HPV抗原、ワクチン組成物、および関連する方法
本発明は、免疫学およびプロテインエンジニアリングの分野の共通部分、特に、ヒトパピローマウルスによる感染の予防で言うような抗原およびワクチンに関する。そのような抗原およびワクチン組成物の生産および使用のための組換え蛋白質抗原、組成物および方法が提供される。本発明は、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン、および植物で生産されたワクチン成分を提供する。いくつかの具体例において、1以上のヒトパピローマウイルス抗原は、熱安定性蛋白質との融合蛋白質として作られる。本発明は、さらに、HPV抗原を含有するワクチン組成物を含む。いくつかの具体例において、本発明のHPVワクチンは少なくとも2つの異なるHPV抗原を含む。さらに、本発明は、少なくとも2つの異なるヒトパピローマウイルス(HPV)抗原を含むヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、米国特許法119(e)の下、2006年2月13日に出願されたU.S.S.N.60/773,374(‘374出願)に関し、これらへの優先権を主張する。‘374出願の全体の内容は、参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
子宮頸癌は世界中の婦人の間で第二の最も普通の癌である。スクリーニングは先進国においてこの病気の発生率を劇的に低下させたが、ほとんどの婦人が正規の婦人科医学看護およびスクリーニングに対してアクセスしない世界の領域においては、子宮頸癌は死亡の癌−関連原因として乳癌にすぐに続いて2番目である。臨床的、分子的および疫学的研究は、子宮頸癌および子宮頸部形成不全の主な原因としてヒトパピローマウイルス(HPV)を同定した。実質的に全ての子宮頸癌(約99%)は、高い危険性のHPVの遺伝子、最も普通にはタイプ16、18、31および45を含む(Ferlayら、1999)。世界中で女性の癌の約12%は子宮頸部のHPV感染によるものである。毎年、子宮頸癌の約470,000の症例が世界中で診断されており、罹った婦人のほとんど半分が死亡するであろう。HPV16は子宮頸癌のほぼ60%を占め、HPV−18がさらに10%ないし20%加えられると見積られている。他の高い危険性のタイプはタイプ31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68、および73を含む。
【0003】
さらに、HPVは頭部および首部領域のある種の癌腫ならびにより致死的なメラノーマおよび恐らくは他の癌で役割を演じるようである(例えば、非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;および非特許文献4参照)。
【0004】
子宮頸部形成不全の現行の治療は子宮頸部組織を除去し、または破壊する切除または除去手法に制限される。これらの手法はほぼ90%の有効率を有するが、罹患率および出費に関連する。加えて、外科的処置は形成不全組織のみを除去し、正常に見えるHPV−感染組織を処置しないまま残す(Bellら、2005)。従って、ワクチンを用いてこの感染を根絶するのが望ましい。HPVに遭遇する前の思春期の予防的ワクチン接種はこの標的を狙っている。いくつかの予防的ワクチンは、勇気づけられる結果を伴って、後期相臨床試験において現在進められている。感染および癌の間の長い潜伏期間のため、予防的ワクチン接種の利点は、癌発生率の点においては、数十年後に目に見えるようになろう。しかしながら、既に感染した個体ならびに進行した癌に罹った患者もまた治療的ワクチン接種から利益を受けるであろう。感染を予防し、および/または悪性疾患を治療するためのHPVに対するワクチン接種は、実質的に、HPV−関連癌からの罹患率および死亡率を実質的に減少できるであろう。かくして、安価であって、かなりの人口に容易に入手できるHPVに対する更なる改良されたワクチンを開発する要望が依然として存在する。さらに、既に存在する病巣および悪性腫瘍の進行を妨げ、およびそれらを排除さえすることができるHPVに対する治療的ワクチンの開発は、感染に罹った者に対して大いに利益となるであろう。
【非特許文献1】Mellinら、Internat.J.Cancer(2000)89:300
【非特許文献2】Zumbachら、Internat.J.Cancer(2000)85:815
【非特許文献3】Dreauら、Annals Surgery(2000)231:664
【非特許文献4】Soiniら、Thorax(1996)51:887
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
本発明は、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン、および植物で生産されたワクチン成分を提供する。いくつかの具体例において、1以上のヒトパピローマウイルス抗原は、熱安定性蛋白質との融合蛋白質として作られる。本発明は、さらに、HPV抗原を含有するワクチン組成物を含む。いくつかの具体例において、本発明のHPVワクチンは少なくとも2つの異なるHPV抗原を含む。さらに、本発明は、少なくとも2つの異なるヒトパピローマウイルス(HPV)抗原を含むヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを提供する。別法として、あるいは加えて、本発明のHPVワクチンは1以上の植物成分を含むことができる。なおさらに、本発明の抗原およびワクチン組成物の生産方法およびその使用が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(発明の詳細な説明)
本発明は、HPV感染に対するワクチンの調製でいうようなヒトパピローマウイルス(HPV)抗原、および熱安定性蛋白質に操作可能に連結したそのようなHPV抗原を含む融合蛋白質に関する。本発明は、限定されるものではないが、植物系における生産を含めた、提供された抗原の生産方法に関する。さらに、本発明の抗原および融合蛋白質を含むベクター、融合蛋白質、植物細胞、植物およびワクチン組成物に関する。なおさらに、本発明のワクチン組成物を対象に投与することを含む対象においてHPV感染に対する免疫応答を誘導する方法が提供される。
【0007】
HPV抗原
本発明のヒトパピローマウイルス(HPV)抗原蛋白質は、HPVウイルスに対する免疫応答を誘導することができるいずれかの免疫原性抗原蛋白質またはペプチドを含む。一般に、注目する免疫原性蛋白質はHPV抗原(例えば、E6蛋白質、E7蛋白質等)、その免疫原性部分、および/またはその免疫原性変種を含む。
【0008】
本発明に従って用いられるHPV抗原は全長HPV蛋白質(例えば、E6、E7等)、またはそのような蛋白質の断片、ここで、そのような断片は免疫学的活性を保有し、および/またはそのような全長HPV蛋白質または断片を含む融合蛋白質を含むことができる。
【0009】
イン・ビトロにて細胞の形質転換に関与するHPV遺伝子は、E6および/またはE7をコードするものである(Bedellら、1987,J.Virol.,61:3635)。E6およびE7蛋白質が細胞形質転換を引き起こし得るメカニズムが提案されている(Parkら、1995,Cancer,76:1902、およびそこで引用された文献)。ウイルス感染に対する免疫保護応答を誘導するそれらの能力に基づき、E7およびE6はワクチンを作成するにおいて注目する一次抗原である。更なるHPV抗原は、免疫保護の効率を改良するための組合せワクチンの生産で有用であろう。
【0010】
E6はZn−結合ドメインを含む小さな(ほぼ15,000MW)ポリペプチドである。その形質転換機能に対する手掛かりは、該蛋白質がp53に結合するという観察によって提供された。p53蛋白質は、細胞周期の専門的役割および、結果的に、細胞成長および分裂を負に調節するよく知られた腫瘍サプレッサー蛋白質である。E6のp53への結合の結果、後者の蛋白質のユビキチン化およびその結果としての分解がもたらされ、そのプロセスは「E6−関連蛋白質」と言われるもう1つの細胞蛋白質を含む。その結果、E6を発現する細胞はp53の低下した基礎レベルを有するであろう。p53レベルはDNA損傷に対する応答において上昇している。そのような増加したレベルの結果、サイクリン−依存性キナーゼの阻害剤であるp21(その蛋白質は細胞周期阻止を媒介する)の増強された発現をもたらす。このメカニズムは、その中で細胞がその複製に先立って損傷したDNAを修復できる時間ウインドウを持つ細胞を提供し、その結果、損傷/突然変異の確立がもたらされるであろう。p53のE6−媒介増強回転はメカニズムが作動するのを妨げることができる。最近、E6はp53の分解を加速することによって細胞周期調節に影響するのみならず、より直接的には、p53がDNAと相互作用するのをブロックすることによって影響する(Thomasら、1995,Oncogene,10:261)。
【0011】
HPV E7癌蛋白質は腫瘍−特異的抗原であって、それは悪性進行に関与する。E7は短命の蛋白質であり、これはユビキチン−プロテオソーム経路によってイン・ビトロおよびイン・ビボ双方において分解する(Reinsteinら、2000)E7蛋白質は、網膜芽細胞腫遺伝子産物Rbに結合することができる小さな(ほぼ10,000MW)Zn−結合リン蛋白質である。Rbは転写因子E2Fに結合し、それを不活化する腫瘍サプレッサーである。後者の因子は、チミジンキナーゼ、c−myc、ジヒドロ葉酸レダクターゼおよびDNAポリメラーゼアルファをコードするものを含めた多数の成長−関連遺伝子の転写を制御する。Rb−E2F複合体形成は、細胞周期のG0およびG1期における後者の遺伝子の発現を妨げ、Rb−E2F複合体が解離するようにプログラムされ、活性な転写因子E2Fを遊離するS期へのそれらの発現を制限する。Rb−E7複合体の形成は、Rb−E2F複合体の形成を妨げ、その結果、プレ−S期を短くし、すなわち、細胞周期を通っての進行を加速する。真核生物発現系における多量の配列−真性非−融合組換えE7蛋白質を生産しようとする試みは、主として、その迅速な分解のため現実的には失敗している(Fernandoら、1999)。それにも拘わらず、いくつかのE7−ベースのHPV−特異的治療ワクチンは、現在、IIおよびIII相臨床試験で調べられつつある。予備的結果は有望であるが、有効な細胞媒介免疫を刺激できるより適切なアジュバントとの関連による尚更なる改良が必要である(Frazer,2004)。
【0012】
これらのメカニズムの重要性についての相関的証拠は、高度に癌性のHPVタイプ(例えば、HPV16および18)由来のE6蛋白質は、非−癌性タイプからの対応する蛋白質よりもp53に対して高い親和性を有し、より高い癌性タイプ由来のE7蛋白質は非−癌性タイプからの対応する蛋白質よりもRbに対してより高い親和性を有するという観察によって提供される。かくして、E6およびE7は、選択的ワクチンおよび抗癌療法の開発のための主たる標的を表す。
【0013】
かくして、本発明は、異種蛋白質(例えば、HPV抗原)を発現する植物細胞および/または植物を提供する。本発明の異種蛋白質は、限定されるものではないが、E6、E7、E6の一部、および/またはE7の一部を含めた、注目するいずれかのHPV抗原であり得る。1つのサブタイプのE7および修飾されたE7についての全長核酸および蛋白質配列は配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4に供される。
【0014】
例示的なHPV抗原の配列が本明細書中において提供されるが、種々のHPV株およびサブタイプについてのE6およびE7配列は当該分野において公知であって、例えば、GenBankのようなデータベースにおいて確認することができる。なおさらに、E6およびE7の各々についての活性およびドメインは当該分野で公知である。かくして、E6および/またはE7のドメインの免疫原性特徴を有するいずれかの配列が別法として使用することができると認識されるであろう。当業者であれば、提供された抗原に対して少なくとも75%、80%、85%、または90%またはそれを超える同一性を有する配列を容易に作成することができるであろう。ある具体例において、HPV抗原の抗原配列は配列に対して少なくとも95%、96%、97、98%またはそれを超える同一性を有するもの、またはその部分を含み、ここで、深い抗原蛋白質は免疫原性活性を保有する。例えば、免疫原性特徴を保有するHPV抗原に対して十分な同一性を有する配列は、本明細書中で提供されるドメイン(抗原)と反応する抗体と結合することができる。免疫原性特徴は、しばしば、関連アミノ酸または側鎖基の三次元提示を含む。当業者であれば、配列の中程度の差を持つ(例えば、それにも拘わらず、免疫原性特徴を維持する境界および/またはいくつかの配列代替物の差を持つ)配列を容易に同定することができる。例えば、その境界が、使命されたアミノ酸配列のいずれかの端部において本明細書中で示されたドメイン教会の近くにある(例えば、約15アミノ酸、14アミノ酸、13アミノ酸、12アミノ酸、11アミノ酸、10アミノ酸、9アミノ酸、8アミノ酸、7アミノ酸、6アミノ酸、5アミノ酸、4アミノ酸、3アミノ酸、2アミノ酸、または1アミノ酸内)配列は、本発明による関連ドメインを含むと考えることができる。かくして、本発明では、ドメイン使命を近似する残基を含ませるためのHPV抗原の配列の使用が考えられる。例えば、E7のドメインは、本発明の抗原としてのイン・フレーム融合蛋白質として作成し、発現された(本明細書中における実施例参照)。さらに、免疫原性であるHPV抗原(例えば、E6、E7)のアミノ酸配列のいずれかのドメイン、部分的ドメイン、または領域は、本明細書中で提供される構築体および方法を用いて作成することができるのは認識されるであろう。尚さらに、ドメインまたはサブドメインは、HPV抗原の生産のために、別々におよび/または連続的に組み合わせることができる。
【0015】
熱安定性蛋白質との抗原の融合
本発明のある態様においては、熱安定性蛋白質に操作可能に連結されたHPV抗原(またはその断片または変種)を含む融合ポリペプチドが提供される。本発明の融合ポリペプチドは、当該分野で公知のいずれかの入手可能な発現系にて生産することができる。ある具体例においては、本発明の融合蛋白質は植物またはその部分(例えば、植物、植物の細胞、根、芽など)において生産される。
【0016】
天然ではヒトまたは動物細胞において見出されない酵素または他の蛋白質は、本発明の融合ポリペプチドで用いるのに特に適当である。融合されると、融合産物に熱安定性を付与する熱安定性蛋白質は有用である。熱安定性は生産された蛋白質が立体配座を維持し、および生産された蛋白質を室温に維持するのを可能とする。この特徴は、融合ポリペプチドの容易な、時間的に効率的なおよびコスト的に効率的な回収を容易とする。本発明によると有用な熱安定性酵素の代表的なファミリーはグルカノヒドロラーゼファミリーである。これらの酵素は、混合され連結された多糖において1,3−β結合に隣接する1,4−βグルコシド結合を特異的に切断する(Hahnら、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,91:10417)。酵素はオート麦および大麦のような穀物で見出され、C.thermocellum(Goldenkovaら、2002,Mol.Biol.,36:698)を含めた多数の真菌および細菌種においても見出される。かくして、本発明の融合ポリペプチドで用いる例示的な熱安定性蛋白質はグルコシダーゼ酵素を含み;例示的な熱安定性グルコシダーゼ蛋白質は、その各々をここに引用して援用する、P29716、P37073、P45798、P38645;P40942;P14002;O33830、O43097、P54583、P14288、O52629、P29094、P49067、JC7532、Q60037、P33558、P05117、P04954、Q4J929、O33833、P49425、P06279、P45703、P45702、P40943、P09961、Q60042、AAN05438、AAN05437、AAN05440、AAN05439およびAAD43138から選択されるGenBankアクセション番号によって表されるものを含む。本発明の融合蛋白質で用いるリケナーゼ酵素は、その各々がそれらのGenBankアクセション番号への参照によって援用される、Clostridium thermocellum P29716、Brevibacillus brevisP37073,およびRhodthermus marinus P45798を含む。実施例で説明される代表的な融合蛋白質は、Clostridium thermocellumから単離された修飾されたリケナーゼを利用するが、いずれの熱安定性蛋白質も本発明に従って同様に利用することができる。
【0017】
本発明に従って融合蛋白質およびポリペプチドを設計する場合、もちろん、抗原の免疫原性を維持するのが望ましい。なおさらに、本発明のある態様においては、融合蛋白質の熱安定性を供する構築体を提供するのが望ましい。この特徴は、標的抗原の容易な、時間的に有効かつコスト的に有効な回収を容易とする。ある態様においては、抗原融合パートナーを選択することができ、これは、免疫原性の増強、多数のワクチン決定基を取り込む潜在能力を含めたさらなる利点を供するが、以前の望ましいものを欠如する。これらの系の二つは、クローン根およびクローン植物系、およびその誘導体の生産、ならびに発芽種苗系の生産を含む。
【0018】
クローン植物
クローン根はRNAウイルス発現ベクターを維持し、延長された時間に渡って全根、および多数のサブ構造において均一に標的蛋白質を安定して生産する。標的遺伝子が細胞間または長距離移動の間の組換えを介して排除される植物とは対照的に、根培養においては、ウイルスベクターの一体性が維持され、啓示的に生産される標的蛋白質のレベルは初期スクリーニングの間に観察されるものと同様である。クローン根は、抗原およびワクチン組成物の経口処方のための物質の生産の容易性を可能とする。抗原(例えば、本発明の抗原蛋白質)の生産でいうような植物から由来する種々のクローン存在物を生じさせるための方法および試薬は従前に記載されており、当該分野で知られている(例えば、ここに引用して援用するPCT公開WO 05/81905参照)。クローン存在物は、抗原(例えば、本発明の抗原蛋白質)を生産できるクローン根株、クローン根細胞株、クローン植物細胞株、およびクローン植物を含む。本発明は、さらに、種々の植物組織(例えば、根、葉)に由来するクローン細胞株における、および単一細胞に由来する全植物(クローン植物)における、抗原ポリヌクレオチドおよびポリペプチド産物の発現のための方法および試薬を提供する。そのような方法は、典型的には、種々のタイプの植物ウイルスベクターの使用に基づく。
【0019】
例えば、1つの態様において、本発明は、(i)本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを植物またはその部分に導入し;次いで、(ii)該植物から1以上のクローン根株を作成する工程を含む本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン根株を得る方法を提供する。クローン根株は、例えば、植物または植物の部分(例えば、葉の収穫されたピース)を、毛根の形成を引き起こすAgrobacterium(例えば、A.rhizogenes)で感染させることによって作成することができる。クローン根株は、種々の方法でスクリーニングして、ウイルスを維持する系、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを高レベルで発現する系などを同定することができる。本発明は、さらに、クローン根株、例えば、本発明によって生産されたクローン根株を提供し、さらに、クローン根株を用いて本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現し、ポリペプチドを生産する方法を含む。
【0020】
本発明は、(i)その細胞が、そのゲノムが本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含有するクローン根株を作成し;(ii)クローン根株から個々の細胞を放出し;次いで、(iii)根細胞増殖に適した条件下で細胞を維持する工程を含む、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン根細胞株を作成する方法を提供する。本発明は、クローン根細胞株、およびクローン根細胞株を用いてポリヌクレオチドを発現させ、ポリペプチドを生産する方法を提供する。
【0021】
いくつかの具体例において、本発明は:(i)そのゲノムが本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターをその細胞が含有するクローン根株を作成し;(ii)クローン根株から個々の細胞を放出させ;次いで、(iii)植物細胞増殖に適した条件下で該細胞を培養に維持する工程を含む、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物細胞株を作成する方法を提供する。本発明は、(i)本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを、培養に維持された植物細胞株の細胞に導入し;次いで、(ii)ウイルスベクターを含有する細胞について豊富化する工程を含む、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物細胞株を作成する方法を提供する。豊富化は、例えば、(i)培養から細胞の一部を取り出し;(ii)細胞濃度を低下させるように取り出した細胞を希釈し;(iii)希釈された細胞を増殖させ;次いで、(iv)ウイルスベクターを含有する細胞についてスクリーニングする工程を含む、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物細胞株を作成する方法を提供する。クローン植物細胞株は、本発明に従ってHPV抗原の生産に用いることができる。
【0022】
本発明は、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターをその細胞が含有するクローン植物を作成する多数の方法を含む。例えば、本発明は:(i)そのゲノムが本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターをその細胞が含有するクローン根株を作成し;(ii)クローン根株からの個々の細胞を放出し;次いで、(iii)植物の形成に適した条件下で放出された細胞を維持する工程を含む、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物を作成する方法を提供する。本発明は、さらに、(i)そのゲノムが本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターをその細胞が含有するクローン植物細胞株を作成し;次いで、(ii)植物の形成に適した条件下で該細胞を維持する工程を含む、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物を作成する方法をさらに提供する。一般に、本発明によるクローン植物は、本発明の抗原をコードするいずれのポリヌクレオチドも発現することができる。そのようなクローン植物は、抗原ポリペプチドの生産で用いることができる。
【0023】
前記したように、本発明は、クローン根株、クローン根細胞株、クローン植物細胞株(例えば、葉、幹などに由来する細胞株)、および/またはクローン植物において、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドまたは複数ポリヌクレオチドを発現するための系を提供する。本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドは、そのゲノムが、プロモーターに(該プロモーターの制御下で)操作可能に連結された本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含む植物ウイルスベクターを用いて先祖植物細胞に導入される。クローン根株またはクローン植物細胞株は、後にさらに記載するいくつかの技術のいずれかに従ってウイルスを含有する細胞から樹立される。植物ウイルスベクターまたはその部分は、感染によって、ウイルス転写体または感染性cDNAクローンでの接種によって、エレクトロポレーションによって、T―DNA媒介遺伝子導入によって、等により植物細胞に導入することができる。
【0024】
以下のセクションは、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン根株、クローン根細胞株、クローン植物細胞株、およびクローン植物を作成する方法を記載し、次いで、記載する。「根株」は、根株が現実の根−様構造または複数の根を生じ、他方、根細胞株が、根−様構造を形成しない根細胞よりなる点で、「根細胞株」から区別される。用語「系」の使用は、該系の細胞が増殖し、遺伝情報を子孫細胞に伝えることができることを示すことを意図する。細胞株の細胞は、典型的には、無傷植物で見出されるもののような組織化構造の一部ではなくして培養で増殖する。用語「根株」の使用は、根構造における細胞が、完全な植物の一部でなくして増殖できることを示すことを意図する。用語「植物細胞」は根細胞を含むことを注記する。しかしながら、根株および根細胞株を作成する本発明の方法を、(クローン根株からクローン植物細胞株を、またはクローン根株に由来するクローン植物の作成とは反対に)非−根組織から植物細胞株を直接的に作成するのに用いられるものから区別するためには、本明細書中で用いる用語「植物細胞」および「植物細胞株」は、一般には、非−根植物組織よりなる細胞または細胞株をいう。該植物細胞は、例えば、葉、茎、苗、花部分などであり得る。種子は本明細書中にて誘導されるように作製したクローン植物に由来することができることを注記する。植物の種子はそのような種子から得られた植物のようにウイルスベクターをやはり含有する。種子ストックを得るための方法は当該分野でよく知られている(例えば、米国特許公開2004/0093643参照)。
【0025】
クローン根株
本発明は、クローン根株を作製するためのシステムを提供し、ここで、植物ウイルスベクターを用いて、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドの発現を指令する。プロモーターに操作可能に連結された本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含めた1以上のウイルス発現ベクターは、種々の公知の方法のいずれかに従って植物またはその部分に導入される。例えば、植物の葉をウイルス転写体で接種することができる。ベクターそれ自体は(例えば、磨耗接種、機械化スプレイ接種、真空浸潤、粒子衝撃またはエレクトロポレーションを介して)植物に直接適用してもよい。別法として、あるいは加えて、ビリオンは(例えば、既に感染された植物から)調製してもよく、公知の技術に従って他の植物に適用してもよい。
【0026】
感染がウイルスゲノムの植物への直接的適用によって達成される場合、いずれかの利用可能な技術を用いてゲノムを調製してもよい。例えば、本発明に従って有用に使用される多くのウイルスがssRNAゲノムを有する。ssRNAは、ゲノムのDNAコピーの転写によって、あるいはRNAコピーの複写によってイン・ビボまたはイン・ビトロいずれかで調製してもよい。イン・ビトロ転写システム(例えば、SP6、T7、網状赤血球溶解物など)の容易な使用の容易な利用可能性、およびRNAベクターのDNAコピーを維持する便利さを仮定すれば、本発明のssRNAベクターは、しばしば、特に、T7またはSP6ポリメラーゼでのイン・ビトロ転写によって、調製されるであろう。感染性cDNAクローンを用いることができる。アグロバクテリウム媒介遺伝子導入を用いて、ウイルスベクター(全ウイルスゲノムまたはその部分いずれか)のようなウイルス核酸を、当該分野で公知の方法に従って、例えば、アグロ侵入を用いて植物細胞に導入することができる。
【0027】
次いで、ウイルス転写体の複製に適した条件下で、植物または植物部分を維持する(例えば、培養し、または成長させる)ことができる。本発明のある具体例において、ウイルスは最初に接種された細胞を超えて、例えば、細胞から細胞へ局所的に、および/または最初に接種された葉からさらなる葉へと全身的に拡大する。しかしながら、本発明のある具体例においては、ウイルスは拡大しない。かくして、ウイルスベクターは機能的MPおよび/またはCPをコードする遺伝子を含有してもよいが、そのような遺伝子の一方または双方を欠如してもよい。一般に、ウイルスベクターを植物またはその部分における多数の細胞に導入される(感染する)。
【0028】
ウイルスベクターの植物への導入に続き、葉を収穫する。一般に、葉は、ウイルスベクターの導入に続いていずれの時点に収穫してもよい。しかしながら、ウイルスベクターの植物への導入後の一定期間、例えば、ウイルス複製および、所望により、それが最初に導入された細胞からのウイルスの拡大に十分な期間の間、植物を維持するのが望ましいであろう。クローン根培養(または多数の培養)は、例えば、後にさらに記載する公知の方法によって調製される。
【0029】
一般に、いずれの利用可能な方法を用いて、ウイルスベクターが導入されている植物または植物組織からクローン根培養を調製してもよい。1つのそのような方法は、ある種の細菌プラスミドに存在する遺伝子を使用する。これらのプラスミドは、広く種々の生物に感染し、それにDNAを導入するアグロバクテリウム(Agrobacterium)の種々の種で見出される。属として、アグロバクテリウムは、多数の双子葉植物および単子葉植物の被子植物種および裸子植物を含めた植物タイプの大きな多様な組にDNAを導入することができる(その全てをここに引用して援用する、Gelvin,2003,Microbiol.Mol.Biol.Rev.,67:16、およびその中で引用された文献参照)。植物細胞の遺伝的形質転換の分子的基礎は、細菌からの導入、および種々のアグロバクテリウム種内に存在する大きな腫瘍−誘導(Ti)または根生成(Ri)プラスミドの領域の植物核ゲノムへの組込みである。この領域は、プラスミドに存在する場合には「T−領域」とプラスミドから切り出された場合には「T−DNA」という。一般に、一本鎖T−DNA分子は天然に生じるアグロバクテリウム感染において植物細胞に導入され、最終的には、ゲノムに(二本鎖形態で)組込まれる。Tiプラスミドに基づく系は、外来性遺伝物質の植物への導入のために、およびトランスジェニック植物生産のために広く用いられる。
【0030】
種々のアグロバクテリウム種での植物の感染、およびT−DNAの導入は多数の効果を有する。例えば、A.tumefaciensはクラウンゴール病を引き起こし、他方、A.rhizogenesは、「毛根病」として知られた疾患である感染の部位において毛根の発生を引き起こす。各根は、単一の遺伝子的に形質転換された細胞から生起する。かくして、根における根細胞はクローンであり、各根は細胞のクローン集団を表す。A.rhizogenes感染によって生じた根は、高い成長速度および遺伝的安定性によって特徴付けられる(ここに引用してその全てを援用する、Giriら、2000,Biotech.adv.,18:1、およびその中の文献)。加えて、そのような根は遺伝的に安定な植物を再生することができる(Giriら、2000,supra)。
【0031】
一般に、本発明は、植物細胞からの根の形成を誘導することができるアグロバクテリウムのいずれかの株(例えば、いずれかのA.rhizogenes株)の使用を含む。前記したように、Riプラスミドの部分(Ri T−DNA)は、毛根病を引き起こす原因である。Riプラスミドのこの部分の植物細胞への導入は、便宜には、Riプラスミドを保有するアグロバクテリウムでの感染によって達成されるが、本発明は、関連領域を植物細胞へ導入するいくつかの他の方法の使用を含む。そのような方法は、限定されるものではないが、バイオリスティックス、エレクトロポレーション、PEG−媒介DNA摂取、Ti−ベースのベクター等を含めた、遺伝物質を植物細胞へ導入するいずれの利用可能な方法も含む。Ri T−DNAの関連部分は、ウイルスベクターの使用によって植物細胞に導入することができる。Ri遺伝子は、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含有する同一のベクターに、または本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含むベクターのそれと同一または異なるタイプであり得る異なるウイルスベクターに含めることができる。全Ri T−DNAは毛根の生産で必要ないかも知れず、本発明はRi T−DNAの一部の使用を含み、但し、そのような一部は当該分野で公知のように根形成を誘導するのに十分な遺伝物質を含有するものとすることを注記する。さらなる遺伝物質、例えば、T−DNA内にはないRiプラスミド内に存在する遺伝子を、本発明に従って植物細胞に導入することができる。特に、その発現産物がT−DNAの植物細胞DNAへの組込みを容易とする遺伝子。
【0032】
本発明のある具体例に従ってクローン根株を調製するには、収穫された葉部分を、感染および形質転換に適した条件下でA.rhizogenesと接触させる。葉の部分は培養で維持して、毛根の発生を可能とする。各根はクローンであり、すなわち、根における細胞は、Ri T−DNAが導入された単一の先祖細胞に由来する。本発明に従うと、そのような先祖細胞の一部はウイルスベクターを含有するであろう。かくして、そのような先祖細胞に由来する根における細胞はウイルスベクターを含有するであろう。というのは、それは複製し、細胞分裂の間に伝達されるだろうからである。かくして、細胞の高い割合、(例えば、少なくとも、50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)、全て(100%)、または実質的に全て(少なくとも98%)はウイルスベクターを含有するであろう。ウイルスベクターはクローン根内の娘細胞によって遺伝されるので、根内のウイルスベクターの移動は、根全体にわたってウイルスベクターを維持する必要はない。個々のクローン毛根は葉部分から取り出してもよく、さらに培養してもよい。そのような根もまた本明細書中においては根株という。単離されたクローン根は単離の後に成長し続ける。
【0033】
種々の異なるクローン根細胞は本発明の方法を用いて作製されてきた。根株は、本発明の抗原をコードする(例えば、免疫原性ペプチドをコードする)ポリヌクレオチドを含有するウイルスベクターを用いて作製した。根株はウェスタンブロットによってテストした。根株は、種々の異なる発現レベルの種々のポリペプチドを呈した。高い発現を呈する根株を選択し、さらに培養した。根株は、引き続いて、再度テストし、延長された期間にわたって高レベルの発現を維持することが示され、これは安定性を示す。発現のレベルは、クローン根株を作製するのに用いた同一ウイルスベクターで感染された無傷植物における発現と匹敵し、またはそれよりも大きかった。加えて、根株の発現の安定性は、同一ウイルスベクターで感染させた植物で得られたのよりも優れていた。そのようなウイルス感染植物の80%までが2ないし3継体後に野生型に復帰した。(そのような継体は植物を転写体で接種し、感染(局所的または全身)を確立されたようになることを可能とし、葉試料を採取し、次いで、引き続いて発現についてテストされる新鮮な植物を接種することを含んだ。
【0034】
根株は、後にさらに議論するように、本発明のポリペプチドの抗原の生産のために大規模で培養することができる。クローン根株(およびクローン根株に由来する細胞株)は、一般に、典型的には、根および植物細胞の培養で使用される種々の化合物、例えば、オーキシン、サイトカイニンなどのような植物成長ホルモンを含まない培地中に維持することができる。この特徴は組織培養に関連する出費を低下させ、本発明者らは、それは植物を用いる蛋白質生産の経済的可能性にかなり寄与するであろうと予測する。
【0035】
種々の方法のいずれかを用いて、本発明のHPV抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン根を選択することができる。ウェスタンブロット、ELISAアッセイなどを用いて、コードされたポリペプチドを検出することができる。GFPのような検出可能なマーカーの場合には、ウイルスルスクリーニングのような代替方法を行うことができる。もし選択マーカーをコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを用いれば、適当な選択を課すことができる(例えば、葉物質および/またはそれに由来する根を適当な抗生物質または栄養条件の存在下で培養することができ、生存する根を同定し、単離することができる)。ある種のウイルスベクターは、本発明の抗原をコードする2以上のポリヌクレオチド、例えば、異なるポリペプチドをコードする2以上のポリヌクレオチドを含有する。もしこれらの1つが選択マーカーまたは検出可能なマーカーであれば、マーカーについて選択し、またはマーカーの発現を検出することによって選択または検出されるクローン根は、やはり第二のポリヌクレオチドを発現する高い可能性を有するであろう。特定のポリヌクレオチドを含有する根株についてのスクリーニングは、PCRおよび他の核酸検出方法を用いて行うことができる。
【0036】
別法として、あるいは加えて、クローン根株は、ウイルス感染の結果として局所的病巣を形成する宿主植物(例えば、過敏宿主植物)をインキュベートすることによってウイルスの存在についてスクリーニングすることができる。例えば、5mgの根組織を50μlのリン酸緩衝液中でホモゲナイズすることができ、それを用いて、タバコ植物の単一の葉を接種することができる。もしウイルスが根培養に存在するならば、2ないし3日以内に、特徴的な病巣は感染した葉に出現するであろう。これは、根株が、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチド(標的因子)を運ぶ組換え遺伝子を含有することを意味する。もし局所的病巣が形成されないならば、ウイルスはなく、根株は陰性として拒絶される。この方法はかなり時間的に有効かつコスト的に有効である。ウイルスの存在について最初にスクリーニングした後に、ウイルスを含有する根は、例えば、ウェスタンブロットまたはELISAによって二次スクリーニングに付して、高い発現体を選択してもよい。さらなるスクリーニング、例えば、迅速な成長、特に培地中でのまたは特定の環境条件下での成長についてのスクリーニングを適用することができる。これらのスクリーニング方法は、一般には、本明細書中に記載するクローン根株、クローン根細胞株、クローン根植物系、および/またはクローン植物のいずれかの発生において適応してもよい。
【0037】
当業者に明らかなように、種々の修飾をウイルスベクターを含有するクローン根株を作製するための本発明の方法の記載においてなすことができる。そのような修飾は本発明の範囲内にある。例えば、ウイルスベクターをRi T−DNA遺伝子の導入に先立って無傷植物またはその部分に導入するのが一般には望ましいが、本発明のある具体例において、ウイルスベクターの導入に先立ってRi T−DNAを導入する。加えて、葉の一部を収穫し、次いで、それらを細菌に曝露するよりはむしろA.rhizogenesと無傷細胞を接触させるのが可能である。
【0038】
ウイルスベクターを保有する植物またはその部分の単一細胞からクローン根株を作製する他の方法を用いることができる(すなわち、A.rhizogenesまたはRiプラスミドからの遺伝物質を用いない方法)。例えば、ある種の植物ホルモン、または植物ホルモンの組合せでの処理は、植物組織からの根の形成をもたらすことが知られている。
【0039】
クローン根株に由来するクローン細胞株
前記したように、本発明は、クローン根株を作製する方法を提供し、ここで、根株における細胞はウイルスベクターを含有する。当該分野でよく知られているように、種々の異なる細胞株を根から作製することができる。例えば、根細胞株は、種々の公知の方法を用いて根から得られた個々の根細胞から作製することができる。そのような根細胞株は根内の種々の異なる根細胞型から得ることができる。一般に、根物質を収穫し、解離させて(例えば、物理的におよび/または酵素的に消化して)、個々の根細胞を放出させ、次いで、これをさらに培養する。完全なプロトプラスト形成は一般には必要ではない。所望であれば、根細胞を非常に希薄な細胞濃度で平板培養して、単一の根細胞から根細胞株を得ることができる。このようにして誘導された根細胞株はウイルスベクターを含有するクローン根細胞株である。そのような根細胞株は、従って、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドの安定な発現を呈する。クローン植物細胞株は、例えば、適当な植物ホルモンの存在下で解離した根細胞を培養することによって、クローン根から同様にして得ることができる。スクリーニングおよび順次のラウンドの豊富化を用いて、高レベルで本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現する細胞株を同定することができる。しかしながら、もし細胞株が由来するクローン根株が既に高レベルで発現するならば、そのようなさらなるスクリーニングは必要ないであろう。
