説明

HIF阻害剤

HIF阻害剤およびその使用法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年8月25日に出願された、出願番号が第60/711,602である「HIF阻害剤」と題する米国仮出願に基づく優先権および利益を主張し、そのすべてが参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、概して低酸素誘導因子(HIF)経路の阻害剤およびそれらの使用法に関する。
【0003】
背景
癌治療の顕著な進歩にも関わらず、多くの悪性腫瘍が致死的な疾患のままである。これらの中には中枢神経系(CNS)腫瘍があり、これは35歳未満の人々の癌死亡の主な原因である。原発性脳腫瘍の罹患率は、1979年〜1991年の間に25%以上増加し、そして死亡率は15%増加した。脳腫瘍に対する新規の治療法の発見は、特に最も高い死亡率(合衆国において、死亡者数は>13,000人/年)を有する悪性神経膠腫に対して、今や大きな課題である。GBMを患う患者は、治療に関わらず平均生存期間が10〜12ヵ月であり、そして2年生存率は10%未満である。
【0004】
癌が致死的疾患となり得る理由の一つは、癌が生物のいたるところに拡大または転移するためである。転移は、乳癌の発病および死亡に主たる役割を担う。典型的な乳癌転移は、リンパ節、肺、肝臓および骨髄に見られる病変をもたらす。一般的に、癌細胞は分化特性、適切な組織の区分化、細胞-細胞接着を欠損するのに加え、変性した細胞基質接着、変性した細胞骨格形成、細胞の移動運動、遠位部位での生存能を獲得する。
【0005】
低酸素状態は、固形腫瘍の効果的な治療に対する主たる障害である。迅速に増殖する固形腫瘍の微環境は、エネルギー需要の増加および血管供給の減少を伴い、酸素圧の低下を伴う顕著な低酸素状態の病変領域を生じる。癌患者に実施する組織酸素電極測定は、酸素分圧が10〜30 mmHgの間の中央値範囲を示し、かなりの割合の測定値が2.5 mmHg未満である一方、正常な組織は24〜66 mmHgの範囲であった。細胞において最も電子親和性である分子であり、そして電離放射線によって生成する根本的な生物学的損傷と化学的に反応する酸素の非存在下において、放射線治療はその低酸素状態の腫瘍細胞を殺傷する能力を大きく損なう。一方、低酸素状態(および場合により、低酸素状態に関連したグルコース等の他の栄養素の欠乏)は、腫瘍細胞が細胞周期の進行の停止または速度の減速をもたらす。多くの抗腫瘍剤が、ゆっくり増殖する細胞または増殖しない細胞よりも、迅速に増殖する細胞に対してより有効であるため、この細胞増殖の減速が細胞殺傷の減少を導く。化学療法剤が全身に送達され、そしてそれらの腫瘍への拡散が、血管に近接した酸素化細胞よりも少ない薬剤に曝露される低酸素領域を生じるので、化学療法はさらに低酸素状態に影響される。さらに、多剤耐性(MDR1)遺伝子産物であるP-糖タンパク質が、周囲の低酸素状態によって誘導される。
【0006】
腫瘍の低酸素状態は、VEGF等の血管新生促進タンパク質および糖分解酵素の上昇を介した代謝的適応の双方の誘導を通して血管新生を促進することにより、悪性進行および転移を増加させる。低酸素状態はまた、細胞が遺伝子変化(例えば、TP53、K-ras)を獲得する選択圧を生み、このことが低酸素誘導性のアポトーシスを回避する。
【0007】
腫瘍増殖の必須要素は、血管新生である。腫瘍は、新血管形成を開始するために血管新生の生理学的調節を混乱させる必要があり、これは初期腫瘍による低酸素誘導性の血管新生因子の放出によって引き起こされるプロセスである。血管新生は、星状細胞腫の進行度II〜IV段階の間の段階的なプロセスである。まず、新規の血管が初期段階の星状細胞腫(II)において見られた後、未分化星状細胞腫(III)において血管密度が増加する。次に、GBM(IV)に移行し、多数の微小血管増殖が、異常な血管の出現を誘導する。低酸素状態は、星状細胞腫増殖の進行に不可欠な要素であり、そして段階と共に増加する。多くの酸素分圧測定値は0.5〜2.5%の範囲であるが、しかし、重度の低酸素状態(0.1%程度)もまた報告されている。低酸素状態が媒介する血管新生は、段階IIIの腫瘍から段階IVの腫瘍への移行において最も一般的である。低酸素状態は、腫瘍の最先端/活発に増殖している端で生じ、ここでGBMの特徴である顕症期の微小血管の増殖をもたらす。低酸素状態/微小血管増殖の組み合わせは、GBMの周辺への拡散を、低い段階の星状細胞腫と比較して10倍にまで促進させる一方、腫瘍の中心部は時間の経過と共に無酸素状態になり、そして壊死する。MR画像上の出現に関わらず、GBMは中心部が低酸素でかつ壊死した球体ではないようである。低酸素状態はミクロン間隔で、酸素勾配の変化の結果生じる。実験上のGBMおよびヒトGBMの活発に増殖する部位における低酸素領域のピモニダゾール染色は、低酸素領域のミクロの一群を示す。ヒトGBMにおける免疫組織化学研究はまた、これらの領域が、低酸素状態に対する生理学的応答の主要な調節因子であるHIF-1に対して強く染色することを示している。低酸素状態の出現は、重大な生理学的変化であり、患者の生存率を著しく低下させる、より悪性の腫瘍の挙動を予兆する。血管新生および微小血管細胞増殖は、IV段階の神経膠腫をII/III段階のものと区別するのに用いられる形態学的特徴であり、これらは患者の予後と関連している。血管新生は、新規の血管形成を促進および阻害する分子の、均衡のとれた合成の崩壊の結果として生じることが知られる。VEGFは、腫瘍血管新生の最も重要な既知の調節因子であり、HIF-1によって転写的に上方制御される。in situハイブリダイゼーションは、VEGF mRNAが、GBMにおける微細壊死領域を縁取る生存低酸素腫瘍の周縁であり、そして高レベルのHIF-1を発現する偽柵状構造細胞において強く発現することを示している。血管新生の促進に加え、低酸素腫瘍細胞はまた、放射線療法および化学療法に対し、屈折性(refractive)である。従って、星状細胞腫の低酸素領域は、抗腫瘍治療のための重要な標的に相当し、そして低酸素状態を標的とする予備的な臨床研究は、GBMにおける結果の改良を示してきた。
【0008】
HIFは、低酸素状態によって活性化される主要な転写因子である。この活性化および制御は複雑であり、潜在的な阻害の多数のポイントを有する。活性化HIFは、α(HIF-1α、2α)サブユニットおよびβ(HIF-1β)サブユニットから構成され、これらは二量体であり、そして標的遺伝子の調節領域におけるコンセンサス配列(低酸素応答配列, HRE)と結合する。HIFは、60以上の標的遺伝子の発現を調節し、これらの産物は、代謝的適応、アポトーシス耐性、血管新生、および転移を含む腫瘍の進行の多くの局面で重要である。これらは、VEGF、エリスロポエチン、グルコース輸送体、および糖分解酵素を含む。正常酸素状態において、HIFはヒドロキシル化され、そして、HIFを分解の標的とするE3ユビキチンリガーゼサブユニットであるフォン・ヒッペル・リンドウタンパク質(pVHL)と相互作用する。酸素の非存在下において、HIFのヒドロキシル化は阻害され、pVHLとの結合が抑制され、その細胞内蓄積をもたらす。HIF-1が、固形腫瘍治療のための重要な分子標的として認識されてきたのは、腫瘍の血管新生および進行におけるその重要な役割のためである。細胞内HIF-1αのレベル上昇は、多くの癌において見られ、そして、不良な予後および治療の耐性を伴う。HIF-2α上方制御は、VHL遺伝子突然変異を有する癌において主に見られる。HIF-1αの発現は、神経膠腫における腫瘍の段階および血管新生と相関する一方、HIF-2αの発現は通常はない。異なる組織および癌のタイプにおける、HIF-1αサブユニットおよびHIF-2αサブユニットの相対的な重要性は、それらの複数レベルの制御と同様に、依然として研究中である。
【0009】
従って、癌に対する新規かつ有効な治療法が必要である。特に、過剰増殖性の病変において低酸素状態およびその役割を解決する新規かつ有効な治療法が必要である。
【0010】
概要
一般的に、本開示の態様はHIF阻害剤およびこれらの誘導体、HIF阻害剤を含む医薬組成物、ならびに、例えば、虚血性疾患、癌等の増殖性疾患、低酸素関連病変、過剰血管新生に関連した疾患等の治療において、これらの化合物を使用する方法に関する。
【0011】
本開示の実施形態は、:式A、式B、式Cおよび式Dより選択される1以上の化合物を含有する医薬組成物を含み、ここで、式A、式B、式Cおよび式Dの各々は、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7およびX8等の「X」基を含み得るが、これらに限定されない。式A、式B、式Cおよび式Dの化合物、ならびにX1、X2、X3、X4、X5、X6、X7およびX8基は、本明細書の以下に示す。
【0012】
本開示の実施形態は、式A'、式B'、式C'および式D'より選択される1以上の化合物を含有する医薬組成物を含み、ここで、式A’、式B’、式C'および式D'の各々は、X1'、X2'、X3'、X4'、X5'、X6'、X7'およびX8'等の「X」基を含み得るが、これらに限定されない。式A'、式B'、式C'および式D'の化合物、ならびにX1'、X2'、X3'、X4'、X5'、X6'、X7'およびX8'基は、本明細書の以下に示す。
【0013】
X1〜X8において(および他の図においてはX1'〜X8'において)示すCH2-SO2基は、アルキル基、アミド基、ホスホンアミド基、カルバマート基、ホスホジエステル基、ホスホルアミダート基、およびホスフィンアミド基等であるが、これらに限定されない結合基で置換され得ることにも注目すべきである。さらに、式A、D、A'およびD'のベンゼン基(式の右端)は、単環複素環基(例えば、ピリミジン基)、置換複素環基、二環式複素環基(例えば、プリン基)、置換二環式複素環基、三環式複素環基、置換三環式複素環基等で置換され得る。
【0014】
本開示の実施形態は、式E、式F、式G、式H、式I、式J、式K、式L、式M、式N、式O、式P、式Q、式R、式S、式T、式U、式V、式Wおよび式Xより選択される1以上の化合物を含有する医薬組成物を含む。式E、式F、式G、式H、式I、式J、式K、式L、式M、式N、式O、式P、式Q、式R、式S、式T、式U、式V、式Wおよび式Xの化合物は、本明細書の以下に示す。
【0015】
本開示の実施形態は、式E'、式F'、式G'、式H'、式I'、式J'、式K'、式L'、式M'、式N'、式O'、式P'、式Q'、式R'、式S'、式T'、式U'、式V'、式W'および式X'より選択される1以上の化合物を含有する医薬組成物を含む。式E'、式F'、式G'、式H'、式I'、式J'、式K'、式L'、式M'、式N'、式O'、式P'、式Q'、式R'、式S'、式T'、式U'、式V'、式W'および式X'の化合物は、本明細書の以下に示す。
【0016】
本開示の実施形態は、式A'/X2'、式B'/X7'、式B'/X8'、式C'/X2'、式C'/X3'、式C'/X4'、式C'/X5'、式C'/X6'、式C'/X7'、式C'/X8'、式D'/X1'および式D'/X7'より選択される1以上の化合物を含有する医薬組成物を含む。特に、HIF-1阻害剤は、式B'/X7'、式B'/X8'、式C'/X7'、式C'/X8'および式D'/X7'を含むが、これらに限定されない。式A'/X2'、式B'/X7'、式B'/X8'、式C'/X2'、式C'/X3'、式C'/X4'、式C'/X5'、式C'/X6'、式C'/X7'、式C'/X8'、式D'/X1'および式D'/X7'の化合物は、本明細書の以下に示す。
【0017】
本開示の実施形態は、式H'、式I'、式J'、式P'、式Q'、式R'、式S'、式T'、式U'、式V'、式W'および式X'より選択される1以上の化合物を含有する医薬組成物を含む。式H'、式I'、式J'、式P'、式Q'、式R'、式S'、式T'、式U'、式V'、式W'および式X'の化合物は、本明細書の以下に示す。
【0018】
本開示の実施形態は、本明細書に記載するあらゆる化合物の加水分解反応産物、酸化反応産物、または還元反応産物を含有する医薬組成物を含む。
【0019】
本開示の実施形態は、低酸素関連病変を治療または予防する方法を含み、これは、HIFを阻害する量の本明細書に記載する任意の組成物を、治療を必要とする宿主に投与することを含む。
【0020】
本開示の実施形態は、細胞内のHIF活性を調節する方法を含み、これは、HIFを阻害する量の本明細書に記載する任意の組成物に細胞を接触させることを含む。
【0021】
本開示の実施形態は、宿主の癌または腫瘍を治療または予防する方法を含み、これは、HIFを阻害する量の本明細書に記載する任意の組成物を、宿主に投与することを含む。
【0022】
本開示の実施形態は、細胞内の遺伝子の転写を調節する方法を含み、これは、HIFを阻害する量の本明細書に記載する1以上の組成物に細胞を接触させることを含む。
【0023】
本開示の実施形態は、細胞内のmRNAの翻訳を調節する方法を含み、これは、HIFを阻害する量の本明細書に記載する1以上の組成物に細胞を接触させることを含む。
【0024】
本開示の実施形態は、宿主の過剰な血管新生を治療または予防する方法を含み、これは、HIFを阻害する量の本明細書に記載する任意の組成物を、宿主に投与することを含む。
【0025】
本開示の他の組成物、方法、特性、および効果は、以下の図面および詳細な説明の検討に基づいて当業者に理解され、または理解されるようになるだろう。そのようなさらなる組成物、方法、特性、および効果のすべては、本明細書に含まれ、本開示の範囲内であり、そして添付の特許請求の範囲によって保護されることが企図される。
【0026】
詳細な説明
本開示をさらに詳説する前に、本開示が、記載する特定の実施形態に限定されず、そのようなものとして当然改変し得ることが理解されるべきである。本開示の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用する専門用語が、特定の実施形態のみを記載する目的のためのものであって、限定を企図するものではないということもまた理解されるべきである。
【0027】
数値の範囲が示される場合、その範囲の上限と下限との間の、文脈が明確に他に指示しない限りは下限単位の10分の1までである各々の介在値、およびその言及される範囲における、他の任意の言及された値または介在値が本開示の中に含まれることが理解される。言及される範囲で特別に除外されるあらゆる限界を条件として、これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立してより小さな範囲内に含まれ得るものであり、そしてまた本開示に含まれる。言及される範囲が一方の限界または双方の限界を含む場合、これらの含まれた限界の一方または双方を除外する範囲もまた本開示に含まれる。
【0028】
他に定義しない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者に普通に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるのと類似または同等のあらゆる方法および物質もまた、本開示の実施または試験に使用され得るが、好ましい方法および物質をこれから記載する。
【0029】
本明細書に引用されるすべての刊行物および特許は、各々の個々の刊行物または特許が具体的におよび個々に参照によって組み込まれることを示したように参照により本明細書に組み込まれ、そして、刊行物が引用されているものと関連した方法および/または物質を開示および記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。あらゆる刊行物の引用は出願日の前の開示のためであり、そして、本開示が先の開示のためにこのような刊行物に先行する権利が与えられないことを承認するものとして解釈されるべきではない。さらに、掲載された刊行物の日付は、実際の刊行日と異なり得るもので、個々に確認される必要があり得る。
【0030】
本開示を読むことにより当業者に明らかになるように、本明細書に記載および説明する個々の実施形態の各々は、本開示の範囲または精神から逸脱しないあらゆる他のいくつかの実施形態の特徴と容易に区別され得るかまたは組み合わされ得る別々の要素および特徴を有する。列挙されるあらゆる方法が、列挙される事象の順序で、または論理的に可能なあらゆる他の順序で実施され得る。
【0031】
本開示の実施形態は、他に指示がない限り、当技術分野の技術に含まれる有機合成化学、生化学、生物学、分子生物学、薬理学等の技術を使用できる。このような技術は、文献において十分に説明されている。
【0032】
以下の実施例は、本明細書で開示および請求する本方法の実施方法、ならびに組成物および化合物の使用方法について、完全な開示および説明を当業者に提供するために開示される。数字(例えば、量、温度等)に関しては正確さを確保するための努力がされてきたが、しかし、多少の誤差および偏差が存在するはずである。他に指示がない限り、割合は重量部、温度は℃、および圧力は大気圧または大気圧近傍である。標準温度および圧力は、20℃および1気圧として定義する。実験的な低酸素状態は、他に指示がない限り、培地中の細胞を酸素分圧1%の環境下のインキュベーター内で増殖させることにより得た。
【0033】
本開示の実施形態を詳細に記載する前に、他に指示のない限り、本開示が特定の物質、試薬、反応物質、製造工程等に限定されるものではなく、改変可能であることを理解するべきである。本明細書で用いる専門用語は、特定の実施形態のみを記載する目的のためであって、限定を企図するものではないこともまた理解するべきである。本開示において、論理的に可能である場合、ステップが異なる順序で実施され得る可能性がある。
【0034】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に他に指示しない限り、複数形の指示対象を含むことに注意しなければならない。従って、例えば、「1つの化合物」(a compound)の言及には、複数の化合物が含まれる。本明細書およびそれに続く特許請求の範囲において、反対の意図であることが明白でない限り、次の意味を有するものと定義されるべき多くの用語に言及する。
【0035】
定義
用語「生物」または「宿主」は、少なくとも1つの細胞からなるあらゆる生存する実体を指す。生体は、例えば単一の真核細胞のように単純なものであるか、またはヒトを含む哺乳動物のように複雑なものであり得る。
【0036】
用語「HIF阻害剤」は、細胞または生物において、HIF-1、HIF-2およびHIF-3の生物学的活性を阻害するか、HIF-1、HIF-2およびHIF-3のシグナル伝達経路を妨害するか、またはHIF-1、HIF-2およびHIF-3の発現もしくは有効性を下方制御する化合物、その製薬上許容され得る塩、プロドラッグ、または誘導体を意味する。
【0037】
用語「低酸素関連病変」は、部分的に、直接的または間接的に、一般的な酸素の生理学的量より少ない条件によって引き起こされる病変を意味する。用語「低酸素関連病変」はまた、非低酸素刺激によって引き起こされる病変も意味する。この用語は、癌、癌転移、虚血、脳梗塞、および関連する病態、疾患または症候群を含む。
【0038】
用語「誘導体」は、開示される化合物の加水分解物、還元物、または酸化物を含むが、これらに限定されない、開示される化合物の変換化合物を意味する。特に、この用語は開示する化合物の窒素含有環構造(イミダゾールを含むがこれに限定されない)の開環を含む。加水分解反応、還元反応、および酸化反応は、当技術分野において知られている。
【0039】
本明細書で使用する用語「治療上有効な量」は、治療する疾患の1以上の症状をある程度緩和するであろう、投与する化合物の量を指す。癌、または無秩序な細胞分裂および/もしくはプログラム細胞死の欠損に関連した病変に関連して、治療上有効な量は、(1)腫瘍のサイズを減少させる効果、(2)異常な細胞分裂(例えば癌細胞分裂)を阻害する(すなわち、ある程度遅らせる、好ましくは停止させる)効果、(3)癌細胞の局所浸潤および遠隔転移を予防または減少させる効果、(4)無秩序もしくは異常な細胞分裂に部分的に関連するか、またはそれらによって引き起こされる病変(例えば癌を含む)に伴う1以上の症状を、ある程度緩和する(または、好ましくは解消する)効果、(5)化合物(癌に対して保護するための日焼け止めのようなもの)の利用によって癌の形成を予防する効果、ならびに/または(6)病変を誘導する初期の虚血状態の下流にある一連の事象を予防する効果、を有する量を指す。
【0040】
「製薬上許容され得る塩」は、遊離塩基の生物学的効果および特性を維持し、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸等のような無機酸または有機酸との反応によって得られる塩を指す。
