ICカード
【課題】 電子磁気ストライプを備えたICカードにおいて、外部装置による読み取り精度の向上を実現し、CPU等の各種部品をコンパクトかつ容易に実装可能とし、更により高いセキュリティ性が得られるICカードを提案する。
【解決手段】 電子磁気ストライプ部1を有するICカードK1であって、電子磁気ストライプ部1は、当該電子磁気ストライプ部1の延在方向に並んで設けられた複数の磁界発生部10と、当該複数の磁界発生部10の各々に対応して設けられたスイッチング素子部とを具備し、磁界発生部10は電子磁気ストライプ部1の表面の法線方向に磁場を発生することを特徴とする。
【解決手段】 電子磁気ストライプ部1を有するICカードK1であって、電子磁気ストライプ部1は、当該電子磁気ストライプ部1の延在方向に並んで設けられた複数の磁界発生部10と、当該複数の磁界発生部10の各々に対応して設けられたスイッチング素子部とを具備し、磁界発生部10は電子磁気ストライプ部1の表面の法線方向に磁場を発生することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICカードにおいては、電子磁気ストライプを介して磁気的に情報の読み取りや書き込みを行うICカードが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このようなICカード200は、図13に示すように導電線からなる擬似磁気ストライプ領域201と、当該磁気ストライプ201を駆動する制御用LSI202と、当該制御用LSI202を駆動するCPU203と、バッテリー204と、によって構成されている。
【特許文献1】特開昭63−120692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、本発明者らは、上記特許文献のICカードにおいては、ICカード表面の法線方向の磁場を発生させることが困難であり、外部装置のリーダーによる読み取り精度が低いという問題があることを見出した。更に、本発明者らは、当該ICカードを構成する導電線のピッチや制御用LSIにおける端子のピッチが高精細かつ高密度であること、また、制御用LSIのサイズが比較的大きいことにより、その実装が困難であるという問題を見出した。更に、本発明者らは、フレキシブル性を有するICカードを実現できないことを見出した。
また、本発明者らは、当該ICカードは、制御用LSIや導電線を設けたことで、ICカード上の多くのスペースが占有されてしまい、他のデバイスを組み込むスペースが無いという問題を見出した。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、電子磁気ストライプを備えたICカードにおいて、外部装置による読み取り精度の向上を実現し、CPU等の各種部品をコンパクトかつ容易に実装可能とし、更により高いセキュリティ性が得られるICカードを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の特許文献においては、空間的磁場分布を与える導電線が一方向のみに平行配置されているので、導電線の断面視において電気力線が導電線の周囲に形成されてしまい、ICカード表面の法線方向の磁場を発生させることが困難となり、従って、外部装置のリーダーによる読み取り精度が低いという問題があることに着目した。
ここで、このような導電線は、ICカード内に例えば1424本必要であり、当該導電線を幅86.5mmのカード上に形成すると、導電線の間隔は0.06mmピッチとなる。また、導電線と、当該導電線の各々を駆動させるための制御用LSIとの接続箇所も、導電線本数と同じく1424箇所必要であるために、端子ピッチは最大でも0.06mmピッチとなる。本発明者らは、このように導電線ピッチや端子ピッチが、高精細、高密度であることから、一般的なLSIの端子ピッチより狭く、高精度な技術が要求され、その実装が困難であるという問題に着目した。
【0006】
また、制御用LSIにおいても、導電線との接続端子が1424箇所必要であるために、端子ピッチが0.06mmであっても、制御用LSIの幅は数センチにも及んでしまう。このような比較的大きなサイズを有する制御用LSIは、単結晶シリコン基板上に作成された後に、ICカード上に実装される。ここで、本発明者らは、制御用LSIのサイズが比較的大きいために、実装工程において割れが生じ易く、実装が困難であるという問題に着目した。また、本発明者らは、このように割れが生じやすい制御用LSIは、可撓性基板に実装することができないため、フレキシブル性を有するICカードを実現できないという問題に着目した。
【0007】
また、本発明者らは、従来の電子磁気ストライプ付きICカードは、磁界の発生そのものを制御する機能しか備えておらず、また、上記のように比較的サイズが大きな制御用LSIや導電線をICカードに設けたことで、ICカード上の多くのスペースが占有されてしまい、当該ICカード上に他のデバイスを組み込むスペースが無いという問題に着目した。そのため、ICカードの利用者を識別する機能を付加することが困難となり、利用者を特定することができず、セキュリティの確保に問題があることに着目した。
そこで、本発明者らは、このような技術的課題を解決するために、以下の手段を有する本発明を想到した。
【0008】
即ち、本発明のICカードは、電子磁気ストライプ部を有するICカードであって、前記電子磁気ストライプ部は、当該電子磁気ストライプ部の延在方向に並んで設けられた複数の磁界発生部と、当該複数の磁界発生部の各々に対応して設けられたスイッチング素子部と、を具備し、前記磁界発生部は、前記電子磁気ストライプ部の表面の法線方向に磁場を発生することを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、磁界発生部が電子磁気ストライプ部の表面の法線方向に磁場を発生させるので、外部装置のリーダーによる読み取り精度を向上させることができる。
一方、従来技術においては、導電線が一方向のみに平行配置されていたために、導電線の断面視において電気力線が導電線の周囲に形成されてしまい、ICカード表面の法線方向の磁場を発生させることが困難であった。本発明は、磁界発生部が電子磁気ストライプ部の表面の法線方向に磁場を発生させるので、従来技術の課題を解決することができる。
【0010】
また、本発明によれば、電子磁気ストライプ部が複数の磁界発生部の各々に対応したスイッチング素子部を備えているので、当該スイッチング素子部の動作によって磁界発生部による磁界を発生させることができる。更に、電子磁気ストライプ部にスイッチング素子部が内蔵されることで、従来技術のような制御用LSIを別途設ける必要がなく、ドライバ回路や電源供給線のみを電子磁気ストライプ部の外部に設けるだけでよい。従って、従来のように、1400本を超える導電線をICカードに形成する必要がなく、従来と比較して配線数を減らすことができる。
更に、従来技術における制御用LSIは、比較的サイズが大きく、硬い部品であるためにフレキシブル基板への実装が困難であるという問題があるが、本発明はこのような技術的課題を解決し、フレキシブル基板への実装を容易にすることができる。
【0011】
また、本発明のICカードにおいては、前記電子磁気ストライプ部は、当該電子磁気ストライプ部と同方向に延在する複数のトラック部を有し、当該トラック部の各々に、前記磁界発生部と前記スイッチング素子部が設けられていることを特徴としている。
このように、複数のトラック部の各々に磁界発生部とスイッチング素子部とが設けられているので、一のトラックしか有していない電子磁気ストライプ部と比較して、より複数の磁界発生部を備えることができる。これにより、より多くの情報の読み取りや書き込みを行うことができる。
【0012】
また、本発明のICカードにおいては、前記磁界発生部の各々は独立して磁界を発生させることを特徴としている。
このように、磁界発生部の各々が独立に設けられているので、スイッチング素子部が動作することによって磁界発生部が独立して磁界を発生することができる。
従って、複数の磁界発生部のうち、必要な磁界発生部のみに磁界を発生させることができる。また、磁界発生部の各々が独立して設けられていない場合には、隣接する磁界発生部の間で磁界を相殺する作用が生じてしまうが、本発明のように磁界発生部の各々が独立に設けられているので、そのような問題が生じることなく磁界を発生させることができる。
【0013】
また、本発明のICカードにおいては、前記磁界発生部は、第1コイル及び第2コイルを有し、前記スイッチング素子部は、前記第1コイルに対応する第1トランジスタと、前記第2コイルに対応する第2トランジスタとを有し、前記第1トランジスタ及び第2トランジスタの各々は、共通のゲート線に接続され、当該ゲート線に付与される電位によって、前記第1コイル及び前記第2コイルに流れる電流方向を制御することを特徴としている。
本発明によれば、第1トランジスタと第2トランジスタのゲート線に付与される電位によって、第1コイル及び第2コイルに流れる電流方向が制御されるので、これにより磁界発生部にて生成される磁界の向きを決定することができる。従って、容易に磁界の向きを決定することができる。
一方、従来技術においては、導電線に付与される電流値によって磁界強度が変わってしまうため、安定した磁界を発生させることが困難であるが、本発明は第1及び第2のトランジスタにおける共通のゲート線に付与される電位によって、第1コイル及び第2コイルに流れる電流方向が制御され、磁界の向きが決定されるので、安定した磁界を所望の向きに発生させることができる。これにより、電子磁気ストライプ部の表面の法線方向における磁場をより確実に発生させることができ、外部装置のリーダーによる読み取り精度を更に向上させることができる。
【0014】
また、本発明のICカードにおいては、前記電子磁気ストライプ部は、前記スイッチング素子部に接続されたドライバ回路部を具備し、当該ドライバ回路部は、前記スイッチング素子部の各々にデータ信号を付与するシフトレジスタ部と、前記スイッチング素子部に付与されたデータ信号を保持するラッチ部と、前記シフトレジスタ部及び前記ラッチ部を動作させるクロック信号を付与するクロック信号発生部と、を具備することを特徴としている。
【0015】
本発明によれば、磁界発生部及びスイッチング素子部だけでなく、ドライバ回路部を電子磁気ストライプ部に内蔵させることができる。
また、本発明によれば、クロック信号発生部が発生するクロック信号がシフトレジスタ部に入力されることにより、複数のスイッチング素子部の各々に、順次データ信号が入力される。シフトレジスタ最終段の出力はラッチ信号であり、ラッチ部に入力されることようになっている。そして、ラッチ信号が入力されることにより、ラッチ部はスイッチング素子部に付与されたデータ信号を保持する。このように保持されたデータ信号は、ゲート線を介してスイッチング素子部のゲート電極に付与され、スイッチング素子部が駆動し、磁界発生部において電子磁気ストライプ部の表面の法線方向に磁界が発生する。
本発明によれば、このようにドライバ回路部が動作することによって、複数のスイッチング素子部を各々動作させて、当該スイッチング素子部に対応した磁界発生部において磁界を発生させることができる。
【0016】
また、本発明のICカードにおいては、前記スイッチング素子部及び前記ドライバ回路部は、薄膜トランジスタによって形成され、前記電子磁気ストライプ部に一体に形成されていることを特徴としている。
このように、薄膜トランジスタを利用して、電子磁気ストライプ部を形成することにより、剥離転写技術によって容易にスイッチング素子部及びドライバ回路部を電子磁気ストライプ部に形成することができる。これにより、ICカードにおいては、曲げ応力に強い構造を容易に形成できるため、強度に優れたICカードを実現できる。
また、一体形成することにより、配線などの後工程が省略でき、部品数も少なくなる為、製造コスト削減が図ることができる。
【0017】
また、本発明のICカードにおいては、前記磁界発生部は、当該磁界発生部を分割した複数の磁界発生領域を備えることを特徴としている。
本発明によれば、磁界発生部が複数の磁界発生領域を備えることによって、スイッチング素子の動作の伴って当該複数の磁界発生領域の各々において磁界が発生する。これにより、磁界発生領域の各々において略中心部に磁束が生成される。
一方、磁界発生部がこのような磁界発生領域を備えていない場合には、磁界発生部の略中心部に一つの磁束が生成されてしまう。この場合においては、複数の磁界発生領域がある場合と比較して磁束一つ当りの磁力が大きくなる。
このように、複数の磁界発生領域が有る場合と無い場合とを比較すると、磁界発生部で生成される磁力の総和は各々等しいものの、複数の磁界発生領域が有る場合では、複数の磁束が磁界発生部で生成されるので、磁力の疎密を緩和することができる。従って、磁界発生部における磁力の分布を均一にすることができる。これにより、電子磁気ストライプ部の表面の法線方向における磁場をより確実に発生させることができ、外部装置のリーダーによる読み取り精度を更に向上させることができる。
【0018】
また、本発明のICカードにおいては、静電容量型指紋センサを更に備えることを特徴としている。
本発明によれば、静電容量型指紋センサを備えることによって、ICカードの利用者の個人認証を行うことが可能となるので、当該利用者を限定することができ、ICカードの悪用を防止することができる。更に、本発明のICカードは、このような個人認証を行うだけでなく、電子磁気ストライプ部を介して外部装置との情報の書き込みや読み込みを行うことができる。従って、指紋認証によるセキュリティが得られるだけでなく、電子磁気ストライプ部を通じて情報通信を行うことができるので、より高いセキュリティ性を有するICカードを実現できる。
また、上記のように、本発明においては、電子磁気ストライプ部に磁界発生部とスイッチング素子部が内蔵され、従来技術のような制御用LSIや導電線を備えていないために、ICカードの省スペース化が図られていることから、静電容量型指紋センサのようなデバイスをICカードの付加的に容易に備えることができる。
【0019】
また、本発明のICカードにおいては、前記電子磁気ストライプ部を介して得られた情報、又は、前記静電容量型指紋センサにおける認証情報の少なくともいずれか一方の情報の表示を行う表示素子を更に備えることを特徴としている。
このように、ICカードが表示素子を備えることにより、静電容量型指紋センサにおける個人認証の結果や、電子磁気ストライプ部を介して情報の読み取りや書き込みを実施した際の結果や情報を表示することができる。これにより、利用者が容易に各種情報を確認することができる。
【0020】
また、表示素子は、電気泳動表示デバイスであることが好ましい。電気泳動表示デバイスは、TFT等の駆動素子が所定時間の間に所定電圧を付与することで、その後に電圧を付加することなく、画像を保持することが可能となっている。即ち、画像の表示記憶性や表示メモリ性を有する表示素子である。
このような電気泳動表示デバイスを備えることにより、画像を表示するための消費電力を低減できるので、低消費電力を実現することができると共に、表示メモリ性を有するICカードを実現できる。
【0021】
また、本発明のICカードにおいては、前記電子磁気ストライプ部、前記静電容量型指紋センサ、及び前記表示素子を制御する制御部を更に備えることを特徴としている。
ここで、制御部は、演算回路や記憶回路等からなることが好ましい。また、ICカードの利用者が情報を入力するための入力手段、又は、ICカードの利用者が表示素子に表示された情報のうちいずれかを選択するための選択手段、等の外部入力部を備えてもよい。
このようにすれば、利用者の指紋情報や、利用者による入力情報や、記憶回路に記憶された記憶情報等を、演算回路によって演算処理することが可能となり、演算結果に基づいて電子磁気ストライプ部が磁場を発生することができる。また、当該演算結果を表示素子に表示することができる。
