説明

II−III−N半導体ナノ粒子および当該II−III−N半導体ナノ粒子の製造方法

【課題】新規のII−III−N半導体ナノ粒子および当該II−III−N半導体ナノ粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、窒化物半導体ナノ粒子(例えば、ナノ結晶)を提供する。当該窒化物半導体ナノ粒子は、新規の組成を有する新規のII−III−N化合物半導体(例えば、ZnGaN、ZnInN、ZnInGaN、ZnAlN、ZnAlGaN、ZnAlInN、または、ZnAlGaInN)によって形成されている。このようなタイプの化合物半導体ナノ粒子は、従来、知られていない。本発明は、また、II−III−N半導体ナノ粒子のサブグループであるII−N半導体ナノ結晶(例えば、ZnNナノ結晶)も開示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体ナノ粒子(例えば、ナノメートルサイズのナノ結晶)に関する。また、本発明は、特に、II−III−Nタイプの新しい化合物半導体システムに用いられる材料に関する。このような材料は、太陽電池、発光ダイオード、発光型ELディスプレイおよびバイオイメージングなどの広い用途に用いられ得る。
【背景技術】
【0002】
寸法がバルクエキシトン直径(bulk exciton diameter)に相当する半導体ナノ結晶は、量子閉じ込め効果を示す。このことは、結晶のサイズが減少するにしたがって光学スペクトルが青色波長側へシフトする場合に、最も明確に観察される。
【0003】
化合物半導体とは、周期表における2つ以上の族に由来する元素によって構成されている半導体材料を意図する。これらの元素は、2元化合物(binary:2つの元素)、3元化合物(ternary:3つの元素)、4元化合物(quaternary:4つの元素)または5元化合物(penternary:5つの元素)を形成し得る。最も一般的な化合物半導体の群は、III−V(例えば、GaAs、AlGaAs、GaN、GaInP)およびII−VI(例えば、ZnS、CdTe、ZnO)である。しかしながら、他の多くの化合物半導体の群(例えば、I−VII、IV−VI、V−VI、II−Vなど)が研究されている。周知の無機半導体の基本的なデータに関する総合的な情報が、非特許文献1に記載されている。
【0004】
様々な材料によって形成されている半導体ナノ結晶(例えば、多くのII−VI半導体およびIII−V半導体)が研究されている。薄膜状または粉末状のII−V化合物半導体(例えば、ZnNおよびZnAs)が周知である(非特許文献2、および、非特許文献3参照)。ナノ結晶については、非特許文献4が、ZnPナノ粒子の合成について報告している。
【0005】
III−V半導体は多数存在する。III−V半導体のなかの最も興味深いクラスの1つは、III−窒化物(III-nitrides)(例えば、AlN、GaN、InN、および、各々の合金)である。これらは、青色発光ダイオード、レーザーダイオード、および、パワーエレクトロニックデバイスの製造に用いられる。窒化物は、化学的に不活性であり、放射線に対して耐性を有している。窒化物は、また、大きな破壊電界(large breakdown fields)、高い熱伝導率、および、大きな高電界電子ドリフト移動度(large high-field electron drift mobilities)を有している。それ故に、窒化物は、腐食をまねく環境下において高出力を必要とする用途に適している(例えば、非特許文献5参照)。窒化アルミニウムのバンドギャップ(6.2eV)、窒化ガリウムのバンドギャップ(3.5eV)および窒化インジウムのバンドギャップ(0.7eV)(非特許文献6参照)は、窒化物が、電磁スペクトルの紫外領域、可視領域および赤外領域の大半に及ぶことを示している。これらの材料の合金が、この領域にわたって直接的な光学的なバンドギャップ(direct optical band gaps)を有していることは、これらの材料の合金が、光学デバイスにとって非常に重要であることを示している。
【0006】
固−液GaN/ZnOナノ粒子が報告されており(非特許文献7)、当該固−液GaN/ZnOナノ粒子は、結晶状の固体として、GaNとZnOとを組み合わせることによって形成されている。GaNに対するZnOの割合は、GaZnO前駆体の窒化物形成時間を変えることによって制御される。
【0007】
III−IV−V半導体(例えば、SiGaAs)は、薄膜状のものとしては報告されているが(例えば、特許文献1参照)、ナノ粒子状のものとしては報告されたことがない非特許文献8および非特許文献9において、F. Zongらは、亜鉛粉末とアンモニアガスとを反応させることによって、亜鉛窒化物のナノワイヤを合成することを提案している。「ナノワイヤ」とは、2つの次元(第1の次元および第2の次元)の方向に向かってはナノメートルのオーダーの寸法を有し、第3の次元の方向に向かってはより大きな寸法(一般的には、マイクロメートルのオーダーの寸法)を有する構造物を意図する。
【0008】
特許文献2は、水素吸蔵材料(hydrogen storage material)を提案しており、当該水素吸蔵材料は、加熱された時に水素を放出する。水素吸蔵材料は、金属水素化合物および金属アミドの、混合物および反応産物を含んでいる。
【0009】
特許文献3は、例えば水素吸蔵システムに用いられるような、水素を含むナノ構造体を提案している。
【0010】
特許文献3は、使用可能な材料として窒化マグネシウムを挙げているとともに、産物が幾つかのナノメートルサイズの吸蔵材料を含むように、材料を圧搾(milling)することを提案している。
【0011】
非特許文献10にて、Y. Ye等は、アモルファスな酸窒化亜鉛半導体材料を提案している。
【0012】
特許文献4は、ZnO単結晶を製造する方法を提案している。当該製造方法では、窒素原子(p−タイプのドーパントとして)およびガリウム原子(n−タイプのドーパントとして)と共に、亜鉛原子および酸素原子を、成長チェンバーへ供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US4213781
【特許文献2】US2009/0121184
【特許文献3】US2003/167778
【特許文献4】US6,527,858
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Semiconductors:Data Handbook by Madelung, Springer-Verlag press; 3rd ed. edition(Nov 2003)
【非特許文献2】Paniconi et al. J. Solid State Chem 181(2008)158-165
【非特許文献3】Chelluri et al. APL 49 24(1986)1665-1667
【非特許文献4】Buhro et al. Polyhedron Vol 13. (1994) p1131
【非特許文献5】Neumayer at. al., Chem., Mater., 1996, 8, 25
【非特許文献6】Gillan et. al., J. Mater. Chem., 2006, 38, 3774
【非特許文献7】Han et al. APL. 96,(2010)183112
【非特許文献8】“Structural properties and photoluminescence of zinc nitride nanowires”, Applied Physics Letters(8691034 IEE INSPEC, 2005)
【非特許文献9】“Nano-structures and properties of zinc nitride prepared by nitridation technique”, Proceedings of Fifth Pacific Rim International Conference on Advanced Materials and Processing”, Beijing, 2004(8418308 IEE INSPEC)
【非特許文献10】“High mobility amorphous zinc oxynitride semiconductor material for thin film transistors”, Applied Physics Letters(10930195 IET INSPEC, 2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、新規のII−III−N半導体ナノ粒子および当該II−III−N半導体ナノ粒子の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様は、一般式II−Nまたは一般式II−III−Nにて示される化合物にて形成されている半導体ナノ粒子であって、上記IIは、周期表のII族に属する1つ以上の元素であり、上記IIIは、周期表のIII族に属する1つ以上の元素である半導体ナノ粒子である。
