説明

ICタグインレット抄き込み紙の製造方法

【課題】ICタグインレット抄き込み紙を製造する際に、乾燥収縮による紙面の波打ちや乾燥ムラがなく、また乾燥工程で平滑を付与する技術を提供する。
【解決手段】ICチップ2cとアンテナ2bとを有するICタグインレット2を紙中に含有するICタグインレット抄き込み紙の製造方法であって、少なくとも、抄紙網にて抄き取って得られる2つの湿紙の間に、ICチップとアンテナとを有するICタグインレットを挿入して積層物を得た後、前記積層物を、網状体を介して加温された面で挟み、前記積層物の含有水分が8質量%以下になるまで加温、加圧する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触方式のICタグインレットを紙中に抄き込んだICタグインレット抄き込み紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICタグはICチップおよびアンテナを有し、通常、電池を内蔵することなくリーダーまたはライターから発生する電波や磁界によって作動し、大量の情報の読み取りや書き込みを行うことができるものとして普及し始めている。ICチップのメモリー容量は最大で数十キロバイトであり二次元バーコードより多く、また、チップが段ボールなどの箱の中に入っていたり、チップから数メートル離れていても、データの読取りや書込みを行うことができる。
【0003】
ICタグを活用することにより、部品メーカー、製造、卸、小売の各段階でばらばらのバーコードで管理されていた情報を全体で最適化するシステムが構築されるため、更なる流通の効率化がもたされると言われている。その他、医療、食品、教育、図書館での貸し借り・蔵書管理、オフィスでの入退出管理、出版などの分野でもICタグを使った新しいサービスが生まれる手段となりつつある。
【0004】
ICタグは、通常、プラスチックフィルムなどの基材上に少なくともICチップおよびアンテナを配置してなる薄いインレットを、台紙に取付けるか、又は樹脂コーティングしたり紙の間に挟み込んで構成されている。
【0005】
このようなICタグとして、インレットをタック紙の粘着面に保持し、インレットの開口部から粘着面を表出させて対象物品にICタグを貼着する技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、インレットの表裏にそれぞれ台紙との接着層と対象物との接着層とを別個に設けた場合に比べ、接触層が1層で済むという利点がある。
【0006】
又、インレットを構成するフィルムを水溶性とし、このインレットを2枚のフィルム又は湿紙でラミネートして内包する技術が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0007】
一方、スレッドと称される細片の長手方向に沿ってアンテナ付のICチップを多数担持させ、このスレッドを2つの紙層の間に抄き合わせる技術が提案されている(例えば特許文献3、4参照)。さらに、スレッドの代わりに個々のインレットを2つの紙層の間に抄き合わせる技術が提案されている(例えば特許文献5〜7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002-342728号公報
【特許文献2】特開2001-134734号公報
【特許文献3】特開2004-139405号公報
【特許文献4】特開2005-171396号公報
【特許文献5】特開2007-122222号公報
【特許文献6】特開2008-077155号公報
【特許文献7】特開2008-248448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1、2記載の技術の場合、接着層を有するタック紙を用いたり、インレットを構成するフィルムとして水溶性フィルムを用いる必要があるため、コストが高くなると共に生産効率が悪くなる。
【0010】
又、特許文献3、4記載の技術の場合、紙層内に抄き込むスレッドが連続したロール状であるため、抄き込み紙の製品サイズは、スレッドに担持されたICチップやアンテナの大きさや、これらをスレッドに配置する間隔によって決まるという不都合がある。従って、抄き込み紙の製品サイズを変更するには、スレッド中のアンテナの大きさや設置間隔を変更する必要があり、作業効率が非常に悪く実用的ではない。
【0011】
さらに、特許文献3〜7記載の技術は、いずれも紙層内にスレッドやインレットを抄き込むものであるが、一般に使用される多筒式ドライヤーを用いてICタグインレット抄き込み紙を乾燥するとICタグインレット挿入部分で蒸気の抜けが阻害されるため挿入部分と非挿入部分で乾燥速度の差が生じる。さらにICタグインレットが紙中に存在するため乾燥が進むとICタグインレットの基材フィルムが乾燥熱により軟化する。このため、出来上がった抄き込み紙はICタグインレットが変形しシート全体が波打ったようになることがある。
