説明

ICカードとその製造方法

【課題】通常の使用状態では異常を発生しないことを保証するICカードである一方、ICカードを構成するICモジュールが、カード本体から分離、破壊された場合に、分離したICモジュールを誤って口に入れると短時間に吐き出させることを可能にすることによって、子供の誤飲、誤食を防ぐICカードを提供すること。
【解決手段】ICモジュールに実装され樹脂で封止されたICチップが封止樹脂の表面をICカード内側に向けて配置されており、該封止樹脂の材料中または封止樹脂の表面に苦味剤を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード基材にICモジュールを搭載して情報を入出力するためのICカードとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、クレジットカード、IDカード、キャッシュカード等に、非視覚情報を磁気テープやICモジュールに書き込んで搭載する形態のものが多く使用され、情報記録容量やセキュリティーのレベルに応じて、各種の仕様のカードが開発されている。
【0003】
キャッシュカードやクレジットカードと同じ寸法と厚さ(幅85.6mm×高さ54.0mm×厚さ0.76mm)のISOおよびJISの規格に準拠するID−1型のICカードは広く普及してきた。中でも、接触型ICカードは、カード端末機のリーダ/ライタ端子と接触するモジュール端子を持つタイプで、カードと端子が直接接触して通信を行う。確実な通信を行える接触型は、利便性を重視して近年普及が進んでいる非接触型よりも、より堅牢なセキュリティが求められる決済や認証の分野で多く使われている。
【0004】
一方、パーソナルコンピュータ、デジタルビデオカメラ、携帯電話等の電子機器のデータ記録媒体として、不揮発性半導体メモリ等を用いたメモリカードが多用されるようになってきた。例えばSDカード(幅24mm×高さ32mm×厚さ2.1mm)や、miniSDカード(幅20mm×高さ21.5mm×厚さ1.4mm)や、microSDカード(最大で、幅11mm×高さ15mm×厚さ1.0mm)のように、小型化して可搬性を良くしたものが日常的に利用されている。これらのメモリカードは、電子機器から取り外して保管する場合に、幼い子供が手にする可能性も稀ではなく、子供の誤飲、誤食を防ぐための提案がなされている(特許文献1、2、3参照)。催吐剤として機能する苦味剤をメモリカードの一部に含ませることにより、口に入れても直ちに吐き出させることができる。
【0005】
前記ID−1型のICカードにおいては、そのサイズが大きいため、上述のような誤飲、誤食の危険はメモリカードより小さい。また、ICカードの中でも、非接触型の場合には、ICモジュールと金属アンテナとを接続したインレットをカードの積層構造体の内部に閉じ込めた構造であるため、ICカードを構成する小型部品であるICチップやICモジュールを抽出して、子供が口に入れる可能性も比較的小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−003955号公報
【特許文献2】特開2007−200178号公報
【特許文献3】特開2007−293402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記ICカードは、メモリカードより誤飲、誤食の危険が小さいとはいえ、破壊されてカード本体からICモジュールが分離した場合は、幼い子供が口に入れる可能性が生じる。特に、接触型ICカードは、外部接続端子をICカードの表面に露出した構造であり、カード本体からICモジュールが分離する恐れは、非接触型ICカードの場合より大きくなる。
【0008】
上記の理由により、前記ICカードの構成部品であるICモジュールに対して、子供の誤飲、誤食を防ぐ方策が有益となる。しかしながら、ICカードは、人が直接携帯して頻繁に手に触れ、また、手の表面と強く密着する可能性が高いので、メモリカードに用いられたような誤飲、誤食を防ぐ催吐剤として機能する薬剤が、ICカードの通常の使用状態で、手に移ることは避けなければならない。
【0009】
