説明

ICカード

【課題】 回路設計上の制約が多い場合でも、キャリアに生じるノイズを低減可能に構成された非接触式ICカードを提供する。
【解決手段】 リーダ/ライタ装置と振幅変調により非接触式データ通信を行うための通信インターフェースと、所定の機能を実現する機能回路の1または複数と、機能回路を制御する制御回路と、を備え、制御回路が、機能回路における第1処理動作の実行前の消費電力に対し、実行中における消費電力が判定変動量以上大きい場合に、第1処理動作の実行開始直前に、判定変動量より小さい変動量で消費電力を段階的に増加させ、第1処理動作の実行後の消費電力に対し、実行中における消費電力が判定変動量以上大きい場合に、第1処理動作の実行終了直後に、判定変動量より小さい変動量で消費電力を段階的に減少させる消費電力制御処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダ/ライタ装置と振幅変調により非接触式データ通信を行うICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードは、定期券や社員証、キャッシュカード等に使用されており、従来の磁気カード等に比べてセキュリティ性に優れていることから、今後より普及していく事が考えられる。
【0003】
ICカードには、データ通信の方式の違いにより接触式と非接触式があり、非接触式ICカードとリーダ/ライタ装置とのデータ通信方式には、例えば、振幅変調、位相変調、或いは、周波数変調等がある。非接触式ICカードは、リーダ/ライタ装置の所定のデータ通信部に近付けられることにより、リーダ/ライタ装置から、伝送データを受け付けることが可能になる。
【0004】
ここで、図7は、非接触式ICカード100の概略構成例を示している。図7に示すICカード100は、ICカード100の各種機能を実現するプログラム等を格納したROM15(Read Only Memory)、RAM14(Random Access Memory)、不揮発性メモリの一例としてのフラッシュメモリ13、ICカード100の各種機能回路及びCPU110にクロック信号を出力するクロック信号生成回路111、ICカード100に搭載された各機能回路を制御するCPU110(Central Processing Unit)、リーダ/ライタ装置2とデータ通信を行い、リーダ/ライタ装置2から電力供給を受けるための通信インターフェース12を備えて構成されている。
【0005】
図7に示す非接触式ICカード100は、振幅変調によるデータ通信を可能に構成されており、リーダ/ライタ装置2から、コマンド等の情報を含む伝送データに応じて振幅変調された搬送波(キャリア)を受信し、当該キャリアを復調して伝送データを復元する。また、非接触式ICカード100は、受け付けた伝送データに基づいて処理を行い、その結果に基づいて振幅変調したキャリアをリーダ/ライタ装置2に送信する。
【0006】
ここで、図8は、振幅変調によるデータ通信を行う場合のキャリア(搬送波)の波形例を示している。振幅変調では、振幅差によりデータを表すが、図8に示すキャリア波形の場合、所定のデータ値を示す振幅Vaに対する他のデータ値を示す振幅Vbの振幅差ΔV=Va−Vbが、約10%となるように設定されている。また、図9は、ICカード100とリーダ/ライタ装置2とのデータ通信における伝送データの構造を示している。図9に示す伝送データは、データ通信の同期を取るための規定のデータ列で構成されるプリアンブル部、コマンド等の情報を示すデータ列からなるデータ部、チェックサムが格納されたCRC部を備えて構成されている。
【0007】
ところで、振幅変調によるデータ通信を行う非接触式ICカード100では、例えば、ICカード100内に搭載された不揮発性メモリに対する書き込み処理等、消費電力の比較的高い処理動作を行うと、電源電圧を変動させ、これに起因して、通信インターフェース12におけるキャリアにノイズを生じさせ変動させる場合がある。キャリアのノイズによる変動量が大きい場合には、リーダ/ライタ装置2において復調が正常に行えず、通信エラーを引き起こす可能性がある。
【0008】
具体的には、例えば、図8に示すキャリアの場合、本来振幅Vaである期間にノイズが発生し、キャリアの振幅が10%程度減少した場合、ICカード100から出力されるキャリアの振幅は、本来的には振幅Vaであるが、ノイズにより振幅Vb程度となる可能性がある。この場合、リーダ/ライタ装置2において、振幅Vaに対応する値ではなく振幅Vbに対応する値に誤復調され、或いは、復調が正常に行えず、通信エラーを引き起こす可能性が高い。従って、ICカード100内に搭載された各種機能回路の処理動作による消費電力の変動に起因するノイズの影響を低減するための様々な技術が提案されている。
