説明

III族窒化物複合基板およびその評価方法

【課題】III族窒化物支持基板およびIII族窒化物薄膜が実質的に同一の化学組成を有していても、III族窒化物支持基板上にIII族窒化物薄膜が配置されているか否かを評価することができるIII族窒化物複合基板およびその評価方法を提供する。
【解決手段】本III族窒化物複合基板1は、III族窒化物薄膜21の任意に特定されるa軸21aと、III族窒化物薄膜21のa軸21aに最も近いIII族窒化物支持基板10のa軸10aとの間のずれ角Δφが0°より大きくかつ60°より小さい、および、III族窒化物薄膜21のc軸21cと、III族窒化物支持基板10のc軸10cとの間のずれ角Δψが0°より大きくかつ90°より小さい、の少なくとも一つのずれ角の条件を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスに好適に用いられるIII族窒化物複合基板およびその評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
III族窒化物半導体デバイスは、一般的にサファイア基板上に半導体層として複数のIII族窒化物半導体層が形成されている。このため、かかるIII族窒化物半導体デバイスは、サファイア基板とIII族窒化物半導体層との物性の違いによりIII族窒化物半導体層中に高い密度で貫通転位が発生し、かかる貫通転位が半導体デバイスの特性を低下させる原因となっていた。たとえば、半導体デバイスがLED(発光ダイオード)の場合は、III族窒化物半導体層中の発光層に発生する貫通転位が非発光再結合中心として振舞うため、貫通転位が発生している部分の周囲の領域の発光強度が低下し、LEDの輝度が低下する。
【0003】
一方、基板としてIII族窒化物半導体層と物性が同一または近似している貫通転位の密度が低いIII族窒化物基板を用いた高輝度のLED(III族窒化物半導体デバイス)が開発されている。しかしながら、かかるIII族窒化物基板は高価であるため、III族窒化物半導体デバイスの製造コストが高くなる問題がある。
【0004】
上記問題を解決するために、特表2004−517472号公報(特許文献1)は、接着界面に分子付着によりサポート(支持基板)上にGaNなどのシード層(薄膜)を転写し、シード層上に有効層のエピタキシーを形成し、シード層と有効層により構成された組立体を接着界面においてサポートに対して分離する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004−517472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特表2004−517472号公報(特許文献1)に開示された方法において、サポート(支持基板)としては、サポート上に形成されたGaNなどのシード層(薄膜)上にGaNなどの有効層をエピタキシャル成長させる観点から、エピタキシャル成長温度である1000℃程度以上の高温耐久性を有し、その熱膨張係数がシード層および有効層の熱膨張係数と同一または近似していることが好ましい。かかる観点から、上記シード層上にIII族窒化物半導体の有効層をエピタキシャル成長させてIII族窒化物半導体デバイスを形成するためには、サポート(支持基板)およびシード層(薄膜)が同じ化学組成のIII族窒化物で形成されていることが好ましい。すなわち、III族窒化物半導体デバイスを形成するために、III族窒化物支持基板とIII族窒化物支持基板上に配置されたIII族窒化物薄膜とを含み、III族窒化物支持基板およびIII族窒化物薄膜が同じ化学組成のIII族窒化物で形成されている複合基板を形成することが好ましい。
【0007】
しかしながら、III族窒化物支持基板およびIII族窒化物薄膜が同じ化学組成のIII族窒化物で形成されている複合基板においては、III族窒化物支持基板上にIII族窒化物薄膜が確かに配置されているか否かを評価することが極めて困難である。
【0008】
したがって、本発明は、III族窒化物支持基板およびIII族窒化物薄膜が実質的に同一の化学組成を有していても、III族窒化物支持基板上にIII族窒化物薄膜が配置されているか否かを評価することができるIII族窒化物複合基板およびその評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、III族窒化物支持基板とIII族窒化物支持基板上に配置されたIII族窒化物薄膜とを含み、III族窒化物薄膜およびIII族窒化物支持基板が実質的に同じ化学組成のIII族窒化物で形成されているIII族窒化物複合基板であって、III族窒化物薄膜の任意に特定されるa軸と、III族窒化物薄膜のそのa軸に最も近いIII族窒化物支持基板のa軸との間のずれ角Δφが0°より大きくかつ60°より小さい、および、III族窒化物薄膜のc軸と、III族窒化物支持基板のc軸との間のずれ角Δψが0°より大きくかつ90°より小さい、の少なくとも一つのずれ角の条件を満たすIII族窒化物複合基板である。
【0010】
本発明にかかるIII族窒化物複合基板において、上記ずれ角Δφを1°より大きくかつ59°より小さくすることができる。また、上記ずれ角Δψを0.01°より大きくかつ10°より小さくすることができる。
【0011】
また、本発明は、上記のIII族窒化物複合基板の評価方法であって、III族窒化物薄膜およびIII族窒化物支持基板において、(0001)面に平行でない面の回折を維持してφ角をスキャンするX線回折法、および、ずれ角Δψのずれ方向またはそのずれ方向と正反対方向からX線を入射させかつ(0001)面に平行な面の回折を維持してω角をスキャンするX線回折法、の少なくとも一つのX線回折法を用いることにより、III族窒化物薄膜とIII族窒化物支持基板との配置を評価するIII族窒化物複合基板の評価方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、III族窒化物支持基板およびIII族窒化物薄膜が実質的に同一の化学組成を有していても、III族窒化物支持基板上にIII族窒化物薄膜が配置されているか否かを評価することができるIII族窒化物複合基板およびその評価方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかるIII族窒化物複合基板の一例を示す概略図である。
