説明

LNGサテライト設備

【課題】設備の運転上、保安要員の常駐が不要となり、運転コストの低減を図り得ると共に、LNGタンクローリ内の残存ガスの放出と脱圧のため、大気放散する必要のないLNGサテライト設備を提供する。
【解決手段】LNGタンクローリ20に収容されたLNGを受入れるLNG受入ライン1
にLNG貯槽2が接続される一方、この貯槽2からLNGを払出すLNG払出ライン3にLNG気化器4が接続され、この気化器4に後続するガス供給ライン5を通して、気化されたLNGガスを需要家に供給するLNGサテライト設備において、前記LNG貯槽2内で発生したBOGを払出し前記ガス供給ライン5に合流させるBOG払出ライン6に、BOG加温器7とBOG貯留タンク8とが介設され、前記BOG加温器7で加温され前記BOG貯留タンク8に貯留された加温BOGの圧力が、前記BOG払出ライン6を介して前記LNG貯槽2内に伝達可能に構成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNGを液体のまま需要地に受入れ、このLNGをガス化して需要家に供給するLNGサテライト設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海外のガス田から船舶により輸送されたLNGは、国内で最初に一次受入基地に受入れ貯蔵される。そして、この一次受入基地と需要地が離れている場合は、LNGをガス化しないで液体のまま需要地のLNGサテライト基地まで、通常LNGローリによって陸路を輸送する。そして、LNGサテライト基地に設置されたLNGサテライト設備によってガス化された後、このガスを燃料として用いる需要家に供給されている。
【0003】
そこで、この様な従来例に係るLNGサテライト設備につき、以下添付図6,7を参照しながら説明する。図6は従来技術1に係るLNGサテライト設備の構成を示す系統図、図7は従来技術2に係る液化ガス用の貯蔵払出し装置を示す構成図である。
【0004】
先ず、従来技術1に係るLNGサテライト設備では、LNGローリ40のローリタンク41内に収納されたLNGは、受入ライン31を介して断熱されたLNG貯槽32に移送される。LNG貯槽32内のLNGは、LNG貯槽32に接続されたLNG払出ライン33より導出され、このLNG払出ライン33から分岐されたLNG加圧ライン45を経て貯槽加圧蒸発器46に至る。
【0005】
そして、この貯槽加圧蒸発器46によりLNGは気化され膨張して、LNG加圧ライン45が接続されたLNG貯槽32の頂部に至って、LNG貯槽32液面を加圧し槽内圧力を高める。その結果、LNG貯槽32から前記LNG払出ライン33に導出されたLNGは、LNG気化器34により気化された後、ガス供給ライン35を経てガス需要家に供給される。
【0006】
この様なLNGサテライト設備では、貯槽加圧蒸発器46を備えているため、高圧ガス保安法上、有資格者(保安要員)の確保が必要となり、LNGの普及と設備運転コスト低減の両面から障害となっていた。一方、LNGサテライト基地において、LNGの荷降ろしを完了したLNGローリ40は、ローリタンク41内の残圧を所定圧(0.3MPa)以下に脱圧しないと、道路交通法上走行できないため、例えば、図6の大気放散ライン44に設けられた開閉弁44aを開放して、ローリタンク41内の残存ガスの放出と脱圧を行なっていた。
【0007】
一方、従来技術2に係る液化ガス用の貯蔵払出し装置では、図7に示す如く、液化ガスLGのための真空断熱式貯槽50と、この真空断熱式貯槽50から払出しされた液化ガスLGを気化し、気化したガスを消費機器に向けて送り出す気化器51とを少なくとも備えた液化ガスLG用の貯蔵払出し装置であって、前記装置は、真空度調節装置52を更に含み、この真空度調節装置52は、前記真空断熱式貯槽50を構成する貯槽内外槽間54に、貯蔵する液化ガスLGの温度よりも液化温度が低いNガスを供給するNガスボンベ55とを備えている。
【0008】
また同時に、この液化ガス用の貯蔵払出し装置は、貯槽内外槽間54を真空引きする真空ポンプ56と、真空断熱式貯槽50内の圧力を検出する圧力センサー57と、圧力センサー57からの信号に基づき、貯槽内外槽間54にNガスボンベ55から第1の開閉弁58を介してNガスを供給するか、または真空ポンプ56により第2の開閉弁59を介して貯槽内外槽間54の真空引きを行なうかを切り替える弁開閉機構58a,59aとを少なくとも備えている(特許文献1参照)。
【0009】
