説明

IL−2を摂取している患者における抑うつを処置するためのグルココルチコイドレセプターIIアンタゴニストの使用

本発明は、II型グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、インターロイキン−2処置を受けている患者において抑うつ症状を逆転または阻害するための方法で用いられ得るという発見に関与する。インターロイキン−2(IL−2)を摂取している、正常レベルのコルチゾールを有する患者において抑うつ症状を改善するための方法であって、特定のグルココルチコイドレセプターアンタゴニストの有効量を該患者に投与する工程を包含し、ただし、該患者はIL−2療法が開始される時点で臨床的に抑うつになっておらず、かつ他の点ではグルココルチコイドレセプターアンタゴニストでの処置が必要ではない、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2006年5月2日に出願された米国仮出願第60/797,265号に対する優先権を主張する。米国仮出願第60/797,265号は、その全体が参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、インターロイキン−2(IL−2)を摂取している患者における抑うつの症状を改善するための方法としてのグルココルチコイドレセプターアンタゴニストの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
サイトカインは、免疫細胞および他の細胞タイプによって活発に分泌される小型タンパク質分子である。サイトカインは、免疫系応答を編成するように機能して、これらの応答を身体において他の生理学的な系と協調させる。それらの作用はしばしば局所的であるが、神経系を含む全身に影響し得る。サイトカインの一般的な例としては、インターフェロン−α(IFNα)、IFNβ、IFNγ、インターロイキン−1(IL−I)、IL−2、IL−6、IL−10、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、および腫瘍壊死因子−α(TNF−α)が挙げられる。
【0004】
サイトカインは、種々の医学的状態、例えば、C型肝炎、多発性硬化症、ある種の感染症、白血病、カポジ肉腫、黒色腫、骨髄腫、腎癌および他の形態のガンの処置に有効であることが示されている。医学療法のために最も一般に用いられるサイトカインとしては、IL−2、IFNα、IFNβおよびIFNγが挙げられる。例えば、非特許文献1を参照のこと。
【0005】
IL−2はT細胞、B細胞および単球を含む免疫系における多様な細胞を活性化する強力な免疫刺激因子である。IL−2は、T細胞増殖の強力かつ重要な刺激因子である。IL−2は、NK細胞の細胞溶解活性を刺激して、IFNγ、GM−CSFおよびTNF−αを含むさらなるサイトカインの分泌を刺激する。IL−2はまた、正常なB細胞による増殖および抗体分泌を増強して、活性化されたマクロファージの細胞毒性活性を刺激し、TNF−α、IL−IおよびIL−6のさらなる分泌を促進する。これらの活性のおかげでIL−2はガンの処置について試験されかつ承認された。IL−2は、1981年から種々の形態のガンの処置のための治療剤として用いられており、腎細胞癌の処置、そしていく例かの患者では転移性の黒色腫のために有効であることが示されている(例えば、非特許文献2を参照のこと)。しかし、医学的処置のために一般に用いられる各々のサイトカインは、無力症、筋肉痛、錯乱およびインフルエンザ様の症状などの副作用を促進することが報告されている。抑うつは、IFNαおよびIL−2には最も共通して付随し、そして時にはIFNβにともなう(非特許文献1を参照のこと)。
【0006】
抑うつは、免疫系の活性化と関連するサイトカイン分泌によって生じ得る。免疫異常の頻度は、一般的な集団に比較して抑うつ患者では高く、そして抑うつはサイトカイン療法の一般的な副作用である(非特許文献1)。
【0007】
臨床的観察によって、インターフェロンまたはIL−2で処置されている患者が、インフルエンザ様の症状および非特異的な神経精神医学的な症状(そのいくつかは抑うつの特徴である)を示すということが示されている。動物試験では、免疫活性化および細菌の内毒素リポポリサッカライド(LPS)またはIL−1の投与が、ヒトを含む病気の動物で共通して観察されるものに類似の行動的パターンを誘発し得る。この行動パターンは、病的行動として公知であり、抗うつ薬によって減弱され得る多くの抑うつおよび不安の症状を共有する(例えば、非特許文献3を参照のこと)。
【0008】
さらに、IL−2は、抑うつの顕著な特徴である性快感消失の影響を誘発し得る。抑うつ病は、免疫活性化の兆候、ならびにサイトカイン産生の増大、または循環中のサイトカイン、詳細には、IL−2、IL−I、IL−6、TNF−α、およびIFN−γのレベルの上昇を伴う。さらに、IL−2またはIFN−αでの免疫療法は、抗うつ薬での処置によって減弱され得る抑うつ様の状態を生じ得る。
【0009】
コルチゾールは、細胞内グルココルチコイドレセプター(GR)に対する結合によって作用する。ヒトでは、グルココルチコイドレセプターは、以下の2つの形態で存在する:777アミノ酸のリガンド結合GRα;および最後の15個のアミノ酸でのみ異なるGR−βイソ型。この2つのタイプのGRは、それらの特異的リガンドに高い親和性を有し、そして同じシグナル伝達経路を通じて機能すると考えられる。
【0010】
副腎皮質機能亢進症(hypercortisolism)が、うつ状態の患者で観察されている。グルココルチコイド(GC)は、長期の増強を抑制し、神経形成を阻害し、そして興奮性アミノ酸神経伝達物質放出を刺激し、これが海馬の萎縮および記憶の障害を生じることが報告されている(例えば、非特許文献4を参照のこと)。同様の効果が炎症促進性(pro−inflammatory)のサイトカイン、例えばIL−1βで報告されている(非特許文献4)。炎症促進性のサイトカインは直接、視床下部・下垂体・副腎系軸(hypothalamic−pituitary adrenal)(HPA)axis)を刺激して、コルチゾールを分泌させ、これがGC分泌を有意に増大することも十分に確立されている(例えば、非特許文献4;非特許文献5を参照のこと)。実際、ラットでの試験によって、IL−1誘発性の記憶障害は、CRFおよびGCに対するIL−1の影響に関することが示唆される。これらの研究では、IL−1の投与直前のGCアンタゴニストRU486の脳室内(i.c.v.)注射を与えられたラットは、代表的にはIL−1投与に関連する学習および記憶の障害の有意な軽減を示した。さらに、数日後でもIL−1の有害な影響から回復しなかったラットでさえ、RU486での1または2回の処置後に完全な回復を示した。これらの研究によって、GCが学習および記憶に対するIL−1の影響を媒介するという概念が強力に支持される(非特許文献4)。
【0011】
高コルチゾール血症(hypercortisolemia)によって生じる病理または機能不全を含む、コルチゾールの生物学的な影響は、レセプターアンタゴニストを用いてGRレベルで調節および制御され得る。いくつかの異なるクラスの薬剤がGRアンタゴニストとして作用し得る、すなわち、GRアゴニスト結合(天然のアゴニストはコルチゾールである)の生理学的影響をブロックし得る。これらのアンタゴニストとしては、あるアゴニストがGRに対して有効に結合するか、および/またはGRを活性化する能力を、GRに結合することによってブロックする組成物が挙げられる。1ファミリーの公知のGRアンタゴニスト、ミフェプリストンおよび関連の化合物は、ヒトにおいて有効かつ強力な抗グルココルチコイド剤である(非特許文献6)。ミフェプリストンは、高い親和性で、10−9M未満の解離定数KでGRに結合する(非特許文献7)。従って、本発明の一実施形態では、ミフェプリストンおよび関連の化合物は、IL−2療法に関連する抑うつの症状を軽減するために用いられる。
【0012】
以前の研究では、高コルチゾール血症は、大うつ病の共通の特徴であることが示唆されている(非特許文献8)。さらに、従来の治療に耐性である大うつ病は、ステロイド生合成のインヒビターに対して応答することが示されている(非特許文献9;米国特許第4,814,333号)。これらの研究によって、治療に極めて耐性である患者における極めて長期間の重篤な大うつ病の、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストであるRU486の治療としての効果を検査するためのさらなる検討が促された(非特許文献10)。重篤な大うつ病を有する患者に対するRU486の影響を検査することを支持するこの研究は、1例のみが処置を完了した4例の患者を含んだ。さらに、結果がコントロール群に対して測定され得るというコントロール群を含まないこの研究では、RU486が抑うつの処置に有効であるという明確な証拠は示されなかった。
【0013】
しかし、Murphyらによって得られた結果によって、特許文献1に記載される方法は、IL−2誘発性の抑うつに罹患している患者を処置するのに有効ではないことが示唆される。さらに、Murphyおよび特許文献1に開示される方法によって処置された患者は、本発明の方法が、抑うつに罹患しておらず、かつIL−2療法が開始される時点で正常なコルチゾールレベルを有している患者の処置に関しているという点で、本明細書に記載される方法とは識別され得る。
【0014】
抑うつの症状は、一般的な身体的検査および神経精神医学的検査(例えば、ハミルトン・レーティング・スケール(Hamilton Rating Scale))を含む、当該分野で十分確立されている種々の方法によって検出され得る。特定の臨床検査によってまた、抑うつの診断および評価が促進され得る。詳細な診断方法および基準の説明は、当該分野の多数の刊行物に見出され得る。このような一例は、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,第4版(DSM−IV)である。
【0015】
脳におけるコルチゾールの作用の多くは、I型(鉱質コルチコイド)レセプターに対する結合によって媒介され、このレセプターは、生理学的なコルチゾールレベルで、II型(グルココルチコイド)レセプターに対して優先的に占有される(非特許文献11)。コルチゾールレベルが増大するにつれ、より多くのグルココルチコイドレセプターが占有されて活性化される。しかし、コルチゾールは、代謝に必須の役割を果たすので、全てのコルチゾール媒介性活性の阻害は、致死性となる。従って、II型グルココルチコイドレセプター機能を有意に妨げるが、I型鉱質コルチコイドレセプター機能を拮抗しないアンタゴニストは、本発明における特別の用途のものである。ミフェプリストンおよび類似のアンタゴニストが、このカテゴリーのレセプターアンタゴニストの例である。
【0016】
IL−2のようなサイトカインが抑うつに寄与し得ることを示唆する強力な証拠があるが、IL−2の投与は急性でも反復でもコルチコステロンの血漿レベルに影響しないことが注目すべきである。(例えば、非特許文献3;非特許文献12;非特許文献4を参照のこと)。IL−2の多数の影響、およびIL−2がコルチゾールの血漿レベルまたは脳のレベルに影響しないという事実を考慮すれば、IL−2療法に関連する抑うつの症状が、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストでの治療によって改善されるということは驚くべきである。
【特許文献1】米国特許第4,814,333号明細書
【非特許文献1】Dunnら,Neurosci. and Behav.Rev.29:891〜909(2005)
【非特許文献2】Wichers and Maes,Int.J.Neuropsychopharm.5:375〜388(2002)
【非特許文献3】AnismanおよびMerali,Annal.of Med.35:2−11(2003)
【非特許文献4】Song,Brain Behav.Immun.16:557〜568(2002)
【非特許文献5】Connorら、Neuroscience 84:923〜933(1998)
【非特許文献6】Bertagna,J.Clin.Endocrinol Metab.59:25,1984
【非特許文献7】Cadepond,Annu.Rev.Med.48:129,1997
【非特許文献8】Murphy J.Steroid Biochem Mol.Biol.38:537〜558(1991)
【非特許文献9】Murphy J.Steroid Biochem Mol Biol.39:239〜244(1991)
【非特許文献10】Murphy J Psych and Neurosci.18(5):209〜213(1993)
【非特許文献11】Ron de Kloetら、Trends in Neurosci.22(10):422〜426(1999)
【非特許文献12】Lacosta,ら,Neuroimmunomod.9:1〜16(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
IL−2療法が最大限有益であるには、有害な副作用、特に抑うつに関連する副作用は、最小限でなければならない。本発明者らは、ミフェプリストンのようなグルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、IL−2療法を受けている患者であって、他の点では臨床的に抑うつ状態でなく、別の理由でII型グルココルチコイドレセプターアンタゴニストを摂取していない患者における抑うつの症状を改善するために、有効な薬剤であるということを確認している。従って本発明は、IL−2療法に伴う抑うつの症状の発現を予防もしくは遅延するため、またはIL−2療法に伴う抑うつの症状を改善もしくは逆転するために有効な方法の必要性を、IL−2療法を受けている患者に対してグルココルチコイドレセプターアンタゴニストを投与する方法を提供することによって、満たす。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、IL−2を摂取しており、かつ正常なコルチゾールのレベルを有し、かつIL−2療法が開始される時点で、専門家によって診断される場合、臨床的な抑うつに罹患していない患者において抑うつの症状を改善する方法を提供する。この方法は、治療上有効な量のグルココルチコイドレセプターアンタゴニストのこの患者への投与を包含し、ただし、この患者はそれ以外にはグルココルチコイドレセプターアンタゴニストを用いる処置が指示される疾患には罹患していない。
【0019】
本発明の一実施形態では、抑うつの症状を改善する方法は、IL−2療法を受けている患者に対してグルココルチコイドレセプターアンタゴニストを投与することによって達成される。
【0020】
