説明

K‐ras変異およびB‐raf変異ならびに抗EGFr抗体療法

本出願は、K−ras変異、変異K−rasポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、およびK−ras変異を同定する方法に関する。本出願は、B‐raf変異、変異B‐rafポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドを含むベクター、およびB‐raf変異を同定する方法にも関連する。また本出願は、癌を診断する方法、ならびに腫瘍の治療における抗EGFr特異的結合剤の有用性を予測するための方法およびキットにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本出願は、2007年3月13日出願の米国仮出願番号第60/906,976号の恩典を主張するものであり、参照することにより、該出願はいかなる目的のためにも本明細書に援用される。
【0002】
本出願は、K‐ras変異、変異K‐rasポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、およびK‐ras変異を同定する方法に関する。本出願は、B‐raf変異、変異B‐rafポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドを含むベクター、およびB‐raf変異を同定する方法にも関連する。また本出願は、癌を診断する方法、ならびに腫瘍の治療における抗EGFr特異的結合剤の有用性を予測するための方法およびキットにも関連する。
【背景技術】
【0003】
背景
癌治療におけるモノクローナル抗体の特定の応用は、癌組織に免疫増強アイソタイプ、毒素または薬物等の細胞傷害性エフェクター機能を特異的に送達する抗体の能力に依存する。代替アプローチは、細胞受容体を介して成長因子によって媒介されるシグナル等の重要な細胞外増殖シグナルを取り除くことにより、腫瘍細胞の生存に直接影響を与えるモノクローナル抗体を用いることである。このアプローチにおける魅力的な標的の1つは、EGFおよび形質転換成長因子α(TGFα)に結合する上皮成長因子受容体(EGFr)である(例えば、Ullrich et al., Cell 61:203‐212, 1990、Baselga et al., Pharmacol. Ther. 64: 127‐154, 1994、Mendelsohn et al., in Biologic Therapy of Cancer 607‐623, Philadelphia: J.B. Lippincott Co., 1995、Fan et al., Curr. Opin. Oncol. 10: 67‐73, 1998を参照されたい)。EGFまたはTGFαが170kDaの膜貫通型細胞表面糖タンパク質であるEGFrに結合すると、EGFrの自己リン酸化およびインターナリゼーションを含む細胞の生化学的事象のカスケードを誘発し、結果的に細胞が増殖する(例えば、Ullrich et al., Cell 61:203‐212, 1990を参照されたい)。
【0004】
EGFrがヒト固形腫瘍の発生および進行の支持に関係していると見なす観察もいくつかある。EGFrは、多くの種類のヒト固形腫瘍に過剰発現されることが証明されている(例えば、Mendelsohn Cancer Cells 7:359 (1989), Mendelsohn Cancer Biology 1:339‐344 (1990), Modjtahedi and Dean Int’l J. Oncology 4:277‐296 (1994)を参照されたい)。例えば、EGF‐rの過剰発現は、特定の肺癌、乳癌、大腸癌、胃癌、脳癌、膀胱癌、頭頚部癌、卵巣癌、および前立腺癌に観察されている(例えば、Modjtahedi and Dean Int’l J. Oncology 4:277‐296 (1994)を参照されたい)。受容体レベルの増加が、不良な臨床予後と関連していると報告されている(例えば、Baselga et al. Pharmacol. Ther. 64: 127‐154, 1994、Mendelsohn et al., Biologic Therapy of Cancer pp. 607‐623, Philadelphia: J.B. Lippincott Co., 1995、Modjtahedi et al., Intl. J. of Oncology 4:277‐296, 1994、Gullick, Br. Medical Bulletin, 47:87‐98, 1991、Salomon et al., Crit. Rev. Oncol. Hematol. 19: 183‐232, 1995を参照されたい)。上皮成長因子(EGF)および形質転換成長因子α(TGF‐α)の両方が、EGF‐rに結合して細胞増殖および腫瘍増殖をもたらすことが証明されている。多くの場合において、表面EGFrの発現増加は腫瘍細胞によるTGFαまたはEGFの産生を伴っており、それらの腫瘍の増殖にオートクリン増殖調節が関与していることを示唆している(例えば、Baselga et al. Pharmacol. Ther. 64: 127‐154, 1994、Mendelsohn et al., Biologic Therapy of Cancer pp. 607‐623, Philadelphia: J.B. Lippincott Co., 1995、Modjtahedi et al., Intl. J. of Oncology 4:277‐296, 1994、Salomon et al., Crit. Rev. Oncol. Hematol. 19: 183‐232, 1995を参照されたい)。
【0005】
したがって、あるグループは、EGF、TGF‐α、およびEGF‐rに対する抗体が、EGF‐rを発現または過剰発現する腫瘍の治療において有用である可能性を提案している(例えば、Mendelsohn Cancer Cells 7:359 (1989), Mendelsohn Cancer Biology 1:339‐344 (1990), Modjtahedi and Dean Int’l J. Oncology 4:277‐296 (1994), Tosi et al. Int’l J. Cancer 62:643‐650 (1995)を参照されたい)。確かに、受容体に結合するEGFおよびTGF‐αをブロックする抗EGF‐r抗体が、腫瘍細胞増殖を阻害するらしいことが実証されている。しかしながら、それと同時に、抗EGF‐r抗体は、EGFおよびTGF‐α単独の細胞増殖を阻害しないようであった(Modjtahedi and Dean Int’l J. Oncology 4:277‐296 (1994))。
【0006】
腫瘍細胞に結合するEGFおよびTGFαを中和し、かつ生体外でのリガンド媒介性の細胞増殖を阻害する能力のあるヒトEGFrに特異的なモノクローナル抗体が、マウスおよびラットから作製されている(例えば、Baselga et al., Pharmacol. Ther. 64: 127‐154, 1994、Mendelsohn et al., in Biologic Therapy of Cancer pp. 607‐623, Philadelphia: J.B. Lippincott Co., 1995、Fan et al., Curr. Opin. Oncol. 10: 67‐73, 1998、Modjtahedi et al., Intl. J. Oncology 4: 277‐296, 1994を参照されたい)。マウス108、225(例えば、Aboud‐Pirak et al., J. Natl. Cancer Inst. 80: 1605‐1611, 1988を参照されたい)および528(例えば、Baselga et al., Pharmacol. Ther. 64: 127‐154, 1994、Mendelsohn et al., in Biologic Therapy of Cancer pp. 607‐623, Philadelphia: J.B. Lippincott Co., 1995を参照されたい)、またはラットICR16、ICR62およびICR64(例えば、Modjtajedi et al., Intl. J. Oncology 4: 277‐296, 1994、Modjtahedi et al., Br. J. Cancer 67:247‐253, 1993、Modjtahedi et al., Br. J. Cancer 67: 254‐261, 1993を参照されたい)モノクローナル抗体等、これらの抗体のうちのいくつかは、異種移植マウスモデルにおける腫瘍増殖に影響を与える能力について大規模に評価された。ほとんどの抗EGFrモノクローナル抗体は、ヒト腫瘍細胞とともに投与した場合、胸腺欠損マウスにおいて腫瘍形成の予防に有効であった(Baselga et al. Pharmacol. Ther. 64: 127‐154, 1994、Modjtahedi et al., Br. J. Cancer 67: 254‐261, 1993)。確立したヒト腫瘍異種移植片を有するマウスにマウスモノクローナル抗体225および528を注射すると、部分的な腫瘍退縮を引き起こし、腫瘍の根絶のためにドキソルビシンまたはシスプラチン等の化学療法剤の併用投与を必要とした(Baselga et al. Pharmacol. Ther. 64: 127‐154, 1994、Mendelsohn et al., in Biologic Therapy of Cancer pp. 607‐623, Philadelphia: J.B. Lippincott Co., 1995、Fan et al., Cancer Res. 53: 4637‐4642, 1993、Baselga et al., J. Natl. Cancer Inst. 85: 1327‐1333, 1993)。マウス抗体の可変領域をヒト定常領域に結合した225モノクローナル抗体のキメラ型(C225)は、高用量でのみ、生体内抗腫瘍活性の向上を示した(例えば、Goldstein et al., Clinical Cancer Res. 1: 1311‐1318, 1995、Prewett et al., J. Immunother. Emphasis Tumor Immunol. 19: 419‐427, 1996を参照されたい)。ラットのICR16、ICR62、およびICR64抗体は、確立した腫瘍の退縮を引き起こしたが、完全な根絶には至らなかった(Modjtahedi et al., Br. J. Cancer 67: 254‐261, 1993)。これらの結果は、EGFrを発現する固形腫瘍の抗体療法のための有望な標的としてEGFrを確立し、複数のヒト固形腫瘍におけるC225モノクローナル抗体を用いたヒト臨床試験へと導くことになった(例えば、Baselga et al. Pharmacol. Ther. 64: 127‐154, 1994、Mendelsohn et al., Biologic Therapy of Cancer pp. 607‐623, Philadelphia: J.B. Lippincott Co., 1995、Modjtahedi et al., Intl. J. of Oncology 4:277‐296, 1994を参照されたい)。
【0007】
生物学的技術における特定の利点により、完全ヒト抗EGFr抗体を産生することが可能となった。ヒト免疫グロブリン遺伝子導入マウス(Xenomouse(商標) technology, Abgenix, Inc.)を用いて、ヒトEGFrに特異的なヒト抗体が開発された(例えば、Mendez, Nature Genetics, 15: 146‐156, 1997、Jakobovits, Adv. Drug Deliv. Rev., 31(1‐2): 33‐42, 1998、Jakobovits, Expert Opin. Invest. Drugs, 7(4): 607‐614, 1998、Yang et al., Crit. Rev. Oncol. Hematol. 38(1):17‐23, 2001、国際公開第WO98/24893号、同第WO 98/50433号を参照されたい)。そのような抗体の1つであるパニツムマブは、ヒトEGFrに対して5×10−11Mの親和性を有するヒトIgG2モノクローナル抗体であり、EGFのEGFrへの結合をブロックすること、受容体のシグナルをブロックすること、および生体外で腫瘍細胞の活性化および増殖を阻害することが判っている(例えば、国際公開第WO98/50433号、米国特許第6,235,883号を参照されたい)。胸腺欠損マウスにおける研究により、パニツムマブも生体内活性を有し、胸腺欠損マウスにおいてヒト類表皮癌A431異種移植片の形成を防ぐだけでなく、既に確立された大きな腫瘍A431異種移植片を根絶させることも実証している(例えば、Yang et al., Crit. Rev. Oncol. Hematol. 38(1):17‐23, 2001、Yang et al., Cancer Res. 59(6):1236‐43, 1999を参照されたい)。パニツムマブは、他の癌の中でも、腎癌、結腸直腸腺癌、前立腺癌、および非小細胞性扁平上皮肺癌の治療のために検討されてきており(例えば、米国特許公開第2004/0033543号を参照されたい)、その抗体を用いた臨床試験が進行中である。パニツムマブは、転移性結腸直腸癌を有する患者を治療するために食品医薬品局(Food & Drug Administration)から認可されている。
【0008】
EGFrの活性化は、少なくとも2つのシグナル経路を誘発する。特定の細胞型において、EGFrの活性化は、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(「PI3K」)を刺激してアポトーシスを防ぐ。PI3Kの活性化は、プログラム細胞死を制御する中枢経路の下方制御をもたらす分子カスケードを誘発する(Yao, R., Science 267:2003‐2006, 1995)。特定の細胞型において、EGFrの活性化は、Ras/Rafを介してMAPKカスケードを開始する。
【発明の概要】
【0009】
概要
特定の実施形態では、EGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に患者が無反応であるかどうかを予測する方法を提供する。特定の実施形態では、当該方法は、患者の腫瘍におけるK‐ras変異の有無を決定するステップを含み、該K‐ras変異はコドン12またはコドン13にある。特定の実施形態では、K‐ras変異が存在する場合は、患者はEGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に無反応であることが予測される。
【0010】
