説明

LED照明装置

【課題】商用電源を整流して得られる脈流電圧によりLED素子を直接駆動する場合に、フリッカを目立たなくすること。
【解決手段】商用電源VACを全波整流して得られる脈流電圧VMによりLEDストリングスSTR1〜STR4を駆動するようにして、脈流電圧VMに応じて複数の電流制御回路3A〜3Dの動作を選択的に立ち上げることにより、脈流電圧VMに応じて駆動に供するLED素子数を切り替える。最も素子数の少ないLED素子の駆動に係る電流制御回路3Aの駆動電流I1を、続いて素子数の少ないLED素子の駆動に係る電流制御回路3Bの駆動電流I2に比して、大きな電流値に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)を光源に使用するLED照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LEDを光源に使用するLED照明装置が普及している。この種のLED照明装置に関して、例えば特許文献1には、複数のLEDを簡易かつ効率良く発光させることを目的に、商用電源を整流して得られる脈流電圧によりLED素子の直列回路を直接駆動するようにして、この脈流電圧値に応じて駆動に供するLED素子の素子数を切り換える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−147933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこの種のLED素子において、商用電源を整流して得られる脈流電圧によりLED素子を直接駆動する場合には、大容量の平滑コンデンサを使用しないことにより、この平滑コンデンサによる製品寿命の制限を回避することができ、長期間使用することができる。
【0005】
しかしながら商用電源を整流して得られる脈流電圧によりLED素子を直接駆動する場合には、フリッカが目立つ問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、商用電源を整流して得られる脈流電圧によりLED素子を直接駆動する場合に、フリッカを目立たなくすることができるLED照明装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、商用電源を全波整流して脈流電圧を出力する整流回路と、1個又は複数個のLED素子を備えた複数のLEDストリングスによる直列回路であって、前記整流回路の正側出力端又は負側種端に一端を接続したLEDストリングスの直列回路と、前記LEDストリングスの直列回路における対応する前記LEDストリングスの一端にそれぞれ接続されて、前記整流回路の負側出力端に駆動電流を流出させ、又は前記整流回路の正側出力端から駆動電流を流入させる複数の電流制御回路と、前記脈流電圧の監視により前記複数の電流制御回路の動作を制御する制御回路とを備え、前記制御回路は、前記脈流電圧に応じて、前記複数の電流制御回路の動作を選択的に立ち上げることにより、前記脈流電圧に応じて駆動に供するLED素子数を切り替え、前記複数の電流制御回路は、最も素子数の少ないLED素子の駆動に係る電流制御回路の駆動電流が、続いて素子数の少ないLED素子の駆動に係る電流制御回路の駆動電流に比して、大きな電流値に設定されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記制御回路は、前記脈流電圧と基準電圧との比較結果をそれぞれ出力する複数の比較回路と、前記複数の比較回路の比較結果の論理演算処理により、前記脈流電圧に応じて順次前記複数の電流制御回路の動作を選択的に立ち上げる制御信号を出力する複数の論理演算回路とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、脈流電圧により直接LEDストリングスを駆動するようにして、脈流電圧に応じて駆動に供するLED素子数を切り替えて効率良くLED素子を駆動することができる。このとき最も素子数の少ないLED素子の駆動に係る電流制御回路の駆動電流が、続いて素子数の少ないLED素子の駆動に係る電流制御回路の駆動電流に比して、大きな電流値に設定されていることにより、発光が停止する期間の前後で、発光に供するLED素子数が少なくなっているときに、全体の発光光量の低下を防止することができる。これによりフリッカを目立たなくすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用効果を奏することができるより具体的な構成を、ディスクリート回路により提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係るLED照明装置の図である。
