説明

LED光源

【課題】LED光源から放射された白色光が、凹面反射鏡を用いて照明対象物上に反射集光される照明装置において、明るくて見易い照明パターンの得られる、LED光源を提供する。
【解決手段】LED光源は、平面状の基板3と、基板上に実装された少なくとも1個以上のLEDチップ4と、LEDチップの周囲を被覆するように塗布された蛍光膜5からなる。蛍光膜は青、緑、黄、赤の主として三原色の蛍光体からなり、LEDチップから放射された一次光を吸収し、演色性に優れた白色発光を発する。LEDチップおよび基板上に広がる蛍光膜の面積はなるべく小さいことが望ましい。また、蛍光膜の形状は、LEDチップの様な矩形ではなく、なるべく曲線から構成されていることがのぞましく、大略円形形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医療用の照明灯に用いられるLED光源に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDは電気エネルギーを紫外光や可視光等の光に変換して放射する半導体素子であり、
このようなLEDチップを例えば透明樹脂で封止したLED光源が各種分野で使用されて
いる。LED光源から放射される光の色調はLEDチップの発光波長に限られるものでは
なく、例えばLEDチップの表面に蛍光体を塗布したり、あるいはLEDチップを封止す
る透明樹脂中に蛍光体を含有させることによって、青色から赤色まで使用用途に応じた可
視光領域の光を得ることができる。特に、白色発光型のLEDランプは携帯通信機器の表
示部のバックライトや車載用ランプ、更に最近では家庭用の照明光源などに、従来の白熱
電球の代替品として、急速に普及し始めている。
【0003】
現在、普及もしくは試行されている白色発光型のLED光源としては、青色発光LEDと
黄色発光蛍光体や赤色蛍光体とを組合せたLED光源と、紫外発光LEDと青色、緑色、
赤色発光の各蛍光体の混合物とを組合せたLED光源とが知られている。現時点では、前
者の青色発光LEDを用いた白色LEDランプの方が後者より輝度特性等に優れることか
ら普及している。しかし、後者の紫外発光LEDを用いた白色LED光源は、輝度が前者
より劣るものの、発光並びに投影光の色ムラが少なく、色再現性に優れた白色光を得るこ
とができる等の利点を有している。この為、高品位が要求される特殊照明の分野では、紫
外発光LEDを用いた発光装置が普及するものと期待されている。なお、紫外発光LEDを用い
た方が、青色発光LEDを用いた場合より色再現性が優れる理由は、紫外発光LEDと組合せ使
用できる蛍光体の種類が、青色発光LEDを用いた場合よりも多く、様々な色温度の白色光
を得る場合に、数多くの蛍光体種の中から最適なものを選択でき、選択の幅が拡がること
によるものである。
【0004】
ところで、手術灯など医療用に用いられる特殊照明の分野でも、LED光源への置き換えが
進み始めている。従来この分野ではハロゲン電球を使用するのが一般的であったが、LED
光源を用いることにより、小型化、省電力を同時に実現することが可能となる。しかもLE
D光源の場合、発熱量が少ない為に、使用中の温度上昇を抑えることができ、手術等で連
続使用した場合に、温度上昇による苦痛を低減できるとか、更には電球の様に切れること
が無い為、保守点検等の手間を大幅に削減できるなどの、利点も有している。一方LED光
源の場合、ハロゲン電球等に比べて、演色性が不十分との問題もあった。何故なら医療用
照明の場合、血管等を鮮明に照らす必要があり、更に動脈と静脈を明確に区別できること
が求められる。この為には、短波長の紫色から長波長の赤色まで、あらゆる色を忠実に再
現できることが重要となる。しかし、この様な問題は、例えば青色LEDと黄色蛍光体の組
合せによる白色LEDランプを使用した場合に生ずるものであり、先に述べた紫外発光LEDと
三原色蛍光体を組合せた白色光源では、演色性の問題も容易に解決できる為、今後急速に
置き換えが進むものと見込まれている。