【0017】
用語「ナノ粒子」は、ナノスケールの3次元寸法を有する粒子を意図し、例えば、1nm〜100nmであり得、より好ましくは1nm〜30nmであり得る。本発明のナノ粒子は、結晶構造または多結晶構造を有するナノ結晶を形成するか、または、アモルファス構造を有し得る。
【0018】
上記半導体ナノ粒子がII族またはIII族に属する1つ以上の元素を有する化合物によって形成されている場合、当該半導体ナノ粒子は、一般式II−III−Nにて示される化合物によって形成されている。なお、当該一般式において、xおよびzはゼロよりも大きく、yはゼロ以上であり、かつ、x、yおよびzは、合金における各元素の相対量を示しているとともに、化学量論と電荷とのバランスをとるように設定されている。より一般的に、本発明の半導体ナノ粒子は、一般式IIax1IIbx2・・・IIIay1IIIby2・・・Nにて示される化合物によって形成されている。なお、IIa、IIb・・・は、II族に属している、異なる元素であり、IIIa、IIIb・・・は、III族に属している、異なる元素であり、x1およびzは、ゼロよりも大きい数であり、x2・・・、y1、y2・・・は、ゼロ以上の数であり、かつ、x1、x2・・・、y1、y2・・・およびzは、合金における各元素の相対量を示しているとともに、化学量論と電荷とのバランスをとるように設定されている。
【0019】
便宜上、x、y、z、または、x1、x2・・・y1、y2・・・およびzの数は、本明細書中に記載されている一般式において省略されている。
【0020】
本発明は、一般式II−III−Nまたは一般式II−Nにて示される化合物半導体ナノ粒子(より一般的には、ナノ粒子)の形態の新たな組成物を提供する。一般式II−III−Nまたは一般式II−Nにて示される化合物半導体ファミリーによって形成されているナノ結晶(または、ナノ粒子)が形成されたということや、これらに関する研究は、知られていない。
【0021】
US2007/0104865には、ナノ結晶のための多くの可能な材料のリストが記載されており、これらのリストの中には、一般式II−Vに対応する多くの材料が含まれている。US2007/0104865に記載されているリストの中には、ZnNナノ結晶が含まれているが、US2007/0104865では、ZnNの製造は行われていない。
【0022】
II族に属する元素(例えば、Mg)またはIV族に属する元素(例えば、Si)を用いたIII−V半導体のドーピングは、当該III−V半導体の伝導率を変化させるために一般的に用いられる。一般的にIII−V半導体をドーピングするために必要な、極微量のII族に属する元素は、II−III−V化合物を形成しない(例えば、Pankove et al. J.Appl. Phys. 45, 3, (1974) 1280-1286参照)。一例として、US3660178は、亜鉛成分がIII−V化合物半導体中へ拡散することを提案しているが、拡散した亜鉛は、不純物として分類されている。不純物の量は、化合物を形成するために必要な量よりも、著しく少ないUS3660178は、II−III−V化合物の形成について開示も示唆もしていない。
【0023】
これに関連して、本発明のII−III−V化合物のナノ粒子中では、II族に属する元素、III族に属する元素、および、V族に属する元素の各々が、化合物の結晶構造内に組み込まれている。例えば、本発明のZnInNナノ粒子中またはMgInNナノ粒子中では、ZnまたはMg原子と、In原子と、N原子との全てが、ZnInN結晶構造中に規則的に配列されている。対照的に、III−V化合物中のドーパントとしてII族に属する元素(例えば、Zn)が用いられる従来技術(US3660178)では、II族に属する元素は、極めて微量(III族に属する元素の量またはV族に属する元素の量と比較して)しか存在せず、II族に属する元素は、III−V化合物の結晶構造中に適切に取り込まれない。それ故に、結果的に形成されるものは、少量のII族に属する元素を不純物として含むIII−V化合物である。一般的な法則として、本発明のII−III−V化合物のナノ粒子は、II族に属する元素、III族に属する元素、および、V族に属する元素の各々を、少なくとも1体積%(1% by volume)含むが、II族に属する元素をIII−V化合物中のドーパントとして用いる場合には、当該化合物中には、1体積%未満のII族に属する元素が含まれている。
【0024】
同様に、II−N化合物のナノ粒子は、II族に属する元素およびN元素の各々を少なくとも1体積%含むものとして規定される。
【0025】
III−V半導体ナノ結晶の分野では、US7399429において、一般式ABCを用いた半導体ナノ粒子の形成が提案されており、このとき、Aは、II族、III族またはIV族であり、Bは、II族、III族またはIV族であり、Cは、V族またはVI族である(パラグラフ5)。しかしながら、特定の一般式II−III−Nにて示される化合物のナノ結晶を実際に形成したことは、報告されていないし、提案されてもいない。
【0026】
US2008/0202383は、I−II−III−VI半導体合金からナノ結晶を形成したことを開示している。
【0027】
III−窒化物半導体ナノ結晶の分野では、UK patent application 0901225.3に発光性の窒化物ナノ結晶が開示されており、当該窒化物ナノ結晶では、ステアリン酸亜鉛が、III−Nナノ結晶を形成する間のキャッピング試薬として用いられる。当該出願は、ステアリン酸亜鉛をIII−窒化物ナノ結晶の表面上に調製(coordinated)し、窒素原子をIII−窒化物ナノ結晶の表面または表面近傍に不動態化することを提案しているが、当該出願は、II−III−Nナノ結晶またはII−Nナノ結晶を形成したことについて、示してもいないし言及してもいない。
【0028】
II−III−N化合物半導体ナノ結晶は、周期表のII族に属する1つ以上の元素(例えば、Zn、Cd、Hg、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、周期表のIII族に属する1つ以上の元素(例えば、Ga、In、Al、B、Tl)および窒素元素を含む材料を含み得る。
【0029】
本願は、II−III−N半導体ナノ粒子を開示しており、当該II−III−N半導体ナノ粒子としては、Zn−III−NまたはMg−III−Nなどの材料によって形成されているナノ粒子を挙げることができ、更に具体的には、ZnGaN、ZnInN、ZnInGaN、ZnAlN、ZnAlGaN、MgInN、ZnAlInNまたはZnAlGaInNなどの材料によって形成されているナノ粒子を挙げることができる。これらの化合物半導体ナノ結晶は、現在まで知られていない。
【0030】
II−III−V化合物半導体ナノ粒子は、周期表のII族に属する1つ以上の元素(例えば、Zn、Cd、Hg、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)および窒素元素を含むII−V小集団(subset)を含み得る。
【0031】
本願は、また、II−III−N半導体ナノ結晶のサブグループであるII−N半導体ナノ結晶(例えば、ZnNまたはMgN)を開示している。このタイプの化合物半導体ナノ結晶は、従来から知られている。
【0032】
本発明のII−III−Nナノ粒子またはII−Nナノ粒子は、潜在的に多くの用途を有している。半導体のバンドギャップエネルギーまたはエネルギーギャップは、半導体材料の価電子帯と伝導帯との間の、室温における最小のエネルギーギャップとして規定される。本発明は、エネルギーギャップがどこでも0.6eV〜6.2eVであり、II−III−N材料またはII−N材料の組成(II−III−N材料またはII−N材料のバルクサンプル(bulk sample)のバンドギャップエネルギーに影響する)に依存し、かつ、ナノ粒子の寸法を有するII−III−N化合物半導体のナノ粒子またはII−N化合物半導体のナノ粒子の形成を可能にする。所望のバンドギャップエネルギーは、II−III−V化合物半導体の所望の用途に依存するが、本発明の重要な用途の1つは、0.6eV〜4.0eVのエネルギーバンドギャップを有する化合物を製造することである。当該エネルギーバンドギャップの範囲は、非常に高い性能を有する太陽電池中に用いられて太陽光スペクトルの略全部を吸収する材料に対して要求される範囲である。
【0033】
一般式II−Nまたは一般式II−III−Nにて示される第1の化合物は、構造中で単結晶であり得、構造中で多結晶であり得、構造中でアモルファスであり得る。
【0034】
一般式II−Nまたは一般式II−III−Nにて示される第1の化合物は、ナノ粒子のコアを形成し得る。更に、ナノ粒子は、上記コアの周りに配置される層を有し得、当該層は、一般式II−Nまたは一般式II−III−Nにて示される第1の化合物とは異なる組成の半導体材料によって形成され得る。これによって、コア−シェル(core-shell)構造を有するナノ粒子を提供することができる。