【図2】図1のLED照明装置の動作の説明に供する図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るLED照明装置の図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係るLED照明装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1実施形態〕
以下に、図面を参照して本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るLED照明装置を示す接続図である。このLED照明装置1において、LEDストリングスSTR1、STR2、STR3、STR4は、それぞれ複数個のLED素子を直列接続したLED素子のアレイである。LEDストリングスSTR1〜STR4は、それぞれ直線状に連続するようにLED素子が配置され、LED照明装置1は、このLEDストリングスSTR1〜STR4のLED素子を光源として使用して棒状光源を形成する。LED照明装置1は、これらのLEDストリングスSTR1〜STR4がさらに直列接続されてLEDストリングスの直列回路が形成される。なお以下において、各LEDストリングスSTR1、STR2、STR3、STR4の順方向電圧(各LEDストリングスを構成する直列接続されたLED素子の順方向電圧の合計電圧である)をそれぞれ符号Vf1、Vf2、Vf3、Vf4により示す。なおLED照明装置1には、各LEDストリングスSTR1、STR2、STR3及びSTR4にそれぞれコンデンサC1A、C1B、C1C、C1Dが並列に配置され、これによりLED素子への高圧ストレスを緩和し、さらにはフリッカを低減する。
【0013】
このLED照明装置1において、整流回路2は、ダイオードD1、D2、D3、D4によるダイオードブリッジ回路であり、商用電源VACを全波整流して脈流電圧VMを出力する。LED照明装置1は、この整流回路2から出力される脈流電圧VMにより直接、LEDストリングスSTR1〜STR4を駆動して発光させる。これによりLED照明装置1は、大容量の平滑コンデンサの使用を省略してLED素子を駆動し、この大容量の平滑コンデンサを使用する場合の製品寿命の低下を防止する。すなわち平滑コンデンサは、大容量が求められることにより、電解液を使用した電解コンデンサが適用される。しかしながら電解コンデンサを使用すると、照明装置内の温度上昇により電解液が劣化する場合があり、この場合、容量が著しく低下し、明かりがちらついたり、点灯しなくなる恐れがある。しかしながらこの実施形態では、そもそも平滑コンデンサを使用しないことにより、このような機能の劣化を防止し、製品寿命の低下を防止することができる。
【0014】
すなわちLED照明装置1は、LEDストリングスSTR1〜STR4による直列回路の、第1のLEDストリングスSTR1側端が、全波整流回路2の正側出力端に接続される。またLED照明装置1は、この直列回路における対応するLEDストリングスSTR1〜STR4の他端がそれぞれ第1〜第4の電流制御回路3A〜3Dに接続され、この第1〜第4の電流制御回路3A〜3Dを介して全波整流回路2の負側出力端に接続される。より具体的に、LED照明装置1は、LEDストリングスSTR1〜STR4の直列回路における各LEDストリングスSTR1〜STR4の接続中点が、それぞれ第1、第2、第3の電流制御回路3A、3B、3Cを介して全波整流回路2の負側出力端に接続される。さらにLEDストリングスSTR1〜STR4による直列回路の、第4のLEDストリングスSTR4側端が、第4の電流制御回路3Dを介して全波整流回路2の負側出力端に接続される。
【0015】
LED照明装置1は、これら第1〜第4の電流制御回路3A〜3Dの動作を、電圧監視回路4と、スイッチング回路5とによる制御回路6により制御し、これにより脈流電圧VMに応じて駆動に供するLED素子数を切り換えて、LEDストリングスSTR1〜STR4を駆動する。
【0016】
このため電圧監視回路4は、整流回路2から出力される脈流電圧VMを監視して監視結果を出力する。すなわち電圧監視回路4は、分圧抵抗R1及びR2により脈流電圧VMを分圧し、監視用の分圧電圧を生成する。なおここで分圧抵抗R2には、半固定抵抗が適用され、これにより電圧監視回路4は、分圧比を調整可能に設定される。
【0017】
