説明

LH液体調製物

本発明は、単回又は反復投与のための黄体形成ホルモン(LH)の液体調製物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黄体形成ホルモン(LH)の液体医薬調製物、及び当該調製物の製造方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)及び絨毛性ゴナドトロピン(CG)は、ゴナドトロピン類である注射可能なタンパク質である。LH、FSH及びCGは、女性及び男性の患者の両方における、不妊症及び生殖障害の治療において、単独及び組み合わせで使用される。
【0003】
天然でFSH及びLHは、下垂体により作製される。医薬使用のために、FSH及びLH及びその変異体は、遺伝子組み換えで作製されてもよいし(rFSH及びrLH)、又はこれらを閉経後の女性の尿から作製してもよい(uFSH及びuLH)。
【0004】
FSHは、排卵誘発(OI)及び過排卵誘起(COH)において、補助的生殖技術(ART)のために、女性の患者に使用される。排卵誘発の典型的な治療計画においては、患者は、FSH又はFSH変異体の連日注射(約75〜300IU FSH/日)を、約6〜約12日間施される。過排卵誘起の典型的な治療計画においては、患者は、FSH又はFSH変異体の連日注射(約150〜600 IU FSH/日)を、約6〜12日間施される。
【0005】
FSHは、精子減少症に罹患する男性における精子形成誘導のためにも使用される。1週間に3回の150 IU FSHを、1週間に2回の2500 IU hCGとの組み合わせで使用することにより、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症に罹患する男性における精子数を増加させることに成功している(Burgues et al., 1997)。
【0006】
LHは、OI及びCOHにおけるFSHとの組み合わせで女性患者に使用され、特に、非常に低い内因性LHレベル又はLHに対する耐性を有する女性、例えば、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(HH、WHOグループI)、又は高齢の患者(すなわち、35歳以上)、及び胚着床又は早産が問題である患者等において使用される。FSHとの組み合わせるLHは、閉経後の女性の尿から抽出される、ヒト閉経期ゴナドトロピン(hMG)とよばれる調製物で、従来から利用可能であった。hMGは、FSH:LH活性と1:1の比率である。
【0007】
CGは、LHと同じ受容体で作用し同じ応答を示す。CGはLHよりも長い循環半減期を有するため、長期間活性なLH活性の供給源として一般に使用される。CGは、天然のLHピークを模倣し排卵を誘発するための、OI及びCOH投薬計画において使用される。ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の注射は、FSH又はFSHとLHの混合物での刺激の最後で、排卵を誘発するために使用される。CGは、LH活性が所望である、例えば上記の患者における刺激の期間に、LH活性を提供するために、OI及びCOHのための刺激の期間、FSHと一緒に使用してもよい。
【0008】
FSH、LH及びCGは、甲状腺刺激ホルモン(TSH)でもある、ヘテロ二量体の糖タンパク質ホルモンファミリーに属する。このファミリーに属するホルモンは、α及びβサブユニットを含むヘテロ二量体である。当該サブユニットは、非共有的相互作用により一緒に保持される。ヒトFSH(hFSH)ヘテロ二量体は、(i)他のヒトファミリーに属するもの(すなわち、絨毛ゴナドトロピン(「CG」)、黄体形成ホルモン(「LH」)、及び甲状腺刺激ホルモン(「TSH」)にも共通する、成熟92アミノ酸糖タンパク質アルファサブユニット;及び(ii)FSHに特有の成熟111アミノ酸ベータサブユニットからなる(Keutmann et al., 1979; Talmadge et al., 1984; Fiddes & Talmadge, 1984)。当該糖タンパク質のアルファ及びベータサブユニットは、保存剤、界面活性剤及びその他の賦形剤との相互作用により、調製物において解離する傾向があってもよい。サブユニットの解離は、生物活性の低下をもたらす(Reichert & Ramsey, 1975)。
【0009】
FSHは、筋肉内(IM)又は皮下(SC)注射のために処方される。FSHは、75 IU/バイアル及び150 IU/バイアルのバイアル又はアンプル中に、2〜25℃での保存時では貯蔵期間が約2年である凍結乾燥(固体)状態で供給される。注射用溶液は、注射用水(WFI)で凍結乾燥製品を再構成することにより形成される。排卵誘発又は過排卵誘起のために、75〜600 IUの出発用量での連日注射を、最大約10日間を行うことが推奨される。患者の応答により、FSHの用量増加による治療が最大3サイクルまで使用できる。凍結乾燥調製物とともに、患者は、毎日の再構成後すぐに、希釈剤で凍結乾燥物質の新品のバイアルを再構成し、投与する必要がある。[皮下注射のためのFertinex(商標)(精製ウロフォリトロピン、注射用)により1996年2月に発行された包装挿入物(Package insert) N1700101 A、 Serono Laboratories, Inc., Randolph, MA]。
【0010】
FSHはまた、単回投与及び反復投与用の液体様式で、バイアル又はアンプル中に調製される。単回投与様式は、使用前の保存において、安定化且つ活性でなければならない。
反復投与様式では、使用前の貯蔵において安定且つ活性状態を維持しなければならないだけでなく、アンプルが開封された後の数日にわたって、安定、活性で、且つ細菌が比較的存在しない状態を維持しなければならない。このため、反復投与様式は、多くの場合静菌剤を含有する。
【0011】
LHは、筋肉内(IM)又は皮下(SC)注射のために処方される。LHは、75 IU/バイアルのバイアル又はアンプル中に、2〜25℃での保存時では貯蔵期間が約2年である凍結乾燥(固体)状態で供給される。注射用溶液は、注射用水(WFI)で凍結乾燥製品を再構成することにより形成される。排卵誘発又は過排卵誘起のために、75〜600 IUの出発用量での連日注射を、最大約10日間を行うことが推奨される。
【0012】
欧州特許第0 618 808号(Applied Research Systems ARS Holding N.V.)は、ゴナドトロピンと、安定化量のスクロース単独、又はグリシンと組み合わせての固体緊密混合物(solid intimate mixture)を含んでなる、医薬組成物を開示する。
【0013】
欧州特許第0 814 841号(Applied Research Systems ARS Holding N.V.)は、組み換えヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)及び安定化量のマンニトールを含んでなる、安定な液体医薬組成物を記載する。
【0014】
国際公開第2004/087213号(Ares Trading S.A.)は、卵胞刺激ホルモン(FSH)又はその変異体及び/又は黄体形成ホルモン(LH)又はその変異体、並びにプルロニック(Pluronic)(登録商標)F77、プルロニックF87、プルロニックF88、及びプルロニックF68から選択される界面活性剤を含んでなる、液体及び凍結乾燥医薬組成物を開示する。
【0015】
国際公開第2004/112826号(Ares Trading S.A.)は、卵胞刺激ホルモン(FSH)又はその変異体及び/又は黄体形成ホルモン(LH)又はその変異体、並びにTween20、Tween40及びTween80等のポリソルベートから選択される界面活性剤を含んでなる、凍結乾燥調製物を開示する。
【0016】
国際公開第00/04913号(Eli Lilly and Co.)は、FSH、又はアルファ及びベータサブユニットを含むFSH変異体、及びフェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジル、アルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及びチメロサール、又は水溶液中のその混合物からなる群から選択される保存料を含んでなる、調製物を開示する。
【0017】
国際公開第2004/105788号(Ferring B.V.)は、少なくとも1つの医薬的に許容される担体中での、FSH及びhCGからなる医薬組成物を開示する。
【0018】
欧州特許第0 448 146号(AKZO N.V.)は、ゴナドトロピン及び安定化量のジカルボン酸塩を含んでなる、安定化ゴナドトロピン含有凍結乾燥体を開示する。
【0019】
欧州特許第0 853 945号(Akzo Nobel N.V.)は、ゴナドトロピン、及び安定化量のポリカルボン酸又はその塩、及び安定化量のチオエーテル化合物を含んでなる調製物を特徴とする、液体ゴナドトロピン含有調製物を開示する。
【0020】
単回投与又は反復投与のいずれかのための、LH又はLH変異体の液体調製物に対する要請が存在している。
【発明の概要】
【0021】
本発明の目的は、LH又はLH変異体の調製物、その製造方法、及び不妊症障害の治療におけるその医薬的又は獣医学的使用のための使用を提供することである。
【0022】
第一の態様によれば、本発明は、LH又はLH変異体の精製調製物質、及び安定化量のアルギニン又はその塩、及び/又はリジン又はその塩を含んでなる、LH又はLH変異体液体調製物を提供する。
【0023】
第二の態様によれば、本発明は、a)LH又はLH変異体の溶液を形成させるステップ、及びb)当該溶液に、安定化量のアルギニン又はその塩及び/又はリジン又はその塩を添加するステップを含んでなる、LH又はLH変異体の液体調製物の製造方法を提供する。
【0024】
第三の態様によれば、本発明は、使用前の保存に適する容器内に、滅菌条件下で密閉される、本発明による液体調製物を含んでなるLH又はLH変異体の液体調製物の提示形態を提供する。
【0025】
