説明

HIV患者のための栄養補助剤

本発明は、HIV患者のための栄養製品に関する。より具体的には、本発明は、栄養関連症状を有するHIV患者を特異的にサポートする、慎重に選択されたオリゴ糖及びシステイン及び/又はシステイン源を含む栄養成分を提供する栄養組成物に関する。また本発明は、HIV患者に使用するための栄養補助剤の製造にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HIV患者のための栄養製品に関する。より詳細には、本発明は、栄養性関連症状を有するHIV患者を特に支援する、慎重に選択された栄養成分を提供する栄養組成物に関する。また本発明は、HIV患者に使用するための栄養補助剤(Nutritional supplement)の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染及び後天性免疫不全症候群(AIDS)の発達は、国内と世界の健康的、社会的、政治的、及び経済的な成果に重大な影響を有している。世界的に、HIV-1感染患者の数は4000万人を超え、彼らの大多数はアジア、サハラ以南のアフリカ及び南アメリカに住んでいる。高活性抗レトロウイルス療法(「HAART」)の発展を含めてここ十年間に達成された全ての治療的優位性にもかかわらず、一度感染した個体は、ウイルスを根絶することは今なお不可能である。
【0003】
現今では、HIV感染患者の栄養的な補助の重要性が認識されている。感染患者は彼らが経験する代謝的なストレスのために、基礎エネルギー、タンパク質、及び微量栄養素の必要性を増大させ得る。このストレスに疾病に付随する摂食障害及び吸収不良が加わり、栄養不良を促進する。栄養不良は一般に、例えば免疫の能力、(作用(work))性能及び認識に影響する。外部から栄養を提供することは、それらの患者がそれらの一般的な栄養状態を改善することを援助する。
【0004】
現在、幾つかの製品がHIV患者の栄養補助のために市販されている。異なる商業的な供給者が、以下のような幾つかの臨床的な栄養製品を市販している:
1.Advera、ロスアボット(Ross Abbott)
カロリー分布:
タンパク質:18.7% (ダイズタンパク質加水分解産物、カゼイン酸ナトリウム)
糖質:65.5% (マルトデキストリン、スクロース、ダイズ繊維)
脂肪:15.8% (アブラナ、MCT、精製、脱臭イワシ油1.5 e%)
カロリー密度:1.28 kcal/mL
2.Resource、ノバルティス
カロリー分布:
タンパク質:14% (カゼイン酸ナトリウム及びカゼイン酸カルシウム、ダイズタンパク質単離物)
糖質:64% (コーンシロップ、糖)
脂肪:22% (高オレインヒマワリ油、コーン油)
カロリー密度:1.06 kcal/mL
3.Benecalorie、ノバルティス
カロリー分布:
タンパク質:9% (カゼイン酸カルシウム)
糖質:0%
脂肪:91% (高オレインヒマワリ油、モノ及びジグリセリド)
カロリー密度:7 kcal/mL
4.Boost、Mead Johnson現製品 ノバルティスによって販売される
カロリー分布:
タンパク質:24% (乳タンパク質濃縮物、カゼイン酸Ca & Na )
糖質:55% (コーンシロップ固形物、糖)
脂肪:21% (アブラナ、高オレインヒマワリ油及びコーン油)
カロリー密度:1.01 kcal/mL
【0005】
しかしながら、HIV感染患者の普遍的な栄養要求を補助する製品の有効性にもかかわらず、栄養状態を改善するだけでなく、さらに、具体的なHIV感染に関連する症状、特に、被験者の免疫機能障害、腸機能障害及び/又はグルタチオン状態を著しく減少させるか又は予防する利用可能な栄養製品はない。
【発明の概要】
【0006】
現在のHIV患者の栄養的な治療は、それらがHIV患者の栄養性に関連する医学的な問題の全て、特に、感染に関連する免疫機能障害、腸機能障害及び/又はグルタチオン状態を解決するものではないという不都合を有している。一つの態様において、本発明は、HIV又はAIDSの治療及び/又は予防のための方法において使用される組成物の製造における、オリゴ糖及びシステイン及び/又はシステイン源の使用に関し、該方法は、治療的有効量のオリゴ糖及びシステイン及び/又はシステイン源を含む組成物を哺乳類に投与することを含む。他の態様において、該組成物はさらに、一以上の多価不飽和脂肪酸 (PUFAs)及び/又は一以上の生物学的に活性な化合物、特に、乳由来化合物を含む。
【0007】
本発明は、HIV患者の栄養的な治療に適した完全栄養補助剤を提供する。本発明の栄養補助剤は、被験者の腸機能、グルタチオン(GSH)状態及び/又は免疫機能を支援する少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つの成分を含む。驚くべきことに、栄養成分を慎重に選択することによって、HIV感染の幾つかの栄養に関連する副作用(即ち、感染関連症状)が予防及び/又は著しく減少できることが分かった。その効果は、幾つかの疾患関連症状が同時に標的にされる場合の方が、今日まで行われてきた個々の成分の一つだけをその患者が与えられる場合よりもよいことが分かった。
【0008】
健康な腸及び健康な腸管内菌叢は、健康な免疫機能に複雑に関連している。特定の繊維/オリゴ糖による潜在的な免疫調節効果は、腸管内菌叢組成(ビフィズス菌及び乳酸菌タイプの免疫効果が実証されている)及び/又は機能(繊維の発酵は、腸細胞の一般的で免疫学的な機能に影響する短鎖脂肪酸のような組成物を生じる)に及ぼす影響の間接的な結果であり得る。驚くべきことに、本発明者らは、樹状細胞のDC-SIGN分子が、ある種のオリゴ糖によって遮断され得ることを発見した。この分子の遮断がHIVの伝達を潜在的に予防することができるため、DC-SIGN受容体を遮断するため及びDC-SIGNが媒介する疾病(特にHIV及びAIDS)の予防及び/又は治療のための組成物の製造のためのそれらのオリゴ糖の使用が、本発明の一つの態様において提供される。
【発明の詳細な説明】
【0009】
一般的な定義
「オリゴ糖」とは、単糖ユニットが1〜5000、より好ましくは2〜250、より好ましくは2〜50、最も好ましくは2〜10の鎖長を有する糖鎖を指す。「重合度」又は「DP」とは、オリゴ糖鎖中の単糖単位の合計数を指す。「平均DP」とは、推定単糖又は二糖を考慮に入れず(存在する場合は、好ましくは除去して)、組成物中のオリゴ糖鎖の平均DPを指す。組成物の平均DPは、組成物間の識別のために用いられる。好ましくはオリゴ糖混合物の平均重合度は好ましくは2〜100であり、より好ましくは3〜250であり、例えば3〜50である。二以上の物質の「共投与」とは、ある個体へのそれらの物質を投与するのに、一つの組成物中又は別々の組成物中(キットのパーツ;組合された組成物として)の何れかで、同じ時に(同時に)投与されるか又は短い間隔で(例えば数分又は数時間以内に、別々に又は経時的に)投与することを指す。
