説明

HPPE糸

本発明は、処理されたHPPE糸が:HPPE糸の表面に付着し、HPPE糸の表面を少なくとも部分的に覆う多孔性ポリオレフィン層と;活性剤を含み、多孔性ポリオレフィン層内に少なくとも部分的に吸収される組成物とを含むことを特徴とする処理されたHPPE糸に関する。本発明は、さらに、処理されたHPPE糸を含む物品、処理されたHPPE糸または物品を含む器具に関する。本発明はまた、処理されたHPPE糸あるいは処理されたHPPE糸構造または処理されたHPPE糸形態を作製するための方法、ならびに自動車用途、海洋用途、航空宇宙用途、医療用途、防護用途、スポーツ/娯楽用途、建築用途、衣類用途、ボトリング用途、機械用途への、処理されたHPPE糸あるいは処理されたHPPE糸を含む物品または器具の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、高性能ポリエチレン(HPPE)の構造要素を含む処理されたモノフィラメントまたはマルチフィラメント糸、このような糸の製造方法および非吸収性外科用縫合糸への使用などの、特に医療用途における、このモノフィラメントまたはマルチフィラメント糸の使用に関する。
【0002】
外科用縫合糸は、外科創傷または外傷の縁部を固定することによって組織または骨を一緒に保持するために、医者または外科医によって使用される縫合糸または一連の縫合糸である。長年の間、外科用縫合糸は、亜麻、毛髪、綿、絹、動物の内臓ならびにポリエチレンテレフタレート、セグメント化ポリエーテル−エステルブロックコポリマーなどのポリエステル、ポリアミドおよびポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィンのような合成材料を含む様々な材料から作製されてきた。合成材料から作製された外科用縫合糸は、モノフィラメントストランド、すなわちモノフィラメント外科用縫合糸として、あるいは編組構造、撚り合わせ構造または他のマルチフィラメント構造におけるマルチフィラメントストランドとして使用することができる。縫合糸は、外科用縫合糸が作製される材料のタイプおよび材料の生体吸収性に応じて、大きく2つの種類すなわちa)吸収性およびb)非吸収性に分類することができる。非吸収性とは、縫合糸が、埋め込み後に身体の自然作用によって溶解もせず、実質的に劣化もしないことを意味する。吸収性とは、縫合糸が、埋め込み後に身体の自然作用によって溶解し、または実質的に劣化することを意味する。例えば、絹またはポリエチレンもしくはポリプロピレンで作製された外科用縫合糸が非吸収性である一方、ポリグラクチンまたはポリ乳酸から作製された外科用縫合糸は吸収性外科用縫合糸である。非吸収性外科用縫合糸は、耐荷重性(load−bearing)インプラントに特に適している。
【0003】
身体組織を修復することを目的とした外科用縫合糸は、非毒性であり、容易に殺菌することが可能であり、良好な引張り強さ(できる限り高いのが好ましい)を有し、耐久性があり(高い耐摩滅性(fray resistance)を有する)、許容できる結節(knotting)および結節特性を有する必要がある。最近では、長期間にわたって抗菌活性を示す外科用縫合糸ならびに他の外科用および/または医療用物品または器具がさらに必要とされている。
【0004】
抗菌剤で被覆された外科用縫合糸が、臨床用途向けに市販されている。現在、抗生物質で被覆されたポリグラクチン外科用縫合糸が、商品名Coated VICRYL PLUS(商標)(ポリグラクチン910編組)Suture(Ethicon、Somerville、N.J.、U.S.A)で販売されている。この外科用縫合糸を作製するのに使用されるポリマーは、90% w/wのグリコリドおよび10% w/wのラクチドからなるコポリマーであるポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)である。VICRYL PLUS(商標)縫合糸は、50% w/wのポリグラクチン730(35% w/wのグリコリドおよび65% w/wのラクチドからなるコポリマーであるポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)である)、50% w/wのステアリン酸カルシウム(潤滑剤)および30年以上の間消費者製品に効果的に使用されている周知の抗菌剤であるトリクロサン[化学名:5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)フェノール]150μg/mの縫合糸を含む。この縫合糸は、縫合糸の周りに細菌がコロニーを作らないようにする阻害領域を作り出す。VICRYL PLUS(商標)縫合糸は、生体適合性であり、吸収性縫合糸の種類に属する。この縫合糸は、一般に、目の組織、心血管組織および神経組織を除く軟組織の縫縮(approximation)および/または結紮に使用される。このタイプの外科用縫合糸の欠点は、その機械的特性、特にその引張り強さおよび弾性率(E−modulus)が限られるため、骨修復に使用できないことである。
【0005】
高い弾性率および高い引張り強さなどのその良好な機械的特性が特に知られているモノフィラメントまたはマルチフィラメントHPPE糸が、医療用途に使用される。それにもかかわらず、モノフィラメントまたはマルチフィラメントHPPE糸は、現在、微生物に対する特異的な防護またはさらなる防護を提供していない。HPPE糸から作製された縫合糸は、高い引張り強さおよび摩擦や高い機械的応力に対する耐性を有する糸が必要とされるためにこのタイプの糸の有利な機械的特性が有益である、組織修復用途だけでなく骨修復用途にも非常に好適であり得る。したがって、長期間にわたって発現される抗菌活性を示し得るHPPE糸をベースとする外科用縫合糸を開発し、使用することが必要とされている。
【0006】
欧州特許出願公開第1 293 218 A1号明細書には、外科用縫合糸または靱帯として使用するための、長い非吸収性縫合糸ストランドが開示されており、この縫合糸ストランドは、超高モル質量ポリエチレン(UHMWPE)フィラメントをやはり含むマルチフィラメントの編組されたシースで囲まれたUHMWPEフィラメントの撚り合わされたストランドのコアを含む。縫合糸ストランドは、高い引張り強さ、可撓性および弾性などの、その目的のための優れた特性を有する。
【0007】
欧州特許出願公開第1 743 659 A1号明細書には、超高分子量ポリエチレンを含有する組成物から作製されたモノフィラメント外科用縫合糸が開示されている。超高分子量ポリエチレンのプラズマエッチングは、不均一な窪み(pitting)および孔を示す様々な形状を有する粗面を与えるための、モノフィラメント縫合糸の処理として使用される。これらの特性は、モノフィラメントが結節を保持する能力を助け、材料がモノフィラメントの表面に付着するのを助ける。欧州特許出願公開第1 743 659 A1号明細書には、抗菌剤または脂肪酸または成長因子を含む組成物は開示されていない。さらに、欧州特許出願公開第1 743 659 A1号明細書は、非処理のモノフィラメントの機械的特性に対して、処理されたモノフィラメントの機械的特性にこの処理が及ぼす影響については言及していない。
【0008】
国際公開第02/076287号パンフレットには、1つ以上のフィラメントから形成される耐摩滅性外科用縫合糸が開示されており、前記外科用縫合糸は、例えば鉱油またはヒマシ油などの油で被覆される。この外科用縫合糸はポリエチレンから作製され得る。この外科用縫合糸は、顔料または染料などの着色剤、充填剤または抗生物質などの治療剤、成長因子を含む他の材料を任意選択的に含有し得る。国際公開第02/076287号パンフレットに記載されるものなどの溶液は、HPPE糸のために適用することができるが、油を含有し、顔料または染料などの着色剤、充填剤または抗生物質などの治療剤、成長因子を含む材料を含有し得るコーティングの(たとえあったとしても)限られた機械的安定性を提供する。国際公開第02/076287号パンフレットのコーティングの(たとえあったとしても)限られた機械的安定性は、このコーティングの、HPPE表面に対する付着性が限られていること、すなわち、HPPEの周知の限られた被覆性から生じる事実に起因する。本質的に、非処理のHPPE糸は、(たとえあったとしても)限られた被覆性を示す。限られた被覆性とは、非処理の液体コーティングの従来の適用方法(例えば浸漬)によって適用される有機コーティング組成物で、ポリエチレンより高い表面エネルギーを有するその表面を部分的にまたは(最も重要には)完全に覆うのが困難であることを意味する。表面の表面エネルギーが低いほど、その表面の湿潤性が低くなり、その表面を被覆するのがより困難になることが知られている。したがって、さらなる物理的、化学的、生物学的および/または機械的特性が必要とされる用途におけるこれらの特定の非常に頑丈な(tenacious)糸の使用が制限される。これまでに、さらなる物理的、化学的、生物学的および/または機械的特性をHPPE糸に付与するために、HPPE糸に有機コーティングを直接付着させる多くの試みが失敗した。その理由は、HPPE糸の従来のコーティング手法は、成功したとしても、このタイプの糸の高い引張り強さの大幅な低下など、HPPE糸の有利な機械的特性を好ましくないほど損なうためである。HPPE糸の少なくとも表面エネルギーを高めるために、HPPE糸が、コロナ、溶媒の存在下または非存在下でのUV照射、プラズマエッチング、ウェットエッチングなどの従来の周知の方法によって表面処理されたとしても、このように処理されたHPPE糸は、非処理のHPPE糸の機械的特性と比較して、著しく劣った機械的特性を示した。
【0009】
米国特許出願公開第20070134305 A1号明細書には、フィブリルコアおよび生物活性剤の活性を保持しながら生物活性剤を封入したポリマーコートから構成される複合構造が開示されている。このポリマーコートは、生物活性剤を閉じ込めるための孔を含む。米国特許出願公開第20070134305 A1号明細書のコートは、10μm(=10,000nm)〜約2000μm(=2,000,000nm)の範囲の厚さを有する厚いポリマーコーティングであり、場合によっては最大で1cm(=10,000,000nm)でさえあり得る。米国特許出願公開第20070134305 A1号明細書によれば、このポリマーコーティングは、エマルジョンの層をフィブリルコアの表面に適用することによって形成される。エマルジョンの層の適用は、例えば、繊維の表面への噴霧、スパッタリング、ブラシ塗布またはエマルジョン中への繊維の浸漬によって行うことができる。米国特許出願公開第20070134305 A1号明細書によれば、被覆された繊維の機械的特性は、被覆されていない繊維の機械的特性より劣っている。
【0010】
結果として、HPPE糸の多くの有利な機械的特性は、さらなる物理的、化学的、生物学的および/または機械的特性がHPPE糸の有利な高い弾性率および高い引張り強さと組み合わせられるべき用途においては、潜在力を最大限に活かすことができない。今までのところ、モノフィラメントまたはマルチフィラメントHPPE糸が抗菌活性を示し得る外科用縫合糸あるいは他のタイプの医療用物品または医療器具においてモノフィラメントまたはマルチフィラメントHPPE糸を使用することはできていない。
【0011】
HPPE糸の別の望ましい特性は、HPPE糸を含む医療用物品または器具に抗菌特性を付与するための例えば抗菌剤などの活性剤の制御放出を提供する能力であろう。その際、HPPE糸あるいは物品または器具は、物品を哺乳類の身体に埋め込んだ後に放出される作用剤の一時的な容器として働く。材料を変性することによって材料に生物活性などのさらなる特性を付与しようとすると、例えば高い引張り強さなどの材料の他の望ましい特性が損なわれると同時に、生物活性物質の放出が多くの場合不十分になることから、一般的に許容できない頻繁な問題が発生する。
【0012】
1つまたは複数のHPPEモノフィラメントの高い引張り強さを効果的に用い得るが、同時に例えば抗菌剤などの生物活性剤の制御放出を提供することが可能であり得る外科用縫合糸が、当業界において必要とされている。
【0013】
[図面の簡単な説明]
本発明は、例示的実施形態ならびに図面を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1aは、HPPE糸の断面図を示し;図1bは、HPPEおよびHPPEの表面に付着する多孔性ポリオレフィン層の断面図を示し;図1cは、本発明に係る処理されたHPPE糸の断面図を示す。
【0015】
全ての図は極めて概略的なものであり、必ずしも縮尺どおりではなく、本発明を説明するために必要な部分のみを示し、他の部分は省略されるかまたは示唆されるに過ぎない。
【0016】
[図面および好ましい実施形態の説明]
本発明の目的は、本明細書において特定される問題または欠点の一部または全てに対処することである。より詳細には、処理されたモノフィラメントまたはマルチフィラメントHPPE糸に改良された特性を与えることが本発明の目的である。改良は、例えば、非処理のHPPE糸の機械的特性に対して少なくとも同等の機械的特性を示し得る処理されたモノフィラメントまたはマルチフィラメントHPPE糸、および同時に例えば生物活性剤などの活性剤の制御放出を提供する処理されたHPPE糸を提供することであり得る。
【0017】
したがって、概して、本発明によれば、
・HPPE糸の表面に付着し、HPPE糸の表面を少なくとも部分的に覆う多孔性ポリオレフィン層と;
・活性剤を含み、多孔性ポリオレフィン層内に少なくとも部分的に吸収される組成物と
を含む処理されたHPPE糸が提供される。
【0018】
本発明の処理されたHPPE糸は、非処理のHPPE糸の機械的特性と同等の機械的特性を有し、さらに向上した付着性を示し、生物活性剤などの活性剤を送達することが可能であり、ひいては抗菌活性を示す。本発明の文脈において、機械的特性は、破断点伸び(%)、弾性率(GPa)、および最大破断力(force−at−maximum break)(Fmax)(N)であることが理解される。
【0019】
