LPS誘導IgM産生増強剤
【課題】経口投与により動物の免疫増強効果を有するLPS誘導IgM産生増強剤を提供する。
【解決手段】麦類の成熟期前の緑葉の搾汁成分を有効成分とするLPS誘導IgM産生増強剤。該麦類としては、成熟期前の緑葉、好ましくは分ケツ開始期から穂揃期までの麦類、例えば、大麦、裸麦、えん麦、更にはハト麦の緑葉(茎及び葉の総称である)を用い、好ましくは機械的手段で、不当な熱変性を与えることなしに搾汁し、粗大固形分を除去して得られた青汁を搾汁成分とするものである。該LPS誘導IgM産生増強剤は、経口投与による医薬品または機能性食品とすることができる。
【解決手段】麦類の成熟期前の緑葉の搾汁成分を有効成分とするLPS誘導IgM産生増強剤。該麦類としては、成熟期前の緑葉、好ましくは分ケツ開始期から穂揃期までの麦類、例えば、大麦、裸麦、えん麦、更にはハト麦の緑葉(茎及び葉の総称である)を用い、好ましくは機械的手段で、不当な熱変性を与えることなしに搾汁し、粗大固形分を除去して得られた青汁を搾汁成分とするものである。該LPS誘導IgM産生増強剤は、経口投与による医薬品または機能性食品とすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫増強剤、さらに詳しくはLPS 誘導IgM 産生増強剤に関する。
【背景技術】
【0002】
麦類の成熟期前の緑葉の青汁成分が多種多様な有用天然成分を豊富に含有することに基づいて、この青汁成分をもとの青汁中の状態を保ったまま安定な粉末として取得することが開示され、麦類緑葉粉末の製法が提案された(特許文献1)。
【0003】
この特許によれば、麦類の成熟期前の緑葉の機械的破砕物から粗大固形分を分離除去して得られる青汁のpH6 〜9 に中和処理したものを噴霧乾燥または凍結乾燥することによって、麦類若葉の青汁成分の安定な粉末が得られる。そして噂好品を包含する食品類、保健薬・化粧品を包含する医薬品類などの広い分野で有用であることを記載し、保健医薬の一例として青汁粉末、防風痛聖散料エキス末、デンプン、乳糖、タルク、ステアリン酸マグネシウム、エチルアルコールを用いて錠剤を製造した例を示し、この剤は動脈硬化予防及び治療用として服用できることを開示している。
【0004】
上記青汁粉末の生理活性に着目し研究を行っている過程で、麦類の成熟期前の緑葉の搾汁成分を有効成分として含有することを特徴とする「免疫増強剤」(特許文献2)が開示された。しかしながら、この特許文献2においては、BALB/cAcl系マウスまたはJC1:ICR 系マウスの脾臓細胞を用いたin vitroの実験結果が開示されているに過ぎず、動物個体に経口投与して免疫機能の調節が可能であるかについては何ら言及しておらず、医薬品または機能性食品としての効果には疑問が持たれるところである。
【0005】
さらに、血糖低下作用・抗炎症作用・抗潰瘍作用・抗高コレステロール作用・抗血栓作用および血管保護作用等を有する大麦若葉の搾汁粉末の経口摂取についての生理活性をさらに詳細に検討した結果、大麦若葉の搾汁粉末の経口摂取によるマウスの腹腔細胞の一酸化窒素(NO)の産生機能を測定することにより、免疫機能の調節作用が確認されている(非特許文献1)。本非特許文献1においては、C3H / HeSIc 系マウス3 ヶ月齢に、蒸留水0 .5ml または大麦若葉青汁粉末3mg を0 .5ml の蒸留水に懸濁して、雄性マウスには1 ヶ月間または雌性マウスには2 ヶ月間に亘り毎日、ゾンデ針を用いて経口投与している。各マウスから個体ごとに腹腔細胞を得て、96−Well plateの各wellに2 ×105cells/well 分注した。CO2 インキュベーター内で2 時間,37℃で培養後、各wellを37℃のMEM 培養液で3 回洗浄し、凍った付着性細胞を腹腔マクロファージとした。各wellの附着性腹腔細胞を、5 %FCS を含むRPMI1640培地にマクロファージ活性化物質としてLPS とINF-γを、所定の組合せで含む培養液により、5 %CO2 インキュベーター内で48時間培養し、C3H / HeSIc 系マウスの3 ヶ月齢から1 または2 ヶ月間、大麦若葉青汁粉末3mg を毎日投与した投与群においては、C3H / HeSIc 系マウスでは、腹腔細胞のNO産生機能が有意に亢進することが開示されている。
