説明

ICタグ、ICタグシステムおよびそのデータの通信方法

【課題】 近年の大量物流により、リーダ・ライタがICタグを識別処理するスピード、すなわち、R/WとICタグとの間の通信速度を向上させることが重要となってきた。
【解決手段】
本発明に係るICタグは、受信する無線信号に含まれるデータ信号に基づいて検波信号を生成する受信回路と、送信データを送信する送信回路と、を備え、検波信号に基づいて生成された基準クロックに同期して動作するICタグであって、送信回路は、検波信号に同期して送信データの送信を行う、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はICタグ、ICタグシステムおよびそのデータの通信方法に関し、特に無線信号に含まれるデータ信号に基づいて動作するICタグ、ICタグシステムおよびそのデータの通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば工場での物流管理や、小売店での物品管理などにおいて、RFID(Radio Frequency IDentification)に関する技術が注目されている。この技術は商品の固有情報を書き込んだICを有するタグを商品などに貼り付けて、その情報を無線アンテナで読み取る技術である。
【0003】
このような技術では、リーダ・ライタ(R/W)とRFID用のタグ(以下、ICタグと称す)が用いられる。R/Wは、搬送波(例えば、2.45GHzの信号)に低い周波数のデータ信号を重畳した無線信号をICタグへ送信し、ICタグから送信された無線信号を受信するものである。ICタグは、受信した無線信号を復調してデータ信号を取り出し、取り出したデータ信号から構成されるコマンドデータに基づいた処理を行う。また、ICタグは、受信したコマンドデータが応答データを要求するものである場合には、応答データをR/Wへ送信する。ここで、ICタグは、例えばICチップとアンテナとが一体化されたものである。
【0004】
ICタグの中でもパッシブ型と呼ばれるICタグでは、R/Wから無線信号を受け取り、この無線信号に含まれる搬送波からICタグ内の整流回路が電源電圧を生成している。すなわち、パッシブ型のICタグでは、R/Wとの間で通信に利用される無線信号が電力供給とデータ送受信に利用されている。
【0005】
上記のように、受信した無線信号から内部で電源電圧を生成して回路を動作する技術が非特許文献1に開示されている。この技術を利用した従来のICタグのブロック図を図15に示す。図15に示すICタグ51は、ICチップ52およびアンテナ53から構成されている。ICチップ52には、アンテナ53を介して受信した無線信号に含まれるデータの復調および制御回路57が動作するための基準クロックを生成するための復調装置54と、受信した無線信号から電源電圧(VDD)を生成する電源電圧生成部55と、復調したデータに基づいて動作する制御回路57と、データを記憶するEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)58と、EEPROM58に対する書き込み/読み出しの際に必要な所定の電圧を生成するチャージポンプ回路(CP)59と、制御回路57から出力されたデータを変調しアンテナ53を介してR/Wへ送信する変調装置56と、が含まれる。
【0006】
復調装置54は、アンテナ53を介して受信した無線信号に含まれるデータ信号を検出し、R/Wから送信されたコマンドデータやパラメータデータを復調する。また、検出したデータ信号から制御回路57が動作するために必要な基準クロックも生成する。復調データや基準クロックは、復調装置54から出力され、制御回路57へ入力される。
【0007】
電源電圧生成部55は、アンテナ53を介して受信した無線信号から電源電圧を生成する。生成された電源電圧は、ICチップ52内の各回路ブロックに供給され、各回路ブロックが動作するための電源として利用される。
【0008】
制御回路57は、復調装置54から出力された復調データ(コマンドデータおよびパラメータデータ)と基準クロックを受けて、コマンドデータに基づいた処理を行う。例えば、受信したコマンドデータがEEPROM58に対するデータの書き込み/読み出しに関するものである場合には、EEPROM58へのアクセス制御を行う。具体的には、EEPROM58へ制御信号(書き込み/読み出し制御信号)やアドレス信号、書き込みデータを出力する。また、受信したコマンドデータがR/Wに応答を返すものである場合には、応答データを変調装置56へ出力する。
【0009】
EEPROM58は、制御回路57からの制御信号等を受けて、データの書き込みおよび読み出し動作を行う。
【0010】
チャージポンプ回路59は、EEPROM58へのデータ書き込み/読み出しの際に必要な所定の電圧を生成する。所定の電圧の生成は、電源電圧生成部55から出力された電源電圧を昇圧することで行われる。
【0011】
変調装置56は、制御回路57から出力された応答データを取得し、取得した応答データを変調してR/Wへ送信する。
【0012】
上述の通り、制御回路57は、基準クロックに同期して動作するため、変調装置56へ入力される応答データの出力タイミングは、基準クロックに同期して行われる。そのため、ICタグ51からR/Wへ送信する応答データの送信タイミングも、復調装置54で生成される基準クロックの出力タイミングに同期している。
【0013】
また、無線信号に含まれるデータ信号には、復調してコマンドデータおよびパラメータデータを構成するものや、基準クロックの基になるものが、混在している。従って、復調装置54は、受信した無線信号に含まれるデータ信号を検出すると共に、検出したデータ信号がどのような種類のものであるかを判断してから、コマンドデータおよびパラメータデータの復調や、基準クロックの生成を行わなければならない。すなわち、ICタグ51が、データ信号を含んだ無線信号を受信してから基準クロックを生成するまでには、所定の時間を要することになり、その分、基準クロックに同期して出力される応答データの出力タイミングも、遅延することになる。
【非特許文献1】ウド・カートハウス(Udo Karthaus)他著、「フリー・インテグレーテッド・パッシブ・ユーエイチエフ・アールエフアイディー・トランスポンダー・アイシー・ウィズ・16.7マイクロワット・ミニマム・アールエフ・インプット・パワー(Fully Integrated Passive UHF RFID Transponder IC With 16.7−μW Minimum RF Input Power)」、アイイーイーイー・ジャーナル・オブ・ソリッド−ステート・サーキッツ(IEEE JOURNAL OF SOLID−STATE CIRCUITS)、VOL.38、NO.10、2003年10月、p.1602−1608
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
物流システムにRFIDを利用するICタグシステムを適用する例を考えると、近年の大量物流により、R/Wが一度の処理で識別処理しなければならない商品(ICタグ)の個数が増加している。また、ベルトコンベアのような流れ作業でICタグを識別処理するような場合には、ベルトコンベアの流れる速度自体も速くなってきている。このように、より多くの商品をより早く処理をするという要求が増しつつあり、このため、R/WがICタグを識別処理するスピード、すなわち、R/WとICタグとの間の通信速度を向上させることが重要となってきた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るICタグは、受信する無線信号に含まれるデータ信号に基づいて検波信号を生成する受信回路と、送信データを送信する送信回路と、を備え、前記検波信号に基づいて生成された基準クロックに同期して動作するICタグであって、前記送信回路は、前記検波信号に同期して前記送信データの送信を行う、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るICタグは、受信する無線信号に含まれるデータ信号を検出し、検波信号を出力する受信回路と、前記検波信号に基づいて基準クロックを生成するデータ信号処理回路と、前記基準クロックに同期して動作し、送信データを出力する制御回路と、 前記送信データを送信する送信回路と、を備えるICタグであって、前記送信回路は、前記検波信号に同期して前記送信データの送信を行う、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るICタグシステムは、受信する無線信号に含まれるデータ信号に基づいて動作するICタグと、前記無線信号を送信するリーダ・ライタと、を備えるICタグシステムであって、前記ICタグは、前記データ信号に基づいて検波信号を出力する受信回路と、前記検波信号に基づいて基準クロックを生成するデータ信号処理回路と、前記基準クロックに同期して動作し、送信データを出力する制御回路と、前記リーダ・ライタへ前記送信データを前記検波信号に同期して送信する送信回路と、を備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るICタグのデータ送信方法は、受信する無線信号に含まれるデータ信号に基づいて検波信号を生成するステップと、前記検波信号に基づいて基準クロックを生成するステップと、前記基準クロックに同期して送信データを生成するステップと、前記送信データを前記検波信号に同期して送信するステップと、を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係るデータ通信方法は、受信する無線信号に含まれるデータ信号に基づいて動作するICタグと、前記無線信号を送信するリーダ・ライタとのデータ通信方法であって、前記ICタグは、前記データ信号に基づいて検波信号を生成し、前記検波信号に基づいて基準クロックを生成し、前記基準クロックに同期して送信データを生成し、前記送信データを前記検波信号に同期して前記リーダ・ライタへ送信し、前記リーダ・ライタは、前記ICタグから送信された送信データを受信する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、R/WからICタグへ送信される無線信号に含まれるデータ信号の送信間隔を縮めることが可能になり、その結果、ICタグシステム全体の通信速度を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