【0040】
クローン根細胞の場合においては、クローン根細胞株の細胞は、ウイルスベクターを含有する単一先祖細胞に由来し、従って、やはりウイルスベクターを含有する。というのは、それは複製され、細胞分裂の間に伝達されるであろうからである。かくして、細胞の高い割合(例えば、少なくとも、50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)、全て(100%)、または実質的に全て(少なくとも98%)はウイルスベクターを含有するであろう。ウイルスベクターはクローン根細胞株内の娘細胞によって遺伝されるので、細胞の間のウイルスベクターの移動はウイルスベクターを維持するのに必要ない。クローン根細胞株は、後に記載するように、本発明の発現をコードするポリヌクレオチドの生産で用いることができる。
【0041】
クローン植物細胞株
本発明は、クローン植物細胞株を作製する方法を提供し、ここで、植物ウイルスベクターを用いて、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドの発現を指令する。本発明によると、プロモーターに操作可能に連結された本発明のHPV抗原をコードするポリヌクレオチドを含めた1以上のウイルス発現ベクターを、細胞培養へ維持される植物細胞株の細胞に導入する。種々の植物タイプからの多数の植物細胞株が当該分野で知られており、そのいずれも用いることができる。新しく誘導された細胞株は、本発明を実施するのに用いられる公知の方法に従って作製することができる。ウイルスベクターは多数の方法のいずれかに従って植物細胞株の細胞に導入される。例えば、プロトプラストを作製し、次いで、ウイルス転写体を細胞にエレクトロポレーションすることができる。植物細胞株の細胞に植物ウイルスベクターを導入する他の方法を用いることができる。
【0042】
本発明によるクローン植物細胞株を作製する方法および植物細胞(例えば、プロトプラスト)に導入するのに適当なウイルスベクターを以下のように用いることができる:ウイルスベクターの導入に続き、植物細胞株は組織培養で維持してもよい。この時点の間に、ウイルスベクターは複製することができ、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現させてもよい。クローン植物細胞株は、例えば、順次の豊富化のプロセスによって培養から誘導される。例えば、試料は、所望により、植物の濃度が低いような希釈でもって培養から取り出し、個々の小滴中でペトリ皿で平板培養することができる。次いで、小滴を維持して、細胞分裂を可能とする。
【0043】
小滴は、培養の初期密度および希釈の量に依存して、可変数の細胞を含有することができることは認識されるであろう。ほとんどの小滴が、もし単一ラウンドのみの豊富化後に本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン細胞株を得るのが望まれれば0または1細胞いずれかを含有するように細胞を希釈することができる。しかしながら、多数の細胞が各小滴に存在し、次いで、小滴をスクリーニングして、発現する細胞を含有するものを同定するように、濃度を選択するのがより有効であり得る。一般に、いずれの適当なスクリーニング手法も使用することができる。例えば、GFPのような検出可能なマーカーの選択または検出を用いることができる。ウェスタンブロットまたはELISAアッセイを用いることができる。個々の小滴(100μl)はこれらのアッセイの性能につき十分な細胞を超えて含有する。多数のラウンドの豊富化は、順次により高い発現をする細胞株を単離するのに行われる。単一のクローン植物細胞株(すなわち、単一の先祖細胞に由来する集団)は、単一細胞クローニングのための標準的方法を用いるさらなる限定希釈によって作製することができる。しかしながら、個々のクローン系を単離する必要はない。多数のクローン細胞株を含有する集団は、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドの発現で用いることができる。
【0044】
一般に、クローン根株の作製のための前記したある考慮は、クローン植物細胞株の作製に適用される。例えば、本発明の抗原をコードする1以上のポリヌクレオチドを含有する多様なウイルスベクターは、多数の異なるベクターの組合せがそうであるように用いることができる。同様なスクリーニング方法を用いることができる。クローン根株、およびクローン根細胞株の場合におけるように、クローン植物細胞株の細胞は、ウイルスベクターを含有する単一の先祖細胞に由来し、従って、やはりウイルスベクターを含有するであろう。というのは、それは複製され、細胞分裂の間に伝達されるだろうからである。かくして、細胞の高い割合(例えば、少なくとも、50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)、全て(100%)、または実質的に全て(少なくとも98%)はウイルスベクターを含有するであろう。ウイルスベクターはクローン植物細胞株内の娘細胞によって遺伝されるので、細胞間のウイルスベクターの移動はウイルスベクターを維持するのに必要ないことを注記する。クローン植物細胞株は後に記載するように本発明の抗原をコードするポリペプチドの生産で用いることができる。
【0045】
クローン植物
クローン植物は前記した種々の方法に従って生産されたクローン根、クローン根細胞株、および/またはクローン植物細胞株から作製することができる。本明細書中に記載されたクローン根株、クローン根細胞株、およびクローン植物細胞株のような根、根細胞株、および植物細胞株からの植物体の作製方法は当該分野でよく知られている(例えば、Peresら、2001,Plant Cell,Tissue,and Organ Culture,65:37参照;および植物分子生物学および本明細書中において他の箇所で引用されたバイオテクノロジーについての標準的な文献研究)。本発明は、従って、(i)前記した本発明の方法のいずれかに従ってクローン根株、クローン根細胞株、またはクローン植物細胞株を作製し;次いで、(ii)クローン根株、クローン根細胞株、またはクローン植物から全植物体を作製する工程を含むクローン植物体を作製する方法を提供する。クローン植物を増殖させ、標準的な方法に従って成長させることができる。
【0046】
クローン根株、クローン根細胞株、およびクローン植物細胞株の場合におけるように、クローン植物の細胞は、ウイルスベクターを含有する単一の先祖細胞に由来し、従って、やはりウイルスを含有する。というのは、それは複製され、細胞分裂の間に伝達されるだろうからである。かくして、細胞の高い割合(例えば、少なくとも、50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)、全て(100%)、または実質的に全て(少なくとも98%)はウイルスベクターを含有するであろう。ウイルスベクターはクローン植物内の娘細胞によって遺伝されるので、ウイルスベクターの移動はウイルスベクターを維持するのに必要ないことを注記する。
【0047】
芽および発芽種苗植物発現系
本発明に従うHPV抗原の生産で有用な種々の芽および発芽種苗を作製するためのシステムおよび試薬は従前に記載されており、当該分野で公知である(例えば、ここに引用して援用するPCT公開 WO 04/43886参照)。本発明は、さらに、HPV抗原ペプチドまたは蛋白質を含有するバイオマスとしての、食べることができる発芽種苗を提供する。ある態様において、該バイオマスは、抗原組成物の消費のために直接的に提供される。いくつかの態様において、該バイオマスは、例えば、ホモゲナイズし、破砕し、乾燥し、または抽出することによって消費に先立って処理される。ある態様において、HPV抗原はバイオマスから精製され、医薬組成物に処方される。
【0048】
加えて、消費でき、または生きたまま収穫することができる発芽種苗(例えば、アブラナ属の芽、発芽種苗)においてHPV抗原を生産する方法が提供される。ある態様において、本発明は、封じ込められた調節可能な環境(例えば、インドア、容器中など)において種子を食べることができる発芽種苗まで成長させることを含む。種子は、その発現が内因的に誘導性のプロモーターによって駆動されるHPV抗原をコードする発現カセットを含有する遺伝子工学により作製された種子であり得る。例えば、光、熱、光ホルモン、栄養素などによって誘導可能な種々の内因的に誘導性のプロモーターを用いることができる。
【0049】
ある具体例において、本発明は、まず、Agrobacterium形質転換系を用いて植物をHPV抗原をコードする発現カセットで形質転換することにより発芽種苗について種子ストックを形成することによって発芽種苗においてHPV抗原を生産する方法を提供し、ここで、HPV抗原の発現は誘導性プロモーターによって駆動される。トランスジェニック種子は、封じ込められた調節可能な環境で成長させた形質転換植物から得ることができ、それを誘導して、HPV抗原を発現させることができる。
【0050】
いくつかの具体例において、その発現がウイルスプロモーターまたは誘導性プロモーターのいずれかによって駆動され得るHPV抗原をコードするウイルス発現カセットで発芽された実生を完成させることを含む。発芽された実生は、封じ込められた調節可能な環境において、あるいは少なくとも十分なレベルのHPV抗原が消費または収穫のために得られるまで、2ないし14日の間成長させる。
【0051】
本発明はさらに、気候が制御された収容ユニットを含む発芽種苗、および1以上のHPV抗原をコードする発現カセットを含有する発芽された実生においてHPV抗原を生産するためのシステムを提供し、ここで、発現は構成的または誘導性プロモーターによって駆動される。本発明のシステムは制御することができないアウトドア環境または温室よりもユニークな利点を提供することができる。かくして、本発明は、育種者がHPV抗原の発現の誘導を正確に時間合わせするのを可能とする。それはHPV抗原を生産するコストも多いに低下させることができる。
【0052】
ある態様において、一過的にトランスフェクトされた芽は本発明のHPV抗原をコードするウイルスベクター配列を含有する。実生は、芽におけるウイルス核酸の生産を可能とするような時間の間、続いて、ウイルスの多数のコピーが生産され、それにより、抗原が生産される期間の間成長させる。
【0053】
ある態様において、HPV抗原をコードする導入遺伝子を含有する遺伝子工学により作製された種子または胚は封じ込められた調節可能な環境において発芽された実生段階まで成長させる。封じ込められた調節可能な環境は、種子をインドアで成長させることができる収容ユニットまたは部屋であってよい。封じ込められた調節可能な環境の全ての環境因子を制御してもよい。芽は成長するのに光を必要とせず、かつ照明は高価であり得るので、遺伝子工学により作製された種子または胚は、光の不存在下でインドアにて発芽種苗段階まで成長させることができる。
【0054】
本発明の封じ込められた調節可能な環境において調節できる他の環境因子は温度、湿度、水、栄養素、ガス(例えば、O2またはCO2含有量または空気循環)、化学物質(糖および糖誘導体のような小分子、植物ホルモンジベレリン酸またアブシジン酸などのようなホルモン)などを含む。
【0055】
本発明のある方法に従うと、HPV抗原をコードする導入遺伝子の発現は外因的に誘導性プロモーターによって制御することができる。外因性誘導性プロモーターは、内部刺激体よりはむしろ外部に対する応答において導入遺伝子の発現を増加させ、または減少させる。多数のこれらの環境因子は、遺伝子工学により作製した芽の発現カセットによって運ばれる導入遺伝子の発現のためのインデューサーとして作用することができる。プロモーターは熱−ショックプロモーターのような熱−誘導性プロモーターであってよい。例えば、熱−ショックプロモーターを用い、封じ込められた環境の温度を、単に上昇させて、導入遺伝子の発現を誘導することができる。他のプロモーターは光誘導性プロモーターを含む。もし封じ込められた調節可能な環境における光を常にオンしているとすれば、構成的プロモーターとして維持することができる。別法として、または加えて、導入遺伝子の発現を、単に光のスイッチを入れることによって、発生の段階の特定の時点でスイッチを入れることができる。プロモーターは化学的に誘導性のプロモーターであってよく、それを用いて、導入遺伝子の発現を誘導する。それらの具体例によると、化学物質は単に種子、胚または実生に霧状に加え、またはスプレイして導入遺伝子の発現を誘導することができよう。スプレイイングおよびミスティングは正確に制御し、それが意図する標的種子、胚または実生に向けられる。封じ込められた環境は風または空気の流れが欠如し、これは、化学物質がそれが意図する標的に留まるように、化学物質を意図した標的から分散させるであろう。
【0056】
本発明によると、時間発現を誘導し、選択して、収穫の時期まで発芽種苗におけるHPV抗原の発現を最大化することができる。成長の特定の段階における胚における発現の誘導、例えば、発芽後の特定の日数における胚での発現の誘導の結果、収穫時期におけるHPV抗原の最大合成が得ることができる。例えば、発芽から4日後のプロモーターからの発現の誘導の結果、3日後または5日後においてプロモーターから発現を誘導するよりも蛋白質合成をもたらし得る。当業者であれば、発現の最大化はルーチン的実験によって達成することができることを認識するであろう。いくつかの具体例において、発芽種苗は発芽から約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12日において収穫される。
【0057】
発現ベクターが誘導性プロモーターの代わりに構成的プロモーターを有する場合には発芽種苗を、発芽種苗の形質転換後のある時点で収穫してもよい。例えば、もし発芽種苗が発生の初期段階においてウイルスにより形質転換されれば、例えば、胚段階で形質転換されれば、発芽種苗は、発現がその最大形質転換後における、例えば、形質転換後約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日における時点に収穫してもよい。また、芽は、種子の発芽に応じて、形質転換後1、2、3またはそれ以上の月で発生するであろう。
【0058】
一般に、一旦HPV抗原の発現が開始すれば、種子、胚、または発芽種苗を、十分なレベルのHPV抗原が発現されるまで成長させる。ある態様においては、十分なレベルは、もし収穫されたバイオマスが生で食べられるならば、患者に対して治療的利点を供するであろうレベルである。別法として、または加えて、十分なレベルは、バイオマスからHPV抗原を濃縮し、または精製し、投与に際して患者に治療的利点を供する医薬組成物に処方することができるレベルである。典型的には、抗原は、天然において発芽種苗で発現される蛋白質ではない。いずれかの速度にて、HPV抗原は、典型的には、天然で発芽種苗に存在するであろう濃度を超える濃度で発現される。
【0059】
一旦HPV抗原の発現が誘導されれば、その時点で発芽種苗が収穫される発芽種苗段階まで、成長を継続させる。発芽種苗は生きて収穫することができる。生きた発芽種苗の収穫は、最小の努力および破壊を含めたいくつかの利点を有する。本発明の発芽種苗を水耕により成長させることができ、収穫を、その水耕溶液からの発芽種苗をリフトする単純な事項とする。本発明の発芽種苗の成長のためには土壌は必要でないが、もし当業者が必要または望ましいとみなしたならば供してもよい。芽は土壌なくして成長させることができるので、発芽種苗物質の清浄は収穫の時点においては必要でない。洗浄または磨きなくしてその水耕環境から直接的に発芽種苗を収穫できることは、収穫された材料の破壊を最小化する。植物の破壊および萎れはアポトーシスを誘導する。アポトーシスの間に、ある種の蛋白質分解酵素が活性となり、発芽種苗で発現された医薬蛋白質を分解することができ、その結果、蛋白質の治療活性は低下する。アポトーシス−誘導蛋白質分解は、成熟植物からの蛋白質の収率を有意に減少させることができる。本発明の方法を用い、蛋白質が植物から抽出される瞬間まで収穫を行わない場合、アポトーシスは回避することができる。
【0060】
例えば、生きた芽を粉砕し、破砕し、またはブレンドして、プロテアーゼ阻害剤を含有する緩衝液中の発芽種苗バイオマスのスラリーを生じさせることができる。緩衝液は約4℃に維持することができる。いくつかの態様において、発芽種苗バイオマスは風乾し、噴霧乾燥し、凍結し、または凍結乾燥される。成熟植物におけるように、風乾のようなこれらの方法のいくつかの結果、医薬蛋白質の活性の喪失がもたらされるであろう。しかしながら、発芽種苗は非常に小さく、容量に対する表面積の大きな比率を有するので、これはあまり起こりそうにない。当業者であれば、発現された蛋白質の蛋白質分解を最小化するバイオマスを収穫するための多くの技術が利用でき、本発明に適用できるであろうことを認識するであろう。
【0061】
いくつかの具体例において、発芽種苗は食べることができる。ある具体例において、十分なレベルのHPV抗原を発現する発芽種苗は、発芽種苗が消費される前に絶対的にプロセッシングが起こらないように、発芽に際して(例えば、収穫直後に、収穫に続いて最小期間内に)十分なレベルのHPV抗原を発現する発芽種苗を消費する。このようにして、治療を必要とする患者へのHPV抗原の投与の前のHPV抗原のいずれかの収穫−誘導蛋白質分解は最小化される。例えば、消費する準備ができている発芽種苗は患者に直接的に送達することができる。別法として、あるいは、加えて、遺伝子工学により作製された種子または胚は治療を必要とする患者に送達され、患者によって発芽種苗段階まで成長させられる。1つの態様において、ある望ましいHPV抗原を発現する発芽種苗の連続的ストックを栽培できるように、遺伝子工学により作製された発芽種苗の供給は患者、または患者を治療する医師に供される。これは、高価な医薬が提供または送達できない開発途上国における集団に対して特に価値があるであろう。本発明の発芽種苗を成長させることができる容易性は、本発明の発芽種苗をそのような開発国集団で特に望ましいものとする。
【0062】
封じ込まれた環境の調節可能な性質は、アウトドア環境における植物の成長よりも優れた利点を本発明に対して付与する。一般に、植物において医薬蛋白質を発現する遺伝子工学により作製された発芽種苗の成長は、(植物はより若くして収穫されるゆえに)より速い医薬製品を、遺伝子工学により作製された植物の成長よりも少ない努力、危険性および調節の考慮でもって提供する。本発明で用いる封じ込まれた調節可能な環境は、性質上人工受粉植物の危険性を低下させ、または排除する。
【0063】
例えば、アウトドア温度は制御することができないゆえに、熱誘導性プロモーターはアウトドアであまり用いられないであろう。プロモーターは、アウトドア温度があるレベルを超えて上昇した時点でスイッチが入れられるであろう。同様に、プロモーターはアウトドア温度が降下するごとにスイッチが切られるであろう。そのような温度シフトは1日内で起こる可能性があり、例えば、日中に発現のスイッチを入れ、夜間にスイッチを切る。本明細書中に記載されたもののような熱誘導性プロモーターは、気候のシフトに対してアウトドアとほとんど同程度感受性である温室で用いるのには現実的ではないであろう。温室における遺伝子工学により作製された植物の成長はかなりコストがかかる。対照的に、本システムにおいては、発現の最大量を各収穫で達成できるように、あらゆる変数を制御することができる。
【0064】
ある具体例において、本発明の発芽種苗は、発芽種苗の発生の間のいずれの時点においても水を与え、スプレイし、または霧状で与えることができるトレイ中で成長させる。例えば、トレイは、発芽種苗の発生の間に、特定の時点にて、かつ正確な量で、水、栄養素、化学物質等を送達し、および/または除去することができる1以上の水やり、スプレイイング、ミスティングおよび排出装置を嵌合させてもよい。例えば、種子はそれを湿った状態で保つのに十分な水分を必要とする。過剰な水分は、トレイ中の穴を通って部屋の床中のドレインまで排出される。典型的には、ドレナージ水は、環境へ排出されて戻される前に有害な化学物質の除去のために適切に処理される。
【0065】
トレイのもう1つの利点は、それが非常に小さな空間内に含むことができることである。発芽種苗が成長するのに光は必要でないので、種子、胚、または発芽種苗を含有するトレイはもう1つの頂部に垂直に密に積むことができ、これらの目的で特別に構築された収容施設における単位床空間当たり多量のバイオマスを提供する。加えて、トレイのスタックは収容ユニット内に水平の列で配置することができる。一旦実生が収穫に適し段階まで成長したならば(約2ないし14日)、個々の実生トレイを処理施設へ手動で、あるいはコンベアベルトのような自動手段によって移動させる。
【0066】
本発明のシステムは、それが、HPV抗原の源である発芽種苗バイオマスを提供する点でユニークである。直接的に消費されるか、あるいは医薬組成物の形態に加工されるかを問わず、発芽種苗は封じ込められた調節可能な環境で成長させるゆえに、発芽種苗バイオマスおよび/または該バイオマスに由来する医薬組成物は低コストで消費者に提供することができる。加えて、発芽種苗の成長の条件は制御できるという事実は、製品の品質および純度を一定のものとする。本発明の封じ込められた調節可能な環境は、科学者が野外で遺伝子工学により作製された農業産物を成長させるのを妨げ得るEPAの多くの安全性規制を避ける。
【0067】
形質転換された芽
種々の方法を用いて、植物細胞を形質転換し、遺伝子工学により作製された発芽された実生を生産することができる。トランスジェニック植物細胞株がイン・ビトロで作製されることを必要とする植物の形質転換、続いての、細胞株の全植物への再生の2つの利用可能な方法は、Agrobacterium tumefaciens媒介遺伝子導入およびマイクロインジェクタイル衝撃またはエレクトロポレーションを含む。ウイルス形質転換は、所望の産物を得るに先立って実験的または世代的遅延無くして収穫することができる、肺および発芽種苗を形質転換するより迅速かつ高価でない方法である。これらの技術のいずれについても、当業者であれば、伝統的には植物、種子、胚または発芽種苗で用いられてきた形質転換プロトコルをどのようにして調整し、最適化するかを認識するであろう。
【0068】
Agrobacterium形質転換発現カセット
Agrobacteriumはグラム陰性のRhizobiaceae科の代表的な属である。この種はクラウンゴールおよび毛根病のような植物腫瘍の原因である。腫瘍に特徴的な脱分化植物組織においては、オパインとして知られたアミノ酸誘導体はAgrobacteriumによって生産され、植物によって異化される。オパインの発現を担う細菌遺伝子は、キメラ発現カセットのための制御エレメントの便利な源である。本発明によると、Agrobacterium形質転換系を用いて、単に成熟植物よりも早く収穫される食用発芽実生を作製することができる。Agrobacterium形質転換方法は、HPV抗原を発現する発芽実生を再生するのに容易に適用することができる。
【0069】
一般に、植物の形質転換は、植物/細菌ベクターを運ぶAgrobacterium tumefaciensとの共−栽培による組織培養で成長させた植物細胞の形質転換を含む。該ベクターは、HPV抗原をコードする遺伝子を含有する。Agrobacteriumは該ベクターを植物宿主細胞に導入し、次いで、抗生物質処理を用いて排除する。HPV抗原を発現する形質転換された植物細胞を選択し、分化させ、最後に、完全な小植物に再生する(その各々をここに引用して援用するHellensら、2000,Plant Mol.Biol.,42:819;Pilon−Smitsら、1999,Plant Physiolog.,119:123;Barfieldら、1991,Plant Cell Reports,10:308;およびRivaら、1998,J.Biotech.,1(3))。
【0070】
本発明で用いる発現ベクターは、発現カッセットの上流および下流のコンパニオン配列と共に、植物における操作のために設計されたHPV抗原をコードする遺伝子(または発現カセット)を含む。コンパニオン配列は、一般には、プラスミドまたはウイルス起源のものであり、ベクターが細菌からのDNAを所望の植物宿主に導入するための必要な特徴を提供する。
【0071】
基本的な細菌/植物ベクター構築体は、望ましくは、広い宿主範囲の原核生物複製起点、原核生物選択マーカーを供することができる。適当な原核生物選択マーカーは、アンピシリンまたはテトラサイクリンのような抗生物質に対する耐性を含む。当該分野で良く知られた更なる機能をコードする他のDNA配列をベクターに存在させることができる。
【0072】
Agrobacterium T−DNA配列は、植物染色体へのDNAのAgrobacterium 媒介導入で必要である。T−DNAの腫瘍−誘導遺伝子は、典型的には、除かれ、HPV抗原をコードする配列で置き換えられる。T−DNA境界配列は保持される。何故ならば、それはT−DNA領域の植物ゲノムへの組込みを開始するからである。もしHPV抗原の発現が検出で容易に使用できないならば、細菌/植物ベクター構築体は、植物細胞が形質転換されているかを決定するのに適した選択マーカー遺伝子、例えば、nptIIカナマイシン耐性遺伝子を含むことができる。同一または異なる細菌/植物ベクター(Tiプラスミド)上にはTi配列がある。Ti配列はビルレンス遺伝子を含み、これはT−DNAの切出し、T−DNAの植物ゲノムへの導入および組込みを担う蛋白質の組をコードする(Schell,1987,Science,237:1176)。異種配列の植物ゲノムへの組込みを行うのに適した他の配列は、相同組換えのためのトランスポゾン配列等を含むことができる。
【0073】
ある構築体は、抗原蛋白質をコードする発現カセットを含むであろう。1、2またはそれ以上の発現カセットを所与の形質転換で用いることができる。組換え発現カセットは、HPV抗原をコードする配列に加えて、少なくとも以下のエレメント:プロモーター領域、植物5’非翻訳配列、(発現された遺伝子がそれ自身を有するか否かに応じて)開始コドン、ならびに転写および翻訳終止配列を含有する。加えて、転写および翻訳ターミネーターを本発明の発現カセットまたはキメラ遺伝子に含めることができる。蛋白質のプロセッシングおよびトランスローケーションを可能とするシグナル分泌配列は、適切には、発現カセットに含めても良い。種々のプロモーター、シグナル配列、および転写および翻訳ターミネーターは記載されている(例えば、ここに引用して援用するLawtonら、1987,Plant Mol.Biol.,9:315;および米国特許第5,888,789号参照)。加えて、構成物質耐性のための構造遺伝子は選択因子として通常利用される(ここに引用して援用するFraley et al.1983,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,80:4803)。カセットの5’および3’末端におけるユニークな制限酵素部位は、予め存在するベクターへの容易な挿入を可能とする。少なくとも1つのT−DNA境界配列を運ぶ、Agrobacterium−媒介形質転換のための他のバイナリーベクター系は、ここに引用して援用するPCT/EP99/07414に記載されている。
【0074】
再生
形質転換された植物の種子を収穫し、乾燥し、正常化し、生存性について、および所望の遺伝子産物の存在および発現についてテストすることができる。一旦これが決定されたならば、種子ストックは、典型的には、必要な場合に用いるべき温度、湿度、衛生および安全性の適当な条件下で貯蔵される。次いで、全植物を培養されたプロトプラストから再生することができる(例えば、ここに引用して援用するEvansら、Handbook of Plant Cell Cultures,Vol.1,MacMillan Publishing Co.,New York,1983;およびVasil I.R.(ed.),Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants, Acad. Press, Orlando,Vol.I,1984,and Vol.III,1986参照)。ある態様においては、植物が発芽種苗段階へのみ再生される。いくつかの態様において、全植物を再生して、種子ストックを生産し、発芽種苗は種子ストックの種子から再生される。
【0075】
それからプロトプラストを単離し、培養して、全再生植物を得ることができる全ての植物は、導入された遺伝子を含有する全植物が回収されるように、本発明によって形質転換することができる。現実的には、全ての植物は限定されるものではないが、食べることができる芽を生産する植物の全ての主な種を含めた培養された細胞または組織から再生することができるのが公知である。いくつかの適当な植物はアルファルファ、緑豆、ラディッシュ、小麦、カラシ、ほうれん草、人参、砂糖ラディッシュ、タマネギ、ニンニク、セロリ、大黄、キャベツまたはレタスのような葉の多い植物、オランダガラシまたはクレス、パセリ、ミントまたはクローバのような薬草、カリフラワー、ブロッコリー、大豆、レンズ豆、ヒマワリ等のような食用花を含む。
【0076】
再生のための手段は植物の1つの種から次の種で変化する。しかしながら、当業者であれば、一般には、異種遺伝子のコピーを含有する形質転換されたプロトプラストの懸濁液が先ず提供されることを認識するであろう。カルス組織が形成され、新芽がカルスから誘導でき、引続いて発根させることができる。別法として、または加えて、胚形成はプロトプラスト懸濁液から誘導することができる。これらの胚は天然の胚として発芽して、植物を形成する。種子を水に浸し、または種子に水をスプレイして、種子の水分含有量を35ないし45%の間まで増加させると、発芽が開始する。発芽を進行させるためには、種子を、典型的には、制御された温度および空気流条件下で、水で飽和した空気中に維持する。培養基は、一般には、種々のアミノ酸、およびオーキシンおよびサイトカイニンのようなホルモンを含有するであろう。特に、アルファルファのような種では、グルタミン酸およびプロリンを培地に加えるのが有利である。新芽および根は通常は同時に発生する。有効な再生は、培地、遺伝子型、および培養の履歴に依存するであろう。もしこれらの3つの変数が制御できれば、再生は十分に再現性がありかつ反復可能である。
【0077】
形質転換された植物細胞から成長させた成熟植物は自己化されており、非−分離性ホモ接合性トランスジェニック植物は同定される。同系交配植物は本発明の抗原をコードする配列を含有する種子を生産する。そのような種子を発芽させ、発芽種苗段階まで成長させて、本発明によるHPV抗原を得る。
【0078】
関連する具体例において、本発明の種子は種子産物に形成することができ、投与、または医薬組成物への収穫のために実生をどのようにして適切な発芽実生段階まで成長させるかについての指示書と共に販売できる。いくつかの関連する具体例において、所望の特性を具体化するハイブリッドまたは新規な品種を本発明の同系交配植物から発生させることができる。
【0079】
直接的組込み
マイクロプロジェクタイル衝撃またはエレクトロポレーションによるDNA断片の植物細胞のゲノムへの直接的組込みを本発明で用いることができる(例えば、Kikkertら、1999,Plant:J.Tissue Cult.Assoc.,35:43;およびBates,1994,Mol.Biotech,2:135参照)。より特別には、本発明のHPV抗原を発現するベクターは、種々の技術によって植物細胞に導入することができる。前記したように、ベクターは植物細胞で用いるために選択マーカーを含むことができる。ベクターは、複製起点および選択マーカーを含有する配列のような、二次宿主におけるその選択および増殖を可能とする配列を含むことができる。典型的には、二次宿主は細菌および酵母を含む。1つの具体例において、二次宿主は細菌(例えば、Escherichia coli、複製の起点はcolE1−タイプの複製の起点である)であり、選択マーカーはアンピシリン耐性をコードする遺伝子である。そのような配列は当該分野で良く知られており、商業的に入手可能である(例えば、Clontech,Palo Alto,CA またはStratagene,La Jolla,CA)。
【0080】
本発明のベクターは、Agrobacterium tumefaciensベクターに対する相同性の領域、Agrobacterium tumefaciensからのT−DNA境界領域、および前記した抗原をコードする核酸または発現カセットを含有する中間植物形質転換プラスミドへ修飾することができる。さらなるベクターは、Agrobacterium tumefaciensの武装していない植物腫瘍誘導プラスミドを含むことができる。
【0081】
この具体例によると、本発明のベクターの直接的形質転換は、マイクロピペットの使用によりベクターを植物細胞に直接的にマイクロインジェクションして、機械的に組換えDNAを導入することを含むことができる(例えば、ここに引用して援用するCrossway,1985,Mol.Gen.Genet.,202:179参照)。遺伝物質をポリエチレングリコールを用いて植物細胞に導入することができる(例えば、Krensら、1982,Nature,296:72参照)。核酸を小さなビーズまたは粒子のマトリックス内、または表面に核酸を含む小さな粒子による高速弾丸貫入を介して核酸を植物に導入するもう1つの方法(例えば、Kleinら、1987,Nature,327:70;Knudsenら、1991,Planta,185:330参照)。導入のさらにもう1つの方法は、他の存在、ミセル、細胞、リソソームまたは他の融合可能な脂質−表面化体いずれかでのプロトプラストの融合である(例えば、Fraleyら、1982,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,79:1859参照)。本発明のベクターはエレクトロポレーションによって植物細胞に導入することができる(例えば、Fromm et al.1985,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,82:5824参照)。この技術に従うと、遺伝子構築体を含有するプラスミドの存在下で、植物プロトプラストをエレクトロポレーション付す。高い場の強度の電気的インパルスは、生体膜を可逆的に浸透させ、プラスミドの導入を可能とする。エレクトロポレーションに付された植物プロトプラストは細胞壁を再度形成し、分裂し、植物カルスを形成し、これは再生して、本発明の発芽種苗を形成することができる。当業者は、これらの方法をどのようにして利用して、食べられる発芽実生を作製するのに用いることができる植物細胞を形質転換するのを認識するであろう。
【0082】
ウイルス形質転換
慣用的な発現系と同様に、植物ウイルスベクターを用いて、全長抗原を含めた全長蛋白質を生産することができる。本発明によると、植物ウイルスベクターを用いて、種子、胚、発芽実生等、ウイルス系を感染させ、その中で抗原を生産することができ、これを用いて、短いペプチドから長い複雑な蛋白質の全てを発現することができる。具体的には、トバモウイルスベクターの使用が記載されている(例えば、その各々をここに引用して援用するMcCormick et al.1999,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,96:703;Kumagaiら、2000,Gene,245:169;およびVerchら、1998,J.Immunol.Methods,220:69参照)。かくして、植物ウイルスベクターは、短いペプチドならびに長い複雑な蛋白質を発現させ証明された能力を有する。
【0083】
ある具体例において、HPV抗原を発現するトランスジェニック芽は宿主/ウイルス系を利用して作製される。ウイルス感染によって生産されたトランスジェニック芽は、既に安全であることが示されているトランスジェニック蛋白質の源を提供する。例えば、芽は動物病原体での汚染がない。例えば、タバコとは異なり、食用芽からの蛋白質は少なくとも理論的には精製なくして経口適用で用いることができ、かくして、コストをかなり低下させる。加えて、ウイルス/芽系はスケールアップおよび製造のためのかなり単純な効果ではない経路を提供する。というのは、導入遺伝子はウイルスに導入され、これは、数日内に商業的規模まで成長させることができるからである。対照的に、トランスジェニック植物は、十分な種子または植物材料が大規模な試験または商業化のために利用可能となる前に5ないし7年までを必要としかねない。
【0084】
本発明によると、RNAウイルスはある利点を有し、これはそれを外来性蛋白質発現用のベクターとして魅力的なものとする。多数の植物RNAウイルスの分子生物学および病理学はよく特徴付けられており、ウイルス生物学、遺伝学、および調節配列のかなりの知識がある。ほとんどの植物RNAウイルスは小さなゲノムを有し、感染性cDNAクローンは、遺伝子操作を容易とするのに利用できる。一旦感染性ウイルス物質が罹患性宿主細胞に入れば、それは高いレベルまで複製され、迅速に、全発芽実生全体に渡って拡大する(接種後1ないし10日)。ウイルス粒子は、感染した発芽実生組織から容易にかつ経済的に回収される。ウイルスは広い宿主範囲を有し、いくつかの罹患性種の感染様の単一構築体の使用を可能とする。これらの特徴は容易に芽に移すことができる。
【0085】
外来性配列は、典型的には、ウイルス遺伝子の1つを所望の配列で置き換えることによって、外来性配列を適当な位置にてウイルスゲノムに挿入することによって、または外来性ペプチドをウイルスの構造蛋白質に融合することによって、植物RNAウイルスから発現させることができる。さらに、これらのアプローチのいずれかを組み合せて、ウイルスのウイルス機能のトランス−補充によって外来性配列を発現させることができる。多数の異なる戦略が、タバコモザイクウイルス(TMV)、アルファルファモザイクウイルス(AlMV)およびそのキメラを用いてウイルス−感染植物において外来性配列を発現させるためのツールとして存在する。
【0086】
AlMVのゲノムは、ウイルスのBromoviridae科の代表であり、3つのゲノムRNA(RNA1−3)およびサブゲノムRNA(RNA4)よりなる。ゲノムRNAs1および2は、各々、ウイルスレプリカーゼ蛋白質P1および2をコードする。ゲノムRNA3は細胞間移動蛋白質P3およびコート蛋白質(CP)をコードする。CPはサブゲノムRNA4から翻訳され、これはゲノムRNA3から合成され、感染を開始させるのに必要である。研究は、ゲノム活性化、複製、RNA安定性、兆候形成、およびRNAカプセル化を含めた、多数の機能におけるCPの関与を示している(例えば、Bolら、1971,Virology,46:73;Van Der Vossenら、1994,Virology 202:891;Yusibovら、Virology,208:405;Yusibov et al.1998,Virology,242:1;Bolら、(Review,100 refs.),1999,J.Gen.Virol.,80:1089;De Graaff,1995,Virology,208:583;Jasparsら、1974,Adv.Virus Res.,19:37;Loesch−Fries,1985,Virology,146:177;Neelemanら、1991,Virology,181:687;Neelemanら、1993,Virology,196:883;Van Der Kuylら、1991,Virology,183:731;and Van Der Kuylら、1991,Virology,185:496参照)。
【0087】
ウイルス粒子のカプセル化は、典型的には、種子、胚または発芽種苗の接種された部分から接種されていない部分への長距離移動のためおよび全身感染のために必要である。本発明によると接種は植物発生のいずれの段階においても起こり得る。胚および芽においては、接種されたウイルスの拡大は非常に迅速なはずである。AlMVのビリオンは、1を超えるタイプの粒子を形成するユニークなCP(24kD)によってキャプシドで包まれる。粒子のサイズ(長さが30−ないし60−nm、直径が18nm)および形状(球、楕円体または桿状)は、キャプシドで包まれたRNAのサイズに依存する。組み立てに際して、AlMV CPのN−端末はウイルス粒子の表面に位置すると考えられ、ウイルス組み立てに干渉するように見えない(Bolら、1971,Virology,6:73)。加えて、そのN−末端においてさらに38−アミノ酸ペプチドを持つAlMV CPはイン・ビトロで粒子を形成し、生物学的活性を保持する(Yusibovら、1995,J.Gen.Virol.,77:567)。