本発明の処理されたHPPE糸はまた、有機コーティングまたは例えば金属もしくは金属酸化物コーティングなどの無機コーティングに対する向上した付着性、生物活性剤(例えば抗菌剤および/または殺菌剤)などの活性剤の持続された制御放出も示し得る。
【0020】
図1aは、HPPE糸2を概略的に示す。他の箇所に記載されるように、HPPE糸は、モノフィラメントまたはマルチフィラメント構造であってもよく、モノフィラメント構造は、膜、テープおよびフィルムを包含する。図1bは、HPPE糸2、およびHPPE糸2の表面に付着し、HPPE糸2の表面を少なくとも部分的に覆う多孔性ポリオレフィン層4を示す。図1cは、本発明に係る処理されたHPPE糸6を示す。処理された糸6は、HPPE糸2の表面に付着し、HPPE糸2の表面を少なくとも部分的に覆う多孔性ポリオレフィン層4、および活性剤を含む組成物8を含み、この組成物8は、多孔性ポリオレフィン層4内に少なくとも部分的に吸収されるかまたは組み込まれて、多孔性ポリオレフィン層4と活性剤を含む組成物8との間に化学結合だけでなく機械的結合が生じる。明確にするために、例えば多孔性ポリオレフィン層の相対的な層厚さおよび組成物の相対的な層厚さなどの、図1a、1bおよび1cに示される物体の物理的寸法は、正確でもなく、前記物体の実際の物理的寸法の比例的な表示でもない。例えば多孔性ポリオレフィン層の層厚さおよび組成物の層厚さなどの、図1a、1bおよび1cに示される物体の物理的寸法は、本発明の明細書において詳細に説明される。本発明の明細書に示される前記物理的寸法の値および範囲のみが、上述した要素の正確な物理的寸法に相当するものである。
【0021】
本発明によれば、処理されたHPPE糸は、活性剤の持続放出、制御放出および徐放が可能である。活性剤の放出は、例えばHPPE糸の埋め込みの際、または埋め込み後の特定の時間に開始し得る好ましくは、送達速度は、時間とともに釣鐘型の曲線をたどり、最初はゆっくりだが急に上昇する放出速度が、最大速度になるまで上がった後、速度が時間とともに急に低下して、0になるまで次第に低下する。活性剤の持続放出の分野において、活性剤の大部分が短時間で送達される大量の活性剤の放出である「バースト(burst)」を回避することが望ましいと一般に考えられている。活性剤のこの好ましい放出分布は、本発明に係る処理されたHPPE糸を提供することによって得られる。
【0022】
本発明の処理されたHPPE糸はまた、組成物の機械的安定性を向上させ、ひいては活性剤の放出に対するより良好な制御にさらに寄与し得る。
【0023】
本発明の処理されたHPPE糸はまた、HPPE糸の可撓性を損なわずに上記の特性の一部または全てを示し得る。
【0024】
本明細書において使用される際の向上した特性とは、本発明の処理されたHPPE糸の関連特性が、本明細書に記載される公知の対照HPPE糸の値の+15%を超え、より好ましくは+17%を超え、さらにより好ましくは+20%を超え、最も好ましくは+25%を超えることを意味する。
【0025】
本明細書において使用される際の同等の特性とは、本発明の処理されたHPPE糸の値が、本明細書に記載される公知の対照HPPE糸の値の±15%以内、より好ましくは±12%以内、最も好ましくは±10%以内であることを意味する。
【0026】
これらの比較のための公知の対照HPPE糸または編組などの糸構造は、DSMダイニーマB.V.(DSM Dyneema B.V.)によって製造および販売される商品名ダイニーマ・ピュリティ(Dyneema Purity)(登録商標)で市販されているHPPE糸またはこの糸で作製される編組などの糸構造である。
【0027】
特性が同じ方法で同じ単位で測定される場合、同等の特性および向上した特性の割合の差は、本明細書において、本発明の処理されたHPPE糸と公知の対照HPPE糸との分数差(fractional difference)を指す(すなわち、比較される値もパーセントとして測定される場合、それは絶対差を示さない)。
【0028】
文脈上特に明示されない限り、本明細書において使用される際、本明細書の複数形の用語(例えば金属、要素、糸、モノフィラメント、マルチフィラメントなど)は、単数形を含むものと解釈されるべきであり、逆もまた同様である。
【0029】
本明細書に示される任意のパラメータの全ての上限境界および下限境界について、境界値は、各パラメータについて各範囲に含まれる。本明細書に記載されるパラメータの最小値および最大値の全ての組合せが、本発明の様々な実施形態および選好(preference)のパラメータ範囲を規定するのに用いられ得る。
【0030】
本発明の文脈において、評価される機械的特性は、破断点伸び(%)、弾性率(GPa)、および最大破断力(Fmax)(N)であった。
【0031】
本発明の文脈において、用語「モノフィラメントまたはマルチフィラメントHPPE糸」、「HPPE糸」は、同義的に用いられる。
【0032】
本発明の文脈において、用語「方法」および「プロセス」は、同義的に用いられる。
【0033】
本発明の文脈において、用語「HPPE糸」および「非処理のHPPE糸」は、同義的に用いられる。
【0034】
本発明の文脈において、「前処理されたHPPE糸」とは、同時のプラズマ重合およびプラズマエッチングの際に得られるHPPE糸を意味し、ここで、多孔性ポリオレフィン層が、HPPE糸の表面に付着し、HPPE糸の表面を少なくとも部分的に覆うが、活性剤を含む組成物で、あるいは脂質もしくはアルキドまたはそれらの組合せで処理されていない。
【0035】
本発明の文脈において、「処理されたHPPE糸」とは、物理的プロセスおよび/または化学的プロセスを行ったHPPE糸を意味する。
【0036】
本発明の文脈において、「処理されたHPPE糸構造」とは、処理されたHPPE糸を構造化する際に得られる構造すなわち物理的プロセスおよび/または化学的プロセスを行ったHPPE糸を構造化する際に得られる構造を包含するHPPE糸構造を意味する。
【0037】
本発明の文脈において、「処理されたHPPE糸形態」とは、処理されたHPPE糸を構成する際に得られる形態すなわち物理的プロセスおよび/または化学的プロセスを行ったHPPE糸を構成する際に得られる形態を包含するHPPE糸形態を意味する。
【0038】
本発明の文脈において、用語「フィラメント」または「糸」は、同義的に用いられる。
【0039】
層とは、表面上の層またはコーティングなどのある物質の厚さを意味する。
【0040】
多孔性層とは、少なくともガスに対して透過性の層を意味する。多孔率は、多孔性材料の量の尺度であり、材料中の間隙の尺度である。多孔率は、全体積に対する間隙の体積の割合であり、0〜1、または百分率では0〜100%である。
【0041】
ポリオレフィン層とは、アルケンのモノマーまたは混合物としての単純オレフィン(アルケンとも呼ばれ、一般式C2nで表される)から生成されるポリマーであるポリオレフィン(同義語はポリアルケンであり;これはより最近の用語であるが、ポリオレフィンは石油化学業界でまだ使用されている)を含む層を意味する。本発明によれば、ポリオレフィンの主鎖は、炭素および水素原子を含み、前記ポリオレフィンは、官能基、例えばアミノ基および/またはヒドロキシル基および/またはカルボキシル基で官能化され得る。本発明によれば、ポリオレフィンの主鎖は、炭素および水素原子から実質的になり、官能基、例えばアミノ基および/またはヒドロキシル基および/またはカルボキシル基で官能化され得る。例えば、ポリエチレンは、アルケン、エチレンを重合することによって生成されるポリオレフィンである。ポリプロピレンは、オレフィン、プロピレンから作製される別の一般的なポリオレフィンである。好ましくは、使用されるアルケンモノマーはエチレンである。例示的なアルケンモノマーには、エチレン、プロピレンなどが含まれるが、これらに限定されない。ポリオレフィンの官能化は、例えばオレフィンまたはオレフィンの混合物のプラズマ重合がプラズマエッチングと組み合わせられるときに行うことができ、ここで、プラズマエッチングに使用されるガスは、二酸化炭素(CO)およびアンモニア(NH)(実施例3〜12を参照)からなる群から選択される。M.M.Hossainら(参照により本明細書に援用されるPlasma Process.Polym.2007、4、471〜481)は、このような多孔性層をポリエステル織物上に生成し、堆積するための同時のプラズマ重合およびプラズマエッチングに基づいた技術を記載している。
【0042】
多孔性ポリオレフィン層は、HPPE糸の表面に付着する。これは、多孔性ポリオレフィン層が、横滑りまたは滑りがなくHPPE糸の表面と強固な接触を確立することができることを意味する。本発明の文脈において、およびより広い意味で、付着性とは、物質または材料が、それらが接触している表面と強固な接触を確立する能力を意味する。
【0043】
組成物とは、全体を形成するために個別の化学物質を組み合わせることを意味する。本明細書にパーセントとして表される量の合計が、(丸め誤差を許容して)100%を超えることがないことが理解されよう。例えば、本発明の組成物(またはその一部)が含む全ての個別の化学物質の合計は、組成物(またはその同じ部分)の重量(または他の)パーセントとして表されるとき、丸め誤差を許容して全部で100%になり得る。しかしながら、成分のリストが完全に網羅されていない場合、このような個別の化学物質の各々のパーセントの合計は、本明細書に明示的に記載されていないことがあるさらなる量の任意のさらなる個別の化学物質のいくらかのパーセントを見越して、100%未満であることがある。本発明の文脈において、組成物は、活性剤を含むべきであり、好ましくは、本明細書に記載されるこれらのように、脂質またはアルキドもしくは酸化アルキド、またはそれらの混合物を含み得る。
【0044】
活性剤とは、意図した作用または効果を生み出す化合物を意味する。
【0045】
本発明の趣旨では、糸は、本明細書において、最終製品としてまたはその様々な他の物品または器具を作製するために使用可能な、長さ寸法が横径よりはるかに長い製品または物品を意味するものと理解される。したがって、本明細書における糸は、複数のモノフィラメントで作製された糸および単一のモノフィラメントで作製された糸の両方を含む。
【0046】
モノフィラメントは、本明細書において、単一の紡糸孔(spin hole)から得られるフィラメントを意味するものと理解される。本明細書におけるモノフィラメントは、参照により本明細書に援用される欧州特許出願公開第0 740 002 A1号明細書に記載のものなどの、いくつかのモノフィラメント特性を有する融合されたマルチフィラメント糸を含むことが留意される。本発明の趣旨では、モノフィラメントは、長さ寸法が横径よりはるかに長い細長い物体である。
【0047】
特別な実施形態において、モノフィラメントは、好ましくはほぼ円形または楕円形の断面を有する。モノフィラメントである糸と比較して、マルチフィラメント糸は、本明細書において、単一の糸を構成するように配置された複数の個別のモノフィラメントを含む細長い物体として理解される。マルチフィラメントはまた、一方向(UD)単層などの一連のモノフィラメントまたはマルチフィラメントも包含する。一方向単層は、好適な表面上に複数のHPPE糸を平行な配置で位置決めし、好適なマトリックス材料中に繊維を埋め込むことによって生成される。このように作製された網目構造は、一般的な糸の方向に沿って互いに平行に一方向に整列した複数の糸からなる。
【0048】
別の特別な実施形態において、モノフィラメントは、モノフィラメント様、すなわち少なくとも部分的に溶融されるマルチフィラメントであり得る。
【0049】
2つ以上のフィラメントが使用される場合、フィラメントは、編組され、撚り合わされ、拡張され、交絡されるか、あるいはある他のマルチフィラメント形態または構造で配置され得る。テープまたはシートなどの構造は、任意選択的に(好ましいわけではないが)糸を結合する接着剤とともに、1つ以上のモノフィラメントまたはマルチフィラメントも含み得る。
【0050】
本発明の好ましい実施形態において、処理されたHPPE糸はモノフィラメントである。
【0051】
本発明の別の好ましい実施形態において、処理されたHPPE糸はマルチフィラメントである。マルチフィラメントは、例えば欧州特許出願公開第0 740 002 A1号明細書に記載されるような、マルチフィラメント糸から得られるモノフィラメント様構造も包含する。
【0052】
本発明の別の好ましい実施形態において、処理されたHPPE糸は、処理されたHPPE糸を含むかまたは処理されたHPPE糸からなる、例えば、編組、織物、織構造、不織構造、編物構造、編組構造または他の方法で形成された構造などの糸形態または糸構造である。
【0053】
本発明の好ましい実施形態において、モノフィラメントまたはマルチフィラメントの処理されたHPPE糸は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィラメントを含む。超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は、熱可塑性ポリエチレンのサブセットである。UHMWPEは、エチレンのモノマーから合成され、エチレンのモノマーは結合されて、非処理の高密度ポリエチレン(HDPE)より桁違いに長いポリエチレンの分子を形成する。一般に、HDPE分子は、分子当たり700〜1,800のモノマー単位を有する一方、UHMWPE分子は、100,000〜250,000のモノマーを有する傾向がある。UHMWPEの分子量は、通常2百万より多く、通常2〜6百万の範囲である。UHMWPEは、非常に強靭な材料であり、実際、全ての公知の熱可塑性プラスチックの中で最も強靭である。UHMWPEは、無味無臭で、非毒性である。UHMWPEは、例えば以下の方法:圧縮成形、ラム押出、ゲル紡糸、焼結、および混練を用いて処理される。ゲル紡糸の際、UHMWPEの正確に加熱されたゲルが、紡糸口金を通して押出機によって処理される。押出物は、空気を通して引き出され、次に冷却される。最終的に得られるのは、高度の分子配向、高い結晶性、ひいては非常に優れた引張り強さを有する糸である。ゲル紡糸は、分子間の絡み合いが最小となるように溶媒中の個別の鎖分子を単離することに依存する。分子間の絡み合いが最小に保たれない場合、UHMWPEなどの材料が処理できなくなる主な原因となる。さらに、分子間の絡み合いにより、鎖配向がより困難になり、最終製品の機械的強度が低下し得る。UHMWPEが繊維に形成される場合、ポリマー鎖は、通常、90%超、例えば95%超の平行配向および高レベルの結晶性、例えば最高85%の結晶性を保つことができる。エチレンを重合してUHMWPEにすることは、1950年代にRuhrchemie AG(この企業は何年かにわたって名称を変更した)によって商業化され;現在、UHMWPE粉末材料は、Ticona、Braskem、および三井(Mitsui)によって製造される。UHMWPEは、シートまたはロッドなどの固結された(consolidated)形態として、および繊維として市販されている。UHMWPE粉末は、製品の最終的な形状に直接成形することもできる。本明細書に使用され得るUHMWPEフィラメントには、DSM(Heerlen、オランダ)から入手可能な商品名ダイニーマ(DYNEEMA)で販売されているものが含まれる。
