説明

IL−17A及びIL−17Fに結合する抗体分子

本発明は、IL−17A及びIL−17Fの両方の抗原決定基に対して特異性を有する抗体分子、この抗体分子の治療的使用及び前記抗体分子の作製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL−17A及びIL−17Fの両方の抗原決定基に対して特異性を有する抗体分子に関する。本発明はさらに、この抗体分子の治療的使用及びそれらの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CTLA−8又はIL−17Aとしても公知の、インターロイキン17(IL−17)は、多様な非免疫細胞から広範囲の他のサイトカインの分泌を促進する、炎症性サイトカインである。IL−17Aは、線維芽細胞、ケラチノサイト、上皮及び内皮の細胞のような接着細胞によるIL−6、IL−8、PGE2、MCP−1及びG−CSFの分泌を誘導でき、照射線維芽細胞の存在下で共培養した場合、ICAM−1の表面発現、T細胞の増殖並びにCD34+ヒト前駆細胞の好中球への成長及び分化もまた誘導できる(Fossiez他、1998、Int.Rev.Immunol.16、541〜551)。IL−17Aは、活性メモリーT細胞によって大部分は産生され、普遍的に発現する細胞表面受容体(IL−17R)に結合することによって作用する(Yao他、1997、Cytokine、9、794〜800)。また、IL−17RA及びIL−17RCの複合体への結合を介してもまた作用できる(Toy他、2006、J.Immunol.177(11);36〜39)。「TH17細胞」と呼ばれる、T細胞を産生するIL−17は、特定の癌の発症に関わっている(Weaver他、2006、Immunity、24、677〜688;Langowski他、2006、442、461〜465;Iwakura及びIshigame、2006、J.Clin.Invest.116、5、1218〜1222)。
【0003】
炎症反応の制御において類似の役割及び異なる役割の両方を有する、多くのIL−17の同族体が特定されている。IL−17サイトカイン/受容体ファミリーに関する総説としては、Dumont、2003、Expert Opin.Ther.Patents、13、287〜303を参照されたい。このような同族体の1つは、IL−24及びML−1としても公知のIL−17Fであり、これはIL−17Aとおよそ55%同一であり、IL−17Aと同じ受容体を共有すると考えられている(Kolls及びLinden 2004、Immunity、21、467〜476;Hymowitz他、2001、EMBO J.20(19)、5332〜5341;Kuestner他、2007、Journal of Immunology、179、5462〜5473)。
【0004】
IL−17A及びIL−17Fの両方は、ホモ二量体及びヘテロ二量体のタンパク質の両方を形成でき、これらはすべて、活性化ヒトCD4+T細胞によって産生される(Wright他、2007、J Biol Chem.282(18)、13447〜13455)。
【0005】
IL−17は、関節リウマチ及び気道炎症などの、異常な免疫応答によって仲介される多くの疾患、並びに臓器移植の拒絶反応及び抗腫瘍性免疫に関係することがある。IL−17の活性の阻害因子は当技術分野において周知であり、例えば、マウスIL−17R:ヒトFc融合タンパク質、マウス可溶性IL−17R及び抗IL−17モノクロナール抗体が、関節リウマチの様々なモデルにおいてIL−17の役割を実証するために使用されている(Lubberts他、J.Immunol.2001、167、1004〜1013;Chabaud他、Arthritis Res.2001、3、168〜177)。さらに、中和ポリクロナール抗体が、腹膜の癒着形成を減少させるために使用されている(Chung他、2002、J.Exp.Med.、195、1471〜1478)。ラットに由来する抗ヒトIL−17抗体が、WO04/106377に記載された。およそ220pMの親和性を有するヒト化抗IL−17抗体が、WO2006/054059に記載された。およそ188pMの親和性を有するモノクロナール抗IL−17完全ヒト抗体が、WO2006/013107に記載された。IL−17F及びIL−17A/IL−17Fヘテロ二量体に結合する抗体が、WO2006/088833に記載された。IL−17A/IL−17Fヘテロ二量体に特異的に結合する抗体が、WO2005/010044に記載された。
【0006】
IL−17Fの拮抗作用は、ぜんそくに対する予防に関与しており(Kawaguchi他、2006、J.Allergy Clin.Immunol.117(4);795〜801)、IL−17Fはさらに、関節炎の病理においてもまた役割を担っていると考えられる(Lubberts 2003、Current Opinion in Investigational Drugs、4(5)、572〜577)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、IL−17A及びIL−17Fの二重拮抗薬は、IL−17により仲介される疾患の治療において、単独の拮抗薬より有効であり得る。IL−17A及びIL−17Fに結合する抗体が、20.9.07に公開されたWO2007/106769に記載された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、IL−17A及びIL−17Fの両方に結合できる抗体が単離でき、IL−17の両方のイソ型の活性を中和できることを実証できた。故に、本発明は、IL−17A及びIL−17Fの両方に結合できる、抗IL−17抗体を提供する。特に、本発明の抗体は、IL−17A及びIL−17Fの両方に特異的に結合でき、すなわち、この抗体はIL−17の他のイソ型には結合しない。好ましくは、本発明の抗体は、IL−17A/IL−17Fヘテロ二量体にもまた結合する。好ましくは、本発明の抗体は、IL−17A及びIL−17Fの両方の活性もまた中和する。一実施形態において、本発明の抗体は、IL−17A/IL−17Fヘテロ二量体の活性を中和する。したがって、本発明の抗体は、IL−17A及びIL−17Fの両方の生物活性を阻害できる、有利な特性を有する。したがって、本発明は、自己免疫疾患又は炎症性疾患或いは癌などの、IL−17A又はIL−17Fのいずれか又は両方によって仲介される疾患の治療及び/又は予防における、このような抗体の使用もまた提供する。
【0009】
本明細書中で使用する場合、「中和抗体」という用語は、IL−17A及びIL−17Fの両方の生物シグナル伝達活性を、例えば、IL−17A及びIL−17Fの、それらの1種又は複数種の受容体への結合をブロックすることによって、及びIL−17A/IL−17Fヘテロ二量体の、その1種又は複数種の受容体への結合をブロックすることによって、中和できる抗体を表す。本明細書中で使用する場合、「中和」という用語が、生物シグナル伝達活性の、部分的又は完全な減少を指すことは理解されるであろう。さらに、抗体によるIL−17A及びIL−17Fの活性の中和の程度は、同じであっても異なっていてもよいことは理解されるであろう。一実施形態において、IL−17A/IL−17Fヘテロ二量体の活性の中和の程度は、IL−17A又はIL−17Fの活性の中和の程度と同じであっても、異なっていてもよい。
【0010】
一実施形態において、本発明の抗体は、IL−17A及びIL−17Fに特異的に結合する。特異的結合は、抗体が、IL−17A及びIL−17のポリペプチド(IL−17A/IL−17Fヘテロ二量体を含む)に対して、他のポリペプチドに対するよりも非常に高い親和性を有することを意味する。好ましくは、IL−17A及びIL−17のポリペプチドは、ヒトである。一実施形態において、この抗体はカニクイザルのIL−17Fにもまた結合する。
【0011】
IL−17A又はIL−17Fのポリペプチド或いは2種の混合物或いは前記ポリペプチドの1種又は両方を発現する細胞は、両方のポリペプチドを特異的に認識する抗体の作製に使用できる。IL−17ポリペプチド(IL−17A及びIL−17F)は、「成熟」ポリペプチド或いは好ましくは受容体結合部位を含む、それらの生物活性断片又は誘導体であってよい。好ましくは、IL−17ポリペプチドは、成熟ポリペプチドである。IL−17ポリペプチドは、発現系を含む、遺伝子操作により作製された宿主細胞から、当技術分野において周知の方法により調製されても、天然の生物起源から回収されてもよい。本出願において、「ポリペプチド」という用語は、ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を含む。別途明記しない限り、これらは同じ意味で使用される。IL−17ポリペプチドは、場合によっては、例えば親和性タグに融合した融合タンパク質などのより大きなタンパク質の一部であってもよい。動物の免疫化が必要な場合、これらのポリペプチドに対して作製される抗体は、動物、好ましくは非ヒト動物にこのポリペプチドを投与し、周知でごく普通のプロトコル(例えば、Handbook of Experimental Immunology、D.M.Weir(編)、Vol4、Blackwell Scientific Publishers、Oxford、England、1986を参照されたい)を使用して得ることができる。多くの温血動物、例えばウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ウシ又はブタなどが免疫化できる。しかし、マウス、ウサギ、ブタ及びラットが一般的に好ましい。
【0012】
本発明における使用のための抗体は、全抗体及びそれらの機能的に活性な断片又は誘導体を含み、限定するものではないが、モノクロナール、多価、多重特異性、ヒト化又はキメラの抗体、ドメイン抗体、例えば、VH、VL、VHH、一本鎖抗体、Fab断片、Fab’及びF(ab’)断片及び上記のいずれかのエピトープ結合断片であってよい。他の抗体断片は、国際特許出願WO2005003169、WO2005003170及びWO2005003171に記載の抗体を含む。抗体断片及びそれらの作製方法は、当技術分野において周知であり、例えばVerma他、1998、Journal of Immunological Methods、216、165〜181;Adair and Lawson、2005、Therapeutic antibodies.Drug Design Reviews−Online 2(3):209〜217を参照されたい。
【0013】
本発明における使用のための抗体は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫的に活性な部分、すなわち、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を含む。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子のいずれのクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD及びIgA)又はサブクラスであってもよい。
【0014】
モノクロナール抗体は、ハイブリドーマ技術(Kohler&Milstein、1975、Nature、256:495〜497)、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor他、1983、Immunology Today、4:72)及びEBV−ハイブリドーマ技術(Cole他、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、77〜96ページ、Alan R Liss、Inc.、1985)などの、当技術分野において公知の任意の方法によって調製できる。
【0015】
本発明における使用のための抗体は、例えば、Babcook、J.他、1996、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(15):7843〜7848l;WO92/02551;WO2004/051268及び国際特許出願番号WO2004/106377により記載された方法により、特異的抗体の作製のために選択された単一リンパ球から作製された、免疫グロブリン可変領域cDNAをクローン化及び発現することによる、単一リンパ球抗体法を使用してもまた作製できる。
【0016】
ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1種又は複数種の相補性決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する、非ヒト種由来の抗体分子である(米国特許第5,585,089号;WO91/09967を参照されたい)。
【0017】
キメラ抗体は、軽鎖及び重鎖遺伝子が、異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントを含むように遺伝子操作された免疫グロブリン遺伝子によってコードされる、それら抗体である。これらのキメラ抗体は、抗原性がより低いと思われる。二価抗体は、当技術分野において公知の方法(Milstein他、1983、Nature 305:537〜539;WO93/08829、Traunecker他、1991、EMBO J.10:3655〜3659)によって作製できる。多価抗体は多重特異性を含んでいても、又は単一特異性であってもよい(例えば、WO92/22853及びWO05/113605を参照されたい)。
【0018】