特定の実施形態では、EGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に腫瘍が無反応であるかどうかを予測する方法を提供する。特定の実施形態では、当該方法は、上記腫瘍のサンプルにおけるK‐ras変異の有無を決定するステップを含み、該K‐ras変異はコドン12またはコドン13にある。特定の実施形態では、K‐ras変異の存在は、EGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に腫瘍が無反応であることを示唆する。
【0011】
特定の実施形態では、EGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に患者が無反応であるかどうかを予測する方法を提供する。特定の実施形態では、当該方法は、患者の腫瘍におけるB‐raf変異の有無を決定するステップを含み、該B−raf変異はコドン600にある。特定の実施形態では、B‐raf変異が存在する場合は、患者はEGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に無反応であることが予測される。
【0012】
特定の実施形態では、EGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に腫瘍が無反応であるかどうかを予測する方法を提供する。特定の実施形態では、当該方法は、上記腫瘍のサンプルにおけるB‐raf変異の有無を決定するステップを含み、該B‐raf変異はコドン600にある。特定の実施形態では、B‐raf変異の存在が、EGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に該腫瘍が無反応であることを示唆する。
【0013】
特定の実施形態では、EGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に患者が無反応であるかどうかを予測する方法を提供する。特定の実施形態では、当該方法は、患者の腫瘍におけるK‐ras変異の有無を決定するステップであって、該K‐ras変異はコドン12またはコドン13にあるステップと、患者の腫瘍におけるB‐raf変異の有無を決定するステップであって、該B‐raf変異はコドン600にあるステップとを含む。特定の実施形態では、K‐ras変異およびB‐raf変異のうちの少なくとも1つが存在する場合は、該患者はEGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に無反応であることが予測される。
【0014】
特定の実施形態では、EGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に腫瘍が無反応であるかどうかを予測する方法を提供する。特定の実施形態では、当該方法は、上記腫瘍のサンプルにおけるK‐ras変異の有無を決定するステップであって、該K‐ras変異はコドン12またはコドン13にあるステップと、B‐raf変異の有無を決定するステップであって、該B‐raf変異はコドン600にあるステップとを含む。特定の実施形態では、K‐ras変異およびB‐raf変異のうちの少なくとも1つの存在が、EGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に該腫瘍が無反応であることを示唆する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】抗体パニツムマブを用いて治療された転移性結腸直腸癌(mCRC)を有する患者の反応を示す図である。「変異+」は、患者がK‐rasまたはB‐raf変異を有することを示す。「変異−」は、患者がK‐rasまたはB‐raf変異を有さないことを示す。SDは安定を表す。PDは進行を表す。PRは部分奏功を表す。
【図2】野生型K‐ras(配列番号1および2)、G12S変異K‐ras(配列番号3および4)、G12V変異K‐ras(配列番号5および6)、G12D変異K‐ras(配列番号7および8)、G12A変異K‐ras(配列番号9および10)、G12C変異K‐ras(配列番号11および12)、G13A変異K‐ras(配列番号13および14)、G13D変異K‐ras(配列番号15および16)のcDNAおよびアミノ酸配列を示す図である。
【図3】野生型B‐raf(配列番号17および18)およびV600E変異B‐raf(配列番号19および20)のcDNAおよびアミノ酸配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
特定の実施形態の詳細な説明
特許、特許出願、論文、教科書等を含む本明細書に列挙されるすべての参考文献、および本明細書に列挙される参考文献は、参照することにより、それらが既に実施されていない範囲でその全体が本明細書に組み込まれる。参照することにより組み込まれた1つもしくは複数の文書が、本出願における用語の定義と矛盾する用語を定義する場合には、本出願が優先される。本明細書で用いられる項目の見出しは、編成目的のためのみであって、記載される内容を限定すると解釈されるものではない。
【0017】
定義
別途定義されない限り、本発明と関連して用いられる科学用語および技術用語は、当該技術分野における当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって別途必要とされないない限り、単数形の用語は複数を含み、複数形の用語は単数を含むものとする。
【0018】
一般的に、本明細書に記載される細胞および組織培養、分子生物学、タンパク質およびオリゴまたはポリヌクレオチド化学、ならびにハイブリダイゼーションと関連して用いられる、またはその技術において用いられる命名法は、当該技術分野において周知であり常用されるものである。組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養および形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)には標準的な技術が用いられる。酵素反応および精製技術は、メーカーの仕様に従って、または当該技術分野において一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように実行される。前述の技術および手技は、通常、当該技術分野において周知である従来の方法に従って、また本明細書を通して引用かつ論じられる、様々な一般的な参考文献およびより具体的な参考文献に記載されるとおりに実行される。例えば、参照することにより本明細書に組み込まれるSambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989))を参照されたい。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、ならびに薬用および医薬化学に関連して用いられる、またそれらの検査手技および技術に関連して用いられる命名法は、当該技術分野において周知であり常用されるものである。化学合成、化学分析、医薬の調製、処方、および送達、ならびに患者の治療には、一般的な技術が用いられる。
【0019】
本出願において、「または」の使用は、別途記載のない限り「および/または」を意味する。複数の従属請求項の文脈において、「または」の使用は、選択的にのみ、2項以上の前に記載される独立または従属請求項を指す。さらに、「含む(includes)」および「含まれた(included)」等の他の形態、および「含む(including)」という用語の使用は限定的ではない。また、「要素」または「構成要素」等の用語は、特に別途記載のない限り、1つのユニットを含む要素および構成要素、ならびに2つ以上のサブユニットを含む要素および構成要素の両方を包含する。
【0020】
本開示に従って用いられる場合、以下の用語は、別途指示のない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0021】
「単離されたポリヌクレオチド」および「単離された核酸」という用語は同じ意味で用いられ、本明細書において用いられる場合は、ゲノム、cDNA、もしくは合成起源のポリヌクレオチドまたはその組み合わせを意味するものとし、その起源に基づいて、(1)「単離されたポリヌクレオチド」が天然に見出されるポリヌクレオチドの全部または一部分と関連していない、(2)天然では結合していないポリヌクレオチドに作用可能に結合している、または(3)より大きな配列の一部分として天然において存在しない。
【0022】
「単離されたタンパク質」および「単離されたポリペプチド」という用語は同じ意味で用いられ、本明細書において称される場合は、cDNA、組み換えRNA、もしくは合成起源のタンパク質、またはその組み合わせを意味するものとし、その起源または誘導源に基づいて、(1)天然に見出されるタンパク質と関連していない、(2)同じ源からの他のタンパク質を含まない(例えば、マウスタンパク質を含まない)、(3)異なる種に由来する細胞によって発現される、または(4)天然において存在しない。
【0023】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は同じ意味で用いられ、本明細書においては、未変性タンパク質、断片、ペプチド、またはポリペプチド配列の類似体を指す一般名称として用いられる。よって、未変性タンパク質、断片、および類似体は、ポリペプチド属の種である。
【0024】
ポリペプチド配列の変異についての文脈における「X#Y」という専門用語は当該技術分野で認識されており、「#」はポリペプチドのアミノ酸数という観点から変異の場所を示し、「X」は野生型アミノ酸配列において該位置に見出されるアミノ酸を示し、「Y」は該位置における変異アミノ酸を示す。例えば、K‐rasポリペプチドに関連して「G12S」という記号は、野生型K‐ras配列のアミノ酸数12にグリシンがあり、該グリシンは変異K‐ras配列においてセリンによって置き換えられていることを示す。
【0025】
「変異K‐rasポリペプチド」および「変異K‐rasタンパク質」という用語は同じ意味で用いられ、G12S、G12V、G12D、G12A、G12C、G13A、およびG13Dから選択される少なくとも1つのK‐ras変異を含むK‐rasポリペプチドを指す。特定の例示的な変異K‐rasポリペプチドには、対立遺伝子変異体、スプライス変異体、誘導体変異体、置換変異体、欠失変異体、および/または挿入変異体、融合ポリペプチド、オーソログ、および種間相同体を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、変異K‐rasポリペプチドは、リーダー配列残基、標的残基、アミノ末端のメチオニン残基、リジン残基、タグの残基および/または融合タンパク質の残基等の追加の残基をC末端またはN末端で含むが、これらに限定されない。
【0026】
「変異B‐rafポリペプチド」および「変異B‐rafタンパク質」という用語は同じ意味で用いられ、V600E変異を含むB‐rafポリペプチドを指す。特定の例示的な変異B‐rafポリペプチドは、対立遺伝子変異体、スプライス変異体、誘導体変異体、置換変異体、欠失変異体、および/または挿入変異体、融合ポリペプチド、オーソログ、および種間相同体を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、変異B‐rafポリペプチドは、リーダー配列残基、標的残基、アミノ末端のメチオニン残基、リジン残基、タグの残基および/または融合タンパク質の残基等の追加の残基をC末端またはN末端で含むが、これらに限定されない。
【0027】
対象に適用して本明細書で用いられる「天然に存在する」という用語は、対象を天然に見出すことができるということを指す。例えば、天然源から単離することができ、かつ、人間によって実験室で意図的に変更されていないかまたは天然に存在する生命体(ウイルスを含む)中に存在する、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列である。
【0028】
本明細書において用いられる「作用可能に結合された」という用語は、構成要素を対象とする様式において、それらが機能することができるようにする関係になるような、構成要素の位置を指す。コード配列に「作用可能に結合された」制御配列は、制御配列に適合する条件下においてコード配列の発現が達成されるように連結する。
【0029】
本明細書において用いられる「制御配列」という用語は、それらが連結するコード配列の発現およびプロセシングをもたらすために必要なポリヌクレオチド配列を指す。かかる制御配列の性質は宿主生物によって異なり、原核生物では、かかる制御配列は一般的にプロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列を含み、真核生物では、かかる制御配列は一般的にプロモーターおよび転写終結配列を含む。「制御配列」という用語は、最低でも、その存在が発現およびプロセシングのために必要不可欠であるすべての構成要素を含み、また、その存在が有利となる追加構成要素(例えば、リーダー配列および融合パートナー配列)をも含むことを意図する。
【0030】
本明細書において用いられる「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドまたはどちらかの種類のヌクレオチドの修飾された形態のいずれかである、少なくとも10塩基の長さのヌクレオチドの重合体型を意味する。該用語は、1本鎖および2本鎖形態のDNAを含む。
【0031】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、本明細書において、天然に存在するおよび天然には存在しないオリゴヌクレオチドの結合によってともに結合された、天然に存在するおよび修飾されたヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、一般的に200塩基以下の長さを有するポリヌクレオチドのサブセットである。好ましくは、オリゴヌクレオチドは10〜60塩基の長さであり、最も好ましくは12、13、14、15、16、17、18、19、または20〜40塩基の長さである。オリゴヌクレオチドは、例えばプローブには、通常1本鎖であるが、例えば、遺伝子変異体の構築における使用には、オリゴヌクレオチドは2本鎖であり得る。本発明のオリゴヌクレオチドは、センスまたはアンチセンスのオリゴヌクレオチドのいずれかであり得る。
【0032】
「変異K‐rasポリヌクレオチド」、「変異K‐rasオリゴヌクレオチド」、および「変異K‐ras核酸」という用語は同じ意味で用いられ、G12S、G12V、G12D、G12A、G12C、G13A、およびG13Dから選択される少なくとも1つのK‐ras変異を含むK‐rasポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを指す。
【0033】
「変異B‐rafポリヌクレオチド」、「変異B‐rafオリゴヌクレオチド」および「変異B‐raf核酸」という用語は同じ意味で用いられ、V600E変異を含むB‐rafポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを指す。