【0012】
さらに、印刷適性を付与する目的でカレンダー処理を行った場合、カレンダー処理時に付与される高い線圧でICチップが破壊またはカレンダーロールにICチップの痕がつくという問題が発生する。このため、ICタグインレット抄き込み紙をカレンダー処理することができなかった。
【0013】
また、乾燥工程でシリンダーの鏡面を転写することで光沢を付与するヤンキードライヤーを用いた場合、図5中の破線矢印で示したようにICタグインレットとシリンダーの間で発生した蒸気はICタグインレットにより紙中からの抜けを阻害されるため乾燥不良と光沢ムラの原因となる。
【0014】
そこで本発明ではICタグインレット抄き込み紙を製造する際に、乾燥収縮による紙面の波打ちや乾燥ムラがなく、また乾燥工程で平滑を付与する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題について検討した結果、発明者らはICタグインレットを抄き込んだ湿紙を乾燥する際に複数層のメッシュでニップした状態で乾燥することで外観の変形がなく乾燥ムラが発生しないことを見出した。
【0016】
従って、本発明はICチップとアンテナとを有するICタグインレットを紙中に含有するICタグインレット抄き込み紙の製造方法であって、少なくとも、抄紙網にて抄き取って得られる2つの湿紙の間に、ICチップとアンテナとを有するICタグインレットを挿入して積層物を得た後、前記積層物を、網状体を介して加温された面で挟み、前記積層物の含有水分が8質量%以下になるまで加温、加圧する工程を含むことを特徴とする前記ICタグインレット抄き込み紙の製造方法である。
【0017】
前記網状体は金属製シート又は合成樹脂製シートであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ICタグインレットを湿紙の間に抄き合わせ後、網状体でニップした状態で乾燥することで外観の変形がなく乾燥ムラなく、平滑化されたICタグインレット抄き込み紙を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ICタグインレットの一例を示す平面図である。
【図2】本発明のICタグインレット抄き込み紙の乾燥方法の一例示す概念図である。
【図3】ICタグインレット抄き込み紙を製造する抄紙機の一例を示す概念図である。
【図4】ICタグ抄き込み紙の平面に垂直な方向の断面を示す図である。
【図5】ICタグインレット抄き込み紙をヤンキードライヤーで乾燥した場合における水蒸気の抜けを示す概念図である。
【図6】本発明のICタグインレット抄き込み紙の乾燥方法の別の一例示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、抄紙網にて抄き取って得られる湿紙の間にICタグインレットを挿入して得られる積層物を含有水分8質量%以下になるまで、網状体(メッシュ)を介して加温された面でニップして乾燥することを特徴とする。
本発明は前記積層物の両面に蒸気の透過性が高い網状体(メッシュ)が接した状態で加温するため、積層物の両面から水蒸気が抜けることになる。そのため乾燥時に、ICタグインレットが挿入された部分においてもICタグインレットに邪魔されることが無く水蒸気が抜け、ICタグインレットの挿入部分と非挿入部分での乾燥速度の差が生じない。
【0021】
本発明では加温した面の熱を網状体(メッシュ)を介して湿紙へ伝達することから、網状体の素材は金属製のものが使用されることが好ましいが、湿紙に直接接する網状体は耐熱性のあるナイロン製のものを使用することができる。なお、本発明では湿紙に直接接する網状体に代えて、水蒸気の透過性が良好で平滑性が高いものであればメッシュ以外にも例えばキャスト紙や製紙用のフェルトなども用いることができる。しかし、キャスト紙では繰り返し使用するためにより高い耐水性が必要とされ、また、フェルトは乾燥の為の熱の伝導性が悪いため好ましくない。
【0022】
網状体(メッシュ)は表面性が紙に転写されるため300メッシュ以上が望ましい。またニップする圧力は0.2MPa以上で処理面全体が密着するように処理すればよいが、メッシュ表面の転写を良好にするにはより高い圧でニップするのが望ましい。本発明ではニップされた状態で乾燥するため紙の乾燥収縮やICタグインレットの基材フィルムの変形(波うち)を抑制する効果もある。
本発明で網状体(メッシュ)は発生した蒸気を逃がすために5層以上重ねることが好ましい。網状体(メッシュ)が少ない場合には発生した蒸気が抜け難くなり乾燥が進まない。
【0023】
本発明は湿紙が乾燥するまで網状体(メッシュ)を介して熱プレート等の加温された面にニップされていれば装置に制限はない。たとえばコンデベルトドライヤー装置の応用が考えられる。一般のコンデベルトドライヤーでは片面が加熱された金属ベルトでもう一方は冷却された金属ベルトとワイヤーメッシュの構成である。これを本発明に適用するには図6に示すように、両面とも加熱した金属ベルト上にワイヤーメッシュのベルトを重ねた構造とすればよい。