【0006】
さらにまた、胸腺欠損C57BL / 6 ヌードマウスをはじめとする数系統のマウスにおいて、LPS によるIgM リューマチ因子の誘導(非特許文献2)、LPS によるPWM 刺激末梢血リンパ球の培養によるIgM およびIgG の産生増強(非特許文献3)が報告されている。ルテオリンは、LPS 誘導の炎症促進性分子の発現を阻害し、マクロファージにおけるLPS による刺激経路を阻害することが報告されている(非特許文献4)。
【特許文献1】特公昭46−38548 号公報(特許第645378号)[対応米国特許第3787591 号、英国特許第1358052 号]
【特許文献2】特開平4-74128 号公報(特許第2603360)
【非特許文献1】第21回老化促進モデルマウス(SAM)研究協議会抄録集第54頁(平成18年6月28日老化促進モデルマウス(SAM)研究協議会発行)
【非特許文献2】Izui,S., Eisenberg,R.A., Dixon,F.J.:J.Immunol., 122,2096-2102(1979)
【非特許文献3】Anderson,S.J., Lawton, A.R.:Clin. lmmunol.Immunopathol.,44, 259-271(1987)
【非特許文献4】・agorari,A., Roussos,C., Papapetropoulos,A.:British J.Pharmacol.:136,1058-1064(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、経口投与により動物の免疫機能に効果を与える医薬品または機能性食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、非特許文献1に記載された発明を詳細に検討した結果、大麦若葉エキスがLPS 誘導IgM 産生を増強することを見出した。
【0009】
すなわち、本発明のLPS 誘導IgM 産生増強剤は、麦類の成熟期前の緑葉の搾汁成分を有効成分とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のLPS 誘導IgM 産生増強剤は、経口投与により動物の免疫機能に効果を与える医薬品または機能性食品として有用なものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明のLPS 誘導IgM 産生増強剤における有効成分は、麦類の成熟期前の緑葉の搾汁成分であって、例えば、前記特許文献1に記載の方法に従って得ることができる。麦類の成熟期前の緑葉、好ましくは分ケツ開始期から穂揃期までの麦類、例えば、大麦、裸麦、えん麦、更にはハト麦の緑葉(茎及び葉の総称である)を、好ましくは機械的手段で、不当な熱変性を与えることなしに搾汁し、粗大固形分を除去して得られた青汁を本発明の搾汁成分として使用することが可能である。好ましくは得られた青汁を更に遠心分離した後、上清液を採取し、必要に応じてこれを除菌濾過処理して得られる液体成分を本発明の搾汁成分としてそのまま使用することができる。なお、上記搾汁に先立って、緑葉を次亜塩素酸ソーダの如き殺菌剤で殺菌処理してから搾汁処理することもできる。さらに、得られた青汁をpH5 〜9 程度に調節し、噴霧乾燥、凍結乾燥等の実質的な熱変成を与えない手段で粉末化した青汁粉末も本発明に適合するものである。
【0013】
本発明において有効成分として使用する「麦類成熟期前の緑葉の搾汁成分」は、麦類の成熟期前の緑葉を上記の如くして搾汁して得られる青汁、及びこの青汁を以上に述べた如くさらに処理して得られるLPS 誘導IgM 産生作用をもつすべての処理成分をも包含する意味で用いるものである。
【0014】
本発明のLPS 誘導IgM 産生増強剤は、所望により、各種の添加剤を配合されていてもよく、またその剤型も種々の剤型であることができる。
【0015】