本発明は、前記の問題点に鑑みて提案するものであり、本発明が解決しようとする課題は、通常の使用状態では異常を発生しないことを保証するICカードである一方、ICカードを構成するICモジュールが、カード本体から分離、破壊された場合に、分離したICモジュールを誤って口に入れると短時間に吐き出させることを可能にすることによって、子供の誤飲、誤食を防ぐICカードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、ICモジュールに実装され樹脂で封止されたICチップが封止樹脂の表面をICカード内側に向けて配置されており、該封止樹脂の材料中または封止樹脂の表面に苦味剤を有することを特徴とするICカードである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記ICモジュールの封止樹脂側の封止樹脂を除く表面領域とICモジュールを収納するICカード内側加工部との間に接着層を介在させることを特徴とする請求項1に記載のICカードである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記苦味剤が、安息香酸デナトニウムを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のICカードである。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、前記苦味剤を含む層が、樹脂に対して苦味剤の含有率を0.1〜5.0wt.%とした材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のICカードである。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、前記ICカードが、国際規格ID−1型の接触型ICカードであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のICカードである。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載のICカードを製造する方法であって、ICモジュールを構成するための絶縁基材にワイヤボンディング用の開口を形成後、基材の両面に金属箔を形成し、外形打ち抜き加工とフォトエッチング法で基材および金属箔をパターン形成し、次に、ICモジュール用基材の所定の位置にICチップをダイボンディングし、ICチップの各パッドとICモジュール用基材の各パッドとをワイヤボンディングで連結し、次に、前記ICチップとワイヤボンディング領域との全体を、苦味剤を有する材料を使用して樹脂封止するか、樹脂封止後に苦味剤を有する材料を封止樹脂表面に塗布するかしてICモジュールを製造した後、前記ICモジュールの所定の領域に接着層を形成し、予め外形加工および内側加工されたカード基材の所定の位置に、前記接着層を介してICモジュールを嵌め込み貼り合わせたことを特徴とするICカードの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ICチップの封止樹脂の表面をICカード内側に向けて配置し、該封止樹脂の材料中または封止樹脂の表面に苦味剤を有するので、ICカードを構成するICモジュールが、カード本体から分離、破壊された場合に、分離したICモジュールを誤って口に入れると短時間に吐き出させることを可能にすることによって、子供の誤飲、誤食を防ぐICカードを提供することができる。しかも、人が直接携帯して頻繁に手に触れ、
また、手の表面と強く密着する可能性が高いICカードであるにも拘らず、苦味剤がICカードの通常の使用状態で手に移ることがないので、通常時には、異常を発生させずに使用できる。
【0017】
また、請求項6によれば、ICカードの製造プロセスを従来の方法から大きく変えることなく、容易に本発明のICカードを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のICカードの一構成例を説明するための断面模式図である。
【図2】本発明のICカードの他の構成例を説明するための断面模式図である。
【図3】本発明のICカードの内、ICモジュールの一構成例の製造工程を説明するための工程順の断面模式図である。
【図4】本発明のICカードの内、ICモジュールの他の構成例の製造工程を説明するための工程順の断面模式図である。
【図5】本発明のICカードの製造工程の一例を示す工程図である。
【図6】本発明のICカードの製造工程の他の例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を、図面に従って、以下に説明する。
【0020】