【0088】
AlMVは広い宿主範囲を有し、これは、植物の種子、胚および芽を含めた多数の農業的に価値ある作物、植物を含む。一緒にすると、これらの特徴はAlMV CPを担体分子としての優れた候補とし、AlMVを、発生の芽段階における植物での外来性配列の発現用の魅力的な候補ベクターとする。さらに、TMVのような異種ベクターからの発現に際して、AlMV CPはウイルス感染性に干渉することなくTMPゲノムをキャプシドで包む(ここに引用して援用するYusibovら、1997,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,94:5784)。これは、外来性配列に融合したAlMV CPについての担体ウイルスとしてのTMVの使用を可能とする。
【0089】
TMV、トバモウイルスのプロトタイプは、棹−形状の粒子(長さが300nm)をもたらす、17.0kD CPでキャプシド化された単一のプラス−センスRNAよりなるゲノムを有する。CPはTMVの唯一の構造蛋白質であり、キャプシド化、および感染した宿主におけるウイルスの長距離移動で必要である(Saitoら、1990, Virology, 176:329)。183および126kD蛋白質はゲノムRNAから翻訳され、ウイルス複製で必要である(Ishikawaら、1986,Nuc.Acids Res.,14:8291)。30kD蛋白質はウイルスの細胞間移動蛋白質である(Meshiら、 1987,EMBO J., 6:2557)。移動およびコート蛋白質はサブゲノムmRNAから翻訳される(その各々をここに引用して援用するHunterら、1976,Nature,260:759;Brueningら、1976,Virology,71:498;およびBeachyら、1976,Virology,73:498)。
【0090】
植物組織を形質転換する他の方法は植物の花の形質転換を含む。Arabodopsis thalianaの形質転換は、Agrobacterium tumefaciensの溶液に植物の花を浸すことによって達成することができる(Curtisら、2001,Transgenic Res.,10:363;and Qingら、2000,Molecular Breeding:New Strategies in Plant Improvement,1:67)。形質転換された植物は、「浸された」植物によって生じた種子の集団において形成される。花の発生の間における特定の地点において、それを通ってAgrobacterium tumefaciensが子房の内部へのアクセスを獲得する子房壁に存在する。一旦子房の内部に入れば、Agrobacterium tumefaciensは増殖し、個々の胚珠を形質転換する(Desfeuxら、2000,Plant Physiology,123:895)。形質転換された胚珠は、子房内での種子形成の典型的な経路に従う。
【0091】
抗原の生産および単離
一般に、当該分野で公知の標準的な方法は、抗原の生産のために、本発明の植物、植物細胞、および/または植物組織(例えば、クローン植物、クローン植物細胞、クローン根、クローン根株、芽、発芽種苗、植物等)を培養し、成長させるのに用いられるであろう。広く種々の培養基および培養リアクターが、毛根細胞、根細胞株、および宿主細胞(例えば、その全てをここに引用して援用するGiriら、2000,Biotechnol.Adv.,18:1;Raoら、2002,Biotechnol.Adv.,20:101;および前記の双方における文献参照)を培養するのに使用されてきた。クローン植物はいずれかの適当な方法で成長させることができる。
【0092】
ある具体例において、本発明のHPV抗原はいずれかの公知の方法によって生産することができる。いくつかの具体例においてHPV抗原は植物またはその部分において発現される。蛋白質を当該分野で公知の慣用的な条件および技術に従って、蛋白質を単離し、精製する。これらは抽出、沈殿、クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー電気泳動などの方法を含む。本発明は、本明細書中に記載されたウイルス植物発現系を含めた、当該分野で公知であって、本明細書中で提供される種々の植物発現系のいずれかを用いるHPV抗原の精製、および該抗原の生産の提供可能なスケールアップを含む。
【0093】
本発明の多くの具体例において、ワクチン抗原産物を単離するのが望ましいであろう。本発明の蛋白質を植物組織またはその部分、例えば、それを発現する根、根細胞、植物、植物細胞から生産する場合、本明細書中でさらに詳細に記載する方法、あるいは当該分野で公知のいずれかの適応可能な方法を植物材料からの部分的または完全な単離いずれかで用いることができる。それを発現する植物細胞または組織のいくつかまたは全てからの発現産物を単離するのが望ましい場合、いずれかの利用可能な精製技術を使用することができる。当業者であれば、広い範囲の分画および分離手法に精通している(例えば、その各々をここに引用して援用するScopesら、Protein Purification:Principles and Practice,3rd Ed.,Jansonら、1993;Protein Purification: Principles,High Resolution Methods,and Applications,Wiley−VCH,1998;Springer−Verlag,NY,1993;and Roe,Protein Purification Techniques,Oxford University Press,2001参照)。しばしば、産物を約50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を超える純度とするのが望ましいであろう。植物組織または流体から物質を精製するのに有用なある方法の議論については米国特許第6,740,740号および第6,841,659号参照。
【0094】
また、当業者であれば、所望のワクチン製品を得る方法は抽出によることも認識するであろう。植物の材料(例えば、根、葉など)を抽出して、残存するバイオマスから所望の産物を取り出し、それにより、産物の濃度および純度を増加させる。植物は緩衝溶液中で抽出することができる。植物材料を、例えば、リン酸緩衝液で緩衝されている重量だけ1:1の比率の氷−冷水の量に移すことができる。プロテアーゼ阻害剤は必要に応じて加えることができる。植物材料は、緩衝溶液に懸濁しつつ、激しいブレンディングまたは粉砕によって破壊することができ、抽出されたバイオマスは濾過または遠心によって取り出される。溶液中で運ばれる産物はさらなる工程によってさらに精製し、あるいは凍結乾燥または沈殿によって乾燥粉末に変換することができる。抽出はプレシングによって行うことができる。植物または根はプレスすることによって、または粉砕することによって抽出することができる。というのも、それは近く間隔を設けられたローラーを通過させるからである。粉砕された植物または根から発現された流体を収集し、当該分野で良く知られた方法に従って処理する。プレシングによる抽出は、より濃縮された形態の産物の放出を可能とする。しかしながら、産物の総じての収率は、もし産物を溶液中に抽出すればそれよりも低いであろう。
【0095】
ワクチン
本発明は、HPV感染の治療的および/または予防的処置のワクチンとしての抗原蛋白質またはその免疫原性部分のような治療的使用のための医薬抗原蛋白質を提供する。さらに、本発明の、動物用途を提供する。というのは、そのような抗原蛋白質またはその免疫原性部分は動物適用において活性だからである。ある具体例において、抗原は、本発明の植物またはその部分(例えば、根、細胞、芽、細胞株、植物等)によって生産することができる。ある具体例において、提供されるHPV抗原は植物、植物細胞、および/または植物組織(例えば、芽、発芽種苗、根、根培養、クローン細胞、クローン細胞株、クローン植物等)で発現され、植物から直接的に用いることができるか、あるいは対象への医薬投与のための調製において部分的に精製され、または精製することができる。
【0096】
本発明は、それを必要とする対象に投与した場合の医薬活性を維持する抗原を発現する植物、植物細胞、および植物組織を提供する。ある具体例において、対象は脊椎動物(例えば、ヒトのような哺乳動物)を含む。本発明によると、対象はウシ、ヒツジ、イヌ、ネコなどのような動物対象を含む。ある態様において、食用植物またはその部分(例えば、芽、根)は治療上有効な量にて対象に経口投与される。いくつかの態様において、1以上のHPV抗原は本明細書中に記載されたように医薬調製で提供される。
【0097】
本発明のワクチン組成物は1以上のHPV抗原を含む。ある具体例において、本発明の少なくとも2つのHPV抗原は投与されたワクチン組成物に含まれる。
【0098】
本発明によると、対象のワクチン抗原での治療は、生理学的効果を誘導することを意図する。ワクチン蛋白質は、障害または病気に対する治癒または緩和的特徴を有することができ、投与して病気または障害の兆候または重症度を軽減し、救済し、緩和し、その開始を遅延させ、逆行させ、または小さくすることができる。ワクチン抗原は予防的特性を有することができ、これを用いて、病気の開始を妨げ、または遅延させ、あるいはそれが出現する場合、そのような病気または障害、または病理学的疾患の重症度を低下させることができる。本発明による抗原での対象の治療によって誘導された生理学的効果は生物による感染が阻止されるように、有効な免疫系を含むことができる。
【0099】
いくつかの具体例において、本発明のワクチンは経口および/または粘膜経路によって送達される。経口および/または粘膜送達は、粘膜組織の感染、多くの病原体についての感染の主な入口を妨げる潜在能力を有する。経口および/または粘膜送達は全身免疫応答を用意することができる。粘膜−免疫系を刺激し、全身免疫を用意することができる抗原の経口投与用の異種発現系の開発においてかなりの進歩があった。しかしながら、経口ワクチン送達における以前の努力は、効果を達成するにおいてかなりの量の抗原に対する要件を示してきた。かくして、多量の標的抗原の経済的生産は、効果的な経口ワクチンの創製のための前提要件である。熱安定性抗原を含めた抗原を発現する植物の発生は、そのような困難に対するより現実的なアプローチを表す。
【0100】
本発明の医薬製剤は、例えば、経口、鼻腔内、腸内、非経口、筋肉内、または静脈内、直腸、膣内、局所、眼内、肺内、あるいは接触適応によるような広く種々の方法にて対象に投与することができる。ある具体例において、植物またはその部分で発現されたHPV抗原は、植物の対象への直接的投与によって対象に経口投与される。いくつかの態様において、植物またはその部分において発現されたワクチン蛋白質は抽出され、および/または精製され、医薬組成物の調製で用いられる。その意図された使用についても(例えば、医薬剤、ワクチン組成物などとしての)そのような単離された産物を処方するのが望ましいであろう。いくつかの具体例において、それを発現する植物組織のいくらかまたは全てと一緒に産物を処方するのが望ましいであろう。
【0101】
産物を植物物質とともに処方するのが望ましい場合、しばしば、関連受容体(例えば、ヒトまたは他の動物に対して毒性でない植物)を利用したのが望ましいであろう。関連植物組織(例えば、細胞、根、葉)を単に収穫し、発現された産物の活性を維持する必要な考慮をなして、当該分野で公知の技術に従って処理することができる。本発明のある具体例において、該物質が引き続いて食べることができるように、ワクチン抗原が食用植物において(および特に、植物の食用部分において)発現されたことが望ましい。例えば、ワクチン抗原が(適切に処方された場合に)経口送達後に活性である場合、抗原蛋白質を食用植物部分に生産し、蛋白質がそれと共に発現された植物物質のいくつかまたは全てと一緒に経口送達のための発現されたワクチン抗原を処方するのが望ましいであろう。
【0102】
提供されたワクチン抗原は公知の技術に従って、処方することができる。例えば、有効量のワクチン産物を、1以上の有機または無機の、液体または固体の医薬上適当な担体物質と共に処方することができる。本発明によって生産されたワクチン抗原は、蛋白質の生物学的活性がそのような投与形態によって破壊されない限り、錠剤、カプセル、トローチ、分散液、懸濁液、溶液、ゲルキャップ、丸剤、カプレット、クリーム、軟膏、エアロゾル、粉末パケット、液体溶液、溶媒、希釈剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤、乳化剤、保存剤、および固体結合剤のような投与形態で使用することができる。
【0103】
一般に、組成物は種々の異なる医薬上許容される担体、アジュバント、ビヒクル、あるいは1以上のそのような担体、アジュバント、またはビヒクルの組合せのいずれかを含むことができる。本明細書中で用いるように用語「医薬上許容される担体、アジュバントまたはビヒクル」は、医薬投与に適合した、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌、および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含む。医薬上許容される担体として働くことができる物質は、限定されるものではないが、ラクトース、グルコースおよびスクロースのような糖;トウモロコシ澱粉およびジャガイモ澱粉のような澱粉;セルロース、ならびにナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよび酢酸セルロースのような誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオバターおよび坐薬ワックスのような賦形剤;落花生油、綿実油、サフラワー油、胡麻油、オリーブ油、トウモロコシ油、大豆油のような油;プロピレングリコールのようなグリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルのようなエステル;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのような緩衝剤;アルギン酸;パイロジェン−フリー水;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝溶液、ならびにラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムのような他の非−毒性適合性滑沢剤、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、フレーバー剤、および香料剤、保存剤、および抗酸化剤を含み、処方者の判断に従って、組成物に存在させることができる(Remington’s Pharmaceutical Sciences,Fifteenth Edition,E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1975参照)。例えば、ワクチン抗原産物は、慣用的な混合顆粒糖衣錠−作成、溶解、凍結乾燥、または同様なプロセスによって医薬組成物として提供することができる。
【0104】
さらなるワクチン成分
本発明のワクチンは、加えて、対象に投与した場合にワクチンの免疫原性を高めるためにいずれかの適当なアジュバントを含むことができる。例えば、そのようなアジュバントが限定されるものではないが、Quil A および QS−21のような食品グレードのQSの精製されたサブ画分を含めたQuillaja saponaria(QS)の抽出物、ミョウバン、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、MF59、Malp2
フロイントの不完全アジュバント;フロイントの完全アジュバント;3デ−O−アシル化モノホスホリル脂質A(3D−MPL)を含むことができる。さらなるアジュバントは免疫変調オリゴヌクレオチド、例えば、WO 96/02555に開示されたメチル化されていないCpG配列を含むことができる。前記したもののような異なるアジュバントの組合せは、TH1細胞応答の好ましい刺激剤であるアジュバントを提供するものと考えられる。例えば、QS21は3D−MPLと一緒に処方することができる。QS21:3D−MPLの比率は典型的には、1:10ないし10:1;1:5ないし5:1のオーダーで;およびしばしば、実質的に1:1である。いくつかの具体例において、最適なシネルギーについての範囲は2.5:1ないし1:1 3D−MPL:QS21である。ヒトワクチン処方で用いるのに適した精製されたQS抽出物の用量は、体重キログラムあたり0.01mgないし10mgである。
【0105】
ある熱安定性蛋白質(例えば、リケナーゼ)は、それ自体、HPV抗原と融合されたまたは別々であるかを問わず、そのような蛋白質の使用がアジュバントの使用と考えることができるように、免疫抑制増強活性を示す。かくして、本発明のワクチン組成物は、さらに、1以上のアジュバントを含むことができる。あるワクチン組成物は2以上のアジュバントを含むことができる。さらに、処方および投与の経路に依存して、あるアジュバントは特定の処方および/または組合せで望まれるであろう。
【0106】
ある状況においては、皮下または筋肉内注射されるワクチン産物(例えば、蛋白質)の1以上の成分の吸収を遅らせることによって本発明のワクチンの効果を延長することが望ましいであろう。これは、貧弱な水溶解度を持つ結晶性またはアモルファス物質の液体懸濁液の使用によって達成することができる。従って、産物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、これは、今度は、サイズおよび形態に依存するであろう。別法として、または加えて、非経口投与される産物の遅延された吸収は、産物を油ビヒクルに溶解または懸濁させることによって達成される。注射デポ形態は、ポリラクチド−ポリグリコイドのような生分解性ポリマー中の蛋白質のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作られる。ポリマーに対する比率、および使用する特定のポリマーの性質に応じて、放出の速度を制御することができる。生分解性ポリマーの例はポリ(オルトエステル)およびポリ(アンヒドリド)を含む。デポ注射処方は、産物を、体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルジョン中に捕獲することによって調製することができる。経口処方には、代替ポリマー送達ビヒクルを用いることができる。例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸のような生分解性生体適合性ポリマーを用いることができる。抗原またはその免疫原性部分は、例えば、ポリマー送達ビヒクルと組合せてミクロ粒子として処方することができる。
【0107】
ワクチン抗原の腸内投与された製剤は固体、半−固体、懸濁液またはエマルジョン形態に導入することができ、水、懸濁化剤および乳化剤のようないずれかの医薬上許容される担体とで調合することができる。抗原は、特に、本発明の尺度として投与して、対象において病気の発生を妨げ、あるいは既に樹立された病気を軽減し、または遅延するように、ポンプまたは持続−放出形態によって投与することができる。補充的活性化合物、例えば、治療すべき病気または臨床的疾患に対して独立して活性な化合物、または本発明の化合物の活性を高める化合物を組成物に配合し、または一緒に投与することができる。フレーバーおよび着色剤を用いることができる。
【0108】
所望により植物組織と一緒にした本発明のワクチン産物は、医薬組成物としての経口投与に特別よく適している。経口液体処方を用いることができ、小児科人口についての特別な利用性のものとすることができる。所望の治療産物およびその所望の形態の特性に依存して、収穫された植物物質は種々の方法(例えば、風乾、凍結乾燥、抽出等)のいずれかで加工することができる。前記したそのような組成物は単独で経口摂取することができ、あるいは食品または食事または飲料と共に摂取することができる。経口投与用の組成物は植物;植物の抽出、および乾燥粉末として供された感染植物から精製された蛋白質、食料品、水性もしくは非−水性溶媒、懸濁液、またはエマルジョンを含む。非−水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、魚油、および注射可能な有機エステルである。水性担体は、セーラインを含めた、水、水−アルコール溶媒、エマルジョンまたは懸濁液、ならびに塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース溶液、デキストロース+塩化ナトリウム溶液、ラクトースまたは不揮発性油を含有するリンゲル液を含めた緩衝化医療非経口ビヒクルを含む。乾燥粉末の例は、乾燥した、例えば、凍結乾燥した、風乾した、または噴霧乾燥したいずれの植物バイオマスも含む。例えば、植物は、バイオマスが5重量%未満の水分を含有するまで、約120°Fにて市販の空気ドライヤー中にそれを置くことによって風乾することができる。乾燥した植物はバルク固体としてのさらなる処理のために貯蔵することができ、あるいは所望のメッシュのサイズの粉末まで粉砕することによってさらに処理することができる。別法として、あるいは加えて、凍結乾燥は、風乾に対して感受性である産物のために用いることができる。産物は、それを真空ドライヤーに入れることによって凍結乾燥し、バイオマスが約5重量%未満までの水分を含有するまで真空下で凍結乾燥することができる。乾燥された物質は本明細書中に記載されたようにさらに処理することができる。
【0109】
植物−由来物質を1以上の薬草調製物として、またはそれと一緒に投与しても良い。有用な薬草調製物は液体および固体薬草調製物を含む。薬草調製物いくつかの例はチンキ、抽出物(例えば、水性抽出物、アルコール抽出物)、煎じ薬、乾燥調製物(例えば、風乾、噴霧乾燥、凍結、または凍結乾燥)、粉末(例えば、凍結乾燥粉末)、および液体を含む。薬草調製物はカプセル、錠剤、坐薬、液体用量等のようないずれかの標準的な送達ビヒクルで供することができる。当業者であれば、本発明に適用することができる薬草調製物の送達の種々の処方および様式を認識するであろう。
【0110】
本発明の根株、細胞株、植物、抽出、粉末、乾燥した調製物および精製された蛋白質または核酸産物等は、前記した1以上の成分と共に、またはそれなくしてカプセル化することができる。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤および顆粒のような固体投与形態は腸溶コーティング、放出制御コーティング、および医薬処方分野でよく知られた他のコーティングのようなコーテシングおよびシェルと共に調製することができる。そのような固体投与形態においては、活性な剤をスクロース、ラクトースまたは澱粉のような少なくとも1つの不活性な希釈剤と混合することができる。そのような投与形態は、通常のプラクティスのように、不活性な希釈剤以外のさらなる物質、例えば、錠剤賦形剤、およびステアリン酸マグネシウムおよびマイクロクリスタリンセルロースのような他の錠剤化助剤を含むことができる。カプセル、錠剤および丸剤の場合においては、投与形態は緩衝剤を含むことができる。それらは、所望により、不透明化剤を含有し、それが腸管のある部分において、および/または遅延された様式でのみ有効成分を放出する組成物のものとすることができる。用いることができる包埋組成物の例はポリマー物質およびワックスを含むことができる。
【0111】
いくつかの方法において、本発明によるHPV抗原を発現する植物またはその部分、あるいはそのバイオマスは薬用食品として経口投与される。そのような食用組成物は、典型的には、もし固体形態ならば、生で食べることによって、あるいはもし液体形態ならば飲むことによって消費される。植物物質が、前処理工程なくして、あるいは最小の料理調製後に直接的に摂取することができる。例えば、ワクチン蛋白質が、直接的に食べることができる芽において発現させることができる。例えば、ワクチン抗原は、アルファルファの芽、緑豆の芽、あるいはホウレンソウまたはレタスの葉の芽等において発現される。1つの具体例において、植物バイオマスを処理し、処理工程後に回収された物質を摂取する。
【0112】
本発明に従って有用である処理方法は、食品または試料産業で通常用いられる方法である。そのような方法の最終産物は、典型的には、実質的な量の発現された抗原を含み、便宜には、食べまたは飲むことができる。最終製品は、塩、担体、フレーバー増強剤、抗生物質等のような他の食品または飼料形態と混合することができ、固体、半固体、懸濁液、エマルジョン、または液体形態で消費することができる。そのような方法は、例えば、殺菌、調理、あるいは保存剤および保持剤の添加のような保存工程を含むことができる。いずれの植物も本発明において用い、処理して、食用または飲料植物物質を生産することができる。植物−由来調製物中のHPV抗原の量は、当該分野において標準的な方法、例えば、ゲル電気詠動、ELISA、またはウェスタンブロッド分析によって、産物に特異的なプローブまたは抗体を用いてテストすることができる。この決定を用いて、摂取されたワクチン抗原蛋白質の量を標準化することができる。例えば、ワクチン抗原の量は、例えば、飲みまたは食べて単一用量の摂取すべき物質の量が標準化できるように、異なるレベルの産物を有する産物のバッチを混合することによって決定し、調節することができる。しかしながら、本発明の封じ込められた調節可能な環境は、そのような標準化手法を行う必要性を最小化すべきである。
【0113】
植物細胞または組織において生産され、対象によって食べられるワクチン蛋白質は、好ましくは、消化系によって吸収され得る。最小限に処理されたに過ぎない植物組織の摂取の1つの利点は、植物の細胞中の蛋白質のカプセル化または隔離を供することにある。かくして、腸に到達する前に上部消化管中における消化からの少なくともいくつかの保護を産物は受けることができ、活性な産物のより高い割合は取込みで利用可能であろう。
【0114】
本発明の医薬組成物は、治療的にまたは予防的に投与することができる。組成物を用いて、病気を治療または予防することができる。例えば、病気に罹った、あるいはHPV感染を発症する危険性があるいずれの個人も治療することができる。個人は、病気のいずれかの兆候を持つと診断されていることなく病気を発症する危険性があると考えることができるのは認識されよう。例えば、もし個人がHPV感染への暴露の比較的高い危険性がある状況にあった、またはそれを意図していたことが知られていれば、その個人は病気を発症する危険性があると考えられるであろう。同様に、もし個人の家族のメンバー、友達またはパートナーがHPV感染を持つと診断されれば、個人は病気を発症する危険性があると考えることができよう。
【0115】
経口投与用の液体投与形態は、限定されるものではないが、医薬上許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルを含む。活性な剤に加えて、液体投与形態は、例えば、水または他の溶媒のような当該分野で通常用いられる不活性な希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、およびその混合物のような可溶化剤および乳化剤を含有することができる。不活性な希釈剤以外に、経口組成物は湿潤剤、乳化および懸濁剤、甘味剤、フレーバー剤、および香料剤のようなアジュバントを含むことができる。
【0116】
直腸または膣投与用の組成物は坐薬または停留浣腸であってよく、常温で固体であるが、体温で液体であって、従って、直腸または膣腔中で融解し、活性な蛋白質を放出するカカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐薬ワックスのような適当な非−刺激性賦形剤または担体と本発明の組成物とを混合することによって調製することができる。
【0117】
本発明のワクチン組成物の局所、経粘膜または経皮投与用の投与形態は軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレイ、吸入またはパッチを含む。活性な剤またはその調製物を、滅菌条件下で、医薬上許容される担体および、必要であれば、いずれかに必要な保存剤または緩衝液と混合される。経粘膜または経皮投与では、浸透させるバリアに適切な浸透剤を処方で用いることができる。そのような浸透剤は、一般には、当該分野で公知であり、例えば、経粘膜投与では、洗剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻腔スプレイまたは坐薬の使用を介して達成することができる。経皮投与では、抗原またはその免疫原性部分は、一般的に当該分野で知られているように、軟膏、膏薬、ゲルまたはクリームに処方することができる。眼科処方、点剤、および点眼剤は本発明の範囲内にあると考えられる。加えて、本発明では、ワクチン蛋白質の身体への制御された送達を供する追加された利点を有する経皮パッチの使用が考えられる。そのような投与形態は、ワクチン産物を適当な媒体に懸濁または分散させることによって作製することができる。吸収増強剤を用いて、ワクチン蛋白質の皮膚を横切ってのフラックスを増加させることができる。速度は速度制御膜を供することによって、あるいはワクチン蛋白質をポリマーマトリックスまたはゲルに分散させることによって制御することができる。
【0118】
本発明の組成物は、所望の結果を達成させるのに必要な量にてそのような時間で投与することができる。本発明のある具体例においては、医薬組成物の「治療上有効な量」は、対象において病気を治療し、弱め、または予防するのに有効な量である。かくして、本明細書中で用いる「病気を治療し、弱め、または予防するのに有効な量」とは、いずれかの対象において病気を治療し、弱め、または予防するための医薬組成物の非毒性であるが十分な量をいう。例えば、「治療上有効な量」は、感染(例えば、ウイルス感染、HPV感染)を治療し、弱め、または予防するための量であり得る。
【0119】
必要な正確な量は、対象の種、年齢および性別の条件、病気の状態、特定の医薬混合物、投与のその態様等に依存して、対象間で変化し得る。抗原を発現する植物および/または調製物を含めた、本発明の炭疽病抗原は、投与の容易性および用量の均一性のため投与単位形態に処方することができる。表現「投与単位形態」とは、本明細書中で用いるように、治療すべき患者に適したワクチン組成物の物理的に区別される単位をいう。しかしながら、本発明の組成物の合計日用法は、典型的には、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解される。いずれかの特定の患者または生物についても特定の治療上有効な用量レベルは、感染の重症度または危険性;使用する特定の化合物の活性;使用する特定の組成物;患者の体重、一般的健康、性別、患者のダイエット、患者のファルマコキネティック状態、投与の時間、投与の経路、および使用される特定の化合物の排出速度;治療の持続;使用されるワクチン組成物と組合せた、またはそれと同時に用いる薬物;および医学因子を含めた種々の因子に依存するであろう。
【0120】
本発明の医薬組成物は組合せ療法(例えば、組合せワクチン療法)、で使用することができ、すなわち、医薬組成物は1以上の他の所望のワクチン接種手法と同時に、それに先立って、または引き続いて投与することができることが認識されよう。組合せ養生法でしようすべき療法の特別な組合せ(例えば、ワクチン、HPV感染の治療的処置)は、所望の治療剤および/または手法、および達成すべき所望の治療効果の適合性を考慮するであろう。使用される療法および/またはワクチンは同一障害について所望の効果を達成することができ(例えば、本発明の化合物はもう1つのHPVワクチンと同時に投与することができ)、あるいはそれらは異なる効果を達成することができるのは認識されよう。ある具体例において、ワクチン組成物は少なくとも2つのHPV抗原を含む。例えば、あるワクチン組成物は、本発明の少なくとも2つのHPV抗原を含む。例えば、あるワクチン組成物は本発明の少なくとも2つのHPV抗原(例えば、本発明の抗原を含有するHPV16ドメインのF7およびHPV18ドメインのE7)を含むことができる。いくつかの態様において、そのような組合せワクチンはHPV抗原を含む1つの熱安定性融合蛋白質を含むことができ;いくつかの態様において、HPV抗原を含む2以上の熱安定性融合蛋白質が提供される。ある具体例において、多数の抗原は同一株のHPVから由来し、異なる蛋白質に由来する抗原を含むことができる。いくつかの具体例において、多数の抗原は同一株のHPVに由来し、同一蛋白質に由来する抗原を含むことができる(例えば、同一蛋白質の異なるドメイン)。ある具体例において、多数の抗原は異なる株のHPV由来し、異なる蛋白質に由来する抗原を含む。なおさらなる組合せでは、異なる株および同一蛋白質に由来する多数の抗原の使用が考えられる。これまでの例示的組合せの変形および/または組合せが考えられる。例えば、いくつかの具体例において、異なる株からの1つのE7、2つのE7または3つのE7ドメインを、本発明のワクチン組成物を含むように組合せる。組合せワクチンを利用する場合、HPV抗原のいずれかの組合せをそのような組合せで用いることができるのは理解されるであろう。
【0121】
キット
1つの態様において、本発明は、本発明によるHPV抗原を生産する生きた発芽種苗、クローン体または植物、あるいは本発明の医薬組成物の成分の1以上を満たした1以上の容器中にワクチンを含有する調製物、抽出物、または医薬組成物を含む医薬パックまたはキットを提供する。ある具体例において、医薬パックまたはキットは、組合せ療法として用いるさらなる認可された治療剤(例えば、HPV抗原、HPVワクチン)を含む。そのような容器と所望により関連させるのは、医薬製品の製造業者、使用または販売を規制する政府当局によって処方された形態の通知であり得、その通知はヒト投与用の製造業者、使用または販売の当局による認可を反映する。
【0122】
治療試薬を含むキットが提供される。1つを除いて非限定的な例としてHPVワクチンは経口処方として提供することができ、療法として投与することができる。別法として、あるいは加えて、HPVワクチンは投与用に注射可能な処方にて提供することができる。医薬用量または指示書は、従って、HPV感染に罹った、またはその危険性がある個体への投与用のキットにて供することができる。
【0123】
以下の代表的な実施例は本発明を説明するのを助けることを意図し、本発明の範囲を限定する意図ではなく、そのように解釈されるべきではない。事実、本明細書中に示され、記載されたものに加えて、本発明の種々の修飾、およびその多くのさらなる具体例は、以下の実施例、および本明細書中で引用された科学および特許文献に対する言及を含めた、本書類の全内容から当業者に明らかとなるであろう。以下の実施例はある情報、例示および指針を含み、これを用いて、種々の具体例およびその同等物において本発明のプラクティスに適合させることができる。
【実施例】
【0124】
実施例1 ワクチン候補構築体の作製
ヒトパピローマウイルスからの抗原配列の作製
安全関心事のため、BamHI/PstI制限部位の間に既にpQE30(pQE30−E7)にクローン化されたHPV16E7癌遺伝子(KO2718,Seedorfら、1985,Virology,145:181)は、Quikchange部位−特異的突然変異誘発キット(Stratagene)を用いて突然変異させて、プラスミドpQE30−E7GGGを作製した。各々、突然変位を導入するために設計された順方向および逆方向「速ポリヌクレオチド液体クロマトグラフィー」−精製プライマーの太文字のオリゴヌクレオチドによって示されるE7遺伝子のpRB−結合部位に3つの点突然変異を導入した:
【0125】
【化1】
導入された突然変異の結果、E7蛋白質配列中の3つのアミノ酸が置換され:D21G(Asp21>Gly)、C24G(Cys24>Gly)、E26G(Glu26>Gly)、E7蛋白質形質転換潜在能力がなくなる。E7GGGと示される得られた遺伝子の真性さは配列決定によって確認された。
【0126】
HPV16E7(KO2718,Seedorfら、supra)(配列番号1)
【0127】
【化2】
E7(配列番号2):
【0128】
【化3】
HPV16E7GGG(配列番号3):
【0129】
【化4】
E7GG(配列番号4):
【0130】
【化5】
熱安定性担体構築体の作製
全長天然C.thermocellumリケナーゼ、LicBは、実質的に、リーダーペプチド(Lp)、N−末端部分(A)、表面ループ(l)、C−末端部分(C)、Pro−Thrボックス、およびセルロソーム−結合ドメイン(C−BD)よりなる。我々はLicBコーディング遺伝子からLp、Pro−ThrボックスおよびC−BDコード配列を取出し、円状に分子を並べて、N−およびC−末端を逆転させ(Musiychukら、2007,Influenza and Other Respiratory Viruses,1:1)、標的配列をクローン化するための制限エンドヌクレアーゼ部位を、新しいN−およびC−末端において、ならびに表面ループ(1)にユニークな制限エンドヌクレアーゼ部位を取込んだ。得られた作製担体分子配列を証明し、LicKMと命名する。
【0131】
配列番号5:
【0132】
【化6】
配列番号6:
【0133】
【化7】
ある構築体では、我々は、LicKMのN−およびC−末端においてPR1aシグナルペプチドおよびKDEL配列を作製した。これらの構築体の核酸およびアミノ酸配列は配列番号7および配列番号8に示す。
【0134】
配列番号7:
【0135】
【化8】
配列番号8:
【0136】
【化9】
組換え抗原構築体の作製
我々は、高レベルの転写および翻訳を促進するT7バクテリオファージ遺伝子10の特徴を利用するように作製されたpBR322プラスミドに由来するpET発現ベクターを用いた。バクテリオファージでコードされたRNAポリメラーゼはT7プロモーター配列に高度に特異的であり、これは、T7ファージゲノム以外のゲノムでは稀にしか遭遇しない(図1)。pET−32は、E7およびE7GGG構築体を、このベクターにクローン化されている修飾されたリケナーゼ配列のループ領域に融合するために用いられてきた。上流配列PR−1A(病原体−関連蛋白質1A)を持ち、小胞体(KDEL)または空胞保持配列(VAC)および下流His6タグを持つリケナーゼ遺伝子の触媒ドメインを、(T7プロモーターおよびT7ターミネーターの間の領域が切り出されている)修飾されたpET−32ベクター中のPacIおよびXhoI部位の間にクローン化した。このようにして、pET−PRACS−LicKM−KDELおよびpET−PRACS−LicKM−VACが得られた(図2)。DNA断片E7またはE7GGGをLicKMのループ(l)部分にサブクローンして、翻訳用の正しいリーディングフレームでの融合を得た。
【0137】
実施例2 ワクチン候補抗原ベクターの作製
標的抗原構築体
LicKM−E7またはLicKM−E7GGGを個々に選択されたウイルスベクター(pBI−D4)にサブクローンした。pBI−D4は、E.coli β−D−グルクロニダーゼ(GUS)が、XbaIおよびSzcI部位の間で、TMV−由来ベクターがクローン化されている「ポリリンカー」によって置換えられたpBI121−由来バイナリーベクターである(図3)。pBI−D4はTMV−ベースの構築体であり、そこでは、発現すべき外来性遺伝子(例えば、標的抗原(例えば、LicKM−E7、LicKM−E7GGG))はTMVのコート蛋白質(CP)遺伝子を置換えている。該ウイルスがTMV 126/183kDa遺伝子、移動蛋白質(MP)遺伝子、およびCPサブゲノムmRNAプロモーター(sgp)を保有し、これはCPオープンリーディングフレーム(ORF)まで伸びる。CPについての開始コドンは突然変異されている。該ウイルスがCPを欠如し、従って、篩部を介して宿主植物全体を移動することができる。しかしながら、ウイルス感染の細胞間移動は機能的なままであり、該ウイルスはそのようにして上部葉までゆっくりと移動することができる。多重クローニング部位(PacI−PmeI−AgeI−XhoI)は外来性遺伝子の発現のためにsgpの端部で作製されており、続いて、TMV3’非−翻訳領域(NTR)がある。35Sプロモーターはウイルス配列の5’端部に融合している。ベクター配列がpBI121のBamHIおよびSacI部位の間に位置する。ハンマーヘッドリボザイムはウイルス配列の3’側に置かれる(Chenら、2003,Mol.Breed.,11:287)。これらの構築体が、タバコPR−1a蛋白質からのシグナルペプチド6×HisタグおよびER−保持アンカー配列KDELまたは空胞ソーティング配列をコードする配列への、LicKM−E7またはE7GGGをコードする配列の融合を含む(図4)。PRACS−LicKM−E7−KDEL、PRACS−LicKM−E7VAC、PRACS−LicKM−E7GGG−KDELおよびPRACS−LicKM−E7GGG−VACをコードする配列を含有する構築体では、コーディングDNAはPacI−XhoI断片としてpBI−D4に導入された。ヌクレオチド配列は、引き続いて、最終接合にわたることが証明された(図5)。
