説明

HHV−6由来の組換ウイルスベクター、その製造方法、それを用いた宿主細胞の形質転換方法、それにより形質転換された宿主細胞およびそれを用いた遺伝子治療方法

外因性ヌクレオチド配列を挿入することができ、哺乳類の宿主細胞に容易に導入することができ、外因性ヌクレオチド配列にコードされた遺伝子を宿主細胞内で発現させることができ、病原性を有する危険性が低く、哺乳類の遺伝子治療に好適に用いることができる、ウイルスベクターを提供する。HHV−6由来の組換ウイルスベクターであって、HHV−6のU2、U3、U4、U5、U6、U7、U8、U24およびU25領域からなる群より選ばれる少なくとも1領域に相当する部位に、外因性ヌクレオチド配列を備える、組換ウイルスベクター。あるいは、HHV−7由来の組換ウイルスベクターであって、HHV−7のU2、U3、U4、U7、U8、U24、U24aまたはU25領域からなる群より選ばれる少なくとも1領域に相当する部位に、外因性ヌクレオチド配列を備える、組換ウイルスベクター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターに関する。さらに詳しくは、本発明は、ヘルペスウイルスに属するHHV−6、HHV−7ウイルス由来の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターに関する。
【0002】
また、本発明は、上記の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターの製造方法に関する。さらに、本発明は、上記の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターを用いた宿主細胞の形質転換方法に関する。そして、本発明は、上記の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターにより形質転換された宿主細胞に関する。加えて、本発明は、上記の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターを用いた遺伝子治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、分子生物学や分子遺伝学などにおける知識の蓄積やさまざまな技術開発により生命科学は大きく発展し、生命現象に関して多くの情報が得られるようになってきている。
【0004】
そのため、現在、生命科学の種々の分野において活発な研究開発が行われている。これらの中でも、遺伝子機能の解析は大きな比重を占めており、単離した遺伝子を細胞や生物個体に導入するためのさまざまな技術やそのためのベクターが開発されている。
【0005】
医療などへの応用を目的として、哺乳類の細胞への遺伝子導入に用いられるベクターも数多く開発されている。これらのベクターの中でも、最近はウイルスを利用したベクター(ウイルスベクター)が注目されている。
【0006】
ウイルスベクターは、いくつかの公知のベクターの中でも、外来遺伝子をタンパク質として発現され得るように細胞に導入するのに有用なものである。ウイルスベクターの中心要素は、ウイルスが本来持っている感染(増殖感染、潜伏感染、流産感染を含む)という性質を利用して、外来遺伝子を感染細胞に導入し、プロモーター配列のコントロール下である外来遺伝子により、形質を導入することにある。
【0007】
既知の形質導入技術としては、非ウイルス的な方法も用いられている。たとえば、遊離DNAとしての標的遺伝子構築体の単なる添加、標的DNAと標的細胞へのDNAの取込みのためにデザインされた特異的なタンパク質との複合体とのインキュベーション、ならびにリポソームまたはその他の脂質を基礎とする感染遺伝子の中に封入された標的DNAとのインキュベーションなどの技術が用いられている。しかし、これらの非ウイルス的な形質導入技術は、導入効率が低い傾向があり、導入された遺伝子の発現効率も低い場合が多い。
【0008】
さらに、既知の形質導入技術としては、必須の標的遺伝子を含むように操作され、かつ標的細胞に感染でき、それゆえ細胞の中に標的遺伝子を発現できる状態で運び込む組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターの利用が実施されている。多種多様なウイルス、たとえばレトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスがこの目的のために利用されている。しかし、これらのウイルスには以下の欠点が認められる。
【0009】
たとえば、レトロウイルスは本来発癌ウイルスであり、実際に遺伝子治療にともなう発癌性が指摘されている。さらに、導入できる遺伝子が小さく、また遺伝子を発現することができる細胞の種類が限られる点が挙げられる。
【0010】
アデノウイルスは、遺伝子治療などで使用した場合、アデノウイルスに対する強いアレルギー反応が起きる場合があり、実際に遺伝子治療にともなう死亡例が確認されている。さらに、血液細胞に対する遺伝子導入の効率が悪く、ベクターとして用いることが困難であることが挙げられる。
【0011】
アデノ随伴ウイルスは、形質導入できる遺伝子の大きさが小さく、さらに遺伝子の発現効率が悪い欠点をもつ。また、アデノ随伴ウイルスのベクター作製は困難であり、宿主の遺伝子に組み込まれるので発癌性が否定できない点が挙げられる。
【0012】
ヘルペスウイルス科のウイルスは、主としてヒトに感染するものだけで、現在8種類同定されている。ヘルペスウイルスは大型のDNAウイルスで、主としてその進化の系統樹に従って、α、β、γの3亜科に分類され、亜科ごとに共通した生物学的性質を持つ。たとえば、α−ヘルペスウイルスは神経細胞で潜伏感染、再活性化を生じる神経向性のウイルスで、γ−ヘルペスウイルスは腫瘍原性を持つ。
【0013】
ヒトのβヘルペスウイルスには、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV:ヒトヘルペスウイルス5、HHV−5)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)およびヒトヘルペスウイルス(HHV−7)が属している。
【0014】
特にHHV−6およびHHV−7は、発現する疾患の症状が穏やかであり(たとえば、非特許文献1参照。)、遺伝子治療に用いるウイルスベクターの候補として注目されている(たとえば、非特許文献2参照。)。
【0015】
ヘルペスウイルス、特にHHV−6およびHHV−7を組換ウイルスまたは組換ウイルスベクターとして用いた場合、病原性が低いことをはじめ、T細胞やマクロファージなどの血液細胞に遺伝子を形質導入しやすい、比較的大きな遺伝子を形質導入できる、といった利点が考えられる。
【0016】
さらに、HHV−6を利用した組換ウイルスまたは組換ウイルスベクターを利用した場合、他のベクターでは難しいマクロファージへの遺伝子の形質導入が可能であること、マクロファージに潜伏感染状態で遺伝子を導入できるため、アデノウイルスに見られるアレルギー症状を引き起こさないこと、といった利点が考えられる。
【0017】
しかし、HHV−6またはHHV−7由来の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターの作製は困難であり、従来の技術では作製することができなかった。HHV−6およびHHV−7の組換が困難であった原因としては、技術的な要因に加え、HHV−6およびHHV−7に備わる遺伝子の性質に由来すると考えられる。
【0018】
HHV−6およびHHV−7の遺伝子の大きさはHCMVよりも小さく、HCMVで知られているウイルス増殖に不必要な遺伝子がほとんど含まれていないことが知られている(たとえば、非特許文献3および非特許文献4参照。)。
【0019】
通常、相同組換法を用いてヘルペスウイルスの組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターを作製する場合、1つ以上の部位を一旦破壊しなければならない。しかし、HCMVの組換ウイルスの作製過程で従来使用されてきた組換可能な部位は、HHV−6およびHHV−7に必ずしも含まれないため、HHV−6およびHHV−7の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターを作製するためには、新しい作製方法の開発が必要である。
【0020】
ヘルペスウイルス由来のウイルスベクターとしては、ゲノムのプロモーター調節領域のコントロール下で単純ヘルペスウイルスゲノムの中に挿入され、それゆえ外来遺伝子の発現のためのベクターを担う外来遺伝子が開示されている(たとえば、特許文献1参照。)。さらに、DNA構築体、外来遺伝子の発現のために有用な構築体を含むプラスミドベクター、このベクターにより製造された組換ウイルスおよび関連の方法が開示されている。しかしながら、これらの文献には、単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)ベクターおよびその作製方法についての記載しかなく、HHV−6由来あるいはHHV−7由来のウイルスベクターに関する記載はない。
単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)とHHV−6またはHHV−7は、進化的には同じ祖先から発生しているが、遺伝子の構造が全く異なり、互いの遺伝子配列の相同性が低く、ベクターの作成や遺伝子治療を行なう際に重要である細胞指向性(cellular tropism)が全く異なる。このため、HHV−6またはHHV−7由来ベクターの作成には、単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)ベクターとは異なった技術開発が必要である。
【0021】
また、ヘルペスウイルスベクターを利用した結果、たとえば造血細胞系の悪性細胞を形質転換し、かかる細胞における外来性遺伝子材料の発現と誘導するための方法も開示されている(たとえば、特許文献2参照)。しかし、単純ヘルペスウイルス1型に関する記述しかなく、HHV−6またはHHV−7由来のベクターまたは作製方法は開示されておらず、遺伝子治療に伴う副作用についての記載もない。
【0022】
【特許文献1】欧州特許第176170号
【特許文献2】特表平11−513565号公報
【非特許文献1】Clin.Microbiol.Rev.,1997年7月,第10巻,第3号,p.521−567
【非特許文献2】J.Virol.Meth.,2002年9月,第105巻,第2号,p.331−341
【非特許文献3】Yuji Isegawa et.al,J.Virol.,1999年10月,第73巻,第10号,p.8053−8063
【非特許文献4】A.George Megaw et.al,Virology,1998年,第244号,p.119−132

本発明の課題は、外因性ヌクレオチド配列を挿入することができ、哺乳類の宿主細胞に容易に導入することができ、外因性ヌクレオチド配列にコードされた遺伝子を宿主細胞内で発現させることができ、病原性を有する危険性が低く、哺乳類の遺伝子治療に好適に用いることができる、ウイルスベクターを提供することである。
【0023】
本発明の他の課題は、外因性ヌクレオチド配列を挿入することができ、哺乳類の宿主細胞に容易に導入することができ、外因性ヌクレオチド配列にコードされた遺伝子を宿主細胞内で発現させることができ、病原性を有する危険性が低く、哺乳類の遺伝子治療に好適に用いることができる、ウイルスベクターを容易かつ安全に製造可能な製造方法を提供することである。
【0024】
本発明の別の課題は、哺乳類の宿主細胞に容易に外因性ヌクレオチド配列が導入でき、外因性ヌクレオチド配列にコードされた遺伝子を宿主細胞内で発現させることができ、病原性を有する危険性を低く抑えることができ、哺乳類の遺伝子治療に好適に用いることができる、ウイルスベクターによる宿主細胞の形質転換方法を提供することである。
【0025】
本発明のさらに別の課題は、ウイルスベクターにより形質転換されて外因性ヌクレオチド配列が挿入されており、外因性ヌクレオチド配列にコードされた遺伝子を宿主細胞内で発現させることができ、病原性を有する危険性が低く、遺伝子治療および細胞治療に好適に用いることのできる、形質転換宿主細胞を提供することである。
【0026】
本発明のもう一つの課題は、哺乳類の宿主細胞に容易に外因性ヌクレオチド配列が導入でき、外因性ヌクレオチド配列にコードされた遺伝子を宿主細胞内で発現させることができ、病原性を有する危険性を低く抑えることができる、ウイルスベクターを用いた哺乳類の遺伝子治療方法を提供することである。
【0027】
本発明のさらにもう1つの課題は、従来の方法では効率よく遺伝子導入できなかった場合や安定な遺伝子発現を得ることができなかった場合および発癌が引き起こる危険性が高かった場合に対して、これまでに使用されてなかったウイルスを利用した遺伝子治療法、組換えウイルスおよび組換えウイルスベクターを開発することである。
【発明の開示】
【0028】
本発明者は、上記の課題を解決するためには、発現する疾患の症状が非常に穏やかであり、健康な成人の体内にほぼ100%の割合で感染・潜伏しているHHV−6またはHHV−7を、遺伝子治療に用いるウイルスベクターとして好適に用いることができるようにすればよいとの着想を得、鋭意研究に励んだ。
【0029】
具体的には、本発明者は、相同組換技術によって組換ウイルスを作るために、薬剤耐性遺伝子に置換することができる欠失可能領域を見出すべく、後述する実施例に示す実験を試行錯誤のもと実施した。
【0030】