【0034】
「天然に存在するヌクレオチド」という用語は、本明細書において、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含む。「修飾されたヌクレオチド」という用語は、本明細書において、修飾または置換された糖類等を有するヌクレオチドを含む。「オリゴヌクレオチド結合」という用語は、本明細書において、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート(phosphoroselenoate)、ホスホロジセレノエート(phosphorodiselenoate)、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)、ホスホラニラデート(phoshoraniladate)、ホスホロアミデート等のオリゴヌクレオチド結合を含む。例えば、LaPlanche et al. Nucl. Acids Res. 14:9081 (1986)、Stec et al. J. Am. Chem. Soc. 106:6077 (1984)、Stein et al. Nucl. Acids Res. 16:3209 (1988)、Zon et al. Anti‐Cancer Drug Design 6:539 (1991)、Zon et al. Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, pp. 87‐108 (F. Eckstein, Ed., Oxford University Press, Oxford England (1991))、Stec et al.米国特許第5,151,510号、Uhlmann and Peyman Chemical Reviews 90:543 (1990)(参照することにより、その開示は本明細書に組み込まれる)を参照されたい。オリゴヌクレオチドは、必要に応じて、検出のための標識を含み得る。
【0035】
「選択的にハイブリダイズする」という用語は、本明細書において、検出可能かつ特異的に結合することを意味する。ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、およびそれらの断片は、非特異的核酸への相当量の検出可能な結合を最小限に抑えるハイブリダイゼーションおよび洗浄条件下において、核酸鎖と選択的にハイブリダイズする。当該技術分野において既知であるように、また本明細書において論じられるように、選択的なハイブリダイゼーション条件を達成するために高ストリンジェンシー条件を用いることができる。一般的に、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、および断片と、対象となる核酸配列との間の核酸配列の相同性は少なくとも80%であり、またより典型的には、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、および100%と増加する相同性が好ましい。2つのアミノ酸配列は、それらの配列の間に部分的または完全な同一性が存在する場合に相同である。例えば、85%の相同性とは、2つの配列を最大の整合性となるよう整列させたときに、アミノ酸の85%が同一であることを意味する。整合性の最大化においてギャップ(整合する2つの配列のうちのいずれかにある)があってもよく、ギャップの長さは5以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。あるいは好ましくは、2つのタンパク質配列(または少なくとも30アミノ酸長のタンパク質配列に由来するポリペプチド配列)は、変異データマトリクスおよび6以上のギャップペナルティーを用いるプログラムALIGNを使用して、これらが(標準偏差単位において)5を上回るアラインメントスコアを有する場合、本明細書においてこの用語が用いられるように、相同である。Dayhoff, M.O., in Atlas of Protein Sequence and Structure, pp. 101‐110 (Volume 5, National Biomedical Research Foundation (1972))およびSupplement 2 to that volume, pp. 1‐10を参照されたい。2つの配列またはその一部分は、ALIGNプログラムを使用して最適に整列させたときに、それらのアミノ酸が50%以上同一である場合に、相同性であることがより好ましい。「〜に対応する」という用語は、本明細書において、あるポリヌクレオチド配列が参照ポリヌクレオチド配列の全部もしくは一部分に相同である(すなわち、同一であり、厳密には進化論上は関連しない)こと、またはあるポリペプチド配列が参照ポリペプチド配列と同一であることを意味するために用いられる。反対に、用語「〜に相補的である」は、相補的配列が参照ポリヌクレオチド配列の全部または一部分に相同であることを意味するために用いられる。例示として、ヌクレオチド配列「TATAC」は参照配列「TATAC」に対応し、そして参照配列「GTATA」に相補的である。
【0036】
以下の用語は、2つ以上のポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の配列関係を説明するために用いられる。「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性の割合」、および「実質的な同一性」。「参照配列」とは、配列比較の基礎として用いられる確定された配列である。参照配列は、例えば、配列表に示される全長cDNAもしくは遺伝子配列のセグメントとしての長い配列のサブセットであっても、または完全なcDNAもしくは遺伝子配列を含んでもよい。一般的に、参照配列は少なくとも18ヌクレオチドまたは6アミノ酸の長さであるか、または少なくとも24ヌクレオチドまたは8アミノ酸の長さであるか、または少なくとも48ヌクレオチドまたは16アミノ酸の長さである。2個のポリヌクレオチドまたはアミノ酸はそれぞれ(1)2個の分子間で類似する配列(すなわち完全ポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の一部)を含み得るため、また(2)2個のポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間で相違した配列をさらに含み得るため、2個(またはそれ以上)の分子間の配列比較は、配列類似性の局部的な領域を同定して比較するために、典型的には2個の分子の配列を「比較ウィンドウ」と比較することにより行われる。本明細書で用いられる場合、「比較ウィンドウ」とは、少なくとも18個の連続するヌクレオチド位置または6アミノ酸の概念的なセグメントを指し、そこでは、ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は、少なくとも18個の連続するヌクレオチドまたは6アミノ酸配列の参照配列と比較され得、また、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド配列の一部が、2個の配列の最適な整列のために、(付加、欠失を含まない)参照配列と比較して、20%以下の付加、欠失、置換等(すなわちギャップ)を含み得る。比較ウィンドウを整列するための最適な配列の整列は、Smith and Waterman Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所的相同性アルゴリズム、Needleman and Wunsch J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性整列アルゴリズム、Pearson and Lipman Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 85:2444 (1988)の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA(Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.)、Geneworks、またはMacVectorソフトウェアパッケージ)、または検査によって行うことができ、様々な方法によって作り出される最良の整列(すなわち、比較ウィンドウにおいて最も高い相同性の割合となる)が選択される。
【0037】
「配列同一性」という用語は、比較ウィンドウに対して2個のポリヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が同一であること(すなわち、ヌクレオチドとヌクレオチドまたは残基と残基ごとに)を意味する。「配列同一性の割合」という用語は、比較ウィンドウに対して2個の最適に整列された配列を比較し、両方の配列において同一の核酸塩基(例えば、AまたはTまたはCまたはGまたはUまたはI)または残基が存在する位置の数を決定することにより一致する位置の数を得て、該一致する位置の数を比較ウィンドウ内の位置数(すなわちウィンドウの大きさ)の合計で除した結果に100を乗じることにより、配列同一性の割合が算出される。本明細書において用いられる場合「実質的な同一性」という用語は、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸の配列の特徴を示し、少なくとも18ヌクレオチド(6アミノ酸)の位置にわたる比較ウィンドウで、しばしば少なくとも24〜48ヌクレオチド(8〜16アミノ酸)の位置にわたる比較ウィンドウで参照配列と比較したときに、該ポリヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が、少なくとも85%の配列同一性、好ましくは少なくとも90〜95%の配列同一性、より一般的には少なくとも96、97、98、または99%の配列同一性を有する配列を含み、その配列同一性の割合は、参照配列と、比較ウィンドウに対して参照配列の合計20%以下の欠失または付加を含む可能性がある配列とを比較することによって算出される。該参照配列は、より長い配列のサブセットであり得る。
【0038】
本明細書で用いられるように、20個の通常のアミノ酸とそれらの略号は通常の使用法に従う。参照することにより本明細書に組み込まれるImmunology − A Synthesis (2nd Edition, E.S. Golub and D.R. Gren, Eds., Sinauer Associates, Sunderland, Mass. (1991))を参照されたい。「アミノ酸」または「アミノ酸残基」という用語は、本明細書において用いられる場合は、天然に存在するL‐アミノ酸またはD‐アミノ酸を指す。常用されるアミノ酸の1文字および3文字の略号が本明細書において使用される(Bruce Alberts et al., Molecular Biology of the Cell, Garland Publishing, Inc., New York (4th ed. 2002))。20個の通常のアミノ酸の立体異性体(例えば、D‐アミノ酸)α‐、α‐二重置換アミノ酸等の非天然のアミノ酸、N‐アルキルアミノ酸、乳酸および他の非通常アミノ酸もまた本発明のポリペプチドに適した構成要素となり得る。非通常のアミノ酸の例には以下を含む:4‐ヒドロキシプロリン、γ‐カルボキシグルタミン酸、ε‐N,N,N‐トリメチルリシン、ε‐N‐アセチルリシン、O‐ホスホセリン、N‐アセチルセリン、N‐ホルミルメチオニン、3‐メチルヒスチジン、5‐ヒドロキシリシン、σ‐N‐メチルアルギニン、および他の類似するアミノ酸およびイミノ酸(例えば、4‐ヒドロキシプロリン)。本明細書において用いられるポリペプチドの表記においては、標準的な使用法および慣習に従い、左手方向はアミノ末端方向であり、右手方向はカルボキシ末端方向である。
【0039】
同様に、別途指定のない限り、1本鎖ポリヌクレオチド配列の左手端は5’末端、2本鎖ポリヌクレオチド配列の左手方向は5’方向と称される。新生RNA転写物の5’から3’方向への付加は、転写の方向と称される。RNAと同じ配列を有し、RNA転写物の5’末端に対して5’側のDNA鎖上の配列領域は「上流配列」と称される。RNAと同じ配列を有し、RNA転写物の3’末端に対して3’側のDNA鎖上の配列領域は、「下流配列」と称される。
【0040】
ポリペプチドに適用されたように、「実質的な同一性」という用語は、2個のペプチド配列が、デフォルトのギャップの重み付けを用いてGAPまたはBESTFITプログラム等によって最適に整列されたときに、少なくとも80%の配列同一性を共有すること、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%または96%または97%または98%の配列同一性、最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基の位置は、保存的なアミノ酸置換によって異なる。本明細書において論じられるように、アミノ酸配列における変動が少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、最も好ましくは99%で維持していると仮定すると、抗体または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列における小さな変動は本発明に包含されることが想定される。保存的なアミノ酸置換は、それらの側鎖と関連しているアミノ酸のファミリー内で生じるものである。遺伝的にコードされるアミノ酸は、一般的に以下のファミリーに分割される。(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸、(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン、(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、および(4)非電荷極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン。より好ましいファミリーは以下のとおりである。セリンおよびスレオニンは脂肪族−水酸化ファミリー、アスパラギンおよびグルタミンはアミド含有ファミリー、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンは脂肪族ファミリー、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは芳香族ファミリー、ならびに、硫黄含有側鎖ファミリーとしてシステインおよびメチオニン。例えば、ロイシンをイソロイシンまたはバリンで、アスパラギン酸塩をグルタミン酸で、スレオニンをセリンで単独に置き換えること、またはアミノ酸を構造的に関連するアミノ酸で同様に置き換えることは、特にその置き換えが骨格となる部位の中にアミノ酸を含まない場合、結果として得られた分子の結合または特性に大きな影響を与えないないと予期するのが妥当である。好ましい保存的なアミノ酸置換基は以下のとおりである:バリン‐ロイシン‐イソロイシン、フェニルアラニン‐チロシン、リジン‐アルギニン、アラニン‐バリン、グルタミン酸‐アスパラギン酸、システイン‐メチオニン、およびアスパラギン‐グルタミン。
