説明

L−フコシル二糖又はオリゴ糖の合成方法及びそれらの新規な2,3,4トリベンジルフコシル誘導中間体

本発明は、L−フコシル二糖又はオリゴ糖を合成する方法、及び結晶化が容易なそれらの新規な2,3,4−トリ−O−ベンジルフコシル合成誘導中間体に関する。特に、本発明は、工業規模に適用可能な2’O−フコシルラクトースの合成方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、オリゴ糖の化学合成の分野、特にL−フコシル二糖又はオリゴ糖の調製に関する。
【現状技術】
【0002】
ヒトの母乳は、オリゴ糖が豊富である。現在まで130種を超える異なる化合物が単離され、同定されている。
【0003】
以前はこれらの化合物の栄養学的重要性は過小評価されてきたが、一方で近年、母乳栄養新生児に対して重要性の高いことが実証されてきている(L.Bode,J.Nutr.2006, 136, 2127−2130;J.Kemsley,Chem.& Eng.News 2008, 86(39),13−17)。これらのオリゴ糖は、更なる生体機能の他に、感染過程開始の主な決定的瞬間と実証されている上皮細胞表面への細菌付着を阻止する。Fuc−α−(1−2)−Gal−β−(1−4)−Glc(2’−O−フコシルラクトース、CAS No.41263−94−9)及びGal−β−(1−4)−[Fuc−α−(1−3)]−Glcが最も豊富であり(Chaturvedi P.et al.,Glycobiology.2001.11.5, 365−372)、これらのフコシルオリゴ糖の抗接着性が、フコース(6−デオキシ−L−ガラクトース)の存在又はグリコシル化の位置に起因するかは不明である。そこで、これらのオリゴ糖が関与する生体内作用を研究し、理解を深められるように、並びに、例えば人工乳等のベビーフード、栄養補助食品又は医薬製剤に添加できるように、これらのオリゴ糖を合成する方法が必要である。
【0004】
フコシルオリゴ糖を調製するための合成手順が現状技術に数多く、例えば以下のように報告されている。
H.M.Flowers et al.,Carbohydrate Research,4,(1967),189−195.
R.R.Schmidt and B.Wegman,Carbohyd.Res.(1988),184, 254−261.
S.A.Abbas et al.,Carbohydr.Res.,88(1981) 51−60.
A.Fernandez−Mayorales et al.,Carbohydr.Res.,154(1986) 93−101.
R.K.Jain et al.,Carbohydrate Research(1991),212,C1−C3.
M.Izumi et al.,J.Org.Chem.(1997),62, 992−998.
A.Rencurosi et al.,J.Carbohydrate Chem.(2001),20, 761−765.
L.Panza et al.,Carbohydrate Research 337(2002),1333−1342.
A.Rencurosi et al.,Eur.J.Org.Chem.(2003),1672−1680.
W.Kinzy et al.,Carbohyd.Res.,245(1993),193−218.
【0005】
既知の合成には、水酸基の保護及び脱保護のステップが数多くあり、そのすべてが多くのクロマトグラフィー精製を必要とし、そのため工業規模での応用が困難である。
【0006】
酵素法又は発酵法による、例えばフコシルラクトシド及びフコシルアセチルラクトサミンのようなフコシルオリゴ糖の他の合成では、酵素が高価であり、入手が難しい基質(GDP−フコース)を使用し、またこれまでに得た収率が低いため、費用効果的な工程を実施することはできない(P.A.Prieto et al.,米国特許第5,945,314号;S.Drouillard et al.,Angew.Chem.Int.Ed.(2006),45(11),1778−1780;T.Murata et al.,J.Carbohyd.Chem.(2003),22(5),309−316;E.Beat et al.,Can.J.Chem.,(2000),78(6),892−904)。
【0007】
そこで、工業規模で実現可能ないくつかの簡便なステップによって、フコシル二糖及びオリゴ糖を得ることができる方法であって、収率及び純度を損なわずに、中間体及び最終生成物の容易な単離及び精製を利用した方法を開発する必要があることは明白である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、工業規模でも実現可能な、式(I):
【化1】


[式中、Rは、遊離ヒドロキシ基を有する単糖、二糖又はオリゴ糖である。]
のフコシル誘導体の合成方法であって、下記式(IV)の中間体の使用を含むことを特徴とする方法によって上記の問題を解決する。
【0009】
【化2】


[式中、Pは相互に独立に次式:
【化3】


(式中、R1は、塩素、臭素、アルコキシ及びニトロから選択され、R2は、水素、塩素、臭素、アルコキシ及びニトロから選択される。)
のベンジル基であり、
R”は、Rに対応して、ヒドロキシ基が遊離である又はベンジル基によって部分的に保護されている単糖、二糖又はオリゴ糖である。]
【0010】
上記式(IV)の化合物は、結晶化による単離及び精製が驚くほど容易であり、結果として式(I)のフコシル誘導体の精製及び単離を工業規模でも容易に行うことを可能にする。
【0011】
ある態様では、本発明の目的は、下記式(II)又は(IV)の2,3,4−トリ−O−ベンジル−L−フコシル誘導体化合物である。
【0012】
【化4】


[式中、Pは相互に独立に次式:
【化5】


(式中、R1は、塩素、臭素、アルコキシ及びニトロから選択され、R2は、水素、塩素、臭素、アルコキシ及びニトロから選択される。)
のベンジル基であり、
Xは、イミデートであり、
R”は、Rに対応して、ヒドロキシ基が遊離である又はベンジル基によって部分的に保護されている単糖、二糖又はオリゴ糖である。
但し、式(II)の化合物では、Xがトリクロロアセトイミデートであり、R1がp−クロロである場合、R2は水素ではない。]
【0013】
本発明の別の目的は、上記式(IV)の化合物を合成するためのフコシル供与体として、式(II)の化合物を使用することであり、ここで、
Xは、イミデート又はハロゲンから選択されるアノマー炭素の活性化剤であり、
Pは相互に独立に次式:
【化6】


[式中、R1は、塩素、臭素、アルコキシ及びニトロから選択され、R2は、水素、塩素、臭素、アルコキシ及びニトロから選択される。]
のベンジル基である。
【0014】
本発明の別の目的は、本発明の方法によって、上記式(I)の化合物を合成するためのフコシル供与体として、上記式(II)の化合物を使用することである。
【詳細な説明】
【0015】
本発明は、工業レベルでも実現可能な、式(I):
【化7】


[式中、Rは、遊離ヒドロキシ基を有する単糖、二糖又はオリゴ糖である。]
のフコシル誘導体を合成する方法であって、下記式(IV)の中間体の使用を含むことを特徴とする方法に関する。
【0016】
【化8】


[式中、Pは相互に独立に次式:
【化9】


(式中、R1は、塩素、臭素、アルコキシ及びニトロから選択され、R2は、水素、塩素、臭素、アルコキシ及びニトロから選択される。)
のベンジル基であり、
R”は、Rに対応して、ヒドロキシ基が遊離である又はベンジル基によって部分的に保護されている単糖、二糖又はオリゴ糖である。]
【0017】
上記式(IV)の化合物は、結晶化による単離及び精製が驚くほど容易であり、結果として式(I)のフコシル誘導体の精製及び単離を工業規模でも容易に行うことを可能にする。
【0018】
好ましい実施形態において、前記方法は、中間体(IV)のベンジル基を除去して式(I)の化合物を得るステップc)を含む。
【0019】
より好ましい実施形態では、前記方法は、ステップc)の前に以下のステップを含む。
【0020】
a)式(II):
【化10】


[式中、Pは上記のとおりであり、Xは、アノマー炭素活性化剤である。]
の供与体、2,3,4−トリ−O−ベンジルフコピラノシル誘導体を、式R’OH[式R’OH中、R’は、Rに対応して、好適に保護された単糖、二糖又はオリゴ糖であり、そのヒドロキシ基が最大2つまで遊離であり、任意選択によりベンジル基で部分的に保護されており、残りのヒドロキシ基が、ベンジル基を保持する、特にフコシル部分に存在する基−OPを保持するような条件下で除去されるような現状技術で既知の保護基で保護されている。]の単糖、二糖又はオリゴ糖グリコシル受容体とカップリングさせて、式(III):
【化11】


[式中、P及びR’は、上記のとおりである。]
の中間体を得るステップ。
【0021】
b)フコシル部分に存在する−OP基を保持し、場合によってR’に存在するベンジル基を保持するような条件下で、R’サッカリド部分の保護基を除去して、式(IV):
【化12】