【図2】本発明にかかるIII族窒化物複合基板を製造する方法の一例を示す概略図である。
【図3】本発明にかかるIII族窒化物複合基板の評価方法において用いられる結晶のX線回折の一例を示す概略図である。
【図4】実施例1におけるIII族窒化物複合基板を示す概略図である。
【図5】実施例1におけるIII族窒化物複合基板のX線回折を示す概略図である。
【図6】実施例2におけるIII族窒化物複合基板を示す概略図である。
【図7】実施例2におけるIII族窒化物複合基板のX線回折を示す概略図である。
【図8】実施例3におけるIII族窒化物複合基板を示す概略図である。
【図9】実施例3におけるIII族窒化物複合基板のX線回折を示す概略図である。
【図10】実施例4におけるIII族窒化物複合基板を示す概略図である。
【図11】実施例4におけるIII族窒化物複合基板のX線回折を示す概略図である。
【図12】実施例5におけるIII族窒化物複合基板を示す概略図である。
【図13】実施例5におけるIII族窒化物複合基板のX線回折を示す概略図である。
【図14】比較例1におけるIII族窒化物複合基板を示す概略図である。
【図15】比較例1におけるIII族窒化物複合基板のX線回折を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態1]
(III族窒化物複合基板)
図1を参照して、本発明の一実施形態であるIII族窒化物複合基板1は、III族窒化物支持基板10とIII族窒化物支持基板10上に配置されたIII族窒化物薄膜21とを含み、III族窒化物薄膜21およびIII族窒化物支持基板10が実質的に同じ化学組成のIII族窒化物で形成され、III族窒化物薄膜21の任意に特定されるa軸21aと、III族窒化物薄膜21のそのa軸21aに最も近いIII族窒化物支持基板10のa軸10aとの間のずれ角Δφが0°より大きくかつ60°より小さい、および、III族窒化物薄膜21のc軸21cと、III族窒化物支持基板10のc軸10cとの間のずれ角Δψが0°より大きくかつ90°より小さい、の少なくとも一つのずれ角の条件を満たす。
【0015】
本実施形態のIII族窒化物複合基板1は、III族窒化物支持基板10とIII族窒化物支持基板10上に配置されたIII族窒化物薄膜21とを含むものであるが、III族窒化物薄膜21およびIII族窒化物支持基板10が実質的に同じ化学組成のIII族窒化物で形成されているため、III族窒化物薄膜21がIII族窒化物支持基板10上に確かに配置されているか否かを評価することが困難であった。
【0016】
すなわち、本実施形態のIII族窒化物複合基板1において、III族窒化物薄膜21およびIII族窒化物支持基板10を形成するIII族窒化物が実質的に同じ化学組成であるとは、X線回折において互いに識別できない範囲内にあるものをいう。すなわち、III族窒化物薄膜21およびIII族窒化物支持基板10を形成するIII族窒化物がいずれもAlxGa1-xN(0≦x≦1、x=0のときGaN、x=1のときAlN)である場合だけでなく、III族窒化物薄膜21がAlx1Ga1-x1N(0≦x1≦1)でIII族窒化物支持基板10がAlx0Ga1-x0N(0≦x0≦1)であって|x1−x0|≦0.05の場合も含まれる。
【0017】
また、本実施形態のIII族窒化物複合基板1においては、III族窒化物薄膜21およびIII族窒化物支持基板10は、いずれも六方晶系であるウルツ鉱型結晶構造を有する。したがって、III族窒化物薄膜21およびIII族窒化物支持基板10は、いずれも6回回転対称軸であるc軸と、このc軸に垂直な6回回転対称の6本のa軸と、を有する。ここで、c軸とは<0001>方向軸であり、a軸とは<11−20>方向軸である。
【0018】
本実施形態のIII族窒化物複合基板1は、III族窒化物薄膜21の任意に特定されるa軸21aと、III族窒化物薄膜21のそのa軸21aに最も近いIII族窒化物支持基板10のa軸10aとの間のずれ角Δφが0°より大きくかつ60°より小さい、および、III族窒化物薄膜21のc軸21cと、III族窒化物支持基板10のc軸10aとの間のずれ角Δψが0°より大きくかつ90°より小さい、の少なくとも一つのずれ角の条件を満たすため、X線回折により測定されるIII族窒化物薄膜21の回折強度ピークとIII族窒化物支持基板10の回折強度ピークとを分離して、III族窒化物薄膜21がIII族窒化物支持基板10上に確かに配置されていることを評価することができる。かかる観点から、上記ずれ角Δφは、1°より大きくかつ59°より小さいことが好ましく、15°より大きくかつ45°より小さいことがより好ましい。また、上記ずれ角Δψは、0.01°より大きいことが好ましく、0.1°より大きいことがより好ましい。なお、窒化物結晶はc軸方向とa軸方向とで熱膨張係数が異なるためIII族窒化物薄膜21とIII族窒化物支持基板10との間の熱膨張係数の差を少なくする観点から、上記ずれ角Δψは、10°より小さいことが好ましく、1°より小さいことがより好ましい。
【0019】
なお、III族窒化物複合基板1について、図1においては、III族窒化物薄膜21の外縁がIII族窒化物支持基板10の外縁よりわずかに内側に描かれているが、これはIII族窒化物支持基板10上にIII族窒化物薄膜21が配置されていることを明確にするためであり、III族窒化物薄膜21およびIII族窒化物支持基板10の外縁は通常一致している。
【0020】
また、III族窒化物複合基板1は、図1においては、III族窒化物支持基板10上に直接III族窒化物薄膜21が接合して配置されているように描かれているが、III族窒化物支持基板10とIII族窒化物薄膜21とが少なくとも1層の中間層(図示せず)を介在させて接合して配置されていてもよい。
