説明

ICソケット

【課題】コンタクトの接点部の垂直方向及び水平方向の移動量を大きくすることができるICソケットを提供する。
【解決手段】ガルウィング形リードを有するICパッケージを搭載するICソケットであって、その上部にICパッケージを収容する収容凹部が設けられている台座を含むソケット本体と、ソケット本体上方に配置され、それに対して上下動可能に形成されているカバーと、それぞれが、駆動部、作用部及び回転軸を含み、それぞれの回転軸を介してソケット本体に対して回転可能に支持される少なくとも一対のレバーと、それぞれが、接点部、アーム部、弾性変形部、圧入部及び端子部を少なくとも含む複数のコンタクトを備え、レバーの回転軸は、垂直断面で、2つの円を2つの共通外接線で連結した形状を有するように形成され、カバーの上下動に伴い、レバーを回転させ、それにより、コンタクトの接点部を台座の収容凹部に対して前進後退させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レバーによりコンタクトの開閉を行なうICソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集積回路パッケージ(以下、「ICパッケージ」という。)を搭載し、スクリーニング用テストボードや電子機器と電気的に接続するためのICソケットが知られている。
【0003】
さらに、ガルウィング形(L字形)をしたリードがパッケージの対をなす2側面または4側面から取り出されているようなICパッケージ用のICソケットとしては、特許文献1、2に示されるように、回動するレバーを介してコンタクトを開閉させることで該コンタクトとICパッケージのリードとの接触または接触解除を行わせる機構を有するICソケットも知られている。
【0004】
このようなレバーを備えるICソケットにおいては、特許文献1、2にも開示されるように、該レバー押圧部材としてのカバーの上下方向(垂直方向)の移動に伴い、レバーが回動する。該レバーは、その自由端がカバー(の下面)に当接しており、断面略真円(単一円形状)の回転軸を中心として回転するように構成されている。コンタクトは、レバーの作用部に当接しており、従って、レバーの回動に伴い、コンタクトの接点部は、所定のストローク量前進または後退し得る。さらに、搭載されるICパッケージとの干渉を避けるべく、コンタクトの接点部の水平方向の移動量を大きくするために、特許文献2に示されるように、カバーのレバー当接面にテーパーを付けたり、該当接面を曲面としたりして、レバーの回動を誘導している。
【0005】
【特許文献1】特開平4−154065号公報
【特許文献2】特開平8−8016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したように、レバーが単一円形状の回転軸を中心として回動する限り、コンタクトの接点部の水平方向の移動量を大きくすると、コンタクトの接点部の垂直方向への移動量が小さくなる。すなわち、コンタクトの接点部の水平方向の移動量を大きくするためには、レバーの回転軸と作用部との距離を大きく取る必要がある。ICソケットの外形寸法を変えないとすると、レバーの回転軸をコンタクトの接点部より下方に配置することになる。したがって、レバーの回動によるレバーの作用部の軌跡が略平坦な円弧状となってしまい、それにより、コンタクトの接点部を上方に引き上げる垂直部分が小さくなってしまう。結果として、図10に一点鎖線Bで示されるように、コンタクトの接点部41をICパッケージのリード61に接触させるに際し、接点部41の突入角度が寝てしまうことで、リード61のコプラナリティ(平坦度)のバラツキにより、コンタクトの接点部41が該リード61を横押しする恐れが生じる。あるいは、コンタクトの接点部41がICパッケージのリード61上面を横方向(水平方向)に滑る力が大きくなるため、リード61の打痕が大きくなってしまう。また、SOP(Small Outline Package;リードがパッケージの対向する2側面から取り出され、且つガルウィング形に整形されているパッケージ)のようなICパッケージでは、カバー開閉のタイミングのずれにより、片側のコンタクトのみが接触した状態になり、この片側の接触部が支点となり、ICパッケージが跳ね上がり、リードの変形が発生する恐れもある。
【0007】