この様な従来技術2によれば、貯槽50内の液面を加圧するための加圧蒸発器を省略できるため、設備の運転において、有資格者(保安要員)の常駐が不要となり、運転コストの低減を図り得る。しかしながら、ローリタンク内の残存ガスの放出と残圧の低減については、何らの配慮もされていないため、従来通り大気放散せざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−47234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記背景技術に説明した様な諸問題点を解消するためになしたものであって、その目的は、設備の運転上、有資格者(保安要員)の常駐が不要となり、運転コストの低減を図り得ると共に、LNGタンクローリ内の残存ガスの放出と脱圧のため、大気放散する必要のないLNGサテライト設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するための本発明は、以下の構成を備えるLNGサテライト設備からなる。即ち、本発明の請求項1に係るLNGサテライト設備は、LNGタンクローリに収容されたLNGを受入れ移送するLNG受入ラインにLNG貯槽が接続される一方、このLNG貯槽からLNGを払出すLNG払出ラインにLNG気化器が接続され、このLNG気化器に後続するガス供給ラインを通して、前記LNG気化器によって気化されたLNGガスを需要家に供給するLNGサテライト設備である。
【0013】
同時に、前記LNGサテライト設備が採用した手段は、前記LNG貯槽内で自然気化して発生したBOG(Boil off Gas)を払出し前記ガス供給ラインに合流させるBOG払出ラインに、前記BOGを常温に加温するBOG加温器と、このBOGを貯留するためのBOG貯留タンクとが介設され、前記BOG加温器で加温され、前記BOG貯留タンクに貯留された加温BOGの圧力が、前記BOG払出ラインを介して前記LNG貯槽内に伝達可能に構成されてなることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項2に係るLNGサテライト設備が採用した手段は、請求項1に記載のLNGサテライト設備において、前記LNG受入ラインと前記ガス供給ラインとを接続するローリ脱圧ラインが設けられると共に、このローリ脱圧ラインに前記LNGタンクローリに残された残存ガスを加温する残存ガス加温器が介装され、LNGタンクローリから前記LNG貯槽にLNG荷降ろし後、前記残存ガス加温器が介装されたローリ脱圧ラインを介して、LNGタンクローリ内の残存ガスを前記LNGガス供給ラインに払出し脱圧可能に構成されてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に係るLNGサテライト設備は、LNGタンクローリに収容されたLNGを受入れ移送するLNG受入ラインにLNG貯槽が接続される一方、このLNG貯槽からLNGを払出すLNG払出ラインにLNG気化器が接続され、このLNG気化器に後続するガス供給ラインを通して、前記LNG気化器によって気化されたLNGガスを需要家に供給するものである。
【0016】
同時に、このLNGサテライト設備によれば、前記LNG貯槽内で自然気化して発生したBOGを払出し前記ガス供給ラインに合流させるBOG払出ラインに、前記BOGを常温に加温するBOG加温器と、このBOGを貯留するためのBOG貯留タンクとが介設され、前記BOG加温器で加温され、前記BOG貯留タンクに貯留された加温BOGの圧力が、前記BOG払出ラインを介して前記LNG貯槽内に伝達可能に構成されてなるので、貯槽加圧蒸発器を備える必要がなく、設備の運転上、有資格者(保安要員)の常駐が不要となり、運転コストの大幅な低減を図り得る。また、LNG貯槽を大容量化することなく、小容量の前記BOG貯留タンクを備えることにより、LNG貯槽の槽内圧力の低下を回避して、LNG受入れ後、ガス供給可能な限界圧力に至るまでの経過時間を延長し得る。
【0017】
また、本発明の請求項2に係るLNGサテライト設備によれば、前記LNG受入ラインと前記ガス供給ラインとを接続するローリ脱圧ラインが設けられると共に、このローリ脱圧ラインに前記LNGタンクローリに残された残存ガスを加温する残存ガス加温器が介装され、LNGタンクローリから前記LNG貯槽にLNG荷降ろし後、前記残存ガス加温器が介装されたローリ脱圧ラインを介して、LNGタンクローリ内の残存ガスを前記LNGガス供給ラインに払出し脱圧可能に構成されてなるので、LNGタンクローリ内の残存ガスの放出と脱圧のために、温室効果のあるメタン等を含むガスを大気放散する必要がなくなり、地球温暖化防止に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係るLNGサテライト設備の構成を示す系統図である。