かかる添加剤としては、凍結乾燥もしくは噴霧乾燥に際して必用な添加物質のほかに、所定の剤型を形成するための調剤用添加物質をあげることができる。これらの添加物質としては、例えばアスコルビン酸、ビオチン、パントテン酸カルシウム、カロテン、塩化コリン、ナイアシン、塩化ピリドキシン、リボフラビン、パントテン酸ナトリウム、チアミン塩酸塩、トコフェロール、ビタミンA 、ビタミンB12 、ビタミンD12 等のビタミン類;メタリン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム(第1 、第2 、第3 塩)、ピロリン酸ナトリウム、三リン酸ナトリウム等;ソルビン酸カルシウム、安息香酸、パラオキシ安息香酸メチル、安息香酸ナトリウム等の保存料;アラビヤガム、トラガント、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、マンニット、ソルビトール、乳糖、可溶性澱粉、アミノ酸類、ブドウ糖、果糖、ショ糖、ハチミツ、脂肪酸エステル等をあげることができる。
【0016】
本発明のLPS 誘導IgM 産生増強剤は経口または非経口投与することができ、それぞれの投与経路に適した任意の剤型に製剤化することができ、例えば、散剤、顆粒、ペレット、若しくは錠剤、コーティング剤、カプセル剤、液剤、シロップ剤等の経口投与に適した剤型にすることができる。
【0017】
本発明のLPS 誘導IgM 産生剤の経口投与量は、対象とする抗原の種類、患者の症状の軽量、性別、年齢、体重、医師の判断などに応じて広い範囲で考えることができるが、一応の目安として一般に、10mg〜3000mg/kg体重/日、好ましくは、50mg〜1000mg/kg体重/日の範囲内を例示することができる。上記投与量は1 日1 回または数回に分けて投与することができる。経口投与する場合には、本発明のLPS 誘導IgM 産生増強剤は以下に述べるとおり実質的に無毒性で且つ副作用を伴わないので、上記範囲を越えて大量投与することもできる。
【0018】
本発明によるLPS 誘導IgM 産生増強剤の有効成分である麦類の成熟期前緑葉の搾汁成分、例えば大麦若葉を搾汁して得られた青汁粉末の急性毒性LD50値は、12,000mg/kg (経口、マウス)と実質的に無毒性であり、1,000mg/kg連続投与(経口、マウス)の亜急性毒性試験の結果からも、毒性及び副作用は実質的に認められず、本発明の麦類緑葉の搾汁成分は、実用性ある免疫調節作用と実質的に無毒性で大量投与可能であることとの両者を兼備した特異な免疫調節剤となることが分った。
【0019】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1](LPS 産生IgM 産生増強剤の調製)
成熟期前の大麦若葉(茎および葉を総称する部分)の搾汁液1000mlを噴霧乾燥して30g の搾汁液粉末を調製した。
【0020】
[実施例2](大麦若葉青汁粉末のC3H /HeSIc 系マウスへの経口投与による脾臓細胞のLPS 誘導IgM 産生増大に関する実験)
本実施例においては、C3H / HeSIc 系雌性マウス(3ヶ月齢投与群(1) …4匹、3 ヶ月齢投与群(2) …5匹、22ヶ月齢投与群(3) …4匹)に蒸留水0 .5ml を、同マウス((1)…5匹、(2) …5匹、(3) …5匹)に大麦若葉青汁粉末5mg の0 .5ml 蒸留水懸濁液を、同マウス((1)…6匹、(2) …4匹、(3) …4匹)に大麦若葉青汁粉末25mgの0 .5ml 蒸留水懸濁液を、それぞれゾンデ針を用いて隔日で4 週間経口投与した。各マウスから個体ごとに脾臓細胞を得て、5 %FCS (Flow Laboratories,North Ryde,Australia )、2mM Gln 、5 ×10-5M2 -メルカプトエタノールを含むRPMI1640粉末培地(日水製薬、東京)5.1gを再蒸留水500ml に溶かした培養液に懸濁して、24- Well(Falcon 353047,Becton Dickinson and Company,Franklin Lakes,New Jersey, U.S.A.)のプレートの各wellに個体ごとに1.0 ×106 cellを分注した。個体ごとに、培養にLPS を添加しない系、LPS を0 .01μg / mlの濃度に添加する系、LPS を 5μg / mlの濃度に添加する系を構成し、各wellの培養液量を2ml に調節して、37℃、5 %CO2 の条件においてCO2 インキュベーターで7 日間培養し、IgM 抗体産生反応を誘発した。