以上のことから、コンタクトの接触部の垂直方向及び水平方向の移動量を大きくするためには、ソケット外形を大きくせざるを得ないことが理解される。
【0008】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、ソケット外形を大きくすることなくコンタクトの接点部の垂直方向及び水平方向の移動量を大きくすることができるICソケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のICソケットは、ガルウィング形リードを有する集積回路パッケージを搭載するICソケットであって、その上部に前記集積回路パッケージを収容する収容凹部が設けられている台座を含むソケット本体と、該ソケット本体上方に配置され、該ソケット本体に対して上下動可能に形成されているカバーと、それぞれが、駆動部、作用部及び回転軸を含み、前記台座を挟んで対称的に配置され、それぞれの回転軸を介して前記ソケット本体に対して回転可能に支持される少なくとも一対のレバーと、それぞれが、対応する前記集積回路パッケージのガルウィン形リードに接触し得る接点部、前記レバーの前記作用部に係合するアーム部、前記接点部の前進後退を可能とする弾性変形部、前記ソケット本体に設けられた貫通孔内に圧入される圧入部及び端子部を少なくとも含む複数のコンタクトとを備え、前記レバーの前記回転軸は、垂直断面で、2つの円を2つの共通外接線で連結した形状を有するように形成され、前記カバーの前記ソケット本体に対する上下動に伴い、該カバーが前記レバーの前記駆動部に当接することで前記レバーを回転させ、それにより、前記レバーの前記作用部に係合する前記コンタクトのアーム部に作用し、前記コンタクトの接点部を前記台座の前記収容凹部に対して前進後退させ得ることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るICソケットは、また、前記レバーの前記回転軸が、垂直断面で、直径が同じ2つの円を2つの共通外接線で連結した形状を有するように形成されていてもよいし、垂直断面で、直径が異なる2つの円を2つの共通外接線で連結した形状を有するように形成されていてもよい。
【0011】
本発明に係るICソケットは、さらに、前記レバーに、前記複数のコンタクトそれぞれの前記アーム部が貫通する複数のスリットが形成されていてもよいし、前記コンタクトそれぞれのアーム部に、前記コンタクトの前記接点部とは反対側に延在し、前記レバーの前記作用部に係合するアーム部がさらに形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るICソケットは、カバーの上下動に伴い、これに当接してコンタクトを開閉する(前進後退させる)レバーの回転軸が、垂直断面で2つの円を2つの共通外接線で連結した形状とすることで、従来の真円形状の回転軸に比べて、コンタクトの接点部の回転軌跡が大きくなり、結果として、該接点部の垂直方向及び水平方向の移動量を大きくすることができる。特に、コンタクトの接点部の垂直方向の移動量を大きくできることで、該接点部をICパッケージのリードに上方から接触させることが可能となり、それにより、ICパッケージのリードを痛めることもなく、接点部をリードに確実に接触させることが可能となる。さらに、レバーの回転軸が、垂直断面で異なる直径の2つの円を2つの共通外接線で連結した形状とすることで、コンタクトの接点部の移動量をより大きくすることができる。
【0013】
さらに、コンタクトのアーム部を、レバーに形成されたスリット内を貫通させることでレバーの作用部とコンタクトのアーム部との係合が確実となり、コンタクトの接点部の前進後退がレバーの回動に確実に追随して行われる。また、コンタクトのアーム部に接点部と逆方向に延在するアーム部をさらに設け、該アーム部とレバーの作用部を係合させる構成とすることでICソケットの製造が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を用いて、本発明に係る好ましい実施例について説明をする。
【0015】
