説明

L−カルニチンの単離精製方法

【課題】工業的規模で実施可能な簡便で効率的なL-カルニチンの単離精製法を提供することを目的とする。
【解決手段】以下の工程を含むL-カルニチンの単離精製方法。
(1)L-カルニチン水溶液を調整する工程
(2)第1の工程で得られる調整液からL-カルニチンを結晶化する工程
(3)第2の工程で得られる母液又は母液に含まれるL-カルニチンを第1の工程及び/又は第2の工程に循環使用する工程
さらに、第2の工程終了後、得られるL-カルニチン結晶を再結晶させる工程を含む、L-カルニチンの単離精製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、L-カルニチンの水溶液からL-カルニチンを単離精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
L-カルニチン単離精製の方法としては、カルニチン水溶液を陽イオン交換カラムに通すことでカルニチンとカルニチンアミドを分離した後、溶媒を留去しL-カルニチンを回収する方法(特許文献2)、電気透析又はイオン交換樹脂を用いてクロトノベタインを含むL-カルニチン溶液から脱塩を行った後、水を完全に留去し、イソブタノール/アセトンから再結晶する方法(特許文献4)、粗L-カルニチンを95%エタノール、無水エタノール又はイソプロパノールとアセトンから再結晶し、L-カルニチンを得る方法(特許文献5)などが知られている。
【0003】
一般に、アルコール系溶媒からL-カルニチンを得る公知の方法では、L-カルニチンの水溶液から水を完全に留去し、その後、その乾固物を再結晶する方法を取っている。これらの方法は操作が煩雑であるばかりでなく、L-カルニチンは吸湿性が高く、且つ乾固した結晶はスケーリングしやすいため、操作性が悪く、工業化には課題が多い。
【0004】
さらに、L-カルニチンの晶析母液を有効利用する方法として、L-カルニチンを結晶化母液をより二番晶を得る方法(特許文献1、特許文献3)が知られている。しかし、本方法は二番晶を得る前に母液の濃縮操作が別途必要となり、回収される2番晶以降のL-カルニチンについては、原理的に品質が下がることが容易に推定される。
【特許文献1】特開昭63−185947
【特許文献2】特開平1−287065
【特許文献3】特開平1−213259
【特許文献4】特開昭61−199793
【特許文献5】WO2006/028068
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、工業的規模で実施可能で、且つ簡便で効率的なL-カルニチンの単離精製法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、L-カルニチンの結晶化母液及び/又は再結晶母液を上流工程に循環利用することで、L-カルニチンを高い収率で回収できること、さらには、特定の溶媒を用いて結晶化及び再結晶実施することで、母液の循環利用が簡便に実施できるばかりでなく、効率的な精製および生産性の向上が達成できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は、以下の工程を含むL-カルニチンの単離精製方法である。
【0007】
(1)L-カルニチン水溶液を調整する工程
(2)第1の工程で得られる調整液からL-カルニチンを結晶化する工程
(3)第2の工程で得られる母液又は母液に含まれるL-カルニチンを第1の工程及び/又は第2の工程に循環使用する工程
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、工業的規模での実施が可能可能なL-カルニチンの水溶液から簡便で効率的に、L-カルニチンを単離精製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0010】
(1)L-カルニチン水溶液の調製
本発明において精製に使用されるL-カルニチンは特に限定されないが、ラセミのカルニチン又はカルニチンニトリル、カルニチンアミド、カルニチンアルキルエステルなどのカルニチン誘導体を光学分割したもの、光学活性なカルニチン前駆体からL-カルニチンを合成したもの、カルニチン誘導体から不斉合成して得られたL-カルニチン、発酵によってL-カルニチンを生産させたものなど、さらに、その後イオン交換カラム、電気透析等の精製工程を経たもの等、公知の技術で製造されたL-カルニチンの水溶液を用いることができる。
【0011】
本発明において、L-カルニチン水溶液は、L-カルニチンの濃度として5〜90%に調整された水溶液である。また、必要に応じて、加熱及び/又は減圧などの操作によって濃縮することができる。
【0012】
濃縮時の温度は好ましくは10〜150℃であるが、低温では時間がかかり、また高温ではL-カルニチンの収率低下及び純度の低下があることから、より好ましくは20〜70℃で行われる。また、常圧以下であれば減圧度は特に限定されないが、好ましくは0〜66.7kPa、濃縮速度の観点から好ましくは0〜26.7kPaの範囲で行うことができる。
【0013】
濃縮液のL-カルニチンの濃度としては、30〜90%の範囲に調整することが好ましい。この範囲であれば、次工程の溶媒置換で用いられる溶媒の使用量を抑えることができる。また、後に続く結晶化工程の前に濃縮液中でL-カルニチンが固化、析出することを避けるために、濃縮液の濃度は、40〜80%の範囲に調整することが特に好ましい。そうすることで、L-カルニチン水溶液が液体状態で取扱可能となり、操作上の諸課題を回避できるとともに、効率良く次工程を行うことができる。
【0014】
また、L-カルニチン水溶液は、D-カルニチン及び/又はクロトノベタイン等の不純物を含有する場合がある。本発明では、このような不純物を有するL-カルニチンを効果的に単離精製することが可能となる。
【0015】
不純物の含有量は、L-カルニチンの単離精製の目的が達成できる範囲であれば、特に制限はないが、より効果が発揮できる範囲としては、含有されるD-カルニチン及び/又はクロトノベタインは、L-カルニチンに対して0〜10%である。より好ましい範囲として0〜6%である。
【0016】
さらにL-カルニチン水溶液は無機塩を含む場合がある。本発明者は、カルニチンが溶解した溶液は予想量を超える塩類を溶解することを見出している。このような水溶液であっても、後に続く結晶化又は再結晶工程により、L-カルニチンを単離精製することが可能である。無機塩の含有量について、単離精製の目的が達成できる範囲であれば、特に制限はないが、効果が発揮できる範囲としては、文献値等から推定される通常の許容量の0〜10倍である。より好ましい範囲として0〜5倍である。
【0017】
L-カルニチン水溶液のpHは特に限定されないが、好ましくは5〜10である。より好ましくは6〜9である。また、このようなpHになるよう、調整して後の工程に用いることができる。
【0018】
(2)L-カルニチン水溶液の調整液からL-カルニチンを結晶化する工程
本発明において、結晶化工程とは、上述のごとく調製されたL-カルニチン水溶液から、L-カルニチンの結晶を取得する工程である。具体的には、L-カルニチン水溶液に水以外の溶媒を添加した後、さらに加熱、濃縮、溶媒置換又は冷却工程等の操作を行い、結晶を得る工程をいう。
【0019】
