説明

III族窒化物半導体製造装置

【課題】圧力容器内部に反応容器を有する二重容器を用いた、Naフラックス法によるIII 族窒化物半導体製造装置において、Naが酸化しないように圧力容器内に反応容器を設置できるIII 族窒化物半導体製造装置を提供する。
【解決手段】III 族窒化物半導体製造装置1は、圧力容器101と、圧力容器101の内部に設置された反応容器102と、圧力容器101の内部に設置され、反応容器102を加熱する加熱装置104a、bと、内部がアルゴンガスによって満たされたグローブボックスとで構成されている。圧力容器101とグローブボックスは、ゲートバルブ105を介して接続されている。これにより、大型で再利用可能な反応容器を、Naを酸化させることなく圧力容器内に設置できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III 族窒化物半導体製造装置に関するもので、特に、Naフラックス法によるIII 族窒化物半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、Naフラックス法によるIII 族窒化物半導体の結晶成長方法が知られている。これは、Na(ナトリウム)とGa(ガリウム)を融解して800℃程度に保ち、100気圧程度の高圧下で窒素と反応させて、GaN(窒化ガリウム)を種結晶表面に結晶成長させるものである。
【0003】
このNaフラックス法によって低不純物なGaNを得るためには、高純度なNaを必要とするが、Naは反応性が高く、酸化されやすい。そのため、秤量などの作業はアルゴンガスなどの不活性ガスで満たされたグローブボックス内で行っている。特許文献1では、NaとGaの融解溶液を保持する反応容器をIII 族窒化物半導体製造装置から切り離し、反応容器をグローブボックス内に入れて作業を行うことが示されている。グローブボックス内では、坩堝にGaとNaを入れ、坩堝を反応容器内に設置し、密閉して外部と遮断する。その後、反応容器をグローブボックスから取り出し、製造装置に組み込む。
【0004】
また、特許文献2に記載のNaフラックス法に用いるIII 族窒化物半導体製造装置は、圧力容器内部に反応容器が配置された二重容器となっている。このような構成にすると、反応容器に高耐圧なものを用いる必要がなくなるため、コストを抑えることができる。
【特許文献1】特開2003−286099
【特許文献2】特開2001−58900
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
反応容器として小型のものを用いる場合は、使い捨てSUS(ステンレス鋼)製反応容器を用いて特許文献1のように作業を行っていた。使い捨てとするのは、反応容器を完全密閉する必要性からである。一方、反応容器として大型のものを用いる場合は、使い捨てSUS製反応容器は高価となるため、反応容器は再利用できるものが求められる。しかし、再利用可能な反応容器では完全密閉が不可能であり、特許文献1の方法ではグローブボックスから取り出して製造装置に組み込むまでの間にNaが酸化されてしまう。
【0006】
製造装置全体をグローブボックス内に入れることも考えられるが、圧力容器内部に反応容器が配置された二重容器の製造装置は大型であるため、グローブボックスも大型のものが必要となり、経済的ではない。
【0007】
そこで本発明の目的は、圧力容器内部に反応容器を有する二重容器を用いたIII 族窒化物半導体製造装置において、Naが酸化しないように圧力容器内に反応容器を設置できるIII 族窒化物半導体製造装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、III 族金属とそのIII 族金属とは異なる金属であるフラックスとを融解した状態で保持する反応容器と、反応容器を加熱する加熱装置と、反応容器と加熱装置とを内部に有する圧力容器と、で構成されたIII 族窒化物半導体製造装置において、フラックスと反応しない気体によって内部が保持されているグローブボックスを有し、圧力容器とグローブボックスとが連結されていることを特徴とするIII 族窒化物半導体製造装置である。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、圧力容器とグローブボックスは、ゲートバルブまたは扉を介して連結されていることを特徴とするIII 族窒化物半導体製造装置である。
【0010】