その結果、本発明者は、下記の実施例に記載するように、ヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)およびヒトヘルペスウイルス7(HHV−7)の複製と潜伏感染のために必須ではないため欠失可能な遺伝子クラスターを発見した。
【0031】
この発見に基づき、本発明者は、HHV−6またはHHV−7の特定領域に外来ヌクレオチド配列を挿入しても、HHV−6またはHHV−7のウイルスベクターとしての機能は失われないことを見出し、従来の技術では作製が非常に困難であったHHV−6またはHHV−7由来の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターの作製を可能にし、本発明を完成した。
【0032】
すなわち、本発明の組換ウイルスベクターは、HHV−6由来の組換ウイルスベクターであって、HHV−6のU2、U3、U4、U5、U6、U7、U8、U24およびU25領域からなる群より選ばれる少なくとも1領域に相当する部位に、外因性ヌクレオチド配列を備える、組換ウイルスベクターである。
【0033】
ここで、この部位は、配列番号1で表されるHHV−6のDNA配列におけるヌクレオチド番号9041〜17446または36250〜37775の範囲に存在することが好ましい。また、本発明の組換ウイルスベクターは、組換ウイルスH6R28またはH6R24−25からなることが望ましい。
【0034】
そして、本発明の組換ウイルスベクターは、HHV−7由来の組換ウイルスベクターであって、HHV−7のU2、U3、U4、U7、U8、U24、U24aまたはU25領域からなる群より選ばれる少なくとも1領域に相当する部位に、外因性ヌクレオチド配列を備える、組換ウイルスベクターであってもよい。
【0035】
ここで、この部位は、配列番号2で表されるHHV−7のDNA配列におけるヌクレオチド番号10558〜18483または34744〜36118の範囲に存在することが好ましい。また、本発明の組換ウイルスベクターは、組換ウイルスH7R28またはH7R24−25からなることが望ましい。
【0036】
そして、この外因性ヌクレオチド配列は、DNA配列および/またはRNA配列であってもよい。
【0037】
また、この外因性ヌクレオチド配列は、bacterial artificial chromosome(BAC)、サイトカイン遺伝子、リボザイム、interference RNA、免疫学的補助刺激分子、シグナル伝達分子、酵素および化学誘引物質からなる群より選ばれる1種以上をコードするヌクレオチド配列であってもよい。
【0038】
さらに、この外因性ヌクレオチド配列は、哺乳類の遺伝子治療に用いられるための配列であってもよい。そして、この外因性ヌクレオチド配列は、マーカー遺伝子をコードするヌクレオチド配列を含んでもよい。
【0039】
本発明の組換ウイルスベクターの製造方法は、HHV−6由来の組換ウイルスベクターの製造方法であって、HHV−6のU2、U3、U4、U5、U6、U7、U8、U24およびU25領域からなる群より選ばれる少なくとも1領域に相当する部位に、外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを備える、組換ウイルスベクターの製造方法である。
【0040】
ここで、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、配列番号1で表されるHHV−6のDNA配列におけるヌクレオチド番号9041〜17446または36250〜37775の範囲に外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを含むことが好ましい。
【0041】
また、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、それぞれ配列番号3−4および5−6に示す配列のプライマーの組合せまたは配列番号36−37および38−39に示す配列のプライマーの組合せを用いて増幅されるDNA配列と、HHV−6のDNA配列との相同組換を行なうステップを含んでもよい。
【0042】
そして、本発明の組換ウイルスベクターの製造方法は、HHV−7由来の組換ウイルスベクターの製造方法であって、HHV−7のU2、U3、U4、U7、U8、U24、U24aまたはU25領域からなる群より選ばれる少なくとも1領域に相当する部位に、外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを備える、組換ウイルスベクターの製造方法であってもよい。
【0043】
ここで、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、配列番号2で表されるHHV−7のDNA配列におけるヌクレオチド番号10558〜18483または34744〜36118の範囲に外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを含んでもよい。
【0044】
また、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、それぞれ配列番号30−31および34−35に示す配列のプライマーの組合せまたは配列番号40−41および42−43に示す配列のプライマーの組合せを用いて増幅されるDNA配列と、HHV−7のDNA配列との相同組換を行なうステップを含んでもよい。
【0045】
また、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、正常かつ/または臍帯血由来の細胞内においてこの外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを含んでもよい。
【0046】
そして、本発明の宿主細胞の形質転換方法は、上記の組換ウイルスベクターによる哺乳類の宿主細胞の形質転換方法であって、この組換ウイルスベクターにより、ヒト、ヒト以外の霊長類およびHHV−6またはHHV−7の感染可能な宿主からなる群より選ばれる1種以上の哺乳類由来のこの宿主細胞を形質転換するステップを備える、宿主細胞の形質転換方法である。
【0047】
ここで、この形質転換するステップは、この組換ウイルスベクターにより、T細胞、マクロファージ、末梢血単核球細胞、血液幹細胞、肝細胞、血管内皮細胞、繊維芽細胞、グリア細胞、アストロサイト、CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、樹状細胞およびナチュラルキラー細胞からなる群より選ばれる1種以上のこの宿主細胞を形質転換するステップを含んでもよい。
【0048】
そして、本発明の形質転換宿主細胞は、上記の宿主細胞の形質転換方法により得られる、形質転換宿主細胞である。また、本発明の形質転換宿主細胞は、哺乳類の遺伝子治療方法に用いられてもよい。
【0049】
さらに、この遺伝子治療は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する易感染性細胞内におけるHIVウイルス感染を予防するための遺伝子治療および/または癌の免疫治療のための遺伝子治療であってもよい。また、この宿主細胞は、この遺伝子治療を行なう対象となる種類の哺乳類と同種の哺乳類由来の宿主細胞であってもよい。
【0050】
そして、本発明の遺伝子治療方法は、ヒト以外の哺乳類の遺伝子治療方法であって、上記の形質転換細胞をこの哺乳類へ投与するステップを備える、遺伝子治療方法である。
【0051】
あるいは、本発明の遺伝子治療方法は、ヒト以外の哺乳類の遺伝子治療方法であって、上記の組換ウイルスベクターにより、この哺乳類の体内の宿主細胞を0.01〜20の感染多重度(MOI)で形質転換するステップを備える、遺伝子治療方法であってもよい。
【0052】
また、本発明の遺伝子治療方法は、さらにこの組換ウイルスベクターに備わる外因性ヌクレオチド配列にコードされる遺伝子を発現させるステップを備えてもよい。
【0053】
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】H6R28のゲノムの構造を表わす模式図である。
【図2(A)】野生型(wt)ウイルスDNAとH6R28ウイルスDNAのU2領域とU8領域を挟むPCR増幅を表わす電気泳動写真の図である。
【図2(B)】図2(A)の増幅産物を制限酵素で消化した断片の電気泳動写真の図である。
【図2(C)】H6R28ウイルスDNAのEGFP−puroカセットの挿入位置を確認するためのPCR増幅を表わす電気泳動写真の図である。
【図2(D)】野生型(wt)ウイルスDNAとH6R28ウイルスDNAのU3〜U7領域をそれぞれ増幅するPCR増幅を表わす電気泳動写真の図である。
【図3(A)】H6R28を感染させた細胞における抗HHV−6モノクローナル抗体陽性細胞の増加を示すグラフ図である。
【図3(B)】H6R28を感染させた細胞の培養上清中のウイルス活性(生存ウイルスの個数)の変化を示すグラフ図である。
【図4】H6R24−25のゲノムの構造を表わす模式図である。
【図5(A)】H6R24−25を感染させた細胞における抗HHV−6モノクローナル抗体陽性細胞の増加を示すグラフ図である。
【図5(B)】H6R24−25を感染させた細胞の培養上清中のウイルス活性(生存ウイルスの個数)の変化を示すグラフ図である。
【図6(A)】H6R28を潜伏感染させた細胞におけるHHV−6DNA陽性細胞の割合を示すグラフ図である。
【図6(B)】H6R28を潜伏感染させた細胞における再活性化細胞の割合を示すグラフ図である。
【図7(A)】H6R28を潜伏感染させたマクロファージの蛍光顕微鏡像を表す画像である。
【図7(B)】プラスミドpU2−U8EGFP−puroをトランスフェクトした潜伏感染マクロファージの蛍光顕微鏡像を表す画像である。
【図7(C)】再活性化誘導したマクロファージの蛍光顕微鏡像を表す画像である。
【図7(D)】H6R28を感染させたCBMCsの蛍光顕微鏡像を表す画像である。
【図7(E)】H6R28を感染させたMolt−3細胞の蛍光顕微鏡像を表す画像である。
【図7(F)】H6R28を感染させたHeLa細胞の蛍光顕微鏡像を表す画像である。
【図8(A)】H6R28を感染させていないナチュラルキラー細胞のEGFP発現をFACSで調べた結果を示す図である。
【図8(B)】H6R28を感染させたナチュラルキラー細胞のEGFP発現をFACSで調べた結果を示す図である。
【図8(C)】図8(A)および図8(B)の結果をまとめた図である。
【図9】H6R28を感染させた感染させたアストロサイトのEGFPの発現を蛍光顕微鏡像で観察した画像である。
【図10】H6R28を感染させたCD4陽性T細胞のEGFP発現をFACSで調べた結果を示す図である。
【図11】H6R28を感染させたCD8陽性T細胞のEGFP発現をFACSで調べた結果を示す図である。
【図12】H6R28を感染させた樹状細胞のEGFP発現をFACSで調べた結果を示す図である。
【図13(A)】H6R28潜伏感染時のHCMVプロモーターの機能を調べるための5’RACEの方法を示す模式図である。
【図13(B)】5’RACEにより増幅された断片の電気泳動写真の図である。
【図14】H7R28のゲノムの構造を表わす模式図である。
【図15(A)】H7R28を感染させた細胞における抗HHV−7モノクローナル抗体陽性細胞の増加を示すグラフ図である。
【図15(B)】H7R28を感染させた細胞の培養上清中のウイルス活性(生存ウイルスの個数)の変化を示すグラフ図である。
【図16】H7R24−25のゲノムの構造を表わす模式図である。
【図17(A)】H7R24−25を感染させた細胞における抗HHV−7モノクローナル抗体陽性細胞の増加を示すグラフ図である。
【図17(B)】H7R24−25を感染させた細胞の培養上清中のウイルス活性(生存ウイルスの個数)の変化を示すグラフ図である。
【図18】H7R28を感染させたマクロファージのEGFP発現をFACSで調べた結果を示す図である。
【図19】H7R28を感染させたCD4陽性T細胞のEGFP発現をFACSで調べた結果を示す図である。
【図20】H7R28を感染させた樹状細胞のEGFP発現をFACSで調べた結果を示す図である。
【図21】H6R28 BACのゲノムの構造を表わす模式図である。
【図22】H6R28 BACを感染させたMolt−3細胞の蛍光顕微鏡像を表す画像である。
【図23】H7R28 BACのゲノムの構造を表わす模式図である。
【図24】H7R28 BACを感染させたSupT1細胞の蛍光顕微鏡像を表す画像である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、実施の形態を示して本発明をより詳細に説明する。
【0056】
<定義>
本明細書において、HHV−6とは、ヒトヘルペスウイルス6(Human herpesvirus6)のvariant AおよびBを意味するものとする。
【0057】
本明細書において、HHV−7とは、ヒトヘルペスウイルス7(Human herpesvirus7)を意味するものとする。
【0058】
本明細書において、組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターとは、ウイルス遺伝子に外来遺伝子を組み込んだもので、宿主細胞に感染させた時に、増殖性感染、潜伏感染及び/または再活性化、流産感染のいずれかの状態をとるものとする。
【0059】
本明細書において、欠失可能領域とは、欠失してもウイルスの増殖性が完全には失われないウイルス遺伝子上の領域を意味するものとする。
【0060】
本明細書において、外因性ヌクレオチド配列とは、本来そこに存在するべきウイルス遺伝子以外の核酸の配列を意味するものとする。
【0061】
本明細書において、潜伏感染とは、ウイルスがウイルス遺伝子を保持したまま、感染性のウイルスの産生を停止することを意味するものとする。