培養後、各wellの培養上清中に含まれるIgM 抗体の濃度を、以下に示す酵素標識免疫吸着法(ELISA 法)により測定して、脾臓細胞の抗体産生機能を評価した。
【0021】
[実施例3](酵素標識免疫吸着法(ELISA 法)による細胞培養上清中のIgM 抗体濃度の測定)
本実施例においては、96- Well plate (Falcon 353915,Becton Dickinson and Company,Franklin Lakes,New Jersey, U.S.A.)に、コーティング緩衝液で2000倍に希釈した Goat anti-mouse IgM(m chain )抗体(Cappel,Aurora,Ohio,U.S.A.)を100 μl/ well 加え、4 ℃で一晩置き、抗体を吸着させ固相化した。翌日、PBS-Tween で各wellを3 回ずつ洗浄した後、牛血清アルブミン(BSA :ナカライテスク)を0 .5 %の濃度に溶解したPBS を各wellに100 μl/ well ずつ加え、固相をブロックした。約1 時間後、PBS - Tween で各wellを3 回ずつ洗浄し、BSA を0 .05%の濃度に溶解したPBS によりサンプルの培養上清を適当な濃度から3 倍希釈して、それぞれ100 μlずつ各wellに加えた。対照として、BSA を0 .05%の濃度に溶解したPBS を用いて、マウスIgM ミエローマ蛋白(Zymed Laboratories,San Francisco ,California,U.S.A.)をそれぞれ1000倍から2 倍希釈して、100 μlずつ各wellに加えた。約1 時間半室温で反応させた後、PBS-Tween で各wellを8 回ずつ洗浄し、アルカリフォスファターゼ(Ap)標識したGoat anti IgM 抗体(Zymed Laboratories,San Francisco, California, U.S.A. )をPBS-Tween で9000倍に希釈して 100μlずつ各wellに加えた。約1 時間半室温で反応させた後、PBS-Tween で各wellを8 回ずつ洗浄し、ジエタノールアミン緩衝液で1mg / mlに溶解した p- ニトロフェニールリン酸ニナトリウム(和光純薬)溶液を、各wellに100 μlずつ加えて発色させた。その後、マイクロプレートリーダーで各wellの415nm と450nm における吸光度の差を求めて、IgM ミエローマ蛋白による検量線により、各培養上清中の総IgM 抗体濃度を比色定量した。結果を図1〜3に示した。
【0022】
図1〜3に示した通り、本発明のLPS 産生IgM 産生増強剤の経口投与は、C3H / HeSIc 系雌性マウスの若齢から高齢個体における脾臓細胞の抗体産生機能を有意に亢進させて免疫機能を高める結果となった。なお、亢進効果は有意であるが顕著ではなく、緩やかなものであった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のLPS 産生IgM 産生増強剤の経口投与によるC3H / HeSIc 系雌性マウス(3 ヶ月齢) 投与群(1)の脾臓細胞のLPS 産生IgM 産生能の平均値を示すグラフである。
【図2】本発明のLPS 産生IgM 産生増強剤の経口投与によるC3H / HeSIc 系雌性マウス(3 ヶ月齢)投与群(2)の脾臓細胞のLPS 産生IgM 産生能の平均値を示すグラフである。
【図3】本発明のLPS 産生IgM 産生増強剤の経口投与によるC3H / HeSIc 系雌性マウス(22ヶ月齢)投与群(3)の脾臓細胞のLPS 産生IgM 産生能の平均値を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫増強剤、さらに詳しくはLPS 誘導IgM 産生増強剤に関する。
【背景技術】
【0002】