[式中、R”及びPは上記のとおりである。]
の中間体を得るステップ。
【0022】
上記式(IV)の化合物は、ステップa)及びb)の粗生成物を連続的に処理した後であっても、結晶化による単離及び精製が驚くほど容易であり、その結果、工業規模でもフコシル誘導体(I)の精製及び単離が容易にできるようにする。
【0023】
中間体(IV)の結晶化は、さらに溶媒を加えることなく反応媒質から直接、又は結晶化に好適な共溶媒を添加することにより、実施することが好ましい。
【0024】
ベンジル基で保護されているヒドロキシ基は、−OCHPh基又は−OP基を意味する。
【0025】
ベンジル基で部分的に保護されているヒドロキシ基とは、「n」をR’及びR”に存在するヒドロキシ基の数とした場合、ベンジル基で保護されているヒドロキシ基の最大数がn/2(nが偶数の場合)又は(n−1)/2(nが奇数の場合)であることを意味する。例えば、R”がガラクトースである場合、n=4であり、そのときの「部分的に保護されている」という用語は、1個又は多くても2個のヒドロキシ基がベンジル基で保護されており、残りの3個又は少なくとも2個のヒドロキシ基が遊離していることを意味する。R”がラクトースである場合、n=7であり、そのときの「部分的に保護されている」という用語は、1個、2個又は多くても3個のヒドロキシ基がベンジル基で保護されており、残りの6個、5個又は少なくとも4個のヒドロキシ基が遊離していることを意味する。
【0026】
対応して脱保護されている、好適には保護されている、又は部分的に保護されている基である、上記のような前記R、R’及びR”は、好ましくは、ラクトース、フコース、(2−アセチルアミノ)−ラクトース、(2−アミノ)−ラクトース、(2−アジド)−ラクトース、ラクト−N−ビオース、ガラクトース、グルコース、(2−アセチルアミノ)−グルコース、(2−アミノ)−グルコース、及び(2−アジド)−グルコースから選択され、より好ましくは、2’−ラクトース、3−ラクトース、3−(2−アセチルアミノ)−ラクトース、3−(2−アミノ)−ラクトース、3−(2−アジド)−ラクトース、4−ラクト−N−ビオース、2−ガラクトース、3−グルコース、3−(2−アセチルアミノ)−グルコース、3−(2−アミノ)−グルコース、3−(2−アジド)−グルコース、4−(2−アセチルアミノ)−グルコース、4−(2−アミノ)−グルコース及び4−(2−アジド)−グルコースから選択される。
【0027】
前記アノマー炭素活性化剤は、好ましくはイミデート又はハロゲンから選択され、より好ましくは、Xは、α−臭素又はトリクロロアセトイミデートである。
【0028】
式(II)の供与体と式R’OHの受容体とのカップリングa)は、既知の技術によって実施できる。
【0029】
アノマー炭素活性化剤は、好適な促進剤の存在下において、グリコシル結合の形成を引き起こす良好な脱離基として作用する、グリコシル供与体の1位に結合している置換基(X)を意味し、例えば、ハロゲン、トリハロアセトイミデート、チオグリコシド、スルホキシド及びn−ペンテニルが挙げられる。
【0030】
これらの各基には、特定の反応条件が必要である(例えば、B.G.Davies,Recent Developments in Oligosaccharide Synthesis,J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,(2000),2137−2160を参照されたい)。
【0031】
2つの糖の間のカップリング反応の成否は、促進剤、両方のサッカリド単位の置換基、及び当然ながら使用する反応条件(溶媒、温度、添加方法)、並びにグリコシル供与体として使用される糖の種類(I.Robina et al.,Glycosylation Methods in Oligosaccharide Synthesis.Part 1,Current Organic Synthesis(2008),vol.5(1),33−60,I.Robina et al.,Glycosylation Methods in Oligosaccharide Synthesis.Part 2,Current Organic Synthesis(2008),vol.5(2),81−116)による、供与体及び受容体の反応性によって決まる。
【0032】
その上、カップリング反応は、新規なグリコシル結合の様々な立体配置(1,2−シス結合、1,2−トランス結合又はこれら2つの混合物の形成)を与え得る。
【0033】
立体配置に影響を与える主な要因は、グリコシル供与体の2位に存在する保護基の性質(関与基/非関与基、隣接基関与効果(anchimeric assistance)を有する基又はそれがない基など)である。
【0034】
上記のパラメータを適切に選択することによって、α(1,2−シス)配置を有するグリコシドを得ることができる。
【0035】
例えば、Xがイミデートである場合、特にXがトリクロロアセトイミデートである場合、カップリングは、三フッ化ホウ素エーテレート又はトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルなどのルイス酸、好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルの存在下で、例えばジクロロメタン及びジエチルエーテルなどの非プロトン溶媒を使用して、R.R.Schmidt及びA.Toepfer(J.Carbohyd.Chem,1993, 12(7),809−822)に記載の「逆手順」(inverse procedure)を使用することによって好適に実行できる。
【0036】
Xがハロゲンの場合、特にXがα−臭素である場合、カップリングは、ケーニッヒ−クノール(Koenigs−Knoor)反応によって、Ag(I)を促進剤として使用して(Koenigs,W.;Knoor,E.Chem.Ber.,1901, 34, 957)、又はHg(II)を促進剤として使用するヘルフェリッヒ修飾を使用する(Helferich,B.;Zimer,J.Chem.Ber.,1962, 95, 2604)ことによって実行できる。
【0037】
サッカリド部分R’の脱保護ステップb)は、フコースの非修飾ベンジル基及び必要に応じてサッカリド部分のベンジル基を保持する、現状技術の方法(T.W.Green及びP.G.M.Wuts.Green’s Protective Groups in Organic Synthesis.Ed.Wiley 4編.2006)を使用することによって実行できる。したがって、受容体R’OHは、好ましくは、塩基性反応条件又は弱酸加水分解によって除去可能な基、例えばアシル基及びアセタール基などで保護される。
【0038】
脱ベンジル化ステップc)は、現状技術の方法、例えば接触水素化(W.Kinzy et al.,Carbohyd.Res.,245(1993),193−218)又は酸加水分解(M.Izum et al.,J.Org.Chem.(1997),62, 992−998,L.Panza et al.,Carbohydrate Research 337(2002),1333−1342)、好ましくは接触水素化によって実施できる。
【0039】
上記式(II)のフコシル供与体は、現状技術の方法に従ってL−フコースから出発して合成することができる。例えば、Xがトリクロロアセトイミデート又は臭素である式(II)の化合物を調製する場合、スキーム1に記載のとおり、メチルフコシドの調製、及び式P−Br又はP−Cl、好ましくはP−Cl(式中、Pは上記のとおりである)の臭化ベンジル又は塩化ベンジルによるその2,3,4−O−トリベンジル誘導体化を経由することが可能である。トリクロロアセトイミデートとしてアノマー炭素を活性化する場合、合成は、メチルフコシドの酸加水分解とトリクロロアセトニトリル及びDBUを用いたイミデートの形成で進めることができる(W.Kinzy et al.,Carbohyd.Res.,245(1993),193−218)。
【0040】
トリベンジルメチルフコシドの酸加水分解後に、ハロゲン化物、好ましくはα−臭化物としてアノマー炭素を活性化する場合、合成を2つの連続したステップで進めてハロゲン化物を得ることができる(Flowers et al.,Carbohyd.Res.1971, 18, 215−226)。
【0041】
【化13】

【0042】
特に好ましい実施形態では、本発明は、スキーム2の記載に従って、上記の方法により得られる2’−O−フコシルラクトース、即ち式(I)の化合物(式中、Rは、2’−ラクトースである)を合成する方法であって、以下のステップを含む方法に関する。
【0043】
a)上記式(II)のグリコシル供与体を、式(VII):
【化14】


[式中、Rは、アルキル又はアリール、アシル、ベンジル、P、トリチル、シリル誘導体から選択される基であり、好ましくはRは、アシルであり、より好ましくはアセチル又はベンゾイルであり、場合によっては塩素、臭素、アルコキシ又はニトロで一置換又は二置換されている。]
のグリコシル受容体、即ち6’−O−置換−2,3:5,6:3’,4’−トリ−O−イソプロピリデン−ラクトースジメチルアセタールとカップリングさせて、中間体(IIIa):
【化15】


[式中、P及びR3は上記のとおりである。]
を得るステップ。
【0044】
b)スキーム3に記載のとおりに、脱保護(b’)及び脱アセトン化(b”)の連続したステップを含む脱保護であって、脱保護(b’)及び脱アセトン化(b”)は、順序に差がなく実施でき、その結果、式(IIIb’)又は(IIIb”):
【化16】


[式中、P及びRは上記のとおりである。]
の中間体を経由する脱保護を行い、R”が2’−ラクトースである式(IV)、即ち式(IVa):
【化17】


[Pは上記のとおりであり、R4は水素、ベンジル又はPである。]
の中間体を得るステップ。
【0045】
c)現状技術で既知の方法により、好ましくは接触水素化により、中間体(IVa)の脱ベンジル化を行うステップ。
【0046】
【化18】

【0047】
R3がベンジル又はPでない場合、中間体(IIIb’)を通って脱保護b)を達成することが好ましい。R3がベンジル又はPである場合、中間体(IIIb”)を通ることが好ましく、この場合これは中間体(IVa)に相当し、したがってステップを1つ省くことができる。
【0048】
【化19】

【0049】
前記連続した脱保護段階(b)(スキーム3)は、反応(b’)及び(b”)由来の粗生成物として連続的に使用される上記中間体(IIIb’)及び(IIIb”)を単離せずに実施することが好ましい。
【0050】
がアシルである場合、現状技術で既知の手順に従って、好ましくはナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド又は水酸化ナトリウム、より好ましくは水酸化ナトリウムなどの塩基を使用して、また第一級アルコール、好ましくはメタノール又はエタノール、より好ましくはメタノールを溶媒として使用して、脱保護(b’)(スキーム3)を実施する。
【0051】
脱アセトン化(b”)(スキーム3)は、現状技術で既知の方法に従って、酸、好ましくはHClの存在下で、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、水又はこれらの混合物、好ましくはアセトニトリル/水の混合物、より好ましくは比が0.5:1〜10:1の間、さらに好ましくは1:1〜8:1の間であるアセトニトリル/水の混合物などの極性溶媒中で実現される。
【0052】
式(IVa)の中間体は、a)及びb)のステップの反応粗生成物を処理することによって得た後でも、驚くほど容易に結晶化されることが今や判明した。特に、共溶媒の添加なしで反応媒質から直接結晶化できる。
【0053】
上記の誘導体(IVa)は、既知の式(IVa)の化合物(式中、Pは非置換ベンジルである)(S.A.Abbas et al.,Carbohydr.Res.,88(1981) 51−60)と比較して、予想と反して、a)及びb)のステップからそれぞれ直接得られる粗生成物として使用される各中間体(II)、(IIIa)、(IIIb’)又は(II)、(IIIa)、(IIIb”)を連続で処理した後に得た場合でも、特にb)段階に関しては、連続した脱保護(b’)及び(b”)又はその逆に従って、反応粗生成物として使用される各中間体(IIIb’)及び(IIIb”)を単離せずに得た場合でも、結晶化により容易に単離されることが判明した。
【0054】
特に、2’−O−フコシルラクトースの合成では、式(II)の供与体(式中、X=OC(NH)CCl3、P=p−クロロベンジル又は2−クロロベンジルである)と、粗生成物として使用する式(VII)の受容体(式中、R3はベンゾイルである)とによって上記の方法を実施する場合、式(IVa)の化合物は、式(IIIb’)の中間体を通って得られ、これは粗中間体を使用して5つの化学変換を行って得られるにも関わらず、さらに驚くべきことには、共溶媒の添加なしで脱アセトン化(b”)反応媒質から直接結晶化できる。
【0055】
式(IVa)の中間体が、50重量%未満の濃度で含有される一方、残りの含有物は、先行する5種の化学反応に由来する副生成物及び残渣からなっている反応媒質から、容易に結晶化されることは、実に意外な結果である。
【0056】
受容体(VII)は、ラクトース一水和物から出発し、アセトン化(Barili et al.,Carbohyd.Res.1997, 298, 75−84)、及びその後の6’位の選択的保護により合成した。
【0057】
スキーム4に記載の6’位の置換基Rは、好ましくはアシル基、例えばアセチル基、又はベンゾイル又は塩素、臭素、アルコキシ若しくはニトロでモノ若しくはジ置換されたベンゾイル、好ましくはベンゾイルである(S.A.Abbas et al.,Carbohydr.Res.,88(1981) 51−60)。
【0058】
【化20】