手術灯の場合、特定対象物を明るく照らす為に、光を集光し、集光位置を制御する手段が設けられている。光を集光させる手段としては、凹面等を有する反射鏡を用いたり、レンズを使用する方法がある。例えば引用文献1には凹面反射鏡を用いた白色LED装置が開示されている。特許文献の白色LED装置は、LED光源と、LED光源に対向配置された反射鏡からなり、LED光源からの光が反射鏡に向かって放射され、反射鏡の凹面で反射集光された後、最終的にはLED光源の背面側より光が取り出される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−65892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明のLED光源は、手術等の医療用に使用される発光装置で、光源からの発光を凹面
反射鏡の作用を用いて集光させるタイプの発光装置に使用され、照明対象物を明るく照ら
すと共に、対象物に照射された光パターンの輪郭に鋭角部や陰影等がなく、対象物を観察
し易い形状となることを課題にしている。本発明のLED光源は医療用の発光装置に利用さ
れるため、例えば手術に用いる際は、照明対象物を明るく照らすだけでなく、対象物の細
部まで正確に判別できる品位も要求される。この為には、照射された光のパターンにおい
て、中心部が明るく照射されると同時に、周辺部に陰影等が無く、なるべく曲線で構成さ
れていることが望ましい。何故なら、光パターンの輪郭に鋭角部や陰影が存在すると、対
象物上に照射された光パターンの輪郭部では、鋭角部や陰影が視覚の邪魔になって、細部
を見分けることが困難になる。また輪郭部が曲線で構成されている方が、柔らかく自然な
印象を与えるとの心理的効果も得られるためである。なお、本発明によるLED光源は、
あらゆる対象物を、自然な色の体色で再現することができ、演色性に優れた白色光を提供
できることは勿論である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態によるLED光源は、平面状の基板と、基板上に実装された少なくとも
1個以上のLEDチップと、LEDチップの集積全体を被覆するように塗布された蛍光膜
からなる。蛍光膜は青、緑、黄、赤等の主として三原色蛍光体からなり、LEDチップか
ら放射された一次光を外部に漏らすことなく吸収し、演色性に優れた白色光を発する。L
EDチップおよび基板上に広がる蛍光膜の面積はなるべく小さいことが望ましい。本発明
の蛍光膜では、蛍光膜表面上の任意の2点における2点間の最大直線距離と、集積を構成
する各LEDチップの各頂点のうち、任意の2つの頂点を結ぶ最大直線距離の比率が、1
.07以上2.50以下であることを特徴とする。また、この時の蛍光膜の形状は、1個
のLEDチップからなる矩形や多数個LEDチップからなる多角形とは異なり、なるべく
曲線から構成されていることがのぞましく、大略円形形状を有することを特徴としている

【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のLED光源を用いた発光装置
【図2】略円形の形状パターン
【図3】本発明のLED光源の正面図
【図4】本発明のLED光源の断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態のLED光源は、基板上に実装された少なくとも1個のLEDチップ(発光ダ
イオード素子)と、LEDチップの集積全体を被覆する様に塗布形成された、蛍光膜より
構成される。
【0010】
図1は、本発明のLED光源(1)が組み込まれた発光装置の模式図を示すものである。平
面基板上に実装されたLEDチップはワイヤで電源に繋がれており、LEDチップに通電
されるとLEDチップが発光し、LEDチップからの一次光は、LEDチップの周囲に被
覆された蛍光膜によって二次光に変換される(図は省略)。蛍光膜から放射された光は、
反射鏡(2)に向かって照射された後、反射鏡の凹面により反射され、最終的にはLED
光源(1)の背面側より、発光装置の外部に取り出されることになる。この時、凹面反射
鏡は、LEDチップの搭載位置が焦点となる様に配置設計されており、LEDの微小光源から発
した光は、凹面鏡で反射された後、凹面鏡の中心軸に対して略平行な光として、LEDチッ
プの外側に取り出されることになる。
【0011】
凹面鏡で反射された光は、元のLED光源の形状がそのまま拡大され、対象物に照射される
ことになる。このため蛍光膜の形状は、輪郭に鋭角部分や陰影の存在しないことが望まし