【0035】
上記シェルは、一般式II−Nまたは一般式II−III−Nにて示される第2の化合物によって形成され得、上記一般式II−Nまたは一般式II−III−Nにて示される第2の化合物は、上記一般式II−Nまたは一般式II−III−Nにて示される第1の化合物とは異なる組成を有している。
【0036】
別の態様として、本発明は、コア−シェルナノ粒子において、II−NシェルまたはII−III−Nシェルを形成するために用いられ得る。このとき、コアは、II−N材料またはIII−N材料以外の材料にて形成され得る。
【0037】
本発明によれば、コアまたはシェルがII−N材料またはII−III−N材料によって形成されているコア−シェル ナノ粒子の場合、基本的に、コアまたはシェルは、あらゆるII−N材料またはII−III−N材料によって形成され得る。コアまたはシェルとして好ましい材料は、コアのバンドギャップよりもシェルのバンドギャップの方が大きくなるように選択された材料である。これによって、コア内に電荷キャリアが閉じ込められて、ナノ粒子のPLQYが増加することが期待される。シェルは、コアの周りの保護層としても機能し、コアの酸化を防止する。
【0038】
半導体ナノ粒子は、発光し得る。「発光性」材料とは、適切な光源からの照射を受けた時に光を放射する材料を意図する。材料が発光性であることの1つの基準は、「フォトルミネッセンス量子収量(photoluminescence quantum yield:PLQY)」である。半導体材料のPLQYとは、材料に光ルミネセンスを生じさせるために光源にて材料を照らした場合の、材料によって吸収される光子の数に対する材料によって放射される光子の数の比率を意図する。(用語「フォトルミネッセンス量子収量」と、従来しばしば用いられていた用語「フォトルミネッセンス量子効率(photoluminescence quantum efficiency)」とを混同すべきではない。「フォトルミネッセンス量子効率」は、材料によって吸収および放射された光子のエネルギーを考慮している。励起波長と放射波長とが似ている場合には、フォトルミネッセンス量子収量とフォトルミネッセンス量子効率とは、似た値を有している。放射波長よりも励起波長の方が短く、それ故に、放射波長よりも励起波長の方がエネルギーが高い場合、フォトルミネッセンス量子効率は、フォトルミネッセンス量子収量よりも低い。)。
【0039】
この用途を目的とした場合、「発光性」材料は、1%以上のPLQYを有する材料である。
【0040】
本発明の発光性ナノ粒子は、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも20%、更に好ましくは少なくとも50%のフォトルミネッセンス量子収量を有し得る。
【0041】
本発明のII−III−N半導体ナノ粒子は、特に電磁スペクトルの可視領域において、顕著なルミネセンス特性を有している。このような材料のナノ粒子は、10%よりも大きなPLQY値を示し、ZnAlNナノ粒子の場合には、55%のPLQY値を示す。
【0042】
本発明のナノ粒子は、光電子装置(例えば、太陽電池、発光ダイオード、レーザーダイオード、LEDやELディスプレイのための発光性リン光体材料)の構成として有用である。
【0043】
本発明の第2の態様では、II族に属する元素の少なくとも1つの供給源と、III族に属する元素の少なくとも1つの供給源と、窒素の少なくとも1つの供給源と、を反応させる工程を有する半導体ナノ粒子の製造方法を提供する。
【0044】
上記半導体ナノ粒子は、一般式II−III−Nにて示される材料にて形成されており、上記IIは、周期表のII族に属する1つ以上の元素であり、上記IIIは、周期表のIII族に属する1つ以上の元素である。
【0045】
上記方法では、上記II族に属する元素の少なくとも1つの供給源と、III族に属する元素の少なくとも1つの供給源と、窒素の少なくとも1つの供給源と、を反応させる工程が、溶媒中で行われ得る。
【0046】
II族に属する元素の少なくとも1つの供給源は、II族に属する元素のカルボン酸塩を含み得、より具体的には、II族に属する元素のステアリン酸塩(例えば、II族に属する元素として、または、II族に属する元素の1つとして亜鉛を有するII−III−Nナノ結晶を形成する場合には、ステアリン酸亜鉛)を含み得る。
【0047】
II−III−N化合物におけるII族に属する元素を供給するための初発材料としてカルボン酸塩(例えば、ステアリン酸塩)を使用すれば、発光性のII−III−N材料が効果的に得られること、特に、発光性のII−III−Nナノ粒子が効果的に得られることが見出された。
【0048】
反応が進むにしたがってナノ粒子のサイズが増大するので、反応混合物からナノ粒子を抽出する時間を変えることによって、得られるナノ粒子の寸法を変えることが可能である。ナノ粒子の特性(例えば、発光波長のピーク)は、ナノ粒子の寸法に依存するので、抽出する時間を変えることによって、所望の特性(例えば、所望の放射特性または吸収特性)を有するナノ粒子を実現することができる。
【0049】
反応が進むにしたがってナノ粒子のサイズが増大するので、反応混合物から、ナノ粒子の集団に含まれる全てのナノ粒子を一度に抽出することによって、単分散または実質的な単分散を得ることが可能である(周知のように、粒子が同じサイズと同様の形とを有している場合、粒子の回収を単分散(monodisperse)またはモノサイズ(monosized)と呼ぶ)。
【0050】
本発明の第3の態様では、II族に属する元素の少なくとも1つの供給源と、窒素の少なくとも1つの供給源と、を反応させる工程を有する半導体ナノ粒子の製造方法を提供する。
【0051】
上記半導体ナノ粒子は、一般式II−Nにて示される材料にて形成され得、このとき、上記IIは、周期表のII族に属する1つ以上の元素である。
【0052】
上記製造方法では、上記II族に属する元素の少なくとも1つの供給源と、窒素の少なくとも1つの供給源と、を反応させる工程が、溶媒中で行われ得る。
【0053】
II族に属する元素の少なくとも1つの供給源は、II族に属する元素のカルボン酸塩を含み得、より具体的には、II族に属する元素のステアリン酸塩(例えば、II族に属する元素として、または、II族に属する元素の1つとして亜鉛を有するII−III−Nナノ結晶を形成する場合には、ステアリン酸亜鉛)を含み得る。
【0054】
第2の態様および第3の態様の両方において、窒素の供給源の少なくとも1つは、アミド(例えば、ナトリウムアミド)を含み得る。
【0055】
II族に属する元素の供給源としてカルボン酸塩(例えば、II族の材料として亜鉛を用いる例においてステアリン酸亜鉛を用いる)を用いるとともに、V族に属する元素の供給源としてアミドを用いれば、II−III−V化合物のナノ結晶を形成する場合に特に有利である。その理由は、カルボン酸塩は、ナトリウムアミドが反応混合物中へ溶解することを助けて、より均一な溶液を形成させ、当該均一な溶液は、より制御されたナノ結晶の成長を可能にすると考えられているからである。
【0056】
しかしながら、本発明では、II族に属する元素の供給源はカルボン酸塩に限定されず、II族に属する元素の別の供給源(例えば、アミン、アセト酢酸、スルホン酸塩、ホスホン酸塩、チオカルバメート、チオレート)を用いることも可能である。
【0057】
II−III−N材料またはII−N材料は、コア−シェルナノ粒子のコアを形成することが可能であり、当該方法は、シェルを形成するために、コアを覆うように別の半導体材料の層を形成する工程を更に有することが可能である。上記別の半導体材料は、別のII−III−N材料またはII−N材料であってもよいし、II−III−N材料やII−N材料ではない材料であってもよい。
【0058】
別の態様として、コア−シェルナノ粒子のシェルを、II−III−N材料またはII−N材料によって形成することも可能である。この場合、製造方法には、コアの上にII−III−N材料またはII−N材料を形成して、当該II−III−N材料またはII−N材料によってシェルを形成する工程が含まれる。コアは、別のII−III−N材料または別のII−N材料によって形成されてもよい。コアは、II−III−N材料やII−N材料ではない半導体材料によって形成されてもよい。
【発明の効果】
【0059】
本発明は、窒化物半導体ナノ粒子(例えば、ナノ結晶)を提供する。当該窒化物半導体ナノ粒子は、新規の組成を有する新規のII−III−N化合物半導体(例えば、ZnGaN、ZnInN、ZnInGaN、ZnAlN、ZnAlGaN、ZnAlInN、または、ZnAlGaInN)によって形成されている。このようなタイプの化合物半導体ナノ粒子は、従来、知られていない。本発明は、また、II−III−N半導体ナノ粒子のサブグループであるII−N半導体ナノ結晶(例えば、ZnNナノ結晶)も開示している。
【0060】
新規なII−III−N化合物半導体ナノ結晶の組成およびサイズは、バンドギャップおよび発光特性を調整するために制御され得る。紫外−可視−赤外波長領域における効果的な発光が実現される。
