説明

ICカード読取装置およびICカード認証システム

【課題】 ICカード認証システム等のICカードを使用したシステムが完成するまでの期間を短縮できるとともに、他の通信方式のICカードへの切り替えに伴うコストを低減することができるICカード読取装置を提供する。
【解決手段】 非接触型のICカードとの間で無線方式による通信を行う制御基板を備えたICカード読取装置(10)において、前記制御基板(20)に、第1の周波数帯の信号を送受信するための第1のアンテナ(31)と、前記第1の周波数帯とは異なる第2の周波数帯の信号を送受信するための第2のアンテナ(32)と、前記第1のアンテナに接続された第1の送受信回路(29a)と、前記第2のアンテナに接続された第2の送受信回路(29b)とを設けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカード読取装置およびICカード認証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビルや工場などの建物や設備の入退出管理システムや警備システムにおいては、IDコード(個体識別情報)などを記憶した非接触型のICカードやICタグ(以下、ICタグを含めてICカードと称する)および該ICカードの情報を読み取るカードリーダを使用した認証システムが多用されている。そして、かかる認証システムにおける非接触型ICカードとカードリーダとの間の通信方式として、13.56MHz帯の信号を使用するMifare(登録商標)やFeliCa(登録商標),125KHz帯の信号を使用するHiTag1など様々な種類の方式が実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−285207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ある建物や設備において、新たにICカードを利用した認証システムを構築する場合、上述したような多種多様な方式のICカードの中から目的とするシステムに適したICカードを選定することとなるが、各方式はそれぞれ長所と短所を有するためICカードの選定には比較的長い期間を要することがある。
【0005】
しかるに、従来のICカード読取装置としてのカードリーダは、いずれか一種類の方式のICカードの情報を読み取るのが一般的であった。そのため、使用するICカードの選定が終了するまで、カードリーダおよびそれを管理する管理装置との間を接続するケーブルを建物や設備に敷設する作業が進められず、システムが完成するまでの期間が長くなる。また、既に敷設された認証システムで使用している方式と異なる方式のICカードを新たに適用したい場合には、これまで使用していたICカードをすべて廃棄して新たな方式のICカードおよびカードリーダに切り替える必要があるため、切り替えに伴うコストが嵩むという課題があった。
【0006】
なお、従来、2種類の方式のICカードの情報を読み取ることができるようにされたマルチ対応カードリーダも提案されている(特許文献1)が、従来のマルチ対応カードリーダは、それぞれの方式に対応した2種類のカードリーダ用の基板を単に重ねてケースに内蔵しただけのものであるため、ケースが大型化してしまうという課題がある。
【0007】
さらに、従来のICカードを利用した入退出管理システムには、入室記録をカード内のメモリに記憶し退出の際にカード内の入室記録をチェックして記録がない場合には退出を許可しないような管理を行うものがあるが、カード内のメモリへの書き込み回数に制限があるため、カードの使用可能な期間が短くなるというという課題がある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたもので、ICカード認証システム等のICカードを使用したシステムが完成するまでの期間を短縮できるICカード読取装置を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、コンパクトであるとともに他の通信方式のICカードへの切り替えに伴うコストを低減することができるICカード読取装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、ICカードを使用したシステムにおけるスキミングや偽造されたカードによる不正行為に対する安全性を高くすることができるICカード認証システムを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、ICカード内のメモリに入室記録等のデータを記憶する入退出管理システム等において、カードの使用期間を長くすることができるICカード認証システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、
非接触型のICカードとの間で無線方式による通信を行う制御基板を備えたICカード読取装置であって、
前記制御基板は、
第1の周波数帯の信号を送受信するための第1のアンテナと、
前記第1の周波数帯とは異なる第2の周波数帯の信号を送受信するための第2のアンテナと、