麦類の成熟期前の緑葉の青汁成分が多種多様な有用天然成分を豊富に含有することに基づいて、この青汁成分をもとの青汁中の状態を保ったまま安定な粉末として取得することが開示され、麦類緑葉粉末の製法が提案された(特許文献1)。
【0003】
この特許によれば、麦類の成熟期前の緑葉の機械的破砕物から粗大固形分を分離除去して得られる青汁のpH6 〜9 に中和処理したものを噴霧乾燥または凍結乾燥することによって、麦類若葉の青汁成分の安定な粉末が得られる。そして噂好品を包含する食品類、保健薬・化粧品を包含する医薬品類などの広い分野で有用であることを記載し、保健医薬の一例として青汁粉末、防風痛聖散料エキス末、デンプン、乳糖、タルク、ステアリン酸マグネシウム、エチルアルコールを用いて錠剤を製造した例を示し、この剤は動脈硬化予防及び治療用として服用できることを開示している。
【0004】
上記青汁粉末の生理活性に着目し研究を行っている過程で、麦類の成熟期前の緑葉の搾汁成分を有効成分として含有することを特徴とする「免疫増強剤」(特許文献2)が開示された。しかしながら、この特許文献2においては、BALB/cAcl系マウスまたはJC1:ICR 系マウスの脾臓細胞を用いたin vitroの実験結果が開示されているに過ぎず、動物個体に経口投与して免疫機能の調節が可能であるかについては何ら言及しておらず、医薬品または機能性食品としての効果には疑問が持たれるところである。
【0005】
さらに、血糖低下作用・抗炎症作用・抗潰瘍作用・抗高コレステロール作用・抗血栓作用および血管保護作用等を有する大麦若葉の搾汁粉末の経口摂取についての生理活性をさらに詳細に検討した結果、大麦若葉の搾汁粉末の経口摂取によるマウスの腹腔細胞の一酸化窒素(NO)の産生機能を測定することにより、免疫機能の調節作用が確認されている(非特許文献1)。本非特許文献1においては、C3H / HeSIc 系マウス3 ヶ月齢に、蒸留水0 .5ml または大麦若葉青汁粉末3mg を0 .5ml の蒸留水に懸濁して、雄性マウスには1 ヶ月間または雌性マウスには2 ヶ月間に亘り毎日、ゾンデ針を用いて経口投与している。各マウスから個体ごとに腹腔細胞を得て、96−Well plateの各wellに2 ×105cells/well 分注した。CO2 インキュベーター内で2 時間,37℃で培養後、各wellを37℃のMEM 培養液で3 回洗浄し、凍った付着性細胞を腹腔マクロファージとした。各wellの附着性腹腔細胞を、5 %FCS を含むRPMI1640培地にマクロファージ活性化物質としてLPS とINF-γを、所定の組合せで含む培養液により、5 %CO2 インキュベーター内で48時間培養し、C3H / HeSIc 系マウスの3 ヶ月齢から1 または2 ヶ月間、大麦若葉青汁粉末3mg を毎日投与した投与群においては、C3H / HeSIc 系マウスでは、腹腔細胞のNO産生機能が有意に亢進することが開示されている。
【0006】
さらにまた、胸腺欠損C57BL / 6 ヌードマウスをはじめとする数系統のマウスにおいて、LPS によるIgM リューマチ因子の誘導(非特許文献2)、LPS によるPWM 刺激末梢血リンパ球の培養によるIgM およびIgG の産生増強(非特許文献3)が報告されている。ルテオリンは、LPS 誘導の炎症促進性分子の発現を阻害し、マクロファージにおけるLPS による刺激経路を阻害することが報告されている(非特許文献4)。
【特許文献1】特公昭46−38548 号公報(特許第645378号)[対応米国特許第3787591 号、英国特許第1358052 号]
【特許文献2】特開平4-74128 号公報(特許第2603360)
【非特許文献1】第21回老化促進モデルマウス(SAM)研究協議会抄録集第54頁(平成18年6月28日老化促進モデルマウス(SAM)研究協議会発行)
【非特許文献2】Izui,S., Eisenberg,R.A., Dixon,F.J.:J.Immunol., 122,2096-2102(1979)
【非特許文献3】Anderson,S.J., Lawton, A.R.:Clin. lmmunol.Immunopathol.,44, 259-271(1987)