【0061】
本発明は、光電子デバイス(例えば、太陽電池、発光ダイオード、レーザーダイオード)の構成として、また、LEDおよび発光型ELディスプレイの発光性のリン光体(phosphor)材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】1つの反応において異なる反応時間に得られた亜鉛 ガリウム 窒化物 ナノ結晶溶液の、一連のPL発光スペクトルを示している。
【図2】ガリウム:亜鉛のモル比が、1:3、1:1、3:1であるZnGaNナノ結晶溶液の、室温におけるPL発光スペクトルを示している。
【図3】異なる反応時間および異なる亜鉛対ガリウム比にて得られるZnGaNナノ結晶溶液の、PL発光波長のピークの変化を示している。
【図4】1つの反応において異なる反応時間に得られたZnInNナノ結晶溶液の、室温におけるPL発光スペクトルを示している。
【図5】異なる反応時間および異なる亜鉛対インジウム比にて得られるZnInNナノ結晶溶液の、PL発光波長のピークの変化を示している。
【図6】1つの反応において異なる反応時間に得られたZnAlNナノ結晶溶液の、室温におけるPL発光スペクトルを示している。
【図7】1つの反応において異なる反応時間に得られた亜鉛窒化物ナノ結晶溶液の、室温におけるPL発光スペクトルを示している。
【図8】(a)および(b)は、本発明の方法によって得られたZnAlNナノ粒子の、透過電子顕微鏡の像である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明は、半導体化合物のナノ粒子(例えば、ナノ結晶)に関する。より具体的には、本発明は、一般式II−III−Nまたは一般式II−Nにて示されるII−III−N化合物半導体の名の粒子(例えば、ナノ結晶)に関し、このとき、上記IIは、周期表のII族に属する1つまたは複数の元素であり、上記IIIは、周期表のIII族に属する1つまたは複数の元素であり、上記Nは、窒素である。
【0064】
本発明は、ナノ粒子(例えば、ナノ結晶)を製造することを可能にする。ナノ結晶は、直径が略1nm〜略100nmになるように、より具体的には、直径が略1nm〜略30nmになるように製造され得る。本発明は、略球形または略涙形(teardrop)の形をしたナノ結晶を製造するために利用され得る。加えて、本発明にて提供されるナノ結晶は、コア−シェル構造を有し得、当該コア−シェル構造では、第2の材料によって形成されるシェルが、ナノ結晶(当該ナノ結晶は、コア−シェル構造のコアを形成している)の表面上に直接形成される。このようなシェルが、1つ以上形成され得る。当該シェルは、コアに用いられている材料と同じ材料にて形成されてもよく、コアに用いられている材料と異なる材料にて形成されてもよい。また、当該シェルは、別のIII−V半導体、II−VI半導体、または、他のあらゆる適した材料にて形成されてもよい。理想的には、シェルを形成する材料のバンドギャップは、コアを形成する材料のバンドギャップよりも大きい。上記構成によれば、ナノ結晶のコア内が励起状態に制限され、このような材料からの発光強度を向上させる。
【0065】
好ましい実施形態では、本発明のII−III−N半導体ナノ粒子は、結晶質のナノ粒子の形態にて存在し得る。
【0066】
別の好ましい実施形態では、本発明のII−III−N半導体ナノ粒子は、多結晶のナノ粒子の形態にて存在し得る。
【0067】
別の好ましい実施形態では、本発明のII−III−N半導体ナノ粒子は、アモルファスなナノ粒子の形態にて存在し得る。
【0068】
別の好ましい実施形態では、本発明のII−III−N半導体ナノ粒子は発光し得るとともに、少なくとも5%、少なくとも20%、または、少なくとも50%の光ルミネセンス量子収量を有している。
【0069】
別の好ましい実施形態では、本発明のII−III−N半導体ナノ粒子は、亜鉛ガリウム窒化物からなる。当該合金材料は、可視スペクトル領域を横断する1.0eV〜3.4eVのエネルギーギャップを有しており、当該エネルギーギャップは、Zn:Gaの比に依存している。
【0070】
別の好ましい実施形態では、本発明のII−III−N半導体ナノ粒子は、亜鉛アルミニウムガリウムインジウム窒化物からなる。当該材料は、太陽のスペクトル領域を横断する0.6eV〜4.0eVのエネルギーギャップを有しており、当該エネルギーギャップは、正確な組成に依存している。
【0071】
別の好ましい実施形態では、本発明のII−III−N半導体ナノ粒子は、亜鉛アルミニウム窒化物からなる。当該合金材料は、紫外線を発するための、6.2evまでの幅広いエネルギーギャップを生じ得る。
【0072】
別の好ましい実施形態では、本発明のII−III−N半導体ナノ粒子は、亜鉛インジウム窒化物からなる。当該合金材料は、赤外線を発するための、0.6eVの小さなエネルギーギャップを生じ得る。
【0073】
別の好ましい実施形態では、本発明のII−III−N半導体ナノ粒子は、1つ以上の不純物元素によってドーピングされ得る。不純物元素の例としては、ケイ素、マグネシウム、炭素、ベリリウム、カルシウム、ゲルマニウム、スズおよび鉛を挙げることができる。
【0074】
本発明の新しい材料の用途は、光源(例えば、発光ダイオードまたはレーザーダイオード)によって励起されるリン光体(phosphor)を提供するための、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0075】
本発明の新しい材料の用途は、光源(例えば、発光ダイオードまたはレーザーダイオード)によって励起される、広い面積を有するイルミネーションパネルを提供するための、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0076】
本発明の新しい材料の更なる用途は、太陽電池内における、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0077】
本発明の新しい材料の更なる用途は、光起電装置内における、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0078】
本発明の新しい材料の更なる用途は、発光ダイオード内における、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0079】
本発明の新しい材料の更なる用途は、発光装置内における、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0080】
本発明の新しい材料の更なる用途は、レーザーダイオード装置内における、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0081】
本発明の新しい材料の更なる用途は、レーザー内における、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0082】
本発明の新しい材料の更なる用途は、電子デバイス内における、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0083】
本発明の新しい材料の更なる用途は、トランジスタデバイス内における、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0084】
本発明の新しい材料の更なる用途は、マイクロプロセッサデバイス内における、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0085】
本発明の新しい材料の更なる用途は、増幅デバイス内における、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0086】
本発明の新しい材料の更なる用途は、電力スイッチングデバイス内における、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0087】
本発明の新しい材料の更なる用途は、電源レギュレータデバイス内における、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0088】
本発明の新しい材料の更なる用途は、光検出デバイス内における、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0089】
本発明の新しい材料の更なる用途は、蛍光ファイバー、蛍光ロッド、蛍光ワイヤ、および、他の形状の蛍光体を提供するための、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0090】
本発明の新しい材料の更なる用途は、励起状態を形成するための、電流の使用である。当該励起状態は、発光ダイオードが、II−III−N半導体ナノ結晶に対して直接的に電気を注入するために、光を放射することによって減衰する。
【0091】