本発明における使用のための抗体は、当技術分野において公知の様々なファージディスプレイ法を使用してもまた作製でき、Brinkman他、(J.Immunol.Methods、1995、182:41〜50)、Ames他、(J.Immunol.Methods、1995、184:177〜186)、Kettleborough他、(Eur.J.Immunol.1994、24:952〜958)、Persic他、(Gene、1997 187 9〜18)、Burton他、(Advances in Immunology、1994、57:191〜280)並びにWO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;並びに米国特許第5,698,426号;同第5,223,409号;同第5,403,484号;同第5,580,717号;同第5,427,908号;同第5,750,753号;同第5,821,047号;同第5,571,698号;同第5,427,908号;同第5,516,637号;同第5,780,225号;同第5,658,727号;同第5,733,743号及び同第5,969,108号により記載された方法を含む。米国特許第4,946,778号に記載の方法などの、一本鎖抗体の作製のための技術は、IL−17A及びIL−17Fに結合する一本鎖抗体の作製のためにもまた適合できる。さらに、トランスジェニックマウス又は他の哺乳動物を含む他の生物は、ヒト化抗体を発現させるために使用できる。
【0019】
抗体可変領域の残基は、Kabat 他により考案されたシステムに従って、慣習的に付番されている。このシステムは、Kabat他、1987、Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Department of Health and Human Services、NIH、USA(これ以降「Kabat他、(上記)」)に記述されている。この付番方式を、別途明示しない限り、本明細書中で使用する。
【0020】
Kabatの残基指定は、必ずしもアミノ酸残基の線形付番と直接一致しない。実際の直線アミノ酸配列は、フレームワーク領域又は相補性決定領域(CDR)であろうとなかろうと、基本の可変領域構造の構成要素の短縮、又はそれらへの挿入に対応する、厳密なKabat付番よりアミノ酸が少なかったり、付加されていたりすることがある。残基の正確なKabat付番は、所与の抗体に関して、「標準的」Kabat付番配列との、抗体の配列における相同性残基のアラインメントによって決定できる。
【0021】
重鎖可変領域のCDRは、Kabatの付番方式によれば、残基31〜35(CDR−H1)、残基50〜65(CDR−H2)及び残基95〜102(CDR−H3)に位置する。しかし、Chothia(Chothia,C.及びLesk,A.M.J.Mol.Biol.、196、901〜917(1987))によれば、CDR−H1に相当するループは、残基26から残基32の範囲である。それ故に、本明細書中で使用する場合「CDR−H1」は、Kabatの付番方式及びChothiaの位相的ループ定義を組み合わせることによって記載されるように、残基26から35を含む。
【0022】
軽鎖可変領域のCDRは、Kabatの付番方式によれば、残基24〜34(CDR−L1)、残基50〜56(CDR−L2)及び残基89〜97(CDR−L3)に位置する。
【0023】
一実施形態において、本発明は、ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに対して特異性を有し、重鎖の可変領域が、CDR−H1に関して配列番号1で示される配列を有するCDR、CDR−H2に関して配列番号2で示される配列を有するCDR及びCDR−H3に関して配列番号3で示される配列を有するCDRの、少なくとも1種を包含する重鎖を含む中和抗体を提供する。
【0024】
別の実施形態において、本発明は、ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに対して特異性を有し、重鎖の可変領域のCDR−H1、CDR−H2及びCDR−H3の少なくとも2種が、以下:CDR−H1に関して配列番号1で示される配列、CDR−H2に関して配列番号2で示される配列及びCDR−H3に関して配列番号3で示される配列から選択される重鎖を含む中和抗体を提供する。例えば、この抗体は、CDR−H1が配列番号1で示される配列を有し、CDR−H2が、配列番号2で示される配列を有する重鎖を含むことができる。或いは、この抗体は、CDR−H1が配列番号1で示される配列を有し、CDR−H3が、配列番号3で示される配列を有する重鎖を含むことができ、或いはこの抗体は、CDR−H2が配列番号2で示される配列を有し、CDR−H3が、配列番号3で示される配列を有する重鎖を含むことができる。誤解を避けるために、すべての順列が含まれることと理解する。
【0025】
別の実施形態において、本発明は、ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに対して特異性を有し、重鎖の可変領域が、CDR−H1に関して配列番号1で示される配列、CDR−H2に関して配列番号2で示される配列及びCDR−H3に関して配列番号3で示される配列を包含する重鎖を含む中和抗体を提供する。
【0026】
一実施形態において、本発明は、ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに対して特異性を有し、軽鎖の可変領域が、CDR−L1に関して配列番号4で示される配列を有するCDR、CDR−L2に関して配列番号5で示される配列を有するCDR及びCDR−L3に関して配列番号6で示される配列を有するCDRの少なくとも1種を包含する軽鎖を含む中和抗体を提供する。
【0027】
別の実施形態において、本発明は、ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに対して特異性を有し、軽鎖の可変領域のCDR−L1、CDR−L2及びCDR−L3の少なくとも2種が、以下:CDR−L1に関して配列番号4で示される配列、CDR−L2に関して配列番号5で示される配列及びCDR−L3に関して配列番号6で示される配列から選択される軽鎖を含む中和抗体を提供する。例えば、この抗体は、CDR−L1が配列番号4で示される配列を有し、CDR−L2が、配列番号5で示される配列を有する軽鎖を含むことができる。或いは、この抗体は、CDR−L1が配列番号4で示される配列を有し、CDR−L3が、配列番号6で示される配列を有する軽鎖を含むことができ、或いはこの抗体は、CDR−L2が配列番号5で示される配列を有し、CDR−L3が、配列番号6で示される配列を有する軽鎖を含むことができる。誤解を避けるために、すべての順列が含まれることと理解する。
【0028】
別の実施形態において、本発明は、ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに対して特異性を有し、可変領域が、CDR−L1に関して配列番号4で示される配列、CDR−L2に関して配列番号5で示される配列及びCDR−L3に関して配列番号6で示される配列を包含する軽鎖を含む中和抗体を提供する。
【0029】
本発明の抗体分子は、好ましくは、それぞれ相補的な軽鎖又は相補的な重鎖を含む。
【0030】
それ故、一実施形態において、本発明に従った抗体は、重鎖の可変領域が、CDR−H1に関して配列番号1で示される配列、CDR−H2に関して配列番号2で示される配列及びCDR−H3に関して配列番号3で示される配列を含む重鎖、ならび軽鎖の可変領域が、CDR−L1に関して配列番号4で示される配列、CDR−L2に関して配列番号5で示される配列及びCDR−L3に関して配列番号6で示される配列を包含する軽鎖を含む。
【0031】
1つ又は複数のアミノ酸の置換が、IL−17A及びIL−17Fに結合し、IL−17A及びIL−17Fの活性を中和する抗体の能力を有意に変化させることなく、本発明により提供されるCDRに対して実施可能なことは理解されるであろう。結合及び中和についてのアミノ酸置換の効果は、当業者によって、例えば本明細書中に記載の方法を使用して、容易に試験できる。したがって、本発明は、1種又は複数種のCDRにおいて1つ又は複数のアミノ酸が別のアミノ酸に置換されている、CDRH−1(配列番号1)、CDRH−2(配列番号2)、CDRH−3(配列番号3)、CDRL−1(配列番号4)、CDRL−2(配列番号5)及びCDRL−3(配列番号6)から選択される、1種又は複数種のCDRを含む抗体を提供する。IL−17A及びIL−17Fに結合し、IL−17A及びIL−17Fの活性を中和する抗体の能力を有意に変化させることなく、1種又は複数種のCDRの長さを変更し得ることもまた理解されるであろう。
【0032】
一実施形態において、本発明の抗体は、重鎖の可変領域が3種のCDRを含み、CDRH−1の配列が、配列番号1で示される配列に対して少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、CDRH−2の配列が、配列番号2で示される配列に対して少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、及び/又はCDRH−3の配列が、配列番号3で示される配列に対して少なくとも60%の同一性又は類似性を有する重鎖を含む。別の実施形態において、本発明の抗体は、重鎖の可変領域が3種のCDRを含み、CDRH−1の配列が、配列番号1で示される配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%若しくは98%の同一性又は類似性を有し、CDRH−2の配列が、配列番号2で示される配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%若しくは98%の同一性又は類似性を有し、及び/又はCDRH−3の配列が、配列番号3で示される配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%若しくは98%の同一性又は類似性を有する重鎖を含む。
【0033】
本明細書中で使用する場合、「同一性」は、アライメントした配列の任意の特定の位置において、アミノ酸残基が配列間で同一であることを指す。本明細書中で使用する場合、「類似性」は、アライメントした配列の任意の特定の位置において、アミノ酸残基が配列間で類似の型であることを指す。例えば、ロイシンは、イソロイシン又はバリンに置換されていてもよい。多くの場合互いに置換されていてもよい他のアミノ酸は、限定するものではないが、
フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸)
リシン、アルギニン及びヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸)
アスパラギン酸及びグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸)
アスパラギン及びグルタミン(アミノ側鎖を有するアミノ酸)及び
システイン及びメチオニン(硫黄含有側鎖を有するアミノ酸)
を含む。同一性又は類似性の度合は、容易に計算できる(Computational Molecular Biology、Lesk、A.M.編、Oxford University Press、New York、1988;Biocomputing.Informatics and Genome Projects、Smith,D.W.編、Academic Press、New York、1993;Computer Analysis of Sequence Data、Part1、Griffin、A.M.and Griffin,H.G.編、Humana Press、New Jersey、1994;Sequence Analysis in Molecular Biology、von Heinje、G.、Academic Press、1987;及びSequence Analysis Primer、Gribskov、M.and Devereux,J.編、M Stockton Press、New York、1991)
【0034】
別の実施形態において、本発明の抗体は、軽鎖の可変領域が3種のCDRを含み、CDRL−1の配列が、配列番号4で示される配列に対して少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、CDRL−2の配列が、配列番号5で示される配列に対して少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、及び/又はCDRL−3の配列が、配列番号6で示される配列に対して少なくとも60%の同一性又は類似性を有する軽鎖を含む。別の実施形態において、本発明の抗体は、重鎖の可変領域が3種のCDRを含み、CDRL−1の配列が、配列番号4で示される配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%若しくは98%の同一性又は類似性を有し、CDRL−2の配列が、配列番号5で示される配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%若しくは98%の同一性又は類似性を有し、及び/又はCDRL−3の配列が、配列番号6で示される配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%若しくは98%の同一性又は類似性を有する軽鎖を含む。