ここで溶媒置換とは、カルニチン溶液の溶媒を、該溶媒とは異なる溶媒に置き換える操作をいう。例えば、複数の溶媒の混合液から沸点の低い溶媒を濃縮により除去する操作、共沸組成のある溶媒を濃縮操作により除去し、一方の溶媒を残留させる操作、又は乾固しない範囲で充分濃縮した溶液に、溶媒と相互溶解度の有る溶媒を加えることで該溶媒の溶液とする操作などがあげられる。具体的には、L-カルニチン水溶液に水以外の単一あるいは複数の溶媒を添加した後、最終的には水を除去し、結晶化に用いる溶媒に置き換える操作を指す。
【0020】
本発明において、L-カルニチン水溶液に添加する水以外の溶媒と最終的に結晶化に用いる溶媒は、経済面から同一であることが好ましく、そのように条件を設定することで、L-カルニチン水溶液に水以外の溶媒を添加した後、水を除き、その溶媒に置き換える操作のみで効率的に結晶化が達成できる。
【0021】
使用される溶媒は、L-カルニチンが経口摂取される場合があるため、無毒性または低毒性の溶媒であることが好ましいが、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチルなどのエステル系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどの塩素系溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドなどである。
【0022】
好ましくは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール等の低級アルコール類である。水の沸点より高い溶媒又は共沸組成のある溶媒であれば、効率よく水を除去できることから、さらに好ましい。
【0023】
本発明にあっては、溶媒として1-ブタノール、イソブタノールを使用し、且つ特定条件を選択することで、L-カルニチンの晶析による光学純度の向上が効率的に達成できることを見出しており、最も好適である。
【0024】
また、これら溶媒は二種類以上の混合してもよい。そのような混合溶媒は上記溶媒から二種類以上選択される。好ましくは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノールなどのアルコール系溶媒類に、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、又はアセトニトリル、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドなどを添加する例、又はアルコール系溶媒内での2種類以上の組み合わせの例である。1-ブタノール又はイソブタノール及びメタノール又はエタノールの組み合わせによる混合溶媒を用いることで、光学純度の向上の観点および母液の効率的循環利用の観点から、最も好ましい。
【0025】
溶媒の混合の比率に特に制限はないが、例えば、1-ブタノール又はイソブタノール中、0.1%〜50%の範囲で含むことができる。より好ましくは0.1%〜20%であれば効果的に溶媒置換および結晶化を行うことができる。
【0026】
L-カルニチン水溶液への該溶媒の添加方法は、特に限定されなく、L-カルニチンの水溶液に該溶媒を添加することもできるし、該溶媒にL-カルニチンの水溶液を一括または数回に分けて添加してもよい。または、該溶媒およびL-カルニチンの調整液をそれぞれ数回に分けて添加してもよい。添加方法を工夫することで生産性良く結晶化を行うことができる。また、二種類以上の混合溶媒であれば、予め混合したものを用いることもできるが、途中で一括又は個々の溶媒を数回に分けて添加することもできる。
【0027】
結晶化溶媒へ溶媒置換の温度は特に制限はなく、通常5℃〜150℃で実施できる。本発明においては、80℃より高温では、L-カルニチン収率の低下又はL-カルニチン純度の低下が観測されることがある。一般には影響のない範囲であるが、本発明の循環再利用時には、その熱履歴による微細な変化が影響することが示されている。また、低い温度では溶媒置換中に結晶が急激に発生し、固化することがある。よって本発明を効果的に実施するに当たっては、80℃以下が良く、より好ましくは20〜70℃の範囲で用いることで品質の低下なくかつ効率的に溶媒置換することができる。減圧度は特に限定されないが0〜66.7kPa、濃縮速度の観点から好ましくは0〜26.7kPaの範囲で行うことができる。
【0028】
使用される溶媒の量は、特に制限はないが、カルニチン水溶液の水の量、添加される溶剤の種類、最終的に結晶化(析出)時の条件等を勘案して適宜決定される。
【0029】
特に本発明においては、水以外の溶媒を添加した後、結晶化(析出)が進行する前に均一な溶液の状態を経ることで、より純度の高いL-カルニチン結晶を得ることができる。したがってL-カルニチンに対して溶媒の量が3〜20倍量であることが好ましい。また、より好ましくは4〜10倍量であれば、均一な溶液状態を経て効率的に結晶を得ることができると共に、結晶化の際に結晶が急激に析出することを回避することができる。
【0030】
また、前記均一な溶液状態で微量のL-カルニチン結晶を添加することで、微細な結晶の発生を抑制し、結晶径をコントロールさせることが可能である。
【0031】
本発明において、結晶化させる溶液の最終的な組成に特に制限はないが、好ましくは、結晶化完了時の水の量が1%以下となるまで行われる。水が多量に残留した場合、カルニチンの収率低下および光学純度低下が生じることが判明しており、より好適には0.5%以下となるまで水を除くことが行うことが好ましい。なお、本発明において、結晶化溶媒への置換操作の途中に、一部L-カルニチンの結晶の析出が開始する場合があり、その場合、前記水の量は好ましい範囲を外れることがあるが、最終的な結晶化完了時の水の量をコントロールすることで、光学純度の向上が達成できることが明らかとなっている。
【0032】
また、結晶化完了時のL-カルニチン含量に関してはスラリー濃度が1〜70%であれば、流動性を確保しながら固液分離を行うことができる。好ましくは、20〜50%のスラリー濃度で行うことで、効率的に実施できる。
【0033】
上記の結晶化(晶析)は、結晶化溶媒への溶媒置換の前後又は溶媒置換と平行して冷却を行うことで、効率よく結晶を得ることができる。好ましくは、結晶化溶媒への溶媒置換後に冷却を行うことで収率よくL-カルニチンを取得することができる。
【0034】
本発明において、カルニチン溶液の冷却速度は特に限定されないが、急激に冷却することで微細晶が発生し濾過性を悪化させることから2.0℃/minよりも遅い速度で行うことが好ましい。より好ましくは、0.05℃/min〜1.0℃/minの範囲であれば濾過性を悪化させることなく、工業的に好ましい速度で操作することができる。
【0035】
得られた結晶化完了液からの固液分離は特に限定されないが例えば、遠心分離、加圧濾過等の方法で分離することができる。また、L-カルニチンの結晶は高い吸湿性を有するため、乾燥空気、乾燥窒素など雰囲気下で実施することが好ましい。
【0036】
分離された結晶は、特に限定されないが洗浄(リンス、リパルプ、リスラリー)することができる。好ましくはエタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール等のアルコール系溶媒、結晶化溶媒と同一の溶媒、又は、再結晶工程から得られる再結晶母液などを用いて洗浄することができる。さらに好ましくは、1-ブタノール、イソブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、結晶化溶媒と同一の溶媒又は再結晶工程から得られる再結晶母液を用いることで効率的に洗浄することができる。