【0062】
本明細書において、感染とは、ウイルスが細胞内に進入することを指し、増殖感染、潜伏感染、流産感染を含むことを意味する。
【0063】
本明細書において、流産感染とは、細胞内に進入したウイルスが、感染性のウイルスを産生しない状態で、ウイルス遺伝子を積極的には保持しない状態を意味する。
【0064】
本明細書において、遺伝子治療とは、外来遺伝子を細胞内に導入することによって、細胞の形質を転換することによる治療を指し、体外に取出した細胞を遺伝子導入によって形質転換した後に、生体に戻す狭義の細胞治療や、感染性のウイルスを体内の細胞に感染させて、産生されたウイルスによる宿主細胞の修飾を期待する狭義のウイルス治療を含むことを意味する。
【0065】
<HHV−6由来の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクター>
本発明の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターは、HHV−6由来の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターであって、HHV−6のU2、U3、U4、U5、U6、U7、U8、U24およびU25領域からなる群より選ばれる少なくとも1領域に相当する部位に、外因性ヌクレオチド配列を備える、組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターである。
【0066】
HHV−6のU2は、配列番号1に示すHHV−6のヌクレオチド番号10768(開始)〜9467(終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、HCMVのUS22遺伝子ファミリーと共通のモチーフをもつ。
【0067】
HHV−6のU3は、配列番号1に示すHHV−6のヌクレオチド番号12051(開始)〜10891(終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、HCMVのUS22遺伝子ファミリーと共通のモチーフをもつ。
【0068】
HHV−6のU4は、配列番号1に示すHHV−6のヌクレオチド番号13883(開始)〜12276(終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、機能は未知である。
【0069】
HHV−6のU5は、配列番号1に示すHHV−6のヌクレオチド番号15333(開始)〜14002(終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、機能は未知である。
【0070】
HHV−6のU6は、配列番号1に示すHHV−6のヌクレオチド番号15395(開始)〜15652(終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、機能は未知である。
【0071】
HHV−6のU7は、配列番号1に示すHHV−6のヌクレオチド番号16802(開始)〜15678(終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、HCMVのUS22遺伝子ファミリーと共通のモチーフをもつ。
【0072】
HHV−6のU8は、配列番号1に示すHHV−6のヌクレオチド番号18041(開始)〜16806(終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、HCMVのUS22遺伝子ファミリーと共通のモチーフをもつ。
【0073】
HHV−6のU24は、配列番号1に示すHHV−6のヌクレオチド番号36616(開始)〜36350(終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、機能は未知である。
【0074】
HHV−6のU25は、配列番号1に示すHHV−6のヌクレオチド番号38770(開始)〜37883(終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、HCMVのUS22遺伝子ファミリーと共通のモチーフをもつ。
【0075】
ここで、HHV−6の上記の部位は、配列番号1で表されるHHV−6のDNA配列におけるヌクレオチド番号9041〜17446または36250〜3777の範囲に存在する部位であってもよい。後述する実施例において欠失可能であることが示唆されているHHV−6のU2〜U8がヌクレオチド番号9041〜17446の範囲に含まれ、U24〜U25がヌクレオチド番号36250〜3777の範囲に含まれるからである。
【0076】
また、HHV−6の上記の部位は、配列番号1で表されるHHV−6のDNA配列におけるヌクレオチド番号10216〜16547または36250〜37775の範囲に存在する部位であってもよい。この範囲については、後述する実施例において前者は欠失可能である事が、後者は組み換え可能であることが実験的に確認されているからである。
【0077】
これらの部位に存在する制限酵素切断部位を適当な条件のもと市販の制限酵素にて切断し、相補的な末端配列を有する外因性ヌクレオチドと混合して市販のリガーゼにより適当な条件でライゲーションすることにより、これらの部位に容易に所望の外因性ヌクレオチドを挿入することができる。
【0078】
なお、US22ファミリー遺伝子の機能は、HHV−6、HHV−7と同じβ−ヘルペスウイルスに属するヒトサイトメガロウイルスやマウスサイトメガロウイルスに関しては、少し判っているが、HHV−6およびHHV−7に関しては全く未知である。このため、HHV−6およびHHV−7のUS22ファミリー遺伝子についての増殖や潜伏に関する機能は本発明においてはじめて機能解析が試みられたものである。
【0079】
また、HHV−6およびHHV−7のUS22ファミリー遺伝子は、機能などが確定していないアミノ酸配列上の仮想的なモチーフを用いた分類に過ぎず、このファミリーに属することから、何らかの機能が予測されるわけではない。さらに、HHV−6およびHHV−7とサイトメガロウイルスなどの相同するタンパク質に高いアミノ酸ホモロジーの存在も認められない。
【0080】
<HHV−7由来の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクター>
本発明の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターは、HHV−7由来の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターであって、HHV−7のU2、U3、U4、U7、U8、U24、U24aおよびU25領域からなる群より選ばれる少なくとも1領域に相当する部位に、外因性ヌクレオチド配列を備える、組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターであってもよい。
【0081】
HHV−7のU2は、配列番号2に示すHHV−7のヌクレオチド番号11637(開始)〜10558(終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、HCMVのUS22遺伝子ファミリーである。
【0082】
HHV−7のU3は、配列番号2に示すHHV−7のヌクレオチド番号12953(開始)〜11799(終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、HCMVのUS22遺伝子ファミリーである。
【0083】
HHV−7のU4は、配列番号2に示すHHV−7のヌクレオチド番号14603(開始)〜12975(終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、U7のエキソン2と関連のある遺伝子である。
【0084】
HHV−7のU7のエキソン1(別名U5)は、配列番号2に示すHHV−7のヌクレオチド番号17324(開始)〜16348(終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、HCMVのUS22遺伝子ファミリーと共通のモチーフをもつ。
【0085】
HHV−7のU7のエキソン2(別名U7)は、配列番号2に示すHHV−7のヌクレオチド番号16266(開始)〜14628(終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、U4と関連のある遺伝子である。
【0086】
HHV−7のU24は、配列番号2に示すHHV−7のヌクレオチド番号34992(開始)〜34744(終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、機能不明である。
【0087】
HHV−7のU24aは、配列番号2に示すHHV−7のヌクレオチド番号35166(開始)〜34996(終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、機能不明である。
【0088】
HHV−6のU25は、配列番号2に示すHHV−7のヌクレオチド番号36118(開始)〜35156(終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、HCMVのUS22遺伝子と共通のモチーフをもつ。
【0089】
ここで、HHV−7の上記の部位は、配列番号2で表されるHHV−7のDNA配列におけるヌクレオチド番号10558〜18483または34744〜36118の範囲に存在する部位であってもよい。後述する実施例において欠失可能であることが示唆されているHHV−7のU2、U3、U4、U7およびU8がヌクレオチド番号10558〜18483の範囲に含まれ、U24、U24aおよびU25がヌクレオチド番号34744〜36118の範囲に含まれるからである。
また、HHV−7の上記の部位は、配列番号2で表されるHHV−7のDNA配列におけるヌクレオチド番号11631〜17221または34744〜36118の範囲に存在する部位であってもよい。この範囲については、後述する実施例において前者は欠失可能である事が、後者は組み換え可能であることが実験的に確認されているからである。
【0090】
これらの部位に存在する制限酵素切断部位を適当な条件のもと市販の制限酵素にて切断し、相補的な末端配列を有する外因性ヌクレオチドと混合して市販のリガーゼにより適当な条件でライゲーションすることにより、これらの部位に容易に所望の外因性ヌクレオチドを挿入することができる。
【0091】
<外因性ヌクレオチド配列>
上記の外因性ヌクレオチド配列は、DNA配列および/またはRNA配列であってもよい。DNA配列はゲノムDNA配列であってもよく、cDNA配列であってもよい。
【0092】
さらに、この外因性ヌクレオチド配列は、bacterial artificial chromosome(BAC)、サイトカイン遺伝子、リボザイム、interference RNA、免疫学的補助刺激分子および化学誘引物質からなる群より選ばれる1種以上をコードするヌクレオチド配列であってもよい。
【0093】
そして、この外因性ヌクレオチド配列は、哺乳類の遺伝子治療に用いられるための配列であってもよい。また、この外因性ヌクレオチド配列は、哺乳類の腫瘍治療および/または免疫治療において有用な免疫調節タンパク質をコードするヌクレオチド配列であってもよい。
【0094】
さらに、この外因性ヌクレオチド配列は、マーカー遺伝子をコードするヌクレオチド配列を含んでもよい。そして、このマーカー遺伝子は、抗生物質耐性遺伝子であってもよい。
【0095】
<組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターの製造方法>
本発明の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターの製造方法は、HHV−6由来の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターの製造方法であって、HHV−6のU2、U3、U4、U5、U6、U7、U8、U24およびU25領域からなる群より選ばれる少なくとも1領域に相当する部位に、外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを備える、組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターの製造方法である。
【0096】
ここで、上記の外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、上記の部位に存在する制限酵素切断部位を適当な条件のもと市販の制限酵素にて切断するステップと、上記のようにして切断されたウイルスベクターを相補的な末端配列を有する外因性ヌクレオチドと混合して市販のリガーゼにより適当な条件でライゲーションするステップと、を含むことが好ましい。このようにして市販の制限酵素およびリガーゼにより、これらの部位に容易に所望の外因性ヌクレオチドを挿入することができるからである。
【0097】
ここで、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、配列番号1で表されるHHV−6のDNA配列におけるヌクレオチド番号9041〜17446または36250〜37775の範囲にこの外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを含んでもよい。後述する実施例において欠失可能であることが示唆されているHHV−6のU2〜U8がヌクレオチド番号9041〜17446の範囲に含まれ、U24〜U25がヌクレオチド番号36250〜37775の範囲に含まれるからである。