【0035】
一実施形態において、本発明により提供される抗体は、モノクロナール抗体である。
【0036】
一実施形態において、本発明により提供される抗体は、キメラ抗体である。
【0037】
一実施形態において、本発明により提供される抗体は、配列番号1から6で提供される1種又は複数種のCDRを含む、CDRグラフト抗体分子である。本明細書中で使用する場合、「CDRグラフト抗体分子」という用語は、1種又は複数種のCDR(所望であれば1種又は複数種の修飾されたCDR)を含む、ドナー抗体(例えば、マウスモノクロナール抗体)由来の重鎖及び/又は軽鎖が、アクセプター抗体(例えば、ヒト抗体)の重鎖及び/又は軽鎖の可変領域フレームワークにグラフトされた抗体分子を指す。総説としては、Vaughan他、Nature Biotechnology、16、535〜539、1998を参照されたい。一実施形態において、全CDRを移入するのではなく、本明細書中の上記のCDRのいずれか1種に由来する特異性決定残基の1種又は複数種のみを、ヒト抗体フレームワークに移入する(例えば、Kashmiri他、2005、Methods、36、25〜34を参照されたい)。一実施形態において、本明細書中の上記のCDRの1種又は複数種に由来する特異性決定残基のみを、ヒト抗体フレームワークに移入する。別の実施形態において、本明細書中の上記のCDRのそれぞれに由来する特異性決定残基のみを、ヒト抗体フレームワークに移入する。
【0038】
CDR又は特異性決定残基をグラフトする場合、任意の適切なアクセプターの可変領域フレームワーク配列を、マウス、霊長類及びヒトのフレームワーク領域を含む、CDRが由来するドナー抗体のクラス/型を考慮して使用できる。本発明に従ったCDRグラフト抗体は、ヒトアクセプターのフレームワーク領域並びに上記の1種又は複数種のCDR又は特異性決定残基を含む、可変領域を有することが好ましい。それ故に、一実施形態において、可変領域がヒトアクセプターのフレームワーク領域及び非ヒトドナーのCDRを含む、中和CDRグラフト抗体を提供する。
【0039】
本発明に使用できるヒトフレームワークの例は、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY及びPOM(Kabat他、上記)である。例えば、KOL及びNEWMは、重鎖に関して使用でき、REIは、軽鎖に関して使用でき、EU、LAY及びPOMは重鎖及び軽鎖の両方に関して使用できる。或いは、ヒト生殖細胞系配列が使用できこれらは、http://vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk/において利用可能である。
【0040】
本発明のCDRグラフト抗体において、アクセプターの重鎖及び軽鎖は必ずしも同じ抗体に由来する必要はなく、所望であれば、異なる鎖に由来するフレームワーク領域を有する複合鎖を含んでもよい。
【0041】
本発明のCDRグラフト抗体の重鎖に関する好ましいフレームワーク領域は、JH4を伴うヒトサブグループのVH3配列1−3 3−07に由来する。したがって、重鎖フレームワーク領域が、JH4を伴うヒトサブグループ配列の1−3 3−07に由来する、少なくとも1種の非ヒトドナーのCDRを含む、中和CDRグラフト抗体を提供する。ヒトJH4の配列は以下の、(YFDY)WGQGTLVTVSSである。YFDYモチーフは、CDR−H3の一部であり、フレームワーク4の一部ではない(Ravetch、JV.他、1981、Cell、27、583〜591)。
【0042】
本発明のCDRグラフト抗体の軽鎖に関する好ましいフレームワーク領域は、JK1を伴うヒト生殖細胞系サブグループVK1配列2−1−(1)L4に由来する。したがって、軽鎖フレームワーク領域が、JK1を伴うヒトサブグループ配列VK1 2−1−(1)L4に由来する、少なくとも1種の非ヒトドナーCDRを含む、中和CDRグラフト抗体を提供する。JK1の配列は以下の、(WT)FGQGTKVEIKである。WTモチーフは、CDR−L3の一部であり、フレームワーク4の一部ではない(Hieter、PA.、他、1982、J.Biol.Chem.、257、1516〜1522)。
【0043】
また、本発明のCDRグラフト抗体において、フレームワーク領域は、アクセプター抗体のフレームワーク領域と正確に同じ配列を有する必要はない。例えば、異常な残基は、そのアクセプター鎖のクラス又は型のために、より頻繁に発生する残基に交換できる。或いは、アクセプターのフレームワーク領域において選択された残基は、ドナー抗体の同じ位置に見出される残基に一致するように交換できる(Reichmann他、1998、Nature、332、323〜324を参照されたい)。このような交換は、ドナー抗体の親和性の回復に必要な最小限にとどめるべきである。交換が必要と思われるアクセプターのフレームワーク領域において、残基を選択するためのプロトコルは、WO91/09967に説明されている。
【0044】
本発明のCDRグラフト抗体分子において、アクセプターの重鎖が、JH4を伴うヒトVH3配列1−3 3−07を有する場合、その時、重鎖のアクセプターのフレームワーク領域は、1種又は複数種のドナーCDRに加えて、少なくとも94位にドナーの残基を含むことが好ましい(Kabat他、による(上記))。したがって、少なくとも、重鎖の可変領域の94位の残基がドナーの残基であるCDRグラフト抗体を提供する。
【0045】
本発明に従ったCDRグラフト抗体において、アクセプターの軽鎖がJK1を伴うヒトサブグループVK1配列2−1−(1)L4を有する場合、ドナー残基は移入されない、すなわち、CDRのみが移入されることが好ましい。したがって、CDRのみがドナーのフレームワークに移入されるCDRグラフト抗体を提供する。
【0046】
ドナー残基は、ドナー抗体由来の残基、すなわち、CDRが本来派生した抗体に由来する残基である。
【0047】
一実施形態において、本発明の抗体は、重鎖の可変領域が配列番号9(gH9)で示される配列を含む、重鎖を含む。
【0048】
別の実施形態において、本発明の抗体は、重鎖の可変領域が、配列番号9で示される配列に対して少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を包含する重鎖を含む。一実施形態において、本発明の抗体は、重鎖の可変領域が、配列番号9で示される配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を包含する重鎖を含む。
【0049】
一実施形態において、本発明の抗体は、軽鎖の可変領域が、配列番号7(gL7)で示される配列を包含する軽鎖を含む。
【0050】
別の実施形態において、本発明の抗体は、軽鎖の可変領域が、配列番号7で示される配列に対して少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を包含する軽鎖を含む。一実施形態において、本発明の抗体は、軽鎖の可変領域が、配列番号7で示される配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を包含する軽鎖を含む。
【0051】
一実施形態において、本発明の抗体は、重鎖の可変領域が、配列番号9で示される配列を包含する重鎖、及び軽鎖の可変領域が、配列番号7で示される配列を包含する軽鎖を含む。
【0052】
本発明の別の実施形態において、抗体は、重鎖の可変領域が、配列番号9で示される配列に対して少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を包含し、軽鎖の可変領域が、配列番号7で示される配列に対して少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を包含する、重鎖及び軽鎖を含む。抗体が、重鎖の可変領域が、配列番号9で示される配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を包含する重鎖、及び軽鎖の可変領域が、配列番号7で示される配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を包含する軽鎖を含むことが好ましい。
【0053】
上記のように、本発明の抗体分子は、完全長の重鎖及び軽鎖を有する完全な抗体分子又はドメイン抗体、例えばVH、VL、VHH、Fab、修飾されたFab、Fab’、F(ab’)、Fv又はscFv断片などのそれらの断片を含むことができる。
【0054】
本発明の抗体分子の定常領域ドメインは、存在するのであれば、抗体分子の提案された機能、特に必要とされると思われるエフェクター機能を考慮して選択できる。例えば、定常領域ドメインは、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMドメインであってよい。具体的には、抗体分子が治療的使用を意図されており、抗体エフェクター機能が必要とされている場合、ヒトIgG、特にIgG1及びIgG3のイソ型の定常領域ドメインが使用できる。或いは、抗体分子が治療目的を意図されており、抗体エフェクター機能が必要とされていない、例えば、単純にIL−17の活性をブロックする場合、IgG2及びIgG4のイソ型が使用できる。例えば、Angal他、Molecular Immunology、1993、30(1)、105〜108に記載されているように、241位のセリンがプロリンに交換されているIgG4分子が使用できる。特に好ましいのは、この交換を含むIgG4定常領域ドメインである。
【0055】
一実施形態において、抗体の重鎖はCH1領域を含み、抗体の軽鎖はCL領域のκ又はλのいずれかを含む。
【0056】
好ましい実施形態において、本発明により提供される抗体は、ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに特異性を有し、重鎖の定常領域が、241位のセリンが、上記のAngal他、に記載のようにプロリンによって置換されている、ヒトIgG4の定常領域を含む中和抗体である。したがって、本発明は、重鎖が配列番号15で示される配列を含む、又は配列番号15で示される配列からなる抗体を提供する。
【0057】
本発明の一実施形態において、抗体は、配列番号15で示される配列に対して少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含んだ重鎖を含む。抗体は、配列番号15で示される配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含んだ重鎖を含むことが好ましい。
【0058】
一実施形態において、本発明に従った抗体分子は、配列番号11で示される配列を包含する軽鎖を含む。
【0059】
本発明の一実施形態において、抗体は、配列番号11で示される配列に対して少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含んだ軽鎖を含む。抗体は、配列番号11で示される配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含んだ軽鎖を含むことが好ましい。
【0060】
一実施形態において、本発明は、重鎖が配列番号15で示される配列を含み、又は配列番号15で示される配列からなり、軽鎖が配列番号11で示される配列を含む、又は配列番号11で示される配列からなる抗体を提供する。
【0061】
本発明の一実施形態において、抗体は、重鎖が配列番号15で示される配列に対して少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含み、軽鎖が配列番号11で示される配列に対して少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含んだ、重鎖及び軽鎖を含む。抗体は、配列番号15で示される配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含んだ重鎖、及び配列番号11で示される配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含んだ軽鎖を含むことが好ましい。
【0062】
さらに本発明により、ヒトIL−17Aの特定領域又はエピトープ及び/又はヒトIL−17Fの特定領域又はエピトープ及び/又は本発明により提供される抗体、具体的には、重鎖配列gH9(配列番号9)及び/又は軽鎖配列gL7(配列番号7)を含む抗体によって結合しているヒトIL−17A/Fヘテロ二量体、の特定領域又はエピトープを含む抗体が提供される。
【0063】
ヒトIL−17Aポリペプチドの特定領域又はエピトープ及びヒトIL−17Fポリペプチドの特定領域又はエピトープ及びヒトIL−17A/Fヘテロ二量体の特定領域又はエピトープは、当技術分野において公知の任意の適切なエピトープマッピング法と、本発明により提供される抗体の任意の1つを組み合わせて容易に特定できる。このような方法の例は、IL−17A及びIL−17Fに由来する様々な長さのペプチドのスクリーニングを含み、抗体に特異的に結合できる最も小さい断片は、抗体により認識されるエピトープの配列を含む。IL−17ペプチドは、合成的に、又は適切なIL−17ポリペプチドのタンパク質分解によって作製できる。抗体に結合するペプチドは、例えば質量分光分析によって特定できる。別の例において、NMR分光法が、本発明の抗体により結合されたエピトープの特定に使用できる。ひとたび特定すれば、本発明の抗体に結合するエピトープ断片を、必要に応じて、同じエピトープに結合する更なる中和抗体を得るための免疫原として使用できる。