を有することを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、ICカード読取装置は、通信方式の異なる複数のICカードとの間で通信を行うことができるため、新たにICカードを利用した認証システムを構築する場合に、目的とするシステムに適したICカードを決定する前にICカード読取装置および管理装置とこれらを接続するためのケーブルを敷設することができ、それによってシステムが完成するまでの期間を短縮できる。また、既存のシステムの通信方式と異なる他の通信方式のICカードへ切り替えたとしてもそれまで使用していたICカードを継続して使用できるため、ICカードの切り替えに伴うコストを低減することができる。
また、既存のシステムで使用していた周波数帯の信号の送受信を行う送受信回路として汎用のモジュールを使用していた場合には、異なる他の通信方式に使用する周波数帯の信号を送受信する送受信回路を組み込んで制御基板を交換または変更することにより、新たにICカードを使用したシステムを構築する場合や既存のシステムの通信方式から他の通信方式のICカードに切り替える際に伴う期間を短縮し、コストを削減することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のICカード読取装置において、
前記制御基板は、さらに、前記第1のアンテナに接続された第1の送受信回路と、前記第2のアンテナに接続された第2の送受信回路と、を有することを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、ICカード読取装置は、通信方式の異なる複数のICカードとの間で通信を行うことができるため、新たにICカードを利用した認証システムを構築する場合に、目的とするシステムに適したICカードを決定する前にICカード読取装置および管理装置とこれらを接続するためのケーブルを敷設することができ、それによってシステムが完成するまでの期間を短縮できる。また、既存のシステムの通信方式と異なる他の通信方式のICカードへ切り替えたとしてもそれまで使用していたICカードを継続して使用できるため、ICカードの切り替えに伴うコストを低減することができる。また、制御基板に各アンテナに接続される送受信回路が組み込まれるので、コンパクトなICカード読取装置を提供できる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1また2に記載のICカード読取装置において、
前記制御基板の周縁部に沿って前記第1のアンテナを構成するコイル状の導電層パターンが形成され、前記制御基板の前記第1のアンテナを構成するコイル状の導電層パターンの内側に前記第2のアンテナを構成するコイル状の導電層パターンが形成されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、2つのアンテナを1つの基板上に形成できるとともに、横に並べて形成する場合に比べて必要な基板の面積を小さくすることができ、それによってICカード読取装置を小型化することが可能になる。また、2つのアンテナが同心円状に配置されることとなるため、ICカードの種類によってカードリーダに対してカードをかざす位置が変わるのを防止することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のICカード読取装置において、
前記第2のアンテナを構成するコイル状の導電層パターンは、少なくとも前記第1のアンテナを構成するコイル状の導電層パターンの該コイルのピッチおよび前記第2のアンテナを構成するコイル状の導電層パターンの該コイルのピッチよりも広い間隔をおいて前記第1のアンテナを構成するコイル状の導電層パターンの内側に配置されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、第1のアンテナと第2のアンテナのアンテナ間の干渉を防止することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載のICカード読取装置において、
前記制御基板の前記第2のアンテナを構成するコイル状導電層パターンの内側の領域に、少なくとも該コイルのピッチよりも広い間隔をおいて、前記第1の送受信回路および第2の送受信回路が配置されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、第1のアンテナと第2のアンテナのアンテナ間および各アンテナと各送受信回路との干渉を防止することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明に係るICカード認証システムは、
請求項1〜5のいずれに記載のICカード読取装置と、
前記第1の周波数帯の信号を送受信するための第3のアンテナと、前記第2の周波数帯の信号を送受信するための第4のアンテナと、前記第3のアンテナに接続された第3の送受信回路と、前記第4のアンテナに接続された第4の送受信回路とを有するICカードと、を組み合わせてなることを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、通信方式の異なる複数種類のICカードを併存して使用することができ、目的とするシステムに適した認証を行うことができる。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のICカード認証システムにおいて、
