説明

ICタグ及びICタグの製造方法

【課題】再利用を不可能にする破壊機能付きのICタグを提供する。
【解決手段】ICタグ1のアンテナ回路11およびICチップ15等を含むインレット25の上下または片側に粘着度に強弱のある粘着層31、33を設ける。離型紙付の強粘着層35の上面に強弱あり粘着層b37を貼り付け、その上面にインレット25、その上面に強弱あり粘着層a31、その上面に上紙21を貼り付ける。強弱あり粘着層a31、b37に使用する強弱あり粘着シート51は、ロール状のシートであり、シートの進行方向に垂直、あるいは水平に、帯状あるいは波状の強粘着部分と弱粘着部分が交互に設けられる。インレット25の上下に配する強弱あり粘着シート51には、強弱部分の形状の異なるもの、シート幅の異なるものを使用する。また、強弱部分の形状が同じものを使用する場合には、インレット25の上下で強粘着部分がずれるように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグに関し、詳しくは、添付面から剥がすと再利用を不可能にするためICタグが破壊されるICタグおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線技術の進歩に伴い、無線技術を用いた識別方法であるRFID(Radio Frequency Identification)を利用した商品管理システムが開発され、ICタグやICラベルが使用され始めている。ICタグは、外部のICタグ・ライタとの無線通信により商品等に関する情報が記録され、外部のICタグ・リーダとの無線通信により、ICタグ内に記録されている情報が読み出される。ICタグに記録される情報により、商品の品質管理や在庫管理、販売管理、物流管理等が行うことが可能になる。
【0003】
ICタグは、基材と、アンテナ回路およびICチップを含むインレット、インレットを保護する封止材等の層構造を成しており、書き込み/読み取りされる情報は、ICチップのメモリーに蓄積される。
【0004】
ICタグ内に記録されている情報は、通常、上記の品質管理、在庫管理、販売管理、物流管理等の正規の意図した目的で読み取られるが、ICタグ・リーダがあればICタグ内の情報を読み取ることは容易であり、第三者が故意に読み取り、読み取った情報を悪用することもありえる。これは、個人情報保護、プライバシー保護の観点から大きな問題である。
【0005】
これに対して、上記の品質管理、在庫管理、販売管理、流通管理等の初期の目的を達した後に、ICタグを剥がすことにより、ICタグの機能を破壊する方法が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−78172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記提案の方法では、ICタグのアンテナ回路とICチップの結線は切れるものの、アンテナ回路およびICチップ自体は破壊されずにきれいな状態で残るため、完全に再利用を不可能にすることはできないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、再利用を不可能にする破壊機能付きのICタグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための第1の発明は、ICタグ内に、異なる粘着強度が混在する粘着層を設けることを特徴とするICタグである。前記粘着層は強粘着部分と弱粘着部分が交互に設けられた粘着シートである。
そして、ICタグ内のICチップおよびアンテナ回路からなるインレット層の上下に前記粘着層を設ける。前記インレット層の上下に設ける2つの前記粘着層は、上側の前記粘着層の強粘着部分と、下側の前記粘着層の強粘着部分の位置が上下でずれるように設けられる。
また、前記上側の前記粘着層と前記下側の前記粘着層に異なる幅の前記粘着シートを用いるようにしてもよい。
【0009】
前記粘着シートはロール状のシートであり、強粘着部分と弱粘着部分をシートの伸長方向と垂直に交互に設けてもよいし、シートの伸長方向と同一方向に設けてもよい。また、強粘着部分と弱粘着部分を波型に交互に設けてもよい。
前記インレット層の上下に設ける2つの前記粘着層には、粘着部分の形状の異なる前記粘着シートを用いることが望ましい。また、前記インレット層の上側または下側に前記粘着層を設けてもよい。また、弱粘着層の粘着強度をゼロとし、粘着力無しにしてもよい。
【0010】
上述のように、インレット層の上下または片側に、強粘着部分と弱粘着部分が交互に形成された粘着シートを設けることにより、ICタグを貼り付けた対象物から剥がす際に、粘着シートの強粘着部分にインレット層が付着し、弱粘着部分には付着せず、インレット層が切れ切れに切れて破壊される。これにより、ICタグの再利用が不可能になる。