【0064】
本発明に従った抗体、具体的には重鎖配列gH9(配列番号9)及び軽鎖配列gL7(配列番号7)を含む抗体の結合を交差ブロックする抗体は、IL−17A及びIL−17Fの活性の中和において同様に有用であり得る。したがって、本発明はさらに、ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに結合し、上記の抗体のいずれか1種の、ヒトIL−17A及び/又はヒトIL−17F及び/又はIL−17A/Fヘテロ二量体への結合を交差ブロックし、並びに/或いは上記の抗体のいずれか1種によって、IL−17A及び/又はIL−17F及び/又はヒトIL−17A/Fヘテロ二量体を結合することから交差ブロックされる中和抗体を提供する。一実施形態において、このような抗体は、本明細書中の上記の抗体と同じエピトープに結合する。別の実施形態において、交差ブロック中和抗体は、本明細書中の上記の抗体によって結合されるエピトープより広い及び/又は重複するエピトープに結合する。別の実施形態において、本発明のこの態様の交差ブロック中和抗体は、本発明の抗体と同じエピトープ又は前記エピトープより広い及び/又は重複するエピトープには結合しない。
【0065】
交差ブロック抗体は、交差ブロック抗体のヒトIL−17A及び/又はヒトIL−17Fへの結合が、本発明の抗体の結合を妨げる又は逆の場合、当技術分野における任意の適切な方法、例えば、競合ELISA又はBIAcoreを使用することによって特定できる。
【0066】
一実施形態において、ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに結合する中和抗体が提供され、この中和抗体は、重鎖が配列gH9(配列番号9)を含み、軽鎖が配列gL7(配列番号7)を含む抗体の、ヒトIL−17Aへの、又はヒトIL−17Fへの結合を交差ブロックする。一実施形態において、本発明により提供される交差ブロック抗体は、重鎖配列gH9(配列番号9)及び軽鎖配列gL7(配列番号7)を含む抗体の、IL−17Aへの結合を、80%超、好ましくは85%超、より好ましくは90%超、さらにより好ましくは95%超、及びIL−17Fへの結合を、80%超、好ましくは85%超、より好ましくは90%超、さらにより好ましくは95%超阻害する。
【0067】
一実施形態において、ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに結合する中和抗体が提供され、この中和抗体は、重鎖が配列gH9(配列番号9)を含み、軽鎖が配列gL7(配列番号7)を含む抗体の、ヒトIL−17Aへの、及びヒトIL−17Fへの、及びヒトIL−17A/Fヘテロ二量体への結合を交差ブロックする。一実施形態において、本発明により提供される交差ブロック抗体は、重鎖配列gH9(配列番号9)及び軽鎖配列gL7(配列番号7)を含む抗体の、IL−17Aへの結合を、80%超、好ましくは85%超、より好ましくは90%超、さらにより好ましくは95%超、及びIL−17Fへの結合を、80%超、好ましくは85%超、より好ましくは90%超、さらにより好ましくは95%超、並びにIL−17A/Fヘテロ二量体への結合を、80%超、好ましくは85%超、より好ましくは90%超、さらにより好ましくは95%超阻害する。
【0068】
一実施形態において、ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに結合する中和抗体が提供され、この中和抗体は、重鎖が配列gH9(配列番号9)を含み、軽鎖が配列gL7(配列番号7)を含む抗体の、ヒトIL−17Aへの、又はヒトIL−17Fへの、又はヒトIL−17A/Fヘテロ二量体への結合を交差ブロックする。一実施形態において、本発明により提供される交差ブロック抗体は、重鎖配列gH9(配列番号9)及び軽鎖配列gL7(配列番号7)を含む抗体の、IL−17A又はIL−17F又はIL−17A/Fへの結合を、80%超、好ましくは85%超、より好ましくは90%超、さらにより好ましくは95%超阻害する。
【0069】
或いは、又はさらに、本発明のこの態様に従った中和抗体は、重鎖配列gH9(配列番号9)及び軽鎖配列gL7(配列番号7)を含む抗体によって、ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fへの結合を交差ブロックされ得る。したがってさらに、ヒトIL−17Aに、及びヒトIL−17Fに結合し、重鎖配列gH9(配列番号9)及び軽鎖配列gL7(配列番号7)を含む抗体によって、ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fを結合することから交差ブロックされる中和抗体分子を提供する。一実施形態において、本発明のこの態様により提供される中和抗体は、重鎖配列gH9(配列番号9)及び軽鎖配列gL7(配列番号7)を含む抗体によって、ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fへの結合から、80%超、好ましくは85%超、より好ましくは90%超、さらにより好ましくは95%超阻害される。
【0070】
別の実施形態において、ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに結合する中和抗体が提供され、この中和抗体は、重鎖配列gH9(配列番号9)及び軽鎖配列gL7(配列番号7)を含む抗体によって、ヒトIL−17A及びヒトIL−17F及びIL−17A/Fヘテロ二量体への結合から交差ブロックされる。一実施形態において、本発明のこの態様により提供される中和抗体は、重鎖配列gH9(配列番号9)及び軽鎖配列gL7(配列番号7)を含む抗体により、ヒトIL−17A及びヒトIL−17F及びヒトIL−17A/Fヘテロ二量体への結合から、80%超、好ましくは85%超、より好ましくは90%超、さらにより好ましくは95%超阻害される。
【0071】
したがってさらに、ヒトIL−17Aに、及びヒトIL−17Fに結合し、重鎖配列gH9(配列番号9)及び軽鎖配列gL7(配列番号7)を含む抗体によって、ヒトIL−17A又はヒトIL−17F又はヒトIL−17A/Fを結合することから交差ブロックされる中和抗体分子を提供する。一実施形態において、本発明のこの態様により提供される中和抗体は、重鎖配列gH9(配列番号9)及び軽鎖配列gL7(配列番号7)を含む抗体によって、ヒトIL−17A又はヒトIL−17F又はヒトIL−17A/Fへの結合から、80%超、好ましくは85%超、より好ましくは90%超、さらにより好ましくは95%超阻害される。
【0072】
本発明の任意の態様の抗体分子は、好ましくは高い結合親和性、好ましくはナノモルの、さらにより好ましくはピコモルの結合親和性を有する。本発明に従った抗体のヒトIL−17Aに対する結合親和性は、同じ抗体のヒトIL−17F及び/又はヒトIL−17A/Fヘテロ二量体に対する結合親和性と異なっていてもよいことは、理解されるであろう。一例において、本発明の抗体分子は、IL−17Aに対して、IL−17Fに対するその結合親和性よりも高い親和性を有する。一例において、本発明の抗体分子は、IL−17Aに対して、IL−17Fに対する結合親和性より少なくとも10倍高い親和性を有する。一例において、本発明の抗体分子は、IL−17Aに対して、IL−17Fに対するその結合親和性より少なくとも50倍高い親和性を有する。一例において、本発明の抗体分子は、IL−17Aに対して、IL−17Fに対するその結合親和性より少なくとも100倍高い親和性を有する。一例において、本発明の抗体分子は、IL−17Fに対して、IL−17Aに対するその親和性よりも高い親和性を有する。一例において、本発明の抗体分子は、IL−17Aに対して、IL−17Fに対するその親和性と同じ親和性を有する。一例において、本発明の抗体分子は、IL−17Aに対してピコモルの親和性及びIL−17Fに対してナノモルの親和性を有する。一例において、本発明の抗体分子は、IL−17Fに対してナノモルの親和性及びIL−17Aに対してピコモルの親和性を有する。一例において、本発明の抗体分子は、IL−17A及びIL−17Fの両方に対してナノモルの親和性を有する。一例において、本発明の抗体分子は、IL−17A及びIL−17Fの両方に対してピコモルの親和性を有する。
【0073】
好ましくは、本発明の抗体分子は、IL−17Aに対して10nMより優れた結合親和性を有する。一実施形態において、本発明の抗体分子は、IL−17Aに対して500pMより優れた結合親和性を有する。一実施形態において、本発明の抗体分子は、IL−17Aに対して100pMより優れた結合親和性を有する。一実施形態において、本発明の抗体分子は、IL−17Aに対して20pMより優れた結合親和性を有する。一実施形態において、本発明の抗体分子は、IL−17Aに対して16pMの親和性を有する。
【0074】
好ましくは、本発明の抗体分子は、IL−17Fに対して10nMより優れた結合親和性を有する。一実施形態において、本発明の抗体分子は、IL−17Fに対して2nMより優れた親和性を有する。一実施形態において、本発明の抗体分子は、IL−17Fに対して1.75nMの親和性を有する。
【0075】
好ましくは、本発明の抗体分子は、IL−17A/Fヘテロ二量体に対して10nMより優れた結合親和性を有する。一実施形態において、本発明の抗体分子は、IL−17A/Fヘテロ二量体に対して500pMより優れた結合親和性を有する。一実施形態において、本発明の抗体分子は、IL−17A/Fヘテロ二量体に対して150pMより優れた結合親和性を有する。一実施形態において、本発明の抗体分子は、IL−17A/Fヘテロ二量体に対して116pMの結合親和性を有する。
【0076】
一実施形態において、本発明の抗体分子は、カニクイザルのIL−17Fに対して2nMより優れた結合親和性を有する。一実施形態において、本発明の抗体分子は、カニクイザルのIL−17Fに対して1.03nMの結合親和性を有する。
【0077】
本発明によって提供される抗体の親和性は、当技術分野において公知の、任意の適切な方法を使用して改変されてもよいことは理解されるであろう。したがって、本発明はさらに、IL−17A及び/又はIL−17Fに対する親和性が改善されている、本発明の抗体分子の変異体にも関する。このような変異体は、CDRの成熟(Yang他、J.Mol.Biol.、254、392〜403、1995)、チェーンシャッフリング(Marks他、Bio/Technology、10、779〜783、1992)、大腸菌のミューテーター株の使用(Low他、J.Mol.Biol.、250、359−368、1996)、DNAシャッフリング(Patten他、Curr.Opin.Biotechnol.、8、724〜733、1997)、ファージディスプレイ(Thompson他、J.Mol.Biol.、256、77〜88、1996)及びセクシャルPCR(Crameri他、Nature、391、288〜291、1998)を含む、多くの親和性成熟プロトコルによって得られる。Vaughan他(上記)は、これらの方法の親和性成熟について論じている。
【0078】
一実施形態において、本発明の抗体分子は、例えば、実施例に記載したインビトロアッセイにおいて、IL−17A及びIL−17Fの活性を中和する。一実施形態において、本発明は、ヒトIL−17A及びIL−17Fに対して特異性を有し、0.8nMのヒトIL−17Aの活性を、5nM未満の濃度で50%阻害でき、4.2nMのヒトIL−17Fの活性を、12nM未満の濃度で50%阻害でき、前記阻害活性が、IL−17A又はIL−17により誘導されたヒーラ細胞からのIL−6の放出について測定される中和抗体を提供する。一実施形態において、IL−17Aを50%阻害する抗体の濃度は、3nM未満である。一実施形態において、IL−17Fを50%阻害する抗体の濃度は、11nM未満である。一実施形態において、アッセイに使用したヒトIL−17A及びヒトIL−17Fは、組換えのヒトIL−17A及びIL−17Fである。一実施形態において、中和抗体は、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体である。
【0079】
所望であれば、本発明における使用のための抗体は、1種又は複数種のエフェクター分子に結合できる。エフェクター分子が、本発明の抗体に結合できる単一部位を形成するように連結された、単一のエフェクター分子又は2種以上のそのような分子を含んでよいことは理解されるであろう。エフェクター分子に連結された抗体断片を得ることが所望の場合、これは、抗体断片を直接又はカップリング剤を介してのいずれかで、エフェクター分子に連結する、標準的な化学的又は組換えDNAの手法によって調製できる。このようなエフェクター分子と抗体の結合に関する技術は、当技術分野において周知である(Hellstrom他、Controlled Drug Delivery、第2版、Robinson他編、1987、623〜53ページ;Thorpe他、1982、Immunol.Rev.、62:119〜58及びDubowchik他、1999、Pharmacology and Therapeutics、83、67〜123を参照されたい)。具体的な化学的手法は、例えば、WO93/06231、WO92/22583、WO89/00195、WO89/01476及びWO03031581に記載された手法を含む。或いは、エフェクター分子がタンパク質又はポリペプチドである場合、連結は、例えば、WO86/01533及び欧州特許第0392745号に記載されたような組換えDNA手法を使用して達成できる。
【0080】