なお、記憶回路には、プログラムが記憶されていてもよい。このようにすれば、当該プログラムに応じて演算回路を動作させることができる。
従って、ICカードが制御部を備えることにより、電子磁気ストライプ部、静電容量型指紋センサ、及び表示素子を制御することができる。
【0022】
また、本発明のICカードにおいては、前記電子磁気ストライプ部、前記静電容量型指紋センサ、前記表示素子、及び前記制御部は、薄膜トランジスタによって形成され、一体に形成されていることを特徴としている。
このように、薄膜トランジスタを利用して、電子磁気ストライプ部、静電容量型指紋センサ、表示素子、及び制御部を形成することにより、剥離転写技術によって容易にICカードを製造することができる。これにより、ICカードは曲げ応力に強い構造を容易に形成できるため、強度に優れたICカードを実現できる。
また、一体形成することにより、配線等を形成するための後工程を省略でき、部品数も少なくなる為、製造コスト削減を図ることができる。また、一体形成されているので、改造や偽造を施すと容易にICカードが壊れる構造となるので、即ち、ICカードの改造や偽造がしにくくなり、セキュリティ性を更に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(ICカードの第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るICカードの実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
ここで、図1は本実施形態のICカードの構成を説明するための構成図、図2はICカードにおける電子磁気ストライプ部及びドライバ回路部を説明するための構成図、図3はドライバ回路部を説明するための回路図、図4は電子磁気ストライプ部を説明するための回路図、図5はシフトレジスタ部の動作を説明するためのタイミングチャート図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態におけるICカードK1は、電子磁気ストライプ部1と、当該電子磁気ストライプ部1を駆動制御する制御部2と、バッテリー3と、によって構成されている。
また、図2に示すように、電子磁気ストライプ部1は、磁界発生部10と、ドライバ回路部11とを備えている。また、ドライバ回路部11は、シフトレジスタ部12と、ラッチ回路(ラッチ部)13と、バッファ部とを備えている。また、制御部2は、シフトレジスタ部12に接続されており、後述するようにリセット信号、データ信号、クロック信号をシフトレジスタ部12に供給し、また、高電位線VDD及び低電位線VSSを介して磁界発生部10に電位を付与するようになっている。
【0025】
また、図3に示すように、ドライバ回路部11は、n個の選択トランジスタ部(後述)の各々に応じたゲート線M1〜Mn(後述)を備えており、シフトレジスタ部12は、ゲート線M1〜Mnの各々に、H(1)レベル又はL(0)レベルのデータ信号を出力するようになっている。
また、ラッチ回路13は、M1〜Mnの出力部に付与された各々のデータ信号を保持する回路である。
また、シフトレジスタ部12には、クロック信号発生部14が接続されている。これにより、シフトレジスタ部12にクロック信号が付与されることで、当該シフトレジスタ部12が動作するようになっている。ラッチ回路13には、シフトレジスタ12の最終段の出力Xlatchが接続されている。XlatchにH(1)レベルが出力されると、当該ラッチ回路13が動作するようになっている。
また、シフトレジスタ部12には、リセット信号を付与するリセット信号発生部15が接続されており、当該シフトレジスタ部12及びラッチ回路13の動作状態をリセットするようになっている。
【0026】
また、本実施形態においては、シフトレジスタ部12の段数は、n個の磁界発生部10に対して2n段となっている。また、シフトレジスタ部12に最初に書き込まれるデータはラッチ回路部13へと出力されるようになっている。また、クロック信号発生部14においては、後述するように正転信号CLK(後述)と反転信号CLKBが出力され、当該信号はシフトレジスタ部12とラッチ回路部13へ入力されるようになっている。
【0027】
図4に示すように、電子磁気ストライプ部1は、紙面左右方向、換言すればICカードK1の長手方向(図1参照)に延在しており、当該延在方向においてn個(複数)の磁界発生部10が並んで設けられ、例えば1424個の磁界発生部10が60μmピッチで並べて配置されている。また、電子磁気ストライプ部1は、磁界発生部10の各々に設けられた選択トランジスタ部(スイッチング素子部)16を有している。従って、磁界発生部10の各々は、電子磁気ストライプ部1内において独立して駆動することが可能となっている。
【0028】
また、磁界発生部10は、導電性が高い金属配線によって形成された2つのコイル(第1コイル、第2コイル)C1、C2を備えている。また、選択トランジスタ部16は、2つのトランジスタ(第1トランジスタ、第2トランジスタ)T1、T2を備えている。また、n個の磁界発生部10の各々は、低電位線VSS及び高電位線VDDに接続されている。ここで、コイルC1の経路においては、トランジスタT1が配置され、高電位線VDDの接続端子から低電位線VSSの接続端子に向けて、右回り(図中矢印R)にコイルC1が形成されている。一方、コイルC2の経路においては、トランジスタT2が配置され、高電位線VDDの接続端子から低電位線VSSの接続端子に向けて、左回り(図中矢印L)にコイルC2が形成されている。
また、このようなコイルC1、C2は、電子磁気ストライプ部1の法線方向において、絶縁膜を介して重合して配置されている。従って、コイルC1、C2は各々のレイヤ(層膜)に形成されている。
【0029】
また、トランジスタT1、T2の各々は、共通のゲート線を有しており、上記シフトレジスタ12のデータ信号が同時に付与されるようになっている。ここで、トランジスタT1はn型のトランジスタであり、トランジスタT2はp型のトランジスタとなっている。これにより、データ信号がH(1)レベルである場合は、トランジスタT1が動作状態となりトランジスタT2が非動作状態となる。一方、データ信号がL(0)レベルである場合は、トランジスタT2が動作状態となりトランジスタT1が非動作状態となる。
従って、データ信号の電位がHレベルかLレベルかによって、トランジスタT1、T2のいずれか一方のみが動作し、これに伴ってコイルC1、C2のいずれか一方のみにおいて高電位線VDDから低電位線VSSに向けて電流が流れるようになっている。即ち、データ信号の電位によってコイルC1及びコイルC2に流れる電流方向を制御するようになっている。
ここで、コイルC1に電流が流れた場合には、右ネジの法則から、紙面表側から紙面裏側に向けて(図中符号B)磁界が生成するようになっている。一方、コイルC2に電流が流れた場合には、紙面裏側から紙面表側に向けて(図中符号A)磁界が生成するようになっている。上記の構成を備えることで、ICカードK1は、電子磁気ストライプ部1の表面における法線方向に磁場を発生するようになっている。
【0030】
このように構成された電子磁気ストライプ部1においては、選択トランジスタ部16及びドライバ回路部11は、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、TFT)を利用して形成されたものである。
また、電子磁気ストライプ部1は、SUFTLA(Surface Free Technology by Laser Ablation)(登録商標)等の剥離転写技術によってICカードK1に一体形成されたものである。このような剥離転写技術は、耐熱性に優れて透明性を有する例えばガラス基板上に低温ポリシリコンTFTを予め形成し、その後、レーザー照射によって所定の薄膜トランジスタを剥離して、当該薄膜トランジスタをプラスチック基材上に転写して形成するものである。
従って、このような剥離転写技術を利用することにより、薄膜トランジスタを利用して構成された選択トランジスタ部16及びドライバ回路部11、更には磁界発生部10をプラスチック基材のような樹脂基板に容易に形成することが可能となる。従って、ICカードK1の基板として、可撓性を有する樹脂基板を採用することができる。
また、このような剥離転写技術を用いることにより、従来まではガラス基板のような硬くて耐熱性を有する基板のみにしか形成することができなかった薄膜トランジスタを、例えばガラス基板よりも耐熱性が劣るような、可撓性基板に転写形成することが可能となる。従って、柔軟性を有するプラスチック基材等に、磁界発生部10、選択トランジスタ部16、及びドライバ回路部11を備える電子磁気ストライプ部1を容易に実装することができ、可撓性を有するICカードK1を実現することができる。
【0031】
なお、本実施形態においては、電子磁気ストライプ部1の全面に磁界発生部10と選択トランジスタ部16とを設けた構成となっているが、これを限定するものではない。電子磁気ストライプ部1の延在方向と同方向に延在するトラック部が割り当てられ、当該トラック部に磁界発生部10と選択トランジスタ部16とを設けた構成となっていてもよい。更には、電子磁気ストライプ部1が複数のトラック部を備え、複数のトラック部の各々に磁界発生部10と選択トランジスタ部16とを設けた構成となっていてもよい。
【0032】
次に、図5のタイミングチャート図を参照して、シフトレジスタ部12の動作を説明する。
まず、リセット信号発生部15において、リセット信号RSTの電位がLレベルである場合に、シフトレジスタ部12における全ての段の出力は低電位のLレベルとなる。一方、リセット信号RSTの電位がHレベルである場合には、シフトレジスタ部12が動作する。そして、クロック信号の立ち上がりで、データ線17から出力された信号が順次シフトレジスタに転送される。
ここで、最初のデータD1は高電位Hとしておく。当該最初のデータD1は、ラッチ回路部13を動作するための信号となる。
そして、データD1を除いた、それ以降のn個のデータは、n個の磁界発生部10の各々に任意の磁束分布を与える値としておく。n回目のクロックの立ち下りで、1回目のクロックの立ち上がりで、シフトレジスタ部12の1段目に入力されたデータD1が、シフトレジスタ部12のn+1段目に入力され、ラッチ回路部13に出力される。このとき、シフトレジスタ部12の1〜n段目の出力は、ラッチ回路部13にラッチされる。
【0033】
そして、ラッチ回路部13において、低電位のLレベルの信号が書き込まれると、図4に示すトランジスタT2が動作状態となり、高電位線VDDから低電位線VSSに向けて電流が流れる。従って、図4では左回り(図中矢印L)に電流が流れるので、紙面裏側から紙面表側に向けて(図中符号A)磁界が生成する。
また、ラッチ回路部13において、高電位のHレベルの信号が書き込まれると、図4に示すトランジスタT1が動作状態となり、高電位線VDDから低電位線VSSに向けて電流が流れる。従って、図4では右回り(図中矢印R)に電流が流れるので、紙面表側から紙面裏側に向けて(図中符号B)磁界が生成する。
そして、全てのn個の磁界発生部10において磁界が発生することにより、ICカードK1の表面の法線方向に磁場分布が発生し、あたかも磁気ストライプのように既存の磁気リーダーで所望のデータを読み取らせることが可能となる。
【0034】
上述したように、本実施形態においては、磁界発生部10が電子磁気ストライプ部1の表面の法線方向に磁場を発生させるので、外部装置のリーダーによる読み取り精度を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、電子磁気ストライプ部1が複数の磁界発生部10の各々に対応した選択トランジスタ部16を備えているので、当該選択トランジスタ部16の動作によって磁界発生部10による磁界を発生させることができる。更に、電子磁気ストライプ部1に選択トランジスタ部16が内蔵されることで、ドライバ回路や電源供給線のみを電子磁気ストライプ部1の外部に設けるだけでよい。従って、従来と比較して配線数を減らすことができる。
一方、従来技術における制御用LSIは、比較的サイズが大きく、硬い部品であるためにフレキシブル基板への実装が困難であるという問題があるが、本実施形態はこのような技術的課題を解決し、フレキシブル基板への実装を容易にすることができる。
【0035】
また、ICカードK1においては、磁界発生部10及び選択トランジスタ部16だけでなく、ドライバ回路部11を電子磁気ストライプ部1に内蔵させることができる。
更に、ドライバ回路部11を一体形成している為、接続端子数を大幅に減少することができ、ICカードK1上への実装が容易になる。また、剥離転写技術を用いることによって、電子磁気ストライプ部1をICカードK1上に実装した際の機械的強度を高めることができる。例えば、このような剥離転写技術を適用して電子磁気ストライプ部1をICカードK1に形成すれば、絶縁性基板としてプラスチック基板などの適度な強度を有する安価な基板を採用できるため、電子磁気ストライプ部1の機械的強度を高めることができる。
【0036】
また、電子磁気ストライプ部1において、当該電子磁気ストライプ部1と同方向に延在する複数のトラック部を有し、当該トラック部の各々に磁界発生部10と選択トランジスタ部16が設けられている場合には、一のトラックしか有していない電子磁気ストライプ部1と比較して、より複数の磁界発生部10を備えることができる。これにより、より多くの情報の読み取りや書き込みを行うことができる。
【0037】
また、磁界発生部10の各々は、独立して磁界を発生することが可能となっているので、選択トランジスタ部16が動作することによって磁界発生部10が独立して磁界を発生することができる。従って、複数の磁界発生部10のうち、必要な磁界発生部10のみに磁界を発生させることができる。また、磁界発生部10の各々が独立して設けられていない場合には、隣接する磁界発生部10の間で磁界を相殺する作用が生じてしまうが、本実施形態のように磁界発生部10の各々が独立に設けられているので、そのような問題が生じることなく磁界を発生させることができる。
【0038】
また、トランジスタT1とトランジスタT2のゲート線M1〜Mnに付与される電位のHレベル又はLレベルによって、コイルC1、C2に流れる電流方向が制御されるので、これにより磁界発生部10にて生成される磁界の向きを決定することができる。従って、容易に磁界の向きを決定することができる。
一方、従来技術においては、導電線に付与される電流値によって磁界強度が変わってしまうため、安定した磁界を発生させることが困難であるが、本実施形態はトランジスタT1、T2における共通のゲート線に付与される電位のレベルによって、コイルC1及びコイルC2に流れる電流方向が制御され、磁界の向きが決定されるので、安定した磁界を所望の向きに発生させることができる。これにより、電子磁気ストライプ部1の表面の法線方向における磁場をより確実に発生させることができ、外部装置のリーダーによる読み取り精度を更に向上させることができる。
【0039】
また、クロック信号発生部14が発生するクロック信号がシフトレジスタ部12に入力されることにより、複数の選択トランジスタ部16の各々に、順次データ信号を入力することができる。更に、クロック信号がラッチ回路13に入力されることにより、ラッチ回路13は選択トランジスタ部16に付与されたデータ信号を保持することができる。このように保持されたデータ信号は、ゲート線を介して選択トランジスタ部16のゲート電極に付与され、選択トランジスタ部16が駆動し、磁界発生部10において電子磁気ストライプ部1の表面の法線方向に磁界を発生することができる。従って、ドライバ回路部11が動作することによって、複数の選択トランジスタ部16を各々動作させて、当該選択トランジスタ部16に対応した磁界発生部10において磁界を発生させることができる。