【0037】
リンスに用いた溶液も後述する結晶化母液を循環利用する工程に記載の結晶化母液として循環利用可能である。
【0038】
得られた結晶は必要に応じて、乾燥することができる。例えば80℃以下で加熱しながら、必要に応じて、常圧又はアスピレーターや真空ポンプ等の減圧が可能な装置を用いて減圧することで、残留する溶媒を除去することができるが、本結晶化工程に続き次の再結晶を続けて行う場合はこの操作を省くことができる。
【0039】
(3)結晶化母液を循環利用する工程
上記結晶化で生じた分離母液は、特に限定されないが、そのまま循環利用する、一部溶媒を留去した後に循環利用する、又は溶媒をほぼ留去した後に循環利用することができる。好ましくは、母液をそのまま循環利用することで、結晶化溶媒および母液に含まれるL-カルニチンを同時に再利用することが可能となり、効率的に実施できる。
【0040】
一部溶媒を留去した母液とは、流動性を有したL-カルニチンを含む溶液であり、結晶が析出していても構わない。
【0041】
母液を循環利用のために供給する工程は、L-カルニチン水溶液を調整する工程へ循環させる場合については、分離母液中の溶媒をほぼ留去した後のL-カルニチンを水溶液調整の原料として循環再利用することができる。
【0042】
L-カルニチンを結晶化する工程へ循環させる場合については、そのまま、一部溶媒を留去したもの又は溶媒をほぼ留去したものを循環再利用させることができる。好ましくは、そのまま又は一部溶媒を留去したものを用いることで、結晶化溶媒および母液に含まれるL-カルニチンを同時に再利用することが可能となり、効率的に実施できる。
【0043】
また、結晶化溶媒への溶媒置換を行う前あるいは完了後に母液を一括で添加することもできるが、溶媒置換の途中に数回に分けて添加することもできる。
【0044】
(4)再結晶する工程
ここで再結晶とは、L-カルニチン結晶を溶媒に溶解させた後に再び結晶を得る操作をいう。再結晶法としては、温度による溶解度差を利用する方法、溶媒を濃縮する方法、溶液中の溶媒の種類を変え溶解度を減少させる方法等が挙げられる。本発明においてはこれらの方法単独あるいは組み合わせにより、L-カルニチン結晶を収率良く得ることができる。
【0045】
結晶化工程で得られた結晶は、L-カルニチンが溶解する溶媒であれば特に限定されないが、溶媒回収の観点から、先の結晶化工程で用いられた溶媒を含む一種類以上の混合溶媒に溶解させることが好ましい。
【0046】
さらに、再結晶母液を効率的に循環利用させる目的においては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノールなどのアルコール系溶媒が用いられる。
【0047】
より好ましくは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノールである。
【0048】
また、再結晶溶媒は二種類以上の溶媒の混合溶媒でも良い。該混合溶媒は、上記溶媒から二種類以上選択される溶媒を混合したもの、又は上記溶媒から一種類以上選択される溶媒に、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチルなどのエステル系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどの塩素系溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド又は水などから選択される溶媒を添加したものを用いることができる。
【0049】
好ましくは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノールから一種類以上選択される混合溶媒又は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノールから一種類以上選択される混合溶媒にアセトン、酢酸エチル、ヘキサン、トルエン、アセトニトリル、水などを添加したものを用いることができる。
【0050】
さらに好ましくは、1−ブタノール又はイソブタノールと水、メタノール又はエタノールを混合した混合溶媒を用いる。
【0051】
混合溶媒の混合比率は、例えば、水、メタノール又はエタノールに対して1−ブタノール又はイソブタノールが、0.01〜1000倍量の範囲で用いることができる。好ましくは1−ブタノール又はイソブタノールが、30〜1000倍量、メタノール又はエタノールに対して1−ブタノール又はイソブタノールが、0.05〜10倍量であれば効率的に溶解させることができる。
【0052】
また、上記溶媒で溶解させた時のL-カルニチンの濃度は、溶液の流動性が維持される範囲であれば制限はないが、濃度が低いと過剰量の溶媒が必要となり、効率的に結晶を得ることが難しいことから、5〜70%の範囲で用いることが好ましい。また、工業的利用の観点から、10〜60%がより好ましい範囲である。
【0053】
L-カルニチンを混合溶媒に溶解させる方法としては、予め混合した溶媒を一括で添加して溶解させることもできるが、溶媒を分割して添加することもできる。
【0054】
L-カルニチン結晶を溶解させる温度は、特に制限はなく、通常5℃〜150℃で実施できる。本発明においては、80℃より高温では、L-カルニチン収率の低下又はL-カルニチン純度の低下が観測されることがある。一般には影響のない範囲であるが、本発明の循環再利用時には、その熱履歴による微細な変化が影響することが示されている。したがって、20〜80℃の範囲で溶解させることが好ましい。
【0055】
L-カルニチン溶液から結晶を得る操作としては、L-カルニチンを溶解させた溶液から、濃縮操作、溶媒置換操作及び冷却操作を組み合わせることで結晶を得ることができる。本発明においては、L-カルニチンを溶解させた溶液を冷却し結晶を析出させ、さらに、濃縮、溶媒置換の操作を行うことでL-カルニチンの結晶を取得する方法又は、L-カルニチンを溶解させた溶液を濃縮、溶媒置換を行い、その後冷却しL-カルニチンの結晶を取得するなどの方法を行うことができる。濃縮の速度又は冷却速度を制御し、結晶径をコントロールすることもできる。また、温度を下げる途中又は濃縮を行う途中で微量のL-カルニチン結晶を添加することで微細な結晶の発生を抑制し、結晶径を向上させることが可能である。
【0056】
濃縮を行う場合、温度は特に制限はなく、通常5℃〜150℃で実施できる。本発明においては、80℃より高温では、L-カルニチン収率の低下又はL-カルニチン純度の低下が観測されることがある。一般には影響のない範囲であるが、本発明の循環再利用時には、その熱履歴による微細な変化が影響することが示されている。また、低温では濃縮速度が遅いことから、80℃以下が良く、特に限定されないが、20〜70℃の範囲で用いることで品質の低下なくかつ効率的に濃縮することができる。
【0057】
濃縮を行う時の減圧度は特に限定されないが0〜66.7kPa、濃縮速度の観点から好ましくは0〜26.7kPaの範囲で行うことができる。
【0058】
