図4A、列5)が、H3アセチル化が、この実験においてはHDAC1またはAPPLのみによって既に抑制されていた(図5A、列3および4)ことを注目すべきである。この結果は、APPLがヒストンH3のアセチル化状態を減少させ、これはHDAC1活性の増強と合致していることを示す。
【0104】
例6:過発現されたAPPLはHEK293細胞においてp21waf1,cip1タンパク質レベルを減少させる
HDAC1活性は、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤p21waf1,cip1の低発現レベルを維持する際にきわめて重要である2,11。p21waf1,cip1のプロモーターは、数種のSp1結合部位を含有し、これを介してHDAC1が補充される。本発明者らは、APPLがHDAC1活性を特異的に増強し、そしてH3のアセチル化状態を減少する場合は、p21waf1,cip1タンパク質レベルはAPPL過発現により低下するであろうと仮定した。再び、HEK239細胞がHDAC1および/またはAPPLにより48時間トランスフェクトされた。総タンパク質抽出物が調製され、そしてウエスタンブロットにおいて分析された。APPL過発現された場合、p21waf1,cip1タンパク質レベルにおけるほとんど完全な抑制が、対照に比較されて検出できた(図4B、列1と3を比較)。効果は、p16、その他のサイクリン依存性キナーゼ阻害剤では検出できなかったので、この効果はp21waf1,cip1について特異的である。観察されたAPPL媒介のp21waf1,cip1の下方調節が内因性HDAC1活性に依存することを確認するために、本発明者らはHDAC1変異体(HDAC1−H141A)を利用した。この変異体では、ヒスチジン141がアラニン残基によって置換され、そして酵素活性における50%の低下を示す(Hassig et al.,PNAS 95;3519−3524、1998)。しかしながら、HDAC1−H141Aは、Sin3Aクロマチン再形成複合体を形成する能力をなお有する。図4Bに図示したように、H141A変異体の同時発現は、APPLによってp21waf1,cip1の抑制を部分的に反転し(列4と6に比較)、p21waf1,cip1のAPPL媒介抑制におけるHDAC1の重要な役割を例証している。
【0105】
結論
このスクリーニングにおいて、本発明者らは、APPL(PHドメイン、PTBドメインおよびロイシンジッパー・モチーフを含有するアダプタータンパク質)をHDAC1の新規な相互作用因子として同定した。APPLは、またDIP13αとして既知であり、「PHドメイン、PTBドメインおよびロイシンジッパー・モチーフを含有するアダプタータンパク質」7−10を表す。APPLは最初は細胞質タンパク質として記述されたが、それは、近年、EGFによる刺激によって核に移行し、そこでNuRD/Mi2複合体と一時的に相互作用することが報告された。APPLが、細胞周期の調節およびアポトーシスにおいて重要な役割を演じることを示すいくつかの事実がある。第1に、APPLはがん遺伝子Akt2と相互作用することが示された。第2には、プロ・アポトーシスタンパク質DCC(結腸直腸がんにおいて検出された)と相互作用することが記述された。APPLの過発現はDCC誘導の細胞死を増進する。第3に、Miaczynskaらは、近年、siRNAを用いるAPPLのノックダウンがDNA合成に抑制効果を有することを示した。APPLは細胞周期の進行に明らかに影響を与えるけれども、これが起きるメカニズムは現在知られていない。
【0106】
この報告では、本発明者らは、APPLがHDAC1の新規な直接的インターラクター(interactor)であり、そしてその酵素活性の調節における鍵因子であることを示す。APPLの過発現は、HDAC1活性の増強およびそれに続くヒストンH3のアセチル化状態の減少をもたらす。さらにまた、APPL過発現は、発現レベルがHDAC1活性に厳格に依存する重要なGI細胞周期チェックポイント・レギュレーターである、p21waf1,cip1の基礎タンパク質レベルの減少を惹起する。
【0107】
総括すれば、本発明者らは、APPLはHDAC1活性を強化し、そしてHDAC1下流の機能を調節することを見出した。HDAC1活性は腫瘍細胞の増殖のためには決定的であるので、これは、APPLについての発がん性および/またはプロ増殖性役割を具体的に説明している。興味あることには、Miaczynskaら(2004)は、HeLa細胞におけるAPPLのノックダウン後、48時間後のS期において細胞のパーセンテージの明らかな減少があることを、siRNAを用いて示した。結論的に、本発明者らのデータは、APPLがHDAC1と直接相互作用すること、そしてAPPLの過発現がヒストンH3アセチル化およびp21waf1,cip1タンパク質レベルを減少させ、そしてHDAC1の酵素活性を増強することを示す。我々の知見は、APPLが、がん遺伝子HDAC1の活性を調節する上で重要であることを示し、腫瘍細胞の増殖におけるAPPLの鍵となる役割を指摘している。
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】HDAC1はAPPL−PTBドメインおよび全長APPLと同時免役沈降する。 HEK293細胞が、Lipofectamine Plus試薬を用いてHDAC1−flagおよびHA−APPL−PTB(パネルA)またはV5−APPL(パネルB)の指示された組み合わせ物により24時間トランスフェクトされた。その後、全細胞溶解物が、50mMTris−HCl(pH7.5)、120mMNaCl、5m MEDTAおよび0.5%NonidetP−40を含有する低緊縮バッファーにおける溶解によって調製された。HDAC1免役沈降されたタンパク質がSDS−PAGEによって分離され、そしてHA−APPL−PTB(A)またはV5−APPL(B)の同時免役沈降がウエスタンブロットによって追跡された。対照として、免役沈降されたHDAC1−flagタンパク質の総量、ならびに全溶解物中のHDAC1−flag、HA−APPL−PTBおよびV5−APPLの過発現レベルが現された。