実施の形態1
図1は、実施の形態1に係るRFIDシステムを示す図である。このシステムは、RFID用のICタグ3とリーダ・ライタ(R/W)1を有している。なお、この実施の形態1では、ICタグ3はR/W1と2.45GHz帯などの高い周波数で通信を行うシステムである。
【0023】
R/W1は、アンテナ2を介して、データ信号および搬送波(2.45GHz)を含む変調された無線信号をICタグ3へ送信し、ICタグ3から送信された無線信号を受信する装置である。
【0024】
データ信号には、基準パルスのデータ信号とデータパルスのデータ信号の2種類のデータ信号が含まれる。基準パルスのデータ信号は、ICタグ3が動作するときの基準となる同期信号(基準クロック)を生成するために利用される。一方、データパルスのデータ信号は、R/W1からICタグ3に送信されるコマンドデータおよびパラメータデータを構成する。
【0025】
ICタグ3は、受信した無線信号に含まれるデータ信号を復調し、当該復調して得られたコマンドデータに基づいた処理を行う。また、ICタグ3は、受信したコマンドデータがR/W1に対し何らかの応答を要求するものである場合には、当該コマンドデータに基づいて、応答データなどをR/W1へ送信する。この実施の形態1のICタグ3は、内部に電源を有していないパッシィブ型のICタグ3であり、ICチップ4とアンテナ5とが一体化されたものである。
【0026】
なお、図1に示すように、R/W1とICタグ3の無線通信区間を伝播路6とし、伝播路6の無線信号には、R/W1からICタグ3へ送信される下り方向の無線信号7と、ICタグ3からR/W1へ送信される上り方向の無線信号8とが含まれる。
【0027】
図2は、実施の形態1に係るR/W1のブロック図である。図2に示すように、R/W1は、ICタグ3と無線信号の送受信を行うアンテナ2と、アンテナ2が接続されるアンテナ端子11と、送信回路13へ送信データを出力し、また、受信回路14からASK検波出力を受けて受信データ(ICタグ3からの応答データ)を2値データ(データ0/データ1)として出力する信号処理回路12と、例えば2.45GHzの搬送波に送信データを重畳した信号をアンテナ2を介して送信する送信回路13と、受信した無線信号を検波し信号処理回路12へASK検波出力を出力する受信回路14を有する。また、受信回路14は、受信信号検出回路15およびASK検波回路16から構成される。
【0028】
信号処理回路12は、送信回路14に対し、送信データをシリアル出力する。このシリアル出力された送信データは、送信回路13において、ICタグ3へ送信する無線信号に含まれるデータ信号として無線送信される。
【0029】
また、受信回路14から出力されたASK検波出力を受けて、ICタグ3から送信されたデータを2値データに変換する。変換した2値データは、R/W1に接続された情報端末(不図示)へ受信データとして出力される。なお、ASK検波出力はアナログ値であり、出力される受信データはデジタル値であるが、その際のアナログ値からデジタル値へのアナログ−デジタル変換は、所定の閾値との比較により行われる。
【0030】
送信回路13は、搬送波となる2.45GHzの信号を発振する第1の発振器131と第1のミキサ132とを有し、信号処理回路12からシリアル出力された送信データと2.45GHzの搬送波とを第1のミキサ132でミキシングし、ICタグ3へ送信するための信号を生成する。生成された信号は、アンテナ2を介してICタグ3へ無線送信される。また、第1のミキサ132の出力は、受信回路14へも出力される。
【0031】
受信信号検出回路15は、第2のミキサ151およびバンド・パス・フィルタ(BPF)152を有する。BPF152は、ICタグ3から送信される応答データの周波数帯域の信号のみを通過させる。第2のミキサ151の入力の一端は、アンテナ端子11に接続され、他端は第1のミキサ132の出力に接続されている。また、第2のミキサ151の出力は、BPF152の入力に接続されている。
【0032】
アンテナ端子11から第2のミキサ151に入力される信号には、アンテナ2を介して受信した無線信号成分(ICタグ3から送信された信号以外の成分(ノイズ成分)を含む)と、第1のミキサ132の出力からアンテナ端子11を介して回り込んだ信号成分とが含まれている。そのため、第1のミキサ132の出力を利用して第2のミキサ151によって2.45GHzの周波数を持つ搬送波成分の信号を取り除き、さらにBPF152を用いて、ICタグ3から送信された応答データの周波数帯域に含まれる信号以外の信号成分を除去している。
【0033】
ASK検波回路16は、受信信号検出回路15の出力の振幅の大きさを検波し、その振幅の大きさに応じた信号(ASK検波出力)を出力する。また、ASK検波回路16は、時定数回路(例えば、抵抗とキャパシタからなる積分回路)を有し、所定の振幅を有する受信信号検出回路15の出力を平滑化して、ASK検波出力を出力している。
【0034】
図3は、実施の形態1にかかるICタグ3のブロック図である。図3に示すように、ICタグ3は、ICチップ4およびアンテナ5から構成されている。ICチップ4およびアンテナ5は、アンテナ端子21において接続されている。
【0035】
ICチップ4には、R/W1とデータの送受信を行う無線回路22と、受信したデータの検出および基準クロックの生成を行うデータ信号処理回路25と、受信したコマンドデータに基づいて処理を行う制御回路26と、データを記憶する記憶回路27が含まれる。また、無線回路22は、受信回路23および送信回路24から構成される。
【0036】
受信回路23は、アンテナ5を介して受信した無線信号の搬送波から電源電圧を生成する整流回路231と、アンテナ5を介して受信した無線信号に含まれるデータ信号を検出して検波信号(パルス信号)を出力する検波回路232を有する。整流回路231で生成された電源電圧は、ICチップ4内の各回路ブロックが動作するための電源電圧として利用される。また、検波回路232から出力されたパルス信号は、データ信号処理回路25および送信回路24へ出力される。
【0037】
データ信号処理回路25は、検波回路232から出力されたパルス信号を受けて、コマンドデータおよびパラメータデータを生成する。ここで、パラメータデータとは、広くコマンドデータ以外のデータを意味し、例えば、記憶領域271のアドレスを示すアドレスデータ、記憶領域271に書き込まれる書き込みデータ等が該当する。また、データ信号処理回路25は、コマンドデータおよびパラメータデータの生成に加えて、制御回路26を動作させるための基準クロックも生成する。
【0038】
検波回路232が出力するパルス信号には、コマンドデータおよびパラメータデータを構成するパルス信号と、基準クロックの基になるパルス信号が混在している。そのため、データ信号処理回路25は、受け取ったパルス信号がどのような種類のものなのかを判断してから、コマンドデータ、パラメータデータおよび基準クロックを生成する。従って、R/W1から送信された無線信号を受信してから、基準クロック等を生成するまでには、所定の時間を要する。
【0039】
制御回路26は、データ信号処理回路25から出力されたコマンドデータ、パラメータデータおよび基準クロックを受けて、コマンドデータに基づいた処理を行う。例えば、記憶回路27へのアクセス制御に関するコマンドデータが入力された場合には、記憶回路27へ制御信号(書き込み/読み出し制御信号)やアドレス信号、書き込みデータを出力する。また、R/W1からICタグ3へ送信されたコマンドデータが、R/W1に対し応答を要求するものであった場合には、送信データ(応答データ)を送信回路24へ出力する。
【0040】
記憶回路27は、データを格納する記憶領域271と、書き込み/読み出し電圧を生成するためのチャージポンプ回路(CP)272と、制御回路26から制御信号等を受けて記憶領域271に対しデータの書き込みおよび読み出し処理を行うメモリ制御回路273を有する。記憶領域271から読み出したデータは、制御回路26へ出力される。
【0041】
送信回路24は、制御回路26から出力された応答データと、検波回路232から出力されたパルス信号を受けて、当該応答データを搬送波に重畳させて、アンテナ端子21を介してR/W1へ送信する。
【0042】
ここで、図4を用いて、実施の形態1に係るR/W1からICタグ3へ送信される信号について説明する。図4(a)は、R/W1からICタグ3へ送信される無線信号を示す。図4(b)は、ICタグ3が受信した無線信号を検波し検波回路232から出力される検波信号(パルス信号)を示す。
