説明

Liベースの電池に使用するための室温単相Li挿入/抽出材料

本発明はLiベースの電池の製造用の活性材料に関する。式Li(M,M’)PO、特にLiFePO(0≦x≦1)を有する結晶性ナノメータ粉末状材料が開示されており、該材料はLiベースの電池において正極材料として使用される際に室温において単相Li挿入/抽出機構を示す。目下のLiFePOと比較して、新規の材料は、円滑な、勾配のある充電/放電の電圧曲線をもたらし、電池の充電状態の監視を大幅に簡略化している。Feの混合原子価状態の共存(即ち、FeIIIVFeII)は、従来技術の2相材料と比較して、室温の単相LiFePO材料における電子伝導性を向上させると考えられる。これは、ナノメータサイズの粒子及びそれらの鋭い単峰性のサイズ分布と共に、電池において示された例外的な高速の能力に寄与している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は結晶性ナノメータ材料に関し、特にLiFePO(0≦x≦1)粉末に関し、これはLiベースの電池において陽極材料として使用された時に室温(25℃)において異常な単相のLi挿入/抽出機構を示す。
【0002】
数年後にPadhiらによる最初の論文(J. Electrochem. Soc., 144, 1188 (1997))が刊行され、リン−カンラン石LiMPO(MはFe、Mn、Co・・・である)は目下、充電可能なリチウム電池用の正極材料として可能な候補であると判明している。例えば、炭素被覆による高度な加工の結果、LiイオンはLiFePOの外に抜き出されて、約160mAh/gの室温容量をもたらし、即ち、これは170mAh/gの理論容量に近い。室温のLi挿入/抽出については、LiFePOとFePOの間の2相反応において、Li/Liに対して3.45Vで進めるために、例えば、WO2004/001881号から公知である。
【0003】
Striebelら(J. Electrochem. Soc., 152, A664 (2005))によって提起されたように、種々の炭素被覆されたLiFePO化合物の試験を編纂する間、たとえマトリックス伝導率が被覆によって改善されても、今までのところ電池の開発者は一次粒度が50〜100nmの存在しない化合物を歓迎しており、概して、より良好な出力効率を出すために、粒度分布を最小にすることを試みるべきであることに留意されたい。
【0004】
WO2004/056702号及びWO2007/00251号は、平均粒度を140〜150nmの範囲に減少させる技術を教示している。それにもかかわらず、粒度をこれらの値よりも下に減少させることによって高出力の性能の更なる向上を可能にすることが当業者に認められている。
【0005】
種々の研究者、例えば、Yamadaら(Electrochem. Solid State Let., 8, A409 (2005))及びUS2007/0031732号は、粒度の低減は十分に記載された2相のLi挿入/抽出挙動による幾らかの偏差を許容することを示した。実際に、小さい粒度を示す材料は、室温で幾らかの制限された固溶体(即ち、単相)領域を示し、これは即ちLi−不足のLiFePO(x<0.15)及びLi−過剰のLiFePO(y>0.85)のものである。x及びyの制限(2相領域の境界を表す)は、粒度と特定の合成条件の両方に依存することが認識されたが、極めて広い単相領域を有する材料は決して得られなかった。
【0006】
近年、約350℃の温度における完全な単相LiFePO(0≦x≦1)固溶体が発見され、Li−イオン電池のカソード材料としてLiFePOの作用における役割を評価することに拍車をかけて大きな関心が寄せられている。それにもかかわらず、xが評価するものが何であっても、固溶体が室温で安定化され得ないことを明確に示しており、従って標準の電池材料としての実際的関心は限定されている(Delacourtら, Nature Mat., 4, 254 (2005);Doddら, Electrochem. Solid State Let., 9, A151 (2006))。
【0007】
単相及び2相の挿入/抽出機構の間の最も明確な違いは、単相系の平衡電位(EMF)が組成依存性であるが、2相系の平衡電位は全組成範囲にわたり一定であるということである。従って単相の電極は、充電又は放電サイクルの間、勾配のある電圧曲線を示す:これは平坦な電圧曲線を示す系と比較して削減されたコストで充電状態の監視が可能であるため、電池の製造業者に大いに歓迎されている。
【0008】