本発明の別の実施形態では、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、IL−2療法と同時に患者に同時投与される。
【0021】
本発明の別の実施形態では、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、IL−2療法の経過全体を通じて患者に投与される。
【0022】
本発明の別の実施形態では、GRAは、他の治療方法と組み合わせて、IL−2を摂取している患者に投与される。
【0023】
本発明の別の実施形態では、GRAは、ステロイド化合物である。
【0024】
本発明の別の実施形態では、GRAは、以下の修飾または誘導体のうちの1つを有するコルチゾールステロイド骨格を有する:11−β−ヒドロキシ基の除去、11−β−ヒドロキシ基のアリール置換、11−β−フェニル−アミノジメチルステロイド、17−β−側鎖修飾、α−ケト−メタン−スルホナート誘導体、およびアンドロゲン型のステロイド。このような化合物の例としては、デキサメタゾン−オキセタノン、4−プレグネン−11−β,17−α,21−トリオール−3,20−ジオン−21−メタン−スルホナート、16−メチル−9α−フルオロ−1,4−プレグナジエン−11β,17−α,21−トリオール−3,20−ジオン−21−メタン−スルホナート、11−β−(4−ジメチル−アミノエトキシフェニル)−17−α−(プロピニル−17−β−ヒドロキシ−4,9−エストラジエン−3−オン、および17−β−ヒドロキシ−11−β−(4−ジメチル−アミノフェニル)−17−α−(1−プロピニル)エストラ−4,9−ジエン−3−オンが挙げられる。
【0025】
本発明の別の実施形態では、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、ステロイド骨格の11β位置に少なくとも1つのフェニル含有部分を有するステロイド骨格を含む。ステロイド骨格の11−β位置におけるフェニル含有部分は、ジメチルアミノフェニル部分であってもよい。このようなグルココルチコイドレセプターアンタゴニストの例は、ミフェプリストン、RU009およびRU044である。
【0026】
本発明の別の実施形態では、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、GRアゴニスト相互作用から生じる生物学的応答に影響する任意のステロイド骨格修飾を含む。当該分野で公知のGRアンタゴニストの例は、下にさらに詳細に考察されるが、(6β,11β,17β)−11−(4−(ジメチル−アミノフェニル)−6−メチル−4’,5’−ジヒドロ[エストラ−4,9−ジエン−17,2’(3H’−フラン]−3−オン(「Org31710」、Mizuatani,J Steroid Biochem MoI Biol 42(7):695〜704,1992を参照のこと)、Org31806、Org34517、Org34116、RU43044、(17−β−ヒドロキシ−11−β−/4−/[メチル]−[1−メチルエチル]アミノフェニル/−17 α−[プロプ−1−イニル]エストラ−4−9−ジエン−3−オン(「RU40555」,Kim,J Steroid Biochem Mol Biol.67(3):213〜22,1998を参照のこと)、RU28362、およびZK98299が挙げられる。
【0027】
本発明の別の実施形態では、GRAは、GRアゴニスト相互作用から生じる生物学的応答に影響するステロイド化合物である。当該分野で公知であり、下にさらに詳細に考察される化合物の例としては、(6β,11β,17β)−11−(4−(ジメチル−アミノ)フェニル)−6−メチル−4’,5’−ジヒドロ[エストラ−4,9−ジエン−17,2’(3H’−フラン]−3−オン、(11β、17β)−11−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−17−ヒドロキシ−17−(1−プロピニル)エ−ストラ−4,9−ジエン−3−オン、(11β,17α)−11−(4−アセチルフェニル)−17,23−エポキシ−19,24−ジノルコラ−4,−9,20−トリエン−3−オン、(7β,11β,17β)−11−(4−(ジメチルアミノ)フェニル)−7−Me−4’,5’−ジヒドロスピロ(オエストラ−4,9−ジエン−17,2’(3’H)−フラン)−3−オン]−、(11β,17α)−11,21−Bis[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−17−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−4,9,ジエン−20−イン−3−オン、および(11β,17α)−11−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−17−ヒドロキシ−21−[4−(メチルスルホニル)フェニル−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−20−イン−3−オンが挙げられる。
【0028】
本発明のさらに別の実施形態では、GRAは、ミフェプリストンである。
【0029】
本発明の別の実施形態では、GRAは、アゴニストとGRとの間の結合を妨げることによってGRアゴニスト相互作用から生じる生物学的応答に影響する非ステロイド性化合物である。当該分野で公知であって、下にさらに詳細に考察される化合物の例としては、以下が挙げられる:4b(S)−ベンジル−7(S)−ヒドロキシ−7−(1−プロピニル)−4b,5,6,7,8,8a(R),9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボン酸(ピリジン−4−イルメチル)アミド、4b(S)−ベンジル−7(S)−ヒドロキシ−7−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−4b,5,6,7,8,8a(R),9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボン酸(2−メチルピリジン−3−イルメチル)アミド、1−(o−クロロ−α,α−ジフェニルベンジル)イミダゾール、N(トリフェニルメチル)イミダゾール、N−([2−フルオロ−9−フェニル]フルオレニル)イミダゾール、N−([2−ピリジル]ジフェニルメチル)イミダゾール、N−([4,4’,4”]−トリクロロトリチル)イミダゾール、およびN((2,6ジクロロ−3−メチルフェニル)ジフェニル)メチルイミダゾール。
【0030】
本発明のさらに別の実施形態では、非ステロイド化合物は、GRアゴニスト相互作用から生じる生物学的応答に影響する化合物を生じることが公知の化学的分類由来である。本発明での使用のためのGRA由来のこのような基の例は下にさらに詳細に考察されるが、6−置換−1,2−ジヒドロ−N保護−キノリン、オクタヒドロフェナントレニルカルバメート、オキサジアゾリルアルコキシオクタヒドロフェナントレン、およびオクタヒドロフェナントレンヒドラジン、オクタヒドロ−2−H−ナフトール[1,2,−f]インドール−4カルボキサミド、シクロペント[f]インダゾール、およびベンズ[f]インダゾール、6H−ジベンゾ[b,d]ピラン誘導体、置換アミノベンゼン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、ジフェニルエーテル誘導体、および修飾ピリミジン化合物が挙げられる。本発明での使用に適切であり、下にさらに詳細に考察される、当該分野で公知の非ステロイドGRAの例としては以下が挙げられる:1−(2−クロロトリチル)−2−メチルイミダゾール、N−(2−クロロトリチル)−L−プロリノールアセテート、1−(2−クロロトリチル)−1,2,4−トリアゾール、および1−(2−クロロトリチル)−3,5−ジメチルピラゾール、シス−1−アセチル−4−(4−((2−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(1H−イミダゾール−1−イルメチル)−1,3−ジオキソラン−4−イル)メトキシ)フェニル)ピペラジン、N−(2[4,4’,4”−トリクロロトリチル]オキシエチル)モルホリン、1−(2[4,4’,4”−トリクロロトリチル]オキシエチル)−4(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンジマレアート、4−(モルホリノメチル)−A−(2−ピリジル)ベンズヒドロール、および1,S−ビス(4,4’,4”−トリクロロトリチル)−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、9−(3−メルカプト−1,2,4トリアゾリル)−9−フェニル−2,7−ジフルオロフルオレノン、5−(5−メトキシ−2−(N−メチルカルバモイル)−フェニル)ジベンゾスベロール、4a(S)−ベンジル−2(R)−クロロエチニル−1,2,3,4,4a,9,10,10a(R)−オクタヒドロ−フェナントレン−2,7−ジオール、および4a(S)−ベンジル−2(R)−プロプ−1−イニル−1,2,3,4,4a,9,10,10a(R)−オクタヒドロ−フェナントレン−2,7−ジオール。
【0031】
本発明の別の実施形態では、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、非ステロイド性化合物を含む。非ステロイド性GRアンタゴニスト化合物、および修飾されたピリミジン化合物の例は、PCT US05/23675に開示されるとおりである。
【0032】
本発明の他の実施形態では、GRAは、1日あたり体重1kgあたり0.5mg〜20mg、好ましくは、1日あたり体重1kgあたり約1mg〜10mg、または好ましくは、1日あたり体重1kgあたり約1mg〜4mgの毎日量で、好ましくは投与される。本発明によればさらに、GRAは1日1回投与されるか、および/または投与は経口であるか、経皮適用によるか、霧状化懸濁液によるか、エアロゾルスプレーによるか、または注射によって、または膣内もしくは直腸内経路(坐剤を含む)による。
【0033】
本発明の別の実施形態では、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、当該分野で公知であり、下にさらに詳細に考察される、アザデカリンまたは縮合環アザデカリン化合物であるが、米国特許出願公開第20040176595に開示される化合物、アザデカリンおよびPCT/US05/08049に開示される関連の化合物は以下の一般式を有する:
【0034】
【化1】

式(I)では、LおよびLは、結合、置換または非置換のアルキレン、および置換または非置換のヘテロアルキレンから独立して選択されるメンバーである。破線bは必要に応じて結合である。環Aは置換または非置換の5〜6員のヘテロシクロアルキル、および置換または非置換のヘテロアリールから選択されるメンバーである。Rは、置換または非置換の高級アルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、および−OR1Aから選択されるメンバーである。R1Aは、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のアリール、および置換または非置換のヘテロアリールから選択されるメンバーである;そしてRは、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、−S(O)R2A、−S(O)NR2B2C、=NOR2D、から選択されるメンバーである。R2A、R2B、R2C、およびR2Dは、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のアリール、および置換または非置換のヘテロアリールから独立して選択されるメンバーである。
【0035】
本発明の他の実施形態では、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、1日あたり体重1kgあたり約0.5mg〜20mg、好ましくは、1日あたり体重1kgあたり約1mg〜10mg、または好ましくは、1日あたり体重1kgあたり約1mg〜4mgの毎日量で、投与される。本発明によれば、GRAが1日1回投与されるか、および/またはGRAが口から(経口的に)、経皮適用によってか、霧状化懸濁液によってか、エアロゾルスプレーによってか、または注射によって、または眼内、膣内 直腸内経路(坐剤を含む)によって投与される方法がさらに提供される。
【0036】
本発明の性質および利点のさらなる理解は、本明細書の残りの部分および特許請求の範囲を参照して現実化される。
【0037】
本明細書に引用される全ての刊行物、特許および特許出願は全ての目的のために参照によって本明細書に明確に援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
(発明の詳細な説明)
本発明は、グルココルチコイド誘発性の生物学的応答を阻害し得る薬剤が、IL−2を摂取している患者において抑うつの症状を改善するために有効であるという驚くべき発見に関与する。良性であるか、現在IL−2療法を受けているか、またはIL−2療法を終了した患者では、本発明の方法は、IL−2療法に関連した抑うつの症状を改善し得る。本発明の方法は、コルチゾールまたは他のグルココルチコイド(天然または合成)のレベルの正常、増大または減少のいずれかに罹っている患者においてIL−2療法に関連する抑うつの症状を改善するのに有効である。
【0039】
本発明の方法は、アゴニストとGRとの間の結合を妨げ、従って、その下流の生物学的効果を阻害する任意の方法の使用を包含するので、IL−2療法によって誘発される抑うつを治療するために用いられ得る例示的な化合物および組成物も説明される。本発明の方法を行うのにおける使用のためのGRアゴニスト相互作用によって生じる生物学的応答をブロックし得る、さらなる化合物および組成物を特定するために用いられ得る慣用的な手順も記載される。本発明は、これらの化合物および組成物を薬剤として投与する方法を提供するので、本発明の方法を行うためのGRアンタゴニスト薬物レジメンおよび処方物を決定するための慣用的な手段を下に説明する。
【0040】
(I.定義)
本明細書において用いる場合、「抑うつの症状を改善する(寛解させる)(ameliorating the symptoms of depression)」という用語は以下を指す:(1)IL−2で処置されているが、抑うつの症状をまだ経験しても示してもいない患者におけるIL−2投与に関連した抑うつの症状の発現を防ぐかもしくは遅延させること(予防的治療)か、または(2)抑うつの症状およびその症状の任意のさらなる発達を阻害して、この抑うつの症状もしくは副作用からの救済を得ること(対症療法を含む)、または(3)抑うつの症状を逆転させること(抑うつの症状の回帰を生じる)。抑うつの症状の寛解(改善)は、客観的または主観的なパラメーターに基づいてもよく、これには、健康診断の結果、神経精神医学的検査、および/または精神医学的評価が挙げられる。