【非特許文献4】・agorari,A., Roussos,C., Papapetropoulos,A.:British J.Pharmacol.:136,1058-1064(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、経口投与により動物の免疫機能に効果を与える医薬品または機能性食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、非特許文献1に記載された発明を詳細に検討した結果、大麦若葉エキスがLPS 誘導IgM 産生を増強することを見出した。
【0009】
すなわち、本発明のLPS 誘導IgM 産生増強剤は、麦類の成熟期前の緑葉の搾汁成分を有効成分とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のLPS 誘導IgM 産生増強剤は、経口投与により動物の免疫機能に効果を与える医薬品または機能性食品として有用なものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明のLPS 誘導IgM 産生増強剤における有効成分は、麦類の成熟期前の緑葉の搾汁成分であって、例えば、前記特許文献1に記載の方法に従って得ることができる。麦類の成熟期前の緑葉、好ましくは分ケツ開始期から穂揃期までの麦類、例えば、大麦、裸麦、えん麦、更にはハト麦の緑葉(茎及び葉の総称である)を、好ましくは機械的手段で、不当な熱変性を与えることなしに搾汁し、粗大固形分を除去して得られた青汁を本発明の搾汁成分として使用することが可能である。好ましくは得られた青汁を更に遠心分離した後、上清液を採取し、必要に応じてこれを除菌濾過処理して得られる液体成分を本発明の搾汁成分としてそのまま使用することができる。なお、上記搾汁に先立って、緑葉を次亜塩素酸ソーダの如き殺菌剤で殺菌処理してから搾汁処理することもできる。さらに、得られた青汁をpH5 〜9 程度に調節し、噴霧乾燥、凍結乾燥等の実質的な熱変成を与えない手段で粉末化した青汁粉末も本発明に適合するものである。
【0013】
本発明において有効成分として使用する「麦類成熟期前の緑葉の搾汁成分」は、麦類の成熟期前の緑葉を上記の如くして搾汁して得られる青汁、及びこの青汁を以上に述べた如くさらに処理して得られるLPS 誘導IgM 産生作用をもつすべての処理成分をも包含する意味で用いるものである。
【0014】
本発明のLPS 誘導IgM 産生増強剤は、所望により、各種の添加剤を配合されていてもよく、またその剤型も種々の剤型であることができる。
【0015】
かかる添加剤としては、凍結乾燥もしくは噴霧乾燥に際して必用な添加物質のほかに、所定の剤型を形成するための調剤用添加物質をあげることができる。これらの添加物質としては、例えばアスコルビン酸、ビオチン、パントテン酸カルシウム、カロテン、塩化コリン、ナイアシン、塩化ピリドキシン、リボフラビン、パントテン酸ナトリウム、チアミン塩酸塩、トコフェロール、ビタミンA 、ビタミンB12 、ビタミンD12 等のビタミン類;メタリン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム(第1 、第2 、第3 塩)、ピロリン酸ナトリウム、三リン酸ナトリウム等;ソルビン酸カルシウム、安息香酸、パラオキシ安息香酸メチル、安息香酸ナトリウム等の保存料;アラビヤガム、トラガント、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、マンニット、ソルビトール、乳糖、可溶性澱粉、アミノ酸類、ブドウ糖、果糖、ショ糖、ハチミツ、脂肪酸エステル等をあげることができる。
【0016】
本発明のLPS 誘導IgM 産生増強剤は経口または非経口投与することができ、それぞれの投与経路に適した任意の剤型に製剤化することができ、例えば、散剤、顆粒、ペレット、若しくは錠剤、コーティング剤、カプセル剤、液剤、シロップ剤等の経口投与に適した剤型にすることができる。
【0017】