【0098】
また、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、配列番号1で表されるHHV−6のDNA配列におけるヌクレオチド番号10216〜16547または36250〜37775の範囲にこの外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを含んでもよい。この範囲については、後述する実施例において前者が欠失可能で後者が組み換え可能であることが実験的に確認されているからである。
【0099】
また、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、それぞれ表1に示す配列番号3−4および5−6に示す配列のプライマーの組合せまたは配列番号36−37および38−39に示す配列のプライマーの組合せを用いて増幅されるDNA配列と、HHV−6のDNA配列との相同組換を行なうステップを含んでもよい。
【0100】
【表1】

本発明の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターの製造方法は、HHV−7由来の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターの製造方法であって、HHV−7のU2、U3、U4、U7、U8、U24、U24aおよびU25領域からなる群より選ばれる少なくとも1領域に相当する部位に、外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを備える、組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターの製造方法であってもよい。
【0101】
ここで、上記の外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、上記の部位に存在する制限酵素切断部位を適当な条件のもと市販の制限酵素にて切断するステップと、上記のようにして切断されたウイルスベクターを相補的な末端配列を有する外因性ヌクレオチドと混合して市販のリガーゼにより適当な条件でライゲーションするステップと、を含むことが好ましい。このようにして市販の制限酵素およびリガーゼにより、これらの部位に容易に所望の外因性ヌクレオチドを挿入することができるからである。
【0102】
ここで、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、配列番号2で表されるHHV−7のDNA配列におけるヌクレオチド番号10558〜18483または34744〜36118の範囲に外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを含んでもよい。後述する実施例において欠失可能であることが示唆されているHHV−7のU2、U3、U4、U7およびU8がヌクレオチド番号10558〜18483の範囲に含まれ、U24、U24aおよびU25がヌクレオチド番号34744〜36118の範囲に含まれるからである。また、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、配列番号2で表されるHHV−7のDNA配列におけるヌクレオチド番号1163〜17221または34744〜36118の範囲にこの外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを含んでもよい。この範囲については、後述する実施例において前者が欠失可能で後者が組み換え可能であることが実験的に確認されているからである。
【0103】
なお、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、正常かつ/または臍帯血由来の細胞内において前記外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを含んでもよい。ここで、従来公知の組換ウイルスベクターの構築に用いられるアデノウイルスは、腎臓の癌細胞由来のHEK293という細胞株内でなければ組換ウイルスの構築が困難であるという欠点を有するが、本発明の組換ウイルスベクターは、正常細胞内において、好ましくは正常な臍帯血由来の細胞内において構築することができるという利点がある。
【0104】
<宿主細胞の形質転換方法>
本発明の宿主細胞の形質転換方法は、上記の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターによる哺乳類の宿主細胞の形質転換方法であって、上記の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターにより上記の宿主細胞を0.01〜20の感染多重度(MOI)で形質転換するステップを備える、宿主細胞の形質転換方法である。
【0105】
ここで、この形質転換するステップは、上記の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターにより、ヒト、ヒト以外の霊長類およびHHV−6またはHHV−7の感染可能な宿主からなる群より選ばれる1種以上の哺乳類由来の宿主細胞を形質転換するステップを含んでもよい。
【0106】
また、この形質転換するステップは、上記の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターにより、T細胞、マクロファージ、末梢血単核球細胞、血液幹細胞、肝細胞、血管内皮細胞、繊維芽細胞、グリア細胞、アストロサイト、CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、樹状細胞およびナチュラルキラー細胞からなる群より選ばれる1種以上のこの宿主細胞を形質転換するステップを含んでもよい。
ここで、これらの細胞は、従来のベクターでは導入効率や発現などに問題があったが、本発明の組換ウイルスベクターを用いることにより、これらの細胞にも外来遺伝子を導入して発現させることが可能になる利点がある。
【0107】
さらに、この形質転換するステップは、宿主の体外(ex vivo)または体内(in vivo)であってもよい。
【0108】
<形質転換宿主細胞>
本発明の形質転換宿主細胞は、上記の宿主細胞の形質転換方法により得られる形質転換宿主細胞である。
【0109】
ここで、本発明の形質転換宿主細胞は、哺乳類の遺伝子治療方法に用いられてもよい。また、この遺伝子治療は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する易感染性細胞内におけるHIVウイルス感染を予防するための遺伝子治療および/または癌の免疫治療のための遺伝子治療であってもよい。
【0110】
さらに、この宿主細胞は、この遺伝子治療を行なう対象となる種類の哺乳類と同種の哺乳類由来の宿主細胞であってもよい。
【0111】
<遺伝子治療方法>
本発明の遺伝子治療方法は、ヒト以外の哺乳類の遺伝子治療方法であって、上記の形質転換細胞をこの哺乳類へ投与するステップを備える、遺伝子治療方法である。
【0112】
本発明の遺伝子治療方法は、遺伝子治療をはじめウイルス治療および細胞治療方法であってもよい。細胞治療とは、遺伝子導入によって形質転換した細胞を患者に投与する治療方法である。ウイルス治療とは、感染性があって、ヒトの体内で増殖することを前提としたウイルスを患者に投与する治療方法である。
【0113】
本発明の遺伝子治療方法は、ヒト以外の哺乳類の遺伝子治療方法であって、上記の組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターにより、この哺乳類の体内の宿主細胞を0.01〜20の感染多重度(MOI)で形質転換するステップを備える、遺伝子治療方法であってもよい。
【0114】
本発明の遺伝子治療方法は、さらにこの組換ウイルスおよび組換ウイルスベクターに備わる外因性ヌクレオチド配列にコードされる遺伝子を発現させるステップを備えてもよい。
【0115】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0116】
なお、下記の実施例は、インフォームド・コンセントの条件を満たした上で、本研究に参加している献血者から得られた試料を用いて実施した。
【0117】
<HHV−6の組換ウイルスベクターH6R28の構築>
ヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)のU3−U7遺伝子クラスターを、ヒトサイトメガロウイルスの主要な即時型エンハンサー−プロモーター(MIEP)の制御下にある増強された緑色蛍光タンパク質(enhanced green fluorescent protein:EGFP)と、SV40初期プロモーターの制御下にあるピューロマイシン耐性遺伝子と、を含む遺伝子カセット(EGFP−puroカセット)に置換した、組換えウイルスH6R28を構築した。相同組換によってEGFP−puroカセットをHHV−6ゲノムに挿入するために、ウイルスのゲノムの約1キロベース(kb)の部分がカセット(図1)のそれぞれの末端に挿入された。
【0118】
続いて、次の遺伝子クラスターについて調査した:ウイルスのゲノムで繰返し存在するDR2−DR7遺伝子、U95、ウイルスの複製において欠失可能であることが知られているmurineサイトメガロウイルス(MCMV)の即時型(IE)2遺伝子の位置の同族体およびU3−U7遺伝子である。それらの遺伝子について、本発明者は、U3−U7遺伝子をEGFP−puroに置換しても複製能を有するウイルスが得られることに気付いた。
【0119】
以下に具体的な構築手順を説明する。
【0120】
図1は、組換えウイルスH6R28の構造を表わす模式図である。
【0121】
図1においては、最上部にHHV−6B HST株ゲノムの地図を示し、その下(中段)にU1−U9領域を拡大して示している。
【0122】
中段に灰色三角印で示されたU3−U7のORFをEGFP−puroカセットによって置換したものがH6R28である。
【0123】
下段は、EGFP−puroカセットの両端に相同組換えに利用するU2DNA断片およびU8DNA断片を挿入した相同組換え用プラスミドpU2−U8 EGFP−puroを表す。
【0124】
左右向きの短い矢印はプライマーのアニーリング位置を示し、上下向きの短い矢印は制限酵素認識部位を示す。破線の矢印は増幅断片または消化された断片の大きさを表す。
【0125】
EGFP−puroカセットのEGFP遺伝子およびMIEPは、pEGFP−C1(CLONTECH)のヌクレオチド番号8〜1640に由来する。PstIサイトを含むpEGFP−C1のマルチクローニングサイトは除去されている。
【0126】
EGFP−puroカセットのピューロマイシン−N−アセチル−転移酵素遺伝子(pac)とSV40即時型プロモーター遺伝子は、pPUR(CLONTECH)のヌクレオチド番号−408〜1392に由来する。
【0127】
まず、プライマーU2 XbaIとU2 AflIIとを用いたPCRによりU2遺伝子を増幅し、プライマーU8 BamHIとU8 EcoRIとを用いたPCRによりU8遺伝子を増幅した。増幅断片を制限酵素処理した後、それぞれEGFP−puroカセットの両端に挿入し、pU2−U8 EGFP−puroを構築した。
【0128】
上記pU2−U8 EGFP−puroをフィトヘムアグルチニン(PHA)で刺激した末梢血液単核細胞(PBMCs)中に導入した。プラスミドの導入は、Nucleofector TM electroporator(Amaxa Biosystems、ドイツ)を用い、推奨されるプロトコールにしたがって行った。
【0129】
すなわち、5×10個の細胞を、プラスミド5μgおよびT細胞用Nucleofector(TM)溶液100μlと混和し、プログラムU−14を用いたNucleofector(TM)によりエレクトロポレーションを行った。
【0130】
同時に、従来のエレクトロポレーション法も実施した。すなわち、1×10個の細胞と500μlのK−PBS溶液(30.8mMのNaCl、120.7mMのKCl、8.1mMのNaHPO、1.46mMのKHPOおよび25mMのMgCl)中に懸濁した50μgのプラスミドと混合し、混合液をエレクトロポレーションキュベット(ジーンパルサーキュベット 4cm、Bio−Rad)内に入れた。
【0131】
エレクトロポレーションは、ジーンパルサーII エレクトロポレーションシステム(Bio−Rad)を用いて、抵抗無限大、電圧300V、キャパシタンス960μF以下の条件下で行った。6時間後に、HST株のHHV−6variantBを、染多重度(MOI)0.5で遠心法により細胞に感染させた。
【0132】
10%牛胎児血清を添加したRPMI 1640培地で、3日間、細胞を培養し、ウイルスストックとして凍結した。組換ウイルスを増やすために、PHAで刺激した臍帯血単核細胞(CBMCs)に上記ウイルスストックを感染させて1日間培養し、7.5μg/mlのピューロマイシンで1日間処理し、培地で洗浄し、3日間CBMCsと一緒に培養した。感染細胞を新たなウイルスストックとして凍結した。
【0133】
この選択処理を5回繰り返し、その後、96穴のプレートで培養されたCBMCsを使って、限界希釈培養法により組換ウイルス(H6R28)をクローン化した。
【0134】
<HHV−6の組換えウイルスベクターH6R28構築の確認>
予想される領域の中にEGFP−puroカセットが挿入されたことを確認するために、相同ヒンジ領域の外側の領域に設計されたプライマー(外側のプライマーセット:U2R2−U8F2、内側のプライマーセット:U2R1−U8F1、図1参照)を用いて、二重ネストPCRによりウイルスのDNAを増幅した。PCRにはKODプラスDNAポリメラーゼ(東洋紡)を用いた。