【0054】
本発明の文脈において、UHMWPEは、本明細書において、5dl/g(デシリットル/グラム)を超える固有粘度(ηintrinsic)を有するポリエチレンと定義される。固有粘度は、MおよびMなどのパラメータからより容易に求めることができる分子量の尺度である。ηintrinsicは、方法PTC−179(Hercules Inc.Rev.、1982年4月29日)に準拠してデカリン中135℃で、16時間の溶解時間で、溶液1l当たり2g(グラム/リットル)の量の酸化防止剤としてのDBPCを用いて求められ、様々な濃度における粘度が、ゼロ濃度に外挿される。5dl/g超のηintrinsicを有する伸張ポリオレフィン繊維は、分子鎖が長いため、高い引張り強さ、弾性率、および破断時エネルギー吸収などの非常に良好な機械的特性を有する。より好ましくは、10dl/g超のηintrinsicを有するポリエチレンが選択される。これは、このようなゲル紡糸UHMWPE糸が、高強度、低い相対密度、良好な耐加水分解性、および優れた磨耗特性の組合せを提供するため、インプラントを含む様々な生物医学的用途における使用に特に適したものとなるためである。
【0055】
好ましくは、本発明のUHMWPEは、直鎖状ポリエチレン、すなわち炭素原子100個当たり1個未満の側鎖または分枝鎖、好ましくは炭素原子300個当たり1個未満の側鎖(1個の分枝鎖は一般に少なくとも10個の炭素原子を含む)を有するポリエチレンである。好ましくは、ポリエチレンのみが存在するが、あるいはポリエチレンは、プロピレン、ブテン、ペンテン、4−メチルペンテンまたはオクテンなどの、それと共重合していてもまたはしていなくてもよい最高5モル%のアルケンをさらに含み得る。ポリエチレンは、ポリエチレンと添加剤を合計した総重量の最高15% w/w、好ましくはポリエチレンと添加剤を合計した総重量の1〜10% w/wで、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤などの、このような繊維に通常用いられる添加剤をさらに含有し得る。UHMWPEには、好ましくはUHMWPEとより低い分子量を有するポリエチレンを合計した総重量の最高10%モルで、より低い分子量を有するポリエチレンがさらに添加され得る。
【0056】
モノフィラメントまたはマルチフィラメントHPPE糸は、欧州特許出願公開第0 205 960 A号明細書、欧州特許出願公開第0213208 A1号明細書、米国特許第4 413 110号明細書、国際公開第01 73173 A1号パンフレット、およびAdvanced Fiber Spinning Technology、中島利誠(T.Nakajima)編、Woodhead Publ.Ltd(1994)、ISBN 1−855−73182−7、ならびにそれらに引用される参考文献(これらは全て参照により本明細書に援用される)を含む様々な刊行物に記載されている。これらの刊行物において、モノフィラメントまたはマルチフィラメントHPPE糸は、ゲル紡糸法によって作製される。ゲル紡糸モノフィラメントまたはマルチフィラメントHPPE糸マルチフィラメント糸は、高い弾性率および高い引張り強さのような有利な機械的特性を有する。
【0057】
モノフィラメントHPPE糸の直径は、本明細書において、下式1にしたがって糸のdtex(g/10km、糸の長さ10Km当たりの糸のグラム)から計算されるHPPE糸の平均直径Dを意味するものと理解される:
D(μm)=(4/π・ρ−1・dtex・10−71/2・10(式1)
(式中、モノフィラメントの密度ρは、970kg/mであると仮定される)
【0058】
本発明に係る処理されたHPPE糸は、外科用縫合糸として使用されるのに十分大きい直径を有する。大きい直径を有するフィラメントは、外科医による取り扱いの際により丈夫であり(例えば摩擦に対して)、耐磨耗性がより高い。外科用縫合糸のサイズは、米国薬局方(United States Pharmacopeia)(USP)によって規定される。現在、外科用縫合糸についてのUSP指定は、11−0(最も薄い外科用縫合糸)〜7(最も厚い外科用縫合糸)の範囲である。外科用縫合糸として使用され得る本発明の外科用縫合糸についての例示的なUSP指定には、USP11−0(約10μmの直径を有する糸)、USP 10−0(約20μmの直径を有する糸)、USP 9−0(30μmの直径を有する糸)、USP 8−0(約40μmの直径を有する糸)、USP 7−0(約50μmの直径を有する糸)、USP 6−0(約70μmの直径を有する糸)、USP 5−0(約100μmの直径を有する糸)が含まれるが、これらに限定されない。直径が大きくなるほど全強度は高くなるが、通常、比強度は、直径の増加に伴い低下する。100ppm以下のレベルまで残留紡糸溶媒を除去するのは困難であるため、糸の直径は、好ましくは150μm以下(USP 4−0指定の外科用縫合糸として使用され得る)である。より好ましくは、糸の直径は100μm以下であり、さらにより好ましくは糸の直径は50μm以下であり、最も好ましくは糸の直径は40μm以下であり、例えば糸の直径は30μm以下である。糸の直径は好ましくは少なくとも1μmであり、より好ましくは糸の直径は少なくとも2μmであり、さらにより好ましくは糸の直径は少なくとも3μmであり、最も好ましくは糸の直径は少なくとも5μmであり、例えば糸の直径は少なくとも6μmである。
【0059】
外科用縫合糸として使用され得る本発明に係る処理されたHPPE糸は、USP 4.0より大きい直径を有することもある。USP 4.0より大きい直径を有するこのような縫合糸は、より小さい直径の糸の組合せによって、または圧縮成形、ラム押出、ゲル紡糸、焼結、および混練などの方法によって製造される糸によって得ることもできる。
【0060】
本発明のさらに別の実施形態において、外科的修復物品はテープまたはフィルムであり、HPPEは、テープまたはフィルムに含まれる。テープまたはフィルムは、本明細書において、通常、マルチフィラメントHPPE糸に使用される、モノフィラメントよりはるかに大きいサイズおよび形状を有していてもHPPEのモノフィラメントとみなされる。このテープまたはフィルムは、極めて大きいことがある、例えば矩形の1つの紡糸孔を通して溶融物または溶液から押し出されるためである)。このようなテープまたはフィルムは、例えばポリエチレン、好ましくは超高分子量ポリエチレンを、押出機に供給し、HPPEの融点を超える温度でテープまたはフィルムを押し出し、押し出されたポリマーテープまたはフィルムを一方向にまたは二軸で延伸することによって製造され得る。必要に応じて、ポリエチレンを押出機に供給する前に、好ましくはUHMWPEを用いる場合のように、例えば溶液、懸濁液またはゲルを形成するために、ポリエチレンは、例えばデカリンまたはパラフィンなどの好適な液体有機化合物と混合されてもよい。本発明のこの実施形態の下位の一実施形態において、外科的修復物品は、多孔性膜、好ましくは多孔性HPPE膜であり、この膜は、例えば、欧州特許第500 173号明細書または欧州特許第504 954号明細書(両方とも参照により本明細書に援用される)にしたがって作製され、次に、他の箇所に記載されるようにゾル/ゲルを含むコーティングで被覆され得る。
【0061】
テープまたはフィルムを製造するための別の方法は、粉末状のHPPEを高温でカレンダ加工して凝集(coherent)テープまたはフィルムを形成した後、テープまたはフィルムを一方向にまたは二軸で延伸する工程を含む固相プロセスによるものである。
【0062】
別の実施形態において、本発明は、処理されたHPPE糸を提供し、処理されたHPPE糸の直径は、50μm未満、好ましくは30μm未満である。
【0063】
本発明の別の実施形態において、本発明の処理されたHPPE糸は、約10〜17μmの直径を有し、この直径は、USP 10−0の縫合糸として使用され得る。
【0064】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明の処理されたHPPE糸は、約11〜15μmの直径を有し、この直径は、USP 10−0の縫合糸として使用され得る。
【0065】
本発明のさらなる実施形態において、本発明の処理されたHPPE糸は、医療用ケーブルとして使用されるのに十分大きく、最大5mmの直径を有し得る。
【0066】
本発明のさらに別の実施形態において、処理されたHPPE糸は、医療用メッシュ、例えばヘルニアメッシュなどの医療用途に好適なメッシュに構成される。
【0067】
本発明の別の実施形態において、非処理のHPPE糸が、医療用メッシュ、例えばヘルニアメッシュなどの医療用途に好適なメッシュに構成され、次に、このメッシュには、医療用メッシュの表面に付着し、医療用メッシュの表面を少なくとも部分的に覆う多孔性ポリオレフィン層の堆積;および活性剤を含み、多孔性ポリオレフィン層内に少なくとも部分的に吸収される組成物の堆積が行われる。
【0068】
残留紡糸溶媒は、本明細書において、最終的なモノフィラメントにまだ残留している、モノフィラメントを作製するのに使用された溶媒の含量を意味するものと理解される。糸を作製するプロセスにおいて、UHMWPEをゲル紡糸するための公知の溶媒のいずれも使用することができる。紡糸溶媒の好適な例には、脂肪族および脂環式炭化水素、例えばオクタン、ノナン、デカンおよびパラフィン(その異性体を含める);石油留分;鉱油;灯油;芳香族炭化水素、例えば、トルエン、キシレン、およびナフタレン(例えばデカリンおよびテトラリンなどのその水素化誘導体を含む);ハロゲン化炭化水素、例えばモノクロロベンゼン;およびシクロアルカンまたはシクロアルケン、例えばカリーン(careen)、フッ素、カンフェン、メンタン、ジペンテン、ナフタレン、アセナフタレン(acenaphtalene)、メチルシクロペンタンジエン、トリシクロデカン、1,2,4,5−テトラメチル−1,4−シクロヘキサジエン、フルオレノン、ナフトインダン、テトラメチル−p−ベンゾジキノン、エチルフオレン(ethylfuorene)、フルオランテンおよびナフテノンが含まれる。また、モノフィラメントまたはマルチフィラメントHPPE糸をゲル紡糸するための上に挙げた紡糸溶媒の組合せも使用されてもよく、溶媒の組合せも分かりやすくするために紡糸溶媒と呼ばれる。一実施形態において、最適な紡糸溶媒は、例えばパラフィン油など、室温(23℃)で低い蒸気圧を有する。本発明の方法が、例えばデカリン、テトラリンおよび灯油グレードなどの室温で比較的揮発性の紡糸溶媒のために特に有利であることも分かった。最も好ましくは、紡糸溶媒はデカリンである。
【0069】
大きい直径と低い紡糸溶媒残留物との組合せにより、モノフィラメントは、医療用途における使用に極めて適したものとなる。
【0070】
直径が30μm以上であると、さらなる撚り合わせまたは融合プロセスなしでモノフィラメントを糸として使用することができ、これには、細菌が孔に隠れる可能性が低くなるという利点がある。
【0071】
残留紡糸溶媒含量が100ppm以下であると、ほとんどの医療用途で使用するために厄介な清浄化プロセスが不要になる。好ましくは、残留溶媒含量は80ppm以下であり、さらにより好ましくは、60ppm以下である。溶媒含量が低くなると、モノフィラメント糸が一部の特殊な医療用途にさらにより適したものとなる。
【0072】
本発明の一実施形態において、処理されたHPPE糸は、15cN/dtex以上の靭性を有する。このような靭性は、メッシュに使用するのに適している。縫合糸などの特に高い靭性が必要とされる用途において、糸は、25cN/dtex以上の靭性を有するのが好ましい。
【0073】
したがって、6μm以上の直径および100ppm未満の紡糸溶媒残留物を有する、UHMWPEを含む処理されたHPPE糸が提供され、この糸はモノフィラメントである。UHMWPEを溶媒に溶解させた溶液が、1つの紡糸孔または複数の紡糸孔を含む紡糸プレートから紡糸される。好ましくは、フィラメントの紡糸は、紡糸される溶液の流量が制御されるように行われる。一実施形態において、UHMWPEの溶液は、紡糸孔の前に存在する流量制御手段を含む紡糸プレートから紡糸される。流量制御手段は、定量ポンプであり得る。紡糸プレートが異なる紡糸孔に関連する複数の流量制御手段を備えた一実施形態において、流量制御手段の各々が、それぞれの紡糸孔からの流量を個別に制御するのが好ましい。あるいは、複数の流量制御手段はまた、異なる紡糸孔からの流量を同じように制御してもよい。
【0074】
直径のより大きいフィラメントを作製する際に一定でない流量の影響がより大きくなるため、溶液流量の制御は本発明において特に有利である。紡糸孔の直径が大きいと、フィラメントの直径にわたって特性が変動する可能性が高くなる。これにより、モノフィラメントの均一性がより高くなる。
【0075】
本発明の糸を形成するモノフィラメントは、取り扱いの観点および機械的特性から、例えば外科用縫合糸のような医療用途における糸として使用されるのに十分大きい直径を有する。したがって、モノフィラメントは、糸をマルチフィラメントのように作製するために撚り合わせる必要がないため、必要な工程の数を減少させ、簡素化された糸の作製方法を提供する。さらに、モノフィラメントの閉じた構造には、細菌を寄せ付ける隙間がない。