【0024】
<ICタグインレット>
ICタグインレットは、ICチップとアンテナとを有し、通常、平板状をなす。本発明におけるICタグインレットは、プラスチックフィルムなどの基材上に少なくともICチップおよびアンテナを配置してなる薄いインレットをいうが、このインレットを台紙に取付けるか又は樹脂コーティング等したものも含む。
【0025】
ICタグインレットのICチップとアンテナとは接続され、リーダーやライター等の通信機器と無線交信することにより、ICチップに記憶された商品情報などの読み取りや、ICチップへの書き込みができる。通常、ICチップに記録できる最大容量は数十キロバイトであり、記録容量はバーコードの約100倍になる。アンテナとしては、導線をコイル状に巻いて無線交信できるようにした電磁誘導方式によるものや、ポール状のアンテナをICチップに接続する方式のものを使用することができる。
【0026】
ICタグインレットは例えば以下のようにして製造することができる。まず、ロール状のフィルム基材にアルミ箔を貼着した後、アンテナパターンをエッチング処理で作成する。アンテナを作成する別の方法として、フィルム上にアンテナパターンとなる導電性ペーストを印刷することもできる。アンテナパターンを作成したのち、フィルム上にICチップを接着剤などで接着してインレットを得ることができる。これら一連の工程はロール状のフィルム上で行われた後、個々のインレット片に断裁する。
【0027】
上記フィルム基材としては主にプラスチックフィルムが使用され、例えば、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。これらの樹脂はいずれも基材に絶縁性や耐熱性を持たせると同時に、耐水性のないICチップを保護するため、耐水性に優れたものを使用することができる。フィルム基材の厚さは特に限定されるものではではないが、商品の外観などを考慮して10μm〜200μmであることが好ましく、さらに好ましくは30μm〜80μmである。
【0028】
図1は、ICタグの一例を示す平面図である。この図において、矩形状のフィルム基材2a上の周縁部を囲むようにアンテナ2bが形成され、ICチップ2cがアンテナ2bと接続するようにしてフィルム基材2a上に配置され、全体としてICタグインレット2を構成している。
【0029】
<ICタグの抄き込み>
ICタグを紙層内に抄き込む方法としては特に制限されず、例えば一般の多層抄紙機を用い、複数の湿紙の間にICタグを挟んで合わせることができる。
特に、2つの抄紙機を用いてそれぞれ抄き取った湿紙の表面同士を対向させ、この状態で一方の湿紙の上にICタグを載置した後、各湿紙を合わせて乾燥する方法が好ましい。各湿紙として同じ紙料を用いる場合、各湿紙が合わせられると一体化して1つの紙層になる。又、各湿紙として異なる紙料を用いる場合、各湿紙が合わせられると2層の紙層となり、ICタグは各紙層の間に抄き込まれるが、この場合も「ICタグを紙層内に抄き込む」ことに含むものとする。
【0030】
なお、3層以上の湿紙を合わせることにより、3層以上の紙層を形成させてもよいが、この場合、いずれかの紙層内か、又は隣接する2つの紙層の間にICタグインレットが抄き込まれる点は上記と同様である。
【0031】
図4は、ICタグインレット抄き込み紙の平面に垂直な方向の断面を示す。ICタグインレット11は紙層内に抄き込まれている。紙層は、それぞれ同一の紙料からなる湿紙12a、12bを合わせているため、乾燥後は全体として単一の紙層からなるように見える。
【0032】
紙層(湿紙)に用いるパルプの材質は特に限定されることなく、LBKP、NBKP、機械パルプ、古紙などが使用することができる。また、叩解条件も限定されることなく、濾水度は200〜550mlのものであれば使用することができる。
紙層を形成するために積層される2つ(以上)の湿紙に用いるパルプは同じ材質、濾水度であっても良いし、異なっていても良い。3層以上の湿紙の抄きあわせ紙の場合も同様である。
【0033】
さらに、本発明においては必要に応じて紙層(湿紙)の中に填料、サイズ剤を添加することができる。填料の種類は特に限定されないが、例えば炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、カオリン、クレーなどを使用することができる。サイズ剤についても同様に特に限定されることはなく、例えばロジン系、変性ロジン系、アルキルケテンダイマー、スチレン系、スチレンーアクリル系、アルケニルコハク酸系、オレフィン系などがあげられる。また、添加剤として紙料中に蛍光染料、着色剤、PH調製剤、硫酸バンド、歩留まり向上剤などを適宜使用することができる
湿紙の表面にICタグインレットを載置し、その上に別の湿紙を重ね合わせた後、これらをニップロールで脱水したのちに本発明の手段により乾燥を行う。