【0040】
(電子磁気ストライプ部の変形例1)
次に、図6を参照して、電子磁気ストライプ部の変形例1について説明する。
ここで、図6(a)は本変形例1における電子磁気ストライプ部を説明するための回路図、図6(b)は本変形例1における磁界発生部を詳細に説明するための回路図である。
本変形例においては、先に説明した実施形態と異なる部分についてのみ説明し、同一構成には同一符号を付して説明を簡略化している。
【0041】
図6に示すように、磁界発生部10は、コイルC1、C2を備えると共に、各コイルC1、C2に設けられたダイオードX1〜X6を有している。また、コイルC1、C2は共通配線L1を有しており、当該共通配線L1は高電位線VDDから低電位線VSSに向け流れる電流をコイルC1、C2の各々に供給するようになっている。
そして、コイルC1においては、共通配線L1に接続されていると共に対向配置しているコイル配線L2が設けられ、当該共通配線L1とコイル配線L2との間には、ダイオードX1〜X3が接続されている。ここで、ダイオードX1〜X3は各々、共通配線L1からコイル配線L2に向けた方向のみに電流を流すことが可能となっている。
一方、コイルC2においては、共通配線L1に接続されていると共に対向配置しているコイル配線L3が設けられ、当該共通配線L1とコイル配線L3との間には、ダイオードX4〜X6が接続されている。ここで、ダイオードX4〜X6は各々、共通配線L1からコイル配線L3に向けた方向のみに電流を流すことが可能となっている。
本変形例1においては、このような配線構造を備えることにより、磁界発生部10が分割された複数の磁界発生領域20a、20bが形成されたものとなる。
また、このようなコイルC1、C2は、同一のレイヤに形成されている。
【0042】
次に、このような構成を有する磁界発生部10において流れる電流方向と生成される磁界の方向について説明する。
まず、トランジスタT2が動作状態となる場合においては、高電位線VDDから低電位線VSSに向けて流れる電流は、共通配線L1からコイル配線L3に向けて流れる。そして、電流はダイオードX4〜X6にも流れる。従って、電流i1〜i4が流れることにより、磁界発生領域20bにおいて紙面表側から紙面裏側に向けて(図中符号B)磁界が発生する。
また、トランジスタT1が動作状態となる場合においては、高電位線VDDから低電位線VSSに向けて流れる電流は、共通配線L1からコイル配線L2に向けて流れる。そして、電流はダイオードX1〜X3にも流れる。従って、電流i5〜i8が流れることにより、磁界発生領域20aにおいて紙面裏側から紙面表側に向けて(図中符号A)磁界が発生する。
また、磁界発生領域20a、20bの各々においては、各領域を囲う4辺の配線のうち、3辺の配線には同方向の電流が流れるため、隣接する領域間で発生する磁界が相殺されることがない。
【0043】
上述したように、本変形例1においては、磁界発生部10は、当該磁界発生部10を分割した複数の磁界発生領域20a、20bを備えるので、トランジスタT1、T2の動作の伴って当該複数の磁界発生領域20a、20bの各々において磁界が発生する。これにより、磁界発生領域20a、20bの各々において略中心部に磁束が生成される。
一方、先に記載の実施形態のように磁界発生部10がこのような磁界発生領域を備えていない場合には、磁界発生部10の略中心部に一つの磁束が生成されてしまう。この場合においては、複数の磁界発生領域20a、20bがある場合と比較して磁束一つ当りの磁力が大きくなる。
このように、複数の磁界発生領域20a、20bが有る場合と無い場合とを比較すると、磁界発生部10で生成される磁力の総和は各々等しいものの、複数の磁界発生領域20a、20bが有る場合では、複数の磁束が磁界発生部10で生成されるので、磁力の疎密を緩和することができる。従って、磁界発生部10における磁力の分布を均一にすることができる。これにより、電子磁気ストライプ部1の表面の法線方向における磁場をより確実に発生させることができ、外部装置のリーダーによる読み取り精度を更に向上させることができる。
【0044】
(電子磁気ストライプ部の変形例2)
次に、図7を参照して、電子磁気ストライプ部の変形例2について説明する。
ここで、図7(a)は本変形例2における電子磁気ストライプ部を説明するための回路図、図7(b)は本変形例2における磁界発生部を詳細に説明するための回路図である。
本変形例においては、先に説明した実施形態と異なる部分についてのみ説明し、同一構成には同一符号を付して説明を簡略化している。
【0045】
図7に示すように、磁界発生部10は、コイルC1、C2を備えている。
ここで、コイルC1、C2の各々においては、一本のみの金属配線によって、複数の「コ」の字状の配線経路を備えた構成となっている。このような配線経路を有することにより、磁界発生部10は、複数の磁界発生領域30a、30bを備えている。また、当該磁界発生領域30a、30bの各々の一部は、互いに重合するように配置されている。
このような構成を有することにより、コイルC1において高電位線VDDから低電位線VSSに向け電流が流れた場合には、ループ電流r4〜r6が生じるようになっている。また、コイルC2において高電位線VDDから低電位線VSSに向け電流が流れた場合には、ループ電流r1〜r3が生じるようになっている。
また、このようなコイルC1、C2は、電子磁気ストライプ部1の法線方向において、絶縁膜を介して重合して配置されている。従って、コイルC1、C2は各々のレイヤ(層膜)に形成されている。
【0046】
次に、このような構成を有する磁界発生部10において流れる電流方向と生成される磁界の方向について説明する。
まず、トランジスタT2が動作状態となる場合においては、高電位線VDDから低電位線VSSに向けて、r3、r2、r1の順に電流が流れる。これにより磁界発生領域30bにおいて紙面表側から紙面裏側に向けて(図中符号B)磁界が発生する。
また、トランジスタT1が動作状態となる場合においては、高電位線VDDから低電位線VSSに向けて、r6、r5、r4の順に電流が流れる。これにより磁界発生領域30aにおいて紙面裏側から紙面表側に向けて(図中符号A)磁界が発生する。
また、磁界発生領域30a、30bの各々においては、隣接する領域間で発生する磁界によって、磁界発生領域30a、30bで発生する磁界が相殺されることが考えられるが、図7(b)のように各領域間の距離を狭くすることで、磁界の相殺量が最小限となっている。
【0047】
上述したように、本変形例2においては、磁界発生部10は、当該磁界発生部10を分割した複数の磁界発生領域30a、30bを備えるので、トランジスタT1、T2の動作の伴って当該複数の磁界発生領域30a、30bの各々において磁界が発生する。これにより、磁界発生領域30a、30bの各々において略中心部に磁束が生成される。
一方、先に記載の実施形態のように磁界発生部10がこのような磁界発生領域を備えていない場合には、磁界発生部10の略中心部に一つの磁束が生成されてしまう。この場合においては、複数の磁界発生領域30a、30bがある場合と比較して磁束一つ当りの磁力が大きくなる。
このように、複数の磁界発生領域30a、30bが有る場合と無い場合とを比較すると、磁界発生部10で生成される磁力の総和は各々等しいものの、複数の磁界発生領域30a、30bが有る場合では、複数の磁束が磁界発生部10で生成されるので、磁力の疎密を緩和することができる。従って、磁界発生部10における磁力の分布を均一にすることができる。これにより、電子磁気ストライプ部1の表面の法線方向における磁場をより確実に発生させることができ、外部装置のリーダーによる読み取り精度を更に向上させることができる。
【0048】
(ICカードの第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るICカードの実施形態について、図8〜図12を参照して説明する。
ここで、図8(a)は本実施形態のICカードにおける表側の外観図、図8(b)は本実施形態のICカードにおける裏側の外観図、図9は指紋センサからの情報を処理する処理部のブロック図、図10は指紋センサの構成を示す模式図、図11は電気泳動表示デバイスの断面を示す断面図、図12はICカードにおける指紋認証を説明するためのフローチャート図である。
なお、本実施形態においては、先に記載した実施形態と同一構成には同一符号を付して説明を簡略化している。
【0049】
図8に示すように、本実施形態におけるICカードK2は、その表側に指紋センサ(静電容量型指紋センサ)50と、電気泳動表示デバイス(表示素子、Electro Phoretic Display、以下、EPDと称する。)60と、選択スイッチ70と、を備えている。
また、当該ICカードK2は、その裏側に電子磁気ストライプ部1を備えている。当該電子磁気ストライプ部1は、先の実施形態に記載したものであり、磁界発生部10と、ドライバ回路部11とを備えている。
また、ICカードK2は、2枚のプラスチック基材によって挟持された構成となっており、当該基材間にはICチップ等の制御部2と、バッテリー3とが設けられている。
【0050】
(指紋センサ)
図9に示すように、処理部140は、指紋センサ50に取り込まれた指紋パターンの特徴抽出を行うデータ処理部141と、特定の指紋パターンの特徴量等の各種情報を記憶するメモリ142と、データ処理部141により抽出された特徴量とメモリ142に記憶された特徴量とを比較する比較部143と、ICカードK2の動作を制御する制御部144と、を備えている。このような処理部140における処理は、上記の制御部2において行われる。
【0051】
また、図10に示すように、指紋センサ50は、静電容量型、すなわち凹凸を有する指紋と検出面50aとの間の距離に応じて変化する静電容量を測定して、指紋パターンを検出するようになっている。このような静電容量型の指紋センサ50は、光源が不要であるために薄型化することが容易であり、かつ表面保護層(パッシベーション膜)を適切に選択することによって、耐傷性を向上させることができるという特徴がある。
指紋センサ50は、センサ基板115を有しており、このセンサ基板115上には、所定の間隔を空けて互いに平行に形成された不図示の複数の走査線と、この走査線に対して直交するように所定の間隔を空けて互いに平行に形成された複数の信号線116とが設けられている。
【0052】
複数の走査線と複数の信号線116との交点のそれぞれに対応する位置には、トランジスタ等によって構成されるスイッチング素子(検出回路)112が設けられている。
これらの走査線、信号線116およびスイッチング素子112によって、アクティブマトリクスアレイ113が構成されており、このアクティブマトリクスアレイ113の上には、検出電極111が各スイッチング素子112に対応する位置にマトリックス状に設けられている。
各検出電極111は、アクティブマトリクスアレイ113の全面を覆うように絶縁膜(パッシベーション膜)114にて覆われており、絶縁膜114は、ICカードK2の利用者の指Fと接触可能になっている。
なお、アクティブマトリクスアレイ113としては、半導体基板上に形成されたMOSトランジスタアレイ、絶縁基板上に形成された薄膜トランジスタ(TFT)等を用いることができる。
【0053】
このような構成を有する指紋センサ50においては、指Fが検出面50aに接触すると、指Fとマトリックス状に配置された各検出電極111との間に、2次元的に分布する静電容量が発生する(図10のC1,C2,C3等)。この2次元的に分布した各静電容量の値をアクティブマトリクスアレイ113によって電気的に読み出すことにより、指Fの表面に形成された微細な凹凸形状のパターン(抽出指紋パターン)を検出することができる。静電容量方式を用いた指紋センサ50において、人体に帯電した静電気による放電破壊を回避するためには、検出前において、指Fに帯電した静電気を放電し、指Fの電位をスイッチング素子112のグランド(基準電位)Gレベルと略同一の電位にしておくことが必須である。更に、各静電容量の値を安定して検出するためには、検出時において、指Fの電位を所定の電位に固定することが好ましい。
このため、検出電極とは異なる電極、すなわち人体に帯電した静電気を放電させる放電用電極120をICカードK2の基板50上に設けている。
【0054】
(EPD)
図11は、EPD60の断面を示す断面図である。
プラスチック等の可撓性を有するEPD基材211e上に、電極フィルム211d、電気泳動表示層211c、電極フィルム211b及びこの表示部を保護する表面保護層211aが積層されている。
ここで、EPD基材211eは、先述のセンサ基板115と同一部材である。また、後述するようにEPD60の駆動電極は、薄膜トランジスタに接続されており、当該薄膜トランジスタのスイッチング動作によってEPD60の画像表示が行なわれるようになっている。また、本実施形態においては、表面保護層211aを設けた構成となっているが、当該表面保護層211aは省略することも可能である。
【0055】
電極フィルム211bは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド等の寸法安定性の優れた透明なプラスチックフィルムに電極が形成されているものである。電極フィルム211dも同様な基材の電極が形成されてなるものであるが、必ずしも透明性は要求されない。なお、電極フィルム211bと電極フィルム211dとは、上下動通電極211fにより導通される。
電極フィルム211bは、全面に同一の電位がかかる共通電極となり、一方、電極フィルム211dにはアクティブマトリックス電極或いはセグメント電極等が形成されて駆動電極となる。
【0056】
電気泳動表示層211cを形成するマイクロカプセル211は、アラビアガム・ゼラチンの複合膜、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、尿素樹脂等をカプセル殻とし、カプセル殻の作製方法としては、界面重合法、in−situ重合法、相分離法、界面沈殿法、スプレードライング法、等の公知のマイクロカプセル化手法を採用することができる。内部には泳動粒子と分散媒が封入される。泳動粒子としては有機あるいは無機の粒子(高分子あるいはコロイド)が用いられる。たとえば、アニリンブラック、カーボンブラック等の黒色顔料、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色顔料、モノアゾ、ジイスアゾン、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、アンチモン等の黄色顔料、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドンレッド、クロムバーミリオン等の赤色顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、アントラキノン系染料、紺青、群青、コバルトブルー等の青色顔料、フタロシアニングリーン等の緑色顔料等の1種又は2種以上を用いることができる。分散媒としては無色または染料により染色された水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、メチルセルソルブ等のアルコール系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等の各種エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ぺンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロへキサン、メチルシクロへキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキシルベンゼン、ヘブチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン等の長鎖アルキル基を有するベンゼン類等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、カルボン酸塩又はその他の種々の油類等の単独又はこれらの混合物に界面活性剤等を配合したものを用いることができる。