【0059】
ある態様では、本発明の目的は、下記式(II)又は(IV)の2,3,4−トリ−O−ベンジル−L−フコシル誘導化合物である。
【0060】
【化21】

【0061】
式中、Pは相互に独立に次式:
【化22】


[式中、R1は塩素、臭素、アルコキシ及びニトロから選択され、R2は水素、塩素、臭素、アルコキシ及びニトロから選択される。]
のベンジル基であり、
Xはイミデートであり、
R”は、ヒドロキシ基が遊離である又はベンジル基によって部分的に保護されている、単糖、二糖又はオリゴ糖である。
但し、式(II)の化合物で、Xがトリクロロアセトイミデートであり、R1がp−クロロである場合、R2は水素である。
R2は好ましくは水素である。
R1は好ましくは塩素である。
【0062】
式(IV)の化合物の場合、R”は好ましくは、ラクトース、フコース、(2−アセチルアミノ)−ラクトース、(2−アミノ)−ラクトース、(2−アジド)−ラクトース、ラクト−N−ビオース、ガラクトース、グルコース、(2−アセチルアミノ)−グルコース、(2−アミノ)−グルコース及び(2−アジド)−グルコースから選択され、これらの基は遊離である又はベンジル基によって部分的に保護されており、より好ましくは、2’−ラクトース、3−ラクトース、3−(2−アセチルアミノ)−ラクトース、3−(2−アミノ)−ラクトース、3−(2−アジド)−ラクトース、4−ラクト−N−ビオース、2−ガラクトース、3−グルコース、3−(2−アセチルアミノ)−グルコース、3−(2−アミノ)−グルコース、3−(2−アジド)−グルコース、4−(2−アセチルアミノ)−グルコース、4−(2−アミノ)−グルコース及び4−(2−アジド)−グルコースから選択され、これらのヒドロキシ基は遊離である又はベンジル基によって部分的に保護されている。
【0063】
特に好ましい実施形態において、本発明は、式(IV)の化合物(式中、R”は2’−ラクトースである)、即ち下記式(IVa)の化合物を提供する。
【0064】
【化23】


[式中、Pは上記のとおりであり、R4は水素、ベンジル又はPである。]
【0065】
式(II)の化合物の場合、Xは好ましくはトリクロロアセトイミデートである。
【0066】
上記式(IV)の化合物は、上記方法のa)及びb)各ステップによって得ることができる。
【0067】
その上、本発明は、上記式(IV)の化合物を合成するためのフコシル供与体としての、式(II)の化合物の使用に関する。
【0068】
式(II)中、Xはイミデート又はハロゲンから選択されるアノマー炭素活性化剤、好ましくはトリクロロアセトイミデート又はα−臭素であり、Pは相互に独立に次式のベンジル基である。
【0069】
【化24】


[式中、R1は塩素、臭素、アルコキシ及びニトロから選択され、R2は水素、塩素、臭素、アルコキシ及びニトロから選択され、好ましくはR2は水素であり、R1は塩素である。]
【0070】
その上、本発明は、本発明の方法によって上記式(I)の化合物を合成するためのフコシル供与体としての、上記式(II)の化合物の使用に関する。
【0071】
その上、本発明は、上記式(IV)の化合物を合成するためのフコシル供与体としての、式(II)の化合物の使用に関する。
【0072】
式(II)中、Xはイミデート又はハロゲンから選択されるアノマー活性化剤であり、好ましくはトリクロロアセトイミデート又は臭化物であり、Pは相互に独立に次式のベンジル基である。
【0073】
【化25】