【図2】従来技術1に係るLNGサテライト設備において、容量100kLのLNG貯槽におけるケース1の槽内圧力の経時変化の実測値と計算値とを比較して示す図である。
【図3】従来技術1に係るLNGサテライト設備において、容量80kLのLNG貯槽におけるケース2の槽内圧力の経時変化の実測値と計算値とを比較して示す図である。
【図4】本発明の比較例−1,2及び実施例に係り、各LNG貯槽の槽内圧力の経時変化につき数値実験した結果を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係るLNGサテライト設備の構成を示す系統図である。
【図6】従来技術1に係るLNGサテライト設備の構成を示す系統図である。
【図7】従来技術2に係る液化ガス用の貯蔵払出し装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態1に係るLNGサテライト設備を、以下添付図1を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態1に係るLNGサテライト設備の構成を示す系統図である。
【0020】
本発明の実施の形態1に係るLNGサテライト設備には、LNGの一次受入基地から、ローリタンク21を搭載したLNGタンクローリ20によってLNGが輸送される。そして、このLNGタンクローリ20がLNGサテライト基地に到着すると、ローリタンク21に収容されたLNGは、後述の如くフレキシブルホース24により接続され、LNG受入ライン1を介してLNGサテライト設備に移送される。
【0021】
一方、このLNGサテライト設備には、LNG貯槽2が設けられており、通常このLNG貯槽2は内槽2aがSUS製の二重壁構造を有し、この二重壁内が断熱構造をなしている。そして、前記LNG受入ライン1の下流側が、前記内槽2aの底部に連通された底部受入ライン12と、前記内槽2aの頂部に連通された頂部受入ライン13とに分岐され、夫々LNG貯槽2の内槽2aに接続されている。前記LNG受入ライン1の上流側には開閉弁1aが介装されると共に、前記LNG受入ライン1の下流側で分岐された底部受入ライン12及び頂部受入ライン13にも、夫々開閉弁12a,13aが介装されている。
【0022】
LNG貯槽2の内槽2aは、ガス需要家におけるガス消費量の3日分程度の容量、即ち、小規模であれば40〜60kL或いは60kLより多少多い程度の容量を有するのが一般的であり、LNG温度(−162℃)に耐え得る構造となっている。
【0023】
そして、このLNG貯槽2の内槽2aからLNGを払出すLNG払出ライン3には、LNGを温水や外気熱によって気化させるLNG気化器4の一端が接続され、更にこのLNG気化器4の他端には、気化された液化ガスをガス需要家に搬送するガス供給ライン5が後続して接続されている。LNG払出ライン3には、非常時にLNGの払出しを遮断するためのLNG遮断弁3aが、またガス供給ライン5には、ガス需要家へのガス払出圧力を維持するための圧力調節弁5aが夫々介装されている。
【0024】
一方、前記LNG貯槽2の内槽2aの頂部には、この内槽2a内で自然気化して発生したBOGを、前記ガス供給ライン5に合流させるBOG払出ライン6が、開閉弁6bを介装して接続されている。また、このBOG払出ライン6には、前記BOGを温水や外気温により常温に加温するBOG加温器7と、加温されたこのBOGを貯留するためのBOG貯留タンク8と、LNG貯槽2の内圧を保持するために、BOG流量を絞るBOG絞り弁6aが介設されている。
【0025】
そして、BOG加温器7で加温されて、BOG貯留タンク8に貯留された加温BOGの圧力が、前記BOG払出ライン6を介してLNG貯槽2の内槽2a内に伝達可能に構成されているので、LNG貯槽2の槽内圧力の低下を延長させることが可能となる。
【0026】
尚、このBOG払出ライン6には、BOG絞り弁6aの後流側にガス抜取ライン14が接続されると共に、BOG払出ライン6がガス供給ライン5に合流する直前と、ガス抜取ライン14には夫々開閉弁6c,14aが夫々介装されている。そして、ガスやBOGを定常的なガス需要家以外の他の用途に転用する場合は、開閉弁6c,14aを開弁して、ガス抜取ライン14から転用供給することもできる。
【0027】