【0041】
「医薬組成物」は、生理学上許容され得る担体および賦形剤といった他の化学成分を含む、本明細書に記載する1以上の化合物、またはこれらの製薬上許容され得る塩の混合物を指す。医薬組成物の1つの目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0042】
本明細書において、「製薬上許容され得る担体」は、生物に深刻な炎症を引き起こさず、そして投与する化合物の生物学的活性および特性を無効にすることのない担体または希釈剤を指す。
【0043】
「賦形剤」は、化合物の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加する不活性な基質を指す。制限のない賦形剤の例示は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、および各種デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、およびポリエチレングリコールを含む。
【0044】
疾患の「治療(treating)」または「治療(treatment)」は、疾患を患いやすい可能性があるが、まだ疾患の経験または症状の提示のない動物に、疾患が生じるのを予防すること(予防的治療)、疾患を抑制すること(その進行を遅延または停止すること)、疾患の症状または副作用の緩和を提供すること(待機的治療を含む)、および疾患の緩和(疾患の退縮)を含む。癌に関しては、これらの用語は単に、癌を患っている個体の平均余命が延長されるか、または疾患の1以上の症状が軽減されることを意味する。
【0045】
用語「プロドラッグ」は、in vivoにおいて生物学的な活性型へと変換される薬剤を指す。プロドラッグが多くの場合に有用であるのは、いくつかの状況において、これらが親化合物より容易に投与され得るためである。これらは、例えば、経口投与によって生物学的に利用可能となり得るが、親化合物はそうではない。プロドラッグはまた、親薬剤より医薬組成物における溶解度が改良され得る。プロドラッグは、酵素的プロセスおよび代謝加水分解を含む種々のメカニズムにより、親薬剤に変換され得る。Harper,N.J.(1962)Drug Latentiation, Progress in Drug Reseach, Jucker監修 4:221-294;Morozowichら(1977)Application of Physical Organic Principles to Prodrug Design, E. B. Roche監修 Design of Biophaemaceutical Properties through Prodrugs and Analogs, APhA; Acad. Pharm. Sci.;E. B. Roche監修(1977)Bioreversible Carriers in Drug in Drug Design, Theory and Application, APhA;H. Bundgaard監修(1985)Design of Prodrugs, Elsevier;Wangら(1999)Prodrug approaches to the improved delivery of peptide drug, Curr. Pharm. Design.5(4):265-287;Paulettiら(1997)Improvement in peptide bioavailability: Peptidomimetics and Prodrug Strategies, Adv. Drug. Delivery Rev. 27:235-256;Mizenら(1998)The Use of Esters as Prodrugs for Oral Delivery of β-Lactam antibiotics, Pharm. Biotech. 11,:345-365;Gaignaultら(1996)Designing Prodrugs and Bioprecursors I. Carrier Prodrugs, Pract. Med. Chem. 671-696;M. Asgharnejad(2000)Improving Oral Drug Transport Via Prodrugs, in G. L. Amidon, P. I. LeeおよびE. M. Topp,監修, Transport Processes in Phaemaceutical Systems, Marcell Dekker, p. 185-218;Balantら(1990)Prodrugs for the improvement of drug absorption via different routes of administration, Eur. J. Drug Metab. Pharmacokinet., 15(2): 143-53;BalimaneおよびSinko(1999)Involvement of multiple transporters in the oral absorption of nucleoside analogues, Adv. Drug Delivery Rev., 39(1-3):183-209;Browne(1997)Fosphenytoin(Cerebyx), Clin. Neuropharmacol. 20(1): 1-12;Bundgaard(1979)Bioreversible derivatization of drugs-principle and applicability to improve the therapeutic effects of drugs, Arch. Pharm. Chemi. 86(1):1-39;H. Bundgaard監修(1985)Design of Prodrugs, NewYork:Elsevier;Fleisherら(1996)Improved oral drug delivery: solubility limitations overcome by the use of prodrugs, Adv. Drug Delivery Rev. 19(2): 115-130;Fleisherら(1985)Design of prodrugs for improved gastrointestinal absorption by intestinal enzyme targeting, Methods Enzymol. 112: 360-81;Farquhar D,ら(1983)Biologically Reversible Phosphate-Protective Groups, J. Pharm. Sci., 72(3): 324-325;Han, H.K.ら(2000)Targeted prodrug design to optimize drug delivery, AAPS PharmSci., 2(1):E6;Sadzuka Y.(2000)Effective prodrug liposome and conversion to active metabolite, Curr. Drug Metab., 1(1):31-48;D.M. Lambert(2000)Rationale and applications of lipids as prodrug carriers, Eur. J. Pharm Sci., 11 Suppl 2:S15-27;Wang, W.ら(1999)Prodrug approaches to the improved delivery of peptide drugs. Curr. Pharm. Des., 5(4):265-87。
【0046】
本明細書において、用語「局所的活性薬剤」は、宿主へ使用する(局所使用における接触する)部位で薬理学的反応を導く本開示の組成物を指す。
【0047】
本明細書において、用語「局所的」は、本開示の組成物の、皮膚表面ならびに粘膜細胞および組織の表面への使用を指す。
【0048】
用語「alk」または「アルキル」は、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を有する直鎖状炭化水素基または分岐鎖状炭化水素基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等を指す。低級アルキル基、すなわち1〜6個の炭素原子のアルキル基が一般的に最も好ましい。用語「置換アルキル」は、1以上の基により置換されたアルキル基を指し、置換基は好ましくは、アリール、置換アリール、複素環、置換複素環、炭素環、置換炭素環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ(任意に置換されたもの)、アリールオキシ(任意に置換されたもの)、アルキルエステル(任意に置換されたもの)、アリールエステル(任意に置換されたもの)、アルカノイル(任意に置換されたもの)、アロイル(aryol)(任意に置換されたもの)、シアノ、ニトロ、アミノ、置換アミノ、アミド、ラクタム、尿素、ウレタン、スルホニル等から選択される。
【0049】
用語「アルコキシ」は、R-O-のように酸素に連結したアルキル基を意味する。この官能基において、Rはアルキル基を表す。例示は、メトキシ基CH3O-である。
【0050】
用語「アルケニル」は、2〜12個の炭素原子、好ましくは2〜4個の炭素原子、そして少なくとも1つの炭素-炭素二重結合(シスまたはトランスのどちらか)を有する直鎖状炭化水素基または分岐鎖状炭化水素基(例えばエテニル)を指す。用語「置換アルケニル」は、1以上の基で置換されたアルケニル基を指し、置換基は好ましくは、アリール、置換アリール、複素環、置換複素環、炭素環、置換炭素環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ(任意に置換されたもの)、アリールオキシ(任意に置換されたもの)、アルキルエステル(任意に置換されたもの)、アリールエステル(任意に置換されたもの)、アルカノイル(任意に置換されたもの)、アロイル(任意に置換されたもの)、シアノ、ニトロ、アミノ、置換アミノ、アミド、ラクタム、尿素、ウレタン、スルホニル等から選択される。
【0051】
用語「アルキニル」は、2〜12個の炭素原子、好ましくは2〜4個の炭素原子、そして少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖状炭化水素基または分岐鎖状炭化水素基(例えばエチニル)を指す。用語「置換アルキニル」は、1以上の基で置換されたアルキニル基を指し、置換基は好ましくは、アリール、置換アリール、複素環、置換複素環、炭素環、置換炭素環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ(任意に置換されたもの)、アリールオキシ(任意に置換されたもの)、アルキルエステル(任意に置換されたもの)、アリールエステル(任意に置換されたもの)、アルカノイル(任意に置換されたもの)、アロイル(任意に置換されたもの)、シアノ、ニトロ、アミノ、置換アミノ、アミド、ラクタム、尿素、ウレタン、スルホニル等から選択される。
【0052】
用語「ar」または「アリール」は、芳香族同素環(つまり、炭化水素)の、単環、二環または三環を含有し、好ましくは6〜12員を有する基を指し、例えばフェニル、ナフチルおよびビフェニル等である。フェニルは、好ましいアリール基である。用語「置換アリール」は、1以上の基で置換されたアリール基を指し、置換基は好ましくは、アルキル、置換アルキル、アルケニル(任意に置換されたもの)、アリール(任意に置換されたもの)、複素環(任意に置換されたもの)、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ(任意に置換されたもの)、アリールオキシ(任意に置換されたもの)、アルカノイル(任意に置換されたもの)、アロイル(任意に置換されたもの)、アルキルエステル(任意に置換されたもの)、アリールエステル(任意に置換されたもの)、シアノ、ニトロ、アミノ、置換アミノ、アミド、ラクタム、尿素、ウレタン、スルホニル等より選択され、ここで、場合により、置換基の1以上の対は、それが結合する原子と共に3〜7員環を形成する。
【0053】
用語「シクロアルキル」および「シクロアルケニル」は、それぞれが完全飽和および部分的不飽和である3〜15個の炭素原子の単環式、二環式、または三環式同素環基を指す。用語「シクロアルケニル」は、全体としては芳香族ではないが、芳香族部分を含有する二環系および三環系(例えば、フルオレン、テトラヒドロナフタレン、ジヒドロインデン等)を含む。多環シクロアルキル基の環は、1以上のスピロ結合を介して、縮合、架橋および/または結合のいずれかがされ得る。用語「置換シクロアルキル」および「置換シクロアルケニル」は、各々、1以上の基で置換されたシクロアルキル基およびシクロアルケニル基を指し、置換基は好ましくは、アリール、置換アリール、複素環、置換複素環、炭素環、置換炭素環、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ(任意に置換されたもの)、アリールオキシ(任意に置換されたもの)、アルキルエステル(任意に置換されたもの)、アリールエステル(任意に置換されたもの)、アルカノイル(任意に置換されたもの)、アロイル(任意に置換されたもの)、シアノ、ニトロ、アミノ、置換アミノ、アミド、ラクタム、尿素、ウレタン、スルホニル等より選択される。
【0054】
用語「炭素環」、「炭素環式」または「炭素環基」は、シクロアルキル基およびシクロアルケニル基の双方を指す。用語「置換炭素環」、「置換炭素環式」または「置換炭素環基」は、シクロアルキルおよびシクロアルケニルの定義で記載するような1以上の基で置換された炭素環または炭素環基を指す。
【0055】
用語「ハロゲン」および「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を指す。
【0056】
用語「複素環(heterocycle)」、「複素環式」、「複素環基」または「複素環(heterocyclo)」は、完全飽和または部分的もしくは完全に不飽和である、芳香族基(「ヘテロアリール」)または非芳香族環(例えば、3〜13員単環系、7〜17員二環系、または10〜20環三環系、好ましくは、合計3〜10個の環原子を含む)を含み、少なくとも1つの炭素原子を含有する環に少なくとも1つのヘテロ原子を有する基を指す。ヘテロ原子を含む複素環基の各環は、窒素原子、酸素原子、および/または硫黄原子から選択される1、2、3または4つのヘテロ原子を有してもよく、ここで、窒素および硫黄へテロ原子は任意に酸化され、そして窒素へテロ原子は任意に四級化され得る。複素環基は、環または環系の任意のヘテロ原子または炭素原子で結合し得る。多重環式複素環は、1以上のスピロ結合を介して、縮合、架橋および/または結合のいずれかがされ得る。
【0057】
例示的な単環式の複素環基は、アゼチジニル、ピロリジニル、ピロリル、ピラゾリル、オキセタニル、ピラゾリニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、イソキサゾリニル、イソキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、イソチアゾリジニル、フリル、テトラヒドロフリル、チエニル、オキサジアゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロロジニル、2-オキソアゼピニル、アゼピニル、4-ピペリドニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル、テトラヒドロピラニル、テトラゾイル、トリアゾリル、モルホリニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、1,3-ジオキソラン、およびテトラヒドロ-1,1-ジオキソチエニル等を含む。
【0058】
例示的な二環式の複素環基は、インドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチエニル、キヌクリジニル、キノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾピラニル、インドリジニル、ベンゾフリル、ベンゾフラニル(benzofuranly)、ジヒドロベンゾフラニル、クロモニル、クマリニル、ベンゾジオキソリル、ジヒドロベンゾジオキソリル、ベンゾジオキシニル、シンノリニル、キノキサリニル、インダゾリル、ピロロピリジル、フロピリジニル(フロ[2,3-c]ピリジニル、フロ[3,2-b]ピリジニル、またはフロ[2,3-b]ピリジニル等)、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロキナゾリニル(3,4-ジヒドロ-4-オキソ-キナゾリニル等)、テトラヒドロキノリニル、アザビシクロアルキル(6-アザビシクロ[3.2.1]オクタン等)、アザスピロアルキル(1,4-ジオキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン等)、イミダゾピリジニル(イミダゾ[1,5-a]ピリジン-3-イル等)、トリアゾロピリジニル(1,2,4-トリアゾロ[4,3-a]ピリジン-3-イル等)、およびヘキサヒドロイミダゾピリジニル(1,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-3-イル等)等を含む。
【0059】
例示的な三環式の複素環基は、カルバゾリル、ベンジドリル、フェナントロリニル、アクリジニル、フェナントリジニル、キサンテニル等を含む。
【0060】
用語「置換複素環(heterocycle)」、「置換複素環式」、「置換複素環基」および「置換複素環(heterocyclo)基」は、1以上の基で置換された複素環、複素環式および複素環基を指し、置換基は好ましくは、アルキル、置換アルキル、アルケニル、オキソ、アリール、置換アリール、複素環、置換複素環、炭素環(任意に置換されたもの)、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ(任意に置換されたもの)、アリールオキシ(任意に置換されたもの)、アルカノイル(任意に置換されたもの)、アロイル(任意に置換されたもの)、アルキルエステル(任意に置換されたもの)、アリールエステル(任意に置換されたもの)、シアノ、ニトロ、アミド、アミノ、置換アミノ、ラクタム、尿素、ウレタン、スルホニル等より選択され、ここで、場合により、置換基の1以上の対は、それが結合する原子と共に、3〜7員環を形成する。
【0061】
用語「アルカノイル」は、カルボニル基と結合したアルキル基(上記のように、任意に置換され得る)を指す(例えば、-C(O)-アルキル)。同様に、用語「アロイル」は、カルボニル基と結合したアリール基(上記のように、任意に置換され得る)を指す(例えば、-C(O)-アリール)。
【0062】
本明細書全体を通して、基およびその置換基は、安定な部分および化合物を提供するために選択され得る。
【0063】
開示される化合物は塩を形成し、これもまた本発明の範囲内である。本明細書におけるあらゆる式の化合物に対する言及は、他に指示がない限り、これらの塩に対する言及を含むことが理解される。本明細書で使用する用語「塩」は、無機酸および/または有機酸と無機塩基および/または有機塩基とを用いて形成される酸性塩および/または塩基性塩を意味する。さらに、式Iの化合物が塩基性部分および酸性部分の双方を含む場合、両性イオン(「内部塩」)を形成する可能性があり、そしてこれらは本明細書で使用する用語「塩」の中に含まれる。製薬上許容され得る(例えば非毒性、生理学上許容され得る)塩が好ましいが、他の塩もまた(例えば、調製中に行われ得る単離または精製ステップにおいて)有用である。式Iの化合物の塩は、例えば、化合物Iをある量(等量など)の酸または塩基と、塩が沈殿するような溶媒または水性溶媒中において反応させた後に、凍結乾燥によって形成され得る。
【0064】