[式中、R1は塩素、臭素、アルコキシ及びニトロから選択され、R2は水素、塩素、臭素、メトキシ、アルコキシ及びニトロから選択され、好ましくはR2は水素であり、より好ましくはR2は水素、R1はp−クロロである。]
【0074】
その上、本発明は、本発明の方法によって上記式(I)の化合物を合成するためのフコシル供与体としての、上記式(II)の化合物の使用に関する。
【0075】
本発明によれば、アルコキシは、例えば−OMe、−OEt、−OnPr、−OiPr、−OnBu、−OiBu、−OtBuを意味する。
【0076】
本発明によれば、ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を意味する。
【0077】
本発明によれば、アルキルは、1〜10個の炭素原子を含有する線状又は分岐状アルキル鎖であって、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、ニトロから選択される1つ又は複数の基によって任意選択で置換されたアルキル鎖である。
【0078】
本発明によれば、アリールは、ハロゲン、アルコキシ、ニトロから選択される1つ又は複数の基によって任意選択で置換されたベンゼンである。
【0079】
本発明によれば、アシルは、−OCO−アルキル、又は−OCO−アリールの基を意味し、ここでアルキル及びアリールは上で定義したとおりである。
【0080】
本発明によれば、イミデートは、−OC(NH)−アルキル基を意味し、ここでアルキルは上で定義したとおりである。
【0081】
本発明によれば、トリアルキルシリルは、置換基として3アルキル又はアリール(同一又は異なる)に結合しているケイ素原子によってなる化学基を意味し、ここでアルキル及びアリールは上で定義したとおりである(例えばtert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル又はトリイソプロピルシリル)。
【0082】
本発明によれば、単糖は、ポリオキシアルデヒド(アルドース)又はポリオキシケトン(ケトース)を指し、n=3、4、5、6、7である式(CHO)、C2nn−1、C2nn−1NH、C2nn−1又はC2nn−1NHAcの単純な糖である。
【0083】
定義には、可能な立体異性体すべてと、例えばピラノシド型及びフラノシド型のような開形態又は環状形態、即ち分子内のセミアセタール及びセミケタールすべてが含まれ、例えばグリセルアルデヒド、アロース、アルトロース、アラビノース、エリトロース、フコース、ガラクトース、グルコース、グルコサミン、N−アセチル−グルコサミン、イドース、リキソース、マンノース、プシコース、リボース、デオキシリボース、ソルボース、タガトース、トレオース、キシロース及び対応するキトースが定義に含まれる。
【0084】
本発明によれば、二糖は、それぞれO−グリコシル結合及びN−グリコシル結合であるアセタール結合によって結合している2つの単糖によってなるポリヒドロキシレート化合物を指し、すべての可能な立体異性体及びすべての開形態又は環状形態が定義に含まれ、例としてラクトース、ラクトサミン、N−アセチル−ラクトサミン、マルトース、セロビオース、サッカロース、トレハロース、ツラノースが挙げられる。
【0085】
本発明によれば、オリゴ糖は、線状又は分岐状の糖鎖を形成するようにグリコシル結合で相互に結合している3〜6個の単糖を有するポリマーを意味し、例えばラフィノース、メレジトース、マルトトリオース、アカルボース、スタキオースが挙げられる。
【0086】
以下の実施例に基づいて、本発明をより理解することができる。
【実施例】
【0087】
[実施例1]
2,3:5,6:3’,4’−トリ−O−イソプロピリデンラクトースジメチルアセタール(1)の調製:
100.0グラム(278mmol)のラクトース及び4.0グラム(21mmol)のp−トルエンスルホン酸を600mlの2,2ジメトキシプロパン中に懸濁させ、混合物を加熱還流した。
90分後、溶液をトリエチルアミン(3.2ml、2.3mmol)で中和し、室温で冷却し、真空下で濃縮して濃厚なシロップを得た。
該シロップをトルエン(2×100ml)で2回処理し、再度濃縮して乾燥し、過剰の塩基を除去した。
残渣を10容の9:1メタノール/水の混合物に溶解し、上のR点(酢酸エチル中0.7)の消失が認められるまで加熱還流した。
真空下で蒸留して溶媒を除去し、最終シロップを300mlのジクロロメタンに溶解した。
有機層を水で2回洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して真空下で再度濃縮してシロップを得た。
酢酸エチル/ヘキサン混合物から残渣を結晶化し、91.2グラム(179mmol、64%)の2,3:5,6:3’,4’−トリ−O−イソプロピリデンラクトースジメチルアセタール(1)を得た。
【0088】
13C NMR(75MHz,CDCl): 110.47, 109.94, 108,38((CHC=)基の四級炭素が3個);107.20(C1),103.52(C1’);79.54, 78,24, 77.63, 75.88, 75.44, 74.75 74.18, 73.64;64.57(C6),62.45(C6’);57.56 e 54.41(2 OCH);28.17, 27.10, 26.30, 26.30, 25.72, 24.01(6 CHC=).
【0089】
[実施例2]
6’−O−ベンゾイル−2,3:5,6:3’,4’−トリ−O−イソプロピリデンラクトースジメチルアセタール(2)の調製(R=ベンゾイルである式VIIの化合物):
51.0グラム(100mmol)の1及び17.5ml(126mmol)のトリエチルアミンを510mlのジクロロメタンに溶解した。
塩化ベンゾイル14.6ml(126mmol)のジクロロメタン245ml中溶液を、事前に準備して0℃に冷やした上記溶液に30分かけて滴加した。
0℃で3時間後、溶液を室温まで温め、重炭酸ナトリウムの飽和溶液、次いで水で洗浄した。
分離後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮して粗製の6’−O−ベンゾイル−2,3:5,6:3’,4’−トリ−O−イソプロピリデンラクトースジメチルアセタールのシロップ(73.5g)を得た。得た粗生成物は、さらに精製することなく、カップリング反応に使用した。
【0090】
13C NMR(75MHz,CDCl): 166.35(ArCOO);133.18, 130.44, 129.79, 128.44(C Ar);110.39, 110.14, 108.31(四級炭素3個,イソプロピリデン基);105.06(C1),103.81(C1’);79.07, 77.86, 77.82, 76.46, 75.21, 74.29, 73.45, 71.63;64.74(C6),64.01(C6’);56.34, 53.24(2 OCH);28.13, 27.23, 26.43, 26.30, 25.72, 24.60(6 CHC=).
【0091】
[実施例3]
メチル6−デオキシ−L−ガラクトピラノシド(メチルL−フコピラノシド)(3)の調製:
200グラム(1.22moli)のL−フコース及び200グラムのアンバーライト(Amberlite)IR120、H型を、2リットルのメタノール中に懸濁させ、24時間、激しく撹拌しながら還流することによって加熱した。
室温で冷却した後、樹脂を濾過し、真空下で溶液を蒸発させた。
残渣を酢酸エチルから結晶化して、145.4グラム(816mmol、67%)のメチル6−デオキシ−L−ガラクトピラノシド(3)が得られた。
【0092】
13C NMR(75MHz,DO):
α−アノマー:100.1(C1),72.4, 70.2, 68.5, 67.1, 15.9(C6),55.7(OCH);
β−アノマー:104.4(C1),73.6, 72.0, 71.5, 71.1,15.9(C6),57.8(OCH).
【0093】
結晶を濾過した後、一度シロップになるまで濃縮した母液を上記と同様に再度処理して、前記のものと同じ特徴を有する追加の43.0g(20%)の化合物3を得ることができる。全収率87%。
【0094】
[実施例4]
メチル2,3,4−トリ−O−(4−クロロベンジル)−6−デオキシ−L−ガラクトピラノシド(4)の調製(P=4−クロロベンジルである式Vの化合物):
10.0グラム(56mmol)の3を27.8ml(200mmol)のトリエチルアミン中に懸濁させた。
懸濁液を80℃で加熱し、18.9ml(200mmol)の無水酢酸を滴加した。
添加後、溶液を60分間80℃で維持し、次いで室温で冷却した。
反応混合物を30mlのトルエンで希釈し、30mlの重炭酸ナトリウムの飽和溶液で2回抽出した。
層を分離した後、無機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。
47g(0.80mol)の水酸化カリウムを乾燥溶液に添加し、懸濁液を100℃で加熱した。
28ml(0.22mol)の4−塩化クロロベンジルを約90分かけて滴加し、次いで混合物をさらに60分間、還流し続けた。
室温まで冷却した後、懸濁液を50mlの水で希釈し、塩が完全に溶解するまで撹拌しながら放置しておいた。その後、層が定着し、分離し、有機相を25mlの10%塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。
最後に、溶液を少量になるまで濃縮し、シリカゲルを用いたFCC(8:2のトルエン/酢酸エチルを溶離剤とする)で精製した。
生成物を含有する分画を貯留し、濃縮して、22.6グラム(73%)のメチル2,3,4−トリ−O−(4−クロロベンジル)−6−デオキシ−L−ガラクトピラノシド(無色のシロップ)を得た。
【0095】
H NMR(200MHz,CDCl3): 7.34−7.18(m,12H,H Ar),4.91−4.57(m,6H,3CHベンジル),4.25(d,7.6Hz,1H,H1−β),3.98(dd,1H,J2,3 1.1Hz,J2,1 3.4Hz,H2−α),3.88(dd,1H,J3,4 2.7Hz,J3,2 10.1Hz,H3−α),3.85(m,1H,H5−α),3.61(dd,1H,J4,5 0.9Hz,J4,3 2.4Hz,H4−α),3.54(s,3H,OCH−β),3.37(s,3H,OCH−α),1.24(d,6.4Hz,3H,H6−β),1.17(s,6.4Hz,3H,H6−α).
【0096】
13C NMR(50MHz,CDCl):
αアノマー:98.6, 79.2, 78.6, 76.5, 74.4, 72.6, 72.6, 66.1, 55.4, 16.7;
βアノマー:104.9, 82.4, 79.4, 77.2, 74.2, 74.2, 72.4, 70.4, 57.0, 16.9.
【0097】
[実施例5]
粗製のメチル2,3,4−トリ−O−(4−クロロベンジル)−6−デオキシ−L−ガラクトピラノシド(4)の調製(P=4−クロロベンジルである式Vの化合物):
100g(0.56mol)の3を実施例4に記載のとおりに、但しシリカを用いた精製ステップを省いて処理した。
反応混合物を処理し、有機層を濃縮した後、387.4gのシロップを得た。このシロップは、さらに精製することなく後続のステップに用いた。
【0098】
[実施例6]
2,3,4−トリ−O−(4−クロロベンジル)−6−デオキシ−L−ガラクトピラノシド(5)の調製(P=4−クロロベンジルである式VIの化合物):
実施例5に記載のとおりに調製した粗製シロップ4(387.4g、0.41mol)を、1500mlの80%酢酸及び280mlの2M塩酸で処理した。
10時間還流下に加熱した後、溶液を室温で冷却し、1リットルのジクロロメタンで希釈した。
その後、層を分離し、有機層を先ず重炭酸ナトリウムの飽和溶液で、次いで水で洗浄した。
硫酸ナトリウムで乾燥し、シロップになるまで濃縮した後、ヘキサンから粗生成物を結晶化した。
155.2グラムの5(289mmol、4からの収率70%、3からの収率52%)を得た。
【0099】
H NMR(300MHz,CDCl): 7.33−7.20(m,12H,H Ar),5.28(m,1H,H1−α),4.88(m,2H ベンジル),4.75−4.59(m,5H,4H ベンジル + H1−β),4.11(q,6.6Hz,1H,H−5α),3.97(dd,1H,J2,3 10.4Hz,J2,1 3.7Hz,1H,H2−α),3.87(dd,J3,2 10.4Hz,J3,4 2.7Hz,1H,H3−α),3.70−3.46(m,5H,H2−β,H3−β,H4−β,H5−β,H4−α),3.22(bs,1H,1OH−β),2.90(bs,1H,1OH−α),1.24(d,6.6Hz,3H,H6−β),1.17(d,6.6Hz,3H,H6−α).
【0100】
[実施例7]
2,3,4−トリ−O−(4−クロロベンジル)−6−デオキシ−L−ガラクトピラノシド 1−O−トリクロロアセトイミデート(6)の調製(P=4−クロロベンジルである式IIaの化合物):
42mlのトリクロロアセトニトリル及び1.1ml(7.4mmol)の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンを、5(50.0グラム、92mmol)の無水ジクロロメタン(250ml)中溶液に添加した。
30分撹拌した後、反応混合物を2×150mlの塩化アンモニウムの飽和溶液で抽出した。
有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。
このようにして得た粗製トリクロロアセトイミデート油(6)(73.8グラム)は、さらに精製することなくカップリング反応に用いた。
【0101】
H NMR(300MHz,CDCl): 8.64(s,1H,NH−β),8.52(s,1H,NH−α),7.32−7.18(m,12H,H 芳香族),6.53(d,3.3Hz,1H,H1−α) 5.72(d,8.1Hz,1H,H1−β),4.95−4.60(m,6H,3CH ベンジル),4.17(dd,1H,J2,3 10.2Hz,H2−α),4.11(q,6.6Hz,1,H5−α),4.01(m,1H,H2−β),3.97(dd,1H,J3,4 2.7Hz,H3−α),3.72−3.64(m,2H,H4−αβ+ H5−β),3.62−3.55(m,2H,H3−β+ H4−β),1.27(d,6.4Hz,3H,H6β),1.20(d,6.3Hz,3H,H6α).
【0102】
[実施例8]
メチル2,3,4−トリ−O−(2−クロロベンジル)−6−デオキシ−L−ガラクトピラノシド(7)の調製(P=2−クロロベンジルである式Vの化合物):
3.0g(16.8mmol)の3を、8.3ml(60mmol)のトリエチルアミン、5.7ml(60mmol)の無水酢酸、14g(0.24mol)のKOH及び8.5ml(67mmol)の2−塩化クロロベンジルを使用して実施例4と同様に処理した。