【図2】MDA−MB−231およびA2780細胞におけるAPPLおよびHDAC1の共局在(colocalization)。 MDA−MB−231およびA2780細胞が8穴培養チャンバースライドに接種され、そしてMillonigバッファー中4%パラホルムアルデヒド(パネルAおよびB)または冷メタノール(パネルCおよびD)により固定された。スライドはHDAC1およびAPPL特異的抗体(Upstate Biotechnology)およびAPPL(Eurogentechによる注文製造)とともにインキュベートされ、次いでHDAC1のためのAlexa488共役抗マウス(緑色)およびAPPLのためのCy3共役抗ウサギ(赤色)とともにインキュベートされた。DNAはHoechst(青色)によって染色された。パネルAおよびB:MDA−MB−231(パネルA)およびA2780(パネルB)細胞の核における間期中のHDAC1およびAPPLの3D分布を描く合成画像は、ApotomeおよびAxiocam HRを備えた可動Axioplan 2(Zeiss)顕微鏡を用いて光学的セクションのZ−stackシリーズから合成された。外側のパネルは、Z−stackをとおしてのXZ(赤色矩形)およびYZ(青色矩形)ディメンションを示す。外側のパネルにおける白色三角は、Z−stackにおけるXY画像の場所を示す。ピクセル(pixel)強度グラフは、XY画像における黄色矢印に沿った3チャンネル(青=Hoechst;緑=HDAC1、赤=APPL)のピクセル値を表す。Aにおける白色矢印は、両HDAC1およびAPPLについて高ピクセル(pixel)値を有する領域を印す。
【図3】APPL過発現はHEK293細胞においてHDAC1酵素活性を増大する。 HEK293細胞は、HDAC1−flagおよびV5−APPLの指示された組み合わせ物により48時間トランスフェクトされた。パネルA:HDAC1活性が、ヒストンH4ペプチドの[H]アセチル標識されたフラグメント([ビオチン−(6−アミノヘキサノイク)Gly−Ala−(アセチル[H])Lys−Arg−His−Arg−Lys−Val−NH]、Amersham Pharmacia Biotech)とともに免役沈降HDAC1複合体をインキュベートすることによって測定された。遊離された[H]酢酸が酢酸エチルにより抽出され、そしてシンチレーションカウントによって定量された。HDAC1活性の結果は、単一溶解物における3回の独立した実験の平均値±標準偏差として表される。パネルB:等量のHDAC1がウエスタンブロット分析によって示されるように免役沈降された。過発現されたHDAC1−flagおよびV5−APPLタンパク質の量がウエスタンブロットによって全細胞溶解物において現された。
【図4】APPLの過発現がH3アセチル化およびp21waf1,cip1タンパク質の発現を低下させる。 HEK293細胞は、HDAC1−flagおよびV5−APPLの指示された組み合わせ物により48時間トランスフェクトされた。パネルA:トランスフェクトされた細胞集団は、MACSelect−transfected Cell Selection System(Miltenyi Biotec)を用いて濃縮された。パネルAおよびB:全細胞溶解物が、RIPAバッファーにおいて調製され、そしてタンパク質がSDS−PAGEによって分離された。タンパク質発現が、アセチル化H3(Upstate Biotechnology),総H3(abcam)、V5−APPL(Invitrogen)、APPL(Eurogentech)、HDAC1−flag(Sigma)、p21waf1,cip1(Transduction Laboratories)およびp16(BD Pharmingen)の特異的抗原を用いてウエスタンブロットによって分析された。アクチンタンパク質レベル(Oncogene)は、等負荷のための対照として現された。タンパク質−抗体複合体は、製造者の指示にしたがって化学発光(Piece Chemical Co.)および蛍光(Odyssey)によって可視化された。
【図5】PTB結合ドメインにおける全APPL−PTB結合パートナーの整列。 配列名は、UniProt Accession Number HUGO gene symbol speciesとして与えられる。下線は共通配列を提供し、ここで、3は、炭水化物セリン(S)またはトレオニン(T)を表し;4は、塩基性アミノ酸残基リジン(K)またはアルギニン(R)を表し;5は、芳香族アミノ酸残基フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)またはトリプトファン(W)を表し;そして6は、疎水性アミノ酸残基ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)またはメチオニン(M)を表す。