第3の発明は、III 族金属とそのIII 族金属とは異なる金属であるフラックスとを融解した状態で保持する反応容器と、反応容器を加熱する加熱装置と、反応容器と加熱装置とを内部に有する圧力容器と、で構成されたIII 族窒化物半導体製造装置において、フラックスと反応しない気体によって内部が保持されているグローブボックスを有し、圧力容器は、蓋によって開閉される開閉部を有し、圧力容器とグローブボックスは、蓋と開閉部が前記グローブボックス内となるように接続されていることを特徴とするIII 族窒化物半導体製造装置である。
【0011】
第1、3の発明において、フラックスには、ナトリウムやカリウムを用いることができ、カルシウム等のアルカリ土類金属やリチウムなどを含んでもよい。また、フラックスと反応しない気体とは、たとえばアルゴンガスなどの不活性ガスである。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において、反応容器は蓋の圧力容器側に接続し、反応容器をグローブボックス内から圧力容器内に配置させる移動装置を有することを特徴とするIII 族窒化物半導体製造装置である。ここで、反応容器と蓋は直接的に接続する必要はなく、たとえば、反応容器に窒素を供給する配管を介して反応容器と蓋が接続していてもよい。
【0013】
第5の発明は、第4の発明において、圧力容器とグローブボックスは固定され、移動装置は反応容器と接続し、移動装置が反応容器を移動させることにより、反応容器をグローブボックス内から圧力容器内に配置させることを特徴とするIII 族窒化物半導体製造装置である。
【0014】
第6の発明は、第4の発明おいて、反応容器および蓋は固定され、移動装置は、グローブボックスまたは圧力容器と接続し、移動装置が圧力容器を移動させることにより、反応容器をグローブボックス内から圧力容器内に配置させることを特徴とするIII 族窒化物半導体製造装置である。
【0015】
第7の発明は、第4の発明において、反応容器とグローブボックスは固定され、圧力容器とグローブボックスは、圧力容器の開閉部がグローブボックス内で移動できるように接続されていて、移動装置は、圧力容器と接続し、移動装置が圧力容器を移動させることにより、反応容器をグローブボックス内から圧力容器内に配置させることを特徴とするIII 族窒化物半導体製造装置である。
【0016】
第8の発明は、第3の発明から第7の発明において、圧力容器は、グローブボックスに対して水平に接続していることを特徴とするIII 族窒化物半導体製造装置である。
【0017】
第9の発明は、第3の発明から第7の発明において、圧力容器は、グローブボックスに対して垂直に接続していることを特徴とするIII 族窒化物半導体製造装置である。
【0018】
第10の発明は、第1の発明から第9の発明において、反応容器および加熱装置は、断熱材により覆われていることを特徴とするIII 族窒化物半導体製造装置である。
【0019】
第11の発明は、第1の発明から第10の発明において、III 族金属はガリウムであり、III 族金属とは異なる金属はナトリウムであることを特徴とするIII 族窒化物半導体製造装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明のIII 族窒化物半導体製造装置によると、グローブボックス内と圧力容器内を同一の雰囲気に保持することができるので、グローブボックス内で秤量後にフラックスを酸化等させることなく反応容器を圧力容器内に配置できる。そのため、反応容器を完全密閉する必要がなく、大型で再利用可能な反応容器を用いることができる。その結果、本発明のIII 族窒化物半導体製造装置により大型で高品質なIII 族窒化物半導体を低コストに製造することができる。また、小型のグローブボックスを用いることができる。さらに、圧力容器内に反応容器を有する構造であるため、反応容器は高耐圧なものを用いる必要がなく、低コストな反応容器を用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照しながら説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
図1は、実施例1のIII 族窒化物半導体製造装置1の構成を示す模式図であり、III 族窒化物半導体製造装置1は、フラックス法によるIII 族窒化物半導体の製造に用いるものである。以下、III 族窒化物半導体製造装置1の構成について説明する。
【0023】
III 族窒化物半導体製造装置1は、主として、圧力容器101と、圧力容器101の内部に設置された反応容器102と、圧力容器101の内部に設置され、反応容器102を加熱する加熱装置104a、bと、内部がアルゴンガスによって満たされたグローブボックス103とで構成されている。圧力容器101とグローブボックス103とは、開閉可能なゲートバルブ105により連結されている。これにより、ゲートバルブ105を開いているときは、圧力容器101内とグローブボックス103内の雰囲気を同一に保持することができる。加熱装置104a、bのヒータ材としては、Fe−Al−Cr、Ta、Mo、W、W−Reなどを用いる。