【0009】
非接触式ICカードにおける消費電力の変動に起因するキャリアへのノイズの影響を低減するための技術としては、例えば、ICカードに搭載された機能回路において消費電力の大きい処理動作を行う場合等、ノイズの発生が予測されるタイミングにおいて、電源電圧の変動による影響を受けない制御信号にダミー信号を挿入し、当該タイミングにおいてリーダ/ライタ装置から受信したキャリアの復調を制限することにより、誤復調を防止する非接触式ICカードが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
【特許文献1】特開2005−142889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、非接触式ICカードは、今後より普及していく事が考えられ、セキュリティ性の高い用途で使用されることが考えられることから、より信頼性を向上させることが望まれており、リーダ/ライタ装置とのデータ通信の通信精度をより向上させることが望まれている。
【0012】
リーダ/ライタ装置とのデータ通信の通信精度をより向上させるためには、非接触式ICカードにおいて、リーダ/ライタ装置に送信するキャリアのノイズを低減させることが望ましい。リーダ/ライタ装置に送信するキャリアのノイズを低減させ、リーダ/ライタ装置における誤復調を低減することができれば、受信したキャリアのノイズによる影響を低減させる上記特許文献1に記載の非接触式ICカードの構成と組み合わせることにより、より通信精度を向上させることができる。
【0013】
尚、リーダ/ライタ装置に送信するキャリアのノイズを低減させるためには、ノイズに起因するキャリアの変動量を低減するために、ノイズの発生要因である消費電力の変動を抑える必要がある。しかしながら、非接触式ICカードは、回路設計上の制約が多いことから、消費電力の変動を抑えることが困難であるという問題があった。
【0014】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、回路設計上の制約が多い場合でも、送信キャリアに生じるノイズを低減可能に構成された非接触式ICカードを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明に係るICカードは、リーダ/ライタ装置と振幅変調により非接触式データ通信を行うための通信インターフェースと、所定の機能を実現する機能回路の1または複数と、前記機能回路を制御する制御回路と、を備え、前記制御回路が、前記機能回路における所定の第1処理動作の実行前における消費電力に対し、前記第1処理動作の実行中における消費電力が所定の判定変動量以上大きい場合に、前記第1処理動作の実行開始直前に、前記機能回路を制御して、前記判定変動量より小さい変動量で消費電力を段階的に増加させる消費電力制御処理を実行するように構成されていることを第1の特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するための本発明に係るICカードは、リーダ/ライタ装置と振幅変調により非接触式データ通信を行うための通信インターフェースと、所定の機能を実現する機能回路の1または複数と、前記機能回路を制御する制御回路と、を備え、前記制御回路が、前記機能回路における所定の第1処理動作の実行後における消費電力に対し、前記第1処理動作の実行中における消費電力が所定の判定変動量以上大きい場合に、前記第1処理動作の実行終了直後に、前記機能回路を制御して、前記判定変動量より小さい変動量で消費電力を段階的に減少させる消費電力制御処理を実行するように構成されていることを第2の特徴とする。
【0017】
上記目的を達成するための本発明に係るICカードは、リーダ/ライタ装置と振幅変調により非接触式データ通信を行うための通信インターフェースと、所定の機能を実現する機能回路の1または複数と、前記機能回路を制御する制御回路と、を備え、前記制御回路が、前記機能回路における所定の第1処理動作の実行前における消費電力に対し、前記第1処理動作の実行中における消費電力が所定の判定変動量以上大きい場合に、前記第1処理動作の実行開始直前に、前記機能回路を制御して、前記判定変動量より小さい変動量で消費電力を段階的に増加させ、前記第1処理動作の実行後における消費電力に対し、前記第1処理動作の実行中における消費電力が前記判定変動量以上大きい場合に、前記第1処理動作の実行終了直後に、前記機能回路を制御して、前記判定変動量より小さい変動量で消費電力を段階的に減少させる消費電力制御処理を実行するように構成されていることを第3の特徴とする。