【0010】
「含む」という用語は、言及された部分、工程又は成分の存在を特定するが、しかし、一以上のさらなる部分、工程又は成分の存在を排除しないと解釈される。
【0011】
「割合」又は「平均」は一般に、他に特定しない限り又は他の基本を表すことが明らかでない限り、重量による平均の割合を示す。
「GOS」又は「ガラクトオリゴ糖」又は「トランス-ガラクトオリゴ糖」又は「TOS」は、ガラクトース単位で構成されるオリゴ糖を指す。
【0012】
「HIVの治療及び/又は予防」は、免疫機能障害、腸機能障害及び/又は低グルタチオン状態から選択される一以上のHIV感染関連症状/機能障害の著しい減少又は予防を指す。一つの態様において、HIVの治療又は予防とは、本願明細書によって明らかになるように、DC-SIGN受容体の遮断によるHIVの拡散の著しい減少(又はその完全な予防)を指す。
【0013】
「著しい減少又は予防」とは、本発明の組成物を投与されていないコントロールの被験者と比較して、少なくとも5%、10%、15%、30%、50%又は100%もの症状(又はHIVの拡散)の減少を指す。該症状は、当該分野で周知のように測定することができ、例えば、免疫機能障害は、CD4+細胞数を測定することによって評価できる。DC-SIGN受容体の遮断は、実施例1に記載したように測定できる。
【0014】
本発明の目的は、それらの栄養状態及び少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのHIV関連症状を改善するために、HIV患者の治療に適した栄養組成物を提供することである。本発明の組成物は、一般にHAART療法がまだ必要ではないが、しかし患者がすでに一以上の免疫機能障害、腸機能障害及び/又はグルタチオン関連機能障害を発達又は経験している場合に、約700細胞/μl血液の臨界レベルを下回るCD4+ T細胞数を有する患者のために特に有用である。
【0015】
従って、本発明の組成物は、一以上のHIV感染関連機能障害、特に以下のものの予防及び/又は治療に適する:
1.免疫機能障害、即ち、障害性免疫機能をもたらすCD4+ T細胞数の減少;
2.腸機能障害、即ち、腸管の問題、特にHIV誘発吸収不良及び下痢;及び/又は
3.低グルタチオン状態、特に、血中及びT細胞内の低いグルタチオンレベル。
【0016】
好ましい態様において、該組成物は少なくとも免疫機能障害及び低グルタチオン状態の治療又は予防に適する。それらの組成物は、オリゴ糖及びシステイン及び/又はシステイン源の両方を適切な量で含む。他の態様において、該組成物はさらに、適切な量の一以上のPUFA及び/又は一以上の生物学的に活性な化合物を含み、上記の機能障害の3つ全ての治療又は予防に適する。
【0017】
CD4+ T-リンパ球がHIVに感染して破壊されるために、HIVの進行は、循環中のCD4+ T-リンパ球数を測定することによってルーチン的に及び定期的にモニターすることができる。HIVの感染後の初期期間は、三年から十年以上にわたるが、感染に対する抵抗性の減少の明らかな症状をみせずに、総CD4+ T-細胞数の遅いが漸進的な減少によって特徴付けられる。感染性合併症の最初の徴候は、通常、CD4+ T細胞数が700細胞/μl血液を下回ったときに発生する。この時点で、HIV血清陽性個体は、呼吸性の症状(咳、かぜ、インフルエンザ)及び/又は胃腸管系の症状(腸の不快感、下痢)を経験し得る。それらの症状は、まだ比較的穏やかであり、個人にとってはやっかいであっても、無症状であると見なされる可能性があり、それらは通常、入院又は高活性な抗レトロウイルス治療(HAART)の開始をさせるのに十分なほどには重篤でない。
【0018】
性行為感染後に1型ヒト免疫不全症ウイルス(HIV-1)が遭遇する細胞タイプの一つが樹状細胞(DC)である。DCは、その最も研究された例がDC-SIGNであるC型レクチン受容体を介してHIV-1を捕獲し、これはHIV-1の内部移行を媒介する。DCはそのウイルス感染を数日間維持することができ、HIV-1のCD4(+) T細胞への伝染を可能にする。実施例1に示したように、本発明者らは驚くべきことにオリゴ糖がDC-SIGNに結合できることを発見した。
【0019】
本発明の組成物及び使用
本発明の組成物は、哺乳類の被験者におけるHIV及び/又はAIDSの治療及び/又は予防に適している。該被験者は、好ましくはHIVに感染し、約700細胞/μl血液以下、好ましくは約200〜700細胞/μl、例えばμl血液あたり約200〜500細胞又は約200〜600又は500〜700細胞のCD4+細胞数を含むヒト被験者である。一つの態様において、該被験者は、700以下のCD4+細胞数を有するが、高活性な抗レトロウイルス療法(HAART)を受けていない。
一つの態様において、該栄養組成物は、好ましくは食品補助剤であり、オリゴ糖及びシステイン及び/又はシステイン源を含む。
【0020】
オリゴ糖
本発明の組成物は、治療的有効量のオリゴ糖、好ましくは以下に記載する酸性オリゴ糖(acid oligosaccharides)及び/又は中性オリゴ糖を含む。
【0021】
酸性オリゴ糖は、少なくとも一つの酸性基を含み、一方、中性オリゴ糖はそのような酸性基を有さない。食物繊維は、それらの健康有益効果について広く研究されている。繊維の中には、不溶性で非発酵性であり、不変のまま腸を通過するものがある。他のタイプの繊維は、プレバイオティクス、即ち、それらが腸内細菌に使われ、それらの成長を刺激することに役立つものであり得る。例としてイヌリンのような繊維又はガラクト-オリゴ糖 (GOS)及びフルクト-オリゴ糖 (FOS)のようなオリゴ糖は、健康な腸管内菌叢にとって重要である、ビフィズス菌及び乳酸菌の成長を刺激することが証明されている。
【0022】
酸性オリゴ糖
「酸性オリゴ糖」という用語は、N-アセチルノイラミン酸、N-グリコロイルノイラミン酸、遊離の又はエステル型のカルボン酸、硫酸基及びリン酸基から成る群から選択される少なくとも一つの酸性基を含むオリゴ糖を指す。一つの態様において、該酸性オリゴ糖は好ましくはポリヘキソースである。好ましくは、上述の酸性基の少なくとも一つは、該酸性オリゴ糖の末端のヘキソースユニットに位置する。好ましくは、該酸性オリゴ糖は、図式1に示すような構造を有し、ここで該末端のヘキソース(左)は、好ましくは二重結合を含む。好ましくは、該酸性オリゴ糖は、末端のヘキソースユニットにカルボン酸を含み、ここで該カルボン酸基は、遊離であるか又はエステル型であってよい。本発明の方法及び組成物において好適に使用可能な、エステル化されたペクチン加水分解産物の製造方法は、WO 01/60378及び/又はWO 02/42484に開示されており、参照によって本明細書に援用される。末端ヘキソースユニットを除くヘキソースユニットは、好ましくはウロン酸ユニットであり、より好ましくはガラクツロン酸ユニットである。それらのユニットにおけるカルボン酸基は、遊離であるか又は(部分的に)エステル化され、好ましくは少なくとも10%がメチル化される(下記参照)。
