説明

HE4モノクローナル抗体およびそれらの使用方法

患者の卵巣癌を診断し、卵巣癌を有する可能性の増大した患者を特定するための組成物および方法が提供される。組成物は、HE4に特異的に結合するモノクローナル抗体ならびにその変異体および断片を含む。本発明のHE4抗体の結合の特徴を有するモノクローナル抗体が、さらに提供される。本発明のHE4モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系も、本明細書で開示される。本組成物は、卵巣癌を有する可能性の増大した患者を特定するための診断方法ならびにスクリーニング方法に使用される。開示されるHE4モノクローナル抗体の1つまたは複数を含む、本発明の方法を実施するためのキットがさらに提供される。HE4エピトープのアミノ酸配列を含むポリペプチド、および抗体産生においてこれらのポリペプチドを用いる方法も、本発明に包含される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)に結合することができる抗体、ならびに、特に卵巣癌を診断し、卵巣癌を有する可能性の増大した患者を特定するための方法において、これらの抗体を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
卵巣癌は、世界中の女性を冒す不均一な群の疾患を表す。卵巣の上皮癌、生殖細胞癌および卵巣間質癌を含む、いくつかの形態の卵巣癌がある。上皮卵巣癌は、この疾患の最も一般的な形態である。約5〜10%の上皮卵巣癌はその疾患の遺伝性の形態を表し、3つの一般的なパターン、すなわち、卵巣癌単独、それぞれ染色体17q21および13q12上のBRAC1およびBRCA2遺伝的連鎖に関連づけられる卵巣および乳癌(breast cancer)、ならびに卵巣および結腸癌が認められる。卵巣癌の最も重要なリスク因子は、その疾患を有する一親等の血縁者(例えば、卵巣癌を有する母、姉妹または娘)である。(例えば、非特許文献1参照)。2005年に、推定で22,000件の卵巣癌診断の新症例および16,000件の卵巣癌による死亡があった。(一般には、非特許文献2および非特許文献3参照)。卵巣癌は、診断の年齢中央値が63歳である閉経女性を主に冒す疾患である。しかし、本疾患はすべての年齢群の女性を冒し得る。(例えば、非特許文献4参照)。
【0003】
卵巣癌病期の分類は、局在化の程度に対する卵巣を越えた疾患の広がりに基づく。第1期卵巣癌は、卵巣の1つまたは両方に限定される。第2期疾患は、卵巣の1つまたは両方の腫瘍を含み、骨盤への拡張を有する。第3期卵巣癌では、腫瘍は1つまたは両方の卵巣に存在し、骨盤外に顕微鏡で確認される腹膜転移および/または局所のリンパ節転移を伴う。第4期卵巣癌は、腹膜腔を越える遠隔転移を特徴とする。卵巣癌は、小さな腫瘍の存在を示す特異的な臨床症状を欠くために、疾患の進行した段階で一般に診断される。50歳未満の女性に関しては、腫瘍が卵巣の1つまたは両方に限定される場合、および疾患の予後が最もよい場合に、40%未満の卵巣癌が検出される。50歳より上の女性に関しては、その数字は15%未満に低下する。卵巣癌に苦しむすべての年齢群の女性の約68%は、遠隔転移が存在するまで診断されない。(一般には、非特許文献4参照)。
【0004】
卵巣癌は、卵巣上皮から腹膜腔への局所脱皮と、続く腹膜への着床ならびに腸および膀胱の局所侵入によって広がる。卵巣癌におけるリンパ節の関与の存在は、診断された卵巣癌のすべての段階で明白である。陽性のリンパ節の割合は、疾患の進行に比例してかなり増加する(すなわち、第1期24%、第2期50%、第3期74%、第4期73%)。(例えば、非特許文献4参照)。
【0005】
卵巣癌患者の生存期間は、その疾患が診断される段階の関数であり、5年生存は疾患の進行に伴い低下する。第1期の卵巣癌と診断される女性の90%を超える者は、診断の後少なくとも5年間生存する。疾患が第4期(すなわち、遠隔転移)まで診断されない場合、5年生存率は30%未満に低下する。(例えば、非特許文献4参照)。
【0006】
上皮卵巣癌は、本疾患の最も一般的な形態である。上皮卵巣癌で認められる4つの主要な組織学的群があり、漿液性、類子宮内膜、明細胞および粘液性のサブタイプが含まれる。卵巣癌の病因は十分によく理解されていないが、卵巣の表面上皮から生じると考えられている。(例えば、非特許文献5参照)。卵巣癌のリスクを最も大きく低下させる生活因子には、経産婦、経口避妊薬の使用および母乳保育が含まれ、そのすべては排卵を阻止する。排卵は上皮損傷と、続く修復、およびおそらくは炎症性応答をもたらすので、女性の生殖的生涯を通してのこの過程の間断のない繰り返しは細胞傷害につながり、卵巣癌のリスクを増加させるようである。(例えば、非特許文献6参照)。しかし、子宮頸癌および結腸癌について認められるもののような明確な前駆病変を通した、卵巣癌の段階的進行は認められていない。したがって、かなりの研究が、卵巣癌の分子基礎を理解すること、および卵巣癌の様々な組織学的サブタイプの間の基本的な差を理解することに向けられてきた。これらの研究は、この理解を提供するために遺伝子発現分析を利用し、診断応用での評価のための一連の可能性のあるバイオマーカーを特定した。(例えば、非特許文献7、8、9、10参照)。
【0007】
卵巣癌は、明白な臨床症状の提示、最も著しくは腹痛、付属器塊、腹部鼓脹および尿意逼迫の提示でしばしば検出される。このように、卵巣癌の検出は進行した段階でしばしば検出され、そこでは、予後および臨床上の結果は劣る。初期段階(すなわち、第1期)での卵巣癌の検出は、標準の手術および化学療法を用いて約90%の治癒率をもたらす。それゆえに、治療が最も有効である初期段階で卵巣癌を検出する臨床上の必要性がある。残念なことに、初期段階の卵巣癌を検出する現在のスクリーニング方法は、不十分である。卵巣癌スクリーニングの現在の慣行は、CA125および経膣的超音波(超音波検査法)の使用を採用する。CA125の血清レベルの上昇は卵巣癌と関連し、その後の経膣的超音波の使用は卵巣癌の存在の検出を助ける。卵巣疾患の確認は、開腹などの侵襲性処置に基づく。しかし、CA125の使用は、限定された感度、限定された特異性および<3%の劣る陽性予測値の問題のために、一般集団のスクリーニングに無効である。(例えば、非特許文献11参照)。その結果、無症候性患者集団における卵巣癌の一般スクリーニングのための推奨について、いかなるコンセンサスもない。(例えば、非特許文献3参照)。高リスク患者については、卵巣癌の検出で一般に認められている手順には、骨盤検査の使用、CA125血清検査の使用および経膣的超音波(超音波検査法)の使用が含まれる。(例えば、非特許文献12参照)。
【0008】
CA125は、通常上皮細胞表面に発現されるよく特徴づけられた腫瘍マーカーであり、正常な患者の血清中に35U/mLでしばしば検出される。CA125の高い血清レベル(>35U/mL)が、約85%の卵巣癌患者でしばしば検出される。卵巣癌患者の残りの15%は、CA125の正常な血清レベルを有する。さらに、CA125は第1期卵巣癌患者の50%だけで上昇し、それにより、卵巣癌の早期発見でのその臨床有用性が限定される。しかし、CA125の上昇した血清レベルは、治療的介入の後の疾患再発のモニタリングに用いられ、これは、FDAによって現在承認されているCA125の用途を表す。さらに、CA125の上昇した血清レベルは、将来の検出可能な卵巣癌を予測させるものである。
【0009】
一般集団での卵巣癌の低い有病率は、疾患の早期発見を促進するスクリーニング検査の開発にとって、かなりの難題となる。卵巣癌などの低い有病率を有する疾患のスクリーニング方法は、高い偽陽性対真陽性の比をしばしば生じ、そのことは、そのようなスクリーニングプログラムの臨床有用性を制限する。可能性のある卵巣癌のための外科的検査に付随するかなりのリスクを考慮すると、臨床的に有用なスクリーニング検査では、実際に卵巣癌を有する女性一人につき、10人を超える女性に手術を受けさせるべきではない(すなわち、少なくとも10%の陽性予測値(PPV))。(例えば、非特許文献13参照)。PPVは特定の疾患または状態の有病率に強く依存し、疾患有病率の差の結果、劇的に変動する。したがって、卵巣癌などの低い有病率の疾患では、比較的低いPPVを有するスクリーニング診断検査でも、かなりの臨床有用性を有する。可能性のある卵巣癌スクリーニングプログラムは、卵巣癌の低い有病率について調整し、バイオマーカー性能および臨床必要性について評価しなければならない。(例えば、非特許文献13、14、15参照)。卵巣癌の検出、特に早期発見のためのバイオマーカーまたはバイオマーカーの一団を特定するための努力にもかかわらず、臨床必要性を満たす適当なスクリーニング検査および診断検査は現在存在しない。今日利用できる方法、例えばCA125の検出は、容認できないほど高い偽陽性率を示す。
【0010】
国立癌研究所の現行推奨は、「CA125などの血清マーカー、経膣的超音波または骨盤検査による卵巣癌のスクリーニングが卵巣癌死亡率の低下をもたらすことを証明するには、不十分な証拠しかない」と述べている(非特許文献16参照)。今日利用できるスクリーニング技術による偽陽性の重大なリスクを考慮して、NCIは卵巣癌のための一般スクリーニング手順の設定を支持していない。このように、卵巣癌のために、標準化されたいかなるスクリーニング検査も存在しない。
【0011】
卵巣癌、例えば上皮卵巣癌(EOC)の5年生存率は、診断時の疾患の病期に大いに依存する。生存の増加は、早期発見(すなわち、第1期または第2期)と関連する。しかし、大多数の卵巣癌は、予後が不良である第3期または4期まで診断されない。したがって、より早期の段階でより多くの卵巣癌を同定する必要性がある。卵巣癌のより早期の同定を可能にするバイオマーカーの特徴づけは、多くの患者に対して臨床上の予後を改善する可能性を有する。そのようなバイオマーカーの1候補は、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)である。HE4はヒト精巣上体組織で最初に観察された、分泌され、グリコシル化されたタンパク質であり、卵巣および乳癌を含むある種の癌で過剰発現される。以後の研究は、HE4タンパク質が女性の生殖管および他の上皮組織にも存在することを示した。HE4遺伝子は、ヒト染色体20q12〜13.1に存在し、20q12染色体領域は卵巣癌でしばしば増幅されることが見出されている。(例えば、本明細書に参照によりその全体が組み込まれる非特許文献17、18、19、20、21、22参照)。したがって、卵巣癌細胞でのHE4の過剰発現は、このタンパク質を、卵巣癌を検出するための、または卵巣癌を有する可能性の高い患者を特定するための方法で、バイオマーカーとして用いることができることを示唆する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,946,778号明細書
【特許文献2】米国特許第5,260,203号明細書
【特許文献3】米国特許第5,455,030号明細書
【特許文献4】米国特許第5,856,456号明細書
【特許文献5】米国特許第5、514、548号明細書
【特許文献6】米国特許第4,816,567号明細書
【特許文献7】米国特許第5,545,403号明細書
【特許文献8】米国特許第5,545,405号明細書
【特許文献9】米国特許第5,998,144号明細書
【特許文献10】米国特許第5、223、409号明細書
【特許文献11】国際公開第92/18619号パンフレット
【特許文献12】国際公開第91/17271号パンフレット
【特許文献13】国際公開第92/20791号パンフレット
【特許文献14】国際公開第92/15679号パンフレット
【特許文献15】国際公開第93/01288号パンフレット
【特許文献16】国際公開第92/01047号パンフレット
【特許文献17】国際公開第92/09690号パンフレット
【特許文献18】国際公開第90/02809号パンフレット
【特許文献19】米国特許第4,708,871号明細書
【特許文献20】米国特許第4,873,192号明細書
【特許文献21】欧州特許出願公開第75,444号明細書
【特許文献22】米国特許出願第11/699,229号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Patridge et al. (1999) CA-A Cancer Journal for Clinicians 49:297-320
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【非特許文献56】Smith and Waterman (1981) Adv. Appl. Math. 2:482-489
【非特許文献57】Current Protocols in Immunology. Indirect Antibody Sandwich ELISA to Detect Soluble Antigens, John Wiley & Sons, 1991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記を考慮すると、その過剰発現が卵巣癌または患者が卵巣癌を有する可能性の増大を示すことができるHE4のようなバイオマーカーの発現を検出することができる抗体の必要性が当技術分野に存在する。そのような抗体は、卵巣癌を診断するための方法、または、卵巣癌を有する可能性の増大した患者を特定するための方法で用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
卵巣癌を診断し、卵巣癌を有する可能性の増大した患者を特定するための組成物および方法が提供される。組成物は、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)に結合することができるモノクローナル抗体を含む。抗原結合性断片およびこれらのモノクローナル抗体の変異体、これらの抗体を産生することができるハイブリドーマ細胞系、ならびに本発明のモノクローナル抗体を含むキットも、本明細書に包含される。
【0016】
