HIF−1αC−末端ペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の結合を定量分析する方法、及び前記方法を利用した抑制剤のスクリーニング方法
【課題】本発明は、蛍光物質で標識されたHIF−1αC−末端ペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の結合を定量分析する方法、及び前記方法を利用したHIF−1α−p300またはHIF−1α−CBP蛋白質複合体の形成を阻害する抑制剤のスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】本発明の蛍光偏光測定方法は、HIF−1α−CBPまたはHIF−1α−p300の反応を体系的に評価し、p300蛋白質の補充時、HIF−1αC−末端トランス活性ドメインペプチドの蛋白質合成後の変形(水酸化、S−ニトロソ化、及びリン酸化)の作用を調査するのに有用である。
【解決手段】本発明の蛍光偏光測定方法は、HIF−1α−CBPまたはHIF−1α−p300の反応を体系的に評価し、p300蛋白質の補充時、HIF−1αC−末端トランス活性ドメインペプチドの蛋白質合成後の変形(水酸化、S−ニトロソ化、及びリン酸化)の作用を調査するのに有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドの結合、より詳しくは、蛍光物質で標識されたHIF−1αC−末端ペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の結合を定量分析する方法、及び前記方法、つまり、蛍光偏光に基づいた結合分析法を利用したHIF−1αペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の結合を阻害する抑制剤のスクリーニング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
動物細胞が酸素数値の変化を感知及び反応する能力を持つことは生存に必須であり、このような能力は、血管形成、心筋虚血、脳虚血、肺性高血圧、及び多様な種類の癌のような人間の病気だけでなく、発生及び生理的過程において大変重要な役割を果たす。低酸素症は、マスター転写因子、つまり、低酸素誘導因子−1(HIF−1)と関連している。
【0003】
低酸素誘導因子−1(HIF−1)は、αとβサブユニットで構成されており、この時、前記βサブユニットは常に安定して発現するが、HIF−1α(αサブユニット)は、低酸素状態では安定化しており、正常酸素状態では、プロテアソームによって退化する。低酸素状態で安定化されたHIF−1αは、核内にあるCBP(cAMP-response element-binding protein)またはp300蛋白質と結合して複合体を形成した後、標的遺伝子のプロモーターに存在する低酸素応答因子(hypoxia-response element, HRE)と結合して、標的遺伝子の転写を活性化させる(Lando, D.ら、Genes. Dev., 16: 1466-14, 2002)。
【0004】
このようなCBP及びp300転写補助蛋白質は多様な信号伝達経路の終結点で作用して、細胞の成長、分化、及び恒常性維持に関連する特定の遺伝子の発現を調節するので、HIF−1αとCBPまたはp300蛋白質間の結合を調節することは、冠不全、脳虚血、及び血管不全(vascular insufficiency)のような虚血性疾患を治療、および血管形成抑制を通じた癌治療研究に有用である。
【0005】
CBPまたはp300蛋白質は、亜鉛イオン(Zn2+)結合因子を含むシステイン−/ヒスチジン−リッチ1(cystein-/histidine-rich 1, CH1)ドメインを有しており、この時、前記CH1ドメインは、HIF−1αのC−末端トランス活性ドメイン(C-terminal transactivation domain, C−TAD)と結合する(Kung, A.L.ら、Nature Medicine, 6: 1335-1340, 2000)。また、NMR研究を通じて、p300蛋白質の331−418番目のアミノ酸部位とHIF−1αの792−824番目のアミノ酸ペプチドの複合体構造、及びCBP蛋白質の345−439番目のアミノ酸部位とHIF−1αの776−826番目のアミノ酸ペプチドの複合体構造が明らかになった(Dames, S.A.ら、PNAS, 99: 5271-5276, 2002)。このような複合体構造によれば、CH1は、HIF−1αのC−末端ドメインの折り畳み構造のための骨格として作用するので、多様な疎水性及び極性相互作用によって安定化される。また、本発明では分析に要する資料が少量でよく、ペプチドを数mMの高濃度で使用するNMR分析とは違って、μM単位の低濃度でも充分に結合可能なHIF−1αのアミノ酸部位を使用する結合分析法を開発した。
【0006】
HIF−1依存性標的遺伝子の発現は、2種類の互いに異なる酸素依存性メカニズム、つまり、プロリン水酸化反応とアスパラギン水酸化反応により調節される。HIF−1αに、特異なプロリル水酸化酵素によるHIF−1αの酸素依存性ドメイン(oxygen-dependent domain, ODD)にあるプロリン残基の水酸化反応はHIF−1αの分解を誘導する反面、アスパラギンの水酸化反応は、HIF−1αのC−末端トランス活性ドメイン(C−TAD)とCBPまたはp300蛋白質間の結合を不活性化させ、HIF−1依存性標的遺伝子の発現を減少させる。
【0007】
初期に、HIF−1を阻害する因子として知られたHIF−1阻害因子(factor-inhibiting HIF-1, FIH−1)蛋白質(Mahon, P.C.ら、Genes Dev., 15: 2675-2686, 2001)は、その後、HIF−1αの調節に関与する酸素センサの特徴を有していることが明らかになった(Lando, D.ら、Genes Dev., 16: 1466-14, 2002)。つまり、HIF−1阻害因子(FIH−1)は、2−オキソグルタル酸及び鉄分依存性ジオキシゲナーゼ蛋白質(Safran, M.ら、J. Clin. Invest., 111: 779-783, 2003)であって、正常酸素状態では、HIF−1αのC−末端トランス活性ドメインにあるアスパラギン(Asn)−803を水酸化させ、HIF−1αとCBPまたはp300蛋白質間の結合及びHIFに関するトランス活性を阻害するものと知られている(Lando, D.ら、Science, 295: 858-861, 2002)。
【0008】
標的遺伝子に対するHIF−1αの転写的活性のために、アスパラギンの水酸化反応と共に、C−末端トランス活性ドメインにある他の残基の翻訳後修飾が、HIF−1αのこのような機能を微細に調節することに影響を与えると提示されている(Brahimi-Horn.ら、Cell, Signal., 17: 1-9, 2005)。HIF−1αの転写的活性調節のための代表的なメカニズムのうちの一つは、転写因子のリン酸化(Holmberg, C. I.ら、Trends Biochem. Sci., 27: 619-627, 2002)、つまり、正常酸素状態及び低酸素状態でのHIF−1αの直接的なリン酸化が報告されている(Brahimi-Horn, C.ら、Cellular Signalling, 17: 1-9, 2005)。
【0009】
また、HIF−1αのリン酸化は、それ自体の転写的活性を調節することが可能である。低酸素状態で誘導されたMAPK(mitogen-activated protein kinase)の活性はHIF−1αをリン酸化させることと提示されており、リン酸化されたHIF−1αはp300蛋白質との結合を増加させるが、それ自体の転写的活性との関連性はないと報告されている(Sang, N.ら、J. Biol. Chem., 278: 14013-14019, 2003)。しかし、HIF−1αを核内に蓄積するように誘導するリン酸化部位が、C−末端トランス活性ドメインから遠く離れた部位に存在することが明らかになった(Mylonis, I.ら、J. Biol. Chem., 281: 33095-33106, 2006)。これとは異なり、C−末端トランス活性ドメインにあるスレオニン(Thr)−796は、カゼインキナーゼ2(CK2)によってリン酸化される候補物質として報告されている(Mottet, D.ら、Int. J. Cancer, 117: 764-774, 2005)。HIF−1αのC−末端トランス活性ドメインの蛋白質合成後変形による転写的活性を示す資料が充分であるにもかかわらず、HIF−1αのC−末端トランス活性ドメインとp300またはCBP蛋白質間の結合において、このような変形の直接的な影響を示す明白な資料は有用であり得る。
【0010】
さらに、一酸化窒素(NO)は、細胞の種類及びNO濃度に依存的なHIF−1αの安定性を増加させたりあるいは減少させるものと知られており(Bilton, R. L.ら、Eur. J. Biochem., 270: 791-798, 2003)、HIF−1αのシステイン(Cys)−800残基のS−ニトロソ化は、HIF−1αとp300蛋白質間の結合を強化させてHIF−1αの転写的活性を増加させるという報告もあるが(Yasinska, I.M.ら、FEBS Lett., 549: 105-109, 2003)、いくつかの反対の結果も報告されている(Brahimi-Horn, C.ら、Cell, Signal., 17: 1-9, 2005)。
【0011】
他の方法としては、HIF−1αとCBPまたはp300蛋白質のうちの一つの蛋白質は簡単に検出可能な物質で標識し、他の一つの蛋白質は固体担体に固定させて、二つの蛋白質の結合を測定する方法がある。
【0012】
また他の方法としては、CBPまたはp300蛋白質とHIF−1αの結合を確認するために、HIF−1αの特定の部位を認識する抗体を利用した免疫共沈降に基づいた測定法がある。しかし、このような方法は大量の試料を要求し、その過程が複雑であり、実験所要時間も長いだけでなく、放射性同位元素を使用しなければならないなどの多くの短所を有している。
【0013】
これと共に、蛋白質間の直接的な結合を分析する代わり、間接的な方法、つまり、HIF−1αがCBPまたはp300蛋白質と結合した後、標的遺伝子の低酸素−反応因子(HRE)に結合して転写的活性を現わすということに着眼したリポーター分析法もある。一例として、Epo−ルシフェラーゼ(Epo-luciferase)を利用した測定方法がある(Kung, A. L.ら、Nature Medicine, 6: 1335-1340, 2000)。
【0014】
このような生化学的または免疫学的方法がや放射能を表示する方法は大量の試料が要求され、過程が複雑であり、実験時間が長く、放射線同位元素を使用しなければならないなどの多くの短所を有しているので、HIF−1αとCBPまたはp300蛋白質との結合を定量分析するより簡単な測定方法が要求されている。
【0015】
このような研究の一環として、放射線同位元素を使わずに短時間にHIF−1αとCBPまたはp300蛋白質間の結合を観察することができる96穴プレートを利用した分析法が開発された(Kung, A. L., et al, Cancer Cell, 6: 33-43, 2004)。このような分析法は、HIF−1αとCBPまたはp300蛋白質間の結合を阻害する化合物をスクリーニングすることに利用可能であるが、高価なアビジンがコーティングされたプレート、ユウロピウムが融合された抗−GST抗体、及び時間分解蛍光分光計を使用しなければならないという短所を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者らは、蛍光物質で標識されたHIF−1αC−末端ペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の蛋白質複合体が形成されたか否かを、蛍光偏光値の変化を測定して定量分析する方法を開発した。
【0017】
また、本発明者らは、HIF−1αC−末端トランス活性ドメイン(C−TAD)の蛋白質合成後変形(水酸化反応、S−ニトロソ化反応、及びリン酸化反応)の直接的な影響の調査や、またはHIF−1α−CBPまたはHIF−1α−p300蛋白質複合体の形成を阻害する抑制剤をスクリーニングに有用な方法を開発した。
【0018】
したがって、本発明の目的は、HIF−1αC−末端ペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の結合を定量分析する簡単な方法を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、前記方法を利用して、HIF−1αC−末端ペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の結合を阻害する抑制剤のスクリーニング方法を提供することにある。
【0020】
また、本発明の他の目的は、HIF−1αC−末端部位にあるアミノ酸配列中、CBPまたはp300蛋白質との結合に必要な少なくとも41−51個のアミノ酸を含む変形された蛍光物質で標識されたHIF−1αC−末端ペプチドを提供することにある。
【0021】
このような目的を達成するために、本発明は、HIF−1αC−末端ペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の結合を定量分析する方法を提供する。
【0022】
また他の側面より、本発明は、前記方法、つまり、蛍光偏光に基づいた結合分析法を利用したHIF−1αC−末端ペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の結合を阻害する抑制剤のスクリーニング方法を提供する。
【0023】
また他の側面より、本発明は、HIF−1αC−末端アミノ酸配列中、CBPまたはp300蛋白質との反応に必要な少なくとも41−51個のアミノ酸を含む合成されたHIF−1αC−末端ペプチド、より望ましくは、各々、F−HIF−1α−(776−826、配列番号3)及びF−HIF−1α−(786−826、配列番号4)に表記されたHIF−1αペプチドの776−826番目の残基及び786−826番目の残基を含むHIF−1αC−末端ペプチドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、
1)HIF−1α蛋白質のC−末端トランス活性ドメインから由来したペプチドに蛍光物質を結合させて、蛍光プローブを製造する段階;
2)前記蛍光プローブをCBPまたはp300蛋白質と反応させる段階;及び
3)前記2)段階で得られた反応物の蛍光偏光値を測定し、測定された蛍光偏光値の変化を分析するために、蛍光プローブ自体の蛍光偏光値と前記測定された蛍光偏光値とを比較する段階;
を含んで、HIF−1αとCBPまたはp300蛋白質間の結合を定量分析する方法を提供する。
【0025】
この定量分析方法において、前記1)段階の蛍光プローブは、HIF−1α(NCBI受入番号AAA50152)の全長アミノ酸配列内に連続的に存在する少なくとも41個のアミノ酸を有するペプチドを含み、この時、前記ペプチドは、配列番号4であるHIF−1α内に存在する786番目のアミノ酸乃至826番目のアミノ酸配列を必ず含み、前記ペプチドのN−末端にはアミノカプロン酸リンカーが連結されており、前記アミノカプロン酸リンカーの端部には蛍光物質が連結されたものであってもよい。
【0026】
これは、前記蛍光プローブ内にある前記ペプチドが41個のアミノ酸より短い場合、CBPまたはp300蛋白質に対する前記ペプチドの結合活性が完全に抑制され得るため、前記ペプチドは、41個またはHIF−1αの全長アミノ酸配列内に連続的に存在する41個以上のアミノ酸を有するものであることができる。さらに、前記ペプチドは、55個のアミノ酸より道場合、前記ペプチドのより大きい蛍光偏光値により、CBPまたはp300蛋白質に対する前記ペプチドの結合活性を蛍光偏光変化で測定できないので、望ましくは、前記ペプチドは、HIF−1αの全長アミノ酸配列内に連続的に存在する41乃至55個のアミノ酸を有するものであることができ、より望ましくは、配列番号3であるアミノ酸配列を有する51個のアミノ酸であることができ、最も望ましくは、配列番号4であるアミノ酸配列を有する41個のアミノ酸であることができる。
【0027】
また、前記プローブは、HIF−1αのアミノ酸配列上にある配列番号3であるアミノ酸配列を含むことができ、この時、前記ペプチドのN−末端にはアミノカプロン酸リンカーが連結されており、及び前記アミノカプロン酸リンカーの端部には蛍光物質が連結されてもよい。
【0028】