【0041】
「インターロイキン−2(Interleukin−2)」という用語は、「IL−2」と同義に用いられる。本明細書において用いる場合、IL−2とは、天然、組み換え、または実験室で作成されたタンパク質(例えば、アルデスロイキン)であって、天然のヒトIL−2の133個の正常に存在するアミノ酸配列を有し(さらなる20のN末端アミノ酸からなるシグナルペプチドがない)、そのアミノ酸配列がFujitaら、PNAS USA,80:7437−7441(1983)に記載されており、そのタンパク質がE.coliの細胞内画分、もしくは生物学的に活性なフラグメント、もしくはその改変体として発現される場合に必然的に含まれるさらなるN末端メチオニンが有無いずれかであるタンパク質をいう。
【0042】
IL−2は、ガン(例えば、転移性黒色腫または腎癌)、または当該分野で公知の他の疾患を処置するために用いられ得る。IL−2によって提示される特性としては、限定はしないが以下の能力を増強することが挙げられる:身体の免疫系が疾患と戦う能力;腫瘍細胞を殺傷する能力;NK細胞の細胞溶解活性を刺激する能力;およびIFNγ、GM−CSFおよびTNFα、IL−IおよびIL−6を含むさらなるサイトカインの分泌を刺激する能力。
【0043】
IL−2はまた、IL−2を認識するように製造された抗体にIL−2が結合される能力で規定され得る。ヒトIL−2に結合する市販の抗体の例としては以下が挙げられる:4IL34、HyTest Ltd.,Turku Finland;GTX74203、GTX75071、GeneTex、Inc.,San Antonio,TX;855.020.005、Diaclone,Stamford,CT;XP−5182,ProSci,Inc.,Poway,CA;ab10751,Abeam,Inc.,Cambridge,UK.;abl6235,Novus Biologicals,Littleton,CO。
【0044】
IL−2はまた、米国特許第6,955,807号に開示されるようなIL−2レセプターにIL−2が結合する能力によって規定されてもよい。さらに、IL−2は、当該分野で公知の任意の適切なアッセイを用いて、IL−2の生物学的活性によって規定されてもよい。このようなアッセイの例としては、米国特許第6,955,807に開示されるようなPHA芽細胞増殖およびNK細胞増殖アッセイが挙げられる。
【0045】
本明細書において用いる場合、IL−2とはまた、天然のIL−2に比較して大きい相対活性を示すIL−2の生物学的に活性なフラグメントまたは改変体を包含する。例えば、IL−2レセプターαβγを発現する細胞に結合した場合完全な活性を示すが、IL−2レセプターβγを保有する細胞(例えば、NK細胞)に対しては活性が減少している化合物は、本明細書に規定されるIL−2とみなされる。IL−2のこの定義を満たすIL−2改変体の例は、米国特許第6,559,807号に開示される。
【0046】
「抑うつ(depression)」という用語は、専門家によって臨床診断される任意の形態の抑うつを包含する。例えば、この用語は、少なくとも2週間にわたる以下の症状のうちの5つまたはそれ以上の存在によって特徴づけられる、大うつ病を包含する:睡眠障害または過剰な睡眠;しばしば体重増加もしくは減少を伴う、食欲の劇的な変化;疲労およびエネルギー欠乏;倦怠感、自己嫌悪および不穏当罪悪感;過度の集中力欠如;興奮(不穏)(agitation)、不穏状態(restlessness)および興奮性(irritability);不活性(inactivity)および通常の活動からの脱落、かつて楽しんだ活動(例えば、性交)の興味または楽しみの喪失;無力感および絶望感;ならびに死または自殺の観念。
【0047】
抑うつという用語はまた、一貫して低いが、他のタイプの抑うつほど過度ではない気分によって特徴づけられる、慢性型の抑うつである気分変調を包含する。気分変調に罹患した患者は、ほぼ毎日、低い自尊心、絶望(despair)および絶望(hopelessness)と葛藤する。気分変調(dysthymia)の主要な症状は、少なくとも2年間にわたるほぼ毎日の落ち込んだ、暗いまたは悲しい気分である。他の症状としては以下を挙げることができる:食欲不振または過食;不眠症または過眠症;低エネルギーまたは疲労;低い自尊心;集中力低下;および絶望感。
【0048】
抑うつという用語はまた、抑うつ気分を有する任意の特定の気分の障害または適応障害の基準を満たさない抑うつの特徴を有する障害を含む小うつ病を包含する。小うつ病の例としては限定はしないが、気分変調の基準を満たさない再発の、軽度の抑うつ障害;または大うつ病エピソードの基準を満たさない非ストレス関連の抑うつエピソードを挙げることができる。
【0049】
「コルチゾール(cortisol)」という用語は、ヒドロコルチゾンとも呼ばれる組成物のファミリー、およびその任意の合成または天然のアナログをいう。正常なコルチゾールレベルは、1日を通じて、代表的には朝には25mg/dl未満から、午後には5〜15ng/dlの間で変動する。
【0050】
「グルココルチコイドレセプター(glucocorticoid receptor)」(GR)という用語は、コルチゾールおよび/またはコルチゾールアナログに特異的に結合するコルチゾールレセプターとも呼ばれる細胞内レセプターのファミリーをいう。この用語は、GRのイソ型、組み換えGRおよび変異GRを包含する。
【0051】
「ミフェプリストン(mifepristone)」という用語は、RU486とも呼ばれる組成物のファミリー、またはRU38.486、または17−β−ヒドロキシ−11−β−(4−ジメチル−アミノフェニル)−17−α−(1−プロピニル)−エストラ−4,9−ジエン−3−オン)、または11−β−(4ジメチルアミノフェニル)−17−β−ヒドロキシ−17−α−(1−プロピニル)−エストラ−4,9−ジエン−3−オン)、またはそのアナログであり、これらはGRに対して、代表的には高親和性で結合し、そしてGRレセプターに対する任意のコルチゾールまたはコルチゾールアナログの結合によって開始されるか/媒介される生物学的影響を阻害する。RU−486の化学名は変化し;例えば、RU486はまた、以下のように命名されている:11β−[p−(ジメチルアミノ)フェニル]−17β−ヒドロキシ−17−(1−プロピニル)−エストラ−4,9−ジエン−3−オン;11β−(4−ジメチル−アミノフェニル)−17β−ヒドロキシ−17α−(プロプ−1−イニル)−エストラ−4,9−ジエン−3−オン;17β−ヒドロキシ−11β−(4−ジメチルアミノフェニル−1)−17α−(プロピニル−1)−エストラ−4,9−ジエン−3−オン;17β−ヒドロキシ−11β−(4−ジメチルアミノフェニル−1)−17α−(プロピニル−1)−E;(11β,17β)−11−[4−ジメチルアミノ)−フェニル]−17−ヒドロキシ−17−(1−プロピニル)エストラ−4,9−ジエン−3−オン;および11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル]−17α−(プロプ−1−イニル)−D−4,9−エストラジエン−17β−オール−3−オン。
【0052】
「特異的なグルココルチコイドレセプターアンタゴニスト(specific glucocorticoid receptor antagonist)」という用語は、GRに対する、グルココルチコイドレセプター(GR)アゴニストの結合を部分的にまたは完全に阻害する(拮抗する)任意の組成物または化合物、例えば、コルチゾール、またはコルチゾールアナログ、合成または天然の組成物または化合物をいう。「特異的(specific)」とは、その薬物がGRに対して、鉱質コルチコイドレセプター(MR)よりも優先的に、少なくとも100倍の親和性および1000倍の頻度で結合することを意味する。
【0053】
「他の点では(それ以外には)グルココルチコイドレセプターアンタゴニストでの処置が必要でない(状態の)(not otherwise in need of treatment with a glucocorticoid receptor antagonist)」患者とは、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストで効率的に処理可能であることが当該分野で公知である状態に罹患していない患者である。グルココルチコイドレセプターアンタゴニストで効率的に処置可能であると当該分野で公知である状態としては、クッシング病、薬物離脱、精神病、痴呆、ストレス障害および精神病性大うつ病が挙げられる。
【0054】
本出願では、2つの治療剤が「同時に投与される(administered coextensively)」場合、この薬剤の投与期間は完全に重複していてもよいし、または少なくとも部分的に重複してもよい。2つの薬剤の投与が同時でない場合、この2つの治療剤は好ましくは、重複しない時間で投与されるが、やはりお互いの生物活性期間内であり、すなわち、前に投与された薬剤は、後で投与された薬剤が送達される時点でこの患者においてその生物学的活性の少なくとも実質的な部分を保持する。しかし、2つの治療剤が同時に投与されない他の場合には、この2つの薬剤はお互いの生物活性期間の外側で投与されてもよい。
【0055】
置換基が、左から右に欠かれたそれらの従来の化学式によって特定される場合、それらは、右から左に構造を書くことから生じる化学的に同一の置換基を等しく包含し、例えば、−CHO−は、−OCH−に等しい。
【0056】
「アルキレン(alkylene)」という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、限定はしないが−CHCHCHCH−によって例示されるようなアルカン由来の二価ラジカルを意味し、そして「ヘテロアルキレン(heteroalkylene)」として下に記載される基をさらに包含する。代表的には、アルキル(またはアルキレン)基は、1〜24個の炭素原子を有し、本発明では10以下の炭素原子を有する基が好ましい。「低級アルキル(lower alkyl)」または「低級アルキレン(lower alkylene)」とは、より短い鎖のアルキルまたはアルキレン基をいい、これは一般には8個以下の炭素原子を有する。
【0057】
「アルキル(alkyl)」という用語は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、他に言及しない限り、直鎖(すなわち、分枝していない)もしくは分枝鎖、または環状炭化水素基、またはそれらの組み合わせを意味し、これは完全に飽和されても、一不飽和でも、または多価不飽和でもよく、そして二価ラジカルおよび多価ラジカルを含んでもよく、これは示された炭素原子の数を有する(すなわち、C−C10とは1〜10個の炭素を意味する)。飽和炭化水素基の例としては限定はしないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルのホモログおよび異性体などのような基が挙げられる。不飽和アルキル基とは、1つ以上の二重結合または三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例としては、限定はしないがビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−および3−プロピニル、3−ブチニル、ならびにより高次のホモログおよび異性体が挙げられる。炭化水素基に限定されるアルキル基は「ホモアルキル(homoalkyl)」と呼ばれる。
【0058】
「ヘテロアルキル(heteroalkyl)」という用語はそれ自体または別の用語と組み合わせて、他に言及しない限り、安定な直鎖もしくは分枝鎖、または環状炭化水素基、またはそれらの組み合わせを意味し、これは述べられた数の炭素原子、ならびにO、N、P、SiおよびSからなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子からなり、そしてこの窒素およびイオウ原子は必要に応じて酸化されてもよく、そして窒素ヘテロ原子は必要に応じて四級化されてもよい。ヘテロ原子O、N、P、SおよびSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置に置かれても、またはアルキル基がその分子の残りに結合される位置に置かれてもよい。例としては、限定はしないが、−CH−CH−O−CH、−CH−CH−NH−CH、−CH−CH−N(CH)−CH、−CH−S−CH−CH、−CH−CH、−S(O)−CH、−CH−CH−S(O)−CH、−CH=CH−O−CH、−Si(CH、−CH−CH=N−OCH、−CH=CH−N(CH)−CH、O−CH、−O−CH−CH、および−CNが挙げられる。最大2つのヘテロ原子が連続されてもよい、例えば、−CH−NH−OCHおよび−CH−O−Si(CHなど。同様に、「ヘテロアルキレン(heteroalkylene)」という用語は、それ自体、または別の置換基の一部として、例示されるようなヘテロアルキル由来の二価ラジカルを意味し、ただし、−CH−CH−S−CHCH−および−CH−S−CH−CH−NH−CH−には限定されない。ヘテロアルキレン基については、ヘテロ原子はまた、鎖末端のいずれかを占めても、または両方を占有してもよい(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。なおさらに、アルキレンおよびヘテロアルキレン連結基については、連結基の配向は、連結基の式が書かれる方向では示されない。例えば、式−C(O)R’は、−C(O)R’および−R’C(O)の両方を意味する。上記されるとおり、ヘテロアルキル基としては、本明細書において用いられる場合、ヘテロ原子を通じて分子の残りに結合される基、例えば、−C(O)R’、−C(O)NR’、−NR’R”、−OR’、−SR’、および/または−SOR’が挙げられる。「ヘテロアルキル(heteroalkyl)」が言及され、続いて特定のヘテロアルキル基、例えば、−NR’R”などの言及が続く場合、ヘテロアルキルおよび−NR’R”という用語は、冗長でもなくまたは互いに相反することもないことが理解される。そうではなく、特定のヘテロアルキル基は、明瞭さを加えるために言及される。従って、「ヘテロアルキル(heteroalkyl)」という用語は、特定のヘテロアルキル基、例えば、−NR’R”などを排除すると本明細書において解釈されるべきではない。
【0059】