本発明の組成物は、癌の診断方法、および、卵巣癌を有する可能性の増大した患者を特定するためのスクリーニング方法で有用であることがわかった。本明細書で記載されるように、患者の卵巣癌を診断する方法は、2抗体または「サンドイッチ」ELISA技術を通して患者の身体試料でHE4タンパク質の過剰発現を検出することを一般に含む。卵巣癌を有する可能性の増大した患者を特定するスクリーニング方法は、卵巣癌で選択的に過剰発現する複数のバイオマーカーの発現を、患者の身体試料で検出することを一般に含む。バイオマーカーの過剰発現は、患者が卵巣癌を有する可能性の増大を示す。本発明の方法は、例えば、第一のアッセイステップが第一のバイオマーカー(例えば、HE4)の発現またはバイオマーカーの一団を検出するために実施される、「2段階」分析を含むことができる。第一のバイオマーカーまたはバイオマーカーの一団が過剰発現される場合、第二のバイオマーカーまたはバイオマーカーの一団の発現を検出するために第二のアッセイステップが実施される。第一および第二のバイオマーカーまたはバイオマーカーの一団の過剰発現は、患者が卵巣癌を有する可能性の増大を示す。本発明の方法は、患者試料中のHE4の発現を検出するために、開示されるHE4抗体を利用することができる。本発明の組成物および方法は、それに限定されないが乳癌を含む、他の型の癌の診断または検出でさらに利用することができる。
【0017】
本発明の組成物は、HE4モノクローナル抗体に結合することができるエピトープを含む、単離されたポリペプチドをさらに含む。これらのポリペプチドは、HE4抗体を産生する方法で有用である。HE4エピトープのアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子も、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本明細書の下に記載のサンドイッチELISAアッセイで363A90.1および363A71.1と命名されたHE4モノクローナル抗体を用いて、55歳を超える患者からの試料(A)で得られたHE4の受信者動作特性(ROC)(receiver Operating Characteristic)プロットを示す図である。
【図1B】本明細書の下に記載のサンドイッチELISAアッセイで363A90.1および363A71.1と命名されたHE4モノクローナル抗体を用いて、様々な年齢の患者の試料(B)で得られたHE4の受信者動作特性(ROC)(receiver Operating Characteristic)プロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
患者の卵巣癌を診断し、卵巣癌を有する可能性の増大した患者を特定するための組成物および方法が提供される。組成物は、卵巣癌細胞で過剰発現されることが示されているタンパク質であるHE4に結合することができるモノクローナル抗体を含む。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系も、開示される。本明細書で記載のモノクローナル抗体を含むキットが、さらに提供される。本組成物は、下で詳述するように、患者の卵巣癌を診断するための「サンドイッチ」ELISA方法、および卵巣癌を有する可能性の増大した患者を特定するためのスクリーニング方法で特に有用である。
【0020】
本発明の組成物は、HE4、またはその変異体もしくは断片に特異的に結合するモノクローナル抗体を含む。詳細には、363A90.1および363A71.1と命名されたHE4抗体が提供される。HE4モノクローナル抗体363A90.1および363A71.1を産生するハイブリドーマ細胞系は、米国微生物系統保存機関(American Type Culture Collection)(ATCC)の特許寄託所、マナッサス、バージニア州、20110−2209に2007年2月9日に寄託され、それぞれ特許寄託番号PTA−8196およびPTA−8195を割り当てられた。これらの寄託物は、特許手順のための微生物寄託の国際認証に関するブダペスト条約(Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purposes of Patent Procedure)の条項の下で維持される。これらの寄託物は当業者の便宜のためだけになされ、寄託物が米国特許法第112条の下で必要とされることを認めるものではない。
【0021】
モノクローナル抗体363A90.1および363A71.1の結合の特徴を有する抗体も、本明細書で開示される。そのような抗体には、それらに限定されないが、競合結合アッセイでこれらの抗体と競合する抗体、ならびにモノクローナル抗体363A90.1または363A71.1に結合することができるエピトープに結合する抗体が含まれる。HE4に特異的に結合する能力を保持するモノクローナル抗体363A90.1および363A71.1の変異体および断片も、提供される。組成物は、本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系、および本明細書で開示される少なくとも1つのモノクローナル抗体を含むキットをさらに含む。
【0022】
「抗体」および「免疫グロブリン」(Ig)は、同じ構造特性を有する糖タンパク質である。抗体は抗原に対して結合特異性を示すが、免疫グロブリンは、抗体および抗原特異性のない他の抗体様分子を含む。後者の種類のポリペプチドは、例えば、リンパ系によって低レベルで、骨髄腫によって高いレベルで産生される。
【0023】
用語「抗体」および「複数の抗体(antibodies)」は、広義には抗体の天然の形態および単鎖抗体、キメラおよびヒト化抗体のような組換え抗体、多重特異的抗体、ならびに上のすべての断片および誘導体を包含し、それらの断片および誘導体は少なくとも抗原結合部位を有する。抗体誘導体は、抗体にコンジュゲートしたタンパク質または化学部分を含むことができる。用語「抗体」は最も幅広い意味で用いられ、完全に組み立てられた抗体、抗原に結合することができる抗体断片(例えば、Fab’、F’(ab)2、Fv、単鎖抗体、ダイアボディ)、および上記のものを含む組換えペプチドを含む。本明細書で用いるように、「HE4抗体」は、任意のHE4アイソフォーム、特にHE4アイソフォームT1(配列番号1)、またはその変異体もしくは断片に特異的に結合する任意の抗体を指し、親抗体の抗原結合機能を保持するモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単鎖抗体、およびその断片を含む。下の表1で詳述されるように、T1〜T5と命名された、HE4タンパク質の5つのアイソフォームが知られている。各アイソフォームが特定のHE4抗体に関連するエピトープ配列を含む限り、本発明のHE4モノクローナル抗体が複数のHE4アイソフォームに結合することができることを、当業者は理解するであろう。
【0024】
【表1】

【0025】
本発明のHE4抗体は、最適にはモノクローナル抗体である。本明細書で用いる用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在することのある可能な自然突然変異を除いて同一である。
【0026】
「天然の(native)抗体」および「天然の免疫グロブリン」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖で構成される、約150,000ダルトンのヘテロテトラマー糖タンパク質である。各軽鎖は1つの共有結合ジスルフィド結合によって重鎖に連結されるが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の間で異なる。各重鎖および軽鎖は、規則正しく間隔をあけた鎖内部のジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、その一端に可変ドメイン(VH)と、それに続くいくつかの定常ドメインを有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V,)を、他方の端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第一の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。個々のアミノ酸残基は、軽鎖と重鎖の可変ドメインの間で境界面を形成すると考えられている。
【0027】
用語「可変」は、可変ドメインのある部分の配列が抗体間で大きく異なり、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合および特異性で利用されるという事実を指す。しかし、可変性は、抗体の可変ドメイン全体に均一に分布しているわけではない。それは、軽鎖および重鎖の可変ドメインの両方の相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる3つの区分に濃縮される。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク(FR)領域と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは各々4つのFR領域を含み、そのほとんどはp−シート配置を採用し、3つのCDRによって連結され、それらはp−シート構造を連結するループ、場合によってはその一部を形成するループを形成する。各鎖のCDRは、FR領域によって他の鎖からのCDRに近接して一緒に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(例えば、非特許文献23参照)。
【0028】
定常ドメインは抗体を抗原に結合することに直接関与していないが、抗体依存性細胞毒性における抗体の関与のような様々なエフェクタ機能を示す。
【0029】
本明細書で用いる場合、用語「超可変領域」は、抗原結合のための役割を担う抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域(complementarily determining region)」すなわち「CDR」からのアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメイン中の残基24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)、ならびに重鎖可変ドメイン中の31〜35(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3)(非特許文献24))ならびに/または「超可変ループ」からの残基(すなわち、軽鎖可変ドメイン中の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)、ならびに重鎖可変ドメイン中の2632(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3)(非特許文献25)を含む。「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書でみなされる超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0030】
「抗体断片」は、完全(intact)な抗体の一部、好ましくはその完全な抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFv断片;ダイアボディ;線状抗体(非特許文献26);単鎖抗体分子;ならびに、抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。抗体のパパイン消化から、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合性断片が生じ、それぞれは単一の抗原結合部位、および、その名称が容易に結晶するその能力を反映する残留性「Fc」(residual "Fc")断片を含む。ペプシン処理から、2つの抗原結合部位を有し、抗原を架橋させる能力を今まで通り保持するF(ab’)2断片が得られる。
【0031】
「Fv」は、完全な抗原認識および抗原結合部位を含む、最小限の抗体断片である。2鎖Fv種では、この領域は、密接な、非共有的に結合した1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。単鎖Fv種では、軽鎖および重鎖が2鎖Fv種のそれに類似した「二量体」構造で結合することができるように、1つの重鎖および1つ軽鎖可変ドメインを柔軟なペプチドリンカーによって共有結合で連結することができる。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用してVH−VL二量体の表面の抗原結合部位を規定するのは、この配置においてである。一緒になって、6つのCDRは、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRだけを含むFvの半分)だけでも、抗原を認識して結合する能力を有するが、親和性は結合部位全体よりも低い。
【0032】
Fab断片は、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第一の定常ドメイン(CH1)も含む。Fab断片は、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に、少数の残基が付加されていることにより、Fab’断片と異なる。本明細書で、Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離のチオール基を抱えるFab’の呼称である。F(ab’)2抗体断片は、当初、それらの間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生成された。
【0033】
HE4抗体の断片は、それらが完全長抗体の所望の親和性を保持する限り、本発明に包含される。したがって、例えば、HE4抗体の断片は、HE4抗原に結合する能力を保持する。そのような断片は、対応する完全長抗体に類似した特性によって特徴づけられ、すなわち、その断片はHE4に特異的に結合する。そのような断片は、本明細書で「抗原結合性」断片と称する。
【0034】
