説明

LED照明用ヒートシンク

【課題】アルミ押出材から比較的簡便な加工方法で製造することができ、また、スペースの制約がある箇所でも取り付けが可能で、しかも、十分な放熱量を確保することができるLED照明用ヒートシンクを提供することを課題とする。
【解決手段】アルミ押出材から形成されたヒートシンクAであって、LED光源1が正面側に配置固定された基板部2と、基板部2の背面側に間隔を隔てて突出する複数枚の平行に配置されたフィン部3より構成され、前記基板部2は前記フィン部3の長手方向と直交する方向に折り曲げられたL字状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)素子を発光源とするLED照明が、発光時に発生する熱を周囲の空間に放熱するためのLED照明用ヒートシンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)素子を発光源とする照明は、低消費電力であり且つ長寿命であることから徐々に市場に浸透し始めている。その中でも、近年特に注目を集めているのが、自動車のヘッドライトなどの車載LED照明であり、その車載LED照明を応用して、建物等その他の分野の埋め込み照明でもLED照明への置き換えが始まっている。
【0003】
しかしながら、このLED照明の発光源であるLED素子は熱に非常に弱く、許容温度を超えると発光効率が低下し、更には、その寿命にも影響を及ぼしてしまうという問題がある。この問題を解決するためには、LED素子の発光時の熱を周囲の空間に放熱する必要があるため、LED照明には大型のヒートシンクが備えられている。
【0004】
このLED照明用ヒートシンクには、アルミニウム或いはアルミニウム合金を材料としたアルミダイキャスト製のものが多く採用されており、特許文献1〜4には、それらヒートシンクのうち代表的な構成のヒートシンクが開示されている。これらのヒートシンクは、LED光源が正面側に配置固定された基板部と、その基板部の背面側に間隔を置いて突出する複数枚の平行に配置されたフィン部を有して構成されているが、これらは全て基板部が平板状であり、スペースの制約がある場合は取り付けが不可能となり、適用できる範囲が限られてしまう。
【0005】
一方、アルミダイキャスト製のLED照明用ヒートシンクは、製造コストが高くなるという問題があり、その問題を解決せんとして、アルミ押出材からLED照明用ヒートシンクを製造することが検討されている。しかしながら、このアルミ押出材から製造されるLED照明用ヒートシンクも、図9に示すように、LED光源1が正面側に配置固定された基板部2と、その基板部2の背面側に間隔を置いて突出する複数枚の平行に配置されたフィン部3を有して構成されることとなり、基板部2は必ず平板状になるため、スペースの制約がある場合は取り付けが不可能となる。従って、特許文献1〜4に記載されたヒートシンク同様に、適用できる範囲が限られてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−172932号公報
【特許文献2】特開2007−193960号公報
【特許文献3】特開2009−277535号公報
【特許文献4】特開2010−278350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、アルミ押出材から比較的簡便な加工方法で製造することができ、また、スペースの制約がある箇所でも取り付けが可能で、しかも、十分な放熱量を確保することができるLED照明用ヒートシンクを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、アルミ押出材から形成されたLED照明用ヒートシンクであって、LED光源が正面側に配置固定された基板部と、前記基板部の背面側に間隔を隔てて突出する複数枚の平行に配置されたフィン部より構成され、前記基板部は前記フィン部の長手方向と直交する方向に折り曲げられたL字状であることを特徴とするLED照明用ヒートシンクである。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記フィン部はL字状に折り曲げられた前記基板部の外側に突出しており、前記フィン部の折り曲げ部には加工時に前記基板部の外側表面に達する線状の切り込みが形成され、前記フィン部が分断されている請求項1記載のLED照明用ヒートシンクである。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記フィン部はL字状に折り曲げられた前記基板部の内側に突出しており、前記フィン部の折り曲げ部には加工時に前記基板部の内側表面に達する角度が90度以上のV字状の切り込みが形成され、前記フィン部が分断されている請求項1記載のLED照明用ヒートシンクである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1記載のLED照明用ヒートシンクによると、アルミ押出材から切り込み、折り曲げといった比較的簡便な加工法を用いて製造することができ、また、構成する部品点数が増えることもなく、しかも、スペースの制約がある狭い箇所、入り組んだ形状の箇所等にも取り付けが可能で、そのようなスペースの制約がある箇所でもLED照明からの放熱量を十分に確保することができる。
【0012】