他に明確に言及されない限り、「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」という用語は、それ自体でまたは他の用語と組み合わせて、それぞれ、「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環状バージョンを意味する。さらに、ヘテロシクロアルキルについては、ヘテロ原子は、複素環が分子の残りに結合される位置を占めてもよい。シクロアルキルの例としては、限定はしないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられる。ヘテロシクロアルキルの例としては、限定はしないが、1−(1,2,5,6−テトラヒドロピリジル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニルなどが挙げられる。
【0060】
「アリール」という用語は、他に述べない限り、多価不飽和、芳香族、炭化水素置換基を意味し、これは一緒に縮合されるかまたは共有結合されている単環または多環(好ましくは1〜3環)であってもよい。「ヘテロアリール」という用語は、N、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含むアリール基(または環)を指しており、この窒素およびイオウ原子は必要に応じて酸化されてもよく、そして窒素原子は必要に応じて四級化されてもよい。ヘテロアリール基は、炭素またはヘテロ原子を通じて分子の残りに結合されてもよい。アリールおよびヘテロアリール基の非限定的な例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリニル、および6−キノリニルが挙げられる。
【0061】
上記の用語の各々(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」、および「ヘテロアリール」)は、示されたラジカルの置換型および非置換型の両方を包含することが意味される。各々のタイプのラジカルについての好ましい置換基は下に提供される。
【0062】
アルキルおよびヘテロアルキルラジカルの置換基(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルとしばしば呼ばれる基を含む)は、限定はしないが以下から選択される種々の基のうちの1つ以上であってもよい:−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R”、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R”R”’、OC(O)R’、−C(O)R’、−CO2R’、−CONR’R”、−OC(O)NR’R”、−NR”C(O)R’、NR’C(O)NR”R”’、−NR”C(O)2R’、−NR−C(NR’R”R’”)=NR””、NRC(NR’R”)=NR”’、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R”、NRSOR’、−CNおよび−NOをゼロ〜(2m’+1)におよぶ数で、ここでm’は、このようなラジカルにおける炭素原子の総数である。R’、R”、R’”およびR””は各々好ましくは独立して、水素、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のアリール(例えば、1〜3ハロゲンで置換されたアリール)、置換または非置換のアルキル、アルコキシまたはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基をいう。本発明の化合物が2つ以上のR基を含む場合、例えば、各々のR基は、各々R’、R”、R’”およびR””基として、これらの2つ以上の基が存在する場合、独立して選択される。R’およびR”が同じ窒素原子に結合される場合、それらは、窒素原子と組み合わされて、4−、5−、6−または7−員の環を形成し得る。例えば、−NR’R”は、限定はしないが、1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルを含むことを意味する。置換基の上記の考察から、「アルキル」という用語は、水素基以外の基、例えば、ハロアルキル(例えば、−CFおよび−CHCF)およびアシル(例えば、−C(O)CH、−C(O)CF、−C(O)CHOCH、など)に結合する炭素原子を含む基を包含することを意味することを当業者は理解する。
【0063】
アルキルラジカルについて記載される置換基と同様に、アリールおよびヘテロアリール基の置換基は変化され、そして、例えば、以下から選択される:ハロゲン、OR’、−NR’R”、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R”R”’、OC(O)R’、−C(O)R’、CO2R’、−CONR’R”、−OC(O)NR’R”、−NR”C(O)R’、NR’C(O)NR”R”’、−NR”C(O)R’、NR−C(NR’R”R’”)=NR””、NRC(NR’R”)=NR’”、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R”、NRSO2R’、−CNおよび−NO、−R、−N、−CH(Ph)、フルオロ(C−C)アルコキシ、およびフルオロ(C−C)アルキルが、ゼロから芳香族環系上の開放価数の総数の範囲の数で;そしてここでR’、R”、R”’およびR””は好ましくは独立して、水素、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のアリールおよび置換または非置換のヘテロアリールから選択される。本発明の化合物が2つ以上のR基を含む場合、例えば、各々のR基は独立して、各々R’、R”、R’”およびR””基として、これらの基の2つ以上が存在する場合、選択される。
【0064】
(II.抑うつ症状の決定)
抑うつ診断は主に、臨床的な抑うつの指標である症状についての専門家による、患者の検査に基づく。抑うつの客観的なアセスメントは、当業者に公知のレーティングスケールを用いて行われてもよい(例えば、抑うつのハミルトン・レーティング・スケール(Hamilton Rating Scale for Depression))。J.Operational Psychiatry 10(2):149〜165(1979)を参照のこと。この抑うつ症状は、各々がさらに下に詳細に考察される、臨床的な大うつ病、胸腺機能不全または小うつ病エピソードのいずれかに相当し得る。
【0065】
大うつ病は、2つ以上の大うつ病エピソードの存在である単一のエピソードまたは再発のいずれであってもよい。大うつ病の症状は、社会、職業的な、または機能の他の重要な領域での臨床的に有意な苦悩または障害を生じる。大うつ病の診断は、同じ2週間の間の5つ(またはそれ以上)の症状の存在によって特徴づけられ、そして以前の機能からの変化に相当し、そしてその症状の少なくとも1つが、抑うつ気分、または関心もしくは楽しみの喪失のいずれかでなければならない。大うつ病を特徴づける症状としては以下が挙げられる:(1)ほとんどの日、ほぼ毎日の抑うつされた気分であって、主観的な報告(例えば、悲しい気分または寂寥感)、または他人によって行われる観察、例えば、涙ぐんだ様子(小児および青年では、抑うつされた気分はまたイラついた気分であってもよい)のいずれかによって示されるような気分;(2)著名に軽減された関心または快楽が、全てまたはほぼすべての活動において、ほとんどの日、ほぼ毎日(主観的な説明または他人によって行われる観察のいずれかによって示される場合);(3)ダイエットしていない時に有意な体重減少、または体重増加(例えば、1か月に体重の5%を超える変化)、またはほぼ毎日の食欲の低下もしくは増大(小児では、予期される体重増大を行えないことが考慮されるべきである);(4)ほぼ毎日の不眠症または過眠症;(5)ほぼ毎日の精神運動性の激越または遅滞(他人から観察可能、不穏状態の主観的感覚だけでなく、動きが鈍くなる);(6)ほぼ毎日の疲労またはエネルギー損失;(7)ほぼ毎日の倦怠感または過度のもしくは不穏当な罪悪感(病気であることに対する罪の意識または自責だけでなく);(8)ほぼ毎日、思考もしくは集中力の低下、または優柔不断(主観的説明によって、または他人によって観察されるかのいずれか);ならびに(9)死を繰り返し考えること(死に対する恐怖だけでなく)、特別な計画のない反復性の自殺の観念、または自殺の企図もしくは自殺するつもりの特別な計画。
【0066】
大うつ病の診断には、その患者が躁病エピソードも、混合エピソードも、軽躁病のエピソードも以前に経験していないことが必要である。しかし、この除外は、全ての躁病様、混合様、または軽躁病様のエピソードが実質もしくは誘導された処置であるか、または一般的な医学的状態の直接の生理学的効果に起因した場合には、あてはまらない。大うつ病は、分裂情動性の障害によってよく説明されないものとして最もよく特徴づけられ、そしてそれ以外には他に特定されない統合失調症、統合失調症様障害、妄想性障害または精神異常に上書きされない。
【0067】
気分変調性障害の症状は、社会、職業的な、または機能の他の重要な領域での臨床的に有意な苦悩または障害を生じる。気分変調性障害は、主観的根拠によって、または少なくとも2年間の他人による観察のいずれかによって示される場合、ほとんどの日に、さらにそれよりも数日間、抑うつされた気分として最もよく特徴付けられる。小児および青年では、気分は、興奮性として顕在化し得、そしてその期間は、少なくとも1年間でなければならない。抑うつされた気分に加えて、気分変調性障害の診断には、以下のうちの2つ(またはそれ以上)の存在が必要である:食欲不振または過食;不眠症または過眠症;低エネルギーまたは疲労;低い自尊心;集中力低下または優柔不断;および絶望感。成人については、2年間の障害の間(小児または青年については1年)、その人は、一度に2か月より長い症状は決してない。さらに、その症状が物質(例えば、乱用薬物、医薬)の直接の生理学的効果にも全身的な医学的状態(例えば、甲状腺機能低下症)にも起因しないことが除外されなければならない。
【0068】
気分変調性障害の診断については、患者は、気分変調性障害の最初の2年間(小児または青年については1年)の間、大うつ病エピソードを経験できていない。言い換えれば、その障害は、慢性の大うつ病障害、または大うつ病障害によって、部分寛解では、よく説明されない。気分変調性障害の発達前に完全寛解(2ヶ月間有意な兆候も症状もない)があったという条件であれば、以前に大うつ病エピソードがあってもよい。さらに、気分変調性障害の最初の2年(小児または青年では1年)後、大うつ病障害の上書きされたエピソードがあってもよく、この場合、基準が大うつ病エピソードを満たす場合、両方の診断が与えられ得る。
【0069】
気分変調性障害の診断には、その患者が躁病エピソードも、混合エピソードも、軽躁病のエピソードも以前に経験していないこと、および循環病障害の基準が満たされていないことが必要である。統合失調症(精神分裂病)または妄想性障害のような慢性の精神異常の経過の間、障害が排他的に生じることはない。
【0070】
小うつ病には、抑うつされた気分を有する任意の特異的な気分障害または適応障害についての基準を満たさない抑うつ性の特徴を有する気分障害を含む。小うつ病の例としては、限定はしないが、気分変調の基準を満たさない再発性で、軽度の、抑うつのエピソード、または大うつ病エピソードの基準を満たさない非ストレス関連抑うつエピソードを挙げることができる。
【0071】
(III.一般的検査法)
本発明の方法を行う場合、血液コルチゾール、薬物代謝などのようなパラメーターのモニタリングを含む、多数の一般的臨床検査を用いて、IL−2療法を受けている患者の進行を補助してもよい。全ての患者は独自に薬物を代謝して反応するので、これらの手順は有益であり得る。さらに各々のGRアンタゴニストは異なる薬物動態を有するので、このようなモニタリングは、重要であり得る。種々の医学的状態を有する患者は、種々の投薬レジメンおよび処方物を要し得る。投薬レジメンおよび処方物を決定するためのこのような手順および手段は、科学論文および特許文献に十分記載されている。
【0072】
(A.血液コルチゾールレベルを決定する)
血液コルチゾールの種々のレベルは、IL−2誘発性の抑うつに関連しているが、本発明はまた、血液コルチゾールの見掛け上正常なレベルを有する患者に対して実施され得る。従って、血液コルチゾールモニタリングおよびベースラインのコルチゾールレベル決定は、IL−2療法を受けている患者の進行をモニタリングすることを補助するために有用な臨床検査である。個人が正常であるか、低コルチゾール血症または高コルチゾール血症であるかを決定するために用いられ得る広範な種々の臨床検査が存在する。長期のIL−2処置を受けるべき、または受けている患者は代表的には、モニタリングにおいてしばしば25μg/dl未満であり、そして午後には高頻度に約15μg/dl以下である正常なレベルのコルチゾールを有し、これは、午後には、5〜15μg/dlの正常範囲のハイエンドであると考えられる。
【0073】
ラジオイムノアッセイのような免疫アッセイが一般に用いられる。なぜならそれらは正確であって、行うことが容易であり、かつ比較的安価であるからである。循環中のコルチゾールのレベルは、副腎皮質機能の指標であるので、種々の刺激および抑制試験、例えば、ACTH刺激、ACTH Reserve、またはデキサメタゾン抑制(例えば、Greenwald,Am.J.Psychiatry 143:442〜446,1986を参照のこと)ではまた、本発明の方法において、付属的に用いられるべき診断、予後予測または他の情報を得ることができる。
【0074】
キット型で利用可能な1つのこのようなアッセイは、「Double Antibody Cortisol Kit」(Diagnostic Products Corporation,Los Angeles,CA),(Acta Psychiatr.Scand.70:239〜247,1984)として利用可能なラジオイムノアッセイである。この試験は、競合的ラジオイムノアッセイであり、ここでは125I−標識コルチゾールが、臨床サンプル由来のコルチゾールと抗体部位について競合する。この試験では、抗体の特異性および任意の有意なタンパク質の影響がないおかげで、血清および血漿のサンプルは、事前抽出も事前希釈も必要としない。
【0075】
(B.血液/尿のミフェプリストンレベルの決定)
患者の代謝、クリアランス速度、毒性レベルなどは、背景にある一次または二次の疾患状態、薬物履歴、年齢、全身病状などの変動に伴って異なるので、GRアンタゴニストの血液および尿のレベルを測定することが必要であり得る。このようなモニタリングの手段は、科学論文および特許文献によく記載されている。本発明の1実施形態にあるとおり、ミフェプリストンは、IL−2療法を受けている患者での抑うつの症状を改善するために投与され、血液および尿のミフェプリストンレベルを決定する説明に役立つ実例は、下の実施例に説明される。
【0076】
(C.他の検査法)