図1は、本発明に係るICソケットの第1の実施例の上面図であり、図2は、図1のICソケットのII−II線に沿う概略断面図である。図3は、図2に示されるICソケットにおいて、コンタクトの接点部の移動を説明するための概略要部拡大断面図である。図4は、図2、3に示されるICソケットの第1の実施例の変形例である。図5は、本発明のICソケットの第2の実施例であって、図3と同様の概略要部拡大断面図である。図6は、図5に示されるICソケットの第2の実施例の変形例である。図7は、図2、3に示されるICソケットの第1の実施例に係るレバーを示し、(a)は、該レバーの正面図、(b)は、側面図、(c)は、上面図である。図8は、第1の実施例と第2の実施例におけるレバーの軸形状の相違による軸の軌跡の違いを説明するための図であり、(a)は、第1の実施例の軸の軌跡を示し、(b)は、第2の実施例の軸の軌跡を示す。図9は、図8と同様に、軸の軌跡の違いを説明するための図であり、(a)は、第1の実施例の軌跡を示し、(b)は、第2の実施例の軸の軌跡を示す。図10は、本発明及び従来のコンタクトの接点部の軌跡の比較を示す図である。
【0016】
(第1の実施例)
図1ないし3に、本発明に係る第1の実施例としてのICソケット1が示されている。ICソケット1は、概略、カバー10、ソケット本体20、レバー30及び複数のコンタクト40を備えている。
【0017】
ソケット本体20は、電気的に絶縁性の合成樹脂から形成され、上から見て概略矩形状をなしている底板26を含んでいる。ソケット本体20の底板26の中央部には、ICパッケージ60を収容するICパッケージ収容凹部21aがその上部に形成された台座21が底板21から一段高く形成されている。台座21及びICパッケージ収容凹部21aは、上から見て、概略、搭載されるICパッケージ60の外郭と同じ方形状をなしている。台座21上部には、ICパッケージ収容凹部21aを画定する外周壁22が設けられている。本実施例においては、外周壁22は、搭載されるICパッケージ60の位置決めをする位置決め部材として機能し、さらに、図2に示される左右に対向して位置する外周壁22は、ICパッケージ60のリード61が載置されるリード載置部材としても機能する。
【0018】
ソケット本体20のICパッケージ収容凹部21aの左右両側には、図1、2に示されるように、複数のコンタクト40が互いに平行に配置され、コンタクト40はそれぞれの圧入部46が底板26に形成されている対応する貫通孔24に圧入されることで、ソケット本体20の底板26に固定される。また、底板26には、隣り合うコンタクト40が確実に平行に配置され、電気的に短絡しないように、隣り合うコンタクト40を仕切る複数の隔壁25が互いに平行に形成されている。
【0019】
ソケット本体20の前後両側部(図2において、紙面に垂直方向であって、対向して位置する側部)には、後述するレバー30の回転軸35を回転可能に支持する軸受部27が形成されている側壁28が設けられている(図2においては、後壁のみが示されている)。軸受部27は、横から見て概略凹面形状をなし、該凹面形状は、回転軸35の垂直断面形状に倣った形状をなしている(図3参照)。
【0020】
カバー10は、図1に示されるように、上から見て、概略矩形状をなし、その中央部分には、ソケット本体20のICパッケージ収用凹部21aに対応して開口11が形成されている。該開口11は、上から見てICソケット1に搭載されるICパッケージ60の平面形状と相似形をなしており、ICパッケージ60が貫通できる大きさを有している。したがって、該開口11を介してソケット本体20のICパッケージ収用凹部21a内にICパッケージ60を収容または取り出すことができる。
【0021】
カバー10の裏面側(図2において、下側)には、後述するレバー30の駆動部31に当接し得る位置に押圧面12が形成されている。カバー10は、ソケット本体20に対して、カバー10を上方に付勢するコイルバネ(不図示)を介して上下動可能に取り付けられている。
【0022】
複数のコンタクト40各々は、例えば、ベリリウム銅(BeCu)のような導電性の金属製薄板から所定形状にプレス加工されることで形成される。本実施例では、図2に示されるように、搭載されるICパッケージ60の複数のリード61それぞれに対応して、ソケット本体20の台座21の左右に1列ずつ配列される。左右のコンタクト列は、台座21を挟んで対応するように配列される。また、隣り合うコンタクト40は、上述したように、互いに平行に配置され、ソケット本体20の底板26に固定される。
【0023】
各コンタクト40は、接点部41、第1のアーム部42、第2のアーム部43、略S字形の弾性変形部44、固定部45、圧入部46及び端子部47を含んでいる。