【0018】
上記何れかの特徴の本発明に係るICカードは、クロック信号の周波数を切り替え可能に構成されたクロック信号生成回路を備え、前記制御回路が、前記消費電力制御処理において、前記クロック信号生成回路を制御して、前記クロック信号の動作周波数を段階的に切り替えることを第4の特徴とする。
【0019】
上記特徴の本発明に係るICカードは、前記制御回路が、前記消費電力制御処理において、消費電力を段階的に増加させる場合に、前記クロック信号の周波数を段階的に増加させ、消費電力を段階的に減少させる場合に、前記クロック信号の周波数を段階的に減少させることを第5の特徴とする。
【0020】
上記第1〜第3の特徴の本発明に係るICカードは、前記制御回路が、前記消費電力制御処理において、前記第1処理動作の実行中における消費電力との差が前記判定変動量より小さく、且つ、前記処理動作の実行中における消費電力より低い消費電力の第2処理動作を実行するように、前記機能回路における各処理動作の動作順序を再設定することを第6の特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上記特徴のICカードによれば、制御回路が、ICカード内における消費電力の変動量が所定の判定変動量より大きくなる場合に、ICカード内における消費電力が判定変動量より小さい変動量で段階的に変動するように、ICカード内の各機能回路を制御する消費電力制御処理を行うように構成したので、ICカード内における消費電力の変動に起因するキャリアの振幅の変動量を低減することが可能になる。
【0022】
リーダ/ライタ装置では、振幅の変動量によりデータ値を判定して伝送データを復調することから、上記特徴のICカードの如く、消費電力制御処理により、ICカード内における消費電力の変動に起因するキャリアの振幅の変動(ノイズ)を低減するように構成すれば、ノイズによる振幅の変動がデータ値の遷移として検出されるのを効果的に防止可能になる。これにより、リーダ/ライタ装置において、誤復調やエラーが発生するのを、より効果的に防止低減することが可能になる。
【0023】
また、上記特徴のICカードによれば、制御回路(CPU等)が消費電力制御処理を実行することにより、消費電力の変動に起因するキャリアの変動量を低減可能になるので、キャリアの変動をおさえるための特別な回路を構成する必要がないことから、ICカードの回路設計上の制約が厳しい場合により対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係るICカードの実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
〈第1実施形態〉
本発明に係るICカードの第1実施形態について図1〜図3を基に説明する。ここで、図1は、本実施形態のICカードの概略構成例を示す概略ブロック図である。
【0026】
ICカード1は、図1に示すように、リーダ/ライタ装置2と振幅変調により非接触式データ通信を行うための通信インターフェース12と、所定の機能を実現する機能回路の1または複数と、機能回路を制御する制御回路とを備えて構成されている。更に、ICカード1は、本実施形態では、クロック信号CLK1の周波数を切り替え可能に構成されたクロック信号生成回路11を備えている。
【0027】
尚、ICカード1は、従来技術に係るICカード1と同様に、リーダ/ライタ装置2から、ICカード1に対するコマンド等の情報を含む伝送データに応じて振幅変調されたキャリアを受信し、当該キャリアを復調して伝送データを復元するように構成されている。更に、非接触式ICカード1は、受け付けた伝送データに基づいて処理を行い、その結果に基づいて振幅変調したキャリアをリーダ/ライタ装置2に送信するように構成されている。
【0028】
通信インターフェース12は、本実施形態では、リーダ/ライタ装置2との非接触式データ通信を行うための非接触式データ通信機能に加え、リーダ/ライタ装置2から電力及び外部クロック信号を受け付けるように構成されている。
【0029】
機能回路は、本実施形態では、図1に示すように、ICカード1の各種機能を実現するプログラム等を格納したROM15、一時的にデータを記憶するRAM14、不揮発性メモリの一例としてのフラッシュメモリ13を想定している。ROM15に格納されたプログラムは、例えば、リーダ/ライタ装置2から通信インターフェース12を介して受け付けた伝送データをフラッシュメモリ13に書き込む書き込み動作や、フラッシュメモリ13に対する消去動作を実行するためのプログラムが含まれている。尚、本実施形態では、機能回路として、上述したROM15、RAM14、フラッシュメモリ13等の記憶装置を想定しているが、これに限るものではなく、暗号回路等の他の回路を想定しても良い。