本明細書中で使用する場合、エフェクター分子という用語は、例えば、抗腫瘍薬、薬剤、毒素、生物活性タンパク質、例えば酵素、他の抗体又は抗体断片、合成又は天然ポリマー、核酸及びそれらの断片、例えばDNA、RNA及びそれらの断片、放射性核種、特に放射性ヨウ化物、放射性同位元素、キレート金属、ナノ粒子、並びに蛍光化合物又はNMR若しくはESR分光法によって検出できる化合物などのレポーター基を含む。
【0081】
エフェクター分子の例は、細胞毒素、又は細胞にとって有害(例えば致死的)である任意の薬剤を含む、細胞毒性薬を含み得る。例としては、コンブレスタチン、ドラスタチン、エポチロン、スタウロスポリン、マイタンシノイド、スポンジスタチン、リゾキシン、ハリコンドリン、ロリジン、ヘミアステリン、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD,1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン、並びにそれらの類似体及び相同体が挙げられる。
【0082】
エフェクター分子はさらに、限定するものではないが、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン(mechlorethamine)、チオエパ(thioepa)クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、並びにcis−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(anthramycin)(AMC)、カリケアマイシン又はデュオカルマイシン)並びに有糸分裂阻害剤(例えばビンクリスチン及びビンブラスチン)を含む。
【0083】
他のエフェクター分子は、111In及び90Y、Lu177、ビスマス213、カリホルニウム252、イリジウム192及びタングステン188/レニウム188などのキレートされた放射性核種;又は限定するものではないが、アルキルホスホコリン、トポイソメラーゼI阻害剤、タキソイド及びスラミンなどの薬剤を含み得る。
【0084】
他のエフェクター分子は、タンパク質、ペプチド及び酵素を含む。限定するものではないが、対象となる酵素は、タンパク質分解酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼを含む。限定するものではないが、対象となるタンパク質、ポリペプチド及びペプチドは、免疫グロブリン、アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素又はジフテリア毒素などの毒素、インスリン、腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子又は組織プラスミノーゲン活性化因子などのタンパク質、血栓剤(thrombotic agent)又は抗血管新生剤、例えばアンギオスタチン又はエンドスタチン、或いはリンホカイン、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−6(IL−6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、神経成長因子(NGF)、又は他の成長因子などの生物反応修飾因子、及び免疫グロブリンを含む。
【0085】
他のエフェクター分子は、例えば診断において有用な検出可能な物質を含み得る。検出可能な物質の例は、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性核種、陽電子放出金属(陽電子放出トモグラフィーにおける使用のため)及び非放射性常磁性金属イオンを含み得る。診断としての使用のための抗体に結合可能な金属イオンに関しては、米国特許第4,741,900号全体を参照されたい。適切な酵素は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼを含み、適切な補欠分子族はストレプトアビジン、アビジン及びビオチンを含み、適切な蛍光物質はウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオロセイン、塩化ダンシル及びフィコエリトリンを含み、適切な発光物質はルミノールを含み、適切な生物発光物質は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンを含み、適切な放射性核種は、125I、131I、111In及び99Tcを含む。
【0086】
別の例において、エフェクター分子は、インビボにおける抗体の半減期の増加及び/又は抗体の免疫原性の減少及び/又は上皮バリアを超えた免疫系への抗体の送達を強化できる。この型のエフェクター分子の適切な例は、WO05/117984に記載された様な、ポリマー、アルブミン、アルブミン結合タンパク質、アルブミン結合化合物を含む。
【0087】
エフェクター分子がポリマーである場合、一般的に、合成又は天然ポリマー、例えば適宜置換された直鎖又は分岐鎖のポリアルキレン、ポリアルケニレン又はポリオキシアルキレンポリマー、或いは分岐型又は非分岐型の多糖類、例えばホモ又はヘテロの多糖類であってよい。
【0088】
上記の合成ポリマーに存在してもよい具体的な任意選択の置換基は、1種又は複数種のヒドロキシ基、メチル基又はメトキシ基を含む。
【0089】
合成ポリマーの具体的な例は、場合によって置換された直鎖又は分岐鎖のポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)ポリ(ビニルアルコール)又はそれらの誘導体、特に、場合によって置換されたメトキシポリ(エチレングリコール)などのポリ(エチレングリコール)及びその誘導体を含む。
【0090】
具体的な天然ポリマーは、ラクトース、アミロース、デキストラン、グリコーゲン又はそれらの誘導体を含む。
【0091】
本明細書中で使用する場合の「誘導体」は、例えばマレイミドなどのチオール選択的反応基などの反応性誘導体を含むことを意図する。反応基は、ポリマーに直接又はリンカーセグメントを介して連結できる。このような基の残基が、抗体断片とポリマーとの間の連結基として、時には生成物の一部を形成することは理解されるであろう。
【0092】
ポリマーのサイズは、所望に応じて変更できるが、一般的には平均分子量が500Daから50000Da、好ましくは5000から40000Da、より好ましくは20000から40000Daの範囲となろう。ポリマーのサイズは、具体的には、生成物の使用目的、例えば腫瘍などの特定の組織に局在する能力又は循環半減期を延長させる能力に基づいて選択できる(総説としては、Chapman、2002、Advanced Drug Delivery Reviews、54、531〜545を参照されたい)。それ故に、例えば、例えば腫瘍の治療に使用するために、生成物を循環から離れて組織に浸透させることを意図する場合、分子量の小さいポリマー、例えばおよそ5000Daの分子量のポリマーの使用が有利であると思われる。生成物が循環に残存する場合の適用に関しては、分子量の大きいポリマー、例えば20000Daから40000Daの範囲の分子量を有するポリマーの使用が有利であると思われる。
【0093】
特に好ましいポリマーは、ポリ(エチレングリコール)、或いは特にメトキシポリ(エチレングリコール)などの、特に約15000Daから約40000Daの範囲の分子量のポリアルキレンポリマー又はその誘導体を含む。
【0094】
一例において、本発明における使用のための抗体は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)部位に結合する。特定の一例において、抗体は、抗体断片であり、PEG分子は、任意の利用可能なアミノ酸側鎖又は抗体断片に位置する末端アミノ酸官能基、例えば遊離アミノ酸、イミノ、チオール、ヒドロキシ又はカルボキシルの各基を介して結合できる。このようなアミノ酸は、抗体断片中に自然に発生してもよく、又は組換えDNA法を使用して断片中に操作・導入してもよい(例えば、米国特許第5,219,996号、米国特許第5,667,425号、WO98/25971を参照されたい)。一例において、本発明の抗体分子は、修飾Fab断片であり、修飾は抗体分子の重鎖のC末端への、エフェクター分子の結合を可能にする、1つ又は複数のアミノ酸の付加である。付加アミノ酸は、エフェクター分子が結合できる1つ又は複数のシステイン残基を含む、修飾ヒンジ領域を形成することが好ましい。2つ以上のPEG分子を結合するために、複数の部位が使用できる。
【0095】
PEG分子は、抗体断片に位置する少なくとも1つのシステイン残基のチオール基を介して、共有結合することが好ましい。修飾抗体断片に結合した各ポリマー分子は、断片に位置するシステイン残基のイオウ原子に共有結合できる。共有結合は、一般的にジスルフィド結合、又は、特にイオウ−炭素の結合であろう。チオール基が、活性化エフェクター分子と適切に結合する場所として使用される場合、例えばマレイミドなどのチオール選択性誘導体及びシステイン誘導体が使用できる。上記のように、活性化ポリマーが、ポリマー−修飾抗体断片の調製において、出発物質として使用できる。活性化ポリマーは、α−ハロカルボン酸又はエステル、例えばヨードアセトアミド、イミド、例えばマレイミド、ビニルスルホン又はジスルフィドなどの、チオール反応基を含む任意のポリマーであってよい。このような出発物質は、市販で(例えば、Nektar、以前はShearwater Polymers Inc.、Huntsville、AL、USAから)得られる、又は市販の出発物質から、従来の化学的手法を使用して調製できる。特定のPEG分子は、20Kメトキシ−PEG−アミン(Nektar、以前はShearwater、Rapp Polymere及びSunBioから入手可能)及びM−PEG−SPA(Nektar、以前はShearwaterから入手可能)を含む。
【0096】
一実施形態において、抗体は、例えば、欧州特許第0948544号に記載の方法に従って、PEG化された、すなわちPEG(ポリ(エチレングリコール))が共有結合した修飾Fab断片である[「ポリ(エチレングリコール)化学、バイオ技術及び生物医学的応用(Poly(ethyleneglycol) Chemistry,Biotechnical and Biomedical Applications)」、1992,J.Milton Harris(編)、Plenum Press,New York,「ポリ(エチレングリコール)の化学及び生物学的応用(Poly(ethyleneglycol)Chemistry and Biological Applications)」1997、J.Milton Harris and S.Zalipsky(編)、American Chemical Society、Washington DC及び「生物医科学のための生物学的結合タンパク質カップリング技術(Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences)」、1998、M.Aslam and A.、Dent、Grove Publishers、New York;Chapman、A.2002、Advanced Drug Delivery Reviews 2002、54:531〜545も参照されたい]。一例において、PEGは、ヒンジ領域においてシステインに結合する。一例において、PEG修飾Fab断片は、修飾ヒンジ領域において単一のチオール基に共有結合したマレイミド基を有する。リシン残基は、マレイミド基に共有結合でき、リシン残基上の各アミン基は、およそ20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)ポリマーに結合できる。Fab断片に結合したPEGの全分子量は、したがっておよそ40,000Daであると思われる。
【0097】
一実施形態において、本発明は、ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに対して特異性を有する中和抗体分子を提供し、この中和抗体は、重鎖が配列番号9で示される配列を含み、軽鎖が配列番号7で示される配列を含み、その重鎖のC末端に、エフェクター分子が結合した少なくとも1つのシステイン残基を含む修飾ヒンジ領域を有する、修飾Fab断片である。好ましくは、エフェクター分子はPEGであり、(WO98/25971及びWO2004072116)に記載の方法を使用して結合し、そのため、リシル−マレイミド基がその重鎖のC末端のシステイン残基に結合し、リシル残基の各アミノ基がそれに共有結合しており、メトキシポリ(エチレングリコール)残基は約20,000Daの分子量を有する。抗体に結合したPEGの全分子量は、したがっておよそ40,000Daである。
【0098】
別の例において、エフェクター分子は、国際特許出願WO2005/003169、WO2005/003170及びWO2005/003171に記載の方法を使用して、抗体断片に結合できる。
【0099】
本発明はさらに、本発明の抗体分子の重鎖及び/又は軽鎖をコードする、単離DNAを提供する。好ましくは、DNA配列は、本発明の抗体分子の重鎖又は軽鎖をコードする。本発明のDNA配列は、例えば、化学的方法により作製された合成DNA、cDNA、ゲノムDNA又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0100】
本発明の抗体分子をコードするDNA配列は、当業者に周知の方法によって得られる。例えば、抗体の重鎖及び軽鎖の一部又はすべてをコードするDNA配列は、所望に応じて確定されたDNA配列から、又は対応するアミノ酸配列に基づいて合成できる。