【0041】
好ましいアミノ酸置換は以下のとおりである。(1)タンパク分解に対する感受性を低下させる、(2)酸化に対する感受性を低下させる、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変化させる、(4)結合親和性を変化させる、および(5)そのような類似体の他の物理化学的または機能的特性を与えるもしくは改変する。類似体は、天然に存在するペプチド配列以外の配列の様々な突然変異タンパク質を含み得る。例えば、単一または複数のアミノ酸置換(好ましくは保存的なアミノ酸置換)は、天然に存在する配列において(好ましくは、分子間接触を形成するドメインの外側のポリペプチドの部分において)、行われる可能性がある。保存的なアミノ酸置換は、親配列の構造的特性を実質的に変化させるべきではない(例えば、置換アミノ酸は、親配列に生じるへリックスを破壊しない、または親配列を特徴づける他の型の二次構造を乱さない傾向にあるべきである)。当技術分野において認識されるポリペプチドの二次および三次構造の例は、Proteins, Structures and Molecular Principles (Creighton, Ed., W. H. Freeman and Company, New York (1984))、Introduction to Protein Structure (C. Branden and J. Tooze, eds., Garland Publishing, New York, N.Y. (1991))、およびThornton et at. Nature 354:105 (1991)に記載されており、参照することによって、それぞれが本明細書に組み込まれる。
【0042】
本明細書で用いられる「類似体」という用語は、天然に存在するポリペプチドのアミノ酸配列の一部に実質的な同一性を有する少なくとも25アミノ酸のセグメントを含むポリペプチドであって、該天然に存在するポリペプチドの活性のうちの少なくとも1つを有するポリペプチドを指す。通常、ポリペプチド類似体は、天然に存在する配列に関して保存的なアミノ酸置換(または付加もしくは欠失)を含む。類似体は、典型的には、少なくとも20アミノ酸長、好ましくは少なくとも50アミノ酸長またはそれ以上であり、しばしば、天然に存在する完全長のポリペプチドと同じ長さであり得る。
【0043】
ペプチド類似体は、医薬業界において、鋳型のペプチドと類似の特徴を有する非ペプチド薬として一般的に用いられる。これらの種類の非ペプチド化合物は「ペプチド模倣体(peptide mimeticsまたはpeptidomimetics)」と呼ばれる。参照することにより本明細書に組み込まれるFauchere, J. Adv. Drug Res. 15:29 (1986)、Veber and Freidinger TINS p.392 (1985)、およびEvans et al. J. Med. Chem. 30:1229 (1987)を参照されたい。このような化合物は、しばしばコンピュータ化された分子モデリングによって開発される。治療上有用なペプチドに構造的に類似するペプチド模倣体は、同等な治療効果または予防効果をもたらすために用いることができる。一般的に、ペプチド模倣体は構造的にヒト抗体等のパラダイムポリペプチド(すなわち、生化学的な特性または薬理学的な活性を有するポリペプチド)に類似しているが、当該技術分野において周知の方法により、‐‐CHNH‐‐、‐‐CHS‐‐、‐‐CH‐CH‐‐、‐‐CH=CH‐‐(シスおよびトランス)、‐‐COCH‐‐、‐‐CH(OH)CH‐‐、および‐CHSO‐‐から構成される群から選択される結合によって任意選択的に置き換えられる1個もしくは複数のペプチド結合を有する。コンセンサス配列の1つもしくは複数のアミノ酸の、同じ型のD‐アミノ酸での系統的置換(例えば、L‐リジンの代わりにD‐リジン)は、より安定したペプチドを作製するために用いることができる。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一であるコンセンサス配列変異を含む制限ペプチドは、当該技術分野において既知の方法により作製することができ(参照することにより本明細書に組み込まれるRizo and Gierasch Ann. Rev. Biochem. 61:387 (1992))、例えば、ペプチドを環化する分子内ジスルフィド架橋を形成する能力を持つ内部システイン残基を付加することにより、作製され得る。
【0044】
断片または類似体の好ましいアミノ末端およびカルボキシ末端は、機能性ドメインの境界近くに存在する。構造性および機能性ドメインは、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列のデータを、公共のまたは所有権を主張できる配列のデータベースと比較することにより同定され得る。好ましくは、コンピュータ化された比較方法が、既知の構造および/または機能の他のタンパク質に存在する配列モチーフまたは推定のタンパク質構造ドメインを同定するために用いられる。既知の三次元構造に折り畳むタンパク質配列を同定するための方法は既知である(Bowie et al. Science 253:164 (1991)を参照されたい)。当業者は、本発明に従って、構造性および機能性ドメインを確定するために用いることができる配列モチーフおよび構造コンフォメーションを認識できる。
【0045】
「特異的結合剤」という用語は、標的に特異的に結合する天然または非天然の分子を指す。特異的結合剤の例としては、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質、および低分子化合物が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、特異的結合剤は抗体である。特定の実施形態では、特異的結合剤は抗原結合領域である。
【0046】
「EGFrポリペプチド特異的結合剤」という用語は、EGFrポリペプチドの任意の部分に特異的に結合する特異的な結合剤を指す。特定の実施形態では、EGFrポリペプチド特異的結合剤はEGFrポリペプチドに対する抗体である。特定の実施形態では、EGFrポリペプチド特異的結合剤は抗原結合領域である。特定の実施形態では、EGFrポリペプチド特異的結合剤はEGFrに対する抗体である。特定の実施形態では、EGFrポリペプチド特異的結合剤はパニツムマブである。
【0047】
「変異K‐rasポリペプチド特異的結合剤」という用語は、変異K‐rasポリペプチドの任意の部分に特異的に結合する特異的な結合剤を指す。特定の実施形態では、変異K‐rasポリペプチド特異的結合剤は変異K‐rasポリペプチドに対する抗体である。特定の実施形態では、変異K‐rasポリペプチド特異的結合剤は抗原結合領域である。
【0048】
「変異B‐rafポリペプチド特異的結合剤」という用語は、変異B‐rafポリペプチドの任意の部分に特異的に結合する特異的な結合剤を指す。特定の実施形態では、変異B‐rafポリペプチド特異的結合剤は、変異B‐rafポリペプチドに対する抗体である。特定の実施形態では、変異B‐rafポリペプチド特異的結合剤は、抗原結合領域である。
【0049】
「特異的に結合する」という用語は、非標的に結合するよりも高い親和性を持って標的と結合する、特異的な結合剤の能力を指す。特定の実施形態では、特異的結合は、非標的に対する親和性よりも少なくとも10倍または50倍または100倍または250倍または500倍または1000倍高い親和性を持って標的と結合することを指す。特定の実施形態では、親和性は親和性ELISAアッセイによって決定される。特定の実施形態では、親和性はBIAcoreアッセイによって決定される。特定の実施形態では、親和性は動力学的方法によって決定される。特定の実施形態では、親和性は平衡/溶液法によって決定される。特定の実施形態では、抗体とその認識された1つもしくは複数のエピトープとの間の解離定数が≦1μM、好ましくは≦100nM、また最も好ましくは≦10nMである場合に、抗体は抗原に特異的に結合すると言われている。
【0050】
特定の場合における「天然の抗体および免疫グロブリン」は、通常、2本の同一の軽(L)鎖および2本の同一の重(H)鎖からなる約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合されるが、ジスルフィド結合の数は免疫グロブリンの異なるアイソタイプの重鎖により変化する。各重鎖および軽鎖は、規則的に空間を隔てた鎖内のジスルフィド架橋も有する。各重鎖はその一端に可変ドメイン(VH)を有し、それに続いていくつかの定常ドメインを有する。各軽鎖は一方の端に可変ドメイン(VL)を有し、他方の端に定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列する。特別のアミノ酸残基が、軽鎖および重鎖の可変ドメインの間の界面を形成していると考えられる(Chothia et al. J. Mol. Biol. 186:651 (1985)、Novotny and Haber, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82:4592 (1985)、Chothia et al., Nature 342:877‐883 (1989))。
【0051】
「抗体」という用語は、インタクトな抗体および特異的結合においてインタクトな抗体と競合するその抗原結合断片の両方を指す。「その抗原結合断片」とは、インタクトな抗体分子の一部分または断片を指し、その断片は抗原結合機能を保持する。結合断片は、組み換えDNA技術によって、またはインタクトな抗体の酵素的もしくは化学的開裂(パパインを用いた開裂等)によって、生成される。結合断片はFab、Fab’、F(ab’)、Fv、1本鎖抗体(「scFv」)、Fd’およびFd断片を含む。モノクローナル抗体から様々な断片を生成するための方法が、当業者に周知である(例えば、Pluckthun, 1992, Immunol. Rev. 130:151‐188を参照されたい)。「二重特異性」または「二機能性」抗体以外の抗体は、それぞれが同一の結合部位を有すると理解されている。抗体は、抗体の余剰により対抗受容体に結合した受容体の量が少なくとも約20%または40%または60%または80%、より一般的には約85%または90%または95%または96%または97%または98%または99%を上回って減少した場合(生体外の競合結合アッセイ法により測定)に、実質的に受容体が対抗受容体に接着するのを阻害する。
【0052】
「単離された」抗体は、その天然環境の構成要素から同定ならびに分離および/または回復された抗体である。天然の環境における汚染成分は、その抗体の診断的または治療的な使用を妨げる物質であり、それには酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質を含み得る。好ましい実施形態では、抗体は、(1)Lowry法によって、およびスピニングカップシークエネーター(spinning cup sequenator)を用いた末端もしくは内部アミノ酸の配列決定によって決定される場合に、抗体の95重量%を上回るまで、または(2)クーマシーブルー染色、または好ましくは、銀染色を用いた還元条件下もしくは非還元条件下でSDS‐PAGEによる均質性を示すまで、精製される。抗体の天然の環境の少なくとも1つの構成要素が存在しないため、単離された抗体は組み替え細胞内の原位置で抗体を含む。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0053】
「可変」という用語は、可変ドメインの特定の部分が配列において抗体間で大幅に異なることを指し、特定の抗原に対するそれぞれの特定の抗体の結合および特異性において用いられる。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインに均一に分布しているのではない。それは、軽鎖および重鎖可変ドメインの両方にある「相補性決定領域」(CDR)または「超可変領域」と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分はフレームワーク(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ4つのFR領域を含み、これらは大抵βシート構成を採り、3つのCDRによって連結されているが、それらは該βシート構造を連結するループを形成し、またある場合には該βシート構造の一部を形成している。各鎖のCDRはFR領域によって極めて近接して保持され、他の鎖のCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat et al. (1991)を参照されたい)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与してはいないが、抗体の抗体依存性細胞障害性への参加等の様々なエフェクター機能を示す。
【0054】
「Fv」は、完全な抗原認識および抗原結合部位を含む最小の抗体断片である。2本鎖Fv種において、この領域は、密接に非共有結合した1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインの二量体から構成されている。一本鎖のFv種において、1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインが可動性ペプチドリンカーによって共有結合されているため、軽鎖および重鎖は2本鎖のFv種の構造と類似する「二量体」構造で会合することができる。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用してVH‐VL二量体の表面上に抗原結合部位を確定するのはこの立体配置においてである。集合的に、6つのCDRが該抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、たとえ単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)であっても、完全な結合部位と比較すると低い親和性においてではあるが、抗原を認識および結合する能力を有する。
【0055】