【0024】
接点部41は、搭載されるICパッケージ60のリード61に電気的に接触する部分であり、本実施例では、第1のアーム部42の一端から下方に突出形成されている。接点部41は、コンタクト40がソケット本体20に固定され、無負荷状態(ICパッケージ60が搭載されておらず、且つ、カバー10が押し下げられていない状態)にあるとき、ICパッケージ収用凹部21aを画定している外周壁22上面またはその近傍に位置する。
【0025】
第1のアーム部42は、図2に示されるように、コンタクト40がソケット本体20に固定された状態で、略水平に延在するように形成されている。第1のアーム部42の一端は、接点部41に連続しており、他端は、第2のアーム部43に連続している。
【0026】
第2のアーム部43は、図2において、第1のアーム部42の他端から下方に向かって垂直に延び、弾性変形部44に連続している。第1のアーム部42及び第2のアーム部43は、後述するレバー30の作用部32に当接して、接点部41を、図10の実線Aで示されるような所定の軌跡で、前進、後退させる。第1のアーム部42及び第2のアーム部43は、本実施例では、概略L字形をなしている。しかしながら、第1のアーム部42及び第2のアーム部43は、レバー30の作用部32に当接し、接点部41を図10の実線Aで示される所定の軌跡で前進後退させることができる構造をしていれば、どのような形状をなしていてもよい。例えば、後述する変形例のように、第3のアーム部48を備えていてもよい(図4参照)。
【0027】
S字形状の弾性変形部44が、垂直方向か方に向かって延在する第2のアーム部43に続いて、第2のアーム部43の下方に形成されている。弾性変形部44は、接点部41がICパッケージ60のリード61に接触する方向にコンタクト40を付勢するとともに、レバー30の回動に伴い、接点部41が垂直及び水平方向に移動することを可能にしている。言い換えれば、該弾性変形部44は、台座21のICパッケージ収容凹部21aに向かって付勢するとともに、該ICパッケージ収容凹部21aに対し、コンタクト40の接点部41の前進、後退を可能としている。
【0028】
S字形状の弾性変形部44に続いて、その下方に固定部45が形成されている。固定部45は、図2に示されるように、水平方向に延在し、その底辺45aがソケット本体20の底板26の上面26aに接することで、コンタクト40がソケット本体20に固定されたとき、コンタクト40を図2に示されるような所定の姿勢に維持させる。
【0029】
固定部45に続いて、圧入部46が垂直方向か方に向かって延在する。したがって、固定部45と圧入部46は、略直角に交差する。圧入部46は、ソケット本体20の底板26に形成された貫通孔26内に圧入され、それにより、コンタクト40をソケット本体20に固定子、これを支持する。圧入部46に続くコンタクト40の最下端となる端子部47は、コンタクト40がソケット本体20に固定されたとき、底板26からか方に突出するように形成されている。該端子部47は、例えば、不図示のテストボード等の印刷回路基板に設けられた外部接点としてのスルーホール内に挿入され、半田付けされ、印刷回路基板に電気的に接続される。
【0030】
最後に、本発明の特徴点であるレバー30について、図7を用いて詳細に説明する。レバー30は、ソケット本体20と同様に、電気的に絶縁性の合成樹脂から成形される。レバー30は、対をなして配列されたコンタクト列と同様に、台座21を挟んで対をなして配置され、より具体的には、台座21のICパッケージ収用凹部21aを挟んで、対称的にソケット本体20に回動自在に取付けられる。また、対をなすレバー30は、それぞれ、台座21に対して平行に配置されている。レバー30は、カバー10の上下動により回動し、対をなして配列される複数のコンタクト40を左右に開閉する。
【0031】
レバー30は、駆動部31、作用部32、複数のスリット33及び回転軸35を含んでいる。
【0032】