【0024】
圧力容器101内部には、反応容器102と加熱装置104a、bを囲う断熱材106が配置されている。この断熱材106により効率よく反応容器102を加熱することができ、圧力容器101に高耐熱なものは必要なくなる。反応容器102には、反応容器102内に窒素を供給する供給する供給管107と、反応容器102からの排気のための排出管108とが接続されていて、圧力容器101にも、供給管109と、排気のための排出管110とが接続されている。また、供給管107、109は、図示しないボンベに接続している。
【0025】
また、圧力容器101内部には、円柱状の可動式トレイ111が設置されている。可動式トレイ111の上には、GaとフラックスであるNaとの混合融液および種結晶の入れられた坩堝112が配置される。可動式トレイ111の下部は、ねじのようならせん状の構造であり、可動部113により可動式トレイ111を昇降させることができる。また、可動式トレイ111を上昇させることで、その可動式トレイ111によって反応容器102を封止することができる。
【0026】
次に、反応容器102と可動式トレイ111の構造について詳しく説明する。
【0027】
図2は、反応容器102の構造を詳細に示した図である。反応容器102の下部は円形の開口部102aが設けられ、断熱材106およびその台座117は、開口部102aを覆っていない。その開口部102aにおける台座117の断面には、断面に沿って円環状の溝117aが設けられている。溝117aにはOリング114が装着されている。一方、図3は、可動式トレイ111の構造を詳細に示した図である。可動式トレイ111の上部側面には円環状の溝111aが設けられ、溝111aにはOリング115が装着されている。また、その溝111aの上部であって可動式トレイ111の一部は断熱材116により構成されている。図4は、可動式トレイ111を上昇させ、可動式トレイ111によって反応容器102を封止した状態を示した図である。反応容器102は、開口部102aの下部において2つのOリング114、115によって封止され、反応容器102内部は圧力容器101内部から遮断されている。また断熱材116は、反応容器102内の熱が可動式トレイ111を介して反応容器102外へ伝わるのを防止している。
【0028】
次に、III 族窒化物半導体製造装置1によるGaNの製造工程とともに、III 族窒化物半導体製造装置1の動作について説明する。
【0029】
まず、グローブボックス103内でGa(ガリウム)やフラックス材であるNa(ナトリウム)、種結晶を秤量し、それらを坩堝112に入れる作業を行う。また、圧力容器101内部は供給管109よりアルゴンガスを供給して満たしておく。そして、ゲートバルブ105を開けてその坩堝112を可動式トレイ111に置く。これにより、坩堝112内のNaを酸化等させることなくグローブボックス103から圧力容器101内部に坩堝112を移すことができる。
【0030】
なお、上記工程では坩堝112を可動式トレイ111に置いているが、グローブボックス103内で坩堝112を反応容器102内に設置したあと、反応容器102を可動式トレイ111に置くようにしてもよい。また、圧力容器101とグローブボックス103はゲートバルブ105を介して接続しているが、扉を介して接続していてもよい。
【0031】
次に、可動式トレイ111を上昇させて坩堝112を反応容器102内部に運ぶとともに、可動式トレイ111によって反応容器102を封止し、ゲートバルブ105を閉じ、圧力容器101内部を真空引きする。そして、供給管107、109を通して圧力容器101内部および反応容器102内部に窒素を供給し、加圧する。この時、反応容器102内部の圧力は、圧力容器101内部の圧力よりも若干高くすることが望ましい。圧力容器101内の不純物が反応容器102内に進入することを防ぐことができるからである。
【0032】
次に、加熱装置104a、bにより反応容器102を加熱し、GaN結晶が成長する温度まで上昇させ、結晶成長を開始する。ここで、可動式トレイ111は断熱機能を有しているため、可動式トレイ111を介した反応容器102から圧力容器101への熱の伝導は抑制される。
【0033】
結晶成長の終了後は、逆の工程によりグローブボックス103内に坩堝112を取り出す。
【0034】