再結晶させる溶液の最終的な組成に制限はないが、例えば、水の濃度が0.5%以下、メタノール又はエタノールの比率が0〜30%となるまで行われる。水が多量に残留した場合、カルニチンの収率低下および光学純度低下が生じることが判明しており、より好適には0.2%以下となるまで水を除くことが行うことが好ましい。
【0059】
また、この時、スラリー濃度が1〜70%であれば、流動性を確保しながら固液分離を行うことができる。好ましくは、20〜50%のスラリー濃度で行うことで、効率的に実施できる。
【0060】
冷却を行う場合、L-カルニチン溶液の冷却速度は特に限定されないが、急激に冷却することで微細晶が発生し濾過性を悪化させることが確認されていることから、2.0℃/minよりも遅い速度で行うことが好ましい。より好ましくは、0.05℃/min〜1.0℃/minの範囲であれば濾過性を悪化させることなく、工業的に好ましい速度で操作することができる。
【0061】
本発明においては、L-カルニチンの溶解度の高い溶媒と、該溶媒よりL-カルニチンの溶解度の低い溶媒の組み合わせから、L-カルニチンの溶解度の高い方の溶媒を優先的に留去することで効率よくL-カルニチンを取得することができる。
【0062】
特に好ましい例として、二種類のアルコール系溶媒を使用した場合では、L-カルニチンをメタノール又はエタノールに溶解させ、その後、1−ブタノール又はイソブタノールを添加し、減圧下で濃縮し、メタノール又はエタノールを留出させ、1−ブタノール又はイソブタノールの溶液へ置換することで、L-カルニチンの結晶を得ることができる。さらに、その溶液を冷却することでより収率良くL-カルニチンを得ることができる。
【0063】
このようにして得られるカルニチン再結晶分離母液はカルニチンを含む1−ブタノール又はイソブタノールとして、回収再利用が極めて効果的に実施できる。
【0064】
得られた再結晶完了液からの固液分離は特に限定されないが例えば、遠心分離、加圧濾過等の方法で分離することができる。また、L-カルニチンの結晶は高い吸湿性を有するため、乾燥空気、乾燥窒素など雰囲気下で実施することが好ましい。
【0065】
分離された結晶は、特に限定されないが洗浄(リンス、リパルプ、リスラリー)することができる。好ましくはエタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール等のアルコール系溶媒又は結晶化溶媒と同一の溶媒などを用いて洗浄することができる。さらに好ましくは、1-ブタノール、イソブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノールを用いることで効率的に洗浄することができる。
【0066】
リンスに用いた溶液も再結晶母液として循環利用可能である。
【0067】
得られた結晶は必要に応じて、乾燥することができる。例えば80℃以下で加熱しながら、必要に応じて、常圧又はアスピレーターや真空ポンプ等の減圧が可能な装置を用いて減圧することで、残留する溶媒を除去することができる。
【0068】
また、該再結晶工程は1回以上繰り返して行い、得られる再結晶母液を上述の(3)結晶化母液を循環利用する工程に記載の再結晶母液として循環利用することもできる。
【0069】
(5)再結晶母液を循環利用する工程
上記再結晶で生じた分離母液は、特に限定されないが、そのまま循環利用する、一部溶媒を留去した後に循環利用する、又は溶媒をほぼ留去した後に循環利用することができる。
【0070】
本発明において、再結晶での分離母液から溶媒をほぼ留去した場合、L-カルニチンは極めて流動性の悪いオイル状であったり、取扱の困難な塊状で回収されることが多い。また、流動性のある粉体で回収される場合にあっても、嵩密度が低い上に、吸湿性が高く、条件によっては短時間で潮解することから、工業的に取扱う上で極めて煩雑で、その対策が別途必要になることがわかっている。
【0071】
したがって、再結晶での分離母液は溶液状態とし、流動性を持たせた状態で取り扱うことが好ましく、母液をそのまま、または一部溶媒を留去した後に循環利用することが好ましい。
【0072】
より好ましくは、再結晶での分離母液をそのまま循環利用することで、再結晶溶媒および母液に含まれるL-カルニチンを同時に再利用することが可能となり、効率的に実施できる。
【0073】
一部溶媒を留去した母液とは、流動性を有したL-カルニチンを含む溶液であり、結晶が析出していても構わない。
【0074】
母液を循環利用のために供給する工程は、L-カルニチン水溶液を調整する工程へ循環させる場合については、分離母液中の溶媒をほぼ留去した後のL-カルニチンを水溶液調整の原料として循環再利用することができる。
【0075】
L-カルニチン水溶液からL-カルニチンを結晶化する工程へ循環させる場合については、そのまま、一部溶媒を留去したもの又は溶媒をほぼ留去したものを循環再利用させることができる。好ましくは、そのまま又は一部溶媒を留去したものを用いることで、再結晶溶媒および母液に含まれるL-カルニチンを同時に再利用することが可能となり、効率的に実施できる。
【0076】
L-カルニチンを再結晶する工程へ循環させる場合については、そのまま又は一部溶媒を留去したものを循環させることができるが、好ましくは、そのまま用いることで再結晶溶媒を効率的に再利用できる。
【0077】
循環されるL-カルニチンには、D-カルニチン及び/又はクロトノベタインが含まれていても良い。含まれるD-カルニチン及び/又はクロトノベタインの量は特に制限はないが、連続的に再結晶母液を循環利用した場合、これらが濃縮されることが容易に考えられることから、好ましくはL-カルニチン水溶液中のL-カルニチン又はL-カルニチン結晶中に含まれる量以下である。また、その範囲になるよう結晶化工程又は再結晶工程の条件を調整して実施することが好ましい。
【0078】
より詳細には、D-カルニチンでは、0%〜5%、クロトノベタインでは0%〜1%であれば品質への影響なく、連続的に循環利用することができる。
【0079】
なお、L-カルニチン及びクロトノベタインは以下に示す高速液体クロマトグラフィー条件により容易に測定することができる。詳しくは、
カラム:Nucleosil 100-N(CH3)2 GL science社製 4.6×250mm
移動相:50mM リン酸カリウム(pH4.7):ATN=35:65
流速:1.0ml:min
検出:UV205nm
リテンションタイム:
クロトノベタイン 12-13 min
カルニチン 10-11min
本発明中の水分量は三菱化成(株)製水分計(カールフィッシャー法)を用いて測定を行った。また、その他の溶媒に関してはガスクロマトグラフィーを用いて容易に分析することができる。
【0080】
ここで、上記分析条件から測定された溶液中又は結晶中の濃度は、いずれも重量%で記載する。
L-カルニチンのD-カルニチンに対する過剰率(%ee)は、文献(J. Pharm. Bio. Anal. , 14 (1996)1579-1584 )記載の方法を用いることで、高速液体クロマトグラフィ−による分析結果から算出することができる。
【0081】
詳細には
L-体過剰率(%ee)= (L-カルニチン誘導体面積− D-カルニチン誘導体面積)÷( L-カルニチン誘導体面積+ D-カルニチン誘導体面積)×100
カラム: Ultron ES-OVM, 信和化工社製、2×150 mm,
移動相: アセトニトリル:20mMリン酸カリウム(pH4.5)=17:83
流速:0.2 mL:min
検出:UV 254nm