【0057】
電気泳動は、電気泳動粒子は予め正または負に帯電させられており、また、分散媒と電気泳動粒子とは、互いに異なる着色がなされている。例えば白の粒子である酸化チタンを正電荷に、一方黒の粒子であるカーボンブラックを負電荷にした場合、二つの電極フィルム211b,211dに電界を印加して、電極フィルム211bが負極、電極フィルム211dが正極になると、正に帯電した白の粒子が電極フィルム211b側に引かれ、黒の粒子が電極フィルム211d側に引かれるので、電極フィルム211bを透明電極としておくことにより、電極フィルム211b側の上方から観察すると、その部分が白く見えるようになる。逆に、電極フィルム211bが正極、電極フィルム211dが負極になった場合には、正に帯電した白の粒子が電極フィルム211d側に引かれ、黒の粒子が電極フィルム211b側に引かれるので、電極フィルム211bの上方から観察するとその部分が黒く見える。
【0058】
EPD60は、上述したマイクロカプセル211を多数有しているので、電極フィルム211b,211dの各アドレス電極の電界を制御することで、所望の文字、数字、或いは記号を白と黒の画素で表示させることができる。
なお、マイクロカプセル211をアクティブマトリックス駆動法で駆動する場合は、電極フィルム211dは画素電極として画素毎に独立してパターニングされ、不図示の薄膜トランジスタ、信号電極、および走査電極を併設し、電極フィルム211bは光透過性基材上に一様に形成された透明な共通電極とする。この場合、電極フィルム211bを共通電極にすると全面同一電位になるので(例えば電位をゼロとする)、電極フィルム211d側の各アドレス電極の電界を制御(正または負の電位を与える)することで、上述した原理に基づき電極位置のマイクロカプセル211内の粒子を移動させ、所望の画像を表示させることができる。同様に、電極フィルム211dを共通電極とし、電極フィルム211b側の各アドレス電極の電界を制御することで、電極位置のマイクロカプセル211内の粒子を移動させることで所望の画像を表示させるようにしてもよい。
時分割駆動の場合は、電極フィルム211b、211dは互いに直交するライン状のITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)等の透明導電体からなる透明電極により構成され、両電極の交わる領域にマイクロカプセル211を配置する。
駆動方式は上述したものに限定されず、用途に応じて最適なものを選択すればよい。また、マイクロカプセル211の径は、種々のものを採用することが可能である。
【0059】
また、選択スイッチ70は、ICカードK2で利用可能なアプリケーションを選択、決定するものである。また、当該アプリケーションは、上記のEPD60に複数表示されるようになっている。また、EPD60に表示されたアプリケーションは、選択スイッチ70を用いて選択、決定されるようになっている。
また、選択スイッチ70は、アプリケーションを選択、決定するだけでなく、ICカードK2の電源のOFF状態(電源切の状態)から、ON状態(電源入の状態)に切り替えるためのスイッチとしても機能するようになっている。
【0060】
また、ICカードK2に内蔵された制御部2は、CPU等の演算回路、ドライバ等の駆動回路、ROMやRAM等のメモリからなる記憶回路を備えている。そして、このような回路が動作することにより、指紋センサ50及びEPD60の動作が制御されるようになっている。具体的には、指紋センサ50における入力信号の判定や、EPD60の表示制御を行うようになっている。また、選択スイッチ70からの入力、接続用IC端子12を介して入出力される外部装置との通信を行うようになっている。更に、制御部2は、後述するように、ICカードK2を利用する複数のアプリケーションや、当該アプリケーションに応じたプログラムを記憶している。
また、制御部2は、電子磁気ストライプ部1の表面の法線方向に磁場を生成するように、当該電子磁気ストライプ部1を制御している。これにより、外部装置がICカードK2の情報を読み取りできるようになっている。
【0061】
上記のような指紋センサ50、EPD60、及び制御部2は、薄膜トランジスタを利用した構成を有している。このような薄膜トランジスタを利用することにより、指紋情報を静電容量として電気的に読み出したり、電気泳動表示層211cに電圧を付与したり、各種情報の演算や記憶を行うことが可能となっている。このような薄膜トランジスタは、上記の剥離転写技術により形成されたものであり、当該剥離転写技術を用いることによって、従来まではガラス基板のような硬くて耐熱性を有する基板のみにしか形成することができなかった薄膜トランジスタを、例えばガラス基板よりも耐熱性が劣るような、可撓性基板に転写形成することが可能となる。従って、柔軟性を有する樹脂基板に容易に薄膜トランジスタを形成することが可能となり、指紋センサ50、EPD60、及び制御部2を備えると共に、可撓性を有するICカードK2が実現可能となる。また、剥離転写技術を利用することにより、ICカードK2に指紋センサ50、EPD60、及び制御部2を一体に形成することが可能となる。
【0062】
(ICカードの利用者の認証)
本実施形態のICカードK2においては、予め制御部2に記憶された特定の指紋パターンの情報と、指紋センサに入力された指紋パターンとを比較して、利用者が特定された後に、利用可能となっている。
次に、図12を参照し、上記のICカードK2における利用者の認証の手続きについて説明する。
【0063】
まず、ICカードK2に電源を入れる。ここでは、選択スイッチ70をONにしたり、指紋センサ50に触れたりすることで、電源がONになる。
次に、指紋認証を行う(ステップS2)。当該ステップS2においては、図10に示すように利用者が指Fを指紋センサ50に触れることにより行われる。そして、処理部140におけるデータ処理部141が指紋センサ50に取り込まれた指紋パターンの特徴抽出を行う。更に、比較部143が、当該指紋パターンの情報と、メモリ142に記憶された特定の指紋パターンの情報との比較を行う。
ここで、ステップS2の指紋認証の結果、利用者の指紋と予め設定された指紋とが一致した場合には、ICカードの有効状態となり、電子磁気ストライプ部1において磁界が生成される(ステップS3)。当該電子磁気ストライプ部1においては、ドライバ回路部11が動作し、選択トランジスタ部16が動作することで、磁界発生部10から磁界が生成される。また、EPD60は、ICカードK2が有効であることを表示する。
【0064】
次に、ICカードK2の電子磁気ストライプ部1において磁界が生成された状態で、利用者が外部装置のリーダーもしくはライタにICカードK2を通すことにより、外部装置において、ICカードK2の磁気データ認証が行われる(ステップS4)。ここでは、外部装置に予め記憶されたユーザーデータと、ICカードK2の磁気データとが比較されることで、認証が行われる。そして、認証の結果は、EPD60によって表示される。
【0065】
上述したように、本実施形態においては、ICカードK2が指紋センサ50を備えることによって、ICカードK2の利用者の個人認証を行うことが可能となるので、当該利用者を限定することができ、ICカードK2の悪用を防止することができる。更に、本実施形態のICカードK2においては、このような個人認証を行うだけでなく、電子磁気ストライプ部1を介して外部装置が情報を読み込むことができる。従って、指紋認証によるセキュリティが得られるだけでなく、電子磁気ストライプ部1を通じた読み取りができるので、より高いセキュリティ性を有するICカードK2を実現できる。
また、上記のように、本実施形態においては、電子磁気ストライプ部1に磁界発生部10と選択トランジスタ部16が内蔵され、従来技術のような制御用LSIや導電線を備えていないために、ICカードK2の省スペース化が図られていることから、静電容量型指紋センサのようなデバイスをICカードK2の付加的に容易に備えることができる。
【0066】
また、本実施形態のICカードK2は、EPD60を備えており、当該EPD60は、電子磁気ストライプ部1を介して得られた情報や、指紋センサ50による認証情報の表示を行っている。従って、個人認証の結果や、外部装置が電子磁気ストライプ部1から情報の読み取りを実施した際の結果や情報を表示することができる。これにより、利用者が容易に各種情報を確認することができる。
【0067】
また、EPD60は、TFT等の駆動素子が所定時間の間に所定電圧を付与することで、その後に電圧を付加することなく、画像を保持することが可能となっている。即ち、画像の表示記憶性や表示メモリ性を有する表示素子である。そのため、画像を表示するための消費電力を低減できるので、低消費電力を実現することができると共に、表示メモリ性を有するICカードK2を実現できる。
【0068】
また、ICカードK2においては、電子磁気ストライプ部1、指紋センサ50、及びEPD60を制御する制御部2を更に備えているので、ICカードK2の利用者の指紋情報や、利用者による入力情報や、記憶回路に記憶された記憶情報等を、演算回路によって演算処理することが可能となり、演算結果に基づいて電子磁気ストライプ部1が磁場を発生することができる。また、当該演算結果をEPD60に表示することができる。
従って、ICカードK2が制御部2を備えることにより、電子磁気ストライプ部1、指紋センサ50、及びEPD60を制御することができる。
【0069】
また、ICカードK2においては、電子磁気ストライプ部1、指紋センサ50、EPD60、及び制御部2は、薄膜トランジスタによって形成され、一体に形成されているので、剥離転写技術によって容易にICカードK2を製造することができる。これにより、ICカードK2は曲げ応力に強い構造を容易に形成できるため、強度に優れたICカードK2を実現できる。
また、一体形成することにより、配線等を形成するための後工程を省略でき、部品数も少なくなる為、製造コスト削減を図ることができる。また、一体形成されているので、改造や偽造を施すと容易にICカードK2が壊れる構造となるので、即ち、ICカードK2の改造や偽造がしにくくなり、セキュリティ性を更に高めることができる。
【0070】
このようなICカードK2は、例えば電子鍵として機能したり、クレジットカードとして機能したり等、セキュリティ性が求められる各種カードとして利用可能となる。
なお、本発明は、上記の第1及び第2の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1実施形態に係るICカードの構成を説明するための構成図。
【図2】第1実施形態における電子磁気ストライプ部とドライバ回路部の構成図。
【図3】第1実施形態におけるドライバ回路部を説明するための回路図。
【図4】第1実施形態における電子磁気ストライプ部を説明するための回路図。
【図5】第1実施形態におけるシフトレジスタ部の動作のタイミングチャート図。
【図6】変形例1における電子磁気ストライプ部を説明するための回路図。
【図7】変形例2における電子磁気ストライプ部を説明するための回路図。
【図8】第2実施形態に係るICカードの外観図。
【図9】第2実施形態における指紋センサからの情報を処理する処理部のブロック図。
【図10】第2実施形態における指紋センサの構成を示す模式図
【図11】第2実施形態における電気泳動表示デバイスの断面を示す断面図。
【図12】第2実施形態における指紋認証を説明するためのフローチャート図。
【図13】従来のICカードの構成図。
【符号の説明】
【0072】
1…電子磁気ストライプ部、 10…磁界発生部、 11…ドライバ回路部、 12…シフトレジスタ部、 13…ラッチ回路(ラッチ部)、 14…クロック信号発生部、 16…選択トランジスタ部(スイッチング素子部)、 20a、20b、30a30b…磁界発生領域、 50…指紋センサ(静電容量型指紋センサ)、 60…EPD(表示素子、電気泳動表示デバイス)、 C1…コイル(第1コイル)、 C2…コイル(第2コイル)、 T1…トランジスタ(第1トランジスタ)、 T2…トランジスタ(第2トランジスタ)、 K1、K2…ICカード
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICカードにおいては、電子磁気ストライプを介して磁気的に情報の読み取りや書き込みを行うICカードが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このようなICカード200は、図13に示すように導電線からなる擬似磁気ストライプ領域201と、当該磁気ストライプ201を駆動する制御用LSI202と、当該制御用LSI202を駆動するCPU203と、バッテリー204と、によって構成されている。
【特許文献1】特開昭63−120692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、本発明者らは、上記特許文献のICカードにおいては、ICカード表面の法線方向の磁場を発生させることが困難であり、外部装置のリーダーによる読み取り精度が低いという問題があることを見出した。更に、本発明者らは、当該ICカードを構成する導電線のピッチや制御用LSIにおける端子のピッチが高精細かつ高密度であること、また、制御用LSIのサイズが比較的大きいことにより、その実装が困難であるという問題を見出した。更に、本発明者らは、フレキシブル性を有するICカードを実現できないことを見出した。
また、本発明者らは、当該ICカードは、制御用LSIや導電線を設けたことで、ICカード上の多くのスペースが占有されてしまい、他のデバイスを組み込むスペースが無いという問題を見出した。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、電子磁気ストライプを備えたICカードにおいて、外部装置による読み取り精度の向上を実現し、CPU等の各種部品をコンパクトかつ容易に実装可能とし、更により高いセキュリティ性が得られるICカードを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の特許文献においては、空間的磁場分布を与える導電線が一方向のみに平行配置されているので、導電線の断面視において電気力線が導電線の周囲に形成されてしまい、ICカード表面の法線方向の磁場を発生させることが困難となり、従って、外部装置のリーダーによる読み取り精度が低いという問題があることに着目した。
ここで、このような導電線は、ICカード内に例えば1424本必要であり、当該導電線を幅86.5mmのカード上に形成すると、導電線の間隔は0.06mmピッチとなる。また、導電線と、当該導電線の各々を駆動させるための制御用LSIとの接続箇所も、導電線本数と同じく1424箇所必要であるために、端子ピッチは最大でも0.06mmピッチとなる。本発明者らは、このように導電線ピッチや端子ピッチが、高精細、高密度であることから、一般的なLSIの端子ピッチより狭く、高精度な技術が要求され、その実装が困難であるという問題に着目した。
【0006】