【0138】
実施例3:植物の作製および抗原の生産
植物のAgrobacterium侵入
Agrobacterium侵入によって達成されたAgrobacterium−媒介一過性発現系を利用することができる(Turpenら、1993,J.Virol.Methods,42:227)。N.benthamianaの健康な葉に、LicKM−E7またはLicKM−E7GGGを発現するように作製されたウイルスベクターを含有するA.rhizogenesを侵入させた。
【0139】
A.rhizogenes 株A4(ATCC 43057)またはA.tumefaciens(GV3103)を構築体pBI−D4−PRACS−LicKM−E7−KDEL、pBI−D4−PRACS−LicKM−E7VAC、pBI−D4−PRACS−LicKM−E7GGG−KDELおよびpBI−D4−PRACS−LicKM−E7GGG−VACで形質転換した。Agrobacterium培養を記載されているように成長させ、誘導した(Kapilaら、1997,Plant Sci.,122:101)。(新鮮なコロニーから拾った)2mlのスターター培養を、28℃にて、25μg/mlカナマイシンを含むYEB(5g/lウシ抽出物、1g/l酵母エキス、5g/lペプトン、5g/lスクロース、2mM MgSO4)中で一晩成長させた。スターター培養を、25μg/mlカナマイシン、10mM 2−4(−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、pH5.6、2mMのさらなるMgSO4および20μmアセトシリンゴンを含む500mlのYEBに1:500希釈した。次いで、希釈された培養を28℃にて〜1.7のO.D.600まで一晩成長させた。細胞を3,000 x gにて15分間遠心し、MMA培地(MS塩、10mM MES pH5.6、20g/lスクロース、200μMアセトシリンゴン)中に2.4のO.D.600まで再度懸濁させ、室温にて1時間保ち、Agrobacterium−侵入のために用いた。N.benthamiana の葉に、針のない使い捨てシリンジを用いてAgrobacterium−懸濁液を注射した。侵入された葉を侵入から6日後に収穫した。
【0140】
クローン根およびクローン根株の作製
Petunia hybridaの葉の外植体1cm×1cm幅を、0.1%NH4Cl中での滅菌、および滅菌dH2O中での6回の洗浄後に葉から得た。外植体をアバクス(abacsial)側をナイフでわずかに損傷させ、pBID4−LicKM−E7−KDELまたはpBID4−LicKM−E7GGG−KDELいずれかを含有するAgrobacterium rhizogenes株A4で共培養した。外植体を、3000rpmおよび4℃にて10分間遠心したAgrobacterium一晩培養物(O.D.600nm=0.8−1)と共に一晩2分間インキュベートし、20mMアセトシリンゴンの存在下でMMA培地に最終O.D.600nm=0.5まで再懸濁させた。インキュベーションの後に、外植体を滅菌紙上で乾燥し、1%グルコースおよび20mMアセトシリンゴンの存在下で0.8%寒天MSプレートに移した。プレートをパラフィルムで覆い、室温にて2日間保持した。次いで、500mg/lセフォタキシム(Cif)、100mg/lチメンチン(Tim)および25mg/lカナマイシンの存在下で、外植体をMSプレートに移した。5週間後、トランスジェニック根の世代が、pBID4−LicKM−E7−KDELおよびpBID4−LicKM−E7GGG−KDEL構築体を含有するAgrobacterium rhizogenesで形質転換されたPetunia hybrida葉外植体から得られた。より多くの根が、pBID4−LicKM−E7GGG−KDEL構築体の形質転換からよりも、pBID4−LicKM−E7−KDEL構築体での形質転換から得られた。ザイモグラム分析は、テストしたPetunia hybridaトランスジェニック根におけるE7およびE7GGGキメラ蛋白質双方の発現を明らかとした。発現はリケナーゼ活性と関連付けられる。融合蛋白質に関連する活性バンドは、リケナーゼ対照よりも高い分子量、およびアグロ−感染後に植物によって発現された産物の同一分子量を示し、全融合産物の存在が確認される。
【0141】
形質転換後に、毛根を切り取り、固体のホルモンフリーK3培地上に線状に置くことができる。4ないし6日後に、最も活発に成長する根を単離し、半−固体(0.4%寒天)K3培地に移す。選択された根を暗所にて22℃で培養し、クローン系を単離し、6週間ごとに継体培養する。根および/またはクローン系は、リケナーゼ活性アッセイおよびイムノブロット分析の評価によって、標的抗原発現の存在についてスクリーニングすることができる。
【0142】
実施例4:ワクチン候補の生産
N.benthamiana侵入葉物質の100mg試料を感染から4、5、6および7日後に収穫した。引き続いての粗製植物抽出物も調製のために、または融合蛋白質精製のために、−80℃で収穫し、または収集した直後に、新鮮な組織を蛋白質発現について分析した。
【0143】
新鮮な試料を1/3w/v比にて(1ml/0.3gの組織)、冷PBS 1×+プロテアーゼ阻害剤(Roche)中に再懸濁し、乳棒で粉砕した。ホモゲネートを、SDSゲル付加緩衝液中で5分間煮沸し、次いで、4℃における12,000rpmでの5分間の遠心によって清澄化した。上清を新鮮なチューブ中に移し、20μlの、1μlのまたは希釈物を12%SDS−PAGEで分離し、抗−His6−E7マウスまたはウサギ抗−リケナーゼポリクローナル抗体を用いるウェスタンブロット分析によって、および/またはザイモグラム分析によって分析して、機能的リケナーゼ活性を示す加水分解活性を評価した。ザイモグラフィーは、酵素活性を測定するための電気詠動方法である。該方法は、インキュベーション時間の間に解像された酵素によって分解された基質を含浸させたドデシル硫酸ナトリウムゲルに基づく。ゲルの染色は、暗赤色バックグラウンド上の白色バンドとしての酵素活性を明らかにする。ある範囲内では、バンドの強度は付加された酵素の量に直線的に関連させることができる。
【0144】
プラスミドpBID4−LicKM−E7−KDELを含有するAgrobacterium tumefaciensまたはAgrobacterium rhizogenesいずれかが侵入したNicotiana benthamiana植物におけるE7発現は、もし融合蛋白質におけるE7蛋白質電気泳動移動度が11kDの理論MWに対応すれば(リケナーゼ酵素MWは約28kDである)、キメラ蛋白質LicKM−E7−KDELの分子量(約39kD)に対応する特異的バンドに導く(図6AないしD)。pBID4−LicKM−E7−VACプラスミドを含有するAgrobacterium tumefaciensまたはAgrobacterium rhizogenesいずれかが侵入したNicotiana benthamiana植物は、キメラ蛋白質LicKM−E7−VACを発現する。それにも拘わらず、明らかにされたバンドはダブレットである。二重バンドは、恐らくは、キメラ蛋白質内での貧弱にプロセッシングされた、およびプロセッシングされていない空胞シグナル配列双方の存在の代表である(図6AないしD)。双方のAgrobacterium株において、最良の発現構築体は、リケナーゼ酵素とのE7(またはE7GGG)融合を発現する植物組織の大きな生産について選択された、KDEL配列を備えたものとなった。同一の発現結果が、E7GGGキメラ蛋白質について得られた(図7A)。
【0145】
ザイモグラム分析は、E7およびE7GGGキメラ蛋白質双方の発現はリケナーゼ活性に関連することを明らかとし、これは、リケナーゼ酵素の触媒ドメインのループにおける前記した蛋白質の融合が酵素活性を損なわないことを示す。融合蛋白質に関連する活性バンドは、リケナーゼ対照よりも高い分子量を示し、全融合産物の存在が確認される。pBID4−LicKM−E7−KDEL、pBID4−LicKM−E7GGG−KDを含有するAgrobacterium tumefaciensまたはAgrobacterium rhizogenesが侵入したNicotiana benthamiana植物から得られた抽出物は、活性バンドを示し、他方、−VAC構築体の結果、活性のより低い程度がもたらされた(図8AないしD)。
【0146】
E7−LicKM−KDELおよびE7−LicKM−VAC融合の発現の双方は、感染後第6日から第7日に劇的に降下するAgrobacterium rhizogenes−媒介発現を除いて、一定に高く、かつ感染後第4日から7日に安定である(が、第5日においてはより高く見える)。我々は、感染後第5日に収穫して、蛋白質分解を回避しようと決定した。粗製抽出物中で発現されたキメラ蛋白質LicKM−E7−KDELおよびLicKM−E7GGG−KDELの定量は、手動で侵入させた組織上での、および真空−侵入組織でのイムノブロッティングによって行った(図7B、C)。粗製抽出物における発現の見積られた収率は、(100μgのE7またはE7GGG蛋白質/組織のgに対応する)少なくとも400μgのキメラ蛋白質LicKM−E7−KDELおよびLicKM−E7GGG−KDEL/組織のgである。
【0147】
抗原の精製
pBID4−LicKM−E7−KDELおよびpBID4−LicKM−E7GGG−KDEL構築体を含有する組換えAgrobacterium tumefaciensを侵入させた植物からの葉をホモゲナイズした。「EDTA−フリー」プロテアーゼ阻害剤(Roche)およびTriton X−100 1%を含む抽出緩衝液を3容量w/vの比率で用い、4℃にて30分間揺らした。抽出物を、9000×gにおける4℃での10分間の遠心によって清澄化した。クロマトグラフィー精製前に、上清を順次Miraクロスを通して濾過し、20,000×gにおいて4℃で30分間遠心し、0.45−μmフィルターを通して濾過した。
【0148】
His−タグドLicKM−E7−KDELおよびLicKM−E7GGG−KDEL20mM EDTAキメラ蛋白質を、重力下室温にて、IMAC(「固定化金属アフィニティークロマトグラフィー」、GE Health)を用いることによって精製した。精製は、非−変性条件下で行った。蛋白質を0.5mlの画分として収集し、これを合わせ、20mM EDTAを加え、PBS 1×に対して4℃にて一晩透析し、SDS−PAGEによって分析した。
【0149】
別法として、次いで、20mM EDTAを加えて画分を一緒に収集し、NaH2PO4 10mMに対して4℃にて一晩透析し、アニオン交換クロマトグラフィーによって精製した。LICKM−E7−KDEL E LICKM−E7GGG−KDEL精製のために、アニオン交換からのQ Sepharose Fast Flow(Amersham Pharmacia Biosciences)を用いた。LICKM−E7−KDEL E LICKM−E7GGG−KDELアフィニティーまたはイオン−交換精製キメラ蛋白質の試料を12%ポリアクリルアミドゲルで分離し、続いて、クーマシー染色を行った。分離された蛋白質はやはりPVDF膜まで電気泳動により移動され、ポリクローナル抗−リケナーゼ抗体を用いる、および順次、抗−ウサギIgGホースラディッシュペルオキシダーゼ−コンジュゲーテッド抗体にてウェスタンブロット分析によって分析した。
【0150】
透析後の収集された画分は、pAbα−リケナーゼ(図9A)およびpAbα―抗−His6(データは示さず)双方を用いるイムノブロッティングによって分析した。His−タグは発現されたキメラ蛋白質によって維持され、精製された蛋白質の最終濃度はソフトウェアによって評価した(図9A、B)。40gの侵入された組織から、6.5mgの各LicKM−E7−KDELおよびLicKM−E7GGG−KDELキメラ蛋白質は、163μgのキメラ蛋白質/組織のg(約50μgのE7またはE7GGG蛋白質/組織のg、ここで、E7のおよびE7GGG蛋白質の分子量は全融合の約1/4である)の最終収率にて精製された。精製プロトコルからの結果を図9C、Dに描く。
【0151】
実施例5:免疫原性の実験
標的抗原の生産および特徴付け
最初の免疫原性実験を行って、植物−生産LicKM−E7−KDELおよびLicKM−E7GGG−KDELが腹腔内免疫化されたマウスにおいて特異的血清IgGを誘導できるか否か、および誘導された抗体がE7−発現細胞に結合できるか否かを決定した。実験は、前記したように、N.benthamianaのAgrobacterium侵入葉から純粋なまで豊富化されたLicKM−E7−KDELおよびLicKM−E7GGG−KDELを用いた。
【0152】
簡単に述べれば、HPV16 E7癌遺伝子(GenBankアクセション番号KO2718)は、Quikchange部位−特異的突然変異誘発キット(Stratagene;La Jolla,CA)を用いて突然変異させて、E7:D21G、C24GおよびE26GのpRB−結合部位において以下のアミノ酸置換を持つE7GGGを得た(Smahelら、2001,Virology,281:231)。HPV16 E7およびE7GGGをコードする配列をLicKMのイン−フレーム内部融合としてクローン化して、LicKM−E7およびLicKM−E7GGGを得た。これらの融合はそのN−末端においてNicotiana tabacum PRIa蛋白質のシグナル配列、およびそのC−末端において6xHisタグ、続いて、小胞体滞留シグナルKDELを含んだ。融合が植物発現ベクターpBID4(Musiychukら、2007,Influenza and Other Respiratory Viruses,1:1,in press)においてクローン化されて、pBID4−LicKM−E7およびpBID4−LicKM−E7GGGを得た。各構築体をAgrobacterium rhizogenes株A4に導入し、得られた細菌をNicotiana benthamianaに摂取した。侵入後5ないし7日後、標的抗原をアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。
【0153】
LicKM−E7およびLicKM−E7GGGについての見積もられた収率は新鮮な葉組織のkg当たりほぼ400mgであり、LicKMについての見積られた収率はkgあたりほぼ1gであった。精製された標的抗原をSDS−PAGE分析によって特徴付けて、28kD(LicKM)、39kD(LicKM−E7)、および39kD(LicKM−E7GGG)の予測されたサイズの蛋白質が明らかにされた(図9B)。対照物質を供するために、LicKMを同様にN.benthamianaにおいて生産した。植物−発現蛋白質の真性は、LicKMおよびE7に特異的な抗体を用いるイムノブロッティングによって証明した。試料は、GeneToolsソフトウェア(Syngene;Cambridge,UK)を用いるデンシトメトリーによって定量した。
【0154】
免疫原性の実験
植物−生産標的抗原の有効性を評価するために、4ないし8週齢雌C57BL/6マウス(Charles River;Como,Italy)を標的抗原で免疫化した。
【0155】
予防的実験のために、群当たり10匹のマウスは40μgのLicKM−E7またはLicKM−E7GGG(各々、E7またはE7GGGのほぼ10μgと同等)を、0、14、28、42および76日に、Quil Aアジュバント(10μgマウス)と共にまたはそれなくして、皮下的に受けた。動物からの血清の試料を各投与の日に収集し、ELISAによってE7−特異的抗体の存在について評価した。49日に、各群において2匹の動物を犠牲にして、細胞媒介免疫応答を評価した。次いで、全ての残りの動物を、5x104 E7−発現TC−1腫瘍細胞での皮下注射によって攻撃した(Linら、1996,Cancer Research,56:21)免疫応答の特徴付けについては、ELISA、ELISPOT、および自然遅延−タイプの過敏(DTH)アッセイを従前に記載されているように行った(Franconiら、2002,Cancer Research,62:3654)。
【0156】
治療的実験のために、群当たり8ないし10匹のマウスを、0、15、30、45および60日に、Quil A(10μg/マウス)と共に、またはそれなくして、40μg LicKM−E7またはLicKM−E7GGGでの皮下免疫化に3日先立って、5x104 E7−発現TC−1腫瘍細胞で皮下摂取した。
【0157】
予防的および治療的実験双方のために、対照動物に、Quil Aと共にまたはそれなくして、10μgのE.coli−生産E7またはE7GGGまたは植物−生産LicKMを投与した。腫瘍の成長を触診によって1週間に2回モニターした。これらの実験を通じて、動物を苦痛、下痢、死亡または標的抗原の投与に由来し得る他の臨床的兆候の潜在的兆候について観察した。
【0158】
植物―生産LicKM−E7およびLicKM−E7GGGの免疫原性および予防的潜在能力をテストするために、動物を標的抗原で免疫化した。アジュバントの存在下で、LicKM−E7またはLicKM−E7GGGで、またはE.coli−生産E7またはE7GGGで免疫化した全ての動物はIgG応答を高めた(図11A)が、アジュバントの不存在下では、LicKM融合は有意な液性応答を誘導しなかった(図11A)。CD8+細胞傷害性T細胞は抗−癌応答におけるエフェクターとしての認識された役割を有するので、E7−特異的CD8+T細胞の誘導はELISPOTによって調べた。アジュバントの存在下で、多数のIFNγ分泌細胞がLicKM−E7またはLicKM−E7GGGで摂取されたマウスで検出され、他方、少数のE7−特異的CD8+細胞がE.coli−生産E7またはE7GGGで接種したマウスで見出され、LicKMマウスにおいてはIFNγ分泌細胞は検出されなかった(図11B)。LicKM融合およびE.coli−生産抗原は共に、アジュバントの不存在下において少数であるが有意な数のスポットを誘導し、LicKM融合はより多い数のELISPOTカウントを与えた(図11B)。
【0159】
HPV−特異的CD8+T細胞は、E7−発現腫瘍での調製に対して保護的であることが確立されている(Frazer,2004,Nature Reviews,4:46)。従って、植物−生産E7候補ワクチンによって誘導された免疫応答の抗−腫瘍活性は、TC−1細胞でワクチン接種マウスを攻撃することによって評価した。アジュバントの存在下においては、LicKM−E7およびLicKM−E7GGGは、各々、動物の100%において腫瘍保護を誘導し、他方、E.coli−生産E7またはE7GGGは、各々、マウスの80%および60%において保護を誘導した(図11C)。アジュバントの不存在下でLicKM−E7で免疫化された動物の80%は保護された(図11C)。アジュバントの不存在下においてLicKM−E7GGG、またはいずれかのE.coli−生産抗原で免疫化された動物の20%は保護された(図11C)。LicKMで免疫化された動物において保護は観察されなかった(図11C)。
【0160】
HPV16 E7発現腫瘍に対するLicKM−E7およびLicKM−E7GGGの治療達成についてテストするために、E7−発現TC−1細胞で接種された動物を、引き続いて、LicKM、LicKM−E7、またはLicKM−E7GGGで、またはE.coli−生産E7またはE7GGGで免疫化した。LicKMで免疫化した全ての動物は4週間以内に腫瘍を発生し、他方、LicKM−E7またはLicKM−E7GGG+アジュバントで処理したものは、実験の持続の間に腫瘍−フリーのままであった(10週間)。E.coli−生産E7またはE7GGG+アジュバントへの免疫化は、各々、動物の40%および60%において腫瘍成長を阻害した(図11D)。アジュバントの不存在下においては、LicKM融合は腫瘍成長を阻害し、より大きな保護が、LicKM−E7(80%) vs LicKM−E7GGG(60%)を受けた動物で観察され、E.coli−生産E7またはE7GGGで処理された動物の20%は腫瘍−フリーのままであった(図11D)。
【0161】
HPV−関連病の発生に対する保護は、細胞−媒介免疫応答にかなり帰せられる。DTH応答は、特に、Th1タイプのサイトカインを含む抗原−特異的サイトカイン媒介炎症を表すと考えられる。LicKM−E7は、E7−発現腫瘍に対してLicKM−E7GGGよりも大きな治療活性を示すので、我々は、LicKM−E7またはE.coli−生産E7で接種されたマウスにおけるE7に対するDTH応答を評価した。抗原−特異的DTH応答は、アジュバントの不存在においてさえ、LicKM−E7蛋白質で接種したマウスで観察された(表1)。この応答は、E.coli−生産E7で接種したマウスで観察されたものを超えた。LicKMで接種したマウスは有意な耳膨潤を示さず、これは、LicKM担体分子が免疫応答を誘導しないことを示す。
【0162】
【表1】
*耳膨潤は、群当たり5匹からの攻撃された、および攻撃されていない対照耳の間の厚みの差(Δ)の平均として報告する(mm耳厚み×10−2)。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】pET32プラスミドのマップ。頂部左側は、標的抗原をクローニングするのに用いられる修飾されたプラスミドにおいて欠如するT7プロモーターおよびT7ターミネーターの間の領域を示す。
【図2】修飾されたpET32ベクターからのpET−PRACS−Lic−KDELおよびpET−PRACS−Lic−VAC構築体の生産。
【図3】pBI121ベクター組織化の模式図。
【図4】β−グルコロニダーゼ(GUS)遺伝子の切り出し、およびTMV由来プラスミドの付加後におけるpBIベクターからのpBID4プラスミドの誘導の模式的組織化。
【図5】BglIIおよびHindIII部位の間のリケナーゼ配列におけるE7およびE7GGGの融合、および引き続いてのpBID4ベクターにおけるクローニングの模式図。
【図6】抗−リケナーゼ抗体(6A、C)または抗−6HISE7抗体(6B、D)を用いるE7構築体を発現するAgrobacterium侵入植物のウエスタン分析。
【図7】抗−リケナーゼ抗体(7A、C)または抗−6HIS−E7抗体(7B,D)を用いるE7構築体を発現するAgrobacterium侵入植物のウエスタン分析。
【図8】抗−リケナーゼ抗体を用いるE7(8A、8B)またはE7GGG(8C、8D)構築体を発現するAgrobacterium侵入植物のリケナーゼ活性分析。
【図9】(9A)抗−リケナーゼ抗体を用いるE7GGG構築体を発現するAgrobacterium侵入植物のウエスタン分析。(9B−D)精製手法を介する単離からの蛋白質画分のクーマシー染色分析。
【図10】pBID4−Lic−E7−KDEL(レーン1ないし9)およびpBID4−Lic−E7GGG−KDEL構築体(レーン10、11)を含有するAgrobacterium rhizogenesで形質転換されたNicotiana benthamiana葉外植体から得られたトランスジェニック根からの抽出物;レーン12=150ngリケナーゼ(陽性対照);レーン13=pBID4−Lic−E7−KDEL構築体を含有するAgrobacterium rhizogenesでアグロ−侵入させたNicotiana benthamiana葉からの粗製抽出物で行ったザイモグラム分析。
【図11】植物−生産ワクチン候補の特徴付けおよび有効性。(11A)E7−特異的血清IgG応答。データは1:500希釈血清の405nmにおける光学密度値として表す。個々の動物からのデータは平均値と共に示す。(11B)ワクチン接種したマウスからの脾臓細胞のELISPOT分析。データは2x105脾臓細胞当たりのスポット±SDの平均数として表す。灰色および黒色の欄は、各々、特異的CTL E7ペプチドで刺激した、またはそれなしでの細胞をいう。(11C)TC−1−誘導腫瘍に対する予防的ワクチン接種。データは腫瘍−フリーマウスのパーセンテージとして表す。(11D)TC−1−誘導腫瘍に対する治療的ワクチン接種。データは腫瘍−フリーマウスのパーセンテージとして表す。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、米国特許法119(e)の下、2006年2月13日に出願されたU.S.S.N.60/773,374(‘374出願)に関し、これらへの優先権を主張する。‘374出願の全体の内容は、参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
子宮頸癌は世界中の婦人の間で第二の最も普通の癌である。スクリーニングは先進国においてこの病気の発生率を劇的に低下させたが、ほとんどの婦人が正規の婦人科医学看護およびスクリーニングに対してアクセスしない世界の領域においては、子宮頸癌は死亡の癌−関連原因として乳癌にすぐに続いて2番目である。臨床的、分子的および疫学的研究は、子宮頸癌および子宮頸部形成不全の主な原因としてヒトパピローマウイルス(HPV)を同定した。実質的に全ての子宮頸癌(約99%)は、高い危険性のHPVの遺伝子、最も普通にはタイプ16、18、31および45を含む(Ferlayら、1999)。世界中で女性の癌の約12%は子宮頸部のHPV感染によるものである。毎年、子宮頸癌の約470,000の症例が世界中で診断されており、罹った婦人のほとんど半分が死亡するであろう。HPV16は子宮頸癌のほぼ60%を占め、HPV−18がさらに10%ないし20%加えられると見積られている。他の高い危険性のタイプはタイプ31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68、および73を含む。
【0003】
さらに、HPVは頭部および首部領域のある種の癌腫ならびにより致死的なメラノーマおよび恐らくは他の癌で役割を演じるようである(例えば、非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;および非特許文献4参照)。
【0004】
子宮頸部形成不全の現行の治療は子宮頸部組織を除去し、または破壊する切除または除去手法に制限される。これらの手法はほぼ90%の有効率を有するが、罹患率および出費に関連する。加えて、外科的処置は形成不全組織のみを除去し、正常に見えるHPV−感染組織を処置しないまま残す(Bellら、2005)。従って、ワクチンを用いてこの感染を根絶するのが望ましい。HPVに遭遇する前の思春期の予防的ワクチン接種はこの標的を狙っている。いくつかの予防的ワクチンは、勇気づけられる結果を伴って、後期相臨床試験において現在進められている。感染および癌の間の長い潜伏期間のため、予防的ワクチン接種の利点は、癌発生率の点においては、数十年後に目に見えるようになろう。しかしながら、既に感染した個体ならびに進行した癌に罹った患者もまた治療的ワクチン接種から利益を受けるであろう。感染を予防し、および/または悪性疾患を治療するためのHPVに対するワクチン接種は、実質的に、HPV−関連癌からの罹患率および死亡率を実質的に減少できるであろう。かくして、安価であって、かなりの人口に容易に入手できるHPVに対する更なる改良されたワクチンを開発する要望が依然として存在する。さらに、既に存在する病巣および悪性腫瘍の進行を妨げ、およびそれらを排除さえすることができるHPVに対する治療的ワクチンの開発は、感染に罹った者に対して大いに利益となるであろう。
【非特許文献1】Mellinら、Internat.J.Cancer(2000)89:300
【非特許文献2】Zumbachら、Internat.J.Cancer(2000)85:815
【非特許文献3】Dreauら、Annals Surgery(2000)231:664
【非特許文献4】Soiniら、Thorax(1996)51:887
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
本発明は、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン、および植物で生産されたワクチン成分を提供する。いくつかの具体例において、1以上のヒトパピローマウイルス抗原は、熱安定性蛋白質との融合蛋白質として作られる。本発明は、さらに、HPV抗原を含有するワクチン組成物を含む。いくつかの具体例において、本発明のHPVワクチンは少なくとも2つの異なるHPV抗原を含む。さらに、本発明は、少なくとも2つの異なるヒトパピローマウイルス(HPV)抗原を含むヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを提供する。別法として、あるいは加えて、本発明のHPVワクチンは1以上の植物成分を含むことができる。なおさらに、本発明の抗原およびワクチン組成物の生産方法およびその使用が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(発明の詳細な説明)
本発明は、HPV感染に対するワクチンの調製でいうようなヒトパピローマウイルス(HPV)抗原、および熱安定性蛋白質に操作可能に連結したそのようなHPV抗原を含む融合蛋白質に関する。本発明は、限定されるものではないが、植物系における生産を含めた、提供された抗原の生産方法に関する。さらに、本発明の抗原および融合蛋白質を含むベクター、融合蛋白質、植物細胞、植物およびワクチン組成物に関する。なおさらに、本発明のワクチン組成物を対象に投与することを含む対象においてHPV感染に対する免疫応答を誘導する方法が提供される。
【0007】
HPV抗原
本発明のヒトパピローマウイルス(HPV)抗原蛋白質は、HPVウイルスに対する免疫応答を誘導することができるいずれかの免疫原性抗原蛋白質またはペプチドを含む。一般に、注目する免疫原性蛋白質はHPV抗原(例えば、E6蛋白質、E7蛋白質等)、その免疫原性部分、および/またはその免疫原性変種を含む。
【0008】
本発明に従って用いられるHPV抗原は全長HPV蛋白質(例えば、E6、E7等)、またはそのような蛋白質の断片、ここで、そのような断片は免疫学的活性を保有し、および/またはそのような全長HPV蛋白質または断片を含む融合蛋白質を含むことができる。
【0009】
イン・ビトロにて細胞の形質転換に関与するHPV遺伝子は、E6および/またはE7をコードするものである(Bedellら、1987,J.Virol.,61:3635)。E6およびE7蛋白質が細胞形質転換を引き起こし得るメカニズムが提案されている(Parkら、1995,Cancer,76:1902、およびそこで引用された文献)。ウイルス感染に対する免疫保護応答を誘導するそれらの能力に基づき、E7およびE6はワクチンを作成するにおいて注目する一次抗原である。更なるHPV抗原は、免疫保護の効率を改良するための組合せワクチンの生産で有用であろう。
【0010】
E6はZn−結合ドメインを含む小さな(ほぼ15,000MW)ポリペプチドである。その形質転換機能に対する手掛かりは、該蛋白質がp53に結合するという観察によって提供された。p53蛋白質は、細胞周期の専門的役割および、結果的に、細胞成長および分裂を負に調節するよく知られた腫瘍サプレッサー蛋白質である。E6のp53への結合の結果、後者の蛋白質のユビキチン化およびその結果としての分解がもたらされ、そのプロセスは「E6−関連蛋白質」と言われるもう1つの細胞蛋白質を含む。その結果、E6を発現する細胞はp53の低下した基礎レベルを有するであろう。p53レベルはDNA損傷に対する応答において上昇している。そのような増加したレベルの結果、サイクリン−依存性キナーゼの阻害剤であるp21(その蛋白質は細胞周期阻止を媒介する)の増強された発現をもたらす。このメカニズムは、その中で細胞がその複製に先立って損傷したDNAを修復できる時間ウインドウを持つ細胞を提供し、その結果、損傷/突然変異の確立がもたらされるであろう。p53のE6−媒介増強回転はメカニズムが作動するのを妨げることができる。最近、E6はp53の分解を加速することによって細胞周期調節に影響するのみならず、より直接的には、p53がDNAと相互作用するのをブロックすることによって影響する(Thomasら、1995,Oncogene,10:261)。
【0011】
HPV E7癌蛋白質は腫瘍−特異的抗原であって、それは悪性進行に関与する。E7は短命の蛋白質であり、これはユビキチン−プロテオソーム経路によってイン・ビトロおよびイン・ビボ双方において分解する(Reinsteinら、2000)E7蛋白質は、網膜芽細胞腫遺伝子産物Rbに結合することができる小さな(ほぼ10,000MW)Zn−結合リン蛋白質である。Rbは転写因子E2Fに結合し、それを不活化する腫瘍サプレッサーである。後者の因子は、チミジンキナーゼ、c−myc、ジヒドロ葉酸レダクターゼおよびDNAポリメラーゼアルファをコードするものを含めた多数の成長−関連遺伝子の転写を制御する。Rb−E2F複合体形成は、細胞周期のG0およびG1期における後者の遺伝子の発現を妨げ、Rb−E2F複合体が解離するようにプログラムされ、活性な転写因子E2Fを遊離するS期へのそれらの発現を制限する。Rb−E7複合体の形成は、Rb−E2F複合体の形成を妨げ、その結果、プレ−S期を短くし、すなわち、細胞周期を通っての進行を加速する。真核生物発現系における多量の配列−真性非−融合組換えE7蛋白質を生産しようとする試みは、主として、その迅速な分解のため現実的には失敗している(Fernandoら、1999)。それにも拘わらず、いくつかのE7−ベースのHPV−特異的治療ワクチンは、現在、IIおよびIII相臨床試験で調べられつつある。予備的結果は有望であるが、有効な細胞媒介免疫を刺激できるより適切なアジュバントとの関連による尚更なる改良が必要である(Frazer,2004)。
【0012】
これらのメカニズムの重要性についての相関的証拠は、高度に癌性のHPVタイプ(例えば、HPV16および18)由来のE6蛋白質は、非−癌性タイプからの対応する蛋白質よりもp53に対して高い親和性を有し、より高い癌性タイプ由来のE7蛋白質は非−癌性タイプからの対応する蛋白質よりもRbに対してより高い親和性を有するという観察によって提供される。かくして、E6およびE7は、選択的ワクチンおよび抗癌療法の開発のための主たる標的を表す。
【0013】
かくして、本発明は、異種蛋白質(例えば、HPV抗原)を発現する植物細胞および/または植物を提供する。本発明の異種蛋白質は、限定されるものではないが、E6、E7、E6の一部、および/またはE7の一部を含めた、注目するいずれかのHPV抗原であり得る。1つのサブタイプのE7および修飾されたE7についての全長核酸および蛋白質配列は配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4に供される。
【0014】
例示的なHPV抗原の配列が本明細書中において提供されるが、種々のHPV株およびサブタイプについてのE6およびE7配列は当該分野において公知であって、例えば、GenBankのようなデータベースにおいて確認することができる。なおさらに、E6およびE7の各々についての活性およびドメインは当該分野で公知である。かくして、E6および/またはE7のドメインの免疫原性特徴を有するいずれかの配列が別法として使用することができると認識されるであろう。当業者であれば、提供された抗原に対して少なくとも75%、80%、85%、または90%またはそれを超える同一性を有する配列を容易に作成することができるであろう。ある具体例において、HPV抗原の抗原配列は配列に対して少なくとも95%、96%、97、98%またはそれを超える同一性を有するもの、またはその部分を含み、ここで、深い抗原蛋白質は免疫原性活性を保有する。例えば、免疫原性特徴を保有するHPV抗原に対して十分な同一性を有する配列は、本明細書中で提供されるドメイン(抗原)と反応する抗体と結合することができる。免疫原性特徴は、しばしば、関連アミノ酸または側鎖基の三次元提示を含む。当業者であれば、配列の中程度の差を持つ(例えば、それにも拘わらず、免疫原性特徴を維持する境界および/またはいくつかの配列代替物の差を持つ)配列を容易に同定することができる。例えば、その境界が、使命されたアミノ酸配列のいずれかの端部において本明細書中で示されたドメイン教会の近くにある(例えば、約15アミノ酸、14アミノ酸、13アミノ酸、12アミノ酸、11アミノ酸、10アミノ酸、9アミノ酸、8アミノ酸、7アミノ酸、6アミノ酸、5アミノ酸、4アミノ酸、3アミノ酸、2アミノ酸、または1アミノ酸内)配列は、本発明による関連ドメインを含むと考えることができる。かくして、本発明では、ドメイン使命を近似する残基を含ませるためのHPV抗原の配列の使用が考えられる。例えば、E7のドメインは、本発明の抗原としてのイン・フレーム融合蛋白質として作成し、発現された(本明細書中における実施例参照)。さらに、免疫原性であるHPV抗原(例えば、E6、E7)のアミノ酸配列のいずれかのドメイン、部分的ドメイン、または領域は、本明細書中で提供される構築体および方法を用いて作成することができるのは認識されるであろう。尚さらに、ドメインまたはサブドメインは、HPV抗原の生産のために、別々におよび/または連続的に組み合わせることができる。
【0015】
熱安定性蛋白質との抗原の融合
本発明のある態様においては、熱安定性蛋白質に操作可能に連結されたHPV抗原(またはその断片または変種)を含む融合ポリペプチドが提供される。本発明の融合ポリペプチドは、当該分野で公知のいずれかの入手可能な発現系にて生産することができる。ある具体例においては、本発明の融合蛋白質は植物またはその部分(例えば、植物、植物の細胞、根、芽など)において生産される。
【0016】
天然ではヒトまたは動物細胞において見出されない酵素または他の蛋白質は、本発明の融合ポリペプチドで用いるのに特に適当である。融合されると、融合産物に熱安定性を付与する熱安定性蛋白質は有用である。熱安定性は生産された蛋白質が立体配座を維持し、および生産された蛋白質を室温に維持するのを可能とする。この特徴は、融合ポリペプチドの容易な、時間的に効率的なおよびコスト的に効率的な回収を容易とする。本発明によると有用な熱安定性酵素の代表的なファミリーはグルカノヒドロラーゼファミリーである。これらの酵素は、混合され連結された多糖において1,3−β結合に隣接する1,4−βグルコシド結合を特異的に切断する(Hahnら、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,91:10417)。酵素はオート麦および大麦のような穀物で見出され、C.thermocellum(Goldenkovaら、2002,Mol.Biol.,36:698)を含めた多数の真菌および細菌種においても見出される。かくして、本発明の融合ポリペプチドで用いる例示的な熱安定性蛋白質はグルコシダーゼ酵素を含み;例示的な熱安定性グルコシダーゼ蛋白質は、その各々をここに引用して援用する、P29716、P37073、P45798、P38645;P40942;P14002;O33830、O43097、P54583、P14288、O52629、P29094、P49067、JC7532、Q60037、P33558、P05117、P04954、Q4J929、O33833、P49425、P06279、P45703、P45702、P40943、P09961、Q60042、AAN05438、AAN05437、AAN05440、AAN05439およびAAD43138から選択されるGenBankアクセション番号によって表されるものを含む。本発明の融合蛋白質で用いるリケナーゼ酵素は、その各々がそれらのGenBankアクセション番号への参照によって援用される、Clostridium thermocellum P29716、Brevibacillus brevisP37073,およびRhodthermus marinus P45798を含む。実施例で説明される代表的な融合蛋白質は、Clostridium thermocellumから単離された修飾されたリケナーゼを利用するが、いずれの熱安定性蛋白質も本発明に従って同様に利用することができる。
【0017】
本発明に従って融合蛋白質およびポリペプチドを設計する場合、もちろん、抗原の免疫原性を維持するのが望ましい。なおさらに、本発明のある態様においては、融合蛋白質の熱安定性を供する構築体を提供するのが望ましい。この特徴は、標的抗原の容易な、時間的に有効かつコスト的に有効な回収を容易とする。ある態様においては、抗原融合パートナーを選択することができ、これは、免疫原性の増強、多数のワクチン決定基を取り込む潜在能力を含めたさらなる利点を供するが、以前の望ましいものを欠如する。これらの系の二つは、クローン根およびクローン植物系、およびその誘導体の生産、ならびに発芽種苗系の生産を含む。
【0018】
クローン植物