前記ICカードは、前記第3の送受信回路に接続された第1の不揮発性メモリと、前記第4の送受信回路に接続された第2の不揮発性メモリとを有し、
前記第1の不揮発性メモリおよび第2の不揮発性メモリのそれぞれに異なるIDコードが格納され、
前記ICカード読取装置は、前記第1の不揮発性メモリおよび第2の不揮発性メモリのそれぞれに格納されているIDコードを読み取って照合を行うように構成されていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、一方のIDコードがスキミングされてカードが偽造されたとしても他方のIDコードがないと正規なカードとして認知されることがないので、偽造されたカードによる不正行為に対する安全性を高めることができる。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のICカード認証システムにおいて、
前記第1の不揮発性メモリまたは前記第2の不揮発性メモリには暗号化されたIDコードが格納され、
前記第2の不揮発性メモリまたは前記第1の不揮発性メモリには暗号化された前記IDコードを復号するためのキーコードが格納され、
前記ICカード読取装置は、前記第1の不揮発性メモリおよび第2の不揮発性メモリに格納されているIDコードおよびキーコードを読み取って、読み取ったキーコードを用いて読み取ったIDコードを復号して照合を行うように構成されていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、IDコードが読み取られたとしてもキーコードを読み取れなかったり、読み取れたとしてもキーコードによるIDコードの復号ができないと、正規なカードとして認知されることがないので、偽造されたカードによる不正行為に対する安全性をさらに高めることができる。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項7または8に記載のICカード認証システムにおいて、
前記第1の不揮発性メモリと前記第2の不揮発性メモリは、それぞれデータを書き込み可能なメモリであって、
前記ICカードは、前記第1の不揮発性メモリまたは第2の不揮発性メモリの一方への特定のデータの書込み回数が所定値に達した後に他方の不揮発性メモリへ前記特定のデータの書込みを行うように構成されていることを特徴とする。
請求項8に記載の発明によれば、ICカード内のメモリに入室記録等のデータを記憶する入退出管理システム等に適用した場合に、一方のメモリの書込み回数が当該メモリの書込み可能回数に達したとしてもその後さらに他方のメモリへデータを書き込むことができるため、従来のカードに比べて書込み回数を増やすことが可能となり、カードの使用期間を長くすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ICカード認証システム等のICカードを使用したシステムが完成するまでの期間を短縮できるICカード読取装置を実現することができる。また、コンパクトであるとともに他の通信方式のICカードへの切り替えに伴うコストを低減することができるICカード読取装置を実現することができる。
さらに、本発明によれば、ICカードを使用したシステムにおけるスキミングや偽造されたカードによる不正行為に対する安全性を高くすることができるICカード認証システムを実現することができる。また、ICカード内のメモリに入室記録等のデータを記憶する入退出管理システム等において、カードの使用期間を長くすることができるICカード認証システムを実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用したカードリーダの外観を示すもので、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図2】実施形態のカードリーダにおける制御基板の回路構成例を示すブロック図である。
【図3】実施形態のカードリーダの制御基板のアンテナパターンおよびグランドパターンの一例を示すレイアウト図である。
【図4】本発明のICカード認証システムを適用したICカード内の回路構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
なお、以下に説明する実施形態においては、本発明を一例として入退出管理機能および警備機能を1つの装置として実現したICカードのカードリーダおよびそれを用いた認証システムについて説明するが、本発明はそれに限定されるものでなく、いずれか一方の機能のみ有するカードリーダにも適用することができる。
【0022】
図1は、本実施形態に係る入退出管理機能と警備機能とを有する認証システムを構成するカード読取装置としてのカードリーダの外観を示すもので、図1(A)は正面図、図1(B)は側面図である。
【0023】