第四の態様によれば、本発明は、包材、及び本発明のLH又はLH変異体の液体調製物と、静菌剤を含む容器を含んでなるヒトの医薬的使用のための製品を提供し、ここで当該包材は、当該調製物が最初に使用後、28日以上の期間にわたって保持し得ることを示す表示を含む。
【0026】
さらなる本発明の目的は、FSH又はFSH変異体の液体調製物と組み合わせての、本発明によるLH又はLH変異体の液体調製物の使用を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】図1A〜Fは、異なる濃度(6、12及び24μg/mlのr−hLH)、容器(シリンジ及びカートリッジ)、及び充填容量(0.25、0.5及び1 ml)のr−hLH調製物(SE−HPLCによる)クロマトグラフィプロファイルの比較を示す。これらの調製物は、r−hLHに加え、リン酸バッファ、スクロース、Tween20、メチオニン、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム及び注射用水を含有する。点線は、充填容量0.25 ml;破線は、充填容量0.5 ml;及び黒線は、充填容量1 mlに対応する。図1Aは、シリンジ中の6μg/ml r−hLH調製物のクロマトグラフィプロファイルである。8.5分の保持時間でのピークは、未処理のヘテロ二量体(非共有結合で連結したアルファ+ベータ)に対応し、より高いピーク(約9.5分)は、遊離のサブユニットに対応する。AU:吸光度単位。
【図1B】図1Bは、カートリッジ中の6μg/m r−hLH調製物のクロマトグラフィプロファイルである。調製物は、r−hLHに加え、リン酸バッファ、スクロース、Tween20、メチオニン、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム及び注射用水を含有する。点線は、充填容量0.25 ml;破線は、充填容量0.5 ml;及び黒線は、充填容量1 mlに対応する。8.5分の保持時間でのピークは、未処理のヘテロ二量体(非共有結合で連結したアルファ+ベータ)に対応し、より高いピーク(約9.5分)は、遊離のサブユニットに対応する。AU:吸光度単位。
【図1C】図1Cは、シリンジ中の12μg/ml r−hLH調製物のクロマトグラフィプロファイルである。調製物は、r−hLHに加え、リン酸バッファ、スクロース、Tween20、メチオニン、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム及び注射用水を含有する。点線は、充填容量0.25 ml;破線は、充填容量0.5 ml;及び黒線は、充填容量1 mlに対応する。8.5分の保持時間でのピークは、未処理のヘテロ二量体(非共有結合で連結したアルファ+ベータ)に対応し、より高いピーク(約9.5分)は、遊離のサブユニットに対応する。AU:吸光度単位。
【図1D】図1Dは、カートリッジ中の12μg/ml r−hLH調製物のクロマトグラフィプロファイルである。調製物は、r−hLHに加え、リン酸バッファ、スクロース、Tween20、メチオニン、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム及び注射用水を含有する。点線は、充填容量0.25 ml;破線は、充填容量0.5 ml;及び黒線は、充填容量1 mlに対応する。8.5分の保持時間でのピークは、未処理のヘテロ二量体(非共有結合で連結したアルファ+ベータ)に対応し、より高いピーク(約9.5分)は、遊離のサブユニットに対応する。AU:吸光度単位。
【図1E】図1Eは、シリンジ中の24μg/ml r−hLH調製物のクロマトグラフィプロファイルである。調製物は、r−hLHに加え、リン酸バッファ、スクロース、Tween20、メチオニン、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム及び注射用水を含有する。点線は、充填容量0.25 ml;破線は、充填容量0.5 ml;及び黒線は、充填容量1 mlに対応する。8.5分の保持時間でのピークは、未処理のヘテロ二量体(非共有結合で連結したアルファ+ベータ)に対応し、より高いピーク(約9.5分)は、遊離のサブユニットに対応する。AU:吸光度単位。
【図1F】図1Fは、カートリッジ中の24μg/ml r−hLH調製物のクロマトグラフィプロファイルである。調製物は、r−hLHに加え、リン酸バッファ、スクロース、Tween20、メチオニン、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム及び注射用水を含有する。点線は、充填容量0.25 ml;破線は、充填容量0.5 ml;及び黒線は、充填容量1 mlに対応する。8.5分の保持時間でのピークは、未処理のヘテロ二量体(非共有結合で連結したアルファ+ベータ)に対応し、より高いピーク(約9.5分)は、遊離のサブユニットに対応する。AU:吸光度単位。
【図2】図2は、静菌剤の組み合わせ、SAC/500/24μgBACL_cart及びSAC/500/24μg_cartの存在下又は不存在下で、調製物のSE−HPLCにより計算したヘテロ二量体の割合の比較を示す。(A)40℃保存で3日後(3d)に行ったSE−HPLC、(B)33℃保存で、8日後(8d)、4週後(4w)、6週後(6w)、8週後(8w)及び13週後(13w)で行ったSE−HPLC。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の液体LH調製物は、改良され、又はより好適な特性又は安定性を有するとともに、女性及び/又は男性における不妊症の治療のために有用である。
【0029】
好ましい実施態様によれば、本発明の液体調製物は、皮下及び/又は筋肉内注射のためのものである。
【0030】
本発明によるLH又はLH変異体液体調製物の好適な特性又は安定性は、活性又は安定性の損失を防ぐ又は低減させることにより、又は有効性又は投与の望ましさの任意の態様を向上させることにより、例えば、様式、頻度、投薬、快適性、使用しやすさ等の少なくとも1つを向上させることにより、得ることができる。
【0031】
本明細書で使用される黄体形成ホルモン、又はLHは、全長成熟タンパク質として作製されたLHのことを言い、限定するものではないが、遺伝子組み換え的に作製されたか、閉経後女性の尿等のヒト供給源から単離されたにかかわらず、ヒトLH又は「hLH」等が含まれる。
【0032】
「LH変異体」なる表現は、提示LH活性以外の、アミノ酸配列、糖鎖付加パターン、又はヒトLH由来のサブユニット間結合が異なる分子が包含される。
【0033】
LHとの関係で「活性」なる用語は、LH調製物又は混合した調製物が、例えば精嚢重量増加法(seminal vesicle weight gain method)(Van Hell et al., 1964)等のLHに関連する生物応答を引き起こす能力のことを言う。LHの生物活性は、標準と認められるLHに対して評価される。
【0034】
活性の測定は、溶液1ミリリットル当たりの国際単位(IU/ml)又は、溶液1ミリリットル当たりのメガ国際単位(MIU/ml)で表現される(1MIU/ml=1,000,000IU/mlである)。国際単位は、メリーランド州、ベセスダ、国立衛生研究所(the National Institute of Health, Bethesda, Maryland)により発行される、Research Reference Reagent Note No. 35に記載の通り計算する。
【0035】
LH又はLH変異体は、遺伝子組み換え等の好適な方法により、場合によっては天然供給源からの単離もしくは精製により、又は化学合成、又は任意のこれらの組み合わせにより作製することができる。
【0036】
「遺伝子組み換え」なる用語の使用は、遺伝子組み換えDAN法(国際公開第85/01958号を参照されたい)の使用と通して作製されるLH又はLH変異体の調製のことを言う。組み換え法を用いるLH発現方法の例としては、欧州特許第0 211 894号及び欧州特許第0 487 512号に記載されるような、DNA配列をコードするLHのアルファ及びベータサブユニットを、1つのベクターであっても、別々のプロモーターを有する各々のサブユニットを有する2つのベクターであってもよいが、このベクターを用いて真核細胞の形質導入による方法がある。
【0037】
LHを作製する遺伝子組み換え法の使用の別の例としては、欧州特許第0 505 500号(Applied Research Systems ARS Holding NV)に記載されるような、内因性配列をコードするLHのサブユニットへの作動的接続において、異種接合型制御セグメントを挿入する、同種接合型遺伝子組み換え明けの使用によるものがある。
【0038】
本明細書で使用される卵胞刺激ホルモン、又はFSHは、全長成熟タンパク質として作製されたFSHのことを言い、限定するものではないが、遺伝子組み換え的に作製されたか、閉経後女性の尿等のヒト供給源から単離されたにかかわらず、ヒトFSH又は「hFSH」等が含まれる。
【0039】
「FSH変異体」なる表現は、提示FSH活性以外の、アミノ酸配列、糖鎖付加パターン、又はヒトFSH由来のサブユニット間結合が異なる分子が包含される。
【0040】
FSHとの関係で「活性」なる用語は、FSH調製物又は混合した調製物が、例えばSteelman-Pohleyアッセイにおける卵巣重量増加(Steelman et al., 1953)、又は女性患者における卵胞増殖等のFSHに関連する生物応答を引き起こす能力のことを言う。LHの生物活性は、標準と認められるLHに対して評価される。女性患者における卵胞増殖は、超音波により評価することができ、例えば、刺激8日目の平均直径が約16 mmである卵胞の数を評価する。生物活性は、標準と認められるFSHに対して評価される。
【0041】
FSH変異体の例には、LaPoIt et al. (1992)により報告されるような、野生型α−サブユニット及びハイブリッドβ−サブユニットからなる長時間作用型修正組み換えFSHであるCTP−FSHがあり、ここでhCGのカルボキシ末端ペプチドがFSHのβサブユニットのC末端と融合するものがある。また、以下の配列(N末端からC末端)からなる、単鎖分子の単鎖CTP−FSHがある。
【0042】
【化1】