また、制御用LSIにおいても、導電線との接続端子が1424箇所必要であるために、端子ピッチが0.06mmであっても、制御用LSIの幅は数センチにも及んでしまう。このような比較的大きなサイズを有する制御用LSIは、単結晶シリコン基板上に作成された後に、ICカード上に実装される。ここで、本発明者らは、制御用LSIのサイズが比較的大きいために、実装工程において割れが生じ易く、実装が困難であるという問題に着目した。また、本発明者らは、このように割れが生じやすい制御用LSIは、可撓性基板に実装することができないため、フレキシブル性を有するICカードを実現できないという問題に着目した。
【0007】
また、本発明者らは、従来の電子磁気ストライプ付きICカードは、磁界の発生そのものを制御する機能しか備えておらず、また、上記のように比較的サイズが大きな制御用LSIや導電線をICカードに設けたことで、ICカード上の多くのスペースが占有されてしまい、当該ICカード上に他のデバイスを組み込むスペースが無いという問題に着目した。そのため、ICカードの利用者を識別する機能を付加することが困難となり、利用者を特定することができず、セキュリティの確保に問題があることに着目した。
そこで、本発明者らは、このような技術的課題を解決するために、以下の手段を有する本発明を想到した。
【0008】
即ち、本発明のICカードは、電子磁気ストライプ部を有するICカードであって、前記電子磁気ストライプ部は、当該電子磁気ストライプ部の延在方向に並んで設けられた複数の磁界発生部と、当該複数の磁界発生部の各々に対応して設けられたスイッチング素子部と、を具備し、前記磁界発生部は、前記電子磁気ストライプ部の表面の法線方向に磁場を発生することを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、磁界発生部が電子磁気ストライプ部の表面の法線方向に磁場を発生させるので、外部装置のリーダーによる読み取り精度を向上させることができる。
一方、従来技術においては、導電線が一方向のみに平行配置されていたために、導電線の断面視において電気力線が導電線の周囲に形成されてしまい、ICカード表面の法線方向の磁場を発生させることが困難であった。本発明は、磁界発生部が電子磁気ストライプ部の表面の法線方向に磁場を発生させるので、従来技術の課題を解決することができる。
【0010】
また、本発明によれば、電子磁気ストライプ部が複数の磁界発生部の各々に対応したスイッチング素子部を備えているので、当該スイッチング素子部の動作によって磁界発生部による磁界を発生させることができる。更に、電子磁気ストライプ部にスイッチング素子部が内蔵されることで、従来技術のような制御用LSIを別途設ける必要がなく、ドライバ回路や電源供給線のみを電子磁気ストライプ部の外部に設けるだけでよい。従って、従来のように、1400本を超える導電線をICカードに形成する必要がなく、従来と比較して配線数を減らすことができる。
更に、従来技術における制御用LSIは、比較的サイズが大きく、硬い部品であるためにフレキシブル基板への実装が困難であるという問題があるが、本発明はこのような技術的課題を解決し、フレキシブル基板への実装を容易にすることができる。
【0011】
また、本発明のICカードにおいては、前記電子磁気ストライプ部は、当該電子磁気ストライプ部と同方向に延在する複数のトラック部を有し、当該トラック部の各々に、前記磁界発生部と前記スイッチング素子部が設けられていることを特徴としている。
このように、複数のトラック部の各々に磁界発生部とスイッチング素子部とが設けられているので、一のトラックしか有していない電子磁気ストライプ部と比較して、より複数の磁界発生部を備えることができる。これにより、より多くの情報の読み取りや書き込みを行うことができる。
【0012】
また、本発明のICカードにおいては、前記磁界発生部の各々は独立して磁界を発生させることを特徴としている。
このように、磁界発生部の各々が独立に設けられているので、スイッチング素子部が動作することによって磁界発生部が独立して磁界を発生することができる。
従って、複数の磁界発生部のうち、必要な磁界発生部のみに磁界を発生させることができる。また、磁界発生部の各々が独立して設けられていない場合には、隣接する磁界発生部の間で磁界を相殺する作用が生じてしまうが、本発明のように磁界発生部の各々が独立に設けられているので、そのような問題が生じることなく磁界を発生させることができる。
【0013】
また、本発明のICカードにおいては、前記磁界発生部は、第1コイル及び第2コイルを有し、前記スイッチング素子部は、前記第1コイルに対応する第1トランジスタと、前記第2コイルに対応する第2トランジスタとを有し、前記第1トランジスタ及び第2トランジスタの各々は、共通のゲート線に接続され、当該ゲート線に付与される電位によって、前記第1コイル及び前記第2コイルに流れる電流方向を制御することを特徴としている。
本発明によれば、第1トランジスタと第2トランジスタのゲート線に付与される電位によって、第1コイル及び第2コイルに流れる電流方向が制御されるので、これにより磁界発生部にて生成される磁界の向きを決定することができる。従って、容易に磁界の向きを決定することができる。
一方、従来技術においては、導電線に付与される電流値によって磁界強度が変わってしまうため、安定した磁界を発生させることが困難であるが、本発明は第1及び第2のトランジスタにおける共通のゲート線に付与される電位によって、第1コイル及び第2コイルに流れる電流方向が制御され、磁界の向きが決定されるので、安定した磁界を所望の向きに発生させることができる。これにより、電子磁気ストライプ部の表面の法線方向における磁場をより確実に発生させることができ、外部装置のリーダーによる読み取り精度を更に向上させることができる。
【0014】
また、本発明のICカードにおいては、前記電子磁気ストライプ部は、前記スイッチング素子部に接続されたドライバ回路部を具備し、当該ドライバ回路部は、前記スイッチング素子部の各々にデータ信号を付与するシフトレジスタ部と、前記スイッチング素子部に付与されたデータ信号を保持するラッチ部と、前記シフトレジスタ部及び前記ラッチ部を動作させるクロック信号を付与するクロック信号発生部と、を具備することを特徴としている。
【0015】
本発明によれば、磁界発生部及びスイッチング素子部だけでなく、ドライバ回路部を電子磁気ストライプ部に内蔵させることができる。
また、本発明によれば、クロック信号発生部が発生するクロック信号がシフトレジスタ部に入力されることにより、複数のスイッチング素子部の各々に、順次データ信号が入力される。シフトレジスタ最終段の出力はラッチ信号であり、ラッチ部に入力されることようになっている。そして、ラッチ信号が入力されることにより、ラッチ部はスイッチング素子部に付与されたデータ信号を保持する。このように保持されたデータ信号は、ゲート線を介してスイッチング素子部のゲート電極に付与され、スイッチング素子部が駆動し、磁界発生部において電子磁気ストライプ部の表面の法線方向に磁界が発生する。
本発明によれば、このようにドライバ回路部が動作することによって、複数のスイッチング素子部を各々動作させて、当該スイッチング素子部に対応した磁界発生部において磁界を発生させることができる。
【0016】
また、本発明のICカードにおいては、前記スイッチング素子部及び前記ドライバ回路部は、薄膜トランジスタによって形成され、前記電子磁気ストライプ部に一体に形成されていることを特徴としている。
このように、薄膜トランジスタを利用して、電子磁気ストライプ部を形成することにより、剥離転写技術によって容易にスイッチング素子部及びドライバ回路部を電子磁気ストライプ部に形成することができる。これにより、ICカードにおいては、曲げ応力に強い構造を容易に形成できるため、強度に優れたICカードを実現できる。
また、一体形成することにより、配線などの後工程が省略でき、部品数も少なくなる為、製造コスト削減が図ることができる。
【0017】
また、本発明のICカードにおいては、前記磁界発生部は、当該磁界発生部を分割した複数の磁界発生領域を備えることを特徴としている。
本発明によれば、磁界発生部が複数の磁界発生領域を備えることによって、スイッチング素子の動作の伴って当該複数の磁界発生領域の各々において磁界が発生する。これにより、磁界発生領域の各々において略中心部に磁束が生成される。
一方、磁界発生部がこのような磁界発生領域を備えていない場合には、磁界発生部の略中心部に一つの磁束が生成されてしまう。この場合においては、複数の磁界発生領域がある場合と比較して磁束一つ当りの磁力が大きくなる。
このように、複数の磁界発生領域が有る場合と無い場合とを比較すると、磁界発生部で生成される磁力の総和は各々等しいものの、複数の磁界発生領域が有る場合では、複数の磁束が磁界発生部で生成されるので、磁力の疎密を緩和することができる。従って、磁界発生部における磁力の分布を均一にすることができる。これにより、電子磁気ストライプ部の表面の法線方向における磁場をより確実に発生させることができ、外部装置のリーダーによる読み取り精度を更に向上させることができる。
【0018】
また、本発明のICカードにおいては、静電容量型指紋センサを更に備えることを特徴としている。
本発明によれば、静電容量型指紋センサを備えることによって、ICカードの利用者の個人認証を行うことが可能となるので、当該利用者を限定することができ、ICカードの悪用を防止することができる。更に、本発明のICカードは、このような個人認証を行うだけでなく、電子磁気ストライプ部を介して外部装置との情報の書き込みや読み込みを行うことができる。従って、指紋認証によるセキュリティが得られるだけでなく、電子磁気ストライプ部を通じて情報通信を行うことができるので、より高いセキュリティ性を有するICカードを実現できる。
また、上記のように、本発明においては、電子磁気ストライプ部に磁界発生部とスイッチング素子部が内蔵され、従来技術のような制御用LSIや導電線を備えていないために、ICカードの省スペース化が図られていることから、静電容量型指紋センサのようなデバイスをICカードの付加的に容易に備えることができる。
【0019】
また、本発明のICカードにおいては、前記電子磁気ストライプ部を介して得られた情報、又は、前記静電容量型指紋センサにおける認証情報の少なくともいずれか一方の情報の表示を行う表示素子を更に備えることを特徴としている。
このように、ICカードが表示素子を備えることにより、静電容量型指紋センサにおける個人認証の結果や、電子磁気ストライプ部を介して情報の読み取りや書き込みを実施した際の結果や情報を表示することができる。これにより、利用者が容易に各種情報を確認することができる。
【0020】
また、表示素子は、電気泳動表示デバイスであることが好ましい。電気泳動表示デバイスは、TFT等の駆動素子が所定時間の間に所定電圧を付与することで、その後に電圧を付加することなく、画像を保持することが可能となっている。即ち、画像の表示記憶性や表示メモリ性を有する表示素子である。
このような電気泳動表示デバイスを備えることにより、画像を表示するための消費電力を低減できるので、低消費電力を実現することができると共に、表示メモリ性を有するICカードを実現できる。
【0021】
また、本発明のICカードにおいては、前記電子磁気ストライプ部、前記静電容量型指紋センサ、及び前記表示素子を制御する制御部を更に備えることを特徴としている。
ここで、制御部は、演算回路や記憶回路等からなることが好ましい。また、ICカードの利用者が情報を入力するための入力手段、又は、ICカードの利用者が表示素子に表示された情報のうちいずれかを選択するための選択手段、等の外部入力部を備えてもよい。
このようにすれば、利用者の指紋情報や、利用者による入力情報や、記憶回路に記憶された記憶情報等を、演算回路によって演算処理することが可能となり、演算結果に基づいて電子磁気ストライプ部が磁場を発生することができる。また、当該演算結果を表示素子に表示することができる。
なお、記憶回路には、プログラムが記憶されていてもよい。このようにすれば、当該プログラムに応じて演算回路を動作させることができる。
従って、ICカードが制御部を備えることにより、電子磁気ストライプ部、静電容量型指紋センサ、及び表示素子を制御することができる。
【0022】
また、本発明のICカードにおいては、前記電子磁気ストライプ部、前記静電容量型指紋センサ、前記表示素子、及び前記制御部は、薄膜トランジスタによって形成され、一体に形成されていることを特徴としている。
このように、薄膜トランジスタを利用して、電子磁気ストライプ部、静電容量型指紋センサ、表示素子、及び制御部を形成することにより、剥離転写技術によって容易にICカードを製造することができる。これにより、ICカードは曲げ応力に強い構造を容易に形成できるため、強度に優れたICカードを実現できる。
また、一体形成することにより、配線等を形成するための後工程を省略でき、部品数も少なくなる為、製造コスト削減を図ることができる。また、一体形成されているので、改造や偽造を施すと容易にICカードが壊れる構造となるので、即ち、ICカードの改造や偽造がしにくくなり、セキュリティ性を更に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(ICカードの第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るICカードの実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
ここで、図1は本実施形態のICカードの構成を説明するための構成図、図2はICカードにおける電子磁気ストライプ部及びドライバ回路部を説明するための構成図、図3はドライバ回路部を説明するための回路図、図4は電子磁気ストライプ部を説明するための回路図、図5はシフトレジスタ部の動作を説明するためのタイミングチャート図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態におけるICカードK1は、電子磁気ストライプ部1と、当該電子磁気ストライプ部1を駆動制御する制御部2と、バッテリー3と、によって構成されている。
また、図2に示すように、電子磁気ストライプ部1は、磁界発生部10と、ドライバ回路部11とを備えている。また、ドライバ回路部11は、シフトレジスタ部12と、ラッチ回路(ラッチ部)13と、バッファ部とを備えている。また、制御部2は、シフトレジスタ部12に接続されており、後述するようにリセット信号、データ信号、クロック信号をシフトレジスタ部12に供給し、また、高電位線VDD及び低電位線VSSを介して磁界発生部10に電位を付与するようになっている。
【0025】
また、図3に示すように、ドライバ回路部11は、n個の選択トランジスタ部(後述)の各々に応じたゲート線M1〜Mn(後述)を備えており、シフトレジスタ部12は、ゲート線M1〜Mnの各々に、H(1)レベル又はL(0)レベルのデータ信号を出力するようになっている。
また、ラッチ回路13は、M1〜Mnの出力部に付与された各々のデータ信号を保持する回路である。
また、シフトレジスタ部12には、クロック信号発生部14が接続されている。これにより、シフトレジスタ部12にクロック信号が付与されることで、当該シフトレジスタ部12が動作するようになっている。ラッチ回路13には、シフトレジスタ12の最終段の出力Xlatchが接続されている。XlatchにH(1)レベルが出力されると、当該ラッチ回路13が動作するようになっている。
また、シフトレジスタ部12には、リセット信号を付与するリセット信号発生部15が接続されており、当該シフトレジスタ部12及びラッチ回路13の動作状態をリセットするようになっている。
【0026】
また、本実施形態においては、シフトレジスタ部12の段数は、n個の磁界発生部10に対して2n段となっている。また、シフトレジスタ部12に最初に書き込まれるデータはラッチ回路部13へと出力されるようになっている。また、クロック信号発生部14においては、後述するように正転信号CLK(後述)と反転信号CLKBが出力され、当該信号はシフトレジスタ部12とラッチ回路部13へ入力されるようになっている。