【図6】種々の有糸分裂段階におけるMDA−MB−231細胞のApotome画像。 MDA−MB−231細胞が8穴培養チャンバースライドに接種され、そして冷メタノールにより固定された。スライドはHDAC1−(Upstate Biotechnology)およびAPPL−(Eurogentechによる注文製造)特異的抗体とともにインキュベートされ、次いでHDAC1のためのAlexa488共役抗マウス(緑色)およびAPPLのためのCy3共役抗ウサギ(赤色)とともにインキュベートされた。DNAはHoechst(青色)によって染色された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
APPLまたはAPPL関連タンパク質とHDAC酵素との相互作用の使用をなすアッセイ。
【請求項2】
APPLまたはAPPL関連タンパク質が、
i)アミノ酸配列、配列番号:2を含んでなる、APPLをコードしている単離されたポリペプチド;
ii)APPLから誘導され、そしてHDACに結合することが可能な単離されたポリペプチド;または
iii)アミノ酸配列、配列番号:3またはその同族体を含んでなる、APPLのHDAC結合性フラグメントをコードしている単離されたポリペプチドであって、該同族体は配列番号:3に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の配列同一性を有する;
からなる群から選ばれる、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項3】
HDAC酵素が、
i)アミノ酸配列、配列番号:5またはその同族体を含んでなる、HDAC1をコードしている単離されたポリペプチドであって、該同族体は配列番号:5に対して少なくとも70、80、85、90、95、96、97、98または99%の配列同一性を有する;または
ii)アミノ酸配列、配列番号:6またはその同族体を含んでなる、ヒストンデアセチラーゼ・ドメインをコードしている単離されたポリペプチドであって、該同族体は配列番号:6に対して少なくとも70、80、85、90、95、96、97、98または99%の配列同一性を有する;
iii)アミノ酸配列、配列番号:7またはその同族体を含んでなる、APPL結合性フラグメントをコードしている単離されたポリペプチドであって、該同族体は配列番号:7に対して少なくとも70、80、85、90、95、96、97、98または99%の配列同一性を有する;
からなる群から選ばれる、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項4】
アミノ酸配列、配列番号:7によってコードされた単離され、精製されたAPPL結合性フラグメント。
【請求項5】
核酸、配列番号:4の235〜336によってコードされたAPPL結合性フラグメントをコードしている単離され、精製された核酸分子。
【請求項6】
請求項1に記載のアッセイにおける、APPLまたはAPPL関連タンパク質をコードしている単離され、精製された核酸分子の使用。
【請求項7】
請求項1に記載のアッセイにおける、HDAC1またはそのフラグメントをコードしている単離され、精製された核酸分子の使用。
【請求項8】
a)HDAC酵素またはそのフラグメントを含有する給源を、
i)APPLまたはAPPL関連タンパク質、
ii)該試験化合物
とともにインキュベートし;そして
b)酵素に結合されたAPPLまたはAPPL関連タンパク質の量に及ぼす試験化合物の影響を測定すること:
を含んでなる、HDAC酵素を結合することが可能な試験化合物を同定し、かつ得る方法

【請求項9】
HDACを含有する給源が、
a)アミノ酸配列、配列番号:5またはその同族体を有する、単離され、精製されたHDAC1タンパク質であって、該同族体は配列番号:5に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
b)アミノ酸配列、配列番号:6またはその同族体を有する、単離され、精製されたAPPL結合性フラグメントであって、該同族体は配列番号:6に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
c)アミノ酸配列、配列番号:7またはその同族体を有する、単離され、精製されたAPPL結合性フラグメントであって、該同族体は配列番号:7に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
からなる群から選ばれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
APPLまたはAPPL関連タンパク質が、
a)アミノ酸配列、配列番号:2を含んでなる、APPLをコードしている単離されたポリペプチド;
b)APPLから誘導され、そしてHDACに結合することが可能な単離されたポリペプチド;
c)アミノ酸配列、配列番号:3またはその同族体を含んでなる、APPLのHDAC結合性フラグメントをコードしている単離されたポリペプチドであって、該同族体は配列番号:3に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の同一性を有する;
からなる群から選ばれる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
単離され、精製されたHDAC1タンパク質またはAPPL結合性フラグメントが固体支持体に結合される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
APPLまたはAPPL関連タンパク質が標識され、そして該標識が、酵素に結合されたAPPLまたはAPPL関連タンパク質の量に及ぼす試験化合物の影響を測定するために使用される、請求項8〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
方法が、段階:
a)APPLまたはAPPL関連タンパク質によるHDAC上のリガンド結合部位の構造を探査し;
b)結合においてAPPLリガンドと相互作用するHDAC酵素のリガンド結合部位において接触する原子を同定し;
c)HDAC酵素の活性を調節するように、(b)において同定された原子と相互作用する試験化合物を設計し;そして
d)該設計された試験化合物をHDACまたはその機能性フラグメントと接触させて、HDAC活性を調節する該化合物の能力を測定すること;
を含んでなる合理的な薬物設計の方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
a)HDACまたはその機能性フラグメントを、該試験化合物とともにインキュベートし;
b)HDAC酵素の活性に及ぼす試験化合物の影響を測定し:そして
c)この影響を、APPLリガンドまたはAPPL関連タンパク質の結合におけるHDAC酵素の活性と比較すること;
を含んでなる、HDACの活性を調節することが可能な試験化合物を同定し、かつ得る方法。
【請求項15】
HDAC酵素が、
a)配列番号:5のアミノ酸配列またはその同族体を有するHDAC1であって、該同族体は配列番号:5に対して少なくとも70、80、85、90、95、97、98または99%の配列同一性を有する;
b)HDAC1の機能性フラグメント;または
c)アミノ酸配列、配列番号:6またはその同族体を有するHDAC1のヒストンデアセチラーゼ・ドメインであって、該同族体は配列番号:6に対して少なくとも70、80、85、90、95、96、97、98または99%の配列同一性を有する;
からなる群から選ばれる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
HDAC酵素に及ぼす試験化合物の影響が、基質として放射能標識または蛍光標識されたアセチル化ヒストンを用い、そして標識されたアセチル基の遊離を測定して調査される、請求項14〜15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
基質が放射能標識されたアセチル化ヒストンH4ペプチドである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
化合物がHDAC酵素に結合し、そして/またはその活性を調節することが可能である、請求項8〜17のいずれか1つにおいて定義される方法のいずれか1つによって同定され、かつ得られる化合物。
【請求項19】
請求項8〜17のいずれか1つにおいて定義される方法のいずれか1つによって同定された化合物および製薬学的に許容できる添加物または担体を含んでなる、製薬学的組成物。
【請求項20】
医薬として使用するための配列番号:7によってコードされたAPPL結合性フラグメント。
【請求項21】
限定されるものではないが、肺がん(例えば、非小細胞肺がんを含む腺がん)、膵臓がん(例えば、外分泌膵臓がん腫のような膵臓がん腫)、結腸がん(例えば、結腸腺がんおよび結腸腺腫のような結腸直腸がん腫)、後生的疾病を含む前立腺がん、リンパ様系統の造血性腫瘍(例えば、急性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫)、骨髄性白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML))、甲状腺胞状がん、脊髄異形成症候群(MDS)、間葉原発の腫瘍(例えば、線維肉腫および横紋筋肉腫)、黒色腫、奇形がん、神経芽細胞腫、膠腫、皮膚の良性腫瘍(例えば、角化棘細胞腫)、乳がん(例えば、後生的乳がん)、腎臓がん、卵巣がん、膀胱がんおよび表皮がんを含む、がんおよび乾癬のような増殖性病状の処置において、医薬として使用するための組成物の製造における、請求項7に記載の配列番号:3によってコードされたHDAC結合性フラグメントまたはAPPL関連ペプチドの使用。
【請求項22】
化合物が、限定されるものではないが、肺がん(例えば、非小細胞肺がんを含む腺がん)、膵臓がん(例えば、外分泌膵臓がん腫のような膵臓がん腫)、結腸がん(例えば、結腸腺がんおよび結腸腺腫のような結腸直腸がん腫)、後生的疾病を含む前立腺がん、リンパ様系統の造血性腫瘍(例えば、急性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫)、骨髄性白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML))、甲状腺胞状がん、脊髄異形成症候群(MDS)、間葉原発の腫瘍(例えば、線維肉腫および横紋筋肉腫)、黒色腫、奇形がん、神経芽細胞腫、膠腫、皮膚の良性腫瘍(例えば、角化棘細胞腫)、乳がん(例えば、後生的乳がん)、腎臓がん、卵巣がん、膀胱がんおよび表皮がんを含む、がんおよび乾癬のような増殖性病状の処置のための組成物の製造におけるHDACアンタゴニストである、請求項8〜17のいずれか1つに記載の方法によって同定され、かつ得られる化合物の使用。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−541749(P2008−541749A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514116(P2008−514116)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062859
【国際公開番号】WO2006/131496
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】