【0043】
Klein et al.(2002)で報告されるように、上記配列中、βFSHはFSHのβ−サブユニットを表し、βhCG−CTP(113−145)はhCGのカルボキシ末端ペプチドを表し、αFSHはFSHのα−サブユニットを表す。
【0044】
FSH変異体のその他の例には、国際公開第01/58493号(Maxygen)、特に国際公開第01/58493号の請求項10及び11に記載される、α−、及び/又はβ−サブユニットに組み込まれたさらなる糖鎖付加部位を有するFSH分子、及び国際公開第98/58957号に記載されるサブユニット間S−S結合を有するFSH分子がある。
【0045】
FSH又はFSH変異体は、遺伝子組み換え等の好適な方法により、場合によっては天然供給源からの単離もしくは精製により、又は化学合成、又は任意のこれらの組み合わせにより、作製することができる。
【0046】
本発明で使用されるFSH又はFHS変異体は、動物細胞由来等の遺伝子組み換え手法によって作製されるばかりでなく、泌供給源由来等の、その他の生物的供給源から精製されてもよい。許容される方法論としては、Hakola et al. (1997)、Keene et al. (1989)、Cerpa-Poljak et al. (1993)、Dias et al. (1994)、 Flack et al. (1994)、Valove et al. (1994)、米国特許第3,119,740号及び米国特許第号5,767,067号がある。
【0047】
「投与する」又は「投与すること」なる用語は、疾患又は症状を治療するために、本発明の調製物を、それを必要とする患者の体内に導入することを意味する。
【0048】
「患者」なる用語は、疾患又は症状を治療される哺乳類を意味する。限定するものではないが、患者とは、ヒト、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシ、ウサギ等の患者である。
【0049】
「水性希釈剤」なる用語は、水を含有する液体溶媒のことを言う。水性溶媒系は、水単独からなるものであっても、水プラス1又は複数の混和溶媒からなるものであってもよく、糖、バッファ、塩もしくはその他の賦形剤等の溶解溶質を含有してもよい。より一般的に使用される非水性溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール等の単鎖有機アルコール、アセトン等の単鎖ケトン、及びグリセロール等のポリアルコールである。
【0050】
「等張剤」は、生理的に耐性があり、且つ調製物と接触する細胞膜を通る水のネットフロー(net flow)を防ぐために調製物に好適な浸透圧を与える化合物である。グリセリン等の化合物は、既知の濃度で上記目的のために一般的に使用される。その他の好適な等張剤は、限定されるものではないが、アミノ酸又はタンパク質(例えば、グリセリン又はアルブミン)、塩(例えば、塩化ナトリウム)及び糖(例えば、デキストロース、スクロース及びラクトース)がある。
【0051】
「静菌的」又は「静菌剤」なる用語は、調製物に添加され、抗細菌剤として作用する化合物又は組成物のことを言う。本発明の調製物に含まれる保存されたLH又はLH変異体は、商業的に実現可能な、好ましくはヒトにおける多使用製品となるための保存有効性についての法令又は規制のガイドラインに合致する。
静菌剤の例としては、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジル、アルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及びチメロサールがある。
【0052】
「バッファ」又は「生理的に許容されるバッファ」なる用語は、調製物における医薬的又は獣医学的な使用にとって安全であるとしあれる化合物の溶液であり、当該調製物に望まれるpH範囲における調製物のpHを維持又は制御する効果を有するもののことを言う。中程度に酸性のpHから中程度に塩基性のpHでの制御のために許容されるバッファには、限定するものではないが、リン酸、酢酸、クエン酸、アルギニン、TRIS及びヒスチジンがある。「TRIS」は、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール及び医薬的に許容されるその任意の塩のことを言う。好ましいバッファは食塩水又は医薬的に許容される塩を含有するリン酸バッファである。
【0053】
「リン酸バッファ」なる用語は、リン酸又はその塩を含有し、所望のpHに調整された溶液のことを言う。一般的にリン酸バッファは、リン酸、又はリン酸の塩、例えば限定するものではないが、ナトリウム塩もしくはカリウム塩等の塩から調製される。いくつかのリン酸の塩は当業者に既知であり、例えば当該酸のナトリウム及びカリウムの、一塩基性、二塩基性、及び三塩基性の塩がある。リン酸の塩は、存在する塩の水和物として存在することが知られているものもある。リン酸バッファは、pH約4〜pH約10等の範囲、及びpH約5〜約9の好ましい範囲、及び約7.5〜約8.5の最も好ましい範囲、最も好ましい約8.0等のpH範囲に含まれてもよい。
【0054】
「バイアル」又は「容器」なる用語は概して、LH及び希釈剤を抑制した滅菌状態に維持するのに適するリザーバーのことを言う。本明細書で使用されるバイアルの例には、アンプル、カートリッジ、ブリスター包装、又はシリンジ、ポンプ(浸透性のもの等)、カテーテル、経皮パッチ、肺又は経粘膜的スプレーを介する、当該患者へのLHの送達に適するリザーバーのようなその他のものがある。非経口、肺、経粘膜、又は経皮投与のための包装製品に適するバイアルは、当業界で周知であり認識されている。
【0055】
「安定性」なる用語は、本発明の調製物におけるLHの、生理的、化学的、及び立体配座的な安定性(生物学的活性の保持性等)のことを言う。タンパク質調製物の不安定性は、より高次のポリマーを形成するためのタンパク質分子の化学的分解又は凝集によって引き起こされても、ヘテロ二量体の単量体への解離、脱グリコシル化、糖鎖付加の修正、酸化(特にα−サブユニットの酸化)、又は本発明に含まれるLHポリペプチドの少なくとも1つの生物活性を低減させるその他の構造的修正によって起こされてもよい。
【0056】
「安定な」溶液又は調製物は、本明細書において、タンパク質の分解、修正、凝集、生物活性の損失等の度合いが、許容されるように制御され、時間と共に許容されないような増加はない。好ましくは、当該調製物は、約1〜約10℃の温度で、より好ましくは約2〜約8℃、より好ましくは4〜5℃で、6ヶ月以上の期間、少なくとも標識されたLH活性の約80%が残る。LH活性は、バイオ精嚢重量増加アッセイ6を用いて測定できる。
【0057】
「治療すること」なる用語は、LH投与が、卵胞又は精巣刺激、又はその他のLHにより調整される生理的応答の目的のための望ましい患者への投与、追跡、管理及び/又は次介護のことを言う。すなわち、治療することには、限定するものではないが、精子の質の誘導又は向上、男性におけるテストステロンの刺激、又は女性における卵胞発達もしくは排卵誘導のためのLHの投与があり得る。
【0058】
「反復投与使用」なる表現には、複数の注射、例えば2、3、4、5、6又はそれ以上の注射のための、LH調製物の単一アンプル、バイアル、又はカートリッジの使用が含まれることが意図される。当該注射は、好ましくは、少なくとも、12時間又は約12時間、24時間、48時間等の期間にわたり、好ましくは最大28又は約28日の期間までなされる。当該注射は、例えば、6、12、24、48又は72時間のごとに、時間間隔を空けてもよい。
【0059】
タンパク質の「塩」は、酸又は塩基付加塩である。当該塩は、好ましくは、当該タンパク質における1又は複数の帯電した任意の基と、1又は複数の医薬的に許容される非毒性のカチオンもしくはアニオンとの間で形成される。有機及び無機の塩には、例えば、エン酸、硫酸、スルホン酸、酒石酸、フマル酸、臭化水素酸、グリコール酸、クエン酸、マレイン酸、リン酸、コハク酸、酢酸、硝酸、安息香酸、炭酸等から形成されるもの、又は例えばアンモニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、又はマグネシウムから形成されるものがある。
【0060】
アルギニン、リジン又はその混合物、又はその塩の群から選択されるアミノ酸は、LHを含んでなる、安定な液体著生物を調製するための公的な安定化剤であることがわかっている。したがって、本発明の第一の態様は、安定化量のアルギニンもしくはその塩、及び/又はリジンもしくはその塩を含んでなる、黄体形成ホルモン(LH)又はその変異体を含有する液体ゴナドトロピン調製物に関する。
【0061】
当該液体著生物に存在する、安定化量のアルギニンもしくはその塩、及び/又はリジンもしくはその塩の濃度は、総調製物の、約10〜約150 mg/ml、より好ましくは約20〜約60 mg/mlである。
【0062】
好ましくは、アルギニンもしくはその塩の濃度は、約10 mg/ml〜約50 mg/ml、より好ましくは約20 mg/ml〜約40 mg/ml、より特に好ましくは約25 mg/ml〜約35 mg/ml、最も好ましくは約31.5 mg/mlである。
【0063】
好ましくは、リジンもしくはその塩の濃度は、約10 mg/ml〜約50 mg/ml、より好ましくは約20 mg/ml〜約40 mg/ml、より特に好ましくは約25 mg/ml〜約35 mg/ml、最も好ましくは約28.5 mg/mlである。
【0064】
液体調製物における黄体形成ホルモン(LH)は、好ましくは、総調製物の1又は約1〜50又は約50μg/mlの濃度で存在する。ある実施態様によれば、黄体形成ホルモン(LH)は、特に単回使用が意図される場合に、総調製物の1又は約1〜15μg/mlの濃度で存在する。
【0065】
さらなる実施態様によれば、黄体形成ホルモン(LH)は、特に反復使用(反復投与)を意図される場合に、総調製物の15又は約15〜30 μg/mlの濃度で存在する。
【0066】
当該調製物におけるLH濃度は、好ましくは約20 IU/ml〜約2,000 IU/ml、より好ましくは約50〜約1,000 IU/ml、より特に好ましくは約100 IU/ml〜約600 IU/mlである。
【0067】
好ましくは、当該LHは、遺伝子組み換えにより作られ、特に好ましくは、それは、ヒト糖タンパク質アルファ−サブユニット及びLHのベータ−サブユニットをコードするDNAを含んでなる1又は複数の発現ベクターを形質移入した、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で作製される。アルファ及びベータ−サブユニットをコードするDNAは、同じベクターに存在しても、異なるベクターに存在してもよい。
【0068】
遺伝子組み換えLHは、その尿由来の対応物を上回る複数の利点を有する。遺伝子組み換え細胞を使用する培養及び単離技術は、バッチ間で一貫したものが提供可能となる。反対に、尿のLHは、バッチによって、サブユニットの純度、糖鎖付加パターン、シアル化及び酸化などの特徴が大きく変化する。遺伝子組み換えLHのバッチ間の一貫性及び純度が非常に優れているため、当該ホルモンは等電点電気泳動法(IEF)等の技術を用いて容易に同定及び定量ができる。遺伝子組み換えLHが同定及び定量できるという容易さにより、バイオアッセイによる充填よりもむしろ、ホルモンの質量によるバイアルの充填(質量による充填)が可能となる。
【0069】
好ましくは、本発明の液体調製物は、バッファ、好ましくはリン酸バッファを、好ましい対イオンをナトリウム又はカリウムイオンとして有する。