【0043】
図4(a)に示すように、R/W1が送信する無線信号には、搬送波と、搬送波の送信が停止する部分が含まれている。このような搬送波の振幅を変更してデータを送信する方式は、ASK(Amplitude Shift Keying)変調方式と呼ばれている。従って、データを示す部分が搬送波の送信が停止している部分に相当する。なお、図4(a)では、変調度を100%として示しているが、受信装置(ICタグ3)側が適切に振幅の差を認識してデータを受信可能ならば、変調度は100%である必要はない。
【0044】
また、図4(b)には、検波回路232が無線信号を検波し搬送波に含まれるデータ部分(データ信号)を抽出してパルス信号として出力する信号波形が、図4(a)に対応するように示されている。図4(a)における搬送波の停止する部分が、パルス信号として出力される。
【0045】
R/W1から送信される無線信号には、所定間隔ごとに、搬送波の停止する部分、すなわち、データ信号が含まれている。この所定間隔ごとに送信されるデータ信号は、基準パルスのデータ信号である。検波回路232は、この基準パルスのデータ信号から基準パルスのパルス信号(以下、単に基準パルスと称す)を生成する。また、データ信号処理回路25は、検波回路232から出力された基準パルスを受けて、基準クロックを生成する。
【0046】
基準パルスのデータ信号が送信される所定間隔、つまり、基準パルスが1個のみ生成される1つの単位期間を、1フレームとする。図4(a)および図4(b)では、3個の基準パルスのデータ信号(または基準パルス)が存在するので、フレーム1〜3の3つのフレームが存在している。また、図4(a)に示すように、基準パルスのデータ信号(または基準パルス)は、1フレームの最後に存在するので、例えば、図4(b)では、1フレームは、基準パルスの立ち下がりから次の基準パルスの立ち下がりまでの期間に相当する。
【0047】
一方、データ信号には、基準パルスのデータ信号のほかに、データパルスのデータ信号も含まれている。データパルスのデータ信号は、1フレームの中に含まれるパルスの数によって、データなし/データ0/データ1をそれぞれ表す。検波回路232は、このデータパルスのデータ信号からデータパルスのパルス信号(以下、単にデータパルスと称す)を生成する。また、データ信号処理回路25は、検波回路232から出力されたデータパルスを受けて、コマンドデータおよびパラメータデータを生成する。
【0048】
図4(a)および図4(b)は、データパルスのデータ信号(または、データパルス)が、1フレームの中に、全く存在しない場合/1個存在する場合/2個存在する場合の3通りのパターンを、それぞれ、フレーム1/フレーム2/フレーム3として示している。
【0049】
フレーム1は、データなしの場合である。データなしは、基準パルスのデータ信号だけが送信され、1フレーム中にデータパルスのデータ信号を全く含まない。従って、このフレームを含む無線信号を受信したICタグ3は、基準クロックのみを生成する。
【0050】
フレーム2は、データ0の場合である。データ0は、デジタル信号の「0」に相当し、1フレーム中にデータパルスのデータ信号を1個含む。従って、このフレームを含む無線信号を受信したICタグ3は、基準クロックの生成とデータ0を取得する。
【0051】
フレーム3は、データ1の場合である。データ1は、デジタル信号の「1」に相当し、1フレーム中にデータパルスのデータ信号を2個含む。従って、このフレームを含む無線信号を受信したICタグ3は、基準クロックの生成とデータ1を取得する。
【0052】
上述のようなデータなし/データ0/データ1の判定は、データ信号処理回路25が行う。検波回路232は、受信したデータ信号が、基準パルスのデータ信号であっても、データパルスのデータ信号であっても、どちらでも同じパルス信号を出力する。すなわち、検波回路232では、受信したデータ信号の種類の判断をせず、検波回路232からパルス信号を受けたデータ信号処理回路25が、データ信号(パルス信号)の種類の判定を行う。
【0053】
しかしながら、データ信号処理回路25での当該判定が、データ信号の送信方法によっては、適切に行うことができない場合がある。例えば、1フレームの間隔は、基準パルスのデータ信号の送信間隔で決定するが、R/W1とICタグ3との間の通信環境が悪い場合には、ICタグ3による基準パルスのデータ信号の受信タイミングが前後にゆれることが予想される。その際、さらに1フレーム中にデータパルスのデータ信号を含む場合には、受信したデータ信号が所定の期間内に複数送信されることになる。そのため、受信装置(ICタグ3のデータ信号処理回路25)側では、当該受信した複数のデータ信号の内どれを基準パルスのデータ信号として判定すればよいのか、間違うことなく正しく判定することが困難である。
【0054】
そこで、R/W1とICタグ3との間の通信プロトコルとして、例えば、「R/W1から送信される1フレーム内のデータ信号は、所定期間内で連続して送信されるものであるとし、ICタグ3は所定期間経過してもデータ信号を受信できなかった場合には、最後に受信したデータ信号を基準パルスであると決める」という取り決めを行う。このような通信プロトコルを採用することで、受信したデータ信号の種類の正しい判定が容易となる。以下、この通信プロトコルを採用した場合の受信したデータ信号の判定方法について詳細に説明する。
【0055】
まず、図5は、データ信号処理回路25内に存在し、検波回路232から出力されたパルス信号をカウントするカウンタ回路を示す。カウンタ回路は、3個のフリップ・フロップ回路(F/F)31〜33で構成されている。1段目のF/F31のデータ入力端子には、VDDが接続されている。また、2段目、3段目のF/F32、33のデータ入力端子は、それぞれ、1段目のF/F31の出力端子、2段目のF/F32の出力端子と接続されている。F/F31〜33のCLK端子は、検波回路232の出力と接続されていて、共通のクロックとして、検波回路232から出力されるパルス信号が入力される。1段目、2段目、3段目のそれぞれのF/F31〜33の出力端子は、パルス1検出信号、パルス2検出信号、パルス3検出信号を出力する。なお、F/F31〜33のRESET端子には、共通にリセット信号が接続されている。本カウンタ回路は、1フレーム中に受信するデータ信号(パルス信号)の数をカウントするためのものであるため、次フレームのパルス信号の数をカウントする前に、リセット信号が入力され、F/F31〜33の出力端子(パルス1検出信号、パルス2検出信号、パルス3検出信号)が、クリアされる。
【0056】
次に、図6〜図8を用いて、基準パルスおよびデータパルスの判別方法と、基準クロックの生成タイミングについて説明する。
【0057】
図6は、検波回路232が1個のパルス信号を出力した場合に、データ信号処理回路25がパルス信号の種類を判定して基準クロックを生成するまでの処理を示す波形図である。
【0058】
データ信号処理回路25は、検波回路232から1個目のパルス信号(図6(a))を受け取ると、図5に示すカウンタ回路により、パルス1検出信号(図6(b))を‘H’レベルとする(t0)。パルス1検出信号を‘H’レベルとした後、データ信号処理回路25は、所定期間1(t0〜t1)中に新たなパルス信号(2個目のパルス信号)の入力があるか否か(具体的には、図5に示すカウンタ回路のパルス2検出信号(図6(c))が新たなパルスの入力を受けて‘H’レベルとなるか否か)を監視しながら待機する。
【0059】
図6に示すように、データ信号処理回路25には、所定期間1中に新たなパルス信号(2個目のパルス信号)の入力がなかったため、データ信号処理回路25は、所定期間1の経過後(t1)、「入力された1個のパルス信号が基準パルスである」と判定し、当該判定した基準パルスに基づいて基準クロック(図6(e))を生成する。基準クロックの生成後(t2)、t3のタイミングにおいて、次フレームのパルス入力に備えて図5に示すカウンタ回路をリセットし、パルス1検出信号を‘L’レベルとする。
【0060】
従って、図6は、R/W1がICタグ3へ基準パルスのデータ信号のみを送信し、ICタグ3が受信したデータ信号に基づいて基準クロックを生成する例となる。
【0061】
図7は、検波回路232が2個のパルス信号を出力した場合に、データ信号処理回路25がパルス信号の種類を判定して基準クロックを生成するまでの処理を示す波形図である。
【0062】
データ信号処理回路25は、1個目のパルス信号(図7(a))を受けて、図6と同様に、パルス1検出信号(図7(b))を‘H’レベルとする(t0)。パルス1検出信号を‘H’レベルとした後、データ信号処理回路25は、所定期間1(t0〜t2)中に新たなパルス信号(2個目のパルス信号)の入力があるか否か(具体的には、図5に示すカウンタ回路のパルス2検出信号(図7(c))が新たなパルスの入力を受けて‘H’レベルとなるか否か)を監視しながら待機する。
【0063】
図7に示すように、データ信号処理回路25には、所定期間1中に2個目のパルス信号(図7(a))の入力があったため、データ信号処理回路25は、パルス2検出信号(図7(c))を‘H’レベルとする(t1)。パルス2検出信号を‘H’レベルした後、データ信号処理回路25は、所定期間2(t1〜t3)中に新たなパルス信号(3個目のパルス信号)の入力があるか否か(具体的には、図5に示すカウンタ回路のパルス3検出信号(図7(d))が新たなパルスの入力を受けて‘H’レベルとなるか否か)を監視しながら待機する。