電圧監視回路4は、それぞれ入力抵抗R3A、R3B、R3C、R3Dを介してこの監視用の分圧電圧を第1〜第4の比較回路7A、7B、7C、7Dの反転入力端に入力する。ここで比較回路7A、7B、7C、7Dは、それぞれ非反転入力端に基準電圧V1、V2、V3、V4が供給される。これにより第1〜第4の比較回路7A、7B、7C、7Dは、それぞれ基準電圧V1、V2、V3、V4により監視用の分圧電圧を介して脈流電圧VMを監視し、基準電圧V1、V2、V3、V4で決まる電圧より脈流電圧VMが高い場合に、出力端の電圧を立ち下げる。
【0018】
具体的に、第1の比較回路7Aは、脈流電圧VMが第1のLEDストリングスSTR1の点灯に必要な順方向電圧Vf1より高い場合に、比較出力を立ち下げる。また第2の比較回路7Bは、第1及び第2のLEDストリングスSTR1及びSTR2の直列回路の点灯に必要な順方向電圧Vf1+Vf2より高い場合に、比較出力を立ち下げる。また第3の比較回路7Cは、第1、第2及び第3のLEDストリングスSTR1、STR2及びSTR3の直列回路の点灯に必要な順方向電圧Vf1+Vf2+Vf3より脈流電圧VMが高い場合に、比較結果を立ち下げる。さらに第4の比較回路7Dは、第1、第2、第3及び第4のLEDストリングスSTR1、STR2、STR3及びSTR4の直列回路の点灯に必要な順方向電圧Vf1+Vf2+Vf3+Vf4より脈流電圧VMが高い場合に、比較結果を立ち下げる。
【0019】
スイッチング回路5は、これら比較回路7A〜7Dの比較結果に基づいて、順次、電流制御回路3A〜3Dの動作を立ち上げる。すなわちスイッチング回路5において、第1〜第4の論理演算回路8A〜8Cは、それぞれ論理演算回路である。第1の論理演算回路8Aは、制御データDCと第2〜第4の比較回路7B〜7Dの比較出力とが立ち上がっている場合であって、かつ第1の比較回路7Aの比較出力が立ち下がっている場合(すなわち脈流電圧VMが、第1のLEDストリングスSTR1の点灯に必要な電圧より高く、かつ第1及び第2のLEDストリングスSTR1及びSTR2の直列回路の点灯に必要な電圧より低い場合であって、かつ制御データDCがHレベルのとき)、出力端を立ち下げる。なおここで制御データDCは、この実施形態では、LED照明装置1の点灯を制御する制御信号であり、LED照明装置1を点灯させる場合、例えばスイッチ等によりHレベルに設定される。
【0020】
第2の論理演算回路8Bは、制御データDCと第3及び第4の比較回路7C及び7Dの比較出力とが立ち上がっている場合であって、かつ第1及び第2の比較回路7A及び7Bの比較出力が立ち下がっている場合(すなわち脈流電圧VMが、第1及び第2のLEDストリングスSTR1及びSTR2の直列回路の点灯に必要な電圧より高く、第1、第2及び第3のLEDストリングスSTR1、STR2及びSTR3の直列回路の点灯に必要な電圧より低い場合であって、かつ制御データDCがHレベルのとき)、出力端を立ち下げる。
【0021】
第3の論理演算回路8Cは、制御データDC及び第4の比較回路7Dの比較出力が立ち上がっている場合であって、かつ第1〜第3の比較回路7A〜7Cの比較出力が立ち下がっている場合(すなわち脈流電圧VMが、第1、第2及び第3のLEDストリングスSTR1、STR2及びSTR3の直列回路の点灯に必要な電圧より高く、第1、第2、第3及び第4のLEDストリングスSTR1、STR2、STR3及びSTR4の直列回路の点灯に必要な電圧より低い場合であって、かつ制御データDCがHレベルのとき)、出力端を立ち下げる。
【0022】
第4の論理演算回路8Dは、制御データDCが立ち上がっている場合であって、かつ第1〜第4の比較回路7A〜7Dの比較出力が立ち下がっている場合(すなわち脈流電圧VMが、第1、第2、第3及び第4のLEDストリングスSTR1、STR2、STR3及びSTR4の直列回路の点灯に必要な電圧より高い場合であって、かつ制御データDCがHレベルのとき)、出力端を立ち下げる。
【0023】
これらによりスイッチング回路5は、脈流電圧VMが高くなるに従って、順次、論理演算回路8A〜8Dの出力を選択的に立ち下げる。LED照明装置1は、これら第1〜第4の論理演算回路8A〜8Dの出力が、それぞれ第1〜第4の電流制御回路3A〜3Dに入力される。
【0024】
ここで第1の電流制御回路3Aは、FETQ1A、電流電圧変換抵抗RSAの直列回路を介して第1及び第2のLEDストリングスSTR1及びSTR2の接続中点を、全波整流回路2の負側出力端に接続する。第1の電流制御回路3Aは、この電流電圧変換抵抗RSAのFETQ1側端電圧を、入力抵抗R6Aを介して演算増幅回路9Aの非反転入力端に入力する。演算増幅回路9Aは、抵抗R7A及びコンデンサCAによる帰還回路が設けられ、演算出力によりFETQ1Aを駆動する。これにより第1の電流制御回路3Aは、電流電圧変換抵抗RSAの端子電圧が、演算増幅回路9Aの非反転入力端の電圧と等しくなるように、FETQ1Aのゲート電圧の制御によりFETQ1Aの電流を制御する。