図1は、本発明のICカードの一構成例を説明するための断面模式図である。ICカード1は、ICモジュール2aを埋設可能とする凹部をカード基材8に形成してあり、ICモジュール2aに実装され樹脂で封止されたICチップ5が封止樹脂61の表面をICカード内側の凹部に向けて配置されており、該封止樹脂61の材料中に後述の苦味剤を有する例である。
【0021】
図2は、本発明のICカードの他の構成例を説明するための断面模式図である。ICカード1は、ICモジュール2bを埋設可能とする凹部をカード基材8に形成してあり、ICモジュール2bに実装され樹脂で封止されたICチップ5が封止樹脂62の表面をICカード内側の凹部に向けて配置されており、該封止樹脂62の表面に積層した苦味剤塗布層63に後述の苦味剤を有する例である。
【0022】
図1および図2において、封止樹脂61、62と封止樹脂62の表面に積層した苦味剤塗布層63とを除くICモジュール2a、2bの他の部分は共通であって、開口部を有する絶縁基材3の両面に金属パターン41、42、43の配線層が形成され、ICチップ5の接続用パッド部と前記金属パターンの内、外部接続端子を構成する金属パターン42とが、前記開口部を通してボンディングワイヤ51により接続されている。
【0023】
また、ICモジュール2a、2bとカード基材8の凹部とは、ICモジュールが適切に凹部に埋設されて、図の上面に露出するICモジュールの片側の金属パターン41、42の表面とカード基材8の凹部入口に隣接する表面とが略同一の高さの平面を形成する。さらに、ICモジュールのカード表面に露出する金属パターンの反対側の金属パターン43の側の所定の位置、すなわち、ICモジュールの封止樹脂側の封止樹脂を除く表面領域の所定の位置とICモジュールを収納するICカード内側加工部である凹部の一部との間に後述の接着層7を介在させることにより、ICモジュール2a、2bをICカード1の構成要素として固定することができる。
【0024】
前述のように、接着層7が封止樹脂面を覆わないことにより、ICモジュールがカード本体から分離、破壊された場合に、分離したICモジュールの表面または表面近傍に設ける後述の苦味剤が、略露出状態になり、誤飲、誤食を防ぐ効果を保持できる。
【0025】
また、不良ICモジュールやバージョン更新された古いICを含むICモジュールをカード本体から意図的に分離交換したり、古いICモジュールをリサイクル利用したりする場合に、ICモジュールの通常工程から離れた保管や流通の場面であっても、本発明のICカードにおけるICモジュールが誤飲、誤食を防ぐ効果を有することは明らかである。
【0026】
前述の封止樹脂61の材料中に、または封止樹脂62の表面に積層した苦味剤塗布層63に含まれる苦味剤とは、人が口に入れて苦味を感じ催吐剤として機能するような呈味物質であって、天然または合成された化合物で食品添加物等としても使用し得るものが望ましい。このような苦味物質としては、安息香酸デナトニウム、八アセチル化ショ糖、ホップ、香辛料抽出物、キク抽出物、キハダ抽出物、ヒメマツタケ抽出物、レイシ抽出物、カワラタケ抽出物、ナリンジン、フムロン等を用いることができる。このほかにも、カテキン類、アルカロイド類、アノレカロイド類、キサンチン類、テルペン類、トリテルペノイド類、テルペン配糖体等の化合物で食品添加物等として使用し得るものであれば、広く用いることができる。
【0027】
さらに、苦味剤に準ずるものとして、カプサイシン、イソチオシアン酸エステル、シニグリン等の辛味を感じさせるもの、クエン酸、酒石酸、フマル酸、フマル酸ナトリウム、リンゴ酸、アジピン酸等の酸味を感じさせるもの、カテキン、プロトシアニジン酸等の渋味を感じさせるものも同様の催吐効果を得られるので、本発明においては、広い意味の苦味剤として上記の各物質を含めることができる。
【0028】
上記各種の苦味剤の中でも、安息香酸デナトニウムは、苦味検知閾値10ppbという最も苦味の強い物質として市場に流通しており、洗剤、殺虫剤、不凍液、工業用アルコール等に誤飲防止の目的で添加されている。本発明に用いる苦味剤としても、封止樹脂61として用いる熱硬化性または紫外線硬化性を有する機能性エポキシ系樹脂中に、安息香酸デナトニウムを予め配合しておくことにより、催吐剤として機能させることができる。あるいは、封止樹脂62として通常の熱硬化性または紫外線硬化性を有する機能性エポキシ系樹脂を用いて形成後、封止樹脂62の表面に安息香酸デナトニウム等の苦味剤を樹脂と溶剤中に含めて形成することができる。
【0029】
前記接着層7は、ICモジュール2a、2bの封止樹脂部側の周辺の基板外周部に、0.5mm厚のホットメルト接着シートを用いることができ、これを仮貼りしたものを、ICモジュールを収納するICカード内側加工部である凹部の一部の所定の位置に貼り合わせることによりICモジュールとカード基材8とを一体化できる。