【0030】
クロック信号生成回路11は、本実施形態では、図1に示すように、通信インターフェース12が受け付けた外部クロック信号CLK0を分周して複数種類の分周クロック信号を出力するクロック分周回路11bと、CPU10からのクロック選択信号SELに基づいて、クロック分周回路11bから出力される複数の分周クロック信号の内の1つを選択し、CPU10に対して出力するクロック選択回路11aを備えて構成されている。クロック分周回路11bは、クロック選択信号SELに基づいて、外部クロック信号CLK0の1/1分周、1/2分周、1/4分周、1/8分周の4つの分周クロック信号を出力するように構成されている。
【0031】
尚、本実施形態では、クロック信号生成回路11が、リーダ/ライタ装置2から受け付けた外部クロック信号CLK0から、1/1分周、1/2分周、1/4分周、1/8分周の4つの分周クロック信号を生成する場合について説明したが、これに限るものではない。第1処理動作の実行によるキャリアの振幅の変動量や、後述する消費電力の判定変動量等を考慮して、適切な数、適切な周波数の分周クロック信号を生成する。
【0032】
制御回路は、本実施形態では、ICカード1に搭載された各機能回路を制御するCPU10で構成されている。本実施形態のCPU10は、機能回路における所定の第1処理動作の実行前における消費電力に対し、第1処理動作の実行中における消費電力が所定の判定変動量以上大きい場合に、第1処理動作の実行開始直前に、機能回路を制御して、判定変動量より小さい変動量で消費電力を段階的に増加させる消費電力制御処理を実行するように構成されている。
【0033】
より具体的には、本実施形態では、ROM15に格納された各プログラムを実行することにより実行される処理動作の夫々について、消費電力を記憶したテーブルを備えている。CPU10は、当該テーブルに基づいて、第1処理動作の実行中における消費電力と実行前における消費電力の差の予測値を求め、後述する判定変動量と大小を比較する。CPU10は、差の予測値が判定変動量より大きい場合に、消費電力制御処理を実行する。尚、本実施形態では、説明のために、消費電力の差の予測値を判定変動量と比較しているが、各処理動作の夫々の消費電力を示す指標値を用い、判定変動量に対応する判定用指標値と比較するように構成しても良い。
【0034】
また、判定変動量は、リーダ/ライタ装置2においてキャリアから伝送データを復調するときに誤復調が生じないように、消費電力の変動による影響を受けていないときのキャリア波形の振幅に対する消費電力の変動の影響を受けているときのキャリア波形の振幅の変動量が、10%以内となるように設定している。即ち、キャリア波形の振幅を10%変動させた場合に対応する消費電力の変動量に設定されている。尚、本実施形態では、キャリア波形を10%変動させた場合に対応する消費電力の変動量に設定しているが、判定変動量は、リーダ/ライタ装置2の構成等に応じて適切に設定する。
【0035】
更に、本実施形態のCPU10は、消費電力制御処理において、クロック信号生成回路11に対し、4つの分周クロック信号の内の1つを指定するためのクロック選択信号SELを出力することにより、動作周波数を段階的に切り替えるように構成されている。ここでは、CPU10は、CPU10による動作周波数を規定するクロック信号CLK1の周波数が段階的に増加するように、1/8分周のクロック信号を選択するためのクロック選択信号SEL、1/4分周のクロック信号を選択するためのクロック選択信号SEL、1/2分周のクロック信号を選択するためのクロック選択信号SEL、1/1分周のクロック信号を選択するためのクロック選択信号SELを、この順に、一定の時間間隔で順次出力する。
【0036】
以下、CPU10による消費電力制御処理について、図2〜図4を基に説明する。ここで、図2は、本実施形態におけるICカード1の消費電力制御処理の処理手順を示しており、図3は、消費電力制御処理を実行した場合のキャリア波形の推移を示している。
【0037】
尚、本実施形態では、第1処理動作として、消費電力が比較的大きいフラッシュメモリ13への書き込み動作を想定している。また、本実施形態では、フラッシュメモリ13への書き込み動作の実行開始前に対する実行中における消費電力が、判定変動量より大きい場合について説明する。
【0038】