塩基性部分を含有する開示される化合物は、種々の有機酸および無機酸と塩を形成し得る。例示的な酸付加塩は、酢酸塩(酢酸またはトリハロ酢酸(例えば、トリフルオロ酢酸)と形成されるもの等)、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩(塩酸と形成する)、臭化水素酸塩(臭化水素と形成する)、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩(マレイン酸と形成する)、メタンスルホン酸塩(メタンスルホン酸と形成する)、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩(硫酸と形成するもの等)、スルホン酸塩(本明細書に記載するもの等)、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩等のトルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩等を含む。
【0065】
酸性部分を含む開示される化合物は、種々の有機塩基および無機塩基と塩を形成し得る。例示的な塩基性塩は、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、リチウム塩、およびカリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩およびマグネシウム塩等)、有機塩基(例えば、有機アミン)(ベンザチン、ジシクロヘキシルアミン、ヒドラバミン(N,N-ビス(デヒドロアビエチル)エチレンジアミンと形成される)、N-メチル-D-グルカミン、N-メチル-D-グルカミド、t-ブチルアミン等)との塩、ならびにアミノ酸(アルギニン、リジン等)との塩を含む。
【0066】
塩基性の窒素含有基は、ハロゲン化低級アルキル(例えば、塩化、臭化およびヨウ化メチル、塩化、臭化およびヨウ化エチル、塩化、臭化およびヨウ化プロピル、ならびに塩化、臭化およびヨウ化ブチル)、硫酸ジアルキル(例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチル、および硫酸ジアミル)、長鎖ハロゲン化物(例えば、塩化、臭化およびヨウ化デシル、塩化、臭化およびヨウ化ラウリル、塩化、臭化およびヨウ化ミリスチル、ならびに塩化、臭化およびヨウ化ステアリル)、ハロゲン化アラルキル(例えば、臭化ベンジルおよび臭化フェネチル)等といった物質で四級化され得る。
【0067】
本開示の化合物の溶媒和物もまた、本明細書に企図される。化合物の溶媒和物は、好ましくは水和物である。
【0068】
開示される化合物およびこれらの塩が互変異性型として存在し得る範囲で、すべてのそのような互変異性型は、本開示の一部として本明細書に企図される。
【0069】
エナンチオマー型(不斉炭素がなくても存在し得る)やジアステレオマー型を含む、種々の置換基上の不斉炭素によって存在し得るような本発明の化合物のすべての立体異性体は、本開示の範囲内に企図される。本発明の化合物の個々の立体異性体は、例えば、他の異性体が実質的に混入していないか、あるいは、例えばラセミ化合物としてまたは他のすべての立体異性体もしくは他の選択された立体異性体と混合されていてもよい。本開示の化合物のキラル中心は、IUPAC 1974勧告に規定されたS配置またはR配置を有し得る。
【0070】
用語「含む」、「といった、等(such as)」、「例えば」等は、例示的な実施形態に言及することを意図するものであって、本開示の範囲を制限するものではない。
【0071】
考察
HIF阻害剤化合物およびHIF阻害剤を含む組成物、医薬組成物、低酸素関連病変の治療または予防方法、HIF関連病変、細胞内のHIF活性(例えば、HIF-1、HIF-2またはHIF-3活性)を調節する方法、宿主の癌または腫瘍を治療または予防する方法、細胞内の遺伝子転写を調節する方法、ならびに(例えば目の)過剰な血管新生によって特徴付けられる病変を治療する方法を開示する。例示的なHIF阻害剤化合物またはHIF阻害剤化合物を含む組成物は、図1A〜6に示す。HIF阻害剤に関するさらなる詳細は、以下ならびに実施例1および2に記載する。
【0072】
HIF-1、HIF-2および/またはHIF-3を介する遺伝子調節の阻害は、腫瘍血管新生を減少させ、そして低酸素状態に対する適応代謝反応を予防して、腫瘍増殖を抑制する。理論に縛られることを企図するものではないが、HIF-1/HRE相互作用の下流での阻止をもたらす本開示のHIF阻害剤は、低酸素状態またはHIF誘導性遺伝子発現の減少、腫瘍増殖の遅延、および正常な組織に対する最小限の毒性を導くことが期待される。従って、HIF-1、HIF-2および/またはHIF-3経路の阻害剤は、固形腫瘍増殖を阻害することが可能なはずであり、そして臨床治療の可能性を有する。
【0073】
さらに、化合物は「HIF阻害剤」と記載されるが、しかし場合により(そのいくつかは以下に言及する)、化合物は他のタンパク質または経路に直接的または間接的な作用を有し、そしてそのような作用が効果的であることに注目するべきである。従って、HIF阻害剤はHIF経路にのみ作用を有するものに限定されない。
【0074】
低酸素誘導因子(HIF-1、HIF-2およびHIF-3)
HIFは、低酸素状態における遺伝子の特異的な誘導に関わる主要な転写因子である。HIFは、bHLH-PASファミリーに属する2つのサブユニット:HIF-1αまたはHIF-2αおよびアリール炭化水素受容体核輸送体(ARNT、HIF-1βとしても知られる)から構成される。標的遺伝子の転写促進を活性化するために、HIFアルファサブユニットαは、HIF-1βと二量体化し、そしてこれらの遺伝子のプロモーター領域またはエンハンサー領域のDNAのコンセンサス配列(低酸素応答配列、HRE)に結合する。一方、HIF3αサブユニットを含むHIF二量体は、転写的に不活性であり、そしてHIF3αイソ型は、優性阻害調節因子として作用し得る。そのような遺伝子でコードされるタンパク質は、血管内皮増殖因子(VEGF)、エリスロポエチン、グルコース輸送体-1、糖分解酵素、およびチロシン水酸化酵素を含む(Semenza G.L. Regulation of mammalian homeostasis by hypoxia-inducible factor 1. Annu Rev Cell Dev Biol 15,551-78(1999))。さらなるHIF関連遺伝子は、図22および以下の刊行物に記載され、これらすべては参照により本明細書に組み込まれる:Cancer Treat Rev. 2006 Aug 2;Cardiovasc Hematol Agents Med Chem. 2006 Jul, 4(3):199-218;Cardiovasc Hematol Agents Med Chem. 2006 Jul, 4(3):189-97;Curr Pharm Des. 2006, 12(21):2673-88;Ann N Y Acad Sci. 2006 Apr, 1068:66-73;Circ Res. 2006 Jun 23;98(12):1465-7;Cardiovasc Res. 2006 Sep 1, 71(4):642-51;Sci STKE. 2006 May 30, 2006(337):p.25;Endocr Relat Cancer. 2006 Jun, 13(2):415-25;Nature. 2006 May 25, 441(7092):437-43;Shock. 2006 Jun, 25(6):557-70;Crit Rev Oncol Hematol. 2006 Jul, 59(1):15-26;Novartis Found Symp. 2006, 272:2-8;discussion 8-14, 33-6;Curr Atheroscler Rep. 2006 May, 8(3):252-60;Am J Physiol Renal Physiol. 2006 Aug, 291(2):F271-81;Curr Opin Neurol. 2006 Apr, 19(2):141-7;Kidney Blood Press Res. 2005, 28(5-6):325-40;Kidney Int. 2006 Apr, 69(8):1302-7;Trends Mol Med. 2006 Apr, 12(4):141-3;Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2006 Feb 1, 64(2):343-54;Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2006 Feb 1, 64(2):343-54;Z Gastroenterol. 2006 Jan, 44(1):67-76;EMBO Rep. 2006 Jan, 7(1):41-5;Curr Cancer Drug Targets. 2005 Dec, 5(8):595-610;およびChest. 2005 Dec, 128(6 Suppl):592S-594S。
【0075】
正常酸素圧において、フォン・ヒッペル・リンドウタンパク質(pVHL)は、E3ユビキチンリガーゼ(これは、後にHIF-1αをユビキチン化して、その分解を標的とする)を活性化する複合体の集合体を組織する。HIF-1αとpVHLとの間の相互作用は、プロリル水酸化酵素によるHIF-1αの2つのプロリン残基の水酸化によって調節される。酸素非存在下において、この酵素はもはや活性ではなく、そしてHIF-1αはpVHLと相互作用せず、細胞内に蓄積する(Ivan, M.ら, HIFα targeted for VHL-mediated destruction by proline hydroxylation:implications for O2 sensing. Science 292,464-8(2001);Jaakkola, P.ら, Targeting of HIFα to the von Hippel Lindau ubiquitylation complex by O2 regulated prolyl hydroxylation. Science 292, 468-72(2001))。
【0076】
腫瘍の低酸素状態は、VEGFといった血管新生促進タンパク質の誘導により血管新生を促進することによって、悪性の進行および転移を増加させる(Schweiki, D.ら, Vascular endothelial growth factor induced by hypoxia may mediate hypoxia-induced angiogenesis. Nature 359, 843-5(1992))。低酸素状態によって誘導される多くの遺伝子は、HIF-1αによって調節され、従って、このタンパク質は腫瘍増殖において中枢的役割を担う(Dachs G.U.およびChaplin, D.J. Microenvironmental control of gene expression:implications for tumor angiogenesis, progression, and metastasis. Semin Radiat Oncol 8, 208-16(1998);Maxwell, P.H.ら, Hypoxia-inducible factor-1 mediates gene expression in solid tumors and influences both angiogenesis and tumor growth. Proc Natl Acad Sci USA 94, 8104-9(1997);Semenza, G.L. Hypoxia-inducible factor 1:master regulator of O2 homeostasis. Curr Opin Genet Dev 8, 588-94(1998))。組織学的解析は、細胞内のHIF-1αのレベルの増加が、頭部癌および頸部癌、乳癌、子宮頸癌、および腔咽頭癌における予後不良ならびに治療に対する耐性に関連することを示した(Beasley, N.J.P.ら, Hypoxia-inducible factors HIF-1α and HIF-2α in head and neck cancer: relationship to tumor biology and treatment outcome in surgically resected patients. Cancer Res 62, 2493-7(2002);Schindl, M.ら, Overexpression of hypoxia-inducible factor Iα is associated with an unfavorable prognosis in lymph node-positive breast cancer. Clin Cancer Res 8, 1831-7(2002);Birner, P.ら, Overexpression of hypoxia-inducible factor Iα is a marker for an unfavorable prognosis in early-stage invasive cervical cancer. Cancer Res 60, 4693-6(2000);Aebersold, D.M.ら, Expression of hypoxia-inducible factor-Iα: a novel predictive and prognostic parameter in the radiotherapy of oropharyngeal cancer. Cancer Res 61, 2911-6(2001))。HIF-1αは、結腸癌、乳癌、胃癌、肺癌、皮膚癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌および腎臓癌の細胞質ならびに核において過剰発現した。
【0077】
HIF阻害剤
本開示の実施形態は、図1〜8に示すHIF阻害剤、これらの誘導体、これらの製薬上許容され得る塩誘導体、これらのプロドラッグ誘導体、および少なくとも1種のHIF阻害剤を含有する医薬組成物を含む。
【0078】
図1Aおよび1Bは、HIF阻害剤に関する式の例示的な実施形態を示す。HIF阻害剤は、式A、式B、式Cおよび式Dを含むが、これらに限定されない。式A、式B、式Cおよび式Dの各々は、限定されないが、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7およびX8といった「X」基を含み得る(例えば、式A/X1、式B/X8等)。
【0079】
X1〜X8(および他の図におけるX1'〜X8')に示されるCH2-SO2基は、限定されないが、アルキル基、アミド基、ホスホンアミド基、カルバミン酸基、ホスホジエステル基、ホスホルアミダート基、およびホスフィンアミド基等の結合基で置換され得ることにも注目するべきである。さらに、式AおよびDのベンゼン基(式の右端)は、単環式複素環基(例えば、ピリミジン基)、置換複素環基、二環式複素環基(例えば、プリン基)、置換二環式複素環基、三環式複素環基、置換三環式複素環基等で置換され得る。
【0080】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17およびR18は、各々が独立して、HIF阻害剤の以下のHIF阻害特性、すなわち、HIF阻害剤の可溶性の増加、ADME特性の増加、薬理学的特性の増加、HIF阻害剤の薬力学特性の増加、HIF阻害剤の薬物動態学特性の増加、毒性の減少、生物学的利用能の拡大、およびこれらの組み合わせの1つ以上を増強する基より選択され得る。
【0081】
実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17およびR18は、各々が独立して、H、OH、分岐鎖状または非分岐鎖状C1-12アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、イミダゾール基、置換イミダゾール基、アルキル置換アリール基、ハロゲン置換アリール基、ハロゲン基、アミン基、NO2、およびアシル基といった基より選択され得るが、これらに限定されない。
【0082】
他の実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17およびR18は、各々が独立して、H、OH、分岐鎖状または非分岐鎖状C1-12アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、イミダゾール基、アルキル置換アリール基、ハロゲン置換アリール基、ハロゲン基、アミン基、およびアシル基といった基より選択され得るが、これらに限定されない。
【0083】
他の実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17およびR18は、各々が独立して、H、OH、ハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基、およびアルケニル基といった基より選択され得るが、これらに限定されない。
【0084】
他の実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17およびR18は、各々が独立して、H、OH、ハロゲン基、アルキル基、およびアルコキシ基といった基より選択され得るが、これらに限定されない。
【0085】
実施形態において、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R50およびR51は、各々が独立して、HIF阻害剤の可溶性の増加、ADME特性の増加、薬理学的特性の増加、HIF阻害剤の薬力学的特性の増加、HIF阻害剤の薬物動態学特性の増加、毒性の減少、生物学的利用能の拡大、およびこれらの組み合わせである特性を増強する基より選択され得る。
【0086】
他の実施形態において、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R50およびR51は、各々が独立して、H、OH、分岐鎖状または非分岐鎖状C1-12アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、イミダゾール基、置換イミダゾール基、アルキル置換アリール基、ハロゲン置換アリール基、ハロゲン基、アミン基、NO2、およびアシル基といった基より選択され得るが、これらに限定されない。
【0087】
他の実施形態において、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R50およびR51は、各々が独立して、H、OH、分岐鎖状または非分岐鎖状C1-12アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、イミダゾール基、アルキル置換アリール基、ハロゲン置換アリール基、ハロゲン基、アミン基、およびアシル基といった基より選択され得るが、これらに限定されない。
【0088】
他の実施形態において、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R50およびR51は、各々が独立して、H、OH、ハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基、およびアルケニル基といった基より選択され得るが、これらに限定されない。
【0089】
他の実施形態において、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R50およびR51は、各々が独立して、H、OH、ハロゲン基、アルキル基、およびアルコキシ基といった基より選択され得るが、これらに限定されない。
【0090】
図2Aおよび2Bは、HIF阻害剤に関する式の例示的な実施形態を示す。HIF阻害剤は、式A'、式B'、式C'および式D'を含むが、これらに限定されない。式A'、式B'、式C'および式D'の各々は、限定されないが、X1'、X2'、X3'、X4'、X5'、X6'、X7'およびX8'といった「X」基を含み得る(例えば、式A'/X1'、式B'/X8'等)。
【0091】
図3A〜3Gは、HIF阻害剤に関する式の例示的な実施形態を示す。HIF阻害剤は、式E、式F、式G、式H、式I、式J、式K、式L、式M、式N、式O、式P、式Q、式R、式S、式T、式U、式V、式Wおよび式Xを含むが、これらに限定されない。
【0092】