本発明のLPS 誘導IgM 産生剤の経口投与量は、対象とする抗原の種類、患者の症状の軽量、性別、年齢、体重、医師の判断などに応じて広い範囲で考えることができるが、一応の目安として一般に、10mg〜3000mg/kg体重/日、好ましくは、50mg〜1000mg/kg体重/日の範囲内を例示することができる。上記投与量は1 日1 回または数回に分けて投与することができる。経口投与する場合には、本発明のLPS 誘導IgM 産生増強剤は以下に述べるとおり実質的に無毒性で且つ副作用を伴わないので、上記範囲を越えて大量投与することもできる。
【0018】
本発明によるLPS 誘導IgM 産生増強剤の有効成分である麦類の成熟期前緑葉の搾汁成分、例えば大麦若葉を搾汁して得られた青汁粉末の急性毒性LD50値は、12,000mg/kg (経口、マウス)と実質的に無毒性であり、1,000mg/kg連続投与(経口、マウス)の亜急性毒性試験の結果からも、毒性及び副作用は実質的に認められず、本発明の麦類緑葉の搾汁成分は、実用性ある免疫調節作用と実質的に無毒性で大量投与可能であることとの両者を兼備した特異な免疫調節剤となることが分った。
【0019】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1](LPS 産生IgM 産生増強剤の調製)
成熟期前の大麦若葉(茎および葉を総称する部分)の搾汁液1000mlを噴霧乾燥して30g の搾汁液粉末を調製した。
【0020】
[実施例2](大麦若葉青汁粉末のC3H /HeSIc 系マウスへの経口投与による脾臓細胞のLPS 誘導IgM 産生増大に関する実験)
本実施例においては、C3H / HeSIc 系雌性マウス(3ヶ月齢投与群(1) …4匹、3 ヶ月齢投与群(2) …5匹、22ヶ月齢投与群(3) …4匹)に蒸留水0 .5ml を、同マウス((1)…5匹、(2) …5匹、(3) …5匹)に大麦若葉青汁粉末5mg の0 .5ml 蒸留水懸濁液を、同マウス((1)…6匹、(2) …4匹、(3) …4匹)に大麦若葉青汁粉末25mgの0 .5ml 蒸留水懸濁液を、それぞれゾンデ針を用いて隔日で4 週間経口投与した。各マウスから個体ごとに脾臓細胞を得て、5 %FCS (Flow Laboratories,North Ryde,Australia )、2mM Gln 、5 ×10-5M2 -メルカプトエタノールを含むRPMI1640粉末培地(日水製薬、東京)5.1gを再蒸留水500ml に溶かした培養液に懸濁して、24- Well(Falcon 353047,Becton Dickinson and Company,Franklin Lakes,New Jersey, U.S.A.)のプレートの各wellに個体ごとに1.0 ×106 cellを分注した。個体ごとに、培養にLPS を添加しない系、LPS を0 .01μg / mlの濃度に添加する系、LPS を 5μg / mlの濃度に添加する系を構成し、各wellの培養液量を2ml に調節して、37℃、5 %CO2 の条件においてCO2 インキュベーターで7 日間培養し、IgM 抗体産生反応を誘発した。
培養後、各wellの培養上清中に含まれるIgM 抗体の濃度を、以下に示す酵素標識免疫吸着法(ELISA 法)により測定して、脾臓細胞の抗体産生機能を評価した。
【0021】
[実施例3](酵素標識免疫吸着法(ELISA 法)による細胞培養上清中のIgM 抗体濃度の測定)
本実施例においては、96- Well plate (Falcon 353915,Becton Dickinson and Company,Franklin Lakes,New Jersey, U.S.A.)に、コーティング緩衝液で2000倍に希釈した Goat anti-mouse IgM(m chain )抗体(Cappel,Aurora,Ohio,U.S.A.)を100 μl/ well 加え、4 ℃で一晩置き、抗体を吸着させ固相化した。翌日、PBS-Tween で各wellを3 回ずつ洗浄した後、牛血清アルブミン(BSA :ナカライテスク)を0 .5 %の濃度に溶解したPBS を各wellに100 μl/ well ずつ加え、固相をブロックした。約1 時間後、PBS - Tween で各wellを3 回ずつ洗浄し、BSA を0 .05%の濃度に溶解したPBS によりサンプルの培養上清を適当な濃度から3 倍希釈して、それぞれ100 μlずつ各wellに加えた。