【0064】
図7に示すように、データ信号処理回路25には、所定期間2中に新たなパルス信号(3個目のパルス信号)の入力がなかったため、所定期間2の経過後(t3)、データ信号処理回路25は、「最後に入力された2個目のパルス信号が基準パルスであり、1個目のパルス信号がデータパルスである」とそれぞれ判定し、当該判定した基準パルスに基づいて基準クロック信号(図7(e))を生成する。基準クロックの生成後(t4)、t5のタイミングにおいて、次フレームのパルス入力に備えて図5に示すカウンタ回路をリセットし、パルス1検出信号およびパルス2検出信号を‘L’レベルとする。
【0065】
従って、図7は、R/W1がICタグ3へ基準パルスのデータ信号とデータパルスのデータ信号を1個ずつ送信し、ICタグ3が受信した2個目のデータ信号に基づいて基準クロックを生成する例となる。
【0066】
図8は、検波回路232が3個のパルス信号を出力した場合に、データ信号処理回路25がパルス信号の種類を判定して基準クロックを生成するまでの処理を示す波形図である。データ信号処理回路25が、2個目のパルス信号を受け取り、所定期間2(t1〜t4)において新たなパルス信号(3個目のパルス信号)の入力を監視するところまでは、図7の場合と同様である。
【0067】
図8に示すように、データ信号処理回路25は、所定期間2中に3個目のパルス信号(図8(a))を受けると、パルス3検出信号(図8(d))を‘H’レベルとする(t2)。パルス3検出信号を‘H’レベルとした後、データ信号処理回路25は、所定期間3(t2〜t5)が経過するまで待機する。パルス信号は、1フレーム期間中に連続して4個以上送信される場合はないため、3個目のパルス信号が入力された時点で、「3個目の信号が基準パルスであり、1、2個目のパルス信号がデータパルスである」と判断することができる。しかし、基準パルスに基づく基準クロックの生成は、t2〜t5の間では行わずに、所定期間3の経過(t5)の時点で行う。なぜならば、t2〜t5の間で基準クロックを生成してしまうと、基準クロックの周期(若しくは1フレームの期間)が、パルス信号が1個および2個の場合とパルス信号が3個の場合とで異なってしまうからである。基準クロックの生成後(t6)、t7のタイミングにおいて、次フレームのパルス入力に備えて図5に示すカウンタ回路をリセットし、パルス1検出信号、パルス2検出信号およびパルス3検出信号を‘L’レベルとする。
【0068】
従って、図8は、R/W1がICタグ3へ1個の基準パルスのデータ信号と2個のデータパルスのデータ信号を送信し、ICタグ3が受信した3個目のデータ信号に基づいて基準クロックを生成する例となる。
【0069】
なお、図6〜図8では、1フレームの期間を明示していないが、所定期間1〜3は、それぞれ1フレームの期間に対して短い期間であるとする。
【0070】
また、図6〜図8でも明らかな通り、基準パルスは所定期間経過後(所定期間1〜3により決定する期間後)に確定する(判定可能である)ため、基準クロックは、基準パルスのデータ信号を受信してから所定期間経過後に生成される。この所定期間は、通信環境によりデータ信号の送信間隔が変化することも考えられため、R/W1から送信されるデータ信号を確実に取得できるように、ある程度のマージンを持って決められている。従って、その分、基準パルスのデータ信号の受信から基準クロックの生成までの時間は遅延する。さらに、パッシブ型のICタグ3は、受信する無線信号の大小により、生成する電源電圧が変化する。ICチップ4の動作速度は、電源電圧が小さいほど遅くなるため、生成する電源電圧が小さいほど、基準クロックの生成タイミングは、基準パルスのデータ信号の受信から遅延することになる。
【0071】
以上のようなタイミングで基準クロックを生成したデータ信号処理回路25は、当該生成した基準クロックに同期してデータなし/データ/データ1の判定(データの取り込み)を行う。データ信号処理回路25は、基準クロックの立ち上がりエッジ若しくは立ち下がりエッジのタイミングで、パルス1検出信号、パルス2検出信号およびパルス3検出信号の‘H’レベルを取り込む。図6の基準クロックの立ち上がりエッジ(t1)若しくは立ち下がりエッジ(t2)においては、パルス1検出信号のみ‘H’レベルであるため、データ信号処理回路25は、データなしと判定する。図7の基準クロックの立ち上がりエッジ(t3)若しくは立ち下がりエッジ(t4)においては、パルス1検出信号およびパルス2検出信号が‘H’レベルであるため、データ信号処理回路25は、データ0と判定する。図8の基準クロックの立ち上がりエッジ(t5)若しくは立ち下がりエッジ(t6)においては、パルス1検出信号、パルス2検出信号およびパルス3検出信号が‘H’レベルであるため、データ信号処理回路25は、データ1と判定する。データ0またはデータ1と判定した場合には、データ信号処理回路25は、一時的に内部の記憶領域(不図示)にデータ0またはデータ1を格納する。格納されたデータ0およびデータ1は、所定数の単位で組み合わされて、コマンドデータおよびパラメータデータとして制御回路26へ出力される。
【0072】
次に、図9および図10を用いて、本実施の形態1のICタグ3からR/W1へ送信される無線信号について説明する。図9は、ICタグ3の無線回路22およびアンテナ5を示しており、特に、無線回路22内の送信回路24に関し、より詳細な回路(ブロック)図を示している。
【0073】
送信回路24には、送信データ(応答データ)を検波信号(パルス信号)に同期してパルス列の応答データ(シリアルの応答データ)を生成するパルス列生成回路241と、副搬送波とパルス列の応答データの論理積を出力する変調回路242と、トランジスタ246をオン/オフさせることでICタグ3の入力インピーダンスを変化させるスイッチング回路243が含まれている。
【0074】
パルス列生成回路241は、検波回路232から出力されたパルス信号に同期して、制御回路26から出力された複数ビット幅を有するパラレルの応答データを1ビットのパルス列の応答データに変換する。変換したパルス列の応答データは、変調回路242へ出力される。
【0075】
また、パルス列生成回路241は、パラレルデータをシリアルデータに変換する機能を有するが、重要なのは、その際、基準クロックに同期して入力された応答データを、パルス信号に同期して出力することにある。従来のICタグ51では、制御回路57から出力され変調装置56へ入力される応答データは、シリアルデータであり、かつ、基準クロックに同期している。すなわち、従来のICタグ51では、応答データは基準クロックに同期して送信されるのに対し、本発明のICタグ3では、応答データはパルス信号に同期して送信されるという相違点がある。従って、もし制御回路26から出力された応答データが複数ビットではなく1ビットデータであったとしても、パラレル−シリアル変換は不要であるが、パルス信号に同期させてから変調回路242へ出力する必要がある。
【0076】
変調回路242は、副搬送波を用いてパルス列の応答データを搬送波に重畳させるために、送信するべき応答データに応じて副搬送波の信号成分をスイッチング回路243へ出力する回路である。副搬送波は、2.45GHzの周波数を有する搬送波に対し、例えば400KHz程度の周波数が選択される。そのため、変調回路242は、400KHzの信号を発振する第2の発振器244を有する。さらに変調回路242は、論理積回路245を有し、第2の発振器244の出力とパルス列の応答データとの論理積を取る。論理積回路245の出力は、スイッチング回路243と接続されている。なお、図9の変調回路242では、副搬送波を生成するための発振器を有しているが、発振器の代わりに分周回路を有し、受信した搬送波から分周して副搬送波を生成するようにしてもよい。
【0077】
スイッチング回路243は、トランジスタ246で構成され、トランジスタ246のドレインおよびソースの各端子は、それぞれアンテナ端子21に接続および接地されている。また、トランジスタ246のゲートは、変調回路242の論理積回路245の出力と接続されている。これにより、トランジスタ246のオン/オフの切替えを行うことにより、トランジスタ246における抵抗値が変化し、ICタグ3の入力インピーダンスを変更することができるようになっている。
【0078】
図10は、ICタグ3内の信号および伝播路6の無線信号を示す。図10を用いて、図9の回路動作について詳細に説明する。
【0079】
図10(a)は、R/W1からICタグ3へ送信される無線信号を示す。ICタグ3がR/W1へ応答データを送信する期間においては、ICタグ3は動作するために基準クロックのみが必要であるため、R/W1からICタグ3へ基準パルスのデータ信号のみが送信される。
【0080】
図10(b)は、ICタグ3の検波回路232から出力される検波信号(パルス信号)を示す。R/W1から送信されるのは、基準パルスのデータ信号のみであるため、検波回路232は、1フレーム中で、1個のパルス信号のみを出力する。
【0081】
図10(c)は、パルス列の応答データを示す。フレーム1にデータ1を送信する場合(‘H’レベル)を、フレーム2にデータ0を送信する場合(‘L’レベル)が、それぞれ示されている。また、パルス列の応答データは、パルス列生成回路241において、パルス信号に同期して出力されている。図10(c)では、パルス信号の立ち下がりに同期して、パルス列の応答データの信号が変化している。