実施形態において、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R60、R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67、R68、R69、R70、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78、R79、R80、R81、R82、R83、R84、R85、R86、R87、R88、R89、R90、R91、R92、R93、R94、R95、R96、R97、R98、R99、R100、R101、R102、R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109、R110、R111、R112、R113、R114、R115、R116、R117、R118、R119、R120、R121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129、R130、R131、R132、R133、R134、R135、R136、R137、R138、R139、R140、R141、R142、R143、R144、R145、R146、R147、R148、R149、R150、R151、R152、R153、R154、R155、R156、R157、R158、R159、R160、R161、R162およびR163は、各々が独立して、HIF阻害剤の以下のHIF阻害特性、すなわち、HIF阻害剤の可溶性の増加、ADME特性の増加、薬理学的特性の増加、HIF阻害剤の薬力学特性の増加、HIF阻害剤の薬物動態学特性の増加、毒性の減少、生物学的利用能の拡大、およびこれらの組み合わせの1つ以上を増強する基より選択され得る。
【0093】
他の実施形態において、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R60、R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67、R68、R69、R70、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78、R79、R80、R81、R82、R83、R84、R85、R86、R87、R88、R89、R90、R91、R92、R93、R94、R95、R96、R97、R98、R99、R100、R101、R102、R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109、R110、R111、R112、R113、R114、R115、R116、R117、R118、R119、R120、R121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129、R130、R131、R132、R133、R134、R135、R136、R137、R138、R139、R140、R141、R142、R143、R144、R145、R146、R147、R148、R149、R150、R151、R152、R153、R154、R155、R156、R157、R158、R159、R160、R161、R162およびR163は、各々が独立して、H、OH、分岐鎖状または非分岐鎖状C1-12アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、イミダゾール基、置換イミダゾール基、アルキル置換アリール基、ハロゲン置換アリール基、ハロゲン基、アミン基、NO2、およびアシル基といった基より選択され得るが、これらに限定されない。
【0094】
他の実施形態において、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R60、R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67、R68、R69、R70、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78、R79、R80、R81、R82、R83、R84、R85、R86、R87、R88、R89、R90、R91、R92、R93、R94、R95、R96、R97、R98、R99、R100、R101、R102、R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109、R110、R111、R112、R113、R114、R115、R116、R117、R118、R119、R120、R121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129、R130、R131、R132、R133、R134、R135、R136、R137、R138、R139、R140、R141、R142、R143、R144、R145、R146、R147、R148、R149、R150、R151、R152、R153、R154、R155、R156、R157、R158、R159、R160、R161、R162およびR163は、各々が独立して、H、OH、分岐鎖状または非分岐鎖状C1-12アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、イミダゾール基、アルキル置換アリール基、ハロゲン置換アリール基、ハロゲン基、アミン基、およびアシル基といった基より選択され得るが、これらに限定されない。
【0095】
他の実施形態において、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R60、R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67、R68、R69、R70、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78、R79、R80、R81、R82、R83、R84、R85、R86、R87、R88、R89、R90、R91、R92、R93、R94、R95、R96、R97、R98、R99、R100、R101、R102、R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109、R110、R111、R112、R113、R114、R115、R116、R117、R118、R119、R120、R121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129、R130、R131、R132、R133、R134、R135、R136、R137、R138、R139、R140、R141、R142、R143、R144、R145、R146、R147、R148、R149、R150、R151、R152、R153、R154、R155、R156、R157、R158、R159、R160、R161、R162およびR163は、各々が独立して、H、OH、ハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基、およびアルケニル基といった基より選択され得るが、これらに限定されない。
【0096】
他の実施形態において、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R60、R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67、R68、R69、R70、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78、R79、R80、R81、R82、R83、R84、R85、R86、R87、R88、R89、R90、R91、R92、R93、R94、R95、R96、R97、R98、R99、R100、R101、R102、R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109、R110、R111、R112、R113、R114、R115、R116、R117、R118、R119、R120、R121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129、R130、R131、R132、R133、R134、R135、R136、R137、R138、R139、R140、R141、R142、R143、R144、R145、R146、R147、R148、R149、R150、R151、R152、R153、R154、R155、R156、R157、R158、R159、R160、R161、R162およびR163は、各々が独立して、H、OH、ハロゲン基、アルキル基、およびアルコキシ基といった基より選択され得るが、これらに限定されない。
【0097】
図4A〜4Gは、HIF阻害剤に関する式の例示的な実施形態を示す。HIF阻害剤は、式E'、式F'、式G'、式H'、式I'、式J'、式K'、式L'、式M'、式N'、式O'、式P'、式Q'、式R'、式S'、式T'、式U'、式V'、式W'および式X'を含むが、これらに限定されない。
【0098】
図5A〜5Cは、HIF阻害剤に関する式の例示的な実施形態を表す。これらは、式A'/X2'、式B'/X7'、式B'/X8'、式C'/X2'、式C'/X3'、式C'/X4'、式C'/X5'、式C'/X6'、式C'/X7'、式C'/X8'、式D'/X1'、および式D'/X7'を含むが、これらに限定されない。特に、HIF阻害剤は式B'/X7'、式B'/X8'、式C'/X7'、式C'/X8'および式D'/X7'を含むが、これらに限定されない。
【0099】
図6は、HIF阻害剤に関する式の例示的な実施形態を示す。これらは、式H'、式I'、式J'、式P'、式Q'、式R'、式S'、式T'、式U'、式V'、式W'および式X'を含むが、これらに限定されない。
【0100】
別の実施形態において、HIF阻害剤(例えば、図1〜8に示すHIF阻害剤)は、開示する化合物の誘導体であり、開示する化合物の酸化物、還元物、または加水分解反応産物、特に窒素を含有する環(例えばイミダゾール環)が開環した化合物を含むが、これらに限定されない。
【0101】
HIF阻害剤は、当技術分野において知られるベンゾピラン合成の方法および技術を用いて合成した。例えば、Nicolaou, K.C.ら, Natural Product-like Combinatorial Libraries Based on Privileged Structures 1. General Principles and Solid-Phase Synthesis of Benzopyrans. J. Am. Chem. Soc. 122:9939-9953(2000);Nicolaou, K.C.ら, Natural Product-like Combinatorial Libraries Based on Privileged Structures 2. Construction of a 10,000-Membered Benzopyran Library by Directed Split-and-Pool Chemistry Using NanoKans and Optical Encoding. J. Am. Chem. Soc. 122:9954-9967(2000);Nicolaou, K.C.ら, Natural Product-like Combinatorial Libraries Based on Privileged Structures 3. The "Libraries from Libraries" Principle for Diversity Enhancement of Benzopyran Libraries. J. Am. Chem. Soc. 122:9968-9976(2000)を参照せよ(これらは参照によりその全体が組み込まれる)。
【0102】
使用法
本開示のいくつかの実施形態は、HIF(例えば、HIF-1、HIF-2およびHIF-3)経路を経由するシグナル伝達を調節(例えば、妨害、阻害または阻止)することに関する。そのような阻害は、HIFまたはHIFに関連した分子と、本開示のHIF阻害剤化合物またはこれらの誘導体とを結合させ、HIFを不活性化または無効の状態にすることにより達成され得る。あるいはまた、細胞内のHIFの発現を(HIF mRNAの転写、HIF mRNAの転写後修飾、HIF mRNAの翻訳、HIFタンパク質の翻訳後修飾、およびHIF安定性を抑制することによって)抑制することにより、HIF経路は全体的または部分的に阻害され得る。HIF阻害はまた、HIFまたはHIF複合体の低酸素応答配列への結合を妨害することによっても達成され得る。
【0103】
1つの実施形態は、HIFを阻害する量の開示されるHIF阻害剤化合物、組成物、誘導体、製薬上許容され得る塩、プロドラッグ、またはこれらの組み合わせを、治療が必要な宿主、例えば哺乳動物に投与することによって、低酸素関連病変を治療または予防する方法を提供する。
【0104】
実施形態は、HIFを阻害する量の開示されるHIF阻害剤化合物、組成物、誘導体、製薬上許容され得る塩、プロドラッグ、またはこれらの組み合わせを、治療が必要な宿主、例えば哺乳動物に投与することによって、血管新生に関連する疾患(例えば、眼病(例えば、白内障、緑内障、黄斑変性症、および糖尿病性網膜症))を治療または予防する方法を提供する。
【0105】
別の実施形態は、HIFを阻害する量の開示されるHIF阻害剤化合物、組成物、誘導体、製薬上許容され得る塩、プロドラッグ、またはこれらの組み合わせと、細胞とを接触させることによって、細胞、例えば真核細胞内のHIF活性を調節する方法を提供する。
【0106】
さらに別の実施形態は、HIFを阻害する量の開示されるHIF阻害剤化合物、組成物、誘導体、製薬上許容され得る塩、プロドラッグ、またはこれらの組み合わせを宿主に投与することによって、宿主の癌または腫瘍を治療または予防する方法を提供する。
【0107】
癌は、異常な細胞が制御されずに蓄積および分裂する疾患に対する一般的な用語である。癌細胞は、隣接する組織に浸潤することができ、そして血流およびリンパ系を通じて身体の他の部位に拡散し得る。HIF阻害剤を宿主(例えば、哺乳動物)に投与することが、癌、腫瘍の増殖または形成、および腫瘍細胞の転移を阻害または減少させることが分かってきた。
【0108】
いくつかの主要な癌のタイプがあり、そして開示される組成物はあらゆるタイプの癌を治療するのに使用され得る。例えば、癌腫は、皮膚において、または内臓器官を裏打ちするかもしくは覆う組織において発生する癌である。肉腫は、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管、または他の結合組織もしくは支持組織において発生する癌である。白血病は、骨髄等の造血組織において発生し、そして多数の異常な血液細胞の産生および血流への浸潤をもたらす。リンパ腫は、免疫系の細胞において発生する癌である。
【0109】
正常な細胞が、その特定の、制御された、そして組織的な単位として振舞う能力を喪失する時に、腫瘍が形成される。一般的に、固形腫瘍は異常に大量の組織であり、通常、嚢胞または液体領域を含まない(しかし、嚢胞および液体で満たされた中心壊死領域を有する脳腫瘍もある)。単発性腫瘍は、その中に、間違った異なるプロセスによる、異なる細胞集団(癌幹細胞を含む)をも有し得る。固形腫瘍は、良性(癌ではない)または悪性(癌)であり得る。異なるタイプの固形腫瘍は、それらを形成する細胞のタイプによって命名される。固形腫瘍の例示は、肉腫、癌腫およびリンパ腫である。白血病(血液の癌)は、一般的に固形腫瘍を形成しないが、このような癌は、HIF阻害剤によっても阻害され得る骨髄内の血管新生によって支持される。本明細書に記載する組成物は、腫瘍細胞の増殖を低減、阻害または減少するために使用することができ、その結果、腫瘍サイズを縮小させるのに役立つ。特に、開示される組成物は、固形腫瘍または低酸素領域における病変の治療に有用である。癌はまた、低酸素状態とは無関係の構成的なHIFの発現を導く遺伝子変化を有する。
【0110】
開示される組成物および方法により治療され得る代表的な癌は、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、頭部および頸部癌、白血病、肺癌、リンパ腫、黒色腫、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、子宮癌、子宮頸癌、甲状腺癌、胃癌、脳幹神経膠腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫、膠芽細胞腫、上衣細胞腫、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、胚細胞腫、頭蓋外腫瘍、ホジキン病、白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、肝臓癌、髄芽細胞腫、神経芽細胞腫、脳腫瘍一般、非ホジキンリンパ腫、骨肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、軟組織肉腫一般、テント上原始神経外胚葉腫瘍および松果体腫瘍、視覚路および視床下部膠腫、ウィルムス腫瘍、急性リンパ性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、食道癌、有毛細胞白血病、腎臓癌、多発性骨髄腫、口腔癌、膵臓癌、中枢神経系原発リンパ腫、皮膚癌、小細胞肺癌を特に含むが、これらに限定されない。さらなる癌は、World Cancer report, World Health Organization and International Agency for Research on Cancer, BW StewardおよびP Kleihuesによる監修, Lyon France 2003;IARC Press(ISBN 92 832 0411 5)に記載され、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
癌は、悪性または良性に分類できる。双方の場合に、細胞の異常な凝集および増殖がある。悪性の腫瘍の場合、これらの細胞は高い侵襲性の特性を獲得してより活動的に振舞う。最終的に、腫瘍細胞は、それらが発生した微視的環境から離脱し、身体の別の部位(例えば、非常に異なる環境で、通常はこれらの増殖をもたらさない部位)に拡散し、そして新しい場所でこれらの迅速な増殖および分裂を継続する能力でさえも獲得し得る。これを転移と呼ぶ。一度悪性細胞が転移すると、治療の達成はより困難である。
【0112】
良性腫瘍は浸潤する傾向が低く、そして転移は少ないようである。脳腫瘍は、脳内の広範囲に拡散するが、通常は脳の外側には転移しない。神経膠腫は、脳内部において非常に侵襲的であり、脳半球を横断することさえある。しかし、これらは非制御的な様式で分裂する。これらの位置によっては、良性の神経膠腫は悪性病変と同様に、生死に関わるものとなり得る。この例示は、脳における良性腫瘍であり、これは増殖して頭蓋骨内のスペースを占め、脳への圧力の増加をもたらす。本明細書が提供する組成物は、良性腫瘍または悪性腫瘍を治療するのに使用され得る。
【0113】
従って、1つの実施形態は、HIFを阻害する量の開示される1以上のHIF阻害剤化合物、その製薬上許容され得る塩、プロドラッグ、または誘導体に、細胞を接触させることによって、細胞、例えば腫瘍細胞または癌細胞の遺伝子転写、例えば、VEGF、エリスロポエチン、グルコース輸送体1、糖分解酵素、またはチロシン水酸化酵素の転写を調節する方法を提供する。あるいは、そのような転写は、HIFを阻害する量の開示するHIF阻害剤化合物および組成物を宿主に投与することにより、宿主内で阻害され得る。
【0114】
別の実施形態は、HIFを調節する量の開示される1以上のHIF阻害剤化合物、組成物、その製薬上許容され得る塩、誘導体、またはプロドラッグに、腫瘍細胞を接触させることによって、腫瘍細胞内の遺伝子発現を調節する方法を提供する。開示されるHIF阻害剤化合物および組成物を用いたHIF経路の調節は、転写、翻訳、および/または翻訳後の段階で起こり得る。
【0115】
別の実施形態は、開示されるHIF阻害剤化合物および組成物を、従来の化学療法剤および/または放射線治療と組み合わせて投与することにより、低酸素関連病変を治療する方法を提供する。例えば、開示されるHIF阻害剤の組成物は、病変(例えば、癌または他の低酸素関連病変等の増殖性病変)を治療するために、独立して、または互いに、すなわち他の1以上のさらなる治療薬と組み合わせて使用することができる。代表的な治療薬は、抗生物質、抗炎症薬、抗酸化剤、鎮痛剤、放射性同位体、抗体、化学療法剤(ノスカピン、パクリタキセル、ノコダゾール、ビンカアルカロイド、アドリアマイシン、アルケラン、Ara-C、BiCNU、ブスルファン、CCNU、カルボプラチン、シスプラチン、サイトキサン、ダウノルビシン、DTIC、5-FU、フルダラビン、ハイドレア、イダルビシン、イホスファミド、メトトレキセート、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ナイトロジェンマスタード、ベルバン(velban)、ビンクリスチン、VP-16、ゲンシタビン(gemzar)、ハーセプチン、イリノテカン(カンプトサー、CPT-11)、ロイスタチン、ナベルビン、リツキサン、STI-571、タキソテール、トポテカン(ハイカムチン)、ゼローダ(カペシタビン)、ゼベリン、BCNU、タキソール、テモゾロミド等)、およびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0116】