リテンションタイム:D-カルニチン誘導体6-6.5 min
L-カルニチン誘導体7.5-8.5 min
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。
<実施例1>
【0083】
L-カルニチン10.0gを含む水溶液100.0gを、60℃で加熱し、2.7kPaの減圧下でカルニチンが50%となるまで濃縮した。
【0084】
該濃縮液に1-ブタノールをL-カルニチンの5.5倍量(重量)添加し、60℃で加熱しながら3.3kPaの減圧下で溶媒置換したところ、水分が3%を下回った時点で結晶が発生した。さらに濃縮を続け、最終的に水分が0.2%以下となったところで溶媒置換を終了した。この時L-カルニチンのスラリー溶液の重量は24.4gであった。
【0085】
その後、液温が50℃から20℃となるまで1℃/minの速度で冷却し、0.2MPaの乾燥窒素で加圧濾過で固液分離を行ない結晶を回収した。その後、真空ポンプを用いて50℃、10Paで5時間乾燥させたところ、L-カルニチン結晶が9.5g得られた。
【0086】
次に、得られた結晶化母液21.5gを、上記と同様の方法で作成したL-カルニチンを10g含むL-カルニチン濃縮液に添加し、さらに1-ブタノールを、結晶化母液の混合液を添加後のL-カルニチンに対して3.5倍量添加した後、上記と同様に溶媒置換を行い溶液の重量が25.6gとなったところで溶媒置換を終了した。この時、溶液中の水分量は0.1%であった。上記と同様の方法で冷却、固液分離及び乾燥を行い、得られた結晶を測定したところ、9.98gのL-カルニチンを得た。
<実施例2>
【0087】
L-カルニチン10.0gとD-カルニチンを0.5g含む水溶液100.0gを、実施例1と同様の方法で50%まで濃縮し、次いで1−ブタノールをカルニチンの5.5倍量添加し溶媒置換を行ったところ、当初、水と1−ブタノールの二相であったが、水分量が3.2%となったところで均一な溶液となった。この時のカルニチンの濃度は20%であった。
【0088】
さらに溶媒置換を進めると水分量が3%を下回った時点で結晶が析出し始め、25.6gとなったところで溶媒置換を終了した。溶媒置換後に1−ブタノールをカルニチンに対して1.1倍量追加し、実施例1と同様に冷却、固液分離を行なった。
【0089】
得られた結晶を10℃で冷却した1−ブタノール2.5g及び1.0gでそれぞれリンスを行なった後、実施例1と同様の方法で乾燥を行った。得られたカルニチン結晶は8.4gであった。この時、結晶中のD-カルニチンは0.06gと精製されたL-カルニチンの結晶を得ることができた。
【0090】
次に、得られた結晶化母液及びリンス液を混合したもの27.5gを、上記と同様の方法で作成したL-カルニチン10.0g及びD-カルニチン0.5gを含むカルニチン濃縮液に添加し、さらに1-ブタノールを結晶化母液の混合液を添加後のカルニチンに対して3.3倍量添加した後、上記と同様に溶媒置換を行い、29.6gとなった時点で溶媒置換を終了した。溶媒置換後に1−ブタノールをカルニチンに対して1.5倍量追加し、上記同様冷却、固液分離、リンス及び乾燥を行い結晶を得たところ、9.8gのカルニチンの結晶が得られた。結晶中のD-カルニチンは0.07gであった。
<実施例3>
【0091】
L-カルニチン10.0gとクロトノベタインを0.5g含む水溶液15.0gを、実施例1と同様の方法で50%まで濃縮し、L-カルニチンに対して5.5倍量の1−ブタノールを添加した後実施例1と同様の方法で溶媒置換を行った。溶媒置換終了時で水分を0.2%含むL-カルニチンのスラリー溶液が24.8g得られた。溶媒置換した液に1−ブタノールをL-カルニチンに対して1.8倍量追加し、実施例1と同様の方法で冷却、固液分離を行った。得られた結晶を10℃に冷やした1−ブタノール5.0gで二回リンスを行った後、乾燥させ、L-カルニチン結晶9.0gを得た。この時、結晶中のクロトノベタインの量は0.01gであった。
【0092】
次に、得られた結晶化母液とリンス液を混合したもの40.1gを、上記と同様の方法で作成したL-カルニチン10.0gとクロトノベタイン0.5gを含むL-カルニチン濃縮液に添加し、さらに1−ブタノールを、結晶化母液の混合液を添加後のL-カルニチンに対して1.9倍量添加し上記と同様に溶媒置換を行った。L-カルニチンのスラリー溶液が26.9gとなった時点で溶媒置換を終了した。この時の水分量は0.1%であった。溶媒置換後にL-カルニチンに対して1.7倍量の1−ブタノールを追加し、上記と同様の方法で冷却、固液分離、リンス及び乾燥を行い結晶を得たところ、L-カルニチンの結晶が9.9g得られた。結晶中のクロトノベタインは0.01gであった。
<実施例4>
【0093】
L-カルニチンを100.0g含む水溶液1000.0gを、60℃で加熱し、2.7kPa減圧下で125.0g(L-カルニチンが80%濃度)まで濃縮した。以下濃縮液Aと称する。
【0094】
次に濃縮液Aを62.5g分取し、1-ブタノールをL‐カルニチンに対して4.0倍量となるよう添加し、60℃で加熱しながら3.3kPa減圧下で溶媒置換したところ、水分が3%を下回った時点で結晶が発生した。さらに濃縮を続け結晶を析出させ、122.0gとなったところで溶媒置換を終了した。このとき溶液中の水分が0.1%であった。さらにL-カルニチンに対して0.5倍量の1−ブタノールを添加した。
【0095】
その後、実施例1と同様に冷却を行った後、0.2MPaの乾燥窒素で加圧濾過を行った。その後、結晶を回収したところ乾燥重量で47.3gのL-カルニチン結晶が得られた。
【0096】
得られた結晶を60℃でL-カルニチン結晶と等量(重量)のメタノールに溶解させ、メタノール:1−ブタノール比率が1:3となるよう1−ブタノールを添加し、60℃で加熱しながら、6.7kPaで濃縮を行った。溶液中のメタノール量が0.3%となったところで濃縮を終わらせた。この時のスラリー溶液の量は159.0gであった。その後、液温を38℃から1℃/minの冷却速度で20℃まで冷却した後、0.2MPaの乾燥窒素で加圧濾過を行い、結晶を回収した。真空ポンプを用いて50℃、10Pa で5時間乾燥させ、結晶を回収したところ、L-カルニチンの結晶が44.7g得られた。
【0097】
次に、再結晶で得られた母液114.3g全量を濃縮液Aの残り62.5gに添加し、さらに1-ブタノールを、母液を添加した後のL‐カルニチンに対して1.9倍量添加し、上記と同様の方法で溶媒置換を行った。L-カルニチンのスラリー溶液が129.0gとなったところで溶媒置換を終了した。この時水分量は0.1%であった。さらに母液を添加した後のL-カルニチンに対して0.5倍量の1−ブタノールを添加し、上記と同様に冷却、固液分離を行ったところ、L-カルニチン結晶が乾燥重量で50.2g得られた。
【0098】
得られた結晶にL-カルニチンに対して等量のメタノールを添加し結晶を溶解させ、その後メタノールの3倍量の1−ブタノールを添加した後、上記と同様の方法で濃縮を行った。L-カルニチンのスラリー溶液が168.0gとなったところで濃縮を終了したところ、含まれるメタノールは0.3%であった。このスラリー溶液を上記と同様に冷却、固液分離及び乾燥させたところ、L-カルニチンの結晶が47.3g得られた。
<実施例5>
【0099】
L-カルニチンを100.0gとD-カルニチンを4.2g含む水溶液1000.0gを、実施例4と同様に130.3gまで濃縮した。以下濃縮液Bと称する。