【0034】
また、得られた紙層に対し、通常のサイズプレスを行うこともできる。サイズプレスに使われる薬品の種類は特に限定されるものではないが、一例として澱粉、酸化澱粉、カチオン化澱粉、燐酸化エステル澱粉、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどをあげることができる。
【0035】
上記のようにして作成したICタグインレット抄き込み紙の表面に粘着層を塗設することで、ラベルとして使用することができる。また、表面に塗工層を設けることで、オフセット印刷適性、熱転写記録適性、インクジェット記録適性、感熱記録適性等の各種記録適性を付与することができる。
【0036】
<一般の多層抄紙機を用いたICタグインレットの抄き込み>
次に、一般の多層抄紙機を用いたICタグインレットの抄き込み例について述べる。多層抄紙機としては、2つの円網(ワイヤー)シリンダーを並列に有し、各シリンダー上をフェルト帯が移動するものを用いる。そして、紙料を貯留する槽から水中に分散されたパルプ繊維をシリンダーで抄き取り、フェルト下面に第1の湿紙を形成させ、第1の湿紙の下面にICタグインレットを載置した後、槽を有するシリンダーにより、第1の湿紙及びICタグインレットの下面に第2の湿紙を抄き合わせ、脱水、乾燥する。この方法は、例えば特開2002−298118号公報の図1に例示されている。
【0037】
但し、この方法は、湿紙の下面にICタグを載置するため、抄き合わせ時にICタグが落下することがある。又、ICタグインレットが落下しないように湿紙に押し付けると湿紙層が破壊され、ICタグインレットを内包した部分の抄き込み紙表面が平滑にならないことがある。そこで、以下の抄紙機を用いることが好ましい。
【0038】
<各湿紙の表面を対向させた抄紙機を用いたICタグの抄き込み>
一般の多層抄紙機における上記問題を解決するため、湿紙の上面にICタグインレットを載置した後、その上から別の湿紙を合わせることが必要である。そこで、円網と長網を組合せ、長網の上面に抄き取られた第1の湿紙の上にICタグインレットを載置した後、槽を有する円網で抄き取った第2の湿紙の下面を第1の湿紙の表面に抄き合わせるよう設計された多層抄紙機を用いることもできる。又、2つの円網シリンダーを組合せ、一方の円網で抄き取られた第1の湿紙をターンさせて湿紙表面が上になるようにし、その上にICタグインレットを載置した後、円網で抄き取られた第2の湿紙の下面を湿紙上面に抄き合わせるよう設計された多層抄紙機を用いることもできる。
【0039】
又、図3に示すように、長網が傾斜した抄紙機を用いることもできる。ICタグインレットは、所定の挿入機を用いて1個ずつ湿紙上に載置することができる。これらの抄紙機により、ICタグインレットを落下させずに紙層内に抄き込むことができる。また、これらの抄紙機において、さらにワイヤーパートを増やし、3層以上の湿紙を積層した多層抄き合わせ紙を抄造することも可能である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を更に詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。また、実施例において示す「部」及び「%」は、特に明示しない限り重量部及び重量%を示す。
【0041】
(ICタグインレットを湿紙に抄き込んだ積層体の作製)
抄紙用の紙料は、濾水度400mlのLBKP100部に対し、軽質炭酸カルシウム20部、アルキルケテンダイマー0.015部、カチオン化デンプン0.5部、および湿潤紙力増強剤としてポリアミド・エピクロヒドリン2部を添加し、さらに1%濃度(紙料濃度)となるように水を添加して調製した。
乾燥後に100g/m2になる分量の紙料スラリーを250mm×250mmの角型手抄き機で攪拌脱水後、コーティングを行った。この湿紙シートを2枚用意し、一枚の湿紙シート上にICタグインレット(寿フォーム印刷製、13.56MHz)を5枚並べ、もう一方の湿紙シートを重ねた。これにプレス処理を行い水分約72%の積層体を得た。
【0042】
[実施例1]
250mm×250mmの金属プレートの上に210mm×240mmの80メッシュの金属網を5枚重ね、更にその上に同じ大きさの500メッシュのスクリーン(αメッシュ、 5S-2424、メッシュ株式会社)を一枚重ねたものを2組用意した。500メッシュのスクリーンが内側になるようにして210mm×240mmの大きさにカットした上記の積層体を挟み100℃に加熱したプレス機で0.4MPaで加圧しながら20分間乾燥した。
【0043】
[実施例2]
プレスの圧力を0.2MPaにした他は実施例1と同様にした。
【0044】
[実施例3]
500メッシュのスクリーンの代わりに市販のインクジェットキャストコート紙(製品名:を使用した以外は実施例1と同様にした。