【0023】
図式1 重合体酸性オリゴ糖
【化1】

【0024】
ここにおいて:
Rは好ましくは、水素、ヒドロキシ又は酸基からなる群から選択され、好ましくはヒドロキシである;及び
R2、R3、R4及びR5から成る群から選択される少なくとも一つは、N-アセチルノイラミン酸、N-グリコロイルノイラミン酸、遊離の又はエステル化されたカルボン酸、硫酸基及びリン酸基を表し、R2、R3、R4及びR5の残りは、ヒドロキシ及び/又は水素を表す。好ましくは、R2、R3、R4及びR5から成る群から選択される一つは、N-アセチルノイラミン酸、N-グリコロイルノイラミン酸、遊離の又はエステル化されたカルボン酸、硫酸基又はリン酸基を表し、残りはヒドロキシ及び/又は水素を表す。さらにより好ましくは、R2、R3、R4及びR5から成る群から選択される一つは、遊離の又はエステル化されたカルボン酸を表し、R2、R3、R4及びR5の残りはヒドロキシ及び/又は水素を表す;及び、
nは整数であり、ヘキソースユニットの数を指し(下記の重合度も参照)、これは任意のヘキソースユニットであってよい。適切なnは、1〜5000の整数である。好ましくは、該ヘキソースユニットはウロン酸ユニットである。
【0025】
最も好ましくは、R1、R2及びR3は、ヒドロキシを表し、R4は水素を表し、R5はカルボン酸を表し、nは1〜250の任意の数であり、好ましくは1〜10であり、該ヘキソースユニットはガラクツロン酸である。
【0026】
本発明の方法において使用されるような酸性オリゴ糖の検出、測定及び分析は、酸性オリゴ糖に関する本出願人の先の特許出願、即ちWO 01/60378において提供され、参照によって本明細書に援用される。
【0027】
好ましくは、該酸性オリゴ糖は一つの、好ましくは二つの、末端ウロン酸ユニットを有し、これは、遊離の又はエステル化されたものであってよい。好ましくは、該末端ウロン酸ユニットは、ガラクツロン酸、グルクロン酸、グルロン酸、イズロン酸、マンヌロン酸、リブロン酸(riburonic acid)及びアルツロン酸(alturonic acid)から成る群から選択される。それらのユニットは、遊離又はエステル化されてあってよい。一つの態様において、該末端ヘキソースユニットは二重結合を有し、これは好ましくは該末端ヘキソースユニットのC4位とC5位の間に位置する。好ましくは該末端ヘキソースユニットの一つは二重結合を含む。該末端ヘキソース(例えばウロン酸)は好ましくは、図式2に記載の構造を有する。
【0028】
図式2:好ましい末端ヘキソース酸基:
【化2】

【0029】
ここにおいて:
Rは好ましくは、水素、ヒドロキシ又は酸基から成る群から選択され、好ましくはヒドロキシである(上記参照);及び
R2、R3、R4及びR5から成る群から選択される少なくとも一つは、N-アセチルノイラミン酸、N-グリコロイルノイラミン酸、遊離の又はエステル化されたカルボン酸、硫酸基及びリン酸基を表し、R2、R3、R4及びR5の残りは、ヒドロキシ及び/又は水素を表す。好ましくは、R2、R3、R4及びR5から成る群から選択される一つは、N-アセチルノイラミン酸、N-グリコロイルノイラミン酸、遊離の又はエステル化されたカルボン酸、硫酸基及びリン酸基を表し、R2、R3、R4及びR5の残りはヒドロキシ及び/又は水素を表す。さらにより好ましくは、R2、R3、R4及びR5から成る群から選択される一つは、遊離の又はエステル化されたカルボン酸を表し、R2、R3、R4及びR5の残りはヒドロキシ及び/又は水素を表し;及びnは整数であり、ヘキソースユニットの数を指し(下記の重合度を参照)、これは任意のヘキソースユニットであってよい。好適なnは1〜5000の整数であり、ヘキソースユニットの数を表し、前記ヘキソースユニットは好ましくはウロン酸であり、より好ましくはガラクツロン酸ユニットである。それらのユニット上の該カルボン酸基は、遊離であるか又は(部分的に)エステル化されていてよく、好ましくは少なくとも部分的にメチル化されている。
最も好ましくは、R2及びR3はヒドロキシを表し、R4は水素を表し、R5 は遊離の又はエステル化されたカルボン酸を表す。
【0030】
一つの態様において、該組成物は、シングルタイプの酸性オリゴ糖(均一な重合度を有する)を含み、一方、他の態様において、該組成物は、異なる重合度を有する酸性オリゴ糖の混合物を含み、及び/又は、不飽和の及び飽和の末端ヘキソースユニットの両方を含む。好ましくは、該酸性オリゴ糖の末端ヘキソースユニットの少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、さらにより好ましくは、少なくとも25%が、不飽和のヘキソースユニットである(図2を参照)。それぞれ個々の酸性オリゴ糖が好ましくは唯一の不飽和の末端ヘキソースユニットを含むため、好ましくは、該末端ヘキソースユニットのせいぜい50%が不飽和のヘキソースユニットである(即ち、二重結合を含む)。
【0031】
酸性オリゴ糖の混合物は、ヘキソースユニットの総量に基づいて、好ましくは2〜50%の不飽和ヘキソースユニットを含み、好ましくは10〜40%含む。
【0032】
本発明の方法において使用される酸性オリゴ糖は、1〜5000、好ましくは1〜1000、より好ましくは2〜250、さらにより好ましくは2〜50、最も好ましくは2〜10の重合度(DP)を有する。重合度の異なる酸性オリゴ糖の混合物を用いる場合、その酸性オリゴ糖混合物の平均DPは、好ましくは2〜1000であり、より好ましくは3〜250であり、さらにより好ましくは3〜50である。図1も参照されたい。ここで「n」と末端ユニットの合計(即ち、n+1)が重合度を表す。低いDPのオリゴ糖は嗜好性を改善し、酸性オリゴ糖が液体形態中に投与されたときの粘性産物を減少させることが分かった。酸性オリゴ糖は、均一性又は不均一性の糖質であってよい。
【0033】