【0021】
また、図1を参照して、III族窒化物複合基板1は、上記所定のずれ角ΔφおよびΔψでIII族窒化物支持基板10上にIII族窒化物薄膜21を配置させるのを容易にする観点から、III族窒化物支持基板10およびIII族窒化物薄膜21のそれぞれに、OF(オリエンテーションフラット)10of,21ofおよびIF(アイデンディフィケーションフラット)10if,21ifが設けられていることが好ましい。
【0022】
(III族窒化物複合基板の製造方法)
本実施形態のIII族窒化物複合基板1を製造する方法は、特に制限はないが、上記ずれ角Δφが0°より大きくかつ60°より小さい、および、上記ずれ角Δψが0°より大きくかつ90°より小さい、の少なくともいずれかとする観点から、III族窒化物支持基板10上にIII族窒化物薄膜21を貼り合わせる方法が好ましい。
【0023】
図2を参照して、具体的には、本実施形態のIII族窒化物複合基板1を製造する方法は、図2(A)に示すように薄膜形成用III族窒化物基板20の一方の主面側から深さDの面(この面がイオン注入領域20iとなる)に水素、ヘリウム、窒素、酸素などのイオンIを注入する工程(イオン注入工程)と、図2(B)に示すように薄膜形成用III族窒化物基板20のイオンが注入された側の主面とIII族窒化物支持基板10の一方の主面とを貼り合わせる工程(貼り合わせ工程)と、図2(C)に示すようにIII族窒化物支持基板10および薄膜形成用III族窒化物基板20に熱、応力などを加えて、貼り合わせ面から深さDの薄膜形成用III族窒化物基板20のイオン注入領域20iにおいて、薄膜形成用III族窒化物基板20をIII族窒化物薄膜21と残りの薄膜形成用III族窒化物基板22とに分離する工程(分離工程)と、を含む。
【0024】
上記の工程により、III族窒化物支持基板10上に厚さTDのIII族窒化物薄膜21が貼り合わせにより接合されたIII族窒化物複合基板1が得られる。ここで、III族窒化物薄膜21の厚さTDの大きさは上記イオンの注入深さDの大きさにほぼ等しい。また、上記イオン注入工程においては、基板へのダメージを小さくする観点から、半径の小さいイオンが好ましく、水素イオンが最も好ましい。
【0025】
かかる方法は、薄膜形成用III族窒化物基板20中のイオン注入領域20iが脆化することを利用したものであり、イオンの注入深さDは精度よく調節することができるため、厚さTDの小さい、好ましくは10nm〜100μm程度、より好ましくは10nm〜10μm程度のIII族窒化物薄膜21を有するIII族窒化物複合基板1を製造するのに適した方法である。
【0026】
なお、III族窒化物支持基板10と薄膜形成用III族窒化物基板20との間に少なくとも1層の中間層(図示せず)を介在させて貼り合わせることもできる。たとえば、III族窒化物支持基板10および薄膜形成用III族窒化物基板20の少なくともいずれかにSiO2層などの中間層を形成して、それらの中間層を介在させてIII族窒化物支持基板10と薄膜形成用III族窒化物基板20とを貼り合わせることにより、III族窒化物支持基板10とIII族窒化物薄膜21との接合強度を高めるとともに、それらを再度分離することを容易にすることができる。また、III族窒化物支持基板10と薄膜形成用III族窒化物基板20との間に、中間層として、III族窒化物支持基板10側から順に薄いSiO2層、アモルファスSi層、厚いSiO2層を介在させて貼り合わせることにより、III族窒化物支持基板10とIII族窒化物薄膜21との接合強度を高めるとともに、それらを再度分離することをさらに容易にすることができる。
【0027】
なお、上記の貼り合わせ工程において、上記所定のずれ角ΔφおよびΔψでのIII族窒化物支持基板10と薄膜形成用III族窒化物基板20との貼り合わせを容易にする観点から、III族窒化物支持基板10および薄膜形成用III族窒化物基板20のそれぞれの所定の位置にOF10of,20ofおよびIF(アイデンディフィケーションフラット)10if,20ifが設けられていることが好ましい。そして、III族窒化物支持基板10のOF10ofと薄膜形成用III族窒化物基板20のOF20ofとを、III族窒化物支持基板10のIF10ifと薄膜形成用III族窒化物基板20のIF20ifとを、それぞれ重ね合わせて貼り合わせることにより、上記所定のずれ角ΔφおよびΔψでIII族窒化物支持基板10と薄膜形成用III族窒化物基板20とが接合されたIII族窒化物複合基板1が得られる。
【0028】
[実施形態2]
図1および3を参照して、本発明の別の実施形態であるIII族窒化物複合基板1の評価方法は、実施形態1のIII族窒化物複合基板1の評価方法であって、III族窒化物薄膜21およびIII族窒化物支持基板10において、(0001)面に平行でない面の回折を維持してφ角をスキャンするX線回折法、および、ずれ角Δψのずれ方向またはそのずれ方向と正反対方向からX線を入射させかつ(0001)面に平行な面の回折を維持してω角をスキャンするX線回折法、の少なくとも一つのX線回折法を用いることにより、III族窒化物薄膜とIII族窒化物支持基板との配置を評価する。
【0029】
図3を参照して、結晶100の主面100sに照射された入射X線111が結晶100の回折面100dで回折されて出射X線112として放出されるX線回折においては、一般に、主面100sに対して垂直なφ軸、回折面100dに対して垂直なd軸124、主面100sに平行でかつ入射X線111および出射X線112により作られる面に垂直なω軸(2θ軸)、主面100sに平行でかつ入射X線111および出射X線112により作られる面に平行なχ軸が考えられる。また、かかるφ軸、ω軸(2θ軸)およびχ軸の回りの角を、それぞれφ角、ω角(2θ角)およびχ角という。ここで、θ角はBragg角である。また、φ軸とd軸とのなす角をψ角という。
【0030】