【0076】
2つ以上のフィラメントが使用される場合、フィラメントは、編組され、撚り合わされ、拡張され、交絡されるか、または他のマルチフィラメント形態で配置され得る。外科用縫合糸の特に有用な編組構造は、米国特許第5 019 093号明細書および米国特許第5 059 213号明細書に記載されるらせん状の編組構造である。
【0077】
一実施形態において、処理されたHPPE糸、あるいは処理されたHPPE糸を含むかまたは処理されたHPPEからなる編組、織物、織構造、不織構造、編物構造、編組構造または他の方法で形成された構造などの糸構造または糸形態は、非処理のHPPE糸、あるいは非処理のHPPE糸を含むかまたは非処理のHPPEからなる編組、織物、織構造、不織構造、編物構造、編組構造または他の方法で形成された構造などの糸構造または糸形態、ならびに/あるいは他のタイプの糸、あるいは他のタイプの糸を含むかまたは他のタイプの糸からなる編組、織物、織構造、不織構造、編物構造、編組構造または他の方法で形成された構造などの糸構造または糸形態と組み合わせることができる。好ましくは、他のタイプの糸、あるいは他のタイプの糸を含むかまたは他のタイプの糸からなる編組、織物、織構造、不織構造、編物構造、編組構造または他の方法で形成された構造などの糸構造または糸形態は、例えばナイロン糸、テフロン(teflon)糸、ポリプロピレン糸などの高性能なものである。
【0078】
別の態様において、本発明は、以下の工程:
・同時のプラズマ重合およびプラズマエッチングによって、HPPE糸の表面に付着し、HPPE糸の表面を少なくとも部分的に覆う多孔性ポリオレフィン層を堆積し;前処理されたHPPE糸をこのように作製する工程と;
・活性剤を含む組成物、好ましくは脂質および/またはアルキドも含む組成物を、有効な温度でかつ有効な時間にわたって前処理されたHPPE糸に堆積し;処理されたHPPE糸をこのように作製する工程と;
・任意選択的に、このように作製された処理されたHPPE糸を用いて、処理されたHPPE糸を含むかまたは処理されたHPPE糸からなる編組、織物、織構造、不織構造、編物構造、編組構造または他の方法で形成された構造などの糸構造または糸形態を作製する工程と
を含む、処理されたHPPE糸の作製方法を提供する。
【0079】
さらに別の実施形態において、本発明は、本明細書において上述したような処理されたHPPE糸の作製方法によって得られる処理されたHPPE糸を提供する。
【0080】
プラズマ重合は、重合を開始させるために、多くの場合ビニル基を含有する気体または液体モノマーを活性化または分断するためのエネルギーを提供するガス放電を生成するためのプラズマ源を使用する。プラズマ重合を用いて、ポリマー薄膜を堆積することができる。モノマーのタイプおよびモノマー当たりのエネルギー密度(Yasudaパラメータとして知られている)を選択することによって、得られる薄膜の化学組成および構造を、広い範囲で様々に変化させることができる。本発明の文脈において、好ましくは、プラズマ重合は真空下で行われ、その場合、真空プラズマ重合と呼ばれることになる。プラズマ重合の際に適切なプラズマガス(気体アルケンモノマーを含む)およびプラズマ動作条件を使用することで、表面にポリオレフィン層を有するHPPE糸を製造することができる。プラズマ重合は、特定の順序の不活性ガス、好ましくは希ガス、およびプラズマ重合の際にポリオレフィン層を形成するために本発明において使用されるアルケンモノマーに基づいて行われ得る。ガスは、プラズマを生成可能である必要があり、プラズマが生成されるとアルケンモノマーの重合が開始する。
【0081】
プラズマエッチングは、プラズマ処理の一形態であり、適切なガス混合物のプラズマの高速ストリームが試料に(パルスで)噴射されることを含む。エッチング種として知られているプラズマ源は、帯電している(イオン)かまたは中性(原子および基)のいずれかであり得る。プロセスの間、プラズマは、エッチングされる材料の要素とプラズマによって生成される反応種との間の化学反応から、室温で揮発性のエッチング生成物を生成する。最終的に、噴射された要素の原子は、目的物の表面またはその真下に埋め込まれ、それによって目的物の物理的特性が変性される。プラズマ系は、RF励起を用いて真空系において様々な供給源のガスをイオン化する。RF電源の動作の周波数は、工業および科学的使用のための、連邦通信委員会(Federal Communications Commission)(FCC)によって選択される周波数13.56MHzである。しかしながら、プラズマ系は、より低い周波数(キロヘルツ)またはより高い周波数(マイクロ波)で使用することができる。プラズマ系の動作の形態は、動作圧力が変化すると変化する。また、反応チャンバの構造が異なると、動作の形態は異なる。簡単な例では、電極構造は対称であり、試料は接地電極に配置される。例えば、フッ素または塩素などの遊離基がプラズマ中に生成され、試料表面で反応し得る。プラズマを用いない場合、はるかに高い温度が必要となるであろう。プラズマは、化学種が生成される通常の分子ガスより化学的に反応性の高い原子、分子基および陽イオンを生成するため、より低い処理温度が可能である。例示的なガスは、二酸化炭素、一酸化炭素、アンモニア、塩素(Cl)、ハロカーボン(例えばCF、CFBrおよびCFClなど)、HCl、SFなどであるが、これらに限定されない。本発明の文脈において、好ましくは、プラズマエッチングに使用されるガスは、二酸化炭素(CO)およびアンモニア(NH)からなる群から選択される。
【0082】
同時のプラズマ重合およびプラズマエッチングは、動的マスキング(dynamic masking)プロセスとともに行うこともでき、このプロセスにより、HPPE糸の表面に付着し、HPPE糸の表面を選択的に覆う多孔性ポリオレフィン層が生成される。この技術を使用することによって、活性剤を含む組成物をHPPE糸の表面における特定の箇所に後者に選択的に堆積してもよく、この箇所は組成物に機械的安定性を与えるため、その長期効果が促進される。
【0083】
単一のプロセス工程で、例えばガスであるエチレン(プラズマ重合用のモノマー)の(真空)プラズマ重合とプラズマエッチングとを組み合わせて、前処理されたHPPE糸を生成することで、比較的薄い全体コーティング層厚さを達成することができることが分かった。構造要素および/またはHPPEフィラメントの寸法に対するコーティングの相対的な厚さは、広い限界範囲内で様々に変化し得るが、比較的薄いコーティング層厚さが好ましい。構造要素および/またはHPPEフィラメントと比べてコーティング層が厚すぎる場合、要素および/またはフィラメントの可撓性が低くなりすぎるが、これは一般に要素および/またはフィラメントの用途ならびにサイズまたは寸法に左右される。外科用修復製品が例えば約50〜250μmの直径を有する厚いモノフィラメントまたはモノフィラメント様糸を含む場合、例えば非常に厚いコーティングが有利であり得る。この場合、例えば100nm〜10μmの厚さを有する厚いコーティングが有利であり得る。このような厚いコーティングには、生物学的に活性な化合物の非常に多い充填を実現することができるだけでなく、例えば成長因子、抗生物質などの非常に大型の分子を容易にコーティングに組み込むことができるという利点がある。
【0084】
好ましい実施形態において、本発明は、HPPE糸の表面に付着し、HPPE糸の表面を少なくとも部分的に覆う多孔性ポリオレフィン層を含む処理されたHPPE糸を提供し、ここで、多孔性ポリオレフィン層は、同時のプラズマ重合およびプラズマエッチングによって、HPPE糸に堆積される。
【0085】
本発明の文脈において、多孔性ポリオレフィン層の厚さは、プラズマ重合およびプラズマエッチングが行われる時間に左右される。本発明の多孔性ポリオレフィン層の厚さは、少なくとも5nm、好ましくは少なくとも10nm、より好ましくは少なくとも15nm、最も好ましくは少なくとも18nm、例えば少なくとも20nmである。多孔性ポリオレフィン層の厚さは、1000nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、最も好ましくは300nm以下、例えば250nm以下である。
【0086】
本発明の多孔性ポリオレフィン層の存在は、非処理のHPPE糸への組成物の向上した付着性を提供するだけでなく、同時に、活性剤の向上した制御放出に寄与することが意外にも分かった。さらに、本発明に係る処理されたHPPE糸は、非処理のHPPE糸の機械的特性に対して少なくとも同等の機械的特性を有するため、多孔性ポリオレフィン層の存在は、処理されたHPPE糸の機械的特性を実質的に損なわなかったことが意外にも分かった。
【0087】
多孔性ポリオレフィン層を含むHPPE糸への活性剤の堆積は、例えば浸漬コーティング、スピンコーティングなどの様々な方法によって行うことができる。前処理されたHPPE糸に活性剤を堆積するための有効な時間および温度は、当業者による日常的な実験の際に導かれ得る。前処理されたHPPE糸への活性剤の堆積は、浸漬コーティングによって行われるのが好ましい。
【0088】
浸漬コーティングは、コーティング材料を入れたタンクに基材を浸し、タンクからその片を取り出し、任意選択的にそれを流すことを指す。次に、被覆された片は、強制乾燥または加熱乾燥によって乾燥させることができる。これは、スピンコーティング手順とともに薄膜被覆材料を作製するための一般的な方法である。浸漬コーティングプロセスは、一般に、以下の3段階に分けることができる:
a)浸漬:基材を一定の速度でコーティング材料の溶液に好ましくは激しく揺すらずに浸し;
b)滞留時間:コーティング材料が基材に付着できるように、基材を完全に浸して静止した状態に保ち;
c)取り出し:激しく揺するのを避けるようにやはり一定の速度で基材を取り出す。基材をタンクから速く取り出すほど、基板に付着されることになるコーティング材料が厚くなる。
【0089】
浸漬コーティングプロセス工程のための好ましい時間および温度条件である浸漬コーティングプロセスの全ての上記の工程の有効な時間および温度は、構造要素のHPPEフィラメントがその分子配向を緩めないように、それらが軟化または溶融し始めないように選択される。多孔性ポリオレフィン層およびコーティングを含むHPPE糸が特定の温度に曝される滞留時間は、好ましくは少なくとも10秒間、より好ましくは少なくとも12秒間、さらにより好ましくは少なくとも15秒間、最も好ましくは少なくとも20秒間、例えば少なくとも25秒間である。多孔性ポリオレフィン層およびコーティングを含むHPPE糸が特定の温度に曝される滞留時間は、好ましくは60分間以下、より好ましくは45分間以下、さらにより好ましくは30分間以下、最も好ましくは20分間以下、例えば15分間以下である。好ましくは、浸漬コーティングのプロセス工程のいずれかに使用され得る温度は、構造要素のHPPEフィラメントがその分子配向を緩めないと同時に、例えば活性剤を溶媒に溶解させた溶液などのコーティング材料が液体形態にあるように、構造要素のHPPEフィラメントが軟化または溶融し始めないように選択されるべきである。より好ましくは、適用される温度は、少なくとも10℃、さらにより好ましくは少なくとも15℃、最も好ましくは少なくとも20℃、例えば少なくとも室温であり得る。好ましくは、適用される温度は、90℃以下、さらにより好ましくは80℃以下、最も好ましくは70℃以下、例えば60℃以下であり得る。当業者であれば、日常的な実験によって、一方で、含まれる材料の物理的/化学的特性および他方で目的とする用途に合った有利な時間および温度設定が分かる。好ましくは浸漬コーティングプロセスの工程c)の後のコーティング材料の乾燥は、いくつかの方法にしたがった熱処理によって行うことができる。周囲加熱による乾燥(室温における乾燥に相当する)、真空乾燥、電磁乾燥、音響乾燥(acoustic drying)、噴霧乾燥または凍結乾燥は全て用いられ得る。本方法の好ましい実施形態において、熱処理温度は、120℃未満、より好ましくは100℃未満、さらにより好ましくは80℃未満、最も好ましくは50℃未満、例えば室温である。これらの好ましい温度条件は、構造要素のHPPEフィラメントがその分子配向を緩めないように、それらが軟化または溶融し始めないように選択される。構造要素およびコーティングの前駆物質がオーブン温度に曝される滞留時間は、例えば約30秒間〜約15分間の範囲内である。当業者であれば、日常的な実験によって有利な設定が分かる。
【0090】
別の実施形態において、本発明は、本発明の処理されたHPPE糸の作製方法を提供し、本方法は本明細書に記載され、ここで、同時のプラズマ重合およびプラズマエッチングは、HPPE糸、アルケンガス、好ましくはエチレンまたはアルケンガスの混合物、不活性ガス、好ましくは希ガス、好ましくはアルゴンまたは不活性ガスの混合物;ならびに二酸化炭素(CO)またはアンモニア(NH)のいずれかの存在下で行われる。
【0091】
別の実施形態において、本発明は、本発明の処理されたHPPE糸の作製方法を提供し、本方法は本明細書に記載され、ここで、活性剤を含む組成物を堆積する工程の前に、HPPE糸は、HPPE糸を含む編組、織物、織構造、不織構造、編物構造、編組構造または他の方法で形成された構造などの糸構造または糸形態に転化され、好ましくは、活性剤を含む組成物を堆積する工程の前および多孔性ポリオレフィン層を堆積する工程の前に、HPPE糸は、上記の糸構造または糸形態に転化される。
【0092】
本発明に係る前処理されたHPPE糸に、好ましくは脂質および/またはアルキドを含み得る活性剤を含む組成物を、特定の時間、すなわち選択した時間に添加することには、処理されたHPPE糸の形態で長期間貯蔵するのが本来なら難しい化学的におよび/または物理的に不安定な活性剤を使用することができるという利点がある。その理由は、処理されたHPPE糸の適用の時点でそれらを添加することができるためである。同じ利点が、前処理されたHPPE糸を含むかまたは前処理されたHPPE糸からなる任意の糸構造または糸形態、すなわち本発明に係る糸構造または糸形態に当てはまる。
【0093】