本発明で使用される酸性オリゴ糖は、好ましくは、ペクチン、ペクテート、アルギナート、コンドロイチン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン、細菌性糖質(bacterial carbohydrates)、シアログリカン、フコイダン、フコオリゴ糖又はカラゲナンから調製され、好ましくはペクチン及び/又はアルギナートから調製される。該酸性オリゴ糖は、WO 01/60378に開示された方法によって、例えば、化学的又は酵素的な加水分解又は部分的加水分解によって調製することができ(第8〜9頁参照)、これは参照によって本明細書に援用される。
【0034】
アルギナートは、広範な平均分子量(100〜100000残基)のβ-(1→4)-結合D-マンヌロン酸及びα-(1→4)-結合L-グルロン酸残基を含む、直鎖状の非分枝のポリマーである。適切なアルギナート源は、海藻及び細菌性アルギナートを含む。
【0035】
ペクチンは、二つの主要なカテゴリーに分類される:50%以上のメトキシル化度によって特徴づけられる高メトキシル化ペクチン、及び、50%未満のメトキシル化度を有する低メトキシル化ペクチン。ここで用いられるように、「メトキシル化度」(DE又は「エステル化度」とも称される)は、そのポリガラクツロン酸鎖に含まれる遊離のカルボン酸基がエステル化(例えば、メチル化)された程度を意味するように意図される。本発明の酸性オリゴ糖は、好ましくは、高メトキシル化ペクチンから調製される。
【0036】
酸性オリゴ糖は、好ましくは、20%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上の、メトキシル化度によって特徴付けられる。好ましくは、酸性オリゴ糖は、20%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上のメチル化度を有する。
【0037】
酸性オリゴ糖は、好ましくは、一日あたり約10 mg〜100グラム、好ましくは一日あたり約100 mg〜50グラム、より好ましくは一日あたり約0.5〜20グラムの量で投与される。
【0038】
中性オリゴ糖
上記のように、該組成物は、一以上の酸性オリゴ糖の代わりに又はそれに加えてのいずれかで、一以上の中性オリゴ糖を含んでもよい。一以上の中性オリゴ糖は、セロビオース、セロデキストリン、B-シクロデキストリン、消化しにくいデキストリン、ゲンチオオリゴ糖、グルコオリゴ-サッカリド、イソマルトオリゴ糖、イソマルトース、イソマルトリオース、パノース(panose)、ロウクロース(leucrose)、パラチノース(palatinose)、テアンデロース(theanderose)、D-アガトース(agatose)、D-リキソ-へクスロース、ラクトスクロース、α-ガラクトオリゴ糖、β-ガラクトオリゴ糖、トランスガラクトオリゴ糖、ラクツロース、4’-ガラトシルラクトース、合成ガラクトオリゴ糖、フルクタンス(fructans)-レバン(Levan)型、フルクタンス-イヌリン型、1f-β-フルクトフラノシルニストース、ラクトN-テトラオース、ラクトN-ネオテトラオース、キシロオリゴ糖、ラフィノース、ラクトスクロース及びアルビノオリゴ糖から成る群から選択される。
【0039】
好ましくは、中性オリゴ糖は、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、トランスガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ラクトスクロース及びアルビノオリゴ糖から成る群から選択される。さらにより好ましくは、中性オリゴ糖は、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖及びトランスガラクトオリゴ糖から成る群から選択される。
【0040】
好ましくは、該組成物は、ガラクトースベースの中性オリゴ糖から成る群から選択されるもの及びフルクトース及び/又はグルコースベースのオリゴ糖の群から選択されるものの、二つの化学的に異なる中性オリゴ糖を含む。
【0041】
さらに好ましくは、該組成物は、フラクトオリゴ糖、及び、トランスガラクトオリゴ糖及びガラクトオリゴ糖から選択される少なくとも一つのオリゴ糖を含む。
【0042】
中性オリゴ糖の好ましい一日の量は、一日あたり約10 mg〜100グラムであり、好ましくは一日あたり約100 mg〜50グラムであり、さらにより好ましくは一日あたり約0.5〜20グラムである。
【0043】
好ましくは、中性及び酸性オリゴ糖を含む組成物が用いられ、ここで、総オリゴ糖の少なくとも15%、より好ましくは10〜90%及び最も好ましくは25〜75%が酸性オリゴ糖から成る。好ましくは、オリゴ糖の少なくとも25%が少なくとも一つの末端ウロン酸ユニットを含む酸性オリゴ糖である組成物が用いられる。
【0044】
システイン又はシステイン源
該提供される組成物は、上記のような一以上のオリゴ糖に加えて、適切な量のシステイン及び/又はシステイン源を含む。「システイン源」という用語は、ここにおいて、生物学的に利用可能なシステインを何れの形態ででも含む全ての化合物を指し、化合物中に存在するシステインアミノ酸の量で計算され、或いは、モルベースで、摂取後の身体における化合物から導かれることもできる。
【0045】
これ以後、「システイン等量」は、そのようなシステインの量を指し、又はシステイン源中に存在するシステインの量を指す。例えば100 mgのNAC(N-アセチルシステイン;MW= 163.2)は、74 mgのシステイン (MW 121.15)に等価である。従って、100 mgのNACは74 mgシステイン等量である。同様に、これはタンパク質又はペプチドにも適用できる。ペプチド(MW=x ダルトン)が3システインアミノ酸(3y ダルトン)を含む場合、100 mgのこのペプチドは100×3Y/X mgシステイン等量である。よって、100mgのこのペプチドは300y/x mgシステイン等量である。
【0046】
本発明による適切なシステイン源は、例えば、変性した及び/又は変性していない形態のタンパク質であり、例えば乳清又はカゼインタンパク質などの乳タンパク質のようなものである。卵タンパク質はシステインに富んでおり、それ故適切である。エンドウマメ、ポテト、ダイズ及びコメのような植物性タンパク質もまた、システインを提供するために用いることができる。また、それらのタンパク質源の加水分解産物も使用可能であり、システインに富むタンパク質又はペプチドが豊富な画分である(例えば、EP1201137に開示されているように)。さらにその上、合成システイン等量、例えば、システイン、システイン塩、N-アセチルシステイン及び/又はジアセチルシステインのようなシステイン誘導体が使用可能である。
【0047】