【0027】
図4に示すように、電子磁気ストライプ部1は、紙面左右方向、換言すればICカードK1の長手方向(図1参照)に延在しており、当該延在方向においてn個(複数)の磁界発生部10が並んで設けられ、例えば1424個の磁界発生部10が60μmピッチで並べて配置されている。また、電子磁気ストライプ部1は、磁界発生部10の各々に設けられた選択トランジスタ部(スイッチング素子部)16を有している。従って、磁界発生部10の各々は、電子磁気ストライプ部1内において独立して駆動することが可能となっている。
【0028】
また、磁界発生部10は、導電性が高い金属配線によって形成された2つのコイル(第1コイル、第2コイル)C1、C2を備えている。また、選択トランジスタ部16は、2つのトランジスタ(第1トランジスタ、第2トランジスタ)T1、T2を備えている。また、n個の磁界発生部10の各々は、低電位線VSS及び高電位線VDDに接続されている。ここで、コイルC1の経路においては、トランジスタT1が配置され、高電位線VDDの接続端子から低電位線VSSの接続端子に向けて、右回り(図中矢印R)にコイルC1が形成されている。一方、コイルC2の経路においては、トランジスタT2が配置され、高電位線VDDの接続端子から低電位線VSSの接続端子に向けて、左回り(図中矢印L)にコイルC2が形成されている。
また、このようなコイルC1、C2は、電子磁気ストライプ部1の法線方向において、絶縁膜を介して重合して配置されている。従って、コイルC1、C2は各々のレイヤ(層膜)に形成されている。
【0029】
また、トランジスタT1、T2の各々は、共通のゲート線を有しており、上記シフトレジスタ12のデータ信号が同時に付与されるようになっている。ここで、トランジスタT1はn型のトランジスタであり、トランジスタT2はp型のトランジスタとなっている。これにより、データ信号がH(1)レベルである場合は、トランジスタT1が動作状態となりトランジスタT2が非動作状態となる。一方、データ信号がL(0)レベルである場合は、トランジスタT2が動作状態となりトランジスタT1が非動作状態となる。
従って、データ信号の電位がHレベルかLレベルかによって、トランジスタT1、T2のいずれか一方のみが動作し、これに伴ってコイルC1、C2のいずれか一方のみにおいて高電位線VDDから低電位線VSSに向けて電流が流れるようになっている。即ち、データ信号の電位によってコイルC1及びコイルC2に流れる電流方向を制御するようになっている。
ここで、コイルC1に電流が流れた場合には、右ネジの法則から、紙面表側から紙面裏側に向けて(図中符号B)磁界が生成するようになっている。一方、コイルC2に電流が流れた場合には、紙面裏側から紙面表側に向けて(図中符号A)磁界が生成するようになっている。上記の構成を備えることで、ICカードK1は、電子磁気ストライプ部1の表面における法線方向に磁場を発生するようになっている。
【0030】
このように構成された電子磁気ストライプ部1においては、選択トランジスタ部16及びドライバ回路部11は、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、TFT)を利用して形成されたものである。
また、電子磁気ストライプ部1は、SUFTLA(Surface Free Technology by Laser Ablation)(登録商標)等の剥離転写技術によってICカードK1に一体形成されたものである。このような剥離転写技術は、耐熱性に優れて透明性を有する例えばガラス基板上に低温ポリシリコンTFTを予め形成し、その後、レーザー照射によって所定の薄膜トランジスタを剥離して、当該薄膜トランジスタをプラスチック基材上に転写して形成するものである。
従って、このような剥離転写技術を利用することにより、薄膜トランジスタを利用して構成された選択トランジスタ部16及びドライバ回路部11、更には磁界発生部10をプラスチック基材のような樹脂基板に容易に形成することが可能となる。従って、ICカードK1の基板として、可撓性を有する樹脂基板を採用することができる。
また、このような剥離転写技術を用いることにより、従来まではガラス基板のような硬くて耐熱性を有する基板のみにしか形成することができなかった薄膜トランジスタを、例えばガラス基板よりも耐熱性が劣るような、可撓性基板に転写形成することが可能となる。従って、柔軟性を有するプラスチック基材等に、磁界発生部10、選択トランジスタ部16、及びドライバ回路部11を備える電子磁気ストライプ部1を容易に実装することができ、可撓性を有するICカードK1を実現することができる。
【0031】
なお、本実施形態においては、電子磁気ストライプ部1の全面に磁界発生部10と選択トランジスタ部16とを設けた構成となっているが、これを限定するものではない。電子磁気ストライプ部1の延在方向と同方向に延在するトラック部が割り当てられ、当該トラック部に磁界発生部10と選択トランジスタ部16とを設けた構成となっていてもよい。更には、電子磁気ストライプ部1が複数のトラック部を備え、複数のトラック部の各々に磁界発生部10と選択トランジスタ部16とを設けた構成となっていてもよい。
【0032】
次に、図5のタイミングチャート図を参照して、シフトレジスタ部12の動作を説明する。
まず、リセット信号発生部15において、リセット信号RSTの電位がLレベルである場合に、シフトレジスタ部12における全ての段の出力は低電位のLレベルとなる。一方、リセット信号RSTの電位がHレベルである場合には、シフトレジスタ部12が動作する。そして、クロック信号の立ち上がりで、データ線17から出力された信号が順次シフトレジスタに転送される。
ここで、最初のデータD1は高電位Hとしておく。当該最初のデータD1は、ラッチ回路部13を動作するための信号となる。
そして、データD1を除いた、それ以降のn個のデータは、n個の磁界発生部10の各々に任意の磁束分布を与える値としておく。n回目のクロックの立ち下りで、1回目のクロックの立ち上がりで、シフトレジスタ部12の1段目に入力されたデータD1が、シフトレジスタ部12のn+1段目に入力され、ラッチ回路部13に出力される。このとき、シフトレジスタ部12の1〜n段目の出力は、ラッチ回路部13にラッチされる。
【0033】
そして、ラッチ回路部13において、低電位のLレベルの信号が書き込まれると、図4に示すトランジスタT2が動作状態となり、高電位線VDDから低電位線VSSに向けて電流が流れる。従って、図4では左回り(図中矢印L)に電流が流れるので、紙面裏側から紙面表側に向けて(図中符号A)磁界が生成する。
また、ラッチ回路部13において、高電位のHレベルの信号が書き込まれると、図4に示すトランジスタT1が動作状態となり、高電位線VDDから低電位線VSSに向けて電流が流れる。従って、図4では右回り(図中矢印R)に電流が流れるので、紙面表側から紙面裏側に向けて(図中符号B)磁界が生成する。
そして、全てのn個の磁界発生部10において磁界が発生することにより、ICカードK1の表面の法線方向に磁場分布が発生し、あたかも磁気ストライプのように既存の磁気リーダーで所望のデータを読み取らせることが可能となる。
【0034】
上述したように、本実施形態においては、磁界発生部10が電子磁気ストライプ部1の表面の法線方向に磁場を発生させるので、外部装置のリーダーによる読み取り精度を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、電子磁気ストライプ部1が複数の磁界発生部10の各々に対応した選択トランジスタ部16を備えているので、当該選択トランジスタ部16の動作によって磁界発生部10による磁界を発生させることができる。更に、電子磁気ストライプ部1に選択トランジスタ部16が内蔵されることで、ドライバ回路や電源供給線のみを電子磁気ストライプ部1の外部に設けるだけでよい。従って、従来と比較して配線数を減らすことができる。
一方、従来技術における制御用LSIは、比較的サイズが大きく、硬い部品であるためにフレキシブル基板への実装が困難であるという問題があるが、本実施形態はこのような技術的課題を解決し、フレキシブル基板への実装を容易にすることができる。
【0035】
また、ICカードK1においては、磁界発生部10及び選択トランジスタ部16だけでなく、ドライバ回路部11を電子磁気ストライプ部1に内蔵させることができる。
更に、ドライバ回路部11を一体形成している為、接続端子数を大幅に減少することができ、ICカードK1上への実装が容易になる。また、剥離転写技術を用いることによって、電子磁気ストライプ部1をICカードK1上に実装した際の機械的強度を高めることができる。例えば、このような剥離転写技術を適用して電子磁気ストライプ部1をICカードK1に形成すれば、絶縁性基板としてプラスチック基板などの適度な強度を有する安価な基板を採用できるため、電子磁気ストライプ部1の機械的強度を高めることができる。
【0036】
また、電子磁気ストライプ部1において、当該電子磁気ストライプ部1と同方向に延在する複数のトラック部を有し、当該トラック部の各々に磁界発生部10と選択トランジスタ部16が設けられている場合には、一のトラックしか有していない電子磁気ストライプ部1と比較して、より複数の磁界発生部10を備えることができる。これにより、より多くの情報の読み取りや書き込みを行うことができる。
【0037】
また、磁界発生部10の各々は、独立して磁界を発生することが可能となっているので、選択トランジスタ部16が動作することによって磁界発生部10が独立して磁界を発生することができる。従って、複数の磁界発生部10のうち、必要な磁界発生部10のみに磁界を発生させることができる。また、磁界発生部10の各々が独立して設けられていない場合には、隣接する磁界発生部10の間で磁界を相殺する作用が生じてしまうが、本実施形態のように磁界発生部10の各々が独立に設けられているので、そのような問題が生じることなく磁界を発生させることができる。
【0038】
また、トランジスタT1とトランジスタT2のゲート線M1〜Mnに付与される電位のHレベル又はLレベルによって、コイルC1、C2に流れる電流方向が制御されるので、これにより磁界発生部10にて生成される磁界の向きを決定することができる。従って、容易に磁界の向きを決定することができる。
一方、従来技術においては、導電線に付与される電流値によって磁界強度が変わってしまうため、安定した磁界を発生させることが困難であるが、本実施形態はトランジスタT1、T2における共通のゲート線に付与される電位のレベルによって、コイルC1及びコイルC2に流れる電流方向が制御され、磁界の向きが決定されるので、安定した磁界を所望の向きに発生させることができる。これにより、電子磁気ストライプ部1の表面の法線方向における磁場をより確実に発生させることができ、外部装置のリーダーによる読み取り精度を更に向上させることができる。
【0039】
また、クロック信号発生部14が発生するクロック信号がシフトレジスタ部12に入力されることにより、複数の選択トランジスタ部16の各々に、順次データ信号を入力することができる。更に、クロック信号がラッチ回路13に入力されることにより、ラッチ回路13は選択トランジスタ部16に付与されたデータ信号を保持することができる。このように保持されたデータ信号は、ゲート線を介して選択トランジスタ部16のゲート電極に付与され、選択トランジスタ部16が駆動し、磁界発生部10において電子磁気ストライプ部1の表面の法線方向に磁界を発生することができる。従って、ドライバ回路部11が動作することによって、複数の選択トランジスタ部16を各々動作させて、当該選択トランジスタ部16に対応した磁界発生部10において磁界を発生させることができる。
【0040】
(電子磁気ストライプ部の変形例1)
次に、図6を参照して、電子磁気ストライプ部の変形例1について説明する。
ここで、図6(a)は本変形例1における電子磁気ストライプ部を説明するための回路図、図6(b)は本変形例1における磁界発生部を詳細に説明するための回路図である。
本変形例においては、先に説明した実施形態と異なる部分についてのみ説明し、同一構成には同一符号を付して説明を簡略化している。
【0041】
図6に示すように、磁界発生部10は、コイルC1、C2を備えると共に、各コイルC1、C2に設けられたダイオードX1〜X6を有している。また、コイルC1、C2は共通配線L1を有しており、当該共通配線L1は高電位線VDDから低電位線VSSに向け流れる電流をコイルC1、C2の各々に供給するようになっている。
そして、コイルC1においては、共通配線L1に接続されていると共に対向配置しているコイル配線L2が設けられ、当該共通配線L1とコイル配線L2との間には、ダイオードX1〜X3が接続されている。ここで、ダイオードX1〜X3は各々、共通配線L1からコイル配線L2に向けた方向のみに電流を流すことが可能となっている。
一方、コイルC2においては、共通配線L1に接続されていると共に対向配置しているコイル配線L3が設けられ、当該共通配線L1とコイル配線L3との間には、ダイオードX4〜X6が接続されている。ここで、ダイオードX4〜X6は各々、共通配線L1からコイル配線L3に向けた方向のみに電流を流すことが可能となっている。
本変形例1においては、このような配線構造を備えることにより、磁界発生部10が分割された複数の磁界発生領域20a、20bが形成されたものとなる。
また、このようなコイルC1、C2は、同一のレイヤに形成されている。
【0042】
次に、このような構成を有する磁界発生部10において流れる電流方向と生成される磁界の方向について説明する。
まず、トランジスタT2が動作状態となる場合においては、高電位線VDDから低電位線VSSに向けて流れる電流は、共通配線L1からコイル配線L3に向けて流れる。そして、電流はダイオードX4〜X6にも流れる。従って、電流i1〜i4が流れることにより、磁界発生領域20bにおいて紙面表側から紙面裏側に向けて(図中符号B)磁界が発生する。
また、トランジスタT1が動作状態となる場合においては、高電位線VDDから低電位線VSSに向けて流れる電流は、共通配線L1からコイル配線L2に向けて流れる。そして、電流はダイオードX1〜X3にも流れる。従って、電流i5〜i8が流れることにより、磁界発生領域20aにおいて紙面裏側から紙面表側に向けて(図中符号A)磁界が発生する。
また、磁界発生領域20a、20bの各々においては、各領域を囲う4辺の配線のうち、3辺の配線には同方向の電流が流れるため、隣接する領域間で発生する磁界が相殺されることがない。
【0043】
上述したように、本変形例1においては、磁界発生部10は、当該磁界発生部10を分割した複数の磁界発生領域20a、20bを備えるので、トランジスタT1、T2の動作の伴って当該複数の磁界発生領域20a、20bの各々において磁界が発生する。これにより、磁界発生領域20a、20bの各々において略中心部に磁束が生成される。
一方、先に記載の実施形態のように磁界発生部10がこのような磁界発生領域を備えていない場合には、磁界発生部10の略中心部に一つの磁束が生成されてしまう。この場合においては、複数の磁界発生領域20a、20bがある場合と比較して磁束一つ当りの磁力が大きくなる。
このように、複数の磁界発生領域20a、20bが有る場合と無い場合とを比較すると、磁界発生部10で生成される磁力の総和は各々等しいものの、複数の磁界発生領域20a、20bが有る場合では、複数の磁束が磁界発生部10で生成されるので、磁力の疎密を緩和することができる。従って、磁界発生部10における磁力の分布を均一にすることができる。これにより、電子磁気ストライプ部1の表面の法線方向における磁場をより確実に発生させることができ、外部装置のリーダーによる読み取り精度を更に向上させることができる。
【0044】
(電子磁気ストライプ部の変形例2)