【0100】
次に濃縮液Bを65.1g分取し、カルニチンに対して4.0倍量の1−ブタノールを添加し、60℃で加熱しながら内温を50℃以上で維持するように6.7〜8.0kPaの減圧下で溶媒置換を行った。スラリー溶液の重量が132.0gとなったところで溶媒置換を終了した。実施例4と同様の方法で冷却、固液分離を行い、得られた結晶を10℃に冷却した1−ブタノールを10.0g、4.0gを用いて二回リンスを行った。結晶を回収したところ、カルニチン結晶が56.7g得られた。含液率は23%であった。
【0101】
得られた結晶を実施例4と同様の方法で再結晶操作を行い、スラリー溶液の重量が169.8gとなったところで濃縮を終了した。この時、溶液中に含まれるメタノールは8%であった。スラリー溶液を実施例4と同様の方法で冷却、固液分離を行った後、10℃に冷却した1−ブタノールを10.0g、5.0gを用いて二回リンスを行い結晶を回収した。これを実施例4と同様に乾燥ところ、カルニチンの結晶が35.6g得られた。D-カルニチンは検出されず、L-カルニチンの結晶が得られた。この時、再結晶母液中に、L-カルニチンが8.0g、D-カルニチンが0.3g含まれていた。
【0102】
次に、再結晶で得られた母液とリンス液を混合したもの126.0gを全量濃縮液Bの残り65.1gに添加し、さらに母液を添加した後のカルニチンに対して2.2倍量の1−ブタノールを添加し、上記と同様の方法で溶媒置換を行った。144.5gとなったところで溶媒置換を終了し、さらに1−ブタノールを、母液の混合液を添加した後のカルニチンに対して、0.2倍量追加した。そのときの溶液中の水分量は0.1%であった。実施例4と同様の方法で冷却、固液分離を行い、上記と同様に得られた結晶を冷却した1−ブタノールを用いてリンスを行い結晶を回収したところ、カルニチン結晶が68.2g得られた。含液率は25%であった。
【0103】
得られた結晶を上記と同様の方法で再結晶操作を行い、スラリー溶液の重量が201.7gとなったところで濃縮を終了した。この時の溶液中のメタノールは8%であった。上記と同様の操作で冷却、固液分離及びリンスを行い結晶を回収し、乾燥したところL-カルニチンの結晶が42.4g得られた。D-カルニチンは検出されなかった。
<実施例6>
【0104】
L-カルニチンを100.0gとクロトノベタインを0.5g含む水溶液1000gを、実施例4同様に125.0gまで濃縮した。以下濃縮液Cと称する。
【0105】
次に濃縮液Cを62.5g分取し、1-ブタノールをL‐カルニチンに対して4.0倍量添加し、実施例4と同様の方法で溶媒置換を行った。スラリー溶液が122.0gとなった時点で溶媒置換を終了した。次に、1−ブタノールをL-カルニチンに対して2.4倍量添加した後、実施例4と同様の方法で冷却、固液分離を行い、得られた結晶を10℃で冷却した1−ブタノール5.0gを用いてリンスを二回行い、結晶を回収した。L-カルニチン結晶が55.4g得られ、含液率は21%であった。
【0106】
得られた結晶を実施例4と同様の方法で再結晶操作を行い、スラリー溶液の重量が154.1gとなるまで濃縮を行った。溶液中に含まれるメタノールは3%であった。その後、実施例4と同様の方法で冷却、固液分離を行い、10℃に冷却した1−ブタノール5.0gを用いてリンスを二回行った。結晶を回収し、乾燥したところ、クロトノベタインを60ppm含むL-カルニチンの結晶が39.6g得られた。再結晶母液中のクロトノベタインのL-カルニチンに対する割合は0.5%であった。
【0107】
次に、再結晶で得られた母液及びリンス液を混合したもの105.0gを全量濃縮液Cの残り62.5gに添加し、さらに母液の混合液を添加した後のL-カルニチンに対して2.2倍量の1−ブタノールを添加し、上記と同様の操作で溶媒置換を行った。スラリー溶液の重量が133.6gとなったところで、さらに母液の混合液を添加した後のL-カルニチンに対して2.4倍量の1−ブタノールを添加し溶媒置換を終了した。その後、上記と同様の方法で冷却、固液分離及び結晶を回収したところ、L-カルニチン結晶が60.7g得られ、含液率は20%であった。
【0108】
得られた結晶を上記と同様の操作で再結晶操作を行い、スラリー溶液の重量が168.9gとなったところで濃縮を終了した。この時のメタノールの濃度は3%であった。上記と同様の方法で冷却、固液分離及びリンスを行い結晶を回収し、乾燥したところ、クロトノベタインを60ppm含むL-カルニチンの結晶が43.4g得られた。
<実施例7>
【0109】
L-カルニチンを95.0g、D−カルニチンを5.0g含む水溶液1000.0gを、実施例4と同様に125.0gまで濃縮した。以下濃縮液Dと称する。
【0110】
次に濃縮液Dを62.5g分取し、イソブタノールをL‐カルニチンに対して9.4倍量となるよう添加し、実施例4と同様の方法で溶媒置換を行い、スラリー溶液が154.2gとなった時点で溶媒置換を終了した。この時の溶液中の水分量は0.4%であった。次に、実施例4と同様の方法で冷却、固液分離を行い、冷イソブタノール5.0gでリンスを二回行い、結晶を回収した。L-カルニチン結晶が53.4g得られ、含液率は20%であった。
【0111】
得られた結晶を60℃で等量のメタノールに溶解させ、メタノール:イソブタノール比率が1:3となるようイソブタノールを添加し、60℃、3.3kPaで濃縮を行った。溶液中のメタノール量が0.3%となったところで濃縮を終わらせた。この時のスラリー溶液の量は141.0gであった。濃縮液にさらにL−カルニチンに対して2.8倍量のイソブタノールを添加し、その後、40℃から1℃/minの冷却速度で20℃まで冷却した後、0.2MPaの乾燥窒素で加圧濾過を行い、上記同様に冷イソブタノール5.0gで二回リンスを行った。真空ポンプを用いて50℃、10Pa で5時間乾燥させ、結晶を回収したところ、L-カルニチンの結晶が32.3g得られた。D−カルニチンは検出されなかった。
【0112】
次に、再結晶で得られた母液とリンス液を混合したもの230.0gを全量、濃縮液Dの残り62.5gに添加し、さらに母液混合液を添加した後のL-カルニチンに対して5.8倍量のイソブタノールを添加し、上記と同様の操作で溶媒置換を行いスラリー溶液の重量が170.5gとなったところで、溶媒置換を終了した。さらに、母液混合液を添加した後のL-カルニチンに対して0.4倍量のイソブタノールを添加した後、上記と同様の方法で冷却、固液分離及びリンスを行い結晶を回収したところ、L-カルニチン結晶が63.6g得られ、含液率は21%であった。
【0113】
得られた結晶を上記と同様の操作で再結晶操作を行い、スラリー溶液の重量が168.1gとなったところで濃縮を終了した。この時のメタノールの濃度は0.3%であった。濃縮液に、母液混合液を添加した後のL−カルニチンに対して2.8倍量のイソブタノールを添加し、上記と同様の方法で冷却、固液分離及びリンスを行い結晶を回収した。得られた結晶を上記と同様に乾燥したところ、L-カルニチンの結晶が38.6g得られた。D−カルニチンは検出されなかった。
<実施例8>
【0114】
L-カルニチンを100.0gとD-カルニチンを2.6g含む水溶液1000.0gを、実施例4と同様に128.3gまで濃縮した。以下濃縮液Eと称する。
【0115】