【0070】
リン酸生理食塩水バッファは当業界で周知であり、例えばダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水がある。総溶液におけるバッファ濃度は、約1 mM、5 mM、9.5 mM、10 mM、50 mM、100 mM、150 mM、200 mM、250 mM及び500 mMの間で変動し得る。
【0071】
好ましくは、当該バッファ濃度は、約10 mMである。特に好ましくは約8.0で、リン酸イオンが10 mMのバッファである。
【0072】
好ましくは当該バッファは、本発明の液体調製物が、約7.0〜約9.0、より好ましくは約7.5〜約8.5、例えばpH約7.8、pH8.0、及び8.2等のpHを有するように調整される。本発明は、単回投与又は反復投与されてもよい、LH又はLH変異体の液体調製物に関する。
【0073】
反復投与を意図される本発明の液体LH調製物は、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジル、アルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及びチメロサール等の静菌剤を含んでなる。好ましくは、ベンジルアルコール、フェノール、及びベンジルアルコールと塩化ベンザルコニウムの組み合わせである。当該静菌剤は、約12又は24時間〜約12又は14日、好ましくは約6〜約28日であってもよい、反復投与での注射期間にわたって、本質的に細菌未含有(注射に適する)な調製物を維持するのに有効な濃度となるはずの量で使用される。
【0074】
静菌剤は、好ましくは約0.005〜約15 mg/ml、より好ましくは約0.01〜約12 mg/mlの濃度で存在する。当該静菌剤は、好ましくは約0.1%(静菌剤質量/溶媒の質量)〜約2.0%、より好ましくは約0.2%〜約1.0%の濃度で存在する。
【0075】
ベンジルアルコールの場合、0.9%又は1.2%の濃度が特に好ましい。フェノールの場合、約0.5%の濃度が特に好ましい。ベンジルアルコールと塩化ベンザルコニウムの組み合わせの場合、それぞれが0.3%と0.001%の濃度が特に好ましい。
【0076】
好ましくは、本発明の調製物は、抗酸化剤、例えば、メチオニン、亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸塩(EDTA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、及びブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)等を含む。最も好ましくはメチオニンである。当該抗酸化剤は、LH(特にα−サブユニット)の酸化を防止する。
【0077】
メチオニン等の抗酸化剤は、好ましくは約0.01〜約5.0 mg/ml、より好ましくは約0.05〜約0.5 mg/mlの濃度で存在する。
【0078】
好ましくは、本発明の調製物は界面活性剤を含有する。好ましくは、当該界面活性剤は、ポリソルベート、特にTween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Tween40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、及びTween80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)の群から選択される。Tween20が最も好ましく、約0.01〜約10 mg/mlの濃度が好ましい。
【0079】
好ましい実施態様によれば、本発明の調製物は、25μg/mlのr−hLH、1.65 mg/mlのNa2HPO4 2H2O、0.104 mg/mlのNaH2PO42O、31.5 mg/mlのアルギニン1塩酸塩、0.05 mg/mlのTween20、0.5 mg/mlのメチオニン及び5 mg/mlのフェノールを含んでなる。
【0080】
別の好ましい実施態様によれば、本発明の調製物は、25μg/mlのr−hLH、1.65 mg/mlのNa2HPO4 2H2O、0.104 mg/mlのNaH2PO42O、28.5 mg/mlのリジン1塩酸塩、0.05 mg/mlのTween20、0.5 mg/mlのメチオニン及び12 mg/mlのベンジルアルコールを含んでなる。
【0081】
別の好ましい実施態様によれば、本発明の調製物は、25μg/mlのr−hLH、1.65 mg/mlのNa2HPO4 2H2O、0.104 mg/mlのNaH2PO42O、28.5 mg/mlのリジン1塩酸塩、0.05 mg/mlのTween20、0.5 mg/mlのメチオニン及び3 mg/mlのベンジルアルコール及び0.01 mg/mlの塩化ベンザルコニウムを含んでなる。
【0082】
好ましい実施態様によれば、本発明は、LH又はLH変異体と、アルギニン、リジン又はその混合物又はその塩からなる群から選択される安定化剤と、及びベンジルアルコール、フェノール、及びベンジルアルコールと塩化ベンザルコニウムの組み合わせから選択される静菌剤を含んでなる、反復使用のための、液体医薬組成物を提供する。
【0083】
さらなる好ましい実施態様によれば、本発明は、LH又はLH変異体と、アルギニン、リジン又はその混合物又はその塩からなる群から選択される安定化剤と、及びベンジル、アルコール、フェノール、及びベンジルアルコールと塩化ベンザルコニウムの組み合わせから選択される静菌剤と、及びWFI(注射用水)の水溶液を形成するステップを含んでなる、反復使用のための、液体医薬組成物を製造するための方法を提供する。
【0084】
さらなる別の好ましい実施態様によれば、本発明は、LH又はLH変異体と、アルギニン、リジン又はその混合物又はその塩からなる群から選択される安定化剤と、及びベンジル、アルコール、フェノール、及びベンジルアルコールと塩化ベンザルコニウムの組み合わせから選択される静菌剤を含んでなる溶液を分散させるステップを含んでなる、包装された医薬組成物を製造するための方法を提供する。
【0085】
さらなる別の好ましい実施態様によれば、本発明は、LH又はLH変異体と、アルギニン、リジン又はその混合物又はその塩からなる群から選択される安定化剤と、及びベンジル、アルコール、フェノール、及びベンジルアルコールと塩化ベンザルコニウムの組み合わせから選択される静菌剤の溶液、及び当該溶液が第一の使用後、約24時間又はそれ以上の時間を超えて保持されても良いことを提示する表示を含んでなるバイアルを含む、ヒトの医薬的使用のための製品を提供する。好ましくは、当該表示は、当該溶液が、第一の使用後、約12日又は14日まで保持されてもよいことを提示する。
【0086】
第一の使用の前、つまり、バイアルアンプル又はカートリッジが開封される前に、本発明の調製物を、少なくとも、約6ヶ月、12ヶ月又は24ヶ月の間保存してもよい。
【0087】
第一の使用前は、好ましい貯蔵条件下で、当該製剤は、約2℃〜8℃、より好ましくは約4℃〜5℃の温度で、明るい光を避ける(好ましくは暗中におく)。
【0088】
上記の通り、本発明は、静菌剤を含む、LH又はLH変異体の単回使用又は反復使用のための液体調製物を提供する。本発明の調製物は、医薬的又は獣医学的使用に適する。
【0089】
上記の通り、好ましい実施態様によれば、本発明は、包材と、LH又はLH変異体と、アルギニン、リジン又はその混合物又はその塩からなる群から選択される安定化剤と、及びベンジル、アルコール、フェノール、及びベンジルアルコールと塩化ベンザルコニウムの組み合わせから選択される静菌剤水性希釈剤中の溶液を、任意にバッファ及び/又はその他の賦形剤と共に含んでなるバイアルを含む製品を提供し、ここで当該包材は、当該溶液が、第一の使用後、24時間又はそれ以上の期間以上保持されてもよいことを示す表示を含んでなる。
【0090】
好ましくは、本発明の調製物は、(第一の使用の前に)24ヶ月の期間を超えて包装されている時間で、LH活性の少なくともちょうど又は約80%を残す。LH活性は、ラット精嚢重量増加バイオアッセイを用いて測定することができる。
【0091】
本発明の調製物は、LH又はその変異体、及び安定化量のアルギニン又はその塩及び/又はリジン又はその塩、及び任意に、ベンジルアルコール、フェノール、及びベンジルアルコールと塩化ベンザルコニウムの組み合わせから選択される静菌剤を、固体として混合すること、又はLH又はその変異体、及び安定化量のアルギニン又はその塩及び/又はリジン又はその塩、及び任意に、ベンジルアルコール、フェノール、及びベンジルアルコールと塩化ベンザルコニウムの組み合わせから選択される静菌剤を、水性希釈剤に溶解させること、含んでなるプロセスにより調製することができる。
【0092】
成分の混合、及びこれらの水性希釈剤への溶解は、従来の溶解及び混合手法を用いて行う。好適な調製物を調製するために、例えば、緩衝化溶液中の測定量のLH又はLHを、アルギニン又はその塩及び/又はリジン又はその塩、及び任意に、ベンジルアルコール、フェノール、及びベンジルアルコールと塩化ベンザルコニウムの組み合わせから選択される静菌剤とを、緩衝化溶液中で、タンパク質を提供するのに十分な量で、アルギニン又はその塩及び/又はリジン又はその塩、及び任意の静菌剤を所望の濃度で混合する。その後得られる溶液をバイアル、アンプル又はカートリッジに分注する。このプロセスのバリエーションは、当業者により認識されるはずである。例えば、前記成分が添加される順番、追加の添加剤が使用されるか否か、調製物が調製される温度とpHは、全て使用される投与の濃度と手段のために最適化されてよい因子である。
【0093】
好ましい実施態様によれば、本発明の調製物は、調製物の全ての成分(例えば、リン酸ナトリウムバッファ、アルギニン又はその塩又はリジン又はその塩、Tween20、メチオニン、LH)の濃度が既知である個別の保存溶液を調製すること、及び最終調製物と同じ組成物の「母溶液(mother solution)」作製するため容積量に分割することにより作製される。「母溶液」を、微生物を除去するために、好ましくはDuropore(登録商標)(Millipore)0.22マイクロPDF膜を通して濾過し、その後分割量をバイアル、アンプル又はカートリッジ等の個別の溶液に分注する。
【0094】
本発明の調製物は、FSH又はFSH変異体(例えばGonal−F(登録商標))を含んでなる調製物と組み合わせて使用することができる。
【0095】
本発明の調製物は、広く認められる装置を用いて投与することができる。これらの単一バイアルシステムを含んでなる例には、EasyJect(登録商標)、Gonal-F(登録商標) Pen、Humaject(登録商標)、NovoPen(登録商標)、B−D(登録商標)Pen、AutoPen(登録商標)、及びOptiPen(登録商標)等の溶液の送達のためのペン型注射装置がある。
【0096】
ここで請求される製品には、包材がある。包材は、管理機関による要請される情報に加え、当該製品を使用してよい条件を提供する。単一バイアルで溶液製品の場合は、表示は、当該溶液が第一の使用後、24時間又はそれ以上の期間、好ましくは最大12又は14日まで保存してもよいことを提示する。ここで請求される製品は、ヒトの医薬的製品使用のために有用である。
【0097】
以下の例を、単に本発明の調製物及び組成物の調製をさらに例示するために提供する。本発明の範囲は、単に以下の例からなると解されるべきではない。
【実施例】
【0098】
【表1】