抗体の適する抗原結合性断片は、完全長抗体の一部、一般にはその抗原結合性または可変性の領域を含む。抗体断片の例には、それらに限定されないが、Fab、F(ab’)2およびFv断片、ならびに単鎖抗体分子が含まれる。「Fab」は、軽鎖および重鎖の一部で構成される、免疫グロブリンの一価の抗原結合性断片を指すものとする。F(ab’)2は、両軽鎖および両重鎖の一部を含む、免疫グロブリンの二価の抗原結合性断片を指すものとする。「単鎖Fv」または「sFv」抗体断片は、抗体のVHおよびVLドメインを含む断片を指すものとし、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖中に存在する。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、特許文献1、2、3、4参照。一般には、Fvポリペプチドは、sFvが抗原結合のために所望の構造を形成することを可能にする、VHおよびVLドメイン間のポリペプチドリンカーをさらに含む。sFvの総説については、非特許文献27参照。
【0035】
抗体または抗体断片は、例えば、非特許文献28、特許文献5に記載されている技術を用いて生成された抗体ファージライブラリから単離することができる。非特許文献29および30には、それぞれ、ファージライブラリを用いた、マウスおよびヒトの抗体の単離が記載されている。以降の刊行物は、鎖シャフリング(非特許文献31)による高親和性(nM範囲)のヒト抗体の産生、ならびに、非常に大きなファージライブラリを構築するための戦略としての組合せ(combinatorial)感染およびインビボ組換えを記載する(非特許文献32)。したがって、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離のための、従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術に対する実行可能な代替形態である。
【0036】
抗体断片の生成のために、様々な技術が開発されてきた。伝統的に、これらの断片は、完全な抗体のタンパク分解性の消化を通して誘導された(例えば、非特許文献33、34参照)。しかし、これらの断片は、今では組換え宿主細胞によって直接生成することができる。例えば、抗体断片は、上述の抗体ファージライブラリから単離することができる。あるいは、Fab’−SH断片を大腸菌(E. coli)から直接回収し、化学的に結合してF(ab’)2断片を形成することができる(非特許文献35)。別のアプローチによると、組換え宿主細胞培養からF(ab’)2断片を直接分離することができる。抗体断片の生成のための他の技術は、当業者にとって明らかとなる。
【0037】
好ましくは、本発明の抗体は、本質的にモノクローナルである。上で示したように、「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指すものとし、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在することのある可能な自然突然変異を除いて同一である。この用語は、抗体の種類または供給源に関して限定されない。この用語は、全体の免疫グロブリンならびに、抗体の抗原結合機能を保持するFab、F(ab’)2、Fvおよびその他のような断片を包含する。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、単一の抗原部位、すなわち、本明細書の下で規定されるHE4タンパク質中の特定のエピトープに対して誘導される。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対して誘導される異なる抗体を典型的に含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物と対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して誘導される。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を要求するものと解釈すべきでない。例えば、本発明に従って用いられるモノクローナル抗体は、非特許文献36によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製することができ、または、組換えDNA方法(例えば、特許文献6参照)によって作製することができる。「モノクローナル抗体」は、例えば、非特許文献29、非特許文献30、および特許文献5中で記載される技術を用いて、ファージ抗体ライブラリから単離することもできる。
【0038】
モノクローナル抗体は、非特許文献36の方法、またはその改変方法を用いて調製することができる。典型的には、抗原を含む溶液でマウスを免疫化する(immunize)。免疫化(immunization)は、抗原を含有する溶液を生理食塩水で、好ましくはフロイント完全アジュバントのようなアジュバント中で混合または乳化し、混合液または乳濁液を非経口注入することによって実施することができる。本発明のモノクローナル抗体を得るために、当技術分野で公知である任意の免疫化方法を用いることができる。動物の免疫化の後、脾臓(および任意選択で、いくつかの大きなリンパ節)を取り出して、単一の細胞に解離する。細胞懸濁液を対象とする抗原でコーティングしたプレートまたはウェルに加えることで、脾細胞をスクリーニングすることができる。抗原に特異的な膜結合免疫グロブリンを発現するB細胞(すなわち、抗体産生細胞)はプレートに結合し、洗い流されない。次に、生じたB細胞または解離したすべての脾細胞を、ミエローマ細胞(Myeloma cell)と融合してモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを形成するように誘導し、選択培地で培養する。生じた細胞を連続希釈によって平板培養し、対象とする抗原に特異的に結合し(無関係な抗原に結合しない)抗体の産生についてアッセイする。次に、選択されたモノクローナル抗体(mAb)を分泌するハイブリドーマを、インビトロ(例えば、組織培養ビンもしくは中空繊維リアクター)で、またはインビボ(マウスの腹水)で培養する。モノクローナル抗体は、反復接種多重部位技術(Repetitive Immunizations Multiple Sites)(RIMMS)を用いて産生することもできる。例えば、それらのすべては参照により本明細書に完全に組み込まれている、非特許文献37、38、39参照。
【0039】
ハイブリドーマの使用に代わるものとして、CHO細胞系のような細胞系で抗体を産生することができることが特許文献7、8、9に開示されている(これらは参照により本明細書に組み込まれる)。簡潔には、それぞれ軽鎖および重鎖を発現させることができるベクターで細胞系をトランスフェクトする。別々のベクター上で2つのタンパク質をトランスフェクトすることによって、キメラ抗体を産生することができる。別の利点は、抗体の正しいグリコシル化である。組換え組合せ(combinatorial)免疫グロブリンライブラリ(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリ)をバイオマーカータンパク質でスクリーニングし、それによってバイオマーカータンパク質に結合する免疫グロブリンライブラリメンバーを単離することによって、モノクローナル抗体を特定および単離することもできる。ファージディスプレイライブラリを生成およびスクリーニングするためのキットは市販されている(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27−9400−01;およびStratagene SurfZAP19 Phage Display Kit、カタログ番号240612)。さらに、抗体ディスプレイライブラリの生成およびスクリーニングで使用するために特に適合する方法および試薬の例を、例えば特許文献10〜18、非特許文献40〜43に見出すことができる。
【0040】
本発明のモノクローナル抗体の結合の特徴を有する抗体も、提供される。抗体に関して用いられる場合、「結合の特徴(binding characteristics)」または「結合特異性(binding specificity)」は、抗体が比較抗体と同じであるか類似した抗原エピトープを認識することを意味する。そのような抗体の例には、例えば、競合結合アッセイで本発明のモノクローナル抗体と競合する抗体が含まれる。当業者は、標準の方法を用いて、抗体が別の抗体を競合的に妨害するかどうか決定することができよう。
【0041】
「エピトープ」は、それに対して抗体が産生され、それに対して抗体が結合する抗原性分子の部分を指すものとする。「HE4エピトープ」は、HE4タンパク質(またはその特定のアイソフォーム)の部分であって、それに対してHE4モノクローナル抗体が結合する部分を含む。エピトープは、線状アミノ酸残基(すなわち、エピトープ中の残基が線状に次々と連続的に配置される)、非線状アミノ酸残基(本明細書では「非線状エピトープ」と称する;これらのエピトープは連続的に配置されない)、または線状および非線状のアミノ酸残基の両方を含むことができる。典型的には、エピトープは短いアミノ酸配列であり、例えば長さが約5個のアミノ酸である。エピトープを特定するための体系的技術は、当技術分野で公知であり、例えば、特許文献19および下で述べた実施例で記載されている。簡潔には、1つの方法では、抗原由来の一組の重複オリゴペプチド(overlapping oligopeptides)を合成し、固相のピン配列に結合することができ、ただ1つのオリゴペプチドが各ピンの上に置かれる。ピン配列は96ウェルマイクロタイタープレートを含むことができ、96個すべてのオリゴペプチドを、例えばバイオマーカー特異的モノクローナル抗体への結合について、同時に分析することを可能にする。あるいは、ファージディスプレイペプチドライブラリキット(New England BioLabs)が、エピトープマッピング用に現在市販されている。これらの方法を用いて、所与の抗体が結合するエピトープを特定するために、連続するアミノ酸の可能なあらゆるサブセットの結合親和性を決定することができる。抗体を得る動物を免疫化するためにエピトープ長ペプチド配列が用いられる場合、エピトープを推論によって特定することもできる。
【0042】
本発明は、HE4モノクローナル抗体に結合するためのエピトープを含む、単離されたポリペプチドも包含する。これらのポリペプチドは、モノクローナル抗体に結合する抗原(すなわち、HE4)の部分に対応する。そのようなポリペプチドは、HE4に選択的に結合する抗体を産生する方法で有用である。抗体産生で用いられるポリペプチドの能力を、本明細書では「抗原活性」と称する。例えば、配列番号11、12および13で表されるアミノ酸配列(配列番号1で表されるHE4アイソフォーム1アミノ酸配列中の、それぞれ残基83〜94、93〜116および93〜112に対応する)は、HE4モノクローナル抗体、より詳細にはモノクローナル抗体363A90.1および363A71.1によって認識されるエピトープを含む。詳細は実施例4を参照。元のポリペプチドの抗原活性を保持する、配列番号11、12および13で表されるHE4エピトープ配列の変異体および断片も、提供される。本発明は、HE4エピトープを含むポリペプチド、ならびにその変異体および断片をコードする、単離された核酸分子をさらに含む。
【0043】
本明細書の上で記載されるように、HE4に特異的に結合するモノクローナル抗体の産生方法で、HE4エピトープを含む本発明のポリペプチドを用いることができる。そのようなポリペプチドは、ポリクローナルHE4抗体の産生で用いることもできる。例えば、HE4エピトープ(すなわち、免疫原)を含むポリペプチドで適する対象(例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳動物)を免疫化することによって、ポリクローナル抗体を調製することができる。免疫化した対象での抗体力価は、標準の技術、例えば固定化バイオマーカータンパク質を用いる酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって、経時的にモニタリングすることができる。免疫化の後の適当な時間に、例えば、抗体力価が最高のときに、非特許文献44に最初に記載されたハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(非特許文献45)、EBV−ハイブリドーマ技術(非特許文献46)またはトリオーマ(trioma)技術のような標準の技術によって抗体産生細胞を対象から得、これを用いてモノクローナル抗体を調製することができる。ハイブリドーマの産生技術は、公知である(一般には、非特許文献47〜50参照)。
【0044】
本明細書で記載されるHE4エピトープを含むモノクローナル抗体またはポリペプチドのアミノ酸配列の変異体も、本発明に包含される。対象とする抗体をコードするクローン化DNA配列中の突然変異によって、変異体を調製することができる。突然変異誘発およびヌクレオチド配列の変更のための方法は、当技術分野で公知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、非特許文献51〜54、特許文献20、およびその中で引用される参考文献を参照。対象とするポリペプチドの生物活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスは、参照により本明細書に組み込まれている、非特許文献55のモデルに見られる。1個のアミノ酸を類似した特性を有する別のものと交換するなどの、保存的な置換が好ましいことがある。保存的な置換の例には、それらに限定されないが、Gly⇔Ala、Val⇔Ile⇔Leu、Asp⇔Glu、Lys⇔Arg、Asn⇔GlnおよびPhe⇔Trp⇔Tyrが含まれる。
【0045】
対象とするポリペプチドの変異体を構築するにあたって、変異体が、所望の活性、すなわちバイオマーカー(すなわち、HE4)への類似した結合親和性を継続して有するように、修飾(modification)が加えられる。明らかに、変異体ポリペプチドをコードするDNAに加えられた任意の突然変異は、読み枠の外にその配列を置いてはならず、好ましくは、二次的mRNA構造物を生成する相補領域を形成しない。特許文献21参照。
【0046】