次に濃縮液Eを64.1g分取し、L-カルニチンに対して4.0倍量の1−ブタノールを添加した。実施例4と同様の方法で溶媒置換を行いスラリー溶液の重量が121.3gとなったところで溶媒置換を終了した後、L-カルニチンに対して0.2倍量の1−ブタノールを追加した。実施例4と同様の方法で冷却、固液分離を行い、10℃に冷却した1−ブタノール10.0gでリンスを二回繰り返し、結晶を回収したところ、L-カルニチン結晶が58.4g得られた。含液率は21%であった。
【0116】
得られた結晶を実施例4と同様の方法で再結晶操作を行い、スラリー溶液の重量が206.8gとなったところで濃縮を終了した。この時、溶液中に含まれるメタノールは20%であった。スラリー溶液を実施例4と同様の方法で冷却、固液分離を行い、10℃に冷却した1−ブタノール5.0gでリンスを二回行い結晶を回収した。これを実施例4と同様に乾燥ところ、L-カルニチンの結晶が23.0g得られた。D-カルニチンは検出されなかった。
【0117】
次に、濃縮液Eの残り64.1gも上記と同様の方法で溶媒置換を行った。スラリー溶液の重量が122.0gとなったところで溶媒置換を終了し上記と同様の方法で冷却、固液分離を行った。得られた結晶を10℃に冷却した1−ブタノール10.0gでリンスを二回行い結晶を回収したところ、58.8gのL-カルニチン結晶を得た。この時含液率は22%であった。
【0118】
ここで得られた結晶に、上記の再結晶で得られた再結晶母液及びリンス液の混合液184.9gを全量添加し、さらに混合溶液を添加した後のL-カルニチンに対して0.6倍量のメタノールと1.1倍量の1−ブタノールを添加し上記と同様の方法で再結晶操作を行った。スラリー溶液の重量が314.8gとなったところで濃縮を終了した。この時の溶液中のメタノールは20%であった。上記と同様の操作で冷却、固液分離及びリンスを行い結晶を回収し、乾燥したところL-カルニチンの結晶が35.5g得られた。D-カルニチンは検出されなかった。
<実施例9>
【0119】
L-カルニチンを100.0gとD-カルニチンを11.0g含む水溶液1000.0gを、実施例4同様に138.8gまで濃縮した。以下濃縮液Fと称する。
【0120】
次に濃縮液Fを69.4g分取し、L-カルニチンに対して1―ブタノールを4.0倍量添加し実施例4と同様の方法で溶媒置換を行った。スラリー溶液の重量が121.4gとなったところで溶媒置換を終了し、さらにL-カルニチンに対して1.8倍量の1−ブタノールを添加した。その後、実施例4と同様の方法で冷却、固液分離を行い、得られた結晶を10℃に冷却した1−ブタノール6.0gを用いてリンスを二回行い結晶を回収した。含液率が22%のL-カルニチン結晶が49.4g得られた。
【0121】
得られた結晶を実施例4と同様の方法で再結晶操作を行い、スラリー溶液の重量が128.3gとなったところで濃縮を終了した。この時、溶液中に含まれるメタノールは0.3%であった。スラリー溶液を実施例4と同様の方法で冷却、固液分離を行い、得られた結晶に10℃に冷却した1−ブタノール10.0gを用いてリンスを二回行った後、結晶を回収した。得られた結晶を実施例4と同様に乾燥ところ、L-カルニチンの結晶が35.6g得られた。D-カルニチンは検出されなかった。この時、再結晶母液中に、D-カルニチンがL-カルニチンに対して11.0%含まれていた。
【0122】
次に、再結晶で得られた母液及びリンス液を混合したもの100.6gを全量濃縮液Fの残り69.4gに添加し、1-ブタノールを母液の混合液を添加した後のL‐カルニチンに対して2.2倍量添加した。上記と同様の方法で結晶化を行い、スラリー溶液の重量が130.6gとなったところで溶媒置換を終了し、さらに母液の混合液を添加した後のL-カルニチンに対して1.8倍量の1−ブタノールを追加した。上記と同様の方法で冷却、固液分離及びリンスを行い結晶を回収したところ、L-カルニチン結晶が52.9g得られた。含液率は22%であった。
【0123】
次に、得られた結晶を上記と同様の方法で再結晶操作を行い、スラリー溶液の重量が137.8gとなったところで濃縮を終了した。このときのメタノール濃度は0.3%であった。結晶を上記と同様の方法で回収し乾燥したところ、L-カルニチンの結晶が38.2g得られた。D-カルニチンは検出されなかった。
<実施例10>
【0124】
L-カルニチンを100.0gとD-カルニチンを4.2g含む水溶液1000.0gを、実施例4と同様に130.3gまで濃縮した。以下濃縮液Gと称する。
【0125】
次に濃縮液Gを65.1g分取し、1−ブタノールをL-カルニチンに対して4.0倍量添加し、実施例5と同様の方法で溶媒置換を行った。スラリー溶液の重量が132.0gとなったところで溶媒置換を終了し、実施例5と同様の方法で冷却、固液分離及びリンスを行い結晶を回収したところ、L-カルニチン結晶が56.7g得られた。含液率は23%であった。
【0126】
得られた結晶を実施例4と同様の方法で再結晶操作を行い、スラリー溶液の重量が170.2gとなったところで濃縮を終了した。この時、溶液中に含まれるメタノールは8%であった。スラリー溶液を実施例5と同様の方法で冷却、固液分離及びリンスを行い結晶を回収した。これを実施例4と同様に乾燥ところ、L-カルニチンの結晶が35.6g得られた。D-カルニチンは検出されなかった。この時、再結晶母液中に、D-カルニチンがL-カルニチンに対して4.2%含まれていた。
【0127】
次に、再結晶で得られた母液及びリンス液の混合液126.0gを100.2gまで濃縮した。このときL-カルニチンの結晶が析出していた。濃縮した母液混合液を全量濃縮液Gの残り65.1gに添加し、さらに1-ブタノールを母液混合液を添加した後のL‐カルニチンに対して2.2倍量添加し、上記と同様の方法で溶媒置換を行った。157.5gとなったところで溶媒置換を終了し、そのときの溶液中の水分量は0.1%であった。実施例4と同様の方法で冷却、固液分離及びリンスを行い結晶を回収したところ、L-カルニチン結晶が67.1g得られた。含液率は22%であった。
【0128】
得られた結晶を上記と同様の方法で再結晶操作を行い、スラリー溶液の重量が2012gとなったところで濃縮を終了した。この時の溶液中のメタノールは8%であった。上記と同様の操作で冷却、固液分離及びリンスを行い結晶を回収し、乾燥したところL-カルニチンの結晶が42.4g得られた。D-カルニチンは検出されなかった。
<実施例11>
【0129】
L-カルニチン100.0gとD-カルニチン3.2gを含むカルニチン水溶液200.0gを二つに分け、それぞれ60℃でカルニチン濃度が80%となるまで濃縮を行った後、1−ブタノールをL-カルニチンに対して4.0倍量添加し、実施例5と同様の方法で溶媒置換を行い、スラリー溶液の重量がそれぞれ122.0g、122.1gとなったところで溶媒置換を終了した。
【0130】
ここで、一方を50℃から2℃/minの速度で液温が20℃となるまで冷却し、加圧濾過にて固液分離を行ったところ、濾過圧0.2MPa、ろ過面積128cm2で濾過速度が0.3g/minであった。ケーク厚は1cmであった。
【0131】
また、もう一方を50℃から0.2℃/minの速度で液温が20℃となるまで冷却し、上記と同様に固液分離を行ったところ、濾過圧0.2MPa、ろ過面積128cm2で濾過速度が7g/minであった。ケーク厚は1cmであった。
【0132】
溶媒置換を行った後の冷却速度を遅く行うことによって、ろ過性が改善する傾向が見られた。
<実施例12〜16>