同図に示すように、本実施形態のカードリーダ10は、ケース本体11の前面に、「解錠」や「照合」、「許可」、「異常」などの制御状態や処理結果を外部に報知するための表示ランプ12a,12b,12c,12dと、システムを警備状態へ移行させる指令を与えるための操作ボタン13a、システムを警備解除状態へ移行させる指令を与えるための操作ボタン13b、内蔵スピーカが発した音を外部へ伝わり易くしたりマイクへの入力音量を大きくするための多孔部14、警備中に人感センサなどにより侵入が検知された場合に警備会社の巡回員が現場に赴いてシステムに警備開始(巡回開始)又は警備解除(巡回解除)を実行させる際に操作する操作ボタン13cなどが設けられている。図示しないが、図1のカードリーダは、建物の入口のドア近傍の壁面などに設置されて使用される。
【0024】
図2は、図1のカードリーダ10のケース内部に設けられるメイン制御基板20の回路構成例を示すブロック図である。
【0025】
図2に示すように、メイン制御基板20は、LEDの光らせ方やスピーカから発する音の種類など、構築するシステムに応じた各種設定を行うための設定用スイッチ21a、ケースの上蓋の開閉状態を検出するためのタンパスイッチ21b、ケース前面に設けられている「警備」、「解除」、「巡回」の各操作ボタン13a〜13cが操作されたか否かを検出するための操作ボタンスイッチ21c、これらのスイッチ類からの信号を受けてカードリーダ20内の制御信号を生成したり通信処理を行うCPUやROM、RAMなどからなる制御回路22、制御回路22からの制御信号によってケース前面に設けられている表示ランプ12a〜12dを点灯駆動するためのドライバ回路23、制御状態や信号処理結果に応じた音声を出力するための音声合成LSI24およびスピーカ(SP)を駆動するドライバ回路25などを備える。
【0026】
また、メイン制御基板20上には、外部からのDC9V〜28Vの電源電圧の供給を受けて制御回路22などの動作に必要な例えば5Vのような内部電源電圧Vccを生成するDC−DCコンバータなどからなる電源回路26、図示しない管理装置との間で例えばRS485などの通信規格に従ったデータ通信を行うための通信ドライバ回路27a,27b、通信の切替えを行う通信切り替え回路27c、ケース11の上蓋の不正な開放等の異常を検出した場合にベルを鳴動させたり警報ランプを点灯させたりするための警備出力信号を生成して出力するドライバ回路28を備える。
【0027】
通信ドライバ回路27aは、「警備」、「解除」、「巡回」の各操作ボタン13a〜13cが操作されたり、後述のICカードとの間の通信によりカードが認証された場合などに結果を管理装置へ知らせるための通信等を行う。通信ドライバ回路27bは、制御回路22が備える自己診断機能を実施する。管理装置は、システムに設けられている図2のような構成の制御基板20を有する複数のカードリーダ10とデータ通信を行いシステム全体を監視したり、ドアの開閉などの指令を送ったりする機能を有するように構成される。
【0028】
さらに、図2のメイン制御基板20上には、Mifare(登録商標)など13.56MHz帯の信号を使用するICカードとの間のデータの送受信を行う送受信回路29aと、HiTag1など125KHz帯の信号を使用するICカードとの間のデータの送受信を行う送受信回路29bと、それぞれの送受信回路に接続されたアンテナ31,32とが設けられている。
【0029】
そして、この実施形態のカードリーダの制御回路22は、13.56MHz帯の信号に関しては、Mifare(登録商標)以外に例えばFeliCa(登録商標)など他の規格の複数種類のICカードと通信するためのプロトコルやデータ構成を示す情報を、また125KHz帯の信号に関しては、HiTag1やHiTag2など複数種類のICカードと通信するためのプロトコルやデータ構成を示す情報を有するように構成されている。また、実際に、送受信回路29aと送受信回路29bを動作させてカードとの間の通信を行う場合には、送受信回路29aと29bを時分割で動作させて、アンテナ31,32の相互干渉を回避する制御を行うように構成されている。
【0030】
上記のように、この実施形態のカードリーダは、複数のICカードと通信可能に構成されているため、ある建物や設備において、新たにICカードを利用した認証システムを構築する場合、多種多様な方式のICカードの中から目的とするシステムに適したICカードを選定する前に、カードリーダおよびそれを管理する管理装置との間を接続するケーブルを建物や設備に敷設する作業を進めることができ、システムが完成するまでの期間を短縮することができる。
また、既に敷設された認証システムで使用している方式と異なる方式のICカードを適用したい場合にも、カードリーダを本実施形態のようなカードリーダに置き換えることによって、これまで使用していたICカードを継続して使用することができるため、切り替えに伴うコストを低減することができる。さらに、種類の異なる複数のカードリーダを在庫管理する必要もないという利点がある。
【0031】
次に、上記のような2つの周波数帯の信号を送受信可能にするために設ける2つのアンテナ31,32の具体的な形成の仕方について説明する。