また、前記1)段階の蛍光プローブは、特に制限されているわけではないが、追加的に前記プローブは、前記ペプチドのN−末端にはアミノカプロン酸リンカー、及び蛍光物質、望ましくはFITC(フルオレセインイソチオシアネート)で標識された蛍光物質が連結されており、前記リンカーの端には、配列番号3または配列番号4であるペプチドが連結されていることが好ましい(表1)。
【0029】
前記定量分析方法において、前記リンカーが特に制限されているのではなく、できるだけリンカーの種類に関係なしでまたはリンカーなしで前記ペプチドに連結されることができ、これは蛍光物質で標識されたHIF−1αC−末端ペプチド、つまり、蛍光プローブと対象蛋白質間の結合によって誘導された蛍光強さの不要な変化を最少化することによって、蛍光偏光測定に用いてもよい。
【0030】
また、前記蛍光物質はフルオレセイン及びその類似体を含むことができるが、これに制限する必要はない。例えば、前記蛍光物質は、望ましくはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、テキサスレッド(TR)、及びテトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、フルオレセインカルボン酸(FCA)、フルオレセインチオウレア(FTH)、7−アセトキシクマリン−3−1、フルオレセイン−5−1、フルオレセイン−6−1、2’,7’−ジクロロフルオレセイン−5−1、ジヒドロテトラメチルローダミン−4−1、テトラメチルローダミン−5−1、及びテトラメチルローダミン−6−1からなる群より選択されたものであることができ、より望ましくは、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)であることができる。
【0031】
前記定量分析方法において、前記CBPまたはp300蛋白質は、特に制限されているのではなく、この時、前記CBP蛋白質は、望ましくは配列番号1である1−450番目のアミノ酸配列を含むことができ、及び前記p300蛋白質は、望ましくは配列番号2である1−221番目のアミノ酸配列を含むことができる。さらに、前記CBPまたはp300蛋白質は、各々、GenBank受入番号U85962(CBPコーディング配列)及びU01877(p300コーディング配列)である遺伝子上に存在するHIF−1αの結合部位を含む一部または全長アミノ酸配列を含みうる。
【0032】
本発明の好ましい具体例では、合成されたCBPまたはp300蛋白質を提供することができ、この時、前記蛋白質は、培養した細胞または培養培地から分離及び精製されたものであることができる。前記蛋白質の分離及び精製方法は特に制限されているのではなく、望ましくは、前記方法は透析、限外濾過、ゲル濾過、及びSDS−PAGEのような分子量の差に基づいた蛋白質分離方法、イオン−交換クロマトグラフィーのような電荷の差に基づいた蛋白質分離方法、及び逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)のような親水性の差に基づいた蛋白質分離方法からなる群より選択しうる。
【0033】
また、前記2)段階の反応は、望ましくは蛍光プローブをCBPまたはp300蛋白質と1:1(100nM:100nM)乃至1:30(100nM:3000nM)の範囲内で、より望ましくは、1:2(100nM:200nM)乃至1:10(100nM:1000nM)の範囲内で混合して、誘導することができる。
【0034】
前記定量分析方法において、前記3)段階の蛍光偏光測定は特に制限されているのではなく、望ましくは、蛍光偏光測定のための蛍光分光器またはウェルプレート基盤の蛍光検出器(Victor plate reader等)を利用することができ、この時、前記蛍光偏光値の変化は、2)段階で測定された反応物の蛍光偏光値から、蛍光プローブ自体の蛍光偏光値を差し引いて示すことができる。ここで、前記蛍光プローブはそれ自体の分子量が非常に小さいため、相対的に小さい蛍光偏光値を有する。しかし、前記蛍光HIF−1αペプチドプローブがより大きい分子量を有するCBPまたはp300蛋白質と結合する場合、HIF−1α−CBPまたはHIF−1α−p300複合体の蛍光偏光値は著しく増加する。
【0035】
結果として、HIF−1αとCBPまたはp300蛋白質間の結合の要否は、前記蛍光プローブをCBPまたはp300蛋白質と混合する前と混合した後に測定された蛍光偏光値の変化を通じて分析することができる。より詳しくは、前記蛍光偏光値の変化から、前記蛍光偏光値の差が陽性(+)である時に複合体が形成されることを判断することができる。
【0036】
同時に、本発明は、
1)HIF−1α蛋白質のC−末端トランス活性ドメインから由来したペプチドに蛍光物質を結合させて製造した蛍光プローブと、CBPまたはp300蛋白質を含む反応液に阻害剤候補物質を添加し、
2)前記反応液に阻害剤候補物質を添加する前と添加した後の蛍光偏光値の変化を測定し;及び
3)前記阻害剤候補物質の添加後に測定された前記反応液の蛍光偏光値が減少すれば、前記候補物質を抑制剤として決定する段階;を含む、HIF−1αとCBPまたはp300蛋白質間の結合を阻害する抑制剤のスクリーニング方法を提供する。
【0037】
前記スクリーニング方法において、前記1)段階の蛍光プローブは、HIF−1α(NCBI受入番号AAA50152)の全長アミノ酸配列内に連続的に存在する少なくとも41個のアミノ酸を有するペプチドを含み、この時、前記ペプチドは、配列番号4であるHIF−1α内に存在する786番目のアミノ酸乃至826番目のアミノ酸配列を必ず含み、前記ペプチドのN−末端にはアミノカプロン酸リンカーが連結されており、前記アミノカプロン酸リンカーの端部には蛍光物質を連結しうる。
【0038】
これは、前記蛍光プローブ内にあるペプチドが41個のアミノ酸より短い場合、CBPまたはp300蛋白質に対する前記ペプチドの結合活性が完全に抑制され得るため、前記ペプチドは、41個またはHIF−1αの全長アミノ酸配列内に連続的に存在する41個以上のアミノ酸を有することができる。さらに、前記ペプチドは、55個のアミノ酸より長い場合、前記ペプチドのより大きい蛍光偏光値により、CBPまたはp300蛋白質に対する前記ペプチドの結合活性を蛍光偏光変化で測定できないため、望ましくは、前記ペプチドは、HIF−1αの全長アミノ酸配列内に連続的に存在する41乃至55個のアミノ酸を有することができ、より望ましくは、配列番号3であるアミノ酸配列を有する51個のアミノ酸であることができ、最も望ましくは、配列番号4であるアミノ酸配列を有する41個のアミノ酸であることができる。
【0039】
また、前記プローブは、HIF−1αのアミノ酸配列上にある配列番号3であるアミノ酸配列を含むことができ、この時、前記ペプチドのN−末端にはアミノカプロン酸リンカーが連結されており、及び前記アミノカプロン酸リンカーの端部には蛍光物質を連結しうる。
【0040】
また、前記1)段階の蛍光プローブは特に制限されているのではないが、追加として前記プローブは、前記ペプチドのN−末端にはアミノカプロン酸リンカー及び蛍光物質、望ましくはFITCで標識された蛍光物質が連結されており、前記リンカーの端には、配列番号3または配列番号4であるペプチドが連結されているのが好ましい(表1)。
【0041】
このようなスクリーニング方法において、前記リンカーは特に制限されているのではなく、できるだけリンカーの種類に関係なしでまたはリンカーなしで前記ペプチドに連結することができ、これは蛍光物質で標識されたHIF−1αC−末端ペプチド、つまり、蛍光プローブと対象蛋白質間の結合によって誘導された蛍光強さの不要な変化を最少化することによって、蛍光偏光測定に用いられうる。
【0042】
また、前記蛍光物質は、フルオレセイン及びその類似体を含むこともできるが、これに制限されるわけではない。例えば、前記蛍光物質は、望ましくはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、テキサスレッド(TR)及びテトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、フルオレセインカルボン酸(FCA)、フルオレセインチオウレア(FTH)、7−アセトキシクマリン−3−1、フルオレセイン−5−1、フルオレセイン−6−1、2’,7’−ジクロロフルオレセイン−5−1、ジヒドロテトラメチルローダミン−4−1、テトラメチルローダミン−5−1、及びテトラメチルローダミン−6−1からなる群より選択されることができ、より望ましくは、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)でありうる。
【0043】
前記スクリーニング方法において、前記CBPまたはp300蛋白質は特に制限されているのではなく、この時、前記CBP蛋白質は、望ましくは配列番号1である1−450番目のアミノ酸配列を含むことができ、及び前記p300蛋白質は、望ましくは配列番号2である1−221番目のアミノ酸配列を含みうる。さらに、前記CBPまたはp300蛋白質は、各々、GenBank 受入番号U85962(CBPコーディング配列)及びU01877(p300コーディング配列)である遺伝子上に存在するHIF−1αの結合部位を含む一部または全長アミノ酸配列を含みうる。
【0044】
また、前記2)段階の阻害剤候補物質は特に制限されているのではなく、望ましくは、前記候補物質は、前記蛍光プローブとCBPまたはp300蛋白質間の結合を競合阻害する抗体、ペプチド、オリゴヌクレオチド、及び天然及び合成化合物からなる群より選択されうる。
【0045】
これに、本発明は、
a)蛍光物質をHIF−1α蛋白質のC−末端トランス活性ドメイン(C−TAD)から由来したペプチドに結合させて、蛍光プローブを製造し、前記蛍光プローブをCBPまたはp300蛋白質と反応させて、これらの蛍光偏光値を測定する段階;
b)前記蛍光プローブに、HIF−1阻害因子(FIH−1)、S−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン(SNAP)、及びカゼインキナーゼ2(CK2)からなる群より選択されたいずれか一つの酵素を処理し、前記酵素処理されたプローブをCBPまたはp300蛋白質と反応させて、これらの蛍光偏光値を測定する段階;及び
c)CBPまたはp300蛋白質との結合相で、HIF−1αC−末端トランス活性ドメインの蛋白質合成後の変形の影響を分析するために、前記a)及びb)段階で測定された蛍光偏光値を比較する段階;
を含む、定量分析する方法を提供する。
【発明の効果】
【0046】
結果として、本発明による作用が、たとえp300蛋白質との結合活性において、蛋白質合成後の変形の影響がHIF−1α−p300蛋白質結合の直接的な調節よりも、いくつかの他のメカニズムを通じてHIF−1αに関する転写活性に影響を与えるものだとしても、このような効果において相反する問題の解決を援助することができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0048】
本発明の実用的であり好ましい実施例は、本発明に関する当業者が本発明を実施できるように、より明確にするためのものであり、これは本発明の精神及び範囲内で変形及び向上させうる。
【0049】
(実施例1)
CBP及びp300蛋白質の分離及び発現
本発明の実施例によるCBP及びp300蛋白質の発現のために、配列番号1であるアミノ酸配列を含む切片化された人間CBP(1−450番目のアミノ酸)及び配列番号2であるアミノ酸配列を含む切片化されたp300(1−221番目のアミノ酸)を、各々、pGEX−KG(GE Healthcare Life Sciences, 米国)及びpGEX−4T−1(Amersham Biosciences, 米国)ベクターにクローニングした後、大腸菌BL21(Novagen)に形質転換させた。
【0050】
前記形質転換された細胞を、50μg/mlのアンピシリンが添加されたLuria-Bertani(LB)液体培地に接種して、吸光度(O.D)が0.6程度になるまで37℃で培養した後、蛋白質の発現を誘導するために、0.5mMのIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトシド)を添加して、18℃で15時間培養した。遠心分離した後、前記細胞にPMSF(フッ化フェニルメチルスルホニル)及びリゾチームを、最終濃度が各々0.2mM及び1mg/mlになるように添加した10mMのリン酸塩緩衝溶液(PBS、pH7.4;110mMNaCl、1mM DTT)に懸濁させ、4℃で粉砕した。細胞抽出物に2%のトリトンX−100を添加してよく混合した後、10分間氷に入れた後、13,000rpmで30分間遠心分離した。分離された上清に1mMのDTTを添加して、グルタチオン−セファロース(Amersham Biosciences, 米国)と混合した後、4℃で2時間攪拌し、前記反応混合物に10倍体積のリン酸塩緩衝溶液を添加して5分間遠心分離した後、上清を除去した。このような過程を3回連続で繰り返し、遠心分離して上清を除去した後、前記処理されたセファロースビードをBio-Spin(登録商標)の使い捨てクロマトグラフィーカラム(Bio-Rad)に添加した。前記ビードに非特異的に結合された不要な物質を除去するために、5mlのリン酸塩緩衝溶液で濾過させ、2mlの1MNaCl溶液で濾過させた。
【0051】
最後に、10mMのグルタチオン−セファロースを利用して、前記ビードからGST−CBP及びGST−p300蛋白質を収得した後、SDS−PAGEを利用してその純度を確認し、ブラッドフォード分析法(Bio-Red)を利用して、定量化した。
【0052】
(実施例2)
蛍光物質で標識されたHIF−1αペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の結合分析
2−1.蛍光物質で標識されたHIF−1αペプチド
人間HIF−1αのC−末端トランス活性ドメイン(C−TAD)を含む蛍光物質で標識された4個のHIF−1αペプチドは、N−末端にアミノカプロン酸リンカー(Anygen、Kwangju、韓国)と共にフルオレセインイソチオシアネート(FITC)を連結して合成し、この時776−826、786−826、776−814、及び788−822番目のアミノ酸残基を含む前記合成された4個のペプチドは、各々、F−HIF−1α(776−826、配列番号3)、F−HIF−1α(786−826、配列番号4)、F−HIF−1α(776−814、配列番号5)、及びF−HIF−1α(788−822、配列番号6)に記載した(表1)。
【表1】
【0053】
変異ペプチドを製造するために、PCR反応により調製したHIF−1α(786−826、配列番号4)の単一変異生成物をpGEX−2T−1(Amersham Biosciences,米国)ベクターにクローニングした後、大腸菌BL21(DE3)で過発現させた。過発現されたGST融合蛋白質をグルタチオ−セファロース(Amersham Biosciences,米国)を利用して精製した後、トロンビンを処理してGSTを除去し、得られたペプチドを逆相HPLCを利用して精製し、MALDI−TOF質量分析法でその質量を確認した。
【0054】
前記HIF−1αペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の結合親和力及びその特徴は、前記実施例1の方法によって製造された合成ペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の結合による蛋白質−リガンド複合体の形成によって変化された蛍光偏光値を測定することによって分析される。前記蛍光偏光値は、蛍光分光器(Perkin-Elmer)で測定し、この時、スリット幅は5nm、総測定時間(integration time)は5秒に設定した。前記結合反応において、EBC溶液(50mMのTris;120mMのNaCl;pH8.0、0.25%NonidetP(NP)−40)が使用された。
【0055】
2−2.蛍光物質で標識されたHIF−1αペプチドとZn2+処理または未処理されたCBPまたはp300蛋白質間の結合分析
CBPまたはp300蛋白質のシステイン−/ヒスチジン−リーチ1(CH1)ドメインは、Zn2+結合センターを含んでいるHIF−1αのC−末端トランス活性ドメイン(C−TAD)と結合するので、本発明の実施例では、CBPまたはp300蛋白質とHIF−1αから由来したペプチドとの結合において、前記CBPまたはp300蛋白質調製過程、つまり、細胞粉砕及び蛋白質溶出時に添加されたZn2+の重要性を最初に調査し、この時、前記CH1ドメインを含むGST−CBPまたはGST−p300蛋白質は、蛋白質調製過程時細胞粉砕または蛋白質溶出過程で、硫酸亜鉛(ZnSO4)を添加または添加せずに調製した。前記実施例1で調製したEBC溶液に800nMのCBPまたはp300蛋白質を添加した後、CBP添加溶液には100nMのF−HIF−1α(776−826、配列番号3)ペプチドを、及びp300添加溶液には100nMのF−HIF−1α(786−826、配列番号4)ペプチドを、各々25℃で混合し、その後蛍光偏光値を測定した。