またここで、2相系LiFePO/FePOにおいて、両端の部材は非常に限定された電子伝導性を示し、FePO(Fe(III))又はLiFePO(Fe(II))のいずれかにおいて混在の原子価状態が存在しないことが認められている(Delacourtら, Electrochem. Soc, 152, A913 (2005))。US2007/0031732号においてChiangらによって強調されたように、デインターカレーション範囲内の全ての点において両方のFe種のより大きな母集団は、より高い電子伝導性を材料に与え得る。良好な材料伝導性は高ドレイン用途に対して特に有利である。
【0009】
強化された材料伝導性に対する同じ要求は、未公開の欧州特許出願第06292049号及び第06292048号においてそれぞれ報告されているように、LiMnPO及びLi(Fe,M)PO(MはCo及び/又はMnである)などのLi電池に対して類似の活性材料に適合する。
【0010】
更に、US2006/0035150A1号において、被覆されたLiFePOの製造のために、Li、Fe及びリン酸塩の源をポリカルボン酸及び多価アルコールと一緒に水溶液中に溶解させる。水の蒸発時に、ポリエステル化が起こる一方で、Li、Fe及びリン酸塩を含有する混合沈殿物が形成される。次に樹脂封入混合物が還元雰囲気において700℃で熱処理される。
【0011】
WO2007/000251A1号において、直接的な沈殿法は以下の工程:
− 6〜10の間のpHを有する水ベース混合物を提供し、水混和性沸点上昇添加剤、並びに前駆体成分としてLi(I)、Fe(II)及びP(V)を含有する工程;
− 上記水ベース混合物を大気圧でその沸点以下に加熱し、それによって結晶性LiFePO粉末を沈殿させる工程を含む、結晶性LiFePO粉末の製造について記載されている。極めて微細な50〜200nmの粒度が狭い分布で得られる。
【0012】
US2004/0175614A1号において、LiFePOの製造について以下の工程:
− Li1+、Fe3+及びPO3−の等モル水溶液を提供する工程、
− 溶液から水を蒸発させ、それによって固体混合物を生成させる工程、
− 500℃を下回る温度で固体混合物を分解して純粋且つ均質なLi及びFeリン酸塩前駆体を形成する工程、及び
− 還元雰囲気において800℃未満の温度で前駆体を焼きなまし、それによってLiFePO粉末を形成する工程
を含む、方法が開示されている。得られた粉末は1μm未満の粒度を有する。
【0013】
Delacourtら, Solid State Ionics 173 (2004) 113-118において、Li電池のリン酸塩相の純粋な粉末の沈殿を制御する熱力学及び動力学が記載されている。最適化された電極は、FeIII−含有水溶液の蒸発によって製造されたLiFePOの表面において化学的導電性炭素被覆を介して合成された。
【0014】
開示された方法は、従来の材料の伝導性よりも高い伝導性を有する材料を提供し、且つ充電状態の監視の問題を解決することを目的とする。
【0015】
この目的を達成するために、活性成分としてLi(M,M’)PO(式中、0≦x≦1、MはMn、Fe、Co、Ni、Cuからなる群から選択される1つ以上のカチオンであり、M’はNa、Mg、Ca、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Zn、B、Al、Ga、Ge、Snからなる群から選択される任意の置換カチオンである)を含む粉末状Li挿入/抽出材料であって、上記材料は、0.2未満から0.8を上回るまで変化するxに対して、Li挿入/抽出の間25℃において熱力学的に安定な単相材料であることを特徴とする、粉末状Li挿入/抽出材料が開示される。上記の式において、Mは有利にはFeであり;更に、M’に対するMのモル比が5を上回り、有利には8を上回ることが教示される。MがFe及びM/M’>5である場合、本発明の材料は、典型的には291Åより低い、有利には290Å以下、更に有利には289Å以下の結晶セル体積によって特徴付けられる。この体積はPmna又はPmnb空間群を用いるXRD測定から導き出される。
【0016】
本発明の材料は、50nm未満の、有利には10〜50nmの間のd50の有利な粒度分布を有する粉末である。300nm未満、有利には200nm未満のd99が教示される。更に、比(d90−d10)/d50が1.5未満、有利には1.2未満である単峰性の粒度分布が教示される。
【0017】
本発明の別の態様は上述のLi(M,M’)PO材料の合成のプロセスに関する。本方法は次の工程:
− 6〜10の間のpHを有し、二極性(即ち、水混和性)非プロトン性添加剤、並びにLi(I)及びP(V)として導入されたLi及びP前駆体を含有する、第1の水ベース混合物を提供する工程;
− M(II)としてのM前駆体、及びM’前駆体を上記第1の水ベース混合物に添加し、それによって第2の水ベース混合物を得る工程;
− 上記第2の水ベース混合物を大気圧においてその沸点以下の温度に加熱し、それによって粉末状Li挿入/抽出材料を沈殿させる工程
を含む。
【0018】
有利な実施態様において、Li(I)をLiOH.HOとして導入し、P(V)をHPOとして導入する。LiOH.HO及びHPOの固有比を用いることによって第1の混合物のpHを調整することが望ましい。この方法はまた合成Li(M,M’)POを含み、その際、M=Feであり、M’が不在であり、且つ第1の水ベース混合物のpHが6.5〜8の間、有利には6.5〜7.5の間である。
【0019】
二極性非プロトン性添加剤は、有利には、第2の水ベース混合物の大気の沸点を100〜150℃の間、有利には105〜120℃の間に上昇させるように選択且つ添加される。ジメチルスルホキシドが有利には添加剤である。第1の水ベース混合物は5〜50モル%の間、有利には10〜30モル%の間のジメチルスルホキシドを含有する。
【0020】
更に有利な実施態様において、沈殿している粉末状Li挿入/抽出材料は、650℃、有利には少なくとも300℃の温度において、非酸化条件下での加熱による熱後処理に供される。
【0021】
更に有利な実施態様において、熱後処理の前に、電子伝導性物質、又はその前駆体を、1種又は複数種の第1の水ベース混合物、第2の水ベース混合物、及び粉末のいずれかに添加する。電子伝導性物質は有利には炭素、特に伝導性炭素又は炭素繊維であってよく、電子伝導性物質の前駆体は炭素ベースの重合可能な構造であってよい。
【0022】
本発明の別の態様は、アノード、電解質及びカソードを含む、Liベースの二次電池に関し、上記カソードは上述の材料を含む。
【0023】
本発明の更に別の態様は、上述の材料を含む、Liベースの二次電池用の電極混合物に関する。
【0024】
第1の実施態様は、少なくとも80質量%の本発明の材料を含む、非水性液体電解質を有するLiベースの二次電池用の電極混合物であって、25℃で0.1Cの放電速度のLi/Liに対して2.5〜4.5Vの間でサイクルされるカソードにおいて活性成分として使用される際に、理論容量(約170mAh/g)の少なくとも75%の可逆的容量によって特徴付けられる、Liベースの二次電池用の電極混合物に関する。電極混合物中の添加剤(バインダー及び炭素)の量は20質量%未満、有利には10質量%未満に制限できる。これは、集電装置上に塗られている混合物がこのタイプの電池のために自己支持される必要がないためである。
【0025】
第2の実施態様は、少なくとも80質量%の本発明の材料を含む、非水性ゲル様ポリマー電解質を有するLiベースの二次電池用の電極混合物であって、25℃で0.1Cの放電速度のLi/Liに対して2.5〜4.5Vの間でサイクルされるカソードにおいて活性成分として使用される際に、理論容量の少なくとも75%の可逆的容量によって特徴付けられる、Liベースの二次電池用の電極混合物に関する。電極混合物中の添加剤の量は、この場合、20質量%程度である。これは、集電装置に積層されるシートの形態でロールされている混合物が、このタイプの電池の組み立ての間、自己支持される必要があるためである。
【0026】
第3の実施態様は、少なくとも70質量%の本発明の材料を含む、非水性乾燥ポリマー電解質を有するLiベースの二次電池用の電極混合物であって、25℃で0.1Cの放電速度のLi/Liに対して2.5〜4.5Vの間でサイクルされるカソードにおいて活性成分として使用される際に、理論容量の少なくとも75%の可逆的容量によって特徴付けられる、Liベースの二次電池用の電極混合物に関する。
【0027】