本発明の請求項2記載のLED照明用ヒートシンクによると、スペースの制約がある狭い箇所の入隅コーナ部にも取り付けが可能で、且つ、基板部の折り曲げの際にフィン部があることで折り曲げに影響するというようなことはなく、また、フィン部の突出寸法も短くする必要はないため、LED照明からの放熱量を更に十分に確保することができる。
【0013】
本発明の請求項3記載のLED照明用ヒートシンクによると、スペースの制約がある狭い箇所であっても取り付けることができ、基板部とフィン部の表面積により十分な放熱面積を確保することができるため、LED照明からの放熱量を更に十分に確保することができる。また、スペースの制約がある入り組んだ箇所の出隅コーナ部にも取り付けが可能である。更には、基板部の折り曲げの際にフィン部があることで折り曲げに影響するというようなことはなく、フィン部の突出寸法も短くする必要はないため、LED照明からの放熱量を更に十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態のLED照明用ヒートシンクを示す斜視図である。
【図2】本発明の異なる実施形態のLED照明用ヒートシンクを示す斜視図である。
【図3】本発明の更に異なる実施形態のLED照明用ヒートシンクを示す斜視図である。
【図4】本発明の更に異なる実施形態のLED照明用ヒートシンクを示す斜視図である。
【図5】図3に示す実施形態のLED照明用ヒートシンクを、ハウジングの一部としてLED照明に組み込んだ使用状態を示す横断面図である。
【図6】同実施形態のLED照明用ヒートシンクを、ハウジングの一部としてLED照明に組み込んだ使用状態を示す図5のB−B線断面図である。
【図7】図4に示す実施形態のLED照明用ヒートシンクを、ハウジングの一部としてLED照明に組み込んだ使用状態を示す横断面図である。
【図8】同実施形態のLED照明用ヒートシンクを、ハウジングの一部としてLED照明に組み込んだ使用状態を示す図7のB−B線断面図である。
【図9】従来のLED照明用ヒートシンクを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて更に詳細に説明する。
【0016】
本発明に係るLED照明用ヒートシンクA(以下、単にヒートシンクAと述べることもある。)は、JIS1000系の純アルミニウム、JIS6000系のアルミニウム合金などの熱伝導率および成形性に優れたアルミニウム素材を用いて押出成形したアルミ押出材を基に、切り込み、折り曲げといった比較的簡便な加工を加えることで製造される。また、JIS5000系のアルミニウム合金材などの他のアルミニウム合金材を用いて製造しても構わない。
【0017】
図1に本発明に係るヒートシンクAの一実施形態を示す。このヒートシンクAは、LED光源1が正面側(図1では右の入隅コーナ部側の面)に配置固定された基板部2と、その基板部2の背面側に間隔を隔てて突出する複数枚の平行に配置されたフィン部3より構成されている。
【0018】
基板部2は、平行に配置されたフィン部3の長手方向と直交する方向に折り曲げられた所謂L字形の板状である。本実施形態では、フィン部3は基板部2と共に外側に折り曲げられるが、フィン部3の折り曲げ部分は引き延ばされることで基板部2の折り曲げ加工に影響を与える可能性があるため、折り曲げ加工に支障を来さないようフィン部3の突出寸法を短くする必要がある。
【0019】
尚、前記LED光源1は、例えば、複数の発光ダイオード(LED)素子を、アルミニウム合金をベースとした基板に実装したものである。
【0020】
図2に本発明に係るヒートシンクAの異なる実施形態を示す。このヒートシンクAも図1に示すヒートシンクAと同様に、LED光源1が正面側(図2では右の出隅コーナ部側の面)に配置固定された基板部2と、その基板部2の背面側に間隔を隔てて突出する複数枚の平行に配置されたフィン部3より構成されている。
【0021】
基板部2は、平行に配置されたフィン部3の長手方向と直交する方向に折り曲げられた所謂L字形の板状である。本実施形態では、フィン部3は基板部2と共に内側に折り曲げられるが、フィン部3の折り曲げ部分は圧縮されることで基板部2の折り曲げ加工に影響を与える可能性があるため、その折り曲げ加工に支障を来さないようフィン部3の突出寸法を短くする必要がある。
【0022】
図3に本発明に係るヒートシンクAの更に異なる実施形態を示す。このヒートシンクAも図1に示すヒートシンクAと同様に、LED光源1が正面側(図2では右の入隅コーナ部側の面)に配置固定された基板部2と、その基板部2の背面側に間隔を隔てて突出する複数枚の平行に配置されたフィン部3より構成されている。
【0023】
基板部2は、平行に配置されたフィン部3の長手方向と直交する方向に折り曲げられた所謂L字形の板状である。本実施形態では、フィン部3は基板部2と共に外側に折り曲げられるが、そのままでは基板部2の折り曲げ加工に支障を来さすので、基板部2の折り曲げ加工を行う前に、フィン部3の折り曲げ部には基板部2の外側表面に達する線状の切り込みを設ける。このようにフィン部3に切り込みを形成した後で基板部2の折り曲げ加工を行うため、図1に示す実施形態のように、フィン部3の突出寸法を特に短くする必要はなく、LED照明からの放熱を図1に示す実施形態と比較してより効率的に行うことができる。
【0024】