後処理の最後に、真空下で溶液を濃縮して減容し、シリカゲルで精製した(ヘキサン/酢酸エチル8:2を溶離剤とする)。生成物を含有する分画を貯留し、濃縮して、6.4グラム(69%)のメチル2,3,4−トリ−O−(2−クロロベンジル)−6−デオキシ−L−ガラクトピラノシド(7)を無色のシロップとして得た。
【0103】
H NMR(300MHz,CDCl): 7.0−7.1(m,12H,H Ar),5.14−4.73(m,7H,3CHベンジルα及びβ,H1−α),4.30(d,7.5Hz,H1−β),4.13(dd,1H,J2,3 2.6Hz,J2,1 3.3Hz,H2−α),4.06(dd,1H,J3,4 2.7Hz,J3.2 10.2Hz,H3−α),3.96(q,1H,6.6Hz,H5−α),3.83(d,1H,1.5Hz,H4−α),3.57(s,3H,OCH−α),3.43(s,3H,OCH−β),1.33(d,3H,6.6Hz,H6−β),1.25(d,3H,6.6Hz,H6−α).
【0104】
13C NMR(75MHz,CDCl):
αアノマー: 137.0−126.6(C Ar),98.72(C1),79.64,79.13,76.92,72.21,70.47,70.43,66.32,55.52(OCH),16.66(C6);
βアノマー: 137.0−126.6(C Ar),105.02(C1),82.86,79.56,78.14,72.10,71.79,70.47,70.33,57.22(OCH),16.89(C6).
【0105】
[実施例9]
粗製メチル2,3,4−トリ−O−(2−クロロベンジル)−6−デオキシ−L−ガラクトピラノシド(7)の調製(P=2−クロロベンジルである式Vの化合物):
10.0g(56mmol)の3を、実施例8に記載のとおりに、但しシリカゲルを用いた精製ステップを省いて処理した。反応混合物を処理し、有機層を濃縮した後、シロップ40.8gを得た。このシロップは、さらに精製することなく、後続のステップで使用した。
【0106】
[実施例10]
2,3,4−トリ−O−(2−クロロベンジル)−6−デオキシ−L−ガラクトピラノシド(8)の調製(P=2−クロロベンジルである式VIの化合物):
150mlの80%酢酸及び28mlの2M塩酸を、実施例9に記載のとおり調製した粗製シロップ7(40.8g、39mmol)に添加した。
10時間還流下に加熱した後、溶液を室温で冷却して、100mlのジクロロメタンで希釈した。層を分離し、有機層を先ず重炭酸ナトリウムの飽和溶液で、次いで水で洗浄した。
硫酸ナトリウムで乾燥し、シロップになるまで濃縮した後、ヘキサンから粗生成物を結晶化した。
14.9グラム(28mmol、7からの収率72%、3からの収率50%)を得た。
【0107】
1H NMR(200MHz,CDCl): 7.60−7.19(m,12H,H Ar),5.40(d,1H,3.2Hz,H1−α),5.23−4.71(m,13H,3CH ベンジル,H1−β),4.21(q,1H,6.6Hz,H5−α),4.11(dd,1H,J2,3 9.8Hz,J2,1 3.2Hz,H2−α),4.00(dd,1H,J3.2 9.8Hz,J3,4 2.6Hz,H3−α),3.88−3.58(m,5H,H2−β,H3−β,H4−β,H5−β,H4−α),1.31(d,3H,6.4Hz,H6−β),1.25(d,3H,6.6Hz,H6−α).
【0108】
13C NMR(50MHz,CDCl): 137.0−126.6(C Ar α+β):
αアノマー: 91.73, 79.24, 78.57, 77.05, 72.05, 70.60, 70.01, 66.83, 16.67;
βアノマー: 97.61, 82.83, 80.85, 77.78, 72.04, 71.83, 70.88, 70.05, 16.87.
【0109】
[実施例11]
2,3,4−トリ−O−(2−クロロベンジル)−6−デオキシ−L−ガラクトピラノシド 1−O−トリクロロアセトイミデート(9)の調製(P=2−クロロベンジルである式IIaの化合物):
8.5mlのトリクロロアセトニトリル及び0.22ml(1.5mmol)の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンを、8(10.0グラム、18.6mmol)の無水ジクロロメタン中溶液に添加した。
30分撹拌した後、反応混合物を2×30mlの塩化アンモニウム飽和溶液で抽出した。
有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。
このようにして得た粗製トリクロロアセトイミデート(9)は、さらに精製することなく、カップリング反応で使用した。
【0110】
H NMR(200MHz,CDCl ): 8.68(s,1H,NH βアノマー),8.57(s,1H,NH αアノマー),7.65−7.15(m,12H,芳香族水素α+β),6.66(d,3.4Hz,1H,H1−α),5.85(d,7.8Hz,1H,H1−β),4.35(dd,J2,3 9.8Hz,1H,H2−α),4.26−4.14(m,2H,H3−α + H5−α),4.19(dd,J2,3 9.4Hz,1H,H2−β),3.91(dd,J 2.6 e 1.0Hz,1H,H4−α),3.86−3.84(m,3H,H3−β+ H4−β+ H5−β),1.36(d,6.4Hz,3H,3H6−β),1.29(d,6.6Hz,3H,3H6−α).
【0111】
13C NMR(50MHz,CDCl):
αアノマー: 161.20(C=NH),130.0−126.0(C Ar),95.23(C1),78.75, 78.39, 76.14, 72.1, 70.10, 70.04, 69.62, 16.63(C6);
βアノマー: 161.62(C=NH),130.0−126.0(C Ar),98.77(C1),82.70, 78.39, 77.63, 72.14, 71.85, 71.71, 70.24, 16.74(C6).
【0112】
[実施例12]
O−[2,3,4−トリ−O−(4−クロロベンジル)−6−デオキシ−α−L−ガラクトピラノシル]−(1→2)−O−(6−O−ベンゾイル−3,4−O−イソプロピリデン−β−D−ガラクトピラノシル)−(1→4)−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−D−グルコースジメチルアセタール(10)の調製(P=クロロベンジルであり、R=ベンゾイルである式IIIaの化合物):
粗製シロップ2(5.1グラム、10.0mmolの1から出発して、実施例2に記載のとおり調製した。)を、無水ジクロロメタン(32ml)に溶解し、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(23μl)を添加した。
粗製シロップ6(10.0g、18.6mmolの5から出発して、実施例7に記載のとおり調製した。)を40mlの無水ジクロロメタンに溶解して調製した溶液を、撹拌しながら前記溶液に加えた。
添加後、溶液を30分間、室温で維持した。
混合物のTLCでは、予期した生成物のメインスポット(2:1のn−ヘキサン/酢酸エチルでR=0.7)、少量のβ配置を有する縮合物、未反応の受容体(2)のスポット、及びグリコシル供与体のいくつかの分解スポットが示される。
トリエチルアミン(23μl)で中和した後、反応混合物を少量になるまで濃縮し、シリカゲルのカラム(2:1のn−ヘキサン/酢酸エチル)に通した。
9.71グラム(8.6mmol、受容体2から計算した収率86%)の10が無色のシロップとして得られた。
【0113】
H NMR(300MHz,CDCl3): 8.05(d,7.2Hz,2H Bz),7.57(m,1H Bz),7.45(m,2H,Bz),7.30−7.20(m,12H Ar Bn),5,59(d,3.0Hz,1H,H1’’),4.90−4.45(m,10H,3CH ベンジル,H1’,H2,2H6’),4.34(d,5.7Hz,1H,H1),4.27(m,1H),4.20−4.00(m,9H),3.91(dd,J 6.6 e 8.1Hz,1H),3.73,(dd,J 6.3 e 8.1Hz,1H) 3.63(bs,1H,H4’’),3.37(s,3H,OCH),3.35(s,3H,OCH),1.50(s,3H),1.43(s,3H),1.37(s,6H),1.32(s,3H),1.15(d,6.2Hz,3H,H6’’).
【0114】
13C NMR(75MHz,CDCl) 166.19(ArCOO);137.72, 137.39, 137.25, 133.18, 133.11, 133.03(四級炭素,Ar) 130.0−128.1(CH Ar),110.32, 109.86, 108,49(四級炭素,イソプロピリデン);105.08(C1),101.06(C1’),94.79(C1’’);80.3, 78.84, 78.68, 77.65, 76.46, 75.13, 74.19, 73.84, 72.23, 71.65, 70.86, 66.28;64.97, 63.67(CHe CH’),56.00, 53.03(2 OCH3);27.83, 27.11, 26.84, 26.70, 26.43, 25.02(イソプロピリデン基のCH);16.81(C6’’).
【0115】
[実施例13]
O−[2,3,4−トリ−O−(4−クロロベンジル)−6−デオキシ−α−L−ガラクトピラノシル]−(1→2)−O−(3,4−O−イソプロピリデン−β−D−ガラクトピラノシル)−(1→4)−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−D−グルコースジメチルアセタール(11)の調製(P=4−クロロベンジルである式IIIb’の化合物):
4.00g(3.5mmol)の10を40mlのメタノールに溶解し、0.39ml(3.9mmol)の30%水酸化ナトリウム溶液を添加した。
溶液を終夜室温で維持し、次いで真空下でシロップになるまで濃縮した。
残渣をジクロロメタン20mlに溶解し、水20mlで2回洗浄した。
分離後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮した。
3.5gの11(3.4mmol、97%)を無色のシロップとして得た。
【0116】
H NMR(200MHz,CDCl): 7.3−7.2(m,12H Ar),5.57(d,2.4Hz,1H,H1’’),4.92−4.52(m,8H,3 CH2 ベンジル + H2+ H1’),4.35(d,6.8Hz,1H,H1),4.30−3.50(m,15H),3.48(s,6H,2−OCH3),1.46(s,3H),1.43(s,3H),1.38(s,6H),1.29(s,6H),1.13(d,6.4Hz,3H,H6’’).
【0117】
13C NMR(50MHz,CDCl): 137.71, 137.39, 137.30, 133.27, 133.18, 132.93(四級、Ar),130.0−128.0(CH Ar),110.54, 109.78, 108.71(四級炭素,イソプロピリデン),107.60(C1),101.45(C1’),94.94(C1’’),80.88, 78.86, 78.77, 78.04, 77.58, 76.49, 75.52, 75.07, 74.58, 74.25, 74.06, 72.29, 71.77, 66.29, 64.93(C6),62.46(C6’),57.72(OCH),54.14(OCH),16.90(C6’’).
【0118】
[実施例14]
O−[2,3,4−トリ−O−(4−クロロベンジル)−6−デオキシ−α−L−ガラクトピラノシル]−(1→2)−O−(6−O−ベンゾイル−β−D−ガラクトピラノシル)−(1→4)−D−グルコース(12)の調製(P=4−クロロベンジルであり、R=ベンゾイルである式IIIb”の化合物):
5.00g(4.4mmol)の10を40mlのアセトニトリルに溶解した。溶液を40℃で加熱し、7.5mlの2M塩酸を添加し、40分間40℃で維持した。
前記の時間後、TLC(2:1のヘキサン/酢酸エチル)によって出発物質のないことが示された。
次いで溶液を室温で冷却し、水酸化ナトリウムで中和し、真空下で濃縮した。
残渣を30mlのジクロロメタンに溶解し、溶液を20mlの水で2回洗浄した。
水洗液を10mlのジクロロメタンで抽出し、貯留した有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。
真空下で溶媒を除去した後、粗生成物をイソプロピルエーテルから結晶化した。3.37グラム(3.4mmol、77%)の12を得た。
融点=111〜112℃。
【0119】
H NMR(200MHz,CDCl+ DO): 7.98(pst,7.0Hz,2H Ar),7.49(m,1H Ar),7.35(m,2H Ar),7.35−7.20(m,12H Ar),5.22(d,3.2Hz,1H,H1’’),4.88−4.33(m,10H,3 CH ベンジル,H1,H1’,2 H6’),411−3.21(m,14H,H2,H3,H4,H5,2 H6,H2’,H3’,H4’,H5’,H2’’,H3’’,H4’’,H5’’),1.17−1.11(m,3H,H6’’).
【0120】
13C NMR(50MHz,CDCl): 166.60(四級炭素,ArCOO), 136.99, 136.83, 135.64, 133.68, 133.56, 130.06, 129.65, 129.60, 129.37, 128.81, 128.57, 101.88(C1’ α +β),99.94(C1’’−β),99.83(C1’’−α),96.48(C1−β),92.31(C1−α),79.63, 79.21, 78.46, 78.06, 77.49, 75.22, 75.07, 74.49, 73.85, 73.25, 72.77, 72.64, 72.19, 71.73, 70.52, 68.39, 68.30, 63.23, 63.02, 61.23, 61.06, 16.80(C6’’).
【0121】
[実施例15]
中間体IIIb’を介したO−[2,3,4−トリ−O−(4−クロロベンジル)−6−デオキシ−α−L−ガラクトピラノシル]−(1→2)−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1→4)−D−グルコース(13)の調製(P=クロロベンジルでありR=Hである式IVaの化合物):
実施例12に記載の反応を再度、19.5グラム(31mmol)の粗生成物2及び6(25.0g、46mmolの5から出発して調製した。)から出発して、実施した。
トリエチルアミンで中和した後、反応混合物を真空下で濃縮して54.9グラムのシロップを得た。
該シロップを250mlのメタノールに溶解し、30%ナトリウムメトキシドのメタノール中溶液3.6ml(15.7mmol)を前記溶液に添加した。
TLC対照(2:1のn−ヘキサン/酢酸エチル使用)で出発生成物10の完全な消失が示されるまで、(約24時間)反応を室温で維持した。