次に、本実施の形態1に係るLNGサテライト設備を用いたガス供給方法につき、上記同様添付図1を参照しながら説明する。
【0028】
LNGサテライト基地に到着したLNGタンクローリ20は、ローリタンク21に収容されたLNGを受入れ移送するLNG受入ライン1の上流側の一端に、フレキシブルホース24を介して接続される。このLNGタンクローリ20には、加圧蒸発器22が搭載されており、循環流路23の図示しないポンプを介してローリタンク21内のLNGを循環させて、加圧蒸発器22によって蒸発させてタンク21内に戻し、前記タンク21内を0.5〜0.6MPaに加圧している。
【0029】
そして、LNG受入ライン1に介装された開閉弁1a,及び底部受入ライン12、頂部受入ラインに夫々介装された開閉弁12a,13aが開弁されると、ローリタンク21内の加圧されたLNGが、フレキシブルホース24及びLNG受入ライン1を経て、LNGの一部は底部受入ライン12を介してLNG貯槽2の底部に移送される一方、その他のLNGは、頂部受入ライン13を介してLNG貯槽2の頂部に移送され、共にこのLNG貯槽2の内槽2a内に貯蔵される。
【0030】
LNG貯槽2の内槽2aは、前記ローリタンク21内の圧力と後述するBOG絞り弁6aとの作用により、通常0.3MPa程度の内圧に保持されている。また、LNG貯槽2の槽内圧力をできるだけ高くして圧力低下を延長させるためには、0.35〜0.45MPa程度まで高圧にすることも可能である。そのため、LNG貯槽2に貯蔵されたLNGは、ガス需要家の要請により図示しない制御器からの制御信号に基づき、圧力調節弁5aを制御して、前記槽内圧力によってLNG気化器4から導出されるガス流量を制御する。LNG気化器4により気化されたガスは、ガス供給ライン5から圧力調節弁5aを介してガス需要家に供給される。
【0031】
一方、LNG貯槽2の内槽2a頂部にはBOGが貯留されており、開閉弁6bの開弁と共にBOG払出ライン6を経てBOG加温器7へ供給され、常温に加温されたBOGはBOG貯留タンク8に貯留される。そして、通常運転では、ガス抜取ライン14に介装された開閉弁14aは閉弁されると共に、BOG払出ライン6に介装された開閉弁6cは開弁されているので、BOG払出ライン6から払い出されたBOGは、ガス供給ライン5に合流する。
【0032】
そして、BOG貯留タンク8の後流側のBOG払出ライン6に介装されたBOG絞り弁6aによって、BOG払出ライン6からガス供給ライン5に合流するBOG流量が絞り込まれるため、上述した通りLNG貯槽2の槽内圧力が保持される。この様にして合流したガスとBOGが混合されてガス需要家に供給されるのである。
【0033】
以上の通り、本発明の実施の形態1に係るLNGサテライト設備によれば、貯槽加圧蒸発器を備えていないため、設備の運転上、有資格者(保安要員)の常駐が不要となり、運転コストの大幅な低減を図り得る。
【実施例】
【0034】
先ず、図6を用いて説明した従来技術1に係るLNGサテライト設備において、容量100kL及び80kLのLNG貯槽を夫々有するサテライト設備を例として、これらのLNGサテライト設備に、LNGタンクローリのローリタンクに収容されたLNGを受入れた後、需要家のLNG消費による前記LNG貯槽の槽内圧の経時変化を、夫々圧力計により実測した実測値と数値実験によって求めた計算値とを比較して、図2,3を参照しながら説明する。
【0035】
図2は、従来技術1に係るLNGサテライト設備において、容量100kLのLNG貯槽におけるケース1の槽内圧力の経時変化の実測値と計算値とを比較して示す図、図3は、従来技術1に係るLNGサテライト設備において、容量80kLのLNG貯槽におけるケース2の槽内圧力の経時変化の実測値と計算値とを比較して示す図である。
【0036】
これらケース1,2における計算値は、何れも貯槽への外部入熱により内部のLNGが一部蒸発し、LNG導出による圧力低下を緩和させる効果も考慮した数値実験結果である。ケース1(図2)では、100kLのLNG貯槽を夫々有するサテライト設備において、LNG払出開始時の液面が内槽最頂部高さの53.2%、LNG払出量が払出開始後7時間未満は平均0.51トン/h、払出開始後7時間から21時間未満は平均0.08トン/h、払出開始後21時間から23時間未満は平均0.39トン/hの場合を示す。
【0037】