【0099】
以下の実験では、以下のパラメータを多くの調製物について評価した。
安定化剤及び/又は静菌剤の調査
FSH調製物との適合性
一次包装との適合性
保存後の安定性プロファイル
【0100】
調製物は、液体単回投与及び反復投与の調製物とした。以下の6つの安定化剤について評価した。
L−アルギニン1塩酸塩(実施例中のARG又はアルギニン)
L−リジン1塩酸塩(実施例中のLYS又はリジン)
トレハロース(TRE)
L−グリシン(実施例中のGLY又はグリシン)
スクロース(SAC)
ソルビトール(SOR)
【0101】
以下の4つの静菌剤について、反復投与調製物を評価した。
ベンジルアルコール(BA)
m−クレゾール(mCr)
フェノール(Phe)
ベンジルアルコールと塩化ベンザルコニウム(BACL)の組み合わせ
【0102】
実施例1 単回投与調製物のための安定化剤の調査
6つの安定化剤(スクロース、アルギニン、グリシン、リジン、ソルビトール及びトレハロース)が、安定な単回投与調製物を送達することを試験した。試験調製物を表1にまとめた。
【0103】
表1.異なる安定化剤を含有する複数のr−hLH調製物の組成
【0104】
【表2】

【0105】
各々約40 mlの溶液を調製し、22 mlのステンレス鋼のホルダー中の0.22μmの膜を通して濾過し、15 mlのプラスティック管中、2〜8℃、+25℃及び+40℃で保存した。当該溶液の、タンパク質含量(SE−HPLCにより)、酸化状態(RP−HPLCにより)、凝集(SE−HPLCにより)及びサブユニット形成(定性的に、SE−HPLCにより)を1ヶ月まで試験した。この調製物のセットに適用した試験結果の一式を、表2〜5で報告する。
【0106】
【表3】