更なる実施態様は、活性成分としてナノメートルの粉末状Li(M,M’)PO(式中、0≦x≦1、MはMn、Fe、Co、Ni、Cuからなる群から選択される1つ以上のカチオンであり、M’はNa、Mg、Ca、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Zn、B、Al、Ga、Ge、Snからなる群から選択される任意の置換カチオンである)を含む電極を有するLiベースの二次電池であって、25℃での電池のEMFへの上記電極の寄与率が、0.2から0.8まで変化するxに対して、0.05Vを上回る充電状態で継続的に変化することを特徴とする、Liベースの二次電池に関する。上記の式において、Mは有利にはFeであり;更に、M’に対するMのモル比が5を上回り、更に有利には8を上回ることが教示される。MがFe及びM/M’>5である場合、上記ナノメートルの粉末状活性成分は、典型的には291Åより低い、有利には290Å以下、更に有利には289Å以下の結晶セル体積によって特徴付けられる。この体積はPnma又はPmnb空間群を用いるXRD測定から導き出される。
【0028】
「EMFを継続的に変化させる」とは、継続的に勾配のある充電/放電の電圧曲線を意味する。本発明によるこの勾配は、挿入/抽出Li当たり少なくとも5mV、有利には挿入/抽出Li当たり少なくとも15mVにのぼり、これは全ての充電/放電サイクルに沿う。
【0029】
上記ナノメータ粉末状活性成分は50nm未満、有利には10〜50nmのd50で有利な粒度分布を有する。300nm未満、有利には200nm未満のd99が教示される。更に、比(d90−d10)/d50が1.5未満、有利には1.2未満である単峰性の粒度分布が教示される。
【0030】
本発明の材料において、M及びM’は少なくとも部分的に互いに交換できると考えられるが、しかしながら、電気的中性の規則に関してLi(I)、M(II)、M’(I)〜(V)、及びP(V)を仮定していることに留意するべきである。
【0031】
10nmよりも微細な生成物は、電極を製造する間に加工性の問題をもたらし得るため、特に望ましくない。
【0032】
本発明の方法に従って、第1の水ベース混合物は、不純物としてのLiPOの沈殿を避けるために6〜10、有利には6〜8のpHを有する。
【0033】
沈殿物の核形成速度を上昇させる共溶媒として二極性添加剤が使用される。従って、室温の単相Li挿入/抽出LiFePO(0≦x≦1)ナノメートル粒子のサイズを小さくする。二極性、即ち、水と混和性であることに加えて、有用な共溶媒は非プロトン性でなければならず、即ち、水素イオンの放出に伴う解離がほんの少しであるか又は完全にないことを示す。エチレングリコールなどの錯化又はキレート化特性を示す共溶媒は、LiMPOの沈殿の速度を低下させ、従ってより大きな粒度をもたらすので好適であると思われない。好適な二極性非プロトン性溶媒は、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N−(C−C18−アルキル)ピロリドン、エチレングリコールジメチルエーテル、;脂肪族C−C−カルボン酸のC−C−アルキルエステル、C−C−ジアルキルエーテル、脂肪族C−C−カルボン酸のN,N−ジ−(C−C−アルキル)アミド、スルホラン、1,3−ジ−(C−C−アルキル)−2−イミダゾリジノン、N−(C−C−アルキル)カプロラクタム、N,N,N’,N’−テトラ−(C−C−アルキル)尿素、1,3−ジ−(C−C−アルキル)−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミドン、N,N,N’,N’−テトラ−(C−C−アルキル)スルファミド、4−ホルミルモルホリン、1−ホルミルピペリジン又は1−ホルミルピロリジン、特にN−(C−C18−アルキル)ピロリドン、脂肪族C−C−カルボン酸のN,N−ジ−(C−C−アルキル)アミド−、4−ホルミルモルホリン、1−ホルミルピロリジンの1−ホルミルピペリジン、有利にはN−メチルピロリドン(NMP)、N−オクチルピロリドン、N−ドデシルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ホルミルモルホリン、1−ホルミルピペリジン又は1−ホルミルピロリジン、特に有利にはN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド又はヘキサメチルホスホルアミドである。テトラアルキル尿素などの他の代替物もまた可能である。上述の二極性非プロトン性溶媒の混合物もまた使用してよい。有利な実施態様において、ジメチルスルホキシド(DMSO)を溶媒として使用する。
【0034】
新規な室温の単相挿入/抽出材料が、25℃を大きく下回る、例えば、10℃未満の温度において2相システムをもたらし得ることは、排除することができない。しかしながら、この相転移は可逆性でなければならない。従ってこの効果は最も実用的な環境において電池の動作にほんのわずかな影響を及ぼす。
【0035】