【0025】
ここで演算増幅回路9Aは、抵抗R8Aを介して所定の基準電圧Vrefが非反転入力端に入力され、さらにこの非反転入力端が接地抵抗R9Aを介して接地される。またこの接地抵抗R9Aは、その両端がFETQ2Aのソース、ドレインにそれぞれ接続され、このFETQ2が第1の論理演算回路8Aの出力によりオンオフ制御される。これにより第1の電流制御回路3Aは、制御データDCがHレベルに保持されていることを前提に、脈流電圧VMが第1のLEDストリングスSTR1の点灯に必要な電圧より高く、かつ第1及び第2のLEDストリングスSTR1及びSTR2の直列回路の点灯に必要な電圧より低い場合にのみ、FETQ2Aがオフ状態に設定されて、演算増幅回路9Aの非反転入力端に基準電圧Vref、抵抗R8A、R9Aで決まる所定電圧が印加される。電流制御回路3Aは、この所定電圧の印加により動作を立ち上げ、この印加電圧に応じた電流I1を第1及び第2のLEDストリングスSTR1及びSTR2の接続中点から流出させる。また脈流電圧VMがこれ以外の電圧である場合、FETQ2Aをオン状態に設定して演算増幅回路9Aの非反転入力端の電圧を0Vに設定し、これにより動作を停止して第1及び第2のLEDストリングスSTR1及びSTR2の接続中点からの電流流出を停止する。
【0026】
第2〜第4の電流制御回路3B〜3Dは、第1の電流制御回路3Aと同様に構成される。これにより第2の電流制御回路3Bは、制御データDCがHレベルに保持されていることを前提に、脈流電圧VMが第1及び第2のLEDストリングスSTR1及びSTR2の直列回路の点灯に必要な電圧より高く、かつ第1〜第3のLEDストリングスSTR1〜STR2の直列回路の点灯に必要な電圧より低い場合にのみ、FETQ2Bがオフ状態に設定されて、演算増幅回路9Bの非反転入力端に基準電圧Vref、抵抗R8B、R9Bで決まる所定電圧が印加される。これにより電流制御回路3Bは、動作を立ち上げ、この印加電圧に応じた電流I2を第2及び第3のLEDストリングスSTR2及びSTR3の接続中点から流出させる。また脈流電圧VMがこれ以外の電圧である場合、FETQ2Bをオン状態に設定して演算増幅回路9Bの非反転入力端の電圧を0Vに設定し、これにより動作を停止して第2及び第3のLEDストリングスSTR2及びSTR3の接続中点からの電流流出を停止する。
【0027】
また第3の電流制御回路3Cは、制御データDCがHレベルに保持されていることを前提に、脈流電圧VMが第1〜第3のLEDストリングスSTR1〜STR3の直列回路の点灯に必要な電圧より高く、かつ第1〜第4のLEDストリングスSTR1〜STR4の直列回路の点灯に必要な電圧より低い場合にのみ、FETQ2Cがオフ状態に設定され、演算増幅回路9Cの非反転入力端に基準電圧Vref、抵抗R8C、R9Cで決まる所定電圧が印加される。これにより電流制御回路3Cは、動作を立ち上げ、この印加電圧に応じた電流I3を第3及び第4のLEDストリングスSTR3及びSTR4の接続中点から流出させる。また脈流電圧VMがこれ以外の電圧である場合、FETQ2Cをオン状態に設定して演算増幅回路9Cの非反転入力端の電圧を0Vに設定し、動作を停止して第3及び第4のLEDストリングスSTR3及びSTR4の接続中点からの電流流出を停止する。
【0028】
また第4の電流制御回路3Dは、制御データDCがHレベルに保持されていることを前提に、脈流電圧VMが第1〜第4のLEDストリングスSTR1〜STR4の直列回路の点灯に必要な電圧より高い場合にのみ、FETQ2Dがオフ状態に設定され、演算増幅回路9Dの非反転入力端に基準電圧Vref、抵抗R8D、R9Dで決まる所定電圧が印加される。これにより電流制御回路3Dは、動作を立ち上げ、この印加電圧に応じた電流I4を第4のLEDストリングスSTR4から流出させる。また脈流電圧VMがこれ以外の電圧である場合、FETQ2Dをオン状態に設定して演算増幅回路9Dの非反転入力端の電圧を0Vに設定し、動作を停止して第4のLEDストリングスSTR4からの電流流出を停止する。
【0029】