好ましくは、参照ポリペプチドの変異体は、参照抗体分子のアミノ酸配列に対して、または参照抗体分子のより短い部分に対して少なくとも70%もしくは75%の配列同一性、好ましくは少なくとも80%もしくは85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%もしくは95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。より好ましくは、分子は少なくとも96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を共有する。本発明の目的のために、配列同一性割合は、12のギャップオープンペナルティ(gap open penalty)および2のギャップ伸長ペナルティ、62のBLOSUMマトリックスでアフィンギャップ検索を用いる、Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムを用いて決定される。Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムは、非特許文献56によって教示されている。変異体は、例えば、わずか1〜15個のアミノ酸残基、わずか1〜10個のアミノ酸残基、例えば6〜10個、わずか5個、わずか4個、3個、2個または1個のアミノ酸残基でも、参照抗体と異なっていてもよい。
【0047】
2つのアミノ酸配列の最適な整列に関して、変異体アミノ酸配列の連続した区分は、参照アミノ酸配列に関して付加アミノ酸残基または欠失アミノ酸残基を有することができる。参照アミノ酸配列との比較のために用いる連続した区分は、少なくとも20個の連続したアミノ酸残基を含み、30個、40個、50個またはそれ以上のアミノ酸残基であることができる。保存的な残基の置換またはギャップと関連する配列同一性のための修正を加えることができる(Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムを参照)。
【0048】
試料中のバイオマーカータンパク質の検出を容易にするために、特に本明細書の下で開示されるサンドイッチELISA方法で使用するために、本発明のHE4モノクローナル抗体を検出可能な物質で標識することができる。そのような抗体は、本発明の方法の実施で有用である。抗体結合の検出を容易にするために、本発明の抗体および抗体断片を検出可能な物質に結合することができる。本明細書で用いる場合、用語「標識」は、「標識された」抗体を産生するために抗体に直接または間接にコンジュゲート(複合体形成(conjugate))される検出可能な化合物または組成物を指す。標識はそれ自体検出可能であることができ(例えば、放射性同位体標識もしくは蛍光標識)、または、酵素標識の場合、検出可能な基質化合物もしくは組成物の化学的改変を触媒することができる。抗体を標識する目的のための検出可能な物質の例には、様々な酵素、補欠分子団、蛍光物質、発光物質、生物発光物質および放射性物質が含まれる。適する酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが含まれ、適する補欠分子団複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが含まれ、適する蛍光物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンが含まれ、発光物質の例には、ルミノールが含まれ、生物発光物質の例には、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが含まれ、適する放射性物質の例には、125I、131I、35Sまたは3Hが含まれる。
【0049】
本発明の組成物は、患者の卵巣癌を診断する方法で特に有用である。「卵巣癌を診断する」ことは、例えば、卵巣癌の存在を診断または検出すること、疾患の進行をモニタリングすること、および卵巣癌を示す細胞または試料を特定または検出することを含むものとする。用語卵巣癌を診断すること、検出すること、および特定することは、本明細書で互換的に用いられる。「卵巣癌」は、疾患のすべての段階(すなわち、第1期〜第4期)を含む。
【0050】
本発明の一実施形態では、2抗体または「サンドイッチ」ELISAが用いられ、患者の身体試料中のHE4の過剰発現を検出することによって患者の卵巣癌を診断する。そのような「サンドイッチ」または「2部位」イムノアッセイは、当技術分野で公知である。例えば、非特許文献57参照。本明細書で用いるように、「身体試料」は、バイオマーカーの発現を検出することができる、患者からの細胞、組織または体液の任意のサンプリングを指す。そのような身体試料の例には、それらに限定されないが、血液(例えば、全血、血清、血小板除去血液など)、リンパ液、腹水液、尿、婦人科体液(例えば、卵巣、卵管および子宮の分泌物、月経など)、生検材料、開腹術からの流体および組織、ならびに卵巣の組織試料が含まれる。身体試料は、例えば静脈穿刺、領域を掻き取るかぬぐうこと、または針を用いて体液もしくは組織を吸引することを含む様々な技術によって、患者から得ることができる。様々な身体試料の収集方法は、当技術分野で公知である。特定の実施形態では、身体試料は血液または血清を含む。
【0051】
本サンドイッチELISA方法では、HE4上の2つの異なる抗原部位に特異的である2つの抗体、例えば363A90.1および363A71.1と称されるHE4モノクローナル抗体が用いられる。「捕捉抗体(capture antibody)」として知られる第一の抗体は、固体支持体上に固定化されるか、または結合される。例えば、HE4に対する捕捉抗体は、マイクロタイタープレートウェル、ビーズ、キュベットまたは他の反応容器に共有結合で、または非共有結合で結合することができる。特定の実施形態では、捕捉抗体は、マイクロタイタープレートウェルに結合される。抗体を固体支持体に結合する方法は、当技術分野で常用されるものである。ある実施形態では、患者の身体試料、詳細には血液試料、より詳細には血清試料を固体支持体と接触させ、結合した捕捉抗体と複合体(complex)を形成させる。未結合の試料を除去し、「検出」または「タグ」抗体として知られる第二の抗体を固体支持体に加える。タグ抗体は対象とするバイオマーカー(すなわち、HE4)上の異なる抗原部位に特異的であり、先に述べた検出可能な物質に結合されるかそれで標識される。そのような抗体標識は当技術分野で公知であり、その例には、様々な酵素、補欠分子団、蛍光物質、発光物質、生物発光物質および放射性物質が含まれる。本発明のある態様では、タグ抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合される。タグ抗体とのインキュベーションの後、未結合の試料を除去し、結合したHE4のレベルと直接相関する固体支持体に結合した標識検出抗体のレベルを定量化することによって、HE4発現レベルを決定する。この定量化ステップはいくつかの既知の技術によって実施することができ、タグ抗体に結合する特定の検出可能な物質に依存して、変化する。
【0052】
本発明のサンドイッチELISA方法は、患者の身体試料中の結合したHE4タンパク質のレベルを閾値レベルと比較し、患者が卵巣癌を有するかどうかを決定することをさらに含むことができる。本明細書で用いるように、「閾値レベル」は、それを超えると患者試料がその疾患について「陽性」とみなされ、それより下では試料がその疾患について「陰性」と分類されるHE4の発現レベルを指す。特定のバイオマーカー(例えば、HE4)の閾値発現レベルは、正常患者の試料(すなわち、正常な患者集団)からのデータの編集に基づくことができる。例えば、閾値発現レベルは、卵巣癌を有しない患者からの試料の分析に基づき、平均HE4発現レベルに標準偏差の2倍を加えたものとして設定することができる。当業者は、発現の閾値レベルを設定するための様々な統計的および数学的な方法が当技術分野で公知であることを理解するであろう。
【0053】
当業者は、捕捉抗体およびタグ抗体を先に述べたように逐次的に、または同時に身体試料と接触させることができることをさらに認識するであろう。さらに、試料を固定化捕捉抗体と接触させる前に、タグ抗体を先ず身体試料と一緒にインキュベートすることができる。本明細書で開示されるサンドイッチELISA方法で本発明のHE4モノクローナル抗体を用いる場合、363A90.1または363A71.1抗体を捕捉抗体または検出抗体として用いることができる。特定の一実施形態では、捕捉抗体はHE4モノクローナル抗体363A90.1であり、検出抗体は363A71.1抗体、より詳細にはHRP標識363A71.1抗体である。HE4を検出するために、それに限定されないが多重ビーズをベースにしたアッセイ(multiplex bead-based assay)を含む任意のアッセイフォーマットで、本発明の抗体を用いることができる。
【0054】
同じバイオマーカー(すなわち、HE4)に対する2つの抗体が用いられる上記のサンドイッチELISAフォーマットに関して、抗体の相補性およびSN比に関して最良の結果をもたらす特定の抗体組合せもしくは対合、ならびにこれらの抗体の濃度を特定するために、多段階分析を実施した。サンドイッチELISAフォーマットで最適な結果を得るために、捕捉抗体およびタグ抗体は異なる抗原部位を有するべきである。「異なる抗原部位」は、抗体が対象とするバイオマーカータンパク質(すなわち、HE4)上の異なる部位に特異的であり、その結果、1つの抗体の結合がバイオマーカータンパク質に対する他の抗体の結合をあまり妨害しないことを意味するものとする。そのような抗体対合を特定するために、様々なHE4抗体クローンを調製して分析した。具体的には、個々の各HE4抗体クローン、および各対の抗体クローンについて、450nm(OD450)の光学濃度を測定した。HE4抗体群の相対的な対合能力の評価で、それらに限定されないが、「示差指数(DI)(differential index)」および「調整加算指数/最大調整加算指数(AAI/AAIMax)(adjusted additivity index/maximum adjusted additivity index)」を含む、いくつかの数学的測定法を用いた。当業者は、サンドイッチELISA方法で使用するための最良のHE4抗体対合を特定するために、追加の論理および解釈の戦略も適用されたことを理解するであろう。
【0055】
可能性のある最適な抗体対合を特定するためにHE4抗体の評価で用いたDI測定法は、各抗体のOD450値を別々に、および2つの抗体を混合物として測定することによって得られた。DIを得るために、1つの抗体単独で得られたより高いOD450値を、抗体混合物のOD450値から引いた。DIは、評価される2つの抗体の相補性の尺度である。すなわち、2つの抗体が相補的であり対としてよく働く場合、良い対合はタンパク質との結合において各抗体に対する立体障害または干渉を起こさないので、各々を別々に測定する場合、抗体の混合物で得られるOD450の最高値は2つの抗体のOD450の合計に等しくなるはずである。2つの抗体が相補的ではなく、代わりにタンパク質上の同じ結合部位をめぐって競合する場合、第二のより弱い結合抗体はより強い結合抗体単独から得られたOD450値を越えて混合物に対していかなる追加のOD450値にも寄与しないので、抗体の混合物で得られるOD450の最高値は、抗体を別々に検査したときに得られるOD450の最高値以下のはずである。正確に同じ結合部位をめぐって競合する2つの抗体の場合、DIはゼロの値を有するであろう。相補的でない抗体は、上記のサンドイッチELISA方法での使用には好適でない。
【0056】
AAI/AAIMaxは、最良のHE4抗体対合を特定するために用いられる、別の数学的測定法であった。AAI値は、以下の式によって表される:
[A1+2/[(A1+A2+√(A1−A22)/2]−1]×100=AAI
AAIMAX値は、下記式によって表される:
[A1+A2/[(A1+A2+√(A1−A22)/2]−1]×100=AAIMax
AAI/AAIMax値は、AAI値をAAIMax値で割り、この結果に100を掛け算して得られた:
(AAI値/AAIMax値)×100=AAI/AAIMax
最良のHE4モノクローナル抗体対合を特定するために追加の推論技術を適用したが、低DIおよび高AAI/AAIMaxは、さらなる調査のため、特に患者の卵巣癌を診断するためのサンドイッチELISA方法で使用するために、最良の可能性ある対合を特定するうえで考慮した因子であった。
【0057】
上記のように特定された潜在的に良好なHE4抗体対合を確認するために、追加の分析を実施した。具体的には、対象とする、可能性があるHE4モノクローナル抗体対合を、緩衝液ベースのアッセイで分析した。各抗体を様々な濃度で分析して、捕捉抗体または標識タグ抗体として交互に用いた。本発明のモノクローナル抗体、すなわち363A90.1および363A71.1を、検査したHE4抗体の良い対合として特定し、他の抗体対とともにさらなる分析にかけた。例えば、363A90.1および363A71.1抗体を、精製HE4タンパク質を混入させた血清試料に対して試験した。各抗体を捕捉抗体およびタグ抗体として用い、最も大きなSN比を得るために様々な濃度で用いて、HE4抗体のこの対および他の対を、これらのHE4混入試料で試験した。さらに、卵巣癌試料および正常な試料を最適に区別する抗体対合を特定するために、HE4抗体の最良の対合を用いて、卵巣癌患者からの血清、および閉経後の卵巣癌のない供与体からの血清をサンドイッチELISAで分析した。他の抗体対は相補性および正常試料と卵巣癌試料とを区別する能力に関して相応な結果を示したが、HE4モノクローナル抗体363A90.1および363A71.1の対合は、分析した他の抗体対よりもかなり優れていた。当業者は、抗体濃度、抗体インキュベーション時間、緩衝条件および検出化学のさらなる最適化が必要となることを認識するであろう。そのような条件を最適化するアッセイの設計は標準であり、十分に当業者の通常の能力の範囲内である。
【0058】
本発明の組成物は、卵巣癌を有する可能性の増大した患者を特定するためのスクリーニング方法、例えば、参照により本明細書に完全に組み込まれている2007年1月29日に出願の「Methods For Identifying Patients With An Increased Likelihood Of Having Ovarian Cancer And Compositions Therefor」と題する係属中の特許文献22に開示されているものでさらに有用である。本明細書で用いるように、「卵巣癌を有する可能性の増大した患者を特定する」ことは、卵巣癌を有する可能性のより高い女性を検出する方法を意味するものとする。「卵巣癌を有する可能性の増大」は、本方法に従って特定のバイオマーカーの過剰発現を示すと決定される患者が、そうではない患者よりも卵巣癌を有する可能性が高いことを意味するものとする。