クローン根はRNAウイルス発現ベクターを維持し、延長された時間に渡って全根、および多数のサブ構造において均一に標的蛋白質を安定して生産する。標的遺伝子が細胞間または長距離移動の間の組換えを介して排除される植物とは対照的に、根培養においては、ウイルスベクターの一体性が維持され、啓示的に生産される標的蛋白質のレベルは初期スクリーニングの間に観察されるものと同様である。クローン根は、抗原およびワクチン組成物の経口処方のための物質の生産の容易性を可能とする。抗原(例えば、本発明の抗原蛋白質)の生産でいうような植物から由来する種々のクローン存在物を生じさせるための方法および試薬は従前に記載されており、当該分野で知られている(例えば、ここに引用して援用するPCT公開WO 05/81905参照)。クローン存在物は、抗原(例えば、本発明の抗原蛋白質)を生産できるクローン根株、クローン根細胞株、クローン植物細胞株、およびクローン植物を含む。本発明は、さらに、種々の植物組織(例えば、根、葉)に由来するクローン細胞株における、および単一細胞に由来する全植物(クローン植物)における、抗原ポリヌクレオチドおよびポリペプチド産物の発現のための方法および試薬を提供する。そのような方法は、典型的には、種々のタイプの植物ウイルスベクターの使用に基づく。
【0019】
例えば、1つの態様において、本発明は、(i)本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを植物またはその部分に導入し;次いで、(ii)該植物から1以上のクローン根株を作成する工程を含む本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン根株を得る方法を提供する。クローン根株は、例えば、植物または植物の部分(例えば、葉の収穫されたピース)を、毛根の形成を引き起こすAgrobacterium(例えば、A.rhizogenes)で感染させることによって作成することができる。クローン根株は、種々の方法でスクリーニングして、ウイルスを維持する系、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを高レベルで発現する系などを同定することができる。本発明は、さらに、クローン根株、例えば、本発明によって生産されたクローン根株を提供し、さらに、クローン根株を用いて本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現し、ポリペプチドを生産する方法を含む。
【0020】
本発明は、(i)その細胞が、そのゲノムが本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含有するクローン根株を作成し;(ii)クローン根株から個々の細胞を放出し;次いで、(iii)根細胞増殖に適した条件下で細胞を維持する工程を含む、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン根細胞株を作成する方法を提供する。本発明は、クローン根細胞株、およびクローン根細胞株を用いてポリヌクレオチドを発現させ、ポリペプチドを生産する方法を提供する。
【0021】
いくつかの具体例において、本発明は:(i)そのゲノムが本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターをその細胞が含有するクローン根株を作成し;(ii)クローン根株から個々の細胞を放出させ;次いで、(iii)植物細胞増殖に適した条件下で該細胞を培養に維持する工程を含む、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物細胞株を作成する方法を提供する。本発明は、(i)本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを、培養に維持された植物細胞株の細胞に導入し;次いで、(ii)ウイルスベクターを含有する細胞について豊富化する工程を含む、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物細胞株を作成する方法を提供する。豊富化は、例えば、(i)培養から細胞の一部を取り出し;(ii)細胞濃度を低下させるように取り出した細胞を希釈し;(iii)希釈された細胞を増殖させ;次いで、(iv)ウイルスベクターを含有する細胞についてスクリーニングする工程を含む、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物細胞株を作成する方法を提供する。クローン植物細胞株は、本発明に従ってHPV抗原の生産に用いることができる。
【0022】
本発明は、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターをその細胞が含有するクローン植物を作成する多数の方法を含む。例えば、本発明は:(i)そのゲノムが本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターをその細胞が含有するクローン根株を作成し;(ii)クローン根株からの個々の細胞を放出し;次いで、(iii)植物の形成に適した条件下で放出された細胞を維持する工程を含む、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物を作成する方法を提供する。本発明は、さらに、(i)そのゲノムが本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターをその細胞が含有するクローン植物細胞株を作成し;次いで、(ii)植物の形成に適した条件下で該細胞を維持する工程を含む、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物を作成する方法をさらに提供する。一般に、本発明によるクローン植物は、本発明の抗原をコードするいずれのポリヌクレオチドも発現することができる。そのようなクローン植物は、抗原ポリペプチドの生産で用いることができる。
【0023】
前記したように、本発明は、クローン根株、クローン根細胞株、クローン植物細胞株(例えば、葉、幹などに由来する細胞株)、および/またはクローン植物において、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドまたは複数ポリヌクレオチドを発現するための系を提供する。本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドは、そのゲノムが、プロモーターに(該プロモーターの制御下で)操作可能に連結された本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含む植物ウイルスベクターを用いて先祖植物細胞に導入される。クローン根株またはクローン植物細胞株は、後にさらに記載するいくつかの技術のいずれかに従ってウイルスを含有する細胞から樹立される。植物ウイルスベクターまたはその部分は、感染によって、ウイルス転写体または感染性cDNAクローンでの接種によって、エレクトロポレーションによって、T―DNA媒介遺伝子導入によって、等により植物細胞に導入することができる。
【0024】
以下のセクションは、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン根株、クローン根細胞株、クローン植物細胞株、およびクローン植物を作成する方法を記載し、次いで、記載する。「根株」は、根株が現実の根−様構造または複数の根を生じ、他方、根細胞株が、根−様構造を形成しない根細胞よりなる点で、「根細胞株」から区別される。用語「系」の使用は、該系の細胞が増殖し、遺伝情報を子孫細胞に伝えることができることを示すことを意図する。細胞株の細胞は、典型的には、無傷植物で見出されるもののような組織化構造の一部ではなくして培養で増殖する。用語「根株」の使用は、根構造における細胞が、完全な植物の一部でなくして増殖できることを示すことを意図する。用語「植物細胞」は根細胞を含むことを注記する。しかしながら、根株および根細胞株を作成する本発明の方法を、(クローン根株からクローン植物細胞株を、またはクローン根株に由来するクローン植物の作成とは反対に)非−根組織から植物細胞株を直接的に作成するのに用いられるものから区別するためには、本明細書中で用いる用語「植物細胞」および「植物細胞株」は、一般には、非−根植物組織よりなる細胞または細胞株をいう。該植物細胞は、例えば、葉、茎、苗、花部分などであり得る。種子は本明細書中にて誘導されるように作製したクローン植物に由来することができることを注記する。植物の種子はそのような種子から得られた植物のようにウイルスベクターをやはり含有する。種子ストックを得るための方法は当該分野でよく知られている(例えば、米国特許公開2004/0093643参照)。
【0025】
クローン根株
本発明は、クローン根株を作製するためのシステムを提供し、ここで、植物ウイルスベクターを用いて、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドの発現を指令する。プロモーターに操作可能に連結された本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含めた1以上のウイルス発現ベクターは、種々の公知の方法のいずれかに従って植物またはその部分に導入される。例えば、植物の葉をウイルス転写体で接種することができる。ベクターそれ自体は(例えば、磨耗接種、機械化スプレイ接種、真空浸潤、粒子衝撃またはエレクトロポレーションを介して)植物に直接適用してもよい。別法として、あるいは加えて、ビリオンは(例えば、既に感染された植物から)調製してもよく、公知の技術に従って他の植物に適用してもよい。
【0026】
感染がウイルスゲノムの植物への直接的適用によって達成される場合、いずれかの利用可能な技術を用いてゲノムを調製してもよい。例えば、本発明に従って有用に使用される多くのウイルスがssRNAゲノムを有する。ssRNAは、ゲノムのDNAコピーの転写によって、あるいはRNAコピーの複写によってイン・ビボまたはイン・ビトロいずれかで調製してもよい。イン・ビトロ転写システム(例えば、SP6、T7、網状赤血球溶解物など)の容易な使用の容易な利用可能性、およびRNAベクターのDNAコピーを維持する便利さを仮定すれば、本発明のssRNAベクターは、しばしば、特に、T7またはSP6ポリメラーゼでのイン・ビトロ転写によって、調製されるであろう。感染性cDNAクローンを用いることができる。アグロバクテリウム媒介遺伝子導入を用いて、ウイルスベクター(全ウイルスゲノムまたはその部分いずれか)のようなウイルス核酸を、当該分野で公知の方法に従って、例えば、アグロ侵入を用いて植物細胞に導入することができる。
【0027】
次いで、ウイルス転写体の複製に適した条件下で、植物または植物部分を維持する(例えば、培養し、または成長させる)ことができる。本発明のある具体例において、ウイルスは最初に接種された細胞を超えて、例えば、細胞から細胞へ局所的に、および/または最初に接種された葉からさらなる葉へと全身的に拡大する。しかしながら、本発明のある具体例においては、ウイルスは拡大しない。かくして、ウイルスベクターは機能的MPおよび/またはCPをコードする遺伝子を含有してもよいが、そのような遺伝子の一方または双方を欠如してもよい。一般に、ウイルスベクターを植物またはその部分における多数の細胞に導入される(感染する)。
【0028】
ウイルスベクターの植物への導入に続き、葉を収穫する。一般に、葉は、ウイルスベクターの導入に続いていずれの時点に収穫してもよい。しかしながら、ウイルスベクターの植物への導入後の一定期間、例えば、ウイルス複製および、所望により、それが最初に導入された細胞からのウイルスの拡大に十分な期間の間、植物を維持するのが望ましいであろう。クローン根培養(または多数の培養)は、例えば、後にさらに記載する公知の方法によって調製される。
【0029】
一般に、いずれの利用可能な方法を用いて、ウイルスベクターが導入されている植物または植物組織からクローン根培養を調製してもよい。1つのそのような方法は、ある種の細菌プラスミドに存在する遺伝子を使用する。これらのプラスミドは、広く種々の生物に感染し、それにDNAを導入するアグロバクテリウム(Agrobacterium)の種々の種で見出される。属として、アグロバクテリウムは、多数の双子葉植物および単子葉植物の被子植物種および裸子植物を含めた植物タイプの大きな多様な組にDNAを導入することができる(その全てをここに引用して援用する、Gelvin,2003,Microbiol.Mol.Biol.Rev.,67:16、およびその中で引用された文献参照)。植物細胞の遺伝的形質転換の分子的基礎は、細菌からの導入、および種々のアグロバクテリウム種内に存在する大きな腫瘍−誘導(Ti)または根生成(Ri)プラスミドの領域の植物核ゲノムへの組込みである。この領域は、プラスミドに存在する場合には「T−領域」とプラスミドから切り出された場合には「T−DNA」という。一般に、一本鎖T−DNA分子は天然に生じるアグロバクテリウム感染において植物細胞に導入され、最終的には、ゲノムに(二本鎖形態で)組込まれる。Tiプラスミドに基づく系は、外来性遺伝物質の植物への導入のために、およびトランスジェニック植物生産のために広く用いられる。
【0030】
種々のアグロバクテリウム種での植物の感染、およびT−DNAの導入は多数の効果を有する。例えば、A.tumefaciensはクラウンゴール病を引き起こし、他方、A.rhizogenesは、「毛根病」として知られた疾患である感染の部位において毛根の発生を引き起こす。各根は、単一の遺伝子的に形質転換された細胞から生起する。かくして、根における根細胞はクローンであり、各根は細胞のクローン集団を表す。A.rhizogenes感染によって生じた根は、高い成長速度および遺伝的安定性によって特徴付けられる(ここに引用してその全てを援用する、Giriら、2000,Biotech.adv.,18:1、およびその中の文献)。加えて、そのような根は遺伝的に安定な植物を再生することができる(Giriら、2000,supra)。
【0031】
一般に、本発明は、植物細胞からの根の形成を誘導することができるアグロバクテリウムのいずれかの株(例えば、いずれかのA.rhizogenes株)の使用を含む。前記したように、Riプラスミドの部分(Ri T−DNA)は、毛根病を引き起こす原因である。Riプラスミドのこの部分の植物細胞への導入は、便宜には、Riプラスミドを保有するアグロバクテリウムでの感染によって達成されるが、本発明は、関連領域を植物細胞へ導入するいくつかの他の方法の使用を含む。そのような方法は、限定されるものではないが、バイオリスティックス、エレクトロポレーション、PEG−媒介DNA摂取、Ti−ベースのベクター等を含めた、遺伝物質を植物細胞へ導入するいずれの利用可能な方法も含む。Ri T−DNAの関連部分は、ウイルスベクターの使用によって植物細胞に導入することができる。Ri遺伝子は、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含有する同一のベクターに、または本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを含むベクターのそれと同一または異なるタイプであり得る異なるウイルスベクターに含めることができる。全Ri T−DNAは毛根の生産で必要ないかも知れず、本発明はRi T−DNAの一部の使用を含み、但し、そのような一部は当該分野で公知のように根形成を誘導するのに十分な遺伝物質を含有するものとすることを注記する。さらなる遺伝物質、例えば、T−DNA内にはないRiプラスミド内に存在する遺伝子を、本発明に従って植物細胞に導入することができる。特に、その発現産物がT−DNAの植物細胞DNAへの組込みを容易とする遺伝子。
【0032】
本発明のある具体例に従ってクローン根株を調製するには、収穫された葉部分を、感染および形質転換に適した条件下でA.rhizogenesと接触させる。葉の部分は培養で維持して、毛根の発生を可能とする。各根はクローンであり、すなわち、根における細胞は、Ri T−DNAが導入された単一の先祖細胞に由来する。本発明に従うと、そのような先祖細胞の一部はウイルスベクターを含有するであろう。かくして、そのような先祖細胞に由来する根における細胞はウイルスベクターを含有するであろう。というのは、それは複製し、細胞分裂の間に伝達されるだろうからである。かくして、細胞の高い割合、(例えば、少なくとも、50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)、全て(100%)、または実質的に全て(少なくとも98%)はウイルスベクターを含有するであろう。ウイルスベクターはクローン根内の娘細胞によって遺伝されるので、根内のウイルスベクターの移動は、根全体にわたってウイルスベクターを維持する必要はない。個々のクローン毛根は葉部分から取り出してもよく、さらに培養してもよい。そのような根もまた本明細書中においては根株という。単離されたクローン根は単離の後に成長し続ける。
【0033】
種々の異なるクローン根細胞は本発明の方法を用いて作製されてきた。根株は、本発明の抗原をコードする(例えば、免疫原性ペプチドをコードする)ポリヌクレオチドを含有するウイルスベクターを用いて作製した。根株はウェスタンブロットによってテストした。根株は、種々の異なる発現レベルの種々のポリペプチドを呈した。高い発現を呈する根株を選択し、さらに培養した。根株は、引き続いて、再度テストし、延長された期間にわたって高レベルの発現を維持することが示され、これは安定性を示す。発現のレベルは、クローン根株を作製するのに用いた同一ウイルスベクターで感染された無傷植物における発現と匹敵し、またはそれよりも大きかった。加えて、根株の発現の安定性は、同一ウイルスベクターで感染させた植物で得られたのよりも優れていた。そのようなウイルス感染植物の80%までが2ないし3継体後に野生型に復帰した。(そのような継体は植物を転写体で接種し、感染(局所的または全身)を確立されたようになることを可能とし、葉試料を採取し、次いで、引き続いて発現についてテストされる新鮮な植物を接種することを含んだ。
【0034】
根株は、後にさらに議論するように、本発明のポリペプチドの抗原の生産のために大規模で培養することができる。クローン根株(およびクローン根株に由来する細胞株)は、一般に、典型的には、根および植物細胞の培養で使用される種々の化合物、例えば、オーキシン、サイトカイニンなどのような植物成長ホルモンを含まない培地中に維持することができる。この特徴は組織培養に関連する出費を低下させ、本発明者らは、それは植物を用いる蛋白質生産の経済的可能性にかなり寄与するであろうと予測する。
【0035】
種々の方法のいずれかを用いて、本発明のHPV抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン根を選択することができる。ウェスタンブロット、ELISAアッセイなどを用いて、コードされたポリペプチドを検出することができる。GFPのような検出可能なマーカーの場合には、ウイルスルスクリーニングのような代替方法を行うことができる。もし選択マーカーをコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを用いれば、適当な選択を課すことができる(例えば、葉物質および/またはそれに由来する根を適当な抗生物質または栄養条件の存在下で培養することができ、生存する根を同定し、単離することができる)。ある種のウイルスベクターは、本発明の抗原をコードする2以上のポリヌクレオチド、例えば、異なるポリペプチドをコードする2以上のポリヌクレオチドを含有する。もしこれらの1つが選択マーカーまたは検出可能なマーカーであれば、マーカーについて選択し、またはマーカーの発現を検出することによって選択または検出されるクローン根は、やはり第二のポリヌクレオチドを発現する高い可能性を有するであろう。特定のポリヌクレオチドを含有する根株についてのスクリーニングは、PCRおよび他の核酸検出方法を用いて行うことができる。
【0036】
別法として、あるいは加えて、クローン根株は、ウイルス感染の結果として局所的病巣を形成する宿主植物(例えば、過敏宿主植物)をインキュベートすることによってウイルスの存在についてスクリーニングすることができる。例えば、5mgの根組織を50μlのリン酸緩衝液中でホモゲナイズすることができ、それを用いて、タバコ植物の単一の葉を接種することができる。もしウイルスが根培養に存在するならば、2ないし3日以内に、特徴的な病巣は感染した葉に出現するであろう。これは、根株が、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチド(標的因子)を運ぶ組換え遺伝子を含有することを意味する。もし局所的病巣が形成されないならば、ウイルスはなく、根株は陰性として拒絶される。この方法はかなり時間的に有効かつコスト的に有効である。ウイルスの存在について最初にスクリーニングした後に、ウイルスを含有する根は、例えば、ウェスタンブロットまたはELISAによって二次スクリーニングに付して、高い発現体を選択してもよい。さらなるスクリーニング、例えば、迅速な成長、特に培地中でのまたは特定の環境条件下での成長についてのスクリーニングを適用することができる。これらのスクリーニング方法は、一般には、本明細書中に記載するクローン根株、クローン根細胞株、クローン根植物系、および/またはクローン植物のいずれかの発生において適応してもよい。
【0037】
当業者に明らかなように、種々の修飾をウイルスベクターを含有するクローン根株を作製するための本発明の方法の記載においてなすことができる。そのような修飾は本発明の範囲内にある。例えば、ウイルスベクターをRi T−DNA遺伝子の導入に先立って無傷植物またはその部分に導入するのが一般には望ましいが、本発明のある具体例において、ウイルスベクターの導入に先立ってRi T−DNAを導入する。加えて、葉の一部を収穫し、次いで、それらを細菌に曝露するよりはむしろA.rhizogenesと無傷細胞を接触させるのが可能である。
【0038】
ウイルスベクターを保有する植物またはその部分の単一細胞からクローン根株を作製する他の方法を用いることができる(すなわち、A.rhizogenesまたはRiプラスミドからの遺伝物質を用いない方法)。例えば、ある種の植物ホルモン、または植物ホルモンの組合せでの処理は、植物組織からの根の形成をもたらすことが知られている。
【0039】
クローン根株に由来するクローン細胞株
前記したように、本発明は、クローン根株を作製する方法を提供し、ここで、根株における細胞はウイルスベクターを含有する。当該分野でよく知られているように、種々の異なる細胞株を根から作製することができる。例えば、根細胞株は、種々の公知の方法を用いて根から得られた個々の根細胞から作製することができる。そのような根細胞株は根内の種々の異なる根細胞型から得ることができる。一般に、根物質を収穫し、解離させて(例えば、物理的におよび/または酵素的に消化して)、個々の根細胞を放出させ、次いで、これをさらに培養する。完全なプロトプラスト形成は一般には必要ではない。所望であれば、根細胞を非常に希薄な細胞濃度で平板培養して、単一の根細胞から根細胞株を得ることができる。このようにして誘導された根細胞株はウイルスベクターを含有するクローン根細胞株である。そのような根細胞株は、従って、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドの安定な発現を呈する。クローン植物細胞株は、例えば、適当な植物ホルモンの存在下で解離した根細胞を培養することによって、クローン根から同様にして得ることができる。スクリーニングおよび順次のラウンドの豊富化を用いて、高レベルで本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現する細胞株を同定することができる。しかしながら、もし細胞株が由来するクローン根株が既に高レベルで発現するならば、そのようなさらなるスクリーニングは必要ないであろう。
【0040】
クローン根細胞の場合においては、クローン根細胞株の細胞は、ウイルスベクターを含有する単一先祖細胞に由来し、従って、やはりウイルスベクターを含有する。というのは、それは複製され、細胞分裂の間に伝達されるであろうからである。かくして、細胞の高い割合(例えば、少なくとも、50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)、全て(100%)、または実質的に全て(少なくとも98%)はウイルスベクターを含有するであろう。ウイルスベクターはクローン根細胞株内の娘細胞によって遺伝されるので、細胞の間のウイルスベクターの移動はウイルスベクターを維持するのに必要ない。クローン根細胞株は、後に記載するように、本発明の発現をコードするポリヌクレオチドの生産で用いることができる。
【0041】
クローン植物細胞株
本発明は、クローン植物細胞株を作製する方法を提供し、ここで、植物ウイルスベクターを用いて、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドの発現を指令する。本発明によると、プロモーターに操作可能に連結された本発明のHPV抗原をコードするポリヌクレオチドを含めた1以上のウイルス発現ベクターを、細胞培養へ維持される植物細胞株の細胞に導入する。種々の植物タイプからの多数の植物細胞株が当該分野で知られており、そのいずれも用いることができる。新しく誘導された細胞株は、本発明を実施するのに用いられる公知の方法に従って作製することができる。ウイルスベクターは多数の方法のいずれかに従って植物細胞株の細胞に導入される。例えば、プロトプラストを作製し、次いで、ウイルス転写体を細胞にエレクトロポレーションすることができる。植物細胞株の細胞に植物ウイルスベクターを導入する他の方法を用いることができる。
【0042】
本発明によるクローン植物細胞株を作製する方法および植物細胞(例えば、プロトプラスト)に導入するのに適当なウイルスベクターを以下のように用いることができる:ウイルスベクターの導入に続き、植物細胞株は組織培養で維持してもよい。この時点の間に、ウイルスベクターは複製することができ、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現させてもよい。クローン植物細胞株は、例えば、順次の豊富化のプロセスによって培養から誘導される。例えば、試料は、所望により、植物の濃度が低いような希釈でもって培養から取り出し、個々の小滴中でペトリ皿で平板培養することができる。次いで、小滴を維持して、細胞分裂を可能とする。
【0043】
小滴は、培養の初期密度および希釈の量に依存して、可変数の細胞を含有することができることは認識されるであろう。ほとんどの小滴が、もし単一ラウンドのみの豊富化後に本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン細胞株を得るのが望まれれば0または1細胞いずれかを含有するように細胞を希釈することができる。しかしながら、多数の細胞が各小滴に存在し、次いで、小滴をスクリーニングして、発現する細胞を含有するものを同定するように、濃度を選択するのがより有効であり得る。一般に、いずれの適当なスクリーニング手法も使用することができる。例えば、GFPのような検出可能なマーカーの選択または検出を用いることができる。ウェスタンブロットまたはELISAアッセイを用いることができる。個々の小滴(100μl)はこれらのアッセイの性能につき十分な細胞を超えて含有する。多数のラウンドの豊富化は、順次により高い発現をする細胞株を単離するのに行われる。単一のクローン植物細胞株(すなわち、単一の先祖細胞に由来する集団)は、単一細胞クローニングのための標準的方法を用いるさらなる限定希釈によって作製することができる。しかしながら、個々のクローン系を単離する必要はない。多数のクローン細胞株を含有する集団は、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチドの発現で用いることができる。
【0044】
一般に、クローン根株の作製のための前記したある考慮は、クローン植物細胞株の作製に適用される。例えば、本発明の抗原をコードする1以上のポリヌクレオチドを含有する多様なウイルスベクターは、多数の異なるベクターの組合せがそうであるように用いることができる。同様なスクリーニング方法を用いることができる。クローン根株、およびクローン根細胞株の場合におけるように、クローン植物細胞株の細胞は、ウイルスベクターを含有する単一の先祖細胞に由来し、従って、やはりウイルスベクターを含有するであろう。というのは、それは複製され、細胞分裂の間に伝達されるだろうからである。かくして、細胞の高い割合(例えば、少なくとも、50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)、全て(100%)、または実質的に全て(少なくとも98%)はウイルスベクターを含有するであろう。ウイルスベクターはクローン植物細胞株内の娘細胞によって遺伝されるので、細胞間のウイルスベクターの移動はウイルスベクターを維持するのに必要ないことを注記する。クローン植物細胞株は後に記載するように本発明の抗原をコードするポリペプチドの生産で用いることができる。
【0045】
クローン植物
クローン植物は前記した種々の方法に従って生産されたクローン根、クローン根細胞株、および/またはクローン植物細胞株から作製することができる。本明細書中に記載されたクローン根株、クローン根細胞株、およびクローン植物細胞株のような根、根細胞株、および植物細胞株からの植物体の作製方法は当該分野でよく知られている(例えば、Peresら、2001,Plant Cell,Tissue,and Organ Culture,65:37参照;および植物分子生物学および本明細書中において他の箇所で引用されたバイオテクノロジーについての標準的な文献研究)。本発明は、従って、(i)前記した本発明の方法のいずれかに従ってクローン根株、クローン根細胞株、またはクローン植物細胞株を作製し;次いで、(ii)クローン根株、クローン根細胞株、またはクローン植物から全植物体を作製する工程を含むクローン植物体を作製する方法を提供する。クローン植物を増殖させ、標準的な方法に従って成長させることができる。
【0046】
クローン根株、クローン根細胞株、およびクローン植物細胞株の場合におけるように、クローン植物の細胞は、ウイルスベクターを含有する単一の先祖細胞に由来し、従って、やはりウイルスを含有する。というのは、それは複製され、細胞分裂の間に伝達されるだろうからである。かくして、細胞の高い割合(例えば、少なくとも、50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)、全て(100%)、または実質的に全て(少なくとも98%)はウイルスベクターを含有するであろう。ウイルスベクターはクローン植物内の娘細胞によって遺伝されるので、ウイルスベクターの移動はウイルスベクターを維持するのに必要ないことを注記する。
【0047】
芽および発芽種苗植物発現系
本発明に従うHPV抗原の生産で有用な種々の芽および発芽種苗を作製するためのシステムおよび試薬は従前に記載されており、当該分野で公知である(例えば、ここに引用して援用するPCT公開 WO 04/43886参照)。本発明は、さらに、HPV抗原ペプチドまたは蛋白質を含有するバイオマスとしての、食べることができる発芽種苗を提供する。ある態様において、該バイオマスは、抗原組成物の消費のために直接的に提供される。いくつかの態様において、該バイオマスは、例えば、ホモゲナイズし、破砕し、乾燥し、または抽出することによって消費に先立って処理される。ある態様において、HPV抗原はバイオマスから精製され、医薬組成物に処方される。
【0048】
加えて、消費でき、または生きたまま収穫することができる発芽種苗(例えば、アブラナ属の芽、発芽種苗)においてHPV抗原を生産する方法が提供される。ある態様において、本発明は、封じ込められた調節可能な環境(例えば、インドア、容器中など)において種子を食べることができる発芽種苗まで成長させることを含む。種子は、その発現が内因的に誘導性のプロモーターによって駆動されるHPV抗原をコードする発現カセットを含有する遺伝子工学により作製された種子であり得る。例えば、光、熱、光ホルモン、栄養素などによって誘導可能な種々の内因的に誘導性のプロモーターを用いることができる。
【0049】
ある具体例において、本発明は、まず、Agrobacterium形質転換系を用いて植物をHPV抗原をコードする発現カセットで形質転換することにより発芽種苗について種子ストックを形成することによって発芽種苗においてHPV抗原を生産する方法を提供し、ここで、HPV抗原の発現は誘導性プロモーターによって駆動される。トランスジェニック種子は、封じ込められた調節可能な環境で成長させた形質転換植物から得ることができ、それを誘導して、HPV抗原を発現させることができる。
【0050】
いくつかの具体例において、その発現がウイルスプロモーターまたは誘導性プロモーターのいずれかによって駆動され得るHPV抗原をコードするウイルス発現カセットで発芽された実生を完成させることを含む。発芽された実生は、封じ込められた調節可能な環境において、あるいは少なくとも十分なレベルのHPV抗原が消費または収穫のために得られるまで、2ないし14日の間成長させる。
【0051】
本発明はさらに、気候が制御された収容ユニットを含む発芽種苗、および1以上のHPV抗原をコードする発現カセットを含有する発芽された実生においてHPV抗原を生産するためのシステムを提供し、ここで、発現は構成的または誘導性プロモーターによって駆動される。本発明のシステムは制御することができないアウトドア環境または温室よりもユニークな利点を提供することができる。かくして、本発明は、育種者がHPV抗原の発現の誘導を正確に時間合わせするのを可能とする。それはHPV抗原を生産するコストも多いに低下させることができる。
【0052】
ある態様において、一過的にトランスフェクトされた芽は本発明のHPV抗原をコードするウイルスベクター配列を含有する。実生は、芽におけるウイルス核酸の生産を可能とするような時間の間、続いて、ウイルスの多数のコピーが生産され、それにより、抗原が生産される期間の間成長させる。
【0053】
ある態様において、HPV抗原をコードする導入遺伝子を含有する遺伝子工学により作製された種子または胚は封じ込められた調節可能な環境において発芽された実生段階まで成長させる。封じ込められた調節可能な環境は、種子をインドアで成長させることができる収容ユニットまたは部屋であってよい。封じ込められた調節可能な環境の全ての環境因子を制御してもよい。芽は成長するのに光を必要とせず、かつ照明は高価であり得るので、遺伝子工学により作製された種子または胚は、光の不存在下でインドアにて発芽種苗段階まで成長させることができる。
【0054】
本発明の封じ込められた調節可能な環境において調節できる他の環境因子は温度、湿度、水、栄養素、ガス(例えば、O2またはCO2含有量または空気循環)、化学物質(糖および糖誘導体のような小分子、植物ホルモンジベレリン酸またアブシジン酸などのようなホルモン)などを含む。
【0055】
本発明のある方法に従うと、HPV抗原をコードする導入遺伝子の発現は外因的に誘導性プロモーターによって制御することができる。外因性誘導性プロモーターは、内部刺激体よりはむしろ外部に対する応答において導入遺伝子の発現を増加させ、または減少させる。多数のこれらの環境因子は、遺伝子工学により作製した芽の発現カセットによって運ばれる導入遺伝子の発現のためのインデューサーとして作用することができる。プロモーターは熱−ショックプロモーターのような熱−誘導性プロモーターであってよい。例えば、熱−ショックプロモーターを用い、封じ込められた環境の温度を、単に上昇させて、導入遺伝子の発現を誘導することができる。他のプロモーターは光誘導性プロモーターを含む。もし封じ込められた調節可能な環境における光を常にオンしているとすれば、構成的プロモーターとして維持することができる。別法として、または加えて、導入遺伝子の発現を、単に光のスイッチを入れることによって、発生の段階の特定の時点でスイッチを入れることができる。プロモーターは化学的に誘導性のプロモーターであってよく、それを用いて、導入遺伝子の発現を誘導する。それらの具体例によると、化学物質は単に種子、胚または実生に霧状に加え、またはスプレイして導入遺伝子の発現を誘導することができよう。スプレイイングおよびミスティングは正確に制御し、それが意図する標的種子、胚または実生に向けられる。封じ込められた環境は風または空気の流れが欠如し、これは、化学物質がそれが意図する標的に留まるように、化学物質を意図した標的から分散させるであろう。
【0056】
本発明によると、時間発現を誘導し、選択して、収穫の時期まで発芽種苗におけるHPV抗原の発現を最大化することができる。成長の特定の段階における胚における発現の誘導、例えば、発芽後の特定の日数における胚での発現の誘導の結果、収穫時期におけるHPV抗原の最大合成が得ることができる。例えば、発芽から4日後のプロモーターからの発現の誘導の結果、3日後または5日後においてプロモーターから発現を誘導するよりも蛋白質合成をもたらし得る。当業者であれば、発現の最大化はルーチン的実験によって達成することができることを認識するであろう。いくつかの具体例において、発芽種苗は発芽から約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12日において収穫される。
【0057】
発現ベクターが誘導性プロモーターの代わりに構成的プロモーターを有する場合には発芽種苗を、発芽種苗の形質転換後のある時点で収穫してもよい。例えば、もし発芽種苗が発生の初期段階においてウイルスにより形質転換されれば、例えば、胚段階で形質転換されれば、発芽種苗は、発現がその最大形質転換後における、例えば、形質転換後約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日における時点に収穫してもよい。また、芽は、種子の発芽に応じて、形質転換後1、2、3またはそれ以上の月で発生するであろう。
【0058】
一般に、一旦HPV抗原の発現が開始すれば、種子、胚、または発芽種苗を、十分なレベルのHPV抗原が発現されるまで成長させる。ある態様においては、十分なレベルは、もし収穫されたバイオマスが生で食べられるならば、患者に対して治療的利点を供するであろうレベルである。別法として、または加えて、十分なレベルは、バイオマスからHPV抗原を濃縮し、または精製し、投与に際して患者に治療的利点を供する医薬組成物に処方することができるレベルである。典型的には、抗原は、天然において発芽種苗で発現される蛋白質ではない。いずれかの速度にて、HPV抗原は、典型的には、天然で発芽種苗に存在するであろう濃度を超える濃度で発現される。
【0059】
一旦HPV抗原の発現が誘導されれば、その時点で発芽種苗が収穫される発芽種苗段階まで、成長を継続させる。発芽種苗は生きて収穫することができる。生きた発芽種苗の収穫は、最小の努力および破壊を含めたいくつかの利点を有する。本発明の発芽種苗を水耕により成長させることができ、収穫を、その水耕溶液からの発芽種苗をリフトする単純な事項とする。本発明の発芽種苗の成長のためには土壌は必要でないが、もし当業者が必要または望ましいとみなしたならば供してもよい。芽は土壌なくして成長させることができるので、発芽種苗物質の清浄は収穫の時点においては必要でない。洗浄または磨きなくしてその水耕環境から直接的に発芽種苗を収穫できることは、収穫された材料の破壊を最小化する。植物の破壊および萎れはアポトーシスを誘導する。アポトーシスの間に、ある種の蛋白質分解酵素が活性となり、発芽種苗で発現された医薬蛋白質を分解することができ、その結果、蛋白質の治療活性は低下する。アポトーシス−誘導蛋白質分解は、成熟植物からの蛋白質の収率を有意に減少させることができる。本発明の方法を用い、蛋白質が植物から抽出される瞬間まで収穫を行わない場合、アポトーシスは回避することができる。
【0060】
例えば、生きた芽を粉砕し、破砕し、またはブレンドして、プロテアーゼ阻害剤を含有する緩衝液中の発芽種苗バイオマスのスラリーを生じさせることができる。緩衝液は約4℃に維持することができる。いくつかの態様において、発芽種苗バイオマスは風乾し、噴霧乾燥し、凍結し、または凍結乾燥される。成熟植物におけるように、風乾のようなこれらの方法のいくつかの結果、医薬蛋白質の活性の喪失がもたらされるであろう。しかしながら、発芽種苗は非常に小さく、容量に対する表面積の大きな比率を有するので、これはあまり起こりそうにない。当業者であれば、発現された蛋白質の蛋白質分解を最小化するバイオマスを収穫するための多くの技術が利用でき、本発明に適用できるであろうことを認識するであろう。
【0061】