【0056】
その結果、前記GST−CBP及びGST−p300を前記ペプチドと混合した場合には、蛍光偏光値が著しく増加し、この時、CBP−F−HIF−1α(776−826、配列番号3)及びp300−HIF−1α(786−826、配列番号4)複合体形成によって測定された蛍光偏光値は、各々、HIF−1α(776−826、配列番号3)及びHIF−1α(786−826、配列番号4)ペプチド自体の蛍光偏光値に比べて増加した(図1A及び1B)。しかし、CBPまたはp300蛋白質調製過程時の硫酸亜鉛(ZnSO4)の添加有無に応じた蛍光偏光値の変化は殆どなく、これは、前記HIF−1αペプチドとGST−CBPまたはGST−p300蛋白質のCH1ドメインとの複合体を形成するにおいて、前記大腸菌培養額内に充分な量のZn2+が存在していることを意味する。
【0057】
2−3.蛍光物質で標識されたHIF−1αと多様な濃度のCBPまたはp300蛋白質間の結合分析
HIF−1αC−末端トランス活性ドメイン内にある互いに異なる部位から由来した4個のペプチドと、CBPまたはp300蛋白質間の結合を比較するために、蛍光物質で標識されたHIF−1αペプチドと0−3000nMの多様な濃度を有するCBP蛋白質を、前記実施例2−2と同一な条件で反応させて、蛍光偏光値を測定した(図2A)。このようなペプチドはその大きさにより固有の蛍光偏光値を有しているので、前記蛋白質複合体の蛍光偏光値から前記ペプチド自体の蛍光偏光値を差し引いて、その変化を測定した。
【0058】
CBPの場合、CBPと混合されたHIF−1α(776−826、配列番号3)、及びHIF−1α(786−826、配列番号4)の蛍光偏光値は、GST−CBPの濃度が増加することに伴って各々増加し、場合によっては一定の安定値に到達した(図2A)。また、このような二つのペプチドの解離定数は、各々HIF−1α(776−826、配列番号3)に対しては195.7nMであり、HIF−1α(786−826、配列番号4)に対しては174.9nMであった。これとは異なり、HIF−1α(788−822、配列番号6)の蛍光偏光値は、前記二つのペプチドの蛍光偏光値に比べて遥かに増加せず、HIF−1α(776−814、配列番号5)の蛍光偏光値は3000nM以上のGST−CBP蛋白質濃度でも増加しなかった(図2A)。
【0059】
p300の場合、p300と混合されたHIF−1α(776−826、配列番号3)及びHIF−1α(786−826、配列番号4)の蛍光偏光値は、図2Aに示したものに類似しているように、GST−p300の濃度増加に伴って増加した(図2B)。このような二つのペプチドの解離定数は、各々、HIF−1α(776−826、配列番号3)に対しては157.3nMであり、HIF−1α(786−826、配列番号4)に対しては180.1nMであった。これとは異なり、HIF−1α(788−822、配列番号6)の蛍光偏光値は、前記二つのペプチドの蛍光偏光値に比べて遥かに増加せず、HIF−1α(776−814、配列番号5)の蛍光偏光値はGST−p300と共に培養する場合、いかなる増加もなかったが、これはp300との結合において、HIF−1αC−末端トランス活性ドメインのC−末端螺旋形が重要な役割を果たしていることを意味する。
【0060】
このような結果は、蛍光物質で標識されたHIF−1αペプチドを利用した簡単な蛍光偏光に基づいた測定法が、HIF−1αC−末端トランス活性ドメインから由来したペプチド断片とCBPまたはp300蛋白質間の結合活性を定量分析する可能性があることを意味する。
【0061】
(実施例3)蛍光偏光に基づいた分析法を利用したHIF−1αとp300蛋白質間の結合におけるHIF−1αの蛋白質合成後の変形(水酸化、ニトロソ化、及び水酸化)の影響
3−1.FIH−1による水酸化作用
HIF−1αのアスパラギン(Asn)−803相での水酸化反応は、HIF−1αによるCBPまたはp300蛋白質の補充を阻害させてHIF−1の転写的活性を抑制するため、本発明の実施例では、前記蛍光偏光に基づいた分析法を利用して、p300蛋白質との結合におけるHIF−1αペプチドの直接的な水酸化作用を調査した。まず、蛍光物質で標識されたHIF−1αペプチドを、HIF−1αの特定アスパラギン残基を水酸化させる酵素として知られたHIF−1阻害因子(HIF−1)で処理した後、前記HIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合を、蛍光偏光に基づいた分析法で測定した。前記FIH−1酵素は下記のような方法で分離及び精製した。
【0062】
つまり、全長人間FIH−1(1−349番目のアミノ酸;GenBank I.D.:AF395830)をpET28a(+)(Novagen)ベクターにクローニングし、大腸菌BL21(Novagen)に形質転換した。前記形質転換された菌株から過発現されたFIH−1蛋白質を、前記CBPまたはp300蛋白質の分離方法と同一に粉砕、懸濁、及び分離した。前記細胞抽出物を2%のトリトンX−100と混合して氷で10分間の反応させ、13,000rpmで30分間遠心分離した。これから得られた上清を、ニッケル−親和性アガローズ(Qiagen、米国)相で4℃、1時間攪拌し、リン酸塩緩衝溶液で2回洗浄した後、前記反応混合物を、Bio-Spin(登録商標)の使い捨てクロマトグラフィーカラム(Bio−Rad)積載した。最後に、300mMのイミダゾール溶液でヒスチジン−FIH−1を溶出し、前記精製された蛋白質はSDS−PAGEを利用してその純度を確認し、ブラッドフォード分析法(Bio-Red)で定量化した。
【0063】
前記アスパラギン残基の水酸化反応のために、400mMのアスコルブサン及び100μMのアルファ−ケトグルタレートを含む水酸化反応溶液(20mMTris−HCL、5mMKCl、1.5mMのMgCl2;pH7.5)に0.7μg/μLの再組み合わせHis−FIH−1を混合して、反応させた。室温で2時間反応させた後、前記反応混合物をZipTipC18(Millipore、米国)に通過させて塩を除去し、アセトニトリル/水に0.1%TFA(1:1vol/vol)を含んでいるアルファ−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸を添加して、溶出した。前記溶出したペプチド溶液をMALDIサンプルプレートに移した後、ボイジャー(Voyager)分析器を利用してMALDI−TOF測定を行った。結合分析のために、前記水酸化されたペプチドを逆相HPLCに精製した。
【0064】
水酸化反応の要否を調査するために、まず、HIF−1α(786−826、配列番号4)ペプチドに再組み合わせHis−FIH−1蛋白質を処理した後、MALDI−TOF分析を行い、この時、前記ペプチドは、FIH−1の完全な活性(図2B)だけでなく、p300結合活性のための残基を含んでいる。FIH−1によるF−HIF−1α(786−826、配列番号4)の水酸化反応結果を図3Aに示した。
【0065】
図3Aに示したように、His−FIH−1を処理したペプチドは、対照群(His−FIH−1を処理していないペプチド)に比べて〜16ダルトン程度その分子量が増加したが(図3A)、これは前記アスパラギンが再組み合わせHis−FIH−1によって水酸化されたことを意味する。前記水酸化されたF−HIF−1α(786−826、配列番号4)ペプチドを逆相HPLCに精製し、GST−p300との結合における蛍光偏光変化をモニタリングすることに利用したが、これは前記反応混合物に含まれているアスコルブサン及びアルファ−ケトグルタレートがHIF−1α−p300結合及び蛍光偏光測定を妨害し得るためである。前記水酸化されたペプチドの蛍光偏光変化を図3Bに示した。
【0066】
図3Bに示したように、水酸化されたペプチドによる蛍光偏光変化数値は、単にp300蛋白質濃度が増加することに伴って弱いながらも増加したが、これは変形していないペプチドに比べて遥かに増加していない(図3B)。したがって、このような結果は、FIH−1によるHIF−1αのアスパラギン水酸化がたとえ完全ではなくても、p300との結合活性を抑制する可能性があることを意味する。
【0067】
3−2.SNAPによるS−ニトロソ化作用
HIF−1αのシステイン(Cys)−800相でのS−ニトロソ化反応は、p300蛋白質の補充及びHIF−1α自体の転写的活性を増加させるものと報告された反面、一酸化窒素(NO)はHIF−1αの安定性を増加または減少させるものと報告された(Ema, M.ら、EMBO J., 18: 1905-1914, 1999;Yasinska, I.M.とSumbayev, V.V.、FEBS Lett., 549: 105-109, 2003;Hagen, T.ら、Science, 302: 1975-1978, 2003)。本発明の実施例によれば、HIF−1αとp300蛋白質との結合相で、HIF−1α内にあるCys−800のS−ニトロソ化作用が確認された。また、ニトロソチオール結合は、レーザー照射下で、それ自体の光誘導分解のため、MALDI−TOF分析で検出できなかった。したがって、前記ニトロソチオール結合の形成は、S−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン(SNAP)処理されたF−HIF−1α(786−826、配列番号4)の存在下ではは〜320nmの吸光度で検出されたが、SNAPが処理されていないペプチドでは検出されず(図4A)、この時、前記ペプチドの含有量は前記蛍光吸光度のピークに標準化させた。
【0068】
同時に、本発明では、S−ニトロソ化されたペプチドを検出及び精製するために、既に公知された方法を若干変形させたビオチン化法を利用した(Jaffery, S.R.ら、Na. Cell Biol., 3: 193-197, 2001)。つまり、スルフヒドリル基をビオチン化するために、S−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン(SNAP)を処理または処理していないF−HIF−1α(786−826、配列番号4)と、合成ビオチン化試料を反応させた。F−HIF−1α(786−826、配列番号4)は単に一つのシステイン(Cys)−800を有しているため、S−ニトロソ化によって変形された前記ペプチドはビオチン化されることができず、反面、SANPを処理していないペプチド内で遊離されたシステインはビオチン化される。このようなビオチン化方法は、ストレプトアビジン添加時に蛍光偏光の変化を測定することができ、また、逆相HPLCを利用して測定時、S−ニトロ消化されて変形していないペプチドはよく分離しないが、S−ニトロ消化されてビオチン化されたペプチドは簡単に分離するので、S−ニトロソ化されたペプチドを分離することに容易である。
【0069】
より具体的には、システイン(Cys)の代わりに、アラニン(Ala)を含んでいる30μMのF−HIF−1α−(786−826、配列番号4)及びF−HIF−1α(786−826)[C800A]を、各々、2mMのSNAPを含む30℃の50mMTris(pH8.0)溶液で30分間反応させた。反応していないSNAPを、セファデックスG−15レジンを利用して除去した後、前記ペプチドのS−ニトロソ化反応を、前記ニトロソチオール一部の吸光度を測定することによって分光学的に分析した(Jaffery, S.R.ら、Nat. Cell Biol., 3: 193-197, 2001)。S−ニトロソ化の要否を確認するために、前記で調製した300μMのビオチン化試料をSNAP処理した後、変形していないシステインを標識する際利用した。室温で2時間反応させた後、ビオチン化を、スクレプタビジン添加による蛍光偏光変化に測定した。また、結合分析のために、逆相HPLC上に存在するビオチン化デンペプチドから、前記S−ニトロソ化されたペプチドを分離して、収得した。
【0070】
S−ニトロソ化の定量分析のためのビオチン化試料を調製するために、まず、ビオチン−システイン−アミノ基(NH2)を、固形状ペプチド合成プロトコルに従って、25μmolのFmoc−システインを利用して Rink Amide(登録商標)レジン(NovaBiochem)相で合成した。12mgの1,11−ビス−マレイミドトリエチレングリコール(Pierce)を1.5mlのビオチン−システイン−アミノ基(4mg)溶液を含むPBS/DMSO(1:2v/v)に添加した。前記混合物を室温で夜通しで混合した後、前記ビオチン化試料を逆相HPLCを利用して精製し、MALDI−TOF質量分析器でその質量を測定した。前記ビオチン化試料を処理したペプチドの蛍光偏光値を図4Bに示した。
【0071】
図4Bに示したように、ストレプトアビジンを添加した場合には、前記ビオチン化デンペプチドの蛍光偏光値は増加したが、前記S−ニトロソ化されたペプチドの蛍光偏光値は変わらなかったが、これは、前記S−ニトロソ化されたペプチドは、ビオチン化試料を処理した時にはビオチン化できないからである。さらに、システイン(Cys)−800がアラニン(Ala)で置換された変異F−HIF−1α(786−826)[C800A]ペプチドは、SNAPを処理し、ビオチン化を行った場合にも蛍光偏光値が変わらなかった(図4B)。
【0072】
F−HIF−1α(786−826、配列番号4)内にあるシステイン(Cys)−800のS−ニトロソ化反応を確認した後、このような反応がp300蛋白質との結合にいかなる影響を示すかを分析した。S−ニトロソ化された場合、GST−p300蛋白質が未処理されたF−HIF−1α(786−826、配列番号4)、及びGST−p300と混合されたF−HIF−1α(786−826)[C800A]の蛍光偏光を測定した時、F−HIF−1α(786−826)[C800A]及び未処理されたF−HIF−1α(786−826、配列番号4)が全て類似に濃度−依存的な結合様相を示したが、S−ニトロソ化されたF−HIF−1α(786−826、配列番号4)は、p300蛋白質の濃度増加に伴って多少増加した(図4C)。
【0073】
このような結果は、たとえ一酸化窒素(NO)がプロリルヒドロキシラーゼに依存してHIF−1αの分解を誘導すると提案されているが(Hagen, T.ら、Science, 302: 1975-1978, 2003)、HIF−1αのS−ニトロソ化反応それ自体は、p300蛋白質との結合を著しく阻害し、減少したHIF−1αの安定性に直接的なメカニズムで作用する可能性があることを意味する。
【0074】
3−3.キナーゼによるリン酸化作用
HIF−1α内にあるスレオニン(Thr)−796のリン酸化反応はHIF−1α−CBP結合を増加させることと報告されたが(Gradin, K.ら、J. Biol. Chem., 277: 23508-23514, 2002)、HIF−1αのリン酸化部位はC−末端トランス活性ドメイン(C−TAD)から遠く離れている(Mylonis, I.ら、J. Biol. Chem., 281: 33095-33106, 2006)。したがって、本発明の実施例では、直接的な結合分析法を利用して、p300蛋白質との結合におけるF−HIF−1α(786−826、配列番号4)ペプチドのリン酸化作用を調査した。まだ、HIF−1αのスレオニン(Thr)−796をリン酸化させるプロテインキナーゼは確認されていないため、低酸素状態(H)及び正常酸素状態(N)下で培養したHeLa細胞から得られたキナーゼ分画物を、p300蛋白質に結合するF−HIF−1α(786−826、配列番号4)のリン酸化反応を分析する際に利用した。
【0075】
より具体的には、低酸素状態(H)または正常酸素状態(N)下で培養した人間HeLa細胞を受取し、均質化溶液(50mMPIPES、2mM DTT、プロテアーゼ阻害剤カクテル、pH7.0)で懸濁させ、超音波で前記細胞を粉砕した。前記細胞粉砕物からキナーゼ分画物を収得するために、まず、0.5M NaOHで膨らむようにしたセルロースリン酸塩(Whatman)を焼結ガラスフィルターを有する開口カラムに入れて、pHが3になるまで0.5MのHClを添加し、4℃、0.5M HEPES溶液で洗浄した。同時に、前記細胞粉砕物を洗浄溶液(0.5M HEPES、0.1M NaCl、pH7.5)で予め−水平化させたカラムに積載した。結合していない物質を前記洗浄溶液で洗浄して除去した後、結合された蛋白質を溶出溶液(0.5M HEPES、0.45M NaCl、pH7.5)で溶出し、ブラッドフォード法を利用して、定量化した。