図1、3−7および10−11を参照して、III族窒化物複合基板1において、III族窒化物薄膜21の任意に特定されるa軸21aと、III族窒化物薄膜21のa軸21aに最も近いIII族窒化物支持基板10のa軸10aとの間のずれ角Δφが0°より大きくかつ60°より小さい場合は、(0001)面と平行でない面(たとえば(10−11)面)の回折を維持して、φ角をスキャンするX線回折法により、III族窒化物薄膜21に由来するX線回折ピークとIII族窒化物支持基板10に由来するX線回折ピークとを分離することにより識別することができるため、III族窒化物支持基板10上にIII族窒化物薄膜21が確かに配置されていると評価することができる。
【0031】
図1、3および6−13を参照して、III族窒化物複合基板1において、III族窒化物薄膜21のc軸21cと、III族窒化物支持基板10のc軸10cとの間のずれ角Δψが0°より大きくかつ90°より小さい場合は、ずれ角Δψのずれ方向またはそのずれ方向と正反対方向からX線を入射させかつ(0001)面に平行な面(たとえば、(0002)面)の回折を維持してω角をスキャンするX線回折法により、III族窒化物薄膜21に由来するX線回折ピークとIII族窒化物支持基板10に由来するX線回折ピークとを分離することにより識別することができるため、III族窒化物支持基板10上にIII族窒化物薄膜21が確かに配置されていると評価することができる。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
1.III族窒化物複合基板の作製
図2(A)を参照して、表主面の面方位が(0001)で裏主面の面方位が(000−1)で直径が100mmで厚さが600μmの薄膜形成用GaN基板(薄膜形成用III族窒化物基板20)を準備した。次いで、このGaN支持基板に、面方位が{11−20}のOF20ofと面方位が{10−10}のIF20ifをダイシング加工により作製した。ここで、表主面、裏主面、OFおよびIFの面方位の精度は、X線回折で確認したところ、上記面方位からのオフ角で0.05°以下であった。次いで、薄膜形成用GaN基板の裏表面側から深さ0.6μmの面に水素イオンを注入した(イオン注入領域20i)。ここで、水素イオンの加速電圧は90keVとし、水素イオンのドーズ量は6×1017cm-2とした。
【0033】
図2(B)を参照して、表主面の面方位が(0001)で裏主面の面方位が(000−1)で直径が100mmで厚さが600μmのGaN支持基板(III族窒化物支持基板10)を準備した。次いで、このGaN支持基板に、面方位が{10−10}のOF10ofと面方位が{11−20}のIF10ifをダイシング加工により作製した。ここで、表主面、裏主面、OFおよびIFの面方位の精度は、X線回折で確認したところ、上記面方位からのオフ角で0.05°以下であった。
【0034】
次に、薄膜形成用GaN基板(薄膜形成用III族窒化物基板20)のイオン注入側の主面である裏主面およびGaN支持基板(III族窒化物支持基板10)の表主面を、Arガス中でプラズマエッチングすることにより清浄面とした後、互いのOF20of,10ofおよびIF20if,10ifがそれぞれ重なり合うように、大気中で貼り合わせることにより接合した。
【0035】
次に、図2(C)を参照して、貼り合わせた薄膜形成用GaN基板(薄膜形成用III族窒化物基板20)およびGaN支持基板(III族窒化物支持基板10)をN2ガス雰囲気中300℃で2時間熱処理することにより、薄膜形成用GaN基板(薄膜形成用III族窒化物基板20)をイオン注入領域20iでGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)と残りの薄膜形成用GaN基板(残りの薄膜形成用III族窒化物基板22)とに分離することにより、厚さ600μmのGaN支持基板(III族窒化物支持基板10)とその上に接合された厚さ0.6μmのGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)とで構成されるGaN複合基板(III族窒化物複合基板1)が得られた。
【0036】
図4を参照して、得られたGaN複合基板(III族窒化物複合基板1)について、GaN薄膜(III族窒化物薄膜21)は、表主面の面方位が(0001)で、OF21ofの面方位が{11−20}で、IF21ifの面方位が{10−10}であり、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)は、表主面の面方位が(0001)で、OF10ofの面方位が{10−10}で、IF10ifの面方位が{11−20}であった。また、GaN薄膜(III族窒化物薄膜21)のc軸とGaN支持基板(III族窒化物支持基板10)のc軸とのずれ角Δψは、GaN複合基板(III族窒化物複合基板1)のIF1ifの面に垂直な方向およびOF1ofの面に垂直な方向のいずれにも0°であった。結果を表1にまとめた。
【0037】
2.X線回折によるIII族窒化物複合基板の評価
得られたGaN複合基板(III族窒化物複合基板1)について、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されているのかどうかを以下のX線回折により評価した。
【0038】
X線回折は、パナリティカル社のX’Pert MRDを用いて行なった。X線回折においては、x軸、y軸、z軸に加えて、主面内の回転を示すφ軸、y軸方向の煽り角度を示すψ軸が存在する。またX線の入射軸がω軸であり、かかるω軸は回折強度を測定する軸のひとつである2θ軸と中心軸が同一である。本装置では回折面を指定すると自動的に装置が各軸に対する変位値を計算し、移動するシステムとなっている。
【0039】
図4および5を参照して、GaN複合基板(III族窒化物複合基板1)のIF1ifの面に垂直な方向(すなわち、GaN薄膜(III族窒化物薄膜21)の<10−10>方向、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)の<11−20>方向)からの入射X線を用いて(0002)面回折を維持してω角をスキャンした場合は、回折ピークは1つだけしか観測できず、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されているのかどうか評価できなかった。