い。何故なら鋭角部や陰影の近傍の対象物は、鋭角部の形状や陰影が邪魔になって、対象
物の詳細を見極めることが困難になる。本発明のLED光源を手術用の光源として使用する
場合、対象となる人体の傷口や患部の微細構造を見極める必要がある。輪郭に鋭角部が存
在せず、対象物にムラ無く光が照射されていれば、対象物の詳細を識別し易い照明が得ら
れることになる。この場合、一定の範囲の大きさで輪郭形状の条件を満足した照明であれ
ば、蛍光膜の形状自体は本来特に制限されない。不定形であっても構わない。しかし、輪
郭に鋭角部が存在せず、サイズがコンパクトであることを同時に満たすための最も合理的
な形状は円形である。しかも円形であれば、照射対象物の中心から、あらゆる方向に同じ
距離の範囲で、光が照射されることになり、最も望ましい形状の照明と言える。
【0012】
蛍光膜の形状が円形であることは、明るさの面からも望ましい。何故なら、凹面鏡の形状
が通常は円形である為である。仮に蛍光膜の形状が長方形や多角形の場合、凹面鏡の形状
と合致しない為、長方形の長辺の一部や多角形の一部を凹面鏡で捉えきれず、一部光が損
失される恐れがある。蛍光膜の形状を小さくすれば、全体の光を捉えることができるが、
この場合最も効率的な形状は円形である。蛍光膜の形状が円形で、なるべく小さいもので
あれば、蛍光膜の発光の全てが効率的に凹面鏡に捉えられ、対象物を明るく照らすことに
なる。
【0013】
蛍光膜の形状は、円形であることが望ましいが、必ずしも真円である必要は無く、略円形
であれば、同様の効果を発揮できる。略円形とは、楕円であっても構わない。最も重要な
ことは輪郭に鋭角部分の存在しないことである。図2は様々な形状の照明パターンを表し
た模式図である。図2のaやbやcが本発明の略円形パターンであり、dやeの様に輪郭
に角が存在するものは、本発明には適さない。またcの様に、輪郭に微小な凹凸が存在す
るものの、全体としての形状が円に近ければ、略円形と定義する。
【0014】
蛍光膜と組合せるLEDチップは、1つのLED光源に対して、1個のLEDチップを使
用するのが最も効率的である。なぜなら、出来るだけ小さな面積の発光を得ようとする場
合、限られた面積内に複数のLEDチップを並べるよりも、全発光面積を1個のLEDチ
ップで形成するのが、最も効率的であるためである。しかし、求められる明るさや経済性
に応じて、複数個のLEDチップが使用される場合もある。複数個のLEDチップが使用
される場合、チップ間の隙間が成るべく小さくなる様に、基板上に集積して並べられるの
が望ましい。LEDチップの形状は矩形であるのが一般的であり、矩形形状を有するLE
Dチップを高密度に並べようとすると、集積部全体の形状も、正方形や長方形などの四角
形となるのが、一般的である。しかしながら、場合によっては、三角形の各頂点にLED
を配列するパターンも有り得るため、集積部全体の形状は多角形を想定する必要がある。
この様に、集積部全体の形状は、鋭角部を有する多角形となるため、集積部全体の形状
を光源の形状とするのは好ましくない。光源の形状そのものである蛍光膜の形状は、LE
Dチップ集積部の形状と異なるものとする必要がある。
【0015】
LEDチップとしては、たとえば、InGaN、GaNまたはAlGaN系発光ダイオー
ドチップが挙げられる。また発光ピーク波長は、350〜420nmの範囲にあることが
好ましい。すなわち、実施形態のLED光源は、紫外線〜紫色領域に発光ピークを有する
LED光を、蛍光体によって可視光に全面変換する方式である。この様な方式を採用する
ことのメリットは、主に2つある。つまり、白色光を構成する発光成分を全て蛍光体の組
合せにより得ることができるため、1つは、蛍光膜の形状を任意に変形できることであり
、他の1つは均一な発光で、且つ高演色な白色光が得られることである。
【0016】
本発明のLED光源では、複数個のLEDチップが全体として多角形状となる様に、平面
基板上に配列され、LEDチップ全体を覆う様に形成された蛍光膜の形状が略円形状を有
している。本発明の蛍光膜の形状が略円形を形成できるのは、LEDからの一次光が紫外乃
至紫色光から構成されている為である。つまり、本発明のLED光源は、LEDチップか
ら紫外光または紫色光が一次放射され、蛍光体がLEDからの一次光を吸収して、青色〜