このケース1では、計算値は実測値より多少早く圧力降下しているが、初期槽内圧力が270kPa程度であっても、LNG払出開始後20h経過後の内槽圧力は、250kPa(0.25MPa)までしか低下していない。この理由は、貯槽容量が大きいと、それに比例して貯槽内のガス層の容量が大きくなるため、LNG払出開始直後のガス層の蓄圧量が大きくなるためである。また、たまたま実測した時は、LNG払出開始後7時間から21時間が夜間に該当しておりLNG需要家(工場)の使用量が低下して、LNG払出量が少なくなったことにも起因している。
【0038】
一方、ケース2(図3)は、LNG払出開始時の液面が内槽最頂部高さの70%で、LNG払出量が平均0.2トン/hの場合を示す。ケース1,2における計算値は、何れも実測値と良く一致した圧力降下を示し、LNG貯槽における槽内圧の経時変化を、本数値実験により予測可能なことを示している。
【0039】
通常、ガス需要家では、100kPa(0.1MPa)程度以上のガス圧が必要なため、LNG貯槽からガス需要家に至るまでの配管、機器等の圧損を加味して、LNG貯槽においてガス供給可能な限界圧力は、120〜150kPa(0.12〜0.15MPa)程度と考えられる。しかしながら、図2はもとより、図3によれば、LNG払出開始後60h経過しても、槽内圧力は230kPa(0.23MPa)程度までしか低下せず、容量80kLのLNG貯槽を備えたLNGサテライト設備では、3日間は十分ガス供給可能であることを示している。
【0040】
次に、前記従来技術1に係るLNGサテライト設備において、容量60kLのLNG貯槽を有する比較例−1と、容量80kLのLNG貯槽を有する比較例−2と、上記実施の形態1に係るLNGサテライト設備において、容量60kLのLNG貯槽及び容量25kLのBOG貯留タンクを有する実施例につき、以下図4を参照しながら説明する。図4は、本発明の比較例−1,2及び実施例に係り、各LNG貯槽の槽内圧力の経時変化につき数値実験した結果を示す図である。
【0041】
これら比較例−1,2及び実施例における数値実験は、何れもLNGサテライト設備に、LNGタンクローリのローリタンクに収容されたLNGを受入れた後、ガス需要家のLNG消費による前記LNG貯槽の槽内圧力の経時変化を夫々数値実験した結果である。即ち、比較例−1及び実施例は、貯槽容量が60kL、LNG払出開始時の液面が内槽最頂部高さの80%で、LNG払出量が平均で0.288トン/hの場合を示している。
【0042】
一方、比較例−2は、貯槽容量が80kL、LNG払出開始時の液面が内槽最頂部高さの60.3%で、LNG払出量は比較例−1と同じく平均で0.288トン/hの場合を示す。上記比較例−1,2及び実施例の何れの場合も、貯槽への外部入熱により内部のLNGが一部蒸発し、LNG払出による圧力低下を緩和させる効果も考慮した数値実験結果である。
【0043】
この結果によれば、容量80kLのLNG貯槽を備えた比較例−2のLNGサテライト設備では、BOG貯留タンクを備えなくとも、LNGタンクローリのローリタンクに収容されたLNGを受入れた後3日経た時点で、140kPa程度の槽内圧力を有している。また、BOG貯留タンクを備えない比較例−1では、LNG受入れ後33hで槽内圧力150kPa以下となってしまうのに対し、比較例−1にBOG貯留タンクを追加した実施例においては、槽内圧力150kPa以下となるのは、LNG受入れ後58hに延長される。
【0044】
次に、本発明の実施の形態2に係るLNGサテライト設備について、以下添付図5を参照しながら説明する。図5は、本発明の実施の形態2に係るLNGサテライト設備の構成を示す系統図である。
但し、本発明の実施の形態2が上記実施の形態1と相違するところは、ローリ脱圧ラインとこの脱圧ラインに介装された残存ガス加温器の有無に相違があり、これ以外は上記実施の形態1と全く同構成であるから、上記実施の形態1と同一のものに同一符号を付して、その相違する点について説明する。
【0045】
即ち、上記実施の形態1に係るLNGサテライト設備では、LNGタンクローリ20から移送されるLNGは、LNG受入ライン1を経てLNG貯槽2に貯蔵され、次いで、下流側のLNG払出ライン3から払出されたLNGは、これに連通するLNG気化器4によりガス化された後、ガス供給ライン5を経て、BOG払出ライン6から払い出されたBOGと共に合流して需要家に供給する構成を有している。そのため、LNG貯槽2におけるLNGにヘッド(液位)がある限り、ローリタンク21内の残存ガスの抜き取りと脱圧を、大気放散することなく行なうことは難しい。
【0046】