【0076】
リン酸化反応のために、基質としては、3μMのF−HIF1α−(786−826、配列番号4)を利用し、100μMの[γ−32P]ATPまたは同位元素で標識されないATPを含む50μLのキナーゼ反応溶液(25mMのHEPES、20mMのMgCl2、2mMのDTT、0.1mMのNa3VO4、pH7.5)内に正常酸素状態または低酸素状態のキナーゼ(40μg)、またはCK2(500ユニット;New England Biolabs, Beverly、米国)を混合して、反応させた。結合分析のために、[γ−32P]ATPを含んでいない前記リン酸化された生成物を室温で夜通しで反応させた後、逆相HPLCで精製した。正常酸素状態(N)または低酸素状態(H)のキナーゼ分画物による前記F−HIF−1α(786−826、配列番号4)ペプチドのリン酸化反応結果を図5Aに示した。
【0077】
図5Aに示したように、正常酸素状態(N)または低酸素状態(H)のキナーゼ分画物で処理した前記ペプチドの放射能は、対照群(キナーゼ処理していないペプチド)に比べて著しく増加した(図5A)。
【0078】
また、正常酸素状態(N)または低酸素状態(H)のキナーゼ分画物で処理及び逆相HPLCに精製された前記ペプチドは、前記酵素で処理していないペプチドに類似に、GST−p300蛋白質と反応時、蛍光偏光が増加した(図5B)。同時に、前記ペプチド内に存在するスレオニン(Thr)−796は固有なCK2リン酸化部位を有しているので(Mottet, D.ら、Int. J. Cancer, 117: 764-774, 2005)、前記F−HIF−1α−(786−826、配列番号4)ペプチドは、CK2によってリン酸化される(図5C)。前記精製されたCK2によってリン酸化されたペプチドの蛍光偏光は、前記酵素で処理されていないがペプチドの蛍光偏光と比較すると、類似なp300蛋白質結合様相を示した(図5D)。
【0079】
したがって、このような結果は、HIF−1α内にあるC−末端トランス活性ドメイン(C−TAD)のリン酸化反応はHIF−1α−p300結合にいかなる影響度与えず、リン酸化反応による前記増加された転写的活性は、他のメカニズムが関連していることを意味する(Brahimi-Horn, C.ら、Cell. Signal., 17: 1-9, 2005)。
【0080】
3−4.競合的結合分析
p300蛋白質との結合における、HIF−1αペプチドのスレオニン(Thr)−796、システイン(Cys)−800、及びアスパラギン(Asn)−803残基の重要度を比較するために、本発明の実施例では、簡単な変異ペプチドを利用して分析する蛍光偏光に基づいた競合的抑制分析法を行った。前記変異ペプチドは下記のような方法で調製した。
【0081】
つまり、人間HIF−1α−(786−826、配列番号4)ペプチド及びPCRによって調製したその単一変異生成物をpGEX−2T−1(Amersham Biosciences)ベクターにクローニングした後、大腸菌BL21(DE3)で過発現させた。過発現されたGST融合蛋白質をグルタチオ−セファロース(Amersham Biosciences)を利用して精製した後、トロンビンを処理してGSTを除去し、得られたペプチドを逆相HPLCを利用して精製し、MALDI−TOF質量分析法でその質量を確認した。HIF−1α−p300蛋白質結合相で点突然変異を有するHIF−1α−(786−826、配列番号4)ペプチドによる競合的抑制結果を図6に示した。
【0082】
図6に示したように、多様な濃度の自然型ペプチド及び単一変異ペプチドを含んでいるGST−p300とF−HIF−1α−(786−826、配列番号4)の混合物の蛍光偏光において、HIF−1αの786−826番目の残基を有する前記自然型ペプチドは、p300蛋白質との結合でF−HIF−1α−(786−826、配列番号4)ペプチドと効果的に競合したが(318.6nMのKi)、前記C800S辺がペプチドは抑制剤として作用しなかった(3592.3nMのKi)(図6)。このような結果は、HIF−1α内にあるシステイン(Cys)−800を、親水性を帯びたセリン(Ser)またはアスパルト酸(Asp)で置換する場合はp300蛋白質との結合を妨害するが、疎水性を帯びたアラニン(Ala)またはバリン(Val)で置換すると、p300蛋白質との結合を妨害しないという以前の研究報告と一脈相通ずることであって、これはまた、F−HIF−1α(786−826)[C800A]とp300蛋白質間の結合でも観察された(図4C)。
【0083】
これとは異なり、T796D及びN803A変異ペプチドは、p300蛋白質との結合において、前記自然型ペプチドに比べてはその抑制の程度はそれほどでないが、F−HIF−1α−(786−826、配列番号4)を競合的に抑制した(図6)。このような結果は、アスパラギン(Asn)−803をアラニン(Ala)で置換した変異ペプチドは、p300蛋白質との結合においてその効果が殆どないが、FIH−1による水酸化反応は抑制しており、また、スレオニン(Thr)−796のリン酸化反応は少なくともp300蛋白質結合で重要な役割を果たしていないことを意味する。
【0084】
前記で説明された実施例は、単に本発明の原理を適用した例に過ぎない。多くの変形と選択的な実施例は本発明の精神及び範囲を越えない限り自由に変形されることができ、添付の特許請求の範囲はこのような変形及び整列と一致する。したがって、本発明が図面から見られるように、特により実用的であり好ましい実施例として見なされる場合、これと関連してより詳しく説明する際、請求の範囲で説明する本発明の原理及び概念を越えずに、当業系の普通の熟練者によって多様な変形が行われることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1A】蛍光物質で標識されたHIF−1αペプチドとCBP蛋白質間の結合における、CBP蛋白質の調製時に添加されたZn2+の作用を示すグラフであって、この時使用されたペプチドはF−HIF−1α(776−826、配列番号3)であり、測定された値は、3回を独立に繰り返して得られた蛍光偏光値を平均±標準偏差に示したものである。
【図1B】蛍光物質で標識されたHIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合における、p300蛋白質の調製時に添加されたZn2+の作用を示すグラフであって、この時使用されたペプチドはF−HIF−1α(786−826、配列番号4)であり、測定された値は、3回を独立に繰り返して得られた蛍光偏光値を平均±標準偏差に示したものである。
【図2】図2は、蛍光物質で標識された長さの多様な4個のHIF−1αペプチドとCBP(図2A)またはp300(図2B)蛋白質間の結合による蛍光偏光値の変化を示すグラフであって、この時、(■)、(□)、(●)、及び(○)は、各々、F−HIF−1α(776−826、配列番号3)、F−HIF−1α(786−826、配列番号4)、F−HIF−1α(788−822、配列番号6)、及びF−HIF−1α(776−814、配列番号5)ペプチドを示したものである。また、蛍光偏光値の変化(△FP)は、CBPまたはp300蛋白質の不在下で測定された前記蛍光物質で標識されたペプチドの蛍光偏光値を差し引いて示したものである。
【図3A】図3は、HIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合における、HIF−1αペプチドのアスパラギンの水酸化作用を示したものであって、図3Aは、HIF−1阻害因子(FIH−1)酵素を処理または処理していないF−HIF−1α(786−826、配列番号4)ペプチドのMALDI−TOF分析結果を示したものである。
【図3B】図3は、HIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合における、HIF−1αペプチドのアスパラギンの水酸化作用を示したものであって、図3Bは、前記反応後、逆相HPLCによって精製された、水酸化されたペプチド(●)及び酵素処理していない対照群ペプチド(○)を示したものである。
【図4A】図4は、HIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合における、HIF−1αペプチドのシステイン(Cys)−800のS−ニトロソ化の作用を示したものであって、図4Aは、SNAPを処理したペプチド(実線)または処理していないペプチド(点線)の吸光度を示したものである。
【図4B】図4は、HIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合における、HIF−1αペプチドのシステイン(Cys)−800のS−ニトロソ化の作用を示したものであって、図4Bは、SNAPで処理または処理していない自然型ペプチド(WT)及びシステイン(Cys)がアラニン(Ala)で置換されたF−HIF−1α(786−826)[C800A]ペプチドの蛍光偏光値の変化を示したものである。
【図4C】図4は、HIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合における、HIF−1αペプチドのシステイン(Cys)−800のS−ニトロソ化の作用を示したものであって、図4Cは、(●)、F−HIF−1α−(786−826、配列番号4)ペプチド;(■)、S−ニトロソ化されたF−HIF−1α(786−826、配列番号4)ペプチド;及び(▲)、F−HIF−1α(786−826)[C800A]ペプチドとp300蛋白質間の結合による蛍光偏光値の変化を各々示したものである。
【図5A】図5は、HIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合における、HIF−1αペプチドのリン酸化作用を示したものであって、図5Aは、正常酸素状態(N)で分離したキナーゼ分画物または低酸素状態(H)で分離したキナーゼ分画物と反応させたF−HIF−1α(786−826、配列番号4)ペプチドのリン酸化数値を示したものであり、放射線分析法で測定したものである。
【図5B】図5は、HIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合における、HIF−1αペプチドのリン酸化作用を示したものであって、図5Bは、p300蛋白質を処理または処理していない前記ペプチドの結合活性を示したものであり、ここで結合活性は、蛍光偏光分析で測定したものである。
【図5C】図5は、HIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合における、HIF−1αペプチドのリン酸化作用を示したものであって、図5Cは、CK2処理によるHIF−1αペプチドのリン酸化数値を示したものであり、放射線分析法で測定したものである。
【図5D】図5は、HIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合における、HIF−1αペプチドのリン酸化作用を示したものであって、図5Dは、CK2がまだ処理されていないHIF−1αペプチド(●)またはリン酸化されたHIF−1αペプチド(○)の結合活性を示したものであり、ここで結合活性は、蛍光偏光分析で測定したものである。
【図6】図6は、F−HIF−1α−p300反応における、F−HIF−1αペプチドの点突然変異による競合的抑制活性を示したものであって、この時(●)、(■)、(○)、及び(□)は、各々、野生型、T79D、N803A、及びC800SHIF−1α(786−826)ペプチドを示したものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドの結合、より詳しくは、蛍光物質で標識されたHIF−1αC−末端ペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の結合を定量分析する方法、及び前記方法、つまり、蛍光偏光に基づいた結合分析法を利用したHIF−1αペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の結合を阻害する抑制剤のスクリーニング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
動物細胞が酸素数値の変化を感知及び反応する能力を持つことは生存に必須であり、このような能力は、血管形成、心筋虚血、脳虚血、肺性高血圧、及び多様な種類の癌のような人間の病気だけでなく、発生及び生理的過程において大変重要な役割を果たす。低酸素症は、マスター転写因子、つまり、低酸素誘導因子−1(HIF−1)と関連している。
【0003】
低酸素誘導因子−1(HIF−1)は、αとβサブユニットで構成されており、この時、前記βサブユニットは常に安定して発現するが、HIF−1α(αサブユニット)は、低酸素状態では安定化しており、正常酸素状態では、プロテアソームによって退化する。低酸素状態で安定化されたHIF−1αは、核内にあるCBP(cAMP-response element-binding protein)またはp300蛋白質と結合して複合体を形成した後、標的遺伝子のプロモーターに存在する低酸素応答因子(hypoxia-response element, HRE)と結合して、標的遺伝子の転写を活性化させる(Lando, D.ら、Genes. Dev., 16: 1466-14, 2002)。
【0004】
このようなCBP及びp300転写補助蛋白質は多様な信号伝達経路の終結点で作用して、細胞の成長、分化、及び恒常性維持に関連する特定の遺伝子の発現を調節するので、HIF−1αとCBPまたはp300蛋白質間の結合を調節することは、冠不全、脳虚血、及び血管不全(vascular insufficiency)のような虚血性疾患を治療、および血管形成抑制を通じた癌治療研究に有用である。
【0005】
CBPまたはp300蛋白質は、亜鉛イオン(Zn2+)結合因子を含むシステイン−/ヒスチジン−リッチ1(cystein-/histidine-rich 1, CH1)ドメインを有しており、この時、前記CH1ドメインは、HIF−1αのC−末端トランス活性ドメイン(C-terminal transactivation domain, C−TAD)と結合する(Kung, A.L.ら、Nature Medicine, 6: 1335-1340, 2000)。また、NMR研究を通じて、p300蛋白質の331−418番目のアミノ酸部位とHIF−1αの792−824番目のアミノ酸ペプチドの複合体構造、及びCBP蛋白質の345−439番目のアミノ酸部位とHIF−1αの776−826番目のアミノ酸ペプチドの複合体構造が明らかになった(Dames, S.A.ら、PNAS, 99: 5271-5276, 2002)。このような複合体構造によれば、CH1は、HIF−1αのC−末端ドメインの折り畳み構造のための骨格として作用するので、多様な疎水性及び極性相互作用によって安定化される。また、本発明では分析に要する資料が少量でよく、ペプチドを数mMの高濃度で使用するNMR分析とは違って、μM単位の低濃度でも充分に結合可能なHIF−1αのアミノ酸部位を使用する結合分析法を開発した。
【0006】
HIF−1依存性標的遺伝子の発現は、2種類の互いに異なる酸素依存性メカニズム、つまり、プロリン水酸化反応とアスパラギン水酸化反応により調節される。HIF−1αに、特異なプロリル水酸化酵素によるHIF−1αの酸素依存性ドメイン(oxygen-dependent domain, ODD)にあるプロリン残基の水酸化反応はHIF−1αの分解を誘導する反面、アスパラギンの水酸化反応は、HIF−1αのC−末端トランス活性ドメイン(C−TAD)とCBPまたはp300蛋白質間の結合を不活性化させ、HIF−1依存性標的遺伝子の発現を減少させる。
【0007】
初期に、HIF−1を阻害する因子として知られたHIF−1阻害因子(factor-inhibiting HIF-1, FIH−1)蛋白質(Mahon, P.C.ら、Genes Dev., 15: 2675-2686, 2001)は、その後、HIF−1αの調節に関与する酸素センサの特徴を有していることが明らかになった(Lando, D.ら、Genes Dev., 16: 1466-14, 2002)。つまり、HIF−1阻害因子(FIH−1)は、2−オキソグルタル酸及び鉄分依存性ジオキシゲナーゼ蛋白質(Safran, M.ら、J. Clin. Invest., 111: 779-783, 2003)であって、正常酸素状態では、HIF−1αのC−末端トランス活性ドメインにあるアスパラギン(Asn)−803を水酸化させ、HIF−1αとCBPまたはp300蛋白質間の結合及びHIFに関するトランス活性を阻害するものと知られている(Lando, D.ら、Science, 295: 858-861, 2002)。