【0101】
受容体のフレームワーク配列をコードするDNAは、当業者に広く利用可能であり、それらの公知のアミノ酸配列に基づいて容易に合成できる。
【0102】
分子生物学の標準的技術を使用して、本発明の抗体分子をコードするDNA配列を調製できる。所望のDNA配列は、オリゴヌクレオチド合成技術を使用して、完全に又は部分的に合成できる。部位特異的突然変異誘発法及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を必要に応じて使用できる。
【0103】
適切な配列の例は、配列番号8、配列番号10、配列番号13、配列番号14、配列番号17及び配列番号18で提供される。配列番号18のヌクレオチド1〜57及び配列番号14の1〜60は、本発明の中和抗体分子を得るために切断される、マウス抗体B72.3由来のシグナルペプチド配列をコードする。(Whittle他、1987、Protein Eng.1(6)499〜505)。
【0104】
本発明はさらに、本発明の1種又は複数種のDNA配列を含むクローニングベクター又は発現ベクターに関する。したがって、本発明の抗体をコードする1種又は複数種のDNA配列を含むクローニングベクター又は発現ベクターを提供する。クローニングベクター又は発現ベクターは、それぞれ本発明の抗体分子の軽鎖及び重鎖をコードする、2種のDNA配列を含むことが好ましい。本発明に従ったベクターは、配列番号14及び配列番号18で示される配列を含むことが好ましい。配列番号18のヌクレオチド1〜57及び配列番号14の1〜60は、切断して本発明の中和抗体分子を得るために最も好ましいマウス抗体B72.3由来のシグナルペプチド配列(それぞれ配列番号16の残基1〜19及び配列番号12の1〜20)をコードする。
【0105】
ベクターを構築できる一般的な方法、形質移入法及び培養方法は、当業者に周知である。この点において、「分子生物学における最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」、1999、F.M.Ausubel(編)、Wiley Interscience、New York 及びCold Spring Harbor Publishingにより作成された「マニアティスのマニュアル(Maniatis Manual)」を参照する。
【0106】
さらに、本発明の抗体をコードする1種又は複数種のDNA配列を含む1種又は複数種のクローニングベクター又は発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。任意の適切な宿主細胞/ベクター系は、本発明の抗体分子をコードするDNA配列の発現のために使用できる。細菌、例えば大腸菌及び他の微生物系が使用でき、又は真核生物、例えば哺乳動物、宿主細胞発現系もまた使用できる。適切な哺乳動物宿主は、CHO、骨髄腫又はハイブリドーマの細胞を含む。
【0107】
本発明はさらに、本発明の抗体分子をコードするDNAからタンパク質の発現を引き起こすために適切な条件下で、本発明のベクターを含む宿主細胞を培養するステップ及びこの抗体分子を単離するステップを含む、本発明に従った抗体分子の作製に関する方法を提供する。
【0108】
抗体分子は、重鎖又は軽鎖のポリペプチドのみ、この場合、宿主細胞に形質移入するための使用が必要とされる配列をコードする、重鎖又は軽鎖のポリペプチドのみを含むことができる。重鎖及び軽鎖の両方を含む生成物の作製に関しては、細胞系には、2つのベクター、軽鎖ポリペプチドをコードする第1のベクター及び重鎖ポリペプチドをコードする第2のベクターを形質移入できる。或いは、重鎖及び軽鎖のポリペプチドをコードする配列を含むベクターである、単一のベクターを使用できる。
【0109】
本発明の抗体は、病態の治療及び/又は予防に有用であるので、本発明はさらに、本発明の抗体分子と、1種又は複数種の医薬として許容可能な賦形剤、希釈剤又は担体とを組み合わせて含む、医薬組成物又は診断用組成物を提供する。したがって、本発明に従った抗体の、薬剤の製造のための使用を提供する。この組成物は、医薬として許容可能な担体を普通は含むであろう、滅菌医薬組成物の一部として通常供給されるであろう。本発明の医薬組成物は、医薬として許容可能なアジュバントをさらに含むことができる。
【0110】
本発明はさらに、本発明の抗体分子に加えて又は本発明の抗体分子と混合して、1種又は複数種の医薬として許容可能な賦形剤、希釈剤又は担体とを一緒に含む、医薬組成物又は診断用組成物の調製方法を提供する。
【0111】
この抗体分子は、医薬組成物又は診断用組成物における唯一の活性成分であっても、又は他の抗体成分、例えば抗TNF、抗IL−1β、抗T細胞、抗IFNγ又は抗LPSの抗体或いはキサンチンなどの非抗体成分を含む他の活性成分を伴ってもよい。
【0112】
医薬組成物は、治療有効量の本発明の抗体を含むことが好ましい。本明細書中で使用する場合、「治療有効量」という用語は、標的となる疾患又は病態を治療、改善又は予防するために、或いは検出可能な治療効果又は予防効果を示すために必要とされる治療薬の量を指す。任意の抗体に関して、治療有効量は、細胞培養アッセイ又は動物モデル(通常、げっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタ又は霊長類)のどちらかにおいて、はじめに推定することができる。動物モデルは、適切な濃度範囲及び投与経路を決めるために使用できる。このような情報はその後、ヒトにおける有用な用量及び投与経路を決めるために使用できる。
【0113】
ヒト対象に対する正確な治療有効量は、疾患状態の重篤度、対象の全体的な健康、対象の年齢、体重及び性別、食事、投与の回数及び頻度、薬の組み合わせ、治療に対する反応感受性及び耐性/応答に依存するであろう。この量は、日常の実験によって決定でき、臨床医の判断の範囲内である。一般的に、治療有効量は、0.01mg/kgから50mg/kg、好ましくは0.1mg/kgから20mg/kgであろう。医薬組成物は、用量当たりの本発明の活性成分の所定量を含む、単位剤形で存在することが都合がよいと思われる。
【0114】
組成物は、患者に単独で投与しても、又は他の成分、薬剤又はホルモンと組み合わせて(例えば、同時に、連続して又は別々に)投与してもよい。
【0115】
本発明の抗体分子を投与する場合の用量は、治療する病態の特徴、存在する炎症の程度及び抗体分子が予防的に使用されるか、又は現状を治療するために使用されるかどうかに依存する。
【0116】
投与の頻度は、抗体分子の半減期及びその効果の持続期間に依存するであろう。抗体分子の半減期が短い(例えば、2から10時間)場合、1日に1回又は複数回の投与が必要と思われる。或いは、抗体分子の半減期が長い場合(例えば2から15日)、1日に1回、1週間に1回或いはさらに1又は2か月に1回の投与で十分であると思われる。
【0117】
医薬として許容可能な担体は、それ自体は組成物を摂取する個体に対して有害な抗体の産生を誘導してはならず、毒性であってはならない。適切な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー及び不活性ウィルス粒子などの、大型の緩慢に代謝される巨大分子であってよい。
【0118】
医薬として許容可能な塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩及び硫酸塩などの鉱酸塩、又は酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩及び安息香酸塩などの有機酸の塩が使用できる。
【0119】
治療用組成物中の医薬として許容可能な担体は、さらに水、食塩水、グリセロール及びエタノールなどの液体を含むことができる。さらに、湿潤剤又は乳化剤或いはpH緩衝物質などの補助剤がこのような組成物中に存在してもよい。このような担体は、患者による摂取のために、医薬組成物を錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー及び懸濁液などに処方可能にする。
【0120】
投与の好ましい形態は、例えば注射又は注入による、例えばボーラス注射又は連続注入による非経口投与に適した形態を含む。生成物が、注射用又は注入用である場合、油性又は水性の媒体において懸濁液、溶液又は乳剤の形態を取ってよく、懸濁剤、保存料、安定剤及び/又は分散剤などの製剤助剤を含むことができる。或いは、抗体分子は、使用前に適切な滅菌の液体により再構成するために、乾燥形態であってもよい。
【0121】
ひとたび処方したら、本発明の組成物は、対象に直接投与できる。治療される対象は動物であってよい。しかし、組成物はヒト対象に投与するために適合されることが好ましい。
【0122】
本発明の医薬組成物は、限定するものではないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経皮的、経皮的(例えば、WO98/20734を参照されたい)、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所的、舌下、膣内又は直腸の経路を含む、任意の数の経路によって投与できる。皮下噴射器もまた本発明の医薬組成物の投与のために使用できる。典型的には、治療用組成物は、溶液又は懸濁液のどちらかとして、注射可能に調製できる。注射前の、液体媒体中における溶液用又は懸濁液用に適した固体形態にもまた調製できる。
【0123】
組成物の直接送達は、一般的に、皮下、腹腔内、静脈内又は筋肉内に注射することによって達成される、或いは組織の間質腔に送達されるであろう。組成物は、病巣に投与することもまたできる。投薬治療は、単回投与スケジュールであっても、又は複数回投与スケジュールであってもよい。
【0124】
組成物中の活性成分が、抗体分子であることは理解されるであろう。そのため、消化管における分解を受けやすいであろう。それ故に、組成物を、消化管を使用する経路によって投与する場合、組成物は抗体を分解から保護するが、消化管から吸収されたら抗体を放出する成分を含む必要があると思われる。
【0125】
医薬として許容可能な担体の徹底的な考察は、レミントンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)(Mack Publishing Company、N.J.1991)で利用できる。
【0126】
本発明の抗体を遺伝子治療の使用により投与することも想定している。このことを達成するために、本抗体分子の重鎖及び軽鎖をコードするDNA配列を、適切なDNA成分の調節下で、抗体鎖がDNA配列から発現し、その場で結合するように患者に導入する。
【0127】
本発明はさらに、炎症性疾患の調節における使用のための抗体を提供する。抗体分子は、炎症過程を減少させる又は炎症過程を防ぐために使用できることが好ましい。
【0128】
本発明はさらに、IL−17A及び/又はIL−17Fにより仲介される、或いはIL−17A及び/又はIL−17Fのレベルの上昇に伴う、病的障害の治療又は予防における使用を提供する。病態は、感染(ウィルス性、細菌性、真菌性及び寄生性)、感染に伴う内毒素性ショック、関節炎、間接リウマチ、ぜんそく、骨盤内炎症性疾患、アルツハイマー病、クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、ペイロニー病、セリアック病、胆嚢疾患、毛巣病、腹膜炎、乾癬、血管炎、外科手術後の癒着、脳梗塞、I型糖尿病、ライム病関節炎、髄膜脳炎、多発性硬化症及びギラン・バレー症候群などの中枢神経系及び末梢神経系の免疫介在性炎症性疾患、他の自己免疫疾患、膵炎、外傷(外科手術)、移植片対宿主病、移植による拒絶反応、癌(メラノーマ、肝芽腫、肉腫、扁平上皮癌、移行上皮癌、卵巣癌などの固体腫瘍、及び悪性血液疾患の両方、並びに特に急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、胃癌、及び結腸癌)、心筋梗塞並びにアテローム性動脈硬化などの虚血性疾患を含む心臓疾患、血管内凝固、骨吸収、骨粗しょう症、歯周炎及び低塩酸症からなる群から選択されることが好ましい。
【0129】
本発明はさらに、痛みの治療又は予防における使用のための、本発明に従った抗体分子を提供する。
【0130】
本発明はさらに、IL−17A及び/又はIL−17Fにより仲介される、或いはIL−17A及び/又はIL−17Fのレベルの上昇に伴う、病的障害の治療又は予防のための薬剤の製造における、本発明に従った抗体分子の使用を提供する。病的障害は、間接リウマチ又は多発性硬化症であることが好ましい。
【0131】
本発明はさらに、痛みの治療又は予防のための薬剤の製造における、本発明に従った抗体分子の使用を提供する。
【0132】
本発明の抗体分子は、ヒト又は動物の体内で、IL−17A及び/又はIL−17Fの効果を減少させることが望ましい、任意の治療において利用できる。IL−17A及び/又はIL−17Fは、体内で循環していても、又は体内の特定の部位、例えば炎症部位に、望ましくない高レベルで局在していてもよい。
【0133】
本発明に従った抗体分子は、炎症性疾患、自己免疫疾患又は癌の調節のために使用することが好ましい。
【0134】
本発明はさらに、IL−17A及び/又はIL−17Fによって仲介される疾患を患っている、又は危険性があるヒト又は動物の対象を治療する、有効量の本発明の抗体分子を対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0135】