対照として、BSA を0 .05%の濃度に溶解したPBS を用いて、マウスIgM ミエローマ蛋白(Zymed Laboratories,San Francisco ,California,U.S.A.)をそれぞれ1000倍から2 倍希釈して、100 μlずつ各wellに加えた。約1 時間半室温で反応させた後、PBS-Tween で各wellを8 回ずつ洗浄し、アルカリフォスファターゼ(Ap)標識したGoat anti IgM 抗体(Zymed Laboratories,San Francisco, California, U.S.A. )をPBS-Tween で9000倍に希釈して 100μlずつ各wellに加えた。約1 時間半室温で反応させた後、PBS-Tween で各wellを8 回ずつ洗浄し、ジエタノールアミン緩衝液で1mg / mlに溶解した p- ニトロフェニールリン酸ニナトリウム(和光純薬)溶液を、各wellに100 μlずつ加えて発色させた。その後、マイクロプレートリーダーで各wellの415nm と450nm における吸光度の差を求めて、IgM ミエローマ蛋白による検量線により、各培養上清中の総IgM 抗体濃度を比色定量した。結果を図1〜3に示した。
【0022】
図1〜3に示した通り、本発明のLPS 産生IgM 産生増強剤の経口投与は、C3H / HeSIc 系雌性マウスの若齢から高齢個体における脾臓細胞の抗体産生機能を有意に亢進させて免疫機能を高める結果となった。なお、亢進効果は有意であるが顕著ではなく、緩やかなものであった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のLPS 産生IgM 産生増強剤の経口投与によるC3H / HeSIc 系雌性マウス(3 ヶ月齢) 投与群(1)の脾臓細胞のLPS 産生IgM 産生能の平均値を示すグラフである。
【図2】本発明のLPS 産生IgM 産生増強剤の経口投与によるC3H / HeSIc 系雌性マウス(3 ヶ月齢)投与群(2)の脾臓細胞のLPS 産生IgM 産生能の平均値を示すグラフである。
【図3】本発明のLPS 産生IgM 産生増強剤の経口投与によるC3H / HeSIc 系雌性マウス(22ヶ月齢)投与群(3)の脾臓細胞のLPS 産生IgM 産生能の平均値を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
麦類の成熟期前の緑葉の搾汁成分を有効成分とすることを特徴とするLPS 誘導IgM 産生増強剤。
【請求項1】
麦類の成熟期前の緑葉の搾汁成分を有効成分とすることを特徴とするLPS 誘導IgM 産生増強剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2009−143851(P2009−143851A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323144(P2007−323144)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 老化促進モデルマウス(SAM)研究協議会 刊行物名 第22回老化促進モデルマウス(SAM)研究協議会 抄録集 該当頁 37頁(発表番号14、第二日 IV.病態制御 研究報告) 発行年月日 平成19年6月15日
【出願人】(501028574)日本薬品開発株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 老化促進モデルマウス(SAM)研究協議会 刊行物名 第22回老化促進モデルマウス(SAM)研究協議会 抄録集 該当頁 37頁(発表番号14、第二日 IV.病態制御 研究報告) 発行年月日 平成19年6月15日
【出願人】(501028574)日本薬品開発株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
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