【0059】
一般に、スクリーニング方法は、患者由来の身体試料、詳細には血液試料、より詳細には血清試料中の複数のバイオマーカーの発現を検出することを含む。本発明の実施で用いられるバイオマーカーの過剰発現は、卵巣癌の存在の可能性の増大を示す。本発明の特定のスクリーニング方法では、2段階分析が用いられ、卵巣癌を有する可能性の増大した患者を特定する。第一のアッセイステップが実施され、患者の身体試料中の第一のバイオマーカーまたはバイオマーカーの一団(panel)の発現を検出する。特定の実施形態では、第一のバイオマーカーは、HE4である。本発明のHE4モノクローナル抗体の1つまたは複数を用いて、卵巣癌スクリーニング方法を実施することができる。第一のバイオマーカーまたはバイオマーカーの一団が試料中に過剰発現されると決定される場合、第二のアッセイステップが実施され、第二のバイオマーカーまたはバイオマーカーの一団の発現を検出する。本発明のある態様では、バイオマーカーの一団の第二のバイオマーカーは、CA125、グリコデリン、Muc−1、PAI−1およびPLAU−Rを含む一団、CA125およびPAI−1を含む一団、CA125、グリコデリン、PAI−1およびMMP−7を含む一団、CA125、グリコデリン、PAI−1およびPLAU−Rを含む一団、CA125、グリコデリン、PAI−1およびPLAU−Rを含む一団、グリコデリン、Muc−1、PLAU−RおよびインヒビンAを含む一団、CA125、Muc−1、グリコデリン、PAI−1およびPLAU−Rを含む一団ならびにCA125、MMP−7、グリコデリンおよびPLAU−Rを含む一団からなる群から選択される。第一および第二のバイオマーカーまたはバイオマーカーの一団の過剰発現は、患者が卵巣癌を有する可能性の増大を示す。
【0060】
本発明のスクリーニング方法で「過剰発現」を構成するのに十分な特定のバイオマーカーの発現レベルは、用いる特定のバイオマーカーによって異なる。本発明の特定の実施形態では、発現の「閾値レベル」が個々のバイオマーカーについて設定され、この値より上の発現レベルは過剰発現とみなされる。発現の閾値レベルを設定するための様々な統計的および数学的な方法が、当技術分野で公知である。特定のバイオマーカーの閾値発現レベルは、例えば、受容体作動特性(ROC)(Receiver Operating Characteristic)プロットからのデータ、または正常な患者試料(すなわち、正常な患者集団)からのデータの編集に基づいて選択することができる。例えば、閾値発現レベルは、卵巣癌を有しない正常患者からの試料の分析に基づき、平均発現レベルに標準偏差の2倍を加えたものとして設定することができる。当業者は、例えば、特定のバイオマーカーについてROCプロットに沿って移動させ、そのことによって全体のアッセイ能力に影響を及ぼすことによってこれらの閾値発現レベルを変更し、感度、特異性、陽性予測値(PPV)および陰性予測値(NPV)の異なる値を得ることができることを理解するであろう。
【0061】
本発明の特定の態様では、卵巣癌を有する可能性の増大した患者を特定する本方法の第一のアッセイステップは、患者から血液試料を、特に血清試料を得ること、試料を本発明の少なくとも1つのHE4モノクローナル抗体と接触させること、およびHE4への抗体の結合を検出することを含む。他の実施形態では、試料を、HE4に特異的に結合する少なくとも2つのモノクローナル抗体、特にモノクローナル抗体363A90.1および363A71.1と接触させる。HE4の過剰発現を示す試料を、対象とする第二のバイオマーカーまたはバイオマーカーの一団の発現についてさらに分析する。HE4および第二のバイオマーカーまたはバイオマーカーの一団の過剰発現は、患者が卵巣癌を有する可能性の増大を示す。抗体抗原結合を検出する技術は、当技術分野で公知である。対象とするバイオマーカーへの抗体結合は、抗体結合のレベルに、従ってバイオマーカータンパク質発現のレベルに対応する、検出可能なシグナルを生成する化学試薬を用いることにより検出することができる。本発明の方法を実施するために、抗体抗原結合を検出する任意の方法を用いることができる。
【0062】
モノクローナル抗体を含む他のHE4抗体が、当技術分野で公知である。しかし、本出願で記載のように、モノクローナル抗体363A90.1および363A71.1は、患者の卵巣癌を診断する方法で、および卵巣癌を有する可能性の増大した患者を特定するスクリーニング方法で優れた特性を示す。したがって、363A90.1および363A71.1のモノクローナル抗体の対合は、卵巣癌を有する可能性の増大の診断およびスクリーニングで特に強力である。
【0063】
本明細書で開示される方法の効力は、感度、特異性、陽性予測値(PPV)および陰性予測値(NPV)などの尺度を測定することによって評価することができる。本明細書で用いるように、「特異性」は試験陰性である疾患陰性体の割合を指す。臨床試験では、特異性は、真の陰性体の数を、真の陰生体および偽陽性体の合計で割ることによって計算される。「感度」は、本発明の方法が、陽性(すなわち、真の陽性)と確認された試料を正確に特定することができるレベルを意味するものとする。したがって、感度は、試験陽性である疾患陽性体の割合である。臨床試験では、感度は、真の陽性体の数を、真の陽性体および偽陰性体の合計で割ることによって計算される。一部の実施形態では、卵巣癌を診断するための、または卵巣癌を有する可能性の増大した患者を特定するための開示されている方法の感度は、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%またはそれ以上である。さらに、本方法の特異性は、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%またはそれ以上である。
【0064】
用語「陽性予測値」すなわち「PPV」は、本発明の方法を用いて陽性に分類される患者に限定される、対象とする疾患(例えば、卵巣癌)を患者が有する可能性を指す。臨床試験では、PPVは、真の陽性体の数を、真の陽性体および偽陽性体の合計で割ることによって計算される。試験の「陰性予測値」すなわち「NPV」は、試験陰性のすべての患者に限定するときの、患者が疾患を有しない可能性である。臨床試験では、NPVは、真の陰性体の数を、真の陰性体および偽陰性体の合計で割ることによって計算される。
【0065】
本発明の少なくとも1つのHE4モノクローナル抗体を含むキットが、さらに提供される。「キット」は、HE4の発現を特異的に検出するための少なくとも1つの試薬、すなわち、抗体を含む任意の製造物(例えば、パッケージまたは容器)を指すものとする。キットは、本発明の方法を実施するためのユニットとして促進、分配、または販売することができる。さらに、キット試薬のいずれかまたは全部を、それらを外部環境から保護する容器、例えば密封容器に入れて提供することができる。キットは、キットおよびその使用方法を記載する添付文書(package insert)を含むこともできる。
【0066】
本発明のサンドイッチELISA方法を実施するためのキットは、任意選択で固体支持体(例えば、マイクロタイタープレート)上に固定された捕捉抗体、ならびに、例えばHRP、蛍光標識、放射性同位体、β−ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼなどの検出可能な物質に結合されたタグ抗体を一般に含む。ある実施形態では、捕捉抗体およびタグ抗体は、モノクローナル抗体、詳細にはHE4モノクローナル抗体、より詳細には363A90.1および363A71.1と称されるHE4モノクローナル抗体である。サンドイッチELISA方法を実施するための本発明の1つのキットでは、捕捉抗体はマイクロタイタープレート上に固定されたHE4モノクローナル抗体363A90.1であり、タグ抗体はHRP標識363A71.1である。固体支持体に結合されるタグ抗体のレベル(それは、試料中のHE4レベルと直接相関する)を検出および定量化するための化学物質は、任意選択でキットに含まれてもよい。精製されたHE4は、抗原標準物質として提供することもできる。
【0067】
一般に、卵巣癌を有する可能性の増大した患者を特定するための本発明のスクリーニング方法を実施するためのキットは、HE4に対する少なくとも1つのモノクローナル抗体、抗体結合の検出のための化学物質、対比染色剤、および任意選択で、陽性染色細胞の特定を容易にするための青色化剤を含む。抗原抗体結合を検出する任意の化学物質を、本発明のキットで用いることができる。一部の実施形態では、検出化学物質は、二次抗体にコンジュゲートされる標識重合体を含む。例えば、抗原抗体結合部位での色素原の沈着を触媒する酵素にコンジュゲートされる二次抗体を提供することができる。抗体結合の検出でそれらを用いるためのそのような酵素および技術は、当技術分野で公知である。一実施形態では、キットは、HRP標識重合体にコンジュゲートされる二次抗体を含む。複合酵素(例えば、HRP標識二次抗体の場合にはDAB)に適合する色素原、および非特異的染色をブロックするための過酸化水素などの溶液を、さらに提供することができる。キットは、ペルオキシダーゼブロッキング試薬(例えば、過酸化水素)、タンパク質ブロッキング試薬(例えば、精製カゼイン)および対比染色剤(例えば、ヘマトキシリン)をさらに含むことができる。陽性染色細胞の検出を容易にするために、青色化剤(例えば、Tween20およびアジ化ナトリウムを含む水酸化アンモニウムまたはTBS、pH7.4)をキットに入れてさらに提供することができる。品質管理目的のために、キットは陽性および陰性の対照試料を含むこともできる。適当な陽性および陰性の対照の開発は、十分に当業者の通常の能力の範囲内である。
【0068】
別の実施形態では、本発明のキットは、少なくとも2つのHE4モノクローナル抗体、より詳細にはモノクローナル抗体363A90.1および363A71.1を含む。複数の抗体がキットに存在する場合、各抗体を個々の試薬として、あるいは、対象とする抗体のすべてを含む抗体カクテルとして提供することができる。
【0069】
卵巣癌を診断するためのおよび卵巣癌を有する可能性の増大した患者を特定するための上記方法を記載したが、開示されている方法をHE4が過剰発現する他の癌にも同様に適用できることを、当業者は認識するであろう。そのような癌には、それに限定されないが、乳癌が含まれる。
【0070】
当業者は、本発明の方法のステップのいずれかまたは全部を、手動または自動化された様式で担当者が実施することができることをさらに理解するであろう。したがって、試料調製、抗体インキュベーションおよび抗体結合の検出のステップを自動化することができる。開示されている方法に従って卵巣癌を有するか、または卵巣癌を有する可能性が増大したと確認される患者に、その患者が卵巣癌を有するかどうかを確定的に決定するためのさらなる診断検査を受けさせることができる。「さらなる診断検査」には、それらに限定されないが、骨盤検査、経膣的超音波検査、CTスキャン、MRI、開腹、腹腔鏡検査および生検が含まれる。そのような診断法は、当技術分野においては公知である。さらに、卵巣癌を有する可能性が増大したと分類され、さらなる診断検査によって現在卵巣癌を有しないと決定される患者を、卵巣癌の発症について定期的に綿密にモニタリングすることができる。そのような患者のモニタリングには、それらに限定されないが、定期骨盤検査、経膣的超音波検査、CTスキャンおよびMRIを含めることができる。当分野の医師は、卵巣癌の発症について患者をモニタリングするための適当な技術を理解するであろう。
【0071】
本明細書で冠詞「a」および「an」は、1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)の冠詞の文法上の目的を指すために用いられる。例として、「要素(a element)」は、1つまたは複数の要素を意味する。
【0072】
明細書全体を通して、単語「含んでいる(comprising)」または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」のような変形形態は、明示された要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群が含まれることを意味するが、いかなる他の要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群の除外を意味するものではないと理解される。
【0073】
以下の実施例は例示のために提供され、限定するものではない。
【0074】
実験
【実施例1】
【0075】
HE4に対するマウスモノクローナル抗体の産生
HE4に特異的なマウスモノクローナル抗体を産生した。抗原(免疫原性ポリペプチド)は、完全長組換えヘキサヒスチジンタグ付きHE4アイソフォーム1タンパク質であった。抗原は、Tni細胞内でバキュロウイルス発現系を用いて発現させた。具体的には、ヘキサヒスチジンタグ付きHE4のコード配列を、Tni細胞内での発現のためにpFastBac1プラスミド(Invitrogen)にクローニングした。バキュロウイルス発現系を用いる組換えタンパク質の産生法は、当技術分野で公知である。Ni+2イオン(Qiagen社製Ni−NTA)を装填(charged)したキレート化アガロースを用いてタグ付きHE4タンパク質を精製し、免疫原として用いた。HE4アイソフォーム1ポリペプチドのアミノ酸およびヌクレオチド配列を、それぞれ配列番号1および2に示す。
【0076】
マウス免疫化およびハイブリドーマ融合は、基本的には非特許文献36に記載されているように実施した。免疫原性タグ付きHE4タンパク質溶液で、マウスを免疫化した。抗体産生細胞を免疫したマウスから単離し、骨髄腫細胞と融合させてモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを形成した。ハイブリドーマを、選択培地で培養した。生じた細胞を連続希釈によって平板培養し、HE4に特異的に結合する(無関係な抗原に結合しない)抗体の産生について分析した。対象とするモノクローナル抗体がHE4タンパク質だけと反応することを確認するために、選択したハイブリドーマをSLPIまたはSpon2−Hisタグ付きタンパク質に対してスクリーニングした。次に、選択したモノクローナル抗体(mAb)を分泌するハイブリドーマを培養した。