【0045】
[実施例4]
250mm×250mmの金属プレートの上に210mm×240mmの80メッシュの金属網を5枚重ねたものを2組用意した。210mm×240mmの大きさにカットしたICタグインレット挿入湿紙シートを挟み100℃に加熱したプレス機で0.4MPaで加圧しながら20分間乾燥した。
【0046】
[比較例1]
ICタグインレット挿入湿紙シートをドラム式乾燥機(ジャポー株式会社 MR-3D)にて110℃で6パス通して乾燥し比較例1とした。
【0047】
[比較例2]
2枚の250mm×250mmの金属プレートで直接ICタグ挿入湿紙シートを挟み100℃に加熱したプレス機で0.4MPaで20分加圧した。蒸気が抜けないため湿紙シートは乾燥できなかった。
【0048】
得られた実施例、比較例サンプルについて以下の評価を行い表にまとめた。
(平滑) JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5-2:2000(紙及び板紙 ―平滑度及び透気度試験方法― 第2部:王研法)に従い王研式平滑度試験機にて平滑度を測定した。数値が大きいほど平滑性が高い。
【0049】
(読取) リーダーライター(TAKAYA製 TR−3)によりICタグインレットの読取を評価した。湿紙に挿入した5枚のうち5枚全てが読み取り可能であったものを○とし、1枚でも読取不能になったものは×とした。
【0050】
(外観)紙の外観を評価した。
〇:紙層にしわが見られない。
×:ICタグを抄き込んだ部分の紙層にしわが見られる
【0051】
<評価>
得られた結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1から明らかなように、各実施例の場合、ICタグの読み取り、外観共に優れていた。実施例1と2ではニップした状態で乾燥したためICタグインレットへの皺は入らなかった。高い平滑性も得られており、特にニップ圧の高い実施例1の方が良好であった。実施例2および実施例3で得られた平滑から判断して0.2MPa以上であると本発明の効果が期待できる。なお、実施例4では出来上がった挿入紙の表面はICタグインレット挿入湿紙シートに接するメッシュの表面を転写しているため、平滑性がやや低かった。最も表面性の優れたキャスト紙を使用した実施例3で高い平滑が得られなかったのはテストに使用したキャスト紙の耐水性が劣っていた為、一部キャスト紙の塗工層で取られが発生した為である。
【0054】
一方、通常の抄紙機での乾燥方法にちかい比較例1では乾燥しただけでは平滑性が得られなかった。また乾燥中に紙の収縮とフィルムの軟化によりICタグインレットに皺が入るため紙全体が波打った。比較例2は乾燥が進まなかったことから、本発明では多層のメッシュにより蒸気の抜け道が確保されることが重要であることがわかる。また比較例2ではICタグインレットが読取不能になったものがあった。これより、網状体(メッシュ)が加圧下でICチップを保護するクッションの役割を果たすことがわかる。
【符号の説明】
【0055】
2 : ICタグインレット
2a: フィルム基材
2b: アンテナ
2c: ICチップ
1 : プレス機テーブル
1a: 金属プレート
3 : 80メッシュ金網(5枚)
4 : 500メッシュスクリーン
5 : ICタグインレット挿入湿紙シート
6 : 長網ワイヤー
7 : 傾斜ワイヤー
8 : プレスパート
9 : シリンダードライヤー
10: カレンダー
11: ICタグインレット
12a、12b: 紙層
13: ヤンキードライヤー シリンダー
14: ヤンキードライヤー カンバス
15: 湿紙
16、16a: 金属ベルト
17、17a: ワイヤーベルト
18、18a: スチームボックス
19: 湿紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップとアンテナとを有するICタグインレットを、紙中に含有するICタグインレット抄き込み紙の製造方法であって、抄紙網にて抄き取って得られる2つの湿紙の間に、ICチップとアンテナとを有するICタグインレットを挿入して積層物を得た後、前記積層物を、網状体を介して加温された面で挟み、前記積層物の含有水分が8質量%以下になるまで加温加圧する工程を含むことを特徴とする前記ICタグインレット抄き込み紙の製造方法。
【請求項2】
前記網状体は金属製シート又は合成樹脂製シートであることを特徴とする請求項1に記載されたICタグ抄き込み紙の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−189801(P2010−189801A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35306(P2009−35306)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】