【0030】
上述の図1または図2で説明したICカードの構成例において、キャッシュカードやクレジットカードと同じ寸法と厚さ(幅85.6mm×高さ54.0mm×厚さ0.76mm)の国際規格ISO/IEC7810およびJIS X 6301の規格に準拠するID−1型の接触型ICカードを適用することができ、本発明の課題に適切に対応する例を提示することができる。
【0031】
図3は、本発明のICカードの内、ICモジュールの一構成例の製造工程を説明するための工程順の断面模式図である。また、図4は、本発明のICカードの内、ICモジュールの他の構成例の製造工程を説明するための工程順の断面模式図である。
【0032】
絶縁基材3は、厚さ110〜130μmのガラスエポキシ基材を用いることができ(1)、熱硬化性接着シート(図示せず)を表裏両面に接着してから、所定の位置にワイヤボンディング用パッドとするための開口を直径1.0mm以下の大きさの円形に形成する(2)。次に、上記表裏の接着シートの各外向面に金属箔4、4’として銅箔をラミネートした(3)後、表面側に外部接続端子42を含む金属パターン41、42および外形打ち抜き輪郭形状を、また、裏面側にアンテナ接続用端子とリード部を含む金属パターン43をフォトエッチング法により形成する(4)。図示していないが、さらに、金属パターン表面に選択的にニッケルめっきと金めっきを行い、接続の信頼性を向上したICモジュール用の配線基板とすることができる。
【0033】
次に、ICチップ5を熱硬化性ダイペーストを用いてダイボンディングし、加熱硬化する(5)。ICチップの各パッドとモジュールの配線基板のワイヤボンディング用パッド間やその他必要に応じて、直径25μmの金のボンディングワイヤ51で、熱圧・超音波併用式のワイヤボンダーを使用して接続する(6)。
【0034】
続いて、ICチップ5とワイヤボンディング領域を覆う全体を封止樹脂61、62により樹脂封止する(7)。熱硬化性エポキシ樹脂を主成分とする封止樹脂材料を、トランスファーモールド方式、ポッティング方式、印刷方式等の通常の樹脂封止手段により樹脂封止することができる。ここで、図3に示すICモジュール2aの一構成例では、前述の図1の説明に示したように、封止樹脂61として用いる熱硬化性エポキシ樹脂中に、安息香酸デナトニウム等の苦味剤を予め配合しておくことにより、催吐剤としての機能を発揮させることができる。
【0035】
また、図4に示すICモジュール2bの他の構成例では、前述の図2の説明に示したように、封止樹脂62として通常の熱硬化性または紫外線硬化性を有する機能性エポキシ系樹脂を用いて形成(7)後、封止樹脂62の表面に安息香酸デナトニウム等の苦味剤を樹脂と溶剤中に含めて、苦味剤塗布層63として形成することができる(8)。
【0036】
なお、上記の苦味剤を含む封止樹脂61や苦味剤塗布層63に使用する材料として、具体的には、芳香族系炭化水素、ケトン系化合物、エステル化合物等を溶剤とし、樹脂に対して苦味剤の含有率を0.1〜5.0wt.%、とりわけ0.1〜2.0wt.%とすることが好ましい。苦味剤が0.1wt.%未満では、苦味剤としての効果を生じない恐れがあり、また、苦味剤が5.0wt.%を超えると封止樹脂の特性が低下することがある。樹脂に対して溶剤の含有率を100〜200wt.%、とりわけ130〜170wt.%とし、ディスペンサー塗布方式、噴霧吹き付け方式、印刷方式等の手段により、苦味剤塗布層63を形成できる。塗布層形成後、硬化処理として、50〜100℃、10〜20分間の加熱乾燥を行う。
【0037】
図5は、本発明のICカードの製造工程の一例を示す工程図である。また、図6は、本発明のICカードの製造工程の他の例を示す工程図である。製造工程全体の内、ICモジュールの製造工程については、図3と図4により、二つの例で説明したので、主にICモジュールの貼り付けを含むICカード全体の製造工程を中心に、磁気テープを含むICカードの例について説明する。図5と図6との差異は、図1と図2の関係や図3と図4の関係と同様に、ICモジュールの封止樹脂部分に苦味剤成分を付与するための構造の違いに由来する差異であるため、それ以外の部分の説明は共通となる。
【0038】