本開示のHIF阻害剤化合物は、病変(例えば癌)の治療のために、放射線治療または外科的処置と組み合わせて使用され得ることが認識される。
【0117】
1つの実施形態において、開示されるHIF阻害剤の組成物は、従来の化学療法剤に耐性を有するようになった宿主に投与される。
【0118】
HIF阻害剤の医薬組成物
本開示のHIF阻害剤の医薬組成物および剤形は、開示される製薬上許容され得る塩または製薬上許容され得るこれらの多形体、溶媒和物、水和物、脱水物、共結晶物、無水物、もしくは非結晶の形態を含む。開示される化合物の特定の塩は、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、およびこれらの水和物を含むが、これらに限定されない。
【0119】
本開示の医薬組成物および単位剤形はまた、通常は、1以上の製薬上許容され得る賦形剤または希釈剤も含む。溶解度の増加および/または流量(flow)、純度もしくは安定性(例えば吸湿性)特性の向上等(しかし、これらに限定されない)といった本開示の特定の化合物によって提供される利点は、これらを先行技術よりも、医薬製剤および/または患者への投与に対し、より適切となるようにすることが可能である。
【0120】
本開示の化合物の医薬単位剤形は、患者への経口投与、経粘膜投与(例えば、経鼻投与、舌下投与、膣内投与、口腔投与、もしくは直腸投与)、非経口投与(例えば、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与、もしくはボーラス注射)、局所投与、または経皮投与に適している。剤形の例示は以下のものを含むが、これらに限定されない:錠剤;カプレット;硬ゼラチンカプセルおよび軟弾性ゼラチンカプセル等のカプセル;カシェ剤;トローチ剤;ロゼンジ;分散剤;坐剤;軟膏;パップ剤(湿布);ペースト;散剤;包帯;クリーム;硬膏剤;液剤;パッチ;エアロゾル(例えば、鼻スプレーまたは吸入器);ゲル;患者への経口または経粘膜投与に適切な液体剤形(懸濁液(例えば、水性もしくは非水性液体懸濁液、水中油型乳剤、または油中水型液体乳剤)、溶液、およびエリキシル剤を含む);患者への非経口投与に適切な液体剤形;ならびに患者への非経口投与に適した液体剤形を提供するために再構成することができる滅菌固体(例えば、結晶性固体または非結晶性固体)。
【0121】
本開示の組成物の組成、形状および剤形のタイプは、通常はそれらの用途に依存して変化し得る。例えば、疾患または障害の緊急治療において使用される剤形は、同じ疾患または障害の長期治療において使用される剤形よりも、より多量の活性成分(例えば、開示する化合物またはこれらの組み合わせ)を含み得る。同様に、非経口の剤形は、同じ疾患または障害を治療するのに使用される経口の剤形よりも、少量の活性成分を含み得る。本開示によって包含される特定の剤形が互いに変化するこれらの方法およびその他の方法は、当業者には容易に明らかとなるだろう。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences,第18版, Mack Publishing, Easton, Pa.(1990)を参照せよ。
【0122】
一般的な医薬組成物および剤形は、1以上の賦形剤を含む。適切な賦形剤は、薬学または製剤学の技術分野の当業者によく知られており、適切な賦形剤の制限されない例示は、本明細書に提供される。特定の賦形剤が医薬組成物または剤形に組み込むのに適切であるかどうかは、限定するものではないが、剤形が患者に投与される方法を含む当技術分野でよく知られる様々な要因に依存する。例えば、錠剤またはカプセルといった経口の剤形は、非経口の剤形において使用するのには適さない賦形剤を含み得る。特定の賦形剤の適合性はまた、剤形中の特定の活性成分にも依存し得る。例えば、いくつかの活性成分の分解は、ラクトースといったいくつかの賦形剤によって、または水に曝露された場合に促進され得る。1級または2級アミンを含む活性成分は、特にそのような分解の促進を受けやすい。
【0123】
本開示はさらに、活性成分が崩壊する速度を下げる1以上の化合物を含む医薬組成物および剤形を包含する。そのような化合物は、本明細書において「安定剤」と呼ぶが、アスコルビン酸といった抗酸化剤、pH緩衝剤、または塩緩衝剤を含むが、これらに限定されない。さらに、本開示の医薬組成物または剤形は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウム、または有機酸といった1以上の溶解度調節剤を含み得る。特定の溶解度調節剤は酒石酸である。
【0124】
賦形剤の量およびタイプと同様に、剤形中の活性成分の量および特定のタイプは、限定するものではないが、患者に投与する経路などの因子によって異なり得る。しかし、本開示の化合物の代表的な剤形は、製薬上許容され得る塩、または製薬上許容され得るこれらの多形体、溶媒和物、水和物、脱水物、共結晶物、無水物、もしくは非結晶の形態を、約10 mg〜約1000 mgの量、好ましくは約25 mg〜約750 mgの量、およびより好ましくは50 mg〜500 mgの量で含む。
【0125】
さらに、化合物および/または組成物は、脂質ナノ粒子またはポリマーナノ粒子を用いて送達することができる。例えば、ナノ粒子は、非経口的に投与される薬剤の薬理学的特性および治療特性を改良するように設計することができる(Allen, T.M., Cullis, P.R. Drug delivery systems: entering the mainstream. Science. 303(5665):1818-22(2004))。
【0126】
経口剤形
経口投与に適した本開示のHIF阻害剤の医薬組成物は、錠剤(分割錠もしくはコーティング錠を含むが、これらに限定されない)、丸剤、カプレット、カプセル、チュアブル錠、粉末分包、カシェ剤、トローチ剤、ウエハース、エアロゾルスプレー、あるいは液体(制限されないが、シロップ、エリキシル、水性溶液もしくは非水溶性溶液中の溶液または懸濁液、水中油型乳剤、または油中水型乳剤等)といった別々の剤形として提供されるが、これらに限定されない。そのような組成物は、規定量の本開示の化合物の製薬上許容され得る塩を含み、そして当業者によく知られる製剤方法により調製され得る。一般的には、Remington's Pharmaceutical Sciences,第18版, Mack Publishing, Easton, Pa.(1990)を参照せよ。
【0127】
本開示の組成物の一般的な経口剤形は、本開示の化合物の製薬上許容され得る塩を、従来の調剤技術に従って、少なくとも1種の賦形剤と十分に混合することによって調製する。賦形剤は、投与に望ましい組成物の形態によって、多種多様な形態をとることができる。例えば、経口液体剤形またはエアロゾル剤形に使用するのに適した賦形剤は、水、グリコール、油、アルコール、矯味剤、保存剤、および着色剤を含むが、これらに限定されない。固形経口剤形(例えば、散剤、錠剤、カプセル、およびカプレット)に使用するのに適した賦形剤の例示は、デンプン、糖、微結晶性セルロース、カオリン、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、および崩壊剤を含むが、これらに限定されない。
【0128】
投与が容易なために、固形の医薬賦形剤を使用する場合には、錠剤およびカプセルは最も有利な固形経口投与単位剤形である。必要に応じて、錠剤は標準的な水溶液法または非水溶液法によってコーティングすることができる。これらの剤形は、任意の製剤方法により調製され得る。一般的には、医薬組成物および剤形は、活性成分を液体担体、微粉化固形担体、またはこれらの双方と均一かつ十分に混合し、そして次に、必要であれば生成物を所望の形状に成形することによって調製する。
【0129】
例えば、錠剤は圧縮または成形によって調製され得る。圧縮錠剤は、適切な機器において、粉末または顆粒といった自由流動形態の活性成分を圧縮し、場合により、1種以上の賦形剤と混合することにより調製され得る。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状の化合物の混合物を、適切な機器において成形することにより製造され得る。
【0130】
本開示の経口剤形に使用され得る賦形剤の例示は、結合剤、充填剤、崩壊剤、および滑沢剤を含むが、これらに限定されない。医薬組成物および剤形に使用するのに適した結合剤は、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、または他のデンプン、ゼラチン、天然ゴムおよび合成ゴム(アラビアゴム等)、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、トラガカント粉末、グアーガム、セルロースおよびその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチセルロースカルシウム、カルボキシメチセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、α化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、No. 2208, 2906, 2910)、微結晶性セルロース、およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0131】
微結晶性セルロースの適切な形態は、AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103、AVICEL RC-581およびAVICEL-PH-105として販売される物質(FMC Corporation, American Viscose Division, Avicel Sales, Marcus Hook, Pa., U.S.A.より入手)およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。例示的な適切な結合剤は、AVICEL RC-581として販売される、微結晶性セルロースとカルボキシメチルセルロースナトリウムとの混合物である。適切な無水もしくは低水分性の賦形剤または添加剤には、AVICEL-PH-103(商標)およびStarch 15000 LMが含まれる。
【0132】
本明細書に開示される医薬組成物および剤形に使用するのに適した充填剤の例示は、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒または粉末)、微結晶性セルロース、セルロース粉末、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、α化デンプン、およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。本開示の医薬組成物における結合剤または充填剤は、一般的には、医薬組成物または剤形の約50〜約99重量%である。
【0133】
水性環境に曝露された時に崩壊する錠剤を提供するために、崩壊剤が本開示の組成物に使用される。過剰な崩壊剤を含む錠剤は、保存中に膨張したり、割れたり、または崩壊するかも知れず、一方、崩壊剤を過少に含むものは、崩壊が起こるのに不十分かも知れず、従って、剤形からの活性成分の放出の速度および程度が変化し得る。従って、過少または過剰により活性成分の放出をひどく変化させることのない、十分な量の崩壊剤が、本開示の固形経口剤形を形成するのに使用されるべきである。使用される崩壊剤の量は、製剤のタイプおよび投与の様式に基づいて変化し、そして、当業者に容易に認識される。一般的な医薬組成物は、約0.5〜約15重量%の崩壊剤、好ましくは約1〜約5重量%の崩壊剤を含む。
【0134】
本開示の医薬組成物および剤形を形成するのに使用され得る崩壊剤は、カンテン、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、他のデンプン、α化デンプン、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ゴム、およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0135】
本開示の医薬組成物および剤形を形成するのに使用され得る滑沢剤は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、硬化植物油(例えば、ラッカセイ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、カンテン、およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。さらなる滑沢剤は、例えば、サイロイドシリカゲル(AEROSIL(登録商標)200, Baltimore, Md のW. R. Grace Co.により製造)、合成シリカの凝固エアロゾル(Plano, Tex.のDegussa Co.から市販)、CAB-O-SIL(登録商標)(Boston, Mass.のCabot Co.により販売される焼成二酸化ケイ素製品)、およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。仮に使用する場合、滑沢剤は通常は、それらが組み込まれる医薬組成物または剤形の約1重量%未満の量で使用される。
【0136】
本開示はさらに、ラクトース非含有の医薬組成物および剤形を包含し、ここで、このような組成物は好ましくは、もし含んでいたとしても、ラクトースまたは他の単糖もしくは二糖をほとんど含まない。本明細書で使用する用語「ラクトース非含有」は、もし含んでいたとしても、存在するラクトースの量が、実質的に活性成分の崩壊速度を加速させるのに不十分であることを意味する。
【0137】
本開示のラクトース非含有組成物は、当業者によく知られる賦形剤を含んでいてもよく、そして、USP(XXI)/NF(XVI)に列挙され、これは参照により本明細書に組み込まれる。一般的に、ラクトース非含有組成物は、HIF阻害剤の製薬上許容され得る塩、結合剤/充填剤、および滑沢剤を、製薬上適切な量かつ製薬上許容され得る量で含む。好ましいラクトース非含有剤形は、本開示の化合物の製薬上許容され得る塩、微結晶性セルロース、α化デンプン、およびステアリン酸マグネシウムを含む。
【0138】
水が化合物の分解を促進することがあるので、本開示はさらに、開示される化合物を活性成分として含む無水の医薬組成物および剤形を包含する。例えば、水の添加(例えば5%)は、長期間に渡る製剤の保存期間または安定性といった特徴を決定するための、長期保存を想定する手段として、医薬分野において幅広く受け入れられている。例えば、Jens T. Carstensen, Drug Stability: Principles & Practice, 379-80(第2版, Marcel Dekker, NY, N. Y.: 1995)を参照せよ。水および熱は、いくつかの化合物の分解を促進する。従って、通常、水分および/または湿気が、製剤の製造中、処理中、包装中、保存中、出荷中、および使用中に接触するため、製剤における水の作用が大変重要であり得る。
【0139】
本開示の無水の医薬組成物および剤形は、無水成分または低水分含有成分を用いて、かつ低水分状態または低湿度状態で調製され得る。ラクトース、および1級または2級アミンを含有する少なくとも1つの活性成分を含む医薬組成物および剤形は、製造中、包装中、および/または保存中に水分および/または湿気との実質的な接触が見込まれる場合、好ましくは無水である。
【0140】
無水の医薬組成物は、その無水性が維持されるように調製および保存されるべきである。従って、無水組成物は、好ましくは水への曝露を防ぐことが知られる物質を用いて包装することにより、適切な処方キットに含めることができる。適切な包装の例示は、密封されたホイル、プラスチック、乾燥剤を含むかまたは含まない単位用量容器(例えばバイアル)、ブリスターパック、およびストリップパックを含むが、これらに限定されない。
【0141】
制御放出剤形および遅延放出剤形
開示されるHIF阻害剤化合物の製薬上許容され得る塩は、制御放出手段または遅延放出手段によって投与され得る。制御放出の医薬品は、非制御放出の医薬品によって達成される目的を上回って薬剤療法を改良するという共通した目的を有する。理想的には、医療において最適に設計された制御放出製剤を使用することは、最小限の時間内に病態を治療または制御するために使用する医薬物質が最小限であることを特徴とする。制御放出製剤の利点は:1)薬剤の活性延長;2)投薬頻度の減少;3)患者のコンプライアンスの向上;4)少ない総薬量の使用;5)局所的または全身的副作用の減少;6)薬剤の蓄積の最少化;7)血中レベルの変動の減少;8)治療効果の向上;9)薬剤活性増強の減少または薬剤活性損失の減少;および10)疾患または病態の制御速度の向上、を含む。Kim, Cherng-ju, Controlled Release Dosage Form Design, 2(Technomic Publishing, Lancaster, Pa.:2000)。
【0142】
従来の剤形は一般的に、製剤からの迅速または即時的な薬剤の放出を提供する。薬剤の薬理学的特性および薬物動態学的特性により、従来の剤形の使用は、患者の血中および他の組織中における薬剤の濃度に広い変動をもたらし得る。これらの変動は、投薬頻度、作用の開始、効果の持続期間、治療的血中レベルの維持、毒性、副作用等といった多くのパラメーターに影響を及ぼし得る。有利なことに、制御放出製剤は、薬剤の作用開始、作用の持続期間、治療濃度域内の血漿レベル、および最高血中レベルを制御するために使用され得る。特に、制御放出剤形もしくは製剤または持続放出剤形もしくは製剤は、薬剤の最大限の有効性が達成される一方、不十分な量の薬剤の投与(つまり、最小治療レベルを下回る)ならびに毒性レベルを上回る量の薬剤の投与の両方から起こり得る潜在的な有害な作用および安全性の懸念が最小限となるように使用され得る。
【0143】
多くの制御放出製剤は、所望の治療効果を即座に生じる量の薬剤(有効成分)を初めに放出し、そして次第に、かつ連続的に、この治療的レベルまたは予防的効果のレベルを長期間に渡って維持する別の量の薬剤を放出するように設計される。体内でこの薬剤の一定レベルを維持するために、代謝されて体内から排出される薬剤の量を置き換える速度で、薬剤が剤形から放出されなければならない。活性成分の制御放出は、pH、イオン強度、浸透圧、温度、酵素、水、および他の生理学的条件または化合物を含む種々の条件により促進され得るが、これらに限定されない。
【0144】
種々の知られる制御放出または持続放出の剤形、製剤および装置は、本開示の塩および組成物と共に使用するのに適合し得る。例示は、米国特許第:3,845,770号;3,916,899号;3,536,809号;3,598,123号;4,008,719号;5,674,533号;5,059,595号;5,591,767号;5,120,548号;5,073,543号;5,639,476号;5,354,556号;5,733,566号;および6,365,185 B1号に記載されるものを含むが、これらに限定されず、これら各々は参照により本明細書に組み込まれる。これらの剤形は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリクス、ゲル、透過性膜、浸透性システム(OROS(登録商標)(Alza Corporation, Mountain View, Calif. USA)等)、多層コーティング、微小粒子、リポソーム、もしくは微小球、またはこれらの組み合わせを使用して、1以上の活性成分の遅延放出または制御放出を提供するのに使用することができ、種々の比率で所望の放出特性を提供する。さらに、イオン交換物質を使用して、開示される化合物の固定化され、吸着された塩形態を調製することができ、したがって、薬剤の制御された送達を達成する。特定の陰イオン交換体の例示は、Duolite(登録商標)A568およびDuolite(登録商標)AP143(Rohm&Haas, Spring House, Pa. USA)を含むが、これらに限定されない。
【0145】