【0107】
【表4】

【0108】
【表5】

【0109】
【表6】

【0110】
これらの結果に基づいて、酸化剤としてのメチオニンの増量(250μg/ml及び500μg/ml)への適合をさらに調べるための、最良の賦形剤として、スクロース、リジン及びアルギニンを選択した。試験溶液の組成物を表6で報告する。これらの溶液は、エキソノボ(ex novo)で調製されていることに留意すべきである。
【0111】
表6.選択された安定化剤及び異なる量のメチオニンを含有するr−hLH単回投与調製物の組成
【0112】
【表7】

【0113】
各々約100 mlの溶液を調製し、22 mlのステンレス鋼のホルダー中の0.22μmの膜を通して濾過し、1 mlのガラスシリンジに充填し、当該薬物基質と、最終容器(1 mlガラスシリンジ+プランジャー)との間の適合性を試験した。当該シリンジを、2〜8℃、+25℃、+33℃及び+40℃で保存した。+33℃の保存温度は、分解速度が、速過ぎる(+40℃)ものと遅過ぎる(+25℃)との間の妥協点を提供するために導入した。当該溶液をr−hLH含量(SE−HPLCにより)、酸化状態(RP−HPLCにより)、凝集(SE−HPLCにより)及びサブユニット形成(定性的に、SE−HPLCにより)を2〜3ヶ月まで試験した。表6に記載した調製物へ適用した試験結果のパネル一式を、表7〜11で報告する。
【0114】
【表8】

【0115】
【表9】

【0116】
【表10】

【0117】
【表11】

【0118】
【表12】

【0119】
【表13】

【0120】
これらの結果に基づき、メチオニンとのより高い適合性は、スクロースでは250μg/ml、リジンでは500μg/ml、及びアルギニンでは両方の濃度で示された。
【0121】
実施例2 FSH反復投与液体調製物と、r−hLH単回投与液体調製物の適合性
実施例1に記載した結果から、表6に記載される調製物を、FSH調製物(すなわち、Gonal−F(登録商標)単回投与液体調製物)と混合し、25℃で24時間接触後に、以下の方法により試験した。
r−hFSH及びr−hLHのα−サブユニット酸化状態については、RP−HPLC(表12中の純度(%)未満で、非酸化状態を報告する)
凝集体定量は、SE−HPLC
r−hFSH及びr−hLHの力価については、RP−HPLC
r−hFSH及びr−hLHのインビボ(in vivo)バイオアッセイ
r−hFSH及びr−hLHの遊離サブユニット及び凝集体定量については、SDS−PAGE(データは示さない)
外観
【0122】
結果を表12〜14で報告する。
【0123】
【表14】