HIV感染被験者は、少なくとも約100 mgシステイン等量の一日量、好ましくは、一日あたり少なくとも約200、400、又は600 mgシステイン等量、より好ましくは、一日あたり少なくとも約1000 mgシステイン等量を適切に投与される。一日の投与量が、一日に数回摂取される2、3又はそれ以上の投与量ユニットに分けられることも可能であることは理解されよう。
【0048】
さらに他の態様において、本発明の組成物は、グルタチオンレベルを刺激する一以上の化合物を含む。例えば、リポ酸、ピルビン酸、オキサロ酢酸、オキサロアスパラギン酸は、グルタチオンレベルを刺激することができる。そのようなグルタチオンレベルを刺激する化合物は、システインに加えて用いられてもよいが、システインの代わりに用いられることもできる。
【0049】
他の態様において、該組成物は、一以上のオリゴ糖及びシステイン及び/又はシステイン源を含み、さらに、一以上のPUFA及び/又は一以上の生物学的に活性な化合物、例えば乳又はプロバイオティクス微生物中に発見できるような化合物を含む。
【0050】
プロバイオティクス微生物
プロバイオティクス微生物は、腸管の微生物のバランスを改善することによってHIV患者に有利に影響する微生物を意味する(Fuller, R. J. Applied Bacteriology, 1989;66:365-378)。プロバイオティクス微生物は、ヒトの消費に適し、腸内の微生物バランスを改善できる一以上の微生物から選択され得る。好ましくは、本発明の組成物は、2〜100のDPを有するウロン酸性オリゴ糖のグラムあたり、104から1012、より好ましくは105から1011、最も好ましくは107から5x1010 のコロニー形成ユニット(cfu)のプロバイオティクス細菌を含む。本発明の組成物は、好ましくは、本発明の組成物の乾燥重量グラムあたり、102 から1013 のコロニー形成ユニット(cfu)のプロバイオティクス細菌を含み、好ましくは104から1012、より好ましくは105から1010、最も好ましくは105から1x109 のcfuを含む。本発明に従うプロバイオティクス細菌の投与量は、一日あたり、好ましくは102から1013、より好ましくは105から1011、最も好ましくは108から5x1010 のコロニー形成ユニット(cfu)である。好ましくは生菌又は生存可能な細菌が用いられるが、死細菌又は細菌断片も使用され得る。
【0051】
好ましくは本発明の組成物は、乳酸菌及び/又はビフィズス菌の属の細菌を含む。好ましくは、該組成物はB. longum、B.breve及びB. bifidumから成る群から選択されるビフィズス菌及び/又はカセイ菌(L. casei)、L paracasei、L. rhamnosus、アソドフィルス菌(L. acidophilus)及びL. plantarumから成る群から選択される乳酸菌(Lactobacillus)を含む。最も好ましくは本発明の組成物は、ビフィドバクテリウム属ブレヴ(Bifidobacterium breve)及び/又は乳酸杆菌属パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)を含む。
【0052】
ビフィドバクテリウム属ブレヴは、グラム陽性で嫌気性の桿菌である。本発明のB. breveは、好ましくは、「Stackebrandt & Goebel, 1994, Int. J. Syst. Bacteriol. 44:846-849」に開示されたように、B. breve ATCC 15700の基準株と比較して、少なくとも95 %の16 S rRNA配列の核酸配列同一性を有し、より好ましくは少なくとも97%、98%、99%又はそれ以上の配列同一性を有する。核酸配列同一性は、デフォルトパラメーターを用いてプログラムGAP又はBESTFITを使用して最適に配列したときの、二つの核酸配列について計算される。GAPデフォルトパラメーターは、ギャップ創造ペナルティ=50 (ヌクレオチド) / 8 (タンパク質)及びギャップ拡大ペナルティ=3 (ヌクレオチド) / 2 (タンパク質)と共に用いられる。ヌクレオチドのために用いられるデフォルトスコアリングマトリクスはnwsgapdna (Henikoff & Henikoff, 1992, PNAS 89, 915-919)である。RNA配列が基本的に類似しているか又はDNA配列とのある程度の配列同一性を有するかした場合、DNA配列中のチミン(T)はRNA配列中のウラシル(U)と等しいとみなされることは明らかである。配列アライメント及び配列同一性の割合のスコアは、「GCG Wisconsin Package, Version 10.3」(Accelrys Inc., 9685 Scranton Road, San Diego, CA 92121-3752, USAから入手可能)又はEMBOSSwin v. 2.10.0.のようなコンピュータープログラムを用いて決定され得る。本発明で用いるビフィズス菌は、好ましくは、B. breve プローブとハイブリダイズし、本願の係属中の国際特許出願PCT/NL2004/000748及び欧州特許出願05075486.0に開示されたような5’ ヌクレアーゼアッセイ方法によるシグナルを与える。好ましい態様に従って、本発明の組成物は、B. breve Bb-03 (Rhodia)、B. breve M16-V (Morinaga)、B. breve R0070 (Institute Rosell, Lallemand)、DSM 20091、及びLMG 11613から成る群から選択される少なくとも一つのB. breveを含む。最も好ましくは、該B. breveはB. breve M-16V (Morinaga)である。
【0053】
好ましい態様において、本発明の組成物は、乳酸杆菌属パラカゼイを含む。好ましくは本発明のL.パラカゼイ株は、上記定義のL.パラカゼイATCC 25032の基準株と比較して、少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、98%、99%又はそれ以上の16S rRNA配列の核酸配列同一性を有する。本発明で用いられる乳酸菌は、好ましくは、L.パラカゼイプローブとハイブリダイズし、本願の係属中の欧州特許出願05075486.0に記載された5’ヌクレアーゼアッセイ方法によるシグナルを与える。好ましい態様において、本発明の組成物は、L.パラカゼイF19 (Arla, Sweden)、L. パラカゼイLAFTI L26 (DSM Food Specialties, the Netherlands)及びL. パラカゼイCRL 431 (Chr. Hansen, Denmark)、LMG 12165及びLMG 11407から成る群から選択される少なくとも一つのL.パラカゼイを含む。