ここで、図4は、フラッシュメモリ13への書き込み動作とその直前におけるキャリア波形の予測推移を示している。図4に示すように、時間t0以前は、消費電力の大きさが電源電圧に影響を与えない大きさであり、キャリア波形は振幅Vaとなっている。時間t120において、フラッシュメモリ13への書き込み動作が実行されると、消費電力が急激に増加して、電源電圧が急激に低下し、この影響により、キャリア波形の振幅が減少して振幅Vbとなる。フラッシュメモリ13への書き込み動作に起因するキャリア波形の振幅の変動量Va−Vbは、誤復調を引き起こす可能性のある振幅の変動量ΔVtより大きい。従って、本実施形態のCPU10は、フラッシュメモリ13への書き込み動作を実行する場合に、消費電力制御処理を実行する。
【0039】
具体的には、CPU10は、図2に示すように、フラッシュメモリ13への書き込み動作の実行直前に、消費電力制御処理(ステップ#110)を実行する。尚、図3に示す時間t10〜時間t16までのキャリア波形が、消費電力制御処理の実行中におけるキャリア波形に相当する。
【0040】
CPU10は、先ず、時間t10において、外部クロックを1/8分周した分周クロック信号を選択する(ステップ#111)。尚、本実施形態では、上述したように、時間t10以前は、消費電力の大きさが電源電圧に影響を与えない大きさであることから、消費電力が最小であり電源電圧への影響が最小となる1/8分周クロック信号を選択しているが、フラッシュメモリ13への書き込み動作の直前に実行される処理動作の消費電力によっては、1/4分周クロック信号等、他の分周クロック信号を選択するように構成しても良い。
【0041】
引き続き、CPU10は、図3の時間t11において、外部クロック信号CLK0を1/4分周した分周クロック信号を選択することにより、動作周波数を1段階高速にし、消費電力を増加させ、キャリア波形の振幅をΔVd11減少させる(ステップ#112)。尚、キャリア波形の振幅の減少量ΔVd11は、消費電力の判定変動量に対応する振幅の変動量ΔVtより小さい。更に、CPU10は、分周クロック信号の切り替えによるキャリア波形の変動が安定するまでの期間を考慮して設定された一定期間が経過するまで、本実施形態では、図3の時間t13まで待機する(ステップ#113)。
【0042】
同様にして、CPU10は、1/1分周クロック信号が選択されるまで、順次、動作周波数の高い分周クロック信号を選択する(ステップ#112〜#114)。即ち、CPU10は、時間t13になると、クロック信号を、外部クロック信号CLK0を1/2分周した分周クロック信号に切り替ることにより(ステップ#112)、消費電力を1段階増加させ、キャリア波形の振幅をΔVd12減少させて、時間t15まで待機する(ステップ#113)。更に、CPU10は、時間t15になると、クロック信号を、外部クロック信号CLK0を1/1分周した分周クロック信号に切り替え(ステップ#112)、消費電力を1段階増加させ、キャリア波形の振幅をΔVd13減少させて、時間t20まで待機する(ステップ#113)。尚、本実施形態では、クロック信号生成回路11から出力される分周クロック信号が、1/1分周、1/2分周、1/4分周、1/8分周に設定されており、キャリア波形の振幅の減少量ΔVd11〜ΔVd13は同じになるが、これに限るものではなく、分周クロック信号の設定によっては、減少量が夫々異なっていても良い。
【0043】
CPU10は、外部クロック信号CLK0を1/1分周した分周クロック信号を選択した後(ステップ#114で「YES」分岐)、フラッシュメモリ13への書き込み動作を実行する(ステップ#130)。
【0044】
図3に示すように、本実施形態では、分周クロック信号を切り替えることによるキャリア波形の変動量はΔVd11〜ΔVd13となり、これらは全て消費電力の判定変動量に対応する振幅の変動量ΔVt以下となっている。このため、リーダ/ライタ装置2側では、振幅の変動量ΔVd11〜ΔVd13が、誤復調を引き起こす可能性のある振幅の変動量ΔVtより小さいため、データの遷移として認識されず、誤復調が効果的に防止できる。これにより、リーダ/ライタ装置2との通信精度を向上させることが可能になる。
【0045】
〈第2実施形態〉
本発明に係るICカード1の第2実施形態について図5及び図6を基に説明する。尚、本実施形態では、上記第1実施形態とは、CPU10による消費電力制御処理の構成が異なる場合について説明する。
【0046】
本実施形態のICカード1は、上記第1実施形態と同様に、図1に示すように、リーダ/ライタ装置2と振幅変調により非接触式データ通信を行うための通信インターフェース12と、所定の機能を実現する機能回路の1または複数と、機能回路を制御する制御回路と、クロック信号CLK1の周波数を切り替え可能に構成されたクロック信号生成回路11を備えている。尚、通信インターフェース12、機能回路(フラッシュメモリ13、RAM14、ROM15)、クロック信号生成回路11の構成は、上記第1実施形態と同じである。