このIII 族窒化物半導体製造装置1の構成によると、Naを酸化等させることなく反応容器102に坩堝112を設置することができるため、反応容器102は完全密閉する必要がなく、反応容器102に大型で再利用可能なものを用いることができる。その結果、大型で高品質なIII 族窒化物半導体を製造することができ、製造コストを抑えることができる。また、グローブボックス103も小さなものを用いることができる。さらに、圧力容器101内部に反応容器102を有する構造であるため、反応容器102に高耐圧なものを用いる必要がなく、反応容器102のコストを抑えることができる。
【実施例2】
【0035】
図5は、実施例2のIII 族窒化物半導体製造装置2の構成を示す模式図である。以下、その構成について説明する。
【0036】
III 族窒化物半導体製造装置2は、主として、横型の圧力容器201と、圧力容器201の内部に設置される反応容器202と、圧力容器201の内部に設置される反応容器202を加熱する加熱装置204a、bと、内部がアルゴンガスによって満たされたグローブボックス203とで構成されている。
【0037】
圧力容器201は、フランジ蓋201aによって圧力容器201の開閉部221を開閉することができる。また、圧力容器201とグローブボックス203は、圧力容器201がグローブボックス203に対して水平に、かつ、圧力容器201の開閉部221がグローブボックス203内部側となるように接続している。フランジ蓋201aとグローブボックス203は、ベローズ222によって接続されていて、フランジ蓋201aのグローブボックス203外部側には移動装置220が接続している。移動装置220によってベローズ222を伸縮させてフランジ蓋201aを移動させ、開閉部221をフランジ蓋201aのボルト223により開閉する。この構成により、圧力容器201が開いている時にはグローブボックス203内と圧力容器201内とを同一の雰囲気に保持することができ、閉じているときには、グローブボックス203内と圧力容器201内を異なる雰囲気とすることができる。
【0038】
フランジ蓋201aのグローブボックス203内部側には、反応容器202を配置するトレイ211がフランジ蓋201aと接続して設置されている。トレイ211は断熱材からなる。また、トレイ211上に配置される反応容器202、および加熱装置204a、bは、断熱材206により囲われている。このため、フランジ蓋201aを移動装置220により移動させて圧力容器201を閉じたときには、断熱材206で覆われた反応容器202、加熱装置204a、bは圧力容器201内部に置かれることとなる。
【0039】
反応容器202には、反応容器202内に窒素を供給する供給する供給管207と、反応容器202からの排気のための排出管208とが接続されていて、圧力容器201にも、供給管209と、排気のための排出管210とが接続されている。また、供給管207、排出管208を介してフランジ蓋201aと反応容器202は接続している。また、供給管207は、図示しないボンベに接続していて、フランジ蓋201aの移動時には、その移動に付随して供給管207、ボンベも移動する。
【0040】
このIII 族窒化物半導体製造装置2でも、実施例1の場合と同様に、圧力容器201内部に反応容器202を有する構造のため、反応容器202に高耐圧なものを用いる必要がなく、反応容器202と加熱装置204a、bは断熱材206に囲われているため、圧力容器201は高耐熱性を必要としない。
【0041】
次に、III 族窒化物半導体製造装置2によるGaNの製造工程とともに、III 族窒化物半導体製造装置2の動作について説明する。
【0042】
まず、グローブボックス203内でGa、フラックス材であるNa、種結晶を秤量し、それらを坩堝212に入れる作業を行う。その坩堝212を反応容器202内に入れ、トレイ211上に配置する。ここで、圧力容器201は開いておき、圧力容器201内をグローブボックス203内と同様にアルゴンガスによって満たし、同一の雰囲気とする。そして、反応容器202、加熱装置204a、bを断熱材206で覆う。その後、移動装置220により、断熱材206で覆われた反応容器202、加熱装置204a、bを圧力容器201内部に移動させ、フランジ蓋201aのボルト223を閉めて圧力容器201の開閉部221を閉じる。
【0043】
次に、圧力容器201内部を真空引きする。そして、供給管207、209を通して圧力容器201内部および反応容器202内部に窒素を供給し、加圧する。次に、加熱装置204a、bにより反応容器202を加熱し、GaN結晶が成長する温度まで上昇させ、結晶成長を開始する。
【0044】
結晶成長の終了後は、逆の工程によりグローブボックス203内に坩堝212を取り出す。
【0045】
このように、III 族窒化物半導体製造装置2に置いても、III 族窒化物半導体製造装置1と同様に、Naを酸化等させることなく圧力容器201内の反応容器202に坩堝212を設置することができる。そのため、反応容器202に大型で再利用可能なものを用いることができ、大型で高品質なIII 族窒化物半導体を低コストに製造することができる。