別の実施形態において、本発明は、本明細書に記載される処理されたHPPE糸あるいは糸構造または糸形態の作製方法を提供し、ここで、同時のプラズマ重合およびプラズマエッチングは、HPPE糸、アルケンガス、好ましくはエチレンまたはアルケンガスの混合物、不活性ガス、好ましくは希ガス、好ましくはアルゴンまたは不活性ガスの混合物;ならびに二酸化炭素(CO)またはアンモニア(NH)のいずれかの存在下で行われる。
【0094】
好ましい実施形態において、本発明は、本明細書に記載される方法のいずれかによって得られる、処理されたHPPE糸、HPPE糸を含むかまたはHPPE糸からなる編組、織物、織構造、不織構造、編物構造、編組構造または他の方法で形成された構造などの処理されたHPPE糸構造または処理されたHPPE糸形態を提供する。
【0095】
好ましい実施形態において、本発明は、本明細書に上述される方法によって得られる、処理されたHPPE糸、HPPE糸を含むかまたはHPPE糸からなる編組、織物、織構造、不織構造、編物構造、編組構造または他の方法で形成された構造などの処理されたHPPE糸構造または処理されたHPPE糸形態を提供する。
【0096】
活性剤は、香料、顔料、染料、着色剤、防虫剤、UV−Vis吸収剤、着色剤、香気化合物、触媒、光−/UV−安定剤、難燃剤、殺菌剤、殺虫剤、抗ウイルス剤、成長因子、成長因子阻害剤、成長因子受容体、骨誘導剤、または完全もしくは部分的機能遺伝子、抗炎症薬、抗感染症薬(例えば抗生物質および抗ウイルス剤)、抗菌剤、抗癌剤、抗高脂血薬、鎮痛薬および併用鎮痛薬、抗ぜんそく薬、抗けいれん薬、抗鬱薬、抗糖尿病薬、および他の疾病に使用される剤などの生物活性化合物であり得る。通常、活性剤の分子量は、約3000g/モル(グラム/モル)未満、好ましくは2000g/モル未満、さらにより好ましくは1500g/モル未満、最も好ましくは1200g/モル未満、例えば1000g/モル未満である。望ましくは、活性剤の構造は、多孔性ポリオレフィン層を通した浸透を促進するようなものである。例示的な活性剤には、薬剤、プロドラッグ、向神経薬、抗高脂血薬、抗菌剤、殺菌剤、抗けいれん薬、ステロイド、ホルモン、抗炎症薬、抗癌剤、抗生物質、光増感剤、難燃剤、UV−安定剤、ラジカル開始剤、染料、潤滑剤などが含まれるが、これらに限定されない。活性化合物は、上述した同じおよび/または別の化合物の混合物を含み得る。活性化合物は、好ましくは上記の化合物のうちの4つの混合物を含み、さらにより好ましくは3つの混合物、最も好ましくは2つの混合物を含み、例えば活性化合物は、上記の化合物のうちの1つを含む。
【0097】
本発明の文脈において、生物学的活性剤は、生物学的に活性な任意の有機剤、無機剤または生物剤(living agent)であり得る。好ましくは、生物学的活性剤は、有機または無機化合物である。好適な生物学的活性剤には、タンパク質、ポリペプチド、多糖類(例えばヘパリン)、オリゴ糖、単糖類または二糖類、有機金属化合物、他の有機化合物または無機化合物が含まれる。生物学的活性剤はまた、生細胞または死細胞、細菌、ホルモン、ウイルスまたはそれらの一部であり得る。例示的な生物活性化合物には、殺菌剤(アムホテリシンB、ナイスタチン、他のポリエン抗生物質など)、殺虫剤、抗ウイルス剤、成長因子、成長因子阻害剤、成長因子受容体、骨誘導剤(ヒドロキシルアパタイト、β−リン酸三カルシウムなど)あるいは完全もしくは部分的機能遺伝子、抗炎症薬、抗感染症薬(例えば抗生物質および抗ウイルス剤)、抗菌剤、抗癌剤(パクリタレクス、タモキシフェン、ドキソルビシン、ゲルダナマイシン、光増感剤、ダウノマイシンなど)、抗高脂血薬、鎮痛薬および併用鎮痛薬、抗ぜんそく薬、抗けいれん薬、抗鬱薬、抗糖尿病薬、および他の疾病に使用される剤などが含まれるが、これらに限定されない。
【0098】
特別な実施形態において、本発明は、活性剤が、生物活性化合物、好ましくは抗菌剤を含む処理されたHPPE糸を提供する。抗菌剤は、細菌、真菌、または原生動物、ならびに破壊性ウイルス(destroying virus)などの微生物を死滅させるかその増殖を阻害する物質である。抗菌剤は、微生物を死滅させる(殺菌性)かまたは微生物の増殖を防ぐ(微生物増殖阻害性(microbistatic))のいずれかである。例えば組織の結紮の場合、抗菌剤を組み込むと、感染症を回避する助けとなり、ひいては治癒を促進する。
【0099】
さらなる実施形態において、本発明は、活性剤が、抗菌剤、好ましくはトリクロサンである処理されたHPPE糸を提供する。
【0100】
別の実施形態において、本発明は、活性剤が抗菌剤である処理されたHPPE糸を提供する。
【0101】
特別な実施形態において、本発明は、活性剤がトリクロサンである処理されたHPPE糸を提供する。
【0102】
さらに別の特別な実施形態において、本発明は、活性剤が、生物活性化合物、好ましくは殺菌剤を含む処理されたHPPE糸を提供する。殺菌剤は、真菌または真菌胞子を死滅させるかまたは抑制するのに使用される化学化合物または生物有機体である。
【0103】
別の特別な実施形態において、本発明は、活性剤が、生物活性化合物、好ましくは抗菌剤および/または殺菌剤を成長因子とともに含む処理されたHPPE糸を提供する。成長因子は、細胞の成長、増殖および細胞分化を促進することが可能な天然物質である。通常、成長因子は、タンパク質またはステロイドホルモンである。成長因子は、様々な細胞過程を調節するのに重要である。成長因子は、通常、細胞間のシグナル伝達分子として働く。例は、標的細胞の表面上の特定の受容体に結合するサイトカインおよびホルモンである。それらは、成長因子間で様々である細胞分化および成熟を促進することが多い。例えば、骨形態形成タンパク質が、骨の細胞分化を促進する一方、線維芽細胞成長因子および血管内皮成長因子は、血管分化(血管形成)を促進する。
【0104】
本発明の別の実施形態において、本発明は、活性剤が、生物活性化合物、好ましくは骨誘導剤を含む処理されたHPPE糸を提供する。例示的な骨誘導剤は、ヒドロキシルアパタイト、β−リン酸三カルシウムであるが、これらに限定されない。骨誘導剤を含む処理されたHPPE糸は、軟組織および/または骨の治癒を早めるのに寄与することができ、処理されたHPPE糸あるいは糸構造または糸形態と、軟組織および/または骨との間の結紮を促進することができる。
【0105】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明は、活性剤が、ヒドロキシルアパタイト、β−リン酸三カルシウムまたはそれらの混合物からなる群から選択される処理されたHPPE糸を提供する。
【0106】
本発明の別の実施形態において、本発明の処理されたHPPE糸は、成長因子をさらに含む。
【0107】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明の処理されたHPPE糸は、骨形態形成タンパク質(BMP)および血管内皮成長因子からなる群から選択される成長因子をさらに含む。
【0108】
さらなる特別な実施形態において、本発明は、活性剤がUV−Vis−吸収剤を含む処理されたHPPE糸を提供する。UV−Vis−吸収剤は、UV線または可視光線から吸収された光エネルギーを、通常は熱として放散する物質である。これは、例えばポリマーまたはポリマーマトリックスなどの材料によるUV線または可視光線の吸収を減少させることによって、この材料の風化速度を遅くする。典型的なUV−Vis吸収剤は、ポリアミドのためのオキサニリド、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾールおよびヒドロキシフェニルトリアジンなどである。
【0109】
さらなる特別な実施形態において、本発明は、活性剤が光−/UV−安定剤を含む処理されたHPPE糸を提供する。光−/UV−安定剤は、例えばある種のポリマーなどの光−/UV−酸化に感受性の材料の光−/UV−酸化によって引き起こされる酸化、鎖の切断、制御されない再結合および架橋反応などの影響を防ぐことができる物質である。例示的な光−/UV−安定剤には、ヒンダードアミン光安定剤などが含まれるが、これらに限定されない。
【0110】
さらなる特別な実施形態において、本発明は、活性剤が難燃剤を含む処理されたHPPE糸を提供する。難燃剤は、火が広がるのを防ぐかまたは抑える物質である。例示的な難燃剤には、アスベストなどの鉱物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロマグネサイト、三酸化アンチモン、様々な水和物、赤リン、ホウ素化合物(ほとんどの場合、ホウ酸塩)、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム塩、塩酸などの鉱酸、合成材料、通常、有機塩素、例えばポリ塩化ビフェニル(PCB)、クロレンド酸誘導体(ほとんどの場合、クロレンド酸ジブチルおよびクロレンド酸ジメチル)、塩素化パラフィン;有機臭素、例えばポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)、ペンタブロモジフェニルエーテル(ペンタBDE)、オクタブロモジフェニルエーテル(オクタBDE)、デカブロモジフェニルエーテル(デカBDE)およびヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)などのハロカーボン;ハロゲン化リン化合物、例えばトリ−o−クレシルホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート(TRIS)、ビス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(1−アジリジニル)−ホスフィンオキシド(TEPA)などの形態の有機リン酸塩などの化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
別の特別な実施形態において、本発明は、活性剤が染料を含む処理されたHPPE糸を提供する。
【0112】
さらに別の特別な実施形態において、本発明は、活性剤が触媒を含む処理されたHPPE糸を提供する。
【0113】
さらに別の特別な実施形態において、本発明は、活性剤が着色剤を含む処理されたHPPE糸を提供する。
【0114】
活性剤は、様々な方法によって前処理されたHPPE糸に添加され得る。活性剤は、混合されていない(neat)物質として、あるいは例えば溶媒、例えば水、酢酸エチル、エタノール、メタノール、アセトニトリルなど、または不活性ガス、例えば窒素、ヘリウム、アルゴンなど、または粉末、あるいはそれらの混合物などの固体または液体または気体物質の媒体と予め混合された状態で、前処理されたHPPE糸に堆積され得る。前処理されたHPPE糸への活性剤の堆積は、例えば噴霧、フレーム溶射、流動床プロセス、スピンコーティング、浸漬コーティングなどの当業者に公知の様々な方法によって行うことができる。好ましくは、活性は、本明細書において説明されたように、浸漬コーティングによって前処理されたHPPE糸に堆積される。本発明の文脈において、および浸漬コーティングプロセスの説明によれば、基材は、前処理されたHPPE糸であり、コーティング材料は、例えば水、酢酸エチル、エタノール、メタノール、アセトニトリルなどの有機または無機溶媒に活性剤を溶解させた溶液であり得、被覆片は、処理されたHPPE糸である。好ましくは、コーティング材料は、活性剤を有機溶媒に溶解させた溶液であり、より好ましくは、コーティング材料は、活性剤を酢酸エチルに溶解させた溶液である。
【0115】
処理されたHPPE糸中の活性剤の量は、目的とする最終用途のタイプに主に左右され、活性剤に起因する特定の作用または効果の強度は、活性剤が処理されたHPPE糸の一部になってから現れるように意図されている。当業者には、最終用途および得たい効果を考慮して自分が使用できる活性剤の量が分かっている。
【0116】
好ましい実施形態において、本発明は、活性剤が有機溶媒に添加される処理されたHPPE糸を提供する。
【0117】
別の好ましい実施形態において、本発明は、活性剤が、脂質を有機溶媒に溶解させた溶液に添加される処理されたHPPE糸を提供する。
【0118】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、活性剤が酸化アルキドに添加される処理されたHPPE糸を提供する。
【0119】
本発明の別の実施形態において、本発明の処理されたHPPE糸は脂質も含む。
【0120】
脂質は、脂肪、脂肪酸、油、ろう、ステロール、脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、EおよびKなど)、モノグリセリド、ジグリセリド、リン脂質、糖脂質などを含む天然分子の広いグループである。
【0121】
脂質という用語は、脂肪の同義語として用いられることがあるが、脂肪は、トリグリセリドと呼ばれる脂質のサブグループである。脂質は、脂肪酸およびそれらの誘導体(トリ−、ジ−、およびモノグリセリドおよびリン脂質を含む)、ならびにコレステロールなどの他のステロール含有代謝産物などの分子も包含する。
【0122】
トリグリセリド(より正式にはトリアシルグリセロール(TAG)またはトリアシルグリセリドとして知られている)は、グリセロールが3種の脂肪酸とエステル化されたグリセリドである。トリグリセリドは、植物油および動物性脂肪の主成分である。トリグリセリドは、OH基の各々の上に3種の脂肪酸と組み合わせられたグリセロールの単一分子から形成され、ヒトによって消化される脂肪のほとんどを構成する。エステル結合が、各脂肪酸とグリセロール分子との間に形成される。トリグリセリドは飽和または不飽和であり得る。トリグリセリドの一般的な化学式は、RCOO−CHCH(−OOCR’)CH−OOCR”であり、式中、R、R’、およびR”が長いアルキル鎖である。3種の脂肪酸RCOOH、R’COOHおよびR”COOHは、全て異なるか、全て同じであるか、または2種のみが同じであり得る。
【0123】