【0077】
組換えプロテインAをコーティングした樹脂(STREAMLINE(登録商標)、Amersham社製)を用いて、「消耗した」ハイブリドーマ細胞(すなわち、生存度が0〜15%の間に低下するまで増殖した細胞)の培地上清から抗体を精製した。低いpHを用いて抗体を溶出させ、その後直ちにpHを中和した。280nMでかなりの吸光度を有する分画をプールした。生じたプールを、PBSに対して透析した。精製した抗体を、さらなる特徴付けに供した。HE4モノクローナル抗体363A90.1および363A71.1の両方を、上記の方法に従って産生した。HE4モノクローナル抗体363A90.1および363A71.1は、それぞれ、IgGアイソタイプおよびIgG1アイソタイプであると決定された。これらの抗体のエピトープマッピングの詳細を、下に記載する。
【実施例2】
【0078】
ハイブリドーマ細胞からのモノクローナル抗体の単離
以下の手順を用いて、ハイブリドーマ細胞からモノクローナル抗体を単離する:
培地調製
・滅菌した1,000ml保存ビンに、100mlのHycloneウシ胎児血清(FBS)を加える。
【0079】
・10mlのMEM非必須アミノ酸溶液を加える。
【0080】
・10mlのペニシリン−ストレプトマイシン−L−グルタミン溶液を加える。
【0081】
・ExCell 610−HSF培地で約1000mlの容量にする。
【0082】
・滅菌キャップでビンにふたをし、きつく締める。軽く回して混合する。
【0083】
・1000mlの滅菌アセテート減圧フィルターユニット(0.2μm)を、減圧ポンプ系に連結する。
【0084】
・培地溶液の約半分を滅菌アセテート減圧フィルターユニットへ穏やかに注ぎ、減圧を始動する。
【0085】
・培地の最初の半分をろ過した後、残りの培地をフィルターユニットへ注いでろ過を続ける。
【0086】
・すべての培地をろ過した後、バキュームホースを減圧フィルターユニットから切り離し、減圧ポンプを停止させる。フィルタービンからフィルターユニットの受容器部分を取り外す。新しい滅菌ボトルキャップでビンにふたをする。
【0087】
・2℃から10℃で保存する。光から保護する。
【0088】
初期ハイブリドーマ細胞培養
・保存されていたハイブリドーマ凍結培養物のバイアルを、予熱した37℃のH2O浴上で解凍する。
【0089】
・冷凍バイアルの外側に70%エタノールをスプレーする。
【0090】
・解凍したバイアルを、生物学的安全キャビネット(Biological Safety Cabinet)に移す。
【0091】
・冷凍バイアルから細胞を取り出して、細胞を15ml遠心管へ移す。
【0092】
・7mlの細胞培地を、解凍した細胞を含む15ml遠心管に滴下する。
【0093】
・解凍した細胞および培地を含む15ml遠心管を、200gの力で5分間遠心分離する。
【0094】
・細胞が遠心機にある間、45mlの細胞培地を滅菌したT−225フラスコに加える。
【0095】
・遠心分離の後、細胞ペレットの存在について試験管を目視検査する。
【0096】
・細胞ペレットを取り外さないように注意しながら、遠心管から培地を取り出す。注:細胞ペレットをかき乱した場合、遠心分離ステップを繰り返す。
【0097】
・5mlの細胞培地を、ペレット化細胞を含む15ml遠心管に加える。細胞ペレットを再懸濁するために、培地にピペットで加える。
【0098】
・再懸濁細胞および培地の全内容物を、45mlの培地を含むT−225フラスコに移す。
【0099】
・T−225フラスコにキャップをする。
【0100】
・顕微鏡下で、完全な細胞の存在について観察する。T−225フラスコをCO2インキュベータに直ちに入れ、細胞を一晩インキュベートする。
【0101】
ハイブリドーマ細胞系の拡大増殖(expansion)
・生存度、濃度および汚染の存在について、細胞培養物のモニタリングを続ける。
【0102】
・濃度が約600,000細胞/mlから800,000細胞/mlおよび合計200から250mlの培地まで、初期T−225フラスコからの細胞懸濁液をモニタリングし、調節する。
【0103】
・最小限の細胞密度要件を満たすために、必要に応じて細胞を取り除き、追加の培地を加える。1つの新しい滅菌T−225フラスコに、細胞懸濁液を分割して移す。2つのT−225フラスコをCO2インキュベータに入れる。
【0104】
・各フラスコで濃度が約600,000細胞/mlから800,000細胞/ml、および合計200から250mlの培地まで、2つのT−225フラスコからの細胞をモニタリングする。
【0105】
・最小限の細胞密度要件を満たすために、必要に応じて細胞を取り除き、追加の培地を加える。合計4つのT−225フラスコのために、2つの追加の新しい滅菌T−225フラスコに、細胞懸濁液を分割して移す。すべてのフラスコをCO2インキュベータに戻す。
【0106】
・細胞濃度が約600,000細胞/mlから800,000細胞/mlになり、T−225フラスコにつき約250mlの総容量(または合計で約1000ml)になるまで、細胞をモニタリングし、4つのT−225フラスコ内の容量を調節する。
【0107】
・細胞が消耗するまで増殖し、0%〜15%の最終生存度まで、4つのT−225フラスコからの細胞のモニタリングを続ける。細胞培養上清は、これで清澄化工程に回すことができる。
【0108】
上清の清澄化
・卓上遠心機を始動する。500ml試験管アダプターをローターバケットに入れ、ふたを閉じ、温度を4℃(+/−)4℃に設定する。
【0109】
・無菌技術を用いて、いまや消耗した4つすべてのT−225フラスコから、培地を2つの500ml円錐遠心管に注ぐ。
【0110】
・2つの500ml試験管が平衡していることを確認する。それらのバランスをとるために、必要に応じて片方の試験管から他方へ上清を移す。
【0111】
・消耗した上清を2℃から10℃で15分間、1350g(+/−40g)で遠心分離する。
【0112】
・遠心分離の完了後、上清を1000mlの滅菌保存ビンに無菌的にデカンテーションし、滅菌キャップをきつく締める。
【0113】
・1mlを無菌的にマイクロチューブへ移す。試料を含むマイクロチューブを、2℃から10℃で保存する(光から保護する)。
【0114】
・清澄化した上清試料は、Easy−Titer(登録商標)アッセイを用いるIgG評価に回すことができる。
【0115】
緩衝液調製
結合緩衝液:
・約600mlのDI H2Oを、清潔なビーカーに加える。
【0116】
・77.28mlのホウ酸水(4%W/V)を加える。清潔な撹拌棒を用いて室温で撹拌する。
【0117】
・233.76gの塩化ナトリウムを秤量し、撹拌し続けながら溶液に入れる。
【0118】
・DI H2Oで溶液を約950mlにし、撹拌し続ける。
【0119】
・塩化ナトリウムが溶解して溶液が透明なとき、水酸化ナトリウムでpHを9.0±0.2に調節する。
【0120】
・溶液を清潔な1000mlメスシリンダーに移し、DI H2Oで1000mlの容量にする。
【0121】
・完了した緩衝液を、適当な保存ビンへ移す。この緩衝液は、使用時まで最高7日間保存することができる。
【0122】
・追加の0.2リットルから1.0リットルの結合緩衝液を調製するために、この全体の工程を繰り返す。
【0123】
溶出緩衝液
・1.725gのリン酸ナトリウム、一塩基性、を秤量し、清潔な撹拌棒で清潔な250mlビーカーに入れる。
【0124】
・3.676gのクエン酸ナトリウムを秤量し、同じ清潔な250mlビーカーに入れる。
【0125】
・約175mlのDI H2Oを加え、溶解するまで室温で撹拌する。
【0126】
・4.38gの塩化ナトリウムを秤量し、撹拌し続けながら溶液に入れる。
【0127】
・DI H2Oで溶液を約225mlにし、撹拌し続ける。
【0128】
・塩化ナトリウムが溶解して溶液が透明なとき、塩酸でpHを3.5±0.2に調節する。
【0129】
・溶液を清潔な250mlメスシリンダーに移し、DI H2Oで250mlの容量にする。
【0130】
・500mlの滅菌アセテート減圧フィルターユニット(0.2μm)を、減圧ポンプ系に連結し、溶液をろ過滅菌する。
【0131】
・フィルターを取り出し、滅菌キャップで容器を密閉する。
【0132】
抗体吸着
・清澄化した上清(約1L)を清潔な撹拌棒で清潔な4000mlプラスチックビーカーへ注ぐ。
【0133】
・ほぼ同等量(約1L)の結合緩衝液を、清澄化した上清を含む清潔な4000mlプラスチックビーカーに加える。清潔な撹拌棒を加える。
【0134】
・清潔なラップ(plastic wrap)でビーカーを覆い、「抗体結合」と表示する。
【0135】
・表2のデータを用いて、必要となるSTREAMLINE(登録商標)プロテインAの近似量を計算する。
【0136】
【表2】

【0137】
・清潔な使い捨て式カラムおよびコック(stopcock)アセンブリーを、リングスタンドおよびクランプに固定する。コックの栓を閉じる。
【0138】
・ビンを数回転倒することによって、適量のSTREAMLINEプロテインAビーズを混合する。必要な容量を抜き取り、使い捨て式カラムに入れる。
【0139】
・10mlのDI H2Oで、STREAMLINEプロテインAビーズを洗浄する。コックを開き、DI H2Oを排出させる。コックを閉じる。さらなる10mlのDI H2Oで繰り返す。
【0140】
・10mlの結合緩衝液で、STREAMLINEプロテインAビーズを洗浄する。コックを開き、結合緩衝液を排出させる。コックを閉じる。さらなる10mlの結合緩衝液で繰り返す。
【0141】
・STREAMLINEプロテインAビーズを約10mlの清澄化した上清および結合緩衝液の溶液(4000mlビーカーから)に再懸濁し、清澄化した上清および結合緩衝液の溶液を含む4000mlビーカーにビーズを移す。残りのすべてのビーズを移すために、必要に応じて繰り返す。完了後、カラムおよびコックを捨てる。
【0142】
・2℃から10℃で約18時間、混合液を激しく混合させる。
【0143】
・混合の完了後、撹拌プレートを停止し、緩衝処理上清およびビーズの懸濁液を含む「抗体結合」ビーカーを、研究室ベンチ領域へ戻す。STREAMLINEプロテインAビーズを、ビーカーの底に沈殿させる(約5分)。
【0144】
・清潔な使い捨て式カラムおよびコックアセンブリーを、リングスタンドおよびクランプに固定する。コックを閉じる。
【0145】
・清潔な250mlビンまたは適する容器に「結合後カラム洗浄」と表示する。
【0146】
・清潔なプラスチックビーカーに「結合後上清」と表示する。
【0147】
・4000mlビーカーから清潔な表示済み2リットルプラスチックビーカーに上清デカンテーションし、ビーズは4000mlビーカーの底に残す。「結合後上清」溶液を含む2000mlビーカーを清潔なラップで覆い、2℃から10℃で保存する。
【0148】
・移した4000ml「抗体結合」ビーカーに、結合緩衝液を約15ml加える。STREAMLINEプロテインAビーズを再懸濁し、それらをカラムへ移す。コックを開放し、結合緩衝液を「結合後カラム洗浄」容器へ排出させる。排出されたら、コックを閉じる。
【0149】
・追加の結合緩衝液を加えることによって「抗体結合」ビーカー中の残りのすべてのSTREAMLINEプロテインAビーズを移し、混合し、前のステップのようにカラムに移す。排出後、コックを閉じる。
【0150】
・表3のデータを用いて、カラム中のSTREAMLINEプロテインAビーズを洗浄するのに必要な結合緩衝液の近似量を計算する。
【0151】
【表3】

【0152】
・カラム中のSTREAMLINEプロテインAビーズを適量の結合緩衝液で適切な回数洗浄し、「結合後カラム洗浄」容器に流出液を収集し続ける。
【0153】
・完了後、コックを閉じる。「結合後カラム洗浄」容器を2℃から10℃で保存する。
【0154】
・表4から、カラム中のSTREAMLINEプロテインAビーズを溶出するのに必要な溶出緩衝液および中和緩衝液の総量を決定する。
【0155】
【表4】

【0156】
・9個の滅菌円錐遠心管に「溶出抗体」と表示する、分画番号(1から9)。
【0157】
・分画あたりの必要とされる中和緩衝液の適量(上の表「C」から決定される)を9個の「溶出抗体」分画試験管の各々に入れ、カラムコック排出口の下に固定する。
【0158】
・分画あたりの必要とされる適量の溶出緩衝液(上の表3から決定される)による分画によってカラム分画中のSTREAMLINEプロテインAビーズを溶出させ、その間、中和緩衝液を含む各「溶出抗体」試験管に溶出液を収集する。
【0159】
・溶出の完了後、各「溶出抗体」分画試験管を数回回転させることによって穏やかに混合する。分画#3の約50μlを取り出してpH試験紙片上に置き、溶出液が約6.5から8.5のpHに中和されたことを確認する。必要ならば、pHを範囲内にするために、必要に応じて追加の中和緩衝液または溶出緩衝液を加える。
【0160】
・pHの評価が完了したら、透析工程に進む前に各分画からの試料の吸光度スキャンを280nm〜400nmで実施し、溶出液中のIgGの近似濃度を決定する。
【0161】
A280〜A400値が≧0.200である場合、溶出液プールの一部として分画を受け入れる。
【0162】
A280〜A400値が<0.200である場合、溶出液プールの一部として分画を拒絶する。
【0163】
・滅菌円錐遠心管に「溶出抗体」、「溶出液プール」と表示し、プールの一部として受け入れられた全分画を合わせる。
【0164】
・透析工程に進む前に溶出液プールの試料の吸光度スキャンを実施し、溶出液中のIgGの近似濃度を決定する。
【0165】
・溶出液プールの容量を推定し、IgGの近似総mgを計算する。
【0166】
・溶出液プールの容量:_ml×_IgG mg/ml=_IgGの総mg
抗体透析
・「溶出抗体」試験管を、2℃〜10℃から取り出す。
【0167】
・表5の溶出液の近似容量およびデータを用いて、抗体溶出液を透析するのに必要である透析管の近似長を計算する。
【0168】
【表5】

【0169】