【0046】
実施例2では、移動装置220によりベローズ222を伸縮させてフランジ蓋201aとともに反応容器202、加熱装置204a、bを移動しているが、逆に、フランジ蓋を固定し、圧力容器を移動装置により移動することで、反応容器202、加熱装置204a、bを圧力容器201内部に入れるようにしてもよい。
【実施例3】
【0047】
図6は、実施例3のIII 族窒化物半導体製造装置3の構成を示す模式図である。以下、その構成について説明する。
【0048】
III 族窒化物半導体製造装置3は、主として、横型の圧力容器301と、圧力容器301の内部に設置される反応容器302と、圧力容器301の内部に設置される反応容器302を加熱する加熱装置304a、bと、内部がアルゴンガスによって満たされたグローブボックス203とで構成されている。
【0049】
圧力容器301は、フランジ蓋301aによって圧力容器301の開閉部321を開閉することができる。圧力容器301がグローブボックス203に対して水平に、かつ、圧力容器301の開閉部321がグローブボックス203内部側となるように接続している点は実施例2と同様であるが、圧力容器301とグローブボックス303はベローズ322により接続されていて、圧力容器301をフランジ蓋301a側に移動することで圧力容器301の開閉が可能となっている。なお、開閉はフランジ蓋301aのボルト323により行う。また、フランジ蓋301aは、グローブボックス303内に接続し固定されている。
【0050】
フランジ蓋301aに接続するトレイ311上には、反応容器302が配置され、反応容器302の側部には加熱装置304a、bが配置されている。また、反応容器302と加熱装置304a、bは断熱材306に覆われている。反応容器302には、反応容器302内に窒素を供給する供給する供給管307と、反応容器302からの排気のための排出管308とが接続されていて、フランジ蓋301aには、圧力容器301内への給気のための供給管309と、圧力容器301からの排気のための排出管310とが接続されている。また、供給管307、排出管308を介してフランジ蓋301aと反応容器302は接続している。
【0051】
圧力容器301は移動装置320と接続し、移動装置320により圧力容器301をフランジ蓋301a側へと移動させることで、圧力容器301は閉じることができ、反応容器302と加熱装置304a、bは圧力容器301内となる。
【0052】
このIII 族窒化物半導体製造装置3でも、実施例2と同様に、Naを酸化等させることなく圧力容器301内の反応容器302に坩堝312を配置することができる。そのため、反応容器302に大型で再利用可能なものを用いることができ、大型で高品質なIII 族窒化物半導体を低コストに製造することができる。
【0053】
実施例2、3では、圧力容器をグローブボックスに対して水平に接続しているが、縦型の圧力容器をグローブボックスに対して垂直に接続するようにしてもよい。
【実施例4】
【0054】
図7は、実施例4のIII 族窒化物半導体製造装置4の構成を示す模式図である。以下、その構成について説明する。
【0055】
III 族窒化物半導体製造装置4は、主として、縦型の圧力容器401と、圧力容器401の内部に設置される反応容器402と、圧力容器401の内部に設置される反応容器402を加熱する加熱装置404a、bと、内部がアルゴンガスによって満たされたグローブボックス403とで構成されている。
【0056】
圧力容器401は、圧力容器401がグローブボックス403に対して垂直に、かつ、圧力容器201の開閉部421がグローブボックス403内部側となるように、グローブボックス403の下部に接続している。フランジ蓋401aとグローブボックス403は、ベローズ422によって接続されていて、フランジ蓋401aのグローブボックス203外部側には移動装置420が接続している。移動装置420によってベローズ422を伸縮させてフランジ蓋201aを上下に移動させることで、圧力容器401の開閉部421をフランジ蓋201aのボルト423により開閉する。
【0057】
反応容器402、加熱装置404a、bは圧力容器401の内部に設置されていて、断熱材406によって側部および底部が覆われている。上部は、開閉部421をフランジ蓋401aにより閉じたときに、フランジ蓋401aのグローブボックス403内側に接続する断熱材の蓋406aによって覆われる。
【0058】