本開示の1つの実施形態は、開示される化合物の製薬上許容され得る塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、もしくはリチウム塩)、あるいはこれらの多形体、溶媒和物、水和物、脱水物、共結晶物、無水物、または非結晶の形態、および1以上の製薬上許容され得る賦形剤または希釈剤を含む単位剤形を包含し、ここで、医薬組成物または剤形は、制御放出型として製剤される。特定の剤形は、浸透圧薬剤送達系を利用する。
【0146】
特定のよく知られる浸透圧薬剤送達系は、OROS(登録商標)(Alza Corporation, Mountain View, Calif. USA)と言われる。この技術は、本開示の化合物および組成物の送達に容易に適用され得る。本技術の種々の態様は、米国特許第6,375,978 B1号;6,368,626 B1号;6,342,249 B1号;6,333,050 B2号;6,287,295 B1号;6,283,953 B1号;6,270,787 B1号;6,245,357 B1号;および6,132,420号に開示され;これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。本開示の化合物および組成物を投与するのに使用され得るOROS(登録商標)の特定の適用は、OROS(登録商標)Push-Pull(商標)、Delayed Push-Pull(商標)、Multi-Layer Push-Pull(商標)、およびPush-Stick(商標)システムを含むが、これらに限定されず、これらすべてはよく知られる。例えば、ワールドワイドウェブサイトalza.com.を参照せよ。本開示の化合物および組成物の制御経口送達に使用され得るさらなるOROS(登録商標)システムは、OROS(登録商標)-CTおよびL-OROS(登録商標)を含む;Delivery Times, vol 11, issue II(Alza Corporation)を参照せよ。
【0147】
従来のOROS(登録商標)経口剤形は、薬剤の粉末(例えば、HIF阻害剤の塩)を硬い錠剤に圧縮し、錠剤をセルロース誘導体でコーティングすることにより、半透過性膜を形成させ、そして次にコーティングに穴を開けること(例えば、レーザーによって)により製造される。Kim, Cherng-ju, Controlled Release Dosage Form Design, 231-238(Technomic Publishing, Lancaster, Pa.:2000)。そのような剤形の利点は、薬剤の送達速度が、生理学的または実験的条件の影響を受けないということである。pH依存性の溶解度を有する薬剤であっても、送達媒体のpHに関係なく、一定速度で送達され得る。しかし、これらの利点は、投与後の剤形中の浸透圧の増加によって提供されるため、従来のOROS(登録商標)薬剤送達システムは、水難溶性の薬剤を効果的に送達するのには使用できない。本開示のHIF阻害剤の塩および複合体(例えば、HIF阻害剤のナトリウム塩)は、HIF阻害剤それ自身よりはるかに水に可溶性であり得るため、これらは患者への浸透圧に基づく送達によく適し得る。しかしながら、本開示は、HIF阻害剤ならびにその非塩型の異性体および異性体混合物を、OROS(登録商標)剤形への組み込むことを包含する。
【0148】
本開示のHIF阻害剤の組成物の特定の剤形は:空洞を画定する壁であって、壁に形成されるかまたは形成され得る出口穴を有し、そして少なくとも壁の一部が半透過性である壁;出口穴から離れた空洞内に位置し、そして壁の半透過性部分と流体連通している膨張可能な層;出口に隣接し、そして膨張可能な層と直接的または間接的に接する関係にある、乾燥した状態または実質的に乾燥した状態の薬剤層;ならびに壁の内面と、空洞内に位置する薬剤層の少なくとも外部表面との間に挿入された流動促進層を含み、ここで、薬剤層はHIF阻害剤の塩、またはその多形体、溶媒和物、水和物、脱水物、共結晶物、無水物、もしくは非結晶の形態を含む。米国特許第6,368,626号を参照のこと(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0149】
本開示の別の特定の剤形は:空洞を画定する壁であって、壁に形成されるかまたは形成され得る出口穴を有し、そして少なくとも壁の一部が半透過性である壁;出口穴から離れた空洞内に位置し、そして壁の半透過性部分と流体連通している膨張可能な層;出口に隣接し、そして膨張可能な層と直接的または間接的に接する関係にある薬剤層;液体、多孔性粒子に吸着された活性物質、液体の顕著な浸出のない圧縮された薬剤層を形成するのに十分な圧縮力に耐えるのに適合している多孔性粒子、活性物質製剤、場合により出口穴と薬剤層との間に偽薬層を有する剤形を含み、ここで、活性物質製剤は、HIF阻害剤の塩、またはその多形体、溶媒和物、水和物、脱水物、共結晶物、無水物、もしくは非結晶の形態を含む。米国特許第6,342,249号を参照のこと(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0150】
非経口剤形
非経口剤形は、種々の経路で患者に投与することができ、皮下、静脈内(ボーラス注射を含む)、筋肉内、および動脈内を含むが、これらに限定されない。一般的に、非経口剤形の投与は患者本来の混入物質に対する防御を回避するため、非経口剤形は、患者に投与する前に滅菌されているかまたは滅菌可能であることが好ましい。非経口剤形の例示は、注射用液体、注射用に製薬上許容され得るベヒクル中に用時溶解または用時懸濁する乾燥生成物、注射用懸濁物、および乳剤を含むが、これらに限定されない。さらに、制御放出型非経口剤形は、DUROS(登録商標)型剤形の投与を含む(これに限定されない)患者への投与、および1回の投与(dose-dumping)のために調製することができる。
【0151】
本開示の非経口剤形を提供するために使用できる適切なベヒクルは、当業者によく知られる。例示は:滅菌水;USP注射用水;食塩水;グルコース溶液;水性ベヒクル(塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液、ならびに乳酸リンゲル注射液等を含むが、これらに限定されない);水混和性ベヒクル(エチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコール等を含むが、これらに限定されない);ならびに非水性ベヒクル(トウモロコシ油、綿実油、ラッカセイ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、および安息香酸ベンジル等を含むが、これらに限定されない)を含むが、これらに限定されない。
【0152】
本明細書に開示するHIF阻害剤の製薬上許容され得る塩の溶解度を変化または変更する化合物は、従来の非経口剤形および制御放出型の非経口剤形を含む本開示の非経口剤形内に組み込むこともできる。
【0153】
局所剤形、経皮剤形、および経粘膜剤形
本開示の局所剤形は、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、シャンプー、スプレー、エアロゾル、溶液、乳剤、および当業者によく知られる他の形態を含むが、これらに限定されない。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences,第18版, Mack Publishing, Easton, Pa.(1990);およびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms,第4版, Lea & Febiger, Philadelphia, Pa.(1985)を参照せよ。噴霧不可能な局所剤形には、局所適用に適合する担体または1以上の賦形剤を含み、好ましくは水より高い動粘性を有する、粘性から半固体または固体形状であるものが一般的に用いられる。適切な製剤は、溶液、懸濁液、乳剤、クリーム、軟膏(ointments)、散剤、リニメント剤、軟膏(salves)等を含むが、これらに限定されず、これらは必要に応じて、滅菌するかまたは補助剤(例えば、保存剤、安定剤、湿潤剤、バッファー、もしくは塩)と混合することにより、例えば、浸透圧といった種々の特性に影響を与える。他の適切な局所剤形は、噴霧可能なエアロゾル調製物を含み、ここで、活性成分は、好ましくは固体または液体の不活性担体と組み合わせて、圧縮した揮発物質(例えば、フロンガスといった気体の加圧ガス)との混合物中またはスクイーズボトル中に包装される。湿潤剤または保湿剤もまた、必要に応じて医薬組成物および剤形に添加することができる。そのような添加成分の例示は、当技術分野においてよく知られる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences,第18版, Mack Publishing, Easton, Pa.(1990)を参照せよ。
【0154】
本開示のHIF阻害剤の組成物の経皮剤形および経粘膜剤形は、点眼剤、パッチ、スプレー、エアロゾル、クリーム、ローション、坐剤、軟膏、ゲル、溶液、乳剤、懸濁液、または当業者によく知られる他の形態を含むが、これらに限定されない。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences,第18版, Mack Publishing, Easton, Pa.(1990);およびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms,第4版, Lea & Febiger, Philadelphia, Pa.(1985)を参照せよ。口腔内の粘膜組織を治療するのに適した剤形は、口腔洗浄剤として、経口ゲルとして、または口腔パッチ(buccal patches)として製剤され得る。さらなる経皮剤形は、「リザーバータイプ」または「マトリクスタイプ」のパッチを含み、これらは皮膚に適用でき、そして所望の量の活性成分が浸透するように特定の期間装着することができる。
【0155】
経皮剤形および本開示の活性成分を投与するのに用いられ得る投与方法の例示は、米国特許第4,624,665号;第4,655,767号;第4,687,481号;第4,797,284号;第4,810,499号;第4,834,978号;第4,877,618号;第4,880,633号;第4,917,895号;第4,927,687号;第4,956,171号;第5,035,894号;第5,091,186号;第5,163,899号;第5,232,702号;第5,234,690号;第5,273,755号;第5,273,756号;第5,308,625号;第5,356,632号;第5,358,715号;第5,372,579号;第5,421,816号;第5,466,465号;第5,494,680号;第5,505,958号;第5,554,381号;第5,560,922号;第5,585,111号;第5,656,285号;第5,667,798号;第5,698,217号;第5,741,511号;第5,747,783号;第5,770,219号;第5,814,599号;第5,817,332号;第5,833,647号;第5,879,322号;および第5,906,830号に記載されるものを含むが、これらに限定されず、これらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0156】
本開示に包含される経皮剤形および経粘膜剤形を提供するのに使用され得る適切な賦形剤(例えば、担体および希釈剤)ならびに他の物質は、薬学分野の当業者によく知られており、所与の医薬組成物または剤形が適用される特定の組織または器官に依存する。この事実を考慮に入れ、一般的な賦形剤は、限定されないが、水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油、およびそれらの混合物が含まれ、非毒性で製薬上許容され得る剤形を形成する。
【0157】
治療する特定の組織に依存して、本開示のHIF阻害剤の製薬上許容され得る塩を用いた治療の前に、それと共に、またはその後に、さらなる成分が使用され得る。例えば、浸透促進剤は、活性成分を組織へまたは組織全体に送達するのを補助するのに使用され得る。適切な浸透促進剤は:アセトン;種々のアルコール(エタノール、オレイル、テトラヒドロフリルなど);アルキルスルホキシド(ジメチルスルホキシドなど);ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;ポリエチレングリコール;ピロリドン(ポリビニルピロリドンなど);コリドン(Kollidon)グレード(ポビドン、ポリビドン);尿素;ならびに種々の水溶性の糖エステルまたは不溶性の糖エステル(TWEEN 80(ポリソルベート80)およびSPAN 60(ソルビタンモノステアラート)など)を含むが、これらに限定されない。
【0158】
医薬組成物もしくは剤形のpH、または医薬組成物もしくは剤形が適用される組織のpHもまた、活性成分の送達を改良するために調整され得る。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度、または張性は、送達を改良するために調整され得る。活性成分の親水性または親油性を都合よく変化させて送達を改良するために、ステアラートなどの化合物もまた、医薬組成物または剤形に添加され得る。この点において、ステアラートは、製剤のための脂質ベヒクルとして、乳化剤または界面活性剤として、および送達増強剤または浸透促進剤としての役割を果たし得る。HIF阻害剤の製薬上許容され得る塩の、異なる水和物、脱水物、共結晶物、溶媒和物、多形体、無水物、または非結晶の形態は、生じる組成物の特性をさらに調整するために使用され得る。
【0159】
キット
一般的に、本開示の医薬組成物の活性成分は、好ましくは同時にまたは同じ投与経路では患者に投与されない。従って、この開示は、医師によって使用される場合に、患者へ適量の活性成分を投与することを簡略化することのできるキットを包含する。
【0160】
一般的なキットは、HIF阻害剤の製薬上許容され得る塩の単位剤形、そして場合により、抗増殖剤または抗癌剤などの第二の薬理活性化合物の単位剤形を含む。特に、HIF阻害剤の製薬上許容され得る塩は、ナトリウム塩、リチウム塩、もしくはカリウム塩、またはこれらの多形体、溶媒和物、水和物、脱水物、共結晶物、無水物、もしくは非結晶の形態である。キットはさらに、活性成分の投与に使用可能な装置を含み得る。そのような装置の例示は、注射器、点滴袋、パッチ、および吸入器を含むが、これらに限定されない。
【0161】
本開示のキットは、1以上の活性成分(例えば、HIF阻害剤)の投与に使用可能な、製薬上許容され得るベヒクルをさらに含み得る。例えば、活性成分が、非経口投与のために再構成されなければならない固体形態で提供される場合、キットは、非経口投与に適する、微粒子を含まない滅菌溶液を形成するための、活性成分を溶解することのできる適切なベヒクルの密封容器を含み得る。製薬上許容され得るベヒクルの例示は:USPの注射用水;水性ベヒクル(塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液、ならびに乳酸リンゲル注射液等を含むが、これらに限定されない);水混和性ベヒクル(エチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコール等を含むが、これらに限定されない);および非水性ベヒクル(トウモロコシ油、綿実油、ラッカセイ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、および安息香酸ベンジル等を含むが、これらに限定されない)を含むが、これらに限定されない。
【0162】
他の実施形態は、低酸素関連病変を治療するための薬剤の調製における、開示される組成物の使用に関する。
【実施例】
【0163】
実施例1
6コピーの低酸素応答配列の制御下でアルカリホスファターゼレポーター遺伝子を安定発現する、遺伝子組換えLN229細胞(ヒト神経膠腫細胞株)を用いて、HIF-1/HRE経路の低分子阻害剤を同定した。組換えLN229細胞株は、米国仮特許出願第60/235,283号に開示され、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。細胞を96穴プレート中にウェル当たり40,000細胞で播種した。2,2-ジメチルベンゾピラン部分を有する対象の化合物を添加し、そして、プレートを低酸素下(1% O2、5% CO2、および94% N2)37℃で24時間インキュベーションした。次に細胞をリン酸緩衝食塩水で洗浄し、そしてp-ニトロフェニルリン酸塩を用いて37℃で30分間インキュベーションした。反応を、3 N NaOHを添加することにより停止させ、そしてプレートは、405 nmでの吸光度を測定した。各々の化合物の抗HIF-1/HRE活性を、未処理の対照細胞の活性と比較したアルカリホスファターゼ(AP)活性の減少割合として定量化した。
【0164】
図7および8は、例示的なHIF阻害剤化合物を示し、10μMでのAP活性を示す。図7および8における%表示は、阻害の後に残ったAP活性の割合を表し、例えばこのアッセイでは、割合が低いほど抗HRE活性が良好であることに注目すべきである。図9は、最初のHIF阻害剤85D5Rについての構造-活性相関実験(SAR)の成果の簡略図を示す。この化合物の阻害活性は、活性が改良された化合物を生成するために、部位Iおよび部位IIにおける修飾によって改良された(KCN1およびKCN67、これらも図7に示す)。部位IIIの独立した除去に関する実験は、「サマプリン(Psammaplin)」との類似点を明らかにし、そして試験した多くのサマプリンもまた、バイオアッセイにおいて抗HRE活性を示した(図8を参照せよ)。
【0165】
実施例2
この実施例は、HIF阻害剤がマウスにおいて、HIF-1αおよび侵襲性ヒト腫瘍(神経膠芽細胞腫)の増殖を阻害し得ることを示す実験を示す。
【0166】
低分子のHIF-1経路阻害剤について選別するために、神経膠腫細胞株に低酸素誘導性アルカリホスファターゼ(AlkPhos)発現ベクター(LN229-HRE-AP)を安定に導入することによって、細胞アッセイを構築した。細胞の低酸素(1% O2)への曝露は、レポーター遺伝子発現を誘導し、これは比色反応によって検出および定量することができた。このバイオアッセイを用いて、2,2-ジメチルベンゾピラン骨格部分に基づいた10,000個の天然物様化合物を選別した。2,2-ジメチルベンゾピラン部分を薬剤設計のための優先的な合成骨格として選択したのは、この骨格が4,000個以上の天然物に存在し、良好な細胞膜透過性を確保するのに十分な親油性であり、BBBを通過して低酸素腫瘍に達すると思われる、平均500 Da未満の化合物を生成するからである(Nicolaou, K.C.ら, Natural Product-like Combinatorial Libraries Based on Privileged Structures 1. General Principles and Solid-Phase Synthesis of Benzopyrans. J. Am. Chem. Soc. 122:9939-9953(2000);Nicolaou, K.C.ら, Natural Product-like Combinatorial Libraries Based on Privileged Structures 2. Construction of a 10,000-Membered Benzopyran Library by Directed Split-and-Pool Chemistry Using NanoKans and Optical Encoding. J. Am. Chem. Soc. 122:9954-9967(2000);Nicolaou, K.C.ら, Natural Product-like Combinatorial Libraries Based on Privileged Structures 3. The "Libraries from Libraries" Principle for Diversity Enhancement of Benzopyran Libraries. J. Am. Chem. Soc. 122:9968-9976(2000))。
【0167】
発見された化合物の1つの例示は、KCN1(図2Aおよび2Bの式D'/X7')であり、IC50(4μM以下)および実験のLogP(3.9)が改良された(示さない;cLogP=5.8)誘導体であった。4 gのKCN1を、最初のPKおよび抗腫瘍研究のために合成した。図10は、KCN1を形成する方法の実例的な実施形態を示す。
【0168】