本明細書において用いられる場合「超可変領域」という用語は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は一般的に「相補性決定領域」または「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメイン内の残基24‐34(L1)、50‐62(L2)、および89‐97(L3)ならびに重鎖可変ドメイン内の31‐55(H1)、50‐65 (H2)および95‐102 (H3)、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))および/または、「超可変ループ」からの残基(例えば、軽鎖可変ドメイン内の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)ならびに重鎖可変ドメイン内の26〜32((H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3)、Chothia and Lesk J. Mol. Biol 196:901‐917 (1987))を含む。「フレームワーク領域」または「FR」残基は、本明細書に定義される超可変領域以外のそれらの可変ドメイン残基である。
【0056】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、本明細書において用いられる場合、特定のリガンドと接触してその特異性を決定する免疫受容体の一部分を指す。免疫受容体のCDRは、受容体タンパク質の最も可変性の部分であり、受容体に多様性を与え、受容体の可変ドメインの遠位端にある6つのループ上にあり、3つのループは受容体の2つの可変ドメインそれぞれに由来する。
【0057】
「抗体依存性の細胞媒介性細胞傷害性」および「ADCC」は、Fc受容体(FcRs)を発現する非特異的な細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が標的細胞上に結合した抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす、細胞によって媒介される反応を指す。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞がFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞上におけるFcの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457‐92 (1991)の464ページの表3にまとめられている。対象となる分子のADCC活性を評価するには、例えば、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載される生体外のADCCアッセイを行ってもよい。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、抹消血単核細胞(PBMC)およびNK細胞が含まれる。代替的または付加的に、対象となる分子のADCC活性は、生体内で、例えば、Clynes et al. 1998,PNAS(USA),95:652‐656(1988)に開示されるモデル等の動物モデルにおいて、評価することができる。
【0058】
「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンおよび/またはT細胞受容体への特異的結合をする能力を持つ任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は、通常はアミノ酸または糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面群から構成され、また通常は特異的な三次元構造特性、および特異的な電荷特性を有する。
【0059】
「剤」という用語は、化学化合物、化学化合物の混合物、生物学的高分子、または生物学的物質から作製された抽出物を表すために本明細書で用いられる。
【0060】
本明細書で用いられる場合、「標識」または「標識された」という用語とは、例えば、放射標識されたアミノ酸の取り込み、または標識されたアビジン(例えば、光学的または比色定量的な方法によって検出され得る蛍光マーカーまたは酵素活性を含有するストレプトアビジン)によって検出され得るビオチニル部分のポリペプチドへの結合等の、検出可能なマーカーの取り込みを指す。特定の状況において、標識またはマーカーは治療用であり得る。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する様々な方法が当該技術分野において既知であり、用いられる。ポリペプチドの標識の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。放射性同位体または放射性核種(例えば、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニドリン光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β‐ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光基、ビオチニル基、および二次レポーターによって認識される予め決められたポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)を含む。いくつかの実施形態では、潜在的な立体障害を低減させるために、様々な長さのスペーサーアームによって標識が結合される。
【0061】
本明細書で用いられる「医薬剤または薬物」という用語は、患者に適切に投与された場合、所望の治療効果を誘導する能力を持つ化学化合物または組成物を指す。本明細書における他の化学用語は、参照することにより本明細書に組み込まれるThe McGraw‐Hill Dictionary of Chemical Terms (Parker, S., Ed., McGraw‐Hill, San Francisco (1985))に例示されるように、当該技術分野における慣例的使用法に従って用いられる。
【0062】
「抗悪性腫瘍剤」という用語は、ヒトにおいて腫瘍(具体的には細胞腫、肉腫、リンパ腫、の悪性(癌性)病変、または白血病等)の発生または進行を阻害する機能特性を有する剤を指して本明細書において用いられる。転移を阻害することは、しばしば抗悪性腫瘍剤の特性である。特定の実施形態では、抗悪性腫瘍剤はパニツムマブである。
【0063】
本明細書で用いられる場合、「実質的に純粋」とは、目的の種が存在する優勢な種である(すなわち、モル基準で、それが組成物中の他の個々のいずれの種よりも豊富である)ことを意味し、好ましくは実質的に精製された画分が組成物であり、存在するすべての高分子種の少なくとも約50パーセント(モル基準で)で、目的とする種が含まれる。一般的に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在するすべての高分子種の約80以上を構成し、より好ましくは85%または90%または95%または96%または97%または98%または99%以上を構成する。最も好ましくは、目的の種が本質的に均質になるまで(従来の検出方法では汚染種が組成物中で検出できない)精製され、その組成物は本質的に単一の高分子種から構成される。
【0064】
患者という用語は、ヒトおよび動物の対象を含む。
【0065】
治療の目的のための「哺乳動物」および「動物」という用語は、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ等のヒト、家畜および農場の動物、ならびに動物園、競技、または愛玩動物を含む、哺乳動物に分類される任意の動物を指す。好ましくは、動物はヒトである。
【0066】
「病態」という用語は、細胞もしくは身体の機能、システム、または器官の妨害、休止、または障害が発生した細胞または哺乳動物全体の生理的状態を指す。
【0067】
「治療する」または「治療」という用語は、治療的処置および予防的または防止的処置の両方を指し、その目的は、癌の発症または転移等、望ましくない生理学的変化または障害を防止するかまたは抑制する(軽減する)ことである。本発明の目的のために、有益または所望の臨床成績としては、検出可能であるか検出不能であるかにかかわらず、症状の軽減、疾病の程度の低減、安定した(すなわち悪化していない)病態、疾病進行の遅延または抑制、病態の改善または緩和、および寛解(部分的または全体的のいずれか)が挙げられるが、これらに限定されない。「治療」とは、治療を受けなかった場合に予測される生存期間と比較して生存期間を延長することも意味し得る。治療を必要とする者には、既にその状態または疾患を有する者およびその状態または疾患に罹患し易い者、またはその状態または疾患が防止されるべき者を含む。
【0068】
本明細書で用いられる場合「反応する」という用語は、RECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors、固形癌治療効果判定基準)によると、薬剤投与後に患者または腫瘍が完全奏功または部分奏功を示すことを意味する。本明細書で用いられる場合「無反応」という用語は、RECISTによると、薬剤投与後に患者または腫瘍が安定または進行を示すことを意味する。RECISTは、例えばTherasse et al., February 2000, “New Guidelines to Evaluate the Response to Treatment in Solid Tumors,” J. Natl. Cancer Inst. 92(3): 205‐216に記載されており、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。例示的な薬剤としては、EGFrに対する抗体を含む、EGFrポリペプチド特異的結合剤が挙げられるが、これに限定されない。
【0069】
「疾患」とは、1つもしくは複数の治療が有益な任意の状態である。これには、哺乳動物を該当する疾患にかかりやすくする病理学的状態を含む、慢性および急性疾患または疾病が含まれる。本明細書において治療されるべき疾患の非制限例には、良性および悪性腫瘍、白血病、およびリンパ性悪性疾患、具体的には乳癌、直腸癌、卵巣癌、胃癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎癌、大腸癌、甲状腺癌、膵癌、前立腺または膀胱癌を含む。本発明に従って治療されるべき好ましい疾患は、子宮頸癌および子宮頸部の扁平上皮内腫瘍および腺腫瘍、腎細胞癌(RCC)、食道腫瘍、ならびに癌由来細胞株等の悪性腫瘍である。
【0070】
「EGFrポリペプチドに関連する疾病または状態」は、以下のうちの1つもしくは複数を含む。EGFrポリペプチドによって引き起こされる疾病または状態、EGFrポリペプチドに起因する疾病または状態、およびEGFrポリペプチドの存在に関連する疾病または状態。特定の実施形態では、EGFrポリペプチドに関連する疾病または状態は癌である。例示的な癌としては、非小細胞肺癌、乳癌、大腸癌、胃癌、能癌、膀胱癌、頭頚部癌、卵巣癌、および前立腺癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
「変異K‐rasポリペプチドに関連する疾病または状態」は以下のうちの1つもしくは複数を含む:変異K‐rasポリペプチドによって引き起こされる疾病または状態、変異K‐rasポリペプチドに起因する疾病または状態、変異K‐rasポリペプチドを引き起こす疾病または状態、および変異K‐rasポリペプチドの存在に関連する疾病または状態。特定の実施形態では、変異K‐rasポリペプチドに関連する疾病または状態が、変異K‐rasポリペプチドの不在下において存在し得る。特定の実施形態では、変異K‐rasポリペプチドに関連する疾病または状態が、変異K‐rasポリペプチドの存在によって悪化し得る。特定の実施形態では、変異K‐rasポリペプチドに関連する疾病または状態は、癌である。例示的な癌としては、非小細胞肺癌、乳癌、大腸癌、胃癌、能癌、膀胱癌、頭頚部癌、卵巣癌、および前立腺癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
「変異B‐rafポリペプチドに関連する疾病または状態」は、以下のうちの1つもしくは複数を含む。変異B‐rafポリペプチドによって引き起こされる疾病または状態、変異B‐rafポリペプチドに起因する疾病または状態、変異B‐rafポリペプチドを生じさせる疾病または状態、および変異B‐rafポリペプチドの存在に関連する疾病または状態。特定の実施形態では、変異B‐rafポリペプチドに関連する疾病または状態が、変異の不在下において存在し得る。特定の実施形態では、変異B‐rafポリペプチドに関連する疾病または状態が、変異B‐rafポリペプチドの存在によって悪化し得る。特定の実施形態では、変異B‐rafポリペプチドに関連する疾病または状態は、癌である。例示的な癌としては、非小細胞肺癌、乳癌、大腸癌、胃癌、能癌、膀胱癌、頭頚部癌、卵巣癌、および前立腺癌を含むが、これらに限定されない。
【0073】
「併用療法」において、患者は、化学療法剤ならびに抗悪性腫瘍剤および/または放射線療法と併用した、標的抗原に対する特異的結合剤を用いて治療される。特定の実施形態では、特異的結合剤はパニツムマブである。プロトコル設計は、腫瘍量の減少および標準的な化学療法の通常用量を減少させる能力によって評価される有効性を検討する。これらの用量の減少により、化学療法剤の用量関連毒性を減少させることによってさらなるおよび/または長期間の療法が可能となるであろう。
【0074】
「単剤療法」とは、化学療法剤または抗悪性腫瘍剤を併用せずに、患者に免疫療法を施行することによって疾患を治療することを指す。特定の実施形態では、単剤療法は、化学療法剤ならびに抗悪性腫瘍剤および/または放射線療法の不在下において、パニツムマブを投与することを含む。
【0075】
特定の実施形態
特定の実施形態では、対象において1つもしくは複数のK‐ras変異に関連する疾病または状態を診断する方法を提供する。特定の実施形態では、対象において1つもしくは複数のB‐raf変異に関連する疾病または状態を診断する方法を提供する。
【0076】
特定の実施形態では、対象において1つもしくは複数のK‐ras変異に関連する疾病または状態を診断する方法は、(a)対象由来のサンプルにおいて変異K‐rasポリペプチドの存在または発現の量を決定するステップと、(b)そのポリペプチドの存在または発現の量に基づいて、1つもしくは複数のK‐ras変異に関連する疾病または状態を診断するステップとを含む。特定の実施形態では、対象において1つもしくは複数のK‐ras変異に関連する疾病または状態を診断する方法は、(a)対象由来のサンプルにおいて変異K‐rasポリヌクレオチドの存在または転写もしくは翻訳の量を決定するステップと、(b)そのポリヌクレオチドの存在または転写もしくは翻訳の量に基づいて、1つもしくは複数のK‐ras変異に関連する疾病または状態を診断するステップとを含む。特定の実施形態では、該疾病または状態は癌である。
【0077】