【0047】
本実施形態の制御回路は、上記第1実施形態と同様に、ICカード1に搭載された各機能回路を制御するCPU10で構成されている。本実施形態のCPU10は、機能回路における所定の第1処理動作の実行後における消費電力に対し、第1処理動作の実行中における消費電力が判定変動量以上大きい場合に、第1処理動作の実行終了直後に、機能回路を制御して、判定変動量より小さい変動量で消費電力を段階的に減少させる消費電力制御処理を実行するように構成されている。
【0048】
より具体的には、本実施形態では、第1実施形態と同様に、ROM15に格納された各プログラムを実行することにより実行される処理動作の夫々について、消費電力を記憶したテーブルを備えている。CPU10は、当該テーブルに基づいて、第1処理動作の実行中における消費電力と実行後における消費電力の差の予測値を求め、後述する判定変動量と大小を比較する。CPU10は、差の予測値が判定変動量より大きい場合に、消費電力制御処理を実行する。尚、上記第1実施形態と同様に、各処理動作の夫々の消費電力を示す指標値を用い、判定変動量に対応する判定用指標値と比較するように構成しても良い。
【0049】
また、判定変動量は、上記第1実施形態と同様に、キャリア波形の振幅を10%変動させた場合に対応する消費電力の変動量に設定されている。また、本実施形態のCPU10は、消費電力制御処理において、クロック信号生成回路11に対し、クロック信号CLK1の周波数が段階的に減少するように、1/1分周の分周クロック信号を選択するためのクロック選択信号SEL、1/2分周の分周クロック信号を選択するためのクロック選択信号SEL、1/4分周の分周クロック信号を選択するためのクロック選択信号SEL、1/8分周の分周クロック信号を選択するためのクロック選択信号SELを、この順に、一定の時間間隔で順次出力する。
【0050】
以下、CPU10による消費電力制御処理について、図5及び図6を基に説明する。ここで、図5は、本実施形態におけるICカード1の消費電力制御処理の処理手順を示しており、図6は、消費電力制御処理を実行した場合のキャリア波形の推移を示している。
【0051】
本実施形態では、第1処理動作として、上記第1実施形態と同様に、消費電力が比較的大きいフラッシュメモリ13への書き込み動作を想定している。また、本実施形態では、フラッシュメモリ13への書き込み動作の実行終了後に対する実行中における消費電力が、判定変動量より大きい場合について説明する。
【0052】
具体的には、CPU10は、図5に示すように、フラッシュメモリ13への書き込み動作(ステップ#120)の実行直後に、消費電力制御処理(ステップ#130)を実行する。尚、図6に示す時間t30〜時間t36までのキャリア波形が、消費電力制御処理の実行中におけるキャリア波形に相当する。
【0053】
CPU10は、先ず、時間t30において、フラッシュメモリ13への書き込み動作中における消費電力を考慮して、外部クロックを1/1分周した分周クロック信号を選択する(ステップ#131)。尚、本実施形態では、フラッシュメモリ13への書き込み動作中における消費電力と同等の消費電力となる1/1分周クロック信号を選択しているが、フラッシュメモリ13への書き込み動作における消費電力によっては、他の分周クロック信号を選択するように構成しても良い。
【0054】
引き続き、CPU10は、図6の時間t31において、外部クロック信号CLK1を1/2分周した分周クロック信号を選択することにより、動作周波数を1段階低速にし、消費電力を減少させ、キャリア波形の振幅をΔVd21減少させる(ステップ#132)。尚、キャリア波形の振幅の増加量ΔVd21は、消費電力の判定変動量に対応する振幅の変動量ΔVtより小さい。更に、CPU10は、分周クロック信号の切り替えによるキャリア波形の変動が安定するまでの期間を考慮して設定された一定期間が経過する時間t33まで待機する(ステップ#133)。
【0055】
同様にして、CPU10は、1/8分周クロック信号が選択されるまで、順次、動作周波数の低い分周クロック信号を選択する(ステップ#132〜#134)。即ち、CPU10は、時間t33になると、クロック信号を、外部クロック信号CLK1を1/4分周した分周クロック信号に切り替ることにより(ステップ#132)、消費電力を1段階減少させ、キャリア波形の振幅をΔVd22減少させて、時間t35まで待機する(ステップ#133)。