反応容器402の蓋402aには、反応容器402内に窒素を供給する供給する供給管407と、反応容器402からの排気のための排出管408とが接続されていて、圧力容器401には、圧力容器401内への給気のための供給管409と、圧力容器401からの排気のための排出管410とが接続されている。供給管407と排出管408にはバルブ407v、408vが設けられ、そのバルブ407v、408vの部分で分離することで反応容器402の蓋を取り外すことができる。
【0059】
また、グローブボックス403内と反応容器402内の間で坩堝412を昇降させる昇降機423が設置されていて、上昇させた昇降機423に坩堝412を配置したのち、昇降機423を降下させることで、坩堝412をグローブボックス403内から反応容器402内へと運ぶことができる。
【0060】
次に、III 族窒化物半導体製造装置2によるGaNの製造工程とともに、III 族窒化物半導体製造装置2の動作について説明する。
【0061】
まず、移動装置420によりフランジ蓋401aを上昇させて圧力容器401を開き、グローブボックス403内と圧力容器401内をアルゴンガスで満たし、同一の雰囲気としておく。また、坩堝412を配置する昇降機423を上昇させておき、反応容器402の蓋402aは取り外しておく。そして、グローブボックス403内でGa、フラックス材であるNa、種結晶を秤量し、それらを坩堝412に入れる作業を行う。その坩堝412を昇降機423に置き、昇降機423により下降させて反応容器202内に坩堝412を入れる。次に、蓋402aにより反応容器402を閉じ、バルブ407v、408vにより供給管407および排出管408と反応容器402を接続する。その後、移動装置420によりフランジ蓋401aを下降させ、フランジ蓋401aのボルト423を閉めて、圧力容器401を閉じる。この時、反応容器402および加熱装置404a、bの上部は、フランジ蓋401aに接続する断熱材の蓋406aによって覆われる。
【0062】
次に、圧力容器401内部を真空引きする。そして、供給管407、409を通して圧力容器401内部および反応容器402内部に窒素を供給し、加圧する。次に、加熱装置404a、bにより反応容器402を加熱し、GaN結晶が成長する温度まで上昇させ、結晶成長を開始する。
【0063】
結晶成長の終了後は、逆の工程によりグローブボックス403内に坩堝412を取り出す。
【0064】
以上のように、このIII 族窒化物半導体製造装置4においても、Naを酸化等させることなく圧力容器401内の反応容器402に坩堝412を配置することができる。そのため、反応容器402に大型で再利用可能なものを用いることができ、大型で高品質なIII 族窒化物半導体を低コストに製造することができる。また、III 族窒化物半導体製造装置4の構成では、フランジ蓋401aのみを移動するので軽く、その移動が容易であり、供給管407、409、排出管409、410は固定されているため、開閉機構が簡単な構成となる利点がある。
【0065】
なお、実施例4において、断熱材の蓋406aはフランジ蓋401aに接続し、フランジ蓋401aによる開閉に伴い、断熱材406の開閉も行うようになっているが、断熱材の蓋とフランジ蓋とを接続せず、手動により断熱材を開閉するようにしてもよい。
【0066】
また、実施例2〜4では、フランジ蓋と圧力容器本体との開閉をボルトで行う構造としているが、本発明はこのようなボルトによる開閉構造に限るものではなく、ボルトを用いずに開閉する構造(たとえば、圧力容器の開口部とフランジ蓋とをはめ合わせた後、フランジ蓋を回転させることで圧力容器を閉じる構造)であってもよい。
【0067】
また、実施例1〜4では、フラックスとしてNaを用いてGaNを製造する方法を示したが、本発明のIII 族窒化物半導体製造装置は当然にGaN以外のIII 族窒化物半導体の製造にも用いることができる。また、フラックスとしてNa以外にK(カリウム)などを用いることができ、カルシウム等のアルカリ土類金属やリチウムなどが添加されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、III 族窒化物半導体のNaフラックス法による製造に適用でき、III 族窒化物半導体はLEDなどの半導体デバイスの作製に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1のIII 族窒化物半導体製造装置の構成を示す断面図。
【図2】反応容器102の構造を示す図。
【図3】可動式トレイ111の構造を示す図。
【図4】可動式トレイ111によって反応容器102が封止された状態を示す図。
【図5】実施例2のIII 族窒化物半導体製造装置の構成を示す断面図。
【図6】実施例3のIII 族窒化物半導体製造装置の構成を示す断面図。