これらによりLED照明装置1は、図2に示すように、脈流電圧VMが0〔V〕〜Vf1の範囲では、全てのLEDストリングスSTR1〜STR4の駆動を停止し、脈流電圧VMがVf1〜VF1+Vf2の範囲では、第1のLEDストリングスSTR1のみ発光させる。また脈流電圧VMがVf1+Vf2〜VF1+Vf2+Vf3の範囲では、第1及び第2のLEDストリングスSTR1及びSTR2の直列回路を電流制御回路3Bで駆動して発光させ、脈流電圧VMがVf1+Vf2+Vf3〜VF1+Vf2+Vf3+Vf4の範囲では、第1〜第3のLEDストリングスSTR1〜STR3の直列回路を電流制御回路3Cで駆動して発光させる。また脈流電圧VMがVf1+Vf2+Vf3+VF4以上の範囲では、第1〜第4のLEDストリングスSTR1〜STR4の直列回路を電流制御回路3Dで駆動して発光させる。なおこれら図2では、これら電流制御回路3A〜3Dによる駆動電流を符号I1〜I4により示す。
【0030】
これらによりLED照明装置1は、LEDストリングスSTR1〜STR4を直列接続して、この直列回路におけるLEDストリングスSTR1〜STR4の一端に接続された電流制御回路3A〜3Dの駆動の制御により、脈流電圧VMに応じて駆動に供するLED素子数を切り換えて、LEDストリングスSTR1〜STR4を発光させる。
【0031】
ところでこのようにしてLED素子を駆動する場合、脈流電圧VMが0〔V〕〜Vf1の範囲では、全てのLEDストリングスSTR1〜STR4が発光を停止する。従って全てのLED素子が発光を停止する休止期間T1が周期的に発生することになる。またこの休止期間T1の前後では、第1のLEDストリングスSTR1のみ発光していることにより、最も発光に供する素子数が低下し、発光光量も小さいことになる。これにより脈流電圧によりLED素子を直接駆動する場合、フリッカが目立つようになる。
【0032】
そこでこのLED照明装置1では、図2(B)に示すように、休止期間T1の前後の、第1のLEDストリングスSTR1のみの駆動電流I1については、これに隣接する第1及び第2のLEDストリングスSTR1及びSTR2の直列回路に係る駆動電流I2に比して、電流値が大きくなるように設定する。なおこの設定は、電流電圧変換抵抗RSA及び又は分圧抵抗R8A、R9Aにより設定することができる。これに対して他の駆動電流である電流制御回路3C及び3Dの駆動電流I3及びI4については、第2の電流制御回路3Bの駆動電流I2と等しい電流値に設定する。
【0033】
これによりLED照明装置1では、休止期間T1における発光の停止、この休止期間T1の前後における光量の低下を目立たなくして、フリッカを目立たなくする。
【0034】
この実施形態のLED照明装置1では、駆動に供する脈流電圧VMに応じた電流制御回路3A〜3Dの切り替えにより駆動に供するLED素子数を切り換えるようにして、最も素子数の少ないLED素子の駆動に係る電流制御回路3Aの駆動電流I1を、続いて素子数の少ないLED素子の駆動に係る電流制御回路3Bの駆動電流I2に比して、大きな電流値に設定することにより、商用電源を整流して得られる脈流電圧によりLED素子を直接駆動する場合にあって、フリッカを目立たなくすることができる。
【0035】
またこの電流制御回路3A〜3Dの切り替えに係る制御回路6を、脈流電圧VMと基準電圧V1〜V4との比較結果をそれぞれ出力する複数の比較回路7A〜7Dと、この複数の比較回路7A〜7Dの比較結果の論理演算処理により、脈流電圧VMに応じて順次電流制御回路3A〜3Dの動作を選択的に立ち上げる制御信号を出力する複数の論理演算回路8A〜8Dにより構成することにより、ディスクリート回路により制御回路を構成して商用電源を整流して得られる脈流電圧によりLED素子を直接駆動する場合に、フリッカを目立たなくすることができる。
【0036】
〔第2実施形態〕
図3は、本発明の第2実施形態に係るLED照明装置を示す図である。このLED照明装置11において、図1について上述したLED照明装置1と同一の構成は、対応する符号を付して示し、重複した説明は省略する。
【0037】
このLED照明装置11は、第1〜第4の電流制御回路3A〜3Dの動作を、電圧監視回路14と、スイッチング回路15とによる制御回路16により制御し、脈流電圧VMに応じて駆動に供するLED素子数を切り換えて、LEDストリングスSTR1〜STR4を駆動する。
【0038】
電圧監視回路14は、第4の比較回路7Dが省略されている点、残りの比較回路7A〜7Cに係る基準電圧の設定が異なる点を除いて、第1の実施形態に係る電圧監視回路4と同一に構成される。すなわち第1の比較回路7Aは、脈流電圧VMが第1のLEDストリングスSTR1の点灯に必要な電圧より一定電圧以上高い場合に、比較結果を立ち下げる。また第2の比較回路7Bは、脈流電圧VMが第1及び第2のLEDストリングスSTR1及びSTR2の直列回路の点灯に必要な電圧より一定電圧以上高い場合に、比較結果を立ち下げる。また第3の比較回路7Cは、脈流電圧VMが第1〜第3のLEDストリングスSTR1〜STR3の直列回路の点灯に必要な電圧より一定電圧以上高い場合に、比較結果を立ち下げる。