特定の実施形態では、対象において1つもしくは複数のK‐ras変異に関連する疾病または状態を診断する方法は、(a)配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、および配列番号16から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含むポリペプチドの存在または発現の量を決定するステップと、(b)そのポリペプチドの存在または発現の量に基づいて、1つもしくは複数のK‐ras変異に関連する疾病または状態を診断するステップとを含む。特定の実施形態では、対象において1つもしくは複数のK‐ras変異に関連する疾病または状態を診断する方法は、(a)対象由来のサンプルにおいて、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、および配列番号16から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの存在または転写もしくは翻訳の量を決定するステップと、(b)そのポリヌクレオチドの存在または転写もしくは翻訳の量に基づいて、1つもしくは複数のK‐ras変異に関連する疾病または状態を診断するステップとを含む。特定の実施形態では、該疾病または状態は癌である。
【0078】
特定の実施形態では、対象において1つもしくは複数のB‐raf変異に関連する疾病または状態を診断する方法を提供する。特定の実施形態では、対象において1つもしくは複数のB‐raf変異に関連する疾病または状態を診断する方法は、(a)対象由来のサンプルにおいて変異B‐rafポリペプチドの存在または発現の量を決定するステップと、(b)そのポリペプチドの存在または発現の量に基づいて、1つもしくは複数のB‐raf変異に関連する疾病または状態を診断するステップとを含む。特定の実施形態では、対象において1つもしくは複数のB‐raf変異に関連する疾病または状態を診断する方法は、(a)対象由来のサンプルにおいて変異B‐rafポリヌクレオチドの存在または転写もしくは翻訳の量を決定するステップと、(b)そのポリヌクレオチドの存在または転写もしくは翻訳の量に基づいて、1つもしくは複数のB‐raf変異に関連する疾病または状態を診断するステップとを含む。特定の実施形態では、該疾病または状態は癌である。
【0079】
特定の実施形態では、対象において1つもしくは複数のB‐raf変異に関連する疾病または状態を診断する方法は、(a)対象由来のサンプルにおいて配列番号20のアミノ酸配列を含むポリペプチドの存在または発現の量を決定するステップと、(b)そのポリペプチドの存在または発現の量に基づいて、1つもしくは複数のB‐raf変異に関連する疾病または状態を診断するステップとを含む。特定の実施形態では、対象において1つもしくは複数のB‐raf変異に関連する疾病または状態を診断する方法は、(a)対象由来のサンプルにおいて配列番号20のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの存在または転写もしくは翻訳の量を決定するステップと、(b)そのポリヌクレオチドの存在または転写もしくは翻訳の量に基づいて、1つもしくは複数のB‐raf変異に関連する疾病または状態を診断するステップとを含む。特定の実施形態では、該疾病または状態は癌である。
【0080】
特定の実施形態では、対象において1つもしくは複数のK‐ras変異に関連する疾病または状態に対する感受性を診断する方法を提供する。特定の実施形態では、対象において1つもしくは複数のK‐ras変異に関連する疾病または状態に対する感受性を診断する方法は、(a)対象由来のサンプルにおいて変異K‐rasポリペプチドの存在または発現の量を決定するステップと、(b)そのポリペプチドの存在または発現の量に基づいて、1つもしくは複数のK‐ras変異に関連する疾病または状態に対する感受性を診断するステップとを含む。特定の実施形態では、対象において1つもしくは複数のK‐ras変異に関連する疾病または状態に対する感受性を診断する方法は、(a)対象由来のサンプルにおいて変異K‐rasポリヌクレオチドの存在または転写もしくは翻訳の量を決定するステップと、(b)そのポリヌクレオチドの存在または転写もしくは翻訳の量に基づいて、1つもしくは複数のK‐ras変異に関連する疾病または状態に対する感受性を診断するステップとを含む。特定の実施形態では、該疾病または状態は癌である。
【0081】
特定の実施形態では、対象において1つもしくは複数のK‐ras変異に関連する疾病または状態に対する感受性を診断する方法は、(a)対象由来のサンプルにおいて、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、および配列番号16から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含むポリペプチドの存在または発現の量を決定するステップと、(b)そのポリペプチドの存在または発現の量に基づいて、1つもしくは複数のK‐ras変異に関連する疾病または状態に対する感受性を診断するステップとを含む。特定の実施形態では、対象において1つもしくは複数のK‐ras変異に関連する疾病または状態に対する感受性を診断する方法は、(a)対象由来のサンプルにおいて、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、および配列番号16から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの存在または転写もしくは翻訳の量を決定するステップと、(b)そのポリヌクレオチドの存在または転写もしくは翻訳の量に基づいて、1つもしくは複数のK‐ras変異に関連する疾病または状態に対する感受性を診断するステップとを含む。特定の実施形態では、該疾病または状態は癌である。
【0082】
特定の実施形態では、対象において1つもしくは複数のB‐raf変異に関連する疾病または状態に対する感受性を診断する方法を提供する。特定の実施形態では、対象において1つもしくは複数のB‐raf変異に関連する疾病または状態に対する感受性を診断する方法は、(a)対象由来のサンプルにおいて変異B‐rafポリペプチドの存在または発現の量を決定するステップと、(b)そのポリペプチドの存在または発現の量に基づいて、1つもしくは複数のB‐raf変異に関連する疾病または状態に対する感受性を診断するステップとを含む。特定の実施形態では、対象において1つもしくは複数のB‐raf変異に関連する疾病または状態に対する感受性を診断する方法は、(a)対象由来のサンプルにおいて変異B‐rafポリヌクレオチドの存在または転写もしくは翻訳の量を決定するステップと、(b)そのポリヌクレオチドの存在または転写もしくは翻訳の量に基づいて、1つもしくは複数のB‐raf変異に関連する疾病または状態に対する感受性を診断するステップとを含む。特定の実施形態では、該疾病または状態は癌である。
【0083】
特定の実施形態では、対象において1つもしくは複数のB‐raf変異に関連する疾病または状態に対する感受性を診断する方法は、(a)対象由来のサンプルにおいて、配列番号20のアミノ酸配列を含むポリペプチドの存在または転写もしくは翻訳の量を決定するステップと、(b)そのポリペプチドの存在または発現の量に基づいて、1つもしくは複数のB‐raf変異に関連する疾病または状態に対する感受性を診断するステップとを含む。特定の実施形態では、対象において1つもしくは複数のB‐raf変異に関連する疾病または状態に対する感受性を診断する方法は、(a)対象由来のサンプルにおいて、配列番号20のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの存在または転写もしくは翻訳の量を決定するステップと、(b)そのポリペプチドの存在または転写もしくは翻訳の量に基づいて、1つもしくは複数のB‐raf変異に関連する疾病または状態に対する感受性を診断するステップとを含む。特定の実施形態では、該疾病または状態は癌である。
【0084】
特定の実施形態では、変異K‐rasポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの有無を決定する方法を提供する。特定の実施形態では、サンプル中において変異K‐rasポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの有無を決定する方法は、(a)変異K‐rasポリペプチドの領域をコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズするプローブにサンプルを曝露するステップであって、該領域はG12S、G12V、G12D、G12A、G12C、G13A、およびG13Dから選択される少なくとも1つのK‐ras変異を含むステップと、(b)該サンプル中において変異K‐rasポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの有無を決定するステップとを含む。特定の実施形態では、サンプル中において変異K‐rasポリペプチドの有無を決定する方法は、(a)変異K‐rasポリペプチドの領域をコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズするプローブにサンプルを曝露するステップであって、該領域はG12S、G12V、G12D、G12A、G12C、G13A、およびG13Dから選択される少なくとも1つのK‐ras変異を含むステップと、(b)該サンプル中において変異K‐rasポリペプチドの有無を決定するステップとを含む。
【0085】
特定の実施形態では、変異B−rafポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの有無を決定する方法を提供する。特定の実施形態では、サンプル中において変異B−rafポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの有無を決定する方法は、(a)変異B−rafポリペプチドの領域をコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズするプローブにサンプルを曝露するステップであって、該領域はV600E変異を含むステップと、(b)該サンプル中において変異B−rafポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの有無を決定するステップとを含む。特定の実施形態では、サンプル中において変異B−rafポリペプチドの有無を決定する方法は、(a)変異B−rafポリペプチドの領域をコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズするプローブにサンプルを曝露するステップであって、該領域はV600E変異を含むステップと、(b)該サンプル中において変異B−rafポリペプチドの有無を決定するステップとを含む。
【0086】
特定の実施形態では、(a)ある集団における個体の遺伝子プロファイルにおいて、少なくとも1つのK‐ras変異の存在を決定するステップと、(b)変異K‐ras遺伝子プロファイルとその個体との間の関係を確立するステップとを含む、個体の特異的な集団において変異K‐ras集団のプロファイルを確立するための方法を提供する。そのような特定の実施形態では、個体の特異的な特徴はK‐ras変異に関連する疾病または状態を発症する感受性を含む。そのような特定の実施形態では、個体の特異的な特徴はK‐ras変異に関連する疾病または状態を呈することを含む。
【0087】
特定の実施形態では、対象においてK‐ras変異G12Sの有無を決定するステップを含む、癌に罹患している対象においてEGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に対する無反応性を予測する方法を提供する。特定の実施形態では、EGFrポリペプチド特異的結合剤は、EGFrに対する抗体である。そのような特定の実施形態では、該抗体はパニツムマブである。
【0088】
特定の実施形態では、対象においてK‐ras変異G12Vの有無を決定するステップを含む、癌に罹患している対象においてEGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に対する無反応性を予測する方法を提供する。特定の実施形態では、EGFrポリペプチド特異的結合剤は、EGFrに対する抗体である。そのような特定の実施形態では、該抗体はパニツムマブである。
【0089】
特定の実施形態では、対象においてK‐ras変異G12Dの有無を決定するステップを含む、癌に罹患している対象においてEGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に対する無反応性を予測する方法を提供する。特定の実施形態では、EGFrポリペプチド特異的結合剤は、EGFrに対する抗体である。そのような特定の実施形態では、該抗体はパニツムマブである。
【0090】
特定の実施形態では、対象においてK‐ras変異G12Aの有無を決定するステップを含む、癌に罹患している対象においてEGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に対する無反応性を予測する方法を提供する。特定の実施形態では、EGFrポリペプチド特異的結合剤は、EGFrに対する抗体である。そのような特定の実施形態では、該抗体はパニツムマブである。
【0091】
特定の実施形態では、対象においてK‐ras変異G12Cの有無を決定するステップを含む、癌に罹患している対象においてEGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に対する無反応性を予測する方法を提供する。特定の実施形態では、EGFrポリペプチド特異的結合剤は、EGFrに対する抗体である。そのような特定の実施形態では、該抗体はパニツムマブである。
【0092】
特定の実施形態では、対象においてK‐ras変異G13Aの有無を決定するステップを含む、癌に罹患している対象においてEGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に対する無反応性を予測する方法を提供する。特定の実施形態では、EGFrポリペプチド特異的結合剤は、EGFrに対する抗体である。そのような特定の実施形態では、該抗体はパニツムマブである。
【0093】
特定の実施形態では、対象においてK‐ras変異G13Dの有無を決定するステップを含む、癌に罹患している対象においてEGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に対する無反応性を予測する方法を提供する。特定の実施形態では、EGFrポリペプチド特異的結合剤は、EGFrに対する抗体である。そのような特定の実施形態では、該抗体はパニツムマブである。
【0094】
特定の実施形態では、対象においてK‐rasのアミノ酸12および/またはK‐rasのアミノ酸13でK‐ras変異の有無を決定するステップを含む、癌に罹患している対象においてEGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に対する無反応性を予測する方法を提供する。特定の実施形態では、EGFrポリペプチド特異的結合剤は、EGFrに対する抗体である。そのような特定の実施形態では、該抗体はパニツムマブである。