油は、トリグリセリドと、トリグリセリド分子の中に分配された様々な脂肪酸との混合物である。例示的な油は、アマニ油、ヒマワリ油、大豆油、ベニバナ油、キリ油、ヒマシ油、コクナット(cocunut)油、パーム油、トール油脂肪酸(TOFA)などであるが、これらに限定されない。油の組成は、植物株、気候、土壌、および他の成長因子の変化とともに、場合によりかなり広く様々である。動物性油脂もトリグリセリドであり、本発明の文脈において使用することができる。好ましくは、例えば精製魚油などの動物油が使用されることになる。共役炭素二重結合を含む油は、共役油(conjugated oil)と呼ばれる。共役油は、交互の単結合および二重結合、例えば、−C=C−C=C−C−で共有結合された炭素原子を含有する油である。非共役炭素二重結合を含む油は、非共役油(non−conjugated oil)と呼ばれる。いくつかの油は乾性油である。乾性油は、一定期間空気に曝されると固化して固い固体膜になる油である。用語「乾性」は、実際には誤った呼び名であり−油は、水または他の溶媒の蒸発によって固化するのではなく、成分が酸素の作用によって架橋する化学反応によって固化する。乾性油と酸素との反応性は、メチレン基によって隔てられた2つの炭素二重結合、すなわち−CH=CHCHCH=CH−、または共役二重結合からなる化学基であるジアリル基の存在から得られる。乾性油、半乾性油および不乾性油は、100gの油の二重結合を飽和するのに必要なヨウ素のグラムであるヨウ素価に基づいて定義されることが多い。それによれば、乾性油は、140より高いヨウ素価を有する油であり;半乾性油は、125〜140の範囲のヨウ素価を有する油であり;不乾性油は、125より低いヨウ素価を有する。乾燥の際に起こる反応は複雑であり、架橋されたフィルムを生じる。油の乾燥は、油溶性金属塩またはそれらの混合物、例えば油溶性コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、ジルコニウム塩、カルシウム塩などの油溶性乾燥剤の使用によって触媒することができる。油、特に乾性油のいくつかのタイプの化学的改質を実施することができる。これらの化学的改質により、乾性油改質アルキド、エポキシエステル、ウラルキド(uralkyd)、マレエート化(maleated)油、ビニル改質油、ワニス、より高い官能性のポリオールのエステルなどが得られる。例えばより高い官能性のポリオールのエステルの場合などのいくつかの場合、乾燥油の乾燥速度および/または乾燥時間および/または架橋密度が向上される。
【0124】
本発明の特別な実施形態において、処理されたHPPE糸は油を含む。
【0125】
本発明のさらに別の特別な実施形態において、処理されたHPPE糸は、乾燥され、架橋された網目構造が形成された油である乾燥油を含む。乾燥油を含む処理されたHPPE糸は、処理されたHPPE糸の組成物の向上した機械的安定性および/または処理されたHPPE糸の向上した被覆性および/または活性剤の放出に対する向上した制御を示し得る。
【0126】
リン脂質は脂質の一種であり、全ての細胞膜の主成分である。ほとんどのリン脂質は、ジグリセリド、リン酸基、およびコリンなどの単純な有機分子を含有し;この原則の1つの例外は、スフィンゴミエリンであり、グリセロールの代わりにスフィンゴシンから誘導される。グリセロールリン脂質は、グリセロールに結合された2種の脂肪酸を含有する。脂肪酸は、互いに異なっていてもよい。グリセロールの3つ目の炭素は、リン酸基(ホスファチジン酸を形成する)に結合され、リン酸基は、今度は、別の小さい極性分子(ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、またはホスファチジルイノシトールを形成する)に結合されることが多い。スフィンゴミエリン中、2つの炭化水素鎖は、グリセロールの代わりにセリンから形成される極性頭部基に結合される。
【0127】
糖脂質は、脂質の一種であり、炭水化物が結合した脂質であり、飽和または不飽和であり得る。糖脂質の一般構造が以下に示される。
【化1】



【0128】
脂肪酸は、脂質の別の種類であり、本発明の文脈において脂質の好ましい種類である。脂肪酸は、飽和または不飽和の、長い非分枝状の脂肪族末端(鎖)を有することが多いカルボン酸である。酪酸(4個の炭素原子)と同程度に短いカルボン酸は、脂肪酸とみなされる一方、天然油脂に由来する脂肪酸は、少なくとも8個の炭素原子を有するもの(カプリル酸(オクタン酸))と仮定され得る。ほとんどの多くの天然脂肪酸は、その生合成が、2個の炭素原子の基を有する補酵素であるアセチル−CoAに関与するため、偶数の炭素原子を有する。脂肪酸は、グリセロールの除去とともに、脂肪または生物学的油(両方ともトリグリセリドである)中のエステル結合の加水分解によって生成される。脂肪酸は、動物性または植物性脂肪、油、またはろうに由来するかあるいは植物性脂肪、油、またはろうの中にエステル化形態で含まれる脂肪族モノカルボン酸である。天然脂肪酸は、一般的に、飽和または不飽和であり得る4〜28個の炭素の鎖(通常、非分枝状で、偶数個である)を有する。脂肪酸は、二重結合に応じて飽和および不飽和であり得る。脂肪酸は長さも同様に異なる。不飽和脂肪酸は、1つ以上のアルケニル官能基が鎖に沿って存在することを除いて同様の形態を有し、各アルケンは、鎖の単結合「−CH−CH−」部分が二重結合された「−CH=CH−」部分(すなわち、1つの炭素が別の炭素に二重結合されている)で置換されている。二重結合の両側に結合された鎖中の2つの隣接する炭素原子は、シスまたはトランス配置で現れ得る。
【0129】
シス配置とは、隣接する水素原子が二重結合の同じ側にあることを意味する。二重結合の硬さにより、その配置が固定され、シス異性体の場合、鎖が屈曲し、脂肪酸の配置の自由が制限される。鎖がシス配置中に有する二重結合が多いほど、鎖が有する融通性は低くなる。鎖が多くのシス結合を有する場合、その最も許容できる配置において鎖はかなり屈曲している。例えば、1つの二重結合を有するオレイン酸が、その中に「屈曲」を有する一方、2つの二重結合を有するリノール酸は、より顕著な屈曲を有する。3つの二重結合を有するα−α−リノレン酸は、かぎ状の形状を有する傾向がある。この影響は、脂肪酸が脂質二層中のリン脂質、または脂質滴中のトリグリセリドの一部である場合などの限られた環境において、シス結合が、脂肪酸が密に入れられる能力を制限し、ひいては膜の溶融温度または脂肪の溶融温度に影響を与え得ることである。
【0130】
対照的に、トランス配置は、隣接する2つの水素原子が二重結合の反対側に結合されることを意味する。結果として、トランス配置では、鎖が大きく屈曲せず、その形状は直鎖状の飽和脂肪酸と類似している。ほとんどの天然の不飽和脂肪酸において、各二重結合は、いくつかのnについて3nの炭素原子を後ろに有し、全てがシス結合である。トランス配置になるほとんどの脂肪酸(トランス脂肪)は、自然界には見られず、人工処理(例えば、水素化)の結果得られるものである。トランス脂肪酸(一般的にトランス脂肪と略される)は、炭素原子間にトランス二重結合を含む不飽和脂肪酸分子であり、このトランス二重結合により、この分子は、シス二重結合を有する脂肪酸と比較して「屈曲」が小さくなる。これらの結合は、植物油の工業的水素化の際に特徴的に生成される。
【0131】
飽和脂肪酸に加えて、脂肪酸には、短鎖、中鎖、または長鎖がある。短鎖脂肪酸(SCFA)は、その化学構造中に6個未満の炭素を有する脂肪酸である。中鎖脂肪酸(MCFA)は、その化学構造中に6〜12個の炭素を有する脂肪酸であり、中鎖トリグリセリドを形成することができる。長鎖脂肪酸(LCFA)は、その化学構造中に、より多く12〜21個の炭素を有する脂肪酸である。極長鎖脂肪酸(VLCFA)は、その化学構造中に22個を超える炭素を有する脂肪酸である。本発明において、脂肪酸は、その化学構造中に好ましくは少なくとも6個の炭素を有し、より好ましくは少なくとも8個の炭素原子を有し、さらにより好ましくは少なくとも10個の炭素原子を有し、最も好ましくは少なくとも12個の炭素原子を有し、例えばその化学構造中に少なくとも14個の炭素原子を有する。本発明において、脂肪酸は、その化学構造中に好ましくは100個以下の炭素を有し、より好ましくは80個以下の炭素原子を有し、さらにより好ましくは60個以下の炭素原子を有し、最も好ましくは40個以下の炭素原子を有し、例えばその化学構造中に30個以下の炭素原子を有する。
【0132】
ギ酸および酢酸などの短鎖カルボン酸は、水に混和性であり、解離してかなり強い酸(それぞれpK3.77および4.76)を形成する。長鎖脂肪酸は、pKの大きな変化を示さない。ノナン酸は、例えば、4.96のpKを有する。したがって、そのpK値の大きさは、それらが関与し得る反応のタイプのみに関連性を有する。水に不溶性の脂肪酸でも温かいエタノールには溶解し、例えば、指示薬としてフェノールフタレインを用いて、薄いピンク色のエンドポイントにいたるまで水酸化ナトリウム溶液で滴定することができる。この分析を用いて、脂肪における遊離脂肪酸含量;すなわち、加水分解されたトリグリセリドの割合を求める。
【0133】
脂肪酸は、トリグリセリドまたはリン脂質と同様に、他の分子に結合または付着され得る。脂肪酸は、他のカルボン酸と同様に反応し、これは、脂肪酸がエステル化および酸塩基反応を行うことができることを意味する。脂肪酸の還元により脂肪アルコールが生じる。不飽和脂肪酸は、付加反応、最も一般的には水素化も行うことができ、水素化は、植物油をマーガリンに転化するのに使用される。部分水素化によって、不飽和脂肪酸は、シス配置からトランス配置へと異性化され得る。脂肪酸は、室温で自動酸化として知られている化学変化を起こす。脂肪酸は分解されて炭化水素、ケトン、アルデヒド、ならびにより少量のエポキシドおよびアルコールになる。油脂中に低レベルで存在する重金属は、自動酸化を促進する。油脂は、クエン酸などのキレート剤で処理されることが多い。
【0134】
例示的な脂肪酸には、ミリストレイン酸[CH(CHCH=CH(CHCOOH]、パルミトレイン酸[CH(CHCH=CH(CHCOOH]、オレイン酸[CH(CHCH=CH(CHCOOH]、リノール酸[CH(CHCH=CHCHCH=CH(CHCOOH]、リノレン酸[CHCHCH=CHCHCH=CHCHCH=CH(CHCOOH]、ピノレン酸[CH(CHCH=CHCHCH=CHCHCHCH=CH(CHCOOH]、パルミチン酸[CH(CH14COOH]、オレイン酸[CH(CHCH=CH(CHCOOH]、α−α−リノレン酸[CHCHCH=CHCHCH=CHCHCH=CH(CHCOOH]、アラキドン酸[CH(CHCH=CHCHCH=CHCHCH=CHCHCH=CH(CHCOOH]、エイコサペンタエン酸[CHCHCH=CHCHCH=CHCHCH=CHCHCH=CHCHCH=CH(CHCOOH]、エルカ酸[CH(CHCH=CH(CH11COOH]、ドコサヘキサエン酸[CHCHCH=CHCHCH=CHCHCH=CHCHCH=CHCHCH=CHCHCH=CH(CHCOOH]、ステアリン酸[CHCH(CH15COOH)、リシノール酸[CH(CHC(OH)HCHCH=CH(CHCOOHなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0135】
本発明の別の実施形態において、本発明の処理されたHPPE糸は、脂質も含み、ここで、脂質は、その化学構造中に6〜30個の炭素原子を有する脂肪酸またはそれらの混合物、好ましくはα−リノレン酸もしくはアラキドン酸またはそれらの混合物からなる群から選択される脂肪酸である。
【0136】
本発明の別の実施形態において、本発明の処理されたHPPE糸は、酸化アルキドも含む。
【0137】
アルキド樹脂(またはアルキド)は、ポリオール、ポリ酸および脂肪酸から調製されるポリエステルである。多くのタイプのアルキドがある。1つの分類は、酸化型および非酸化型への分類である。酸化アルキド(または酸化アルキド樹脂)は、本明細書に挙げた乾性油と同じ機構によって架橋されるアルキドである。原則的に、乾性油に使用される同じタイプの乾燥剤を用いて、酸化アルキドも乾燥させることができる。酸化アルキドは、本明細書において、合成乾性油とみなされる。酸化アルキドは、グリセロール、ペンタエリトリトールなどの1種以上のポリオール、1種以上のポリ酸、好ましくは、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などの二塩基酸および例えば大豆油などの1種以上の乾性油または半乾性油に由来する脂肪酸のポリエステルである。酸化アルキドは、例えばスチレン、ビニルトルエン、メチルメタクリレート、メチルアクリレートなどのビニルモノマーとの反応によって変性され得る。
【0138】
本発明の一実施形態において、処理されたHPPE糸は、アルキドも含む。
【0139】
本発明の好ましい実施形態において、処理されたHPPE糸は、酸化アルキドも含む。
【0140】
本発明の別の実施形態において、本発明の処理されたHPPE糸は、抗菌剤を含む。
【0141】
本発明の別の実施形態において、本発明の処理されたHPPE糸は、抗菌剤および脂質を含む。
【0142】
本発明の別の実施形態において、本発明の処理されたHPPE糸は、抗菌剤およびアルキドを含む。
【0143】
本発明の別の実施形態において、本発明の処理されたHPPE糸は、抗菌剤および酸化アルキドを含む。
【0144】
本発明の別の実施形態において、本発明の処理されたHPPE糸は、脂質および/またはアルキドも含む。
【0145】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の処理されたHPPE糸は、脂質および/または酸化アルキドも含む。
【0146】
別の実施形態において、本発明は、
・HPPE糸の表面に付着し、HPPE糸の表面を少なくとも部分的に覆う多孔性ポリオレフィン層と;
・活性剤および脂質を含み、多孔性ポリオレフィン層内に少なくとも部分的に吸収される組成物と
を含む処理されたHPPE糸を提供する。
【0147】
これらの処理されたHPPE糸は、非処理のHPPE糸の機械的特性と同等の機械的特性を有し、さらに向上した付着性を示し、生物活性剤などの活性剤を送達することが可能であり、ひいてはHPPE糸の可撓性も損なわずに抗菌活性を示す。
【0148】