【0054】
多価不飽和脂肪酸
本発明者らは、エイコサペンタエン酸(EPA, n-3)及びガンマリノレン酸(GLA, n-6)が、炎症が媒介する腸の密着帯(tight junction)の透過性を効率的に減少することを発見した。それ故、腸内バリアの完全性を改善するのに適する組成物が提供され、これは、(オリゴ糖及びシステイン及び/又はシステイン源に加えて)EPA及び/又はGLAを含む。生化学的な経路に基づいて、脂肪酸の他の組み合わせも有効であると仮定できる。従って、一以上の他のPUFA又はそれらの混合物を含む組成物もまた提供される。例えば、任意のEPA、ドコサヘキサエン酸(DHA, n-3)、ジホモ-ガンマリノレン酸(DGLA, C20:3n-6)、ステアリン酸(STA, C18:4n-4)、アルファリノレン酸(ALA, C18:3n-3)、(ドコサペンタエン酸(DPA, C22:5n-3)、エイコサテトラエン酸(C20:4n-3)及び/又はアラキドン酸(AA, n-6)の混合物が用いられ得る。
【0055】
適切には、比較的高い一日量の多価不飽和脂肪酸が用いられる。一つの態様において、n-3及び/又はn-6の脂肪酸を含む、少なくとも約25 en%、好ましくは少なくとも約30 en%、より好ましくは少なくとも約35 en% の脂肪ブレンドが用いられる(en% はエネルギーパーセントの短縮であり、各成分が製剤の総カロリー値に寄与する相対的な量を表す)。好ましい一日量は、少なくとも1グラムPUFAであり、より好ましくは1〜50グラムPUFAであり、より好ましくは5〜25 グラムPUFAであり、最も好ましくは7.5〜15 グラムPUFAの量である。
【0056】
最適な脂肪ブレンドは、例えば、40%のルリジサ油及び60%の魚油を含み得る。該n-3/n-6脂肪酸比は、1〜2であり、n-3の重量パーセントは総脂肪酸含量の20〜40であり、n-6の重量パーセントは総脂肪酸含量の15〜35である。ルリジサ油は、マツヨイグサ油によって部分的に又は完全に置換されることができる。
【0057】
それ故、好ましい一日量は、少なくとも0.1グラムのEPA及び0.05グラムのGLAであり、より好ましくは0.1〜5グラムのEPA及び0.05〜2.5グラムのGLAであり、より好ましくは0.5〜2.5グラムのEPA及び0.25〜1.25グラムのGLAであり、最も好ましくは0.75〜1.5グラムのEPA及び0.37〜0.75グラムのGLAの量である。
【0058】
生物学的に活性な成分
本発明の組成物は、一以上の生物学的に活性な分子、好ましくは乳中に天然に発見される成分をさらに含み得る。それらは成長因子、免疫グロブリン及び他の乳成分又は乳由来成分を含む。
【0059】
A. 成長因子
乳成長因子は、腸の健康に有益であることが分かっている。トランスフォーミング成長因子-ベータ、インスリン様成長因子及びケラチノサイト成長因子は、乳成長因子の最も重要な例である。それ故、一つの態様において、前記組成物は、一以上の成長因子、例えば、一日あたり約1-500μgの成長因子をさらに含む。
【0060】
B. 免疫グロブリン
免疫グロブリンは、腸感染を防ぐことが示されており、本発明の組成物は一日量で0,1〜10gの免疫グロブリンを好適に含む。
【0061】
C. 他の成分
乳から得られる他の生理活性成分、例えば、ヌクレオチド、脂肪酸、オリゴ糖もまた、腸のバリア機能に有益な影響を有することが分かっており、それ故、前記組成物の製造において好適に用いられる。
【0062】
D. 初乳
一つの態様において、該組成物は初乳を含む。初乳は、出産後の哺乳類の母親の、特に出産後の雌牛の乳腺によって分泌される前乳液体(pre-milk fluid)である。初乳は、多くの生物学的に活性な乳成分を含み、それ故、生物学的に活性な分子の優れた出所である。初乳はタンパク質源であり、システインを提供するというさらなる利益を有している。HIV患者に有益な効果を有するためには、少なくとも約5グラムの初乳が毎日の基本として提供され、好ましくは一日あたり少なくとも約10グラム、より好ましくは少なくとも約20 g又はそれ以上が提供される。
【0063】
EP0545946に開示された乳清成長因子抽出物又はWO02083164に開示されたようなカゼイン抽出物のような乳タンパク質からの抽出物、免疫グロブリン濃縮物、ラクトフェリン又は他の濃縮された乳清画分もまた、HIV患者の腸のバリア機能を改善するために用いることができる。
【0064】
生物学的に活性な分子又は成分は、方法の範囲内で得ることができることは理解される。多くが商業的に入手可能であり、又は、組換えDNA技術によって合成的に製造でき、又は、それらは乳のような天然の出所から(部分的に)精製されるか又は抽出されることができる。生物学的に活性な分子又はそれらの分子を含む成分の任意の混合物も用いられ得る。
【0065】
DC-sign受容体を遮断するのに適する組成物
他の態様において、HIV又はAIDSのような DC-sign 媒介疾病の治療及び/又は予防に適した組成物が提供される。そのような組成物は、適切な量のオリゴ糖、特に上記及び実施例1で定義されたような酸性オリゴ糖を含む。約1000、600、400、より好ましくは200μg/ml又はそれ以下、例えば150、100、50、25 μg/ml又はそれ以下のIC50値を有するオリゴ糖が好ましい。該IC 50値は、当該分野で既知の方法を用いて決定することができる(実施例1を参照)。
【0066】
それらの組成物は、システイン及び/又はシステイン源、PUFAなど、本明細書に他で記載したようなものを付加的にさらに含んでよい。該オリゴ糖は、医薬組成物として処方されてよく、又は、食品又は食品補助組成物(オリゴ糖及びシステイン及び/又はシステイン源を含む組成物について以下に記載されたように)として処方されても良い。
【0067】
投与の種々のタイプに適した医薬製剤についてのガイダンスは、「Remington's Pharmaceutical Sciences, Mace Publishing Company, Philadelphia, PA, 17th ed. (1985)」に見出すことができる。
【0068】
栄養組成物及び食品補助剤(food supplements)
オリゴ糖及びシステイン及び/又はシステイン源は、ベビーフードや臨床的な食品のような食品中に都合よく適用できることが分かっている。そのような食品は、好ましくは、脂質、タンパク質及び糖質を含み、液体又は固体形態で投与できる。本発明で用いる「液体食品」という用語は、乾燥食品を適切な液体(例えば水)と混合するようにという指示を伴う乾燥食品(例えば粉末)を含む。固体食品は、0.2〜0.4の水活性を有するサプリメントバーの形態の食品を含む。水活性は、同じ温度での、純粋な水の蒸気圧に対する製品の水蒸気圧の割合として定義できる。固体製品は、目的の水活性に合わせなければならず、さもないと該製品は保存性がない。半固体食品及び補助食品も提供される。