【0095】
特定の実施形態では、対象において変異K‐rasポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを検出するためのキットを提供する。そのような特定の実施形態では、該キットは変異K‐rasポリペプチドの領域をコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズするプローブを含み、該領域はG12S、G12V、G12D、G12A、G12C、G13A、およびG13Dから選択される少なくとも1つのK‐ras変異を含む。特定の実施形態では、該キットは2つ以上の増幅プライマーをさらに含む。特定の実施形態では、該キットは検出コンポーネントをさらに含む。特定の実施形態では、該キットは、核酸サンプリングコンポーネントをさらに含む。
【0096】
特定の実施形態では、ある集団における個体の遺伝子プロファイルにおいて、少なくとも1つのB‐raf変異の存在を決定するステップと、(b)変異B‐raf遺伝子プロファイルとその個体との間の関係を確立するステップとを含む、特異的な個体の集団において変異B‐raf集団のプロファイルを確立するための方法を提供する。そのような特定の実施形態では、個体の特異的な特徴はB‐raf変異に関連する疾病または状態を発症する感受性を含む。そのような特定の実施形態では、個体の特異的な特徴はB‐raf変異に関連する疾病または状態を呈することを含む。
【0097】
特定の実施形態では、対象においてB‐raf変異V600Eの有無を決定するステップを含む、癌に罹患している対象においてEGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に対する無反応性を予測する方法を提供する。特定の実施形態では、EGFrポリペプチド特異的結合剤は、EGFrに対する抗体である。そのような特定の実施形態では、該抗体はパニツムマブである。
【0098】
特定の実施形態では、対象においてB‐rafのアミノ酸600でB‐raf変異の有無を決定するステップを含む、癌に罹患している対象においてEGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に対する無反応性を決定する方法を提供する。特定の実施形態では、EGFrポリペプチド特異的結合剤は、EGFrに対する抗体である。そのような特定の実施形態では、該抗体はパニツムマブである。
【0099】
特定の実施形態では、対象において変異B‐rafポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを検出するためのキットを提供する。対象において変異K‐rasポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを検出するためのキットを提供する。そのような特定の実施形態では、該キットは変異B‐rafポリペプチドの領域をコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズするプローブを含み、該領域はV600E変異を含む。特定の実施形態では、該キットは2つ以上の増幅プライマーをさらに含む。特定の実施形態では、該キットは検出コンポーネントをさらに含む。特定の実施形態では、該キットは核酸サンプリングコンポーネントをさらに含む。
【0100】
特定の実施形態では、EGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に対する無反応性は、RECIST(固形癌治療効果判定基準)を用いて決定される。RECISTによる完全奏功または部分奏功は、両方ともEGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に反応すると見なされる。安定または進行の両方ともが、EGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に無反応であると見なされる。RECISTは当該技術分野において既知であり、例えば、参照することによりいずれの目的のためにも本明細書に組み込まれるTherasse et al., February 2000, “New Guidelines to Evaluate the Response to Treatment in Solid Tumors,” J. Natl. Cancer Inst. 92(3): 205‐216を参照されたい。
【0101】
特定の実施形態では、K‐ras変異および/またはB‐raf変異が検出される。特定の実施形態では、変異K‐rasポリヌクレオチドおよび/または変異B‐rafポリヌクレオチドを検出することにより、K‐ras変異および/またはB‐raf変異が検出される。特定の実施形態では、変異K‐rasポリペプチドおよび/または変異B‐rafポリペプチドを検出することにより、K‐ras変異および/またはB‐raf変異が検出される。
【0102】
ポリヌクレオチドにおける変異を検出する特定の方法は、当該技術分野において既知である。そのような方法の特定の例としては、配列決定法、プライマー伸長反応法、電気泳動法、picogreenアッセイ、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ、ハイブリダイゼーションアッセイ、TaqManアッセイ、SNPlexアッセイ、および、例えば、米国特許第5,470,705号、5,514,543号、5,580,732号、5,624,800号、5,807,682号、6,759,202号、6,756,204号、6,734,296号、6,395,486号、および米国特許出願第US 2003‐0190646 A1号に記載されるアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドにおいて変異を検出するステップは、最初に変異を含む可能性があるポリヌクレオチドを増幅するステップを含む。ポリヌクレオチドを増幅するための特定の方法は、当該技術分野において既知である。そのような増幅産物は、ポリヌクレオチドにおいて変異を検出するために、本明細書に記載される方法または当該技術分野において既知である方法のうちのいずれにおいても用いることができる。
【0104】
ポリペプチドにおいて変異を検出する特定の方法は、当該技術分野において既知である。そのような方法の特定の例には、変異ポリペプチドに特異的な特異的結合剤を用いる検出を含むが、これに限定されない。変異ポリペプチドを検出する他の方法は、電気泳動法およびペプチド配列決定法を含むが、これに限定されない。
【0105】
ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドにおいて変異を検出する特定の例示的方法は、例えば、Schimanski et al. (1999) Cancer Res., 59: 5169‐5175、Nagasaka et al. (2004) J. Clin. Oncol., 22: 4584‐4596、PCT公開第WO 2007/001868 A1号、米国特許公開第2005/0272083 A1号、およびLievre et al. (2006) Cancer Res. 66: 3992‐3994に説明されている。
【0106】
特定の実施形態では、1つもしくは複数の変異K‐rasポリペプチドをコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドを含むマイクロアレイを提供する。特定の実施形態では、1つもしくは複数の変異K‐rasポリペプチドをコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドに相補的な1つもしくは複数のポリヌクレオチドを含むマイクロアレイを提供する。特定の実施形態では、1つもしくは複数の変異B‐rafポリペプチドをコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドを含むマイクロアレイを提供する。特定の実施形態では、1つもしくは複数の変異B‐rafポリペプチドをコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドに相補的な1つもしくは複数のポリヌクレオチドを含むマイクロアレイを提供する。
【0107】
特定の実施形態では、マイクロアレイ技術を用いて、2つ以上の細胞または組織サンプルにおける1つもしくは複数の変異K‐rasポリヌクレオチドの有無が評価される。特定の実施形態では、マイクロアレイ技術を用いて、2つ以上の細胞または組織サンプルにおける1つもしくは複数の変異K‐rasポリヌクレオチドの量が評価される。
【0108】
特定の実施形態では、マイクロアレイ技術を用いて、2つ以上の細胞または組織サンプルにおける1つもしくは複数の変異B‐rafポリヌクレオチドの有無が評価される。特定の実施形態では、マイクロアレイ技術を用いて、2つ以上の細胞または組織サンプルにおける1つもしくは複数の変異B‐rafポリヌクレオチドの量が評価される。
【0109】
特定の実施形態では、マイクロアレイ技術を用いて、2つ以上の細胞または組織サンプルにおける1つもしくは複数の変異K‐rasポリペプチドの有無が、評価される。そのような特定の実施形態では、最初にmRNAが細胞または組織サンプルから抽出され、続いてcDNAに変換されて、マイクロアレイとハイブリダイズされる。そのような特定の実施形態では、マイクロアレイに特異的に結合するcDNAの有無が変異K‐rasポリペプチドの有無を示す。そのような特定の実施形態では、1つもしくは複数の変異K‐rasポリペプチドの発現レベルは、マイクロアレイに特異的に結合するcDNAの量を定量化することにより評価される。
【0110】
特定の実施形態では、マイクロアレイ技術を用いて、2つ以上の細胞または組織サンプルにおける1つもしくは複数の変異B‐rafポリペプチドの有無が評価される。そのような特定の実施形態では、最初にmRNAが細胞または組織サンプルから抽出され、続いてcDNAに変換されて、マイクロアレイとハイブリダイズされる。そのような特定の実施形態では、マイクロアレイに特異的に結合するcDNAの有無が変異B‐rafポリペプチドの有無を示す。そのような特定の実施形態では、1つ以上の変異B‐rafポリペプチドの発現レベルは、マイクロアレイに特異的に結合するcDNAの量を定量化することにより評価される。
【0111】
特定の実施形態では、1つもしくは複数の変異K‐rasポリペプチドに特異的な1つもしくは複数の結合剤を含むマイクロアレイを提供する。そのような特定の実施形態では、細胞または組織における1つもしくは複数の変異K‐rasポリペプチドの有無が評価される。そのような特定の実施形態では、細胞または組織における1つもしくは複数の変異K‐rasポリペプチドの量が評価される。
【0112】
特定の実施形態では、1つもしくは複数の変異B‐rafポリペプチドに特異的な1つもしくは複数の結合剤を含むマイクロアレイを提供する。そのような特定の実施形態では、細胞または組織における1つもしくは複数の変異B‐rafポリペプチドの有無が評価される。そのような特定の実施形態では、細胞または組織における1つもしくは複数の変異B−rafポリペプチドの量が評価される。
【0113】
実施された実験および達成された結果を含む以下の実施例は、例示目的のためのみに提供されるのであって、特許請求の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0114】
実施例1
パニツムマブ治療に対する転移性結腸直腸腺癌の反応
転移性結腸直腸癌を有するする25人の患者からの腫瘍を、パニツムマブ(Amgen, Thousand Oaks, CA)の臨床試験に組み入れた。患者全員が、EGFrを発現する転移性結腸直腸癌およびDAKO EGFRPharmDXキット(DakoCytomation, Glostrup, Denmark)を用いた免疫組織化学法により1%以上EGFr染色した悪性細胞を有した。
【0115】
オキサリプラチンおよびイリノテカン療法に耐性を示す患者の第三選択薬剤または第四選択薬剤として、進行が認められるまで2週間ごとに6mg/kgのパニツムマブを患者に静脈内投与した。CTまたはMRIを用いて腫瘍反応を評価し、腫瘍の大きさに基づいて、完全奏功、部分奏功、安定、または進行を同定するためのガイドラインを提供するRECIST(固形癌治療効果判定基準)を用いて統計学的に分析した(例えば、Therasse et al., February 2000, “New Guidelines to Evaluate the Response to Treatment in Solid Tumors,” J. Natl. Cancer Inst. 92(3): 205‐216を参照されたい)。
【0116】
表1に示すように、25人の患者のうち、4人が治療に対して部分奏功を示し、8人が安定を示し、13人が進行を示した。
【0117】
(表1)パニツムマブを用いて治療した転移性結腸直腸癌を有する患者の臨床的特徴

PR=部分奏功、SD=安定、PD=進行
【0118】
実施例2
転移性結腸直腸癌を有する患者におけるK−ras、B−raf、およびEGFrの変異解析
K−ras、B−raf、および/またはEGFr変異が、転移性結腸直腸癌のパニツムマブに対する反応と相関しているかどうかをを判定するために、各患者からのK−rasのエクソン2、B−rafのエクソン15および21、ならびにEGFrのエクソン9および20を配列決定した。
【0119】
各患者ごとに、パラフィン包埋した10ミクロンのサンプルを調製した。2ミクロンの切片を脱パラフィンし、ヘマトキシリン・エオシンで染色して詳細な形態について分析した。腫瘍組織を示す領域をマークして、Moroni et al. Lancet Oncol. 6: 279−286 (2005)に記載されるように、組織からDNA抽出を行った。
【0120】
エクソン特異的プライマーおよび配列決定プライマーは、Primer3ソフトウェア(http://frodo.wi.mit.edu/cgi−bin/primer3/primer3_www.cgi)を使用して設計され、Invitrogen社によって合成された。K‐rasのエクソン2、B‐rafのエクソン15および21、ならびにEGFrのエクソン9および20を、各エクソンに特異的なプライマーを用いてPCRにより増幅した。当業者は、K‐rasおよびB‐rafの遺伝子配列決定を用いて、適切なプライマーを設計することができる。
【0121】
野生型K‐rasポリペプチド配列を図2Aに示す(配列番号2、Genbank受入(Accession)番号NP_004976)。野生型K‐ras cDNA配列もまた図2Aに示す(配列番号1、Genbank受入番号NM_004985)。ゲノムの野生型K‐rasヌクレオチド配列は、Genbank受入番号NM_004985に見られる。
【0122】