次に、図7を参照して、電子磁気ストライプ部の変形例2について説明する。
ここで、図7(a)は本変形例2における電子磁気ストライプ部を説明するための回路図、図7(b)は本変形例2における磁界発生部を詳細に説明するための回路図である。
本変形例においては、先に説明した実施形態と異なる部分についてのみ説明し、同一構成には同一符号を付して説明を簡略化している。
【0045】
図7に示すように、磁界発生部10は、コイルC1、C2を備えている。
ここで、コイルC1、C2の各々においては、一本のみの金属配線によって、複数の「コ」の字状の配線経路を備えた構成となっている。このような配線経路を有することにより、磁界発生部10は、複数の磁界発生領域30a、30bを備えている。また、当該磁界発生領域30a、30bの各々の一部は、互いに重合するように配置されている。
このような構成を有することにより、コイルC1において高電位線VDDから低電位線VSSに向け電流が流れた場合には、ループ電流r4〜r6が生じるようになっている。また、コイルC2において高電位線VDDから低電位線VSSに向け電流が流れた場合には、ループ電流r1〜r3が生じるようになっている。
また、このようなコイルC1、C2は、電子磁気ストライプ部1の法線方向において、絶縁膜を介して重合して配置されている。従って、コイルC1、C2は各々のレイヤ(層膜)に形成されている。
【0046】
次に、このような構成を有する磁界発生部10において流れる電流方向と生成される磁界の方向について説明する。
まず、トランジスタT2が動作状態となる場合においては、高電位線VDDから低電位線VSSに向けて、r3、r2、r1の順に電流が流れる。これにより磁界発生領域30bにおいて紙面表側から紙面裏側に向けて(図中符号B)磁界が発生する。
また、トランジスタT1が動作状態となる場合においては、高電位線VDDから低電位線VSSに向けて、r6、r5、r4の順に電流が流れる。これにより磁界発生領域30aにおいて紙面裏側から紙面表側に向けて(図中符号A)磁界が発生する。
また、磁界発生領域30a、30bの各々においては、隣接する領域間で発生する磁界によって、磁界発生領域30a、30bで発生する磁界が相殺されることが考えられるが、図7(b)のように各領域間の距離を狭くすることで、磁界の相殺量が最小限となっている。
【0047】
上述したように、本変形例2においては、磁界発生部10は、当該磁界発生部10を分割した複数の磁界発生領域30a、30bを備えるので、トランジスタT1、T2の動作の伴って当該複数の磁界発生領域30a、30bの各々において磁界が発生する。これにより、磁界発生領域30a、30bの各々において略中心部に磁束が生成される。
一方、先に記載の実施形態のように磁界発生部10がこのような磁界発生領域を備えていない場合には、磁界発生部10の略中心部に一つの磁束が生成されてしまう。この場合においては、複数の磁界発生領域30a、30bがある場合と比較して磁束一つ当りの磁力が大きくなる。
このように、複数の磁界発生領域30a、30bが有る場合と無い場合とを比較すると、磁界発生部10で生成される磁力の総和は各々等しいものの、複数の磁界発生領域30a、30bが有る場合では、複数の磁束が磁界発生部10で生成されるので、磁力の疎密を緩和することができる。従って、磁界発生部10における磁力の分布を均一にすることができる。これにより、電子磁気ストライプ部1の表面の法線方向における磁場をより確実に発生させることができ、外部装置のリーダーによる読み取り精度を更に向上させることができる。
【0048】
(ICカードの第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るICカードの実施形態について、図8〜図12を参照して説明する。
ここで、図8(a)は本実施形態のICカードにおける表側の外観図、図8(b)は本実施形態のICカードにおける裏側の外観図、図9は指紋センサからの情報を処理する処理部のブロック図、図10は指紋センサの構成を示す模式図、図11は電気泳動表示デバイスの断面を示す断面図、図12はICカードにおける指紋認証を説明するためのフローチャート図である。
なお、本実施形態においては、先に記載した実施形態と同一構成には同一符号を付して説明を簡略化している。
【0049】
図8に示すように、本実施形態におけるICカードK2は、その表側に指紋センサ(静電容量型指紋センサ)50と、電気泳動表示デバイス(表示素子、Electro Phoretic Display、以下、EPDと称する。)60と、選択スイッチ70と、を備えている。
また、当該ICカードK2は、その裏側に電子磁気ストライプ部1を備えている。当該電子磁気ストライプ部1は、先の実施形態に記載したものであり、磁界発生部10と、ドライバ回路部11とを備えている。
また、ICカードK2は、2枚のプラスチック基材によって挟持された構成となっており、当該基材間にはICチップ等の制御部2と、バッテリー3とが設けられている。
【0050】
(指紋センサ)
図9に示すように、処理部140は、指紋センサ50に取り込まれた指紋パターンの特徴抽出を行うデータ処理部141と、特定の指紋パターンの特徴量等の各種情報を記憶するメモリ142と、データ処理部141により抽出された特徴量とメモリ142に記憶された特徴量とを比較する比較部143と、ICカードK2の動作を制御する制御部144と、を備えている。このような処理部140における処理は、上記の制御部2において行われる。
【0051】
また、図10に示すように、指紋センサ50は、静電容量型、すなわち凹凸を有する指紋と検出面50aとの間の距離に応じて変化する静電容量を測定して、指紋パターンを検出するようになっている。このような静電容量型の指紋センサ50は、光源が不要であるために薄型化することが容易であり、かつ表面保護層(パッシベーション膜)を適切に選択することによって、耐傷性を向上させることができるという特徴がある。
指紋センサ50は、センサ基板115を有しており、このセンサ基板115上には、所定の間隔を空けて互いに平行に形成された不図示の複数の走査線と、この走査線に対して直交するように所定の間隔を空けて互いに平行に形成された複数の信号線116とが設けられている。
【0052】
複数の走査線と複数の信号線116との交点のそれぞれに対応する位置には、トランジスタ等によって構成されるスイッチング素子(検出回路)112が設けられている。
これらの走査線、信号線116およびスイッチング素子112によって、アクティブマトリクスアレイ113が構成されており、このアクティブマトリクスアレイ113の上には、検出電極111が各スイッチング素子112に対応する位置にマトリックス状に設けられている。
各検出電極111は、アクティブマトリクスアレイ113の全面を覆うように絶縁膜(パッシベーション膜)114にて覆われており、絶縁膜114は、ICカードK2の利用者の指Fと接触可能になっている。
なお、アクティブマトリクスアレイ113としては、半導体基板上に形成されたMOSトランジスタアレイ、絶縁基板上に形成された薄膜トランジスタ(TFT)等を用いることができる。
【0053】
このような構成を有する指紋センサ50においては、指Fが検出面50aに接触すると、指Fとマトリックス状に配置された各検出電極111との間に、2次元的に分布する静電容量が発生する(図10のC1,C2,C3等)。この2次元的に分布した各静電容量の値をアクティブマトリクスアレイ113によって電気的に読み出すことにより、指Fの表面に形成された微細な凹凸形状のパターン(抽出指紋パターン)を検出することができる。静電容量方式を用いた指紋センサ50において、人体に帯電した静電気による放電破壊を回避するためには、検出前において、指Fに帯電した静電気を放電し、指Fの電位をスイッチング素子112のグランド(基準電位)Gレベルと略同一の電位にしておくことが必須である。更に、各静電容量の値を安定して検出するためには、検出時において、指Fの電位を所定の電位に固定することが好ましい。
このため、検出電極とは異なる電極、すなわち人体に帯電した静電気を放電させる放電用電極120をICカードK2の基板50上に設けている。
【0054】
(EPD)
図11は、EPD60の断面を示す断面図である。
プラスチック等の可撓性を有するEPD基材211e上に、電極フィルム211d、電気泳動表示層211c、電極フィルム211b及びこの表示部を保護する表面保護層211aが積層されている。
ここで、EPD基材211eは、先述のセンサ基板115と同一部材である。また、後述するようにEPD60の駆動電極は、薄膜トランジスタに接続されており、当該薄膜トランジスタのスイッチング動作によってEPD60の画像表示が行なわれるようになっている。また、本実施形態においては、表面保護層211aを設けた構成となっているが、当該表面保護層211aは省略することも可能である。
【0055】
電極フィルム211bは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド等の寸法安定性の優れた透明なプラスチックフィルムに電極が形成されているものである。電極フィルム211dも同様な基材の電極が形成されてなるものであるが、必ずしも透明性は要求されない。なお、電極フィルム211bと電極フィルム211dとは、上下動通電極211fにより導通される。
電極フィルム211bは、全面に同一の電位がかかる共通電極となり、一方、電極フィルム211dにはアクティブマトリックス電極或いはセグメント電極等が形成されて駆動電極となる。
【0056】
電気泳動表示層211cを形成するマイクロカプセル211は、アラビアガム・ゼラチンの複合膜、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、尿素樹脂等をカプセル殻とし、カプセル殻の作製方法としては、界面重合法、in−situ重合法、相分離法、界面沈殿法、スプレードライング法、等の公知のマイクロカプセル化手法を採用することができる。内部には泳動粒子と分散媒が封入される。泳動粒子としては有機あるいは無機の粒子(高分子あるいはコロイド)が用いられる。たとえば、アニリンブラック、カーボンブラック等の黒色顔料、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色顔料、モノアゾ、ジイスアゾン、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、アンチモン等の黄色顔料、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドンレッド、クロムバーミリオン等の赤色顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、アントラキノン系染料、紺青、群青、コバルトブルー等の青色顔料、フタロシアニングリーン等の緑色顔料等の1種又は2種以上を用いることができる。分散媒としては無色または染料により染色された水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、メチルセルソルブ等のアルコール系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等の各種エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ぺンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロへキサン、メチルシクロへキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキシルベンゼン、ヘブチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン等の長鎖アルキル基を有するベンゼン類等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、カルボン酸塩又はその他の種々の油類等の単独又はこれらの混合物に界面活性剤等を配合したものを用いることができる。
【0057】
電気泳動は、電気泳動粒子は予め正または負に帯電させられており、また、分散媒と電気泳動粒子とは、互いに異なる着色がなされている。例えば白の粒子である酸化チタンを正電荷に、一方黒の粒子であるカーボンブラックを負電荷にした場合、二つの電極フィルム211b,211dに電界を印加して、電極フィルム211bが負極、電極フィルム211dが正極になると、正に帯電した白の粒子が電極フィルム211b側に引かれ、黒の粒子が電極フィルム211d側に引かれるので、電極フィルム211bを透明電極としておくことにより、電極フィルム211b側の上方から観察すると、その部分が白く見えるようになる。逆に、電極フィルム211bが正極、電極フィルム211dが負極になった場合には、正に帯電した白の粒子が電極フィルム211d側に引かれ、黒の粒子が電極フィルム211b側に引かれるので、電極フィルム211bの上方から観察するとその部分が黒く見える。
【0058】
EPD60は、上述したマイクロカプセル211を多数有しているので、電極フィルム211b,211dの各アドレス電極の電界を制御することで、所望の文字、数字、或いは記号を白と黒の画素で表示させることができる。
なお、マイクロカプセル211をアクティブマトリックス駆動法で駆動する場合は、電極フィルム211dは画素電極として画素毎に独立してパターニングされ、不図示の薄膜トランジスタ、信号電極、および走査電極を併設し、電極フィルム211bは光透過性基材上に一様に形成された透明な共通電極とする。この場合、電極フィルム211bを共通電極にすると全面同一電位になるので(例えば電位をゼロとする)、電極フィルム211d側の各アドレス電極の電界を制御(正または負の電位を与える)することで、上述した原理に基づき電極位置のマイクロカプセル211内の粒子を移動させ、所望の画像を表示させることができる。同様に、電極フィルム211dを共通電極とし、電極フィルム211b側の各アドレス電極の電界を制御することで、電極位置のマイクロカプセル211内の粒子を移動させることで所望の画像を表示させるようにしてもよい。
時分割駆動の場合は、電極フィルム211b、211dは互いに直交するライン状のITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)等の透明導電体からなる透明電極により構成され、両電極の交わる領域にマイクロカプセル211を配置する。
駆動方式は上述したものに限定されず、用途に応じて最適なものを選択すればよい。また、マイクロカプセル211の径は、種々のものを採用することが可能である。
【0059】
また、選択スイッチ70は、ICカードK2で利用可能なアプリケーションを選択、決定するものである。また、当該アプリケーションは、上記のEPD60に複数表示されるようになっている。また、EPD60に表示されたアプリケーションは、選択スイッチ70を用いて選択、決定されるようになっている。
また、選択スイッチ70は、アプリケーションを選択、決定するだけでなく、ICカードK2の電源のOFF状態(電源切の状態)から、ON状態(電源入の状態)に切り替えるためのスイッチとしても機能するようになっている。
【0060】
また、ICカードK2に内蔵された制御部2は、CPU等の演算回路、ドライバ等の駆動回路、ROMやRAM等のメモリからなる記憶回路を備えている。そして、このような回路が動作することにより、指紋センサ50及びEPD60の動作が制御されるようになっている。具体的には、指紋センサ50における入力信号の判定や、EPD60の表示制御を行うようになっている。また、選択スイッチ70からの入力、接続用IC端子12を介して入出力される外部装置との通信を行うようになっている。更に、制御部2は、後述するように、ICカードK2を利用する複数のアプリケーションや、当該アプリケーションに応じたプログラムを記憶している。