開示された方法は、微量のFe(III)を含有する初期の材料をもたらす。ナノメートルの粒度のために、Fe(III)の一部は材料の表面で化学量論による偏差から生じ得る。Fe(III)の存在もまた、第2の非晶相のためであり、結晶の表面又は粒状境界における、LiFePO(OH)又はFePO.nHOが最も可能性が高い。当業者であれば、還元性雰囲気下での加工によって又はヒドラジンもしくはSOなどの還元剤によってFe(III)を最小限にする。その上、初期の材料において予想されるLi欠損は、環境が必要なLiを与えることが可能である場合、電池の最初の完全な放電サイクルの間に補われる(これはおそらく多くの実用的な電池において事実であるため)。
【0036】
従来技術のLiFePO材料と比較して、本発明の材料の利点は:
− 簡易電位測定によって充電状態の直接的な監視を可能にする、勾配のある充電/放電曲線;
− 粒子内のLiイオン運搬のために運動制限を緩和し、電池の急速な充電/放電を可能にする、ナノメートル粒度;
− 電池内の電流分布を確実に均一にする、狭い粒度分布;これもまた、微細な粒子が粗い粒子よりも劣化する(最終的な粒子の変質及び使用時の電池容量のフェージングをもたらす現象)場合に、高い充電/放電速度において特に重要である;狭い粒度分布は電極の製造を更に容易にする;
− (1−x)FePO+xLiFePO(0≦x≦1)で表された、従来技術の2相材料と比較された室温の単相LiFePO材料の電子伝導性を上昇させると考えられる、Fe(即ち、Fe(III)/Fe(II))の混合原子価状態の共存
である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、勾配のある電圧曲線を示す、25℃及びC/20の速度における本発明の材料の定電流充電/放電曲線を表す。プロットは正規化された容量に応じた電池の電圧を示す;0%充電状態(SOC)は起動LiFePO材料に対応するが、100%は充電された脱リチウム化FePO材料に対応する。
【図2】図2は、小さい粒度及びシャープな粒度分布を示す、実施例の生成物のFEG−SEM画像を表す。
【図3】図3は、約45nmのd50値を示すが、(d90−d10)/d50として定義された相対的なスパンが約1.2(d10=25nm、d90=79nm)である、実施例の生成物についての容量粒度分布及び累積分布(%対nm)を表す。
【図4】図4は、本発明の材料について異なる充電状態で且つ25℃で記録されたインサイチュXRDを表す;0%充電状態(SOC)は起動LiFePO材料に対応するが、100%は充電された脱リチウム化FePO材料に対応する。
【図5】図5は異なる充電状態で且つ25℃での測定において記録されたインサイチュXRDから計算されたLiFePO(0≦x≦1)の電池パラメータの組成物についての変遷を表す。これは明らかに、LiFePOとFePOの間の連続固溶体を示しており、リチウム濃度が1から0まで変化するので電池パラメータの制限値間の連続変化を伴う。
【図6】図6は、定電圧曲線を示す、25℃及びC/20の速度における従来技術の材料の定電流充電/放電曲線を表す。プロットは正規化された容量に応じた電池の電圧を示す;0%充電状態(SOC)は起動LiFePO材料に対応するが、100%は充電された脱リチウム化FePO材料に対応する。
【図7】図7は、従来技術の生成物について異なる充電状態で記録されたインサイチュXRDを表す;0%充電状態(SOC)は起動LiFePO材料に対応するが、100%は充電された脱リチウム化FePO材料に対応する。
【図8】図8は、異なる充電状態で記録されたインサイチュXRDから計算された(1−x)FePO+xLiFePO(0≦x≦1)の電池パラメータの組成物についての変遷を表す。これは明らかに慣用の二相系を示しており、各端部材の割合は、材料中のリチウム濃度に従って変化する。
【0038】
実施例
本発明は以下の実施例において更に例示される。
【0039】
第1工程において、DMSOを0.1MのHPO溶液に添加し、撹拌しながらHO中で希釈させる。50体積%の水及び50体積%のDMSOの完全な組成物に到達させるためにDMSOの量を調整する。
【0040】
第2工程において、0.3MのLiOH.HOの水溶液を、25℃でpHを6.5〜7.5の値まで上昇させるような量で添加すると、LiPOの沈殿がもたらされる。
【0041】
第3工程において、0.1MのFe(II)のFeSO.7HO溶液を25℃で添加する。これはLiPOの再溶解をもたらすと考えられる。溶液中の最終的なLi:Fe:Pの比は3:1:1に近い。溶液のpHを6.5〜7.5の間のある値に設定した後にFe(II)前駆体を添加することによって、Fe種の制御された沈殿を行うことが可能であり、先行技術において得られたものよりも遥かに低い粒度がもたらされる。