【0008】
標的遺伝子に対するHIF−1αの転写的活性のために、アスパラギンの水酸化反応と共に、C−末端トランス活性ドメインにある他の残基の翻訳後修飾が、HIF−1αのこのような機能を微細に調節することに影響を与えると提示されている(Brahimi-Horn.ら、Cell, Signal., 17: 1-9, 2005)。HIF−1αの転写的活性調節のための代表的なメカニズムのうちの一つは、転写因子のリン酸化(Holmberg, C. I.ら、Trends Biochem. Sci., 27: 619-627, 2002)、つまり、正常酸素状態及び低酸素状態でのHIF−1αの直接的なリン酸化が報告されている(Brahimi-Horn, C.ら、Cellular Signalling, 17: 1-9, 2005)。
【0009】
また、HIF−1αのリン酸化は、それ自体の転写的活性を調節することが可能である。低酸素状態で誘導されたMAPK(mitogen-activated protein kinase)の活性はHIF−1αをリン酸化させることと提示されており、リン酸化されたHIF−1αはp300蛋白質との結合を増加させるが、それ自体の転写的活性との関連性はないと報告されている(Sang, N.ら、J. Biol. Chem., 278: 14013-14019, 2003)。しかし、HIF−1αを核内に蓄積するように誘導するリン酸化部位が、C−末端トランス活性ドメインから遠く離れた部位に存在することが明らかになった(Mylonis, I.ら、J. Biol. Chem., 281: 33095-33106, 2006)。これとは異なり、C−末端トランス活性ドメインにあるスレオニン(Thr)−796は、カゼインキナーゼ2(CK2)によってリン酸化される候補物質として報告されている(Mottet, D.ら、Int. J. Cancer, 117: 764-774, 2005)。HIF−1αのC−末端トランス活性ドメインの蛋白質合成後変形による転写的活性を示す資料が充分であるにもかかわらず、HIF−1αのC−末端トランス活性ドメインとp300またはCBP蛋白質間の結合において、このような変形の直接的な影響を示す明白な資料は有用であり得る。
【0010】
さらに、一酸化窒素(NO)は、細胞の種類及びNO濃度に依存的なHIF−1αの安定性を増加させたりあるいは減少させるものと知られており(Bilton, R. L.ら、Eur. J. Biochem., 270: 791-798, 2003)、HIF−1αのシステイン(Cys)−800残基のS−ニトロソ化は、HIF−1αとp300蛋白質間の結合を強化させてHIF−1αの転写的活性を増加させるという報告もあるが(Yasinska, I.M.ら、FEBS Lett., 549: 105-109, 2003)、いくつかの反対の結果も報告されている(Brahimi-Horn, C.ら、Cell, Signal., 17: 1-9, 2005)。
【0011】
他の方法としては、HIF−1αとCBPまたはp300蛋白質のうちの一つの蛋白質は簡単に検出可能な物質で標識し、他の一つの蛋白質は固体担体に固定させて、二つの蛋白質の結合を測定する方法がある。
【0012】
また他の方法としては、CBPまたはp300蛋白質とHIF−1αの結合を確認するために、HIF−1αの特定の部位を認識する抗体を利用した免疫共沈降に基づいた測定法がある。しかし、このような方法は大量の試料を要求し、その過程が複雑であり、実験所要時間も長いだけでなく、放射性同位元素を使用しなければならないなどの多くの短所を有している。
【0013】
これと共に、蛋白質間の直接的な結合を分析する代わり、間接的な方法、つまり、HIF−1αがCBPまたはp300蛋白質と結合した後、標的遺伝子の低酸素−反応因子(HRE)に結合して転写的活性を現わすということに着眼したリポーター分析法もある。一例として、Epo−ルシフェラーゼ(Epo-luciferase)を利用した測定方法がある(Kung, A. L.ら、Nature Medicine, 6: 1335-1340, 2000)。
【0014】
このような生化学的または免疫学的方法がや放射能を表示する方法は大量の試料が要求され、過程が複雑であり、実験時間が長く、放射線同位元素を使用しなければならないなどの多くの短所を有しているので、HIF−1αとCBPまたはp300蛋白質との結合を定量分析するより簡単な測定方法が要求されている。
【0015】
このような研究の一環として、放射線同位元素を使わずに短時間にHIF−1αとCBPまたはp300蛋白質間の結合を観察することができる96穴プレートを利用した分析法が開発された(Kung, A. L., et al, Cancer Cell, 6: 33-43, 2004)。このような分析法は、HIF−1αとCBPまたはp300蛋白質間の結合を阻害する化合物をスクリーニングすることに利用可能であるが、高価なアビジンがコーティングされたプレート、ユウロピウムが融合された抗−GST抗体、及び時間分解蛍光分光計を使用しなければならないという短所を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者らは、蛍光物質で標識されたHIF−1αC−末端ペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の蛋白質複合体が形成されたか否かを、蛍光偏光値の変化を測定して定量分析する方法を開発した。
【0017】
また、本発明者らは、HIF−1αC−末端トランス活性ドメイン(C−TAD)の蛋白質合成後変形(水酸化反応、S−ニトロソ化反応、及びリン酸化反応)の直接的な影響の調査や、またはHIF−1α−CBPまたはHIF−1α−p300蛋白質複合体の形成を阻害する抑制剤をスクリーニングに有用な方法を開発した。
【0018】
したがって、本発明の目的は、HIF−1αC−末端ペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の結合を定量分析する簡単な方法を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、前記方法を利用して、HIF−1αC−末端ペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の結合を阻害する抑制剤のスクリーニング方法を提供することにある。
【0020】
また、本発明の他の目的は、HIF−1αC−末端部位にあるアミノ酸配列中、CBPまたはp300蛋白質との結合に必要な少なくとも41−51個のアミノ酸を含む変形された蛍光物質で標識されたHIF−1αC−末端ペプチドを提供することにある。
【0021】
このような目的を達成するために、本発明は、HIF−1αC−末端ペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の結合を定量分析する方法を提供する。
【0022】
また他の側面より、本発明は、前記方法、つまり、蛍光偏光に基づいた結合分析法を利用したHIF−1αC−末端ペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の結合を阻害する抑制剤のスクリーニング方法を提供する。
【0023】
また他の側面より、本発明は、HIF−1αC−末端アミノ酸配列中、CBPまたはp300蛋白質との反応に必要な少なくとも41−51個のアミノ酸を含む合成されたHIF−1αC−末端ペプチド、より望ましくは、各々、F−HIF−1α−(776−826、配列番号3)及びF−HIF−1α−(786−826、配列番号4)に表記されたHIF−1αペプチドの776−826番目の残基及び786−826番目の残基を含むHIF−1αC−末端ペプチドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、
1)HIF−1α蛋白質のC−末端トランス活性ドメインから由来したペプチドに蛍光物質を結合させて、蛍光プローブを製造する段階;
2)前記蛍光プローブをCBPまたはp300蛋白質と反応させる段階;及び
3)前記2)段階で得られた反応物の蛍光偏光値を測定し、測定された蛍光偏光値の変化を分析するために、蛍光プローブ自体の蛍光偏光値と前記測定された蛍光偏光値とを比較する段階;
を含んで、HIF−1αとCBPまたはp300蛋白質間の結合を定量分析する方法を提供する。
【0025】
この定量分析方法において、前記1)段階の蛍光プローブは、HIF−1α(NCBI受入番号AAA50152)の全長アミノ酸配列内に連続的に存在する少なくとも41個のアミノ酸を有するペプチドを含み、この時、前記ペプチドは、配列番号4であるHIF−1α内に存在する786番目のアミノ酸乃至826番目のアミノ酸配列を必ず含み、前記ペプチドのN−末端にはアミノカプロン酸リンカーが連結されており、前記アミノカプロン酸リンカーの端部には蛍光物質が連結されたものであってもよい。
【0026】
これは、前記蛍光プローブ内にある前記ペプチドが41個のアミノ酸より短い場合、CBPまたはp300蛋白質に対する前記ペプチドの結合活性が完全に抑制され得るため、前記ペプチドは、41個またはHIF−1αの全長アミノ酸配列内に連続的に存在する41個以上のアミノ酸を有するものであることができる。さらに、前記ペプチドは、55個のアミノ酸より道場合、前記ペプチドのより大きい蛍光偏光値により、CBPまたはp300蛋白質に対する前記ペプチドの結合活性を蛍光偏光変化で測定できないので、望ましくは、前記ペプチドは、HIF−1αの全長アミノ酸配列内に連続的に存在する41乃至55個のアミノ酸を有するものであることができ、より望ましくは、配列番号3であるアミノ酸配列を有する51個のアミノ酸であることができ、最も望ましくは、配列番号4であるアミノ酸配列を有する41個のアミノ酸であることができる。
【0027】
また、前記プローブは、HIF−1αのアミノ酸配列上にある配列番号3であるアミノ酸配列を含むことができ、この時、前記ペプチドのN−末端にはアミノカプロン酸リンカーが連結されており、及び前記アミノカプロン酸リンカーの端部には蛍光物質が連結されてもよい。
【0028】
また、前記1)段階の蛍光プローブは、特に制限されているわけではないが、追加的に前記プローブは、前記ペプチドのN−末端にはアミノカプロン酸リンカー、及び蛍光物質、望ましくはFITC(フルオレセインイソチオシアネート)で標識された蛍光物質が連結されており、前記リンカーの端には、配列番号3または配列番号4であるペプチドが連結されていることが好ましい(表1)。
【0029】
前記定量分析方法において、前記リンカーが特に制限されているのではなく、できるだけリンカーの種類に関係なしでまたはリンカーなしで前記ペプチドに連結されることができ、これは蛍光物質で標識されたHIF−1αC−末端ペプチド、つまり、蛍光プローブと対象蛋白質間の結合によって誘導された蛍光強さの不要な変化を最少化することによって、蛍光偏光測定に用いてもよい。
【0030】
また、前記蛍光物質はフルオレセイン及びその類似体を含むことができるが、これに制限する必要はない。例えば、前記蛍光物質は、望ましくはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、テキサスレッド(TR)、及びテトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、フルオレセインカルボン酸(FCA)、フルオレセインチオウレア(FTH)、7−アセトキシクマリン−3−1、フルオレセイン−5−1、フルオレセイン−6−1、2’,7’−ジクロロフルオレセイン−5−1、ジヒドロテトラメチルローダミン−4−1、テトラメチルローダミン−5−1、及びテトラメチルローダミン−6−1からなる群より選択されたものであることができ、より望ましくは、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)であることができる。
【0031】
前記定量分析方法において、前記CBPまたはp300蛋白質は、特に制限されているのではなく、この時、前記CBP蛋白質は、望ましくは配列番号1である1−450番目のアミノ酸配列を含むことができ、及び前記p300蛋白質は、望ましくは配列番号2である1−221番目のアミノ酸配列を含むことができる。さらに、前記CBPまたはp300蛋白質は、各々、GenBank受入番号U85962(CBPコーディング配列)及びU01877(p300コーディング配列)である遺伝子上に存在するHIF−1αの結合部位を含む一部または全長アミノ酸配列を含みうる。
【0032】
本発明の好ましい具体例では、合成されたCBPまたはp300蛋白質を提供することができ、この時、前記蛋白質は、培養した細胞または培養培地から分離及び精製されたものであることができる。前記蛋白質の分離及び精製方法は特に制限されているのではなく、望ましくは、前記方法は透析、限外濾過、ゲル濾過、及びSDS−PAGEのような分子量の差に基づいた蛋白質分離方法、イオン−交換クロマトグラフィーのような電荷の差に基づいた蛋白質分離方法、及び逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)のような親水性の差に基づいた蛋白質分離方法からなる群より選択しうる。
【0033】
また、前記2)段階の反応は、望ましくは蛍光プローブをCBPまたはp300蛋白質と1:1(100nM:100nM)乃至1:30(100nM:3000nM)の範囲内で、より望ましくは、1:2(100nM:200nM)乃至1:10(100nM:1000nM)の範囲内で混合して、誘導することができる。
【0034】
前記定量分析方法において、前記3)段階の蛍光偏光測定は特に制限されているのではなく、望ましくは、蛍光偏光測定のための蛍光分光器またはウェルプレート基盤の蛍光検出器(Victor plate reader等)を利用することができ、この時、前記蛍光偏光値の変化は、2)段階で測定された反応物の蛍光偏光値から、蛍光プローブ自体の蛍光偏光値を差し引いて示すことができる。ここで、前記蛍光プローブはそれ自体の分子量が非常に小さいため、相対的に小さい蛍光偏光値を有する。しかし、前記蛍光HIF−1αペプチドプローブがより大きい分子量を有するCBPまたはp300蛋白質と結合する場合、HIF−1α−CBPまたはHIF−1α−p300複合体の蛍光偏光値は著しく増加する。
【0035】
結果として、HIF−1αとCBPまたはp300蛋白質間の結合の要否は、前記蛍光プローブをCBPまたはp300蛋白質と混合する前と混合した後に測定された蛍光偏光値の変化を通じて分析することができる。より詳しくは、前記蛍光偏光値の変化から、前記蛍光偏光値の差が陽性(+)である時に複合体が形成されることを判断することができる。
【0036】
同時に、本発明は、
1)HIF−1α蛋白質のC−末端トランス活性ドメインから由来したペプチドに蛍光物質を結合させて製造した蛍光プローブと、CBPまたはp300蛋白質を含む反応液に阻害剤候補物質を添加し、
2)前記反応液に阻害剤候補物質を添加する前と添加した後の蛍光偏光値の変化を測定し;及び
3)前記阻害剤候補物質の添加後に測定された前記反応液の蛍光偏光値が減少すれば、前記候補物質を抑制剤として決定する段階;を含む、HIF−1αとCBPまたはp300蛋白質間の結合を阻害する抑制剤のスクリーニング方法を提供する。
【0037】
前記スクリーニング方法において、前記1)段階の蛍光プローブは、HIF−1α(NCBI受入番号AAA50152)の全長アミノ酸配列内に連続的に存在する少なくとも41個のアミノ酸を有するペプチドを含み、この時、前記ペプチドは、配列番号4であるHIF−1α内に存在する786番目のアミノ酸乃至826番目のアミノ酸配列を必ず含み、前記ペプチドのN−末端にはアミノカプロン酸リンカーが連結されており、前記アミノカプロン酸リンカーの端部には蛍光物質を連結しうる。
【0038】
これは、前記蛍光プローブ内にあるペプチドが41個のアミノ酸より短い場合、CBPまたはp300蛋白質に対する前記ペプチドの結合活性が完全に抑制され得るため、前記ペプチドは、41個またはHIF−1αの全長アミノ酸配列内に連続的に存在する41個以上のアミノ酸を有することができる。さらに、前記ペプチドは、55個のアミノ酸より長い場合、前記ペプチドのより大きい蛍光偏光値により、CBPまたはp300蛋白質に対する前記ペプチドの結合活性を蛍光偏光変化で測定できないため、望ましくは、前記ペプチドは、HIF−1αの全長アミノ酸配列内に連続的に存在する41乃至55個のアミノ酸を有することができ、より望ましくは、配列番号3であるアミノ酸配列を有する51個のアミノ酸であることができ、最も望ましくは、配列番号4であるアミノ酸配列を有する41個のアミノ酸であることができる。