駆動部31は、図7(a)に示されるように、正面(図に対して、垂直方向手前)から見て、レバー30の回転軸35に対して、右斜め上方に位置し、傾斜した板体として形成されている。駆動部31は、また、図7(b)に示されるように、上から見て回転軸35と平行に延在している。駆動部31の自由端は、レバー30の回転軸35を介してソケット本体20に回動自在に取り付けられているとき、カバー10の下面に形成される押圧面12に当接し得るように配置されている。また、駆動部31は、カバー10の垂直方向の移動(上下動)に伴い、レバー30が長円形状として形成されている回転軸35の軸P2を中心として回転するように構成される。なお、駆動部31のカバー10に当接する自由端は、正面から見て、円弧状に形成されていることが好ましい。
【0033】
作用部32は、正面から見て、回転軸35の略真上に位置し、本実施例では、垂直断面略方形状をなし、上から見て、駆動部31と同様に、回転軸35と平行に延在している。駆動部31と作用部32との間には、複数のスリット33が形成されている。作用部32の上面32aは、平坦な水平面として形成されており、ICソケット1が組み立てられたとき、コンタクト40の第1のアーム部42が当接する。作用部32のスリット33に面している垂直面32bには、ICソケット1が組み立てられたとき、コンタクト40の第2のアーム部43が当接する。なお、32cは、作用部32の底面であり、上面32aとほぼ平行に形成され、スリット33に面している。
【0034】
レバー30の駆動部31と作用部32との間に形成される複数のスリット33各々は、より具体的には、図7(b)に示されるように、下から回転軸35を横断し、図7(a)に示されるように、作用部32に達し、図7(c)に示されるように、駆動部31と作用部32との間を上方に貫通するように形成されている。各スリット33は、互いに平行で、且つICパッケージ60のリード61が載置される台座21の左右の外周壁22に垂直に形成される。レバー30及びコンタクト40がソケット本体20に組み込まれたとき、各スリット33内を、対応するコンタクト40それぞれが貫通する。この時、上述したように、コンタクト40の第1のアーム部42及び第2のアーム部43が、レバー30の作用部32の上面32a及び垂直面32bにそれぞれ当接する。
【0035】
回転軸35は、レバー30の最下方に位置し、その輪郭(垂直断面形状)は、従来のように真円ではなく、本実施例では、図7(a)に示されるように、正面から見て、同じ直径の2つの円を2つの共通外接線で結んだ長円形状をなしている。ここで、回転軸35の垂直断面が長円形状であることに関し、2つの円の中心軸のうち台座21に近い内側の縁の軸をP1とし、台座21から遠い外側の縁の軸をP2とする。また、軸P1と軸P2とを結ぶ線分の長さをLとすると、これに限定されるものではないが、本実施例においては、該線分の長さLは、それぞれの円の半径Rより短い。また、回転軸35は、図7(a)、図8(a)、図9(a)に示されるように、ICソケット1が無負荷状態にあるとき、軸P1と軸P2とを結ぶ線分あるいは2つの円を結ぶ接線が略水平となるように、ソケット本体20の軸受部27で支持される。上述したように、レバー30は、回転軸35の軸P2を中心として回転するように構成されている。
【0036】
回転軸35は、このように長円形状の輪郭を備えているので、軸受部27上で回転するとき、コンタクト40の接点部41を上方に持ち上げるように後退させることが可能となる。具体的には、レバー30の回転動作及びコンタクト40の接点部41の動作を中心に、本実施例におけるICソケットの動作につき図3を用いて以下に詳細に説明する。
【0037】
ソケット本体20の前後の側壁28に形成されたい軸受部27は、図3に示されるように、正面から見て、概略U字形をなしている。より具体的には、軸受部27の底面は、上述したように、回転軸35の輪郭の下半分に倣った形状を有している。また、軸受部27の台座21側(図3において、軸受部27の左側)の側面及び台座21から遠い側(図3において、軸受部27の右側)の側面は、垂直面として形成されている。
【0038】
ICソケット1のカバー10、レバー30及びコンタクト40は、図3において実線で示される状態にある。なお、この時、図3に示されるように、ICパッケージ60がICパッケージ収用凹部21aに配置されており、したがって、そのリード61が外周壁22上に載置されている。
【0039】