【0042】
第4工程において、溶液の温度を溶液の沸点、108〜110℃まで上昇させる。6時間後、得られた沈殿を濾過して水で完全に洗う。
【0043】
粉末状の沈殿は、XRD測定によると、純粋な結晶のLiFePOである。完全なパターンマッチングの改善をXRDパターン(Pmnbスペースグループ)において行うとセルのパラメータa=10.294Å、b=5.964Å及びc=4.703Åが得られて、これは288.7Åの結晶セル体積に相当する。図2のFEG−SEM図は、30〜60nm範囲の単分散の小結晶粒子を示す。生成物の容積粒度分布は画像分析を使用して測定した。図3に示されるように、d50値は約45nmであるが、(d90−d10)/d50として定義された、相対的なスパンは、約1.2(d10=25nm、d90=79nm)である。
【0044】
スラリーは上述された方法で得られたLiFePO粉末を、N−メチルピロリドン(NMP)中で10質量%のカーボンブラック及び10質量%のPVDFと混合することによって製造され、これを集電装置としてのAlホイル上に堆積させる。得られた電極は、80質量%の活性材料を含有し、6mg/cm活性材料の装入を用いて、コイン電池を製造するために使用される。陰極は金属Liで作られている。コイン電池は2.5〜4.0VのLiBFベースの電解液中でサイクルされる。図1は高可逆性容量が低速度で得られ、単相Li挿入/抽出機構の特性のサイクル下で勾配のある電圧曲線を有することを示す。強調されるべきことは、図1の曲線は定電流条件において記録されており、そのため、正に電池のEMFに近似していることである。この場合、EMFはLi挿入/抽出に応じて継続的に変化し;従ってEMF曲線の勾配は、図の勾配よりも若干はっきりしないが、明らかにゼロではない。
【0045】
図4はサイクル時に電池において集められたインサイチュXRDデータを示す。図5において明確に見られることは、挿入/抽出が、電池パラメータの継続的な進化と共に、LiFePOからFePOへと進み、これは単一のLiFePO(0≦x≦1)相の存在を証明する。これはまた、この単相機構のサイクル時の良好な可逆性も強調する。
【0046】
反例
反例として、WO2007/000251号を例示する実施例に従って材料を合成する。本発明による実施例と比較すると、反応物の添加の順序が異なっていることが分かり;この変更は、沈殿材料の最終粒度に関して極めて重要であり、該材料は記載された先行技術によって沈殿した生成物の場合、約130〜150nmである。本発明と先行技術との間の差は、Fe前駆体を6.5〜7.5の間の既に固定された安定なpHを有する溶液に添加する事実にあるが;先行技術においてFe前駆体を6未満のpHを有する溶液に添加し、その後、Li前駆体の添加によってpHは約7まで上昇した。Fe前駆体はまた固体形態で添加できる。
【0047】
また、得られた反例材料は、XRDパターンからのリートフェルト改良によって特徴づけられるように、291.7Åの結晶セル体積を示す。
【0048】
この材料を用いて、電池は上述のように製造される。図6は室温における先行技術の材料の充電/放電曲線とC/20サイクル速度を示す。低電圧プラトーが存在しており、これは2相のLi挿入/抽出機構の特徴である。強調されるべきことは、図6の曲線は定電流条件において記録されており、そのため、この曲線は正に電池のEMFに近似していることである。この場合、EMFは一定であり、Li挿入/抽出に応じたEMFの勾配は殆どゼロである。
【0049】
図7は充電/放電の異なる状態で記録されたインサイチュXRDを示す。図8に電池パラメータの進展が例示されている。これは明らかに慣用の二相系を示しており、各端部材FePOとLiFePOの割合は、本発明による生成物とは対照的に、材料中のリチウム濃度によって変化する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分としてLi(M,M’)PO(式中、0≦x≦1、MはMn、Fe、Co、Ni、Cuからなる群から選択される1つ以上のカチオンであり、M’はNa、Mg、Ca、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Zn、B、Al、Ga、Ge、Snからなる群から選択される任意の置換カチオンである)を含むLi挿入/抽出粉末状材料であって、前記活性成分は、0.2未満から0.8を上回るまで変化するxに対して、Li挿入/抽出の間25℃において熱力学的に安定な単相材料であることを特徴とする、活性成分としてLi(M,M’)POを含むLi挿入/抽出粉末状材料。