【0040】
GaN複合基板(III族窒化物複合基板1)のOF1ofの面に垂直な方向(すなわちGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)の<11−20>方向、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)の<10−10>方向)からの入射X線を用いて(0002)面回折を維持してω角をスキャンした場合は、回折ピークは1つだけしか観測できず、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されているのかどうか評価できなかった。
【0041】
(10−11)面回折を維持してφ角をスキャンした場合は、強度の強い6つの回折ピークと強度の弱い6つの回折ピークを観測することができ、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されていることを評価できた。結果を表1にまとめた。
【0042】
(実施例2)
1.III族窒化物複合基板の作製
図2および6を参照して、表主面の面方位が(0001)からIF20ifの面に垂直な<10−10>方向に0.35°傾き、裏主面の面方位が(000−1)からIF20ifの面に垂直な<10−10>方向に0.35°傾き、{11−20}の面方位のOF20ofと{10−10}の面方位のIF20ifが形成された薄膜形成用GaN基板(薄膜形成用III族窒化物基板20)を用いた以外は、実施例1と同様にして、III族窒化物複合基板を作製した。
【0043】
図6を参照して、得られたGaN複合基板(III族窒化物複合基板1)について、GaN薄膜(III族窒化物薄膜21)は、表主面の面方位が(0001)からIF21ifの面に垂直な<10−10>方向に0.35°傾き、OF21ofの面方位が{11−20}で、IF21ifの面方位が{10−10}であり、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)は、表主面の面方位が(0001)で、OF10ofの面方位が{10−10}で、IF10ifの面方位が{11−20}であった。また、GaN薄膜(III族窒化物薄膜21)のc軸とGaN支持基板(III族窒化物支持基板10)のc軸とのずれ角Δψは、GaN複合基板(III族窒化物複合基板1)のIF1ifの面に垂直な方向が0.35°であり、OF1ofの面に垂直な方向が0°であった。結果を表1にまとめた。
【0044】
2.X線回折によるIII族窒化物複合基板の評価
得られたGaN複合基板(III族窒化物複合基板1)について、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されているのかどうかを実施例1と同様のX線回折により評価した。
【0045】
図6および7を参照して、GaN複合基板(III族窒化物複合基板1)のIF1ifの面に垂直な方向(すなわち、GaN薄膜(III族窒化物薄膜21)の<10−10>方向、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)の<11−20>方向)からの入射X線を用いて(0002)面回折を維持してω角をスキャンした場合は、強度の強い1つの回折ピークと強度の弱い1つの回折ピークを観測することができ、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されていることを評価できた。
【0046】
GaN複合基板(III族窒化物複合基板1)のOF1ofの面に垂直な方向(すなわちGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)の<11−20>方向、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)の<10−10>方向)からの入射X線を用いて(0002)面回折を維持してω角をスキャンした場合は、回折ピークは1つだけしか観測できず、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されているのかどうか評価できなかった。
【0047】
(10−11)面回折を維持してφ角をスキャンした場合は、強度の強い6つの回折ピークと強度の弱い6つの回折ピークを観測することができ、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されていることを評価できた。結果を表1にまとめた。
【0048】
(実施例3)
1.III族窒化物複合基板の作製
図2および8を参照して、表主面の面方位が(0001)からIF20ifの面に垂直な<10−10>方向に0.35°傾き、裏主面の面方位が(000−1)からIF20ifの面に垂直な<10−10>方向に0.35°傾き、{11−20}の面方位のOF20ofと{10−10}の面方位のIF20ifが形成された薄膜形成用GaN基板(薄膜形成用III族窒化物基板20)を用いるとともに、表主面の面方位が(0001)で、{11−20}の面方位のOF10ofと{10−10}の面方位のIF10ifが形成されたGaN支持基板(III族窒化物支持基板10)を用いた以外は、実施例1と同様にして、III族窒化物複合基板を作製した。
【0049】
図8を参照して、得られたGaN複合基板(III族窒化物複合基板1)について、GaN薄膜(III族窒化物薄膜21)は、表主面の面方位が(0001)からIF21ifの面に垂直な<10−10>方向に0.35°傾き、OF21ofの面方位が{11−20}で、IF21ifの面方位が{10−10}であり、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)は、表主面の面方位が(0001)で、OF10ofの面方位が{11−20}で、IF10ifの面方位が{10−10}であった。また、GaN薄膜(III族窒化物薄膜21)のc軸とGaN支持基板(III族窒化物支持基板10)のc軸とのずれ角Δψは、GaN複合基板(III族窒化物複合基板1)のIF1ifの面に垂直な方向が0.35°であり、OF1ofの面に垂直な方向が0°であった。結果を表1にまとめた。