【図7】実施例4のIII 族窒化物半導体製造装置の構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0070】
1、2、3、4:III 族窒化物半導体製造装置
101、201、301、401:圧力容器
102、202、302、402:反応容器
103、203、303、403:グローブボックス
104a、104b、204a、204b、304a、304b、404a、404b:加熱装置
105:ゲートバルブ
106、206、306、406:断熱材
107、109、207、209、307、309、407、409:供給管
108、110、208、210、308、310、408、410:排出管
112、212、312、412:坩堝
220、320、420:移動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III 族金属とそのIII 族金属とは異なる金属であるフラックスとを融解した状態で保持する反応容器と、前記反応容器を加熱する加熱装置と、前記反応容器と前記加熱装置とを内部に有する圧力容器と、で構成されたIII 族窒化物半導体製造装置において、
前記フラックスと反応しない気体によって内部が保持されているグローブボックスを有し、
前記圧力容器と前記グローブボックスとが連結されていることを特徴とするIII 族窒化物半導体製造装置。
【請求項2】
前記圧力容器と前記グローブボックスは、ゲートバルブまたは扉を介して連結されていることを特徴とする請求項1に記載のIII 族窒化物半導体製造装置。
【請求項3】
III 族金属とそのIII 族金属とは異なる金属であるフラックスとを融解した状態で保持する反応容器と、前記反応容器を加熱する加熱装置と、前記反応容器と前記加熱装置とを内部に有する圧力容器と、で構成されたIII 族窒化物半導体製造装置において、
前記フラックスと反応しない気体によって内部が保持されているグローブボックスを有し、
前記圧力容器は、蓋によって開閉される開閉部を有し、
前記圧力容器とグローブボックスは、前記蓋の少なくとも開閉部側と前記圧力容器の開閉部が前記グローブボックス内となるように接続されている、
ことを特徴とするIII 族窒化物半導体製造装置。
【請求項4】
前記反応容器は前記蓋の前記圧力容器側に接続し、
前記反応容器を前記グローブボックス内から前記圧力容器内に配置させる移動装置を有することを特徴とする請求項3に記載のIII 族窒化物半導体製造装置。
【請求項5】
前記圧力容器とグローブボックスは固定され、
前記移動装置は前記反応容器の一部もしくは全部と接続し、
前記移動装置が前記反応容器の一部もしくは全部を移動させることにより、前記反応容器を前記グローブボックス内から前記圧力容器内に配置させることを特徴とする請求項4に記載のIII 族窒化物半導体製造装置。
【請求項6】
前記反応容器および前記蓋は固定され、
前記移動装置は、前記グローブボックスまたは前記圧力容器と接続し、
前記移動装置が前記圧力容器を移動させることにより、前記反応容器を前記グローブボックス内から前記圧力容器内に配置させることを特徴とする請求項4に記載のIII 族窒化物半導体製造装置。
【請求項7】
前記反応容器と前記グローブボックスは固定され、
前記圧力容器と前記グローブボックスは、前記圧力容器の前記開閉部が前記グローブボックス内で移動できるように接続されていて、
前記移動装置は、前記圧力容器と接続し、
前記移動装置が前記圧力容器を移動させることにより、前記反応容器を前記グローブボックス内から前記圧力容器内に配置させることを特徴とする請求項4に記載のIII 族窒化物半導体製造装置。
【請求項8】
前記圧力容器は、前記グローブボックスに対して水平に接続していることを特徴とする請求項3ないし請求項7のいずれか1項に記載のIII 族窒化物半導体製造装置。
【請求項9】
前記圧力容器は、前記グローブボックスに対して垂直に接続していることを特徴とする請求項3ないし請求項7のいずれか1項に記載のIII 族窒化物半導体製造装置。
【請求項10】
前記反応容器および前記加熱装置は、断熱材により覆われていることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のIII 族窒化物半導体製造装置。
【請求項11】
前記III 族金属はガリウムであり、前記III 族金属とは異なる金属はナトリウムであることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のIII 族窒化物半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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