緑色〜赤色の三原色可視光に変換し、三原色が混合されて白色光を形成するものである。
この時、蛍光体により吸収されることの無かった紫外光や紫色光も、白色光の一部として
含有されるが、量的には極微量であり、しかも紫外光は目に見えず、更に紫色光は視感度
が低いため、白色光に本質的な影響を与えない。従って本発明の蛍光膜はどの部分を見て
も、均一な白色光を示すことになる。しかしながら、青色発光のLEDチップを採用した
場合、LEDの青色光と、蛍光体の黄色光等を混合して白色光としている。この場合、均
一な白色光を得るには、青色光と黄色光が、どの部分においても均一な割合で混合される
必要がある。従い、青色LEDの周囲を、薄くてかつ均一な厚さの蛍光膜を形成すること
が重要となる。つまり、青色LEDを使用した場合には、蛍光膜の形状はLEDチップの
形状と相似形であることが必須条件となる。現在市販のLEDチップは矩形形状であるの
が一般的であり、青色LEDを用いた場合に、略円形形状の蛍光膜を形成することは出来
ない。もし無理矢理に略円形形状の蛍光膜を形成した場合は、同一の蛍光膜において、青
色光の強い部分や黄色光の強い部分が同時に存在し、色ムラのある発光しか得ることがで
きないものである。
【0017】
高演色な白色光を得るために組み合わせる蛍光体としては、350〜420nmの発光源
で励起させたとき、青、緑、黄、赤等の主として三原色に明るく発光する蛍光体を使用す
る。使用できる蛍光体種は特に限定されるものでは無いが、明るさ及び演色性の観点より
、以下の蛍光体を使用することが望ましい。青色蛍光体としてはユーロピウム付活ハロ燐
酸塩蛍光体、緑色乃至黄色蛍光体としてはユーロピウム、マンガン付活アルカリ土類オル
ト珪酸マグネシウム蛍光体、ユーロピウム付活アルカリ土類オルト珪酸塩蛍光体またはユ
ーロピウム付活サイアロン蛍光体が、赤色蛍光体としてはユーロピウム付活サイアロン蛍
光体またはユーロピウム付活カズン蛍光体等を用いることが望ましい。これらの蛍光体の
3〜5種を任意の割合で混合することで、高輝度・高演色で様々な色温度を有する白色発
光を得ることができる。
【0018】
蛍光体はシリコーン樹脂等の透明樹脂と混合して蛍光体スラリーとし、前記スラリーをL
EDチップの周囲に塗布して、蛍光膜が形成される。この時、蛍光膜はLEDチップの全
面を覆う様に形成されていることが重要となる。もしLEDチップの一部に、蛍光膜で被
覆されない部分があれば、LEDからの直接光が光源の外部に漏れ出ることになる。本発
明で使用するLEDチップは、発光成分に紫外線が含まれており、人体への影響面で好ま
しくない上、蛍光体により可視光に変換されるLED光の割合が減少して、光源の輝度が
低下することになる。
【0019】
蛍光膜の形状は真円が最も望ましいが、本発明の効果を発揮するには、大きさの範囲も制
限される。図3は本発明のLED光源を正面から見た構造を模式的に表したものである。
図中、蛍光膜は円形形状を有しており、半径はMLである。一方LEDチップは矩形形状
であり、図中では2個のLEDチップが全体として長方形となる様に配列されている。こ
の時、各LEDチップの任意の頂点において、頂点間の直線距離が最大となるのは、図中
のCLである。なおLEDや蛍光膜は平面図で表わされているが、実際には立体形状であ
る。具体的には、LEDチップには厚みがあり、蛍光膜はLEDチップの上面に形成され
る為に、更に大きな高低差を有している。しかしながら本発明のMLやCLの長さは、厚
味を無視して、平面図上の直線距離として定義するものとする。
【0020】
本発明において、MLとCLの比率、ML/CLの値は、1.07以上2.5以下である
ことが望まれる。この比率を決定する基準として、まずLEDチップ面積の最大値と最小値
を考慮する。本発明では、LEDチップの使用個数を制限するものではないが、光源はなる
べく小さなものが望まれるため、最大値については、最も大きなLEDチップを1個使用し
たケースを上限値とする。本発明で使用することのできる最大の大きさは3×3mm角のLE
Dチップである。このLEDチップを複数個使用したり、このLEDチップより大きなLEDチップ
を使用することは、凹面鏡の大きさとのバランスを考慮すると、考えられないものである