【0039】
また、前記プローブは、HIF−1αのアミノ酸配列上にある配列番号3であるアミノ酸配列を含むことができ、この時、前記ペプチドのN−末端にはアミノカプロン酸リンカーが連結されており、及び前記アミノカプロン酸リンカーの端部には蛍光物質を連結しうる。
【0040】
また、前記1)段階の蛍光プローブは特に制限されているのではないが、追加として前記プローブは、前記ペプチドのN−末端にはアミノカプロン酸リンカー及び蛍光物質、望ましくはFITCで標識された蛍光物質が連結されており、前記リンカーの端には、配列番号3または配列番号4であるペプチドが連結されているのが好ましい(表1)。
【0041】
このようなスクリーニング方法において、前記リンカーは特に制限されているのではなく、できるだけリンカーの種類に関係なしでまたはリンカーなしで前記ペプチドに連結することができ、これは蛍光物質で標識されたHIF−1αC−末端ペプチド、つまり、蛍光プローブと対象蛋白質間の結合によって誘導された蛍光強さの不要な変化を最少化することによって、蛍光偏光測定に用いられうる。
【0042】
また、前記蛍光物質は、フルオレセイン及びその類似体を含むこともできるが、これに制限されるわけではない。例えば、前記蛍光物質は、望ましくはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、テキサスレッド(TR)及びテトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、フルオレセインカルボン酸(FCA)、フルオレセインチオウレア(FTH)、7−アセトキシクマリン−3−1、フルオレセイン−5−1、フルオレセイン−6−1、2’,7’−ジクロロフルオレセイン−5−1、ジヒドロテトラメチルローダミン−4−1、テトラメチルローダミン−5−1、及びテトラメチルローダミン−6−1からなる群より選択されることができ、より望ましくは、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)でありうる。
【0043】
前記スクリーニング方法において、前記CBPまたはp300蛋白質は特に制限されているのではなく、この時、前記CBP蛋白質は、望ましくは配列番号1である1−450番目のアミノ酸配列を含むことができ、及び前記p300蛋白質は、望ましくは配列番号2である1−221番目のアミノ酸配列を含みうる。さらに、前記CBPまたはp300蛋白質は、各々、GenBank 受入番号U85962(CBPコーディング配列)及びU01877(p300コーディング配列)である遺伝子上に存在するHIF−1αの結合部位を含む一部または全長アミノ酸配列を含みうる。
【0044】
また、前記2)段階の阻害剤候補物質は特に制限されているのではなく、望ましくは、前記候補物質は、前記蛍光プローブとCBPまたはp300蛋白質間の結合を競合阻害する抗体、ペプチド、オリゴヌクレオチド、及び天然及び合成化合物からなる群より選択されうる。
【0045】
これに、本発明は、
a)蛍光物質をHIF−1α蛋白質のC−末端トランス活性ドメイン(C−TAD)から由来したペプチドに結合させて、蛍光プローブを製造し、前記蛍光プローブをCBPまたはp300蛋白質と反応させて、これらの蛍光偏光値を測定する段階;
b)前記蛍光プローブに、HIF−1阻害因子(FIH−1)、S−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン(SNAP)、及びカゼインキナーゼ2(CK2)からなる群より選択されたいずれか一つの酵素を処理し、前記酵素処理されたプローブをCBPまたはp300蛋白質と反応させて、これらの蛍光偏光値を測定する段階;及び
c)CBPまたはp300蛋白質との結合相で、HIF−1αC−末端トランス活性ドメインの蛋白質合成後の変形の影響を分析するために、前記a)及びb)段階で測定された蛍光偏光値を比較する段階;
を含む、定量分析する方法を提供する。
【発明の効果】
【0046】
結果として、本発明による作用が、たとえp300蛋白質との結合活性において、蛋白質合成後の変形の影響がHIF−1α−p300蛋白質結合の直接的な調節よりも、いくつかの他のメカニズムを通じてHIF−1αに関する転写活性に影響を与えるものだとしても、このような効果において相反する問題の解決を援助することができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0048】
本発明の実用的であり好ましい実施例は、本発明に関する当業者が本発明を実施できるように、より明確にするためのものであり、これは本発明の精神及び範囲内で変形及び向上させうる。
【0049】
(実施例1)
CBP及びp300蛋白質の分離及び発現
本発明の実施例によるCBP及びp300蛋白質の発現のために、配列番号1であるアミノ酸配列を含む切片化された人間CBP(1−450番目のアミノ酸)及び配列番号2であるアミノ酸配列を含む切片化されたp300(1−221番目のアミノ酸)を、各々、pGEX−KG(GE Healthcare Life Sciences, 米国)及びpGEX−4T−1(Amersham Biosciences, 米国)ベクターにクローニングした後、大腸菌BL21(Novagen)に形質転換させた。
【0050】
前記形質転換された細胞を、50μg/mlのアンピシリンが添加されたLuria-Bertani(LB)液体培地に接種して、吸光度(O.D)が0.6程度になるまで37℃で培養した後、蛋白質の発現を誘導するために、0.5mMのIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトシド)を添加して、18℃で15時間培養した。遠心分離した後、前記細胞にPMSF(フッ化フェニルメチルスルホニル)及びリゾチームを、最終濃度が各々0.2mM及び1mg/mlになるように添加した10mMのリン酸塩緩衝溶液(PBS、pH7.4;110mMNaCl、1mM DTT)に懸濁させ、4℃で粉砕した。細胞抽出物に2%のトリトンX−100を添加してよく混合した後、10分間氷に入れた後、13,000rpmで30分間遠心分離した。分離された上清に1mMのDTTを添加して、グルタチオン−セファロース(Amersham Biosciences, 米国)と混合した後、4℃で2時間攪拌し、前記反応混合物に10倍体積のリン酸塩緩衝溶液を添加して5分間遠心分離した後、上清を除去した。このような過程を3回連続で繰り返し、遠心分離して上清を除去した後、前記処理されたセファロースビードをBio-Spin(登録商標)の使い捨てクロマトグラフィーカラム(Bio-Rad)に添加した。前記ビードに非特異的に結合された不要な物質を除去するために、5mlのリン酸塩緩衝溶液で濾過させ、2mlの1MNaCl溶液で濾過させた。
【0051】
最後に、10mMのグルタチオン−セファロースを利用して、前記ビードからGST−CBP及びGST−p300蛋白質を収得した後、SDS−PAGEを利用してその純度を確認し、ブラッドフォード分析法(Bio-Red)を利用して、定量化した。
【0052】
(実施例2)
蛍光物質で標識されたHIF−1αペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の結合分析
2−1.蛍光物質で標識されたHIF−1αペプチド
人間HIF−1αのC−末端トランス活性ドメイン(C−TAD)を含む蛍光物質で標識された4個のHIF−1αペプチドは、N−末端にアミノカプロン酸リンカー(Anygen、Kwangju、韓国)と共にフルオレセインイソチオシアネート(FITC)を連結して合成し、この時776−826、786−826、776−814、及び788−822番目のアミノ酸残基を含む前記合成された4個のペプチドは、各々、F−HIF−1α(776−826、配列番号3)、F−HIF−1α(786−826、配列番号4)、F−HIF−1α(776−814、配列番号5)、及びF−HIF−1α(788−822、配列番号6)に記載した(表1)。
【表1】
【0053】
変異ペプチドを製造するために、PCR反応により調製したHIF−1α(786−826、配列番号4)の単一変異生成物をpGEX−2T−1(Amersham Biosciences,米国)ベクターにクローニングした後、大腸菌BL21(DE3)で過発現させた。過発現されたGST融合蛋白質をグルタチオ−セファロース(Amersham Biosciences,米国)を利用して精製した後、トロンビンを処理してGSTを除去し、得られたペプチドを逆相HPLCを利用して精製し、MALDI−TOF質量分析法でその質量を確認した。
【0054】
前記HIF−1αペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の結合親和力及びその特徴は、前記実施例1の方法によって製造された合成ペプチドとCBPまたはp300蛋白質間の結合による蛋白質−リガンド複合体の形成によって変化された蛍光偏光値を測定することによって分析される。前記蛍光偏光値は、蛍光分光器(Perkin-Elmer)で測定し、この時、スリット幅は5nm、総測定時間(integration time)は5秒に設定した。前記結合反応において、EBC溶液(50mMのTris;120mMのNaCl;pH8.0、0.25%NonidetP(NP)−40)が使用された。
【0055】
2−2.蛍光物質で標識されたHIF−1αペプチドとZn2+処理または未処理されたCBPまたはp300蛋白質間の結合分析
CBPまたはp300蛋白質のシステイン−/ヒスチジン−リーチ1(CH1)ドメインは、Zn2+結合センターを含んでいるHIF−1αのC−末端トランス活性ドメイン(C−TAD)と結合するので、本発明の実施例では、CBPまたはp300蛋白質とHIF−1αから由来したペプチドとの結合において、前記CBPまたはp300蛋白質調製過程、つまり、細胞粉砕及び蛋白質溶出時に添加されたZn2+の重要性を最初に調査し、この時、前記CH1ドメインを含むGST−CBPまたはGST−p300蛋白質は、蛋白質調製過程時細胞粉砕または蛋白質溶出過程で、硫酸亜鉛(ZnSO4)を添加または添加せずに調製した。前記実施例1で調製したEBC溶液に800nMのCBPまたはp300蛋白質を添加した後、CBP添加溶液には100nMのF−HIF−1α(776−826、配列番号3)ペプチドを、及びp300添加溶液には100nMのF−HIF−1α(786−826、配列番号4)ペプチドを、各々25℃で混合し、その後蛍光偏光値を測定した。
【0056】
その結果、前記GST−CBP及びGST−p300を前記ペプチドと混合した場合には、蛍光偏光値が著しく増加し、この時、CBP−F−HIF−1α(776−826、配列番号3)及びp300−HIF−1α(786−826、配列番号4)複合体形成によって測定された蛍光偏光値は、各々、HIF−1α(776−826、配列番号3)及びHIF−1α(786−826、配列番号4)ペプチド自体の蛍光偏光値に比べて増加した(図1A及び1B)。しかし、CBPまたはp300蛋白質調製過程時の硫酸亜鉛(ZnSO4)の添加有無に応じた蛍光偏光値の変化は殆どなく、これは、前記HIF−1αペプチドとGST−CBPまたはGST−p300蛋白質のCH1ドメインとの複合体を形成するにおいて、前記大腸菌培養額内に充分な量のZn2+が存在していることを意味する。
【0057】
2−3.蛍光物質で標識されたHIF−1αと多様な濃度のCBPまたはp300蛋白質間の結合分析
HIF−1αC−末端トランス活性ドメイン内にある互いに異なる部位から由来した4個のペプチドと、CBPまたはp300蛋白質間の結合を比較するために、蛍光物質で標識されたHIF−1αペプチドと0−3000nMの多様な濃度を有するCBP蛋白質を、前記実施例2−2と同一な条件で反応させて、蛍光偏光値を測定した(図2A)。このようなペプチドはその大きさにより固有の蛍光偏光値を有しているので、前記蛋白質複合体の蛍光偏光値から前記ペプチド自体の蛍光偏光値を差し引いて、その変化を測定した。
【0058】
CBPの場合、CBPと混合されたHIF−1α(776−826、配列番号3)、及びHIF−1α(786−826、配列番号4)の蛍光偏光値は、GST−CBPの濃度が増加することに伴って各々増加し、場合によっては一定の安定値に到達した(図2A)。また、このような二つのペプチドの解離定数は、各々HIF−1α(776−826、配列番号3)に対しては195.7nMであり、HIF−1α(786−826、配列番号4)に対しては174.9nMであった。これとは異なり、HIF−1α(788−822、配列番号6)の蛍光偏光値は、前記二つのペプチドの蛍光偏光値に比べて遥かに増加せず、HIF−1α(776−814、配列番号5)の蛍光偏光値は3000nM以上のGST−CBP蛋白質濃度でも増加しなかった(図2A)。
【0059】
p300の場合、p300と混合されたHIF−1α(776−826、配列番号3)及びHIF−1α(786−826、配列番号4)の蛍光偏光値は、図2Aに示したものに類似しているように、GST−p300の濃度増加に伴って増加した(図2B)。このような二つのペプチドの解離定数は、各々、HIF−1α(776−826、配列番号3)に対しては157.3nMであり、HIF−1α(786−826、配列番号4)に対しては180.1nMであった。これとは異なり、HIF−1α(788−822、配列番号6)の蛍光偏光値は、前記二つのペプチドの蛍光偏光値に比べて遥かに増加せず、HIF−1α(776−814、配列番号5)の蛍光偏光値はGST−p300と共に培養する場合、いかなる増加もなかったが、これはp300との結合において、HIF−1αC−末端トランス活性ドメインのC−末端螺旋形が重要な役割を果たしていることを意味する。
【0060】
このような結果は、蛍光物質で標識されたHIF−1αペプチドを利用した簡単な蛍光偏光に基づいた測定法が、HIF−1αC−末端トランス活性ドメインから由来したペプチド断片とCBPまたはp300蛋白質間の結合活性を定量分析する可能性があることを意味する。
【0061】
(実施例3)蛍光偏光に基づいた分析法を利用したHIF−1αとp300蛋白質間の結合におけるHIF−1αの蛋白質合成後の変形(水酸化、ニトロソ化、及び水酸化)の影響
3−1.FIH−1による水酸化作用
HIF−1αのアスパラギン(Asn)−803相での水酸化反応は、HIF−1αによるCBPまたはp300蛋白質の補充を阻害させてHIF−1の転写的活性を抑制するため、本発明の実施例では、前記蛍光偏光に基づいた分析法を利用して、p300蛋白質との結合におけるHIF−1αペプチドの直接的な水酸化作用を調査した。まず、蛍光物質で標識されたHIF−1αペプチドを、HIF−1αの特定アスパラギン残基を水酸化させる酵素として知られたHIF−1阻害因子(HIF−1)で処理した後、前記HIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合を、蛍光偏光に基づいた分析法で測定した。前記FIH−1酵素は下記のような方法で分離及び精製した。
【0062】
つまり、全長人間FIH−1(1−349番目のアミノ酸;GenBank I.D.:AF395830)をpET28a(+)(Novagen)ベクターにクローニングし、大腸菌BL21(Novagen)に形質転換した。前記形質転換された菌株から過発現されたFIH−1蛋白質を、前記CBPまたはp300蛋白質の分離方法と同一に粉砕、懸濁、及び分離した。前記細胞抽出物を2%のトリトンX−100と混合して氷で10分間の反応させ、13,000rpmで30分間遠心分離した。これから得られた上清を、ニッケル−親和性アガローズ(Qiagen、米国)相で4℃、1時間攪拌し、リン酸塩緩衝溶液で2回洗浄した後、前記反応混合物を、Bio-Spin(登録商標)の使い捨てクロマトグラフィーカラム(Bio−Rad)積載した。最後に、300mMのイミダゾール溶液でヒスチジン−FIH−1を溶出し、前記精製された蛋白質はSDS−PAGEを利用してその純度を確認し、ブラッドフォード分析法(Bio-Red)で定量化した。
【0063】