【0082】
図10(d)は、第2の発振器244の出力である副搬送波の信号波形を示す。また、図10(e)は、副搬送波とパルス列の応答データの論理積を取った信号(副搬送波*パルス列の応答データ)を示す。図10の例では、データ1を送信する場合には、搬送波に対し副搬送波を用いてASK変調し、データ0を送信する場合には、搬送波に対し無変調とする。そのため、図10(e)に示すように、データ1の場合のみ副搬送波を出力する。
【0083】
図10(f)は、ICタグ3が受信する無線信号を示す。本発明のICタグ3では、スイッチング回路243のトランジスタ246がオフした場合に、伝送路のインピーダンスとICタグ3の入力インピーダンスとがマッチングするように設計されている。インピーダンス・マッチングが取れると、アンテナ5で反射を起こさずに、ICタグ3は効率よくR/W1から送信された無線信号を受信することができる。一方、スイッチング回路243のトランジスタ246がオンした場合には、インピーダンス・マッチングが取れず、R/W1から送信された無線信号の一部は、ICタグ3のアンテナ5で反射される。パッシブ型のICタグ3では、内部に電源を持たない関係上、2.45GHzもの搬送波を発振する発振器を搭載することが難しい。そのため、インピーダンス・マッチングが取れない場合に生じる反射波を利用して、ICタグ3はR/W1へデータを送信する。
【0084】
また、図10(f)では、データ1を送信するフレーム1の期間において、信号波形は落ち込んでいる。フレーム1の期間は、副搬送波が出力されている期間であるため、スイッチング回路243のトランジスタ246がオン/オフを繰り返す。トランジスタ246がオンしている間は、無線信号の一部が反射されるため、その分ICタグ3が受信する無線信号の振幅が減少する。これに対し、データ0を送信するフレーム2の期間において、信号波形の振幅は減少しない。フレーム2の期間は、副搬送波が出力されていない期間であるため、スイッチング回路243のトランジスタ246は、常にオフしている。トランジスタ246がオフしている間は、無線信号の反射が起こらず、効率よくICタグ3が無線信号を受信できる。なお、ここでは、スイッチング回路243のトランジスタ246がオフしている際にインピーダンス・マッチングが取れると説明したが、これとは逆にオンしている際にインピーダンス・マッチングが取れるようにICタグ3を設計しても構わない。
【0085】
図10(g)は、ICタグ3の入力インピーダンスが変化したことによりICタグ3のアンテナ5によって反射された反射波(ICタグ3が送信する無線信号)を示す。スイッチング回路243のトランジスタ246がオンしている期間のみ無線信号の振幅が存在する。図10(f)における信号波形が落ち込んでいる部分がこれに対応する。
【0086】
図10(h)は、R/W1とICタグ3の間の伝送路6における無線信号の波形を示す。この無線信号には、R/W1からICタグ3に送信される下りの無線信号7と、ICタグ3のアンテナ5で反射される反射波およびそれ以外の無線信号(例えば、アンテナ5部分以外で反射される反射波や電波の干渉における他の無線信号成分等)からなる上りの無線信号8が混在している。データ1を送信するフレーム1の期間は、データ0を送信するフレーム2の期間に比べて無線信号の振幅が大きくなっている。R/W1は、この振幅の差を利用して、ICタグ3から送信されたデータ0およびデータ1を取得する。
【0087】
ここで、R/W1から送信される無線信号と、ICタグ3から送信される無線信号のデータ変調方式の相違点について説明する。R/W1から送信される無線信号も、ICタグ3から送信される無線信号も、その変調方式は、共にASK変調であると言える。しかしながら、R/W1から送信される無線信号では、ベースバンド信号(図2の送信データ)に応じて搬送波を直接変調しているのに対し、ICタグ3から送信される無線信号では、ベースバンド信号(図10(c)のパルス列の応答データ)に応じて搬送波を直接変調せずに副搬送波を利用してASK変調を行っている。この変調方式の違いは、ICタグ3が電源を持たないパッシィブ型であることに起因する。
【0088】
図10に示すように、ICタグ3は、データ1を送信している間(フレーム1の期間)、R/W1から送信された無線信号を一部反射しなければならない。パッシィブ型のICタグ3は、R/W1から送信された無線信号の搬送波から電源電圧を生成するが、無線信号を反射してしまうと当然その分電源電圧の生成量が減少する。そのため、反射される期間が長ければ長いほど、電力不足になる可能性があり、できるだけ無線信号を反射する期間を少なくすることが望まれる。そこで、図10に示すように、R/W1から送信された無線信号に対し、パルス列の応答データの期間の全てで反射させず、副搬送波を用いて副搬送波の‘H’レベルの期間だけ、反射させるようにしている。そのため、R/W1から送信される無線信号から生成する電源電圧の生成量を増加させることができ、電力不足によってICタグ3が誤動作および動作不能になることを回避することにしている。特に、R/W1とICタグ3との間の距離が大きくなればなるほど、ICタグ3が動作するための電力の確保が重要になるため、副搬送波を用いたASK変調方式の効果は大きい。
【0089】
また、ASKの変調度に関しても、同じ理由により、R/W1からICタグ3へ送信される無線信号とICタグ3からR/W1へ送信される無線信号とで相違する。ICタグ3から送信される無線信号のASK変調度は、100%ではなく、R/W1が受信した無線信号からデータを検波できる(データ1の期間の振幅とデータ0の期間の振幅を区別することができる)程度でよく、可能な限り変調度を小さくすることが望ましい。変調度を小さくすることができれば、ICタグ3が取得可能な電力を増やすことができるからである。なお、R/W1から送信される無線信号に関しては、変調度が100%であることにこだわる必要はないが、変調度が小さくなるほど、電波の干渉によるノイズ等が原因で、ICタグ3が正しくデータを検波できない状況が多くなってしまうことが予想される。また、R/W1は1つであるのに対し、ICタグ3は複数存在し、その製造コストも抑えることが重要である。ICタグ3の受信データの検波精度を上げることは、その検波精度を上げるための回路の追加が必要になり、製造コストの増加につながってしまう。そのため、R/W1から送信される無線信号の変調度は、ICタグ3がデータの検波を行い易い、変調度が100%に近い方が望ましい。
【0090】
続いて、図11を用いて、本実施の形態1のICタグ3から送信された無線信号を受信したR/W1の動作について説明する。図11は、R/W1による受信した無線信号のデータ処理を示す。
【0091】
図11(a)は、R/W1が送信する無線信号を示す。ここでは、フレーム1〜3の無線信号が示されている。図11(b)は、ICタグ3内の検波信号(パルス信号)を示す。図11(c)は、R/W1とICタグ3の間の伝播路6における無線信号を示す。フレーム1およびフレーム3は、無変調(データ0)であり、フレーム2は、副搬送波によりASK変調(データ1)されている。変調/無変調(データ1/データ0)の切替えは、図11(b)のパルス信号に同期して行われている。なお、図11(a)〜(c)は、図10(a)、(b)(h)と、それぞれ同じ信号を示している。
【0092】
図11(d)は、R/W1内の受信信号検出回路15の出力を示す。第2のミキサ151およびBPF152によって、アンテナ端子11を介して入力された信号成分の内、副搬送波の周波数成分(400KHz)のみが出力される。図11(d)に示すように、フレーム1および3の期間では、無変調であるため、信号は出力されていない(t1〜t3、t7〜t9)。一方、フレーム2の期間では、400KHzの副搬送波によりASK変調されているため、副搬送波の信号が出力されている(t4〜t6)。なお、搬送波が停止するフレームの端の部分では、非常に大きい振幅を有する信号が出力されている(t0〜t1、t3〜t4、t6〜t7、t9〜t10)が、これは、R/W1が基準パルスのデータ信号を送信するために搬送波を停止した際に生じた切替えノイズによるものである。
【0093】
図11(e)は、R/W1内のASK検波出力を示す。ASK検波回路16は、受信信号検出回路15の出力の信号振幅の大きさに応じた電圧を生成する。生成された電圧は、時定数回路へ入力され、平滑化された信号として出力される。ASK検波出力は、フレーム1および3の期間(データ0が送信された期間)では、t1(t7)を経過後、徐々に上昇し、平滑化された結果、基準1の信号レベルに収束して安定化する(t1〜t3、t7〜t9)。一方、フレーム2の期間(データ1が送信された期間)では、t4を経過後、徐々に上昇し、平滑化された結果、基準2の信号レベルに収束して安定化する。この基準1および基準2の信号レベルは、所定の閾値に対して、上下に分かれた信号レベルとなっている。
【0094】