。またCLの最小値は、当然のことながら、最も小さいLEDチップを1個使用した場合であ
る。CLの値がこれらの最小値と最大値を満たす範囲であれば、どのような大きさのLEDチ
ップを、どのような個数で使用しても問題はない。
【0021】
本発明で使用される最大面積のLEDチップとして3×3mm角のものを使用した場合、CL
は約4.24mmとなり、MLとして許される大きさは、CLの2.5倍の10.6mmと
なる。つまり光源として許される最大値は直径が約1.1cmまでの円形となる。蛍光膜の
直径をこれ以上大きくすると、蛍光膜の膜厚が厚くなりすぎること及び凹面反射鏡との大
きさのバランスが悪くなり、蛍光膜から出射される白色光の強度が低下してしまう。
【0022】
一方下限値については小さい程良好であるが、蛍光膜は一定以上の輝度を発揮する為の膜
厚が必要となる上、LEDチップが蛍光膜でほぼ完全に被覆されている必要がある。蛍光膜
が明るく発光するには、少なくとも数μm程度以上の膜厚が必要であり、例えば本発明で
最小面積のLEDチップ0.1×0.1mm角のものを使用した場合に、LEDチップを完
全に被覆するには、蛍光膜形状の外径が少なくとも0.15mmΦの円形となることが必
要とされため、ML/CLの値は1.07が下限である。なお、ML/CLの値は、1.07以上2
.50以下であるが、蛍光膜の輝度がより明るくなる膜厚範囲を考慮すれば、より望まし
い範囲は1.12以上1.80以下となる。
【0023】
蛍光膜の大きさを円形に限定して説明したが、本発明の蛍光膜の形状は真円のみに限定さ
れる必要はない。形状が略円形である場合、前記MLの値は、円の直径ではなく、蛍光膜
表面上の2点間の距離で定義される。具体的には、蛍光膜の表面上の任意の2点で、2点
間の距離を測定した時、直線距離が最大値を示す2点間の距離をMLとして定義する。こ
の場合においても、蛍光膜の高さ方向の厚味は無視するものとし、あくまで平面図に表し
た時の、直線距離を測定するものとする。なお、蛍光膜が円形以外の場合でも、MLとC
Lの比率(ML/CL)の最適範囲は変わらず、1.07以上2.5以下となる。なお、
より望ましい範囲は1.12以上1.8以下である。
【0024】
LEDチップを実装するための基板の材料はアルミナが好適である。ただし、表面の反射
率が高く、物理的強度や、放熱特性等が適正であればアルミナに限定されることは無く、
例えばプラスチック等でも構わない。また基板外形については、LED光源から集光・反
射した光を背面側よ取り出す為に、小形であることが望ましい。具体的には、基板表面上
の任意の2点の最大直線距離をPLとして、前記PL値は14.5mm以下であり、より
好ましくは7mm以下である。
【0025】
基板表面の体色は反射率を高くするとの観点で、白色が望ましい。ただし反射率を高くす
るのは、LEDチップが載置される部分と蛍光膜で覆われた部分のみである。これらの部
分においては、LEDチップや蛍光膜から放射された光が、基板表面で反射され、光源全
体から放射される光の強度が増大する。
【0026】
一方、基板上で、その表面上にLEDチップや蛍光膜が存在しない部分、つまり外部から
見て、基板表面を直接見ることのできる部分は、光を反射しないことが望ましい。何故な
ら、基板表面で反射された光が、凹面鏡に向かって放射され、最終的には照明対象物への
照明光に混合される為である。蛍光膜からの直接光と、周囲の反射光の両者が凹面鏡に照
射されると、両者間の光の強度差が大きいために、照射パターンにムラが生じてしまう。
具体的には本来の照射パターンの輪郭部周辺に、陰影が形成されることになる。この様な
陰影部分は照明対象物を観察する上での障害となるため、なるべく存在しないことが好ま
しい。この為、蛍光膜の周囲の基板表面は反射率を成るべく低くする必要がある。具体的
には、基板表面にカーボンブラックからなる層を形成し、反射率を抑えると良い。シリコ
ーン樹脂中に、カーボンブラックの粉末を加えてスラリーを形成し、基板上に塗布するこ
とで形成することができる。カーボンブラック膜の膜厚は、数十〜数百ミクロン程度が適
正である。
【0027】
なお、カーボンブラック膜を形成する際、基板表面上に直接塗布するのが原則であるが、
蛍光膜との境界線に沿ってピッタリ塗り分けるのは製造技術上困難である。この為、蛍光