前記アスパラギン残基の水酸化反応のために、400mMのアスコルブサン及び100μMのアルファ−ケトグルタレートを含む水酸化反応溶液(20mMTris−HCL、5mMKCl、1.5mMのMgCl2;pH7.5)に0.7μg/μLの再組み合わせHis−FIH−1を混合して、反応させた。室温で2時間反応させた後、前記反応混合物をZipTipC18(Millipore、米国)に通過させて塩を除去し、アセトニトリル/水に0.1%TFA(1:1vol/vol)を含んでいるアルファ−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸を添加して、溶出した。前記溶出したペプチド溶液をMALDIサンプルプレートに移した後、ボイジャー(Voyager)分析器を利用してMALDI−TOF測定を行った。結合分析のために、前記水酸化されたペプチドを逆相HPLCに精製した。
【0064】
水酸化反応の要否を調査するために、まず、HIF−1α(786−826、配列番号4)ペプチドに再組み合わせHis−FIH−1蛋白質を処理した後、MALDI−TOF分析を行い、この時、前記ペプチドは、FIH−1の完全な活性(図2B)だけでなく、p300結合活性のための残基を含んでいる。FIH−1によるF−HIF−1α(786−826、配列番号4)の水酸化反応結果を図3Aに示した。
【0065】
図3Aに示したように、His−FIH−1を処理したペプチドは、対照群(His−FIH−1を処理していないペプチド)に比べて〜16ダルトン程度その分子量が増加したが(図3A)、これは前記アスパラギンが再組み合わせHis−FIH−1によって水酸化されたことを意味する。前記水酸化されたF−HIF−1α(786−826、配列番号4)ペプチドを逆相HPLCに精製し、GST−p300との結合における蛍光偏光変化をモニタリングすることに利用したが、これは前記反応混合物に含まれているアスコルブサン及びアルファ−ケトグルタレートがHIF−1α−p300結合及び蛍光偏光測定を妨害し得るためである。前記水酸化されたペプチドの蛍光偏光変化を図3Bに示した。
【0066】
図3Bに示したように、水酸化されたペプチドによる蛍光偏光変化数値は、単にp300蛋白質濃度が増加することに伴って弱いながらも増加したが、これは変形していないペプチドに比べて遥かに増加していない(図3B)。したがって、このような結果は、FIH−1によるHIF−1αのアスパラギン水酸化がたとえ完全ではなくても、p300との結合活性を抑制する可能性があることを意味する。
【0067】
3−2.SNAPによるS−ニトロソ化作用
HIF−1αのシステイン(Cys)−800相でのS−ニトロソ化反応は、p300蛋白質の補充及びHIF−1α自体の転写的活性を増加させるものと報告された反面、一酸化窒素(NO)はHIF−1αの安定性を増加または減少させるものと報告された(Ema, M.ら、EMBO J., 18: 1905-1914, 1999;Yasinska, I.M.とSumbayev, V.V.、FEBS Lett., 549: 105-109, 2003;Hagen, T.ら、Science, 302: 1975-1978, 2003)。本発明の実施例によれば、HIF−1αとp300蛋白質との結合相で、HIF−1α内にあるCys−800のS−ニトロソ化作用が確認された。また、ニトロソチオール結合は、レーザー照射下で、それ自体の光誘導分解のため、MALDI−TOF分析で検出できなかった。したがって、前記ニトロソチオール結合の形成は、S−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン(SNAP)処理されたF−HIF−1α(786−826、配列番号4)の存在下ではは〜320nmの吸光度で検出されたが、SNAPが処理されていないペプチドでは検出されず(図4A)、この時、前記ペプチドの含有量は前記蛍光吸光度のピークに標準化させた。
【0068】
同時に、本発明では、S−ニトロソ化されたペプチドを検出及び精製するために、既に公知された方法を若干変形させたビオチン化法を利用した(Jaffery, S.R.ら、Na. Cell Biol., 3: 193-197, 2001)。つまり、スルフヒドリル基をビオチン化するために、S−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン(SNAP)を処理または処理していないF−HIF−1α(786−826、配列番号4)と、合成ビオチン化試料を反応させた。F−HIF−1α(786−826、配列番号4)は単に一つのシステイン(Cys)−800を有しているため、S−ニトロソ化によって変形された前記ペプチドはビオチン化されることができず、反面、SANPを処理していないペプチド内で遊離されたシステインはビオチン化される。このようなビオチン化方法は、ストレプトアビジン添加時に蛍光偏光の変化を測定することができ、また、逆相HPLCを利用して測定時、S−ニトロ消化されて変形していないペプチドはよく分離しないが、S−ニトロ消化されてビオチン化されたペプチドは簡単に分離するので、S−ニトロソ化されたペプチドを分離することに容易である。
【0069】
より具体的には、システイン(Cys)の代わりに、アラニン(Ala)を含んでいる30μMのF−HIF−1α−(786−826、配列番号4)及びF−HIF−1α(786−826)[C800A]を、各々、2mMのSNAPを含む30℃の50mMTris(pH8.0)溶液で30分間反応させた。反応していないSNAPを、セファデックスG−15レジンを利用して除去した後、前記ペプチドのS−ニトロソ化反応を、前記ニトロソチオール一部の吸光度を測定することによって分光学的に分析した(Jaffery, S.R.ら、Nat. Cell Biol., 3: 193-197, 2001)。S−ニトロソ化の要否を確認するために、前記で調製した300μMのビオチン化試料をSNAP処理した後、変形していないシステインを標識する際利用した。室温で2時間反応させた後、ビオチン化を、スクレプタビジン添加による蛍光偏光変化に測定した。また、結合分析のために、逆相HPLC上に存在するビオチン化デンペプチドから、前記S−ニトロソ化されたペプチドを分離して、収得した。
【0070】
S−ニトロソ化の定量分析のためのビオチン化試料を調製するために、まず、ビオチン−システイン−アミノ基(NH2)を、固形状ペプチド合成プロトコルに従って、25μmolのFmoc−システインを利用して Rink Amide(登録商標)レジン(NovaBiochem)相で合成した。12mgの1,11−ビス−マレイミドトリエチレングリコール(Pierce)を1.5mlのビオチン−システイン−アミノ基(4mg)溶液を含むPBS/DMSO(1:2v/v)に添加した。前記混合物を室温で夜通しで混合した後、前記ビオチン化試料を逆相HPLCを利用して精製し、MALDI−TOF質量分析器でその質量を測定した。前記ビオチン化試料を処理したペプチドの蛍光偏光値を図4Bに示した。
【0071】
図4Bに示したように、ストレプトアビジンを添加した場合には、前記ビオチン化デンペプチドの蛍光偏光値は増加したが、前記S−ニトロソ化されたペプチドの蛍光偏光値は変わらなかったが、これは、前記S−ニトロソ化されたペプチドは、ビオチン化試料を処理した時にはビオチン化できないからである。さらに、システイン(Cys)−800がアラニン(Ala)で置換された変異F−HIF−1α(786−826)[C800A]ペプチドは、SNAPを処理し、ビオチン化を行った場合にも蛍光偏光値が変わらなかった(図4B)。
【0072】
F−HIF−1α(786−826、配列番号4)内にあるシステイン(Cys)−800のS−ニトロソ化反応を確認した後、このような反応がp300蛋白質との結合にいかなる影響を示すかを分析した。S−ニトロソ化された場合、GST−p300蛋白質が未処理されたF−HIF−1α(786−826、配列番号4)、及びGST−p300と混合されたF−HIF−1α(786−826)[C800A]の蛍光偏光を測定した時、F−HIF−1α(786−826)[C800A]及び未処理されたF−HIF−1α(786−826、配列番号4)が全て類似に濃度−依存的な結合様相を示したが、S−ニトロソ化されたF−HIF−1α(786−826、配列番号4)は、p300蛋白質の濃度増加に伴って多少増加した(図4C)。
【0073】
このような結果は、たとえ一酸化窒素(NO)がプロリルヒドロキシラーゼに依存してHIF−1αの分解を誘導すると提案されているが(Hagen, T.ら、Science, 302: 1975-1978, 2003)、HIF−1αのS−ニトロソ化反応それ自体は、p300蛋白質との結合を著しく阻害し、減少したHIF−1αの安定性に直接的なメカニズムで作用する可能性があることを意味する。
【0074】
3−3.キナーゼによるリン酸化作用
HIF−1α内にあるスレオニン(Thr)−796のリン酸化反応はHIF−1α−CBP結合を増加させることと報告されたが(Gradin, K.ら、J. Biol. Chem., 277: 23508-23514, 2002)、HIF−1αのリン酸化部位はC−末端トランス活性ドメイン(C−TAD)から遠く離れている(Mylonis, I.ら、J. Biol. Chem., 281: 33095-33106, 2006)。したがって、本発明の実施例では、直接的な結合分析法を利用して、p300蛋白質との結合におけるF−HIF−1α(786−826、配列番号4)ペプチドのリン酸化作用を調査した。まだ、HIF−1αのスレオニン(Thr)−796をリン酸化させるプロテインキナーゼは確認されていないため、低酸素状態(H)及び正常酸素状態(N)下で培養したHeLa細胞から得られたキナーゼ分画物を、p300蛋白質に結合するF−HIF−1α(786−826、配列番号4)のリン酸化反応を分析する際に利用した。
【0075】
より具体的には、低酸素状態(H)または正常酸素状態(N)下で培養した人間HeLa細胞を受取し、均質化溶液(50mMPIPES、2mM DTT、プロテアーゼ阻害剤カクテル、pH7.0)で懸濁させ、超音波で前記細胞を粉砕した。前記細胞粉砕物からキナーゼ分画物を収得するために、まず、0.5M NaOHで膨らむようにしたセルロースリン酸塩(Whatman)を焼結ガラスフィルターを有する開口カラムに入れて、pHが3になるまで0.5MのHClを添加し、4℃、0.5M HEPES溶液で洗浄した。同時に、前記細胞粉砕物を洗浄溶液(0.5M HEPES、0.1M NaCl、pH7.5)で予め−水平化させたカラムに積載した。結合していない物質を前記洗浄溶液で洗浄して除去した後、結合された蛋白質を溶出溶液(0.5M HEPES、0.45M NaCl、pH7.5)で溶出し、ブラッドフォード法を利用して、定量化した。
【0076】
リン酸化反応のために、基質としては、3μMのF−HIF1α−(786−826、配列番号4)を利用し、100μMの[γ−32P]ATPまたは同位元素で標識されないATPを含む50μLのキナーゼ反応溶液(25mMのHEPES、20mMのMgCl2、2mMのDTT、0.1mMのNa3VO4、pH7.5)内に正常酸素状態または低酸素状態のキナーゼ(40μg)、またはCK2(500ユニット;New England Biolabs, Beverly、米国)を混合して、反応させた。結合分析のために、[γ−32P]ATPを含んでいない前記リン酸化された生成物を室温で夜通しで反応させた後、逆相HPLCで精製した。正常酸素状態(N)または低酸素状態(H)のキナーゼ分画物による前記F−HIF−1α(786−826、配列番号4)ペプチドのリン酸化反応結果を図5Aに示した。
【0077】
図5Aに示したように、正常酸素状態(N)または低酸素状態(H)のキナーゼ分画物で処理した前記ペプチドの放射能は、対照群(キナーゼ処理していないペプチド)に比べて著しく増加した(図5A)。
【0078】
また、正常酸素状態(N)または低酸素状態(H)のキナーゼ分画物で処理及び逆相HPLCに精製された前記ペプチドは、前記酵素で処理していないペプチドに類似に、GST−p300蛋白質と反応時、蛍光偏光が増加した(図5B)。同時に、前記ペプチド内に存在するスレオニン(Thr)−796は固有なCK2リン酸化部位を有しているので(Mottet, D.ら、Int. J. Cancer, 117: 764-774, 2005)、前記F−HIF−1α−(786−826、配列番号4)ペプチドは、CK2によってリン酸化される(図5C)。前記精製されたCK2によってリン酸化されたペプチドの蛍光偏光は、前記酵素で処理されていないがペプチドの蛍光偏光と比較すると、類似なp300蛋白質結合様相を示した(図5D)。
【0079】
したがって、このような結果は、HIF−1α内にあるC−末端トランス活性ドメイン(C−TAD)のリン酸化反応はHIF−1α−p300結合にいかなる影響度与えず、リン酸化反応による前記増加された転写的活性は、他のメカニズムが関連していることを意味する(Brahimi-Horn, C.ら、Cell. Signal., 17: 1-9, 2005)。
【0080】
3−4.競合的結合分析
p300蛋白質との結合における、HIF−1αペプチドのスレオニン(Thr)−796、システイン(Cys)−800、及びアスパラギン(Asn)−803残基の重要度を比較するために、本発明の実施例では、簡単な変異ペプチドを利用して分析する蛍光偏光に基づいた競合的抑制分析法を行った。前記変異ペプチドは下記のような方法で調製した。
【0081】
つまり、人間HIF−1α−(786−826、配列番号4)ペプチド及びPCRによって調製したその単一変異生成物をpGEX−2T−1(Amersham Biosciences)ベクターにクローニングした後、大腸菌BL21(DE3)で過発現させた。過発現されたGST融合蛋白質をグルタチオ−セファロース(Amersham Biosciences)を利用して精製した後、トロンビンを処理してGSTを除去し、得られたペプチドを逆相HPLCを利用して精製し、MALDI−TOF質量分析法でその質量を確認した。HIF−1α−p300蛋白質結合相で点突然変異を有するHIF−1α−(786−826、配列番号4)ペプチドによる競合的抑制結果を図6に示した。
【0082】
図6に示したように、多様な濃度の自然型ペプチド及び単一変異ペプチドを含んでいるGST−p300とF−HIF−1α−(786−826、配列番号4)の混合物の蛍光偏光において、HIF−1αの786−826番目の残基を有する前記自然型ペプチドは、p300蛋白質との結合でF−HIF−1α−(786−826、配列番号4)ペプチドと効果的に競合したが(318.6nMのKi)、前記C800S辺がペプチドは抑制剤として作用しなかった(3592.3nMのKi)(図6)。このような結果は、HIF−1α内にあるシステイン(Cys)−800を、親水性を帯びたセリン(Ser)またはアスパルト酸(Asp)で置換する場合はp300蛋白質との結合を妨害するが、疎水性を帯びたアラニン(Ala)またはバリン(Val)で置換すると、p300蛋白質との結合を妨害しないという以前の研究報告と一脈相通ずることであって、これはまた、F−HIF−1α(786−826)[C800A]とp300蛋白質間の結合でも観察された(図4C)。
【0083】
これとは異なり、T796D及びN803A変異ペプチドは、p300蛋白質との結合において、前記自然型ペプチドに比べてはその抑制の程度はそれほどでないが、F−HIF−1α−(786−826、配列番号4)を競合的に抑制した(図6)。このような結果は、アスパラギン(Asn)−803をアラニン(Ala)で置換した変異ペプチドは、p300蛋白質との結合においてその効果が殆どないが、FIH−1による水酸化反応は抑制しており、また、スレオニン(Thr)−796のリン酸化反応は少なくともp300蛋白質結合で重要な役割を果たしていないことを意味する。
【0084】
前記で説明された実施例は、単に本発明の原理を適用した例に過ぎない。多くの変形と選択的な実施例は本発明の精神及び範囲を越えない限り自由に変形されることができ、添付の特許請求の範囲はこのような変形及び整列と一致する。したがって、本発明が図面から見られるように、特により実用的であり好ましい実施例として見なされる場合、これと関連してより詳しく説明する際、請求の範囲で説明する本発明の原理及び概念を越えずに、当業系の普通の熟練者によって多様な変形が行われることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1A】蛍光物質で標識されたHIF−1αペプチドとCBP蛋白質間の結合における、CBP蛋白質の調製時に添加されたZn2+の作用を示すグラフであって、この時使用されたペプチドはF−HIF−1α(776−826、配列番号3)であり、測定された値は、3回を独立に繰り返して得られた蛍光偏光値を平均±標準偏差に示したものである。