この状態から、カバー10がコイルバネの付勢力に抗して押し下げられると、カバー10の押圧面12にレバー30の駆動部31の自由端が当接し、レバー30は、全体として回動軸35の軸P2の周りに回転する。図3に示される実施例においては、レバー30は、時計回りに右方向に回転する。この時、レバー30の作用部32の上面32a及び垂直面32bは、コンタクト40の第1のアーム部42及び第2のアーム部43に当接し、コンタクト40の接点部41をICパッケージ60のリード61上から上昇及び後退させる。
【0040】
カバー10がさらに押し下げられると、レバー30の駆動部31は、図3において、回転軸35の軸P2の周りにさらに右回転する。この時、レバー30の作用部32は、上述したように、コンタクト40の接点部41をさらに後退させる。特に、作用部32の垂直面32bがコンタクト40の第2のアーム部43に当接することで、コンタクト40の弾性変形に伴い、作用部32ひいては回転軸35は、垂直面32bを介してコンタクト40が元の位置に戻ろうとする反力を該コンタクト40から受ける。
【0041】
したがって、回転軸35は、軸P2を中心に回転するとともに、回転軸35の垂直断面長円形状の輪郭が軸受部27の左側の垂直面に沿って、時計回りに回転する。言い換えると、軸P2は、回転軸35の回転に伴い、軸受部27の左側の垂直面に向かって水平に移動し、これに近づき、それにより、軸P1は、上昇する。仮に、駆動軸31が角度θだけ回転させられたとすると、回転軸35も角度θ分回転する。それに伴い、回転軸35の一方の軸P2は、L(1−cosθ)=S分だけ左側に水平移動し(すなわち、台座21に近寄る)、軸P1は、Lsinθ=H分上昇する(図9(a)参照)。すなわち、回転軸35の輪郭を本発明のように長円形状にすると、従来のレバーのように輪郭が真円である回転軸周りに単純円運動で回転するよりも、レバー30の作用部32がソケット本体20に対してより高く上昇することになる。
【0042】
したがって、図10に示されるように、作用部32の上面32aに当接するコンタクト40の第1のアーム部42の軌跡、ひいては接点部41の軌跡Aは、ICパッケージ60のリード61あるいは台座21の上部に形成される外周壁22上面に対して上方への移動量を従来(軌跡B)よりも増大させることが可能となる。それにより、コンタクト40の接点部41は、外周壁22上面、あるいはICパッケージ60のリード61に対して、従来よりも上方から接近または離脱することが可能となる。
【0043】
逆に、カバー10の押し下げ力を取り除くと、コイルバネの復帰力により、カバー10は、上昇し、コンタクト40の弾性力(復帰力)により、レバー30の駆動部31、作用部32及び回転軸35も元の位置に戻る。コンタクト40の接点部41も、上記後退するときと同じ軌跡Aで外周壁22に向かって前進する。この時、外周壁22上にICパッケージ60のリード61が載置されていれば、コンタクト40の接点部41は、リード61に上方から接近することができる。したがって、コンタクト40の接点部41は、何のトラブルも発生させることなく、リード61に所定の接圧で確実に接触し得る。
【0044】
図4には、本実施例の変形例が示されている。該変形例は、上記第1の実施例において、コンタクト40の第1のアーム部42または第2のアーム部43から第1のアーム部42が延びる方向とは反対方向に第3のアーム部48が延びている点で実質的に相違する。すなわち、本変形例におけるコンタクト40’は、第1の実施例と同様に、接点部41、第1のアーム部42、第2のアーム部43、略S字形の弾性変形部44、固定部45、圧入部46及び端子部47を含むとともに、第3のアーム部48をさらに含んでいる。
【0045】
第3のアーム部48は、本変形例では、第2のアーム部43から第1のアーム部42が延びる方向とは逆の方向に延び、その末端(図4において、第3のアーム部48の右端)部において、鉤型(L字形)に形成された係止部48aを有している。係止部48aは、該係止部48aを含む第3のアーム部48がレバー30’の作用部32’の上面及び垂直面に当接するように、該作用部32’に係止される。それにより、本変形例においても、コンタクト40’の接点部41は、第1の実施例と同様の軌跡を描いて前進後退することが可能となる。
【0046】