【0050】
2.X線回折によるIII族窒化物複合基板の評価
得られたGaN複合基板(III族窒化物複合基板1)について、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されているのかどうかを実施例1と同様のX線回折により評価した。
【0051】
図8および9を参照して、GaN複合基板(III族窒化物複合基板1)のIF1ifの面に垂直な方向(すなわち、GaN薄膜(III族窒化物薄膜21)の<10−10>方向、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)の<10−10>方向)からの入射X線を用いて(0002)面回折を維持してω角をスキャンした場合は、強度の強い1つの回折ピークと強度の弱い1つの回折ピークを観測することができ、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されていることを評価できた。
【0052】
GaN複合基板(III族窒化物複合基板1)のOF1ofの面に垂直な方向(すなわちGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)の<11−20>方向、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)の<11−20>方向)からの入射X線を用いて(0002)面回折を維持してω角をスキャンした場合は、回折ピークは1つだけしか観測できず、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されているのかどうか評価できなかった。
【0053】
(10−11)面回折を維持してφ角をスキャンした場合は、強度の強い6つの回折ピークしか観測できず、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されているのかどうか評価できなかった。結果を表1にまとめた。
【0054】
(実施例4)
1.III族窒化物複合基板の作製
図2および10を参照して、表主面の面方位が(0001)からIF20ifの面に垂直な<10−10>方向に0.35°傾き、裏主面の面方位が(000−1)からIF20ifの面に垂直な<10−10>方向に0.35°傾き、{11−20}の面方位のOF20ofと{10−10}の面方位のIF20ifが形成された薄膜形成用GaN基板(薄膜形成用III族窒化物基板20)を用いるとともに、表主面の面方位が(0001)からOF10ofの面に垂直な<10−10>方向に0.35°傾き、裏主面の面方位が(000−1)からOF10ofの面に垂直な<10−10>方向に0.35°傾き、{10−10}の面方位のOF10ofと{11−20}の面方位のIF10ifが形成されたGaN支持基板(III族窒化物支持基板10)を用いた以外は、実施例1と同様にして、III族窒化物複合基板を作製した。
【0055】
図10を参照して、得られたGaN複合基板(III族窒化物複合基板1)について、GaN薄膜(III族窒化物薄膜21)は、表主面の面方位が(0001)からIF21ifの面に垂直な<10−10>方向に0.35°傾き、OF21ofの面方位が{11−20}で、IF21ifの面方位が{10−10}であり、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)は、表主面の面方位が(0001)からOF10ofの面に垂直な<10−10>方向に0.35°傾き、OF10ofの面方位が{10−10}で、IF10ifの面方位が{11−20}であった。また、GaN薄膜(III族窒化物薄膜21)のc軸とGaN支持基板(III族窒化物支持基板10)のc軸とのずれ角Δψは、GaN複合基板(III族窒化物複合基板1)のIF1ifの面に垂直な方向が0.35°であり、OF1ofの面に垂直な方向が0.35°であった。結果を表1にまとめた。
【0056】
2.X線回折によるIII族窒化物複合基板の評価
得られたGaN複合基板(III族窒化物複合基板1)について、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されているのかどうかを実施例1と同様のX線回折により評価した。
【0057】
図10および11を参照して、GaN複合基板(III族窒化物複合基板1)のIF1ifの面に垂直な方向(すなわち、GaN薄膜(III族窒化物薄膜21)の<10−10>方向、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)の<11−20>方向)からの入射X線を用いて(0002)面回折を維持してω角をスキャンした場合は、強度の強い1つの回折ピークと強度の弱い1つの回折ピークを観測することができ、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されていることを評価できた。
【0058】
GaN複合基板(III族窒化物複合基板1)のOF1ofの面に垂直な方向(すなわちGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)の<11−20>方向、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)の<10−10>方向)からの入射X線を用いて(0002)面回折を維持してω角をスキャンした場合は、強度の強い1つの回折ピークと強度の弱い1つの回折ピークを観測することができ、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されていることを評価できた。
【0059】