さらに別の実施形態において、本発明は、
・HPPE糸の表面に付着し、HPPE糸の表面を少なくとも部分的に覆う多孔性ポリオレフィン層と;
・活性剤および酸化アルキドを含み、多孔性ポリオレフィン層内に少なくとも部分的に吸収される組成物と
を含む処理されたHPPE糸を提供する。
【0149】
これらの処理されたHPPE糸は、非処理のHPPE糸の機械的特性と同等の機械的特性を有し、さらに向上した付着性を示し、それらは、生物活性剤などの(制御放出)活性剤を向上した制御された方法で送達することが可能であり、ひいては向上した制御抗菌活性を示す。
【0150】
別の実施形態において、本発明は、
・HPPE糸の表面に付着し、HPPE糸の表面を少なくとも部分的に覆う多孔性ポリオレフィン層と;
・活性剤および脂肪酸を含み、多孔性ポリオレフィン層内に少なくとも部分的に吸収される組成物と
を含む処理されたHPPE糸を提供する。
【0151】
これらの処理されたHPPE糸は、非処理のHPPE糸の機械的特性と同等の機械的特性を有し、さらに向上した付着性を示し、生物活性剤などの活性剤を送達することが可能であり、ひいてはHPPE糸の可撓性も損なわずに抗菌活性を示す。
【0152】
さらに別の実施形態において、本発明は、
・HPPE糸の表面に付着し、HPPE糸の表面を少なくとも部分的に覆う多孔性ポリオレフィン層と;
・活性剤および油を含み、多孔性ポリオレフィン層内に少なくとも部分的に吸収される組成物と
を含む処理されたHPPE糸を提供する。
【0153】
これらの処理されたHPPE糸は、非処理のHPPE糸の機械的特性と同等の機械的特性を有し、さらに向上した付着性を示し、それらは、生物活性剤などの(制御放出)活性剤を向上した制御された方法で送達することが可能であり、ひいてはHPPE糸の可撓性も損なわずに向上した制御抗菌活性を示す。
【0154】
好ましい実施形態において、本発明は、
・HPPE糸の表面に付着し、HPPE糸の表面を少なくとも部分的に覆う多孔性ポリオレフィン層と;
・成長因子および脂肪酸を含み、多孔性ポリオレフィン層内に少なくとも部分的に吸収される組成物と
を含む処理されたHPPE糸を提供する。
【0155】
これらの処理されたHPPE糸は、非処理のHPPE糸の機械的特性と同等の機械的特性を有し、さらに向上した付着性を示し、それらは、HPPE糸の可撓性も損なわずに成長因子を送達することが可能である。
【0156】
好ましい実施形態において、本発明は、
・HPPE糸の表面に付着し、HPPE糸の表面を少なくとも部分的に覆う多孔性ポリオレフィン層と;
・骨誘導剤を含み、多孔性ポリオレフィン層内に少なくとも部分的に吸収される組成物と
を含む処理されたHPPE糸を提供する。
【0157】
これらの処理されたHPPE糸は、HPPE糸の機械的特性と同等の機械的特性を有し、さらに向上した付着性を示し、それらは、骨誘導剤を送達することが可能であり、ひいてはHPPE糸の可撓性も損なわずにHPPE糸の生体適合性および生物活性を向上させる。
【0158】
さらに別の実施形態において、本発明は、
・HPPE糸の表面に付着し、HPPE糸の表面を少なくとも部分的に覆う多孔性ポリオレフィン層と;
・抗菌剤、成長因子、骨誘導剤および脂質を含み、多孔性ポリオレフィン層内に少なくとも部分的に吸収される組成物と
を含む処理されたHPPE糸を提供する。
【0159】
これらの処理されたHPPE糸は、HPPE糸の機械的特性と同等の機械的特性を有し、さらに向上した付着性を示し、それらは、成長因子および抗菌剤を送達することが可能であり、ひいては向上した制御抗菌活性を示す。さらに、処理されたHPPE糸は、骨誘導剤を送達することが可能であり、ひいてはHPPE糸の生体適合性および生物活性を向上させる。
【0160】
さらに別の実施形態において、本発明は、
・HPPE糸の表面に付着し、HPPE糸の表面を少なくとも部分的に覆う多孔性ポリオレフィン層と;
・抗菌剤、成長因子、骨誘導剤および酸化アルキドを含み、多孔性ポリオレフィン層内に少なくとも部分的に吸収される組成物と
を含む処理されたHPPE糸を提供する。
【0161】
これらの処理されたHPPE糸は、HPPE糸の機械的特性と同等の機械的特性を有し、さらに向上した付着性を示し、向上した制御された方法で(制御放出)成長因子および抗菌剤を送達することが可能であり、ひいては向上した制御抗菌活性を示す。さらに、処理されたHPPE糸は、骨誘導剤を送達することが可能であり、ひいてはHPPE糸の生体適合性および生物活性を向上させる。
【0162】
さらに別の実施形態において、本発明は、
・HPPE糸の表面に付着し、HPPE糸の表面を少なくとも部分的に覆う多孔性ポリオレフィン層と;
・抗菌剤、成長因子、骨誘導剤および脂肪酸を含み、多孔性ポリオレフィン層内に少なくとも部分的に吸収される組成物と
を含む処理されたHPPE糸を提供する。
【0163】
これらの処理されたHPPE糸は、HPPE糸の機械的特性と同等の機械的特性を有し、さらに向上した付着性を示し、それらは、成長因子および抗菌剤を送達することが可能であり、ひいては向上した制御抗菌活性を示す。さらに、処理されたHPPE糸は、骨誘導剤を送達することが可能であり、ひいてはHPPE糸の生体適合性および生物活性を向上させる。
【0164】
別の態様において、本発明は、処理されたHPPE糸、あるいは本発明の処理されたHPPE糸を含むかまたは本発明の処理されたHPPE糸からなる編組、織物、織構造、不織構造、編物構造、編組構造または他の方法で形成された構造などの糸構造または糸形態を含む物品を提供する。
【0165】
別の態様において、本発明は、処理されたHPPE糸、好ましくは縫合糸、医療用ケーブルまたはヘルニアメッシュなどの医療用メッシュを含む物品を提供する。
【0166】
別の態様において、本発明は、本発明の処理されたHPPE糸を含む器具を提供する。
【0167】
さらに別の実施形態において、本発明は、上で規定したような物品を含む器具、好ましくは縫合糸と、針および固定具(anchor)の少なくとも1つとを含む医療器具を提供する。
【0168】
好ましくは、外科用縫合糸は、感染症にかかりやすい創傷を縫合するのに使用されるため、高純度を有するべきである。本発明に係る糸からなる縫合糸は、その純度および細菌を寄せ付けるリスクの低さのため特に有利である。モノフィラメントは、固くて平滑な表面を有し、結合して絡み合いを減少させる。これも創傷を縫合する作業の際の利点である。
【0169】
別の態様において、本発明は、
・本発明の処理されたHPPE糸;
・本発明の物品;または
・本発明の器具の、
自動車用途(車両部品、複合構造、セラミック構造など)、海洋用途(船舶、ボート、ヨット/船舶の索具、帆、スリング、釣り糸、ケーブル、複合構造、セラミック構造、バイオミメティックスなど)、航空宇宙用途(航空機、ヘリコプター、複合構造、セラミック構造など)、医療用途(関節形成術、整形外科用および脊椎インプラント、例えば半月板インプラント、外科用縫合糸、メッシュ、例えばヘルニアメッシュ、布帛、織物または不織物シート、テープ、リボン、包帯、人工関節、外傷固定ケーブル、胸骨閉鎖ケーブル、予防用または人工装具用(per prosthetic)ケーブル、長骨骨折固定ケーブル、小骨骨折固定ケーブルなどのケーブル、例えば靱帯置換術用のチューブ状製品、エンドレスループ製品(endless loop product)、袋状、バルーン状製品、複合構造、セラミック構造など)、防護用途(防弾、防弾衣、防弾チョッキ、防弾ヘルメット、防弾車両の防護、複合構造、セラミック構造など)、スポーツ/娯楽用途(フェンシング、スケート、スケートボード、スノーボード、スポーツパラシュートのサスペンションライン、パラグライダー、凧、凧スポーツ用の凧糸、登山用具、弓の弦、ラケットのガット、水中銃用のやり(spear line)、リンクおよびボードのエッジ保護、複合構造、セラミック構造など)、建築用途(窓、ドア、(擬似)壁、ケーブルなど)、衣類(手袋、防護衣/器具、織物、織物複合構造、織物セラミック構造など)、ボトリング用途(bottling application)、機械用途(缶および瓶のハンドリング機械の部品、織機の可動部品、軸受、ギア、複合構造、セラミック構造など)への使用を提供する。
【0170】
さらに別の実施形態において、本発明は、自動車用途(車両部品、複合構造、セラミック構造など)、海洋用途(船舶、ボート、ヨット/船舶の索具、帆、スリング、釣り糸、ケーブル、複合構造、セラミック構造など)、航空宇宙用途(航空機、ヘリコプター、複合構造、セラミック構造など)、医療用途(関節形成術、整形外科用および脊椎インプラント、例えば半月板インプラント、外科用縫合糸、メッシュ、例えばヘルニアメッシュ、布帛、織物または不織物シート、テープ、リボン、包帯、人工関節、外傷固定ケーブル、胸骨閉鎖ケーブル、予防用または人工装具用ケーブル、長骨骨折固定ケーブル、小骨骨折固定ケーブルなどのケーブル、例えば靱帯置換術用のチューブ状製品、エンドレスループ製品、袋状、バルーン状製品、複合構造、セラミック構造、バイオミメティックスなど)、防護用途(防弾、防弾衣、防弾チョッキ、防弾ヘルメット、防弾車両の防護、複合構造、セラミック構造など)、スポーツ/娯楽用途(フェンシング、スケート、スケートボード、スノーボード、スポーツパラシュートのサスペンションライン、パラグライダー、凧、凧スポーツ用の凧糸、登山用具、弓の弦、ラケットのガット、水中銃用のやり、リンクおよびボードのエッジ保護、複合構造、セラミック構造など)、建築用途(窓、ドア、(擬似)壁、ケーブルなど)、衣類(手袋、防護衣/器具、織物、織物複合構造、織物セラミック構造など)、ボトリング用途、機械用途(缶および瓶のハンドリング機械の部品、織機の可動部品、軸受、ギア、複合構造、セラミック構造など)への、本発明の処理されたHPPE糸の使用を提供し、ここで、処理されたHPPE糸は、その機械的特性、抗菌特性および/または付着特性を示すことが可能な量および形式で使用される。
【0171】
本発明の別の態様は、本明細書に記載される実施例4〜7および実施例9〜12に係る編組などの処理されたHPPE糸および糸構造である。
【0172】
さらに、本発明の別の態様は、実施例4〜7および実施例9〜12に係る物品である。
【0173】
得られる実施形態が物理的に実現可能でないと当業者が即座に認識し得ない限り、本明細書に記載される本発明の実施形態の個々の特徴または複数の特徴の組合せ、ならびにそれらの明白な変形は、本明細書に記載される他の実施形態の特徴と組み合わせたり、または交換したりすることができる。
【0174】
本発明のさらなる態様およびそれらの好ましい特徴は、本願の特許請求の範囲に示される。
【0175】
これより、本発明は、例示に過ぎない以下の非限定的な実施例を参照して詳細に説明される。
【0176】
[実施例]
例1、3および8では、組成物は、活性剤を全く含んでいなかった。例2では、組成物は、活性剤としてのトリクロサンのみを含んでいた。実施例4〜7および9〜12では、組成物は、活性剤としてのトリクロサンおよび脂質としてのα−リノレン酸またはアラキドン酸のいずれかを含んでいた。α−リノレン酸およびアラキドン酸は脂肪酸である。
【0177】
ダイニーマ・ピュリティ(登録商標)編組の同時のRFプラズマ重合およびガスエッチングを、EMPA(Swiss Materials Science & Technology、Lerchenfeldstrasse 5、CH−9014、St.Gallen、スイス)で行った。
【0178】
[HPPE編組に関する特性を評価するための方法および技術]
[HPPE編組の機械的特性の評価]
試験されるHPPE編組の破断点伸び(%)、弾性率(GPa)、最大破断力(Fmax)(N)を以下のとおりに測定した:編組の試料を、引張試験機を用いて破断するまで伸ばし、破断力および破断点伸びを記録した。試料の作製および調整を以下のとおりに行った:試験の前に、ボビンを、21℃±1℃および相対湿度40〜75%で少なくとも2時間調整する。HPPE編組をボビンから取り、引張試験機のクランプに直接設置した。試験される部分に素手で触れないようにすると同時に、試料の撚りの変化を避ける。実際の引張試験を以下のとおりに行った:引張試験機、Zwick 1435を、一定の伸張速度で操作した。この機械には、インストロン(Instron)クランプ5681Cおよびステンレス鋼締め付けブロックが装備されていた。締め付け圧力は6.8バールであった。伸張速度は250mm/分であった。ゲージ長は500mmである。1kNの最大力を有するロードセルを使用した。0.2cN/dtexのプレテンションをかけて、編組の緩みをなくした。
【0179】
破断最大力(Fmax)(cN、センチニュートン)は、試料を破断させるためにかけられる最大力であった。クランプの変位(ΔL)(mmで表される)をゲージ長さ(L)(500mm)で割った値に100を掛けることによって破断点伸び(%)を求めた。プレテンションをかけたため、破断点伸びは正確ではなかった。0.3〜1%の伸び率の比応力差(ΔF、cN/dtexで測定される)を伸び率の差(0.7%)で割った値に10−1を掛け、次に糸を構成する材料の線密度(g/cmで測定される)を掛けることによって弾性率(GPa)を求めた。5つの個々の引張試験のデータを用いて、破断点伸び、弾性率、最大破断力の平均値を計算した。Handbook of Fibre Rope Technologyに準拠して比応力を以下のとおりに求める:
比応力=張力/(線密度)(MN/(kg/m)=N/texの単位で測定される)
【0180】
[HPPE編組に対する組成物の付着性の評価]
HPPE編組に対する組成物の付着性を、抗菌活性試験によって検査した。脂肪酸およびトリクロサンを含む組成物を含む編組のインキュベーションの後、寒天中の脂肪酸およびトリクロサンの減少が、編組の抗菌活性の低下に反映される。対照HPPE編組および脂肪酸(α−リノレン酸およびトリクロサンまたはアラキドン酸およびトリクロサン)を含むC:H:NまたはC:H:O処理されたHPPE編組を、播種されていない寒天中で37℃で8日間インキュベートし、次に、編組を播種された寒天に移して、後述される方法(HPPE編組の抗菌活性の評価を参照)に準拠して抗菌活性を評価した。