IL−2療法に関連する抑うつの機構は複雑であって、かつその症状は、変化し得るので、多数のさらなる臨床検査を本発明の方法で補助的に用いて、診断、処置の計画、予後予測、毒性などを補助してもよい。例えば、診断および処置のアセスメントは、限定はしないが、空腹時血糖、グルコース経口投与後の血糖、甲状腺刺激ホルモン(TSH)血漿濃度、コルチコステロイド結合グロブリン、黄体形成ホルモン(LH)、テストステロン−エストラジオール−結合グロブリン、レプチン、インスリン、ならびに/または総テストステロンおよび遊離テストステロンを含む、グルココルチコイド感受性の変数をモニタリングおよび測定することによって増強され得る。
【0077】
アンタゴニストおよび代謝物の尿濃度を含む、GRアンタゴニスト代謝物の生成、血漿濃度およびクリアランス速度をモニタリングおよび測定する臨床検査はまた、本発明の方法を行うのに有用であり得る。例えば、ミフェプリストンは、2つの親水性の、N−モノメチル化した、およびN−ジメチル化した、代謝物を有する。これらの代謝物(RU486に加えて)の血漿および尿濃度は、例えば、Kawai,Pharmacol,and Experimental Therapeutics 241:401〜406,1987に記載されるような薄層クロマトグラフィーを用いて決定され得る。
【0078】
(IV.IL−2療法を受けている患者における抑うつの症状を改善するためのグルココルチコイドレセプターアンタゴニスト)
本発明は、GRに対するコルチゾールまたはコルチゾールアナログの結合をブロックするかまたは妨げ得る任意の組成物または化合物を利用して、IL−2療法によって誘発される抑うつの症状を阻害または逆転する方法を提供する。本発明の方法において利用されたGR活性のアンタゴニストは、科学論文および特許文献に十分記載されている。2〜3の説明に役立つ実例を下に説明する。
【0079】
(A.GRアンタゴニストとしてのステロイド性の抗グルココルチコイド)
ステロイド性のグルココルチコイドアンタゴニストは、本発明の種々の実施形態におけるIL−2誘発性抑うつを阻害または逆転するために投与される。ステロイド性の抗グルココルチコイドは、グルココルチコイドアゴニストの基礎構造の改変、すなわち、ステロイド骨格の変化型によって得てもよい。コルチゾールの構造は、種々の方法で改変され得る。グルココルチコイドアンタゴニストを作成するためのコルチゾールステロイド骨格の構造的改変の2つの最も一般に知られたクラスとしては、11−βヒドロキシ基の修飾および17−β側鎖の修飾が挙げられる(例えば、Lefebvre,J.Steroid Biochem.33:557〜563,1989を参照のこと)。
【0080】
ステロイド性のGRアンタゴニストの例としては、米国特許第5,929,058号に記載のアンドロゲン型ステロイド化合物、および米国特許第4,296,206号;同第4,386,085号;同第4,447,424号;同第4,477,445号;同第4,519,946号;同第4,540,686号;同第4,547,493号;同第4,634,695号;同第4,634,696号;同第4,753,932号;同第4,774,236号;同第4,808,710号;同第4,814,327号;同第4,829,060号;同第4,861,763号;同第4,912,097号;同第4,921,638号;同第4,943,566号;同第4,954,490号;同第4,978,657号;同第5,006,518号;同第5,043,332号;同第5,064,822号;同第5,073,548号;同第5,089,488号;同第5,089,635号;同第5,093,507号;同第5,095,010号;同第5,095,129号;同第5,132,299号;同第5,166,146号;同第5,166,199号;同第5,173,405号;同第5,276,023号;同第5,380,839号;同第5,348,729号;同第5,426,102号;同第5,439,913号;同第5,616,458号、および同第5,696,127号に開示される化合物が挙げられる。このようなステロイド性のGRアンタゴニストとしては、コルテキソロン、デキサメタゾン−オキセタノン、19−ノルデオキシコルチコステロン、19−ノルプロゲステロン、コルチゾール−21−メシレート;デキサメタゾン−21−メシレート、11β−(4−ジメチルアミノエトキシフェニル)−17α−プロピニル−17β−ヒドロキシ−4,9エストラジエン−3−オン(RU009)、および17β−ヒドロキシ−17α−19−(4−メチルフェニル)アンドロスタ−4,9(11)−ジエン−3−オン(RU044)が挙げられる。
【0081】
(1.11−βヒドロキシ基の除去または置換)
11−βヒドロキシ基の除去または置換を含む修飾されたステロイド性の骨格を有するグルココルチコイドアゴニストは、本発明の1実施形態で投与される。このクラスとしては、天然の抗グルココルチコイドが挙げられ、これにはコルテキソロン、プロゲステロンおよびテストステロン誘導体、および合成の組成物、例えば、ミフェプリストン(Lefebvreら、前出)が挙げられる。本発明の好ましい実施形態としては、全ての11−β−アリールステロイド骨格誘導体が挙げられる。なぜなら、これらの化合物は、プロゲステロンレセプター(PR)結合活性を欠くからである(Agarwal,FEBS 217:221〜226,1987)。別の好ましい実施形態は、11−β フェニル−アミノジメチルステロイド骨格誘導体、すなわち、有効な抗グルココルチコイドおよび抗プロゲステロン剤の両方であるミフェプリストンを含む。これらの組成物は、可逆的に結合するステロイドレセプターアンタゴニストとして作用する。例えば、11−βフェニルアミノジメチルステロイドに結合する場合、ステロイドレセプターは、GRの場合にはコルチゾールのなどの、その天然のリガンドに結合できない高次構造で維持される(Cadepond,1997,前出)。
【0082】
合成の11−βフェニル−アミノジメチルステロイドとしては、RU486としても公知のミフェプリストン、または17−β−ヒドロクス−11−β−(4−ジメチル−アミノフェニル)17−α−(1−プロピニル)エストラ−4,9−ジエン−3−オン)が挙げられる。ミフェプリストンは、プロゲステロンおよびグルココルチコイド(GR)レセプターの両方の強力なアンタゴニストであることが示されている。GRアンタゴニスト効果を有することが示された別の11−βフェニル−アミノジメチルステロイドとしては、RU009(RU39.009)、11−β−(4−ジメチル−アミノエトキシフェニル)−17−α−(プロピニル−17β−ヒドロキシ−4,9−エストラジエン−3−オン)が挙げられる(Bocquel,J.Steroid Biochem.Molec.Biol.45:205−215,1993を参照のこと)。RU486に関連する別のGRアンタゴニストは、RU044(RU43.044)17−β−ヒドロクス−17−α−19−(4−メチル−フェニル)−アンドロスタ−4,9(11)−ジエン−3−オン)(Bocquel,1993,前出)である。また、Teutsch,Steroids 38:651〜665,1981;米国特許第4,386,085号および同第4,912,097号を参照のこと。
【0083】
1実施形態は、可逆性の抗グルココルチコイドである基礎的グルココルチコイドステロイド構造を含む組成物を包含する。このような化合物としては、コルチゾールのα−ケト−メタンスルホナート誘導体が挙げられ、これには、コルチゾール−21−メシレート(4−プレグネン−11−β,17−α,21−トリオール−3,20−ジオン−21−メタン−スルホナートおよびデキサメタゾン−21−メシレート(16−メチル−9α−フルオロ−1,4−プレグナジエン−11β,17−α,21−トリオール−3,20−ジオン−21−メタン−スルホナート)が挙げられる。Simons,J.Steroid Biochem.24:25〜32,1986;Mercier,J.Steroid Biochem.25:11〜20,1986;米国特許第4,296,206号を参照のこと。
【0084】
(2.17−β側鎖基の修飾)
17−β側鎖の種々の構造的修飾によって得ることができるステロイド性の抗グルココルチコイドも本発明の方法で用いられる。このクラスは、合成の抗グルココルチコイド、例えば、デキサメタゾン−オキセタノン、種々の17,21−アセトニド誘導体、およびデキサメタゾンの17−β−カルボキサミド誘導体を包含する(Lefebvre,1989,前出;Rousseau,Nature 279:158〜160,1979)。
【0085】
(3.他のステロイド骨格修飾)
本発明の種々の実施形態で用いられるGRアンタゴニストとしては、GRアゴニスト相互作用から生じる生物学的な応答に影響する任意のステロイド骨格修飾が挙げられる。ステロイド骨格アンタゴニストは、コルチゾールの任意の天然または合成のバリエーション、例えば、C−19メチル基を欠く副腎ステロイド、例えば、19−ノルデオキシコルチコステロンおよび19−ノルプロゲステロンであってもよい(Wynne,Endocrinology 107:1278〜1280,1980)。
【0086】
一般には、11−β側鎖置換基および詳細には、その置換基のサイズは、ステロイドの抗グルココルチコイド活性の程度を決定するのに重要な役割を果たし得る。ステロイド骨格のA環の置換も重要であり得る。17−ヒドロキシプロペニル側鎖は一般には、17−プロピニル側鎖含有化合物に比較して抗グルココルチコイド活性を減少させる。
【0087】
当該分野で公知であって、本発明の実施に適切であるさらなるグルココルチコイドレセプターアンタゴニストとしては、21−ヒドロキシ−6,19−オキシドプロゲステロン(Vicent,Mol.Pharm.52:749〜753,1997を参照のこと);ORG31710,(6β,11β,17β)−11−(4−(ジメチル−アミノ)フェニル)−6−メチル−4’,5’−ジヒドロ[エストラ−4,9−ジエン−17,2’(3H’)−フラン]−3−オン、(Mizutani,J Steroid Biochem Mol Biol 42(7):695〜704,1992を参照のこと);Hoybergら、Int’l J.of Neuro−psychopharmacology,5:Supp.1,S148(2002)に開示される、ORG34517、(11β,17β)−11−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−17−ヒドロキシ−17−(1−プロピニル)エ−ストラ−4,9−ジエン−3−オン;ORG 33628、[(11β,17α)−11−(4−アセチルフェニル)−17,23−エポキシ−19,24−ジノルコラ−4,−9,20−トリエン−3−オン];ORG 31806、[(7β,11β,17β)−11−(4−(ジメチルアミノ)フェニル)−7−Me−4’,5’−ジヒドロスピロ(オエストラ−4,9−ジエン−17,2’(3’H)−フラン)−3−オン]−;ORG 34116,(11β,17α)−11,21−Bis[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−17−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−4,9,ジエン−20−イン−3−オン;ORG 34850、(11b,17a)−11−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−17−ヒドロキシ−21−[4−(メチルスルホニル)フェニル−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−20−イン−3−オン、および米国特許第5,741,787号に開示される関連の化合物;RU43044、(17β−ヒドロキシ−11β−4−[メチル]−[1−メチルエチル]アミノフェニル/−17α−[プロプ−1−イニル]エストラ−4−9−ジエン−3−オン(「RU40555」,Kim,J Steroid Biochem Mol Biol.67(3):213〜22,1998を参照のこと)、RU28362、およびZK98299が挙げられる。
【0088】
(B.アンタゴニストとしての非抗ステロイド性抗グルココルチコイド)
非ステロイド性のグルココルチコイドアンタゴニストも、IL−2誘発性の抑うつを阻害または逆転するために本発明の方法において用いられる。これらとしては、タンパク質の合成の模倣物およびアナログが挙げられ、これには部分的にペプチドの、シュードペプチドの、および非ペプチドの分子物が挙げられる。例えば、本発明において有用なオリゴマーのペプチド模倣物としては、(α−β−不飽和)ペプチドスルホンアミド、N−置換グリシン誘導体、オリゴカルバメート、オリゴウレアペプチド模倣物、ヒドラジノペプチド、オリゴスルホンなどが挙げられる(例えば、Amour,Int.J.Pept.Protein Res.43:297〜304,1994;de Bont,Bioorganic & Medicinal Chem.4:667〜672,1996を参照のこと)。合成分子の大ライブラリーの作成および同時のスクリーニングは、コンビナトリアル化学における周知の技術を用いて行われ得る。例えば、van Breemen,Anal Chem 69:2159〜2164,1997;およびLam,Anticancer Drug D es 12:145〜167,1997を参照のこと。GRに特異的なペプチド模倣物のデザインは、コンビナトリアル化学(コンビナトリアルライブラリー)スクリーニングのアプローチと組み合わせてコンピュータープログラムを用いて設計され得る(Murray,J of Computer−Aided Molec.Design 9:381〜395,1995;Bohm,J.of Computer−Aided Molec.Design 10:265〜272,1996)。このような「合理的薬物設計(デザイン)(rational drug design)」によって、ペプチド異性体、およびシクロアイソマー(cycloisomers)、レトロインベルソ(retro−inverso)異性体、レトロ異性体などを含む配座異性体を開発することが補助され得る(Chorev,TibTech 13:438〜445,1995に考察されるとおり)。
【0089】