それに対し、本実施の形態2に係るLNGサテライト設備は、LNG受入ライン1と、ガス供給ライン5とを接続するローリ脱圧ライン10が、残存ガス加温器11を介装して設けられると同時に、この残存ガス加温器11の上流側のローリ脱圧ライン9には開閉弁10bが、前記脱圧加温器11の下流側の第2ローリ脱圧ライン9にはローリ脱圧絞り弁10aと開閉弁10cが介装されている。
【0047】
その結果、本発明の実施の形態2に係るLNGサテライト設備によれば、LNGタンクローリ20から前記LNG貯槽2にLNGを荷降ろし後、LNG受入ライン1の開閉弁1aを閉弁する一方、ローリ脱圧ライン10に介装された開閉弁10b、ローリ脱圧絞り弁10a、開閉弁10cを全て開弁して、ローリタンク36内の残存ガスを前記ローリ脱圧ライン10を介して残存ガス加温器11に導いて加温し、ガス供給ライン5に払出し脱圧可能に構成されてなるので、ローリタンク21内の残存ガスの放出と脱圧のために、温室効果のあるメタン等を含むガスを大気放散する必要がなくなる。
【0048】
以上説明した通り、本発明に係るLNGサテライト設備によれば、LNG貯槽内で発生したBOGをガス供給ラインに合流させるBOG払出ラインに、前記BOGを常温に加温するBOG加温器と、このBOGを貯留するためのBOG貯留タンクとが介設され、前記BOG加温器で加温され、前記BOG貯留タンクに貯留された加温BOGの圧力が、前記BOG払出ラインを介して前記LNG貯槽内に伝達可能に構成されてなる。
【0049】
その結果、貯槽加圧蒸発器を備える必要がなくなるため、設備の運転上、有資格者(保安要員)の常駐が不要となり、運転コストの大幅な低減を図り得る。また、LNG貯槽を大容量化することなく、小容量の前記BOG貯留タンクを備えることにより、LNG貯槽の槽内圧力の低下を回避して、LNG受入れ後、ガス供給可能な限界圧力に至るまでの経過時間を延長し得る。
【符号の説明】
【0050】
1:LNG受入ライン, 1a:開閉弁,
2:LNG貯槽, 2a:内槽,
3:LNG払出ライン, 3a:LNG遮断弁, 3b:開閉弁,
4:LNG気化器,
5:ガス供給ライン, 5a:圧力調節弁,
6:BOG払出ライン, 6a:BOG絞り弁, 6b,6c:開閉弁,
7:BOG加温器, 8:BOG貯留タンク,
10:ローリ脱圧ライン, 10a:ローリ脱圧絞り弁,
10b,10c:開閉弁, 11:残存ガス加温器,
12:底部受入ライン, 12a:開閉弁,
13:頂部受入ライン, 13a:開閉弁,
14:ガス抜取ライン, 14a:開閉弁,
20:LNGタンクローリ, 21:ローリタンク, 22:加圧蒸発器,
23:循環流路, 24:フレキシブルホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LNGタンクローリに収容されたLNGを受入れ移送するLNG受入ラインにLNG貯槽が接続される一方、
このLNG貯槽からLNGを払出すLNG払出ラインにLNG気化器が接続され、
このLNG気化器に接続されたガス供給ラインを通して、前記LNG気化器によって気化されたLNGガスを需要家に供給するLNGサテライト設備において、
前記LNG貯槽内で自然気化して発生したBOGを払出し前記ガス供給ラインに合流させるBOG払出ラインに、
前記BOGを常温に加温するBOG加温器と、このBOGを貯留するためのBOG貯留タンクとが介設され、
前記BOG加温器で加温され、前記BOG貯留タンクに貯留された加温BOGの圧力が、前記BOG払出ラインを介して前記LNG貯槽内に伝達可能に構成されてなることを特徴とするLNGサテライト設備。
【請求項2】
前記LNG受入ラインと前記ガス供給ラインとを接続するローリ脱圧ラインが設けられると共に、このローリ脱圧ラインに前記LNGタンクローリに残された残存ガスを加温する残存ガス加温器が介装され、LNGタンクローリから前記LNG貯槽にLNG荷降ろし後、前記残存ガス加温器が介装されたローリ脱圧ラインを介して、LNGタンクローリ内の残存ガスを前記LNGガス供給ラインに払出し脱圧可能に構成されてなることを特徴とする請求項1に記載のLNGサテライト設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−236929(P2011−236929A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106314(P2010−106314)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(504358148)株式会社神鋼エンジニアリング&メンテナンス (8)
【Fターム(参考)】