【0135】
増幅産物を電気泳動に供した。ゲルは0.6%アガロースゲルを用いた。結果を図2(A)に示した。野生型ウイルス(wt)の増幅産物は約8.5kbであり(レーン1)、期待値(図中の白色矢印)と一致した。また、H6R28の増幅産物は約5.0kbであり(レーン2)、期待値(図中の黒色矢印)と一致した。なお、H6R28の3つのクローンにおいて約5.0kbの増幅産物が観察された。
【0136】
増幅断片は、部分的な配列決定によって確認された(資料を示さない)。組換ウイルス(H6R28)において8.5kbの増幅産物が検出されなかったことから、組換ウイルス(H6R28)に野生型ウイルスが混入していないことが示された。
【0137】
上記増幅産物を制限酵素(PstI、AflIIおよびBamHI、図1参照)で消化し、1.0%アガロースゲル電気泳動に供した。結果を図2(B)に示した。図中左端の白色矢印は野生型ウイルスの消化断片の期待されるサイズを示す。図中右端の黒色矢印はH6R28の消化断片の期待されるサイズを示す。図2(B)から明らかなように野生型ウイルス(レーン3)およびH6R28(レーン4〜6)のいずれも期待されるサイズのバンドが検出された。
【0138】
次に、EGFP−puroカセットの挿入部位を確認した。すなわち、H6R28のDNAを鋳型としてプライマーU2R1−EGFPprimおよびプライマーU8F1−PACprimを用いてそれぞれPCRを行い、増幅産物を1.0%アガロースゲル電気泳動に供した。
【0139】
結果を図2(C)に示した。図中右端の黒色矢印は、プライマーU2R1−EGFPprimにより増幅される断片の期待されるサイズ(1582bp)およびプライマーU8F1−PACprimにより増幅される断片の期待されるサイズ(1760bp)を示す。図2(C)から明らかなように、プライマーU2R1−EGFPprimにより増幅された断片(レーン1)およびプライマーU8F1−PACprimにより増幅された断片(レーン2)とも期待されるサイズのバンドが検出された。
【0140】
さらに、U3〜U7遺伝子の異所性の発現の可能性を検討した。すなわち、EGFP−puroカセットと置換されて欠失していると考えられるU3〜U7遺伝子のそれぞれのORFの増幅を試みた。U3の増幅にはプライマーペアU3F1−U3R1、U4の増幅にはプライマーペアU4F1−U4R1、U5の増幅にはプライマーペアU5F1−U5R1、U6の増幅にはプライマーペアU6F1−U6R1、U7の増幅にはプライマーペアU7F1−U7R1をそれぞれ用いて、野生型ウイルスのDNAまたはH6R28のDNAを鋳型としてPCRを行い、1.0%アガロースゲル電気泳動に供した。
【0141】
結果を図2(D)に示した。図中左右端の黒色矢印は、各プライマーペアにより増幅される断片の期待されるサイズを示す。U3F−U3Rの大きさは、1161bpであり、U4F−U4Rの大きさは、1338bpであり、U5F−U5Rの大きさは、1275bpであり、U6F−U6Rの大きさは、171bpであり、U7F−U7Rの大きさは、1094bpである。
【0142】
図2(D)から明らかなように、野生型ウイルス(レーン1〜5)では、各プライマーペアによりそれぞれ期待されるサイズの断片が増幅されたが、H6R28(レーン6〜10)では、増幅断片が検出されなかった。
【0143】
<HHV−6の組換えウイルスベクターH6R28の増殖感染>
本発明者は、独立した3つの個別のエレクトロポレーションにより3つの個別のH6R28を作出して、CBMCsで複製の動態を調べた。前述のように、ウイルス力価の測定はCBMCsを用いてAsadaらの方法(H.Asada,et.al,J.Clin.Microbiol.27:2204−2207,1989)により行われた。CBMCsにMOI0.05の条件で感染させると、3つのH6R28クローンとwtウイルスとはウイルスの感染の拡大(図3(A))およびウイルス生産(図3(B))が、長い時間にわたって類似の水準であった。
【0144】
図3は、H6R28の生産的感染を表わすグラフ図である。
【0145】
図3(A)は、wtウイルスとH6R28に感染している細胞の増殖速度を示す。CBMC細胞は、感染多重度(MOI)0.05において、wtウイルスまたはH6R28の3つの独立したクローンに、組織培養感染投与量50(TCID50)/細胞の量で投与されて感染した。そして、糖タンパク質Bと糖タンパク質Hに対するモノクローナル抗体の混合液に反応している細胞の存在割合は、モノクローナル抗体を使って免疫蛍光抗体(IFA)染色によって決定された。wt(○)、H6R28クローン1(黒三角印)、クローン2(●)、クローン3(黒四角印)に感染している細胞の存在割合を示す。3回の繰返し培養の平均値が示される。
【0146】
図3(B)は、wtウイルスとH6R28の増殖曲線を示す。
【0147】
CBMCsは、上述のように感染させられ、感染細胞が示された時間に回収されて−80℃で凍結された。子孫ウイルスは、CBMCsにおいてIFA染色を使って力価測定した。ウイルス力価は、1ミリリットルあたりのTCID50として示された。wt(□)、H6R28クローン1(黒三角印)、クローン2(●)およびクローン3(黒四角印)で感染した細胞における力価を示す。0日目における値が投与されたウイルスの力価を表す。3回の繰返し培養の平均値が示される。
【0148】
図3(A)および図3(B)に示した結果から、H6R28は野生型ウイルスと同等の増殖能力を保持していることが明らかとなった。すなわち、U2〜U8の部位に外来遺伝子を挿入してもウイルスの増殖に影響を及ぼさないことが示された。
【0149】
<HHV−6の組換ウイルスベクターH6R24−25の構築>
HHV−6のU24とU25を組み換え部位に使用した組み換えウイルスH6R24−25を構築した。
【0150】
図4は、組換えウイルスH6R24−25の構造を表わす模式図である。
【0151】
図4においては、最上部にHHV−6BHSTゲノムの地図を示し、その下(中段)にU24−U25領域を拡大して示している。
【0152】
下段は、EGFP−puroカセットの両端に相同組換えに利用するU24DNA断片およびU25DNA断片を挿入した相同組換え用プラスミドpHHV−6 U24−U25 EGFP−IRES−puroを表す。
【0153】
左右向きの短い矢印はプライマーのアニーリング位置を示す。
【0154】
図中の数字36250,36980,37775は、HHV−6HST株の塩基の番号を示す。
【0155】
前記の組換ウイルスH6R28よりも短い組換え部位に遺伝子を挿入するために、internal ribosomal entry site(IRES)を用いて挿入遺伝子を小型化した。
【0156】
構築手順は、相同組換えに利用するU24−U25遺伝子の増幅にプライマーU24 SpeIとU25 EcoRIおよびプライマーU25 MluIとU25 KpnIを用いたことを除いて、上記H6R28の構築手順と同様である。
【0157】
また、H6R24−25構築の確認は、上記H6R28構築の確認と同様に行い、同様の結果を得た。なお、重複記載を避けるため、説明を繰返さない。
【0158】
さらに、上記H6R28と同様に、H6R24−25の細胞から細胞への広がりの効率および感染細胞でのウイルス産生の効率を検討した。なお、実験方法は上記H6R28と同じである。
【0159】
図5(A)にウイルス抗原陽性細胞の増加を示した。また、図5(B)にウイルスの増殖曲線を示した。図中○が野生型ウイルス、■がH6R24−25を表す。
【0160】
図5(A)および図5(B)に示した結果から、H6R24−25は野生型ウイルスと同等の増殖能力を保持していることが明らかとなった。すなわち、U24〜U25の部位に外来遺伝子を挿入してもウイルスの増殖に影響を及ぼさないことが示された。
【0161】
以上、H6R28およびH6R24−25のデータより、HHV−6では、U3、U4、U5、U6、U7、U8、U24、U25が外来遺伝子の挿入部位として使用可能である事が判明した。
【0162】
<HHV−6の組換ウイルスベクターの潜伏感染能力および再活性化効率>
本発明者は次に潜伏感染を確立する能力、再活性化の効率に関しH6R28を用いて実験した。
【0163】
潜伏感染の確立を評価するために、末梢血液マクロファージにwtウイルスとH6R28を感染させた。HHV−6DNA陽性細胞の存在割合はKondoらの方法(J.Gen.Virol.72:1401−1408,1991、J.Virol.77:2258−2264,2003、J.Virol.76:4145−4151,2002)によりモニターされた。
【0164】
手短かに言えば、末梢血液マクロファージは、コラーゲンコートしたプラスチックプレート(住友ベークライト社 日本)で、25%の馬血清を添加したRPMI 1640培地を用いて培養した。培養7日目にHHV−6をマクロファージに感染させ、さらに4〜6週の間培養した。感染しているマクロファージをプレートから剥がし、糖タンパク質Bと糖タンパク質Hに対するモノクローナル抗体を使って、免疫蛍光抗体(IFA)染色によって、ウイルスが複製をしていないことを確認した。
【0165】
細胞を段階希釈し(10〜1cell/tube)、各チューブごとにDNAを分離した。なお、1希釈段階あたり4本のチューブを使用した。ウイルスDNAは二重ネストPCRによって検出し(K Kondo,et.al,J.Infect.Dis.167:1197−1200,1993)、HHV−6DNA陽性細胞の数は、Reed−Muench法(Reed,L.J.,and H.Muench,Am.J.Hyg.27:493,1938)によって計算した。
【0166】
再活性化効率を検討するために、Kondoらの方法(J.Gen.Virol.72:1401−1408,1991、J.Virol.76:4145−4151,2002)にしたがって、テトラデカノイルホルボール酢酸塩(TPA)処理によりウイルスの再活性化が誘導された。手短かに言えば、潜伏感染細胞を培養皿から剥がし、段階希釈し、未感染のマクロファージをフィーダーレイヤーとして共培養した。その後、細胞はTPA(20ng/ml)で7日間処理されて、CBMCsと一緒に7日間共培養された。ウイルスの再活性化の効率はReed−Muench法(Reed,L.J.,and H.Muench,Am.J.Hyg.27:493,1938)によって計算した。
【0167】
結果を図6(A)および図6(B)に示した。
図6(A)は、HHV−6のDNA陽性細胞の存在割合を示す。HHV−6のDNAが検出される細胞の存在割合は、感染後4週目と6週目に調べられた。wtウイルスとH6R28の3つのクローンの3回の繰返し培養の平均値と標準偏差が示される。白色柱は、野生型ウイルスを示し;灰色柱は、H6R28を示す。
【0168】
図6(B)は、再活性化陽性細胞の存在割合を示す。ウイルスの再活性化が誘導され、そして再活性化陽性細胞の存在割合が計算された。wtウイルスとH6R28の3つのクローンの3回の繰返し培養の平均値と標準偏差が示される。白色柱は、野生型ウイルスを示し、灰色柱は、H6R28を示す。
【0169】
図6(A)および図6(B)から明らかなように、HHV−6のDNA陽性細胞および再活性化陽性細胞の割合は野生型ウイルスとH6R28との間に差は認められなかった。したがって、潜伏感染の確立と再活性化プロセスがU3−U7遺伝子の削除によって失われないことが明らかとなった。
【0170】
<HHV−6組換ウイルスベクターの様々な細胞への導入>
(1)マクロファージ、CBMCs、Molt−3、HeLa
興味深いことに、HHV−6の潜伏感染の間に、本発明者はHCMVの主要な即時型エンハンサーとプロモーター遺伝子(MIEP)によって促進されるEGFPの発現を認めることができなかった(図7(A))。他方、EGFPの発現が、図1に示したプラスミドpU2−U8EGFP−puroをトランスフェクトされた、潜伏感染しているマクロファージ(図7(B))、再活性化−誘導マクロファージ(図7(C))、生産的感染したCBMC細胞とMolt−3細胞(図7(D)と7(E))、流産感染したHela細胞(図7(F))で観察された。
【0171】
図7は、種々のタイプの細胞の中のEGFP発現を表わす蛍光顕微鏡写真の図である。図7においては、これらの写真は、培養生細胞が螢光性の照明の下で観察された。
【0172】
図7(A)においては、H6R28に潜在的に感染したマクロファージが示される。図7(B)においては、図1に示されるプラスミドpU2−U8 EGFP−puroがトランスフェクトされた、潜在感染しているマクロファージが示される(トランスフェクションは、Kondoらの方法(J.Virol.77:2258−2264,2003)でおこなった。)。図7(C)においては、7日間にわたり20ng/mlのTPA処理をして、再活性化を誘導されたマクロファージが示される。
【0173】
図7(D)においては、H6R28で処理して感染させたCBMC細胞が示される。図7(E)においては、H6R28に感染しているMolt−3細胞が示される。図7(F)においては、H6R28に感染しているHela細胞が示される。
【0174】
これらの細胞は感染後4週目(A−C)、感染後2日目(E−F)に観察された。形質導入された細胞は、形質移入後1日目(B)に観察された。
【0175】
(2)ナチュラルキラー(NK)細胞
H6R28のfree virusを、interleukin−2(IL−2)存在下で培養した成人末梢血由来単核球にmultiplicity of infection(MOI)1で感染させた。CD56陽性細胞(NK細胞)への遺伝子導入を、感染3日後にFACSを用いてEGFP発現で確認した。