野生型B‐rafポリペプチド配列を図3Bに示す(配列番号18、Genbank受入番号NP_004324)。野生型B‐raf cDNA配列を図3Aに示す(配列番号17、Genbank受入番号NM_004333)。ゲノムの野生型B−rafヌクレオチド配列は、例えば、Genbank受入番号NT_007914.14に示される。
【0123】
野生型EGFrポリペプチド配列は、例えば、図6CのPCT公開番号WO 2006/091899 A1(Genbank受入番号AAS83109)に示される。野生型EGFrのcDNA 配列は、例えば、図6Aおよび6BのPCT公開番号WO 2006/091899 A1(Genbank受入番号AC006977)に示される。ゲノムの野生型EGFrのヌクレオチド配列は、Genbank受入番号AC073324に見られる。
【0124】
以前に記載した腫瘍のゲノムDNAからエクソン特異的領域を増幅するための条件下において、タッチダウンPCRプログラムを用いて20μlの量でPCRを行った。例えば、Bardelli et al., Science 300: 949 (2003)を参照されたい。BigDye(登録商標)Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)を用いて精製したPCR産物を配列決定し、3730 ABIキャピラリー電気泳動システム上で分析した。患者13からの腫瘍組織は量が限られており、すべてのエクソンについて変異解析を行うことは技術的に不可能であった。
【0125】
上記解析の結果を表2に示す。
【0126】
(表2)転移性結腸直腸癌のK−ras、B−raf、およびEGFr変異解析

【0127】
25個の腫瘍のうち、10個すなわち40%にK‐ras変異が検出された。それらの変異のうちの6個がコドン12にあり、4個はコドン13にあった。
【0128】
25個の腫瘍のうち、6個すなわち24%にB‐raf変異が検出された。すべてのB‐raf変異はコドン600(以前に記載したV599E変異)にあった。テストした25個の癌にEGFr変異は認められなかった。
【0129】
総合すると、合計で64%の腫瘍が、K‐rasまたはB‐rafのいずれかに変異を有していた(しかし、分析した腫瘍で、その両方に変異を有するものは存在しなかった)。K‐rasまたはB‐raf変異のいずれかを伴う16個の腫瘍のうち、パニツムマブ治療に対する反応を示したのはわずか1個すなわち6%であった。K‐rasまたはB‐raf変異を伴う残り15個すなわち94%の腫瘍は、パニツムマブ治療後、進行または安定のいずれかを示した。反対に、K‐rasまたはB‐raf変異の見られなかった9個の腫瘍のうち、3個すなわち33%は、パニツムマブ治療に対する反応を示した。
【0130】
それらのデータを図1にまとめる。この分析において、K−rasコドン12もしくは13またはB‐rafコドン600における変異は、パニツムマブ治療に対する無反応性と相関性があった。
【0131】
本明細書に開示される詳細および本発明の実践を考慮すると、当業者には他の実施形態が明白になる。本明細書および実施例は例示目的のみであると見なされることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に患者が無反応であるかどうかを予測する方法であって、前記患者の腫瘍においてK‐ras変異の有無を決定するステップを含み、前記K‐ras変異はコドン12またはコドン13にあり、かつK‐ras変異が存在する場合は、前記患者はEGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に無反応であることが予測される、方法。
【請求項2】
腫瘍においてK‐ras変異の有無を決定する前記ステップが、前記腫瘍からK‐ras核酸を増幅するステップと、前記増幅された核酸の配列を決定するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記EGFrポリペプチド特異的結合剤が、EGFrに対する抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記EGFrに対する抗体がパニツムマブである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
腫瘍においてK‐ras変異の有無を決定する前記ステップが、変異K‐rasポリペプチド特異的結合剤を用いて、前記腫瘍のサンプルにおいて変異K‐rasポリペプチドを検出するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記K‐ras変異が、G12S、G12V、G12D、G12A、G12C、G13A、およびG13Dから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
EGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に腫瘍が無反応であるかどうかを予測する方法であって、前記腫瘍のサンプルにおいてK‐ras変異の有無を決定するステップを含み、前記K‐ras変異はコドン12またはコドン13にあり、かつ前記K‐ras変異の存在は、EGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に前記腫瘍が無反応であることを示唆する、方法。
【請求項8】
前記腫瘍のサンプルにおいてK‐ras変異の有無を決定する前記ステップが、前記腫瘍からK‐ras核酸を増幅するステップと、前記増幅された核酸の配列を決定するステップとを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記EGFrポリペプチド特異的結合剤が、EGFrに対する抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記EGFrに対する抗体がパニツムマブである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記腫瘍のサンプルにおいてK‐ras変異の有無を決定する前記ステップが、変異K‐rasポリペプチド特異的結合剤を用いて変異K‐rasポリペプチドを検出するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記K‐ras変異が、G12S、G12V、G12D、G12A、G12C、G13A、およびG13Dから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
EGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に患者が無反応であるかどうかを予測する方法であって、前記患者の腫瘍においてB‐raf変異の有無を決定するステップを含み、前記B‐raf変異はコドン600にあり、かつB‐raf変異が存在する場合は、前記患者はEGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に無反応であることが予測される、方法。
【請求項14】
腫瘍においてB‐raf変異の有無を決定する前記ステップが、前記腫瘍からB‐raf核酸を増幅するステップと、前記増幅された核酸の配列を決定するステップとを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記EGFrポリペプチド特異的結合剤が、EGFrに対する抗体である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記EGFrに対する抗体がパニツムマブである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
腫瘍においてB‐raf変異の有無を決定する前記ステップが、変異B‐rafポリペプチド特異的結合剤を用いて、前記腫瘍のサンプルにおいて変異B‐rafポリペプチドを検出するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記B−raf変異がV600Eである、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
EGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に腫瘍が無反応であるかどうかを予測する方法であって、前記腫瘍のサンプルにおいてB‐raf変異の有無を決定するステップを含み、前記B‐raf変異はコドン600にあり、かつ前記B‐raf変異の存在が、前記腫瘍がEGFrポリペプチド特異的結合剤に無反応であることを示唆する、方法。
【請求項20】
前記腫瘍のサンプルにおいてB‐raf変異の有無を決定する前記ステップが、前記腫瘍からB‐raf核酸を増幅するステップと、前記増幅された核酸の配列を決定するステップとを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記EGFrポリペプチド特異的結合剤が、EGFrに対する抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記EGFrに対する抗体がパニツムマブである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記腫瘍の前記サンプルにおいてB‐raf変異の有無を決定する前記ステップが、変異B‐rafポリペプチド特異的結合剤を用いて変異B‐rafポリペプチドを検出するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記B‐raf変異がV600Eである、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
EGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に患者が無反応であるかどうかを予測する方法であって、前記患者の腫瘍においてK‐ras変異の有無を決定するステップであって、前記K‐ras変異はコドン12またはコドン13にあるステップと、前記患者の腫瘍においてB‐raf変異の有無を決定するステップであって、前記B‐raf変異はコドン600にあるステップとを含み、K‐ras変異およびB‐raf変異のうちの少なくとも1つが存在する場合は、前記患者はEGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に無反応であることが予測される、方法。
【請求項26】
腫瘍においてK‐ras変異の有無を決定する前記ステップが、前記腫瘍からK‐ras核酸を増幅するステップと、前記増幅された核酸の配列を決定するステップとを含み、かつ腫瘍においてB‐raf変異の有無を決定する前記ステップが、前記腫瘍からB‐raf核酸を増幅するステップと、前記増幅された核酸の配列を決定するステップとを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記EGFrポリペプチド特異的結合剤が、EGFrに対する抗体である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記EGFrに対する抗体がパニツムマブである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
腫瘍においてK‐ras変異の有無を決定する前記ステップが、変異K−rasポリペプチド特異的結合剤を用いて、前記腫瘍のサンプルにおいて変異K‐rasポリペプチドを検出するステップを含み、かつ腫瘍においてB‐raf変異の有無を決定する前記ステップが、変異B‐rafポリペプチド特異的結合剤を用いて、前記腫瘍のサンプルにおいて変異B‐rafポリペプチドを検出するステップを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記K‐ras変異が、G12S、G12V、G12D、G12A、G12C、G13A、およびG13Dから選択され、かつ前記B‐raf変異がV600Eである、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
EGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に腫瘍が無反応であるかどうかを予測する方法であって、前記腫瘍のサンプルにおいてK‐ras変異の有無を決定するステップであって、前記K‐ras変異はコドン12またはコドン13にあるステップと、B‐raf変異の有無を決定するステップであって、前記B‐raf変異はコドン600にあるステップとを含み、かつ前記K−ras変異および前記B‐raf変異のうちの少なくとも1つの存在が、EGFrポリペプチド特異的結合剤を用いる治療に前記腫瘍が無反応であることを示唆する、方法。
【請求項32】
前記腫瘍のサンプルにおいてK‐ras変異の有無を決定する前記ステップが、前記腫瘍からK‐ras核酸を増幅するステップと、前記増幅された核酸の配列を決定するステップとを含み、かつ前記腫瘍のサンプルにおいてB‐raf変異の有無を決定する前記ステップが、前記腫瘍からB‐raf核酸を増幅するステップと、前記増幅された核酸の配列を決定するステップとを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記EGFrポリペプチド特異的結合剤が、EGFrに対する抗体である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記EGFrに対する抗体がパニツムマブである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
腫瘍においてK‐ras変異の有無を決定する前記ステップが、変異K‐rasポリペプチド特異的結合剤を用いて、前記腫瘍のサンプルにおいて変異K‐rasポリペプチドを検出するステップを含み、かつ腫瘍においてB‐raf変異の有無を決定する前記ステップが、変異B‐rafポリペプチド特異的結合剤を用いて、前記腫瘍のサンプルにおいて変異B‐rafポリペプチドを検出するステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記K‐ras変異が、G12S、G12V、G12D、G12A、G12C、G13A、およびG13Dから選択され、かつ前記B‐raf変異がV600Eである、請求項31に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【公表番号】特表2010−521154(P2010−521154A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553625(P2009−553625)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/003327
【国際公開番号】WO2008/112274
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(506147331)アムゲン インコーポレイティッド (27)
【Fターム(参考)】