本変形例におけるレバー30’は、駆動部31’、作用部32’及び回転軸35’を備えている点で、第1の実施例と異なるものではなく、複数のコンタクト40が貫通する複数のスリット33が省略されている点で相違するだけである。本変形例においては、スリットに代えて、作用部32’と駆動部31’との間に係止凹部38が形成され、且つ、該係止凹部38の少なくとも作用部32’側の壁面は垂直面とされ、第3のアーム部48の係止部48aが作用部32’に係合できるように構成されている。なお、係止凹部48には、隣接するコンタクト40’との間に仕切り壁が設けられてもよい。
【0047】
本変形例におけるICソケットの動作は、コンタクトとレバーとの当接部が異なるだけで、上記第1の実施例で説明したとほぼ同じ態様を取るので、説明を省略する。いずれにしても、カバー10の上下動に伴い、コンタクト40’の接点部41の軌跡は、図10の実線Aに示される通りになる。
【0048】
本変形例においては、レバー30’から複数のスリットが省略されることで、レバー30’の構造が強固になり、耐久性が増すとともに、その製造が容易となる。また、複数のコンタクトをそれぞれ対応するスリットに挿入する必要がなく、ICソケットの組立がよいとなる。したがって、本変形例では、ICソケットの大きさが若干大きくなることを許されるのであれば、全体として上部で安価なICソケットを得ることができる。
【0049】
(第2の実施例)
図5、6には、本発明に係るICソケットの第2の実施例及びその変形例が示されている。本実施例におけるICソケットは、第1の実施例と比べて、レバーの回転軸の形状が異なるのみでその他の構成は全て同じである。
【0050】
図5に示されるように、本実施例におけるレバー30aの回転軸35aの輪郭(垂直断面形状)は、正面から見て、軸P1aを中心とする大径の円と軸P2aを中心とする小径の円との2つの円を接線で結んでできる概略卵形状をなしている。本実施例では、軸P1aを中心とする大径の円の直径は、上記第1の実施例の円と同じである。
【0051】
本実施例における回転軸35aは、軸P1aを中心とする大径の円と軸P2aを中心とする小径の円を結ぶ2本の接線のうちの一方の接線が軸受部27の水平な底面に接するように、側壁28に形成される該軸受部27に支持されている。したがって、図8(b)に示されるように、大径の円の中心軸P1aと小径の円の中心軸P2aとを結ぶ線分は、水平線に対して角度θ1だけ傾斜している。
【0052】
また、軸受部27は、第1の実施例とほぼ同じ形状及び寸法を有しているとすると、本実施例における大径の円の中心軸P1aと小径の円の中心軸P2aとを結ぶ線分の長さL1は、第1の実施例における中心軸P1とP2を結ぶ線分の長さLより大きくなる。したがって、同じ角度回転したとき、本実施例のほうが上記第1の実施例より回転軌跡が大きくなる。具体的には、例えば、駆動軸31が上記第1の実施例と同じく角度θだけ回転させられたとすると、回転軸35aも角度θ分回転する。それに伴い、回転軸35の一方の軸P2aは、S1分だけ左側に水平移動し(すなわち、台座21に近寄る)、軸P1aは、H1分上昇する。図9(a)及び(b)に示されるように、軸P2aの水平移動量S1及び軸P1の垂直移動量H1は、それぞれ、上記第1の実施例の軸P2aの水平移動量S及び軸P1の垂直移動量Hより大きい。それにより、コンタクト40の接点部41の軌跡は、外周壁22上面に対して右方への水平移動量及び上方への垂直移動量を上記第1の実施例のそれらよりさらに増大させることが可能となる。
【0053】
図6に示される第2の実施例の変形例は、第1の実施例における変形例と同様に、コンタクト40’が第3のアーム部48を備え、レバー30’の作用部32’がコンタクト40’の第3のアーム部48に係合するように形成されている点で相違する。本変形例のICソケットのその他の構成は、第2の実施例とほぼ同じ構成を備えている。すなわち、本変形例は、第1の実施例と比べて、概略、レバー30’の回転軸35’a、コンタクト40’の第3のアーム部48及びレバー30’がスリット33を備えていない点で相違し、その他の構成はほぼ同じであるといえる。したがって、本変形例は、第2の実施例と同様に、第1の実施例及びその変形例と比べて、コンタクト40の接点部41の軌跡をさらに増大させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係るICソケットの第1の実施例の上面図である。
【図2】図1のICソケットのII−II線に沿う概略断面図である。
【図3】図2に示されるICソケットにおいて、コンタクトの接点部の移動を説明するための概略要部拡大断面図である。