従来、異なる周波数帯の信号を使用する2種類のICカードと送受信可能なカードリーダを設計する場合、それぞれの周波数帯の信号を送受信するカードリーダ基板を別々に製造し、それらの基板を重ねるように配置するのが一般的であった。これにより、既存のカードリーダ基板をそのまま流用することができるという利点がある。しかし、2枚のカードリーダ基板を単に重ねて配置すると、収納するケースが大型してしまうという不具合がある。
【0032】
また、2つのアンテナを同一基板上に設けることも考えられるが、その場合には、2つのアンテナ間の信号の干渉等を回避するため、2つのアンテナを横方向に並べて配置するのが望ましいと従来は考えられていた。しかし、2つのアンテナを同一基板上に並べて配置すると、基板およびそれを収納するケースが大型してしまう。また、使用するカードの種類によってカードリーダに対してカードをかざす位置を変える必要が生じ、使い勝ってが低下するという不具合がある。そこで、本発明者は、上記のような不具合を回避することができるアンテナの形成方法を開発した。
【0033】
図3には、本発明者が開発した形成方法による2つのアンテナ31,32の具体的なパターンのレイアウトが示されている。
図3に示すように、本実施形態のカードリーダの制御基板20においては、125KHz帯の信号の送受信用アンテナ32は、基板20の周縁部に沿ってほぼ矩形状をなすように導電層からなる径の大きなコイル状アンテナパターンP2として形成されている。一方、13.56MHz帯の信号の送受信用アンテナ31は、アンテナパターンP2の内側に、P1よりも径の小さなコイル状アンテナパターンP1として形成されている。アンテナパターンP1とP2は、互いの距離がアンテナパターンのコイルのピッチよりも大きくなるように配置するのが望ましい。
【0034】
なお、125KHz帯と13.56MHz帯で使用するアンテナを上記と逆にすることも考えられる。
【0035】
この実施例のレイアウトにおいては、13.56MHz帯の信号のアンテナパターンP1は、基板20の中央の横方向の幅と縦方向の幅がほぼ同一の領域に、丸みを帯びた矩形状のパターンとして形成され、そのアンテナパターンP1の内側には、主として制御回路22および送受信回路29aと29bを構成するICや素子が実装される領域A1が設けられている。また、基板20の上方部であってアンテナパターンP1とP2との間には、主として電源回路26を構成するICや素子が実装される領域A2が設けられている。
【0036】
そして、領域A1とA2には、アンテナパターンP1と一部で交差し制御回路22や電源回路26へ接地電位を供給するためのグランドパターンP3が設けられている。なお、領域A1とA2のグランドパターンP3は一部で繋がるように形成しても良い。その場合、パターンの形成に多層配線技術を適用し、グランドパターンP3とアンテナパターンP1の少なくとも交差部分は異なる導電層にて形成することで、グランドパターンとアンテナパターンを絶縁層により絶縁するようにするのがよい。
【0037】
しかし、アンテナパターンP1,P2の内側の領域A1,A2がグランドパターンP3や電子回路部品で目一杯に埋まるように形成されると、送受信回路27a,27bによる送信時にアンテナで発生していた磁界が領域A1,A2では遮断されて、外部のICカードとの間の信号の強度が低下してしまい良好な通信が行えなくなる。
【0038】
そこで、この実施例の制御基板20においては、グランドパターンP3および各回路部品とアンテナパターンP1,P2との間にアンテナパターンのコイルのピッチよりも広い隙間Sを確保するようにした。具体的には、アンテナパターンP1,P2とグランドパターンP3との間に、できるだけ5mm以上の隙間Sを設けるように設計した。
【0039】
上述したように、本実施形態のカードリーダは、125KHz帯の信号を用いる複数種類のICカードおよび13.56MHz帯の信号を用いる複数種類のICカードと通信可能である。従って、そのようなICカードを使用する既存の認証システムに本実施形態のカードリーダを適用することで、それまで使用していたICカードを廃棄することなく、継続して使用することができる。しかも、本実施形態のカードリーダを適用したシステムにおいて、以下に説明するような125KHz帯の信号による通信機能と13.56MHz帯の信号を用いる通信機能の2つを有するように構成したICカードと組み合わせることで、さらに優れた効果を得ることができる。
【0040】
図4は、本発明に係る認証システムに好適なICカードの構成を示す。
図4に示すように、本実施形態のICカード100には、125KHz帯の信号による通信機能を有する第1回路部110と、13.56MHz帯の信号による通信機能を有する第2回路部120とが設けられている。このうち、第1回路部110は、アンテナ111と、該アンテナ111に接続され電磁誘導でアンテナに生じた交流電流を整流する整流回路やレギュレータなどからなりカード内部の回路の動作に必要な内部電源電圧Vcciを生成する電源回路112と、アンテナ111に接続された送受信回路113と、カード内部の回路を制御したりデータを転送したりするCPU114と、データを不揮発的に記憶可能なEEPROMやフラッシュメモリのような不揮発性メモリ115と、これらの回路ブロック間を接続するバス116を備える。