膜の周辺部分においては、一部蛍光膜の上に重ねて、カーボンブラック膜が形成される場
合がある。この時、実質的な光源の大きさは、蛍光膜が外表面に露出している部分に限定
されるため、本発明における蛍光膜とは、表面が露出している部分に限定するものとする
。つまり本発明では、蛍光膜の表面上の任意の二点のうち、二点間の最大直線距離をML
と定義しているが、前記MLは、蛍光面が直接露出している表面の2点間の最大直線距離
を意味するものとする。
【実施例】
【0028】
以下、実施例について具体的に説明する。
(実施例1)
青色、緑色、黄色、および赤色に発光する4種類の蛍光体を用意し、これにシリコーン
樹脂を加えて、十分に混練し、蛍光体スラリーを作成した。各色蛍光体の組合せは、LE
D光源の白色色温度が4250度Kとなる様に、表1記載の蛍光体種と配合比率で行なっ
た。
【0029】
【表1】

【0030】
次に、アルミナ基板(サイズ:4×4mm)上に隣接するチップとの間隔を0.1mmとし
て実装された2個のLEDチップ(発光ピーク波長:399nm,1個のサイズ:800
×800μm)を並列接続し、その上から、蛍光体を含む混合スラリーを滴下し、140
℃で熱処理してシリコーン樹脂を硬化させることにより、蛍光膜を作製した。さらに蛍光
膜の周囲で、アルミナ基板が剥き出しになっている箇所に、カーボンブラックの混練され
た樹脂スラリーを塗布し、表面の体色を黒色とした。なお、ML/CL値を測定した結果
、1.5であった。このようにして得られたLED光源に、300mAの電流を流し駆動
した。積分球で明るさ(全光束)を測定すると共に、演色性(Ra,R9値)を求めた。
測定にあたり、積分球はLABSPERE社製10インチ積分球の装置を使用し、基板面中央から
垂直に127mm離れた位置での分光光度を測定した。また、実施例1のLED光源に凹
面反射鏡を組合せ、発光装置の照度を測定した。LED光源の背面で、光源から1m離れ
た位置に観察用試料を置き、試料に発光措置から光を照射して測定した。得られた諸特性
の数値を表2に示す。
【0031】
【表2】


表2に示される通り、実施例1の光源は、4250度Kの白色光で、全光束が44lm(
ルーメン)、試料の照度が4290lx(ルックス)を示し、所望の明るさを示すLED
光源を得ることができた。また白色光の演色性は、平均演色評価数Raが97、赤色の見
え方を評価する特殊演色評価数R9が92であり、医療用照明としての品位を十分に満足
するものであった。演色評価数は、人体に照射した際の血管等の存在を見極めるのに必要
な特性であり、Raが90以上、R9が85以上あれば、全く問題のないレベルである。
【0032】
(実施例2〜14、比較例1〜7)
続いて、 LEDチップの使用個数を変更すると共に、LEDチップの総面積に対応して
、種々の形状と大きさの蛍光膜を組合せ、実施例と比較例のLED光源を作成した。なお
蛍光膜は実施例1で作成したものと全く同じ組成のスラリーを使用した。LEDチップを
実装する基板については、材料は同じアルミナを使用したが、大きさについては蛍光膜の
形状や大きさに応じて適宜変更した。また基板表面で、蛍光膜等で被覆されていない部分
については、カーボンブラックによる黒色膜を形成してあるが、実施例14と比較例7に
ついては、黒色膜は形成せず、アルミナ基板の生地がそのまま剥き出しとなっている。ま
た、同じ表3のチップ配列の欄には、チップ間の接続方式と使用個数が判る表現で記載し
た。例えば「2並列×2直列」とは、LEDチップ2個を直列に接続したものを、2列に
並列接続したもので、合計4個のLEDチップが実装されていることを示す。
【0033】
【表3】


表3の照度特性を見ると判る通り、実施例のLED光源では、ML/CLが1.07から
2.41の範囲にあり、約3000から4500lxの明るい照度特性を示し、特にML
/CLが1.8以下1.12以上の場合は、4200lx以上の明るい照度特性が得られ
た。一方ML/CLが規定値を満たさない比較例1〜5のLED光源の照度は3000l
x以下しか得られなかった。特に比較例2の様に、ML/CLの下限値を下回る場合に蛍
光膜の膜厚が十分確保できず、効率良く可視光に変換できないために全光束が低い事がわ