酢酸で中和した後、溶液を真空下で濃縮し、得た残渣を200mlのアセトニトリルに溶解した。
結果として得られた溶液を40℃で加熱し、28mlの2M塩酸を加えた。
40℃で45分後、TLC対照(1:1の酢酸エチル/ヘキサン使用)によって中間体11の消失が示された。
次いで、懸濁液をダイカライトで濾過し、30%水酸化ナトリウムを添加することによってpH6.5〜7.0まで中和した。
室温で徐々に冷却してから、白色の結晶析出物を得た。
次いで、固体生成物を濾過し、水で洗浄し、真空下50℃で乾燥した。
15.6グラム(17.8mmol)の13を、2からの収率57%で得た。
【0122】
[α]20=−84.7(MeOH中でC=1.0、平衡時まで)。Pfus=118〜124℃。
HPLC純度:96%。
【0123】
H NMR(300MHz,DMSO−d6): 7.4−7.2(m,12H 芳香族),6.65(d,6.6Hz,OH βアノマー),6.33(d,4.5Hz,OH αアノマー),5.54(dd,2.4Hz,1H,H1’’),5.00−4.52(m,11.4 H,5OH,6 CH2 ベンジル,H1−α),4.39−4.12(m,3.6 H,1 OH,H1’,H1−β,H5’’),3.85−2.95(m,15H),1.08,1.96(2d重複,6.0Hz,3H,H6’’).
【0124】
13C NMR(75MHz,DMSO−d6): 138.09, 138.06, 137.90, 131.88, 131.79, 131.77(四級炭素6個,Ar);129.46, 129.08, 129.06, 128.17, 128.10, 128.07(CH 芳香族);101.03, 100.89(C1’ α e β);96.59(C1,β);95.97(C1’’ α +β);91.96(C1,α),79.52, 78.88, 78.04, 77.96, 75.41, 75.25, 75.19, 74.83, 74.68, 74.51, 73.56, 73.46(CH2 ベンジル),72.34, 70.94(CH2 ベンジル),70.30, 69.44(CH2 ベンジル),68.72, 65.39;60.31, 60.15, 60.11(C6 e C6’ α e β);16.32, 16.23(C6’’ α e β).
【0125】
[実施例16]
中間体IIIb”を介したO−[2,3,4−トリ−O−(4−クロロベンジル)−6−デオキシ−α−L−ガラクトピラノシル]−(1→2)−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1→4)−D−グルコース(13)の調製(P=クロロベンジルでありR=Hである式IVaの化合物):
実施例12に記載の反応を再度、19.5グラム(31mmol)の粗生成物2及び36.9グラムの粗生成物6(25.0g、46mmolの5から出発して調製した。)から出発して実施した。
トリエチルアミンで中和した後、反応混合物を真空下で濃縮して54.2グラムのシロップを得た。
該シロップを200mlのアセトニトリルに溶解し、溶液を40℃で加熱した。
次いで、28mlの2M塩化物酸を添加し、反応混合物を40分間40℃で維持し、その後室温で冷却した。
TLC対照(2:1の酢酸エチル/ヘキサン使用)で陽性(出発生成物10のスポットがない)が出た後、混合物を水酸化ナトリウムで中和し、真空下で濃縮した。
残渣を250mlのジクロロメタンに溶解し、溶液を100mlの水で2回洗浄した。
有機層を真空下で濃縮し、シロップを250mlのメタノールに溶解した。
3.6ml(15.7mmol)のメタノール中30%ナトリウムメトキシドを添加した後、溶液を24時間室温で維持した。
混合物を酢酸で中和し、チャコールで変色させ、ダイカライトで濾過し、真空下で再度濃縮した。
イソプロピルエーテルから結晶化した後、13.3g(15.2mmol)の13を2からの収率49%で得た。
【0126】
[α]20=−83.9(MeOH中でC=1.0、平衡時まで)。融点=114〜124℃。
HPLC純度94%。実施例15で報告したデータと一致したNMRデータ。
【0127】
[実施例17]
O−[2,3,4−トリ−O−(2−クロロベンジル)−6−デオキシ−α−L−ガラクトピラノシル]−(1→2)−O−(6−O−ベンゾイル−3,4−O−イソプロピリデン−β−D−ガラクトピラノシル)−(1→4)−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−D−グルコースジメチルアセタール(14)の調製(P=2−クロロベンジルであり、R=ベンゾイルである式IIIaの化合物):
粗製シロップ2(5.1グラム(10.0mmol)の1から出発して実施例2に記載のとおり調製した。)を、無水ジクロロメタン(32ml)に溶解し、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(23μl)を添加した。
粗製シロップ9(10.0g、18.6mmolの8から出発して実施例11に記載のとおり調製した。)を、無水ジクロロメタン40mlに溶解することによって調製した溶液を、前記溶液に撹拌しながら滴加した。
添加後、該溶液を室温で30分間維持した。
混合物試料をTLCにかけると、予期した生成物のメインスポット(ヘキサン/酢酸エチル2:1でR=0.7)、未反応の受容体(2)のスポット、分解したグリコシル供与体のいくつかのスポットを示す。
トリエチルアミン(23μl)で中和した後、反応混合物を少量になるまで濃縮し、シリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル2:1使用)に通した。
6.91グラムの14(6.1mmol、受容体2からの収率61%)を無色のシロップとして得た。
【0128】
H NMR(300MHz,CDCl): 8.05(d,7.2Hz,2H Ar),7.65−7.14(m,15 H Ar),5.15−4.70(m,7H,3CH2 ベンジル + H2),4.56−4.48(m,3H,2H6’+h1’),4.36(d,5.7Hz,1H,H1),4.34−3.94(m,11H),3.84(m,1H),3.78(m,1H),3.37(s,3H,OCH3),3.35(s,3H,OCH3),1.51(s,3H),1.48(s,3H),1.41(s,3H),1.38(s,3H),1.30(s,3H),1.28(s,3H),1.22(d,6.6Hz,3H,3H6’’).
【0129】
13C NMR(75MHz,CDCl3): 166.42(ArCOO),137.5−126.5(C Ar),110.47, 110.12, 108.73(四級炭素,イソプロピリデン);105.17(C1),101.36(C1’),95.00(C1’’);80.31, 79.61, 79.17, 77.87, 77.83, 77.00, 75.37, 75.23, 74.02, 73.91, 72.26, 71.04, 70.04, 69.65, 66.65, 65.08, 63.89;56.14, 53.12(2 OCH);27.96, 27.30, 27.01, 26.77, 26.45, 24.95(6 CH イソプロピリデン);16.90(C6’’).
【0130】
[実施例18]
O−[2,3,4−トリ−O−(2−クロロベンジル)−6−デオキシ−α−L−ガラクトピラノシル]−(1→2)−O−(3,4−O−イソプロピリデン−β−D−ガラクトピラノシル)−(1→4)−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−D−グルコースジメチルアセタール(15)の調製(P=2−クロロベンジルである式IIIb’の化合物):
2.20g(1.9mmol)の14を40mlのメタノールに溶解し、0.21ml(2.1mmol)の30%水酸化ナトリウム溶液を前記溶液に添加した。
該溶液を2.5時間室温で維持し、次いで真空下でシロップになるまで濃縮した。
残渣を15mlのジクロロメタンに溶解し、2 10mlの水で2回洗浄した。
分離後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮した。
1.85g(1.8mmol、94%)の無色のシロップを得た。
【0131】
H NMR(200MHz,CDCl): 7.65−7.10(m,12H Ar),5.68(d,3.4Hz,1H,H1’’),5.16−4.68(m,7H,3 CH2 ベンジル + H2),4.61(d,8.0Hz,1H,H1’),4.36(d,6.6Hz,1H,H1),4.32−3.60(m,15H),3.49(s,6H,2 OCH3),1.50(s,3H),1.48(s,3H),1.39(s,6H),1.29(s,3H),1.27(s,3H),1.20(d,6.6Hz,3H,3H6’’).
【0132】
13C NMR(50MHz,CDCl): 137.07, 136.87, 136.79, 132.65, 132.61, 133.15, 129.74, 129.68, 129.04, 129.01, 128.63, 128.46, 128.34, 128.25, 126.3, 126.73, 126.63(C Ar);110.59, 109.92, 108.80(四級炭素,イソプロピリデン);107.66(C1),101.65(C1’),95.03(C1’’),80.91, 79.65, 79.13, 78.25, 77.74, 76.99, 75.63, 75.08, 74.67, 74.29, 74.09, 72.27, 70.38, 69.57, 66.54, 64.93, 62.55, 57.80(OCH3),54.08(OCH3);28.02, 27.22, 26.84, 26.80, 26.48, 24.88(CH3 イソプロピリデン),16.92(C6’’).
【0133】
[実施例19]
中間体IIIb’を介したO−[2,3,4−トリ−O−(2−クロロベンジル)−6−デオキシ−α−L−ガラクトピラノシル]−(1→2)−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1→4)−D−グルコース(16)の調製(P=2−クロロベンジルであり、R=Hである式IVaの化合物):
実施例17に記載の反応を、同じ様式及び量で再度実施した。
トリエチルアミンで中和した後、反応混合物を真空下で濃縮して20.8gのシロップを得た。
該シロップを100mlのメタノールに溶解し、1.1ml(11mmol)の30%水酸化ナトリウムを溶液に添加した。
TLC対照(n−ヘキサン/酢酸エチル2:1)によって出発生成物14の完全な消失が示されるまで、室温で反応を維持した。酢酸で中和した後、溶液を真空下で濃縮し、残渣を80mlのアセトニトリルに溶解した。
結果として得られた溶液を40℃で加熱し、11.2mlの2M塩酸を添加した。40℃で30分後、TLC対照によって中間体生成物15の消失が示された。次いで、懸濁液をダイカライトで濾過し、30%水酸化ナトリウムを添加することによってpH6.5〜7.0に中和した。室温で徐々に冷却した後、白色の結晶析出物を得、これを次いで濾過し、水で洗浄した。
真空下で乾燥し、4.65g(5.3mol、2からの収率53%)の16を得た。
【0134】
[α]20=−65.7(MeOH中でC=1.0、平衡時まで)。Pfus=125〜130℃
【0135】
H NMR(300MHz,DMSO−d6): 7.75−7.20(m,12H 芳香族),6.68(d,6.6Hz,0.7 H,OH βアノマー),6.35(d,4.5Hz,0.3 H,OH αアノマー),5.63(bs,1H,H1’’),5.05−4.60(m,11,3 H,3CH2 ベンジル,5 OH,H1−α),4.45−4.23(m,2.7 H,H1’,H5’’,H1−β),4.26(s,0.7H,OH),4.14(s,0.3H,OH),4.00−3.25(m,14.3 H),2.99(m,0.7H),1.10(pst,6.0Hz,3H,H6’’).
【0136】
13C NMR(75MHz,DMSO−d6): 136.45, 136.34, 136.29, 131.90, 131.63, 131.52(6C 四重線 Ar);129.56, 129.42, 128.90, 127.04, 126.96, 126.89(CH 芳香族);100.99, 100.83(C1’ α及びβ);96.60(C1,β);96.04(C1’’ α+β);91.97(C1,α),79.41, 78.71, 78.56, 78.40, 76.00, 75.39, 75.21, 74.80, 74.70, 74.53, 73.69, 73.55, 72.36, 71.27(CH2 ベンジル),70.98, 70.30, 69.50, 69.44(CH2 ベンジル),68.66, 67.68(CH2 ベンジル),65.47, 60.32, 60.15, 16.14(C1’’−α),16.05(C6’’−β).
【0137】
[実施例20]
中間体13からの2’−O−α−L−フコピラノシルラクトース(17)の調製:
12.00g(13.7mmol)の13を600mlのメタノールに溶解し、8.1g(49.3mmol)の酢酸ナトリウム及び1.5gのチャコール担持パラジウム10%を溶液に添加した。
反応フラスコを水素で飽和させ、懸濁液を室温で24時間激しく撹拌しながら維持した。TLC対照(トルエン、メタノール、AcOH 10:10:1)によって、反応の完了が示される。
次いで、懸濁液をダイカライトで濾過し、シロップになるまで濃縮し、2組のイオン交換樹脂で脱イオン化した。
濃縮、及びメタノール/n−プロパノールからの結晶化を経て、5.70グラム(85%)の2’−α−L−フコピラノシルラクトースを得た。
【0138】
HPLC純度:99%
NMRスペクトルは、文献(Y.Ishizuka et al.,J.Carbohyd.Chem.(1999),18(5),523−533)に一致する。
【0139】
[実施例21]
中間体16からの2’−O−α−L−フコピラノシルラクトース(17)の調製:
4.00g(4.6mmol)の16を200mlのメタノールに溶解し、2.7g(16mmol)の酢酸ナトリウム及び0.5gのチャコール担持パラジウム10%を溶液に添加した。
反応フラスコを水素で飽和させ、懸濁液を室温で24時間激しく撹拌しながら維持した。TLC対照(トルエン、メタノール、AcOH 10:10:1)によって、反応の完了が示される。
次いで、懸濁液をデカライトで濾過し、シロップになるまで濃縮し、2組のイオン交換樹脂で脱イオン化した。
濃縮、及びメタノール/n−プロパノールからの結晶化を経て、1.98グラム(88%)の2’−α−L−フコピラノシルラクトースを得た。
【0140】
HPLC純度:98%
NMRスペクトルは、文献(Y.Ishizuka et al.,J.Carbohyd.Chem.(1999),18(5),523−533)に一致する。
【0141】
以下の実施例22〜26で、以下に図示した合成の実験の詳細を報告する。
【0142】
【化26】