【請求項2】
MがFeであることを特徴とする、請求項1記載の材料。
【請求項3】
M’に対するMのモル比が5を上回ることを特徴とする、請求項1又は2記載の材料。
【請求項4】
291Åより低い、有利には290Å以下、更に有利には289Å以下の結晶セル体積によって特徴付けられる、請求項2又は3記載の材料。
【請求項5】
50nm未満の、有利には10〜50nmの間のd50を有する粒度分布を特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の材料。
【請求項6】
300nm未満の、有利には200nm未満のd99を有する粒度分布を特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の材料。
【請求項7】
比(d90−d10)/d50が1.5未満、有利には1.2未満である単峰性の粒度分布を特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の材料。
【請求項8】
式Li(M,M’)PO(式中、0≦x≦1、MはMn、Fe、Co、Ni、Cuからなる群から選択される1つ以上のカチオンであり、M’はNa、Mg、Ca、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Zn、B、Al、Ga、Ge、Snからなる群から選択される任意の置換カチオンである)による粉末状Li挿入/抽出材料の製造方法であって:
− 6〜10の間のpHを有し、二極性非プロトン性添加剤、並びにLi(I)及びP(V)として導入されたLi及びP前駆体を含有する第1の水ベース混合物を提供する工程;
− M(II)としてのM前駆体、及びM’前駆体を前記第1の水ベース混合物に添加し、それによって第2の水ベース混合物を得る工程;
− 前記第2の水ベース混合物を大気圧においてその沸点以下の温度に加熱し、それによって粉末状Li挿入/抽出材料を沈殿させる工程
を含む、粉末状Li挿入/抽出材料の製造方法。
【請求項9】
少なくともLi(I)の部分をLiOH.HOとして導入することを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
少なくともP(V)の部分をHPOとして導入することを特徴とする、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
第1の水ベース混合物のpHがHPOに対するLiOH.HOの比を調整することによって得られることを特徴とする、請求項9又は10記載の方法。
【請求項12】
M=Feであり、M’が不在であり、且つ前記第1の水ベース混合物のpHが6.5〜8の間、有利には6.5〜7.5の間である、請求項8から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
二極性非プロトン性添加剤が第2の水ベース混合物の大気の沸点を、100〜150℃の間、有利には105〜120℃の間に上昇させることを特徴とする、請求項8から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
二極性非プロトン性添加剤がジメチルスルホキシドであることを特徴とする、請求項8から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
第1の水ベース混合物が5〜50モル%の間、有利には10〜30モル%の間のジメチルスルホキシドを含有することを特徴とする、請求項14記載の方法。
【請求項16】
非酸化条件下でのLi挿入/抽出粉末状材料の加熱による該材料の後処理工程が後に続くことを特徴とする、請求項8から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
後処理の工程が650℃以下、有利には少なくとも300℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項18】
請求項16に記載の後処理工程の前に、電子伝導性物質、又はその前駆体を、1種又は複数種の第1の水ベース混合物、第2の水ベース混合物、及び粉末のいずれかに添加することを特徴とする、請求項8から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