また、受信信号検出回路15の出力の信号振幅の大きさに応じた電圧を時定数回路で平滑化するのは、電波の干渉等の影響を考慮したものである。図11(d)のt1〜t3およびt7〜t9の無変調期間をみると、理想的な信号として一定値で示しているが、実際の通信においては、一定値ではなく変動している。また、同様に、t4〜t6のASK変調期間においても、理想的な信号として400KHzのきれいな正弦波で示しているが、実際の通信においては、必ずしもこのようになるとは限らない。R/W1は、ASK検波出力と所定の閾値とを比較することによって、データ0/データ1の判断を行っているが、比較をすべきASK検波出力が一定値に安定しない状態では、その判断を行うことができない。そこで、ある程度の時定数を有する時定数回路を利用して信号を平滑化し、ASK検波出力が安定化したところで、データ0/データ1の判定を行っている。特に、R/W1とICタグ3との通信距離が長く、ICタグ3から送信される無線信号の信号振幅が小さくなればなるほど、電波の干渉等の影響が顕著となり、十分に安定化したASK検波出力をもってデータ0/データ1の判定をすることが、より正確なデータの送受信を行うという観点において重要となってくる。
【0095】
なお、ASK検波出力の安定化とは、出力の大きさがある一定値に収束して、その変化がほとんどなくなった状態を想定する。例えば、時定数回路の出力が95%立ち上がったときを十分安定化したと判断しても問題がない場合には、R/W1は95%立ち上がるのに要する時間を経過後、ASK検波出力が安定化したと判断して、データ0/データ1の判定を行う。また、時定数回路の立ち上がり時間は、時定数τ=CR(C:容量値、R:抵抗値)で決まるので、フレーム1の安定化に要する時間(t1〜t2)、フレーム2の安定化に要する時間(t4〜t5)、フレーム3の安定化に要する時間(t7〜t8)は、すべて同じ時間となる。
【0096】
また、搬送波が停止するフレームの端の部分(t0〜t1、t3〜t4、t6〜t7、t9〜t10)では、非常に大きい信号振幅となるため、本来は、ASK検波出力は、急上昇する。しかしながら、急上昇してから基準1または基準2に向かって安定化するまでには、非常に時間がかかることになり、データ0/データ1の判定までに要する時間が増大することになる。そこで、この振幅の大きい信号の影響を防ぐために、当該信号振幅の大きい信号が入力されるフレームの端の期間には、ASK検波回路16をオフし、強制的にASK検波出力を0に落とすことにしている。このようにして、ASK検波出力が急上昇することを防いでいる。従って、t0〜t1、t3〜t4、t6〜t7、t9〜t10のそれぞれの期間においては、ASK検波出力は、0に落ち込んでいる。
【0097】
図11(f)は、R/W1の受信データ(2値)出力を示す。信号処理回路12は、図11(e)に示す閾値と入力されたASK検波出力の信号レベル(基準1または基準2)との比較を行い、その結果を2値(データ0/データ1)で出力する。前述の通り、この比較(データ0/データ1の判定)のタイミング(t2、t5、t8)は、ASK検波出力が安定化してから行われる。また、データ信号が送信される(搬送波が停止される)期間には、ASK検波回路16はオフされるため、当然のことながら、当該比較は、ASK検波出力の安定後から次のデータ信号を送信する前までに行わなければならない。図11(f)では、t2およびt8のタイミングにおいて、基準1で安定化しているASK検波出力と閾値とを比較してデータ0と判定し、信号レベルを‘L’レベルとしている。一方、t5のタイミングにおいて、基準2で安定化しているASK検波出力と閾値とを比較してデータ1と判定し、信号レベルを‘H’レベルとしている。
【0098】
なお、図11では、ASK検波出力は、無変調期間を基準1で、ASK変調期間を基準2で、それぞれ安定化すると説明したが、R/W1は、閾値とASK検波出力(基準1または基準2)を比較するだけであるため、無変調期間を基準2で、ASK変調期間を基準1で、それぞれ安定化するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0099】
ここで、図12を用いて、ICタグ3が基準クロックに同期して応答データをR/W1へ送信するRFIDシステムとICタグ3が検波信号に同期して応答データをR/W1へ送信する本発明に係るRFIDシステムを比較する。図12(a)〜(f)は、ICタグ3が基準クロックに同期して応答データを送信するRFIDシステムにおける通信処理を示す波形図を示す。また、図12(g)〜(l)は、本発明に係るRFIDシステムにおける通信処理を示す波形図を示す。
【0100】
図12(a)および(g)は、R/W1が送信する無線信号を示す。図12(b)および(h)は、ICタグ3内の検波信号(パルス信号)を示す。図12(c)および(i)は、パルス信号に基づいて生成されるICタグ3内の基準クロックを示す。図12に示すように、基準クロックは、パルス信号の生成からT1の期間経過後に生成される。
【0101】
図12(d)および(j)は、R/W1とICタグ3との間の伝播路6の無線信号を示す。図12(d)のICタグ3による応答データ送信タイミングは、ICタグ3内の基準クロックに同期(図12(d)では基準クロックの立ち下がりエッジに同期)して行われている。一方、図12(j)のICタグ3による応答データ送信タイミングは、ICタグ3内の検波信号に同期(図12(j)では検波信号の立ち下がりエッジに同期)して行われている。
【0102】
図12(e)および図12(k)は、R/W1が受信した応答データのASK検波出力を示す。ASK検波出力は、伝播路6の無線信号振幅が小さい無変調期間では、閾値に対し下の信号レベルである基準1で安定化し、伝播路6の無線信号振幅が大きいASK変調期間では、閾値に対し上の信号レベルである基準2で安定化する。また、データ信号が送信される(搬送波の送信が停止される)期間では、ASK検波出力は、強制的に0に落とされる。なお、ASK検波出力が安定化する時間(図12(e)では、t2〜t6、t11〜t13、図12(k)では、t1〜t3、t5〜t9、t11〜t13)をT2とする。図12(f)および(l)は、ASK検波出力と所定の閾値との比較により、2値(データ0/データ1)判定をおこなった結果を示す。
【0103】
図12(e)の波形では、t1において、ASK検波出力は、無変調期間の安定化する信号レベルである基準1向かって徐々に上昇する。しかし、t2のタイミングで基準クロックが生成され、当該基準クロックに同期してデータ1の送信が開始されるため、t2を境にASK検波出力の傾きが変化し、今度は基準2に向かって上昇する。その後、ASK検波出力が安定化したt6のタイミングで、データ1の取り込みが行われ、図12(f)が‘L’レベルから‘H’レベルに遷移する。
【0104】
さらに、図12(e)の波形において、データ1の取り込み後のt7において、データ信号が送信される期間に入り、ASK検波出力が0に落ち込む。t8になると、再びデータ1のASK変調期間になり、ASK検波出力は、基準2に向かって再上昇する。しかし、t11のタイミングで次の基準クロックが生成され、当該基準クロックに同期してデータ0の送信が開始されるため、t11を境にASK検波出力が反転し、今度は基準1に向かって下降する。その後、ASK検波出力が安定化したt13のタイミングで、データ0の取り込みが行われ、図12(f)が‘H’レベルから‘L’レベルに遷移する。そして、次のデータ信号が送信されることにより、t14のタイミングで、ASK検波出力は、0に落ち込む。
【0105】
このように、図12(a)〜(f)に係るRFIDシステムでは、ICタグ3が応答データを送信するタイミングは、基準クロックに同期して行われ、R/W1が応答データを受信して当該応答データのデータ取り込み(データ0/データ1の判定)を行うタイミングは、ASK検波出力が安定化した後(T2の期間経過後)から次のデータ信号が送信される前までに行われる。図12(e)では、「t0(t7)において、R/W1はデータ信号を送信」→「t2(t11)において、ICタグ3は基準クロックに同期してデータ1(データ0)を送信」→「t6(t13)において、ASK検波出力が安定化し、R/W1はデータ1(データ0)の取り込みを実行」→「t7(t14)において、R/W1は次のデータ信号を送信」のような処理タイミングとなる。従って、データ信号の送信間隔(フレーム間隔(A))は、応答データの送信トリガとなる基準クロックの生成時間(T1)と、ASK検波出力が安定化するのに要する時間(T2)とにより決定される。換言すれば、「フレーム間隔(A)>T1+T2」となる。
【0106】
一方、図12(k)の波形では、t1(t11)において、ICタグ3は、検波信号に同期してデータ0を送信し、ASK検波出力は、無変調期間の安定化する信号レベルである基準1に向かって徐々に上昇する。また、基準クロックは、t1(t11)からT1の期間経過後、t2(t12)のタイミングで生成される。ASK検波出力が安定化したt3(t13)のタイミングで、データ0の取り込みが行われ、図12(l)が‘L’レベルとなる。
【0107】
また、図12(k)の波形において、データ0の取り込み後のt4(t14)において、データ信号が送信される期間に入り、ASK検波出力が0に落ち込む。t5になると、ICタグ3は検波信号に同期してデータ1の送信を開始するため、ASK検波出力は、基準2に向かって上昇する。また、基準クロックは、t5からT1の期間経過後、t8のタイミングで生成される。ASK検波出力が安定化したt9のタイミングで、データ1の取り込みが行われ、図12(l)が‘L’レベルから‘H’レベルに遷移する。そして、次のデータ信号が送信されることにより、t10のタイミングで、ASK検波出力は、0に落ち込む。
【0108】