・必要とされる透析管の適切な長さを切断する。(Spectra/Por(登録商標)2再生セルロース膜、12,000〜14,000ダルトンの分子量カットオフ(MWCO)、16mm直径、Spectrum Laboratories社、カタログ番号132678)
・>30分の間1000mlのDIH2O中で透析膜管を水和させる。
【0170】
・表6のデータを用いて、抗体溶出液を透析するのに必要な透析緩衝液の近似容量を計算する。
【0171】
【表6】

【0172】
・適量の透析緩衝液を適する大きさのプラスチックビーカーに入れる。ビーカーに「透析抗体」と表示する。清潔な撹拌棒を加え、2℃から10℃の冷蔵庫または低温室内部の撹拌プレート上にビーカーを置く。
【0173】
・DI−H20中で透析管を徹底的に洗浄する。透析管の1つの末端から約7cmで2つの末端結び目をつくり、固く固定する。
【0174】
・透析管に約5mlのDI−H2Oを加える。
【0175】
・「溶出抗体」収集試験管からの溶出抗体で、透析管を満たす。
【0176】
・透析管の残りの開放末端から約7cmで2つの末端結び目をつくり、固く固定する。ヘッドスペースが、大体表4から誘導されるものであるようにする。
【0177】
・満たして密閉した透析管を、適量の1XPBS(表5から)を含む透析貯蔵器に入れる。
【0178】
・清潔なラップでビーカーを覆う。透析試料は自由に回転するが、透析物の渦に吸い込まれないように、撹拌プレート上の速度を調節する。透析は、24時間以内に合計3回の緩衝液交換で2℃から10℃で行うべきである。
【0179】
抗体ろ過
・滅菌収集管に「透析抗体」と表示する。
【0180】
・透析した試料管を透析ビーカーから取り出す。透析管を一端で切り開き、透析した試料を「透析抗体」遠心管に移す。
【0181】
・別の滅菌収集管に「透析抗体」と表示する。
【0182】
・最終透析容量を保持するのに十分な能力を有する、滅菌Luer Lok注射器を選択する。
【0183】
・注射器(0.2μm HT Tuffryn(登録商標)メンブラン、低いタンパク質結合、Gelman Laboratories、カタログ番号4192)の開口部に、Acrodisc(登録商標)注射器フィルターを付ける。注射器からプランジャーを外し、注射器を直立に保持しながら、透析したモノクローナル抗体を「透析抗体」試験管から注射器に移す。プランジャーを戻す。
【0184】
・開放された、滅菌の「精製抗体」と表示された収集管の上にAcrodisc(登録商標)注射器フィルターを保持し、注射器プランジャーを押し下げて精製抗体をろ過して「精製抗体」試験管に入れる。
【0185】
・ろ過の完了後、「精製抗体」試験管にキャップをし、2℃から10℃で保存する。
【0186】
・A280手順を用いて、精製したモノクローナル抗体の濃度を決定する。
【実施例3】
【0187】
エピトープマッピングのための一般方法
一般手法
363A90.1および363A71.1と命名された抗HE4抗体のためのエピトープマッピング手順を、下に記載する。典型的には、エピトープマッピングは、特定のモノクローナル抗体によって認識される抗原タンパク質(すなわち、エピトープ)内の線状アミノ酸配列を特定するために実施される。エピトープマッピングのための一般手法は、一般に異種発現系での完全長タンパク質、ならびにそのタンパク質の様々な断片(すなわち、切断型)の発現を必要とする。次に、これらの様々な組換えタンパク質は、特異的モノクローナル抗体が、切断型の標的タンパク質の1つまたは複数に結合することができるかどうかを決定するために用いられる。反復切断の利用および重複アミノ酸領域を有する組換えタンパク質の産生により、調査中のモノクローナル抗体によって認識される領域を特定することが可能である。ウェスタンブロット分析またはELISAが使用され、調査中の特異的モノクローナル抗体が組換えタンパク質断片の1つまたは複数に結合することができるかどうかを決定する。究極には、この手法は、エピトープを含むペプチド領域を特定し、場合によってはエピトープを正確に8〜11個のアミノ酸の配列に精製することができる。
【0188】
一般的エピトープマッピング手順
鋳型生成
対象とする遺伝子は、しばしば6等分される。初期PCRステップを、鋳型である対象とする完全長遺伝子(例えば、HE4)と一緒に用いて、線状発現切断断片を生成する。重複切断の使用は、線状エピトープが断片接合点で「切られる」ことによって見落とされることのないようにする。
【0189】
第二のPCR:調節要素およびGFPの付加(メガプライミング)の付加
次に、対象とする完全長遺伝子または遺伝子切断物を、メガプライミングを用いて緑色蛍光タンパク質(GFP)と結合する。メガプライミングPCRは、PCRを用いる、大きなDNA断片とそれらの末端での小さな相補的領域との連結を指す。次に、2つ以上の断片の連結から生じる大きなDNA断片を、標準のPCRを用いて増幅する。迅速翻訳系(RTS)(Rapid Translation System)での任意の特定の遺伝子断片の頑健で安定した発現を確保するために、GFPが融合パートナーとして用いられる。GFPは、抗GFP抗体を用いるタンパク質発現レベルの検出も可能にする。
【0190】
メガプライミングで用いられる断片には、RBS−GFP上流側断片(765bp)およびターミネーター断片(114bp)が含まれる。これらの断片は、それぞれXbaI/BamHIおよびXhoI/BspeI消化を用いてpSCREEN−GFPプラスミドから単離された。メガプライミングで用いたRBS−GFP上流断片は、GFPおよび対象とする遺伝子の両方を含む完全長PCR産物だけがRTS反応で安定した発現を示すことを確実にするために、T7プロモーター配列を含んでいなかった。センスプライマー中にT7プロモーター配列およびアンチセンスプライマー中にT7ターミネーター配列を含む短い外部プライマーを通して、完全長断片を最後に増幅する。
【0191】
メガプライミングは、1,000bp未満の初期PCRサイズにより適する。より大きな断片は、第二のPCRメガプライミング反応で、明瞭な単一のPCR断片を与えない。しかし、エピトープが遺伝子のより小さな領域で特定された場合、メガプライミングを用いて、第二ラウンドおよび第三ラウンドのエピトープマッピングを実施することができる。
【0192】
PCR鋳型の迅速翻訳を用いるタンパク質発現
次に、先に述べたように作製されたGFP−遺伝子融合物を、Roche社製のRTS100大腸菌HYキットを用いるRTS反応でのタンパク質産生用鋳型として用いる。Roche迅速翻訳系(RTS)は、T7転写要素の支配下で、線状またはプラスミドDNA配列からのタンパク質の無細胞(インビトロ)生成を可能にする技術である。この方法は、タンパク質産生用大腸菌培養における、クローニング、細胞増殖および細胞溶解ステップの、時間のかかるステップを回避する。これは、タンパク質発現時間を約5倍(すなわち、約10日から約2日まで)短縮する。
【0193】
ウェスタンブロット法およびエピトープマッピング
下で詳述するように、RTS産物をアセトンで沈殿させ、変性ポリアクリルアミドゲルへ直接加え、その後ウェスタンブロット法にかける。Laemmliの方法によってSDS−PAGEを実施した。すべての試料を1XNupage LDS試料緩衝液(Invitrogen)中の20mM DTTで還元し、70℃で10分間加熱した。細胞溶解物を、4〜12%ビス−トリス(MES)ゲル(Invitrogen)に加えた。
【0194】
分離後、製造業者のガイドラインに従ってタンパク質をニトロセルロース膜(Invitrogen)上に移した。非特異的結合を阻止するための膜の適当なブロッキングの後、膜をマウス抗体で1時間探り(probed)、その後、ヤギ抗マウスアルカリホスファターゼ抗体と一緒に1時間インキュベートした。次に、ウェスタンブロットを、ウェスタンブルー(Promega)で可視化した。
【0195】
ウェスタンブロットの陽性バンドは、エピトープがタンパク質のその領域に存在することを示す。上記のステップは、対象とする元のタンパク質の1/6にエピトープを絞り込む。エピトープをさらに8〜12個のアミノ酸の領域に絞り込むためには、ウェスタンブロット法によって「陽性」と特定された領域をエピトープマッピングのさらなるラウンドの出発点として利用し、上記のステップを繰り返す必要がある。
【0196】
追加のエピトーププロトコル
RTS系がウェスタンブロットによる検出のために十分なレベルのタンパク質を産生しない場合、遺伝子切断部分をpSCREEN−GFPベクターに直接クローニングすることができる。この方法では、プラスミドが大腸菌の形質転換のため導入され、IPTGを用いて対数期に誘導される。上記のように細胞ペレットを変性させ、分析する。
【0197】
抗体がニトロセルロース膜に結合した変性タンパク質を認識することができない場合、それらに限定されないがELISAまたは免疫沈降を含む、抗体/抗原相互作用を検出する他の方法を用いることができる。
【実施例4】
【0198】
HE4モノクローナル抗体363A90.1および363A71.1のエピトープの特徴づけ
基本的に、実施例3に記載されているように、HE4モノクローナル抗体363A90.1および363A71.1のためのエピトープマッピングを実施した。具体的には、PCRを用いてHE4遺伝子切断物を作製し、続いてRTSを用いて組換えHE4タンパク質断片を生成し、最後にウェスタンブロット法を用いてHE4タンパク質断片への抗体結合を検出した。RTSでの頑健で安定した発現を確保するために、第二ラウンドのPCRでGFPにHE4遺伝子切断部分を結合した。
【0199】
HE4−T1の完全長アミノ酸配列(すなわち、アイソフォーム1;配列番号1)のサイズは、124個のアミノ酸残基である。HE4-363A90.1抗体をエピトープマップするために、以下の逐次的なステップを実施した:
HE4タンパク質は、各々約20個のアミノ酸の6つの領域[1〜6]に等分した。第一のPCRの間に、第二のPCRサイクルの間のメガプライミングを可能にする相同配列およびpScreen−GFPプラスミドへのサブクローニングの第二の選択肢のための制限部位を含む重複配列を、HE4遺伝子に加えた。第一ラウンドのPCRは、領域[1](すなわち、アミノ酸1〜20);領域[1〜2](すなわち、アミノ酸1〜40);領域[1〜3](すなわち、アミノ酸1〜60);領域[1〜4](すなわち、アミノ酸1〜80);領域[1〜5](すなわち、アミノ酸1〜102);領域[1〜6](すなわち、アミノ酸1〜124);および最後に領域[2〜6](すなわち、アミノ酸21〜124)を含むHE4タンパク質(配列番号1)の断片を生成した。領域間の接合点配列に存在していたエピトープの見落としを回避するために、個々の領域(例えば、領域[5]単独)は発現されなかった。
【0200】
HE4の第一ラウンドPCR産物を先に述べたように産生し、pSCREEN−GFP(BamHI−XhoI)にサブクローニングした。生成したGFP−遺伝子融合物を、Roche社製のRTS100大腸菌HYキットを用いるRTS反応でのタンパク質産生用鋳型として用いた。RTSからのタンパク質産物をアセトンで沈殿させ、変性ポリアクリルアミドゲルに直接加え、ウェスタンブロット法によって分析した。ウェスタンブロットを、363A90.1モノクローナル抗体およびGFP抗体で直接探索した。領域[5]で、陽性バンドが検出された。領域[4]の最後の5個のアミノ酸および完全長領域[5]を含む断片を開始配列として用いて、上記の工程を繰り返した。
【0201】
第二ラウンドのRTSは、配列番号1のアミノ酸残基83〜94に対応する5Q3(VNINFPQLGLCR(配列番号11))と命名された領域で、363A90.1抗体について陽性結果を生成した。
【0202】
結果
初期の結果は、HE4モノクローナル抗体363A90.1のエピトープが、HE4タンパク質のC末端領域に位置することを示した。HE4タンパク質のさらなる切断は、363A90.1によって認識されるエピトープが、(配列番号1のアミノ酸残基83〜94に対応するVNINFPQLGLCR(配列番号11))であることを示した。
【0203】
HE4モノクローナル抗体363A71.1のエピトープを特定するために、上記と同一の工程を用いた。初期結果は、エピトープがHE4タンパク質のC末端領域に位置することを示した。予備的に、エピトープは、24個のアミノ酸の領域、具体的には配列番号1のアミノ酸残基93〜116(CRDQCQVDSQCPGQMKCCRNGCGK(配列番号12))に対応する領域と規定された。精製されたエピトープは、CRDQCQVDSQCPGQMKCCRNからなる20個のアミノ酸の領域(配列番号13;配列番号1のアミノ酸残基93〜112に対応する)に位置する可能性が高い。明らかに、363A90.1および363A71.1について特定されたエピトープは、HE4のT1、T4およびT5アイソフォームに存在する。
【実施例5】
【0204】
サンドイッチELISAフォーマットを用いる正常および卵巣癌の血清試料でのHE4過剰発現の検出
本発明のモノクローナルHE4抗体、特に363A90.1および363A71.1の、初期段階の卵巣癌を検出する有用性を調査した。患者標本コホートの組成を、下の表7に示す。
【0205】
【表7】

【0206】
本明細書に記載する方法に従って、サンドイッチELISAフォーマットで本発明の363A90.1および363A71.1抗体を用いて、試料のすべてを分析した。具体的には、下記のようにこれらの方法を実施した:
アッセイプレートのコーティング:
PBS中で2μg/mlの一次抗体(すなわち、抗HE4モノクローナル抗体363A90.1)により100μl/ウェルで96ウェルプレートにコーティングし、プレートを4℃で一晩インキュベートした。その翌日、プレートをPBSで5回洗浄し、次に、PBS/3%BSAを各ウェルに250μl/ウェルで加え、プレートを30℃で2時間インキュベートした。次にプレートを空にし、室温で2時間真空オーブン中で乾燥させた。乾燥パックと一緒にマイラーホイルバッグの中でプレートをヒートシールし、使用前まで4℃で保存した。
【0207】
サンドイッチELISA方法:
アッセイでの使用直前に、アッセイプレートが入っているホイルバッグを室温に温めた。血清試料は、PBS/1%ウシ血清/0.05%Tween(登録商標)20/1mg/mlマウスIgGで、1:4に希釈した。HE4抗原タンパク質標準物質を100ng/mlまで希釈し、次に、PBS/1%ウシ血清/0.05%Tween20(登録商標)/1mg/mlマウスIgGで、2倍に連続希釈した。それらが血清試料と同程度に希釈されるように、個々の標準曲線試料のすべてを緩衝液でさらに1:4に希釈した。希釈した血清試料および標準曲線試料を、100μl/ウェルで抗HE4コーティングアッセイプレートに加えた。プレートを30℃で2時間インキュベートし、次に、PBS−0.05%Tween(登録商標)20(250ul/ウェル)で5回洗浄した。
【0208】
二次的(またはタグ)抗体(すなわち、HRPに結合した抗HE4モノクローナル363A71.1)を、PBS/1%ウシIgG/0.05%Tween(登録商標)20/1mg/mlマウスIgG中に1:16,000に希釈した。100μl/ウェルの二次抗体溶液を、吸引したプレートに加え、30℃で1時間インキュベートした。次に、プレートをPBS−0.05%Tween(登録商標)20(250μl/ウェル)で5回洗浄した。抗原抗体結合を検出するために用いた発色溶液(developing solution)、TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)を使用前に室温まで温め、次に、吸引したプレートにTMBを100μl/ウェルで加えた。プレートを室温で10分間インキュベートし、次に、TMBを含むプレートに、停止液(すなわち、2N H2SO4)を100μl/ウェルで加えた。
【0209】
次に、プレートを室温で10分間インキュベートし、SoftMax Proソフトウェアを用いて、650nmの参照波長により、Molecular Devices SpectraMaxプレートリーダーで450nmの値を読み取った。データをSoftMax Proファイルとして保存し、また、MS Excel用にテキストファイルとしてエクスポートした。
【0210】
サンドイッチELISAアッセイのための対照には、Uniglobe#72372(高い対照として用いた血清)、Uniglobe#72404(低い対照として用いた血清)、およびPBS/1%ウシ血清/0.05%Tween(登録商標)20/1mg/mlマウスIgG(緩衝液対照)が含まれた。
【0211】
「陽性」または「陰性」としての試料の分類およびアッセイ結果
104名の正常な閉経後女性からの第二の独立した患者試料コホートから標準偏差の2倍のカットオフ閾値が得られ、それを用いて結果を「陽性」または「陰性」に分類した。これらの研究結果を、表8に示す。
【0212】
【表8】

【実施例6】
【0213】
乳癌血清試料中のHE4過剰発現の検出
様々な年齢(すなわち、年齢53〜97)の27人の乳癌患者からの血清試料で乳癌を検出するHE4過剰発現の能力を評価した。
【0214】
基本的には、上の実施例5で述べたように、試料のすべてを「サンドイッチ」ELISAフォーマットを用いて分析した。正常な非癌性の試料の第二の独立したコホートから標準偏差の2倍のカットオフ閾値が得られ、それを用いて結果を「陽性」または「陰性」に分類した。これらの研究結果を、表10に示す。
【0215】
【表9】

【0216】
363A90.1および363A71.1と命名されたHE4モノクローナル抗体を用いて、55歳を超える患者からの試料および様々な年齢の患者の試料で得られたHE4の受容体作動特性(ROC)プロットを、図1に示す。
【0217】
本明細書中に挙げたすべての刊行物および特許出願は、本発明が関連する技術分野の当業者のレベルを示すものである。すべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれることが具体的におよび個々に示されているかのように、同じ程度に参照により本明細書に組み込まれている。
【0218】
上記発明は理解の明瞭さの目的のために例示および実施例としてある程度詳細に記載されているが、添付の請求項の範囲内で、ある変更および修正を加えることができることは明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)特許寄託番号PTA−8196としてATCCに寄託されているハイブリドーマ細胞系363A90.1によって産生されるモノクローナル抗体、
(b)特許寄託番号PTA−8195としてATCCに寄託されているハイブリドーマ細胞系363A71.1によって産生されるモノクローナル抗体、
(c)ハイブリドーマ細胞系363A90.1または363A71.1によって産生されるモノクローナル抗体の結合の特徴を有するモノクローナル抗体、
(d)ハイブリドーマ細胞系363A90.1または363A71.1によって産生されるモノクローナル抗体に結合することができるエピトープに結合するモノクローナル抗体、
(e)配列番号11、12または13に示すアミノ酸配列を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体、
(f)ハイブリドーマ細胞系363A90.1または363A71.1によって産生されるモノクローナル抗体と競合結合アッセイで競合するモノクローナル抗体、および
(g)(a)〜(f)のモノクローナル抗体の抗原結合断片であって、該断片がHE4に特異的に結合する能力を保持するものであるモノクローナル抗体、またはその変異体もしくは断片
からなる群から選択されることを特徴とする、HE4に特異的に結合することができるモノクローナル抗体、またはその変異体もしくは断片。
【請求項2】
特許寄託番号PTA−8196としてATCCに寄託されていることを特徴とする、ハイブリドーマ細胞系363A90.1。
【請求項3】
特許寄託番号PTA−8195としてATCCに寄託されていることを特徴とする、ハイブリドーマ細胞系363A71.1。
【請求項4】
請求項1のモノクローナル抗体を産生することができることを特徴とする、ハイブリドーマ細胞系。
【請求項5】
a)固体支持体上に固定されている、第一のHE4抗体である捕捉抗体、および
b)検出可能な物質で標識されている第二のHE4抗体であるタグ抗体
を含むことを特徴とする、患者の卵巣癌を診断するためのキット。
【請求項6】
前記捕捉抗体は、特許寄託番号PTA−8196としてATCCに寄託されているハイブリドーマ細胞系363A90.1によって産生されるモノクローナル抗体であり、前記タグ抗体は、特許寄託番号PTA−8195としてATCCに寄託されているハイブリドーマ細胞系363A71.1によって産生されるモノクローナル抗体であることを特徴とする、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
少なくとも1つの請求項1に記載のモノクローナル抗体を含むことを特徴とする、卵巣癌を診断し、または卵巣癌を有する可能性の増大した患者を特定するためのキット。
【請求項8】
モノクローナル抗体は、特許寄託番号PTA−8196としてATCCに寄託されているハイブリドーマ細胞系363A90.1によって産生されるモノクローナル抗体、または特許寄託番号PTA−8195としてATCCに寄託されているハイブリドーマ細胞系363A71.1によって産生されるモノクローナル抗体であることを特徴とする、請求項7に記載のキット。
【請求項9】
第一の抗体は、特許寄託番号PTA−8196としてATCCに寄託されているハイブリドーマ細胞系363A90.1によって産生されるモノクローナル抗体であり、第二の抗体は、特許寄託番号PTA−8195としてATCCに寄託されているハイブリドーマ細胞系363A71.1によって産生されるモノクローナル抗体である少なくとも2つの抗体を含むことを特徴とする、請求項7に記載のキット。
【請求項10】
a)患者からの身体試料を、固体支持体上に固定されている、第一のHE4抗体である捕捉抗体と共にインキュベートすること、
b)前記固体支持体を、検出可能な物質で標識されている第二のHE4抗体であるタグ抗体と接触させることによって、結合されたHE4を検出すること、および
c)結合されたタグ抗体を定量化し、それによって結合されたHE4タンパク質のレベルを決定すること
を含むことを特徴とする、患者の卵巣癌を診断するための方法。
【請求項11】
患者身体試料中の結合されたHE4タンパク質のレベルを閾値レベルと比較することをさらに含み、該閾値レベルは、卵巣癌を有しない患者からの試料中の結合されたHE4タンパク質のレベルを測定することによって決定されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記捕捉抗体は、特許寄託番号PTA−8196としてATCCに寄託されているハイブリドーマ細胞系363A90.1によって産生されるモノクローナル抗体であり、前記タグ抗体は、特許寄託番号PTA−8195としてATCCに寄託されているハイブリドーマ細胞系363A71.1によって産生されるモノクローナル抗体であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
a)身体試料中のHE4の発現を検出すること、およびHE4が過剰発現するかどうか決定することを含む第一のアッセイステップを実施すること、および
b)HE4がステップ(a)で過剰発現すると決定される場合、身体試料中の第二のバイオマーカーまたは第二のバイオマーカーの一団の発現を検出すること、および第二のバイオマーカーまたは第二のバイオマーカーの一団が過剰発現するかどうか決定することを含む第二のアッセイステップを実施すること
を含み、HE4および第二のバイオマーカーまたはバイオマーカーの一団の両方の過剰発現は、患者が卵巣癌を有する可能性の増大を示すことを特徴とする、卵巣癌を有する可能性の増大した患者を特定するためのスクリーニング方法。
【請求項14】
前記身体試料を、特許寄託番号PTA−8196としてATCCに寄託されているハイブリドーマ細胞系363A90.1によって産生されるモノクローナル抗体および特許寄託番号PTA−8195としてATCCに寄託されているハイブリドーマ細胞系363A71.1によって産生されるモノクローナル抗体からなる群から選択されるモノクローナル抗体と接触させることによってHE4発現が検出されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記身体試料を、HE4に特異的に結合する少なくとも2つのモノクローナル抗体と接触させることによってHE4発現が検出され、第一の抗体は、特許寄託番号PTA−8196としてATCCに寄託されているハイブリドーマ細胞系363A90.1によって産生されるモノクローナル抗体であり、第二の抗体は、特許寄託番号PTA−8195としてATCCに寄託されているハイブリドーマ細胞系363A71.1によって産生されるモノクローナル抗体であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第二のバイオマーカーの一団は、CA125、グリコデリン、Muc−1、PAI−1およびPLAU−Rを含む一団、CA125およびPAI−1を含む一団、CA125、グリコデリン、PAI−1およびMMP−7を含む一団、CA125、グリコデリン、PAI−1およびPLAU−Rを含む一団、CA125、グリコデリン、PAI−1およびPLAU−Rを含む一団、グリコデリン、Muc−1、PLAU−RおよびインヒビンAを含む一団、CA125、Muc−1、グリコデリン、PAI−1およびPLAU−Rを含む一団ならびにCA125、MMP−7、グリコデリンおよびPLAU−Rを含む一団からなる群から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
(a)配列番号11、12または13に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、および
(b)配列番号11、12または13と少なくとも90%の配列同一性を有し、且つ抗原活性を有するポリペプチド
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、HE4モノクローナル抗体に結合するためのエピトープを含む単離ポリペプチド。
【請求項18】
(a)配列番号11、12または13に示すアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、および
(b)配列番号11、12または13と少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードし、且つ抗原活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、HE4モノクローナル抗体に結合するためのエピトープを含むポリペプチドをコードする単離核酸分子。
【請求項19】
請求項17に記載のポリペプチドで動物を免疫化することを含む、HE4抗体の産生方法。
【請求項20】
(a)免疫応答を誘発する条件下で請求項17に記載のポリペプチドで動物を免疫化すること、
(b)該動物から抗体産生細胞を単離すること、
(c)培養物中で該抗体産生細胞を不死化細胞と融合させてモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞を形成すること、
(d)該ハイブリドーマ細胞を培養すること、および
(e)培養物からモノクローナル抗体を単離すること
を含むことを特徴とする、HE4モノクローナル抗体の産生方法。

【図1A】
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【図1B】
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【公表番号】特表2010−520768(P2010−520768A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553695(P2009−553695)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/056132
【国際公開番号】WO2008/112514
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(502118993)トライパス イメージング インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】