【0041】
CPU114は、ROMおよびRAMを備えたシングルチップマイコンのような構成を有するものが使用される。不揮発性メモリ115には、カードに固有のIDコードが格納され、入出記録などを記憶する場合にはCPU114によって不揮発性メモリ115に所定の情報の書き込みが行われる。CPU114が動作するためのプログラムは不揮発性メモリ115に格納されていても良い。第2回路部120は第1回路部110と同一の構成であるので、重複した説明は省略する。また、CPU114(124)は、第1回路部110と第2回路部120とで共通に使用するように構成しても良い。さらに、第1回路部110のバス116と第2回路部120のバス126は互いに直接あるいはバスインタフェースを介して間接的に接続しても良い。
【0042】
次に、本実施形態のICカードに特有な制御について説明する。
第1の制御方式においては、第1回路部110の不揮発性メモリ115と第2回路部120の不揮発性メモリ125にそれぞれ異なるIDコードを格納しておいて、当該ICカードを前記実施形態のカードリーダで認証する際には、2つのIDコードを読み出してカードリーダもしくは管理装置が保持しているコードと照合し、両コードとも一致した場合に正規なカードとして認証する。このような方式を採用することにより、例えば不正を行おうとする者が、1方の周波数帯の信号に対応したカードリーダを使用して内部のIDコードをスキミングして複製カードを偽造したとしても、他方のIDコードの照合ができないため正規なカードとして認証されないこととなり、偽造されたカードによる不正行為に対する安全性が向上する。
【0043】
第2の制御方式においては、第1回路部110の不揮発性メモリ115または第2回路部120の不揮発性メモリ125のいずれか一方に暗号化したIDコードを、また他方のメモリに復号するためのデータ(キーコード)を格納しておいて、当該ICカードを前記実施形態のカードリーダで認証する際には、それぞれのメモリからIDコードとキーコードを読み出して、読み出されたIDコードをキーコードで復号したものを照合して一致した場合に正規なカードとして認証する。
【0044】
また、2つのメモリにそれぞれ別個のキーで暗号化されたIDコードを格納し、該IDコードとペアで他方のIDコードを復号するためのデータ(キーコード)を格納しておく。つまり、一方の不揮発性メモリには暗号化された第1のIDコードおよび暗号化された第2のIDコードを復号するための第1のキーコードを格納し、他方の不揮発性メモリには暗号化された前記第2のIDコードおよび暗号化された前記第1のIDコードを復号するための第2のキーコードを格納しておくようにしても良い。これにより、スキミングや偽造されたカードによる不正行為に対する安全性がさらに向上する。
【0045】
第3の制御方式においては、ICカード内のメモリに入室記録等のデータを記憶する場合に、先ず例えば第1回路部110の不揮発性メモリ115に対して入出記録などの書き込みを行う。そして、この書込み回数が当該メモリの書込み可能数のような所定値に達した後は、第2回路部120の不揮発性メモリ125に対して入出記録などの書き込みを行うようにする。これにより、カードに内蔵されている不揮発性メモリの書込み回数に制限がある場合に、カードの使用期間を長くすることができるという利点がある。なお、この制御方式の場合、カードの書込み回数もICカード内の不揮発性メモリに入室記録等のデータとともに記憶するようにしてもよい。
【0046】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態においては、一例として入退出管理機能と警備機能とを1つの装置として実現したICカードのカードリーダおよびそれを用いた認証システムに適用した場合について説明したが、入退出管理機能または警備機能のいずれか一方の機能のみ有するカードリーダにも適用することができる。
【0047】
そして、その場合、その機能に応じてカードリーダの構成も変えることができる。例えば、入退出管理機能のみ有するカードリーダにおいては、図1に示す「警備」や「解除」、「巡回」の操作ボタン13a,13b,13cおよびそれを検出するスイッチ(図2の21c)は省略するようにしてもよい。また、警備機能のみ有するカードリーダにおいては、図1に示す「解錠」や「照合」、「許可」のLEDランプ12a〜12cおよびそれを駆動するドライバ(図2の23の一部)は省略するようにしてもよい。
【0048】
また、前記実施形態においては、制御基板20に自己診断機能の結果を管理装置へ送信する通信ドライバ回路27bを設けているが、このような自己診断機能および送信ドライバ回路27bは省略しても良い。
【0049】
以上、本発明を入退出管理システムや警備システムに適用したものを説明したが、本発明は、ICカードを使用した認証システムおよびカードリーダに広く利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 カードリーダ