更に、CPU10は、時間t35になると、クロック信号を、外部クロック信号CLK1を1/8分周した分周クロック信号に切り替え(ステップ#132)、消費電力を1段階減少させ、キャリア波形の振幅をΔVd23減少させる。尚、本実施形態では、クロック信号生成回路11から出力されるクロック信号CLK1が、1/1分周、1/2分周、1/4分周、1/8分周に設定されており、キャリア波形の振幅の減少量ΔVd21〜ΔVd23は同じになるが、これに限るものではなく、分周クロック信号の設定によっては、減少量が夫々異なっていても良い。
【0056】
CPU10は、外部クロック信号CLK1を1/8分周した分周クロック信号を選択した後(ステップ#134で「YES」分岐)、消費電力制御処理(ステップ#130)を終了する。
【0057】
〈第3実施形態〉
本発明に係るICカード1の第3実施形態について図面を基に説明する。尚、本実施形態では、上記第1及び第2実施形態とは、CPU10による消費電力制御処理の構成が異なる場合について説明する。
【0058】
本実施形態のICカード1は、上記第1及び第2実施形態と同様に、図1に示すように、リーダ/ライタ装置2と振幅変調により非接触式データ通信を行うための通信インターフェース12と、所定の機能を実現する機能回路の1または複数と、機能回路を制御する制御回路と、クロック信号CLK1の周波数を切り替え可能に構成されたクロック信号生成回路11を備えている。尚、通信インターフェース12、機能回路(フラッシュメモリ13、RAM14、ROM15)、クロック信号生成回路11の構成は、上記第1及び第2実施形態と同じである。
【0059】
本実施形態の制御回路は、上記第1及び第2実施形態と同様に、ICカード1に搭載された各機能回路を制御するCPU10で構成されている。
【0060】
本実施形態のCPU10は、機能回路における所定の第1処理動作の実行前における消費電力に対し、第1処理動作の実行中における消費電力が判定変動量以上大きい場合に、第1処理動作の実行開始直前に、機能回路を制御して、判定変動量より小さい変動量で消費電力を段階的に増加させる消費電力制御処理を実行するように構成されている。更に、本実施形態のCPU10は、機能回路における第1処理動作の実行後における消費電力に対し、第1処理動作の実行中における消費電力が判定変動量以上大きい場合に、第1処理動作の実行終了直後に、機能回路を制御して、判定変動量より小さい変動量で消費電力を段階的に減少させる消費電力制御処理を実行するように構成されている。
【0061】
より具体的には、本実施形態のCPU10は、消費電力制御処理において、第1処理動作の実行中における消費電力との差が判定変動量より小さく、且つ、処理動作の実行中における消費電力より低い消費電力の第2処理動作を実行するように、機能回路における各処理動作の動作順序を再設定するように構成されている。本実施形態では、例えば、第1処理動作として、フラッシュメモリ13への書き込み動作を想定した場合、第2処理動作として、フラッシュメモリ13の読み出し動作等を想定している。
【0062】
また、第1実施形態と同様に、ROM15に格納された各プログラムを実行することにより実行される処理動作の夫々について、消費電力を記憶したテーブルを備えている。CPU10は、当該テーブルに基づいて、第1処理動作の実行中における消費電力と実行前における消費電力の差の予測値を求め、後述する判定変動量と大小を比較する。CPU10は、差の予測値が判定変動量より大きい場合に、第1処理動作の実行直前に、第2処理動作を実行する。尚、上記第1及び第2実施形態と同様に、各処理動作の夫々の消費電力を示す指標値を用い、判定変動量に対応する判定用指標値と比較するように構成しても良い。
【0063】
更に、CPU10は、上記テーブルに基づいて、第1処理動作の実行中における消費電力と実行後における消費電力の差の予測値を求め、後述する判定変動量と大小を比較する。CPU10は、差の予測値が判定変動量より大きい場合に、第1処理の実行直後に、第2処理動作を実行する。
【0064】
〈別実施形態〉
上記第1〜第3実施形態では、消費電力制御処理の実行対象となる処理動作として、フラッシュメモリ13への書き込み動作を例に説明したが、これに限るものではなく、消費電力の変動量が判定変動量以上となる処理動作を消費電力制御処理の実行対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る非接触式ICカードの第1実施形態における概略構成例を示す概略ブロック図
【図2】本発明に係る非接触式ICカードの第1実施形態における消費電力制御処理の処理手順を示すフローチャート
【図3】本発明に係る非接触式ICカードの第1実施形態におけるキャリア波形の一例を示す概略波形図
【図4】キャリア波形の予測例を示す概略波形図