【0039】
スイッチング回路15は、これら電圧監視回路14に設けられた比較回路7A〜7Cの比較結果に基づいて、順次、電流制御回路3A〜3Dの動作を立ち上げる。すなわちスイッチング回路15において、第1〜第4の論理演算回路18A〜18Cは、それぞれ論理演算回路である。第1の論理演算回路18Aは、制御データDCと第1〜第3の比較回路7A〜7Cの比較出力とが立ち上がっている場合、出力端を立ち下げる。
【0040】
第2の論理演算回路18Bは、制御データDCと第2及び第3の比較回路7B及び7Cの比較出力とが立ち上がっている場合であって、かつ第1の比較回路7Aの比較出力が立ち下がっている場合、出力端を立ち下げる。第3の論理演算回路18Cは、制御データDC及び第3の比較回路7Cの比較出力が立ち上がっている場合であって、かつ第1及び第2の比較回路7A及び7Bの比較出力が立ち下がっている場合、出力端を立ち下げる。第4の論理演算回路18Dは、制御データDCが立ち上がっている場合であって、かつ第1〜第3の比較回路7A〜7Cの比較出力が立ち下がっている場合、出力端を立ち下げる。
【0041】
これらによりスイッチング回路15は、脈流電圧VMが高くなるに従って、順次、論理演算回路18A〜18Dの出力を選択的に立ち下げる。LED照明装置11は、これら第1〜第4の論理演算回路18A〜18Dの出力が、それぞれ第1〜第4の電流制御回路3A〜3Dに入力される。
【0042】
これによりこの第2実施形態のLED照明装置11は、第1実施形態のLED照明装置1に比して簡易な構成により、第1実施形態のLED照明装置と同様の効果を得ることができる。
【0043】
〔第3実施形態〕
図4は、本発明の第3実施形態に係るLED照明装置を示す図である。このLED照明装置21において、図1及び図3について上述したLED照明装置1、11と同一の構成は、対応する符号を付して示し、重複した説明は省略する。このLED照明装置21は、3つのLEDストリングスSTR1〜STR3が設けられる。LED照明装置21は、脈流電圧VMに応じてLEDストリングスSTR1〜STR3を順次駆動することにより、脈流電圧VMに応じて素子数を切り換えてLEDストリングスSTR1〜STR3を駆動する。LED照明装置21は、このLEDストリングスSTR1〜STR3の駆動を、ディジタル信号処理回路による制御回路26により実行する。
【0044】
すなわちLED照明装置21において、LEDストリングスSTR1〜STR3は、それぞれ負側出力端側が、FETQ1A及び電流電圧変換抵抗RSAの直列回路、FETQ1B及び電流電圧変換抵抗RSBの直列回路、FETQ1C及び電流電圧変換抵抗RSCの直列回路を介して接地される。これによりLEDストリングスSTR1〜STR3は、電流電圧変換抵抗RSA、RSB、RSCの端子電圧を介して、それぞれ駆動電流を検出できるように、さらにFETQ1A、Q1B、Q1Cの制御により駆動電流を制御できるように構成される。なおFETQ1A、Q1B、Q1Cは、それぞれゲート電荷引き抜き用のゲート抵抗R10A、R10B、R10Cを介してゲートが接地される。
【0045】
制御回路26は、分圧抵抗R1、R2により脈流電圧VMを分圧して監視用の分圧電圧を生成する。制御回路26は、入力抵抗R11を介してこの監視用の分圧電圧をアナログディジタル変換回路(AD)27に入力し、ここでアナログディジタル変換処理してコントローラ28に出力する。また制御回路26は、マルチプレクサ29により電流電圧変換抵抗RSA、RSB、RSCの端子電圧を選択してアナログディジタル(AD)30に入力し、ここでアナログディジタル変換処理してコントローラ28に入力する。また制御回路26は、コントローラ28から出力される制御データをディジタルアナログ(DA)31に入力してアナログ信号による制御信号に変換し、マルチプレクサ32よりこの制御信号をFETQ1A、Q1B、又はQ1Cに選択的に出力する。
【0046】
制御回路26において、タイミング制御回路33は、コントローラ28の制御によりマルチプレクサ29、32の動作を制御する。コントローラ28は、所定の処理手順を実行するディジタル信号処理回路である。コントローラ28は、この処理手順の実行により、アナログディジタル変換回路27を介して監視用の分圧電圧を監視する。またこの監視により、脈流電圧VMが第1のLEDストリングスSTR1の点灯に必要な電圧Vf1以上であって、かつ第1及び第2のLEDストリングスSTR1及びSTR2の直列回路の点灯に必要な電圧Vf1+Vf2より小さい場合、ディジタルアナログ変換回路31より出力する制御信号を第1のFETQ1Aに出力するように、タイミング制御回路33を介してマルチプレクサ32の動作を制御する。