【0176】
結果を図8(A)、図8(B)および図8(C)に示した。図8(A)はH6R28を感染させていない細胞の結果を示し、図8(B)はH6R28を感染させた細胞の結果を示している。また、図8(C)は上記図8(A)および図8(B)の結果をまとめたグラフである。
【0177】
図8(A)、図8(B)および図8(C)から明らかなように、HHV−6は高率に外来遺伝子EGFPをNK細胞に導入可能であることが判明した。導入率は、88%[39.8%÷(5.5%+39.8%)]であった。
【0178】
(3)アストロサイト
H6R28のfree virusを、basic fibroblast growth factor(bFGF)存在下で培養したヒト初代培養アストロサイトにmultiplcity of infection(MOI)1で感染させた。遺伝子導入は2日後に蛍光顕微鏡を用いてEGFPの発現で確認した。
【0179】
図9に蛍光顕微鏡写真を示した。HHV−6は、約40%のヒト初代培養アストロサイトに、外来遺伝子EGFPを導入可能であった。
【0180】
(4)CD4陽性T細胞
H6R28のfree virusを、phytohemagglutinin(PHA)存在下で培養した成人末梢血由来単核球にmultiplicity of infection(MOI)1で感染させた。CD4陽性T細胞への遺伝子導入を、感染1日後にFACSを用いてEGFP発現で確認した。
【0181】
結果を図10に示した。HHV−6は、CD4陽性T細胞の内、約30%[19.6%÷(50.8%+19.6%)]に、外来遺伝子EGFPを導入可能であった。
【0182】
(5)CD8陽性T細胞
H6R28のfree virusを、phytohemagglutinin(PHA)存在下で培養した成人末梢血由来単核球にmultiplicity of infection(MOI)1で感染させた。CD8陽性T細胞への遺伝子導入を、感染3日後にFACSを用いてEGFP発現で確認した。
【0183】
結果を図11に示した。HHV−6は、CD8陽性T細胞の内、約40%[30.1%÷(38.3%+30.1%)]に、外来遺伝子EGFPを導入可能であった。
【0184】
(6)樹状細胞
H6R28のfree virusを、interleukin−4(IL−4)とgranulocyte−macrophage colony−stimulating factor(GM−CSF)存在下で培養した成人末梢血由来単球にmultiplicity of infection(MOI)1で感染させた。CD83陽性細胞(樹状細胞)への遺伝子導入を、感染3日後にFACSを用いてEGFP発現で確認した。
【0185】
結果を図12に示した。HHV−6は、CD83陽性の樹状細胞の内、約60%[43.2%÷(26.6%+43.2%)]に、外来遺伝子EGFPを導入可能であった。
なお、実施例には記載しないが、血液幹細胞、肝細胞、血管内皮細胞、繊維芽細胞においても、野生株のHHV−6が感染することは報告されており(参考文献1〜5参照)、H6R28のfree virusが上記細胞に感染することが示唆される。
(参考文献1)
Luppi M,Barozzi P,et.al,J Virol.,1999年1月第73巻、第1号、P.754−9.「Human herpesvirus 6 latently infects early bone marrow progenitors in vivo.」
(参考文献2)
Tajiri H,Tanaka−Taya K,et.al,Pediatr.,1997年9月、第131巻、第3号、P.473−5.「Chronic hepatitis in an infant,in association with human herpesvirus−6 infection.」
(参考文献3)
Wu CA,Shanley JD.1998年3月、第79巻、第5号、P.1247−56.「Chronic infection of human umbilical vein endothelial cells by human herpesvirus−6.」
(参考文献4)
Rotola A,Di Luca D,et.al,J Clin Microbiol.,2000年8月、第38巻、第8号、P.3135−6「Human herpesvirus 6 infects and replicates in aortic endothelium.」
(参考文献5)
Luka J,Okano M,Thiele G.,J Clin Lab Anal.1990年、第4巻、第6号、P.483−6.「Isolation of human herpesvirus−6 from clinical specimens using human fibroblast cultures.」
<潜伏感染HHV−6におけるHCMVプロモーターの機能>
IE1/IE2プロモーター遺伝子からの遺伝子発現を検討するために、5’RACEを行なった(J.Virol.77:2258−2264,2003、J.Virol.76:4145−4151,2002、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:11137−11142,1996)。手短かに言えば、cDNAの5′末端はdA−tailが付加されて、そしてアンカープライマー、RL−1と一緒にアニーリングされた。PCRの最初の10のサイクルは、Taqポリメラーゼ(Roche Diagnostics)を用いて以下の条件で行なった。変性は94°Cにおいて1分間、アニーリングは55°Cにおいて1分間、伸長は72°Cにおいて1分間の条件で行なった。
【0186】
PCR増幅は、KODプラスDNAポリメラーゼ(東洋紡、大津、日本)を用いたPCRにより、プライマーN1とEGFP−R1を用いて、続いてプライマーN2とEGFP−R2を用いて、次の条件の下で行なった(図13(A)参照)。変性は94°Cにおいて1分間、アニーリングは65°Cにおいて30秒間、伸長は68°Cにおいて1分間(増幅毎に15サイクル)の条件で行なった。増幅断片は配列決定した。
【0187】
上記の潜伏感染した細胞では、通常の転写開始部位(生産的感染の転写開始部位:PSS)からのmRNAの転写が検出されなかった(図13(B))。しかし、HCMVの潜伏感染に関する転写物を発現させるために使われる、HCMVの潜伏感染の転写開始部位(LSSs)1と2から少量のmRNAが転写された。
【0188】
それと対照的に、PSSは、プラスミドpU2−U8 EGFP−puroが形質導入された潜伏感染マクロファージ、再活性化が誘導されたマクロファージ、生産的感染したMolt−3細胞、流産感染HeLa細胞において使われた(図13(B))。HCMV
MIEPがHHV−6潜伏感染条件で潜伏感染と関係のある性質を示したので、HHV−6潜伏感染の転写調節がHCMV潜伏感染と若干の共通の機構を共有するかもしれないことが示唆される。これらの知見は、潜伏感染の部位の場合のように、HHV−6とHCMVとが比較的共通した性質を示すという事実と関係があるかもしれない。
【0189】
図13は、潜在感染しているHHV−6でのHCMVプロモーター遺伝子の機能を表わす模式図および電気泳動写真の図である。
【0190】
図6(A)は、HCMV IE1/IE2プロモーター遺伝子とPCRプライマーを示す。EGFP遺伝子と転写開始部位は一定の比率で縮尺して描かれている。生産的感染による転写のIE1/IE2のmRNA(PSSは+1として示されている)の開始部位と、2つの潜伏感染の転写開始部位(LSS1とLSS2)が示される。PCRプライマーの位置も描写されている。そして、模式図はアンカープライマーRL−1の使用法を示している。なお、プライマー配列は表1に示される。
【0191】
図6(B)は、EGFPの転写物の5’RACE法による増幅を示す。
【0192】
1×10個の潜在的に感染したマクロファージ(Mφ)から得られるRNAを示す(レーン1)。図1に示すプラスミドpU2−U8 EGFP−puroを形質導入した1×10個の潜在的に感染したマクロファージを示す(レーン2)。1×10個の再活性化を誘導されたマクロファージを示す(レーン3)。1×10個の生産的に感染したMolt−3細胞を示す(レーン4)。1×10個の未感染Hela細胞を示す(レーン5)。
【0193】
これらは、5’RACE法によって分析された。使われたRACE法としては通常に用いられる方法を採用した。転写物の5′末端はdAテイルであって、そしてアンカープライマーRL−1とともにアニーリングした(図6(A))。そして最初にプライマーN2−EGFP R2と共に、それからプライマーN1−EGFP R1と共に増幅した。PSS(〜360bp)、LSS1(〜720bp)、そして/あるいはLSS2(〜650bp)で始まる転写物の5′末端が検出された。Hae IIIによって切断されたΦX174 DNA断片がサイズマーカー(ΦX)として用いられた。
【0194】
<HHV−7の組換ウイルスベクターH7R28の構築>
ヒトヘルペスウイルス7(HHV−7)のU2−U8遺伝子クラスターを、ヒトサイトメガロウイルスの主要な即時型エンハンサー−プロモーター(MIEP)の制御下にある増強された緑色蛍光タンパク質(enhanced green fluorescent protein:EGFP)と、SV40初期プロモーターの制御下にあるピューロマイシン耐性遺伝子と、を含む遺伝子カセット(EGFP−puroカセット)に置換した組換えウイルスH7R28を構築した。相同組換によってEGFP−puroカセットをHHV−7ゲノムに挿入するために、ウイルスのゲノムの約1キロベース(kb)の部分がカセット(図14)のそれぞれの末端に挿入された。
【0195】
続いて、次の遺伝子クラスターについて調査した:U2−U8遺伝子である。それらの遺伝子について、本発明者は、U2−U8遺伝子をEGFP−puroに置換しても複製能を有するウイルスが得られることに気付いた。
【0196】
以下に具体的な構築手順を説明する。
【0197】
図14は、組換えウイルスH7R28の構造を表わす模式図である。
【0198】
図14においては、最上部にHHV−7RKゲノムの地図を示し、その下(中段)にU2−U8領域を拡大して示している。
【0199】
下段は、EGFP−puroカセットの両端に相同組換えに利用するDNA断片を挿入した相同組換え用プラスミドHHV−7pU2−U8 EGFP−puroを表す。
【0200】
左右向きの短い矢印はプライマーのアニーリング位置を示す。
【0201】
図中の数字10558,11637,17395,18483は、HHV−7RK株の塩基の番号を示す。
【0202】
プライマー配列は、下記の表2で示す。
【0203】
【表2】

まず、プライマー7U2FBam−7U2RSpeとを用いたPCRによりU2遺伝子を増幅し、プライマー7U8FSal−7U7RBamとを用いたPCRによりU7−U8遺伝子を増幅した。
【0204】
増幅されたU2遺伝子産物はSpeI−BamHIで、U7U8遺伝子産物はSalI−BamHIでそれぞれ消化され、pEGFP−puro(図14でのHHV−7pU2−U8 EGFP−puro)のそれぞれの末端に挿入された。
【0205】
上記HHV−7pU2−U8 EGFP−puroをフィトヘムアグルチニン(PHA)で刺激した末梢血液単核細胞(PBMCs)中に導入した。プラスミドの導入は、Nucleofector TM electroporator(Amaxa Biosystems、ドイツ)を用い、推奨されるプロトコールにしたがって行った。
【0206】
すなわち、5×10個の細胞を、プラスミド5μgおよびT細胞用Nucleofector(TM)溶液100μlと混和し、プログラムU−14を用いたNucleofector(TM)によりエレクトロポレーションを行った。
【0207】
同時に、従来のエレクトロポレーション法も実施した。すなわち、1×10個の細胞と500μlのK−PBS溶液(30.8mMのNaCl、120.7mMのKCl、8.1mMのNaHPO、1.46mMのKHPOおよび25mMのMgCl)中に懸濁した50μgのプラスミドと混合し、混合液をエレクトロポレーションキュベット(ジーンパルサーキュベット 4cm、Bio−Rad)内に入れた。
【0208】
エレクトロポレーションは、ジーンパルサーII エレクトロポレーションシステム(Bio−Rad)を用いて、抵抗無限大、電圧300V、キャパシタンス960μF以下の条件下で行った。6時間後に、HHV−7 KHR株を染多重度(MOI)0.5で遠心法により細胞に感染させた。
【0209】
10%牛胎児血清を添加したRPMI 1640培地で、3日間、細胞を培養し、ウイルスストックとして凍結した。組換ウイルスを増やすために、PHAで刺激した臍帯血単核細胞(CBMCs)に上記ウイルスストックを感染させて1日間培養し、7.5μg/mlのピューロマイシンで1日間処理し、培地で洗浄し、3日間CBMCsと一緒に培養した。感染細胞を新たなウイルスストックとして凍結した。
【0210】
この選択処理を5回繰り返し、その後、96穴のプレートで培養されたCBMCsを使って、限界希釈培養法により組換ウイルス(H7R28)をクローン化した。
【0211】
<HHV−7の組換えウイルスベクターH7R28構築の確認>
HHV−7の組換えウイルスベクター構築の確認は、HHV−6の組換えウイルスベクターH6R28構築の確認の方法と同様の方法により行われ、同様の結果を得た。なお、重複記載を避けるため、説明を繰返さない。
【0212】
<HHV−7の組換えウイルスベクターH7R28の増殖感染>
H7R28の細胞から細胞への広がりの効率および感染細胞でのウイルス産生の効率を検討した。なお、実験方法は、抗HHV−6モノクローナル抗体の代わりに、抗HHV−7モノクローナル抗体(KR4)を使用したこと以外は、前記H6R28と同じである。