【0124】
【表15】

【0125】
【表16】

【0126】
試験した全ての単回投与調製物は、Gonal−F(登録商標)反復投与調製物との適合性は、以下の通りであった。
FSH及びLHの含量における損失がない。
酸化されない。
凝集形成がなく、遊離サブユニット解離がない(SDS−PAGEによる)。
LH及びFSHの生物活性における損失がない。
【0127】
実施例3 単回投与液体調製物の安定性試験
実施例1及び2の結果に基づき、表6に記載される調製物のうち、アルギニンを含有するものを除いたものを、r−hLH濃度を2種類(6μg/mlと12μg/ml)調製し、2〜8℃及び+25℃で保存し、厳密な安定性計画に従い、分析方法を用いて試験した。
LH含量について、RP−HPLC
α−サブユニット酸化状態について、RP−HPLC
遊離サブユニット及び凝集体について、SDS−PAGE
バイオアッセイ
溶液のpH
外観
【0128】
Stabileo 1.1ソフトウェアの支援を用いて、安定性の指標として確認される全てのパラメータの結果について、統計的解析を行った。
【0129】
2〜8℃及び25±2℃で保存したr−hLHの濃度(RP−HPLC)
いずれのr−hLH濃度でも(6μg/mlと12μg/ml)、2〜8℃で6ヶ月保存後、調製物について、タンパク質濃度の統計的に有意な損失は観察されなかった。25℃±2℃で6ヶ月保存後のものは、共に0.4μg/月の減少が観察された。
【0130】
2〜8℃及び25±2℃で保存したr−hLHの生物活性(バイオアッセイ)
いずれのr−hLH濃度でも(6μg/mlと12μg/ml)、2〜8℃及び25±2℃で6ヶ月保存後、調製物について、明らかな生物活性の損失は観察されなかった。
【0131】
SDS−PAGEによるサブユニット及び凝集体の%
2〜8℃及び25±2℃で6ヶ月保存後、両方の濃度で、凝集体の割合は、SDS−PAGEによると2%未満のままである。2〜8℃で6ヶ月保存後、両方の濃度で、サブユニットの割合は、2%のままである。25±2℃で6ヶ月保存後では、共に約5%/月の減少が観察された。
【0132】
RP−HPLCによる酸化状態%
2〜8℃で6ヶ月保存後、約0.4%/月の増加が、及び25℃±2℃では0.6〜1.4%/月の範囲での増加が測定された。
【0133】
pH及び外観
製造及び保存中の、外観変化(色、透明度、可視粒)も、pH変化も観察されなかった。
【0134】
実施例4 反復投与調製物について、安定化剤及び静菌剤の適合性
安定な反復投与調製物を送達するための、静菌剤との適合性を、6つの安定化剤(スクロース、アルギニン、グリシン、リジン、ソルビトール及びトレハロース)について試験した。試験調製物を、表15にまとめた。
【0135】
【表17】

【0136】
【表18】

【0137】
各々約40 mlの溶液を調製し、0.22μmの膜を通して濾過し、15 mlのプラスティック管に、2〜8℃、+25℃及び+40℃で保存した。当該溶液を、タンパク質含量(サイズ排除HPLC、つまりSE−HPLCにより、データは示さない)、酸化状態(逆相−HPLC、つまりRP−HPLCにより)、凝集体(SE−HPLCにより)及びサブユニット形成(定性的、SE−HPLCにより)について、1ヶ月まで試験した。この調製物のセットに適用した試験結果のパネル一式を、表16〜18で報告する。m−クレゾール(mCr)を含有する溶液は全て、静菌剤と界面活性剤(Tween20)との不混和性により、製造後非常に速やかに乳白色になった。
【0138】
【表19】

【0139】
【表20】

【0140】
【表21】

【0141】
【表22】

【0142】
これらの結果に基づき、酸化剤としてのメチオニンの増量(500μg/ml)への適合をさらに調べるための、最良の安定化として、スクロース、リジン及びアルギニンを選択した。静菌剤として、ベンジルアルコール、フェノール、及びベンジルアルコールと塩化ベンザルコニウムとの組み合わせを選択した。試験した調製物を表19にまとめた。
【0143】
【表23】

【0144】
各々約100 mlの溶液を調製し、0.22μmの膜を通して濾過し、3 mlのカートリッジに充填した。以下の一次包装を用いた。
3 mlのシリコン化ガラスカートリッジ(Nuova Ompi)
クリンプキャップ(Crimp cap)コードCAP J 3ML L1 H075-1-H1 B FM 257/2 (Helvoet Pharma)
被覆プランジャー:Helvoet V9282 FM257/2 Omniflex 被覆される。
【0145】
タンパク質濃度(SE−HPLCにより)、酸化状態(RH−HPLCにより)、凝集体(SE−HPLCにより)及びサブユニット形成(定性的、SE−HPLCにより)を試験するために、当該カートリッジを、2〜8℃、+25℃及び40℃で、2ヶ月まで保存した。この第二の調製物のセットに適用した試験結果の一式のパネルを、表20〜26で報告する。
【0146】
【表24】

【0147】
【表25】

【0148】
【表26】

【0149】
【表27】

【0150】
【表28】

【0151】
【表29】

【0152】
【表30】

【0153】
これらの結果から、増加量のメチオニンと当該安定化剤との適合性が確認された(実施例1を参照されたい)。さらに、当該結果は、静菌剤が500μg/mlのメチオニンと適合することを示した。
【0154】
実施例5 FSH反復投与液体調製物と、r−hLH反復投与液体調製物の適合性
実施例4の結果に基づき、3 mlカートリッジ中のr−hLHの調製物を、FSH調製物すなわち、Gonal−F(登録商標)反復投与液体調製物)と混合し、25℃で24時間接触させた後、以下の方法により試験した。
純度について、SE−HPLC
r−hFSH及びr−hLHの力価についてRP−HPLC
r−hFSH及びr−hLHのα−サブユニット酸化状態について、RP−HPLC
r−hFSH及びr−hLHのインビボバイオアッセイ
r−hFSH及びr−hLHの遊離サブユニット及び凝集体定量についてSDS−PAGE(データは示さない)
溶液のpH
外観
【0155】
結果を表27〜29で報告する。
【0156】
【表31】

【0157】
【表32】

【0158】
【表33】

【0159】
試験した全ての反復投与調製物は、Gonal−F(登録商標)反復投与調製物に、以下の通り適合する。
FSH及びLHの含量における損失がない。
酸化されない。
凝集体がない(SE−HPLCによる)。
凝集体及びサブユニットの形成がない(SDS−PAGEによる)。
LH及びFSHの生物活性における損失がない。
【0160】
実施例6 一次包装との適合性
r−hLH調製物と最終容器(シリンジ及びカートリッジ)との間の適合性を試験するため、以下のパラメータについてマトリクス試験を行った。
r−hLH濃度の効果:6μg/ml、12μg/ml、24μg/ml
充填量の効果:0.25、0.5 ml、1 ml
容器のタイプ:1 mlガラスシリンジ及び3 mlガラスカートリッジ
静菌剤の効果:調製物を静菌剤の存在下及び非存在下で調製し、3 mlガラスカートリッジに保存した。
【0161】
調製物(SAC/500/BACL)を、異なるr−hLH強度で調製し、異なる充填量で容器に充填した。このバッチを33℃で1週間まで、SE−HPLCにより定性的に比較した。結果を図1(A〜F)で報告する。図2(A〜B)において、SE−HPLCにより、静菌剤の組み合わせの存在下及び不存在下での調製物におけるヘテロ二量体の割合を比較する。図1及び2における結果をみると、以下の結論が導かれる。
12μg/ml及び24μg/mlで、調製物の容器は影響がない。
12μg/ml及び24μg/mlで、調製物の充填量は影響がない。
濃度増加は、サブユニットの解離に対し正の影響がある。
静菌剤の有無でバッチ間に差異はない。
r−hLH濃度が高くなると、安定性の向上につながる。
【0162】
実施例7 反復投与液体調製物の安定性試験
これまでの実施例の結果に基づき、表19に記載される4つの調製物(SAC/500/BACL、LYS/500/BA、LYS/500/BACL及びARG/500/Phe)を、2〜8℃及び+25℃で、厳密な安定性計画に従い、以下の分析方法を用いて試験した。
LH含量については、RP−HPLC
α−サブユニット酸化状態については、RP−HPLC
フェノール含量については、RP−HPLC
塩化ベンザルコニウム含量については、RP−HPLC
ベンジルアルコール含量については、RP−HPLC
遊離サブユニット及び凝集体については、SDS−PAGE
バイオアッセイ
溶液のpH
外観
【0163】
上記調製物におけるリジン及びアルギニンの量を、調製物の等張性を最適化するよう調整した(すなわち、L−リジン1塩酸塩を28.5mg、L−アルギニン1塩酸塩を31.5 mg)。
【0164】
Stabileo 1.1ソフトウェアの支援を用いて、安定性の指標として確認される全てのパラメータの結果について、統計的解析を行った。
【0165】
2〜8℃及び25±2℃で保存したr−hLHの濃度(RP−HPLC)
2〜8℃で12ヶ月保存後、調製物について、タンパク質濃度の統計的に有意な損失は観察されなかった。25℃±2℃で6ヶ月保存後のものは、共に0.4μg/月の減少が観察された。
【0166】
2〜8℃及び25±2℃で保存したr−hLHの生物活性(バイオアッセイ)
2〜8℃及び25±2℃で12ヶ月保存後、調製物について、明らかな生物活性の損失は観察されなかった。
【0167】
SDS−PAGEによるサブユニット及び凝集体の%
2〜8℃及び25℃で12ヶ月保存後、全ての調製物について、凝集体の割合は、SDS−PAGEによると2%未満のままである。
2〜8℃で6ヶ月保存後、両方の濃度で、サブユニットの割合は、2%のままである。25℃で6ヶ月保存後では、全ての調製物について、約32%/月の増加が観察された。
【0168】
RP−HPLCによる酸化状態%
SAC/500/BACL及びARG/500/Pheは、酸化状態の増加がより低い。
【0169】
pH及び外観
製造及び保存中の、外観変化(色、透明度、可視粒)も、pH変化も観察されなかった。
【0170】
静菌剤濃度
フェノール及びベンジルアルコールの目標量を検出し、6ヶ月〜12ヶ月の安定性確認ポイントでは損失が見られなかった。目標量(10μg/mlではなくて、6μg/ml)未満の塩化ベンザルコニウム量を、6ヶ月の安定性確認ポイントで、SAC/500/BACL調製物中において測定した。
【0171】
静菌剤の有効性
T=0と9ヵ月後に、調製物中で行われた静菌有効試験の結果を、表30〜33で報告する。
【0172】
【表34】