【0047】
またコントローラ28は、脈流電圧VMが、第1及び第2のLEDストリングスSTR1及びSTR2の直列回路の点灯に必要な電圧Vf1+Vf2以上であって、かつ第1〜第3のLEDストリングスSTR1〜STR3の直列回路の点灯に必要な電圧Vf1+Vf2+Vf3より小さい場合、ディジタルアナログ変換回路31より出力する制御信号を第2のFETQ2Bに出力するように、タイミング制御回路33を介してマルチプレクサ32の動作を制御する。
【0048】
またコントローラ28は、脈流電圧VMが、第1〜第3のLEDストリングスSTR1〜STR3の直列回路の点灯に必要な電圧Vf1+Vf2以上の場合、ディジタルアナログ変換回路31より出力する制御信号を第3のFETQ2Cに出力するように、タイミング制御回路33を介してマルチプレクサ32の動作を制御する。
【0049】
これに対して脈流電圧VMが、第1のLEDストリングスSTR1の点灯に必要な電圧Vf1より小さい場合、何れのFETQ1A、Q1B、Q1Cにも制御信号を出力しないように、タイミング制御回路33を介してマルチプレクサ32の動作を制御する。
【0050】
しかしてFETQ1A、Q1B、Q1Cは、それぞれゲート抵抗R10A、R10B、R10Cによりゲートが接地されていることにより、何ら制御信号が入力されない場合、対応するLEDストリングスSTR1、STR2、STR3からの駆動電流の流出を停止制御することになる。これに対してマルチプレクサ32を介して制御信号が入力される場合には、この制御信号によるゲート電圧の設定に応じた駆動電流を第1〜第3のLEDストリングスSTR1〜STR3から流出させることになる。
【0051】
コントローラ28は、このようにして脈流電圧VMに応じて素子数を切り換えてLEDストリングスSTR1〜STR3を駆動するようにして、マルチプレクサ32の設定に対応するようにマルチプレクサ29を設定し、これにより制御信号の供給による駆動電流を、対応する電流電圧変換抵抗RSA、RSB、RSCの端子電圧により検出する。
【0052】
コントローラ28は、この端子電圧による駆動電流の監視により、駆動電流が目標の電流になるようにディジタルアナログ変換回路31に出力する制御データを可変する。具体的に、目標電流をI1、I2、I3、電流電圧変換抵抗RSA、RSB、RSCの端子電圧をVS1、VS2、VS3、利得係数をk1、k2、k3とおくと、VG1(n)=VG1(N−1)+k1(I1−VS1/RSA)、VG2(n)=VG2(N−1)+k2(I2−VS2/RSB)、VG3(n)=VG3(N−1)+k3(I3−VS3/RSC)の演算処理により、順次、制御データVG1、VG2、VG3を更新し、これにより駆動電流が目標電流I1、I2、I3になるようにディジタルアナログ変換回路31に出力する制御データVG1、VG2、VG3を調整する。なおこれによりこのLED照明装置21では、駆動電流の制御に係る電流制御回路が、制御回路26と、FETQ1A、Q1B、Q1C、ゲート抵抗R10A、R10B、R10C、電流電圧変換抵抗RSA、RSB、RSCとにより構成されることになる。
【0053】
このようにして各駆動電流I1、I2、I3を設定して、この実施の形態では、最も素子数の少ないLED素子の駆動に係る駆動電流I1が、続いて素子数の少ないLED素子の駆動に係る駆動電流I2に比して、大きな電流値に設定される。また駆動電流I3は、駆動電流I2と同一に設定される。これによりこの実施形態でも、フリッカを目立たなくする。
【0054】
この第3実施形態では、ディジタル信号処理回路により制御回路等を構成するようにしても、第1実施形態、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
〔第4実施形態〕
この実施形態に係るLED照明装置は、光通信に適用され、この光通信に供する伝送用のデータが上述の制御データに代えて制御回路に入力される。これによりこの実施形態のLED照明装置は、照明に供するLED素子からの光を伝送用のデータにより変調して、この伝送用のデータを光通信により送出する。この実施形態のLED照明装置は、この制御回路に入力されるデータが異なる点を除いて、上述のLED照明装置1、11、21と同一に構成される。
【0056】
この実施形態では、フリッカを目立たなくすることができることにより、光通信に適用して従来に比して安定に所望のデータを伝送することができる。
【0057】
〔他の実施形態〕