【0213】
図15(A)にウイルス抗原陽性細胞の増加を示した。また、図15(B)にウイルスの増殖曲線を示した。図中○が野生型ウイルス、■がH7R28を表す。
【0214】
図15(A)および図15(B)に示した結果から、H7R28は野生型ウイルスと同等の増殖能力を保持していることが明らかとなった。すなわち、U2、U3、U4、U5、U7、U8の部位に外来遺伝子を挿入してもウイルスの増殖に影響を及ぼさないことが示された。
【0215】
<HHV−7の組換ウイルスベクターH7R24−25の構築>
HHV−7のU24とU25を組み換え部位に使用した組み換えウイルスH7R24−25を構築した。
【0216】
図16は、組換えウイルスH7R24−25の構造を表わす模式図である。
【0217】
図16においては、最上部にHHV−7RKゲノムの地図を示し、その下(中段)にU24−U25領域を拡大して示している。
【0218】
下段は、EGFP−puroカセットの両端に相同組換えに利用するDNA断片を挿入した相同組換え用プラスミドpHHV−7U24−U25 EGFP−IRES−puroを表す。
【0219】
左右向きの短い矢印はプライマーのアニーリング位置を示す。
【0220】
図中の数字34744,35420,36118は、HHV−7RK株の塩基の番号を示す。
【0221】
前記の組換ウイルスH7R28よりも短い組換え部位に遺伝子を挿入するために、internal ribosomal entry site(IRES)を用いて挿入遺伝子を小型化した。
【0222】
構築手順は、相同組換えに利用するU24−U25遺伝子の増幅にプライマー7U24 SpeIと7U25 EcoRIおよびプライマー7U25 MluIと7U25 KpnIを用いたことを除いて、上記H7R28の構築手順と同様である。
【0223】
また、H7R24−25構築の確認は、前記H6R28構築の確認と同様に行い、同様の結果を得た。なお、重複記載を避けるため、説明を繰返さない。
【0224】
さらに、前記H6R28と同様に、H7R24−25の細胞から細胞への広がりの効率および感染細胞でのウイルス産生の効率を検討した。なお、実験方法は、抗HHV−6モノクローナル抗体の代わりに、抗HHV−7モノクローナル抗体(KR4)を使用したこと以外は、前記H6R28と同じである。
【0225】
図17(A)にウイルス抗原陽性細胞の増加を示した。また、図17(B)にウイルスの増殖曲線を示した。図中○が野生型ウイルス、■がH7R24−25を表す。
【0226】
図17(A)および図17(B)に示した結果から、H7R24−25は野生型ウイルスと同等の増殖能力を保持していることが明らかとなった。すなわち、U24〜U25の部位に外来遺伝子を挿入してもウイルスの増殖に影響を及ぼさないことが示された。
【0227】
以上、H7R28およびH7R24−25のデータより、HHV−7では、U3、U4、U5、U7、U8、U24、U24a、U25が外来遺伝子の挿入部位として使用可能である事が判明した。
【0228】
<HHV−7の組換ウイルスベクターの潜伏感染能力および再活性化効率>
HHV−7の組換えウイルスベクターの潜伏感染能力および再活性化効率は、HHV−6の組換えウイルスベクターの潜伏感染能力および再活性化効率の確認の方法と同様の方法により行われ、同様の結果を得た。なお、重複記載を避けるため、説明を繰返さない。
【0229】
<HHV−7組換ウイルスベクターの様々な細胞への導入>
(1)マクロファージ
H7R28のfree virusを、コラーゲンコートディッシュで培養した成人末梢血由来単球にmultiplicity of infection(MOI)1で感染させた。接着細胞でかつCD11c陽性の細胞(マクロファージ)への遺伝子導入を、感染3日後にFACSを用いてEGFP発現で確認した。
【0230】
結果を図18に示した。HHV−7は、マクロファージの約80%[45.7%÷(12.1%+45.7%)]に、外来遺伝子EGFPを導入可能であった。
【0231】
(2)CD4陽性T細胞
H7R28のfree virusを、phytohemagglutinin(PHA)存在下で培養した成人末梢血由来単核球にmultiplicity of infection(MOI)1で感染させた。CD4陽性T細胞への遺伝子導入を、感染3日後にFACSを用いてEGFP発現で確認した。
【0232】
結果を図19に示した。HHV−7は、CD4陽性T細胞の約48%[34.8%÷(6.8%+34.8%)]に、外来遺伝子EGFPを導入可能であった。
【0233】
(3)樹状細胞
H7R28のfree virusを、interleukin−4(IL−4)とgranulocyte−macrophage colony−stimulating factor(GM−CSF)存在下で培養した成人末梢血由来単球にmultiplicity of infection(MOI)1で感染させた。CD83陽性細胞(樹状細胞)への遺伝子導入を、感染3日後にFACSを用いてEGFP発現で確認した。
【0234】
結果を図20に示した。HHV−7は、CD83陽性の樹状細胞の内、約70%[46.4%÷(17.9%+46.4%)]に、外来遺伝子EGFPを導入可能であった。
【0235】
<HHV−6およびHHV−7における、BAC(Bacterial artificial chromosome)の複製開始点の導入>
HHV−6、HHV−7ともに、U2〜U8の外来遺伝子挿入可能部位が大きいので、比較的大きな遺伝子の導入が可能である。特にBacterial artificial chromosome(BAC)の複製開始点を挿入できれば、所謂BACシステムによるベクター産生が可能となる。BACシステムによる組み換えウイルス作製は、他のヘルペスウイルスなど、多くのウイルスで確立しているが、HHV−6およびHHV−7においては未だ確立されていない。
【0236】
(1)BACの複製開始点を挿入した組換えHHV−6の作製:(H6R28 BAC)
図21は、H6R28 BACの構造を表す模式図である。
【0237】
前記H6R28と同様に、U2とU8の配列を相同組み換えに使用した。EGFPとpuromycin耐性遺伝子(pac)をinternal ribosomal entry site(IRES)でつないだものを組換えウイルスの選択マーカーとし、BAC複製開始点[クロラムフェニコール耐性遺伝子(CMR)、BAC複製開始点(Ori S,rep E,par A,par B,par C)を相同組み換え部位の内側に配したプラスミド(pHHV−6 U2−8 EGFP−puro BAC)を作製した。
【0238】
相同組み換えによるウイルス作製法は、前記H6R28構築の項に記載した方法と同様であるので、重複記載を避けるため、説明を繰返さない。
【0239】
次に、相同組み換え後、6回のpuromycin選択により、BAC複製開始点をもった組み換えウイルスを作製した。
【0240】
組み換えウイルスは、安定に増殖し、6回のpuromycin選択で全体の約90%に達した。図22は、H6R28 BAC感染Molt−3細胞の蛍光顕微鏡写真である。この結果は、上記の方法で、BAC複製開始点を持つHHV−6を作製できたことを示す。
【0241】
(2)BACの複製開始点を挿入した組換えHHV−7の作製:(H7R28 BAC)
図23は、H7R28 BACの構造を表す模式図である。
【0242】
前記H7R28と同様U2とU8の配列を相同組み換えに使用した。EGFPとpuromycin耐性遺伝子(pac)をinternal ribosomal entry site(IRES)でつないだものを組み換えウイルスの選択マーカーとし、BAC複製開始点[クロラムフェニコール耐性遺伝子(CMR)、BAC複製開始点(Ori S,rep E,par A,par B,par C)を相同組み換え部位の内側に配したプラスミド(pHHV−7 U2−8 EGFP−puro BAC)を作製した。
【0243】
相同組み換えによるウイルス作製法は、前記H7R28構築の項に記載した方法と同様であるので、重複記載を避けるため、説明を繰返さない。
【0244】
次に、相同組み換え後、6回のpuromycin選択により、BAC複製開始点をもった組み換えウイルスを作製した。
【0245】
組み換えウイルスは、安定に増殖し、6回のpuromycin選択で全体の約90%に達した。図24は、H7R28 BACが感染したSupT1細胞の蛍光顕微鏡写真である。この結果は、上記の方法で、BAC複製開始点を持つHHV−7を作製できたことを示す。
【0246】
<評価結果のまとめ>
上記のように、全体的に、組換ウイルスH6R28により、HHV−6のかなり大きい遺伝子クラスターU3−U7がウイルスの複製、潜伏感染と再活性化のために欠失可能であることが明らかとなった。削除された遺伝子について、U4とU6の機能は報告されていない。
また、H7R28によりHHV−7のかなり大きい遺伝子クラスターU3−U7がウイルスの複製、潜伏感染と再活性化のために欠失可能であることが明らかとなった。
【0247】
ここで、HHV−6の遺伝子U3、U5、U7とU25は、HHV−7の遺伝子U3、U7とU25は、HCMV US22遺伝子と機能不明の共通のモチーフを持ち、US22遺伝子系統群に属する。すべてのβヘルペスウイルスが4つの保存されたモチーフの少なくとも1をコードするいくつかのUS22系統群遺伝子をコードする。US22系統群遺伝子の大部分の機能が未知であるけれども、murineサイトメガロウイルス(MCMV)の即時型2(IE2)遺伝子、HCMV UL36−38遺伝子などは、ともにトランス活性化機能を有するタンパク質をコードする。
【0248】
しかしながら、MCMV IE2はウイルスの複製と潜伏感染/再活性化のために欠失可能であることを知られている。H6R28のUS22系統群遺伝子の削除により、それらと類似の特性を持っていることが示された。HHV−6 U3は弱い再活性化機能を有するタンパク質をコードする。そして本発明者はwtと組換体ウイルスの間において、どのようなウイルス複製あるいは潜伏感染/再活性化においても、相違を見出すことができなかった。
【0249】
HCMVのUS22系統群遺伝子UL36とUL37は抗アポトーシス機能を持っている。しかしながら、本発明者は、本研究において、H6R28またはH7R28に感染した細胞で細胞自滅の増加を観察しなかった。
【0250】
MCMV M140とM141遺伝子のような、他のUS22系統群の遺伝子は、細胞と組織の向性を変化させる。HHV−6は、生体上の宿主組織の適合範囲が広く、種々のタイプの細胞に感染するので、HHV−6 US22系統群遺伝子がこのウイルスの幅広い臓器への向性の一因になることは可能であると考えられる。
【0251】
H6R28は、HHV−6潜伏感染と再活性化の研究のために有用な材料であるように思われる。また、H7R28もHHV−7の潜伏感染と再活性化の研究に有用と思われる。さらに、両ウイルスにおいて、バクテリアの人工染色体(BAC)ベクターのように、大きい遺伝子を挿入するために、この大きい欠失可能位置は有用な部位であり得るし、実際にBAC遺伝子が安定して挿入可能である事を示した。
【0252】
本発明者は、これがHHV−6組換ウイルスベクターおよびHHV−7組み換えベクターと、それをなし得るための詳細なプロトコールをHHV−6とHHV−7の研究者に提供することができる、成功した最初の報告であると信じる。
【0253】
なお、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0254】
本発明のウイルスベクターは、外因性ヌクレオチド配列を挿入することができ、哺乳類の宿主細胞に容易に導入することができ、外因性ヌクレオチド配列にコードされた遺伝子を宿主細胞内で発現させることができ、病原性を有する危険性が低く、哺乳類の遺伝子治療に好適に用いることができる、ウイルスベクターである。
【0255】
さらに、本発明のウイルスベクターの製造方法は、外因性ヌクレオチド配列を挿入することができ、哺乳類の宿主細胞に容易に導入することができ、外因性ヌクレオチド配列にコードされた遺伝子を宿主細胞内で発現させることができ、病原性を有する危険性が低く、哺乳類の遺伝子治療に好適に用いることができる、ウイルスベクターを容易に製造可能な、ウイルスベクターの製造方法である。
さらに、本発明のウイルスベクターの製造方法で使用されたウイルスの組み換え方法は、他のベクター開発技術であるBACシステムやアンプリコンシステムをHHV−6およびHHV−7に応用しようとする際に、必要不可欠な技術である。
【0256】
また、本発明の宿主細胞の形質転換方法は、哺乳類の宿主細胞に容易に外因性ヌクレオチド配列が導入でき、外因性ヌクレオチド配列にコードされた遺伝子を宿主細胞内で発現させることができ、病原性を有する危険性を低く抑えることができ、哺乳類の遺伝子治療に好適に用いることができる、ウイルスベクターによる宿主細胞の形質転換方法である。
【0257】
そして、本発明の形質転換宿主細胞は、ウイルスベクターにより形質転換されて外因性ヌクレオチド配列が挿入されており、外因性ヌクレオチド配列にコードされた遺伝子を宿主細胞内で発現させることができ、病原性を有する危険性が低く、遺伝子治療に好適に用いることのできる、形質転換宿主細胞である。
【0258】
また、本発明の遺伝子治療方法は、哺乳類の宿主細胞に容易に外因性ヌクレオチド配列が導入でき、外因性ヌクレオチド配列にコードされた遺伝子を宿主細胞内で発現させることができ、病原性を有する危険性を低く抑えることができる、ウイルスベクターを用いた哺乳類の遺伝子治療方法である。
【0259】