インレット層の上下にこの粘着シートを設ける場合には、上下の粘着層の強粘着部分の位置がずれるように配置することにより、上の強粘着部分と下の強粘着部分にインレット層のアンテナ回路やICチップが切れ切れに切れて付着し、インレット層が確実に破壊される。
【0011】
このとき、粘着部分の形成形状が異なる粘着シートをインレット層の上下に置くことにより、上下の強粘着部分がずれやすくなる。すなわち、ロール状のシートの進行方向に垂直、交互に強粘着部分と弱粘着部分を形成した粘着シートと、シートの進行方向に水平、交互に強粘着部分と弱粘着部分を形成した粘着シートをインレット層の上下にそれぞれ用いればよい。
また、波状に強粘着部分と弱粘着部分を交互に配置した粘着シートを使用してもよく、これを上下に使用すれば、上下の強粘着部分がずらしやすい。
【0012】
第2の発明は、ICチップおよびアンテナ回路から成るインレット層の破壊機能を持つICタグの製造方法であって、基材上に強粘着部分と弱粘着部分が交互に設けられた第1の粘着シートを貼り合せる工程(a)と、前記第1の粘着シート上に前記インレット層を貼り合せる工程(b)と、前記インレット層上に強粘着部分と弱粘着部分が交互に設けられた第2の粘着シートを貼り合せる工程(c)と、前記第2の粘着シート上に上紙を貼り合せる工程(d)と、を有することを特徴とするICタグの製造方法である。
前記第1の粘着シートと前記第2の粘着シートは、前記第1の粘着シートの強粘着部分と、前記第2の粘着シートの強粘着部分の位置が上下でずれるように設けられることが好ましい。
前記基材、前記第1および第2の粘着シート、および、前記上紙はロール状のシートであり、前記インレット層は、複数のICタグ用インレットを含むロール状のシートであり、前記工程(a)、前記工程(b)、前記工程(c)、前記工程(d)により複数のICタグを含むシートが作成された後、個々のICタグに切断される。
【0013】
本発明によれば、インレットのアンテナ層やICチップが破壊され、再利用を不可能にするICタグを提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明のICタグ1の構造を説明する図である。図1(a)は、ICタグ1の平面図の一例、図1(b)は、ICタグ1をA−A方向から見た場合の従来のICタグの断面図、図1(c)は、ICタグ1をA−A方向から見た場合の本発明の実施形態に係る断面図である。
【0015】
図1(a)において、通常、ICタグ1の上部はプラスチックフィルムや紙材等の上紙で覆われており、アンテナパターン11やICチップ15等は見えないのが普通である。同図では、理解を容易にするため、アンテナパターン11やICチップ15を透視した状態のICタグ1を示している。
【0016】
ICタグ1内部には、アンテナパターン11およびICチップ15、接点13、導通路17等が形成されている。アンテナパターン11はコイル状であり、コイルの一端(内側)は接点13bに接続され、他端(外側)は導通路17を介して接点13aに接続されている。
また、ICチップ15は、無線送受信部と制御部および情報を蓄積するための記憶部を備えている。
【0017】
上記のアンテナパターン11、ICチップ15、接点13、導通部17からなるICタグ1の主要部は、インレット25として事前に製造される。ICタグ1の製造時には、離型紙29付きの粘着層27にインレット25、粘着層23、および上紙21を貼り合わせることにより、ICタグ1が形成される。
離型紙29は、ICタグ1使用時に剥がして商品等のICタグ被装着物に粘着層27によって貼れるようにするためのものである。
【0018】
図1(b)に沿って、従来のICタグ1の多層構造および製造方法を説明する。
【0019】
同図に示すように、ICタグ1は多層構造を成す。ICタグの製造工程では、まず、両面が接着可能で片面に離型紙29が貼り付けられた粘着層27のもう一方の面にインレット25を貼り付ける。さらに、粘着層23を有する上紙21をインレット25の上面に貼り付けることにより、従来のICタグ1が形成される。上紙21は、インレット25を保護する役割を持つ。
粘着層23、27は、それぞれ、両面テープ等で形成することが可能である。
【0020】
製造時には、離型紙29付きの粘着層27、上紙21つきの粘着層23、インレット25、上紙21は、例えば7cm幅のシートであり、ロール状に巻かれている。ロール状に巻かれたインレット25には複数のICタグ用アンテナパターン11やICチップ15等が形成されている。これらのシートを、上述の順に重ねて貼り合わせることにより、複数のICタグ1を含むロール状の多層シートが製造される。
次に、個々のICタグに切り分けるため、複数のICタグを含む多層シートをマグネットシリンダー等により上紙31から粘着層27までハーフカットする。ハーフカット後、ICタグ1以外の部分を除去することにより、複数のICタグ1が離型紙33に貼りついたロール状シートが製造される。