いくつかの具体例において、発芽種苗は食べることができる。ある具体例において、十分なレベルのHPV抗原を発現する発芽種苗は、発芽種苗が消費される前に絶対的にプロセッシングが起こらないように、発芽に際して(例えば、収穫直後に、収穫に続いて最小期間内に)十分なレベルのHPV抗原を発現する発芽種苗を消費する。このようにして、治療を必要とする患者へのHPV抗原の投与の前のHPV抗原のいずれかの収穫−誘導蛋白質分解は最小化される。例えば、消費する準備ができている発芽種苗は患者に直接的に送達することができる。別法として、あるいは、加えて、遺伝子工学により作製された種子または胚は治療を必要とする患者に送達され、患者によって発芽種苗段階まで成長させられる。1つの態様において、ある望ましいHPV抗原を発現する発芽種苗の連続的ストックを栽培できるように、遺伝子工学により作製された発芽種苗の供給は患者、または患者を治療する医師に供される。これは、高価な医薬が提供または送達できない開発途上国における集団に対して特に価値があるであろう。本発明の発芽種苗を成長させることができる容易性は、本発明の発芽種苗をそのような開発国集団で特に望ましいものとする。
【0062】
封じ込まれた環境の調節可能な性質は、アウトドア環境における植物の成長よりも優れた利点を本発明に対して付与する。一般に、植物において医薬蛋白質を発現する遺伝子工学により作製された発芽種苗の成長は、(植物はより若くして収穫されるゆえに)より速い医薬製品を、遺伝子工学により作製された植物の成長よりも少ない努力、危険性および調節の考慮でもって提供する。本発明で用いる封じ込まれた調節可能な環境は、性質上人工受粉植物の危険性を低下させ、または排除する。
【0063】
例えば、アウトドア温度は制御することができないゆえに、熱誘導性プロモーターはアウトドアであまり用いられないであろう。プロモーターは、アウトドア温度があるレベルを超えて上昇した時点でスイッチが入れられるであろう。同様に、プロモーターはアウトドア温度が降下するごとにスイッチが切られるであろう。そのような温度シフトは1日内で起こる可能性があり、例えば、日中に発現のスイッチを入れ、夜間にスイッチを切る。本明細書中に記載されたもののような熱誘導性プロモーターは、気候のシフトに対してアウトドアとほとんど同程度感受性である温室で用いるのには現実的ではないであろう。温室における遺伝子工学により作製された植物の成長はかなりコストがかかる。対照的に、本システムにおいては、発現の最大量を各収穫で達成できるように、あらゆる変数を制御することができる。
【0064】
ある具体例において、本発明の発芽種苗は、発芽種苗の発生の間のいずれの時点においても水を与え、スプレイし、または霧状で与えることができるトレイ中で成長させる。例えば、トレイは、発芽種苗の発生の間に、特定の時点にて、かつ正確な量で、水、栄養素、化学物質等を送達し、および/または除去することができる1以上の水やり、スプレイイング、ミスティングおよび排出装置を嵌合させてもよい。例えば、種子はそれを湿った状態で保つのに十分な水分を必要とする。過剰な水分は、トレイ中の穴を通って部屋の床中のドレインまで排出される。典型的には、ドレナージ水は、環境へ排出されて戻される前に有害な化学物質の除去のために適切に処理される。
【0065】
トレイのもう1つの利点は、それが非常に小さな空間内に含むことができることである。発芽種苗が成長するのに光は必要でないので、種子、胚、または発芽種苗を含有するトレイはもう1つの頂部に垂直に密に積むことができ、これらの目的で特別に構築された収容施設における単位床空間当たり多量のバイオマスを提供する。加えて、トレイのスタックは収容ユニット内に水平の列で配置することができる。一旦実生が収穫に適し段階まで成長したならば(約2ないし14日)、個々の実生トレイを処理施設へ手動で、あるいはコンベアベルトのような自動手段によって移動させる。
【0066】
本発明のシステムは、それが、HPV抗原の源である発芽種苗バイオマスを提供する点でユニークである。直接的に消費されるか、あるいは医薬組成物の形態に加工されるかを問わず、発芽種苗は封じ込められた調節可能な環境で成長させるゆえに、発芽種苗バイオマスおよび/または該バイオマスに由来する医薬組成物は低コストで消費者に提供することができる。加えて、発芽種苗の成長の条件は制御できるという事実は、製品の品質および純度を一定のものとする。本発明の封じ込められた調節可能な環境は、科学者が野外で遺伝子工学により作製された農業産物を成長させるのを妨げ得るEPAの多くの安全性規制を避ける。
【0067】
形質転換された芽
種々の方法を用いて、植物細胞を形質転換し、遺伝子工学により作製された発芽された実生を生産することができる。トランスジェニック植物細胞株がイン・ビトロで作製されることを必要とする植物の形質転換、続いての、細胞株の全植物への再生の2つの利用可能な方法は、Agrobacterium tumefaciens媒介遺伝子導入およびマイクロインジェクタイル衝撃またはエレクトロポレーションを含む。ウイルス形質転換は、所望の産物を得るに先立って実験的または世代的遅延無くして収穫することができる、肺および発芽種苗を形質転換するより迅速かつ高価でない方法である。これらの技術のいずれについても、当業者であれば、伝統的には植物、種子、胚または発芽種苗で用いられてきた形質転換プロトコルをどのようにして調整し、最適化するかを認識するであろう。
【0068】
Agrobacterium形質転換発現カセット
Agrobacteriumはグラム陰性のRhizobiaceae科の代表的な属である。この種はクラウンゴールおよび毛根病のような植物腫瘍の原因である。腫瘍に特徴的な脱分化植物組織においては、オパインとして知られたアミノ酸誘導体はAgrobacteriumによって生産され、植物によって異化される。オパインの発現を担う細菌遺伝子は、キメラ発現カセットのための制御エレメントの便利な源である。本発明によると、Agrobacterium形質転換系を用いて、単に成熟植物よりも早く収穫される食用発芽実生を作製することができる。Agrobacterium形質転換方法は、HPV抗原を発現する発芽実生を再生するのに容易に適用することができる。
【0069】
一般に、植物の形質転換は、植物/細菌ベクターを運ぶAgrobacterium tumefaciensとの共−栽培による組織培養で成長させた植物細胞の形質転換を含む。該ベクターは、HPV抗原をコードする遺伝子を含有する。Agrobacteriumは該ベクターを植物宿主細胞に導入し、次いで、抗生物質処理を用いて排除する。HPV抗原を発現する形質転換された植物細胞を選択し、分化させ、最後に、完全な小植物に再生する(その各々をここに引用して援用するHellensら、2000,Plant Mol.Biol.,42:819;Pilon−Smitsら、1999,Plant Physiolog.,119:123;Barfieldら、1991,Plant Cell Reports,10:308;およびRivaら、1998,J.Biotech.,1(3))。
【0070】
本発明で用いる発現ベクターは、発現カッセットの上流および下流のコンパニオン配列と共に、植物における操作のために設計されたHPV抗原をコードする遺伝子(または発現カセット)を含む。コンパニオン配列は、一般には、プラスミドまたはウイルス起源のものであり、ベクターが細菌からのDNAを所望の植物宿主に導入するための必要な特徴を提供する。
【0071】
基本的な細菌/植物ベクター構築体は、望ましくは、広い宿主範囲の原核生物複製起点、原核生物選択マーカーを供することができる。適当な原核生物選択マーカーは、アンピシリンまたはテトラサイクリンのような抗生物質に対する耐性を含む。当該分野で良く知られた更なる機能をコードする他のDNA配列をベクターに存在させることができる。
【0072】
Agrobacterium T−DNA配列は、植物染色体へのDNAのAgrobacterium 媒介導入で必要である。T−DNAの腫瘍−誘導遺伝子は、典型的には、除かれ、HPV抗原をコードする配列で置き換えられる。T−DNA境界配列は保持される。何故ならば、それはT−DNA領域の植物ゲノムへの組込みを開始するからである。もしHPV抗原の発現が検出で容易に使用できないならば、細菌/植物ベクター構築体は、植物細胞が形質転換されているかを決定するのに適した選択マーカー遺伝子、例えば、nptIIカナマイシン耐性遺伝子を含むことができる。同一または異なる細菌/植物ベクター(Tiプラスミド)上にはTi配列がある。Ti配列はビルレンス遺伝子を含み、これはT−DNAの切出し、T−DNAの植物ゲノムへの導入および組込みを担う蛋白質の組をコードする(Schell,1987,Science,237:1176)。異種配列の植物ゲノムへの組込みを行うのに適した他の配列は、相同組換えのためのトランスポゾン配列等を含むことができる。
【0073】
ある構築体は、抗原蛋白質をコードする発現カセットを含むであろう。1、2またはそれ以上の発現カセットを所与の形質転換で用いることができる。組換え発現カセットは、HPV抗原をコードする配列に加えて、少なくとも以下のエレメント:プロモーター領域、植物5’非翻訳配列、(発現された遺伝子がそれ自身を有するか否かに応じて)開始コドン、ならびに転写および翻訳終止配列を含有する。加えて、転写および翻訳ターミネーターを本発明の発現カセットまたはキメラ遺伝子に含めることができる。蛋白質のプロセッシングおよびトランスローケーションを可能とするシグナル分泌配列は、適切には、発現カセットに含めても良い。種々のプロモーター、シグナル配列、および転写および翻訳ターミネーターは記載されている(例えば、ここに引用して援用するLawtonら、1987,Plant Mol.Biol.,9:315;および米国特許第5,888,789号参照)。加えて、構成物質耐性のための構造遺伝子は選択因子として通常利用される(ここに引用して援用するFraley et al.1983,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,80:4803)。カセットの5’および3’末端におけるユニークな制限酵素部位は、予め存在するベクターへの容易な挿入を可能とする。少なくとも1つのT−DNA境界配列を運ぶ、Agrobacterium−媒介形質転換のための他のバイナリーベクター系は、ここに引用して援用するPCT/EP99/07414に記載されている。
【0074】
再生
形質転換された植物の種子を収穫し、乾燥し、正常化し、生存性について、および所望の遺伝子産物の存在および発現についてテストすることができる。一旦これが決定されたならば、種子ストックは、典型的には、必要な場合に用いるべき温度、湿度、衛生および安全性の適当な条件下で貯蔵される。次いで、全植物を培養されたプロトプラストから再生することができる(例えば、ここに引用して援用するEvansら、Handbook of Plant Cell Cultures,Vol.1,MacMillan Publishing Co.,New York,1983;およびVasil I.R.(ed.),Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants, Acad. Press, Orlando,Vol.I,1984,and Vol.III,1986参照)。ある態様においては、植物が発芽種苗段階へのみ再生される。いくつかの態様において、全植物を再生して、種子ストックを生産し、発芽種苗は種子ストックの種子から再生される。
【0075】
それからプロトプラストを単離し、培養して、全再生植物を得ることができる全ての植物は、導入された遺伝子を含有する全植物が回収されるように、本発明によって形質転換することができる。現実的には、全ての植物は限定されるものではないが、食べることができる芽を生産する植物の全ての主な種を含めた培養された細胞または組織から再生することができるのが公知である。いくつかの適当な植物はアルファルファ、緑豆、ラディッシュ、小麦、カラシ、ほうれん草、人参、砂糖ラディッシュ、タマネギ、ニンニク、セロリ、大黄、キャベツまたはレタスのような葉の多い植物、オランダガラシまたはクレス、パセリ、ミントまたはクローバのような薬草、カリフラワー、ブロッコリー、大豆、レンズ豆、ヒマワリ等のような食用花を含む。
【0076】
再生のための手段は植物の1つの種から次の種で変化する。しかしながら、当業者であれば、一般には、異種遺伝子のコピーを含有する形質転換されたプロトプラストの懸濁液が先ず提供されることを認識するであろう。カルス組織が形成され、新芽がカルスから誘導でき、引続いて発根させることができる。別法として、または加えて、胚形成はプロトプラスト懸濁液から誘導することができる。これらの胚は天然の胚として発芽して、植物を形成する。種子を水に浸し、または種子に水をスプレイして、種子の水分含有量を35ないし45%の間まで増加させると、発芽が開始する。発芽を進行させるためには、種子を、典型的には、制御された温度および空気流条件下で、水で飽和した空気中に維持する。培養基は、一般には、種々のアミノ酸、およびオーキシンおよびサイトカイニンのようなホルモンを含有するであろう。特に、アルファルファのような種では、グルタミン酸およびプロリンを培地に加えるのが有利である。新芽および根は通常は同時に発生する。有効な再生は、培地、遺伝子型、および培養の履歴に依存するであろう。もしこれらの3つの変数が制御できれば、再生は十分に再現性がありかつ反復可能である。
【0077】
形質転換された植物細胞から成長させた成熟植物は自己化されており、非−分離性ホモ接合性トランスジェニック植物は同定される。同系交配植物は本発明の抗原をコードする配列を含有する種子を生産する。そのような種子を発芽させ、発芽種苗段階まで成長させて、本発明によるHPV抗原を得る。
【0078】
関連する具体例において、本発明の種子は種子産物に形成することができ、投与、または医薬組成物への収穫のために実生をどのようにして適切な発芽実生段階まで成長させるかについての指示書と共に販売できる。いくつかの関連する具体例において、所望の特性を具体化するハイブリッドまたは新規な品種を本発明の同系交配植物から発生させることができる。
【0079】
直接的組込み
マイクロプロジェクタイル衝撃またはエレクトロポレーションによるDNA断片の植物細胞のゲノムへの直接的組込みを本発明で用いることができる(例えば、Kikkertら、1999,Plant:J.Tissue Cult.Assoc.,35:43;およびBates,1994,Mol.Biotech,2:135参照)。より特別には、本発明のHPV抗原を発現するベクターは、種々の技術によって植物細胞に導入することができる。前記したように、ベクターは植物細胞で用いるために選択マーカーを含むことができる。ベクターは、複製起点および選択マーカーを含有する配列のような、二次宿主におけるその選択および増殖を可能とする配列を含むことができる。典型的には、二次宿主は細菌および酵母を含む。1つの具体例において、二次宿主は細菌(例えば、Escherichia coli、複製の起点はcolE1−タイプの複製の起点である)であり、選択マーカーはアンピシリン耐性をコードする遺伝子である。そのような配列は当該分野で良く知られており、商業的に入手可能である(例えば、Clontech,Palo Alto,CA またはStratagene,La Jolla,CA)。
【0080】
本発明のベクターは、Agrobacterium tumefaciensベクターに対する相同性の領域、Agrobacterium tumefaciensからのT−DNA境界領域、および前記した抗原をコードする核酸または発現カセットを含有する中間植物形質転換プラスミドへ修飾することができる。さらなるベクターは、Agrobacterium tumefaciensの武装していない植物腫瘍誘導プラスミドを含むことができる。
【0081】
この具体例によると、本発明のベクターの直接的形質転換は、マイクロピペットの使用によりベクターを植物細胞に直接的にマイクロインジェクションして、機械的に組換えDNAを導入することを含むことができる(例えば、ここに引用して援用するCrossway,1985,Mol.Gen.Genet.,202:179参照)。遺伝物質をポリエチレングリコールを用いて植物細胞に導入することができる(例えば、Krensら、1982,Nature,296:72参照)。核酸を小さなビーズまたは粒子のマトリックス内、または表面に核酸を含む小さな粒子による高速弾丸貫入を介して核酸を植物に導入するもう1つの方法(例えば、Kleinら、1987,Nature,327:70;Knudsenら、1991,Planta,185:330参照)。導入のさらにもう1つの方法は、他の存在、ミセル、細胞、リソソームまたは他の融合可能な脂質−表面化体いずれかでのプロトプラストの融合である(例えば、Fraleyら、1982,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,79:1859参照)。本発明のベクターはエレクトロポレーションによって植物細胞に導入することができる(例えば、Fromm et al.1985,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,82:5824参照)。この技術に従うと、遺伝子構築体を含有するプラスミドの存在下で、植物プロトプラストをエレクトロポレーション付す。高い場の強度の電気的インパルスは、生体膜を可逆的に浸透させ、プラスミドの導入を可能とする。エレクトロポレーションに付された植物プロトプラストは細胞壁を再度形成し、分裂し、植物カルスを形成し、これは再生して、本発明の発芽種苗を形成することができる。当業者は、これらの方法をどのようにして利用して、食べられる発芽実生を作製するのに用いることができる植物細胞を形質転換するのを認識するであろう。
【0082】
ウイルス形質転換
慣用的な発現系と同様に、植物ウイルスベクターを用いて、全長抗原を含めた全長蛋白質を生産することができる。本発明によると、植物ウイルスベクターを用いて、種子、胚、発芽実生等、ウイルス系を感染させ、その中で抗原を生産することができ、これを用いて、短いペプチドから長い複雑な蛋白質の全てを発現することができる。具体的には、トバモウイルスベクターの使用が記載されている(例えば、その各々をここに引用して援用するMcCormick et al.1999,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,96:703;Kumagaiら、2000,Gene,245:169;およびVerchら、1998,J.Immunol.Methods,220:69参照)。かくして、植物ウイルスベクターは、短いペプチドならびに長い複雑な蛋白質を発現させ証明された能力を有する。
【0083】
ある具体例において、HPV抗原を発現するトランスジェニック芽は宿主/ウイルス系を利用して作製される。ウイルス感染によって生産されたトランスジェニック芽は、既に安全であることが示されているトランスジェニック蛋白質の源を提供する。例えば、芽は動物病原体での汚染がない。例えば、タバコとは異なり、食用芽からの蛋白質は少なくとも理論的には精製なくして経口適用で用いることができ、かくして、コストをかなり低下させる。加えて、ウイルス/芽系はスケールアップおよび製造のためのかなり単純な効果ではない経路を提供する。というのは、導入遺伝子はウイルスに導入され、これは、数日内に商業的規模まで成長させることができるからである。対照的に、トランスジェニック植物は、十分な種子または植物材料が大規模な試験または商業化のために利用可能となる前に5ないし7年までを必要としかねない。
【0084】
本発明によると、RNAウイルスはある利点を有し、これはそれを外来性蛋白質発現用のベクターとして魅力的なものとする。多数の植物RNAウイルスの分子生物学および病理学はよく特徴付けられており、ウイルス生物学、遺伝学、および調節配列のかなりの知識がある。ほとんどの植物RNAウイルスは小さなゲノムを有し、感染性cDNAクローンは、遺伝子操作を容易とするのに利用できる。一旦感染性ウイルス物質が罹患性宿主細胞に入れば、それは高いレベルまで複製され、迅速に、全発芽実生全体に渡って拡大する(接種後1ないし10日)。ウイルス粒子は、感染した発芽実生組織から容易にかつ経済的に回収される。ウイルスは広い宿主範囲を有し、いくつかの罹患性種の感染様の単一構築体の使用を可能とする。これらの特徴は容易に芽に移すことができる。
【0085】
外来性配列は、典型的には、ウイルス遺伝子の1つを所望の配列で置き換えることによって、外来性配列を適当な位置にてウイルスゲノムに挿入することによって、または外来性ペプチドをウイルスの構造蛋白質に融合することによって、植物RNAウイルスから発現させることができる。さらに、これらのアプローチのいずれかを組み合せて、ウイルスのウイルス機能のトランス−補充によって外来性配列を発現させることができる。多数の異なる戦略が、タバコモザイクウイルス(TMV)、アルファルファモザイクウイルス(AlMV)およびそのキメラを用いてウイルス−感染植物において外来性配列を発現させるためのツールとして存在する。
【0086】
AlMVのゲノムは、ウイルスのBromoviridae科の代表であり、3つのゲノムRNA(RNA1−3)およびサブゲノムRNA(RNA4)よりなる。ゲノムRNAs1および2は、各々、ウイルスレプリカーゼ蛋白質P1および2をコードする。ゲノムRNA3は細胞間移動蛋白質P3およびコート蛋白質(CP)をコードする。CPはサブゲノムRNA4から翻訳され、これはゲノムRNA3から合成され、感染を開始させるのに必要である。研究は、ゲノム活性化、複製、RNA安定性、兆候形成、およびRNAカプセル化を含めた、多数の機能におけるCPの関与を示している(例えば、Bolら、1971,Virology,46:73;Van Der Vossenら、1994,Virology 202:891;Yusibovら、Virology,208:405;Yusibov et al.1998,Virology,242:1;Bolら、(Review,100 refs.),1999,J.Gen.Virol.,80:1089;De Graaff,1995,Virology,208:583;Jasparsら、1974,Adv.Virus Res.,19:37;Loesch−Fries,1985,Virology,146:177;Neelemanら、1991,Virology,181:687;Neelemanら、1993,Virology,196:883;Van Der Kuylら、1991,Virology,183:731;and Van Der Kuylら、1991,Virology,185:496参照)。
【0087】
ウイルス粒子のカプセル化は、典型的には、種子、胚または発芽種苗の接種された部分から接種されていない部分への長距離移動のためおよび全身感染のために必要である。本発明によると接種は植物発生のいずれの段階においても起こり得る。胚および芽においては、接種されたウイルスの拡大は非常に迅速なはずである。AlMVのビリオンは、1を超えるタイプの粒子を形成するユニークなCP(24kD)によってキャプシドで包まれる。粒子のサイズ(長さが30−ないし60−nm、直径が18nm)および形状(球、楕円体または桿状)は、キャプシドで包まれたRNAのサイズに依存する。組み立てに際して、AlMV CPのN−端末はウイルス粒子の表面に位置すると考えられ、ウイルス組み立てに干渉するように見えない(Bolら、1971,Virology,6:73)。加えて、そのN−末端においてさらに38−アミノ酸ペプチドを持つAlMV CPはイン・ビトロで粒子を形成し、生物学的活性を保持する(Yusibovら、1995,J.Gen.Virol.,77:567)。
【0088】
AlMVは広い宿主範囲を有し、これは、植物の種子、胚および芽を含めた多数の農業的に価値ある作物、植物を含む。一緒にすると、これらの特徴はAlMV CPを担体分子としての優れた候補とし、AlMVを、発生の芽段階における植物での外来性配列の発現用の魅力的な候補ベクターとする。さらに、TMVのような異種ベクターからの発現に際して、AlMV CPはウイルス感染性に干渉することなくTMPゲノムをキャプシドで包む(ここに引用して援用するYusibovら、1997,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,94:5784)。これは、外来性配列に融合したAlMV CPについての担体ウイルスとしてのTMVの使用を可能とする。
【0089】
TMV、トバモウイルスのプロトタイプは、棹−形状の粒子(長さが300nm)をもたらす、17.0kD CPでキャプシド化された単一のプラス−センスRNAよりなるゲノムを有する。CPはTMVの唯一の構造蛋白質であり、キャプシド化、および感染した宿主におけるウイルスの長距離移動で必要である(Saitoら、1990, Virology, 176:329)。183および126kD蛋白質はゲノムRNAから翻訳され、ウイルス複製で必要である(Ishikawaら、1986,Nuc.Acids Res.,14:8291)。30kD蛋白質はウイルスの細胞間移動蛋白質である(Meshiら、 1987,EMBO J., 6:2557)。移動およびコート蛋白質はサブゲノムmRNAから翻訳される(その各々をここに引用して援用するHunterら、1976,Nature,260:759;Brueningら、1976,Virology,71:498;およびBeachyら、1976,Virology,73:498)。
【0090】
植物組織を形質転換する他の方法は植物の花の形質転換を含む。Arabodopsis thalianaの形質転換は、Agrobacterium tumefaciensの溶液に植物の花を浸すことによって達成することができる(Curtisら、2001,Transgenic Res.,10:363;and Qingら、2000,Molecular Breeding:New Strategies in Plant Improvement,1:67)。形質転換された植物は、「浸された」植物によって生じた種子の集団において形成される。花の発生の間における特定の地点において、それを通ってAgrobacterium tumefaciensが子房の内部へのアクセスを獲得する子房壁に存在する。一旦子房の内部に入れば、Agrobacterium tumefaciensは増殖し、個々の胚珠を形質転換する(Desfeuxら、2000,Plant Physiology,123:895)。形質転換された胚珠は、子房内での種子形成の典型的な経路に従う。
【0091】
抗原の生産および単離
一般に、当該分野で公知の標準的な方法は、抗原の生産のために、本発明の植物、植物細胞、および/または植物組織(例えば、クローン植物、クローン植物細胞、クローン根、クローン根株、芽、発芽種苗、植物等)を培養し、成長させるのに用いられるであろう。広く種々の培養基および培養リアクターが、毛根細胞、根細胞株、および宿主細胞(例えば、その全てをここに引用して援用するGiriら、2000,Biotechnol.Adv.,18:1;Raoら、2002,Biotechnol.Adv.,20:101;および前記の双方における文献参照)を培養するのに使用されてきた。クローン植物はいずれかの適当な方法で成長させることができる。
【0092】
ある具体例において、本発明のHPV抗原はいずれかの公知の方法によって生産することができる。いくつかの具体例においてHPV抗原は植物またはその部分において発現される。蛋白質を当該分野で公知の慣用的な条件および技術に従って、蛋白質を単離し、精製する。これらは抽出、沈殿、クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー電気泳動などの方法を含む。本発明は、本明細書中に記載されたウイルス植物発現系を含めた、当該分野で公知であって、本明細書中で提供される種々の植物発現系のいずれかを用いるHPV抗原の精製、および該抗原の生産の提供可能なスケールアップを含む。
【0093】
本発明の多くの具体例において、ワクチン抗原産物を単離するのが望ましいであろう。本発明の蛋白質を植物組織またはその部分、例えば、それを発現する根、根細胞、植物、植物細胞から生産する場合、本明細書中でさらに詳細に記載する方法、あるいは当該分野で公知のいずれかの適応可能な方法を植物材料からの部分的または完全な単離いずれかで用いることができる。それを発現する植物細胞または組織のいくつかまたは全てからの発現産物を単離するのが望ましい場合、いずれかの利用可能な精製技術を使用することができる。当業者であれば、広い範囲の分画および分離手法に精通している(例えば、その各々をここに引用して援用するScopesら、Protein Purification:Principles and Practice,3rd Ed.,Jansonら、1993;Protein Purification: Principles,High Resolution Methods,and Applications,Wiley−VCH,1998;Springer−Verlag,NY,1993;and Roe,Protein Purification Techniques,Oxford University Press,2001参照)。しばしば、産物を約50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を超える純度とするのが望ましいであろう。植物組織または流体から物質を精製するのに有用なある方法の議論については米国特許第6,740,740号および第6,841,659号参照。
【0094】
また、当業者であれば、所望のワクチン製品を得る方法は抽出によることも認識するであろう。植物の材料(例えば、根、葉など)を抽出して、残存するバイオマスから所望の産物を取り出し、それにより、産物の濃度および純度を増加させる。植物は緩衝溶液中で抽出することができる。植物材料を、例えば、リン酸緩衝液で緩衝されている重量だけ1:1の比率の氷−冷水の量に移すことができる。プロテアーゼ阻害剤は必要に応じて加えることができる。植物材料は、緩衝溶液に懸濁しつつ、激しいブレンディングまたは粉砕によって破壊することができ、抽出されたバイオマスは濾過または遠心によって取り出される。溶液中で運ばれる産物はさらなる工程によってさらに精製し、あるいは凍結乾燥または沈殿によって乾燥粉末に変換することができる。抽出はプレシングによって行うことができる。植物または根はプレスすることによって、または粉砕することによって抽出することができる。というのも、それは近く間隔を設けられたローラーを通過させるからである。粉砕された植物または根から発現された流体を収集し、当該分野で良く知られた方法に従って処理する。プレシングによる抽出は、より濃縮された形態の産物の放出を可能とする。しかしながら、産物の総じての収率は、もし産物を溶液中に抽出すればそれよりも低いであろう。
【0095】
ワクチン
本発明は、HPV感染の治療的および/または予防的処置のワクチンとしての抗原蛋白質またはその免疫原性部分のような治療的使用のための医薬抗原蛋白質を提供する。さらに、本発明の、動物用途を提供する。というのは、そのような抗原蛋白質またはその免疫原性部分は動物適用において活性だからである。ある具体例において、抗原は、本発明の植物またはその部分(例えば、根、細胞、芽、細胞株、植物等)によって生産することができる。ある具体例において、提供されるHPV抗原は植物、植物細胞、および/または植物組織(例えば、芽、発芽種苗、根、根培養、クローン細胞、クローン細胞株、クローン植物等)で発現され、植物から直接的に用いることができるか、あるいは対象への医薬投与のための調製において部分的に精製され、または精製することができる。
【0096】
本発明は、それを必要とする対象に投与した場合の医薬活性を維持する抗原を発現する植物、植物細胞、および植物組織を提供する。ある具体例において、対象は脊椎動物(例えば、ヒトのような哺乳動物)を含む。本発明によると、対象はウシ、ヒツジ、イヌ、ネコなどのような動物対象を含む。ある態様において、食用植物またはその部分(例えば、芽、根)は治療上有効な量にて対象に経口投与される。いくつかの態様において、1以上のHPV抗原は本明細書中に記載されたように医薬調製で提供される。
【0097】
本発明のワクチン組成物は1以上のHPV抗原を含む。ある具体例において、本発明の少なくとも2つのHPV抗原は投与されたワクチン組成物に含まれる。
【0098】
本発明によると、対象のワクチン抗原での治療は、生理学的効果を誘導することを意図する。ワクチン蛋白質は、障害または病気に対する治癒または緩和的特徴を有することができ、投与して病気または障害の兆候または重症度を軽減し、救済し、緩和し、その開始を遅延させ、逆行させ、または小さくすることができる。ワクチン抗原は予防的特性を有することができ、これを用いて、病気の開始を妨げ、または遅延させ、あるいはそれが出現する場合、そのような病気または障害、または病理学的疾患の重症度を低下させることができる。本発明による抗原での対象の治療によって誘導された生理学的効果は生物による感染が阻止されるように、有効な免疫系を含むことができる。
【0099】
いくつかの具体例において、本発明のワクチンは経口および/または粘膜経路によって送達される。経口および/または粘膜送達は、粘膜組織の感染、多くの病原体についての感染の主な入口を妨げる潜在能力を有する。経口および/または粘膜送達は全身免疫応答を用意することができる。粘膜−免疫系を刺激し、全身免疫を用意することができる抗原の経口投与用の異種発現系の開発においてかなりの進歩があった。しかしながら、経口ワクチン送達における以前の努力は、効果を達成するにおいてかなりの量の抗原に対する要件を示してきた。かくして、多量の標的抗原の経済的生産は、効果的な経口ワクチンの創製のための前提要件である。熱安定性抗原を含めた抗原を発現する植物の発生は、そのような困難に対するより現実的なアプローチを表す。
【0100】
本発明の医薬製剤は、例えば、経口、鼻腔内、腸内、非経口、筋肉内、または静脈内、直腸、膣内、局所、眼内、肺内、あるいは接触適応によるような広く種々の方法にて対象に投与することができる。ある具体例において、植物またはその部分で発現されたHPV抗原は、植物の対象への直接的投与によって対象に経口投与される。いくつかの態様において、植物またはその部分において発現されたワクチン蛋白質は抽出され、および/または精製され、医薬組成物の調製で用いられる。その意図された使用についても(例えば、医薬剤、ワクチン組成物などとしての)そのような単離された産物を処方するのが望ましいであろう。いくつかの具体例において、それを発現する植物組織のいくらかまたは全てと一緒に産物を処方するのが望ましいであろう。
【0101】
産物を植物物質とともに処方するのが望ましい場合、しばしば、関連受容体(例えば、ヒトまたは他の動物に対して毒性でない植物)を利用したのが望ましいであろう。関連植物組織(例えば、細胞、根、葉)を単に収穫し、発現された産物の活性を維持する必要な考慮をなして、当該分野で公知の技術に従って処理することができる。本発明のある具体例において、該物質が引き続いて食べることができるように、ワクチン抗原が食用植物において(および特に、植物の食用部分において)発現されたことが望ましい。例えば、ワクチン抗原が(適切に処方された場合に)経口送達後に活性である場合、抗原蛋白質を食用植物部分に生産し、蛋白質がそれと共に発現された植物物質のいくつかまたは全てと一緒に経口送達のための発現されたワクチン抗原を処方するのが望ましいであろう。
【0102】
提供されたワクチン抗原は公知の技術に従って、処方することができる。例えば、有効量のワクチン産物を、1以上の有機または無機の、液体または固体の医薬上適当な担体物質と共に処方することができる。本発明によって生産されたワクチン抗原は、蛋白質の生物学的活性がそのような投与形態によって破壊されない限り、錠剤、カプセル、トローチ、分散液、懸濁液、溶液、ゲルキャップ、丸剤、カプレット、クリーム、軟膏、エアロゾル、粉末パケット、液体溶液、溶媒、希釈剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤、乳化剤、保存剤、および固体結合剤のような投与形態で使用することができる。
【0103】
一般に、組成物は種々の異なる医薬上許容される担体、アジュバント、ビヒクル、あるいは1以上のそのような担体、アジュバント、またはビヒクルの組合せのいずれかを含むことができる。本明細書中で用いるように用語「医薬上許容される担体、アジュバントまたはビヒクル」は、医薬投与に適合した、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌、および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含む。医薬上許容される担体として働くことができる物質は、限定されるものではないが、ラクトース、グルコースおよびスクロースのような糖;トウモロコシ澱粉およびジャガイモ澱粉のような澱粉;セルロース、ならびにナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよび酢酸セルロースのような誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオバターおよび坐薬ワックスのような賦形剤;落花生油、綿実油、サフラワー油、胡麻油、オリーブ油、トウモロコシ油、大豆油のような油;プロピレングリコールのようなグリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルのようなエステル;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのような緩衝剤;アルギン酸;パイロジェン−フリー水;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝溶液、ならびにラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムのような他の非−毒性適合性滑沢剤、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、フレーバー剤、および香料剤、保存剤、および抗酸化剤を含み、処方者の判断に従って、組成物に存在させることができる(Remington’s Pharmaceutical Sciences,Fifteenth Edition,E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1975参照)。例えば、ワクチン抗原産物は、慣用的な混合顆粒糖衣錠−作成、溶解、凍結乾燥、または同様なプロセスによって医薬組成物として提供することができる。
【0104】
さらなるワクチン成分
本発明のワクチンは、加えて、対象に投与した場合にワクチンの免疫原性を高めるためにいずれかの適当なアジュバントを含むことができる。例えば、そのようなアジュバントが限定されるものではないが、Quil A および QS−21のような食品グレードのQSの精製されたサブ画分を含めたQuillaja saponaria(QS)の抽出物、ミョウバン、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、MF59、Malp2
フロイントの不完全アジュバント;フロイントの完全アジュバント;3デ−O−アシル化モノホスホリル脂質A(3D−MPL)を含むことができる。さらなるアジュバントは免疫変調オリゴヌクレオチド、例えば、WO 96/02555に開示されたメチル化されていないCpG配列を含むことができる。前記したもののような異なるアジュバントの組合せは、TH1細胞応答の好ましい刺激剤であるアジュバントを提供するものと考えられる。例えば、QS21は3D−MPLと一緒に処方することができる。QS21:3D−MPLの比率は典型的には、1:10ないし10:1;1:5ないし5:1のオーダーで;およびしばしば、実質的に1:1である。いくつかの具体例において、最適なシネルギーについての範囲は2.5:1ないし1:1 3D−MPL:QS21である。ヒトワクチン処方で用いるのに適した精製されたQS抽出物の用量は、体重キログラムあたり0.01mgないし10mgである。
【0105】
ある熱安定性蛋白質(例えば、リケナーゼ)は、それ自体、HPV抗原と融合されたまたは別々であるかを問わず、そのような蛋白質の使用がアジュバントの使用と考えることができるように、免疫抑制増強活性を示す。かくして、本発明のワクチン組成物は、さらに、1以上のアジュバントを含むことができる。あるワクチン組成物は2以上のアジュバントを含むことができる。さらに、処方および投与の経路に依存して、あるアジュバントは特定の処方および/または組合せで望まれるであろう。
【0106】