【0069】
それ故、本発明はまた、存在するオリゴ糖及びシステイン及び/又はシステイン源に加えて、好ましくは5〜50 en%の脂質、10〜60 en%のタンパク質、15〜85 en%の糖質を含む栄養組成物にも関する。本発明の内容において、本発明の組成物中のオリゴ糖が、カロリーを与えず、それ故、上記の en%に含まれないことは理解されるであろう。全てのタンパク質、ペプチド、アミノ酸は、カロリーに寄与し、それ故、上記 en% に含まれる。一つの態様において、該栄養組成物は、15〜50 en%の脂質、25〜60 en%のタンパク質及び15〜45 en%の糖質を含む。他の多様において、本発明の栄養組成物は、15〜50 en%の脂質、35〜60 en%のタンパク質及び15〜45 en%の糖質を含む。
【0070】
好ましくは、EPA又はGLAの高含有量を有する脂質が用いられる。魚油及びルリジサ油又はマツヨイグサ油がそれらの多価不飽和脂肪酸の好ましい原料である。
【0071】
消化できる糖質の源は、栄養製剤に加えられ得る。それは好ましくは、栄養組成物のエネルギーの約25%〜約40%で提供される。任意の適切な糖質(源)、例えばスクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、コーンシロップ固体、及びマルトデキストリン、及びそれらの混合物が用いられ得る。
【0072】
好ましくはビタミン及びミネラルは、FSMP調節によって必要とされる量で存在する。
【0073】
下痢は、液体食品を受ける多くのHIV患者において重大な問題である。便の問題は、50〜500 mOsm/kg、より好ましくは100〜400 mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度を有する乾燥栄養組成物又は液体栄養組成物中に本発明のオリゴ糖を投与することによって減少することが分かった。
【0074】
上記の観点から、該栄養組成物は、過剰なカロリーを与えないことが好ましい。それ故、該栄養組成物は、500 kcal/一日量より多くを含まず、より好ましくは200〜400 kcal/一日量、及びより好ましくは250〜350 kcal/一日量を含むことが好ましい。
【0075】
上記に従って、本発明は、以下を含む栄養組成物に関する:
a)オリゴ糖、好ましくは該オリゴ糖は少なくとも酸性オリゴ糖を、好ましくは1日あたり10 mg〜100 グラム、好ましくは1日あたり約100 mg〜50グラム、さらには約0.5〜20 グラムが1日の用量で提供される量で含む、及び
b)システイン及び/又はシステイン源、好ましくはここにおいて少なくとも0.1 gシステイン等量が一日量で提供される、及び任意に
c)一以上の生物学的に活性な成分(例えば、初乳)及び/又はPUFA(例えば、EPA及び/又はGLA)、好ましくは、ここにおいて、少なくとも1グラムのPUFA、より好ましくは1〜50グラムのPUFA、より好ましくは5〜25グラムのPUFA及びさらにより好ましくは7.5〜15グラムのPUFAが一日量で提供され、また好ましくは少なくとも0.1グラムのEPA及び0.05グラムのGLA、より好ましくは0.1〜5グラムのEPA及び0.05〜2.5グラムのGLA、より好ましくは0.5〜2.5グラムのEPA及び0.25〜1.25グラムのGLA及びさらにより好ましくは0.75〜1.5グラムのEPA及び0.37〜0.75グラムのGLAが一日量で提供される。
【0076】
一つの態様において、該栄養組成物は、5〜50 en%の脂質、35〜60 en%のタンパク質、15〜60 en%の糖質、酸性オリゴ糖及びシステイン及び/又はシステイン源を含み、ここにおいて、該システイン源は、NAC、乳清、初乳、卵タンパク質又はそれらの混合物から成る群から選択される。
【0077】
他の態様において、該食品組成物は、15〜50 en%の脂質、35〜60 en%のタンパク質、15〜45 en%の糖質、酸性オリゴ糖及び中性オリゴ糖及びシステイン又は及び/又はシステイン源を含み、ここにおいて該システイン源はNAC、初乳、卵タンパク質又はそれらの組合せから成る群から選択される。
【0078】
該栄養組成物は、好ましくは食品補助剤の形態であり、又は食品補助剤として投与される。この栄養組成物又は食品補助剤は、HIV患者を治療するための方法において有利に用いることができ、前記方法は、前記組成物又は補助剤を哺乳類、好ましくはHIVに感染したヒトに投与することを含む。
【0079】
HIVの治療及び/又は予防において使用するための組成物の製造方法も提供され、該方法は、
−適切な量の一以上のオリゴ糖を提供すること;
−適切な量のシステイン及び/又はシステイン源を提供すること
−上記成分を両方とも適切な食品又は食品補助剤又は医薬組成物中に処方すること
を含む。
【0080】
以下の実施例は本発明を説明する。他で述べない限り、本発明の実施は、分子生物学、薬理学、免疫学、ウイルス学、微生物学又は生化学の標準的な従来方法を用いる。そのような技術は、「Sambrook and Russell (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, in Volumes 1 and 2 of Ausubel et al. (1994) Current Protocols in Molecular Biology, Current Protocols, USA」及び「Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, Pa., 17th ed. (1985), Microbiology: A Laboratory Manual (6th Edition) by James Cappuccino, Laboratory Methods in Food Microbiology (3rd edition) by W. Harrigan (Author) Academic Press」に開示されており、その全てが参照によって本明細書に援用される。
【実施例】
【0081】
実施例1.酸性オリゴ及びGOSによるDC-SIGN-Fc結合の遮断
DC-SIGNの遮断は、樹状細胞からCD4 T-細胞へのウイルスの移行を防ぐことが示されている。本発明者らは、驚くべきことに、オリゴ糖が異なる有効性でDC-SIGNを遮断できることを発見した。酸性オリゴ糖 (AOS)、ペクチン様加水分解産物は、表1に示すように最も強力である。それらの結果は、AOSは、最も低い濃度でFc断片のDC-SIGNへの結合を防ぐことができることを示す。