また、制御部2は、電子磁気ストライプ部1の表面の法線方向に磁場を生成するように、当該電子磁気ストライプ部1を制御している。これにより、外部装置がICカードK2の情報を読み取りできるようになっている。
【0061】
上記のような指紋センサ50、EPD60、及び制御部2は、薄膜トランジスタを利用した構成を有している。このような薄膜トランジスタを利用することにより、指紋情報を静電容量として電気的に読み出したり、電気泳動表示層211cに電圧を付与したり、各種情報の演算や記憶を行うことが可能となっている。このような薄膜トランジスタは、上記の剥離転写技術により形成されたものであり、当該剥離転写技術を用いることによって、従来まではガラス基板のような硬くて耐熱性を有する基板のみにしか形成することができなかった薄膜トランジスタを、例えばガラス基板よりも耐熱性が劣るような、可撓性基板に転写形成することが可能となる。従って、柔軟性を有する樹脂基板に容易に薄膜トランジスタを形成することが可能となり、指紋センサ50、EPD60、及び制御部2を備えると共に、可撓性を有するICカードK2が実現可能となる。また、剥離転写技術を利用することにより、ICカードK2に指紋センサ50、EPD60、及び制御部2を一体に形成することが可能となる。
【0062】
(ICカードの利用者の認証)
本実施形態のICカードK2においては、予め制御部2に記憶された特定の指紋パターンの情報と、指紋センサに入力された指紋パターンとを比較して、利用者が特定された後に、利用可能となっている。
次に、図12を参照し、上記のICカードK2における利用者の認証の手続きについて説明する。
【0063】
まず、ICカードK2に電源を入れる。ここでは、選択スイッチ70をONにしたり、指紋センサ50に触れたりすることで、電源がONになる。
次に、指紋認証を行う(ステップS2)。当該ステップS2においては、図10に示すように利用者が指Fを指紋センサ50に触れることにより行われる。そして、処理部140におけるデータ処理部141が指紋センサ50に取り込まれた指紋パターンの特徴抽出を行う。更に、比較部143が、当該指紋パターンの情報と、メモリ142に記憶された特定の指紋パターンの情報との比較を行う。
ここで、ステップS2の指紋認証の結果、利用者の指紋と予め設定された指紋とが一致した場合には、ICカードの有効状態となり、電子磁気ストライプ部1において磁界が生成される(ステップS3)。当該電子磁気ストライプ部1においては、ドライバ回路部11が動作し、選択トランジスタ部16が動作することで、磁界発生部10から磁界が生成される。また、EPD60は、ICカードK2が有効であることを表示する。
【0064】
次に、ICカードK2の電子磁気ストライプ部1において磁界が生成された状態で、利用者が外部装置のリーダーもしくはライタにICカードK2を通すことにより、外部装置において、ICカードK2の磁気データ認証が行われる(ステップS4)。ここでは、外部装置に予め記憶されたユーザーデータと、ICカードK2の磁気データとが比較されることで、認証が行われる。そして、認証の結果は、EPD60によって表示される。
【0065】
上述したように、本実施形態においては、ICカードK2が指紋センサ50を備えることによって、ICカードK2の利用者の個人認証を行うことが可能となるので、当該利用者を限定することができ、ICカードK2の悪用を防止することができる。更に、本実施形態のICカードK2においては、このような個人認証を行うだけでなく、電子磁気ストライプ部1を介して外部装置が情報を読み込むことができる。従って、指紋認証によるセキュリティが得られるだけでなく、電子磁気ストライプ部1を通じた読み取りができるので、より高いセキュリティ性を有するICカードK2を実現できる。
また、上記のように、本実施形態においては、電子磁気ストライプ部1に磁界発生部10と選択トランジスタ部16が内蔵され、従来技術のような制御用LSIや導電線を備えていないために、ICカードK2の省スペース化が図られていることから、静電容量型指紋センサのようなデバイスをICカードK2の付加的に容易に備えることができる。
【0066】
また、本実施形態のICカードK2は、EPD60を備えており、当該EPD60は、電子磁気ストライプ部1を介して得られた情報や、指紋センサ50による認証情報の表示を行っている。従って、個人認証の結果や、外部装置が電子磁気ストライプ部1から情報の読み取りを実施した際の結果や情報を表示することができる。これにより、利用者が容易に各種情報を確認することができる。
【0067】
また、EPD60は、TFT等の駆動素子が所定時間の間に所定電圧を付与することで、その後に電圧を付加することなく、画像を保持することが可能となっている。即ち、画像の表示記憶性や表示メモリ性を有する表示素子である。そのため、画像を表示するための消費電力を低減できるので、低消費電力を実現することができると共に、表示メモリ性を有するICカードK2を実現できる。
【0068】
また、ICカードK2においては、電子磁気ストライプ部1、指紋センサ50、及びEPD60を制御する制御部2を更に備えているので、ICカードK2の利用者の指紋情報や、利用者による入力情報や、記憶回路に記憶された記憶情報等を、演算回路によって演算処理することが可能となり、演算結果に基づいて電子磁気ストライプ部1が磁場を発生することができる。また、当該演算結果をEPD60に表示することができる。
従って、ICカードK2が制御部2を備えることにより、電子磁気ストライプ部1、指紋センサ50、及びEPD60を制御することができる。
【0069】
また、ICカードK2においては、電子磁気ストライプ部1、指紋センサ50、EPD60、及び制御部2は、薄膜トランジスタによって形成され、一体に形成されているので、剥離転写技術によって容易にICカードK2を製造することができる。これにより、ICカードK2は曲げ応力に強い構造を容易に形成できるため、強度に優れたICカードK2を実現できる。
また、一体形成することにより、配線等を形成するための後工程を省略でき、部品数も少なくなる為、製造コスト削減を図ることができる。また、一体形成されているので、改造や偽造を施すと容易にICカードK2が壊れる構造となるので、即ち、ICカードK2の改造や偽造がしにくくなり、セキュリティ性を更に高めることができる。
【0070】
このようなICカードK2は、例えば電子鍵として機能したり、クレジットカードとして機能したり等、セキュリティ性が求められる各種カードとして利用可能となる。
なお、本発明は、上記の第1及び第2の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1実施形態に係るICカードの構成を説明するための構成図。
【図2】第1実施形態における電子磁気ストライプ部とドライバ回路部の構成図。
【図3】第1実施形態におけるドライバ回路部を説明するための回路図。
【図4】第1実施形態における電子磁気ストライプ部を説明するための回路図。
【図5】第1実施形態におけるシフトレジスタ部の動作のタイミングチャート図。
【図6】変形例1における電子磁気ストライプ部を説明するための回路図。
【図7】変形例2における電子磁気ストライプ部を説明するための回路図。
【図8】第2実施形態に係るICカードの外観図。
【図9】第2実施形態における指紋センサからの情報を処理する処理部のブロック図。
【図10】第2実施形態における指紋センサの構成を示す模式図
【図11】第2実施形態における電気泳動表示デバイスの断面を示す断面図。
【図12】第2実施形態における指紋認証を説明するためのフローチャート図。
【図13】従来のICカードの構成図。
【符号の説明】
【0072】
1…電子磁気ストライプ部、 10…磁界発生部、 11…ドライバ回路部、 12…シフトレジスタ部、 13…ラッチ回路(ラッチ部)、 14…クロック信号発生部、 16…選択トランジスタ部(スイッチング素子部)、 20a、20b、30a30b…磁界発生領域、 50…指紋センサ(静電容量型指紋センサ)、 60…EPD(表示素子、電気泳動表示デバイス)、 C1…コイル(第1コイル)、 C2…コイル(第2コイル)、 T1…トランジスタ(第1トランジスタ)、 T2…トランジスタ(第2トランジスタ)、 K1、K2…ICカード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子磁気ストライプ部を有するICカードであって、
前記電子磁気ストライプ部は、
当該電子磁気ストライプ部の延在方向に並んで設けられた複数の磁界発生部と、
当該複数の磁界発生部の各々に対応して設けられたスイッチング素子部と、
を具備し、
前記磁界発生部は、前記電子磁気ストライプ部の表面の法線方向に磁場を発生することを特徴とするICカード。
【請求項2】
前記電子磁気ストライプ部は、当該電子磁気ストライプ部と同方向に延在する複数のトラック部を有し、
当該トラック部の各々に、前記磁界発生部と前記スイッチング素子部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のICカード。
【請求項3】
前記磁界発生部の各々は、独立して磁界を発生させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のICカード。
【請求項4】
前記磁界発生部は、第1コイル及び第2コイルを有し、
前記スイッチング素子部は、前記第1コイルに対応する第1トランジスタと、前記第2コイルに対応する第2トランジスタとを有し、
前記第1トランジスタ及び第2トランジスタの各々は、共通のゲート線に接続され、当該ゲート線に付与される電位によって、前記第1コイル及び前記第2コイルに流れる電流方向を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項5】
前記電子磁気ストライプ部は、前記スイッチング素子部に接続されたドライバ回路部を具備し、
当該ドライバ回路部は、
前記スイッチング素子部の各々にデータ信号を付与するシフトレジスタ部と、
前記スイッチング素子部に付与されたデータ信号を保持するラッチ部と、
前記シフトレジスタ部及び前記ラッチ部を動作させるクロック信号を付与するクロック信号発生部と、
を具備することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項6】
前記スイッチング素子部及び前記ドライバ回路部は、薄膜トランジスタによって形成され、前記電子磁気ストライプ部に一体に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項7】
前記磁界発生部は、当該磁界発生部を分割した複数の磁界発生領域を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項8】
静電容量型指紋センサを更に備えることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項9】
前記電子磁気ストライプ部を介して得られた情報、又は、前記静電容量型指紋センサにおける認証情報の少なくともいずれか一方の情報の表示を行う表示素子を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項10】
前記電子磁気ストライプ部、前記静電容量型指紋センサ、及び前記表示素子を制御する制御部を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項11】
前記電子磁気ストライプ部、前記静電容量型指紋センサ、前記表示素子、及び前記制御部は、薄膜トランジスタによって形成され、一体に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項1】
電子磁気ストライプ部を有するICカードであって、
前記電子磁気ストライプ部は、
当該電子磁気ストライプ部の延在方向に並んで設けられた複数の磁界発生部と、
当該複数の磁界発生部の各々に対応して設けられたスイッチング素子部と、
を具備し、
前記磁界発生部は、前記電子磁気ストライプ部の表面の法線方向に磁場を発生することを特徴とするICカード。
【請求項2】
前記電子磁気ストライプ部は、当該電子磁気ストライプ部と同方向に延在する複数のトラック部を有し、
当該トラック部の各々に、前記磁界発生部と前記スイッチング素子部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のICカード。
【請求項3】
前記磁界発生部の各々は、独立して磁界を発生させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のICカード。
【請求項4】
前記磁界発生部は、第1コイル及び第2コイルを有し、
前記スイッチング素子部は、前記第1コイルに対応する第1トランジスタと、前記第2コイルに対応する第2トランジスタとを有し、
前記第1トランジスタ及び第2トランジスタの各々は、共通のゲート線に接続され、当該ゲート線に付与される電位によって、前記第1コイル及び前記第2コイルに流れる電流方向を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項5】
前記電子磁気ストライプ部は、前記スイッチング素子部に接続されたドライバ回路部を具備し、
当該ドライバ回路部は、
前記スイッチング素子部の各々にデータ信号を付与するシフトレジスタ部と、
前記スイッチング素子部に付与されたデータ信号を保持するラッチ部と、
前記シフトレジスタ部及び前記ラッチ部を動作させるクロック信号を付与するクロック信号発生部と、
を具備することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項6】
前記スイッチング素子部及び前記ドライバ回路部は、薄膜トランジスタによって形成され、前記電子磁気ストライプ部に一体に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項7】
前記磁界発生部は、当該磁界発生部を分割した複数の磁界発生領域を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項8】
静電容量型指紋センサを更に備えることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項9】
前記電子磁気ストライプ部を介して得られた情報、又は、前記静電容量型指紋センサにおける認証情報の少なくともいずれか一方の情報の表示を行う表示素子を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項10】
前記電子磁気ストライプ部、前記静電容量型指紋センサ、及び前記表示素子を制御する制御部を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項11】
前記電子磁気ストライプ部、前記静電容量型指紋センサ、前記表示素子、及び前記制御部は、薄膜トランジスタによって形成され、一体に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のICカード。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−72445(P2006−72445A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251807(P2004−251807)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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