11 ケース本体
12a,12b,12c,12d 表示ランプ
13a,13b,13c 操作ボタン
14 多孔部
20 メイン制御基板
21a 設定用スイッチ
21b タンパスイッチ
21c 操作ボタンスイッチ
22 制御回路
23 表示ランプの駆動ドライバ回路
24 音声合成LSI
25 スピーカの駆動ドライバ回路
26 電源回路
27a,27b 通信ドライバ回路
27c 通信切り替え回路
28 警備出力信号の出力ドライバ回路
29a,29b 送受信回路
31,32 アンテナ
100 ICカード
111,121 アンテナ
112,122 電源回路
113,123 送受信回路
115,125 不揮発性メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触型のICカードとの間で無線方式による通信を行う制御基板を備えたICカード読取装置であって、
前記制御基板は、
第1の周波数帯の信号を送受信するための第1のアンテナと、
前記第1の周波数帯とは異なる第2の周波数帯の信号を送受信するための第2のアンテナと、
を有することを特徴とするICカード読取装置。
【請求項2】
前記制御基板は、さらに、前記第1のアンテナに接続された第1の送受信回路と、前記第2のアンテナに接続された第2の送受信回路と、を有することを特徴とする請求項1に記載のICカード読取装置。
【請求項3】
前記制御基板の周縁部に沿って前記第1のアンテナを構成するコイル状の導電層パターンが形成され、前記制御基板の前記第1のアンテナを構成するコイル状の導電層パターンの内側に前記第2のアンテナを構成するコイル状の導電層パターンが形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のICカード読取装置。
【請求項4】
前記前記第2のアンテナを構成するコイル状の導電層パターンは、少なくとも前記第1のアンテナを構成するコイル状の導電層パターンの該コイルのピッチおよび前記第2のアンテナを構成するコイル状の導電層パターンの該コイルのピッチよりも広い間隔をおいて前記第1のアンテナを構成するコイル状の導電層パターンの内側に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のICカード読取装置。
【請求項5】
前記制御基板の前記第2のアンテナを構成するコイル状導電層パターンの内側の領域に、少なくとも該コイルのピッチよりも広い間隔をおいて、前記第1の送受信回路および第2の送受信回路が配置されていることを特徴とする請求項3または4に記載のICカード読取装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれに記載のICカード読取装置と、
前記第1の周波数帯の信号を送受信するための第3のアンテナと、前記第2の周波数帯の信号を送受信するための第4のアンテナと、前記第3のアンテナに接続された第3の送受信回路と、前記第4のアンテナに接続された第4の送受信回路とを有するICカードと、
を組み合わせてなることを特徴とするICカード認証システム。
【請求項7】
前記ICカードは、前記第3の送受信回路に接続された第1の不揮発性メモリと、前記第4の送受信回路に接続された第2の不揮発性メモリとを有し、
前記第1の不揮発性メモリおよび第2の不揮発性メモリのそれぞれに異なるIDコードが格納され、
前記ICカード読取装置は、前記第1の不揮発性メモリおよび第2の不揮発性メモリのそれぞれに格納されているIDコードを読み取って照合を行うように構成されていることを特徴とする請求項6に記載のICカード認証システム。
【請求項8】
前記第1の不揮発性メモリまたは前記第2の不揮発性メモリには暗号化されたIDコードが格納され、
前記第2の不揮発性メモリまたは前記第1の不揮発性メモリには暗号化された前記IDコードを復号するためのキーコードが格納され、
前記ICカード読取装置は、前記第1の不揮発性メモリおよび第2の不揮発性メモリに格納されているIDコードおよびキーコードを読み取って、読み取ったキーコードを用いて読み取ったIDコードを復号して照合を行うように構成されていることを特徴とする請求項7に記載のICカード認証システム。
【請求項9】
前記第1の不揮発性メモリと前記第2の不揮発性メモリは、それぞれデータを書き込み可能なメモリであって、
前記ICカードは、前記第1の不揮発性メモリまたは第2の不揮発性メモリの一方への特定のデータの書込み回数が所定値に達した後に他方の不揮発性メモリへ前記特定のデータの書込みを行うように構成されていることを特徴とする請求項7または8に記載のICカード認証システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−227591(P2011−227591A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94643(P2010−94643)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000111074)株式会社LIXILニッタン (93)
【Fターム(参考)】