ある状況においては、皮下または筋肉内注射されるワクチン産物(例えば、蛋白質)の1以上の成分の吸収を遅らせることによって本発明のワクチンの効果を延長することが望ましいであろう。これは、貧弱な水溶解度を持つ結晶性またはアモルファス物質の液体懸濁液の使用によって達成することができる。従って、産物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、これは、今度は、サイズおよび形態に依存するであろう。別法として、または加えて、非経口投与される産物の遅延された吸収は、産物を油ビヒクルに溶解または懸濁させることによって達成される。注射デポ形態は、ポリラクチド−ポリグリコイドのような生分解性ポリマー中の蛋白質のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作られる。ポリマーに対する比率、および使用する特定のポリマーの性質に応じて、放出の速度を制御することができる。生分解性ポリマーの例はポリ(オルトエステル)およびポリ(アンヒドリド)を含む。デポ注射処方は、産物を、体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルジョン中に捕獲することによって調製することができる。経口処方には、代替ポリマー送達ビヒクルを用いることができる。例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸のような生分解性生体適合性ポリマーを用いることができる。抗原またはその免疫原性部分は、例えば、ポリマー送達ビヒクルと組合せてミクロ粒子として処方することができる。
【0107】
ワクチン抗原の腸内投与された製剤は固体、半−固体、懸濁液またはエマルジョン形態に導入することができ、水、懸濁化剤および乳化剤のようないずれかの医薬上許容される担体とで調合することができる。抗原は、特に、本発明の尺度として投与して、対象において病気の発生を妨げ、あるいは既に樹立された病気を軽減し、または遅延するように、ポンプまたは持続−放出形態によって投与することができる。補充的活性化合物、例えば、治療すべき病気または臨床的疾患に対して独立して活性な化合物、または本発明の化合物の活性を高める化合物を組成物に配合し、または一緒に投与することができる。フレーバーおよび着色剤を用いることができる。
【0108】
所望により植物組織と一緒にした本発明のワクチン産物は、医薬組成物としての経口投与に特別よく適している。経口液体処方を用いることができ、小児科人口についての特別な利用性のものとすることができる。所望の治療産物およびその所望の形態の特性に依存して、収穫された植物物質は種々の方法(例えば、風乾、凍結乾燥、抽出等)のいずれかで加工することができる。前記したそのような組成物は単独で経口摂取することができ、あるいは食品または食事または飲料と共に摂取することができる。経口投与用の組成物は植物;植物の抽出、および乾燥粉末として供された感染植物から精製された蛋白質、食料品、水性もしくは非−水性溶媒、懸濁液、またはエマルジョンを含む。非−水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、魚油、および注射可能な有機エステルである。水性担体は、セーラインを含めた、水、水−アルコール溶媒、エマルジョンまたは懸濁液、ならびに塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース溶液、デキストロース+塩化ナトリウム溶液、ラクトースまたは不揮発性油を含有するリンゲル液を含めた緩衝化医療非経口ビヒクルを含む。乾燥粉末の例は、乾燥した、例えば、凍結乾燥した、風乾した、または噴霧乾燥したいずれの植物バイオマスも含む。例えば、植物は、バイオマスが5重量%未満の水分を含有するまで、約120°Fにて市販の空気ドライヤー中にそれを置くことによって風乾することができる。乾燥した植物はバルク固体としてのさらなる処理のために貯蔵することができ、あるいは所望のメッシュのサイズの粉末まで粉砕することによってさらに処理することができる。別法として、あるいは加えて、凍結乾燥は、風乾に対して感受性である産物のために用いることができる。産物は、それを真空ドライヤーに入れることによって凍結乾燥し、バイオマスが約5重量%未満までの水分を含有するまで真空下で凍結乾燥することができる。乾燥された物質は本明細書中に記載されたようにさらに処理することができる。
【0109】
植物−由来物質を1以上の薬草調製物として、またはそれと一緒に投与しても良い。有用な薬草調製物は液体および固体薬草調製物を含む。薬草調製物いくつかの例はチンキ、抽出物(例えば、水性抽出物、アルコール抽出物)、煎じ薬、乾燥調製物(例えば、風乾、噴霧乾燥、凍結、または凍結乾燥)、粉末(例えば、凍結乾燥粉末)、および液体を含む。薬草調製物はカプセル、錠剤、坐薬、液体用量等のようないずれかの標準的な送達ビヒクルで供することができる。当業者であれば、本発明に適用することができる薬草調製物の送達の種々の処方および様式を認識するであろう。
【0110】
本発明の根株、細胞株、植物、抽出、粉末、乾燥した調製物および精製された蛋白質または核酸産物等は、前記した1以上の成分と共に、またはそれなくしてカプセル化することができる。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤および顆粒のような固体投与形態は腸溶コーティング、放出制御コーティング、および医薬処方分野でよく知られた他のコーティングのようなコーテシングおよびシェルと共に調製することができる。そのような固体投与形態においては、活性な剤をスクロース、ラクトースまたは澱粉のような少なくとも1つの不活性な希釈剤と混合することができる。そのような投与形態は、通常のプラクティスのように、不活性な希釈剤以外のさらなる物質、例えば、錠剤賦形剤、およびステアリン酸マグネシウムおよびマイクロクリスタリンセルロースのような他の錠剤化助剤を含むことができる。カプセル、錠剤および丸剤の場合においては、投与形態は緩衝剤を含むことができる。それらは、所望により、不透明化剤を含有し、それが腸管のある部分において、および/または遅延された様式でのみ有効成分を放出する組成物のものとすることができる。用いることができる包埋組成物の例はポリマー物質およびワックスを含むことができる。
【0111】
いくつかの方法において、本発明によるHPV抗原を発現する植物またはその部分、あるいはそのバイオマスは薬用食品として経口投与される。そのような食用組成物は、典型的には、もし固体形態ならば、生で食べることによって、あるいはもし液体形態ならば飲むことによって消費される。植物物質が、前処理工程なくして、あるいは最小の料理調製後に直接的に摂取することができる。例えば、ワクチン蛋白質が、直接的に食べることができる芽において発現させることができる。例えば、ワクチン抗原は、アルファルファの芽、緑豆の芽、あるいはホウレンソウまたはレタスの葉の芽等において発現される。1つの具体例において、植物バイオマスを処理し、処理工程後に回収された物質を摂取する。
【0112】
本発明に従って有用である処理方法は、食品または試料産業で通常用いられる方法である。そのような方法の最終産物は、典型的には、実質的な量の発現された抗原を含み、便宜には、食べまたは飲むことができる。最終製品は、塩、担体、フレーバー増強剤、抗生物質等のような他の食品または飼料形態と混合することができ、固体、半固体、懸濁液、エマルジョン、または液体形態で消費することができる。そのような方法は、例えば、殺菌、調理、あるいは保存剤および保持剤の添加のような保存工程を含むことができる。いずれの植物も本発明において用い、処理して、食用または飲料植物物質を生産することができる。植物−由来調製物中のHPV抗原の量は、当該分野において標準的な方法、例えば、ゲル電気詠動、ELISA、またはウェスタンブロッド分析によって、産物に特異的なプローブまたは抗体を用いてテストすることができる。この決定を用いて、摂取されたワクチン抗原蛋白質の量を標準化することができる。例えば、ワクチン抗原の量は、例えば、飲みまたは食べて単一用量の摂取すべき物質の量が標準化できるように、異なるレベルの産物を有する産物のバッチを混合することによって決定し、調節することができる。しかしながら、本発明の封じ込められた調節可能な環境は、そのような標準化手法を行う必要性を最小化すべきである。
【0113】
植物細胞または組織において生産され、対象によって食べられるワクチン蛋白質は、好ましくは、消化系によって吸収され得る。最小限に処理されたに過ぎない植物組織の摂取の1つの利点は、植物の細胞中の蛋白質のカプセル化または隔離を供することにある。かくして、腸に到達する前に上部消化管中における消化からの少なくともいくつかの保護を産物は受けることができ、活性な産物のより高い割合は取込みで利用可能であろう。
【0114】
本発明の医薬組成物は、治療的にまたは予防的に投与することができる。組成物を用いて、病気を治療または予防することができる。例えば、病気に罹った、あるいはHPV感染を発症する危険性があるいずれの個人も治療することができる。個人は、病気のいずれかの兆候を持つと診断されていることなく病気を発症する危険性があると考えることができるのは認識されよう。例えば、もし個人がHPV感染への暴露の比較的高い危険性がある状況にあった、またはそれを意図していたことが知られていれば、その個人は病気を発症する危険性があると考えられるであろう。同様に、もし個人の家族のメンバー、友達またはパートナーがHPV感染を持つと診断されれば、個人は病気を発症する危険性があると考えることができよう。
【0115】
経口投与用の液体投与形態は、限定されるものではないが、医薬上許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルを含む。活性な剤に加えて、液体投与形態は、例えば、水または他の溶媒のような当該分野で通常用いられる不活性な希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、およびその混合物のような可溶化剤および乳化剤を含有することができる。不活性な希釈剤以外に、経口組成物は湿潤剤、乳化および懸濁剤、甘味剤、フレーバー剤、および香料剤のようなアジュバントを含むことができる。
【0116】
直腸または膣投与用の組成物は坐薬または停留浣腸であってよく、常温で固体であるが、体温で液体であって、従って、直腸または膣腔中で融解し、活性な蛋白質を放出するカカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐薬ワックスのような適当な非−刺激性賦形剤または担体と本発明の組成物とを混合することによって調製することができる。
【0117】
本発明のワクチン組成物の局所、経粘膜または経皮投与用の投与形態は軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレイ、吸入またはパッチを含む。活性な剤またはその調製物を、滅菌条件下で、医薬上許容される担体および、必要であれば、いずれかに必要な保存剤または緩衝液と混合される。経粘膜または経皮投与では、浸透させるバリアに適切な浸透剤を処方で用いることができる。そのような浸透剤は、一般には、当該分野で公知であり、例えば、経粘膜投与では、洗剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻腔スプレイまたは坐薬の使用を介して達成することができる。経皮投与では、抗原またはその免疫原性部分は、一般的に当該分野で知られているように、軟膏、膏薬、ゲルまたはクリームに処方することができる。眼科処方、点剤、および点眼剤は本発明の範囲内にあると考えられる。加えて、本発明では、ワクチン蛋白質の身体への制御された送達を供する追加された利点を有する経皮パッチの使用が考えられる。そのような投与形態は、ワクチン産物を適当な媒体に懸濁または分散させることによって作製することができる。吸収増強剤を用いて、ワクチン蛋白質の皮膚を横切ってのフラックスを増加させることができる。速度は速度制御膜を供することによって、あるいはワクチン蛋白質をポリマーマトリックスまたはゲルに分散させることによって制御することができる。
【0118】
本発明の組成物は、所望の結果を達成させるのに必要な量にてそのような時間で投与することができる。本発明のある具体例においては、医薬組成物の「治療上有効な量」は、対象において病気を治療し、弱め、または予防するのに有効な量である。かくして、本明細書中で用いる「病気を治療し、弱め、または予防するのに有効な量」とは、いずれかの対象において病気を治療し、弱め、または予防するための医薬組成物の非毒性であるが十分な量をいう。例えば、「治療上有効な量」は、感染(例えば、ウイルス感染、HPV感染)を治療し、弱め、または予防するための量であり得る。
【0119】
必要な正確な量は、対象の種、年齢および性別の条件、病気の状態、特定の医薬混合物、投与のその態様等に依存して、対象間で変化し得る。抗原を発現する植物および/または調製物を含めた、本発明の炭疽病抗原は、投与の容易性および用量の均一性のため投与単位形態に処方することができる。表現「投与単位形態」とは、本明細書中で用いるように、治療すべき患者に適したワクチン組成物の物理的に区別される単位をいう。しかしながら、本発明の組成物の合計日用法は、典型的には、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解される。いずれかの特定の患者または生物についても特定の治療上有効な用量レベルは、感染の重症度または危険性;使用する特定の化合物の活性;使用する特定の組成物;患者の体重、一般的健康、性別、患者のダイエット、患者のファルマコキネティック状態、投与の時間、投与の経路、および使用される特定の化合物の排出速度;治療の持続;使用されるワクチン組成物と組合せた、またはそれと同時に用いる薬物;および医学因子を含めた種々の因子に依存するであろう。
【0120】
本発明の医薬組成物は組合せ療法(例えば、組合せワクチン療法)、で使用することができ、すなわち、医薬組成物は1以上の他の所望のワクチン接種手法と同時に、それに先立って、または引き続いて投与することができることが認識されよう。組合せ養生法でしようすべき療法の特別な組合せ(例えば、ワクチン、HPV感染の治療的処置)は、所望の治療剤および/または手法、および達成すべき所望の治療効果の適合性を考慮するであろう。使用される療法および/またはワクチンは同一障害について所望の効果を達成することができ(例えば、本発明の化合物はもう1つのHPVワクチンと同時に投与することができ)、あるいはそれらは異なる効果を達成することができるのは認識されよう。ある具体例において、ワクチン組成物は少なくとも2つのHPV抗原を含む。例えば、あるワクチン組成物は、本発明の少なくとも2つのHPV抗原を含む。例えば、あるワクチン組成物は本発明の少なくとも2つのHPV抗原(例えば、本発明の抗原を含有するHPV16ドメインのF7およびHPV18ドメインのE7)を含むことができる。いくつかの態様において、そのような組合せワクチンはHPV抗原を含む1つの熱安定性融合蛋白質を含むことができ;いくつかの態様において、HPV抗原を含む2以上の熱安定性融合蛋白質が提供される。ある具体例において、多数の抗原は同一株のHPVから由来し、異なる蛋白質に由来する抗原を含むことができる。いくつかの具体例において、多数の抗原は同一株のHPVに由来し、同一蛋白質に由来する抗原を含むことができる(例えば、同一蛋白質の異なるドメイン)。ある具体例において、多数の抗原は異なる株のHPV由来し、異なる蛋白質に由来する抗原を含む。なおさらなる組合せでは、異なる株および同一蛋白質に由来する多数の抗原の使用が考えられる。これまでの例示的組合せの変形および/または組合せが考えられる。例えば、いくつかの具体例において、異なる株からの1つのE7、2つのE7または3つのE7ドメインを、本発明のワクチン組成物を含むように組合せる。組合せワクチンを利用する場合、HPV抗原のいずれかの組合せをそのような組合せで用いることができるのは理解されるであろう。
【0121】
キット
1つの態様において、本発明は、本発明によるHPV抗原を生産する生きた発芽種苗、クローン体または植物、あるいは本発明の医薬組成物の成分の1以上を満たした1以上の容器中にワクチンを含有する調製物、抽出物、または医薬組成物を含む医薬パックまたはキットを提供する。ある具体例において、医薬パックまたはキットは、組合せ療法として用いるさらなる認可された治療剤(例えば、HPV抗原、HPVワクチン)を含む。そのような容器と所望により関連させるのは、医薬製品の製造業者、使用または販売を規制する政府当局によって処方された形態の通知であり得、その通知はヒト投与用の製造業者、使用または販売の当局による認可を反映する。
【0122】
治療試薬を含むキットが提供される。1つを除いて非限定的な例としてHPVワクチンは経口処方として提供することができ、療法として投与することができる。別法として、あるいは加えて、HPVワクチンは投与用に注射可能な処方にて提供することができる。医薬用量または指示書は、従って、HPV感染に罹った、またはその危険性がある個体への投与用のキットにて供することができる。
【0123】
以下の代表的な実施例は本発明を説明するのを助けることを意図し、本発明の範囲を限定する意図ではなく、そのように解釈されるべきではない。事実、本明細書中に示され、記載されたものに加えて、本発明の種々の修飾、およびその多くのさらなる具体例は、以下の実施例、および本明細書中で引用された科学および特許文献に対する言及を含めた、本書類の全内容から当業者に明らかとなるであろう。以下の実施例はある情報、例示および指針を含み、これを用いて、種々の具体例およびその同等物において本発明のプラクティスに適合させることができる。
【実施例】
【0124】
実施例1 ワクチン候補構築体の作製
ヒトパピローマウイルスからの抗原配列の作製
安全関心事のため、BamHI/PstI制限部位の間に既にpQE30(pQE30−E7)にクローン化されたHPV16E7癌遺伝子(KO2718,Seedorfら、1985,Virology,145:181)は、Quikchange部位−特異的突然変異誘発キット(Stratagene)を用いて突然変異させて、プラスミドpQE30−E7GGGを作製した。各々、突然変位を導入するために設計された順方向および逆方向「速ポリヌクレオチド液体クロマトグラフィー」−精製プライマーの太文字のオリゴヌクレオチドによって示されるE7遺伝子のpRB−結合部位に3つの点突然変異を導入した:
【0125】
【化1】
導入された突然変異の結果、E7蛋白質配列中の3つのアミノ酸が置換され:D21G(Asp21>Gly)、C24G(Cys24>Gly)、E26G(Glu26>Gly)、E7蛋白質形質転換潜在能力がなくなる。E7GGGと示される得られた遺伝子の真性さは配列決定によって確認された。
【0126】
HPV16E7(KO2718,Seedorfら、supra)(配列番号1)
【0127】
【化2】
E7(配列番号2):
【0128】
【化3】
HPV16E7GGG(配列番号3):
【0129】
【化4】
E7GG(配列番号4):
【0130】
【化5】
熱安定性担体構築体の作製
全長天然C.thermocellumリケナーゼ、LicBは、実質的に、リーダーペプチド(Lp)、N−末端部分(A)、表面ループ(l)、C−末端部分(C)、Pro−Thrボックス、およびセルロソーム−結合ドメイン(C−BD)よりなる。我々はLicBコーディング遺伝子からLp、Pro−ThrボックスおよびC−BDコード配列を取出し、円状に分子を並べて、N−およびC−末端を逆転させ(Musiychukら、2007,Influenza and Other Respiratory Viruses,1:1)、標的配列をクローン化するための制限エンドヌクレアーゼ部位を、新しいN−およびC−末端において、ならびに表面ループ(1)にユニークな制限エンドヌクレアーゼ部位を取込んだ。得られた作製担体分子配列を証明し、LicKMと命名する。
【0131】
配列番号5:
【0132】
【化6】
配列番号6:
【0133】
【化7】
ある構築体では、我々は、LicKMのN−およびC−末端においてPR1aシグナルペプチドおよびKDEL配列を作製した。これらの構築体の核酸およびアミノ酸配列は配列番号7および配列番号8に示す。
【0134】
配列番号7:
【0135】
【化8】
配列番号8:
【0136】
【化9】
組換え抗原構築体の作製
我々は、高レベルの転写および翻訳を促進するT7バクテリオファージ遺伝子10の特徴を利用するように作製されたpBR322プラスミドに由来するpET発現ベクターを用いた。バクテリオファージでコードされたRNAポリメラーゼはT7プロモーター配列に高度に特異的であり、これは、T7ファージゲノム以外のゲノムでは稀にしか遭遇しない(図1)。pET−32は、E7およびE7GGG構築体を、このベクターにクローン化されている修飾されたリケナーゼ配列のループ領域に融合するために用いられてきた。上流配列PR−1A(病原体−関連蛋白質1A)を持ち、小胞体(KDEL)または空胞保持配列(VAC)および下流His6タグを持つリケナーゼ遺伝子の触媒ドメインを、(T7プロモーターおよびT7ターミネーターの間の領域が切り出されている)修飾されたpET−32ベクター中のPacIおよびXhoI部位の間にクローン化した。このようにして、pET−PRACS−LicKM−KDELおよびpET−PRACS−LicKM−VACが得られた(図2)。DNA断片E7またはE7GGGをLicKMのループ(l)部分にサブクローンして、翻訳用の正しいリーディングフレームでの融合を得た。
【0137】
実施例2 ワクチン候補抗原ベクターの作製
標的抗原構築体
LicKM−E7またはLicKM−E7GGGを個々に選択されたウイルスベクター(pBI−D4)にサブクローンした。pBI−D4は、E.coli β−D−グルクロニダーゼ(GUS)が、XbaIおよびSzcI部位の間で、TMV−由来ベクターがクローン化されている「ポリリンカー」によって置換えられたpBI121−由来バイナリーベクターである(図3)。pBI−D4はTMV−ベースの構築体であり、そこでは、発現すべき外来性遺伝子(例えば、標的抗原(例えば、LicKM−E7、LicKM−E7GGG))はTMVのコート蛋白質(CP)遺伝子を置換えている。該ウイルスがTMV 126/183kDa遺伝子、移動蛋白質(MP)遺伝子、およびCPサブゲノムmRNAプロモーター(sgp)を保有し、これはCPオープンリーディングフレーム(ORF)まで伸びる。CPについての開始コドンは突然変異されている。該ウイルスがCPを欠如し、従って、篩部を介して宿主植物全体を移動することができる。しかしながら、ウイルス感染の細胞間移動は機能的なままであり、該ウイルスはそのようにして上部葉までゆっくりと移動することができる。多重クローニング部位(PacI−PmeI−AgeI−XhoI)は外来性遺伝子の発現のためにsgpの端部で作製されており、続いて、TMV3’非−翻訳領域(NTR)がある。35Sプロモーターはウイルス配列の5’端部に融合している。ベクター配列がpBI121のBamHIおよびSacI部位の間に位置する。ハンマーヘッドリボザイムはウイルス配列の3’側に置かれる(Chenら、2003,Mol.Breed.,11:287)。これらの構築体が、タバコPR−1a蛋白質からのシグナルペプチド6×HisタグおよびER−保持アンカー配列KDELまたは空胞ソーティング配列をコードする配列への、LicKM−E7またはE7GGGをコードする配列の融合を含む(図4)。PRACS−LicKM−E7−KDEL、PRACS−LicKM−E7VAC、PRACS−LicKM−E7GGG−KDELおよびPRACS−LicKM−E7GGG−VACをコードする配列を含有する構築体では、コーディングDNAはPacI−XhoI断片としてpBI−D4に導入された。ヌクレオチド配列は、引き続いて、最終接合にわたることが証明された(図5)。
【0138】
実施例3:植物の作製および抗原の生産
植物のAgrobacterium侵入
Agrobacterium侵入によって達成されたAgrobacterium−媒介一過性発現系を利用することができる(Turpenら、1993,J.Virol.Methods,42:227)。N.benthamianaの健康な葉に、LicKM−E7またはLicKM−E7GGGを発現するように作製されたウイルスベクターを含有するA.rhizogenesを侵入させた。
【0139】
A.rhizogenes 株A4(ATCC 43057)またはA.tumefaciens(GV3103)を構築体pBI−D4−PRACS−LicKM−E7−KDEL、pBI−D4−PRACS−LicKM−E7VAC、pBI−D4−PRACS−LicKM−E7GGG−KDELおよびpBI−D4−PRACS−LicKM−E7GGG−VACで形質転換した。Agrobacterium培養を記載されているように成長させ、誘導した(Kapilaら、1997,Plant Sci.,122:101)。(新鮮なコロニーから拾った)2mlのスターター培養を、28℃にて、25μg/mlカナマイシンを含むYEB(5g/lウシ抽出物、1g/l酵母エキス、5g/lペプトン、5g/lスクロース、2mM MgSO4)中で一晩成長させた。スターター培養を、25μg/mlカナマイシン、10mM 2−4(−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、pH5.6、2mMのさらなるMgSO4および20μmアセトシリンゴンを含む500mlのYEBに1:500希釈した。次いで、希釈された培養を28℃にて〜1.7のO.D.600まで一晩成長させた。細胞を3,000 x gにて15分間遠心し、MMA培地(MS塩、10mM MES pH5.6、20g/lスクロース、200μMアセトシリンゴン)中に2.4のO.D.600まで再度懸濁させ、室温にて1時間保ち、Agrobacterium−侵入のために用いた。N.benthamiana の葉に、針のない使い捨てシリンジを用いてAgrobacterium−懸濁液を注射した。侵入された葉を侵入から6日後に収穫した。
【0140】
クローン根およびクローン根株の作製
Petunia hybridaの葉の外植体1cm×1cm幅を、0.1%NH4Cl中での滅菌、および滅菌dH2O中での6回の洗浄後に葉から得た。外植体をアバクス(abacsial)側をナイフでわずかに損傷させ、pBID4−LicKM−E7−KDELまたはpBID4−LicKM−E7GGG−KDELいずれかを含有するAgrobacterium rhizogenes株A4で共培養した。外植体を、3000rpmおよび4℃にて10分間遠心したAgrobacterium一晩培養物(O.D.600nm=0.8−1)と共に一晩2分間インキュベートし、20mMアセトシリンゴンの存在下でMMA培地に最終O.D.600nm=0.5まで再懸濁させた。インキュベーションの後に、外植体を滅菌紙上で乾燥し、1%グルコースおよび20mMアセトシリンゴンの存在下で0.8%寒天MSプレートに移した。プレートをパラフィルムで覆い、室温にて2日間保持した。次いで、500mg/lセフォタキシム(Cif)、100mg/lチメンチン(Tim)および25mg/lカナマイシンの存在下で、外植体をMSプレートに移した。5週間後、トランスジェニック根の世代が、pBID4−LicKM−E7−KDELおよびpBID4−LicKM−E7GGG−KDEL構築体を含有するAgrobacterium rhizogenesで形質転換されたPetunia hybrida葉外植体から得られた。より多くの根が、pBID4−LicKM−E7GGG−KDEL構築体の形質転換からよりも、pBID4−LicKM−E7−KDEL構築体での形質転換から得られた。ザイモグラム分析は、テストしたPetunia hybridaトランスジェニック根におけるE7およびE7GGGキメラ蛋白質双方の発現を明らかとした。発現はリケナーゼ活性と関連付けられる。融合蛋白質に関連する活性バンドは、リケナーゼ対照よりも高い分子量、およびアグロ−感染後に植物によって発現された産物の同一分子量を示し、全融合産物の存在が確認される。
【0141】
形質転換後に、毛根を切り取り、固体のホルモンフリーK3培地上に線状に置くことができる。4ないし6日後に、最も活発に成長する根を単離し、半−固体(0.4%寒天)K3培地に移す。選択された根を暗所にて22℃で培養し、クローン系を単離し、6週間ごとに継体培養する。根および/またはクローン系は、リケナーゼ活性アッセイおよびイムノブロット分析の評価によって、標的抗原発現の存在についてスクリーニングすることができる。
【0142】
実施例4:ワクチン候補の生産
N.benthamiana侵入葉物質の100mg試料を感染から4、5、6および7日後に収穫した。引き続いての粗製植物抽出物も調製のために、または融合蛋白質精製のために、−80℃で収穫し、または収集した直後に、新鮮な組織を蛋白質発現について分析した。
【0143】
新鮮な試料を1/3w/v比にて(1ml/0.3gの組織)、冷PBS 1×+プロテアーゼ阻害剤(Roche)中に再懸濁し、乳棒で粉砕した。ホモゲネートを、SDSゲル付加緩衝液中で5分間煮沸し、次いで、4℃における12,000rpmでの5分間の遠心によって清澄化した。上清を新鮮なチューブ中に移し、20μlの、1μlのまたは希釈物を12%SDS−PAGEで分離し、抗−His6−E7マウスまたはウサギ抗−リケナーゼポリクローナル抗体を用いるウェスタンブロット分析によって、および/またはザイモグラム分析によって分析して、機能的リケナーゼ活性を示す加水分解活性を評価した。ザイモグラフィーは、酵素活性を測定するための電気詠動方法である。該方法は、インキュベーション時間の間に解像された酵素によって分解された基質を含浸させたドデシル硫酸ナトリウムゲルに基づく。ゲルの染色は、暗赤色バックグラウンド上の白色バンドとしての酵素活性を明らかにする。ある範囲内では、バンドの強度は付加された酵素の量に直線的に関連させることができる。
【0144】
プラスミドpBID4−LicKM−E7−KDELを含有するAgrobacterium tumefaciensまたはAgrobacterium rhizogenesいずれかが侵入したNicotiana benthamiana植物におけるE7発現は、もし融合蛋白質におけるE7蛋白質電気泳動移動度が11kDの理論MWに対応すれば(リケナーゼ酵素MWは約28kDである)、キメラ蛋白質LicKM−E7−KDELの分子量(約39kD)に対応する特異的バンドに導く(図6AないしD)。pBID4−LicKM−E7−VACプラスミドを含有するAgrobacterium tumefaciensまたはAgrobacterium rhizogenesいずれかが侵入したNicotiana benthamiana植物は、キメラ蛋白質LicKM−E7−VACを発現する。それにも拘わらず、明らかにされたバンドはダブレットである。二重バンドは、恐らくは、キメラ蛋白質内での貧弱にプロセッシングされた、およびプロセッシングされていない空胞シグナル配列双方の存在の代表である(図6AないしD)。双方のAgrobacterium株において、最良の発現構築体は、リケナーゼ酵素とのE7(またはE7GGG)融合を発現する植物組織の大きな生産について選択された、KDEL配列を備えたものとなった。同一の発現結果が、E7GGGキメラ蛋白質について得られた(図7A)。
【0145】
ザイモグラム分析は、E7およびE7GGGキメラ蛋白質双方の発現はリケナーゼ活性に関連することを明らかとし、これは、リケナーゼ酵素の触媒ドメインのループにおける前記した蛋白質の融合が酵素活性を損なわないことを示す。融合蛋白質に関連する活性バンドは、リケナーゼ対照よりも高い分子量を示し、全融合産物の存在が確認される。pBID4−LicKM−E7−KDEL、pBID4−LicKM−E7GGG−KDを含有するAgrobacterium tumefaciensまたはAgrobacterium rhizogenesが侵入したNicotiana benthamiana植物から得られた抽出物は、活性バンドを示し、他方、−VAC構築体の結果、活性のより低い程度がもたらされた(図8AないしD)。
【0146】
E7−LicKM−KDELおよびE7−LicKM−VAC融合の発現の双方は、感染後第6日から第7日に劇的に降下するAgrobacterium rhizogenes−媒介発現を除いて、一定に高く、かつ感染後第4日から7日に安定である(が、第5日においてはより高く見える)。我々は、感染後第5日に収穫して、蛋白質分解を回避しようと決定した。粗製抽出物中で発現されたキメラ蛋白質LicKM−E7−KDELおよびLicKM−E7GGG−KDELの定量は、手動で侵入させた組織上での、および真空−侵入組織でのイムノブロッティングによって行った(図7B、C)。粗製抽出物における発現の見積られた収率は、(100μgのE7またはE7GGG蛋白質/組織のgに対応する)少なくとも400μgのキメラ蛋白質LicKM−E7−KDELおよびLicKM−E7GGG−KDEL/組織のgである。
【0147】
抗原の精製
pBID4−LicKM−E7−KDELおよびpBID4−LicKM−E7GGG−KDEL構築体を含有する組換えAgrobacterium tumefaciensを侵入させた植物からの葉をホモゲナイズした。「EDTA−フリー」プロテアーゼ阻害剤(Roche)およびTriton X−100 1%を含む抽出緩衝液を3容量w/vの比率で用い、4℃にて30分間揺らした。抽出物を、9000×gにおける4℃での10分間の遠心によって清澄化した。クロマトグラフィー精製前に、上清を順次Miraクロスを通して濾過し、20,000×gにおいて4℃で30分間遠心し、0.45−μmフィルターを通して濾過した。
【0148】
His−タグドLicKM−E7−KDELおよびLicKM−E7GGG−KDEL20mM EDTAキメラ蛋白質を、重力下室温にて、IMAC(「固定化金属アフィニティークロマトグラフィー」、GE Health)を用いることによって精製した。精製は、非−変性条件下で行った。蛋白質を0.5mlの画分として収集し、これを合わせ、20mM EDTAを加え、PBS 1×に対して4℃にて一晩透析し、SDS−PAGEによって分析した。
【0149】
別法として、次いで、20mM EDTAを加えて画分を一緒に収集し、NaH2PO4 10mMに対して4℃にて一晩透析し、アニオン交換クロマトグラフィーによって精製した。LICKM−E7−KDEL E LICKM−E7GGG−KDEL精製のために、アニオン交換からのQ Sepharose Fast Flow(Amersham Pharmacia Biosciences)を用いた。LICKM−E7−KDEL E LICKM−E7GGG−KDELアフィニティーまたはイオン−交換精製キメラ蛋白質の試料を12%ポリアクリルアミドゲルで分離し、続いて、クーマシー染色を行った。分離された蛋白質はやはりPVDF膜まで電気泳動により移動され、ポリクローナル抗−リケナーゼ抗体を用いる、および順次、抗−ウサギIgGホースラディッシュペルオキシダーゼ−コンジュゲーテッド抗体にてウェスタンブロット分析によって分析した。
【0150】
透析後の収集された画分は、pAbα−リケナーゼ(図9A)およびpAbα―抗−His6(データは示さず)双方を用いるイムノブロッティングによって分析した。His−タグは発現されたキメラ蛋白質によって維持され、精製された蛋白質の最終濃度はソフトウェアによって評価した(図9A、B)。40gの侵入された組織から、6.5mgの各LicKM−E7−KDELおよびLicKM−E7GGG−KDELキメラ蛋白質は、163μgのキメラ蛋白質/組織のg(約50μgのE7またはE7GGG蛋白質/組織のg、ここで、E7のおよびE7GGG蛋白質の分子量は全融合の約1/4である)の最終収率にて精製された。精製プロトコルからの結果を図9C、Dに描く。
【0151】
実施例5:免疫原性の実験
標的抗原の生産および特徴付け
最初の免疫原性実験を行って、植物−生産LicKM−E7−KDELおよびLicKM−E7GGG−KDELが腹腔内免疫化されたマウスにおいて特異的血清IgGを誘導できるか否か、および誘導された抗体がE7−発現細胞に結合できるか否かを決定した。実験は、前記したように、N.benthamianaのAgrobacterium侵入葉から純粋なまで豊富化されたLicKM−E7−KDELおよびLicKM−E7GGG−KDELを用いた。
【0152】
簡単に述べれば、HPV16 E7癌遺伝子(GenBankアクセション番号KO2718)は、Quikchange部位−特異的突然変異誘発キット(Stratagene;La Jolla,CA)を用いて突然変異させて、E7:D21G、C24GおよびE26GのpRB−結合部位において以下のアミノ酸置換を持つE7GGGを得た(Smahelら、2001,Virology,281:231)。HPV16 E7およびE7GGGをコードする配列をLicKMのイン−フレーム内部融合としてクローン化して、LicKM−E7およびLicKM−E7GGGを得た。これらの融合はそのN−末端においてNicotiana tabacum PRIa蛋白質のシグナル配列、およびそのC−末端において6xHisタグ、続いて、小胞体滞留シグナルKDELを含んだ。融合が植物発現ベクターpBID4(Musiychukら、2007,Influenza and Other Respiratory Viruses,1:1,in press)においてクローン化されて、pBID4−LicKM−E7およびpBID4−LicKM−E7GGGを得た。各構築体をAgrobacterium rhizogenes株A4に導入し、得られた細菌をNicotiana benthamianaに摂取した。侵入後5ないし7日後、標的抗原をアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。
【0153】
LicKM−E7およびLicKM−E7GGGについての見積もられた収率は新鮮な葉組織のkg当たりほぼ400mgであり、LicKMについての見積られた収率はkgあたりほぼ1gであった。精製された標的抗原をSDS−PAGE分析によって特徴付けて、28kD(LicKM)、39kD(LicKM−E7)、および39kD(LicKM−E7GGG)の予測されたサイズの蛋白質が明らかにされた(図9B)。対照物質を供するために、LicKMを同様にN.benthamianaにおいて生産した。植物−発現蛋白質の真性は、LicKMおよびE7に特異的な抗体を用いるイムノブロッティングによって証明した。試料は、GeneToolsソフトウェア(Syngene;Cambridge,UK)を用いるデンシトメトリーによって定量した。
【0154】
免疫原性の実験
植物−生産標的抗原の有効性を評価するために、4ないし8週齢雌C57BL/6マウス(Charles River;Como,Italy)を標的抗原で免疫化した。
【0155】
予防的実験のために、群当たり10匹のマウスは40μgのLicKM−E7またはLicKM−E7GGG(各々、E7またはE7GGGのほぼ10μgと同等)を、0、14、28、42および76日に、Quil Aアジュバント(10μgマウス)と共にまたはそれなくして、皮下的に受けた。動物からの血清の試料を各投与の日に収集し、ELISAによってE7−特異的抗体の存在について評価した。49日に、各群において2匹の動物を犠牲にして、細胞媒介免疫応答を評価した。次いで、全ての残りの動物を、5x104 E7−発現TC−1腫瘍細胞での皮下注射によって攻撃した(Linら、1996,Cancer Research,56:21)免疫応答の特徴付けについては、ELISA、ELISPOT、および自然遅延−タイプの過敏(DTH)アッセイを従前に記載されているように行った(Franconiら、2002,Cancer Research,62:3654)。
【0156】
治療的実験のために、群当たり8ないし10匹のマウスを、0、15、30、45および60日に、Quil A(10μg/マウス)と共に、またはそれなくして、40μg LicKM−E7またはLicKM−E7GGGでの皮下免疫化に3日先立って、5x104 E7−発現TC−1腫瘍細胞で皮下摂取した。
【0157】
予防的および治療的実験双方のために、対照動物に、Quil Aと共にまたはそれなくして、10μgのE.coli−生産E7またはE7GGGまたは植物−生産LicKMを投与した。腫瘍の成長を触診によって1週間に2回モニターした。これらの実験を通じて、動物を苦痛、下痢、死亡または標的抗原の投与に由来し得る他の臨床的兆候の潜在的兆候について観察した。
【0158】
植物―生産LicKM−E7およびLicKM−E7GGGの免疫原性および予防的潜在能力をテストするために、動物を標的抗原で免疫化した。アジュバントの存在下で、LicKM−E7またはLicKM−E7GGGで、またはE.coli−生産E7またはE7GGGで免疫化した全ての動物はIgG応答を高めた(図11A)が、アジュバントの不存在下では、LicKM融合は有意な液性応答を誘導しなかった(図11A)。CD8+細胞傷害性T細胞は抗−癌応答におけるエフェクターとしての認識された役割を有するので、E7−特異的CD8+T細胞の誘導はELISPOTによって調べた。アジュバントの存在下で、多数のIFNγ分泌細胞がLicKM−E7またはLicKM−E7GGGで摂取されたマウスで検出され、他方、少数のE7−特異的CD8+細胞がE.coli−生産E7またはE7GGGで接種したマウスで見出され、LicKMマウスにおいてはIFNγ分泌細胞は検出されなかった(図11B)。LicKM融合およびE.coli−生産抗原は共に、アジュバントの不存在下において少数であるが有意な数のスポットを誘導し、LicKM融合はより多い数のELISPOTカウントを与えた(図11B)。