本発明の新しい材料の更なる用途は、液晶ディスプレイに用いられるバックライトの一部としての、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0092】
本発明の新しい材料の更なる用途は、ディスプレイ内の発光性部材(例えば、プラズマディスプレイパネル、電界放出ディスプレイ、または、ブラウン管)としての、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0093】
本発明の新しい材料の更なる用途は、有機発光ダイオード内の発光性部材としての、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0094】
本発明の新しい材料の更なる用途は、太陽集光器内の発光性部材としての、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。このとき、太陽集光器によって放射された光は、集められた光を電流へ変換するために用いられる太陽電池へ合わせられる。1つ以上のこのような太陽集光器は、一連の波長の光を提供するために、お互いの上に積み重ねられ得る。そして、上記一連の波長の光は、各々、分離された太陽電池へ合わせられる。
【0095】
本発明の新しい材料の更なる用途は、有機太陽電池内または光検出器内の光回収部材としての、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0096】
本発明の新しい材料の更なる用途は、色素増感太陽電池内または光検出器内の光回収部材としての、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0097】
本発明の新しい材料の更なる用途は、太陽電池内または光検出器内における複数エキサイトン生成の工程を介して、1つの光子の吸収から複数のエキサイトンを形成するための、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0098】
本発明の新しい材料の更なる用途は、戦闘中の識別を助けるための、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0099】
本発明の新しい材料の更なる用途は、トラッキングおよびマーキングをアサートするための、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0100】
本発明の新しい材料の更なる用途は、カウンターフィットインク(counterfeit inks)としての、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0101】
本発明の新しい材料の更なる用途は、in−vivoおよびin−vitroの両方におけるバイオマーカーとしての、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0102】
本発明の新しい材料の更なる用途は、光線力学療法への、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0103】
本発明の新しい材料の更なる用途は、例えば、癌の診断、フローサイトメトリーまたはイムノアッセイにおけるバイオマーカーとしての、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0104】
本発明の新しい材料の更なる用途は、フラッシュメモリにおける、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0105】
本発明の新しい材料の更なる用途は、量子計算における、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0106】
本発明の新しい材料の更なる用途は、ダイナミックホログラフィーにおける、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0107】
本発明の新しい材料の更なる用途は、熱電素子における、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0108】
本発明の新しい材料の更なる用途は、遠隔通信に用いられるデバイス内における、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【0109】
本発明の新しい材料の更なる用途は、あらゆる用途における、II−III−N化合物半導体ナノ結晶の使用である。
【実施例】
【0110】
以下の実施例では、本発明の形態を製造するための幾つかの方法が記載されている。II−III−N半導体ナノ粒子を製造するための別の方法は特に限定されず、例えば、有機金属気相成長法(MOVPE)、分子線エピタキシャル成長法(MBE)、化学蒸着(CVD)、スパッタ法、プラズマアシスト真空蒸着、パルスレーザー堆積法(PLD)、ハイドライド気相成長法(HVPE)、凝華、熱分解および濃縮、アニーリング、粉末または金属の窒化物形成などを用いることが可能である。
【0111】
フォトルミネッセンス量子収量(PLQY)の測定は、「Analytical Chemistry, Vol. 81, No. 15, 2009, 6285-6294」に記載されている方法を用いて行われ得る。吸光度が0.04〜0.1である、シクロヘキサン中に希釈された窒化物ナノ結晶のサンプルが用いられる。1,4−ジオキサン中のNile red PLQY 70%(Analytical Biochemistry, Vol. 167, 1987, 228-234)が、標準物質として用いられた。
【0112】
実施例は、あくまでも例として示されるものであり、本発明は、これらの実施例に限定されない。例えば、実施例1〜8では、II族に属する元素の供給源としてカルボン酸塩(特に、ステアリン酸塩)を使用しているが、本発明はこれに限定されず、II族に属する元素の別の前駆体(例えば、アミン、アセト酢酸、スルホン酸塩、ホスホン酸塩、チオカルバメートまたはチオレートなど)も用いられ得る。更に、実施例1〜8では、溶媒として1−オクタデセンまたはジフェニルエーテルを用いているが、本発明は、これら特定の溶媒に限定されない。
【0113】
以下に記載する方法によって、1nm〜100nmのオーダーの三次元寸法を有するナノ粒子、または、1nm〜30nmのオーダーの三次元寸法を有するナノ粒子が効率的に得られることが見出された。得られたナノ粒子のサイズは、あらゆる適切な方法によって決定され得る。例えば、ナノ粒子の透過電子顕微鏡(TEM)の像を撮り、当該TEM像からナノ粒子のサイズを決定
することができる。
【0114】
〔実施例1〕コロイド状のZnGaN半導体ナノ結晶
ヨウ化ガリウム(270mg、0.6mmol)、ナトリウムアミド(500mg、12.8mmol)、ヘキサデカンチオール(308μL、10mmol)、ステアリン酸亜鉛(379mg、0.6mmol)および1−オクタデセン(20mL)を250℃まで急速に加熱し、当該温度にて維持した。上記反応において、ヨウ化ガリウムは、III族に属する金属(ガリウム)を供給し、ナトリウムアミドは、窒素原子を供給し、ヘキサデカンチオールは、電子供与基を有するキャッピング試薬として機能し、ステアリン酸亜鉛は、II族に属する金属(亜鉛)を供給し、1−オクタデセンは、溶媒として機能する。60分間の反応時間の間に、反応混合物の一部からなるサンプルを複数個分取した(1サンプルあたり、0.25mL)。トルエン(3mL)を用いて上記サンプルを希釈した後、遠心分離によって、不溶性物質を除去した。得られた透明の溶液について、発光分光(emission spectroscopy)を解析したところ、図1に示すように、反応が進行するにしたがって、450nm−600nmの発光波長のピークが変化した。発光スペクトルのピークは、最大強度の半分における全幅が、100nmのオーダーである。
【0115】
得られたZnGaNナノ粒子は、Ga:Znの比が、略1:1.3であった。
【0116】
このような反応系から回収したサンプルに対してUV光源を用いて光を照射したところ、サンプルが可視領域の光を発しているので、裸眼にて容易に発光を観察することができた。このことは、本発明によって得られたZnGaNナノ構造体が高い量子収量を有していることを示している。
【0117】
これらのサンプルに対応する発光スペクトルを図1に示す。最も左側の発光スペクトル(破線にて示している)は、反応を開始してから2、3分後(当該実施例では、反応を開始してから10分後)に回収した反応混合物のサンプルから得られた発光スペクトルである。最も右側の発光スペクトル(点線にて示している)は、反応を開始してから略1時間後に回収した反応混合物のサンプルから得られた発光スペクトルである。最も左側の発光スペクトルと最も右側の発光スペクトルとの間の発光スペクトルは、複数の中間の時間に回収した反応混合物のサンプルから得られた発光スペクトルである。
【0118】