よって、本発明のウイルスベクターは、HHV−6、HHV−7がともに、HIVと同じCD4陽性T細胞に感染することを利用して、AIDS治療に利用可能である。この場合、本発明のウイルスベクターには、リボザイム、干渉RNAなどの抗HIV遺伝子を挿入することが好ましい。
【0260】
また、本発明のウイルスベクターは、HHV−6がHIVと同じくマクロファージで潜伏感染を成立させることを利用して、AIDS治療に利用可能である。この場合も、本発明のウイルスベクターには、リボザイム、干渉RNAなどの抗HIV遺伝子を挿入することが好ましい。
【0261】
さらに、本発明のウイルスベクターは、HHV−6、HHV−7がCD4陽性T細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、Lymphokine activated killer(LAK)細胞などの免疫担当細胞に感染することを利用して、これらの細胞にサイトカインを導入するために利用可能である。このことにより、本発明のウイルスベクターは、癌の免疫療法への応用が可能となる。
【0262】
そして、本発明のウイルスベクターは、HHV−6が膵癌などの難治性の消化器系腫瘍に大量に発現しているCD46分子を受容体として細胞に侵入することを利用して、膵癌にHHV−6を感染させ、癌を死滅させるなどの抗腫瘍治療にも応用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HHV−6由来の組換ウイルスベクターであって、HHV−6のU2、U3、U4、U5、U6、U7、U8、U24およびU25領域からなる群より選ばれる少なくとも1領域に相当する部位に、外因性ヌクレオチド配列を備える、組換ウイルスベクター。
【請求項2】
前記部位は、配列番号1で表されるHHV−6のDNA配列におけるヌクレオチド番号9041〜17446または36250〜37775の範囲に存在する、請求の範囲1に記載の組換ウイルスベクター。
【請求項3】
組換ウイルスH6R28またはH6R24−25からなる、請求の範囲1に記載の組換ウイルスベクター。
【請求項4】
HHV−7由来の組換ウイルスベクターであって、HHV−7のU2、U3、U4、U7、U8、U24、U24aまたはU25領域からなる群より選ばれる少なくとも1領域に相当する部位に、外因性ヌクレオチド配列を備える、組換ウイルスベクター。
【請求項5】
前記部位は、配列番号2で表されるHHV−7のDNA配列におけるヌクレオチド番号10558〜18483または34744〜36118の範囲に存在する、請求の範囲4に記載の組換ウイルスベクター。
【請求項6】
組換ウイルスH7R28またはH7R24−25からなる、請求の範囲4に記載の組換ウイルスベクター。
【請求項7】
前記外因性ヌクレオチド配列が、DNA配列および/またはRNA配列である、請求の範囲1または4に記載の組換ウイルスベクター。
【請求項8】
前記外因性ヌクレオチド配列が、bacterial artificial chromosome(BAC)、サイトカイン遺伝子、リボザイム、interference RNA、免疫学的補助刺激分子、シグナル伝達分子、酵素および化学誘引物質からなる群より選ばれる1種以上をコードするヌクレオチド配列である、請求の範囲7に記載の組換ウイルスベクター。
【請求項9】
前記外因性ヌクレオチド配列が、哺乳類の遺伝子治療に用いられるための配列である、請求の範囲7に記載の組換ウイルスベクター。
【請求項10】
前記外因性ヌクレオチド配列が、マーカー遺伝子をコードするヌクレオチド配列を含む、請求の範囲7に記載の組換ウイルスベクター。
【請求項11】
HHV−6由来の組換ウイルスベクターの製造方法であって、HHV−6のU2、U3、U4、U5、U6、U7、U8、U24およびU25領域からなる群より選ばれる少なくとも1領域に相当する部位に、外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを備える、組換ウイルスベクターの製造方法。
【請求項12】
前記外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、配列番号1で表されるHHV−6のDNA配列におけるヌクレオチド番号9041〜17446または36250〜37775の範囲に外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを含む、請求の範囲11に記載の組換ウイルスベクターの製造方法。
【請求項13】
前記外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、それぞれ配列番号3−4および5−6に示す配列のプライマーの組合せまたは配列番号36−37および38−39に示す配列のプライマーの組合せを用いて増幅されるDNA配列と、HHV−6のDNA配列との相同組換を行なうステップを含む、請求の範囲11に記載の組換ウイルスベクターの製造方法。
【請求項14】
HHV−7由来の組換ウイルスベクターの製造方法であって、HHV−7のU2、U3、U4、U7、U8、U24、U24aまたはU25領域からなる群より選ばれる少なくとも1領域に相当する部位に、外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを備える、組換ウイルスベクターの製造方法。
【請求項15】
前記外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、配列番号2で表されるHHV−7のDNA配列におけるヌクレオチド番号10558〜18483または34744〜36118の範囲に外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを含む、請求の範囲14に記載の組換ウイルスベクターの製造方法。
【請求項16】
前記外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、それぞれ配列番号30−31および34−35に示す配列のプライマーの組合せまたは配列番号40−41および42−43に示す配列のプライマーの組合せを用いて増幅されるDNA配列と、HHV−7のDNA配列との相同組換を行なうステップを含む、請求の範囲14に記載の組換ウイルスベクターの製造方法。
【請求項17】
前記外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、正常かつ/または臍帯血由来の細胞内において前記外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを含む、請求の範囲11または14に記載の組換ウイルスベクターの製造方法。
【請求項18】
請求の範囲1または4に記載の組換ウイルスベクターによる哺乳類の宿主細胞の形質転換方法であって、前記組換ウイルスベクターにより、ヒト、ヒト以外の霊長類およびHHV−6またはHHV−7の感染可能な宿主からなる群より選ばれる1種以上の哺乳類由来の前記宿主細胞を形質転換するステップを備える、宿主細胞の形質転換方法。
【請求項19】
前記形質転換するステップは、前記組換ウイルスベクターにより、T細胞、マクロファージ、末梢血単核球細胞、血液幹細胞、肝細胞、血管内皮細胞、繊維芽細胞、グリア細胞、アストロサイト、CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、樹状細胞およびナチュラルキラー細胞からなる群より選ばれる1種以上の前記宿主細胞を形質転換するステップを含む、請求の範囲18に記載の宿主細胞の形質転換方法。
【請求項20】
請求の範囲18または19に記載の宿主細胞の形質転換方法により得られる、形質転換宿主細胞。
【請求項21】
哺乳類の遺伝子治療方法に用いられる、請求の範囲20に記載の形質転換宿主細胞。
【請求項22】
前記遺伝子治療は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する易感染性細胞内におけるHIVウイルス感染を予防するための遺伝子治療および/または癌の免疫治療のための遺伝子治療である、請求の範囲21に記載の形質転換宿主細胞。
【請求項23】
前記宿主細胞は、前記遺伝子治療を行なう対象となる種類の哺乳類と同種の哺乳類由来の宿主細胞である、請求の範囲21に記載の形質転換宿主細胞。
【請求項24】
ヒト以外の哺乳類の遺伝子治療方法であって、請求の範囲20〜23のいずれかに記載の形質転換細胞を前記哺乳類へ投与するステップを備える、遺伝子治療方法。
【請求項25】
ヒト以外の哺乳類の遺伝子治療方法であって、請求の範囲1または4に記載の組換ウイルスベクターにより、前記哺乳類の体内の宿主細胞を0.01〜20の感染多重度(MOI)で形質転換するステップを備える、遺伝子治療方法。
【請求項26】
さらに前記組換ウイルスベクターに備わる外因性ヌクレオチド配列にコードされる遺伝子を発現させるステップを備える、請求の範囲24または25に記載の遺伝子治療方法。

【図1】
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【図2(A)】
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【図2(B)】
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【図2(C)】
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【図2(D)】
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【図3(A)】
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【図3(B)】
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【図4】
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【図5(A)】
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【図5(B)】
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【図6(A)】
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【図6(B)】
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【図7(A)】
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【図7(B)】
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【図7(C)】
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【図7(D)】
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【図7(E)】
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【図7(F)】
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【図8(A)】
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【図8(B)】
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【図8(C)】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13(A)】
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【図13(B)】
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【図14】
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【図15(A)】
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【図15(B)】
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【図16】
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【図17(A)】
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【図17(B)】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【国際公開番号】WO2005/021746
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【発行日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513498(P2005−513498)
【国際出願番号】PCT/JP2004/012487
【国際出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【特許番号】特許第3923505号(P3923505)
【特許公報発行日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(506056240)株式会社ウイルス医科学研究所 (6)
【Fターム(参考)】