【0159】
HPV−特異的CD8+T細胞は、E7−発現腫瘍での調製に対して保護的であることが確立されている(Frazer,2004,Nature Reviews,4:46)。従って、植物−生産E7候補ワクチンによって誘導された免疫応答の抗−腫瘍活性は、TC−1細胞でワクチン接種マウスを攻撃することによって評価した。アジュバントの存在下においては、LicKM−E7およびLicKM−E7GGGは、各々、動物の100%において腫瘍保護を誘導し、他方、E.coli−生産E7またはE7GGGは、各々、マウスの80%および60%において保護を誘導した(図11C)。アジュバントの不存在下でLicKM−E7で免疫化された動物の80%は保護された(図11C)。アジュバントの不存在下においてLicKM−E7GGG、またはいずれかのE.coli−生産抗原で免疫化された動物の20%は保護された(図11C)。LicKMで免疫化された動物において保護は観察されなかった(図11C)。
【0160】
HPV16 E7発現腫瘍に対するLicKM−E7およびLicKM−E7GGGの治療達成についてテストするために、E7−発現TC−1細胞で接種された動物を、引き続いて、LicKM、LicKM−E7、またはLicKM−E7GGGで、またはE.coli−生産E7またはE7GGGで免疫化した。LicKMで免疫化した全ての動物は4週間以内に腫瘍を発生し、他方、LicKM−E7またはLicKM−E7GGG+アジュバントで処理したものは、実験の持続の間に腫瘍−フリーのままであった(10週間)。E.coli−生産E7またはE7GGG+アジュバントへの免疫化は、各々、動物の40%および60%において腫瘍成長を阻害した(図11D)。アジュバントの不存在下においては、LicKM融合は腫瘍成長を阻害し、より大きな保護が、LicKM−E7(80%) vs LicKM−E7GGG(60%)を受けた動物で観察され、E.coli−生産E7またはE7GGGで処理された動物の20%は腫瘍−フリーのままであった(図11D)。
【0161】
HPV−関連病の発生に対する保護は、細胞−媒介免疫応答にかなり帰せられる。DTH応答は、特に、Th1タイプのサイトカインを含む抗原−特異的サイトカイン媒介炎症を表すと考えられる。LicKM−E7は、E7−発現腫瘍に対してLicKM−E7GGGよりも大きな治療活性を示すので、我々は、LicKM−E7またはE.coli−生産E7で接種されたマウスにおけるE7に対するDTH応答を評価した。抗原−特異的DTH応答は、アジュバントの不存在においてさえ、LicKM−E7蛋白質で接種したマウスで観察された(表1)。この応答は、E.coli−生産E7で接種したマウスで観察されたものを超えた。LicKMで接種したマウスは有意な耳膨潤を示さず、これは、LicKM担体分子が免疫応答を誘導しないことを示す。
【0162】
【表1】
*耳膨潤は、群当たり5匹からの攻撃された、および攻撃されていない対照耳の間の厚みの差(Δ)の平均として報告する(mm耳厚み×10−2)。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】pET32プラスミドのマップ。頂部左側は、標的抗原をクローニングするのに用いられる修飾されたプラスミドにおいて欠如するT7プロモーターおよびT7ターミネーターの間の領域を示す。
【図2】修飾されたpET32ベクターからのpET−PRACS−Lic−KDELおよびpET−PRACS−Lic−VAC構築体の生産。
【図3】pBI121ベクター組織化の模式図。
【図4】β−グルコロニダーゼ(GUS)遺伝子の切り出し、およびTMV由来プラスミドの付加後におけるpBIベクターからのpBID4プラスミドの誘導の模式的組織化。
【図5】BglIIおよびHindIII部位の間のリケナーゼ配列におけるE7およびE7GGGの融合、および引き続いてのpBID4ベクターにおけるクローニングの模式図。
【図6】抗−リケナーゼ抗体(6A、C)または抗−6HISE7抗体(6B、D)を用いるE7構築体を発現するAgrobacterium侵入植物のウエスタン分析。
【図7】抗−リケナーゼ抗体(7A、C)または抗−6HIS−E7抗体(7B,D)を用いるE7構築体を発現するAgrobacterium侵入植物のウエスタン分析。
【図8】抗−リケナーゼ抗体を用いるE7(8A、8B)またはE7GGG(8C、8D)構築体を発現するAgrobacterium侵入植物のリケナーゼ活性分析。
【図9】(9A)抗−リケナーゼ抗体を用いるE7GGG構築体を発現するAgrobacterium侵入植物のウエスタン分析。(9B−D)精製手法を介する単離からの蛋白質画分のクーマシー染色分析。
【図10】pBID4−Lic−E7−KDEL(レーン1ないし9)およびpBID4−Lic−E7GGG−KDEL構築体(レーン10、11)を含有するAgrobacterium rhizogenesで形質転換されたNicotiana benthamiana葉外植体から得られたトランスジェニック根からの抽出物;レーン12=150ngリケナーゼ(陽性対照);レーン13=pBID4−Lic−E7−KDEL構築体を含有するAgrobacterium rhizogenesでアグロ−侵入させたNicotiana benthamiana葉からの粗製抽出物で行ったザイモグラム分析。
【図11】植物−生産ワクチン候補の特徴付けおよび有効性。(11A)E7−特異的血清IgG応答。データは1:500希釈血清の405nmにおける光学密度値として表す。個々の動物からのデータは平均値と共に示す。(11B)ワクチン接種したマウスからの脾臓細胞のELISPOT分析。データは2x105脾臓細胞当たりのスポット±SDの平均数として表す。灰色および黒色の欄は、各々、特異的CTL E7ペプチドで刺激した、またはそれなしでの細胞をいう。(11C)TC−1−誘導腫瘍に対する予防的ワクチン接種。データは腫瘍−フリーマウスのパーセンテージとして表す。(11D)TC−1−誘導腫瘍に対する治療的ワクチン接種。データは腫瘍−フリーマウスのパーセンテージとして表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱安定性蛋白質に融合されたヒトパピローマウイルス(HPV)の成分を含む単離された抗原であって;
ここで、該HPV成分はHPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片およびHPV18由来のE6の断片よりなる群から選択される少なくとも1つのドメインを含む単離された抗原。
【請求項2】
前記HPV成分がHPV16由来のE7よりなる請求項1記載の単離された抗原。
【請求項3】
前記HPV成分がHPV18由来のE7よりなる請求項1記載の単離された抗原。
【請求項4】
前記HPV成分が配列番号2または配列番号4よりなる請求項1記載の単離された抗原。
【請求項5】
前記熱安定性蛋白質が修飾されたリケナーゼ蛋白質配列を含む請求項1記載の単離された抗原。
【請求項6】
前記リケナーゼについてのコード配列が植物における蛋白質発現について最適化されている請求項1記載の単離された抗原。
【請求項7】
前記リケナーゼ蛋白質配列がリケナーゼのN−末端ドメイン、C−末端ドメインおよび表面ループドメインを含む請求項1記載の単離された抗原。
【請求項8】
前記リケナーゼに融合されたHPV成分がN−末端融合、C−末端融合、または表面ループ挿入融合蛋白質のいずれか1つである請求項1記載の単離された抗原。
【請求項9】
前記HPV成分がHPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片、およびHPV18由来のE6の断片よりなる群から独立して選択される少なくとも2つのドメインを含む請求項1記載の単離された抗原。
【請求項10】
第一のHPV成分がHPV16由来のE7を含み、第二のHPV成分がHPV18由来のE7を含む請求項9記載の単離された抗原。
【請求項11】
熱安定性蛋白質に融合したヒトパピローマウイルス(HPV)の成分を含む抗原、および医薬上許容される担体を含むワクチン組成物であって;
ここで、該HPV成分がHPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片、およびHPV18由来のE6の断片よりなる群から選択される少なくとも1つのドメインを含み;かつ、該組成物は対象への投与に際して免疫応答を誘導することができるワクチン組成物。
【請求項12】
前記HPV成分がHPV16由来のE7よりなる請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項13】
前記HPV成分がHPV18由来のE7よりなる請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項14】
前記HPV成分が配列番号2または配列番号4よりなる請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項15】
前記熱安定性蛋白質が修飾されたリケナーゼ蛋白質配列を含む請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項16】
前記リケナーゼについてのコード配列が植物における蛋白質発現について最適化されている請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項17】
前記リケナーゼ蛋白質配列が、リケナーゼのN−末端ドメイン、C−末端ドメイン、および表面ループドメインを含む請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項18】
前記リケナーゼに融合したHPV成分がN−末端融合、C−末端融合、または表面ループ挿入融合蛋白質のいずれか1つである請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項19】
前記HPV成分がHPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片、およびHPV18由来のE6の断片よりなる群から独立して選択される少なくとも2つのドメインを含む請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項20】
第一のHPV成分がHPV16由来のE7を含み、第二のHPV成分がHPV18由来のE7を含む請求項19記載のワクチン組成物。
【請求項21】
さらに第二の抗原を含み、ここで、前記組成物は動物への投与に際して免疫応答を誘導することができる請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項22】
前記第二の抗原が熱安定性蛋白質に融合したヒトパピローマウイルス(HPV)の成分、および医薬上許容される担体を含み;
ここで、第一の抗原のHPV成分はHPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片、およびHPV18由来のE6の断片よりなる群から選択される少なくとも1つのドメインを含み、および第二の抗原のHPV成分がHPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片およびHPV18由来のE6の断片よりなる群から選択される該第一の抗原から区別される少なくとも1つのドメインを含み;かつ
ここで、前記組成物は対象への投与に際して免疫応答を誘導することができる、請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項23】
前記第一の抗原HPV成分がHPV16由来のE7、HPV16由来のE7の断片よりなる群から選択される少なくとも1つのドメインを含み、および前記第二の抗原のHPV成分がHPV18由来のE7、およびHPV18由来のE7の断片よりなる群から選択される該第一の抗原とは区別される少なくとも1つのドメインを含む、請求項22記載のワクチン組成物。
【請求項24】
前記抗原がトランスジェニック植物、および該抗原を一過的に発現する植物から選択される植物において生産される請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項25】
前記組成物が、植物細胞、植物、種子、果実、またはその抽出物から精製された、部分的に精製された、または精製されていない抗原を含む請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項26】
さらに、ワクチンアジュバントを含む請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項27】
前記アジュバントがミョウバン、MF59、MALP2、およびサポニンを含む請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項28】
各々がヒトパピローマウイルス(HPV)の成分を含む少なくとも2つの抗原を含むワクチン組成物であって、ここで、該抗原の少なくとも1つは、さらに、熱安定性蛋白質を含み、ここで、該組成物は対象への投与に際して免疫応答を誘導することができるワクチン組成物。
【請求項29】
少なくとも2つの抗原が、HPVの成分を含み、その各々が、独立して、HPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6,およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片、およびHPV18由来のE6の断片、およびその組合せよりなる群から選択される少なくとも1つのドメインを含み;かつ、前記組成物は対象への投与に際して免疫応答を誘導することができる請求項28記載のワクチン組成物。
【請求項30】
有効量の抗−HPVワクチン組成物を対象に投与することを含む対象においてヒトパピローマウイルス(HPV)感染に対して保護免疫応答を誘導するための方法であって、該投与は、抗原特異的抗体の生産を刺激するのに、または該対象による細胞性免疫応答を刺激するのに十分であり;それにより、保護免疫応答を誘導し;
a.ここに該ワクチン組成物は熱安定性蛋白質に融合したヒトパピローマウイルス(HPV)の成分を含む抗原を含み;および
b.ここで、該HPV成分はHPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片、およびHPV18由来のE6の断片よりなる群から選択される少なくとも1つのドメインを含む、方法。
【請求項31】
前記組成物が経口、鼻腔内、皮下、静脈内、腹腔内、または筋肉内投与される請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が植物細胞を前記対象に供することを介して経口投与される請求項30記載の方法。
【請求項33】
前記対象がヒトである請求項30記載の方法。
【請求項34】
熱安定性蛋白質に融合されたヒトパピローマウイルス(HPV)の成分を含む抗原蛋白質を生産するための方法であって、
a.熱安定性蛋白質に融合されたヒトパピローマウイルス(HPV)の抗原成分をコードする核酸構築体を調製する工程;
b.細胞を工程aの核酸構築体で形質転換する工程;および
c.該抗原蛋白質の発現に好都合な条件下で該細胞をインキュベートする工程;
d.それにより、該抗原蛋白質を生産する工程;
ことを含み、
e.ここで、該抗原のHPV成分はHPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片およびHPV18由来のE6の断片よりなる群から選択される少なくとも1つのドメインを含む、
方法。
【請求項35】
前記HPV成分がHPV16由来のE7よりなる請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記HPV成分がHPV18由来のE7よりなる請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記HPV成分が配列番号1および配列番号3よりなる群から選択されるヌクレオチド配列によってコードされる請求項34記載の方法。
【請求項38】
前記HPV成分が配列番号2または配列番号4よりなる請求項34記載の方法。
【請求項39】
前記熱安定性蛋白質が修飾されたリケナーゼ蛋白質配列を含む請求項34記載の方法。
【請求項40】
前記リケナーゼについてのコード配列が植物における蛋白質発現について最適化されている請求項34記載の方法。
【請求項41】
前記リケナーゼ蛋白質配列がリケナーゼのN−末端ドメイン、C−末端ドメイン、および表面ループドメインを含む請求項34記載の方法。
【請求項42】
前記リケナーゼに融合されたHPV成分がN−末端融合、C−末端融合、または表面ループ挿入融合蛋白質のいずれか1つである請求項34記載の方法。
【請求項43】
前記HPV成分が、各々が独立して、HPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、HPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片、およびHPV18由来のE6の断片、およびその組合せよりなる群から選択される少なくとも1つのドメインを含む少なくとも2つのドメインを含む請求項34記載の方法。
【請求項44】
前記抗原蛋白質の発現がウイルスプロモータの制御下にある請求項34記載の方法。
【請求項45】
前記核酸構築体が、さらに、ベクター核酸配列を含む請求項34記載の方法。
【請求項45】
前記ベクターがバイナリベクターである請求項45記載の方法。
【請求項46】
前記核酸構築体が、さらに、ウイルス蛋白質をコードする配列を含む請求項34記載の方法。
【請求項47】
前記植物が植物細胞である請求項34記載の方法。
【請求項48】
前記植物細胞がアルファルファ、ラディッシュ、カラシ、緑豆、ブロッコリー、オランダガラシ、大豆、小麦、ヒマワリ、キャベツ、クローバー、ペチュニア、トマト、ジャガイモ、ニコチン(nicotine)、ほうれん草およびレンズ豆細胞よりなる群から選択される請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記抗原蛋白質がクローン根細胞において生産される請求項47記載の方法。
【請求項50】
前記抗原蛋白質が発芽種苗において生産される請求項47記載の方法。
【請求項51】
さらに、生産される部分的に精製され、または精製された抗原蛋白質を回収する工程を含む、請求項34記載の方法。
【請求項52】
熱安定性蛋白質に融合されたヒトパピローマウイルス(HPV)の成分をコードする核酸配列を含む単離された核酸構築体であって、ここに;該HPVの成分はHPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片、およびHPV18由来のE6の断片、およびその組合せよりなる群から選択される少なくとも1つのドメインを含む、単離された核酸構築体。
【請求項53】
前記HPV成分がHPV16由来のE7、HPV16由来のE6、あるいはHPV16由来のE7の断片、またはHPV16由来のE6の断片よりなる請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項54】
前記HPV成分がHPV18由来のE7、HPV18由来のE6、あるいはHPV18由来のE7の断片またはHPV18由来のE6の断片よりなる請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項55】
前記HPV成分が配列番号2または配列番号4よりなる請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項56】
前記熱安定性蛋白質が修飾されたリケナーゼ蛋白質配列を含む請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項57】
前記リケナーゼについてのコード配列が植物における蛋白質発現について最適化されている請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項58】
前記リケナーゼ蛋白質配列がリケナーゼのN−末端ドメイン、C−末端ドメインおよび表面ループドメインを含む請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項59】
前記リケナーゼに融合されたHPV成分がN−末端融合、C−末端融合、または表面ループ挿入融合蛋白質のうちのいずれか1つである請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項60】
前記HPV成分が、その各々が、独立して、HPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片、およびHPV18由来のE6の断片およびその組合せよりなる群から選択される少なくとも1つのドメインを含む少なくとも2つを含む請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項61】
前記HPV成分が配列番号1または配列番号3を含む請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項62】
さらに、ベクター核酸配列を含む請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項63】
さらに、ウイルスプロモータ核酸配列を含む請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項64】
前記ベクターがバイナリーベクターである請求項52記載の方法。
【請求項65】
さらに、ウイルス蛋白質をコードする核酸配列を含む請求項52記載の方法。
【請求項66】
請求項52記載の核酸構築体を含む細胞。
【請求項67】
植物細胞である請求項66記載の宿主細胞。
【請求項68】
アルファルファ、ラディッシュ、カラシ、緑豆、ブロッコリー、オランダガラシ、大豆、小麦、ヒマワリ、キャベツ、クローバー、ペチュニア、トマト、ジャガイモ、ニコチン、ほうれん草およびレンズ豆細胞よりなる群から選択される請求項66記載の宿主細胞。
【請求項69】
前記植物が前記抗原蛋白質を生産することができる請求項52記載の核酸構築体を含む植物。
【請求項70】
アルファルファ、ラディッシュ、カラシ、緑豆、ブロッコリー、オランダガラシ、大豆、小麦、ヒマワリ、キャベツ、クローバー、ペチュニア、トマト、ジャガイモ、ニコチン、ほうれん草およびレンズ豆よりなる群から選択される請求項69記載の植物。
【請求項71】
アブラナ属、タバコ(Nicotiana)属、およびペチュニア属から選択される属のものである請求項69記載の植物。
【請求項1】
熱安定性蛋白質に融合されたヒトパピローマウイルス(HPV)の成分を含む単離された抗原であって;
ここで、該HPV成分はHPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片およびHPV18由来のE6の断片よりなる群から選択される少なくとも1つのドメインを含む単離された抗原。
【請求項2】
前記HPV成分がHPV16由来のE7よりなる請求項1記載の単離された抗原。
【請求項3】
前記HPV成分がHPV18由来のE7よりなる請求項1記載の単離された抗原。
【請求項4】
前記HPV成分が配列番号2または配列番号4よりなる請求項1記載の単離された抗原。
【請求項5】
前記熱安定性蛋白質が修飾されたリケナーゼ蛋白質配列を含む請求項1記載の単離された抗原。
【請求項6】
前記リケナーゼについてのコード配列が植物における蛋白質発現について最適化されている請求項1記載の単離された抗原。
【請求項7】
前記リケナーゼ蛋白質配列がリケナーゼのN−末端ドメイン、C−末端ドメインおよび表面ループドメインを含む請求項1記載の単離された抗原。
【請求項8】
前記リケナーゼに融合されたHPV成分がN−末端融合、C−末端融合、または表面ループ挿入融合蛋白質のいずれか1つである請求項1記載の単離された抗原。
【請求項9】
前記HPV成分がHPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片、およびHPV18由来のE6の断片よりなる群から独立して選択される少なくとも2つのドメインを含む請求項1記載の単離された抗原。
【請求項10】
第一のHPV成分がHPV16由来のE7を含み、第二のHPV成分がHPV18由来のE7を含む請求項9記載の単離された抗原。
【請求項11】
熱安定性蛋白質に融合したヒトパピローマウイルス(HPV)の成分を含む抗原、および医薬上許容される担体を含むワクチン組成物であって;
ここで、該HPV成分がHPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片、およびHPV18由来のE6の断片よりなる群から選択される少なくとも1つのドメインを含み;かつ、該組成物は対象への投与に際して免疫応答を誘導することができるワクチン組成物。
【請求項12】
前記HPV成分がHPV16由来のE7よりなる請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項13】
前記HPV成分がHPV18由来のE7よりなる請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項14】
前記HPV成分が配列番号2または配列番号4よりなる請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項15】
前記熱安定性蛋白質が修飾されたリケナーゼ蛋白質配列を含む請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項16】
前記リケナーゼについてのコード配列が植物における蛋白質発現について最適化されている請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項17】
前記リケナーゼ蛋白質配列が、リケナーゼのN−末端ドメイン、C−末端ドメイン、および表面ループドメインを含む請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項18】
前記リケナーゼに融合したHPV成分がN−末端融合、C−末端融合、または表面ループ挿入融合蛋白質のいずれか1つである請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項19】
前記HPV成分がHPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片、およびHPV18由来のE6の断片よりなる群から独立して選択される少なくとも2つのドメインを含む請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項20】
第一のHPV成分がHPV16由来のE7を含み、第二のHPV成分がHPV18由来のE7を含む請求項19記載のワクチン組成物。
【請求項21】
さらに第二の抗原を含み、ここで、前記組成物は動物への投与に際して免疫応答を誘導することができる請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項22】
前記第二の抗原が熱安定性蛋白質に融合したヒトパピローマウイルス(HPV)の成分、および医薬上許容される担体を含み;
ここで、第一の抗原のHPV成分はHPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片、およびHPV18由来のE6の断片よりなる群から選択される少なくとも1つのドメインを含み、および第二の抗原のHPV成分がHPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片およびHPV18由来のE6の断片よりなる群から選択される該第一の抗原から区別される少なくとも1つのドメインを含み;かつ
ここで、前記組成物は対象への投与に際して免疫応答を誘導することができる、請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項23】
前記第一の抗原HPV成分がHPV16由来のE7、HPV16由来のE7の断片よりなる群から選択される少なくとも1つのドメインを含み、および前記第二の抗原のHPV成分がHPV18由来のE7、およびHPV18由来のE7の断片よりなる群から選択される該第一の抗原とは区別される少なくとも1つのドメインを含む、請求項22記載のワクチン組成物。
【請求項24】
前記抗原がトランスジェニック植物、および該抗原を一過的に発現する植物から選択される植物において生産される請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項25】
前記組成物が、植物細胞、植物、種子、果実、またはその抽出物から精製された、部分的に精製された、または精製されていない抗原を含む請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項26】
さらに、ワクチンアジュバントを含む請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項27】
前記アジュバントがミョウバン、MF59、MALP2、およびサポニンを含む請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項28】
各々がヒトパピローマウイルス(HPV)の成分を含む少なくとも2つの抗原を含むワクチン組成物であって、ここで、該抗原の少なくとも1つは、さらに、熱安定性蛋白質を含み、ここで、該組成物は対象への投与に際して免疫応答を誘導することができるワクチン組成物。
【請求項29】
少なくとも2つの抗原が、HPVの成分を含み、その各々が、独立して、HPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6,およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片、およびHPV18由来のE6の断片、およびその組合せよりなる群から選択される少なくとも1つのドメインを含み;かつ、前記組成物は対象への投与に際して免疫応答を誘導することができる請求項28記載のワクチン組成物。
【請求項30】
有効量の抗−HPVワクチン組成物を対象に投与することを含む対象においてヒトパピローマウイルス(HPV)感染に対して保護免疫応答を誘導するための方法であって、該投与は、抗原特異的抗体の生産を刺激するのに、または該対象による細胞性免疫応答を刺激するのに十分であり;それにより、保護免疫応答を誘導し;
a.ここに該ワクチン組成物は熱安定性蛋白質に融合したヒトパピローマウイルス(HPV)の成分を含む抗原を含み;および
b.ここで、該HPV成分はHPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片、およびHPV18由来のE6の断片よりなる群から選択される少なくとも1つのドメインを含む、方法。
【請求項31】
前記組成物が経口、鼻腔内、皮下、静脈内、腹腔内、または筋肉内投与される請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が植物細胞を前記対象に供することを介して経口投与される請求項30記載の方法。
【請求項33】
前記対象がヒトである請求項30記載の方法。
【請求項34】
熱安定性蛋白質に融合されたヒトパピローマウイルス(HPV)の成分を含む抗原蛋白質を生産するための方法であって、
a.熱安定性蛋白質に融合されたヒトパピローマウイルス(HPV)の抗原成分をコードする核酸構築体を調製する工程;
b.細胞を工程aの核酸構築体で形質転換する工程;および
c.該抗原蛋白質の発現に好都合な条件下で該細胞をインキュベートする工程;
d.それにより、該抗原蛋白質を生産する工程;
ことを含み、
e.ここで、該抗原のHPV成分はHPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片およびHPV18由来のE6の断片よりなる群から選択される少なくとも1つのドメインを含む、
方法。
【請求項35】
前記HPV成分がHPV16由来のE7よりなる請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記HPV成分がHPV18由来のE7よりなる請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記HPV成分が配列番号1および配列番号3よりなる群から選択されるヌクレオチド配列によってコードされる請求項34記載の方法。
【請求項38】
前記HPV成分が配列番号2または配列番号4よりなる請求項34記載の方法。
【請求項39】
前記熱安定性蛋白質が修飾されたリケナーゼ蛋白質配列を含む請求項34記載の方法。
【請求項40】
前記リケナーゼについてのコード配列が植物における蛋白質発現について最適化されている請求項34記載の方法。
【請求項41】
前記リケナーゼ蛋白質配列がリケナーゼのN−末端ドメイン、C−末端ドメイン、および表面ループドメインを含む請求項34記載の方法。
【請求項42】
前記リケナーゼに融合されたHPV成分がN−末端融合、C−末端融合、または表面ループ挿入融合蛋白質のいずれか1つである請求項34記載の方法。
【請求項43】
前記HPV成分が、各々が独立して、HPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、HPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片、およびHPV18由来のE6の断片、およびその組合せよりなる群から選択される少なくとも1つのドメインを含む少なくとも2つのドメインを含む請求項34記載の方法。
【請求項44】
前記抗原蛋白質の発現がウイルスプロモータの制御下にある請求項34記載の方法。
【請求項45】
前記核酸構築体が、さらに、ベクター核酸配列を含む請求項34記載の方法。
【請求項45】
前記ベクターがバイナリベクターである請求項45記載の方法。
【請求項46】
前記核酸構築体が、さらに、ウイルス蛋白質をコードする配列を含む請求項34記載の方法。
【請求項47】
前記植物が植物細胞である請求項34記載の方法。
【請求項48】
前記植物細胞がアルファルファ、ラディッシュ、カラシ、緑豆、ブロッコリー、オランダガラシ、大豆、小麦、ヒマワリ、キャベツ、クローバー、ペチュニア、トマト、ジャガイモ、ニコチン(nicotine)、ほうれん草およびレンズ豆細胞よりなる群から選択される請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記抗原蛋白質がクローン根細胞において生産される請求項47記載の方法。
【請求項50】
前記抗原蛋白質が発芽種苗において生産される請求項47記載の方法。
【請求項51】
さらに、生産される部分的に精製され、または精製された抗原蛋白質を回収する工程を含む、請求項34記載の方法。
【請求項52】
熱安定性蛋白質に融合されたヒトパピローマウイルス(HPV)の成分をコードする核酸配列を含む単離された核酸構築体であって、ここに;該HPVの成分はHPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片、およびHPV18由来のE6の断片、およびその組合せよりなる群から選択される少なくとも1つのドメインを含む、単離された核酸構築体。
【請求項53】
前記HPV成分がHPV16由来のE7、HPV16由来のE6、あるいはHPV16由来のE7の断片、またはHPV16由来のE6の断片よりなる請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項54】
前記HPV成分がHPV18由来のE7、HPV18由来のE6、あるいはHPV18由来のE7の断片またはHPV18由来のE6の断片よりなる請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項55】
前記HPV成分が配列番号2または配列番号4よりなる請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項56】
前記熱安定性蛋白質が修飾されたリケナーゼ蛋白質配列を含む請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項57】
前記リケナーゼについてのコード配列が植物における蛋白質発現について最適化されている請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項58】
前記リケナーゼ蛋白質配列がリケナーゼのN−末端ドメイン、C−末端ドメインおよび表面ループドメインを含む請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項59】
前記リケナーゼに融合されたHPV成分がN−末端融合、C−末端融合、または表面ループ挿入融合蛋白質のうちのいずれか1つである請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項60】
前記HPV成分が、その各々が、独立して、HPV16由来のE7、HPV18由来のE7、HPV16由来のE6、およびHPV18由来のE6、HPV16由来のE7の断片、HPV18由来のE7の断片、HPV16由来のE6の断片、およびHPV18由来のE6の断片およびその組合せよりなる群から選択される少なくとも1つのドメインを含む少なくとも2つを含む請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項61】
前記HPV成分が配列番号1または配列番号3を含む請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項62】
さらに、ベクター核酸配列を含む請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項63】
さらに、ウイルスプロモータ核酸配列を含む請求項52記載の単離された核酸構築体。
【請求項64】
前記ベクターがバイナリーベクターである請求項52記載の方法。
【請求項65】
さらに、ウイルス蛋白質をコードする核酸配列を含む請求項52記載の方法。
【請求項66】
請求項52記載の核酸構築体を含む細胞。
【請求項67】
植物細胞である請求項66記載の宿主細胞。
【請求項68】
アルファルファ、ラディッシュ、カラシ、緑豆、ブロッコリー、オランダガラシ、大豆、小麦、ヒマワリ、キャベツ、クローバー、ペチュニア、トマト、ジャガイモ、ニコチン、ほうれん草およびレンズ豆細胞よりなる群から選択される請求項66記載の宿主細胞。
【請求項69】
前記植物が前記抗原蛋白質を生産することができる請求項52記載の核酸構築体を含む植物。
【請求項70】
アルファルファ、ラディッシュ、カラシ、緑豆、ブロッコリー、オランダガラシ、大豆、小麦、ヒマワリ、キャベツ、クローバー、ペチュニア、トマト、ジャガイモ、ニコチン、ほうれん草およびレンズ豆よりなる群から選択される請求項69記載の植物。
【請求項71】
アブラナ属、タバコ(Nicotiana)属、およびペチュニア属から選択される属のものである請求項69記載の植物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−526780(P2009−526780A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554443(P2008−554443)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/003973
【国際公開番号】WO2007/095320
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(508033591)フラウンホーファー ユーエスエー, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/003973
【国際公開番号】WO2007/095320
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(508033591)フラウンホーファー ユーエスエー, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
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