【0181】
[HPPE編組の抗菌活性の評価]
無菌のLuria Bettani培地の凍結ストックからの大腸菌(Escherichia coli)ATCC 11105を培養した。細菌懸濁液は、約10CFU/mLの濃度を有していた。この細菌懸濁液100μLをLB寒天プレートに播種した。HPPE編組を約5cmの長さに切断し;HPPE編組の直線部分を使用した。寒天表面との接触を最適にするために滅菌したピンセットを用いて各編組を寒天に押し込んだ。次に、寒天プレートを、寒天の脱水を防ぐために飽和塩溶液で満たしたエキシケータ(exicator)中37℃で24時間インキュベートした。編組の長さに直角な成長阻害領域の幅が、縫合糸に沿った3箇所における一番近い1mmであることが記録され、寒天プレートの画像が生成された。
【0182】
[3.5ヶ月間のHPPE編組の抗菌活性の評価:生体内の抗菌活性のシミュレーション:]
無菌のLuria Bettani培地の凍結ストックからの大腸菌(Escherichia coli)ATCC 11105を培養した。細菌懸濁液は、約10CFU/mLの濃度を有していた。この細菌懸濁液100μLをLB寒天プレートに播種した。HPPE編組を約5cmの長さに切断し;HPPE編組の直線部分を使用した。寒天表面との接触を最適にするために滅菌したピンセットを用いて各編組を寒天に押し込んだ。次に、寒天プレートを、寒天の脱水を防ぐために飽和塩溶液で満たしたエキシケータ中37℃で24時間インキュベートした。各試料の阻害領域の評価の際、寒天プレート中の編組の位置を変化させずに、37℃でさらに105日間、試験される編組を播種された寒天中に入れたままにした。時間の経過とともに寒天の質が低下するため、より長い試験は不可能であった。阻害領域を再度評価した。縫合糸の長さに直角な成長阻害領域の幅が、編組に沿った3箇所における一番近い1mmであることが記録され、寒天プレートの画像が生成された。
【0183】
[例1〜12:]
[例1:対照HPPE編組(対照HPPE)]
ダイニーマ・ピュリティ(登録商標)SGX 110 dtex TS100は非処理のHPPE糸である。ダイニーマ・ピュリティ(登録商標)SGX 110 dtex TS100糸を用いて、8×1×110編組(以後、「ダイニーマ・ピュリティ(登録商標)編組」と呼ぶ)を形成した。
【0184】
非処理のダイニーマ・ピュリティ(登録商標)編組を、対照HPPE編組として使用した。
【0185】
表1は、ダイニーマ・ピュリティ(登録商標)SGX 110 dtex TS100糸の特性を、これらの特性を測定するのに使用される試験方法とともに示す。
【0186】
【表1】



【0187】
[例2:α−リノレン酸を含むダイニーマ・ピュリティ(登録商標)編組:対照HPPE−L−TRI−2.9]
ダイニーマ・ピュリティ(登録商標)編組(8×1×110)を、酢酸エチル中に2.9g/L(グラム/リットル)のトリクロサンを含有する6.0g/Lのα−リノレン酸溶液(表2を参照)中で(23℃で10分間)浸漬コーティングした。得られた編組を23℃で乾燥させた。
【0188】
[実施例3:C:H:N処理されたダイニーマ・ピュリティ(登録商標)編組:CHN−HPPE]
ダイニーマ・ピュリティ(登録商標)編組(8×1×110)を、同時のRFプラズマ重合およびガスエッチングによって処理した。厚さ60nmの多孔性ポリオレフィンフィルムを、NH/Cの1:1v/vの体積比、10Paの圧力、0.06W/cmの電力入力および24分間の曝露時間での曝露により堆積した。
【0189】
[実施例4〜6:α−リノレン酸およびトリクロサンを含む組成物を含むC:H:N処理されたダイニーマ・ピュリティ(登録商標)編組:CHN−HPPE−L−TRI−1.0、CHN−HPPE−L−TRI−2.0およびCHN−HPPE−L−TRI−2.9]
実施例3のダイニーマ・ピュリティ(登録商標)編組(8×1×110)を、酢酸エチル中に所定量のトリクロサンを含有する6.0g/Lのα−リノレン酸溶液(表2を参照)中で23℃で10分間さらに浸漬コーティングした。得られた編組を23℃で乾燥させた。
【0190】
[実施例7:アラキドン酸およびトリクロサンを含むC:H:N処理されたダイニーマ・ピュリティ(登録商標)編組:CHN−HPPE−A−TRI−2.0]
ダイニーマ・ピュリティ(登録商標)編組(8×1×110)を、酢酸エチル中に2.0g/Lのトリクロサンを含有する6.0g/Lのアラキドン酸溶液(表2を参照)で23℃で10分間さらに浸漬コーティングした。得られた編組を23℃で乾燥させた。
【0191】
[実施例8:C:H:O処理されたダイニーマ・ピュリティ(登録商標)編組:CHO−HPPE]
ダイニーマ・ピュリティ(登録商標)編組(8×1×110)を、同時のRFプラズマ重合およびガスエッチングによって処理した。厚さ60nmの多孔性ポリオレフィンフィルムを、CO/Cの4:1v/vの体積比、10Paの圧力、0.07W/cmの電力入力および30分間の曝露時間での曝露により堆積した。
【0192】
[実施例9〜11:α−リノレン酸およびトリクロサンを含む組成物を含むC:H:O処理されたダイニーマ・ピュリティ(登録商標)編組:CHO−HPPE−L−TRI−1.0、CHO−HPPE−L−TRI−2.0およびCHO−HPPE−L−TRI−2.9]
実施例8のダイニーマ・ピュリティ(登録商標)編組(8×1×110)をさらに、同時の真空プラズマ重合およびプラズマエッチング(C:H:O処理)によって最初に処理した。次に、編組を、酢酸エチル中に所定量のトリクロサンを含有する6.0g/Lのα−リノレン酸溶液(表2を参照)中で23℃で10分間浸漬コーティングした。得られた編組を23℃で乾燥させた。
【0193】
[実施例12:アラキドン酸およびトリクロサンを含むC:H:O処理されたダイニーマ・ピュリティ(登録商標)編組:CHO−HPPE−A−TRI−2.0]
実施例8のダイニーマ・ピュリティ(登録商標)編組(8×1×110)を、酢酸エチル中に2.0g/Lのトリクロサンを含有する6.0g/Lのアラキドン酸溶液(表2を参照)中で23℃で10分間さらに浸漬コーティングした。得られた編組を23℃で乾燥させた。
【0194】
【表2】



【0195】
表2に示されるデータを比較すると、以下のように結論付けることができる:
【0196】
a.トリクロサンなどの活性剤を含む全てのC:H:NまたはC:H:O処理されたHPPE編組は、対照HPPE編組の機械的特性と比較して同等の機械的特性を示した。
【0197】
例えば、例1のHPPE編組(対照HPPE)の機械的特性を、実施例4〜7または実施例9〜12のHPPE編組のいずれかの機械的特性と比較すると、α−リノレン酸およびトリクロサンを含むC:H:NまたはC:H:O処理されたHPPE編組が、対照編組(対照HPPE)の機械的特性と同等の機械的特性を示したことが明らかである。
【0198】
b.トリクロサンなどの活性剤を含む組成物を含むHPPE編組のみが抗菌活性を示した。
【0199】
試験される大腸菌(E.coli)株の成長は、対照HPPE編組によっても、CHN−またはCHO−HPPE編組によっても阻害されない。トリクロサンを含む編組のみが、抗菌活性を示した(例1、3および8の抗菌特性/プレインキュベーション時間(=0日間)を、例2、4〜7および9〜12の抗菌特性/プレインキュベーション時間(=0日間)と比較されたい)。より高いトリクロサン含量を有する編組について、より大きい阻害領域が見られた。
【0200】
c.トリクロサンなどの活性剤も含むC:H:NまたはC:H:O処理されたHPPE編組のみが、C:H:NまたはC:H:O処理のいずれも行わないかあるいは活性剤を含まないHPPE編組に対して組成物の向上した付着性を示した(例1、2、3および8の抗菌特性/プレインキュベーション時間(=8日間)を、実施例4〜7および9〜12の抗菌特性/プレインキュベーション時間(=8日間)と比較されたい)。
【0201】
α−リノレン酸およびトリクロサンまたはアラキドン酸およびトリクロサンを含む組成物を含む全てのC:H:NまたはC:H:O処理されたHPPE編組は、寒天中での23℃における8日間のプレインキュベーションの後、試験される大腸菌(E.coli)株に対して抗菌活性を保持しており、その後、新鮮な寒天に移された。例えば、対照HPPE−L−TRI−2.9の抗菌活性を、CHN−HPPE−L−TRI−2.9またはCHO−HPPE−L−TRI−2.9のいずれかと比較すると、α−リノレン酸およびトリクロサンを含むC:H:NまたはC:H:O処理された編組が、非処理の対照HPPE−L−TRI−2.9より向上した付着性を示したことが明らかになる。
【0202】
上記のa.、b.およびc.の結果から、脂質(この一連の実施例では、α−リノレン酸またはアラキドン酸などの脂肪酸は、組成物の脂質からなった)および活性剤(この一連の実施例では、トリクロサンが活性剤であった)を含む組成物を含むC:H:NまたはC:H:O処理されたHPPE編組のみが、脂質および活性剤を含む組成物の良好な機械的特性(非処理のHPPE編組の機械的特性と同等である)ならびに同時に抗菌活性および向上した付着性を兼ね備えていることを示したことが明らかになる。
【図1a】

【図1b】

【図1c】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
・HPPE糸の表面に付着し、前記HPPE糸の前記表面を少なくとも部分的に覆う多孔性ポリオレフィン層と;
・活性剤を含み、前記多孔性ポリオレフィン層内に少なくとも部分的に吸収される組成物と
を含む処理されたHPPE糸。
【請求項2】
前記処理されたHPPE糸が、脂質および/またはアルキドも含む、請求項1に記載の処理されたHPPE糸。
【請求項3】
前記脂質が、その化学構造中に6〜30個の炭素原子を有する脂肪酸またはそれらの混合物、好ましくはα−リノレン酸もしくはアラキドン酸またはそれらの混合物からなる群から選択される脂肪酸である、請求項2に記載の処理されたHPPE糸。
【請求項4】
前記活性剤が、抗菌剤、好ましくはトリクロサンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の処理されたHPPE糸。
【請求項5】
成長因子をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の処理されたHPPE糸。
【請求項6】
直径が50μm未満、好ましくは30μm未満である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の処理されたHPPE糸。
【請求項7】
・同時のプラズマ重合およびプラズマエッチングによって、HPPE糸の表面に付着し、前記HPPE糸の前記表面を少なくとも部分的に覆う多孔性ポリオレフィン層を堆積し;前処理されたHPPE糸をこのように作製する工程と;
・活性剤を含む組成物、好ましくは脂質および/またはアルキドも含む前記組成物を、有効な温度でかつ有効な時間にわたって前記前処理されたHPPE糸に堆積し;処理されたHPPE糸をこのように作製する工程と;
・任意選択的に、前記このように作製された処理されたHPPE糸を用いて、前記処理されたHPPE糸を含むかまたは前記処理されたHPPE糸からなる編組、織物、織構造、不織構造、編物構造、編組構造または他の方法で形成された構造などの糸構造または糸形態を作製する工程と
を含む、処理されたHPPE糸の作製方法。
【請求項8】
前記同時のプラズマ重合およびプラズマエッチングが、前記HPPE糸、アルケンガス、好ましくはエチレンまたはアルケンガスの混合物、不活性ガス、好ましくは希ガス、好ましくはアルゴンまたは不活性ガスの混合物;ならびに二酸化炭素(CO)またはアンモニア(NH)のいずれかの存在下で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記活性剤を含む前記組成物を堆積する前記工程の前に、前記HPPE糸が、前記HPPE糸を含む編組、織物、織構造、不織構造、編物構造、編組構造または他の方法で形成された構造などの糸構造または糸形態に転化され、好ましくは、前記活性剤を含む前記組成物を堆積する前記工程の前および前記多孔性ポリオレフィン層を堆積する前記工程の前に、前記HPPE糸が、前記糸構造または糸形態に転化される、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法によって得られる処理されたHPPE糸。
【請求項11】
請求項1〜6または10のいずれか一項に記載の処理されたHPPE糸を含む物品、好ましくは縫合糸、医療用ケーブルまたはヘルニアメッシュなどの医療用メッシュ。
【請求項12】
請求項1〜6または10のいずれか一項に記載の処理されたHPPE糸を含む器具。
【請求項13】
請求項11に記載の物品を含む器具であって、好ましくは、縫合糸と、針および固定具の少なくとも1つとを含む医療器具。
【請求項14】
・請求項1〜6または10のいずれか一項に記載の処理されたHPPE糸;
・請求項11に記載の物品;
・請求項12または請求項13のいずれかに記載の器具の、
自動車用途、海洋用途、航空宇宙用途、医療用途、防護用途、スポーツ/娯楽用途、建築用途、衣類用途、ボトリング用途、機械用途への使用。
【請求項15】
自動車用途、海洋用途、航空宇宙用途、医療用途、防護用途、スポーツ/娯楽用途、建築用途、衣類用途、ボトリング用途、機械用途への、請求項1〜6または10のいずれか一項に記載の処理されたHPPE糸の使用であって、前記処理されたHPPE糸がその機械的特性、抗菌特性および/または付着特性を示すことが可能な量および形式で使用される、使用。

【公表番号】特表2013−501162(P2013−501162A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523335(P2012−523335)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061399
【国際公開番号】WO2011/015620
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】