【図5】本発明に係る非接触式ICカードの第2実施形態における消費電力制御処理の処理手順を示すフローチャート
【図6】本発明に係る非接触式ICカードの第2実施形態におけるキャリア波形の一例を示す概略波形図
【図7】従来技術に係る非接触式ICカードの概略構成例を示す概略ブロック図
【図8】従来技術に係る非接触式ICカードとリーダ/ライタ装置との間のデータ通信で用いられるキャリア波形の一例を示す概略波形図
【図9】非接触式ICカードとリーダ/ライタ装置との間のデータ通信における伝送データのデータ構造の概略構成例を示す概略ブロック図
【符号の説明】
【0066】
1 本発明に係るICカード
2 リーダ/ライタ装置
10 CPU
11 クロック信号生成回路
11a クロック選択回路
11b クロック分周回路
12 通信インターフェース
13 フラッシュメモリ
14 RAM
15 ROM
100 従来技術に係るICカード
110 CPU
111 クロック信号生成回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダ/ライタ装置と振幅変調により非接触式データ通信を行うための通信インターフェースと、
所定の機能を実現する機能回路の1または複数と、
前記機能回路を制御する制御回路と、を備え、
前記制御回路が、前記機能回路における所定の第1処理動作の実行前における消費電力に対し、前記第1処理動作の実行中における消費電力が所定の判定変動量以上大きい場合に、前記第1処理動作の実行開始直前に、前記機能回路を制御して、前記判定変動量より小さい変動量で消費電力を段階的に増加させる消費電力制御処理を実行するように構成されていることを特徴とするICカード。
【請求項2】
リーダ/ライタ装置と振幅変調により非接触式データ通信を行うための通信インターフェースと、
所定の機能を実現する機能回路の1または複数と、
前記機能回路を制御する制御回路と、を備え、
前記制御回路が、前記機能回路における所定の第1処理動作の実行後における消費電力に対し、前記第1処理動作の実行中における消費電力が所定の判定変動量以上大きい場合に、前記第1処理動作の実行終了直後に、前記機能回路を制御して、前記判定変動量より小さい変動量で消費電力を段階的に減少させる消費電力制御処理を実行するように構成されていることを特徴とするICカード。
【請求項3】
リーダ/ライタ装置と振幅変調により非接触式データ通信を行うための通信インターフェースと、
所定の機能を実現する機能回路の1または複数と、
前記機能回路を制御する制御回路と、を備え、
前記制御回路が、前記機能回路における所定の第1処理動作の実行前における消費電力に対し、前記第1処理動作の実行中における消費電力が所定の判定変動量以上大きい場合に、前記第1処理動作の実行開始直前に、前記機能回路を制御して、前記判定変動量より小さい変動量で消費電力を段階的に増加させ、
前記第1処理動作の実行後における消費電力に対し、前記第1処理動作の実行中における消費電力が前記判定変動量以上大きい場合に、前記第1処理動作の実行終了直後に、前記機能回路を制御して、前記判定変動量より小さい変動量で消費電力を段階的に減少させる消費電力制御処理を実行するように構成されていることを特徴とするICカード。
【請求項4】
クロック信号の周波数を切り替え可能に構成されたクロック信号生成回路を備え、
前記制御回路が、前記消費電力制御処理において、前記クロック信号生成回路を制御して、前記クロック信号の動作周波数を段階的に切り替えることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のICカード。
【請求項5】
前記制御回路が、前記消費電力制御処理において、消費電力を段階的に増加させる場合に、前記クロック信号の周波数を段階的に増加させ、消費電力を段階的に減少させる場合に、前記クロック信号の周波数を段階的に減少させることを特徴とする請求項4に記載のICカード。
【請求項6】
前記制御回路が、前記消費電力制御処理において、前記第1処理動作の実行中における消費電力との差が前記判定変動量より小さく、且つ、前記処理動作の実行中における消費電力より低い消費電力の第2処理動作を実行するように、前記機能回路における各処理動作の動作順序を再設定することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−301487(P2009−301487A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158072(P2008−158072)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】