【0133】
90%eeのL-カルニチンを600.0g(L-カルニチンが570.0g、D-カルニチンが30.0g) 含む水溶液6000.0gを実施例4と同様の方法で80%まで濃縮し、それを12分割した。うち6分割分をそれぞれ1−ブタノールをカルニチンに対して4.0倍量添加し、実施例5と同様に溶媒置換した。各々スラリー溶液の重量が120g前後(表1中、結晶化終了時重量)となったところで溶媒置換を終了した。ここで、残存する水分量の影響を調べるため、表1に示した分の水を添加し調整した(表1中、溶媒置換後の水追加)。その後、実施例5と同様に冷却、固液分離及びリンスを行い結晶を獲得した。調整後のスラリー溶液中の水分濃度、得られた結晶の収率及び結晶の光学純度は表2の通りであった。
【0134】
得られた結晶を結晶中のカルニチンに対して1.0倍量のメタノール及び3.0倍量の1−ブタノールの混合液に60℃に加熱しながら溶解させた。次に、実施例4と同様の方法で濃縮を行い溶液中のメタノールが0.4%となったところで濃縮を終了した。その時、カルニチンのスラリー溶液の重量は表1に示す。ここで、再結晶母液を効率よく循環利用する目的から、再結晶母液中の光学純度が90%eeとなるように再結晶工程のスラリー濃度を調整するため、それぞれ1−ブタノールを追加した(表1中、濃縮後1−ブタノール追加量)。その後、実施例4と同様に冷却、固液分離及びリンスを行い、結晶を取得した。収率及び品質は表2の通りであった。
【0135】
次に、再結晶で得られた母液及びリンス液を混合したもの全量をそれぞれ、上記と同様の方法で濃縮したL-カルニチン水溶液の濃縮液に循環利用した。
【0136】
母液の濃縮液を添加した後、1−ブタノールを追加せずに実施例4と同様の方法で溶媒置換を行った。各々スラリー溶液の重量が表1中、「結晶化終了時重量」となったところで溶媒置換を終了した。そこで、上記と同様に溶媒中の水分量を0.1〜1.0%となるよう調製(表1中、溶媒置換後の水追加)した後、実施例5と同様に冷却、固液分離及びリンスを行い結晶を獲得した。調整後のスラリー溶液中の水分濃度、得られた結晶の収率及び結晶中のD-カルニチンの比率は表2の通りであった。
【0137】
次に、得られた結晶を上記と同様にメタノール、1−ブタノール混合液に溶解させ、再結晶を行った。溶液中のメタノールが0.4%となったところで濃縮を終了した。その時、カルニチンのスラリー溶液の重量は表1に示す。ここで、上記と同様にそれぞれ1−ブタノールを追加した(表1中、濃縮後1−ブタノール追加量)。その後、実施例4と同様に冷却、固液分離及びリンスを行い結晶を取得した。収率及び品質は表2の通りであった。
【表1】

【表2】

<実施例17〜19>
【0138】
L-カルニチンを288.0g、D-カルニチンを12.0g含む水溶液1500.0gを、実施例5と同様の方法で375.0gまで濃縮した。
【0139】
濃縮液を6分割し、うち3分割分を溶媒置換温度及び再結晶での濃縮温度を除いて実施例5と同様の方法で結晶化及び再結晶を行い結晶を取得した。
【0140】
それぞれ得られた再結晶母液及びリンス液を混合したものを全量、L-カルニチンの水濃縮液の残り3分割分にそれぞれ添加し、母液の混合液を添加した後のカルニチンに対して1−ブタノールを2.2倍量を追加した後、上記と同様の方法で結晶化及び再結晶を行った。再結晶で得られた結晶の、母液の混合液を添加する前のカルニチンの量に対する収率を表3に示した。
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含むL-カルニチンの単離精製方法。
(1)L-カルニチン水溶液を調整する工程
(2)第1の工程で得られる調整液からL-カルニチンを結晶化する工程
(3)第2の工程で得られる母液又は母液に含まれるL-カルニチンを第1の工程及び/又は第2の工程に循環使用する工程
【請求項2】
以下の工程を含むL-カルニチンの単離精製方法。
(1)L-カルニチン水溶液を調整する工程
(2)第1の工程で得られる調整液からL-カルニチンを結晶化する工程
(3)第2の工程で得られるL-カルニチン結晶を再結晶させる工程
(4)第3の工程で得られる母液又は母液に含まれるL-カルニチンを第1の工程から第3の工程の少なくとも1の工程に循環使用する工程
【請求項3】
以下の工程を含むL-カルニチンの単離精製方法。
(1)L-カルニチン水溶液を調整する工程
(2)第1の工程で得られる調整液からL-カルニチンを結晶化する工程
(3)第2の工程で得られるL-カルニチン結晶を再結晶させる工程
(4)第3の工程で得られる母液をそのまま又は一部を濃縮して第3の工程に循環使用する工程
【請求項4】
L-カルニチンを結晶化する工程が、溶媒置換を行う工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
溶媒置換が、水と共沸組成のある溶媒を添加し、溶液から水を除去することを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
溶媒置換に使用する溶媒が、低級アルコールである請求項4記載の方法。
【請求項7】
低級アルコールが、1-ブタノール又はイソブタノールである請求項6記載の方法。
【請求項8】
水の除去が、水を0.5%以下とする請求項5記載の方法。
【請求項9】
再結晶で用いられる溶媒が、L-カルニチンを結晶化する工程で用いられる溶媒又はその溶媒を含む混合溶媒である、請求項2〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
再結晶で用いられる溶媒が、混合溶媒であって、L-カルニチンを結晶化する工程で用いられる溶媒及び水、メタノール、エタノールから一種類以上選択される溶媒との混合溶媒である請求項9記載の方法。
【請求項11】
L-カルニチン水溶液を調整する工程において、その水溶液のカルニチン濃度が40〜80%であること請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
L-カルニチンを結晶化する工程で、カルニチンに対して4〜10倍量の溶媒を添加することを含む、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
L-カルニチンを結晶化する工程が、冷却工程を含み、且つ冷却速度を0.05℃/min〜1.0℃/minとする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
カルニチン水溶液からのL-カルニチンの単離精製を、20〜70℃で行う、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
L-カルニチンの水溶液が、D-カルニチン及び/又はクロトノベタインを含む、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
D-カルニチン及び/又はクロトノベタインが、L-カルニチンに対して0%〜10%含まれる、請求項14記載の方法。

【公開番号】特開2009−102263(P2009−102263A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275858(P2007−275858)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】