(10−11)面回折を維持してφ角をスキャンした場合は、強度の強い6つの回折ピークと強度の弱い6つの回折ピークを観測することができ、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されていることを評価できた。結果を表1にまとめた。
【0060】
(実施例5)
1.III族窒化物複合基板の作製
図2および12を参照して、表主面の面方位が(0001)からIF20ifの面に垂直な<10−10>方向に0.35°傾き、裏主面の面方位が(000−1)からIF20ifの面に垂直な<10−10>方向に0.35°傾き、{11−20}の面方位のOF20ofと{10−10}の面方位のIF20ifが形成された薄膜形成用GaN基板(薄膜形成用III族窒化物基板20)を用いるとともに、表主面の面方位が(0001)からIF10ifの面に垂直な方向以外の<10−10>方向に0.35°傾き、裏主面の面方位が(000−1)からIF10ifの面に垂直な方向以外の<10−10>方向に0.35°傾き、{11−20}の面方位のOF10ofと{10−10}の面方位のIF10ifが形成されたGaN支持基板(III族窒化物支持基板10)を用いた以外は、実施例1と同様にして、III族窒化物複合基板を作製した。
【0061】
図12を参照して、得られたGaN複合基板(III族窒化物複合基板1)について、GaN薄膜(III族窒化物薄膜21)は、表主面の面方位が(0001)からIF21ifの面に垂直な<10−10>方向に0.35°傾き、OF21ofの面方位が{11−20}で、IF21ifの面方位が{10−10}であり、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)は、表主面の面方位が(0001)からIF10ifの面に垂直な方向以外の<10−10>方向に0.35°傾き、OF10ofの面方位が{11−20}で、IF10ifの面方位が{10−10}であった。また、GaN薄膜(III族窒化物薄膜21)のc軸とGaN支持基板(III族窒化物支持基板10)のc軸とのずれ角Δψは、GaN複合基板(III族窒化物複合基板1)のIF1ifの面に垂直な方向が0.525°であり、OF1ofの面に垂直な方向が0.30°であった。結果を表1にまとめた。
【0062】
2.X線回折によるIII族窒化物複合基板の評価
得られたGaN複合基板(III族窒化物複合基板1)について、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されているのかどうかを実施例1と同様のX線回折により評価した。
【0063】
図12および13を参照して、GaN複合基板(III族窒化物複合基板1)のIF1ifの面に垂直な方向(すなわち、GaN薄膜(III族窒化物薄膜21)の<10−10>方向、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)の<10−10>方向)からの入射X線を用いて(0002)面回折を維持してω角をスキャンした場合は、強度の強い1つの回折ピークと強度の弱い1つの回折ピークを観測することができ、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されていることを評価できた。
【0064】
GaN複合基板(III族窒化物複合基板1)のOF1ofの面に垂直な方向(すなわちGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)の<11−20>方向、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)の<11−20>方向)からの入射X線を用いて(0002)面回折を維持してω角をスキャンした場合は、強度の強い1つの回折ピークと強度の弱い1つの回折ピークを観測することができ、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されていることを評価できた。
【0065】
(10−11)面回折を維持してφ角をスキャンした場合は、強度の強い6つの回折ピークしか観測できず、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されているのかどうか評価できなかった。結果を表1にまとめた。
【0066】
(比較例1)
1.III族窒化物複合基板の作製
表主面の面方位が(0001)からIF20ifの面に垂直な<10−10>方向に0.35°傾き、裏主面の面方位が(000−1)からIF20ifの面に垂直な<10−10>方向に0.35°傾き、{11−20}の面方位のOF20ofと{10−10}の面方位のIF20ifが形成された薄膜形成用GaN基板(薄膜形成用III族窒化物基板20)を用いるとともに、表主面の面方位が(0001)からIF10ifの面に垂直な<10−10>方向(すなわち薄膜形成用GaN基板の傾きと同じ方向)に0.35°傾き、裏主面の面方位が(000−1)からIF10ifの面に垂直な<10−10>方向(すなわち薄膜形成用GaN基板の傾きと同じ方向)に0.35°傾き、{11−20}の面方位のOF10ofと{10−10}の面方位のIF10ifが形成されたGaN支持基板(III族窒化物支持基板10)を用いた以外は、実施例1と同様にして、III族窒化物複合基板を作製した。
【0067】
図14を参照して、得られたGaN複合基板(III族窒化物複合基板1)について、GaN薄膜(III族窒化物薄膜21)は、表主面の面方位が(0001)からIF21ifの面に垂直な<10−10>方向に0.35°傾き、OF21ofの面方位が{11−20}で、IF21ifの面方位が{10−10}であり、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)は、表主面の面方位が(0001)からIF10ifの面に垂直な<10−10>方向(すなわち薄膜形成用GaN基板の傾きと同じ方向)に0.35°傾き、OF10ofの面方位が{11−20}で、IF10ifの面方位が{10−10}であった。また、GaN薄膜(III族窒化物薄膜21)のc軸とGaN支持基板(III族窒化物支持基板10)のc軸とのずれ角Δψは、GaN複合基板(III族窒化物複合基板1)のIF1ifの面に垂直な方向が0°であり、OF方向1ofの面に垂直な方向も0°であった。結果を表1にまとめた。