図5および図6において、予め、磁気テープ(J2)と、それを直接保持するためのオーバーシート(J1)と、を準備し、両者を仮貼りしておく(S1)。別にカード基材(J3)を準備しておき、前述の磁気テープを仮貼りしたオーバーシートを該基材に仮貼りする(S2)。この状態で、軽度の熱プレス等による積層処理を行い、磁気テープのオーバーシートへの埋め込みを充分なものにすると共に、印刷前の下地の状態を整える(S3)。
【0039】
上述の説明をさらに補足すると、カード基材(J3)の材質として、ポリエステル樹脂
、アクリルニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS)、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂、PET−G、ポリプロピレン、ポリカーボネート、トリアセテート、ポリアミド等の樹脂が一般的に用いられるが、この限りではなく、JIS X 6301の規格を満たすものであれば使用することができる。オーバーシート(J1)には、カード基材と類似の材料として塩ビや耐熱塩ビが用いられる。磁気テープのオーバーシートへの仮貼り(S1)とオーバーシートの基材への仮貼り(S2)は、熱転写の手段で行う。
【0040】
次に、印刷工程を重ねて隠蔽層印刷(S4)、白色層印刷(S5)、絵柄層印刷(S6)を行う。絵柄層印刷(S6)が複数回の印刷からなる場合もある。本例では、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等の印刷法を適宜選択してカードに直接印刷できるが、他の方法として、転写フィルム等にいったん印刷した印刷層を転写して形成することもできる。転写形成する場合は、印刷各層毎に単独で転写することもできるが、他の層と併せて転写することもできる。カード上に印刷層が形成された後、予め準備したオーバーコート転写箔(J4)を印刷層の上に転写して積層処理を加熱および加圧しながら行い平坦化する(S7)。次に、カードの外形加工(S8)とミリング加工(S9)とを行って、ICモジュールを嵌め込み貼り合わせるためのカード基材側の準備が完了する。
【0041】
なお、具体的な印刷例としては、先ず、スクリーン印刷で隠蔽層1.5〜2.0μm厚、および白色層1.5〜2.0μm厚の印刷を行い(S4)(S5)、乾燥後、オフセット印刷で詳細な絵柄層0.5〜1.0μm厚を印刷する(S6)。印刷後の乾燥処理(図5、図6では省略)も含めて、ここまでの各工程の処理温度は、例えば、基材に貼り合わせるオーバーシートとして塩ビシートを使う場合には、塩ビのガラス転移点である60〜70℃を超えない。但し、後述のオーバーコート転写箔(J4)の積層処理(S7)では、基材とオーバーシート、オーバーコート転写箔の接着を熱融着により行う場合、より高温の処理も可能になる。
【0042】
オーバーコート転写箔(J4)は、転写保護層付きフィルムであって、オーバーコート層となるべき樹脂層を剥離性のよいフィルム上に形成したタイプのものを準備しておき、オーバーコート層を110〜165℃、10秒程度の加熱による積層処理を行うことでオフセット印刷による絵柄層の上に転写する(S7)。
【0043】
オーバーコート層の形成は、上述のとおり、オーバーコート転写箔を上記絵柄層に転写して積層処理を行うことにより可能であるが、直接、スクリーン印刷やオフセット印刷等の通常の印刷方法により形成することもできる。例えばオーバーコート層の転写膜厚を1.0〜1.5μmとして良好なオーバーコートが実現できる。
【0044】
上述のとおり、必要な層と絵柄が形成されたカード基材の表面に熱と圧力をかけることで均一な表面を出す。この時の温度は100〜160℃、圧力は10〜50MPaで行うことが一般的である。転写方式の場合は、各層の転写と表面出し加工を兼ねることができる。
【0045】
上記表面出し加工まで行ったカード基材の所定位置に、刃先径3mmφのエンドミルを用いたミリング加工により、図1および図2に示す断面形状に、カード基材表面よりICモジュールを埋設可能とする凹部を形成することができる。
【0046】
図5および図6のJ5、J6、S10、S11、S12、S13に示す各工程は、前述の図3および図4の説明におけるICモジュールの各構成例の製造工程の説明と同じであり、配線基板(J5)が各構成例の製造工程を説明するための工程順の断面模式図(4)に相当する。また、図5の樹脂封止(S12)が、図3の工程順(7)に示すICモジュ
ール2aの処理段階を、図6の苦味剤塗布(S13)が、図4の工程順(8)に示すICモジュール2bの処理段階を、それぞれ表す。
【0047】