本発明は上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0058】
すなわち上述の実施形態では、最も駆動に供する素子数が少ない場合の駆動電流I1を、続いて駆動に供する素子数が少ない場合の駆動電流I2より増大させるようにして、他の駆動電流I3、I4をこの駆動電流I2と等しい電流に設定する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、他の駆動電流I3、I4については、種々に設定することができる。すなわち照度が不足する場合には、この他の駆動電流I3、I4の双方又は1方を駆動電流I2より増大させ、照度を増大させるようにしてもよい。また光通信に適用してさらに一段と安定にデータ伝送する場合には、I4>I3>I2となるように設定して、光量の変動を低減させるようにしてもよい。
【0059】
また上述の実施形態では、全波整流回路の負側出力端側に電流制御回路を配置して、LEDストリングスから流出する駆動電流を制御する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、全波整流回路の正側出力端側に電流制御回路を配置して、LEDストリングスに流入する駆動電流を制御してもよく、さらにはこれらを組合せて駆動電流を制御してもよい。
【0060】
また上述の実施形態では、3つ又は4つのLEDストリングスによりLED照明装置を構成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、2つのLEDストリングスによりLED照明装置を構成する場合、5つ以上のLEDストリングスによりLED照明装置を構成する場合等に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1、11、21 LED照明装置
2 全波整流回路
3A〜3D 電流制御回路
4、14 電圧監視回路
5、15 スイッチング回路
6、16、26 制御回路
7A〜7D 比較回路
8A〜8D、18A〜18D 論理演算回路
9A〜9D 演算増幅回路
27、30 アナログディジタル変換回路
28 コントローラ
29、32 マルチプレクサ
31 ディジタルアナログ変換回路
33 タイミング制御回路
STR1〜STR4 LEDストリングス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源を全波整流して脈流電圧を出力する整流回路と、
1個又は複数個のLED素子を備えた複数のLEDストリングスによる直列回路であって、前記整流回路の出力端の一端に一端を接続したLEDストリングスの直列回路と、
前記LEDストリングスの直列回路における対応する前記LEDストリングスの一端にそれぞれ接続されて、前記整流回路の負側出力端に駆動電流を流出させ、又は前記整流回路の正側出力端から駆動電流を流入させる複数の電流制御回路と、
前記脈流電圧の監視により前記複数の電流制御回路の動作を制御する制御回路とを備え、
前記制御回路は、
前記脈流電圧に応じて、前記複数の電流制御回路の動作を選択的に立ち上げることにより、前記脈流電圧に応じて駆動に供するLED素子数を切り替え、
前記複数の電流制御回路は、
最も素子数の少ないLED素子の駆動に係る電流制御回路の駆動電流が、続いて素子数の少ないLED素子の駆動に係る電流制御回路の駆動電流に比して、大きな電流値に設定された
ことを特徴とするLED照明装置。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記脈流電圧と基準電圧との比較結果をそれぞれ出力する複数の比較回路と、
前記複数の比較回路の比較結果の論理演算処理により、前記脈流電圧に応じて順次前記複数の電流制御回路の動作を選択的に立ち上げる制御信号を出力する複数の論理演算回路とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のLED照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−37837(P2013−37837A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171605(P2011−171605)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度経済産業省、戦略的基盤技術高度化支援事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(399039731)株式会社タキオン (15)
【Fターム(参考)】