説明

LED照明器具

【課題】基板の表面にLEDを配置し、裏面に放熱器を取り付けた従来のLED照明器具では、発熱源であるLEDと放熱器との間に基板が介在されている。基板は絶縁体で形成されているが、絶縁材は一般的に熱伝導率が低い。基板の熱伝導率はそのためあまり高くはなく、放熱器まで伝達された熱は速やかに放熱されるが、基板の表面で発生した熱は基板が断熱して基板の裏面に伝達されにくい。そのため、結果的にLEDで発生した熱を効率よく放熱器で放熱することができない。
【解決手段】基板表面に電気的に独立した独立パターン23を形成し、裏面パターン24に対して熱通路部4で連結し、さらに導電パターン21,22と独立パターンとに跨がるように熱の良導体であるシリコン樹脂6を塗布した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面にLEDが配置され、基板の裏面に放熱器が取り付けられたLED照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギを推進する流れでLED(発光ダイオード)を用いた照明器具が多数提案されている。1個のLEDの発光量は年々増加しているものの、従来の白熱灯や蛍光灯の代替とするためには、多数のLEDを集積して点灯させる必要がある。そのため、基板の表面に多数のLEDを配置したLED照明器具が提案されている(例えば特許文献1参照)。ただし、多数のLEDを点灯させるとLED全体の発熱量も増加するため、冷却する必要がある。そこで、基板の裏面に放熱フィンを備えた放熱器を取り付けて、基板に伝達された熱を基板の裏面側から放熱器に伝達させて基板を冷却している。
【0003】
また、放熱器を用いないものとして、基板を透明な筒状体の中に収納し、さらに筒状体の内部をシリコン樹脂で充填したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。シリコン樹脂は比較的熱伝導率が高いことが知られている。このものでは、LEDで発生した熱を筒状体内に充填したシリコン樹脂に伝達させ、その熱をシリコン樹脂内で伝導させ拡散させることによりLEDを冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−21156号公報(図2,図4)
【特許文献2】特開2010−97763号公報(図1,図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記基板の裏面に放熱器を取り付けたものでは、発熱源であるLEDと放熱器との間に基板が介在されている。基板は絶縁体で形成されているが、絶縁材は一般的に熱伝導率が低い。基板の熱伝導率はそのためあまり高くはなく、放熱器まで伝達されれば熱は速やかに放熱されるが、基板の表面で発生した熱は断熱材として機能する基板自体に阻害されて基板の裏面に伝達されにくい。そのため、結果的にLEDで発生した熱を効率よく放熱器で放熱することができないという不具合が生じる。
【0006】
なお、LEDをシリコン樹脂で覆うものでは、LEDからシリコン樹脂へと直接熱が伝達されるので、放熱という観点からは優れているが、シリコン樹脂自体の透光性が高くないため、LEDから照出された光量が減衰するという不具合が生じる。また、光がシリコン樹脂で拡散されるため、スポットライトのように拡散を嫌う用途には採用することができない。さらに、シリコン樹脂の外周面に位置する筒状体の断熱性が高いと、シリコン樹脂自体の温度が上がり、放熱量は少ない。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、LEDをシリコン樹脂で覆うことなくLEDで発生した熱を効率よく放熱することでのきるLED照明器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明によるLED照明器具は、基板の表面に金属箔からなる導電パターンと、この導電パターンに半田付けされたLEDとを備え、基板の裏面に放熱器が押接されたLED照明器具において、基板の表面に、上記導電パターンとは電気的に絶縁された別個の独立パターンを設けるとともに、基板の裏面を覆う裏面パターンを設け、独立パターンと裏面パターンとを基板を貫通して両者を熱の良導体からなる熱通路部で連結し、上記導電パターンと独立パターンとに跨がるようにシリコン樹脂を塗布し、上記放熱器を裏面パターンに押接させることにより、LEDで発生した熱を導電パターンからシリコン樹脂を介して独立パターンに伝達させ、さらに熱通路部から裏面パターンに伝達し、放熱器で放熱するようにしたことを特徴とする。
【0009】
基板の表面の熱を熱通路部を介して裏面に流すことにより、LEDで発生した熱を効率よく放熱器へと伝達させる。但し、熱通路部は金属で形成することが望ましいので、基板の裏面に裏面パターンを設けるので、導電パターンと裏面パターンとを熱通路部で連結すると導電パターンが裏面パターンによってショートする。そこで、絶縁体であるシリコン樹脂を介して熱を一旦独立パターンに伝達することにより、導電パターンがショートしないようにした。
【0010】
なお、シリコン樹脂は比較的熱伝導率が高いが、金属よりは低い。そのため、導電パターンと独立パターンとの間に介在するシリコン樹脂の熱伝導長さは短い方が望ましい。そこで、上記導電パターンは1対のパターンで構成され、上記LEDは両パターンに跨がって半田付けされており、上記独立パターンをこの1対のパターンの間に配置するとともに、熱通路部を、LEDと重ならない位置に形成することが望まれる。熱通路部をLEDと重ならないように形成することにより、熱通路部に直接シリコン樹脂を接触させることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明は、シリコン樹脂を介して基板の表面側の熱を裏面の放熱器に伝達するので、導電パターンをショートさせることなく効率よく熱を放熱器へと伝達させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】基板と放熱器を示す斜視図
【図3】III部の断面図
【図4】シリコン樹脂の他の塗布状態を示す図