【0173】
【表35】

【0174】
【表36】

【0175】
【表37】

【0176】
0.3%のベンジルアルコール+0.001%の塩化ベンザルコニウム、及びスクロース又はリジン(SAC/500/BACL及びLYS/500/BACL)の組み合わせを含有する調製物は、塩化ベンザルコニウム量が目標未満(10μg/mlではなくて、6μg/ml)であっても、欧州薬局方の基準Aを満たした。
0.5%のフェノールを含有する調製物(ARG/500/Phe)、及び1.2%のベンジルアルコールを含有する調製物(LYS/500/BA)は、欧州薬局方の基準Bを満たした。
【0177】
結論
全ての反復投与調製物は、2〜8℃で12ヶ月保存後、良好な安定性プロファイルを示した。
【0178】
【表38】

【0179】
【表39】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
黄体形成ホルモン(LH)又はその変異体を含有し、安定化量のアルギニン又はその塩及び/又はリジン又はその塩を含んでなる、液体調製物。
【請求項2】
前記黄体形成ホルモン(LH)が、ヒト黄体形成ホルモン(hLH)である、請求項1に記載の調製物。
【請求項3】
前記黄体形成ホルモン(LH)が、組み換えヒト黄体形成ホルモン(r−hLH)である、請求項1又は2に記載の調製物。
【請求項4】
前記黄体形成ホルモン(LH)が、尿ヒト黄体形成ホルモン(u−hLH)である、請求項1又は2に記載の調製物。
【請求項5】
前記黄体形成ホルモン(LH)が、約1〜約50μg/mlの濃度で存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項6】
前記アルギニン又はその塩が、約10〜約50mg/mlの濃度で存在する、請求項1に記載の調製物。
【請求項7】
前記リジン又はその塩が、約10〜約50mg/mlの濃度で存在する、請求項1に記載の調製物。
【請求項8】
リン酸バッファをさらに含んでなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項9】
前記リン酸バッファが、約1〜約100mMの濃度で存在する、請求項8に記載の調製物。
【請求項10】
前記リン酸バッファが、好ましくはリン酸ナトリウムバッファである、請求項8又は9に記載の調製物。
【請求項11】
界面活性剤をさらに含んでなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項12】
前記界面活性剤がTween20である、請求項11に記載の調製物。
【請求項13】
Tween20が約0.01〜約10 mg/mlの濃度で存在する、請求項12に記載の調製物。
【請求項14】
メチオニンをさらに含んでなる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項15】
メチオニンが、約0.01〜約5.0 mg/mlの濃度で存在する、請求項14に記載の調製物。
【請求項16】
静菌剤をさらに含んでなる、請求項1〜15のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項17】
前記静菌剤が、ベンジルアルコール、フェノール、及びベンジルアルコールと塩化ベンザルコニウムの組み合わせのいずれかから選択される、請求項16に記載の調製物。
【請求項18】
前記静菌剤が、約0.005〜約15 mg/mlの濃度で存在する、請求項16又は17に記載の調製物。
【請求項19】
注射用水をさらに含んでなる、請求項1〜18のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項20】
pHが、約7.5〜約8.5の範囲内である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項21】
少なくとも、25μg/mlのr−hLH、1.65 mg/mlのNa2HPO4 2H2O、0.104 mg/mlのNaH2PO42O、31.5 mg/mlのL−アルギニン1塩酸塩、0.05 mg/mlのTween20、0.5 mg/mlのメチオニン及び5 mg/mlのフェノールを含んでなる、請求項1〜20のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項22】
少なくとも、25μg/mlのr−hLH、1.65 mg/mlのNa2HPO4 2H2O、0.104 mg/mlのNaH2PO42O、28.5 mg/mlのリジン1塩酸塩、0.05 mg/mlのTween20、0.5 mg/mlのメチオニン及び5 mg/mlのベンジルアルコールを含んでなる、請求項1〜20のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項23】
少なくとも、25μg/mlのr−hLH、1.65 mg/mlのNa2HPO4 2H2O、0.104 mg/mlのNaH2PO42O、28.5 mg/mlのリジン1塩酸塩、0.05 mg/mlのTween20、0.5 mg/mlのメチオニン及び3 mg/mlのベンジルアルコール及び0.01 mg/mlの塩化ベンザルコニウムを含んでなる、請求項1〜20のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項に記載の調製物を含んでなる、医薬組成物。
【請求項25】
使用前の保存に適する容器内に、滅菌条件下で密閉される、請求項1〜23のいずれか1項に記載の調製物の提示形態。
【請求項26】
賦形剤溶液での黄体形成ホルモン(LH)の希釈を含んでなる、請求項1〜23のいずれか1項に記載の調製物の製造方法。
【請求項27】
医薬の調製のための、請求項1〜23のいずれか1項に記載の調製物の使用。
【請求項28】
女性及び/又は男性における不妊症治療用の医薬の調製のための、請求項1〜23のいずれか1項に記載の調製物の使用。
【請求項29】
卵胞刺激ホルモン(FSH)又はその変異体を含んでなる液体調製物と組み合わせる、請求項1〜23のいずれか1項に記載の調製物の使用。
【請求項30】
女性及び/又は男性における不妊症治療用の、請求項1〜23のいずれか1項に記載の調製物。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−502968(P2011−502968A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531519(P2010−531519)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064679
【国際公開番号】WO2009/056569
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(309025524)メルク セローノ ソシエテ アノニム (49)
【Fターム(参考)】