非ステロイド性GRアンタゴニストの例としては、ケトコナゾール、クロトリマゾール;N(トリフェニルメチル)イミダゾール;N−([2−フルオロ−9−フェニル]フルオレニル)イミダゾール;N−([2−ピリジル]ジフェニルメチル)イミダゾール;N(2[4,4’,4”−トリクロロトリチル]オキシエチル)モルホリン;1−(2[4,4’,4”−トリクロロトリチル]オキシエチル)−4(2ヒドロキシエチル)ピペラジンジマレアート;N−([4,4’,4”]−トリクロロトリチル)イミダゾール;9−(3−メルカプト−1,2,4トリアゾールイル)−9−フェニル−2,7−ジフルオロフルオレノン;1−(2−クロロトリチル)−3,5−ジメチルピラゾール;4(モルホリノメチル)−A−(2−ピリジル)ベンズヒドロール;5−(5−メトキシ−2−(N−メチルカルバモイル)−フェニル)ジベンゾスベロール;N−(2−クロロトリチル)−L−プロリノールアセテート;1−(2−クロロトリチル)−2−メチルイミダゾール;1(2クロロトリチル)−1,2,4−トリアゾール;1,S−ビス(4,4’,4”−トリクロロトリチル)−1,2,4−トリアゾール−3−チオール;およびN((2,6ジクロロ−3メチルフェニル)ジフェニル)メチルイミダゾール(米国特許第6,051,573号を参照のこと);米国特許第5,696,127号に開示されるGRアンタゴニスト化合物;Bradleyら、J.Med.Chem.45,2417〜2424(2002)に開示されるグルココルチコイドレセプターアンタゴニスト、例えば、4a(S)−ベンジル−2(R)−クロロエチニル−1,2,3,4,4a,9,10,10a(R)−オクタヒドロ−フェナントレン−2,7−ジオール(CP 394531)および4a(S)−ベンジル−2(R)−プロプ−1−イニル−1,2,3,4,4a,9,10,10a(R)−オクタヒドロ−フェナントレン−2,7−ジオール(CP 409069);ステロイドレセプターについての高親和性、高い選択性のアンタゴニストである非ステロイド性化合物を記載するPCT国際出願第WO 96/19458に開示される化合物、例えば、6−置換−1,2−ジヒドロ−N保護−キノリン;およびいくつかのκオピオイドリガンド、例えば、κオピオイド化合物ジノルフィン−1,13ジアミド、U50,488(トランス−(1R,2R)−3,4−ジクロロ−N−メチル−N−[2−(1−ピロリジニル)シクロヘキシル]ベンゼンアセトアミド)、ブレマゾシンおよびエチルケトシクラゾシン;4b(S)−ベンジル−7(S)−ヒドロキシ−7−(1−プロピニル)−4b,5,6,7,8,8a(R),9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボン酸(ピリジン−4−イルメチル)アミド CP−472555)、4b(S)−ベンジル−7(S)−ヒドロキシ−7−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−4b,5,6,7,8,8a(R)、9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボン酸(2−メチルピリジン−3−イルメチル)アミド、ならびにWO 0066522および米国特許出願公開第20040176595号に開示される関連の化合物;欧州特許第1201649号に開示されるオクタヒドロフェナントレニルカルバメート;欧州特許第1201660号に開示されるオキサジアゾリルアルコキシオクタヒドロフェナントレン;WO 2005/047254に開示されるオクタヒドロフェナントレンヒドラジン;WO 2004/005299に開示されるグルココルチコイドレセプターのモジュレーター;WO 2005/011336およびWO 2005/011337に開示される三環系化合物;WO 2003/011755に開示されるWieland−Miescher ケトン誘導体;WO 2004/075840に開示されるシクロペント[f]インダゾールおよびベンズ[f]インダゾール誘導体;WO 2004/093805に開示されるスピロ環化化合物;WO 2004/026248に開示されるオクタヒドロ−2−H−ナフト[1,2,−f]インドール−4−カルボキサミド誘導体;WO 2004/000869に開示されるコール酸誘導体;WO 2001/16128に開示されるジベンゾピラン誘導体;米国特許出願公開第20020049322号および米国特許出願公開第20030220332号に開示される6H−ジベンゾ[b,d]ピラン誘導体、WO 2002/064550に開示される置換アミノベンゼン誘導体;米国特許第6,166,013号に開示されるトリフェニルメタン誘導体;WO 2001/047859およびWO 1999/63976に開示されるジフェニルエーテル誘導体;WO 2005/070893に開示されるアザデカリン誘導体;WO 2005/087769に開示される縮合環アザデカリン;PCT/US05/23675に開示される修飾ピリミジン化合物、ならびにEvansら、Endocrin.,141:2294 2300(2000)に開示されるような非特異的オピオイドレセプターリガンド、ナロキソンが挙げられる。
【0090】
(C.特異的なグルココルチコイドレセプターアンタゴニストを特定する)
上記の化合物および組成物に加えて、任意の特異的なGRアンタゴニストを用いて、本発明の方法におけるIL−2誘発性の抑うつを阻害または逆転し得るので、さらなる有用なGRアンタゴニストを当業者によって決定してもよい。種々のこのような経路、周知の方法が用いられてもよく、そして科学論文および特許文献に記載されている。それらとしては、さらなるGRアンタゴニストの特定のためのインビトロおよびインビボアッセイが挙げられる。2〜3の例示的な実施例が下に記載される。
【0091】
本発明のGRアンタゴニストを特定するために用いられ得る一アッセイは、Granner,Meth.Enzymol.15:633,1970の方法に従ってチロシンアミノ−トランスフェラーゼ活性に対する推定のGRアンタゴニストの影響を測定する。この分析は、ラットヘパトーマ(肝細胞腫)細胞(RHC)の培養における肝臓酵素チロシンキナーゼアミノ−トランスフェラーゼ(TAT)の活性の測定に基づく。TATは、チロシンの代謝における最初の工程を触媒し、そして肝細胞およびヘパトーマ細胞の両方でグルココルチコイド(コルチゾール)によって誘導される。この活性は、細胞抽出物で容易に測定される。TATは、チロシンのアミノ基を2−オキソグルタル酸へ変換する。P−ヒドロキシフェニルピルビン酸も形成される。これは、アルカリ溶液中でより安定なp−ヒドロキシベンズアルデヒドに変換されて、331nmの吸光度で定量され得る。推定のGRアンタゴニストは、コルチゾールとともに肝臓全体に、インビボもしくはエキソビボで、またはヘパトーマ細胞もしくは細胞抽出液に同時投与される。コントロール(すなわち、コルチゾールまたはGRアゴニストのみが添加される)と比較してある化合物の投与が誘発されたTAT活性の量を減少させる場合、その化合物はGRアンタゴニストとして特定される(Shirwany,Biochem.Biophys.Acta 886:162〜168,1986も参照のこと)。
【0092】
TATアッセイに加えて、本発明の方法で利用される組成物を特定するために用いられ得る多くのアッセイのさらなる例示は、インビボでのグルココルチコイド活性に基づくアッセイである。例えば、グルココルチコイドによって刺激される細胞中のDNAへのH−チミジンの取り込みを推定のGRアンタゴニストが阻害する能力を評価するアッセイが用いられてもよい。あるいは、推定上のGRアンタゴニストは、ヘパトーマ組織培養物GRに対する結合についてH−デキサメタゾンと競合し得る(例えば、Choi,ら、Steroids 57:313〜318,1992を参照のこと)。別の例としては、H−デキサメタゾン−GR複合体の核結合を推定のGRアンタゴニストがブロックする能力を用いてもよい(Alexandrovaら、J.Steroid Biochem.Mol.Biol.41:723〜725,1992)。推定のGRアンタゴニストをさらに特定するためには、レセプター結合動態によってグルココルチコイドのアゴニストとアンタゴニストとの間を識別し得る動態アッセイを用いてもよい(Jones,Biochem J.204:721〜729,1982に記載のとおり)。
【0093】
別の説明に役立つ実例では、Daune,Molec.Pharm.13:948〜955,1977によって;そして米国特許第4,386,085号に記載のアッセイを用いて、抗グルココルチコイド活性を特定してもよい。要するに、副腎摘出されたラットの胸腺細胞を、デキサメタゾンを含有する栄養培地中で、試験化合物(推定GRアンタゴニスト)とともに種々の濃度でインキュベートする。Hウリジンを細胞培養物に添加し、これをさらにインキュベートして、ポリヌクレオチドへの放射性標識の組み込みの程度を測定する。グルココルチコイドアゴニストは、組み込まれたHウリジンの量を低下させる。従って、GRアンタゴニストは、この効果を妨害する。
【0094】
本発明の方法、ならびにこのような化合物を特定および作製する方法において利用され得るさらなる化合物については、米国特許第4,296,206号(上記を参照のこと);4,386,085号(上記を参照のこと);4,447,424号;同第4,477,445号;同第4,519,946号;同第4,540,686号;同第4,547,493号;同第4,634,695号;同第4,634,696号;同第4,753,932号;同第4,774,236号;同第4,808,710号;同第4,814,327号;同第4,829,060号;同第4,861,763号;同第4,912,097号;同第4,921,638号;同第4,943,566号;同第4,954,490号;同第4,978,657号;同第5,006,518号;同第5,043,332号;同第5,064,822号;同第5,073,548号;同第5,089,488号;同第5,089,635号;同第5,093,507号;同第5,095,010号;同第5,095,129号;同第5,132,299号;同第5,166,146号;同第5,166,199号;同第5,173,405号;同第5,276,023号;同第5,380,839号;同第5,348,729号;同第5,426,102号;同第5,439,913号;同第および5,616,458号;米国特許出願公開第20040176595号、およびWO 96/19458(ステロイドレセプターについての高親和性、高度に選択性のモジュレーター(アンタゴニスト)である非ステロイド性化合物、例えば、6−置換−1,2−ジヒドロN−1保護キノリンを記載する)を参照のこと。
【0095】
MRに対するGRについてのアンタゴニストの特異性は、当業者に公知の種々のアッセイを用いて測定してもよい。例えば、特定のアンタゴニアストは、MRに比較したGRに対して結合するアンタゴニストの能力を測定することによって特定され得る(例えば、米国特許第5,606,021号;同第5,696,127号;同第5,215,916号;同第5,071,773号を参照のこと)。このような分析は、直接結合アッセイを用いるか、または公知のアンタゴニストの存在下における精製のGRもしくはMRに対する競合的な結合を評価することによって、行われてもよい。例示的なアッセイでは、グルココルチコイドレセプターまたは鉱質コルチコイドレセプター(例えば、米国特許第5,606,021号を参照のこと)を高レベルで安定に発現する細胞を、精製レセプターの供給源として用いる。次いで、レセプターのアンタゴニストの親和性を直接測定する。次いで、MRに対してGRについて、少なくとも100倍、しばしば1000倍高い親和性を示すアンタゴニストを、本発明の方法における使用のために選択する。
【0096】
GR特異的なアンタゴニストはまた、GR媒介性の活性を阻害するが、MR媒介性の活性は阻害しない能力を有する化合物として規定され得る。このようなGR特異的なアンタゴニストを特定する1方法は、トランスフェクションアッセイを用いて、アンタゴニストがレポーター構築物の活性を妨げる能力を評価することである(例えば、Bocquelら、J.Steroid Biochem Molec.Biol.45:205〜215,1993;米国特許第5,606,021号、同第5,929,058号を参照のこと)。例示的なトランスフェクションアッセイでは、レセプターをコードする発現プラスミドおよびレセプター特異的調節エレメントに結合されたレポーター遺伝子を含むレポータープラスミドを、適切なレセプター陰性の宿主細胞中に同時トランスフェクトする。次いで、このトランスフェクトされた宿主細胞を、レポータープラスミドのホルモン反応性のプロモーター/エンハンサーエレメントを活性化し得る、コルチゾールまたはそのアナログのようなホルモンの有無において培養する。次に、このトランスフェクトされかつ培養された宿主細胞を、レポーター遺伝子配列の産物の誘導(すなわち、存在)についてモニターする。結局、ホルモンレセプタータンパク質(発現プラスミド上でレセプターDNA配列によってコードされ、そしてトランスフェクトされかつ培養された宿主細胞中で作成される)の発現および/またはステロイド結合能力を、アンタゴニストの有無においてレポーター遺伝子の活性を決定することによって測定する。化合物のアンタゴニスト活性は、GRおよびMRレセプターの公知のアンタゴニストに比較して決定され得る(米国特許第5,696,127号を参照のこと)。次いで、参照アンタゴニスト化合物に対する各々の化合物について観察された最大応答パーセントとして効率を報告する。GR特異的なアンタゴニストは、MRに対してGRに向かう、少なくとも100倍、しばしば1000倍またはそれより大きい活性を示すとみなされる。
【0097】
(V.グルココルチコイドレセプターアンタゴニストを用いるIL−2療法に関連する抑うつの症状の改善)
抗グルココルチコイド、例えば、ミフェプリストンは、IL−2誘発性抑うつを阻害または逆転するための本発明の方法において用いられるべき医薬品として処方される。GRに対するコルチゾールまたはコルチゾールアナログの結合をブロックまたは妨げ得る任意の組成物または化合物は、本発明における医薬品として用いられ得る。本発明の方法を行うためのGRアンタゴニスト薬物レジメンおよび医薬品を決定するための慣用的な方法は、特許および科学文献に十分に記載されており、そのいくつかの説明に役立つ実例が、下に説明される。
【0098】
(A.薬学的組成物としてのグルココルチコイドレセプターアンタゴニスト)
本発明の方法において用いられるGRアンタゴニストは、当該分野で公知の任意の手段によって、例えば、非経口的に、局所的に、経口的にまたは局所投与によって、例えば、エアロゾルによってまたは経皮的に投与され得る。本発明の方法は、予防的および/または治療的な処置を提供する。薬学的組成物としてのGRアンタゴニストは、各々の患者の状態または疾患および重篤度の程度、全身的な医学的状態、得られた好ましい投与方法などに依存して種々の単位剤形で投与されてもよい。処方及び投与技術の詳細は、科学および特許文献によく記載されており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co,Easton PAの最終版を参照のこと。本発明の方法の実施に適切なグルココルチコイドブロッカーの治療上有効な量は、1kgあたり約0.5〜約25ミリグラム(mg/kg)に及んでもよい。当業者は、その技術および本開示に関して、過度の実験なしに、本発明の実施についての特定のグルココルチコイドブロッカー化合物の治療上有効な量を決定できる。
【0099】