【0021】
次に、図1(c)を沿って、本実施の形態の破壊機能を持つICタグ1の構造および製造手順について説明する。
図1(c)は、インレット25の両面に粘着力に強弱のある粘着シートを設ける場合の断面図である。
【0022】
図1(c)に示すように、離型紙33が片面に付いた両面接着シートからなる粘着層35に、粘着度に強弱のある粘着層b37を貼り付ける。粘着層35の両面には、粘着度は強い接着剤を使用し、接着層35の全面に塗布する。被装着物に適した粘着度の強い接着剤を使用し、被装着物からこの粘着層が剥がれないようにする。
このとき、粘着層b37の弱粘着部分は粘着剤を塗布せずに粘着強度をゼロにしてもよい。
【0023】
図2は、粘着度に強弱のある粘着シート51を説明する図である。
図2(a)に示すように、粘着度に強弱のある粘着シート51も、ICタグ1を構成する他の素材であるインレット25や上紙21等と同様にロール状のシートである。
図2(b)は、粘着度に強弱のある粘着シート51の断面図である。すなわち、ベースフィルム53の上面に粘着度に強弱のある粘着層55が設けられ、その上面を離型紙57で覆った構造である。
【0024】
強粘着層35の上に強弱あり粘着層b37を貼り付ける場合には、強粘着層35に図2に示す強弱あり粘着シート51のベースフィルム53が貼り付けられることになる。
【0025】
次に、図1(c)に示すように、強弱あり粘着層b37の上面にインレット25が貼り付けられる。
この場合には、強弱あり粘着シート51の離型紙57を剥ぎ、強弱あり粘着層55を露出させてインレット25を置き、貼り付ける。
【0026】
次に、図1(c)に示すように、インレット25の上面に、強弱あり粘着層a31を貼り付ける。この場合、図2に示す強弱あり粘着シート51の離型紙57を剥ぎ、インレット25の上面に置き、貼り付ける。
【0027】
次に、図1(c)に示すように、強弱あり粘着シート51の上面に、粘着層23付きの上紙21を貼り付ける。
このとき、粘着層23の粘着強度は、上紙21の材質によって上紙21のみがICタグ1から剥がれることのない十分な強度にする。
以上の工程により、破壊機能付きのICタグ1が製造できる。
【0028】
図2(c)、図2(d)、図2(e)は、強弱あり粘着層55を上から見た平面図である。
図2(c)は、粘着シート51の進行方向に垂直、帯状に粘着度の強い部分と弱い部分が設けられている。
【0029】
粘着度の強い部分には、例えば、インレット25のICチップ15やアンテナパターン11の材質(例えばアルミニウム製)を強力に接着する接着剤を使用する。一方、粘着度の弱い部分には、インレット25の材質への接着度が弱い接着剤を使用する。
このようにシート上で粘着度の異なる部分のある粘着シート51は、例えば、粘着式クリーナ用ローラー(例えば、特開2007−29679および登録実用新案第3131755号)として周知であり、これらの技術を使用して、帯状に粘着度の強弱部分を設けた粘着シート51を製造される。
【0030】
また、図2(d)は、粘着シート51の進行方向に、帯状に、図2(e)は、粘着シート51の進行方向に垂直に、波状に粘着強度の強い部分と弱い部分が設けられている。
【0031】
以上のような粘着度に強弱のある粘着シートを、図1(c)の強弱あり粘着層a31およびb37に用いることにより、ICタグ1を被装着物から剥がしたとき、粘着度の強い部分にインレット25のアンテナパターン11やICチップ15が貼りつき、粘着度の弱い部分には貼り付かずにインレット25側に残り、インレット25のアンテナパターン11やICチップ15が切れ切れになり、破壊される。
【0032】
ここで、強弱あり粘着層a31およびb37には、それぞれ、例えば図2(c)〜図2(e)の異なる形状の強弱あり粘着シート51を用いるとよい。これにより、インレット25の上下面で、接着度の強い部分の位置がずれて、ICタグ1を剥がすときに引き剥がす力に偏りができ、インレット25がより不規則にちぎれやすくなる。
【0033】
また、強弱あり粘着層a31およびb37に、例えば図2(c)〜図2(e)の同一形状の強弱あり粘着シート51を用いる場合には、貼り付け時に、上下面で接着度の強い部分がずれるように配置すればよい。
さらに、強弱あり粘着層a31およびb37に、異なるロール幅の強弱あり粘着シート51を用いてもよい。例えば、上側の強弱あり粘着層a31のシートの幅を、下側の強弱あり粘着層b37のシート幅よりも狭める。これにより、上下での引き剥がそうとする力に偏りができ、インレット25が破壊されやすくなる。
【0034】
図1(c)では、インレット25の上下に強弱あり粘着層a31およびb37を設けたが、強弱あり粘着層はどちらか一方でもよい。
【0035】