正常酸素細胞および低酸素細胞の抽出物を、KCN1によって媒介される全タンパク質発現レベルの変化について、ウエスタンブロット解析によって5時間の時点で解析し、強い抗HIF-1α活性を検出した。シグナル伝達タンパク質(Akt、p85 PI3Kサブユニット、Erk1/2)、短命のタンパク質(p53、IkBα,サイクリンD1)、または調節タンパク質(HIF-1βおよびアクチン)については、変化は観察されなかった(図11(A))。上記の抽出物をさらに解析して、重要なシグナル伝達タンパク質の活性状態の変化を、多重ウエスタン(Kinexus)によって検出した。この方法は、重要な細胞シグナル経路に関与する37種の異なるリンタンパク質を同時に選別することを可能にする。これらの結果は、これらの細胞において検出可能なリン酸化を示す27種のこれらのタンパク質に対して、KCN1がわずかな影響(<1.5倍)を有することを示す(図11(B))。KCN1は低酸素条件下でHIF-1αのみを阻害する(図11(C))。CoCl2、デスフェロキサミン、またはプロテアソーム阻害剤MG132よる、正常酸素圧下におけるHIF-1αの安定化は、KCN1によって阻害されない。このことは、KCN1が独特の作用機構を有し、恐らく、低酸素下で特異的に機能するHIFの翻訳機構の成分を標的としていることを示唆する。
【0169】
可能性のあるKCN1の作用機序における知見を得るために、以下に列挙する多くの実験を実施した。まず、KCN1がHIFをmRNAレベルで阻止し得るか、またはタンパク質レベルで阻止し得るかに焦点を当てた実験を実施した。KCN1がHIF-1α mRNAの合成を妨害し得るか、または安定性を妨害し得るかを調べるために、ノーザンブロットを実施した。HIF-1α mRNAレベルは、KCN1処理をしてもしなくても一定に維持された(図12)。第二に、KCN1がHIFの核へ移行する能力を妨害し得るか否かに焦点を当てた実験を、顕微鏡によってLN229細胞内のその位置を調べることにより実施した。ウエスタンブロットの結果を確認すると、低酸素下においてKCN1はHIFの蓄積を阻害しており、HIFは核または細胞質には見られない。CoCl2条件下において、HIFは「化学的に誘導」され、そしてそのレベルは上記のウエスタンブロットから予想されるようにKCN1による影響を受けない(図11C)。HIFは、未処理細胞およびKCN1処理細胞のどちらにおいても主に細胞核に存在し、このことは、KCN1が核での蓄積を阻害しないことを示唆する(図13)。
【0170】
さらに、KCN1処理細胞およびCoCl2処理細胞の核に存在するHIFが転写的に活性か否かに焦点を当てた実験を実施した。細胞に存在するHRE-ルシフェラーゼレポーターのルシフェラーゼ活性が活性を維持することが見出され、このことは、KCN1が転写因子として機能するHIFの能力を阻止しないことを示唆する。第三に、KCN1がmRNAの翻訳を制御するPI3キナーゼ/Akt/mTOR経路によるHIF合成を妨害し得るか否かに焦点を当てた実験を実施した。成長因子IGF1(インスリン成長因子1)に対する応答のAktのリン酸化におけるKCN1の影響を調べた。図14は、Aktのセリン473におけるリン酸化が、IGF1処理によって迅速に誘導され、このシグナルはKCN1によっては1、3および6時間において阻害されないことを示す。興味深いことに、リン酸化Aktの増加がKCN1存在下で観察される。これに関する理由は現在のところ不明であるが、この発見は、KCN1がホスファターゼを阻害し得るか、またはキナーゼの活性を増加させ得ることを示唆する。この発見は、HIFに対するKCN1の活性とは関係なく、治療的意味合いを有するだろう。
【0171】
最後に、いくつかのHIF阻害剤がトポイソメラーゼ機能に対する影響を有し得るか否かに焦点を当てた実験を実施した。いくつかのHIF阻害剤がトポイソメラーゼ依存的な機構を介して作用し得ることが、文献において報告されている(Rapisarda Aら, 2004, Cancer Res 64, 1475-82)。KCN1およびサマプリンアナログF2(図8)を試験して、トポイソメラーゼIIに対するそれらの阻害効果を、キネトプラストDNA脱連環アッセイ(図15)を用いて調べた。F2は、連環kDNAの存在によって示されるように、アッセイにおいて40μMでtopo II活性を部分的に阻害し(エチジウムブロミド電気泳動の上方のバンド)、これは病院で使用される既知のtopo II阻害剤であるエトポシド(VP16)が100μMである場合に観察される阻害活性と同様である。反対に、このアッセイにおいて、KCN1は、HIFを阻害する濃度(5〜25μM)でtopo IIを阻害しなかった。これらのデータは:F2が治療的応用を有し得る有望なtopo IIの阻害剤であり得ること、そしてHIFを阻害するKCN1の能力がtopo IIの阻害と関係がないこと、およびKCN1が25μMまでの濃度でtopo IIを阻害しないことを示唆する。
【0172】
総合的に、これらの結果は、本開示の阻害剤が、低酸素下において5時間以内でHIF-1αの安定化を強く抑制する一方、これらは、同一期間内では、主要な細胞内シグナル事象または細胞内の他の短命のタンパク質の安定性を変動させない。
【0173】
双方向性LacZ-HRE-ホタルルシフェラーゼレポーターを含む神経膠腫細胞株を作製した。ラット脳に異種移植した時、HIF活性の出現は生物発光画像法(BLI)によって観察できる(図16)。BLIは、一度腫瘍が臨界サイズに達し、そして低酸素状態が進展すると、注入後約8日間から検出することができる(図17)。腫瘍は、低酸素誘導性のLacZ発現について染色することができる。
【0174】
異種移植した神経膠腫の、ピモニダゾールによる低酸素領域の検出は、げっ歯動物へのピモニダゾール注入、低酸素細胞内のチオール含有タンパク質に結合する化合物を含み、免疫組織化学によって、腫瘍切片において検出することができる。この技術を説明するために、本発明者らは、げっ歯動物において増殖したヒト神経膠腫のsc.およびic.異種移植片の低酸素領域の検出を示す(図17)。
【0175】
BBBは、薬剤送達に対する障害となり得る。KCN1が長時間に渡って脳に存在するか否か、そして正常な脳と腫瘍の脳のどちらにより大量のKCN1が蓄積するかを調べるために、本発明者らは予備的なPK実験を実施した。U87MG-EGFRvIII腫瘍を有するヌードマウスに、KCN1をiv.注射し、そして6、18および24時間の時点で屠殺した。脳腫瘍および反対側の正常な脳内のKCN1濃度を、HPLCによって測定した。この予備実験は、KCN1が脳に到達し、そして脳腫瘍に選択的に蓄積および保持されることを示唆する(図18)。
【0176】
げっ歯動物における抗癌剤の有効性は、臨床試験におけるこれらの薬剤の成功を明確に予測するものではないことがよく理解される。従って、薬剤治療の分子的および機構的評価項目(end points)を評価することは、初期の前臨床研究のための重要な補助的アプローチである。この点を考慮して、本発明者らは、本発明の主要なHIF-1経路阻害剤(KCN1)が神経膠腫異種移植モデルにおいてHIF活性を減少させることができるか否かを測定しようとした。予備実験において、本発明者らは、安定的なHIF応答性ルシフェラーゼレポーターを含む4つのLN229細胞の異種移植片を有するマウスを使用した(サイズの合った中型の腫瘍が後方、そして小さなものが前方)。腫瘍のHIF依存性ルシフェラーゼ活性を、非侵襲的BLIによって検出した。予想通り、より大きな後方の腫瘍はより強いルシフェラーゼシグナルを産生し、これは低酸素状態の体積が増加しているためであるようだった。KCN1を、右後方の腫瘍に注入し、そして対照として左後方の腫瘍にはベヒクル(DMSO)を注入した(前方の腫瘍は未処理のまま残した)。5時間後、マウスをBLIで再度検出し、KCN1を注入した腫瘍において、HIF依存性ルシフェラーゼ活性の>90%の減少が明らかとなり、一方、対照の腫瘍は変化しないままであった(図19)。ルシフェラーゼ活性は28時間後に回復し、このことはKCN1が急激な腫瘍細胞死の誘導によってBLIシグナルを減少させたのではないことを示す。この実験が二回繰り返して同じ結果であった(示さない)ということは、KCN1がin vivoにおいてGBM細胞のHRE活性を阻害することを強く示唆する。
【0177】
マウスにおける送達のために、KCN1をクレマホール/EtOH中に調製し、予備的な抗発癌性効果が観察され得るか否かを実験的に(つまり、そのin vivoの薬理学を事前に知ることなく)測定した。腫瘍増殖の強く持続的な阻害が、KCN1処理をした動物において観察された(図20)。上記の実験からの重要な結論はまた、KCN1が良好な耐性を示すことが分かったこと、およびit.およびiv.で注入した(100 mg/kg以下)動物において、明白な毒性が観察されなかったことである。
【0178】
阻害剤の実施形態は、阻害剤の特性を改良するために変更することができる。1つの実施形態において、阻害剤は以下のような部位に定義され得る:部位I(右側のアルキル/アリール置換基)、部位II(アシル/スルホニル置換基)、および部位III(ベンゾピラン芳香環系)。変更は、ヒドロキシル基などの「脱離」基を有する化合物を選択することを含むが、これに限定されず、これは、親水性(例えばより低いLogP)を増加させることを可能とし、そして低酸素状態を標的としたレドックス感受性のプロドラッグの調製を可能とすることになる。これは、低酸素下での還元により切断され得るレドックス感受性のプロドラッグ部分を導入するために行うことができる。これは、相乗効果を可能にするような魅力的な概念である:低酸素状態の分子機構が標的化され、そして、低酸素感受性プロドラッグを使用することによってもまた、良性の組織に対する潜在的な毒性を最小限にすることができる。
【0179】
2,2-ジメチルベンゾピラン骨格(部位III)は、固層法および液層法に従って合成することができる(Nicolaou, K. C., Pfefferkorn, J. A., Mitchell, H. J., Roecker, A. J., Barluenga, S., Cao, G-Q., Affleck, R. L.およびLilling, J. E., Natural product-like combinatorial libraries based on privileged structures. 2. Construction of a 10,000-membered benzopyran library by directed split-and-pool chemistry using NanoKans and optical encoding. J Am Chem Soc 122, 9954-67(2000)、これは参照により本明細書に組み込まれる)。これらの骨格は、アルデヒド官能性を含み、その後、部位Iおよび部位IIを多様化する短い合成経路を用いて合成される:グリニャール付加に続くアシル化(クラスV);または還元的アミノ化に続くスルホニル化(クラスV)。これらの方法はよく確立されており、市販の構成要素を使用するものであって、本発明者らのグループの刊行物は、このような化学の実用性を示している。部位IIIにおけるさらなる多様化は、ピラン環の炭素-炭素二重結合の生成を達成し得る。これらの化合物は、平行合成を用いて合成され、一般的なクロマトグラフィー技術によって精製され、そしてLC-MSまたはGC-MS技術によって特性評価され得る。この結果、KCN1は容易にさらに精製される(図21)。本発明者らはまた、スルホンアミド結合をアミド、ホスホンアミド、または上記の関連する基により置換することによって、分子の中核をさらに安定化することができるか否かを調べ得る。ベンジル位に結合する脱離基の遊離のための、レドックス誘発物質としてのニトロアリール化合物が調査され得る。この方針は、薬剤候補物質にヒドロキシルなどの「脱離基」を必要とし、そして本発明者らはすでにSAR研究によって、ヒドロキシ基を有するいくつかの活性HIF阻害剤を同定してきた(図21、データは示さない)。
【0180】
結論として、以下のことが示された:(i)生物学的レポーター神経膠腫細胞株を作製し、AlkPhosまたはルシフェラーゼの測定によって、HIF転写活性を確実に評価した;(ii)このレポーター系は、低分子のHIF阻害剤の選別のために使用した;(iii)KCN1は、HIF-1αレベルの低酸素誘導性の増加を抑制する;(iv)ポリリボソーム解析、およびシグナル伝達成分が制御する翻訳の双方による、翻訳に対する阻害剤の影響に関連する機構をさらに調べるための方法を確立した;(v)HIF応答性レポーター系は、脳内のHIF活性をBLIによって非侵襲的に検出するために、in vivoにおいて利用され得る;(vi)頭蓋内神経膠腫異種移植を実施した(これには、β-gal発現、アルカリホスファターゼ発現に対する組織解析、およびピモニダゾールIHCによる低酸素領域の検出が含まれる);(vii)HIF-1を、siRNAおよびウイルス治療アプローチを用いて抗腫瘍標的として確認した;(viii)KCN1の生体内分布を、脳内で増殖させたラット神経膠腫により示した、(ix)KCN1の注入は、in vivoの腫瘍内で、HIF促進性のルシフェラーゼレポーター遺伝子活性を減少させる、そして(xii)KCN1はin vivoで腫瘍増殖を阻害し得る。
【0181】
本開示の上記の実施形態は、単に可能性のある実施例であり、そして単に本開示の本質の明確な理解のための説明であることを重視すべきである。多くの変化および変更が、本開示の上記の実施形態において、本開示の精神および本質から実質的に逸脱することなくなされ得る。そのような変更および変化のすべてが、本開示の範囲内において本明細書に含まれ、そして以下の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】図1Aおよび1Bは、HIF阻害剤の式の例示的な実施形態を示す。
【図2】図2Aおよび2Bは、HIF阻害剤の式の例示的な実施形態を示す。
【図3】図3Aから3Gは、HIF阻害剤の式の例示的な実施形態を示す。
【図4】図4Aから4Gは、HIF阻害剤の式の例示的な実施形態を示す。
【図5】図5Aから5Dは、HIF阻害剤の式の例示的な実施形態を示す。
【図6】図6は、HIF阻害剤の式の例示的な実施形態を示す。
【図7】図7は、10μMでAP活性を示し、2,2-ジメチルベンゾピラン部分を含む、例示的なHIF阻害剤化合物を示す。
【図8】図8は、10μMでAP活性を示し、サマプリン様構造を有する、例示的なHIF阻害剤化合物を示す。
【図9】図9は、例示的なHIF阻害剤の概略図を示す。
【図10】図10は、KCN1(図2Aおよび2Bの式D'/X7')を生成する例示的な方法を示す。
【図11】図11は、KCN1の特異性の解析を示す。LN229細胞をKCN1(25μM)で1時間前処理し、次に1%O2中に5時間放置した。細胞抽出物は、ウエスタンブロットにより全タンパク質のレベル(図11(A))について、そして多重ウエスタンによりリンタンパク質のレベル(図11(B))について解析した。低酸素状態において、HIF-1αレベルの強い増加が、KCN1によって阻害されることに注目するべきである。密度解析(densitometry analysis)は、解析した他のタンパク質の発現が、同じ時間内でわずかに変化しただけ(<1.5倍)であったことを示す。図11(C)は、KCN1が低酸素誘導性HIF-1αを阻害するが、CoCl2、DFX、またはMG132での正常酸素圧誘導を阻害しなかったことを示す。
【図12】図12は、KCN1がHIF-1αのmRNAレベルに影響を及ぼさないことを示す。KCN1がmRNAの合成または安定性を妨害し得るか否かを調べるために、ノーザンブロットを実施した。HIF-1αのmRNAレベルは、KCN1処理をしてもしなくても、一定に維持された。
【図13】図13は、KCN1が、HIF-1αの細胞内局在化または転写活性に影響を及ぼさないことを示す。KCN1がHIFの核への移行能力を妨害するか否かを調べるために、安定して組み込まれたHRE-ルシフェラーゼレポーター構築物を含むLN229細胞内の局在化を、顕微鏡によって調べた。低酸素下において、KCN1はHIF蓄積を阻害し、そしてHIFは核や細胞質では見られない。CoCl2存在下において、HIFは化学的に誘導され、そのレベルはKCN1による影響を受けない。HIFは、KCN1未処理細胞およびKCN1処理細胞の細胞核に主に存在し、このことは、KCN1が核への蓄積を妨害しないことを示唆する。HIF誘導性ルシフェラーゼ活性の測定(下段パネル)により、CoCl2処理した細胞内でKCN1存在下で、HIFが転写的に活性であることが確認された。
【図14】図14は、KCN1がPI3Kシグナル経路を阻害しないが、Aktリン酸化を促進することを示す。AktのS473におけるリン酸化は、IGF処理によって迅速に誘導され、そしてこのシグナルはKCN1によって1、3および6時間の時点では阻害されない。リン酸化Aktの増加は、KCN1存在下の1、3および6時間の時点で観察される。
【図15】図15は、KCN1ではなくHIF阻害剤のF2(サマプリンアナログ)が、トポイソメラーゼII活性を阻害することを示す。F2またはKCN1の存在下での精製したtopo II活性を、正常酸素圧下で、kDNA脱連環アッセイを用いて解析した。活性を調べるために、エチジウムブロミドを含む1%アガロースゲルを使用し、そして連環状kDNAおよび脱連環kDNAを検出できるようにした。レーン5および9において、トポイソメラーゼII活性の阻害は、連環状DNAの存在から明らかなものとして検出された。
【図16】図16は、(A)腫瘍細胞移植後11日目の9L頭蓋内ラット神経膠腫モデルにおける、HIF活性の非侵襲的画像、および(B)組織染色:切片におけるB-ガラクトシダーゼを示す。
【図17】図17は、神経膠腫における低酸素領域のピモニダゾール染色を示す。図17(A)は、LN229神経膠腫細胞の皮下異種移植片を表す。最も近い血管から約10細胞層の距離において、低酸素領域は濃茶色である。図17(B)は、U87MG神経膠腫細胞の脳内異種移植片を示す。左側のピモニダゾール染色切片において、低酸素細胞の濃茶色の周縁部が血管を囲んでいる。右側は、隣接切片のH&E染色を示す。血管に近接した半径約10細胞の範囲内の細胞が生存していること(濃青色)に注目すべきである。さらに遠位の細胞は壊死しており(淡青色)、ピモニダゾールで染色されない。
【図18】図18は、脳腫瘍モデルにおけるKCN1のPK実験を示す。図18(A)は、マウス脳内で増殖したU87MG-EGFRvIIIのMRIを示す。図18(B)は、35mg/kgで静脈注射した後の正常脳内および腫瘍脳内のKCN1蓄積の動態を示す。
【図19】図19は、LN229HRE-ルシフェラーゼ神経膠腫を有するnu/nuマウスにおける、KCN1の薬力学研究を示す。DMSOに溶解したKCN1(2mg)を、右後方の腫瘍に注入し、そしてDMSO対照を左後方の腫瘍に注入した。マウスにD-ルシフェリンを注入し、そして、注入前ならびに注入後5時間および28時間に、BLIによって画像化した(図19(C))。右後方の腫瘍内での、5時間でのHIF依存性ルシフェラーゼ活性の強い減少、および28時間後のHIFシグナルの部分的な回復に注目するべきである(n=2)。ベヒクル処理をした左の腫瘍では、ルシフェラーゼ活性の変化は観察されなかった。
【図20】図20は、KCN1がsc LN229神経膠腫異種移植片の増殖を阻害することを示す。LN229(5×106)を、ヌードマウス(1群あたり8匹)の両脇腹に移植し、そして1週間後にKCN1の腹腔内への注入(60mg/kg;5日/週)を開始した。図20(A)は、経時的にカリパスで測定した腫瘍容積を示す。図20(B)は、実験終了時に解剖した腫瘍の写真を示し、KCN1群において、それらの重量が〜6分の1未満であったことを示す。
【図21】図21は、KCN1の化学的修飾を目的として生成される強力なHIF-1阻害剤の構造を表す。KCN1の4つの部位を、本発明者らのSAR実験において体系的に修飾した(図21)。元のKCN1分子と化学的に異なる部位を、各々の構造において強調する。この手法を用いて、幅広い範囲のlogP値および溶解度を有する11の強力な阻害剤(IC50<20μM)のパイプライン(pipeline)を作出した。矢印および勾配記号(gradient symbols)は、logP値を増加(赤色)またはlogP値を減少(青色)させる修飾を示す。左側の表は、KCN1と比較した各々の化合物の活性およびそれらのlogP計算値を列挙する。
【図22】図22は、HIFに関連する遺伝子、タンパク質、および経路を示す。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図3D】