本発明に従った抗体分子は、IL−17A及び/又はIL−17Fに関与する病態の診断、例えばインビボ診断及び画像化において使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
本発明はさらに、添付の図面について言及する以下の実施例においてのみ、図解を用いて説明する。
【0137】
【図1】図1aは、抗体CA028_0496の軽鎖V領域(配列番号7)を表す図である。 図1bは、抗体CA028_0496の重鎖V領域(配列番号9)を表す図である。 図1cは、抗体CA028_496のCDRH1(配列番号1)、CDRH2(配列番号2)、CDRH3(配列番号3)、CDRL1(配列番号4)、CDRL2(配列番号5)、CDRL3(配列番号6)を表す図である。 図1dは、抗体CA028_496の軽鎖(配列番号11)を表す図である。 図1eは、抗体CA028_496の重鎖(配列番号15)を表す図である。 図1fは、シグナル配列を含む抗体CA028_496の軽鎖をコードするDNA(配列番号14)を表す図である。 図1gは、シグナル配列を含む抗体CA028_496の重鎖をコードするDNA(配列番号18)を表す図である。
【図2a】ヒトIL−17により誘導される、ヒーラ細胞からのIL−6の産生についての抗体CA028_0496(凡例においてAb#496と指定される)の効果を表す図である。
【図2b】ヒトIL−17Fにより誘導される、ヒーラ細胞からのIL−6の産生についての抗体CA028_0496(凡例においてAb#496と指定される)の効果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0138】
DNAの操作及び一般的方法
大腸菌株INVαF’(Invitrogen)を、形質転換及び日常の培養成長に使用した。DNAの制限酵素及び修飾酵素は、Roche Diagnostics Ltd.及びNew England Biolabsから入手した。プラスミドの調整は、マキシプラスミド(Maxi Plasmid)精製キット(QIAGEN、カタログ番号12165)を使用して実施した。DNAシークエンシング反応は、ABI Prism Big Dye terminator sequencing kit(カタログ番号4304149)を使用して実施し、ABI 3100自動シークエンサー(Applied Biosystems)で実行した。データを、プログラムAutoAssembler(Applied Biosystems)を使用して分析した。オリゴヌクレオチドは、Invitrogenから入手した。IgGの濃度は、IgG会合ELISAを使用して決定した。
【0139】
IL−17イソ型
組換えIL−17A及びIL−17Fは、R&D Systemsから購入した。
組換えIL−17A/Fヘテロ二量体は、GSリンカーを使用して、IL−17A及びIL−17Fを連結することによって作製した。このヘテロ二量体は、以下の配列(配列番号19)を有した。
【化1】


組換えカニクイザルIL−17F(配列番号20)
【化2】

【0140】
IL−17A/Fヘテロ二量体をコードするDNA配列は、Entelechon GmbHによって化学的に合成し、pET43.1aのNdeI/XhoI部位にサブクローン化した。
カニクイザルのL−17FをコードするDNA配列は、NdeI及びXhoIの制限部位に導入されたプライマーを使用して、PCRにより増幅した。PCR産物は、pCR4Blunt−TOPO内において連結し分解及びpET43.1aのNdeI/XhoI部位への連結前に、配列を確認した。
【0141】
IL−17のイソ型をコードするpET43.1a DNAを、BL21(DE3)細胞の形質移入に使用し、選択されたカルベニシリン耐性クローンを、2%グルコース及び50μg/mlのカルベニシリン含有の2TYブロスで、37℃において一晩成長させた。その後、培養物を希釈し、同じ培地において、OD600が0.5〜0.7になるまで成長させ、1mMのIPTGを誘導し、37℃においてさらに4〜5時間成長させた。
【0142】
細胞を遠心分離機により回収し、細胞から封入体を調製した。封入体を、50mM Tris−HCl、5Mのグアニジン塩酸塩、50mMのNaCl、1mMのEDTA、2mMの還元型グルタチオン、0.2mMの酸化型グルタチオン、pH8.5において可溶化した。可溶化したタンパク質を、グアニジン塩酸塩を含まない上記のバッファーに、激しく攪拌しながら滴下することによって、IL−17タンパク質をリフォールディングした。最終容積は、最終タンパク質濃度が0.1mg/ml未満であるように選択した。
【0143】
リフォールディングしたタンパク質溶液を、バッファーを10mMのMES pH6に交換する前に、必要に応じて濃縮した。その後タンパク質を、20mMのMES pH6で平衡化したSepharose SP HPのカラムに注入した。タンパク質を、カラム容量の10倍量のMES pH6において、0〜500mMのNaClの直線勾配で溶出した。IL−17Fに関しては、勾配を600mMのNaclまで拡張した。IL−17をさらに精製するために、Sepharose SP HPからの関連分画をプールし、濃縮し、20mMのCAPSO(pH10)で希釈し、20mMのCAPSOで平衡化したMono Qカラムに注入した。タンパク質を、カラム容量の20倍量の20mMのCAPSOにおいて、0〜250mMのNaClの直線勾配で溶出した。IL−17を含む分画をプールし、1MのMES pH6を使用して中和した。
【実施例】
【0144】
(実施例1)
中和抗IL−17抗体の作製
メスのSprague Dawlyラットを組換えヒトIL−17(R&D systemsから購入)を用いて免疫化した。ラットは、100μlのフロイントのアジュバント中の20μgIL−17の免疫化を4回受けた。ヒトIL−17と結合した抗体225を、WO04/051268に記載の方法を使用して単離した。抗体225の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)に関する遺伝子を単離し、逆転写PCRを介したクローニングの後でシークエンシングした。
【0145】
ヒト化したVL及びVH領域のシリーズを、ヒトV領域アクセプターのフレームワークを使用して、フレームワーク領域におけるドナー残基の数を変えることによって、設計した。8種のグラフトVL領域(gL1〜8)及び9種のグラフトVH領域(gH1〜9)を設計し、遺伝子を、オリゴヌクレオチド形成及びPCR突然変異生成によって構築した。
【0146】
軽鎖をグラフトした配列を、ヒトC−κ定常領域(Km3 アロタイプ)をコードするDNAを含むヒト軽鎖発現ベクターpKH10.1中にサブクローン化した。重鎖をグラフトした配列を、ヒンジ安定化突然変異S241Pを含む、ヒトγ−4定常領域をコードするDNAを含むヒトγ−4発現ベクターpVhg4P FL中にサブクローン化した(Angal他、上記)。プラスミドを、CHO細胞中に共形質移入し、抗体を、IL−17結合における活性に関してスクリーニングし、中和アッセイを実施することによって作製した。CHOの形質移入は、Lipofectamine(商標)2000の手法を使用して、製造業者の指示書(InVitrogen、カタログ番号11668)に従って実施した。
【0147】
発現、親和性及び中和能力(gL7gH9)に基づく最適なグラフトを選択し、CA028_0496と名付けた。この抗体のV領域の配列を、図1(a)及び(b)に、軽鎖(gL7)及び重鎖(gH9)に関してそれぞれ配列番号7及び9で示した。
【0148】
重鎖アクセプターのフレームワークは、ヒト生殖細胞系配列VH3 1−3 3−07であり、フレームワーク4は、ヒトJH領域生殖細胞系JH4のこの部分からもたらされる。軽鎖アクセプターのフレームワークは、ヒト生殖細胞系配列VK1 2−1−(1)L4であり、フレームワーク4は、ヒトJK領域生殖細胞系JK1のこの部分からもたらされる。
【0149】
(実施例2)
抗体CA028_0496はIL−17及びIL−17F及びIL−17A/Fヘテロ二量体を中和する。
ヒーラ細胞
ヒーラ細胞におけるヒト組換えIL−17A及びヒト組換えIL−17Fに対する抗体CA028_0496の能力を試験し、抗体CDP435(WO06/054059)と比較した。ヒーラ細胞は、ATCC(ATCC CCL−2)の細胞バンクから得た。細胞を、10%ウシ胎児血清、ペニシリン、ゲンタマイシン及びグルタミンを添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で成長させた。1×10の細胞を、96ウェルの平底組織培養プレートに播種した。細胞を一晩インキュベートし、アッセイバッファーで1回洗浄した。ヒトIL−17A(25ng/ml)又はヒトIL−17F(125ng/ml)のどちらかを、固定濃度のヒトTNFαの存在下でインキュベートし、この混合物を、抗体CA028_0496又は抗体CDP435とともにプレインキュベートした。その後、サイトカインと抗体とを、一晩インキュベートしたヒーラ細胞に加えた。細胞培養の上清におけるIL−6の産生は、細胞に加えたIL−17A/IL−17Fの量と比例していた。ヒトIL−6のレベルをELISAにより測定し、ヒトIL−6の公知の標準濃度と比較することによって定量化した。
【0150】
データ(図2a及び2b)は、抗体CA028_0496がヒト組換えIL−17Aを強力に中和し、さらにヒトIL−17Fに対する活性もいくらか有していたことを示している。これらの実験からのデータは、抗体CA028_0496が、ヒト組換えIL−17(25ng/ml)に対して43/ng/ml、及び組換えIL−17F(125ng/ml)に対して1477ng/mlのIC50をもたらすことを示した。したがって、抗体CA028_0496は、このアッセイにおいて、ヒト組換えIL−17(0.78nM)に対して0.29M、及びヒト組換えIL−17F(4.16nM)に対して10.18nMのIC50をもたらす(平均IgG4として分子量145,000と仮定したIgGごとに、IL−17A及びIL−17Fは二量体であるとの仮定に基づいて計算)。
【0151】
ヒトミクログリア細胞
ヒトミクログリア細胞(TCS Cellworks)を、平底の96ウェルプレートに、ウェル当たり5,000細胞で、全量100μlで播種し、プラスチックへの付着のため24時間放置した。この時、ヒト組換えIL−17A、ヒト組換えIL−17F、カニクイザル組換えIL−17F及びヒト組換えIL−17A/Fヘテロ二量体の滴定(5、1、0.2及び0.04μg/ml)を、10ng/mlのヒト組換えTNFαの存在下及び不在下で、ウェルに3重に加えた。対照ウェルは、刺激を含まず、IL−17A単独(100ng/ml)、TNFα単独並びにIL−17A及びTNFαを一緒に含む。すべてのサイトカインを、全容量が110μl/ウェルで加え、ウェルの全容量を210μlにした。抗体に関する実験において、細胞を、同じ方法で播種した。24時間後、抗体及びサイトカインを同時に加え、全最終容量200μlにおいて定められた最終濃度をもたらした。
【0152】
37℃においてさらに24時間インキュベートした後で、上清を回収し、分析まで−20℃で凍結した。分析では、上清を1/10に希釈し、ヒトIL−6MSDキットを使用して、製造業者の説明書に従って、IL−6に関して測定した。
【0153】
試験したすべてのIL−17のイソ型が、特にTNFαの存在下でアッセイにおいて活性であることを見出した。
【0154】
ヒトミクログリア細胞における、ヒト組換えIL−17A及びヒト組換えIL−17F、カニクイザル組換えIL−17F及びヒト組換えIL−17A/Fヘテロ二量体に対する抗体CA028_0496の能力を、TNFαの存在下で試験し、上記の方法を使用して、対照の抗体及びIL−17A特異的抗体と比較した。
【0155】
対照抗体は、試験したいずれのサイトカインの活性についても効果はなかった。抗体CA028_0496は、カニクイザルIL−17Fを含む、サイトカインIL−17、IL−17F及びIL−17A/Fの3種すべてに対して阻害活性を有し、一方IL−17A特異的抗体は、IL−17A及びIL−17A/Fヘテロ二量体に対してのみ、阻害活性を有した。
【0156】
(実施例3)
抗体CA028_0496(ヒトIgG4定常領域)のIL−17A及びIL−17Fに対する親和性
BIA(Biamolecular Interaction Analysis)を、Biacore3000(Biacore AB)を使用して実施した。すべての実験は、25℃において実施した。Affinipure Fc Fragment goat anti−human IgG,Fc fragment specific(Jackson ImmunoResearch)を、アミン結合化学反応を介して、捕捉レベルおよそ6000反応単位(RU)まで、CM5 Sensor Chipに固定した。HBS−EPバッファー(10mM HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005% Surfactant P20、Biacore AB)を、流速10μl/分で、ランニングバッファーとして使用した。固定抗ヒトIgG−Fcによって捕捉するために、抗体CA028_0496(1.81mg/ml)を10μl注入した。ヒトのIL−17A及びIL−17のイソ型を、50nMからサブnMに2重に希釈した捕捉CA028_0496により、流速30μL/分で滴定した。30μLの40mM HClを注入し、その後5μLの5mM NaOHを1度注入することによって、表面を再生した。