発光スペクトルのピーク波長が、時間にともなって均一に変化する訳ではないことに注意すべきである。はじめに、発光波長のピークが時間にともなって急激に増加するが、反応が進むにしたがって、発光波長のピークの増加率が減少する。
【0119】
図1から明らかなように、反応開始後略1時間までの時間に回収したサンプルの発光スペクトルは、青色から橙赤色までの可視領域の大半に広がっている。したがって、溶液からナノ結晶を回収する前の反応時間を適切に選択することによって、特定の光学特性(例えば、所望の発光波長のピーク)を有するナノ結晶を得ることが可能になる。
【0120】
この反応から回収したサンプルのフォトルミネッセンス量子収量を測定したところ、30%よりも高い値であった。
【0121】
同様の合成方法を用いて、幾つかの別のZnGaNナノ結晶化合物を製造した。例えば、異なる量のガリウムと亜鉛とを含む亜鉛ガリウム窒化物の化合物を製造するために、ステアリン酸亜鉛に対するヨウ化ガリウムの比率を変えた。図2に、ガリウムに対する亜鉛の比率を変えて製造したサンプルのPLスペクトルを示す。反応を開始してから略90分後に反応混合物を回収して得たサンプルによって、Ga:Znの比率が3:1であるナノ粒子の発光スペクトルを得た。また、反応を開始してから略90分後に反応混合物を回収して得たサンプルによって、Ga:Znの比率が1:1であるナノ粒子の発光スペクトルを得た。反応を開始してから略20分後に反応混合物を回収して得たサンプルによって、Ga:Znの比率が1:3であるナノ粒子の発光スペクトルを得た。略90分後までに回収したサンプルの発光スペクトルは、紫外線−可視光線−赤外線の領域に広がっていることが見出された。
【0122】
図3は、異なる反応時間と、ガリウムに対する亜鉛の3つの異なる比率とを用いて得られたZnGaNナノ結晶について、PL発光波長のピークの変化を示している。この結果は、特定の光学特性(例えば、所望の発光波長のピーク)を有するナノ結晶が、溶液からナノ結晶を回収する前の反応時間を適切に選択すること、および、合成反応系中の亜鉛およびガリウムの量を適切に選択することによって得られることを示している。一例として、略450nmの発光波長のピーク(青色領域のスペクトル)を有するナノ粒子を製造したいと考えている人は、図3から、実施例1に記載されているようにZnGaNナノ粒子を製造することによって所望のナノ粒子を実現し得ることが理解できる。つまり、ナノ粒子におけるGa:Znの比率が3:1になるように構成成分の量を選択するとともに、反応を開始してから略35分後に反応混合物からサンプルを回収すればよい。
【0123】
反応成分におけるGa:Znの比率を4:1として製造される、フォトルミネッセンス量子収量の値が45%であるナノ結晶は、反応時間を40分間にすることによって得られた。
【0124】
それ故に、本発明は、極めて発光特性が良い亜鉛ガリウム窒化物ナノ結晶、または、より一般的に極めて発光特性が良いII−III−N化合物半導体ファミリーのナノ結晶を製造することを可能にする。
【0125】
〔実施例2〕コロイド状のZnInN半導体ナノ結晶
ヨウ化インジウム(300mg、0.6mmol)、ナトリウムアミド(500mg、12.8mmol)、ヘキサデカンチオール(308μL、10mmol)、ステアリン酸亜鉛(379mg、0.6mmol)およびジフェニルエーテル(20mL)を250℃まで急速に加熱し、当該温度にて維持した。上記反応において、ヨウ化インジウムは、III族に属する金属(インジウム)を供給し、ナトリウムアミドは、窒素原子を供給し、ヘキサデカンチオールは、電子供与基を有するキャッピング試薬として機能し、ステアリン酸亜鉛は、II族に属する金属(亜鉛)を供給し、ジフェニルエーテルは、溶媒として機能する。60分間の反応時間の間に、反応混合物の一部からなるサンプルを複数個分取した(1サンプルあたり、0.25mL)。シクロヘキサン(3mL)を用いて上記サンプルを希釈した後、遠心分離によって、不溶性物質を除去した。得られた透明の溶液について、PL発光分光(PL emission spectroscopy)を解析したところ、図4に示すように、反応が進行するにしたがって、500nm−850nmの最大発光波長が変化した。(図4の最も左側の発光スペクトルは、反応を開始してから略5分後に回収した反応混合物のサンプルから得られた発光スペクトルである。他の発光スペクトルは、反応を開始してから略10分後、略15分後、略20分後、略25分後、略35分後および略60分後に回収した反応混合物のサンプルから得られた発光スペクトルである。)発光スペクトルのピークは、最大強度の半分における全幅が、100nmのオーダーである。
【0126】
このような反応系から回収したサンプルに対してUV光源を用いて光を照射したところ、サンプルが可視領域の光を発しているので、裸眼にて容易に発光を観察することができた。このことは、本発明によって得られたZnInNナノ構造体が高いフォトルミネッセンス量子収量を有していることを示している。
【0127】
これらのサンプルに対応するPL発光スペクトルを図4に示す。反応開始後略1時間までの時間に回収したサンプルの発光スペクトルは、実質的に可視領域全体に広がっているとともに、赤外領域にまで及んでいる。したがって、溶液からナノ結晶を回収する前の反応時間を適切に選択することによって、特定の光学特性(例えば、所望の発光波長のピーク)を有するナノ結晶を得ることが可能になる。
【0128】
この反応から回収したサンプルのフォトルミネッセンス量子収量を測定したところ、10%の値であった。
【0129】
同様の合成方法を用いて、幾つかの別のZnInNナノ結晶化合物を製造した。例えば、異なる量のインジウムと亜鉛とを含む亜鉛インジウム窒化物の化合物を製造するために、ステアリン酸亜鉛に対するヨウ化インジウムの比率を変えた。図5に、インジウムに対する亜鉛の比率を変えるとともに、反応時間を変えて製造したZnInNナノ結晶における、PL発光波長のピークの変化を示す。当該結果は、溶液からナノ結晶を回収する前の反応時間を適切に選択すること、および、合成反応における亜鉛の量とインジウムの量とを適切に選択することによって、特定の光学特性(例えば、所望の発光波長のピーク)を有するナノ結晶を得ることが可能になることを示している。
【0130】
In:Znの比率を1:4として製造される、フォトルミネッセンス量子収量の値が30%であるナノ結晶は、反応時間を20分間にすることによって得られた。
【0131】
それ故に、本発明は、極めて発光特性が良い亜鉛インジウム窒化物ナノ結晶、または、より一般的に極めて発光特性が良いII−III−N化合物半導体ファミリーのナノ結晶を製造することを可能にする。
【0132】
〔実施例3〕コロイド状のZnAlN半導体ナノ結晶
ヨウ化アルミニウム(102mg、0.25mmol)、ナトリウムアミド(468mg、12mmol)、ヘキサデカンチオール(259μL、10mmol)、ステアリン酸亜鉛(474mg、0.75mmol)および1−オクタデセン(25mL)を250℃まで急速に加熱し、当該温度にて維持した。上記反応において、ヨウ化アルミニウムは、III族に属する金属(アルミニウム)を供給し、ナトリウムアミドは、窒素原子を供給し、ヘキサデカンチオールは、電子供与基を有するキャッピング試薬として機能し、ステアリン酸亜鉛は、II族に属する金属(亜鉛)を供給し、1−オクタデセンは、溶媒として機能する。60分間の反応時間の間に、反応混合物の一部からなるサンプルを複数個分取した(1サンプルあたり、0.25mL)。トルエン(3mL)を用いて上記サンプルを希釈した後、遠心分離によって、不溶性物質を除去した。得られた透明の溶液を、吸光光度法および発光分光法によって解析したところ、図6に示すように、反応が進行するにしたがって、420nm−950nmの最大発光波長が変化した。発光スペクトルのピークは、最大強度の半分における全幅が、100nmのオーダーである。
【0133】
このような反応系から回収したサンプルに対してUV光源を用いて光を照射したところ、サンプルが可視領域の光を発しているので、裸眼にて容易に発光を観察することができた。このことは、本発明によって得られたZnAlNナノ構造体が高いフォトルミネッセンス量子収量を有していることを示している。
【0134】
これらのサンプルに対応する発光スペクトルを図6に示す。図6の最も左側の発光スペクトルは、反応を開始してから2、3分後に回収した反応混合物のサンプルから得られた発光スペクトルである。図6の最も右側の発光スペクトルは、反応を開始してから略60分後に回収した反応混合物のサンプルから得られた発光スペクトルである。最も左側の発光スペクトルと最も右側の発光スペクトルとの間の発光スペクトルは、複数の中間の時間に回収した反応混合物のサンプルから得られた発光スペクトルである。反応開始後略1時間までの時間に回収したサンプルの発光スペクトルは、紫外領域から可視領域に広がっているとともに、赤外領域にまで及んでいる。したがって、溶液からナノ結晶を回収する前の反応時間を適切に選択することによって、特定の光学特性(例えば、所望の発光波長のピーク)を有するナノ結晶を得ることが可能になる。