一般に、グルココルチコイドブロッカー化合物は、治療薬を投与するための当該分野で公知の任意の方法による薬学的組成物として投与されてもよい。組成物は、錠剤、丸剤、カプセル、半固体、粉末、徐放性処方物、溶液、懸濁液、エリキシル、エアロゾルまたは任意の他の適切な組成物の形態をとってもよく;そして少なくとも1つの薬学的に受容可能な賦形剤と組み合わせて本発明の少なくとも1つの化合物を含む。適切な賦形剤は、当業者に周知であり、そしてそれらの賦形剤、およびこの組成物を処方する方法は、Remington’s Pharmaceutical Sciencesのような標準的引用文献に見出され得る。特に注射用溶液について、適切な液体キャリアとしては、水、生理食塩水、デキストラン水溶液およびグリコールが挙げられる。
【0100】
本発明の水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適切な賦形剤と混合されたGRアンタゴニストを含む。このような賦形剤としては、懸濁剤、例えば、カルボキシルメチル・セルロース・ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカント・ゴムおよびアカシア・ゴム、および分散剤または湿潤剤、例えば、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、酸化アルキレンと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ステアリン酸ポリエチレン)、酸化エチレンと長鎖脂肪酸アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、酸化エチレンと脂肪酸及びヘキシトール由来の部分的エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレン・ソルビトール・モノオレエート)、または酸化エチレンと脂肪酸及び無水ヘキシトール由来の部分的エステルとの縮合生成物(例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。水性懸濁液はまた、1つ以上の防腐剤、例えば、エチルまたはn−プロピル p−ヒドロキシベンゾエート、1つ以上の着色剤、1つ以上の香味剤、及び1つ以上の甘味剤、例えば、スクロース、アスパルテームまたはサッカリンを含んでもよい。処方物は浸透圧について調節されてもよい。
【0101】
油状の懸濁物は、植物油、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココナツオイル(やし油)中に、または鉱油、例えば、液体パラフィン;またはこれらの混合物中にGRアンタゴンストを分散することによって処方されてもよい。この油状懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜ろう、硬カプセルまたはセチルアルコールを含んでもよい。甘味剤、例えば、グリセロール、ソルビトールまたはスクロースが、口当たりのよい経口調製物を得るために添加されてもよい。これらの処方物は、アスコルビン酸のような抗酸化剤の添加によって保存されてもよい。注射用オイルビヒクルの例としては、Minto,J.Pharmacol.Exp.Ther.281:93〜102,1997を参照のこと。本発明の薬学的処方物はまた、水中油型エマルジョンの形態であってもよい。油相は、上記の植物油もしくは鉱油、またはこれらの混合物であってもよい。適切な乳化剤としては、天然に存在するガム(ゴム)、例えば、アカシア・ゴムおよびトラガカント・ゴム、天然に存在するホスファチド、例えば、大豆レシチン、脂肪酸及びヘキシトール無水物由来のエステルまたは部分エステル、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、及びこれらの部分エステルと酸化エチレンとの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートが挙げられる。このエマルジョンはまた、甘味剤、および香味剤を、シロップおよびエリキシルの処方物中に含んでもよい。このような処方物はまた、鎮痛薬、保存剤または着色剤を含んでもよい。
【0102】
グルココルチコイドブロッカーの薬学的処方物は、医薬品の製造について当該分野で公知の任意の方法に従って調製されてもよい。このような薬物は、甘味剤、香味料、着色料および保存剤を含んでもよい。任意のグルココルチコイドブロッカー処方物は、製造に適切である非毒性の薬学的に受容可能な賦形剤とともに混合されてもよい。
【0103】
代表的には、本発明の実施における使用に適切なグルココルチコイドブロッカー化合物は経口的に投与される。組成物中の本発明の化合物の量は、組成物のタイプ、単位投薬量のサイズ、賦形剤の種類、および当業者に周知である他の要因に依存して広範に変化し得る。一般には、最終組成物は、0.000001重量パーセント(%W)〜10重量%のグルココルチコイドブロッカー化合物、好ましくは、0.00001重量%〜1重量%を含んでもよく、その残りが賦形剤(単数または複数)である。例えば、GRアンタゴニストであるミフェプリストンは、錠剤型で経口的に与えられ、ここで投薬量の範囲は、0.5〜25mg/kg、さらに好ましくは約0.75mg/kg〜15mg/kg、最も好ましくは約10mg/kgである。
【0104】
経口投与のための薬学的処方物は、経口投与に適切な投薬量で当該分野において周知の薬学的に受容可能なキャリアを用いて処方され得る。このようなキャリアによって、この薬学的処方物は、患者による摂取に適切な錠剤、丸剤、粉末、糖衣錠、カプセル、液体、トローチ剤、ゲル、シロップ、スラリー、坐剤などとして単位剤形で処方できるようになる。経口使用のための薬学的調製物は、グルココルチコイドブロッカー化合物と固体賦形剤の組み合わせ、必要に応じて、錠剤または糖衣錠コアを得るために、適切なさらなる化合物を加えた後に、必要に応じて得られた混合物を粉砕すること、および顆粒の混合物を処理することを通じて得ることができる。適切な固体賦形剤は、炭水化物またはタンパク質充填剤であり、これには限定はしないが、糖(ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む);コーン、コムギ、コメ、ジャガイモまたは他の植物由来のデンプン;セルロース、例えば、メチルセルロール、ヒドロキシプロピルメチル−セルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウム;およびアラビアゴムおよびトラガカント・ゴムを含むゴム;ならびにタンパク質、例えば、ゼラチンおよびコラーゲンが挙げられる。必要に応じて、崩壊剤または可溶化剤、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはそれらの塩、例えば、アルギン酸ナトリウムが添加されてもよい。
【0105】
本発明のGRアンタゴニストはまた、薬物の直腸投与のための坐剤の形態で投与されてもよい。これらの処方物は、通常の温度で固体であるが直腸温度で液体であり、従って直腸で溶解して薬物を放出する適切な非刺激性の賦形剤とこの薬物とを混合することによって調製され得る。このような物質は、ココアバターおよびポリエチレングリコールである。
【0106】
本発明のGRアンタゴニストはまた、坐剤、ガス吸入、粉末およびエアロゾル処方物を含む鼻腔内、眼内、膣内、および直腸内経路によって投与されてもよい(例えば、ステロイド吸入剤については、Rohatagi,J.Clin.Pharmacol.35:1187〜1193,1995;Tjwa,Ann.Allergy Asthma Immunol.75:107〜111,1995を参照のこと)。
【0107】
本発明のGRアンタゴニストは、経皮的に、局所経路によって送達されてもよく、アプリケーター・スティック、溶液、懸濁液、エマルジョン、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、ペイント、粉末およびエアロゾルとして処方されてもよい。
【0108】
本発明のGRアンタゴニストはまた、身体での徐放のためのマイクロスフェアとして送達されてもよい。例えば、マイクロスフェアは、皮下に緩徐に放出する、薬物(例えば、ミフェプリストン)含有マイクロスフェアの皮内注射物を介して(Rao,J.Biomater Sci.Polym.7:623〜645,1995を参照のこと;生分解性および注射用ゲル処方物として(例えば、Gao Pharm.Res.12:857〜863,1995を参照のこと);または、経口投与のためのマイクロスフェアとして(例えば、Eyles,J.Pharm.Pharmacol.49:669〜674,1997を参照のこと)投与されてもよい。経皮経路および皮内経路の両方によって、数週間または数ヶ月にわたる一定の送達が得られる。
【0109】
本発明のGRアンタゴニストの薬学的処方物は、塩として与えられてもよいし、限定はしないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含む多くの酸で形成されてもよい。塩は、遊離の塩基型に相当する水性または他のプロトン性の溶媒中でさらに安定になる傾向である。他の場合には、好ましい調製物は、1mM〜50mMのヒスチジン、0.1%〜2%のスクロース、2%〜7%のマンニトール中において、4.5〜5.5のpH範囲で凍結乾燥された粉末であってもよく、これが使用前に緩衝液と合わされる。
【0110】
別の実施形態では、本発明のGRアンタゴニスト処方物は、静脈内(IV)投与のような非経口投与に有用である。投与のための処方物は一般に、薬学的に受容可能なキャリア中に溶解されたGRアンタゴニスト(例えば、ミフェプリストン)の溶液を含む。なかでも使用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒は、水およびリンゲル液、等張性塩化ナトリウムである。さらに、無菌の固定油が慣習的に、溶媒または分散媒体として使用され得る。この目的に関しては、任意の混合固定油が、使用されてもよく、これには合成のモノグリセリドまたはジグリセリドが挙げられる。さらに、脂肪酸、例えば、オレイン酸が同様に注射用の調製物中で用いられてもよい。これらの溶液は無菌であり、一般には所望されない物質を含まない。これらの処方物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌されてもよい。この処方物は、適切な生理学的条件に必要な場合、薬学的に受容可能な添加物、例えば、pH調節剤および緩衝剤、毒性調整剤、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含んでもよい。これらの処方物におけるGRアンタゴニストの濃度は、広範に変化し得、そして主に液体の容積、粘度、体重などに基づいて、選択される投与の特定の方式および患者の要件に従って選択される。IV投与については、この処方物は、滅菌注射用処方物、例えば、滅菌注射用水溶液または油脂性懸濁液であってもよい。この懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて公知の技術に従って処方されてもよい。この滅菌注射用調製物はまた、1,3−ブタンジオールの溶液のような、非毒性の非経口の許容される希釈液又は溶媒中の滅菌の注射用液又は懸濁液であってもよい。
【0111】
別の実施形態では、本発明のGRアンタゴニスト処方物は、細胞膜と融合するか、またはエンドサイトーシスされるリポソームの使用によって、すなわち、リポソームに結合されたリガンドを使用することによって、送達されてもよいし、またはエンドサイトーシスを生じる細胞の表面膜タンパク質レセプターに結合するオリゴヌクレオチドに直接結合されてもよい。リポソームを用いることによって、特に、リポソーム表面が標的細胞に特異的なリガンドを担持するか、そうでなければ特定の器官に優先的に指向される場合、当業者は、インビボにおいて標的細胞へのGRアンタゴニストの送達に集中し得る(例えば、Al−Muhammed,J.Microencapsul.13:293〜306,1996;Chonn,Curr.Opin.Biotechnol.6:698〜708,1995;Ostro,Am.J.Hosp.Pharm.46:1576〜1587,1989を参照のこと)。
【0112】
(B.グルココルチコイドレセプターアンタゴニストについての投薬レジメン決定)
本発明の方法は、IL−2誘発性の抑うつを阻害または逆転させる。これを達成するために十分なGRアンタゴニストの量は、「治療上有効な用量(therapeutically effective dose)」として規定される。この用途に有効な投与スケジュールおよび量、すなわち、「投薬レジメン(dosing regimen)」は、種々の要因に依存しており、これには、患者が用いているIL−2医薬のタイプ、既に生じたIL−2誘発性抑うつの重篤度、患者の身体的状態、年齢などが挙げられる。患者の投薬レジメンを計算するには、投与の方式も考慮される。
【0113】
この投薬レジメンはまた、当該分野で周知の薬物動態学的パラメーター、すなわち、GRアンタゴニストの吸収速度、バイオアベイラビリティ、代謝、クリアランスなどを考慮する(例えば、Hidalgo−Aragones,J.Steroid Biochem.Mol.Biol.58:611〜617,1996;Groning,Pharmazie 51:337〜341,1996;Fotherby,Contraception 54:59〜69,1996;Johnson,J.Pharm.Sci.84:1144〜1146,1995;Rohatagi,Pharmazie 50:610〜613,1995;Brophy,Eur.J.Clin.Pharmacol.24:103〜108,1983;最新のRemington’s,前出、を参照のこと)。例えば、一研究では、0.5%未満のミフェプリストンの1日量が、尿中に排出され;この薬物は、循環中のアルブミンの排他的に結合する(Kawai,前出,1989を参照のこと)。最先端技術によって、臨床家は、各々の個々の患者、GRアンタゴニストおよび処置される疾患または状態について投薬レジメンを決定することが可能になる。説明に役立つ実例としては、ミフェプリストンについて下に与えられたガイドラインは、投薬レジメン、すなわち、本発明の方法を行う場合に投与される任意のGRアンタゴニストの投与スケジュールおよび投薬レベルを決定するための手引きとして用いられ得る。
【0114】