尚、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の改変が可能であり、それらも、本発明の技術範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施の形態に係るICタグ構造の説明図
【図2】強弱あり粘着シート51の説明図
【符号の説明】
【0037】
1………ICタグ
11………アンテナパターン
13………接点
15………ICチップ
21………上紙
23、27……粘着層
25………インレット
29、33、57………離型紙
31、37、55………強弱あり粘着層
35………強粘着層
51………強弱あり粘着シート
53………ベースフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICタグ内に、異なる粘着強度が混在する粘着層を設けることを特徴とするICタグ。
【請求項2】
前記粘着層は強粘着部分と弱粘着部分が交互に設けられた粘着シートであることを特徴とする請求項1記載のICタグ。
【請求項3】
ICタグ内のICチップおよびアンテナ回路からなるインレット層の上下に前記粘着層を設けることを特徴とする請求項1または請求項2記載のICタグ。
【請求項4】
前記インレット層の上下に設ける2つの前記粘着層は、上側の前記粘着層の強粘着部分と、下側の前記粘着層の強粘着部分の位置がずれるように設けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のICタグ。
【請求項5】
前記上側の前記粘着層と前記下側の前記粘着層に異なる幅の前記粘着シートを用いることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のICタグ。
【請求項6】
前記粘着シートはロール状のシートであり、シートの伸長方向と垂直に強粘着部分と弱粘着部分が交互に設けられることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のICタグ。
【請求項7】
前記粘着シートはロール状のシートであり、シートの伸長方向と同一方向に強粘着部分と弱粘着部分が交互に設けられることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のICタグ。
【請求項8】
前記粘着シートの強粘着部分と弱粘着部分は波型に交互に設けられることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のICタグ。
【請求項9】
前記インレット層の上下に設ける2つの前記粘着層には、粘着部分の形状の異なる前記粘着シートを用いることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載のICタグ。
【請求項10】
前記弱粘着層は粘着力が無い(粘着強度ゼロ)であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載のICタグ。
【請求項11】
前記インレット層の上側または下側に前記粘着層を設けることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項6から請求項8のいずれかに記載のICタグ。
【請求項12】
ICチップおよびアンテナ回路から成るインレット層の破壊機能を持つICタグの製造方法であって、
基材上に強粘着部分と弱粘着部分が交互に設けられた第1の粘着シートを貼り合せる工程(a)と、
前記第1の粘着シート上に前記インレット層を貼り合せる工程(b)と、
前記インレット層上に強粘着部分と弱粘着部分が交互に設けられた第2の粘着シートを貼り合せる工程(c)と、
前記第2の粘着シート上に上紙を貼り合せる工程(d)と、
を有することを特徴とするICタグの製造方法。
【請求項13】
前記第1の粘着シートと前記第2の粘着シートは、前記第1の粘着シートの強粘着部分と、前記第2の粘着シートの強粘着部分の位置が上下でずれるように設けられることを特徴とする請求項12記載のICタグの製造方法。
【請求項14】
前記基材、前記第1および第2の粘着シート、および、前記上紙はロール状のシートであり、前記インレット層は、複数のICタグ用インレットを含むロール状のシートであり、前記工程(a)、前記工程(b)、前記工程(c)、前記工程(d)により複数のICタグを含むシートが製造された後、個々のICタグに切断されることを特徴とする請求項12または請求項13に記載のICタグの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−93448(P2009−93448A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263984(P2007−263984)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】