【0135】
この反応から回収したサンプルのフォトルミネッセンス量子収量を測定したところ、55%よりも大きな値であった。
【0136】
図8の(a)は、当該実施例に記載の方法によって得られたZnAlNナノ粒子の透過電子顕微鏡の像である。当該ナノ粒子は、略3nmの寸法(dimension)を有している。図8の(a)に示す像は、反応を開始してから略12分後に回収した反応混合物のサンプルから得られた像である。
【0137】
図8の(b)は、当該実施例に記載の方法によって得られたZnAlNナノ粒子の透過電子顕微鏡の第2の像である。図8の(b)に示す像は、反応を開始してから略60分後に回収した反応混合物のサンプルから得られた像である。図8の(b)に示すナノ粒子は、略5nmの寸法を有しており、図8の(a)に示す略3nmの寸法を有するナノ粒子と比較して大きい。
【0138】
本明細書に記載した方法は、反応時間を長くすることによって、5nmよりも大きな寸法を有するナノ粒子の製造にも用いられ得る。しかしながら、本発明のナノ粒子の多くの用途を考慮すれば、ナノ粒子は、可視領域のスペクトルの光を放射することが好ましく、そのためには、ナノ粒子の寸法は一般的に5nm以下である。5nmよりも大きな寸法を有するナノ粒子は、多くの場合、発光波長のピークが750nm以上である。また、5nmよりも大きな寸法を有するナノ粒子を製造するためには、より長い反応時間を必要とするのみならず、より多くの化学原料を必要とする。
【0139】
それ故に、本発明は、極めて発光特性が良い亜鉛アルミニウム窒化物ナノ結晶、または、より一般的に極めて発光特性が良いII−III−V化合物半導体ファミリーのナノ結晶を製造することを可能にする。
【0140】
〔実施例4〕コロイド状のMgInN半導体ナノ結晶
ステアリン酸亜鉛の代わりにステアリン酸マグネシウムを初発材料として用いたこと以外は、実施例2に記載された方法と同様の方法によって、MgInNナノ結晶を製造した。
【0141】
〔実施例5〕コロイド状のZnN半導体ナノ結晶
ナトリウムアミド(500mg、12.8mmol)、ステアリン酸亜鉛(379mg、0.6mmol)および1−オクタデセン(20mL)を250℃まで急速に加熱し、当該温度にて維持した。上記反応において、ナトリウムアミドは、窒素原子を供給し、ステアリン酸亜鉛は、II族に属する金属(亜鉛)を供給し、1−オクタデセンは、溶媒として機能する。60分間の反応時間の間に、反応混合物の一部からなるサンプルを複数個分取した(1サンプルあたり、0.25mL)。トルエン(3mL)を用いて上記サンプルを希釈した後、遠心分離によって、不溶性物質を除去した。得られた透明の溶液を、PL発光分光によって解析したところ、図7に示すように、反応が進行するにしたがって、450nm−850nmの最大発光波長が変化した。(図7の最も左側の発光スペクトルは、反応を開始してから2、3分後に回収した反応混合物のサンプルから得られた発光スペクトルであり、図7の最も右側の発光スペクトルは、反応を開始してから略60分後に回収した反応混合物のサンプルから得られた発光スペクトルである。最も左側の発光スペクトルと最も右側の発光スペクトルとの間の発光スペクトルは、複数の中間の時間に回収した反応混合物のサンプルから得られた発光スペクトルである。)発光スペクトルのピークは、最大強度の半分における全幅が、100nmのオーダーである。
【0142】
このような反応系から回収したサンプルに対してUV光源を用いて光を照射したところ、初期のステージのサンプルは可視領域の光を発しているので、裸眼にて容易に発光を観察することができた。このことは、本発明によって得られたZnNナノ構造体が高いフォトルミネッセンス量子収量を有していることを示している。
【0143】
これらのサンプルに対応する発光スペクトルを図7に示す。反応開始後略1時間までの時間に回収したサンプルの発光スペクトルは、紫外領域から可視領域全体に広がっているとともに、赤外領域にまで及んでいる。したがって、溶液からナノ結晶を回収する前の反応時間を適切に選択することによって、特定の光学特性(例えば、所望の発光波長のピーク)を有するナノ結晶を得ることが可能になる。
【0144】
この反応から回収したサンプルのフォトルミネッセンス量子収量を測定したところ、25%の値であった。
【0145】
それ故に、本発明は、極めて良好な発光特性と結晶特性とを有する亜鉛窒化物ナノ結晶、特に極めて良好な発光特性と結晶特性とを有するII−N化合物半導体ファミリーのナノ結晶を製造することを可能にする。
【0146】
〔実施例6〕ZnInGaNのコアとZnGaNのシェルとを備えた、コロイド状の半導体ナノ結晶
ヨウ化ガリウム(113mg、0.25mmol)、ヨウ化インジウム(124mg、0.25mmol)、ナトリウムアミド(390mg、10mmol)、ヘキサデカンチオール(153μL、0.5mmol)、ステアリン酸亜鉛(316mg、0.5mmol)および1−オクタデセン(40mL)を225℃にまで急速に加熱した。20分後に、混合物を室温にまで冷却するとともに、当該混合物を遠心分離することによって、不溶性物質を除去した。当該混合物は、ZnInGaNナノ粒子であるコアのみを含んでいる。上記ナノ粒子のコアの周りにZnGaNのシェルを形成するために、20mLのコア溶液を、更にヨウ化ガリウム(113mg、0.25mmol)、ステアリン酸亜鉛(316mg)およびナトリウムアミド(185mg、5mmol)にて処理した後、225℃にて20分間加熱した。
【0147】
このような反応系から回収したサンプルに対してUV光源を用いて光を照射したところ、サンプルが可視領域の光を発しているので、裸眼にて容易に発光を観察することができた。このことは、本発明によって得られたZnInGaN_ZnGaNナノ構造体(ZnInGaNのコアと、ZnGaNのシェルとを有するナノ構造体)が、高いフォトルミネッセンス量子収量を有していることを示している。この反応から回収したサンプルのフォトルミネッセンス量子収量を測定したところ、30%の値であった。
【0148】
〔実施例7〕ZnInGaNのコアとZnSのシェルとを備えた、コロイド状の半導体ナノ結晶
ヨウ化ガリウム(113mg、0.25mmol)、ヨウ化インジウム(124mg、0.25mmol)、ナトリウムアミド(390mg、10mmol)、ヘキサデカンチオール(153μL、0.5mmol)、ステアリン酸亜鉛(316mg、0.5mmol)および1−オクタデセン(40mL)を225℃にまで急速に加熱した。20分後に、混合物を室温にまで冷却するとともに、当該混合物を遠心分離することによって、不溶性物質を除去した。当該混合物は、ZnInGaNナノ粒子であるコアのみを含んでいる。上記ナノ粒子のコアの周りにZnSのシェルを形成するために、20mLのコア溶液を、更にヨウ化ガリウム(113mg、0.25mmol)、ステアリン酸亜鉛(316mg)およびナトリウムアミド(185mg、5mmol)にて処理した後、225℃にて20分間加熱した。デカンテーションによって、着色した溶液を固体から分離した後、4mLのサンプルを、175℃にて40分間、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(100mg、0.27mmol)にて処理した。
【0149】
このような反応系から回収したサンプルに対してUV光源を用いて光を照射したところ、サンプルが可視領域の光を発しているので、裸眼にて容易に発光を観察することができた。このことは、本発明によって得られたZnInGaN_ZnSナノ構造体(ZnInGaNのコアと、ZnSのシェルとを有するナノ構造体)が、高いフォトルミネッセンス量子収量を有していることを示している。この反応から回収したサンプルのフォトルミネッセンス量子収量を測定したところ、23%の値であった。
【0150】
〔実施例8〕ZnInGaNのコアと、ZnGaNおよびZnSの2つのシェルとを備えた、コロイド状の半導体ナノ結晶
ヨウ化ガリウム(113mg、0.25mmol)、ヨウ化インジウム(124mg、0.25mmol)、ナトリウムアミド(390mg、10mmol)、ヘキサデカンチオール(153μL、0.5mmol)、ステアリン酸亜鉛(316mg、0.5mmol)および1−オクタデセン(40mL)を225℃にまで急速に加熱した。20分後に、混合物を室温にまで冷却するとともに、当該混合物を遠心分離することによって、不溶性物質を除去した。当該混合物は、ZnInGaNナノ粒子であるコアのみを含んでいる。上記ナノ粒子のコアの周りに内側のシェルであるZnGaNを形成するために、20mLの溶液産物を、更にヨウ化ガリウム(113mg、0.25mmol)およびナトリウムアミド(185mg、5mmol)にて処理した後、225℃にて20分間加熱した。溶液産物を遠心分離することによって不溶性物質を除去した後、外側のシェルであるZnSを形成するために、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(500mg、1.35mmol)にて処理するとともに、175℃にて60分間加熱した。