図4に本発明に係るヒートシンクAの更に異なる実施形態を示す。このヒートシンクAも図2に示すヒートシンクAと同様に、LED光源1が正面側(図2では左の出隅コーナ部側の面)に配置固定された基板部2と、その基板部2の背面側に間隔を隔てて突出する複数枚の平行に配置されたフィン部3より構成されている。
【0025】
基板部2は、平行に配置されたフィン部3の長手方向と直交する方向に折り曲げられた所謂L字形の板状である。本実施形態では、フィン部3は基板部2と共に内側に折り曲げられるが、そのままでは基板部2の折り曲げ加工に支障を来さすので、基板部2の折り曲げ加工を行う前に、フィン部3の折り曲げ部には基板部2の外側表面に達する角度が90度以上のV字状の切り込みを設ける。このようにフィン部3にV字状の切り込みを形成した後で基板部2の折り曲げ加工を行うため、図2に示す実施形態のように、フィン部3の突出寸法を特に短くする必要はなく、LED照明からの放熱を図2に示す実施形態と比較してより効率的に行うことができる。
【0026】
以上、説明したLED照明用ヒートシンクAを、自動車のヘッドライトなどの車載照明や建物の埋め込み照明などのヒートシンクAとして用いるが、図5および図6は、図3に示す実施形態のヒートシンクAを、自動車のヘッドライトのLED照明用ヒートシンクAとして用いた使用状態を、図7および図8は、図4に示す実施形態のヒートシンクAを、自動車のヘッドライトのLED照明用ヒートシンクAとして用いた使用状態を、夫々示す。
【0027】
尚、図1に示す実施形態のヒートシンクAは図3に示す実施形態のヒートシンクAと、図2に示す実施形態のヒートシンクAは図4に示す実施形態のヒートシンクAと、使用状態は夫々同一であるのでその説明を省略する。
【0028】
図3に示す実施形態のヒートシンクAは、図5および図6に示すように、L字状の基板部2が、LED照明の筐体であるハウジング4の一部を構成するような状態でLED照明の入隅コーナ部に取り付けられることとなる。このように、図9に示すような従来からの平板状の基板部2を有するヒートシンクAが取り付けられないようなスペースの制約がある狭い箇所であっても、図3に示すようなL字状の基板部2を有するヒートシンクAを用いれば(図1に示すヒートシンクAの場合も同様)、取り付けすることが可能となる。
【0029】
尚、5はLED照明の正面に取り付けられる透光性を有するアウターレンズ、6はLED光源1から放射される光をアウターレンズ5側に反射させるリフレクタである。
【0030】
図4に示す実施形態のヒートシンクAは、図7および図8に示すように、L字状の基板部2の一片が、LED照明の筐体であるハウジング4の一部を構成するような状態で取り付けられることとなる。このように、図9に示すような従来からの平板状の基板部2を有するヒートシンクAが取り付けられないようなスペースの制約がある狭い箇所であっても、図4に示すようなL字状の基板部2を有するヒートシンクAを用いれば(図2に示すヒートシンクAの場合も同様)取り付けすることが可能となる。
【0031】
このように、基板部2の一片をLED照明のハウジング4の一部を構成するような状態で取り付けると、基板部2の他片はフィン部3と同様にLED照明から外部(自動車の場合はボンネット内の内部空間)に突出した状態となるが、L字状の基板部2とフィン部3の表面積により十分な放熱面積を確保することができるため、十分な放熱量を確保することができる。
【0032】
尚、特に使用状態は図示しないが、図2および図4に示すヒートシンクAは、スペースの制約がある入り組んだ形状の出隅コーナ部にも取り付けることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
A…LED照明用ヒートシンク
1…LED光源
2…基板部
3…フィン部
4…ハウジング
5…アウターレンズ
6…リフレクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ押出材から形成されたLED照明用ヒートシンクであって、
LED光源が正面側に配置固定された基板部と、前記基板部の背面側に間隔を隔てて突出する複数枚の平行に配置されたフィン部より構成され、
前記基板部は前記フィン部の長手方向と直交する方向に折り曲げられたL字状であることを特徴とするLED照明用ヒートシンク。
【請求項2】
前記フィン部はL字状に折り曲げられた前記基板部の外側に突出しており、前記フィン部の折り曲げ部には加工時に前記基板部の外側表面に達する線状の切り込みが形成され、前記フィン部が分断されている請求項1記載のLED照明用ヒートシンク。
【請求項3】
前記フィン部はL字状に折り曲げられた前記基板部の内側に突出しており、前記フィン部の折り曲げ部には加工時に前記基板部の内側表面に達する角度が90度以上のV字状の切り込みが形成され、前記フィン部が分断されている請求項1記載のLED照明用ヒートシンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−204508(P2012−204508A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66326(P2011−66326)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】