【0068】
2.X線回折によるIII族窒化物複合基板の評価
得られたGaN複合基板(III族窒化物複合基板1)について、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されているのかどうかを実施例1と同様のX線回折により評価した。
【0069】
図14および15を参照して、GaN複合基板(III族窒化物複合基板1)のIF1ifの面に垂直な方向(すなわち、GaN薄膜(III族窒化物薄膜21)の<10−10>方向、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)の<10−10>方向)からの入射X線を用いて(0002)面回折を維持してω角をスキャンした場合は、回折ピークは1つだけしか観測できず、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されているのかどうか評価できなかった。
【0070】
GaN複合基板(III族窒化物複合基板1)のOF1ofの面に垂直な方向(すなわちGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)の<11−20>方向、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)の<11−20>方向)からの入射X線を用いて(0002)面回折を維持してω角をスキャンした場合は、回折ピークは1つだけしか観測できず、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されているのかどうか評価できなかった。
【0071】
(10−11)面回折を維持してφ角をスキャンした場合は、強度の強い6つの回折ピークしか観測できず、GaN支持基板(III族窒化物支持基板10)上にGaN薄膜(III族窒化物薄膜21)が確かに配置されているのかどうか評価できなかった。
【0072】
【表1】

【0073】
表1を参照して、III族窒化物支持基板10とIII族窒化物支持基板上に配置されたIII族窒化物薄膜21とを含み、III族窒化物薄膜21およびIII族窒化物支持基板10が実質的に同じ化学組成のIII族窒化物で形成されているIII族窒化物複合基板1においても、III族窒化物薄膜21の任意に特定されるa軸21aと、III族窒化物薄膜21のa軸21aに最も近いIII族窒化物支持基板10のa軸10aとの間のずれ角Δφが0°より大きくかつ60°より小さい、および、III族窒化物薄膜21のc軸21cと、III族窒化物支持基板10のc軸10cとの間のずれ角Δψが0°より大きくかつ90°より小さい、の少なくとも一つのずれ角の条件を満たすIII族窒化物複合基板1を形成することにより、(0001)面に平行でない面の回折を維持してφ角をスキャンするX線回折法、および、ずれ角Δψのずれ方向または前記ずれ方向と正反対方向からX線を入射させかつ(0001)面に平行な面の回折を維持してω角をスキャンするX線回折法、の少なくとも一つのX線回折法を用いることにより、III族窒化物支持基板10上にIII族窒化物薄膜21が確かに配置されているかどうかを評価することができた。
【0074】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
1 III族窒化物複合基板、1if,10if,20if,21if IF、1n,10n,21n 主面の法線軸、1of,10of,20of,21of OF、10 III族窒化物支持基板、10a,21a a軸、10c,21c c軸、20,22 薄膜形成用III族窒化物基板、20i イオン注入領域、100 結晶、100d 回折面、100s 主面、111 入射X線、112 出射X線、121 χ軸、122 ω軸(2θ軸)、123 φ軸、124 d軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族窒化物支持基板と前記III族窒化物支持基板上に配置されたIII族窒化物薄膜とを含み、
前記III族窒化物薄膜および前記III族窒化物支持基板が実質的に同じ化学組成のIII族窒化物で形成されているIII族窒化物複合基板であって、
前記III族窒化物薄膜の任意に特定されるa軸と、前記III族窒化物薄膜の前記a軸に最も近い前記III族窒化物支持基板のa軸との間のずれ角Δφが0°より大きくかつ60°より小さい、および、前記III族窒化物薄膜のc軸と、前記III族窒化物支持基板のc軸との間のずれ角Δψが0°より大きくかつ90°より小さい、の少なくとも一つのずれ角の条件を満たすIII族窒化物複合基板。
【請求項2】
前記ずれ角Δφが1°より大きくかつ59°より小さい請求項1に記載のIII族窒化物複合基板。
【請求項3】
前記ずれ角Δψが0.01°より大きくかつ10°より小さい請求項1に記載のIII族窒化物複合基板。
【請求項4】
請求項1に記載のIII族窒化物複合基板の評価方法であって、
前記III族窒化物薄膜および前記III族窒化物支持基板において、(0001)面に平行でない面の回折を維持してφ角をスキャンするX線回折法、および、ずれ角Δψのずれ方向または前記ずれ方向と正反対方向からX線を入射させかつ(0001)面に平行な面の回折を維持してω角をスキャンするX線回折法、の少なくとも一つのX線回折法を用いることにより、
前記III族窒化物薄膜と前記III族窒化物支持基板との配置を評価するIII族窒化物複合基板の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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