【0151】
このような反応系から回収したサンプルに対してUV光源を用いて光を照射したところ、サンプルが可視領域の光を発しているので、裸眼にて容易に発光を観察することができた。このことは、本発明によって得られたZnInGaN_ZnGaN_ZnSナノ構造体(ZnInGaNのコアと、ZnGaNおよびZnSの2つのシェルとを有するナノ構造体)が、高いフォトルミネッセンス量子収量を有していることを示している。この反応から回収したサンプルのフォトルミネッセンス量子収量を測定したところ、22%の値であった。
【0152】
実施例6〜8において、これらの実施例のコア−シェルナノ粒子におけるコアおよび任意のシェルは、II−III−N材料またはII−N材料によって形成されている。本発明の更なる用途では、本発明は、コアがII−III−N材料またはII−N材料によって形成されていないコア−シェルナノ粒子において、II−III−N材料またはII−N材料によって形成されているシェルを提供するために用いられ得る。
【0153】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明は、光電子デバイス(例えば、太陽電池、発光ダイオード、レーザーダイオード)の構成として、また、LEDおよび発光型ELディスプレイの発光性のリン光体(phosphor)材料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式II−Nまたは一般式II−III−Nにて示される第1の化合物にて形成されている半導体ナノ粒子であって、
上記IIは、周期表のII族に属する1つ以上の元素であり、上記IIIは、周期表のIII族に属する1つ以上の元素である半導体ナノ粒子。
【請求項2】
上記半導体ナノ粒子は、一般式II−III−Nにて示される第1の化合物にて形成されている請求項1に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項3】
上記半導体ナノ粒子は、一般式II−Nにて示される第1の化合物にて形成されている請求項1に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項4】
上記半導体ナノ粒子は、ZnGaNにて形成されている請求項2に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項5】
上記半導体ナノ粒子は、ZnInNにて形成されている請求項2に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項6】
上記半導体ナノ粒子は、ZnAlNにて形成されている請求項2に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項7】
上記半導体ナノ粒子は、ZnGaInNにて形成されている請求項2に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項8】
上記半導体ナノ粒子は、MgInNにて形成されている請求項2に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項9】
上記半導体ナノ粒子は、ZnNにて形成されている請求項3に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項10】
上記一般式II−Nまたは一般式II−III−Nにて示される第1の化合物は、構造が単結晶である請求項1〜9の何れか1項に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項11】
上記一般式II−Nまたは一般式II−III−Nにて示される第1の化合物は、構造が多結晶である請求項1〜9の何れか1項に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項12】
上記一般式II−Nまたは一般式II−III−Nにて示される第1の化合物は、構造がアモルファスである請求項1〜9の何れか1項に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項13】
上記一般式II−Nまたは一般式II−III−Nにて示される第1の化合物は、上記半導体ナノ粒子のコアを形成し、
上記半導体ナノ粒子は、更に、上記コアの周りに配置された層を有し、
上記層は、上記一般式II−Nまたは一般式II−III−Nにて示される第1の化合物とは異なる組成の半導体材料にて形成されている請求項1〜12の何れか1項に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項14】
上記層は、一般式II−Nまたは一般式II−III−Nにて示される第2の化合物にて形成されており、
上記一般式II−Nまたは一般式II−III−Nにて示される第2の化合物は、上記一般式II−Nまたは一般式II−III−Nにて示される第1の化合物とは異なる組成である請求項13に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項15】
上記半導体ナノ粒子は、光を放射するものである請求項1〜14の何れか1項に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項16】
上記半導体ナノ粒子は、少なくとも5%の光ルミネセンス量子収量を有している請求項15に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項17】
上記半導体ナノ粒子は、少なくとも20%の光ルミネセンス量子収量を有している請求項15に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項18】
上記半導体ナノ粒子は、少なくとも50%の光ルミネセンス量子収量を有している請求項15に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項19】
II族に属する元素の少なくとも1つの供給源と、III族に属する元素の少なくとも1つの供給源と、窒素の少なくとも1つの供給源と、を反応させる工程を有する半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項20】
上記半導体ナノ粒子は、一般式II−III−Nにて示される材料にて形成されており、
上記IIは、周期表のII族に属する1つ以上の元素であり、上記IIIは、周期表のIII族に属する1つ以上の元素である請求項19に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項21】
上記II族に属する元素の少なくとも1つの供給源と、III族に属する元素の少なくとも1つの供給源と、窒素の少なくとも1つの供給源と、を反応させる工程が、溶媒中で行われる請求項19または20に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項22】
II族に属する元素の少なくとも1つの供給源と、窒素の少なくとも1つの供給源と、を反応させる工程を有する半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項23】
上記半導体ナノ粒子は、一般式II−Nにて示される材料にて形成されており、
上記IIは、周期表のII族に属する1つ以上の元素である請求項22に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項24】
上記II族に属する元素の少なくとも1つの供給源と、窒素の少なくとも1つの供給源と、を反応させる工程が、溶媒中で行われる請求項23に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項25】
上記II族に属する元素の少なくとも1つの供給源は、II族に属する元素のカルボン酸塩を含む請求項19〜24の何れか1項に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項26】
上記II族に属する元素の少なくとも1つの供給源は、ステアリン酸亜鉛を含む請求項25に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項27】
上記窒素の少なくとも1つの供給源は、アミドを含む請求項19〜26の何れか1項に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−31057(P2012−31057A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165929(P2011−165929)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】