【表1】

【0082】
材料及び方法:
オリゴ糖製剤を連続的に希釈してELISAプレート上に被覆した。DC-SIGN-Fc結合は、抗-DC-SIGN-Fcを用いてELISAで測定し、標識された二次抗体を加えて可視化した。20分のインキュベーション後、ODを分光光度計(Becton Dickinson)で測定した。結果を、50%阻害のときの阻害性の濃度として示す。
【0083】
実施例2.栄養バー(nutritional bar)の組成
【表2】

【0084】
実施例3.栄養バーの組成
【表3】

【0085】
実施例4.粉末組成
【表4】

【0086】
実施例5.粉末組成
【表5】

【0087】
実施例6.液体栄養組成
【表6】

【0088】
実施例7.液体栄養組成
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】グラフを示す。
【図2】グラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類におけるHIV又はAIDSの治療及び/又は予防のための方法において使用するための組成物の製造における、一以上の酸性オリゴ糖、一以上の中性オリゴ糖及びシステイン及び/又はシステイン源の使用であって、
前記方法は、治療的有効量の前記一以上の酸性オリゴ糖及び一以上の中性オリゴ糖を含む前記組成物を、前記哺乳類に投与することを含み、ここにおいて、該酸性オリゴ糖はペクチン、ペクテート、アルギナート、コンドロイチン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン、細菌性糖質、シアログリカン、フコイダン、フコオリゴ糖又はカラゲナンから調製され、該中性オリゴ糖はガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、トランスガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ラクトスクロース及びアルビノオリゴ糖から成る群から選択されることを特徴とする使用。
【請求項2】
前記システイン及び/又はシステイン源が、少なくとも100 mgシステイン等量を一日量で提供する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記システイン及び/又はシステイン源が、少なくとも600、好ましくは少なくとも1000 mgのシステイン等量を一日量で提供する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
酸性オリゴ糖がペクチン加水分解産物である、請求項1〜3の何れかに記載の使用。
【請求項5】
前記中性オリゴ糖がフラクトオリゴ糖及びガラクトオリゴ糖の混合物である、請求項1〜4の何れかに記載の使用。
【請求項6】
前記総オリゴ糖の少なくとも15%が酸性オリゴ糖から成る、請求項1〜5の何れかに記載の使用。
【請求項7】
前記システイン源がN-アセチルシステイン、乳清、初乳、卵タンパク質又はそれらの組合せである、請求項1〜6の何れかに記載の使用。
【請求項8】
前記乳清、初乳又は卵タンパク質が少なくとも部分的に加水分解される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記組成物がさらに多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含む、請求項1〜8の何れかに記載の使用。
【請求項10】
前記PUFAが総脂肪酸含量に基づいて少なくとも20%のGLAプラスEPAを含む、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
15〜50 en%の脂質、25〜60 en%のタンパク質、15〜45 en%の糖質、ペクチン、ペクテート、アルギナート、コンドロイチン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン、細菌性糖質、シアログリカン、フコイダン、フコオリゴ糖又はカラゲナンから調製された酸性オリゴ糖、好ましくはペクチン加水分解産物、及び、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、トランスガラクトオリゴ糖 キシロオリゴ糖、ラクトスクロース及びアラビノオリゴ糖から成る群から選択される中性オリゴ糖、及びシステイン及び/又はシステイン源を含み、ここにおいて、該システイン及び/又はシステイン源がN-アセチルシステイン、乳清、初乳、卵タンパク質又はそれらの組合せから成る群から選択される食品組成物。
【請求項12】
15〜50 en%の脂質、35〜60 en%のタンパク質、15〜45 en%の糖質、ペクチン、ペクテート、アルギナート、コンドロイチン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン、細菌性糖質、シアログリカン、フコイダン、フコオリゴ糖又はカラゲナンから調製された酸性オリゴ糖、好ましくはペクチン加水分解産物、及び、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、トランスガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ラクトスクロース及びアルビノオリゴ糖から成る群から選択される中性オリゴ糖、及びシステイン及び/又はシステイン源を含み、ここにおいて該システイン及び/又はシステイン源がN-アセチルシステイン、初乳、卵タンパク質又はそれらの組合せから成る群から選択される食品組成物。
【請求項13】
前記脂質がEPA及び/又はGLAを含む、請求項11又は12に記載の食品組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2008−540331(P2008−540331A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507579(P2008−507579)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【国際出願番号】PCT/NL2006/050091
【国際公開番号】WO2006/112716
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(505296821)エヌ.ブイ.・ヌートリシア (32)
【Fターム(参考)】