【図4】図2、3に示されるICソケットの第1の実施例の変形例である。
【図5】本発明のICソケットの第2の実施例であって、図3と同様の概略要部拡大断面図である。
【図6】図5に示されるICソケットの第2の実施例の変形例である。
【図7】図2、3に示されるICソケットの第1の実施例に係るレバーを示し、(a)は、該レバーの正面図、(b)は、側面図、(c)は、上面図である。
【図8】第1の実施例と第2の実施例におけるレバーの軸形状の相違による軸の軌跡の違いを説明するための図であり、(a)は、第1の実施例の軸の軌跡を示し、(b)は、第2の実施例の軸の軌跡を示す。
【図9】図8と同様に、軸の軌跡の違いを説明するための図であり、(a)は、第1の実施例の軌跡を示し、(b)は、第2の実施例の軸の軌跡を示す。
【図10】本発明及び従来のコンタクトの接点部の軌跡の比較を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 ICソケット
10 カバー
20 ソケット本体
21 台座
21a IC(集積回路)パッケージ収容凹部
24 貫通孔
27 軸受部
30 レバー
31、31’ 駆動部
32、32’ 作用部
33 スリット
35、35a 回転軸
40 コンタクト
41 接点部
42 第1のアーム部
43 第2のアーム部
44 弾性変形部
45 固定部
46 圧入部
47 端子部
48 第3のアーム部
60 ICパッケージ
61 ガルウィング形リード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガルウィング形リードを有する集積回路パッケージを搭載するICソケットであって、
その上部に前記集積回路パッケージを収容する収容凹部が設けられている台座を含むソケット本体と、
該ソケット本体上方に配置され、該ソケット本体に対して上下動可能に形成されているカバーと、
それぞれが、駆動部、作用部及び回転軸を含み、前記台座を挟んで対称的に配置され、それぞれの回転軸を介して前記ソケット本体に対して回転可能に支持される少なくとも一対のレバーと、
それぞれが、対応する前記集積回路パッケージのガルウィン形リードに接触し得る接点部、前記レバーの前記作用部に係合するアーム部、前記接点部の前進後退を可能とする弾性変形部、前記ソケット本体に設けられた貫通孔内に圧入される圧入部及び端子部を少なくとも含む複数のコンタクトと、
を備え、
前記レバーの前記回転軸は、垂直断面で、2つの円を2つの共通外接線で連結した形状を有するように形成され、
前記カバーの前記ソケット本体に対する上下動に伴い、該カバーが前記レバーの前記駆動部に当接することで前記レバーを回転させ、それにより、前記レバーの前記作用部に係合する前記コンタクトのアーム部に作用し、前記コンタクトの接点部を前記台座の前記収容凹部に対して前進後退させ得ることを特徴とするICソケット。
【請求項2】
前記レバーの前記回転軸は、垂直断面で、直径が同じ2つの円を2つの共通外接線で連結した形状を有するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のICソケット。
【請求項3】
前記レバーの前記回転軸は、垂直断面で、直径が異なる2つの円を2つの共通外接線で連結した形状を有するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のICソケット。
【請求項4】
前記レバーには、前記複数のコンタクトそれぞれの前記アーム部が貫通する複数のスリットが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のICソケット。
【請求項5】
前記コンタクトそれぞれのアーム部には、前記コンタクトの前記接点部とは反対側に延在し、前記レバーの前記作用部に係合するアーム部がさらに形成されていることを特徴とする請求項1に記載のICソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−92616(P2010−92616A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258692(P2008−258692)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】