【図3E】

【図3F】

【図3G】

【図4A】

【図4B】

【図4C】

【図4D】

【図4E】

【図4F】

【図4G】

【図5A】

【図5B】

【図5C】

【図5D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって、以下の1つ以上より選択される化合物:
【化1】


ここで、Xは以下の基の少なくとも1つより選択され:
【化2】



ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17およびR18は、各々が独立して以下の基より選択される:H、OH、分岐鎖状または非分岐鎖状C1-12アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、イミダゾール基、置換イミダゾール基、アルキル置換アリール基、ハロゲン置換アリール基、ハロゲン基、アミン基、NO2、およびアシル基;
ここで、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R50およびR51は、各々が独立して以下の基より選択される:H、OH、分岐鎖状または非分岐鎖状C1-12アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、イミダゾール基、置換イミダゾール基、アルキル置換アリール基、ハロゲン置換アリール基、ハロゲン基、アミン基、NO2、およびアシル基;
またはこれらの製薬上許容され得る塩もしくはプロドラッグを含む、前記医薬組成物。
【請求項2】
医薬組成物であって、以下より選択される1つ以上化合物:
【化3】







ここで、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R60、R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67、R68、R69、R70、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78、R79、R80、R81、R82、R83、R84、R85、R86、R87、R88、R89、R90、R91、R92、R93、R94、R95、R96、R97、R98、R99、R100、R101、R102、R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109、R110、R111、R112、R113、R114、R115、R116、R117、R118、R119、R120、R121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129、R130、R131、R132、R133、R134、R135、R136、R137、R138、R139、R140、R141、R142、R143、R144、R145、R146、R147、R148、R149、R150、R151、R152、R153、R154、R155、R156、R157、R158、R159、R160、R161、R162およびR163は、各々が独立して以下の基より選択される:H、OH、分岐鎖状または非分岐鎖状C1-12アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、イミダゾール基、置換イミダゾール基、アルキル置換アリール基、ハロゲン置換アリール基、ハロゲン基、アミン基、NO2、およびアシル基;
またはこれらの製薬上許容され得る塩もしくはプロドラッグを含む、前記医薬組成物。
【請求項3】
請求項1および2に記載の任意の化合物の加水分解反応産物、酸化反応産物、または還元反応産物を含有する医薬組成物。
【請求項4】
前記加水分解反応、酸化反応、または還元反応が、請求項1から2に記載の任意の化合物の窒素を含有する環を開環する、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
第二の治療薬をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記第二の治療薬が、抗体、抗生物質、抗炎症薬、抗酸化剤、鎮痛剤、放射性同位体、ノスカピン、パクリタキセル、ノコダゾール、ビンカアルカロイド、アドリアマイシン、アルケラン、Ara-C、BiCNU、ブスルファン、CCNU、カルボプラチン、シスプラチン、サイトキサン、ダウノルビシン、DTIC、5-FU、フルダラビン、ハイドレア、イダルビシン、イホスファミド、メトトレキセート、ミトラマイシン、マイトマイシン、マイトキサントロン、ナイトロジェンマスタード、ベルバン、ビンクリスチン、VP-16、ゲムシタビン、ハーセプチン、イリノテカン、カンプトサー、CPT-11、ロイスタチン、ナベルビン、リツキサン、STI-571、タキソテール、テモゾロミド、トポテカン、ハイカムチン、ゼローダ、カペシタビン、ゼベリン、およびこれらの組み合わせである、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
低酸素関連病変の治療または予防のための方法であって、HIFを阻害する量の請求項1〜6のいずれか1項に記載の任意の組成物を、前記治療を必要とする宿主に投与することを含む、前記方法。
【請求項8】
細胞内のHIF活性を調節する方法であって、HIFを阻害する量の請求項1〜6のいずれか1項に記載の任意の組成物に、細胞を接触させることを含む前記方法。
【請求項9】
宿主内の癌または腫瘍を治療または予防する方法であって、HIFを阻害する量の請求項1〜6のいずれか1項に記載の任意の組成物を、宿主に投与することを含む前記方法。
【請求項10】
前記癌または腫瘍が、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、頭部および頸部癌、白血病、肺癌、リンパ腫、黒色腫、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、子宮癌、子宮頸癌、甲状腺癌、胃癌、脳幹神経膠腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫、上衣細胞腫、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、胚細胞腫、頭蓋外腫瘍、ホジキン病、白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、肝臓癌、髄芽細胞腫、神経芽細胞腫、脳腫瘍一般、非ホジキンリンパ腫、骨肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、軟組織肉腫一般、テント上原始神経外胚葉腫瘍および松果体腫瘍、視覚路および視床下部膠腫、ウィルムス腫瘍、急性リンパ性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、食道癌、有毛細胞白血病、腎臓癌、多発性骨髄腫、口腔癌、膵臓癌、中枢神経系原発リンパ腫、皮膚癌、小細胞肺癌をからなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
細胞内の遺伝子の転写を調節する方法であって、HIFを阻害する量の請求項1〜6のいずれか1項に記載の1以上の組成物に、細胞を接触させることを含む前記方法。
【請求項12】
細胞内のmRNAの翻訳を調節する方法であって、HIFを阻害する量の請求項1〜6のいずれか1項に記載の1以上の組成物に、細胞を接触させることを含む前記方法。
【請求項13】
宿主の過剰な血管新生を治療または予防する方法であって、HIFを阻害する量の請求項1〜6のいずれか1項に記載の任意の組成物を、宿主に投与することを含む前記方法。
【請求項14】
医薬組成物であって、以下より選択される1つ以上の化合物:
【化4】







またはこれらの製薬上許容され得る塩もしくはプロドラッグを含む、前記医薬組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の任意の化合物の加水分解反応産物、酸化反応産物、または還元反応産物を含有する医薬組成物。
【請求項16】
前記加水分解反応、酸化反応、または還元反応が、請求項14に記載の任意の化合物の窒素を含有する環を開環する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
第二の治療薬をさらに含む、請求項14〜16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記第二の治療薬が、抗体、抗生物質、抗炎症薬、抗酸化剤、鎮痛剤、放射性同位体、ノスカピン、パクリタキセル、ノコダゾール、ビンカアルカロイド、アドリアマイシン、アルケラン、Ara-C、BiCNU、ブスルファン、CCNU、カルボプラチン、シスプラチン、サイトキサン、ダウノルビシン、DTIC、5-FU、フルダラビン、ハイドレア、イダルビシン、イホスファミド、メトトレキセート、ミトラマイシン、マイトマイシン、マイトキサントロン、ナイトロジェンマスタード、ベルバン、ビンクリスチン、VP-16、ゲムシタビン、ハーセプチン、イリノテカン、カンプトサー、CPT-11、ロイスタチン、ナベルビン、リツキサン、STI-571、タキソテール、テモゾロミド、トポテカン、ハイカムチン、ゼローダ、カペシタビン、ゼベリン、およびこれらの組み合わせである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
低酸素関連病変の治療または予防のための方法であって、HIFを阻害する量の請求項14〜18のいずれか1項に記載の任意の組成物を、前記治療を必要とする宿主に投与することを含む、前記方法。
【請求項20】
細胞内のHIF活性を調節する方法であって、HIFを阻害する量の請求項14〜18のいずれか1項に記載の任意の組成物に、細胞を接触させることを含む前記方法。
【請求項21】
宿主の癌または腫瘍を治療または予防する方法であって、HIFを阻害する量の請求項14〜18のいずれか1項に記載の任意の組成物を、宿主に投与することを含む、前記方法。
【請求項22】
癌または腫瘍が、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、頭部および頸部癌、白血病、肺癌、リンパ腫、黒色腫、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、子宮癌、子宮頸癌、甲状腺癌、胃癌、脳幹神経膠腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫、上衣細胞腫、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、胚細胞腫、頭蓋外腫瘍、ホジキン病、白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、肝臓癌、髄芽細胞腫、神経芽細胞腫、脳腫瘍一般、非ホジキンリンパ腫、骨肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、軟組織肉腫一般、テント上原始神経外胚葉腫瘍および松果体腫瘍、視覚路および視床下部膠腫、ウィルムス腫瘍、急性リンパ性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、食道癌、有毛細胞白血病、腎臓癌、多発性骨髄腫、口腔癌、膵臓癌、中枢神経系原発リンパ腫、皮膚癌、小細胞肺癌からなる群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
細胞内の遺伝子の転写を調節する方法であって、HIFを阻害する量の請求項14〜18のいずれか1項に記載の1以上の組成物に、細胞を接触させることを含む、前記方法。
【請求項24】
細胞内のmRNAの翻訳を調節する方法であって、HIFを阻害する量の請求項14〜18のいずれか1項に記載の1以上の組成物に、細胞を接触させることを含む、前記方法。
【請求項25】
宿主の過剰な血管新生を治療または予防する方法であって、HIFを阻害する量の請求項14〜18のいずれか1項に記載の任意の組成物を、宿主に投与することを含む、前記方法。

【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2009−506068(P2009−506068A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528213(P2008−528213)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/033286
【国際公開番号】WO2007/025169
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(598038968)エモリー・ユニバーシティ (19)
【Fターム(参考)】