電子伝導性物質が炭素、特に伝導性炭素又は炭素繊維であることを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項20】
電子伝導性物質の前駆体が炭素ベースであり且つ重合可能であることを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項21】
アノード、電解質及びカソード、請求項1から7までのいずれか1項記載の材料を含む前記カソードを含む、Liベースの二次電池。
【請求項22】
請求項1から7までのいずれか1項記載の材料を含む、Liベースの二次電池用の電極混合物。
【請求項23】
請求項1から7までのいずれか1項記載の少なくとも80質量%の化合物を含む、非水性液体電解質を有するLiベースの二次電池用の電極混合物であって、25℃で0.1Cの放電速度のLi/Liに対して2.5〜4.5Vの間でサイクルされるカソードにおいて活性成分として使用される際に、理論容量の少なくとも75%の可逆的容量によって特徴付けられる、Liベースの二次電池用の電極混合物。
【請求項24】
請求項1から7までのいずれか1項記載の少なくとも80質量%の化合物を含む、非水性ゲル様ポリマー電解質を有するLiベースの二次電池用の電極混合物であって、25℃で0.1Cの放電速度のLi/Liに対して2.5〜4.5Vの間でサイクルされるカソードにおいて活性成分として使用される際に、理論容量の少なくとも75%の可逆的容量によって特徴付けられる、Liベースの二次電池用の電極混合物。
【請求項25】
請求項1から7までのいずれか1項記載の少なくとも70質量%の化合物を含む、非水性乾燥ポリマー電解質を有するLiベースの二次電池用の電極混合物であって、25℃で0.1Cの放電速度のLi/Liに対して2.5〜4.5Vの間でサイクルされるカソードにおいて活性成分として使用される際に、理論容量の少なくとも75%の可逆的容量によって特徴付けられる、Liベースの二次電池用の電極混合物。
【請求項26】
活性成分としてナノメートルの粉末状Li(M,M’)PO(式中、0≦x≦1、MはMn、Fe、Co、Ni、Cuからなる群から選択される1つ以上のカチオンであり、M’はNa、Mg、Ca、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Zn、B、Al、Ga、Ge、Snからなる群から選択される任意の置換カチオンである)を含む電極を有するLiベースの二次電池であって、25℃での電池のEMFへの前記電極の寄与率が、0.2から0.8まで変化するxに対して、0.05Vを上回る充電状態で継続的に変化することを特徴とする、Liベースの二次電池。
【請求項27】
M’に対するMのモル比が5を上回ることを特徴とする、請求項26記載の二次電池。
【請求項28】
MがFeであり、M’が不在であることを特徴とする、請求項27記載の二次電池。
【請求項29】
ナノメータ粉末状活性成分が50nm未満のd50である粒度分布を有することを特徴とする、請求項26から28までのいずれか1項記載の二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−521797(P2010−521797A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500113(P2010−500113)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/002195
【国際公開番号】WO2008/113570
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(509126003)ユミコア ソシエテ アノニム (23)
【氏名又は名称原語表記】Umicore S.A.
【住所又は居所原語表記】Rue du Marais 31, B−1000 Brussels, Belgium
【出願人】(500379381)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシャルシュ シアンティフィク (17)
【氏名又は名称原語表記】Centre National de la Recherche Scientifique
【住所又は居所原語表記】3 rue Michel Ange, FR−75016 Paris, France
【Fターム(参考)】