【0157】
バックグラウンドを差し引いた結合曲線を、2重試験を参照し、BIAevaluationソフトウェア(バージョン3.2)を使用して、標準的手法に従って分析した。速度パラメーターは、フィッティングアルゴリズムから決定した。
【0158】
IL−17Aに結合する抗体CA028_0496に対して決定した親和性値は、16pMであり、IL−17Fに対しては1750pMであった。抗体CA028_0496は、他のIL−17のイソ型(IL−17B、C、D及びE)には結合しなかった。したがって、抗体CA028_0496は、IL−17A及びIL−17Fに特異的に結合する。
【0159】
(実施例4)
IL−17A、カニクイザルIL−17F及びIL−17A/Fヘテロ二量体に対する、抗体CA028_0496(マウスIgG1定常領域)の親和性
BIA(Biamolecular Interaction Analysis)を、Biacore3000(Biacore AB)を使用して実施した。
すべての実験は、25℃において実施した。Affinipure F(ab’) fragment goat anti−mouse IgG,Fc fragment specific(Jackson ImmunoResearch)を、アミン結合化学を介して、捕捉レベルおよそ6000反応単位(RU)まで、CM5 Sensor Chip(Biacore AB)に固定した。HBS−EPバッファー(10mM HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005% Surfactant P20、Biacore AB)を、流速10μl/分で、ランニングバッファーとして使用した。固定抗マウスIgG、Fcによって捕捉するために、抗体CA028_0496(4ug/mlL)を10μl注入した。ヒトIL−17A、カニクイザルIL−17F及びヘテロ二量体A/Fを、25nMからサブnMに2重に希釈した、捕捉CA028_0496により、流速30μL/分で滴定した。流速10uL/分で10μLの40mM HClを注入し、その後5μLの5mM NaOHを1度注入することによって、表面を再生した。
【0160】
2重試験を参照し、バックグラウンドを差し引いた結合曲線を、BIAevaluationソフトウェア(バージョン3.2)を使用して、標準的手法に従って分析した。速度パラメーターは、フィッティングアルゴリズムから決定した。
【0161】
抗体CA028_0496は、IL−17Aに対して21pM、IL−17A/Fヘテロ二量体に対して116pM及びカニクイザルIL−17Fに対して1030pMの親和性を有した。
【0162】
本発明を単に例証としてこれまで説明し、限定的にする意図は全くなく、詳細の変更を、以下の特許請求の範囲内でなし得ることは当然理解されるであろう。本発明の各実施形態の好ましい特徴は、変更すべきところは変更した他の実施形態それぞれに関しても同様である。限定するものではないが、本明細書に引用した特許及び特許出願を含むすべての刊行物は、それぞれ個々の刊行物が、具体的に、かつ個別に、完全に説明されたように本明細書中に参照により組み入れられることを示唆したかのように、本明細書中に参照により組み入れられる。
【図1−1】

【図1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに結合する中和抗体。
【請求項2】
ヒトIL−17A/Fヘテロ二量体にも結合する、請求項1に記載の中和抗体。
【請求項3】
IL−17Fに対して、2nMより優れた結合親和性を有する、請求項1又は請求項2に記載の中和抗体。
【請求項4】
IL−17Aに対して、IL−17Fに対するその結合親和性より少なくとも10倍高い結合親和性を有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の中和抗体。
【請求項5】
IL−17Aに対して、100pMより優れた結合親和性を有する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の中和抗体。
【請求項6】
0.8nMのヒトIL−17Aの活性を、5nM未満の濃度で50%阻害でき、4.2nMのIL−17Fの活性を、12nM未満の濃度で50%阻害でき、前記阻害活性が、IL−17A又はIL−17Fにより誘導されたヒーラ細胞からのIL−6の放出について測定される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の中和抗体。
【請求項7】
ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに結合し、重鎖の可変領域が、CDR−H1に関して配列番号1で示される配列を有するCDR、CDR−H2に関して配列番号2で示される配列を有するCDR及びCDR−H3に関して配列番号3で示される配列を有するCDRの、少なくとも1種を含んだ重鎖を含む中和抗体。
【請求項8】
重鎖の可変領域が、CDR−H1に関して配列番号1で示される配列、CDR−H2に関して配列番号2で示される配列、及びCDR−H3に関して配列番号3で示される配列を含む、請求項7に記載の中和抗体。
【請求項9】
ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに結合し、軽鎖の可変領域が、CDR−L1に関して配列番号4で示される配列を有するCDR、CDR−L2に関して配列番号5で示される配列を有するCDR、及びCDR−L3に関して配列番号6で示される配列を有するCDRの少なくとも1種を包含する軽鎖を含む中和抗体。
【請求項10】
軽鎖の可変領域が、CDR−L1に関して配列番号4で示される配列を有するCDR、CDR−L2に関して配列番号5で示される配列を有するCDR、及びCDR−L3に関して配列番号6で示される配列を有するCDRの少なくとも1種を包含する軽鎖をさらに含む、請求項7又は請求項8に記載の中和抗体。
【請求項11】
軽鎖の可変領域が、CDR−L1に関して配列番号4で示される配列、CDR−L2に関して配列番号5で示される配列、及びCDR−L3に関して配列番号6で示される配列を含む、請求項9又は請求項10に記載の中和抗体。
【請求項12】
ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに結合し、重鎖の可変領域が3種のCDRを含み、CDRH−1の配列が、配列番号1で示される配列に対して少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、CDRH−2の配列が、配列番号2で示される配列に対して少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、及びCDRH−3の配列が、配列番号3で示される配列に対して少なくとも60%の同一性又は類似性を有する重鎖を含む中和抗体。
【請求項13】
軽鎖の可変領域が3種のCDRを含み、CDRL−1の配列が、配列番号4で示される配列に対して少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、CDRL−2の配列が、配列番号5で示される配列に対して少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、及びCDRL−3の配列が、配列番号6で示される配列に対して少なくとも60%の同一性又は類似性を有する軽鎖をさらに含む、請求項12に記載の中和抗体。
【請求項14】
重鎖が配列番号9で示される配列を含む、請求項7から11までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項15】
軽鎖が配列番号7で示される配列を含む、請求項7から11までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項16】
ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに結合し、配列番号9で示される配列を含む重鎖、及び配列番号7で示される配列を含む軽鎖を有する中和抗体。
【請求項17】
ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに結合し、軽鎖の可変領域が、請求項16に記載の抗体の軽鎖可変領域に対して少なくとも80%の同一性又は類似性を有する配列を含み、重鎖の可変領域が、請求項16に記載の抗体の重鎖可変領域に対して少なくとも80%の同一性又は類似性を有する配列を含む中和抗体。
【請求項18】
ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに結合し、配列番号15で示される配列を含む重鎖、及び配列番号11で示される配列を含む軽鎖を有する中和抗体。
【請求項19】
ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに結合し、重鎖及び軽鎖が、請求項18に記載の抗体の対応する重鎖及び軽鎖に対して少なくとも80%同一又は類似である中和抗体。
【請求項20】
ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに結合し、ヒトIL−17A及び/又はヒトIL−17F及び/又はIL−17A/Fヘテロ二量体上にある、請求項16に記載の抗体と同じエピトープに結合する中和抗体。
【請求項21】
ヒトIL−17A及びヒトIL−17Fに結合し、請求項16に記載の抗体の、ヒトIL−17A及び/又はヒトIL−17F及び/又はIL−17A/Fヘテロ二量体への結合を交差ブロックし、並びに/或いは請求項16に記載の抗体によって、ヒトIL−17A及び/又はヒトIL−17F及び/又はIL−17A/Fヘテロ二量体を結合することから交差ブロックされる、中和抗体。
【請求項22】
抗体が、抗体全体又はそれらの機能的に活性な断片又は誘導体である、請求項1から21までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項23】
抗体断片が、ドメイン抗体、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv又はそれらのエピトープ結合断片である、請求項22に記載の抗体。
【請求項24】
抗体又はその断片が、CDRグラフト抗体又は完全ヒト抗体である、請求項23に記載の抗体。
【請求項25】
抗体又はその断片が、1種又は複数種のエフェクター分子に結合した、請求項1から24までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項26】
請求項16に記載の抗体によって結合されるヒトIL−17A上のエピトープ。
【請求項27】
請求項16に記載の抗体によって結合されるヒトIL−17F上のエピトープ。
【請求項28】
請求項16に記載の抗体によって結合されるヒトIL−17A/Fヘテロ二量体上のエピトープ。
【請求項29】
請求項1から24までのいずれか一項に記載の抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコードする、単離DNA配列。
【請求項30】
請求項29に記載の1種又は複数種のDNA配列を含む、クローニングベクター又は発現ベクター。
【請求項31】
ベクターが、配列番号14及び配列番号18で示される配列を含む、請求項30に記載のベクター。
【請求項32】
請求項30又は請求項31に記載の1種又は複数種のクローニングベクター又は発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項33】
請求項32に記載の宿主細胞を培養するステップ、及び抗体を単離するステップを含む、請求項1から24までのいずれか一項に記載の抗体の作製方法。
【請求項34】
請求項1から24までのいずれか一項に記載の抗体と、1種又は複数種の医薬として許容可能な賦形剤、希釈剤又は担体とを組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項35】
他の活性成分をさらに含む、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
IL−17A及び/又はIL−17Fにより仲介される、或いはIL−17A又はIL−17Fのレベルの上昇に伴う、病的障害の治療又は予防における使用のための、請求項1から24までのいずれか一項に記載の抗体、或いは請求項34又は請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
IL−17A又はIL−17Fにより仲介される、或いはIL−17A又はIL−17Fのレベルの上昇に伴う、病的障害の治療又は予防のための薬剤の製造における、請求項1から24までのいずれか一項に記載の抗体の使用。

【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2010−506580(P2010−506580A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532894(P2009−532894)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003983
【国際公開番号】WO2008/047134
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(507073918)ユセベ ファルマ ソシエテ アノニム (70)
【Fターム(参考)】