このように、図12(g)〜(l)の本発明に係るRFIDシステムでは、ICタグ3が応答データを送信するタイミングは、データ信号を検波して得られた検波信号(パルス信号)に同期して行われ、R/W1が応答データを受信して当該応答データのデータ取り込み(データ0/データ1の判定)を行うタイミングは、ASK検波出力が安定化した後(T2の期間経過後)から次のデータ信号が送信される前までに行われる。図12(k)では、「t0、t10(t4)において、R/W1はデータ信号を送信」→「t1、t11(t5)において、ICタグ3は検波信号に同期してデータ0(データ1)を送信」→「t3、t13(t9)において、ASK検波出力が安定化し、R/W1はデータ0(データ1)の取り込みを実行」→「t4、t14(t10)において、R/W1は次のデータ信号を送信」のような処理タイミングとなる。従って、データ信号の送信間隔(フレーム間隔(B))は、ASK検波出力が安定化するのに要する時間(T2)のみで決定される。換言すれば、「フレーム間隔(B)>T2」となる。
【0109】
なお、図12においては、基準クロックの生成に要する期間T1とASK検波出力が安定化するのに要する期間T2の関係を、T1<T2としたが、適用するRFIDシステムによっては、T1>T2の場合も考えられる。T1>T2の場合には、データ信号の送信間隔(フレーム間隔(B))は、基準クロックの生成に要する期間T1のみで決定される。換言すれば、「フレーム間隔(B)>T1」となる。
【0110】
ここで、図12(a)〜(f)に係るRFIDシステムのフレーム間隔(A)と図12(g)〜(l)の本発明に係るRFIDシステムのフレーム間隔(B)とを比較する。まず、T1<T2の場合には、「(A)=T1+T2>T2=(B)」の関係が成立することになるため、図12(g)〜(l)の本発明に係るRFIDシステムのフレーム間隔(B)の方が、図12(a)〜(f)に係るRFIDシステムのフレーム間隔(A)に比べて、T1に相当する時間、フレーム間隔を縮めるができる。その結果、R/W1とICタグ3との間のデータ通信速度を速くすることができる。一方、T1>T2である場合には、「(A)=T1+T2>T1=(B)」の関係が成立することになるため、図12(g)〜(l)の本発明に係るRFIDシステムのフレーム間隔(B)の方が、図12(a)〜(f)に係るRFIDシステムのフレーム間隔(A)に比べて、T2に相当する時間、フレーム間隔を縮めるができる。その結果、T1<T2の場合と同様、R/WとICタグとの間のデータ通信速度を速くすることができる。
【0111】
以上の通り、本発明の実施の形態1では、ICタグ3が送信する応答データは、R/W1が送信する無線信号に含まれるデータ信号を検波した検波信号(パルス信号)に同期して送信され、R/W1による受信したデータの取り込みは、次にR/W1がデータ信号を送信する前に行う。これにより、ICタグ3からの応答データの送信タイミングとR/W1における受信した応答データの取り込みタイミングが、効率よく1フレーム内にフィッティングする。そのため、R/W1とICタグ3とのデータ通信処理の効率化が図られ、その結果、データの送受信のスピードを決定するフレーム間隔を狭めることが可能となる。
【0112】
従って、近年の大量物流により、R/W1が一度の処理で認識・処理しなければならない商品(ICタグ3)の個数が増加し、商品が搬送されるベルトコンベアの速度が速くなったとしても、本発明の実施の形態1に係るRFIDシステムを適用することによって、商品1個当たりに要する処理時間を減らし、より多くの商品の識別処理にすることに対応することが可能となる。
【0113】
実施の形態2
実施の形態1に係るICタグ3が検波回路232の出力である検波信号に同期して応答データをR/W1へ送信するのに対して、実施の形態2に係るICタグは、データ送信パルス生成回路の出力であるデータ送信パルスに同期して応答データをR/W1へ送信する。図13は、実施の形態2に係るICタグ41のブロック図である。ここで、実施の形態1と同様の動作をするブロックについては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0114】
図13に示すICタグ41は、ICチップ4およびアンテナ5から構成されている。ICチップ4には、実施の形態1のICタグ3と比較して、無線回路22内にデータ送信パルス生成回路42が追加されている点が相違する。データ送信パルス生成回路42は、検波回路232が出力する検波信号を受けて、データ送信パルスを生成する。生成されたデータ送信パルスは、送信回路24へ出力される。送信回路24は、データ送信パルスに同期して応答データを送信する。
【0115】
また、データ送信パルス生成回路42は、1フレーム期間中に検波回路232から複数の検波信号が入力された場合、その内の1個だけを選択して、データ送信パルスとして出力する機能を有する。換言すれば、データ送信パルス生成回路42は、1フレーム期間中に送信回路24へ入力される検波信号を1個に制限する機能を有する。従って、電波の干渉等が原因で検波回路232が1フレーム期間中に2個以上の検波信号を出力したとしても、データ送信パルス生成回路42は、1フレーム期間中に1個のデータ送信パルス(1個に制限された検波信号)だけを出力する。
【0116】
図14は、実施の形態2に係るR/W1とICタグ41との間の無線信号とICタグ41内の信号を示す。図14(a)は、R/W1が送信した無線信号を示す。図14(b)は、ICタグ41が受信した無線信号を示す。図14(c)は、検波回路232が出力した検波信号を示す。図14(d)は、データ送信パルス生成回路41が出力したデータ送信パルスを示す。
【0117】
図14(a)〜(c)に示すように、フレーム2の期間中には、R/W1は1個のデータ信号Aを送信したのにもかかわらず、ICタグ41は、2個のデータ信号Aおよびデータ信号Bを受信している。その結果、検波回路232は、2個の検波信号を出力する。データ信号Bは、電波の干渉等の原因により、ICタグ41がR/W1から送信されたデータ信号として誤って受信してしまったものである。このような場合、検波信号の出力をそのまま応答データの送信トリガとして利用すると、フレーム2の期間中に、R/W1へ2回にわたって応答データが送信されることになり、これがRFIDシステムの誤動作の原因となる可能性がある。
【0118】
しかしながら、図14(d)には、フレーム2の期間中には、1個のデータ送信パルスだけが出力されている。データ送信パルス生成回路42は、フレーム2の期間中に検波回路232から出力された2個の検波信号から1個の検波信号を選択して、当該選択した1個の検波信号をデータ送信パルスとして出力する。すなわち、データ送信パルス生成回路42は、データ信号Bに基づいたデータ送信パルスの生成を行わない。従って、応答データの送信トリガをデータ送信パルスとすることにより、1フレーム期間中に2回以上の応答データが送信されることを防止することができるようになる。
【0119】
以上の通り、本発明の実施の形態2では、ICタグ41が送信する応答データは、1フレーム期間中に2個以上生成されることがないデータ送信パルスに同期してR/W1へ送信される。すなわち、ICタグ41は、1フレーム期間に対して、1回のみの応答データを送信する。これにより、電波等の干渉が原因により、ICタグ41が誤ってデータ信号を認識してしまい、検波回路232が1フレーム期間中に複数の検波信号を出力したしても、これが原因で生じる応答データの送信エラーを回避することができ、RFIDシステムが誤動作することを防止することが可能となる。
【0120】
なお、本発明の実施の形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は、本発明の主旨を変更しない限り、種々の変形が可能である。例えば、上述の例では、内部に電源を有しないパッシィブ型のICタグとして説明したが、内部に電源を有するアクティブ型のICタグであってもよい。また、電力を十分生成できる状況での使用(R/WとICタグとの距離が短い場合等)を考慮するならば、副搬送波を用いないASK変調方式をとっても構わない。また、図3等では、送信データ(応答データ)は、制御回路26から出力され送信回路24へ入力されているが、記憶領域271に格納されたデータを応答データとしてR/W1へ送信する場合には、記憶回路27から出力された読み出しデータを制御回路26を介さずに直接応答データとして送信回路24へ出力しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の実施の形態1に係るFRIDシステムを示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るR/W1のブロック図を示す。
【図3】本発明の実施の形態1に係るICタグ3のブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るR/W1からICタグ3へ送信される無線信号およびICタグ3内の検波信号を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るデータ信号処理回路25内に存在し、検波信号をカウントするカウンタ回路を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る基準パルスおよびデータパルスの判別方法と基準クロックの生成タイミングを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る基準パルスおよびデータパルスの判別方法と基準クロックの生成タイミングを示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る基準パルスおよびデータパルスの判別方法と基準クロックの生成タイミングを示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係るICタグ3の無線回路22の詳細な図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係るICタグ3内の信号および伝播路6の無線信号を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係るR/W1による受信した無線信号のデータ処理を示す図である。