【0143】
[実施例22]
4,6−O−ベンジリデン−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシド(18)の調製:
44.3g(0.2mol)の2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシドをN,N−ジメチルホルムアミド中に懸濁させ、3.82g(20mmol)のp−スルホン酸トルエン及び50mlのベンズアルデヒドジメチルアセタールを懸濁液に添加した。
反応物を60℃で加熱し、80分後に3.5ml(25mmol)のトリエチルアミンで中和した。
溶液を室温で冷却し、150gまで濃縮し、水で結晶化した。44.2g(71%)を得た。
【0144】
H(300MHz,DMSO−d6) 7.81(d,8.1Hz,1H,NH),7.49−7.37(m,5H,Ar),6.75(d,5.7Hz,1H,OH 1),5.61(s,1H,CHPh),5.2(d,5.4Hz,1H,OH3−β),5.05(d,5.4Hz,1H,OH3−α),4.99(t,J 4.2 e 3.6Hz,1H,H1−α),4.62(t,1H,H1− β),4.18(dd,6.0Hz,1H,H6−β),4.10(dd,J 4.5 e 9.9Hz,H6−α),3.90−3.56(m,4H,H2,H4,H5,H6),3.45(t,9.0Hz,1H,H3),1.85(s,3H,CHAc−α),1.83(s,3H,CH Ac−β).
【0145】
13C(75MHz,DMSO−d6): 169.43(COAc),137.82(四級炭素,Ar),128.81, 127.99, 126.35(CH Ar),100.85(CH Ph−β),100.67(CH Ph−α),96.0(C1β),91.45(C1α),82.46(C4α),81.51(C4β),70.49, 68.27, 67.94, 67.18, 65.85(C6β),62.05(C6α),58.03(C2β),54.74(C2α),23.07(CH Ac−β),22.63(CH Ac−α).
【0146】
[実施例23]
1,3−ジ−O−アセチル−4,6−O−ベンジリデン−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシド(19)の調製:
20グラム(64.7mmol)の18をアセトニトリル(200ml)及びトリエチルアミン(22.5ml)中に懸濁させた。15mlの無水酢酸を該懸濁液に滴加し、50℃で予熱した。添加後、析出物の形成を観察するまで溶液を数分間65℃で維持した。
該懸濁液を室温で冷却し、固体生成物を濾過し、アセトニトリルで洗浄した。
12.1gの生成物を得た。
母液を濃縮し、さらに11.8gの生成物を回収した。
全収率は、23.9グラム(94%)である。
【0147】
H NMR(300MHz,CDCl): 7.46−7.35(m,5H,Ar),6.14(d,J1,2 3.6Hz,1H,H1),5.83(bd,1H,NH),5.54(s,1H,CHPh),5.33(t,10.5Hz,1H,H3),4.48(ddd,1H,H2),4.30(dd,1H,H6),3.92(dd,1H,H6),3.79(t,9.6Hz,1H,H5),3.76(t,9.3,Hz,1H,H4),2.07, 1.94, 1.93(3s,9H,CH Ac).
【0148】
13C NMR(75MHz,CDCl): 171.96, 170.24, 169.10,(COAc),136.88(四級炭素,Ar),129.36, 128.39, 126.27(CH Ar),101.79(CH Ph),91.35(C1),78.60, 69.95, 68.72(C4,C3,C5),65.04(C6),51.82(C2),23.11(CH NHAc),22.63(CH OAc).
【0149】
[実施例24]
1,3−ジ−O−アセチル−6−O−ベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシド(20)の調製:
5.0グラム(12.7mmol)の19をテトラヒドロフラン(100ml)に溶解し、N雰囲気下において室温でシアノ水素化ホウ素(4.0g、63.6mmol)及びモレキュラーシーブ(10g)と共に撹拌しながら維持した。
1時間後、60mlの2%メタンスルホン酸のテトラヒドロフラン中溶液を滴加した。
添加開始から3時間後、溶液を冷却し、75mlの炭酸水素塩で飽和した溶液で中和した。懸濁液をダイカライトで濾過し、水層をジクロロメタンで抽出した。
有機層を貯留し、炭酸ナトリウム飽和溶液で洗浄し、次いで水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。
次いで、溶液を濃縮し、乾燥して、4.1g(80%)の生成物を得た。
【0150】
H NMR(300MHz,CDCl): 7.36−7.31(m,5H,Ar),6.13(d,J1,2 3.6Hz,1H,H1),5.68(d,JNH,2 8.4,1H,NH),5.12(dd,J2,3 11.1,J3,4 8.7Hz,1H,H3),4.57(q,12Hz,2H,CHBn),4.34(ddd,J 3.6,8.7,11.1,1H,H2),3.90−3.64(m,4H,H4,H5,2H6),3.04(bs,1H,OH4),2.16, 2.12(2s,6H,CH OAc),1.87(s,3H,CH NHAc).
【0151】
13C NMR(75MHz,CDCl): 172.49, 170.34, 169.26(COAc),137.45(四級炭素,Ar),128.70, 128.19, 127.99(CH Ar),91.10(C1),74.10(CHBn),73.07, 71.83, 70.22(C3,C4,C5),68.11(C6),51.25(C2),23.21(CH NHAc),21.14(2CH OAc).
【0152】
[実施例25]
O−[2,3,4−トリ−O−(4−クロロベンジル)−6−デオキシ−α−L−ガラクトピラノシル]−(1→4)−O−1,3−ジ−O−アセチル−6−O−ベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシド(21)の調製(P=4−クロロベンジルである式IIIの化合物):
2.6g(6.55mmol)の20を実施例12に記載のとおり処理した。トルエン/メタノール=4/1を溶離剤としてシリカゲルクロマトグラフィーを使用して、2.95gの白色の固体(51%)を得た。
【0153】
H NMR(300MHz,CDCl): 7.29−7.14(m,15H Ar),6.17(d,3.6Hz,1H,H1),5.58(d,9.0Hz,1H,NH),5.19(dd,1H,H3),5.00(d,3.6Hz,1H,H1’),4.83(d,11.4Hz,1H,ベンジルH) 4.65−4.40(m,7H,ベンジルCH),4.39−4.31(m,1H,H2),3.95−3.74(m,7H,H4,H5,2H6,H2’,H3’,H5’),3.6(bs,1H,H4’),2.17, 2.06(2s,6H,2CH OAc),1.92(s,3H,CH NAc),1.12(d,6.3Hz,3H,H6’).
【0154】
13C NMR(75MHz,CDCl): 172.44, 170.7, 169.00(3 CO Ac),138.30, 136.96, 136.90, 133.68, 133.61(四級炭素7個,Ar);129.57, 129.38, 128.70, 128.63, 128.51, 128.43, 128.32, 127.63, 127.59, 127.55(CH Ar);99.56(C1’−α);90.91(C1−α),79.01, 78.18, 76.38, 75.62, 74.43, 73.65, 73.10, 72.77, 72.09, 68.26(C6),67.55, 51.51(C2),23.12(CH NAc),21.31, 21.12(2 CH AcO),16.54(C6’).
【0155】
[実施例26]
O−[2,3,4−トリ−O−(4−クロロベンジル)−6−デオキシ−α−L−ガラクトピラノシル]−(1→4)−O−6−O−ベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシド(22)の調製(P=4−クロロベンジルである式IVの化合物):
1.25g(1.37mmol)の21を7.5mlのメタノール中に懸濁させ、79μlの30%ナトリウムメトキシドのメタノール中溶液で処理した。
反応を1時間室温で維持した。
結果として得られた懸濁液を酢酸(23μl)で中和し、水(8ml)で処理した。
固体生成物を濾過し、メタノール/水1:1で洗浄した。
1.05gの生成物を得た。
【0156】
H NMR(300MHz,DMSO−d6): 7.71(d,7.8Hz,NH),7.4−7.2(m,17H Ar),6.56(d,4.2Hz,アノマーOH),5.0(d,3.3Hz,1H,H1’−α),4.96−4.94(m,1H,H1−α),4.80−4.53(m,8H,OH,3 CHBn,H3),4.35−4.26(m,3H),3.85−2.95(m,10H),1.84(s,3H,CH NAc),(d,6.6Hz,3H,H6’).
【0157】
13C NMR(75MHz,DMSO−d6): 169.37(CO Ac),138.41, 138.02, 137.81, 137.60, 131.93, 131.87, 131.83(四級炭素7個,Ar);129.35, 129.32, 128.91, 128.17, 128.14, 128.11, 128.07, 127.33(CH Ar);97.46(C1’α);90.32(C1α), 78.36, 77.89, 75.66, 73.45(ベンジルCH),72.22, 71.98, 71.70, 70.34, 69.44(ベンジルCH),69.23, 68.79, 66.29(C6);54.42(C2),16.35(C6’).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