【図1B】蛍光物質で標識されたHIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合における、p300蛋白質の調製時に添加されたZn2+の作用を示すグラフであって、この時使用されたペプチドはF−HIF−1α(786−826、配列番号4)であり、測定された値は、3回を独立に繰り返して得られた蛍光偏光値を平均±標準偏差に示したものである。
【図2】図2は、蛍光物質で標識された長さの多様な4個のHIF−1αペプチドとCBP(図2A)またはp300(図2B)蛋白質間の結合による蛍光偏光値の変化を示すグラフであって、この時、(■)、(□)、(●)、及び(○)は、各々、F−HIF−1α(776−826、配列番号3)、F−HIF−1α(786−826、配列番号4)、F−HIF−1α(788−822、配列番号6)、及びF−HIF−1α(776−814、配列番号5)ペプチドを示したものである。また、蛍光偏光値の変化(△FP)は、CBPまたはp300蛋白質の不在下で測定された前記蛍光物質で標識されたペプチドの蛍光偏光値を差し引いて示したものである。
【図3A】図3は、HIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合における、HIF−1αペプチドのアスパラギンの水酸化作用を示したものであって、図3Aは、HIF−1阻害因子(FIH−1)酵素を処理または処理していないF−HIF−1α(786−826、配列番号4)ペプチドのMALDI−TOF分析結果を示したものである。
【図3B】図3は、HIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合における、HIF−1αペプチドのアスパラギンの水酸化作用を示したものであって、図3Bは、前記反応後、逆相HPLCによって精製された、水酸化されたペプチド(●)及び酵素処理していない対照群ペプチド(○)を示したものである。
【図4A】図4は、HIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合における、HIF−1αペプチドのシステイン(Cys)−800のS−ニトロソ化の作用を示したものであって、図4Aは、SNAPを処理したペプチド(実線)または処理していないペプチド(点線)の吸光度を示したものである。
【図4B】図4は、HIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合における、HIF−1αペプチドのシステイン(Cys)−800のS−ニトロソ化の作用を示したものであって、図4Bは、SNAPで処理または処理していない自然型ペプチド(WT)及びシステイン(Cys)がアラニン(Ala)で置換されたF−HIF−1α(786−826)[C800A]ペプチドの蛍光偏光値の変化を示したものである。
【図4C】図4は、HIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合における、HIF−1αペプチドのシステイン(Cys)−800のS−ニトロソ化の作用を示したものであって、図4Cは、(●)、F−HIF−1α−(786−826、配列番号4)ペプチド;(■)、S−ニトロソ化されたF−HIF−1α(786−826、配列番号4)ペプチド;及び(▲)、F−HIF−1α(786−826)[C800A]ペプチドとp300蛋白質間の結合による蛍光偏光値の変化を各々示したものである。
【図5A】図5は、HIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合における、HIF−1αペプチドのリン酸化作用を示したものであって、図5Aは、正常酸素状態(N)で分離したキナーゼ分画物または低酸素状態(H)で分離したキナーゼ分画物と反応させたF−HIF−1α(786−826、配列番号4)ペプチドのリン酸化数値を示したものであり、放射線分析法で測定したものである。
【図5B】図5は、HIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合における、HIF−1αペプチドのリン酸化作用を示したものであって、図5Bは、p300蛋白質を処理または処理していない前記ペプチドの結合活性を示したものであり、ここで結合活性は、蛍光偏光分析で測定したものである。
【図5C】図5は、HIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合における、HIF−1αペプチドのリン酸化作用を示したものであって、図5Cは、CK2処理によるHIF−1αペプチドのリン酸化数値を示したものであり、放射線分析法で測定したものである。
【図5D】図5は、HIF−1αペプチドとp300蛋白質間の結合における、HIF−1αペプチドのリン酸化作用を示したものであって、図5Dは、CK2がまだ処理されていないHIF−1αペプチド(●)またはリン酸化されたHIF−1αペプチド(○)の結合活性を示したものであり、ここで結合活性は、蛍光偏光分析で測定したものである。
【図6】図6は、F−HIF−1α−p300反応における、F−HIF−1αペプチドの点突然変異による競合的抑制活性を示したものであって、この時(●)、(■)、(○)、及び(□)は、各々、野生型、T79D、N803A、及びC800SHIF−1α(786−826)ペプチドを示したものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)HIF−1α蛋白質のC−末端トランス活性ドメインから由来したペプチドに蛍光物質を結合させて蛍光プローブを製造する段階;
2)前記蛍光プローブをCBPまたはp300蛋白質と反応させる段階;及び
3)前記2)段階で得られた反応物の蛍光偏光値を測定し、測定された蛍光偏光値の変化を分析するために、蛍光プローブ自体の蛍光偏光値と前記測定された蛍光偏光値とを比較する段階;
を含む、HIF−1αとCBPまたはp300蛋白質間結合の定量分析方法。
【請求項2】
前記蛍光プローブは、HIF−1α(NCBI受入番号AAA50152)の全長アミノ酸配列内に連続的に存在する少なくとも41個のアミノ酸を有するペプチドを含み、この時、前記ペプチドは、配列番号4であるHIF−1α内に存在する786番目のアミノ酸乃至826番目のアミノ酸配列を必ず含み、前記ペプチドのN−末端にはアミノカプロン酸リンカーが連結されており、前記アミノカプロン酸リンカーの端部には蛍光物質が連結されている、請求項1に記載の定量分析方法。
【請求項3】
前記蛍光プローブは、配列番号3であるアミノ酸配列を有するペプチドを含むものである、請求項2に記載の定量分析方法。
【請求項4】
前記CBPは、配列番号1であるアミノ酸配列を含むものである、請求項1に記載の定量分析方法。
【請求項5】
前記p300蛋白質は、配列番号2であるアミノ酸配列を含むものである、請求項1に記載の定量分析方法。
【請求項6】
前記蛍光物質は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、テキサスレッド(TR)及びテトラ−メチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、フルオレセインカルボン酸(FCA)、フルオレセインチオウレア(FTH)、7−アセトキシクマリン−3−1、フルオレセイン−5−1、フルオレセイン−6−1、2’,7’−ジクロロフルオレセイン−5−1、ジヒドロテトラメチルローダミン−4−1、テトラメチルローダミン−5−1、及びテトラメチルローダミン−6−1からなる群より選択された蛍光物質を含むものである、請求項1に記載の定量分析方法。
【請求項7】
前記反応は、蛍光プローブをCBPまたはp300蛋白質と1:2(100nM:200nM)乃至1:10(100nM:1000nM)の範囲内で混合して、誘導する、請求項1に記載の定量分析方法。
【請求項8】
1)HIF−1α蛋白質のC−末端トランス活性ドメインから由来したペプチドに蛍光物質を結合させて製造した蛍光プローブと、CBPまたはp300蛋白質を含む反応液に阻害剤候補物質を添加する段階;
2)前記反応液に阻害剤候補物質を添加する前と添加した後の蛍光偏光値の変化を測定する段階;及び
3)前記阻害剤候補物質の添加後に測定された前記反応液の蛍光偏光値が減少すれば、前記候補物質を抑制剤として決定する段階;
を含む、HIF−1αとCBPまたはp300蛋白質間の結合を阻害する抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項9】
前記蛍光プローブは、HIF−1α(NCBI受入番号AAA50152)の全長アミノ酸配列内に連続的に存在する少なくとも41個のアミノ酸を有するペプチドを含み、この時、前記ペプチドは、配列番号4であるHIF−1α内に存在する786番目のアミノ酸乃至826番目のアミノ酸配列を必ず含み、前記ペプチドのN−末端にはアミノカプロン酸リンカーが連結されており、前記アミノカプロン酸リンカーの端部には蛍光物質が連結されている、請求項8に記載の抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項10】
前記蛍光プローブは、配列番号3であるアミノ酸配列を有するペプチドを含むものである、請求項9に記載の抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項11】
前記CBPは、配列番号1であるアミノ酸配列を含むものである、請求項8に記載の抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項12】
前記p300蛋白質は、配列番号2であるアミノ酸配列を含むものである、請求項8に記載の抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項13】
前記方法は、
a)HIF−1α蛋白質のC−末端トランス活性ドメインに蛍光物質を結合させて蛍光プローブを製造し、前記蛍光プローブをCBPまたはp300蛋白質と反応させて、これらの蛍光偏光値を測定する段階;
b)前記蛍光プローブに、HIF−1阻害因子(FIH−1)、S−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン(SNAP)、及びカゼインキナーゼ2(CK2)からなる群より選択されたいずれか一つの酵素を処理し、前記酵素処理されたプローブをCBPまたはp300蛋白質と反応させて、これらの蛍光偏光値を測定する段階;及び
c)CBPまたはp300蛋白質との結合相で、HIF−1αC−末端トランス活性ドメインの蛋白質合成後の変形の影響を分析するために、前記a)及びb)段階で測定された蛍光偏光値を比較する段階;
を含む、請求項1に記載の定量分析方法。
【請求項1】
1)HIF−1α蛋白質のC−末端トランス活性ドメインから由来したペプチドに蛍光物質を結合させて蛍光プローブを製造する段階;
2)前記蛍光プローブをCBPまたはp300蛋白質と反応させる段階;及び
3)前記2)段階で得られた反応物の蛍光偏光値を測定し、測定された蛍光偏光値の変化を分析するために、蛍光プローブ自体の蛍光偏光値と前記測定された蛍光偏光値とを比較する段階;
を含む、HIF−1αとCBPまたはp300蛋白質間結合の定量分析方法。
【請求項2】
前記蛍光プローブは、HIF−1α(NCBI受入番号AAA50152)の全長アミノ酸配列内に連続的に存在する少なくとも41個のアミノ酸を有するペプチドを含み、この時、前記ペプチドは、配列番号4であるHIF−1α内に存在する786番目のアミノ酸乃至826番目のアミノ酸配列を必ず含み、前記ペプチドのN−末端にはアミノカプロン酸リンカーが連結されており、前記アミノカプロン酸リンカーの端部には蛍光物質が連結されている、請求項1に記載の定量分析方法。
【請求項3】
前記蛍光プローブは、配列番号3であるアミノ酸配列を有するペプチドを含むものである、請求項2に記載の定量分析方法。
【請求項4】
前記CBPは、配列番号1であるアミノ酸配列を含むものである、請求項1に記載の定量分析方法。
【請求項5】
前記p300蛋白質は、配列番号2であるアミノ酸配列を含むものである、請求項1に記載の定量分析方法。
【請求項6】
前記蛍光物質は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、テキサスレッド(TR)及びテトラ−メチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、フルオレセインカルボン酸(FCA)、フルオレセインチオウレア(FTH)、7−アセトキシクマリン−3−1、フルオレセイン−5−1、フルオレセイン−6−1、2’,7’−ジクロロフルオレセイン−5−1、ジヒドロテトラメチルローダミン−4−1、テトラメチルローダミン−5−1、及びテトラメチルローダミン−6−1からなる群より選択された蛍光物質を含むものである、請求項1に記載の定量分析方法。
【請求項7】
前記反応は、蛍光プローブをCBPまたはp300蛋白質と1:2(100nM:200nM)乃至1:10(100nM:1000nM)の範囲内で混合して、誘導する、請求項1に記載の定量分析方法。
【請求項8】
1)HIF−1α蛋白質のC−末端トランス活性ドメインから由来したペプチドに蛍光物質を結合させて製造した蛍光プローブと、CBPまたはp300蛋白質を含む反応液に阻害剤候補物質を添加する段階;
2)前記反応液に阻害剤候補物質を添加する前と添加した後の蛍光偏光値の変化を測定する段階;及び
3)前記阻害剤候補物質の添加後に測定された前記反応液の蛍光偏光値が減少すれば、前記候補物質を抑制剤として決定する段階;
を含む、HIF−1αとCBPまたはp300蛋白質間の結合を阻害する抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項9】
前記蛍光プローブは、HIF−1α(NCBI受入番号AAA50152)の全長アミノ酸配列内に連続的に存在する少なくとも41個のアミノ酸を有するペプチドを含み、この時、前記ペプチドは、配列番号4であるHIF−1α内に存在する786番目のアミノ酸乃至826番目のアミノ酸配列を必ず含み、前記ペプチドのN−末端にはアミノカプロン酸リンカーが連結されており、前記アミノカプロン酸リンカーの端部には蛍光物質が連結されている、請求項8に記載の抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項10】
前記蛍光プローブは、配列番号3であるアミノ酸配列を有するペプチドを含むものである、請求項9に記載の抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項11】
前記CBPは、配列番号1であるアミノ酸配列を含むものである、請求項8に記載の抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項12】
前記p300蛋白質は、配列番号2であるアミノ酸配列を含むものである、請求項8に記載の抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項13】
前記方法は、
a)HIF−1α蛋白質のC−末端トランス活性ドメインに蛍光物質を結合させて蛍光プローブを製造し、前記蛍光プローブをCBPまたはp300蛋白質と反応させて、これらの蛍光偏光値を測定する段階;
b)前記蛍光プローブに、HIF−1阻害因子(FIH−1)、S−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン(SNAP)、及びカゼインキナーゼ2(CK2)からなる群より選択されたいずれか一つの酵素を処理し、前記酵素処理されたプローブをCBPまたはp300蛋白質と反応させて、これらの蛍光偏光値を測定する段階;及び
c)CBPまたはp300蛋白質との結合相で、HIF−1αC−末端トランス活性ドメインの蛋白質合成後の変形の影響を分析するために、前記a)及びb)段階で測定された蛍光偏光値を比較する段階;
を含む、請求項1に記載の定量分析方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【公開番号】特開2008−96423(P2008−96423A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210103(P2007−210103)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(591074116)韓国科学技術研究院 (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(591074116)韓国科学技術研究院 (17)
【Fターム(参考)】
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