【図5】独立パターンの他の形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照して、1は本発明によるLED照明器具(以下、照明器具という)である。この照明器具1は天井材Cに形成された円形の窓穴に取り付けられるものであり、後述するLEDが収納されているケース部11と、同じく後述する放熱器が収納されているカバー部12とから構成されている。この照明器具1は居間などの室内やイベントホールなど、設置する場所を選ばないが、本実施の形態では浴室の天井に設置した。そのため、ケース部11は浴室内の湯水や水蒸気がケース部11内に浸入しないように密閉しておく必要がある。本実施の形態ではケース部11の前面を透明板10で密閉した。このため、ケース部11内は換気されないので、LEDから発生した熱はカバー部12内に収納されている放熱器に伝達させて放熱する必要がある。このため、カバー部12には換気のための多数のスリット13が形成されている。
【0014】
図2および図3を参照して、図2に示すものはケース部11に収納されている基板2とカバー部12に収納されている放熱器5とを示したもので、図1に示したものと姿勢が上下反転されている。基板2の表面にはLED3に給電するための導電パターン21,22が形成されている。この導電パターン21,22はプラス側とマイナス側との1対で構成されており、図示しない外部の駆動回路から直流電力の供給を受けて各LED3を発光させる。導電パターン21,22は基板2の表面に貼着された銅箔をエッチングすることにより形成される。そして基板2の表面に、これら導電パターン21,22のほかに独立パターン23を形成した。この独立パターン23は導電パターン21,22をエッチングにより形成する際に同時に形成されるもので、導電パターン21,22のいずれとも電気的に接続されておらず、電気的に導電パターン21,22に対して独立している。
【0015】
一方、基板2の裏面には裏面全体を覆う裏面パターン24が被着されている。この裏面パターン24も他のパターンと同じく銅箔で形成されている。そして、独立パターン23と裏面パターン24とを複数のスルーホールで連結し、そのスルーホール内にハンダを充填して、独立パターン23と裏面パターン24とを熱的に連結する熱通路部4を形成した。
【0016】
そして、図2の2点鎖線で示す境界線Sの外側にシリコン樹脂6を塗布した。なお、裏面パターン24に放熱器5の基部51を接触させる際に同様のシリコン樹脂もしくはシリコングリスを介在させ、裏面パターン24から放熱器5の基部51への熱の伝達が良好になるようにした。この基部51は基板2と同径の円板状に形成されており、多数のフィン52が一体に形成されたものである。
【0017】
上述のように境界線Sの外側にシリコン樹脂6を塗布すると、シリコン樹脂6は導電パターン21,22と独立パターン23とに跨がることになる。LED3で発生した熱はLED3が半田付けされている導電パターン21,22に伝達される。上述のように、導電パターン21,22は銅箔で形成されているので、伝達された熱は導電パターン21,22を素早く伝導して拡がる。シリコン樹脂6が塗布された部分まで熱が伝導してくると、その熱はシリコン樹脂6に伝達される。シリコン樹脂6は熱伝導率が高いので、導電パターン21,22から伝達された熱はシリコン樹脂6内を伝導して独立パターン23へと伝達する。独立パターン23に伝達された熱は熱通路部4を通って裏面パターン24に伝達され、さらに放熱器5の基部51へと伝達される。放熱器5の基部に伝達された熱はフィン52から大気へと放熱され、上述の一連の熱経路を通ってLED3で発生した熱がフィン52から放熱されることになる。
【0018】
ところで、上述のように導電パターン21,22からシリコン樹脂6へといち早く熱を伝達させることが望ましい。そこで、図4に示すように、LED3が配置されている箇所を除いて基板2の表面をシリコン樹脂6で覆うように塗布してもよい。このように、熱の発生源であるLED3の近傍からシリコン樹脂6へと熱を伝達させて独立パターン23へと熱を逃がすことが重要である。
【0019】
また、発熱源であるLED3から近い位置で裏面パターン24へと熱を逃がすことも有効である。そこで、図5に示すように、1対の導電パターン21,22に挟まれるように、第2の独立パターン7を設け、その第2の独立パターン7に熱通路部4を形成することによって、発熱源であるLED3に近い位置で熱を裏面パターン24に流すようにした。なお、この図5に示すものでは、シリコン樹脂6は図4に示すようにLED3の設置位置以外の全面に塗布することになるが、熱通路部4にシリコン樹脂が塗布できるように、熱通路部4をLED3とは重ならない位置に形成した。
【0020】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0021】
1 (LED)照明器具
2 基板
3 LED
4 熱通路部
5 放熱器
6 シリコン樹脂
21,22 導電パターン
23,7 独立パターン
24 裏面パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に金属箔からなる導電パターンと、この導電パターンに半田付けされたLEDとを備え、基板の裏面に放熱器が押接されたLED照明器具において、基板の表面に、上記導電パターンとは電気的に絶縁された別個の独立パターンを設けるとともに、基板の裏面を覆う裏面パターンを設け、独立パターンと裏面パターンとを基板を貫通して両者を熱の良導体からなる熱通路部で連結し、上記導電パターンと独立パターンとに跨がるようにシリコン樹脂を塗布し、上記放熱器を裏面パターンに押接させることにより、LEDで発生した熱を導電パターンからシリコン樹脂を介して独立パターンに伝達させ、さらに熱通路部から裏面パターンに伝達し、放熱器で放熱するようにしたことを特徴とするLED照明器具。
【請求項2】
上記導電パターンは1対のパターンで構成され、上記LEDは両パターンに跨がって半田付けされており、上記独立パターンをこの1対のパターンの間に配置するとともに、熱通路部を、LEDと重ならない位置に形成したことを特徴とする請求項1に記載のLED照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−99433(P2012−99433A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248401(P2010−248401)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000100562)アール・ビー・コントロールズ株式会社 (97)
【Fターム(参考)】