かる。また光源の形状は図2のa〜eの5種類のパターンのものを作成した。形状a及び
bは、照射パターンの輪郭に鋭角部や陰影は無く、対象物が見易くて大変良好な品位であ
った。一方形状dやeの場合は、照射パターンの輪郭に鋭角部が存在し、対象物が見難い
照明しか得られなかった。また実施例14つおいては、照射パターンの形状は円形で問題
はなかったが、輪郭に薄い二重のパターンが現われ、実用レベルではあるが、やや見難い
照明であった。なお、得られた白色光の演色性は実施例1と同様に良好であり、全ての光
源が、Raは97±2、R9は92±2の範囲内に収まった。
【符号の説明】
【0034】
1・・・LED光源、2・・・凹面反射鏡、3・・・基板、4・・・LEDチップ、5・
・・蛍光膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、矩形を有するLEDチップが少なくとも1個と、蛍光膜からなるLED光源にお
いて、前記基板上の特定領域部内に、前記LEDチップが集積されて配列され、前記LE
Dチップの集積全体を被覆する様に前記蛍光膜が形成されてなり、前記特定領域部の平面
形状と、前記蛍光膜の平面形状が互いに異なることを特徴とするLED光源。
【請求項2】
請求項1記載のLED光源において、前記蛍光膜の平面形状が略円形であることを特徴と
するLED光源。
【請求項3】
請求項1乃至2記載のLED光源において、前記特定領域部内で集積を構成する各LED
の各頂点のうち、任意の2つの頂点を結ぶ2点間距離のうち、最大直線距離をCLとし、
蛍光膜の表面上の任意の2点間の距離のうち、最大直線距離をMLとするとき、前記CL
と前記MLの比率ML/CLが、1.07以上2.50以下であることを特徴とするLE
D光源。
【請求項4】
請求項1乃至3記載のLED光源において、前記基板のうち、前記特定領域部内及び前記
蛍光膜で被覆された部分の表面が白色であり、その他の部分の表面が黒色であることを特
徴とするLED光源。
【請求項5】
請求項4記載のLED光源において、前記基板がアルミナからなり、前記基板上の黒色部
分はカーボンブラックとシリコーン樹脂からなることを特徴とするLED光源。
【請求項6】
請求項1乃至5記載のLED光源において、前記MLとCLの比率ML/CLが、1.1
2以上1.80以下であることを特徴とするLED光源。
【請求項7】
請求項1乃至6記載のLED光源において、各LEDチップの1辺が0.1〜3.0mm、
他の1辺が0.1〜3mmの矩形であることを特徴とするLED光源。
【請求項8】
請求項1乃至7記載のLED光源において、前記LEDチップから照射される光のピーク
波長が380nm以上420nm以下であることを特徴とするLED光源。
【請求項9】
請求項1乃至8記載のLED光源において、前記蛍光膜が、青色蛍光体、緑色蛍光体、黄
色蛍光体及び赤色蛍光体からなる主として三原色の蛍光体と透明樹脂との混合物であり、
白色に発光する事を特徴とするLED光源。
【請求項10】
請求項9記載のLED光源において、前記青色蛍光体がユーロピウム付活ハロ燐酸塩蛍光
体、前記緑色乃至黄色蛍光体がユーロピウム、マンガン付活アルカリ土類オルト珪酸マグ
ネシウム蛍光体、ユーロピウム付活アルカリ土類オルト珪酸塩蛍光体もしくはユーロピウ
ム付活サイアロン蛍光体の少なくとも1種、前記赤色蛍光体がユーロピウム付活サイアロ
ン蛍光体、もしくはユーロピウム付活カズン蛍光体の少なくとも1種であることを特徴と
するLED光源。
【請求項11】
請求項1乃至10記載のLED光源は、凹面を有する反射鏡を備えた発光装置に使用され
ることを特徴とするLED光源。
【請求項12】
請求項11記載のLED光源において、前記発光装置が医療用に用いられることを特徴と
するLED光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−102058(P2013−102058A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244956(P2011−244956)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(303058328)東芝マテリアル株式会社 (252)
【Fターム(参考)】