GRアンタゴニスト処方物の単回または複数回の投与は、患者に必要かつ耐容である投薬量および頻度に依存して投与され得る。この処方物は、IL−2医薬によって誘発される抑うつの症状を効率的に阻害または逆転するために、十分な量の活性剤、例えば、ミフェプリストンを提供しなければならない。例えば、ミフェプリストンの経口投与のための代表的な好ましい薬学的処方物は、1日あたり1患者あたり体重1kgあたり約5〜15mg、より好ましくは1日あたり1患者あたり体重1kgあたり約8〜12mg、最も好ましくは1日あたり1患者あたり体重1kgあたり10mgであるが、1日あたり体重1kgあたり約0.5〜約25mgの投薬量が本発明の実施に用いられてもよい。経口的に、血流中に、体腔内に、または器官の管腔内への投与に比較して、特に薬物が解剖学的に隔離された部位、例えば、脳脊髄液(CSF)腔に投与される場合、より低い投薬量を用いてもよい。実質的に高い投薬量を局所投与に用いてもよい。非経口的に投与可能なGRアンタゴニスト処方物を調製するための正確な方法は、当業者に公知であるかまたは明白であり、そして前出のRemington‘sのような刊行物に詳細に記載される。また、Nieman,In「Receptor Mediated Antisteroid Action,」Agarwal,ら編,De Gruyter,New York,1987.も参照のこと。
【実施例】
【0115】
以下の実施例は例示のために示すものであり、特許請求される本発明を限定するものではない。
【0116】
実施例1:IL−2療法を受けている患者における抑うつの症状を改善するためのミフェプリストンの使用。
【0117】
以下の実施例は、本発明の方法を行う方法を実証する。
【0118】
(患者選択)
IL−2療法を開始すべき、または現在受けている個人。この患者は代表的には、彼らの年齢にとって正常なレベルのコルチゾールを有する。
【0119】
(ミフェプリストンの投薬レジメンおよび投与)
グルココルチコイドレセプター(GR)アンタゴニストであるミフェプリストンをこの研究で用いる。これを毎日200mgの投薬量で投与する。個体は、6ヶ月間毎日200mgのミフェプリストンを与えられ、そして下記のように評価される。投薬量は、必要に応じて調節され、そしてさらなる評価が処置全体を通じて定期的に行われる。
【0120】
ミフェプリストン錠剤は、Shanghai Hua Lian Pharmaceuticals Co.,Ltd.,Shanghai,Chinaのような商業的な供給業者から入手可能である。
【0121】
(抑うつの症状の改善を評価する)
抑うつの症状を改善するのにおけるミフェプリストンの有効性を描写および評価するために、IL−2療法に関連する抑うつに罹患しているか、または感受性である患者を、抑うつ症状の存在および/または重篤度について、ミフェプリストン投与の前後の両方に検査する。詳細な検査方法および抑うつの状態を評価する基準は、例えば、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,第4版(DSM−IV)に見出され得る。
【0122】
本明細書に記載される実施例および実施形態は、例示の目的に過ぎないこと、そしてそれに照らした種々の改変または変化が当業者に示唆され、そして本出願および特許請求の範囲の趣旨および条項内に含まれることが理解される。本明細書に引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、全ての目的のためにその全体が参照によって本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン−2(IL−2)を摂取している、正常レベルのコルチゾールを有する患者において抑うつ症状を改善するための方法であって、特定のグルココルチコイドレセプターアンタゴニストの有効量を該患者に投与する工程を包含し、ただし、該患者はIL−2療法が開始される時点で臨床的に抑うつになっておらず、かつ他の点ではグルココルチコイドレセプターアンタゴニストでの処置が必要ではない、方法。
【請求項2】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、IL−2と同一の広がりをもって前記患者に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、前記患者がIL−2を摂取している全期間の間、前記患者に投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、他の処置方法と組み合わせて、IL−2を摂取している前記患者に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、膣内または直腸内の経路を介して投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、坐剤によって投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストがステロイド化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、11−β−ヒドロキシ基の除去、11−β−ヒドロキシ基のアリール置換、11−β−フェニル−アミノジメチルステロイド、17−β−側鎖修飾、コルチゾールのα−ケト−メタン−スルホナート誘導体、およびアンドロゲン型のステロイドからなる群より選択される修飾されたコルチゾールステロイド骨格を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、デキサメタゾン−オキセタノン、4−プレグネン−11−β,17−α,21−トリオール−3,20−ジオン−21−メタン−スルホナート、16−メチル−9α−フルオロ−1,4−プレグナジエン−11β,17−α,21−トリオール−3,20−ジオン−21−メタン−スルホナート、11−β−(4−ジメチル−アミノエトキシフェニル)−17−α−(プロピニル−17−β−ヒドロキシ−4,9−エストラジエン−3−オン、および17−β−ヒドロキシ−11−β−(4−ジメチル−アミノフェニル)−17−α−(1−プロピニル)エストラ−4,9−ジエン−3−オンからなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、(6β,11β,17β)−11−(4−(ジメチル−アミノ)フェニル)−6−メチル−4’,5’−ジヒドロ[エストラ−4,9−ジエン−17,2’(3H’)−フラン]−3−オン、(11β,17β)−11−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−17−ヒドロキシ−17−(1−プロピニル)エ−ストラ−4,9−ジエン−3−オン、(11β,17α)−11−(4−アセチルフェニル)−17,23−エポキシ−19,24−ジノルコラ−4,−9,20−トリエン−3−オン、(7β,11β,17β)−11−(4−(ジメチルアミノ)フェニル)−7−Me−4’,5’−ジヒドロスピロ(オエストラ−4,9−ジエン−17,2’(3’H)−フラン)−3−オン]−、(11β,17α)−11,21−ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−17−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−4,9,ジエン−20−イン−3−オン、および(11β,17α)−11−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−17−ヒドロキシ−21−[4−(メチルスルホニル)フェニル−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−20−イン−3−オンからなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、ステロイド骨格の11−β位に少なくとも1つのフェニル含有部分を有するステロイド骨格を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記ステロイド骨格の11−β位における前記フェニル含有部分が、ジメチルアミノフェニル部分である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、ミフェプリストンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、RU009およびRU044からなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、非ステロイド化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが修飾ピリミジン化合物を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、4b(S)−ベンジル−7(S)−ヒドロキシ−7−(1−プロピニル)−4b,5,6,7,8,8a(R),9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボン酸(ピリジン−4−イルメチル)アミドである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、4b(S)−ベンジル−7(S)−ヒドロキシ−7−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−4b,5,6,7,8,8a(R),9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボン酸(2−メチルピリジン−3−イルメチル)アミドである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、1−(o−クロロ−α,α−ジフェニルベンジル)イミダゾール、N(トリフェニルメチル)イミダゾール、N−([2−フルオロ−9−フェニル]フルオレニル)イミダゾール、N−([2−ピリジル]ジフェニルメチル)イミダゾール、N−([4,4’,4”]−トリクロロトリチル)イミダゾール、およびN((2,6ジクロロ−3−メチルフェニル)ジフェニル)メチルイミダゾールからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、6−置換−1,2−ジヒドロ−N保護−キノリン、オクタヒドロフェナントレニルカルバメート、オキサジアゾリルアルコキシオクタヒドロフェナントレン、およびオクタヒドロフェナントレンヒドラジンからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、オクタヒドロ−2−H−ナフトール[1,2,−f]インドール−4カルボキサミド、シクロペント[f]インダゾール、およびベンズ[f]インダゾールからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、6H−ジベンゾ[b,d]ピラン誘導体、置換アミノベンゼン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、ジフェニルエーテル誘導体、および修飾ピリミジン化合物からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、1−(2−クロロトリチル)−2−メチルイミダゾール、N−(2−クロロトリチル)−L−プロリノールアセテート、1−(2−クロロトリチル)−1,2,4−トリアゾール、および1−(2−クロロトリチル)−3,5−ジメチルピラゾールからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、シス−1−アセチル−4−(4−((2−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(1H−イミダゾール−1−イルメチル)−1,3−ジオキソラン−4−イル)メトキシ)フェニル)ピペラジン、N−(2[4,4’,4”−トリクロロトリチル]オキシエチル)モルホリン、1−(2[4,4’,4”−トリクロロトリチル]オキシエチル)−4(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンジマレアート、4−(モルホリノメチル)−A−(2−ピリジル)ベンズヒドロール、および1,S−ビス(4,4’,4”−トリクロロトリチル)−1,2,4−トリアゾール−3−チオールからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、9−(3−メルカプト−1,2,4トリアゾリル)−9−フェニル−2,7−ジフルオロフルオレノン、5−(5−メトキシ−2−(N−メチルカルバモイル)−フェニル)ジベンゾスベロール、4a(S)−ベンジル−2(R)−クロロエチニル−1,2,3,4,4a,9,10,10a(R)−オクタヒドロ−フェナントレン−2,7−ジオール、および4a(S)−ベンジル−2(R)−プロプ−1−イニル−1,2,3,4,4a,9,10,10a(R)−オクタヒドロ−フェナントレン−2,7−ジオールからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストがアザデカリン化合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、縮合環アザデカリン化合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが1日1回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが1日あたり体重1kgあたり0.5mgと20mgとの間の量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが1日あたり体重1kgあたり1mgと10mgとの間の量で投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが1日あたり体重1kgあたり1mgと4mgとの間の量で投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが経口投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、経皮適用によって、霧状化懸濁液によって、エアロゾルスプレーによって、または注射によって投与される、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2009−535430(P2009−535430A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510053(P2009−510053)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/068044
【国際公開番号】WO2007/131041
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(503345477)コーセプト セラピューティクス, インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】