次に、図5および図6における接着層仮貼り(S14)は、図1および図2において、ICモジュール2a、2bの封止樹脂部側の周辺の基板外周部に、0.5mm厚のホットメルト接着シートを仮貼りする例に相当する。前記ホットメルト接着シートとしては、ニトリルゴム、フェノール樹脂、ポリエステル系等の材料が可能であり、例えば、120℃の加熱処理で仮貼りすることができる。
【0048】
加工済みのカード基材の凹部と、ICモジュールの封止樹脂部側の周辺の基板外周部に設けたホットメルト接着シートと、が対向するように配置し、ICモジュールの外部接続端子側より160〜200℃に加熱されたヘッドで1〜5秒間加圧、加熱することにより、ICモジュールが嵌め込み貼り合わされて載置されたICカードを得ることができる(モジュールインプラント加工:S15)。
【符号の説明】
【0049】
1・・・ICカード
2、2a、2b・・・ICモジュール
3・・・絶縁基材
4、4’・・・金属箔
5・・・ICチップ
7・・・接着層
8・・・カード基材
9・・・ノンリーフィングタイプの隠蔽層
41、43・・・金属パターン
42・・・金属パターン(外部接続端子)
51・・・ボンディングワイヤ
61、62・・・封止樹脂
63・・・苦味剤塗布層
J1・・・オーバーシート
J2・・・磁気テープ
J3・・・カード基材
J4・・・オーバーコート転写箔
J5・・・配線基板
J6・・・ICチップ(LSI)
S1・・・磁気テープ仮貼り
S2・・・オーバーシート仮貼り
S3・・・積層処理(印刷前処理)
S4・・・隠蔽層印刷(オーバープリント1)
S5・・・白色層印刷(オーバープリント2)
S6・・・絵柄層印刷(オーバープリント3)
S7・・・積層処理(転写)
S8・・・カード外形加工
S9・・・ミリング加工
S10・・・ダイボンディング
S11・・・ワイヤボンディング
S12・・・樹脂封止
S13・・・苦味剤塗布
S14・・・接着層仮貼り
S15・・・モジュールインプラント加工

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICモジュールに実装され樹脂で封止されたICチップが封止樹脂の表面をICカード内側に向けて配置されており、該封止樹脂の材料中または封止樹脂の表面に苦味剤を有することを特徴とするICカード。
【請求項2】
前記ICモジュールの封止樹脂側の封止樹脂を除く表面領域とICモジュールを収納するICカード内側加工部との間に接着層を介在させることを特徴とする請求項1に記載のICカード。
【請求項3】
前記苦味剤が、安息香酸デナトニウムを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のICカード。
【請求項4】
前記苦味剤を含む層が、樹脂に対して苦味剤の含有率を0.1〜5.0wt.%とした材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のICカード。
【請求項5】
前記ICカードが、国際規格ID−1型の接触型ICカードであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のICカード。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のICカードを製造する方法であって、ICモジュールを構成するための絶縁基材にワイヤボンディング用の開口を形成後、基材の両面に金属箔を形成し、外形打ち抜き加工とフォトエッチング法で基材および金属箔をパターン形成し、次に、ICモジュール用基材の所定の位置にICチップをダイボンディングし、ICチップの各パッドとICモジュール用基材の各パッドとをワイヤボンディングで連結し、次に、前記ICチップとワイヤボンディング領域との全体を、苦味剤を有する材料を使用して樹脂封止するか、樹脂封止後に苦味剤を有する材料を封止樹脂表面に塗布するかしてICモジュールを製造した後、前記ICモジュールの所定の領域に接着層を形成し、予め外形加工および内側加工されたカード基材の所定の位置に、前記接着層を介してICモジュールを嵌め込み貼り合わせたことを特徴とするICカードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−43086(P2012−43086A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182185(P2010−182185)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】