[式中、Rは、遊離ヒドロキシ基を有する単糖、二糖又はオリゴ糖である。]
のフコシル誘導体を合成する方法であって、
下記式(IV)の中間体の使用を含むことを特徴とする方法。
【化2】


[式中、Pは相互に独立に次式:
【化3】


(式中、R1は塩素、臭素、アルコキシ及びニトロから選択され、R2は水素、塩素、臭素、アルコキシ及びニトロから選択される。)
のベンジル基であり、
R”は、Rに対応して、ヒドロキシ基が遊離である又はベンジル基によって部分的に保護されている、単糖、二糖又はオリゴ糖であり、
ベンジル基によって保護されている前記ヒドロキシ基は、−OCHPh又は−OPの基であり、ベンジル基によって部分的に保護されているヒドロキシ基とは、R”に存在するヒドロキシルの数をnとし、nが偶数である場合に最大n/2、又はnが奇数である場合に最大(n−1)/2だけ、前記ベンジル基によって保護されていることを意味する。]
【請求項2】
中間体(IV)からベンジル基を除去して式(I)の化合物を得るステップc)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップc)に先行して、以下のステップ:
a)式(II):
【化4】


[式中、Pは上記のとおりであり、Xはアノマー炭素活性化剤である。]
の2,3,4−トリ−O−ベンジルフコピラノシル誘導供与体を、式R’OH[式R’OH中、R’は、Rに対応して、好適に保護された単糖、二糖又はオリゴ糖であり、そのヒドロキシ基が最大2つまで遊離であり、任意選択によりベンジル基で部分的に保護されており、残りのヒドロキシ基が、ベンジル基を保持する、特にフコシル部分に存在する基−OPを保持するような条件下で除去されるような現状技術の基で保護されている。]の単糖、二糖又はオリゴ糖グリコシル受容体とカップリングさせて、式(III):
【化5】


[式中、P及びR’は上記のとおりである。]
の中間体を得るステップ、
b)フコシル部分に存在する基−OPを保持し、R’に存在するベンジル基を任意選択により保持するような条件下において、サッカリド部分R’の保護基を除去して、式(IV):
【化6】


[式中、R”及びPは上記のとおりである。]
の中間体を得るステップ
を行う、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
下記式(II)又は(IV)の2,3,4−トリ−O−ベンジル−L−フコシル誘導化合物。
【化7】


[式中、Pは相互に独立に次式:
【化8】


(式中、R1は塩素、臭素、アルコキシ及びニトロから選択され、R2は水素、塩素、臭素、アルコキシ及びニトロから選択される。)
のベンジル基であり、
Xはイミデートであり、
R”は、ヒドロキシ基が遊離である又はベンジル基によって部分的に保護されている単糖、二糖又はオリゴ糖である。
但し、式(II)の化合物で、Xがトリクロロアセトイミデートであり、R1がp−クロロであるとき、R2が水素である場合を除く。]
【請求項5】
R”は、ヒドロキシ基が遊離である又はベンジル基によって部分的に保護されている、ラクトース、フコース、(2−アセチルアミノ)−ラクトース、(2−アミノ)−ラクトース、(2−アジド)−ラクトース、ラクト−N−ビオース、ガラクトース、グルコース、(2−アセチルアミノ)−グルコース、(2−アミノ)−グルコース及び(2−アジド)−グルコースから選択される、請求項4に記載の式(IV)の化合物。
【請求項6】
R”は、ヒドロキシ基が遊離である又はベンジル基によって部分的に保護されている、2’−ラクトース、3−ラクトース、3−(2−アセチルアミノ)−ラクトース、3−(2−アミノ)−ラクトース、3−(2−アジド)−ラクトース、4−ラクト−N−ビオース、2−ガラクトース、3−グルコース、3−(2−アセチルアミノ)−グルコース、3−(2−アミノ)−グルコース、3−(2−アジド)−グルコース、4−(2−アセチルアミノ)−グルコース、4−(2−アミノ)−グルコース及び4−(2−アジド)−グルコースから選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
R”が2’−ラクトースである、即ち下記式(IVa)の化合物である、請求項6に記載の化合物。
【化9】


[式中、Pは上記のとおりであり、R4は水素、ベンジル又はPである。]
【請求項8】
Xは、イミデート又はハロゲンから選択されるアノマー炭素活性化剤であり、
Pは相互に独立に次式:
【化10】


[式中、R1は塩素、臭素、アルコキシ及びニトロから選択され、R2は水素、塩素、臭素、アルコキシ及びニトロから選択される。]
のベンジル基である、
請求項4〜7のいずれか一項に記載の式(IV)の化合物を合成するためのフコシル供与体としての式(II)の化合物の使用。
【請求項9】
Xがトリクロロアセトイミデート又はα−臭素である、式(II)の化合物の請求項8に記載の使用。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法により式(I)の化合物を合成するためのフコシル供与体としての、請求項8又は9に記載の式(II)の化合物の使用。

【公表番号】特表2012−512865(P2012−512865A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541706(P2011−541706)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055841
【国際公開番号】WO2010/070616
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(502350799)イナルコ ソシエタ ペル アチオニ (6)
【Fターム(参考)】