【図12】ICタグ3の応答データ送信タイミングの違いに関する比較を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態2に係るICタグ41のブロック図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係るR/W1とICタグ41との間の無線信号とICタグ41内の信号を示す図である。
【図15】従来のICタグ51を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0122】
1 リーダ・ライタ(R/W)
2、5、53 アンテナ
3、41、51 ICタグ
4、52 ICチップ
6 伝播路
7 下り方向の無線信号
8 上り方向の無線信号
11、21 アンテナ端子
12 信号処理回路
13、24 送信回路
131 第1の発振器
132 第1のミキサ
14、23 受信回路
15 受信信号検出回路
151 第2のミキサ
152 バンド・パス・フィルタ(BPF)
16 ASK検波回路
22 無線回路
231 整流回路
232 検波回路
241 パルス列生成回路
242 変調回路
243 スイッチング回路
244 第2の発振器
245 論理積回路
246 トランジスタ
25 データ信号処理回路
26、57 制御回路
27 記憶回路
271 記憶領域
272、59 チャージポンプ回路(CP)
273 メモリ制御回路
31、32、33 フリップ・フロップ回路(F/F)
42 データ送信パルス生成回路
54 復調装置
55 電源電圧生成部
56 変調装置
58 EEPROM
VDD 電源電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信する無線信号に含まれるデータ信号に基づいて検波信号を生成する受信回路と、
送信データを送信する送信回路と、を備え、前記検波信号に基づいて生成された基準クロックに同期して動作するICタグであって、
前記送信回路は、前記検波信号に同期して前記送信データの送信を行う、
ことを特徴とするICタグ。
【請求項2】
前記基準クロックに同期して動作する制御回路を、備え、
前記送信データは、前記制御回路が行う処理によって前記送信回路へ入力される、
ことを特徴とする請求項1に記載のICタグ。
【請求項3】
受信する無線信号に含まれるデータ信号を検出し、検波信号を出力する受信回路と、
前記検波信号に基づいて基準クロックを生成するデータ信号処理回路と、
送信データを送信する送信回路と、
前記基準クロックに同期して動作し、前記送信データを前記送信回路へ入力させる処理を行う制御回路と、
を備えるICタグであって、
前記送信回路は、前記検波信号に同期して前記送信データの送信を行う、
ことを特徴とするICタグ。
【請求項4】
前記無線信号から電源電圧を生成する整流回路を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のICタグ。
【請求項5】
前記データ処理回路は、複数の前記検波信号に基づいてコマンドデータを生成し、
前記制御回路は、前記コマンドデータに基づいた動作を行う、
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1に記載のICタグ。
【請求項6】
前記送信回路は、前記送信データを前記検波信号に同期してシリアル変換するパルス列生成回路を備える、
ことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1に記載のICタグ。
【請求項7】
前記送信回路は、前記シリアル変換された前記送信データに基づいてICタグの入力インピーダンスを変化させるスイッチング回路を備える、
ことを特徴とする請求項6に記載のICタグ。
【請求項8】
前記送信回路は、
発振器の出力と前記シリアル変換された前記送信データとの論理積を出力する変調回路と、
前記変調回路の出力に基づいてICタグの入力インピーダンスを変化させるスイッチング回路と、を備える、
ことを特徴とする請求項6に記載のICタグ。
【請求項9】
所定の期間における前記送信回路への前記検波信号の入力を制限するデータ送信パルス生成回路を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載のICタグ。
【請求項10】
前記データ送信パルス生成回路は、所定の期間内に前記送信回路へ入力される前記検波信号を1個に制限し、前記1個に制限された検波信号を出力する、
ことを特徴とする請求項9に記載のICタグ。
【請求項11】
前記送信回路は、前記1個に制限された検波信号に同期して前記送信データを送信する、
ことを特徴とする請求項10に記載のICタグ。
【請求項12】
受信する無線信号に含まれるデータ信号に基づいて動作するICタグと、前記無線信号を送信するリーダ・ライタと、を備えるICタグシステムであって、
前記ICタグは、
前記データ信号に基づいて検波信号を出力する受信回路と、
前記検波信号に基づいて基準クロックを生成するデータ信号処理回路と、
前記リーダ・ライタへ送信データを前記検波信号に同期して送信する送信回路と、
前記基準クロックに同期して動作し、送信データを前記送信回路へ入力させる処理を行う制御回路と、を備える、
ことを特徴とするICタグシステム。
【請求項13】
前記送信回路は、前記送信データを前記検波信号に同期してシリアル変換するパルス列生成回路を備える、
ことを特徴とする請求項12に記載のICタグシステム。
【請求項14】
前記送信回路は、前記シリアル変換された前記送信データに基づいてICタグの入力インピーダンスを変化させるスイッチング回路を備える、
ことを特徴とする請求項13に記載のICタグシステム。
【請求項15】
前記ICタグは、前記送信回路への前記検波信号の入力を制限するデータ送信パルス生成回路を備える、
ことを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1に記載のICタグシステム。
【請求項16】
受信する無線信号に含まれるデータ信号に基づいて検波信号を生成するステップと、
前記検波信号に基づいて基準クロックを生成するステップと、
前記基準クロックに同期して送信データを生成するステップと、
前記送信データを前記検波信号に同期して送信するステップと、を有する
ことを特徴とするICタグのデータ送信方法。
【請求項17】
前記送信するステップは、前記送信データを前記検波信号に同期してシリアル変換するステップを、含み、前記検波信号に同期して送信される前記送信データは、前記シリアル変換された送信データである、
ことを特徴とする請求項16記載のデータ送信方法。
【請求項18】
前記送信するステップは、前記シリアル変換された前記送信データに基づいてICタグの入力インピーダンスを変換するステップを、含む、
ことを特徴とする請求項17記載のデータ送信方法。
【請求項19】
所定の期間内に生成された前記検波信号の数を検出するステップを有し、
前記検出ステップの結果、複数の前記検波信号を検出した場合には、複数の前記検波信号の内の1個を選択し、
前記送信するステップは、前記選択された検波信号に同期して行われる、
ことを特徴とする請求項16乃至18のいずれか1に記載のデータ送信方法。
【請求項20】
受信する無線信号に含まれるデータ信号に基づいて動作するICタグと、前記無線信号を送信するリーダ・ライタとのデータ通信方法であって、
前記ICタグは、前記データ信号に基づいて検波信号を生成し、前記検波信号に基づいて基準クロックを生成し、前記基準クロックに同期して送信データを生成し、前記送信データを前記検波信号に同期して前記リーダ・ライタへ送信し、
前記リーダ・ライタは、前記ICタグから送信された送信データを受信する、
ことを特徴とするデータ通信方法。
【請求項21】
前記リーダ・ライタは、前記受信した送信データを検波し、前記ICタグが送信する送信データの送信切替えタイミングに合わせて前記検波した結果から2値データへの取り込みを行う、
ことを特徴とする請求項20記載のデータ通信方法。
【請求項22】
前記2値データへの取り込みは、前記ICタグが送信する送信データが切替る直前に行われる、
ことを特徴とする請求項21記載のデータ通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−272805(P2007−272805A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100649(P2006−100649)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】